説明

耐アルコール性成形材料及び成形品

【課題】耐アルコール性、機械的強度、超音波溶着性に優れ、アルコールと接触する条件での使用に好適な耐アルコール性成形材料、及び、これで成形された成形品を提供する。
【解決手段】成分(A)35〜77質量%と、成分(B)7〜40質量%と、成分(C)15〜50質量%と、成分(D)0.1〜15質量%とを含有する耐アルコール性成形材料。
成分(A):オレフィン系樹脂;
成分(B):エチレン−α−オレフィン系ゴム(a1)及び/又は水添共役ジエン系ゴム(a2)の存在下に、ビニル系単量体(b)を重合して得られるグラフト共重合体(B1)を含有するゴム強化樹脂;
成分(C):芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物の共重合体(c1)、エポキシ系樹脂(c2)又はウレタン系重合体(c3)からなる収束剤で収束されたガラス繊維;
成分(D):酸価が5〜40である酸変性オレフィン系樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコールを収容する容器などの耐アルコール性が要求される成形品のための成形材料、及び、これで成形されたアルコール容器等の成形品に関し、更に詳しくは、アルコールと接触しても、白化、亀裂、変形等の不良現象の発生が少なく耐薬品性に優れ、アルコールに対する耐透過性、アルコール存在下における耐熱性の他、機械的強度および超音波溶着性に優れる耐アルコール性成形材料、及び、これで成形されたアルコール容器等の成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料電池などに用いられる各種樹脂成形品として、耐薬品性、耐熱性等に優れたものが要求されるようになっている。ここで、燃料電池とは、イオン伝導体である電解質の両側に電極を備え、一方の電極に酸素や空気などの酸化ガスを供給し、他方の電極に水素や炭化水素などの気体燃料、あるいはアルコールなどの液体燃料を供給し、これらの電極間に電気化学反応を起こさせて、電気と水とを発生させる電池である。
【0003】
燃料としてメタノールを直接供給する直接型メタノール燃料電池(DMFC)は、電解質として固体高分子電解質膜を用いることができるため、100℃以下で動作できる可能性があり、また、燃料が液体で、輸送、貯蔵が容易であることなどから、小型・可搬用に適していると考えられ、将来の自動車用動力源、モバイル電子機器用電源として有力視されている。DMFCの構造は、例えば、特許文献1に開示されている。
【0004】
また、燃料電池を携帯用電子機器の電源として使用するための方法が、特許文献2に開示されている。この方法によれば、携帯電子機器の内部に小型のDMFCを組み込み、メタノールを充填した取り替え式のカートリッジから燃料が供給される。
【0005】
カートリッジを形成する材料としては、特許文献1にはアクリル樹脂が、特許文献2にはポリプロピレン、ポリエチレンが記載されている。さらに、特許文献3にはポリフェニレンエーテル系樹脂とポリオレフィン系樹脂、並びにポリフェニレンエーテル系樹脂とポリスチレン系樹脂からなるアルコール直接型燃料電池用燃料容器またはカートリッジが記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開2003−17102号公報
【特許文献2】特開2003−92128号公報
【特許文献3】特開2005−222845号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
アルコール容器用成形材料及びこれで成形されたアルコール容器の性能としては、アルコールと容器が接触しても容器に白化、亀裂、変形等の不良現象の発生が少なく耐薬品性に優れ、容器内のアルコールが容器外に漏洩するのを防ぐためにアルコールに対する耐透過性に優れ、アルコール存在下、高い使用環境温度で使用する場合においても、十分な耐熱性を保持することが求められる。また、容器の堅牢さの観点から、高度な機械的強度が求められる。そして、容器製造工程において、樹脂や金属同士を重ね合わせて超音波振動させ、お互いをすり合わせることで摩擦熱を発生させて、溶け合わせて接着する超音波溶着性に優れることが求められる。
しかしながら、特許文献1〜3に開示されている組成物は、上記の耐薬品性、耐透過性、アルコール存在下における耐熱性、機械的強度、超音波溶着性が十分でなく、その使用範囲が限られていた。
【0008】
本発明は、アルコールと接触しても、白化、亀裂、変形等の不良現象の発生が少なく耐薬品性に優れ、アルコールに対する耐透過性、アルコール存在下における耐熱性、衝撃強度、曲げ強度等の機械的強度、超音波溶着性に優れた耐アルコール性成形材料及び成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、オレフィン系樹脂(A)と、特定のグラフト共重合体(B)と、特定の収束ガラス繊維(C)と、特定の酸変性オレフィン系樹脂(D)とをそれぞれ特定量だけ含有した成形材料が、前述の耐薬品性、耐透過性、耐熱性、衝撃強度、曲げ強度等の機械的強度、超音波溶着性の課題を解消した成形品を与えることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、以下に示される。
1.下記成分(A)35〜77質量%と、下記成分(B)7〜40質量%と、下記成分(C)15〜50質量%と、下記成分(D)0.1〜15質量%とを含有する(但し、上記成分(A)、(B)、(C)及び(D)の合計は100質量%である)耐アルコール性成形材料。
成分(A):オレフィン系樹脂;
成分(B):エチレン−α−オレフィン系ゴム(a1)及び/又は水添共役ジエン系ゴム(a2)からなるゴム質重合体(a)の存在下に、ビニル系単量体(b)を重合して得られるグラフト共重合体(B1)、または、該グラフト共重合体(B1)とビニル系単量体(b)の(共)重合体(B2)との混合物からなるゴム強化樹脂;
成分(C):芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体の共重合体(c1)、エポキシ系樹脂(c2)及びウレタン系重合体(c3)からなる群より選ばれた少なくとも1種の収束剤で収束されたガラス繊維;
成分(D):酸価が5〜40である酸変性オレフィン系樹脂。
2.前記成分(D)は、マレイン酸及び/又は無水マレイン酸で変性されたオレフィン系樹脂である上記1に記載の耐アルコール性成形材料。
3.上記1又は2に記載の耐アルコール性成形材料で成形された成形品
4.アルコール容器である上記3に記載の成形品。
【発明の効果】
【0011】
本発明の耐アルコール性成形材料で成形された成形品は、アルコールと接触しても白化、亀裂、変形等の不良現象の発生が少なく耐薬品性に優れ、アルコールに対する耐透過性に優れ、高い環境温度で使用するに十分なアルコール存在下における耐熱性を備える。また衝撃強度、曲げ強度等の機械的強度に優れ、容器製造工程における超音波溶着性にも優れる。したがって、アルコール直接型燃料電池用燃料容器(カートリッジも含む)等のアルコールと接触する条件で使用される成形品の成形材料として極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳しく説明する。尚、本明細書において、「(共)重合」とは、単独重合および共重合を意味し、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
【0013】
本発明の耐アルコール性成形材料は、オレフィン系樹脂(A)と、特定のグラフト共重合体(B)と、特定のガラス繊維(C)と、特定の酸変性オレフィン系樹脂(D)とを必須成分として含有してなる。以下、各成分について詳細に説明する。
【0014】
成分(A)
本発明で使用する成分(A)は、オレフィン系樹脂であり、代表的には、エチレン及び炭素数3〜10のα−オレフィンからなる群より選ばれた少なくとも1種のオレフィン類を構成単量体単位として含有する重合体である。このオレフィン系樹脂としては、X線回折により室温で結晶化度を示すものが好ましく、より好ましくは結晶化度が20%以上であり、融点が40℃以上であることが好ましい。また、このオレフィン系樹脂は、常温下での使用に対する十分な強度と、例えば射出成形等に対する十分な成形性をもつことが好ましい。
【0015】
上記成分(A)の構成単量体単位であるオレフィン類の例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ヘキセン、1−オクテン等があり、好ましくは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテンである。また他に、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、1,9−デカジエン等の非共役ジエン等の他の単量体成分を構成単量体単位の一部として使用することができる。
【0016】
また、上記成分(A)としては、アイオノマー、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、環状オレフィン共重合体、塩素化ポリエチレン、臭素化ポリエチレン等を用いることもできる。
【0017】
本発明で用いられる上記成分(A)は、単独重合体または共重合体であってよく、該共重合体は、ランダム共重合体またはブロック共重合体のいずれであってもよいが、これらのうちプロピレン単独重合体及びエチレン−プロピレンブロック共重合体が特に好ましい。
【0018】
例えば、上記成分(A)としてのポリプロピレン系樹脂は、230℃、2.16kgの条件で測定したメルトフローレート(MFR)が、0.01〜500g/10分であることが好ましく、より好ましくは0.05〜100g/10分である。
【0019】
成分(B)
本発明で使用する成分(B)は、エチレン−α−オレフィン系ゴム(a1)及び/又は水添共役ジエン系ゴム(a2)からなるゴム質重合体(a)の存在下に、ビニル系単量体(b)を重合して得られるグラフト共重合体(B1)、または、該グラフト共重合体(B1)とビニル系単量体(b)の(共)重合体(B2)との混合物からなるゴム強化樹脂である。
【0020】
グラフト共重合体(B1)
上記成分(B)のゴム強化樹脂を構成するグラフト共重合体(B1)は、エチレン−α−オレフィン系ゴム(a1)及び/又は水添共役ジエン系ゴム(a2)からなるゴム質重合体(a)の存在下に、ビニル系単量体(b)を重合して得られるものである。
エチレン−α−オレフィン系ゴム(a1)としては、例えば、エチレン/α−オレフィン共重合体、エチレン/α−オレフィン/非共役ジエン共重合体が挙げられる。該成分(a1)を構成するα−オレフィンとしては、例えば、炭素数3〜20のα−オレフィンが挙げられ、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−ヘキサデセン、1−エイコセンなどが挙げられる。これらのα−オレフィンは、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。α−オレフィンの炭素数は、好ましくは3〜20、より好ましくは3〜12、さらに好ましくは3〜8である。炭素数が20を超えると、共重合性が低下し、成形品の表面外観が十分でなくなる可能性がある。エチレン/α−オレフィンの質量比は、好ましくは5〜95/95〜5、より好ましくは50〜90/50〜10、さらに好ましくは60〜88/40〜12である。α−オレフィンの質量比が95を超えると、耐候性が十分でなく、一方、5未満になるとゴム質重合体のゴム弾性が十分でなくなるため、十分な耐衝撃性が発現しない可能性がある。
【0021】
非共役ジエンとしては、アルケニルノルボルネン類、環状ジエン類、脂肪族ジエン類が挙げられ、好ましくは5−エチリデン−2−ノルボルネンおよびジシクロペンタジエンである。これらの非共役ジエンは、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。非共役ジエンの、ゴム質重合体全量に対する割合は、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜10質量%である。非共役ジエンの割合が30質量%を超えると、成形外観および耐候性が十分でなくなる可能性がある。尚、成分(a1)における不飽和基量は、ヨウ素価に換算しして4〜40の範囲が好ましい。
また、成分(a1)のムーニー粘度(ML1+4、100℃;JIS K6300に準拠)は、好ましくは5〜80、より好ましくは10〜65、さらに好ましくは15〜45である。ムーニー粘度が80を超えると、流動性が不十分に、ムーニー粘度が5未満になると、得られる成形品の耐衝撃性が不十分となる可能性がある。
【0022】
水添共役ジエン系ゴム(a2)としては、例えば、下記の構造を有する共役ジエンブロック共重合体の水素添加物が挙げられる。すなわち、芳香族ビニル化合物単位からなる重合体ブロックA、1,2−ビニル結合含量が25モル%を超える共役ジエン系化合物単位からなる重合体の二重結合部分を80モル%以上水素添加してなる重合体ブロックB、1,2−ビニル結合含量が25モル%以下の共役ジエン系化合物単位からなる重合体の二重結合部分を80モル%以上水素添加してなる重合体ブロックC、および芳香族ビニル化合物単位と共役ジエン系化合物単位の共重合体の二重結合部分を80モル%以上水素添加してなる重合体ブロックDのうち、2種以上を組み合わせたものからなるブロック共重合体である。
【0023】
上記重合体ブロックAの製造に用いられる芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α―メチルスチレン、メチルスチレン、ビニルキシレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレン、フルオロスチレン、p−t−ブチルスチレン、エチルスチレン、ビニルナフタレンなどが挙げられ、これらは、1種単独で、または2種以上を混合して用いることができる。中でも好ましいものは、スチレンである。ブロック共重合体中の重合体ブロックAの割合は、ブロック共重合体中の0〜65質量%が好ましく、さらに好ましくは10〜40質量%である。重合体ブロックAが65質量%を超えると、耐衝撃性が十分でなくなる可能性がある。
【0024】
上記重合体ブロックB、CおよびDは、共役ジエン系化合物の重合体を水素添加することにより得られる。上記重合体ブロックB、CおよびDの製造に用いられる共役ジエン系化合物としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、クロロプレンなどが挙げられるが、工業的に利用でき、物性の優れた水添ジエン系ゴム質重合体を得るには、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。これらは、1種単独で、または2種以上を混合して用いることができる。上記重合体ブロックDの製造に用いられる芳香族ビニル化合物としては、上記重合体ブロックAの製造に用いられる芳香族ビニル化合物と同様のものが挙げられ、これらは、1種単独で、または2種以上を混合して用いることができる。中でも好ましいものは、スチレンである。
【0025】
上記重合体ブロックB、CおよびDの水素添加率は、80モル%以上であり、好ましくは90モル%以上であり、より好ましくは95モル%以上である。80モル%未満であると、耐候性が低下する可能性がある。重合体ブロックBの1,2−ビニル結合含量は、25モル%を超え90モル%以下が好ましく、30〜80モル%がさらに好ましい。重合体ブロックBの1,2−ビニル結合含量が25モル%以下であると、ゴム的性質が失われ耐衝撃性が十分でなくなる可能性があり、一方、90モル%を超えると、耐薬品性が十分でなくなる可能性がある。また、重合体ブロックCの1,2−ビニル結合含量は、25%モル以下が好ましく、20モル%以下がさらに好ましい。重合体ブロックCの1,2−ビニル結合含量が25モル%を超えると、耐傷つき性および摺動性が十分に発現しない可能性がある。重合体ブロックDの1,2−ビニル結合含量は、25〜90モル%が好ましく、30〜80モル%がさらに好ましい。重合体ブロックDの1,2−ビニル結合含量が25モル%未満であると、ゴム的性質が失われ耐衝撃性が十分でなくなる可能性があり、一方、90モル%を超えると、耐薬品性が十分に得られない可能性がある。また、重合体ブロックDの芳香族ビニル化合物含量は、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。重合体ブロックDの芳香族ビニル化合物含量が50質量%を超えると、ゴム的性質が失われ耐衝撃性が十分でなくなる可能性がある。
【0026】
上記ブロック共重合体の分子構造は、分岐状、放射状またはこれらの組み合わせでもよく、さらにブロック構造としては、ジブロック、トリブロック、もしくはマルチブロック、またはこれらの組み合わせでもよい。例えば、A−(B−A)n 、(A−B)n 、A−(B−C)n 、C−(B−C)n 、(B−C)n 、A−(D−A)n 、(A−D)n 、A−(D−C)n 、C−(D−C)n 、(D−C)n 、A−(B−C−D)n 、(A−B−C−D)n 、(ただし、n=1以上の整数)で表されるブロック共重合体であり、好ましくは、A−B−A、A−B−A−B、A−B−C、A−D−C、C−B−Cの構造を有するブロック共重合体である。
上記成分(a1)及び(a2)の重量平均分子量(Mw)は、それぞれ、1万〜100万が好ましく、さらに好ましくは3万〜80万、より好ましくは5万〜50万である。Mwが1万未満では、耐衝撃性が十分でなく、一方、100万を超える高分子量のものでは、成形品外観が十分でなくなる可能性がある。
【0027】
ビニル系単量体(b)は、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、およびその他の共重合可能な他のビニル系単量体の群から選ばれた少なくとも1種である。ビニル系単量体(b)は、通常、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を必須成分として含有し、必要に応じて、その他の共重合可能な他のビニル系単量体を含有してなる。なお、その他の共重合可能なビニル系単量体の使用量は、本発明の効果を損なわない範囲であればよく、ビニル系単量体(b)全体を100質量%とした場合に、好ましくは0〜95質量%、より好ましくは5〜95質量%、さらに好ましくは15〜90質量%である。
【0028】
芳香族ビニル化合物としては、上記共役ジエンブロック共重合体の重合体ブロックAの製造に用いられる芳香族ビニル化合物と同様のものが挙げられ、これらは、1種単独で、または2種以上を混合して用いることもできる。好ましい芳香族ビニル化合物は、スチレンまたは芳香族ビニル化合物中にスチレンを50質量%以上含むものである。芳香族ビニル化合物の使用量は、ビニル系単量体(b)全体に対し、好ましくは5〜80質量%、さらに好ましくは8〜70質量%である。芳香族ビニル化合物の使用量が5質量%未満では、樹脂の成形性および熱安定性が十分でなく、一方、80質量%を超えると、樹脂の靱性が十分に得られない可能性がある。
【0029】
シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられるが、好ましくはアクリロニトリルである。シアン化ビニル化合物の使用量は、ビニル系単量体(b)全体に対し、好ましくは3〜50質量%、さらに好ましくは5〜35質量%である。シアン化ビニル化合物の使用量が3質量%未満では耐薬品性が十分でなく、一方、50質量%を超えると、例えば、成形品の表面外観および樹脂の熱安定性が十分でなくなる可能性がある。
【0030】
その他の共重合可能な他のビニル系単量体としては、芳香族ビニル化合物及び/又は、シアン化ビニル化合物と共重合可能なものであれば特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、マレイミド基含有不飽和化合物、および、その他各種の官能基含有不飽和化合物などが挙げられる。
【0031】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、アミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレートなどのアクリル酸アルキルエステル、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレートなどのメタクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上組合わせて使用できる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルを使用すると、透明性または透明感が付与される。(メタ)アクリル酸アルキルエステルを使用する場合、その使用量は、(b)成分中、好ましくは1〜80質量%、さらに好ましくは5〜80質量%である。
【0032】
マレイミド基含有不飽和化合物としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド化合物が挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上組合わせて使用できる。また、このマレイミド化合物は、無水マレイン酸を共重合させ、その後イミド化する方法で導入してもよい。マレイミド基含有不飽和化合物を使用すると、耐熱性が付与される。マレイミド基含有不飽和化合物を使用する場合、その使用量は、(b)成分中、好ましくは1〜60質量%、さらに好ましくは5〜50質量%である。
【0033】
その他各種の官能基含有不飽和化合物としては、カルボキシル基含有不飽和化合物、酸無水物基含有不飽和化合物、エポキシ基含有不飽和化合物、水酸基含有不飽和化合物、置換基または非置換のアミノ基含有不飽和化合物、オキサゾリン基含有不飽和化合物等が挙げられる。これらの官能基含有不飽和化合物は1種単独で、または2種以上組合わせて使用できる。
【0034】
カルボキシル基含有不飽和化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸等が挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上組合わせて使用できる。
酸無水物基含有不飽和化合物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などの不飽和カルボン酸無水物が挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上組合わせて使用できる。
エポキシ基含有不飽和化合物としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテルなどが挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上組合わせて使用できる。
水酸基含有不飽和化合物としては、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミドなどが挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上組合わせて使用できる。
【0035】
置換または非置換のアミノ基含有不飽和化合物としては、アクリル酸アミノエチル、メタクリル酸アミノエチル、メタクリル酸アミノプロピル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アクリルアミン、メタクリルアミン、N−メチルアクリルアミン、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、p−アミノスチレン等が挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上組合わせて使用できる。
オキサゾリン基含有不飽和化合物としては、ビニルオキサゾリン等が挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上組合わせて使用できる。
【0036】
かかる官能基含有不飽和化合物を使用した場合、ゴム強化樹脂と他のポリマーとをブレンドした時、両者の相溶性を向上させることができる。かかる効果を達成するために好ましい単量体は、エポキシ基含有不飽和化合物、カルボキシル基含有不飽和化合物、および水酸基含有不飽和化合物であり、さらに好ましくは水酸基含有不飽和化合物であり、特に好ましくは2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレートである。
官能基含有不飽和化合物の使用量は、ゴム強化樹脂中で使用される官能基含有不飽和化合物の合計量で、ゴム強化樹脂全体に対して0.01〜20質量%が好ましく、本発明の熱可塑性樹脂組成物全体に対して0.01〜10質量%が好ましく、0.05〜5質量%がさらに好ましい。
【0037】
本発明において、ビニル系単量体(b)は、通常、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を必須成分として含有し、必要に応じて、その他の共重合可能な他のビニル系単量体を含有する。より好ましくは、ビニル系単量体(b)は、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を必須成分として含有し、必要に応じて、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及びマレイミド基含有不飽和化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種のビニル系単量体を含有する。
【0038】
上記ゴム質重合体(a)の使用量は、成分(a)及び成分(b)の合計100質量%に対して、好ましくは5〜60質量%、より好ましくは5〜55質量%である。成分(a)の使用量が5質量%未満では、耐衝撃性が十分でなく、一方、60質量%を超えると、成形加工性、熱変形温度、アルコール存在下における耐熱性、剛性が十分でなくなる可能性がある。
一方、上記ビニル系単量体(b)の使用量は、成分(a)及び成分(b)の合計100質量%に対して、好ましくは40〜95質量%、より好ましくは45〜95質量%である。成分(b)の使用量が95質量%を超えると、耐衝撃性が十分でなく、一方、40質量%未満であると、成形加工性、熱変形温度、アルコール存在下における耐熱性、剛性が十分でなくなる可能性がある。
【0039】
上記成分(B1)のグラフト率は、通常10〜200%、好ましくは20〜120%、さらに好ましくは30〜90%である。グラフト率が10%未満では、耐衝撃強度が十分でなく、一方、200%を超えると、耐衝撃性と成形品の外観のバランスが十分でなくなる可能性がある。グラフト率は、重合開始剤の種類、量、重合温度、さらには単量体の量などによって容易に調整することができる。
【0040】
また、上記成分(B1)のアセトン可溶分の極限粘度[η](30℃、メチルエチルケトン中で測定)は、0.2〜1.5dl/g、好ましくは0.25〜1.0dl/g、さらに好ましくは0.3〜0.8dl/gである。極限粘度[η]が0.2dl/g未満であると、成形品の耐衝撃強度が十分でなく、一方、1.5dl/gを超えると、成形品表面の光沢の低下やフローマークの発生を招く可能性がある。上記極限粘度[η]は、重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤、溶剤などの種類や量、さらには重合時間、重合温度などを変えることにより、容易に制御することができる。
【0041】
このグラフト率(質量%)は、次式(1)により求められる。
【0042】
グラフト率(質量%)={(T−S)/S}×100・・・(1)
【0043】
上記式(1)中、Tは成分(B1)1gをアセトン20mlに投入し、振とう機により2時間振とうした後、遠心分離機(回転数;23,000rpm)で60分遠心分離し、不溶分と可溶分とを分離して得られる不溶分の質量(g)であり、Sは該成分(B1)1gに含まれる成分(a)の質量(g)である。
【0044】
共重合体の極限粘度[η]の測定は下記方法で行った。まず、共重合体をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度の異なるものを5点作った。ウベローデ粘度管を用い、30℃で各濃度の還元粘度を測定した結果から、極限粘度[η]を求めた。単位はdl/gである。
【0045】
成分(B1)は、成分(a)の存在下に、上記成分(b)を乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合などでラジカルグラフト重合を行い、製造することができる。このうち好ましくは乳化重合、溶液重合である。なお、上記ラジカルグラフト重合には、通常使用されている重合溶媒(溶液重合の場合)、重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤(乳化重合の場合)などを用いることができる。また、成分(B1)を製造するのに用いる単量体成分は、ゴム質重合体全量の存在下に、単量体成分を一括添加して重合してもよく、または分割もしくは連続添加して重合してもよい。また、これらを組み合わせた方法で、重合してもよい。さらに、ゴム質重合体の全量または一部を、重合途中で添加して重合してもよい。
【0046】
溶液重合法で用いられる溶剤は、通常のラジカル重合で使用される不活性重合溶剤であり、例えばエチルベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素、メチルエチルケトン、アセトンなどのケトン類、ジクロロメチレン、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素などの有機溶剤が用いられる。溶剤の使用量は、上記成分(a)及び成分(b)の合計量100質量部に対し、好ましくは20〜200質量部、さらに好ましくは50〜150質量部である。
【0047】
上記重合開始剤は、重合法に合った一般的な開始剤が用いられる。溶液重合の重合開始剤としては、例えばケトンパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、ハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物等を用いることができる。また、重合開始剤は、重合系に、一括または連続的に添加することができる。重合開始剤の使用量は、単量体成分に対し、好ましくは0.05〜2質量%、より好ましくは0.2〜0.8質量%である。
【0048】
また、乳化重合の重合開始剤としては、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイドなどで代表される有機ハイドロパーオキサイド類と含糖ピロリン酸処方、スルホキシレート処方などで代表される還元剤との組み合わせによるレドックス系、または過硫酸塩、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイドなどの過酸化物等を用いることができる。このうち、好ましくは、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイドなどで代表される有機ハイドロパーオキサイド類と含糖ピロリン酸処方、スルホキシレート処方などで代表される還元剤との組み合わせによるレドックス系がよい。また、開始剤は油溶性でも水溶性でもよく、さらには油溶性と水溶性を組み合わせて用いてもよい。組み合わせる場合の水溶性開始剤の添加比率は、全添加量の好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下である。さらに、重合開始剤は、重合系に一括または連続的に添加することができる。重合開始剤の使用量は、単量体成分に対し、好ましくは0.1〜1.5質量%、より好ましくは0.2〜0.7質量%である。
【0049】
また、連鎖移動剤としては、例えばオクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、t−テトラデシルメルカプタンなどのメルカプタン類、テトラエチルチウラムスルフィド、四塩化炭素、臭化エチレンおよびペンタフェニルエタンなどの炭化水素類、またはアクロレイン、メタクロレイン、アリルアルコール、2−エチルヘキシルチオグリコレート、α−メチルスチレンのダイマーなどが挙げられる。これらの連鎖移動剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。連鎖移動剤の使用方法は、一括添加、分割添加、または連続添加のいずれの方法でも差し支えない。連鎖移動剤の使用量は、単量体成分に対し、好ましくは0〜5質量%程度である。
【0050】
乳化剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。このうち、アニオン性界面活性剤としては、例えば高級アルコールの硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪酸スルホン酸塩、リン酸系塩、脂肪酸塩などが挙げられる。また、ノニオン性界面活性剤としては、通常のポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルエーテル型、アルキルフェニルエーテル型などが用いられる。さらに、両性界面活性剤としては、アニオン部分としてカルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩を、カチオン部分としてアミン塩、第4級アンモニウム塩などを持つものが挙げられる。乳化剤の使用量は、単量体成分に対し、好ましくは0.3〜5質量%である。なお、グラフト重合の際の重合温度は、好ましくは10〜160℃、より好ましくは30〜120℃である。
【0051】
ゴム質重合体(a)の存在下、ビニル系単量体(b)を共重合して得られる本発明のグラフト共重合体(B1)には、通常ビニル系単量体成分がゴム質重合体にグラフトした共重合体と、ビニル系単量体成分がゴム質重合体にグラフトしていない未グラフト成分(すなわち、下記成分(B2)と同様のビニル系単量体(b)同士の(共)重合体)およびグラフトしていないゴム質重合体(a)が含まれる。
成分(B1)は、(i)上記成分(a1)からなるゴム質重合体(a)の存在下に、ビニル系単量体(b)を重合して得られるグラフト共重合体、(ii) 上記成分(a2)からなるゴム質重合体(a)の存在下に、ビニル系単量体(b)を重合して得られるグラフト共重合体、及び、(iii) 上記成分(a1)及び上記成分(a2)からなるゴム質重合体(a)の存在下に、ビニル系単量体(b)を重合して得られるグラフト共重合体の3態様を少なくとも包含するものである。そして、成分(B)のゴム強化樹脂は、上記(i)又は(ii)のグラフト共重合体に加えて、それぞれ、上記(ii)又は(i)のグラフト共重合体を混合した態様も含まれるものである。
【0052】
ビニル系単量体(b)の(共)重合体(B2)
上記成分(B)のゴム強化樹脂は、上記グラフト共重合体(B1)とビニル系単量体(b)の(共)重合体(B2)との混合物であってもよい。
該(共)重合体(B2)は、ゴム質重合体(a)の非存在下に、ビニル系単量体(b)を重合して得られるものである。
該(共)重合体(B2)を構成するビニル系単量体(b)としては、上記成分(B1)に関して述べた芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、マレイミド基含有不飽和化合物、および、その他各種の官能基含有不飽和化合物などをすべて使用できる。これらの化合物は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。通常は、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を必須単量体成分とし、これに、必要に応じて、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及びマレイミド基含有不飽和化合物からなる群より選ばれる1種以上を単量体成分として併用でき、更に必要に応じて、その他各種の官能基含有不飽和化合物の少なくとも1種を単量体成分として併用できる。
ゴム強化樹脂(B)と他の成分との相溶性を向上させるためには、官能基含有不飽和化合物として、エポキシ基含有不飽和化合物、カルボキシル基含有不飽和化合物または水酸基含有不飽和化合物を用いるのが好ましく、このうち、水酸基含有不飽和化合物がより好ましく、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0053】
芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよびマレイミド基含有不飽和化合物の(b)成分中の好ましい使用量は、前記(B1)成分中の使用量と同じである。
好ましい(共)重合体(B2)の単量体の組み合わせとしては、(a)芳香族ビニル化合物/シアン化ビニル化合物、(b)芳香族ビニル化合物/(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(c)芳香族ビニル化合物/シアン化ビニル化合物/(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(d)芳香族ビニル化合物/マレイミド化合物/シアン化ビニル化合物、および、(e)芳香族ビニル化合物/2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート/シアン化ビニル化合物が挙げられる。
【0054】
(共)重合体(B2)は、前記ビニル系単量体(b)の重合をゴム質重合体の非存在下に行なう以外、前記成分(B1)と同様の方法により製造できる。
(共)重合体(B2)は、単一組成の(共)重合体であってもよいし、組成の異なる2種以上の(共)重合体のブレンドであってもよい。
(共)重合体(B2)のアセトン可溶分の極限粘度(メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、通常0.3〜1.5であり、好ましくは0.3〜1.3dl/g、より好ましくは0.4〜1.0dl/g、特に好ましくは0.4〜0.8dl/gである。この極限粘度は、連鎖移動剤、重合時間、重合温度などによって制御することができる。
(共)重合体(B2)は、上記成分(B1)に適宜の方法で混合することができる。
【0055】
成分(B)中の上記ゴム質重合体(a)の含有量は、成分(B)100質量%に対して、好ましくは3〜45質量%、より好ましくは5〜40質量%、特に好ましくは5〜35質量%である。成分(a)の含有量は、上記成分(B2)の配合量を変更することによって容易に調整できる。成分(B2)は、予め成分(B)に配合してもよく、又は、成分(A)、(B)、(C)及び(D)を混合して本発明の成形材料を調製する際にこれらの成分に混合してもよい。
【0056】
成分(C)
本発明で使用される成分(C)は、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体の共重合体(c1)、エポキシ系樹脂(c2)及びウレタン系重合体(c3)からなる群より選ばれた少なくとも1種の収束剤で収束されたガラス繊維である。
【0057】
上記共重合体(c1)の構成単量体として使用される芳香族ビニル化合物としては、成分(B)の芳香族ビニル化合物として列挙した化合物を使用することができ、好ましくはスチレン、α−メチルスチレンであり、より好ましくはスチレンである。
上記共重合体(c1)の構成単量体として使用されるシアン化ビニル化合物としては、成分(B)のシアン化ビニル化合物として列挙した化合物を使用することができ、好ましくはアクリロニトリルである。
上記共重合体(c1)における芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物の使用割合(芳香族ビニル化合物/シアン化ビニル化合物)は、50〜95/5〜50(質量比)が好ましく、55〜90/10〜45(質量比)がより好ましい。上記共重合体(c1)としては、通常、芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物との2成分からなる共重合体(AS樹脂)が好適に用いられるが、エポキシ基含有不飽和化合物をコモノマーとして含有するエポキシ変性AS樹脂であってもよい。エポキシ基含有不飽和化合物としては、成分(B)のエポキシ基含有不飽和化合物として列挙した化合物を使用することができる。
【0058】
上記エポキシ系樹脂(c2)としては、ガラス繊維の収束剤として使用されている公知のエポキシ系樹脂が挙げられる。
【0059】
上記ウレタン系重合体(c3)としては、ガラス繊維の収束剤として使用されている公知のウレタン系重合体が挙げられる。
【0060】
上記成分(C)のガラス繊維のガラス組成としては、珪酸塩ガラス、ホウ酸珪酸ガラス、燐酸塩ガラス等が挙げられる。また、ガラスの種類としては、Eガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Mガラス、ARガラス、Lガラス等が挙げられ、Eガラス、Cガラスが好ましい。
ガラス繊維は、収束剤とシランカップリング剤との両方で処理されていることが好ましい。シランカップリング剤は、例えばガラス繊維を収束剤で収束する前にガラス繊維に表面処理することができる。この場合、成形品の耐薬品性、耐透過性、耐熱性、衝撃強度、曲げ強度等の機械的強度、超音波溶着性が一層向上する。
シランカップリング剤としては、式Y−R−Si−(X)(式中、Yはビニル基、アミノ基、エポキシ基、メタクリル基又はメルカプト基を示し、Rは2価の有機基を示すか又は存在しなくてもよく、Xはアルコキシ基、アルキル基、アセトキシ基又はクロル原子を示す)で示されるものが挙げられる。Xは炭素数1乃至3のアルコキシ基またはアルキル基であることが好ましい。上記式の化合物中、Yがアミノ基であるアミノシラン、Yがビニル基であるビニルシラン及びYがメルカプト基であるメルカプトシランが好ましく、アミノシランが特に好ましい。アミノシランの具体例としては、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルジエトキシメチルシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン及び3−アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0061】
上記収束剤の使用量は、ガラス繊維に対して、固形分換算で、0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜8質量%がより好ましく、0.5〜6質量%が更により好ましい。
また、ガラス繊維と樹脂との密着性を向上させるために、シランカップリング剤等を併用してもよい。シランカップリング剤としては、公知のシランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤の使用量は、収束剤に対して、0.01〜20質量%程度である。本発明の収束ガラス繊維は、細い直径の長繊維を複数本撚り、収束剤によって収束させて切断したチョップトスランドの形態が好ましい。
本発明の成分(C)の収束ガラス繊維の混合前の平均長さは、1〜10mmが好ましく、2〜6mmがより好ましく、また、平均径は、5〜25μmが好ましく、8〜20μmがより好ましい。
本発明の成形材料から成形された成形品中に分散している成分(C)の残存平均繊維長は、150〜1000μmが好ましく、200〜800μmがより好ましく、250〜700μmが更により好ましい。残存平均繊維長が上記の範囲にあると、高温下での剛性が一段と優れた成形品が得られる。
上記の残存平均繊維長は、成形品の一部を切り出して測定される。具体的には、切り出した成形品を800℃に加熱して樹脂成分を分解した後、残ったガラス繊維の繊維長を画像分析により測定する。
【0062】
成分(D)
本発明で使用される成分(D)は、酸価が5〜40の酸変性オレフィン系樹脂である。
上記オレフィン系樹脂としては、オレフィン類のホモポリマー、ブロックコポリマーまたはこれらの混合物が挙げられ、具体的には、プロピレン単独重合体、エチレン単独重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体等が挙げられる。このうち、プロピレン単独重合体及びエチレン−プロピレンブロック共重合体が好ましい。
成分(D)の酸変性とは、オレフィン系樹脂に、酸基を備えた化合物を結合させることにより酸基を付与することを意味し、酸変性に使用できる化合物として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸等の不飽和酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、クロロ無水マレイン酸、無水シトラコン酸等の不飽和酸無水物が挙げられる。これらの不飽和酸又は不飽和酸無水物は、1種単独で又は2種以上併用して使用することができる。これらの不飽和酸又は不飽和酸無水物のうち、好ましくはマレイン酸及び無水マレイン酸である。したがって、酸変性オレフィン系樹脂としては、マレイン酸基及び/又は無水マレイン酸基を有するオレフィン系樹脂が好ましい。
成分(D)の酸価は5〜40、好ましくは10〜35、より好ましくは12〜35である。酸価は、JIS K 0760に従って測定される。酸価が5未満であると、ガラス繊維との親和性が劣り、その結果、機械的強度が劣る。一方、酸価が40を超えると、メタノールとの親和性が高くなり、その結果、熱変形温度が劣る。
成分(D)に相当する市販品として、例えば、ユーメックス1001、ユーメックス1003、ユーメックス2000(商品名;三洋化成工業社製マレイン酸変性オレフィン系樹脂)が挙げられる。
【0063】
耐アルコール性成形材料の製造
本発明の耐アルコール性成形材料は、上記成分(A)、(B)、(C)及び(D)を所定の配合比率で混合することにより得られる。
【0064】
上記成分(A)は、本発明の成形材料の耐アルコール性を向上させるために有用であり、その配合量は、上記成分(A)、(B)、(C)及び(D)の合計を100質量%として、35〜77質量%であり、好ましくは40〜70質量%であり、より好ましくは45〜70質量%である。この配合量が35質量%未満であると、耐アルコール性が劣り、77質量%を超えると耐衝撃性が劣る。
【0065】
上記成分(B)は、本発明の成形材料の耐衝撃性を向上させるために有用であり、その配合量は、上記成分(A)、(B)、(C)及び(D)の合計を100質量%として、7〜40質量%であり、好ましくは10〜30質量%であり、より好ましくは10〜25質量%である。この配合量が7質量%未満であると、耐衝撃性が劣り、40質量%を超えると耐アルコール性が劣り、また、50℃での耐熱変形性が劣る。
【0066】
上記成分(C)は、本発明の成形材料の高温下での剛性、具体的には、50℃における曲げ最大応力と50℃における曲げ弾性率を向上させるために有用であり、その配合量は、上記成分(A)、(B)、(C)及び(D)の合計を100質量%として、15〜50質量%であり、好ましくは19〜45質量%であり、より好ましくは19〜40質量%である。この配合量が15質量%未満であると、高温下での剛性が劣り、50質量%を超えると成形品外観及び超音波溶着性が劣る。
【0067】
上記成分(D)は、本発明の成形材料の高温下での剛性、具体的には、50℃における曲げ最大応力と50℃における曲げ弾性率を向上させるために有用であり、その配合量は、上記成分(A)、(B)、(C)及び(D)の合計を100質量%として、0.1〜15質量%であり、好ましくは0.5〜14質量%であり、より好ましくは0.5〜13質量%である。この配合量が0.1質量%未満であると、剛性が劣り、15質量%を超えると、剛性、アルコールに対する耐透過性、アルコール存在下の耐熱性が劣る。
【0068】
尚、本発明の耐アルコール性成形材料は、必要に応じて、成分(C)以外の充填剤、滑剤、熱安定剤、酸化防止剤、熱伝導性フィラー、紫外線吸収剤、難燃剤、老化防止剤、可塑剤、抗菌剤、着色剤等の各種添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で含有することができる。
【0069】
さらに、本発明の耐アルコール性成形材料は、必要に応じて、他の樹脂、例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアミド等を、本発明の目的を損なわない範囲で含有することができる。
【0070】
本発明の耐アルコール性成形材料は、各成分を所定の配合比で、タンブラーミキサーやヘンシェルミキサーなどで混合した後、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、フィーダールーダー等の混合機を用いて、適当な条件下で溶融混練して製造することができる。好ましい混練機は、二軸押出機である。さらに、それぞれの成分を混練するに際しては、それぞれの成分を一括して混練しても、多段、分割配合して混練してもよい。尚、バンバリーミキサー、ニーダー等で混練した後、押出機によりペレット化することもできる。また、充填材のうち繊維状のものは、混練中での切断を防止するためにサイドフィーダーにより押出機の途中から供給する方が好ましい。溶融混練温度は、通常200〜300℃、好ましくは220〜280℃である。
【0071】
この様にして得られる本発明の耐アルコール性成形材料は、射出成形、シート押出、真空成形、異形押出、発泡成形、インジェクションプレス、プレス成形、ブロー成形などによって各種成形品に成形することができる。本発明の耐アルコール性成形材料は、アルコールと接触しても、白化、亀裂、変形等の不良現象の発生が少なく耐薬品性に優れ、アルコールに対する耐透過性、アルコール存在下における耐熱性、機械的強度、超音波溶着性に優れた成形品を提供するものであり、これらの特性を生かして、OA・家電分野、電気・電子分野、雑貨分野、サニタリー分野、自動車分野などの各種パーツ、ハウジング、シャーシ、トレーなどに使用することができる。そのなかでも、アルコール直接型燃料電池のアルコールを貯蔵する容器(カートリッジも含む)に好適である。
【実施例】
【0072】
以下、実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に何等制約されるものではない。尚、実施例中、部および%は特に断らない限り質量基準である。
【0073】
(1)評価方法
下記の実施例及び比較例における、各種評価項目の測定方法を以下に示す。
(1−1)物性試験:曲げ最大応力・曲げ弾性率
ISO178に準じ、島津製作所製の精密万能試験機「オートグラフAG5000E型」を用いて50℃で測定した。測定値の単位は、MPaである。
【0074】
(1−2)物性試験:シャルピー衝撃強さ
ISO179に準じて、室温におけるシャルピー衝撃強さ(Edgewise Impact、ノッチ付き)を測定した。測定条件は、
試験片タイプ : Type 1
ノッチタイプ : Type A
荷重 : 2J
で、単位はKJ/mである。
【0075】
(1−3)物性試験:熱変形温度(HDT)
ISO75に準じ、荷重1.80MPaの条件で測定を行った。測定値の単位は℃である。
【0076】
(1−4)耐メタノール性試験:ガスバリア性(カップ試験)
図1に示すように、直径60mmの金属製円筒状カップ1にメタノール2を10g入れ、カップ1の開口部を、厚さ1mm、直径74mmの円板状試験片3で、カップ内部のメタノールが外部に漏洩しないように密閉した。そして、50℃の恒温槽内に5日間放置した後、これを取り出し、メタノールの減少量(%)を測定した。測定結果は、メタノールの減少量が小さいほど、成形材料のメタノールに対する耐透過性が優れる。
【0077】
(1−5)耐メタノール性試験:50℃耐熱変形性(カップ試験)
上記(1−4)のガスバリア性試験において、恒温槽から取り出した時の試験片中央部の上方への変形量(mm)を測定した。測定結果は、試験片中央部の変形量が小さいほど、高温での使用環境下における変形が少なく、アルコール存在下における耐熱性に優れる。
【0078】
(1−6)耐メタノール性試験:70℃浸漬試験
射出成形機により作成した厚さ1.6mmの成形品から、70mm×40mm×1.6mmの試験片を切り出した。次に、500mlビーカー中にメタノール(100%)を150g入れ、メタノールの揮発を防ぐためにアルミ箔でビーカーに蓋をし、ウォーターバス中で70℃に加熱した。その後、ビーカー内温が70℃になったところで、上記試験片を40mmの辺がビーカー底面に接し、試験片底面から3.5cmがメタノールに浸るように、ビーカー壁面に立てかけた。ビーカー内温を70℃に保持しつつ、そこから8時間後に、試験片がメタノールに浸漬された部分の外観の変化と、メタノールに浸漬していない部分の変化も含めた試験片全体での変形(軟化)の発生を目視で評価した。評価は下記基準で行った。
○;外観変化なし、且つ、変形(軟化)発生なし。
×;白化等の外観変化あり、及び/または、変形(軟化)発生あり。
【0079】
(1−7)曲げ試験片中の成分(C)の平均長
上記した方法で測定した。
【0080】
(1−8)超音波溶着性(引張り強度)
使用樹脂片:曲げ試験用試験片(120mm×10mm×4mm)を2本使用。
使用溶着試験機:精電舎電子工業(株)製SONOPET Σ−1200。
溶着条件:溶着時間 1.0sec、保持時間 1.0sec、加圧 1.0kgf 振幅 21um。
図2に示すように、2枚の試験片を互いに17mm重なり合うように置き、その重なり合った上側の試験片の末端から10mm離れた部分にホーンを押し当てて、上記条件にて溶着させた。溶着後の試験サンプルを用い、上記物性試験で使用したオートグラフにて通常の引張り試験を行い、その引張り強度を測定した。
【0081】
(2−1)成分(A)(オレフィン系樹脂)
成分(A−1):ホモタイプポリプロピレン「ノバテックPP FY4」(商品名:日本ポリプロ社製)を用いた。
成分(A−2):ブロックタイプポリプロピレン「ノバテックPP BC6C」(商品名:日本ポリプロ社製)を用いた。
【0082】
(2−2)成分(B)(ゴム強化樹脂)
(2−2−1)成分(B−1)(エチレン−プロピレン系ゴム強化樹脂)
リボン型攪拌機翼、助剤連続添加装置、温度計などを装備した容積20リットルのステンレス製オートクレーブに、エチレン−プロピレン系ゴム(エチレン/プロピレン/ジシクロペンタジエン=63/32/5(%)、ムーニー粘度(ML1+4、100℃)33であるエチレン−プロピレン系共重合体)30部、スチレン45部、アクリロニトリル25部、トルエン140部を仕込み、内温を75℃に昇温して、オートクレーブ内容物を1時間攪拌して均一溶液とした。その後、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート0.45部を添加し、内温を更に昇温し、100℃に達した後は、この温度を保持しながら、攪拌回転数100rpmとして重合反応を行った。重合反応開始後4時間目から、内温を120℃に昇温し、この温度を保持しながら更に2時間反応を行って終了した。
内温を100℃まで冷却した後、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)−プロピオネート0.2部を添加した後、反応混合物をオートクレーブより抜き出し、水蒸気蒸留により未反応物と溶媒とを留去し、40mmφベント付き押出機でシリンダー温度を220℃、真空度を770mmHgに調節して揮発分を実質的に脱気させ、ペレット化した。得られたエチレン−プロピレン系ゴム強化樹脂のグラフト率は60%、アセトン可溶分の極限粘度[η]は0.45dl/g、透過型電子顕微鏡写真にて求めた数平均ゴム粒子径は0.57μmであった。
【0083】
(2−2−2)成分(B−2)(水添共役ジエン系ゴム強化樹脂)
水添スチレン−ブタジエンブロック共重合体(商品名「ダイナロン4600P」、JSR社製)の存在下に、メタクリル酸メチル、スチレン、アクリロニトリルを溶液重合して得られたゴム強化樹脂を用いた。このゴム強化樹脂は、グラフト率45%であり、水添スチレン−ブタジエンブロック共重合体の含有量30%、メタクリル酸メチル単位量が50%、スチレン単位量が10%、アクリロニトリル単位量が10%であり、アセトン可溶成分の極限粘度(メチルエチルケトン中、30℃で測定)0.30dl/gであった。
【0084】
(2−2−3)成分(B−3)(成分(B)以外のゴム強化樹脂)(対照)
ポリブタジエンゴムの存在下に、スチレンとアクリロニトリルを乳化重合して得られたゴム強化樹脂(B1−3)を用意した。このゴム強化樹脂のグラフト率は60%、アセトン可溶成分の極限粘度(メチルエチルケトン中、30℃で測定)0.48dl/g、ポリブタジエンゴム含有量は40%、スチレン単位量45%、アクリロニトリル単位量15%であった。
このゴム強化樹脂(B1−3)70部とAS樹脂(B2−3)(スチレン単位量70%及びアクリロニトリル単位量30%のスチレン−アクリロニトリル共重合体、アセトン可溶成分の極限粘度(メチルエチルケトン中、30℃で測定)0.65dl/g)30部とを混合してゴム強化樹脂(B−3)を得た。
【0085】
(2−3)成分(C)(収束ガラス繊維)
成分(C−1):AS樹脂とエポキシ系樹脂との混合物からなる収束剤で収束された、アミノシラン表面処理ガラス繊維「CS03MAA51A」(オーウェンスコーニングジャパン社製、平均長/平均径=3〜4mm/13μm)。
成分(C−2):ウレタン系重合体からなる収束剤で収束された、アミノシラン表面処理ガラス繊維「RES03−TP11」(商品名;NSGヴェトロテックス社製、平均長/平均径=3mm/13μm)。
成分(C−3):アクリル系重合体からなる収束剤で収束された、シラン表面処理ガラス繊維「RES03−TP89Z」(商品名;NSGヴェトロテックス社製、平均長/平均径=3mm/13μm)(対照)。
成分(C−4):繊維状でないガラスフレーク「REFG−101」(商品名;NSGヴェトロテックス社製)(対照)。
【0086】
(2−4)成分(D)(酸変性オレフィン系樹脂)
成分(D−1):マレイン酸基を有する酸価26の酸変性プロピレン系樹脂「ユーメックス1001」(商品名;三洋化成工業社製)。
成分(D−2):マレイン酸基を有する酸価52の酸変性プロピレン系樹脂「ユーメックス1010」(商品名;三洋化成工業社製)(対照)。
【0087】
実施例1〜6及び比較例1〜9
表1に記載の配合割合で、上記成分(A)〜(D)をヘンシェルミキサーにより混合した後、二軸押出機(日本製鋼所製、TEX44、バレル設定温度250℃)で混練し、ペレット化した。得られたペレットで評価用の各試験片を成形した。そして得られた試験片を用いて、前記の方法で評価した。以上の評価結果を表1に示した。
【0088】
【表1】

【0089】
表1から明らかように、実施例1〜6の成形材料は、本発明の目的とする性能の成形品を提供する。
これに対し、比較例1は、成分(B)として、本発明の範囲外のゴム強化樹脂を使用した例であり、ガスバリア性、50℃の耐熱変形性が劣り、50℃の曲げ最大応力及び50℃の曲げ弾性率が低く、従って、高温下での剛性が劣る。比較例2は、本発明の成分(C)の代わりに、本発明の範囲外の収束剤で収束されたガラス繊維を用いた例であり、ガスバリア性、50℃の耐熱変形性、高温下での剛性が劣る。比較例3は、本発明の成分(C)の代わりに、ガラスフレークを使用した例であり、50℃の耐熱変形性、衝撃強度が劣り、50℃の曲げ最大応力及び50℃の曲げ弾性率が低く、従って、高温下での剛性が劣る。比較例4は、成分(D)の酸価が本発明の範囲を超えた酸変性オレフィン系樹脂を使用した例であり、ガスバリア性、50℃の耐熱変形性が劣る。比較例5は、成分(C)の使用量が本発明の範囲未満の例であり、超音波溶着性、50℃の耐熱変形性、及び高温下での剛性が劣る。比較例6は、成分(C)の使用量が本発明の範囲を超えた例であり、超音波溶着性が劣る。比較例7は、成分(D)の使用量が本発明の範囲未満の例であり、ガスバリア性、50℃の耐熱変形性、及び高温下での剛性が劣る。比較例8は、成分(D)の使用量が本発明の範囲を超えた例であり、ガスバリア性、50℃の耐熱変形性、及び高温下での剛性が劣る。比較例9は、成分(B)の使用量が本発明の範囲未満の例であり、耐衝撃性が劣る。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の耐アルコール性成形材料及びこれで成形されたアルコール容器等の成形品は、アルコールと接触しても容器に白化、亀裂、変形等の不良現象の発生が少なく耐薬品性に優れ、アルコールに対する耐透過性、アルコール存在下における耐熱性、機械的強度、超音波溶着性に優れ、アルコール型燃料電池用燃料容器(カートリッジも含む)等のアルコールと接触する条件での使用に極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】実施例で行った耐メタノール性試験の方法を示す概略縦断面図である。
【図2】実施例で行った超音波溶着試験の方法を示す概略斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)35〜77質量%と、下記成分(B)7〜40質量%と、下記成分(C)15〜50質量%と、下記成分(D)0.1〜15質量%とを含有する(但し、上記成分(A)、(B)、(C)及び(D)の合計は100質量%である)耐アルコール性成形材料。
成分(A):オレフィン系樹脂;
成分(B):エチレン−α−オレフィン系ゴム(a1)及び/又は水添共役ジエン系ゴム(a2)からなるゴム質重合体(a)の存在下に、ビニル系単量体(b)を重合して得られるグラフト共重合体(B1)、または、該グラフト共重合体(B1)とビニル系単量体(b)の(共)重合体(B2)との混合物からなるゴム強化樹脂;
成分(C):芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体の共重合体(c1)、エポキシ系樹脂(c2)及びウレタン系重合体(c3)からなる群より選ばれた少なくとも1種の収束剤で収束されたガラス繊維;
成分(D):酸価が5〜40である酸変性オレフィン系樹脂。
【請求項2】
前記成分(D)は、マレイン酸及び/又は無水マレイン酸で変性されたオレフィン系樹脂である請求項1に記載の耐アルコール性成形材料。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の耐アルコール性成形材料で成形された成形品
【請求項4】
アルコール容器である請求項3に記載の成形品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−215523(P2009−215523A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−76700(P2008−76700)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(396021575)テクノポリマー株式会社 (278)
【Fターム(参考)】