説明

耐貫通性複合材料およびそれを含んでなる物品

耐貫通性複合材料、および軽量であり、そして紫外線安定性である物品。一つの耐貫通性複合材料は、プレートと、プレートの少なくとも1つの主面に隣接して配置された複数の繊維層とを有する。繊維層の少なくとも1つは、紫外線安定性であるポリマー繊維を含む。複合材料は、平方メートル当たり約25キログラム未満の面密度を有し、そして2000年9月付けのNIJ−0101.04レベルIIIに従って非貫通性である。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、開示内容の全体が参照により本明細書に援用される、2005年8月10日出願の米国仮特許出願第60/707,201号明細書の利益を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、耐貫通性複合材料およびそれを含んでなる耐貫通性物品に関する。複合材料は一般に、剛性プレートであってもなくてもよい第1層と、第1層の少なくとも1つの主面に隣接して配置された複数の繊維層とを含む。
【背景技術】
【0003】
個人用防弾性防護服、具体的にはチョッキ、ヘルメット、および他の物品は、弾丸または他の発射体、およびナイフなどの、防護服に強く加えられる任意の他の物体の貫通を防ぐのに役立つ材料で一般に形成される。これらの物品は国防軍のために主として使用されるが、警察および民間でも利用される。戦闘環境で兵士および警官によって使用される防護服システムの着用性および全体的な有効性を向上させることへの要求が高まっている。防護服システムの全体的な厚さおよび重量は着用性に影響を及ぼし得るが、現在公知のシステムでこれらのパラメーターを下げることは貫通に抗する防護服の有効性を損ない得る。
【0004】
個人用の防護服のために使用されてきた公知の一システムは、1つもしくはそれ以上の繊維層によって強化されているセラミックプレートを含む。例えば、ポリベンゾオキサゾールおよびポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)などの従来の芳香族ポリマーから製造された繊維を用いる防護服システムは典型的には、放射線が繊維の引張強度を低減し、それが今度は防護服の耐貫通性を低下させるので、紫外(UV)放射線から繊維を保護するためのカバーまたはシールドを必要とする。場合によっては、カバーまたはシールドは防護服システムの重量および/または厚さを増加させることがあり、それは上記の現行要求に直接抵触する。
【0005】
非特許文献1は、M5繊維ベース防護服システムの潜在的効果を議論している。
【0006】
非特許文献2は、2−(2’−ヒドロキシフェニル)−3H−イミダゾール[4,5−b]ピリジンおよびその誘導体の分子および超分子プロトン移動メカニズムに関する研究を発表している。M5繊維はポリ[ジイミダゾピリジニレン(ジヒドロキシ)フェニレン]をベースとしている。
【0007】
特許文献1および特許文献2は、防弾性材料裏地と共にセラミック要素を有する物品に関する。
【0008】
特許文献3は、剛性プレート上に支持されている防弾性ラミネート構造に関する。ラミネートは、第2アレイが第1アレイに対してある角度で直交積層されている、一方向に配向した繊維の第1および第2アレイを有する。
【0009】
特許文献4は、少なくとも1つの層が金属層であり、そして層の少なくとも1つが繊維層である、表面に貼られた少なくとも2つの層と共に基材層を有する耐貫通性複合材料を教示している。
【0010】
この分野での研究にもかかわらず、弾丸および他の衝撃物体の貫通に対して有効である軽量のUV安定な複合材料が必要とされている。
【0011】
【特許文献1】米国特許第6,408,733号明細書
【特許文献2】米国特許第6,389,594号明細書
【特許文献3】米国特許第5,635,288号明細書
【特許文献4】米国特許第5,376,426号明細書
【非特許文献1】クンニッフ(Cunniff)ら、「弾道学/構造複合材料のための高性能「M5」繊維(‘High Performance “M5” Fiber For Ballistics/Structural Composites’)」(第23回陸軍科学会議(Army Science Conference)、2002年12月2〜5日、フロリダ州オーランド(Orlando,Florida)で発表)
【非特許文献2】サルマン(Salman)ら著、Journal of Lunimescence 102−103(2003)、261−266ページ
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、良好なUV安定性の、軽量の耐貫通性複合材料に関する。ここで、好ましい一実施形態に従って、プレートと、プレートの少なくとも1つの主面に隣接して配置された、繊維層の少なくとも1つが立方センチメートル当たり1.6グラム以上の密度とデニール当たり少なくとも約30グラムの引張強度とを有する、複数の繊維層とを含んでなる耐貫通性複合材料であって、ポリマー繊維が約360時間、AATCC試験方法16−2003に従って、キセノン−アーク灯への露光後にその引張強度の少なくとも約70%を保持するように紫外線安定性である複合材料が提供された。
【0013】
特定の実施形態では、ポリマー繊維は、紫外線安定剤および紫外線吸収剤を含んでなる群から選択される添加剤の不存在下に紫外線安定性である。
【0014】
本発明の幾つかの実施形態では、ポリマー繊維は、約360時間、AATCC試験方法16−2003に従って、キセノン−アーク灯への露光後にその引張強度の少なくとも約85%を保持する。
【0015】
ポリマー繊維はポリアレーンアゾール繊維を含んでもよい。好適な一ポリアレーンアゾール繊維はポリ{2,6−ジイミダゾ[4,5−b:4’,5’−e]ピリジニレン−1,4−(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン}繊維である。
【0016】
特定の実施形態では、ポリマー繊維はデニール当たり約1,500グラムより大きい引張弾性率を有する。幾つかの実施形態では、本複合材料は平方メートル当たり約25キログラム未満の面密度を有する。
【0017】
幾つかの繊維層は約7.5ミリメートル未満の全厚を有する。
【0018】
幾つかの実施形態では、物品は、プレートの対向主面に隣接して配置されている繊維層を有する。
【0019】
特定の態様では、本発明は少なくとも1つの紫外線安定剤をさらに含んでなる。好適な紫外線安定剤には、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、およびそれらの混合物が含まれる。
【0020】
幾つかの実施形態では、プレートはセラミック、スチール、アルミニウム、ガラス、またはポリマー樹脂を含んでなる。
【0021】
ここで、本発明の別の好ましい実施形態に従って、プレートと、繊維層の少なくとも1つが紫外線安定性であるポリマー繊維を含む、プレートの少なくとも1つの主面に隣接して配置された複数の繊維層とを含んでなる耐貫通性複合材料であって、平方メートル当たり約25キログラム未満の面密度を有し、そして2000年9月付け規格NIJ−0101.04レベルIIIに従って非貫通性である複合材料が提供された。
【0022】
ここで、本発明に従ったさらに別の好ましい実施形態に従って、第1層と、第1層の少なくとも1つの主面に隣接して配置された複数の繊維層とを含んでなる耐貫通性複合材料であって、繊維層が約7.5ミリメートル未満の全厚を有し、複合材料が平方メートル当たり約25キログラム未満の面密度を有し、そして2000年9月付け規格NIJ−0101.04レベルIIIに従って非貫通性である複合材料が提供された。
【0023】
本発明はまた、例えば、シールドおよび車両などの様々な保護デバイスに着ける、供給するまたは取り付けることができる耐貫通性物品に関する。好ましい物品の実施形態には、上に線引きされた複合材料を用いる物品が含まれる。用途によっては、複合材料の繊維層の少なくとも一部が物品の外面を形成する、すなわち、複合材料は、追加のカバーまたはシールドが不要であるように十分にUV安定性である。本発明で考えられる代わりの複合材料および物品の実施形態はカバーまたはシールドを含み、そしてUV安定剤および/またはUV吸収剤をさらに含んでもよいことに留意されたい。
【0024】
本発明はまた、第1層を提供する工程と、第1層の少なくとも1つの主面上に複数の繊維層を配置する工程とを含んでなる耐貫通性物品の形成方法であって、ポリマー繊維が約360時間、AATCC試験方法16−2003に従って、キセノン−アーク灯への露光後にその引張強度の少なくとも約70%を保持するように紫外線安定性である方法に関する。
【0025】
これらのおよび様々な他の新規な特徴、ならびにそれらのそれぞれの利点は、本明細書に添付される、そして本明細書の一部を形成する特許請求の範囲で詳細に指摘される。しかしながら、本発明の態様をより理解するために、例示される好ましい実施形態がある付随の説明内容に言及されるべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明は、本開示の一部を形成する例示的な好ましい実施形態の以下の詳細な説明の参照によってより容易に理解され得る。特許請求の範囲は本明細書に記載されるおよび/または示される具体的なデバイス、方法、条件もしくはパラメーターに限定されず、本明細書に用いられる専門用語はあくまで一例として特定の実施形態を記載する目的のためのものであり、そして特許請求される本発明を限定することを意図されないことが理解されるべきである。また、添付される特許請求の範囲を含む本明細書で用いられるように、単数形(「a」、「an」、および「the」)は複数を含み、ある特定の数値についての言及は、文脈が特に明らかに指示しない限り、少なくとも当該特定値を含む。値の範囲が表されるとき、別の実施形態は、1つの特定の値からおよび/または他の特定の値までを含む。同様に、先行する「約」を用いて値が近似値として表されるとき、特定の値は別の実施形態を形成すると理解されるであろう。すべての範囲は包括的であり、そして組み合わせ可能である。
【0027】
本発明の物品は、第1層と、幾つかの実施形態ではプレートと、複数の繊維層とを含んでなる。幾つかの実施形態では、プレートは、炭化シリコン、窒化シリコン、炭化ホウ素、炭化タングステン、または他の好適なセラミック材料およびハイブリッド、スチール、アルミニウム、ガラス、またはポリマー樹脂を含んでなってもよい。好適なポリマー樹脂には、ポリウレタン、ポリオレフィン、フェノール系、フェノール系ポリビニルブチラールゴムブレンド、ポリエステル、およびビニルエステル樹脂が含まれる。
【0028】
本発明の耐貫通性複合材料および物品は、ポリマー繊維から製造されている複数の繊維層を好ましくは含む。本明細書の目的のためには、「繊維」という用語は、長さ対その長さに垂直のその断面積を横切る幅の高い比を有する比較的可撓性の、巨視的に均一の物体と定義される。繊維断面は任意の形状であることができるが、典型的には円形である。繊維は、コートされていない、もしくはコートされている、または別の方法で前処理された(例えば、前延伸または熱処理された)形態で存在することができる。本明細書では、「フィラメント」という用語は「繊維」という用語と同じ意味で用いられる。
【0029】
繊維層は、編布もしくは織布または不織構造体を含むが、それらに限定されない、多数の構造をとることができる。不織のとは、一方向を含む(マトリックス樹脂内に含有される場合)、繊維の網状構造、フェルトなどを意味する。織られたとは、平織、千鳥綾織、バスケット織、繻子織、綾織などのような、任意の布の織り方を意味する。平織が業界で用いられる最も一般的な織り方であると考えられる。
【0030】
本発明に好適な繊維の代表的なリストには、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維、ポリベンゾオキサゾール繊維、ポリベンゾチアゾール繊維、ポリ{2,6−ジイミダゾ[4,5−b4’,5’−e]ピリジニレン−1,4(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン}(PIPD)繊維、またはそれらの混合物が含まれる。好ましくは、繊維はポリ{2,6−ジイミダゾ[4,5−b4’,5’−e]ピリジニレン−1,4(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン}(PIPD)繊維でできている。
【0031】
ポリマーがポリアミドであるとき、アラミドが好ましい。「アラミド」とは、アミド(−CO−NH−)結合の少なくとも85%が2つの芳香環に直接結合しているポリアミドを意味する。好適なアラミド繊維は、W.ブラック(W.Black)ら著、「人造繊維−科学および技術、第2巻、繊維形成芳香族ポリアミドという表題のセクション(Man−Made Fibers−Science and Technology,Volume 2,Section titled Fiber−Forming Aromatic Polyamides)」、インターサイエンス・パブリッシャー(Interscience Publishers)、1968年、297ページに記載されている。アラミド繊維はまた、米国特許第4,172,938号明細書、同第3,869,429号明細書、同第3,819,587号明細書、同第3,673,143号明細書、同第3,354,127号明細書、および同第3,094,511号明細書にも開示されている。添加剤をアラミドで使用することができ、そして10重量%程度までの他のポリマー材料をアラミドとブレンドできること、またはアラミドのジアミンを10重量%程度の他のジアミンで置換できるかもしくはアラミドの二酸塩化物を10重量%程度の他の二酸クロリドで置換できることが分かった。
【0032】
好ましいアラミドはパラ−アラミドであり、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)(PPD−T)が好ましいパラ−アラミドである。PPD−Tとは、p−フェニレンジアミンとテレフタロイルクロリドとのおおよそモル対モル重合から生じるホモポリマーならびに、また、p−フェニレンジアミンと共に少量の他のジアミンおよびテレフタロイルクロリドと共に少量の他の二酸クロリドの組み入れから生じるコポリマーを意味する。原則として、他のジアミンおよび他の二酸クロリドは、他のジアミンおよび二酸クロリドが重合反応を妨害する反応基を全く持たないことのみを条件として、p−フェニレンジアミンもしくはテレフタロイルクロリドの約10モルパーセント程度までの、または場合によりわずかにより高い量で使用することができる。PPD−Tは、また、例えば、2,6−ナフタロイルクロリドまたはクロロ−もしくはジクロロテレフタロイルクロリド、または3,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどの他の芳香族ジアミンと他の芳香族二酸クロリドとの組み入れから生じるコポリマーをも意味する。
【0033】
ポリマーがポリオレフィンであるとき、ポリエチレンまたはポリプロピレンが好ましい。ポリエチレンとは、少量の鎖分岐もしくは100個の鎖炭素原子当たり5個を超えない変性ユニットのコモノマーを含有してもよい、かつ、それと混合されてアルケン−1ポリマー、具体的には低密度ポリエチレン、プロピレンなどのような約50重量パーセント以下の1つもしくはそれ以上のポリマー添加物、または一般に組み入れられる酸化防止剤、滑剤、紫外線遮断剤、着色剤などのような低分子量添加剤をまた含有してもよい、好ましくは百万より大きい分子量の主に線状のポリエチレン材料を意味する。かかるものは伸張鎖ポリエチレン(ECPE)として一般に知られる。同様に、ポリプロピレンは、好ましくは百万より大きい分子量の主に線状のポリプロピレン材料である。高分子量の線状ポリオレフィン繊維は商業的に入手可能である。ポリオレフィン繊維の製造は米国特許第4,457,985号明細書に説明されている。
【0034】
ポリアレーンアゾールポリマーは、乾燥原料の混合物をポリリン酸(PPA)溶液と反応させることによって製造されてもよい。乾燥原料は、アゾール形成モノマーおよび金属粉末を含んでなってもよい。これらの乾燥原料の正確に秤量されたバッチは、本発明の好ましい実施形態の少なくとも幾つかの使用によって得ることができる。
【0035】
例示的なアゾール形成モノマーには、2,5−ジメルカプト−p−フェニレンジアミン、テレフタル酸、ビス−(4−安息香酸)、オキシ−ビス−(4−安息香酸)、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸、イソフタル酸、2,5−ピリドジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,6−キノリンジカルボン酸、2,6−ビス(4−カルボキシフェニル)ピリドビスイミダゾール、2,3,5,6−テトラアミノピリジン、4,6−ジアミノレゾルシノール、2,5−ジアミノヒドロキノン、1,4−ジアミノ−2,5−ジチオベンゼン、またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。好ましくは、アゾール形成モノマーには、2,3,5,6−テトラアミノピリジンおよび2,5−ジヒドロキシテレフタル酸が含まれる。特定の実施形態では、アゾール形成モノマーはリン酸化されていることが好ましい。好ましくは、リン酸化アゾール形成モノマーはポリリン酸および金属触媒の存在下で重合させられる。
【0036】
金属粉末は、最終ポリマーの分子量を構成するのを助けるために用いることができる。金属粉末には典型的には、鉄粉、スズ粉末、バナジウム粉末、クロム粉末、およびそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0037】
アゾール形成モノマーおよび金属粉末は混合され、次に混合物はポリリン酸と反応させられてポリアレーンアゾールポリマー溶液を形成する。追加のポリリン酸を、必要に応じてポリマー溶液に加えることができる。ポリマー溶液は典型的には、フィラメントを製造するまたは紡糸するためにダイまたは紡糸口金を通して押し出される。
【0038】
ポリベンゾオキサゾール(PBO)およびポリベンゾチアゾール(PBZ)は2つの好適なポリマーである。これらのポリマーは、PCT出願国際公開第93/20400号パンフレットに記載されている。ポリベンゾオキサゾールおよびポリベンゾチアゾールは好ましくは、次の構造の繰り返し単位で構成される。
【0039】
【化1】

【0040】
窒素原子に結合して示される芳香族基は複素環であってもよいが、それらは好ましくは炭素環であり、そしてそれらは縮合または非縮合多環系であってもよいが、それらは好ましくは単6員環である。ビス−アゾールの主鎖中に示される基は、好ましいパラ−フェニレン基であるが、当該基は、ポリマーの製造を、または何の基も全く妨害しない任意の二価有機基で置換されてもよい。例えば、当該基は12個以下の炭素原子の脂肪族、トリレン、ビフェニレン、ビス−フェニレンエーテルなどであってもよい。
【0041】
本発明の繊維を製造するために使用されるポリベンゾオキサゾールおよびポリベンゾチアゾールは、少なくとも25、好ましくは少なくとも100の繰り返し単位を有するべきである。ポリマーの製造およびそれらのポリマーの紡糸は、前述のPCT出願国際公開第93/20400号パンフレットに開示されている。
【0042】
M5繊維は本発明での使用に好適である。この繊維はポリ[ジイミダゾピリジニレン(ジヒドロキシ)フェニレン]をベースとする。M5繊維は、約310GPaの平均弾性率と約5.8GPa以下の平均靱性とを有することが知られている。M5繊維は、ブルー(Brew)ら著、複合材料科学および技術(Composites Science and Technology)、59(1999)、1109ページ;ファンデルジャグト(Van der Jagt)、ビューカース(Beukers)著、Polymer 40(1999)、1035ページ;シッケマ(Sikkema)著、Polymer 39(1998)、5981ページ;クロップ(Klop)、ラマース(Lammers)著、Polymer 39(1998)、5987ページ;ハーゲマン(Hageman)ら著、Polymer 40(1999)、1313ページに記載されてきた。
【0043】
ラミネート層は、熱硬化性もしくは熱可塑性樹脂、またはそれらの混合物を含んでなるポリマーマトリックスを含浸した繊維の網状構造と定義される。各層は複合構造体の厚さおよび重量まで追加され、それによってその可撓性、着用性および着心地の良さを低下させる。それ故、層の数は、全体複合構造体が具体的な脅威から保護するために構成され、そして使用されるように選択されてきた。
【0044】
層は、縫い合わせることなどによって、任意の方法で一緒に保持するまたは接合することができるか、またはそれらは一緒に積み重ね、例えば、布エンベロープもしくはキャリヤで保持することができる。セクションを形成する層は、別々に積み重ね、接合することができるか、または複数の層のすべては、単一ユニットとして積み重ね、接合することができる。
【0045】
層はまた、熱硬化性もしくは熱可塑性樹脂、またはそれらの混合物を含んでなるポリマーマトリックスによって一緒に保持することもできる。多種多様な好適な熱硬化性および熱可塑性樹脂ならびにそれらの組み合わせが先行技術で周知であり、マトリックス材料として使用することができる。例えば、熱可塑性樹脂は、1つもしくはそれ以上のポリウレタン、ポリイミド、ポリエチレン、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、ポリカーボネートなどを含んでなることができる。熱硬化性樹脂は、1つもしくはそれ以上のエポキシ−ベース樹脂、ポリエステル−ベース樹脂、フェノール−ベース樹脂など、好ましくはポリビニルブチラール・フェノール系樹脂であることができる。混合物は熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との任意の組み合わせであることができる。各層中のマトリックス材料の割合は、層の約10%〜約80重量%、好ましくは層の20%〜60重量%である。
【0046】
様々な量の紫外線吸収剤または安定剤を、有害な紫外線を吸収し、それを熱エネルギーとして消散させるために繊維またはラミネート層に添加することができる。UV吸収剤は、繊維またはラミネート層をUV光から遮断することによって役割を果たすが、UV安定剤は、UV光に露光されたときに繊維またはラミネート層の実用寿命を高めるために光酸化プロセスで形成されるラジカル中間体を捕捉することによって役割を果たす。UV吸収剤の例には、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)のベンゾフェノンまたはベンゾチアゾールが挙げられる。
【0047】
フィラメントまたは繊維の線密度は、ASTM(米国材料試験協会)D1907−97およびD885−98に記載されている手順に基づいて既知の長さのフィラメントまたは繊維を秤量することによって求められる。繊維「デニール」は、9,000メートルの繊維またはフィラメントのグラム単位の重量と定義される。そしてデシテックスまたは「dtex」は、10,000メートルのフィラメントまたは繊維のグラム単位の重量と定義される。
【0048】
引張特性
試験される繊維は、ASTM D885−98に記載されている手順に基づいて順化させられ、次に引張試験される。靱性(破断靱性)、破断点伸び、および弾性率は、試験繊維をインストロン(Instron)試験機で破断することによって求められる。
【0049】
防弾性能
多層パネルの弾道試験は、2000年9月に発行された、NIJ規格−0101.04「個人用防護服の防弾性(Ballistic Resistance of Personal Body Armor)」に従って行われる。
【0050】
UV安定性
試験される繊維のUV安定性は、AATCC試験方法(AATCC Test Method)16−1998、キセノン光源でのオプションE、「光に対する色堅牢度(Colorfastness to Light)」に基づく。サンプルは次にそれらの引張特性についてさらに試験される。「実質的に非破壊的な方法」とは、H.サラマン(H.Salaman)ら著、「2(2’−ヒドロキシフェニル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジンおよびその誘導体における分子および超分子プロトン移動プロセス(Molecular and supramolecular proton−transfer processes in 2(2’−hydroxyphenyl)−3H−imidazo[4,5−b]pyridine and its derivatives)」、Journal of Luminescence 102−103(2003)、261−266ページに記載されているものに類似のプロトン移動メカニズムを意味する。
【実施例】
【0051】
ここで、本発明は以下の具体的な実施例によって例示される。
【0052】
比較例1
比較例1では、商標ケブラー(Kevlar)(登録商標)129でイー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.du Pont de Nemours and Company)から入手可能な、フィラメント当たり1.36デシテックスの線密度の930デシテックスのポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)連続フィラメント糸から製造した30層の布を、12.2×12.2エンド/cmの布構成での強化材として使用する。糸の引張強度は24.3グラム/デシテックスであり、繊維の密度は1.44グラム/cmである。360時間、AATCC試験方法16−2003によって、キセノン−アーク灯耐光試験装置(fading apparatus)への露光後に、糸はその元の引張強度の約63%を保持する。布層をさらに加工して布の各層をポリエチレンフィルムの層と積層することにより布層を強化することによって1.63psfの面密度および67mmの厚さの複合構造体を形成する。サーコム社(Cercom Inc.)から入手可能な、衝撃面としての、炭化ホウ素のセラミックプレートを、試験のためにエポキシで複合構造体に接着する。アセンブリを次に、レベルIIIについてのNIJ防弾規格0101.04によって7.62×51mmのライフル丸形M−80ボール(148グレイン)に対して試験する。この比較例の防護具の防弾性能およびUV耐性の両方は不良であると予測される。
【0053】
比較例2
比較例2では、商標ザイロン(Zylon)(登録商標)で、東洋紡績株式会社から入手可能な、フィラメント当たり1.36デシテックスの線密度の1110デシテックスのポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール)連続フィラメント糸から製造した28層の布を、8.7×8.7エンド/cmの布構成での強化材として使用する。糸の引張強度は37.8グラム/デシテックスであり、繊維の密度は1.54グラム/cmである。360時間キセノン−アーク灯耐光試験装置へ露光された後に、それはその元の引張強度の約55%を保持する。布層をさらに加工して布の各層をポリエチレンフィルムの層と積層することにより布層を強化することによって1.41psfの面密度および61mmの厚さの複合構造体を形成する。サーコム社から入手可能な、衝撃面としての、炭化ホウ素のセラミックプレートを、試験のためにエポキシで複合構造体に接着する。アセンブリを次に、レベルIIIについてのNIJ防弾規格0101.04によって7.62×51mmのライフル丸形M−80ボール(148グレイン)に対して試験する。この比較例の防護具のUV耐性は不良である。
【0054】
実施例1
本発明の実施例1では、フィラメント当たり1.36デシテックスの線密度の930デシテックスのポリ{2,6−ジイミダゾ[4,5−b4’,5’−e]ピリジニレン−1,4(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン}連続フィラメント糸の26層の布を、12.2×12.2エンド/cmの布構成での強化材として使用する。糸の引張強度は32.7グラム/デシテックスであり、繊維の密度は1.65グラム/cmである。360時間キセノン−アーク灯耐光試験装置へ露光された後に、糸はその元の引張強度の約91%を保持する。布層をさらに加工して布の各層をポリエチレンフィルムの層と積層することにより布層を強化することによって1.41psfの面密度および58mmの厚さの複合構造体を形成する。サーコム社から入手可能な、衝撃面としての、炭化ホウ素のセラミックプレートを、試験のためにエポキシで複合構造体に接着する。アセンブリを次に、レベルIIIについてのNIJ防弾規格0101.04によって7.62×51mmのライフル丸形M−80ボール(148グレイン)に対して試験する。本発明の測定された防弾性能は、上の先行技術例の防弾性能を向上させる。さらに、本発明の防護具の重量および厚さの両方、ひいては嵩高さは大きく減少するが、そのUV耐性、ひいては安定性は、比較例1および2に記載されるような、先行技術のUV耐性および安定性よりはるかに良好である。
【0055】
本発明は特定の好ましい実施形態に関連して記載されてきたが、他の類似の実施形態が用いられてもよいか、または本発明の同じ機能を果たすために記載された実施形態に対し、それから逸脱することなく変更および追加がなされてもよいことは理解されるべきである。従って、本発明はいかなる単一実施形態にも限定されるべきではなく、添付の特許請求の範囲の詳述に従った広さおよび範囲で解釈されるべきである。
【0056】
本明細書に開示されるすべての特許および刊行物は、全体が参照により援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレートと、
繊維層の少なくとも1つが立方センチメートル当たり1.6グラム以上の密度とデニール当たり少なくとも約30グラムの引張強度とを有するポリマー繊維を含む、プレートの少なくとも1つの主面に隣接して配置された複数の繊維層と
を含んでなる耐貫通性複合材料であって、
ポリマー繊維が約360時間、AATCC試験方法16−2003に従って、キセノン−アーク灯への露光後にその引張強度の少なくとも約70%を保持するように紫外線安定性である複合材料。
【請求項2】
ポリマー繊維が紫外線安定剤および紫外線吸収剤を含んでなる群から選択される添加剤の不存在下に紫外線安定性である請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
ポリマー繊維が約360時間、AATCC試験方法16−2003に従って、キセノン−アークランプへの露光後にその引張強度の少なくとも約85%を保持する請求項1に記載の複合材料。
【請求項4】
ポリマー繊維がポリアレーンアゾール繊維を含む請求項4に記載の複合材料。
【請求項5】
ポリアレーンアゾール繊維がポリ{2,6−ジイミダゾ[4,5−b:4’,5’−e]ピリジニレン−1,4−(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン}繊維である請求項4に記載の複合材料。
【請求項6】
ポリマー繊維がデニール当たり約1,500グラムより大きい引張弾性率を有する請求項1に記載の複合材料。
【請求項7】
平方メートル当たり約25キログラム未満の面密度を有する請求項1に記載の複合材料。
【請求項8】
繊維層が約7.5ミリメートル未満の全厚を有する請求項1に記載の複合材料。
【請求項9】
繊維層の面密度が平方メートル当たり7.5キログラム未満である請求項1に記載の複合材料。
【請求項10】
繊維層がプレートの対向主面に隣接して配置される請求項1に記載の複合材料。
【請求項11】
少なくとも1つの紫外線安定剤をさらに含んでなる請求項1に記載の複合材料。
【請求項12】
紫外線安定剤がベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、およびそれらの混合物を含んでなる群から選択される請求項10に記載の複合材料。
【請求項13】
プレートがセラミック、スチール、アルミニウム、ガラス、またはポリマー樹脂を含んでなる請求項1に記載の複合材料。
【請求項14】
第1層と、
繊維層の少なくとも1つが約7.5ミリメートル未満の厚さを有する、第1層の少なくとも1つの主面に隣接して配置された複数の繊維層と
を含んでなる耐貫通性複合材料であって、
複合材料が平方メートル当たり約25キログラム未満の面密度を有し、そして2000年9月付け規格NIJ−0101.04レベルIIIに従って非貫通性であり、かつ、
繊維層が約360時間、AATCC試験方法16−2003に従って、キセノン−アーク灯への露光後にその元の引張強度の少なくとも約70%を保持するポリマー繊維を含む複合材料。
【請求項15】
繊維層が立方センチメートル当たり少なくとも約1.6グラムの密度とデニール当たり少なくとも約30グラムの引張強度とを有するポリマー繊維を含む請求項14に記載の複合材料。
【請求項16】
繊維層がポリアレーンアゾール繊維を含む請求項14に記載の複合材料。
【請求項17】
ポリアレーンアゾール繊維がポリ{2,6−ジイミダゾ[4,5−b:4’,5’−e]ピリジニレン−1,4−(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン}繊維である請求項16に記載の複合材料。
【請求項18】
第1層がセラミック、スチール、アルミニウム、ガラス、またはポリマー樹脂を含んでなる剛性プレートである請求項14に記載の複合材料。
【請求項19】
第1層を提供する工程と、
第1層の少なくとも1つの主面上に複数の繊維層を配置する工程と
を含んでなる耐貫通性物品の形成方法であって、
ポリマー繊維が約360時間、AATCC試験方法16−2003に従って、キセノン−アーク灯への露光後にその引張強度の少なくとも約70%を保持するように紫外線安定性である方法。
【請求項20】
第1層がセラミック、スチール、アルミニウム、ガラス、またはポリマー樹脂を含んでなるプレートであり、そしてポリマー繊維が少なくとも1つのポリアレーンアゾール繊維を含む請求項19に記載の方法。

【公表番号】特表2009−505034(P2009−505034A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−526181(P2008−526181)
【出願日】平成18年8月8日(2006.8.8)
【国際出願番号】PCT/US2006/031146
【国際公開番号】WO2007/133238
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】