説明

翻訳装置、翻訳方法およびプログラム

【課題】 短時間でできるだけ精度の高い翻訳結果を得ることのできる技術の提供を目的とする。
【解決手段】 翻訳装置1は、互いに異なる複数の翻訳方式を翻訳精度の低いものから順次使用して原文を翻訳し、複数の翻訳方式の各々による翻訳が完了し次第、翻訳の完了した翻訳方式による翻訳文を記憶する。そして、翻訳文の出力が指示された時点で、記憶されている翻訳文の中から最後に記憶された翻訳文を抽出し、この翻訳文を表すデータを出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文章を異なる言語の文章に翻訳する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ある自然言語で記述された文章(原文)を他の自然言語の文章(翻訳文)に翻訳する機械翻訳の技術が知られている。機械翻訳には種々の方式が存在する。例えば、最も翻訳精度の高い方式として、公知の形態素解析、構文解析、意味解析を組み合わせたいわゆる解析ベースの翻訳方式が知られている。また、最も単純な翻訳方式としては、原文を形態素に分割し、各形態素に対応する訳語を順次出力する方式がある。
各翻訳方式にはそれぞれ長所、短所がある。例えば、一般に高精度の翻訳方式においては原文を入力してから翻訳結果を得るまでにかかる時間が長いという傾向がある。反対に、各形態素の訳語を出力だけの方式の場合、翻訳に要する時間は比較的短時間で済むが、翻訳結果が文章として構成されていないので、そのままでは意味を把握しにくいという問題がある。
【0003】
そこで、翻訳に要する処理時間と翻訳精度とをある程度のレベルで両立させることを目的とした技術が提案されている。例えば、特許文献1に開示されている翻訳装置は、特定のキーワードが登録されたテーブルが記憶されており、このキーワードを含む文のみを翻訳する速読モードと全文を翻訳する全訳モードのいずれかが選択可能となっている。ユーザが速読モードを選択することによって、特定のキーワードを含む文のみが翻訳されるから、文書の概要を迅速に把握することができる。
【特許文献1】特開平8−6950号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の従来技術には以下のような問題がある。すなわち、第一に、ユーザは翻訳方式を選択して翻訳装置に指示を与える手間がかかる。第二に、ユーザが簡易な方式で翻訳を行い、その翻訳結果に不満を持った場合、より高度な方式により翻訳をやり直すという手間がかかる。
本発明は、上述した背景の下になされたものであり、短時間でできるだけ精度の高い翻訳結果を得ることのできる技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の課題を解決するために、本発明は、原文を表すデータを入力する入力手段と、互いに異なる複数の翻訳方式を翻訳精度の低いものから順次使用して、前記入力手段で入力されたデータで表される原文を翻訳し、翻訳文を生成する翻訳手段と、前記複数の翻訳方式の各々による翻訳が完了し次第、翻訳の完了した翻訳方式による翻訳文を記憶する記憶手段と、翻訳文の出力を指示する指示手段と、前記指示手段により翻訳文の出力が指示された時点で前記記憶手段に記憶されている翻訳文の中から最後に記憶された翻訳文を抽出し、該翻訳文を表すデータを出力する出力手段とを有することを特徴とする翻訳装置を提供する。
【0006】
また、上述の課題を解決するために、本発明は、原文を表すデータを入力する入力ステップと、互いに異なる複数の翻訳方式を翻訳精度の低いものから順次使用して、前記入力ステップで入力されたデータで表される原文を翻訳し、翻訳文を生成する翻訳ステップと、前記複数の翻訳方式の各々による翻訳が完了し次第、翻訳の完了した翻訳方式による翻訳文を記憶する記憶ステップと、翻訳文の出力が指示された時点で、記憶されている翻訳文の中から最後に記憶された翻訳文を抽出し、該翻訳文を表すデータを出力する出力ステップとを有することを特徴とする翻訳方法を提供する。
【0007】
また、上述の課題を解決するために、本発明は、コンピュータ装置を、原文を表すデータを入力する入力手段と、互いに異なる複数の翻訳方式を翻訳精度の低いものから順次使用して、前記入力手段で入力されたデータで表される原文を翻訳し、翻訳文を生成する翻訳手段と、前記複数の翻訳方式の各々による翻訳が完了し次第、翻訳の完了した翻訳方式による翻訳文を記憶する記憶手段と、翻訳文の出力を指示する指示手段と、前記指示手段により翻訳文の出力が指示された時点で前記記憶手段に記憶されている翻訳文の中から最後に記憶された翻訳文を抽出し、該翻訳文を表すデータを出力する出力手段として機能させるためのプログラムを提供する。
【0008】
上記の翻訳装置または翻訳方法もしくはプログラムによれば、互いに異なる複数の翻訳方式を翻訳精度の低いものから順次使用して原文が翻訳され、複数の翻訳方式の各々による翻訳が完了し次第、翻訳の完了した翻訳方式による翻訳文が記憶される。そして、翻訳文の出力が指示された時点で、記憶されている翻訳文の中から最後に記憶された翻訳文が抽出され、この翻訳文を表すデータが出力される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、短時間でできるだけ精度の高い翻訳結果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
<構成>
翻訳装置1は、入力された原文を翻訳して目的言語の翻訳文を得る翻訳機能と、原稿を読み取って複製物を作成する複写機能とを有している。
まず、翻訳装置1のハードウェア構成について説明する。図1は、本発明の実施形態における翻訳装置1のハードウェア構成を示す図である。
翻訳装置1は、CPU(Central Processing Unit)44、ROM(Read Only Memory)45、RAM(Random Access Memory)46等(いずれも図示省略)からなる制御部4を有し、ROM45に格納されているOS(Operating System)プログラムをCPU44が実行することによって翻訳装置1各部の制御を行う。
【0011】
記憶部5は、ハードディスク装置等の不揮発性メモリである。記憶部5には、原稿の読取、翻訳、出力等の手順を記述したプログラムが記憶されている。
指示入力部41は、テンキー、スタートボタン等からなるキーボード40、タッチパネル機能を有する液晶パネルからなる表示部39を備えており、翻訳装置1に対する指示をユーザが入力することができる。ユーザが入力する指示とは、例えば、原稿の読み取り及び翻訳処理を開始することの指示、翻訳結果を出力することの指示などである。また、表示部39には、翻訳装置1の状態に関する情報を表示することができ、翻訳の処理中であることを示す情報、翻訳処理が完了したことを示す情報などが表示される。
給紙トレイ9には画像を形成するためのシート10が収容される。ユーザが指示入力部41により画像形成の指示を入力すると、給紙ローラ33が回転駆動され、給紙トレイ9からシート10を1枚ずつ送り出す。給紙トレイ9から送り出されたシート10はローラ対34、35、37によって搬送路36に沿って搬送される。
【0012】
画像入力部12は、原稿を光学的に読み取って画像データを生成するスキャナ装置である。プラテンガラス2上に載置された原稿に対して光源13により光が照射され、この反射光が光学系3によって処理される。反射光は、ミラー14、15、16を介して受光部17で受光される。そして、画像処理部18が反射光を電気信号に変換し、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色からなる画像データを生成する。
【0013】
画像形成部6は、画像形成エンジン7Y、7M、7C、7K、転写ベルト8等からなる。
画像形成エンジン7Y、7M、7C、7Kは、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー像を形成する。各画像形成エンジンの構成は共通であるから、ここでは画像形成エンジン7Yについてのみ説明する。
画像形成エンジン7Yは、静電潜像が形成される像担持体としての感光体ドラム20Yの周囲に、帯電装置21Y、露光装置19Y、現像装置22Y、クリーナ24Y等を設けて構成されている。
【0014】
帯電装置21Yは、矢印Aの方向に回転駆動される感光体ドラム20Yの表面を所定の電位に帯電させる。
露光装置19Yは、所定の電位に帯電した感光体ドラム20Yに対して、画像データに基づいた露光用ビームLBを照射するROS(Raster Output Scanner)である。露光装置19Yは、図示しない半導体レーザーから画像データに基づいてレーザー光を出射し、このレーザー光を偏向走査することにより感光体ドラム20Yの表面に静電潜像を形成する。感光体ドラム20Yの表面では、レーザー光が照射された部分の電位が、感光体ドラム20Yの有する光導電性により所定のレベルまで減少する。このように、感光体ドラム20Yの表面電位が変化することにより、感光体ドラム20Yの表面には画像データにもとづいた静電潜像が形成される。
【0015】
現像装置22Yは、感光体ドラム20Y表面に形成された静電潜像を顕像化する装置である。トナータンク23Yからはトナー(帯電色材)が供給され、感光体ドラム20Yの帯電極性と同極性に帯電したトナーによって静電潜像を反転現像することによってトナー像を得る。
転写ベルト8は、ローラ26、27、28、29に張架されており、矢印Bの方向に循環駆動される。感光体ドラム20Yはその下方に位置する転写ベルト8と圧接しており、上記のようにして形成されたトナー像が転写ベルト8に転写される。
クリーナ24Yは、感光体ドラム20Yに残存したトナーを除去する装置である。
【0016】
以上が画像形成エンジン7Yの構成である。画像形成エンジン7M、7C、7Kにおいても各色に対応したトナー像が形成され、転写ベルト8に重ねて転写される。なお、これ以降、画像形成エンジン7Y、7M、7C、7Kを区別する必要のない場合には、単に画像形成エンジン7と称する。他の構成要素についても同様に、Y、M、C、Kの別を区別する必要のない場合には、Y、M、C、Kの表記を省略するものとする。
【0017】
給紙トレイ9から搬送路36上に送り出されたシート10は、転写ベルト8と転写ローラ30とが形成するニップ部に進入し、転写ベルト8に圧接される。この圧接力および静電吸引力によってトナー像がシート10の表面に転写される。
トナー像が転写されたシート10は、ローラ対31によって定着装置11に導かれる。定着装置11においては、シート10に対して加圧および加熱が施され、トナー像がシート10に定着される。このようにして画像形成が行われたシート10は、排紙トレイ32に排出される。
【0018】
次に、翻訳装置1の機能構成について説明する。図2は、翻訳装置1の機能構成を表す図である。CPU44が記憶部5に記憶されているプログラムを実行することによってこれらの機能が実現される。
辞書201は、異種言語間で同義の語句を対応付けて記憶したものであり、記憶部5に格納されている。辞書201は、日本語、英語、中国語など種々の言語に対応したものが記憶されている。また、辞書201には、単語の品詞の種別を表す情報が各単語と対応付けられて記憶されている。
【0019】
入力手段101は、原文を表すデータを入力する。具体的には、入力手段101は、画像入力部12を用いて原文の記載された原稿を読み取り、原稿の画像を表す原稿画像データを生成する。
文字認識手段102は、入力手段101にて入力されたデータに含まれている文字列を認識する。記憶部5には公知のOCR(Optical Character Recognition)プログラムが記憶されており、CPU44がこのOCRプログラムを実行することによって文字認識が行われる。
形態素解析手段103は、文字認識手段102により認識された文字列を形態素(単語等)に分割する。形態素解析手段103は、当該文字列に該当する単語を辞書201から抽出する。
【0020】
翻訳手段104は、文字認識手段103で認識された文字列を翻訳して翻訳文を生成する。翻訳文の生成においては複数の翻訳方式が使用可能となっており、いずれも公知の方法である。本実施形態においては、以下に示す3種類の翻訳方式が使用可能となっているが、これはあくまでも一例であり、ここに示す以外の翻訳方式を用いることも可能である。
【0021】
<A方式>
A方式は、原文を形態素に分割し、各形態素に対応する訳語を順次出力する方式である。
<B方式>
B方式は、前述の特許文献1で開示されている速読モードである。すなわち、特定のキーワードが登録されたテーブルが記憶部5に記憶されており、このキーワードを含む文のみを解析ベースの翻訳方式(後述するC方式)によって翻訳し、出力する。
【0022】
<C方式>
C方式は、形態素解析、構文解析、意味解析を組み合わせたいわゆる解析ベースの翻訳方式である。この方式では、まず、形態素解析手法を用いて原文を形態素に分割し、構文解析手法、意味解析手法を用いて原文の構文を解析して構文木を作成し、翻訳先言語における構文木に変換する。そして、各形態素に対応する訳語を辞書201から抽出して構文木にあてはめ、翻訳文を生成する。
【0023】
ここで、各方式を比較すると、それぞれ以下のような特徴がある。
A方式は、翻訳結果が文章として構成されていないので翻訳の精度は最も低いが、最も処理時間が短い。C方式は、翻訳の精度は最も高いが、翻訳処理に要する時間が最も長い。B方式は、翻訳の精度と処理時間の両方において、A方式とC方式の中間的な方式である。
【0024】
さらに、本発明における翻訳手段104は、以下の特徴を有している。
翻訳手段104は、上記の3つの翻訳方式を下記の順序にて順次使用して翻訳を行う。翻訳方式の使用順序は任意であるが、本実施形態においては下記の2種類のいずれかの順序決定方式にて使用順序が定められている。
<順序決定方式1>
互いに異なる複数の翻訳方式を翻訳精度の低いものから順次使用する。順序決定方式1によれば、上記の3方式の使用順序は、A方式、B方式、C方式の順となる。
<順序決定方式2>
互いに異なる複数の翻訳方式を翻訳処理に要する時間の短いものから順次使用する。順序決定方式2によれば、上記の3方式の使用順序は、A方式、B方式、C方式の順となる。
【0025】
このように、上記の3方式の場合、一般には、順序決定方式1、順序決定方式2のいずれによっても3方式の使用順序は同一となる。しかし、使用順序に例外が生じる場合がある。例えば、原文言語と翻訳先言語とが非常に近似した文法構造を有している場合、原文の形態素に対応する訳語を順次出力するだけの単純な逐語訳でも十分な精度を持つことがあり得る。その場合、B方式よりもA方式の方が翻訳文全体の翻訳精度が高くなることがあり得る。すると、順序決定方式1による使用順序は、B方式、A方式、C方式の順となる。
また、原文言語と翻訳先言語とが非常に近似した文法構造を有している場合、解析ベース(B方式、C方式)の翻訳処理に要する時間が他の言語の組み合わせに比べて比較的短くなることがあり得る。その場合、A方式よりもB方式の方が処理時間が短くなることがあり得る。すると、順序決定方式2による使用順序は、B方式、A方式、C方式の順となる。
【0026】
上記のように、原文言語と翻訳先言語の組み合わせによって、翻訳方式の使用順序は異なる場合がある。本発明の翻訳装置1においては、原文の言語と翻訳先言語との組み合わせに応じて、複数の翻訳方式の使用順序が予め決定されており、その言語の組み合わせと翻訳方式の使用順序とが対応付けられて記憶部5に記憶されている。順序決定手段108は、原文言語と翻訳先言語の組み合わせに応じた使用順序を記憶部5から読み出して、その使用順序を表す情報を翻訳手段104に供給する。翻訳手段104は、順序決定手段108から供給された情報で表される使用順序に従って翻訳を行う
【0027】
記憶手段105は、複数の翻訳方式の各々による翻訳が完了し次第、翻訳の完了した翻訳文を表すデータを記憶部5に記憶させる。翻訳文の記憶の際、当該翻訳文のデータを原文を表すデータと対応付けて記憶させる。ここで原文を表すデータは、原文自体であってもよいし、原文を識別することのできる識別データであってもよい。
指示手段106は、翻訳文の出力を指示する。具体的には、ユーザが指示入力部41に備えられているキーボード40、または表示部39のタッチパネル機能を用いて翻訳文の出力を指示すると、当該指示を表す情報がCPU44に供給される。
【0028】
出力手段107は、指示手段106により翻訳文の出力が指示された時点で記憶部5に記憶されている翻訳文の中から最後に記憶された翻訳文を抽出し、この翻訳文を表すデータを出力する。ここで例えば、順序決定手段108で決定された使用順序がA方式、B方式、C方式の順であるとする。この場合、指示手段106により翻訳文の出力が指示された時点でA方式による翻訳のみが完了し、その翻訳文が記憶部5に記憶されているならば、出力手段107はこの翻訳文を出力する。一方、翻訳文の出力が指示された時点でA方式、b方式による翻訳が完了し、それらの翻訳文が記憶部5に記憶されているならば、出力手段107はB方式による翻訳文を出力する。同様に、翻訳文の出力が指示された時点でA方式、b方式、C方式による翻訳が完了し、それらの翻訳文が記憶部5に記憶されているならば、出力手段107はC方式による翻訳文を出力する。
そして、出力されたデータは、画像形成部6に供給され、画像形成部6は翻訳文の画像をシート表面に形成して、このシートを排紙トレイ32に排出する。
【0029】
<動作>
次に、翻訳装置1の動作について説明する。ここで、翻訳装置1には電源が投入されており、CPU44がプログラムを実行中であるものとする。図3は、翻訳装置1の動作のフローを示す図である。なお、以下に示す動作はCPU44がプログラムを実行することによって実現されるから、動作の主体をCPU44とする。
【0030】
最初にステップA01では、CPU44は、原文の入力、文字認識処理、形態素解析を行う。具体的には、まず、CPU44は、入力手段101を用いて、原文の記載された原稿の読み取りを行う。ユーザは、原稿の読み取り面がプラテンガラス2に接するように原稿を載置し、指示入力部41のスタートボタンを押下する。すると、翻訳装置1の画像入力部12が原稿の読み取りを開始する。画像入力部12は、読み取った原稿の画像データを生成し、記憶部5に記憶する。画像データが記憶されると、CPU44は、文字認識手段102を用いて画像データに含まれる文字列を認識する。そして、CPU44は、形態素解析手段103を用いて、文字列を形態素に分割する。文字列が形態素に分割されると、CPU44は、順序決定手段108を用いて、原文言語と翻訳先言語との組み合わせに応じて翻訳方式の使用順序を決定する。この例においては、翻訳方式の使用順序はA方式、B方式、C方式の順であるものとする。
【0031】
次にステップA02では、CPU44は、A方式を使用して原文の翻訳を行う。ステップA03では、CPU44は、翻訳文の出力指示が入力されたか否かを判定する。出力指示が入力された場合(ステップA03:YES)にはステップA04に進み、A方式による翻訳処理が完了したか否かを判定する。翻訳処理が完了している場合(ステップA04:YES)にはステップA17に進む。ステップA17では、CPU44は翻訳文を表すデータを記憶部5に記憶させ、ステップA18に進み、出力手段107によって翻訳文を出力する。翻訳処理が完了していない場合(ステップA04:NO)にはステップA02に戻る。
【0032】
一方、翻訳文の出力指示が入力されていない場合(ステップA03:NO)にはステップA05に進み、A方式による翻訳処理が完了したか否かを判定する。翻訳処理が完了している場合(ステップA05:YES)にはステップA06に進む。ステップA06では、CPU44は、翻訳文を表すデータを記憶部5に記憶させる。翻訳処理が完了していない場合(ステップA05:NO)にはステップA02に戻る。
CPU44は、ステップA03の判定を一定時間間隔(例えば、1秒間隔)で行うことによって、翻訳文の出力指示が入力されたか否かを常時監視する。
【0033】
ステップA06の処理が完了したならば、CPU44は、ステップA07に進み、B方式による翻訳処理を開始する。なお、ステップA07からステップA11までの動作は、翻訳方式がB方式であることを除いてはステップA02からステップA06までの動作と同様であるのでその説明を割愛する。また、ステップA12からステップA16までの動作は、翻訳方式がC方式であることを除いてはステップA02からステップA06までの動作と同様であるのでその説明を割愛する。
以上が翻訳装置1の動作である。
以上説明したように、本発明の翻訳装置1によれば、短時間でできるだけ精度の高い翻訳結果を得ることができる。
【0034】
<変形例>
以上説明した形態に限らず、本発明は種々の形態で実施可能である。例えば、上述の実施形態を以下のように変形した形態でも実施可能である。
画像入力部12は、翻訳装置1にネットワークを介して接続された別体のスキャナ装置であってもよい。また、画像入力部12は、被写体を撮像して、被写体の画像を表す画像データを生成するデジタルスチールカメラであってもよい。この場合、画像データをデジタルスチールカメラに組み込まれた半導体メモリ等の記録媒体に記録させ、この記録媒体から画像データを読み出し、読み出された画像データを翻訳装置1に入力する。
画像形成部6は、翻訳装置1にネットワークを介して接続された別体のプリンタ装置であってもよい。
【0035】
指示手段106は、ネットワークを介して翻訳装置1に接続されているコンピュータ装置等から翻訳文の出力の指示を受け付けるようにしてもよい。
出力手段107は、ネットワークを介して翻訳装置1に接続されている画像形成装置等へ翻訳文を表すデータを出力するようにしてもよい。
出力手段107により出力されるデータは、翻訳文を表すテキストデータ、翻訳文の画像を表す画像データであってもよい。
また、翻訳装置1を以下に示すように構成することも好ましい。すなわち、翻訳装置1に公知のレイアウト解析機能を備えておき、原文の原稿のレイアウトを解析する。レイアウト解析によって、原文の原稿に含まれる文章領域、絵柄領域、図表領域等が判別され、さらに文章領域における文字の字体、文字サイズ、文字修飾(太字、斜体、色、網がけなど)、文字間隔、行間隔などに関する情報が得られる。そして、翻訳手段104によって生成された翻訳文を原文と同一または近似したレイアウトにて配置し、この翻訳文を表すデータをページ記述言語、ビットマップデータ形式等により生成し、出力手段107により出力する。また、原文の原稿に絵柄や図表が含まれている場合には、翻訳文とともにこれらの絵柄や図表を原文の原稿と同一または近似したレイアウトにて配置した画像を表すデータを生成する。なお、翻訳文、絵柄、図表等をそれぞれ別個のデータファイルとして生成し、出力するようにしてもよい。
【0036】
原文の入力後、所定の時間までに翻訳文の出力指示が入力されない場合、その時点で記憶部5に記憶されている翻訳文のデータを消去するようにしてもよい。また、記憶部5の記憶容量が不足する場合、入力時刻の最も古い原文に対応する翻訳文のデータを記憶部5から消去するようにしてもよい。また、記憶部5の記憶容量が不足する場合、最も生成時刻の古い翻訳文のデータを記憶部5から消去するようにしてもよい。また、記憶部5の記憶容量が不足する場合、最も翻訳精度の低い翻訳文のデータを記憶部5から消去するようにしてもよい。このようにすれば、記憶部5の記憶領域を無駄に占有するを防止することができる。
【0037】
翻訳文の出力指示が入力された時点で、まだ翻訳処理の完了していない翻訳方式による翻訳処理を中止するようにしてもよい。このようにすれば、制御部4の有する計算資源の無駄な使用を防止することができる。
また、翻訳文の出力指示が入力された時点で、まだ翻訳処理の完了していない翻訳方式による翻訳処理を続行するようにしてもよい。このようにすれば、出力された翻訳文の翻訳精度が不足しているとユーザが判断した場合に、さらに高度な翻訳精度の翻訳文を迅速に得ることができる。
【0038】
また、ある翻訳方式による翻訳処理が完了し次第、その翻訳文を出力するようにしてもよい。また、ある翻訳方式による翻訳処理が完了し次第、翻訳が完了したことを表すメッセージを表示部39に表示し、翻訳の完了をユーザに対して報知するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】翻訳装置1のハードウェア構成を示す図である。
【図2】翻訳装置1の機能構成を表す図である。
【図3】翻訳装置1の動作のフローを示す図である。
【符号の説明】
【0040】
1…翻訳装置、4…制御部、5…記憶部、51…辞書、41…指示入力部、9…給紙トレイ、10…シート、12…画像入力部、6…画像形成部、7Y、7M、7C、7K…画像形成エンジン、8…転写ベルト、201…辞書、101…入力手段、102…文字認識手段、103…形態素解析手段、104…翻訳手段、105…記憶手段、106…指示手段、107…出力手段、108…順序決定手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原文を表すデータを入力する入力手段と、
互いに異なる複数の翻訳方式を翻訳精度の低いものから順次使用して、前記入力手段で入力されたデータで表される原文を翻訳し、翻訳文を生成する翻訳手段と、
前記複数の翻訳方式の各々による翻訳が完了し次第、翻訳の完了した翻訳方式による翻訳文を記憶する記憶手段と、
翻訳文の出力を指示する指示手段と、
前記指示手段により翻訳文の出力が指示された時点で前記記憶手段に記憶されている翻訳文の中から最後に記憶された翻訳文を抽出し、該翻訳文を表すデータを出力する出力手段と
を有することを特徴とする翻訳装置。
【請求項2】
原文を表すデータを入力する入力手段と、
互いに異なる複数の翻訳方式を翻訳処理に要する時間の短いものから順次使用して、前記入力手段で入力されたデータで表される原文を翻訳し、翻訳文を生成する翻訳手段と、
前記複数の翻訳方式の各々による翻訳が完了し次第、翻訳の完了した翻訳方式による翻訳文を記憶する記憶手段と、
翻訳文の出力を指示する指示手段と、
前記指示手段により翻訳文の出力が指示された時点で前記記憶手段に記憶されている翻訳文の中から最後に記憶された翻訳文を抽出し、該翻訳文を表すデータを出力する出力手段と
を有することを特徴とする翻訳装置。
【請求項3】
原文の言語と翻訳先言語との組み合わせに応じて、前記複数の翻訳方式の使用順序を決定する順序決定手段を有し、
前記翻訳手段は、前記順序決定手段で決定された使用順序に従って翻訳を行う
ことを特徴とする請求項1または2に記載の翻訳装置。
【請求項4】
原文の記載された原稿を読み取り、該原稿の画像を表す画像データを生成する読取手段と、
前記読取手段で生成された画像データに含まれる文字列を認識する文字認識手段と
を有し、
前記入力手段は前記文字認識手段にて認識された文字列を入力する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の翻訳装置。
【請求項5】
原文を表示した被写体を撮像し、該被写体の画像を表す画像データを生成する読取手段と、
前記読取手段で生成された画像データに含まれる文字列を認識する文字認識手段と
を有し、
前記入力手段は前記文字認識手段にて認識された文字列を入力する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の翻訳装置。
【請求項6】
原文を表すデータを入力する入力ステップと、
互いに異なる複数の翻訳方式を翻訳精度の低いものから順次使用して、前記入力ステップで入力されたデータで表される原文を翻訳し、翻訳文を生成する翻訳ステップと、
前記複数の翻訳方式の各々による翻訳が完了し次第、翻訳の完了した翻訳方式による翻訳文を記憶する記憶ステップと、
翻訳文の出力が指示された時点で、記憶されている翻訳文の中から最後に記憶された翻訳文を抽出し、該翻訳文を表すデータを出力する出力ステップと
を有することを特徴とする翻訳方法。
【請求項7】
コンピュータ装置を、
原文を表すデータを入力する入力手段と、
互いに異なる複数の翻訳方式を翻訳精度の低いものから順次使用して、前記入力手段で入力されたデータで表される原文を翻訳し、翻訳文を生成する翻訳手段と、
前記複数の翻訳方式の各々による翻訳が完了し次第、翻訳の完了した翻訳方式による翻訳文を記憶する記憶手段と、
翻訳文の出力を指示する指示手段と、
前記指示手段により翻訳文の出力が指示された時点で前記記憶手段に記憶されている翻訳文の中から最後に記憶された翻訳文を抽出し、該翻訳文を表すデータを出力する出力手段
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−86867(P2007−86867A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−271847(P2005−271847)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】