耐火性に優れた床構造
【課題】耐火性能を高めた床構造を提供することにある。
【解決手段】上面材10および下面材11と、前記上面材10および下面材11を連結する連結部材12を備えた床構造において、上面材10および下面材11間の空間3に、消火性液体封入パック17を配設した耐火性に優れた床構造とする。前記の消火性液体封入パック17は、水等の消火性を有する液体20を詰めた火災時破損可能な袋体とする。消火性液体封入パック17における袋体を、合成樹脂製袋体又はゴム製袋体或いは布製袋体とした。
【解決手段】上面材10および下面材11と、前記上面材10および下面材11を連結する連結部材12を備えた床構造において、上面材10および下面材11間の空間3に、消火性液体封入パック17を配設した耐火性に優れた床構造とする。前記の消火性液体封入パック17は、水等の消火性を有する液体20を詰めた火災時破損可能な袋体とする。消火性液体封入パック17における袋体を、合成樹脂製袋体又はゴム製袋体或いは布製袋体とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の耐火構造の他、船等の耐火・防火性能が求められる構造、特に耐火性を高めた床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、3階建て以上の建築物(共同住宅,病院,ホテル等)については、建築基準法に基づき所定の耐火性能を有する耐火構造でなければならない。
例えば建築物の場合、一般に、構造用鋼材は、使用される場所により、より高い耐火性能が要求される。例えば、高層建築物の柱、あるいは梁として使用される場合に、最上階から数えて1階以上4階まででは、1時間の耐火性能が、同様に数えて5階以上14階まででは、2時間の耐火性能が、同様に数えて15階以上では3時間の耐火性能が要求されている。鉄骨構造においては前記以外にも使用される場所により、30分防火性能等の防火性能が要求されている。
さらに具体的に、床では、非損傷性(構造耐力上支障のある変形、溶融、破損その他の損傷を生じないものであること)あるいは遮熱性(加熱以外の面の温度を可燃物が発火する恐れのある温度以上に上昇しないものであること)について、準耐火の建築物では45分、高性能準耐火の建築物では1時間または2時間の耐火性能が要求される。また、屋根あるいは外壁については、遮炎性(屋外に火炎を出す原因となる亀裂その他の損傷を生じないものであること)について、準耐火の建築物では30分または45分の防・耐火性能が、耐火の建築物では、1時間または2時間の耐火性能が要求されている。
構造用鋼材等の鋼材を使用した建築物における鋼材は、400℃で常温強度の約2/3に強度が低下し、耐火鋼の場合では、600℃において常温強度の約2/3の強度を確保することが知られているが、火災時においてこれら鋼材について、極力強度低下を生じないようにすることが望まれる。
このようなことから、床構造にも耐火性能(遮熱性,遮炎性,非損傷性)を確保させる必要があり、鉄骨構造であっても床には合成デッキプレートが用いられる。床を鋼製化した場合、合成デッキプレートよりも剛性・強度に優れるため、重量を半減することが可能となり、構造物全体のコストダウンが可能となる。
しかし、鋼材は熱せられやすく、また熱伝導性も高いために、床構造に求められる耐火性能のうち、遮熱性が著しく低下するという問題が生じる。そのため、床構造にも、遮熱性を確保する方策が必要である。
前記の点を改善できる技術として、従来、デッキプレートあるいは床下部プレート等の下床材の上側に空間部を形成して水を溜める構造とする技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−13595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の場合は、デッキプレートあるいは床下部プレート等の下床材(下弦材)の上側に直に水を溜める構造であるので、構造が複雑になると共に、下層階への水の漏洩を防止することが非常に困難で漏洩を生じる恐れがあるという問題がある。
また、前記の場合には、下床材(下弦材)に対して全周溶接が必要になる恐れが高く、高い溶接技術が必要になると共に、地震時等において亀裂が生じた場合には、水浸しになる恐れもあり、しかも施工が非常に困難であり、さらに施工後の管理も高度の管理を必要とし、管理コストも高くなり、重量も重くなるという問題があった。
本発明は前記の問題を有利に解消した耐火性に優れた床構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の課題を有利に解決するために、第1発明の耐火性に優れた床構造では、上面材および下面材と、前記上面材および下面材を連結する連結部材を備えた床構造において、上面材および下面材間の空間に、消火性液体封入パックを配設したことを特徴とする。
第2発明では、第1発明の耐火性に優れた床構造において、消火性液体封入パックは、水等の消火性を有する液体を詰めた火災時破損可能な袋体からなることを特徴とする。
第3発明では、第1発明又は第2発明の耐火性に優れた床構造において、消火性液体封入パックは、火災時において所定の温度範囲で破損可能にされ、消化性液体の下面材上への流出により、床の温度上昇を抑制可能にされていることを特徴とする。
第4発明では、第1発明〜第3発明のいずれかの耐火性に優れた床構造において、消火性液体封入パックにおける袋体を、合成樹脂製袋体又はゴム製袋体或いは布製袋体としたことを特徴とする。
第5発明では、第1発明〜第4発明のいずれかの耐火性に優れた床構造において、床下面材の下表面に、下表面の赤外線反射率を0.4〜1.0に高めた反射板を取り付けたことを特徴とする。
第6発明では、第1発明〜第5発明のいずれかの耐火性に優れた床構造において、反射板は、めっき仕上げ、又は研磨処理、或いは金属箔の取付けにより赤外線反射率を高めた反射板とされていることを特徴とする。
第7発明では、第5発明又は第6発明の耐火性に優れた床構造において、反射板の板厚寸法が、0.06mm以上〜0.4mm以下とされていることを特徴とする。
第8発明では、第1発明〜第7発明のいずれかの耐火性に優れた床構造において、床の下面材の下表面側に断熱材を取り付け、さらにその断熱材の下表面に、下表面の赤外線反射率を0.4〜1.0に高めた反射板を取り付けたことを特徴とする。
第9発明では、第1発明〜第8発明のいずれかの耐火性に優れた床構造において、床下方に天井材が配設されていることを特徴とする。
第10発明では、第1発明〜第9発明のいずれかの耐火性に優れた床構造において、床は、鋼製床又は木製床とされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
第1発明によると、上面材および下面材間の空間に、消火性液体封入パックを配設したので、火災時において消火性液体封入パックが破損することで、水あるいは消火液などの消火性を有する液体が流出することで、床を冷却する冷却効果を発揮することができる。
また、上面材および下面材間の空間に、消火性液体封入パックを配設する簡単な構造であり、しかも床構造側を水漏れしないような止水構造とする必要がないので、経済的な耐火床構造とすることができ、また、パックを空間内において下面材上に載置する簡単な構造であるので、構造が簡単であると共に施工が容易である。さらに、従来の場合に比べて軽量である等の効果が得られる。
また、消火性液体封入パックが設けられていることで、上下階間での遮音効果を発揮することもできる。
なお、火災時における消火性液体封入パックの破損により、下面材に孔が設けられる場合あるいは床版間の隙間等から消火性液体の下階側への散布を生じると、下階側の火災の消火を促進又は抑制することもできる。
第2発明によると、消火性液体封入パックは、水等の消火性を有する液体を詰めた火災時破損可能な袋体からなるので、火災時において確実に消火性液体封入パックを破損させて、消火性を有する液体を流出させることができる等の効果が得られる。
第3発明によると、消火性液体封入パックは、火災時において所定の温度範囲で破損可能にされ、消化性液体の下面材上への流出により、床の温度を低下可能にされているので、例えば、常温時より高い70℃〜200℃の範囲において、確実に消火性液体封入パックを破損させて、消化性液を下面材上へ流出させて、床の温度を低下させたり、温度上昇を抑制したりすることができる。
第4発明によると、消火性液体封入パックにおける袋体を、合成樹脂製袋体又はゴム製袋体或いは布製袋体としたので、安価な袋体を用いた安価な耐火床構造とすることができる等の降下が得られる。
第5発明によると、床下面材の下表面に、下表面の赤外線反射率を0.4〜1.0に高めた反射板を取り付けたので、反射板の表面の赤外線反射率を高めることにより、室内側からの火災時に、火炎の輻射熱を反射して床の温度上昇を遅延することができる。
第6発明によると、反射板は、めっき仕上げ、又は研磨処理、或いは金属箔の取付けにより赤外線反射率を高めた反射板とされているので、容易に赤外線反射率を高めることができ、これにより輻射熱を反射して自らの温度上昇を遅延させることができ、その結果、床の温度上昇を遅延させることができる。
第7発明によると、反射板の板厚寸法を0.06mm以上にすることで作業性を確保し、0.4mm以下にすることで重量増によるコストアップを抑制できる。作業性およびコストを低減して床の耐火性能を向上させることができる。
第8発明によると、床の下面材の下表面側に断熱材を取り付け、さらにその断熱材の下表面に、下表面の赤外線反射率を0.4〜1.0に高めた反射板を取り付けたので、床の下表面側に断熱材を、その下表面側に反射板を取り付けることにより、断熱材の断熱性能と床下用金属板の遮炎性能が発揮され、床の温度上昇を遅延することができる。
第9発明によると、第1発明〜第8発明のいずれかの耐火性に優れた床構造において、床下方に天井材が配設されているので、床の下面に天井材を覆うことにより、天井材の遮熱性が発揮され、天井材に亀裂が入ったり乾燥収縮して隙間が生じたりするまで、床が直接火炎に熱せられるのを防止できる。
第10発明によると、床は、鋼製床又は木製床とされているので、床を安価な鋼製床あるいは木製床とすることができ、いずれの床であっても、これらに消火性液体封入パックを空間部に配置して、鋼製床又は木製床の耐火性能を高めることができる等の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第1実施形態の床構造を示す縦断正面図である。
【図2】(a)は、図1に示す床部分の縦断側面図、(b)は(a)の変形形態を示す縦断側面図、(c)は(a)のさらに変形形態を示す縦断側面図、(d)は平面形態を示す図である。
【図3】本発明の第2実施形態の耐火性に優れた床構造を示す縦断正面図である。
【図4】本発明の第3実施形態の耐火性に優れた床構造を示す縦断正面図である。
【図5】本発明の第4実施形態の耐火性に優れた床構造を示す縦断正面図である。
【図6】本発明の第5実施形態の耐火性に優れた床構造を示す縦断正面図である。
【図7】本発明の第6実施形態の耐火性に優れた床構造を示す縦断正面図である。
【図8】本発明の第7実施形態の耐火性に優れた床構造を示す縦断正面図である。
【図9】本発明の第8実施形態の耐火性に優れた床構造を示す縦断正面図である。
【図10】本発明の第9実施形態の耐火性に優れた床構造を示す縦断正面図である。
【図11】本発明の第10実施形態の耐火性に優れた床構造を示す縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本発明を図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0009】
図1には、本発明の第1実施形態の耐火性に優れた床構造が示されている。この形態では、H形鋼あるいはI形鋼などの鋼製梁材1に渡って、鋼製床版パネルからなる鋼製床4が形成されている。
この形態では、鋼製上面板からなる上面材10と鋼製下面板からなる下面材11とが、これらを連結する鋼製縦リブ等の複数の横架材や折板材等からなる連結部材12が横方向に配置されて溶接または固着具により固定された鋼製床4とされている。
また、この形態では、前記の鋼製下面材11が床下用金属板2を兼ねており、鋼製下面材11の下面の赤外線反射率としては、0.8以上0.95以下(好ましくは、1.0以下)となるように、亜鉛めっき、錫めっきや鉛めっきニッケルめっき等の金属めっき処理、あるいは研磨処理、あるいは鋼製下面板11の下面にステンレスやアルミニウムなどの金属箔を取り付けることにより、赤外線反射率を高めている。
前記の上面材10と下面材11間の空間3に、水等の消火性を有する液体を詰めた火災時破損可能な袋体16からなる消火性液体封入パック17が、前記下面材11に載置されている。
前記の消火性を有する液体(消火性液体20)としては、水のみを使用してもよく、或いは、炭酸カリウムを主成分とする消火液としてもよく、水にリン酸塩、硫酸塩、界面活性材等の潤滑材を加えた消化液としてもよく、液体ゾルであってもよく、流動性を有する液体であればよい。常温時において流動性の低い液体で、火災時において昇温して鋼流動性の液体に変化する材料であってもよい。
消火性液体封入パック17に用いる袋体としては、耐火性能の低い材料でよく、図2(a)に示すように、ほぼ床パネルの前後方向の長さと同様な寸法で、両端部が閉塞処理された、直線状合成樹脂製チューブ(管)、ゴム製チューブ(管)、あるいは布製チューブ(管)あるいはこれらの複合材料からなるチューブ等の直線状等の袋体としてもよい。前記の消火性液体封入パック17として、図2(b)に示すように、長手方向の一端部に給液用バルブ18を、他端側に排気用バルブ19を有する形態として、一端側から消火性液体20を注入しながら他端側の排気用バルブ19を開いて排気して注入しもよく、図2(c)に示すように、一端側に給液用バルブ18を有する形態でもよい。
消火性液体封入パック17の平面配置形態としては、図2(d)に示すように、直線状に配置してもよく、これ以外にも、リング状、立方体状等でもよく、前記の空間3に配置可能な形態であれば、適宜の形態でよい。したがって、図示を省略するが、床パネルの全体にわたって、連続する形態であってもよく、この場合に交互に折り返す形態であってもよい。また、図示のように、長尺の空間3ごとにそれぞれ独立して消火性液体封入パック17を下面材11上に配置する形態としてもよい。
実施形態のように、消火性液体封入パック17を床4における上面材10と下面材11の間の空間3における下面材11上に載置する形態は、安価で容易であるが、上面材10の下面又は連結部材12の側面或いはこれらの両面に支持部材(図示を省略)設けて消火性液体封入パック17を支持することで、空間3に配置するようにしてもよい。
【0010】
前記のような消火性液体封入パック17を空間3に配置して、消火性床版パネルユニット21として、工場において製作してもよく、あるいは上面材10と下面材11と連結部材12を備えた床版パネルユニット21を梁材1に渡って設置した後、消火性液体封入パック17を空間3内の下面材11上に現場作業により配置するようにしてもよい。或いは適宜のチューブ等の袋体を空間3内の下面材11上に配置したのち、チューブ等の袋体内に、消火性液体20を注入してもよい。
【0011】
前記のような消火性液体封入パック17を床版パネルの空間3内の下面材11上に備えた場合には、下階側からの火災時には、チューブ等の袋体16が、溶融、燃焼等により破損することで、消火性液体20が流出し、下面材11を直接冷却すると共に蒸発することで、床版パネルの温度を低下又は温度上昇を抑制することができる。また、床版パネル間の隙間或いは、下面材11に適宜設けた孔(図示を省略)から、消火性液体20を下階側に散布することで、火災の消火を促進あるいは抑制することができ、建物の耐火性能を向上させることができる。
前記のような構造であると、上面材10および下面材11間の空間3内の下面材11上に、消火性液体封入パック17を配設する簡単な構造であり、しかも床構造側を水漏れしないような止水構造とする必要がないので、経済的な耐火床構造とすることができ、また、消火性液体封入パック17を空間3内において下面材11上に載置する簡単な構造であるので、構造が簡単であると共に施工が容易である。また、消火性液体封入パック17を配置することで、下面材11の振動あるいは床4の振動を抑制する共に、上下階間の遮音効果がある。遮音効果を高める上では、消火性液体封入パック17を接触させて蜜に配置するのが好ましい。
【0012】
前記のチューブ等の袋体16を破損させる温度としては、常温より高い70℃あるいはその温度付近〜200℃の範囲において破損させるようにするのが望ましい。破損させる場合の形態としては、火災時における温度上昇により破損させるのが望ましい。図示を省略するが、前記のチューブ等の袋体16に熱感知弁を付属させ、熱感知弁における伸縮式感熱素子が火災時に感熱することで、その伸縮式感熱素子により弁を動作させて、所定温度の時に自動的に開弁して、消火性液体20を流出させるようにしてもよい。
【0013】
ここで、前記の袋体16を高分子化合物の材料とする場合には、クロロプレンゴムあるいはシリコーンゴム等の軟質又は硬質ゴム製材料、ポリエチレン(融点130℃)、ポリプロピレン(融点170℃)、ナイロン6(融点225℃)、ナイロン66(融点267℃)、プリエチレンテレフタラート(融点260℃)、ポリ塩化ビニル(融点180℃)、ポリ塩化ビニリデン(融点212℃)、ポリテトラフルオロエチレン(四フッ化エチレン)(融点320℃)、ポリフッ化ビニリデン(融点210℃)、ポリメタクリル酸メチル(140℃で熱変形を生じる形態のものでもよい)、ポリスチレン(融点230℃)等の材料を適宜用いることでもよい。
【0014】
次に、前記実施形態を基本にした他の実施形態について説明する。前記実施形態と同様な要素については、同様な符号を付している。以下の実施形態で共通する点は、床下方に天井材が配設されていることで、床の下面を天井材により覆うことにより、天井材の遮熱性が発揮され、天井材に亀裂が入ったり乾燥収縮して隙間が生じたりするまで、床が直接火炎に熱せられるのを防止できるようにした形態である。
【0015】
図3には、本発明の第2実施形態の耐火性に優れた床構造が示されている。
この形態では、鋼製上面材10と鋼製下面材11とが、これらの間に連結部材12としての多数の鋼製縦リブ12が横方向に間隔をおいて多数配置されて溶接または固着具により固定された鋼製床4とされ、鋼製床4に吊材5が連結されて、天井材6が吊り下げ支持されている。また、この形態では、前記の鋼製下面材11が反射板として床下用金属板2を兼ねており、鋼製下面材11の下面の赤外線反射率としては、0.8以上0.95以下(好ましくは、1.0以下)となるように、亜鉛めっき、錫めっきや鉛めっきニッケルめっき等の金属めっき処理、あるいは研磨処理、あるいは鋼製下面板11の下面にステンレスやアルミニウムなどの金属箔を取り付けることにより、赤外線反射率を高めている。
【0016】
前記の吊材5は、角波形鋼板などの鋼板からなる床下用金属板2に取り付けられる鋼製の保持金具7と、これに連結される鋼製の棒状連結金具8と、天井材6に取り付けられる鋼製のハンガー(吊金具)9等により構成されている。
【0017】
この形態では、床4から吊り下げられた複数の吊材5により、天井材6が床4の下方に支持される場合であるが、根太を用いて天井材6を支持する方法や、鋼製梁材1の下面側に天井材6を直接取り付ける方法等があり、いずれの場合を用いてもかまわない。
【0018】
図4には、本発明の第3実施形態の耐火性に優れた床構造が示されている。この形態と、前記第2実施形態との相違する部分は、床がトラス構造の鋼製床とされ、鋼製上面材10と鋼製下面板11とが、これらの間に交互に傾斜する方向が異なるように配置された鋼製傾斜縦リブ13が横方向に間隔をおいて多数配置されて溶接または固着具により固定された鋼製床4とされている。そして、前記の鋼製傾斜縦リブ13下面側間の鋼製下面板11上に消火性液体封入パック17を配置し、適宜、鋼製傾斜縦リブ13の下端側に孔が設けられ(図示を省略)、また、鋼製傾斜縦リブ13の上面側にも消火性液体封入パック17が鋼製下面板11上に載置されている。
【0019】
図5には、本発明の第4実施形態の耐火性に優れた床構造が示されている。この形態と、図3に示す第2実施形態と相違する部分は、この形態では、天井材6の上面側に、天井用金属板14が載置されて、図示省略のビス又は溶接等により天井材6に固着されている。この形態は、天井材6の上面側に天井用金属板14を設けてもよいことを示すための代表形態を示す図であり、前記の各実施形態に適用することもできる。
天井材6の上側に天井用金属板14を取り付けたことにより、天井材6が乾燥収縮して亀裂が生じても、天井用金属板14により遮炎性が発揮され、床が直接火炎に炙られるのを防止できる。
なお、本発明を実施する場合、天井材6を金属板製とすることにより、後記の実施形態のように、天井材6により天井用金属板14を兼ねて、天井用金属板14を省略することも可能であるが、天井材6と天井用金属板14を併用するほうが望ましい。
【0020】
図6には、本発明の第5実施形態の耐火性に優れた床構造が示されている。この形態と、図5に示す第4実施形態と相違する部分は、この形態では、天井材6の下面側に、天井用金属板14が当接されて、図示省略のビス等により天井材6に固着されている。この形態は、天井材6の下面側に天井用金属板14を設けてもよいことを示すための代表形態を示す図であり、前記の各実施形態に適用することもできる。
天井材6の下側に天井用金属板14を取り付けたことにより、天井材6が乾燥収縮して亀裂が生じても、天井用金属板14により遮炎性が発揮され、床が直接火炎に炙られるのを防止できる。さらに、天井材6が木製等である場合、天井材6の下側に天井用金属板14を取り付けたことにより、天井材が乾燥収縮して亀裂が生じ、天井材6自身で構造が成り立たなくなったとしても、天井用金属板14により、天井材6が脱落する現象を防止することができ、天井材6の断熱性能を発揮させ続けることができる。なお、図示を省略するが、天井材6の表裏両面に天井用金属板14をビスなどの固着具により固定してもよく、この場合には、天井材6をその表裏両面の金属板により補強することができると共に、一方の天井用金属板14が損傷しても、他方の天井用金属板14により遮炎性が発揮され、床4が直接火炎に炙られるのを防止できる。
【0021】
図5および図6の実施形態からわかるように、天井材6の少なくとも一方の表面に天井用金属板14を取り付けたことにより、天井材6が乾燥収縮して亀裂が生じても、天井用金属板14により遮炎性が発揮され、床4が直接火炎に炙られるのを防止できる。
前記の天井用金属板14としては、薄鋼板の下表面を、亜鉛めっき、錫めっきや鉛めっき等の金属めっき処理、あるいは研磨処理されることで赤外線反射率を0.8以上に高めた高反射率鋼板でもよく、鋼板の下表面側に、ステンレスやアルミニウムなどの金属箔を取り付けることにより、容易に赤外線反射率を高めることができ、輻射熱を反射して自らの温度上昇を遅延することができる。前記のように、天井用金属板14の下表面側を、めっき処理を施したり、研磨処理を施したり、ステンレスなどの金属箔を取り付けたりすることにより、赤外線反射率を、0.8から0.95程度に容易に向上させることができる。
前記の天井用金属板14を天井材6の上面または下面あるいは上下両面に設ける場合には、天井用金属板14の上面もしくは下面あるいは両面に、めっき処理を施したり、研磨処理を施したり、ステンレスなどの金属箔を取り付けた天井用金属板14を天井材6に設置するようにしてもよい。
天井用金属板14の少なくとも下表面の赤外線反射率を、0.4以上1.0以下にすることにより、下面側からの火災による赤外線および輻射熱を反射することができ、床側の温度上昇を遅延させることができる。
【0022】
前記実施形態のように、天井材6の少なくとも一方(好ましくは、天井材6の下面側)に取り付けた天井用金属板14は、その板厚が、0.06mm以上にすることで、これを下回る場合に比べて天井用金属板14の取り扱い性が向上し、作業性を確保することができ、0.4mm以下とすることで、重量増によるコストアップを抑制することができる。天井用金属板14の板厚が、0.06mmを下回るようになると、剛性が低下することになり、取り扱い性が低下するばかりでなく、製造コストが高価になるため、前記の天井用金属板14の板厚としては、0.06mm以上0.4mm以下、好ましくは、0.1mm以上0.23mm以下に設定すると、取り扱い性が容易であると共に製造コストの低減を図ることができる。
【0023】
図7および図8には、本発明の第6および第7実施形態の耐火性に優れた床構造が示されている。これら形態は、床4の下側に床4とは別個の床下用金属板2を設ける場合に、床4と床下用金属板2との間に断熱材15を介して設けてもよいことを示すための代表形態である。この形態では、床4の下表面側に、断熱材の粘性を利用した吹き付けにより断熱材を設けてもよく、あるいは断熱板等の乾式の断熱材を床4下面にビスまたはスタッドボルトと定着金具等の固着具により固定することで断熱材15を設け、その断熱材15の下表面側に床下用金属板2を取り付けることにより、断熱材15の断熱性能と床下用金属板2の遮炎性能が発揮され、例えば、下階側からの火災等による、床4の温度上昇を遅延させることができるようにした形態である。前記以外の構造は、図5および図6に示す第4および第5実施形態と同様である。床下用金属板2は、床4又は断熱材15に固定される。
【0024】
床パネル等の床4の下表面側に取り付ける断熱材15は、耐火兼断熱材であると耐火性能が高まり望ましい。さらに断熱材15は、300℃以上の高温下で、自己消火性を有する断熱材であるのが好ましい。300℃以上の高温下で、自己消火性を有する断熱材としては、ロックウール板が安価で好ましいが、ロックウール板以外にも、例えば、セラミックボード等を用いても良い。
【0025】
前記の自己消火性とは、炎にさらされている間は燃えるが、炎から離されれば消火する性質である。例えばJIS K 6911に規定するA法において、炎を取り去った後に、試験片の燃焼が180秒以内に消え、かつ燃焼した長さが25mm以上100mm以下であった材料を用いても良い。
【0026】
断熱材15の下表面側に取り付けられた床下用金属板2の上下表面のうち、少なくとも下表面の赤外線反射率を高めることにより反射板としても機能させ、火災時において、輻射熱を反射して自らの温度上昇を遅延することができ、すなわち、最終的には、床4の温度上昇を遅延することができる。
【0027】
図9には、本発明の第8実施形態の耐火性に優れた床構造が示されている。この形態では、図7または図8に示す形態において、天井用金属板14を省略した形態であるが、その他の構成は、前記実施形態と同様である。このように床下用金属板2を設けても、床の下面に赤外線反射率を0.4以上1.0以下に高めた金属板を設置することで、天井材からの輻射熱を反射させることができ、天井材6が損傷した後も、床下用金属板2により、火災の輻射熱を反射して、床の温度上昇を遅延させることができる。赤外線反射率が0.4未満では、火災の輻射熱の反射効率が低く、床の温度上昇の遅延が弱くなるため、反射板として用いる場合には、赤外線反射率を0.4以上1.0以下に高めた金属板を用いるとよい。
【0028】
前記各実施形態のように、床4の下面側に取り付けた床下用金属板2は、その板厚が、0.06mmを下回るようになると、剛性が低下することになり、取り扱い性が低下するばかりでなく、製造コストが高価になり、0.4mmを超えると重量増によるコストアップとなるため、前記の床下用金属板2の板厚としては、0.06mm以上0.4mm以下、好ましくは、0.1mm以上0.23mm以下に設定すると、取り扱い性が容易であると共に製造コストの低減を図ることができる。
【0029】
なお、図9に示すような床4の下表面に断熱材15を介して床下用金属板2を設ける形態の変形形態として、図10に示す第9実施形態のように、単に床4の下に床下用金属板2を設け、その下に断熱材15を設ける形態としてもよいが、図9に示す形態の方が、床下用金属板2が設けられているので耐火性能が高い。
【0030】
図11には、本発明の第10実施形態の耐火性に優れた床構造が示されている。この形態では、床が木製の床とされ、その下側に高反射床下用鋼板2が設けられている構造とされている。
また、この形態では、木製上面材10と木製下面材11とが、これらの間に木製縦リブ12が横方向に間隔をおいて多数配置されて固着具により固定された木製床4とされ、その木製床4の下面側に、高反射床下用鋼板2が、ビス等の固着具により木製床4に固定されている。
また、前記実施形態と同様に、木製縦リブ12間の木製下面材11上に、消火性液体封入パック17が載置されている。消火性液体封入パック17の構成としては、前記各実施形態と同様である。
前記の高反射床下用鋼板2としては、鋼板の下表面を、亜鉛めっき、錫めっきやニッケルめっき等の金属めっき処理、あるいは研磨処理されることで赤外線反射率を0.8以上に高めた高反射率鋼板でもよく、鋼板の下表面側に、赤外線反射率の高いステンレスやアルミニウムなどの金属箔を取り付けることにより、容易に赤外線反射率を高めることができ、輻射熱を反射して自らの温度上昇を遅延することができる。前記のように、金属板の下表面側を、めっき処理を施したり、ステンレスなどの金属箔を取り付けたりすることにより、赤外線反射率を、0.8から0.95程度に容易に向上させることができる。またステンレスなどの金属箔を用いる場合、直接木製下面板11の下表面に金属箔を取り付けることで、高反射床下用鋼板2を省略することもできる。
高反射床下用鋼板2の板厚が、0.06mmを下回るようになると、剛性が低下することになり、取り扱い性が低下するばかりでなく、製造コストが高価になり、0.4mmを超えると重量増によるコストアップとなるため、前記の高反射床下用鋼板2の板厚としては、0.06mm以上0.4mm以下、好ましくは、0.1mm以上0.23mm以下に設定すると、取り扱い性が容易であると共に製造コストの低減を図ることができる。
そして、前記の木製床4に天井材6が複数の吊材5により吊り下げ支持されている。
【0031】
前記実施形態によると、下記のような効果を奏することができる。
(1)面材および下面材間の空間に、消火性液体封入パックを配設したので、火災時において消火性液体封入パックが破損することで、水あるいは消火液などの消火性を有する液体が流出することで、床を冷却したり、床の温度上昇を抑制することができる。
また、上面材および下面材間の空間に、消火性液体封入パックを配設する簡単な構造であり、しかも床構造側を水漏れしないような止水構造とする必要がないので、経済的な耐火床構造とすることができ、また、パックを空間内において下面材上に載置する簡単な構造であるので、構造が簡単であると共に施工が容易である。さらに、従来の場合に比べて軽量である等の効果が得られる。
また、消火性液体封入パックが設けられていることで、上下階間での遮音効果を発揮することもできる。
(2)床の下面に天井材を覆うことにより、天井材の遮熱性が発揮され、天井材に亀裂が入ったり乾燥収縮して隙間が生じたりするまで、床が直接火炎に熱せられるのを防止できる。また、床の下面に赤外線反射率を0.4以上1.0以下に高めた金属板と設置することで、天井材からの輻射熱を反射させることができ、さらに天井材が崩壊しても、火災の輻射熱を反射させることができるため、床の温度上昇を遅延することができる。
(3)床の下側の床下用金属板の下表面をめっき仕上げ、あるいは研磨処理したり、あるいは金属箔を取り付けることにより、容易に赤外線反射率を高めることができ、これにより輻射熱を反射して自らの温度上昇を遅延させることができ、その結果、床の温度上昇を遅延させることができる。
(4)床の下表面に取り付けられた床下用金属板は、その板厚を0.06mm以上にすることで作業性を確保し、0.4mm以下にすることで重量増によるコストアップを抑制でき、作業性およびコストを低減して床の耐火性能を向上させることができる。
(5)天井材の上下面のうち少なくとも一方の表面に天井用金属板を取り付けたことにより、天井材が乾燥収縮して亀裂が生じても、天井用金属板により遮炎性が発揮され、床が直接火炎に炙られるのを防止できる。
(6)天井材の上下面のうち少なくとも一方(好ましくは、天井材の下面側)に取り付けた天井用金属板の表面の赤外線反射率を高めることにより、室内側からの火災時に、火炎の輻射熱を反射して床の温度上昇を遅延することができる。
(7)天井材の上下面のうち少なくとも一方(好ましくは、天井材の下面側)に取り付けた天井用金属板の下表面をめっき仕上げ、あるいは研磨処理、あるいは金属箔を取り付けることにより、容易に赤外線反射率を高めることができ、輻射熱を反射して床の温度上昇を遅延させることができる。
(8)天井材の上下面のうち少なくとも一方(好ましくは、天井材の下面側)に取り付けた天井用金属板は、その板厚を0.06mm以上にすることで作業性を確保し、0.4mm以下にすることで重量増によるコストアップを抑制できる。作業性およびコストを低減して床の耐火性能を向上させることができる。
(9)床の下表面側に断熱材を、その下表面側に床下用金属板を取り付けることにより、断熱材の断熱性能と床下用金属板の遮炎性能が発揮され、床の温度上昇を遅延することができる。
(10)床パネル等の床の下表面側に取り付ける断熱材に、自己消火性を有する断熱材(ロックウール材等)を用いることにより、火災終了後(鎮火後)に速やかに断熱材の燃焼が終了し、床の温度上昇を抑制することができる。
(11)断熱材の下表面側に取り付けられた床下用金属板の上下表面のうち、少なくとも下表面の赤外線反射率を高めることにより、輻射熱を反射して自らの温度上昇を遅延することができ、その結果、床の温度上昇を遅延することができる。
(12)断熱材の下表面に取り付けられた天井材の下側の床下用金属板の下表面をめっき仕上げ、あるいは研磨処理したり、あるいは前記床下用金属板の下表面に金属箔を取り付けることにより、容易に赤外線反射率を高めることができ、輻射熱を反射して自らの温度上昇を遅延させることができ、その結果、床の温度上昇を遅延させることができる。
(13)断熱材の下表面に取り付けられた床の下表面に取り付けられた床下用金属板は、その板厚を0.06mm以上にすることで作業性を確保し、0.4mm以下にすることで重量増によるコストアップを抑制でき、作業性およびコストを低減して床の耐火性能を向上させることができる。
(14)前記のように、本発明の床構造は、金属製の床構造、木製の床構造にも適用可能であり、経済的に床の耐火性能を向上させることができる。
【0032】
本発明を実施する場合、断熱材15としては、グラスウール製の断熱材を使用するようにしてもよい。また、本発明を実施する場合、床下用金属板としては、ステンレス板を使用するようにしてもよい。
【0033】
なお、本発明を実施する場合、前記各実施形態において、天井材6を金属板製とすることにより、天井材6により天井用金属板14を兼ねて、天井用金属板14を省略することも可能である。例えば、図3〜図11において、天井材6を金属板製の天井材6とし、金属板製の天井材6の上下表面のうち、少なくとも前記金属板製の天井材6の下表面の赤外線反射率を0.4以上1.0以下に高められていると、天井用金属板14を省略することができる。このようにしてもよいが、天井材6の赤外線反射率を高める加工を行わないで、これにステンレス板(あるいは箔)等の薄い金属部材を取り付けるようにした方が安価で経済的であるから、天井材6とこれに取り付けられる天井用金属板14を併用するほうが望ましい。
【符号の説明】
【0034】
1 鋼製梁材
2 床下用金属板(または高反射床下用鋼板)
3 空間
4 床
5 吊材
6 天井材
7 保持金具
8 棒状連結金具
9 ハンガー
10 木製上面材または鋼製上面材
11 木製下面材または鋼製下面材
12 連結部材、木製縦リブ、鋼製縦リブ
13 傾斜連結部材、鋼製傾斜縦リブ
14 天井用金属板
15 断熱材
16 袋体
17 消火性液体封入パック
18 給液用バルブ
19 排気用バルブ
20 消火性液体
21 消火性床版パネルユニット
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の耐火構造の他、船等の耐火・防火性能が求められる構造、特に耐火性を高めた床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、3階建て以上の建築物(共同住宅,病院,ホテル等)については、建築基準法に基づき所定の耐火性能を有する耐火構造でなければならない。
例えば建築物の場合、一般に、構造用鋼材は、使用される場所により、より高い耐火性能が要求される。例えば、高層建築物の柱、あるいは梁として使用される場合に、最上階から数えて1階以上4階まででは、1時間の耐火性能が、同様に数えて5階以上14階まででは、2時間の耐火性能が、同様に数えて15階以上では3時間の耐火性能が要求されている。鉄骨構造においては前記以外にも使用される場所により、30分防火性能等の防火性能が要求されている。
さらに具体的に、床では、非損傷性(構造耐力上支障のある変形、溶融、破損その他の損傷を生じないものであること)あるいは遮熱性(加熱以外の面の温度を可燃物が発火する恐れのある温度以上に上昇しないものであること)について、準耐火の建築物では45分、高性能準耐火の建築物では1時間または2時間の耐火性能が要求される。また、屋根あるいは外壁については、遮炎性(屋外に火炎を出す原因となる亀裂その他の損傷を生じないものであること)について、準耐火の建築物では30分または45分の防・耐火性能が、耐火の建築物では、1時間または2時間の耐火性能が要求されている。
構造用鋼材等の鋼材を使用した建築物における鋼材は、400℃で常温強度の約2/3に強度が低下し、耐火鋼の場合では、600℃において常温強度の約2/3の強度を確保することが知られているが、火災時においてこれら鋼材について、極力強度低下を生じないようにすることが望まれる。
このようなことから、床構造にも耐火性能(遮熱性,遮炎性,非損傷性)を確保させる必要があり、鉄骨構造であっても床には合成デッキプレートが用いられる。床を鋼製化した場合、合成デッキプレートよりも剛性・強度に優れるため、重量を半減することが可能となり、構造物全体のコストダウンが可能となる。
しかし、鋼材は熱せられやすく、また熱伝導性も高いために、床構造に求められる耐火性能のうち、遮熱性が著しく低下するという問題が生じる。そのため、床構造にも、遮熱性を確保する方策が必要である。
前記の点を改善できる技術として、従来、デッキプレートあるいは床下部プレート等の下床材の上側に空間部を形成して水を溜める構造とする技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−13595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の場合は、デッキプレートあるいは床下部プレート等の下床材(下弦材)の上側に直に水を溜める構造であるので、構造が複雑になると共に、下層階への水の漏洩を防止することが非常に困難で漏洩を生じる恐れがあるという問題がある。
また、前記の場合には、下床材(下弦材)に対して全周溶接が必要になる恐れが高く、高い溶接技術が必要になると共に、地震時等において亀裂が生じた場合には、水浸しになる恐れもあり、しかも施工が非常に困難であり、さらに施工後の管理も高度の管理を必要とし、管理コストも高くなり、重量も重くなるという問題があった。
本発明は前記の問題を有利に解消した耐火性に優れた床構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の課題を有利に解決するために、第1発明の耐火性に優れた床構造では、上面材および下面材と、前記上面材および下面材を連結する連結部材を備えた床構造において、上面材および下面材間の空間に、消火性液体封入パックを配設したことを特徴とする。
第2発明では、第1発明の耐火性に優れた床構造において、消火性液体封入パックは、水等の消火性を有する液体を詰めた火災時破損可能な袋体からなることを特徴とする。
第3発明では、第1発明又は第2発明の耐火性に優れた床構造において、消火性液体封入パックは、火災時において所定の温度範囲で破損可能にされ、消化性液体の下面材上への流出により、床の温度上昇を抑制可能にされていることを特徴とする。
第4発明では、第1発明〜第3発明のいずれかの耐火性に優れた床構造において、消火性液体封入パックにおける袋体を、合成樹脂製袋体又はゴム製袋体或いは布製袋体としたことを特徴とする。
第5発明では、第1発明〜第4発明のいずれかの耐火性に優れた床構造において、床下面材の下表面に、下表面の赤外線反射率を0.4〜1.0に高めた反射板を取り付けたことを特徴とする。
第6発明では、第1発明〜第5発明のいずれかの耐火性に優れた床構造において、反射板は、めっき仕上げ、又は研磨処理、或いは金属箔の取付けにより赤外線反射率を高めた反射板とされていることを特徴とする。
第7発明では、第5発明又は第6発明の耐火性に優れた床構造において、反射板の板厚寸法が、0.06mm以上〜0.4mm以下とされていることを特徴とする。
第8発明では、第1発明〜第7発明のいずれかの耐火性に優れた床構造において、床の下面材の下表面側に断熱材を取り付け、さらにその断熱材の下表面に、下表面の赤外線反射率を0.4〜1.0に高めた反射板を取り付けたことを特徴とする。
第9発明では、第1発明〜第8発明のいずれかの耐火性に優れた床構造において、床下方に天井材が配設されていることを特徴とする。
第10発明では、第1発明〜第9発明のいずれかの耐火性に優れた床構造において、床は、鋼製床又は木製床とされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
第1発明によると、上面材および下面材間の空間に、消火性液体封入パックを配設したので、火災時において消火性液体封入パックが破損することで、水あるいは消火液などの消火性を有する液体が流出することで、床を冷却する冷却効果を発揮することができる。
また、上面材および下面材間の空間に、消火性液体封入パックを配設する簡単な構造であり、しかも床構造側を水漏れしないような止水構造とする必要がないので、経済的な耐火床構造とすることができ、また、パックを空間内において下面材上に載置する簡単な構造であるので、構造が簡単であると共に施工が容易である。さらに、従来の場合に比べて軽量である等の効果が得られる。
また、消火性液体封入パックが設けられていることで、上下階間での遮音効果を発揮することもできる。
なお、火災時における消火性液体封入パックの破損により、下面材に孔が設けられる場合あるいは床版間の隙間等から消火性液体の下階側への散布を生じると、下階側の火災の消火を促進又は抑制することもできる。
第2発明によると、消火性液体封入パックは、水等の消火性を有する液体を詰めた火災時破損可能な袋体からなるので、火災時において確実に消火性液体封入パックを破損させて、消火性を有する液体を流出させることができる等の効果が得られる。
第3発明によると、消火性液体封入パックは、火災時において所定の温度範囲で破損可能にされ、消化性液体の下面材上への流出により、床の温度を低下可能にされているので、例えば、常温時より高い70℃〜200℃の範囲において、確実に消火性液体封入パックを破損させて、消化性液を下面材上へ流出させて、床の温度を低下させたり、温度上昇を抑制したりすることができる。
第4発明によると、消火性液体封入パックにおける袋体を、合成樹脂製袋体又はゴム製袋体或いは布製袋体としたので、安価な袋体を用いた安価な耐火床構造とすることができる等の降下が得られる。
第5発明によると、床下面材の下表面に、下表面の赤外線反射率を0.4〜1.0に高めた反射板を取り付けたので、反射板の表面の赤外線反射率を高めることにより、室内側からの火災時に、火炎の輻射熱を反射して床の温度上昇を遅延することができる。
第6発明によると、反射板は、めっき仕上げ、又は研磨処理、或いは金属箔の取付けにより赤外線反射率を高めた反射板とされているので、容易に赤外線反射率を高めることができ、これにより輻射熱を反射して自らの温度上昇を遅延させることができ、その結果、床の温度上昇を遅延させることができる。
第7発明によると、反射板の板厚寸法を0.06mm以上にすることで作業性を確保し、0.4mm以下にすることで重量増によるコストアップを抑制できる。作業性およびコストを低減して床の耐火性能を向上させることができる。
第8発明によると、床の下面材の下表面側に断熱材を取り付け、さらにその断熱材の下表面に、下表面の赤外線反射率を0.4〜1.0に高めた反射板を取り付けたので、床の下表面側に断熱材を、その下表面側に反射板を取り付けることにより、断熱材の断熱性能と床下用金属板の遮炎性能が発揮され、床の温度上昇を遅延することができる。
第9発明によると、第1発明〜第8発明のいずれかの耐火性に優れた床構造において、床下方に天井材が配設されているので、床の下面に天井材を覆うことにより、天井材の遮熱性が発揮され、天井材に亀裂が入ったり乾燥収縮して隙間が生じたりするまで、床が直接火炎に熱せられるのを防止できる。
第10発明によると、床は、鋼製床又は木製床とされているので、床を安価な鋼製床あるいは木製床とすることができ、いずれの床であっても、これらに消火性液体封入パックを空間部に配置して、鋼製床又は木製床の耐火性能を高めることができる等の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第1実施形態の床構造を示す縦断正面図である。
【図2】(a)は、図1に示す床部分の縦断側面図、(b)は(a)の変形形態を示す縦断側面図、(c)は(a)のさらに変形形態を示す縦断側面図、(d)は平面形態を示す図である。
【図3】本発明の第2実施形態の耐火性に優れた床構造を示す縦断正面図である。
【図4】本発明の第3実施形態の耐火性に優れた床構造を示す縦断正面図である。
【図5】本発明の第4実施形態の耐火性に優れた床構造を示す縦断正面図である。
【図6】本発明の第5実施形態の耐火性に優れた床構造を示す縦断正面図である。
【図7】本発明の第6実施形態の耐火性に優れた床構造を示す縦断正面図である。
【図8】本発明の第7実施形態の耐火性に優れた床構造を示す縦断正面図である。
【図9】本発明の第8実施形態の耐火性に優れた床構造を示す縦断正面図である。
【図10】本発明の第9実施形態の耐火性に優れた床構造を示す縦断正面図である。
【図11】本発明の第10実施形態の耐火性に優れた床構造を示す縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本発明を図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0009】
図1には、本発明の第1実施形態の耐火性に優れた床構造が示されている。この形態では、H形鋼あるいはI形鋼などの鋼製梁材1に渡って、鋼製床版パネルからなる鋼製床4が形成されている。
この形態では、鋼製上面板からなる上面材10と鋼製下面板からなる下面材11とが、これらを連結する鋼製縦リブ等の複数の横架材や折板材等からなる連結部材12が横方向に配置されて溶接または固着具により固定された鋼製床4とされている。
また、この形態では、前記の鋼製下面材11が床下用金属板2を兼ねており、鋼製下面材11の下面の赤外線反射率としては、0.8以上0.95以下(好ましくは、1.0以下)となるように、亜鉛めっき、錫めっきや鉛めっきニッケルめっき等の金属めっき処理、あるいは研磨処理、あるいは鋼製下面板11の下面にステンレスやアルミニウムなどの金属箔を取り付けることにより、赤外線反射率を高めている。
前記の上面材10と下面材11間の空間3に、水等の消火性を有する液体を詰めた火災時破損可能な袋体16からなる消火性液体封入パック17が、前記下面材11に載置されている。
前記の消火性を有する液体(消火性液体20)としては、水のみを使用してもよく、或いは、炭酸カリウムを主成分とする消火液としてもよく、水にリン酸塩、硫酸塩、界面活性材等の潤滑材を加えた消化液としてもよく、液体ゾルであってもよく、流動性を有する液体であればよい。常温時において流動性の低い液体で、火災時において昇温して鋼流動性の液体に変化する材料であってもよい。
消火性液体封入パック17に用いる袋体としては、耐火性能の低い材料でよく、図2(a)に示すように、ほぼ床パネルの前後方向の長さと同様な寸法で、両端部が閉塞処理された、直線状合成樹脂製チューブ(管)、ゴム製チューブ(管)、あるいは布製チューブ(管)あるいはこれらの複合材料からなるチューブ等の直線状等の袋体としてもよい。前記の消火性液体封入パック17として、図2(b)に示すように、長手方向の一端部に給液用バルブ18を、他端側に排気用バルブ19を有する形態として、一端側から消火性液体20を注入しながら他端側の排気用バルブ19を開いて排気して注入しもよく、図2(c)に示すように、一端側に給液用バルブ18を有する形態でもよい。
消火性液体封入パック17の平面配置形態としては、図2(d)に示すように、直線状に配置してもよく、これ以外にも、リング状、立方体状等でもよく、前記の空間3に配置可能な形態であれば、適宜の形態でよい。したがって、図示を省略するが、床パネルの全体にわたって、連続する形態であってもよく、この場合に交互に折り返す形態であってもよい。また、図示のように、長尺の空間3ごとにそれぞれ独立して消火性液体封入パック17を下面材11上に配置する形態としてもよい。
実施形態のように、消火性液体封入パック17を床4における上面材10と下面材11の間の空間3における下面材11上に載置する形態は、安価で容易であるが、上面材10の下面又は連結部材12の側面或いはこれらの両面に支持部材(図示を省略)設けて消火性液体封入パック17を支持することで、空間3に配置するようにしてもよい。
【0010】
前記のような消火性液体封入パック17を空間3に配置して、消火性床版パネルユニット21として、工場において製作してもよく、あるいは上面材10と下面材11と連結部材12を備えた床版パネルユニット21を梁材1に渡って設置した後、消火性液体封入パック17を空間3内の下面材11上に現場作業により配置するようにしてもよい。或いは適宜のチューブ等の袋体を空間3内の下面材11上に配置したのち、チューブ等の袋体内に、消火性液体20を注入してもよい。
【0011】
前記のような消火性液体封入パック17を床版パネルの空間3内の下面材11上に備えた場合には、下階側からの火災時には、チューブ等の袋体16が、溶融、燃焼等により破損することで、消火性液体20が流出し、下面材11を直接冷却すると共に蒸発することで、床版パネルの温度を低下又は温度上昇を抑制することができる。また、床版パネル間の隙間或いは、下面材11に適宜設けた孔(図示を省略)から、消火性液体20を下階側に散布することで、火災の消火を促進あるいは抑制することができ、建物の耐火性能を向上させることができる。
前記のような構造であると、上面材10および下面材11間の空間3内の下面材11上に、消火性液体封入パック17を配設する簡単な構造であり、しかも床構造側を水漏れしないような止水構造とする必要がないので、経済的な耐火床構造とすることができ、また、消火性液体封入パック17を空間3内において下面材11上に載置する簡単な構造であるので、構造が簡単であると共に施工が容易である。また、消火性液体封入パック17を配置することで、下面材11の振動あるいは床4の振動を抑制する共に、上下階間の遮音効果がある。遮音効果を高める上では、消火性液体封入パック17を接触させて蜜に配置するのが好ましい。
【0012】
前記のチューブ等の袋体16を破損させる温度としては、常温より高い70℃あるいはその温度付近〜200℃の範囲において破損させるようにするのが望ましい。破損させる場合の形態としては、火災時における温度上昇により破損させるのが望ましい。図示を省略するが、前記のチューブ等の袋体16に熱感知弁を付属させ、熱感知弁における伸縮式感熱素子が火災時に感熱することで、その伸縮式感熱素子により弁を動作させて、所定温度の時に自動的に開弁して、消火性液体20を流出させるようにしてもよい。
【0013】
ここで、前記の袋体16を高分子化合物の材料とする場合には、クロロプレンゴムあるいはシリコーンゴム等の軟質又は硬質ゴム製材料、ポリエチレン(融点130℃)、ポリプロピレン(融点170℃)、ナイロン6(融点225℃)、ナイロン66(融点267℃)、プリエチレンテレフタラート(融点260℃)、ポリ塩化ビニル(融点180℃)、ポリ塩化ビニリデン(融点212℃)、ポリテトラフルオロエチレン(四フッ化エチレン)(融点320℃)、ポリフッ化ビニリデン(融点210℃)、ポリメタクリル酸メチル(140℃で熱変形を生じる形態のものでもよい)、ポリスチレン(融点230℃)等の材料を適宜用いることでもよい。
【0014】
次に、前記実施形態を基本にした他の実施形態について説明する。前記実施形態と同様な要素については、同様な符号を付している。以下の実施形態で共通する点は、床下方に天井材が配設されていることで、床の下面を天井材により覆うことにより、天井材の遮熱性が発揮され、天井材に亀裂が入ったり乾燥収縮して隙間が生じたりするまで、床が直接火炎に熱せられるのを防止できるようにした形態である。
【0015】
図3には、本発明の第2実施形態の耐火性に優れた床構造が示されている。
この形態では、鋼製上面材10と鋼製下面材11とが、これらの間に連結部材12としての多数の鋼製縦リブ12が横方向に間隔をおいて多数配置されて溶接または固着具により固定された鋼製床4とされ、鋼製床4に吊材5が連結されて、天井材6が吊り下げ支持されている。また、この形態では、前記の鋼製下面材11が反射板として床下用金属板2を兼ねており、鋼製下面材11の下面の赤外線反射率としては、0.8以上0.95以下(好ましくは、1.0以下)となるように、亜鉛めっき、錫めっきや鉛めっきニッケルめっき等の金属めっき処理、あるいは研磨処理、あるいは鋼製下面板11の下面にステンレスやアルミニウムなどの金属箔を取り付けることにより、赤外線反射率を高めている。
【0016】
前記の吊材5は、角波形鋼板などの鋼板からなる床下用金属板2に取り付けられる鋼製の保持金具7と、これに連結される鋼製の棒状連結金具8と、天井材6に取り付けられる鋼製のハンガー(吊金具)9等により構成されている。
【0017】
この形態では、床4から吊り下げられた複数の吊材5により、天井材6が床4の下方に支持される場合であるが、根太を用いて天井材6を支持する方法や、鋼製梁材1の下面側に天井材6を直接取り付ける方法等があり、いずれの場合を用いてもかまわない。
【0018】
図4には、本発明の第3実施形態の耐火性に優れた床構造が示されている。この形態と、前記第2実施形態との相違する部分は、床がトラス構造の鋼製床とされ、鋼製上面材10と鋼製下面板11とが、これらの間に交互に傾斜する方向が異なるように配置された鋼製傾斜縦リブ13が横方向に間隔をおいて多数配置されて溶接または固着具により固定された鋼製床4とされている。そして、前記の鋼製傾斜縦リブ13下面側間の鋼製下面板11上に消火性液体封入パック17を配置し、適宜、鋼製傾斜縦リブ13の下端側に孔が設けられ(図示を省略)、また、鋼製傾斜縦リブ13の上面側にも消火性液体封入パック17が鋼製下面板11上に載置されている。
【0019】
図5には、本発明の第4実施形態の耐火性に優れた床構造が示されている。この形態と、図3に示す第2実施形態と相違する部分は、この形態では、天井材6の上面側に、天井用金属板14が載置されて、図示省略のビス又は溶接等により天井材6に固着されている。この形態は、天井材6の上面側に天井用金属板14を設けてもよいことを示すための代表形態を示す図であり、前記の各実施形態に適用することもできる。
天井材6の上側に天井用金属板14を取り付けたことにより、天井材6が乾燥収縮して亀裂が生じても、天井用金属板14により遮炎性が発揮され、床が直接火炎に炙られるのを防止できる。
なお、本発明を実施する場合、天井材6を金属板製とすることにより、後記の実施形態のように、天井材6により天井用金属板14を兼ねて、天井用金属板14を省略することも可能であるが、天井材6と天井用金属板14を併用するほうが望ましい。
【0020】
図6には、本発明の第5実施形態の耐火性に優れた床構造が示されている。この形態と、図5に示す第4実施形態と相違する部分は、この形態では、天井材6の下面側に、天井用金属板14が当接されて、図示省略のビス等により天井材6に固着されている。この形態は、天井材6の下面側に天井用金属板14を設けてもよいことを示すための代表形態を示す図であり、前記の各実施形態に適用することもできる。
天井材6の下側に天井用金属板14を取り付けたことにより、天井材6が乾燥収縮して亀裂が生じても、天井用金属板14により遮炎性が発揮され、床が直接火炎に炙られるのを防止できる。さらに、天井材6が木製等である場合、天井材6の下側に天井用金属板14を取り付けたことにより、天井材が乾燥収縮して亀裂が生じ、天井材6自身で構造が成り立たなくなったとしても、天井用金属板14により、天井材6が脱落する現象を防止することができ、天井材6の断熱性能を発揮させ続けることができる。なお、図示を省略するが、天井材6の表裏両面に天井用金属板14をビスなどの固着具により固定してもよく、この場合には、天井材6をその表裏両面の金属板により補強することができると共に、一方の天井用金属板14が損傷しても、他方の天井用金属板14により遮炎性が発揮され、床4が直接火炎に炙られるのを防止できる。
【0021】
図5および図6の実施形態からわかるように、天井材6の少なくとも一方の表面に天井用金属板14を取り付けたことにより、天井材6が乾燥収縮して亀裂が生じても、天井用金属板14により遮炎性が発揮され、床4が直接火炎に炙られるのを防止できる。
前記の天井用金属板14としては、薄鋼板の下表面を、亜鉛めっき、錫めっきや鉛めっき等の金属めっき処理、あるいは研磨処理されることで赤外線反射率を0.8以上に高めた高反射率鋼板でもよく、鋼板の下表面側に、ステンレスやアルミニウムなどの金属箔を取り付けることにより、容易に赤外線反射率を高めることができ、輻射熱を反射して自らの温度上昇を遅延することができる。前記のように、天井用金属板14の下表面側を、めっき処理を施したり、研磨処理を施したり、ステンレスなどの金属箔を取り付けたりすることにより、赤外線反射率を、0.8から0.95程度に容易に向上させることができる。
前記の天井用金属板14を天井材6の上面または下面あるいは上下両面に設ける場合には、天井用金属板14の上面もしくは下面あるいは両面に、めっき処理を施したり、研磨処理を施したり、ステンレスなどの金属箔を取り付けた天井用金属板14を天井材6に設置するようにしてもよい。
天井用金属板14の少なくとも下表面の赤外線反射率を、0.4以上1.0以下にすることにより、下面側からの火災による赤外線および輻射熱を反射することができ、床側の温度上昇を遅延させることができる。
【0022】
前記実施形態のように、天井材6の少なくとも一方(好ましくは、天井材6の下面側)に取り付けた天井用金属板14は、その板厚が、0.06mm以上にすることで、これを下回る場合に比べて天井用金属板14の取り扱い性が向上し、作業性を確保することができ、0.4mm以下とすることで、重量増によるコストアップを抑制することができる。天井用金属板14の板厚が、0.06mmを下回るようになると、剛性が低下することになり、取り扱い性が低下するばかりでなく、製造コストが高価になるため、前記の天井用金属板14の板厚としては、0.06mm以上0.4mm以下、好ましくは、0.1mm以上0.23mm以下に設定すると、取り扱い性が容易であると共に製造コストの低減を図ることができる。
【0023】
図7および図8には、本発明の第6および第7実施形態の耐火性に優れた床構造が示されている。これら形態は、床4の下側に床4とは別個の床下用金属板2を設ける場合に、床4と床下用金属板2との間に断熱材15を介して設けてもよいことを示すための代表形態である。この形態では、床4の下表面側に、断熱材の粘性を利用した吹き付けにより断熱材を設けてもよく、あるいは断熱板等の乾式の断熱材を床4下面にビスまたはスタッドボルトと定着金具等の固着具により固定することで断熱材15を設け、その断熱材15の下表面側に床下用金属板2を取り付けることにより、断熱材15の断熱性能と床下用金属板2の遮炎性能が発揮され、例えば、下階側からの火災等による、床4の温度上昇を遅延させることができるようにした形態である。前記以外の構造は、図5および図6に示す第4および第5実施形態と同様である。床下用金属板2は、床4又は断熱材15に固定される。
【0024】
床パネル等の床4の下表面側に取り付ける断熱材15は、耐火兼断熱材であると耐火性能が高まり望ましい。さらに断熱材15は、300℃以上の高温下で、自己消火性を有する断熱材であるのが好ましい。300℃以上の高温下で、自己消火性を有する断熱材としては、ロックウール板が安価で好ましいが、ロックウール板以外にも、例えば、セラミックボード等を用いても良い。
【0025】
前記の自己消火性とは、炎にさらされている間は燃えるが、炎から離されれば消火する性質である。例えばJIS K 6911に規定するA法において、炎を取り去った後に、試験片の燃焼が180秒以内に消え、かつ燃焼した長さが25mm以上100mm以下であった材料を用いても良い。
【0026】
断熱材15の下表面側に取り付けられた床下用金属板2の上下表面のうち、少なくとも下表面の赤外線反射率を高めることにより反射板としても機能させ、火災時において、輻射熱を反射して自らの温度上昇を遅延することができ、すなわち、最終的には、床4の温度上昇を遅延することができる。
【0027】
図9には、本発明の第8実施形態の耐火性に優れた床構造が示されている。この形態では、図7または図8に示す形態において、天井用金属板14を省略した形態であるが、その他の構成は、前記実施形態と同様である。このように床下用金属板2を設けても、床の下面に赤外線反射率を0.4以上1.0以下に高めた金属板を設置することで、天井材からの輻射熱を反射させることができ、天井材6が損傷した後も、床下用金属板2により、火災の輻射熱を反射して、床の温度上昇を遅延させることができる。赤外線反射率が0.4未満では、火災の輻射熱の反射効率が低く、床の温度上昇の遅延が弱くなるため、反射板として用いる場合には、赤外線反射率を0.4以上1.0以下に高めた金属板を用いるとよい。
【0028】
前記各実施形態のように、床4の下面側に取り付けた床下用金属板2は、その板厚が、0.06mmを下回るようになると、剛性が低下することになり、取り扱い性が低下するばかりでなく、製造コストが高価になり、0.4mmを超えると重量増によるコストアップとなるため、前記の床下用金属板2の板厚としては、0.06mm以上0.4mm以下、好ましくは、0.1mm以上0.23mm以下に設定すると、取り扱い性が容易であると共に製造コストの低減を図ることができる。
【0029】
なお、図9に示すような床4の下表面に断熱材15を介して床下用金属板2を設ける形態の変形形態として、図10に示す第9実施形態のように、単に床4の下に床下用金属板2を設け、その下に断熱材15を設ける形態としてもよいが、図9に示す形態の方が、床下用金属板2が設けられているので耐火性能が高い。
【0030】
図11には、本発明の第10実施形態の耐火性に優れた床構造が示されている。この形態では、床が木製の床とされ、その下側に高反射床下用鋼板2が設けられている構造とされている。
また、この形態では、木製上面材10と木製下面材11とが、これらの間に木製縦リブ12が横方向に間隔をおいて多数配置されて固着具により固定された木製床4とされ、その木製床4の下面側に、高反射床下用鋼板2が、ビス等の固着具により木製床4に固定されている。
また、前記実施形態と同様に、木製縦リブ12間の木製下面材11上に、消火性液体封入パック17が載置されている。消火性液体封入パック17の構成としては、前記各実施形態と同様である。
前記の高反射床下用鋼板2としては、鋼板の下表面を、亜鉛めっき、錫めっきやニッケルめっき等の金属めっき処理、あるいは研磨処理されることで赤外線反射率を0.8以上に高めた高反射率鋼板でもよく、鋼板の下表面側に、赤外線反射率の高いステンレスやアルミニウムなどの金属箔を取り付けることにより、容易に赤外線反射率を高めることができ、輻射熱を反射して自らの温度上昇を遅延することができる。前記のように、金属板の下表面側を、めっき処理を施したり、ステンレスなどの金属箔を取り付けたりすることにより、赤外線反射率を、0.8から0.95程度に容易に向上させることができる。またステンレスなどの金属箔を用いる場合、直接木製下面板11の下表面に金属箔を取り付けることで、高反射床下用鋼板2を省略することもできる。
高反射床下用鋼板2の板厚が、0.06mmを下回るようになると、剛性が低下することになり、取り扱い性が低下するばかりでなく、製造コストが高価になり、0.4mmを超えると重量増によるコストアップとなるため、前記の高反射床下用鋼板2の板厚としては、0.06mm以上0.4mm以下、好ましくは、0.1mm以上0.23mm以下に設定すると、取り扱い性が容易であると共に製造コストの低減を図ることができる。
そして、前記の木製床4に天井材6が複数の吊材5により吊り下げ支持されている。
【0031】
前記実施形態によると、下記のような効果を奏することができる。
(1)面材および下面材間の空間に、消火性液体封入パックを配設したので、火災時において消火性液体封入パックが破損することで、水あるいは消火液などの消火性を有する液体が流出することで、床を冷却したり、床の温度上昇を抑制することができる。
また、上面材および下面材間の空間に、消火性液体封入パックを配設する簡単な構造であり、しかも床構造側を水漏れしないような止水構造とする必要がないので、経済的な耐火床構造とすることができ、また、パックを空間内において下面材上に載置する簡単な構造であるので、構造が簡単であると共に施工が容易である。さらに、従来の場合に比べて軽量である等の効果が得られる。
また、消火性液体封入パックが設けられていることで、上下階間での遮音効果を発揮することもできる。
(2)床の下面に天井材を覆うことにより、天井材の遮熱性が発揮され、天井材に亀裂が入ったり乾燥収縮して隙間が生じたりするまで、床が直接火炎に熱せられるのを防止できる。また、床の下面に赤外線反射率を0.4以上1.0以下に高めた金属板と設置することで、天井材からの輻射熱を反射させることができ、さらに天井材が崩壊しても、火災の輻射熱を反射させることができるため、床の温度上昇を遅延することができる。
(3)床の下側の床下用金属板の下表面をめっき仕上げ、あるいは研磨処理したり、あるいは金属箔を取り付けることにより、容易に赤外線反射率を高めることができ、これにより輻射熱を反射して自らの温度上昇を遅延させることができ、その結果、床の温度上昇を遅延させることができる。
(4)床の下表面に取り付けられた床下用金属板は、その板厚を0.06mm以上にすることで作業性を確保し、0.4mm以下にすることで重量増によるコストアップを抑制でき、作業性およびコストを低減して床の耐火性能を向上させることができる。
(5)天井材の上下面のうち少なくとも一方の表面に天井用金属板を取り付けたことにより、天井材が乾燥収縮して亀裂が生じても、天井用金属板により遮炎性が発揮され、床が直接火炎に炙られるのを防止できる。
(6)天井材の上下面のうち少なくとも一方(好ましくは、天井材の下面側)に取り付けた天井用金属板の表面の赤外線反射率を高めることにより、室内側からの火災時に、火炎の輻射熱を反射して床の温度上昇を遅延することができる。
(7)天井材の上下面のうち少なくとも一方(好ましくは、天井材の下面側)に取り付けた天井用金属板の下表面をめっき仕上げ、あるいは研磨処理、あるいは金属箔を取り付けることにより、容易に赤外線反射率を高めることができ、輻射熱を反射して床の温度上昇を遅延させることができる。
(8)天井材の上下面のうち少なくとも一方(好ましくは、天井材の下面側)に取り付けた天井用金属板は、その板厚を0.06mm以上にすることで作業性を確保し、0.4mm以下にすることで重量増によるコストアップを抑制できる。作業性およびコストを低減して床の耐火性能を向上させることができる。
(9)床の下表面側に断熱材を、その下表面側に床下用金属板を取り付けることにより、断熱材の断熱性能と床下用金属板の遮炎性能が発揮され、床の温度上昇を遅延することができる。
(10)床パネル等の床の下表面側に取り付ける断熱材に、自己消火性を有する断熱材(ロックウール材等)を用いることにより、火災終了後(鎮火後)に速やかに断熱材の燃焼が終了し、床の温度上昇を抑制することができる。
(11)断熱材の下表面側に取り付けられた床下用金属板の上下表面のうち、少なくとも下表面の赤外線反射率を高めることにより、輻射熱を反射して自らの温度上昇を遅延することができ、その結果、床の温度上昇を遅延することができる。
(12)断熱材の下表面に取り付けられた天井材の下側の床下用金属板の下表面をめっき仕上げ、あるいは研磨処理したり、あるいは前記床下用金属板の下表面に金属箔を取り付けることにより、容易に赤外線反射率を高めることができ、輻射熱を反射して自らの温度上昇を遅延させることができ、その結果、床の温度上昇を遅延させることができる。
(13)断熱材の下表面に取り付けられた床の下表面に取り付けられた床下用金属板は、その板厚を0.06mm以上にすることで作業性を確保し、0.4mm以下にすることで重量増によるコストアップを抑制でき、作業性およびコストを低減して床の耐火性能を向上させることができる。
(14)前記のように、本発明の床構造は、金属製の床構造、木製の床構造にも適用可能であり、経済的に床の耐火性能を向上させることができる。
【0032】
本発明を実施する場合、断熱材15としては、グラスウール製の断熱材を使用するようにしてもよい。また、本発明を実施する場合、床下用金属板としては、ステンレス板を使用するようにしてもよい。
【0033】
なお、本発明を実施する場合、前記各実施形態において、天井材6を金属板製とすることにより、天井材6により天井用金属板14を兼ねて、天井用金属板14を省略することも可能である。例えば、図3〜図11において、天井材6を金属板製の天井材6とし、金属板製の天井材6の上下表面のうち、少なくとも前記金属板製の天井材6の下表面の赤外線反射率を0.4以上1.0以下に高められていると、天井用金属板14を省略することができる。このようにしてもよいが、天井材6の赤外線反射率を高める加工を行わないで、これにステンレス板(あるいは箔)等の薄い金属部材を取り付けるようにした方が安価で経済的であるから、天井材6とこれに取り付けられる天井用金属板14を併用するほうが望ましい。
【符号の説明】
【0034】
1 鋼製梁材
2 床下用金属板(または高反射床下用鋼板)
3 空間
4 床
5 吊材
6 天井材
7 保持金具
8 棒状連結金具
9 ハンガー
10 木製上面材または鋼製上面材
11 木製下面材または鋼製下面材
12 連結部材、木製縦リブ、鋼製縦リブ
13 傾斜連結部材、鋼製傾斜縦リブ
14 天井用金属板
15 断熱材
16 袋体
17 消火性液体封入パック
18 給液用バルブ
19 排気用バルブ
20 消火性液体
21 消火性床版パネルユニット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面材および下面材と、前記上面材および下面材を連結する連結部材を備えた床構造において、上面材および下面材間の空間に、消火性液体封入パックを配設したことを特徴とする耐火性に優れた床構造。
【請求項2】
消火性液体封入パックは、水等の消火性を有する液体を詰めた火災時破損可能な袋体からなることを特徴とする請求項1に記載の耐火性に優れた床構造。
【請求項3】
消火性液体封入パックは、火災時において所定の温度範囲で破損可能にされ、消化性液体の下面材上への流出により、床の温度を低下可能にされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐火性に優れた床構造。
【請求項4】
消火性液体封入パックにおける袋体を、合成樹脂製袋体又はゴム製袋体或いは布製袋体としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐火性に優れた床構造。
【請求項5】
床下面材の下表面に、下表面の赤外線反射率を0.4〜1.0に高めた反射板を取り付けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の耐火性に優れた床構造。
【請求項6】
反射板は、めっき仕上げ、又は研磨処理、或いは金属箔の取付けにより赤外線反射率を高めた反射板とされていることを特徴とする請求項5に記載の耐火性に優れた床構造。
【請求項7】
反射板の板厚寸法が、0.06mm以上〜0.4mm以下とされていることを特徴とする請求項5又は6に記載の耐火性に優れた床構造。
【請求項8】
床の下面材の下表面側に断熱材を取り付け、さらにその断熱材の下表面に、下表面の赤外線反射率を0.4〜1.0に高めた反射板を取り付けたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の耐火性に優れた床構造。
【請求項9】
床下方に天井材が配設されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の耐火性に優れた床構造。
【請求項10】
床は、鋼製床又は木製床とされていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の耐火性に優れた床構造。
【請求項1】
上面材および下面材と、前記上面材および下面材を連結する連結部材を備えた床構造において、上面材および下面材間の空間に、消火性液体封入パックを配設したことを特徴とする耐火性に優れた床構造。
【請求項2】
消火性液体封入パックは、水等の消火性を有する液体を詰めた火災時破損可能な袋体からなることを特徴とする請求項1に記載の耐火性に優れた床構造。
【請求項3】
消火性液体封入パックは、火災時において所定の温度範囲で破損可能にされ、消化性液体の下面材上への流出により、床の温度を低下可能にされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐火性に優れた床構造。
【請求項4】
消火性液体封入パックにおける袋体を、合成樹脂製袋体又はゴム製袋体或いは布製袋体としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐火性に優れた床構造。
【請求項5】
床下面材の下表面に、下表面の赤外線反射率を0.4〜1.0に高めた反射板を取り付けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の耐火性に優れた床構造。
【請求項6】
反射板は、めっき仕上げ、又は研磨処理、或いは金属箔の取付けにより赤外線反射率を高めた反射板とされていることを特徴とする請求項5に記載の耐火性に優れた床構造。
【請求項7】
反射板の板厚寸法が、0.06mm以上〜0.4mm以下とされていることを特徴とする請求項5又は6に記載の耐火性に優れた床構造。
【請求項8】
床の下面材の下表面側に断熱材を取り付け、さらにその断熱材の下表面に、下表面の赤外線反射率を0.4〜1.0に高めた反射板を取り付けたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の耐火性に優れた床構造。
【請求項9】
床下方に天井材が配設されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の耐火性に優れた床構造。
【請求項10】
床は、鋼製床又は木製床とされていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の耐火性に優れた床構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−12911(P2012−12911A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153287(P2010−153287)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]