説明

耐火スクリーン

【課題】
より少量の散水によって、遮煙性能・遮炎性能を奏することができる耐火スクリーンを提供する。
【解決手段】
スクリーンの散水を受ける面には、スクリーン幅方向に延出する畝状部が、スクリーン高さ方向に間隔を存して複数形成されており、前記散水を受ける面はスクリーン高さ方向に凹凸状の断面形状を備えている。前記布構造は、複数の緯糸10Aと複数の経糸10Bとからなり、緯糸10Aは経糸に比べて幅広で肉厚の部材から形成されており、緯糸10Aは、スクリーン高さ方向に間隔を存して幅方向に延出しており、前記緯糸が前記畝状部を形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火スクリーンに係り、詳しくは、火災時に建物開口部を閉鎖する耐火スクリーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
防火・防煙用シャッターのシートとして耐火クロスを使用する場合において、遮煙性能を向上させるためにシートに樹脂コーティングを施している。しかしながら、遮煙性能を向上させることはシートに通気性がないこととなるため、機械排煙の現場(大型ビル等の建物では、火災時に排煙機を使用して煙を積極的に排出することが行われる)にこのようなシートからなるシャッターカーテンを使用するとシャッターカーテンにより区画しようとする区域間に差圧が発生し、シャッターカーテンが膨らんでしまって、シャッターカーテン端部とガイドレールとの間に摩擦が発生してシャッターカーテンの閉鎖ができずに防火区画を形成できないおそれがある。
【0003】
そこで、通気性を有し、散水を受けることで気密性・耐火性を奏するシートから耐火スクリーンを構成し、降下中のシャッターカーテンは通気性を有する一方、全閉状態のシャッターカーテンに気密性・耐火性を付与するようにシャッターカーテンの降下及び散水を制御する技術が(非従来技術)、本出願人らによって研究されている。また、前記技術とは目的が異なるものの、防火ないし防煙用のスクリーンに散水を行うものが特許文献1乃至3に記載されている。
【0004】
通気性を備えたスクリーンに散水して気密性・耐火性(遮熱性)を得るためには、スクリーンにまんべんなく水を散布する必要がある。しかしながら、気密性・耐火性(遮熱性)を得るために大量の水が必要となるのであれば、大きな貯水タンクが必要となる等の不具合がある。
【特許文献1】特開昭52−139247
【特許文献2】特開昭53−120896
【特許文献3】実開平5−78256
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、より少量の散水によって、遮煙性能・遮炎性能を奏することができる耐火スクリーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を達成するために本発明が採用した技術手段は、通気性を備えた布構造を有し、少なくとも一方の面に散水を受けることで気密性・耐火性を奏するスクリーンであって、前記スクリーンの散水を受ける面には、スクリーン幅方向に延出する畝状部が、スクリーン高さ方向に間隔を存して複数形成されており、前記散水を受ける面はスクリーン高さ方向に凹凸状の断面形状を備えている、耐火スクリーン、である。一つの好ましい態様では、凹凸状の断面形状は、波形状の断面形状である。スクリーン幅方向に延出する畝状部は、必ずしも水平状に延出する畝状部に限定されるものではなく、傾斜状に延出するものであっても、全体としてスクリーン幅方向に延出するものも含む。一つの態様では、畝状部は、スクリーンの全幅に亘って延出するが、畝状部は、スクリーン幅方向の一部(例えば、畝状部の端部がガイドレールまでは及んでいるが、スクリーン端縁には達していない)に延出するものでもよい。また、より少量の散水によってまんべんなく水がスクリーンに行渡るようにするには、一方の面に散水を行う場合であっても、両面に(すなわち、散水を受ける面及び散水を受けない面にも)前記畝状部が形成されることが望ましい。
【0007】
スクリーン幅方向に延出する各畝状部は、一つの繊維から形成されていても、あるいは、複数の繊維(細い糸)を束ねたり、密集させて形成してもよい。一つの好ましい態様では、前記布構造は、複数の緯糸と複数の経糸とからなり、前記緯糸は経糸に比べて幅広で肉厚の部材から形成されており、前記緯糸は、スクリーン高さ方向に間隔を存して幅方向に延出しており、前記緯糸が前記畝状部を形成している。
【0008】
一つの好ましい態様では、前記畝状部は吸水性部材からなる。緯糸が畝状部を形成するものでは、緯糸が吸水性部材からなる。後述する実施形態では、吸水性部材としてパルプが採用されるが、吸水繊維として市場で入手可能な繊維からなる吸水性部材を採用することができる。また、耐火スクリーンを構成する布構造において、畝状部以外の部分を形成する繊維が吸水性を備えていてもよいことはもちろんである。
【0009】
本発明に係る耐火スクリーンが用いられる防火防煙システムは、スクリーンとスクリーンの下端に装着された座板とからなり、火災時に降下し、着床して開口部を閉鎖するシャッターカーテンと、シャッターカーテンに散水する散水手段と、火災時にシャッターカーテンの降下及び散水手段による散水を制御する制御手段と、からなる。一つの好ましい態様では、前記制御手段は、降下中のシャッターカーテンは通気性を有する一方全閉状態のシャッターカーテンに気密性・耐火性を付与するように、シャッターカーテンの降下及び散水を制御する。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、スクリーンの散水を受ける面には、スクリーン幅方向に延出する畝状部が、スクリーン高さ方向に間隔を存して複数形成されており、前記散水を受ける面(散布面)はスクリーン高さ方向に凹凸状の断面形状を備えているので、より少量の散水によってまんべんなく水が行渡り、遮煙性能・遮炎性能を奏することができる。
【0011】
第1に、スクリーンの面に散水された水のスクリーンの散布面に沿う降下速度を、散布面が平滑面の場合に比べて、遅延させることができ、必要厚の水膜をより安定に形成することができ、水膜を形成するまでの水量及び形成された水膜を維持するための水量を削減することができる。従来のように、スクリーンの散水を受ける面が平滑面であると、水の落下速度が速く、相当量の水がスクリーンに保持されずに落下することになる。
【0012】
第2に、スクリーン幅方向に延出する複数の畝状部間には、スクリーン幅方向に延出する溝部(凹部)が形成されるので、散布地点から下方に流れる水をスクリーン幅方向にも仕向けることができ、水膜がスクリーン高さ方向のみならず、スクリーン幅方向にも形成されていく。
【0013】
畝状部を吸水性部材から形成したものでは、散水によって、散布面に水膜が形成されることに加えて、同時に、畝状部が速やかに吸水するので、良好に、気密性・耐火性を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[A]防火防煙システム
本発明に係る防火防煙システムの構成について説明する。防火防煙システムはシートシャッター装置から構成されており、建物開口部を開閉するシート状のシャッターカーテン1と、建物開口部の両端に立設されており、シャッターカーテン1の幅方向両端部をそれぞれ受け入れて案内する一対のガイドレール2と、シャッターカーテン1の上端が連結してあり、開口部幅方向に延出する巻取シャフト3と、建物開口部の上方に配設され、巻取シャフト3を内装するシャッターケース4と、を有する。シャッターカーテン1は、スクリーン10と、スクリーン10の幅方向左右両端に上下方向に間隔を存して設けた複数の抜け止めガイド体11と、スクリーン10の下端に設けた鋼製の座板部5と、からなる。
【0015】
スクリーン10は、通気性を有し、散水を受けることで気密性・耐火性を奏するシートから形成されている。通常、スクリーン10は、小面積のシートを複数枚縫着することで形成されている。スクリーン10の構成については後に詳述する。スクリーン10の下端の座板5は水を溜めることができる形状ないし構造を有している。より具体的には、座板5は、底壁50と側壁51とを有し、上方が開口状であり、座板内部が貯留部52を形成することで、水を貯留可能に構成されている。このものにおいて、垂直板状部53に貫通孔を貫設することで、垂直板状部53によって前後に区画された一方の区画から他方の区画へ貯留水が移動できるようにしてもよい。こうすることで、散水口71を一側に設けた場合でも前後区画で均等に水を貯留することができる。座板5の貯留部52に散水された水が貯留することで座板5へ水の重量が付加される。散水によって開口部を閉鎖するスクリーンに気密性・耐火性が付与される。貯留部52を備えた座板5について説明したが、本発明のスクリーン10の下端に設けられる座板は、所定の重量を備えた貯留部を有しない座板でもよい。
【0016】
防火防煙システムは、さらに、火災検知手段6、散水手段7と、火災検知に基づくシャッターカーテン1の下降、散水手段7による散水を制御する制御手段8、とを備えている。火災検知手段6として例示される煙感知器が火災時の煙を感知すると、火災検知信号が制御手段8に送信され、制御手段8は、所定の手順に従って、シャッターカーテン1の下降、散水手段7による散水を行う。制御手段8は、シャッターカーテン1の下降、散水手段7による散水を個別に制御する複数の制御手段から構成されていてもよい。
【0017】
巻取シャフト3は開閉機9によって回転駆動されるようになっているが、1つの態様では、シャッターカーテン1の下降はシャッターカーテン1の座板5の自重で行い、シャッターカーテン1の上昇を開閉機9で行うようになっている。シャッターカーテン1が巻取シャフト3に巻装されてシャッターケース4内に収納されている時には巻取シャフト3の回動は規制されており、火災検知手段6により火災検知信号が制御手段8に送信されると、制御手段8から開閉機9への信号によって、巻取りシャフト3の回動規制を解除することで、シャッターカーテン1が座板5の自重で降下するようにしている。尚、シャッターカーテン1の下降を電動駆動で行うようにしてもよい。
【0018】
散水手段7は、図示しない水供給源(例えば、貯水タンク)と、水の供給パイプ70と、供給パイプ70の先端に形成された散水口(ノズル)71と、からなり、散水口71は、天井面からシャッターカーテン1の降下経路に仕向けられている。供給パイプ70の途中にはバルブ72が設けてあり、バルブ72は通常時は閉状態にあり、制御手段8からの信号によってバルブ72が開状態となって、散水口71から散水が行われる。散水手段7は、シャッターカーテン1の長さ方向に沿って配設された複数の散水口を有しており、シャッターカーテン1全体に水を散水するようになっている。散水口の数、配置態様、仕向け方向、形状等は最適なものから適宜選択される。図示の例では、シャッターカーテン1の降下経路の前後に散水口71が設けてあり、シャッターカーテン1の両側面に散水を行うようにしているが、散水口71を一側に設けたものでもよい。シャッターカーテン1全体が通気性を有し、散水を受けることで気密性・耐火性を奏するシート(このようなシートは散水前には耐火性が低いものが多いと考えられる)から構成される場合には、シャッターケース4内においても散水手段7Aを設けることが望ましい。また、煙感知器によって火災が発生した側を検知し、火災が発生した側のみ散水するようにしてもよい。シャッターカーテン1の上端部位(全閉状態でもケース4内に位置している)を耐火クロスから構成することで、ケース4内の散水手段を省略することも可能である。バルブ72は水量可変バルブであってもよく、例えば、制御手段に内蔵されたタイマによって、所定時間毎に散水口71から散水される水量を増加させてもよい。また、制御手段8は、シャッターカーテン1の着床後に、散水手段7による散水を開始するものでも、シャッターカーテン1の着床前(ある程度降下した後)に、散水手段7による散水を開始するものでもよい。
【0019】
シャッターカーテン降下時には、スクリーン10は通気性を備えているので、機械排煙等によって、区画しようとする区域間に差圧が発生しようとしても、スクリーン10が空気を通すことで、良好にシャッターカーテン1を降下させて開口部を閉鎖することができる。シャッターカーテン降下後は、散水によってスクリーン10が吸水あるいは含水することで、気密性が向上して遮煙性能が良好となる。また、スクリーン10が吸水あるいは含水することで耐火性能も良好となる。シャッターカーテン降下後は、座板5の貯留部52に水が溜まるので、座板5に水の重量が付加され、シャッターカーテン1による区画域間で差圧が発生してシャッターカーテン1が膨らもうとしても座板5が持ち上がることがなく、座板5と床面との間に防火上問題となるような隙間の発生を防止し、良好な防火・防煙性能を維持することができる。
【0020】
[B]スクリーンの構造
スクリーン10は、通気性を有し、散水を受けることで気密性・耐火性を奏するシートから形成されている。スクリーンの構造の説明の前に、本発明に係るスクリーンを規定する用語について説明する。
【0021】
「通気性」とは、シャッターカーテン降下時に、差圧が発生するような場合であっても、シートを通して空気を流動させることで、シャッターカーテンが膨らむことがなく、良好にシャッターカーテンを降下させることができる程度の通気性をいう。この場合において、スクリーンは全体として通気性を有していれば、一部に通気性を有しない部分を含んでいてもよい。スクリーンの吊り元側(開口部全閉時にケース内にある部分)は通気性を有していなくてもよい。
【0022】
「耐火性」は、火災時に、火災の熱によってシートが燃えることなく防火区画を形成して開口部を閉鎖する防火システムとしての機能を担保できる程度の耐火性である。「耐火性」には、シート自体が耐火性を有する場合と、それ自体では耐火性を有しないシートが含水することで耐火性を有する場合とが含まれる。「耐火性を奏する」には、散水前の状態で所定の耐火性を有するシートが散水によりさらに耐火性が向上する場合を含む。シートが耐火性を備えることは、シートが遮熱性を備えることの前提条件である。ここで、「遮熱性」とは、空間を区画したシートが、一側の空間から他側の空間への熱の伝達を遮断する性能を意味するものである。本発明では、シートが含水することで遮熱性を奏するものである。
【0023】
本発明における「気密性」とは、防火防煙システムとしての機能を奏する程度の気密性を言い、一つの指標では、防火規定関連告示に基づく遮煙性能を満たす程度の気密性である。具体的には、建設省告示第2564号の別記に規定された遮煙性能試験方法において、合格基準(圧力差が1平方メートル当たり2キログラムの場合における遮煙性能試験の結果、測定値のいずれについても、毎分1平方メートル当たり0.2立方メートル以下である)を満たすような気密性である。通気性を有するシートが気密性を有するようになる機構については、幾つか考えられ、シートがシート表面の通気孔に水膜を形成するように吸水する場合、シートが吸水することで膨張するような構造を有しており、膨張によって通気孔が塞がれる場合、等がある。
【0024】
本発明では、通気性を有し、少なくとも一方の面に散水を受けることで気密性・耐火性を奏するスクリーンにおいて、前記スクリーンの散水を受ける面には、スクリーン幅方向に延出する畝状部が、スクリーン高さ方向に間隔を存して複数形成されており、前記散水を受ける面はスクリーン高さ方向に凹凸状の断面形状を備えている。このようなスクリーンを形成する布構造については、スクリーン幅方向に延出する畝状部を形成できるものであれば、織物、編物、組物、レース、網、その他の布構造であってもよい。織物、編物、組物、レース、網のような糸を組み合わせることにより形成される布構造においては、組織を形成する糸間に通気孔が形成される。また、スクリーン幅方向に延出する畝状部を備え、かつ通気性を備えているものであれば、不織布からなる布構造を採用することもできる。
【0025】
通気性を備えた布構造は、散水を受けることで気密性・耐火性を奏するものであれば、当該布構造を形成する部材の材質は限定されない。布構造を形成する繊維は、繊維自体が吸水性を備えていてもよく、あるいは/および、布構造が全体として吸水性(含水性、保水性)を備えていてもよい。好ましい態様では、畝状部は、吸水性繊維から形成され、吸水性繊維としてはパルプが例示される。また、布構造において、畝状部以外の部分を形成する繊維として、ポリアクリレート系繊維、ポリエステル、これらの混合繊維、が例示される。
【0026】
凹凸状の断面形状の実施形態として、図2乃至図4に波形状の断面形状を備えたスクリーンを示す。図2から図4にいくにしたがって、スクリーン10を形成する布構造の組織が、粗目から細目になる。スクリーン10のいわゆる網目の寸法は、散水前の通気性、散水後の気密性・耐火性等を考慮して当業者において適宜選択され得る。例えば、網目の大きさを変更することで散水によって形成された水膜が破壊し始める差圧を変えることができ、よって、漏煙開始圧力を制御することができる。
【0027】
図2乃至図4に示すように、スクリーン10は、複数の緯糸10Aと複数の経糸10B、10B´、10B´´とからなる布構造であり、緯糸10Aは経糸10B、10B´、10B´´に比べて幅広で肉厚の部材から形成されている。ここで、緯糸10Aの幅とは、図2におけるA方向、すなわち、スクリーンの高さ方向であり、スクリーン幅方向を意味するものではない。緯糸10Aの厚さとは、図2におけるB方向、すなわち、スクリーンの厚さ方向を意味する。好ましくは、緯糸10Aは吸水性繊維からなる。
【0028】
緯糸10Aは、スクリーン高さ方向に間隔を存してスクリーン幅方向に延出しており、緯糸10Aは、スクリーン幅方向に延出する畝状部を形成している。図2乃至図4の右側の断面図に示すように、スクリーン10の両面はスクリーン高さ方向に連続する波形状の断面形状を備えている。したがって、断面波形状のスクリーン10の面に散水が行われると、散水された水は、波形状の散布面に沿って下方に伝わるため、散水された水の降下速度を、散布面が平滑面の場合に比べて、遅延させることができ、必要厚の水膜をより安定に形成することができ、水膜を形成するまでの水量及び形成された水膜を維持するための水量を削減することができる。
【0029】
また、幅広かつ肉厚の緯糸10Aは、スクリーン幅方向に延出する複数の畝状部を形成しており、高さ方向に隣り合う緯糸10A間には、スクリーン10の幅方向に延出する溝部(凹部)10Cが形成されている。したがって、散布地点から下方に流れる水をスクリーン幅方向にも仕向けることができ、水膜がスクリーン高さ方向のみならず、スクリーン幅方向にも形成される。
【0030】
一つの好ましい態様では、緯糸10Aは、吸水性の良好な紐状のパルプからなり、経糸10B、10B´、10B´´はポリエステル糸からなる。緯糸10Aは、好ましい態様では、幅:1〜3mm程度、厚さ:0.5mm〜2mm程度である。経糸10B、10B´、10B´´は、好ましい態様では、直径:0.1〜0.5mm程度である。スクリーン幅方向に延出する緯糸10Aのスクリーン高さ方向の間隔は、好ましい態様では、1〜3mmである。図示の例では、複数の緯糸10Aは高さ方向に等間隔で形成されている。
【0031】
一つの態様では、緯糸10A(畝状部)は、スクリーン10の全幅に亘って設けてあるが、スクリーン10の幅方向に部分的に緯糸10A(畝状部)を設けたものでも効果はある。また、一つの態様では、緯糸10A(畝状部)は、少なくとも、スクリーン10の幅方向の両端部位であって、ガイドレール2内に位置する部位まで延出している(スクリーン10の全幅に亘って設けたものを含む)。こうすることで、散水した水が回り難いスクリーン幅方向端部に水を仕向けることができる。さらに、このものにおいて、畝状部の長さ方向両端部を覆うようにシート12を設けて、スクリーン表面を平らにして、スクリーンとガイドレールとの密着度を向上させて気密性を確保することが望ましい。さらに、当該シートを吸水性が良い繊維から形成して、散水された水を速やかに浸透させて、スクリーン幅方向端部に行渡らせるようにすることが望ましい。
【0032】
図2乃至図4に記載されたスクリーン10の布構造は、組織を形成する糸間に通気孔10Dが形成されており、シャッターカーテン降下時には、機械排煙等によって、区画しようとする区域間に差圧が発生しようとしても、スクリーン10が空気を通すことで、良好にシャッターカーテン1を降下させて開口部を閉鎖することができる。図2においては、幅方向に延出する緯糸10Aと高さ方向に延出する経糸10Bとで囲まれる空間が通気孔10Dを形成しているが、図3、図4のように組織の目が細かくなると、経糸10B´、10B´´同士で囲まれる空間も通気孔10Dを形成している。
【0033】
シャッターカーテン降下後に、スクリーン10に対して散水を行うと、スクリーン10が保水ないし含水することで通気孔10Dに水膜が形成されることに加えて、同時に、緯糸10A(畝状部)が速やかに吸水するので、良好に、気密性・耐火性を奏することができる。より具体的には、スクリーン10の面に散水された水のスクリーンの散布面に沿う降下速度を、散布面が平滑面の場合に比べて、遅延させることができ、必要厚の水膜をより安定に形成することができ、水膜を形成するまでの水量及び形成された水膜を維持するための水量を削減することができる。さらに、スクリーン幅方向に延出する複数の緯糸10A(畝状部)間には、スクリーン幅方向に延出する溝部(凹部)10Cが形成されているので、散布地点から下方に流れる水をスクリーン幅方向にも仕向けることができ、水膜がスクリーン高さ方向のみならず、スクリーン幅方向にも形成されていく。また、スクリーン10に対する散水は、スクリーン10の両面から行っても、スクリーン10の片面から行うものでもよい。
【0034】
凹凸状の断面形状の他の実施形態を図6に示す。図6(A)では、スクリーン10は、複数の緯糸10aと複数の経糸10bとからなる布構造であり、緯糸10aは経糸10bに比べて幅広で肉厚の部材から形成されている。緯糸10aは、スクリーン高さ方向に間隔を存してスクリーン幅方向に延出しており、緯糸10aは、スクリーン幅方向に延出する畝状部を形成している。緯糸10aは断面視縦長の矩形状であり、スクリーン10の両面はスクリーン高さ方向に連続する凹凸状の断面形状を備えている。図6(B)では、スクリーン10は、複数の緯糸10a´と複数の経糸10b´とからなる布構造であり、緯糸10a´は経糸10b´に比べて幅広で肉厚の部材から形成されている。緯糸10a´は、スクリーン高さ方向に間隔を存してスクリーン幅方向に延出しており、緯糸10a´は、スクリーン幅方向に延出する畝状部を形成している。緯糸10a´は断面視菱形状であり、スクリーン10の両面はスクリーン高さ方向に連続する凹凸状の断面形状を備えている。
【産業上の利用可能性】
【0035】
火災時に建物開口部を閉鎖する防火設備に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】防火防煙システムを構成する耐火スクリーンの正面図であり、ガイドレールが2点鎖線で示して有る。
【図1A】図1におけるシャッターカーテンを示す正面図である。畝状部は省略してある。
【図2】本発明に係るスクリーンの布構造を示す図である。
【図3】本発明に係るスクリーンの布構造を示す図である。
【図4】本発明に係るスクリーンの布構造を示す図である。
【図5】防火防煙システムの概略全体図である。
【図6】他の実施形態に掛かるスクリーンの布構造を示す部分縦断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 シャッターカーテン
2 ガイドレール
5 座板
10 スクリーン
10A、10a、10a´ 緯糸
10B、10B´、10B´´、10b、10b´ 経糸
10C 溝部(凹部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性を備えた布構造を有し、少なくとも一方の面に散水を受けることで気密性・耐火性を奏するスクリーンであって、
前記スクリーンの散水を受ける面には、スクリーン幅方向に延出する畝状部が、スクリーン高さ方向に間隔を存して複数形成されており、前記散水を受ける面はスクリーン高さ方向に凹凸状の断面形状を備えている、耐火スクリーン。
【請求項2】
前記凹凸状の断面形状は、波形状の断面形状である、請求項1に記載の耐火スクリーン。
【請求項3】
前記布構造は、複数の緯糸と複数の経糸とからなり、前記緯糸は経糸に比べて幅広で肉厚の部材から形成されており、前記緯糸は、スクリーン高さ方向に間隔を存して幅方向に延出しており、前記緯糸が前記畝状部を形成している、請求項1,2いずれかに記載の耐火スクリーン。
【請求項4】
前記畝状部は吸水性部材からなる、請求項1乃至3いずれかに記載の耐火スクリーン。
【請求項5】
前記布構造は、糸の組み合わせから形成されており、前記布構造を形成する糸間に通気孔が形成されており、散水により前記通気孔に水膜が形成される、請求項1乃至4いずれかに記載の耐火スクリーン。



【図1】
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【図1A】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−297782(P2008−297782A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−144362(P2007−144362)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【出願人】(307038540)三和シヤッター工業株式会社 (273)
【Fターム(参考)】