説明

耐久力増強塗布剤

【課題】細胞賦活効果及び血行促進効果を有する耐久力増強塗布剤を提供する。
【解決手段】本発明は、ヌクレオプロテイン及び/又はDNA又はRNAの酵素分解生成物又は加水分解生成物、該分解生成物から分離したデオキシオリゴヌクレオチド、デオキシモノヌクレオチド、オリゴペプチド、オリゴヌクレオチド、モノヌクレオチド、或いは前記分解生成物又は前記化合物から選択された少なくとも2種の混合物を有効成分として含有する耐久力増強塗布に関するものである。本発明の耐久力増強塗布を適用し得る対象は人間のみならず馬、犬などのレースを行う哺乳動物に対しても、耐久力増強するために利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐久力増強塗布剤、更に詳しくは、細胞賦活効果及び血行促進効果を有する、ヌクレオプロテイン及び/又はDNA又はRNAの酵素分解生成物又は加水分解生成物、該分解生成物から分離したデオキシオリゴヌクレオチド、デオキシモノヌクレオチド、オリゴペプチド、オリゴヌクレオチド、モノヌクレオチド、或いは前記分解生成物又は前記化合物から選択された少なくとも2種の混合物を有効成分として含有する耐久力増強塗布剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
運動をすると、筋肉疲労から耐久力がなくなる。筋肉疲労すると血中尿素濃度、血中乳酸濃度が高まり、肝臓のグリコーゲンが少なくなり、結果として、耐久力がなくなることが分かっている。運動を行う人の中でも特にアスリートは、試合での耐久力が成績に直結するため耐久力の増強に関心が高い。
【0003】
従来の耐久剤の研究においては、食品又は経口摂取医薬品により、耐久力を増強する手段が多く試みられていた。
しかしながら、食品又は経口摂取医薬品は、吸収後に筋肉に働きかけることからタイム・ラグがあり、試合などのタイミングと一致しないこともあり、直接筋肉に働きかけ、耐久力を増強する塗布剤の開発が望まれていた。
【0004】
ところで、近年、健康に対する世間一般の関心の高まりを反映して、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)又は核タンパク質を、原料又は有効成分として用いた健康食品が提供されている。高分子量の核タンパク質を水可溶性及び易消化性とするために、低分子化することも提案されている(特許文献1)。
デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)又は核タンパク質は、老化防止効果を有することは知られているが、耐久力増強塗布剤に適用する試みは充分に成されていない。
【特許文献1】特開2004−16143号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
耐久力の低下の原因は、筋肉疲労によるものであり、血中尿素濃度、血中乳酸濃度が高まり、肝臓のグリコーゲンが少なくなり、結果として、耐久力がなくなることが分かっている。従って、効果的に筋肉疲労を防止し、且つ同時に必要なときに耐久力を高める効果を発揮するものが望ましいが、従来の食品又は経口摂取医薬品の耐久力増強効果は充分でない。
【0006】
本発明者らは、従来の食品又は経口摂取医薬品の耐久力増強効果を上回る効果を有する耐久力増強塗布剤を得るため鋭意研究した結果、ヌクレオプロテイン及び/又はDNAを酵素分解処理又は加水分解処理して得られた、デオキシオリゴヌクレオチド、デオキシモノヌクレオチド又はオリゴペプチドを含有する分解物、或いは、RNAを酵素分解処理又は加水分解処理して得られた、オリゴヌクレオチド又はモノヌクレオチドを含有する分解物、或いは、それらの混合物に、優れた耐久力増強効果があることを見出し、本発明を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明の耐久力増強塗布剤は、ヌクレオプロテイン及び/又はDNAを酵素分解
処理又は加水分解処理により低分子化して得られた分子量1000乃至3000の画分を20乃至50質量%含有する分解生成物、又は、該分解生成物から分離したデオキシオリゴヌクレオチド、デオキシモノヌクレオチド又はオリゴペプチド、又は、
RNAを酵素分解処理又は加水分解処理により低分子化して得られた分子量1000乃至3000の画分を20乃至50質量%含有する分解生成物、又は、該分解生成物から分離したオリゴヌクレオチド又はモノヌクレオチド、又は、
前記ヌクレオプロテイン及び/又はDNA分解生成物、前記RNA分解生成物、デオキシオリゴヌクレオチド、デオキシモノヌクレオチド、オリゴペプチド、オリゴヌクレオチド、及びモノヌクレオチドから選択された少なくとも2種の混合物、
を含有することを特徴とする。
【0008】
本発明の耐久力増強塗布剤の好ましい態様において、前記分解生成物に含まれるデオキシオリゴヌクレオチド、デオキシモノヌクレオチド、オリゴヌクレオチド及びモノヌクレオチドは、その二重らせん率が20%を超えないことが好ましい。
また、前記ヌクレオプロテイン及びDNAは鮭、鱒、鰊及び鱈からなる群から選択される魚類の白子から得ることが好ましい。
更に、前記RNAは、酵母から得られ、好ましくはビール酵母、トルラ酵母、乳酵母及びパン酵母からなる群から選択される酵母から得られる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の耐久力増強塗布剤は、ヌクレオプロテイン及び/又はDNA又はRNAを酵素分解処理又は加水分解処理により低分子化して得られた分子量1000乃至3000の画分を20乃至50%質量含有する分解生成物、該分解生成物から分離したデオキシオリゴヌクレオチド、デオキシモノヌクレオチド、オリゴペプチド、オリゴヌクレオチド、モノヌクレオチド、或いは前記分解生成物又は前記化合物から選択された少なくとも2種の混合物を有効成分として含有するものである。
前記デオキシオリゴヌクレオチド等は、分子量が比較的小さいので経皮的に吸収され易く、またそれらは経皮的に吸収されたとき細胞賦活作用及び血行促進作用を有する。したがって、本発明の耐久力増強塗布剤を手足の筋肉部の皮膚に適用した場合、筋肉に対する優れた耐久力増強効果を奏する。
本発明の耐久力増強塗布剤は、馬、犬などのレースを行う哺乳動物に対しても、人の場合と同様、耐久力増強効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の耐久力増強塗布剤の有効成分として、精製品としても使用されるデオキシオリゴヌクレオチド又はデオキシモノヌクレオチドは、DNAを酵素分解処理又は加水分解処理して、オリゴヌクレオチド又はモノヌクレオチドは、RNAを酵素分解処理又は加水分解処理して、またオリゴペプチドは、ヌクレオプロテインを酵素分解処理又は加水分解処理して、それぞれ得ることができる。
【0011】
DNA及びヌクレオプロテインは、例えば、魚類の白子から抽出し、精製することにより得ることができる。前記魚類は、全ての魚種が対象となるが、例えば、鮭、鱒、鰊及び鱈であり、とりわけ、鮭及び鰊が好ましい。
【0012】
以下、DNAについて更に詳しく説明する。
本発明の耐久力増強塗布剤の製造原料であるDNAは種々の態様のものでよく、例えば、二本鎖、一本鎖又は環状のDNAであってよい。DNAの供給源は、動物、植物、微生物等の様々な生物である。水産加工上の廃棄物である、魚類特に鮭、鱒、鰊及び鱈の精巣(白子)は、とりわけDNAを多く含むが、従来、資源として有効に利用されず、多くが廃棄されていた。それ故、廃棄物の資源化という観点から、これらの精巣由来のDNAを
利用することは望ましい。また、哺乳動物や鳥類、例えばウシ、ブタ、ニワトリ等の胸腺から得られるDNAを使用することができる。更に、合成DNAもまた使用することができる。
【0013】
なお、魚類白子からDNAを得るには、特開2005−245394号公報に記載の抽出・精製方法を用いることができる。
具体的には、まず魚類白子を粗砕し、粗砕した魚類白子にDNAが分解しない条件下でタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)処理を行い、酵素処理した溶液を濾過する。そして分画分子量が2000乃至1000000である中空糸膜を用いて濾液に透析処理を行い、分解したタンパク質及びイオン類を除去すると共に二本鎖DNAを濃縮する。更に、透析処理を行った溶液から二本鎖DNA塩として沈殿させるか或いは溶液を濃縮し、これら沈殿物或いは濃縮物を回収する。
上記方法により得られたDNA塩を乾燥させた粉末状DNA塩を、本発明の耐久力増強塗布剤の製造原料として用いることができる。
【0014】
RNAは酵母から得られ、好ましくはビール酵母、トルラ酵母、乳酵母及びパン酵母からなる群から選択される酵母から抽出し、精製することにより得ることができる。
【0015】
DNA及びRNAを処理する酵素は、例えば、ヌクレアーゼであり、とりわけ、アオカビ由来のヌクレアーゼが好ましい。
【0016】
オリゴペプチドは、魚類の白子などに含まれるヌクレオプロテイン(核タンパク質)をプロテアーゼで加水分解して得られる。
【0017】
前記プロテアーゼはトリプシンを主体とするものである。トリプシンは高い特異性を有するセリンプロテアーゼであり、アルギニン及びリジンのカルボキシル側でペプチド結合を選択的に加水分解するので、アルギニンを多く含むプロタミンの加水分解に適している。また前記プロテアーゼは、トリプシンに加えて、他のプロテアーゼ、例えばキモトリプシン等を含むこともできる。良好なプロテアーゼとしては、ノボノルディスクバイオインダストリー株式会社製のプロテアーゼを挙げることができる。
【0018】
前記ヌクレアーゼは、デオキシリボ核酸(DNA)及びリボ核酸(RNA)の3,5’−ホスホジエステル結合を加水分解し、オリゴ体重合の5’−(デオキシ)ヌクレオチドを生成する。該ヌクレアーゼの性質について特に制限はないが、ある程度の熱安定性を備えることが好ましい。このようなヌクレアーゼは、例えば天野エンザイム株式会社(旧天野製薬株式会社)、シグマ社等から市販品を入手可能である。
【0019】
前記ヌクレアーゼを用いたDNA、RNA及びヌクレオプロテインの加水分解処理において重要なのは、反応を行う温度である。反応温度は60〜75℃の範囲内でなければならず、70℃が最も好ましい。該温度範囲より低い温度で反応を行うと、DNA、RNA及びヌクレオプロテインの低分子化が十分に進行せず、分解物が水溶性とならない。一方、該温度範囲より高い温度で行うと、低分子化が過度に進行し、核タンパク質(ヌクレオプロテイン)の優れた効果を失う惧れがある。
【0020】
以上のようにDNA、RNA及びヌクレオプロテインをヌクレアーゼを用い60〜75℃で行う加水分解によって処理することにより、分子量が1000乃至3000である画分を20乃至50質量%含有し、そして分子量が1000以下である画分を、通常、分子量1000乃至3000の画分の量よりも多い量、例えば30乃至50質量%含有する程度まで低分子化することができ、これにより、水可溶性及び経皮吸収性を兼ね備えたDNA、RNA及びヌクレオプロテイン分解生成物を製造できる。
以上の処理により得られたヌクレオプロテイン分解生成物及びDNA分解生成物には、低分子化されたデオキシオリゴヌクレオチド、デオキシモノヌクレオチド及びオリゴペプチドが主要な部分もしくは大部分として含まれ、そして低分子化が不十分なデオキシヌクレオチド等がごく少量の部分として含有されている。
また同様の処理により得られたRNA分解生成物にはオリゴヌクレオチド及びモノヌクレオチドが主要な部分もしくは大部分として含まれ、そして低分子化が不十分なヌクレオチド等がごく少量の部分として含有されている。
従って、これら分解生成物に含まれるヌクレオチド類(デオキシオリゴヌクレオチド、デオキシモノヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、モノヌクレオチド)は、そのほぼ全て乃至その大部分が、本来らせん鎖を取らないモノ体、完全な一本鎖のオリゴ体、並びに、二重らせん構造を一部にしか有しないオリゴ体で構成される。言い換えると、上述の低分子化が十分に進行しなかったような場合を想定したとしても、上記の分解生成物に含まれるヌクレオチド類の二重らせん率が20%を超えることはない。
なお、ヌクレオプロテインを加水分解処理してオリゴペプチドを得るにはプロテアーゼ処理及びオリゴヌクレオチドを得るにはヌクレアーゼ処理が成されることとなるが、好ましくは、始めにプロテアーゼで処理し、続いてヌクレアーゼ処理することが、作業上の都合及び得られる最終生成物の品質の観点より望ましい。
【0021】
本発明の耐久力増強塗布剤の有効成分として、ヌクレオプロテイン及び/又はDNAを酵素分解処理又は加水分解処理して得られた分解生成物、或いは、RNAを酵素分解処理又は加水分解処理して得られた分解生成物を、そのまま(精製することなく)使用することができる。前記分解生成物中に、例えば、アミノ酸などが含まれていてもよい。
また、本発明の耐久力増強塗布剤の有効成分として、ヌクレオプロテイン及び/又はDNA又はRNA分解生成物から慣用の分離手段及び/又は精製手段を用いて分離・精製された以下の化合物:デオキシオリゴヌクレオチド、デオキシモノヌクレオチド、オリゴペプチド、オリゴヌクレオチド及びモノヌクレオチドを使用することができる。
このとき、ヌクレオプロテイン、DNA及びRNAの分解生成物に含まれるか、又は、該分解生成物から慣用の分離手段及び/又は精製手段を用いて分離・精製されたデオキシオリゴヌクレオチド及びオリゴヌクレオチドの鎖長は2乃至12のものであることが好ましい。
【0022】
前記分解生成物及び前記化合物は、それぞれ単独で使用してもよいし、又は、これらの少なくとも2種類を混合して使用してもよい。
前記分解生成物や前記化合物を混合して使用する場合は、その混合比率は適宜選択し得る。
このとき、前記分解生成物及び前記化合物として、鎖長が2乃至12の前記デオキシオリゴヌクレオチド又は前記オリゴヌクレオチドのうち少なくとも何れか一方を含み、並びに鎖長が2乃至12の前記デオキシオリゴヌクレオチド及び前記オリゴヌクレオチドの含有量の合計が、前記分解生成物及び前記化合物の全合計量に対して20質量%以上であることが特に好ましい。
また、前記分解生成物や前記化合物を更に、消炎、鎮痛、疲労回復、殺菌、消毒、着香など種々の目的で皮膚に塗布して使用する塗布剤の慣用の添加成分と所定比率で組み合わせて使用してもよい。
【0023】
本発明の耐久力増強塗布剤における有効成分(前記分解生成物及び/又は前記化合物)の濃度は適宜選択し得る。
【0024】
本発明の耐久力増強塗布剤が採り得る剤型は、皮膚に適用可能な剤型であれば特に限定されず、例えば液状ローション、液状トニック、乳液、軟膏、ゲル、エーロゾル等を適宜選択可能である。
【0025】
本発明の耐久力増強塗布剤には、既存の塗布剤に配合され得る公知の成分を、前記有効成分に加えて、配合することができる。例えば、殺菌剤又は抗菌剤として、ヒノキチオール、ヘキサクロロフェン、ベンザルコニウムクロリド、セチルピリジニウムクロリド、ウンデシレン酸、トリクロロカルバニリド、ビチオノール等を単独又は組み合わせて配合することができる。
【0026】
また、本発明の耐久力増強塗布剤には、ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル、ビタミンE又はその誘導体、例えばビタミンEアセテート、センブリエキス、塩化カルプロニウム、アセチルコリン誘導体等の血管拡張剤;セファランチン等の皮膚機能亢進剤;グリチルレチン酸又はその誘導体、紫根エキス等の消炎剤;エストラジオール、エストロン等の女性ホルモン剤;セリン、メチオニン、アルギニン等のアミノ酸類;ビタミンA、ビタミンB1 、ビタミンB6 、ビオチン、パントテン酸又はその誘導体等のビタミン類を、薬剤成分として、単独又は組み合わせて配合することができる。
【0027】
更に、本発明の耐久力増強塗布剤には、必要に応じて、サリチル酸、亜鉛又はその誘導体、乳酸又はそのアルキルエステル等の薬剤;メントール等の清涼剤;クエン酸等の有機酸類;並びに耐久力増強塗布剤に通常使用される薬剤や添加剤、例えば、防腐剤、界面活性剤、分散安定剤、増粘剤、pH調整剤及び精製水、を単独又は組み合わせて配合することができる。
【実施例】
【0028】
以下に示す実施例及び比較例において、本発明を具体的且つ更に詳細に説明する。下記実施例は本発明の説明のためのみのものであり、これらの実施例により本発明の技術的範囲が限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例における配合量は、全体量に対する質量%である。又、実施例で用いた試作品1乃至試作品6(ヌクレオプロテイン及び/又はDNA、或いは、RNAを、酵素分解処理又は加水分解処理して得られた分解生成物をそれぞれ含有するもの)の量は固形分量として示す。試作品1はDNA塩分解生成物、試作品2はDNA分解生成物、試作品3はヌクレオプロテイン分解生成物、試作品4はDNA及びヌクレオプロテイン分解生成物、試作品5はRNA分解生成物、そして試作品6は試作品2と試作品5の混合物である。
【0029】
1.試作品1の製造
鮭白子由来のDNAに対して、食品添加物として認可されているヌクレアーゼ[例えば、酵素製剤ヌクレアーゼ「アマノ」(天野エンザイム(旧天野製薬)社製)]を用いて限定分解を行った。産生したデオキシモノヌクレオチドとデオキシオリゴヌクレオチドを電気泳動装置で分析して最適条件を決定した。
[製造方法]
65℃前後に調整した温水に原料として鮭白子由来の粉末状DNA−Na塩を投入し、撹拌後、更に70℃に加温し、原料に対してヌクレアーゼ0.25%を加えて3時間反応させた。次に、85℃で10分間加熱してヌクレアーゼを失活させた後、遠心分離し、上澄み液にスプレードライ法を適用して、乾燥粉末の形態で試作品1を得た。試作品1は、DNAを酵素分解処理により低分子化して得られた分解生成物であり、有効成分として、デオキシオリゴヌクレオチド及びデオキシモノヌクレオチドを含有する。
【0030】
2.試作品2の製造
[製造方法]
DNA−Na塩の代わりにDNAを使用すること以外は試作品1の場合と同様にして、乾燥粉末の形態で試作品2を得た。試作品2は、DNAを酵素分解処理により低分子化し
て得られた分解生成物であり、有効成分として、デオキシオリゴヌクレオチド及びデオキシモノヌクレオチドを含有する。
[構造及び組成]
得られた上述の分解生成物をHPLCで分析した。図1に、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)による、分解生成物のデオキシオリゴヌクレオチドの分析例を示す。図1において、5' −デオキシモノヌクレオチド及び3' −デオキシモノヌクレオチドはピーク20までに溶出しており、以降の比較的大きなピーク、即ち、ピーク26以後をデオキシオリゴヌクレオチドの吸収とみなすことができる。また、ピーク41以後は分子量が3000を超える分解生成物の吸収とみなすことができる。このため、ピーク26乃至41のピーク強度から算出した結果、本例では分解生成物全体に対して、31%のデオキシオリゴヌクレオチド(分子量1000〜3000)の分画が含まれていることが判った。
【0031】
3.試作品3の製造
DNA−Na塩の代わりにヌクレオプロテインを使用すること以外は試作品1の場合と同様にして、試作品3を得た。試作品3は、ヌクレオプロテインを酵素分解処理により低分子化して得られた分解生成物であり、有効成分として、デオキシオリゴヌクレオチド、デオキシモノヌクレオチド及びオリゴペプチドを含有する。
[製造方法]
水に原料として鮭白子由来のヌクレオプロテイン(日生バイオ(株)製)を投入し、50℃で加熱、撹拌後、原料に対して酵素製剤プロテアーゼ「PTN」(ノボザイムズジャパン(株)製)を0.065%加えて4時間反応させ、更に70℃で加熱、撹拌する。続いて、酵素製剤ヌクレアーゼ「アマノ」(天野エンザイム社製)を0.1%加えて3時間反応させた。次に、85℃で10分間加熱してヌクレアーゼを失活させた後、遠心分離し、スプレードライ法を適用して、デオキシオリゴヌクレオチドを含む乾燥粉末の形態で試作品3を得た。
[構造及び組成]
得られた上述の分解生成物をHPLCで分析した。図2に、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)による、分解生成物のデオキシオリゴヌクレオチドの分析例を示す。図2において、保持時間19分から24分以内のピーク(ピーク1乃至ピーク4)をオリゴヌクレオチドの吸収とみなすことができる。このため、ピーク1乃至4のピーク強度から算出した結果、本例では分解生成物全体に対して、33.4%のデオキシオリゴヌクレオチド(分子量1000乃至3000)の分画が含まれていることが判った。
下記表1に、図2のHPLCのピークレポートを示す。
【表1】

【0032】
4.試作品4の製造
試作品2と試作品3を当量混合して、乾燥粉末の形態で試作品4を得た。試作品4は、有効成分として、デオキシオリゴヌクレオチド、デオキシモノヌクレオチド及びオリゴペプチドを含有する。
【0033】
5.試作品5の製造
DNA−Na塩の代わりにRNAを使用すること以外は試作品1の場合と同様にして、試作品5を得た。試作品5は、RNAを酵素分解処理により低分子化して得られた分解生成物であり、有効成分として、オリゴヌクレオチド及びモノヌクレオチドを含有する
[製造方法]
70℃前後に調整した温水に原料として酵母由来のRNA(日生バイオ(株)製)を投入し、撹拌後、更に70℃に加温し、原料に対して酵素製剤ヌクレアーゼ「アマノ」(天野エンザイム社製)を0.05%加えて3時間反応させた。次に、85℃で10分間加熱してヌクレアーゼを失活させた後、遠心分離し、スプレードライ法を適用して、オリゴヌクレオチドを含む乾燥粉末の形態で試作品5を得た。
[構造及び組成]
得られた上述の分解生成物をHPLCで分析した。図3に、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)による、分解生成物のオリゴヌクレオチドの分析例を示す。図3において、保持時間13分から24分以内のピーク(ピーク2乃至ピーク5)をオリゴヌクレオチドの吸収と見なすことができる。このため、ピーク2乃至5のピーク強度から算出した結果、本例では分解生成物全体に対して、41.1%のオリゴヌクレオチド(分子量1000乃至3000)の分画が含まれていることが判った。
下記表2に、図3のHPLCのピークレポートを示す。
【表2】

【0034】
6.試作品6の製造
試作品2と試作品5を当量混合して、乾燥粉末の形態で試作品6を得た。試作品6は、有効成分として、デオキシオリゴヌクレオチド、デオキシモノヌクレオチド、オリゴヌクレオチド及びモノヌクレオチドを含有する
【0035】
7.耐久力増強塗布剤の製造(実施例1)
試作品1を用いて、本発明の実施例1の耐久力増強塗布剤を以下のように製造した。ま
た対照として、試作品1を含有しない耐久力増強塗布剤を製造した。これらの組成を下記表3にまとめて示す。
[実施例1]
95%エタノールに精製水を加え、これに硬化ヒマシ油エチレンオキシド(40モル)付加物、ステアリルジメチルアミンオキシドを加えて撹拌後、試作品1を加えて撹拌溶解し、透明液状の実施例1の製剤を得た。
[比較例1]
試作品1の代わりに同量のグリセリンを用い、実施例1と同様の製法で比較例1の製剤を得た。
【0036】
8.血流量測定試験(実施例1及び比較例1)
実施例1の製剤と比較例1の製剤をそれぞれ、ヒト上腕に10μL塗布し、塗布1時間後に、レーザードップラー計で血流量を測定した。試験結果の判定は、下記判定基準により行った。
++:比較例に比べて血流量が極めて増加した(著効)
+ :比較例に比べて血流量が増加した(有効)
± :比較例に比べて血流量がやや増加した(やや有効)
− :比較例に比べて血流量が同等以下であった(無効)
実施例1の製剤及び比較例1の製剤の組成及び評価試験結果を下記表3にまとめて示す。
【表3】

【0037】
9.耐久力増強塗布剤の製造(実施例2乃至6及び比較例2)
[実施例2〜6]
試作品2、試作品3、試作品4、試作品5及び試作品6の各々に、下記表4に記載の防腐剤、界面活性剤、分散安定剤、増粘剤及びpH調整剤を適量添加し、撹拌しながら、これらを精製水に溶解し、乳液状の実施例2乃至実施例6の製剤を得た。
[比較例2]
試作品2乃至試作品6の代わりに同量のグリセリンを用いて、実施例2乃至実施例6と同様の方法で比較例2の製剤を得た。
【0038】
10.血流量測定試験(実施例2乃至6及び比較例2)
実施例2乃至6及び比較例2の製剤について、実施例1及び比較例1の製剤の場合と同様にして血流量測定試験を行った。実施例2乃至6及び比較例2の製剤の組成及び評価試験結果を下記表4にまとめて示す。
【表4】

【0039】
表3及び表4に示した結果から、実施例1又は実施例2乃至実施例6の製剤における血流量測定試験の評価は++[比較例1又は比較例2に比べて血流量が極めて増加した(著効)]であり、実施例1乃至実施例6の製剤の有効成分がヒトの皮膚から浸透して血流量を著しく増加させることは明らかである。
なお、実施例1乃至実施例6では、有効成分として試作品1(DNA塩分解生成物)、試作品2(DNA分解生成物)、試作品3(ヌクレオプロテイン分解生成物)、試作品4(DNA及びヌクレオプロテイン分解生成物)、試作品5(RNA分解生成物)及び試作品6(DNA及びRNA分解生成物)を使用したが、試作品1乃至試作品6の代わりに、それらから分離・精製されたデオキシオリゴヌクレオチド及びデオキシモノヌクレオチド、オリゴペプチド、オリゴヌクレオチド又はモノヌクレオチドを単独で又は組み合わせて使用しても、試作品1乃至試作品6を使用した場合と同様に血流量を増加させた。
【0040】
即ち、本実施例から、デオキシオリゴヌクレオチド、デオキシモノヌクレオチド、オリゴペプチド、オリゴヌクレオチド又はモノヌクレオチドを含有する製剤は、血流量の増加を有することが認められた。
【0041】
以下に、上記試作品1乃至試作品6を用いた、種々の形態の耐久力増強塗布剤の処方例を、実施例7乃至実施例9として示す。なお、ここで記載した「試作品(類)」とは、試作品1乃至試作品3及び試作品5を其々単独で、或いは試作品2及び試作品3の当量混合物である試作品4又は試作品2及び試作品5の当量混合物である試作品6から選択されるいずれかの意味を表すものとする。
いずれの実施例においても、血流量の増加を有することが認められた。
【0042】
[実施例7]液状ローション製剤としての耐久力増強塗布剤
【表5】

<製造方法>
95%エタノールに試作品(類)、ニコチン酸アミド、セファランチン、ジプロピレングリコール、L−メントール、香料を溶解させた。
次に精製水にリン酸ニナトリウム、リン酸一カリウムを溶解させたものを添加し、撹拌溶解して、液状ローション製剤を調製した。
【0043】
[実施例8]液状トニック製剤としての耐久力増強塗布剤
【表6】

<製造方法>
95%エタノールに試作品(類)、ニコチン酸ベンジル、酢酸α−DL−トコフェロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール200、香料を加えて溶解した。
次に精製水に色素を溶解させたものを添加し、撹拌溶解して、液状トニック製剤を調製した。
【0044】
[実施例9]乳液状製剤としての耐久力増強塗布剤
【表7】

<製造方法>
(A)相及び(B)相をそれぞれ70℃で加熱溶解し、混合してホモミキサー処理を行い、ゲルを調整した。このゲルに(D)相を徐々に添加してホモミキサーで分散させた。
次に、このゲル分散物に予め溶解させた(C)相を添加し、更に予め溶解させたE相を添加してホモミキサーで乳化し、乳液状製剤を調製した。
【0045】
11.耐久力測定試験(実施例1乃至6及び比較例1、2)
実施例1乃至6及び比較例1、2の製剤をそれぞれ、1群10匹で4群に分け剃毛した5週令のマウスの四肢に0.5mL塗布し、塗布3時間後に、各群にトレッドミルによる走行負荷をさせ、疲労困憊で動かなくなるまでの走行距離を測定した。結果を下記表8にまとめて示す。
【0046】
表8:実施例1乃至6及び比較例1、2の耐久力増強塗布剤の組成及び耐久力測定試験結果
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┃ 製剤 ┃耐久力測定試験結果:走行距離(m)┃
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┃実施例1┃1773.2±495.5 ┃
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┃比較例1┃927.4±184.7 ┃
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┃実施例2┃1672.8±327.6 ┃
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┃実施例3┃1563.7±307.4 ┃
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┃実施例4┃1609.3±296.5 ┃
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┃実施例5┃1459.1±276.8 ┃
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┃実施例6┃1546.3±331.4 ┃
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┃比較例2┃882.4±207.7 ┃
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【0047】
表8において、実施例1の製剤を塗布したマウスの耐久力測定試験結果(走行距離)は、比較例1の製剤を塗布したマウスの耐久力測定試験結果(走行距離)に比べて、また、実施例2乃至実施例6の製剤を塗布したマウスの耐久力測定試験結果(走行距離)は、比較例2の製剤を塗布したマウスの耐久力測定試験結果(走行距離)に比べて、約60%〜90%走行距離が延びており、本発明の耐久力増強塗布剤の耐久力増強効果は明らかである。
なお、実施例1乃至実施例6では、有効成分として試作品1(DNA塩分解生成物)、試作品2(DNA分解生成物)、試作品3(ヌクレオプロテイン分解生成物)、試作品4(DNA及びヌクレオプロテイン分解生成物)、試作品5(RNA分解生成物)及び試作品6(DNA及びRNA分解生成物)を使用したが、試作品1乃至試作品6の代わりに、それらから分離・精製されたデオキシオリゴヌクレオチド及びデオキシモノヌクレオチド、オリゴペプチド、オリゴヌクレオチド又はモノヌクレオチドを単独で又は組み合わせて使用しても、試作品1乃至試作品6を使用した場合と同様に耐久力増強効果が認められた。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は、DNAのヌクレアーゼ処理品(分解生成物)の、HPLCによるデオキシオリゴヌクレオチドの分析例を示す図である。
【図2】図2は、ヌクレオプロテインのヌクレアーゼ処理品(分解生成物)の、HPLCによるデオキシオリゴヌクレオチドの分析例を示す図である。
【図3】図3は、RNAのヌクレアーゼ処理品(分解生成物)の、HPLCによるオリゴヌクレオチドの分析例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヌクレオプロテイン及び/又はDNAを酵素分解処理又は加水分解処理により低分子化して得られた分子量1000乃至3000の画分を20乃至50質量%含有する分解生成物、又は、該分解生成物から分離したデオキシオリゴヌクレオチド、デオキシモノヌクレオチド又はオリゴペプチド、又は、
RNAを酵素分解処理又は加水分解処理により低分子化して得られた分子量1000乃至3000の画分を20乃至50%質量含有する分解生成物、又は、該分解生成物から分離したオリゴヌクレオチド又はモノヌクレオチド、又は、
前記ヌクレオプロテイン及び/又はDNA分解生成物、前記RNA分解生成物、デオキシオリゴヌクレオチド、デオキシモノヌクレオチド、オリゴペプチド、オリゴヌクレオチド、及びモノヌクレオチドから選択された少なくとも2種の混合物、
を含有することを特徴とする耐久力増強塗布剤。
【請求項2】
前記分解生成物に含まれるデオキシオリゴヌクレオチド、デオキシモノヌクレオチド、オリゴヌクレオチド及びモノヌクレオチドは、その二重らせん率が20%を超えないことを特徴とする、請求項1に記載の耐久力増強塗布剤。
【請求項3】
前記ヌクレオプロテイン及びDNAは鮭、鱒、鰊及び鱈からなる群から選択される魚類の白子から得ることを特徴とする、請求項1に記載の耐久力増強塗布剤。
【請求項4】
前記RNAはビール酵母、トルラ酵母、乳酵母及びパン酵母からなる群から選択される酵母から得ることを特徴とする、請求項1に記載の耐久力増強塗布剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−133217(P2008−133217A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−320167(P2006−320167)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【出願人】(598043054)日生バイオ株式会社 (21)
【Fターム(参考)】