説明

耐火物の連続混練装置

【課題】耐火物の内張りライニング施工、補修施工として好適に用いることのできる不定形耐火物の連続混練装置の提供。
【解決手段】乾式材料の供給装置から施工場所に至る気流搬送手段の任意の場所にコンパクトな装置を用いて必要な施工量を連続混練できるもので、低水分での混練と安定した搬送が可能となるので、吹き付けや流し込み施工における、施工体の耐用性改善とともに、施工作業の効率改善も図れ、装置内や管路に材料が残らないので清掃作業も容易である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属容器、溶融金属処理装置、高温雰囲気炉の内張りライニング、あるいはその補修手段として用いられる不定形耐火物の連続混練装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、溶融金属容器、溶融金属処理装置にライニングする不定形耐火物は、耐火原料と水をバッチ式の混練機(ミキサー)に所定量投入して、所定時間混練した後、排出して流し込み施工や吹き付け施工を行っている。混練機(ミキサー)による混練が終了すると、次のバッチを混練する非連続的な混練を行っているのが一般的である。そのため、流し込み施工や吹き付け施工は混練タイミングに合わせて、一時的に施工作業を中断させる必要があった。
例えば、耐火物の混練機(ミキサー)に関するもので、特許文献1に記載の発明では、ホッパー状容器の中でスクリュー羽根が高速回転する方法が提案されている。
また、特許文献2に記載の発明では、従来の二軸ミキサーに改良を加え、混練性能を向上させる提案がされている。
さらに、特許文献3に記載の発明では、耐火物の連続的な混練方法に関する提案がされている。
また、特許文献4に記載の発明では、耐火物の連続的な混練方法とその搬送に関する提案がされている。
【0003】
【特許文献1】特開平5−7759号公報
【特許文献2】特開平11−221818号公報
【特許文献3】特開2004−53195号公報
【特許文献4】特開2004−34088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、例えば、耐火物の混練機(ミキサー)に関するもので、上記特許文献1と特許文献2に記載の発明では、いずれも所定量の混練を行うバッチ式の混練方法であるため、前記の通り、混練タイミングに合わせて、一時的に施工作業を中断させる等の問題がある。
また、特許文献3に記載の発明の混練装置は、上段ミキサー部と下段ミキサー部などから構成されているため、上段から下段に混練材料が乗り移る必要がある他、その際、材料の移動方向が逆方向になる等、材料の混練工程が長く、装置構成が複雑であるため、装置は施工現場に据え置く固定方式であり、混練材料を施工場所までホースなどを介して搬送しなくてはいけないという問題がある。
また、特許文献4に記載の発明の混練装置は、連続混練機の前後の材料搬送手段として搬送コンベアや圧送ポンプから構成されており、装置構成が複雑である。しかも、装置は施工現場に据え置く固定方式であり、混練材料を施工場所までホースなどを介して搬送しなくてはいけないという問題がある。
【0005】
本発明は、溶融金属容器、溶融金属処理装置、高温雰囲気炉の耐火物の内張りライニング施工、補修施工として好適に用いることのできる不定形耐火物の連続混練装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、次の構成を具備するものである。
(1) 耐火原料と水を連続的に供給しながらスラリー状の混練物を連続的に得るための耐火物の連続混練装置において
気流により前記耐火原料を構成する乾式原料を上流管路内に搬送する材料導入部と、
前記材料導入部で搬送された前記材料を混練する材料混練部と、
前記材料混練部で混練された材料を下流管路へ搬送するための材料吐出部と、を備え、
前記材料導入部は
前記上流管路に耐火原料を連続供給可能な供給機構と、
前記上流管路内の耐火原料に水を添加する水添加機構と、
前記上流管路に接続され回転自在に支持される上流回転継ぎ手と、
前記上流回転継ぎ手の下流に接続されるとともに下端が開放された中空回転軸と、
前記中空回転軸を回転駆動させる中空回転軸駆動源と、
前記中空回転軸の下端の延長上に設けられ、前記耐火原料が衝突する衝突盤と、を備え、
前記材料混練部は、
略筒形又は略錐台形の容器の内部を密閉空間とするとともに回転自在に支持された外筒と、
前記外筒を回転駆動させる外筒駆動源と、
前記中空回転軸に連結され前記衝突盤下方から前記外筒の中心軸方向に延びる混練手段回転軸と、
前記混練手段回転軸周りに植設される棒状部材と、を備え、
前記材料吐出部は、
吐出口に向け前記外筒下端から接続され下方に向かうに従って縮径する略錐状の排出筒と、
前記混練手段回転軸の下端に延伸された排出手段回転軸と、
前記排出手段回転軸の周りにその軸方向と交差する方向に突出する状態で植設され、前記材料混練部で混練された混練物に旋回流を付与する旋回流付与部材と、
前記吐出口に接続され前記下流管路と回転自在に支持される下流回転継ぎ手と、を備えていることを特徴とする耐火物の連続混練装置。
【0007】
(2)(1)に記載の耐火物の連続混練装置において、前記旋回流付与部材に板状部材を用いることを特徴とする耐火物の連続混練装置。
(3)(1)に記載の耐火物の連続混練装置において、前記旋回流付与部材に棒状部材を用いることを特徴とする耐火物の連続混練装置。
(4)(1)に記載の耐火物の連続混練装置において、前記旋回流付与部材に螺旋羽根を用いることを特徴とする耐火物の連続混練装置。
(5)(1)乃至(4)のいずれかに記載の耐火物の連続混練装置において、前記上流回転継ぎ手及び前記下流回転継ぎ手のうち少なくとも一方の軸受け近傍に加圧流体を供給するとともに、その加圧流体の圧力を前記上流管路或いは前記下流管路の内圧以上に維持することを特徴とする耐火物の連続混練装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、従来のミキサー内でのバッチ式混練では非連続的な混練のため、流し込み施工や吹き付け施工が連続的に行うことが出来なかった施工形態を、連続的に行うことのできる耐火物の連続施工方法に貢献できる。
また、本発明を吹き付け施工に用いることにより、従来の耐火物の乾式吹き付け施工と比較して、大幅な低水分化とともに均質化が図れ、施工体の組織の緻密化に貢献できる。
一方、従来の湿式吹き付け施工方法に比べ、気流搬送の途中で連続混煉が行えるので、湿式吹き付け施工では事前に混練した混練物をすべて吹き付け施工するのが一般的であるのに対して、本発明では必要量施工すれば任意に施工を終了できる。
加えて、従来の湿式方法で不可欠の事前混練に用いる混練機(ミキサー)が不要のため、施工後の混練機(ミキサー)の清掃、搬送ホースの清掃も不要となる。特に、従来の湿式施工方法では、混練を所定量毎に行うバッチ混練であるため、吹き付け施工も中断しなくてはならないが、本発明では、連続的な混練であるため、施工も中断せずに連続的に行える。
以上のように、製鉄用耐火物の不定形耐火物補修方法として、耐火物の低水分施工による組織の緻密化が図れ、耐用性を向上させることができ、耐火物コストの削減、窯炉設備の安定稼動に貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
[1]連続混練装置Sの構造と作用
図1には、本発明の第1実施形態に係る連続混練装置Sが示されている。但し、本発明は図1に示す装置に限定されるものではない。
【0010】
<材料導入部A構造・作用>
気流式乾式原料の供給機構(図示せず)は、粉粒状の乾式原料を気流により搬送する物である。図示を略したが、この気流式乾式原料の供給機構には乾式原料を供給するホッパーが設けられ、ホッパーから粉粒状の乾式原料は、テーブルフィーダーなどを用いて一定の切り出しにより圧送ポンプにより気流を用いて上流管路1aから材料導入部Aに連続的に供給される。
粉粒状の乾式原料は、耐火原料を破砕などにより所定の粒度配合に篩い分けし、その後、粒度別、種類別に調合することにより得られ、吹き付け性、施工体品質の点からトップサイズが5mmもしくは3mm以下が吹き付け材として好ましい。
また、粉粒状の乾式原料のサイズの下限値は、適宜、設定すれば良く、特に規定するものではない。
【0011】
水添加機構は、乾式原料に所定の水分量を添加するための部材である。水添加機構としては、上流管路1aの材料導入部Aとの接続部上流側に、注水口2が接続され、注水口2の上流側には、図示を略したが、圧送ポンプが接続され、供給量に見合った最適な水分量は、バルブ式の流量計等用いて注水口2から材料搬送部へ連続的に添加される。
この注水口2の内側には、圧送ポンプの圧力を利用してミスト状の水が送出され、注水口2から上流管路1a中の乾式原料にミスト状の水を添加するようになっている。
ここで、最適な水分量とは、耐火物が所望の耐用性を保持できる範囲であれば特に規定するものではないが、従来の乾式吹き付け施工、湿式吹き付け施工方法よりも低い水分量である、7質量%〜9質量%程度(耐火原料に対する質量%で外掛け)が例示できる。
尚、材料導入部Aでは、耐火原料は容器の任意の位置から添加して良く、例えば、図1に示す様に上部から添加することができる。
また、材料導入部Aでの水の添加は容器の外部から注水口2の1箇所で添加されているものを例示しているが、複数箇所から水を添加しても良い。
【0012】
上流回転継ぎ手3は、上流管路1aに対し乾式原料と水の混合物を搬送のための気流に対する密閉状態を保ちつつ材料混練部Bへ導くための中空回転軸4を回転自在に軸支するための部材である。構造は、回転条件や中を通る気流の圧力条件が異なるものの後述の下流回転継ぎ手11と同じ構造である。気流中には水だけではなく摩耗性の乾式原料を含むため、軸受けのシール部には耐久性を考慮した工夫が必要である。その詳しい構造については下流回転継ぎ手11の構造の説明箇所にて説明する。
【0013】
中空回転軸4は、乾式原料と水の混合物を材料混練部Bへ導くとともに下方に連結される衝突盤5や材料混練部Bへ回転駆動力を伝達するための部材である。図1に示すように中空回転軸4はスプロケット21を嵌挿しており、ベルト22を介して中空回転軸駆動源であるモータ24に嵌挿されるスプロケット23により回転力を伝達される。
中空回転軸4は断面図である図2に示されるように、スプロケット21の嵌挿されている位置より上部がフレーム42に取り付けられた軸受25により、また下部が軸受13a、13bにより軸支され、高速回転が円滑に行われるようになっている。
【0014】
衝突盤5は乾式原料と水の混合物を分散させながら材料混練部Bへ導くための部材である。衝突盤5は、中空回転軸4の下端が開放されているその軸方向の延長上に設けられている。衝突盤5は中空回転軸4の下端から連結板20にて連結され、中空回転軸4ともども回転する。平面を示した図3に記載されるように、円形の衝突盤5の中心から中央部に空間を設けて放射状に連結板20が4枚配置されており、衝突盤5に衝突した混練物は、連結板20の間隙を放射状に方向を変え搬送される。連結板20の枚数は4枚に限定するものではなく、混練手段回転軸7の回転駆動に必要な強度と回転のバランスを確保できるのであれば枚数は制約がない。
【0015】
次に、供給機構及び水添加機構によりそれぞれ連続的に供給された粉粒状の乾式原料と水は、まず、材料導入部Aで、容器の中心軸方向に延びる回転可能な中空回転軸4を通り、その下流端部に設けられた衝突盤5に向かう。中空回転軸4とそれに接続された衝突盤5の回転により、乾式原料の中の凝集された微粒子成分が衝突盤5との衝突により分散され、同時に、添加される水も高速で回転する衝突盤5との衝突により霧状に分散される。
その結果、その両者が衝突することにより混合・分散されて、ペースト状の混合物を生成しながら、下流の材料混練部Bへ搬送させることができる。
【0016】
<材料混練部B構造・作用>
材料混練部Bは上流管路1aにより搬送された乾式原料に、注水口2を介して水を添加した原料を、攪拌混練するものであり、図1に示されるように、外筒6、外筒駆動源としてのモータ33、混練手段回転軸7、及び棒状部材40を備え、通常、混練手段回転軸7を鉛直方向に向けた縦置き状態で使用される。
【0017】
外筒6は、密閉容器を形成するための円筒形の容器であるが、回転が可能となっていることにより、遠心力によりその内壁面に混練材料を一時滞留させ、吹き抜けを防止するための部材である。
外筒6を回転させるモータ33はフレーム42に固定され、スプロケット32を介して外筒6の上面に嵌挿されたスプロケット30へベルト31を介して動力を伝える。
混練手段回転軸7は、断面を示した図2で示されるように、中空回転軸4から連結板20を介して回転力を伝達されている。混練手段回転軸7は、上流管路1aから気流によって搬送された乾式材料が十分に混練の機会を得られるように後述する外筒6との間隙を小さくし、しかも、下流方向において外筒6との間隙がほぼ一定になるように径が決められている。
【0018】
棒状部材40は、混練手段回転軸7の周囲に植設された部材であり、外筒6内壁面に層状に付着した混練材料を強い力で押し込むことにより練り込むための部材である。下流方向においては隙間が生じないように、半径方向において回転軸に対称になるように配置する。しかも回転方向に対して下流に推進力が働くように螺旋状のピッチを切ることが好ましい。材質としては、耐火原料による摩耗を最小限にするために超硬等の硬度の高い材質を用いることが好ましい。
【0019】
外筒6の回転は、断面を示した図2で示されるように、スプロケット30が嵌挿されている位置より上部はフランジ19a、19bにより連結されたリング14に取り付けられた軸受13a、13bにより、また、下部はフランジ44a、44bにより連結された排出筒9の下部に取り付けられた軸受26により軸支され、高速回転が円滑に行われるようになっている。更に、リング14の外側はフレーム42に固定された軸受16により軸支されており、混練手段回転軸7と独立に回転可能な構造になっている。
軸受13a、13bは、密閉された連続混練装置Sの容器の中の材料が侵入することによる摩耗を避けるためにパッキン18を設けるのがこのましい。更に、注油口17を通じて気流圧を上回る油圧を付与することにより更にこれらの材料の侵入を防ぐことができる。この構造と作用については後述する下流回転継ぎ手11のところで説明する。
【0020】
材料混練部Bでは、中心軸方向に延びる回転可能な混練手段回転軸7と、その軸周りに設けられる棒状部材40を備えた混練手段が回転される。材料導入部Aから搬送されたペースト状の混合物は、材料混練部Bの容器としての外筒6の内壁面に遠心力により付着し、さらに棒状部材40によって押し込まれることにより効率的な混練が行われながら、外筒6の内壁に接した状態で下流に送られて、スラリー状の混練物を連続的に得ることができる。
混合物は衝突盤5との衝突により外筒6の内側と混練手段回転軸7の間隙を気流により下流に搬送されるが、質量が大きい混合物は外筒6が回転することで得られる遠心力により外筒6内壁面に滞留するので、外筒6が回転しない場合に比較して、混練物中における耐火原料の吹き抜けが最小限に抑制され、しかも棒状部材40によって押し込まれる機会が増えるため、混練性が改善される。
【0021】
材料混練部Bの外筒6の形状は、略筒形又は略錐台形であればよいが、円筒形或いは下流方向へ拡大する円錐台状とすることで、滞留した耐火原料は棒状部材40により下方に推進力が与えられるため淀みがほとんどなく混練し易いという点で好適である。
ここで、混練手段の棒状部材40とは、その形状として、円柱状や角柱状のものを意味しており、この様な形状のものであれば、外筒6の回転により生じた遠心力により内面に付着した混練材料を棒状部材40によって強い力で押し込み、練り込む力が発生して混練性が向上するため、上流の材料導入部Aの混合手段と比較して、より強い攪拌を実現でき、スラリー状の混練物を連続的に得ることができる。
【0022】
ここで、棒状部材40のサイズは、対象とする耐火原料の性状等に応じて、事前の実験等により、適宜、設定することができる。棒状部材40と外筒6内壁面との間隙に混練物が滞留するので、間隙が大きいほど滞留量が増すが、間隙が大きすぎると外筒6内壁面に付着し、混練に寄与しない層が生成する。従って、適正な間隙の寸法としては10mm程度が好ましい。
また、混練手段回転軸7の回転数は、特に規定するものではないが、実験的な知見から、600〜1200(rpm)程度が推奨される。なお、棒状部材40の先端の周速としては850〜1700(cm/sec)程度が推奨される。
尚、材料混練部Bの回転軸は、材料導入部Aの中空回転軸4と、同じ回転数で使用可能な場合は、これらが同軸で構成されていると装置上、簡略化できるため好ましい。
尚、材料混練部Bの外筒6の回転数も、特に規定するものではないが、実験的な知見から、100〜200(rpm)程度が推奨される。なお、その際の周速は45〜90(cm/sec)程度が推奨される。
【0023】
<材料吐出部C構造・作用>
材料吐出部Cは材料混練部Bにて混練された混練材料を、気流を利用しながら下端の吐出口10を介して施工部へ導くための下流管路1bへ閉塞なく安定的に圧送するためのものであり、図1に示されるように、排出筒9、排出手段回転軸8、板状部材41、及び下流回転継ぎ手11とを備えている。
【0024】
排出筒9は、混練されて粘性が増した混練材料を、吐出口10から下流管路1bを経て施工部へ安定的に供給するための部材であり、材料混練部Bの密閉容器である外筒6の下端に連結され、管路へ続く吐出口10まで縮径された回転可能な円錐台形すなわち略錐形の容器である。
排出手段回転軸8は、平面を示した図4(A)及び側面を示した図4(B)のように、排出筒9の中心軸上に配置され、旋回流付与部材としての板状部材41へ回転力を伝達するための部材である。
板状部材41は、排出手段回転軸8上に植設された部材であり、排出筒9から吐出口10へ向かう混練材料に旋回流を付与するための部材である。
下流回転継ぎ手11は回転する排出筒9の下端の吐出口10を下流管路1bに対し回転自在に軸支するための部材である。
排出筒9は、図1で示されるように、外筒6とフランジ44a、44bにより連結しており、この位置より上部はフランジ19a、19bにより連結されたリング14に取り付けられた軸受13a、13b及び軸受16により、また、下部は軸受26により軸支され、高速回転が円滑に行われるようになっている。
【0025】
排出筒9では、混練材料と気流とが口径が絞られた吐出口10へ効率良く吐出される機能が求められる。特に、下流管路1bにおいては、粉流体を搬送する場合に比べ粘性が高い混練材料が搬送されるため、搬送圧力が上がり易いが、極力、気流と混練材料の分離や脈動が少ない条件で吐出口10から搬出される必要がある。
排出筒9の中では材料混練部Bを通過してきた混練材料と気流とで複雑な流れを生じている。例えば、混練材料では、排出筒9は外筒6と同じく回転しているため、排出筒9に接した粘性を持った混練材料には遠心力により上方へ向かう流れの発生が避けられない。一方、材料混練部Bの混練手段回転軸7と外筒6の間隙をいきおいよく通過してきた気流は一旦排出筒9で開放され流速が落ちるが、再び口径が絞られた吐出口10を介して高速の気流で通過しようとする。従って、排出筒9の中央部における混練材料の滞留を防ぐため、中央部の混練材料に吐出口10に向かうとともに、中央部へ空間を形成し中央部を流れる気流の抵抗を最小限にする旋回流を生成することが好ましく、この旋回流により混練材料の排出性を高めることができる。また、各種の羽根形状により定量性を付与することができるため、混練材料と気流の速度に差異が生じた分離した流れや、部分的に閉塞が生じる脈動流を防ぐことが可能となる。
【0026】
ここで、材料吐出部Cの板状部材41とは、その形状として平面を有する直方体や羽根状のものを意味しており、この様な形状のものであれば、旋回流を生成することができ、気流によりペースト状の混合物を定量的且つ閉塞なく下流管路1bへ導くことができる。
例えば、これらの効果を生成するための部材としてはいろいろな形状が考えられるが、板状部材41は、定量性を付与する上で好ましく気流への抵抗が少ない上で最適の形状である。平面を示した図5(A)及び側面を示した図5(B)のような旋回流付与部材としての棒状部材41aは、材料排出における定量性には効果があるが、旋回流は弱い傾向がある。逆に平面を示した図6(A)及び側面を示した図6(B)のような旋回流付与部材としての螺旋羽根41bは混練材料に対する旋回流生成には最も強い効果があるが気流抵抗を大きくする傾向がさけられない。これらは、気流や混練材料の流動性を考慮して最適の形状を選定するのが好ましい。
また、板状部材41のサイズも、対象とする耐火原料の性状等に応じて、事前の実験等により、適宜、設定することができる。
また、混練手段回転軸7の回転数は、特に規定するものではないが、実験的な知見から、600〜1200rpm程度が推奨される。
【0027】
<下流回転継ぎ手の構造の説明>
下流回転継ぎ手11の構造について図7を用いて説明する。前述したように上流回転継ぎ手3と基本的な構造は同じため、本説明で上流回転継ぎ手3の説明を兼ねるものとする。
吐出口10から連結され回転する上流管路50と固定されている下流管路55を接続する下流回転継ぎ手11は、気流で混練された材料を圧送するため密閉条件が保たれる必要がある。相対回転を行う上流管路50と吐出口10との間には間隙があり、通常では気流の圧力により上流管路50内部から外部への漏出が避けられない。例えば相対回転については、下流回転継ぎ手11の場合は100〜200rpmと比較的低速であるが、上流回転継ぎ手3の場合は、中空回転軸が1000rpm前後と高速になっている。また、圧力については、吐出口10から搬送する長さにより変わるが、例えば、吐出口10から施工場所までの長さが20m程度の搬送の場合は、連続混練装置Sの導入部では最高0.3から0.4MPaの圧力がかかる場合がある。しかも、耐火原料は摩耗性があるため、回転時に、耐火原料がシール部から侵入すると軸受を摩耗させるとともに、停止時には固化し、これらを繰り返す結果、最悪の場合には、軸受に耐火原料がかみ込み回転が不可能に至ることが避けられない。
従って、前述したような圧力、相対回転速度或いは耐火原料の摩耗性にたいしシール性を確保するには、気流の圧力に打ち勝つ圧力を加圧流体により間隙の外部から付与することにより、前述したような耐火原料の侵入を防ぐことができる。加圧流体としては油が一般的であるので事例では油として以下図を用いて説明する。
【0028】
図7に示すように上流管路50から下流管路55に耐火原料が気流によって圧送される。下流回転継ぎ手11の場合は、上流管路50が回転し、下流管路55が固定されている。上流回転継ぎ手3の場合は、回転の管路と固定の管路が上下逆に配置される。シールの部材としては、先ずオイルシール51とパッキン52が設けられる。軸受54はこれら部材の外側に配置される。圧力を付与する加圧流体は注油口53から供給され、油溜まり56に圧力が一定になるように、稼働時は常時圧力がかかるようになっている。圧力付与に適した加圧流体としては水を使うことも可能であるが油が実用上好ましい。こうすることにより、材料が軸受けへ侵入することが避けられ、安定した回転を確保することが可能となる。
前述した連続混練装置Sでは、対象とする耐火原料の材質には制限はない。
主要な耐火原料であるアルミナ質、アルミナ−シリカ質、アルミナ−スピネル質、アルミナ−マグネシア質、アルミナ−カーボン質、アルミナ−SiC質、アルミナ−SiC−カーボン質、マグネシア質、マグネシア−カーボン質等、およびこれらの組み合わせである材質に問題なく適用できる。
【0029】
[2]連続混練装置Sを搭載した耐火物施工装置S’
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。尚、以下の説明では既に説明した部分と同一の部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
本実施形態に係る耐火物施工装置S’は、図8に示されるように、取鍋Tの上部開口から連続混練装置Sを吊り下げ、この状態で連続混練装置Sによる耐火物の施工を行っている。以下、本実施形態について詳述する。
本実施形態に係る耐火物施工装置S’は、図8に示されるように、取鍋Tの上部開口端部間に架設される基台70と、基台70から懸垂される昇降フレーム74と昇降フレーム74を懸垂するとともに昇降させるウインチ76と束ねられたホース、ケーブル類を案内するガイド機構75とを備えて構成される。
基台70は、取鍋Tの上部開口端面上に設置され、中央部に上方に突出する中央部架構71とを備えて構成され、そのほか、デッキ72及び操作盤73が設置されている。操作者はデッキ72上にて操作盤73により必要な操作を行う。
基台70から懸垂された昇降フレーム74には連続混練装置Sが搭載されている。昇降フレーム74の昇降は、ウインチ76の昇降動作により行われる。
ノズル60は、昇降フレーム74に搭載された連続混練装置Sの下流回転継ぎ手11下方に回転自在に支持され、図示を略したが、外部にスプロケットが嵌挿されている。スプロケットには、昇降フレーム74上に設けられた駆動モータ64の回転軸に接続されたベルト63が連結し、ベルト63が駆動モータ64によって回転すると、それに伴いノズル60が回転する。
ノズル60の途中には急結剤添加口61が接続され、吹き付け材の凝固速度調整を図ることができる。急結剤添加口61へ急結剤を圧送するポンプは図示されていないが、ノズルが搭載される回転フレームに搭載することにより回転自在にすることができる。
【0030】
耐火物施工装置S’への乾式原料の供給は、図示を略したがホッパー下端に設けられたテーブルフィーダーなどの切り出し装置を経て乾式原料を気流により連続混練装置Sの供給口へ連続的に送る。
連続混練装置Sへ導かれるホースや動力用或いは信号伝達用のケーブル類は束ねられガイド機構75により中央部架構71から懸垂され、昇降フレーム74の上下動にあわせて追従することができる。
このような耐火物施工装置S’において、昇降フレーム74を上下に移動させると、図8に示されるように、連続混練装置Sを自在に移動させることが可能である。
また、回転フレームを回転させると、連続混練装置S下端に接続されたノズル60を自由に回転させることができる。
このような耐火物施工装置S’によれば、耐火物施工装置S’が取鍋Tの上部開口に跨って設置されるため、取鍋Tの底部に耐火物施工装置S’を設置することなく不定形耐火物の吹き付け施工を行うことができ、設置作業を簡単に行うことができる。
また、昇降フレーム74の昇降及びノズル60の旋回により、耐火物の投射を取鍋Tの側壁全範囲に渡り行うことができる。
屈曲部に可撓可能なホースを用い、図示しないがノズルの仰俯可能な機構を設けることにより底部の吹き付けも可能である。
【0031】
なお、以上に説明した態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的及び効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。また、本発明を実施する際における具体的な構造及び形状などは、本発明の目的及び効果を達成できる範囲内において、他の構造や形状などとしても問題はない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1実施形態に係る連続混練装置の構造を表す側断面模式図。
【図2】前記実施形態における耐火原料混練部の構造を表す断面拡大図。
【図3】前記実施形態における耐火原料混練部の構造の一部の平面を表す断面拡大図。
【図4】前記実施形態における材料吐出部の構造を表す断面拡大図。
【図5】本発明の変形例における材料吐出部の構造を表す断面拡大図。
【図6】本発明の他の変形例における材料吐出部の構造を表す断面拡大図。
【図7】前記実施形態における回転継ぎ手の構造を表す断面拡大図。
【図8】本発明の第2実施形態における施工適用事例の模式図。
【符号の説明】
【0033】
1a…上流管路、1b…下流管路、2…注水口、3…上流回転継ぎ手、4…中空回転軸、5…衝突盤、6…外筒、7…混練手段回転軸、8…排出手段回転軸、9…排出筒、10…吐出口、11…下流回転継ぎ手、13a,13b…軸受、14…リング、16…軸受、17…注油口、18…パッキン、19a,19b…フランジ、20…連結板、21…スプロケット、22…ベルト、23…スプロケット、24…モータ(中空回転軸駆動源)、25…軸受、26…軸受、30…スプロケット、31…ベルト、32…スプロケット、33…モータ(外筒駆動源)、40…棒状部材、41…板状部材(旋回流付与部材)、41a…棒状部材(旋回流付与部材)、41b…螺旋羽根(旋回流付与部材)、42…フレーム、44a,44b…フランジ、50…上流管路、51…オイルシール、52…パッキン、53…注油口、54…軸受、55…下流管路、60…ノズル、61…急結剤添加口、63…ベルト、64…駆動モータ、70…基台、71…中央部架構、72…デッキ、73…操作盤、74…昇降フレーム、75…ガイド機構、76…ウインチ、A…材料導入部、B…材料混練部、C…材料吐出部、S’…耐火物施工装置、S…連続混練装置、T…取鍋。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火原料と水を連続的に供給しながらスラリー状の混練物を連続的に得るための耐火物の連続混練装置において
気流により前記耐火原料を構成する乾式原料を上流管路内に搬送する材料導入部と、
前記材料導入部で搬送された前記材料を混練する材料混練部と、
前記材料混練部で混練された材料を下流管路へ搬送するための材料吐出部と、を備え、
前記材料導入部は
前記上流管路に耐火原料を連続供給可能な供給機構と、
前記上流管路内の耐火原料に水を添加する水添加機構と、
前記上流管路に接続され回転自在に支持される上流回転継ぎ手と、
前記上流回転継ぎ手の下流に接続されるとともに下端が開放された中空回転軸と、
前記中空回転軸を回転駆動させる中空回転軸駆動源と、
前記中空回転軸の下端の延長上に設けられ、前記耐火原料が衝突する衝突盤と、を備え、
前記材料混練部は、
略筒形又は略錐台形の容器の内部を密閉空間とするとともに回転自在に支持された外筒と、
前記外筒を回転駆動させる外筒駆動源と、
前記中空回転軸に連結され前記衝突盤下方から前記外筒の中心軸方向に延びる混練手段回転軸と、
前記混練手段回転軸周りに植設される棒状部材と、を備え、
前記材料吐出部は、
吐出口に向け前記外筒下端から接続され下方に向かうに従って縮径する略錐状の排出筒と、
前記混練手段回転軸の下端に延伸された排出手段回転軸と、
前記排出手段回転軸の周りにその軸方向と交差する方向に突出する状態で植設され、前記材料混練部で混練された混練物に旋回流を付与する旋回流付与部材と、
前記吐出口に接続され前記下流管路と回転自在に支持される下流回転継ぎ手と、を備えていることを特徴とする耐火物の連続混練装置。
【請求項2】
請求項1に記載の耐火物の連続混練装置において、前記旋回流付与部材に板状部材を用いることを特徴とする耐火物の連続混練装置。
【請求項3】
請求項1に記載の耐火物の連続混練装置において、前記旋回流付与部材に棒状部材を用いることを特徴とする耐火物の連続混練装置。
【請求項4】
請求項1に記載の耐火物の連続混練装置において、前記旋回流付与部材に螺旋羽根を用いることを特徴とする耐火物の連続混練装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の耐火物の連続混練装置において、前記上流回転継ぎ手及び前記下流回転継ぎ手のうち少なくとも一方の軸受け近傍に加圧流体を供給するとともに、その加圧流体の圧力を前記上流管路或いは前記下流管路の内圧以上に維持することを特徴とする耐火物の連続混練装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−281697(P2009−281697A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−136565(P2008−136565)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(000170716)黒崎播磨株式会社 (314)
【出願人】(504092460)
【Fターム(参考)】