説明

耐火性シリコーンポリマー組成物

以下を含む耐火性組成物:シリコーンポリマー;該組成物の総重量に基づいて5重量%〜30重量%の量の雲母;および該シリコーンポリマーの分解温度より高くかつ該組成物の防火定格温度(fire rating temperature)未満の温度で自己支持セラミック材料の形成を確実にするに十分な限られた量のガラス添加物。自己支持セラミック材料を生成するために必要とされるガラス添加物添加は、好ましくは該組成物の総重量に基づいて0.3重量%〜8重量%であることが判明した。該組成物は、防火壁ライニング(fire wall linings)、防火パーティション(fire partitions)、スクリーン、天井またはライニング、構造的防火(structural fire protection)、防火戸インサート(fire door inserts)、窓またはドアシール(window or door seals)、膨張性シール(intumescent seals)のために形成されるプロダクトに、配電板キャビネット(electrical switchboard cabinet)または電気ケーブルにおいて適用可能である。1つのケーブル適用において、該組成物は、導線(3)と押出成形シース(4)との間の押出成形中間材料(2)として使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、有用な防火バリア特性を有しそして種々の用途に使用され得るポリマー組成物に関する。本発明はまた、このような組成物の調製およびそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
構造物および構成要素の受動的防火は、ますます注目を受けている領域である。この文脈において、用語“受動的(passive)”は、耐火性を付与する材料の使用を意味する。受動的防火システムは、建築業および輸送業の至るところで広く使用されており、そして、熱および/または煙の動きを阻止にすることによって、穴を密封することによって、該システムが適用される構造物の安定性を延長させることによって並びに/或いは炎、熱および煙の通過に対して熱的および/または物理的バリアを作製することによって、典型的に機能する。
【0003】
興味深い1つの特定領域は、電気ケーブル用途である。これらは、典型的に、少なくとも絶縁層によって囲まれている中心の導線からなる。このようなケーブルは、建物における広い用途が見出され、そして実際に家庭、職場および工業用建物におけるほとんど全ての電気回路の基礎を形成している。いくつかの用途(例えば、非常電源回路)において、炎に供された場合でさえ作動しそして回路完全性(circuit integrity)を提供し続けるケーブルについての要求が存在しており、そして、このタイプのケーブルについて広範囲の基準が存在している。これらの基準のいくつかを満たすために、ケーブルは、典型的に、所定の様式でそして特定の時間(例えば、15分、30分、60分、2時間)、特定の温度(例えば、650、750、950、1050℃)まで加熱された場合に、電気回路完全性を少なくとも維持することが要求される。いくつかの場合において、ケーブルは、加熱段階の間、規則的な機械的ショックに供せられる。例えば、それらは、加熱サイクルの後期または加熱段階後のいずれかにおいて、ウォータージェットまたはスプレーに供されるかもしれない。実際の炎において、ケーブルの部品は、持続時間におけるなおより大きな変動のために、恐らくより広範囲の温度に曝され得る。所定の基準を満たすために、ケーブルは、典型的に、試験に渡って回路完全性を維持することが要求される。従って、絶縁体が低伝導性を維持し(高温での長期間の加熱後でさえ)、その形状を維持し、従ってそれが収縮したり亀裂が入ったりせず、そして機械的に強い(特に、ウォータージェットまたはスプレー暴露に起因する機械的ショックから生じるもののような機械的衝撃の間に所定の位置に留まることが要求される場合)ことが重要である。
【0004】
絶縁ケーブルの高温性能を改善する1つの方法は、ガラス繊維で作製されそして雲母でコーティングされたテープでケーブルの導線を巻くことであった。このようなテープは、製造の間に導線の周りに巻かれ、次いで少なくとも1つの絶縁層が適用される。上昇する温度へ曝されると、外部層は分解しそして剥がれるが、ガラス繊維は雲母を所定の位置に保持する。これらのテープは、火災において回路完全性を維持するために有効であることが判明したが、非常に高価である。更に、導線周囲にテープを巻くプロセスは、他のケーブル製造工程と比較して比較的遅く、従って、テープを巻くことはケーブルの全体的な製造を遅め、また費用を加算する。押出し成形によるケーブル製造の間に適用され得え、それによってテープの使用を回避する、耐火性コーティングが望ましい。
【0005】
種々の材料が、構造物および構成要素に耐火性を与えるために使用されている。シリコーンエラストマーに基づく組成物の使用は、広範囲の用途が見出された。しかし、これらの組成物は、炎に曝されるとそれらが粉末状物質に変換されるという付随した不都合を有する傾向にあり、何故ならばシリコーンエラストマーの有機成分が熱分解または燃焼するからである。熱分解または燃焼生成物は揮発し、そしてほとんど固有の強度を有さない無機残渣または灰を残す。この残渣は、一般的に、凝集性(coherent)または自己支持性(self supporting)ではなく、そして実際に、しばしば容易に破壊、移動または崩壊される。この挙動は、受動的防火要素としてシリコーンエラストマーを使用することを弱める。これは、電気ケーブル上の絶縁体として使用されるシリコーンポリマーは、無機テープおよびブレードまたはメタルジャケットのような物理的支持体を用いて、所定の位置に保持および保護されなければならないことを意味する。本発明に従う組成物は、電気導線の周りに物理的に強い凝集性層を形成し得、従って、このような物理的支持体を使用する必要がない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の要旨
本出願人は、シリコーンポリマーおよび雲母を含む耐火性組成物中における低レベルのガラス添加物の存在が、該組成物の加熱時に形成されるセラミックの機械的強度を顕著に改善することを見出した。この文脈において、セラミックは、高温処理(例えば、約300℃超)によって作製される無機非金属固体材料である。
【0007】
従って、1つの局面において、本発明は、以下:
シリコーンポリマー;
組成物の総重量に基づいて5重量%〜30重量%の量の雲母;および
該シリコーンポリマーの分解温度より高くかつ組成物の防火定格温度(fire rating temperature)以下の温度で自己支持セラミック材料(self supporting ceramic material)の形成を確実にするに十分な限られた量のガラス添加物
を含む、耐火性組成物を提供する。
【0008】
別の局面において、以下:
シリコーンポリマー;
組成物の総重量に基づいて5重量%〜30重量%の量の雲母;および
組成物の総重量に基づいて0.3重量%〜8重量%の量のガラス添加物
を含む、組成物が提供される。
【0009】
本発明の更なる局面において、耐火性組成物のポリマー成分は、シリコーンポリマーから本質的になる。この局面によれば、以下:
シリコーンポリマーから本質的になるポリマー成分;
該組成物の総重量に基づいて5重量%〜30重量%の量の雲母;および
該組成物の総重量に基づいて0.3重量%〜8重量%の量のガラス添加物
を含む、耐火性組成物が提供される。
【0010】
ガラス添加物(glass additive)は、良好な機械的特性を有するセラミックの形成を生じさせる温度範囲を拡大し、それによって、受動的防火適用におけるこれらの組成物の性能を改善させる点で特に有効である。それはまた、ガラス添加物を有さない等価の組成物と比較して、得られるセラミックの機械的強度を改善する。雲母のタイプおよび平均粒度は、典型的には、以下に記載されるように、組成物の意図される用途に基づいて選択される。
【0011】
ガラス添加物は、粉末、粒子または繊維のような種々の形態をとり得る。これらの1以上の混合物が使用され得る。好ましくは、該組成物は、粉末または微細粒子の形態のガラスフリット(glass frits)を含む。形態に関わらず、ガラス添加物は、好ましくは、1050℃以下、例えば800℃以下、そして最も好ましくは300〜800℃の軟化点を有する。ガラスの軟化点は、ガラスの粘度が107.6ポアズに等しくなる温度によって規定される。
【0012】
ガラス添加物は、シリケート、ボレート、ホスフェートおよび/または鉛に基づくガラス系の1つまたはそれらの組合せであり得る。好適なガラス添加物は市販されている。
【0013】
理論によって拘束されることを望まないが、シリコーンポリマーおよび5重量%〜30重量%の雲母を含む組成物は、高温への暴露後、雲母粒子とシリコーンポリマーの分解から形成される無機化合物(主として二酸化珪素)の粒子との界面で形成される低融点の材料(共融混合物であり得る)の結果として、凝集性セラミック生成物(coherent ceramic product)を形成すると考えられる。通常、二酸化ケイ素および雲母は、それぞれ、1050℃を十分に超える融点を有する。しかし、界面で形成される共晶は低温で融解する。この共晶材料は、二酸化ケイ素粒子と雲母粒子との間で“架橋(bridge)”として作用し、それによって燃焼温度で該組成物を固化すると考えられる。冷却時に、凝集性セラミック生成物が形成され、そしてこれは自己支持性(self supporting)であることが判っており、そして少なくとも僅かな機械的衝撃またはショックに耐えることができる。
【0014】
シリコーンポリマー/雲母組成物中におけるガラス添加物の存在は、本発明の組成物が高温に曝されると、粒子間の界面での共晶の形成のために必要とされるものよりも低い温度および/またはこれと同様の温度でのガラス軟化または融解に起因して、より強いセラミック材料が形成されるという結果を生じさせると考えられる。これは、二酸化ケイ素および/または雲母粒子を一緒に“結合させる”ことを助けると考えられる。このようにして、凝集性セラミック生成物の形成は改善され、そして比較的強いセラミック材料を形成するために必要とされる温度を低下させることを可能にする。ガラス添加物のレベルが0.3wt%〜8wt%の範囲にある場合、該添加物は寸法安定性に悪影響を与えない。
【0015】
本願出願人は、8重量%よりも多いガラス添加物を有する組成物は、1000℃よりも高い温度に供されると、持続した体積収縮を経験することを見出した。防火適用のために、この収縮は10%未満そしてより好ましくは5%未満であることが好ましい。従って、添加されるガラスの量は、該組成物または該組成物から形成される物品が防火定格温度(fire rating temperature)での所定の適用についての所望の体積収縮制限を満足することを確実にするように、調節される。前述のように、ケーブルの防火定格についての基準は、国によって異なるが、一般的に、15分、30分、60分および2時間のような特定時間の間、所定の様式で、650°、750°、950°、1050°のような温度へのケーブルの加熱に基づいている。
【0016】
該組成物は防火定格温度に曝されると自己支持性多孔質セラミック(典型的に、40vol%〜70vol%の多孔性を有する)を形成することが要求されるので、該組成物が溶融しないことが必須である。本発明の文脈において、溶融(fuse)とは、該組成物中で作製される液相が連続相になること、および/または雲母粒子がそれらの元の形態を大きく失うこと、および/または作製される液相の量がセラミックをそれ自体の重量に起因して変形させるに十分なものとなることを意味する。ガラス成分の添加についての上限は、暴露の上限温度未満で該組成物の溶融が生じることを回避するために、8重量%である。従って、得られるセラミックにおいて、雲母粒子は本質的にそれらの形態を維持しており、二酸化ケイ素粒子への“架橋化”またはガラス粒子との“結合”の結果として端部が少しだけ変化している。従って、本発明に従う組成物は、それが高温に曝される前の組成物と実質的に同一の形状および体積を有している凝集性セラミック生成物を生成する。このような組成物は、ニアネットシェイプ(near net shape)を維持していると記載され得る。
【0017】
ガラスの軟化点は、高温で形成されるセラミックの特性に対して影響を有する。比較的低い軟化点を有するガラスは、比較的高い軟化点を有するガラスよりもより低い温度で、増強された機械的強度を提供する。ガラス添加物の粒度が細かいほど、得られるセラミックの機械的強度を増強させる点でそれはより効果的である。低軟化点および高軟化点を有するガラス添加物のブレンドが、広範囲の温度への暴露後に良好な機械的特性を発揮するセラミックを加熱時に生成する組成物を提供するために、使用され得る。
【0018】
ケーブル適用について、該組成物の電気抵抗率が重要である場合には、雲母および/またはガラス添加物のレベルは、注意深く選択されなければならない。所定の組成物について、雲母のレベルが高すぎる場合には、電気的完全性(electrical integrity)は、該組成物が長期間高温に供された場合の誘電破壊からおよび/または該組成物の電気抵抗の許容し難い減少に起因して、弱められる。高温で、雲母またはガラス添加物のいずれかからのアルカリ金属イオンは、液相において導電性経路を提供する傾向にあり、雲母のレベルおよび/またはガラス添加物のレベルを制限する必要性を生じさせる。この理由のため、低アルカリ金属酸化物含有率(例えば、好ましくは、30%未満のアルカリ金属酸化物含有率)および/または微細な粒度(所望の機械的特性を達成するために必要とされる該添加物の全体的なレベルを減少させるため)を有するガラス添加物を選択することがまた、好適であるかもしれない。意外なことに、ガラス添加物が、隣接した金属表面(例えば、ケーブル導線)と本発明の組成物の加熱時に形成されるセラミックとの間の接着を改善し得ることもまた見出された。
【0019】
本発明の組成物は、必須成分として、シリコーンポリマーを含む。シリコーンポリマーの性質は特に重要ではなく、そして当業者であれば、使用され得るポリマーのタイプについて理解する。有用なシリコーンポリマーは、US 4,184,995、US 4,269,753、US 4,269,757およびUS 6,387,518を含む先行技術において詳細に記載されている。より詳細な例示のために、シリコーンポリマーは、以下の式の単位から構成されるオルガノポリシロキサンであり得る:
【0020】
【数1】

【0021】
式中、
Rは、同一であってもまたは異なっていてもよくそして置換されていないまたは置換されている炭化水素基であり、rは、0、1、2または3でありそして1.9〜2.1の平均数値を有する。
【0022】
炭化水素基Rの例は、アルキル基、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチルおよびヘキシル基(例えば、n−ヘキシル)、ヘプチル基(例えば、n−ペプチル)、オクチル基(例えば、n−オクチル、およびイソオクチル基、例えば、2,2,4−トリメチルペンチル)、ノニル基(例えば、n−ノニル)、デシル基(例えば、n−デシル)、ドデシル基(例えば、n−ドデシル)、オクタデシル基(例えば、n−オクタデシル);シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチルならびにメチルシクロヘキシル基);アリール基(例えば、フェニル、ビフェニル、ナフチルおよびアントリルおよびフェナントリル);アルカリール基(例えば、o−、m−またはp−トリル基、キシリルおよびエチルフェニル基);ならびにアラルキル基(例えば、ベンジルならびにα−およびβ−フェニルエチル)である。
【0023】
置換されている炭化水素基Rの例は、ハロゲン化アルキル基、例えば、3−クロロプロピル、3,3,3−トリフルオロプロピルおよびペルフルオロヘキシルエチル、ならびにハロゲン化アリール、例えば、p−クロロフェニルおよびp−クロロベンジルである。
【0024】
基Rは、好ましくは、水素原子または1〜8の炭素原子を有する炭化水素基(好ましくは、メチル)である。基Rの他の例は、ビニル、アリル、メタリル(methallyl)、1−プロペニル、1−ブテニルおよび1−ペンテニル、ならびに5−ヘキセニル、ブタジエニル、ヘキサジエニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、エチニル、プロパルギルおよび1−プロピニルである。基Rは、好ましくは、2〜8炭素原子を有するアルケニル基(好ましくは、ビニル)である。
【0025】
該ポリマーの末端基は、トリアルキルシロキシ基、例えば、トリメチルシロキシまたはジメチルビニルシロキシ基、あるいは1以上のアルキル基がヒドロキシまたはアルコキシ基で置換されている誘導化基であり得る。
【0026】
該組成物は、1またはそれ以上の架橋性シリコーンポリマーを含み得る。該架橋性ポリマー(crosslinkable polymer)は、市販のオルガノポリシロキサンポリマーについて使用される方法[鎖間でのエチレン性架橋の形成を介しての過酸化物でのフリーラジカル架橋、ケイ素に結合されたアリルまたはビニル基とシリルヒドリド基との反応を含む付加反応、Si−O−Si架橋を生成するシラノールの反応を含む縮合反応、あるいは他の反応性基を使用することを含む]のいずれか1つによって架橋され得るものであり得る。従って、使用されるシリコーンポリマーのタイプに依存して、該組成物は、好適な架橋剤を更に含む。好適な架橋剤は市販されており、例えば、この適用における使用に好適な広範囲の有用な過酸化物[例えば、過酸化ジベンゾイル、過酸化ビス(2,4−ジクロロベンゾイル)、過酸化ジクミルまたは2,5−ビス(tert−ブチルポロキシ)−2,5−ジメチルヘキサンあるいはまたこれらの混合物]が存在し、そして好適である場合、それらは配合プロセスの間に該組成物中に含められ得る。
【0027】
使用され得るシリコーンポリマーとしてはまた、付加反応において熱の適用を介して架橋する不飽和(典型的に、ビニル)側鎖を有する白金触媒化液体シリコーンポリマー(platinum catalysed liquid silicone polymers)が挙げられる。このようなポリマーは、通常、使用直前に混合される二成分として供給される。これらのポリマーの粘度は、注ぐことが可能な液体から固いペーストまで変動する。シリコーンゴム組成物はまた、室温湿気で硬化可能なオルガノポリシロキサン(a room temperature moisture-curable organopolysiloxane)(RTV)を含み得、これについては、例が、US 5,023,295により詳細に与えられている。この場合、それは以下を含む:(a)末端ヒドロキシル基を有するジオルガノポリシロキサン、(b)1分子あたりケイ素原子へ結合された平均で少なくとも3つの加水分解性官能基を有する架橋剤、(c)縮合触媒、および(d)白金金属または化合物。例えばUS 4, 184, 995に記載されるような、1つの部分(これは、シラノール末端終結ジオルガノポリシロキサンと混合される)としてカルボン酸の金属塩およびアルキルシリケートならびに他方のパーツとして不活性充填材を含む他の室温硬化系もまた、含まれる。
【0028】
シリコーンポリマーが高分子量のものであってそして白金触媒化付加反応または過酸化物開始化フリーラジカル反応のいずれかを介しての架橋のために熱を必要とするビニル側鎖を有する別のタイプが、ケーブル絶縁体に特に好適である。これらのシリコーンポリマーは、主要なシリコーン製造業者から広く市販されている。
【0029】
オルガノポリシロキサン原料はまた、好ましくは、沈降もしくは熱分解法シリカのような補強充填材および/または非補強充填材を含む。更に、これらシリカタイプ充填材の表面は、直鎖または分枝鎖オルガノポリシロキサン、オルガノ−クロロシランおよび/またはヘキサメチルジシラザンによって修飾され得る。
【0030】
本発明に従う組成物は、必須成分として雲母を含む。市販の雲母の2つ最も一般的なクラスは、白雲母および金雲母である。白雲母は、ジオクタヘドラル・アルカリアルミニウムシリケートである。白雲母は、カリウムイオンの層によって共に弱く結合されたアルミニウムシリケートシートの層状構造を有する。それは以下の組成を有する:KAlSi10(OH)。金雲母は、トリオクタヘドラル・アルカリアルミニウムシリケートである。金雲母は、カリウムイオンの層によって共に弱く結合されたマグネシウムアルミニウムシリケートシートの層状構造を有する。それは以下の組成を有する:KMgAlSi10(OH)。両方の雲母タイプは、典型的に、鋭い形状の端部を有する薄いプレートまたはフレークの形態で存在する。
【0031】
金雲母を含有する組成物は、約1000℃に加熱されてセラミックを形成すると、より高い機械的強度を示す。しかし、それらはまた、白雲母を含有するものよりも高い収縮を示す。白雲母の使用は、より高い形状安定性が必要とされる適用において好ましい。本発明のシリコーンポリマー組成物の高温電気特性は、金雲母の代わりに白雲母が使用される場合に僅かに良好であることが見出された。
【0032】
雲母の市販のグレードは、粒度分布幅を有する。雲母の粒度は、本発明の組成物が高温へ曝されると形成されるセラミック生成物の寸法安定性および機械的特性に重要な影響を有することが見出された。典型的に、雲母は、15μm〜250μmの平均粒度を有するように選択される。この範囲の下限(例えば、50μm平均粒度未満)の雲母は、機械的により強いセラミックスを生じさせるが、クラッキングを生じさせ得るより高い収縮を示す。該範囲の中央および上限の雲母は、ケーブル適用または形状保持が特に重要である他の適用における使用に好ましい。雲母の平均粒度が大きすぎるまたは存在する雲母の量が多すぎる場合、得られる組成物は、例えば押出しにより、所望の形状に処理および形成し難くなる傾向になる。加えて、雲母のより粗い粒度グレードまたは高雲母レベルを含有する架橋化シリコーンポリマーの機械的特性は、より不十分となる。より粗い雲母粒子は、該組成物が押出し成形または圧縮下でモールドされた場合、それらの結晶基底面に沿って優先的配置を生じる傾向にあり、そしてこれは低い引裂強度を生じ得る。
【0033】
雲母は、燃焼前および/または後に機械的特性を増強させるために、シランカップリング剤で表面処理され得る。シランカップリング剤の例は、ビニルトリメトキシシラン、芳香族シラン、アリールシラン、エポキシシラン、アクリルシラン、ポリマー性シランおよびメルカプトシラン(例えば、メルカプトプロピルトリメトキシシラン)である。シランカップリング剤は、好ましくは、組成物の0.05重量%〜2重量%の範囲で存在する。
【0034】
本発明によれば、好適な雲母タイプ、平均粒度および雲母レベルの選択は、意図される適用、該組成物の要求されるプロセッシング特性、架橋された該組成物の要求される機械的特性、ならびに得られるセラミックへ変換される場合に要求される寸法保持の必要とされる強度および程度に依存する。炎に一般的に伴う高温の範囲に曝された場合にこれらの組成物が示すことが望ましい特性は、使用される雲母のタイプおよび粒度の好適な選択によって操作され得る。換言すれば、これらの組成物の特性は、意図される最終用途に調整することが出来る。
【0035】
本発明によれば、雲母添加は、該組成物の総重量に基づいて5重量%〜30重量%である。特にケーブル適用について、雲母の好ましいレベルは、15重量%〜30重量%、そしてより好ましくは20重量%〜30重量%である。寸法安定性が重要である耐火性ケーブルおよび非ケーブル適用について、雲母の平均粒度は、好ましくは50〜200μmの範囲である。白雲母は、それらの提供について一般的に好ましいタイプであるが、1000℃での燃焼後のより高い機械的強度は、金雲母を使用して得られ得る。
【0036】
本発明の別の局面において、シリコーンポリマー、雲母、ガラス添加物および架橋剤から本質的になる耐火性組成物が提供される。これは、該組成物が、該組成物および/または該組成物を高温へ加熱した際に形成されるセラミックの特性に実質的に影響を与える他の成分を含有していないことを意味する。
【0037】
他の成分が、本発明の組成物に混合され得る。ホウ酸亜鉛、水酸化マグネシウムまたはアルミナ三水和物の添加は、該組成物の難燃性を改善する。更に、いくつかは、セラミックの強度を改善し得る。他の成分としては、無機繊維または他の繊維補強材料(fibre reinforcing materials)、熱伝導性を減少させる材料(例えば、膨張バーミキュライト(exfoliated vermiculite))、化学的発泡剤(これは、密度を減少させること、熱的特性を改善させること、および更に騒音吸収(noise attenuation)を増強させることに役立つ)、伸長非反応性充填材(extending non-reactive fillers)、シリカ、および膨張材料(intumescing materials)(炎または高温への暴露時に膨張する組成物を得るため)が挙げられる。好適な膨張材料としては、天然黒鉛、膨張していないバーミキュライトまたは膨張していないパーライトが挙げられる。膨張前駆体の他のタイプもまた使用され得る。
【0038】
本発明の組成物は、種々の成分をブレンドおよび加熱することによって調製され得る。加熱は、シリコーンポリマーを過酸化物架橋してシリコーンエラストマーを形成するために必要とされる。従来の任意の配合装置が使用され得る。該組成物が比較的に低い粘度を有する場合、それは分散装置(例えば、塗料工業において使用されるタイプのもの)を使用して処理され得る。ケーブル絶縁適用のために有用な材料は、高粘度(高分子量)のものであり、そして、2本ロールミル(two roll mill)、インターナルミキサー(internal mixers)、二軸押出し機などを使用して処理され得る。添加される架橋剤/触媒のタイプに依存して、該組成物は、液体塩浴(liquid salt bath)を備える連続加硫装置を使用して、高圧蒸気でのオートクレーブ中、200℃の空気への暴露によって、あるいは過酸化物を分解させる任意の媒体(マイクロ波、超音波などを含む)への暴露によって、硬化され得る。
【0039】
本発明の組成物は、耐火性が望まれる多数の用途において使用され得る。例えば、該組成物は、耐火性建築パネル(building panel)を形成するために使用され得る。該組成物は、それ自体で、あるいは他の材料の1以上の層と共に使用され得る。
【0040】
本発明の組成物は、以下を含む種々の異なる形態で提供され得る:
1.シート、プロフィールまたはコンプレックス形状として。該組成物は、標準のポリマー加工操作、例えば押出、一次成形(ホットプレッシングおよび射出成形を含む)を使用してこれらのプロダクトに作製され得る。形成されたプロダクトは、受動的防火システムにおいて使用され得る。該組成物は、それ自体で、または別の材料とのラミネートもしくはコンポジット(例えば、合板、バーミキュライトボードまたはその他)として使用され得る。1つの適用において、該組成物は、防火戸のシールを作製するための形状に押出し成形され得る。火災の場合、該組成物は、セラミックに変換されて、従って、炎および煙の蔓延に対して効果的な機械的シールを形成する。
【0041】
2.プレ拡大された(pre-expanded)シートまたはプロフィールとして。この形態は、減少された重量ならびに通常の作動条件中より高い騒音吸収および絶縁のためのキャパシティーを含む、上記と比較して更なる利点を有する。多孔性が、ガス生成物を生成するための化学的発泡剤の熱分解によって、または硬化前の該組成物へ物理的にガスを注入することによって、該シートまたはプロフィールの製造の間に該材料へ組み込まれ得る。
【0042】
3.熱または炎に曝されると発泡により膨張する、膨張性プロダクト(intumescent product)として。この適用において、該プロダクトは、例えば、壁の間の配管またはペネトレーション(penetrations)の周囲に使用され得る。火災の場合、該プロダクトは、膨張して間隙を満たし、そして効果的な栓を提供して炎の蔓延を防止する。該膨張性材料は、押出し可能なペーストまたは可撓性シールの形態であり得る。
【0043】
4.窓および他の物品のためのシールとして(例えば、従来のシリコーンシーラントによりチューブから)適用され得るマスチック材料(mastic material)として。
【0044】
5.ブラシを使用して噴霧または適用され得る、塗料、またはエアロゾルベースの材料として。
【0045】
本発明が適用され得る受動的防火適用の具体例としては、フェリー、電車および他の乗り物用の防火壁ライニング(firewall linings)、防火パーティション(fire partitions)、スクリーン、天井およびライニング、構造的防火(structural fire protection)[ビルの構造的金属骨組を絶縁(insulate)して、それが一定期間その必要とされる耐荷重強度(load bearing strength)を維持する(または、コア温度を制限する)ことを可能にすること]、防火戸インサート(fire door inserts)、窓またはドアシール(window or door seals)、膨張性シール(intumescent seals)、あるいは配電板キャビネット(electrical switchboard cabinets)または同様な適用における使用のためのコンパウンドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
本発明の更なる局面によれば、導線および該導線上に押出されたポリマー組成物を含む電気ケーブルであって、該ポリマー組成物が以下:
シリコーンポリマー;
該組成物の総重量に基づいて15重量%〜30重量%の量の雲母(該雲母は、50μm〜200μmの平均粒度を有する);および
該組成物の総重量に基づいて0.3重量%〜8重量%の量のガラス添加物
を含む、電気ケーブルが提供される。本発明の組成物は、導線のコーティングに特に有用である。従って、該組成物は、火災時に回路完全性(circuit integrity)を提供し得る電気ケーブルの製造に好適である。
【実施例】
【0047】
好ましい実施形態の説明および実施例
以下の実施例は、本発明を例示する。
【0048】
全ての実施例における組成物は、市販のシリコーンエラストマーに基づいていた。雲母の平均粒度は篩分析によって測定され、そして、特に記載しないならば、使用した雲母は160μmの平均粒度を有する白雲母であった。ガラスフリットAは、525℃の軟化点を有し、そして以下の分析された組成を有する:SiO,33.5%;NaO,18.2%;KO,10.8%;TiO,19.3%;P,1.8%;V,8.7%。ガラスフリットBは、800℃の軟化点を有し、そして以下の分析された組成を有する:SiO,39.2%;ZnO,36.2%;NaO,2.9%;KO,2.2%;CaO,5.3%;MgO,0.2%;ZrO,0.8%。ガラスフリットCは、525℃の軟化点を有し、そして以下の分析された組成を有する:SiO,37.7%;NaO,14.6%;KO,10.6%;TiO,16%;Fe,3%;BaO,2.6%;P,1.3%;Al,1.2%;CaO,1.14%;CuO,0.4%;MgO,0.37%;ZrO,0.8%。ジクミルペルオキシドを、熱的架橋を行うための組成物中に含めた。実施例に列挙される全ての組成物は、%wt/wtで与えられる。組成物は以下に記載の手順によって作製した。
【0049】
二本ロールミル(two roll mill)を、該組成物を調製するために使用した。シリコーンエラストマーを、該ミル(10〜20℃)上に集め(banded)、そしてまず雲母、次いでガラスフリットを添加し、そして分離しそしてそれが該2本ロールのニップを通過する直前に該材料のバンドを再混合することによって分散させた。これらが該エラストマーに均一に分散したら、過酸化物を同様の様式で添加および分散させた。
【0050】
次いで、実施例1〜5および11における試験のための組成物を、該ミルからシートとして取り出し、次いで、170℃および7MPaで30分間、ピクチャーフレーム(1.7mmまたは3mm厚)鋳型中、250ミクロンポリエステルフィルムのシートで覆われた2つの10mmスチールバッキングプレート間で、圧縮および加硫した。
【0051】
実施例1
シリコーンエラストマーおよび過酸化物および20%wt/wtと30%wt/wtの雲母および種々のレベルの低軟化点ガラスフリットを含有する熱的に架橋された(170℃、30分、7MPa)組成物から作製された、寸法38.1mm×13.3mm×1.7mmの試料を、1分当たり10℃で、示される温度へ加熱し、そして次いで空気中で30分間600℃または1030℃のいずれかで維持した。冷却された試料についての体積のパーセンテージ変化を下記の表1に示す。結果は、ガラスフリットのレベルが10%まで増加すると、1030℃で該組成物の顕著な収縮が存在することを示している。
【0052】
【表1】

【0053】
実施例2
シリコーンエラストマーおよび過酸化物および20%wt/wtと30%wt/wtの雲母および種々のレベルの低軟化点ガラスフリット(A)を含有する熱的に架橋された(170℃、30分、7MPa)組成物から作製された、寸法38.1mm×13.3mm×1.7mmの試料を、1分当たり10℃で600℃まで加熱し、そして次いで空気中で30分間、該温度で維持した。冷却した試料の侵入ロード(penetration load)を、アッパーローディングフレームへ取り付けられた90°コーンチップインデンターを備えるInstron Universal Testing Machineを使用して測定した。侵入ロードは、インデンターが該試料に侵入しそして続いてこれを破砕する際に得られるピークロードである。平らな燃焼させたセラミック試料を木製平板上に配置し、そして侵入ロードを、1mm/分のクロスヘッド速度を使用して測定した。結果(表2)は、雲母および低軟化点ガラスフリットの組合せを使用することによる侵入ロードの相乗的な改善が存在することを示している。従って、20%雲母のみおよび7.5%ガラスフリットのみは、それぞれ26および4Nの侵入ロードを提供するが、これら2つの組合せは45Nの値を提供する。雲母およびガラスフリットの両方を含有する組成物の侵入ロードは、ガラスフリットのレベルが増加するにつれて増加する。
【0054】
【表2】

【0055】
実施例3
シリコーンエラストマーおよび過酸化物および雲母および種々のレベルの低軟化点または高軟化点のいずれかのガラスフリット(それぞれ、フリットAおよびB)を含有する熱的に架橋された(170℃、30分、7MPa)組成物から作製された、寸法50mm×14mm×3mmの試料を、600℃、800℃および1000℃まで加熱し、そして空気中で30分間これらの温度で維持した。冷却した試料の曲げ強度を、Instron Universal Testing Machineを使用して3点曲げモード(three-point bend mode)で測定した。結果(表3)は、シリコーン/雲母/ガラスフリットの組合せが、シリコーン/雲母およびシリコーン/ガラスフリット組成物に対して曲げ強度の相乗的な改善を生じさせることを示している。
【0056】
シリコーン中2.5%ガラスフリットAおよびシリコーン中20%雲母の1000℃で燃焼させた組成物は、それぞれ、0.5および2.2MPaの曲げ強度を生じる。シリコーン/雲母/ガラスフリットの組合せは、ガラスフリットAを2.5%使用して3.2MPaそしてガラスフリットBを2.5%使用して5.9MPaの曲げ強度を生じる。結果は、高軟化点ガラスが、この高温での燃焼後に曲げ強度を増強させることにおいてより効果的であること、およびフリットBの含有率を1.25%に減少させることが曲げ強度を4.2MPaへ減少させることを示している。
【0057】
800℃で燃焼させた試料について、結果は、高軟化点ガラスフリット(フリットB)の添加は、シリコーン/雲母組成物に対して強度改善を提供しないことを示している。しかし、シリコーン/雲母への低軟化点ガラスフリット(フリットA)の添加は、800℃で燃焼させた試料の曲げ強度の3倍の増加を生じさせる(0.7MPa対2.1MPa。)
【0058】
【表3】

【0059】
実施例4
(A)
受けた(received)ガラスフリットB(平均粒度=12μm)の粒度を、ボールミル粉砕によって約6μmの平均粒度に減少させた。前述の実施例において概略を述べたのと同じ条件下で調製した試料を、空気中で30分間、600℃、800℃および1000℃で燃焼させた。冷却した試料の曲げ強度を、Instron Universal Testing Machineを使用して3点曲げモード(three-point bend mode)で測定し、そして結果を表4に示す。
【0060】
【表4】

【0061】
より微細な粒度を有するガラスフリットは、最も高い温度での試料の該強度を約1.3倍改善する。しかし、それは、低温で有意な改善を提供しない。
【0062】
(B)
寸法50mm×14mm×2mmの試料を、以下を含有する熱的に架橋された(170℃、30分、7MPa)組成物から作製した:シリコーンエラストマーおよび過酸化物ならびに雲母および種々のガラス繊維(Cガラス繊維、軟化点約700℃、およびEガラス繊維、軟化点840℃);ならびに雲母および平均粒度12μm(受けたもの)と6μm(粉砕したもの)のガラスフリットB;ならびに雲母および2つのレベルの低軟化ガラスフリットならびにガラスフリットBとガラスフリットCとの混合物。試料を、空気中で30分間、600℃、800℃および1000℃で燃焼させた。冷却した試料の曲げ強度を、Instron Universal Testing Machineを使用して3点曲げモード(three-point bend mode)で測定した。
【0063】
【表5】

【0064】
結果(表5)は、ガラスフリットおよびガラス繊維の両方の添加が、高温からの冷却時に得られるセラミックスの曲げ強度を有意に改善することを示している。
【0065】
800℃で燃焼させた試料について、結果は、低軟化点ガラスフリット(フリットC)または低軟化点ガラス繊維(Cガラス繊維)の添加が、これらの添加物が低レベルで添加される場合(フリットCについて1.25%そしてCガラス繊維について4%)、試料の曲げ強度の約5倍増加を生じさせるということを示している。より多量の添加物(フリットCについて2.5%そしてCガラス繊維について8%)が添加される場合、強度は、ガラス添加物を含まない組成物と比較して8倍まで増加される。
【0066】
高軟化点ガラスフリット(粉砕されたフリットB)の半分を低軟化点ガラスフリット(フリットC)で置換した場合、セラミックの曲げ強度は、全ての燃焼温度で改善された(表4および5におけるデータを比較のこと)。シリコーン/雲母/ガラスフリットの組合せは、1000℃で加熱した場合、2.5%の粉砕したガラスフリットBを使用して2.52MPa、そして1.25%の粉砕したガラスフリットBおよび1.25%のガラスフリットCを使用して4.84MPaの曲げ強度を生じる。800℃および600℃での強度改善は、それぞれ、約5および3倍である。
【0067】
(C)
燃焼後の表4および5に示される架橋された組成物についての寸法変化を測定した(表6)。結果は、ガラスフリットおよびガラス繊維の添加は1000℃での収縮を増加させ、一方、それは600℃での膨張を相殺するかまたは減少させることを示している。1000℃での収縮は、高温ガラスフリット(フリットB)およびガラス繊維(Eガラス繊維)と比較して、低温ガラスフリット(フリットC)またはガラス繊維(Cガラス繊維)が添加される場合により大きい。
【0068】
これらの試料は全て、全ての温度で厚みが拡大し、しかし、ガラスフリットおよびガラス繊維の添加は、この効果を減少させ、そして低融点フリットおよび繊維が使用される場合に最も顕著である。
【0069】
【表6】

【0070】
実施例5
表7に列挙される熱的に架橋された(170℃、30分、7MPa)組成物の試料を、1000℃まで1分当たり10℃で加熱した。加熱の間、試料間に電圧をかけ、そして回路における電流を電流計でモニターした。次いで、結果を、オームの法則を適用することによって体積抵抗率へ変換した。電気抵抗率は、可動イオン(mobile ions)を含むガラスにおいて、温度を増加させるにつれて減少することが知られている。温度の増加に伴う体積抵抗率の減少(電流の増加)が、下記の表7に示されるように、種々の組成物の全てについて、900℃、950℃および1000℃の測定温度に渡って、観察される。
【0071】
アルカリ含有雲母のシリコーンへの添加は、体積抵抗率の減少を生じさせる。体積抵抗率の減少は、白雲母の代わりに金雲母(例えば、雲母B’)が使用される場合に僅かに大きい。高アルカリ・低軟化点ガラスフリット(フリットA)のシリコーン/雲母への添加は、該フリット中の高レベルのナトリウムおよびカリウムの結果、体積抵抗率の大きな減少を引き起こす。該高アルカリフリットが高軟化点・低アルカリフリット(フリットB)で代替される場合、シリコーン/雲母と比較しての体積抵抗率の減少は、ほんの僅かである。アルカリフリーのシリケート充填材での雲母の部分的置換によりシリコーン/雲母/ガラスフリット組成物における雲母のレベルを減少させることは、該コンパウンドの抵抗率を増加させる効果を有する。
【0072】
【表7】

【0073】
実施例6
燃焼試験におけるパフォーマンス
1つのケースにおいてシリコーン/雲母/過酸化物(78:20:2)組成物でそして別のものにおいてシリコーン/雲母/ガラスフリットB/過酸化物(76.75:20:1.25:2)組成物で絶縁した1.5mm平坦銅導線を用いて、実験的ケーブルを作製した。該組成物は作製の間に架橋された。これら絶縁した導線を一緒にねじって、そして市販のハロゲンフリーの難燃性熱可塑性シース材料(sheathing)で包んだ。該ケーブルを、30秒毎に激しい機械的ショックを用いて、15分間、950℃で、英国規格試験BS6387に記載されるように、炎および機械的ショック試験において、240ボルト(接地)の電圧を加えながら、試験した。シリコーンエラストマーおよび雲母組成物で絶縁した導線はこの試験に落第し、一方、シリコーンエラストマー、雲母およびガラスフリット組成物で絶縁した導線は、首尾よく該条件に耐えることが判った。
【0074】
実施例7
以下の組成物を調製した:
・組成物1−シリコーン/雲母/過酸化物(78:20:2)
・組成物2−シリコーン/雲母/ガラスフリットA/過酸化物(70.5:20:7.5:2)。
【0075】
これらを、加熱しながら(150℃、30分)、パネル(1200mm×900mm×10mm)に圧縮成形し、これを相対的な耐火性を評価するために試験し、これはオーストラリア国規格AS1530 Part4:建築構造物の構成要素の耐火性試験−パイロット炉試験に従って、完全性破壊(integrity failure)によって測定した。パネルを、正圧下で作動するガス燃焼炉の戸枠に保持し、そして該試料を、240分にわたって1150℃まで温度を上昇させる該試験において明記される標準セルロース加熱曲線(standard cellulose heating curve)に対して試験した。完全性破壊は、炎の通過に耐えるように意図される材料を比較することについて関連し、そして炎の突破が最初に生じるポイントとして測定した;組成物1についてこれは24分であった(平均測定炉温度が821℃であった場合)そして組成物2についてこれは97分であった(平均測定炉温度が1023℃であった場合)。結果は、ガラスフリットの添加が防火バリア材料としての性能を顕著に改善することを示している。
【0076】
実施例8
実施例7からのコンパウンド2の試料を、ドアシールに押出し成形し、架橋し(170℃、30分)、そして1000℃で燃焼させた。該試料は、燃焼後にドアシールの形状を維持しそしてほんの僅かな収縮を示し、高度の構造的完全性(structural integrity)を実証した。
【0077】
実施例9
化学的に架橋されたシリコーン発泡体から作製された長方形の試料を、1050℃で30分間燃焼させた(表8に示される組成物)。試料寸法は、3点曲げ試験における動的熱機械特性測定装置(DMA)を使用して曲げ機械特性の測定に好適な、18×5×3mmであった。各組成物の5つの試料を測定し、そして結果を平均して十分な信頼性を確実にした。シリコーンポリマーは、2液系の(two-part)室温架橋材料である。シランカップリング剤、ガンマ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランもまた、いくつかの組成物に含まれた。1050℃で30分間燃焼させた後のセラミック化残渣の機械的特性に対する、該シランカップリング剤および難燃剤の添加の影響を、表8に示す。
【0078】
【表8】

【0079】
難燃剤、水酸化マグネシウムを添加することは、曲げ弾性率の少しの減少および曲げ強度の少しの増加を生じさせる。より高レベルの該カップリング剤を添加することは、曲げ弾性率を増加させる。
【0080】
実施例10
化学的に架橋されたシリコーン発泡体から作製された長方形の試料を、1050℃で30分間燃焼させた(表9に示される組成物)。試料寸法は、3点曲げ試験における動的熱機械特性測定装置(DMA)を使用して曲げ機械特性の測定に好適な、18×5×3mmであった。各組成物の5つの試料を測定し、そして結果を平均して十分な信頼性を確実にした。低温でのガラス形成剤および難燃剤としてのホウ酸亜鉛の影響を調べた。使用した低融点ガラス(ガラスフリットB)は525℃で軟化し、一方、ホウ酸亜鉛の軟化温度は300〜700℃である。ホウ酸亜鉛での該低融点ガラスの置換は、高い剛性および良好な形状保持を維持しながら、セラミック化可能な系(ceramifiable system)の耐火性を改善することを保証した。
【0081】
実施例9からのシリコーンベース組成物を使用した。表9は、3点曲げ試験モードにおけるDMAを使用して測定される曲げ特性および熱重量分析によって測定される質量損失を示す。これらは、改変された試料の機械的特性および耐火性を評価するために測定された。質量損失のより低いレベルは、より良好な耐火性を示す。
【0082】
結果は、ホウ酸亜鉛での低融点ガラスの置換によって、より良好な機械的特性が達成されるだけでなく、遥かにより良好な耐火性(質量損失測定により定量)が得られることを示している。
【0083】
【表9】

【0084】
1050℃で、組成物Iおよび組成物IIについての体積変化は、それぞれ、−6%および−1%であり、ホウ酸亜鉛での低融点ガラスの置換はより小さな体積変化をもたらすことを示している。
【0085】
実施例11
シリコーンゴム(DC 4−7219、Dow Corning)、20部の雲母、3部のガラスフリットAおよび3部のガラスフリットBを含む押出し成形に好適なシリコーンゴムベース組成物を、種々のパーセンテージの水酸化マグネシウムおよびホウ酸亜鉛で改変して、700℃で燃焼させることにより形成して得られるセラミックの耐火性および機械的特性を改善させた。試料寸法は、3点曲げ試験における動的熱機械特性測定装置(DMA)を使用して曲げ機械特性の測定に好適な、18×5×3mmであった。各系の5つの試料を測定し、そして結果を平均して結果の十分な信頼性を確実にした。結果を表10に示す。
【0086】
表10におけるコンパウンド(II)は、700℃で燃焼させた後、耐火性および機械的特性の点で良好な性能を示した。水酸化マグネシウムおよびホウ酸亜鉛を添加することは、曲げ弾性率および曲げ強度を改善しながら、耐火性を改善する。
【0087】
【表10】

【0088】
実施例12
寸法30mm×13mm×2mmの試料を、熱的架橋(170℃、30分、7MPa)によって、2つの材料XおよびYから作製した。材料X(実施例4a)は、耐火性材料についての特性を有する本発明に従う組成物であり、そして材料Yは、800℃を超える温度で溶融することが知られている組成のものである。それらを、それらの長軸が支持耐火性ブロックの1つの端部に対して垂直となり、かつ、各試料の13mm長の部分が支持耐火性ブロックの該端部から突き出しているように、耐火性の長方形断片上に配置した。次いで、それらを、1分当たり12℃で830℃および1000℃まで加熱し、そして空気中30分間これらの温度で維持した。両方の温度で、組成物Xの試料は溶融せず、そして高温への暴露前の該試料の形状を維持する凝集性多孔性セラミック(coherent porous ceramic)を生成した。組成物Xの試料の全ての寸法の収縮は2%未満であった。両方の温度で、組成物Yの試料は溶融し、そして支持されていないスパンは耐火性支持体の端部上に曲がって、ほぼ垂直位置をとり、形状を維持またはそれ自体の重量を支持することができないことを示した。1000℃で、組成物Yの試料は、完全に溶融して、耐火性支持体の側部上および側部に沿って流動するガラス状材料を形成した。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】図1は、本発明の使用のための典型的なケーブルの斜視図である。
【0090】
このようなケーブル1のデザインにおいて、本発明の組成物は、導線3の真上に押出し成形された絶縁体として使用され得る。該組成物は、アセンブリに丸みをつけるために該アセンブリに添加された個々の押出し成形された充填材として、ワイヤまたはテープアーマー(armour)の適用前の内層として、あるいは押出し成形された外部シース層4として、マルチコアケーブルにおける隙間充填材(interstice filler)の形態をとり得る。
【0091】
実際には、該組成物は、導線の表面上に押出し成形される。この押出し成形は、従来の装置を使用して従来の様式で行われ得る。典型的に、該組成物は、押出し成形の直後に架橋される。絶縁層の厚みは、導線のサイズおよび作動電圧の特定の基準の要件に依存する。典型的に、絶縁体は、0.6〜3mmの厚みを有する。例えば、0.6/1kVで評価される35mm導線について、オーストラリアの基準は、約1.2mmの絶縁体厚みを必要とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下:
シリコーンポリマー;
組成物の総重量に基づいて5重量%〜30重量%の量の雲母;および
組成物の総重量に基づいて0.3重量%〜8重量%の量のガラス添加物
を含む、耐火性組成物。
【請求項2】
前記ガラス添加物がガラスフリットとして存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ガラス添加物が1050℃以下の軟化点を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ガラス添加物が800℃以下の軟化点を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ガラス添加物が300〜800℃の軟化点を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ガラス添加物が低軟化点および高軟化点を有するガラス添加物のブレンドを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記ガラス添加物が該ガラス添加物の50重量%未満のアルカリ金属酸化物含有率を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記ガラス添加物が該ガラス添加物の30重量%未満のアルカリ金属酸化物含有率を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
ホウ酸亜鉛、水酸化マグネシウムおよびアルミナ三水和物からなる群から選択される、セラミック形成温度に曝されると酸化物を形成する難燃性材料を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
1000℃で融解しない無機繊維を更に含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
シリコーンポリマー、雲母、ガラス添加物および架橋剤から本質的になる、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記雲母が金雲母である、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記雲母が白雲母である、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記雲母が15μm〜250μmの平均粒度範囲を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記雲母が50μm〜200μmの平均粒度範囲を有する、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
シランカップリング剤を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記シランカップリング剤が、ビニルトリメトキシシラン、芳香族シラン、アリールシラン、エポキシシラン、アクリルシラン、ポリマー性シランおよびメルカプトシランからなる群から選択される、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記シランカップリング剤が0.05%〜2%の量で存在する、請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
以下:
シリコーンポリマーから本質的になるポリマー成分;
組成物の総重量に基づいて5重量%〜30重量%の量の雲母;および
組成物の総重量に基づいて0.3重量%〜8重量%の量のガラス添加物
を含む、耐火性組成物。
【請求項20】
前記ガラス添加物がガラスフリットとして存在する、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記ガラス添加物が1050℃以下の軟化点を有する、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
前記ガラス添加物が800℃以下の軟化点を有する、請求項19に記載の組成物。
【請求項23】
前記ガラス添加物が300〜800℃の軟化点を有する、請求項19に記載の組成物。
【請求項24】
前記ガラス添加物が低軟化点および高軟化点を有するガラス添加物のブレンドを含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項25】
前記ガラス添加物が該ガラス添加物の50重量%未満のアルカリ金属酸化物含有率を有する、請求項19に記載の組成物。
【請求項26】
前記ガラス添加物が該ガラス添加物の30重量%未満のアルカリ金属酸化物含有率を有する、請求項19に記載の組成物。
【請求項27】
ホウ酸亜鉛、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1つの難燃性材料を更に含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項28】
以下:
シリコーンポリマー;
組成物の総重量に基づいて5重量%〜30重量%の量の雲母;および
該シリコーンポリマーの分解温度より高くかつ該組成物の防火定格温度(fire rating temperature)以下の温度で自己支持多孔性セラミック材料の形成を確実にするに十分な限られた量のガラス添加物
を含む、耐火性保護組成物。
【請求項29】
該組成物の融合温度が防火定格温度を超える、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
該組成物が、防火定格温度まで加熱されると10%未満の体積収縮を受ける、請求項28に記載の組成物。
【請求項31】
該組成物が、防火定格温度まで加熱されると5%未満の体積収縮を受ける、請求項28に記載の組成物。
【請求項32】
防火壁ライニング(firewall lining)、防火パーティション(fire partition)、スクリーン、天井またはライニング、構造的防火(structural fire protection)、防火戸インサート(fire door insert)、窓またはドアシール(window or door seal)、膨張性シール(intumescent seal)として、または配電板キャビネット(electrical switchboard cabinet)における、請求項1〜31のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項33】
電気導体のコーティングのための請求項1〜31のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項34】
請求項1〜31のいずれか1項に記載の組成物を含む電気ケーブル。
【請求項35】
導線および該導線上に押出し成形されたポリマー組成物を含む電気ケーブルであって、該ポリマー組成物が以下:
シリコーンポリマー;
該組成物の総重量に基づいて15重量%〜30重量%の量の雲母;および
該組成物の総重量に基づいて0.3重量%〜8重量%の量のガラス添加物
を含む、電気ケーブル。
【請求項36】
前記雲母が50μm〜200μmの範囲の平均粒度を有する、請求項35に記載の電気ケーブル。
【請求項37】
前記雲母が白雲母である、請求項35に記載の電気ケーブル。
【請求項38】
前記ガラス添加物がガラスフリットとして存在する、請求項35に記載の電気ケーブル。

【図1】
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【公表番号】特表2006−503121(P2006−503121A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−525064(P2004−525064)
【出願日】平成15年8月1日(2003.8.1)
【国際出願番号】PCT/AU2003/000968
【国際公開番号】WO2004/013255
【国際公開日】平成16年2月12日(2004.2.12)
【出願人】(505141967)セラム ポリメリック ピーティーワイ リミテッド (3)
【Fターム(参考)】