説明

耐火部材の掛止め取付け構造

【課題】耐火部材を取付け側に遊び無しの固定状態となるように掛け止めて取り付けることができ、しかも、火災時には、耐火部材が取付け側から剥離、脱落するのを防ぐことができる耐火部材の掛止め取付け構造を提供する。
【解決手段】耐火部材1の垂直面部1aに掛止め用凹所6が設けられると共に、取付け側2にビス10が打設され、該ビス10には中間介在物11が設けられ、ビス10の頭部側が中間介在物11とともに掛止め用凹所6内に配置されることで、耐火部材1が取付け側2に遊び無しの固定状態に掛け止められ、中間介在物11は、火災による熱で所定の温度に達すると支持力を失う樹脂等からなり、耐火部材1は、中間介在物11が火災で支持力を失うと、取付け側2に対して遊びをもたされてビス10で取付け側2に保持された状態を維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火部材の掛止め取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、建物用の外壁パネルとして、耐火部材としての窯業系等の外壁面材の屋外側の面部から、取付け側としての背後の鋼製パネルフレームにビスを打つことで、外壁面材をパネルフレームに取り付けた構造のものは、従来より提供されている。
【0003】
しかしながら、そのような構造では、外壁面材の屋外側の面部に対し、ビス打ちの痕跡を隠す処理を行わなければならず、厄介であることから、
出願人は、パネルフレームの側に金属製の掛止め金物をビスで取り付けると共に、外壁面材の垂直な裏面部に掛止め用の有底の凹所を設け、前記掛止め金物を有底凹所内に配置した状態にすることで、外壁面材が、パネルフレームに対し、離間方向及び左右方向に相対変位するのを阻止された遊び無しの固定状態に掛け止められて取り付けられるようになされた外壁パネルの実用化を進めている。
【0004】
この構造によれば、外壁面材の屋外側の面部からのビス打ちを排除することができると共に、有底凹所と掛止め金物との係合作用によって、外壁面材が、パネルフレームに対し、離間方向及び左右方向に相対変位するのを阻止された遊び無しの固定状態に取り付けることが可能になる。
【特許文献1】特開2003−293552号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような掛止め式取付け構造を採用する外壁パネルに対して、防火試験を行ったところ、外壁面材に生じる反りや収縮にパネルフレーム側の掛止め金具が追従できず、外壁面材の裏面部における掛止め部分が損傷して、外壁面材がパネルフレームから剥離したり、脱落したりする危険性のあることが明らかになった。
【0006】
本発明は、上記のような問題点に鑑み、耐火部材が取付け側に対し離間方向及び左右方向に相対変位するのを阻止された遊び無しの固定状態となるように、耐火部材を取付け側に掛け止めて取り付けることができ、しかも、火災時には、耐火部材が取付け側から剥離したり脱落したりするのを防ぐことができる構造の耐火部材の掛止め取付け構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題は、次の掛止め取付け構造によって解決される。この掛止め取付け構造の構成を、図1を参照して説明すると、図1(ロ)に示すように、耐火部材1の垂直面部1aに掛止め用の凹所6が設けられると共に、該耐火部材1が取り付けられる取付け側2にビス10が打設され、該ビス10には、図1(イ)(ロ)に示すように、その頭部10aの内面部10b及び首部10cの外周部に沿う中間介在物11が設けられ、図1(ハ)に示すように、ビス10の頭部10a及び首部10cが中間介在物11とともに耐火部材1の掛止め用凹所6内に配置され、耐火部材1が、ビス10の頭部10aの内面部10b及び首部10cの外周部に対し、中間介在物11を介して係合することにより、取付け側2に対し、離間方向及び左右方向に相対変位するのを阻止された遊び無し固定状態に掛け止められて取り付けられ、
前記中間介在物11は、図1(ニ)に示すように、火災による熱で所定の温度に達すると支持力を失うものからなり、
前記耐火部材1は、該中間介在物11が火災による熱で支持力を失うと、取付け側2に対して離間方向及び左右方向に遊びをもたされた状態となって、ビス10により取付け側2に保持された状態を維持するようになされている構成となっている(第1発明)。
【0008】
この構造では、ビス10の頭部10aの内面部10b及び首部10cの外周部に沿うように設けられた中間介在物11によって、耐火部材1が取付け側2に対し離間方向及び左右方向に相対変位するのを阻止された遊び無しの固定状態となるように、耐火部材1を取付け側2に掛け止めて取り付けることができる。
【0009】
しかも、火災時には、中間介在物11が熱で支持力を失うと、耐火部材1は、取付け側2に対して離間方向及び左右方向に遊びをもたされた状態となり、ビス10により、取付け側2に保持された状態を維持するようになされているので、上記の遊びによって、ビス10が耐火部材1の反りや収縮に追従し、耐火部材1の掛止め部分の損傷が防がれ、耐火部材1が取付け側2から剥離したり脱落したりするのを防ぐことができる。
【0010】
第1発明において、前記耐火部材1が、中間介在物11の支持力喪失に伴い、ビス10によって取付け側2に保持された状態において、ビス10は、耐火部材1が取付け側2に対して離間方向に変位しようとする力によって、その頭部10aを変形させながら保持状態を維持するようになされているとよい(第2発明)。この構造では、ビス10の頭部10aの変形作用によって、耐火部材1の掛止め部分の損傷が防がれ、耐火部材1が取付け側2から脱落するのをより一層有効的に防ぐことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、以上のとおりのものであるから、耐火部材が取付け側に対し離間方向及び左右方向に相対変位するのを阻止された遊び無しの固定状態となるように、耐火部材を取付け側に掛け止めて取り付けることができ、しかも、火災時には、耐火部材が取付け側から剥離したり脱落したりするのを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の実施最良形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図2〜図5に示す実施形態の掛止め取付け構造は、外壁パネルにおいて、耐火部材としての窯業系などからなる外壁面材1を、取付け側としての鋼製のパネルフレーム2に掛け止めて取り付ける構造に適用した場合のもので、
パネルフレーム2の屋外側にはグラスウールボード3が備えられると共に、その外側にスチレンボード4が備えられ、パネルフレーム2には、複数の掛止め部5…が、これらグラスウールボード3とスチレンボード4を介して外方に突出するように、幅方向及び高さ方向に間隔をおいて設けられていると共に、外壁面材1の屋内側となる垂直な裏面部には、図5(イ)(ロ)に示すように、パネルフレーム2側の掛止め部5…の位置に対応して、複数の掛止め用凹所6…が、分散状態に設けられている。
【0014】
外壁面材1側の各掛止め用凹所6は、種々の形態のものが採用されてよいが、本実施形態では、図4(イ)(ロ)に示すように、凹所の開口部側の形状が、下端側の円とそれよりも径小な上端側の円とを、それら二円の共通外接線で結んだ形状をしていて、下端側7を挿入部とし、上端側8を受け部とし、それらをつなぐ中間部9を、挿入部7と受け部8とを連絡するスライド部としており、スライド部9は、その幅寸法を挿入部7から受け部8にわたって漸次小さくしていくように形成され、受け部8は、深さ方向に奥拡がりとなるように内方周囲面8aが斜面に形成され、スライド部9も深さ方向に奥拡がりとなるように左右の内方両側面部9a,9aが斜面に形成されたものからなっている。
【0015】
パネルフレーム2側の各掛止め部5は、図2(イ)(ロ)に示すように、パネルフレーム2に打設されたビス10と、中間介在物11とを含んで構成されている。
【0016】
ビス10は、その頭部10aの平面サイズが、掛止め用凹所6の挿入部7よりも小さく、受け部8よりも大きく形成されると共に、首部10cの横断面サイズが、掛止め用凹所6の受け部8よりも小さく形成されていて、頭部10aと首部10cとを挿入部7を通じて掛止め用凹所6内に配置し、スライド部9をスライドさせ、頭部10aの内面部10bと首部10cの外周部とを受け部8内で受けさせた状態にすることにより、外壁面材1は、パネルフレーム2に対して離間方向及び左右方向に遊びをもたされた状態となって、ビス10に保持されるようになされている。
【0017】
また、ビス10の頭部10aは、ビス軸から普通よりも大きく側方に張り出すようになされていると共に、該張り出し部分の肉厚寸法が小さく設計されていて、火災時に、外壁面材1が離間方向に相対変位をしようとすると、外壁面材1の掛止め部分を損傷させる前に変形をして、そのような損傷の発生が阻止されるようになされている。
【0018】
中間介在物11は、ビス10の頭部10aの内面部10b及び首部10cの外周部に沿う部分を備え、図3(イ)に示すように、ビス10の頭部10aと首部10cとが中間介在物11とともに外壁面材1の掛止め用凹所6の受け部8内に配置されると、外壁面材1が、ビス10の頭部10aの内面部10b及び首部10cに対して中間介在物11を介して係合するようになされていて、それらの係合により、外壁面材1は、パネルフレーム2に対し、離間方向及び左右方向に相対変位するのを阻止された遊び無し固定状態に掛け止められて取り付けられるようになされている。
【0019】
そして、上記の中間介在物11は、火災による熱で所定の温度に達すると支持力を失うもの、具体的には、例えば、ビス10よりも融点の低い樹脂材などからなっていて、外壁面材1は、中間介在物11が火災による熱で融解したり、図3(ロ)に示すように融け落ちて消失したりして、支持力を失うと、パネルフレーム2に対して離間方向及び左右方向に遊びをもたされた状態となり、ビス10によってパネルフレーム2に保持された状態を維持するようになされている。なお、中間介在物11としては、その他、例えば、木のように熱で炭化したり消失したりして支持力を失うものなどであってもよい。
【0020】
なお、本実施形態において、12は金属製の保護カバーであり、中間介在物11は、該保護カバー12を介して、外壁面材1の掛止め用凹所6内において外壁面材1を支持するようになされていて、中間介在物11はこのカバー12によって保護される。本実施形態では、該保護カバー12は、外壁パネルの製作において、中間介在物11と共にビス10でパネルフレーム2の側に取り付けられるようになされている。
【0021】
上記の掛止め取付け構造では、図3(イ)に示すように、ビス10の頭部10aの内面部10b及び首部10cの外周部に沿わされた中間介在物11によって、外壁面材1は、パネルフレーム2に対し、離間方向及び左右方向に相対変位するのを阻止された遊び無しの固定状態に掛け止めて取り付けることができる。
【0022】
そして、火災時には、例えば300〜600°Cの高温状態になると、中間介在物11が熱で融解して支持力を失った状態になったり、また、図3(ロ)に示すように融け落ちるなどして消失した状態になると、外壁面材1は、パネルフレーム2に対して離間方向及び左右方向に遊びをもたされた状態となって、ビス10によりパネルフレーム2に保持された状態を維持し、この遊びによって、ビス10は、外壁面材1の熱による反りや収縮に追従し、それにより、外壁面材1の掛止め部分の損傷が防がれ、外壁面材1がパネルフレーム2から剥離したり脱落したりするのが防がれる。
【0023】
また、本実施形態では、火災により、上記の300〜600°Cの高温状態や、700〜1000°Cの高温状態になった場合において、外壁面材1が離間方向に相対変位をしようとすると、図示しないけれども、ビス10の頭部10aが、外壁面材1の掛止め部分を損傷させる前に変形をして、外壁面材1がパネルフレーム2から脱落するのを防ぐ作用を行う。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】発明の構成を理解するためのもので、図(イ)は取付け側とビスと中間介在物とを分離状態にして示す断面平面図、図(ロ)は耐火部材と取付け側とを分離状態にして示す断面平面図、図(ハ)は掛止め取付け状態の断面平面図、図(ニ)は火災によって中間介在物が支持力を喪失した状態の断面平面図である。
【図2】実施形態の掛止め取付け構造を示すもので、図(イ)はパネルフレームの側とビスと中間介在物等を分離状態にして示す断面平面図、図(ロ)はパネルフレームの側と外壁面材とを分離状態にして示す断面平面図である。
【図3】同掛止め取付け構造を示すもので、図(イ)は外壁面材をパネルフレームの側に掛止め取付け状態にした断面平面図、図(ロ)は火災によって中間介在物が支持力を喪失した状態の断面平面図である。
【図4】同実施形態を示すもので、図(イ)は掛止め用凹所の正面図、図(ロ)は同断面側面図である。
【図5】同実施形態を示すもので、図(イ)はパネルフレーム側の正面図、図(ロ)は外壁面材の背面図である。
【符号の説明】
【0025】
1…外壁面材(耐火部材)
1a…垂直面部
2…パネルフレーム(取付け側)
6…掛止め用凹所
10…ビス
10a…頭部
10b…内面部
10c…首部
11…中間介在物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火部材の垂直面部に掛止め用の凹所が設けられると共に、該耐火部材が取り付けられる取付け側にビスが打設され、該ビスにはその頭部の内面部及び首部外周部に沿う中間介在物が設けられ、ビスの頭部及び首部が中間介在物とともに耐火部材の掛止め用凹所内に配置され、耐火部材が、ビスの頭部の内面部及び首部外周部に対し、中間介在物を介して係合することにより、取付け側に対し、離間方向及び左右方向に相対変位するのを阻止された遊び無し固定状態に掛け止められて取り付けられ、
前記中間介在物は、火災による熱で所定の温度に達すると支持力を失うものからなり、
前記耐火部材は、該中間介在物が火災による熱で支持力を失うと、取付け側に対して離間方向及び左右方向に遊びをもたされた状態となって、ビスにより取付け側に保持された状態を維持するようになされていることを特徴とする耐火部材の掛止め取付け構造。
【請求項2】
前記耐火部材が、中間介在物の支持力喪失に伴い、ビスによって取付け側に保持された状態において、ビスは、耐火部材が取付け側に対して離間方向に変位しようとする力によって、その頭部を変形させながら保持状態を維持するようになされている請求項1に記載の耐火部材の掛止め取付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−249899(P2009−249899A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−98634(P2008−98634)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】