説明

耐熱性ダクト

【課題】 気密性が良好に維持され、軽量で、積層複合材の層間はがれによる不具合を抑制可能な耐熱性ダクトを提供する。
【解決手段】 最外層2a及び最内層2bが樹脂層で、その中間に金属層2cを有する積層複合材からなる条帯2を、その両側縁部が互いにつき合わせられるようにらせん状に捲回し、互いに隣接する両側縁部21,22にまたがるように螺旋状の樹脂製補強体3を接着一体化して耐熱性ダクトを構成する際に、ダクト内周面側に配置される第1補強体31と、ダクト外周面側に配置される第2補強体32によって樹脂製補強体を構成するとともに、第1補強体31と第2補強体32とを互いに重なり合うように配置し、さらに、互いに隣接する条帯側縁部において、条帯の最内層2b、2bが第1補強体31によって、条帯の最外層2a,2aが第2補強体32によって互いに接着されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性に優れたダクトに関し、特に耐熱性に優れた耐熱性ダクトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
空調用や送風用のダクトにおいて、ダクトを構成する素材に金属材料を使用して耐熱性を高めることが旧来行われてきたが、耐熱性ダクトの可撓性を高めたり、軽量化を図るために樹脂材料を使用した耐熱ダクトが近年検討され、開発されてきている。
【0003】
例えば、特許文献1には、金属箔層と合成樹脂層とを備えた可撓性を有する基材フィルム(条帯)によってチューブ状に形成された管本体の外面に不燃性の補強部材を螺旋状に直接固定した空調用伸縮性フレキシブルダクトが開示されており、当該耐熱ダクトによれば、ダクトの伸縮性や取り扱い性に優れ、良好な耐熱性を有することが開示されている。また、特許文献1に記載のダクトにおいては、積層材である基材フィルムは螺旋状に捲回されて、その隣接する側縁部を互いに重ね合わせて、重ねあわせ部分を略C字断面の不燃性の補強部材(金属製)によってかしめるようにして接合されている。
【0004】
また、特許文献2には、アルミ箔の両面に樹脂層をラミネートしてなる帯状複合材の条帯を、両縁部が互いに重なり合うように螺旋状に捲回して、重ねあわせ部を超音波溶着して筒状のアルミ箔製外装ジャケットを得ることが開示されており(請求項5)、接合部の品質を向上させてコスト低減できることが開示されている。また、特許文献3には、耐熱性ダクトではないものの、ダクトホースにおいて、不織布に気密層を積層した可撓性条帯をその側縁部が互いに突き合わせられるように螺旋状に捲回し、隣接する側縁部にまたがるように樹脂製の補強体を接着一体化して可撓性ホースを得ることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−234188号公報
【特許文献2】特開2006−248045号公報
【特許文献3】特開平10−227379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び特許文献2に開示されたダクトや外装ジャケットは、管壁を構成する素材(条帯)が、金属素材と樹脂素材を積層させて構成した積層複合材からなるために、耐熱性を良好なものとしながら、軽量なダクトが得られる。しかしながら、これら耐熱性ダクトには、いまだ改良の余地があった。
【0007】
特許文献1に記載された空調ダクトにおいては、基材フィルムの接合が不燃性補強部材によるかしめによって行われるために、得られるダクトの気密性が十分に保たれないことがある。また、不燃性の金属製補強体を用いているためにやや重く、更なる軽量化の余地があった。
【0008】
特許文献2に記載された外装ジャケットにおいては、条帯側縁部における帯状複合材の接合が、重ねあわせ部の超音波溶着により行われるために、気密性はよいものの、積層された帯状複合材の層間はがれの問題が生ずるおそれがある。即ち、金属素材と樹脂素材が積層されたフィルムやシート状部材によって管を製造した場合に、金属層と樹脂層との間の接着強度を十分に高められない場合があり、その場合、金属層と樹脂層が層間はがれをおこすおそれがある。特許文献2に記載された外装ジャケットにおいて、層間はがれが発生すると、外装ジャケットが螺旋状にばらばらになってしまい、その機能を果たせなくなるという問題を生ずる。
【0009】
帯状複合材を螺旋状に接合してダクトを得るには、特許文献3に記載されたように、積層された帯状複合材をその両縁部が突き合わせられるようにらせん状に捲回して、突合せ部にまたがるように樹脂製の螺旋補強体を溶着する方法を採用することもできる。しかしながら、このような方法によって得られるダクトでも、積層された帯状複合材はその外周面の層が螺旋補強体で接合されているだけであり、帯状積層複合材に層間はがれが発生すると、はがれた内層部分がダクトの内周に遊離してしまって、ダクトの機能が十分に発揮されなくなるおそれがある。
【0010】
したがって、本発明の目的は、気密性が良好に維持され、軽量で、積層複合材の層間はがれによる不具合を抑制可能な耐熱性ダクトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者は、鋭意検討の結果、積層複合材製の条帯側縁部において、最内層同士を第1の樹脂補強体で接着一体化して、最外層同士を第2の樹脂補強体で接着一体化するとともに、これら2つの樹脂補強体が互いに重なり合うように配置すると、条帯側縁部が一対の樹脂補強体で挟み込まれるようになり、上記課題を解決できることを知見し、本発明を完成させた。
【0012】
本発明は、最外層及び最内層が樹脂層で構成されると共に中間に金属層を有する積層複合材からなる条帯を、その両側縁部が互いにつき合わせられるようにらせん状に捲回し、互いに隣接する両側縁部にまたがるように螺旋状の樹脂製補強体を接着一体化して構成される耐熱性ダクトであって、樹脂製補強体は、ダクト内周面側に配置される第1補強体と、ダクト外周面側に配置される第2補強体によって構成されるとともに、第1補強体と第2補強体とは互いに重なり合うように配置され、互いに隣接する条帯側縁部において、条帯の最内層が第1補強体によって互いに接着されていると共に、条帯の最外層が第2補強体によって互いに接着されていることを特徴とする耐熱性ダクトである。
【0013】
本発明においては、条帯側縁部がつき合わせられる部分には側縁部の間に隙間が設けられ、その隙間を通じて、第1補強体と第2補強体とが互いに接着一体化されていることが好ましい(請求項2)。
【0014】
また、本発明では、条帯側縁部がつき合わせられる部分で、隣接する条帯側縁部のうちの一方の条帯の最内層と、他方の条帯の最外層とが互いに重ね合わせられて、互いに接着されていることが好ましい(請求項3)。
そして、本発明では、最外層及び最内層が樹脂製補強体に熱溶着されることが好ましい(請求項4)。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、積層複合材からなる条帯が樹脂製補強体によって接着一体化されるので、ダクトの気密性が良好に維持され、樹脂製補強体を使用するので軽量な耐熱性ダクトが得られる。また、本発明によれば、最内層及び最外層がそれぞれ、樹脂補強体によって円筒状に接合一体化されるとともに、互いに重なり合うように設けられる第1補強体と第2補強体によって条帯側縁部が挟み込まれるようにして接着一体化されるので、積層複合材の層間はがれによる不具合を抑制できるという効果が得られる。
【0016】
さらに、本発明において、条帯側縁部の突き合わせ部分に設けられた隙間を通じて、第1補強体と第2補強体とが互いに接着一体化される場合(請求項2)や、条帯側縁部の突き合わせ部分で、隣接する条帯側縁部のうちの一方の条帯の最内層と、他方の条帯の最外層とを互いに重ね合わせて、互いに接着する場合(請求項3)には、第1補強体と第2補強体の間に条帯側縁部が挟み込まれた状態を確実に維持できるようになり、積層複合材の層間はがれによる不具合をより確実に抑制できる。
【0017】
また、本発明において、最外層及び最内層が樹脂製補強体に熱溶着されるようにした場合には、特に空調用途に適した耐熱性ダクトを低コストで提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態である耐熱性ダクトの部分断面図である。
【図2】本発明第1実施形態の耐熱性ダクトのダクト壁部分の拡大断面図である。
【図3】本発明第2実施形態の耐熱性ダクトのダクト壁部分の拡大断面図である。
【図4】本発明第3実施形態の耐熱性ダクトのダクト壁部分の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。図1及び図2は本発明の第1の実施形態の耐熱性ダクト1を示す図である。図1は耐熱性ダクトの構造を示す部分断面図であり、図の上部を断面として示している。また、図2は耐熱性ダクトのダクト壁部分の拡大断面図であり、図の上側がダクトの外側、図の下側がダクトの内側である。
【0020】
耐熱性ダクト1は、可撓性を有するダクトであり、例えば、空気を送るための送風ダクトや空調用ダクトとして、送風機などに接続して使用することができる。ダクトの使用用途や使用環境に応じて、耐熱性ダクト1の外側に断熱層などを追加して使用することもできる。
【0021】
図1に示すように、耐熱性ダクト1は、円筒状の可撓性ダクトであって、可撓性を有する積層複合材製の条帯2を螺旋状に捲回して円筒状のダクト壁を構成すると共に、互いに隣接する条帯の両側縁部にまたがるように樹脂製の補強体3を接着一体化してダクトを保形したダクトである。
【0022】
ダクト壁を構成する積層複合材製の条帯2は、ダクトの最外層となる層2a、および、ダクトの最内層2bとなる層が樹脂層とされて、最外層2aと最内層2bの間に金属層2cが挟み込まれた積層構造を有する積層複合材を所定幅にスリットしてなる条帯である。本実施形態においては、金属層2cはアルミニウム箔とされ、最外層2a及び最内層2bはポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)からなる層である。
【0023】
樹脂製の補強体3は、最外層2a及び最内層2bの樹脂層の樹脂材料と接着可能な樹脂材料(好ましくは熱可塑性樹脂材料)で構成される補強体であって、条帯2が互いに突き合わせられる側縁部21,22に沿って、これら両側縁部にまたがるように螺旋状に接着一体化されている。そして、樹脂製補強体3は、ダクト内周面側に配置される第1補強体31と、ダクト外周面側に配置される第2補強体32とで構成されており、第1補強体31と第2補強体32とは、ダクトの半径方向に互いに重なり合うように配置されて、条帯2の側縁部21,22を挟み込むように接着一体化されている。
【0024】
本実施形態においては、第1補強体31および第2補強体32はいずれもPET樹脂製であり、条帯の最外層2a及び最内層2bのPET樹脂と熱溶着されている。その結果、樹脂製補強体3によって、条帯2の隣接する両側縁部21,22が互いに接続されて筒状のダクト壁となり、さらに、ダクトの円筒状の形状が保形される。そして積層複合材製の条帯2は可撓性を有しており、ダクトの変形(伸縮・曲げ)の際には、主に条帯2の部分がたわむように変形することによってダクトの変形が許容される。
【0025】
条帯2と樹脂製補強体3の接合構造を、図2を参照してより詳細に説明する。
第2補強体32の断面形状は、条帯2の最外層2aに接着される基部と、基部の中央部からダクト外側に向けて突出した突出部とによって、逆T字状の断面を有するように形成されている。また、第1補強体31の断面形状は、やや偏平な長方形状断面とされている。互いに隣接する条帯側縁部21,22は、これら第1補強体31と第2補強体32とに挟み込まれるようにして接合されている。
そして、互いに隣接する条帯側縁部21,22においては、条帯2の最内層2b,2bが第1補強体31によって互いに接着一体化されて、条帯2の最外層2a,2aが第2補強体32によって互いに接着一体化されている。
【0026】
また、条帯2は、その両側縁部21,22の端縁の間に所定の間隔(隙間)を有するように螺旋状に捲回されており、両側縁部21,22がつき合わせられる部分においては、この隙間部分を通じて第1補強体31と第2補強体32とが互いに接着一体化されている。
【0027】
上記耐熱性ダクト1は、公知のダクト成形軸を利用したいわゆるスパイラル成形法によって製造することができる。まず、所定の積層構造を有するシート状あるいはフィルム状の積層複合材を所定幅で裁断し、ダクト壁となるべき可撓性条帯を準備する。得られた条帯2は、その両側縁部が互いにつき合わせられるように、スパイラル成形が可能な公知のダクト成形軸に螺旋状に巻きつけられる。一方で、樹脂製補強体3を構成する樹脂材料を押し出し機に供給し、第1補強体31や第2補強体32の断面形状となるように、半溶融状態で押出してダクト成形軸に供給する。可撓性条帯や半溶融状態の樹脂製補強体は、第1補強体、可撓性条帯、第2補強体の順番にダクト成形軸に供給して巻きつける。そして、ダクト成形軸上で、可撓性条帯の隣接する両側縁部が、第1補強体及び第2補強体によって接合されれば、上記実施形態の耐熱性ダクトを得ることができる。第1補強体31や第2補強体32と条帯2の接着は、本実施形態においては、半溶融状態の第1補強体31や第2補強体32が有する熱量により、条帯2の最外層2aや最内層2bが溶融し、その後冷却されることによって熱融着することにより、接着が行われる。かかる工程により、条帯2と第1補強体31及び第2補強体32とは、図2に示すような断面構造に接着一体化され、本実施形態の耐熱性ダクト1が製造される。
【0028】
本発明の第1実施形態の耐熱性ダクト1が有する作用効果について説明する。
まず、耐熱性ダクト1は、ダクト壁が積層複合材で構成され、補強体も樹脂製であるため、金属の使用量が少なく、軽量なダクトとなる。
【0029】
また、ダクト壁となる条帯2には、最外層及び最内層が樹脂層で構成されると共に中間に金属層を有する積層複合材からなる条帯を使用しているので、条帯が樹脂素材のみからなる条帯である場合に比べ、ダクトの耐熱性が高められる。本実施形態によれば、例えばダクトの耐熱温度を例えば120℃程度まで高めることができる。なお、耐熱性の観点からは、樹脂製補強体3や接着剤(接着剤を使用する場合)の耐熱温度を、条帯2の耐熱温度と同等かより高い温度とすることが好ましい。
【0030】
さらに、ダクト壁となるべき可撓性条帯の側縁部は、樹脂製補強体が条帯の最外層及び最内層の樹脂層に接着されることによって接続されるので、ダクト壁の気密性が良好に維持される。
【0031】
また、ダクト壁となるべき可撓性条帯2の最外層2a,2a及び最内層2b,2bのそれぞれが、第2補強体32及び第1補強体31によって互いに接着一体化されると共に、第1補強体31と第2補強体32が互いに重なり合うように配置されているので、積層複合材からなる条帯2の層間はがれによる不具合を抑制できる。
すなわち、可撓性条帯2の最外層2a,2aが第2補強体32によって、最内層2b,2bが第1補強体31によって、それぞれその端部で接着されて、各層が円筒状に接続一体化されているため、積層条帯の層間剥離がたとえ起こったとしても、最外層2aや最内層2bは円筒状に維持されて、従来技術のようにホース壁が螺旋状にばらばらになってしまうことがない。また、第1補強体31と第2補強体32が互いに重なり合うように配置されて条帯2の側縁部21,22を挟み込むようにしているため、条帯2の側縁部での層間剥離の発生が確実に防止される。また、たとえ条帯2の中心部から層間はがれが起こることがあろうとも、条帯の両側縁部では、最外層2aと最内層2bの端部が第1補強体31と第2補強体32に挟み込まれて接着されているので、はがれた層がばらばらに離脱した状態となって、ダクト形状を保てなくなったり、ダクト内周面に垂れ下がってダクト内部の流れを阻害したりすることが防止される。
【0032】
特に、本実施形態のように、互いに隣接する条帯側縁部21,22の間に所定の隙間を有するように条帯2を螺旋状に捲回して、第1補強体31と第2補強体32とが、条帯側縁部間の隙間を通じて互いに接着一体化されるようにした場合には、第1補強体31と第2補強体32とがばらばらになってしまうことがより確実に防止できるようになり、条帯側縁部を補強体の間に挟みこんだ状態を確実に維持して、層間はがれによる不具合発生の抑制・防止をより確実なものとすることができる。
【0033】
また、本発明の耐熱性ダクトによれば、条帯2を構成する積層複合材中の金属層2cは、樹脂層である最内層2bや最外層2aおよび、第1補強体31、第2補強体32によって外部環境とは直接接触しないようにされるため、これら樹脂層や樹脂補強体を構成する樹脂を、酸やアルカリなどへの耐性が高い樹脂やバリア性の高い樹脂とすれば、金属層2cが腐食してしまうことも防止できる。
【0034】
また、本実施形態のように、樹脂製補強体3と最外層2a及び最内層2bの接着一体化を、熱溶着により行えば、ダクト壁の気密が良好に保たれるほか、生産性も高い。また、接着に伴い溶剤などを使用する必要も無いので、特に通気ダクトとして好ましく使用できる耐熱性ダクトが得られる。なお、樹脂製補強体3と条帯2の接着一体化は、熱溶着に限定されるものではなく、接着剤を利用して接着しても良い。接着剤は溶剤を使用した接着剤や2液型などの反応性の接着剤やホットメルト系接着剤などが使用できる。
【0035】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変をして実施することができる。以下に本発明の他の実施形態について説明するが、以下の説明においては、上記実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様である部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0036】
図3には、本発明の第2実施形態の耐熱性ダクトのダクト壁の拡大断面を示す。本実施形態においても、積層複合材製の条帯4が、その側縁部が突き合わせられるように螺旋状に捲回されて、互いに隣接する側縁部にまたがるように樹脂製補強体5が接着一体化される点や、樹脂製補強体5がダクト内周面側に配置される第1補強体51とダクト外周面側に配置される第2補強体52とで構成されて、第1補強体51と第2補強体52とが互いに重なり合うように配置される点、及び、条帯の最外層4aと最内層4bがそれぞれ第2補強体52及び第1補強体51によって互いに接着(溶着)一体化されている点で、第1実施形態と同様である。ただ、本実施形態においては、可撓性条帯の突合せの形態が異なっており、条帯4の捲回形態は、互いに隣接する側縁部端縁の間に隙間が生じないような形態とされている。そして、第1補強体51と第2補強体52とは、直接には接着一体化されずに、互いに独立した一対の補強体として樹脂製補強体5を構成する。
【0037】
本実施形態においても、第1実施形態と同様に、軽量で、耐熱性や気密性に優れ、積層複合材の層間はがれの問題が予防・抑制されるような耐熱性ダクトが得られる。
【0038】
すなわち、本発明においては、第1補強体と第2補強体とは、必ずしも直接接着一体化される必要はなく、第1補強体と第2補強体とが互いに重なり合うように設けられて、第1補強体と第2補強体との間に条帯側縁部を挟持する状態が維持可能とされていれば上記効果が得られる。
【0039】
また、第2実施形態においては、条帯4は、最外層4aおよび最内層4bが樹脂層からなり、その間に金属層4cおよび補強層4dが挟み込まれた積層構造を有する積層複合材により構成されている。このように、ダクト壁となる条帯を構成する積層複合材には、適宜補強層や他の機能層(着色層、バリア層、吸収層など)を設けることもできる。
【0040】
図4には、本発明の第3実施形態の耐熱性ダクトのダクト壁の拡大断面を示す。本実施形態においては、第1実施形態と比べて、樹脂補強体の断面形状や、条帯側縁部の突き合わせ形態が異なっているが、他の点では同様とされている。
【0041】
本実施形態においては、樹脂補強体6を構成する第1補強体61と第2補強体62のうち、ダクト外周面側に配置される第2補強体62の断面形状がドーム状(かまぼこ形状)となるようにされている。即ち、本発明の耐熱性ダクトにおいては、第1補強体や第2補強体の断面形状は、これら補強体がその螺旋状の形態を適切に維持しうる限りにおいて、適宜変更することができるのである。
【0042】
また、本実施形態においては、ダクト壁を構成する条帯2の両側縁部21,22がつき合わせられて螺旋状に捲回される形態が、側縁部21,22がその端縁において互いに重ね合わせられるようにつき合わせられる形態とされている。その結果、条帯2の両側縁部21,22がつき合わせられて接合一体化される部分では、隣接する条帯側縁部のうちの一方(22)の側の条帯最内層2bと、他方(21)の側の条帯最外層2aとが互いに重ね合わせられて、接着一体化されている。そして、この重ね合わせて接合された部分全体を覆うようにして、第1補強体61および第2補強体62が接着一体化されて、両側縁部の間で、最内層2b、2bや最外層2a,2aがそれぞれ樹脂補強体によって互いに接着されている。
【0043】
このように、第1及び第2補強体による接着一体化に加えて、条帯両側縁部の端縁部分を重ね合わせて、互いの最内層と最外層とを接着するようにした場合には、条帯を構成する積層複合材がその端縁部分から剥離することがより確実に防止されるようになって、ダクトの層間はがれの抑制効果をさらに高めることができる。
【0044】
ダクト壁となる条帯を構成する積層複合材の構成材料としては、特に限定されるものではないが、たとえば、以下のものが使用できる。最外層や最内層の樹脂層としては、ポリエチレン(PE)樹脂やポリプロピレン(PP)樹脂やエチレン酢酸ビニル(EVA)樹脂、塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂が使用でき、あるいは、ウレタン樹脂やエポキシ樹脂やアクリル樹脂、フェノール樹脂などといった熱硬化性樹脂が使用できる。また、金属層としては、前述したアルミニウム箔のほか、ステンレス箔、銅箔などの金属箔や、金属の薄板が使用できる。
【0045】
また、積層複合材には、第2実施形態のように、補強層4dを含むこともでき、補強層としては、ガラス繊維や金属繊維、炭素繊維などの不燃性・難燃性の補強繊維や、木綿や麻などの天然繊維や、アクリル繊維やナイロン繊維などの合成繊維を、糸や織布、不織布状の繊維補強体として配列したものが使用できる。
【0046】
積層複合材を製造するにあたって、これら複数の層の積層一体化は、多様な手段によることができ、樹脂層を溶着させたり、接着剤や粘着剤を使用したりして積層一体化できる。接着剤を使用する場合には、ポリエステル樹脂や変性ポリイソシアネート樹脂や酢酸エチル樹脂などが好ましい接着剤として例示できるほか、溶剤を含まないような熱硬化性接着剤も接着剤として好ましい。
【0047】
本発明の実施に特に好ましく使用できる積層複合材としては、第1実施形態に示したようなアルミニウム箔にPET樹脂を積層した積層複合材や、アルミニウム箔にポリプロピレン樹脂を積層した積層複合材が例示できる。
【0048】
最外層や最内層を構成する樹脂材料としてポリプロピレンを使用すると、ダクト壁からの発塵や不純物等の溶出を効果的に防止することができ、清浄な環境で使用する用途に特に適したダクトとすることができて好ましい。また、ポリプロピレンは耐薬品性にも富んでおり、酸やアルカリなどから金属層を効果的に保護することができる。
【0049】
樹脂製補強体を構成する樹脂材料は、最外層及び最内層の樹脂層の樹脂材料と接着可能な樹脂材料であれば、特に制限はないが、接着性や溶着性の観点から、最外層及び最内層の樹脂材料と同種の樹脂材料を使用することが好ましい。そして、補強体の材料としてポリプロピレン樹脂を採用する場合には、ホモタイプのポリプロピレン樹脂を用いることが特に好ましい。
【0050】
また、本発明においては、条帯側縁部がつき合わせられる部分に設けられる樹脂製補強体のほかに、補強体を適宜追加することも可能であり、例えば、条帯2の中央部に樹脂製のあるいは金属製のらせん状補強体を、ダクトの内周面や外周面に設けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の耐熱性ダクトは、例えば空調用ダクトや送風用ダクトとして利用可能であり、軽量で、気密性、耐熱性があり、ダクト壁部分の層間はがれといった問題が抑制されていて、産業上の利用価値が高い。
【符号の説明】
【0052】
1 耐熱性ダクト
2 条帯
2a 最外層
2b 最内層
2c 金属層
21,22 側縁部
3 樹脂製補強体
31 第1補強体
32 第2補強体
4 条帯
4a 最外層
4b 最内層
4c 金属層
4d 補強層
5,6 樹脂製補強体
51,61 第1補強体
52,62 第2補強体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最外層及び最内層が樹脂層で構成されると共に中間に金属層を有する積層複合材からなる条帯を、その両側縁部が互いにつき合わせられるようにらせん状に捲回し、互いに隣接する両側縁部にまたがるように螺旋状の樹脂製補強体を接着一体化して構成される耐熱性ダクトであって、
樹脂製補強体は、ダクト内周面側に配置される第1補強体と、ダクト外周面側に配置される第2補強体によって構成されるとともに、第1補強体と第2補強体とは互いに重なり合うように配置され、
互いに隣接する条帯側縁部において、条帯の最内層が第1補強体によって互いに接着されていると共に、条帯の最外層が第2補強体によって互いに接着されていることを特徴とする耐熱性ダクト。
【請求項2】
条帯側縁部がつき合わせられる部分には側縁部の間に隙間が設けられ、その隙間を通じて、第1補強体と第2補強体とが互いに接着一体化されていることを特徴とする請求項1に記載の耐熱性ダクト。
【請求項3】
条帯側縁部がつき合わせられる部分で、隣接する条帯側縁部のうちの一方の条帯の最内層と、他方の条帯の最外層とが互いに重ね合わせられて、互いに接着されていることを特徴とする請求項1に記載の耐熱性ダクト。
【請求項4】
最外層及び最内層が樹脂製補強体に熱溶着されたことを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の耐熱性ダクト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−190988(P2011−190988A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57583(P2010−57583)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000108498)タイガースポリマー株式会社 (187)
【Fターム(参考)】