説明

耐伸び変形性に優れる本革複合体

【課題】 本革表皮表面の亀裂や塗膜の剥離を効果的に防止できる手段を提供する。
【解決手段】 本革表皮10と、本革表皮10の裏面に貼り合わされた布地20とからなる自動車用本革複合体であって、本革複合体は、本革表皮10より伸びにくいことを特徴とする、自動車用本革複合体である。布地20を本革表皮10の裏面に貼り合わせることによって、本革表皮10の表面に皺が生じることを抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用内装部品に用いられる本革表皮材に関する。
【背景技術】
【0002】
高級車のシート、ドアトリム、ステアリング、シフトノブ等に表皮材として使用される本革は、天然素材であり、種類、年齢および部位によって革の組織の粗密が異なる。このため、本革によって、引張伸びや引張残留伸びに違いが生じる。
【0003】
引張伸びや引張残留伸びが大きい本革を、引張りや曲げなどの入力が厳しい部位に適用すると、皺が発生する。そして、場合によっては、入力が繰り返されることによって、皺を起点にして本革表面の塗膜に亀裂が生じかねない。たとえば、シートの表皮材として本革が適用される場合には、人の乗降の繰り返しにより本革表皮の表面に皺が発生し、その皺が、乗降のさらなる繰り返しにより亀裂へと進行し、塗膜の剥離にまで進行する虞もある。
【0004】
本革表皮表面の亀裂や塗膜の剥離を防止するためには、本革表皮の表面に形成される塗膜を強度の高い塗膜に変更する方策や、引張りや曲げなどの入力が厳しい部位には、背部などの組織が密で伸びにくい本革を用いる方策などが考えられる。しかしながら、塗膜の強化は表皮材の風合いの低下を招く。また、用いる本革を選別すると、材料コストの上昇を招く。そこで、本革表皮表面の亀裂や塗膜の剥離を効果的に防止できる手段の開発が求められていた。
【0005】
表皮材に関する従来技術としては、例えば、化学合成表皮の裏面に天然の動物床皮を接着重合させた合成皮革が開示されている(特許文献1参照)。また、本革表皮の裏面に軟質成分を介在させ硬質成分と接着させる技術が開示されている(特許文献2参照)。しかしながら、これらの技術の目的は、亀裂や剥離の防止ではなく、本革表皮表面の亀裂や塗膜の剥離を効果的に防止することができない。
【特許文献1】特開平4−108186号公報
【特許文献2】特表2003−531751号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、本革表皮表面の亀裂や塗膜の剥離を効果的に防止できる手段を提供し、もって、伸びやすい本革表皮を引張りや曲げなどの入力が厳しい部位に適用した際の、本革の品質保持を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、本革表皮の裏面に布地を貼り合わせて、本革表皮の伸びを抑制することによって、本革表皮における、皺や亀裂の発生、塗膜の剥離を抑制することが可能であることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、本革表皮と、前記本革表皮の裏面に貼り合わされた布地とからなる自動車用本革複合体であって、前記本革複合体は、前記本革表皮より伸びにくいことを特徴とする、自動車用本革複合体である。
【発明の効果】
【0009】
本革表皮の裏面に貼り合わされた布地によって、本革表皮の伸びが抑制され、本革表皮表面における皺の発生が抑制される。ひいては、本革表皮における亀裂の発生、および塗膜の剥離が抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、本発明の自動車用本革複合体の断面図である。本革複合体は、本革表皮10と布地20とからなり、布地20は本革表皮10の裏面に貼り合わされている。図1においては、本革表皮10と布地20との間に、本革表皮10と布地20とを貼り合わせるための接着層15が存在する実施態様を示した。本革表皮10と布地20とを貼り合わせるには、フィルム状のホットメルト接着剤、接着液、粘着テープなどが用いられる。場合によっては、他の部材が本革複合体に配置されてもよい。本革複合体の形状は特に限定されない。シート状であってもよいし、用途の形状に合わせて切断されていてもよい。
【0011】
本発明においては、本革表皮の裏面に布地を貼り合わせることによって、本革表皮と布地とからなる本革複合体の伸びを抑制し、本革表皮の表面における皺の発生を抑える。つまり、本革表皮単独での伸びやすさと、布地を貼り合わせた本革複合体の状態での伸びやすさを比較した場合に、本革複合体の方が伸びにくくなるようにする。
【0012】
好ましくは、縦30mm×横150mmのサイズの本革複合体に、つかみ幅50mmで横方向に30Nの荷重を加えたときの本革複合体の伸びが30%未満となるように、本革複合体を作製する。つまり、荷重が加わっていない状態の本革複合体の長さを1としたときに、荷重が加わった状態の本革複合体の長さが1.3未満であることが好ましい。この程度に本革複合体の伸びやすさを抑制することができれば、本革表皮の表面における皺の発生を十分に抑制することが可能である。
【0013】
本革複合体の伸び率の測定にあたっては、まず、縦30mm×横150mmのサイズのサンプルを準備する。本革複合体の伸び率が、方向によって異なる場合には、本革を裁断する際における頭から尻への方向を縦方向、縦方向に垂直な方向を横方向とする。サンプルに30Nの荷重を加える際のつかみ幅は50mmとする。つまり、横方向の長さ150mmのうち50mmがサンプルをつかむために用いられ、実際に伸び率が測定される長さは100mmとする。測定測地や測定条件については、信頼できるデータが得られるのであれば、特に限定されない。測定装置や測定条件によって数値に有意差が生じる場合には、株式会社島津製作所製試験機SIMADZU(AG−1)AUTOGRAPHを用いて、つかみ具移動速度200mm/minで測定された数値を、伸び率とする。
【0014】
本革複合体を伸びにくくする方法の1つとしては、貼り合わせる布地として、伸びにくい材料を選択することが挙げられる。具体的には、本革表皮より伸びにくい布地を用いて、本革複合体の伸びを抑える。ただし、本革複合体を伸びにくくする方法は、この方法に限定されない。
【0015】
次に、本発明の本革複合体の構成部材について説明する。
【0016】
本革表皮10は、本革であれば、動物の種類や部位については特に限定されない。動物としては、例えば、牛、馬、羊などが挙げられる。部位についても特に限定されず、例えば、背、尻、腹など、本革として使用可能な部位の皮革を用いればよい。本革表皮表面における皺の発生を抑制するという本発明の効果を最大限活用するのであれば、本革表皮が伸びやすい場合に、本発明は特に有効といえる。たとえば、一般に伸びやすい部位である腹の本革を表皮材として用いる場合に、本発明は有効である。
【0017】
本革表皮10は、革の耐久性や風合いを向上させるための各種処理が施されることが好ましい。例えば、通常は、表面側に耐光性や耐摩耗性を向上させるための塗膜が形成される。
【0018】
本革表皮の裏面に布地を貼り付ける方法としては、熱プレスにより布地を本革表皮に融着させる方法、接着液を用いて本革表皮と布地とを接着する方法、粘着テープを用いて本革表皮と布地とを接着する方法などが挙げられる。
【0019】
熱プレスにより本革表皮に布地を融着させる方法を採用する場合には、フィルム状のホットメルト接着剤を用いることが好ましい。ホットメルト接着剤として用いられうる材料としては、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリオレフィン、スチレン系熱可塑性エラストマー、スチレン系ゴムが挙げられる。これらの変性物が用いられてもよい。
【0020】
熱プレスにより布地を貼り付けるには、まず、本革表皮と布地とを、ホットメルト接着剤を介して重ね合わせて、ホットメルト接着剤を加熱して、溶融させる。溶融したホットメルト接着剤は加圧され、本革表皮および布地に貼り付く。加熱温度、加圧力は貼り付けるホットメルト接着剤により選択される。
【0021】
ホットメルト接着剤は、80℃における透湿係数が、好ましくは500g・mm/m/day以下である、より好ましくは100g・mm/m/day以下、さらに好ましくは10g・mm/m/day以下である。
【0022】
透湿係数が小さいホットメルト接着剤を用いることによって、本革表皮の内部と外部との間の湿気の出入りを少なくでき、吸湿の繰り返しによる本革表皮の硬化や収縮が抑制される。透湿係数の下限は特に限定されず、透湿係数が低いほど、厳しい環境下で長期間使用しても硬化や収縮が生じにくい。
【0023】
透湿係数の測定方法は、信頼性があるデータが得られる方法であれば、特に限定されない。ただし、透湿係数の測定方法によって測定データに有意差が生じる場合には、後述する実施例で用いられている測定方法によって得られた数値を、本願における透湿係数とする。
【0024】
ホットメルト接着剤を用いる場合には、布地と貼り合わせた状態で本革の風合いが低下することを防止するため、本革より弾性率が小さいホットメルト接着剤を使用することが好ましい。ただし、本革複合体がインストルメントパネルやステアリングのような本革複合体より十分固い基材上に配置される場合は、本革複合体が変形しづらいため、この限りではない。
【0025】
接着剤により布地を貼り付けるには、本革表皮の裏面または布地の一方または双方に接着剤を塗布し、本革表皮と布地とを重ね合わせて加圧すればよい。必要に応じて、加圧とともに、加熱してもよい。接着剤の種類は、本革と布地とを接着可能な材料であれば、特に限定されない。接着剤の塗布方法も特に限定されない。はけ塗り、スプレー、ロールコーターなどの方法が、適宜選択される。
【0026】
粘着テープにより布地を貼り付けるには、本革表皮の裏面または布地の一方または双方に両面テープなどの粘着テープを貼り付け、本革表皮と布地とを重ね合わせて加圧すればよい。
【0027】
布地20の具体例としては、織物、経編、緯編、不織布、およびこれらから派生する組織が挙げられる。これらが組み合わせられていてもよい。織物とは、経糸と緯糸との交差によって布地とした繊維である。経編および緯編は、いずれも、一本の糸でループを作り、そのループを連続してつなげることにより布地とした繊維として定義される編物の一種である。経編はループの形成方向がたてであるのに対して、緯編はループの形成方向が横であり、一方向に螺旋状に編まれている。不織布とは、繊維を集合させ、合成樹脂その他の接着剤によって結合、または熱融着して布地とした繊維である。また、派生する組織としては、例えば、各素材のベロア商品が挙げられる。
【0028】
布地組織の具体例としては、平織、綾織、朱子織などのドビー織機やジャガード織機でつくられた生地;ダブルラッセル、シングルラッセル及びトリコット機でつくられた生地;ダブルジャージー、シングルジャージー、シンカパイルおよびフロートニットなどの丸編や横編(丸編と同じく緯編の一種で、編機の針の並びが円形になっている丸編と異なり、直線になっているものをいう);ニードルパンチ機で作られた生地などが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
布地の具体的態様としては、布地を構成する糸を解いた際の最も長い糸長をA、最も短い糸長をBとしたとき、以下の式を満たす、織物、経編または緯編の布地が挙げられる。
【0030】
【数1】

【0031】
式中、織物の場合はM=2、経編の場合はM=6、緯編の場合はM=3である。A/Bが、織物の場合には2を超える場合、経編の場合には6を超える場合、緯編の場合には3を超える場合には、本革表皮の裏面に貼り合わされる布地の伸びが大きくなり、本革の伸びを抑制できない虞がある。
【0032】
布地が上記式を満たすか否かの判断に際しては、布地を、その一辺が糸目方向に沿うような正方形に切り取ったものから、AおよびBを求めてA/Bを算出することが可能である。ここで、糸目方向とは、織物であれば糸の方向を指し、経編もしくは緯編であればループの重なっている方向を指す。例えば、10cm四方に布地を切り取り、その布地を構成する糸を解く。その一本一本の糸を伸ばして糸長を測り、最も長い糸長をA、最も短い糸長をBとする。ただし、ベロア部を有する布地のベロア部については、糸目方向に沿う一列分と糸目に垂直な方向に沿う一列分とについて、一本ずつ糸長を測った後に、方向毎の総和を算出し、その総和を各方向の糸長とする。
【0033】
また、布地の本革表皮側の組織が、織物の場合は縦16本以下、横16本以下、経編の場合は縦3ループ以下、横12ループ以下、緯編の場合は縦4ループ以下、横4ループ以下で繰り返される構成となっていることが好ましい。なお、布地の縦方向、横方向とは、布地を作製する際に、布地が流れる方向を意味する。
【0034】
また、布地を構成する糸の中で、一番太い糸のデニールをC、一番細い糸のデニールをDとしたとき、以下の式を満たすことが好ましい。
【0035】
【数2】

【0036】
式中、織物の場合はX=10、経編の場合はX=3、緯編の場合はX=4である。
【0037】
これらの関係を満たしている布地を用いることによって、布地の場所によって布地の硬さやバラツキが発生することを防止でき、本革表皮材の張栄えを保つことが可能である。また、本革と布地との接着力を高く保たれ、大きな力が本革表皮材に加わっても本革表皮と布地とが剥がれにくい。
【0038】
布地として不織布を用いる場合には、不織布の単位面積あたりの質量が100g/m以上であることが好ましい。密度の高い不織布を用いることにより、十分な強度を有する本革複合体とすることができる。
【0039】
不織布は、一般に伸びやすい傾向がある。このため、不織布を布地として用いる場合には、不織布を糸で縫い、伸びを抑制することが好ましい。
【0040】
布地の材質は、特に限定されない。ポリエステル、ポリアミド、アラミド、レーヨン、天然繊維、鉱物繊維などが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0041】
本皮表皮の厚さは、特に限定されない。本皮表皮は天然素材であるため、その厚さは、ある程度、原料に依存する。布地の厚さも、本革複合体が、本革表皮より伸びにくくなるという条件が満たされるのであれば、特に限定されない。ただし、布地が厚すぎると、形成される本革複合体が硬くなってしまう虞がある。通常は、布地の厚さは、0.5〜2.3μmである。ただし、本発明の技術的範囲はこの範囲に限定されない。
【0042】
なお、必要に応じて、本革表皮および布地以外の材料が配置されてもよい。
【0043】
本発明の本革複合体は、自動車用内装部品の表皮材として用いられる。部品は、特に限定されず、シート、ドアトリム、ステアリング、シフトノブなど各種部品が挙げられる。好ましくは、シートのような撓みやすく、皺が生じやすい部材に本発明は適用される。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例によって限定されることはない。なお、各種表価値の評価方法は、以下の通りである。
【0045】
(本革表皮、布地、本革複合体の伸び)
試験片(30mm×150mm)の両端をつかみ冶具で固定しJIS K7161に準拠した装置を用いて、つかみ幅30mm、つかみ間隔100mm、つかみ冶具速度200mm/minで引張り、30Nの荷重を加えたときの伸びを、試験片の伸びとして評価した。本革表皮および本革複合体は、本革の背から腹への方向が150mmとなるように試験片を切り取った。布地は、布地を作製する際の巻取り方向が150mmとなるように試験片を切り取った。
【0046】
(透湿係数の測定方法)
透湿係数は、水蒸気透過割合を測定し算出した。図2は、透湿係数の算出に用いた装置の平面図であり、図3は、図2のIII−III線における断面図である。
【0047】
図3に示すAl製カップ30の溝に、線径Φが3mmのゴム製Oリング40をセットした。Al製カップ30の内部に30mlの純水を入れて、透湿係数が測定されるフィルムで覆い、フィルム上にSUS製フタ50を配置し、ボルト/ナット60で締結した。ボルト/ナット60でSUS製フタ50を締結するために形成されている孔の径Φは、5mmとした。SUS製フタ50は、図示する形状の通気孔55が形成されているものを用いた。通気孔の径Φは、7mmとした。
【0048】
この状態で、タバイエスペック(PVH−21)の恒温槽を用いて温度80℃、湿度5%の雰囲気下に静置し、1時間の間隔で装置の質量を秤量した。秤量装置としては、島津製作所AEX−200Gを用いた。1時間あたりの質量減少量が一定値に達したときの質量減少量から、以下の式により透湿係数(g・mm/m/day)として算出した。なお、下記式におけるフィルム面積とは、容器内部の水蒸気が透過しうる領域の総面積を意味する。
【0049】
【数3】

【0050】
(布地の剥離および外観調査)
得られたサンプルについて、摩耗試験を実施し、摩耗試験後の本革表皮と布地との剥離の有無、および本革表皮の表面の外観状態を評価した。摩耗試験および評価の詳細は、以下の通りである。
【0051】
図4は、摩耗試験装置の正面図であり、図5は、摩耗試験装置の側面図である。鉄板70上に、井内盛栄堂株式会社製(コードNo.55−586−12)の外径6mm内径4mmのシリコンチューブ80を載置し、その上に、本革表面が摩耗される側となるように試験片(50mm×120mm)90を配置した。試験片90は、両面テープ100を用いて、鉄板70に固定した。試験片90の上に、並綿帆布(No.9)110をまきつけたSUS製摩擦子(25mm×25mm×25mm)120を配置し、荷重5kg、ストローク10cm、スピード30回/min、の条件で往復1万回の摩擦を行った。摩耗試験終了後、以下に示す基準に従い、評点化した。
【0052】
○:本革表面に皺が発生しているが、塗膜の亀裂やはがれは発生していない
△:本革表面に皺が発生し、塗膜に亀裂が見られる
×:本革表面にはっきりと皺が発生し、塗膜の亀裂だけでなくはがれも発生している
(硬化率の測定方法)
本革複合体の硬化率は、剛軟度を測定し、剛軟度に基づいて硬化率を算出した。
【0053】
剛軟度の測定方法は以下の通りである。まず、試験片(25mm×200mm)をJIS L1096に示される45゜カンチレバー試験機台上のスケールに合わせて置き、試験片とほぼ同じ大きさの押さえ板を試験片上に置いた。試験片の一端が45゜の斜面に接するまで押さえ板と共に試験片をゆるやかに押し出し、試験片の一端が斜面に接したときの試験片の他端の位置スケール差をmmで測定した。
【0054】
初期(プレス圧着後)の硬化率は以下の式により計算した。
【0055】
【数4】

【0056】
a:本革を重ね合わせて安定した後の本革複合体の剛軟度
b:本革の剛軟度
湿熱収縮試験後の硬化率は以下の式にて計算した。
【0057】
【数5】

【0058】
c:湿熱収縮試験後の本革複合体の剛軟度
d:湿熱収縮試験前の本革複合体の剛軟度
(収縮率の測定方法)
本革複合体の収縮率は、以下の湿熱収縮試験により算出した。
【0059】
(1)110mm×110mmの試験片を作成し、23℃50%の標準状態に48時間以上静置した。その後、縦横約100mmにマーキングし正確に評点間距離を測定した。
【0060】
(2)試験片を100℃×22h恒温槽に静置し、次に20℃×65%RH×30min恒温恒湿槽に静置した。さらに、50℃×95%RH×1h恒温槽に静置し、20℃×65%RH×30min恒温恒湿槽に静置した。
【0061】
(3)(2)のサイクルを5回繰り返した。
【0062】
(4)試験片を100℃×22h恒温槽に静置し、次に20℃×65%RH×30min恒温恒湿槽に静置した。試験片の縦横の評点間距離を測定し、以下の式により収縮率を計算した。
【0063】
【数6】

【0064】
e:湿熱収縮試験後の本革複合体における評点間距離の縦横平均
f:湿熱収縮試験前の本革複合体における評点間距離の縦横平均
(実施例1)
30Nの負荷を加えたときの伸びが45%であるホクヨー株式会社製自動車用本革エリオIIの表皮面を下側にし、その本革の裏面上に、フィルム状のホットメルト接着剤として、透過係数が7g・mm/m/dayである東洋紡績株式会社製のポリエステルホットメルト(グレード:GM913)を重ね合わせた。さらにその上面に、布地としてトリコット1のバック側を重ね合わせた。トリコット1は、トリコット編機を用いて、フロント糸ポリエステル75dを1−0/3−4 バック糸ポリエステル75dを0−1/2−1に動かし、フロント糸の長さ÷バック糸の長さ(A/B)が1.8になるような条件に設定し、染め−熱セットにより密度をタテ64コース/inch ヨコ34ウェル/inchにしあげたものを用いた。次に、アサヒ繊維機販売株式会社製のプレス機(型式:NAP−54)を用いて、上面から加熱プレスし、常温まで冷却して、本革表皮と布地とが貼り合わされた本革複合体を得た。プレス条件は温度200℃、圧力2.0kg/cm、時間30秒とした。各材料の特性を表1に示す。
【0065】
本革複合体に摩耗試験を実施したところ、本革表皮と布地との剥離は観察されなかった。また、皺は発生したものの、本革表面塗膜の亀裂および剥れは発生しなかった。湿熱収縮試験後の試験片は、硬化率が−8%と試験前の状態より柔らかくなっていた。収縮率は4.8%であり、本革単品の収縮率15.0%(比較例1)と比べて、大幅に抑えられていた。結果を表2に示す。
【0066】
(実施例2)
布地として、トリコット編機を用いて、フロント糸ポリエステル75dを1−0/3−4 バック糸ポリエステル75dを1−0/2−3に動かし、フロント糸の長さ÷バック糸の長さ(A/B)が1.4になるような条件に設定し、生機を作製し、染め−熱セットにより密度をタテ64コース/inch ヨコ34ウェル/inchにしあげたトリコット2を用いた以外は、実施例1と同様にして本革複合体を得た。
【0067】
本革複合体に摩耗試験を実施したところ、本革表皮と布地との剥離は観察されなかった。また、皺は発生したものの、本革表面塗膜の亀裂および剥れは発生しなかった。湿熱収縮試験後の試験片は、硬化率が−10%と試験前の状態より柔らかくなっていた。収縮率は4.8%であり、本革単品の収縮率15.0%(比較例1)と比べて、大幅に抑えられていた。
【0068】
(実施例3)
布地として、トリコット編機を用いて、フロント糸ポリエステル75dを1−0/3−4 バック糸ポリエステル75dを1−0/1−2に動かし、フロント糸の長さ÷バック糸の長さ(A/B)が1.8になるような条件に設定し、染め−熱セットにより密度をタテ64コース/inch ヨコ34ウェル/inchにしあげたトリコット3を用いた以外は、実施例1と同様にして本革複合体を得た。
【0069】
本革複合体に摩耗試験を実施したところ、本革表皮と布地との剥離は観察されなかった。また、皺は発生したものの、本革表面塗膜の亀裂および剥れは発生しなかった。湿熱収縮試験後の試験片は、硬化率が−12%と試験前の状態より柔らかくなっていた。収縮率は4.8%であり、本革単品の収縮率15.0%(比較例1)と比べて、大幅に抑えられていた。
【0070】
(実施例4)
布地として、トリコット編機を用いて、フロント糸ポリエステル150dを1−0/4−5 バック糸ポリエステル75dを1−0/1−2に動かし、フロント糸の長さ÷バック糸の長さ(A/B)が2.1になるような条件に設定し、セット−起毛−染め−熱セットにより密度をタテ64コース/inch ヨコ34ウェル/inchにしあげたトリコット4を用いた以外は、実施例1と同様にして本革複合体を得た。
【0071】
本革複合体に摩耗試験を実施したところ、本革表皮と布地との剥離は観察されなかった。また、皺は発生したものの、本革表面塗膜の亀裂および剥れは発生しなかった。湿熱収縮試験後の試験片は、硬化率が−8%と試験前の状態より柔らかくなっていた。収縮率は4.8%であり、本革単品の収縮率15.0%(比較例1)と比べて、大幅に抑えられていた。
【0072】
(実施例5)
布地として、丸編機を用いて、表糸ポリエステル150d収縮糸、つなぎポリエステル150d収縮糸、裏糸ポリエステル150d収縮糸で、つなぎ糸の長さ÷裏糸の長さ(A/B)が1.2になるような条件に設定し、染め−熱セットにより密度をタテ36コース/inch ヨコ30ウェル/inchにしあげたジャージー1を用いた以外は、実施例1と同様にして本革複合体を得た。
【0073】
本革複合体に摩耗試験を実施したところ、本革表皮と布地との剥離は観察されなかった。また、皺は発生したものの、本革表面塗膜の亀裂および剥れは発生しなかった。湿熱収縮試験後の試験片は、硬化率が−5%と試験前の状態より柔らかくなっていた。収縮率は4.8%であり、本革単品の収縮率15.0%(比較例1)と比べて、大幅に抑えられていた。
【0074】
(実施例6)
布地として、織機を用いて、タテ糸ポリエステル/ナイロン150dコンジュゲート糸、ヨコ糸ポリエステル/ナイロン150dコンジュゲート糸で平組織で、タテ糸の長さ÷ヨコ糸の長さ(A/B)が1.2になるような条件に設定し、染め−熱セットにより密度をタテ101本/inch、ヨコ138本/inchにしあげた織1を用いた以外は、実施例1と同様にして本革複合体を得た。
【0075】
本革複合体に摩耗試験を実施したところ、本革表皮と布地との剥離は観察されなかった。また、皺は発生したものの、本革表面塗膜の亀裂および剥れは発生しなかった。湿熱収縮試験後の試験片は、硬化率が−6%と試験前の状態より柔らかくなっていた。収縮率は4.8%であり、本革単品の収縮率15.0%(比較例1)と比べて、大幅に抑えられていた。
【0076】
(実施例7)
30Nの負荷を加えたときの伸びが45%であるホクヨー株式会社製自動車用本革エリオIIの表皮面を下側にし、その本革の裏面上に、フィルム状のホットメルト接着剤として、透過係数が77g・mm/m/dayである日本ユニカー株式会社製のエチレン酢酸ビニルホットメルト(グレード:NUC3170)を重ね合わせた。さらにその上面に、布地として、トリコット1のバック側を重ね合わせた。トリコット1は、トリコット編機を用いて、フロント糸ポリエステル75dを1−0/3−4 バック糸ポリエステル75dを0−1/2−1に動かし、フロント糸の長さ÷バック糸の長さ(A/B)が1.8になるような条件に設定し、染め−熱セットにより密度をタテ64コース/inch ヨコ34ウェル/inchにしあげたものを用いた。次に、アサヒ繊維機販売株式会社製のプレス機(型式:NAP−54)を用いて、上面から加熱プレスし、常温まで冷却して、本革表皮と布地とが貼り合わされた本革複合体を得た。プレス条件は温度200℃、圧力2.0kg/cm、時間30秒とした。
【0077】
本革複合体に摩耗試験を実施したところ、本革表皮と布地との剥離は観察されなかった。また、皺は発生したものの、本革表面塗膜の亀裂および剥れは発生しなかった。湿熱収縮試験後の試験片は、硬化率が−3%と試験前の状態より柔らかくなっていた。収縮率は5.2%であり、本革単品の収縮率15.0%(比較例1)と比べて、大幅に抑えられていた。
【0078】
(実施例8)
フィルム状のホットメルト接着剤として、透過係数が239g・mm/m/dayである住友化学株式会社製のポリオレフィンホットメルト(グレード:HX8290)を用いた以外は、実施例7と同様にして本革複合体を得た。
【0079】
本革複合体に摩耗試験を実施したところ、本革表皮と布地との剥離は観察されなかった。また、皺は発生したものの、本革表面塗膜の亀裂および剥れは発生しなかった。湿熱収縮試験後の試験片は、硬化率が−1%と試験前の状態より柔らかくなっていた。収縮率は6.5%であり、本革単品の収縮率15.0%(比較例1)と比べて、大幅に抑えられていた。
【0080】
(実施例9)
布地として、トリコット編機に3mmポールを取り付け、フロント糸ポリエステル200dを0−1/1−2 バック糸ポリエステル75dを1−0/1−2に動かし、フロント糸の長さ÷バック糸の長さ(A/B)が8.5になるような条件に設定し、シャーリング−セット−染め−熱セットにより密度をタテ64コース/inch ヨコ30ウェル/inchにしあげたポールトリコットのフロント側を重ね合わせた以外は、実施例1と同様にして本革複合体を得た。
【0081】
本革複合体に摩耗試験を実施したところ、本革表皮と布地との剥離はわずかに観察されるものの、問題になるレベルではなかった。また、皺は発生したものの、本革表面塗膜の亀裂および剥れは発生しなかった。湿熱収縮試験後の試験片は、硬化率が−2%と試験前の状態より柔らかくなっていた。収縮率は4.9%であり、本革単品の収縮率15.0%(比較例1)と比べて、大幅に抑えられていた。
【0082】
(実施例10)
布地として、丸編機で、表糸ポリエステル300d つなぎ糸ポリエステル200d 裏糸ポリエステル150dを用いて、つなぎ糸の長さ÷裏糸の長さ(A/B)が1.3になるような条件に設定し、染め−熱セットにより密度をタテ30コース/inch ヨコ24ウェル/inchにしあげたジャージー2のバック側を重ね合わせた以外は、実施例1と同様にして本革複合体を得た。
【0083】
本革複合体に摩耗試験を実施したところ、本革表皮と布地との剥離は観察されなかった。また、皺はやや多く発生したものの、本革表面塗膜の亀裂および剥れは発生しなかった。湿熱収縮試験後の試験片は、硬化率が−2%と試験前の状態より柔らかくなっていた。収縮率は4.9%であり、本革単品の収縮率15.0%(比較例1)と比べて、大幅に抑えられていた。
【0084】
(実施例11)
布地として、丸編機で、表糸ポリエステル900d 裏糸ポリエステル150d染糸を用いて、表糸の長さ÷裏糸の長さ(A/B)が2.4になるような条件に設定し、熱セットにより密度をタテ30コース/inch ヨコ22ウェル/inchにしあげたジャージー3の裏側を重ね合わせた以外は、実施例1と同様にして本革複合体を得た。
【0085】
本革複合体に摩耗試験を実施したところ、本革表皮と布地との剥離はわずかに観察されるものの、問題になるレベルではなかった。また、皺はやや多く発生したものの、本革表面塗膜の亀裂および剥れは発生しなかった。湿熱収縮試験後の試験片は、硬化率が−6%と試験前の状態より柔らかくなっていた。収縮率は4.9%であり、本革単品の収縮率15.0%(比較例1)と比べて、大幅に抑えられていた。
【0086】
(実施例12)
布地として、織機を用いて、タテ糸ポリエステル250d染糸、ヨコ糸ポリエステル3000dおよび1000d染糸で、タテ糸の長さ÷ヨコ糸の長さ(A/B)が1.3になるような条件に設定し、熱セットにより密度をタテ64本/inch ヨコ90本/inchにしあげた織2のフロント側を重ね合わせた以外は、実施例1と同様にして本革複合体を得た。
【0087】
本革複合体に摩耗試験を実施したところ、本革表皮と布地との剥離はわずかに観察されるものの、問題になるレベルではなかった。また、皺は発生したものの、本革表面塗膜の亀裂および剥れは発生しなかった。湿熱収縮試験後の試験片は、硬化率が−3%と試験前の状態より柔らかくなっていた。収縮率は4.9%であり、本革単品の収縮率15.0%(比較例1)と比べて、大幅に抑えられていた。
【0088】
(実施例13)
布地として、ダブルラッセル編機を用いて、フロント糸ポリエステル150d つなぎ糸ポリエステル30d バック糸ポリエステル100dで、つなぎ糸の長さ÷バック糸の長さ(A/B)が8.3になるような条件に設定し、熱セット−染め−熱セットにより密度をタテ38コース/inch ヨコ24ウェル/inchにしあげたダブルラッセル(スペースファブリック)のバック側を重ね合わせた以外は、実施例1と同様にして本革複合体を得た。
【0089】
本革複合体に摩耗試験を実施したところ、本革表皮と布地との剥離はわずかに観察されるものの、問題になるレベルではなかった。また、皺は発生したものの、本革表面塗膜の亀裂および剥れは発生しなかった。湿熱収縮試験後の試験片は、硬化率が−1%と試験前の状態より柔らかくなっていた。収縮率は4.9%であり、本革単品の収縮率15.0%(比較例1)と比べて、大幅に抑えられていた。
【0090】
(実施例14)
布地として、トリコット編機で、フロント糸ポリエステル150dを1−0/4−5 ミドル糸ポリエステル75dを0−1/1−0 バック糸ポリエステル75dを0−0/10−10に動かし、バック糸の長さ÷ミドル糸の長さ(A/B)が3.8になるような条件に設定し、熱セット−染め−熱セットにより密度をタテ65コース/inch ヨコ32ウェル/inchにしあげたトリコット5のフロント側を用いた以外は、実施例1と同様にして本革複合体を得た。
【0091】
本革複合体に摩耗試験を実施したところ、本革表皮と布地との剥離はわずかに観察されるものの、問題になるレベルではなかった。また、皺は発生したものの、本革表面塗膜の亀裂および剥れは発生しなかった。湿熱収縮試験後の試験片は、硬化率が−1%と試験前の状態より柔らかくなっていた。収縮率は4.8%であり、本革単品の収縮率15.0%(比較例1)と比べて、大幅に抑えられていた。
【0092】
(比較例1)
実施例1〜14において本革表皮として用いたホクヨー株式会社製自動車用本革エリオIIを、そのまま表皮材として使用して評価した。本革複合体に摩耗試験を実施したところ、はっきりとした皺の発生がみられ、塗膜の亀裂および剥れも生じていた。湿熱収縮試験後の試験片は、硬化率が11%と大幅な硬化が見られた。収縮率は15.0%であり、大幅に収縮し、風合いが悪化していた。
【0093】
【表1】

【0094】
【表2】

【0095】
以上のように、本発明の本革複合体は、引張りやせん断等の力が加わる部位に使用された場合であっても、皺が発生しづらく、ひいては本革表面の塗膜割れや塗膜剥れが抑制される。
【0096】
(ホットメルト接着剤の透湿係数の影響)
ホットメルト接着剤の透湿係数の影響を、ホットメルト接着剤の種類を変化させて調査した。
【0097】
サンプルAとして、透湿係数が7g・mm/m/dayであるホットメルト接着剤を用いた、実施例1の本革複合体を準備した。
【0098】
サンプルBとして、透湿係数が77g・mm/m/dayであるホットメルト接着剤を用いた、実施例7の本革複合体を準備した。
【0099】
サンプルCとして、透湿係数が239g・mm/m/dayであるホットメルト接着剤を用いた、実施例8の本革複合体を準備した。
【0100】
透過係数が655g・mm/m/dayである日東紡績株式会社製のフィルムタイプポリウレタンホットメルト(グレード:6730A)をホットメルト接着剤として用いた以外は、実施例1と同様にして本革複合体を得た。この本革複合体をサンプルDとして準備した。
【0101】
透過係数が7108g・mm/m/dayである日東紡績株式会社製のネットタイプポリウレタンホットメルト(グレード:6730A)をホットメルト接着剤として用いた以外は、実施例1と同様にして本革複合体を得た。この本革複合体をサンプルEとして準備した。
【0102】
サンプルA〜Eについて、磨耗試験後の布地の剥離及び外観、ならびに湿熱収縮試験後の硬化率および収縮率を調査した。結果を表3に示す。
【0103】
【表3】

【0104】
表3に示すように、本革と布地とを、透湿係数が小さいフィルム状のホットメルト接着剤を使って貼り合せることにより、吸湿に対する耐久性が増し、本革複合体の硬化や収縮が抑制される。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明の本革複合体は、各種製品に適用されうる。特に、長期間に亘る耐久性が要求され、伸びに対する耐性が要求される、自動車のシートに適用されることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の自動車用本革複合体の断面図である。
【図2】透湿係数を算出する装置の平面図である。
【図3】図2の装置のIII−III面での断面図である。
【図4】摩耗試験装置の正面図である。
【図5】摩耗試験装置の側面図である。
【符号の説明】
【0107】
10…本革表皮、15…接着層、20…布地、30…Al容器、40…Oリング、50…SUSふた、55…通気孔、60…ボルト/ナット、70…鉄板、80…シリコンチューブ、90…試験片、100…両面テープ、110…並綿帆布、120…SUS製摩擦子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本革表皮と、前記本革表皮の裏面に貼り合わされた布地とからなる自動車用本革複合体であって、
前記本革複合体は、前記本革表皮より伸びにくいことを特徴とする、自動車用本革複合体。
【請求項2】
縦30mm×横150mmのサイズの本革複合体に、つかみ幅50mmで横方向に30Nの荷重を加えたときの前記本革複合体の伸びが30%未満である、請求項1に記載の自動車用本革複合体。
【請求項3】
前記布地が前記本革表皮より伸びにくい、請求項1または2に記載の自動車用本革複合体。
【請求項4】
前記布地は、織物、経編、緯編、不織布、およびこれらから派生する組織からなる群より選択される1種以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動車用本革複合体。
【請求項5】
前記布地は、織物、経編または緯編であり、前記布地を構成する糸を解いた際の最も長い糸長をA、最も短い糸長をBとしたとき、以下の式を満たす、請求項4に記載の自動車用本革複合体。
【数1】

(式中、織物の場合はM=2、経編の場合はM=6、緯編の場合はM=3である)
【請求項6】
前記布地の前記本革表皮側の組織が、織物の場合は縦16本以下、横16本以下、経編の場合は縦3ループ以下、横12ループ以下、緯編の場合は縦4ループ以下、横4ループ以下で繰り返される構成となっている、請求項5に記載の自動車用本革複合体。
【請求項7】
前記布地を構成する糸の中で、一番太い糸のデニールをC、一番細い糸のデニールをDとしたとき、以下の式を満たす、請求項5に記載の自動車用本革複合体。
【数2】

(式中、織物の場合はX=10、経編の場合はX=3、緯編の場合はX=4である)
【請求項8】
前記布地は、単位面積あたりの質量が100g/m以上の不織布である、請求項4に記載の自動車用本革複合体。
【請求項9】
前記布地は、接着剤または粘着テープで前記本革表皮と貼り合わされてなる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の自動車用本革複合体。
【請求項10】
前記接着剤は、フィルム状のホットメルト接着剤である、請求項9に記載の自動車用本革複合体。
【請求項11】
前記フィルム状のホットメルト接着剤は、80℃における透湿係数が500g・mm/m/day以下である、請求項10に記載の自動車用本革複合体。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の本革複合体を表皮材として用いた自動車用内装部品。
【請求項13】
自動車用シートである請求項12に記載の自動車用内装部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−298335(P2006−298335A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−127212(P2005−127212)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(591189535)ホクヨー株式会社 (37)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】