説明

耐火閉塞用複合材、及び耐火閉塞用複合材内蔵延焼防止装置、及び耐火閉塞用複合材内蔵延焼防止装置を設けた管継手又はスリーブ

【課題】単に熱膨張材を内部に設けた管継手はあるが、塩ビ管の樹脂管の減容部を充填できる程に膨張せず、完全に閉塞しない。
【解決手段】火災時の熱により収縮する収縮材を用いることで、第1の耐火層2を閉塞させ、完全に管路を閉塞する。また、場合により有してもよい収縮材層3、及び第2の熱膨張性部材等の耐火災層4を形成してなる筒形の耐火閉塞用複合材であり、該2つの熱膨張性部材層2,4は熱膨張性材料と樹脂、ゴムを含有し、又は該収縮材層3は、熱収縮性を有する円筒形樹脂、ゴム、又は形状記憶合金からなる網状あるいは孔が形成されてもよいシートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建築物内に設置された給排水管やケーブルが床及び壁を貫通する箇所において、該箇所に設置するための耐火閉塞用複合材、及び耐火閉塞用複合材内蔵延焼防止装置、及び耐火閉塞用複合材内蔵延焼防止装置を設けた管継手又はスリーブに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、熱可塑性の合成樹脂材料よりなる管路部材を接続するよう防火区画貫通部に穿設された管路の貫通孔に配設される防火区画貫通部の継手において、非金属の不燃材料より成る外被層を有し、前記管路部材が嵌合する接続端部に、火災の熱で膨張し管路を閉塞して火炎が伝達しないようにする耐火性の熱膨張部材を装着して成ることを特徴とする防火区画貫通部の継手、及び嵌合する接続端部に中心向きのリング状溝形の膨張保持部を設けること、さらに使い勝手が悪いものの管路部材に後付する熱膨張材とその膨張保持部材は公知である。
【0003】
特許文献2に記載されているように、パイプの一部分の周りに熱膨張材料を支持するカラーを有し、熱膨張材料が十分に加熱されるようになった時に膨張してパイプの前記部分を閉塞しパイプに沿って火災防止障壁を形成するようにしている熱膨張可能火災防止装置であって、カラーの周りに配設された複数の熱伝導タブを具備し、前記タブがパイプに向って熱膨張材料の中に突出し熱を熱膨張材料の内部に導き、熱膨張材料が迅速かつ均一に膨張するようにし、カラーが第1及び第2の連結端部を含み、第1の連結端部が第2の連結端部と共働してカラーをパイプの前記部分の周りに固定するようにし、カラーが十分な可撓性を有し第1及び第2の連結端部が離間するよう拡げられカラーをパイプの前記部分の周りに取付けることができるようにしている、熱膨張可能火災防止装置は公知である。
【0004】
特許文献3に記載されているように、建築物の床や壁等の防火区画体に開けられた貫通孔内を貫通する電線、樹脂製パイプ等の可燃性長尺物の外周に防火措置を施してなる可燃性長尺物貫通部の防火構造において、可燃性長尺物が貫通する防火区画体の表側と裏側の少なくとも一方に、複数の絞り片が円周上に放射状に形成され且つそれらの絞り片の中心部1を可燃性長尺物が貫通できるようにした閉塞板を取り付け、この絞り片の外周に、火災発生時に発泡して同絞り片を可燃性長尺物側に押し曲げる熱発泡性耐火材を同絞り片及び可燃性長尺物を包むように取り付け、同熱発泡性耐火材の外側を金属製固定部材で包んだことを特徴とする防火区画体における可燃性長尺物貫通部の防火構造も公知である。
【0005】
特許文献4に記載されているように、プラスチックパイプが貫通配置されている防火 区画体の貫通孔の下方で且つプラスチックパイプの外周に熱発泡性耐火材を配置し、貫通孔とプラスチックパイプとの間には耐熱性発泡体5を常圧状態よりも体積を少なくとも20%圧縮して充填配置させてなることを特徴とするプラスチックパイプの防火区画体貫通部の防火措置構造も公知である。
【0006】
特許文献5に記載されているように、建築物内で床スラブを貫通して配管される立管継ぎ手部材と、この立管継ぎ手部材の上部及び下部に接続される立管部材とを備えており、少なくとも上記立管継ぎ手部材は耐火性を有して形成されており、立管継ぎ手部材又は立管部材の少なくとも一方に対して、立管継ぎ手部材の高さ領域内において、所定の温度で膨張する熱膨張性耐火材が設けられていることを特徴とする排水配管構造、及び建築物内で床スラブを貫通して配管される立管継ぎ手用の主要管材とこの主要管材の上下方向に接続される立管部材との接続部分に付設される排水管用耐火性付属部材であって、上記主要管材に接近した位置付けで立管部材の外周部を取り囲む耐火性材料製の立管外装部と、この立管外装部の内周面と立管部材の外周面との周間に設けられた、所定の温度で膨張する熱膨張性耐火材とを有していることを特徴とする排水管用耐火性付属部材は公知である。
【0007】
特許文献6に記載されているように、床または壁の開口部を貫通するプラスチック管と、プラスチック管の外周に設けられ、火災時の熱で発泡してプラスチック管外周面と開口部内周面との間の空隙を塞ぐ熱発泡性耐火材と、プラスチック管の外周に設けられ、火災時の熱で収縮して火災時の熱で軟化したプラスチック管を閉塞する環状の形状記憶合金製スプリングとを備え、前記形状記憶合金製スプリングが、火災時の熱がそのスプリングに伝わるのを遅らせる熱伝達遅延部材で包囲されていることを特徴とするプラスチック管貫通部の防火処理構造は公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−152065号公報
【特許文献2】実開平6−46749号公報
【特許文献3】実開平5−37251号公報
【特許文献4】実開平5−81582号公報
【特許文献5】特開2007−56536号公報
【特許文献6】特開平9−178052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1〜5に記載されている、樹脂管の周囲に配置され、熱により膨張する耐火部材は、火災時における加熱により予め配置した箇所において膨張するので、樹脂管が軟化、溶解して発生した空間に向けてその膨張は進展するとしても、特に床スラブ等のように樹脂の立管に採用した場合には、耐火部材が膨張する過程においてそのうちの多くの量が配置した箇所から落下することにより、その落下した耐火部材は耐火には寄与しないことになる。
【0010】
また、落下しなかった耐火部材は、そもそも、当初配置された箇所から膨張するので、膨張後の状態をみると、当初の配置箇所付近においては耐火機能を発揮出来る程度の密度となるように膨張が可能であるが、当初樹脂管が存在していた箇所の特に管の中心軸付近では、膨張が開始した点から離れることとなり、膨張後の状態をみると、耐火性能を十分に発揮できる程度の密度で耐火部材が存在しているとまではいえない。
さらに、上記特許文献6に記載されているような、熱発泡性耐火材に形状記憶合金製スプリングを埋め込むことにより、軟化するまたは軟化されたプラスチック管を形状記憶スプリングの縮径する力により閉塞させる手段によれば、確かにプラスチック管は縮径するかもしれないが、その縮径により生じた空間に向けて熱発泡性耐火材の発泡が進むとしても、やはり、熱発泡性耐火材は当初設けられた箇所を起点にして発泡を開始するので、プラスチック管の縮径により発生した空間を確実に発泡した耐火材で充填することは困難であり、結果的に十分な耐火性能を発揮できるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、内部から第1の熱膨張性部材層等の耐火材層、場合により有してもよい収縮材層、及び第2の熱膨張性部材層等の耐火材層を形成してなる筒形の耐火閉塞用複合材であり、該2つの熱膨張性部材層は熱膨張性材料と樹脂、ゴムを含有し、又は該収縮材層は熱収縮性を有する円筒状樹脂、ゴム、又は形状記憶合金からなる網状あるいは孔が形成されてもよいシートである。
さらに該第1の熱膨張性部材層は内側表面からV字状又はU字状等の溝が形成されてもよく、上記第1の熱膨張性部材層の膨張開始温度をT、前記収縮材層の収縮開始温度をT、前記第2の熱膨張性部材層の膨張開始温度をTとすると、T≦TかつT≦Tであり、これらの温度が耐火閉塞用複合材に挿入される樹脂材料の軟化点温度以上である場合を、又は、樹脂管又は樹脂被覆ケーブルの軟化開始と同時又は軟化開始に遅れて、前記収縮材が収縮を開始し、前記収縮材の収縮と同時又は収縮に遅れて第1及び第2の熱膨張性部材層が膨張を開始するようにした場合を含む耐火閉塞用複合材である。
【0012】
また、本発明は、 建築物の床、天井又は壁に設けた開口部に挿入された管継手、管用スリーブ、ケーブル用スリーブ又は該開口部を形成する床、天井又は壁に接続するための耐火閉塞用複合材内蔵延焼防止装置であって、該管継手、該スリーブ、床、天井又は壁に接続するための固定具を備え、かつ上記の耐火閉塞用複合材の筒形の内側以外の面を耐火部材で覆い、該固定具と該耐火部材を一体化してなる耐火閉塞用複合材内蔵延焼防止装置であり、該耐火閉塞用複合材の上下面の耐火閉塞用複合材に対向する箇所、及び耐火閉塞用複合材の外面と、該耐火部材との間に断熱材層を設けてもよい耐火閉塞用複合材内蔵延焼防止装置であってもよく、また、管継手や不燃性スリーブに上記のいずれかの耐火閉塞用複合材を挿入し、該耐火閉塞用複合材の内部に樹脂管又は樹脂被覆ケーブルを挿入するようにした建築物の床、天井又は壁に設けた開口部に挿入される樹脂管用不燃性管継手、樹脂管又は樹脂被覆ケーブル用不燃性スリーブである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は筒形の複合材であって、内側の第1の耐火材層と外側の第2の耐火材層の間に収縮材層を有するので、該複合材の円筒の内部に樹脂管や樹脂ケーブルを挿入し、建築物に設置した後に火災が発生して、この熱によりこれらの樹脂が溶融等により減容したり落下等により消失する場合において、火災時の熱により収縮材が収縮し、この収縮力によって内側の第1の耐火材層に内側に向けた力が作用する。そうすると、該内側の第1の耐火材層の少なくとも一部が変形や移動等によって、もとの筒形の複合材の中心部分にまで移動することになり、その移動後において該内側の第1の耐火材層が結果的に樹脂の溶融等による減容や消失部分の空間を埋めることになる。
その結果、火災の炎、熱、有毒ガスが元の樹脂管や樹脂ケーブル部分を通って、他の階や隣室などに移動することを防止できる。
【0014】
その効果にさらに加えて、該内側の第1の耐火材層と該外側の第2の耐火材層を、それぞれ内側の第1の熱膨張性部材層と外側の第2の熱膨張性部材層とすることも可能であり、その場合には、内側の該第1の熱膨張性部材層は自ら膨張しながら、あるいは熱収縮材の収縮により該第1の熱膨張性部材層が内側に押されて、筒形の内側の空間に押されることになる。
この結果、筒形の複合材の内側空間部には、押された該第1の熱膨張性部材層が存在することとなり、又は押されながらその内側の空間内にて該第1の熱膨張性部材層が十分に膨張されるので、加熱後の筒形の内側では十分な密度の膨張済みの熱膨張性部材層が存在する結果、つまり、火災の熱により膨張体が形成され、筒形の内側が封鎖された結果、筒形の中央を火炎や熱気、有毒ガスが遮断されて通過できなくなるという効果を奏する。
【0015】
さらにこのような複合材を、建造物の天井又は壁に設けた開口部に挿入された管継手、管用スリーブ、ケーブル用スリーブ又は該開口部を形成する床、天井又は壁に設けると、該建造物が火災に見舞われた際にも、加熱により膨張し、開口部全体を確実に封鎖する膨張体により該開口部が封鎖されるので、該開口部を介して火災がさらに延焼することや煙や有毒ガスが広がることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】・・・耐火閉塞用複合材全体図
【図2】・・・該耐火閉塞用複合材断面図
【図3】・・・V字の溝が形成された該耐火閉塞用複合材
【図4】・・・耐火閉塞用複合材内蔵延焼防止装置1の図
【図5】・・・耐火閉塞用複合材内蔵延焼防止装置2の図
【図6】・・・耐火閉塞用複合材内蔵延焼防止装置3の図
【図7】・・・耐火閉塞用複合材内蔵延焼防止装置を樹脂管に取り付けた図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図を基に本発明を説明する。
図1は耐火閉塞用複合材の全体図であり、図2はその断面図であって、耐火閉塞用複合材1は筒の内周から順に第1の耐火材層2、収縮材層3、第2の耐火材層4を積層してなっている。
該耐火閉塞用複合材の大きさについて、その複合材の内径はその内部に例えば塩化ビニル樹脂管や樹脂被覆ケーブルを挿入できる程度の内径であり、外径は挿入された塩化ビニルパイプの径に必要な耐火性を付与できる程度の耐火材の量を反映した厚さを考慮した径である。また高さは確実に耐火や防火ができるために十分な高さを有することが必要である。
該耐火閉塞用複合材は筒形であってその内部には樹脂管や樹脂被覆ケーブルを挿入するものであり、筒形の形状は円筒状が最も一般的ではあるが、その外面及び内面は6角や8角等の多角形の筒状や、楕円、その他の形状のものでもよく、挿入された樹脂管や樹脂被覆ケーブルの周囲を囲むことができる筒形の形状であればよい。
例えば樹脂被覆ケーブル3本が3角形状に束ねられているときには、その3角形状に対応するように筒形の内面は3角形状とすると、第1の熱膨張性部材層を樹脂ケーブルに密着させることができ、火災時に確実に耐火性を発揮させる上で望ましい。
【0018】
該第1及び第2の耐火材層に使用される耐火性を有する物質は、耐火性を有する物質であれば特に限定されないが、例えば、シリカ、珪藻土、砂、カオリン、タルク、パーライト、シラス、マイカ、ガラス、ガラス繊維、ロックウール、セメント、ホウ砂、みょうばん、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、無機硼素化合物等の無機物質、リン酸塩等のリン含有有機化合物や無機化合物、有機スルホン酸化合物、臭素含有有機化合物、ハロゲン含有有機化合物等の公知の物質から1以上の任意の物質を選択して使用することができる。
更にこの耐火性を有する物質のバインダーとして、樹脂或いはゴムを含有してもよく、その樹脂としてはシリコーン樹脂、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、ポリエステル等、ゴムとしてはブチルゴム、NBR、IIR、NR等の合成ゴム及び天然ゴム等を使用することができる。
【0019】
また、該第1及び第2の熱膨張性部材層に使用される熱膨張性部材としては、熱膨張性黒鉛、ひる石、リン酸塩、硼素含有化合物、窒素含有有機化合物等の加熱により発泡し膨張する膨張剤と、バインダー成分として樹脂或いはゴム等を含有する組成物を使用できる。また充填剤としてのシリカ、炭酸カルシウム、タルク等の各種無機化合物を含有させることも可能である。
そして、該第1の耐火材層の幅(筒形の高さ方向)は5〜50mm、厚さが10mm以下でもよく、該第1の耐火材層を熱膨張性部材層とした場合の熱膨張性部材の含有比率は10〜50wt%であり、上記のバインダー成分の他に含有させることができる成分として可塑剤、安定剤等が挙げられる。
【0020】
該収縮材としては、熱収縮性樹脂やゴムのチューブ及びシート、形状記憶合金のシートが使用でき、該熱収縮性樹脂やゴムのチューブ及びシートとしては、ブロー成形により延伸されてなるポリ塩化ビニル、EPR、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の樹脂やゴムのチューブ及びシート、2軸延伸ポリエステルフィルム等の延伸等により加熱下において収縮する性質を有する樹脂からなるチューブ及びシート、ゴムのシートやチューブを巻いたものを使用でき、さらに熱収縮性樹脂やゴムの延伸された網状物、孔が形成された延伸シート、延伸された繊維を多重に巻いたもの等が使用できる。また形状記憶合金としては、チタン−ニッケル系合金、鉄−マンガン−ケイ素合金、銅−亜鉛系合金、コバルト−ニッケル系合金等の公知の合金を選択して使用できる。そして、耐火閉塞用複合材に樹脂管等を挿入した際に必要なことは、火災時における収縮材は、収縮により第1の耐火材を確実に内径方向に移動させることができる程度の押圧力を発生させることである。そのために、収縮材の厚さは0.1〜10mmで、幅は必要に応じて適切な長さに切断する。
【0021】
さらに図3に示すように、上記第1の耐火材層は内側表面からV字状又はU字状の溝5が形成されていてもよく、その溝5は収縮材の表面にまで、つまり溝5により耐火材層が複数の部材に分割されていてもよい。
このような溝5が形成されていることにより、火災時に収縮材層が収縮することによって、第1の熱膨張性部材層が内径方向の力を受けた場合において、該溝5の幅が小さくなるようにして第1の熱膨張性部材層が円筒の中心部に向けて移動する。
もちろん溝5を必ず設ける必要はなく、第1の耐火材層が収縮材の収縮力により内部に移動できる程度の可撓性を備える場合などは溝を設けなくてもよい。
【0022】
該第1及び第2の耐火材層としてそれぞれ、第1及び第2の熱膨張性部材層を採用した場合は、火災時においてこれらの熱膨張性部材層の膨張により、上記の効果を達成できる程度に膨張後の部材が樹脂管や樹脂被覆ケーブルの減容部を埋めることができるように、膨張倍率や膨張開始温度によりこれらの材料を選択することが必要である。
【0023】
また、場合によっては、該第1の熱膨張性部材層の膨張開始温度をT、前記収縮材層の収縮開始温度をT、前記第2の熱膨張性部材層の膨張開始温度をTとし、これらの温度が該樹脂管の軟化温度より高温であることを前提に、T≦TかつT≦Tとする。この理由としては、先に挿入されている樹脂管や樹脂被覆ケーブルの樹脂が軟化した後に、第1の熱膨張性部材層を内径方向に移動させ得るために最初に熱収縮材が収縮することも必要であるし、又は場合により第1の熱膨張性部材層を内径方向に移動させるために第2の熱膨張性部材層を膨張させることにより発生する押圧力と熱収縮材の収縮力を利用することができることによる。
【0024】
上記の温度条件下にて本発明の耐火閉塞用複合材の第一の熱膨張性部材層が収縮材から受ける力を付勢するために、第2の熱膨張性部材層の膨張を利用するようにしてもよい。
【0025】
さらに本発明は、建築物の床、天井又は壁に設けた開口部に挿入される樹脂管用管継手、樹脂管用スリーブ又は樹脂被覆ケーブル用スリーブに、上記の耐火閉塞用複合材を挿入し、該耐火閉塞用複合材の内部に該樹脂管又は樹脂被覆ケーブルを挿入するようにした樹脂管用管継手又は樹脂管用スリーブでもよく、具体的には、樹脂管用管継手の樹脂管が挿入される継手端部の管継手内面に耐火閉塞用複合材を挿入・設置しておくことにより、建築物への設置後の該継手端部は、外側より、管継手の不燃性材料部分、該耐火閉塞用複合材部分、樹脂管又は樹脂被覆ケーブルが順に重なり合う状態となっている。
【0026】
また、耐火閉塞用複合材の筒形の形状を覆う形状を有し、樹脂管や樹脂被覆ケーブルを通すための開口部を、筒形の耐火閉塞用複合材の穴に対応するように設けられた耐火閉塞用複合材内蔵延焼防止装置としてもよい。この耐火閉塞用複合材内蔵延焼防止装置は外層が金属等の耐火性の物質からなり、耐火閉塞用複合材の上下面及び周面を包み、筒形の耐火閉塞用複合材の穴に対応する開口部を有するように成形されており、耐火閉塞用複合材を設置するその内部には、耐火閉塞用複合材の上下面、外周面と耐火閉塞用複合材内蔵延焼防止装置の外層の内面との間に空間を設け、その空間に断熱材層を設けてもよい。
断熱材層は特に第1及び第2の熱膨張性部材層及び収縮材層の温度の上昇を遅らせる作用を備えるので、上記のように第1及び2の熱膨張性材料の膨張開始温度の選択と収縮材の収縮温度を合わせることにより、第1及び第2の熱膨張性材料の膨張開始時期と収縮材の収縮時期とを調整することが可能である。このような調整の結果によっても、樹脂管や樹脂被覆ケーブルの樹脂の軟化後に、まず熱収縮材が収縮し、次いで第1及び2の熱膨張性材料が膨張するようにすると、樹脂管や樹脂被覆ケーブルがあった場所にて第1の熱膨張性材料が膨張でき、しかも第2の熱膨張性材料は第1の熱膨張性材料の移動により生じた空間を埋めるように膨張することが可能となる。
該断熱材としては、グラスファイバー、ロックウール、シリカガラス、セラミックファイバー等の公知の断熱材を選択して使用できる。
【0027】
耐火閉塞用複合材は建築物の床、天井又は壁に設けた開口部に挿入された排水管等用の管継手、管用スリーブ、樹脂被覆ケーブル用スリーブ等の内面に設けることが好ましい。さらに管継手、管用スリーブ、ケーブル用スリーブの室内への開口部であって、樹脂管や樹脂被覆ケーブルと、上記管継手、管用スリーブ、ケーブル用スリーブが接続される箇所を被覆するように、該管継手、管用スリーブ、ケーブル用スリーブの端部に、例えばフランジを介して接続したり、またはこの端部と樹脂管や樹脂被覆ケーブルのすき間を用いて固定することが必要である。
【0028】
耐火閉塞用複合材を収納した耐火閉塞用複合材内蔵延焼防止装置1の例を第4図に示す。耐火閉塞用複合材内蔵延焼防止装置1はその外層6の内側に耐火閉塞用複合材1を収納し、さらに集合管や天井、壁等に取り付けるための外層6から固定具7を一体に形成してなるものであり、この一体に延びた箇所は隣接する固定具7の間から炎やガスが集合管や樹脂管、樹脂被覆ケーブル内に流入することを防止するために設けられている箇所であって、この耐火閉塞用複合材内蔵延焼防止装置1は配管時、配線時もしくはリフォーム時において樹脂管や樹脂被覆ケーブルに設置する。
別の例として、耐火閉塞用複合材内蔵延焼防止装置2の例を第5図に示す。この装置においては、隣接する固定具7の間を埋めるように外層6を一体に延ばしてはいないが、設置する際に、断熱材層8(図示せず)を隣接する固定具7の間を埋めるように設けることにより耐火効果を発揮させる。
さらに、第6図に示すような耐火閉塞用複合材内蔵延焼防止装置3としてもよく、この装置は、固定具7を外層6から延ばして立てることなく、外層6の上面に接して設けることによりこの耐火閉塞用複合材内蔵延焼防止装置3を樹脂管や樹脂被覆ケーブルに設置するものである。
これら耐火閉塞用複合材内蔵延焼防止装置の設置の態様としては、図7に示すように外層6の内部に第1の熱膨張性部材層2、収縮材層3、第2の熱膨張性部材層4を順に設けてなる耐火閉塞用複合材1を収納し、該耐火閉塞用複合材1の上下及び外面に断熱材層8を設けてなる耐火閉塞用複合材内蔵延焼防止装置を集合管10と樹脂管9の接続箇所において、集合管のフランジに固定具7により固定する。このように設置することによって、耐火閉塞用複合材より天井もしくは壁までの間は樹脂管が露出せず、火災時には膨張した耐火閉塞用複合材1によって樹脂管の溶融により生じた減容部分の空間を封鎖して、樹脂管を通じて炎やガス等が天井や壁に設けた開口部を通じて拡がることを防止する。
また、これらの図に限定されず、管継手、管用スリーブ、ケーブル用スリーブが設けられた周囲の壁面に、耐火閉塞用複合材を設けてなる耐火閉塞用複合材内蔵延焼防止装置を固定することも好ましい。
【0029】
他の固定手段としては、本発明の耐火閉塞用複合材内蔵延焼防止装置を該管継手、管用スリーブ、ケーブル用スリーブ、該開口部を形成する床、天井又は壁に、直接ビス等により密着して固定する手段や、該管継手やスリーブに設けたフランジに接続することが可能である。また、直接該管継手やスリーブに内挿又は外挿することも可能であり、何らかの手段により床、天井又は壁に設けた開口部を耐火閉塞用複合材が囲うようにして設けることが必要である。
このような手段を採用することにより、既設樹脂管や既設樹脂被覆ケーブル等に対しても耐火閉塞用複合材内蔵延焼防止装置を簡易に設けることが可能となり、既存の建築物の耐火性が向上する。
【符号の説明】
【0030】
1・・・耐火閉塞用複合材
2・・・第1の熱膨張性部材層
3・・・収縮材層
4・・・第2の熱膨張性部材層
5・・・V字状もしくはU字状の溝
6・・・外層
7・・・固定具
8・・・断熱材層
9・・・樹脂管
10・・集合管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒形であって、内部から第1の耐火材層、場合により有してもよい収縮材層、及び第2の耐火材層を形成してなる耐火閉塞用複合材。
【請求項2】
該第1の耐火材層及び第2の耐火材層が、それぞれ第1の熱膨張性部材層及び第2の熱膨張性部材層であるか、もしくは第2の耐火材層のみが第2の熱膨張性部材層である請求項1記載の耐火閉塞用複合材。
【請求項3】
上記第1及び第2の熱膨張性部材層は熱膨張性材料と樹脂及び/又はゴムを含有してなる請求項2記載の耐火閉塞用複合材。
【請求項4】
上記収縮材層は熱収縮性を有する円筒状樹脂、ゴム、又は形状記憶合金からなる円筒状シートである請求項1〜3のいずれかに記載の耐火閉塞用複合材。
【請求項5】
上記収縮材層のシートは、孔が形成されてないシート、孔が形成されたシート、又は網状シートからなる請求項1〜4のいずれかに記載の耐火閉塞用複合材。
【請求項6】
上記第1の熱膨張性部材層は内側表面からV字状又はU字状の溝が形成されてなる請求項1〜5のいずれかに記載の耐火閉塞用複合材。
【請求項7】
上記第1の熱膨張性部材層の膨張開始温度をT、前記収縮材層の収縮開始温度をT、前記第2の熱膨張性部材層の膨張開始温度をTとすると、T≦TかつT≦Tであり、これらの温度が耐火閉塞用複合材に挿入される樹脂材料の軟化点温度以上である請求項2〜6のいずれかに記載の耐火閉塞用複合材。
【請求項8】
樹脂管又は樹脂被覆ケーブルの軟化開始と同時又は軟化開始に遅れて、前記収縮材が収縮を開始し、前記収縮材の収縮と同時又は収縮に遅れて第1及び第2の熱膨張性部材層が膨張を開始するようにした請求項2〜7のいずれかに記載の耐火閉塞用複合材。
【請求項9】
建築物の床、天井又は壁に設けた開口部に挿入された管継手、管用スリーブ、ケーブル用スリーブ又は該開口部を形成する床、天井又は壁に接続するための耐火閉塞用複合材内蔵延焼防止装置であって、該管継手、該スリーブ、床、天井又は壁に接続するための固定具を備え、かつ請求項1〜8のいずれかに記載の耐火閉塞用複合材の筒形の内側以外の面を耐火部材で覆い、該固定具と該耐火部材を一体化してなる耐火閉塞用複合材内蔵延焼防止装置。
【請求項10】
耐火閉塞用複合材の上下面の耐火閉塞用複合材に対向する箇所、及び耐火閉塞用複合材の外面と、該耐火部材との間に断熱材層を設けてなる請求項9記載の耐火閉塞用複合材内蔵延焼防止装置。
【請求項11】
建築物の床、天井又は壁に設けた開口部に挿入される樹脂管用不燃性管継手又は樹脂管用不燃性スリーブであって、該樹脂管用不燃性管継手又は該樹脂管用不燃性スリーブに、請求項1〜8のいずれかに記載の耐火閉塞用複合材を挿入し、該耐火閉塞用複合材の内部に該樹脂管を挿入するようにした樹脂管用不燃性管継手又は樹脂管用不燃性スリーブ。
【請求項12】
建築物の床、天井又は壁に設けた開口部に挿入される樹脂ケーブル用不燃性スリーブであって、該樹脂ケーブル用不燃性スリーブに、請求項1〜8のいずれかに記載の耐火閉塞用複合材を挿入し、該耐火閉塞用複合材の内部に該樹脂ケーブルを挿入するようにした樹脂ケーブル用不燃性スリーブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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