説明

耐衝撃性プラスティックレンズ

【課題】耐摩耗性、耐衝撃性、耐候性、密着性のいずれにもバランス良く優れたプラスティックレンズを提供する。
【解決手段】プラスティックレンズ基材上に、ブロック型ポリイソシアネートと活性水素化合物とを含有する塗料を加熱硬化させてなるプライマー層を備え、このプライマー層の上にさらにハードコート層を備えたプラスティックレンズであって、プライマー層を構成するブロック型ポリイソシアネートが、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、及び1,3−ビスイソシアネートメチルシクロヘキサンからなる群から選択された1種以上により形成されたイソシアヌレート体であり、マロン酸エステル化合物及びアセト酢酸エステル化合物の中から選択された1種以上のブロック剤にてブロックされたものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラスティックレンズに関し、耐擦傷性、耐衝撃性、耐候性、及び密着性に優れたプラスティックレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
眼鏡用プラスティックレンズは、軽い、割れにくい、染色性を有するといった、ガラス製レンズにはない特徴を有しており、その素材としてはアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アリル/ジ−グリコール/カーボネート樹脂(ADC樹脂)、ウレタン樹脂を経て、現在は高屈折率エピスルフィド樹脂が用いられ、屈折率も1.74以上のものが上市されている。
【0003】
しかし、プラスティックレンズは、樹脂の光学特性は向上しているものの、耐擦傷性においてはガラス製レンズに比べてはるかに劣るという問題を有する。そのため、レンズ基材上にハードコート層を備えることが必要不可欠となっている。
【0004】
一方、屈折率1.60以上のマイナスレンズにおいては、レンズ周辺部の厚さも薄くすることが可能となり、外観のよいレンズが得られている。しかし、レンズの重量を軽減させるために中心部の厚みを極力薄くし、且つ非球面性による光学収差を改善し、周辺部の厚さをさらに薄くすることが求められている。
【0005】
また耐擦傷性を向上させるために有機シラン化合物やアクリル化合物の縮合体からなるハードコート層を備えることが行われており、これはその上層に形成される金属酸化物の多層膜からなる反射防止層を密着させる点においては有効であるが、衝撃でこの反射防止層に亀裂が生じた場合、レンズ本体まで亀裂が成長し、ついにはレンズを破壊させてしまうという大きな欠点がある。すなわち、一般的にプラスティックレンズに直接ハードコート層を形成し、その上層にTiO、ZrO、SiOなどの金属酸化物を真空蒸着すると、これらの層は固い反面脆いため、耐衝撃性が低く、亀裂が入りやすい。また、プラスティックレンズ基材の種類によっては、ハードコート層の密着性も不十分なものとなる。
【0006】
従って、ハードコート層の密着性及びレンズ全体としての耐衝撃性を向上させるために、ハードコート層を形成する前にまずプライマー層を形成することが行われている。
【0007】
特許文献1(特開昭63−87223号公報)および特許文献2(特開昭63−141001号公報)には特定のポリオールあるいは活性水素化合物とジイソシアネートあるいはポリイソシアネートから得られるポリウレタンを、プライマーとしてジエチレングリコールビスアリルカーボネートあるいはその共重合体からなるレンズ上に使用することが記載されているが、そこで使用されているレンズの中心厚は1.6mmあるいは1.2mmである。特許文献3(特開平9−113852号公報)に記載されているように、今日の高屈折率レンズにおいて用いられる薄いレンズの中心厚は0.7mm以上1.2mm未満となっており、特許文献1及び2の技術では、外観の優れた薄いレンズを提供することはできない。また、レンズ中心厚が薄くなると耐衝撃性が極端に低下する傾向がある。
【0008】
また、特許文献4(特開昭62−11801号公報)には、芳香族ホモポリマー、アクリル化合物と芳香族ホモポリマーの共重合体、エポキシ化合物、シリコン系化合物から選ばれたものを用いたプライマー層が記載されているが、これは反射防止層を設けた後の耐衝撃性が不十分であるという問題を有する。
【特許文献1】特開昭63−87223号公報
【特許文献2】特開昭63−141001号公報
【特許文献3】特開平9−113852号公報
【特許文献4】特開昭62−11801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、耐擦傷性、耐衝撃性、耐候性、密着性のいずれにもバランス良く優れたプラスティックレンズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究した結果、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、及び1,3−ビスイソシアネートメチルシクロヘキサンからなる群から選択された1つ以上からなる変性体のブロックポリイソシアネートと活性水素化合物から形成されるプライマー層をプラスティックレンズ上に備えることにより、耐擦傷性、耐衝撃性、耐候性、密着性に優れたプライマーを見出した。
【0011】
すなわち、本発明のプラスティックレンズは、プラスティックレンズ基材上にブロック型ポリイソシアネートと活性水素化合物とを含有する塗料を加熱硬化させてなるプライマー層を備え、このプライマー層の上にさらにハードコート層を備えたプラスティックレンズであって、プライマー層を構成するブロック型ポリイソシアネートが、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、及び1,3−ビスイソシアネートメチルシクロヘキサンからなる群から選択された1種以上により形成されたイソシアヌレート体であり、マロン酸エステル化合物及びアセト酢酸エステル化合物の中から選択された1種以上のブロック剤にてブロックされたものとする。
【0012】
上記において、活性水素化合物は、ポリオール及びポリチオールからなる群から選択された1種又は2種以上のものとすることができる。
【0013】
上記ポリオールの水酸基価及び/又はポリチオールのチオール基価が100mgKOH/g以上であることが好ましい。
【0014】
また、プライマー層には、Ti、Zr、Sb、Al、Si、Ce、及びFeからなる群から選択された元素の酸化物2種以上からなる複合金属酸化物微粒子を含有させることができる。
【0015】
さらに、ハードコート層は、有機シラン化合物及びアクリル化合物からなる群から選択された1つ以上のものからなる層を備えたものとすることができる。
【0016】
本発明のプラスティックレンズは、屈折率が1.47以上であることが好ましい。
【0017】
上記ハードコート層の上に金属酸化膜からなる反射防止層をさらに備えることもできる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によるプラスティックレンズは、耐擦傷性、耐衝撃性、耐候性、密着性のいずれにもバランス良く優れたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明におけるプラスティックレンズ基材の素材は特に限定されず、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートあるいはその共重合体、ポリカーボネート樹脂、スチレン樹脂、ウレタン樹脂、チオウレタン樹脂、エポキシ樹脂、エピスルフィド樹脂、オレフィン樹脂、ポリシロキサン樹脂等の樹脂であって、透明なものが使用でき、屈折率が1.47以上であることが好ましい。
【0020】
本発明では上記プラスティックレンズ素材に、プライマー層として特定のブロック型イソシアネートと活性水素化合物からなる層を設ける。
【0021】
特定のブロックポリイソシアネートとは、イソシアネートがイソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、又は1,3−ビスイソシアネートメチルシクロヘキサンであり、これらの中の1種以上のものを変性体にし、ブロック剤によりブロックしたものを用いる。変性体の例としては、イソシアヌレート体、アロファネート体、ビウレット体、カルボジイミド体などの公知のものが挙げられる。特に好ましいのは、イソシアヌレート体である。非ブロック型ポリイソシアネートを用いた場合、活性水素化合物との反応が常温にて反応するため、プライマーのポットライフが短くなってしまう。それに対しブロック型ポリイソシアネートは、プライマーを加熱することによりブロック剤を解離させることによって初めて活性水素化合物と反応するためポットライフが非常に長いという長所を有する。ブロック剤の例としては、活性メチレン化合物、オキシム化合物、アミン化合物、フェノール化合物など公知のブロック剤が挙げられる。プラスティックレンズの軟化点が100℃以下のものの場合、加熱温度が100℃よりも高いとレンズ変形による脱落や外観不良が発生する。そのため、特に好ましいのは活性メチレン化合物である。活性メチレン化合物は100℃未満の加熱温度においてもブロック剤が解離する点で有効である。活性メチレン化合物の例としては、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチルなどのようなアセト酢酸エステル化合物や、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチルなどのようなマロン酸エステル化合物が挙げられる。
【0022】
また、活性水素化合物の例としては、ポリオール、ポリチオール、ポリカルボン酸、ポリアミンなどが挙げられる。この中で特に好ましいのはポリオールとポリチオールである。ポリオールの例としては、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリアクリルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィンポリオール等が挙げられる。またポリチオールの例としては、ポリエステルポリチオール、ポリカーボネートポリチオール、ポリカプロラクトンポリチオール、ポリアクリルポリチオール、ポリエーテルポリチオール、ポリオレフィンポリチオール等が挙げられる。
【0023】
本発明においては、ポリオールおよびポリチオールの樹脂中における水酸基価もしくはチオール基価が100mgKOH/g以上のものを用いることが好ましい。ポリオールおよびポリチオールの樹脂中における水酸基価もしくはチオール基価が100mgKOH/g未満のものを用いると、プライマー層の白濁や未硬化が生じる傾向がある。
【0024】
上記においてブロック型ポリイソシアネートと活性水素化合物との割合は、イソシアネート基に対する活性水素化合物内の活性水素基のモル比が0.5〜1.5となる割合が好ましく、この比が0.85〜1.2であるのが特に好ましい。モル比が0.5未満である場合、又は1.5よりも大きい場合は、塗膜の架橋密度が小さすぎて耐衝撃性が向上しにくい傾向がある。
【0025】
上記ブロックイソシアネートと活性水素化合物とからなるプライマー液は、溶媒によって希釈することが可能である。希釈に用いられる溶媒の例としては、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類等が挙げられる。好ましくは、アルコール類、ケトン類、エーテル類であり、沸点が150℃未満のものがより好ましい。沸点が150℃以上のものを用いた場合、塗膜が乾燥せず、ハードコート内に溶出し、外観不良となる場合がある。
【0026】
また硬化反応を促進させるために硬化触媒を添加することも可能である。
【0027】
またプライマーには、必要に応じ、レベリング剤、紫外線吸収剤、染料、酸化防止剤を添加することも可能である。本発明でのプライマーの塗布方法としては、スピンコート法、ディッピング法、フロー法等の方法を適宜用いることができる。また、必要に応じて、アルカリ処理、プラズマ処理、紫外線処理等のレンズの前処理を行っておくことも可能である。
【0028】
プライマー層を形成するためには、プライマー液塗布後、好ましくは60℃〜150℃、より好ましくは70℃〜130℃の温度で加熱することが必要である。60℃よりも低い温度ではブロック剤の解離が進行せず、硬化反応が進行し難い。150℃よりも高い温度ではレンズ自体の黄変や変形が生じ易い。加熱時間は加熱温度により変化するが、通常は10分から120分間程度である。
【0029】
プライマー層の膜厚は硬化後において0.05μm〜5μmであるのが好ましく、より好ましくは0.1μmから3μmである。0.05μmより薄いと耐衝撃性が著しく劣り、5μmよりも厚いと面精度が劣る。
【0030】
また、プライマー層の屈折率を向上させるために、少なくとも1種の金属酸化物を含む2種以上の酸化物からなる複合金属酸化物微粒子を添加することが可能である。酸化物の例としては、Ti、Zr、Sb、Al、Si、Ce、Fe、Sn、Mg等の元素の酸化物が挙げられる。特に好ましいのは、Ti、Zr、Sb、Al、Si、Ce、及びFeからなる群から選択された元素の酸化物を2種類以上複合させた複合微粒子である。これら複合微粒子の表面が、有機シラン、有機アミンなどにより処理されたものを用いることもできる。また、これら複合微粒子を有機溶媒にて分散させたゾルを用いることもできる。
【0031】
本発明ではプライマー層の上に有機シラン化合物の縮合体もしくはアクリル化合物の縮合体もしくはこれら共重合体の縮合体からなるハードコート層を形成することが可能である。
【0032】
ハードコート層の膜厚は、硬化後において0.5μm〜5.0μmであるのが好ましく、より好ましくは1.0μm〜3.0μmである。0.5μmよりも薄いと耐擦傷性が低く、5.0μmよりも厚いとハードコート層にクラックが生じ易くなる。またハードコートには、必要に応じ、レベリング剤、紫外線吸収剤、染料、酸化防止剤、複合金属酸化物を添加することも可能である。ハードコートの塗布方法としては、スピンコート法、ディッピング法、フロー法等の方法を適宜用いることができる。
【0033】
さらにハードコート層の上には、金属酸化物からなる反射防止層を形成することができる。金属酸化物の例としては、TiO、ZrO、SiO等が挙げられ、真空蒸着により成膜することができる。反射防止層の膜厚は、総数によって異なるが、50nm〜1000nmであるのが好ましく、より好ましくは100nm〜300nmである。50nmより薄いと反射防止性能が低下し、1000nmより厚いと反射防止層にクラックが生じる。また、反射防止層を形成する際に、イオンアシスト法やイオンプレーティング法、スパッタ法など公知の手法を用いることができる。また、反射防止層を形成する前にイオンクリーニングやアルカリ処理などの前処理を行ってもよい。反射防止層を形成後、ディッピング法や真空蒸着法、CVD法など公知の手法によってフッ素系シランカップリング剤やアルキルシランカップリング剤などからなる撥水層や撥油層を形成することも可能である。
【0034】
また、金属酸化物からなる反射防止膜の代わりに低屈折率樹脂からなる有機反射防止膜を形成しても良い。低屈折率樹脂の屈折率は1.45以下が好ましい。低屈折率樹脂としては、例えば非晶質フッ素樹脂が使用可能である。非晶質フッ素樹脂の具体例としては、デュポン社製、TEFLON(登録商標)AF(屈折率1.30)や、旭硝子社製、CYTOP(登録商標)(屈折率1.34)が挙げられる。有機反射防止膜の膜厚は、通常、1/4波長膜すなわち100〜200nmである。反射防止膜の塗布方法としては、ディッピング法やスピンコート法を用いることができる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0036】
1.ブロック型ポリイソシアネートの合成
[合成例1]
攪拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管を取り付けた4つ口フラスコ内を窒素雰囲気下に置き、イソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと略す)のイソシアヌレート体(デグザ製、樹脂分100%、イソシアネート含有量17.2重量%)100部(重量部、以下同様)、マロン酸ジエチル70.80部、酢酸エチル59.26部を仕込み、ナトリウムメチラート0.15部を室温下で添加し、60℃で6時間反応させ、樹脂分74%(重量%、以下同様)の活性メチレンでブロックされたIPDIイソシアヌレート体を得た。
【0037】
[合成例2]
攪拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管を取り付けた4つ口フラスコ内を窒素雰囲気下に置き、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(以下、H12MDIと略す。住化バイエル製、樹脂分100%、イソシアネート含有量32.0重量%)100部を仕込み、攪拌下、反応機内温度を60℃に保持し、テトラブチルアセテートを添加、収率が21.1%になった時点で燐酸を添加し、反応を停止させた。反応液をろ過後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のH12MDIを除去し、イソシアネート含有量10.3重量%のH12MDIのイソシアヌレート体を得た。
【0038】
次に攪拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管を取り付けた4つ口フラスコ内を窒素雰囲気下に置き、得られたH12MDIのイソシアヌレート体100部、マロン酸ジエチル44.12部、酢酸エチル72.5部を仕込み、ナトリウムメチラート0.24部を室温下で添加し、60℃で6時間反応させ、樹脂分66%の活性メチレンでブロックされたH12MDIイソシアヌレート体を得た。
【0039】
[合成例3]
実施例2のH12MDIを1,3−ビスイソシアネートメチルシクロヘキサン(以下、H6XDIと略す。三井化学ポリウレタン製、樹脂分100%、イソシアネート含有量43.3重量%)に変えた以外は同様の方法によって、樹脂分60%の活性メチレンでブロックされたH6XDIイソシアヌレート体を得た。
【0040】
2.ハードコート液の調製
[調製例1]
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン109部、テトラエトキシシラン40部、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン27部、メタノール320部を加え、攪拌しながら、0.01N塩酸水溶液38部を滴下して、一昼夜加水分解を行った。続いて、加水分解物にメタノールシリカゾル(日産化学製、シリカゾル、固形分30%、メタノール分散)390部、イソプロピルアルコール9.9部、レベリング剤(東レダウコーニングシリコーン製、L−7001)1.5部、アセチルアルミニウムアセトナート1.5部を加え、一昼夜攪拌した。これをハードコート液1とした。
【0041】
[調製例2]
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン210部、メタノール100部を加え、攪拌しながら0.01N塩酸水溶液46.1部を滴下して、一昼夜加水分解を行った。続いて、加水分解物に酸化チタン複合微粒子A(ルチル型酸化チタン、酸化ジルコニア、二酸化珪素からなる複合金属酸化物の微粒子の表面をシランカップリング剤で修飾したゾル、固形分25%、メタノール分散)373.5部、プロピレングリコールモノメチルエーテル262.6部、レベリング剤(東レダウコーニングシリコーン製、L−7001)1.5部、アセチルアルミニウムアセトナート3.8部を加え、一昼夜攪拌した。これをハードコート液2とした。
【0042】
[調製例3]
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン170部、メタノール100部を加え、攪拌しながら0.01N塩酸水溶液37.3部を滴下して、一昼夜加水分解を行った。続いて、加水分解物に酸化チタン複合微粒子A53.75部、プロピレングリコールモノメチルエーテル147.1部、レベリング剤(東レダウコーニングシリコーン製、L−7001)1.5部、アセチルアルミニウムアセトナート3.1部を加え、一昼夜攪拌した。これをハードコート液3とした。
【0043】
3.レンズの製造
[実施例1]
合成例1で得られたブロックIPDIイソシアヌレート体125部、ポリエステルポリオール(住化バイエル製、デスモフェン670BA、ポリオール樹脂中における水酸基価が141.9mgKOH/g、以下同様)111部、レベリング剤(東レダウコーニングシリコーン製、L−7001)0.3部、溶媒としてのプロピレングリコールモノメチルエーテル759部を均一になるまで攪拌し、これをプライマー液1とした。このプライマー液1をCR−39(ジエチレングリコールビスアリルカーボネートの重合体)からなるレンズ基材へ、ディッピング法により引き上げ速度100mm/minで塗布し、90℃で30分間加熱硬化させた。その後、調製例1で得られたハードコート液1をディッピング法により引き上げ速度100mm/minで塗布し、100℃で30分硬化させ、その後、120℃で2時間硬化させた。
【0044】
[実施例2]
合成例2で得られたブロックH12MDIイソシアヌレート体140部、ポリエステルポリオール(住化バイエル製、デスモフェン670BA)110部、レベリング剤(東レダウコーニングシリコーン製、L−7001)0.3部、溶媒としてのプロピレングリコールモノメチルエーテル745部を均一になるまで攪拌し、これをプライマー液2とした。このプライマー液2を用いた以外は実施例1と同様の方法により塗布レンズを得た。
【0045】
[実施例3]
合成例3で得られたブロックH6XDIイソシアヌレート体140部、ポリエステルポリオール(住化バイエル製、デスモフェン670BA)119.2部、レベリング剤(東レダウコーニングシリコーン製、L−7001)0.3部、溶媒としてのプロピレングリコールモノメチルエーテル735.8部を均一になるまで攪拌し、これをプライマー液3とした。このプライマー液3を用いた以外は実施例1と同様の方法により塗布レンズを得た。
【0046】
[実施例4]
合成例1で得られたブロックIPDIイソシアヌレート体150部、ポリカプロラクトンポリオール(ダイセル化学製、PLACCEL308、ポリオール樹脂中における水酸基価が198.6mgKOH/g)77.5部、レベリング剤(東レダウコーニングシリコーン製、L−7001)0.3部、溶媒としてのプロピレングリコールモノメチルエーテル767.5部を均一になるまで攪拌し、これをプライマー液4とした。このプライマー液4を用いた以外は実施例1と同様の方法により塗布レンズを得た。
【0047】
[実施例5]
合成例1で得られたブロックIPDIイソシアヌレート体118部、ポリアクリルポリオール(住化バイエル製、デスモフェンA575X、ポリオール樹脂中における水酸基価が123.2mgKOH/g)131.6部、レベリング剤(東レダウコーニングシリコーン製、L−7001)0.3部、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル745.4部を均一になるまで攪拌し、これをプライマー液5とした。このプライマー液5を用いた以外は実施例1と同様の方法により塗布レンズを得た。
【0048】
[実施例6]
合成例1で得られたブロックIPDIイソシアヌレート体を185部、ポリエーテルポリオール(住化バイエル製、デスモフェン550U、ポリオール樹脂中における水酸基価が386.1mgKOH/g)49.2部、レベリング剤(東レダウコーニングシリコーン製、L−7001)0.3部、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル760.8部を均一になるまで攪拌し、これをプライマー液6とした。このプライマー液6を用いた以外は実施例1と同様の方法により塗布レンズを得た。
【0049】
[実施例7]
合成例1で得られたブロックIPDIイソシアヌレート体を118.5部、ポリエステルポリオール(住化バイエル製、デスモフェン670BA)105.3部、レベリング剤(東レダウコーニングシリコーン製、L−7001)0.3部、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル638.5部を均一になるまで攪拌し、酸化チタン複合微粒子A267.4部を均一になるまで攪拌し、これをプライマー液7とした。このプライマー液7を屈折率1.60(チオウレタン樹脂)へディッピング法により引き上げ速度100mm/minで塗布し、90℃で30分加熱硬化した。その後、調製例2で得られたハードコート液2をディッピング法により引き上げ速度100mm/minで塗布し、100℃で30分間硬化させ、その後、120℃で2時間硬化させた。
【0050】
[実施例8]
ブロック型ポリイソシアネートの合成例1で得られたブロックIPDIイソシアヌレート体を80部、ポリエステルポリオール(住化バイエル製、デスモフェン670BA)71.1部、レベリング剤(東レダウコーニングシリコーン製、L−7001)0.3部、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル482.8部を均一になるまで攪拌し、酸化チタン複合微粒子A366.1部を均一になるまで攪拌し、これをプライマー8とした。このプライマー8を屈折率1.66(チオウレタン樹脂)のレンズ基材へディッピング法により引き上げ速度100mm/minで塗布し、90℃で30分加熱硬化した。その後、調製例3で得られたハードコート液3をディッピング法により引き上げ速度100mm/minで塗布し、100℃で30分硬化させ、その後、120℃で2時間硬化させた。
【0051】
[実施例9]
実施例8のプラスティックレンズ基材を屈折率1.74のエピスルフィド樹脂に変えた以外は同様の方法で、レンズを得た。
【0052】
[実施例10〜18]
上記実施例1〜9で得られたレンズの上にSiO/ZrO系の4層反射防止層を真空蒸着法にて形成させ、その後、5重量%のシラン系コート材(信越化学製、KP−801M)を引き上げ速度200mm/minで塗布し、50℃で1時間乾燥させ、その後、中性洗剤、純水で洗浄し、反射防止層付レンズを得た。なお、反射防止層はハードコート側から順にλ/12(ZrO)(λは520nmの光の波長、以下同様。)、λ/12(SiO)、λ/2(ZrO)、λ/4(SiO)の構成とした。
【0053】
[比較例1]
メチルエチルケトンオキシムにてブロックしたイソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体(住化バイエル製、デスモジュールBL4265SN)130部、ポリエステルポリオール(住化バイエル製、デスモフェン670BA)121.8部、レベリング剤(東レダウコーニングシリコーン製、L−7001)0.3部、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル743.2部を均一になるまで攪拌し、これをプライマー液9とした。このプライマー液9を用いた以外は実施例1と同様の方法により塗布レンズを得た。
【0054】
[比較例2]
比較例1にて得られたレンズの上に実施例10と同様の方法にて反射防止層を形成したレンズを得た。
【0055】
[比較例3]
実施例8においてプライマー液8を塗布しなかった以外は同様の方法でレンズを得た。
【0056】
[比較例4]
合成例1で得られたブロックIPDIイソシアヌレート体60.0部、ポリエステルポリオール(住化バイエル製、デスモフェン1700、樹脂中におけるポリオール水酸基価が42.96mgKOH/g)143.3部、レベリング剤(東レダウコーニングシリコーン製、L−7001)0.3部、溶媒としてのプロピレングリコールモノメチルエーテル791.9部を均一になるまで攪拌し、これをプライマー液10とした。このプライマー液10を用いた以外は実施例1と同様の方法により塗布レンズを得た。
【0057】
[比較例5]
合成例1で得られたブロックIPDIイソシアヌレート体85.0部、ポリエーテルポリオール(協和発酵工業製、TOE−2000H、樹脂中における水酸基価が73.3mgKOH/g)119.0部、レベリング剤(東レダウコーニングシリコーン製、L−7001)0.3部、溶媒としてのプロピレングリコールモノメチルエーテル791.3部を均一になるまで攪拌し、これをプライマー液11とした。このプライマー液11を用いた以外は実施例1と同様の方法により塗布レンズを得た。
【0058】
上記により得られたレンズにつき、以下の評価方法で評価を行った。結果を表1〜3に示す。
【0059】
1)外観:レンズに3波長蛍光灯の光を当て、表面処理面の透明度・干渉縞を目視で下記の評価基準に基づき判定を行った。
【0060】
透明度:
◎:クモリなし(プライマー層なしハードコートプラスチックレンズと同等)
○:少しクモリがあるが、眼鏡レンズとして支障を来さない程度である
△:クモリが目立つ
×:白く濁って見える
【0061】
干渉縞:
蛍光灯の光を反射防止膜表面で反射させ、対象物表面にできる干渉縞(虹模様)の有無を判定した。
【0062】
2)密着性:クロスカットテープテストを次の方法で実施した。すなわち、膜を有するレンズの表面にカッターで1mm角のゴバン目(100個)に切傷をつけ、その上にセロハンテープを貼り付けた後、そのセロハンテープを勢いよく引き剥し、レンズから剥ぎ取られずに残っている膜のゴバン目の数を数えた。そして、結果を「m/100」のように表した。「100/100」はクロスカットテープテストの結果、膜が全く剥がれなかったことを示している。
【0063】
3)耐擦傷性:プライマー層、ハードコート層を有するプラスチック基材を#0000のスチールウールで摩擦して傷のつきにくさを調べ、次の基準に基づき判定した。
A…全く傷が確認できない
B…若干の傷が確認できる
C…目立った傷が確認できる
D…多くの目立った傷が確認できる
E…傷が帯状に確認できる
【0064】
4)耐候性:サンシャイン・ウェザー・オメーター(カーボンアーク)で促進テストを行い、200時間後の密着性を調べた。
【0065】
5)耐衝撃性:鉄球落下試験により評価した。16.3gの鉄球を127cmの高さからレンズ中心部に向かって自然落下させた。なお、本試験に用いたレンズの中心厚は1.0mmとした。評価として○は割れなかったことを示す。
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスティックレンズ基材上に、ブロック型ポリイソシアネートと活性水素化合物とを含有する塗料を加熱硬化させてなるプライマー層を備え、このプライマー層の上にさらにハードコート層を備えたプラスティックレンズであって、
前記ブロック型ポリイソシアネートが、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、及び1,3−ビスイソシアネートメチルシクロヘキサンからなる群から選択された1種以上により形成されたイソシアヌレート体であり、マロン酸エステル化合物及びアセト酢酸エステル化合物の中から選択された1種以上のブロック剤にてブロックされたことを特徴とするプラスティックレンズ。
【請求項2】
前記活性水素化合物が、ポリオール及びポリチオールからなる群から選択された1種又は2種以上のものからなることを特徴とする、請求項1に記載のプラスティックレンズ。
【請求項3】
前記ポリオールの水酸基価及び/又は前記ポリチオールのチオール基価が100mgKOH/g以上であることを特徴とする、請求項2に記載のプラスティックレンズ。
【請求項4】
前記プライマー層に、Ti、Zr、Sb、Al、Si、Ce、及びFeからなる群から選択された元素の酸化物2種以上からなる複合金属酸化物微粒子を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のプラスティックレンズ。
【請求項5】
前記ハードコート層が、有機シラン化合物及びアクリル化合物からなる群から選択された1つ以上のものからなる層を備えたことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のプラスティックレンズ。
【請求項6】
屈折率が1.47以上であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のプラスティックレンズ。
【請求項7】
前記ハードコート層の上に金属酸化膜からなる反射防止層をさらに備えたことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のプラスティックレンズ。

【公開番号】特開2010−122374(P2010−122374A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−294599(P2008−294599)
【出願日】平成20年11月18日(2008.11.18)
【出願人】(391003750)株式会社アサヒオプティカル (13)
【Fターム(参考)】