説明

耐風圧型防振天井吊り体

【課題】強い風に対する耐風圧強度を十分に確保でき、防振機能をも併せて備える耐風圧型防振天井吊り体を提供する。
【解決手段】耐風圧型防振天井吊り体1は、建造物の天井吊り下げ構造体の一部を構成し、枠状体2と、該枠状体2の両側面に添設した一対の補助強化片21とからなり、上部が天井スラブ52から垂下した上部吊りボルト51に連結される吊り基体11と、吊り基体11により支持される防振体と、防振体を吊り基体11の下部中央に一体的に、かつ、垂直配置に取り付けるとともに、下部が下部吊りボルト61を介して二重天井体60に連結される防振体取り付け支持機構部と、枠状体2と一方の補助強化片21、枠状体2と他方の補助強化片21を各々一体的に固着するリベット12による枠状体2と一対の補助強化片21との一体的な固着により、吊り基体11の圧縮強度、引張強度を強化するとともに、圧縮側、引張側の防振を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐風圧型防振天井吊り体に関し、詳しくは、例えば高速列車が走行する駅舎等において天井スラブと天井パネル体との間の吊り構造の一部に配置し、列車通過時の大きな風圧による天井パネル体の吹き上がり防止するとともに防振機能も有する耐風圧型防振天井吊り体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、高速列車が走行する駅舎において、駅舎の構造として、ホームの上方に天井スラブから天井パネル体を吊り下げた構造を採用している場合、ホームが面するレール上を高速列車が走行すると、高速列車の走行に伴う衝撃風が天井パネル体に当たり、また、屋外に面したホームおよび通路で、台風等による強風が作用することにより、大きな風圧が天井パネル体に作用する。
【0003】
このとき、天井パネル体の吊り下げ構造における耐風圧強度が十分でないと、天井パネル体自体が風圧により吹き上がり、その後、重力により落下して部分的に又はかなり広範囲にわたって破損し下方に落下して、ホーム上にいる乗客に怪我をさせてしまう等の不都合な事態が発生する。
【0004】
また、この種の天井パネル体の吊り下げ構造においては、上述したような風圧に対する対策の他、地震によりかかる力に耐えられることが必要とされているところである。
【0005】
本願出願人は、先に特許文献1に示すように、2個の各フレームと、ゴム材からなる防振体との組み合わせからなり、2個の各フレームは、垂直片と上片、下片とを有し、2個の各フレームの上片、下片のいずれか一方の片の中央には小孔を穿孔し、他方の片の中央には円形孔を穿孔し、且つ、円形孔から当該片の端部に連続した切り込み孔部を有しているとともに、各フレームの各上片、下片には、カシメ止め用等の各小穴を設けて構成し、防振体は、その中心に、挿通孔を有し、上下端部の近傍には各括れ部を形成しているとともに、防振体の上端には鋼材等からなりワッシャー作用を果たす座金を一体的に接合配置し且つ防振体の下端には肉薄部を備える構成として、天井パネル体の吊り下げ構造の一部として組み込むようにした圧縮型防振吊り体を提案し、登録を受けている。
【0006】
この圧縮型防振吊り体によれば、例えば地震等による振動で天井スラブ側が振動するとき、前記防振体による防振作用で天井パネル体の揺れを低減し、これにより、天井パネル体の破損を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】登録実用新案第3020928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする問題点は、天井パネル体の吊り下げ構造の一部に組み込むことよって、例えば高速列車の走行に伴う衝撃風のような強い風に対する耐風圧強度及び地震によりかかる力に対する耐力を十分に確保でき、振動の防振を行うこともできるとともに、特許文献1に開示した圧縮型防振吊り体のような防振機能をも併せて備えるような耐風圧型防振天井吊り体が存在しない点である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の耐風圧型防振天井吊り体は、建造物の天井スラブの下方に天井パネル体を吊り下げ支持する吊り下げ構造体を構成する耐風圧型防振天井吊り体であって、金属材からなる枠状体と、この枠状体の両側面に添設した金属材からなる一対の補助強化片とからなり、上部が天井パネル体から垂下した上部吊りボルトに連結される吊り基体と、前記吊り基体により支持される防振体と、前記防振体を、前記吊り基体の下部中央に一体的に、かつ、垂直配置に取り付けるとともに、下部が下部吊りボルトを介して天井パネル体に連結される防振体取り付け支持機構部と、前記枠状体と一方の補助強化片、前記枠状体と他方の補助強化片を各々一体的に固着する複数の固着具と、を有し、複数の固着具による前記枠状体と一対の補助強化片との一体的な固着により、吊り基体の圧縮強度、引張強度を強化するとともに、前記防振体取り付け支持機構部により吊り基体に一体的に支持した防振体により、吊り基体の圧縮側、引張側に作用する振動の防振を行うようにしたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、金属材からなる枠状体と、この枠状体の両側面に添設した金属材からなる一対の補助強化片とからなり、上部が天井パネル体から垂下した上部吊りボルトに連結される吊り基体と、前記吊り基体により支持されるゴム材からなる防振体と、前記防振体を、前記吊り基体の下部中央に一体的に、かつ、垂直配置に取り付けるとともに、下部が下部吊りボルトを介して天井パネル体に連結される防振体取り付け支持機構部と、前記枠状体と一方の補助強化片、前記枠状体と他方の補助強化片を各々一体的に固着する複数の固着具と、を有し、複数の固着具による前記枠状体と一対の補助強化片との一体的な固着により、吊り基体の圧縮強度、引張強度を強化するとともに、前記防振体取り付け支持機構部により吊り基体に一体的に支持した防振体をもって、吊り基体の圧縮側、引張側に作用する振動防振を行うように構成しているので、前記吊り基体の圧縮強度、引張強度を強化することができ、特に高速列車の走行に伴う衝撃風のような強い風に対する前記吊り基体の圧縮方向の耐風圧強度及び地震による力に耐えられる強度を十分に確保でき、建造物の天井スラブの下方に吊り下げた天井パネル体の吹き上がりを確実に防止でき、更に、前記防振体取り付け支持機構部により吊り基体に一体的に支持した防振体により、吊り基体の圧縮側、引張側に作用する振動の防振を行うこともできる耐風圧型防振天井吊り体を実現し提供することができる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、金属材からなり、四角形状で平坦な上片と、この上片の短辺両隅から下方に屈曲形成した一対の垂直片と、一対の垂直片の各下端から前記上片と平行配置に、かつ、各々内方に向けて屈曲形成して対向させた一対の内向き突片と、前記一対の垂直片の両側垂直縁部から外方に向けて各々突設した片側2個ずつ両側で4個の外向き突片とを、一体に有する枠状体と、金属材からなり、前記枠状体における一対の外向き突片の両突出端間の距離にほぼ等しい幅を有する長方形状の添設片と、この添設片の下端から90度屈曲させて形成されるとともに、突出端に挟み込み凹部を設けた下片とを一体に有し、一対構成として、一対の下片を一対の垂直片の間から一対の内向き突片上に対向させる状態で添設する状態で一対添設片を前記枠状体の両側面に添設した2個の補助強化片と、からなり、上片が天井パネル体から垂下した上部吊りボルトにナットを用いて連結される吊り基体と、天然ゴム材からなりほぼ円筒状で、挿通孔を貫通状態に設け、上下端面の近傍位置の外周部には各々括れ凹部を設け、上端側に上部円板部を、下端側に下部円板部を形成し、前記吊り基体により支持される防振体と、前記一対の補助強化片における各下片に設けた挟み込み凹部を、防振体の下側の括れ凹部に嵌合することによって前記吊り基体内に支持された前記防振体の挿通孔に対して、上部円板部上に上部座金を添設しつつ挿通し、前記吊り基体の下方に突出させる取り付けボルトと、前記吊り基体の下方に突出する取り付けボルトの突出端側に前記下部円板部に添設するように嵌装する下部座金と、下部座金の下側に突出する取り付けボルトの突出端側のネジ部に、ネジ孔の途中位置まで螺合し、締め付けることで、前記防振体を前記吊り基体に対して一体的に固着するとともに、下側から下部吊りボルトが螺着される連結ナットと、を有する防振体取り付け支持機構部と、前記枠状体における片側2個ずつ両側で4個の外向き突片と、一対の補助強化片における添設片とを各々2箇所ずつで固着し、前記枠状体における一対の内向き突片と、前記一対の補助強化片における一対の下片とを各々2箇所ずつで固着する複数の固着具と、を有し、複数の固着具による前記枠状体と一対の補助強化片とにおける前記外向き突片と前記添設片の固着、及び、前記内向き突片と前記下片との固着により、吊り基体の圧縮強度、引張強度を強化するとともに、前記防振体取り付け支持機構部により吊り基体に一体的に支持した防振体により、吊り基体の圧縮側、引張側に作用する振動の防振を行う構成の基に、前記吊り基体の圧縮強度、引張強度を強化することができ、特に高速列車の走行に伴う衝撃風のような強い風に対する前記吊り基体の圧縮方向の耐風圧強度及び地震による力に耐えられる強度を十分に確保でき、建造物の天井スラブの下方に吊り下げた天井パネル体の吹き上がりを確実に防止でき、更に、前記防振体取り付け支持機構部により吊り基体に一体的に支持した防振体により、吊り基体の圧縮側、引張側に作用する振動の防振を行うこともできる耐風圧型防振天井吊り体を実現し提供することができる。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、請求項2記載の発明の効果を奏することに加え、前記枠状体の上片と、この上片の短辺両隅から下方に屈曲形成した一対の垂直片との各境界を画する領域の中央部分に、各々前記吊り基体の外面側がV状に窪み、内面側が内方に向けて膨出する形態の一対の局所的塑性変形部を設けているので、前記枠状体の圧縮強度、引張強度を更に強化することができ、特に高速列車の走行に伴う衝撃風のような強い風に対する前記吊り基体の圧縮方向の耐風圧強度をより十分に確保でき、建造物の天井スラブの下方に吊り下げた天井パネル体の吹き上がりをより確実に防止できる耐風圧型防振天井吊り体を実現し提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は本発明の実施例にかかる耐風圧型防振天井吊り体を使用した二重天井体の吊り下げ構造を示す概略図である。
【図2】図2は本実施例にかかる耐風圧型防振天井吊り体を示す概略斜視図である。
【図3】図3は本実施例にかかる耐風圧型防振天井吊り体の部分切欠正面図である。
【図4】図4は本実施例にかかる耐風圧型防振天井吊り体の部分切欠側面図である。
【図5】図5は本実施例にかかる耐風圧型防振天井吊り体における連結ナット、下部座金、取り付けボルトを除去した状態の底面図である。
【図6】図6は本実施例にかかる耐風圧型防振天井吊り体における防振体のみを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、天井パネル体の吊り下げ構造の一部に組み込むことよって、例えば高速列車の走行に伴う衝撃風のような強い風に対する耐風圧強度を十分に確保でき、かつ、地震等による振動に対する防振機能をも併せて備える耐風圧型防振天井吊り体を実現し提供するという目的を、建造物の天井スラブの下方に天井パネル体を吊り下げ支持する吊り下げ構造体を構成する耐風圧型防振天井吊り体であって、金属材からなり、四角形状で平坦な上片と、この上片の短辺両隅から下方に屈曲形成した一対の垂直片と、一対の垂直片の各下端から前記上片と平行配置に、かつ、各々内方に向けて屈曲形成して対向させた一対の内向き突片と、前記一対の垂直片の両側垂直縁部から外方に向けて各々突設した片側2個ずつ両側で4個の外向き突片とを、一体に有する枠状体と、金属材からなり、前記枠状体における一対の外向き突片の両突出端間の距離にほぼ等しい幅を有する長方形状の添設片と、この添設片の下端から90度屈曲させて形成されるとともに、突出端に挟み込み凹部を設けた下片とを一体に有し、一対構成として、一対の下片を一対の垂直片の間から一対の内向き突片上に対向させる状態で添設する状態で一対添設片を前記枠状体の両側面に添設した2個の補助強化片と、からなり、上片が天井パネル体から垂下した上部吊りボルトにナットを用いて連結される吊り基体と、天然ゴム材からなりほぼ円筒状で、挿通孔を貫通状態に設け、上下端面の近傍位置の外周部には各々括れ凹部を設け、上端側に上部円板部を、下端側に下部円板部を形成し、前記吊り基体により支持される防振体と、前記一対の補助強化片における各下片に設けた挟み込み凹部を、防振体の下側の括れ凹部に嵌合することによって前記吊り基体内に支持された前記防振体の挿通孔に対して、上部円板部上に上部座金を添設しつつ挿通し、前記吊り基体の下方に突出させる取り付けボルトと、前記吊り基体の下方に突出する取り付けボルトの突出端側に前記下部円板部に添設するように嵌装する下部座金と、下部座金の下側に突出する取り付けボルトの突出端側のネジ部に、ネジ孔の途中位置まで螺合し、締め付けることで、前記防振体を前記吊り基体に対して一体的に固着するとともに、下側から下部吊りボルトが螺着される連結ナットと、を有する防振体取り付け支持機構部と、前記枠状体における片側2個ずつ両側で4個の外向き突片と、一対の補助強化片における添設片とを各々2箇所ずつで固着し、前記枠状体における一対の内向き突片と、前記一対の補助強化片における一対の下片とを各々2箇所ずつで固着する複数の固着具と、を有し、複数の固着具による前記枠状体と一対の補助強化片とにおける前記外向き突片と前記添設片の固着、及び、前記内向き突片と前記下片との固着により、吊り基体の圧縮強度、引張強度を強化するとともに、前記防振体取り付け支持機構部により吊り基体に一体的に支持した防振体により、吊り基体の圧縮側、引張側に作用する振動の防振を行う構成により実現した。
【実施例】
【0015】
以下、本発明の実施例に係る耐風圧型防振天井吊り体について図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
本実施例1に係る耐風圧型防振天井吊り体1は、図1、図2乃至図4に示すように、全体形状がほぼ四角形状を呈するステンレス材のように金属材からなる枠状体2と、この枠状体2の両側面に一体的に添設したL状を呈するステンレス材のように金属材からなる一対の補助強化片21、21と、からなる吊り基体11と、例えば天然ゴム材(NP)からなるほぼ円筒状の防振体31と、この防振体31を、前記吊り基体11が形成する内部空間の下部中央に一体的に、かつ、垂直配置に取り付けるとともに、下側から下部吊りボルト61を螺着して連結する防振体取り付け支持機構部41と、を有している。
【0017】
前記枠状体2は、四角形状で平坦な上片3と、この上片3の短辺両隅から下方に屈曲形成した一対の垂直片4、4と、一対の垂直片4、4の各下端から前記上片3と平行配置に、かつ、各々内方に向けて屈曲形成して対向させた一対の内向き突片6、6と、前記一対の垂直片4、4の両側垂直縁部から外方に向けて各々突設した片側2個ずつ両側で4個の外向き突片5とを、一体に有している。
【0018】
前記上片3の中央部には、上部吊りボルト51を挿通させる孔部7を設けている。
【0019】
また、前記上片3とその両側の垂直片4、4との各境界を画する領域における中央部分には、各々前記吊り基体11の外面側がV状に窪み、内面側が内方に向けて膨出する形態の局所的塑性変形部8、8を設け、前記枠状体2に対して圧縮力、引張力が作用する際における前記枠状体2自体の上部、すなわち、上片3、垂直片4の境界を画する領域の変形を防止するように構成し、これにより、特に前記枠状体2の上部の圧縮強度、引張強度を高めている。
【0020】
枠状体2における一対の内向き突片6、6の各突出端側には、図5に示すように、前記防振体31における下部円板部36の外周を囲むように、円弧状凹部6a、6aを設けている。
【0021】
前記補助強化片21は、前記枠状体2における一対の外向き突片5、5の両突出端間の距離にほぼ等しい幅を有する長方形状の添設片22と、この添設片22の下端から90度屈曲させて形成した下片23とを一体に有し、この補助強化片21を2個用いて、一対の下片23を対向させる状態で前記枠状体2の両側面に一体的に添設するようになっている。
【0022】
すなわち、前記各補助強化片21における各下片23の幅は、前記一対の垂直片4、4間の寸法よりも小幅で、一対の補助強化片21、21の各下片23を各々一対の垂直片4、4の間から前記一対の内向き突片6、6上に載置するようにして装着し、また、一対の添設片22、22を前記枠状体2の側面に各々当接させて添設するように構成している。
【0023】
前記一対の補助強化片21、21の前記枠状体2の両側面に対する添設態様は対称配置となっている。
【0024】
前記一対の補助強化片21、21における各下片23、23の突出端中央には、図5に示すように、各々ほぼ半円状の挟み込み凹部24、24が形成され、この挟み込み凹部24、24を前記防振体31における下側の括れ凹部34に嵌合するようにして、これら一対の補助強化片21、21により前記防振体31を垂直配置に支持するように構成している。
【0025】
前記防振体31は、図6に示すように、その長さ方向中心部に、防振体取り付け支持機構部41を構成する取り付けボルト42を挿通する挿通孔32を貫通状態に設けているとともに、上下端面の近傍位置の外周部には各々括れ凹部33、34を設け、上端側に上部円板部35を、下端側に下部円板部36を形成した構成としている。
【0026】
更に、前記防振体31の上端面には、図6に示すように、挿通孔32と同径の孔を有する埋め込み座金37を埋設している。
【0027】
前記防振体取り付け支持機構部41は、図2乃至図4に示すように、前記一対の補助強化片21における各下片23に設けた挟み込み凹部24、24を、防振体31の下側の括れ凹部34に嵌合することによって前記吊り基体11内に支持された前記防振体31の挿通孔32に対して、上部円板部35上に上部座金43を添設しつつ挿通し、前記吊り基体11の下方に突出させる取り付けボルト42と、前記吊り基体11の下方に突出する取り付けボルト42の突出端側に前記下部円板部36に添設するように嵌装する下部座金44と、下部座金44の下側に突出する取り付けボルト42の突出端側のネジ部に、ネジ孔の途中位置まで螺合し、締め付けることで、前記防振体31を前記吊り基体11に対して一体的に固着する例えば長さ20mmの連結ナット45と、を具備している。
【0028】
次に、前記吊り基体11における前記枠状体2と、一対の補助強化片21との固着構造ついて図2乃至図4を参照して説明する。
【0029】
前記枠状体2における片側2個ずつ両側で4個の外向き突片5と、一対の補助強化片21、21における添設片22、22とは、図2乃至図4に示すように、合計4個の固着具である例えばリベット12を用いて一体的に固着している。
【0030】
すなわち、前記枠状体2の一面側においては、図2、図3に示すように、補助強化片21における添設片22の両隅上部位置と、添設片22と接合している外向き突片5の対応位置とを一対のリベット12を用いて一体的に固着している。前記枠状体2の他面側においても同様である。
【0031】
前記枠状体2における一対の内向き突片6、6と、前記一対の補助強化片21、21における一対の下片23、23とは、図5に示すように、合計4個の固着具である例えばリベット12を用いて一体的に固着している。
【0032】
すなわち、前記枠状体2における一対の内向き突片6、6における円弧状凹部6a、6aよりも外側位置と、一対の内向き突片6、6に接合する一対の下片23、23との間を、四角形配置を呈する合計4個のリベット12を用いて一体的に固着している。
【0033】
上述したような吊り基体11における前記枠状体2と、一対の補助強化片21との固着構造によって、この吊り基体11の特に下部側の圧縮強度、引張強度を高めている。
【0034】
すなわち、前記吊り基体11の両面において、一対の補助強化片21における各添設片22の両隅上部位置と、各添設片22と接合している枠状体2を構成する各外向き突片5の対応位置とを合計4個のリベット12を用いて一体的に固着するとともに、前記枠状体2における一対の内向き突片6、6と、前記一対の補助強化片21、21における前記防振体31を嵌め込み凹部24によって嵌め込み状態で支持する前記一対の下片23、23とを、互いに交差配置に接合し、かつ、合計4個のリベット12を用いて一体的に固着している。
【0035】
したがって、前記吊り基体11に対して圧縮力、引張力が作用する際におけるこの吊り基体11の下部側においては、前記枠状体2における一対の内向き突片6、6の変形が防止され、前記吊り基体11の特に下部側の圧縮強度、引張強度を高めることになる。
【0036】
更に、前記一対の垂直片4、4の両側垂直縁部には、各々片側2個ずつ両側で4個の外向き突片5を外方に向けて突設しているので、前記吊り基体11に対して圧縮力、引張力が作用する際における前記枠状体2の一対の垂直片4、4の変形も防止することができる。
【0037】
この結果、特許文献1の2個のフレームの組み合わせからなる吊り基体に比べ、本実施例の耐風圧型防振天井吊り体1によれば、前記吊り基体11の下部領域、一対の垂直片4、4の領域及び前記枠状体2の上部領域の各部にわたって、すなわち、前記吊り基体11全体にわたって圧縮力、引張力が作用する際における圧縮強度、引張強度を向上させることができる。
【0038】
本発明の耐風圧型防振天井吊り体1の具体的仕様の一例としては、耐風圧荷重、すなわち、圧縮荷重としては10000Nを、また、引張荷重としては7000Nを挙ることができる。更に、前記防振体31の許容荷重としては300N、静的はばね定数としては70(N/mm)の例を挙ることができる。
【0039】
次に、本実施例1に係る耐風圧型防振天井吊り体1を用いた天井吊り構造の一例について、図1を参照して説明する。
【0040】
この天井吊り構造は、図1に示すように、天井スラブ52の下方に天井パネル体の一例である例えば二重天井体60を水平に吊り下げるものであり、前記吊り基体11を構成する前記枠状体2の上片3に設けた孔部7に上部吊りボルト51を挿通させるとともに、上部吊りボルト51に対して上片3を挟むように螺合した一対のナット53を締め付けることで、前記耐風圧型防振天井吊り体1における吊り基体11の上部側を前記上部吊りボルト51に強固に連結するものである。
【0041】
また、前記耐風圧型防振天井吊り体1における前記連結ナット45のネジ孔に下方から下部吊りボルト61の上端側のネジ部を螺着するとともに、二重天井体60から上方に突出させた吊り金具62の水平に曲げた上片62aに下部吊りボルト61の下端側を挿通し、前記下部吊りボルト61に対して上片62aを挟むように螺合した一対のナット63を締め付けることで、前記耐風圧型防振天井吊り体1における吊り基体11の下部側を下部吊りボルト61に強固に連結し、二重天井体60を天井スラブ52の下方に吊り下げるものである。
【0042】
なお、図1においては、1個の耐風圧型防振天井吊り体1を用いた天井吊り構造のみを示しているが、実際には多数の耐風圧型防振天井吊り体1を用いて上述したような吊り構造を多数箇所設けることにより二重天井体60を吊り下げることは言うまでもない。
【0043】
次に、本実施例1に係る耐風圧型防振天井吊り体1の作用を、前記二重天井体60を吹き上げるような強風に対する耐風圧動作を主にして説明する。
【0044】
本実施例1に係る耐風圧型防振天井吊り体1によれば、上述したように、前記吊り基体11の下部領域、一対の垂直片4、4の領域及び前記枠状体2の上部領域の各部にわたって、すなわち、前記吊り基体11全体にわたって圧縮力、引張力が作用する際における圧縮強度、引張強度を向上させている。
【0045】
これにより、高速列車が走行する駅舎において上述したような天井吊り構造の一部に前記耐風圧型防振天井吊り体1を採用した場合においては、高速列車の走行に伴う衝撃風のような強い風に対する天井吊り構造全体の耐風圧強度を十分に確保でき、二重天井体60自体が風圧により吹き上がり、その後、重力により落下して部分的に又はかなり広範囲にわたって破損してしまうというような不都合な事態発生を未然に回避することが可能となる。また、強大な地震振動により、前記二重天井体60自体が上方に変位しようとした場合にも、前記耐風圧型防振天井吊り体1の圧縮強度の向上により、二重天井体60自体が上昇し、その後、重力により落下して部分的に又はかなり広範囲にわたって破損してしまうというような不都合な事態発生を未然に回避することが可能となる。
【0046】
また、例えば前記天井スラブ52が高速列車の走行に伴う振動により上下に振動する際には、前記天井スラブ52から上部吊りボルト51を経て本実施例1の耐風圧型防振天井吊り体1に伝達される振動は、防振体取り付け支持機構部41によって前記吊り基体11が形成する内部空間の下部中央に一体的に、かつ、垂直配置に取り付けられ、更に、前記二重天井体60による引張荷重が前記連結ナット45、取り付けボルト42を介して作用する防振体31によって特許文献1の場合と同様にして効果的に防振され、前記二重天井体60の上下方向の防振を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の耐風圧型防振天井吊り体は、上述した場合の他、各種ビルディング、工場建屋等において、天井スラブの下方に天井パネル体を吊り下げ支持する吊り下げ構造体の一部として広範に適用可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 耐風圧型防振天井吊り体
2 枠状体
3 上片
4 垂直片
5 外向き突片
6 内向き突片
6a 円弧状凹部
7 孔部
8 局所的塑性変形部
11 吊り基体
12 リベット
21 補助強化片
22 添設片
23 下片
24 挟み込み凹部
31 防振体
32 挿通孔
33 括れ凹部
34 括れ凹部
35 上部円板部
36 下部円板部
37 埋め込み座金
41 防振体取り付け支持機構部
42 取り付けボルト
43 上部座金
44 下部座金
45 連結ナット
51 上部吊りボルト
52 天井スラブ
53 ナット
60 二重天井体
61 下部吊りボルト
62 金具
62a 上片
63 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物の天井スラブの下方に天井パネル体を吊り下げ支持する吊り下げ構造体を構成する耐風圧型防振天井吊り体であって、
金属材からなる枠状体と、この枠状体の両側面に添設した金属材からなる一対の補助強化片とからなり、上部が天井スラブから垂下した上部吊りボルトに連結される吊り基体と、
前記吊り基体により支持されるゴム材からなる防振体と、
前記防振体を、前記吊り基体の下部中央に一体的に、かつ、垂直配置に取り付けるとともに、下部が下部吊りボルトを介して天井パネルに連結される防振体取り付け支持機構部と、
前記枠状体と一方の補助強化片、前記枠状体と他方の補助強化片を各々一体的に固着する複数の固着具と、
を有し、
複数の固着具による前記枠状体と一対の補助強化片との一体的な固着により、吊り基体の圧縮強度、引張強度を強化するとともに、前記防振体取り付け支持機構部により吊り基体に一体的に支持した防振体により、吊り基体の圧縮側、引張側に作用する振動の防振を行うようにしたこと、
を特徴とする耐風圧型防振天井吊り体。
【請求項2】
建造物の天井スラブの下方に天井パネル体を吊り下げ支持する吊り下げ構造体を構成する耐風圧型防振天井吊り体であって、
金属材からなり、四角形状で平坦な上片と、この上片の短辺両隅から下方に屈曲形成した一対の垂直片と、一対の垂直片の各下端から前記上片と平行配置に、かつ、各々内方に向けて屈曲形成して対向させた一対の内向き突片と、前記一対の垂直片の両側垂直縁部から外方に向けて各々突設した片側2個ずつ両側で4個の外向き突片とを、一体に有する枠状体と、金属材からなり、前記枠状体における一対の外向き突片の両突出端間の距離にほぼ等しい幅を有する長方形状の添設片と、この添設片の下端から90度屈曲させて形成されるとともに、突出端に挟み込み凹部を設けた下片とを一体に有し、一対構成として、一対の下片を一対の垂直片の間から一対の内向き突片上に対向させる状態で添設する状態で一対添設片を前記枠状体の両側面に添設した2個の補助強化片と、からなり、上片が天井スラブから垂下した上部吊りボルトにナットを用いて連結される吊り基体と、
天然ゴム材からなりほぼ円筒状で、挿通孔を貫通状態に設け、上下端面の近傍位置の外周部には各々括れ凹部を設け、上端側に上部円板部を、下端側に下部円板部を形成し、前記吊り基体により支持される防振体と、
前記一対の補助強化片における各下片に設けた挟み込み凹部を、防振体の下側の括れ凹部に嵌合することによって前記吊り基体内に支持された前記防振体の挿通孔に対して、上部円板部上に上部座金を添設しつつ挿通し、前記吊り基体の下方に突出させる取り付けボルトと、前記吊り基体の下方に突出する取り付けボルトの突出端側に前記下部円板部に添設するように嵌装する下部座金と、下部座金の下側に突出する取り付けボルトの突出端側のネジ部に、ネジ孔の途中位置まで螺合し、締め付けることで、前記防振体を前記吊り基体に対して一体的に固着するとともに、下側から下部吊りボルトが螺着される連結ナットと、を有する防振体取り付け支持機構部と、
前記枠状体における片側2個ずつ両側で4個の外向き突片と、一対の補助強化片における添設片とを各々2箇所ずつで固着し、前記枠状体における一対の内向き突片と、前記一対の補助強化片における一対の下片とを各々2箇所ずつで固着する複数の固着具と、
を有し、
複数の固着具による前記枠状体と一対の補助強化片とにおける前記外向き突片と前記添設片の固着、及び、前記内向き突片と前記下片との固着により、吊り基体の圧縮強度、引張強度を強化するとともに、前記防振体取り付け支持機構部により吊り基体に一体的に支持した防振体により、吊り基体の圧縮側、引張側に作用する振動の防振を行うようにしたこと、
を特徴とする耐風圧型防振天井吊り体。
【請求項3】
建造物の天井スラブの下方に天井パネル体を吊り下げ支持する吊り下げ構造体を構成する耐風圧型防振天井吊り体であって、
金属材からなり、四角形状で平坦な上片と、この上片の短辺両隅から下方に屈曲形成した一対の垂直片と、一対の垂直片の各下端から前記上片と平行配置に、かつ、各々内方に向けて屈曲形成して対向させた一対の内向き突片と、前記一対の垂直片の両側垂直縁部から外方に向けて各々突設した片側2個ずつ両側で4個の外向き突片とを、一体に有する枠状体と、金属材からなり、前記枠状体における一対の外向き突片の両突出端間の距離にほぼ等しい幅を有する長方形状の添設片と、この添設片の下端から90度屈曲させて形成されるとともに、突出端に挟み込み凹部を設けた下片とを一体に有し、一対構成として、一対の下片を一対の垂直片の間から一対の内向き突片上に対向させる状態で添設する状態で一対添設片を前記枠状体の両側面に添設した2個の補助強化片と、からなり、上片が天井スラブから垂下した上部吊りボルトにナットを用いて連結される吊り基体と、
前記枠状体の上片と、この上片の短辺両隅から下方に屈曲形成した一対の垂直片との各境界を画する領域の中央部分に設けた各々前記吊り基体の外面側がV状に窪み、内面側が内方に向けて膨出する形態の一対の局所的塑性変形部と、
天然ゴム材からなりほぼ円筒状で、挿通孔を貫通状態に設け、上下端面の近傍位置の外周部には各々括れ凹部を設け、上端側に上部円板部を、下端側に下部円板部を形成し、前記吊り基体により支持される防振体と、
前記一対の補助強化片における各下片に設けた挟み込み凹部を、防振体の下側の括れ凹部に嵌合することによって前記吊り基体内に支持された前記防振体の挿通孔に対して、上部円板部上に上部座金を添設しつつ挿通し、前記吊り基体の下方に突出させる取り付けボルトと、前記吊り基体の下方に突出する取り付けボルトの突出端側に前記下部円板部に添設するように嵌装する下部座金と、下部座金の下側に突出する取り付けボルトの突出端側のネジ部に、ネジ孔の途中位置まで螺合し、締め付けることで、前記防振体を前記吊り基体に対して一体的に固着するとともに、下側から下部吊りボルトが螺着される連結ナットと、を有する防振体取り付け支持機構部と、
前記枠状体における片側2個ずつ両側で4個の外向き突片と、一対の補助強化片における添設片とを各々2箇所ずつで固着し、前記枠状体における一対の内向き突片と、前記一対の補助強化片における一対の下片とを各々2箇所ずつで固着する複数の固着具と、
を有し、
複数の固着具による前記枠状体と一対の補助強化片とにおける前記外向き突片と前記添設片の固着、及び、前記内向き突片と前記下片との固着、並びに、前記一対の局所的塑性変形部により、吊り基体の圧縮強度、引張強度を強化するとともに、前記防振体取り付け支持機構部により吊り基体に一体的に支持した防振体により、吊り基体の圧縮側、引張側に作用する振動の防振を行うようにしたこと、
を特徴とする耐風圧型防振天井吊り体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−67545(P2012−67545A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214992(P2010−214992)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(591167898)ヤクモ株式会社 (18)
【Fターム(参考)】