説明

耐火補強構造およびその施工方法

【課題】耐熱性能の劣る壁に対して簡便に耐火性能を付与することのできる耐火補強構造およびその施工方法を提供すること。
【解決手段】
[1]内部に空間を有する中空壁と、前記空間に配置された吸熱材と、を少なくとも有することを特徴とする、耐火補強構造。
[2]内部に空間を有する中空壁の内部の空間に、吸熱材を配置することを特徴とする、耐火補強構造の施工方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火補強構造およびその施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物の外壁や内壁、床面を形成する床壁、天井面を形成する天井壁等に代表される壁は火災発生時には炎や熱を遮断する役割を担うものであり、火災による被害を最小限に抑える耐火性能を有することが求められる。
この耐火性能は時代の推移と共により良いものが求められてきている。このため、ある建築物の壁が、壁一般に対する過去の基準に合致していたとしても、今日要請される基準に合致しているとは限らないのが実情である。
また実際の問題として建築物の前記壁の耐火性能が今日要請される基準に達していないことが判明した場合、そのまま放置することはできないため、何らかの耐火補強工事を必要とするのが通常である。
しかし耐火性能が劣る壁に対して耐火性能をさらに付与するためには、前記壁に別途耐火材料や耐火パネル等を新たに設置する工事、前記壁を撤去してから新たに耐火性能のある壁を設置する工事、前記壁の全表面を取り除き、内部に耐火材料を新たに充填する工事等、大がかりな工事が必要となる場合があった。
またその工事の最中にはその建物に住み続けることやその建物で仕事を継続することが困難となるため、その建物の居住者や利用者に対して別途居住環境を提供したり、新たな職場環境を提供したりしなければならない等、工事以外にも手間暇が掛かるため、工期が長くなり単位時間当たりの施工性に劣るとの問題があった。
【0003】
一方、建物の梁等に使用される鉄骨の周囲に吸熱パックを取付け、さらにその周囲を無機繊維混合マット等で前記鉄骨の周囲を取り囲み、鉄骨の耐火性能を向上させる構造が提案されている(特許文献1)。
しかしながらこの提案された構造の場合、鉄骨の耐火性能を上げることはできても壁全体の耐火性が劣る場合にはその壁に対して何らかの耐火補強工事を必要とする問題が依然として残る。
【特許文献1】特開平7−133640号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、耐熱性能の劣る壁に対して簡便に耐火性能を付与することのできる耐火補強構造およびその施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため本発明者らが鋭意検討した結果、内部に空間を有する中空壁の前記空間に吸熱材が配置された耐火補強構造が前記目的に適うことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、
[1]内部に空間を有する中空壁と、
前記空間に配置された吸熱材と、
を少なくとも有することを特徴とする、耐火補強構造を提供するものである。
【0007】
また本発明は、
[2]前記吸熱材が、少なくとも一つの吸熱材料を基材により包装した吸熱包装体を含む、上記[1]に記載の耐火補強構造を提供するものである。
【0008】
また本発明は、
[3]前記吸熱包装体が、互いに対向する前記基材の周囲の端面を貼着して一体とした単一パック、前記単一パックを一列に連結することにより得られる単連パックおよび前記単連パックを横方向に連結することにより得られる複連パックからなる群より選ばれる少なくとも一つである、上記[2]に記載の耐火補強構造を提供するものである。
【0009】
また本発明は、
[4]前記吸熱包装体が、前記基材を折り返して対向させた基材周囲の端面を貼着して一体とした単一パックを含み、
前記単一パックの折り返し部が地面に対して下側かつ水平に配置された、上記[2]または[3]に記載の耐火補強構造を提供するものである。
【0010】
また本発明は、
[5]前記吸熱包装体が、前記基材の貼着部に固定補助部材を備えた、上記[2]〜[4]のいずれかに記載の耐火補強構造を提供するものである。
【0011】
また本発明は、
[6]前記吸熱包装体が、互いに連結された二以上の単一パックを備え、前記単一パック同士の連結部に分離手段が設けられている、上記[2]〜[5]のいずれかに記載の耐火補強構造を提供するものである。
【0012】
また本発明は、
[7]前記中空壁が、内部の空間に柱部材を備え、
前記吸熱包装体が、前記柱部材に沿って配置された、上記[2]〜[6]のいずれかに記載の耐火補強構造を提供するものである。
【0013】
また本発明は、
[8]内部に空間を有する中空壁の前記空間に、吸熱材を配置することを特徴とする、耐火補強構造の施工方法を提供するものである。
【0014】
また本発明は、
[9]中空壁に開口部を設ける工程と、
前記開口部を通して中空壁の内部の空間に前記吸熱材を配置する工程と、
を少なくとも有する、上記[9]に記載の耐火補強構造の施工方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の耐火補強構造は内部に空間を有する中空壁の前記空間に吸熱材が配置された構造を有するため、中空壁に対して簡便に耐火補強を施すことができる。
また本発明の耐火補強構造に使用する吸熱材として吸熱材料を基材により包装したものを使用した場合には取り扱い性に優れることから耐火補強構造の施工性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
最初に本発明に使用する吸熱材について説明する。
本発明に使用する吸熱材としては、例えば、水酸基含有化合物類、水酸化金属塩類、吸水ポリマー類等の吸熱材料を含むものが挙げられるが、具体的には前記吸熱材料等を基材により包装した吸熱包装体等が挙げられる。
【0017】
前記水酸基含有化合物としては、例えば、水、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
前記水酸基含有化合物は水が好ましく、低温下で水が凍ることによる体積変化を少なくするためジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の不凍液を含有する水溶液がより好ましい。
【0018】
前記水酸化金属塩としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化金属塩等が挙げられる。
【0019】
前記吸水ポリマーとしては、例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、イソブチレンーマレイン酸共重合体等が挙げられる。前記吸水ポリマーはポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩が好ましく、ポリアクリル酸ナトリウムであればより好ましい。また前記吸水ポリマーは水を含有させたものであればさらに好ましい。
【0020】
前記吸熱材料は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0021】
また前記吸熱包装体に使用する基材としては、例えば、金属箔類、合成樹脂類、無機繊維類等を含むものを挙げることができる。
前記金属箔としては、例えば、アルミニウム箔、銅箔、ステンレス箔、錫箔、鉛箔、錫鉛合金箔、クラッド箔、鉛アンチ箔等の金属箔類等が挙げられる。
【0022】
前記合成樹脂類としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリペンテン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、フェノール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイソブチレン等が挙げられる。
【0023】
前記無機繊維類としては、例えば、ガラスクロス、シリカクロス、アルミナクロス等を挙げることができる。
【0024】
前記基材は前記金属箔類からなるもの、前記合成樹脂類からなるもの、前記無機繊維類からなるもの等に限定されず、例えば、前記金属箔類と前記合成樹脂類との積層体、前記金属箔類と無機繊維類との積層体、前記樹脂類と前記無機繊維類との積層体等を使用することができる。
【0025】
中でも金属箔ラミネート合成樹脂類、金属箔ラミネート無機繊維類等を使用することが好ましく、アルミラミネート合成樹脂類、アルミラミネート無機繊維類等であればさらに好ましい。
【0026】
前記基材は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0027】
次に本発明に使用する前記吸熱包装体について説明する。
図1は前記吸熱包装体の一実施態様を例示した模式斜視図である。
前記吸熱包装体の形状としては、図1に示す様に互いに対向する前記基材1の周囲の端面2を貼着して一体とした単一パック3が挙げられる。
前記基材1は1枚からなるものを折り返して周囲の端面2を互いに貼着して単一パック3を作ることもできるし、2枚の前記基材1を重ね合わせてから周囲の端面2を互いに貼着して単一パック3を作ることもできる。
【0028】
前記基材1の周囲の端面2を互いに貼着する方法としては、例えば、熱により溶融貼着する方法、接着剤により貼着する方法等が挙げられる。
【0029】
前記吸熱包装体としては前記吸熱材料(図示せず)を前記基材1により包装したもの等が挙げられるが、前記基材1に包装されるのは先に説明した前記吸熱材料のみに限定されず、前記吸熱材料に加えて例えばロックウール、セラミックウール、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、ジルコニア繊維、セラミックブランケット等の無機耐熱材等も含まれる。また前記吸熱材料と前記無機耐熱材とが積層されたもの等を包装したもの等でもよい。
【0030】
また必要に応じて、熱膨張性耐火材(積水化学工業社製、商品名フィブロック)等も前記吸熱材料と併用することができる。
【0031】
図2および図3は前記吸熱包装体の断面を例示した模式断面図である。
前記吸熱包装体の具体例としては、例えば図2に例示される様に含水させた吸水ポリマー4およびロックウール5をアルミラミネートポリエチレンテレフタレート6により包装したものや、図3に例示される様に含水させた吸水ポリマー4をアルミラミネートポリエチレンテレフタレート6により包装し、その両面をセラミックブランケット7の間に配置し、全体をアルミシート8により包装したもの等を挙げることができる。
【0032】
図4は単一パックの使用形態を説明するための模式正面図である。なお図4(a)および(b)では図面の左右方向が地面に対して水平方向を示し、図面の上下方向が地面に対して垂直方向を示す。
図4(a)および(b)では基材の一例としてアルミラミネートポリエチレンテレフタレート6が使用されている。一枚の長方形のアルミラミネートポリエチレンテレフタレート6を短辺6aが互いに平行となるように折り返す。この際、前記アルミラミネートポリエチレンテレフタレートの短辺6a,6a同士が重なる様に前記アルミラミネートポリエチレンテレフタレート6を折り返してもよいし、一方の短辺6aが他方の短辺6aよりも前記折り返し部6cに近くなる様に折り返してもよい。
【0033】
前記アルミラミネートポリエチレンテレフタレート6の長辺6bの端面を互いに貼着した後、吸熱材料として、例えば含水させた吸水ポリマーを前記アルミラミネートポリエチレンテレフタレートを内部に充填する。次に前記アルミラミネートポリエチレンテレフタレートの開放部を貼着することにより図4(a)および(b)に例示した単一パック3aを得ることができる。
【0034】
図4(a)に例示した様に、前記単一パック3aの折り返し部6cを地面に対して垂直にして前記単一パック3aを使用した場合、前記単一パック3aの長辺6bの端面貼着部が前記単一パック3aの底となる。
このため前記単一パック3aが火災等の熱にさらされた場合、前記長辺6bの端面貼着部が熱により開き、前記単一パック3a内部の吸熱材料が一気に抜け落ちる可能性がある。
これを避けるため図4(b)に例示する様に、前記単一パック3bの折り返し部6cを水平かつ下にして前記単一パック3bを使用することが好ましい。
【0035】
前記単一パック3bの折り返し部6cを水平かつ下とすることにより、前記単一パック3bが火災等の熱にさらされた場合、図4(b)の場合であれば前記単一パック3b内部の吸熱材料が一気に抜け落ちることはなく、前記単一パック3bの左右から吸熱材料が徐々に放出されるため図4(a)の場合と比較して前記単一パック3bを使用した場合の吸熱効果を長時間維持することができる。
【0036】
また本発明に使用する吸熱包装体は基材により包装された吸熱材料の周囲を固定補助部材により固定することが好ましい。
前記固定補助部材としては、例えば、ボルト・ナット、タッカー、ステープラー、クリップ等の金属部材、凹部と凸部とを備えた一組の固定鋲を基材の両面から前記凹部と凸部とをはめ合わせて配置し、圧力を加えて固定する圧着部材等が挙げられる。
【0037】
図5は固定補助部材70の使用態様を説明するための模式正面図であり、二枚の基材1を重ね合わせて周囲の端面を互いに貼着すると共に固定補助部材70により固定した状態を例示したものである。図5では前記基材1の下端1aが水平であり、前記基材の左右端1b,1cが地面に対して垂直となっている。
図5(a)では基材1としてアルミラミネートポリプロピレンが使用され、固定補助部材70としてステープラーが配置されている。
【0038】
図5(a)に例示する様に基材1の下端1a貼着部を固定補助部材70により固定しておくことが好ましい。前記基材1の下端1a面を固定補助部材70で固定しておくことより単一パック3cが火災等の熱にさらされた場合でも、前記単一パック3c内部の吸熱材料が一気に抜け落ちることを防ぐことができる。
【0039】
また前記基材1の上端1d貼着部も固定補助部材70により固定しておくことが好ましい。前記基材1の上端1d面を固定補助部材70により固定しておくことにより、前記単一パック3cの急激な形状変化を防止することができ、前記単一パック3c内部の吸熱材料が予期しない段階で抜け落ちることを防ぐことができる。
【0040】
図5(b)および(c)では左右両端1b,1c貼着部に固定補助部材70としてステープラーが配置されている。図5(b)に例示される単一パック3dの左右両端1b,1c貼着部に対する固定補助部材70の数は、図5(c)に例示される単一パック3eの左右両端1b,1c貼着部に対する固定補助部材70の数よりも少なくなっている。
【0041】
図5(a)〜(c)の単一パック3c,3d,3eを同時に使用した場合、図5(a)に例示される単一パック3cはその左右両端1b,1c貼着部に固定補助部材70が配置されていないため、火災等の熱により単一パック3c,3d,3eの中でも左右両端1b,1c貼着部が一番最初に開き、前記単一パック内の吸熱材料が徐々に放出される。次に図5(b)に例示される単一パック3d、図5(c)に例示される単一パック3eの順番に前記吸熱材料が徐々に放出される。
【0042】
また図5(b)および(c)の場合では単一パック3d,3eの左右両端1b,1c貼着部に固定補助部材70が配置されているが、固定補助部材70はそれぞれ左右両端1b,1cいずれかの一方に配置することもできる。
【0043】
二以上の単一パックを地面に対して垂直方向に使用する場合、地面に対して垂直方向の固定補助部材の配置数をそれぞれ変更することにより火災等の際における前記吸熱材料の放出速度を調節することができる。地面に対して垂直方向の固定補助部材の配置数が異なる二以上の単一パックを使用することにより、火災等の初期に全ての吸熱材料が放出されることを防止することができ、吸熱効果を長時間維持することができる。
【0044】
図6は前記吸熱包装体の異なる一実施態様を例示した模式斜視図である。
図6に例示される通り、前記単一パック3を一列に連結することにより単連パック30を得ることができる。単一パック3,3の連結部9は二枚の前記基材の面が互いに貼着されて形成されている。
【0045】
図7は単連パックの製造方法を説明するための模式要部正面図である。
図7では基材1としてアルミラミネートガラスクロスが使用されている。
図4(b)により説明した単一パック3bの折り返し部6cが図7(a)の下となるように、各単一パック3bを長方形のアルミラミネートガラスクロスの表面に揃える。次に図7(b)の前記アルミラミネートガラスクロスを前記基材1の下端1aおよび上端1dの中央部を結ぶ線に沿って折り返す。次に固定補助部材70にて前記各単一パック3bの上下を固定することにより図7(c)に例示する単連パック30aが得られる。
なお図7(c)では固定補助部材70として、ステープラーが使用されている。
また必要に応じて前記アルミラミネートガラスクロスの端面を外周に沿って貼着することもできる。
【0046】
図8は異なる単連パックの製造方法を説明するための模式要部正面図である。
図8では先の図7の場合と同様、基材1としてアルミラミネートガラスクロスが使用されている。
図8(a)に例示する様に長方形のアルミラミネートガラスクロスを、左右両端1b,1cの中央部を結ぶ線に沿って折り返す。
【0047】
次に図8(b)に例示する様に、基材1の長手方向に対して垂直方向に一定の間隔をおいて前記アルミラミネートガラスクロスを互いに貼着して連結部9を形成する。なお、基材1の長手方向とは単一パック3fが連結される方向のことを意味する。
図8(b)では、前記アルミラミネートガラスクロスの折り返し部81および連結部9ならびに前記アルミラミネートガラスクロスの折り返し部81および左右両端1b,1c貼着部により囲まれたそれぞれの収容部80が単一パック3fを形成し、各単一パック3fが連結されて前記単連パック30bが形成される。
【0048】
次に前記アルミラミネートガラスクロスの開放部82から前記収容部80に吸熱材料を充填する。図8(c)では吸熱材料として含水させた吸水ポリマーが使用されている。次に前記アルミラミネートガラスクロスの開放部82を貼着する。
【0049】
次に、基材1の長手方向に対して垂直方向に沿って前記連結部9および左右両端1b,1c貼着部に固定補助部材70を配置する。図8(c)では固定補助部材70としてステープラーが使用されている。この様にして単連パック30bが得られる。
【0050】
前記連結部9に固定補助部材70を配置することにより、火災等の熱により前記アルミラミネートガラスクロスの貼着部が開いて各単一パックから吸熱材料が一気に抜け落ちることを防止することができる。
【0051】
また前記単連パック30bを長手方向を縦にして使用することにより、火災等の熱により前記アルミラミネートガラスクロスの長手方向の貼着部83が開き、前記単連パック30b内の吸熱材料が徐々に放出される。このため前記単連パック30bによる温度上昇抑制の効果を長時間維持することができる。
【0052】
図9は異なる単連パックの製造方法を説明するための模式要部正面図である。
図9では先の図8の場合とは異なり、基材1としてアルミラミネートポリエチレンが使用されている。
図9(a)に例示する様に二枚の長方形のアルミラミネートポリエチレンを重ねる。
次に図9(b)に例示する様に、基材1の左右端1bおよび1cならびに下端1aの端面を貼着すると共に、基材1の長手方向に対して垂直方向に一定の間隔をおいて前記アルミラミネートポリエチレンを互いに貼着して連結部9を形成する。図9(b)では、前記アルミラミネートポリエチレンの下端1a貼着部および連結部9ならびに前記アルミラミネートポリエチレンの下端1a貼着部および左右両端1b,1c貼着部により囲まれたそれぞれの収容部80が単一パック3mを形成し、各単一パック3mが連結されて単連パック32bが形成される。
【0053】
次に前記アルミラミネートポリエチレンの開放部82から前記収容部80に吸熱材料を充填する。図9(c)では吸熱材料として含水させた吸水ポリマーが使用されている。次に前記アルミラミネートポリエチレンの開放部82を貼着する。
図9(d)に例示する様に、得られた単連パック32bをアルミラミネートガラスクロス90により包み、図9(e)に例示する様に、基材1の長手方向に対して垂直方向に沿って前記連結部9および左右両端1b,1c貼着部に固定補助部材70を配置することにより、単連パック34bが得られる。
なお図9(e)では固定補助部材70としてステープラーが使用されている。
【0054】
前記単連パック34bはアルミラミネートガラスクロスを備えるため、火災等の熱にさらされた場合でも形状保持性に優れることから長時間吸熱効果を発揮することができる。
【0055】
また前記単連パック34bを長手方向を縦にして使用することにより、火災等の熱により前記アルミラミネートガラスクロス内部に配置された単連パック32bの長手方向の貼着部83が開き、前記単連パック32b内の吸熱材料が徐々に放出される。このため前記単連パック34bによる温度上昇抑制の効果を長時間維持することができる。
【0056】
図10は単連パックの使用形態を説明するための模式正面図である。
図10(a)に例示される単連パック30bは図8(c)により説明した単連パックを地面に対して垂直に使用した場合を例示したものであり、単連パックの長手方向の貼着部83に固定補助部材70が配置されていない。
図10(b)では単連パック30cの長手方向の貼着部83に固定補助部材70が奇数個配置されている。
図10(c)では単連パック30dの長手方向の貼着部83に固定補助部材70が偶数個配置されている。
単連パックの長手方向の貼着部に配置する固定補助部材の数を増加させると、前記単連パックが火災等の熱にさらされた場合であっても垂直方向の貼着部が容易に開きにくくなるため、前記単連パック内部の吸熱材料の放出を遅延させることができる。
なお、先に説明した通り、単連パックの長手方向とは、単連パックに含まれる単一パックが連結される方向を意味する。
【0057】
図10により説明した様に、二以上の単連パックを使用する場合、
(イ)長手方向の貼着部に固定補助部材が配置されていない単連パック、
(ロ)長手方向の貼着部に固定補助部材が奇数個配置されている単連パック、
(ハ)長手方向の貼着部に固定補助部材が偶数個配置されている単連パック等、
前記(イ)〜(ハ)等の一もしくは二以上を併用することにより、使用する単連パック全体として地面に対して垂直方向の固定補助部材の配置数を自在に変更することが可能となり火災等の際における前記吸熱材料の放出速度を調節することができる。
【0058】
この様に長手方向の固定補助部材の配置数が異なる二以上の単連パックを、前記長手方向が地面に対して垂直となるように使用することによりそれぞれの単連パックからの吸熱材料の放出速度を調節することができる。これにより火災等の初期に全ての吸熱材料が放出することを防止することができ、吸熱効果を長時間維持することができる。
【0059】
図11は単連パックの異なる使用形態を説明するための模式正面図である。
図11に例示される単連パック30eの場合、前記単連パック30eに含まれる各単一パック3gに対応する長手方向の貼着部に配置する固定補助部材70の数が単一パック毎に異なる。
【0060】
この様に、一つの単連パックに含まれる固定補助部材のうち、単一パックの側面に対応する垂直方向の貼着部に配置する固定補助部材の数を増減させることにより、一つの単連パックで火災等の初期に全ての吸熱材料が放出されることを防止することができ、吸熱効果を長時間維持することもできる。
【0061】
図12は前記吸熱包装体の異なる一実施態様を例示した模式斜視図である。
図12に例示される通り、前記単連パック30を横方向に連結することにより複連パック300を得ることができる。単連パック30,30の連結部は先の場合と同様、二枚の前記基材の面が互いに貼着されて形成されている。
【0062】
なお特段図示していないが、複連パックについても二以上の複連パックを使用する場合、地面に対して垂直方向の固定補助部材の配置数をそれぞれ変更することにより火災等の際における前記吸熱材料の放出速度を調節することができる点、一つの複連パックに含まれる単一パックに対応する垂直方向の貼着部に配置する固定補助部材の数を増減させることにより、一つの複連パックで火災等の初期に全ての吸熱材料が放出されることを防止することができ、吸熱効果を長時間維持することができる点等は先の単連パックの場合と全く同様である。
【0063】
図13は前記単連パック30の連結部を例示するための模式要部正面図である。
本発明に使用する二以上の単一パックの連結部には分離手段を設けることもできる。
図13に例示される様に、前記単連パック30の連結部9には分離手段として破線状の切り込み10が設けられていて、前記単連パック30から単一パック3を分離したり、前記単連パック30を二つの単連パックに分離したりすることが容易にできる構造となっている。
このため施工現場で前記吸熱包装体のサイズが前記中空壁のサイズと合致しないことが判明した場合でも前記吸熱包装体のサイズを柔軟に変更することができるため、施工性に優れる。
【0064】
図14は前記単連パック30の連結部9の異なる一実施態様を例示した模式要部正面図である。
図14に例示される様に、前記単連パック30の連結部9は単連パック3同士の一部がつながっているものであってもよい。
【0065】
図15は前記単連パック30の連結部の異なる一実施態様を例示した模式要部正面図である。
前記単連パック30の連結部9には切り欠き11が設けられていて、先の場合と同様、前記単連パック30から単一パック3を分離したり、前記単連パック30を二つの単連パックに分離したりすることが容易にできる構造となっていることから同様に施工性に優れる。
【0066】
図16は前記単連パック30の連結部9の異なる一実施態様を例示した模式要部正面図である。
前記単連パック30の連結部9は、単一パック3の端部同士を無機繊維や金属繊維等からなる糸12により縫合してもよい。この場合には前記糸12を引き抜くことにより、前記単連30パックから単一パック3を分離したり、前記単連パック30を二つの単連パックに分離したりすることが容易にできることから同様に施工性に優れる。
【0067】
図17は前記単連パックの連結部の異なる一実施態様を例示した模式要部正面図である。
図17に例示される様に、金属製の針金等のリング13により単一パック3同士を連結して単連パック30を形成することができる。前記リング13を切断することにより前記単連パック30から単一パック3を分離したり、前記単連パック30を二つの単連パックに分離したりすることが容易にできることから同様に施工性に優れる。
【0068】
図18は前記単連パックの連結部の異なる一実施態様を例示した模式要部正面図である。
図18に例示される様に、金属製のクリップ14等により単一パック3同士を連結して単連パック30を形成することができる。
【0069】
前記クリップ14を取り外すことにより前記単連パック30から単一パック3を分離したり、前記単連パック30を二つの単連パックに分離したりすることが容易にできることから、同様に施工性に優れる。
【0070】
図13〜図18に例示される前記連結部の構造は一または二以上を採用することができる。
【0071】
なお前記複連パックの連結部の構造についても上記に説明した前記単連パックの連結部の構造と同様である。
また前記単連パックおよび複連パックの連結部の構造に加え、先に説明した固定補助部材を併用できることはいうまでもない。
【0072】
本発明に使用する吸熱包装体は、前記基材に包装される前記吸熱材料等の偏りを防止することができることから前記単連パックおよび複連パックの少なくとも一つであることが好ましい。
【0073】
次に本発明の耐火補強構造に使用する中空壁について説明する。
本発明に使用する中空壁はその内部に空間を有するものであればよく、特に限定はないが、例えば柱部材と耐熱パネル等を含むものが挙げられる。
具体的には例えば木桟、金属フレーム、鉄筋コンクリート製の柱、鋼材からなる鉄骨等の少なくとも一つのスタッドに対して耐熱パネル等を両側から固定した構造のもの等を挙げることができる。
【0074】
前記耐熱パネルには、例えば、セメント系パネル、無機セラミック系パネル等が使用される。
前記セメント系パネルとしては、例えば、硬質木片セメント板、無機繊維含有スレート板、軽量気泡コンクリート板、モルタル板、プレキャストコンクリート板等が挙げられる。
前記無機セラミック系パネルとしては、例えば、石膏ボード、けい酸カルシウム板、炭酸カルシウム板、ロックウール板、窯業系板等が挙げられる。
【0075】
ここで前記石膏ボードとしては、具体的には焼石膏に鋸屑やパーライトなどの軽量材を混入し、両面に厚紙を貼って成板したもので、例えば、普通石膏ボード(JIS A6901準拠:GB−R)、化粧石膏ボード(JIS A6911準拠:GB−D)、防水石膏ボード(JIS A6912準拠:GB−S)、強化石膏ボード(JIS A6913準拠:GB−F)、吸音石膏ボード(JIS A6301準拠:GB−P)等が挙げられる。
【0076】
前記耐熱パネルは一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0077】
本発明の耐火補強構造は、内部に空間を有する中空壁と前記空間に配置された吸熱材とを少なくとも有することを特徴とするものであるが、以下に本発明の耐火補強構造およびその施工方法の実施態様について実施例に基づいて図面を参照しつつさらに詳細に説明する。
なお本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0078】
図19は第一の実施態様である耐火補強構造の施工方法を説明するための模式要部断面図であり、水平方向に設置された中空壁20を垂直に切断し、その断面を横方向から観察した状態を示したものである。
図19に例示した中空壁20は、天井壁や床壁等、水平方向に設置されたものである。
前記中空壁20は、鋼製フレーム21の両面に耐熱パネル22がボルトやナット等の固定手段(図示せず)を用いて配置されている。また前記鋼製フレーム21と前記耐熱パネル22とに接してロックウール等の無機耐熱材23がタッカー等の固定手段(図示せず)を用いて配置されている。
【0079】
図19に例示した様に、前記中空壁20はその内部に空間24を有するものである。
また前記鋼製フレーム21として、例えば日本工業規格(JIS G 3101)に規定される一般構造用の圧延鋼材等や日本工業規格(JIS G 3350)に規定される一般構造用軽量形鋼等が使用される。また、前記耐熱パネル22として軽量気泡コンクリート板が使用されている。
【0080】
図20は第一の実施態様である耐火補強構造の施工方法を説明するための模式要部断面図である。
図20に例示する様に、前記中空壁20の空間24に前記中空壁20の側面開口部25から吸熱材としての単連パック30を配置することにより、耐火補強構造を施工することができる。
【0081】
第一の実施態様に使用した単連パック30はアルミラミネートポリエチレンテレフタレートフィルムにより、含水させた吸水ポリマーとロックウールとを包装したものである。
【0082】
前記単連パック30に加えて、ロックウール等の無機耐熱材無機耐熱材、熱膨張性耐火材(積水化学工業社製、商品名フィブロック等)を前記空間24に配置してもよい。
また図19では一つの単連パック30を使用した場合について説明しているが、単連パック30を二以上使用することもできる。
【0083】
二以上の単連パック30を使用する場合には、前記単連パック30を水平方向に隙間無く配置してもよいし、隙間を開けて配置してもよい。また前記単連パック30は垂直方向に積層して配置することもできる。
また前記単連パック30に代えて、または前記単連パック30と共に、図12により説明した複連パックを使用することもできる。
上記の施工方法により、中空壁20の空間24に吸熱材が配置された耐火補強構造が得られる。
【実施例2】
【0084】
図21は第二の実施態様である耐火補強構造の施工方法を説明するための模式要部断面図である。
図21に例示した中空壁40は、例えば建物内部の一方の部屋と他方の部屋とを区画するための内壁、建物の外壁等、垂直方向に設置されたものである。
【0085】
前記中空壁40は鋼製フレーム41の両面に対して耐熱パネル42が設置された構造となっている。前記鋼製フレーム41は先の場合と同様、一般般構造用の圧延鋼材等や一般構造用軽量形鋼等が使用される。また、前記耐熱パネル42として石膏ボードが使用されている。
【0086】
また前記中空壁40内部には無機耐熱材43が設置されている。この第二の実施態様ではガラスウールが前記無機耐熱材43として使用されていて、前記無機耐熱材43がタッカー等の固定手段(図示せず)によって前記耐熱パネル42に対して固定されている。
【0087】
図22は第二の実施態様である耐火補強構造の施工方法を説明するための模式要部断面図である。
図22に例示した前記中空壁40の前記耐熱パネル42の上部を回転刃を備えた電動カッター等の切断手段により切断する。前記鋼製フレーム41に対して複数の前記耐熱パネル42がボルト等の固定手段により前記鋼製フレーム41に設置される場合には、前記ボルト等の固定手段を解除することにより前記耐熱パネル42のうち上部に位置する部分の耐熱パネル42を取り外すことができる。
【0088】
次に前記中空壁40内部の無機耐熱材43の上部を取り外す。
この様にして図22に例示した開口部45を有する前記中空壁40を得ることができる。
【0089】
図23は第二の実施態様である耐火補強構造の施工方法を説明するための模式要部断面図であり、図24は第二の実施態様である耐火補強構造の施工方法を説明するための模式要部斜視図である。
図23および図24に例示する様に前記開口部45から前記中空壁40の内部の空間44に吸熱材を配置する。
【0090】
この第二の実施態様に使用する前記吸熱材は、先の図12により説明した複連パック300であり、アルミラミネートポリエチレンテレフタレートフィルムにより含水させた吸水ポリマーを包装し、この包装体の上面と下面とをセラミックブランケットによりはさみ、全体をさらにアルミラミネートポリエチレンテレフタレートフィルムにより包装したものである。
【0091】
前記複連パック300を前記中空壁40の開口部45から挿入した後、前記複連パック300を前記中空壁40の内部の空間44に配置する。
【0092】
前記複連パック300を前記中空壁40の内部の空間44に配置する方法としては、例えば、金属製リング等を用いて前記鋼製フレーム41に前記複連パック300を吊り下げる方法、伸縮自在竿を前記中空壁40内部の対向する前記耐熱パネル42間に設置して、前記伸縮自在竿に前記複連パック300を吊り下げる方法、タッカー、ピン、ビス、ボルト、接着剤等を用いて前記中空壁40内部の前記耐熱パネル42や前記鋼製フレーム41に固定する方法等が挙げられる(図示せず)。
【0093】
前記複連パック300を前記中空壁40の内部に配置する方法は一種もしくは二種以上を採用することができる。
本発明の場合は前記複連パック300がボルト(図示せず)により前記鋼製フレームに配置されている。
【0094】
次に図25に例示する様に、前記耐熱パネル42の内面に対して前記無機耐熱材43をタッカー等の固定手段(図示せず)により再度固定し、前記開口部45に耐熱パネルを再度設置することにより、中空壁40の空間44に吸熱材が配置された耐火補強構造が得られる。
【実施例3】
【0095】
図26は第三の実施態様である耐火補強構造を説明するための模式要部断面図である。
この実施例3では中空壁50の耐火補強構造の耐火試験を実施した。
厚みが50mmの中空軽量鉄骨51の両面に対して耐熱パネル52が配置されている。
前記耐熱パネルは910mm×910mmの正方形であり、外側が無機繊維含有ケイ酸カルシウム板、内側が石膏ボードの積層構造となっている。
また前記中空壁50の中央部には軽量鉄骨からなるスタッド60が配置されている。
前記中空壁50内部の前記スタッド60により区画された左右の中空壁50の内部の空間に、単連パック30が配置されている。
【0096】
前記単連パック30は、アルミラミネートガラスクロスにより含水させた吸水ポリマーをパックした単一パック6個を連結したものである。各単一パックの大きさは180×210mmであり、各単一パックは含水させたポリマーを300gを含む。
【0097】
前記中空壁50に対してISO834規格の試験方法に従い耐火試験を実施したところ、加熱される面の内側の面の最高温度は最高311℃であり、耐火試験基準を満たすことが確認された。
【比較例】
【0098】
吸熱材として前記単連パック30を使用しない他は実施例3の場合と同様に耐火試験を実施した。
その結果、加熱される面の内側の面の最高温度は最高672℃に達し、耐火試験基準を満たすことはできなかった。
【0099】
本発明の耐火補強構造によれば、中空壁の内部の空間に吸熱材を配置しているため、火災が発生した場合でも中空壁内部の温度上昇を有効に遅延させることができ、耐火性に優れる。
【0100】
また耐火性能に劣ることが事後的に判明した場合であっても、本発明の耐火補強構造であれば、前記壁に別途耐火材料や耐火パネル等を前記壁に新たに設置する工事、前記壁を撤去してから新たに耐火性能のある壁を設置する工事、前記壁の全表面を取り除き、内部に耐火材料を新たに充填する工事等を必要とせず、前記中空壁に開口部を設けて前記中空壁の内部の空間に前記吸熱材を配置することにより耐火補強構造が得られることから施工性にも優れ、単位時間当たりの耐火補強構造の生産性にも優れる。
【0101】
[参考例1]単一パックの評価
図27は参考例1の単一パックを説明するための模式正面図である。
横10cm、縦8cmのアルミラミネートガラスクロス90を2枚準備し、図27に示す様に前記アルミラミネートガラスクロス90の三方向の端面2を溶融貼着した。次に内部に含水させた吸水ポリマーを33.5g〜35.5gの範囲で充填し、前記アルミラミネートガラスクロス90の開放部82を溶融貼着して単一パック3hを得た。
前記単一パック3hを300℃で15分間加熱したところ、前記単一パック3hの底部の溶融貼着部が開き、含水させた吸水ポリマーが全て一気に脱落した。350℃で10分間加熱した場合も同様であった。
【0102】
[参考例2]単一パックの評価
図28は参考例2の単一パックを説明するための模式正面図である。
横10cm、縦16cmのアルミラミネートガラスクロス90を1枚準備し、図28に示す様に前記アルミラミネートガラスクロス90の短辺同士が重なる様に折り返した。次に前記アルミラミネートガラスクロス90の前記折り返し部81に対して垂直の両端面2を溶融貼着した。続いて内部に含水させた吸水ポリマーを33.5g〜35.5gの範囲で充填し、前記アルミラミネートガラスクロス90の開放部82を溶融貼着して単一パック3iを得た。
前記折り返し部81を下にして前記単一パック3iを300℃で15分間加熱したところ、前記含水させた吸水ポリマーが徐々に放出された。350℃で10分間加熱した場合も同様であった。
【0103】
[参考例3]単一パックの評価
図29は参考例3の単一パックを説明するための模式正面図である。
参考例1により得られた単一パック3hの上端と下端とをそれぞれステープラー92で等間隔に4カ所固定し、単一パック3jを得た。
ステープラー92で固定した下端を下にして前記単一パックを300℃で15分間加熱したところ、前記含水させた吸水ポリマーが徐々に放出された。350℃で10分間加熱した場合も同様であった。
【0104】
[参考例4]単連パックの製造
図30は参考例4の単連パックを説明するための模式正面図である。
先に説明した図4(a)に示した単連パック3aの折り返し部6cが地面に対して垂直になる様に、各単一パック3aを長方形のアルミラミネートガラスクロス90の表面に揃える(図30(a))。次に図30(b)の前記アルミラミネートガラスクロス90を上下の短辺の中央部を結ぶ線に沿って折り返す。次に固定補助部材であるステープラー92にて前記各単一パック3aの上下を固定することにより図30(c)に例示する単連パック30fが得られる。この単連パック30fは含水させた吸水ポリマーをパックした単一パック3aを8個連結したものである。各単一パック3aの大きさは180×210mmであり、各単一パック3aは含水させたポリマーを150gを含む。
なお図30では固定補助部材70として、ステープラーが使用されている。
【0105】
[参考例5]単連パックの製造
先に説明した図7に示した単連パック30aの製造方法と全く同じ方法により単連パック30gを得た。参考例4の単連パック30fの場合は各単一パック3aの底部が貼着部になっているのに対し、参考例5の場合は各単一パック3bの底部が折り返し部になっている点が異なる。それ以外は参考例4の場合と同様である。
【0106】
[参考例6]単連パックの製造
参考例5の単連パックの製造方法と同様の方法により単連パック30hを得た。前記単連パック30hは単一パック3kが10個連結されたものであり、各単一パック3kは含水させたポリマーを120g含む。また前記単連パック30hの幅は実施例6に使用するスタッド−スタッド間の幅とほぼ等しい。
【0107】
[参考例7]単連パックの製造
参考例5の単連パックの製造方法と同様の方法により単連パック30iを得た。前記単連パック30iは単一パック3lが5個連結されたものであり、各単一パック3lは含水させたポリマーを240g含む。また前記単連パック30iの幅は実施例7に使用するスタッドの幅とほぼ等しい。
【実施例4】
【0108】
図31は第四の実施態様である耐火補強構造を説明するための模式要部断面図である。
図31に例示した中空壁100は、例えば建物内部の一方の部屋と他方の部屋とを区画するための内壁、建物の外壁等、垂直方向に設置されたものであり、実施例2の場合と同様、中空壁100を水平方向に切断した断面を上部方向から見下ろした状態を例示したものである。
【0109】
前記中空壁100は、断面が100mm×100mmの正方形である軽量鉄骨からなるスタッド62が垂直に複数配置され、このスタッド62に対して両面から厚さ6mmのケイ酸カルシウムボード110、厚さ12.5mmの強化石膏ボード120が配置されている。なおケイ酸カルシウムボード110は最外面に配置されている。
図30に示される様に、スタッド62とスタッド62間の中空壁100内部の空間に吸熱材として参考例4により得られた単連パック30fを配置する。
前記単連パック30fを内部の空間に配置する方法は実施例2の場合と同様である。
【0110】
前記中空壁100に対してISO834規格の試験方法に従い耐火試験を実施したところ、非加熱側の面のうち、前記スタッドが接していない面の温度は最高133℃であり、前記スタッド部が接している面の温度は最高226℃であった。
【実施例5】
【0111】
実施例4に使用した単連パック30fを参考例5の単連パック30gに変更した以外は実施例4の場合と全く同様に耐火試験を実施した。この結果、非加熱側の面のうち、前記スタッドが接していない面の温度は最高67℃であり、前記スタッド部が接している面の温度は最高180℃であった。
【実施例6】
【0112】
図32は第五の実施態様である耐火補強構造を説明するための模式要部断面図である。
図32は実施例4の場合と同様、中空壁200を水平方向に切断した断面を上部方向から見下ろした状態を例示したものである。
実施例6は、実施例4の単連パック30fに代えて、参考例6により得られた2個の単連パック30hと熱膨張性耐火材210が使用されている。前記熱膨張性耐火材210は積水化学工業社製の商品名フィブロックの両面をアルミラミネートガラスクロスにより積層したものである。
【0113】
前記中空壁200に対してISO834規格の試験方法に従い耐火試験を実施したところ、非加熱側の面のうち、前記スタッドが接していない面の温度は最高67℃であり、前記スタッド部が接している面の温度は最高180℃であった。
【実施例7】
【0114】
図33は第五の実施態様の変形例を説明するための模式要部断面図である。
実施例6に使用した単連パック30hを参考例7の単連パック30iに変更した以外は実施例6の場合と全く同様に耐火試験を実施した。
なお図33では内部に空間を有する中空壁200の内部の空間に吸熱材を配置する際、スタッド62に沿って前記吸熱材を配置している。
【0115】
また単連パック30hの長手方向の貼着部を前記スタッドに対向させて前記中空壁200の内部の空間に配置する。
【0116】
この結果、非加熱側の面のうち、前記スタッド62が接していない面の温度は最高77.5℃であり、前記スタッド部が接している面の温度は最高127℃であった。
【0117】
図33に示される様にスタッドの両面にケイ酸カルシウムボード110、強化石膏ボード120等の耐熱パネルを配置した場合、前記耐熱パネルの一方の側で火災等が発生すると前記スタッド62を熱が伝わり反対側の耐熱パネルが加熱され高温になりやすい。実施例7に示されるように吸熱材としての単連パック30iを中空壁200内部のスタッド62に沿って配置することにより、より効率的に火災等の熱を遮断することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】前記吸熱包装体の一実施態様を例示した模式斜視図である。
【図2】吸熱包装体の断面を例示した模式断面図である。
【図3】吸熱包装体の断面を例示した模式断面図である。
【図4】単一パックの使用形態を説明するための模式正面図である。
【図5】固定補助部材の使用態様を説明するための模式正面図である。
【図6】吸熱包装体の異なる一実施態様を例示した模式斜視図である。
【図7】単連パックの製造方法を説明するための模式要部正面図である。
【図8】異なる単連パックの製造方法を説明するための模式要部正面図である。
【図9】単連パックの使用形態を説明するための模式正面図である。
【図10】単連パックの使用形態を説明するための模式正面図である。
【図11】単連パックの異なる使用形態を説明するための模式正面図である。
【図12】吸熱包装体の異なる一実施態様を例示した模式斜視図である。
【図13】単連パックの連結部を例示するための模式要部正面図である。
【図14】単連パックの連結部の異なる一実施態様を例示した模式要部正面図である。
【図15】単連パックの連結部の異なる一実施態様を例示した模式要部正面図である。
【図16】単連パックの連結部の異なる一実施態様を例示した模式要部正面図である。
【図17】単連パックの連結部の異なる一実施態様を例示した模式要部正面図である。
【図18】単連パックの連結部の異なる一実施態様を例示した模式要部正面図である。
【図19】第一の実施態様である耐火補強構造の施工方法を説明するための模式要部断面図である。
【図20】第一の実施態様である耐火補強構造の施工方法を説明するための模式要部断面図である。
【図21】第二の実施態様である耐火補強構造の施工方法を説明するための模式要部断面図である。
【図22】第二の実施態様である耐火補強構造の施工方法を説明するための模式要部断面図である。
【図23】第二の実施態様である耐火補強構造の施工方法を説明するための模式要部斜視図である。
【図24】第二の実施態様である耐火補強構造の施工方法を説明するための模式要部断面図である。
【図25】第二の実施態様である耐火補強構造の模式要部断面図である。
【図26】第三の実施態様である耐火補強構造の模式斜視図である。
【図27】参考例1の単一パックを説明するための模式正面図である。
【図28】参考例2の単一パックを説明するための模式正面図である。
【図29】参考例3の単一パックを説明するための模式正面図である。
【図30】参考例4の単連パックを説明するための模式正面図である。
【図31】第四の実施態様である耐火補強構造を説明するための模式要部断面図である。
【図32】第五の実施態様である耐火補強構造を説明するための模式要部断面図である。
【図33】第五の実施態様の変形例を説明するための模式要部断面図である。
【符号の説明】
【0119】
1 基材
1a 下端
1b 左端
1c 右端
1d 上端
2 端面
3、3a〜3m 単一パック
4 吸水ポリマー
5 ロックウール
6 アルミラミネートポリエチレンテレフタレート
6a 短辺
6b 長辺
6c 折り返し部
7 セラミックブランケット
8 アルミシート
9 連結部
10 切り込み
11 切り欠き
12 糸
13 リング
14 クリップ
20、40、50 中空壁
21、41 鋼製フレーム
22、42、52 耐熱パネル
23、43 無機耐熱材
24、44 空間
25、45 開口部
30、30a〜30i、32b、34b 単連パック
51 中空軽量鉄骨
60、62 スタッド
70 固定補助部材
80 収容部
81 折り返し部
82 開放部
83 貼着部
90 アルミラミネートガラスクロス
92 ステープラー
100、200 中空壁
110 ケイ酸カルシウムボード
120 強化石膏ボード
210 熱膨張性耐火材
300 複連パック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空間を有する中空壁と、
前記空間に配置された吸熱材と、
を少なくとも有することを特徴とする、耐火補強構造。
【請求項2】
前記吸熱材が、少なくとも一つの吸熱材料を基材により包装した吸熱包装体を含む、請求項1に記載の耐火補強構造。
【請求項3】
前記吸熱包装体が、互いに対向する前記基材周囲の端面を貼着して一体とした単一パック、前記単一パックを一列に連結することにより得られる単連パックおよび前記単連パックを横方向に連結することにより得られる複連パックからなる群より選ばれる少なくとも一つである、請求項2に記載の耐火補強構造。
【請求項4】
前記吸熱包装体が、前記基材を折り返して対向させた基材周囲の端面を貼着して一体とした単一パックを含み、
前記単一パックの折り返し部が地面に対して下側かつ水平に配置された、請求項2または3に記載の耐火補強構造。
【請求項5】
前記吸熱包装体が、前記基材の貼着部に固定補助部材を備えた、請求項2〜4のいずれかに記載の耐火補強構造。
【請求項6】
前記吸熱包装体が、互いに連結された二以上の単一パックを備え、前記単一パック同士の連結部に分離手段が設けられている、請求項2〜5のいずれかに記載の耐火補強構造。
【請求項7】
前記中空壁が、内部の空間に柱部材を備え、
前記吸熱包装体が、前記柱部材に沿って配置された、請求項2〜6のいずれかに記載の耐火補強構造。
【請求項8】
内部に空間を有する中空壁の前記空間に、吸熱材を配置することを特徴とする、耐火補強構造の施工方法。
【請求項9】
中空壁に開口部を設ける工程と、
前記開口部を通して中空壁の内部の空間に前記吸熱材を配置する工程と、
を少なくとも有する、請求項8に記載の耐火補強構造の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2009−243253(P2009−243253A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−223836(P2008−223836)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】