説明

肝臓癌予後マーカー

本発明は、肝臓癌予後マーカー、前記肝臓癌予後マーカーの発現量の変化を検出する物質を含む肝臓癌予後推定用組成物、前記肝臓癌予後推定用組成物を含む肝臓癌予後推定用キット、前記肝臓癌予後マーカーを利用する肝臓癌予後推定方法、前記肝臓癌予後マーカーを活用した肝臓癌治療剤スクリーニング方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肝臓癌予後マーカー、前記肝臓癌予後マーカーの発現量の変化を検出する物質を含む肝臓癌予後推定用組成物、前記肝臓癌予後推定用組成物を含む肝臓癌予後推定用キット、前記肝臓癌予後マーカーを利用する肝臓癌予後推定方法、前記肝臓癌予後マーカーを活用した肝臓癌治療剤スクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
癌は、悪性腫瘍と同一の意味を有し、多様な原因で細胞の増殖調節機能に毀損を受け、このような非正常的な細胞が統制されず、過多に増殖し、周囲の組織及び臓器に侵入して腫塊を形成し、正常組織を破壊する状態を意味する。人体の各種組織で発生する癌は、速い成長、浸潤性(入り込むかまたは広がっていく)成長、転移(元の場所から離れたところまで移動する)などによって生命に危険をもたらすこととなる。
【0003】
癌のうち肝臓癌は、世界的に最も致命的な癌の1つとして知られており、特に、アジアとサハラ以南のアフリカで毎年約五十万人以上が肝臓癌で死亡していることが報告されている。肝臓癌は、大きく肝細胞自体から発生した原発性肝臓癌(肝細胞癌;hepatocellular carcinoma)と、他組織の癌が肝臓に転移されてきた転移性肝臓癌とに区分することができるが、肝臓癌の約90%以上は原発性肝臓癌であり、通常、肝臓癌とは、原発性肝臓癌を指称するものとして理解される。
【0004】
このような肝臓癌の発病原因のうちの多くは、B型肝炎ウイルスまたはC型肝炎ウイルスによる急性または慢性的な感染ということが報告されているが、肝臓癌の発病及び進行に関する細胞内の分子的メカニズムは、未だ明確に糾明されていない状態である。従来の研究によると、各種の成長因子遺伝子のような原‐腫瘍形成遺伝子(proto‐oncogene)が多様な原因によって腫瘍形成遺伝子(oncogene)に突然変異し、過発現するかまたは過活性を有する場合、あるいはRbタンパク質やp53タンパク質のような腫瘍形成抑制遺伝子(tumor suppressor gene)が多様な原因によって突然変異し、低発現するかまたは機能を失う場合、肝臓癌を始めとした多様な癌の発病と進行を誘発することが報告されている。特に、肝臓癌に関しては、変形されたp53、ベータ‐カテニン、AXINI、p21(WAF1/CIP1)及びp27 Kipなどの遺伝子が関連しているということが明らかになったりもしている。しかし、最近は、肝臓癌を始めとした多くの癌の発病及び進行は、特定のいくつかの遺伝子のみによって成されるものではなく、細胞周期、信号伝逹などと関連した多様な各種の遺伝子の複合的な相互作用で発病すると認識されており、従って、個別的な遺伝子やタンパク質の発現や機能にのみ重点を置くことから脱し、多様な遺伝子やタンパク質についての総体的な研究の必要性が台頭している。
【0005】
肝臓癌の予後(prognosis)は、肝臓癌が診断された後に肝臓癌の完治可能性、治療後の再発可能性、患者の生存可能性など、肝臓癌による患者の各種の状態を予測することを言うが、これは、疾病の深刻性、診断時点、治療経過などの多様な条件に依存して変わる。肝臓癌は、その予後によって好適に多様な治療方法が適用されて始めて効率的な治療が可能である。例えば、予後が良好であると推定される患者に対しては、攻撃的な化学治療や手術、放射線治療など、患者に深刻な副作用を引き起こす可能性がある危険な治療方法は止揚する必要があり、相対的に穏健且つ保存的で安全な治療方法を選択しなければならない。逆に、予後が不良であると推定される患者に対しては、化学治療や手術、放射線治療のような治療方法を積極的に動員し、生存の期間や確率を高めるために試みなければならない。
【0006】
現在までの研究によると、既に進行してしまった肝臓癌は、その予後が極めて不良であり、診断後6ヶ月以内に死亡し、平均生存期間が4ヶ月にしかならない高い致命率を示しているのに対し、大きさが3cm未満の小さな肝臓癌は、予後が良好であり、特別な治療なしでも1年間生存する確率が90%に達しており、手術をした場合、5年の生存率が40〜50%程度となることが知られている。しかし、肝臓癌患者の予後を正確に推定することは、従来の技術では非常に難しい。予後の正確な推定のためには、患者を危険群別に分類する分析方法が必要であるが、現在までは肝臓癌の予後を正確に推定することができる手段なしに、診断時の病理臨床学的な肝臓癌の段階と1次的外科治療にのみ依存して予後を判断している実情である。しかし、不幸にも肝臓癌の段階のみでは、各肝臓癌患者に対する予後を正確に判断することができない。
【0007】
CBSタンパク質(cystathionine beta‐synthase)は、ホモシスチン(homocysteine)をシスタチオニン(cystathionine)に変換させる酵素であって、トランス‐硫化経路で作用し、生体内のメチオニンの代謝に重要な役割を果たすことが知られている[J Biol Chem.1994 May 20;269(20):14835‐40]。
【0008】
NNMTタンパク質(nicotinamide N‐methyltransferase)は、ニコチンアミドとピリジンのN‐メチル化作用をする酵素であって、種々な薬物及び生体異物化合物(xenobiotic compound)の代謝に関与することが知られている[Genomics.1998 Sep 15;52(3):312‐24]。
【0009】
TKTタンパク質(transketolase)は、非‐酸化性ペントース‐フォスフェート経路で核心的な役割を果たす酵素であって、その群の一員としては、TKTL1(transketolase‐like 1)、TKTL2(transketolase‐like 2)が知られている[J Biol Chem.1993 Jan 15;268(2):1397‐404]。
【0010】
AIFM1タンパク質(apoptosis‐inducing factor、mitochondrion‐associated,1)は、AIFとしても知られているプラボタンパク質であり、細胞死滅(apoptosis)が起こると、このタンパク質は核に移動し、染色体凝集及び断片化を起こすこととなり、また、ミトコンドリアからシトクロムcとカスパーゼ‐9の分泌を誘導することが知られている[Nature.1999 Feb 4;397(6718):441‐6]。
【0011】
AKTタンパク質は、AKT2、AKT3と連関しているタンパク質であり、ホスファチジルイノシトール3‐キナーゼを通じた成長因子信号、すなわち、血小板‐由来成長因子(PDGF)、上皮細胞成長因子(EGF)、インシュリン及びインシュリン‐類似成長因子I(IGF‐I)などの信号を伝達する役割を果たし、活性化される場合、細胞死滅関連のタンパク質をリン酸化して不活性化することができると知られている[Proc Natl Acad Sci USA.1987 Jul;84(14):5034‐7]。
【0012】
ATG3タンパク質(autophagy related 3 homolog)は、ヒトのATG8同族体であるGATE‐16、GABARAP、MAP‐LC3と脂質との結合に関与し、ATG3が欠如したマウスは、オートファゴソーム(autophagosome)が形成できず、生後1日で死ぬことが報告された[J Biol Chem.2002 Apr 19;277(16):13739‐44.Epub 2002 Feb 1]。
【0013】
AGT5タンパク質(autophagy related 5 homolog)は、自食作用(autophagy)に関与するが、ATG5は、ATG7とATG10の作用を通じてATG12‐ATG5の接合を成すようになり、このATG12‐ATG5は、オートファゴソームの膜に移動し、ATG8とホスファチジルエタノールアミンとの結合に作用し、ATG5がないマウスは、オートファゴソームが形成できず、生まれながら死ぬこととなり、切られたATG5は、ミトコンドリアからシトクロムcの分泌とカスパーゼの活性化を誘導することができると知られている[Nature 432:1032‐1036(2004)]。
【0014】
ATG7タンパク質(autophagy related 7 homolog)は、自食作用に関与するが、ATG7は、ATG10と共にATG12‐ATG5の接合を成すようになり、これは、ATG3と共にATG8とホスファチジルエタノールアミンとの結合に関与し、ATG7がないマウスは、オートファゴソームが形成できず、生まれながら死ぬことが報告された[J Biol Chem.2001 Jan 19;276(3):1701‐6.Epub 2000 Nov 28]。
【0015】
ATG12タンパク質(autophagy related 12 homolog)は、自食作用に関与するが、ATG12は、ATG7とATG10の作用を通じてATG12‐ATG5の接合を成し、このATG12‐ATG5は、オートファゴソームの膜に移動し、ATG8とホスファチジルエタノールアミンとの結合に作用すると知られている[J Biol Chem.1998 Dec 18;273(51):33889‐92]。
【0016】
BAXタンパク質(BCL2‐associated X protein)は、BCL2タンパク質群の1つであって、BCL2と結合して細胞死滅促進作用をし、ミトコンドリアの膜電位損失とシトクロムcの分泌にも関与することが知られている[Cell.1993 Aug 27;74(4):609‐19]。
【0017】
BCL2タンパク質(B‐cell lymphoma protein 2)は、ミトコンドリアの膜タンパク質であって、細胞死滅を抑制する作用をし、ミトコンドリアからシトクロムcの分泌抑制、細胞死滅‐活性化因子との結合を通じてカスパーゼの活性化及び細胞死滅を抑制することが知られている[Proc Natl Acad Sci USA.1986 Jul;83(14):5214‐8]。
【0018】
BCL2L1タンパク質(Bcl‐2‐like 1 protein)は、BCL2タンパク質群の一員であって、ミトコンドリアの外膜に位置し、ミトコンドリアの膜チャネル共有に関与することが知られているが、2つの形態のイソ型で存在しており、より長い形態のBCL‐XLは細胞死滅を抑制し、より短い形態のBCL‐XSは細胞死滅を促進することが知られている[Cell.1993 Aug 27;74(4):597‐608]。
【0019】
BNIP3タンパク質(BCL2/adenovirus E1B 19kD‐interacting protein 3)は、E1B 19 kDaタンパク質及びBCL2と結合することができ、細胞死滅と自食作用を誘導する作用をすることが知られている[J Exp Med.1997 Dec 15;186(12):1975‐83]。
【0020】
CASP8タンパク質(caspase 8、apoptosis‐related cysteine protease)は、カスパーゼの群に属する酵素であって、FASによる細胞死滅メカニズムの初期に作用するカスパーゼであり、これは、FADDとの結合及びタンパク質分解性切断を通じて活性化されると、種々の他のカスパーゼを活性化させることが知られている[Proc Natl Acad Sci USA.1996 Dec 10;93(25):14486‐91;Biochem J.1997 Aug 15;326(Pt1):1‐16]]。
【0021】
CSE1Lタンパク質(CSE1 chromosome segregation 1‐like)は、インポーチン‐αを核から細胞質に再度送り出す役割を果たし、細胞死滅または細胞増殖にも関与することが知られている[Proc Natl Acad Sci USA.1995 Oct 24;92(22):10427‐31]。
【0022】
DIABLOタンパク質(Direct IAP‐binding protein with low pI)は、ミトコンドリアに位置するタンパク質であり、細胞死滅が起こると、細胞質に移動してIAP(inhibitor of Apoptosis protein)と結合し、カスパーゼの活性化に役立つことが知られている[Cell.2000 Jul 7;102(1):43‐53]。
【0023】
DRAMタンパク質(damage‐regulated autophagy modulator)は、リソソームの膜タンパク質であり、p53腫瘍抑制子(tumor suppressor)によって制御される自食作用に関与し、p53によって制御される細胞死滅にも必須的であると知られている[Cell.2006 Jul 14;126(1):121‐34]。
【0024】
E2F1タンパク質(E2F transcription factor 1)は、E2F群の転写因子の一員であって、細胞周期と腫瘍抑制子の制御と密接な関連があり、Rbタンパク質と結合して細胞の成長を促進するか、またはp53と関連する細胞死滅を誘導することが知られている[Gene.1996 Sep 16;173(2):163‐9]。
【0025】
FASタンパク質(APO‐1、CD95、TNFRSF6)は、TNF受容体群の一員であって、FASリガンドの信号を受け、FADD(Fas‐associated death domain protein)、カスパーゼ8、カスパーゼ10と共にDISC(death‐inducing signaling complex)を構成し、細胞死滅を誘導することが知られている[J Biol Chem.1992 May 25;267(15):10709‐15]。
【0026】
FRAP1タンパク質(Mammalian target of rapamycin)は、mTORとしても知られており、細胞内のDNA損傷、栄養枯渇などのストレスに対する反応を媒介し、FRAP1を含むTORC2複合体は、FKBP12‐ラパマイシン複合体の細胞周期停止と免疫抑制作用のターゲットとなることが知られている[Nature.1994 Jun 30;369(6483):756‐8]。
【0027】
LAMP1タンパク質(lysosomal‐associated membrane protein 1)は、CD107a抗原としても知られており、膜糖タンパク質の一種であって、癌細胞の転移に関与すると考えられる[J Biol Chem.1990 May 5;265(13):7548‐51]。
【0028】
LC3タンパク質(MAP1 light chain 3‐like protein 1)は、微細小管‐連関タンパク質であって、微細小管と細胞骨格の相互作用に関与し、LC3タンパク質は、酵母のATG8同族体であって、種々の自食作用のタンパク質の作用によってホスファチジルエタノールアミンと結合し、オートファゴソームを構成することが知られている[J Biol Chem.1994 Apr 15;269(15):11492‐7]。
【0029】
PRKAA1タンパク質(AMP‐activated protein kinase、catalytic、alpha‐1)は、AMPKの触媒性サブユニットであり、このAMPKは、細胞内のエネルギー水準を感知する役割を果たすタンパク質であって、AMP/ATPの割合が増加すると活性化され、種々な生合成作用を制限する役割を果たすことが知られている[FEBS Lett.1994 Dec 12;356(1):117‐21]。
【0030】
PTENタンパク質(phosphatase and tensin homolog)は、腫瘍抑制子として知られており、様々な種類の癌で不活性化されており、タンパク質フォスファターゼであると共にホスファチジルイノシトール‐3,4,5‐トリスフォスフェート 3‐フォスファターゼであって、PI3K‐AKT/PKB信号の伝達を弱化させる作用をすることが知られている[Nat Genet.1997 Apr;15(4):356‐62]。
【0031】
ULK1タンパク質(Unc‐51‐like kinase 1)は、軸索突起の成長に関連するセリン/トレオニンキナーゼであり、ATG1同族体としても知られており、自食作用と関連してmTORによってリン酸化されることが知られている[Genomics.1998 Jul 1;51(1):76‐85]。
【0032】
XIAPタンパク質(X‐linked inhibitor of apoptosis protein)は、IAP群の一員であって、IAPの中でも強い細胞死滅抑制効果を有しており、腫瘍怪死因子受容体‐連関因子TRAF1、TRAF2との結合を通じた細胞死滅抑制、カスパーゼ活性抑制の作用をすることが知られている[Nature.1996 Jan 25;379(6563):349‐53]。
【0033】
しかし、前記タンパク質は、具体的に肝臓癌組織で発現量や発現パターンがどのように変化するか、肝臓癌の予後推定においてどのように活用することができるかについては知られておらず、現在まで前記タンパク質や前記タンパク質をコーディングする遺伝子を肝臓癌の予後マーカーとして用いた例はなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0034】
【非特許文献1】Nature.1999 Feb 4;397(6718):441‐6
【非特許文献2】Proc Natl Acad Sci USA.1987 Jul;84(14):5034‐7
【非特許文献3】J Biol Chem.2002 Apr 19;277(16):13739‐44.Epub 2002 Feb 1
【非特許文献4】Nature 432:1032‐1036(2004)
【非特許文献5】J Biol Chem.2001 Jan 19;276(3):1701‐6.Epub 2000 Nov 28
【非特許文献6】J Biol Chem.1998 Dec 18;273(51):33889‐92
【非特許文献7】Cell.1993 Aug 27;74(4):609‐19
【非特許文献8】Proc Natl Acad Sci USA.1986 Jul;83(14):5214‐8
【非特許文献9】Cell.1993 Aug 27;74(4):597‐608
【非特許文献10】J Exp Med.1997 Dec 15;186(12):1975‐83
【非特許文献11】Proc Natl Acad Sci USA.1996 Dec 10;93(25):14486‐91
【非特許文献12】Biochem J.1997 Aug 15;326(Pt1):1‐16
【非特許文献13】Proc Natl Acad Sci USA.1995 Oct 24;92(22):10427‐31
【非特許文献14】Cell.2000 Jul 7;102(1):43‐53
【非特許文献15】Cell.2006 Jul 14;126(1):121‐34
【非特許文献16】Gene.1996 Sep 16;173(2):163‐9
【非特許文献17】J Biol Chem.1992 May 25;267(15):10709‐15
【非特許文献18】Nature.1994 Jun 30;369(6483):756‐8
【非特許文献19】J Biol Chem.1990 May 5;265(13):7548‐51
【非特許文献20】J Biol Chem.1994 Apr 15;269(15):11492‐7
【非特許文献21】FEBS Lett.1994 Dec 12;356(1):117‐21
【非特許文献22】Nat Genet.1997 Apr;15(4):356‐62
【非特許文献23】Genomics.1998 Jul 1;51(1):76‐85
【非特許文献24】Nature.1996 Jan 25;379(6563):349‐53
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0035】
本発明は、肝臓癌の予後と関連するバイオマーカーを提供し、肝臓癌患者の予後推定が簡便且つ正確に行われるようにし、さらに、肝臓癌の治療剤の開発に重要な始発点を提供することを目的とする。これによって、本発明においては、肝臓癌予後マーカー、前記肝臓癌予後マーカーの発現量の変化を検出する物質を含む肝臓癌予後推定用組成物、前記肝臓癌予後推定用組成物を含む肝臓癌予後推定用キット、前記肝臓癌予後マーカーを利用する肝臓癌予後推定方法、前記肝臓癌予後マーカーを活用した肝臓癌治療剤スクリーニング方法を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0036】
本発明者は、肝臓癌の発病が確認された多数の患者から採取した肝臓癌組織の遺伝子の発現程度を比較した後、各患者の経過によって特異的に過量または少量発現する遺伝子を検出し、肝臓癌予後推定に用いられ得る肝臓癌予後マーカーを発掘した。
【0037】
本発明の第1の局面は、下記の遺伝子からなる群より選ばれる1つまたは2つ以上の組み合わせを含む肝臓癌予後マーカーに関する:
CBS(cystathionine beta‐synthase;NCBI GI:209862802;配列番号79);
NNMT(nicotinamide N‐methyltransferase;NCBI GI:62953139;配列番号80);
TKT(transketolase;NCBI GI:205277461;配列番号81);
AIFM1(Apoptosis‐inducing factor 1、mitochondrial;NCBI GI:22202627;配列番号82);
AKT1(RAC‐alpha serine/threonine‐protein kinase;NCBI GI:62241010;配列番号83);
ATG3(Autophagy‐related protein 3;NCBI GI:34147490;配列番号84);
ATG5(Autophagy protein 5;NCBI GI:92859692;配列番号85);
ATG7(Autophagy‐related protein 7;NCBI GI:222144225;配列番号86);
ATG12(Autophagy‐related protein 12;NCBI GI:38261968;配列番号87);
BAX(Apoptosis regulator BAX;NCBI GI:34335114;配列番号88);
BCL2(Apoptosis regulator Bcl‐2;NCBI GI:72198188;配列番号89);
BCL2L1(Apoptosis regulator Bcl‐X;NCBI GI:20336333;配列番号90);
BNIP3(BCL2/adenovirus E1B 19 kDa protein‐interacting protein 3;NCBI GI:7669480;配列番号91);
CASP8(Caspase‐8;NCBI GI:122056470;配列番号92);
CSE1L(Exportin‐2;NCBI GI:29029558;配列番号93);
DIABLO(Diablo homolog、mitochondrial;NCBI GI:218505810;配列番号94);
DRAM(Damage‐regulated autophagy modulator;NCBI GI:110825977;配列番号95);
E2F1(Transcription factor E2F1;NCBI GI:168480109;配列番号96);
FAS(Tumor necrosis factor receptor superfamily member 6;NCBI GI:23510419;配列番号97);
FRAP1(FKBP12‐rapamycin complex‐associated protein;NCBI GI:206725550;配列番号98);
LAMP1(Lysosome‐associated membrane glycoprotein 1;NCBI GI:112380627;配列番号99);
LC3[MAP1LC3A](Microtubule‐associated proteins 1A/1B light chain 3A;NCBI GI:31563519;配列番号100);
PRKAA1(5'‐AMP‐activated protein kinase catalytic subunit alpha‐1;NCBI GI:94557300;配列番号101);
PTEN(Phosphatidylinositol‐3,4,5‐trisphosphate 3‐phosphatase and dual‐specificity protein phosphatase PTEN;NCBI GI:110224474;配列番号102);
ULK1(Serine/threonine‐protein kinase ULK1;NCBI GI:225637564;配列番号103);及び
XIAP(Baculoviral IAP repeat‐containing protein 4;NCBI GI:32528298;配列番号104)。
【0038】
肝臓癌の予後は、多様な観点から推定することができるが、代表的に再発可能性、生存可能性、無病生存可能性の観点から判断される。本明細書において記述された研究は、多数の肝臓癌患者の肝臓癌組織から遺伝子発現プロファイルを得て、これを再発可能性、生存可能性、無病生存可能性の観点を全て考慮した統計的データ処理過程を経て、有意に発現量の差が発生する遺伝子を検出し、肝臓癌の予後推定を可能にするマーカーを発掘する方式で進められた。
【0039】
本明細書において、“肝臓癌予後マーカー”とは、肝臓癌発病後、予後が良好または不良な患者を予測する基準となる遺伝子マーカーを指称する。本発明において、このマーカーは、予後が良好な患者の肝臓癌組織内での発現量が、実験的に設定された基準値と比較して特徴的に多いかまたは少ない。具体的に、本発明において、このマーカーは、予後が良好な患者と不良な患者の肝臓癌組織内での発現の差に基づいて算出されるp‐値が有意に低い。好ましくは、前記p‐値は0.05未満である。
【0040】
本発明は、肝臓癌の発病が確認された多数の患者の肝臓癌組織を対象として、治療経過が良好または不良な患者の肝臓癌組織の遺伝子発現プロファイルを基準値と比較して分析したものであるため、このように確認されたマーカーは、肝臓癌の予後が良好または不良な患者をそうではない患者と特異的に区分することができ、従って、肝臓癌の予後を推定するのに有用に用いられ得る。さらに、このように確認されたマーカーが特定予後の患者の肝臓癌組織で特異的に高発現または低発現するものであるという点を考えると、このマーカーの生理学的機能は、肝臓癌の発病及び進行、特に、前記予後と関連する生理学的機能に直接的に係っているものである可能性があり、従って、このマーカーは、肝臓癌の発病及び進行のメカニズムを研究するか、または肝臓癌治療剤の開発のための標的としても有用に用いられ得る。
【0041】
特に、本発明の第1の局面の肝臓癌予後マーカーは、従来の由来がない程度の多数の患者の肝臓癌組織を統計的に分析して発掘したものであるため、極めて一部の患者の肝臓癌組織の遺伝子発現プロファイルに基づいて発掘された従来の肝臓癌関連マーカーに比べて、さらに有意性があり、臨床的に活用価値が高いマーカーであり、肝臓癌予後推定において、より正確な予測力を保有するものである。
【0042】
本発明の第2の局面は、前記第1の局面の肝臓癌予後マーカーの発現量、発現パターン、または両者全てを特異的に検出する物質を含む肝臓癌予後推定用組成物に関する。
ここで、各肝臓癌予後マーカーの発現量や発現パターンは、該当遺伝子の転写によって生成されたmRNAの量やパターンを確認する通常の生化学的分析方法で検出され得る。このようなmRNAの量やパターンを確認するための分析方法としては、RT‐PCR、競争的RT‐PCR(Competitive RT‐PCR)、リアルタイムRT‐PCR(Real‐time RT‐PCR)、RNase保護分析法(RNase protection assay)、ノーザンブロット(Northern blot)、DNAマイクロアレイ(microarray)などがあるが、その他にも、当業界において通常行われる如何なる方法であっても用いられ得る。
【0043】
この分析方法によって、肝臓癌患者の生物学的試料におけるmRNAの量やパターンを基準値と比較することができ、これに基づいて本発明の肝臓癌予後マーカーの発現量、発現パターン、または両者全ての差を検出し、肝臓癌患者の予後を推定することが可能になる。本明細書において“生物学的試料”とは、肝臓癌予後マーカーの発現量や発現パターン、または肝臓癌予後マーカーがコーディングするタンパク質の存在量や存在パターンを検出することができる人体から分離した細胞、組織などを意味し、尿、血液、血漿、血清などを例として挙げることができるが、特にこれらに制限されるものではない。
【0044】
mRNAの量やパターンをRT‐PCRで測定するためのキットは、本発明の肝臓癌予後マーカーのmRNAに特異的なプライマーを含む。本明細書において“プライマー”とは、テンプレート(template)と相補的に結合することができ、逆転写酵素またはDNA重合酵素がテンプレートの複製を開始することができるようにする自由3末端水酸化基(free 3' hydroxyl group)を有する核酸配列を意味する。プライマーは、特定遺伝子の核酸配列に相補的な配列を有するヌクレオチドであって、約7bp〜50bpの長さ、好ましくは約10bp〜30bpの長さが用いられ得る。その他、RT‐PCRキットは、具体的な実施様相によって、テストチューブまたは他の適切なコンテナ、反応緩衝液、デオキシヌクレオチド(dNTPs)、Taq‐ポリメラーゼ及び逆転写酵素のような酵素、DNAse、RNAse抑制剤DEPC‐水(DEPC water)、滅菌水などを含むことができる。プライマーは、適切な緩衝溶液及び温度で重合反応(すなわち、DNA重合酵素または逆転写酵素)のための試薬及び異なる4つのヌクレオシドトリフォスフェートの存在下でDNA合成を開始させることができる。プライマーは。DNA合成の開始点として作用するプライマーの基本性質を変化させないさらに他の塩基配列を含むこともできる。プライマーは、広く公知になっている方法を用いて化学的に合成することができ、このような核酸配列はまた、当該分野において公知になっている多くの手段を利用して変形させることができる。
【0045】
本発明の第2の局面における“肝臓癌予後マーカーの発現量、発現パターン、または両者全てを特異的に検出する物質”は、該当肝臓癌予後マーカーの発現量や発現パターンの分析方法において、該当のマーカーに特異的に用いられ得る任意の物質またはそれら2つ以上の組み合わせであり得、必ずしもRT‐PCR用プライマーに制限されるものではない。本発明の第2の局面は、対象肝臓癌患者の肝臓癌組織での肝臓癌予後マーカーの発現量や発現パターンを基準値と比較してその差を検出することに技術的特徴があるものであるため、このような差の検出を可能にする物質は、どのようなものであっても“肝臓癌予後マーカーの発現量、発現パターン、または両者全てを特異的に検出する物質”として用いられ得、発明が目的とする技術的効果を達成することができ、当業者であれば、当業界における平均的な知識を参考にして具体的な実施様相によって適当な物質を選択/選別して用いることができるものである。
【0046】
本発明の第3の局面は、前記第1の局面における肝臓癌予後マーカーがコーディングするタンパク質の存在量、存在パターン、または両者全てを特異的に検出する物質を含む肝臓癌予後推定用組成物に関する。
【0047】
本発明の肝臓癌予後マーカーの発現量や発現パターンは、前記本発明の第2の局面のように、各マーカーの発現によるmRNAの量やパターンを検出する方法を用いることの他にも、試料内で各マーカーがコーディングするタンパク質の存在量や存在パターンを検出することにより、各マーカーの発現量や発現パターンを類推する方法を用いることもできる。
【0048】
本発明において、肝臓癌予後マーカーがコーディングするタンパク質の存在量や存在パターンの特異的な検出は、生物学的試料内に本発明の肝臓癌予後マーカーがコーディングするタンパク質がどれほど存在するか、及びどのようなパターンで存在するかを確認する過程を意味し、例えば、前記肝臓癌予後マーカーがコーディングするタンパク質に対して特異的に結合する抗体を利用してその存在量や存在パターンを確認する過程が活用され得る。本明細書において“抗体”とは、抗原の抗原決定基(epitope)に特異的に結合することができるタンパク質を意味し、多クローン抗体、単一クローン抗体及び組み換え抗体を全て含む概念である。
【0049】
抗体を利用してタンパク質の存在量や存在パターンを測定する方法としては、ウエスタンブロット、ELISA(enzyme linked immunosorbent assay)、放射線免疫分析(Radioimmunoassay)、放射免疫拡散法(radioimmunodiffusion)、オークタロニー(Ouchterlony)免疫拡散法、ロケット(rocket)免疫電気泳動、組織免疫染色、免疫沈澱分析法(Immunoprecipitation Assay)、補体固定分析法(Complement Fixation Assay)、FACS、タンパク質チップ(protein chip)などがあるが、その他にも、当業界において通常行われる如何なる方法であっても用いられ得る。
【0050】
この分析方法により、対象肝臓癌患者の生物学的試料での抗原‐抗体複合体の形成量やその形成パターンと基準値を比較することができ、これに基づいて本発明の肝臓癌予後マーカーがコーディングするタンパク質の存在量や存在パターンを判断することができ、窮極的に肝臓癌患者の予後を推定することができるようになる。
【0051】
ここで、“抗原‐抗体複合体”とは、肝臓癌予後マーカーがコーディングするタンパク質とこれに対して特異的な抗体との結合物を意味し、抗原‐抗体複合体の形成量や形成パターンは、通常2次抗体に連係された検出ラベル(detection label)のシグナルの大きさ及びパターンを検出することにより測定が可能である。このような検出ラベルは、酵素、蛍光物、リガンド、発光物、微小粒子、レドックス分子、放射線同位元素などを例として挙げることができるが、必ずしもこれらに制限されるものではない。検出ラベルとして酵素が用いられる場合、利用可能な酵素には、β‐グルクロニダーゼ、β‐D‐グルコシダーゼ、β‐D‐ガラクトシダーゼ 、ウレアーゼ、ペルオキシダーゼまたはアルカリ性フォスファターゼ、アセチルコリンエステラーゼ、グルコースオキシダーゼ、ヘキソキナーゼとGDPase、RNase、グルコースオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、ホスホエノールピルベートカルボキシラーゼ、アスパルテートアミノトランスフェラーゼ、ホスフェノールピルベートデカルボキシラーゼ、β‐ラクタマ‐ゼなどがあるが、これらに制限されない。検出ラベルとして蛍光物が用いられる場合、利用可能な蛍光物には、フルオレセイン、イソチオシアネート、ロダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o‐フタルアルデヒド、フルオレスカミンなどがあるが、これらに制限されない。検出ラベルとしてリガンドが用いられる場合、利用可能なリガンドには、ビオチン誘導体などがあるが、これに制限されない。検出ラベルとして発光物が用いられる場合、利用可能な発光物には、アクリジニウムエステル、ルシフェリン、ルシフェラーゼなどがあるが、これらに制限されない。検出ラベルとして微小粒子が用いられる場合、利用可能な微小粒子には、コロイド金、着色されたラテックスなどがあるが、これらに制限されない。検出ラベルとしてレドックス分子が用いられる場合、利用可能なレドックス分子には、フェロセン、ルテニウム錯化合物、ビオロゲン、キノン、Tiイオン、Csイオン、ジイミド、1,4‐ベンゾキノン、ハイドロキノン、K4W(CN)8、[Os(bpy)3]2+、[RU(bpy)3]2+、[MO(CN)8]4‐などがあるが、これらに制限されない。検出ラベルとして放射性同位元素が用いられる場合、利用可能な放射性同位元素には3H、14C、32P、35S、36Cl、51Cr、57Co、58Co、59Fe、90Y、125I、131Iまたは186Reなどがあるが、これらに制限されない。
【0052】
本発明の第3の局面における“肝臓癌予後マーカーがコーディングするタンパク質の存在量、存在パターン、または両者全てを特異的に検出する物質”は、肝臓癌予後マーカーがコーディングするタンパク質の存在量や存在パターンを検出するための分析方法において、そのマーカーがコーディングするタンパク質に対して特異的に用いられ得る任意の物質であり得、必ずしも抗体に制限されるものではない。本発明の第3の局面は、対象肝臓癌患者の生物学的試料で肝臓癌予後マーカーがコーディングするタンパク質の存在量や存在パターンを基準値と比較してその差を検出することに技術的特徴があるものであるため、このような差の検出を可能にする物質であれば、どのようなものであっても“肝臓癌予後マーカーがコーディングするタンパク質の存在量、存在パターン、または両者全てを特異的に検出する物質”として用いられ得、発明が目的とする技術的効果を達成することができ、当業者であれば、当業界における平均的な知識及び公知技術を参考にし、具体的な実施様相によって適当な物質を特別な困難なしに選択/選別して用いることができるものである。
【0053】
本発明の第4の局面は、前記本発明の第2の局面または第3の局面の肝臓癌予後推定用組成物を含む肝臓癌予後推定用キットに関する。
本発明の肝臓癌予後推定用キットは、肝臓癌予後推定用組成物に含まれる肝臓癌予後マーカーの発現量、発現パターン、または両者全てを特異的に検出する物質、または肝臓癌予後マーカーがコーディングするタンパク質の存在量、存在パターン、または両者全てを特異的に検出する物質の他、遺伝子発現量や発現パターンの分析方法、またはタンパク質の存在量や存在パターンの分析方法に適した1種類またはそれ以上の他の構成成分、溶液または装置をさらに含むことができる。例えば、前記診断キットが遺伝子の発現量や発現パターンを検出するための診断キットである場合は、この診断キットは、RT‐PCRを行うために必要な必須成分を含む診断キットであり得、このようなRT‐PCRキットは、マーカー遺伝子のmRNAに対する特異的なそれぞれのプライマーの他にも、具体的な実施様相によって、例えば、テストチューブまたは他の適切なコンテナ、反応緩衝液、デオキシヌクレオチド(dNTPs)、Taq‐ポリメラーゼ及び逆転写酵素のような酵素、DNAse、RNAse抑制剤DEPC‐水(DEPC water)、滅菌水、定量対照群として用いられる遺伝子に特異的なプライマー対などを含むことができる。一方、前記診断キットがタンパク質の存在量や存在パターンを検出するための診断キットである場合は、この診断キットは、例えば、ELISAを行うために必要な必須成分を含む診断キットであり得、このようなELISAキットは、結合した抗体を検出することができる成分、例えば、標識された2次抗体、発色団(chromopores)、酵素(例えば、抗体と接合した酵素)及びその基質、及び定量対照群のタンパク質に特異的な抗体などを含むことができる。また、具体的な実施様相によって、前記診断キットは、DNAマイクロアレイまたはタンパク質マイクロアレイを含むことができる。
【0054】
本発明の第5の局面は、前記本発明の第2の局面の肝臓癌予後推定用組成物を対象肝臓癌患者から採取した生物学的試料に処理する第1のステップ;及び第1のステップの処理結果を基準値と対比して第1項の肝臓癌予後マーカーの発現量、発現パターン、または両者全ての差を検出する第2のステップを含む肝臓癌予後推定方法に関する。また、さらに、本発明の第5の局面は、前記本発明の第3の局面の肝臓癌予後用組成物を肝臓癌患者から採取した生物学的試料に処理する第1のステップ;及び第1のステップの処理結果を基準値と対比して第1項の肝臓癌予後マーカーがコーディングするタンパク質の存在量、存在パターン、または両者全ての差を検出する第2のステップを含む肝臓癌予後推定方法に関する。
【0055】
例えば、肝臓癌の予後が良好な患者の肝臓癌組織でさらに多く発現する肝臓癌予後マーカーの発現量の差を検出する場合は、もし、対象肝臓癌患者の生物学的試料での前記マーカーの発現量が基準値よりも多ければ、これは、肝臓癌の予後が相対的に良好であるという点を提示するものであると言える。一方、例えば、肝臓癌の予後が不良な患者の肝臓癌組織でさらに多く発現する肝臓癌予後マーカーの発現量の差を検出する場合は、もし、対象肝臓癌患者の生物学的試料での前記マーカーの発現量が基準値より多ければ、これは、肝臓癌の予後が相対的に不良であるという点を提示するものであると言える。
【0056】
一方、例えば、肝臓癌の予後が良好な患者の肝臓癌組織でさらに多く発現する肝臓癌予後マーカーがコーディングするタンパク質の存在量の差を検出する場合は、もし、対象肝臓癌患者の生物学的試料での前記マーカーがコーディングするタンパク質の存在量が基準値より多ければ、これは、肝臓癌の予後が相対的に良好であるという点を提示するものであると言える。一方、例えば、肝臓癌の予後が不良な患者の肝臓癌組織でさらに多く発現する肝臓癌予後マーカーがコーディングするタンパク質の存在量の差を検出する場合は、もし、対象肝臓癌患者の生物学的試料での前記マーカーがコーディングするタンパク質の存在量が基準値より多ければ、これは、肝臓癌の予後が相対的に不良であるという点を提示するものであると言える。
【0057】
本発明の第6の局面は、本発明の第1の局面の肝臓癌予後マーカーを活用した肝臓癌治療剤のスクリーニング方法に関する。本発明の第1の局面の肝臓癌予後マーカーは、肝臓癌患者の予後による発現様相の差が際立っているものであるため、肝臓癌の発病や進行、特に、前記予後と関連した生理学的機能に直接関与する遺伝子である可能性があり、従って、前記マーカーがコーディングするタンパク質は、肝臓癌の発病や進行のメカニズムを研究するか、または肝臓癌治療剤の開発のための標的タンパク質としても有用に用いられ得るものである。すなわち、本発明の第1の局面の肝臓癌予後マーカーは、肝臓癌の治療剤の開発における重要な前提を解決したものであるため、従って、このマーカーを利用して肝臓癌の治療剤をスクリーニングする方法もまた、本発明の範疇に属する。
【0058】
本発明の第6の局面の例としては、試験化合物が本発明の第1の局面の肝臓癌予後マーカーの発現を促進または抑制するか否かを確認するステップを含む肝臓癌治療剤のスクリーニング方法を挙げることができる。このような治療剤をスクリーニングする方法としては、例えば、RT‐PCR、競争的RT‐PCR(Competitive RT‐PCR)、リアルタイムRT‐PCR(Real‐time RT‐PCR)、RNase保護分析法(RNase protection assay)、ノーザンブロット、DNAマイクロアレイ、SAGE[Serial Analysis of Gene Expression;Velculescu et al,Science 270:484‐7]、MPSS[Massively Parellel Signature Sequencing;Brenner et al,PNAS.USA.97、1665‐1670]などを活用することができるが、その他にも、必要に応じて当業界において知られている多数の公知の方法を用いることができる。
【0059】
一方、本発明の第6の局面の更なる例としては、本発明の第1の局面の肝臓癌予後マーカーがコーディングするタンパク質に試験化合物を結合させる第1のステップ;及び試験化合物が前記タンパク質の生理学的活性を促進または抑制するか否かを確認する第2のステップを含む肝臓癌治療剤のスクリーニング方法を挙げることができる。このような治療剤をスクリーニングする方法としては、本発明の第1の局面の肝臓癌早期診断用タンパク質性マーカーをアフィニティーコラムに固定させ、これを試料と接触させて精製する方法[Pandya et al,Virus Res 87:135‐143、2002]、ツー‐ハイブリッド(two‐hybrid)方法を利用する方法、ウエスタンブロット、ハイスループットスクリーニング方法[High‐Throughput Screening;Aviezer et al,J Biomol Screen 6:171‐7、2001]などを活用することができるが、その他にも、必要に応じて当業界において知られている多数の公知の方法を用いることができる。
【0060】
本発明の第6の局面において、スクリーニングに用いるための試験化合物としては、例えば、組織抽出液、遺伝子ライブラリーの発現産物、合成化合物、合成ペプチド、天然化合物などが用いられ得るが、これらに制限されない。
【0061】
本発明の第7の局面は、本発明の第1の局面の肝臓癌予後マーカーがコーディングするタンパク質を特異的に認識する抗体に関する。
本発明の第1の局面の肝臓癌予後マーカーを特異的に認識する抗体は、肝臓癌予後マーカーがコーディングするタンパク質の存在量や存在パターンを特異的に検出する代表的な物質であり、従って、肝臓癌の予後推定のために有用に用いることができる物質に該当する。さらに、場合によっては、肝臓癌の発病や進行に重要な役割を担当するタンパク質の活性を特異的に促進または抑制することもでき、これによって肝臓癌に対する治療剤としても活用され得る。
【0062】
本発明の第1の局面の肝臓癌予後マーカーが発掘されたため、これを利用して各肝臓癌予後マーカーがコーディングするタンパク質に対する多クローン抗体、単一クローン抗体及び組み換え抗体を製造することは、当業界において広く公知になっている技術を利用して容易に行われ得る。
【0063】
多クローン抗体は、前記した本発明の第1の局面の肝臓癌予後マーカーがコーディングするタンパク質抗原を動物に注射し、動物から採血し、抗体を含む血清を得る、当業界において広く公知になっている方法によって生産することができる。このような多クローン抗体は、山羊、兎、羊、猿、馬、豚、牛、犬などの多様な動物種の宿主から製造可能であり、その製造方法は、当業界においてよく知られている。
【0064】
単一クローン抗体は、当業界において広く公知になっているハイブリドーマ方法(hybridoma method)(Kohler及びMilstein(1976)European Jounral of Immunology 6:511‐519を参照)、またはファージ抗体ライブラリー(Clackson et al,Nature,352:624‐628、1991;Marks et al,J.Mol.Biol.,222:58,1‐597,1991)の技術などを利用して製造され得る。通常、ハイブリドーマ方法は、本発明の第1の局面の肝臓癌予後マーカーがコーディングするタンパク質抗原を注射したマウスのような免疫学的に好適な宿主動物からの細胞を利用し、残りの1つの集団としては、癌または骨髓種細胞株を利用する。このような2つの集団の組織をポリエチレングリコールのような当業界において広く公知になっている方法によって融合させてから、抗体‐生産細胞を標準的な組織培養方法によって増殖させる。限界希釈法(limited dilution technique)によるサブクローニングによって均一な細胞集団を得た後、所望の抗体を生産することができるハイブリドーマを公知の技術に従って試験管内でまたは生体内で大量に培養する。ファージ抗体ライブラリー方法は、所望の抗体の遺伝子を得てこれをファージの表面に融合タンパク質の形態で発現させることにより、抗体ライブラリーを試験管内で作製し、このライブラリーから所望の単一クローン抗体を分離して単一クローン抗体を作製する方法である。前記方法で製造された単一クローン抗体は、ゲル電気泳動、透析、塩沈澱、イオン交換クロマトグラフィ、親和性クロマトグラフィなどの公知の方法を利用して分離することができる。
【0065】
本発明の第7の局面の抗体は、2つの全長の軽鎖及び2つの全長の重鎖を有する完全な形態だけではなく、抗体分子の機能的な断片を含む。抗体分子の機能的な断片とは、抗原結合機能を保有している断片を意味し、Fab、F(ab')、F(ab')2及びFvなどがある。
【発明の効果】
【0066】
本発明によって、本発明は、肝臓癌予後マーカー、前記肝臓癌予後マーカーの発現量の変化を検出する物質を含む肝臓癌予後推定用組成物、前記肝臓癌予後推定用組成物を含む肝臓癌予後推定用キット、前記肝臓癌予後マーカーを利用する肝臓癌予後推定方法、前記肝臓癌予後マーカーを活用した肝臓癌治療剤スクリーニング方法が提供される。
【0067】
前記肝臓癌予後マーカーは、肝臓癌患者の簡便且つ正確な予後推定に有用に用いられ得る。さらに、このマーカーの生理学的機能は、肝臓癌の発病や進行に直接的に係っているものである可能性があり、従って、このマーカーは、肝臓癌の発病または進行のメカニズムを研究するか、または肝臓癌治療剤の開発のための標的としても有用に用いられ得る。
【0068】
前記肝臓癌予後マーカーは、従来の由来がない程度の多数の患者の肝臓癌組織を統計的に分析して発掘したものであるため、さらに有意性があり、臨床的に活用価値が高いマーカーであり、肝臓癌予後推定において、より正確な予測力を保有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1は、本願発明の肝臓癌予後マーカーを再発、生存、無病生存の側面から測定して示したカプラン‐マイアー曲線である。
【図2】図2は、本願発明の肝臓癌予後マーカーを再発、生存、無病生存の側面から測定して示したカプラン‐マイアー曲線である。
【図3】図3は、本願発明の肝臓癌予後マーカーを再発、生存、無病生存の側面から測定して示したカプラン‐マイアー曲線である。
【図4】図4は、本願発明の肝臓癌予後マーカーを再発、生存、無病生存の側面から測定して示したカプラン‐マイアー曲線である。
【図5】図5は、本願発明の肝臓癌予後マーカーを再発、生存、無病生存の側面から測定して示したカプラン‐マイアー曲線である。
【図6】図6は、本願発明の肝臓癌予後マーカーを再発、生存、無病生存の側面から測定して示したカプラン‐マイアー曲線である。
【図7】図7は、本願発明の肝臓癌予後マーカーを再発、生存、無病生存の側面から測定して示したカプラン‐マイアー曲線である。
【図8】図8は、本願発明の肝臓癌予後マーカーを再発、生存、無病生存の側面から測定して示したカプラン‐マイアー曲線である。
【図9】図9は、本願発明の肝臓癌予後マーカーを再発、生存、無病生存の側面から測定して示したカプラン‐マイアー曲線である。
【図10】図10は、本願発明の肝臓癌予後マーカーを再発、生存、無病生存の側面から測定して示したカプラン‐マイアー曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、これは、本発明の理解を助けるためのものであるだけで、本発明の範囲をどのような方法であっても制限しようとするものではない。
発明を実施するための形態
【実施例】
【0071】
実施例1:RNA抽出及びcDNA合成
肝臓癌発病が診断されて進行経過が確認された120名の肝臓癌患者の肝臓癌組織及び周辺正常組織を入手した。下記の方式によって各組織のRNAを抽出し、cDNAを合成した。
【0072】
RNeasy Minikit(ドイツQiagen社)を用い、使用者説明書に従って肝臓癌組織及び周辺正常組織から全RNAを抽出した。得られたRNA抽出物をBioanalyzer 2100(米国のAgilent Technologies社)を用いて全RNAを定量した。抽出ステップにおいてDNase Iを処理し、RNA抽出物で汚染したゲノムDNAを取り除いた。全RNA4μgを含むサンプルを1μMオリゴd(T)18プライマー(韓国のGenotech社)2μlと共に70℃で7分間培養し、氷の上で5分間冷やした。酵素混合液[0.1M DTT(オランダのDuchefa社)2μl、10×逆転写緩衝液2μl、2mM dNTP 5μl、200U/μl MMLV逆転写酵素1μl、及び40U/μl RNase阻害子(韓国のEnzynomics社)1μl;総計11μl]を別途に準備した。酵素混合液を前記RNAを含むサンプルに添加し、42℃で90分間培養し、次いで、80℃で10分間培養し、逆転写酵素を不活性化させた。前記サンプルにジエチルピロカーボネート(DEPC)‐処理した水を添加し、最終体積が400μlとなるようにした。
【0073】
実施例2:定量的リアルタイムPCR
実施例1で得られたcDNAサンプルのそれぞれについて、PRISM 7900HT(米国のApplied Biosystems社)を用い、使用者説明書に従って下記2種の遺伝子マーカーに対してリアルタイムPCR増幅を行った:
CBS(cystathionine beta‐synthase;NCBI GI:209862802;配列番号79);及び
NNMT(nicotinamide N‐methyltransferase;NCBI GI:62953139;配列番号80)。
【0074】
リアルタイムPCR分析は、2×TaqMan遺伝子発現株混合液(米国のApplied Biosystems社)5μl、5μM フォワード及びリバースプライマーの各1μl、1μM プローブ(韓国のGenotech社)1μl、cDNA 2μl(対照群の場合、同量の水)からなる総計10μlの体積でリアルタイムPCR分析を行った。95℃で10分間解離ステップを経た後、95℃で15秒間解離、60℃で1分間合成の循環を通じて増幅させた。プライマーとプローブ配列は、Primer Express 3.0(米国のApplied Biosystems社)を用いて考案し、全てのプローブ配列は、5'末端にFAM及び3'末端にTAMRAで標識した。各マーカーについて、下記の表1のようなプライマー及びプローブ配列が用いられた:
【0075】
【表1】

【0076】
各マーカー遺伝子の発現を3回繰り返して測定し、5種の参照遺伝子(B2M、GAPDH、HMBS、HPRT1、及びSDHA)の平均的な発現を差し引いて標準化した。各マーカーのCT(基準値を達成するのに所要されるサイクル回数)を測定し、ΔCT値(各マーカーのCT−参照遺伝子の平均CT)を計算し、mRNAのコピー数は、2−ΔCTと計算された。cDNAサンプルの連続的希釈物の同時的増幅の結果から標準曲線を完成した。
【0077】
実施例3:統計的分析
実施例2で得られた各マーカーについての標準化された発現、及び各組織を提供した患者の経過を考慮し、カプラン‐マイアー曲線を完成した後、有意性の検定を行った。
【0078】
肝臓癌組織を提供した120名の患者の経過に基づいて再発、生存、無病生存のそれぞれについて、期間が短い順に並べた。生存した患者(または再発した患者)を危険に晒された対象患者の数で分け、区間生存率(または区間再発率)を求めた。累積生存率(または累積再発率)は、条件付きの確率であり、以前までの累積生存率(または累積再発率)に現在の区間生存率(または区間再発率)をかけて求めた。横軸を生存時間(または観察期間)、縦軸を累積生存率(または累積再発率)として、階段関数で描いてカプラン‐マイアー曲線を完成させた。
【0079】
各マーカーについて、再発、生存、無病生存に関するカプラン‐マイアー曲線を完成させた。実施例2で測定された各マーカーの発現を、実験的に決定された統計的に有意な基準値に基づいて高発現及び低発現に分類し、各マーカーについて高発現及び低発現の場合を分離してカプラン‐マイアー曲線を完成させた。完成したカプラン‐マイアー曲線を図1に示した。
【0080】
図1から確認できるように、再発(Recurrence)、生存(Overall Survival)、無病生存(Disease‐free Survival)の側面から完成したカプラン‐マイアー曲線において、各マーカーは、高発現の場合と低発現の場合とが明らかに区分される曲線を形成した。これは、各マーカーが高発現する場合と低発現する場合の区間再発率や区間生存率、及びこれに基づいた累積再発率や累積生存率に顕著な差が発生するということを意味し、結果として各マーカーの発現様相が後で患者の再発可能性や生存可能性を示唆する指標となり得ることを意味するものである。
【0081】
各マーカー及びその2つの組み合わせについて再発または死亡が生じた時点ごとに観察値と期待値を計算し、交差分析(Chi‐square test)の統計量を求める方式でログ順位(log‐rank)法による有意性の検定を施行し、p‐値を算出した。算出されたp‐値は、下記の表2のとおりである。
【0082】
【表2】

【0083】
前記表2から確認できるように、各マーカーまたはその2つの組み合わせは、再発、生存、無病生存の全てについて有意な程度に低いp‐値を示した。特に、2つのマーカーの組み合わせの場合、再発、生存及び無病生存についての全てのp‐値が0.05未満と好ましかった。p‐値が低ければ低いほど、統計的有意性は大きくなるものであるところ、前記低いp‐値は、各マーカーまたはその2つの組み合わせによる肝臓癌予後推定が、正確度が高いという点を示唆する。
【0084】
実施例4:追加のマーカー発掘
185名の肝臓癌患者の肝臓癌組織及びその周辺正常組織を入手して実験したことを除いては、前記実施例1〜3と同様の方式で実験し、下記の遺伝子をマーカーとして用いたカプラン‐マイアー曲線とp‐値を得た:
TKT(transketolase;NCBI GI:205277461;配列番号81)。
【0085】
用いられたプライマー及びプローブは、下記の表3のとおりであり、カプラン‐マイアー曲線は、図2のとおりであり、算出されたp‐値は、表4のとおりである。
【0086】
【表3】

【0087】
【表4】

【0088】
図2から確認できるように、再発、生存、無病生存の側面から完成したカプラン‐マイアー曲線において、前記マーカーは、高発現の場合と低発現の場合とが明確に区分される曲線を形成した。これは、前記マーカーが高発現する場合と低発現する場合の区間再発率や区間生存率、及びこれに基づいた累積再発率や累積生存率に顕著な差が発生するということを意味し、結果として前記マーカーの発現様相が後で患者の再発可能性や生存可能性を示唆する指標となり得ることを意味するものである。
【0089】
前記表4から確認できるように、前記マーカーは、再発、生存、無病生存の全てについてp‐値が0.05未満を示しており、好ましい水準に低いp‐値を示した。p‐値が低ければ低いほど、統計的有意性は大きくなるものであるところ、前記低いp‐値は、前記マーカーによる肝臓癌予後推定が、正確度が高いという点を示唆する。
【0090】
実施例5:追加のマーカー発掘
369名の肝臓癌患者の肝臓癌組織及びその周辺正常組織を入手して実験した以外は、前記実施例1〜3と同様の方式で実験し、下記23種の遺伝子をマーカーとして用いたカプラン‐マイアー曲線とp‐値を得た:
AIFM1(Apoptosis‐inducing factor 1、mitochondrial;NCBI GI:22202627;配列番号82);
AKT1(RAC‐alpha serine/threonine‐protein kinase;NCBI GI:62241010;配列番号83);
ATG3(Autophagy‐related protein 3;NCBI GI:34147490;配列番号84);
ATG5(Autophagy protein 5;NCBI GI:92859692;配列番号85);
ATG7(Autophagy‐related protein 7;NCBI GI:222144225;配列番号86);
ATG12(Autophagy‐related protein 12;NCBI GI:38261968;配列番号87);
BAX(Apoptosis regulator BAX;NCBI GI:34335114;配列番号88);
BCL2(Apoptosis regulator Bcl‐2;NCBI GI:72198188;配列番号89);
BCL2L1(Apoptosis regulator Bcl‐X;NCBI GI:20336333;配列番号90);
BNIP3(BCL2/adenovirus E1B 19 kDa protein‐interacting protein 3;NCBI GI:7669480;配列番号91);
CASP8(Caspase‐8;NCBI GI:122056470;配列番号92);
CSE1L(Exportin‐2;NCBI GI:29029558;配列番号93);
DIABLO(Diablo homolog、mitochondrial;NCBI GI:218505810;配列番号94);
DRAM(Damage‐regulated autophagy modulator;NCBI GI:110825977;配列番号95);
E2F1(Transcription factor E2F1;NCBI GI:168480109;配列番号96);
FAS(Tumor necrosis factor receptor superfamily member 6;NCBI GI:23510419;配列番号97);
FRAP1(FKBP12‐rapamycin complex‐associated protein;NCBI GI:206725550;配列番号98);
LAMP1(Lysosome‐associated membrane glycoprotein 1;NCBI GI:112380627;配列番号99);
LC3[MAP1LC3A](Microtubule‐associated proteins 1A/1B light chain 3A;NCBI GI:31563519;配列番号100);
PRKAA1(5'‐AMP‐activated protein kinase catalytic subunit alpha‐1;NCBI GI:94557300;配列番号101);
PTEN(Phosphatidylinositol‐3,4,5‐trisphosphate 3‐phosphatase and dual‐specificity protein phosphatase PTEN;NCBI GI:110224474;配列番号102);
ULK1(Serine/threonine‐protein kinase ULK1;NCBI GI:225637564;配列番号103);及び
XIAP(Baculoviral IAP repeat‐containing protein 4;NCBI GI:32528298;配列番号104)
用いられたプライマー及びプローブは、下記の表5のとおりであり、カプラン‐マイアー曲線は、図3〜10のとおりであり、各マーカーについて算出されたp‐値は、表6のとおりである。2種のマーカーが任意に組み合わせられた場合に算出されたp‐値は、表7〜9のとおりである。
【0091】
【表5】

【0092】
【表6】

【0093】
【表7】

【0094】
【表8】

【0095】
【表9】

【0096】
図3〜10から確認できるように、再発、生存、無病生存の側面から完成したカプラン‐マイアー曲線において、各マーカーは、高発現の場合と低発現の場合とが明確に区分される曲線を形成した。これは、各マーカーが高発現する場合と低発現する場合、区間再発率や区間生存率、及びこれに基づいた累積再発率や累積生存率に顕著な差が発生するということを意味し、結果として各マーカーの発現様相が後で患者の再発可能性や生存可能性を示唆する指標となり得ることを意味するものである。
【0097】
前記表6〜9から確認できるように、各マーカーまたは2種のマーカーの全ての組み合わせは、再発、生存、無病生存の全てについて有意な程度に低いp‐値を示した。p‐値が低ければ低いほど、統計的有意性は大きくなるものであるところ、前記低いp‐値は、各マーカーまたはこれらの組み合わせによる肝臓癌予後推定が正確であるという点を示唆する。特に、各マーカーまたは2種のマーカーの任意の組み合わせは、ほとんどが0.05未満の好適に低いp‐値を示した。
【0098】
3種以上のマーカーの組み合わせについてのp‐値は、いずれも0.05未満であった。最もp‐値が低い単一マーカーや2つ以上のマーカーの組み合わせ及び該当p‐値は、下記の表10のとおりである。
【0099】
【表10】

【0100】
前記表10から、本発明のマーカーは組み合わせられば組み合わせられるほど、p‐値が低くなるという点が分かる。これは、本発明のマーカーは組み合わせられば組み合わせられるほど、さらに有意な程度に低いp‐値を示すというものであって、このマーカーの組み合わせに基づいた予後推定の正確度は、さらに向上するという点が分かる。
【0101】
実施例6:交差検証
実施例5において統計的に有意に示されたマーカーの組み合わせについて、交差検証を行った。
【0102】
369名の肝臓癌患者を無作為に2群(陽性群:185名;試験群:184名)に分け、陽性群に対して前記実施例3と同様の方式で統計的に有意に示される基準値を実験的に設定し、高発現と低発現を分類した。このように設定された基準値を固定したまま、試験群に対して再発、生存、無病生存の側面からp<0.05またはp<0.001の水準で予測正確度を計算した。
【0103】
再発、生存、無病生存の各側面において、優れた予測正確度を示した代表的な例は次のとおりである。
再発:AIFM1_AKT1_LC3(p<0.05の水準で77.3%)
生存:ATG5_DRAM_FAS_XIAP(p<0.001の水準で87.3%)
無病生存:AIFM1_AKT1_LC3(p<0.05の水準で71.3%)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の遺伝子からなる群より選ばれる1つまたは2つ以上の組み合わせを含む肝臓癌予後マーカー:
CBS(cystathionine beta‐synthase;NCBI GI:209862802;配列番号79);
NNMT(nicotinamide N‐methyltransferase;NCBI GI:62953139;配列番号80);
TKT(transketolase;NCBI GI:205277461;配列番号81);
AIFM1(Apoptosis‐inducing factor 1、mitochondrial;NCBI GI:22202627;配列番号82);
AKT1(RAC‐alpha serine/threonine‐protein kinase;NCBI GI:62241010;配列番号83);
ATG3(Autophagy‐related protein 3;NCBI GI:34147490;配列番号84);
ATG5(Autophagy protein 5;NCBI GI:92859692;配列番号85);
ATG7(Autophagy‐related protein 7;NCBI GI:222144225;配列番号86);
ATG12(Autophagy‐related protein 12;NCBI GI:38261968;配列番号87);
BAX(Apoptosis regulator BAX;NCBI GI:34335114;配列番号88);
BCL2(Apoptosis regulator Bcl‐2;NCBI GI:72198188;配列番号89);
BCL2L1(Apoptosis regulator Bcl‐X;NCBI GI:20336333;配列番号90);
BNIP3(BCL2/adenovirus E1B 19 kDa protein‐interacting protein 3;NCBI GI:7669480;配列番号91);
CASP8(Caspase‐8;NCBI GI:122056470;配列番号92);
CSE1L(Exportin‐2;NCBI GI:29029558;配列番号93);
DIABLO(Diablo homolog、mitochondrial;NCBI GI:218505810;配列番号94);
DRAM(Damage‐regulated autophagy modulator;NCBI GI:110825977;配列番号95);
E2F1(Transcription factor E2F1;NCBI GI:168480109;配列番号96);
FAS(Tumor necrosis factor receptor superfamily member 6;NCBI GI:23510419;配列番号97);
FRAP1(FKBP12‐rapamycin complex‐associated protein;NCBI GI:206725550;配列番号98);
LAMP1(Lysosome‐associated membrane glycoprotein 1;NCBI GI:112380627;配列番号99);
LC3[MAP1LC3A](Microtubule‐associated proteins 1A/1B light chain 3A;NCBI GI:31563519;配列番号100);
PRKAA1(5'‐AMP‐activated protein kinase catalytic subunit alpha‐1;NCBI GI:94557300;配列番号101);
PTEN(Phosphatidylinositol‐3,4,5‐trisphosphate 3‐phosphatase and dual‐specificity protein phosphatase PTEN;NCBI GI:110224474;配列番号102);
ULK1(Serine/threonine‐protein kinase ULK1;NCBI GI:225637564;配列番号103);及び
XIAP(Baculoviral IAP repeat‐containing protein 4;NCBI GI:32528298;配列番号104)。
【請求項2】
請求項1の肝臓癌予後マーカーの発現量、発現パターン、または両者全てを特異的に検出する物質を含む肝臓癌予後推定用組成物。
【請求項3】
請求項1の肝臓癌予後マーカーがコーディングするタンパク質の存在量、存在パターン、または両者全てを特異的に検出する物質を含む肝臓癌予後推定用組成物。
【請求項4】
肝臓癌予後マーカーの発現量、発現パターン、または両者全てを特異的に検出する物質が、肝臓癌予後マーカーのmRNAを検出するためのRT‐PCR用プライマーである請求項2に記載の肝臓癌予後推定用組成物。
【請求項5】
肝臓癌予後マーカーがコーディングするタンパク質の存在量、存在パターン、または両者全てを特異的に検出する物質が、前記タンパク質を特異的に認識する抗体である請求項3に記載の肝臓癌予後推定用組成物。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか1項に記載の肝臓癌予後推定用組成物を含む肝臓癌予後推定用キット。
【請求項7】
請求項2または4に記載の肝臓癌予後推定用組成物を対象肝臓癌患者から採取した生物学的試料に処理する第1のステップ;及び
第1のステップの処理結果を基準値と対比して請求項1の肝臓癌予後マーカーの発現量、発現パターン、または両者全ての差を検出する第2のステップ;
を含む肝臓癌予後推定方法。
【請求項8】
請求項3または5に記載の肝臓癌予後推定用組成物を肝臓癌患者から採取した生物学的試料に処理する第1のステップ;及び
第1のステップの処理結果を基準値と対比して請求項1の肝臓癌予後マーカーがコーディングするタンパク質の存在量、存在パターン、または両者全ての差を検出する第2のステップ;
を含む肝臓癌予後推定方法。
【請求項9】
試験化合物が請求項1に記載の肝臓癌予後マーカーの発現を促進または抑制するか否かを確認するステップ;
を含む肝臓癌治療剤のスクリーニング方法。
【請求項10】
請求項1に記載の肝臓癌予後マーカーがコーディングするタンパク質に試験化合物を結合させる第1のステップ;及び
試験化合物が前記タンパク質の生理学的活性を促進または抑制するか否かを確認する第2のステップ;
を含む肝臓癌治療剤のスクリーニング方法。
【請求項11】
請求項1に記載の肝臓癌予後マーカーがコーディングするタンパク質を特異的に認識する抗体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−523833(P2012−523833A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−505825(P2012−505825)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【国際出願番号】PCT/KR2010/002373
【国際公開番号】WO2010/120143
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(511248995)シービーエス・バイオサイエンス,カンパニー・リミテッド (1)
【出願人】(511249006)
【Fターム(参考)】