説明

耐電圧試験装置

【課題】耐電圧試験において、タイマに設定されている試験時間の途中で、外部から強制終了がかけられた場合でも、判定結果が出されるようにする。
【解決手段】被試験体に試験電圧を所定の試験時間印加して耐電圧試験を行うにあたって、基本的な動作モードとして、被試験体に流れる試験電流が所定の電流閾値よりも大きい場合には、その時点で不合格判定を行って試験を終了し、試験電流が電流閾値よりも小さい場合には、試験時間が経過するまで試験を継続し、試験時間の経過後に合格判定を行って、試験を終了する耐電圧試験装置において、特定制御モードとして、試験時間の経過前に外部指令手段から試験を終了させる強制終了信号を受けたときには、その時点で合否判定を行って試験時間の経過を待つことなく試験を終了する強制ストップモードを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐電圧試験装置に関し、さらに詳しく言えば、試験中に外部から強制終了の指示が出された場合に実行される強制ストップモードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気・電子機器の安全性および信頼性を評価するパラメータとしては、第1に電気絶縁性があげられる。絶縁は事故防止のための重要な要素であり、そのため、IEC規格,UL規格,電気用品取締法などの各種安全規格により、その試験方法が規定されている。
【0003】
試験電圧や試験時間は製品ごとに決められているが、基本的には、電圧発生部より製品(被試験体)の電極端子間に所定の試験電圧(一般的には交流電圧)を印加し、そのとき被試験体に流れる試験電流(漏れ電流)Iaを測定して、あらかじめ設定されている電流閾値Ibと比較し、Ia<Ib(もしくはIa≦Ib)であればPASS(合格)判定とし、Ia≧Ib(もしくはIa>Ib)であればFAIL(不合格)判定とする。
【0004】
図5に、従来一般的に行われている耐電圧試験のフローチャートを示す。まず、ユーザーによって被試験体に印加する「試験電圧」,合否判定基準となる「電流閾値」および「試験時間」が制御部に設定されたのち、試験が開始される。なお、試験時間は制御部の内蔵タイマにより計時される。この試験中、測定部にて被試験体に流れる試験電流Iaが測定され、制御部にて試験電流Iaと電流閾値Ibとの大小関係が判断される。
【0005】
その結果、Ia<Ibであれば、試験時間が経過するまで試験を継続し、試験時間経過後にPASS判定を出す。これに対して、Ia≧Ibであれば、試験時間の経過を待つことなくその時点で試験を停止してFAIL判定を出す。
【0006】
このように、Ia<IbでPASS判定の場合、試験時間が経過するまで試験を継続するのは、耐電圧試験では被試験体によって試験時間が異なるものの、その試験時間が経過しないと試験が未成立と見なされるからである。
【0007】
換言すれば、Ia<Ibであっても、タイムアップ前に試験が止められた場合にはPASS判定は出されない。なお、従来の耐電圧試験装置の制御部は、通常、その内蔵タイマからのタイムアップ信号に基づいて試験時間が経過したと判断するようにプログラムされている。一方、Ia≧IbでFAIL判定の場合には、被試験体が絶縁破壊に至るおそれがあるため、即座に試験を終了する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の一般的な耐電圧試験装置は上記のような動作モードを備えるが、例えば製品の連続組立ラインに組み込まれて、そのラインの主制御手段の管理下でシーケンス制御されるような場合、ラインの他の機器やタクトタイムとの関係で、耐電圧試験の試験時間がラインの主制御手段によって設定されることがある。
【0009】
このような場合、ラインの主制御手段が備える試験時間設定用のタイマが優先され、しかも主制御手段により設定される試験時間は、生産性などの観点から、一般的に耐電圧試験装置のタイマで設定可能な時間よりも短くされることになる。
【0010】
そうすると、耐電圧試験装置側では、ラインの主制御手段から出される試験終了信号を試験を途中で終了させる強制終了信号と見なし、図5のフローチャートに示すように、試験は終了するが、Ia<IbであってもPASS判定を出さない。
【0011】
そのため、ラインの主制御手段側ではPASS判定が出されないことから、被試験体を次工程にすすめることができない、という問題が生ずる。これとは別に、ユーザーが試験途中で強制終了をかけたときにも、PASS判定が出されないため、合格品であっても再度試験をやり直さなければならない、という問題もある。
【0012】
したがって、本発明の課題は、被試験体に試験電圧を所定の試験時間印加して行う耐電圧試験において、タイマに設定されている試験時間の途中で、外部から強制終了がかけられた場合でも、判定結果が出されるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明は、請求項1に記載されているように、被試験体に所定の試験電圧を印加する電圧発生部と、上記試験電圧の印加により上記被試験体に流れる試験電流を測定する測定部と、少なくとも上記試験電流の合否判定用の電流閾値と試験時間とが設定されるとともに、上記試験時間を計時するタイマを有する制御部とを含み、上記制御部は、試験開始に伴って上記タイマをスタートさせて上記電圧発生部から上記被試験体に上記試験電圧を印加するとともに、上記測定部にて測定される上記試験電流を監視し、上記試験電流が上記電流閾値よりも大きい場合には、その時点で不合格判定を行って試験を終了し、上記試験電流が上記電流閾値よりも小さい場合には、上記タイマが上記試験時間を計時するまで試験を継続し、上記試験時間の経過後に合格判定を行って試験を終了する耐電圧試験装置において、
上記制御部は、特定制御モードとして、上記試験時間の経過前に外部指令手段から試験を終了させる強制終了信号を受けたときには、その時点で合否判定を行って上記試験時間の経過を待つことなく試験を終了する強制ストップモードを備えていることを特徴としている。
【0014】
本発明において、請求項2に記載されているように、上記外部指令手段は、当該耐電圧試験装置を他の試験装置と関連して制御する主制御手段であることが好ましい。
【0015】
また、請求項3に記載されているように、当該耐電圧試験装置に上記外部指令手段が接続された際、上記制御部は自己の上記タイマを無効とすることが好ましい。
【0016】
また、請求項4に記載されているように、上記外部指令手段は、当該耐電圧試験装置の入力部に設けられている強制終了スイッチであってよい。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、制御部は、特定制御モードとして、試験時間の経過前に外部指令手段から試験を終了させる強制終了信号を受けたときには、その時点で合否判定を行って試験時間の経過を待つことなく試験を終了する強制ストップモードを備えていることにより、試験途中で強制終了信号が出された場合でも、合格判定が出される。
【0018】
したがって、請求項2に記載のように、例えば製品の連続組立ラインに組み込まれて、そのラインの主制御手段の管理下でシーケンス制御されるような場合でも、支障なくラインを稼働することができる。また、請求項4に記載の強制終了スイッチが押された場合でも、合格判定が出されることになる。
【0019】
また、請求項3に記載のように、当該耐電圧試験装置に外部指令手段が接続された際には、制御部は自己のタイマを無効とすることにより、タイムアップかどうかの判断ステップを省略することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による耐電圧試験装置の一例を示す概略的なブロック図。
【図2】本発明の基本的な動作制御モードを示すフローチャート。
【図3】本発明の第1強制ストップモードを示すフローチャート。
【図4】本発明の第2強制ストップモードを示すフローチャート。
【図5】従来の耐電圧試験装置の動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、図1ないし図4により本発明の実施形態について説明する。図1は本発明による耐電圧試験装置の一例を示す概略的なブロック図,図2は本発明の基本的な動作制御モードを示すフローチャート,図3は本発明の参考実施形態としての第1強制ストップモードを示すフローチャート,図4は本発明の請求項1に対応する第2強制ストップモードを示すフローチャートである。
【0022】
図1に示すように、この耐電圧試験装置は、被試験体EUTに対して所定の試験電圧を印加する電圧発生部11と、その試験電圧の印加により被試験体EUTに流れる試験電流Iaを測定する測定部12と、制御部13と、制御部13に試験条件を与える入力部14と、試験結果を表示する表示部15と、図示しない外部制御手段(外部指令手段)が接続される接続端子部16とを備える。
【0023】
被試験体EUTは、電気・電子機器,電子部品,電子材料などであってよく、図示しない一対の電極端子間に電圧発生部11より試験電圧が印加される。耐電圧試験装置では、電圧発生部11に交流電源が用いられるのが一般的であるが、場合によっては、直流電源が用いられてもよい。試験電圧は、被試験体EUTごとに決められる。
【0024】
測定部12は、被試験体EUTの試験電流Iaが流される電流検出抵抗と、電流検出抵抗に生ずる電圧降下を測定する電圧計(ともに図示しない)とにより構成することができる。制御部13には、CPU(中央演算処理ユニット)やマイクロコンピュータなどが用いられてよい。
【0025】
制御部13には、入力部14より各種の試験条件として試験電圧,試験時間,合否判定基準の電流閾値Ibなどが設定され、その試験電圧に基づいて電圧発生部11の出力が制御される。試験時間は、制御部13に内蔵されているタイマにより計時される。
【0026】
入力部14には、キーボードなどの操作盤が用いられてよいが、その中には強制終了スイッチが含まれる。表示部15には、液晶表示パネルやプラズマディスプレイが好ましく採用されるが、プリンタが用いられてもよい。
【0027】
接続端子部16には外部制御手段が接続されるが、当該耐電圧試験装置が、例えば製品の連続組立ラインに組み込まれて、その組立ラインの主制御手段の管理下でシーケンス制御されるような場合、接続端子部16には、その組立ラインの主制御手段(パソコンなど)が接続される。
【0028】
このような場合、当該耐電圧試験装置の試験時間は、外部制御手段である上記主制御手段により設定される。すなわち、上記主制御手段が備える試験時間設定用のタイマが優先され、そのタイマには、組立ラインの生産性などの観点から、当該耐電圧試験装置のタイマで設定可能な時間よりも短い試験時間が設定される。
【0029】
次に、本発明の動作について説明するが、まず、図2のフローチャートを参照して、試験中に強制ストップがかからないときの基本的な動作制御モードについて説明する。
【0030】
試験が開始されるのと同時に、電圧発生部11より被試験体EUTに所定の試験電圧が印加され、また、制御部13の図示しない内蔵タイマがスタートするとともに、測定部12にて被試験体EUTに流れる試験電流Iaが測定される(ステップST1)。
【0031】
次に、制御部13は、試験電流Iaと電流閾値Ibとの大小関係を判定する(ステップST2)。その結果、Ia<Ib(もしくはIa≦Ib)であれば、試験時間が経過しているかを判断する(ステップST3)。
【0032】
試験時間が経過していなければ、ステップST1に戻り、試験時間が経過するまでステップST1,ST2を繰り返す。そして、試験時間が経過した時点(内蔵タイマのタイムアップ時点)で、PASS判定を表示部15に表示して(ステップST4)、試験を終了する。
【0033】
上記ステップST2で、Ia≧Ib(もしくはIa>Ib)であれば、FAIL判定を表示部15に表示し(ステップST5)、その時点で電圧発生部11を出力を止めて試験を停止する。
【0034】
本発明は、上記基本的な動作制御モードのほかに、特定制御モードとして、第1強制ストップモードおよび/または第2強制ストップモードを備える。
【0035】
この特定制御モードは、接続端子部16に外部制御手段(例えば、上記組立ラインの主制御手段)が接続され、試験の途中で、その外部制御手段から試験終了信号が出された場合、もしくは入力部14のむ強制終了スイッチが押された場合に動作する。
【0036】
図3は、第1強制ストップモードのフローチャートで、このモードでは、Ia<Ib(もしくはIa≦Ib)であるが、上記ステップST3で試験時間がまだ経過していないと判断されて、上記ステップST1に戻るときに強制終了かを判断するステップST3aが付加される。
【0037】
すなわち、試験の途中で、外部制御手段から試験終了信号が出されるか、もしくは強制終了スイッチが押されると、即座に上記ステップST4を実行し、PASS判定としたのち、試験を終了する。なお、FAIL判定の場合には、上記基本的な動作制御モードと同じく、その時点で上記ステップST5を実行し、FAIL判定としたのち、試験を終了する。
【0038】
次に、第2強制ストップモードについて説明する。このモードでは、上記ステップST3での試験時間経過待ちのときに、外部制御手段から試験終了信号が出されるか、もしくは強制終了スイッチが押されると、図4に示す割り込み処理が実行され、Ia<Ib(もしくはIa≦Ib)であれば、試験時間の経過を待つことなくPASS判定とし、Ia≧Ib(もしくはIa>Ib)であれば、FAIL判定として試験を終了する。
【0039】
以上説明したように、本発明によれば、耐電圧試験の途中で強制終了した場合でも、PASS判定,FAIL判定がなされるため、例えば製品の連続組立ラインや自動試験システムに適用される場合には、その外部制御手段とのマッチングがとられ円滑に試験を進めることができる。また、手動で強制終了させた場合でも、Ia<Ib(もしくはIa≦Ib)であればPASS判定が出されるため、試験途中であっても良品であることを知ることができる。
【0040】
なお、外部制御手段に接続し、その外部制御手段により試験時間が設定されるような場合には、当該耐電圧試験装置側の内蔵タイマを無効とすることにより、タイムアップかどうかの判断ステップを省略することができ、制御部の負担を軽減することができる。
【0041】
また、本発明の耐電圧試験装置は単機能の機器として製品化されてもよいし、他の測定機能を有する電気測定器の一つの機能として組み込まれてもよい。
【符号の説明】
【0042】
11 電圧発生部
12 測定部
13 制御部
14 入力部
15 表示部
16 外部制御機器の接続端子部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験体に所定の試験電圧を印加する電圧発生部と、上記試験電圧の印加により上記被試験体に流れる試験電流を測定する測定部と、少なくとも上記試験電流の合否判定用の電流閾値と試験時間とが設定されるとともに、上記試験時間を計時するタイマを有する制御部とを含み、
上記制御部は、試験開始に伴って上記タイマをスタートさせて上記電圧発生部から上記被試験体に上記試験電圧を印加するとともに、上記測定部にて測定される上記試験電流を監視し、上記試験電流が上記電流閾値よりも大きい場合には、その時点で不合格判定を行って試験を終了し、上記試験電流が上記電流閾値よりも小さい場合には、上記タイマが上記試験時間を計時するまで試験を継続し、上記試験時間の経過後に合格判定を行って試験を終了する耐電圧試験装置において、
上記制御部は、特定制御モードとして、上記試験時間の経過前に外部指令手段から試験を終了させる強制終了信号を受けたときには、その時点で合否判定を行って上記試験時間の経過を待つことなく試験を終了する強制ストップモードを備えていることを特徴とする耐電圧試験装置。
【請求項2】
上記外部指令手段が、当該耐電圧試験装置を他の試験装置と関連して制御する主制御手段であることを特徴とする請求項1に記載の耐電圧試験装置。
【請求項3】
当該耐電圧試験装置に上記外部指令手段が接続された際、上記制御部は自己の上記タイマを無効とすることを特徴とする請求項1または2に記載の耐電圧試験装置。
【請求項4】
上記外部指令手段が、当該耐電圧試験装置の入力部に設けられている強制終了スイッチであることを特徴とする請求項1に記載の耐電圧試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−169914(P2011−169914A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100955(P2011−100955)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【分割の表示】特願2005−287373(P2005−287373)の分割
【原出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】