説明

耐熱性多価不飽和脂肪酸製剤およびそれを含有する食品

【課題】 DHAをはじめとする多価不飽和脂肪酸は種々の生理機能を有し、生体にとって必須の成分である。多価不飽和脂肪酸またはこれを多量に含む魚油を加工食品に添加するため、様々な製剤化が行われているが、安定性、特に熱に対する安定性が低いため広く一般の飲食品に利用することは困難であった。
【解決手段】 多価不飽和脂肪酸および/またはその誘導体および/またはこれらを含有する油脂、多価アルコール、ポリグリセリン組成中、グリセリン3量体〜10量体の中から選ばれる1種のポリグリセリンの含量が35%以上であるポリグリセリン脂肪酸エステルから成る多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物、およびこれを含む食品を提供することにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水に容易に分散し、かつ高い加工・保存安定性を示し、優れた生体利用率を有する多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物およびこれを添加してなる飲食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多価不飽和脂肪酸、なかでもドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)は血中中性脂質の低下作用、血圧コントロール作用、免疫機能活性化、アレルギー症状の改善、痴呆症の予防、抗炎症作用、学習機能向上といった生理活性作用を有する物質である。この多価不飽和脂肪酸は生体内でほとんど生合成できないため、必須脂肪酸として対外から取り入れる必要がある。
【0003】
多価不飽和脂肪酸は、植物油にも少量含まれるものの、最も多く含有するものは魚油である。日本人はもともと魚食民族であったが、近年、ライフスタイルの変化により若年層での魚離れが進んでいる。脂質の摂取状況は、平成15年厚生労働省の国民健康・栄養調査結果によると40〜49歳を境として、それより高齢者側では肉類よりも魚介類からの摂取が多いのに対し、若齢者側では肉類からの摂取が上回っている。脂質の摂取は、飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸および多価不飽和脂肪酸をバランスよく取ることが健康を維持する上で必須であるが、肉類由来の油脂は飽和脂肪酸が中心であるため、若年層の油脂摂取状況ではそのバランスが崩れ、結果として生活習慣病の引き金ともなっている。
【0004】
このような社会状況から魚油摂取の必要性は広く認識されつつあり、様々な加工食品に魚油を添加しようという試みがある。魚油の問題点として酸化により不快な味や風味を有する場合があり、そのままでは加工食品への添加が困難であることが挙げられる。
【0005】
このような状況において、魚油を加工食品に添加できるよう、様々な製剤化の取り組みが成されている。例えば、DHAやEPAを含む油脂と乳化剤、酸化防止剤、親水性媒体から成る製剤(例えば特許文献1参照)、界面活性剤と溶性多価アルコールおよびDHAを含有する油相成分から成る乳化組成物(例えば特許文献2参照)、DHA含有油脂、SAIB、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよび含水率50%以下の多価アルコール類から成る乳化組成物(例えば特許文献3参照)、水中に抗酸化剤を含有する高度不飽和脂肪酸を含む油成分を分散相とするO/W型乳化剤(例えば特許文献4参照)等の技術が公開されている。
【0006】
しかし、これらの技術工夫により魚油を水中に分散させて加工食品に添加できることは可能となったが、油脂の分離の問題や魚臭の発生といった安定性の面では問題が多く、特に殺菌等の加熱を伴う食品や酸性の食品に添加するのは困難である。
【0007】
さらに、前述のように多価不飽和脂肪酸には種々の生理活性作用が認められており、経口的に摂取されたものが効率的に体内に吸収されることが望ましい。
【0008】
【特許文献1】特許第3487881
【特許文献2】特開平6−63386
【特許文献3】特開平7−115901
【特許文献4】特開平6−298642
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、水に容易に分散し、かつ高い加工・保存安定性を示し、優れた生体利用率を有する多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物およびこれを添加して成る飲食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、多価不飽和脂肪酸エステルを含有する油脂、多価アルコールおよびポリグリセリン組成中のグリセリン縮合度が3〜10の中から選ばれる1種のポリグリセリンの含量が35%以上であるポリグリセリン脂肪酸エステルから成る多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物が、水に容易に可溶化乃至乳化分散し、かつ保存や加熱に対する安定性に優れていることに加え、経口摂取した場合に優れた生体利用率を有するという2つの課題を同時に解決できることを見出した。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、水に容易に分散し、かつ高い加工・保存安定性を示し、優れた生体利用率を有する多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物およびこれを添加して成る飲食品を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明を詳しく説明する。
【0013】
本発明における多価不飽和脂肪酸とは、分子内に二重結合を2個以上有する脂肪酸またはこれを構成成分とする化合物の総称であり、特定の脂肪酸に限定するものではない。一般的に多価不飽和脂肪酸は二重結合の位置によりn‐3系とn‐6系に大別される。n‐3系脂肪酸としては、α‐リノレン酸、イコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、ドコサペンタエン酸(DPA)、n‐6系の脂肪酸としてはリノール酸、γ‐リノレン酸、アラキドン酸といった脂肪酸が例示できる。
【0014】
この脂肪酸はその誘導体の形でも利用できる。例えば、脂肪酸塩やグリセリン、エタノールとのエステル、リン脂質の構成成分であってもよい。飲食品に対しては簡便に使用できることから、特にグリセリンエステルであるトリグリセリドが推奨される。
【0015】
天然由来の植物油、魚油、植物プランクトンの抽出油には、多価不飽和脂肪酸がトリグリセリドとして含まれており、そのまま本発明の目的に使用できる。目的に応じて適宜選択すればよいが、生理的効果を期待するならば含量が高い方が望ましいことから魚油および植物プランクトンからの抽出油が好適に利用できる。多価不飽和脂肪酸含量が20%〜90%のものが市販されており、いずれも利用可能である。この場合、天然由来の抽出油に他の原料由来の油脂や合成油を加えて多価不飽和脂肪酸含量を調節してもよい。
【0016】
本発明の多価アルコールとは、1分子中に水酸基を2個以上有する化合物の総称であり、プロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、ソルビタン、キシロース、アラビノース、マンノース、乳糖、砂糖、カップリングシュガー、ブドウ糖、酵素水飴、酸糖化水飴、麦芽糖水飴、麦芽糖、異性化糖、果糖、還元麦芽糖水飴、還元澱粉糖水飴、蜂蜜、果糖ブドウ糖液糖、およびこれらの水溶液が例示でき、これらは単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。なかでも製剤の調製のしやすさ、安定性からプロピレングリコール、グリセリンが好適に使用できる。
【0017】
本発明に使用されるポリグリセリン脂肪酸エステルにおいて、その構成成分であるポリグリセリンはその組成において、グリセリン3量体〜10量体から選ばれる1種のポリグリセリンの含量が35%以上であり、より好ましくは40%以上がよい。この組成分布はガスクロマトグラフィーや液体クロマトグラフィーにより分析でき、特にポリグリセリンをトリメチルシリル化誘導体とした後、ガスクロマトグラフィーに付すことにより簡便に分析することができる。
【0018】
またポリグリセリン脂肪酸エステルのもう一つの構成成分である脂肪酸は天然の動植物より抽出した油脂を加水分解し、分離してまたは分離せずに精製して得られるカルボン酸を官能基として含む物質であれば特に限定するものではない。または石油などを原料にして化学的に合成して得られる脂肪酸であってもよい。あるいはまた、これら脂肪酸を水素添加などして還元したものや、水酸基を含む脂肪酸を縮重合して得られる縮合脂肪酸や、不飽和結合を有する脂肪酸を加熱重合して得られる重合脂肪酸であってもよい。これら脂肪酸の選択に当たっては所望の効果を勘案して適宜決めればよい。本発明に使用される脂肪酸の具体例としては、炭素数6〜22の飽和または不飽和の脂肪酸、すなわちカプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘニン酸、エルカ酸、パルミトオレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、オクチル酸の他、分子中に水酸基を有するリシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸およびこれらの縮合物などが挙げられる。中でも乳化安定性の面から炭素数10〜18、好ましくは12〜16の脂肪酸が推奨される。
【0019】
以上に挙げた各種素材が、本発明の多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物の構成成分となるが、その配合割合は目的に応じて適宜調整すればよく、特に限定するものではないが、好ましくは多価不飽和脂肪酸および/または多価不飽和脂肪酸誘導体および/またはこれらを含有する油脂10〜50重量部、好ましくは20〜40重量部、ポリグリセリン組成中のグリセリン縮合度が3〜10の中から選ばれる1種のポリグリセリンの含量が35%以上であるポリグリセリン脂肪酸エステル3〜10重量部、好ましくは4〜7重量部、多価アルコールが10〜85重量部、好ましくは15〜70重量部、さらに好ましくは20〜50重量部である。多価不飽和脂肪酸および/または多価不飽和脂肪酸誘導体および/またはこれらを含有する油脂の含量が多すぎると乳化組成物の安定性が低下し、加工食品への適用が困難になる。逆に少なすぎると必要な多価不飽和脂肪酸を摂取するために食品に添加しなければならない製剤の添加量が多くなり、加工食品の物性、例えば食感等が悪化する。ポリグリセリン脂肪酸エステルの添加量は、多価不飽和脂肪酸および/または多価不飽和脂肪酸誘導体および/またはこれらを含有する油脂の配合割合に左右されるが、過量であっても過少であっても製剤の不安定化につながる。多価アルコールについては、過量であると多価不飽和脂肪酸および/または多価不飽和脂肪酸誘導体および/またはこれらを含有する油脂の配合割合が低下するし、逆に過少であると乳化組成物の安定性が悪化するほか、粘度が上昇するため取り扱いが困難となる。
【0020】
これら多価不飽和脂肪酸および/またはその誘導体、多価アルコール、ポリグリセリン脂肪酸エステルからなる製剤は十分本発明の目的を達成しうるものであるが、ここにポリフェノールを添加することで、さらに製剤の保存安定性や風味を向上させることができる。ポリフェノールとは光合成を行う植物のほとんどに含有されているものであり、特に限定するものではなく、フラボン、フラボノール、フラバノン、イソフラボン、アントシアニン、フラバノール等のフラボノイド類、その他の非フラボノイド類、及びこれらの誘導体、重合体等が挙げられる。天然・合成のいずれも使用できるが、天然の植物抽出物が好ましい。
【0021】
ポリフェノールの具体例としては、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート、エピガロカテキン、タンニン酸、ガロタンニン、エラジタンニン、カフェー酸、ジヒドロカフェー酸、クロロゲン酸、イソクロロゲン酸、ゲンチシン酸、ホモゲンチシン酸、没食子酸、エラグ酸、ロズマリン酸、ルチン、クエルセチン、クエルセタギン、クエルセタゲチン、ゴシペチン、アントシアニン、ロイコアントシアニン、プロアントシアニジン、エノシアニン、及びこれらの誘導体、重合体、立体異性体から選ばれる1種又は2種以上の混合物が挙げられる。
【0022】
植物の具体例として、茶等のツバキ科植物、ブドウ等のブドウ科植物、コーヒー等のアカネ科植物、カカオ等のアオギリ科植物、ソバ等のタデ科植物、グーズベリー、クロフサスグリ、アカスグリ等のユキノシタ科植物、ブルーベリー、ホワートルベリー、ブラックハクルベリー、クランベリー、コケモモ等のツツジ科植物、赤米、ムラサキトウモロコシ等のイネ科植物、マルベリー等のクワ科植物、エルダーベリー、クロミノウグイスカグラ等のスイカズラ科植物、プラム、ヨーロッパブラックベリー、ローガンベリー、サーモンベリー、エゾイチゴ、セイヨウキイチゴ、オオナワシロイチゴ、オランダイチゴ、クロミキイチゴ、モレロチェリー、ソメイヨシノ、セイヨウミザクラ、甜茶、リンゴ等のバラ科植物、エンジュ、小豆、大豆、タマリンド、ミモザ、ペグアセンヤク等のマメ科植物、紫ヤマイモ等のヤマイモ科植物、カキ等のカキ科植物、ヨモギ、春菊等のキク科植物、バナナ等のバショウ科植物、ヤマカワラムラサキイモ等のヒルガオ科植物、ローゼル等のアオイ科植物、赤シソ等のシソ科植物、赤キャベツ等のアブラナ科植物等が挙げられ、これらの植物に応じて果実、果皮、花、葉、茎、樹皮、根、塊根、種子、種皮等の部位が任意に選ばれる。
【0023】
中でも、ポリフェノールの生理機能の点より、ツバキ科植物である茶より抽出して得られるポリフェノールが好ましく、中でも緑茶より抽出して得られるポリフェノールが更に好ましい。
【0024】
茶より得られるポリフェノールとしては、(+)−カテキン、(+)−ガロカテキン、(−)−ガロカテキンガレート、(−)−エピカテキン、(−)−エピカテキンガレート、(−)−エピガロカテキン、(−)−エピガロカテキンガレート、遊離型テアフラビン、テアフラビンモノガレートA、テアフラビンモノガレートB、テアフラビンジガレート等があり、これらから選ばれる1種又は2種以上の混合物が挙げられる。
【0025】
また、抽出物中のポリフェノールの純度についても特に限定するものではなく、好ましくは40%以上であり、より好ましくは、60%以上である。
【0026】
なお、市販されているものとして、サンフェノン(太陽化学株式会社製)、テアフラン(株式会社伊藤園製)、サンウーロン(サントリー株式会社製)、ポリフェノン(東京フードテクノ株式会社製)等のポリフェノール含有素材も使用できる。
【0027】
本発明の多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物に添加するポリフェノール量は、特に規定するものではない。ただし、少なすぎると抗酸化効果が劣り、多すぎるとその特有の苦味から添加された食品の風味を損なう恐れがあるため、好適には組成物全体の0.01〜1.0%、より好ましくは0.1〜0.5%の範囲が推奨される。
【0028】
これらに加え、他の有用素材を併用して製剤の安定性や付加価値を向上させたり、粘度を調整して取り扱いを容易にすることも可能である。そのような成分を例示するならば、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、SAIB、レシチン、酵素分解レシチン、サポニン、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルといった乳化剤、カンゾウ抽出物、サッカリンナトリウム、アスパルテームといった甘味料、クチナシ色素、黄色4号といった着色料、ソルビン酸、ヒノキチオールといった保存料、アルギン酸、メチルセルロースといった増粘剤、エリソルビン酸、アスコルビン酸、トコフェロールといった酸化防止剤、クエン酸、フィチン酸といった酸味料、イノシン酸ナトリウム、グルタミン酸ナトリウムといった調味料、柑橘系フレーバー、ミルクフレーバー、ヨーグルトフレーバーといった香料、ビタミンA、D、E、C、B群、パントテン酸といったビタミン類、L−リジン塩、L−トレオニン、L−トリプトファンといったアミノ酸類、カルシウム、鉄、亜鉛、銅、マグネシウムといったミネラル類、油脂、タンパク質、デキストリン、水、エタノールといった食品素材が挙げられる。
【0029】
本発明の乳化組成物の調製方法は、特に定めるものではない。例えば多価アルコールに乳化剤を混合しておき、攪拌しながら徐々に油性物質すなわち本発明では多価不飽和脂肪酸および/または多価不飽和脂肪酸誘導体および/またはこれらを含有する油脂を添加して調製することができる。この場合、多価アルコールまたは含水多価アルコールと乳化剤からD相を形成させ、ここへ油性物質を添加してもよい。さらには油性物質に乳化剤を添加しておき、攪拌しながら徐々に多価アルコールを添加して転相させてもよい。
【0030】
この乳化組成物の調製に使用できる機器類としては、通常の攪拌装置や乳化装置が利用できる。例えばプロペラ型、アンカー型、パドル型の攪拌機、より強力なせん断力を付与できるローター・ステーター型乳化機、磨砕機能を備えたミル型乳化機、高圧化でキャビテーションを発生させる高圧ノズル型乳化機、高圧下で液同士を衝突させ、衝撃力、乱流によるせん断力およびキャビテーションにより乳化させる高圧衝突型乳化機、超音波でキャビテーションを発生させる超音波乳化機、細孔を通して均一乳化を行う膜乳化機、エレメント内で液の分散集合を繰り返して均一混合するスタティックミキサーといったものが例示できる。これらは単独で使用できるほか、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの機器の使用法については限定するものではないが、一般的にホモミキサーと称されるローター・ステーター型乳化機が簡便に利用できるため好適である。さらには、これに必要に応じてホモジナイザーと称される高圧ノズル型乳化機を併用すると、より安定な組成物が調製できるため、より好ましい。
【0031】
本発明の多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を生体にとって有効に利用させるためには、製剤を水に分散させた時の乳化粒子径がポイントとなる。また粒子系のコントロールにより、水に分散させたときに透明から白色のクラウディ状態まで変化させることができ、特に飲料においては製品を設計する上での重要な要素となる。この粒子径は先述した構成する成分の配合割合と乳化装置の選定によりコントロールすることができる。本発明の組成物を水に分散させたときの粒子径は特に限定するものではなく、食品に添加したときの目的に応じて調整すればよい。優れた生体利用率を有し、熱安定性を向上させるという観点から見れば、粒子径がより小さい方が望ましい反面、粒子のトータルの表面積が増加することにより不飽和脂肪酸が酸化されやすくなるため、平均粒子径が0.01μm〜1μm、好ましくは0.05μm〜0.5μmの範囲にあるほうが望ましい。
【0032】
本発明の多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物は飲食品、医薬部外品、医薬品、飼料、ペットフード等に幅広く利用できるが、特に人が手軽に摂取できる飲食品が好ましい。
【0033】
本発明の多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を含有する飲食品とは、前述の設計に基づいて調製された製剤を含有する食品を指し、特に限定するものではない。例えば、即席麺、カップ麺、レトルト・調理食品、調理缶詰、電子レンジ食品、即席スープ・シチュー、即席みそ汁・吸い物、スープ缶詰、フリーズドライ食品といった即席食品、炭酸飲料、天然果汁、果汁飲料、果汁入り清涼飲料水、果肉飲料、果粒入り果実食品、野菜系飲料、豆乳・豆乳飲料、コーヒー飲料、お茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、スポーツ飲料、栄養飲料、アルコール飲料といった嗜好飲料類、パン、マカロニ・スパゲッティ、麺類、ケーキミックス、から揚げ粉・パン粉、ギョーザ・春巻の皮といった小麦粉食品、キャラメル・キャンディー、チューイングガム、チョコレート、クッキー・ビスケット、ケーキ・パイ、スナック・クラッカー、和菓子・米菓子・豆菓子、デザート菓子といった菓子類、しょうゆ、みそ、ソース類、トマト加工調味料、みりん類、食酢類、甘味料、魚醤、ニョクマムといった基礎調味料、風味調味料、調理ミックス、カレーの素、たれ類、ドレッシング、麺つゆ、スパイスといった複合調味料、バター、マーガリン、マヨネーズといった油脂食品、牛乳・加工乳、乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料、チーズ、アイスクリーム、調製粉乳、クリームといった乳・乳製品、素材冷凍食品、半調理冷凍食品、調理済冷凍食品といった冷凍食品、水産缶詰・ペースト類、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品、水産珍味類、水産乾物類、佃煮といった水産加工品、畜産缶詰・ペースト類、畜肉ハム・ソーセージ、畜産珍味類といった畜産加工品、農産缶詰、果実缶詰、ジャム・マーマレード類、漬物、煮豆、農産乾物類、シリアルといった農産加工品、ベビーフード、離乳食、ふりかけ、お茶漬けのり、サプリメントなどを例示できる。
【0034】
食品への添加量は特に定めるものではなく、目的に応じて適宜調整すればよい。敢えて例示するならば、食品100gもしくは食品1食あたり、多価不飽和脂肪酸として0.1mg〜1000mg、好ましくは0.5mg〜500mg、より好ましくは1mg〜50mgといった添加量が挙げられる。
【0035】
こういった加工食品に対して本発明の多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を添加する場合、組成物中に配合されたポリフェノールとは別にポリフェノール類を添加すると、保存中の多価不飽和脂肪酸の酸化劣化を抑制し、製品価値を高めることができる。特に多価不飽和脂肪酸の起源が魚油である場合、酸化に伴う魚臭の発生を顕著に抑制することができる。この場合の添加量は特に限定するものではなく、食品の設計に合せて適宜調整すればよいが、飲食品に対して10〜1000ppm、好ましくは50〜500ppmの添加が推奨される。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明がかかる実施例のみに限定されるものではない。
【実施例】
【0036】
実施例1
グリセリン400gにペンタグリセリンモノミリステート(太陽化学株式会社 サンソフト A−141E、構成ポリグリセリン中グリセリン5量体の含量が42%)60gを添加、70℃においてホモミキサーで十分に攪拌した。十分に攪拌されたことを確認後に品温を50℃まで冷却した。ここへ、ホモミキサーで3000rpmで攪拌しつつ別途澄明に融解した精製魚油(マルハ株式会社 DHA含量22%)300gを徐々に添加した。次いで水240gを添加後ホモミキサーで8000rpm、10分攪拌し本発明の多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を得た。
【0037】
この組成物の一部、10gに水を加えて1000gとし、本発明の多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物水分散液を得た。
【0038】
実施例2
グリセリン400gにペンタグリセリンモノミリステート(太陽化学株式会社 サンソフト A−141E、構成ポリグリセリン中グリセリン5量体の含量が42%)55gを添加、70℃においてホモミキサーで十分に攪拌した。十分に攪拌されたことを確認後に品温を50℃まで冷却した。ここへ、ホモミキサーで3000rpmで攪拌しつつ、別途澄明に融解した精製魚油(マルハ株式会社 DHA含量22%)300gとレシチン(太陽化学株式会社 サンレシチンL−8)5gの混合物を徐々に添加した。次いで水240gを添加後ホモミキサーで8000rpm、10分攪拌し本発明の多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を得た。
【0039】
この組成物の一部、10gに水を加えて1000gとし、本発明の多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物水分散液を得た。
【0040】
比較例1
水900gにグリセリン4gおよびペンタグリセリンモノミリステート(太陽化学株式会社 サンソフト A−141E、構成ポリグリセリン中グリセリン5量体の含量が42%)0.6gを添加、70℃に加熱した。これをホモミキサーで3000rpmで攪拌しながら、品温を50℃まで冷却した。ここへ、別途澄明に融解した精製魚油(マルハ株式会社 DHA含量22%)3gを添加した。さらにホモミキサーで8000rpm、10分攪拌後、水を加えて1000gとし、多価不飽和脂肪酸水分散液を得た。
【0041】
比較例2
水900gにグリセリン4gおよびペンタグリセリンモノミリステート(太陽化学株式会社 サンソフト A−141E、構成ポリグリセリン中グリセリン5量体の含量が42%)0.55gを添加、70℃に加熱した。これをホモミキサーで3000rpmで攪拌しながら、品温を50℃まで冷却した。ここへ、別途澄明に融解した精製魚油(マルハ株式会社 DHA含量22%)3gとレシチン(太陽化学株式会社 サンレシチンL−8)0.05gの混合物を添加した。さらにホモミキサーで8000rpm、10分攪拌後、水を加えて1000gとし、多価不飽和脂肪酸水分散液を得た。
【0042】
試験例1
実施例1、2で得られた多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物水分散液および比較例1、2で得られた多価不飽和脂肪酸水分散液各200gを密栓し、40℃で2週間放置した。実施例1、2の多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物水分散液は良好な乳化状態を維持していたのに対し、比較例1、2で得られた多価不飽和脂肪酸水分散液は油滴の分離が認められた。
以上より、本発明の多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物水分散液は、安定性に優れていることが確認できた。
【0043】
実施例3
グリセリン400gにポリフェノール(太陽化学株式会社 サンフェノンBG−3 ポリフェノール含量80%)3gおよびペンタグリセリンモノミリステート(太陽化学株式会社 サンソフト A−141E、構成ポリグリセリン中グリセリン5量体の含量が42%)60gを添加、70℃においてホモミキサーで十分に攪拌した。十分に攪拌されたことを確認後に品温を50℃まで冷却した。ここへ、ホモミキサーで3000rpmで攪拌しつつ別途澄明に融解した精製魚油(マルハ株式会社 DHA含量22%)300gを徐々に添加、次いで水237gを添加後ホモミキサーで8000rpm、10分攪拌し本発明の多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を得た。
【0044】
実施例4
グリセリン400gにポリフェノール(太陽化学株式会社 サンフェノンBG−3 ポリフェノール含量80%)3gおよびペンタグリセリンモノミリステート(太陽化学株式会社 サンソフト A−141E、構成ポリグリセリン中グリセリン5量体の含量が42%)55gを添加、70℃においてホモミキサーで十分に攪拌した。十分に攪拌されたことを確認後に品温を50℃まで冷却した。ここへ、ホモミキサーで3000rpmで攪拌しつつ、別途澄明に融解した精製魚油(マルハ株式会社 DHA含量22%)300gとレシチン(太陽化学株式会社 サンレシチンL−8)5gの混合物を徐々に添加、次いで水237gを添加後ホモミキサーで8000rpm、10分攪拌し本発明の多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を得た。
【0045】
実施例5
グリセリン400gにポリフェノール(太陽化学株式会社 サンフェノンBG−3 ポリフェノール含量80%)3gおよびトリグリセリンモノミリステート(太陽化学株式会社 サンソフト A−141C、構成ポリグリセリン中グリセリン3量体の含量が47%)55gを添加、70℃においてホモミキサーで十分に攪拌した。十分に攪拌されたことを確認後に品温を50℃まで冷却した。ここへ、ホモミキサーで3000rpmで攪拌しつつ、別途澄明に融解した精製魚油(マルハ株式会社 DHA含量22%)300gとレシチン(太陽化学株式会社 サンレシチンL−8)5gの混合物を徐々に添加、次いで水237gを添加後ホモミキサーで8000rpm、10分攪拌し本発明の多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を得た。
【0046】
比較例3
実施例1のペンタグリセリンモノミリステートをデカグリセリンモノミリステート(太陽化学株式会社 サンソフトQ−14S)に変更したほかは全く同じ条件で調製し、多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を得た。
【0047】
なお、デカグリセリンモノミリステート(サンソフトQ−14S)のポリグリセリン組成は、グリセリン8.2%、グリセリン2量体20.3%、グリセリン3量体18.5%、グリセリン4量体13.4%、グリセリン5量体9.7%、グリセリン6量体7.4%、グリセリン7量体以上22.5%であった。
【0048】
比較例4
実施例2のペンタグリセリンモノミリステートをデカグリセリンモノミリステート(太陽化学株式会社 サンソフトQ−14S)に変更したほかは全く同じ条件で調製し、多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を得た。
【0049】
比較例5
実施例3のペンタグリセリンモノミリステートをデカグリセリンモノミリステート(太陽化学株式会社 サンソフトQ−14S)に変更したほかは全く同じ条件で調製し、多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を得た。
【0050】
比較例6
実施例4のペンタグリセリンモノミリステートをデカグリセリンモノミリステート(太陽化学株式会社 サンソフトQ−14S)に変更したほかは全く同じ条件で調製し、多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を得た。
【0051】
比較例7
実施例4のペンタグリセリンモノミリステートをジグリセリンモノミリステート(太陽化学株式会社 サンソフトQ−14D)に変更したほかは全く同じ条件で調製し、多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を得た。
【0052】
なお、ジグリセリンモノミリステート(サンソフトQ−14D)のポリグリセリン組成は、グリセリン0.8%、グリセリン2量体90.3%、グリセリン3量体8.9%であった。
【0053】
試験例2
実施例1〜5および比較例3〜7で得られた多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を40℃で2か月保存試験を実施した。保存試験前後の製剤の状態と風味を比較した。
【0054】
結果を表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
以上の結果より、本発明の多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物は高い保存安定性を有し、かつ風味的にも優れていることが明らかとなった。
【0057】
試験例3
実施例1〜5および比較例3〜6で得られた多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物0.5gに水を加えて100gとし、よく攪拌して均一な分散液を得た。これをスチール缶に充填し、121℃で30分間レトルト殺菌を行った後、37℃で2か月間保存した。レトルト殺菌前の試験液と、殺菌・保存試験後の試験液の粒度分布を粒度分布計(ベックマンコールター社、LS−230)にて測定し、平均粒子径の変化を比較した。結果を表2に示す。
【0058】
【表2】

【0059】
以上の結果より、本発明の多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物の水分散液は、乳化粒子径が小さい上、殺菌・保存試験の前後で粒子径の変化が小さいことから安定性が高いことが明らかとなった。
【0060】
実施例6
グリセリン340gにペンタグリセリンモノミリステート(太陽化学株式会社 サンソフト A−141E、構成ポリグリセリン中グリセリン5量体の含量が42%)50gおよびペンタグリセリンモノオレート(太陽化学株式会社 サンソフトA−171E、構成ポリグリセリン中グリセリン5量体の含量が36%)30gを添加、70℃においてホモミキサーで十分に攪拌した。十分に攪拌されたことを確認後に品温を50℃まで冷却した。ここへ、ホモミキサーで3000rpmで攪拌しつつ、別途澄明に融解した精製魚油(マルハ株式会社 DHA含量22%)300gとSAIB(ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、イーストマンケミカルジャパン株式会社)100gの混合物を徐々に添加、次いで水180gを添加後ホモミキサーで8000rpm、10分攪拌し本発明の多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を得た。
【0061】
実施例7
グリセリン340gにペンタグリセリンモノラウレート(太陽化学株式会社 サンソフト A−121E、構成ポリグリセリン中グリセリン5量体の含量が41%)60gおよびペンタグリセリンモノステアレート(太陽化学株式会社 サンソフトA−181E、構成ポリグリセリン中グリセリン5量体の含量が42%)20gを添加、70℃においてホモミキサーで十分に攪拌した。十分に攪拌されたことを確認後に品温を50℃まで冷却した。ここへ、ホモミキサーで3000rpmで攪拌しつつ、別途澄明に融解した精製魚油(マルハ株式会社 DHA含量22%)300gとSAIB(ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、イーストマンケミカルジャパン株式会社)100gの混合物を徐々に添加、次いで水180gを添加後ホモミキサーで8000rpm、10分攪拌し本発明の多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を得た。
【0062】
実施例8
グリセリン340gにポリフェノール(太陽化学株式会社 サンフェノンBG−3 ポリフェノール含量80%)5g、ペンタグリセリンモノミリステート(太陽化学株式会社 サンソフト A−141E、構成ポリグリセリン中グリセリン5量体の含量が42%)50gおよびペンタグリセリンモノオレート(太陽化学株式会社 サンソフトA−171E、構成ポリグリセリン中グリセリン5量体の含量が36%)30gを添加、70℃においてホモミキサーで十分に攪拌した。十分に攪拌されたことを確認後に品温を50℃まで冷却した。ここへ、ホモミキサーで3000rpmで攪拌しつつ、別途澄明に融解した精製魚油(マルハ株式会社 DHA含量22%)300gとSAIB(ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、イーストマンケミカルジャパン株式会社)100gの混合物を徐々に添加、次いで水175gを添加後ホモミキサーで8000rpm、10分攪拌し本発明の多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を得た。
【0063】
実施例9
グリセリン340gにポリフェノール(太陽化学株式会社 サンフェノンBG−3 ポリフェノール含量80%)5g、ペンタグリセリンモノラウレート(太陽化学株式会社 サンソフト A−121E、構成ポリグリセリン中グリセリン5量体の含量が41%)60gおよびペンタグリセリンモノステアレート(太陽化学株式会社 サンソフトA−181E、構成ポリグリセリン中グリセリン5量体の含量が42%)20gを添加、70℃においてホモミキサーで十分に攪拌した。十分に攪拌されたことを確認後に品温を50℃まで冷却した。ここへ、ホモミキサーで3000rpmで攪拌しつつ、別途澄明に融解した精製魚油(マルハ株式会社 DHA含量22%)300gとSAIB(ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、イーストマンケミカルジャパン株式会社)100gの混合物を徐々に添加、次いで水175gを添加後ホモミキサーで8000rpm、10分攪拌し本発明の多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を得た。
【0064】
比較例8
実施例6のペンタグリセリンモノミリステートをデカグリセリンモノミリステート(太陽化学株式会社 サンソフトQ−14S)、ペンタグリセリンモノオレートをデカグリセリンモノオレート(太陽化学株式会社 サンソフトQ−17S)に変更したほかは全く同じ条件で調製し、多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を得た。
なお、デカグリセリンモノミリステート(サンソフトQ−14S)およびデカグリセリンモノオレート(サンソフトQ−17S)のポリグリセリン組成は、グリセリン15%、グリセリン2量体18%、グリセリン3量体23%、グリセリン4量体16%、グリセリン5量体以上20%、環状ポリグリセリンが8%であった。
【0065】
比較例9
実施例7のペンタグリセリンモノラウレートをデカグリセリンモノラウレート(太陽化学株式会社 サンソフトQ−12S)、ペンタグリセリンモノステアレートをデカグリセリンモノステアレート(太陽化学株式会社 サンソフトQ−18S)に変更したほかは全く同じ条件で調製し、多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を得た。
なお、デカグリセリンモノラウレート(サンソフトQ−12S)およびデカグリセリンモノステアレート(サンソフトQ−18S)のポリグリセリン組成は、グリセリン15%、グリセリン2量体18%、グリセリン3量体23%、グリセリン4量体16%、グリセリン5量体以上20%、環状ポリグリセリンが8%であった。
【0066】
比較例10
実施例8のペンタグリセリンモノミリステートをデカグリセリンモノミリステート(太陽化学株式会社 サンソフトQ−14S)、ペンタグリセリンモノオレートをデカグリセリンモノオレート(太陽化学株式会社 サンソフトQ−17S)に変更したほかは全く同じ条件で調製し、多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を得た。
【0067】
比較例11
実施例9のペンタグリセリンモノラウレートをデカグリセリンモノラウレート(太陽化学株式会社 サンソフトQ−12S)、ペンタグリセリンモノステアレートをデカグリセリンモノステアレート(太陽化学株式会社 サンソフトQ−18S)に変更したほかは全く同じ条件で調製し、多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を得た。
【0068】
試験例4
実施例6〜9および比較例8〜10で得られた多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を40℃で2か月保存試験を実施した。保存試験前後の製剤の状態と風味を比較した。
【0069】
結果を表3に示す。
【0070】
【表3】

【0071】
以上の結果より、本発明の多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物は高い保存安定性を有し、かつ風味的にも優れていることが明らかとなった。
【0072】
試験例5
実施例6〜9および比較例8〜10で得られた多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物0.1gにクエン酸溶液(100mM)を加えて100gとし、よく攪拌して均一な分散液を得た。これをガラス瓶に充填し、95℃で1分間殺菌を行った後、37℃で2か月間保存した。
【0073】
実施例6〜9の組成物の分散液は保存試験後も良好な乳化状態を維持していたのに対し、比較例8〜10の組成物の分散液は乳化破壊を起こし表面に油滴の浮遊が認められた。
【0074】
よって本発明の多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物の分散液は高い安定性を有していることが確認された。
【0075】
実施例10
グリセリン79gにペンタグリセリンモノラウレート(太陽化学株式会社 サンソフト A−121E、構成ポリグリセリン中グリセリン5量体の含量が41%)10g、ショ糖脂肪酸エステル(DKエステルSS、第一工業製薬株式会社)1gを加えてヒスコトロンで攪拌、ここへDHAオイル10gを加えて、さらにヒスコトロンで3分間攪拌し、本発明の多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を得た。
【0076】
比較例12
実施例10のペンタグリセリンモノラウレートをデカグリセリンモノラウレート(太陽化学株式会社 サンソフトQ−12S)に変更した以外は全く同じ条件で調製し、多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を得た。
【0077】
試験例6
実施例10および比較例12で得られた組成物0.1gに水を加えて100gとし、よく攪拌して均一な分散液を得た。この分散液を40℃で2か月保存したときの透過率(650nm)および粒度分布を測定し、保存試験前後で比較を行った。
結果を表3に示す。
【0078】
結果を表4に示す。
【表4】

【0079】
この結果より、本発明の多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物の水分散液は透明性に優れ、かつ保存中も変化がほとんどないことから、その安定性の高さが確認された。
【0080】
実施例11
実施例2で得られた多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物0.32gに市販のオレンジジュースを加えて100gとした。これを湯浴中で93℃で1分間加熱殺菌した後冷却し、本発明の多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を含む飲料を得た。
【0081】
実施例12
実施例2で得られた多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を実施例4で得られた多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物に変更した他は実施例11と同様に処理し、本発明の多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を含む飲料を得た。
【0082】
実施例13
実施例2で得られた多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物0.32g、およびポリフェノール(太陽化学株式会社 サンフェノンBG−3 ポリフェノール含量80%)0.01gに市販のオレンジジュースを加えて100gとした。これを湯浴中で93℃で1分間加熱殺菌した後冷却し、本発明の多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を含む飲料を得た。
【0083】
実施例14
実施例2で得られた多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を実施例4で得られた多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物に変更した他は実施例13と同様に処理し、本発明の多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を含む飲料を得た。
【0084】
比較例13
実施例2で得られた多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を比較例4で得られた多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物に変更した他は実施例11と同様に処理し、多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を含む飲料を得た。
【0085】
比較例14
実施例2で得られた多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を比較例6で得られた多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物に変更した他は実施例11と同様に処理し、多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を含む飲料を得た。
【0086】
比較例15
実施例2で得られた多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を比較例4で得られた多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物に変更した他は実施例13と同様に処理し、多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を含む飲料を得た。
【0087】
比較例16
実施例2で得られた多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を比較例6で得られた多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物に変更した他は実施例13と同様に処理し、多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を含む飲料を得た。
【0088】
試験例7
実施例11〜14および比較例13〜15で調製した飲料を40℃で2週間保存し、概観および風味を保存試験前後で比較した。
【0089】
結果を表5に示す。
【0090】
【表5】

【0091】
以上の結果より、本発明の多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物の飲料は状態・風味のいずれの観点から見ても安定性に優れていることは明らかである。
【0092】
実施例15
実施例2で得られた多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物0.64gに市販の牛乳を加えて100gとした。これをアルミ缶に充填し、レトルト殺菌機にて123℃で20分間加熱殺菌した後冷却し、本発明の多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を含む飲料を得た。
【0093】
実施例16
実施例2で得られた多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を実施例4で得られた多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物に変更した他は実施例15と同様に処理し、本発明の多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を含む飲料を得た。
【0094】
実施例17
実施例2で得られた多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物0.64g、およびポリフェノール(太陽化学株式会社 サンフェノンBG−3 ポリフェノール含量80%)0.005gに市販の牛乳を加えて100gとした。これをアルミ缶に充填し、レトルト殺菌機にて123℃で20分間加熱殺菌した後冷却し、本発明の多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を含む飲料を得た。
【0095】
実施例18
実施例2で得られた多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を実施例4で得られた多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物に変更した他は実施例17と同様に処理し、本発明の多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を含む飲料を得た。
【0096】
比較例17
実施例2で得られた多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を比較例4で得られた多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物に変更した他は実施例15と同様に処理し、多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を含む飲料を得た。
【0097】
比較例18
実施例2で得られた多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を比較例6で得られた多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物に変更した他は実施例15と同様に処理し、多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を含む飲料を得た。
【0098】
比較例19
実施例2で得られた多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を比較例4で得られた多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物に変更した他は実施例17と同様に処理し、多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を含む飲料を得た。
【0099】
比較例20
実施例2で得られた多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を比較例6で得られた多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物に変更した他は実施例17と同様に処理し、多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を含む飲料を得た。
【0100】
試験例8
実施例15〜18および比較例17〜19で調製した飲料を40℃で2週間保存し、風味を保存試験前後で比較した。
結果を表5に示す。
【0101】
結果を表6に示す。
【0102】
【表6】

【0103】
以上の結果より、本発明の多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物の飲料は風味的に優れていることは明らかである。
【0104】
実施例19
実施例2で得られた多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物1.7gに市販の流動食(明治乳業株式会社 メイバランスYH)を加えて100gとした。これをアルミパウチに充填し、レトルト殺菌機にて121℃で30分間加熱殺菌した後冷却し、本発明の多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を含む流動食を得た。
【0105】
比較例21
実施例2で得られた多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を比較例4で得られた多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物に変更した他は実施例19と同様に処理し、多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を含む流動食を得た。
【0106】
試験例9
実施例19および比較例21で調製した流動食を40℃で2か月保存し、状態と風味を保存試験前後で比較した。
結果を表6に示す。
【0107】
結果を表7に示す。
【0108】
【表7】

【0109】
以上の結果より、本発明の多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物の流動食は状態・風味のいずれの観点から見ても安定性に優れていることは明らかである。
【0110】
試験例10
男性8名をA〜Dの4つの群に分け、それぞれに200mlのミルクシェークを飲食させた。ミルクシェークにDHAとして1000mgを投与するため、A群には実施例2で得られた多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物15.1g、B群には比較例4で得られた多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物15.1g、C群には精製魚油(マルハ株式会社 DHA含量22%)4.5gを、またコントロールとしてD群には水5mlを強制的に経口投与した。投与後、数時間おきに72時間まで、それぞれから血液を採取し、DHA含量を測定した。また各群の72時間内のAUCを求めた。結果を表7に示す。
【0111】
結果を表8に示す。
【0112】
【表8】

【0113】
消化吸収による血中への移行率はA群の方が優れており、また吸収傾向についても緩やかに吸収され、長期的に吸収が持続していることが分かった。
【0114】
以上より、本発明の多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物は、経口摂取した際の吸収性に優れていることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明は、様々な飲食品に応用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1.多価不飽和脂肪酸および/またはその誘導体および/またはこれらを含有する油脂10〜50重量部
2.多価アルコール10〜85重量部
3.ポリグリセリン組成中、グリセリン3量体〜10量体の中から選ばれる1種のポリグリセリンの含量が35%以上であるポリグリセリン脂肪酸エステル10〜85重量部
上記1〜3を含有する多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物。
【請求項2】
ポリフェノールを含有する請求項1記載の多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物。
【請求項3】
請求項1または2記載の多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物を含む飲食品。
【請求項4】
請求項1または2記載の多価不飽和脂肪酸含有乳化組成物と、ポリフェノールとを別に添加することを特徴とする飲食品の製造法。

【公開番号】特開2007−68480(P2007−68480A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−260474(P2005−260474)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(000204181)太陽化学株式会社 (244)
【Fターム(参考)】