説明

肘掛け装置付きロッキング椅子

【課題】キーボード操作やマウス作業に好適な肘掛け装置を有するロッキング椅子において、使い勝手を向上させる。
【手段】肘掛け装置7は、肘支柱21と昇降体22と肘当て23とを有しており、肘当て23はその長手方向に抵抗無くスライドする。肘支柱21は座受け部2に前後傾動自在に取り付けられており、かつ、前傾姿勢に付勢されている。従って、肘当て23を机の天板Dに当接した状態で椅子を机の内部に深く入り込ませることができる。このため、使用者は腕を肘掛け装置で支持しつつ身体を前後に大きく移動させ得る。背もたれ4はその上下中途部を中心にして後傾するため、ロッキングしても上半身の位置はあまり変わらない。このため、ロッキング状態でキーボード等の操作を行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、肘掛け装置付きロッキング椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
椅子用の肘掛け装置は腕を休息させるために設けていることが多いが、作業の補助具として機能させることも提案されている。特に多いのがパソコンのようなOA機器を使用するに際しての負担軽減を狙ったものであり、その例として特許文献1には、肘支柱に水平旋回自在なアームを取り付け、このアームに肘当てを水平回転自在に取り付けることが開示されている。
【0003】
この特許文献1では、肘当てはある程度の範囲で自在に水平動し得るため、人が腕を肘当てに載せたままでマウス操作やキーボード操作を行うにおいて、腕を肘当てに載せたままで自在に水平移動させることができる。すなわち、肘当てが腕(手)の動きに追従することにより、腕の疲れを軽減できる。
【特許文献1】特開2001−161491号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、パソコンやCADの操作は主としてキーボード操作とマウス操作とに分けられるが、人が椅子に腰掛けてキーボード操作やマウス操作を行う場合、操作を行いやすい腕の位置があると言える(腕がどの位置のときにキーボード等を操作しやすいかは個人差があるが。)。また、腕は身体の一部であるから、身体と机との間隔も重要な要素であり、これはまた、椅子と机との関係でもある。
【0005】
しかし、特許文献1を初めとして従来のパソコン対応肘掛け装置は、腕の動きへの追従性には注力しているが、キーボード等の操作しやすい位置に腕を保持するという観点は見受けられず、このため、使い勝手の面でまだ改善の余地があると言える。
【0006】
更に、背もたれがばね手段に抗して後傾動するロッキング椅子において、ロッキング状態でマウス操作を行うことをよく見かける。この場合、通常のロッキング椅子では、ロッキング時に上半身が後ろに大きく移動することにより、非ロッキング状態(ニュートラル状態)とロッキング状態とでは腕の位置と側面視姿勢が相違するため、ロッキング状態ではせいぜいマウス操作程度しかできず、ロッキング状態でキーボードの操作を行ったり筆記作業を行ったりすることは想定されていないと言える。
【0007】
更に、椅子に腰掛けた人が机上のモニター(ディスプレイ)を見る場合、通常のロッキング椅子では、ロッキング状態で人の上半身が大きく後傾することによって視線も上向きになる傾向を呈し、このためモニターを自然に見るには頭(顔)を立てねばならず、このため首ろ肩が疲れやすいといった問題があった。
【0008】
要するに、従来のロッキング椅子は、人はロッキング姿勢で休息するのが本旨であって基本的には作業を行わない、という考え方に基づいて設計されていたと言えるのであり、ロッキング状態でキーボード等の作業を行えるようにするという着想はなかったと言える。本願発明は、これらの現状を改善すべくなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は様々の局面を有しており、それぞれ特徴を有している。このうち請求項1の発明は本願発明の中核を成すもので、この発明に係る椅子は、人が腰掛ける座と、着座した人が凭れ掛かるとばね手段に抗して後傾動する背もたれと、着座した人が腕を載せた状態で机上作業を行い得る肘掛け装置とを備えており、前記肘掛け装置は前後回動自在に配置されている。
【0010】
請求項2の発明に係る椅子は、請求項1において、前記座の下方には当該座と背もたれを支持する座受け部が配置されており、前記肘掛け装置は、座の前後中間点よりよりも前方位置に回動支点が位置する状態で座受け部に回動自在に取り付けられており、かつ、前記肘掛け装置は鉛直線を挟んだ前後両側の範囲で回動するようになっており、鉛直線から手前に回動する角度よりも鉛直線から後ろに回動する角度が大きくなっている。請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記肘掛け装置は付勢手段によって前向き回動方向に付勢されている。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1〜3のうちのいずれかにおいて、前記背もたれと座とは、着座した人が背もたれに凭れ掛かったロッキング状態において、「背もたれは、その上端が後退して下端は前進するように後傾しつつ下降する」「座は全体として前進しつつ後部寄りの部分が後傾する」「背もたれと座面後端部との間隔は一定に保持されている」という3つの状態が確保されるように連動手段を介して連結されており、更に、前記背もたれは、肘掛け装置の上面の付近を仮想中心にして後傾しつつ降するように設定されている。
【0012】
請求項5の発明は、更に好適な態様として、請求項3又は4において、前記肘掛け装置を付勢手段に抗して後傾し切った状態に自動的に保持するロック手段が備えられている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によると、肘掛け装置は前後回動させ得るため、椅子の位置は一定にして机に対する腕の位置を前後に変更することができ、また、肘掛け装置を机天板の前面に当てた状態で椅子を机の内部に深く入り込ませたりというように、腕を肘掛け装置で支持した状態を保持しつつ身体の前後位置も大きく変えることができる。従って、キーボードやマウスを机天板の前より位置で操作したり奥まった位置で操作したりと、手の位置を好み等に応じて大きく変化させることができる。まとめると、腕を肘掛け装置で支持した状態で前後動させ得る範囲を広くすることができるのであり、よって、使い勝手が良い。
【0014】
更に、人がキーボードやマウスを操作する場合、手を頻繁に前後動させるが、肘掛け装置は前後回動するため、腕を肘掛け装置に載せたままで前後移動させることもできるのであり、その結果、腕や肩の疲労を著しく抑制できる。
【0015】
また、肘掛け装置は背もたれの後傾動に追従するように回動させ得るため、着座した人が腕を背もたれに載せたままで非ロッキング状態とロッキング状態とに移行するにおいて、身体に対する腕の位置と姿勢とが一定化され、その結果、例えばロッキング状態でもマウス操作等の机上作業を違和感なく行うことが可能になる。
【0016】
更に、肘掛け装置をキーボード操作やマウス操作の補助に使用する場合、通常は肘掛け装置の上面は机天板の上面の上に位置しており、このため肘掛け装置が固定式であると、椅子を不使用時に机の内部に入り込ませるに際して肘掛け装置が机天板に当たって深く入り込ませることができないが、本実施形態では肘掛け装置は前後回動式であるため、肘掛け装置を後ろに逃げ回動させることにより、椅子を不使用時に机の内部に深く入り込ませることができる。
【0017】
さて、人が椅子に腰掛けた状態でキーボード操作やマウス操作のような作業を行う場合、肘を胴部よりもやや前に出した状態で行うことが殆どであり、この状態のときに手を左右動させ易いと言える。そして、肘を胴部のやや前に出した状態では、着座者の腕(一の腕)は座の前寄りの部位に位置していると言えるが、その場合、側面視で人の二の腕はやや傾斜していて手をやや前に伸ばし気味になっているため、身体への負担がないとは言えない。しかるに、請求項2の構成を採用すると、肘掛け装置は座の前端寄りにずれて配置されているため、腕はやや伸ばした状態でも安定よく支持されるのであり、その結果、腕を動かし易くて作業し易い状態に安定よく支持できるのである。
【0018】
更に、肘掛け装置は鉛直線を境にして後ろには大きく後傾するため、ロッキング時の追従性も高い(従って、ロッキング時に背もたれが後ろに移動するタイプにも好適である。)。また、肘掛け装置は鉛直線を境にして前側にも傾動しているため(すなわち前傾するため)、肘掛け装置に作用した下向きの荷重によって肘掛け装置は前傾し勝手になっており、このため姿勢安定性に優れている(腕に下向きの力を強くかけた弾みで、肘掛け装置がガクンと後ろに後傾することがない。)。
【0019】
既述のように、肘掛け装置を机天板の前面に当てることで肘掛け装置と机との相対位置を一定化することが可能になるが、請求項3のように構成すると、椅子の前後位置が多少相違しても肘掛け装置は付勢手段によって自動的に机天板の前面に当接するため、使い勝手が特に良い。
【0020】
また、請求項4では、座はロッキング時に単に前進するのではなく、全体的に前進しつつ後部は後傾するため、人の上半身は沈みながらロッキングする傾向を呈することになり、これによって高いフィット性を得ることができる。
【0021】
更に、請求項4では、背もたれはその上端は後退して下端は前進するように後傾するものであり、肘掛け装置の上面の付近を仮想中心にして回動する動きをするため、ロッキングしても人の頭の位置はさほど変化はせず、その結果、モニターと頭(顔)との距離が広がるをことを抑制してモニターを見やすい状態が維持される。かつ、ロッキングしても上半身と机との間隔があまり変化しないため、キーボードの操作やマウスの操作を行いつつロッキングすることを支障なく行える。このようにロッキング姿勢で安楽に作業を実行できることにより、人の身体的負担を著しく軽減できると言える。
【0022】
請求項5のように構成すると、ロッキング状態での使い勝手が良くなる。特に、肘掛け装置を前傾方向に付勢する付勢手段を設けている場合は、ロッキング状態で肘掛け装置が突然前傾動してしまうことがないため、使い勝手が特に良いと言える。なお、肘掛け装置のロックを解除するのはボタン操作のような操作具を用いることも可能であるが、操作の容易性という点からは、ロック状態を弾性力で保持して、肘掛け装置にある程度を力を掛ければロックが解除される構成とするの好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図14では第1実施形態(主たる実施形態)を示しており、図15以下では他の実施形態を示している。以下、順次説明する。なお、以下の説明で方向を示すため「前後」「手前」「後ろ」「左右」といった文言を使用するが、これらの文言は着座した人の姿勢を基準にしている。「正面視」は着座者と対向した方向になる。
(1).第1実施形態の概要
図1は全体の概略側面図であり、まず、この図1に基づいて概要を説明する。本実施形態は事務用のいわゆる回転椅子に適用しており、椅子は、主要要素として、ガスシリンダより成る脚支柱1、座受け部2、座3、背もたれ4、背支柱5、バックサポート6、肘掛け装置7を有している。背支柱5と背もたれ4との間には、着座者の腰部が当てる部分を前向きに押すランバーサポート8が配置されており、このランバーサポート8は背支柱5で後ろから高さ調節可能に支持されている。
【0024】
脚支柱1は脚装置の一部を構成するものであり、脚支柱1は、放射状に延びる複数本(一般に5本)の枝足を有する脚本体の中心部に嵌着されている。座受け部2は、脚支柱1の上端に固定されたベース9と、ベース9に第1ピン(第1支軸)10を介して前後スライド自在に取り付けられた第1中間金具11と、第1中間金具11の後端部に左右横長の第2ピン(第1支軸)13で連結された第2中間金具12とを有しており、座3はアウターシェル14を介して第1中間金具11と第2中間金具12とで支持されている。座受け部2は更に、ベース8の下面に固定された下ブラケット15を有しており、この下ブラケット15にバックサポート6が固定されている。
【0025】
第1ピン10は、ベース9に形成した前後長手で水平姿勢の第1長穴16にスライド自在に嵌まっており、かつ、第2ピン13もベース9に形成した前後長手で水平姿勢の第2長穴17にスライド自在に嵌まっている。このため、第1中間金具11と第2中間金具12及びこれで支持されたアウターシェル14と座3とは前後スライド可能になっており、かつ、第2中間金具12は第2ピン13を中心にして傾動し得る。
【0026】
アウターシェル14はその前寄りの2/3ほどを占める第1部分14aと、後ろ寄りの1/3ほどを占める第2部分14bとに分離しており、第1部分14aは第1中間金具11に取り付けられて第2部分14bは第2中間金具12に取り付けられている。更に、座3も前寄り2/3程度の範囲を占める第1部分3aと、後ろ寄りの1/3ほどを占める第2部分3bとからなっており、両部分3a,3bは、第2部分3bが第1部分3aに対して後傾動するように屈曲可能に連続している。
【0027】
そして座3の第1部分3aはアウターシェル14の第1部分14aに固定されて、座3の第2部分3bはアウターシェル14の第2部分14bに固定されている。従って、座3は全体として前後スライドしつつ、第2部分3bは第1部分3aに対して側面視で後傾動し得る。なお、第1部分3aと第2部分3bとの前後寸法の割合は、おおむね5:5〜7:3程度が好適と言える。
【0028】
背もたれ4のうち上端寄りの部位の背面は背支柱5の上端部に固定されており、また、背もたれ4の下端には下向きストッパー18aが設けられており、下向きストッパー18は、背支柱5に設けた横向きストッパー18bに後ろから上下動可能に当接している。このため、ランバーサポート8を上下動させて背もたれ4の突出態様を変化させることができる。
【0029】
背支柱5のうち上端寄りの部位(背もたれ4のおおよそ上下中間部)にはガイド体19が固定されており、このガイド体19がバックサポート6の上端に設けたガイドピン20に上下スライド自在に嵌まっている。従って、着座者が背もたれ4に凭れ掛かると、背もたれ4は、その上端が後退して下端は前進するように傾動しつつ前端的に下降し、座3は全体として前進しつつ第2部分3bが後傾動する。
【0030】
肘掛け装置7は、下ブラケット15に固定された肘支柱21と、肘支柱21に高さ調節可能に取り付けられた昇降体22と、昇降体22の上端に取り付けられた肘当て23とを有している。肘当て23は平面視で細長い形状であり、昇降体22に水平旋回自在に取り付けられている。また、肘支柱21は下ブラケット15に前後回動自在に取り付けられている。より正確には、前向きに回動し切った状態では鉛直線に対して若干の角度θ1で前倒れしており、後傾し切った状態では、前倒れ角度θ1よりも大きい角度θ2で後傾(後ろ倒れ)するようになっている。全体の回動角度(θ1+θ2)は25°程度に設定している(20〜30°が好ましい。)。
【0031】
着座者が腕を肘当て23に載せたままでキーボート等の作業を行う場合、肘当て23の高さは机天板のDと同じ程度がそれよりやや高くせねばならいが、肘毛か装置7がスイングしない固定式であると、肘当て23が天板Dに使えて椅子を机の内部に深く入り込ませることができなくなる。これに対して本実施形態では、肘掛け装置7が前後に傾動(回動)するため、椅子を机の内部に深く入り込ませることができる。その結果、好みの好みの作業位置を選択できる。
【0032】
肘掛け装置7は、ばねが組み込まれたアブソーバ24で前傾方向に付勢されている。また、肘当て23は、肘掛け装置7に内蔵した姿勢保持装置により、一端部が座3の上方に位置する横長姿勢に戻るように付勢されている。また、肘当て23は横長姿勢ではその長手方向(左右方向)に抵抗無しでスライドさせ得る。更に、肘当て23は、前後方向に延びる非縦長姿勢ではその姿勢が保持されるように設定している。
【0033】
(2).座受け部の詳細
次に、図2〜図9も参照して座受け部2と座3との詳細な構造を説明する。まず座受け部2の詳細を説明する。図2は縦断側面図、図3はアウターシェル14を仮想線で表示した平面図、図4はアウターシェル14と座用インナーシェル26との分離平面図、図5は主要部材の分離側断面図、図6は全体を表示した状態での図4のVI-VI 視断面図、図7は全体を表示した状態での図4のVII-VII 視断面図、図8は図7のVI-VI 視断面図、図9は図3のIX-IX 視断面図である。
【0034】
例えば図6から理解できるように、ベース9は上向き開口樋状(あるいは箱状)の形態であり、その後部内面に補ブラケット27を溶接によって固着し、ベース9と補助ブラケット27に固着されたブッシュ28に脚支柱1の上端を嵌着している。図示していないが、座受け部2には脚支柱1のプッシュバルブを操作するレバーが取り付けられている。
【0035】
例えば図6に示すように、第1中間金具11はベース9に上方から被さる正面視下向き開口コの字形になっており、第1ピン10と第2ピン13とは側板11aに貫通しており、また、例えば図2ろ図5に示すように、第1長穴16と第2長穴17とはベース9の側板9aに形成されている。第1長穴16には樹脂製のブッシュを装着しているが、第2長穴17にブッシュを装着することも可能である。
【0036】
例えば図2に示すように、ベース9は前板9bを有しており、前板9bにビスで固定された前部ばね受け29と第1ピン10で後ろから支持された後部ばね受け30との間にロッキングばね31を介在させている。後部ばね受け30には第1ピン10が嵌まる後ろ向き開口の溝が形成されている。また、ベース9の底板は前後ばね受け29,30及びロッキングばね31の下方の部位において段部9になっており、この段部で前後ばね受け29,30が回転不能に保持されている。
【0037】
図6に示すように、第1中間金具11の左右横幅はベース9の左右横幅よりもかなり大きい寸法になっている。他方、下ブラケット15は上向き開口コの字状で第1中間金具11と同じ程度の横幅寸法になっており、その内部の左右両端部にバックサポート6の水平部6aが溶接されている。バックサポート6はスチールパイプ製であるが、板金製やダイキャスト製等とすることも可能である。
【0038】
第2中間金具12は、天板と左右側板12aとを有する正面視下向き開口コの字の形態になっており、左右側板12aは第1中間金具11の外側に位置していて第2ピン13が側板12aに貫通している。左右の側板12aは、天板から前向きに突出しており、この前向き突出部に第2ピン13が貫通している。
【0039】
(3).座の構造及び取り付け手段
図6、図7から理解できるように、アウターシェル14は全体として正面視で上向きに開口した浅いトレー状の形態になっており、かつ、図2に示すように、後端部は上向きに緩く湾曲しつつ立ち上がった壁状になっている。他方、座3は座インナーシェル26の上面にクッション32を張った構造になっており、座インナーシェル26は全体として正面視で上向き開口の浅いトレー状の形態をなしている。クッション32は図示しない表皮材で上から覆われている。
【0040】
また、図4に示すように、座インナーシェル26には、着座者の体圧が強く作用する部分を中心にして多数のスリット33が形成されており、このスリット33の群により、着座者の体圧によって下向きに伸び変形することが許容されており、その結果、高いフィット性が得られる。そして、座インナーシェル26は座3に対応して第1部分26aと第2部分26bとに分離しており、これにより、座3が屈曲することが許容されている。座3の屈曲の中心線(折り目線)は、おおよそ着座者の尾てい骨が当たる箇所(或いはそれより僅かに前)のあたりに設定している。
【0041】
本実施形態ではクッション32は全体にわたって連続しているが、クッション32も第1部分と第2部分とに分離して、座3の全体を分離構成することも可能である。なお、アウターシェル14と座インナーシェル26とはポリプロピレン等の樹脂を素材とした射出成形品である。
【0042】
図4及び図6に示すように、座インナーシェル26とアウターシェル14とは、その左右端部に設けた雄型係合部34と雌型係合部35との嵌め合わせによって一体に連結されている。雄型係合部34と雌型係合部35とは、雌型係合部35を雄型係合部34に上方から嵌め入れて、次いで、座インナーシェル26を後ろ側にスライドさせると互いに噛み合って上下抜け不能に保持されるようになっている。もちろん、両者の固定方法は、単なる上下方向からの強制嵌合を採用することもできるし、ビス等のファスナを使用した固定を採用することも可能である。
【0043】
図2に示すように、アウターシェル14における第1部分14aの前端寄り部位には、第1中間金具11の天板に手前から嵌合する左右一対のフロント係合爪36が形成されている。また、図3に示すように、第1中間金具11には、フロント係合爪36が左右ずれ不能に嵌まるフロント切欠き部37が形成されている。また、アウターシェル14における第1部分14aの後端部には、第1中間金具11の後端に形成したリア切欠き部38に嵌まるリアストッパー39が形成されている。従って、アウターシェル14の第1部部14aは第1中間金具11に前後左右ずれ不能で上向き抜け不能に保持されている。
【0044】
他方、図2及び図3に示すように、第2中間金具12の天板の下面には、天板から後ろ向きにはみ出るストッパー板41がビス42で固定されており、このストッパー板41の後端縁に左右2カ所の切欠き部43が形成されている一方、アウターシェル14における第2部分14bには、ストッパー板41の切欠き部43に後ろ側から嵌合するリア係合爪44が形成されている。従って、アウターシェル14は前後の係合爪36,44によって上向き抜け不能に保持されている。なお、組み立てにおいて、アウターシェル14を中間金具11,12にセットしてから、ストッパー板41をリア係合爪44に嵌め込み、それからストッパー板41をビス42で第1中間金具12に固定することになる。
【0045】
図4及び図7に示すように、アウターシェル14の第1部分12aと第2部分12bとは左右のヒンジ部12cを介して一体に連続している。ヒンジ部12cは正面視で水平姿勢になっており、このため、アウターシェル14はヒンジ部12cを中心にして屈曲する。換言すると、第2部分12bはヒンジ部12cを支点として後傾する。
【0046】
図8でヒンジ部12cの断面形状の例を示している。(A)では特段の細工を施さずに両部分12a,12bと等しい厚さにしている。(B)では下面に台形溝(又はV溝)を形成して薄肉化しており、(C)では上面に台形溝(又はV溝)を形成して薄肉化している。(B)及び(C)では屈曲しやすくなる。アウターシェル14を構成する両部分14a,14bの下面には縦横に延びる多数のリブを45を形成している。
【0047】
(4).肘支柱の取り付け構造
例えば図3,図5,図9に示すように、肘支柱21は内向き水平部21aを有しており、この水平部21aが、下ブラケット15の側面に溶接によって固着したサイドブラケット46にブッシュ46aを介して前後回動自在に取り付けられている。水平部21aのうちサイドブラケット46の外側に位置した箇所には下向きアーム47が固着されており、下向きアーム47の下端とサイドブラケット46とにアブソーバ24がピン48,49を介して相対回動可能に連結されている。サイドブラケット46には、アブソーバ24を逃がすための穴(図示せず)が空いている。
【0048】
なお、アブソーバ24に代えてガスシリンダを使用することも可能である。この場合、ガスシリンダそのプッシュバルブを操作する操作手段を設けて、この操作手段をワイヤーによって遠隔的に操作できるように構成し、かつ、ワイヤーの引き操作を行うボタンやレバー等の操作具を例えば肘当て23や昇降体22に設けることも可能である。このようにすると、肘支柱21を任意の姿勢に固定したり、自由に前後スイングする状態に切り換えたりすることができるため、使い勝手がよくなる。
【0049】
(5).背部の構造
次に、従前の図に加えて図10及び図11も参照して背もたれ4とその取り付け構造を説明する。図10は背面図、図11のうち(A)は縦断側面図、(B)は腰部の分離断面図であある。図11に示すように、背もたれ4は、樹脂製の背インナーシェル51とその前面に張ったクッション52とを有してお、クッション52と背インナーシェル51とは袋状の表皮材で覆われている。
【0050】
そして、図10に示すように、背支柱5は縦長中心線を挟んだ左右両側に2本配置されており、背支柱5の上端には左右横長の上部材5aが固着されており、上部材5aに背インナーシェル51が固定されている。図11に示すように、背インナーシェル51には背支柱5の上部材52に重なる背面リブ53が一体に形成されており、上部材52に背面リブ53を固定している。
【0051】
左右の背支柱5の下部は後傾姿勢になっている一方、第2中間金具12の後面には側面視傾斜姿勢のリア板54が溶接されており、背支柱5はリア板54に溶接されている。横向きストッパー18bは左右の背支柱5に溶接で固着されている。図示していないが、左右の背支柱5は補強部材で連結されている。
【0052】
バックサポート6は背支柱5の対の左右両側に1本ずつ配置されており、左右バックサポート6の上端にはアッパーブラケット55を介して左右横長のガイドピン20が取り付けられている。アッパーブラケット55はバックサポート6に溶接してもよいし、ビス止めしても良い。また、ガイドピン20は、アッパーブラケット55に差し込みによって取り付けることも可能である。左右のバックサポート6はその適所が補強材で連結されている。
【0053】
図11に示すように、ガイド体19はガイドピン20を前後から挟む樹脂製のスライダ57と、背支柱5に固定された前板58と、スライダ57に後ろから嵌まるケース59とから成っている。スライダ57の合わせ面にはガイドピン20に対する上下相対動を許容するための凹所60が相対向して形成されており、また、前板58とケース59とには、スライダ57に形成した突起に嵌まる窓穴61が空いている。前後のスライダ57は互いに重なった状態でケース59に嵌まっており、かつ、スライダ57の突起が前板58とケース59とに嵌まった状態で、それら前板58とケース59とがビス62で締結されている。
【0054】
このため、ガイド体19はガイドピン20に対して上下スライド自在に嵌まっており、かつ、背支柱5及び背もたれ4はバックサポート6に対して相対的に回動し得る。なお、バックサポート6に雌型のガイド体19を設けて、背支柱5にガイドピン20を設けることも可能である。当然ながら、他の構造のガイド手段も採用できる。
【0055】
(6).まとめ
図12はロッキング状態での縦断側面図である。概略で述べたように、着座した人が背もたれ4に凭れ掛かると、背もたれ4は第2ピン13を中心にして後傾するが、第2ピン13が前進するため、背もたれ4はその上下略中間部を中心にして後傾しつつ全体的に下降し、かつ、座3は全体として前進しつつ第2部分3aは後傾する(第1部分14aは水平スライドする。)。従って、本実施形態では、第1及び第2の中間金具11,12、座受け部2の長穴16,17、アウターシェル14、背支柱5、バックサポート6が請求項1に記載した連動手段を構成している。
【0056】
図13のうち(A)は上記実施形態の椅子と机上のモニターとの関係を示した模式図(側面図)で(B)は使用状態の模式的平面図である。ロッキングに際して座3が前進することにより、ロッキングの満足度をできるだけ高いものとすることができる。また、着座者の上半身が大きくのけ反ることはないため、人はロッキング状態で頭Hを対して起こさなくとも机上のモニターMを正視することができるのであり、このため、首や肩の疲れを抑制できる。
【0057】
背もたれ4と第2中間金具12と背支柱5とは一体の構造体と観念することができ、従って、背もたれ4は第2長穴17とガイドピン20とのガイド作用によって傾動するが、第2長穴17は水平状の姿勢であってガイド体10は上下方向に移動するため、背もたれ4は、例えばブランコが揺動すように仮想中心を中心にして回動(スイング)するのと同じ状態になっている。そして、本実施形態では、図1に示すように、背もたれ4が揺動(回動、スイング)するに際しての仮想中心64を、肘当て23の上面の付近に位置させている。
【0058】
肘当て23は前後動し、また、仮想中心64自体もも背もたれ4の傾動によって移動するが、いずれにしても、仮想中心64は前進し切った位置の肘当て23の上面付近と後退し切った肘当て23の上面付近との間に位置するように設定している。また、着座者を一般的な体格の人と仮定すると、背もたれ4の回動仮想中心64は、着座者の腹部(特に臍のあたり)の前面近傍に位置している。更に、座3を基準すると、仮想中心64は、座3の前後中間部の付近の前後位置で、座面からの高さが20〜30cm程度になるように設定している。
【0059】
いずれにしても、背もたれ4の傾動の仮想中心64が背もたれ4の前方で座の上方に位置していることにより、ロッキングしても着座者の上半身が全体的に後ろに後退することはないのであり、このため、ロッキング状態にいても机の天板Dから殆ど離れることはない。その結果、ロッキング状態のままでマウスmの操作やキーボードKの操作を軽快に行うことができるのである。
【0060】
(7).第2実施形態(図14〜図15)
図15〜図16では付勢手段及びロック手段の別例である第2実施形態を示している。図15は一部破断正面図、図16のうち(A)は図6のA−A視断面図で(B)は図6のB−B視断面図である。この実施形態では、サイドブラケット36に座3の外側にはみ出る支軸65を固着しており、支軸65の先端部にインナーブッシュ65aを溶接等で固着している一方、肘支柱21の下端には、インナーブッシュ65aに回転自在に嵌まるアウターブッシュ66が溶接等で固着されている。アウターブッシュ66を挟むように端板67が配置されており、端板67はインナーブッシュ65aに固着されている。
【0061】
アウターブッシュ66の両端部には端板67に向けて開口した開放溝68が円周方向に若干の範囲で広がるように形成されている一方、端板67には開放溝68に嵌まるストッパー69が形成されており、開放溝68の内面がストッパー69に当たることで肘支柱21の回動範囲θが規制されている。肘支柱21の回動範囲は第1実施形態と同じである。
【0062】
そして、付勢手段としてコイル状のねじりばね70を使用しており、このねじりばね70をアウターブッシュ66に外側から嵌め込んでいる。ねじりばね70の一端部70aは肘支柱21に開けた穴71に嵌め込み、ねじりばね70の他端部70bは一方の端板67に開けた穴72に嵌め込んでいる。ねじりばね70は、肘支柱21が後傾すると弾性力が蓄えられる状態で肘支柱21と端板68とに嵌まっている。従って、肘支柱21はねじりばね70で前傾方向に付勢されている。
【0063】
また、この実施形態では、肘支柱21を後傾し切った状態に保持するロック手段として、図16(B)に示すように、アウターブッシュ66に周方向に延びる切欠き穴(又は溝)73を形成すると共に切欠き穴73を覆うように延びる板ばね74を固定し、板ばね74に半径内向きの突起74aを設ける一方、インナーブッシュ65には、板ばね74の突起74aが切り換えるストッパー突起75を設けている。
【0064】
この実施形態は、付勢手段としてねじりばね70を使用するだけなので構造が簡単かつコンパクトであり、また、ロック手段は板ばね54を取り付けるだけで良いのでこれも構造が簡単かつコンパクトである。板ばね74等のばね体を角度規制用ストッパー69に係合させても良いのであり、このようにすると構造が一層シンプルになる。
【0065】
(8).第3実施形態(図16)
図16では、付勢手段及びロック手段の別例である第3実施形態を示している。(A)と(B)は同一例に係るもので、(A)は前傾状態の断面図、(B)は後傾し切る直前の断面図である。本実施形態も肘支柱21の基本的な回動機構は第2実施形態と同じであり、インナーブッシュ65aとアウターブッシュ66とを有している。但し、本実施形態のインナーブッシュ65aは樹脂やダイキャストによって厚肉になっている。
【0066】
肘支柱21には、支軸64の軸心方向から見て下向き突の山形ストッパー76がガイド管77を介して上下スライド自在に配置されており、山形ストッパー76は圧縮コイルばね78でインナーブッシュ65aに向けて付勢されている。ばね78はばね受け78で上方から支持されている。ばね受け79にはロッド80を設けており、ロッド80は肘支柱21に固定されている。そして、インナーブッシュ65に、肘支柱21が前傾姿勢のときに山形ストッパー76がきっちり嵌まるフロント凹所81と、肘支柱21が後傾し切ると山形ストッパー76がきっちり嵌まるリア凹所82とを連続した状態に形成している。
【0067】
この実施形態では、肘支柱21を後傾させると、後傾し切った状態よりやや手前までの範囲では、山形ストッパー76がフロント凹所81の後部傾斜面81aに載っていることにより、肘支柱21はばね68によって前傾姿勢に戻されており、そして、肘支柱21が後傾し切るよりもやや手前まで回動すると、山形ストッパー76はフロント凹所81からリア凹所82に移行し、肘支柱21は後傾し切った状態に保持される。本実施形態は付勢手段とロック手段とが一体化しており、かつ、全体は肘支柱21及びインナーブッシュ65aの内部に形成されているため嵩張ることはない。
【0068】
(C)に示すのは別例である。この別例では、アウターブッシュ66にインナー支柱21bを溶接等によって固着し、インナー支柱21bの内部にガイド筒21cを配置している一方、山形ストッパー76に固定したガイドピン76aをガイド筒21cにスライド自在に嵌め込み、更に、肘支柱21とインナー支柱21bとガイド筒21cとをビス21dで一体に締結している。山形ストッパー76はばね78でインナーブッシュ65aに向けて付勢されている。
【0069】
この(C)の例では、ガイドピン76aとガイド筒21cとの嵌まり合い長さを長く取ることができるため、山形ストッパー76をこじれがない状態でスムースにスライドさせることができる利点がある。ガイドピン76aを固定式にして、これに山形ストッパー76をスライド自在に嵌め込んでも同様の効果を享受できる。
【0070】
(9).第4実施形態(図17)
図17に示す第4実施形態も付勢手段及びロック手段の別例である。(A)は正断面図、(B)は(A)のB−B視断面図である。この実施形態では支軸64にアウターブッシュ66が回転自在に嵌まっており、アウターブッシュ66のうち座受け部と反対側の外側に向いた端面に、外向き凹で三角形状の第1凹所83と第2凹所84とが連続した状態に形成されている。肘支柱21の後傾回転方向から見て、第1凹所83が第2凹所84の前に位置しており、かつ、深さは第2凹所84が第1凹所83よりも浅くなっている。
【0071】
そして、支軸64はアウターブッシュ66の外側にはみ出ており、この支軸64のはみ出し部に、凹所83,84に選択的に嵌まる突起85を有するストッパーリング86が軸方向にはスライド自在で相対回転不能に嵌まっている。ストッパーリング86はばね87でアウターブッシュ66に向けて付勢されており、かつ、ばね87はキャップ88で抜け不能に保持されている。
【0072】
本実施形態おいて、支軸44にはアウターブッシュ46が内側に移動するのを阻止する端板89が固着されている。ストッパーリング86を支軸64にスライドさせる手段としては、ストッパーリング86にビス90をねじ込み固定する一方、支軸64には、ビス70の先端部がスライド自在に嵌まる長溝91を形成している。長溝91は支軸64の端までは延びておらず、このため、ストッパーリング86は一定の距離しかスライドしない。従って、アウターブッシュ66はストッパーリング86によって抜け止めされている。なお、(A)ではビス90は省略している。
【0073】
この第4実施形態も第3実施形態と同様であり、肘支柱21を後傾させようとするとストッパーリング86がばね87に抗して逃げることで、肘支柱21は前傾姿勢に戻ろうする。また、後傾させ切ると、ストッパーリング86の突起85が第2凹所84に嵌まって後傾姿勢が保持される。本実施形態も付勢手段とロック手段とが一体化していてコンパクトであると共にシンプルである。また、ストッパーリング86等は支軸64の端部に設けているため、組み立てやメンテナンスも容易である。
【0074】
(10). 第5実施形態の構造(図17〜図24)
図18〜図21では第5実施形態を示している。図18(A)は非ロッキング状態(ニュートラル状態)での縦断側面図、図19はロッキング状態での縦断側面図、図20は図18の XX-XX視断面図、図21は図18の XXI-XXI視断面図である。
【0075】
本実施形態は基本的な動きは第1実施形態と同様であり、また、背もたれ4の取付け構造は基本的には第1実施形態と同じである。そこで、第1実施形態との相違点に焦点を絞って説明する。
【0076】
本実施形態では、座インナーシェル26の第1部分26aと第2部分26bとは互いに分離している。そして、図18(B)に明示するように、第1部分26aの後端には、その左右中間部とその左右両側とに下向き鉤状のセンター係合爪87が形成されている一方、第2部分26bの前端部には、各係合爪87に対応した係合ピン89が形成されており、両部分26a,26bは、係合爪87と係合ピン89との嵌め合わせによって相対回動可能に連結されている。
【0077】
更に本実施形態では、座インナーシェル26における第2部分26bの左右中間部に下向き足部92を設け、下向き足部92を第1中間金具12で支持している。従って、座インナーシェル26の第2部分26bは下向き足部92の左右両側の部分が着座荷重で下向きに伸びるように変形する。アウターシェル14には、下向き足部92が下向き露出することを許容するための切欠きが形成されている。
【0078】
本実施形態では、アウターシェル14の第1部分14aと第2部分14bとは分離している。座インナーシェル26の第1部分26aがアウターシェル14の第1部分14aに固定されていて、座インナーシェル26の第2部分26bがアウターシェル14の第2部分14bに固定されていることは第1実施形態と同じである。
【0079】
図20に示すように、本実施形態では、ベース9における側板9aの上端に左右外向きの水平片9bを一体に設けて、この水平片9bに樹脂製等のスライド補助体95を固定している一方、第1中間金具11は、左右のサイドメンバー96とこれが固着された中間板97とを有している。中間板97はスライド補助体95の上面に当たっている一方、サイドメンバー96にはスライド補助体95の下面に位置する内向き片を96aを設けており、サイドメンバー96と中間板97とにより、スライド補助体95にスライド自在に嵌まる抱持部を形成している。このように、本実施形態では第1中間金具11は面接触によってベース9で支持されているため、安定性とスライドの円滑性とに優れている。
【0080】
第1中間金具11を構成するサイドメンバー96の上端には左右外向きの上水平片96bを設けており、アウターシェル14の第1部分14bに固定したガイド体98を上水平片96bにスライド自在に嵌め込んでいる。ガイド体98は樹脂製であり、このためアウターシェル14は第1中間金具11に対してスムースにスライドする。なお、ガイド体98はアウターシェル14の第1部分14aに一体に設けることも可能である。
【0081】
第2中間金具12は左右側板12aを有する断面下向き開口コの字形でかつ背面板を有している。そして、左右側板12aが第2ピン13で第1中間金具11に連結されている。第2中間金具12の上面にはスペーサ(補助板)99が固定されており、座インナーシェル26の第2部分26bはスペーサ99にビス(図示せず)で固定されており、また、座インナーシェル26における第2部分26bの下向き足部92はスペーサ99の前端部に載っている。
【0082】
ベース9は前向きに開口しており、その前端部に前板100が上方からの嵌め込みで配置されており、この前板100に全部ばね受け29が固定されている。他方、第1中間金具12における中間板97には下向きブラケット102が固着されており、下向きブラケット102に後部ばね受け30を固定している。図20に示すように、後部ばね受け30が全部ばね受け29に当接することで中間金具11,12の前進位置が規制されるようになっている。
【0083】
第2中間金具12には背支柱5が固定されているので、ロッキングによって背もたれ4が下向き動すると、第2中間金具12は後傾しつつ前進し、第2中間金具12の押し作用によって第1中間金具11も前進する。ロッキングによって座は第2部分3bが第1部分3aに対して後傾するが、第2部分3bは座インナーシェル26のピン89,90を中心に回動するため、第2部分3bの回動に後傾に際して座3の表面に大きな伸びが発生することが抑制される。その結果、人が違和感を受けることがないと共に、クッション32の耐久性も向上できる。
【0084】
そして、座インナーシェル26の第2部分26bはピン89,90を中心にして後傾するが、ピン89,90がアウターシェル14の底面の上方に位置しているため、座インナーシェル26が屈曲するとアウターシェル14の第2部分14bは第1部分14aに対して相対的に前進動する。そして、アウターシェル14の第1部分14aと第2部分14bとが分離していることにより、当該第1部分14aと第2部分14bとが相対動することが許容され、結果として、座インナーシェル26が屈曲すること(第2部分26bが第1部分26aに対して後傾すること)が許容される。
【0085】
(11). その他
本願発明は、上記の実施形態の他にも様々に具体化できる。例えば椅子は床に固定された方式であっても良い。肘掛け装置は、肘当ての高さが固定された方式であっても良い。また、肘当ては必ずしも平面視で細長い形態である必要はないのであり、例えば平面視円形を採用して、ある程度の範囲で全包囲に自在にスライドする構造とすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】第1実施形態に係る椅子の全体の概略側面図である。
【図2】図2は縦断側面図である。
【図3】アウターシェルを仮想線で表示した平面図である。
【図4】アウターシェルと座用インナーシェルとの分離平面図である。
【図5】主要部材の分離側断面図である。
【図6】全体を表示した状態での図4のVI-VI 視断面図である。
【図7】全体を表示した状態での図4のVII-VII 視断面図である。
【図8】(A)は図7の VIII-VIII視断面図、(B)(C)は別例を示す図である。
【図9】図3のIX-IX 視断面図である。
【図10】背部の背面図である。
【図11】(A)は縦断側面図、(B)は腰部の分離断面図である。
【図12】ロッキング状態での縦断側面図である。
【図13】(A)は背もたれと座との動きを示す模式側面図、(B)は使用状態での模式的平面図である。
【図14】第2実施形態の一部破断正面図である。
【図15】(A)は図6のA−A視断面図で(B)は図6のB−B視断面図である。
【図16】第3実施形態を示す図である。
【図17】第4実施形態を示す図である。
【図18】第5実施形態を示す図で、(A)は非ロッキング状態での縦断側面図、(B)は座インナーシェルの連結構造を示す分離断面図である。
【図19】ロッキング状態での縦断側面図である。
【図20】図18の XX-XX視断面図である。
【図21】図18の XXI-XXI視断面図である。
【符号の説明】
【0087】
3 椅子の座
7 肘掛け装置
9 ベース
15 下ブラケット
21 肘支柱
22 昇降体
23 肘当て
24 付勢手段を構成するアブソーバ
70,73,87 付勢手段を構成するばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人が腰掛ける座と、着座した人が凭れ掛かるとばね手段に抗して後傾動する背もたれと、着座した人が腕を載せた状態で机上作業を行い得る肘掛け装置とを備えており、前記肘掛け装置は前後回動自在に配置されている、
肘掛け装置付きロッキング椅子。
【請求項2】
前記座の下方には当該座と背もたれを支持する座受け部が配置されており、前記肘掛け装置は、座の前後中間点よりよりも前方位置に回動支点が位置する状態で座受け部に回動自在に取り付けられており、かつ、前記肘掛け装置は鉛直線を挟んだ前後両側の範囲で回動するようになっており、鉛直線から手前に回動する角度よりも鉛直線から後ろに回動する角度が大きくなっている、
請求項1に記載した肘掛け装置付きロッキング椅子。
【請求項3】
前記肘掛け装置は付勢手段によって前向き回動方向に付勢されている、
請求項1又は2に記載した肘掛け装置付きロッキング椅子。
【請求項4】
前記背もたれと座とは、着座した人が背もたれに凭れ掛かったロッキング状態において、「背もたれは、その上端が後退して下端は前進するように後傾しつつ下降する」「座は全体として前進しつつ後部寄りの部分が後傾する」「背もたれと座面後端部との間隔は一定に保持されている」という3つの状態が確保されるように連動手段を介して連結されており、
更に、前記背もたれは、肘掛け装置の上面の付近を仮想中心にして後傾しつつ降するように設定されている、
請求項1〜3のうちのいずれかに記載した肘掛け装置付きロッキング椅子。
【請求項5】
更に、前記肘掛け装置を付勢手段に抗して後傾し切った状態に自動的に保持するロック手段が備えられている、
請求項3又は4に記載した肘掛け装置付きロッキング椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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