説明

聴導ロボット

【課題】聴覚障害者が日常生活を不自由なく過ごすことを可能とする聴導ロボットを提供する。
【解決手段】聴導ロボット1として、通知すべきイベントの発生を検知する検知機能を有する制御部16の制御により、イベントの発生時にライト10からフラッシュのような閃光を発し、その通知内容を文字表示板12に表示する。さらに、自走用車輪駆動部15を駆動して視聴障害者の傍まで自走させる。また、聴覚障害者が所持するバイブレータ機能および表示機能付き受信機に通知内容を転送するとともにバイブレータ機能を起動する。また、電話・FAX、PC、セキュリティシシテム、電化システムなどと接続し、電話・メール等の着信、来訪者の訪問、不審者の侵入、風呂・炊飯器・洗濯・湯沸し等の完了を検知して、その都度、聴覚障害者に自動的に通知する。体調不良など緊急事態の発生時に通報ボタン13を押すことにより、自動的に病院や警察へ通報する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、聴導ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、聴覚障害者が、健常者並みに不自由なく家庭における生活を営むことができるためには、聴導犬を飼うか、あるいは、家族・親族等による協力が必要であった。しかしながら、日本においては、聴導犬の頭数が少なく、また、人手による協力を行う場合でも、家族・親族が高齢であったり、病気になったりすると、聴覚障害者に対する十分なサポートができない場合がある。
【0003】
このため、例えば、特許文献1の特開2002−000574号公報「介護支援用ロボットおよび介護支援システム」には、被介護人による操作入力が可能で、介護に必要な情報を適宜再生して、被介護人と介護人との間で情報交換を行う介護支援用のロボットが提案されている。
【特許文献1】特開2002−000574号公報(第4−5頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1の場合、被介護人との間のコミュニケーション手段は、健常者の場合と同等のスピーカやディスプレイへの出力情報に頼っており、聴覚に障害がある人にとっては、介護ロボットからの通知を認識することができず、見落としてしまう欠点がある。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、聴覚障害者に対する確実な支援を可能とする聴導ロボットを提供することに、その目的がある。
【0006】
つまり、本発明は、聴覚障害者の生活に必要な情報伝達を行うための通信機能を備えた自走型の聴導ロボットとして、電話・メール等の着信、来訪者の訪問、その他、風呂・炊飯器・洗濯・湯沸し等の完了などの日常生活において必要とする情報を自動的に検知して、検知する都度、聴覚障害者に対して伝達することを可能にするとともに、聴覚障害者にバイブレータ機能および表示機能付き受信機を携帯させることにより、聴覚に頼ることなく、また、聴導ロボットから離れた場所に聴覚障害者がいる場合であっても、聴導ロボットからの情報を確実に受け取ることを可能とすることに、その目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の課題を解決するため、本発明による聴導ロボットは、次のような特徴的な構成を採用している。
【0008】
(1)聴覚障害者の生活を支援する聴導ロボットであって、聴覚障害者に対して通知すべきイベントの発生を検知する検知機能と、閃光を発するライトと、前記イベントが示す通知内容を表示する文字表示板と、を少なくとも備え、前記イベントを検知した場合、前記ライトから閃光を発するとともに、前記文字表示板に通知内容を表示する聴導ロボット。
(2)上記(1)の聴導ロボットにおいて、当該聴導ロボットを自走させるための自走用車輪駆動部を備えている聴導ロボット。
(3)上記(1)または(2)の聴導ロボットにおいて、聴覚障害者が所持するバイブレータ機能および表示機能付き受信機に対して、発生した前記イベントの通知内容を転送するとともに、バイブレータ機能を作動させることにより、前記聴覚障害者に前記イベントの発生を通知する聴導ロボット。
(4)上記(1)ないし(3)のいずれかの聴導ロボットにおいて、電話・FAXと当該聴導ロボットが接続され、前記検知機能が、前記電話・FAX電話への着信を聴覚障害者に通知すべきイベントとして検知する聴導ロボット。
(5)上記(1)ないし(4)のいずれかの聴導ロボットにおいて、電子メールを送受信するPC(Personal Computer)と当該聴導ロボットが接続され、前記検知機能が、前記PCへの電子メール受信を聴覚障害者に通知すべきイベントとして検知する聴導ロボット。
(6)上記(5)の聴導ロボットにおいて、通知内容の詳細情報の表示を指示する表示ボタンを備え、前記表示ボタンの押下操作により、前記PCで受信した電子メールのメール内容を前記PCから転送させて、前記文字表示板に表示する聴導ロボット。
(7)上記(1)ないし(6)のいずれかの聴導ロボットにおいて、聴覚障害者の住居のインターフォンと通話可能な子機を付属して備えるとともに、住居を警備するセキュリティシステムと当該聴導ロボットが接続され、前記検知機能が、前記セキュリティシステムによる訪問者の来訪を聴覚障害者に通知すべきイベントとして検知した場合に、聴覚障害者が前記子機を使用して、前記インターフォンとの間で通話を可能とする聴導ロボット。
(8)上記(1)ないし(6)のいずれかの聴導ロボットにおいて、ネットワークを介して警察に自動的に通報する警報機能を備えるとともに、住居を警備するセキュリティシステムと当該聴導ロボットが接続され、前記検知機能が、前記セキュリティシステムによる不審者の侵入を聴覚障害者に通知すべきイベントとして検知した場合、前記ライトから閃光を発するとともに、前記文字表示板に通知内容を表示するのみならず、前記警報機能により、警察へ自動通報する聴導ロボット。
(9)上記(1)ないし(8)のいずれかの聴導ロボットにおいて、風呂の給水および/または湯沸しの終了を管理する電化システムと当該聴導ロボットが接続され、前記検知機能が、前記電化システムによる風呂の給水や湯沸しの終了を聴覚障害者に通知すべきイベントとして検知する聴導ロボット。
(10)上記(1)ないし(9)のいずれかの聴導ロボットにおいて、炊飯の完了および/またはやかん・鍋の湯沸し完了および/または洗濯の終了を管理する電化システムと当該聴導ロボットが接続され、前記検知機能が、前記電化システムによる炊飯の完了および/またはやかん・鍋の湯沸し完了および/または洗濯の終了を聴覚障害者に通知すべきイベントとして検知する聴導ロボット。
(11)上記(1)ないし(10)のいずれかの聴導ロボットにおいて、ネットワークを介して病院および/または警察に自動的に緊急通報する緊急通報機能と、緊急事態の発生を通報するための通報ボタンとを備え、前記通報ボタンの押下操作がなされた際に、前記緊急通報機能により、病院および/または警察へ緊急通報する聴導ロボット。
【発明の効果】
【0009】
本発明の聴導ロボットによれば、以下のような効果を奏することができる。
【0010】
第1に、聴導ロボットにより日常生活を過ごすために必要な情報が随時聴覚障害者に提供されるので、聴覚障害者を支援する家族、親族の身体的・精神的な負担を低減することができる。
【0011】
第2に、聴導ロボットと生活を共にすれば、聴覚障害者自身で、他人からの支援を受けることなく、生活することができるようになり、自立化も可能である。
【0012】
第3に、聴導ロボットは、聴覚障害者のみならず健常者に対しても有効であることは当然であるが、さらには、本発明の聴導ロボットにおいて文字表示板を用いて文字表示する通知内容を音声でも通知するようにすれば、聴覚ではなく視覚に障害がある人に対しても容易に適用することが可能となるという、拡張性を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明による聴導ロボットの好適実施形態例について添付図を参照して説明する。
【0014】
(本発明の主要な特徴)
本発明においては、聴導犬のように、家庭内における生活に必要な情報の伝達を聴覚障害者に対して行うとともに、通信機能をも備えた自走型の聴導ロボットを実現している点に、主要な特徴を有している。
【0015】
つまり、聴覚障害者の生活に必要な情報伝達を行う、通信機能をも備えた本発明に係る自走型聴導ロボットを、聴覚障害者の家庭内に配置することにより、電話・メール等の着信、来訪者の訪問、その他、風呂・炊飯器・洗濯・湯沸し等の完了など、日常生活に必要な情報を当該聴導ロボットが自動的に検知し、その都度、聴覚障害者に対してその旨を伝達するので、聴覚障害者は不自由なく日常生活を過ごすことができる手段を提供している。
【0016】
また、聴覚障害者がバイブレータ機能および表示機能付き受信機を携帯することにより、聴覚情報に頼ることなく、また、聴導ロボットから離れた場所にいる場合であっても、聴導ロボットからの情報を受け取ることができる。
【0017】
さらには、聴覚障害者本人が、例えば体調不良になった場合のように、何らかの支援を要求したい場合には、聴導ロボットに付属の通報ボタンを聴覚障害者が押すことにより、自動的に、例えば、救急車の手配をしたり、病院へ通報したりすることも可能であり、聴覚障害者に発生した緊急事態への対応も可能とすることができる。
【0018】
(実施例の構成)
本発明に係る聴導ロボットの構成例について、図1を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る聴導ロボットの一構成例を説明するための概念図である。図1に示すように、聴導ロボット1は、家庭内に備えられているセキュリティシステム2、PC3あるいは電化システム6と通信し、また、電話・FAX4への着信信号を認識し、警察・病院5とネットワーク9を介して通信し、さらには、聴覚障害者7との間で、直接および/またはバイブレータ機能および表示機能付き受信機8を介して、コミュニケーションを図ることができるように構成されている。
【0019】
また、図2に示すように、聴導ロボット1には、聴覚障害者7への通知用の閃光を出力するライト10、電話・FAX4や玄関に設置されたインターフォンに無線接続された子機11を備えるとともに、セキュリティシステム2により検知される訪問情報や防犯情報、PC3に届いた電子メール、電化システム6からの情報等を表示するための文字表示板12(ディスプレイ)、さらに、警察・病院5への緊急通報用の通報ボタン13、表示すべき情報の文字表示板12への表示を指示する表示ボタン14、聴導ロボット1を聴覚障害者7の傍まで自走させるための自走用車輪駆動部15、および、聴導ロボット1全体の動作を制御する内蔵の制御部16が少なくとも備えられている。ここに、図2は、本発明に係る聴導ロボット1の内部構成の一例を説明するための模式図である。
【0020】
図2において、聴導ロボット1の制御部16が、聴導ロボット1に接続されているセキュリティシステム2、PC3、電話・FAX4、電化システム6などからの通知信号を検知すると、制御部16の制御の下、自走用車輪駆動部15を駆動して、聴覚障害者7の傍まで聴導ロボット1を自走させるとともに、頭部に取り付けてあるライト10からフラッシュのような閃光を出力することによって、聴覚障害者7に対して、何らかの通知がある旨を認識させる。さらに、制御部16の制御の下、検知された当該通知信号が示す通知内容を文字表示板12へ点滅表示したり、聴覚障害者7が所持するバイブレータ機能および表示機能付き受信機8に通知内容を転送してバイブレータ機能を作動させたりする。
【0021】
さらには、制御部16が聴覚障害者7の通報ボタン13の押下操作を検知すると、自動的に、ネットワーク9に対して発呼動作を行い、警察・病院等5に対して聴覚障害者7の異常を知らせる通報を行う。あるいは、聴覚障害者7の表示ボタン14の押下操作を検知すると、自動的に、通知内容の詳細情報を取得して、取得した詳細情報を文字表示板12へ表示する。詳細情報としては、例えば、受信した電子メールの内容であったり、インターネットの情報を参照した場合には、そのWebページの内容であったり、警察・病院等5からの問い合わせや回答の内容であったり、聴覚障害者7にとって必要とする各種の情報を表示することができる。
【0022】
なお、図2には、通報ボタン13、表示ボタン14を1個ずつ示しているが、必要に応じて、それぞれ、通報先や表示元に対応して複数のボタンを用意しても良い。また、ライト10も、フラッシュのような閃光を発するのみならず、断続的に閃光するようにしても良い。さらには、ライト10は、通知内容に応じて、異なる周期で断続的に閃光を発出するようにしても良いし、閃光の色も、異なる色の光を発出するようにしても良い。
【0023】
(実施例の動作の説明)
次に、図1,2に示す聴導ロボット1における動作例について図3のフローチャートを用いて説明する。図3は、本発明に係る聴導ロボット1の動作の一例を説明するためのフローチャートである。図3において、聴導ロボット1に接続されているセキュリティシステム2、PC3、電話・FAX4、電化システム6などから聴覚障害者7に対して通知すべきイベントが発生したことを制御部16が検知すると(ステップS01)、制御部16は、自走用車輪駆動部15を駆動して、聴覚障害者7の方へ自走させる(ステップS02)。
【0024】
しかる後、制御部16は、聴導ロボット1の頭部に取り付けてあるライト10からフラッシュのような閃光を発出させて、聴覚障害者7に、通知すべきイベントが発生していることを認識させ(ステップS03)、聴導ロボット1の胴体に取り付けてある文字表示板12に、そのイベントが示す通知内容を点滅表示する(ステップS04)。
【0025】
さらに、聴覚障害者7がバイブレータ機能および表示機能付き受信機8を所持している場合に備えて、通知内容をバイブレータ機能および表示機能付き受信機8に転送するとともに(ステップS05)、バイブレータ機能および表示機能付き受信機8のバイブレータ機能を起動して、聴覚障害者7に対して、バイブレータ機能および表示機能付き受信機8に表示されている通知内容を参照するように促す(ステップS06)。
【0026】
次に、聴導ロボット1における具体的な動作例について、いくつかの例を説明する。まず、電話・FAX4に対して着信があった場合の聴導ロボット1の動作について説明する。電話・FAX4に対する着信があった場合は、電話・FAX4に接続された聴導ロボット1は、制御部16により、電話・FAX4に対する着信を検知して、自走用車輪駆動部15を駆動させることによって、聴覚障害者7の方へ自走して、聴覚障害者7の傍にまで赴く。しかる後、制御部16により、聴導ロボット1の頭部に取り付けてあるライト10を制御して、フラッシュのような閃光を出力すると同時に、聴導ロボット1の胴体に取り付けてある文字表示板12に『電話着信』などと点滅表示させることによって、電話・FAX4の着信を聴覚障害者7に通知する。通知を認識した聴覚障害者7は、聴導ロボット1に付属する子機11を用いて、応答して、通話を開始することができる。
【0027】
また、PC3に電子メールの受信があった場合は、PC3に接続された聴導ロボット1は、制御部16により、PC3に対する電子メールの受信を検知して、自走用車輪駆動部15を駆動させることによって、聴覚障害者7の方へ自走して、聴覚障害者7の傍にまで赴く。しかる後、制御部16により、聴導ロボット1の頭部に取り付けてあるライト10を制御して、フラッシュのような閃光を出力すると同時に、聴導ロボット1の胴体に取り付けてある文字表示板12に『電子メール受信』などと点滅表示させることによって、電子メールの受信を聴覚障害者7に通知する。通知を認識した聴覚障害者7は、表示ボタン14を押すことによって、聴導ロボット1の文字表示板12に、受信した電子メールの内容をPC3から転送させて表示することができる。
【0028】
また、誰かが自宅を訪問してきた場合は、セキュリティシステム2に接続された聴導ロボット1は、制御部16により、セキュリティシステム2のインターフォンの鳴動信号を検知して、自走用車輪駆動部15を駆動させることによって、聴覚障害者7の方へ自走して、聴覚障害者7の傍にまで赴く。しかる後、制御部16により、聴導ロボット1の頭部に取り付けてあるライト10を制御して、フラッシュのような閃光を出力すると同時に、聴導ロボット1の胴体に取り付けてある文字表示板12に『訪問客あり』などと点滅表示させることによって、訪問客がある旨を聴覚障害者7に通知する。通知を認識した聴覚障害者7は、聴導ロボット1に付属する子機11を用いて、インターフォンに応答して、訪問客と対話することができる。
【0029】
また、空き巣・泥棒等の不審者が自宅への侵入を図った場合は、セキュリティシステム2に接続された聴導ロボット1は、制御部16により、セキュリティシステム2の警報信号を検知して、自走用車輪駆動部15を駆動させることによって、聴覚障害者7の方へ自走して、聴覚障害者7の傍にまで赴く。しかる後、制御部16により、聴導ロボット1の頭部に取り付けてあるライト10を制御して、フラッシュのような閃光を出力すると同時に、聴導ロボット1の胴体に取り付けてある文字表示板12に『不審者侵入』などと点滅表示させることによって、電子メールの受信を聴覚障害者7に通知する。さらに、同時に、セキュリティシステム2により、あるいは、聴導ロボット1から、ネットワーク9を介して、警察等5へ自動的に通報される。また、通知を認識した聴覚障害者7は、聴導ロボット1に付属する子機11を用いて、関係者に対して緊急連絡を行うこともできる。
【0030】
また、風呂の給水が終了した場合や、風呂が沸いた場合は、電化システム6に接続された聴導ロボット1は、制御部16により、電化システム6の給水完了信号および/または風呂温度センサの感知信号を検知して、自走用車輪駆動部15を駆動させることによって、聴覚障害者7の方へ自走して、聴覚障害者7の傍にまで赴く。しかる後、制御部16により、聴導ロボット1の頭部に取り付けてあるライト10を制御して、フラッシュのような閃光を出力すると同時に、聴導ロボット1の胴体に取り付けてある文字表示板12に『給水完了』や『風呂OK』などと点滅表示させることによって、風呂の準備が完了したことを聴覚障害者7に通知する。通知を認識した聴覚障害者7は、風呂の準備が完了したことを確認することができる。
【0031】
また、炊飯が完了した場合や、やかん・鍋のお湯が沸いた場合や、洗濯が終了した場合は、電化システム6に接続された聴導ロボット1は、制御部16により、電化システム6の炊飯完了信号および/またはやかん温度センサの感知信号および/または洗濯機の選択終了信号を検知して、自走用車輪駆動部15を駆動させることによって、聴覚障害者7の方へ自走して、聴覚障害者7の傍にまで赴く。しかる後、制御部16により、聴導ロボット1の頭部に取り付けてあるライト10を制御して、フラッシュのような閃光を出力すると同時に、聴導ロボット1の胴体に取り付けてある文字表示板12に『炊飯完了』や『やかん・鍋沸騰』や『洗濯終了』などと点滅表示させることによって、炊飯が完了したことやお湯が沸いたことや洗濯が終了したことを聴覚障害者7に通知する。通知を認識した聴覚障害者7は、炊飯が完了したことやお湯が沸いたことや洗濯が終了したことを確認することができる。
【0032】
また、聴覚障害者7が急病などによって具合が悪くなった場合は、聴導ロボット1の胴体に取り付けてある通報ボタン13を押すと、制御部16により、通報ボタン13の押下を検知して、自動的に、聴導ロボット1から、ネットワーク9を介して、警察・病院等5へ急病の発生などを示す緊急通報をしたり、救急車の手配等をしたりする。
【0033】
なお、聴覚障害者7がバイブレータ機能および表示機能付き受信機8を所持している場合には、聴覚障害者7が、別の階に行っていたり、トイレットや風呂に入っていたりする場合など、聴導ロボット1から離れた場所にいたとしても、聴導ロボット1の制御部16の制御により、聴導ロボット1の文字表示板12に点滅表示される『電話着信』、『電子メール受信』、『訪問客あり』などの通知内容を、バイブレータ機能および表示機能付き受信機8に転送させるとともに、バイブレータ機能および表示機能付き受信機8のバイブレータ機能を作動させて、電話着信があることや電子メール受信があることや訪問客があることなどを聴覚障害者7に通知することができ、聴導ロボット1の文字表示板12を見なくても、問題なくコミュニケーションを取ることができる。
【0034】
(本実施例による効果)
本実施例によれば、聴導犬を必要とする聴覚障害者7の家庭にとっても、聴導犬と同等以上の機能を有する聴導ロボット1を採用することにより、次のような点で非常に有効である。
【0035】
第1に、聴導ロボット1により日常生活を過ごすために必要な情報が随時聴覚障害者7に提供されるので、聴覚障害者7を支援する家族、親族の身体的・精神的な負担を低減することができる。
【0036】
第2に、聴導ロボット1と生活を共にすれば、聴覚障害者7自身で、他人からの支援を受けることなく、生活することができるようになり、自立化も可能である。
【0037】
第3に、聴導ロボット1は、聴覚障害者7のみならず健常者に対しても有効であることは当然であるが、さらには、本発明の聴導ロボット1において文字表示板12を用いて文字表示する通知内容を音声を用いて通知するようにすれば、聴覚ではなく視覚に障害がある人に対しても容易に適用することが可能となるという、拡張性を有している。
【0038】
以上、本発明の好適実施例の構成を説明した。しかし、斯かる実施例は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であることは、当業者には容易に理解できよう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る聴導ロボットの一構成例を説明するための概念図である。
【図2】本発明に係る聴導ロボットの内部構成の一例を説明するための模式図である。
【図3】本発明に係る聴導ロボットの動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0040】
1 聴導ロボット
2 セキュリティシステム
3 PC
4 電話・FAX
5 警察・病院
6 電化システム
7 聴覚障害者
8 バイブレータ機能および表示機能付き受信機
9 ネットワーク
10 ライト
11 子機
12 文字表示板
13 通報ボタン
14 表示ボタン
15 自走用車輪駆動部
16 制御部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
聴覚障害者の生活を支援する聴導ロボットであって、聴覚障害者に対して通知すべきイベントの発生を検知する検知機能と、閃光を発するライトと、前記イベントが示す通知内容を表示する文字表示板と、を少なくとも備え、前記イベントを検知した場合、前記ライトから閃光を発するとともに、前記文字表示板に通知内容を表示することを特徴とする聴導ロボット。
【請求項2】
請求項1に記載の聴導ロボットにおいて、当該聴導ロボットを自走させるための自走用車輪駆動部を備えていることを特徴とする聴導ロボット。
【請求項3】
請求項1または2に記載の聴導ロボットにおいて、聴覚障害者が所持するバイブレータ機能および表示機能付き受信機に対して、発生した前記イベントの通知内容を転送するとともに、バイブレータ機能を作動させることにより、前記聴覚障害者に前記イベントの発生を通知することを特徴とする聴導ロボット。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の聴導ロボットにおいて、電話・FAXと当該聴導ロボットが接続され、前記検知機能が、前記電話・FAX電話への着信を聴覚障害者に通知すべきイベントとして検知することを特徴とする聴導ロボット。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の聴導ロボットにおいて、電子メールを送受信するPC(Personal Computer)と当該聴導ロボットが接続され、前記検知機能が、前記PCへの電子メール受信を聴覚障害者に通知すべきイベントとして検知することを特徴とする聴導ロボット。
【請求項6】
請求項5に記載の聴導ロボットにおいて、通知内容の詳細情報の表示を指示する表示ボタンを備え、前記表示ボタンの押下操作により、前記PCで受信した電子メールのメール内容を前記PCから転送させて、前記文字表示板に表示することを特徴とする聴導ロボット。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の聴導ロボットにおいて、聴覚障害者の住居のインターフォンと通話可能な子機を付属して備えるとともに、住居を警備するセキュリティシステムと当該聴導ロボットが接続され、前記検知機能が、前記セキュリティシステムによる訪問者の来訪を聴覚障害者に通知すべきイベントとして検知した場合に、聴覚障害者が前記子機を使用して、前記インターフォンとの間で通話を可能とすることを特徴とする聴導ロボット。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれかに記載の聴導ロボットにおいて、ネットワークを介して警察に自動的に通報する警報機能を備えるとともに、住居を警備するセキュリティシステムと当該聴導ロボットが接続され、前記検知機能が、前記セキュリティシステムによる不審者の侵入を聴覚障害者に通知すべきイベントとして検知した場合、前記ライトから閃光を発するとともに、前記文字表示板に通知内容を表示するのみならず、前記警報機能により、警察へ自動通報することを特徴とする聴導ロボット。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の聴導ロボットにおいて、風呂の給水および/または湯沸しの終了を管理する電化システムと当該聴導ロボットが接続され、前記検知機能が、前記電化システムによる風呂の給水や湯沸しの終了を聴覚障害者に通知すべきイベントとして検知することを特徴とする聴導ロボット。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の聴導ロボットにおいて、炊飯の完了および/またはやかん・鍋の湯沸し完了および/または洗濯の終了を管理する電化システムと当該聴導ロボットが接続され、前記検知機能が、前記電化システムによる炊飯の完了および/またはやかん・鍋の湯沸し完了および/または洗濯の終了を聴覚障害者に通知すべきイベントとして検知することを特徴とする聴導ロボット。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載の聴導ロボットにおいて、ネットワークを介して病院および/または警察に自動的に緊急通報する緊急通報機能と、緊急事態の発生を通報するための通報ボタンとを備え、前記通報ボタンの押下操作がなされた際に、前記緊急通報機能により、病院および/または警察へ緊急通報することを特徴とする聴導ロボット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−119374(P2008−119374A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−309178(P2006−309178)
【出願日】平成18年11月15日(2006.11.15)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】