説明

翼構造体及び翼構造体のリブを製造する方法

翼構造体は、1対の対向する桁要素16、18によって結合されかつ相互に離間される第一及び第二の対向する外板要素12、14を備える。外板要素12、14はそれぞれの外面輪郭及び内面輪郭を有する。外板要素及び桁要素は囲繞空間22を形成し、囲繞空間内部にリブが配列される。リブ24はリブ本体30及び複数のリブ足32を備える。リブ足32は脚部34及びリブ足板36を備える。リブ足板36は、これが当接して配列される外板要素の内面輪郭に合致するようにその寸法、位置及び角度を定められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は翼構造体特に(ただし排他的ではなく)少なくともその一部が繊維強化複合材料から作られる翼構造体及び翼構造体のリブを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
概して組立品の構成部品は許容可能なレベルの寸法公差の範囲内で製造される。構成要素が成形された繊維強化複合材料から製造される場合、通常、一方の面の寸法は厳密に管理され、他方の面はそれほど管理されない。この種の構成部品が航空機の翼など多部品構造組立品に組み立てられる場合、小さいクラッシュ(締り嵌め)またはギャップ(隙間嵌め)が生じる可能性がある。締り嵌めの場合、組立品の構造的無欠性を維持しながら多少の材料が除去されなければならない。最少重量を目的としたデザインにおいて追加の材料が含まれていないなら、最少重量に最適化されたデザインに対して、それを実行すること(材料除去)はできない。追加の材料が含まれると、材料除去が必要ない場合完成組立品の一部に余分な材料が残る可能性がある。隙間嵌めの場合、液体充填(liquid shimming)及び硬質詰め物(hard packer)の挿入を含めてギャップの充填のために様々な選択肢が利用可能である。詰め物の厚みが増大するとともに組み立てられた構成要素の構造的無欠性が損なわれる可能性が増大する。なぜなら、サイクル疲労及び材料クリープのために時間とともに接合部が弛緩して、詰め物の剪断力伝達能力を減少させるからである。さらに、詰め物の使用によって最終組立品に不要な重量が加算される。
【発明の概要】
【0003】
本発明の第一の形態は、
外板要素を備える翼構造体のリブを製造する方法であって、該方法が、
前記外板要素の内面を走査して前記外板要素の表面輪郭を測定するステップと、
リブ本体及び前記リブ本体から突出するリブ足を有するリブを用意するステップと、
前記リブ足を足部表面輪郭に機械加工するステップと、
前記足部表面輪郭が、前記リブ足が前記外板要素に当接する場所において前記外板内面輪郭と相補的になるように配列されるステップと、
を備えることを特徴とする、リブを製造する方法を提供する。
【0004】
このように、外板要素の表面輪郭をマップ化することによって、リブ足が外板要素と当接する領域において外板要素の表面輪郭と相補的になるようにリブ足を明確に設計することができる。従って、リブ足がそれに従って機械加工される、追加の材料を含むように外板要素を設計する必要がない。また、詰め物を使用する必要がない。
【0005】
本発明の別の形態は、
外面輪郭及び内面輪郭を有する外板要素と、リブと、を備える翼構造体であって、
前記リブがリブ本体及び前記本体の外周から突出するリブ足を有し、前記リブが、前記リブ足が前記外板要素の前記内面輪郭に当接するように前記外板要素に対して配列され、前記リブ足が前記外板要素の前記内面輪郭と相補的になるように機械加工された足部表面輪郭を有することを特徴とする、翼構造体を提供する。
【0006】
本発明の上記の形態のさらなる特徴を特許請求の範囲において示す。
【0007】
本発明の上記の形態に係る翼構造体及び翼構造体のリブを製造する方法について、添付図面を参照しながら以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第一形態の方法の一部の略図的流れ図である。
【図2】図1の方法の残り部分の略図的流れ図である。
【図3】本発明の別の形態に係る翼構造体の略図的立面図である。
【図4】翼構造体のリブ足と外板の内面輪郭との間の境界面を示す図3の一部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1及び2は本発明の第一形態に係る方法の諸ステップを図示する。
【0010】
典型的な翼構造体は対向する1対の外板要素及び対向する1対の桁を備える。桁は外板要素を結合する。外板要素は細長く、緩やかな曲線の断面を形成する。本発明において、外板要素は炭素繊維複合材料から製造される。桁要素はチャネル形の断面を形成し、細長い。桁要素も、通常、炭素繊維複合材料から製造される。個々の構成要素の製造公差がこれらの要素の境界部を含む場合に本発明を適用できることが分かるはずである。1つの外板要素及び1つの桁要素を図1に略図的に端面図で示す。
【0011】
典型的な翼構造体の部分組立品を図1に略図で示す。翼構造体の部分組立品10は対向する第一及び第二の外板要素12、14を備え、外板要素は対向する1対の桁要素16、18によって結合され、相互に離間される。
【0012】
図1の部分組立品から分かるように、外板要素12、14と桁要素16、18が部分組立品に組み立てられると、囲繞空間が形成され、構造的に強固に外板要素と桁要素を一緒に保持するように翼構造体の最終組立品においてこの空間の中にリブが組み立てられる。
【0013】
本発明に係る方法において、外板要素及び桁要素12〜16の内面輪郭が適切な走査機構例えばレーザー走査によって走査される。輪郭走査データは、適切なコンピュータ支援設計ソフトウェアを搭載するCPU20へ送られる。CPU20は、表面輪郭走査データを用いて仮想の囲繞空間を形成するために外板要素と桁要素を仮想的に組み立てる。形成された囲繞空間22を図2に示す。ビレット26からリブ24を製造するために、表面輪郭データと一緒にこの形成された囲繞空間を、ソフトウェアにコンピュータ支援製造を用いる適切な工作設備に送ることができる。最終的なリブ形状を製造するために2つの製造機構が考えられる。1つの考えられる工程においては、囲繞空間及び表面輪郭データを用いてリブ24をビレットから直接製造する。または、初期リブ予備形成要素(initial rib preform component)28を製造し、CPU20の囲繞空間及び表面輪郭データを用いて最終リブ形状24を仕上げることができる。
【0014】
囲繞空間22が既知であり外板要素12、14及び桁要素16、18の内面の詳細な表面輪郭が既知なので、それ以上材料を除去する必要なしに、または液体充填によるあるいは硬質詰め物による隙間充填の必要なしに最適の嵌合を与えるようにリブを製造することができる。図2の最終リブ形状24に図示するように、リブはリブ本体30及び一連のリブ足32を備える。リブ足32は各々脚部34とリブ足板36を備える。
【0015】
リブ足板36の寸法、位置及び角度は、足板が当接して配列される外板要素12、14の内面輪郭に合致するように定められる。
【0016】
リブ24がビレットから追加の材料を加えて形成され、リブ足32から材料が機械加工で取り除かれるとき(図2の下部)、外板要素12、14の内面輪郭に合致するリブ足を創成するようにリブ足板36から材料を機械加工で取り除くためにCPU20内の囲繞空間及び表面輪郭情報が使用される。
【0017】
図3及び4は本発明に係る翼構造体を図示する。図1及び2と一致する部品には同じ参照番号が付けられる。翼構造体38は緩やかに湾曲する対向する外板要素12、14を備える。外板要素は、相互に凹状に配列され、かつ相互に離間される。外板要素12、14は、それぞれ外板要素12、14の前縁及び後縁に接続される桁要素16、18によって離間される。外板要素及び桁要素12〜18は一緒に固定され、外板要素及び桁要素によって形成される囲繞空間にリブ24が配列される。リブ24の寸法は、桁要素16、18の間に厳密な公差で嵌合するように定められる。リブ24は、リブ本体30の側面外周から伸びる複数のリブ足32を有する。各リブ足32は脚部34及びリブ足板36を備える。外板要素12、14の内面輪郭にリブ足板36の表面輪郭を合致させるようにリブ足板36を構成する材料を機械加工できることが足部32a、32b、32cから分かる。図3に示すように、リブ24が桁18に接近するにつれてリブ本体30は外板要素12の内面から離れるように湾曲するので、リブ32のリブ足板から除去される材料は小さくなる。従って、外板要素12、14の内面からそれ以上材料を除去する必要なくまたはリブ足板36と外板要素12、14の内面輪郭との間の空間に追加の詰め物を挿入する必要なく全てのリブ足32が外板要素12、14の内面に当接するようにするために、リブ32aはリブ足板から除去された材料がもっとも多く、リブ32cはリブ足板から除去された材料がもっとも少ない。図4は、外板要素12が桁要素18に向かって内向きに傾斜する別の配列体を示す。図4において、外板要素12の湾曲する内面輪郭との間にほぼ平行の関係を維持するように、リブ足32a、b、cのリブ足板36が徐々に傾斜することがはっきりと分かる。この配列体においても、要素の内面からそれ以上材料を除去する必要なくまた液体または硬質詰め物の充填の必要なく外板要素12、14及び桁要素16、18の内面輪郭に当接してリブ足32を配列することができる。
【0018】
1つまたはそれ以上の好ましい実施形態を参照しながら本発明について説明したが、特許請求の範囲において定義される本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更または修正を加えることができることが分かるはずである。特に、様々な走査配列体及びコンピュータ支援設計/コンピュータ支援製造システムは本発明の方法の実施を容易にすることができる。
【0019】
また、本発明は主に繊維強化複合材料から作られる外板要素に関連して使用されるが、外板及び(または)桁要素に他の材料を採用するシステムに使用するのにも適する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外板要素を備える翼構造体のリブを製造する方法であって、該方法が、
前記外板要素の内面を走査して前記外板要素の表面輪郭を測定するステップと、
リブ本体及び前記リブ本体から突出するリブ足を有するリブを用意するステップと、
前記リブ足を足部表面輪郭に機械加工するステップと、
前記足部表面輪郭が、前記リブ足が前記外板要素に当接する場所において前記外板内面輪郭と相補的になるように配列されるステップと、
を備えることを特徴とする、リブを製造する方法。
【請求項2】
前記リブが複数のリブ足を有し、前記足部のうち1つまたはそれ以上が足部表面輪郭を有し、それぞれの足部が前記外板要素に当接する場所において前記外板内面輪郭と相補的になるように前記足部のそれぞれの足部表面輪郭を機械加工するステップを含むことを特徴とする、請求項1に記載のリブを製造する方法。
【請求項3】
前記翼構造体が2つの外板要素を備え、前記足部の足部表面輪郭が、それぞれ、前記足部が当接する前記外板要素の領域の前記内面輪郭と相補的であることを特徴とする、請求項2に記載のリブを製造する方法。
【請求項4】
前記翼構造体が前記外板要素に取り付けられる桁要素を有し、前記方法が前記桁要素の内面輪郭と相補的になるように前記リブを形成するステップを含むことを特徴とする、請求項1、2または3に記載のリブを製造する方法。
【請求項5】
前記翼構造体が、各々外面輪郭及び内面輪郭を有する第一及び第二外板要素と、前記第一外板要素と第二外板要素との間に配列される第一及び第二桁要素と、を備え、第一及び第二外板要素の内面輪郭によって囲繞空間が形成され、前記リブを用意するステップがリブ本体及び複数のリブ足を有するリブを用意するステップを含み、前記足部表面輪郭を機械加工するステップが少なくとも第一及び第二外板の前記内面輪郭と相補的になるように複数の足部表面輪郭を機械加工するステップを含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のリブを製造する方法。
【請求項6】
外面輪郭及び内面輪郭を有する外板要素と、リブと、を備える翼構造体であって、
前記リブがリブ本体及び前記本体の外周から突出するリブ足を有し、前記リブが、前記リブ足が前記外板要素の前記内面輪郭に当接するように前記外板要素に対して配列され、前記リブ足が前記外板要素の前記内面輪郭と相補的になるように機械加工された足部表面輪郭を有することを特徴とする、翼構造体。
【請求項7】
前記リブが複数の足部を備え、前記足部の1つまたはそれ以上が前記外板要素の前記内面輪郭と相補的になるように機械加工された足部表面輪郭を有することを特徴とする、請求項6に記載の翼構造体。
【請求項8】
複数の外板要素が各々外面輪郭及び内面輪郭を有し、前記リブが少なくとも2つのリブ足を備え、前記足部が、各々それぞれの外板要素の前記内面輪郭と相補的である足部表面輪郭を有することを特徴とする、請求項6または7に記載の翼構造体。
【請求項9】
前記構造がさらに前記外板要素に取り付けられる桁要素を備えることを特徴とする、請求項6〜8のいずれか一項に記載の翼構造体。
【請求項10】
前記リブが前記桁要素の内面輪郭と相補的になるように形成されることを特徴とする、請求項9に記載の翼構造体。
【請求項11】
前記構造が、各々外面輪郭及び内面輪郭を有する第一及び第二外板要素と、前記第一外板要素と第二外板要素との間に配列される第一及び第二桁要素と、を備え、
前記第一及び第二桁要素が内面輪郭を有し、
前記第一及び第二外板要素及び第一及び第二桁要素の前記内面輪郭によって囲繞空間が形成され、
前記リブが複数のリブ足を有し、
該複数のリブ足は、前記第一及び第二外板要素の前記内面輪郭と相補的になるように機械加工された足部表面輪郭を有することを特徴とする、請求項6〜10のいずれか一項に記載の翼構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−500444(P2011−500444A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530559(P2010−530559)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【国際出願番号】PCT/GB2008/050947
【国際公開番号】WO2009/053730
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(508305926)エアバス オペレーションズ リミティド (38)
【Fターム(参考)】