説明

肝炎の治療のためのシリビニン成分

本発明は、ウイルス性肝炎、好ましくはB型またはC型肝炎を治療するために、特にウイルス量の低減のために、非経口投与に適合された医薬を製造するためのシリビニン成分の使用に関する。医薬は、好ましくは、シリジアニンおよび/またはシリクリスチンおよび/またはイソシリビニンを含まない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイルス性肝炎、好ましくは、B型またはC型肝炎を治療する、特に、ウイルス量を低減する医薬を製造するためのシリビニン成分の使用に関する。好ましくは、医薬は非経口投与に適合する。好ましくは、シリビニン成分は、シリビニンエステルである。
【背景技術】
【0002】
シリビニン{3,5,7-トリヒドロキシ-2-(3-(3-ヒドロキシ-4-メトキシ-フェニル)-2-(ヒドロキシメチル)-2,3-ジヒドロベンゾ[b][1,4]-ジオキシン-6-イル)クロマン-4-オン;または欧州薬局方による(2R,3R)-3,5,7-トリヒドロキシ-2-[(2R,3R)-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-2-(ヒドロキシメチル)-2,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾ-ジオキシン-6-イル]-2,3-ジヒドロ-4H-1-ベンゾピラン-4-オン}は、シリマリンの主な構成成分であり、マリアアザミ(オオアザミ(Silybum marianum Gaertneri))から抽出された主なフラボノイドである。
【0003】
シリビニンは、以下の構造を有する。
【0004】
【化1】

【0005】
ジアステレオマーであるシリビニンAおよびシリビニンBは、文献中で区別される。
【0006】
【化2】

【0007】
シリビニンは、(シリビンAおよびシリビンBの50:50混合物の形で)シリマリンの主要な構成成分である。さらに、構成成分には、イソシリビニン(イソシリビンAおよびイソシリビンB)、シリジアニン(silidianin)(シリジアニン(silydianin))、シリクリスチン(silichristin)(シリクリスチン(silychristin))、イソシリクリスチン、タキシホリンなどが含まれる。シリビニンを単離する方法は、従来技術(たとえば、米国特許第4,871,763号)により知られている。
【0008】
シリビニンおよびシリマリンは、調査され詳細に記載されている。これに関連して、たとえば、N-C Kimら、Org. Biomol. Chem.、2003年、1巻、1684〜9頁;DYW Leeら、J.Nat.Prod.2003年、66巻、1171〜4頁;DJ Krollら、Integrative Cancer Therapies、2007年、6巻、110〜9頁;Z Wenら、DMD Fast Forward、doi:10.1124/dmd.107.017566;および米国特許第4,871,763号を参照することができる。
【0009】
オオアザミ(Silybum marianum)は、薬用植物としておよそ2千年の歴史がある。シリマリン、すなわち、マリアアザミの種子抽出物は、肝炎、肝硬変を含めた一連の肝臓および胆嚢障害を治療するために用いられ、また野生のキノコ、アルコール、化学物質、および環境性毒素による中毒に対する肝臓保護剤として用いられる古代の薬草療法である。シリマリンの作用機序は多様である。1970年代に実施された最大の無作為化対照試験では、シリマリンによる長期治療が、肝硬変の患者における死亡率を低下し得ることが示された(P Ferenciら、J Hepatol 1989年、9巻、105〜13頁)。それにもかかわらず、肝疾患治療のためのこの薬物の役割は、議論の余地が残されている(S Vermaら、Clinical Gastroenterology and Hepatology 2007年、5巻、408〜16頁;F Rainone、Am Fam Phys 2005年、72巻(7号)、1285〜8頁)。このような不確実な部分は、その薬物動態および最適な投与レジメンに関するデータが限られていることによるものである。シリマリンは水に難溶性であり、経口剤はバイオアベイラビリティが限られている。
【0010】
シリビニンの医薬適用もまた知られている。シリビニンは、強力な抗酸化特性(A Pietrangeloら、Gastroenterology 1995年、109巻、1941〜49頁;MI Lucenaら、Int J Clin Pharmacol Ther 2002年、40巻、2〜8頁;およびL Miraら、Biochem Pharmacol 1994年、48巻、753〜9頁を参照のこと)および抗線維特性(G Boigkら、Hepatology 1987年、26巻、643〜9頁;およびC Dehmlowら、Hepatology 1996年、23巻、749〜54頁を参照のこと)を有しているため、慢性肝疾患の治療のための潜在的に有用な薬物になる。ピュアなシリビニンは、たとえば、タマゴテングタケ(アマニチン、ファロイジン)による肝臓の中毒の場合に、肝臓がさらに損傷しないようにするために、静脈内投与される(K Hrubyら、Hum Toxicol 1983年、2巻、138〜195頁を参照のこと)。キノコ中毒における効果は、リボソームタンパク質の合成を増大させ脂質過酸化を抑制する核小体のポリメラーゼAを刺激することにより部分的に説明されている(J Sonnenbichlerら、Prog Clin Biol Res. 1986年、213巻、319〜31頁)。臨床試験はまた、いくつかのタイプの癌の予防および治療における成功を示している(L Vargheseら、Clin Cancer Res 2005年、11巻(23号)、8441〜7頁;K Letschertら、Toxicological Sciences 2006年、91巻、140〜9頁)。
【0011】
シリビニンエステルは、たとえば、ドイツ連邦共和国でLegalon(登録商標)SILという名で、点滴用液剤として販売されている。
【0012】
ウイルス性肝炎は、肝臓に影響を及ぼす、ウイルスによって引き起こされる感染症を意味する。これは、世界的に大きな公衆衛生の問題である。ウイルス性肝炎は、罹患率が高いだけでなく、医療資源を圧迫し、深刻な経済的影響をもたらし得る。すべてのウイルス性肝炎の症例の大部分は予防可能である。
【0013】
ウイルス性肝炎には、少なくとも5つの異なるウイルスによって引き起こされる5つの異なる疾病が含まれる。A型肝炎およびB型肝炎(それぞれ、感染性肝炎および血清肝炎)は別個の疾患であり、いずれもある特定の血清学的検査によって診断することができる。C型肝炎およびE型肝炎は、第3のカテゴリーを構成し、それぞれの異なるタイプであり、C型肝炎は非経口で伝染し、E型肝炎は経腸的に伝染する。D型肝炎、すなわちデルタ型肝炎は、B型肝炎感染に依存する別の異なるウイルスである。この形の肝炎は、B型肝炎キャリアにおける重複感染として、または急性B型肝炎の個体における同時感染として起こることがある。
【0014】
C型肝炎は、ヒトにおける感染症であり、C型肝炎ウイルス(HCV)が原因である。HCV感染は、その経過中、重度の肝損傷、たとえば、肝実質の炎症、肝線維症、肝硬変および肝癌を生じることがある。感染患者の80%超で、HCV感染は慢性になる。HCVの伝染は通常、血液を介して非経口で起こる。
【0015】
世界中で約1億7000万人がC型肝炎ウイルス(HCV)に感染していると推定されている。最終的に肝硬変および/または肝細胞癌の発生が起こるまで、感染患者は、数十年間無症候性となり得る。米国における肝移植の約40〜50%はHCV感染に基づいている。それらの地理的な広がりおよびそれらの薬物療法に対する応答において異なる、HCVの6つの遺伝子型が同定されている(HCV1〜HCV6)。
【0016】
HCVタンパク質は、酸化ストレスおよびCa2+シグナル伝達によるSTAT-3の活性化(K Koikeら、Hepatol Res 2006年;34巻:65〜73頁;G Warisら、J Virol 2005年、79巻、1569〜80頁)ならびに脂質過酸化生成物および抗酸化遺伝子発現(M Okudaら、Gastroenterology 2002年、122巻、366〜375頁)を誘発することが示されている。細胞内の酸化電位および還元電位のバランス(細胞のレドックス状態)が、障害されたIFN-αシグナル伝達(D Di Bonaら、J Hepatol.2006年、45巻、271〜9頁)を含めたシグナル伝達経路に対して甚だしい影響をもつと思われる(YM Janssenら、Am J Physiol 1997年、273巻:789〜96頁)。
【0017】
HCV感染は、ICD10(WHO、2007年版)に従って、急性C型肝炎(B17.1)および慢性C型肝炎(B18.2)に分けられる。
【0018】
HCVは、急性または慢性肝炎の発症の最も重要な原因の1つである。しかし、疾患の臨床経過は、非常に異なり大きく変動しやすいことがある。したがって、HCV感染が、広い臨床範囲、すなわち、不定の症状、異なる臨床像および不定の肝臓および肝外の二次疾患によって本質的に現れるため、疾患の典型的な経過について述べることはできない。
【0019】
急性肝炎患者の約20%において、肝臓の炎症は、HCV感染によるものとされている。しかし、急性期では、C型肝炎は、通常、無症候に進行し、したがって、症例の約85%において診断されない。一部の症例において、推定的にインフルエンザ様症候群の非特異的な症状が起こるだけである。通常、感染は急性期中に現れない。
【0020】
C型肝炎は、急性HCV感染患者の約85%において慢性的になる。この高い慢性化の割合は、HCVの高いウイルス変異性の結果であると思われる。すなわち、HCVの被膜をコードする遺伝子は、突然変異率が高くなりやすい。ウイルスの高い変異性、特に、HCVの抗原エピトープの高い変異性のために、突然変異したHCVは、ヒトの免疫系による認識を免れる。患者の約25%では、慢性的な肝臓の炎症の結果として、肝硬変の形成が起こり、肝癌の発症のリスクが増大する(たとえば、J.H.Hoofnagle、Hepatology 1997年、26巻、Suppl. 1、15S-20S;M.I.Memonら、Journal of Viral Hepatitis 2002年、9巻、84〜100頁;S.L.Tanら、Nature Reviews、Drug Discovery 2002年、1巻、867〜81頁を参照のこと)。
【0021】
HCVに感染している患者は、通常、ペグ化インターフェロン-α2aまたはペグ化インターフェロン-α2bとリバビリンとからなる医薬の標準的な併用療法を受ける。遺伝子型2または3によるHCV感染(HCV2またはHCV3感染)では、この併用療法は24週間実施される。遺伝子型1によるHCV(HCV1)感染、すなわちHCV1陽性患者では、併用療法は48週間実施される。しかし、発生する副作用のため、および/または非経口投与および長期の治療期間によるコンプライアンスの低さから、HCV-感染患者の多くは治療を中止している。さらに、HCV1感染を有する患者の約50%だけが、長期間持続する治療成績を達成している、すなわち、残りは反応していない(たとえば、RET Smith、Nature Reviews、Drug Discovery、2006年、5巻、715頁を参照のこと)。C型肝炎ウイルスに対するペグ化インターフェロンとリバビリンとの療法は、遺伝子型1患者の約半数において失敗する。治療の失敗は、非反応(ウイルス力価の最小限の減少)または再発(強い初期応答、それに続く、治療中または治療後のウイルス力価の反跳(リバウンド))によって起こる。このような異なるパターンは、宿主の遺伝的特徴、免疫応答およびウイルスの遺伝子的な差異を含めた多くの因子によって影響を受けることもある(MW Friedら、New England Journal of Medicine 2002年、347巻、975〜82頁;HS Conjeevaramら、Gastroenterology 2006年、131巻、470〜7頁;MP Mannsら、Lancet 2001年、358巻、958〜65頁;DB Straderら、Hepatology 2004年、39巻、114771頁;SJ Hadziyannisら、Ann Intern Med、2004年、140巻、346〜55頁を参照のこと)。ウイルスの遺伝子的な差異は、治療前の差異または治療によって加えられた圧力に応答したウイルスの進化によって治療中に生じる差異を含み得る。
【0022】
新規な治療方法が、ペグ化インターフェロンとリバビリンとによる現在の標準治療の最適化、具体的には、HCVに対して標的化された抗ウイルス薬療法、新規な免疫調節薬および線維化を軽減することを目的とした治療を含めて開発されている(R.E.Stauberら、Drugs 2008年、68巻(10号)、1347頁を参照のこと)。
【0023】
今日まで、HCVに対するワクチンは得られていない。標準的な薬物治療は、非常に高価であり、HCV感染の制御においてわずかな成功を示すにすぎず、かなりの副作用を引き起こす場合もある(S.L.Tanら、Nature Reviews、Drug Discovery 2002年、1巻、867頁;R.Bartenschlager、同書、911頁)。
【0024】
ウイルス性肝炎、特に、B型肝炎およびC型肝炎の治療のための医薬の必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】米国特許第4,871,763号
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0123628号
【特許文献3】国際公開第03/090741号
【特許文献4】欧州特許第422,497号
【特許文献5】米国特許第4,764, 508号
【非特許文献】
【0026】
【非特許文献1】N-C Kimら、Org. Biomol. Chem.、2003年、1巻、1684〜9頁
【非特許文献2】DYW Leeら、J.Nat.Prod.2003年、66巻、1171〜4頁
【非特許文献3】DJ Krollら、Integrative Cancer Therapies、2007年、6巻、110〜9頁
【非特許文献4】Z Wenら、DMD Fast Forward、doi:10.1124/dmd.107.017566
【非特許文献5】P Ferenciら、J Hepatol 1989年、9巻、105〜13頁
【非特許文献6】S Vermaら、Clinical Gastroenterology and Hepatology 2007年、5巻、408〜16頁
【非特許文献7】F Rainone、Am Fam Phys 2005年、72巻(7号)、1285〜8頁
【非特許文献8】A Pietrangeloら、Gastroenterology 1995年、109巻、1941〜49頁
【非特許文献9】MI Lucenaら、Int J Clin Pharmacol Ther 2002年、40巻、2〜8頁
【非特許文献10】L Miraら、Biochem Pharmacol 1994年、48巻、753〜9頁
【非特許文献11】G Boigkら、Hepatology 1987年、26巻、643〜9頁
【非特許文献12】C Dehmlowら、Hepatology 1996年、23巻、749〜54頁
【非特許文献13】K Hrubyら、Hum Toxicol 1983年、2巻、138〜195頁
【非特許文献14】J Sonnenbichlerら、Prog Clin Biol Res. 1986年、213巻、319〜31頁
【非特許文献15】L Vargheseら、Clin Cancer Res 2005年、11巻(23号)、8441〜7頁
【非特許文献16】K Letschertら、Toxicological Sciences 2006年、91巻、140〜9頁
【非特許文献17】K Koikeら、Hepatol Res 2006年;34巻:65〜73頁
【非特許文献18】G Warisら、J Virol 2005年、79巻、1569〜80頁
【非特許文献19】M Okudaら、Gastroenterology 2002年、122巻、366〜375頁
【非特許文献20】D Di Bonaら、J Hepatol.2006年、45巻、271〜9頁
【非特許文献21】YM Janssenら、Am J Physiol 1997年、273巻:789〜96頁
【非特許文献22】J.H.Hoofnagle、Hepatology 1997年、26巻、Suppl. 1、15S-20S
【非特許文献23】M.I.Memonら、Journal of Viral Hepatitis 2002年、9巻、84〜100頁
【非特許文献24】S.L.Tanら、Nature Reviews、Drug Discovery 2002年、1巻、867〜81頁
【非特許文献25】RET Smith、Nature Reviews、Drug Discovery、2006年、5巻、715頁
【非特許文献26】MW Friedら、New England Journal of Medicine 2002年、347巻、975〜82頁
【非特許文献27】HS Conjeevaramら、Gastroenterology 2006年、131巻、470〜7頁
【非特許文献28】MP Mannsら、Lancet 2001年、358巻、958〜65頁
【非特許文献29】DB Straderら、Hepatology 2004年、39巻、114771頁
【非特許文献30】SJ Hadziyannisら、Ann Intern Med、2004年、140巻、346〜55頁
【非特許文献31】R.E.Stauberら、Drugs 2008年、68巻(10号)、1347頁
【非特許文献32】S.L.Tanら、Nature Reviews、Drug Discovery 2002年、1巻、867頁
【非特許文献33】R.Bartenschlager、Nature Reviews、Drug Discovery 2002年、1巻、911頁
【非特許文献34】R.Sallerら、Drugs 2001年、61巻(14号)、2035〜63頁
【非特許文献35】K.E.Mayerら、Journal of Viral Hepatitis、2005年、12巻、559〜67頁
【非特許文献36】S.J.Polyakら、Gastroenterology 2007年、132巻、1925〜1936頁
【非特許文献37】A.Vailatiら、Fitoterapia、Volume LXIV、No.3、1993年
【非特許文献38】G.Buzzelliら、Int.J.Clin.Pharmacol.Ther.Toxicol. 1993年、31巻、456〜60頁
【非特許文献39】M.L.Chavez、J.Herb.Pharmacother. 2001年、1巻(3号)、79〜90頁
【非特許文献40】L.B. Seeffら、Hepatology、2001年、34巻(3号)、595〜603頁
【非特許文献41】MD Tanamlyら、Dig Liver Dis. 2004年、36巻、752〜9頁
【非特許文献42】E Gabbayら、World J Gastroenterol. 2007年、13巻、5317〜23頁
【非特許文献43】M Torresら、P R Health Sci J 2004年、23巻(2号)、69〜74頁
【非特許文献44】A Gordonら、J Gastroenterol Hepatol. 2006年、21巻、275〜80頁
【非特許文献45】LB Seeffら、Hepatology、2008年、80巻(11号)、1900〜6頁
【非特許文献46】P.Simmondsら、Hepatology、42巻、2005年、962〜73頁
【非特許文献47】K.H.Bauerら、Lehrbuch der Pharmazeutischen Technologie [Textbook of Pharmaceutical Technology]、WVG Stuttgart 1999年
【非特許文献48】T. Dingら、「Determination of active component in silymarin by RP-LC and LC/MS」、J. Pharm. Biomed.Anal. 2001年、26巻(1号)、155〜161頁
【非特許文献49】H. P. Fiedler、Lexikon der Hilfstoffe fur Pharmazie、Kosmetik und angrenzende Gebiete[Encyclopedia of excipients for pharmacy、cosmetics and related areas]、Editio Cantor Aulendorf、2001年
【非特許文献50】A Federico、Gut、2006年、55巻(6号)、901〜2頁
【非特許文献51】Z Wenら、Drug Metab Dispos. 2008年、36巻(1号)、65〜72頁
【非特許文献52】D.A. Scudieroら、Cancer Res. 48巻、4827〜33頁
【非特許文献53】O.S. Weislowら、J. Natl. Cancer Inst.、81巻、577〜86頁
【非特許文献54】N.W. Roehmら、J. Immunol. Methods、142
【非特許文献55】S.B. Hwangら、Virology 1997年、227巻、439〜46頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
本発明の一目的は、ウイルス性肝炎、特に、B型またはC型肝炎の治療のために、従来技術の医薬に比べて利点を有する医薬を提供することである。医薬は、可能であれば、副作用がないまたはごくわずかであるものとし、たとえば、PEGインターフェロン/リバビリンによる従来の併用療法に十分に応答しないC型肝炎患者に有効であるものとする。さらに、医薬は、明白な抗ウイルス特性を有し、したがって、持続的にウイルス量を低減させるものとする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
この目的は、特許請求の範囲に記載された請求項に係る対象によって達成される。
【0029】
シリビニン、その医薬として許容される塩および/または誘導体が、炎症性、ウイルス性肝疾患、特に、C型肝炎の治療に適していることが驚くべきことに判明した。したがって、現在ではC型肝炎の標準治療を表す、PEGインターフェロン/リバビリンなどの免疫調節薬/抗ウイルス薬併用療法に応答しないC型肝炎患者(すなわち、いわゆる「非応答者」)において、ウイルス量の有意な低減は、シリビニン成分の投与によって、好ましくは非経口投与によって達成することができる。さらに、シリビニン成分による事前治療によって、患者のその後のインターフェロンおよびリバビリンの投与に対する応答を改善すると思われる。
【0030】
シリマリンの投与によるHCV感染の治療、特にHCV感染の抑制に関する調査は従来技術に記載されている(たとえば、R.Sallerら、Drugs 2001年、61巻(14号)、2035〜63頁;K.E.Mayerら、Journal of Viral Hepatitis、2005年、12巻、559〜67頁;米国特許出願公開第2005/0123628号;S.J.Polyakら、Gastroenterology 2007年、132巻、1925〜1936頁を参照のこと)。
【0031】
R.Sallerらは、薬理学的観点から、シリマリンがウイルス複製に影響を与えることは知られていないが、ウイルス感染症によって誘発される事象の炎症性および細胞毒性のカスケードを抑制することが予想され得ると報告している。短期のプラセボ対照パイロット試験で、慢性活動性肝炎患者20名においてシリビニン-ホスファチジルコリン複合体を経口投与(IdB1016、シリビニン240mg1日2回)すると、シリビニン群で、ASTレベルの進展が有意に低減したことが明らかになったが、他の肝機能検査において一貫性のある差がなかった(A.Vailatiら、Fitoterapia、Volume LXIV、No.3、1993年;G.Buzzelliら、Int.J.Clin.Pharmacol.Ther.Toxicol. 1993年、31巻、456〜60頁を参照のこと)。
【0032】
K.E.Mayerらは、経口シリマリン治療が、4つの試験におけるベースラインと比較して、および唯一の試験におけるプラセボと比較して、血清トランスアミナーゼの減少をもたらしたことを開示している。しかし、シリマリンが、ウイルス量に影響を与えるまたはB型またはC型肝炎における肝臓の組織像を改善するという証拠はない(M.L.Chavez、J.Herb.Pharmacother. 2001年、1巻(3号)、79〜90頁;L.B. Seeffら、Hepatology、2001年、34巻(3号)、595〜603頁を参照のこと)。著者らは、シリマリン化合物が、おそらく、慢性ウイルス性肝炎患者において血清トランスアミナーゼを減少させるが、ウイルス量または肝臓の組織像に影響を与えないようであると結論付けている。
【0033】
米国特許出願公開第2005/0123628号は、とりわけ、グリチルリジン、チョウセンゴミン(schisandra)、アスコルビン酸、L-グルタチオン、シリマリン、リポ酸、およびD-α-トコフェロールを含む組成物の調製および経口投与に関する。これらの組成物は、酸化ストレスおよび脂質過酸化を低減させ、かつ慢性肝疾患、慢性C型肝炎ウイルス感染および非アルコール性脂肪性肝炎を治療するのに有用であると言われている。多数の試験で、シリマリンが、アセトアミノフェン、エタノール、四塩化炭素、およびD-ガラクトサミンを含めた広範囲の毒素に対して、および虚血傷害、放射線および鉄毒性に対して有する肝保護的効果が報告されている。非盲検非無作為化1センター臨床試験の最初の20週間、被験者に、グリチルリジンを1日2回合計1,000mg; チョウセンゴミンの抽出物を1日3回合計1,500mg;アスコルビン酸を1日3回合計6,000mg;L-グルタチオンを1日2回合計300mg;マリアアザミ抽出物を1日3回合計750mg;リポ酸を1日2回合計300mg;およびD-α-トコフェロールを1日1回合計800IU経口投与した。試験の最初の10週間、被験者にまた、どれもがシリマリンを含まない4種の異なる非経口組成物を1週間に2回静脈内(iv)注射により投与した。10週間後に対象の12.0%、20週間後に対象の24.0%がウイルス量の1 logの低減を示した。米国特許出願公開第2005/0123628号において、シリマリンが、そしてシリビニンは言うまでもなく、ウイルス量のこの比較的わずかな低減を担い得るという手がかりはない。
【0034】
S.J. Polyakらは、標準化されたシリマリン抽出物(MK-001)をシリマリンの市販の製剤とin vitroで比較している。両方の製剤は、使用された細胞培養に基づくモデルの範囲内で抗ウイルス活性を示すと言われているが、市販の製剤の効果がMK-001ほど強力ではなかった。MK-001は、抗CD3刺激ヒト末梢血単核細胞中の腫瘍壊死因子-αの発現およびヒト肝細胞癌Huh7細胞中の核性因子κB依存性転写を抑制する。さらに、MK-001は、JFH-1ウイルスによるHuh7およびHuh7.5.1細胞の感染を用量依存的に抑制する。MK-001は、単離細胞のHCV感染に対して効果を示し、インターフェロン-αと併用したとき、インターフェロン-α単独よりもHCV複製を抑制した。MK-001の抗HCV作用をシリマリンの市販の製剤と比較するため、Ultrathistle(登録商標)(Natural Wellness、Montgomery NY)およびSilybinin(登録商標)(Indena SpA、Milano)も試験している。しかし、MK-001は、Ultrathistle(登録商標)およびSilybinin(登録商標)よりも強力なウイルス作用を引き起こすと言われている。著者らは、これらのin vitro試験から、抗HCV活性が関係する限り、標準化されたシリマリン抽出物MK-001は、2つの市販製品よりも優れていると結論付けている。S.J.Polyakは、精製済みのシリビニンの非経口投与に関して何も述べておらず、もちろん、非応答者の治療に関しても何も述べていない。さらに、Polyakらの知見は、慢性C型肝炎患者においてシリマリンのHCVに対する効果が全く見出されなかった臨床試験(MD Tanamlyら、Dig Liver Dis. 2004年、36巻、752〜9頁;E Gabbayら、World J Gastroenterol. 2007年、13巻、5317〜23頁)と食い違っている。
【0035】
今回、驚くべきことに、好ましくは純粋なシリビニン成分の投与、具体的には非経口投与が、ウイルス性肝炎患者においてin vivoでウイルス量を低減することを見出した。したがって、シリビニン成分は、ウイルス量を低減することができる。この知見により、望まれない副作用を引き起こす恐れのあるシリマリンの更なる構成成分の非存在下で、シリビニンの用量を最適化することを可能となった。
【0036】
臨床試験では慢性C型肝炎患者においてシリマリンのHCVに対する効果が全く見出されなかったため、シリビニン成分の非経口投与によるウイルス量の低減は特に驚くべきものである。(M Torresら、P R Health Sci J 2004年、23巻(2号)、69〜74頁;MD Tanamlyら、Dig Liver Dis.、2004年、36巻:752〜9頁;A Gordonら、J Gastroenterol Hepatol. 2006年、21巻、275〜80頁;E Gabbayら、World J Gastroenterol. 2007年、13巻、5317〜23頁;およびLB Seeffら、Hepatology、2008年、80巻(11号)、1900〜6頁)。
【0037】
M Torresらは、抗ウイルス療法を用いていなかった慢性C型肝炎と診断された21〜65歳の患者が参加を依頼された臨床試験について報告している。患者34名は、オオアザミ160mgでの経口的に週3回4週間の治療または非治療(対照)に無作為割付けされた。試験では、オオアザミが抗ウイルス薬としての役割を有さないことが明らかになった。
【0038】
MD Tanamlyらは、慢性C型肝炎ウイルスを有する患者177名を、経口シリマリンを投与するかまたは複合ビタミンサプリメントを投与するかに無作為に割り付けた臨床試験について報告している。試験では、シリマリンの推奨用量はC型肝炎ウイルスのウイルス血症に対して効果がないことが明らかになった。
【0039】
A Gordonらは、慢性C型肝炎の被験者24名を無作為化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験に組み入れた臨床試験について報告している。被験者には、オオアザミ(1日600mgまたは1200mg)およびプラセボを12週間投与した。ベースラインの生化学的試験、ウイルス学的試験、心理学的試験および生活の質の試験を実施した。患者17名は試験を完了した。試験では、HCV RNA力価の平均の変化が、プラセボを用いた被験者と比較してオオアザミを用いた被験者で有意には異なっていないことが明らかになった。
【0040】
E. Gabbayらは、インターフェロン治療に失敗した慢性HCV感染患者100名を組み入れ、シリマリンカプセル剤250mg(tid)を含む、7つの異なる酸化防止剤を投与するように無作為に割り付けた臨床試験について報告している。主要エンドポイントは、肝臓の酵素、HCV-RNAレベルおよび組織像であった。試験では、酸化防止剤療法は、治療のウイルス量に対する効果がないことが明らかになった。
【0041】
LB Seeffらは、進行した慢性C型肝炎の者で、以前の抗ウイルス薬療法に対して非応答者であったが、長期のペグ化インターフェロン治療にさらに参加する意思がある者を含む、肝硬変に対するC型肝炎抗ウイルス長期治療(HALT-C)試験について報告している。C型肝炎ウイルス(HCV)のRNAレベルに関して、シリマリンの有益な効果は見出されなかった。結論として、シリマリン使用者は、非使用者と類似のHCVレベルを有した。
【0042】
さらに、シリビニン成分の投与、具体的には非経口投与は、ペグ化インターフェロン/リバビリンによる従来の治療を補助することが驚くべきことに見出されている。シリビニン成分は、ペグ化インターフェロン/リバビリンによる従来の治療に対する患者の感受性を(再)賦活し、かつ/またはペグ化インターフェロン/リバビリンによる従来の治療の抗ウイルス効果を増強することが見出された。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】実施例1、試験1:4時間にわたるシリビニン成分10mg/kgの注入中および注入後の酸化ストレスのパラメータを示す図である。(d-ROMs試験=反応性酸素代謝産物由来化合物、BAP試験=生物学的な抗酸化の可能性)
【図2】実施例1、試験1:シリビニン成分10mg/kg/日の静脈内投与前(1日目)および7日間投与後のHCV-RNA(logIU/ml;平均値±標準偏差)を示す図である。
【図3】実施例1、試験1:シリビニン成分10mg/kg/日を7日間静脈内投与し、それに続いてペグ化インターフェロンα2a/リバビリンによる併用療法およびシリマリン140mg(tid)を投与した後のHCV-RNAの変化を示す図である。
【図4】実施例1、試験2:14日間様々な用量でシリビニン成分を静脈内投与し、それに続いて、8日目に開始されたペグ化インターフェロンα2a/リバビリンによる併用療法を投与した間のHCV-RNAの変化を示す図である。
【図5】実施例1、試験2:様々な用量における、シリビニン成分単独療法の7日間静脈内投与およびペグ化インターフェロンα2a/リバビリンと併用したシリビニン成分の7日間静脈内投与の間のHCV-RNAの平均値(±標準偏差)の減少を示す図である。
【図6】実施例1、試験2: 1日当り15または20mg/kgのシリビニンを受けた患者14名におけるシリビニンの静脈投与終了後(2週目)のHCV-RNAの変化を示す図である。ペグ化インターフェロンα2a/リバビリンによる併用療法は8日目に開始し、シリマリン280mg(tid)15日目に開始した。
【図7】実施例2、60週間の180μgのペグ化インターフェロンα2a/リバビリンによる連続的な併用療法中、連続14日間を含む2回の投与間隔で、すなわち、24週目に開始する第1の静脈内投与間隔および35週目に開始する第2の投与間隔で、シリビニン成分20mg/kg/日を静脈内投与した後の個別の患者におけるHCV-RNAの変化を示す図である。
【図8】実施例2、60週間の180μgのペグ化インターフェロンα2a/リバビリンによる連続的な併用療法中、連続14日間を含み32週目に開始する1回の投与間隔で、シリビニン成分20mg/kg/日を静脈内投与した後の個別の患者におけるHCV-RNAの変化を示す図である。
【図9】実施例2、80週間の180μgのペグ化インターフェロンα2a/リバビリンによる連続的な併用療法中、連続14日間を含み、72週目に開始される1回の投与間隔で、シリビニン成分20mg/kg/日を静脈内投与した後の個別の患者におけるHCV-RNAの変化を示す図である。
【図10A】リバビリンおよび/またはペグ化インターフェロンαおよびシリビニン成分を含む医薬の同時投与の様々なやり方を模式的に示す図である。
【図10B】図10A参照。
【図11A】6つの精製済みのシリマリン構成成分に関するin-vitro NS5B阻害試験から生成したデータを示す図である。
【図11B】図11A参照。
【図12】シリビニンビス(水素スクシナート)(silibinin bis(hydrogensuccinate))に関するin-vitro NS5B阻害試験から生成したデータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明は、ウイルス性肝炎、特にB型またはC型肝炎、好ましくは、慢性もしくは急性C型肝炎ウイルス感染を、好ましくは非経口投与によって治療するための、好ましくはウイルス抑制薬または抗ウイルス薬の製造、より好ましくは、ウイルス量を低減する医薬の製造のためのシリビニン成分の使用に関する。
【0045】
明細書の目的においては、「医薬(medicament)」という用語は、好ましくは、「薬剤(medication)」という用語と同義である。
【0046】
好ましい実施形態において、本発明は、ウイルス性肝炎、好ましくは、B型またはC型肝炎を治療する、シリジアニンおよび/またはシリクリスチンおよび/またはイソシリビニンを本質的に含まない医薬を製造するためのシリビニン成分の使用に関する。
【0047】
好ましい実施形態において、本発明によれば、ウイルス性肝炎、特にB型またはC型肝炎の治療は、ウイルス量(ウイルス量)を減少させることにより行われる。シリビニン成分が、B型またはC型肝炎患者においてウイルス量を低減できることが見出された。これは、特に驚くべきことである。なぜならば、従来技術において、混合物がある一定の量のシリビニンを含むシリマリンが、B型またはC型肝炎においてウイルス量に影響を及ぼすまたは肝臓の組織像を改善する証拠がなかったからである(K.E.Mayerら、Journal of Viral Hepatitis、2005年、12巻、559〜67頁を参照のこと)。
【0048】
本発明による他の好ましい実施形態において、ウイルス性肝炎、特にB型またはC型肝炎の治療は、肝移植を受けるまたは受けた患者において行われる。ウイルス性肝炎が原因で肝移植を受けた患者は、新たに移植された肝臓にウイルス性肝炎を再発するリスクがある。通常、感染した肝臓が手術で除去されるとき、ウイルスは、生体から不完全に除去され、生体において保持された残りのウイルスは、新たに移植された肝臓に再感染する恐れがある。慢性C型肝炎感染患者では、肝移植後の再感染は症例の100%に起こる。シリビニンがウイルス量を低減させることができるということが驚くべきことに判明したため、肝移植後の再感染のリスクは、シリビニン成分を投与、好ましくは、非経口投与することによって実質的に低減することができる。
【0049】
ウイルス性肝炎の形態は、当業者に知られている。
【0050】
ウイルス性肝炎では、現在、少なくとも以下の6つの異なる形態が明確に知られている:A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、E型肝炎およびG型肝炎。これらの感染の原因である生物は、肝臓指向性ウイルスである。これらは、それぞれの場合で異なるウイルスファミリーに属し、DNAまたはRNAゲノムを有する。伝染は、食物によってまたは精液および血液などの体液の交換によって行われる。相違はまた、疾患の経過および疾患の重症度に関する様々な形態間で観察される。A型肝炎およびE型肝炎は、本質的に、急性の形で起こり、B型肝炎、C型肝炎およびD型肝炎は、一部の場合において、重症の合併症を伴う慢性の経過に至る恐れがある。
【0051】
本説明の目的においては、「ウイルス性肝炎」という用語は、好ましくは、B型肝炎およびC型肝炎を含む。
【0052】
好ましい実施形態において、治療は、遺伝子型HCV1、HCV2、HCV3、HCV4、HCV5およびHCV6からなる群から選択されるがそれだけには限らない1種または複数のウイルスのウイルス量、好ましくは、HCV1のウイルス量を低減することによって行われる。
【0053】
関係する遺伝子型がHCV1である場合、サブタイプ1a、1b、1c、1d、1e、1f、1g、1h、1i、1j、1kおよび1lが好ましい。関係する遺伝子型がHCV2である場合、サブタイプ2a、2b、2c、2d、2e、2f、2g、2h、2i、2j、2k、2l、2m、2n、2o、2pおよび2qが好ましい。関係する遺伝子型がHCV3である場合、サブタイプ3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g、3h、3i、3jおよび3kが好ましい。関係する遺伝子型がHCV4である場合、サブタイプ4a、4b、4c、4d、4e、4f、4g、4h、4i、4j、4k、4l、4m、4n、4o、4p、4q、4rおよび4tが好ましい。関係する遺伝子型がHCV5である場合、サブタイプ5aが好ましい。関係する遺伝子型がHCV6である場合、サブタイプ6a、6b、6c、6d、6e、6f、6g、6h、6i、6j、6k、6l、6m、6n、6o、6pおよび6qが好ましい。C型肝炎ウイルスの遺伝子型およびサブタイプの呼び名に関して、たとえば、P.Simmondsら、Hepatology、42巻、2005年、962〜73頁を参照することができる。
【0054】
好ましい実施形態において、本発明は、リバビリン/インターフェロン療法などの従来の免疫調節薬/抗ウイルス薬併用療法に応答しない患者(「非応答者」)および/またはリバビリン/インターフェロン療法などの従来の免疫調節薬/抗ウイルス薬併用療法に部分的に応答する患者(「部分応答者」)および/または強い初期反応を示し、それに続いて、療法中または療法後にウイルス力価の反跳を示す患者(「再発者」)においてウイルス性肝炎、好ましくはC型肝炎を治療するための、非経口投与に好ましくは適合される医薬を製造するためのシリビニン成分の使用に関する。
【0055】
本発明はまた、シリビニン成分によるC型ウイルス性肝炎の治療に関し、その治療は、リバビリン/インターフェロンによる従来の併用療法の後に行う。好ましくは、シリビニン成分の投与による療法は、リバビリン/インターフェロン療法が失敗した後に(ある一定の治療期間の最初にまたは後に)開始する。
【0056】
リバビリン/インターフェロン投与による従来のC型肝炎療法との関連において、「非応答者」、「部分応答者」および「再発者」という用語は、当業者に知られている。現在、C型肝炎ウイルスに対するリバビリンをプラスしたペグ化インターフェロン療法は、遺伝子型1の患者の約半数で失敗する。治療の失敗は、非応答(ウイルス力価の最小限の低減)または再発(強い初期反応、それに続いて、療法中または療法後のウイルス力価の反跳が起こる)によって起こる。
【0057】
本明細書の目的においては、非応答者は、リバビリン/インターフェロン(通常、ペグ化インターフェロンα)を、好ましくは12週間投与したとき、ウイルス量の<2log10IU/mlの低減(すなわち、100倍を超える低減)を示さない患者と好ましくはみなされる。好ましい実施形態において、非応答者は、≦2.1log10IU/mLのウイルス力価の減少および最下点における≧4.62log10IU/mLの絶対力価を有する。
【0058】
本明細書の目的においては、部分応答者は、12週目で≧2log10IU/mlのウイルス量の減少を示さず、24週目では検出可能なHCV RNAを有する患者と好ましくはみなされる。
【0059】
本明細書の目的においては、再発者は、≧2.8log10のウイルス力価の低減を有する患者と好ましくはみなされ、その絶対力価は、一時的に検出限界(2.78log10IU/mL)未満に低下する。
【0060】
本説明の目的においては、「医薬」という用語は、好ましくは、「投与形態」または「投与単位」と同義である。たとえば、経口投与用の医薬が、たとえば、錠剤の形態に関係する場合、この錠剤は、治療計画の範囲内でそれぞれの投与時について意図されたシリビニン成分の用量を含む、好ましくは、投与されようとする投与単位である。投与単位が単一の錠剤を含む場合、投与単位は投与形態に対応する。しかし、投与単位を、いくつかの投与形態、たとえば、いくつかの錠剤に分けることも可能であり、それぞれの場合において、シリビニン成分の部分的な用量しか含まないが全体として総投与量を含み、治療計画の範囲内でそれぞれの投与時について意図されている(その場合は、これらの錠剤の投与単位は、本質的に同時投与を目的とする)。
【0061】
本説明の目的においては、「シリビニン成分」という用語は、好ましくは、たとえば、シリビニンAおよびシリビニンBなど、その立体異性体すべてを含めたシリビニン、その医薬として許容される塩および/または誘導体、特にエステルを意味する。好ましいエステルは、リン酸もしくは硫酸などの無機酸;または、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、クエン酸、リンゴ酸、マンデル酸などの有機酸に由来する。
【0062】
ジカルボン酸のヘミエステルは、たとえば、マロン酸、グルタル酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸などが特に好ましい。好ましいヘミエステルは、遊離酸として、またはたとえば、ナトリウム塩、カリウム塩もしくはアンモニウム塩などの塩として存在し得る、ジヘミスクシナートである。シリビニンのヒドロキシル基の1つまたは複数はエステル化することができる。好ましくは、シリビニンの1個、2個、3個、4個またはすべてのヒドロキシル基がエステル化される。
【0063】
好ましい実施形態において、シリビニン成分は、シリビニンC-2',3-ビス(水素スクシナート)またはそのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などのその生理的に許容される塩ならびにそれらの混合物である。特に好ましいのは、二ナトリウム塩である。
【0064】
適当なエステルはまた、グルコン酸エステルである。
【0065】
好ましくは、シリビニン成分は、一般式(I)の化合物
【0066】
【化3】

【0067】
[式中、
R1、R2、R3、R4およびR5は、互いにそれぞれ独立して、-H、-SO3H、-PO3H2、-CO-C1-C8-アルキレン-OH、-CO-C1-C8-アルキレン-CO2H、-CO-C1-C8-アルキレン-SO3H、-CO-C1-C8-アルキレン-OPO3H2、-CO-C1-C8-アルキレン-PO3H2、-(C2-C3-アルキレン-O)n-H(式中、n=1〜20である)、-CO-C1-C8-アルキレン-N(C1-C3-アルキル)3+X-(式中、X-は医薬として許容される陰イオンである)からなる群から選択される]
またはそれらの医薬として許容される塩である。好ましくは、R1、R2およびR5は-Hである。
【0068】
より好ましくは、一般式(I)のシリビニン成分は、一般式(I-A)または(I-B)の立体化学を有する。
【0069】
【化4】

【0070】
好ましい実施形態において、一般式(I-A)の化合物は、任意の相対的重量比、たとえば、50±5:50±5で一般式(I-B)の化合物と混合している。しかし、好ましい実施形態において、一般式(I-A)の化合物のジアステレオマーの過剰率は、少なくとも50%de、より好ましくは少なくとも75%de、さらに好ましくは少なくとも90%de、一層好ましくは少なくとも95%de、最も好ましくは少なくとも98%deであり、具体的には少なくとも99%deである。他の好ましい実施形態では、一般式(I-B)の化合物のジアステレオマーの過剰率は、少なくとも50%de、より好ましくは少なくとも75%de、さらに好ましくは少なくとも90%de、一層好ましくは少なくとも95%de、最も好ましくは少なくとも98%deであり、具体的には少なくとも99%deである。
【0071】
他の好ましいシリビニン成分は、国際公開第03/090741号(全体を参照)に記載されている。
【0072】
好ましくは、室温で純水中のシリビニン成分は、シリビニン自体よりも優れた溶解性を有する。
【0073】
好ましい実施形態において、本発明は、ウイルス性肝炎、特にB型またはC型肝炎の治療のために、非経口もしくは経口投与用に好ましくは製剤される、医薬を製造するためのシリビニンエステルの使用に関する。好ましくは、医薬は、シリジアニンおよび/またはシリクリスチンおよび/またはイソシリビニンを本質的に含まない。
【0074】
好ましい実施形態において、医薬は、非経口投与用に製剤される。非経口投与は、たとえば、皮下、静脈内、筋肉内、動脈内、腹腔内、皮内、関節内、くも膜下腔内、心臓内、硝子体内、球後、肺内および骨内に行うことができる。
【0075】
特に好ましくは、医薬は、注射または注入用、具体的には静脈内もしくは動脈内投与用に製剤される。
【0076】
注射または注入に適している適当な医薬は、当業者に知られている。これに関連して、たとえば、K.H.Bauerら、Lehrbuch der Pharmazeutischen Technologie[Textbook of Pharmaceutical Technology]、WVG Stuttgart 1999年についてその全体を参照することができる。
【0077】
注射に適している医薬は、慣例的に、活性物質および場合によってはさらなる賦形剤を水中、これが妥当であれば無菌でなくてもよい適当な非水液体中、またはこれらのビヒクルの混合物中で溶解、乳化または懸濁することによって調製される無菌の液剤、乳剤または懸濁剤である。
【0078】
注入に適している医薬は、慣例的に無菌の、水溶液または連続相として水を含む乳剤である。
【0079】
注射または注入用の医薬は、場合によっては、さらなる賦形剤を含むことができる。このタイプの賦形剤は、好ましくは、たとえば、レシチンおよびポロキサマー188などの可溶化剤、たとえば、塩化ナトリウム、グルコースおよびマンニトールなどの等張化物質、たとえば、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液およびクエン酸緩衝液などの緩衝液、たとえば、アスコルビン酸、メタ亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウムおよび亜硫酸水素ナトリウムなどの酸化防止剤、たとえば、エデト酸二ナトリウムなどのキレート化剤、たとえば、p-ヒドロキシ安息香酸エステル、ベンジルアルコールおよびクロロクレゾールなどの保存剤およびたとえば、レシチン、脂肪アルコール、ステロール、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリド、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、グリセロール脂肪酸エステルおよびポロキサマーなどの乳化剤である。
【0080】
特に好ましい医薬は、好ましくは、二ナトリウム塩としてシリビニンC-2',3-ビス(水素スクシナート)、場合によっては、賦形剤としてイヌリンを含む輸液を調製するための散剤である。シリビニンC-2',3-ビス-(水素スクシナート)二ナトリウム塩の散剤598.5mgおよび輸液の調製に適合されるイヌリンを含む容器は、Legalon(登録商標)SILという商標でドイツで商品化されている。好ましい実施形態において、本発明による医薬は、この製剤と生物学的に同等である。
【0081】
他の好ましい実施形態では、医薬は、経口投与用に製剤される。好ましくは、医薬は、錠剤、カプセル剤、糖衣錠、ペレットおよび小袋からなる群から選択される経口投与形態である。
【0082】
経口経路によってシリビニン成分を投与するとき、経口剤形からのシリビニン成分のバイオアベイラビリティが十分に高いことが保証されなければならない。この点において、制限因子は、シリビニンの甚だしい親油性である。
【0083】
特に好ましい実施形態において、本発明は、ウイルス性肝炎、好ましくはB型またはC型肝炎を治療するために、経口投与用に製剤されシリジアニンおよび/またはシリクリスチンおよび/またはイソシリビニンを本質的に含まない医薬を製造するためのシリビニン成分の使用に関する。
【0084】
シリマリンのこうしたさらなる構成成分は、(たとえば、副作用を引き起こす恐れのある)生理的効果をも有すると思われるが、ウイルス性肝炎の治療に関して、シリビニン(または、その類似体)が、特に、ウイルス量を低減するのに最も有効であると思われる。したがって、シリマリン、すなわち、シリビニン、シリジアニン、シリクリスチン、イソシリビニンおよび他の構成成分の混合物を投与するとき、シリマリンの全体的な用量は、シリビニンの特定の量を提供するために、比較的高くしなければならない。たとえば、シリマリンが、たとえば、シリビニン42重量%を含むとき、シリマリン125mgの投与は、シリビニン約52mgおよび生理的効果をも有する(が、所望の効果を有さない)さらなる化合物約73mgのみを提供する。望まれない副作用のリスクは、生理活性物質の用量と共に増加する。したがって、望まれない副作用のプロファイルが関係する限り、ほぼ純粋なシリビニン52mgの投与は、42重量%のシリビニン含有量を有する125mgシリマリンの投与よりも優れている(T. Dingら、「Determination of active component in silymarin by RP-LC and LC/MS」、J. Pharm. Biomed.Anal. 2001年、26巻(1号)、155〜161頁を参照のこと)。
【0085】
シリビニン(シリビン)、シリジアニン(シリジアニン(silydianin))、シリクリスチン(シリクリスチン(silychristin))およびイソシリビニン(イソシリビン)の構造が、以下に示される。(D.Y.-W.Leeら、J. Nat. Prod. 2003年、66巻、1171〜4頁;N.-C. Kimら、Org. Biomol. Chem.、2003年、1巻、1684〜9頁を参照のこと):
【0086】
【化5】

【0087】
【化6】

【0088】
経口投与(経口用医薬)に適している適当な投与形態は、当業者に知られている。これに関連して、たとえば、K. H. Bauerら、Lehrbuch der Pharmazeutischen Technologie [Textbook of Pharmaceutical Technology]、WVG Stuttgart 1999年について、その全体を参照することができる。
【0089】
経口投与形態は、好ましくは、錠剤、散剤、ペレット、顆粒剤、糖衣錠、シロップ剤、液汁、液剤、発泡性散剤、発泡性顆粒剤、発泡性錠剤、凍結乾燥物およびカプセル剤からなる群から選択される。特に好ましくは、経口投与形態は、錠剤、糖衣錠、顆粒剤、ペレットまたは散剤であり、特に好ましくは、錠剤である。
【0090】
経口投与形態の製剤のための適当な賦形剤は、当業者に知られている。これに関連して、たとえば、H. P. Fiedler、Lexikon der Hilfstoffe fur Pharmazie、Kosmetik und angrenzende Gebiete[Encyclopedia of excipients for pharmacy、cosmetics and related areas]、Editio Cantor Aulendorf、2001年について参照することができる。
【0091】
錠剤は、たとえば、シリビニン成分を、たとえば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたは乳糖などの不活性希釈剤、コーンスターチまたはアルギン酸などの崩壊剤、デンプンまたはゼラチンなどの結合剤、ステアリン酸マグネシウムまたはタルクなどの滑沢剤および/またはカルボキシメチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、またはポリ酢酸ビニルなどの蓄積効果を達成するための薬剤など、周知の賦形剤と混合することによって得ることができる。錠剤はまた、いくつかの層からなり得る。言及したビヒクルとは別に、錠剤はまた、たとえば、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウムおよびリン酸二カルシウムなどの添加剤を、デンプン、好ましくはジャガイモデンプン、ゼラチンなどの様々な追加の物質と共に含むこともできる。その上、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウムおよびタルクなどの流動促進剤は、さらに打錠に用いることができる。
【0092】
糖衣錠は、たとえば、錠剤と同じように生成されたコアを、たとえば、コリドンもしくはシェラック、アラビアゴム、タルク、二酸化チタンまたは砂糖など、糖衣錠のコーティングに慣例的に用いられる薬剤でコーティングすることによって製造することができる。蓄積効果を避けるためにまたは配合禁忌を避けるために、コアはまた、いくつかの層からなり得る。糖衣錠のコーティングはまた、蓄積効果を達成するためにいくつかの層からなり得、錠剤の場合には上記賦形剤を使用することができる。
【0093】
経口投与用の液汁、シロップ剤、乳剤、懸濁剤および液剤は、サッカリン、シクラマート、グリセロールまたは砂糖などの甘味剤、および風味増強剤、たとえば、バニリンまたはオレンジ抽出物などの矯味剤をさらに含むことができる。これらは、カルボキシルメチルセルロースナトリウムなどの懸濁助剤または増粘剤、たとえば、脂肪アルコールのエチレンオキシドとの縮合物などの湿潤剤、またはp-ヒドロキシ安息香酸エステルなどの保存剤をさらに含むことができる。
【0094】
カプセル剤は、たとえば、シリビニン成分を乳糖またはソルビトールなどの不活性担体と混合し、ゼラチンカプセルに被包することによって製造することができる。言及することができる賦形剤は、たとえば、水、パラフィン(たとえば、石油留分)、植物由来のオイル(たとえば、ラッカセイ油またはゴマ油)、一官能価もしくは多官能価アルコール(たとえば、エタノールまたはグリセロール)などの医薬として許容される有機溶媒、たとえば、粉砕した天然鉱物(たとえば、カオリン、粘土、タルク、白亜)、粉砕した合成鉱物(たとえば、高分散ケイ酸およびシリケート)、砂糖(たとえば、スクロース、乳糖およびブドウ糖)、乳化剤(たとえば、リグニン、亜硫酸パルプ廃液、メチルセルロース、デンプンおよびポリビニルピロリドン)および流動促進剤(たとえば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸およびラウリル硫酸ナトリウム)などのビヒクルである。
【0095】
医薬は、シリビニン成分を直ちにまたは制御された形態で放出することができる。放出が制御された形態で行われる場合、放出は、好ましくは遅延した形態で行われる。遅延放出は、本発明によれば、シリビニン成分が長期の治療作用の目的で、投与する速度を低減して、比較的長期間にわたって放出される放出プロファイルを好ましくは意味するものと理解される。これは、特に、経口投与の場合に達成される。本発明による「少なくとも部分的に遅延した放出によって」という表現は、医薬の中に含まれるシリビニン成分の調節された放出を保証する任意の医薬を含む。医薬は、好ましくは、放出速度または放出部位を選択的に調節するために、特定のプロセスに従ってまたは両方の可能性を組み合わせて、特別な賦形剤を用いて生成されるコーティングされたもしくはコーティングされていない投与形態である。放出の時間経過に関して、本発明による医薬の場合には、以下のタイプが含まれる:遅延放出(放出延長)、反復作用放出、持続放出および徐放。さらなる詳細に関して、たとえば、K. H. Bauerら、Lehrbuch der Pharmazeutischen Technologie [Textbook of Pharmaceutical Technology]、第6版、WVG Stuttgart、1999年について参照することができる。
【0096】
活性化合物の制御放出の適当な手段は、当業者に知られている。医薬が、たとえば錠剤などの経口投与形態である場合、遅延放出は、たとえば、シリビニン成分を経口投与形態のポリマーマトリックスおよび/またはフィルムコーティングに、膜で埋め込むことによって達成することができる。
【0097】
本発明によれば、制御放出の挙動を有する固形、半固形状または液状の医薬を使用することができる。固形の医薬は、たとえば、経口浸透圧系(OROS)、コーティング錠、マトリックス錠、多層錠、被覆錠、被覆糖衣錠、拡散ペレット、吸着剤および持効性軟質ゼラチンカプセル剤などが好ましい。活性化合物が制御放出される経口用医薬は、特に好ましくは、コーティング錠、被覆錠またはマトリックス錠であり、特に好ましくは、マトリックス錠である。
【0098】
活性化合物が制御放出される医薬は、シリビニン成分を、溶解した、懸濁したおよび/または固形の、非晶質のまたは結晶の形態で含むことができる。
【0099】
活性化合物が制御放出される本発明による医薬の製造のために、シリビニン成分は、様々な粒度で、たとえば、非粉砕で、粉砕してまたは微粉砕の形態で使用することができる。
【0100】
活性化合物が制御放出される医薬中では、シリビニン成分は、好ましくは、たとえば、拡散制御膜でコーティングされる、ペレット、顆粒剤、マイクロカプセル、錠剤、押出物または結晶などの、活性物質含有粒子の形態で存在する。
【0101】
こうした拡散制御医薬は、好ましくは複数微粒子である、すなわち、それらは、好ましくは、たとえば、シリビニン成分の通常の結合剤および増粘剤との混合物を、場合によっては、通常の賦形剤およびビヒクルと共に適用し、続いて、拡散ラッカー、可塑剤および他の賦形剤でコーティングされる、中性ペレットなどの、多数のコーティングされたコアからなる。本発明による拡散制御医薬は、さらに、たとえば、造粒、ローター造粒、流動層凝集、打錠、湿式押出またはメルト押出によって製造され、場合によっては、球状化して製造され、可塑剤および他の賦形剤を含むことができる拡散ラッカーでコーティングされる、シリビニン成分を含む均質なコアからなり得る。
【0102】
シリビニン成分を含む粒子は、たとえば、酸または緩衝物質などの賦形剤を含むことができ、これらは、pHを調節し、それによって、シリビニン成分の放出を放出媒体のpHに依存するのを低減するのに寄与する。
【0103】
拡散制御膜は、さらなる賦形剤をさらに含むことができ、これらは、そのpH-依存性溶解性により様々なpHで膜の透過性に影響を与え、したがって、シリビニン成分の放出のpH依存性を最小限に留めるのに寄与する。
【0104】
コーティングされた中性ペレットの生成に使用される結合剤および増粘剤は、好ましくは、ヒドロキシプロピル-メチルセルロース(HPMC)およびポリビニルピロリドン(PVP)である。同様に、たとえば、メチル-セルロース(MC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、他のヒドロキシアルキルセルロースおよびヒドロキシアルキルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよびその塩、ポリアクリル酸、ポリメタクリラート、ゼラチン、デンプンまたはデンプン誘導体などの他の天然、合成または部分的に合成のポリマーが使用され得る。
【0105】
シリビニン成分を含むペレット、粒子および(ミニ)錠剤の生成について、セルロース、微結晶セルロース、たとえば、HMPC、HPCおよび低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)などのセルロース誘導体、リン酸二カルシウム、乳糖、PVPおよびスクロースは、結合剤および充填剤として造粒、流動層凝集、湿式押出、打錠で好ましくは用いられる。
【0106】
メルト押出ペレットは、シリビニン成分を熱可塑性賦形剤に埋め込むことにより製造される。適当な熱可塑性賦形剤は、好ましくはHPC、HPMC、エチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)、PVP、ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリメタクリラート、ポリビニルアルコール(PVA)、部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニル(PVA)、たとえば、アルギン酸、アルギナート、ガラクトマンナン、ろう、脂肪および脂肪酸誘導体などの多糖類などである。
【0107】
シリビニン成分を含む粒子では、たとえば、酸、塩基、および緩衝物質などのpH-調節物質をさらに組み込むことができる。これらの物質の添加によって、シリビニン成分およびその塩、水和物、溶媒和物の放出のpH依存性を著しく低減することができる。
【0108】
シリビニン成分を含むコアにおいてpHを調節する賦形剤は、たとえば、アジピン酸、リンゴ酸、L-アルギニン、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、コハク酸、クエン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、酒石酸水素カリウム、マレイン酸、マロン酸、メタン-スルホン酸、トルエンスルホン酸、トロメタモール、酒石酸が使用される。好ましくは、クエン酸、コハク酸、酒石酸および酒石酸水素カリウムが用いられる。
【0109】
拡散ラッカーの生成のために、エチル-セルロース(たとえば、Aquacoat(登録商標)またはSurelease(登録商標))およびポリメタクリラート(たとえば、Eudragit(登録商標)NE、Eudragit(登録商標)RSおよびRL)が、好ましくは適している。しかし、たとえば、酢酸セルロースおよび酢酸酪酸セルロースなどの他の物質は、皮膜形成拡散制御ポリマーとして使用することもできる。
【0110】
拡散制御ポリマーの他に、拡散ラッカーは、たとえば、フタル酸セルロース、特に酢酸フタル酸セルロースおよびフタル酸ヒドロキシ-プロピルメチル-セルロース、コハク酸セルロース、特に酢酸コハク酸セルロースおよび酢酸コハク酸ヒドロキシ-プロピルメチルセルロースまたはポリメタクリラート(たとえば、Eudragit(登録商標)L)などの腸溶ポリマーなど、pH-依存性溶解性を有するさらなる賦形剤を含むこともできる。これらの物質を加えて、シリビニン成分の放出のpH依存性を低減することができる。
【0111】
使用される可塑剤は、たとえば、クエン酸誘導体、フタル酸誘導体、安息香酸および安息香酸エステル、他の芳香族カルボン酸エステル、脂肪族ジカルボン酸エステル、グリセロールモノアセタート、グリセロールジアセタート、グリセロールトリアセタート、ポリオール、脂肪酸およびその誘導体、アセチル化脂肪酸グリセリド、ヒマシ油および他の天然油、ミグリオールおよび脂肪酸アルコールである。
【0112】
製造中のおよび最終製品におけるコーティングされた粒子の他着を防止するために、たとえば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、グリセロールモノステアラートおよびAerosilなどの粘着防止剤は、ラッカーに加えることができる。
【0113】
放出速度は、ラッカー組成物およびラッカー層の厚さにより制御される。フィルムの透過性を増加させる添加剤は、ラッカーにも、シリビニン成分を含む、コーティングしようとする粒子にも加えることができる気孔形成剤である。使用される気孔形成剤は、たとえば、ポリエチレングリコール、PVP、PVA、HPMC、HPC、ヒドロキシ-エチルセルロース(HEC)、MC、カルボキシメチルセルロースもしくはその塩、デキストリン、マルトデキストリン、シクロデキストリン、デキストランなどの可溶性ポリマー、またはたとえば、尿素、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、スクロース、乳糖、グルコース、果糖、マルトース、マンニトール、ソルビトール、キシリトールおよびラクチトールなどの他の可溶性物質である。
【0114】
拡散フィルムの構成成分となり得る、pH-依存性溶解性を有する賦形剤は、たとえば、フタル酸セルロース、特に、酢酸フタル酸セルロースおよびフタル酸ヒドロキシ-プロピルメチルセルロース、コハク酸セルロース、特に酢酸コハク酸セルロースおよび酢酸コハク酸ヒドロキシ-プロピルメチルセルロースならびにポリメタクリラート(たとえば、Eudragit(登録商標)L)などの腸溶ポリマーである。
【0115】
さらに、シリビニン成分が制御放出される医薬は、液体の膜への浸透で強力に膨潤し、膨潤および体膨張の結果としてコーティングを裂開させる、1種または複数の膨潤性賦形剤を含むコーティングされた投与形態となり得る。コーティングの裂開の結果として、医薬から薬剤の放出が可能になる(拍動性放出)。膨潤性賦形剤として、これらの医薬は、好ましくは、ポリビニルピロリドン、クロスポビドン、架橋カルボキシメチル-セルロースナトリウム、架橋カルボキシメチルデンプンナトリウム、ポリエチレンオキシド、ポリメタクリラート、低置換度ヒドロキシプロピルメチルセルロース(L-HPC)を含む。適当なコーティング物質は、好ましくは、酢酸セルロース、エチルセルロースおよびポリメタクリラートである。
【0116】
記載したコーティングされた、拡散制御のもしくは拍動性の医薬は、医薬形態として直接使用することができ変更しなくてよい。しかし、それらはまた、さらに処理して、場合によっては賦形剤を加えて、最終的な投与形態(たとえば、カプセル剤、錠剤、小袋)を得ることができる。所望の放出プロファイルを達成するために、様々なコーティングされた粒子は医薬形態で互いに組み合わせることもでき、初回量の投与は、たとえば、速やかに放出する粒子、たとえば、コーティングされていないペレット、顆粒剤または散剤と組み合わせることによって行うことができる。
【0117】
用いることができる、制御放出による医薬はまた、マトリックス中にシリビニン成分を含む製剤である。これらのマトリックス製剤は、シリビニン成分を拡散および/または侵食によって放出する。好ましくは、これらの医薬は、錠剤の形態で、またはたとえば、被包することができる、いくつかの錠剤の形態で存在する。錠剤はコーティングしてもラッカーを施してもよい。かかる医薬は、たとえば、構成成分を混合し直接打錠することによって、または乾式もしくは湿式造粒、続いて打錠によって製造される。
【0118】
使用されるマトリックス形成剤は、水溶性、水膨潤性もしくは非水溶性物質となり得る。好ましくは、医薬は1種または複数の水膨潤性ポリマーを含む。
【0119】
使用される水溶性もしくは水膨潤性マトリックス形成ポリマーは、好ましくは、ヒドロキシ-プロピルメチル-セルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース、他のアルキル-セルロース、ヒドロキシアルキルセルロースおよびヒドロキシアルキル-メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(NaCMC)、アルギナート、たとえば、グアーガムおよびイナゴマメ粉などのガラクトマンナン、キサンタンガム、ポリエチレンオキシド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸誘導体、ポリビニルアルコール(PVA)、部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリビニルピロリドン(PVP)、寒天、ペクチン、アラビアゴム、トラガカントゴム、ゼラチン、デンプンまたはデンプン誘導体およびこれらの物質の混合物である。HPMCの使用が特に好ましい。
【0120】
さらに、非水溶性物質は、構造形成剤として、たとえば、不飽和もしくは飽和(水素化された)脂肪酸およびその塩、エステルまたはアミド、脂肪酸モノ-、ジ-もしくはトリグリセリド、ろう、セラミド、コレステロール誘導体およびこれらの物質の混合物を使用することができる。
【0121】
医薬は、さらに、通常の錠剤用賦形剤、好ましくは高分散シリカ(Aerosil(登録商標))、ステアリン酸マグネシウム、タルク、PVP、乳糖または微結晶セルロースを含むことができる。
【0122】
さらに、マトリックス中でpHを調節する物質は、マトリックスに組み込むことができる。かかるpH-調節賦形剤を加えることによっておよび/またはpHを上げて溶解するまたはマトリックス外で溶解し、したがって、マトリックスの多孔度または透過性を高めるおよび/またはマトリックスの侵食を促進する物質を加えることによって、本発明のこれらの好ましい実施形態がほぼpH非依存性放出を達成することができる。
【0123】
シリビニン成分を含むマトリックスはまた、放出が、特別な形状大きさおよびマトリックス表面に影響される特別な幾何学的形態で存在することができる。マトリックス表面および放出表面は、特別な形式(たとえば、環状錠剤)を与えるためにたとえば圧縮によっておよび/またはサブエリアのコーティングまたは多層加圧による障壁層の適用によって制御することができる。
【0124】
異なる放出特性を有する製剤を、好ましくは、医薬形態を多層もしくは被覆コア錠にするために組み合わせることができる。たとえば、急速放出層を含む多層錠または速やかに放出するジャケットを有する被覆コア錠によって、シリビニン成分を最初に多く放出される本発明による制御放出が達成され、急速放出コアを有する被覆コア錠によって、終部促進放出が達成され得る。
【0125】
シリビニン成分が制御放出されるさらなる医薬は、シリビニン成分が1種または複数の生理的に許容される賦形剤からなるマトリックス中に溶融プロセスによって組み込まれるものである。これらの「溶融押出物」からのシリビニン成分の放出は、拡散および/または侵食によって行われる。好ましくは、シリビニン成分が制御放出されるこれらの製剤は、顆粒剤、ペレットまたは錠剤の形態で存在する。メルト押出によって得られた形態、特に、ペレットおよび顆粒剤は、たとえば、被包または打錠による、場合によっては、さらに医薬として慣例の賦形剤を加えるなどして他の医薬形態を提供するために処理することができる。さらに、本発明による溶融押出物は粉砕し、続いて、たとえば、マトリックス錠などの他の医薬の製造のために、この粉砕された形態で使用することができる。さらなる処理はまた、医薬を提供するために、たとえば、遅延放出粒子および急速放出粒子などの異なる薬剤放出を有する製剤の組合せを含む。
【0126】
溶融押出物および/または溶融押出物から生成される医薬形態はコーティングしてもラッカーを施してもよい。溶融押出物は、シリビニン成分を少なくとも1種の可融性の生理的に許容される賦形剤(担体) 、場合によってはさらなる慣例の追加の医薬物質と混合し、50℃〜250℃、好ましくは60℃〜200℃の温度で溶融し、射出成形または押出および造形をすることによって、好ましくは製造される。この過程において、成分の混合は溶融前または溶融中に行うことができ、あるいは成分のいくつかは溶融され、他の構成成分はこの溶融体に加えられる。ビヒクル、シリビニン成分、場合によっては、現在追加の物質の混合物は熱可塑的に変形し、したがって、押し出すことができる。多数の方法により、混合物の造形、たとえば、熱造粒、低温造粒、カレンダーリング、押出しおよび無発泡性可塑性ストランドもしくは丸みの変形について示唆されている。
【0127】
好ましくは、生理的媒体中で膨潤性または可溶性である、使用される熱可塑性担体は、好ましくは:ポリビニルピロリドン(PVP);N-ビニルピロリドン(NVP)とビニルエステル、特に、酢酸ビニルのコポリマー、酢酸ビニルおよびクロトン酸のコポリマー、部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、セルロースエステル、セルロースエーテル、特に、メチルセルロースおよびエチル-セルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、特に、ヒドロキシプロピル-セルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、特に、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、フタル酸セルロース、特に酢酸フタル酸セルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート、コハク酸セルロース、特に酢酸コハク酸セルロースおよび酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリヒドロキシアルキルアクリラート、ポリヒドロキシアルキルメタクリラート、ポリアクリラートおよびポリメタクリラート(Eudragit(登録商標)タイプ)、メタクリル酸メチルおよびアクリル酸のコポリマー、ポリ乳酸、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、およびガラクトマンナンおよびアルギン酸などの多糖類、およびそのアルカリ金属およびアンモニウム塩である。
【0128】
シリビニン成分が制御放出される医薬を製造するための好ましい熱可塑性賦形剤は、HPC、PVP、ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、ポリメタクリラート、特にEudragit(登録商標)L、HPMCAS、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシドおよびそれらの混合物である。混合物のガラス転移温度を低減するために使用することができる、可塑化賦形剤は、たとえば、プロピレングリコール、グリセロール、トリエチレングリコール、ブタンジオール、ペンタエリスリトールなどのペンタノール、ヘキサノール、長鎖アルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン/ポリ-プロピレングリコール、シリコーン、フタル酸誘導体(たとえば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル)、安息香酸および安息香酸エステル、他の芳香族カルボン酸エステル(たとえば、トリメリット酸エステル)、クエン酸誘導体(たとえば、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリエチル)、脂肪族ジカルボン酸エステル(たとえば、アジピン酸ジアルキル、セバシン酸エステル、特に、セバシン酸ジエチル、酒石酸エステル)、グリセロールモノアセタート、グリセロールジアセタート、またはグリセロールトリアセタート、脂肪酸および誘導体(たとえば、グリセロールモノステアラート、アセチル化脂肪酸グリセリド、ヒマシ油および他の天然油、ミグリオール)、脂肪酸アルコール(たとえば、セチルアルコール、セチルステアリルアルコール)、砂糖、糖アルコールおよび糖誘導体(たとえば、エリスリトール、イソマルト、ラクチトール、マンニトール、マルチトール、マルトデキストリン、キシリトール)である。
【0129】
シリビニン成分、担体、場合によっては、可塑剤に加えて、押出可能な混合物は、さらに、他の医薬として慣例の追加の物質、たとえば、滑沢剤および離型剤、流動促進剤および流動剤、充填剤および吸着剤、安定剤、遊離基捕捉剤、錯生成剤、酸化防止剤、光安定剤、噴霧剤、界面活性剤、保存剤、着色料、甘味剤および矯味剤を含むことができる。
【0130】
滑沢剤および離型剤は、たとえば、ステアリン酸およびステアラート、特に、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウムおよびステアリン酸マグネシウム、ベヘン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、シリコーン、ろう、および、たとえば、グリセロールモノステアラート、グリセロールジステアラート、グリセロールジベヘナート、グリセロールモノオレアート、グリセロールパルミトステアラートなどのモノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドを含むことができる。
【0131】
使用される流動剤は、好ましくは、水素化された形態で少なくとも50℃の融点を有する、好ましくは、動物性脂肪および植物性脂肪であり、ろう(たとえば、カルナウバろう)、モノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリド(たとえば、グリセロールモノステアラート、グリセロールジステアラート、グリセロールジベヘナート、グリセロールモノオレアート、グリセリルパルミト-ステアラート)、リン脂質、具体的にはレシチンである。
【0132】
使用される充填剤は、好ましくは、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、ケイ酸およびシリカート、ステアリン酸およびステアラート、セルロース誘導体(たとえば、メチルセルロース)、デンプンおよびデンプン誘導体、砂糖、糖アルコールおよび糖誘導体などの物質である。
【0133】
シリビニン成分が制御放出される医薬は、pH-調節特性および/またはpH-依存性溶解性を有する賦形剤を含む溶融押出物であってもよい。これらの賦形剤(たとえば、すでに前述した酸、塩基、緩衝物質および腸溶ポリマー)によって、シリビニン成分放出のpH依存性を最小限に抑えることができる。
【0134】
溶融押出物の生成において、シリビニン成分が分子的に分散された形態でマトリックス中に存在する「固溶体」の形成が起こり得る。
【0135】
シリビニン成分が制御放出される医薬はまた、浸透圧性薬剤放出系となり得る。原則的に、このタイプの浸透圧系は従来技術で知られている。本明細書において、医薬形態による薬剤放出は、一般に、駆動力としての浸透圧に基づいている。
【0136】
浸透圧系は、好ましくは、シリビニン成分、場合によっては、親水性膨潤剤、場合によっては、浸透を誘発するための水溶性物質、場合によっては、さらなる医薬として許容される賦形剤を含むコア、およびコアの成分に不透過性であり、少なくとも1つの開口部を有し、そこからコア中に存在する構成成分が放出できる、透水性物質からなる被膜からなる。
【0137】
シリビニン成分が制御放出される本発明によるこれらの医薬の被膜が形成される物質は半透性である、すなわち、水、水性媒体および生体液に透過性であり、かつ/またはコアの成分に非常に制限的に透過性があり、フィルム形成に適している。選択的に半透性の内包物質は、体液に不溶性であり、侵食せず、胃腸管で分解されず、未変化で排泄される、あるいは放出期間の終わりにだけ生体侵食を示す。
【0138】
浸透圧系の被膜を生成するための典型的な物質は、好ましくは、アセチル基で一置換から三置換されているまたはアセチル基およびアセチル以外のさらなるアシル基で一置換から二置換されているアシル化セルロース誘導体(セルロースエステル)であり、たとえば、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、酢酸セルロース/カルバミン酸エチル、酢酸フタル酸セルロース、酢酸メチルカルバミン酸セルロース、酢酸コハク酸セルロース、酢酸ジメチルアミノ酢酸セルロース、酢酸ジエチルアミノ酢酸セルロース、酢酸エチル炭酸セルロース、酢酸クロロ酢酸セルロース、酢酸シュウ酸エチルセルロース、酢酸メチルスルホン酸セルロース、酢酸スルホン酸ブチルセルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸オクタン酸セルロース、酢酸ラウリン酸セルロース、酢酸p-トルエンスルホン酸セルロース、酢酸酪酸セルロースおよび他の酢酸セルロース誘導体、また、寒天アセタートおよび酢酸アミロースである。
【0139】
浸透圧系の適当な半透膜物質は、さらに、エチルセルロース、アルキレンオキシドおよびアルキルグリシジルエーテルのコポリマー、ポリマーエポキシド、ポリグリコールおよびポリ乳酸誘導体である。さらに、非水溶性アクリラートの混合物自体、たとえば、アクリル酸エチルおよびメタクリル酸メチルのコポリマーを使用することができる。
【0140】
必要なら、浸透圧系の被膜は、たとえば、すでに前述した可塑化物質などの可塑剤およびたとえば、気孔形成剤などの他の追加の物質を含むこともできる。必要に応じて、光防護のラッカーは、半透性被膜に施すことができ、その被膜は、たとえば、HPMCまたはHPC、および適当な可塑剤(たとえば、ポリエチレングリコール)および顔料(たとえば、二酸化チタン、酸化鉄)からなり得る。
【0141】
初回量のシリビニン成分を投与することを可能にするため、浸透圧系はシリビニン成分を含む被膜を施すこともでき、シリビニン成分のコアからの浸透圧による放出制御が開始する前に、その被膜から、シリビニン成分は放出媒体に接触して好ましくは速やかに放出される。
【0142】
浸透圧系のコアに存在し得る適当な水膨潤性ポリマーは、好ましくは、ポリエチレンオキシド(たとえば、Polyox(登録商標))、キサンタンガム、ビニルピロリドンおよび酢酸ビニルのコポリマー、ポリビニルピロリドン、クロスポビドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋カルボキシメチルデンプンナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピル-メチルセルロース(L-HPC)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリラート)、アルギナートおよびガラクトマンナン、また、さらに親水性ポリマー膨潤剤およびそれらの混合物である。
【0143】
浸透を誘発するためのコアに加えることができる適当な浸透圧活性物質は、たとえば、炭水化物、特に砂糖またはアミノ酸などの、無機および有機酸の水溶性塩または高い水溶性を有する非イオン性有機物である。例として、個々にまたは浸透を誘発するための混合物として浸透圧系のコアに組み込むことができるいくつかの物質を挙げることができる:たとえば、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウムまたはマグネシウムなどのアルカリ金属およびアルカリ土類金属の塩酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩およびリン酸二水素塩などの無機塩、アジピン酸、アスコルビン酸、コハク酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、安息香酸などの有機酸およびそれらのアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、アセタート、たとえば、アラビノース、リボースまたはキシロースなどの五炭糖、たとえば、グルコース、果糖、ガラクトースまたはマンノースなどの六炭糖、たとえば、スクロース、マルトースまたは乳糖などの二糖、たとえば、ラフィノースなどの三糖、たとえば、マンニトール、ソルビトール、マルチトール、キシリトールまたはイノシトールなどの糖アルコール、および尿素。塩化ナトリウムおよび炭酸ナトリウムを用いることが特に好ましい。
【0144】
さらに、浸透圧系は、たとえば、滑沢剤および離型剤、流動促進剤、結合剤、着色顔料、増粘剤、保護コロイド、安定剤および界面活性剤などの他の医薬として慣例の追加の物質を含むことができる。
【0145】
浸透圧放出系の生成は、たとえば、湿式造粒または乾式圧縮、打錠およびその後の有機コーティングなどの標準の技法を使用して好ましくは行われる。
【0146】
浸透圧系の被膜は、少なくとも1つの流出口を有し、それにより、シリビニン成分が、場合によってはコアの他の構成成分と共に放出される。開口部は、様々なやり方で、たとえば、打抜き、機械的な孔あけによってまたはレーザードリルで被膜に導入することができる。「開口部」という用語はまた、本発明によるこのような医薬を投与して被膜外で溶解させ、したがって、in situで流出口を形成させる生体侵食性材料を含む。
【0147】
シリビニン成分の制御放出についてさらなる実施形態では、シリビニン成分は、イオン交換複合体(吸着質)として存在することもできる。
【0148】
好ましくは、医薬は、1日1回(q.d.)、1日2回(b.i.d.)、1日3回(t.i.d.)または1日4回投与のために製剤される。
【0149】
好ましい実施形態において、最初に含まれるシリビニン成分の0.5〜75重量%は、in vitro条件下で1時間後に医薬から放出される。活性物質のin vitro放出を決定するための適当な条件は当業者に知られている。これに関連して、たとえば、欧州薬局方について参照することができる。好ましくは、放出の決定は、人工の胃液(緩衝液pH1.2)または人工の腸液(緩衝液pH7.6)中で翼型攪拌装置を用いて行われる。放出されるシリビニン成分の量は、たとえば、HPLCおよびUV検出を用いて分析することができる。
【0150】
好ましい放出プロファイルA1からA8を以下の表にまとめる。
【0151】
【表1】

【0152】
好ましい実施形態において、医薬は、シクロデキストリンおよび/またはリン脂質を含む。
【0153】
シリビニンおよびシクロデキストリンを含む医薬製剤は従来技術で知られている(たとえば、欧州特許第422,497号を参照のこと)。好ましくは、シリビニンは、シクロデキストリンと共に包接複合体を形成する。好ましいシクロデキストリンは、α-、β-およびγ-シクロデキストリン、それらのO-C1-C4-アルキルおよびヒドロキシ-C1-C4-アルキル誘導体である。
【0154】
シリビニンおよびリン脂質を含む医薬製剤は、同様に、従来技術で知られている(米国特許第4,764,508号を参照のこと)。好ましくは、シリビニンは、リン脂質と複合体を形成する。好ましいリン脂質は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジルセリンである。好ましいシリビニンリン脂質複合体は、ビタミンE(α-トコフェロール)をさらに含む三元複合体である。このタイプの複合体は、従来技術により「SPV複合体」として知られている(A Federico、Gut、2006年、55巻(6号)、901〜2頁を参照のこと)。
【0155】
シリビニン成分の他に、医薬は、1種または複数のテルペンを含むことができる。テルペンの作用によって、吸収要件および吸収プロセスの両方、すなわち、吸収は全体的に改善することができる。テルペンは、天然もしくは合成のエーテル油および/またはそのテルペノイド構成成分であり純物質またはこれらの純物質の混合物もしくは誘導体の形態となり得る。エーテル油のうち、具体的には、タイム油、ユーカリ油、マツ葉油、チャノキ油、カヤプト油、ショウズク油、ハッカ油、セージ油およびローズマリー油を挙げることができ、好ましくは、タイム油である。テルペノイド物質をも含むものとする物質としてのテルペンについて、具体的には、たとえば、イソプレン、チグリン酸、アンゲリカ酸、イソ吉草酸などのヘミテルペン;たとえば、2,6-ジメチルオクタン、α-ミルセン、(E)-p-オシメン、ペリレン、リナロール、ゲラニアール、(S)-(+)シトロネラルなどの非環式モノテルペンおよび菊酸またはジュニオノンなどのたとえば、シクロプロパンモノテルペンおよびシクロブタンモノテルペン、たとえば、イリドイドまたはネペタラクトンまたは(-)-セコロガニンおよび(-)-オレウロペインなどのシクロペンタンモノテルペン、o-メンタン、シス-もしくはトランス-p-メンタン、(R)-(+)-リモネン、テルピノール、(-)-メントール、(+)-ペリラアルデヒド、(-)-メントンまたは(+)-カルボンなどのシクロヘキサンモノテルペンなどの単環式モノテルペン、酸素架橋テルペンである1,4-シネオール、1,8-シネオール、またはアスカリドールなどの二環式モノテルペンを含めたモノテルペン;シクロプロパンの二環式化合物カランおよびツジャン、シクロブタンの二環式化合物ピナン、およびビシクロヘプタンのカンファンおよびフェンカン;ファルネセン、ビサボラン、ゲルマクラン、エレマン、およびフムランなどのセスキテルペンを挙げることができる。特に好ましいテルペンは、チモール、メントール、シネオール、ボルネオール、カルボン、リモネンおよびピネンであり、通常、好ましくはチモールである。
【0156】
医薬は、シリビニン成分を含む。シリビニンは、シリマリンの構成成分である。好ましくは、シリビニンまたはシリビニン成分の他に、医薬は、シリマリンの他の構成成分を含まない。シリビニン成分が、それ自体としてシリビニンである場合、医薬は、好ましくは、シリマリンの他の構成成分を含まない。シリビニン成分が、それ自体としてシリビニンでなく、たとえば、シリビニンエステルである場合、医薬は、好ましくは、シリマリンの構成成分を一切含まない、すなわち、シリビニンをも含まない。
【0157】
好ましくは、イソシリビニン、シリジアニン、シリクリスチン、タキシホリン、イソシリクリスチン、シリモニン、シランドリン、シリヘルミンおよびネオシリヘルミンからなる群から選択される物質の1つまたは複数は、医薬中に含まれない、すなわち、医薬は、好ましくは、前述の物質の少なくとも1つを本質的に含まない。これに関連して、「本質的に含まない」は、関係する物質の残りの含有量が、医薬の全重量に基づいて、好ましくは2.0重量%未満であり、より好ましくは1.0重量%未満であり、さらにより好ましくは0.5重量%未満、最も好ましくは0.1重量%未満であり、具体的には0.05重量%未満であることを意味する。これらの物質の残りの含有量を決定する分析法は、当業者に知られており、たとえば、HPLCである。
【0158】
シリマリンの個々の構成成分は、それらの化学的および物理的特性が異なり、非常に異なる程度でシリマリンの薬理学的活性に寄与するため、シリマリンの唯一の構成成分として、すなわち、独自に、シリビニンまたはその誘導体および/または塩を投与すると有利であることが見出されている。このようにして、効果および患者のコンプライアンスの両方を改善することができると思われる。
【0159】
さらに、シリマリンの様々な構成成分の忍容性は、互いに異なり、シリビンは、シリマリンよりも(すなわち、シリビニンに加えて他の化合物を含む混合物よりも)許容される、具体的には毒性が少ないことが驚くべきことに見出されている。
【0160】
好ましい実施形態において、本発明は、好ましくは非経口もしくは経口投与用に製剤される医薬を生成するためのシリビニン成分の使用に関し、さらに、シリビニン成分は、ウイルス性肝炎、特にB型またはC型肝炎の治療のためにシリマリンの他の構成成分を含まない。
【0161】
シリビニン成分の経口投与に適合される特に好ましい医薬については、以下に記載される。これらの経口剤形すべてに、それらが、ほぼ純粋な形態で、すなわち、好ましくはシリマリンの他の構成成分が存在せずに、具体的にはイソシリビニンおよび/またはシリクリスチンおよび/またはシリジアニンが存在せずに、シリビニン成分を好ましくは含むという共通点がある。
【0162】
好ましくは、経口剤形は即時放出剤形である、すなわち、シリビニン成分は、そこから速やかに放出され、それによって、胃腸管で薬物を速やかに開始させる。好ましい実施形態において、経口剤形の投与の30分後、最初に含まれるシリビニン成分の少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、さらに好ましくは少なくとも85重量%、最も好ましくは少なくとも90重量%およびより具体的には、少なくとも95重量%が、経口剤形から放出される。
【0163】
好ましい実施形態において、医薬は、固溶体として提供される。固溶体は、大きい比表面積を有する、可溶性の高い、好ましくは非晶質のポリマーマトリックスに、分子分散形態のシリビニン成分を埋め込むことにより好ましくは実現される。シリビニン成分は、分子分散形態で、すなわち、微結晶性でも微細な結晶性でもない形態で存在するものとする。可溶性が高い非晶質の状態は、シリマリン抽出物からシリビニンまたはシリビニン成分を抽出するとき、可溶性の高い固形ポリマー溶媒を利用することによってすでに達成している可能性がある。こうした技術的な薬物製剤は、シリビニン成分の溶解性およびその溶解速度を増大させる。
【0164】
このような固溶体の例は、シリビニン成分、適当なポリマー(たとえば、ポリビニルピロリドン(PVP)またはKollidon(登録商標)25などのポリビニルピロリドンコポリマー)、場合によっては、デキストリン(たとえば、マルトデキストリン)を含む。製剤は、aerosilおよび/またはtalkumなどのさらなる賦形剤を含むことができる。
【0165】
固溶体の好ましい実施形態B1からB6について、以下の表に示す。
【0166】
【表2】

【0167】
製剤は、たとえば、硬ゼラチンカプセル剤の形で提供することができる。
【0168】
他の好ましい実施形態では、医薬は、自己乳化マイクロエマルジョンとして提供される。自己乳化脂質系は、担体として用いることができ、その中に含まれる薬物の高いバイオアベイラビリティをもたらすことができる。脂質系はコロイドの性質であり、これにより、胃腸管のリンパ系によっても、微小粒子、特に、コロイドのサイズの吸収が可能になる。通常、溶解した薬物は飽和するが、再結晶化は起こらない。親油性薬物、たとえば、シリビニン成分を経口投与するごとに、マイクロエマルジョンは、主として、吸収部位で溶解されるもしくは高分散の薬物の溶解速度を増進する最適化されたビヒクルとして使用する。言い換えれば、脂質系は、吸収促進剤として作用する。
【0169】
このような脂質系の例は、シリビニン成分、適当な第1の乳化剤(たとえば、Gelucire(登録商標)44/14などのラウロイルマクロゴールグリセリド)、場合によっては、適当な第2の乳化剤(たとえば、Labrasol(登録商標)などのカプリロカプリルマクロゴールグリセリド)を含む。製剤は、ポリソルベートなどのさらなる賦形剤を含むことができる。
【0170】
固溶体の好ましい実施形態C1からC6について、以下の表に示す。
【0171】
【表3】

【0172】
固形または好ましくは、半液体であってよい製剤は、たとえば、硬ゼラチンカプセル剤の形でまたは軟ゼラチンカプセル剤として提供することができる。
【0173】
さらなる他の好ましい実施形態では、医薬は、ナノ技術の製剤として提供される。ナノ粒子の平均粒度は、好ましくは、1μmより小さい。ナノ粒子は、細胞構造の生体膜を通過することができる。シリビニン成分は、前記ナノ粒子の表面に好ましくは吸着される。ナノ粒子は、無機ナノ粒子および有機ナノ粒子からなる群から好ましくは選択される。
【0174】
無機ナノ粒子は、たとえば、鉱物起源から得られた結晶のシリカートまたはたとえば、アルモシリカート(たとえば、ゼオライト)などのメタロシリカートなどの人工シリカートを含む。これらの無機ナノ粒子は、それらが帯電するように、好ましくは、化学的に改変される。シリカートはナノ粒子に超微粉砕され、シリビニン成分はナノ粒子の微孔質の表面に結合する(吸着される)。
【0175】
有機ナノ粒子には、小型タンパク質またはオリゴペプチドのクラスターもしくは凝集物、または脂質のクラスターもしくは凝集物が含まれる。適当なタンパク質担体は、たとえば、プロタミンである。
【0176】
ナノ粒子を調製する方法は、当業者に知られている。たとえば、経口薬物放出ごとの担体としてのコロイド状ナノ粒子は、強力に冷却したタワー内に多孔ストレーナー(マトリックス)を装備している噴射口を通して、たとえば60℃の圧力下で適当な担体物質と共に、薬物、すなわち、シリビニン成分を噴霧することによって調製することができる。自然冷却により、ナノ粒子からなる非晶質相を形成する。
【0177】
たとえば、固形脂質ナノ粒子は、こうした高圧均質化およびその後の噴霧冷却によって調製することができる。好ましくは、薬物、すなわち、シリビニン成分は、適当な溶媒中の溶液としてまたはサブ微小粒子の形態で使用される。シリビニン成分は、それぞれ脂質ビヒクルおよび界面活性剤と混合して、たとえば、60℃で噴霧し、加圧ホモジナイズすることができる。外側の相としての微細な充填材ならびに流動促進剤およびさらなる界面活性剤を場合によって添加した後、したがって得られた製剤は、硬ゼラチンカプセル剤に充填することができる。
【0178】
このような固形脂質ナノ粒子の例は、シリビニン成分のコア、適当な第1の乳化剤(たとえば、Gelucire(登録商標)50/13などのステアロイルマクロゴールグリセリド)、場合によっては、適当な高分子非イオン性界面活性剤(たとえば、ポロキサマー)を含む。製剤は、第1の界面活性剤(たとえば、Tween 20)、aerosilおよび第2の界面活性剤(たとえば、Percirol(登録商標)などのグリセリルパルミトステアラート)を含む外側の相(コーティング)を好ましくはさらに含む。
【0179】
固溶体の好ましい実施形態D1からD6について以下の表に示す。
【0180】
【表4】

【0181】
添加されたナノ粒子は、薬物の実質的により速い開始を実現する。
【0182】
医薬は、シリビニン換算用量としてのそれぞれの場合において、好ましくは、少なくとも10mg、少なくとも15mg、少なくとも20mg、少なくとも25mg、少なくとも50mg、少なくとも75mg、少なくとも100mg、少なくとも125mg、少なくとも150mg、少なくとも175mgまたは少なくとも200mgの用量で;より好ましくは、少なくとも225mg、少なくとも250mg、少なくとも275mg、少なくとも300mg、少なくとも325mg、少なくとも350mg、少なくとも375mgまたは少なくとも400mgの用量で;さらにより好ましくは、少なくとも425mg、少なくとも450mg、少なくとも475mg、少なくとも500mg、少なくとも525mg、少なくとも550mg、少なくとも575mgまたは少なくとも600mgの用量で;最も好ましくは、少なくとも625mg、少なくとも650mg、少なくとも675mg、少なくとも700mg、少なくとも725mg、少なくとも750mg、少なくとも775mgまたは少なくとも800mgの用量で;具体的には、少なくとも825mg、少なくとも850mg、少なくとも875mg、少なくとも900mg、少なくとも925mg、少なくとも950mg、少なくとも975mg、または少なくとも1000mgの用量でシリビニン成分を含む。
【0183】
医薬は、患者の体重に基づいて、およびシリビニン換算用量としてのそれぞれの場合において、好ましくは、少なくとも1.0mg/kgの用量で、より好ましくは少なくとも2.5mg/kg、さらにより好ましくは少なくとも5.0mg/kg、最も好ましくは少なくとも7.5mg/kgの用量で、具体的には、少なくとも10mg/kg、少なくとも12.5mg/kg、少なくとも15mg/kg、少なくとも17.5mg/kg、少なくとも20mg/kg、少なくとも22.5mg/kg、少なくとも25mg/kg、少なくとも27.5mg/kgまたは少なくとも30mg/kgの用量で、シリビニン成分を含む。好ましくは、前記用量は1日量である。したがって、医薬が、たとえば、1日2回投与するように適合されるとき、それぞれの1日量は、2回分の同一の量に分けられる。同じように、医薬が、たとえば、1日3回投与するように適合されるとき、それぞれの1日量は、3回分の同一の量に分けられる。
【0184】
好ましい実施形態において、シリビニン成分の1日量は、シリビニン当量に対して、体重1kg当たり少なくとも5mg、より好ましくは少なくとも10mg、さらに好ましくは少なくとも15mg、最も好ましくは少なくとも20mgである。
【0185】
好ましい実施形態において、シリビニン成分の1日量は、シリビニン当量に対して、体重1kg当たり20mgである。したがって、医薬が1日1回投与するように適合されるとき、シリビニン成分の1日量は、シリビニン成分の全量、たとえば、体重70kgの患者に対してシリビニン1400mgを好ましくは含む。医薬が1日2回投与するように適合されるとき、シリビニン成分の1日量は、シリビニン成分の半量、たとえば、体重70kgの患者に対してシリビニン700mgを好ましくは含む。医薬が1日3回投与するように適合されるとき、シリビニン成分の1日量は、シリビニン成分の3分の1の量、たとえば、体重70kgの患者に対してシリビニン467mgを好ましくは含む。医薬が1日4回投与するように適合されるとき、シリビニン成分の1日量は、シリビニン成分の4分の1の量、たとえば、体重70kgの患者に対してシリビニン350mgを好ましくは含む。
【0186】
医薬が非経口投与、好ましくは注入に適合されるとき、好ましい治療レジメンは、各2時間持続する4回の同一の注入を含む。好ましくは、24時間当たり合計で4回の注入が投与されるように、4時間後に同じ注入が繰り返される。このようなレジメンは、模式的に「2-4-2-4-2-4-2-4」と省略することができ、各数字は時間数を意味し、下線を引いた数字は注入の期間を意味し、下線を引いていない数字は2つの注入期間の間の遅滞期を意味する。好ましくは、治療レジメンは一様である、すなわち、24時間当たりのすべての注入は同一期間にわたって等しく投与され、連続する注入間の遅滞期も同様に同一である。
【0187】
上記の明示的意味に続いて、好ましい非経口投与レジメンを以下の表にまとめて示す。
【0188】
【表5】

【0189】
好ましい実施形態において、規定の方法で医薬を投与するときに、投与される全体的な1日量が合計で、シリビニン換算用量としてのそれぞれの場合において、少なくとも300mg、少なくとも325mg、少なくとも350mg、少なくとも375mgまたは少なくとも400mg;より好ましくは、少なくとも425mg、少なくとも450mg、少なくとも475mg、少なくとも500mg、少なくとも525mg、少なくとも550mg、少なくとも575mgまたは少なくとも600mg;さらに好ましくは少なくとも625mg、少なくとも650mg、少なくとも675mg、少なくとも700mg、少なくとも725mg、少なくとも750mg、少なくとも775mgまたは少なくとも800mg;一層好ましくは少なくとも825mg、少なくとも850mg、少なくとも875mg、少なくとも900mg、少なくとも925mg、少なくとも950mg、少なくとも975mg、または少なくとも1000mg;最も好ましくは少なくとも1050mg、少なくとも1100mg、少なくとも1150mg、少なくとも1200mgまたは少なくとも1250mg;具体的には少なくとも1300mg、少なくとも1350mg、少なくとも1400mg、少なくとも1450mgまたは少なくとも1500mgとなるように、医薬は1日1回、2回、3回または4回投与されるように適合される。
【0190】
好ましい薬物動態学的なパラメータAUC0-t、AUCt-∞、AUC0-∞およびAUC0-∞(補正)(好ましくは、数回の注入後、たとえば、11回の注入後;単回投与:12.5mg/kg;1日量:4回注入;総投与量:11回注入)を、実施形態E1からE8として、以下の表にまとめて示す。
【0191】
【表6】

【0192】
本発明の好ましい実施形態において、シリビニン成分を含む医薬は、補助療法のために適合され、好ましくは、インターフェロン/リボバリンなどの免疫調節薬/抗ウイルス薬併用療法に適合される。
【0193】
好ましい実施形態において、シリビニン成分の他に、医薬は、炎症性肝疾患の治療、特に好ましくは、ウイルス性肝疾患の治療、具体的にはB型またはC型肝炎の治療に好ましくは適しているさらなる薬剤を含む。
【0194】
好ましくは、さらなる薬剤は、肝臓療法、脂肪作用薬[A05B];ヌクレオシド、ヌクレオチド、逆転写酵素の独占的阻害薬[J05AB];インターフェロン[L03AB]およびHBV(B型肝炎ウイルス)に対するモノクローナル抗体からなる群から選択される。角括弧に示された表記は、好ましくは2007年ドイツ版のATCインデックスを意味する。
【0195】
特に好ましくは、さらなる医薬は、グルタミン酸アルギニン、シチオロン、エポメジオール、オキソグルタル酸オルニチン、チジアシクアルギニン、ミオイノシトール、メチオニンおよびN-アセチル-メチオニン、コリン、アスパラギン酸オルニチン、シアニダノール、チオプロニン、ベタイン、シアノコバラミン、ロイシン、左旋糖、アシクロビル、イドクスウリジン、ビダラビン、リバビリン、ガンシクロビル、ファムシクロビル、バラシクロビル、シドフォビル、ペンシクロビル、バルガンシクロビル、ブリブジン、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターフェロンα-2a、インターフェロンα-2b、インターフェロンα-n1、インターフェロンβ-1a、インターフェロンβ-1b、インターフェロンアルファコン-1、ペグ化インターフェロンα-2b、ペグ化インターフェロンα-2aおよびインターフェロンγ1bからなる群から選択される。
【0196】
好ましい実施形態において、シリビニン成分による患者の治療は、ウイルス性肝炎、特にB型またはC型肝炎の治療を補助および/または準備するのに役立ち、この治療に続いて、グルタミン酸アルギニン、シリマリン、シチオロン、エポメジオール、オキソグルタル酸オルニチン、チジアシクアルギニン、ミオイノシトール、メチオニンおよびN-アセチル-メチオニン、コリン、アスパラギン酸オルニチン、シアニダノール、チオプロニン、ベタイン、シアノコバラミン、ロイシン、左旋糖、アシクロビル、イドクスウリジン、ビダラビン、リバビリン、ガンシクロビル、ファムシクロビル、バラシクロビル、シドフォビル、ペンシクロビル、バルガンシクロビル、ブリブジン、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターフェロンα-2a、インターフェロンα-2b、インターフェロンα-n1、インターフェロンβ-1a、インターフェロンβ-1b、インターフェロンアルファコン-1、ペグ化インターフェロンα-2b、ペグ化インターフェロンα-2aおよびインターフェロンγ1bからなる群から好ましくは選択される他の薬剤で治療する。
【0197】
したがって、好ましくは、シリビニン成分を含む医薬によるウイルス性肝炎、特にB型またはC型肝炎の治療に続いて、他の医薬によるウイルス性肝炎、特にB型またはC型肝炎の治療が行われる。
【0198】
好ましい実施形態において、医薬は、逐次治療の構成成分として製剤され、医薬が第1の期間に、好ましくは非経口で最初に投与され、続いて、他の医薬が第2の期間に投与される。好ましくは、第1の期間は、少なくとも2日、より好ましくは少なくとも3日、さらにより好ましくは少なくとも4日、最も好ましくは少なくとも5日、具体的には少なくとも6日を含む。好ましくは、第2の期間は、第1の期間よりも多くの日数を含む。好ましくは、第2の期間は、少なくとも2日、より好ましくは少なくとも3日、さらにより好ましくは少なくとも4日、最も好ましくは少なくとも5日、具体的には少なくとも6日を含む。特に好ましい実施形態では、第2の医薬は、リバビリンおよびペグ化インターフェロンαの合剤を含み、第2の期間は、24〜48週間の期間を含む。
【0199】
好ましくは、他の医薬は、グルタミン酸アルギニン、シリマリン、シチオロン、エポメジオール、オキソグルタル酸オルニチン、チジアシクアルギニン、ミオイノシトール、メチオニンおよびN-アセチルメチオニン、コリン、アスパラギン酸オルニチン、シアニダノール、チオプロニン、ベタイン、シアノコバラミン、ロイシン、左旋糖、アシクロビル、イドクスウリジン、ビダラビン、リバビリン、ガンシクロビル、ファムシクロビル、バラシクロビル、シドフォビル、ペンシクロビル、バルガンシクロビル、ブリブジン、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターフェロンα-2a、インターフェロンα-2b、インターフェロンα-n1、インターフェロンβ-1a、インターフェロンβ-1b、インターフェロンアルファコン-1、ペグ化インターフェロンα-2b、ペグ化インターフェロンα-2a、インターフェロンγ1bおよびHBVに対するモノクローナル抗体からなる群から選択される1種または複数の薬剤を含み、特に好ましくは、インターフェロンおよび/またはリバビリンおよび/またはシリマリンを含む。他の医薬がインターフェロンを含む場合、これは、好ましくはペグ化インターフェロンα(ペグ化インターフェロンα-2aまたはペグ化インターフェロンα-2b)である。
【0200】
特に好ましい実施形態では、他の医薬は、イソシリビニン、シリジアニン、シリクリスチン、タキシホリン、イソシリクリスチン、シリモニン、シランドリン、シリヘルミンおよびネオシリヘルミンからなる群から選択される1種または複数の薬剤を含み、より好ましくは前述のリストから選択されたただ1つの薬剤を含む。好ましくは、他の医薬は、第1の期間に投与される前述の医薬に関連して定義したシリビニン成分を含み、好ましくは上記物質の少なくとも1種、好ましくはすべてを、本質的に含まない。これに関連して、「本質的に含まない」は、関係する物質の残りの含有量が、医薬の全重量に対して、好ましくは2.0重量%未満、より好ましくは1.0重量%未満、さらにより好ましくは0.5重量%未満、最も好ましくは0.1重量%未満、具体的には0.05重量%未満であることを意味する。
【0201】
他の医薬は、原則的に、非経口または経口投与のために配合することができる。本発明によれば、他の医薬は、第1の期間に投与する医薬とは別の投与経路のために好ましくは製剤される。特に好ましくは、他の医薬は、経口投与のために製剤される。本発明による特に好ましい実施形態では、第1の期間中に投与される医薬は、非経口、好ましくは静脈内投与に適合され、第1の期間に続く第2の期間中に投与される他の医薬は、経口投与に適合される。
【0202】
好ましい実施形態において、本発明による治療レジメンは、互いに連続して続く2つの相、すなわち、第1の期間および第2の期間を含む。好ましくは、第1の期間中、シリビニン成分を含む医薬を、好ましくは非経口で投与するが、肝臓の影響を有する他の医薬は同時には投与しない。第2の期間中、リバビリンおよび/またはペグ化インターフェロンαを好ましくは含む別の医薬を投与する。好ましい実施形態において、シリビニン成分を含む医薬をまた、第2の期間中に、好ましくは非経口で投与する。他の好ましい実施形態では、シリビニン成分を含む医薬は、第2の期間中には投与しない、すなわち、前記他の医薬だけを投与する。
【0203】
2相性の治療レジメンの好ましい実施形態F1からF15について、以下の表にまとめて示す。
【0204】
【表7】

【0205】
他の好ましい実施形態では、本発明による治療レジメンは、互いに連続して続く3つの相、すなわち第1の期間、第2の期間および第3の期間を含む。好ましくは、第1の期間中、シリビニン成分を含む医薬を、好ましくは非経口で投与するが、肝臓の影響を有する他の医薬を同時には投与しない。第2の期間中、リバビリンおよび/またはペグ化インターフェロンαを好ましくは含む別の医薬を投与し、シリビニン成分を含む医薬はまた、第2の期間中、好ましくは非経口で投与する。好ましくは、第3の期間中、リバビリンおよび/またはペグ化インターフェロンαを好ましくは含む前記他の医薬を投与するが、シリビニン成分を含む医薬は第3の期間中には投与しない、すなわち、前記他の医薬だけを投与する。
【0206】
3相性の治療レジメンの好ましい実施形態G1からG15について、以下の表にまとめて示す。
【0207】
【表8】

【0208】
他の好ましい実施形態では、本発明による治療レジメンは、互いに連続して続く3つの相、すなわち、第1の期間、第2の期間および第3の期間を含む。好ましくは、第1の期間中、好ましくはリバビリンおよび/またはペグ化インターフェロンαを含む別の医薬を投与し、シリビニン成分を含む医薬は、第1の期間中には投与しない。第2の期間中、リバビリンおよび/またはペグ化インターフェロンαを好ましくは含む前記別の医薬をさらに投与し、シリビニン成分を含む医薬もまた、第2の期間中、好ましくは非経口で投与する(同時投与される)。好ましくは、第3の期間中、リバビリンおよび/またはペグ化インターフェロンαを好ましくは含む前記他の医薬を投与するが、シリビニン成分を含む医薬は、第3の期間中には投与しない、すなわち、前記他の医薬だけを投与する。言い換えれば、この好ましい実施形態によれば、リバビリンおよび/またはペグ化インターフェロンαを好ましくは含む前記他の医薬は連続的に投与し、中間の期間(=第2の期間)の間、シリビニン成分を含む医薬は、好ましくは非経口で同時投与する。
【0209】
3相性の治療レジメンの好ましい実施形態H1からH15について、以下の表にまとめて示す。
【0210】
【表9】

【0211】
図10は、リバビリンおよび/またはペグ化インターフェロンαおよびシリビニン成分を含む医薬(実施形態a1)からm2))の同時投与の様々な方法を可視化している。各棒は、投与期間を意味する。たとえば、実施形態f1)によれば、投与は、リバビリン/ペグ化インターフェロンαで開始し継続する。中間の期間中、シリビニン成分は同時投与される。
【0212】
本発明のさらなる態様は、上記ウイルス性肝炎を治療するために、好ましくは非経口投与に適合された上記医薬に関する。
【0213】
本発明のさらなる態様は、シリビニン成分を含む本発明による少なくとも1種の医薬および少なくとも1種の他の医薬を含むキットに関する。すべての好ましい実施形態が本発明によるキットにも同じように適用するように、シリビニン成分を含む本発明による医薬および他の医薬の両方が上記で記載されている。
【0214】
好ましい実施形態において、キットは、逐次療法を実施するために必要なだけの医薬(個別の投与単位)を含み、シリビニン成分を含む医薬は、最初に第1の期間に投与され、続いて、他の医薬は第2の期間に投与される。好ましくは、第1の期間は少なくとも2日、より好ましくは少なくとも3日、さらにより好ましくは少なくとも4日、最も好ましくは少なくとも5日、具体的には少なくとも6日を含む。好ましくは、第2の期間は第1の期間よりも多くの日数を含む。好ましくは、第2の期間は、少なくとも2日、より好ましくは少なくとも3日、さらにより好ましくは少なくとも4日、最も好ましくは少なくとも5日、具体的には少なくとも6日を含む。
【0215】
特に好ましい実施形態では、本発明は、リバビリン/インターフェロンに療法に対する非応答者において、すなわち、リバビリン/インターフェロン療法などの免疫調節薬/抗ウイルス薬併用療法に応答しない患者において、ウイルス性C型肝炎を治療するために、非経口投与用に製剤される医薬を製造するためのシリビニン成分、好ましくは、シリビニンエステルの使用に関する。
【0216】
本発明のさらなる態様は、ウイルス性肝炎、好ましくはC型肝炎を治療するための、好ましくは非経口投与用のシリビニン成分、好ましくは、シリビニンエステルに関する。本発明の態様の好ましい実施形態は、本発明の他の態様の好ましい実施形態の上記の説明から明らかであり、したがって、繰り返されない。
【0217】
本発明のさらなる態様は、医薬として有効な量のシリビニン成分、好ましくはシリビニンエステルを、それを必要とする対象に投与すること、好ましくは非経口投与することを含む、ウイルス性肝炎、好ましくはC型肝炎の治療に関する。本発明の態様の好ましい実施形態は、本発明の他の態様の好ましい実施形態の上記の説明から明らかであり、したがって、繰り返されない。
【0218】
以下の実施例はさらに、本発明を例示するが、その範囲を制限するものと解釈されない。
【実施例1】
【0219】
シリビニン成分を、シリビニンC-2',3-ビス(水素スクシナート)(Legalon Sil(登録商標)、Madaus、Koln)(以下において「シリビニン」と称する)の形態で非経口投与した。
【0220】
患者および方法:
【0221】
【表10】

【0222】
ペグ化インターフェロン/リバビリン併用療法の総用量に前回応答しなかった患者をこれらの試験のために選択した。非応答は、12週間の療法後ウイルス量の>2logの低下がないことによっておよび/または治療反応の目的を達成しないことによって定義した。患者は、本試験に組み入れる前の2年以内に肝臓生検を受けたことが必要とされた。ペグ化インターフェロン/リバビリン療法の標準的な組み入れ/除外基準を適用した。
【0223】
試験プロトコール:
試験薬1回目の投与前35日以内のスクリーニングフェーズ中に、組み入れ/除外基準による患者の適格性を確立した。すべての患者は、スクリーニングフェーズ前6カ月以内に少なくとも1回定量的HCV-RNA試験を受けた。
【0224】
プロトコール1:患者に、最初、連続7日間4時間にわたって注入するシリビニン(Legalon Sil(登録商標)、Madaus、Koln)10mg/kgを毎日投与した。1日目に、ベースライン時、注入中30分毎および注入終了後2時間の酸化ストレスパラメータを決定するために血液を採取した。8日目に、PegIFNa-2a(PEGASYS(登録商標);Roche、Basel)180μg/週およびリバビリン(COPEGUS(登録商標);Roche、Basel)1〜1.2g/日と併用してのシリマリン(Legalon(登録商標)、Madaus、Koln)140mg1日3回経口投与に治療を変更した。
【0225】
プロトコール2:第1のプロトコールの結果を得た後、シリビニンによる治療を2週間延長し、シリビニンの異なる用量を投与した。患者に、最初、連続14日間4時間にわたって注入するシリビニン5、10、15または20mg/kgを毎日投与した。8日目に、PegIFNa-2a 180μg/週およびリバビリン1〜1.2g/日による治療を開始した。14日目の後、患者にシリマリン(Legalon(登録商標)、Madaus、Koln)280mg(tid)経口投与を投与した。14日間の注入期間中、ウイルス量を決定するために毎日血液を取得した。
【0226】
両プロトコールにおいて、PEG-IFNα2aまたはリバビリンに対して忍容性がない場合には、標準的な用量調整の指針を用いた。抗ウイルス薬併用療法を、合計24週間(12週目に>2logに低下しない患者では治療を中止する選択を含む)施行し、24週目でウイルス学的に応答する者には、さらなる48週間の治療を続けることを提案した。注入期間が終了してから、患者を、2週間後、4週間後、次いで、24週目に治療が終了するまで毎月検査した。
【0227】
プロトコールは、ウィーン医科大学(Medical University of Vienna)の倫理委員会によって承認された。試験の詳細を患者に説明し、患者全員がインフォームドコンセントに署名した。
【0228】
方法:
血清HCV RNAレベルをTaqMan PCRアッセイ(Cobas Ampliprep/Cobas TaqMan HCV検査;検出限界、15IU/mL、Roche Diagnostics)によって決定した。
【0229】
血液中の反応性酸化代謝産物を、d-ROM試験(反応性酸素代謝産物由来化合物;Diacron、Grosseto、Italy)によって測定し、抗酸化物質の量をシリビニン注入前、注入中(1日目)30分毎、および注入後2時間たってから、BAP試験(生体の抗酸化能力;Diacron、Grosseto、Italy)により移動可能な遊離基決定系(FRAS4、SEAC、Calenzano、Italy)を用いて測定した。d-ROM試験は、フェントン反応に従って、鉄の存在下でアルコキシルおよびペルオキシル基を生成する、酸性緩衝液によって血漿タンパク質から放出された反応性酸素代謝産物(主としてヒドロペルオキシド)を測定する。かかる基は、次いでアルキル置換芳香族アミン(N.N-ジエチルパラフェニレンジアミン)を酸化させることができ、したがって、505nmで光学的に定量化される淡赤色の誘導体を生成する。反応性酸化代謝産物の結果は、Caratelli単位(Ucarr;正常:250〜300、1Ucarr=1dl当たり過酸化水素0.08mg)として表される。BAP試験では、血漿サンプルを加えることによりチオシアナート誘導体と混合した塩化第二鉄溶液の脱色強度を505nmで光学的に測定し、この強度は、血漿中で抗酸化物質の量(正常>2200pM)によって第二鉄イオンを還元する能力に比例する。物質が実際に測定される、製造業者によるアッセイの説明は明記しない。
【0230】
統計:
最初に、結果の主要変数は、治療の終了時(24週目)にPCR陰性である患者の百分率として定義したウイルス学的応答であった。効果の副次的変数は、12週目におけるウイルス学的応答率、PEG-IFN/リバビリン/シリマリンによる治療の安全性および忍容性、ベースライン時、24週目、48週目、72週目における生活の質(SF-36、疲労度評価スケール)、およびシリビニン注入後の酸化状態であった。シリビニンを7日間注入した後の予期しない強力なウイルス学的応答により、募集をやめ、ウイルス学的応答パラメータに基づいてより長期の注入期間およびより高用量のシリビニンを用いて試験を設計しなおした。元の試験について、サンプルサイズをGehanの2段階設計に基づいて推定した。以前の試験によれば、>10%の奏効率は、治療レジメンのさらなる調査を保証すると思われる。したがって、患者29名を第1段階で募集しなければならなかった(β過誤率=5%)。
【0231】
結果:
プロトコール1:
純然たる非応答者(詳細については上記の表を参照のこと)16名が含まれた。すべての患者は、ペグ化インターフェロン(ペグ化インターフェロンα2aが12名、ペグ化インターフェロンα2bが2名)およびリバビリン(1000〜1200mg/日)による総量の治療を少なくとも12週間受けた。測定された酸化ストレスのパラメータは、シリビニン注入中変更しなかった(図1)。
【0232】
血清HCV RNAは、静脈内SIL-単独療法で全患者において減少し(図2)(ベースライン:6.59±0.53、8日目:5.26±0.81log IU/ml、[平均値±標準偏差]、p<0.001)、1週間以内にlogが平均1.32±0.55減少した。並行して、ALTは、162±133から118±107U/1まで減少した(p=0.004)。すべての患者において、HCV RNAは、PegIFN/RBV療法開始時に依然として検出可能であった。患者3名は、PEGIFN/RBV併用療法を辞退した。残りの患者13名のうち11名において、シリビニン注入終了後、PegIFN/RBVの開始にもかかわらず、再びHCV-RNAが増加した。12週目に、すべての患者は、やはりHCV-RNA陽性であったが、患者5名は>2logに低下し、治療を続けた(図3)。24週目にHCV-RNA陰性になった患者はおらず、患者1名が5.5logの低下があり本人の希望により治療を続けた。
【0233】
プロトコール2:
純然たる非応答者20名(詳細については上記の表を参照のこと)が含まれた。すべての患者は、ペグ化インターフェロン(ペグ化インターフェロンα2aが18名、ペグ化インターフェロンα2bが4名;患者2名は2回の治療コースを受けた)およびリバビリン(1000〜1200mg/日)による総量の治療を少なくとも12週間受けた。
【0234】
図4は、これらの患者におけるウイルス動態を示す。ウイルス量は連続的に低減した。シリビニン単独療法の7日後、5mg/kg用量は辛うじて有効であり(n=3、logの低下0.55±0.5)、一方、10mg/kg([プロトコール1の患者を含めて]n=19、logの低下1.41±0.59)、15mg/kg(n=5、logの低下2.11±1.15)および20mg/日の用量(n=9、3.02±1.01)は、ウイルス量の極めて有意な低減をもたらした(p<0.001)。
【0235】
1週間のシリビニンおよびペグ化インターフェロン/リバビリンの併用療法後、ウイルス量はさらに低減した(logの低下:5mg/kg:1.63±0.78;10mg/kg:4.16±1.28;15mg/kg 3.69±1.29;20mg/kg 4.8±0.89;全p<0.0001対ベースライン)(図5)。15mg/kg投与群の患者5名のうち2名および20mg/kg投与群の患者9名のうち4名は、15日目にHCV RNA<15IUとなった。HCV-RNAは、PEGIFN/RBVの開始後、それぞれ4週目(試験プロトコール5週目)に患者8名、12週目(試験プロトコール13週目)に患者7名において<15 IU/mlであった。すべての患者に対して抗ウイルス薬併用療法を続けた(図6)。
【0236】
安全性:
シリビニンは、一般に忍容性がよかった。患者5名が軽度の胃腸症状(腹痛:5名、下痢:2名、悪心1名)、2名が頭痛、および1名が関節痛を訴えた。これらはすべて、患者によって軽度であると評価され、注入終了後に軽快し、投薬の変更は必要としなかった。15mg/kg投与群および20mg/kg投与群のすべての患者は、注入を開始したとき熱感を示し、熱感は治療せずに30分以内で軽快した。重大な有害事象(SAE)は発生しなかった。単独療法において、ヘモグロビン、白血球、血小板およびクレアチニンの変化は観察されなかった。抗ウイルス薬併用療法の典型的な副作用は観察された(8週間後にペグ化インターフェロン/リバビリン療法の終了を要する、ヘモフィルスインフルエンザ(hemophilus influenzae)誘発肺炎による呼吸困難の亢進を来している患者1名を含む)。
【0237】
この実施例によって、シリビニン(C-2',3-ビス(水素スクシナート))の非経口投与がC型肝炎ウイルスに対して著しい抗ウイルス活性を有することが実証される。これらの観察から、特に非応答者において慢性C型肝炎を治療するためのこの薬剤の潜在能力が実証される。
【0238】
驚くべきことに、静脈内投与したシリビニン(C-2',3-ビス(水素スクシナート))は、標準の抗ウイルス薬併用療法に応答しない慢性C型肝炎患者において、強力な抗ウイルス薬であることが見出された。静脈内投与シリビニンは忍容性がよく、重篤な有害作用は観察されなかった。最もよく報告された副作用は、一過性の熱感であった。抗ウイルス薬の効果は、用量依存性であったが、シリマリンの経口投与による注入期間の終了後は維持されなかった。
【0239】
このことに比べて、類似の量のシリマリンを経口投与した場合、HCV量に影響を与えず(A Gordonら、J Gastroenterol Hepatol. 2006年、21巻、275〜80頁)、このことは、はるかに低い血漿レベルをもたらすシリビニンのバイオアベイラビリティおよび代謝の差を反映している。経口投与後、シリマリンフラボノリグナンは、素早くグルクロン酸抱合され、短い半減期で速やかに除去される(Z Wenら、Drug Metab Dispos. 2008年、36巻(1号)、65〜72頁)。
【実施例2】
【0240】
患者を、ペグ化インターフェロンα2a 180μgおよび体重に基づくリバビリンで連続的に治療した。この治療にもかかわらず、以下の患者5名は、療法24週間後にHCV-RNA陽性であった:男性患者3名および女性患者2名;HCV遺伝子型1を有する患者4名およびHCV遺伝子型3aを有する患者1名;肝硬変患者3名。
【0241】
以前の2回の療法(24週間および48週間)に関して、患者4名は未治療とみなすことができ、一方患者1名は再発者とみなすことができる。
【0242】
ペグ化インターフェロンα2a 180μgおよび体重に基づくリバビリンによる継続中の治療の過程において、すべての患者をシリビニン20mg/kg/日静脈内投与により、連続14日間、少なくとも1回治療した。この期間中、ペグ化インターフェロン/リバビリンによる併用療法を継続した。
【0243】
患者5名は全員HCV-RNA陰性になった。
【0244】
図7は、ある個別の患者(男性、55歳)の結果を示している。見てわかるように、ペグ化インターフェロン/リバビリンは、単に24週間後にウイルス量を約log7 IU/mL〜約log4.5 IU/mLまで低減させるだけである。しかし、14日間シリビニンビス(水素スクシナート)20mg/kg/日静脈内投与で同時治療すると、ウイルス量を約log4.5 IU/mLから検出限界を下回る値まで劇的に減少させる。非経口シリビニンビス(水素スクシナート)の最初の投与間隔の後、ウイルス量は、約2IU/mLまで再び増加したが、これは、14日間のシリビニンビス(水素スクシナート)20mg/kg/日静脈内投与による2回目の同時治療によって検出限界より下に永続的に抑制することができる。
【0245】
図8は、他の個別の患者(女性、44歳)の結果を示している。見てわかるように、ペグ化インターフェロン/リバビリンは、単に30週間後にウイルス量を約log7 IU/mL〜約log5 IU/mLまで低減させるだけである。しかし、30週間後に、14日間シリビニンビス(水素スクシナート)20mg/kg/日静脈内投与で同時治療すると、ウイルス量を約log4 IU/mLから検出限界を下回る値まで劇的かつ永続的に減少させる。
【0246】
図9は、1名の個別の患者(男性、52歳)の結果を示している。見てわかるように、ペグ化インターフェロン/リバビリンは、ウイルス量を約log5 IU/mLから<15IU/mLの検出限界に近い値まで効率的に減少させる。72週間後に、14日間シリビニンビス(水素スクシナート)20mg/kg/日静脈内投与で同時治療すると、ウイルス量を検出限界よりはるかに下にさらに減少させた。
【0247】
これらの臨床試験によって、比較的短い時間間隔のシリビニン成分による非経口治療は、ペグ化インターフェロン/リバビリンによる従来の治療を補助し、かなり改善することが実証される。シリビニン成分の非経口投与は、ペグ化インターフェロン/リバビリンによる従来の治療に対する患者の感受性を(再)賦活化し(図7および図8)、かつ/またはペグ化インターフェロン/リバビリンによる従来の治療の抗ウイルス薬効果を増強する(図9)と思われる。
【実施例3】
【0248】
in vivo試験を実施して、体重1kg当たりシリビニン20mg(Legalon(登録商標) SIL)による7日間の静脈内注入治療を受けた慢性C型肝炎に罹患した患者8名において、シリビニンの血漿濃度/時間プロファイルを特徴付けた。体重1kg当たり20mgの複数の用量について、遊離シリビニンおよび総シリビニンの血漿濃度/時間プロファイルおよびPKパラメータを1日目(=単一用量条件)に観察し、7日目(=予想される定常状態条件)に観察したものと比較した。
【0249】
分析手順:
試験サンプルを、検証済みのHPLC-UV法を用いて分析した。アッセイ期間中、分析手順を分析の実行毎に2つの検量線によって検証した。検量線で示されたデータおよび品質管理サンプルのクロマトグラムの検定は、試験の総シリビニンAおよびシリビニンB濃度および遊離シリビニンAおよびシリビニンB濃度の決定結果が信頼できることを示している。
【0250】
PK特性を以下の表にまとめて示す。
【0251】
【表11】

【0252】
【表12】

【実施例4】
【0253】
XTT試験によりマウス細胞系L929を用いてシリマリン、シリビニン、シリビニンビス(水素スクシナート)二ナトリウム塩、およびコハク酸の細胞毒性の潜在能力を評価するためにin vitro試験を実施した(D.A. Scudieroら、Cancer Res. 48巻、4827〜33頁;O.S. Weislowら、J. Natl. Cancer Inst.、81巻、577〜86頁;N.W. Roehmら、J. Immunol. Methods、142を参照のこと)。
【0254】
試験項目の以下の濃度を試験した:9.77μg/mL、19.53μg/mL、39.06μg/mL、78.13μg/mL、156.25μg/mL、312.5μg/mL、625μg/mL、1250μg/mL。完全培地(10%(体積/体積)FCSを含むRPMI 1640)を陰性対照として用いた。試験項目用の溶媒対照は、10%(体積/体積)FCSを含むRPMI 1640培地および1%DMSOであった。陽性対照用の溶媒対照はまた、10%(体積/体積)FCSを含むRPMI 1640培地および10.0%(体積/体積)脱イオン水であった。SDSを陽性対照として用いた。以下の濃度を適用した:3.125μg/mL、6.25μg/mL、12.5μg/mL、25μg/mL、50μg/mL、100μg/mL、125μg/mL、250μg/mL。インキュベーション時間は、37±1.5℃で24時間であった。
【0255】
陰性対照および溶媒対照は、細胞生存率の低減を示さなかった。陽性対照(SDS)は、異なる用量に関連する細胞生存率の低減を示した。
【0256】
39.06μg/mLから最高試験濃度(1250μg/mL)までのシリマリンと共にインキュベートした後に毒性作用は観察された。算出されたXTT50値は、35.2μg/mLである。
【0257】
78.13μg/mLから最高試験濃度(1250μg/mL)までのシリビニンと共にインキュベートした後に毒性作用は観察された。算出されたXTT50値は67.5μg/mLである。
【0258】
最高試験濃度(1250μg/mL)までのシリビニン-ビス(水素スクシナート)ナトリウム塩と共にインキュベートした後に、関連する細胞毒性効果は観察されなかった。細胞毒性の欠如によって、XXT50値は、算出することができなかった。
【0259】
最高試験濃度(1250μg/mL)までのコハク酸と共にインキュベートした後に、関連する細胞毒性効果は観察されなかった。細胞毒性の欠如によって、XXT50値は算出することができなかった。
【0260】
これらの実験によって、所与の条件下で、シリマリンの細胞毒性の潜在能力はシリビニンの細胞毒性の潜在能力よりもほぼ100%高いことが明らかにされた。したがって、シリビニンは、重篤な副作用を引き起こさずに、シリマリンよりも高い用量で投与することができることが予想され得る。
【実施例5】
【0261】
NS5B RNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)は、ウイルス複製のための必須の酵素である(S.B. Hwangら、Virology 1997年、227巻、439〜46頁を参照のこと)。以下の純粋な化合物を、HCV RdRp活性を検出するための無細胞酵素アッセイにおいて試験した:シリビニンA、シリビニンB、イソシリビニンA、イソシリビニンB、シリクリスチン、シリジアニン、およびシリビニンエステルであるシリビニン-C-2',3-ビス(水素スクシナート)二ナトリウム(Legalon(登録商標)SILの有効成分)。
【0262】
100%DMSO中の化合物の原液(100mM)を調製した。すべての反応におけるDMSO濃度は、5%に保たれた。試験の標的酵素は、HCV NS5BΔ21ポリメラーゼ遺伝子型J4(1b)であった。
【0263】
図11は、シリマリンの6つの精製済みの構成成分(すなわち、シリビニンA、シリビニンB、イソシリビニンA、イソシリビニンB、シリクリスチン、およびシリジアニン)について生成したデータを示している。図12は、シリビニンエステルについてのそれぞれのデータを示している。シリビニンエステルが最も効率的であることが明らかになった。
【0264】
シリビニンエステルIC50値を、2つの測定の用量反応曲線から決定した。決定されたIC50値は47±14μMであった。曲線はデータポイントに適合され、IC50値はSigmaPlot 8.0ソフトウェアを用いて得られた曲線から内挿された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルス性肝炎を治療するための非経口投与用に製剤される医薬を製造するためのシリビニン成分の使用。
【請求項2】
シリビニン成分がシリビニンエステルである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
シリビニンエステルがシリビニンC-2',3-ビス(水素スクシナート)または生理的に許容されるその塩である、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
医薬が、シリジアニンおよび/またはシリクリスチンおよび/またはイソシリビニンを本質的に含まない、請求項1から3の一項に記載の使用。
【請求項5】
ウイルス性肝炎が、B型肝炎またはC型肝炎である、請求項1から4の一項に記載の使用。
【請求項6】
医薬が注射または注入用に製剤される、請求項1から5の一項に記載の使用。
【請求項7】
医薬が静脈内投与用に製剤される、請求項1から6の一項に記載の使用。
【請求項8】
医薬が、シリビニン成分以外のシリマリンの他の構成成分をどれも含まない、請求項1から7の一項に記載の使用。
【請求項9】
医薬が、シリビニンに基づいて、少なくとも50mgの用量でシリビニン成分を含む、請求項1から8の一項に記載の使用。
【請求項10】
医薬がシリビニン成分以外のさらなる薬剤を含む、請求項1から9の一項に記載の使用。
【請求項11】
さらなる医薬が、グルタミン酸アルギニン、シチオロン、エポメジオール、オキソグルタル酸オルニチン、チジアシクアルギニン、ミオイノシトール、メチオニンおよびN-アセチルメチオニン、コリン、アスパラギン酸オルニチン、シアニダノール、チオプロニン、ベタイン、シアノコバラミン、ロイシン、左旋糖、アシクロビル、イドクスウリジン、ビダラビン、リバビリン、ガンシクロビル、ファムシクロビル、バラシクロビル、シドフォビル、ペンシクロビル、バルガンシクロビル、ブリブジン、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターフェロンα-2a、インターフェロンα-2b、インターフェロンα-n1、インターフェロンβ-1a、インターフェロンβ-1b、インターフェロンアルファコン-1、ペグ化インターフェロンα-2b、ペグ化インターフェロンα-2aおよびインターフェロンγ1bからなる群から選択される、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
肝炎患者におけるウイルス量の低減のための請求項1から11の一項に記載の使用。
【請求項13】
肝移植を受けるまたは受けた患者においてウイルス性肝炎を治療するための請求項1から12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
リバビリン/インターフェロン療法に応答しない患者においてウイルス性肝炎を治療するための請求項1から13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
グルタミン酸アルギニン、シリマリン、シチオロン、エポメジオール、オキソグルタル酸オルニチン、チジアシクアルギニン、ミオイノシトール、メチオニンおよびN-アセチルメチオニン、コリン、アスパラギン酸オルニチン、シアニダノール、チオプロニン、ベタイン、シアノコバラミン、ロイシン、左旋糖、アシクロビル、イドクスウリジン、ビダラビン、リバビリン、ガンシクロビル、ファムシクロビル、バラシクロビル、シドフォビル、ペンシクロビル、バルガンシクロビル、ブリブジン、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターフェロンα-2a、インターフェロンα-2b、インターフェロンα-n1、インターフェロンβ-1a、インターフェロンβ-1b、インターフェロンアルファコン-1、ペグ化インターフェロンα-2b、ペグ化インターフェロンα-2aおよびインターフェロンγ1bからなる群から選択される薬剤によるウイルス性肝炎の支持的および/または予防的治療のための請求項1から14の一項に記載の使用。
【請求項16】
医薬によるウイルス性肝炎の治療後に、ウイルス性肝炎の治療が別の医薬で行われる、請求項1から15の一項に記載の使用。
【請求項17】
医薬が逐次治療の構成成分として製剤され、前記医薬が最初に第1の期間中に投与され、続いて、別の医薬が第2の期間中に投与される、請求項1から16の一項に記載の使用。
【請求項18】
第1の期間が少なくとも2日間を含む、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
他の医薬が、グルタミン酸アルギニン、シリマリン、シチオロン、エポメジオール、オキソグルタル酸オルニチン、チジアシクアルギニン、ミオイノシトール、メチオニンおよびN-アセチルメチオニン、コリン、アスパラギン酸オルニチン、シアニダノール、チオプロニン、ベタイン、シアノコバラミン、ロイシン、左旋糖、アシクロビル、イドクスウリジン、ビダラビン、リバビリン、ガンシクロビル、ファムシクロビル、バラシクロビル、シドフォビル、ペンシクロビル、バルガンシクロビル、ブリブジン、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターフェロンα-2a、インターフェロンα-2b、インターフェロンα-n1、インターフェロンβ-1a、インターフェロンβ-1b、インターフェロンアルファコン-1、ペグ化インターフェロンα-2b、ペグ化インターフェロンα-2aおよびインターフェロンγ1bからなる群から選択される1種または複数の薬剤を含む、請求項16から18の一項に記載の使用。
【請求項20】
他の医薬が経口投与用に製剤される、請求項16から19の一項に記載の使用。
【請求項21】
請求項1から11の一項に定義の少なくとも1種の医薬および請求項19または20に定義の少なくとも1種の他の医薬を含むキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【公表番号】特表2011−503133(P2011−503133A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533503(P2010−533503)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【国際出願番号】PCT/EP2008/009659
【国際公開番号】WO2009/062737
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(509302294)マダウス ゲーエムベーハー (2)
【Fターム(参考)】