説明

肝酵素誘導を評価する手段及び方法

本発明は、化合物のリスク分類のための毒物学的評価の分野に関する。具体的には、肝酵素を誘導する化合物の前病理学的作用を診断する方法に関する。また、化合物が被験体において酵素誘導による肝臓に対する前病理学的作用を示すことができるかどうかを判定する方法、及び肝酵素誘導の前病理学的作用の治療用薬物の同定方法にも関する。さらに本発明は、少なくとも5つのアナライトの特性値を含むデータ集合、該データ集合を含むデータ記憶媒体、並びに肝酵素誘導の前病理学的作用を診断するためのシステム及びデバイスに関する。最後に、本発明は、被験体において肝酵素誘導の前病理学的作用を診断するための診断用デバイス又は組成物の製造のための、アナライト群又はそれらの測定手段の使用に関する。各性別について、異なるメタボロームパターン、すなわち異なるアナライトセットを開示する。肝酵素誘導マーカーは、主に、遊離脂肪酸から選択されるが、様々なホスファリジルコリン、ガラクトース、3-及び5-メトキシスフィンゴシン、コレステロール、トレオン酸、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジル-L-セリン、グリセロール、グリセロールリン酸、ドデカノール、ミオ-イノシトール-2-一リン酸も含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物のリスク分類のための毒物学的評価の分野に関する。具体的には、肝酵素誘導を診断する方法に関する。また、化合物が被験体においてかかる肝酵素誘導の誘導能があるかどうかを判定する方法、及び肝酵素誘導の治療用薬物の同定方法にも関する。さらに本発明は、少なくとも5つのアナライトの特性値を含むデータ集合、該データ集合を含むデータ記憶媒体、並びに肝酵素誘導を診断するためのシステム及びデバイスに関する。最後に、本発明は、被験体において肝酵素誘導を診断するための診断用デバイス又は組成物の製造のための、アナライト群又はそれらの測定手段の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
肝臓の主要な機能には、代謝機能、解毒及び胆汁排出がある。これらの機能は、肝酵素により行われる。代謝酵素又は解毒酵素の要求に応じて、これらの酵素の活性は肝臓において増大又は低減する。要求の上昇に応答した肝酵素活性の増大は酵素誘導と呼ばれる。酵素誘導は、特に他の化合物の解毒が関係している範囲では、潜在的に前病理学的状態(pro-pathological condition)に至る可能性がある。また、特に発癌物質には、その発癌作用を発揮する前に代謝活性化を必要とする発癌物質の数多くの例がある。従って、酵素誘導は、そのような活性化化合物の生成を増大させる可能性がある。
【0003】
酵素誘導は、肝臓毒性及びそれに伴って起こる疾患又は障害の発症に関する高い素因として考えられている。肝臓毒性は、肝細胞壊死、肝炎、脂肪症、肝硬変、リン脂質症、胆汁鬱滞、胆管炎を含む様々な障害、疾患又は医学的状態によって被験体において明らかとなる(例えば、Grunhagen 2003, Z. Gastroenterol. 41(6): 565-578を参照)。
【0004】
酵素誘導は、肝臓が曝される種々の化合物に応答して観察することができる。これらの化合物のうち、自発的に服用される化合物、例えば薬物、又は食物に含まれる栄養化合物、並びに環境から不可避的に摂取される化合物がある。直接的な肝臓毒性作用を示す化合物とは対照的に、それ自体は病理学的状態として顕在化しない酵素誘導を生じるのみであるが、被験体において病理学的な肝臓毒性又は上述した肝臓関連疾患のいずれかを発症するリスクを上昇させる化合物がある。
【0005】
この前病理学的状態の結果として、前病理学的酵素誘導と一緒に肝臓毒性又は関連する疾患を生じる可能性のある他の因子に対して肝臓が曝露されないように注意を払う必要がある。
【0006】
酵素誘導を判定する現在の方法では、化合物の肝臓毒性作用の可能性についての信頼性ある診断を行うことができない(例えばG.G. Gibson and P. Skett 2001, Introduction to Drug Metabolism, Chapter 3: Induction and Inhibition of Drug Metabolism, 3rd Edition, Nelson Thornes Publishers, Cheltenham, UK;E. M. Bomhard et al. 1998, Toxicology 131:73-91;A. Lahoz et al. 2008, Current Drug Metabolism 9:12-19参照)。しかし、肝臓毒性が、現在、市場から薬物が回収される最も一般的な理由であることを考えれば、酵素誘導及びそれに続く可能性ある肝臓毒性の重要性は明らかになるだろう。
【0007】
さらに、欧州共同体におけるあらゆる種類の産業で使用される化合物は、例えば、現在、REACH(Registration, Evaluation and Authorisation of Chemicals)に従う必要がある。化合物が肝臓毒性を誘導する能力は、該化合物にとって高いリスクであるとみなされ、その結果、該化合物は、限られた用途でのみ、かつ、高い安全基準に従う場合にのみ利用できることは理解されるだろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
肝酵素を誘導する化合物の毒性を効率的かつ信頼できるように評価するための高感度かつ特異的な方法は、まだ利用可能ではないが、それでもなお、大いに歓迎されるだろう。
【0009】
従って、本発明の根底にある技術的課題は、上述のニーズを満たすための手段及び方法の提供とみなすことができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この技術的課題は、特許請求の範囲に特徴付けられておりかつ本明細書の以下に記載されている実施形態により解決される。
【0011】
従って、本発明は、肝酵素誘導を診断する方法であって、
(a)肝酵素誘導を示すことが疑われる雄被験体の試験サンプル中において、以下のアナライト、すなわちステアリン酸(C18:0)、ガラクトース、リグノセリン酸(C24:0)、ベヘン酸(C22:0)、ネルボン酸(C24:1)、3-及び5-メトキシスフィンゴシン、コレステロール、トレオン酸、ホスファチジルコリン(C18:0/C18:2)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジル-L-セリン、エイコサペンタン酸、ホスファチジルコリン(C18:0/C22:6)のうち少なくとも1つ、好ましくは少なくとも5つの量、又は肝酵素誘導を示すことが疑われる雌被験体の試験サンプル中において、以下のアナライト、すなわちグリセロール、パルミチン酸(C16:0)、リノール酸(C18:cis[9,12]2)、ステアリン酸(C18:0)、アラキドン酸(C20:cis-[5,8,11,14]4)、ドコサヘキサエン酸(C22:cis[4,7,10,13,16,19]6)、コレステロール、グリセロールリン酸、ガラクトース、リグノセリン酸(C24:0)、ドデカノール、ヘプタデカン酸(C17:0)、エイコサン酸(C20:0)、ミオ-イノシトール-2-一リン酸、ベヘン酸(C22:0)、ネルボン酸(C24:1)、γ-リノレン酸(C18:cis[6,9,12]3)、3-及び5-メトキシスフィンゴシン、トレオン酸、ホスファチジルコリン(C18:2, C20:4)、ホスファチジルコリン(C18:0/C18:2)のうち少なくとも1つ、好ましくは少なくとも5つの量を測定するステップ、並びに
(b)ステップ(a)において測定された量を参照と比較するステップであって、それによって肝酵素誘導を診断する前記ステップ
を含む、前記方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1−1】ホスファチジルコリン(C18:0/C18:2)のフラグメンテーションパターンを示す。
【図1−2】ホスファチジルコリン(C18:0/C18:2)のフラグメンテーションパターンを示す。
【図1−3】ホスファチジルコリン(C18:0/C18:2)のフラグメンテーションパターンを示す。
【図1−4】ホスファチジルコリン(C18:0/C18:2)のフラグメンテーションパターンを示す。
【図2−1】ホスファチジルコリン(C18:0/C22:6)のフラグメンテーションパターンを示す。
【図2−2】ホスファチジルコリン(C18:0/C22:6)のフラグメンテーションパターンを示す。
【図2−3】ホスファチジルコリン(C18:0/C22:6)のフラグメンテーションパターンを示す。
【図2−4】ホスファチジルコリン(C18:0/C22:6)のフラグメンテーションパターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書で用いる「ホスファチジルコリン(C18:0/C18:2)」という用語は、好ましくは、C18:0脂肪酸単位及びC18:2脂肪酸単位の組み合わせを含むグリセロホスホリルコリンの和パラメーターを特徴とする分子種を指す。イオン化種の質量対電荷比(m/z)は786.6 Da(+/- 0.3 Da)である。好ましいフラグメンテーションパターンは以下の図1に示されている。
【0014】
本明細書で用いる「1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジル-L-セリン」という用語は、好ましくは、総数36個の炭素及び総数1個の二重結合を有する脂肪酸単位を含むグリセロホスホリルコリンの和パラメーターを特徴とする分子種を指す。イオン化種の質量対電荷比(m/z)は788.6 Da(+/- 0.3 Da)である。
【0015】
本明細書で用いる「ホスファチジルコリン(C18:0/C22:6)」という用語は、好ましくは、C18:0脂肪酸単位及びC22:6脂肪酸単位の組み合わせを含むグリセロホスホリルコリンの和パラメーターを特徴とする分子種を指す。イオン化種の質量対電荷比(m/z)は834.6 Da(+/- 0.3 Da)である。好ましいフラグメンテーションパターンは以下の図2に示されている。
【0016】
本発明において記載する「診断する方法」という表現は、本方法が基本的に上述のステップよりなるか又はさらなるステップを含んでもよいことを意味する。しかし、本方法は、好ましい実施形態において、生体外(ex vivo)で行われる方法、すなわち、人体又は動物体で実施されない方法であることは理解されるだろう。本明細書で用いる診断とは、被験体が疾患に罹患している可能性を評価することを指す。当業者であればわかるだろうが、そのような評価は、診断される被験体の100%に対して正しいことが好ましいが、通常はそうでない可能性がある。しかし、この用語は、統計学的に有意な一部の被験体を疾患に罹患しているか又はその素因を有していると同定可能であることを必要とする。当業者であれば、あとは苦もなく、種々の周知の統計学的評価ツールを用いて、例えば、信頼区間の決定、p値の決定、ウェルチの検定、マン・ホイットニー検定などを行って、一部が統計学的に有意であるかどうかを判定することができる。詳細は、Dowdy and Wearden, Statistics for Research, John Wiley & Sons, New York 1983に見い出される。好ましい信頼区間は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%である。p値は、好ましくは0.2、0.1、0.05である。
【0017】
本発明において診断は、関連疾患又はその症状のモニタリング、確認、及び分類を含む。モニタリングは、例えば、疾患の進行を分析したり、疾患期間中又は疾患の奏効的治療の後に生じる疾患又は合併症の進行に及ぼす特定の治療の影響を分析するために、すでに診断された疾患を追跡することに関する。確認は、他の指標又はマーカーを用いてすでに行われた診断を強化又は実証することに関する。
【0018】
分類は、症状の強さ又は種類に基づいて診断結果を様々なクラスに割り当てることに関する。肝酵素誘導に関連して現れる疾患又は状態のいくつかには、さらなる代謝変化が伴い得る。さらに、分類はまた、好ましくは、本発明の方法によって試験される化合物に作用機序を割り当てることを含む。具体的には、本発明の方法は、その作用機序がまだ知られていない化合物の特定の作用機序の決定を可能にする。これは、好ましくは、前記化合物についてバイオマーカーを表す測定されたアナライト(すなわちバイオマーカープロフィール)を、参照として作用機序がわかっている化合物のバイオマーカープロフィールと比較することによって達成される。作用機序の分類は、化合物の分子標的が同定されるために、化合物の酵素誘導特性のさらにより信頼できる評価を可能にする。この同定のために、肝酵素誘導に影響を与えるさらなるパラメーターを考慮に入れることができる。
【0019】
本明細書で用いる「肝酵素誘導」又は「酵素誘導」という用語は、肝臓の代謝酵素及び解毒酵素が、集団において見られる正常値の上限と比較して、活性及び存在量の点で有意に増大している前病理学的状態を意味する。より好ましくは、誘導される酵素には、少なくとも、シトクロムP450酵素、アルコキシレゾルフィン-O-デエチラーゼ、4-ヒドロキシビフェニル-UDP-グルクロノシルトランスフェラーゼ及び/又は4-メチルウンベリフェロン-UDP-グルクロノシル-トランスフェラーゼが含まれる。肝酵素誘導は、好ましくは肝臓毒性及びそれに付随する疾患又は障害、より好ましくは肝細胞壊死、肝炎、脂肪症、肝硬変、リン脂質症、胆汁鬱滞、胆管炎の素因である。上述した疾患及び障害の症状及び臨床兆候は、当業者に周知であり、H. Marquardt, S. G. Schafer, R. O. McClellan, F. Welsch(編), “Toxicology”, Chapter 13: The Liver, 1999, Academic Press, Londonに詳細に記載されている。
本発明の方法において測定される各アナライトは、単独で分析される場合にも、本明細書に記載する疾患又は障害を診断するのに適している。しかし、各アナライトが見かけ上統計的に独立した診断について等価の予測因子であるために、少なくとも5つの異なるアナライトの組み合わせは診断結果をさらに強化することが、本発明において見出された。さらに、他の組織からのマーカー量への影響が相殺されるため、肝臓毒性に対する特異性も有意に増加する。特定の肝酵素誘導性化合物クラスのための好ましいマーカーの組み合わせは、以下の表1及び2に見出される組み合わせである。
【0020】
上述のアナライトの少なくとも5つからなる群に加えて、さらなるアナライトが、好ましくは、本発明の方法において測定されることは理解されるだろう。さらなるアナライトも、好ましくは上述の群から選択される。言い換えれば、好ましくは、上述の群のアナライトのうち少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9又は全てが本発明の方法において測定される。これらのアナライトのさらなる測定は、本発明の方法によって得られる結果をより一層強化する。さらに、他のアナライト又は代謝物質(すなわち上述の群に具体的に記載されていない代謝物質)又はバイオマーカー(酵素など)が、さらに加えて測定されてもよい。好ましくは、本発明の方法において測定されるさらなるパラメーターは、全シトクロムP450量、アルコキシレゾルフィン-O-デエチラーゼ、4-ヒドロキシビフェニル-UDP-グルクロノシルトランスフェラーゼ又は4-メチルウンベリフェロン-UDP-グルクロノシルトランスフェラーゼである。
【0021】
特定の好ましい実施形態において、雄のサンプル中における少なくとも1つのアナライトは以下からなる群より選択される:ステアリン酸(C18:0)、リグノセリン酸(C24:0)、ベヘン酸(C22:0)、コレステロール、及びエイコサペンタン酸。さらにより好ましい実施形態において、上述のアナライトの全てが測定される。
【0022】
しかし、本発明において測定される少なくとも5つのアナライトの群において、1、2、3、又は4つのアナライトが上述の好ましいアナライトの群から選択され、一方、残りのアナライトは本明細書の他の箇所に明記される雄のサンプルについてのアナライトであることも好ましくは想定される。
【0023】
従って、本発明において測定される5つのアナライトの好ましい群の第一アナライトがステアリン酸(C18:0)である場合、残りの4つのアナライトは以下のアナライトからなる群より選択される:ガラクトース、リグノセリン酸(C24:0)、ベヘン酸(C22:0)、ネルボン酸(C24:1)、3-及び5-メトキシスフィンゴシン、コレステロール、トレオン酸、ホスファチジルコリン(C18:0/C18:2)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジル-L-セリン、エイコサペンタン酸、ホスファチジルコリン(C18:0/C22:6)。
【0024】
第一及び第二アナライトがステアリン酸(C18:0)及びリグノセリン酸(C24:0)である場合、残りの3つのアナライトは以下からなる群より選択される:ガラクトース、ベヘン酸(C22:0)、ネルボン酸(C24:1)、3-及び5-メトキシスフィンゴシン、コレステロール、トレオン酸、ホスファチジルコリン(C18:0/C18:2)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジル-L-セリン、エイコサペンタン酸、ホスファチジルコリン(C18:0/C22:6)。
【0025】
第一、第二及び第三アナライトがステアリン酸(C18:0)、リグノセリン酸(C24:0)及びベヘン酸(C22:0)である場合、残りの2つのアナライトは以下からなる群より選択される:ガラクトース、ネルボン酸(C24:1)、3-及び5-メトキシスフィンゴシン、コレステロール、トレオン酸、ホスファチジルコリン(C18:0/C18:2)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジル-L-セリン、エイコサペンタン酸、ホスファチジルコリン(C18:0/C22:6)。
【0026】
第一、第二、第三及び第四アナライトがステアリン酸(C18:0)、リグノセリン酸(C24:0)、ベヘン酸(C22:0)及びコレステロールである場合、残りのアナライトは以下からなる群より選択される:ガラクトース、ネルボン酸(C24:1)、3-及び5-メトキシスフィンゴシン、トレオン酸、ホスファチジルコリン(C18:0/C18:2)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジル-L-セリン、エイコサペンタン酸、ホスファチジルコリン(C18:0/C22:6)。
【0027】
特定の好ましい実施形態において、雌における少なくとも1つのアナライトは以下からなる群より選択される:グリセロール、パルミチン酸(C16:0)、リノール酸(C18:cis[9,12]2)、ステアリン酸(C18:0)、アラキドン酸(C20:cis-[5,8,11,14]4)、コレステロール、リグノセリン酸(C24:0)、エイコサン酸(C20:0)及びベヘン酸(C22:0)。さらにより好ましい実施形態において、上述のアナライトの6つ全てが測定される。しかし、本発明において測定される少なくとも5つのアナライトの群において、1、2、3、又は4つのアナライトが上述の好ましいアナライトの群から選択され、一方、残りのアナライトは本明細書の他の箇所に明記される雌のサンプルについてのアナライトであることが好ましくは想定される。
【0028】
しかし、本発明において測定される少なくとも5つのアナライトの群において、1、2、3、又は4つのアナライトが上述の好ましいアナライトの群から選択され、一方、残りのアナライトは本明細書の他の箇所に明記される雄のサンプルについてのアナライトであることも好ましくは想定される。
【0029】
従って、本発明において測定される5つのアナライトの好ましい群の第一アナライトがグリセロールである場合、残りの4つのアナライトは以下のアナライトからなる群より選択される:パルミチン酸(C16:0)、リノール酸(C18:cis[9,12]2)、ステアリン酸(C18:0)、アラキドン酸(C20:cis-[5,8,11,14]4)、ドコサヘキサエン酸(C22:cis[4,7,10,13,16,19]6)、コレステロール、グリセロールリン酸、ガラクトース、リグノセリン酸(C24:0)、ドデカノール、ヘプタデカン酸(C17:0)、エイコサン酸(C20:0)、ミオ-イノシトール-2-一リン酸、ベヘン酸(C22:0)、ネルボン酸(C24:1)、γ-リノレン酸(C18:cis[6,9,12]3)、3-及び5-メトキシスフィンゴシン、トレオン酸、ホスファチジルコリン(C18:2, C20:4)、ホスファチジルコリン(C18:0/C18:2)。
【0030】
第一及び第二アナライトがグリセロール及びパルミチン酸(C16:0)である場合、残りの3つのアナライトは以下からなる群より選択される:リノール酸(C18:cis[9,12]2)、ステアリン酸(C18:0)、アラキドン酸(C20:cis-[5,8,11,14]4)、ドコサヘキサエン酸(C22:cis[4,7,10,13,16,19]6)、コレステロール、グリセロールリン酸、ガラクトース、リグノセリン酸(C24:0)、ドデカノール、ヘプタデカン酸(C17:0)、エイコサン酸(C20:0)、ミオ-イノシトール-2-一リン酸、ベヘン酸(C22:0)、ネルボン酸(C24:1)、γ-リノレン酸(C18:cis[6,9,12]3)、3-及び5-メトキシスフィンゴシン、トレオン酸、ホスファチジルコリン(C18:2, C20:4)、ホスファチジルコリン(C18:0/C18:2)。
【0031】
第一、第二及び第三アナライトがグリセロール、パルミチン酸(C16:0)及びリノール酸(C18:cis[9,12]2)である場合、残りの2つのアナライトは以下からなる群より選択される:ステアリン酸(C18:0)、アラキドン酸(C20:cis-[5,8,11,14]4)、ドコサヘキサエン酸(C22:cis[4,7,10,13,16,19]6)、コレステロール、グリセロールリン酸、ガラクトース、リグノセリン酸(C24:0)、ドデカノール、ヘプタデカン酸(C17:0)、エイコサン酸(C20:0)、ミオ-イノシトール-2-一リン酸、ベヘン酸(C22:0)、ネルボン酸(C24:1)、γ-リノレン酸(C18:cis[6,9,12]3)、3-及び5-メトキシスフィンゴシン、トレオン酸、ホスファチジルコリン(C18:2, C20:4)、ホスファチジルコリン(C18:0/C18:2)。
【0032】
第一、第二、第三及び第四アナライトがグリセロール、パルミチン酸(C16:0)、リノール酸(C18:cis[9,12]2)及びステアリン酸(C18:0)である場合、残りのアナライトは以下からなる群より選択される:アラキドン酸(C20:cis-[5,8,11,14]4)、ドコサヘキサエン酸(C22:cis[4,7,10,13,16,19]6)、コレステロール、グリセロールリン酸、ガラクトース、リグノセリン酸(C24:0)、ドデカノール、ヘプタデカン酸(C17:0)、エイコサン酸(C20:0)、ミオ-イノシトール-2-一リン酸、ベヘン酸(C22:0)、ネルボン酸(C24:1)、γ-リノレン酸(C18:cis[6,9,12]3)、3-及び5-メトキシスフィンゴシン、トレオン酸、ホスファチジルコリン(C18:2, C20:4)、ホスファチジルコリン(C18:0/C18:2)。
【0033】
本明細書で用いるアナライトは、特定のアナライトの少なくとも1つの分子から該特定のアナライトの複数の分子までを指す。さらに、アナライトの群は、各アナライトごとに少なくとも1分子〜複数分子が存在し得る、複数の化学的に異なる分子を意味することが理解されるだろう。本発明において、アナライトは、全てのクラスの有機又は無機の化合物、例えば生物のような生物学的材料に含まれるものを含む。好ましくは、本発明において、アナライトは小分子化合物である。より好ましくは、複数のアナライトが想定される場合、各アナライトは代謝物質を表し、複数の代謝物質はメタボロームを表すことは理解されるだろう。メタボロームは、特定の時間に特定の条件下で生物、器官、組織又は細胞に含まれる代謝物質の集合である。
【0034】
代謝物質は、代謝経路の酵素に対する基質、そのような経路の中間体、又は代謝経路により得られる産物のような小分子化合物である。代謝経路は、当技術分野で周知であり、種間で異なる可能性がある。好ましくは、該経路は、少なくとも、クエン酸回路、呼吸鎖、解糖、糖新生、ヘキソース一リン酸経路、酸化的ペントースリン酸経路、脂肪酸の産生及びβ酸化、尿素回路、アミノ酸生合成経路、タンパク質分解経路、例えばプロテアソームによる分解、アミノ酸分解経路、次の物質の生合成又は分解を含む:脂質類、ポリケチド類(例えば、フラボノイド類及びイソフラボノイド類を含む)、イソプレノイド類(例えば、テルペン類、ステロール類、ステロイド類、カロテノイド類を含む)、炭水化物類、フェニルプロパノイド類及びその誘導体、アルカロイド類、ベンゼノイド類、インドール類、インドール硫黄化合物類、ポルフィリン類、ホルモン類、ビタミン類、補因子、例えば補欠分子族若しくは電子伝達体、グルコシノレート類、プリン類、ピリミジン類、ヌクレオシド類、ヌクレオチド類及び関連分子、例えばtRNA、マイクロRNA(miRNA)若しくはmRNA。従って、小分子化合物代謝物質は、好ましくは、次のクラスの化合物を含む:アルコール類、アルカン類、アルケン類、アルキン類、芳香族化合物類、ケトン類、アルデヒド類、カルボン酸、エステル類、アミン類、イミン類、アミド類、シアニド類、アミノ酸類、ペプチド類、チオール類、チオエステル類、リン酸エステル類、硫酸エステル類、チオエーテル類、スルホキシド類、エーテル類、又は上述の化合物の組合せ若しくは誘導体。代謝物質のうちの小分子は、正常な細胞機能、器官機能、又は動物の成長、発育、若しくは健康に必要とされる一次代謝物質であり得る。さらに、小分子代謝物質は、不可欠な生態学的機能を有する二次代謝物質、例えば、生物をその環境に適応できるようにする代謝物質をも含む。その上さらに、代謝物質は、該一次代謝物質及び該二次代謝物質に限定されるものではなく、人工小分子化合物をも含む。該人工小分子化合物は、投与されるか又は生物により取り込まれるが上で定義したような一次代謝物質でも二次代謝物質でもない外因的に供給される小分子に由来する。例えば、人工小分子化合物は、動物の代謝経路により薬物から得られる代謝産物であってもよい。さらに、代謝物質は、ペプチド類、オリゴペプチド類、ポリペプチド類、オリゴヌクレオチド類、及びポリヌクレオチド類、例えばRNA若しくはDNAをも含む。より好ましくは、代謝物質は、50 Da(ダルトン)〜30,000 Da、最も好ましくは30,000 Da未満、20,000 Da未満、15,000 Da未満、10,000 Da未満、8,000 Da未満、7,000 Da未満、6,000 Da未満、5,000 Da未満、4,000 Da未満、3,000 Da未満、2,000 Da未満、1,000 Da未満、500 Da未満、300 Da未満、200 Da未満、100 Da未満の分子量を有する。しかし、好ましくは、代謝物質は少なくとも50 Daの分子量を有する。最も好ましくは、本発明において、代謝物質は50 Da〜1,500 Daの分子量を有する。
【0035】
本発明において意味するアナライトは、精製及び/又は測定工程によって天然に存在する代謝物質から誘導される分子種である。いくつかの場合に、アナライトは同一である。しかし、他の場合には、アナライトはその化学的誘導体である。それでもなお、アナライトの出現は、必ず代謝物質の発生について結論を導くことを可能にすることは理解されるだろう。
【0036】
本明細書で用いる「試験サンプル」という用語は、本発明の方法による肝酵素誘導の診断に使用されるサンプルを指す。該試験サンプルは生物学的サンプルである。生物源に由来するサンプル(すなわち生物学的サンプル)は、通常、複数の代謝物質を含む。本発明の方法に使用される好ましい生物学的サンプルは、体液、好ましくは血液、血漿、血清、唾液、胆汁、尿、若しくは脳脊髄液に由来するサンプル、又は生検などにより細胞、組織、若しくは器官、好ましくは肝臓から得られるサンプルである。より好ましくは、サンプルは血液、血漿又は血清サンプルであり、最も好ましくは血漿サンプルである。生物学的サンプルは、本明細書の他の箇所に記載される被験体に由来する。上述の様々な種類の生物学的サンプルを取得するための技術は、当技術分野で周知である。例えば、血液サンプルは、血液採取により取得可能であり、一方、組織又は器官サンプルは、生検などにより取得可能である。
【0037】
上述のサンプルは、好ましくは、本発明の方法に使用される前に前処理される。以下にさらに詳細に記載されるように、この前処理には、化合物の遊離若しくは分離又は過剰の材料若しくは廃物の除去に必要な処理が含まれ得る。好適な技術には、遠心分離、抽出、分画、限外濾過、タンパク質沈降とそれに続く化合物の濾過及び精製、並びに/又は濃縮が含まれる。さらに、化合物分析に好適な形態又は濃度で化合物を提供するために、他の前処理が行われる。例えば、本発明の方法でガスクロマトグラフィー連結質量分析を使用する場合、該ガスクロマトグラフィーを行う前に化合物を誘導体化する必要があるだろう。好適な所要の前処理は、本発明の方法を実施するために使用される手段に依存し、そして当業者に周知である。上に記載したように前処理されたサンプルもまた、本発明において用いる「サンプル」という用語に含まれる。
【0038】
本明細書で用いる「被験体」という用語は、動物、好ましくは哺乳動物、例えばマウス、ラット、モルモット、ウサギ、ハムスター、ブタ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、サル、若しくはウシなど、及び同様に好ましくはヒトに関する。より好ましくは、被験体は、げっ歯動物であり、最も好ましくはラットである。本発明の方法を適用して診断し得る他の動物は、魚類、鳥類又は爬虫類である。好ましくは、該被験体は、肝酵素誘導能を有すると疑われる化合物と接触させたか、又は接触させているものである。肝酵素を誘導すると疑われる化合物と接触させた被験体は、例えば化合物の毒性に関するスクリーニングアッセイに用いられる例えば実験動物(ラットなど)であり得る。肝酵素誘導能がある化合物と接触している疑いのある被験体は、好適な治療を選択するために診断する必要がある被験体でもあり得る。好ましくは、本明細書で用いる肝酵素誘導能を有する化合物は、フェノバルビタールナトリウム、アロクロール1254、ペンタクロロベンゼン、β-イオノン、エチル-ベンゼン又はビンクロゾリンである。
【0039】
本明細書で用いる「量の測定」という用語は、前記少なくとも5つのアナライトの各アナライトの少なくとも1つの特徴的特性を測定することを指す。本発明における特徴的特性は、アナライトの生化学的性質を含む物理的及び/又は化学的性質を特徴付ける特性である。そのような性質としては、例えば、分子量、粘度、密度、電荷、スピン、光学活性、色、蛍光、化学発光、元素組成、化学構造、他の化合物と反応する能力、生物学的読取り系で応答を引き起こす能力(例えば、レポーター遺伝子の誘導)などが挙げられる。該性質の値は、特徴的特性として機能し得る。また、当技術分野で周知の技術により測定可能である。さらに、特徴的特性は、標準的操作、例えば、乗算、除算、又は対数計算のような数学的計算によりアナライトの物理的及び/又は化学的性質の値から導かれる任意の特性であってもよい。最も好ましくは、少なくとも1つの特徴的特性は、アナライト及びその量の測定及び/又は化学的同定を可能にする。従って、特性値は、好ましくは、その特性値を導いた代謝物質の存在量に関する情報も含む。例えば、代謝物質の特性値は、質量スペクトルのピークであり得る。かかるピークは、代謝物質の特徴的な情報、すなわちm/z(質量対電荷比)情報、並びにサンプル中のそのアナライトの存在量(すなわちその量)に関する強度値を含む。
【0040】
上述したように、本発明の方法において測定されるアナライトの群の各アナライトは、好ましくは、定量的又は半定量的に測定され得る。定量的測定では、本明細書において上に記載する特徴的特性(複数可)に関して測定される値に基づいて、アナライトの絶対量若しくは正確な量が測定されるか又はアナライトの相対量が測定されるかのいずれかだろう。アナライトの正確な量を測定できないか又は測定しない場合、相対量を測定し得る。この場合、アナライトの存在量が、該代謝物質を第2の量で含む第2のサンプルと対比して増大又は低減されているかどうかを、測定することが可能である。従って、アナライトの定量分析は、アナライトの半定量分析と称されることもある分析をも含む。
【0041】
さらに、本発明の方法で用いる測定は、好ましくは、上に記載する分析ステップの前に化合物分離ステップを使用することを含む。好ましくは、該化合物分離ステップでは、サンプルに含まれるアナライトの時間分解分離が得られる。従って、好ましくは、本発明において使用される分離に好適な技術としては、全てのクロマトグラフィー分離技術、例えば、液体クロマトグラフィー(LC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ガスクロマトグラフィー(GC)、薄層クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、又はアフィニティークロマトグラフィーが挙げられる。これらの技術は、当技術分野で周知であり、当業者であればあとは苦もなく適用可能である。最も好ましくは、LC及び/又はGCが、本発明の方法で想定されるクロマトグラフィー技術である。アナライトのそのような測定に好適なデバイスは、当技術分野で周知である。好ましくは、質量分析、特には、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)、液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)、直接注入質量分析若しくはフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析(FT-ICR-MS)、キャピラリー電気泳動質量分析(CE-MS)、高速液体クロマトグラフィー連結質量分析(HPLC-MS)、四重極質量分析、任意の逐次連結質量分析、例えばMS-MS若しくはMS-MS-MS、誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)、熱分解質量分析(Py-MS)、イオン移動度質量分析、又は飛行時間質量分析(TOF)が使用される。最も好ましくは、以下に詳細に記載されるようにLC-MS及び/又はGC-MSが使用される。この技術については、例えば、Nissen, Journal of Chromatography A, 703, 1995: 37-57、米国特許第4,540,884号、又は米国特許第5,397,894号(その開示内容は参照により本明細書に援用される)に開示されている。質量分析技術の他の選択肢として又はそれに追加して、次の技術を化合物測定に使用可能である:核磁気共鳴(NMR)、磁気共鳴イメージング(MRI)、フーリエ変換赤外分析(FT-IR)、紫外(UV)分光、屈折率(RI)、蛍光検出、放射化学的検出、電気化学的検出、光散乱(LS)、分散ラマン分光、又はフレームイオン化検出(FID)。これらの技術は、当業者に周知であり、あとは苦もなく適用可能である。本発明の方法は、好ましくは自動化により支援される。例えば、サンプルの処理又は前処理をロボット工学により自動化することが可能である。データの処理及び比較は、好ましくは、好適なコンピュータープログラム及びデータベースにより支援される。本明細書で上に記載したような自動化により、本発明の方法をハイスループット方式で使用することが可能となる。
【0042】
さらに、アナライトはまた、特異的な化学的又は生物学的アッセイにより測定することができる。該アッセイは、サンプル中のアナライトを特異的に検出することを可能にする手段を含む。好ましくは、該手段は、アナライトの化学構造を特異的に認識することができるか、又は他の化合物と反応する能力若しくは生物学的読取り系で応答を引き起こす能力(例えば、レポーター遺伝子の誘導)に基づいてアナライトを特異的に同定することができる。アナライトの化学構造を特異的に認識することができる手段は、好ましくは化学構造と特異的に相互作用する抗体又は他のタンパク質、例えば、受容体若しくは酵素である。例えば、特異的抗体は、当技術分野で周知の方法により代謝物質を抗原として用いて取得することができる。本明細書に記載する抗体は、ポリクロナール抗体及びモノクロナール抗体の両方、さらにはそれらのフラグメント、例えば、抗原又はハプテンに結合することができるFv、Fab、及びF(ab)2フラグメントを含む。本発明はまた、所望の抗原特異性を呈する非ヒトドナー抗体のアミノ酸配列とヒトアクセプター抗体の配列とが組み合わされたヒト化ハイブリッド抗体を含む。さらに、一本鎖抗体が含まれる。ドナー配列は、通常、ドナーの少なくとも抗原結合性アミノ酸残基を含むが、ドナー抗体の他の構造上及び/又は機能上適合するアミノ酸残基をも含み得る。そのようなハイブリッドは、当技術分野で周知のいくつかの方法により調製することができる。アナライトを特異的に認識できる好適なタンパク質は、好ましくは該アナライト又は代謝物質の代謝変換に関与する酵素である。該酵素は、アナライトを基質として使用してよく、又は基質をアナライトに変換してもよい。さらに、該抗体は、アナライトを特異的に認識するオリゴペプチドを生成する基礎として使用され得る。これらのオリゴペプチドは、例えば、該アナライトに対する酵素の結合ドメイン又は結合ポケットを含む。好適な抗体及び/又は酵素に基づくアッセイは、RIA(ラジオイムノアッセイ)、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、サンドイッチ酵素免疫検査、電気化学発光サンドイッチ免疫アッセイ(ECLIA)、解離促進ランタニド蛍光免疫アッセイ(DELFIA)、又は固相免疫検査であり得る。さらに、他の化合物と反応する能力に基づいて、すなわち、特異的な化学反応により、アナライトを同定することもできる。さらに、生物学的読取り系で応答を引き起こす能力に基づいて、サンプル中の代謝物質を測定することができる。生物学的応答は、サンプルに含まれるアナライトの存在及び/又は量を示す読取り値として検出される。生物学的応答は、例えば、遺伝子発現の誘導又は細胞若しくは生物の表現型応答であり得る。
【0043】
「参照」という用語は、肝酵素誘導に相関し得るアナライトの群の各アナライトの特徴的特性の値を指す。そのような参照結果は、好ましくは、フェノバルビタールナトリウム、アロクロール1254、ペンタクロロベンゼン、β-イオノン、エチル-ベンゼン又はビンクロゾリンと接触させた被験体に由来するサンプルから得られる。被験体には、該化合物が生体利用可能である限り、局所又は全身投与方法の各方法で該化合物と接触させることができる。参照結果は、アナライトの量に関して本明細書中上述したように測定することができる。あるいは、とはいえ同様に好ましいことであるが、参照結果は、フェノバルビタールナトリウム、アロクロール1254、ペンタクロロベンゼン、β-イオノン、エチル-ベンゼン若しくはビンクロゾリンと接触させていない被験体、又は肝酵素誘導に関して健康、そしてより好ましくは他の疾患若しくは障害に関しても健康な被験体に由来するサンプルから得ることができる。さらに、参照は、同様に好ましくは、計算された参照、最も好ましくは、検査される被験体を含む個体集団に由来するアナライトの群の各アナライトについての相対量又は絶対量の平均値又は中央値であり得る。しかし、参照計算値を決定するために検査される被験体の集団は、好ましくは見かけ上健康な被験体(例えば未処置)からなるか、あるいはその集団内の検査対象被験体(複数可)の存在のために平均又は中央値の有意な変化に対して統計学的に耐えるのに十分に大きい数の見かけ上健康な被験体を含むことは理解されるだろう。該個体集団のアナライトの絶対量又は相対量は、本明細書の他の箇所に明記されるように測定することができる。好適な参照値、好ましくは平均値又は中央値の計算方法は、当技術分野で周知である。上に記載する被験体集団は、複数の被験体、好ましくは少なくとも5、10、50、100、1,000又は10,000の被験体を含む。本発明の方法により診断される被験体と該複数の被験体の被験体とは、同一種であることは理解されるだろう。
【0044】
より好ましくは、参照結果、すなわちアナライトの少なくとも1つの特徴的特性の値は、データベースのような好適なデータ記憶媒体中に記憶されて、従って、将来の診断にも利用可能となる。
【0045】
「比較」という用語は、上に詳細に記載した測定の結果、すなわち、アナライトの定性的又は定量的な測定の結果が、参照結果と同一であるか若しくは類似しているか、又は参照結果と異なっているかを評価することを指す。
【0046】
フェノバルビタールナトリウム、アロクロール1254、ペンタクロロベンゼン、β-イオノン、エチル-ベンゼン又はビンクロゾリンと接触させた被験体に由来するサンプルから参照結果を取得する場合、試験サンプルから得られる検査結果と上述の参照結果との間の同一度又は類似度に基づいて、すなわち、上述のアナライトに関する同一若しくは類似の定性的若しくは定量的な組成に基づいて、肝酵素誘導を診断することができる。特徴的特性の値、定量的測定の場合は強度値が同一であれば、試験サンプルの結果と参照結果とは同一である。特徴的特性の値は同一であるが強度値に差があれば、それらの結果は類似している。そのような差は、好ましくは、有意ではなく、強度の値が参照値に基づいて少なくとも1〜99パーセンタイル、5〜95パーセンタイル、10〜90パーセンタイル、20〜80パーセンタイル、30〜70パーセンタイル、40〜60パーセンタイルの範囲内、参照値に基づいて50、60、70、80、90若しくは95パーセンタイルであることを特徴とする。
【0047】
フェノバルビタールナトリウム、アロクロール1254、ペンタクロロベンゼン、β-イオノン、エチル-ベンゼン又はビンクロゾリンと接触させていない被験体から参照結果を取得する場合、試験サンプルから得られる検査結果と上述の参照結果との間の差、すなわち、上述のアナライトに関する定性的若しくは定量的な組成の差に基づいて、肝酵素誘導を診断することができる。上に明記されたように計算された参照を使用するのであれば、同じことがあてはまる。差は、アナライトの絶対量若しくは相対量の増大(アナライトの上方制御と称されることもある;実施例も参照されたい)又は該量のいずれかの減少若しくはアナライトの検出可能量の不在(アナライトの上方制御と称されることもある;実施例も参照されたい)であり得る。好ましくは、相対量又は絶対量の差は、有意である。すなわち、参照値に基づいて、45〜55パーセンタイル、40〜60パーセンタイル、30〜70パーセンタイル、20〜80パーセンタイル、10〜90パーセンタイル、5〜95パーセンタイル、1〜99パーセンタイルの範囲外にある。
【0048】
好ましくは、参照と比較したアナライトの量は以下のように異なる:
(i)雄のサンプル中において:ステアリン酸(C18:0)、ガラクトース、リグノセリン酸(C24:0)、ベヘン酸(C22:0)、ネルボン酸(C24:1)、3-及び5-メトキシスフィンゴシン、コレステロール、トレオン酸、ホスファチジルコリン(C18:0/C18:2)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジル-L-セリン、エイコサペンタン酸、ホスファチジルコリン(C18:0/C22:6)、これらは全て増大し;並びに
(ii)雌被験体のサンプル中において:グリセロール、パルミチン酸(C16:0)、リノール酸(C18:cis[9,12]2)、ステアリン酸(C18:0)、アラキドン酸(C20:cis-[5,8,11,14]4)、ドコサヘキサエン酸(C22:cis[4,7,10,13,16,19]6)、コレステロール、グリセロールリン酸、ガラクトース、リグノセリン酸(C24:0)、ドデカノール、ヘプタデカン酸(C17:0)、エイコサン酸(C20:0)、ミオ-イノシトール-2-一リン酸、ベヘン酸(C22:0)、ネルボン酸(C24:1)、γ-リノレン酸(C18:cis[6,9,12]3)、3-及び5-メトキシスフィンゴシン、トレオン酸、ホスファチジルコリン(C18:2, C20:4)、ホスファチジルコリン(C18:0/C18:2)、これらは全て増大する。本明細書に記載する特異的アナライトの場合、相対量の変化(すなわち「倍率」変化)の好ましい値又は変化の種類(すなわち、より多い若しくはより少ない相対量及び/若しくは絶対量をもたらす「上方」制御若しくは「下方」制御)は、以下の実施例に示される。
【0049】
比較は、好ましくは自動化により支援される。例えば、2つの異なるデータセット(例えば、特徴的特性(複数可)の値を含むデータセット)を比較するためのアルゴリズムを含む好適なコンピュータープログラムを使用し得る。そのようなコンピュータープログラム及びアルゴリズムは、当技術分野で周知である。上に述べたとおりであるが、手動で比較を行うこともできる。
【0050】
アナライトを測定する上述の方法は、デバイスにおいて実装することができる。本明細書で用いるデバイスは、少なくとも上述の手段を含む。さらに、デバイスは、好ましくは、アナライトの検出された特徴的特性(複数可)、同様に好ましくは、測定されたシグナル強度を、比較及び評価する手段をも含む。デバイスの手段は、好ましくは互いに作動可能に連結される。作動可能に手段を連結する方法は、デバイスに組み込まれる手段の種類に依存するだろう。例えば、自動で定性的若しくは定量的に代謝物質を測定する手段を適用する場合、診断を容易にするために、自動作動手段により得られたデータを、例えばコンピュータープログラムにより処理することができる。好ましくは、そのような場合、手段は、単一のデバイス内に含まれる。従って、該デバイスは、アナライト用の分析ユニットと、得られた診断用データを処理するためのコンピューターユニットとを含み得る。あるいは、テストストリップのような手段をアナライトの測定に使用する場合、診断手段は、上に記載するように肝酵素誘導に関連することがわかっている結果データ又は健康な被験体の指標となる結果データに測定結果データを割り当てる対照ストリップ又は対照表を含み得る。好ましいデバイスは、専門臨床医の特別な知識がなくても適用可能なもの、例えば、単にサンプルを充填することだけを必要とするテストストリップ又は電子デバイスである。
【0051】
あるいは、アナライトの測定方法は、好ましくは互いに作動可能に連結されたいくつかのデバイスを含むシステムで実装することができる。具体的には、上に詳細に記載したように本発明の方法を実施できるように手段を連結する必要がある。従って、作動可能に連結された(operatively linked)とは、本明細書で用いる場合、好ましくは、機能的に連結されたことを意味する。本発明のシステムに使用される手段に応じて、該手段間のデータ伝送を可能にする手段、例えば、ガラスファイバーケーブル及びハイスループットデータ伝送用の他のケーブルを用いて各手段を他の手段に接続することにより、該手段を機能的に連結し得る。それにもかかわらず、本発明では、例えばLAN(無線LAN、W-LAN)を介する手段間の無線データ転送も想定される。好ましいシステムは、アナライトを測定する手段を含む。本明細書で用いるアナライトの測定手段は、アナライトの分離手段(例えばクロマトグラフィーデバイス)、及びアナライトの測定手段(例えば質量分析デバイス)を含む。好適なデバイスについては、上に詳細に記載されている。本発明のシステムに使用される好ましい化合物分離手段には、クロマトグラフィーデバイス、より好ましくは、液体クロマトグラフィー用、HPLC用、及び/又はガスクロマトグラフィー用のデバイスが含まれる。好ましい化合物測定用デバイスとしては、質量分析デバイス、より好ましくは、GC-MS、LC-MS、直接注入質量分析、FT-ICR-MS、CE-MS、HPLC-MS、四重極質量分析、逐次連結質量分析(MS-MS若しくはMS-MS-MSを含む)、ICP-MS、Py-MS又はTOFが挙げられる。好ましくは、分離手段と測定手段とを互いに結合させる。最も好ましくは、本明細書の他の箇所に詳細に記載されるように、LC-MS及び/又はGC-MSを本発明のシステムに使用する。さらに、アナライトの測定手段から得られた結果の比較手段及び/又は分析手段も含まれる。結果の比較手段及び/又は分析手段は、少なくとも1つのデータベース、及び結果を比較するために実装されるコンピュータープログラムを含み得る。また、上述のシステム及びデバイスの好ましい実施形態については、以下に詳細に記載する。
【0052】
有利なことに、本発明の根底となる研究において、上述のアナライトの少なくとも5つの群の量が、肝酵素誘導、従って肝臓毒性の素因、のバイオマーカーとして機能することが見出された。上述のアナライトの全てを測定することによって、本方法の特異性及び精度をより改善することができる。これらの特異的なアナライトに関するメタボロームの定量的及び/又は定性的組成の変化は、肝酵素誘導の指標となる。肝酵素誘導を診断するために現在使用されている形態学的、生理学的及び生化学的パラメーターは、本発明によって提供されるバイオマーカーの測定と比較して特異性が低く、また感度も低い。本発明によって、化合物の肝酵素誘導特性を、より効率的かつ確実に評価することができる。さらに、上記知見に基づいて、肝酵素誘導の治療又は改善に有用な薬物のスクリーニングアッセイが実行可能である。
【0053】
本発明は、原則として、肝酵素誘導を診断するための診断用デバイス又は組成物の製造のための、雄被験体のサンプルにおける、ステアリン酸(C18:0)、ガラクトース、リグノセリン酸(C24:0)、ベヘン酸(C22:0)、ネルボン酸(C24:1)、3-及び5-メトキシスフィンゴシン、コレステロール、トレオン酸、ホスファチジルコリン(C18:0/C18:2)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジル-L-セリン、エイコサペンタン酸、ホスファチジルコリン(C18:0/C22:6)のうち少なくとも1つ、好ましくは少なくとも5つのアナライト、及び/又は、雌被験体のサンプルにおける、グリセロール、パルミチン酸(C16:0)、リノール酸(C18:cis[9,12]2)、ステアリン酸(C18:0)、アラキドン酸(C20:cis-[5,8,11,14]4)、ドコサヘキサエン酸(C22:cis[4,7,10,13,16,19]6)、コレステロール、グリセロールリン酸、ガラクトース、リグノセリン酸(C24:0)、ドデカノール、ヘプタデカン酸(C17:0)、エイコサン酸(C20:0)、ミオ-イノシトール-2-一リン酸、ベヘン酸(C22:0)、ネルボン酸(C24:1)、γ-リノレン酸(C18:cis[6,9,12]3)、3-及び5-メトキシスフィンゴシン、トレオン酸、ホスファチジルコリン(C18:2, C20:4)、ホスファチジルコリン(C18:0/C18:2)のうち少なくとも1つ、好ましくは少なくとも5つのアナライトの使用、あるいはそれらの検出手段の使用に関する。
【0054】
上記の用語の定義及び説明は全て、以下で特に述べない限り、上述した方法及び以下にさらに記載する全ての他の実施形態に、変更すべきところは変更して適用する。
【0055】
上記に続き、本発明はまた、化合物が被験体において肝酵素誘導の誘導能を有するかどうか判定する方法であって、
(a)肝酵素誘導の誘導能を有することが疑われる化合物と接触させた雄被験体のサンプル中において、以下のアナライト、すなわちステアリン酸(C18:0)、ガラクトース、リグノセリン酸(C24:0)、ベヘン酸(C22:0)、ネルボン酸(C24:1)、3-及び5-メトキシスフィンゴシン、コレステロール、トレオン酸、ホスファチジルコリン(C18:0/C18:2)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジル-L-セリン、エイコサペンタン酸、ホスファチジルコリン(C18:0/C22:6)うち少なくとも1つ、好ましくは少なくとも5つの量、又は肝酵素誘導の誘導能を有することが疑われる化合物と接触させた雌の試験サンプル中において、以下のアナライト、すなわちグリセロール、パルミチン酸(C16:0)、リノール酸(C18:cis[9,12]2)、ステアリン酸(C18:0)、アラキドン酸(C20:cis-[5,8,11,14]4)、ドコサヘキサエン酸(C22:cis[4,7,10,13,16,19]6)、コレステロール、グリセロールリン酸、ガラクトース、リグノセリン酸(C24:0)、ドデカノール、ヘプタデカン酸(C17:0)、エイコサン酸(C20:0)、ミオ-イノシトール-2-一リン酸、ベヘン酸(C22:0)、ネルボン酸(C24:1)、γ-リノレン酸(C18:cis[6,9,12]3)、3-及び5-メトキシスフィンゴシン、トレオン酸、ホスファチジルコリン(C18:2, C20:4)、ホスファチジルコリン(C18:0/C18:2)のうち少なくとも1つ、好ましくは少なくとも5つの量を測定するステップ;並びに
(b)ステップ(a)で測定された量を参照と比較するステップであって、それによって該化合物の肝酵素誘導の誘導能を判定する前記ステップ
を含む、前記方法を想定する。
【0056】
前記方法の好ましい実施形態において、前記化合物は、フェノバルビタールナトリウム、アロクロール1254、ペンタクロロベンゼン、β-イオノン、エチル-ベンゼン又はビンクロゾリンからなる群より選択される少なくとも1つの化合物である。
【0057】
好ましくは、前記参照は、肝酵素誘導が生じている被験体、又はフェノバルビタールナトリウム、アロクロール1254、ペンタクロロベンゼン、β-イオノン、エチル-ベンゼン若しくはビンクロゾリンからなる群より選択される少なくとも1つの化合物と接触させた被験体に由来する。より好ましくは、試験サンプルと参照においてアナライトの量が本質的に同一であることは、肝酵素誘導の指標となる。
【0058】
また好ましくは、前記参照は、肝酵素誘導が生じていないことがわかっている被験体、又はフェノバルビタールナトリウム、アロクロール1254、ペンタクロロベンゼン、β-イオノン、エチル-ベンゼン若しくはビンクロゾリンからなる群より選択される少なくとも1つの化合物と接触させていない被験体に由来する。もう一つの方法としては、同様に好ましいことであるが、前記参照は、被験体集団におけるアナライトについて計算された参照である。より好ましくは、参照と比較して試験サンプル中におけるアナライトの量が異なることは、肝酵素誘導の指標となる。
【0059】
肝酵素誘導の指標となる好ましい量は、本明細書の他の箇所に開示されている。
【0060】
本発明はまた、肝酵素誘導の治療用物質を同定する方法であって、
(a)肝酵素誘導治療能を有することが推測される候補物質と接触させた、肝酵素誘導が生じている雄被験体のサンプル中において、以下のアナライト、すなわちステアリン酸(C18:0)、ガラクトース、リグノセリン酸(C24:0)、ベヘン酸(C22:0)、ネルボン酸(C24:1)、3-及び5-メトキシスフィンゴシン、コレステロール、トレオン酸、ホスファチジルコリン(C18:0/C18:2)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジル-L-セリン、エイコサペンタン酸、ホスファチジルコリン(C18:0/C22:6)のうち少なくとも1つ、好ましくは少なくとも5つの量、又は肝酵素誘導治療能を有することが推測される候補物質と接触させた、肝酵素誘導が生じている雌被験体のサンプル中において、以下のアナライト、すなわちグリセロール、パルミチン酸(C16:0)、リノール酸(C18:cis[9,12]2)、ステアリン酸(C18:0)、アラキドン酸(C20:cis-[5,8,11,14]4)、ドコサヘキサエン酸(C22:cis[4,7,10,13,16,19]6)、コレステロール、グリセロールリン酸、ガラクトース、リグノセリン酸(C24:0)、ドデカノール、ヘプタデカン酸(C17:0)、エイコサン酸(C20:0)、ミオ-イノシトール-2-一リン酸、ベヘン酸(C22:0)、ネルボン酸(C24:1)、γ-リノレン酸(C18:cis[6,9,12]3)、3-及び5-メトキシスフィンゴシン、トレオン酸、ホスファチジルコリン(C18:2, C20:4)、ホスファチジルコリン(C18:0/C18:2)のうち少なくとも1つ、好ましくは少なくとも5つの量を測定するステップ;並びに
(b)ステップ(a)で測定した量を参照と比較するステップであって、それによって肝酵素誘導治療能を有する物質を同定する前記ステップ
を含む、前記方法に関する。
【0061】
具体的には、肝酵素誘導の治療に有用な物質を同定する方法の場合、前記参照は、好ましくは、フェノバルビタールナトリウム、アロクロール1254、ペンタクロロベンゼン、β-イオノン、エチル-ベンゼン若しくはビンクロゾリンからなる群より選択される少なくとも1つの化合物と接触させた被験体、又は肝酵素誘導が生じている被験体に由来する。より好ましくは、試験サンプルと参照においてアナライトの量が異なることは、肝酵素誘導の治療に有用な物質の指標となる。
【0062】
具体的には、肝酵素誘導治療能を有する物質の指標となるのは、参照と比較して以下のように異なるアナライトの量である:
(i)雄のサンプル中において:ステアリン酸(C18:0)、ガラクトース、リグノセリン酸(C24:0)、ベヘン酸(C22:0)、ネルボン酸(C24:1)、3-及び5-メトキシスフィンゴシン、コレステロール、トレオン酸、ホスファチジルコリン(C18:0/C18:2)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジル-L-セリン、エイコサペンタン酸、ホスファチジルコリン(C18:0/C22:6)、これらは全て減少し、並びに
(ii)雌被験体のサンプル中において:グリセロール、パルミチン酸(C16:0)、リノール酸(C18:cis[9,12]2)、ステアリン酸(C18:0)、アラキドン酸(C20:cis-[5,8,11,14]4)、ドコサヘキサエン酸(C22:cis[4,7,10,13,16,19]6)、コレステロール、グリセロールリン酸、ガラクトース、リグノセリン酸(C24:0)、ドデカノール、ヘプタデカン酸(C17:0)、エイコサン酸(C20:0)、ミオ-イノシトール-2-一リン酸、ベヘン酸(C22:0)、ネルボン酸(C24:1)、γ-リノレン酸(C18:cis[6,9,12]3)、3-及び5-メトキシスフィンゴシン、トレオン酸、ホスファチジルコリン(C18:2, C20:4)、ホスファチジルコリン(C18:0/C18:2)、これらは全て減少する。
【0063】
あるいは、前記参照は、好ましくは、フェノバルビタールナトリウム、アロクロール1254、ペンタクロロベンゼン、β-イオノン、エチル-ベンゼン若しくはビンクロゾリンと接触させていない被験体、又は肝酵素誘導が生じていないことがわかっている被験体に由来するか、あるいは被験体集団におけるアナライトについて計算された参照であってもよい。このような参照を使用する場合、試験サンプルと参照における代謝物質の量が同一又は類似であることは、肝酵素誘導の治療に有用な物質の指標となる。
【0064】
「肝酵素誘導の治療用物質」という用語は、本明細書の他の箇所に記載する肝酵素誘導を誘発する生物学的メカニズムを直接妨害し得る化合物を指す。従って、共役(conjugation)及び/又は酸化に関与する酵素の活性がモジュレートされ得る。あるいは、物質は、例えば、前記過程に関与する酵素又は他の因子の発現をモジュレートすることによって、間接的にこれらの活性に影響を与え得ることが想定される。本発明の方法によって同定される物質は、有機及び無機化学物質、例えば小分子、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド(抗体を含む)、又は他の人工的若しくは生物学的多量体であり得る。好ましくは、物質は、薬物、プロドラッグ、又は薬物若しくはプロドラッグの開発のためのリード物質として適する。本明細書において意味する治療は、酵素が誘導された肝臓の前臨床学的状態が、酵素がそれらの生理学的存在量及び活性の範囲内(すなわち正常値の上限に等しい又はそれ未満)である生理学的状態へ転換することのみならず、改善、すなわち肝臓における酵素誘導の低下をも含む。治療は、好ましくは、それを受ける個体集団の少なくとも有意なコホートに影響を及ぼす必要があるが、その治療を受ける個体の全てにおいて成功しなければならないわけではない。
【0065】
本発明の方法を、肝酵素誘導の治療のための薬物の同定、又は化合物の毒性学的評価(すなわち化合物が肝酵素誘導の誘導能を有するかどうかを判定する)に用いようとする場合、統計学的理由のために複数の被験体の試験サンプルを検査し得ることは理解されるだろう。好ましくは、検査被験体のコホート内のメタボロームは、例えば検査対象の化合物以外の要因によって生じる差異を避けるために可能な限り類似である。前記方法に用いられる被験体は、好ましくはげっ歯動物などの実験動物、より好ましくはラットである。さらに、前記実験動物は、好ましくは、本発明の方法の完了後に犠牲にすることは理解されるだろう。コホート検査及び参照動物の全ての被験体は、あらゆる環境差の影響を避けるために同一条件におくべきである。そのような動物を提供する好適な条件及び方法は、WO2007/014825号に詳細に記載されている。前記条件は、参照により本明細書に援用される。
【0066】
本発明はまた、ステアリン酸(C18:0)、ガラクトース、リグノセリン酸(C24:0)、ベヘン酸(C22:0)、ネルボン酸(C24:1)、3-及び5-メトキシスフィンゴシン、コレステロール、トレオン酸、ホスファチジルコリン(C18:0/C18:2)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジル-L-セリン、エイコサペンタン酸、ホスファチジルコリン(C18:0/C22:6)のアナライト、及び/又は少なくともグリセロール、パルミチン酸(C16:0)、リノール酸(C18:cis[9,12]2)、ステアリン酸(C18:0)、アラキドン酸(C20:cis-[5,8,11,14]4)、ドコサヘキサエン酸(C22:cis[4,7,10,13,16,19]6)、コレステロール、グリセロールリン酸、ガラクトース、リグノセリン酸(C24:0)、ドデカノール、ヘプタデカン酸(C17:0)、エイコサン酸(C20:0)、ミオ-イノシトール-2-一リン酸、ベヘン酸(C22:0)、ネルボン酸(C24:1)、γ-リノレン酸(C18:cis[6,9,12]3)、3-及び5-メトキシスフィンゴシン、トレオン酸、ホスファチジルコリン(C18:2, C20:4)、ホスファチジルコリン(C18:0/C18:2)のアナライトについての特性値を含む、データ集合に関する。
【0067】
「データ集合」という用語は、物理的及び/又は論理的に一まとめにし得る一群のデータを指す。従って、データ集合は、単一のデータ記憶媒体又は互いに作動可能に連結された物理的に分離されたデータ記憶媒体に組込まれ得る。好ましくは、データ集合は、データベースを利用して実装される。従って、本明細書で用いるデータベースは、好適な記憶媒体上のデータ集合を含む。さらに、データベースは、好ましくは、データベース管理システムをも含む。データベース管理システムは、好ましくは、ネットワーク型、階層型、又はオブジェクト指向型のデータベース管理システムである。その上さらに、データベースは、連邦データベース又は統合データベースであってもよい。より好ましくは、データベースは、分散型(連邦)システムとして、例えばクライアントサーバーシステムとして実装されるだろう。より好ましくは、データベースは、検索アルゴリズムにより試験データセットをデータ集合に含まれるデータセットと比較できるように構築される。具体的には、そのようなアルゴリズムを用いて、肝酵素誘導の指標となる類似若しくは同一のデータセットが得られるように、データベースを検索することが可能である(例えば、クエリー検索)。従って、データ集合で同一若しくは類似のデータセットを同定できれば、試験データセットは、肝酵素誘導特性に関連付けられるだろう。その結果として、データ集合から得られた情報を用いることにより、被験体から得られた試験データセットに基づいて肝酵素誘導を診断することができる。
【0068】
さらに、本発明は、前記データ集合を含むデータ記憶媒体に関する。
【0069】
本明細書で用いる「データ記憶媒体」という用語は、単一の物理的要素に基づくデータ記憶媒体、例えば、CD、CD-ROM、ハードディスク、光記憶媒体、又はディスケットを含む。さらに、この用語は、好ましくはクエリー検索に好適な方式で上述のデータ集合を提供するように互いに作動可能に連結された物理的に分離された要素よりなるデータ記憶媒体をも含む。
【0070】
本発明はまた、
(a)サンプルのアナライトの特性値を比較する手段と、それと作動可能に連結された
(b)本発明のデータ記憶媒体と
を含むシステムに関する。
【0071】
本明細書で用いる「システム」という用語は、互いに作動可能に連結された種々の手段に関する。該手段は、単一のデバイスに組み込んでよく、又は互いに作動可能に連結された物理的に分離されたデバイスに組み込んでもよい。アナライトの特性値を比較する手段は、好ましくは、上で述べたような比較のアルゴリズムに基づいて動作する。データ記憶媒体は、好ましくは、それぞれの記憶データセットが肝酵素誘導の指標となる上述のデータ集合又はデータベースを含む。従って、本発明のシステムを用いれば、データ記憶媒体に記憶されたデータ集合に試験データセットが含まれるかどうかを同定することが可能である。その結果として、本発明のシステムは、肝酵素誘導を診断する際の診断手段として利用され得る。
【0072】
システムの好ましい実施形態では、サンプルの代謝物質の特性値を測定する手段が含まれる。
【0073】
「アナライトの特性値を測定する手段」という用語は、好ましくは、アナライトを測定するための上述のデバイス、例えば、質量分析デバイス、NMRデバイス、又はアナライトの化学的アッセイ若しくは生物学的アッセイを行うためのデバイスに関する。
【0074】
本発明はまた、ステアリン酸(C18:0)、ガラクトース、リグノセリン酸(C24:0)、ベヘン酸(C22:0)、ネルボン酸(C24:1)、3-及び5-メトキシスフィンゴシン、コレステロール、トレオン酸、ホスファチジルコリン(C18:0/C18:2)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジル-L-セリン、エイコサペンタン酸、ホスファチジルコリン(C18:0/C22:6)のうち少なくとも1つ、好ましくは少なくとも5つのアナライト、及び/又はグリセロール、パルミチン酸(C16:0)、リノール酸(C18:cis[9,12]2)、ステアリン酸(C18:0)、アラキドン酸(C20:cis-[5,8,11,14]4)、ドコサヘキサエン酸(C22:cis[4,7,10,13,16,19]6)、コレステロール、グリセロールリン酸、ガラクトース、リグノセリン酸(C24:0)、ドデカノール、ヘプタデカン酸(C17:0)、エイコサン酸(C20:0)、ミオ-イノシトール-2-一リン酸、ベヘン酸(C22:0)、ネルボン酸(C24:1)、γ-リノレン酸(C18:cis[6,9,12]3)、3-及び5-メトキシスフィンゴシン、トレオン酸、ホスファチジルコリン(C18:2, C20:4)、ホスファチジルコリン(C18:0/C18:2)のうち少なくとも1つ、好ましくは少なくとも5つのアナライト、あるいはそれらの測定手段、を含む診断用組成物を含む。
【0075】
さらに本発明は、
(a)ステアリン酸(C18:0)、ガラクトース、リグノセリン酸(C24:0)、ベヘン酸(C22:0)、ネルボン酸(C24:1)、3-及び5-メトキシスフィンゴシン、コレステロール、トレオン酸、ホスファチジルコリン(C18:0/C18:2)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジル-L-セリン、エイコサペンタン酸、ホスファチジルコリン(C18:0/C22:6)のうち少なくとも1つ、好ましくは少なくとも5つのアナライト、及び/又はグリセロール、パルミチン酸(C16:0)、リノール酸(C18:cis[9,12]2)、ステアリン酸(C18:0)、アラキドン酸(C20:cis-[5,8,11,14]4)、ドコサヘキサエン酸(C22:cis[4,7,10,13,16,19]6)、コレステロール、グリセロールリン酸、ガラクトース、リグノセリン酸(C24:0)、ドデカノール、ヘプタデカン酸(C17:0)、エイコサン酸(C20:0)、ミオ-イノシトール-2-一リン酸、ベヘン酸(C22:0)、ネルボン酸(C24:1)、γ-リノレン酸(C18:cis[6,9,12]3)、3-及び5-メトキシスフィンゴシン、トレオン酸、ホスファチジルコリン(C18:2, C20:4)、ホスファチジルコリン(C18:0/C18:2)のうち少なくとも1つ、好ましくは少なくとも5つのアナライト、の特性値を測定する手段;並びに
(b)手段(a)によって測定された特性値に基づいて肝酵素誘導を診断する手段
を含む、診断用デバイスが含まれる。
【0076】
「診断手段」という用語は、好ましくは、本明細書の他の箇所に詳細に明記されるような診断用デバイス、システム、又は生物学的アッセイ若しくは化学的アッセイに関する。
【0077】
「アナライト群の特性値(characteristic value)を測定する手段」という表現は、代謝物質(複数可)を特異的に認識可能なデバイス又は作用剤を指す。好適なデバイスは、分光測定デバイス、例えば、質量分析デバイス、NMRデバイス、又は代謝物質の化学的アッセイ若しくは生物学的アッセイを行うためのデバイスであり得る。好適な作用剤は、代謝物質を特異的に検出する化合物であり得る。本明細書で用いる検出は、二段階法であってもよい。すなわち、最初に、化合物を検出対象の代謝物質に特異的に結合させ、続いて、検出可能なシグナル、例えば、蛍光シグナル、化学発光シグナル、放射性シグナルなどを発生させることが可能である。検出可能なシグナルを発生させるために、さらなる化合物を必要としてよい。こうした化合物は全て、「アナライト群の特性値を測定する手段」という用語に含まれる。代謝物質に特異的に結合する化合物は、本明細書の他の箇所に詳細に記載されており、好ましくは酵素、抗体、リガンド、受容体、又はアナライトに特異的に結合する他の生物学的分子若しくは化学物質を含む。
【0078】
上記に参照した参考文献は全て、以上の説明で明示的に参照されたそれらの具体的な開示内容だけでなくそれらの全開示内容に関して、参照により本明細書に援用される。
【実施例】
【0079】
以下の実施例は、本発明を説明する目的のためにすぎない。これらは、本発明の範囲をなんらかの観点で限定するものと何ら解釈されるべきではない。
【0080】
実施例:肝酵素誘導に関連するバイオマーカー
それぞれ5匹の雄及び雌のラットの群に、強制飼養により示した化合物(以下の表を参照)を10及び100 mg/kg体重で1日1回、28日間にわたり投与した。それぞれ5匹の雄及び雌のラットの別の群を対照として使用した。処置期間の開始前に、供給時に62〜64日齢であった動物を7日間かけて居住及び環境条件に順応させた。動物集団の全ての動物を同じ一定温度(20〜24±3℃)及び同じ一定湿度(30〜70%)の条件に置いた。動物集団の各動物は別のケージに維持した。動物集団の動物には不断給餌を行った。使用する食餌は、化学物質又は微生物の汚染物を実質的に含まないものとした。飲料水も自由に給餌した。従って、水は、欧州飲料水指令(European Drinking Water Directive)98/83/EGにある規定に従って化学物質及び微生物の汚染物を含まないものとした。日照時間は、明条件12時間の後、暗条件12時間とした(6:00〜18:00の12時間の明るさ、及び18:00〜6:00の12時間の暗闇)。
【0081】
7日目、14日目及び28日目の朝に、絶食させた麻酔動物の眼窩後(retroorbital)静脈叢から血液を採取した。各動物から、EDTAを抗凝血剤として用いて1 mlの血液を採取した。サンプルを遠心して血漿を調製した。全ての血漿サンプルをN2雰囲気で満たし、その後分析まで-80℃で保存した。
【0082】
質量分析法に基づく代謝物質のプロフィール分析のために、血漿サンプルを抽出し、極性及び非極性画分を得た。GC-MS分析のため、非極性画分を酸性条件下でメタノールで処理し、脂肪酸メチルエステルを得た。分析前に両方の画分をさらに、O-メチルヒドロキシアミン塩酸塩及びピリジンを用いてオキソ基をO-メチルオキシムに変換し、その後、シリル化剤を用いて誘導体化した。LC-MS分析においては、両方の画分を適当な溶媒混合物中で再構成した。逆相分離カラムを用いた勾配溶出によってHPLCを実施した。質量分析法による検出のため、メタノミクス(metanomics)専用技術を適用して、標的及び高感度MRM(多重反応モニター)プロファイリングを並行して行い、完全なスクリーニング分析を行った。
【0083】
総合的な分析検証ステップの後、各アナライトについてのデータを、プールサンプルからのデータに対して正規化した。これらのサンプルは、プロセスの変動性を把握するため全プロセスにおいて並行して試験した。性別、投与群及び代謝物質に特異的な処置群の値の有意性は、スチューデントのt検定を用いて、処置群の平均を各未処置群の平均と比較することによって判定した。正規化された処置群の値及びそれらの有意性は、さらなる統計処理及びデータマイニングプロセスのためにデータベースに供給した。
【0084】
ラットの処置後の肝酵素誘導の指標となる血漿代謝物質の群の変化を以下の表に示す。
【表1】

【0085】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝酵素誘導を診断する方法であって、
(a)肝酵素誘導が生じていることが疑われる雄被験体の試験サンプル中において、以下のアナライト:ステアリン酸(C18:0)、ガラクトース、リグノセリン酸(C24:0)、ベヘン酸(C22:0)、ネルボン酸(C24:1)、3-及び5-メトキシスフィンゴシン、コレステロール、トレオン酸、ホスファチジルコリン(C18:0/C18:2)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジル-L-セリン、エイコサペンタン酸、ホスファチジルコリン(C18:0/C22:6)のうち少なくとも5つの量、又は肝酵素誘導が生じていることが疑われる雌被験体の試験サンプル中において、以下のアナライト:グリセロール、パルミチン酸(C16:0)、リノール酸(C18:cis[9,12]2)、ステアリン酸(C18:0)、アラキドン酸(C20:cis-[5,8,11,14]4)、ドコサヘキサエン酸(C22:cis[4,7,10,13,16,19]6)、コレステロール、グリセロールリン酸、ガラクトース、リグノセリン酸(C24:0)、ドデカノール、ヘプタデカン酸(C17:0)、エイコサン酸(C20:0)、ミオ-イノシトール-2-一リン酸、ベヘン酸(C22:0)、ネルボン酸(C24:1)、γ-リノレン酸(C18:cis[6,9,12]3)、3-及び5-メトキシスフィンゴシン、トレオン酸、ホスファチジルコリン(C18:2, C20:4)、ホスファチジルコリン(C18:0/C18:2)のうち少なくとも5つの量を測定するステップ、並びに
(b)ステップ(a)において測定された量を参照と比較するステップであって、それによって肝酵素誘導を診断する前記ステップ
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記被験体が、肝酵素誘導の誘導能を有することが疑われる化合物と接触させたものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
化合物が被験体において肝酵素誘導の誘導能を有するかどうか判定する方法であって、
(a)肝酵素誘導の誘導能を有することが疑われる化合物と接触させた雄被験体のサンプル中において、以下のアナライト:ステアリン酸(C18:0)、ガラクトース、リグノセリン酸(C24:0)、ベヘン酸(C22:0)、ネルボン酸(C24:1)、3-及び5-メトキシスフィンゴシン、コレステロール、トレオン酸、ホスファチジルコリン(C18:0/C18:2)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジル-L-セリン、エイコサペンタン酸、ホスファチジルコリン(C18:0/C22:6)のうち少なくとも5つの量、又は肝酵素誘導の誘導能を有することが疑われる化合物と接触させた雌の試験サンプル中において、以下のアナライト:グリセロール、パルミチン酸(C16:0)、リノール酸(C18:cis[9,12]2)、ステアリン酸(C18:0)、アラキドン酸(C20:cis-[5,8,11,14]4)、ドコサヘキサエン酸(C22:cis[4,7,10,13,16,19]6)、コレステロール、グリセロールリン酸、ガラクトース、リグノセリン酸(C24:0)、ドデカノール、ヘプタデカン酸(C17:0)、エイコサン酸(C20:0)、ミオ-イノシトール-2-一リン酸、ベヘン酸(C22:0)、ネルボン酸(C24:1)、γ-リノレン酸(C18:cis[6,9,12]3)、3-及び5-メトキシスフィンゴシン、トレオン酸、ホスファチジルコリン(C18:2, C20:4)、ホスファチジルコリン(C18:0/C18:2)のうち少なくとも5つの量を測定するステップ;並びに
(b)ステップ(a)で測定された量を参照と比較するステップであって、それによって該化合物の肝酵素誘導の誘導能を判定する前記ステップ
を含む、前記方法。
【請求項4】
前記化合物が、フェノバルビタールナトリウム、アロクロール1254、ペンタクロロベンゼン、β-イオノン、エチル-ベンゼン又はビンクロゾリンからなる群より選択される少なくとも1つの化合物である、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記参照が、(i)肝酵素誘導が生じている被験体、又は(ii)フェノバルビタールナトリウム、アロクロール1254、ペンタクロロベンゼン、β-イオノン、エチル-ベンゼン若しくはビンクロゾリンからなる群より選択される少なくとも1つの化合物と接触させた被験体に由来する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
試験サンプルと参照においてアナライトの量が本質的に同一であることが、肝酵素誘導の指標となる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記参照が、(i)肝酵素誘導が生じていないことがわかっている被験体、又は(ii)フェノバルビタールナトリウム、アロクロール1254、ペンタクロロベンゼン、β-イオノン、エチル-ベンゼン若しくはビンクロゾリンからなる群より選択される少なくとも1つの化合物と接触させていない被験体に由来する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記参照が、被験体の集団におけるアナライトについて計算された参照である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
試験サンプル中におけるアナライトの量が参照と比較して異なることが、肝酵素誘導の指標となる、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
肝酵素誘導の指標となるのが、参照と比較して以下のように異なるアナライトの量である、請求項7〜9のいずれか1項に記載の方法。
(i)雄のサンプル中において:ステアリン酸(C18:0)、ガラクトース、リグノセリン酸(C24:0)、ベヘン酸(C22:0)、ネルボン酸(C24:1)、3-及び5-メトキシスフィンゴシン、コレステロール、トレオン酸、ホスファチジルコリン(C18:0/C18:2)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジル-L-セリン、エイコサペンタン酸、ホスファチジルコリン(C18:0/C22:6)、これらは全て増大し、並びに
(ii)雌被験体のサンプル中において:グリセロール、パルミチン酸(C16:0)、リノール酸(C18:cis[9,12]2)、ステアリン酸(C18:0)、アラキドン酸(C20:cis-[5,8,11,14]4)、ドコサヘキサエン酸(C22:cis[4,7,10,13,16,19]6)、コレステロール、グリセロールリン酸、ガラクトース、リグノセリン酸(C24:0)、ドデカノール、ヘプタデカン酸(C17:0)、エイコサン酸(C20:0)、ミオ-イノシトール-2-一リン酸、ベヘン酸(C22:0)、ネルボン酸(C24:1)、γ-リノレン酸(C18:cis[6,9,12]3)、3-及び5-メトキシスフィンゴシン、トレオン酸、ホスファチジルコリン(C18:2, C20:4)、ホスファチジルコリン(C18:0/C18:2)、これらは全て増大する。
【請求項11】
肝酵素誘導の治療用物質を同定する方法であって、
(a)肝酵素誘導治療能を有することが推測される候補物質と接触させた、肝酵素誘導が生じている雄被験体のサンプル中において、以下のアナライト:ステアリン酸(C18:0)、ガラクトース、リグノセリン酸(C24:0)、ベヘン酸(C22:0)、ネルボン酸(C24:1)、3-及び5-メトキシスフィンゴシン、コレステロール、トレオン酸、ホスファチジルコリン(C18:0/C18:2)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジル-L-セリン、エイコサペンタン酸、ホスファチジルコリン(C18:0/C22:6)のうち少なくとも5つの量、又は肝酵素誘導治療能を有することが推測される候補物質と接触させた、肝酵素誘導が生じている雌被験体のサンプル中において、以下のアナライト:グリセロール、パルミチン酸(C16:0)、リノール酸(C18:cis[9,12]2)、ステアリン酸(C18:0)、アラキドン酸(C20:cis-[5,8,11,14]4)、ドコサヘキサエン酸(C22:cis[4,7,10,13,16,19]6)、コレステロール、グリセロールリン酸、ガラクトース、リグノセリン酸(C24:0)、ドデカノール、ヘプタデカン酸(C17:0)、エイコサン酸(C20:0)、ミオ-イノシトール-2-一リン酸、ベヘン酸(C22:0)、ネルボン酸(C24:1)、γ-リノレン酸(C18:cis[6,9,12]3)、3-及び5-メトキシスフィンゴシン、トレオン酸、ホスファチジルコリン(C18:2, C20:4)、ホスファチジルコリン(C18:0/C18:2)のうち少なくとも5つの量を測定するステップ;並びに
(b)ステップ(a)で測定した量を参照と比較するステップであって、それによって肝酵素誘導治療能を有する物質を同定する前記ステップ
を含む、前記方法。
【請求項12】
前記参照が、(i)肝酵素誘導が生じている被験体、又は(ii)フェノバルビタールナトリウム、アロクロール1254、ペンタクロロベンゼン、β-イオノン、エチル-ベンゼン若しくはビンクロゾリンからなる群より選択される少なくとも1つの化合物と接触させた被験体に由来する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
試験サンプルと参照においてアナライトの量が異なることが、肝酵素誘導治療能を有する物質の指標となる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
肝酵素誘導治療能を有する物質の指標となるのが、参照と比較して以下のように異なるアナライトの量である、請求項11〜13のいずれか1項に記載の方法。
(i)雄のサンプル中において:ステアリン酸(C18:0)、ガラクトース、リグノセリン酸(C24:0)、ベヘン酸(C22:0)、ネルボン酸(C24:1)、3-及び5-メトキシスフィンゴシン、コレステロール、トレオン酸、ホスファチジルコリン(C18:0/C18:2)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジル-L-セリン、エイコサペンタン酸、ホスファチジルコリン(C18:0/C22:6)、これらは全て減少し、並びに
(ii)雌被験体のサンプル中において:グリセロール、パルミチン酸(C16:0)、リノール酸(C18:cis[9,12]2)、ステアリン酸(C18:0)、アラキドン酸(C20:cis-[5,8,11,14]4)、ドコサヘキサエン酸(C22:cis[4,7,10,13,16,19]6)、コレステロール、グリセロールリン酸、ガラクトース、リグノセリン酸(C24:0)、ドデカノール、ヘプタデカン酸(C17:0)、エイコサン酸(C20:0)、ミオ-イノシトール-2-一リン酸、ベヘン酸(C22:0)、ネルボン酸(C24:1)、γ-リノレン酸(C18:cis[6,9,12]3)、3-及び5-メトキシスフィンゴシン、トレオン酸、ホスファチジルコリン(C18:2, C20:4)、ホスファチジルコリン(C18:0/C18:2)、これらは全て減少する。
【請求項15】
前記参照が、(i)肝酵素誘導が生じていないことがわかっている被験体、又は(ii)フェノバルビタールナトリウム、アロクロール1254、ペンタクロロベンゼン、β-イオノンからなる群より選択される少なくとも1つの化合物と接触させていない被験体に由来する、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記参照が、被験体の集団におけるアナライトについて計算された参照である、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
試験サンプルと参照においてアナライトの量が本質的に同一であることが、肝酵素誘導治療能を有する物質の指標となる、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記肝酵素誘導が、肝細胞壊死、肝炎、脂肪症、肝硬変、リン脂質症、胆汁鬱滞、胆管炎、肝静脈血栓症、肝腫瘍からなる群より選択される少なくとも1つの障害又は疾患の素因を示す、請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
アナライトの群の測定が、質量分析(MS)を含む、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記質量分析が、液体クロマトグラフィー(LC)-MS又はガスクロマトグラフィー(GC)-MSである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記サンプルが、前記被験体の体液のサンプルである、請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記体液が血液である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記被験体が哺乳動物である、請求項1〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
ステアリン酸(C18:0)、ガラクトース、リグノセリン酸(C24:0)、ベヘン酸(C22:0)、ネルボン酸(C24:1)、3-及び5-メトキシスフィンゴシン、コレステロール、トレオン酸、ホスファチジルコリン(C18:0/C18:2)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジル-L-セリン、エイコサペンタン酸、ホスファチジルコリン(C18:0/C22:6)のうち少なくとも5つのアナライトについての特性値、及び/又は少なくともグリセロール、パルミチン酸(C16:0)、リノール酸(C18:cis[9,12]2)、ステアリン酸(C18:0)、アラキドン酸(C20:cis-[5,8,11,14]4)、ドコサヘキサエン酸(C22:cis[4,7,10,13,16,19]6)、コレステロール、グリセロールリン酸、ガラクトース、リグノセリン酸(C24:0)、ドデカノール、ヘプタデカン酸(C17:0)、エイコサン酸(C20:0)、ミオ-イノシトール-2-一リン酸、ベヘン酸(C22:0)、ネルボン酸(C24:1)、γ-リノレン酸(C18:cis[6,9,12]3)、3-及び5-メトキシスフィンゴシン、トレオン酸、ホスファチジルコリン(C18:2, C20:4)、ホスファチジルコリン(C18:0/C18:2)のアナライトについての特性値を含む、データ集合。
【請求項25】
請求項23に記載のデータ集合を含むデータ記憶媒体。
【請求項26】
(a)サンプルのアナライトの特性値を比較する手段と、それと作動可能に連結された
(b)請求項25に記載のデータ記憶媒体と
を含むシステム。
【請求項27】
サンプル中のアナライトの特性値を測定する手段をさらに含む、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
ステアリン酸(C18:0)、ガラクトース、リグノセリン酸(C24:0)、ベヘン酸(C22:0)、ネルボン酸(C24:1)、3-及び5-メトキシスフィンゴシン、コレステロール、トレオン酸、ホスファチジルコリン(C18:0/C18:2)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジル-L-セリン、エイコサペンタン酸、ホスファチジルコリン(C18:0/C22:6)のうち少なくとも5つのアナライト、及び/又はグリセロール、パルミチン酸(C16:0)、リノール酸(C18:cis[9,12]2)、ステアリン酸(C18:0)、アラキドン酸(C20:cis-[5,8,11,14]4)、ドコサヘキサエン酸(C22:cis[4,7,10,13,16,19]6)、コレステロール、グリセロールリン酸、ガラクトース、リグノセリン酸(C24:0)、ドデカノール、ヘプタデカン酸(C17:0)、エイコサン酸(C20:0)、ミオ-イノシトール-2-一リン酸、ベヘン酸(C22:0)、ネルボン酸(C24:1)、γ-リノレン酸(C18:cis[6,9,12]3)、3-及び5-メトキシスフィンゴシン、トレオン酸、ホスファチジルコリン(C18:2, C20:4)、ホスファチジルコリン(C18:0/C18:2)のうち少なくとも5つのアナライト、あるいはそれらの測定手段、を含む診断用組成物。
【請求項29】
(a)以下のアナライト:ステアリン酸(C18:0)、ガラクトース、リグノセリン酸(C24:0)、ベヘン酸(C22:0)、ネルボン酸(C24:1)、3-及び5-メトキシスフィンゴシン、コレステロール、トレオン酸、ホスファチジルコリン(C18:0/C18:2)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジル-L-セリン、エイコサペンタン酸、ホスファチジルコリン(C18:0/C22:6)のうち少なくとも5つの特性値、及び/又は少なくとも以下のアナライト:グリセロール、パルミチン酸(C16:0)、リノール酸(C18:cis[9,12]2)、ステアリン酸(C18:0)、アラキドン酸(C20:cis-[5,8,11,14]4)、ドコサヘキサエン酸(C22:cis[4,7,10,13,16,19]6)、コレステロール、グリセロールリン酸、ガラクトース、リグノセリン酸(C24:0)、ドデカノール、ヘプタデカン酸(C17:0)、エイコサン酸(C20:0)、ミオ-イノシトール-2-一リン酸、ベヘン酸(C22:0)、ネルボン酸(C24:1)、γ-リノレン酸(C18:cis[6,9,12]3)、3-及び5-メトキシスフィンゴシン、トレオン酸、ホスファチジルコリン(C18:2, C20:4)、ホスファチジルコリン(C18:0/C18:2)の特性値を測定する手段;並びに
(b)手段(a)によって測定された特性値に基づいて肝酵素誘導を診断する手段
を含む、診断用デバイス。
【請求項30】
肝酵素誘導を診断するための診断用デバイス又は組成物の製造のための、ステアリン酸(C18:0)、ガラクトース、リグノセリン酸(C24:0)、ベヘン酸(C22:0)、ネルボン酸(C24:1)、3-及び5-メトキシスフィンゴシン、コレステロール、トレオン酸、ホスファチジルコリン(C18:0/C18:2)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジル-L-セリン、エイコサペンタン酸、ホスファチジルコリン(C18:0/C22:6)のうち少なくとも5つのアナライト、及び/又はグリセロール、パルミチン酸(C16:0)、リノール酸(C18:cis[9,12]2)、ステアリン酸(C18:0)、アラキドン酸(C20:cis-[5,8,11,14]4)、ドコサヘキサエン酸(C22:cis[4,7,10,13,16,19]6)、コレステロール、グリセロールリン酸、ガラクトース、リグノセリン酸(C24:0)、ドデカノール、ヘプタデカン酸(C17:0)、エイコサン酸(C20:0)、ミオ-イノシトール-2-一リン酸、ベヘン酸(C22:0)、ネルボン酸(C24:1)、γ-リノレン酸(C18:cis[6,9,12]3)、3-及び5-メトキシスフィンゴシン、トレオン酸、ホスファチジルコリン(C18:2, C20:4)、ホスファチジルコリン(C18:0/C18:2)のうち少なくとも5つのアナライトの使用。
【請求項31】
肝酵素誘導を診断するための診断用デバイス又は組成物の製造のための、ステアリン酸(C18:0)、ガラクトース、リグノセリン酸(C24:0)、ベヘン酸(C22:0)、ネルボン酸(C24:1)、3-及び5-メトキシスフィンゴシン、コレステロール、トレオン酸、ホスファチジルコリン(C18:0/C18:2)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジル-L-セリン、エイコサペンタン酸、ホスファチジルコリン(C18:0/C22:6)のうち少なくとも5つのアナライト、及び/又はグリセロール、パルミチン酸(C16:0)、リノール酸(C18:cis[9,12]2)、ステアリン酸(C18:0)、アラキドン酸(C20:cis-[5,8,11,14]4)、ドコサヘキサエン酸(C22:cis[4,7,10,13,16,19]6)、コレステロール、グリセロールリン酸、ガラクトース、リグノセリン酸(C24:0)、ドデカノール、ヘプタデカン酸(C17:0)、エイコサン酸(C20:0)、ミオ-イノシトール-2-一リン酸、ベヘン酸(C22:0)、ネルボン酸(C24:1)、γ-リノレン酸(C18:cis[6,9,12]3)、3-及び5-メトキシスフィンゴシン、トレオン酸、ホスファチジルコリン(C18:2, C20:4)、ホスファチジルコリン(C18:0/C18:2)のうち少なくとも5つのアナライトの測定手段の使用。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図1−4】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図2−4】
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【公表番号】特表2011−522231(P2011−522231A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510975(P2011−510975)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【国際出願番号】PCT/EP2009/056312
【国際公開番号】WO2009/153131
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】