説明

耐候性・耐汚染性エマルション塗料の製造方法とその塗膜

【課題】無機ケイ酸塩−酸化チタン複合材料からなる複合粒子と樹脂成分とを含む耐候性・耐汚染性エマルション塗料とその塗膜を提供する。
【解決手段】無機ケイ酸塩がコーティングされた無機ケイ酸塩−酸化チタン複合粒子と樹脂成分とを含む耐候性・耐汚染性エマルション塗料を製造する方法であって、ケイ素化合物水溶液と、アルミニウム化合物あるいは遷移金属化合物水溶液を混合し、前駆体懸濁液を調製し、上記工程で副生成した塩を除去し、上記前駆体懸濁液に基材を入れ、水熱反応を行うことにより、表面に無機ケイ酸塩を被覆した酸化チタン複合体を合成し、これを、塗料に配合する、エマルション塗料の製造方法、該エマルション塗料及びその塗膜。
【効果】上記エマルション塗料は、既存の光触媒配合塗料では成し得なかった有機物分解能力と、塗膜の耐候性・耐汚染能力の両方にバランスの取れた優れた機能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機ケイ酸塩−酸化チタン複合材料からなる複合粒子と樹脂成分とを含む耐候性・耐汚染性エマルション塗料に関するものであり、更に詳しくは、水熱反応を利用して合成した、酸化チタンからなる表面を持つ基材の表面に、化学組成や細孔構造の制御された無機ケイ酸塩をコーティングした無機ケイ酸塩−酸化チタン複合材料からなる複合粒子と樹脂成分とを含む耐候性・耐汚染性エマルション塗料を製造する方法と、これにより得られるエマルション塗料及びその塗膜に関するものである。
【0002】
本発明は、酸化チタンを基材として利用した光触媒の技術分野において、水熱反応を用いて、酸化チタンの表面に、無機ケイ酸塩膜がコーティングされた酸化チタン複合材料からなる複合粒子と樹脂成分とを含む耐候性・耐汚染性エマルション塗料(以下、耐候性・耐汚染性エマルション塗料と記載することがある。)を合成する新規合成方法及びその製品を提供するものである。
【0003】
本発明の方法によって合成された耐候性・耐汚染性エマルション塗料は、紫外線や降雨等の外的要因に対する耐候性、使用環境下における耐汚染性、耐腐食性、吸着有機物分解能に優れ、例えば、その吸着能と分解能を利用した、シックハウス症候群の源となる有害汚染物質吸着剤、脱臭剤、居室内や車内等の生活環境における悪臭の除去や空気中の有害物質又は汚れの分解除去、廃水処理や浄水処理、あるいは水の殺菌や殺藻等を行うための環境浄化材料として使用可能である。
【0004】
本発明は、化学組成や細孔構造の制御されたケイ酸塩でコーティングされた酸化チタン光触媒複合粒子の生産性を著しく高めるとともに、該光触媒複合粒子を塗料に配合した耐候性・耐汚染性を発揮する新規エマルション塗料及びその塗膜を提供するものである。
【背景技術】
【0005】
塗料は、様々な材料や製品、部品の表面に、通常は、数ミクロンから数百ミクロン程度の膜厚で塗られて、それらの保護(長寿命化)のほか、それぞれの用途に応じて、それらの表面に、色合いや風合い、艶や光輝感を持たせるようにすることで、その機能を発揮している。塗膜の主な機能は、美観と被塗物の保護である。わずか数十ミクロンの薄い塗膜で美観を保ち、過酷な環境から被塗物を長期にわたって保護する耐候性は、最も重要な機能の一つである。
【0006】
塗膜は、常に何らかの形で外界と接触した状態に晒されており、光(主に紫外線)や水(降雨・結露等)、酸素、熱、薬品等による攻撃(化学・物理的)を受ける状態に置かれている。塗膜の性能は、これらの外的な環境因子のさまざまな攻撃や刺激に対して、どれだけ耐えることができるかで決定されることになる。
【0007】
このため、「耐候性」を評価するための試験は、自動車、土木用機械類、橋梁や備蓄タンク等の大型鋼構造物、ビルや体育館等の大型公共建築物等、屋外で使用される、あらゆる機械や構造物の総合的性能を評価する上で、最も重要な試験のひとつである。
【0008】
1960年代以降の石油合成化学の発展に伴い、樹脂合成や高分子化学の研究が進むに連れて、より耐候性・耐久性の優れた素材が開発されるようになったことや、技術開発競争の激化等から、従来の塗膜性能よりも、更なる機能性を有する塗膜が求められるようになってきている。
【0009】
一方、近年、酸化チタン光触媒により、有機物を分解、除去する方法が種々研究されている。酸化チタン光電極による水の光分解は、発見者の名前に因んで、本多・藤嶋効果と呼ばれている。この光触媒反応は、太陽エネルギーを利用する低環境負荷型化学プロセスとしての利用が期待されている。酸化チタンに光を照射すると、強い還元作用を持つ電子と強い酸化作用を持つ正孔とが生成し、接触してくる分子種を酸化還元作用により分解する。
【0010】
酸化チタンのこのような作用、すなわち光触媒作用を利用することによって、例えば、水中に溶解している有機溶剤、農薬や界面活性剤等の環境汚染物質、空気中の有害物質や悪臭等を分解除去することができる。
【0011】
この方法は、酸化チタンと光を利用するだけで、繰り返し利用することができ、反応生成物は、無害な炭酸ガス等であり、微生物を用いる生物処理等の方法に比べて、温度、pH、ガス雰囲気、毒性等の反応条件の制約が少ない。
【0012】
しかも、この方法は、生物処理法では処理しにくい有機ハロゲン化合物や有機リン化合物のようなものでも容易に分解・除去できるという長所を持っている。この方法は、既に、滅菌、防汚、消臭等の分野で実用化されており、更に、燃焼排ガス中の窒素酸化物の除去、住宅内の揮発性有害有機化合物の分解、廃水浄化等の環境浄化への応用が検討されている。
【0013】
しかし、これまで行われてきた酸化チタン光触媒による有機物の分解、除去の研究では、一般に、光触媒として、酸化チタンの粉末がそのまま用いられており、使用後の光触媒の回収が困難であることや、取扱いや使用が難しいこと等の問題があり、なかなか汎用性のある実用化技術を開発することができなかった。
【0014】
そこで、例えば、酸化チタン光触媒を、取扱いの容易な繊維や、プラスチックス等の媒体に練り込んで使用すること等が試みられた。しかし、その強力な光触媒作用によって、有害有機物や、環境汚染物質だけでなく、繊維や、プラスチック自身も分解され、それらが極めて劣化しやすいため、酸化チタン光触媒は、繊維や、プラスチックスに練り込んだ形での使用は、不可能であった。
【0015】
また、酸化チタン光触媒を、抗菌、抗かび材料として用いる場合、流水下等では、菌が光触媒に付着しにくいため、効果が発揮しにくく、効率が悪いという問題があった。現在では、光触媒である酸化チタンを含んだ塗料を、例えば、壁材等の基材に塗装して、光触媒機能を発揮させる試みがなされている。該塗料により形成される塗膜は、表面に付着した汚れ(有機物)を光触媒で分解できる上に、親水性を有する光触媒が塗膜表面に露出しているので、汚れが付着しにくいという特性を発揮する。従って、光触媒を含有する塗膜は、自ら汚れを除去するセルフクリーニング機能を有している。
【0016】
しかし、塗料成分として、樹脂成分を含む有機系塗料を用いた場合には、樹脂成分が酸化チタンと接触するために、その光触媒作用により、樹脂が分解され、塗膜の劣化が起こるという問題があった。そこで、最近では、アパタイト等のリン酸カルシウムを酸化チタンに被覆した光触媒複合粒子を含有した塗料が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0017】
これらの塗料では、いずれも、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム等を溶解させた擬似体液に、酸化チタンを分散させた分散液に、塩化カルシウムを添加して、光触媒複合粒子を製造している。
【0018】
この種の光触媒複合粒子では、アパタイトは、酸化チタンの表面を完全に被覆しているのではなく、酸化チタン表面に分散して析出している。すなわち、該光触媒複合粒子は、酸化チタンの表面が部分的に露出しているため、光触媒機能は、ほとんど失われることはない。また、該光触媒複合粒子では、酸化チタンの表面をアパタイトが被覆しているので、アパタイトがスペーサーとなり、酸化チタンは、直接樹脂成分とは接しないため、樹脂成分の分解が抑制され、有機系塗料の使用が可能になる。
【0019】
また、アパタイトは、タンパク質やアルデヒド類等の物質吸着能に優れているため、上記光触媒複合粒子は、光がなくても物質を吸着できる上、これらの消光時に吸着しておいた物質を、光が照射された時に、光触媒作用により分解することができる。
【0020】
しかしながら、上記特許文献1〜3等の先行技術に記載の塗料に含まれる光触媒複合粒子の製造に使用する擬似体液は、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、塩化物イオン等のイオン種を大過剰に含むため、光触媒複合粒子が分散した分散液をそのまま塗料に用いると、こうした共存イオン種の影響により、樹脂成分が凝集し、分散不良を生じることがあった。樹脂成分の凝集を防ぐためには、分散液を何度もデカンテーションしなければならず、生産工程が増えるので、生産性が悪くなる。
【0021】
また、上記疑似体液を用いる手法では、アパタイト結晶の成長が非常に遅く、工業的製品の製造技術としては生産性が低いために、実用化が難しく、また、この方法で製造された光触媒複合粒子を含む塗料により形成された塗膜は、樹脂成分が凝集し、均質性が低下することがある。そのため、この種の塗料は、有機物光分解機能、耐候性ともに満足できるものではなく、当技術分野では、それらの問題を解消できる新しい塗料や塗膜を開発することが強く要請されていた。
【0022】
また、他の先行技術として、光触媒と他の無機系化合物等を組み合わせることが種々行われており、例えば、光触媒活性を有する無機化合物を含有する共重合体エマルションを製造する方法(特許文献4)、酸化チタンを担持した調湿性無機粉末(珪質頁岩等)を含有する水性エマルション塗料で塗装して得られる建材(特許文献5)、が提案されている。
【0023】
更に、酸化チタン含有コロイダルシリカ共重合アクリル樹脂エマルション塗料(特許文献6)、四価金属のリン酸塩、二価金属の水酸化物、及び光触媒化合物を必須成分とする水性エマルション塗料(特許文献7)、表面の一部がリン酸カルシウムで被覆された酸化チタン粒子を含むビニル系合成樹脂エマルション塗料(特許文献8)、等が提案されている。
【0024】
しかし、従来、水熱反応を利用して、無機ケイ酸塩でコーティングされた酸化チタン複合材料からなる複合粒子を含有した耐候性・耐汚染性エマルション塗料と該エマルション塗料により形成される塗膜を合成することは、行われておらず、また、例えば、水熱反応を用いて、ケイ酸塩高分子重合体であるアロフェン又はイモゴライトを担持させた酸化チタン複合粒子と樹脂成分とを含む耐候性・耐汚染性エマルション塗料と該エマルション塗料により形成される塗膜を合成することも全く知られていない。
【0025】
光触媒作用により、環境中の有害物質を効率良く分解除去するためには、汚染物質の触媒表面近傍での反応と、高い比表面積を有することが望ましい。例えば、Degussa製二酸化チタン(P25)は、一次粒子の平均粒子径が、30nm程度であるにも関わらず、比表面積は、50m/g程度であり、汚染物質の完全無害化には、長時間を必要とする。
【0026】
環境を汚染する嵩高い有機物分子の吸着担持には、高比表面積、かつメソ細孔を有する固体の使用が有効であり、また、大気系における極性分子の捕捉には、固体マトリックスの電荷分布も制御できることが望ましい。例えば、火山噴出物の風化鉱物として、地球表層中に産出するケイ酸塩群は、その特異な形状に起因する微細構造により、高比表面積や高細孔容積及び選択的イオン交換能を有することが明らかとなっている。
【0027】
【特許文献1】特開2000−1631号公報
【特許文献2】特開2003−80078号公報
【特許文献3】特開2004−58050号公報
【特許文献4】特開2002−338897号公報
【特許文献5】特開2002−235382号公報
【特許文献6】特開2002−348525公報
【特許文献7】特開2003−20438号公報
【特許文献8】特開2008−88436号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、光触媒作用による、悪臭の除去や、空気中の有害物質又は汚れの分解除去、廃水処理や浄水処理、抗菌や抗かび等、環境の浄化を効果的、かつ経済的で安全に行うことができる、耐候性・耐汚染性に優れたエマルション塗料の製造方法を開発することを目標として鋭意研究を重ねた。
【0029】
その結果、本発明者らは、光触媒として不活性で、雑菌等を吸着する性質を持ち、環境親和材料として有用であり、かつ多孔質であり、化学組成や細孔構造の制御された合成ケイ酸塩高分子重合体を、酸化チタンの周りに被覆することにより作製した多孔質無機ケイ酸塩酸化チタン複合材料が、その酸化チタンが持つ光触媒機能を損なうことなく、樹脂成分に添加して、耐候性・耐汚染性エマルション塗料として応用可能であるとの新規知見を見出し、更に研究を重ねて、本発明を完成するに至った。
【0030】
本発明は、酸化チタンからなる表面、すなわち酸化チタン表面を持つ基材の表面に、化学組成や細孔構造の制御された多孔質無機ケイ酸塩をコーティングした新規酸化チタン複合材料からなる複合粒子を含有した耐候性・耐汚染性エマルション塗料と該エマルション塗料により形成される塗膜を提供することを目的とするものである。
【0031】
本発明は、酸化チタンからなる表面(酸化チタン表面)を持つ基材の表面に、化学組成や細孔構造の制御された多孔質無機ケイ酸塩をコーティングした新規酸化チタン複合材料からなる複合粒子を含有した耐候性・耐汚染性エマルション塗料と該エマルション塗料により形成される塗膜を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0032】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)酸化チタン表面を持つ基材の表面に、無機ケイ酸塩がコーティングされた無機ケイ酸塩−酸化チタン複合材料からなる複合粒子と樹脂成分とを含む耐候性・耐汚染性エマルション塗料を製造する方法であって、
1)ケイ素化合物水溶液と、アルミニウム化合物、あるいは遷移金属化合物水溶液を混合し、前駆体懸濁液を調製し、2)上記工程で副生成した塩を除去し、3)上記前駆体懸濁液に、基材を入れ、水熱反応を行い、4)上記1)〜3)により、基材表面に、無機ケイ酸塩を被覆した酸化チタン複合粒子を合成し、これを樹脂成分と混合することで耐候性・耐汚染性エマルション塗料を合成する、ことを特徴とする無機ケイ酸塩−酸化チタン複合材料からなる複合粒子と樹脂成分とを含む耐候性・耐汚染性エマルション塗料の製造方法。
(2)基材が、酸化チタン粒子である、前記(1)に記載の耐候性・耐汚染性エマルション塗料の製造方法。
(3)無機ケイ酸塩が、アロフェン、又はイモゴライトの非晶質体ないし準結晶質体からなるケイ酸塩である、前記(1)に記載の耐候性・耐汚染性エマルション塗料の製造方法。
(4)酸化チタンの結晶形が、アナターゼである酸化チタンの表面に、無機ケイ酸塩−酸化チタン複合材料からなる複合粒子を合成する、前記(1)に記載の耐候性・耐汚染性エマルション塗料の製造方法。
(5)溶液濃度が、それぞれ1mmol/l〜10000mol/lのケイ素化合物溶液と、1mmol/l〜10000mol/lのアルミニウム化合物、あるいは遷移金属化合物溶液を混合することにより得られる、無機ケイ酸塩−酸化チタン複合材料からなる複合粒子を含有する、前記(1)に記載の耐候性・耐汚染性エマルション塗料の製造方法。
(6)ケイ素のアルミニウム、あるいは遷移金属化合物に対するモル比率が、0.1〜5.0であり、無機ケイ酸塩−酸化チタン複合材料からなる複合粒子を含有する、前記(1)に記載の耐候性・耐汚染性エマルション塗料の製造方法。
(7)ケイ素化合物水溶液と、アルミニウム化合物、あるいは遷移金属化合物水溶液を、分速1ml〜10000lで同時混合、あるいは両溶液を急速混合して、前駆体懸濁液を調製することにより得られる、無機ケイ酸塩−酸化チタン複合材料からなる複合粒子を含有する、前記(1)に記載の耐候性・耐汚染性エマルション塗料の製造方法。
(8)前駆体懸濁液の液性を、pH3からpH8に調整することにより得られる、無機ケイ酸塩−酸化チタン複合材料からなる複合粒子を含有する、前記(6)に記載の耐候性・耐汚染性エマルション塗料の製造方法。
(9)凝集阻止剤として、ポリエチレングリコール、ポリビニールアルコール又は界面活性剤の水溶性、あるいは非水溶性の試剤を添加することにより得られる、無機ケイ酸塩−酸化チタン複合材料からなる複合粒子を含有する、前記(6)に記載の耐候性・耐汚染性エマルション塗料の製造方法。
(10)調製した前駆体懸濁液を、0.1〜72時間振盪した後、反応副生成物である塩を除去することにより得られる、無機ケイ酸塩−酸化チタン複合材料からなる複合粒子を含有する、前記(1)に記載の耐候性・耐汚染性エマルション塗料の製造方法。
(11)前駆体懸濁液に、酸性溶液を添加して、pH3から6の弱酸性に調整し、生成されるケイ酸塩の形態を制御することにより得られる、無機ケイ酸塩−酸化チタン複合材料からなる複合粒子を含有する、前記(1)に記載の耐候性・耐汚染性エマルション塗料の製造方法。
(12)反応温度20〜150℃、反応時間12〜240時間の条件で、懸濁液の水分が蒸発しない方法で、水熱反応を行うことにより得られる、無機ケイ酸塩−酸化チタン複合材料からなる複合粒子を含有する、前記(1)に記載の耐候性・耐汚染性エマルション塗料の製造方法。
(13)反応終了後の懸濁液に、アルカリ性水溶液を添加して、溶液の液性を、pH8〜12に調整し、生成物を、ゲル状物質として凝集させて回収することにより得られる、無機ケイ酸塩−酸化チタン複合材料からなる複合粒子を含有する、前記(1)に記載の耐候性・耐汚染性エマルション塗料の製造方法。
(14)窒素吸着による比表面積が、少なくとも10m/gである無機ケイ酸塩−酸化チタン複合材料からなる複合粒子を含有する、前記(1)に記載の耐候性・耐汚染性エマルション塗料の製造方法。
(15)酸化チタン表面を持つ基材の表面に、無機ケイ酸塩を水熱合成反応で被覆した無機ケイ酸塩−酸化チタン複合材料からなる複合粒子であって、
上記複合材料は、表面が、光触媒として不活性なケイ酸塩膜によって被覆されており、該ケイ酸塩膜が、表面に細孔を有し、この細孔の底には、光触媒として活性な酸化チタンが露出した状態となっている多孔質構造を有し、窒素吸着による比表面積が、少なくとも10m/gであることを特徴とする無機ケイ酸塩−酸化チタン複合粒子を含有する、耐候性・耐汚染性エマルション塗料。
(16)無機ケイ酸塩が、アロフェン、又はイモゴライトの非晶質体ないし準結晶質体からなるケイ酸塩である、前記(15)に記載の無機ケイ酸塩−酸化チタン複合粒子を含有する、耐候性・耐汚染性エマルション塗料。
(17)前記(15)〜(16)のいずれか1項に記載のエマルション塗料から形成される塗膜であって、該塗膜の膜厚が1〜20μmであることを特徴とする塗膜。
【0033】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、酸化チタン表面を持つ基材の表面に、無機ケイ酸塩がコーティングされた無機ケイ酸塩−酸化チタン複合材料からなる複合粒子を含有した耐候性・耐汚染性エマルション塗料と該エマルション塗料により形成される塗膜を製造する方法であって、ケイ素化合物水溶液と、アルミニウム化合物、あるいは遷移金属化合物水溶液を混合し、前駆体懸濁液を調製し、上記工程で副生成した塩を除去し、上記前駆体懸濁液に、基材を入れ、水熱反応を行うことにより、基材表面に、無機ケイ酸塩を被覆した酸化チタン複合粒子を合成し、得られた該光触媒複合粒子を光触媒成分として塗料に配合することを特徴とするものである。
【0034】
また、本発明は、上記エマルション塗料であって、該光触媒複合粒子が、酸化チタン表面を持つ基材の表面に、無機ケイ酸塩を水熱合成反応で被覆した無機ケイ酸塩−酸化チタン複合材料からなる複合粒子であって、上記複合粒子は、表面が、光触媒として不活性なケイ酸塩膜によって被覆されており、該ケイ酸塩膜が、表面に細孔を有し、この細孔の底には、光触媒として活性な酸化チタンが露出した状態となっている多孔質構造を有し、窒素吸着による比表面積が、少なくとも10m/gであることを特徴とするものである。更に、本発明は、上記エマルション塗料から形成される塗膜であって、該塗膜の厚さが1〜20μmであることを特徴とするものである。
【0035】
本発明の無機ケイ酸塩−酸化チタン複合材料からなる複合粒子と樹脂成分とを含む耐候性・耐汚染性エマルション塗料に含有される複合粒子は、酸化チタンをコーティングするための出発原料として、ケイ素化合物と、アルミニウム化合物、あるいは遷移金属化合物が用いられる。ケイ素源として使用される試剤は、モノケイ酸であれば良く、具体的には、例えば、オルトケイ酸ナトリウム、オルトケイ酸アルキル、メタケイ酸ナトリウム、無定形コロイド状二酸化ケイ素(エアロジル等)、等が好適なものとして挙げられる。
【0036】
これらのケイ酸化合物は、1種又は2種以上を併用して使用することができる。上記ケイ酸塩分子集合体と結合させるアルミニウム源としては、アルミニウムイオンであれば良く、具体的には、例えば、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、アルミニウムイソプロポキシド等のアルミニウムアルキル化合物、等のアルミニウム化合物が好適なものとして挙げられる。
【0037】
また、遷移金属化合物源としては、それらのイオンであれば良く、例えば、バナジウム、鉄、タングステン、チタン、コバルト、ニッケル、銅、ジルコニウム等の遷移金属化合物、例えば、それらの塩化物、硫化物、水酸化物、硝酸塩、ならびに有機金属塩等が好適なものとして挙げられる。
【0038】
これらのアルミニウム化合物、あるいは遷移金属化合物は、1種又は2種以上を併用して使用することができる。これらのケイ素源と、アルミニウム源、あるいは遷移金属源は、上記の化合物に制限されるものではなく、それらと同効のものであれば、同様に使用することができる。
【0039】
本発明では、酸化チタン、あるいは少なくとも、酸化チタンからなる表面(酸化チタン表面)を持つ基材(担持)が用いられる。この基材としては、好適には、例えば、酸化チタン粒子が例示されるが、これに制限されるものではなく、少なくとも、表面に酸化チタンを有する基材であれば、同様に使用することができる。本発明に用いられる担体としての酸化チタン粒子は、光触媒として高性能である点で、酸化チタンの結晶形が、アナターゼであることが好ましい。
【0040】
酸化チタンが、ルチルやブルッカイト、非晶質のものは、光触媒としての活性が低いため、あまり好ましくないが、これらを使用することも可能である。また、酸化チタン粒子の粒径は、どのような大きさでも良いが、有機繊維やプラスチック等に練り込むことを前提とする場合は、サブミクロンの小さなものが好ましい。
【0041】
酸化チタン粒子をコーティングするための、これらの出発原料を、水に溶解して、1mmol/l〜10000mol/l濃度のケイ素化合物水溶液と、1mmol/l〜10000mol/l濃度のアルミニウム化合物、あるいはバナジウム、鉄、タングステン、チタン、コバルト、ニッケル、銅、ジルコニウム等の遷移金属化合物等の1種類以上の水溶液を調製する。
【0042】
これらの溶液を、分速1ml〜10000lで同時混合、あるいは両溶液を急速混合して、前駆体懸濁液を調製する。この時のケイ素/アルミニウム、あるいは遷移金属化合物のモル比率は、0.1〜5.0程度が望ましく、化学組成を制御することで、細孔構造が制御される。モル比が0.1を下回ると、副生成物として、ベーマイトやギブサイトを生成し、また、5.0を上回ると、非晶質シリカが副生成物として、多量に生成する。
【0043】
また、前駆体懸濁の液性は、弱酸性から中性付近(pH3からpH8)程度が好ましく、好適にはpH6から8付近である。組成を制御する目的で、前駆体懸濁液のpHが大幅に上記領域よりずれる場合、液性を調製するために、酸成分として、塩酸、硝酸、ならびに硫酸を、予め遷移金属化合物溶液に計算して添加しておくか、又はアルカリ成分として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ成分を、予めケイ素化合物溶液に計算して添加しておくことも有効である。
【0044】
この時、凝集阻止剤として、ポリエチレングリコールやポリビニールアルコール、界面活性剤等の水溶性、あるいは非水溶性の試剤を添加しても良い。このように、アルミニウム/遷移金属溶液に、ケイ素化合物溶液を混合した後に、pHが弱酸性領域であれば、アルカリ性溶液を、0.1から5ml/分の速度で滴下して、pHが中性付近になるように調整して、前駆体を生成させる。
【0045】
この時、前駆体の生成過程に滴下するアルカリ性溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア水等が挙げられる。勿論、混合段階で溶液の液性が、中性付近のpH6.5から8の領域でも、前駆体は生成される。
【0046】
得られた前駆体懸濁液は、室温で、0.1〜72時間程度振盪した後、反応副生成物である塩を除去する。その除去方法は、特に制限されないが、好適には、例えば、限外濾過、遠心分離機による分離等で行うことができる。脱塩後、除去した量と同量の純水を添加し、良く分散させる。
【0047】
生成されるケイ酸塩の形態を制御するために、この時、必要であれば、その前駆体懸濁液に、酸性溶液を添加して、pHが3から6の弱酸性溶液、好適にはpH3.5から4.5付近になるような、弱酸性に調整する。この時、使用する酸性溶液としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、過塩素酸等が挙げられる。
【0048】
本発明の複合粒子の製造方法は、表面が酸化チタンで覆われている基材を、上記ケイ酸塩前駆体用いて、水熱反応を利用することにより、その表面に、化学組成や細孔構造の制御された多孔質のケイ酸塩を生成させることを特徴とするものである。
【0049】
所定濃度の出発溶液より調製した前駆体懸濁液に、酸化チタン粒子を浸積させ、所定の温度で加熱して反応させる。反応温度範囲は、20〜150℃であり、反応時間は、12〜240時間程度である。この時、懸濁液の水分が蒸発しないような方法で、加熱熟成を行えば良く、例えば、反応装置として、オートクレーブをはじめとする密閉容器や、冷却管付きマントルヒーター等を用いることができる。反応条件は、好適には、100℃前後で、48時間程度の条件が望ましい。
【0050】
反応終了後、得られた生成物は、そのまま、あるいは数回純水で洗浄、乾燥を行うことにより、ケイ酸塩でコーティングされた酸化チタン複合粒子が合成される。得られた生成物は、無機化合物であるため、耐熱性が高く、比較的過酷な条件下で乾燥させることができるが、乾燥条件としては、常圧下、温度40〜100℃が好適である。
【0051】
この場合は、反応終了後の懸濁液に、アルカリ性水溶液を添加することで、溶液の液性をpH8〜12程度に調整し、生成物をゲル状物質として凝集させて回収しても良い。この時用いられるアルカリ性水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア水等が挙げられる。更に、その後、アルカリ溶液で凝集したゲル状生成物を、遠心分離器や、半透膜を用いて、回収することもできる。
【0052】
凝集阻止剤を添加している場合は、乾燥終了後、200℃以下の温度でメタノール、エタノール、アセトン、トルエン、キシレン、ベンゼン等の有機溶媒で、1時間以上抽出除去するか、あるいは空気中300〜600℃、保持時間1〜8時間の加熱処理を行うことにより、ケイ酸塩でコーティングされた酸化チタン複合材料が得られる。
【0053】
本発明では、無機ケイ酸塩として、好適には、アロフェン、イモゴライト及びそれらの類似物の非晶質体、ないし準結晶質体が挙げられる。それにより、球状もしくはチューブ状のアロフェン、又はイモゴライトをコーティングした酸化チタン複合粒子を合成し、提供することができる。
【0054】
上記方法により、比表面積が、10m/g以上であり、また、反応条件や、コートするケイ素化合物と他の金属元素化合物の比率を制御することにより、コーティング膜の物性を変化させた、ケイ酸塩でコーティングされた酸化チタン複合粒子を合成することができる。
【0055】
無機ケイ酸塩として、アロフェンを担持させる方法及び条件の一例を示すと、例えば、100mmol/lのオルトケイ酸ナトリウム溶液と、100mmol/lの塩化アルミニウム水溶液を調製する。それぞれを、Si/Al比が0.75となるように秤量し、塩化アルミニウム溶液に、オルトケイ酸ナトリウム溶液を添加する。
【0056】
この時の混合溶液の液性が、pH4〜7付近になることが望ましく、十分に撹拌して、前駆体懸濁液を生成する。この混合後の液性を制御するために、予め無機酸水溶液、あるいは無機塩基水溶液を添加しておいても良い。液性が酸性側に移行するときには、前駆体懸濁液は、透明な溶液へと変化するが、その後、水酸化ナトリウム溶液を、1ml/分程度でゆっくり添加して、液性をpH6〜7付近まで調整すると、前駆体が生成する。
【0057】
前駆体の生成と同時に、塩化ナトリウムが副生成するので、それを遠心分離等を用いて除去し、前駆体を洗浄処理する。前駆体濃度10mmol/lの懸濁液100mlに、酸化チタン粉末を0.1g添加し、100℃で、48時間、オートクレーブを用いて水熱反応を行うことで、アロフェンをコーティングした酸化チタン複合粒子粉末が得られる。
【0058】
次に、無機ケイ酸塩として、イモゴライトを担持させる方法及び条件の一例を示すと、例えば、100mmol/lのオルトケイ酸ナトリウム溶液と、100mmol/lの塩化アルミニウム水溶液を調製し、Si/Al比が、0.70となるように秤量し、塩化アルミニウム溶液に、オルトケイ酸ナトリウム溶液を添加する。この時の混合溶液の液性が、pH4〜7付近になることが望ましく、十分に撹拌して、前駆体懸濁液を生成する。
【0059】
この混合後の液性を制御するために、予め無機酸水溶液、あるいは無機塩基水溶液を添加しておいても良い。液性が酸性側に移行するときには、前駆体懸濁液は、透明な溶液へと変化するが、その後、水酸化ナトリウム溶液を、1ml/分程度でゆっくり添加して、液性をpH6付近まで調整すると、前駆体が生成する。前駆体の生成と同時に、塩化ナトリウムが副生成するので、それを、遠心分離等を用いて除去し、前駆体を洗浄する。
【0060】
前駆体濃度20mmol/lの懸濁液100mlに、酸化チタン粉末を0.1g添加し、その後、塩酸を加えて、pHが4になるように、液性を調節する。100℃で、48時間、オートクレーブを用いて水熱反応を行うことで、イモゴライトをコーティングした酸化チタン複合粒子粉末が得られる。アロフェン、イモゴライト両方に関して、コーティング膜の厚さは、出発無機溶液濃度及び反応前駆体濃度によって制御される。
【0061】
上記方法及び条件により、酸化チタンの表面に、アロフェンを担持させた無機ケイ酸塩−酸化チタン複合粒子(図1)、及び、酸化チタンの表面にイモゴライトを担持させた無機ケイ酸塩−酸化チタン複合粒子(図2)、が合成される。
【0062】
アロフェンの場合には、酸化チタン表面に、塊状の球状アロフェン粒子凝集体が付着しているのが確認され、イモゴライトの場合には、酸化チタン表面に、繊維束が凝集したヒゲ状の塊が付着している様子が確認される。
【0063】
これらの生成物の理化学的性質を、以下に示す。BET法による比表面積及びHK法による平均細孔直径が、それぞれ約200m/g及び約1nm程度であり、基材である酸化チタンに、重量比で10質量%程度のアロフェン、あるいはイモゴライトがコーティングされている材料が生成する。X線回折では、アナターゼのピークと、アロフェンの場合は、そのブロードなピーク、イモゴライトの場合は、その低角度側に、特徴のあるピークが確認される。
【0064】
また、本発明の複合粒子は、酸化チタンをコーティングするケイ酸塩膜の骨格内部、あるいは膜表面に、例えば、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、銀、銅、亜鉛等の金属を担持させることが可能であり、それにより、化学物質の酸化分解速度が、更に大きくなり、殺菌、殺藻作用も大きくなる。
【0065】
本発明の酸化チタン複合粒子は、その表面のケイ酸塩化合物の多孔質性や、膜厚、形状を、前駆体の組成や温度、浸積時間を変えることによって、制御することができる。ケイ素や他の金属化合物の含有率を低くしたり、反応温度を低くしたり、時間を短くした場合には、基材の表面に、ドメイン状のケイ酸塩が生成したり、ケイ酸塩の薄膜が生成する。ケイ素や、他の金属化合物の含有率を高くしたり、反応温度を高くすることにより、ケイ酸塩の膜厚を厚くすることができる。
【0066】
こうして調製された本発明の酸化チタン複合粒子は、表面が、光触媒として不活性なケイ酸塩膜によって被覆され、更に、このケイ酸塩膜は、蛋白質やアミノ酸、細菌、ウイルス等を吸着する作用を有するので、表面のケイ酸塩膜は、水中や空気中の細菌等を吸着することができる。そして、上記複合材料は、上記ケイ酸塩膜が、表面に細孔を有し、この細孔の底には、光触媒として活性な酸化チタンが露出した状態となっている多孔質の構造を有している。
【0067】
そのため、蛍光灯、白熱灯、ブラックライト、UVランプ、水銀灯、キセノンランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ等からの人工光や太陽光等は、この露出部分に照射される。そして、光の照射によって、酸化チタンに生成した電子と正孔との酸化還元作用により、ケイ酸塩膜は、吸着した蛋白質やアミノ酸、細菌、ウイルス等を迅速に、かつ連続的に分解し、除去することができる。
【0068】
また、本発明の酸化チタン複合粒子は、例えば、環境浄化材料として使用される。上記環境浄化材料を、繊維や樹脂等の媒体に練り込んで使用した場合、これらの有機化合物材料と接触している部分が、光触媒として不活性なセラミックスであるため、上記有機化合物の分解を生じることがない。
【0069】
そして、この環境浄化材料は、悪臭物質やトルエン、キシレン、酢酸エチル、パラジクロロベンゼン、窒素酸化物、硫黄酸化物等の空気中の有害物質、あるいは水中に溶解している有機溶剤や農薬等の、環境を汚染している有機化合物を吸着し、蛍光灯、白熱灯、ブラックライト、UVランプ、水銀灯、キセノンランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ等からの人工光や太陽光の照射によって、酸化チタンに生成した電子と正孔の酸化還元作用によって迅速に、かつ連続的に分解、除去することができる。
【0070】
しかも、この環境浄化材料は、光を照射するだけで、低コスト・省エネルギー的で、かつメンテナンスフリーで使用できる。そして、酸化チタン粒子上にコーティングされるケイ酸塩の内部骨格に、白金あるいはロジウム、ルテニウム、パラジウム、銀、銅、鉄、亜鉛の金属を担持したものを用いた場合には、その触媒作用により、有機化合物の分解除去効果や、抗菌抗黴効果等の環境浄化効果が、一層増大する。
【0071】
本発明による環境浄化材料の媒体としては、例えば、ポリエチレンやナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール、ビニルアセタール樹脂、ポリアセテート、ABS樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、セルロース、セルロース誘導体、ポリアミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリスチレン、尿素樹脂、フッ素樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フェノール樹脂、セルロイド、キチン、デンプンシート等の、あらゆる種類の有機繊維やプラスチックス、あるいはそれらの共重合体が適用可能である。
【0072】
ここで、本発明の、無機ケイ酸塩−酸化チタン複合材料からなる複合粒子と樹脂成分とを含む耐候性・耐汚染性エマルション塗料に用いられる樹脂成分について説明する。本発明で使用される樹脂成分としては、水系の有機系塗料を含むものであれば、特に制限されない。例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、フッ素樹脂などの合成樹脂エマルションが挙げられる。中でもアクリルシリコーン樹脂エマルションが好ましい。
【0073】
なお、アクリルシリコーン樹脂中のシリコーン成分の含有量は、1〜60質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましい。シリコーン成分が少ないと、樹脂が上述した光触媒複合粒子により分解されやすくなる。一方、シリコーン成分が多すぎると、得られるエマルション塗料を重ね塗りした場合に、先に形成された塗膜上に塗料が付着しにくく、新たに形成された塗膜が割れやすくなる。
【0074】
光触媒複合粒子は、エマルション塗料全体の固形分比において、1〜20質量%であることが好ましい。より好ましくは2〜15質量%であり、更に好ましくは3〜10質量%である。この範囲より少ないと、塗膜中における光触媒複合粒子が少なくなることから、光触媒効果が少なくなり、一方、この範囲よりも多いと塗膜の耐候性が低下する。
【0075】
更に、エマルション塗料の固形分は、2〜30質量%であることが望ましい。より望ましくは2〜20質量%であり、更に望ましくは3〜10質量%である。エマルション塗料の固形分を上記範囲内とすることにより、形成する塗膜の膜厚が均一なものとなるので望ましい。
【0076】
なお、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、塗料中には、必要に応じて、ブチルセルソルブ、ブチルカルビトール、トリエチレングリコール、テキサノール等の造膜助剤を用いても良い。また、塗料には、必要に応じて、消泡剤、増粘剤、凍結安定剤、湿潤剤、顔料、水溶性樹脂、浸透助剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の添加剤を配合しても良い。
【0077】
このようにして得られるエマルション塗料の塗装対象物への塗布は、例えば、刷毛、ローラー、エアスプレー、エアレススプレー等の通常の方法及び手段により行うことができる。また、塗装対象物の材質の伸縮に追従するよう、形成される塗膜の膜厚は薄くすることが好ましい。塗膜の膜厚は、1〜20μmが好ましく、1から10μmがより好ましく、2〜8μmが更に好ましい。膜厚が上記範囲内となることにより、まだらな塗膜が形成されるのを防ぎ、膜厚の均一な塗膜が得られる。更に、膜厚を均一にするために、エマルション塗料を複数回重ね塗りすることが好ましい。
【0078】
本発明の耐候性・耐汚染性エマルション塗料の製造方法によれば、光触媒複合粒子を簡便に製造することができるので、生産性が良好であり、かつ、エマルション塗料とした際も、樹脂成分の凝集も抑制され、貯蔵安定性に優れている。また、該エマルション塗料により形成される塗膜は、油分や水分の付着によっても、黄ばみを生じたり劣化したりすることが非常に少なくなり、優れた耐久性と美観保持が得られる。更に、有機系塗料であっても、樹脂成分が酸化チタンと直接接触するのを妨げるため、塗膜が安定である。
【0079】
本発明は、ケイ酸塩でコーティングされた酸化チタン複合材料からなる複合粒子と樹脂成分とを含む耐候性・耐汚染性エマルション塗料の製造方法と、これより得られるエマルション塗料及び該エマルション塗料から形成される塗膜であり、本発明の酸化チタン複合粒子は、ケイ酸塩前駆体懸濁液に、基材を投入して製造することが可能であり、この時のケイ酸塩前駆体懸濁液の組成や反応温度、時間を変化させることによって、表面の細孔径の大きさや、細孔分布の密度等を制御することが可能である。本発明の酸化チタン複合材料は、基材表面の酸化チタンを覆うケイ酸塩膜が多孔質であり、化学組成や細孔構造の制御されたケイ酸塩ドメイン、あるいは細孔の空隙を通じて、基材表面の酸化チタンに光が照射されるため、当該酸化チタン複合材料により、ケイ酸塩膜で覆われていないものと殆ど遜色のない、光触媒作用を得ることができる。
【0080】
また、上記ケイ酸塩膜は、雑菌等の汚染物質を吸着する性質を持っているため、吸着した揮発性有機化合物を、上記光触媒作用によって、確実、かつ効果的に、分解、除去することが可能である。本発明により、酸化チタンの表面にケイ酸塩を簡便な工程で被覆させることができ、光触媒複合粒子の生産性を高めると共に、該光触媒複合粒子を含む塗料や塗膜の有機物光分解機能や耐候性・耐汚染性が向上できるエマルション塗料の製造方法と、これより得られるエマルション塗料及び該エマルション塗料から形成される塗膜を提供することができる。
【0081】
本発明の耐候性・耐汚染性エマルション塗料は、添加されている酸化チタン複合粒子の無機化合物本来の優れた耐水性、耐熱性や耐腐食性に優れるため、例えば、悪臭や煙草の煙、NOx、SOxのような、空気中に存在する有害物質の分解除去、水中に溶解している有機溶剤や農薬のような有機化合物の分解除去、廃水処理や浄水処理、汚れの防止、抗菌及び抗かび、MRSA等による院内感染の防止等、触媒担体、居室内や車内等の生活環境の湿度を自律的に制御する湿度調節材や、その特異な形状を利用した薬剤のマイクロカプセルや浄水用フィルタ等、広範な産業分野での利用が可能である。
【0082】
また、本発明の耐候性・耐汚染性エマルション塗料は、環境の浄化に極めて有効であり、しかも、上記酸化チタンは、塗料や化粧品、歯磨き粉等にも使用され、食品添加物としても認められているものであって、無毒、かつ安全であり、安価で耐候性や耐久性にも優れるため、経済的である。
【0083】
更に、上記ケイ酸塩膜は、光触媒として不活性であるため、酸化チタン複合材料を、有機繊維やプラスチックス等の媒体に、練り込み等によって添加して使用する場合でも、媒体を劣化させなることがなく、長期間、その光触媒効果を持続させることができる。本発明では、ケイ酸塩担持光触媒複合粒子を簡便な手法で高い生産性で作製することができるため、本発明は、該光触媒粒子複合体を配合したエマルション塗料を簡便な工程で高い生産性で製造することができる新しいエマルション塗料の生産技術を提供するものとして有用である。
【発明の効果】
【0084】
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)酸化チタンからなる表面を持つ基材の表面に、例えば、アロフェン、又はイモゴライト等の無機ケイ酸塩がコーティングされた、新規無機ケイ酸塩−酸化チタン複合材料からなる複合粒子を含有した耐候性・耐汚染性エマルション塗料を提供することができる。
(2)表面を覆うケイ酸塩が、多孔質であるため、細孔の底に酸化チタンが露出した状態となり、この部分において、酸化チタンに光が照射される酸化チタン複合粒子を含有した耐候性・耐汚染性エマルション塗料を提供することができる。
(3)上記ケイ酸塩が、光触媒として不活性であるため、酸化チタン表面に、多孔質無機ケイ酸塩をコーティングした光触媒複合粒子を塗料に配合して、塗料成分の劣化を抑制可能にした、耐候性・耐汚染性エマルション塗料を提供することができる。
(4)本発明により、酸化チタンの表面に、ケイ酸塩を簡便な工程で被覆させることができ、光触媒複合粒子の生産性を高めるとともに、該光触媒複合粒子を含む塗料や塗膜の有機物光分解機能や耐候性を向上できる、耐候性・耐汚染性エマルション塗料の製造方法を提供することができる。
(5)上記エマルション塗料より得られる該エマルション塗料から形成される耐候性・耐汚染性に優れた塗膜を提供することができる。
(6)光の照射によって生成した電子と正孔の酸化還元作用により、悪臭や空気中の有害物質、あるいは水中に溶解している有機溶剤や農薬等の環境を汚染している有機化合物を、容易に分解除去する機能を有する新規耐候性・耐汚染性エマルション塗料を製造し、提供することができる。
(7)ケイ酸塩が、雑菌等を吸着する性質を持つため、吸着した雑菌等を、光の照射により、酸化チタンに生じる強力な酸化力によって、確実に、しかも効率良く、死滅、分解することができる。
(8)多孔質無機ケイ酸塩をコーティングした新規酸化チタン複合粒子が、塗料フィラーの役割を果たすため、貯蔵安定性が良好で、かつ、優れた光触媒活性を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0085】
次に、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0086】
(光触媒複合粒子1の製造)
メタケイ酸ナトリウムを、脱イオン水に溶解し、100mmol/lメタケイ酸ナトリウム水溶液を38.46ml調製し、この水溶液に、1mol/l水酸化ナトリウム水溶液7.5mlを添加し、メタケイ酸ナトリウム/水酸化ナトリウム混合水溶液を調製した。これとは別に、塩化アルミニウムを、脱イオン水に溶解し、100mmol/l塩化アルミニウム水溶液を50ml調製した。
【0087】
次に、この塩化アルミニウム水溶液に、上記メタケイ酸ナトリウム/水酸化ナトリウム混合水溶液を添加し、室温で1時間撹拌し、前駆体懸濁液を得た。この時のケイ素/アルミニウム比は、0.75であった。この前駆体生成の際に、副成した塩化ナトリウムを除去するために、遠心分離機を用いて、脱イオン水で充分に洗浄処理した。得られた前駆体を、1000mlの脱イオン水中に分散させた。
【0088】
この前駆体懸濁液に、1gの二酸化チタン(アナターゼ)基材を投入し、充分に撹拌した後、この懸濁液を、テフロン(登録商標)容器に封入し、100℃で48時間加熱して水熱反応を行った。反応終了後、遠心分離機により充分に洗浄処理を行った。これは、基材表面に結合することができなかったアルミニウムケイ酸塩を除去するためであり、また、二酸化チタン基材と、生成したアルミニウムケイ酸塩を、それらの比重差を利用して、遠心分離により分離精製するためである。その後、これを、電気乾燥機中で、40℃、常圧で乾燥し、ケイ酸塩でコーティングされた二酸化チタン複合粒子を得た。
【0089】
このようにして得られたケイ酸塩でコーティングされた二酸化チタン複合粒子は、X線回折図形から、基材アナターゼのピークが確認され、同時に、非晶質ケイ酸塩成分の特徴であるブロードなピークも10°付近に確認された。この材料は、窒素吸着による比表面積は、約200m/g、平均細孔直径は、約1nm、メソ領域の細孔容積は、0.06ml/g程度の値を示した。
【0090】
また、この材料は、蛍光X線分析による化学組成分析の結果、TiO:91.9質量%、Al:3.64質量%、SiO:3.51質量%であり、10質量%程度のアルミニウムケイ酸塩が、二酸化チタン基材に被覆されていることが示唆された。更に、電界放射走査型電子顕微鏡(FE−SEM)観察により、酸化チタン表面に、塊状の球状アロフェン粒子凝集体が付着していることが確認された(図1)。
【実施例2】
【0091】
(光触媒複合粒子2の製造)
100mmol/lのオルトケイ酸ナトリウム水溶液と、150mmol/lの塩化アルミニウム水溶液を、125mlずつ、それぞれ秤量した。塩化アルミニウム水溶液中に、オルトケイ酸ナトリウム水溶液を添加し、室温で、十分に撹拌した。これを撹拌しながら、1mol/lの水酸化ナトリウムを、液性がpH6になるまで1ml/分の速度で添加した。生成した前駆体を、遠心分離機により、脱イオン水を用いて洗浄処理し、前駆体濃度が20mmol/lになるように、1000mlのオートクレーブ中に分散させた。
【0092】
この前駆体懸濁液に、1.0gの二酸化チタン(アナターゼ)基材を投入し、十分に撹拌した後に、5mol/lの塩酸水溶液を、pH4程度になるまで添加した。これを、撹拌した後に、テフロン(登録商標)容器に封入し、100℃で、48時間加熱して水熱反応を行った。反応終了後、アンモニアを添加して、液性をpH10程度まで上昇させ、生成したイモゴライトをゲル化し、これを凝集させた。
【0093】
脱イオン水を用いた遠心分離による洗浄処理を行い、基材表面に結合することができなかったイモゴライトを除去した。その後、これを、電気乾燥機を用いて、40℃、常圧で乾燥し、イモゴライトでコーティングされた二酸化チタン複合粒子を得た。FE−SEM観察により、酸化チタン表面に、イモゴライト繊維束が凝集したヒゲ状の塊が付着している様子が確認された(図2)。
【実施例3】
【0094】
(光触媒複合粒子3の製造)
オルトケイ酸ナトリウムを、脱イオン水に溶解し、100mmol/lオルトケイ酸ナトリウム水溶液を50ml調製し、この水溶液に、1mol/l水酸化ナトリウム水溶液10mlを添加し、オルトケイ酸ナトリウム/水酸化ナトリウム混合水溶液を調製した。これとは別に、塩化アルミニウムを、脱イオン水に溶解し、100mmol/l塩化アルミニウム水溶液を100ml調製した。次に、この塩化アルミニウム水溶液に、上記オルトケイ酸ナトリウム/水酸化ナトリウム混合水溶液を添加し、室温で、1時間撹拌し、前駆体懸濁液を得た。この時のケイ素/アルミニウム比は、0.50であった。この前駆体生成の際に、副成した塩化ナトリウムを除去するために、遠心分離機を用いて、脱イオン水で充分に洗浄処理した。得られた前駆体を、200mlの脱イオン水中に分散させた。
【0095】
この前駆体懸濁液に、0.2gの二酸化チタン(アナターゼ)基材を投入し、充分に撹拌した後、この懸濁液を、テフロン(登録商標)容器に封入し、100℃で、48時間加熱して水熱反応を行った。反応終了後、遠心分離機により、充分に洗浄処理を行った。これは、基材表面に結合することができなかったアルミニウムケイ酸塩を除去するためであり、また、二酸化チタン基材と、生成したアルミニウムケイ酸塩を、それらの比重差を利用して、遠心分離により分離精製するためである。その後、これを、電気乾燥機中にて、40℃、常圧で乾燥し、ケイ酸塩でコーティングされた二酸化チタン複合粒子を得た。
【0096】
このようにして得られたケイ酸塩でコーティングされた二酸化チタン複合粒子は、X回折図形から、基材アナターゼのピークが確認され、同時に、非晶質ケイ酸塩成分の特徴であるブロードなピークも確認された。この材料は、窒素吸着によるBET比表面積は、211m/g、平均細孔直径は、8.28nm、マイクロ/メソ領域の細孔容積は、0.32cm/gの値を示した。また、この材料は、蛍光X線分析による化学組成分析の結果、TiO含有率が、42.8質量%であり、重量比で、60質量%程度のアルミニウムケイ酸塩が、二酸化チタン基材を被覆していることが示唆された。
【実施例4】
【0097】
(光触媒複合粒子4の製造)
オルトケイ酸ナトリウムを、脱イオン水に溶解し、100mmol/lオルトケイ酸ナトリウム水溶液を55ml調製し、この水溶液に、1mol/l水酸化ナトリウム水溶液8mlを添加し、オルトケイ酸ナトリウム/水酸化ナトリウム混合水溶液を調製した。これとは別に、塩化アルミニウムを、脱イオン水に溶解し、100mmol/l塩化アルミニウム水溶液を100ml調製した。次に、この塩化アルミニウム水溶液に、上記オルトケイ酸ナトリウム/水酸化ナトリウム混合水溶液を添加し、室温で、1時間撹拌し、前駆体懸濁液を得た。この時のケイ素/アルミニウム比は、0.55であった。この前駆体生成の際に、副成した塩化ナトリウムを除去するために、遠心分離機を用いて、脱イオン水で充分に洗浄処理した。得られた前駆体を、200mlの脱イオン水中に分散させた。
【0098】
この前駆体懸濁液に、0.2gの二酸化チタン(アナターゼ)基材を投入し、充分に撹拌した後、この懸濁液を、テフロン(登録商標)容器に封入し、100℃で、48時間加熱して水熱反応を行った。反応終了後、遠心分離機により、充分に洗浄処理を行った。これは、基材表面に結合することができなかったアルミニウムケイ酸塩を除去するためであり、また、二酸化チタン基材と、生成したアルミニウムケイ酸塩を、それらの比重差を利用して、遠心分離により分離精製するためである。その後、これを、電気乾燥機中にて、40℃、常圧で乾燥し、ケイ酸塩でコーティングされた二酸化チタン複合粒子を得た。
【0099】
このようにして得られたケイ酸塩でコーティングされた二酸化チタン複合粒子は、X回折図形から、基材アナターゼのピークが確認され、同時に、非晶質ケイ酸塩成分の特徴であるブロードなピークも確認された。この材料は、窒素吸着によるBET比表面積は、165m/g、平均細孔直径は、11.14nm、マイクロ/メソ領域の細孔容積は、0.18cm/gの値を示した。また、この材料は、蛍光X線分析による化学組成分析の結果、TiO含有率が、55.3質量%であり、重量比で、45質量%程度のアルミニウムケイ酸塩が、二酸化チタン基材を被覆していることが示唆された。
【実施例5】
【0100】
(光触媒複合粒子5の製造)
オルトケイ酸ナトリウムを、脱イオン水に溶解し、100mmol/lオルトケイ酸ナトリウム水溶液を60ml調製し、この水溶液に、1mol/l水酸化ナトリウム水溶液6mlを添加し、オルトケイ酸ナトリウム/水酸化ナトリウム混合水溶液を調製した。これとは別に、塩化アルミニウムを、脱イオン水に溶解し、100mmol/l塩化アルミニウム水溶液を100ml調製した。次に、この塩化アルミニウム水溶液に、上記オルトケイ酸ナトリウム/水酸化ナトリウム混合水溶液を添加し、室温で、1時間撹拌し、前駆体懸濁液を得た。この時のケイ素/アルミニウム比は、0.60であった。この前駆体生成の際に、副成した塩化ナトリウムを除去するために、遠心分離機を用いて、脱イオン水で充分に洗浄処理した。得られた前駆体を、200mlの脱イオン水中に分散させた。
【0101】
この前駆体懸濁液に、0.2gの二酸化チタン(アナターゼ)基材を投入し、充分に撹拌した後、この懸濁液を、テフロン(登録商標)容器に封入し、100℃で、48時間加熱して水熱反応を行った。反応終了後、遠心分離機により、充分に洗浄処理を行った。これは、基材表面に結合することができなかったアルミニウムケイ酸塩を除去するためであり、また、二酸化チタン基材と、生成したアルミニウムケイ酸塩を、それらの比重差を利用して、遠心分離により分離精製するためである。その後、これを、電気乾燥機中にて、40℃、常圧で乾燥し、ケイ酸塩でコーティングされた二酸化チタン複合粒子を得た。
【0102】
このようにして得られたケイ酸塩でコーティングされた二酸化チタン複合粒子は、X回折図形から、基材アナターゼのピークが確認され、同時に、非晶質ケイ酸塩成分の特徴であるブロードなピークも確認された。この材料は、窒素吸着によるBET比表面積は、158m/g、平均細孔直径は、12.58nm、マイクロ/メソ領域の細孔容積は、0.13cm/gの値を示した。また、この材料は、蛍光X線分析による化学組成分析の結果、TiO含有率が、35.8質量%であり、重量比で、65質量%程度のアルミニウムケイ酸塩が、二酸化チタン基材を被覆していることが示唆された。
【実施例6】
【0103】
(光触媒複合粒子6の製造)
オルトケイ酸ナトリウムを、脱イオン水に溶解し、100mmol/lオルトケイ酸ナトリウム水溶液を65ml調製し、この水溶液に、1mol/l水酸化ナトリウム水溶液4mlを添加し、オルトケイ酸ナトリウム/水酸化ナトリウム混合水溶液を調製した。これとは別に、塩化アルミニウムを、脱イオン水に溶解し、100mmol/l塩化アルミニウム水溶液を100ml調製した。次に、この塩化アルミニウム水溶液に、上記オルトケイ酸ナトリウム/水酸化ナトリウム混合水溶液を添加し、室温で、1時間撹拌し、前駆体懸濁液を得た。この時のケイ素/アルミニウム比は、0.65であった。この前駆体生成の際に、副成した塩化ナトリウムを除去するために、遠心分離機を用いて、脱イオン水で充分に洗浄処理した。得られた前駆体を、200mlの脱イオン水中に分散させた。
【0104】
この前駆体懸濁液に、0.2gの二酸化チタン(アナターゼ)基材を投入し、充分に撹拌した後、この懸濁液を、テフロン(登録商標)容器に封入し、100℃で、48時間加熱して水熱反応を行った。反応終了後、遠心分離機により、充分に洗浄処理を行った。これは、基材表面に結合することができなかったアルミニウムケイ酸塩を除去するためであり、また、二酸化チタン基材と、生成したアルミニウムケイ酸塩を、それらの比重差を利用して、遠心分離により分離精製するためである。その後、これを、電気乾燥機中にて、40℃、常圧で乾燥し、ケイ酸塩でコーティングされた二酸化チタン複合粒子を得た。
【0105】
このようにして得られたケイ酸塩でコーティングされた二酸化チタン複合粒子は、X回折図形から、基材アナターゼのピークが確認され、同時に、非晶質ケイ酸塩成分の特徴であるブロードなピークも確認された。この材料は、窒素吸着によるBET比表面積は、179m/g、平均細孔直径は、9.89nm、マイクロ/メソ領域の細孔容積は、0.16cm/gの値を示した。また、この材料は、蛍光X線分析による化学組成分析の結果、TiO含有率が、36.6質量%であり、重量比で、65質量%程度のアルミニウムケイ酸塩が、二酸化チタン基材を被覆していることが示唆された。
【実施例7】
【0106】
(光触媒複合粒子7の製造)
オルトケイ酸ナトリウムを、脱イオン水に溶解し、100mmol/lオルトケイ酸ナトリウム水溶液を70ml調製し、この水溶液に、1mol/l水酸化ナトリウム水溶液2mlを添加した。これとは別に、塩化アルミニウムを脱イオン水に溶解し、100mmol/l塩化アルミニウム水溶液を100ml調製し、オルトケイ酸ナトリウム/水酸化ナトリウム混合水溶液を調製した。次に、この塩化アルミニウム水溶液に、上記オルトケイ酸ナトリウム/水酸化ナトリウム混合水溶液を添加し、室温で、1時間撹拌し、前駆体懸濁液を得た。この時のケイ素/アルミニウム比は、0.70であった。この前駆体生成の際に、副成した塩化ナトリウムを除去するために、遠心分離機を用いて、脱イオン水で充分に洗浄処理した。得られた前駆体を、200mlの脱イオン水中に分散させた。
【0107】
この前駆体懸濁液に、0.2gの二酸化チタン(アナターゼ)基材を投入し、充分に撹拌した後、この懸濁液を、テフロン(登録商標)容器に封入し、100℃で48時間加熱して水熱反応を行った。反応終了後、遠心分離機により、充分に洗浄処理を行った。これは、基材表面に結合することができなかったアルミニウムケイ酸塩を除去するためであり、また、二酸化チタン基材と、生成したアルミニウムケイ酸塩を、それらの比重差を利用して、遠心分離により分離精製するためである。その後、これを、電気乾燥機中にて、40℃、常圧で乾燥し、ケイ酸塩でコーティングされた二酸化チタン複合粒子を得た。
【0108】
このようにして得られたケイ酸塩でコーティングされた二酸化チタン複合粒子は、X回折図形から基材アナターゼのピークが確認され、同時に、非晶質ケイ酸塩成分の特徴であるブロードなピークも確認された。この材料は、窒素吸着によるBET比表面積は、198m/g、平均細孔直径は、7.76nm、マイクロ/メソ領域の細孔容積は、0.14cm/gの値を示した。また、この材料は、蛍光X線分析による化学組成分析の結果、TiO含有率が、43.2質量%であり、重量比で、55質量%程度のアルミニウムケイ酸塩が、二酸化チタン基材を被覆していることが示唆された。
【実施例8】
【0109】
(光触媒複合粒子8の製造)
オルトケイ酸ナトリウムを、脱イオン水に溶解し、100mmol/lオルトケイ酸ナトリウム水溶液を75ml調製した。これとは別に、塩化アルミニウムを、脱イオン水に溶解し、100mmol/l塩化アルミニウム水溶液を100ml調製した。次に、この塩化アルミニウム水溶液に、上記オルトケイ酸ナトリウム水溶液を添加し、室温で、1時間撹拌し、前駆体懸濁液を得た。この時のケイ素/アルミニウム比は、0.75であった。この前駆体生成の際に、副成した塩化ナトリウムを除去するために、遠心分離機を用いて、脱イオン水で充分に洗浄処理した。得られた前駆体を、200mlの脱イオン水中に分散させた。
【0110】
この前駆体懸濁液に、0.2gの二酸化チタン(アナターゼ)基材を投入し、充分に撹拌した後、この懸濁液を、テフロン(登録商標)容器に封入し、100℃で、48時間加熱して水熱反応を行った。反応終了後、遠心分離機により、充分に洗浄処理を行った。これは、基材表面に結合することができなかったアルミニウムケイ酸塩を除去するためであり、また、二酸化チタン基材と、生成したアルミニウムケイ酸塩を、それらの比重差を利用して、遠心分離により分離精製するためである。その後、これを、電気乾燥機中にて、40℃、常圧で乾燥し、ケイ酸塩でコーティングされた二酸化チタン複合粒子を得た。
【0111】
このようにして得られたケイ酸塩でコーティングされた二酸化チタン複合粒子は、X回折図形から基材アナターゼのピークが確認され、同時に、非晶質ケイ酸塩成分の特徴であるブロードなピークも確認された。この材料は、窒素吸着によるBET比表面積は、193m/g、平均細孔直径は、9.77nm、マイクロ/メソ領域の細孔容積は、0.23cm/gの値を示した。また、この材料は、蛍光X線分析による化学組成分析の結果、TiO含有率が、46.6質量%であり、重量比で、55質量%程度のアルミニウムケイ酸塩が、二酸化チタン基材を被覆していることが示唆された。
【実施例9】
【0112】
(光触媒複合粒子9の製造)
オルトケイ酸ナトリウムを、脱イオン水に溶解し、100mmol/lオルトケイ酸ナトリウム水溶液を80ml調製した。これとは別に、塩化アルミニウムを、脱イオン水に溶解し、100mmol/l塩化アルミニウム水溶液を100ml調製し、この水溶液に、1mol/l塩酸2mlを添加し、塩化アルミニウム/塩酸混合水溶液を調製した。次に、この塩化アルミニウム/塩酸混合水溶液に、オルトケイ酸ナトリウム水溶液を添加し、室温で、1時間撹拌し、前駆体懸濁液を得た。この時のケイ素/アルミニウム比は、0.80であった。この前駆体生成の際に、副成した塩化ナトリウムを除去するために、遠心分離機を用いて、脱イオン水で充分に洗浄処理した。得られた前駆体を、200mlの脱イオン水中に分散させた。
【0113】
この前駆体懸濁液に、0.2gの二酸化チタン(アナターゼ)基材を投入し、充分に撹拌した後、この懸濁液を、テフロン(登録商標)容器に封入し、100℃で、48時間加熱して水熱反応を行った。反応終了後、遠心分離機により充分に洗浄処理を行った。これは、基材表面に結合することができなかったアルミニウムケイ酸塩を除去するためであり、また、二酸化チタン基材と、生成したアルミニウムケイ酸塩を、それらの比重差を利用して、遠心分離により分離精製するためである。その後、これを、電気乾燥機中にて、40℃、常圧で乾燥し、ケイ酸塩でコーティングされた二酸化チタン複合粒子を得た。
【0114】
このようにして得られたケイ酸塩でコーティングされた二酸化チタン複合粒子は、X回折図形から基材アナターゼのピークが確認され、同時に、非晶質ケイ酸塩成分の特徴であるブロードなピークも確認された。この材料は、窒素吸着によるBET比表面積は、200m/g、平均細孔直径は、9.51nm、マイクロ/メソ領域の細孔容積は、0.29cm/gの値を示した。また、この材料は、蛍光X線分析による化学組成分析の結果、TiO含有率が、34.7質量%であり、重量比で、65質量%程度のアルミニウムケイ酸塩が、二酸化チタン基材を被覆していることが示唆された。
【実施例10】
【0115】
(光触媒複合粒子10の製造)
オルトケイ酸ナトリウムを、脱イオン水に溶解し、100mmol/lオルトケイ酸ナトリウム水溶液を85ml調製した。これとは別に、塩化アルミニウムを、脱イオン水に溶解し、100mmol/l塩化アルミニウム水溶液を100ml調製し、この水溶液に、1mol/l塩酸4mlを添加し、塩化アルミニウム/塩酸混合水溶液を調製した。次に、この塩化アルミニウム/塩酸混合水溶液に、オルトケイ酸ナトリウム水溶液を添加し、室温で1時間撹拌し、前駆体懸濁液を得た。この時のケイ素/アルミニウム比は、0.85であった。この前駆体生成の際に、副成した塩化ナトリウムを除去するために、遠心分離機を用いて、脱イオン水で充分に洗浄処理した。得られた前駆体を、200mlの脱イオン水中に分散させた。
【0116】
この前駆体懸濁液に、0.2gの二酸化チタン(アナターゼ)基材を投入し、充分に撹拌した後、この懸濁液を、テフロン(登録商標)容器に封入し、100℃で、48時間加熱して水熱反応を行った。反応終了後、遠心分離機により、充分に洗浄処理を行った。これは、基材表面に結合することができなかったアルミニウムケイ酸塩を除去するためであり、また、二酸化チタン基材と、生成したアルミニウムケイ酸塩を、それらの比重差を利用して、遠心分離により分離精製するためである。その後、これを、電気乾燥機中にて、40℃、常圧で乾燥し、ケイ酸塩でコーティングされた二酸化チタン複合粒子を得た。
【0117】
このようにして得られたケイ酸塩でコーティングされた二酸化チタン複合粒子は、X回折図形から基材アナターゼのピークが確認され、同時に、非晶質ケイ酸塩成分の特徴であるブロードなピークも確認された。この材料は、窒素吸着によるBET比表面積は、201m/g、平均細孔直径は、9.66nm、マイクロ/メソ領域の細孔容積は、0.24cm/gの値を示した。また、この材料は、蛍光X線分析による化学組成分析の結果、TiO含有率が、34.6質量%であり、重量比で、65質量%程度のアルミニウムケイ酸塩が、二酸化チタン基材を被覆していることが示唆された。
【実施例11】
【0118】
(光触媒複合粒子11の製造)
オルトケイ酸ナトリウムを、脱イオン水に溶解し、100mmol/lオルトケイ酸ナトリウム水溶液を90ml調製した。これとは別に、塩化アルミニウムを、脱イオン水に溶解し、100mmol/l塩化アルミニウム水溶液を100ml調製し、この水溶液に、1mol/l塩酸6mlを添加し、塩化アルミニウム/塩酸混合水溶液を調製した。次に、この塩化アルミニウム/塩酸混合水溶液に、オルトケイ酸ナトリウム水溶液を添加し、室温で1時間撹拌し、前駆体懸濁液を得た。この時のケイ素/アルミニウム比は、0.90であった。この前駆体生成の際に、副成した塩化ナトリウムを除去するために、遠心分離機を用いて、脱イオン水で充分に洗浄処理した。得られた前駆体を、200mlの脱イオン水中に分散させた。
【0119】
この前駆体懸濁液に、0.2gの二酸化チタン(アナターゼ)基材を投入し、充分に撹拌した後、この懸濁液を、テフロン(登録商標)容器に封入し、100℃で、48時間加熱して水熱反応を行った。反応終了後、遠心分離機により、充分に洗浄処理を行った。これは、基材表面に結合することができなかったアルミニウムケイ酸塩を除去するためであり、また、二酸化チタン基材と、生成したアルミニウムケイ酸塩を、それらの比重差を利用して、遠心分離により分離精製するためである。その後、これを、電気乾燥機中にて、40℃、常圧で乾燥し、ケイ酸塩でコーティングされた二酸化チタン複合粒子を得た。
【0120】
このようにして得られたケイ酸塩でコーティングされた二酸化チタン複合粒子は、X回折図形から基材アナターゼのピークが確認され、同時に、非晶質ケイ酸塩成分の特徴であるブロードなピークも確認された。この材料は、窒素吸着によるBET比表面積は、209m/g、平均細孔直径は、10.1nm、マイクロ/メソ領域の細孔容積は、0.34cm/gの値を示した。また、この材料は、蛍光X線分析による化学組成分析の結果、TiO含有率が、34.7質量%であり、重量比で、65質量%程度のアルミニウムケイ酸塩が、二酸化チタン基材を被覆していることが示唆された。
【実施例12】
【0121】
(光触媒複合粒子12の製造)
オルトケイ酸ナトリウムを、脱イオン水に溶解し、100mmol/lオルトケイ酸ナトリウム水溶液を95ml調製した。これとは別に、塩化アルミニウムを、脱イオン水に溶解し、100mmol/l塩化アルミニウム水溶液を100ml調製し、この水溶液に、1mol/l塩酸8mlを添加し、塩化アルミニウム/塩酸混合水溶液を調製した。次に、この塩化アルミニウム/塩酸混合水溶液に、オルトケイ酸ナトリウム水溶液を添加し、室温で1時間撹拌し、前駆体懸濁液を得た。この時のケイ素/アルミニウム比は、0.95であった。この前駆体生成の際に、副成した塩化ナトリウムを除去するために、遠心分離機を用いて、脱イオン水で充分に洗浄処理した。得られた前駆体を、200mlの脱イオン水中に分散させた。
【0122】
この前駆体懸濁液に、0.2gの二酸化チタン(アナターゼ)基材を投入し、充分に撹拌した後、この懸濁液を、テフロン(登録商標)容器に封入し、100℃で、48時間加熱して水熱反応を行った。反応終了後、遠心分離機により、充分に洗浄処理を行った。これは、基材表面に結合することができなかったアルミニウムケイ酸塩を除去するためであり、また、二酸化チタン基材と、生成したアルミニウムケイ酸塩を、それらの比重差を利用して、遠心分離により分離精製するためである。その後、これを、電気乾燥機中にて、40℃、常圧で乾燥し、ケイ酸塩でコーティングされた二酸化チタン複合粒子を得た。
【0123】
このようにして得られたケイ酸塩でコーティングされた二酸化チタン複合粒子は、X回折図形から基材アナターゼのピークが確認され、同時に、非晶質ケイ酸塩成分の特徴であるブロードなピークも確認された。この材料は、窒素吸着によるBET比表面積は、138m/g、平均細孔直径は、13.0nm、マイクロ/メソ領域の細孔容積は、0.47cm/gの値を示した。また、この材料は、蛍光X線分析による化学組成分析の結果、TiO含有率が、46.8質量%であり、重量比で、65質量%程度のアルミニウムケイ酸塩が、二酸化チタン基材を被覆していることが示唆された。
【実施例13】
【0124】
(光触媒複合粒子13の製造)
オルトケイ酸ナトリウムを、脱イオン水に溶解し、100mmol/lオルトケイ酸ナトリウム水溶液を100ml調製した。これとは別に、塩化アルミニウムを、脱イオン水に溶解し、100mmol/l塩化アルミニウム水溶液を100ml調製し、この水溶液に、1mol/l塩酸10mlを添加し、塩化アルミニウム/塩酸混合水溶液を調製した。次に、この塩化アルミニウム/塩酸混合水溶液に、オルトケイ酸ナトリウム水溶液を添加し、室温で1時間撹拌し、前駆体懸濁液を得た。この時のケイ素/アルミニウム比は、1.00であった。この前駆体生成の際に、副成した塩化ナトリウムを除去するために、遠心分離機を用いて、脱イオン水で充分に洗浄処理した。得られた前駆体を、200mlの脱イオン水中に分散させた。
【0125】
この前駆体懸濁液に、0.2gの二酸化チタン(アナターゼ)基材を投入し、充分に撹拌した後、この懸濁液を、テフロン(登録商標)容器に封入し、100℃で、48時間加熱して水熱反応を行った。反応終了後、遠心分離機により、充分に洗浄処理を行った。これは、基材表面に結合することができなかったアルミニウムケイ酸塩を除去するためであり、また、二酸化チタン基材と、生成したアルミニウムケイ酸塩を、遠心分離により分離精製するためである。その後、これを、電気乾燥機中にて、40℃、常圧で乾燥し、ケイ酸塩でコーティングされた二酸化チタン複合粒子を得た。
【0126】
このようにして得られたケイ酸塩でコーティングされた二酸化チタン複合粒子は、X回折図形から、基材アナターゼのピークが確認され、同時に、非晶質ケイ酸塩成分の特徴であるブロードなピークも確認された。この材料は、窒素吸着によるBET比表面積は、184m/g、平均細孔直径は、11.5nm、マイクロ/メソ領域の細孔容積は、0.26cm/gの値を示した。また、この材料は、蛍光X線分析による化学組成分析の結果、TiO含有率が、41.3質量%であり、重量比で、60質量%程度のアルミニウムケイ酸塩が、二酸化チタン基材を被覆していることが示唆された。表1に、ケイ酸塩でコーティングされた二酸化チタン複合粒子の物性評価の結果を示す。
【0127】
【表1】

【0128】
表1から明らかなように、この材料は、窒素吸着によるBET比表面積が、200m/g程度、平均細孔直径が、8〜13nm程度、マイクロ/メソ領域の細孔容積が、0.1から0.4cm/g程度、TiO含有率が、35から45質量%程度であり、重量比で、60質量%程度のアルミニウムケイ酸塩が二酸化チタン基材を被覆されているケイ酸塩でコーティングされた二酸化チタン複合粒子が合成されたことが確認された。
【実施例14】
【0129】
(1)エマルション塗料の製造準備
上記で調製した光触媒複合粒子3〜13を用いて、実施例1〜11、比較例1〜2のエマルション塗料を製造した。まず、ミルベースとして、脱イオン水:光触媒複合粒子を、99:1(質量比)の割合で混合し、超音波分散処理を行った。次に、レッドダウンベースとして、エマルション樹脂「ポリデュレックスH−7000」(旭化成ケミカルズ(株)製、固形分42%)、消泡剤「BYK−028」(ビックケミー(株)製)、成膜助剤の「テキサノール」(イーストマンケミカル(株)製)、及び水を、50.0:0.2:6.0:43.8(質量比)の割合で混合した。
【0130】
(2)エマルション塗料の製造
上記で調製したミルベース及びレッドダウンベースを用いて、エマルション塗料を製造した。レッドダウンベース:ミルベースを、35:65(質量比)の割合で混合し、更に、増粘剤「SNシックナー618」(サンノプコ(株)製)を適量添加し、無機ケイ酸塩−酸化チタン複合材料からなる複合粒子を含有した耐候性・耐汚染性エマルション塗料とした。
【0131】
塗膜試験体は、エアー塗装スプレーガンW−88(アネスト岩田(株)製)を用いて、平板(5cm×5cm)上に塗布量50g/m塗布し、乾燥させて試験体とした。ここで、光触媒複合粒子3から13を用いて調製された耐候性・耐汚染性エマルション塗料を、実施例1から11として記載する。更に、酸化チタン粉末のみを用いて調製した塗料を、比較例1、市販のアパタイト被覆酸化チタン光触媒を用いて調製した塗料を、比較例2として記載する。塗料成分のみをブランクとした。
【0132】
(3)光沢保持率と色差による促進耐候性試験
前記試験体に、紫外線照射機「アイスーパーUVテスターW−151」(岩崎電気(株)製)を用いて、ブラックパネル温度が63℃、湿度が50%RH、各塗面が1000mW/cmの照射強度で受光するように、試験体に4時間照射した。その後、槽内の温度を約30℃、湿度を98%RH以上に設定して、4時間保持し、槽内を結露させた。
【0133】
上述した照射と結露を1サイクルとし、120時間毎に光沢保持率と色差の評価を行った。光沢と色差の測定には、光沢計と色差計(「SMカラーコンピューターSM−T型」スガ試験機製)を用いた。
【0134】
図3に、各試料の光沢保持率の経時変化を示した。実施例で得られた耐候性・耐汚染性エマルション塗料の光沢保持率は、600時間経過後であっても良好であり、殆ど劣化が生じていないことが明らかとなった。一方、比較例1、2で得られたエマルション塗料は、実施例に比べて、光沢の劣化が240時間経過後より始まり、600時間後には、初期光沢より40%程度まで低下し、表面状態の悪化が確認された。
【0135】
図4に、各試料の色差の経時変化を示した。試験時間の経過に伴い、各試料とも、色差は上昇したが、600時間経過後の色差は、実施例の耐候性・耐汚染性エマルション塗料では、NBS単位6以下の数値を示した。比較例1、2で得られたエマルション塗料では、NBS単位8程度の大きな色差を示し、塗膜の劣化による変色が確認された。
【0136】
(4)吸光度測定によるメチレンブルー分解試験
前処理として、ブラックライトBLBを用いて、各塗面が1mW/cmの照射強度で受光するように、試験体に3時間以上照射した。次に、アクリル樹脂製リング(外径:45mm、内径:40mm、高さ:30mm)を、非水溶性接着剤を用いて、塗面上に固定した。そして、このリング内に、吸着液(8ppmメチレンブルー水溶液)を30mL注ぎ入れ、硝子製蓋(50mm×50mm×0.5mm)で密封し、暗所にて、12時間以上静置して、塗膜に、メチレンブルー水溶液を十分に吸着させた。
【0137】
その後、吸着液を排出し、リング内を蒸留水で軽く洗浄した後に、4ppmメチレンブルー水溶液を30mL注ぎ入れ、上記硝子製蓋にて、再び蓋をして密封した。ブラックライトBLBを、塗面が1mW/cmの照射強度で受光するように照射し、メチレンブルーの分解による水溶液の脱色の経時変化を、吸光度により測定した。吸光度の測定には、デジタル比色計(「miniphoto 10」三紳工業(株)、フィルタ:660nm)を用いた。
【0138】
図5に、各試料のメチレンブルー分解試験の結果を示した。実施例で得られた耐候性・耐汚染性エマルション塗料のメチレンブルー分解率は、ブラックライト照射時間の経過と共に緩やかに上昇し、最大で、80%程度の分解率を示すことが明らかとなった。光触媒活性によるメチレンブルー分解と、低色差・光沢保持能力は、相反する機能であり、既存の光触媒配合塗料では成し得なかった有機物分解と、塗膜の耐候性・耐汚染性にバランスの取れた、優れた機能を有することが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0139】
以上詳述したように、本発明は、無機ケイ酸塩−酸化チタン複合材料からなる複合粒子と樹脂成分とを含む耐候性・耐汚染性エマルション塗料の製造方法と、これより得られるエマルション塗料及び該エマルション塗料から形成される塗膜に係るものであり、本発明により、水熱反応を利用して、酸化チタンからなる表面を持つ基材の表面に、化学組成や細孔構造の制御された無機ケイ酸塩をコーティングした無機ケイ酸塩−酸化チタン複合材料からなる複合粒子と、樹脂成分とを含む耐候性・耐汚染性エマルション塗料を合成する方法、及びこれより得られるエマルション塗料及び該エマルション塗料から、乾燥あるいは焼き付け等で形成される塗膜を提供することができる。
【0140】
本発明は、塗料用途は勿論のこと、樹脂フィラーの一部として、有機繊維やプラスチックス等の媒体に添加することが可能であり、自動車の車内や居間、台所、トイレ等の脱臭や、廃水処理、プールや貯水の浄化だけでなく、菌や黴の繁殖防止、食品の腐敗防止等、非常に幅広い用途に適用でき、しかも、化学薬品やオゾンのような有毒な物質を使用せず、電灯の光や自然光等の光を照射するだけで、低コストで省エネルギー的、かつ安全に、メンテナンスフリーで長期間使用することができる新規二酸化チタン複合材料からなる複合粒子と樹脂成分とを含む耐候性・耐汚染性エマルション塗料を提供するものとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】本発明の一実施例に係わる、アロフェンでコーティングされた酸化チタン複合材料の電子顕微鏡写真である。
【図2】本発明の一実施例に係わる、イモゴライトでコーティングされた酸化チタン複合材料の電子顕微鏡写真である。
【図3】本発明の実施例に係わる、耐候性・耐汚染性エマルション塗料より得られた塗膜の光沢保持率の経時変化を示す耐候性試験結果である。
【図4】本発明の実施例に係わる、耐候性・耐汚染性エマルション塗料より得られた塗膜の色差の経時変化を示す耐候性試験結果である。
【図5】本発明の実施例に係わる、耐候性・耐汚染性エマルション塗料より得られた塗膜の耐汚染性の経時変化を示すメチレンブルー分解試験結果である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化チタン表面を持つ基材の表面に、無機ケイ酸塩がコーティングされた無機ケイ酸塩−酸化チタン複合材料からなる複合粒子と樹脂成分とを含む耐候性・耐汚染性エマルション塗料を製造する方法であって、
(1)ケイ素化合物水溶液と、アルミニウム化合物、あるいは遷移金属化合物水溶液を混合し、前駆体懸濁液を調製し、(2)上記工程で副生成した塩を除去し、(3)上記前駆体懸濁液に、基材を入れ、水熱反応を行い、(4)上記(1)〜(3)により、基材表面に、無機ケイ酸塩を被覆した酸化チタン複合粒子を合成し、これを樹脂成分と混合することで耐候性・耐汚染性エマルション塗料を合成する、ことを特徴とする無機ケイ酸塩−酸化チタン複合材料からなる複合粒子と樹脂成分とを含む耐候性・耐汚染性エマルション塗料の製造方法。
【請求項2】
基材が、酸化チタン粒子である、請求項1に記載の耐候性・耐汚染性エマルション塗料の製造方法。
【請求項3】
無機ケイ酸塩が、アロフェン、又はイモゴライトの非晶質体ないし準結晶質体からなるケイ酸塩である、請求項1に記載の耐候性・耐汚染性エマルション塗料の製造方法。
【請求項4】
酸化チタンの結晶形が、アナターゼである酸化チタンの表面に、無機ケイ酸塩−酸化チタン複合材料からなる複合粒子を合成する、請求項1に記載の耐候性・耐汚染性エマルション塗料の製造方法。
【請求項5】
溶液濃度が、それぞれ1mmol/l〜10000mol/lのケイ素化合物溶液と、1mmol/l〜10000mol/lのアルミニウム化合物、あるいは遷移金属化合物溶液を混合することにより得られる、無機ケイ酸塩−酸化チタン複合材料からなる複合粒子を含有する、請求項1に記載の耐候性・耐汚染性エマルション塗料の製造方法。
【請求項6】
ケイ素のアルミニウム、あるいは遷移金属化合物に対するモル比率が、0.1〜5.0であり、無機ケイ酸塩−酸化チタン複合材料からなる複合粒子を含有する、請求項1に記載の耐候性・耐汚染性エマルション塗料の製造方法。
【請求項7】
ケイ素化合物水溶液と、アルミニウム化合物、あるいは遷移金属化合物水溶液を、分速1ml〜10000lで同時混合、あるいは両溶液を急速混合して、前駆体懸濁液を調製することにより得られる、無機ケイ酸塩−酸化チタン複合材料からなる複合粒子を含有する、請求項1に記載の耐候性・耐汚染性エマルション塗料の製造方法。
【請求項8】
前駆体懸濁液の液性を、pH3からpH8に調整することにより得られる、無機ケイ酸塩−酸化チタン複合材料からなる複合粒子を含有する、請求項6に記載の耐候性・耐汚染性エマルション塗料の製造方法。
【請求項9】
凝集阻止剤として、ポリエチレングリコール、ポリビニールアルコール又は界面活性剤の水溶性、あるいは非水溶性の試剤を添加することにより得られる、無機ケイ酸塩−酸化チタン複合材料からなる複合粒子を含有する、請求項6に記載の耐候性・耐汚染性エマルション塗料の製造方法。
【請求項10】
調製した前駆体懸濁液を、0.1〜72時間振盪した後、反応副生成物である塩を除去することにより得られる、無機ケイ酸塩−酸化チタン複合材料からなる複合粒子を含有する、請求項1に記載の耐候性・耐汚染性エマルション塗料の製造方法。
【請求項11】
前駆体懸濁液に、酸性溶液を添加して、pH3から6の弱酸性に調整し、生成されるケイ酸塩の形態を制御することにより得られる、無機ケイ酸塩−酸化チタン複合材料からなる複合粒子を含有する、請求項1に記載の耐候性・耐汚染性エマルション塗料の製造方法。
【請求項12】
反応温度20〜150℃、反応時間12〜240時間の条件で、懸濁液の水分が蒸発しない方法で、水熱反応を行うことにより得られる、無機ケイ酸塩−酸化チタン複合材料からなる複合粒子を含有する、請求項1に記載の耐候性・耐汚染性エマルション塗料の製造方法。
【請求項13】
反応終了後の懸濁液に、アルカリ性水溶液を添加して、溶液の液性を、pH8〜12に調整し、生成物を、ゲル状物質として凝集させて回収することにより得られる、無機ケイ酸塩−酸化チタン複合材料からなる複合粒子を含有する、請求項1に記載の耐候性・耐汚染性エマルション塗料の製造方法。
【請求項14】
窒素吸着による比表面積が、少なくとも10m/gである無機ケイ酸塩−酸化チタン複合材料からなる複合粒子を含有する、請求項1に記載の耐候性・耐汚染性エマルション塗料の製造方法。
【請求項15】
酸化チタン表面を持つ基材の表面に、無機ケイ酸塩を水熱合成反応で被覆した無機ケイ酸塩−酸化チタン複合材料からなる複合粒子であって、
上記複合材料は、表面が、光触媒として不活性なケイ酸塩膜によって被覆されており、該ケイ酸塩膜が、表面に細孔を有し、この細孔の底には、光触媒として活性な酸化チタンが露出した状態となっている多孔質構造を有し、窒素吸着による比表面積が、少なくとも10m/gであることを特徴とする無機ケイ酸塩−酸化チタン複合粒子を含有する、耐候性・耐汚染性エマルション塗料。
【請求項16】
無機ケイ酸塩が、アロフェン、又はイモゴライトの非晶質体ないし準結晶質体からなるケイ酸塩である、請求項15に記載の無機ケイ酸塩−酸化チタン複合粒子を含有する、耐候性・耐汚染性エマルション塗料。
【請求項17】
請求項15〜16のいずれか1項に記載のエマルション塗料から形成される塗膜であって、該塗膜の膜厚が1〜20μmであることを特徴とする塗膜。

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−150434(P2010−150434A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331614(P2008−331614)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000224123)藤倉化成株式会社 (124)
【Fターム(参考)】