説明

耳式体温測定装置におけるLED点灯制御装置

【課題】バッテリ状態や装置の動作状態を表示するLEDを搭載しながらも、LEDによるバッテリ消費電力を低く抑える。
【解決手段】耳式体温測定装置1において、測定装置本体5はバッテリBATTの電圧状態を表示するための第1LED1と、温度測定状態を告知するための第2LED2とを備え、バッテリの電圧が第1の低電圧基準を下回った時に第1LEDを連続点灯させ、第2LEDを消灯させ、バッテリの電圧が第1の低電圧基準よりも低い第2の低電圧基準を下回った時に第1LEDを消灯させ、バッテリの電圧が第1の低電圧基準とそれよりも高い正常電圧基準との間の値である時に第1LEDを点滅させ、第2LEDを連続点灯させ、バッテリの電圧が正常電圧基準以上である時には第1、第2LEDを共に消灯させる制御をする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プローブの測温部を耳孔に挿入して鼓膜の温度を測る耳式体温測定装置において、バッテリの電圧状態、装置の体温測定動作状態を表示するLEDの点灯動作を制御するLED点灯制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば手術室や集中治療室では施術中の患者の体温測定が必須であり、長時間にわたり連続して体温測定ができ、かつ信頼性の高い体温測定装置が必要とされている。さらに、患者の体温測定を連続的に行うために、患者への負担が少ないことも必要である。このような必要に応える体温測定装置として、患者の耳孔に測温部を挿入して鼓膜の温度を測る耳式体温測定装置が注目されている。
【0003】
ところが従来の耳式体温測定装置の場合、測定装置本体が大がかりなものとなる問題点があり、その小型化が要望されていた。これに応えるものとして、特開2006−250883号公報(特許文献1)、特開2007−111363号公報(特許文献2)に記載されているような測温部を含むプローブを小型化し、また測定装置本体も小型化した耳式体温測定装置が知られている。
【0004】
小型化した耳式体温測定装置の場合、電源としてバッテリを用いている。上記の手術室や集中治療室での患者の体温測定に利用する場合、長時間連続して体温測定を行うためにはバッテリ消費電力が少なければ少ないほど好ましい。反面、バッテリを電源とする場合、バッテリ状態や装置の動作状態を何らかの方法で表示する必要がある。そのためには比較的消費電力が小さいLEDを利用するが、それでもバッテリ状態や装置の動作状態を表示するために複数のLEDを長時間点灯させておくと、体温測定本来の目的以外の目的のためにバッテリ電力を消費することになり、結果的には連続体温測定可能時間を短くしてしまうことになる。そのため、LEDを用いてバッテリ状態や装置の動作状態を表示する場合にも極力バッテリの消費電力が小さい態様で表示させることが望ましい。
【特許文献1】特開2006−250883号公報
【特許文献2】特開2007−111363号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した従来技術の課題に鑑みてなされたもので、バッテリ状態や装置の動作状態を表示するLEDを搭載しながらも、LEDによるバッテリ消費電力を低く抑え、耳式体温測定装置の本来の体温測定のために長時間連続使用を可能にする耳式体温測定装置におけるLED点灯制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの特徴は、電源としてのバッテリを内蔵する測定装置本体と、前記測定装置本体にコネクタにて切り離し可能な状態で接続された測温プローブとを備えた耳式体温測定装置において、前記測定装置本体は、前記バッテリの電圧状態を表示するための第1LEDと、温度測定状態を告知するための第2LEDと、前記バッテリの電圧を監視し、体温測定動作状態の正常・異常を判定し、前記第1LEDと第2LEDとの点灯動作を制御するマイクロコントローラとを備え、前記マイクロコントローラは、(a)前記バッテリ電圧監視手段が監視する前記バッテリの電圧が低下しているが当該装置の測定動作をある程度の時間継続できるとする第1の低電圧基準を下回った時に前記第1LEDを連続点灯させ、前記第2LEDを消灯させ、(b)前記バッテリの電圧が前記第1の低電圧基準よりも低い第2の低電圧基準を下回った時に前記第1LEDを消灯させ、(c)前記バッテリの電圧が前記第1の低電圧基準とそれよりも高い正常電圧基準との間の値である時に前記第1LEDを点滅させ、前記第2LEDを連続点灯させ、(d)前記バッテリの電圧が前記正常電圧基準以上である時には前記第1、第2LEDを共に消灯させる制御をする耳式体温測定装置におけるLED点灯制御装置である。
【0007】
本発明の別の特徴は、コモン電圧線にバッテリ電圧を印加するバッテリを内蔵する測定装置本体と、前記測定装置本体にコネクタにて切り離し可能な状態で接続された測温プローブとを備えた耳式体温測定装置において、前記測定装置本体は、前記バッテリ電圧状態を表示するための第1LEDと、温度測定状態を告知するための第2LEDと、前記コモン電圧線の電圧を監視し、体温測定状態の正常・異常を判定し、前記第2LEDを正常動作状態の時には消灯させ、異常動作状態の時には点滅若しくは連続点灯させるマイクロコントローラとを備え、前記コモン電圧線に前記第1LEDと第2LEDとのアノード側それぞれを並列に接続し、前記第1LEDと第2LEDのカソード側それぞれを前記マイクロコントローラの制御ポートそれぞれに接続し、前記コモン電圧線に、その電圧が所定の第1の低電圧基準よりも高い時にはHIGH電圧、低い時にはLOW電圧を出力する電圧検出ICの入力側を接続し、前記電圧検出ICの出力側を前記マイクロコントローラのリセットポートに接続すると共に、前記第1LEDのカソード側に接続し、前記第1LEDの降下電圧値は、前記電圧検出ICのLOW電圧出力状態にて前記第1の低電圧基準よりも低い第2の低電圧基準にて降伏電圧がかからない値とし、前記マイクロコントローラは、前記リセットポートに前記LOW電圧が入力されている状態では前記第1LED、第2LEDのカソード側に制御信号を出さず、前記コモン電圧線の電圧が前記第1の低電圧基準とそれよりも高い正常電圧基準との間の電圧である時に前記第1LEDのカソード側に点滅制御信号を出力し、前記正常電圧基準以上である時には消灯信号を出力する耳式体温測定装置におけるLED点灯制御装置である。
【0008】
上記発明の耳式体温測定装置におけるLED点灯制御装置では、前記マイクロコントローラは、正常動作時には前記測温プローブの測定温度入力が所定の上限温度基準を超えた時、測定温度が所定の下限温度基準を下回った時、測定温度の単位時間当たりの変動が所定の参照値よりも大きい時に前記第2LEDのカソード側に点滅制御信号を出力し、プローブ異常、プローブ連続使用可能時間の超過時及び当該測定装置の異常時に連続点灯信号を出力し、それ以外には前記第2LEDを消灯させるものとすることができる。
【0009】
また、上記発明の耳式体温測定装置におけるLED点灯制御装置では、前記第1LEDは赤色LED、前記第2LEDは緑色LEDとすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、バッテリを電源とするコモン電圧線の電圧が第1の低電圧基準よりも低下すれば第1LEDを点灯させ、第2LEDは消灯させることでバッテリの交換を必要を告知し、コモン電圧線の電圧が第2の低電圧基準よりも低下すれば第1、第2LEDと共に消灯させることで装置停止を告知し、コモン電圧線の電圧が第1の低電圧基準と正常電圧基準との間でなれば第1LEDを点滅点灯させることでバッテリの電圧低下が始まりまもなく交換が必要になることを告知する。しかも、体温測定動作が正常動作状態にあり、バッテリ電圧も正常状態にあれば第1、第2LEDを共に消灯させることで長時間の体温測定でもLEDの表示により電力消費することを抑制する。これにより、本発明によれば、バッテリ状態や装置の動作状態を表示するLEDを搭載しながらも、LEDによるバッテリ消費電力を低く抑え、耳式体温測定装置の本来の体温測定のために長時間連続使用を可能にする耳式体温測定装置におけるLED点灯制御装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて詳説する。図1は本発明の1つの実施の形態の耳式体温測定装置の機器構成を示し、図2は回路構成を示している。図1に示すように、本実施の形態の耳式体温測定装置1は、被測定者の耳孔に挿入して鼓膜の温度を測定し抵抗値として出力するプローブ2、このプローブ2の測定信号を送信し、またプローブ2に電源を供給するケーブル3、雄コネクタ4、温度測定演算処理その他の制御を行う測定装置本体5、この測定装置本体5に接続されたケーブル6、このケーブル6の先端に接続されている雌コネクタ7から成る。測定装置本体5のケーブル6に接続されている雌コネクタ7は、測定温度を表示するモニタ8に接続される。
【0012】
図2に示すように、測定装置本体5の主な構成要素は、プローブ2の測定温度に対応した抵抗値をAD変換するAD変換器51、プローブ2の温度測定信号を増幅する差動増幅器52、デジタル演算処理を行う制御信号処理回路53、制御信号処理回路53が求めた測定温度デジタル信号をモニタ8側の温度対応アナログ抵抗値に再変換する抵抗値出力回路54、スイッチ群55(スイッチS1、S2、S3)、スイッチング・ライン群56(SL1、SL2、SL3)、抵抗群57(R1、R2、R3、R4)、ケーブル6、雌コネクタ7を含む。
【0013】
プローブ2は、使用時にケーブル3及び雄コネクタ4を介して測定装置本体5に連結される。プローブ2は、後述する測温用の第1センサ25及び補正用の第2センサ26を備えている。センサ25、26はサーミスタで成る。抵抗R3、R4は図2ではプローブ2内に設けられているが、それらは測定装置本体5に設けられてもよい。雄コネクタ4は、慣用のカードエッジ式コネクタが好ましい。このカードに、校正値等の個別情報が記録される。
【0014】
プローブ2の測温用の第1センサ25及び補正用の第2センサ26の検出信号が、抵抗R3及びR4を介してAD変換器51に、そしてスイッチS2及びS3を介して差動増幅器52に入力される。
【0015】
AD変換器51は制御信号処理回路53及び差動増幅器52に接続され、制御信号処理回路53は抵抗値出力回路54に接続されている。制御信号処理回路53からはデジタル信号が出力され、抵抗値出力回路54からはアナログ信号が出力される。制御信号処理回路53はスイッチング・ライン群56を介してスイッチ群55に接続されている。スイッチ群55は差動増幅器52に接続されている。
【0016】
第1センサ25及び第2センサ26からの微少温度差信号を容易に検出できるようにするために、AD変換器51には高精度高分解能を持たせることが好ましい。抵抗R1、R2、R3、R4は高精度抵抗である。VrefはAD変換器51の基準電圧であって、AD変換値のフルスケール値である。
【0017】
図3〜図8に示すように、本実施の形態におけるプローブ2は、本体部21、本体部21に連結された測温部22、本体部21の外側に沿って設けられたタブ23を含む。本体部21は、長辺部分211と屈曲短辺部分212からなるほぼL字形に屈曲した円筒体に形成される。長辺部分211が測温対象者9の耳孔9aの下方から顔面こめかみ付近にそって延び、屈曲短辺部分212が測温部22の後述するフランジ部分221に結合する。この概略L字形形状は、測温部22の先端部分222を測温対象者9の耳孔9a内で鼓膜側に向けると共に、装着時に本体部21が耳介から脱落又は耳介上で回転しないようにする。本体部21の下端からはケーブル3が延びていて、後述する第1センサ25及び第2センサ26を装着した可撓性印刷回路基板246を雄コネクタ4に電気的に接続する。タブ23は、プローブ2を測温対象者9の耳孔9aに着脱する際に作業を容易にするために設けられている。
【0018】
測温部22は、本体部21の屈曲短辺部分212に結合するフランジ部分221、フランジ部分221から延びる先端部分222を含む。フランジ部分221は耳孔9aの入口を閉じるように形成され、また、先端部分222は外耳道の複雑な形状に合わせるように形成される。
【0019】
プローブ2を構成する本体部21、測温部22、タブ23、センサミラー24は断熱性材料から作られる。測温部22は、測温対象者9のアレルギー体質を考慮して、エラストマ又はシリコンゴムで被覆することが好ましい。
【0020】
前述したように、本実施の形態耳式体温測定装置1のプローブ2は、本体部21、測温部22、タブ23を含む。測温部22は、フランジ部分221、先端部分222を含む。図3に示すように、測温部22の先端部分222の内部にセンサミラー24が嵌め込まれる。センサミラー24は、例えば、図3に示したような平行光集光型センサミラー又は図4に示したような点光源集光型センサミラーのいずれでもよい。平行光集光型センサミラーは、円筒体ホルダの前面の平行光をセンサに集光する。点光源集光型センサミラーは、鼓膜想定位置の点光源からの光を集光する。センサミラー24は、各センサ25、26の組付け作業を容易にするために、測温部22とは別部品としている。
【0021】
センサミラー(点光源集光型センサミラー)24は絶縁性材料から作られ、図4に示すように、内部に凹形状反射面241を有する比較的長尺の円筒体ホルダ242、ホルダ242の後方から延びる連結軸245、ホルダ242の前面に張り渡された後述する可撓性印刷回路基板246、基板246に装着された後述する測温用の第1センサ25及び補正用の第2センサ26、ホルダ前面を覆う保護カバー27を含む。
【0022】
センサミラー24の反射面241は、素材の鏡面仕上げのままにするか、さらにその上に金属(例えば、アルミニウム)箔を貼り付けるか、ニッケルメッキを施すことが好ましい。保護カバー27は、放射エネルギ損失を抑え、センサ25、26を保護する材料であればよい。例えば、厚み0.015mmのポリエチレン・フィルムが好ましい。保護カバー27は、センサミラー24の円筒体ホルダ242及び連結軸245の外周面と測温部22の先端部分222の穴内周面との間に押し込まれて固定される。
【0023】
可撓性印刷回路基板246は、図5に示すように、可撓性絶縁材料(例えば、ポリエチレン等)からなる細長フィルムであって、その表面に回路導体246d及び熱溜まり246eが印刷され、さらに赤外線透過穴246c、第1位置決め穴246a、第2位置決め穴246bが貫通されている。これらの作用については後述する。
【0024】
図4、図6〜図8に示すように、センサミラー24の円筒体ホルダ242の外周面中間部分のほぼ対向部位に第1突起242a及び第2突起242bが設けられる。図5に示すように、可撓性印刷回路基板246の一端側で第1突起242a及び第2突起242bにそれぞれ対応する部位に第1位置決め穴246a及び第2位置決め穴246bが設けられる。第1突起242a及び第2突起242bが第1位置決め穴246a及び第2位置決め穴246bにそれぞれ係合される。このようにして、可撓性印刷回路基板246の一端側は、センサミラー24の円筒体ホルダ242の前面空間に簡単に張り渡される。
【0025】
可撓性印刷回路基板246の他端側がセンサミラー24の円筒体ホルダ242の外周面上を長手方向に沿って誘導され、基板246の他端側を本体部21の先端に埋め込まれた連結基板213に接続される。図3に示すように、各センサ25、26を装着した可撓性印刷回路基板246の他端は、連結基板213を介してケーブル3の先端に接続される。このようにして、可撓性印刷回路基板246は、測温部22内で本体部21の内部を貫通するケーブル3に電気的に接続される。
【0026】
図4、図6〜図8に示すように、可撓性印刷回路基板246の一端側は円筒体ホルダ242の前面空間に張り渡される。図5に示すように、円筒体ホルダ242の前面空間に張り渡される予定部位に相当する可撓性印刷回路基板246の中間部分に赤外線透過用穴246cが設けられる。その赤外線透過用穴246cの両側でかつ基板246の長手方向に第1センサ25及び第2センサ26が配置される。可撓性印刷回路基板246が円筒体ホルダ242の前面空間に張り渡される以前に、センサ25、26は予め基板246の回路導体246dに半田付けされる。このようにすれば、センサ25、26をセンサミラー24に装着することが容易になり、高度の技術を必要とせず、測温部22を量産化することができる。測温対象者9からの赤外線は基板246の赤外線透過穴246cを通過し、センサミラー24の反射面241で反射され、センサ25、26に至る。
【0027】
また、図5に示すように、円筒体ホルダ242の前面空間に張り渡される予定部位に相当する可撓性印刷回路基板246の中間部分において、その基板246の一端側に熱溜まり導体246eを設けることが好ましい。熱溜まり導体246eは、基板246に到達する赤外線を吸収し、センサ25、26への二次的熱影響を防止する。
【0028】
示度試験の結果、プローブ2の示度は外気温度によって影響を受けることがわかった。そこで、測温用のセンサ(第1センサ25)の外に別のセンサ(第2センサ26)を設けて、外気温度の影響を補正している。
【0029】
第1センサ25及び第2センサ26には、小熱容量、高熱感受性、高赤外線反応温度上昇率等の特性を備えたサーミスタ素子が適している。
【0030】
実験の結果、センサミラー24の円筒体ホルダ242の前面空間に張り渡された可撓性印刷回路基板246上には、集光点が一番高くなる温度分布が現れることを確認した。そこで、測温用の第1センサ25は、図4に示すように、センサミラー24の反射面241のほぼ集光点に配置される。外気温度補正用の第2センサ26は、集光点から外れた位置に配置される。センサ25、26は同一基板上にあるので、ほぼ同時に昇温し、補正がより簡単になっている。第1センサ25には、放射率が高く(赤外線を良く吸収し発熱する)、赤外線により発生した熱を発散し易い樹脂(例えば、黒色熱硬化性のエポキシ樹脂)が塗布される。第2センサ26には、赤外線を吸収し難い樹脂(例えば、2液硬化型エポキシ樹脂)が塗布される。
【0031】
第1センサ25及び第2センサ26を同時に温度校正する。この温度校正には、図2に示した測定装置本体5を用いて、測温対象者9の体温を測定する。まず、プローブコネクタ4を測定装置本体5に接続し、温度プラグ7をモニタ8に接続する。
【0032】
a)オフセット校正
スイッチ群55のスイッチS1をオン、スイッチS2及びS3をオフにする。AD変換を実行し、オフセット値を求める。抵抗R1、R2が既知であるから、AD入力値が既知となる。AD変換値とAD入力値との差は、差動増幅器52及びAD変換器51のオフセット誤差である。オフセット校正時のAD変換器入力V1は、R2/(R1+R2)×Vrefとなる。高精度AD変換器の場合、測定毎にセルフキャリブレーションが行われるため、AD変換器のオフセット誤差は無視してよい。従って、オフセット誤差は実質的に差動増幅器52に起因する。
【0033】
b)第1センサ25の測定
スイッチS2をオン、スイッチS1及びS3をオフにする。AD変換を実行し、AD変換値を求める。第1センサ25の測定時のAD変換入力V2は、R3/(R3+RTh1)×Vrefとなる。ただし、RTh1は、任意の温度における第1センサ25の抵抗値である。
【0034】
c)第2センサ26の測定
スイッチS3をオン、スイッチS1及びS2をオフにする。AD変換を実行し、AD変換値を求める。第2センサ26の測定時のAD変換入力V3は、R4/(R4+RTh2)×Vrefとなる。だだし、RTh2は任意の温度における第2センサ26の抵抗値である。
【0035】
d)第1センサ25と第2センサ26とのAD変換値差
第1センサ25のAD変換値からオフセット校正で求めたオフセット値を引く。この値と第1センサ25と第2センサ26とのAD変換値の差の関係から、測定しようとする目標点の温度を求める。
【0036】
測定された温度データは、MCU(マイクロコントローラ)である制御信号処理回路53からデジタル信号として出力され、また、抵抗値出力回路54からアナログ信号が出力される。アナログ信号はセンサ(サーミスタ)入力のモニタ8にて温度表示可能にするためである。
【0037】
測定された温度対応抵抗値のアナログ信号を制御信号処理回路53にて温度値を示すデジタル信号に変換して抵抗値出力回路54に出力する。抵抗値出力回路54は、図9に示す構成であり、11ビットアナログデジタル変換回路であり、温度値のデジタル信号をアナログ抵抗値に変換して出力する。すなわち、制御信号処理回路53のポートP0〜P10から11桁のオン/オフのデジタル信号が出力されると、これに対応する桁ビットのアナログスイッチAN0〜AN11が1(HIGH)でオープン(OFF)、0(LOW)でクローズ(ON)する。この結果、アナログスイッチANiがオープンしたビットの抵抗Riの直列合成抵抗値が温度値のデジタル信号に対応した抵抗値Routに変換される。この抵抗値出力回路54のAB端子間にはVccの1/2の1.5Vccのバイアス電圧が印加してあり、結果としてAB端子間には抵抗値Routに対応した電流Iout(=Vcc/2Rout)が出力される。モニタ8はこの電流Ioutをサーミスタに流れる電流としてそれに対応する抵抗値を求め、さらに抵抗値/温度変換により温度表示する。
【0038】
測定装置本体5は、測定対象温度を長時間期間中連続的に測定することを目的とし、その操作手順は、(1)校正、(2)第1センサ25の測定、(3)第2センサ26の測定、(4)測定温度計算、(5)温度データ出力となる。前記の操作手順(1)−(5)を連続的に繰り返す。
【0039】
次に、図10〜図13を用いて、測定装置本体5に内蔵されているコモン電圧線Vccの電源であるバッテリBATTの電圧状態を表示するための赤色の第1LED(LED1)と、測定装置1の動作状態を表示するための緑色の第2LED(LED2)とに対するLED点灯制御回路300について説明する。
【0040】
図10に示すように、測定装置本体5の表側にバッテリBATTの電圧状態を表示するための赤色の第1LED1と装置の動作状態を表示するための緑色の第2LED2が設置されている。
【0041】
図11に示すように、この測定装置本体5内に組み込まれているLED点灯制御回路300は、定格電圧3VのバッテリBATTの出力電圧をコモン電圧Vccとし、このコモン電圧Vccが第1の低電圧基準である2.6Vよりも高いか低いかによりHIGH/LOWのリセット信号RESETを制御信号処理回路53のリセットポートRSに出力するリセットIC301、コモン電圧Vccにアノード側が並列に接続された赤色の第1LED1と緑色の第2LED2、第1LED1のカソード側とリセットIC301のリセット信号出力線との間に介挿されたショットキーダイオードD3で構成されている。
【0042】
LED1のカソード側はまた制御信号処理回路53のポートP11に接続され、LED2のカソード側はポートP12に接続されている。制御信号処理回路53内にはLED点灯制御ロジックがプログラムとして組み込んである。このLED点灯制御ロジックの機能構成を示すと、コモン電圧監視部302、装置動作状態判定部303、第1LED点灯制御部304、第2LED点灯制御部305を含んでいる。尚、制御信号処理回路53は上述した体温測定のための諸演算を実行する体温測定動作制御部306を備え、装置動作状態判定部303はこの体温測定動作制御部306から測定温度データを取得し、またプローブ異常、本体異常の動作状態情報も取得する。
【0043】
このLED点灯制御回路300によるLED点灯制御動作を、図12、図13のフローチャートを用いて説明する。
【0044】
ステップST11、ST12:バッテリBATTの電圧低下によりコモン電圧Vccが第2の低電圧基準である2.3Vより低くなれば、LED1、LED2共に降伏電圧以上の電圧が印加されなくて消灯する。
【0045】
ステップST13、ST14:コモン電圧Vccが2.3V以上で、かつ、第1の低電圧基準2.6Vよりも低い場合、リセットIC301のRESET信号はLOWであり、制御信号処理回路53はリセット状態になり、ポートP11、P12は共にハイインピーダンス(OFF)状態になり、第2LED2は消灯する。他方、第1LED1にはコモン電圧Vccから降伏電圧以上の電圧が印加されて導通状態となり、連続点灯する。このときは赤色LEDだけが点灯する状態となり、バッテリ電圧低下のため測定装置本体5が動作できない状態になっていることを警告することになる。
【0046】
ステップST15、ST16:バッテリ電圧が第1の低電圧基準2.6V以上で正常電圧基準である2.7Vよりも低い場合、リセットIC301はRESET信号にHIGH信号を出力し、制御信号処理回路53のリセットポートRSにはHIGH電圧が印加され、動作可能となる。この場合、バッテリ電圧が2.7Vよりも低下しているのでバッテリBATTの交換が必要である。そのために、短時間であれば測定装置本体5の動作が可能であるので、コモン電圧監視部302の測定したコモン電圧Vccが2.6V以上で2.7Vよりも低い場合、第1LED1の点灯制御部304はポートP11に点滅制御信号を出力して第1LED1を点滅動作させ、赤色LEDの点滅にてバッテリ電圧低下を警告する。この場合、第2LED点灯制御部305はポートP12に出力せず、第2LED2は連続点灯状態になる。
【0047】
ステップST17、ST18:コモン電圧監視部302が計測するコモン電圧Vccが2.7V以上である場合、バッテリ電圧は正常電圧であるとし、第1LED点灯制御部304はポートP11に、第2LED点灯制御部305はポートP12に共にHIGHとなる信号を出力することで第1LED1、第2LED2を共に消灯させ、バッテリ電圧に問題がないこと、また、測定装置本体5が正常動作状態にあることを告知する。
【0048】
図13は、バッテリ電圧が正常であっても、測定装置本体5の測定動作状態に異常が発生した時にそれを第1LED1、第2LED2の点灯制御にて告知するための制御フローを示している。
【0049】
装置動作状態判定部303は第2LED点灯制御部305を用いて第2LED2を次のように連続点灯、あるいは点滅点灯させる。すなわち、プローブ2の測定温度が40℃よりも高い時、プローブ2の測定温度が22℃よりも低い時及びプローブ2の測定温度の単位時間当たりの変動ΔT/secが±0.3℃よりも大きい時には、第2LED2のカソード側にポートP12から点滅制御信号(間歇的なLOW電圧)を出力して点滅動作させる(ステップST21、ST22)。
【0050】
また、制御信号処理回路53がそれに組み込まれている異常判定ロジックにてプローブ異常を判定した時、プローブ連続使用可能時間24時間を超過した時及び当該測定装置本体5の異常を判定した時には、第2LED2のカソード側にポートP12から連続点灯制御信号(連続的なLOW電圧)を出力して連続点灯させる(ステップST23、ST24)。
【0051】
プローブ2にも装置本体5にも異常がない場合には、第1LED1、第2LED2は共に消灯状態にしておく。
【0052】
LEDを搭載し、LEDの点灯により測定装置の動作状態を告知する場合、特に正常動作状態を告知するためにLEDを連続点灯させておくならば、バッテリを電源とする耳式体温測定装置の場合、制御信号処理回路53を構成するマイクロコントローラの方では約1mA程度しか消費しない電力を、1つのLEDの連続点灯にてそれと同程度の電力を同時に消費することになり、単純計算でもバッテリ消耗がLEDを使用しない場合の2倍速くなることになる。
【0053】
これに対して、本実施の形態のLED点灯制御装置を耳式体温測定装置に組み込むことにより、バッテリ消耗や測定装置の動作状態の異常をLEDの点灯態様によって告知することができ、しかもバッテリ電圧が正常であり、測定装置も正常動作している状態では2個のLEDを共に消灯させておくことでLEDによる電力消費を極力少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の1つの実施の形態の耳式体温測定装置の概略構成説明図である。
【図2】上記実施の形態の耳式体温測定装置の概略回路構成図である。
【図3】上記実施の形態の耳式体温測定装置を構成するプローブの一部破断側面図である。
【図4】上記実施の形態の耳式体温測定装置におけるプローブを構成するセンサミラーの縦断面図である。
【図5】上記実施の形態の耳式体温測定装置におけるセンサミラーを構成する可撓性印刷回路基板の平面図である。
【図6】図4のVI−VI線から見たセンサミラーの正面図である。
【図7】図6の矢印VII方向から見たセンサミラーの斜視図である。
【図8】図6の矢印VIII方向から見たセンサミラーの斜視図である。
【図9】上記実施の形態の耳式体温測定装置における抵抗値出力回路部分の回路図。
【図10】上記実施の形態の耳式体温測定装置における測定装置本体の斜視図。
【図11】上記実施の形態の耳式体温測定装置におけるLED点灯制御回路のブロック図。
【図12】上記実施の形態の耳式体温測定装置におけるLED点灯制御回路によるLED点灯制御のフローチャート。
【図13】上記実施の形態の耳式体温測定装置におけるLED点灯制御回路による異常発生時のLED点灯制御のフローチャート。
【符号の説明】
【0055】
1 耳式体温測定装置
2 プローブ
3、6 ケーブル
4 雄コネクタ
5 測定装置本体
9 測温対象者
9a 耳孔
21 本体部
22 測温部
23 タブ
24 センサミラー
25 第1センサ
26 第2センサ
27 保護カバー
53 制御信号処理回路
54 抵抗値出力回路
300 LED点灯制御回路
301 リセットIC
302 コモン電圧監視部
303 装置動作状態判定部
304 第1LED点灯制御部
305 第2LED点灯制御部
306 体温測定動作制御部
BATT バッテリ
LED1 第1LED
LED2 第2LED

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源としてのバッテリを内蔵する測定装置本体と、前記測定装置本体にコネクタにて切り離し可能な状態で接続された測温プローブとを備えた耳式体温測定装置において、
前記測定装置本体は、前記バッテリの電圧状態を表示するための第1LEDと、温度測定状態を告知するための第2LEDと、前記バッテリの電圧を監視し、体温測定動作状態の正常・異常を判定し、前記第1LEDと第2LEDとの点灯動作を制御するマイクロコントローラとを備え、
前記マイクロコントローラは、
(a)前記バッテリ電圧監視手段が監視する前記バッテリの電圧が低下しているが当該装置の測定動作をある程度の時間継続できるとする第1の低電圧基準を下回った時に前記第1LEDを連続点灯させ、前記第2LEDを消灯させ、
(b)前記バッテリの電圧が前記第1の低電圧基準よりも低い第2の低電圧基準を下回った時に前記第1LEDを消灯させ、
(c)前記バッテリの電圧が前記第1の低電圧基準とそれよりも高い正常電圧基準との間の値である時に前記第1LEDを点滅させ、前記第2LEDを連続点灯させ、
(d)前記バッテリの電圧が前記正常電圧基準以上である時には前記第1、第2LEDを共に消灯させる制御をすることを特徴とする耳式体温測定装置におけるLED点灯制御装置。
【請求項2】
コモン電圧線にバッテリ電圧を印加するバッテリを内蔵する測定装置本体と、前記測定装置本体にコネクタにて切り離し可能な状態で接続された測温プローブとを備えた耳式体温測定装置において、
前記測定装置本体は、前記バッテリ電圧状態を表示するための第1LEDと、温度測定状態を告知するための第2LEDと、前記コモン電圧線の電圧を監視し、体温測定状態の正常・異常を判定し、前記第2LEDを正常動作状態の時には消灯させ、異常動作状態の時には点滅若しくは連続点灯させるマイクロコントローラとを備え、
前記コモン電圧線に前記第1LEDと第2LEDとのアノード側それぞれを並列に接続し、
前記第1LEDと第2LEDのカソード側それぞれを前記マイクロコントローラの制御ポートそれぞれに接続し、
前記コモン電圧線に、その電圧が所定の第1の低電圧基準よりも高い時にはHIGH電圧、低い時にはLOW電圧を出力する電圧検出ICの入力側を接続し、
前記電圧検出ICの出力側を前記マイクロコントローラのリセットポートに接続すると共に、前記第1LEDのカソード側に接続し、
前記第1LEDの降下電圧値は、前記電圧検出ICのLOW電圧出力状態にて前記第1の低電圧基準よりも低い第2の低電圧基準にて降伏電圧がかからない値とし、
前記マイクロコントローラは、前記リセットポートに前記LOW電圧が入力されている状態では前記第1LED、第2LEDのカソード側に制御信号を出さず、前記コモン電圧線の電圧が前記第1の低電圧基準とそれよりも高い正常電圧基準との間の電圧である時に前記第1LEDのカソード側に点滅制御信号を出力し、前記正常電圧基準以上である時には消灯信号を出力することを特徴とする耳式体温測定装置におけるLED点灯制御装置。
【請求項3】
前記マイクロコントローラは、正常動作時には前記測温プローブの測定温度入力が所定の上限温度基準を超えた時、測定温度が所定の下限温度基準を下回った時、測定温度の単位時間当たりの変動が所定の参照値よりも大きい時に前記第2LEDのカソード側に点滅制御信号を出力し、プローブ異常、プローブ連続使用可能時間の超過時及び当該測定装置の異常時に連続点灯信号を出力し、それ以外には前記第2LEDを消灯させることを特徴とする請求項2に記載の耳式体温測定装置におけるLED点灯制御装置。
【請求項4】
前記第1LEDは赤色LED、前記第2LEDは緑色LEDであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の耳式体温測定装置におけるLED点灯制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2009−254744(P2009−254744A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−110276(P2008−110276)
【出願日】平成20年4月21日(2008.4.21)
【出願人】(500374294)株式会社バイオエコーネット (8)
【Fターム(参考)】