説明

羽根駆動装置及び光学機器

【課題】小型化された羽根を備えた羽根駆動装置及び光学機器を提供することを課題とする。
【解決手段】羽根駆動装置1は、光路開口11を有した基板10と、複数の開口31〜33を有した羽根30と、羽根30を揺動させて光路開口11に対して進退移動させる電磁アクチュエータ50aと、基板10に対する羽根30の揺動支点の位置を変更する電磁アクチュエータ50bとを備えている。電磁アクチュエータ50aは、ロータ51aと、ロータ51aの回転を羽根30に伝達する伝達部58aとを含み、電磁アクチュエータ50bは、ロータ51bと、ロータ51bの回転を羽根30に伝達する伝達部58bとを含み、羽根30は、伝達部58aと係合するカム溝19aと、伝達部58bと摺動可能に嵌合する嵌合孔19bとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、羽根駆動装置及び光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に形成された光路開口を通過する光量を、複数の開口を有した羽根により調整する装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】実開平3−42133号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光路開口と羽根側の複数の開口とが重なるようにするためには、羽根側の複数の開口は、羽根の移動方向に並ぶように設ける必要がある。また、羽根は、所定位置を支点として回転するように移動する。従って、複数の開口は、所定位置を支点とした円弧線上に設ける必要がある。このように開口の位置が制約されるため、羽根が大型化する恐れがある。
【0005】
そこで、本発明は、小型化された羽根を備えた羽根駆動装置及び光学機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、光路開口を有した基板と、複数の開口を有した羽根と、前記羽根を揺動させて前記光路開口に対して進退移動させる第1駆動源と、前記基板に対する前記羽根の揺動支点の位置を変更する第2駆動源と、を備えた羽根駆動装置によって達成できる。
【0007】
羽根の揺動の支点が変更されるので、羽根に形成された複数の開口は、同一の位置を支点とする円弧線上になくてもよい。これにより、羽根に設けられる複数の開口の位置の自由度が向上し、羽根が大型化しないように開口の位置を設定することができる。
【0008】
また、上記の羽根駆動装置を備えた光学機器であってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、小型化された羽根を備えた羽根駆動装置及び光学機器を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、光学機器に採用される本実施例に係る羽根駆動装置の正面図である。羽根駆動装置1は、光学機器に搭載された撮像素子(不図示)への光量を調整する絞り装置として機能する。羽根駆動装置1は、基板10、羽根30、電磁アクチュエータ50a、50bを含む。
【0011】
基板10の中央部には、被写体側からの光量が通過する光路開口11が形成されている。羽根30は、光路開口11を通過する通過光量を調整する。羽根30は、光路開口11に対して進退自在である。羽根30は所定の位置を支点として揺動する。羽根30は、図1において基板10よりも手前側に配置されている。羽根30には、3つの開口31〜33が形成されている。開口31〜33は、光路開口11よりも小さく形成されている。また、開口31〜33の順に大きさが小さくなる。光路開口11と、開口31〜33のいずれかとが重なることにより、光路開口11を通過する光量が絞られる。また、光路開口11から羽根30が退避した状態では、光路開口11を通過する通過光量を最大となる。通過光量が最大となる状態を全開状態と称する。光路開口11と開口31とが重なる状態を第1絞り状態、光路開口11と開口32とが重なる状態を第2絞り状態、光路開口11と開口33とが重なる状態を第3絞り状態と称する。図1は、全開状態での羽根駆動装置1を示している。
【0012】
基板10の背面側には、点線で示した電磁アクチュエータ50a、50bが配置されている。電磁アクチュエータ50a、50bは、羽根30の駆動源として機能する。電磁アクチュエータ50aは、第1駆動源に相当する。電磁アクチュエータ50bは、第2駆動源に相当する。電磁アクチュエータ50aは、羽根30を揺動させる。電磁アクチュエータ50bは、羽根30の揺動の支点を変更する。詳細には、電磁アクチュエータ50aは、回転可能に支持されたロータ51aと、ロータ51aに固定されロータ51aの回転動力を羽根30へ伝達する伝達部58aを有している。ロータ51aは、第1ロータに相当する。伝達部58aは、第1伝達部に相当する。伝達部58aは、ロータ51aの径方向の外側に突出しており、羽根30に形成されたカム溝39aと係合する。詳細には、伝達部58aの先端には、光軸方向に突出した駆動ピン59aが形成されており、この駆動ピン59aがカム溝39aと係合している。また、基板10には、駆動ピン59aの移動を逃すための円弧状の逃げ溝19aが形成されている。尚、各図において、逃げ溝19aを実線で示している。ロータ51aが回転することにより、駆動ピン59aは所定の範囲を揺動し、これにより駆動ピン59aは、逃げ溝19a内を移動する。駆動ピン59aが逃げ溝19a内を移動することにより、羽根30は所定の位置を中心として揺動する。
【0013】
電磁アクチュエータ50aは、ロータ51a、ステータ53a、コイル55aを含む。ロータ51aは、周方向に異なる磁極に着磁されている。ステータ53aには、ステータ53aを励磁するためのコイル55aが巻回されている。ステータ53aは、U字状に形成されており、両端部にそれぞれ磁極部が形成されている。コイル55aへの通電により、ステータ53aの磁極部は、互いに異なる極性に励磁される。ロータ51aとステータ53aの磁極部との間に生じる、磁気的な吸引力及び反発力により、ロータ51aは、所定範囲を回転する。
【0014】
電磁アクチュエータ50bについても、基本的な構成は電磁アクチュエータ50aと同様である。電磁アクチュエータ50bは、ロータ51b、ステータ53b、コイル55bを含む。尚、ロータ51bの回転範囲は、ロータ51aの回転範囲よりも若干長く形成されている。ロータ51bは、第2ロータに相当する。伝達部58bは、第2伝達部に相当する。
【0015】
伝達部58bは、羽根30に形成された嵌合孔39bに嵌合している。詳細には、伝達部58bの駆動ピン59bが、嵌合孔39bと摺動可能に嵌合している。これにより、羽根30は、駆動ピン59bを支点として揺動できる。駆動ピン59bは、逃げ溝19b内を移動する。尚、各図において、逃げ溝19bを実線で示している。駆動ピン59bはロータ51bの回転に伴って位置が変更されるので、羽根30の揺動の支点の位置が変更される。尚、羽根30に対する駆動ピン59bの位置は変更されずに、基板10に対する駆動ピン59bの位置が変更される。これに対し、羽根30に対する駆動ピン59aの位置は変更される。
【0016】
次に、羽根30について詳細に説明する。図2は、羽根30の説明図である。尚、図1には、光路開口11を示しており、全開状態での羽根30と光路開口11との位置関係を示している。全開状態において、駆動ピン59bと嵌合する嵌合孔39bから光路開口11の中心11cまでの距離d1と、嵌合孔39bから開口31の中心31cまでの距離d1とは等しい。また、嵌合孔39bから開口32の中心32cまでの距離d2と、嵌合孔39bから開口33の中心33cまでの距離d2とは等しい。即ち、羽根30の揺動支点(嵌合孔39bの位置)から各開口の中心位置までの距離は、異なっている。換言すれば、開口31〜33の各中心31c〜33cの全ては、支点が同一の場合での円弧線上には存在していない。
【0017】
従来の羽根駆動装置においては、羽根の支点は一箇所に固定されていた。このため、羽根に複数の開口を設ける場合、開口は羽根の支点位置から同一距離を有した位置に設ける必要があった。このため、開口の位置が制限され、羽根が大型化する要因となっていた。
【0018】
しかしながら、本実施例の羽根駆動装置1のように、開口31〜33は、支点位置からそれぞれ異なる位置に設けられている。このため、複数の開口が支点位置から同一距離に設けられている場合と比較し、羽根30は小型化されている。また、羽根30が小型化されているので、羽根30の移動範囲も小さくなる。
【0019】
尚、互いに隣接する開口間の距離は、所定の距離以上短くすることはできない。開口間の距離が短すぎると、一の開口と光路開口11とが重なった際に、光路開口11からの光が一の開口に隣接する開口を経由して撮像素子に入射し、所望の露光量を得られない恐れがあるからである。このため、開口間距離は、ある程度必要となる。本実施例の羽根駆動装置1の羽根30は、このような開口間距離を考慮して、開口31〜33の位置が設定されている。
【0020】
次に、羽根駆動装置1の動作について説明する。図3は、第1絞り状態での羽根駆動装置1の正面図である。尚、図3において、基板10については一部省略してある。
図1に示した全開状態から、伝達部58aは、回転範囲の一端から他端に向けて回転し、他端位置で停止する。これにより、駆動ピン59aはカム溝39a内を移動し、図3に示すように、羽根30は、開口31と光路開口11とが重なる位置に移動する。尚、伝達部58bは、全開状態と第1絞り状態とでは回転せずに、同一位置に維持している。即ち、羽根30の揺動支点の位置は変更されていない。
【0021】
図4は、第2絞り状態での羽根駆動装置1の正面図である。
図3に示した第1絞り状態から、伝達部58aは、再び回転範囲の他端から一端へと向けて回転し、一端位置で停止する。また、伝達部58bは、回転範囲の一端から他端へと向けて回転し、他端位置で停止する。伝達部58bが回転することにより、駆動ピン59bが移動し、基板10に対する駆動ピン59bの位置が変更される。従って、基板10に対する羽根30の揺動支点の位置は変更される。これにより、羽根30は、開口32と光路開口11とが重なる位置に移動する。このようにして第2絞り状態が画定される。
【0022】
図5は、第3絞り状態での羽根駆動装置1の正面図である。
図4に示した第2絞り状態から、伝達部58aが再び回転範囲の一端から他端に向けて回転し、他端位置で停止する。尚、伝達部58bは回転範囲の他端に位置している。伝達部58aが回転することにより、駆動ピン59aがカム溝39a内を移動して、羽根30は、開口33と光路開口11とが重なる位置に移動する。このようにして、第3絞り状態が画定される。
【0023】
図5に示した第3絞り状態から、伝達部58aは、再び回転範囲の他端から一端へと向けて回転し、一端位置で停止する。また、伝達部58bは、回転範囲の他端から一端へと向けて回転し、一端位置で停止する。これにより、基板10に対する駆動ピン59bの位置が変更され、羽根30は基板10に対する羽根30の揺動支点の位置が変更されて、図1に示すように、基板10に形成された光路開口11から退避した位置に移動する。このようにして全開状態が画定される。
【0024】
以上のように、ロータ51a、51bは、回転範囲の両端位置で停止するように構成されている。例えば、ロータが回転範囲の両端のみならず途中位置でも停止するように構成した場合、ロータが途中位置で停止する際には、ロータがハンチングする恐れがある。しかしながら、本実施例のように、ロータ51a、51bは回転範囲の両端位置で停止可能であればよく、例えば、基板10の背面側に伝達部58a、58bの回転範囲を規定するストッパーを設けることにより、ロータ51a、51bのハンチングを防止できる。
【0025】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、変形・変更が可能である。
【0026】
本実施例において、羽根30は3つの開口31〜33を形成した例を挙げたが、開口31〜33のうち少なくとも一つにNDフィルタを設けてもよい。また、本実施例において、第1、第2駆動源は共に、回転範囲の両端位置で停止可能な揺動モータを用いた例を挙げたが、一方の駆動源にステッピングモータを用いてロータを360°回転可能とし、3つ以上の開口を形成した羽根を駆動してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、本実施例に係る羽根駆動装置の正面図である。
【図2】図2は、羽根の説明図である。
【図3】図3は、第1絞り状態での羽根駆動装置の正面図である。
【図4】図4は、第2絞り状態での羽根駆動装置の正面図である。
【図5】図5は、第3絞り状態での羽根駆動装置の正面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 羽根駆動装置
10 基板
11 光路開口
19a、19b 逃げ溝
30 羽根
31〜33 開口
39a カム溝
39b 嵌合孔
50a、50b 電磁アクチュエータ
51a、51b ロータ
53a、53b ステータ
55a、55b コイル
58a、58b 伝達部
59a、59b駆動ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光路開口を有した基板と、
複数の開口を有した羽根と、
前記羽根を揺動させて前記光路開口に対して進退移動させる第1駆動源と、
前記基板に対する前記羽根の揺動支点の位置を変更する第2駆動源と、を備えた羽根駆動装置。
【請求項2】
前記第1駆動源は、第1ロータと、第1ロータの回転を前記羽根に伝達する第1伝達部とを含み、
前記第2駆動源は、第2ロータと、第2ロータの回転を前記羽根に伝達する第2伝達部とを含み、
前記羽根は、前記第1伝達部と係合するカム溝と、前記第2伝達部と摺動可能に嵌合する嵌合孔とを含む、請求項1の羽根駆動装置。
【請求項3】
前記第1ロータは、所定の回転範囲の両端位置で停止する、請求項2の羽根駆動装置。
【請求項4】
前記第2ロータは、所定の回転範囲の両端位置で停止する、請求項2の羽根駆動装置。
【請求項5】
前記羽根の複数の開口は、3つ以上である、請求項1乃至4の何れかの羽根駆動装置。
【請求項6】
前記羽根の揺動支点から前記羽根の各開口の中心までの距離は、異なっている、請求項1乃至5の何れかの羽根駆動装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかの羽根駆動装置を備えた光学機器。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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