肝炎CウイルスE1E2複合体に対する抗体、HCV粒子の組成物及び医薬組成物
本発明は、HCVに対する新規な立体配座抗体、更に詳しくは、モノクローナル抗体に関する。本発明は、該抗体により認識され易い粒子の組成物、及びそれらを含有する医薬組成物にも関する。本発明は、HCVエンベロープドサブウイルス粒子又は精製されたHCVエンベロープド完全ウイルス粒子及びそれらを製造する方法にも関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HCVに対する新規な立体配座抗体(conformational antibodies)、更に詳しくはモノクローナル抗体に関する。本発明、該抗体により認識される傾向がある粒子の組成物及びそれらを含有する医薬組成物にも関する。本発明は、HCVエンベロープドサブウイルス粒子(HCV enveloped subviral particles)又は精製されたHCVエンベロープド完全ウイルス粒子(HCV enveloped complete virus particles)及びそれらを製造する方法にも関する。
【0002】
肝炎Cウイルス(HCV)感染は、慢性肝炎及び硬変の主要な原因であり、そして肝細胞癌をもたらすことがある。世界中で約200万人の人々がHCVに慢性的に感染しており、この疾患は深刻な世界的健康問題となった。HCVは、フラビウイルス科(Flaviridae family)のHepacivirus属に属するエンベロープドRNAウイルスである。そのゲノムは、内部リボソームエントリー部位(internal ribosome entry sites)として機能する5’非翻訳領域(UTR)、約3,000アミノ酸のポリタンパク質をコードする単一オープンリーディングフレーム及び3’UTRを有する正の極性の9.6kbの一本鎖RNAである(Bartenschlager et al., 2000)。このポリタンパク質は、翻訳と同時に又は翻訳後に、宿主細胞ペプチダーゼにより開裂されてコアタンパク質並びにエンベロープ糖タンパク質E1及びE2を含む構造タンパク質を生じ、そしてウイルスプロテアーゼにより開裂されて非構造タンパク質(NS)2〜5Bを発生する(Bartenschlager et al., 2000)。関連したプラス鎖RNAウイルスから類推して、複製はマイナス鎖RNA中間体によって行われ、そして細胞質膜に会合したレプリカーゼ複合体を形成するNSタンパク質により触媒される。
【0003】
患者血漿サンプル中に存在するHCV粒子の低いレベル及び有効なHCV複製又は粒子アセンブリーを支持する細胞培養システムの欠如は、ビリオンと会合した糖タンパク質
の特徴付けを妨害してきた。HCVエンベロープ糖タンパク質に関する最近の知見は、ウイルス若しくは非ウイルス発現ベクターによる細胞培養一過性発現アッセイに基づいている。これらの研究は、E1及びE2糖タンパク質が相互作用して複合体を形成することを示した(Dubuisson, 2000に概観されている)。非イオン洗剤の存在下に、2つの形態のE1E2複合体が検出される:非共有結合相互作用により安定化されたE1E2ヘテロニ量体及びミスフォールディングされた複合体を表すと考えられる不均一なジスルフィド連結された集合体(aggregate)。以前に、エンベロープ糖タンパク質特異的抗体が合成ペプチド又は組換え抗原による免疫化により得られた。しかしながら、HCV糖タンパク質ヘテロ二量体のネイティブ前出芽形態(native prebudding form)と考えられる非共有結合により連結されたE1E2ヘテロ二量体を認識する立体配座感受性E2−反応性モノクローナル抗体(mAb)(H2)は、血清由来のHCV RNAポジティブ粒子と反応しない(Deleersynder et al., 1997)。更に、WO92/07001は、感染したチンパンジーから抽出したHCV粒子の調製物によるマウスの免疫化により調製された抗体を開示しているが、これらの抗体は天然のHCV粒子(即ち、感染した患者由来の)に対して試験されていない。更に、WO00/05266は、感染した患者のB細胞から調製された抗体を開示しているが、これらの抗体は組換えE2タンパク質に結合する能力に従って選ばれている。ゆえに、すべてのこれらの抗体は、診断目的又は治療若しくは予防目的の限定された用途である。何故ならば、それらは非自然のHCV又はその一部により産生されているか又は選ばれており、そして天然のHCV粒子と相互作用することが示されていないからである。
【0004】
十分な量及び濃度で天然のエンベロープドHCV粒子を含有するHCV調製物の欠如は、天然HCV粒子を認識する傾向がある(liable to recognize)抗体をこれまで得ることができなかった理由の1つである。事実、血漿サンプル中のHCV粒子の低いレベルは、このウイルスの特徴付け及び可視化を困難にした。以前に、天然に感染した患者の血漿からの感染の急性期の間に回収されたウイルスは、ショ糖における約1.06g/mlの浮遊密度を有していることが示された(Hijikata et al., 1993)。反対に、in vitro複製後の細胞培養物から回収されたHCVはショ糖における1.12g/mlの浮遊密度を有する(Yoshikura et al., 1996)。最後に、慢性的に感染している個体から回収されたHCVはショ糖における約1.17g/mlの浮遊密度を有している(Hijikata et al., 1993)。血清由来のウイルスの低い密度は、血清低密度リポタンパク質とのその会合のせいであるとされた(Thomssen etal., 1992)。高密度ウイルスは、抗原−抗体複合体中のウイルスに結合した抗体と会合していることが示された(Kanto et al., 1995)。これらのデータにもかかわらず、これらの異なるHCV母集団のタンパク質組成に関する指示及び低密度画分(<1.0g/ml)が完全なビリオンとしてエンベロープ、RNA及びヌクレオカプシドを含有するかどうかに関する指示はまだない。
【0005】
ゆえに、本発明の目的は、天然のHCV粒子と反応する抗体を提供することである。
【0006】
本発明の他の観点は、抗体産生動物の有効な免疫化を可能とするのに十分な量及び濃度で天然のHCV粒子の組成物を提供することである。
【0007】
本発明の他の観点は、医薬組成物の活性物質として使用されやすい、感染のない特異的)HCV組成物を提供することである。
発明の詳細な説明
【0008】
本発明は、天然のHCVウイルスエンベロープに特異的に結合することができる立体配座抗体に関する。
【0009】
「立体配座抗体」という表現は、その分子環境により規定された三次元構造を有するエピトープを認識する抗体を示す。
【0010】
「特異的に結合する」という表現は、天然のHCVウイルスエンベロープを形成するエレメントの実質的に1つのみに見出されるエピトープに抗体が結合すること、即ち、天然のHCVエンベロープを形成するエレメント以外のエレメントとの抗体の結合が実質的にないということを意味する。例えば、抗体の結合特異性は、当業者に周知の方法、例えば、生物学的サンプルをゲル上で電気泳動により移動させ、次いで膜に転写しそして前記抗体と共インキュベーションし、次いでこれを二次抗体により検出するウエスタンブロット実験により試験することができる。該抗体は、検出された電気泳動バンドの実質的すべてが標的化合物又はその一部を含有するならば、該生物学的サンプル中に含有された標的化合物に「特異的に結合している」と言われる。
【0011】
「HCV」は、「肝炎Cウイルス」を意味し、それはChoo et al., (1989, 1991)に特に記載されている。HCVは、特に、RNA、コアタンパク質から作られたカプシド並びに脂質及びタンパク質、特に糖タンパク質を含むエンベロープを含む。
【0012】
「HCVウイルスエンベロープ」は、脂質及びタンパク質、特に糖タンパク質、例えば、HCVタンパク質E1及びE2から作られる(Clarke, 1997)。
【0013】
「天然の」とは、HCV又はその一部が生物学的サンプル中に見いだされたままでありそして場合により単離されたままであり、そして必要ならば、生物学的サンプルから精製されたままであることを意味する。このようなサンプルはHCVにより感染した患者の血液、血漿又は血清であることができる。特に、「天然の」は、組換え法により又は細胞系若しくは動物を使用することにより産生されたものではなく、そして例えば、Schalich et al.(1996), Blanchard et al., (2002)又はWO92/07001に記載のHCVエメントとは異なるHCV又はその一部を指す。
【0014】
本発明は、更に詳しくは、天然のHCV E2タンパク質に特異的に結合することができる立体配座抗体に関する。
【0015】
HCV E2は、特にDubuisson(2000)及びOp De Beeck et al.(2000)に記載されている。それは、開裂されてE2(アミノ酸384〜714)を生じるポリタンパク質(3012アミノ酸)として産生される。
【0016】
「特異的に結合する」という表現は、抗体が、実質的にHCV E2タンパク質にのみ見いだされるエピトープ又はその一部に結合することを意味する。特に、抗体は、抗体−E2複合体が他のタンパク質と一緒に存在する競合試験においてHCV E2タンパク質から引き離される(detached)ことはできない。
【0017】
「天然のHCV E2タンパク質」という表現は、タンパク質がHCVにより感染した
患者の生物学的サンプルにおいて見いだされるままであること、特に天然のHCV E2タンパク質は組換えタンパク質ではないことを意味する。
【0018】
本発明は、患者におけるHCV感染を中和することができる、上記したとおりの立体配座抗体に関する。
【0019】
「HCV感染を中和する」とは、抗体が、例えば、血液、血漿又は血清中に検出されるHCVの減少により証明されうるとおり、HCVにより感染した患者の健康を改善することができること、又は個体がHCVによる感染されるのを抗体が阻止することができることを意味する。
【0020】
該抗体のHCV感染中和能力は、HCVにより慢性的に感染しているか又は該抗体の存在下にHCVにより初めに感染される(primo-infected)モデル動物、例えば、チンパンジー又はマウス、特にヒトに適合したマウス(humanized mice)において監視することができる。監視された抗体は、それぞれ、HCV関連ウイルス血症の減少を誘発するか又はHCVによる感染を阻止することができるべきである。
【0021】
本発明は、共有結合形態又は非共有結合形態下のHCV E1E2複合体を沈殿させることができる上記した立体配座抗体に関する。
【0022】
HCV E1E2複合体は、非共有結合であることができる、即ち、E1及びE2は、弱い結合、例えば、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス結合又は疎水性結合によって会合しているか、又は共有結合であることができる、即ち、E1及びE2は共有結合、例えば、ジスルフィド結合によって会合している。E1E2複合体の共有結合形態及び非共有結合形態は特にDeleersnyder et al.(1997)に記載又は示唆されている。
【0023】
「沈殿する」とは、抗体が HCV E1E2複合体を不溶性にすることができることを意味する。沈殿は、例えばDubuisson and Rice(1996)により記載のとおりに行うことができる。
【0024】
本発明は、天然のECV E1タンパク質に特異的に結合することができる上記した立体配座抗体に関する。
【0025】
HCV E1は、特にDubuisson(2000)及びOp De Beeck et al.(2000)に記載されている。それは、開裂されてE1(アミノ酸192〜383)を生じるポリタンパク質(3012アミノ酸)として産生される。
【0026】
「特異的に結合する」という表現は、抗体が、実質的にHCV E1タンパク質上にのみ見いだされるエピトープ又はその一部に結合することを意味する。特に、抗体は、抗体−E1複合体が他のタンパク質と一緒に存在する競合試験においてHCV E1タンパク質から引き離されることはできない。
【0027】
「天然のHCV E1タンパク質」という表現は、タンパク質がHCVにより感染した
患者の生物学的サンプルにおいて見いだされたままであること、特に天然のHCV E1タンパク質は組換えタンパク質ではないことを意味する。
【0028】
本発明は、更に詳しくは、天然のHCV E1タンパク質、天然のHCV E2タンパク質に特異的に結合することができ、そして共有結合形態又は非共有結合形態下のHCV E1E2複合体を沈殿させることができる立体配座抗体に関する。
【0029】
本発明は、下記の配列:
HCVタンパク質E1のアミノ酸297〜306、
HCVタンパク質E2のアミノ酸480〜494、
HCVタンパク質E2のアミノ酸613〜621、
の少なくとも1つからなるエピトープに特異的に結合することができる上記した立体配座抗体に関する。
【0030】
本発明に従う抗体は、
−下記の配列:RHWTTQGCNC(配列番号1)に相当するHCVタンパク質E1のアミノ酸297〜306を含むペプチドを提示する分子;及び/又は
−下記の配列:PDQRPYCWHYPPKPC(配列番号2)に相当するHCVタンパク質E2のアミノ酸480〜494を含むペプチドを提示する分子;及び/又は
−下記の配列:YRLWHYPCT(配列番号3)に相当するHCVタンパク質E2のアミノ酸613〜621を含むペプチドを提示する分子、
に結合することができる。
【0031】
前記配列の少なくとも1つへの該抗体の結合は、前記配列のいずれかを含有するペプチドを合成し、そして当業者により周知された方法、例えば、ELISA又はEIAにより該合成されたペプチドに対する抗体結合能力をアッセイすることにより試験することができる。
【0032】
頭字語「ELISA」は、酵素結合イムノソルベントアッセイ(Enzyme Linked Immuno Sorbent Assay)を意味する。
【0033】
頭字語「EIA」は、エンザイムイムノアッセイを意味する。
【0034】
本発明は、下記の配列:
HCVタンパク質E1のアミノ酸297〜306、
HCVタンパク質E2のアミノ酸480〜494、
HCVタンパク質E2のアミノ酸613〜621、
の各々からなるエピトープに特異的に結合することができる上記した立体配座抗体に関する。
【0035】
本発明に従う抗体は、
−下記の配列:RHWTTQGCNC(配列番号1)に相当するHCVタンパク質E1のアミノ酸297〜306を含むペプチド、及び
−下記の配列:PDQRPYCWHYPPKPC(配列番号2)に相当するHCVタンパク質E2のアミノ酸480〜494を含むペプチド、及び
−下記の配列:YRLWHYPCT(配列番号3)に相当するHCVタンパク質E2のアミノ酸613〜621を含むペプチド、
を含むエピトープを提示する分子に結合することができる。
【0036】
前記の配列の各々を含むエピトープへの該抗体の結合は、分子、特に配列RHWTTQGCNC(配列番号1)を含むタンパク質、及び分子、特に配列PDQRPYCWHYPPKPC(配列番号2)を含むタンパク質、及び分子、特に、配列 YRLWHYPCT(配列番号3)を含むタンパク質に対する抗体結合能力を、当業者に周知の方法、例えば、ELISA又はEIAによりアッセイすることによって試験することができる。
【0037】
本発明は、モノクローナル抗体である前記した立体配座抗体に関する。
【0038】
「モノクローナル抗体」という表現は、抗体が実質的に1つのエピトープ又は該エピトープの一部に結合することを意味する。
【0039】
モノクローナル抗体は、不死化された抗体分泌細胞、例えばハイブリドーマ由来のモノクローナル細胞系から得ることができる。
【0040】
モノクローナル細胞系は、独特の細胞の培養から誘導される。
【0041】
ハイブリドーマは、例えば、Kohler and Milstein(1975)又はButtin et al.(1978)に従って、抗体分泌細胞、例えばB細胞と不死化された細胞との融合により産生することができる。
【0042】
本発明の他の観点に従えば、上記したモノクローナル抗体は、受託番号CNCM I−2983の下で2003年3月19日に、CNCM(Collection Nationale de Culture de Microorganismes, Institut Pasteur, Paris, France)にブタペスト条約の下で寄託されたハイブリドーマにより分泌される。
【0043】
該モノクローナル抗体は、特に、天然のHCVウイルスエンベロープ、天然のHCV E2タンパク質、天然のHCV E1タンパク質に結合し、そして共有結合形態又は非共有結合形態下のHCV E1E2複合体を沈殿させることができ、そして上記した配列の少なくとも1つ又はすべてからなるエピトープに結合することができる。該モノクローナル抗体は、特に今後D32.10と呼ばれる。
【0044】
本発明の他の観点に従えば、上記したモノクローナル抗体は、受託番号CNCM I−2982の下で2003年3月19日に、CNCM(Collection Nationale de Culture de Microorganismes, Institut Pasteur, Paris, France)にブタペスト条約の下で寄託されたハイブリドーマにより分泌される。
【0045】
該モノクローナル抗体は、特に、天然のHCVウイルスエンベロープ及びHCV E2タンパク質に結合する。該モノクローナル抗体は、特に今後D4.12.9と呼ばれる。
【0046】
本発明は、本発明に従う抗体の断片又は誘導体にも関する。本発明の抗体の断片は、特に、当業者に周知されているFab、F(ab’)2又はscFv(一本鎖Fv)断片を包含する。本発明の抗体の誘導体は、もし適当ならば、ヒトに適合した抗体(humanized antibodies)を含む。ヒトに適合した抗体は、例えば、もし適当ならば、本発明に従う抗体の一部がヒト抗体の対応する部分、例えば、Fc断片により置換されているキメラ抗体であることができる。替わるものとして、本発明に従う抗体の複合決定領域(complex determining region)(CDR)を、例えば、US patent number 5, 824, 307に記載の如きヒト抗体に移植させることができる。
【0047】
他の態様に従えば、本発明は、受託番号CNCM I−2983の下で2003年3月19日に、CNCM(Collection Nationale de Culture de Microorganismes, Institut Pasteur, Paris, France)にブタペスト条約の下で寄託されたハイブリドーマに関する。
【0048】
他の態様に従えば、本発明は、受託番号CNCM I−2982の下で2003年3月19日に、CNCM(Collection Nationale de Culture de Microorganismes, Institut Pasteur, Paris, France)にブタペスト条約の下で寄託されたハイブリドーマに関する。
【0049】
他の態様に従えば、本発明は、活性物質として上記した抗体の少なくとも1つ及び薬学的に許容されうるベヒクルを含む医薬組成物に関する。
【0050】
薬学的に許容されうるベヒクルは、特に、Remington's Pharmaceutical Science 16thed./Mack Publishing Coに定義されているとおりである。
【0051】
他の化合物、特に抗ウイルス化合物、例えば、他の抗HCV抗体及びその断片又は誘導体、インターフェロン、RNAポリメラーゼ阻害剤、プロテアーゼ阻害剤又はヘリカーゼ阻害剤を上記した組成物中に含ませることができる。
【0052】
上記した医薬組成物は、1回投与(single dose)又は繰り返し投与(multiple doses)で投与することができる。1回投与の場合には、組成物は、体重1kg当り抗体約0.1mg〜体重1kg当り抗体約1g、特に約1mg/kg〜約100mg/kgを含むことができる。繰り返し投与の場合には、組成物は、1日当り体重1kg当り抗体約0.1mg〜1日当り体重1kg当り抗体約1g、特に約1mg/kg/日〜約100mg/kg/日の投与量で投与することができる。
【0053】
他の態様に従えば、本発明は、HCV感染の診断、予防又は治療のための医薬を製造するための、上記した抗体の少なくとも1つの使用に関する。
【0054】
本発明に従う抗体は、HCVを含有する傾向がある生物学的サンプル中のHCVウイルス粒子の検出のために使用することができる。このようなサンプルは、HCVにより感染した患者又はHCVにより感染される危険がある患者から得ることができ、そして特に、血液、血漿又は血清のサンプルを含む。抗体によるウイルスの検出のための当業者の周知した方法、例えばELISA又はEIAのどれも、本発明の抗体に関して適用することができる。
【0055】
本発明に従う抗体は、HCVに感染した患者又は感染していない患者に投与してHCV感染を中和する医薬の製造のために使用することができる。HCV感染中和は、例えば、抗体を標的細胞膜受容体に結合するエンベロープ分子、例えばE1又はE2に結合させることによりHCVが標的細胞に接触するのを阻止し、それによりHCV−標的細胞結合を阻止することによつて進行させることができる。
【0056】
抗体は、HCVにより感染した患者に投与して、HCVウイルス粒子が細胞、特に肝細胞に感染するのを阻止するか、又は免疫系の細胞による該抗体で覆われたHCVの捕捉を促進することができる。
【0057】
抗体は、特に、移植された器官、特に肝臓を受け取るべき患者に、移植手術の前、移植手術期間中又は移植手術の後に投与して、移植された器官中に含有されることがあるHCVウイルス粒子を中和することができる。
【0058】
本発明は、上記した抗体の少なくとも1つに結合することができるエンベロープドウイルス粒子にも関する。
【0059】
「エンベロープドウイルス粒子」という表現は、特にHCVビリオン、又はエンベロープを含有するHCVビリオンの一部を表し、該エンベロープは脂質及び/又はタンパク質、特に小葉(leaflets)において会合した糖タンパク質を含む。
【0060】
本発明は、上記した抗体の少なくとも1つに結合することができるエンベロープドウイルス粒子に結合する抗体にも関する。
【0061】
他の態様に従えば、本発明は、ヒト、血液、血漿又は血清の初めのサンプル(initial samples)由来のHCVウイルス粒子の組成物であって、HCV RNAコピーの濃度が、それが由来するヒト、血液、血漿又は血清の初めのサンプル中のHCV RNAコピーの濃度より約100〜1000倍高い、特に約107コピー/mlより高い、組成物に関する。
【0062】
本発明に従う組成物の高い濃度は、該組成物による動物の有効な免疫化を可能とする。
【0063】
HCV RNAは特にHCVゲノムRNAである。
【0064】
サンプルのHCV RNA含有率は、RT−PCR、特に、定量的RT−PCRにより、例えば、Amplicor(登録商標)HCV Monitor(登録商標)、Roche Diagnostics(Young et al., 1999)を使用して測定することができる。
【0065】
別法として、サンプルのHCV RNA含有率は、NASBA(核酸配列に基づく増幅)技術(Damen et al., 1999))を使用して測定することもできる。
【0066】
サンプルのHCV RNA含有率は、該サンプル中のHCV RNA分子のコピーの数として表すことができ、ここで1コピーは1国際単位(UI)と同等である。
【0067】
サンプルのHCV RNA含有率は、該サンプル中に含有されたHCVビリオンの量を示す。
【0068】
約107コピー/mlより多くのHCV RNAを含有する組成物は、該組成物による動物の有効な免疫化を可能とする。
【0069】
本発明は、更に詳しくは、HCV RNAコピーの数がタンパク質mg当り約108〜約109UIである、上記した組成物に関する。
【0070】
組成物のタンパク質含有率は、当業者に周知の方法により評価され、特にLowryアッセイ(lowry et al., 1951)、例えば、Bioradタンパク質アッセイ(Biorad Laboratories)により評価される。
【0071】
この目安は組成物の特異的活性を表し、それは組成物の純度を示し、タンパク質mg当りHCV RNAコピーの数が高ければ高いほど、HCV含有組成物の純度は高い。
【0072】
本発明は、更に、該組成物の容積が約0.1ml〜約10mlである上記した組成物に関する。
【0073】
約0.1ml〜約10mlの組成物容積は、少なくとも106HCV RNAコピーを含有する上記した組成物に対応する。
【0074】
このような組成物は動物の免疫化に有用である。例えば、マウスの有効な免疫化は、実施例で記載のとおり、約106より多くのHCV RNAコピーを含有するHCVウイルス粒子組成物の投与を必要とする。
【0075】
他の態様に従えば、本発明は、HCV RNA及びHCVコアタンパク質を実質的に欠いている単離されたHCVエンベロープドサブウイルス粒子(isolated HCV enveloped subviral particle)に関する。
【0076】
「単離された」という用語は、粒子がその天然の環境から抽出されたこと、それが、特にHCV RNA及び/又はHCVコアタンパク質を含有する他のHCVウイルス粒子又はその一部から分離されたことを意味する。
【0077】
「HCV RNA及びHCVコアタンパク質を実質的に欠いている」という表現は、上記したサブウイルス粒子を含有する溶液が、Amplicor(登録商標)HCV Monitor(登録商標),Roche Diagnostics(Young et al., 1993)により測定して104UI/mlより少ないHCV RNAを含有し、そしてOrtho-Clinical Diagnostics test(Aoyagi et al., 1999)により測定して1pg/mlより少ないコアタンパク質を含有することを意味する。
【0078】
エンベロープの存在は、以後D32.10と呼ばれる受託番号I−2983の下でCNCMに寄託されたハイブリドーマにより分泌された抗体又は、以後D4.12.9と呼ばれる受託番号I−2982の下でCNCMに寄託されたハイブリドーマにより分泌された抗体によって、例えば、ELA又はELISA試験により評価されうる。
【0079】
「HCVエンベロープドサブウイルス粒子」という表現は、粒子が、実質的にHCVビリオンのエンベロープ部分のみ、即ち、脂質及び/又はタンパク質、特に小葉(leaflets)において会合した糖タンパク質を含有することを意味する。今までに単離されたHCVウイルス粒子は、HCV RNA及び/又はHCVコアタンパク質を含有していた。
【0080】
本発明は、更に詳しくは、上記した抗体のいずれかに結合する傾向がある、上記の単離されたHCVエンベロープドサブウイルス粒子に関する。
【0081】
本発明の抗体への上記したサブウイルス粒子の結合は、当業者に周知のいくつかの方法、例えば、免疫沈澱、ELISA、EIA又はウエスタンブロットにより評価されうる。
【0082】
他の態様に従えば、本発明は、HCV RNA、HCVコアタンパク質及HCV
エンベロープを含有しそして上記した抗体のいずれかに結合する傾向のある精製されたHCVエンベロープド完全ウイルス粒子を含む組成物に関する。
【0083】
本発明は、更に詳しくは、精製された天然のHCVエンベロープド完全ウイルス粒子を含む組成物に関する。
【0084】
「HCVエンベロープド完全ウイルス粒子」という表現は、HCVビリオンがHCVゲノムRNA、HCVコアタンパク質及びHCVエンベロープを含有することを意味する。これらの3つの成分を含有するHCVウイルス粒子の報告は先行技術にはなかった。
【0085】
HCV RNA、HCVコアタンパク質及びHCVエンベロープの存在は、上記した方法を使用することにより評価されうる。
【0086】
「精製した」という用語は、上記したHCVエンベロープド完全ウイルス粒子が他の化合物、例えば、HCVエンベロープドサブウイルス粒子から分離されていることを意味する。特に、組成物がHCVエンベロープド完全ウイルス粒子よりも90%少ないHCVエンベロープドサブウイルス粒子を含有することは、例えば、電子顕微鏡法により評価されうる。
【0087】
本発明に従う抗体への上記したHCVエンベロープド完全ウイルス粒子の結合は、当業者に周知のいくつかの方法、例えば、免疫沈澱、ELISA、EI又はウエスタンブロットにより評価されうる。
【0088】
他の態様に従えば、本発明は、下記の段階:
HCV感染患者の清澄化血漿分離交換法(clarified plasmapheresis)から生じるサンプルを少なくとも2回超遠心してHCVに富んだペレットを得、
該HCVに富んだペレットを水性溶液中に再懸濁させてHCVウイルス粒子の組成物を得る、
段階を含む、HCVウイルス粒子の組成物を製造する方法に関する。
【0089】
超遠心は、例えば、約190,000g〜約220,000g、好ましくは210,000gの速度で、約3時間〜約5時間、好ましくは、4時間の期間行うことができる。
【0090】
好ましい遠心条件は、ウイルス粒子、例えばHCVウイルス粒子を沈殿させるが、清澄化血漿中に含有される他の化合物は沈殿されない。
【0091】
「血漿分離交換」という用語は、患者の血液をろ過して血漿を得るが、血液の残りは患者に再注入されたことを意味する。
【0092】
「清澄化された」という用語は、血漿分離交換から得られた血漿が低い速度、特に3000gで30分間遠心されたことを意味する。
【0093】
超遠心の前の血漿分離交換の初期容積は、有利には約1リットルである。
【0094】
他の態様に従えば、本発明は、HCVウイルス粒子の組成物を製造するための上記した方法に従って得られる如きHCVウイルス粒子の組成物に関する。
【0095】
他の態様に従えば、本発明は、下記の段階:
HCV感染患者の清澄化された血漿分離交換法から生じるサンプルを少なくとも2回超遠心してHCVに富んだペレットを得、
該HCVに富んだペレットを水性溶液中に再懸濁させ、
該再懸濁させたHCVに富んだペレットをショ糖密度勾配において超遠心して、再懸濁させたHCVに富んだペレットのエレメントをそれらの密度に従って画分に分離し、
HCV RNAを実質的に含有せず、HCVコアタンパク質を実質的に含有せず、そしてD32.10又はD4.12.9として前記したモノクローナル抗体に結合することができる粒子を含有する画分を回収して、HCVエンベロープドサブウイルス粒子の組成物を得る、
段階を含む、HCVエンベロープドサブウイルス粒子の組成物を製造する方法に関する。
【0096】
再懸濁させたHCVに富んだペレットのショ糖密度勾配での超遠心は、約190,000g〜約220,000g、好ましくは210,000gで、約40時間〜約50時間、好ましくは、48時間の期間行うことができ、ショ糖勾配は、有利には、約10%〜約60%重量/重量、約20〜約50%重量/重量、約25%〜約45%重量/重量又は約30%〜約45%重量/重量であることができる。
【0097】
得られたすべての画分は、HCV RNA、HCVコアタンパク質及び/又はD32.10若しくはD4.12.9に結合することができる粒子の存在について試験される。
【0098】
画分は、Amplicor(登録商標)HCV Monitor(登録商標),Roche Diagnostics(Young et al., 1993)により測定したHCV RNAの含有率が約104UI/mlより小さい場合には、HCV RNAを実質的に含有しないと言われる。
【0099】
画分は、Ortho-Clinical Diagnostics test(Aoyagi et al., 1999)により測定したHCVコアタンパク質の含有率が約1pg/mlより少ない場合には、HCVコアタンパク質を実質的に含有しないと言われる。
【0100】
使用されるモノクローナル抗体は、特に、受託番号I−2983の下でCNCMに寄託されたハイブリドーマにより分泌されるモノクローナル抗体D32.10である。
【0101】
粒子は、それらが下記のEIA試験で試験の結果ポジティブでありうるならば、上記したモノクローナル抗体に結合することができると言われる。
【0102】
96ウエルのポリスチレンプレート(Falcon; Becton Dickinson France S.A, Le Pont de Claix)を10−1〜10−4に希釈した種々の画分でコーティングした。プレートを4℃で一夜インキュベーションし、次いで5%(重量/容積)ウシ血清アルブミン(BSA)を含有するトリス−HCl(TN)緩衝液(20mMトリス−HCl,pH7.5及び100mM NaCl)で飽和させる。TN/BSA緩衝液と50%正常ヒト血清(NHS)の混合物中に希釈された5μg/mlの濃度のmAbD32.10を各ウエルに加えそして37℃で2時間インキュベーションする。結合した抗体を、抗マウス免疫グロブリンのセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRPO)−コンジュゲーテッドF(ab’)2断片(1/5000に希釈;Immunotech)、及び基質としてオルトフェニレンジアミン(OPD)及び過酸化水素(H2O2)により検出する。光学密度(OD)を、ELISAプレートリーダー(MRX,Dynex)により450nm又は490nmで決定する。結果は、ネガティブコントロールの平均の掛ける2.1に相当するカットオフより上であるならば、ポジティブであると考えられる。
【0103】
回収された画分は、特に、約1.13〜1.15g/mlのショ糖密度を有する。
【0104】
別法として、画分をD32.10及び/又はD4.12.9に結合することができる粒子の存在について最初に試験し、もしこのような粒子が実質的に存在しないならば、他の試験を行わず、もしこのような粒子が存在するならば、HCV RNA試験及び/又はHCVコアタンパク質試験を行う。
【0105】
他の態様に従えば、本発明は、HCVエンベロープドサブウイルス粒子の組成物を製造するための上記の方法に従って得られるようなHCVエンベロープドサブウイルス粒子の組成物に関する。
【0106】
他の態様に従えば、本発明は、下記の段階:
HCV感染患者の清澄化された血漿分離交換法から生じるサンプルを少なくとも2回超遠心してHCVに富んだペレットを得、
該HCVに富んだペレットを水性溶液中に再懸濁させ、
該再懸濁させたHCVに富んだペレットをショ糖密度勾配において超遠心して、再懸濁させたHCVに富んだペレットのエレメントをそれらの密度にしたがって画分に分離し、
約5.105〜約106UI/mlのHCV RNA、約50〜約100pg/mlのHCVコアタンパク質を含有しそしてD32.10又はD4.12.9として前記したモノクローナル抗体に結合することができる粒子を含有する画分を回収して、精製されたHCVエンベロープド完全ウイルス粒子の組成物を得る、
段階を含む、精製されたHCVエンベロープド完全ウイルス粒子の組成物を製造する方法に関する。
【0107】
再懸濁させたHCVに富んだペレットのショ糖密度勾配における超遠心は、約190,000g〜約220,000g、好ましくは210,000gで、約40時間〜約50時間、好ましくは、48時間の期間行うことができ、ショ糖勾配は、有利には、約10%〜約60%重量/重量、約20〜約50%重量/重量、約25%〜約45%重量/重量又は約30%〜約45%重量/重量であることができる。
【0108】
HCV RNA含有率、HCVコアタンパク質含有率及び粒子の結合能力を上記のように測定する。
【0109】
使用されたモノクローナル抗体は、受託番号I−2983の下でCNCMに寄託されたハイブリドーマにより分泌されるモノクローナル抗体D32.10である。
【0110】
この方法により得られた組成物は、特に精製されたHCVエンベロープド完全ウイルス粒子を含有し、そして特にHCVエンベロープドサブウイルス粒子を実質的に欠いている。特に、組成物がHCVエンベロープド完全ウイルス粒子よりも90%少ないHCVエンベロープドサブウイルス粒子を含有することが、例えば、電子顕微鏡法により評価されうる。
【0111】
回収された画分は、特に、約1.17〜1.21g/ml、更に詳しくは約1.17〜1.20g/ml、約1.19〜1.21g/ml、約1.17〜1.19g/ml又は1.19〜1.20g/mlのショ糖密度を有する。
【0112】
別法として、画分を、最初にHCV RNAの存在について試験し、105コピー/mlより多くのHCV RNAが存在するならば、HCVコアタンパク質試験を行い、もし50pg/mlより多くのコアタンパク質が存在するならば、D32.10及び/又はD4.12.9に結合することができる粒子の存在を試験し、もし105コピー/mlより少ないHCV RNAが存在するならば、他の試験を行わない。
【0113】
他の態様に従えば、本発明は、上記の対応する方法に従って得られるような精製されたHCVエンベロープド完全ウイルス粒子の組成物に関する。
【0114】
本発明は、下記の段階:
−動物、特に哺乳動物を本発明のHCVウイルス粒子の組成物又は本発明に従って製造されるようなものにより免疫化し、そして発生した抗体を回収し、
−発生した抗体のなかで、HCVウイルス粒子の上記した組成物中に含有されたHCVウイルス粒子に結合する能力に基づいてモノクローナル抗体を選ぶ、
段階を含む、受託番号I−2983の下でCNCMに受託されたハイブリドーマにより分泌されたモノクローナル抗体を製造する方法に関する。
【0115】
HCVウイルス粒子の組成物は、下記のようにして得ることができる:
−HCV感染患者の清澄化された血漿分離交換から生じるサンプルを少なくとも2階超遠心してHCVに富んだペレットを得;
−該HCVに富んだペレットを水性溶液中に再懸濁させてHCVウイルス粒子の組成物を得る。
【0116】
発生した抗体の選択は、プレートを本発明のHCVウイルス粒子の組成物によりコーティングして、上記した間接EIA試験により行うことができる。
【0117】
他の態様に従えば、本発明は、下記の段階:
−動物、特に哺乳動物を本発明の精製されたHCVエンベロープド完全ウイルス粒子の組成物又は本発明に従って製造されるようなものにより免疫化し、そして発生した抗体を回収し、
−発生した抗体のなかで、精製されたHCVエンベロープド完全ウイルス粒子の上記した組成物中に含有された精製されたHCVエンベロープド完全ウイルス粒子に結合する能力に基づいてモノクローナル抗体を選ぶ、
段階を含む、受託番号にI−2982の下でCNCMに受託されたハイブリドーマにより分泌されたモノクローナル抗体を製造する方法に関する。
【0118】
精製されたHCVエンベロープド完全ウイルス粒子の組成物は、下記のようにして得ることができる:
HCV感染患者の清澄化された血漿分離交換法から生じるサンプルを少なくとも2回超遠心してHCVに富んだペレットを得、
該HCVに富んだペレットを水性溶液中に再懸濁させ、
該再懸濁させたHCVに富んだペレットをショ糖密度勾配において超遠心して、再懸濁させたHCVに富んだペレットのエレメントをそれらの密度に従って画分に分離し、
約5.105〜約106UI/mlのHCV RNA、約50〜約100pg/mlのHCVコアタンパク質を含有しそしてD32.10又はD4.12.9として前記したモノクローナル抗体に結合することができる粒子を含有する画分を回収して、精製されたHCVエンベロープド完全ウイルス粒子の組成物を得る。
【0119】
選択段階は前記のように行うことができる。
【0120】
他の態様に従えば、本発明は、下記の段階:
−動物、特に哺乳動物を本発明の又は本発明に従って製造されるHCVエンベロープドサブウイルス粒子の組成物により免疫化し、そして発生した抗体を回収し、
−発生した抗体のなかで、HCVエンベロープドサブウイルス粒子の上記した組成物中に含有されたHCVエンベロープドサブウイルス粒子に結合する能力に基づいてモノクローナル抗体を選ぶ、
段階を含む、HCV、特に、HCVエンベロープドサブウイルス粒子に対するモノクローナル抗体を製造する方法に関する。
【0121】
HCVエンベロープドサブウイルス粒子の組成物は、下記のようにして得ることができる:
−HCV感染患者の清澄化された血漿分離交換法から生じるサンプルを少なくとも2回超遠心してHCVに富んだペレットを得、
−該HCVに富んだペレットを水性溶液中に再懸濁させ、
−該再懸濁させたHCVに富んだペレットをショ糖密度勾配において超遠心して、再懸濁させたHCVに富んだペレットのエレメントをそれらの密度に従って画分に分離し、
−HCV RNAを実質的に含有せず、HCVコアタンパク質を実質的に含有せずそしてD32.10又はD4.12.9として前記したモノクローナル抗体に結合することができる粒子を含有する画分を回収して、HCVエンベロープドサブウイルス粒子の組成物を得る。
【0122】
選択段階は上記のように進めることができる。
【0123】
本発明は、更に詳しくは、本発明のHCVエンベロープドサブウイルス粒子に対する抗体に関する。
【0124】
本発明は、活性物質としてHCVエンベロープドサブウイルス粒子に対する少なくとも1つの抗体及び薬学的に許容されうるベヒクルを含む医薬組成物にも関する。
【0125】
他の態様に従えば、本発明は、活性物質として上記したHCVエンベロープドサブウイルス粒子を、又は上記したHCVエンベロープドサブウイルス粒子を含む組成物、及び薬学的に許容されうるベヒクルを含む医薬組成物に関する。
【0126】
更に、Remington's Pharmaceutical Science 16thed./ Mark Publishing Coに定義されているようなアジュバントを、医薬組成物に加えることができ、該アジュバントは、例えば不完全フロイントアジュバント、アルミニウム塩又は水酸化アルミニウムであることができる。
【0127】
組成物は、例えば、HCVエンベロープドサブウイルス粒子1mg〜1gを含む単一投与量(single dose)で投与することができる。
【0128】
他の態様に従えは、本発明は、上記したHCVエンベロープドサブウイルス粒子又は上記したHCVエンベロープドサブウイルス粒子を含む組成物の使用であって、該HCVエンベロープドサブウイルス粒子に対する免疫反応又は上記したHCVエンベロープド完全ウイルス粒子に対する免疫反応を誘発するための使用に関する。
【0129】
「免疫反応を誘発する」という表現は、HCVウイルス粒子に対する抗体を分泌するB細胞を活性化することができること又はHCVにより感染した細胞を殺すT細胞を活性化することができることを意味する。
【0130】
他の態様に従えば、本発明は、HCV感染の診断、予防又は治療用の医薬を製造するための、上記したHCVエンベロープドサブウイルス粒子又は上記したHCVエンベロープドサブウイルス粒子を含む組成物の使用に関する。
【0131】
HCVエンベロープドサブウイルス粒子は当業者に周知された方法、例えばEIA、ELISAに従うイムノアッセイにおいてHCVに対する抗体の存在を評価するのに使用することができる。
【0132】
HCVエンベロープドサブウイルス粒子は、肝炎Cに対するワクチン、特に治療ワクチンの製造のために使用することができる。
【0133】
「治療ワクチン」という表現は、ワクチンがHCVにより感染した患者の状態を、例えば、HCVに対する抗体の産生を誘発することにより改善することができることを意味する。
【0134】
実施例1
天然のHCVウイルスエンベロープに対するモノクローナル抗体の取得
HCVウイルス粒子の調製
良好な供給においてウイルス物質を得るために、HCVウイルス粒子の精製を血漿分離交換から行った。選ばれた患者は、Cウイルス硬変のための部分的肝臓移植後に慢性の活性肝炎Cを発生し、そして12ヶ月後、血漿交換の原因である高ガンマグロブリン血症と関連した多発性骨髄腫を発生した。患者は、異常に高い血清アミノトランスフェラーゼ(ALT/AST)レベルを示しそして抗HCV抗体についてポジティブであった。患者はすべてのHBV及びHIVマーカーについてネガティブであった。初めの材料のHCV RNA含有率は、6×105コピー/ml(Amplicor(登録商標)HCV Monitor(登録商標)、Roche Diagnostics, Meylan, France)であり、そして遺伝子型1b(INNO−LIPAアッセイ,Innogenetics, Gent, Belgium)であった。
【0135】
清澄化血漿分離交換を使用して、210,000gで4℃で4時間の2回の引き続く超遠心によりHCVに富んだペレットを調製した。最終ペレットをトリス−NaCl−EDTA(TNF)緩衝液(20ミリモル/L トリス−HCl、pH7.5、100ミリモル/L NaCl、1ミリモル/L EDTA)(濃度240倍)1ml中に再懸濁させ、そして−80℃で貯蔵した。この材料のHCV RNA含有率は3×107コピー/mlであり(Monitor, Roche)、そしてタンパク質濃度は5mg/ml(即ち、約107コピーのHCV RNA/タンパク質1mg)であった。
【0136】
ハイブリドーマ調製
モノクローナル抗体(mAbs)を発生させるために、BALB/cマウスに、完全フロイントアジュバント中のHCVペレット化材料100μg(HCV RNA106コピー)を接種し、続いて1週間後に不完全フロイントアジュバント中のウイルス100μgを接種した。3匹の免疫化されたマウスは、間接エンザイムイムノアッセイ(EIA)により検出されたHCVに対する高い血清抗体力価を発生した。3週間後、マウスを、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中のウイルス50μgでブーストした。5日後、注射を繰り返し、そして3日後、脾臓を取り出して、Buttin et al.(1978)により記載された方法によりX63骨髄腫細胞と融合させた。固相として免疫原(5μg/ml)を使用しそして顕色第二抗体(Petit et al., 1987)として抗マウス免疫グロブリンのペルオキシダーゼ−コンジュゲーテッドF(ab’)2断片(Amersham, France)を使用する間接EIAによって、ハイブリドーマ培養上澄液を、HCV特異的抗体の存在についてスクリーニングした。希釈剤は、50%の正常なヒト血清(NHS)を含有していて、HCVウイルス粒子と場合により会合したNHSタンパク質に対する非特異的反応性を除去した。次いで、限界希釈することにより、HCVに対する最も強いシグナル(P/N>10)を与えるハイブリッドを再クローニングし、そしてそれらの特異性を更に決定した。7つのクローン((C9.19.16、C2.22.1、D32.10、D3.20.12、C7.24.19、C7.14.41及びC1.9.3)を選択し、そして4つのクローン(D32.10、C2.22.1、C9.19.16及びD.3.20.12)を、プリスタンでプライミングしたBALB/cマウスに注射することにより増殖させて腹水液を産生させ、次いで50%飽和(NH4)2SO4で沈殿させること、次いでセファロース−プロテインG(Pharmacia, France)におけるアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。アイソタイプを、当業者に周知の方法によってELISAにより決定した。分析した7つのクローンはIgG1アイソタイプの抗体を与えた。
【0137】
モノクローナル抗体特徴付け
間接EIAを使用して、上記したモノクローナル抗体とウイルス粒子との相互作用を評価した。96ウエルのポリスチレンプレート(Falcon; Becton Dickinson France S.A, Le Pont de Claix)を、10−1〜10−6(100μg/ml〜1ng/mlに相当する)に希釈されたHCV調製物(1mgタンパク質/ml)でコーティングした。プレートを4℃で一夜インキュベーションし、次いで5%(重量/容量)ウシ血清アルブミン(BSA)を含有するトリス−NaCl(TN)緩衝液(20mMトリス−HCl、pH7.5及び100mM NaCl)で飽和させた。TN/BSA緩衝液及び50%正常ヒト血清(NHS)の混合物中に5μg/mlの濃度に希釈されたmAbD32.10を、各ウエルに加えそして37℃で2時間インキュベーションした。結合した抗体を、抗マウス免疫グロブリン(1/5,000に希釈された;Immunotech)のセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRPO)−コンジュゲーテッドF(ab’)2断片及び基質としてオルトフェニレンジアミン(OPD)及び過酸化水素により検出した。光学密度(OD)をELISAプレートリーダー(MRX,Dynax)により450nmで側定した。結果は、ネガティブコントロールの平均の掛ける2.1に相当するカットオフより上である場合にポジティブであると考えられた。得られた7つの抗体はウイルス粒子を認識した。
【0138】
mAbsのネイティブポリペプチド特異性を確立するために、抗原性プローブ(Petit et al., 1987)として免疫原を使用するイムノブロッティングを行った。12.5%ゲルでのドデシル硫酸ナトリウム(SDS)−ポリアクリルアミドゲル電気泳動を還元条件下に(2%SDS+5%2−ME)行った。PVDF膜へのタンパク質移行の後、mAbs(2〜5μg/ml)を一次抗体として試験し、50%NHS中に希釈し、そして結合したIgGsを、二次抗体として抗マウス免疫グロブリンのペルオキシダーゼ−コンジュゲーテッドF(ab’)2断片(1/10,000に希釈された;IMMUNOTECH)とのインキュベーションにより検出した。バンドをAmershamからの高められた化学発光(FCL+)システムにより可視化した。
【0139】
D32.10を除くすべての試験したmAbsは、還元条件下にHCVポリペプチドとのネガティブ反応を与えた。選ばれたmAbsは、EIAにおいてヒトIgGと弱く反応した(ネガティブ値の約5倍)C1.9.3及びC7.24.19を除いて、ヒト血清アルブミン又は免疫グロブリン(Ig)のγ鎖若しくはμ鎖と反応性ではなかったことは注目に値する。
【0140】
7つの抗体のポリペプチド特異性も免疫沈澱により検査した。HCVタンパク質(E1、E2又はE1E2)を発現するワクシニアウイルス組換え体により感染したHepG2細胞を、前記したように、35S-Translabel(ICN)で代謝的に標識した(Dubuisson et al., 1996)。細胞を、10mMトリス−HCl(pH7.5)、150mM NaCl及び2mM EDTA中の0.5%NP−40により細胞溶解した。沈殿をLaemmliサンプル緩衝液で処理し、そして還元条件又は非還元条件下にSDS−PAGEにより分析した(図1)。試験したモノクローナル抗体は、C9.19.16(>200kDa)、D3.20.12(70、50及び46kDaにおける3つの強いバンド)及びより弱くは、C2.22.1(70、50、46kDa)及びD32.10(多数の非常に弱いバンド)(図1A、コントロールベクター)を除いて、細胞成分に対する非特異的反応性を示さなかった。すべての抗体は、2つのHCV糖タンパク質が別々に発現される場合には、E1(図1B)及びE2(図1C)を特異的に免疫沈殿させ、そしてこれらのタンパク質が共発現される場合には、E1E2ヘテロ二量体(図1D)を特異的に免疫沈殿させた。興味深いことに、パターンは、非還元条件及び還元条件下にSDS−PAGEの後異なっていた(図1D、図1E)。すべてはジスルフィドで連結されたE1E2集合体を認識したが、これは非還元条件下にゲルの上部において検出された(図1E)。1つのmAb、D32.10は、大抵集合体と反応しそして非共有結合連結された成熟複合体E1E2とも反応する(図1E、非還元条件)ことが見出された。すべてのmAbsは、異種システムにおいて発現された変性された組換えE1又はE2タンパク質をウエスタンブロットにより認識しなかったが、これは、それらがHCVウイルス粒子上の立体配座エピトープを認識したことを示唆している。集約すると、これらの結果は、これらのmAbsは天然の血清由来のHCVウイルス粒子の表面に発現されたジスルフィドで連結されたE1E2複合体を特異的に認識することを示している。それらはE1タンパク質とE2タンパク質との間の共有された立体配座エピトープと反応することは極めて確かである。共有結合形態又は非共有結合形態下のE1E2複合体と相互作用するモノクローナル抗体D32.10が更なる研究のために選ばれた。
【0141】
モノクローナル抗体D32.10抗原マッピング
D32.10のHCV型特異性を試験するために、4つの異なるHCV調製物(ml当り1mgのタンパク質)を10−1〜10−6(100μg/ml〜1ng/mlに相当する)に希釈して、既に記載した方法に従って、間接EIAを行った。免疫原HCV調製物に加えて、同じ患者から得られた調製物を使用し、そして慢性肝炎Cを有する2人の異なる患者から得られた2つの他の調製物を使用したが、患者の1人は血清において2つの異なる遺伝子型、即ちHCV1a及びHCV2a、を有することが見出された。D32.10は、HCV調製物のすべての4つを認識することができることが見出され、それによりそれは免疫原の1b遺伝子型に拘束されない決定基を認識することができることを示す。
【0142】
D32.10のネイティブポリペプチド特異性を評価するために、ウエスタンブロット分析を行った。未処理のHCVに富んだペレットを、0.1から1mg/mlまで変わる種々の濃度で抗原フローブとして使用した。抗原を還元条件又は非還元条件(2%SDS±5%2−メルカプトエタノール(2−ME)下に12.5%ゲルでのドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)に付した。PVDF膜へのタンパク質移行の後、50%NHS中に希釈された一次抗体としてmAbD32.10(2〜5μg/ml)を使用してイムノブロッティングを行った。次いで結合したマウスIgGsを、二次抗体として抗マウス免疫グロブリンのペルオキシダーゼ−コンジュゲーテッドF(ab’)2断片(1/10,000に希釈された;DAKO)とのインキュベーションにより検出した。タンパク質バンドをAmershamからの高められた化学発光(ECL+)により可視化した。循環しているHCVビリオンに対してSato et al.(1993)により今までに記載されたとおりにグリコシダーゼ消化を行った。HCVに富んだペレット(HCV−L、4μg)を、100mMクエン酸塩/リン酸塩緩衝液(pH6.0)中のグリコシダーゼA(ペプチド−N−グリコシダーゼA又はPNGアーゼA;ROCHE)5、10又は20mU/mlで37℃にて18時間処理した。エンドグリコシダーゼH(endoH、5mU/ml、Rocheから)、20mMジチオトレイトール(DTT)及び0.1%TritonX100を含有する50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)中で37℃で一夜インキュベーションすることにより、精製されたHCVウイルス粒子の脱グリコシル化も行った。酵素を省いたことを除いては、PGNアーゼA消化又はendoH消化の場合と同じ条件を使用してコントロール消化を行った。次いでサンプルを、還元剤を含有する電気泳動サンプル緩衝液で処理しそしてSDS−PAGEにより分析した。
【0143】
ウエスタンブロット実験の結果を図2に示される。同じサンプルの2つの濃度(それぞれ、2.5及び5μg、レーン2及び3)が還元条件(2%SDS/5%2−ME)下に分析されるとき、mAbD32.10は、それぞれE2及びE1に対応する68kDaの主要バンド及び31kDaの他のバンドを認識した。しかしながら、非還元条件下では、mAb32.10は、ゲルの上部に回収されたジスルフィドで連結された複合体(>200kDa)を認識した。これらの高分子量バンド(図2、レーン1)はヘテロ二量体E1E2複合体に対応することは極めて確かである。
【0144】
アスパラギンで連結された複合体型糖鎖は、HCVのネイティブビリオンの表面に存在することが示され(Sato et al., 1993)、かくして種々の濃度(20、10及び5mU/ml)のグリコシダーゼ(PNGアーゼA)によるHCV調製物の処理後のHCV特異的タンパク質を認識するD32.10mAbの能力を検査した。図3A(それぞれ、レーン1、2及び3)に示されたとおり、D32.10は、酵素の最も高い濃度で蓄積したE1の脱グリコシル化形態、特に25kDa種と反応した。E1関連産物は脱グリコシル化後にD32.10により明らかに検出することができたが、E2関連産物は処理後明白には同定されなかった。エンドグリコシダーゼH(endoH)消化は、天然のHCVウイルス粒子上に発現されたE1E2複合体のendoH開裂に対する感受性の調査を可能とした。図3Bに示されたとおり、分子量のシフトが、E2(68〜42kDa)及びE1(34〜24kDa)タンパク質で観察され、これはE1及びE2が、部分的endoH抵抗性の主な原因である、血清由来のネイティブHCVウイルス粒子における複合グリコシル化(complex glycosylation)、例えば、endoH抵抗性複合グリカンと感受性形態の混合物を有することを示唆する。
【0145】
D32.10エピトープマッピング
a.ペプチドライブラリーのスクリーニング
mAbD32.10により認識されたエピトープを更に特徴付けるために、抗体を使用してドデカペプチドファージディスプレーライブリーをスクリーニングした。
【0146】
Ph.D−12(登録商標)ファージディスプレイペプチドライブラリーキットをNew England Biolabs Incから得た。これは、M13ファージの少量コートタンパク質(pIII)に融合したコンビナトリアルペプチド12量体(12−mers)である。ディスプレイされたペプチド12量体はpIIIのN末端で発現される。ライブラリーは、約1.9×109個のエレクトロポレーションされた配列からなり、これらは一旦増幅されると供給されたファージ10μlにおいて各配列約20コピーを生じる。いくらかの修正を伴って製造者の取扱説明書に従って3回のバイオパンニング(biopannings)を行った。簡単に言えば、ビオチニル化mAbsD32.10の10μgを、ストレプトアビジン40μgでコーティングされた35mmポリスチレンペトリ皿(Falcon)にカップリングさせた。皿を4℃で一夜インキュベーションし、そして0.5%Tween−20(TBS−T)を含有する50mMトリス、150mM NaCl、pH7.5(TBS)で6回洗浄した。第1回の選択では、最初のライブラリーからの4×1010個のファージをロッキング条件(rocking condition)下に4℃で4時間皿に結合したIgGと反応させた。結合しなかったファージをTBS−Tによる繰り返し洗浄により除去した。次いで、結合したファージを溶離緩衝液(0.1N HCl、グリシンにより2.2に調節されたpH、1mg/mlBSA)400μlで皿から溶離させた。75μlの1Mトリス−HCl pH9.1で中和した後、次いで溶離したファージを、取扱説明書に推奨されたとおりに、E.coliER2537(recA+株細胞)の一夜の培養物の1:100希釈物20mlに感染させることにより増幅した。培養物を激しく振とうしながら、37℃で4.5時間インキュベーションした。上澄液を得、そして前に記載されたとおり(Scott et al., 1990)ポリエチレングリコール(PEG)により沈殿させた。第2及び第3回の選択では、先の回からの増幅されたファージの20%をそれぞれ10及び1nMの最終濃度でビオチニル化mAbD32.10と4℃で一夜予備インキュベーションし、次いでストレプトアビジン10μgでコーティングされた35mmポリスチレンペトリ皿に加えた。次いで処置は第1回と同じであった。次いで第3バイオパンニング溶離物からのファージをクローニングしそしてDNA配列決定及びイムノ分析のために増幅した。
【0147】
DNA配列決定のために、Sambrook et al.(1982)により記載されたとおり精製したファージから一本鎖DNAを調製した。BigDye(登録商標)Terminator Cycle Sequencing Ready Reactionキット(Perkin-Elmer)を使用してApplied Biosystems DNAシーケンサー(Model377A)によりSangerの改変された方法(Sanger et al., 1977)に従って、遺伝子IIIインサートのヌクレオチド配列を決定した。pIII遺伝子配列に対応するプライマー5’HO−CCCTCATAGTTAGCGTAACG−OH3’(配列番号4)によりサイクルシーケンス法を行った。インサートのアミノ酸配列をヌクレオチド配列から推定した。
【0148】
上澄液ファージに対するELISAのために、ELISAプレートウエルの列を、0.1MNaHCO3緩衝液(pH8.6)中の100μg/mlの最終濃度のmAbD32.10又は無関係のmAb 100μlでコーティングした。プレートを4℃で一夜インキュベーションし、次いでBSA5mg/mlを含有する0.1M NaHCO3緩衝液(pH8.6)でブロックした。4℃で2時間インキュベーションの後、プレートを0.5%Tweenを含有するTBSで6回洗浄した。各ファージクローンの4倍逐次希釈物を、TBS−T100μlの最終容積においてマイクロタイタープレートの各ウエルに加え、列の第1ウエル中の1012個のビリオンで出発しそして第12ウエル中の2×105個のビリオンで終わる。プレートを、攪拌しながら室温で2時間インキュベーションし、次いで上記したTBS−Tで6回洗浄した。結合したファージを、1:5,000希釈率のセイヨウワサビペルオキシダーゼ−コンジュゲーテッド抗M13mAb(Pharmacia)を使用してサンドイッチアッセイにおいて検出した。プレートを、OPD及びH2O2を含有する市販のカラーキット(bioMerieux)を使用して顕色した。10分のインキュベーションの後、プレートをELISAプレートリーダーで492nmで読み取った。各ファージクローン希釈物について、結果を、試験した抗HCVmAbで得られた値と無関係のmAbで得られた値との差として表した。次いで、結果を免疫反応性クローンの最適希釈物を3回反復して試験することにより確認した。
【0149】
配列分析のために、ペプチドのアミノ酸配列を、Mac Vector, Ver.4.5ソフトウエア(Kodak)の使用によりHCVE1及びE2タンパク質配列と比較した。基本的に、最も高い類似性の領域を、最善の位置確認を試験的に調査するLFASTAプログラム(Pearson and Lipman, 1988)で検出した。
【0150】
第3回の選択の後、ファージインプットの4%が、特異的に結合したファージの増幅を示す溶離物において見出された。かくして、88クローンを、ランダムに単離し、それらのDNAを配列決定しそしてインサートのアミノ酸配列を推定した。48の異なる配列が得られそしてそれらのいくらかはいくつかの実施例で見出された。しかしながら、D32.10とのそれらの免疫反応性についてELISA試験で試験すると、それらのいずれもポジティブシグナルを与えなかったが、これは、結合アフィニティが検出することができるのにはあまりにも低すぎることを示す。48クローン配列をHCVE1及びE2の配列と比較した。5及び3の配列は、それぞれ292〜305領域及び347〜356領域に位置したE1の残基との類似性を示したが(類似性は表1にボールド体に示される)、これに対して7、4及び2の配列は、それぞれ領域481〜501、610〜631及び685〜698に位置しているE2の残基とのいくらかの類似性を共有していた(類似性は表2のボールド体で示されている)。
【0151】
【表1】
【0152】
【表2】
【0153】
b.ペプチド合成
E1及びE2配列に関するこれらの異なる局在化の意義を評価するために、E1の領域291〜315及び347〜356並びにE2の領域473〜498、607〜627及び686〜697を1つだけずれた重なり合っている合成ペンタデカペプチドとして再現しそしてD32.10とのそれらの免疫反応性について試験した。
【0154】
9−フルオレニルメトキシカルボニルアミノ酸化学(Frank, 1988)を使用してニトロセルロース膜で、種々のペプチド配列の同時合成を行った。
【0155】
各ペプチドを免疫学的検出に適当なナノモル量で発生させた。膜に結合したペプチドに対する抗体反応性を、先に記載された(Jolivet-Reynaud, 1998)間接比色イムノアッセイにより分析した。抗体反応性を有するペプチドに対応するスポットは、ポジティブブルーシグナルを生じた。スポットの強度を可視化により評価しそして0〜5の範囲のスケールで相対的強度として表した。
【0156】
292〜305E1領域に対応するペプチドで強いポジティブシグナルが得られ、これに対して347〜356E1領域はD32.10により認識されなかった。それぞれE2領域482〜499及612〜626に対応するペプチドもD32.10と免疫反応性であり、そしてE2領域686〜697ではシグナルは検出されなかった。ペンタデカペプチドとしてE1の領域292〜306並びにE2の領域480〜494及び608〜622は、ELISAにおいてD32.10と相互作用した。
【0157】
重なり合っているオクタペプチドを使用することにより、HCV E1タンパク質の297RHWTTQGCNC306(配列番号1)領域並びにHCV E2タンパク質の613YRLWHYPCT621(配列番号3)及び480PDQRPYCWHYPPKPC494(配列番号2)領域の両方がD32.10と反応性であった。E2において同定された2つの領域は、E1E2のヘテロ二量化に関与していることがYagnik et al.(2000)により示唆された同じモチーフWHYPを含有する。実際に、これらの領域を識別するのは困難であるが、2つのオーバーラッピングしていないゾーンとして:479GPDQRPYC486(配列番号26)及び487WHYPPKPC494(配列番号27)はD32.10に別々に結合し、これは、D32.10が各オクタペプチドを特異的に認識すること、それゆえ完全な配列(480〜494)を特異的に認識することを示唆する。
【0158】
実施例2
血清由来のHCVウイルス粒子の特徴付け及び精製
種々のHCV母集団を分離するために、最終のHCVに富んだペレットをショ糖密度勾配(10〜60%、重量/重量)における等密度遠心(4℃で48時間210,000g)に付した。画分(0.6ml)を集め、そして各々の密度を屈折率測定法により側定した。HCV RNA含有率を、定量的RT−PCR(Amplicor Monitor, Roche)により分析し、HCVコアタンパク質含有率をOrtho-Clinical Diagnostics試験で測定し、そしてmAbD32.10に対するHCVウイルス粒子抗原反応性を間接EIAにより測定した。
【0159】
ウエルを10−1〜10−4に希釈した種々の画分でコーティングすることを除いて間接EIAを上記したとおりに行った。
【0160】
3つの異なる母集団を同定した(図4)。1つの母集団(画分3〜5)は1.06〜1.08g/mlのショ糖密度に階層区分されており(banded)、そしてD32.10による間接EIAにより得られたネガティブな結果により証明されるとおりウイルスエンベロープを実質的に欠いているが、HCV RNA(約2.105UI/ml)及びHCVコアタンパク質(約2〜4pg/ml)を含有していた。これらは、エンベロープのないウイルス粒子であると思われる。他の母集団(図の画分8〜10)は1.14〜1.15g/mlのショ糖密度に階層区分されており、そしてHCV RNAを実質的に欠いており(約104〜105UI/ml)そしてHCVコアタンパク質を実質的に欠いている(約1pg/ml)が、D32.10に応答する高いレベルの粒子(約1〜3.8OD450nm単位)を含有していた。これらのHCVサブウイルス粒子はHCVウイルスエンベロープのみを含有するようである。第3母集団(画分11〜14)は1.20〜1.21g/mlのショ糖密度に階層区分されており、そして高いレベルのHCV RNA(約5.105〜106UI/ml)及びHCVコアタンパク質(約2.5〜8pg/ml)を有しそしてD32.10に応答する(約0.5〜1.5OD450nm単位)粒子を含有していた。このゆえに、この母集団は実質的に精製されたHCVエンベロープド完全ウイルス粒子のみを含有する。
【0161】
HCVに富んだペレット(図5A)及び第2(図5C)及び第3母集団(図5B)に含有されているウイルス粒子を、D32.10により免疫沈殿させそして電子顕微鏡法により観察した。HCVウイルス粒子のいくつかの調製物をこの方法により分析した。HCVエンベロープドサブウイルス粒子は約30nm(33.08nm)の平均直径を有する球状粒子として現れる(図5C)が、これに対してHCVエンベロープド完全ウイルス粒子は、約50nm(48.72nm)の平均直径を有することを除いては同じく球状に見える(図5B)。
【0162】
実施例2の2
血清由来のHCVウイルス粒子の特徴付け及び精製
感染した患者の血漿中に存在するHCVウイルス粒子の母集団の他の分析も本発明者により行われた。
【0163】
血清由来のHCV粒子の精製
実施例1で得られたHCVに富んだペレット(HCV−L)を、物理化学的、免疫学的及び形態学的研究のために使用し、そして規則的な血漿交換を必要とする重い皮膚脈管炎(cutaneous vascularitis)と関連したタイプIIクリオグロブリン血症を有する慢性肝炎C(CH−C)を示した他の患者(HCV−Fan、遺伝子型1a/2a)の血漿分離交換由来のペレットを使用した。HCV−L患者の場合と同じく、後者のHCV−Fan患者は、異常に高い血清アミノトランスフェラーゼ(ALT/AST)レベルを示し、抗HCV抗体に対してポジティブであり、そしてすべてのHBV及びHIVマーカーに対してネガティブであった。
【0164】
かくして、7つの血清調製物を特徴付けた。それらは定量的Amplicor HCV RNA Monitor試験(Roche)において、2.5×106コピ―/ml〜5〜7.5×107コピー/mlに対応する、106UI/ml〜2〜3×107UI/ml(HCV−Fan、HCV−L)でHCV RNAに対してポジティブであった。
【0165】
異なるHCV母集団を分離するために、最終のHCVに富んだペレットをショ糖密度勾配(10〜60%又は30〜45%、重量/重量)において等密度遠心(4℃で48時間200,000g)に付した。画分(0.6ml)を、集めそして各々の密度を屈折率測定法により側定した。HCV RNA含有率を定量的RT−PCR(Amplicor Monitor, Roche)により監視した。固相上に種々の希釈率(1/10〜1/10000)で各画分をコーティングした後、上記したとおり間接EIAによりMAbD32.10を使用してHCVエンベロープ(env)反応性を検出した。抗コアモノクローナル抗体の混合物(7G12A8、2G9A7及び19D9D6)(Jolivet-Reynaud et al., 1998; Menez et al., 2003)を使用して定量的Orthoアッセイ及びウエスタンブロットを使用することにより、HCVコア抗原をアッセイした。
【0166】
簡単に言えば、HCVに富んだペレット及びショ糖勾配から集めた各画分中のトータルHCVコア抗原の測定を、OrthoR trak-C(登録商標)アッセイ(Ortho-Clinical Diagnostics, Inc)を使用して行った。OrthoR trak-C(登録商標)アッセイは、HCVコア抗原の種々の領域に対する特異性を有するいくつかのモノクローナル抗体を使用する定量的イムノキャプチャーアッセイである。この方法は、サンプル調製物を遊離させるための予備処理段階を使用し、免疫複合化させそしてアッセイに利用可能なビリオン会合抗原を使用する(Aoyagi et al., 1999)。HCV RNAを、Roche Molecular System(Meylan, France)により開発された定量的RT−PCR、Amplicon(登録商標)HCV Monitor(登録商標)により評価した。増幅段階は、単一管、単一酵素(rTth DNA polymerase)、単一プライマー対を組み合わせた逆転写及びDNAポリメリゼーション(Colucci and Gutekunst, 1997)を伴なう。検出を、比色マイクロウエルプレートアッセイにより行った。PCRキャリーオーバーコンタミネーション(PCR carryover contamination)のコントロールは、汚染している増幅DNAを不活性化するためにアッセイに組み込まれたAmpErase(登録商標)を含んでいた(Longo et al., 1990)。
【0167】
HCVに富んだペレットを、最初にショ糖密度勾配(10%〜60%)における等密度遠心に付した。E1E2−D32.10反応性を示すエンベロープドウイルス粒子の存在を、抗E1E2MAbD32.10(その特異性は実施例1に先に明瞭に述べられた)を使用して上記した間接EIA法(図14A及び図14C)及びウエスタンブロット(図14B及び図14D)により調べた。図14A及び図14Cに示されたとおり、1.12g/mlと1.17g/mlとの間にピークを有しそして1.18g/ml〜1.23g/mlの「ショルダー」を有する、EIAにおけるE1E2−D32.10反応性(1/10000に希釈された画分)を、画分9(1.12g/mlの密度)〜画分16(1.23g/mlの密度)から回収した。全然ないか又は非常に低いD32.10反応性(1/10に希釈された画分)を、低密度複合体(1.006〜1.10g/ml)に対応する画分において検出した。同様な結果が、遺伝子型1bの単離HCV−L(図14A)及び遺伝子型1a/2aの単離HCV−Fan(図14C)で得られた。単離HCV−Lのいくらかの画分(6、8、10、12、14)(図14B)及び単離HCV−Fanのすべての画分(4〜18)を、MAbD32.10によるSDS−PAGE及びウエスタンブロットに付した。E1E2−D32.10反応性が、画分8(密度#1.10g/ml)から勾配の底部まで明らかに現れた。注目すべきことに、最も強いE1E2反応性が、1.17〜1.20g/mlの密度に対応する画分11、12及び13(図14D)において観察された。より高い分子量(HMW)のバンドをこれらの画分において検出することができたが、これは多分このような密度に階層区分されるウイルス粒子の表面に存在するE1及びE2エンベロープ糖タンパク質のオリゴマー形態に対応する。E1及びE2の両方に対する他の強い反応性は、EIAにおけるピークに対応する画分9(1.13g/mlの密度)において観察された(図14C)。すべての血清由来のHCV調製物は、ショ糖密度勾配(10〜60%)におけるE1E2−D32.10反応性の同じ平衡階層区分プロフィル(equilibrium banding profiles)を与えた。
【0168】
エンベロープドHCV母集団をさらに特徴付けるために、HCV−Fanペレットを、タイプ1の30〜45%ショ糖勾配(30%2ml、35%3ml、40%3ml、45%2ml)における等密度遠心に付した。これらの実験条件下に、E1E2−D32.10反応性の2つのピークは、図15Aに示されたとおり、明白に個別化することができた。間接EIAは、約1.15g/mlの密度の第1の狭いピーク(ピーク1)及び約1.18g/ml〜1.22g/mlの密度の第2の大きいピーク(ピーク2)を示した。ショ糖勾配(30〜45%)ピーク1(画分8)及び2(画分12及び13)からの粒子を個々に第2平衡遠心に付した。ピーク1を30〜45%のタイプ2のショ糖勾配(30%3ml、35%3ml、40%2ml、45%2ml)において遠心した(図15B)。唯一の狭いE1E2抗原ピーク(ピーク1)は、1.13〜1.14g/ml(約32%ショ糖、画分5及び6)の密度に移行した。ピーク2を、タイプ3の30〜45%ショ糖勾配(30%2ml、35%2ml、40%3ml、45%3ml)において遠心した(図15C)。主要ピーク(ピーク2)ははるかに速く沈降し、約1.18g/ml(40%スクロースに対応する)の密度で最大E1E2抗原性を示した。後者のE1E2抗原ピーク(ピーク2)は、非対称的に現れ、より低い密度を前方に移動させ、そして1.14g/mlのショ糖密度に階層区分されるE1E2母集団(ピーク1)と僅かに重なり合っており、前者のE1E2抗原ピーク(ピーク1)より大きい不均一性を示唆する(図15B、15C)。
【0169】
E1E2エンベロープドウイルス粒子の2つの母集団(ピーク1及び2)間の浮遊密度の差を解明するために、上記したタイプ1の30〜45%ショ糖勾配からの画分を、Ortho HCVコアアッセイ(図9A)及びウエスタンブロット(図15B)によりHCVコア抗原について試験した。
【0170】
簡単に言えば、ポリペプチド特異性を、抗原プローブ(1〜5μg/ml)としてHCVサンプルを使用するイムノブロッティングにより決定した。12.5%ゲルでのドデシル硫酸ナトリウム(SDS)−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)を還元条件(2%SDS+5%2−ME)下に行った。PVDFへのタンパク質移行後に、抗E1E2MAbD32.10(2〜5μg/ml)又は抗コアMAbs7G12A8、2G9A7及び19D9D6(各々5μg/ml)を一次抗体として使用し、50%NHS中に希釈し、次いで、第二抗体として抗マウス免疫グロブリンのHRPO−コンジュゲーテッドF(ab’)2断片(1/10,000に希釈された、Immunotechから購入した)とのインキュベーションにより、結合したIgGsを検出した。ブロットをAmershamからの高められた化学発光(ECL Plus)システムで顕色させた。
【0171】
両実験アプローチは、約1.17〜1.19g/ml(40%ショ糖)の密度で第2E1E2抗原ピーク(ピーク2)において最大HCVコア抗原反応性が回収されることを示した。ウエスタンブロットにおける分析(図9B)により、25kDaのHCVコアタンパク質を、初めの材料(HCV−Fanペレット)及び画分8〜13において同定した。50、75及び150kDaにおけるバンドも検出され、これはHCVコア遺伝子コード化産物のオリゴマーに対応することができた。HCV RNAを、最初の10〜60%ショ糖勾配からのすべての画分において定量的RT−PCR Monitor試験(Roche)により分析した(図10)。ウイルスRNAの2つのピークは1.055〜1.075g/mlの密度及び1.16〜1.21g/mlの密度で生じた。後者のピークの総力価は106UI/mlであり、そして第2E1E2抗原ピーク(ピーク2)に対応していた。対照的に、ピーク1に対応する画分9(1.13g/mlの密度)は、最も低い力価のHCVRNAを含有していた。かくして、ピーク2(約1.17〜1.20g/ml)は、E1E2複合体、HCVコアタンパク質、高い力価のHCV RNAを含有しており、そして完全なビリオンを示しているようである。ピーク1(1.13〜1.15g/ml)は、主としてE1E2複合体を含有しておりそしてサブウイルス粒子(SVPs)を示しているようである。低密度複合体(1.006〜1.10g/ml)は、裸のヌクレオカプシドに相当するコア及びHCV RNAのみを含有していた。
【0172】
かくして、本発明のD32.10モノクローナル抗体を使用して、慢性肝炎C患者の血清中に見出された最も優勢なタイプのエンベロープドウイルス粒子を分析した。濃縮したウイルス材料のショ糖勾配における沈降、定量的RT−PCRによるHCV RNAの監視とカップリングしたイムノアッセイ及びイムノブロッティングによるタンパク質組成(コア及びエンベロープタンパク質)の分析により、1.13〜1.15g/ml及び1.17〜1.21g/mlの2つの異なる密度で沈降したE1E2エンベロープド粒子の2つの母集団をそれぞれ同定した。第1母集団は、E1及びE2エンベロープタンパク質を含有するがヌクレオカプシドを欠いているサブウイルス粒子(SVPs)に対応していた。第2母集団はHCVビリオンに対応することができた。何故ならば、これらの粒子はE1及びE2エンベロープタンパク質、コアタンパク質及び高力価のHCV RNAを含有していたからである。
【0173】
血清由来のHCV粒子の形態学的特徴付け
E1E2(D32.10)特異的モノクローナル抗体による免疫沈殿後のHCV−Fanペレットの電子顕微鏡法(免疫電子顕微鏡法又はIEM)を、下記の方法に従って行った。
【0174】
簡単に言えば、血清由来のHCV調製物(2、20又は200μg)又は勾配からの画分(0.1ml)をMAbD32.10の0.1ml(5μg)又は同じアイソタイプ(IgG1)の無関係のモノクローナル抗体(F35.25,HBV抗preS1)(Petit et al.,1989)と混合した。37℃で1時間、次いで4℃で16時間インキュベーションを行った。次いで混合物をTNF緩衝液10ml中に希釈しそして48,000gで1時間遠心した。ペレットをTNE緩衝液0.1mlに懸濁させた。D32.10−免疫沈殿したHCV粒子を、グロー放電したFormvar/カーボンコーテッドキュプロングリッド(glow-discharged Formvar/ carbon-coated cupron grids)へ5分間吸収させそして1%酢酸ウラニル(pH4.5)により4分間染色した。次いでJEOL 100CX電子顕微鏡を使用して調製物を可視化した(Imaging facility, Laennec Faculty, Lyon, France)。間接免疫金標識化のために、グリッドを、第二抗体としてヤギ抗マウスIgG−コロイド状金粒子(10nm直径;BioCell Research Laboratories)の1:50希釈物とインキュベーションした。
【0175】
コントロール実験は、調製物のサイズ不均一性が抗原:抗体比と共に変わることを示した(結果は示されていない)。形態学的統合性(morphological integrity)を保存するために、HCV粒子の単離方法は沈殿及びショ糖勾配遠心のみを伴なった。このような実験条件下に、図11Aに示されたとおり、相対的に明確な輪郭の粒度分布が得られた。非対称ピークは約35nmに中心を有していた。このサイズの粒子(30〜40nm)が優性であった(56%)。本質的に、粒子の大部分(80%)は30nmより大きい直径を有し、平均値は38.28nm(156粒子の中から125)であり、粒子の20%は40〜50nm(平均値=43.61nm)でありそして4%が50〜60nm(平均値=55.69nm)である。すべての粒子の20%のみが30nmよりも小さい直径を有していた(平均値=26.35nm)。電子顕微鏡(図11B)は、HCV粒子が相対的に規則的な滑らかな表面により特徴付けられることを示した。図11B、パネルa及びbは、HCVエンベロープド粒子のサイズの不均一性を示す。図11B、パネルcは50nmの直径を有する粒子を示し、そしてパネルdは35nmの直径を有する粒子を示す。極めて均一なより高い密度が35nmの粒子の表面に現れたが(図11B、パネルd)、これに対してより低い密度のより軽い区域を50nmの直径を有する粒子の中心に明白に観察することができた(図11B、パネルc)。無関係な一次モノクローナル抗体を使用する場合は粒子はIEMにより可視化されなかった(図11B、パネルe)。ショ糖勾配ピーク1及び2からの粒子を、免疫沈殿させ、染色しそしてIEMによっても分析した(図12A〜12B)。図12Aに示されたとおり、ピーク1の優勢な種(85.4%)は、約20nm(41粒子の中から35、平均値=20.6nm)の直径を有する球状粒子であった。粒子の14.6%のみが30nmより大きい直径を有していたが、これは多分ピーク2との重なりに対応する。ピーク2は、ピーク1の材料よりもサイズが幾分より不均一に見えた(図12B)。しかしながら、この母集団中の最も主要な形態(77.5%)は、約41nm(89粒子の中から69、平均値=41.15nm)の平均直径を有しており、これは全HCVビリオン(whole HCV virion)の直径に対応することができる。少数のより小さい30nm直径の粒子(13.5%)をこの調製物において見ることができたが、これは多分ピーク1との重なりから生じたものである。不均一な主要なより速く沈降するピーク(ピーク2)は、主として35及び50nmの直径の大きな粒子からなり、これに対して均一な少量のより遅く沈降するピーク(ピーク1)は、約20nmの直径の小さな粒子からなっていた。ひっくるめると、形態学的研究は、2つのサイズクラスのE1E2エンベロープドHCV粒子が感染患者の血清中に共存することを示す。間接免疫金標識化(図13)によれば、先にIEMにより同定されたすべての球状エンベロープド粒子は、10nm金標識された二次抗体を特異的に固定した。
【0176】
かくして、MAbD32.10による免疫電子顕微鏡法により、トータルエンベロープド母集団(total enveloped population)(HCVに富んだペレット)及び各E1E2母集団の相対的に明確な輪郭の粒度分布を別々に決定した。エンベロープドHCV粒子は、サイズが不均一であるが、2つの異なるサイズクラスの粒子を容易に同定することができた。主要な種は、多分エンベロープの格子構造に依存して、35nmから50nmまで変わる直径を有する大きな粒子からなっていたが、これは完全なカプシド含有エンベロープド粒子に対応する。他のより均一な種は、カプシドのないSVPsに対応する、約20nmの直径を有する小さな粒子からなっていた。MAbD32.10に結合したすべてのこれらの粒子をさらに同定しそして抗マウスIgG−金粒子による間接標識化を使用して電子顕微鏡法により可視化した。
【0177】
感染性ビリオンに加えて、非感染性SVPsの形成は、フラビウイルス感染の共通の特徴である(Russel et al., 1990)。これらはカプシドのない空のウイルスエンベロープを表すことが示唆された(Mason et al., 1991)。それは肝炎Bウイルス(HBV)で感染した細胞においても起こり、そして分泌されたSVPsはエンベロープタンパク質のみの発現により産生される(Laub et al., 1983)。これらの粒子は、ビリオンより小さい。これは、これらのタンパク質が、コアの存在下又は不存在下に特異的粒状構造を固有に自己形成することができることを証明する。これらの粒子はアセンブルされ、そしてグリコシル化及び炭水化物プロセッシングを含む、全ビリオン(whole virions)と同じ成熟プロセスを受ける。このような組換えエンベロープSVPsによる免疫化は、動物モデル(Konishi et al., 1992; Heinz et al., 1995)及びヒト(Leroux-Roels et al., 1994)においてそれらが優れた予防性免疫原であることを示す。
【0178】
完全なビリオン(complete virions)及びSVPsのMAbD32.10との反応性は、E1(297〜306)−E2(480〜494)(613〜621)立体配座エピトープが、HCVビリオン及びSVPsの表面に本質的に同じ方法で提示されることを示す。しかしながら、血清由来のビリオン及びSVPs上に検出されたこのようなエピトープは、遺伝子組換えにより得られたそして異種システム:バキュロウイルス/昆虫細胞(Baumert et al., 1999)又はレトロウイルス/293T細胞(Bartosch et al., 2003)において産生された粒子上には欠けており、これは、この複合部位が、これらの組換えHCV粒子の表面に存在しないか及び/又はこれらの組換えHCV粒子の表面の離れた近づきがたい領域(inaccessible regions)に存在することを示唆する。前者のHCV様粒子(HCV−LPs)はERに保持されそして後者のHCV擬粒子(HCVpp)の小さな画分(small fraction)のみが細胞表面に達した。MAbD32.10はHSA又は免疫グロブリンのγ鎖若しくはμ鎖と反応性ではないことは注目する価値がある。それは、E1、E2の2つのタンパク質がHepG2細胞でワクシニアウイルス組換え体により別々に又は一緒に発現される場合には、E1、E2及びE1E2ヘテロ二量体を特異的に免疫沈殿させることができる。かくして、それは、大抵ジスルフィド結合で連結された集合体と反応しそしてE1E2非共有結合連結された成熟複合体とはより弱く反応する。しかしながら、それは、このような異種システムで発現された変性された組換えE1又はE2タンパク質をブロッティング分析により認識しない。これは、血清由来のウイルス表面におけるE1、E2及びE1E2のアレンジメント(arrangement)が組換えHCV粒子において見いだされるものとは異なるというのに味方する。天然の構造は、アセンブリー条件に依存する。独特な構造の形成を調節する条件が異種システムに存在していないならば、VLPs及びHCVppにおける二量体アレンジメントは類似しておらず、SVPs及びビリオンが感染患者の血清から単離される場合の、SVPs及びビリオン表面の類似性とは対照的である。組換えサブウイルス粒子(RSPs)及びビリオンにおいて、ダニ媒介性脳炎ウイルス(TBEV)を含むフラビウイルスのエンベロープタンパク質(E)のパッキングの1つの特に注目に値する特徴は、それらがヘッドツーテイル方位(head-to-tail orientation)においてウイルス表面に平坦な状態にあるということである(Ferlengi et al., 2001)。Ig様フォールド(Ig-like fold)を有しそして受容体結合に関係している、ドメインIIIの外側表面(lateral surface)は近接可能である(accessible)が、融合ペプチドはインターナルループである(Rey et al., 1995)。それゆえ、フラビウイルスは受容体媒介エンドサイトーシス及びエンドソームにおける低pHで誘発される融合により細胞に入る(Rice, 1996)。アセンブルしている粒子は、ERの膜又は早期分泌経路の中間区画を経る出芽(budding)によりそのエンベロープを取得すると考えられる。次いで粒子はトランスゴルジ網(TGN)を通して形質膜に輸送され、成熟し、そうして複合糖を取得する。すべてのこれらの段階はウイルスアセンブリーに極めて重要でありそして複製サイクルの多くの相において重要な役割を果たす。
【0179】
意外にも、すべてのHCV粒子は、それらの起源が何であれ、同様な生物物理的性質を示すようである。昆虫細胞でアセンブルされ、株HCV−JcDNAから誘導された又は感染性クローンH77cから誘導された、HCV−LPsのショ糖勾配沈降パターンは、ショ糖平衡勾配において1.14〜1.20g/mlであった(Wellnitz et al., 2002)。粒子の大部分は40〜60nmの直径を有していた。しかしながら、HCV−LPsの外側表面のE1及びE2エクトドメイン(ectodomains)に提示されたすべてのエピトープ(Wellnitz et al., 2002)は、MAbD32.10のE1及びE2特異性とは異なる。それゆえ、たとえ粒子がショ糖において同じ密度で沈降するとしても、それらは異なる免疫反応性を有し、これは不適切な輸送及び/又はフォールディングと関連していることがあり、そして明らかに、細胞結合及び感染性に関して、異なる機能的性質をもたらすであろう。
【0180】
血清エンベロープドHCV粒子とは反対に、HCVに感染した個体の血漿から単離したHCVコア粒子は昆虫細胞において産生されたヌクレオカプシド様粒子と類似していると思われる.HCVヌクレオカプシドは、CsCl勾配において1.32〜1.34g/mlの密度に階層区分されそして直径が38〜62mmで、サイズが極めて不均一であった(Maillard et al., 2001)。すべてのこれらの粒子は、抗コアMAbsと反応性であるが、組換えタンパク質による免疫化により産生された抗E1及び抗E2MAbsと反応性ではない(Deleersnyder et al., 1997; Dubuisson et al., 1994)。
【0181】
それゆえ、種々のタイプのHCV関連粒子(HCV−LPs、血清HCVヌクレオカプシド、血清HCVビリオン)は、サイズ及び/又は密度においていくらかの類似性を有するが、異なる抗原的性質(E1E2複合体の不適切な又は適切なフォールディング、エンベロープドビリオン又は非エンベロープドヌクレオカプシド)を示す。それゆえ、要するに、これは、HCV粒子の真の抗原的性質を分析するため、そして、天然のHCVビリオンを同定するための良好な免疫学的ツールを有することが決定的に重要であることを証明している。
【0182】
これらのデータ及び他のデータを考慮に入れて(Andre et al., Maillard et al., 2001)、慢性肝炎C患者の血清中で循環している種々の形態のHCV関連粒子の完全なスペクトルのより良好な知識を得ることができた。ショ糖勾配における低密度画分(1.06g/ml)は、カプシド様構造であって、リポタンパク質と会合して脂質−ウイルス粒子(lipo-viro-particles)(LVP)を形成しそして個々の変動に依存してHCV RNA及び免疫グロブリンと会合した(Andre et al., 2002)カプシド様構造を含有していた。LVPは、直径が100nmより多くの大きい粒子として現われ、そしてLDL受容体(Andre et al., 2002)を介して肝細胞系に結合した。洗剤で処理した血清から単離された非エンベロープドHCVヌクレオカプシドは、CsClにおける1.32〜1.34g/mlの浮遊密度を有しており、サイズが不均一であり(Meillard et al., 2001)そして最近FγR様活性を有することが示され((Meillard et al., 2004)、これはショ糖勾配における高密度(1.28〜1.35g/ml)のHCVコア−IgG複合体として、HCV RNA含有粒子の「非免疫」抗体("non-immune" antibodies)との会合を説明することができた。1.13〜1.21g/mlの中間密度の画分は、ここではE1E2エンベロープドHCV粒子として同定された。ヌクレオカプシド、脂質膜及び2つのE1及びE2エンベロープ糖タンパク質からなる推定上の全HCVビリオン(entire HCV virion)の平均密度(1.18〜1.20g/ml)は、フラビウイルスの密度に類似している(Bradley et al., 1991)。MAbD32.10の精密な特異性から推定された外側エンベロープタンパク質相互作用の仮定も、TBEV及び全ウイルス粒子からの組換えSVPsのエンベロープの組織化に類似している(Schalich et al., 1996)。最後に、異なる沈降性質(1.13〜1.15g/ml)及び異なる粒度(≒20nm)を示すが全ウイルス粒子と同様な抗原特性を示す、E1E2エンベロープタンパク質のみを含有するSVPsがHCV感染患者の血清中に存在することは、HCVとフラビウイルスとのいくらかの類似性を支持する。
【0183】
要するに、新規なMAbD32.10を使用することにより、初めて下記のものが同定された:
(i)HCV RNA及びコア抗原の両方を含有し、そして35〜50nmの直径を有しそして1.17〜1.21g/mlに階層区分される「大きな粒子」としてE1E2エンベロープ複合体をその表面に発現する、HCV完全ビリオン;
(ii)20〜30nmの直径を有しそして1.13〜1.15g/mlに階層区分される、カプシド及びHCV RNAを欠いている「小さな粒子」としてのエンベロープSVPsのHCV母集団。
【0184】
ゆえに、このようなエンベロープド粒子は、HCVエンベロープ糖タンパク質構造−機能関係を調べるための適切なモデル及び予防接種法のための優れた候補を表す。更に、異なるグループの患者において及びHCV関連疾患の種々の段階で循環しているHCV粒子のスペクトルを追跡することは興味深いであろう。
【0185】
実施例3
精製されたHCVエンベロープド完全ウイルス粒子に対するモノクローナル抗体の取得
精製したHCVエンベロープド完全ウイルス粒子を含有するショ糖密度勾配における糖密度遠心に付した上記したHCVに富んだペレットの画分を使用して、モノクローナル抗体を調製した。この画分を使用して、マウスを免疫化しそして上記したようにハイブリドーマを単離した。かくして、1つのモノクローナル抗体、(D4.12.9)を得、これはウエスタンブロット実験において天然のHCV E2タンパク質を特異的に認識し(図6)及び実施例2で証明された天然のHCVウイルス粒子を特異的に認識すること(図7)が示された。実際に、図7は、D4.12.9が、D32.10と同様に、HCVエンベロープドサブウイルス粒子(画分8〜11)及びHCVエンベロープド完全ウイルス粒子(画分11〜14)の両方を認識することを示す。
【0186】
実施例4
感染患者由来の抗HCV抗体のエピトープ特徴付け
HCV感染患者の血清に対するD32.10(実施例1)と反応性のE1及びE2由来のペプチド配列の免疫反応性を、それらを包含するペプチドを使用することにより評価した。
【0187】
E1(アミノ酸290〜317)及びE2(アミノ酸471〜500及び605〜629)配列を、健康な個体からの11の血清及びHCV感染患者からの44の血清(A1〜A44という番号を付けられた)によってELISAにより試験されるべきビオチニル化合成ペプチドとして産生させた。
【0188】
マイクロタイトレーションプレートのウエルを、0.1M炭酸塩緩衝液(pH9.6)中の10μg/mlの濃度のストレプトアビジン100μlで4℃で一夜コーティングし、そして10%ヤギ血清を含有するPBSで37℃で1時間ブロックした。次いで、プレートを0.05%Tween−20を含有するPBSで3回洗浄した後、ビオチニル化ペプチド溶液(PBS中の10μg/ml)100μlを37℃で2時間加えた。PBS−Tweenで新たな洗浄の後、10%ヤギ血清を含有するPBS−Tween中に1:50に希釈された試験された血清100μlを加えそして37℃で2時間インキュベーションした。プレートをPBS−Tweenで再び洗浄した。次いで、二次抗体、ペルオキシダーゼ−コンジュゲーテッドヤギ抗ヒトIgG(Jackson Immune Research laboratories)をPBS−Tween−ヤギ血清中に1:5000希釈率で加えた。プレートを37℃で1時間インキュベーションし、次いでPBS−tweenでもう1回洗浄した。プレートを、o−フェニレンジアミン及び過酸化水素を含有するBiomeriux カラーキットを使用して顕色した。10分のインキュベーションの後、プレートをELISAプレートリーダーで492nmで読み取った。報告された値は3回反復の平均ODである。
【0189】
カットオフ認識を、各ペプチドについて計算した(HCVネガティブ血清+3標準偏差で得られた値の平均)。それは、E1(アミノ酸290〜317)に対して44のHCV−ポジティブ血清の中からの6つ(図8A)、E2(アミノ酸471〜500)に対する44の中からの6つ(図8B)及びE2(アミノ酸605〜629)に対する44の中からの16(図8c)とのポジティブ反応を証明することを可能とした。血清A7、A14、A21、A33、A39及びA40は、3つのペプチドとのポジティブシグナルを与え、これに対して、E2(605〜629)も10のより多くの血清により認識された。
【0190】
HCV感染患者の血清中に、D32.10mAbにより認識されたE1及びE2の3つの領域と同時に反応することができる特異的抗体が存在することは、循環しているエンベロープドHCVウイルス粒子の表面におけるそれらの並置(juxtaposition)及びマウス及びヒトにおけるそれらの免疫原性を強く支持する。
【0191】
【表3】
【図面の簡単な説明】
【0192】
【図1A】図1A、1B、1C、1D及び1Eは、35S標識された細胞の抗体で沈殿させた溶解物(antibody precipitated lysates)のドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を表す。レーン1、2、3、4、5、6及び7は、それぞれ、抗体C9.19.16、C2.22.1、D32.10、D3.20.12、C7、24.19、C7.14.41及びC1.9.3に対応する。MWは、分子量マーカーに対応する。分子量マーカーに対応するバンドのサイズは、ゲルの右に表される。可能ならば、バンドは、E1、E2又はAgg(集合体の場合)としてゲルの左に確認される。 図1Aは、還元条件における、35S標識されたコントロール細胞の抗体で沈殿させた溶解物のSDS−PAGEを表す。
【図1B】図1A、1B、1C、1D及び1Eは、35S標識された細胞の抗体で沈殿させた溶解物(antibody precipitated lysates)のドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を表す。レーン1、2、3、4、5、6及び7は、それぞれ、抗体C9.19.16、C2.22.1、D32.10、D3.20.12、C7、24.19、C7.14.41及びC1.9.3に対応する。MWは、分子量マーカーに対応する。分子量マーカーに対応するバンドのサイズは、ゲルの右に表される。可能ならば、バンドは、E1、E2又はAgg(集合体の場合)としてゲルの左に確認される。 図1Bは、還元条件における、HCV E1タンパク質を発現する35S標識された細胞の抗体で沈殿させた溶解物のSDS−PAGEを表す。
【図1C】図1A、1B、1C、1D及び1Eは、35S標識された細胞の抗体で沈殿させた溶解物(antibody precipitated lysates)のドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を表す。レーン1、2、3、4、5、6及び7は、それぞれ、抗体C9.19.16、C2.22.1、D32.10、D3.20.12、C7、24.19、C7.14.41及びC1.9.3に対応する。MWは、分子量マーカーに対応する。分子量マーカーに対応するバンドのサイズは、ゲルの右に表される。可能ならば、バンドは、E1、E2又はAgg(集合体の場合)としてゲルの左に確認される。 図1Cは、還元条件における、HCV E2タンパク質を発現する35S標識された細胞の抗体で沈殿させた溶解物のSDS−PAGEを表す。
【図1D】図1A、1B、1C、1D及び1Eは、35S標識された細胞の抗体で沈殿させた溶解物(antibody precipitated lysates)のドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を表す。レーン1、2、3、4、5、6及び7は、それぞれ、抗体C9.19.16、C2.22.1、D32.10、D3.20.12、C7、24.19、C7.14.41及びC1.9.3に対応する。MWは、分子量マーカーに対応する。分子量マーカーに対応するバンドのサイズは、ゲルの右に表される。可能ならば、バンドは、E1、E2又はAgg(集合体の場合)としてゲルの左に確認される。 図1Dは、還元条件における、HCV E1E2タンパク質を発現する35S標識された細胞の抗体で沈殿させた溶解物のSDS−PAGEを表す。
【図1E】図1A、1B、1C、1D及び1Eは、35S標識された細胞の抗体で沈殿させた溶解物(antibody precipitated lysates)のドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を表す。レーン1、2、3、4、5、6及び7は、それぞれ、抗体C9.19.16、C2.22.1、D32.10、D3.20.12、C7、24.19、C7.14.41及びC1.9.3に対応する。MWは、分子量マーカーに対応する。分子量マーカーに対応するバンドのサイズは、ゲルの右に表される。可能ならば、バンドは、E1、E2又はAgg(集合体の場合)としてゲルの左に確認される。 図1Eは、非還元条件における、HCV E1E2タンパク質を発現する35S標識された細胞の抗体で沈殿させた溶解物のSDS−PAGEを表す。
【図2】図2は、非還元条件及び還元条件下にD32.10モノクローナル抗体を使用するHCVウイルス粒子のウエスタンブロットを表す。左から右へ、Mは非還元条件下に分子量マーカーを表し、そのバンドのサイズは、ゲルの左に示され(kDaにおいて)、レーン1は非還元条件下にD32.10モノクローナル抗体を使用するHCVウイルス粒子のウエスタンブロットを表し、第2レーンMは還元条件下の分子量マーカーを表し、レーン2は、還元条件下にD32.10モノクローナル抗体を使用するHCVウイルス粒子2.5μgのウエスタンブロットを表し、レーン3は、還元条件下にD32.10モノクローナル抗体を使用するHCVウイルス粒子5μgのウエスタンブロットを表す。ゲルの右に、レーン3のいくつかのバンドのサイズが示され(kDaで)、いくらかはHCVタンパク質E2(60及び68)又はHCVタンパク質E1(34及び31)に対応する。
【図3A】図3A及び図3Bは、グリコシダーゼAによる脱グリコシル化(図3A)及びエンドグリコシダーゼHによる脱グリコシル化(図3B)に付されたHCVウイルス粒子のウエスタンブロットを表す。 図3Aにおいて、レーンMは分子量マーカーを表し、そのバンドの3つのサイズは、ゲルの左に示され(kDaで);レーン1、2、3及び4はそれぞれ、20、10、5及び0mU/mlのグリコシダーゼ濃度を表す。ゲルの右に、HCVタンパク質E2及びE1の位置が示され、そしてタンパク質E1の主要な脱グリコシル化形態の位置(E1*)及びE1又はE2の脱グリコシル化形態に対応するいつかのバンドのサイズ(kDaで)、並びにE2の主要な脱グリコシル化形態(41*)が示される。
【図3B】図3A及び図3Bは、グリコシダーゼAによる脱グリコシル化(図3A)及びエンドグリコシダーゼHによる脱グリコシル化(図3B)に付されたHCVウイルス粒子のウエスタンブロットを表す。 図3Bにおいて、レーンMは分子量マーカーを表し、そのバンドの4つのサイズがゲルの左に示され(kDaで);レーン1及び2は、それぞれ、エンドグリコシダーゼHなしに行われたコントロール脱グリコシル化実験及びエンドグリコシダーゼHの存在下に行われる脱グリコシル化実験を表す。ゲルの右には、E2及びE1の完全グリコシル化形態及びE2の脱グリコシル化形態(50、48、46及び42kDa)及びE1の脱グリコシル化形態(28及び24kDa)に対応する主要バンドが示される。E2の主要な脱グリコシル化形態(50*)及びE1の主要な脱グリコシル化形態(28*)は星によりマークを付けられている。
【図4】図4は、HCVウイルス粒子調製物のショ糖密度勾配での遠心により得られた画分の特徴付けを示す。3つのパラメーター、HCV RNA含有率、HCVコアタンパク質含有率及びD32.10モノクローナル抗体に対する反応性、を測定した。水平軸は特徴付けに付された画分の数を表す。左垂直軸はHCV RNA濃度(×105UI/ml)及び間接EIA(450nmでのOD)により測定されたD32.10に対する反応性の目安を表す。右垂直軸はHCVコアタンパク質濃度(pg/mlでの)を表す。黒点に対応する曲線はD32.10に対する画分の反応性を表し、白三角形に対応する曲線はコアタンパク質の画分含有率を表し、そしてドット付きバーはHCV RNAの画分含有率を表す。
【図5A】図5A、5B及び5Cは、それぞれ、HCVウイルス粒子調製物、HCVエンベロープド完全ウイルス粒子調製物及びHCVエンベロープドサブウイルス粒子調製物の透過型電子顕微鏡写真を表す。 図5Aでは、水平バーは長さ200nmのスケールを表す。より大きい円形要素はHCVエンベロープド完全ウイルス粒子を表しそしてより小さい円形要素はHCVエンベロープドサブウイルス粒子を表す。
【図5B】図5A、5B及び5Cは、それぞれ、HCVウイルス粒子調製物、HCVエンベロープド完全ウイルス粒子調製物及びHCVエンベロープドサブウイルス粒子調製物の透過型電子顕微鏡写真を表す。 図5Bでは、水平バーは長さ50nmのスケールを表す。円形要素はHCVエンベロープド完全ウイルス粒子を表す。
【図5C】図5A、5B及び5Cは、それぞれ、HCVウイルス粒子調製物、HCVエンベロープド完全ウイルス粒子調製物及びHCVエンベロープドサブウイルス粒子調製物の透過型電子顕微鏡写真を表す。 図5Cでは、水平バーは長さ50nmのスケールを表す。円形要素はHCVエンベロープドサブウイルス粒子を表す。
【図6】図6はD4.12.9モノクローナル抗体を使用するHCVウイルス粒子のウエスタンブロットを表す。レーンMは分子量マーカーを表し、そのバンドの4つのサイズ(75、50、37、25)はゲルの左側及び右側に示される(kDaで)。レーン1及び2は、それぞれ、グリコシダーゼA及びエンドグリコシダーゼHによるHCVウイルス粒子の消化の結果を表し、レーン3及び4はプロテアーゼトリプシン及びV8によるHCVウイルス粒子のタンパク分解消化の結果を表し、レーン5はNP−40による細胞溶解(lysis)の結果を表し、そしてレーン6では前処理は行われなかった。ゲルの右側には、消化されなかったE2タンパク質(68及び48)の2つの主要な形態が示され(kDaで)そしてゲルの左側にはE2の主要な脱グリコシル化形態(E2*)が示される。
【図7】図7は、HCVウイルス粒子調製物のショ糖密度勾配での遠心により得られた画分のD4.12.9に基づく特徴付けを表す。D4.12.9に対する画分反応性に加えて、コアタンパク質の画分含有率も測定した。水平軸は、特徴付けに付された画分の数を表す。右垂直軸はEIA(450nmでのOD)により測定されたD4.12.9に対する反応性の目安を表す。左垂直軸は、HCVコアタンパク質濃度(pg/mlで)を表す。黒四角形に対応する曲線はD4.12.9に対する画分の反応性を表し、黒菱形に対応する曲線はコアタンパク質の画分含有率を表す。
【図8A】図8A、8B及び8Cは、健康な個体(水平軸上にT1〜T11の番号を付けられている11の血清)及びHCV感染患者(水平軸上でA1〜A44の番号を付けられている44の血清)の55の血清に対するそれぞれアミノ酸290〜317(図8A)、アミノ酸471〜500(図8B)及びアミノ酸605〜629(図8C)を含む3つのビオチニル化ペプチドの免疫反応性を表す。垂直軸は、ELISA(492nmにおけるOD×1000)により測定された3つのペプチドに対する血清の反応性を表す。白のバーは健康な個体の血清の反応性を表しそしてグレーのバーは感染患者の血清の反応性を表す。水平線は、カットオフ値を表し、それより上の血清応答はポジティブと考えられる。図8Aでは、カットオフ値は0.691であり、図8Bでは0.572でありそして図8Cでは0.321である。
【図8B】図8A、8B及び8Cは、健康な個体(水平軸上にT1〜T11の番号を付けられている11の血清)及びHCV感染患者(水平軸上でA1〜A44の番号を付けられている44の血清)の55の血清に対するそれぞれアミノ酸290〜317(図8A)、アミノ酸471〜500(図8B)及びアミノ酸605〜629(図8C)を含む3つのビオチニル化ペプチドの免疫反応性を表す。垂直軸は、ELISA(492nmにおけるOD×1000)により測定された3つのペプチドに対する血清の反応性を表す。白のバーは健康な個体の血清の反応性を表しそしてグレーのバーは感染患者の血清の反応性を表す。水平線は、カットオフ値を表し、それより上の血清応答はポジティブと考えられる。図8Bでは、カットオフ値は0.572である。
【図8C】図8A、8B及び8Cは、健康な個体(水平軸上にT1〜T11の番号を付けられている11の血清)及びHCV感染患者(水平軸上でA1〜A44の番号を付けられている44の血清)の55の血清に対するそれぞれアミノ酸290〜317(図8A)、アミノ酸471〜500(図8B)及びアミノ酸605〜629(図8C)を含む3つのビオチニル化ペプチドの免疫反応性を表す。垂直軸は、ELISA(492nmにおけるOD×1000)により測定された3つのペプチドに対する血清の反応性を表す。白のバーは健康な個体の血清の反応性を表しそしてグレーのバーは感染患者の血清の反応性を表す。水平線は、カットオフ値を表し、それより上の血清応答はポジティブと考えられる。図8Cでは0.321である。
【図9A】HCVコアタンパク質は、Ortho Clinical DiagnosticsからのトータルHCVコア抗原アッセイ(図9A)により定量されそしてHCV−Fanペレット及び上記したタイプ1の30〜45%ショ糖勾配からの画分におけるウエスタンブロット(図9B)により分析された。(図9A)すべての画分を1:2の希釈率で試験した。HCV−Fanペレットは、希釈率1:25、1:50及び1:100で試験し、そして332pg/mlを含有することが見出された。すべての希釈はTNE緩衝液で行った。カットオフ値は1.4pg/mlであった。
【図9B】HCVコアタンパク質は、Ortho Clinical DiagnosticsからのトータルHCVコア抗原アッセイ(図9A)により定量されそしてHCV−Fanペレット及び上記したタイプ1の30〜45%ショ糖勾配からの画分におけるウエスタンブロット(図9B)により分析された。(図9B)HCV−Fanペレット及び30%〜45%ショ糖勾配からの画分4、8、12及び13をSDS−12.5%PAGEに付した。HCVコアタンパク質を、モノクローナル抗体抗コア7G12A8、2G9A7及び19D9D6(各々について5μg/ml)の混合物を使用して検出した。AmershamからのECL Plusシステムを使用してブロットを顕色した。左の数は、キロダルトン(kDa)でのマーカー(M)の分子量を示し、そしてHCVコアタンパク質は右に示された。
【図10】最初の10〜60%ショ糖勾配からのすべての画分における定量的RT-PCR Amplicor HCV Monitor試験バージョン2.0(Roche Diagnostics)によりHCV RNAを分析した。製造者の取扱説明書に従って試験を行った。各ロットに対して特異的なQS国際単位(IU)/PCRを使用することにより結果を計算し、そしてIU HCVRNA/mlで表した。
【図11A】電子顕微鏡法(EM)による血清由来のHCVエンベロープド粒子の分析。MAbD32.10(5μg)(パネルa、b、c及びd)又は無関係のMAb(パネルe)を使用すことによりHCV−Fanペレット(2μg)を免疫沈殿させ、そして超遠心によるペレット化後の免疫複合体をグリッドに吸着させそして1%酢酸ウラニル(pH4.5)で染色した。調製物をJEOL 100CX電子顕微鏡を使用して可視化した。(図11A)粒子は幾分直径(nmで表された)が変わり、そして156ウイルス粒子(VPs)に関してヒストグラムを作成した。粒度分布は35nmに中心のあるピークを示す。
【図11B】電子顕微鏡法(EM)による血清由来のHCVエンベロープド粒子の分析。MAbD32.10(5μg)(パネルa、b、c及びd)又は無関係のMAb(パネルe)を使用すことによりHCV−Fanペレット(2μg)を免疫沈殿させ、そして超遠心によるペレット化後の免疫複合体をグリッドに吸着させそして1%酢酸ウラニル(pH4.5)で染色した。調製物をJEOL 100CX電子顕微鏡を使用して可視化した。(図11B)電子顕微鏡写真。パネルa、b、c及びdのバーは50nmを示す。
【図12A】D32.10による免疫沈殿、グリッドへの吸着及び染色後のショ糖勾配ピーク1(図12A)及び2(図12B)からのHCV−Fan粒子の電子顕微鏡法による分析。(図12A)41のウイルス粒子についてヒストグラムを作成した。ピーク1における主要な種(85.4%)は約20nmの直径を有する球状粒子、いわゆる<<小さな粒子>>であった。
【図12B】D32.10による免疫沈殿、グリッドへの吸着及び染色後のショ糖勾配ピーク1(図12A)及び2(図12B)からのHCV−Fan粒子の電子顕微鏡法による分析。(図12B)89のウイルス粒子についてヒストグラムを作成した。ピーク2における最も優勢な形態(77.5%)は、約41nmの平均直径を有していた。ピーク2は、サイズが幾分より不均一であるようであり、そして主として35及び50nm直径粒子、いわゆる<<大きな粒子>>からなっていた。バー、50nm。
【図13】エンベロープドHCV粒子の間接免疫金標識化(indirect immuno-gold labeling)。D32.10−免疫複合体(HCVペレット、20μg;MAbD32.10,5μg)でコーティングされた顕微鏡グリッドを、第2抗体としてのヤギ抗マウスIgG−コンジュゲーテッドコロイド金粒子(10nm)の1:50希釈物とインキュベーションした。IgGの立体障害(EMにおいて約15nm)にしたがって、少数の金粒子のみが、抗体結合を確認することができた。金粒子はウイルス粒子の外側には観察されなかった。すべてのパネルのバーは20nmを示す。
【図14A】図14A及び図14Bは、遺伝子型1bの単離HCV−LからのHCVに富んだペレットのショ糖密度勾配(10%〜60%)における等密度遠心(isopycnic centrifugation)の結果を表す。 図14Aは、遠心後に得られた画分(水平軸)の密度(左水平軸、g/ml)及びE1E2−D32.10反応性(右垂直軸、A490nm)を表す。 EIAでは、各画分を1/10000に希釈し(図4A及び4C)そしてウエスタンブロットでは、選ばれた画分5μl/レーンを使用した(図4B及び4D)。画分の密度は屈折率測定法により測定されそしてg/mlで表される。吸光度(A)は490nmで側定された。EIAの結果は、ネガティブコントロール(少なくとも3つの値)の平均の掛ける2.1に相当するカットオフより上になる場合にはポジティブと考えられた。AmershamからのECL Plusシステムを使用してブロットを顕色した。
【図14B】図1A及び図14Bは、遺伝子型1bの単離HCV−LからのHCVに富んだペレットのショ糖密度勾配(10%〜60%)における等密度遠心(isopycnic centrifugation)の結果を表す。 図14Bは、抗E1E2MAbD32.10を使用する、画分6、8、10,12及び14のウエスタンブロットを表す。左の数は、キロダルトン(kDa)におけるマーカー(M)の分子量を示し、そしてHCVE1及びE2タンパク質は右に示された。 EIAでは、各画分を1/10000に希釈し(図4A及び4C)そしてウエスタンブロットでは、選ばれた画分5μl/レーンを使用した(図4B及び4D)。画分の密度は屈折率測定法により測定されそしてg/mlで表される。吸光度(A)は490nmで側定された。EIAの結果は、ネガティブコントロール(少なくとも3つの値)の平均×2.1に相当するカットオフより上になる場合にはポジティブと考えられた。AmershamからのECL Plusシステムを使用してブロットを顕色した。
【図14C】図14C及び図14Dは、遺伝子型1a/2aの単離HCV−FanからのHCVに富んだペレットのショ糖密度勾配(10%〜60%)における等密度遠心の結果を示す。 図14Cは、遠心後に得られた画分(水平軸)の密度(左水平軸、g/ml)及びE1E2−D32.10反応性(右垂直軸、A490nm)を表す。 EIAでは、各画分を1/10000に希釈し(図4A及び4C)そしてウエスタンブロットでは、選ばれた画分5μl/レーンを使用した(図4B及び4D)。画分の密度は屈折率測定法により測定されそしてg/mlで表される。吸光度(A)は490nmで側定された。EIAの結果は、ネガティブコントロール(少なくとも3つの値)の平均×2.1に相当するカットオフより上になる場合にはポジティブと考えられた。AmershamからのECL Plusシステムを使用してブロットを顕色した。
【図14D】図14C及び図14Dは、遺伝子型1a/2aの単離HCV−FanからのHCVに富んだペレットのショ糖密度勾配(10%〜60%)における等密度遠心の結果を示す。 図14Dは、抗E1E2MAbD32.10を使用する、画分6、8、10、12及び14のウエスタンブロットを表す。 EIAでは、各画分を1/10000に希釈し(図4A及び4C)そしてウエスタンブロットでは、選ばれた画分5μl/レーンを使用した(図4B及び4D)。画分の密度は屈折率測定法により測定されそしてg/mlで表される。吸光度(A)は490nmで側定された。EIAの結果は、ネガティブコントロール(少なくとも3つの値)の平均×2.1に相当するカットオフより上になる場合にはポジティブと考えられた。AmershamからのECL Plusシステムを使用してブロットを顕色した。
【図15A】HCV−Fanペレットのタイプ1の30〜45%ショ糖勾配(30%2ml、35%3ml、40%3ml、45%2ml)における等密度遠心(図15A)。屈折率測定法により側定された画分の密度はg/mlで表した。E1E2−D32.10反応性を前記のように間接EIAにより分析した。
【図15B】ショ糖勾配(30〜45%)ピーク1(画分8)及び2(画分12及び13)からの粒子を個々に第2平衡遠心に付した(それぞれ、図15B及び15C)。ピーク1をタイプ2の30〜45%ショ糖勾配(30%3ml、35%3ml、40%2ml、45%2ml)において遠心した(図15B)。屈折率測定法により側定された画分の密度はg/mlで表した。E1E2−D32.10反応性を前記のように間接EIAにより分析した。
【図15C】ショ糖勾配(30〜45%)ピーク1(画分8)及び2(画分12及び13)からの粒子を個々に第2平衡遠心に付した(それぞれ、図15B及び15C)。ピーク2をタイプ3の30〜45%ショ糖勾配(30%2ml、35%2ml、40%3ml、45%3ml)において遠心した(図15C)。屈折率測定法により側定された画分の密度はg/mlで表した。E1E2−D32.10反応性を前記のように間接EIAにより分析した。
【技術分野】
【0001】
本発明は、HCVに対する新規な立体配座抗体(conformational antibodies)、更に詳しくはモノクローナル抗体に関する。本発明、該抗体により認識される傾向がある粒子の組成物及びそれらを含有する医薬組成物にも関する。本発明は、HCVエンベロープドサブウイルス粒子(HCV enveloped subviral particles)又は精製されたHCVエンベロープド完全ウイルス粒子(HCV enveloped complete virus particles)及びそれらを製造する方法にも関する。
【0002】
肝炎Cウイルス(HCV)感染は、慢性肝炎及び硬変の主要な原因であり、そして肝細胞癌をもたらすことがある。世界中で約200万人の人々がHCVに慢性的に感染しており、この疾患は深刻な世界的健康問題となった。HCVは、フラビウイルス科(Flaviridae family)のHepacivirus属に属するエンベロープドRNAウイルスである。そのゲノムは、内部リボソームエントリー部位(internal ribosome entry sites)として機能する5’非翻訳領域(UTR)、約3,000アミノ酸のポリタンパク質をコードする単一オープンリーディングフレーム及び3’UTRを有する正の極性の9.6kbの一本鎖RNAである(Bartenschlager et al., 2000)。このポリタンパク質は、翻訳と同時に又は翻訳後に、宿主細胞ペプチダーゼにより開裂されてコアタンパク質並びにエンベロープ糖タンパク質E1及びE2を含む構造タンパク質を生じ、そしてウイルスプロテアーゼにより開裂されて非構造タンパク質(NS)2〜5Bを発生する(Bartenschlager et al., 2000)。関連したプラス鎖RNAウイルスから類推して、複製はマイナス鎖RNA中間体によって行われ、そして細胞質膜に会合したレプリカーゼ複合体を形成するNSタンパク質により触媒される。
【0003】
患者血漿サンプル中に存在するHCV粒子の低いレベル及び有効なHCV複製又は粒子アセンブリーを支持する細胞培養システムの欠如は、ビリオンと会合した糖タンパク質
の特徴付けを妨害してきた。HCVエンベロープ糖タンパク質に関する最近の知見は、ウイルス若しくは非ウイルス発現ベクターによる細胞培養一過性発現アッセイに基づいている。これらの研究は、E1及びE2糖タンパク質が相互作用して複合体を形成することを示した(Dubuisson, 2000に概観されている)。非イオン洗剤の存在下に、2つの形態のE1E2複合体が検出される:非共有結合相互作用により安定化されたE1E2ヘテロニ量体及びミスフォールディングされた複合体を表すと考えられる不均一なジスルフィド連結された集合体(aggregate)。以前に、エンベロープ糖タンパク質特異的抗体が合成ペプチド又は組換え抗原による免疫化により得られた。しかしながら、HCV糖タンパク質ヘテロ二量体のネイティブ前出芽形態(native prebudding form)と考えられる非共有結合により連結されたE1E2ヘテロ二量体を認識する立体配座感受性E2−反応性モノクローナル抗体(mAb)(H2)は、血清由来のHCV RNAポジティブ粒子と反応しない(Deleersynder et al., 1997)。更に、WO92/07001は、感染したチンパンジーから抽出したHCV粒子の調製物によるマウスの免疫化により調製された抗体を開示しているが、これらの抗体は天然のHCV粒子(即ち、感染した患者由来の)に対して試験されていない。更に、WO00/05266は、感染した患者のB細胞から調製された抗体を開示しているが、これらの抗体は組換えE2タンパク質に結合する能力に従って選ばれている。ゆえに、すべてのこれらの抗体は、診断目的又は治療若しくは予防目的の限定された用途である。何故ならば、それらは非自然のHCV又はその一部により産生されているか又は選ばれており、そして天然のHCV粒子と相互作用することが示されていないからである。
【0004】
十分な量及び濃度で天然のエンベロープドHCV粒子を含有するHCV調製物の欠如は、天然HCV粒子を認識する傾向がある(liable to recognize)抗体をこれまで得ることができなかった理由の1つである。事実、血漿サンプル中のHCV粒子の低いレベルは、このウイルスの特徴付け及び可視化を困難にした。以前に、天然に感染した患者の血漿からの感染の急性期の間に回収されたウイルスは、ショ糖における約1.06g/mlの浮遊密度を有していることが示された(Hijikata et al., 1993)。反対に、in vitro複製後の細胞培養物から回収されたHCVはショ糖における1.12g/mlの浮遊密度を有する(Yoshikura et al., 1996)。最後に、慢性的に感染している個体から回収されたHCVはショ糖における約1.17g/mlの浮遊密度を有している(Hijikata et al., 1993)。血清由来のウイルスの低い密度は、血清低密度リポタンパク質とのその会合のせいであるとされた(Thomssen etal., 1992)。高密度ウイルスは、抗原−抗体複合体中のウイルスに結合した抗体と会合していることが示された(Kanto et al., 1995)。これらのデータにもかかわらず、これらの異なるHCV母集団のタンパク質組成に関する指示及び低密度画分(<1.0g/ml)が完全なビリオンとしてエンベロープ、RNA及びヌクレオカプシドを含有するかどうかに関する指示はまだない。
【0005】
ゆえに、本発明の目的は、天然のHCV粒子と反応する抗体を提供することである。
【0006】
本発明の他の観点は、抗体産生動物の有効な免疫化を可能とするのに十分な量及び濃度で天然のHCV粒子の組成物を提供することである。
【0007】
本発明の他の観点は、医薬組成物の活性物質として使用されやすい、感染のない特異的)HCV組成物を提供することである。
発明の詳細な説明
【0008】
本発明は、天然のHCVウイルスエンベロープに特異的に結合することができる立体配座抗体に関する。
【0009】
「立体配座抗体」という表現は、その分子環境により規定された三次元構造を有するエピトープを認識する抗体を示す。
【0010】
「特異的に結合する」という表現は、天然のHCVウイルスエンベロープを形成するエレメントの実質的に1つのみに見出されるエピトープに抗体が結合すること、即ち、天然のHCVエンベロープを形成するエレメント以外のエレメントとの抗体の結合が実質的にないということを意味する。例えば、抗体の結合特異性は、当業者に周知の方法、例えば、生物学的サンプルをゲル上で電気泳動により移動させ、次いで膜に転写しそして前記抗体と共インキュベーションし、次いでこれを二次抗体により検出するウエスタンブロット実験により試験することができる。該抗体は、検出された電気泳動バンドの実質的すべてが標的化合物又はその一部を含有するならば、該生物学的サンプル中に含有された標的化合物に「特異的に結合している」と言われる。
【0011】
「HCV」は、「肝炎Cウイルス」を意味し、それはChoo et al., (1989, 1991)に特に記載されている。HCVは、特に、RNA、コアタンパク質から作られたカプシド並びに脂質及びタンパク質、特に糖タンパク質を含むエンベロープを含む。
【0012】
「HCVウイルスエンベロープ」は、脂質及びタンパク質、特に糖タンパク質、例えば、HCVタンパク質E1及びE2から作られる(Clarke, 1997)。
【0013】
「天然の」とは、HCV又はその一部が生物学的サンプル中に見いだされたままでありそして場合により単離されたままであり、そして必要ならば、生物学的サンプルから精製されたままであることを意味する。このようなサンプルはHCVにより感染した患者の血液、血漿又は血清であることができる。特に、「天然の」は、組換え法により又は細胞系若しくは動物を使用することにより産生されたものではなく、そして例えば、Schalich et al.(1996), Blanchard et al., (2002)又はWO92/07001に記載のHCVエメントとは異なるHCV又はその一部を指す。
【0014】
本発明は、更に詳しくは、天然のHCV E2タンパク質に特異的に結合することができる立体配座抗体に関する。
【0015】
HCV E2は、特にDubuisson(2000)及びOp De Beeck et al.(2000)に記載されている。それは、開裂されてE2(アミノ酸384〜714)を生じるポリタンパク質(3012アミノ酸)として産生される。
【0016】
「特異的に結合する」という表現は、抗体が、実質的にHCV E2タンパク質にのみ見いだされるエピトープ又はその一部に結合することを意味する。特に、抗体は、抗体−E2複合体が他のタンパク質と一緒に存在する競合試験においてHCV E2タンパク質から引き離される(detached)ことはできない。
【0017】
「天然のHCV E2タンパク質」という表現は、タンパク質がHCVにより感染した
患者の生物学的サンプルにおいて見いだされるままであること、特に天然のHCV E2タンパク質は組換えタンパク質ではないことを意味する。
【0018】
本発明は、患者におけるHCV感染を中和することができる、上記したとおりの立体配座抗体に関する。
【0019】
「HCV感染を中和する」とは、抗体が、例えば、血液、血漿又は血清中に検出されるHCVの減少により証明されうるとおり、HCVにより感染した患者の健康を改善することができること、又は個体がHCVによる感染されるのを抗体が阻止することができることを意味する。
【0020】
該抗体のHCV感染中和能力は、HCVにより慢性的に感染しているか又は該抗体の存在下にHCVにより初めに感染される(primo-infected)モデル動物、例えば、チンパンジー又はマウス、特にヒトに適合したマウス(humanized mice)において監視することができる。監視された抗体は、それぞれ、HCV関連ウイルス血症の減少を誘発するか又はHCVによる感染を阻止することができるべきである。
【0021】
本発明は、共有結合形態又は非共有結合形態下のHCV E1E2複合体を沈殿させることができる上記した立体配座抗体に関する。
【0022】
HCV E1E2複合体は、非共有結合であることができる、即ち、E1及びE2は、弱い結合、例えば、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス結合又は疎水性結合によって会合しているか、又は共有結合であることができる、即ち、E1及びE2は共有結合、例えば、ジスルフィド結合によって会合している。E1E2複合体の共有結合形態及び非共有結合形態は特にDeleersnyder et al.(1997)に記載又は示唆されている。
【0023】
「沈殿する」とは、抗体が HCV E1E2複合体を不溶性にすることができることを意味する。沈殿は、例えばDubuisson and Rice(1996)により記載のとおりに行うことができる。
【0024】
本発明は、天然のECV E1タンパク質に特異的に結合することができる上記した立体配座抗体に関する。
【0025】
HCV E1は、特にDubuisson(2000)及びOp De Beeck et al.(2000)に記載されている。それは、開裂されてE1(アミノ酸192〜383)を生じるポリタンパク質(3012アミノ酸)として産生される。
【0026】
「特異的に結合する」という表現は、抗体が、実質的にHCV E1タンパク質上にのみ見いだされるエピトープ又はその一部に結合することを意味する。特に、抗体は、抗体−E1複合体が他のタンパク質と一緒に存在する競合試験においてHCV E1タンパク質から引き離されることはできない。
【0027】
「天然のHCV E1タンパク質」という表現は、タンパク質がHCVにより感染した
患者の生物学的サンプルにおいて見いだされたままであること、特に天然のHCV E1タンパク質は組換えタンパク質ではないことを意味する。
【0028】
本発明は、更に詳しくは、天然のHCV E1タンパク質、天然のHCV E2タンパク質に特異的に結合することができ、そして共有結合形態又は非共有結合形態下のHCV E1E2複合体を沈殿させることができる立体配座抗体に関する。
【0029】
本発明は、下記の配列:
HCVタンパク質E1のアミノ酸297〜306、
HCVタンパク質E2のアミノ酸480〜494、
HCVタンパク質E2のアミノ酸613〜621、
の少なくとも1つからなるエピトープに特異的に結合することができる上記した立体配座抗体に関する。
【0030】
本発明に従う抗体は、
−下記の配列:RHWTTQGCNC(配列番号1)に相当するHCVタンパク質E1のアミノ酸297〜306を含むペプチドを提示する分子;及び/又は
−下記の配列:PDQRPYCWHYPPKPC(配列番号2)に相当するHCVタンパク質E2のアミノ酸480〜494を含むペプチドを提示する分子;及び/又は
−下記の配列:YRLWHYPCT(配列番号3)に相当するHCVタンパク質E2のアミノ酸613〜621を含むペプチドを提示する分子、
に結合することができる。
【0031】
前記配列の少なくとも1つへの該抗体の結合は、前記配列のいずれかを含有するペプチドを合成し、そして当業者により周知された方法、例えば、ELISA又はEIAにより該合成されたペプチドに対する抗体結合能力をアッセイすることにより試験することができる。
【0032】
頭字語「ELISA」は、酵素結合イムノソルベントアッセイ(Enzyme Linked Immuno Sorbent Assay)を意味する。
【0033】
頭字語「EIA」は、エンザイムイムノアッセイを意味する。
【0034】
本発明は、下記の配列:
HCVタンパク質E1のアミノ酸297〜306、
HCVタンパク質E2のアミノ酸480〜494、
HCVタンパク質E2のアミノ酸613〜621、
の各々からなるエピトープに特異的に結合することができる上記した立体配座抗体に関する。
【0035】
本発明に従う抗体は、
−下記の配列:RHWTTQGCNC(配列番号1)に相当するHCVタンパク質E1のアミノ酸297〜306を含むペプチド、及び
−下記の配列:PDQRPYCWHYPPKPC(配列番号2)に相当するHCVタンパク質E2のアミノ酸480〜494を含むペプチド、及び
−下記の配列:YRLWHYPCT(配列番号3)に相当するHCVタンパク質E2のアミノ酸613〜621を含むペプチド、
を含むエピトープを提示する分子に結合することができる。
【0036】
前記の配列の各々を含むエピトープへの該抗体の結合は、分子、特に配列RHWTTQGCNC(配列番号1)を含むタンパク質、及び分子、特に配列PDQRPYCWHYPPKPC(配列番号2)を含むタンパク質、及び分子、特に、配列 YRLWHYPCT(配列番号3)を含むタンパク質に対する抗体結合能力を、当業者に周知の方法、例えば、ELISA又はEIAによりアッセイすることによって試験することができる。
【0037】
本発明は、モノクローナル抗体である前記した立体配座抗体に関する。
【0038】
「モノクローナル抗体」という表現は、抗体が実質的に1つのエピトープ又は該エピトープの一部に結合することを意味する。
【0039】
モノクローナル抗体は、不死化された抗体分泌細胞、例えばハイブリドーマ由来のモノクローナル細胞系から得ることができる。
【0040】
モノクローナル細胞系は、独特の細胞の培養から誘導される。
【0041】
ハイブリドーマは、例えば、Kohler and Milstein(1975)又はButtin et al.(1978)に従って、抗体分泌細胞、例えばB細胞と不死化された細胞との融合により産生することができる。
【0042】
本発明の他の観点に従えば、上記したモノクローナル抗体は、受託番号CNCM I−2983の下で2003年3月19日に、CNCM(Collection Nationale de Culture de Microorganismes, Institut Pasteur, Paris, France)にブタペスト条約の下で寄託されたハイブリドーマにより分泌される。
【0043】
該モノクローナル抗体は、特に、天然のHCVウイルスエンベロープ、天然のHCV E2タンパク質、天然のHCV E1タンパク質に結合し、そして共有結合形態又は非共有結合形態下のHCV E1E2複合体を沈殿させることができ、そして上記した配列の少なくとも1つ又はすべてからなるエピトープに結合することができる。該モノクローナル抗体は、特に今後D32.10と呼ばれる。
【0044】
本発明の他の観点に従えば、上記したモノクローナル抗体は、受託番号CNCM I−2982の下で2003年3月19日に、CNCM(Collection Nationale de Culture de Microorganismes, Institut Pasteur, Paris, France)にブタペスト条約の下で寄託されたハイブリドーマにより分泌される。
【0045】
該モノクローナル抗体は、特に、天然のHCVウイルスエンベロープ及びHCV E2タンパク質に結合する。該モノクローナル抗体は、特に今後D4.12.9と呼ばれる。
【0046】
本発明は、本発明に従う抗体の断片又は誘導体にも関する。本発明の抗体の断片は、特に、当業者に周知されているFab、F(ab’)2又はscFv(一本鎖Fv)断片を包含する。本発明の抗体の誘導体は、もし適当ならば、ヒトに適合した抗体(humanized antibodies)を含む。ヒトに適合した抗体は、例えば、もし適当ならば、本発明に従う抗体の一部がヒト抗体の対応する部分、例えば、Fc断片により置換されているキメラ抗体であることができる。替わるものとして、本発明に従う抗体の複合決定領域(complex determining region)(CDR)を、例えば、US patent number 5, 824, 307に記載の如きヒト抗体に移植させることができる。
【0047】
他の態様に従えば、本発明は、受託番号CNCM I−2983の下で2003年3月19日に、CNCM(Collection Nationale de Culture de Microorganismes, Institut Pasteur, Paris, France)にブタペスト条約の下で寄託されたハイブリドーマに関する。
【0048】
他の態様に従えば、本発明は、受託番号CNCM I−2982の下で2003年3月19日に、CNCM(Collection Nationale de Culture de Microorganismes, Institut Pasteur, Paris, France)にブタペスト条約の下で寄託されたハイブリドーマに関する。
【0049】
他の態様に従えば、本発明は、活性物質として上記した抗体の少なくとも1つ及び薬学的に許容されうるベヒクルを含む医薬組成物に関する。
【0050】
薬学的に許容されうるベヒクルは、特に、Remington's Pharmaceutical Science 16thed./Mack Publishing Coに定義されているとおりである。
【0051】
他の化合物、特に抗ウイルス化合物、例えば、他の抗HCV抗体及びその断片又は誘導体、インターフェロン、RNAポリメラーゼ阻害剤、プロテアーゼ阻害剤又はヘリカーゼ阻害剤を上記した組成物中に含ませることができる。
【0052】
上記した医薬組成物は、1回投与(single dose)又は繰り返し投与(multiple doses)で投与することができる。1回投与の場合には、組成物は、体重1kg当り抗体約0.1mg〜体重1kg当り抗体約1g、特に約1mg/kg〜約100mg/kgを含むことができる。繰り返し投与の場合には、組成物は、1日当り体重1kg当り抗体約0.1mg〜1日当り体重1kg当り抗体約1g、特に約1mg/kg/日〜約100mg/kg/日の投与量で投与することができる。
【0053】
他の態様に従えば、本発明は、HCV感染の診断、予防又は治療のための医薬を製造するための、上記した抗体の少なくとも1つの使用に関する。
【0054】
本発明に従う抗体は、HCVを含有する傾向がある生物学的サンプル中のHCVウイルス粒子の検出のために使用することができる。このようなサンプルは、HCVにより感染した患者又はHCVにより感染される危険がある患者から得ることができ、そして特に、血液、血漿又は血清のサンプルを含む。抗体によるウイルスの検出のための当業者の周知した方法、例えばELISA又はEIAのどれも、本発明の抗体に関して適用することができる。
【0055】
本発明に従う抗体は、HCVに感染した患者又は感染していない患者に投与してHCV感染を中和する医薬の製造のために使用することができる。HCV感染中和は、例えば、抗体を標的細胞膜受容体に結合するエンベロープ分子、例えばE1又はE2に結合させることによりHCVが標的細胞に接触するのを阻止し、それによりHCV−標的細胞結合を阻止することによつて進行させることができる。
【0056】
抗体は、HCVにより感染した患者に投与して、HCVウイルス粒子が細胞、特に肝細胞に感染するのを阻止するか、又は免疫系の細胞による該抗体で覆われたHCVの捕捉を促進することができる。
【0057】
抗体は、特に、移植された器官、特に肝臓を受け取るべき患者に、移植手術の前、移植手術期間中又は移植手術の後に投与して、移植された器官中に含有されることがあるHCVウイルス粒子を中和することができる。
【0058】
本発明は、上記した抗体の少なくとも1つに結合することができるエンベロープドウイルス粒子にも関する。
【0059】
「エンベロープドウイルス粒子」という表現は、特にHCVビリオン、又はエンベロープを含有するHCVビリオンの一部を表し、該エンベロープは脂質及び/又はタンパク質、特に小葉(leaflets)において会合した糖タンパク質を含む。
【0060】
本発明は、上記した抗体の少なくとも1つに結合することができるエンベロープドウイルス粒子に結合する抗体にも関する。
【0061】
他の態様に従えば、本発明は、ヒト、血液、血漿又は血清の初めのサンプル(initial samples)由来のHCVウイルス粒子の組成物であって、HCV RNAコピーの濃度が、それが由来するヒト、血液、血漿又は血清の初めのサンプル中のHCV RNAコピーの濃度より約100〜1000倍高い、特に約107コピー/mlより高い、組成物に関する。
【0062】
本発明に従う組成物の高い濃度は、該組成物による動物の有効な免疫化を可能とする。
【0063】
HCV RNAは特にHCVゲノムRNAである。
【0064】
サンプルのHCV RNA含有率は、RT−PCR、特に、定量的RT−PCRにより、例えば、Amplicor(登録商標)HCV Monitor(登録商標)、Roche Diagnostics(Young et al., 1999)を使用して測定することができる。
【0065】
別法として、サンプルのHCV RNA含有率は、NASBA(核酸配列に基づく増幅)技術(Damen et al., 1999))を使用して測定することもできる。
【0066】
サンプルのHCV RNA含有率は、該サンプル中のHCV RNA分子のコピーの数として表すことができ、ここで1コピーは1国際単位(UI)と同等である。
【0067】
サンプルのHCV RNA含有率は、該サンプル中に含有されたHCVビリオンの量を示す。
【0068】
約107コピー/mlより多くのHCV RNAを含有する組成物は、該組成物による動物の有効な免疫化を可能とする。
【0069】
本発明は、更に詳しくは、HCV RNAコピーの数がタンパク質mg当り約108〜約109UIである、上記した組成物に関する。
【0070】
組成物のタンパク質含有率は、当業者に周知の方法により評価され、特にLowryアッセイ(lowry et al., 1951)、例えば、Bioradタンパク質アッセイ(Biorad Laboratories)により評価される。
【0071】
この目安は組成物の特異的活性を表し、それは組成物の純度を示し、タンパク質mg当りHCV RNAコピーの数が高ければ高いほど、HCV含有組成物の純度は高い。
【0072】
本発明は、更に、該組成物の容積が約0.1ml〜約10mlである上記した組成物に関する。
【0073】
約0.1ml〜約10mlの組成物容積は、少なくとも106HCV RNAコピーを含有する上記した組成物に対応する。
【0074】
このような組成物は動物の免疫化に有用である。例えば、マウスの有効な免疫化は、実施例で記載のとおり、約106より多くのHCV RNAコピーを含有するHCVウイルス粒子組成物の投与を必要とする。
【0075】
他の態様に従えば、本発明は、HCV RNA及びHCVコアタンパク質を実質的に欠いている単離されたHCVエンベロープドサブウイルス粒子(isolated HCV enveloped subviral particle)に関する。
【0076】
「単離された」という用語は、粒子がその天然の環境から抽出されたこと、それが、特にHCV RNA及び/又はHCVコアタンパク質を含有する他のHCVウイルス粒子又はその一部から分離されたことを意味する。
【0077】
「HCV RNA及びHCVコアタンパク質を実質的に欠いている」という表現は、上記したサブウイルス粒子を含有する溶液が、Amplicor(登録商標)HCV Monitor(登録商標),Roche Diagnostics(Young et al., 1993)により測定して104UI/mlより少ないHCV RNAを含有し、そしてOrtho-Clinical Diagnostics test(Aoyagi et al., 1999)により測定して1pg/mlより少ないコアタンパク質を含有することを意味する。
【0078】
エンベロープの存在は、以後D32.10と呼ばれる受託番号I−2983の下でCNCMに寄託されたハイブリドーマにより分泌された抗体又は、以後D4.12.9と呼ばれる受託番号I−2982の下でCNCMに寄託されたハイブリドーマにより分泌された抗体によって、例えば、ELA又はELISA試験により評価されうる。
【0079】
「HCVエンベロープドサブウイルス粒子」という表現は、粒子が、実質的にHCVビリオンのエンベロープ部分のみ、即ち、脂質及び/又はタンパク質、特に小葉(leaflets)において会合した糖タンパク質を含有することを意味する。今までに単離されたHCVウイルス粒子は、HCV RNA及び/又はHCVコアタンパク質を含有していた。
【0080】
本発明は、更に詳しくは、上記した抗体のいずれかに結合する傾向がある、上記の単離されたHCVエンベロープドサブウイルス粒子に関する。
【0081】
本発明の抗体への上記したサブウイルス粒子の結合は、当業者に周知のいくつかの方法、例えば、免疫沈澱、ELISA、EIA又はウエスタンブロットにより評価されうる。
【0082】
他の態様に従えば、本発明は、HCV RNA、HCVコアタンパク質及HCV
エンベロープを含有しそして上記した抗体のいずれかに結合する傾向のある精製されたHCVエンベロープド完全ウイルス粒子を含む組成物に関する。
【0083】
本発明は、更に詳しくは、精製された天然のHCVエンベロープド完全ウイルス粒子を含む組成物に関する。
【0084】
「HCVエンベロープド完全ウイルス粒子」という表現は、HCVビリオンがHCVゲノムRNA、HCVコアタンパク質及びHCVエンベロープを含有することを意味する。これらの3つの成分を含有するHCVウイルス粒子の報告は先行技術にはなかった。
【0085】
HCV RNA、HCVコアタンパク質及びHCVエンベロープの存在は、上記した方法を使用することにより評価されうる。
【0086】
「精製した」という用語は、上記したHCVエンベロープド完全ウイルス粒子が他の化合物、例えば、HCVエンベロープドサブウイルス粒子から分離されていることを意味する。特に、組成物がHCVエンベロープド完全ウイルス粒子よりも90%少ないHCVエンベロープドサブウイルス粒子を含有することは、例えば、電子顕微鏡法により評価されうる。
【0087】
本発明に従う抗体への上記したHCVエンベロープド完全ウイルス粒子の結合は、当業者に周知のいくつかの方法、例えば、免疫沈澱、ELISA、EI又はウエスタンブロットにより評価されうる。
【0088】
他の態様に従えば、本発明は、下記の段階:
HCV感染患者の清澄化血漿分離交換法(clarified plasmapheresis)から生じるサンプルを少なくとも2回超遠心してHCVに富んだペレットを得、
該HCVに富んだペレットを水性溶液中に再懸濁させてHCVウイルス粒子の組成物を得る、
段階を含む、HCVウイルス粒子の組成物を製造する方法に関する。
【0089】
超遠心は、例えば、約190,000g〜約220,000g、好ましくは210,000gの速度で、約3時間〜約5時間、好ましくは、4時間の期間行うことができる。
【0090】
好ましい遠心条件は、ウイルス粒子、例えばHCVウイルス粒子を沈殿させるが、清澄化血漿中に含有される他の化合物は沈殿されない。
【0091】
「血漿分離交換」という用語は、患者の血液をろ過して血漿を得るが、血液の残りは患者に再注入されたことを意味する。
【0092】
「清澄化された」という用語は、血漿分離交換から得られた血漿が低い速度、特に3000gで30分間遠心されたことを意味する。
【0093】
超遠心の前の血漿分離交換の初期容積は、有利には約1リットルである。
【0094】
他の態様に従えば、本発明は、HCVウイルス粒子の組成物を製造するための上記した方法に従って得られる如きHCVウイルス粒子の組成物に関する。
【0095】
他の態様に従えば、本発明は、下記の段階:
HCV感染患者の清澄化された血漿分離交換法から生じるサンプルを少なくとも2回超遠心してHCVに富んだペレットを得、
該HCVに富んだペレットを水性溶液中に再懸濁させ、
該再懸濁させたHCVに富んだペレットをショ糖密度勾配において超遠心して、再懸濁させたHCVに富んだペレットのエレメントをそれらの密度に従って画分に分離し、
HCV RNAを実質的に含有せず、HCVコアタンパク質を実質的に含有せず、そしてD32.10又はD4.12.9として前記したモノクローナル抗体に結合することができる粒子を含有する画分を回収して、HCVエンベロープドサブウイルス粒子の組成物を得る、
段階を含む、HCVエンベロープドサブウイルス粒子の組成物を製造する方法に関する。
【0096】
再懸濁させたHCVに富んだペレットのショ糖密度勾配での超遠心は、約190,000g〜約220,000g、好ましくは210,000gで、約40時間〜約50時間、好ましくは、48時間の期間行うことができ、ショ糖勾配は、有利には、約10%〜約60%重量/重量、約20〜約50%重量/重量、約25%〜約45%重量/重量又は約30%〜約45%重量/重量であることができる。
【0097】
得られたすべての画分は、HCV RNA、HCVコアタンパク質及び/又はD32.10若しくはD4.12.9に結合することができる粒子の存在について試験される。
【0098】
画分は、Amplicor(登録商標)HCV Monitor(登録商標),Roche Diagnostics(Young et al., 1993)により測定したHCV RNAの含有率が約104UI/mlより小さい場合には、HCV RNAを実質的に含有しないと言われる。
【0099】
画分は、Ortho-Clinical Diagnostics test(Aoyagi et al., 1999)により測定したHCVコアタンパク質の含有率が約1pg/mlより少ない場合には、HCVコアタンパク質を実質的に含有しないと言われる。
【0100】
使用されるモノクローナル抗体は、特に、受託番号I−2983の下でCNCMに寄託されたハイブリドーマにより分泌されるモノクローナル抗体D32.10である。
【0101】
粒子は、それらが下記のEIA試験で試験の結果ポジティブでありうるならば、上記したモノクローナル抗体に結合することができると言われる。
【0102】
96ウエルのポリスチレンプレート(Falcon; Becton Dickinson France S.A, Le Pont de Claix)を10−1〜10−4に希釈した種々の画分でコーティングした。プレートを4℃で一夜インキュベーションし、次いで5%(重量/容積)ウシ血清アルブミン(BSA)を含有するトリス−HCl(TN)緩衝液(20mMトリス−HCl,pH7.5及び100mM NaCl)で飽和させる。TN/BSA緩衝液と50%正常ヒト血清(NHS)の混合物中に希釈された5μg/mlの濃度のmAbD32.10を各ウエルに加えそして37℃で2時間インキュベーションする。結合した抗体を、抗マウス免疫グロブリンのセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRPO)−コンジュゲーテッドF(ab’)2断片(1/5000に希釈;Immunotech)、及び基質としてオルトフェニレンジアミン(OPD)及び過酸化水素(H2O2)により検出する。光学密度(OD)を、ELISAプレートリーダー(MRX,Dynex)により450nm又は490nmで決定する。結果は、ネガティブコントロールの平均の掛ける2.1に相当するカットオフより上であるならば、ポジティブであると考えられる。
【0103】
回収された画分は、特に、約1.13〜1.15g/mlのショ糖密度を有する。
【0104】
別法として、画分をD32.10及び/又はD4.12.9に結合することができる粒子の存在について最初に試験し、もしこのような粒子が実質的に存在しないならば、他の試験を行わず、もしこのような粒子が存在するならば、HCV RNA試験及び/又はHCVコアタンパク質試験を行う。
【0105】
他の態様に従えば、本発明は、HCVエンベロープドサブウイルス粒子の組成物を製造するための上記の方法に従って得られるようなHCVエンベロープドサブウイルス粒子の組成物に関する。
【0106】
他の態様に従えば、本発明は、下記の段階:
HCV感染患者の清澄化された血漿分離交換法から生じるサンプルを少なくとも2回超遠心してHCVに富んだペレットを得、
該HCVに富んだペレットを水性溶液中に再懸濁させ、
該再懸濁させたHCVに富んだペレットをショ糖密度勾配において超遠心して、再懸濁させたHCVに富んだペレットのエレメントをそれらの密度にしたがって画分に分離し、
約5.105〜約106UI/mlのHCV RNA、約50〜約100pg/mlのHCVコアタンパク質を含有しそしてD32.10又はD4.12.9として前記したモノクローナル抗体に結合することができる粒子を含有する画分を回収して、精製されたHCVエンベロープド完全ウイルス粒子の組成物を得る、
段階を含む、精製されたHCVエンベロープド完全ウイルス粒子の組成物を製造する方法に関する。
【0107】
再懸濁させたHCVに富んだペレットのショ糖密度勾配における超遠心は、約190,000g〜約220,000g、好ましくは210,000gで、約40時間〜約50時間、好ましくは、48時間の期間行うことができ、ショ糖勾配は、有利には、約10%〜約60%重量/重量、約20〜約50%重量/重量、約25%〜約45%重量/重量又は約30%〜約45%重量/重量であることができる。
【0108】
HCV RNA含有率、HCVコアタンパク質含有率及び粒子の結合能力を上記のように測定する。
【0109】
使用されたモノクローナル抗体は、受託番号I−2983の下でCNCMに寄託されたハイブリドーマにより分泌されるモノクローナル抗体D32.10である。
【0110】
この方法により得られた組成物は、特に精製されたHCVエンベロープド完全ウイルス粒子を含有し、そして特にHCVエンベロープドサブウイルス粒子を実質的に欠いている。特に、組成物がHCVエンベロープド完全ウイルス粒子よりも90%少ないHCVエンベロープドサブウイルス粒子を含有することが、例えば、電子顕微鏡法により評価されうる。
【0111】
回収された画分は、特に、約1.17〜1.21g/ml、更に詳しくは約1.17〜1.20g/ml、約1.19〜1.21g/ml、約1.17〜1.19g/ml又は1.19〜1.20g/mlのショ糖密度を有する。
【0112】
別法として、画分を、最初にHCV RNAの存在について試験し、105コピー/mlより多くのHCV RNAが存在するならば、HCVコアタンパク質試験を行い、もし50pg/mlより多くのコアタンパク質が存在するならば、D32.10及び/又はD4.12.9に結合することができる粒子の存在を試験し、もし105コピー/mlより少ないHCV RNAが存在するならば、他の試験を行わない。
【0113】
他の態様に従えば、本発明は、上記の対応する方法に従って得られるような精製されたHCVエンベロープド完全ウイルス粒子の組成物に関する。
【0114】
本発明は、下記の段階:
−動物、特に哺乳動物を本発明のHCVウイルス粒子の組成物又は本発明に従って製造されるようなものにより免疫化し、そして発生した抗体を回収し、
−発生した抗体のなかで、HCVウイルス粒子の上記した組成物中に含有されたHCVウイルス粒子に結合する能力に基づいてモノクローナル抗体を選ぶ、
段階を含む、受託番号I−2983の下でCNCMに受託されたハイブリドーマにより分泌されたモノクローナル抗体を製造する方法に関する。
【0115】
HCVウイルス粒子の組成物は、下記のようにして得ることができる:
−HCV感染患者の清澄化された血漿分離交換から生じるサンプルを少なくとも2階超遠心してHCVに富んだペレットを得;
−該HCVに富んだペレットを水性溶液中に再懸濁させてHCVウイルス粒子の組成物を得る。
【0116】
発生した抗体の選択は、プレートを本発明のHCVウイルス粒子の組成物によりコーティングして、上記した間接EIA試験により行うことができる。
【0117】
他の態様に従えば、本発明は、下記の段階:
−動物、特に哺乳動物を本発明の精製されたHCVエンベロープド完全ウイルス粒子の組成物又は本発明に従って製造されるようなものにより免疫化し、そして発生した抗体を回収し、
−発生した抗体のなかで、精製されたHCVエンベロープド完全ウイルス粒子の上記した組成物中に含有された精製されたHCVエンベロープド完全ウイルス粒子に結合する能力に基づいてモノクローナル抗体を選ぶ、
段階を含む、受託番号にI−2982の下でCNCMに受託されたハイブリドーマにより分泌されたモノクローナル抗体を製造する方法に関する。
【0118】
精製されたHCVエンベロープド完全ウイルス粒子の組成物は、下記のようにして得ることができる:
HCV感染患者の清澄化された血漿分離交換法から生じるサンプルを少なくとも2回超遠心してHCVに富んだペレットを得、
該HCVに富んだペレットを水性溶液中に再懸濁させ、
該再懸濁させたHCVに富んだペレットをショ糖密度勾配において超遠心して、再懸濁させたHCVに富んだペレットのエレメントをそれらの密度に従って画分に分離し、
約5.105〜約106UI/mlのHCV RNA、約50〜約100pg/mlのHCVコアタンパク質を含有しそしてD32.10又はD4.12.9として前記したモノクローナル抗体に結合することができる粒子を含有する画分を回収して、精製されたHCVエンベロープド完全ウイルス粒子の組成物を得る。
【0119】
選択段階は前記のように行うことができる。
【0120】
他の態様に従えば、本発明は、下記の段階:
−動物、特に哺乳動物を本発明の又は本発明に従って製造されるHCVエンベロープドサブウイルス粒子の組成物により免疫化し、そして発生した抗体を回収し、
−発生した抗体のなかで、HCVエンベロープドサブウイルス粒子の上記した組成物中に含有されたHCVエンベロープドサブウイルス粒子に結合する能力に基づいてモノクローナル抗体を選ぶ、
段階を含む、HCV、特に、HCVエンベロープドサブウイルス粒子に対するモノクローナル抗体を製造する方法に関する。
【0121】
HCVエンベロープドサブウイルス粒子の組成物は、下記のようにして得ることができる:
−HCV感染患者の清澄化された血漿分離交換法から生じるサンプルを少なくとも2回超遠心してHCVに富んだペレットを得、
−該HCVに富んだペレットを水性溶液中に再懸濁させ、
−該再懸濁させたHCVに富んだペレットをショ糖密度勾配において超遠心して、再懸濁させたHCVに富んだペレットのエレメントをそれらの密度に従って画分に分離し、
−HCV RNAを実質的に含有せず、HCVコアタンパク質を実質的に含有せずそしてD32.10又はD4.12.9として前記したモノクローナル抗体に結合することができる粒子を含有する画分を回収して、HCVエンベロープドサブウイルス粒子の組成物を得る。
【0122】
選択段階は上記のように進めることができる。
【0123】
本発明は、更に詳しくは、本発明のHCVエンベロープドサブウイルス粒子に対する抗体に関する。
【0124】
本発明は、活性物質としてHCVエンベロープドサブウイルス粒子に対する少なくとも1つの抗体及び薬学的に許容されうるベヒクルを含む医薬組成物にも関する。
【0125】
他の態様に従えば、本発明は、活性物質として上記したHCVエンベロープドサブウイルス粒子を、又は上記したHCVエンベロープドサブウイルス粒子を含む組成物、及び薬学的に許容されうるベヒクルを含む医薬組成物に関する。
【0126】
更に、Remington's Pharmaceutical Science 16thed./ Mark Publishing Coに定義されているようなアジュバントを、医薬組成物に加えることができ、該アジュバントは、例えば不完全フロイントアジュバント、アルミニウム塩又は水酸化アルミニウムであることができる。
【0127】
組成物は、例えば、HCVエンベロープドサブウイルス粒子1mg〜1gを含む単一投与量(single dose)で投与することができる。
【0128】
他の態様に従えは、本発明は、上記したHCVエンベロープドサブウイルス粒子又は上記したHCVエンベロープドサブウイルス粒子を含む組成物の使用であって、該HCVエンベロープドサブウイルス粒子に対する免疫反応又は上記したHCVエンベロープド完全ウイルス粒子に対する免疫反応を誘発するための使用に関する。
【0129】
「免疫反応を誘発する」という表現は、HCVウイルス粒子に対する抗体を分泌するB細胞を活性化することができること又はHCVにより感染した細胞を殺すT細胞を活性化することができることを意味する。
【0130】
他の態様に従えば、本発明は、HCV感染の診断、予防又は治療用の医薬を製造するための、上記したHCVエンベロープドサブウイルス粒子又は上記したHCVエンベロープドサブウイルス粒子を含む組成物の使用に関する。
【0131】
HCVエンベロープドサブウイルス粒子は当業者に周知された方法、例えばEIA、ELISAに従うイムノアッセイにおいてHCVに対する抗体の存在を評価するのに使用することができる。
【0132】
HCVエンベロープドサブウイルス粒子は、肝炎Cに対するワクチン、特に治療ワクチンの製造のために使用することができる。
【0133】
「治療ワクチン」という表現は、ワクチンがHCVにより感染した患者の状態を、例えば、HCVに対する抗体の産生を誘発することにより改善することができることを意味する。
【0134】
実施例1
天然のHCVウイルスエンベロープに対するモノクローナル抗体の取得
HCVウイルス粒子の調製
良好な供給においてウイルス物質を得るために、HCVウイルス粒子の精製を血漿分離交換から行った。選ばれた患者は、Cウイルス硬変のための部分的肝臓移植後に慢性の活性肝炎Cを発生し、そして12ヶ月後、血漿交換の原因である高ガンマグロブリン血症と関連した多発性骨髄腫を発生した。患者は、異常に高い血清アミノトランスフェラーゼ(ALT/AST)レベルを示しそして抗HCV抗体についてポジティブであった。患者はすべてのHBV及びHIVマーカーについてネガティブであった。初めの材料のHCV RNA含有率は、6×105コピー/ml(Amplicor(登録商標)HCV Monitor(登録商標)、Roche Diagnostics, Meylan, France)であり、そして遺伝子型1b(INNO−LIPAアッセイ,Innogenetics, Gent, Belgium)であった。
【0135】
清澄化血漿分離交換を使用して、210,000gで4℃で4時間の2回の引き続く超遠心によりHCVに富んだペレットを調製した。最終ペレットをトリス−NaCl−EDTA(TNF)緩衝液(20ミリモル/L トリス−HCl、pH7.5、100ミリモル/L NaCl、1ミリモル/L EDTA)(濃度240倍)1ml中に再懸濁させ、そして−80℃で貯蔵した。この材料のHCV RNA含有率は3×107コピー/mlであり(Monitor, Roche)、そしてタンパク質濃度は5mg/ml(即ち、約107コピーのHCV RNA/タンパク質1mg)であった。
【0136】
ハイブリドーマ調製
モノクローナル抗体(mAbs)を発生させるために、BALB/cマウスに、完全フロイントアジュバント中のHCVペレット化材料100μg(HCV RNA106コピー)を接種し、続いて1週間後に不完全フロイントアジュバント中のウイルス100μgを接種した。3匹の免疫化されたマウスは、間接エンザイムイムノアッセイ(EIA)により検出されたHCVに対する高い血清抗体力価を発生した。3週間後、マウスを、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中のウイルス50μgでブーストした。5日後、注射を繰り返し、そして3日後、脾臓を取り出して、Buttin et al.(1978)により記載された方法によりX63骨髄腫細胞と融合させた。固相として免疫原(5μg/ml)を使用しそして顕色第二抗体(Petit et al., 1987)として抗マウス免疫グロブリンのペルオキシダーゼ−コンジュゲーテッドF(ab’)2断片(Amersham, France)を使用する間接EIAによって、ハイブリドーマ培養上澄液を、HCV特異的抗体の存在についてスクリーニングした。希釈剤は、50%の正常なヒト血清(NHS)を含有していて、HCVウイルス粒子と場合により会合したNHSタンパク質に対する非特異的反応性を除去した。次いで、限界希釈することにより、HCVに対する最も強いシグナル(P/N>10)を与えるハイブリッドを再クローニングし、そしてそれらの特異性を更に決定した。7つのクローン((C9.19.16、C2.22.1、D32.10、D3.20.12、C7.24.19、C7.14.41及びC1.9.3)を選択し、そして4つのクローン(D32.10、C2.22.1、C9.19.16及びD.3.20.12)を、プリスタンでプライミングしたBALB/cマウスに注射することにより増殖させて腹水液を産生させ、次いで50%飽和(NH4)2SO4で沈殿させること、次いでセファロース−プロテインG(Pharmacia, France)におけるアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。アイソタイプを、当業者に周知の方法によってELISAにより決定した。分析した7つのクローンはIgG1アイソタイプの抗体を与えた。
【0137】
モノクローナル抗体特徴付け
間接EIAを使用して、上記したモノクローナル抗体とウイルス粒子との相互作用を評価した。96ウエルのポリスチレンプレート(Falcon; Becton Dickinson France S.A, Le Pont de Claix)を、10−1〜10−6(100μg/ml〜1ng/mlに相当する)に希釈されたHCV調製物(1mgタンパク質/ml)でコーティングした。プレートを4℃で一夜インキュベーションし、次いで5%(重量/容量)ウシ血清アルブミン(BSA)を含有するトリス−NaCl(TN)緩衝液(20mMトリス−HCl、pH7.5及び100mM NaCl)で飽和させた。TN/BSA緩衝液及び50%正常ヒト血清(NHS)の混合物中に5μg/mlの濃度に希釈されたmAbD32.10を、各ウエルに加えそして37℃で2時間インキュベーションした。結合した抗体を、抗マウス免疫グロブリン(1/5,000に希釈された;Immunotech)のセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRPO)−コンジュゲーテッドF(ab’)2断片及び基質としてオルトフェニレンジアミン(OPD)及び過酸化水素により検出した。光学密度(OD)をELISAプレートリーダー(MRX,Dynax)により450nmで側定した。結果は、ネガティブコントロールの平均の掛ける2.1に相当するカットオフより上である場合にポジティブであると考えられた。得られた7つの抗体はウイルス粒子を認識した。
【0138】
mAbsのネイティブポリペプチド特異性を確立するために、抗原性プローブ(Petit et al., 1987)として免疫原を使用するイムノブロッティングを行った。12.5%ゲルでのドデシル硫酸ナトリウム(SDS)−ポリアクリルアミドゲル電気泳動を還元条件下に(2%SDS+5%2−ME)行った。PVDF膜へのタンパク質移行の後、mAbs(2〜5μg/ml)を一次抗体として試験し、50%NHS中に希釈し、そして結合したIgGsを、二次抗体として抗マウス免疫グロブリンのペルオキシダーゼ−コンジュゲーテッドF(ab’)2断片(1/10,000に希釈された;IMMUNOTECH)とのインキュベーションにより検出した。バンドをAmershamからの高められた化学発光(FCL+)システムにより可視化した。
【0139】
D32.10を除くすべての試験したmAbsは、還元条件下にHCVポリペプチドとのネガティブ反応を与えた。選ばれたmAbsは、EIAにおいてヒトIgGと弱く反応した(ネガティブ値の約5倍)C1.9.3及びC7.24.19を除いて、ヒト血清アルブミン又は免疫グロブリン(Ig)のγ鎖若しくはμ鎖と反応性ではなかったことは注目に値する。
【0140】
7つの抗体のポリペプチド特異性も免疫沈澱により検査した。HCVタンパク質(E1、E2又はE1E2)を発現するワクシニアウイルス組換え体により感染したHepG2細胞を、前記したように、35S-Translabel(ICN)で代謝的に標識した(Dubuisson et al., 1996)。細胞を、10mMトリス−HCl(pH7.5)、150mM NaCl及び2mM EDTA中の0.5%NP−40により細胞溶解した。沈殿をLaemmliサンプル緩衝液で処理し、そして還元条件又は非還元条件下にSDS−PAGEにより分析した(図1)。試験したモノクローナル抗体は、C9.19.16(>200kDa)、D3.20.12(70、50及び46kDaにおける3つの強いバンド)及びより弱くは、C2.22.1(70、50、46kDa)及びD32.10(多数の非常に弱いバンド)(図1A、コントロールベクター)を除いて、細胞成分に対する非特異的反応性を示さなかった。すべての抗体は、2つのHCV糖タンパク質が別々に発現される場合には、E1(図1B)及びE2(図1C)を特異的に免疫沈殿させ、そしてこれらのタンパク質が共発現される場合には、E1E2ヘテロ二量体(図1D)を特異的に免疫沈殿させた。興味深いことに、パターンは、非還元条件及び還元条件下にSDS−PAGEの後異なっていた(図1D、図1E)。すべてはジスルフィドで連結されたE1E2集合体を認識したが、これは非還元条件下にゲルの上部において検出された(図1E)。1つのmAb、D32.10は、大抵集合体と反応しそして非共有結合連結された成熟複合体E1E2とも反応する(図1E、非還元条件)ことが見出された。すべてのmAbsは、異種システムにおいて発現された変性された組換えE1又はE2タンパク質をウエスタンブロットにより認識しなかったが、これは、それらがHCVウイルス粒子上の立体配座エピトープを認識したことを示唆している。集約すると、これらの結果は、これらのmAbsは天然の血清由来のHCVウイルス粒子の表面に発現されたジスルフィドで連結されたE1E2複合体を特異的に認識することを示している。それらはE1タンパク質とE2タンパク質との間の共有された立体配座エピトープと反応することは極めて確かである。共有結合形態又は非共有結合形態下のE1E2複合体と相互作用するモノクローナル抗体D32.10が更なる研究のために選ばれた。
【0141】
モノクローナル抗体D32.10抗原マッピング
D32.10のHCV型特異性を試験するために、4つの異なるHCV調製物(ml当り1mgのタンパク質)を10−1〜10−6(100μg/ml〜1ng/mlに相当する)に希釈して、既に記載した方法に従って、間接EIAを行った。免疫原HCV調製物に加えて、同じ患者から得られた調製物を使用し、そして慢性肝炎Cを有する2人の異なる患者から得られた2つの他の調製物を使用したが、患者の1人は血清において2つの異なる遺伝子型、即ちHCV1a及びHCV2a、を有することが見出された。D32.10は、HCV調製物のすべての4つを認識することができることが見出され、それによりそれは免疫原の1b遺伝子型に拘束されない決定基を認識することができることを示す。
【0142】
D32.10のネイティブポリペプチド特異性を評価するために、ウエスタンブロット分析を行った。未処理のHCVに富んだペレットを、0.1から1mg/mlまで変わる種々の濃度で抗原フローブとして使用した。抗原を還元条件又は非還元条件(2%SDS±5%2−メルカプトエタノール(2−ME)下に12.5%ゲルでのドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)に付した。PVDF膜へのタンパク質移行の後、50%NHS中に希釈された一次抗体としてmAbD32.10(2〜5μg/ml)を使用してイムノブロッティングを行った。次いで結合したマウスIgGsを、二次抗体として抗マウス免疫グロブリンのペルオキシダーゼ−コンジュゲーテッドF(ab’)2断片(1/10,000に希釈された;DAKO)とのインキュベーションにより検出した。タンパク質バンドをAmershamからの高められた化学発光(ECL+)により可視化した。循環しているHCVビリオンに対してSato et al.(1993)により今までに記載されたとおりにグリコシダーゼ消化を行った。HCVに富んだペレット(HCV−L、4μg)を、100mMクエン酸塩/リン酸塩緩衝液(pH6.0)中のグリコシダーゼA(ペプチド−N−グリコシダーゼA又はPNGアーゼA;ROCHE)5、10又は20mU/mlで37℃にて18時間処理した。エンドグリコシダーゼH(endoH、5mU/ml、Rocheから)、20mMジチオトレイトール(DTT)及び0.1%TritonX100を含有する50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)中で37℃で一夜インキュベーションすることにより、精製されたHCVウイルス粒子の脱グリコシル化も行った。酵素を省いたことを除いては、PGNアーゼA消化又はendoH消化の場合と同じ条件を使用してコントロール消化を行った。次いでサンプルを、還元剤を含有する電気泳動サンプル緩衝液で処理しそしてSDS−PAGEにより分析した。
【0143】
ウエスタンブロット実験の結果を図2に示される。同じサンプルの2つの濃度(それぞれ、2.5及び5μg、レーン2及び3)が還元条件(2%SDS/5%2−ME)下に分析されるとき、mAbD32.10は、それぞれE2及びE1に対応する68kDaの主要バンド及び31kDaの他のバンドを認識した。しかしながら、非還元条件下では、mAb32.10は、ゲルの上部に回収されたジスルフィドで連結された複合体(>200kDa)を認識した。これらの高分子量バンド(図2、レーン1)はヘテロ二量体E1E2複合体に対応することは極めて確かである。
【0144】
アスパラギンで連結された複合体型糖鎖は、HCVのネイティブビリオンの表面に存在することが示され(Sato et al., 1993)、かくして種々の濃度(20、10及び5mU/ml)のグリコシダーゼ(PNGアーゼA)によるHCV調製物の処理後のHCV特異的タンパク質を認識するD32.10mAbの能力を検査した。図3A(それぞれ、レーン1、2及び3)に示されたとおり、D32.10は、酵素の最も高い濃度で蓄積したE1の脱グリコシル化形態、特に25kDa種と反応した。E1関連産物は脱グリコシル化後にD32.10により明らかに検出することができたが、E2関連産物は処理後明白には同定されなかった。エンドグリコシダーゼH(endoH)消化は、天然のHCVウイルス粒子上に発現されたE1E2複合体のendoH開裂に対する感受性の調査を可能とした。図3Bに示されたとおり、分子量のシフトが、E2(68〜42kDa)及びE1(34〜24kDa)タンパク質で観察され、これはE1及びE2が、部分的endoH抵抗性の主な原因である、血清由来のネイティブHCVウイルス粒子における複合グリコシル化(complex glycosylation)、例えば、endoH抵抗性複合グリカンと感受性形態の混合物を有することを示唆する。
【0145】
D32.10エピトープマッピング
a.ペプチドライブラリーのスクリーニング
mAbD32.10により認識されたエピトープを更に特徴付けるために、抗体を使用してドデカペプチドファージディスプレーライブリーをスクリーニングした。
【0146】
Ph.D−12(登録商標)ファージディスプレイペプチドライブラリーキットをNew England Biolabs Incから得た。これは、M13ファージの少量コートタンパク質(pIII)に融合したコンビナトリアルペプチド12量体(12−mers)である。ディスプレイされたペプチド12量体はpIIIのN末端で発現される。ライブラリーは、約1.9×109個のエレクトロポレーションされた配列からなり、これらは一旦増幅されると供給されたファージ10μlにおいて各配列約20コピーを生じる。いくらかの修正を伴って製造者の取扱説明書に従って3回のバイオパンニング(biopannings)を行った。簡単に言えば、ビオチニル化mAbsD32.10の10μgを、ストレプトアビジン40μgでコーティングされた35mmポリスチレンペトリ皿(Falcon)にカップリングさせた。皿を4℃で一夜インキュベーションし、そして0.5%Tween−20(TBS−T)を含有する50mMトリス、150mM NaCl、pH7.5(TBS)で6回洗浄した。第1回の選択では、最初のライブラリーからの4×1010個のファージをロッキング条件(rocking condition)下に4℃で4時間皿に結合したIgGと反応させた。結合しなかったファージをTBS−Tによる繰り返し洗浄により除去した。次いで、結合したファージを溶離緩衝液(0.1N HCl、グリシンにより2.2に調節されたpH、1mg/mlBSA)400μlで皿から溶離させた。75μlの1Mトリス−HCl pH9.1で中和した後、次いで溶離したファージを、取扱説明書に推奨されたとおりに、E.coliER2537(recA+株細胞)の一夜の培養物の1:100希釈物20mlに感染させることにより増幅した。培養物を激しく振とうしながら、37℃で4.5時間インキュベーションした。上澄液を得、そして前に記載されたとおり(Scott et al., 1990)ポリエチレングリコール(PEG)により沈殿させた。第2及び第3回の選択では、先の回からの増幅されたファージの20%をそれぞれ10及び1nMの最終濃度でビオチニル化mAbD32.10と4℃で一夜予備インキュベーションし、次いでストレプトアビジン10μgでコーティングされた35mmポリスチレンペトリ皿に加えた。次いで処置は第1回と同じであった。次いで第3バイオパンニング溶離物からのファージをクローニングしそしてDNA配列決定及びイムノ分析のために増幅した。
【0147】
DNA配列決定のために、Sambrook et al.(1982)により記載されたとおり精製したファージから一本鎖DNAを調製した。BigDye(登録商標)Terminator Cycle Sequencing Ready Reactionキット(Perkin-Elmer)を使用してApplied Biosystems DNAシーケンサー(Model377A)によりSangerの改変された方法(Sanger et al., 1977)に従って、遺伝子IIIインサートのヌクレオチド配列を決定した。pIII遺伝子配列に対応するプライマー5’HO−CCCTCATAGTTAGCGTAACG−OH3’(配列番号4)によりサイクルシーケンス法を行った。インサートのアミノ酸配列をヌクレオチド配列から推定した。
【0148】
上澄液ファージに対するELISAのために、ELISAプレートウエルの列を、0.1MNaHCO3緩衝液(pH8.6)中の100μg/mlの最終濃度のmAbD32.10又は無関係のmAb 100μlでコーティングした。プレートを4℃で一夜インキュベーションし、次いでBSA5mg/mlを含有する0.1M NaHCO3緩衝液(pH8.6)でブロックした。4℃で2時間インキュベーションの後、プレートを0.5%Tweenを含有するTBSで6回洗浄した。各ファージクローンの4倍逐次希釈物を、TBS−T100μlの最終容積においてマイクロタイタープレートの各ウエルに加え、列の第1ウエル中の1012個のビリオンで出発しそして第12ウエル中の2×105個のビリオンで終わる。プレートを、攪拌しながら室温で2時間インキュベーションし、次いで上記したTBS−Tで6回洗浄した。結合したファージを、1:5,000希釈率のセイヨウワサビペルオキシダーゼ−コンジュゲーテッド抗M13mAb(Pharmacia)を使用してサンドイッチアッセイにおいて検出した。プレートを、OPD及びH2O2を含有する市販のカラーキット(bioMerieux)を使用して顕色した。10分のインキュベーションの後、プレートをELISAプレートリーダーで492nmで読み取った。各ファージクローン希釈物について、結果を、試験した抗HCVmAbで得られた値と無関係のmAbで得られた値との差として表した。次いで、結果を免疫反応性クローンの最適希釈物を3回反復して試験することにより確認した。
【0149】
配列分析のために、ペプチドのアミノ酸配列を、Mac Vector, Ver.4.5ソフトウエア(Kodak)の使用によりHCVE1及びE2タンパク質配列と比較した。基本的に、最も高い類似性の領域を、最善の位置確認を試験的に調査するLFASTAプログラム(Pearson and Lipman, 1988)で検出した。
【0150】
第3回の選択の後、ファージインプットの4%が、特異的に結合したファージの増幅を示す溶離物において見出された。かくして、88クローンを、ランダムに単離し、それらのDNAを配列決定しそしてインサートのアミノ酸配列を推定した。48の異なる配列が得られそしてそれらのいくらかはいくつかの実施例で見出された。しかしながら、D32.10とのそれらの免疫反応性についてELISA試験で試験すると、それらのいずれもポジティブシグナルを与えなかったが、これは、結合アフィニティが検出することができるのにはあまりにも低すぎることを示す。48クローン配列をHCVE1及びE2の配列と比較した。5及び3の配列は、それぞれ292〜305領域及び347〜356領域に位置したE1の残基との類似性を示したが(類似性は表1にボールド体に示される)、これに対して7、4及び2の配列は、それぞれ領域481〜501、610〜631及び685〜698に位置しているE2の残基とのいくらかの類似性を共有していた(類似性は表2のボールド体で示されている)。
【0151】
【表1】
【0152】
【表2】
【0153】
b.ペプチド合成
E1及びE2配列に関するこれらの異なる局在化の意義を評価するために、E1の領域291〜315及び347〜356並びにE2の領域473〜498、607〜627及び686〜697を1つだけずれた重なり合っている合成ペンタデカペプチドとして再現しそしてD32.10とのそれらの免疫反応性について試験した。
【0154】
9−フルオレニルメトキシカルボニルアミノ酸化学(Frank, 1988)を使用してニトロセルロース膜で、種々のペプチド配列の同時合成を行った。
【0155】
各ペプチドを免疫学的検出に適当なナノモル量で発生させた。膜に結合したペプチドに対する抗体反応性を、先に記載された(Jolivet-Reynaud, 1998)間接比色イムノアッセイにより分析した。抗体反応性を有するペプチドに対応するスポットは、ポジティブブルーシグナルを生じた。スポットの強度を可視化により評価しそして0〜5の範囲のスケールで相対的強度として表した。
【0156】
292〜305E1領域に対応するペプチドで強いポジティブシグナルが得られ、これに対して347〜356E1領域はD32.10により認識されなかった。それぞれE2領域482〜499及612〜626に対応するペプチドもD32.10と免疫反応性であり、そしてE2領域686〜697ではシグナルは検出されなかった。ペンタデカペプチドとしてE1の領域292〜306並びにE2の領域480〜494及び608〜622は、ELISAにおいてD32.10と相互作用した。
【0157】
重なり合っているオクタペプチドを使用することにより、HCV E1タンパク質の297RHWTTQGCNC306(配列番号1)領域並びにHCV E2タンパク質の613YRLWHYPCT621(配列番号3)及び480PDQRPYCWHYPPKPC494(配列番号2)領域の両方がD32.10と反応性であった。E2において同定された2つの領域は、E1E2のヘテロ二量化に関与していることがYagnik et al.(2000)により示唆された同じモチーフWHYPを含有する。実際に、これらの領域を識別するのは困難であるが、2つのオーバーラッピングしていないゾーンとして:479GPDQRPYC486(配列番号26)及び487WHYPPKPC494(配列番号27)はD32.10に別々に結合し、これは、D32.10が各オクタペプチドを特異的に認識すること、それゆえ完全な配列(480〜494)を特異的に認識することを示唆する。
【0158】
実施例2
血清由来のHCVウイルス粒子の特徴付け及び精製
種々のHCV母集団を分離するために、最終のHCVに富んだペレットをショ糖密度勾配(10〜60%、重量/重量)における等密度遠心(4℃で48時間210,000g)に付した。画分(0.6ml)を集め、そして各々の密度を屈折率測定法により側定した。HCV RNA含有率を、定量的RT−PCR(Amplicor Monitor, Roche)により分析し、HCVコアタンパク質含有率をOrtho-Clinical Diagnostics試験で測定し、そしてmAbD32.10に対するHCVウイルス粒子抗原反応性を間接EIAにより測定した。
【0159】
ウエルを10−1〜10−4に希釈した種々の画分でコーティングすることを除いて間接EIAを上記したとおりに行った。
【0160】
3つの異なる母集団を同定した(図4)。1つの母集団(画分3〜5)は1.06〜1.08g/mlのショ糖密度に階層区分されており(banded)、そしてD32.10による間接EIAにより得られたネガティブな結果により証明されるとおりウイルスエンベロープを実質的に欠いているが、HCV RNA(約2.105UI/ml)及びHCVコアタンパク質(約2〜4pg/ml)を含有していた。これらは、エンベロープのないウイルス粒子であると思われる。他の母集団(図の画分8〜10)は1.14〜1.15g/mlのショ糖密度に階層区分されており、そしてHCV RNAを実質的に欠いており(約104〜105UI/ml)そしてHCVコアタンパク質を実質的に欠いている(約1pg/ml)が、D32.10に応答する高いレベルの粒子(約1〜3.8OD450nm単位)を含有していた。これらのHCVサブウイルス粒子はHCVウイルスエンベロープのみを含有するようである。第3母集団(画分11〜14)は1.20〜1.21g/mlのショ糖密度に階層区分されており、そして高いレベルのHCV RNA(約5.105〜106UI/ml)及びHCVコアタンパク質(約2.5〜8pg/ml)を有しそしてD32.10に応答する(約0.5〜1.5OD450nm単位)粒子を含有していた。このゆえに、この母集団は実質的に精製されたHCVエンベロープド完全ウイルス粒子のみを含有する。
【0161】
HCVに富んだペレット(図5A)及び第2(図5C)及び第3母集団(図5B)に含有されているウイルス粒子を、D32.10により免疫沈殿させそして電子顕微鏡法により観察した。HCVウイルス粒子のいくつかの調製物をこの方法により分析した。HCVエンベロープドサブウイルス粒子は約30nm(33.08nm)の平均直径を有する球状粒子として現れる(図5C)が、これに対してHCVエンベロープド完全ウイルス粒子は、約50nm(48.72nm)の平均直径を有することを除いては同じく球状に見える(図5B)。
【0162】
実施例2の2
血清由来のHCVウイルス粒子の特徴付け及び精製
感染した患者の血漿中に存在するHCVウイルス粒子の母集団の他の分析も本発明者により行われた。
【0163】
血清由来のHCV粒子の精製
実施例1で得られたHCVに富んだペレット(HCV−L)を、物理化学的、免疫学的及び形態学的研究のために使用し、そして規則的な血漿交換を必要とする重い皮膚脈管炎(cutaneous vascularitis)と関連したタイプIIクリオグロブリン血症を有する慢性肝炎C(CH−C)を示した他の患者(HCV−Fan、遺伝子型1a/2a)の血漿分離交換由来のペレットを使用した。HCV−L患者の場合と同じく、後者のHCV−Fan患者は、異常に高い血清アミノトランスフェラーゼ(ALT/AST)レベルを示し、抗HCV抗体に対してポジティブであり、そしてすべてのHBV及びHIVマーカーに対してネガティブであった。
【0164】
かくして、7つの血清調製物を特徴付けた。それらは定量的Amplicor HCV RNA Monitor試験(Roche)において、2.5×106コピ―/ml〜5〜7.5×107コピー/mlに対応する、106UI/ml〜2〜3×107UI/ml(HCV−Fan、HCV−L)でHCV RNAに対してポジティブであった。
【0165】
異なるHCV母集団を分離するために、最終のHCVに富んだペレットをショ糖密度勾配(10〜60%又は30〜45%、重量/重量)において等密度遠心(4℃で48時間200,000g)に付した。画分(0.6ml)を、集めそして各々の密度を屈折率測定法により側定した。HCV RNA含有率を定量的RT−PCR(Amplicor Monitor, Roche)により監視した。固相上に種々の希釈率(1/10〜1/10000)で各画分をコーティングした後、上記したとおり間接EIAによりMAbD32.10を使用してHCVエンベロープ(env)反応性を検出した。抗コアモノクローナル抗体の混合物(7G12A8、2G9A7及び19D9D6)(Jolivet-Reynaud et al., 1998; Menez et al., 2003)を使用して定量的Orthoアッセイ及びウエスタンブロットを使用することにより、HCVコア抗原をアッセイした。
【0166】
簡単に言えば、HCVに富んだペレット及びショ糖勾配から集めた各画分中のトータルHCVコア抗原の測定を、OrthoR trak-C(登録商標)アッセイ(Ortho-Clinical Diagnostics, Inc)を使用して行った。OrthoR trak-C(登録商標)アッセイは、HCVコア抗原の種々の領域に対する特異性を有するいくつかのモノクローナル抗体を使用する定量的イムノキャプチャーアッセイである。この方法は、サンプル調製物を遊離させるための予備処理段階を使用し、免疫複合化させそしてアッセイに利用可能なビリオン会合抗原を使用する(Aoyagi et al., 1999)。HCV RNAを、Roche Molecular System(Meylan, France)により開発された定量的RT−PCR、Amplicon(登録商標)HCV Monitor(登録商標)により評価した。増幅段階は、単一管、単一酵素(rTth DNA polymerase)、単一プライマー対を組み合わせた逆転写及びDNAポリメリゼーション(Colucci and Gutekunst, 1997)を伴なう。検出を、比色マイクロウエルプレートアッセイにより行った。PCRキャリーオーバーコンタミネーション(PCR carryover contamination)のコントロールは、汚染している増幅DNAを不活性化するためにアッセイに組み込まれたAmpErase(登録商標)を含んでいた(Longo et al., 1990)。
【0167】
HCVに富んだペレットを、最初にショ糖密度勾配(10%〜60%)における等密度遠心に付した。E1E2−D32.10反応性を示すエンベロープドウイルス粒子の存在を、抗E1E2MAbD32.10(その特異性は実施例1に先に明瞭に述べられた)を使用して上記した間接EIA法(図14A及び図14C)及びウエスタンブロット(図14B及び図14D)により調べた。図14A及び図14Cに示されたとおり、1.12g/mlと1.17g/mlとの間にピークを有しそして1.18g/ml〜1.23g/mlの「ショルダー」を有する、EIAにおけるE1E2−D32.10反応性(1/10000に希釈された画分)を、画分9(1.12g/mlの密度)〜画分16(1.23g/mlの密度)から回収した。全然ないか又は非常に低いD32.10反応性(1/10に希釈された画分)を、低密度複合体(1.006〜1.10g/ml)に対応する画分において検出した。同様な結果が、遺伝子型1bの単離HCV−L(図14A)及び遺伝子型1a/2aの単離HCV−Fan(図14C)で得られた。単離HCV−Lのいくらかの画分(6、8、10、12、14)(図14B)及び単離HCV−Fanのすべての画分(4〜18)を、MAbD32.10によるSDS−PAGE及びウエスタンブロットに付した。E1E2−D32.10反応性が、画分8(密度#1.10g/ml)から勾配の底部まで明らかに現れた。注目すべきことに、最も強いE1E2反応性が、1.17〜1.20g/mlの密度に対応する画分11、12及び13(図14D)において観察された。より高い分子量(HMW)のバンドをこれらの画分において検出することができたが、これは多分このような密度に階層区分されるウイルス粒子の表面に存在するE1及びE2エンベロープ糖タンパク質のオリゴマー形態に対応する。E1及びE2の両方に対する他の強い反応性は、EIAにおけるピークに対応する画分9(1.13g/mlの密度)において観察された(図14C)。すべての血清由来のHCV調製物は、ショ糖密度勾配(10〜60%)におけるE1E2−D32.10反応性の同じ平衡階層区分プロフィル(equilibrium banding profiles)を与えた。
【0168】
エンベロープドHCV母集団をさらに特徴付けるために、HCV−Fanペレットを、タイプ1の30〜45%ショ糖勾配(30%2ml、35%3ml、40%3ml、45%2ml)における等密度遠心に付した。これらの実験条件下に、E1E2−D32.10反応性の2つのピークは、図15Aに示されたとおり、明白に個別化することができた。間接EIAは、約1.15g/mlの密度の第1の狭いピーク(ピーク1)及び約1.18g/ml〜1.22g/mlの密度の第2の大きいピーク(ピーク2)を示した。ショ糖勾配(30〜45%)ピーク1(画分8)及び2(画分12及び13)からの粒子を個々に第2平衡遠心に付した。ピーク1を30〜45%のタイプ2のショ糖勾配(30%3ml、35%3ml、40%2ml、45%2ml)において遠心した(図15B)。唯一の狭いE1E2抗原ピーク(ピーク1)は、1.13〜1.14g/ml(約32%ショ糖、画分5及び6)の密度に移行した。ピーク2を、タイプ3の30〜45%ショ糖勾配(30%2ml、35%2ml、40%3ml、45%3ml)において遠心した(図15C)。主要ピーク(ピーク2)ははるかに速く沈降し、約1.18g/ml(40%スクロースに対応する)の密度で最大E1E2抗原性を示した。後者のE1E2抗原ピーク(ピーク2)は、非対称的に現れ、より低い密度を前方に移動させ、そして1.14g/mlのショ糖密度に階層区分されるE1E2母集団(ピーク1)と僅かに重なり合っており、前者のE1E2抗原ピーク(ピーク1)より大きい不均一性を示唆する(図15B、15C)。
【0169】
E1E2エンベロープドウイルス粒子の2つの母集団(ピーク1及び2)間の浮遊密度の差を解明するために、上記したタイプ1の30〜45%ショ糖勾配からの画分を、Ortho HCVコアアッセイ(図9A)及びウエスタンブロット(図15B)によりHCVコア抗原について試験した。
【0170】
簡単に言えば、ポリペプチド特異性を、抗原プローブ(1〜5μg/ml)としてHCVサンプルを使用するイムノブロッティングにより決定した。12.5%ゲルでのドデシル硫酸ナトリウム(SDS)−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)を還元条件(2%SDS+5%2−ME)下に行った。PVDFへのタンパク質移行後に、抗E1E2MAbD32.10(2〜5μg/ml)又は抗コアMAbs7G12A8、2G9A7及び19D9D6(各々5μg/ml)を一次抗体として使用し、50%NHS中に希釈し、次いで、第二抗体として抗マウス免疫グロブリンのHRPO−コンジュゲーテッドF(ab’)2断片(1/10,000に希釈された、Immunotechから購入した)とのインキュベーションにより、結合したIgGsを検出した。ブロットをAmershamからの高められた化学発光(ECL Plus)システムで顕色させた。
【0171】
両実験アプローチは、約1.17〜1.19g/ml(40%ショ糖)の密度で第2E1E2抗原ピーク(ピーク2)において最大HCVコア抗原反応性が回収されることを示した。ウエスタンブロットにおける分析(図9B)により、25kDaのHCVコアタンパク質を、初めの材料(HCV−Fanペレット)及び画分8〜13において同定した。50、75及び150kDaにおけるバンドも検出され、これはHCVコア遺伝子コード化産物のオリゴマーに対応することができた。HCV RNAを、最初の10〜60%ショ糖勾配からのすべての画分において定量的RT−PCR Monitor試験(Roche)により分析した(図10)。ウイルスRNAの2つのピークは1.055〜1.075g/mlの密度及び1.16〜1.21g/mlの密度で生じた。後者のピークの総力価は106UI/mlであり、そして第2E1E2抗原ピーク(ピーク2)に対応していた。対照的に、ピーク1に対応する画分9(1.13g/mlの密度)は、最も低い力価のHCVRNAを含有していた。かくして、ピーク2(約1.17〜1.20g/ml)は、E1E2複合体、HCVコアタンパク質、高い力価のHCV RNAを含有しており、そして完全なビリオンを示しているようである。ピーク1(1.13〜1.15g/ml)は、主としてE1E2複合体を含有しておりそしてサブウイルス粒子(SVPs)を示しているようである。低密度複合体(1.006〜1.10g/ml)は、裸のヌクレオカプシドに相当するコア及びHCV RNAのみを含有していた。
【0172】
かくして、本発明のD32.10モノクローナル抗体を使用して、慢性肝炎C患者の血清中に見出された最も優勢なタイプのエンベロープドウイルス粒子を分析した。濃縮したウイルス材料のショ糖勾配における沈降、定量的RT−PCRによるHCV RNAの監視とカップリングしたイムノアッセイ及びイムノブロッティングによるタンパク質組成(コア及びエンベロープタンパク質)の分析により、1.13〜1.15g/ml及び1.17〜1.21g/mlの2つの異なる密度で沈降したE1E2エンベロープド粒子の2つの母集団をそれぞれ同定した。第1母集団は、E1及びE2エンベロープタンパク質を含有するがヌクレオカプシドを欠いているサブウイルス粒子(SVPs)に対応していた。第2母集団はHCVビリオンに対応することができた。何故ならば、これらの粒子はE1及びE2エンベロープタンパク質、コアタンパク質及び高力価のHCV RNAを含有していたからである。
【0173】
血清由来のHCV粒子の形態学的特徴付け
E1E2(D32.10)特異的モノクローナル抗体による免疫沈殿後のHCV−Fanペレットの電子顕微鏡法(免疫電子顕微鏡法又はIEM)を、下記の方法に従って行った。
【0174】
簡単に言えば、血清由来のHCV調製物(2、20又は200μg)又は勾配からの画分(0.1ml)をMAbD32.10の0.1ml(5μg)又は同じアイソタイプ(IgG1)の無関係のモノクローナル抗体(F35.25,HBV抗preS1)(Petit et al.,1989)と混合した。37℃で1時間、次いで4℃で16時間インキュベーションを行った。次いで混合物をTNF緩衝液10ml中に希釈しそして48,000gで1時間遠心した。ペレットをTNE緩衝液0.1mlに懸濁させた。D32.10−免疫沈殿したHCV粒子を、グロー放電したFormvar/カーボンコーテッドキュプロングリッド(glow-discharged Formvar/ carbon-coated cupron grids)へ5分間吸収させそして1%酢酸ウラニル(pH4.5)により4分間染色した。次いでJEOL 100CX電子顕微鏡を使用して調製物を可視化した(Imaging facility, Laennec Faculty, Lyon, France)。間接免疫金標識化のために、グリッドを、第二抗体としてヤギ抗マウスIgG−コロイド状金粒子(10nm直径;BioCell Research Laboratories)の1:50希釈物とインキュベーションした。
【0175】
コントロール実験は、調製物のサイズ不均一性が抗原:抗体比と共に変わることを示した(結果は示されていない)。形態学的統合性(morphological integrity)を保存するために、HCV粒子の単離方法は沈殿及びショ糖勾配遠心のみを伴なった。このような実験条件下に、図11Aに示されたとおり、相対的に明確な輪郭の粒度分布が得られた。非対称ピークは約35nmに中心を有していた。このサイズの粒子(30〜40nm)が優性であった(56%)。本質的に、粒子の大部分(80%)は30nmより大きい直径を有し、平均値は38.28nm(156粒子の中から125)であり、粒子の20%は40〜50nm(平均値=43.61nm)でありそして4%が50〜60nm(平均値=55.69nm)である。すべての粒子の20%のみが30nmよりも小さい直径を有していた(平均値=26.35nm)。電子顕微鏡(図11B)は、HCV粒子が相対的に規則的な滑らかな表面により特徴付けられることを示した。図11B、パネルa及びbは、HCVエンベロープド粒子のサイズの不均一性を示す。図11B、パネルcは50nmの直径を有する粒子を示し、そしてパネルdは35nmの直径を有する粒子を示す。極めて均一なより高い密度が35nmの粒子の表面に現れたが(図11B、パネルd)、これに対してより低い密度のより軽い区域を50nmの直径を有する粒子の中心に明白に観察することができた(図11B、パネルc)。無関係な一次モノクローナル抗体を使用する場合は粒子はIEMにより可視化されなかった(図11B、パネルe)。ショ糖勾配ピーク1及び2からの粒子を、免疫沈殿させ、染色しそしてIEMによっても分析した(図12A〜12B)。図12Aに示されたとおり、ピーク1の優勢な種(85.4%)は、約20nm(41粒子の中から35、平均値=20.6nm)の直径を有する球状粒子であった。粒子の14.6%のみが30nmより大きい直径を有していたが、これは多分ピーク2との重なりに対応する。ピーク2は、ピーク1の材料よりもサイズが幾分より不均一に見えた(図12B)。しかしながら、この母集団中の最も主要な形態(77.5%)は、約41nm(89粒子の中から69、平均値=41.15nm)の平均直径を有しており、これは全HCVビリオン(whole HCV virion)の直径に対応することができる。少数のより小さい30nm直径の粒子(13.5%)をこの調製物において見ることができたが、これは多分ピーク1との重なりから生じたものである。不均一な主要なより速く沈降するピーク(ピーク2)は、主として35及び50nmの直径の大きな粒子からなり、これに対して均一な少量のより遅く沈降するピーク(ピーク1)は、約20nmの直径の小さな粒子からなっていた。ひっくるめると、形態学的研究は、2つのサイズクラスのE1E2エンベロープドHCV粒子が感染患者の血清中に共存することを示す。間接免疫金標識化(図13)によれば、先にIEMにより同定されたすべての球状エンベロープド粒子は、10nm金標識された二次抗体を特異的に固定した。
【0176】
かくして、MAbD32.10による免疫電子顕微鏡法により、トータルエンベロープド母集団(total enveloped population)(HCVに富んだペレット)及び各E1E2母集団の相対的に明確な輪郭の粒度分布を別々に決定した。エンベロープドHCV粒子は、サイズが不均一であるが、2つの異なるサイズクラスの粒子を容易に同定することができた。主要な種は、多分エンベロープの格子構造に依存して、35nmから50nmまで変わる直径を有する大きな粒子からなっていたが、これは完全なカプシド含有エンベロープド粒子に対応する。他のより均一な種は、カプシドのないSVPsに対応する、約20nmの直径を有する小さな粒子からなっていた。MAbD32.10に結合したすべてのこれらの粒子をさらに同定しそして抗マウスIgG−金粒子による間接標識化を使用して電子顕微鏡法により可視化した。
【0177】
感染性ビリオンに加えて、非感染性SVPsの形成は、フラビウイルス感染の共通の特徴である(Russel et al., 1990)。これらはカプシドのない空のウイルスエンベロープを表すことが示唆された(Mason et al., 1991)。それは肝炎Bウイルス(HBV)で感染した細胞においても起こり、そして分泌されたSVPsはエンベロープタンパク質のみの発現により産生される(Laub et al., 1983)。これらの粒子は、ビリオンより小さい。これは、これらのタンパク質が、コアの存在下又は不存在下に特異的粒状構造を固有に自己形成することができることを証明する。これらの粒子はアセンブルされ、そしてグリコシル化及び炭水化物プロセッシングを含む、全ビリオン(whole virions)と同じ成熟プロセスを受ける。このような組換えエンベロープSVPsによる免疫化は、動物モデル(Konishi et al., 1992; Heinz et al., 1995)及びヒト(Leroux-Roels et al., 1994)においてそれらが優れた予防性免疫原であることを示す。
【0178】
完全なビリオン(complete virions)及びSVPsのMAbD32.10との反応性は、E1(297〜306)−E2(480〜494)(613〜621)立体配座エピトープが、HCVビリオン及びSVPsの表面に本質的に同じ方法で提示されることを示す。しかしながら、血清由来のビリオン及びSVPs上に検出されたこのようなエピトープは、遺伝子組換えにより得られたそして異種システム:バキュロウイルス/昆虫細胞(Baumert et al., 1999)又はレトロウイルス/293T細胞(Bartosch et al., 2003)において産生された粒子上には欠けており、これは、この複合部位が、これらの組換えHCV粒子の表面に存在しないか及び/又はこれらの組換えHCV粒子の表面の離れた近づきがたい領域(inaccessible regions)に存在することを示唆する。前者のHCV様粒子(HCV−LPs)はERに保持されそして後者のHCV擬粒子(HCVpp)の小さな画分(small fraction)のみが細胞表面に達した。MAbD32.10はHSA又は免疫グロブリンのγ鎖若しくはμ鎖と反応性ではないことは注目する価値がある。それは、E1、E2の2つのタンパク質がHepG2細胞でワクシニアウイルス組換え体により別々に又は一緒に発現される場合には、E1、E2及びE1E2ヘテロ二量体を特異的に免疫沈殿させることができる。かくして、それは、大抵ジスルフィド結合で連結された集合体と反応しそしてE1E2非共有結合連結された成熟複合体とはより弱く反応する。しかしながら、それは、このような異種システムで発現された変性された組換えE1又はE2タンパク質をブロッティング分析により認識しない。これは、血清由来のウイルス表面におけるE1、E2及びE1E2のアレンジメント(arrangement)が組換えHCV粒子において見いだされるものとは異なるというのに味方する。天然の構造は、アセンブリー条件に依存する。独特な構造の形成を調節する条件が異種システムに存在していないならば、VLPs及びHCVppにおける二量体アレンジメントは類似しておらず、SVPs及びビリオンが感染患者の血清から単離される場合の、SVPs及びビリオン表面の類似性とは対照的である。組換えサブウイルス粒子(RSPs)及びビリオンにおいて、ダニ媒介性脳炎ウイルス(TBEV)を含むフラビウイルスのエンベロープタンパク質(E)のパッキングの1つの特に注目に値する特徴は、それらがヘッドツーテイル方位(head-to-tail orientation)においてウイルス表面に平坦な状態にあるということである(Ferlengi et al., 2001)。Ig様フォールド(Ig-like fold)を有しそして受容体結合に関係している、ドメインIIIの外側表面(lateral surface)は近接可能である(accessible)が、融合ペプチドはインターナルループである(Rey et al., 1995)。それゆえ、フラビウイルスは受容体媒介エンドサイトーシス及びエンドソームにおける低pHで誘発される融合により細胞に入る(Rice, 1996)。アセンブルしている粒子は、ERの膜又は早期分泌経路の中間区画を経る出芽(budding)によりそのエンベロープを取得すると考えられる。次いで粒子はトランスゴルジ網(TGN)を通して形質膜に輸送され、成熟し、そうして複合糖を取得する。すべてのこれらの段階はウイルスアセンブリーに極めて重要でありそして複製サイクルの多くの相において重要な役割を果たす。
【0179】
意外にも、すべてのHCV粒子は、それらの起源が何であれ、同様な生物物理的性質を示すようである。昆虫細胞でアセンブルされ、株HCV−JcDNAから誘導された又は感染性クローンH77cから誘導された、HCV−LPsのショ糖勾配沈降パターンは、ショ糖平衡勾配において1.14〜1.20g/mlであった(Wellnitz et al., 2002)。粒子の大部分は40〜60nmの直径を有していた。しかしながら、HCV−LPsの外側表面のE1及びE2エクトドメイン(ectodomains)に提示されたすべてのエピトープ(Wellnitz et al., 2002)は、MAbD32.10のE1及びE2特異性とは異なる。それゆえ、たとえ粒子がショ糖において同じ密度で沈降するとしても、それらは異なる免疫反応性を有し、これは不適切な輸送及び/又はフォールディングと関連していることがあり、そして明らかに、細胞結合及び感染性に関して、異なる機能的性質をもたらすであろう。
【0180】
血清エンベロープドHCV粒子とは反対に、HCVに感染した個体の血漿から単離したHCVコア粒子は昆虫細胞において産生されたヌクレオカプシド様粒子と類似していると思われる.HCVヌクレオカプシドは、CsCl勾配において1.32〜1.34g/mlの密度に階層区分されそして直径が38〜62mmで、サイズが極めて不均一であった(Maillard et al., 2001)。すべてのこれらの粒子は、抗コアMAbsと反応性であるが、組換えタンパク質による免疫化により産生された抗E1及び抗E2MAbsと反応性ではない(Deleersnyder et al., 1997; Dubuisson et al., 1994)。
【0181】
それゆえ、種々のタイプのHCV関連粒子(HCV−LPs、血清HCVヌクレオカプシド、血清HCVビリオン)は、サイズ及び/又は密度においていくらかの類似性を有するが、異なる抗原的性質(E1E2複合体の不適切な又は適切なフォールディング、エンベロープドビリオン又は非エンベロープドヌクレオカプシド)を示す。それゆえ、要するに、これは、HCV粒子の真の抗原的性質を分析するため、そして、天然のHCVビリオンを同定するための良好な免疫学的ツールを有することが決定的に重要であることを証明している。
【0182】
これらのデータ及び他のデータを考慮に入れて(Andre et al., Maillard et al., 2001)、慢性肝炎C患者の血清中で循環している種々の形態のHCV関連粒子の完全なスペクトルのより良好な知識を得ることができた。ショ糖勾配における低密度画分(1.06g/ml)は、カプシド様構造であって、リポタンパク質と会合して脂質−ウイルス粒子(lipo-viro-particles)(LVP)を形成しそして個々の変動に依存してHCV RNA及び免疫グロブリンと会合した(Andre et al., 2002)カプシド様構造を含有していた。LVPは、直径が100nmより多くの大きい粒子として現われ、そしてLDL受容体(Andre et al., 2002)を介して肝細胞系に結合した。洗剤で処理した血清から単離された非エンベロープドHCVヌクレオカプシドは、CsClにおける1.32〜1.34g/mlの浮遊密度を有しており、サイズが不均一であり(Meillard et al., 2001)そして最近FγR様活性を有することが示され((Meillard et al., 2004)、これはショ糖勾配における高密度(1.28〜1.35g/ml)のHCVコア−IgG複合体として、HCV RNA含有粒子の「非免疫」抗体("non-immune" antibodies)との会合を説明することができた。1.13〜1.21g/mlの中間密度の画分は、ここではE1E2エンベロープドHCV粒子として同定された。ヌクレオカプシド、脂質膜及び2つのE1及びE2エンベロープ糖タンパク質からなる推定上の全HCVビリオン(entire HCV virion)の平均密度(1.18〜1.20g/ml)は、フラビウイルスの密度に類似している(Bradley et al., 1991)。MAbD32.10の精密な特異性から推定された外側エンベロープタンパク質相互作用の仮定も、TBEV及び全ウイルス粒子からの組換えSVPsのエンベロープの組織化に類似している(Schalich et al., 1996)。最後に、異なる沈降性質(1.13〜1.15g/ml)及び異なる粒度(≒20nm)を示すが全ウイルス粒子と同様な抗原特性を示す、E1E2エンベロープタンパク質のみを含有するSVPsがHCV感染患者の血清中に存在することは、HCVとフラビウイルスとのいくらかの類似性を支持する。
【0183】
要するに、新規なMAbD32.10を使用することにより、初めて下記のものが同定された:
(i)HCV RNA及びコア抗原の両方を含有し、そして35〜50nmの直径を有しそして1.17〜1.21g/mlに階層区分される「大きな粒子」としてE1E2エンベロープ複合体をその表面に発現する、HCV完全ビリオン;
(ii)20〜30nmの直径を有しそして1.13〜1.15g/mlに階層区分される、カプシド及びHCV RNAを欠いている「小さな粒子」としてのエンベロープSVPsのHCV母集団。
【0184】
ゆえに、このようなエンベロープド粒子は、HCVエンベロープ糖タンパク質構造−機能関係を調べるための適切なモデル及び予防接種法のための優れた候補を表す。更に、異なるグループの患者において及びHCV関連疾患の種々の段階で循環しているHCV粒子のスペクトルを追跡することは興味深いであろう。
【0185】
実施例3
精製されたHCVエンベロープド完全ウイルス粒子に対するモノクローナル抗体の取得
精製したHCVエンベロープド完全ウイルス粒子を含有するショ糖密度勾配における糖密度遠心に付した上記したHCVに富んだペレットの画分を使用して、モノクローナル抗体を調製した。この画分を使用して、マウスを免疫化しそして上記したようにハイブリドーマを単離した。かくして、1つのモノクローナル抗体、(D4.12.9)を得、これはウエスタンブロット実験において天然のHCV E2タンパク質を特異的に認識し(図6)及び実施例2で証明された天然のHCVウイルス粒子を特異的に認識すること(図7)が示された。実際に、図7は、D4.12.9が、D32.10と同様に、HCVエンベロープドサブウイルス粒子(画分8〜11)及びHCVエンベロープド完全ウイルス粒子(画分11〜14)の両方を認識することを示す。
【0186】
実施例4
感染患者由来の抗HCV抗体のエピトープ特徴付け
HCV感染患者の血清に対するD32.10(実施例1)と反応性のE1及びE2由来のペプチド配列の免疫反応性を、それらを包含するペプチドを使用することにより評価した。
【0187】
E1(アミノ酸290〜317)及びE2(アミノ酸471〜500及び605〜629)配列を、健康な個体からの11の血清及びHCV感染患者からの44の血清(A1〜A44という番号を付けられた)によってELISAにより試験されるべきビオチニル化合成ペプチドとして産生させた。
【0188】
マイクロタイトレーションプレートのウエルを、0.1M炭酸塩緩衝液(pH9.6)中の10μg/mlの濃度のストレプトアビジン100μlで4℃で一夜コーティングし、そして10%ヤギ血清を含有するPBSで37℃で1時間ブロックした。次いで、プレートを0.05%Tween−20を含有するPBSで3回洗浄した後、ビオチニル化ペプチド溶液(PBS中の10μg/ml)100μlを37℃で2時間加えた。PBS−Tweenで新たな洗浄の後、10%ヤギ血清を含有するPBS−Tween中に1:50に希釈された試験された血清100μlを加えそして37℃で2時間インキュベーションした。プレートをPBS−Tweenで再び洗浄した。次いで、二次抗体、ペルオキシダーゼ−コンジュゲーテッドヤギ抗ヒトIgG(Jackson Immune Research laboratories)をPBS−Tween−ヤギ血清中に1:5000希釈率で加えた。プレートを37℃で1時間インキュベーションし、次いでPBS−tweenでもう1回洗浄した。プレートを、o−フェニレンジアミン及び過酸化水素を含有するBiomeriux カラーキットを使用して顕色した。10分のインキュベーションの後、プレートをELISAプレートリーダーで492nmで読み取った。報告された値は3回反復の平均ODである。
【0189】
カットオフ認識を、各ペプチドについて計算した(HCVネガティブ血清+3標準偏差で得られた値の平均)。それは、E1(アミノ酸290〜317)に対して44のHCV−ポジティブ血清の中からの6つ(図8A)、E2(アミノ酸471〜500)に対する44の中からの6つ(図8B)及びE2(アミノ酸605〜629)に対する44の中からの16(図8c)とのポジティブ反応を証明することを可能とした。血清A7、A14、A21、A33、A39及びA40は、3つのペプチドとのポジティブシグナルを与え、これに対して、E2(605〜629)も10のより多くの血清により認識された。
【0190】
HCV感染患者の血清中に、D32.10mAbにより認識されたE1及びE2の3つの領域と同時に反応することができる特異的抗体が存在することは、循環しているエンベロープドHCVウイルス粒子の表面におけるそれらの並置(juxtaposition)及びマウス及びヒトにおけるそれらの免疫原性を強く支持する。
【0191】
【表3】
【図面の簡単な説明】
【0192】
【図1A】図1A、1B、1C、1D及び1Eは、35S標識された細胞の抗体で沈殿させた溶解物(antibody precipitated lysates)のドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を表す。レーン1、2、3、4、5、6及び7は、それぞれ、抗体C9.19.16、C2.22.1、D32.10、D3.20.12、C7、24.19、C7.14.41及びC1.9.3に対応する。MWは、分子量マーカーに対応する。分子量マーカーに対応するバンドのサイズは、ゲルの右に表される。可能ならば、バンドは、E1、E2又はAgg(集合体の場合)としてゲルの左に確認される。 図1Aは、還元条件における、35S標識されたコントロール細胞の抗体で沈殿させた溶解物のSDS−PAGEを表す。
【図1B】図1A、1B、1C、1D及び1Eは、35S標識された細胞の抗体で沈殿させた溶解物(antibody precipitated lysates)のドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を表す。レーン1、2、3、4、5、6及び7は、それぞれ、抗体C9.19.16、C2.22.1、D32.10、D3.20.12、C7、24.19、C7.14.41及びC1.9.3に対応する。MWは、分子量マーカーに対応する。分子量マーカーに対応するバンドのサイズは、ゲルの右に表される。可能ならば、バンドは、E1、E2又はAgg(集合体の場合)としてゲルの左に確認される。 図1Bは、還元条件における、HCV E1タンパク質を発現する35S標識された細胞の抗体で沈殿させた溶解物のSDS−PAGEを表す。
【図1C】図1A、1B、1C、1D及び1Eは、35S標識された細胞の抗体で沈殿させた溶解物(antibody precipitated lysates)のドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を表す。レーン1、2、3、4、5、6及び7は、それぞれ、抗体C9.19.16、C2.22.1、D32.10、D3.20.12、C7、24.19、C7.14.41及びC1.9.3に対応する。MWは、分子量マーカーに対応する。分子量マーカーに対応するバンドのサイズは、ゲルの右に表される。可能ならば、バンドは、E1、E2又はAgg(集合体の場合)としてゲルの左に確認される。 図1Cは、還元条件における、HCV E2タンパク質を発現する35S標識された細胞の抗体で沈殿させた溶解物のSDS−PAGEを表す。
【図1D】図1A、1B、1C、1D及び1Eは、35S標識された細胞の抗体で沈殿させた溶解物(antibody precipitated lysates)のドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を表す。レーン1、2、3、4、5、6及び7は、それぞれ、抗体C9.19.16、C2.22.1、D32.10、D3.20.12、C7、24.19、C7.14.41及びC1.9.3に対応する。MWは、分子量マーカーに対応する。分子量マーカーに対応するバンドのサイズは、ゲルの右に表される。可能ならば、バンドは、E1、E2又はAgg(集合体の場合)としてゲルの左に確認される。 図1Dは、還元条件における、HCV E1E2タンパク質を発現する35S標識された細胞の抗体で沈殿させた溶解物のSDS−PAGEを表す。
【図1E】図1A、1B、1C、1D及び1Eは、35S標識された細胞の抗体で沈殿させた溶解物(antibody precipitated lysates)のドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を表す。レーン1、2、3、4、5、6及び7は、それぞれ、抗体C9.19.16、C2.22.1、D32.10、D3.20.12、C7、24.19、C7.14.41及びC1.9.3に対応する。MWは、分子量マーカーに対応する。分子量マーカーに対応するバンドのサイズは、ゲルの右に表される。可能ならば、バンドは、E1、E2又はAgg(集合体の場合)としてゲルの左に確認される。 図1Eは、非還元条件における、HCV E1E2タンパク質を発現する35S標識された細胞の抗体で沈殿させた溶解物のSDS−PAGEを表す。
【図2】図2は、非還元条件及び還元条件下にD32.10モノクローナル抗体を使用するHCVウイルス粒子のウエスタンブロットを表す。左から右へ、Mは非還元条件下に分子量マーカーを表し、そのバンドのサイズは、ゲルの左に示され(kDaにおいて)、レーン1は非還元条件下にD32.10モノクローナル抗体を使用するHCVウイルス粒子のウエスタンブロットを表し、第2レーンMは還元条件下の分子量マーカーを表し、レーン2は、還元条件下にD32.10モノクローナル抗体を使用するHCVウイルス粒子2.5μgのウエスタンブロットを表し、レーン3は、還元条件下にD32.10モノクローナル抗体を使用するHCVウイルス粒子5μgのウエスタンブロットを表す。ゲルの右に、レーン3のいくつかのバンドのサイズが示され(kDaで)、いくらかはHCVタンパク質E2(60及び68)又はHCVタンパク質E1(34及び31)に対応する。
【図3A】図3A及び図3Bは、グリコシダーゼAによる脱グリコシル化(図3A)及びエンドグリコシダーゼHによる脱グリコシル化(図3B)に付されたHCVウイルス粒子のウエスタンブロットを表す。 図3Aにおいて、レーンMは分子量マーカーを表し、そのバンドの3つのサイズは、ゲルの左に示され(kDaで);レーン1、2、3及び4はそれぞれ、20、10、5及び0mU/mlのグリコシダーゼ濃度を表す。ゲルの右に、HCVタンパク質E2及びE1の位置が示され、そしてタンパク質E1の主要な脱グリコシル化形態の位置(E1*)及びE1又はE2の脱グリコシル化形態に対応するいつかのバンドのサイズ(kDaで)、並びにE2の主要な脱グリコシル化形態(41*)が示される。
【図3B】図3A及び図3Bは、グリコシダーゼAによる脱グリコシル化(図3A)及びエンドグリコシダーゼHによる脱グリコシル化(図3B)に付されたHCVウイルス粒子のウエスタンブロットを表す。 図3Bにおいて、レーンMは分子量マーカーを表し、そのバンドの4つのサイズがゲルの左に示され(kDaで);レーン1及び2は、それぞれ、エンドグリコシダーゼHなしに行われたコントロール脱グリコシル化実験及びエンドグリコシダーゼHの存在下に行われる脱グリコシル化実験を表す。ゲルの右には、E2及びE1の完全グリコシル化形態及びE2の脱グリコシル化形態(50、48、46及び42kDa)及びE1の脱グリコシル化形態(28及び24kDa)に対応する主要バンドが示される。E2の主要な脱グリコシル化形態(50*)及びE1の主要な脱グリコシル化形態(28*)は星によりマークを付けられている。
【図4】図4は、HCVウイルス粒子調製物のショ糖密度勾配での遠心により得られた画分の特徴付けを示す。3つのパラメーター、HCV RNA含有率、HCVコアタンパク質含有率及びD32.10モノクローナル抗体に対する反応性、を測定した。水平軸は特徴付けに付された画分の数を表す。左垂直軸はHCV RNA濃度(×105UI/ml)及び間接EIA(450nmでのOD)により測定されたD32.10に対する反応性の目安を表す。右垂直軸はHCVコアタンパク質濃度(pg/mlでの)を表す。黒点に対応する曲線はD32.10に対する画分の反応性を表し、白三角形に対応する曲線はコアタンパク質の画分含有率を表し、そしてドット付きバーはHCV RNAの画分含有率を表す。
【図5A】図5A、5B及び5Cは、それぞれ、HCVウイルス粒子調製物、HCVエンベロープド完全ウイルス粒子調製物及びHCVエンベロープドサブウイルス粒子調製物の透過型電子顕微鏡写真を表す。 図5Aでは、水平バーは長さ200nmのスケールを表す。より大きい円形要素はHCVエンベロープド完全ウイルス粒子を表しそしてより小さい円形要素はHCVエンベロープドサブウイルス粒子を表す。
【図5B】図5A、5B及び5Cは、それぞれ、HCVウイルス粒子調製物、HCVエンベロープド完全ウイルス粒子調製物及びHCVエンベロープドサブウイルス粒子調製物の透過型電子顕微鏡写真を表す。 図5Bでは、水平バーは長さ50nmのスケールを表す。円形要素はHCVエンベロープド完全ウイルス粒子を表す。
【図5C】図5A、5B及び5Cは、それぞれ、HCVウイルス粒子調製物、HCVエンベロープド完全ウイルス粒子調製物及びHCVエンベロープドサブウイルス粒子調製物の透過型電子顕微鏡写真を表す。 図5Cでは、水平バーは長さ50nmのスケールを表す。円形要素はHCVエンベロープドサブウイルス粒子を表す。
【図6】図6はD4.12.9モノクローナル抗体を使用するHCVウイルス粒子のウエスタンブロットを表す。レーンMは分子量マーカーを表し、そのバンドの4つのサイズ(75、50、37、25)はゲルの左側及び右側に示される(kDaで)。レーン1及び2は、それぞれ、グリコシダーゼA及びエンドグリコシダーゼHによるHCVウイルス粒子の消化の結果を表し、レーン3及び4はプロテアーゼトリプシン及びV8によるHCVウイルス粒子のタンパク分解消化の結果を表し、レーン5はNP−40による細胞溶解(lysis)の結果を表し、そしてレーン6では前処理は行われなかった。ゲルの右側には、消化されなかったE2タンパク質(68及び48)の2つの主要な形態が示され(kDaで)そしてゲルの左側にはE2の主要な脱グリコシル化形態(E2*)が示される。
【図7】図7は、HCVウイルス粒子調製物のショ糖密度勾配での遠心により得られた画分のD4.12.9に基づく特徴付けを表す。D4.12.9に対する画分反応性に加えて、コアタンパク質の画分含有率も測定した。水平軸は、特徴付けに付された画分の数を表す。右垂直軸はEIA(450nmでのOD)により測定されたD4.12.9に対する反応性の目安を表す。左垂直軸は、HCVコアタンパク質濃度(pg/mlで)を表す。黒四角形に対応する曲線はD4.12.9に対する画分の反応性を表し、黒菱形に対応する曲線はコアタンパク質の画分含有率を表す。
【図8A】図8A、8B及び8Cは、健康な個体(水平軸上にT1〜T11の番号を付けられている11の血清)及びHCV感染患者(水平軸上でA1〜A44の番号を付けられている44の血清)の55の血清に対するそれぞれアミノ酸290〜317(図8A)、アミノ酸471〜500(図8B)及びアミノ酸605〜629(図8C)を含む3つのビオチニル化ペプチドの免疫反応性を表す。垂直軸は、ELISA(492nmにおけるOD×1000)により測定された3つのペプチドに対する血清の反応性を表す。白のバーは健康な個体の血清の反応性を表しそしてグレーのバーは感染患者の血清の反応性を表す。水平線は、カットオフ値を表し、それより上の血清応答はポジティブと考えられる。図8Aでは、カットオフ値は0.691であり、図8Bでは0.572でありそして図8Cでは0.321である。
【図8B】図8A、8B及び8Cは、健康な個体(水平軸上にT1〜T11の番号を付けられている11の血清)及びHCV感染患者(水平軸上でA1〜A44の番号を付けられている44の血清)の55の血清に対するそれぞれアミノ酸290〜317(図8A)、アミノ酸471〜500(図8B)及びアミノ酸605〜629(図8C)を含む3つのビオチニル化ペプチドの免疫反応性を表す。垂直軸は、ELISA(492nmにおけるOD×1000)により測定された3つのペプチドに対する血清の反応性を表す。白のバーは健康な個体の血清の反応性を表しそしてグレーのバーは感染患者の血清の反応性を表す。水平線は、カットオフ値を表し、それより上の血清応答はポジティブと考えられる。図8Bでは、カットオフ値は0.572である。
【図8C】図8A、8B及び8Cは、健康な個体(水平軸上にT1〜T11の番号を付けられている11の血清)及びHCV感染患者(水平軸上でA1〜A44の番号を付けられている44の血清)の55の血清に対するそれぞれアミノ酸290〜317(図8A)、アミノ酸471〜500(図8B)及びアミノ酸605〜629(図8C)を含む3つのビオチニル化ペプチドの免疫反応性を表す。垂直軸は、ELISA(492nmにおけるOD×1000)により測定された3つのペプチドに対する血清の反応性を表す。白のバーは健康な個体の血清の反応性を表しそしてグレーのバーは感染患者の血清の反応性を表す。水平線は、カットオフ値を表し、それより上の血清応答はポジティブと考えられる。図8Cでは0.321である。
【図9A】HCVコアタンパク質は、Ortho Clinical DiagnosticsからのトータルHCVコア抗原アッセイ(図9A)により定量されそしてHCV−Fanペレット及び上記したタイプ1の30〜45%ショ糖勾配からの画分におけるウエスタンブロット(図9B)により分析された。(図9A)すべての画分を1:2の希釈率で試験した。HCV−Fanペレットは、希釈率1:25、1:50及び1:100で試験し、そして332pg/mlを含有することが見出された。すべての希釈はTNE緩衝液で行った。カットオフ値は1.4pg/mlであった。
【図9B】HCVコアタンパク質は、Ortho Clinical DiagnosticsからのトータルHCVコア抗原アッセイ(図9A)により定量されそしてHCV−Fanペレット及び上記したタイプ1の30〜45%ショ糖勾配からの画分におけるウエスタンブロット(図9B)により分析された。(図9B)HCV−Fanペレット及び30%〜45%ショ糖勾配からの画分4、8、12及び13をSDS−12.5%PAGEに付した。HCVコアタンパク質を、モノクローナル抗体抗コア7G12A8、2G9A7及び19D9D6(各々について5μg/ml)の混合物を使用して検出した。AmershamからのECL Plusシステムを使用してブロットを顕色した。左の数は、キロダルトン(kDa)でのマーカー(M)の分子量を示し、そしてHCVコアタンパク質は右に示された。
【図10】最初の10〜60%ショ糖勾配からのすべての画分における定量的RT-PCR Amplicor HCV Monitor試験バージョン2.0(Roche Diagnostics)によりHCV RNAを分析した。製造者の取扱説明書に従って試験を行った。各ロットに対して特異的なQS国際単位(IU)/PCRを使用することにより結果を計算し、そしてIU HCVRNA/mlで表した。
【図11A】電子顕微鏡法(EM)による血清由来のHCVエンベロープド粒子の分析。MAbD32.10(5μg)(パネルa、b、c及びd)又は無関係のMAb(パネルe)を使用すことによりHCV−Fanペレット(2μg)を免疫沈殿させ、そして超遠心によるペレット化後の免疫複合体をグリッドに吸着させそして1%酢酸ウラニル(pH4.5)で染色した。調製物をJEOL 100CX電子顕微鏡を使用して可視化した。(図11A)粒子は幾分直径(nmで表された)が変わり、そして156ウイルス粒子(VPs)に関してヒストグラムを作成した。粒度分布は35nmに中心のあるピークを示す。
【図11B】電子顕微鏡法(EM)による血清由来のHCVエンベロープド粒子の分析。MAbD32.10(5μg)(パネルa、b、c及びd)又は無関係のMAb(パネルe)を使用すことによりHCV−Fanペレット(2μg)を免疫沈殿させ、そして超遠心によるペレット化後の免疫複合体をグリッドに吸着させそして1%酢酸ウラニル(pH4.5)で染色した。調製物をJEOL 100CX電子顕微鏡を使用して可視化した。(図11B)電子顕微鏡写真。パネルa、b、c及びdのバーは50nmを示す。
【図12A】D32.10による免疫沈殿、グリッドへの吸着及び染色後のショ糖勾配ピーク1(図12A)及び2(図12B)からのHCV−Fan粒子の電子顕微鏡法による分析。(図12A)41のウイルス粒子についてヒストグラムを作成した。ピーク1における主要な種(85.4%)は約20nmの直径を有する球状粒子、いわゆる<<小さな粒子>>であった。
【図12B】D32.10による免疫沈殿、グリッドへの吸着及び染色後のショ糖勾配ピーク1(図12A)及び2(図12B)からのHCV−Fan粒子の電子顕微鏡法による分析。(図12B)89のウイルス粒子についてヒストグラムを作成した。ピーク2における最も優勢な形態(77.5%)は、約41nmの平均直径を有していた。ピーク2は、サイズが幾分より不均一であるようであり、そして主として35及び50nm直径粒子、いわゆる<<大きな粒子>>からなっていた。バー、50nm。
【図13】エンベロープドHCV粒子の間接免疫金標識化(indirect immuno-gold labeling)。D32.10−免疫複合体(HCVペレット、20μg;MAbD32.10,5μg)でコーティングされた顕微鏡グリッドを、第2抗体としてのヤギ抗マウスIgG−コンジュゲーテッドコロイド金粒子(10nm)の1:50希釈物とインキュベーションした。IgGの立体障害(EMにおいて約15nm)にしたがって、少数の金粒子のみが、抗体結合を確認することができた。金粒子はウイルス粒子の外側には観察されなかった。すべてのパネルのバーは20nmを示す。
【図14A】図14A及び図14Bは、遺伝子型1bの単離HCV−LからのHCVに富んだペレットのショ糖密度勾配(10%〜60%)における等密度遠心(isopycnic centrifugation)の結果を表す。 図14Aは、遠心後に得られた画分(水平軸)の密度(左水平軸、g/ml)及びE1E2−D32.10反応性(右垂直軸、A490nm)を表す。 EIAでは、各画分を1/10000に希釈し(図4A及び4C)そしてウエスタンブロットでは、選ばれた画分5μl/レーンを使用した(図4B及び4D)。画分の密度は屈折率測定法により測定されそしてg/mlで表される。吸光度(A)は490nmで側定された。EIAの結果は、ネガティブコントロール(少なくとも3つの値)の平均の掛ける2.1に相当するカットオフより上になる場合にはポジティブと考えられた。AmershamからのECL Plusシステムを使用してブロットを顕色した。
【図14B】図1A及び図14Bは、遺伝子型1bの単離HCV−LからのHCVに富んだペレットのショ糖密度勾配(10%〜60%)における等密度遠心(isopycnic centrifugation)の結果を表す。 図14Bは、抗E1E2MAbD32.10を使用する、画分6、8、10,12及び14のウエスタンブロットを表す。左の数は、キロダルトン(kDa)におけるマーカー(M)の分子量を示し、そしてHCVE1及びE2タンパク質は右に示された。 EIAでは、各画分を1/10000に希釈し(図4A及び4C)そしてウエスタンブロットでは、選ばれた画分5μl/レーンを使用した(図4B及び4D)。画分の密度は屈折率測定法により測定されそしてg/mlで表される。吸光度(A)は490nmで側定された。EIAの結果は、ネガティブコントロール(少なくとも3つの値)の平均×2.1に相当するカットオフより上になる場合にはポジティブと考えられた。AmershamからのECL Plusシステムを使用してブロットを顕色した。
【図14C】図14C及び図14Dは、遺伝子型1a/2aの単離HCV−FanからのHCVに富んだペレットのショ糖密度勾配(10%〜60%)における等密度遠心の結果を示す。 図14Cは、遠心後に得られた画分(水平軸)の密度(左水平軸、g/ml)及びE1E2−D32.10反応性(右垂直軸、A490nm)を表す。 EIAでは、各画分を1/10000に希釈し(図4A及び4C)そしてウエスタンブロットでは、選ばれた画分5μl/レーンを使用した(図4B及び4D)。画分の密度は屈折率測定法により測定されそしてg/mlで表される。吸光度(A)は490nmで側定された。EIAの結果は、ネガティブコントロール(少なくとも3つの値)の平均×2.1に相当するカットオフより上になる場合にはポジティブと考えられた。AmershamからのECL Plusシステムを使用してブロットを顕色した。
【図14D】図14C及び図14Dは、遺伝子型1a/2aの単離HCV−FanからのHCVに富んだペレットのショ糖密度勾配(10%〜60%)における等密度遠心の結果を示す。 図14Dは、抗E1E2MAbD32.10を使用する、画分6、8、10、12及び14のウエスタンブロットを表す。 EIAでは、各画分を1/10000に希釈し(図4A及び4C)そしてウエスタンブロットでは、選ばれた画分5μl/レーンを使用した(図4B及び4D)。画分の密度は屈折率測定法により測定されそしてg/mlで表される。吸光度(A)は490nmで側定された。EIAの結果は、ネガティブコントロール(少なくとも3つの値)の平均×2.1に相当するカットオフより上になる場合にはポジティブと考えられた。AmershamからのECL Plusシステムを使用してブロットを顕色した。
【図15A】HCV−Fanペレットのタイプ1の30〜45%ショ糖勾配(30%2ml、35%3ml、40%3ml、45%2ml)における等密度遠心(図15A)。屈折率測定法により側定された画分の密度はg/mlで表した。E1E2−D32.10反応性を前記のように間接EIAにより分析した。
【図15B】ショ糖勾配(30〜45%)ピーク1(画分8)及び2(画分12及び13)からの粒子を個々に第2平衡遠心に付した(それぞれ、図15B及び15C)。ピーク1をタイプ2の30〜45%ショ糖勾配(30%3ml、35%3ml、40%2ml、45%2ml)において遠心した(図15B)。屈折率測定法により側定された画分の密度はg/mlで表した。E1E2−D32.10反応性を前記のように間接EIAにより分析した。
【図15C】ショ糖勾配(30〜45%)ピーク1(画分8)及び2(画分12及び13)からの粒子を個々に第2平衡遠心に付した(それぞれ、図15B及び15C)。ピーク2をタイプ3の30〜45%ショ糖勾配(30%2ml、35%2ml、40%3ml、45%3ml)において遠心した(図15C)。屈折率測定法により側定された画分の密度はg/mlで表した。E1E2−D32.10反応性を前記のように間接EIAにより分析した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然のHCVウイルスエンベロープに特異的に結合することができる立体配座抗体。
【請求項2】
天然のHCV E2タンパク質に特異的に結合することができる、請求項1に記載の立体配座抗体。
【請求項3】
患者のHCV感染を中和することができる、請求項1又は2に記載の立体配座抗体。
【請求項4】
共有結合形態又は非共有結合形態下のHCV E1E2複合体を沈殿させることができる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の立体配座抗体。
【請求項5】
天然のHCV E1タンパク質に特異的に結合することができる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の立体配座抗体。
【請求項6】
天然のHCV E1タンパク質、天然のHCV E2タンパク質に特異的に結合することができ、そして共有結合形態又は非共有結合形態下のHCV E1E2複合体を沈殿させることができる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の立体配座抗体。
【請求項7】
下記の配列:
HCVタンパク質E1のアミノ酸297〜306(配列番号1)、
HCVタンパク質E2のアミノ酸480〜494(配列番号2)、
HCVタンパク質E2のアミノ酸613〜621(配列番号3)、
の少なくとも1つからなるエピトープに特異的に結合することができる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の立体配座抗体。
【請求項8】
下記の配列:
HCVタンパク質E1のアミノ酸297〜306(配列番号1)、
HCVタンパク質E2のアミノ酸480〜494(配列番号2)、
HCVタンパク質E2のアミノ酸613〜621(配列番号3)、
の各々からなるエピトープに特異的に結合することができる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の立体配座抗体。
【請求項9】
該抗体がモノクローナル抗体である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の立体配座抗体。
【請求項10】
受託番号CNCM I−2983の下で2003年3月19日にCNCM(Collection Nationale de Culture de Microorganismes, Institut Pasteur, Paris, France)に寄託されたハイブリドーマにより分泌される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の立体配座抗体。
【請求項11】
受託番号CNCM I−2982の下で2003年3月19日にCNCM(Collection Nationale de Culture de Microorganismes, Institut Pasteur, Paris, France)に寄託されたハイブリドーマにより分泌される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の立体配座抗体。
【請求項12】
受託番号CNCM I−2983の下で2003年3月19日にCNCM(Collection Nationale de Culture de Microorganismes, Institut Pasteur, Paris, France)に寄託されたハイブリドーマ。
【請求項13】
受託番号CNCM I−2982の下で2003年3月19日にCNCM(Collection Nationale de Culture de Microorganismes, Institut Pasteur, Paris, France)に寄託されたハイブリドーマ。
【請求項14】
活性物質として請求項1〜11に記載の抗体の少なくとも1つ及び薬学的に許容されうるベヒクルを含む医薬組成物。
【請求項15】
HCV感染の診断、予防又は治療のための医薬を製造するための、請求項1〜11に記載の抗体の少なくとも1つの使用。
【請求項16】
請求項10又は11の抗体の少なくとも1つに結合することができるエンベロープドウイルス粒子。
【請求項17】
請求項16エンベロープドウイルス粒子に結合する抗体。
【請求項18】
ヒトの血液、血漿又は血清の初めのサンプル由来のHCVウイルス粒子の組成物であって、HCV RNAコピーの濃度が、それが由来するヒトの血液、血漿又は血清の初めのサンプル中のHCV RNAコピーの濃度より約100〜1000倍高い、特に約107コピー/mlより高い、組成物。
【請求項19】
HCV RNAコピーの数がタンパク質mg当り約108〜約109UIである、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
該組成物の容積が約0.1ml〜約10mlである、請求項18又は19に記載の組成物。
【請求項21】
HCV RNA及びHCVコアタンパク質を実質的に欠いている単離されたHCVエンベロープドサブウイルス粒子。
【請求項22】
該サブウイルス粒子が、請求項1〜11に記載の抗体のいずれかに結合する傾向がある、請求項21に記載の単離されたHCVエンベロープドサブウイルス粒子。
【請求項23】
HCV RNA、HCVコアタンパク質及HCVエンベロープを含有しそして請求項1〜11に記載の抗体のいずれかに結合する傾向がある精製されたHCVエンベロープド完全ウイルス粒子を含む組成物。
【請求項24】
下記の段階:
−HCV感染患者の清澄化された血漿分離交換法から生じるサンプルを少なくとも2回超遠心してHCVに富んだペレットを得、
−該HCVに富んだペレットを水性溶液中に再懸濁させてHCVウイルス粒子の組成物を得る、
段階を含む、HCVウイルス粒子の組成物を製造する方法。
【請求項25】
請求項24の方法に従って得られる如きHCVウイルス粒子の組成物。
【請求項26】
下記の段階:
−HCV感染患者の清澄化された血漿分離交換法から生じるサンプルを少なくとも2回超遠心してHCVに富んだペレットを得、
−該HCVに富んだペレットを水性溶液中に再懸濁させ、
−該再懸濁させたHCVに富んだペレットをショ糖密度勾配において超遠心して、再懸濁させたHCVに富んだペレットのエレメントをそれらの密度に従って画分に分離し、
−HCV RNAを実質的に含有せず、HCVコアタンパク質を実質的に含有せず、そして請求項10又は11のモノクローナル抗体に結合することができる粒子を含有する画分、特に、約1.13〜1.15g/mlのショ糖密度を有する画分を回収して、HCVエンベロープドサブウイルス粒子の組成物を得る、
段階を含む、HCVエンベロープドサブウイルス粒子の組成物を製造する方法。
【請求項27】
請求項26の方法に従って得られる如きHCVエンベロープドサブウイルス粒子の組成物。
【請求項28】
下記の段階:
−HCV感染患者の清澄化された血漿分離交換法から生じるサンプルを少なくとも2回超遠心してHCVに富んだペレットを得、
−該HCVに富んだペレットを水性溶液中に再懸濁させ、
−該再懸濁させたHCVに富んだペレットをショ糖密度勾配において超遠心して、再懸濁させたHCVに富んだペレットのエレメントをそれらの密度に従って画分に分離し、
−約5.105〜約106UI/mlのHCV RNA、約50〜約100pg/mlのHCVコアタンパク質を含有しそして請求項10又は11のモノクローナル抗体に結合することができる粒子を含有する画分、特に、約1.17〜1.21g/mlのショ糖密度を有する画分を回収して、精製されたHCVエンベロープド完全ウイルス粒子の組成物を得る、
段階を含む、精製されたHCVエンベロープド完全ウイルス粒子の組成物を製造する方法。
【請求項29】
請求項28の方法に従って得られる如き精製されたHCVエンベロープド完全ウイルス粒子の組成物。
【請求項30】
下記の段階:
−動物、特に哺乳動物を請求項18に記載のHCVウイルス粒子の組成物又は請求項24に従って製造されるようなものにより免疫化し、そして発生した抗体を回収し、
−発生した抗体の中で、HCVウイルス粒子の上記した組成物中に含有されたHCVウイルス粒子に結合する能力に基づいてモノクローナル抗体を選ぶ、
段階を含む、請求項10に記載のモノクローナル抗体を製造する方法。
【請求項31】
下記の段階:
−動物、特に哺乳動物を請求項23に記載の精製されたHCVエンベロープド完全ウイルス粒子の組成物又は請求項28に従って製造されるようなものにより免疫化し、そして発生した抗体を回収し、
−発生した抗体の中で、精製されたHCVエンベロープド完全ウイルス粒子の上記した組成物中に含有された精製されたHCVエンベロープド完全ウイルス粒子に結合する能力に基づいてモノクローナル抗体を選ぶ、
段階を含む、請求項11のモノクローナル抗体を製造する方法。
【請求項32】
活性物質として請求項21若しくは22のサブウイルス粒子又は請求項27の組成物、及び薬学的に許容されうるベヒクルを含む医薬組成物。
【請求項33】
HCVエンベロープドサブウイルス粒子に対する又は請求項22に記載のHCVエンベロープド完全ウイルス粒子に対する免疫反応を誘発するための、請求項21若しくは22のHCVエンベロープドサブウイルス粒子又は請求項27の組成物の使用。
【請求項34】
HCV感染の診断、予防又は治療用の医薬を製造するための、請求項21若しくは22のHCVエンベロープドサブウイルス粒子又は請求項27の組成物の使用。
【請求項1】
天然のHCVウイルスエンベロープに特異的に結合することができる立体配座抗体。
【請求項2】
天然のHCV E2タンパク質に特異的に結合することができる、請求項1に記載の立体配座抗体。
【請求項3】
患者のHCV感染を中和することができる、請求項1又は2に記載の立体配座抗体。
【請求項4】
共有結合形態又は非共有結合形態下のHCV E1E2複合体を沈殿させることができる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の立体配座抗体。
【請求項5】
天然のHCV E1タンパク質に特異的に結合することができる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の立体配座抗体。
【請求項6】
天然のHCV E1タンパク質、天然のHCV E2タンパク質に特異的に結合することができ、そして共有結合形態又は非共有結合形態下のHCV E1E2複合体を沈殿させることができる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の立体配座抗体。
【請求項7】
下記の配列:
HCVタンパク質E1のアミノ酸297〜306(配列番号1)、
HCVタンパク質E2のアミノ酸480〜494(配列番号2)、
HCVタンパク質E2のアミノ酸613〜621(配列番号3)、
の少なくとも1つからなるエピトープに特異的に結合することができる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の立体配座抗体。
【請求項8】
下記の配列:
HCVタンパク質E1のアミノ酸297〜306(配列番号1)、
HCVタンパク質E2のアミノ酸480〜494(配列番号2)、
HCVタンパク質E2のアミノ酸613〜621(配列番号3)、
の各々からなるエピトープに特異的に結合することができる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の立体配座抗体。
【請求項9】
該抗体がモノクローナル抗体である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の立体配座抗体。
【請求項10】
受託番号CNCM I−2983の下で2003年3月19日にCNCM(Collection Nationale de Culture de Microorganismes, Institut Pasteur, Paris, France)に寄託されたハイブリドーマにより分泌される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の立体配座抗体。
【請求項11】
受託番号CNCM I−2982の下で2003年3月19日にCNCM(Collection Nationale de Culture de Microorganismes, Institut Pasteur, Paris, France)に寄託されたハイブリドーマにより分泌される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の立体配座抗体。
【請求項12】
受託番号CNCM I−2983の下で2003年3月19日にCNCM(Collection Nationale de Culture de Microorganismes, Institut Pasteur, Paris, France)に寄託されたハイブリドーマ。
【請求項13】
受託番号CNCM I−2982の下で2003年3月19日にCNCM(Collection Nationale de Culture de Microorganismes, Institut Pasteur, Paris, France)に寄託されたハイブリドーマ。
【請求項14】
活性物質として請求項1〜11に記載の抗体の少なくとも1つ及び薬学的に許容されうるベヒクルを含む医薬組成物。
【請求項15】
HCV感染の診断、予防又は治療のための医薬を製造するための、請求項1〜11に記載の抗体の少なくとも1つの使用。
【請求項16】
請求項10又は11の抗体の少なくとも1つに結合することができるエンベロープドウイルス粒子。
【請求項17】
請求項16エンベロープドウイルス粒子に結合する抗体。
【請求項18】
ヒトの血液、血漿又は血清の初めのサンプル由来のHCVウイルス粒子の組成物であって、HCV RNAコピーの濃度が、それが由来するヒトの血液、血漿又は血清の初めのサンプル中のHCV RNAコピーの濃度より約100〜1000倍高い、特に約107コピー/mlより高い、組成物。
【請求項19】
HCV RNAコピーの数がタンパク質mg当り約108〜約109UIである、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
該組成物の容積が約0.1ml〜約10mlである、請求項18又は19に記載の組成物。
【請求項21】
HCV RNA及びHCVコアタンパク質を実質的に欠いている単離されたHCVエンベロープドサブウイルス粒子。
【請求項22】
該サブウイルス粒子が、請求項1〜11に記載の抗体のいずれかに結合する傾向がある、請求項21に記載の単離されたHCVエンベロープドサブウイルス粒子。
【請求項23】
HCV RNA、HCVコアタンパク質及HCVエンベロープを含有しそして請求項1〜11に記載の抗体のいずれかに結合する傾向がある精製されたHCVエンベロープド完全ウイルス粒子を含む組成物。
【請求項24】
下記の段階:
−HCV感染患者の清澄化された血漿分離交換法から生じるサンプルを少なくとも2回超遠心してHCVに富んだペレットを得、
−該HCVに富んだペレットを水性溶液中に再懸濁させてHCVウイルス粒子の組成物を得る、
段階を含む、HCVウイルス粒子の組成物を製造する方法。
【請求項25】
請求項24の方法に従って得られる如きHCVウイルス粒子の組成物。
【請求項26】
下記の段階:
−HCV感染患者の清澄化された血漿分離交換法から生じるサンプルを少なくとも2回超遠心してHCVに富んだペレットを得、
−該HCVに富んだペレットを水性溶液中に再懸濁させ、
−該再懸濁させたHCVに富んだペレットをショ糖密度勾配において超遠心して、再懸濁させたHCVに富んだペレットのエレメントをそれらの密度に従って画分に分離し、
−HCV RNAを実質的に含有せず、HCVコアタンパク質を実質的に含有せず、そして請求項10又は11のモノクローナル抗体に結合することができる粒子を含有する画分、特に、約1.13〜1.15g/mlのショ糖密度を有する画分を回収して、HCVエンベロープドサブウイルス粒子の組成物を得る、
段階を含む、HCVエンベロープドサブウイルス粒子の組成物を製造する方法。
【請求項27】
請求項26の方法に従って得られる如きHCVエンベロープドサブウイルス粒子の組成物。
【請求項28】
下記の段階:
−HCV感染患者の清澄化された血漿分離交換法から生じるサンプルを少なくとも2回超遠心してHCVに富んだペレットを得、
−該HCVに富んだペレットを水性溶液中に再懸濁させ、
−該再懸濁させたHCVに富んだペレットをショ糖密度勾配において超遠心して、再懸濁させたHCVに富んだペレットのエレメントをそれらの密度に従って画分に分離し、
−約5.105〜約106UI/mlのHCV RNA、約50〜約100pg/mlのHCVコアタンパク質を含有しそして請求項10又は11のモノクローナル抗体に結合することができる粒子を含有する画分、特に、約1.17〜1.21g/mlのショ糖密度を有する画分を回収して、精製されたHCVエンベロープド完全ウイルス粒子の組成物を得る、
段階を含む、精製されたHCVエンベロープド完全ウイルス粒子の組成物を製造する方法。
【請求項29】
請求項28の方法に従って得られる如き精製されたHCVエンベロープド完全ウイルス粒子の組成物。
【請求項30】
下記の段階:
−動物、特に哺乳動物を請求項18に記載のHCVウイルス粒子の組成物又は請求項24に従って製造されるようなものにより免疫化し、そして発生した抗体を回収し、
−発生した抗体の中で、HCVウイルス粒子の上記した組成物中に含有されたHCVウイルス粒子に結合する能力に基づいてモノクローナル抗体を選ぶ、
段階を含む、請求項10に記載のモノクローナル抗体を製造する方法。
【請求項31】
下記の段階:
−動物、特に哺乳動物を請求項23に記載の精製されたHCVエンベロープド完全ウイルス粒子の組成物又は請求項28に従って製造されるようなものにより免疫化し、そして発生した抗体を回収し、
−発生した抗体の中で、精製されたHCVエンベロープド完全ウイルス粒子の上記した組成物中に含有された精製されたHCVエンベロープド完全ウイルス粒子に結合する能力に基づいてモノクローナル抗体を選ぶ、
段階を含む、請求項11のモノクローナル抗体を製造する方法。
【請求項32】
活性物質として請求項21若しくは22のサブウイルス粒子又は請求項27の組成物、及び薬学的に許容されうるベヒクルを含む医薬組成物。
【請求項33】
HCVエンベロープドサブウイルス粒子に対する又は請求項22に記載のHCVエンベロープド完全ウイルス粒子に対する免疫反応を誘発するための、請求項21若しくは22のHCVエンベロープドサブウイルス粒子又は請求項27の組成物の使用。
【請求項34】
HCV感染の診断、予防又は治療用の医薬を製造するための、請求項21若しくは22のHCVエンベロープドサブウイルス粒子又は請求項27の組成物の使用。
【図2】
【図4】
【図6】
【図7】
【図10】
【図13】
【図4】
【図6】
【図7】
【図10】
【図13】
【公表番号】特表2007−528350(P2007−528350A)
【公表日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504931(P2006−504931)
【出願日】平成16年3月31日(2004.3.31)
【国際出願番号】PCT/EP2004/003412
【国際公開番号】WO2004/087760
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(500366598)インセルム(アンスティチュ・ナショナル・ドゥ・ラ・サンテ・エ・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・メディカル) (17)
【氏名又は名称原語表記】INSERM(INSTITUT NATIONAL DE LA SANTE ET DE LA RECHERCHE MEDICALE)
【出願人】(503148443)ビオメリュー・ソシエテ・アノニム (3)
【氏名又は名称原語表記】BIOMERIEUX SA
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年3月31日(2004.3.31)
【国際出願番号】PCT/EP2004/003412
【国際公開番号】WO2004/087760
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(500366598)インセルム(アンスティチュ・ナショナル・ドゥ・ラ・サンテ・エ・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・メディカル) (17)
【氏名又は名称原語表記】INSERM(INSTITUT NATIONAL DE LA SANTE ET DE LA RECHERCHE MEDICALE)
【出願人】(503148443)ビオメリュー・ソシエテ・アノニム (3)
【氏名又は名称原語表記】BIOMERIEUX SA
【Fターム(参考)】
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