説明

羽ばたき型風力発電機

【課題】
翼が羽ばたきの上端位置と下端位置で風に対しての翼の迎え角であるピッチ角の反転を確実に行い、羽ばたきを発電部に伝える機械的伝達部において、機械的平衡点(デッドポイント)に陥り、羽ばたきの動作が停止することを回避した羽ばたき型風力発電機を提供する。
【解決手段】
ピッチ角の反転保持手段として、翼基部と翼先部に付設した相反発または相引き合うマグネット及び/又は、翼の羽ばたきの上端位置において翼を効果的に反転するための風杯、機械的平衡点で羽ばたきの動作停止の回避手段として、伝達手段の一部と支持手段の一部に配置した相反発する極性のマグネットとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は羽ばたき型風力発電機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、風力発電機としては、翼が風力を受けて回転し、その回転により発電手段を稼動する回転型風力発電機が主流であり、多くの場所で目にすることが出来、特許文献1、特許文献2のような多くの文献に見ることが出来る。
【0003】
翼先端が描く面積分の空間を極力少なく(略上半円以下)することで、大掛かりな支柱を必須のものから除外し、製作、設置工事、メンテナンスの空間、規模を小規模にでき、陸屋根のような平面屋根の上にも設置でき、回転翼とは違った美観を与える風力発電機を提供するものとして、本発明者は、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6に見るように羽ばたき型風力発電機を提案してきた。特許文献3、特許文献4においては、羽ばたき型風力発電機の基本的動作を持つものは提示できた。特許文献5では特に翼の重量を補って、実質的に軽くして弱い風でも持ち上がるようにし、風力発電電力を効率よくえる手段を提案した。また、特許文献6では、翼のリード・ラグ角を変化させ、強風に対する安全状態の創出を提案した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6で記載した風力発電機においては、以下の不都合が招来した。
翼が羽ばたきの上端位置と下端位置で風に対しての翼の迎え角であるピッチ角の反転が不十分で、途中で反転し、上端位置と下端位置の端点まで行かずに再反転したり、途中で小さい羽ばたきや平衡の状態になったりする。
羽ばたきを発電部に伝える機械的伝達部において、機械的平衡点(デッドポイント)に陥り、羽ばたきの動作が止まってしまう。
本発明は、課題は上記の2つの欠点を回避する手段を持った羽ばたき型風力発電機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段として、本発明の羽ばたき型風力発電機では、風を受けて羽ばたく翼手段と、発電手段と、翼手段の回転往復運動を回転運動として発電手段に伝達する伝達手段と、これらを支持する支持手段と、支持手段を回転自在に保持し、設置面に固定される架台を備えた羽ばたき型風力発電機において、
翼手段を伝達手段に接続した翼基部とこれに回転自在についた翼先部を有し、ピッチ角の反転保持の改善手段として、翼基部と翼先部に付設した相反発または相引き合うマグネットによるピッチ角反転保持手段、及び/又は、翼の羽ばたきの上端位置において翼を効果的に反転するための風杯によるピッチ角反転手段、
機械的平衡点で羽ばたきの動作停止の改善手段として、伝達手段の一部と支持手段の一部に配置した相反発する極性のマグネットによる機械的平衡点回避手段とを有するものである。
以下、請求の範囲に沿って説明する。
【0006】
請求項1記載の発明は、羽ばたき型風力発電機であって、
風を受けて羽ばたく翼を有する翼手段と、発電手段と、翼手段の羽ばたき往復運動を回転運動として発電手段に伝達する伝達手段と、前記翼手段と前記発電手段と前記伝達手段を支持する支持手段と、前記支持手段を回転自在に保持し、設置面に固定される架台を備えた羽ばたき型風力発電機において、
前記翼手段は、回転軸を介して前記伝達手段に接続される翼基部と、前記前翼基部の先に回転自在に接続した翼先部を有し、
前記翼基部と前記翼先部の各々に、または、前記支持手段と前記翼先部の各々に、同一磁気極性のマグネットの対である第一マグネット対を配置し、前記翼手段の羽ばたき動作において、最上端と最下端の位置に前記翼手段が達する場合に、第一マグネット対が近づいた後、前記最上端と前記最下端の位置において、第一マグネット対が互いに追い越した状態にし、第一マグネット対の反発力により、前記翼基部に対して前記翼先部が既定の角度だけ回転することで前記風に対する前記翼の迎え角度であるピッチ角を変えることを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の羽ばたき型風力発電機において、
前記翼基部と前記翼先部の各々に、または、前記支持手段と前記翼先部の各々に、相異なる磁気極性のマグネットの組である第二マグネット対を配置し、前記翼手段の羽ばたき動作において、前記最上端と前記最下端の位置に前記翼手段が達する場合に、第二マグネット対が近づいた後、前記最上端と前記最下端の位置において、第二マグネット対が互いに向き合う状態にし、前記翼の上昇時または下降時において、第二マグネット対の引き合う力により前記翼基部に対して前記翼先部が回転しないで前記ピッチ角を保持することを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2のいずれか一つに記載の羽ばたき型風力発電機において、
前記翼先部に相異なる磁気極性のマグネット1とマグネット2を前記ピッチ角の回転方向に略ピッチ角の角度だけ離して配置し、前記支持手段に相異なる磁気極性のマグネット3とマグネット4を配置し、前記翼手段の羽ばたき動作において、前記最下端の位置に前記翼手段が達する場合に、マグネット1とマグネット3が、第一マグネット対となって、前記ピッチ角を変え、前記ピッチ角が変わった後、マグネット2とマグネット3が向き合って第二マグネット対となって前記ピッチ角を保持し、
最上端の位置に前記翼手段が達する場合に、マグネット2とマグネット4が、第一マグネット対となって、前記ピッチ角を変え、前記ピッチ角が変わった後、マグネット1とマグネット4が向き合って第二マグネット対となって前記ピッチ角を保持するようにしたことを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の羽ばたき型風力発電機において、
前記翼基部と前記翼先部の各々に、相異なる磁気極性のマグネットの組として、マグネット5とマグネット6を配置し、前記翼手段の下降の状態では、マグネット5とマグネット6が対向して引き合うことで、下降時の前記ピッチ角を保持するようにしたことを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の羽ばたき型風力発電機において、
前記翼先部に風杯を有し、前記翼手段が前記最上端の位置にある場合のみ、前記風杯に前記風を受けるようにし、前記風杯が受ける風力により、前記翼基部に対して前記翼先部を
回転して前記ピッチ角を変えることを特徴とする。
【0011】
請求項6記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれか一つに記載の羽ばたき型風力発電機において、
翼手段の羽ばたき往復運動を回転運動として発電手段に伝達する前記伝達手段において、前記伝達手段を構成するクランクが、回転の方向が定まらないで停止する点を回避するために、前記伝達手段を構成する回転体または前記伝達手段に繋がった回転体と前記支持手段の各々に同一磁気極性のマグネットの組としてマグネット7とマグネット8を配置して、停止する点において、マグネット7とマグネット8が対向して反発し、前記停止する点を回避することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上のように構成されるので、翼の回転往復運動時の翼の最上端と最下端の位置で、確実にピッチ角を反転させ、翼の上昇と下降の途中では、ピッチ角を保持することが可能となり、伝達手段のクランクにおいて、デッドポイントを回避した回転動作が実現できる羽ばたき型風力発電機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の羽ばたき型風力発電機の全体構成の一実施態様を示す図である。
【図2】本発明の羽ばたき型風力発電機のマグネットによるピッチ角反転保持手段の一実施態様を示す図である。
【図3】本発明の羽ばたき型風力発電機の風杯によるピッチ角反転保持手段の一実施態様を示す図である。
【図4】本発明の羽ばたき型風力発電機の相反発する極性のマグネットによる機械的平衡点回避手段の一実施態様を示す図である。
【図5】本発明の羽ばたき型風力発電機のマグネットによる別のピッチ角反転保持手段の一実施態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明を実施するための形態として、本発明の羽ばたき型風力発電機では、風を受けて羽ばたく翼手段と、発電手段と、翼手段の羽ばたき往復運動を回転運動として発電手段に伝達する伝達手段と、これらを支持する支持手段と、支持手段を回転自在に保持し、設置面に固定される架台を備えた羽ばたき型風力発電機において、
翼手段を伝達手段に接続される翼基部とピッチ角を変えるためにこれに回転自在についた翼先部を有し、ピッチ角の反転保持の改善手段として、翼基部と翼先部に付設した相反発または相引き合うマグネットによるピッチ角反転保持手段、及び/又は、翼の羽ばたきの上端位置において翼を効果的に反転するための風杯によるピッチ角反転手段を有し、
機械的平衡点での羽ばたきの動作停止の改善手段として、伝達手段の一部と支持手段の一部に配置した相反発する極性のマグネットによる機械的平衡点回避手段とを有するものである。
以下実施例をもって詳しく説明する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平11−343959
【特許文献2】特開2000−161197
【特許文献3】特願平11−359770
【特許文献4】特願2008−036838
【特許文献5】特願2008−216932
【特許文献6】特願2009−110461
【0016】
図1は、本発明の羽ばたき型風力発電機の全体構成の一実施態様を示す図である。
以下、全体の構成と動作を説明する。
1−Aでは、羽ばたき型風力発電機の全体を示す。大きく分けて、風を受けて羽ばたく翼手段100と、発電手段200と、翼手段の羽ばたき往復運動を回転運動として発電手段に伝達する伝達手段300と、これらを支持する支持手段400と、支持手段を回転自在に保持し、設置面に固定される架台500を有している。風に対して風力発電機自体が正対するように尾翼600が付いているが、羽ばたく翼手段100により正対する場合もあり、必須ではない。特に、前後にも翼手段がある場合は尾翼600を不要に構成しやすい。この図では、細部が分かりにくいので、以下各部を分解し説明する。
【0017】
1−Bでは、架台500を示す、設置面に固定するために、ボルトナット等で固定するフランジや脚を有し、上部は、後述する支持手段が回転自在に結合することで、風向きに対して両翼が正対するようになっている。
【0018】
1−Cでは、支持手段400を示す。支持手段400は、水平面内で回転可能なように前述のように架台500に回転自在に結合している以外に、他の手段を支持するための部位を有している。以下、それを説明する。支持手段400は、翼軸保持枠410、伝達手段300のうちクランク等の往復回転変換部を格納する第一伝達手段格納部420、伝達手段300のうち、往復回転変換部での回転を増速する増速ギアを格納する第二伝達手段格納部430、増速ギアで増速された回転を受けて発電する発電部を格納する発電部格納部440を有している。
【0019】
翼軸保持枠410には、翼手段100の往復回転軸が挿入される第一軸穴411があり、この穴に嵌った状態で、翼手段100の往復回転軸が羽ばたき回転をする。
第一伝達手段格納部420、第二伝達手段格納部430、発電部格納部440を仕切る仕切り壁450A、450B、450C、450Dには、伝達手段の回転軸、増速ギアの回転軸、発電部の回転軸が嵌る穴を有している。
【0020】
次に、支持手段400に支持される伝達手段300について説明する。1−E、1−Fにおいて、翼手段100の往復回転軸に連結することで、これに伴って動くリンク受け具301があり、この反復動作に伴って、これに回転自在に結合したリンクアーム302が動き、さらにリンクアーム302の他の先端に回転自在についたクランク303により、クランク軸304A、304Bが回転運動を行う。クランク軸304A、304Bの回転運動を極力滑らかにするように、クランク軸304Aの先端には、フライホイール305がついている。クランク軸304Bには、増速ギア306の回転軸が接続していて、クランク軸304Bの回転を増速して発電手段200に回転を伝える。
【0021】
1−C、1−E、1−Fにおいて、左右の両翼ごとに、翼軸保持枠410、往復回転軸が挿入される第一軸穴411、リンク受け具301、リンクアーム302、クランク303があって、一つのクランク軸304A、304Bを動かすので、左右の翼は、対称な羽ばたきを実現することが出来ている。
尚、1−Eにおいては、増速ギア306を格納する第二伝達手段格納部の仕切り壁450B、450Cも描かれている。クランク軸304Aは、第一伝達手段格納部の仕切り壁450Aの第二軸穴421に通され、通された先端にフライホイール305がついている。
従って、フライホイール305とクランク303は、仕切り壁450Aを間にして反対側にあり、フライホイール305は、第一伝達手段格納部の外側にある。勿論、フライホイール305は、第一伝達手段格納部の内側にあることも可能である。
【0022】
1−Gにおいて、1−Cの支持手段400に1−Eの伝達手段300を取り付けた状態を示している。ここでは、翼の回転軸が第一軸穴411に通された状態と、第一伝達手段格納部に、クランク軸304Aの保持を補強するために仕切り壁451を追加した状態を示している。
【0023】
1−Fにおいては、翼手段100とリンク受け具301とリンクアーム302とクランク303、クランク軸304A、304Bを示している。リンク受け具301が羽ばたきの往復回転を行うとその回転軸に固定されたリンク受け具301も往復回転し、リンクアーム302が動いて、クランク303によりクランク軸304A、304Bが回転運動をすることが示されている。
【0024】
1−Dに示すのは、翼手段100であり、伝達手段に接続される翼基部110とピッチ角を変えるためにこれに回転自在についた翼先部120を有している。以下、詳細に述べる。
翼基部110には、柱状体111を貫通する又は、柱状体111の側面に直角に取り付けた回転軸棒112がついている。翼先部120が羽ばたき運動をすると、翼基部110は回転軸棒112の回りに往復回転運動をする。翼基部110の柱状体111の翼先部120が付くほうとは反対側の端には、翼先部120の重量とバランスするようにカウンタバランス113が付いているので、軽い状態で往復回転運動が行われる。尚、翼基部110には、風杯114が付いているが、これについては後述する。
翼先部120は、風を受けて揚力を得るように羽根のように扁平翼部121とこの付け根に接続した翼付け根部122からなる。
翼付け根部122と翼基部110の柱状体111は、翼の羽ばたきの上端位置と下端位置でピッチ角を反転して、翼の上昇と下降時に有効に風を受けるようにするため、回転自在の結合をしている。ピッチ角を反転と角度の保持については、ピッチ角の説明とともに後に詳述する。
【0025】
1−Hには、発電手段200を示している。増速ギア306の増速した回転軸が接続されているので、回転により発電を行う。発電手段200は、発電部格納部440に固定的に格納される。
【0026】
風による翼が上昇、及び下降を効果的に行われるために、上昇時は、風による揚力を上向きに、下降時は下向きに得るように風に対する迎えの角度(ピッチ角という)を羽ばたきの最上端と最下端で反転するように変えなければならない。ピッチ角を変えた後は、羽ばたきの最上端と最下端の間を移動するときは、ピッチ角を保持しなければならない。これがうまくいかないと、羽ばたきは、途中で止まったり、反転したり、小刻みな振動を行うようになり、発電の効率は落ちてしまう。これを改善する手段として、図2に示す手段と、更にこれを改善した図5に示す手段があり、これらのいずれかと、図3に示す手段を併用することも可能である。
【0027】
図1においては、以下のことを述べた。ピッチ角の反転のために、伝達手段に接続される翼基部110とピッチ角を変えるためにこれに回転自在についた翼先部120を有している。翼付け根部122と翼基部110の柱状体111は、翼の羽ばたきの上端位置と下端位置でピッチ角を反転して、翼の上昇と下降時に有効に風を受けるようにするため、回転自在の結合部123を有している。図2、図3においてピッチ角の反転・保持について詳しく説明する。
【0028】
図2は、本発明の羽ばたき型風力発電機のマグネットによるピッチ角反転保持手段の一実施態様を示す図である。
2−A−1と2−B−1は翼の断面2201を示しているが、風2202に対する迎えの角度(ピッチ角)によって、2−A−1では、上向きの揚力、2−B−1では下向きの揚力を受ける。2−A−2と2−B−2は、翼が羽ばたきの下端位置と上端位置とになった場合を示す。この時点で、ピッチ角が反転しなければならない。
先ず、2−A−2において、翼手段100は、下端位置に達して、これから上昇するようにピッチ角を変えなければならない。従って、翼手段は、2−A−1のように風に対する角度を取るように回転することになる。2−A−2で、矢印の方向に翼先部120が翼基部110に対して回転する。図では、回転した結果の状態を示している。従って、2−A−1の状態になっている。回転した結果の状態では、翼付け根部122に付いた第一ノブ124が翼基部110の柱状体111側についたストッパ125に止められた状態で、これ以上は回転しないで角度を維持する。従って、第一ノブ124とストッパ125の位置関係は、最適なピッチ角になるように決められている。このような状態で翼手段100は、風を受けて上昇し、上端位置に達する。
2−B−2において、翼手段100は、矢印の方向に翼先部120が翼基部110に対して回転する。図では、回転した結果の状態を示している。従って、2−B−1の状態になっている。回転した結果の状態では、翼付け根部122に付いた第二ノブ126が翼基部110の柱状体111側についたストッパ125に止められた状態で、これ以上は回転しないで角度を維持する。従って、第二ノブ126とストッパ125の位置関係は、最適なピッチ角になるように決められている。このような状態で翼手段100は、風を受けて下降し、下端位置に達する。以上の上下移動を繰り返す。
下端位置と上端位置でのピッチ角の反転を助けるために、ピッチ角回転のための回転軸から翼先部120の重心を風に対して後側にあるようにすると、下端位置と上端位置で翼手段が停止した瞬間の慣性力により、ピッチ角の反転がより容易となる。
以下は、上記の慣性力に頼らないでピッチ角反転を確実に行わせる手段である。
【0029】
2−C−1、2−C−2では、ピッチ角の反転を容易にする別の手段を示している。
2−C−1と2−C−2とは、同じものを見る角度を変えて、覗いた状態を示している。
翼手段100が羽ばたくと、翼基部110とこれに固定的に繋がった回転軸棒112が翼軸保持枠410の穴に嵌った状態で回転往復する。翼基部110の柱状体111には、固定切片132が固定的に付設されている。翼付け根部122は、柱状体111に開いた貫通穴を通って、その先端が飛び出した先には、被ドライブ切片131が付いている。
翼付け根部122の貫通部と柱状体111の穴は、ベアリングが介在し、ピッチ角回転のための回転軸の回りに回転自在となっている。
翼手段100の羽ばたきに伴って動くように柱状体111の先端に取り付けられた第一の歯車128と、第一の歯車128について回転するドライブ切片130がある。回転しないで固定的に翼基部110に取り付いた第二の歯車127は、第一の歯車128と噛み合って、翼手段100の羽ばたきに伴って、第二の歯車127に沿いながら、第一の歯車128が回転することで、ドライブ切片130がピッチ角回転のための回転軸の回りに回転する。
固定切片132とドライブ切片130の間には、翼付け根部122に繋がって、これを動かしピッチ角回転を行う被ドライブ切片131がある。被ドライブ切片131は、前述のように翼付け根部122に繋がっている。
被ドライブ切片131もピッチ角回転のための回転軸の回りに回転することで、翼先部120のピッチ角回転が行われる。
更にピッチ角回転の動作を説明する。
先ず、2−C−1のような状態から、翼手段100が下方に向かって羽ばたきをすると、ドライブ切片130が第一の歯車128とともに回転する。ドライブ切片130は、被ドライブ切片131と重なるようになる。ドライブ切片130と被ドライブ切片131の先端部には、互いに反発するマグネットが取り付けられているため、ドライブ切片130が最下端まで回転したときには、被ドライブ切片131は、これから逃げるように(矢印の方向)回転する。被ドライブ切片131が回転すると、翼先部120も回転するので、このようにしてピッチ角回転が行われる。翼手段100が上昇すると、ドライブ切片130は、被ドライブ切片131と再び上の位置で重なるようになる。ドライブ切片130が最上下端まで回転したときには、被ドライブ切片131は、再び逃げるように(矢印の反対方向)回転する。このようにピッチ反転が行われる。
ピッチ角の回転後で翼手段100の上下する途中で、ピッチ角の回転を安定に保つ手段として、被ドライブ切片131と固定切片132の間には、互いに引き合う第二のマグネットの組133、134がピッチ角の二つの状態に対して各々存在する。
【0030】
図5は、本発明の羽ばたき型風力発電機のマグネットによる別のピッチ角反転保持手段の一実施態様を示す図である。図2の2−C−1、2−C−2のマグネットによる手段の更なる改善された手段の例である。
5−Aでは、最下端の状態から翼手段100が上昇する場合であり、5−Bでは、最上端の状態に達して、これからピッチ角が反転する場合であり、5−Cでは、ピッチ角が変わって、最上端の状態から翼手段100が下降する場合であり、5−Dでは、最下端の状態に達して、これからピッチ角が反転する場合である。
5−Dにおいて、翼基部110は、第一基片110Aと第二基片110Bが一体になって
L字型を構成している。翼先部120は、円筒部120Aとこれにフランジを有して接続した羽体120Bを有し、円筒部120Aは、第一基片110Aの穴に嵌って回転自在に構成されることで、翼基部110に対して翼先部120がピッチ角を変えることが可能になっている。第二基片110Bには、回転軸棒112が付いていて、回転軸棒112は、翼軸保持枠410の穴に嵌って、回転自在になっていて、先端には、リンク受け具301が付いている。リンク受け具301は、図1で示した伝達手段300の一部を構成しているものである。全体の他の構成は、他の図と同じなので、説明を省く。
翼先部120には、極性の異なる二つのマグネットが付いていて、第一マグネットA:501Aと第二マグネットA:502Aは、翼のピッチ角回転の角度に対応した位置に離れて取り付けられている。これらに相対して第一マグネットB:501Bと第二マグネットB:502Bが、支持手段400に、例えば、翼軸保持枠410に付いている。又、第一基片110Aと円筒部120Aにも第三マグネットA:503Aと第三マグネットB:503Bが付いている。これらのマグネットのピッチ角反転と保持に寄与する機能を説明する。
【0031】
5−Dにおいて、翼手段100が、最下端に近づくと、第一マグネットA:501Aが第一マグネットB:501Bに近づくが、両者は、同じ磁極性(例では、N)なので、反発する方向なので、翼手段100がこの図で時計回りに回転する方向には回転せずピッチ角が保持される。然し、翼手段100が、最下端まで移動すると、第一マグネットA:501Aが第一マグネットB:501Bよりわずかに超えるようになって、マグネットの反発力により、翼手段100が時計回り(矢印)に回転するようになって、ピッチ角反転が起こる。尚、第三マグネットA:503Aと第三マグネットB:503Bは、ピッチ角反転前は、向き合った状態で異なる磁極性なので引き合っているため、ピッチ角反転を妨げるので、第三マグネットA:503Aと第三マグネットB:503Bの引き合いの強さより、第一マグネットA:501Aと第一マグネットB:501Bとの反発力を強めに設定してある。5−Dにおいて、ピッチ角反転が起こった状態は、第二マグネットA:502Aが第一マグネットB:501Bに近づき向き合う。この状態が5−Aであって、これから上昇に転ずる。この場合、両者は、異なる磁極性であるので、引き合い、翼手段100が上昇中ピッチ角を保持する。この状態では、第三マグネットA:503Aと第三マグネットB:503Bは離れていて影響力を持っていない。上昇につれて、5−Bの状態に近づく。
【0032】
5−Bにおいて、翼手段100の上昇により、第二マグネットA:502Aと第二マグネットB:502Bが近づくにつれて、両者は、同じ磁極性なので反発力が働き、翼手段100は、反時計周りの回転は起こらず、この力は、ピッチ角を保持することに寄与している。翼手段100が最上端に達すると、第二マグネットA:502Aが第二マグネットB:502Bをわずかに超える位置になり、反発力により翼手段100は、反時計周りの回転が起こされて、反時計周り(矢印)のピッチ角反転が起こる。この結果が、5−Cの状態である。第一マグネットA:501Aが第二マグネットB:502Bに近づき向き合い、第三マグネットA:503Aと第三マグネットB:503Bも近づき向き合って、各々のマグネットの対は、互いに異なる磁極性なので引き合っていて、ピッチ角を保持することに寄与する。この状態で下降し、5−Dに至り、これらの動作が繰り返される。以上の手段により、翼手段100の最上端と最下端においてのみ効果的にピッチ角を反転させることができる。
【0033】
図3は、本発明の羽ばたき型風力発電機の風杯によるピッチ角反転保持手段の一実施態様を示す図である。ピッチ角を回転するには、風杯による手段も好都合である。
3−A−1では、翼手段100が、羽ばたきで最下端の位置から上昇する状態を示す。3−A−2では、最上端の位置に達して、これから下降に転ずる状態を示す。最上端の位置では、翼手段100に付いた風杯3302が、カバー3301から出て、風を受けて、ピッチ角回転のための回転軸の回りに翼先部120を回転して、ピッチ角を反転する。ここで翼先部120と翼基部110の双方に互いに引き合うマグネットの組(図2の2−B−2における129)を持った二つの切片を設けることで、ピッチ角を安定に保つことが出来る。
【0034】
風杯3302の別の実施態様は3−B−1、3−B−2、3−B−3に示される。カバー3301の代わりに、球形のカバー3303があり、これには風通過穴3304が開いている。球形のカバー3303と風杯3305の間には、シャッタ板3306があって、自重により回転し、風杯3305に対して風通過穴3304の実質的開閉を行っている。
3−B−1の翼手段100が最下端にある状態では、風杯3305がシャッタ板3306に遮られ、風通過穴3304を通った風は、風杯3305には当らない。3−B−2の翼手段100が最上端にある状態では、シャッタ板3306が自重により回転し、シャッタ板3306に風杯3305は、遮られないので、風通過穴3304を通った風は、風杯3305に当る。この状態では、3−A−1や3−A−2の場合と同様に、風杯3305は、ピッチ角回転のための回転軸の回りに翼先部120を回転して、ピッチ角を反転する。回転した結果が、3−B−3の状態である。回転したことで、風杯3305は、初期より画面上で左側に移動している。以上の風杯によるピッチ角反転の場合も、ここで翼先部120と翼基部110の双方に互いに引き合うマグネットの組を持った二つの切片(図2の2−B−2における129と同じ)を設けることで、ピッチ角を安定に保つことが出来る。
【0035】
図4は、本発明の羽ばたき型風力発電機の相反発する極性のマグネットによる機械的平衡点回避手段の一実施態様を示す図である。クランク303による往復運動を回転運動に変える場合に、回転が連続で高速に行われ、慣性力を持って回り続ける場合は、問題がない。回転が低速であり、往復運動が一瞬停止する場合には、運動の状態がどちらにも動かない平衡点(デッドポイント(死点)ともいう)に陥ることがある。このポイントでは平衡状態にあり、どちらにも動けるので、機械的に迷っている状態である。一方向の回転には好ましくない特徴である。このポイントを避けるために、この位置関係にある状態に対応するところに相反発するマグネットを配置して、この位置関係にならない手段を用いている。図4でフライホイール305についたマグネット4401と仕切り壁450Aについたマグネット4402がこのマグネットである。
【0036】
尚、風速が弱いときでも、羽ばたき動作が開始して、勢いをつけるためには、発電手段と伝達手段の間に、遠心クラッチを介することも出来る。遠心クラッチは、勢いがつくまでは、発電機の回転軸が繋がらないので無負荷状態となり、風速が弱いときでも、羽ばたき動作が開始する。回転に勢いがついた後は、遠心力によりクラッチが接続して、発電機の回転軸が繋がり、発電動作が行われる。
又、図示はされていないが、風向きに対して前後にも左右一対の翼を多列して装備する別の実施態様では、前後の翼が上下の同一方向に羽ばたいた場合、前の翼の陰になって、有効に風の力を生かせない。又、翼をずらせても上下に同一方向では、風による揚力が翼の間で相手の翼の運動を阻害する方向に働いて効果が低減する。従って、翼同士は、一箇所のみで交差する上下に反対方向動作をすることが重要であり、これによって、発電効率をさらに向上させることが可能となる。
【0037】
尚、図示してはいないが、強風下で本発明の羽ばたき型風力発電機を運転すると、設計上の強度を超えて回転往復運動を行う場合が考えられ、破損の原因となる為、受ける風圧を軽減させることが好ましい。本発明の羽ばたき型風力発電機では、強風による破損を回避する為に、支持手段400と架台500の間に、風向き方向に自在に折れる介在手段を設けることも効果的である。左右の翼手段100に受ける風圧によって、介在手段を介して、架台500の設置面に対しての支持手段400の角度が変化し、安全運転できる風速以上の強風時下では、支持手段400が折れ込んで、翼手段100に受ける風圧を回避することができ、ラグ状態を創出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上のように、本発明による羽ばたき型風力発電機は、翼手段の最上端と最下端で、確実にピッチ角を反転させ、伝達手段におけるクランク機構のデッドポイントを回避できるので、確実な羽ばたき動作を行う羽ばたき型風力発電機を提供でき、産業上大きな利用性を有している。
【符号の説明】
【0039】
100 翼手段
110 翼基部
110A 第一基片
110B 第二基片
111 柱状体
112 回転軸棒
113 カウンタバランス
114 風杯
120 翼先部
120A 円筒部
120B 羽体
121 扁平翼部
122 翼付け根部
123 回転自在の結合部
124 第一ノブ
125 ストッパ
126 第二ノブ
127 第二の歯車
128 第一の歯車
129 マグネットの組
130 ドライブ切片
131 被ドライブ切片
132 固定切片
133、134 第二のマグネットの組
200 発電手段
300 伝達手段
301 リンク受け具
302 リンクアーム
303 クランク
304A、304B クランク軸
305 フライホイール
306 増速ギア
400 支持手段
410 翼軸保持枠
411 第一軸穴
420 第一伝達手段格納部
421 第二軸穴
430 第二伝達手段格納部
440 発電部格納部
450A、450B、450C、450D 仕切り壁
451 仕切り壁
500 架台
501A 第一マグネットA
502A 第二マグネットA
501B 第一マグネットB
502B 第二マグネットB
503A 第三マグネットA
503B 第三マグネットB
600 尾翼
2201 翼の断面
2202 風
3301 カバー
3302、3305 風杯
3303 球形のカバー
3304 風通過穴
3306 シャッタ板
4401、4402 マグネット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
風を受けて羽ばたく翼を有する翼手段と、発電手段と、翼手段の羽ばたき往復運動を回転運動として発電手段に伝達する伝達手段と、前記翼手段と前記発電手段と前記伝達手段を支持する支持手段と、前記支持手段を回転自在に保持し、設置面に固定される架台を備えた羽ばたき型風力発電機において、
前記翼手段は、回転軸を介して前記伝達手段に接続される翼基部と、前記前翼基部の先に回転自在に接続した翼先部を有し、
前記翼基部と前記翼先部の各々に、または、前記支持手段と前記翼先部の各々に、同一磁気極性のマグネットの対である第一マグネット対を配置し、前記翼手段の羽ばたき動作において、最上端と最下端の位置に前記翼手段が達する場合に、第一マグネット対が近づいた後、前記最上端と前記最下端の位置において、第一マグネット対が互いに追い越した状態にし、第一マグネット対の反発力により、前記翼基部に対して前記翼先部が既定の角度だけ回転することで前記風に対する前記翼の迎え角度であるピッチ角を変えることを特徴とする羽ばたき型風力発電機。
【請求項2】
前記翼基部と前記翼先部の各々に、または、前記支持手段と前記翼先部の各々に、相異なる磁気極性のマグネットの組である第二マグネット対を配置し、前記翼手段の羽ばたき動作において、前記最上端と前記最下端の位置に前記翼手段が達する場合に、第二マグネット対が近づいた後、前記最上端と前記最下端の位置において、第二マグネット対が互いに向き合う状態にし、前記翼の上昇時または下降時において、第二マグネット対の引き合う力により前記翼基部に対して前記翼先部が回転しないで前記ピッチ角を保持することを特徴とする請求項1記載の羽ばたき型風力発電機。
【請求項3】
前記翼先部に相異なる磁気極性のマグネット1とマグネット2を前記ピッチ角の回転方向に略ピッチ角の角度だけ離して配置し、前記支持手段に相異なる磁気極性のマグネット3とマグネット4を配置し、前記翼手段の羽ばたき動作において、前記最下端の位置に前記翼手段が達する場合に、マグネット1とマグネット3が、第一マグネット対となって、前記ピッチ角を変え、前記ピッチ角が変わった後、マグネット2とマグネット3が向き合って第二マグネット対となって前記ピッチ角を保持し、
最上端の位置に前記翼手段が達する場合に、マグネット2とマグネット4が、第一マグネット対となって、前記ピッチ角を変え、前記ピッチ角が変わった後、マグネット1とマグネット4が向き合って第二マグネット対となって前記ピッチ角を保持するようにしたことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか一つに記載の羽ばたき型風力発電機。
【請求項4】
前記翼基部と前記翼先部の各々に、相異なる磁気極性のマグネットの組として、マグネット5とマグネット6を配置し、前記翼手段の下降の状態では、マグネット5とマグネット6が対向して引き合うことで、下降時の前記ピッチ角を保持するようにしたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の羽ばたき型風力発電機。
【請求項5】
前記翼先部に風杯を有し、前記翼手段が前記最上端の位置にある場合のみ、前記風杯に前記風を受けるようにし、前記風杯が受ける風力により、前記翼基部に対して前記翼先部を
回転して前記ピッチ角を変えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の羽ばたき型風力発電機。
【請求項6】
翼手段の羽ばたき往復運動を回転運動として発電手段に伝達する前記伝達手段において、前記伝達手段を構成するクランクが、回転の方向が定まらないで停止する点を回避するために、前記伝達手段を構成する回転体または前記伝達手段に繋がった回転体と前記支持手段の各々に同一磁気極性のマグネットの組としてマグネット7とマグネット8を配置して、停止する点において、マグネット7とマグネット8が対向して反発し、前記停止する点を回避することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一つに記載の羽ばたき型風力発電機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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