肥大化能を有する軟骨細胞と足場を用いた骨補填材料
【課題】骨の欠損部位および病変部位を修復するための複合材料を提供すること。
【解決手段】本発明により、生体内の骨形成を促進または誘発するための複合材料が提供される。この複合材料は、A)肥大化能を有する軟骨細胞、およびB)生体に対して生体適合性を有する足場を含む。また、本発明により、生体内の骨形成を促進または誘発するための複合材料を製造するための方法が提供される。この方法は、A)採取された肥大化能を有する軟骨細胞を提供する工程、およびB)該肥大化能を有する軟骨細胞を生体に対して生体適合性を有する足場上で培養する工程を包含する。
【解決手段】本発明により、生体内の骨形成を促進または誘発するための複合材料が提供される。この複合材料は、A)肥大化能を有する軟骨細胞、およびB)生体に対して生体適合性を有する足場を含む。また、本発明により、生体内の骨形成を促進または誘発するための複合材料を製造するための方法が提供される。この方法は、A)採取された肥大化能を有する軟骨細胞を提供する工程、およびB)該肥大化能を有する軟骨細胞を生体に対して生体適合性を有する足場上で培養する工程を包含する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体内の骨形成を促進または誘発する材料に関する。より詳細には、肥大化能を有する軟骨細胞および足場を用いる複合材料ならびにその製造法およびその利用法に関する。
【背景技術】
【0002】
骨に関わる病気、あるいは骨の損傷または欠損の多くは、骨再生が好ましい治療法である。骨組織が骨折などの損傷を受けると、骨を作る細胞である骨芽細胞が増殖、分化し、骨が再生する。損傷の軽度な症例においては、患部を固定することによって骨芽細胞が機能し、治癒に至る。複雑骨折または関節内の損傷、さらに骨髄炎の併発などにより骨芽細胞が有効に機能し得ない環境では、損傷または欠損を修復するための標準的な方法として、自家骨移植が一般に考えられてきた。骨の欠損部位が大きくて自家骨では修復できない場合は、人工骨を使用するとしても、自家骨を一部混ぜる方法が採られている。しかし、ヒトの場合には自家骨の供給源は限られており、高額な費用および苦痛を伴うものである。さらに、自家骨を使用することにより、骨の採取部位(本来正常部位)には新たな骨欠損が生じる。また採取のためには余分な手術が必要であり、そして採取出来る量に限りがあるという欠点が存在する。
【0003】
米国では死体から採取した同種骨が多く使用されている。しかし、日本では、死体を利用することは習慣として馴染みにくく、そのため利用されることは多くない。骨バンクも存在しているが、現在のところその供給量は多くはない。
【0004】
例えば、米国では死体から採取した同種骨が多く使用されているが、感染症の伝播事故が頻回に起こり、問題になっている。
【0005】
そこで、人工骨のインプラントおよび骨補填材料の使用などさまざまな外科的処置が利用されてきた。しかしながら、これら外科的処置の予後は必ずしも良好ではなく、複数回の手術を必要とすることも多い。
【0006】
特許文献1(特開2003−38635号公報)には、骨軟骨の欠損部位を修復するための、β−リン酸三カルシウム多孔体に、可溶化したアテロコラーゲンに軟骨細胞または骨髄細胞を包埋してゲル化させた材料が記載されているが、肥大化能を有する軟骨細胞との組み合わせは意図されていない。この方法では、可溶化したアテロコラーゲンにこれらの細胞を包埋してゲル化しなければならない。
【0007】
特許文献2(特開平10−243996号公報)には、リン酸カルシウム系化合物と骨性細胞凝集体を主成分とする硬組織石灰化促進用生体材料が記載されている。この方法において使用される細胞には、肥大化能を有する軟骨細胞は意図されていない。さらに、この発明では、骨性細胞は凝集体を形成しており、足場上での培養を意図していない。
【0008】
特許文献3(特開2004−8634号公報)には、硬組織と軟組織の界面を効果的に再生し得る、リン酸カルシウムが傾斜化して含有される生分解性分子材料からなる足場が記載されている。この方法において使用されるリン酸カルシウムは、傾斜化されている必要がある。この文献に記載される足場では、肥大化能を有する軟骨細胞を使用することは意図されていない。
【0009】
特許文献4(特表2001−524937号公報)には、生物学的に活性な薬剤および/または細胞を含有する合成の結晶性不良のアパタイト系(PCA)リン酸カルシウム物質が記載されている。この方法において使用されるリン酸カルシウムは、結晶性不良性でなければならない。特許文献4には、軟骨産生細胞を播種したPCA物質組成物を用いる、イン・ビボまたはイン・ビトロでの軟骨形成についての実施例が記載されているが(実施例28〜31)、軟骨形成の例であり、骨形成の例ではない。骨形成については異所性の骨形成の例が記載されているが(実施例27)、骨髄細胞の使用が意図されている。特許文献4には、肥大化能を有する軟骨細胞は記載されていない。
【0010】
このように従来の人工骨のインプラントおよび骨補填材料には、使用の容易性という点で課題がある。
【0011】
さらに、従来の人工骨のインプラントおよび骨補填材料には、自家骨に比べて、骨形成能が悪く、骨が出来にくく、また靭性が低く衝撃で割れやすいという欠点があった。
【0012】
上に記載した理由により、人工骨の使用割合は増えつつあるものの、未だ2〜3割で、残りの7〜8割は自家骨が使用されている。
【0013】
人工骨のこれらの欠点を改良するために、細胞の再生力を利用した再生医療を使用する試みが行われ始めており、骨欠損に対する治療にも応用されている。この再生医療には骨髄由来の幹細胞が主に使用されている。
【0014】
肥大化能を有する軟骨細胞を、ペレット状にして移植すると骨形成することが示された(非特許文献1:Okihana H.およびShimomura Y.,Bone.13,387−393(1992))。一般に細胞は、ペレット状にせずにそのまま生体に移植すると散逸し、骨を形成することはできず、骨の欠損部位の処置には不向きであった。また、ペレット状にしても実際の骨欠損処置に耐え得るサイズを達成するのは困難である。従来、再生医療に使用されている、骨髄細胞、間葉系幹細胞、骨芽細胞による骨修復は、未だ自家骨に比べて劣っており、満足するものではない(例えば、(特許文献5:特表2000−508911号公報、特許文献6:特表平10−512756号公報、特許文献7:特開2003−199815号公報、特許文献8:特開2003−52365号公報、特許文献9:米国特許5486359号公報、特許文献10:米国特許5226914号公報、特許文献11:特表2000−508911号公報、特許文献12:特表2002−506082号公報、非特許文献2:Ohgushi,H.ら:Acta Orthop.Scand.,60:334−339(1989)、非特許文献3:Caplan,A.I.:J.Orthop.Res.,9:641−650(1991)、非特許文献4:Bruder,S.ら:J.Bone Joint Surg.,80A:985−996(1998)、非特許文献5:Yoshikawa,T.ら:Biomed.Material Eng.,8:311−320(1998)、非特許文献6:Pittenger,M.F.ら:Science,284:143−147(1999)、非特許文献7:Bianco,P.& Robey,P.G.:Nature,414:118−121(2001)、非特許文献8:Quarto,R.ら:New Eng.J.Med.,344:385−386(2001)、非特許文献9:Okihana:Medical Science Digest Vol30(1)(2004)を参照のこと))。
【0015】
非特許文献10(Einhorn,T.A.ら:J Bone Joint Surg.,66A:274−279(1984))には、ラットの骨の欠損部位に同種骨を移植すると、骨形成が生じることが記載されている。しかし、ヒトにおいて、骨の欠損部位の治療のために同種骨を移植することは制約も多く現実的ではない。従って、同種骨の移植に代わる代替方法が求められている。
【0016】
非特許文献11(Bruder,S.P.ら:J Bone Joint Surg.,80A:985−996(1988))には、セラミックインプラントと間葉系幹細胞とをイヌ大腿骨欠損部に移植した実験が記載されている。この文献では、骨欠損部に、セラミックインプラントと間葉系幹細胞とを移植すると、骨癒合が生じることが報告されている。しかし、骨欠損部に間葉系幹細胞とセラミックインプラントとを移植した場合の成功率は自家骨移植ほど高くはなく、培養期間や費用などを勘案すると、実用的な手法とはいえない。
【0017】
骨髄中の間葉系幹細胞は、骨に分化する系統の細胞であるので、足場と組み合せて骨の欠損部位に移植することが試みられている(非特許文献11)。また、良好な骨形成には骨芽細胞またはその前駆細胞(例えば、間葉系幹細胞)が必須であると考えられきた。そこで、骨の欠損部位に、骨形成の足場と骨芽細胞を一緒に移植して骨形成させる試みが記載されている(特許文献4)が、実施したという記載はない。このことから、間葉系幹細胞と同様に実用に耐えないレベルであると予測される。
【0018】
本発明者は、非特許文献1において、骨芽細胞または前駆細胞以外の細胞である成長軟骨細胞が骨形成を誘発し得ることを示した。しかし、足場と組み合わせて使用された例はない。したがって、肥大化能を有する軟骨細胞を足場とともに用いた時の骨形成レベルは予想されていない。元来、骨形成は骨芽細胞によって行われるものであるから、それ以外の細胞を使用することは現実的ではないと考えられている。
【特許文献1】特開2003−38635号公報
【特許文献2】特開平10−243996号公報
【特許文献3】特開2004−8634号公報
【特許文献4】特表2001−524937号公報
【特許文献5】特表2000−508911号公報
【特許文献6】特表平10−512756号公報
【特許文献7】特開2003−199815号公報
【特許文献8】特開2003−52365号公報
【特許文献9】米国特許5486359号公報
【特許文献10】米国特許5226914号公報
【特許文献11】特表2000−508911号公報
【特許文献12】特表2002−506082号公報
【非特許文献1】Okihana,H.およびShimomura Y.,Bone.13,387−393(1992)
【非特許文献2】Ohgushi,H.ら:Acta Orthop.Scand.,60:334−339(1989)
【非特許文献3】Caplan,A.I.:J.Orthop.Res.,9:641−650(1991)
【非特許文献4】Bruder,S.ら:J.Bone Joint Surg.,80A:985−996(1998)
【非特許文献5】Yoshikawa,T.ら:Biomed.Material Eng.,8:311−320(1998)
【非特許文献6】Pittenger,M.F.ら:Science,284:143−147(1999)
【非特許文献7】Bianco,P.& Robey,P.G.:Nature,414:118−121(2001)
【非特許文献8】Quarto,R.ら:New Eng.J.Med.,344:385−386(2001)
【非特許文献9】Okihana:Medical Science Digest Vol30(1)(2004)
【非特許文献10】Einhorn,T.A.ら:J Bone Joint Surg.,66A:274−279(1984).
【非特許文献11】Bruder,S.P.ら:J Bone Joint Surg.,80A:985−996(1988).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、生体骨の大規模な欠損、骨腫瘍および複雑骨折などの処置において使用することができる、自家骨に匹敵するか、あるいは少なくとも同種骨に匹敵する複合材料ならびにその製造法およびその利用法を提供することを課題とする。
【0020】
本発明は、骨再生の速度、再生された骨の強度などの点からみて、従来の人工骨インプラントおよび骨補填材料よりも有用な複合材料を提供することを課題とする。
【0021】
本発明は、固定のみでは修復できない大きさの骨の欠損部位の骨形成を改善するために用いられる複合材料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題は、一部、本発明において肥大化能を有する軟骨細胞および該生体に対して生体適合性を有する足場を使用することによって足場と細胞との組み合わせとしては、予想外に骨化が進展するという性質をもつ複合材料を見出したことによって解決された。特に、肥大化能を有する軟骨細胞と足場との組み合わせが、骨形成に必須と考えられていた骨芽細胞と足場との組み合わせよりも予想外に優れた骨形成率を示し、実用的とは従来考えられていなかった足場と細胞との組み合わせが骨欠損に実用上耐え得るレベルで使用可能ということを本発明者は見出した。本発明が達成した骨形成率は、骨形成は骨芽細胞によって行われるものであるから、それ以外の細胞を使用することは現実的ではないと考えられていることを考慮しても、顕著に優れているといえる。
【0023】
本発明はまた、自家骨に匹敵するか、あるいは少なくとも同種骨に匹敵する複合材料の製造法およびその利用法を提供する。
【0024】
上記目的を達成するために、本発明は、例えば、以下の手段を提供する。
(項目1)
生体内の骨形成を促進または誘発するための複合材料であって、
A)肥大化能を有する軟骨細胞、および
B)該生体に対して生体適合性を有する足場
を含む、複合材料。
(項目2)
前記骨形成は、骨の欠損部位を修復するためのものである、項目1に記載の複合材料。
(項目3)
前記複合材料は、固定のみでは修復できない大きさの骨の欠損部位の骨形成を改善するために用いられる、項目2に記載の複合材料。
(項目4)
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、前記生体に対して生体適合性を有する足場の表面および該生体に対して生体適合性を有する足場の内部孔内からなる群より選択される領域に含まれる、項目1に記載の複合材料。
(項目5)
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、X型コラーゲン、アルカリホスファターゼ、オステオネクチン、II型コラーゲン、軟骨型プロテオグリカンまたはその成分、ヒアルロン酸、IX型コラーゲン、XI型コラーゲンおよびコンドロモジュリンからなる群より選択される少なくとも1つのマーカーを発現している、項目1に記載の複合材料。
(項目6)
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、形態学的に肥大化することを特徴とする、項目1に記載の複合材料。
(項目7)
5×105個の前記細胞を含む培地を遠心することにより該細胞のペレットを作製し、該細胞ペレットを一定期間培養し、顕微鏡下に確認した培養前の細胞の大きさと培養後の細胞の大きさを比較し、有意な成長が確認されたときに、前記肥大化能を有すると判定される、項目6に記載の複合材料。
(項目8)
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、哺乳類動物由来である、項目1に記載の複合材料。
(項目9)
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、ヒト由来、マウス由来、ラット由来、ウサギ由来、イヌ由来、ネコ由来、またはウマ由来である、項目8に記載の複合材料。
(項目10)
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、前記生体と同種異系の関係にある個体由来である、項目1に記載の複合材料。
(項目11)
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、前記生体と異種の関係にある個体由来である、項目1に記載の複合材料。
(項目12)
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、肋骨の骨軟骨移行部、長管骨の骨端線部、脊椎骨の骨端線部、小骨の成長軟骨帯、軟骨膜、胎児の軟骨から形成された骨原基部、骨折治癒時の仮骨部および骨増殖期の軟骨部からなる群より選択される部分から採取された細胞である、項目1に記載の複合材料。
(項目13)
前記長管骨の骨端線部が、大腿骨、脛骨、腓骨、上腕骨、尺骨および橈骨からなる群より選択される部位である、項目12に記載の複合材料。
(項目14)
前記小骨の成長軟骨帯が、手骨、足骨および胸骨からなる群より選択される部位である、項目12に記載の複合材料。
(項目15)
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、1×107細胞/ml〜1×104細胞/mlの細胞密度に調整されている、項目1に記載の複合材料。
(項目16)
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、Ham’s F12(HamF12)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、最小必須培地(MEM)、最小必須培地α(αMEM)、イーグル基礎培地(BME)、フィットン−ジャクソン改変培地(BGJb)およびそれらの組み合わせからなる群より選択される培地を含む培地中で培養された細胞である、項目1に記載の複合材料。
(項目17)
前記培地は、細胞の増殖、分化、またはその両方を促進する物質を含む、項目16に記載の複合材料。
(項目18)
前記培地は、トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)、骨形成因子(BMP)、白血病阻止因子(LIF)、コロニー刺激因子(CSF)、アスコルビン酸、デキサメサゾン、グリセロリン酸、インスリン様成長因子(IGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、多血小板血漿(PRP)、血小板由来増殖因子(PDGF)および血管内皮増殖因子(VEGF)からなる群より選択される少なくとも1つの成分を含む培地である、項目16に記載の複合材料。
(項目19)
前記生体に対して生体適合性を有する足場は、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、アルミナ、ジルコニア、アパタイト−ウォラストナイト析出ガラス、ゼラチン、コラーゲン、キチン、フィブリン、ヒアルロン酸、絹、セルロース、デキストラン、ポリ乳酸、ポリロイシン、アルギン酸、ポリグリコール酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリシアノアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体、ナイロン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される物質を含む、項目1に記載の複合材料。
(項目20)
前記生体に対して生体適合性を有する足場は、リン酸カルシウム、ゼラチン、コラーゲンまたはそれらの組み合わせから構成される、項目19に記載の複合材料。
(項目21)
前記生体に対して生体適合性を有する足場は、ヒドロキシアパタイトから構成される、項目20に記載の複合材料。
(項目22)
生体内の骨形成を促進または誘発するための複合材料を製造するための方法であって、以下の工程:
A)肥大化能を有する軟骨細胞を提供する工程、および
B)該肥大化能を有する軟骨細胞を該生体に対して生体適合性を有する足場上で培養する工程、
を包含する、方法。
(項目23)
前記A)工程は、X型コラーゲン、アルカリホスファターゼ、オステオネクチン、II型コラーゲン、軟骨型プロテオグリカンまたはその成分、ヒアルロン酸、IX型コラーゲン、XI型コラーゲンおよびコンドロモジュリンからなる群より選択される少なくとも1つのマーカーの発現を指標として前記肥大化能を有する軟骨細胞を提供する、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記A)工程は、肥大化を指標として前記肥大化能を有する軟骨細胞を提供し、
5×105個の前記細胞を含む培地を遠心することにより該細胞のペレットを作製し、該細胞ペレットを一定期間培養し、顕微鏡下に確認した培養前の細胞の大きさと培養後の細胞の大きさを比較し、有意な成長が確認されたときに、前記肥大化能を有すると判定される、項目22に記載の方法。
(項目25)
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、哺乳類動物由来である、項目22に記載の方法。
(項目26)
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、ヒト由来、マウス由来、ラット由来、ウサギ由来、イヌ由来、ネコ由来、またはウマ由来である、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、肋骨の骨軟骨移行部、長管骨の骨端線部、脊椎骨の骨端線部、小骨の成長軟骨帯、軟骨膜、胎児の軟骨から形成された骨原基部、骨折治癒時の仮骨部および骨増殖期の軟骨部からなる群より選択される部分から採取された細胞である、項目22に記載の方法。
(項目28)
前記長管骨の骨端線部が、大腿骨、脛骨、腓骨、上腕骨、尺骨および橈骨からなる群より選択される部位である、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記小骨の成長軟骨帯が、手骨、足骨および胸骨からなる群より選択される部位である、項目27に記載の方法。
(項目30)
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、1×107細胞/ml〜1×104細胞/mlの細胞密度で提供される、項目22に記載の方法。
(項目31)
前記B)工程について、前記肥大化能を有する軟骨細胞を、Ham’s F12(HamF12)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、最小必須培地(MEM)、最小必須培地α(αMEM)、イーグル基礎培地(BME)、フィットン−ジャクソン改変培地(BGJb)およびそれらの組み合わせからなる群より選択される培地を含む培地中で培養することを包含する、項目22に記載の方法。
(項目32)
前記B)工程において、前記肥大化能を有する軟骨細胞は、細胞の増殖、分化またはその両方を促進する物質を含む培地中で培養される、項目22に記載の方法。
(項目33)
前記B)工程において、前記肥大化能を有する軟骨細胞は、トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)、骨形成因子(BMP)、白血病阻止因子(LIF)、コロニー刺激因子(CSF)、アスコルビン酸、デキサメサゾン、グリセロリン酸、インスリン様成長因子(IGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、多血小板血漿(PRP)、血小板由来増殖因子(PDGF)および血管内皮増殖因子(VEGF)からなる群より選択される少なくとも1つの成分を含む培地中で培養される、項目22に記載の方法。
(項目34)
前記生体に対して生体適合性を有する足場は、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、アルミナ、ジルコニア、アパタイト−ウォラストナイト析出ガラス、ゼラチン、コラーゲン、キチン、フィブリン、ヒアルロン酸、絹、セルロース、デキストラン、ポリ乳酸、ポリロイシン、アルギン酸、ポリグリコール酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリシアノアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体、ナイロン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される物質を含む、項目22に記載の方法。
(項目35)
前記生体に対して生体適合性を有する足場は、リン酸カルシウム、ゼラチンまたはコラーゲンである、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記生体に対して生体適合性を有する足場は、ヒドロキシアパタイトである、項目35に記載の方法。
(項目37)
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、前記生体に対して生体適合性を有する足場の表面および該生体に対して生体適合性を有する足場の内部孔内からなる群より選択される領域で、37℃、5%〜10%CO2存在下で培養された細胞である、項目22に記載の方法。
(項目38)
前記培養する工程は、前記肥大化能を有する軟骨細胞が前記生体適合性を有する足場に定着するのに十分な期間にわたって実施される、項目22に記載の方法。
(項目39)
生体内の骨形成を促進または誘発するためのインプラントまたは骨補填材料の製造における、複合材料の使用であって、該複合材料は、
A)肥大化能を有する軟骨細胞、および
B)該生体に対して生体適合性を有する足場、
を含む、使用。
(項目40)
骨の欠損部位を修復するための方法であって、該方法は、肥大化能を有する軟骨細胞と該生体に対して生体適合性を有する足場とを含む複合材料を、該骨の欠損部位に移植する工程を包含する、方法。
(項目41)
前記複合材料は、固定のみでは修復できない大きさの骨の欠損部位の骨形成を改善するために用いられる、項目40に記載の方法。
(項目42)
肥大化能を有する軟骨細胞を調製する方法であって、胸骨体下部の剣状突起移行部から細胞を採取する工程を包含する、方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明によって、生体骨の大規模な欠損、骨腫瘍および複雑骨折などの処置において使用することができる、自家骨に匹敵する複合材料ならびにその製造法およびその利用法が提供される。このような複合材料は、従来の複合材料では修復困難な大きさの骨欠損を修復し、予想外の効率で骨形成が起こり、骨の再生を導くことができることから、従来人工物での移植処置の成績が不良であった部位の処置が可能になった。本発明の複合材料は、生体適合性の足場を使用しており、実際に移植治療において機能する。このような複合材料は、従来技術では提供されるものではなく、初めて提供されるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0027】
(用語の定義)
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
【0028】
本明細書において「複合材料」とは、細胞と足場を含む材料をいう。
【0029】
骨形成の「促進」とは、すでに骨形成が起こっている場合に、目的とする変化を加えると、その骨形成の速度が増加することをいう。骨形成の「誘発」とは、骨形成が起こっていない場合に、目的とする変化を加えると骨形成が生じることをいう。
【0030】
本明細書における「骨欠損」には、骨腫瘍、骨粗しょう症、リウマチ性関節炎、変形性関節症、骨髄炎および骨壊死などの病変;骨固定術、椎管拡張術および骨切術などの矯正手術;複雑骨折などの外傷および腸骨採取などによって生じる骨の欠損などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
骨の欠損部位の「修復」とは、その欠損部位が健常状態になるか、またはそれに近づくことをいう。
【0032】
本明細書において「固定のみでは修復できない大きさ」とは、インプラントおよび骨補填材料の使用が不可欠である大きさをいう。
【0033】
(細胞)
本明細書において「成長軟骨細胞(growth cartilage cell)」とは、発生期または成長期および骨折修復期または骨増殖期に、骨を形成する組織(すなわち成長軟骨)にある細胞をいう。成長期に骨を形成する組織を成長軟骨と呼ぶのが一般的であるが、本明細書では、発生期、成長期、骨増殖期または骨折修復期に骨を形成する組織を意味する。成長軟骨細胞はまた、肥大(化)軟骨細胞、石灰化軟骨細胞、または骨端(線)軟骨細胞ともいわれる。成長軟骨細胞がヒトに対して用いられる場合、この成長軟骨細胞はヒト由来であることが好ましいが、周知技術により拒絶反応等の問題が克服できることから、ヒト以外に由来する細胞でも用いることができる。
【0034】
本発明における成長軟骨細胞は、哺乳類動物、好ましくは、ヒト由来、マウス由来、ラット由来、ウサギ由来、イヌ由来、ネコ由来、またはウマ由来である。
【0035】
本発明における成長軟骨細胞は、肋骨の骨軟骨移行部、大腿骨、脛骨、腓骨、上腕骨、尺骨および橈骨などの長管骨の骨端線部、脊椎骨の骨端線部、手骨、足骨および胸骨などの成長軟骨帯、軟骨膜、胎児の軟骨から形成された骨原基部、骨折治癒時の仮骨部、ならびに骨増殖期の軟骨部から採取され得る。これらの成長軟骨細胞は、例えば、本明細書の実施例に記載される方法によって調製され得る。
【0036】
本明細書において「肥大化能を有する軟骨細胞」とは、将来的に肥大化する能力のある細胞をいう。肥大化能を有する軟骨細胞は、生体から直接採取した「成長軟骨細胞」に加えて、本明細書において以下に定義される「肥大化能」の判定法により肥大化能を有する任意の細胞を含む。
【0037】
本発明における肥大化能を有する軟骨細胞は、哺乳類動物、好ましくは、ヒト由来、マウス由来、ラット由来、ウサギ由来、イヌ由来、ネコ由来、またはウマ由来である。肥大化能を有する軟骨細胞がヒトに対して用いられる場合、この肥大化能を有する軟骨細胞はヒト由来であることが好ましいが、周知技術により拒絶反応等の問題が克服できることから、ヒト以外に由来する細胞でも用いることができる。本発明における肥大化能を有する軟骨細胞は、例えば、肋骨の骨軟骨移行部、大腿骨、脛骨、腓骨、上腕骨、尺骨および橈骨などの長管骨の骨端線部、脊椎骨の骨端線部、手骨、足骨および胸骨などの成長軟骨帯、軟骨膜、ならびに胎児の軟骨から形成された骨原基部、骨折治癒時の仮骨部、ならびに骨増殖時の軟骨部から採取され得る。本発明における肥大化能を有する軟骨細胞は、未分化細胞を分化誘導させて得ることも可能である。
【0038】
肥大化能を有する軟骨細胞は、形態学的には肥大化することを特徴とする。
【0039】
本明細書において「肥大化」とは、検鏡下で形態学的に判断され得る。細胞の肥大化は、細胞が柱状配列をしている場合には増殖層に続いて観察され、柱状配列していない場合には、周囲細胞と比較してより大きい状態をいう。
【0040】
肥大化能は、5×105個の前記細胞を含む培地を遠心することにより該細胞のペレットを作製し、該細胞ペレットを一定期間培養し、顕微鏡下に確認した培養前の細胞の大きさと培養後の細胞の大きさを比較し、有意な成長が確認されたときに、肥大化能を有すると判定される。
【0041】
本明細書において、「静止軟骨細胞」とは、肋軟骨の肋骨移行部(成長軟骨部)から離れた部分に位置する軟骨をいい、生涯に亘って軟骨として存在する組織である。静止軟骨部にある細胞を静止軟骨細胞という。本明細書において、「関節軟骨細胞」とは、関節面に存在する軟骨組織(関節軟骨)にある細胞をいう。
【0042】
本明細書において、軟骨細胞は、マーカーとして、II型コラーゲン、軟骨型プロテオグリカン(アグリカン)またはその成分、ヒアルロン酸、IX型コラーゲン、XI型コラーゲンまたはコンドロモジュリンからなる群より選択される少なくとも1つを発現していることを確認することにより判定される。軟骨細胞のうち、肥大化能を有する細胞は、さらにX型コラーゲン、アルカリホスファターゼおよびオステオネクチンからなる群より選択される少なくとも1つを発現していることを確認することによって判定される。X型コラーゲン、アルカリホスファターゼまたはオステオネクチンのいずれも発現していない軟骨細胞は、肥大化能を有していないと判定される。従って、本明細書における肥大化能を有する軟骨細胞は、形態学的に肥大化することを確認する代わりに、軟骨細胞マーカー群より選択される少なくとも1つおよび肥大化能を有する軟骨細胞マーカー群より選択される少なくとも1つを発現していることを確認することによっても判定され得る。マーカーは、特異的な染色法、免疫組織化学的な手法、in situハイブリダイゼーション法、ウェスタンブロッティング法またはPCR法などの培養細胞から抽出したタンパク質またはRNAを解析する手法で、局在または発現が同定される。
【0043】
本明細書において「軟骨細胞マーカー」とは、軟骨細胞において、その局在または発現が軟骨細胞を同定するにおいて補助となるものをいう。好ましくは、その局在または発現(例えば、II型コラーゲン、軟骨型プロテオグリカン(アグリカン)またはその成分、ヒアルロン酸、IX型コラーゲン、XI型コラーゲンまたはコンドロモジュリンの局在または発現)によって軟骨細胞であることが同定できるものをいう。本明細書において「肥大化能を有する軟骨細胞マーカー」とは、肥大化能を有する軟骨細胞において、その局在または発現が軟骨細胞を同定するにおいて補助となるものをいう。好ましくは、その局在または発現(例えば、X型コラーゲン、アルカリホスファターゼまたはオステオネクチンの局在または発現)によって肥大化能を有する軟骨細胞であることが同定できるものをいう。
【0044】
本明細書において、「軟骨型プロテオグリカン」とは、コアタンパク質にコンドロイチン4硫酸、コンドロイチン6硫酸、ケラタン硫酸、O−結合オリゴ糖、N−結合オリゴ糖などのグルコサミノグリカンが多数結合した高分子をいう。この軟骨型プロテオグリカンは、さらにリンクタンパクを介してヒアルロン酸と結合して軟骨型プロテオグリカン集合体を形成する。軟骨組織においてグルコサミノグリカンは豊富で、乾燥重量の20〜40%を占める。軟骨型プロテオグリカンは、アグリカンとも称される。
【0045】
本明細書において、「骨型プロテオグリカン」とは、軟骨型プロテオグリカンより分子量が小さく、コアタンパク質にコンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、O−結合オリゴ糖、N−結合オリゴ糖などのグルコサミノグリカンが結合した高分子をいう。骨組織におけるグルコサミノグリカンは、脱灰骨の乾燥重量の1%以下である。骨型プロテオグリカンとしては、例えば、デコリン、バイグリカンが挙げられ得る。
【0046】
本明細書において「骨芽細胞」とは、骨基質上に存在し、骨基質形成およびその石灰化を行う細胞である。骨芽細胞は、20〜30μmで、立方体または円柱状の細胞である。本明細書において使用される場合、骨芽細胞は、骨芽細胞の前駆体細胞である「前骨芽細胞」を含み得る。
【0047】
骨芽細胞は、マーカーとして、I型コラーゲン、骨型プロテオグリカン(例えば、デコリン、バイグリカン)、アルカリホスファターゼ、オステオカルシン、基質Glaタンパク質、オステオグリシン、オステオポンチン、骨シアル酸タンパク質、オステオネクチンまたはプレイオトロフィン(Pleiotrophin)からなる群より選択される少なくとも1つを発現することによって判定される。加えて、骨芽細胞は、軟骨細胞マーカーであるII型コラーゲン、軟骨型プロテオグリカン(アグリカン)またはその成分、ヒアルロン酸、IX型コラーゲン、XI型コラーゲンまたはコンドロモジュリンを発現していないことを確認することによって確定され得る。マーカーは、特異的な染色法、免疫組織化学的な手法、in situハイブリダイゼーション法、ウェスタンブロッティング法またはPCR法などの培養細胞から抽出したタンパク質またはRNAを解析する手法で、局在または発現が同定される。
【0048】
本明細書において「骨芽細胞マーカー」とは、骨芽細胞において、その局在または発現が骨芽細胞を同定するにおいて補助となるものをいう。好ましくは、その局在または発現(例えば、I型コラーゲン、骨型プロテオグリカン(例えば、デコリン、バイグリカン)、アルカリホスファターゼ、オステオカルシン、基質Glaタンパク質、オステオグリシン、オステオポンチン、骨シアル酸タンパク質、オステオネクチンまたはプレイオトロフィンの局在または発現)によって骨芽細胞であることを確認することができるものをいう。オステオグリシンは、骨誘導因子(OIF)ともいわれる。オステオポンチンは、BSP−I、2arともいわれる。骨シアル酸タンパク質は、BSP−IIともいわれる。プレイオトロフィンは、osteoblast specific protein(OSF−1)、骨芽細胞特異的因子−1ともいわれる。オステオネクチンは、SPARC、BM−40ともいわれる。
【0049】
骨芽細胞であると認定するためには、骨芽細胞のみを陽性と識別するマーカーで陽性であることを示すか:骨芽細胞と肥大化能を有する軟骨細胞とを陽性と識別し、軟骨細胞を陰性と識別するマーカーで陽性であり、かつ骨芽細胞と軟骨細胞とを陽性と識別し、肥大化能を有する軟骨細胞を陰性と識別するマーカーで陽性であることを示すか;骨芽細胞と肥大化能を有する軟骨細胞とを陽性と識別するマーカーで陽性であり、かつ、骨芽細胞を陰性と識別し肥大化能を有する軟骨細胞を陽性と識別するマーカーで陰性であることを示すか;または骨芽細胞と軟骨細胞とを陽性と識別するマーカーで陽性であり、かつ、骨芽細胞を陰性と識別し軟骨細胞を陽性と識別するマーカーで陰性であることなどを示せばよい。
【0050】
肥大化能を有する軟骨細胞であると認定するためには、肥大化能を有する軟骨細胞のみを陽性と識別するマーカーで陽性あることを示すか;肥大化能を有する軟骨細胞と骨芽細胞とを陽性と識別し軟骨細胞を陰性と識別するマーカーで陽性であり、かつ、肥大化能を有する軟骨細胞と軟骨細胞とを陽性と識別し骨芽細胞を陰性と識別するマーカーで陽性であることを示すか;肥大化能を有する軟骨細胞と骨芽細胞とを陽性と識別するマーカーで陽性であり、かつ、肥大化能を有する軟骨細胞を陰性と識別し骨芽細胞を陽性と識別するマーカーで陰性であることを示すか;または肥大化能を有する軟骨細胞と軟骨細胞とを陽性と識別するマーカーで陽性であり、かつ、肥大化能を有する軟骨細胞を陰性と識別し軟骨細胞を陽性と識別するマーカーで陰性であることなどを示せばよい。
【0051】
(肥大化能を有しない)軟骨細胞であると認定するためには、軟骨細胞のみを陽性と識別するマーカーで陽性あることを示すか;軟骨細胞と骨芽細胞とを陽性と識別し肥大化能を有する軟骨細胞を陰性と識別するマーカーで陽性であり、かつ、軟骨細胞と肥大化能を有する軟骨細胞とを陽性と識別し骨芽細胞を陰性と識別するマーカーで陽性であることを示すか;軟骨細胞と骨芽細胞とを陽性と識別するマーカーで陽性であり、かつ、軟骨細胞を陰性と識別し骨芽細胞を陽性と識別するマーカーで陰性であることを示すか;または軟骨細胞と肥大化能を有する軟骨細胞とを陽性と識別するマーカーで陽性であり、かつ、軟骨細胞を陰性と識別し肥大化能を有する軟骨細胞を陽性と識別するマーカーで陰性であることなどを示せばよい。
【0052】
本明細書において、軟骨細胞、肥大化能を有する軟骨細胞、および骨芽細胞を認定するためには、例えば、以下の表に列挙される細胞マーカーの組み合わせが用いられ得る。
【0053】
【表1】
【0054】
本明細書において「間葉系幹細胞」とは、間葉系の組織に見出される幹細胞をいう。間葉系の組織としては、骨髄、脂肪、血管内皮、平滑筋、心筋、骨格筋、軟骨、骨、じん帯が挙げられるが、これらに限定されない。間葉系幹細胞は、代表的には、骨髄、脂肪組織、滑膜組織、筋組織、末梢血、胎盤組織、月経血または臍帯血に由来する幹細胞であり得る。
【0055】
(足場)
本明細書において「足場(scaffold)」とは、細胞を支持するための材料を意味する。足場は、一定の強度、生体適合性を有する。本明細書中で使用される場合、足場は、生物学的物質または天然から供給される物質、天然に存在する物質または合成で供給される物質から製造される。特に言及する場合、足場は、有機体(例えば、組織、細胞)以外の物質(非細胞物質)から形成される。本明細書で使用される場合、足場は、有機体(例えば、組織、細胞)以外の物質から形成された構成物(生物由来の材料(例えば、コラーゲン、ヒドロキシアパタイトも含む)である。本明細書で使用する場合、「有機体」とは、生活機能をもつように組織された物質系をいう。すなわち、有機体は、生物を他の物質系と区別していう。細胞、組織などは有機体の概念に含まれるが、有機体から取り出した生物由来の材料は、有機体には含まれない。細胞が定着する足場の部分としては、足場の表面のほか、内部に孔が存在し、その孔が細胞を収容し得る場合、その内部孔を挙げることができる。例えば、ヒドロキシアパタイトで作製した足場には、通常、細胞を充分に収容し得る孔が多数存在する。
【0056】
足場の材料としては、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、アルミナ、ジルコニア、アパタイト−ウォラストナイト析出ガラス、ゼラチン、コラーゲン、キチン、フィブリン、ヒアルロン酸、絹、セルロース、デキストラン、ポリ乳酸、ポリロイシン、アルギン酸、ポリグリコール酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリシアノアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体、ナイロン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される材料が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、足場の材料は、リン酸カルシウム、ゼラチンまたはコラーゲンである。より好ましくは、足場の材料は、ヒドロキシアパタイトである。
【0057】
これらの足場は、顆粒形態、ブロック形態、スポンジ形態などの任意の形態で提供され得る。これらの足場は、孔があってもなくてもよい。このような足場は、市販されているものを使用してもよく、例えば、ペンタックス株式会社、オリンパス株式会社、京セラ株式会社、三菱ウェルファーマ株式会社、大日本住友製薬株式会社、小林製薬株式会社、ジンマー株式会社などから市販されている。一般的な足場の調製および特徴付けは当該分野において公知であり、そして慣用的な実験および当該分野の技術常識しか必要としない。例えば、米国特許第4,975,526号;同第5,011,691号;同第5,171,574号;同第5,266,683号;同第5,354,557号および同第5,468,845号を参照のこと(これらの開示は本明細書中に参考として援用される)。他の足場はまた、例えば、以下の文献において記載されている:LeGerosおよびDaculsi Handbook of Bioactive Ceramics,II 17−28頁(1990,CRC Press)のような生体適合物質論文;および、Yang Cao,Jie Weng Biomaterials 17,(1996)419−424頁のような他の公開された記載;LeGeros,Adv.Dent.Res.2,164(1988);Johnsonら、J.Orthopaedic Research,1996,14巻、351−369頁;ならびにPiattelliら、Biomaterials 1996、17巻、1767−1770頁を参照のこと(これらの開示は本明細書中に参考として援用される)。
【0058】
本明細書において「リン酸カルシウム」とは、カルシウムリン酸塩の総称である。例えば、CaHPO4、Ca3(PO4)2、Ca4O(PO4)2、Ca10(PO4)6(OH)2、CaP4O11、Ca(PO3)2、Ca2P2O7、Ca(H2PO4)2・H2Oなどの化学式で示される化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
本明細書において「ヒドロキシアパタイト」とは、一般組成をCa10(PO4)6(OH)2とする化合物であり、コラーゲンとともに哺乳類動物の硬組織(骨および歯)の主要構成成分である。ヒドロキシアパタイトは、上記の一連のリン酸カルシウムを含むが、生体硬組織中のアパタイトのPO4およびOH成分は体液中のCO3成分と置換していることが多い。また、ヒドロキシアパタイトは、厚生労働省および米国連邦食品医薬品局(FDA(U.S.Food and Drug Adminisutration)により安全性が承認されている物質である。ヒドロキシアパタイトは、市販のものは生体非吸収性材料であるものが多く、生体内にほとんど吸収されず残存するが、吸収性のものもある。
【0060】
生体に対して生体適合性を有する足場としては、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、アルミナ、ジルコニア、アパタイト−ウォラストナイト析出ガラス、ゼラチン、コラーゲン、キチン、フィブリン、ヒアルロン酸、絹、セルロース、デキストラン、ポリ乳酸、ポリロイシン、アルギン酸、ポリグリコール酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリシアノアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体、ナイロン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される材料を含む足場が挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
本明細書において「コラーゲン」とは、当該分野において慣用される最も広義の意味と同様に用いられ、動物の細胞外マトリクスの主成分である。コラーゲンは、例えば、新田ゼラチン、日本皮革、和光純薬、半井、フナコシ、シグマアルドリッチおよびメルクなどから入手可能であり、その他の供給源からのコラーゲンもまた、本発明において利用可能である。
【0062】
本明細書において「ゼラチン」とは、当該分野において慣用される最も広義の意味と同様に用いられ、コラーゲン(動物の皮、腱、骨から採取)を変性、(例えば、熱変性)させて得られる。コラーゲンのペプチド連鎖間の塩類結合または水素結合が開裂した結果、非可逆的に水溶性タンパク質に変化したものと考えられる。ゼラチンは、例えば、新田ゼラチン、日本皮革、和光純薬、半井、フナコシ、シグマアルドリッチおよびメルクなどから入手可能であり、その他の供給源からのゼラチンもまた、本発明において利用可能である。
【0063】
本明細書において「生体適合性」とは、毒性、免疫反応、損傷などを生じることなく生体組織または臓器と適合する性質をいう。本発明において使用され得る生体適合性材料としては、例えば、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、アルミナ、ジルコニア、アパタイト−ウォラストナイト析出ガラス、ゼラチン、コラーゲン、キチン、フィブリン、ヒアルロン酸、絹、セルロース、デキストラン、ポリ乳酸、ポリロイシン、アルギン酸、ポリグリコール酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリシアノアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体、ナイロンなど、およびそれらの組み合わせが挙げられるがそれらに限定されない。
【0064】
本明細書において「細胞生理活性物質」または「生理活性物質」(physiologically active substance)とは、細胞または組織に作用する物質をいう。そのような作用としては、例えば、その細胞または組織の制御、変化などが挙げられるがそれらに限定されない。生理活性物質には、サイトカインおよび増殖因子が含まれる。生理活性物質は、天然に存在するものであっても、合成されたものでもよい。好ましくは、生理活性物質は、細胞が産生するものまたはそれと同様の作用を有するものであるが改変された作用を持つものであってもよい。本明細書では、生理活性物質は、ペプチドを含むタンパク質形態または核酸形態あるいは他の形態であり得る。
【0065】
本明細書において使用される「サイトカイン」は、当該分野において用いられる最も広義の意味と同様に定義され、細胞から産生され同じまたは異なる細胞に作用する生理活性物質をいう。サイトカインは、一般にタンパク質またはポリペプチドであり、免疫応答の制禦作用、内分泌系の調節、神経系の調節、抗腫瘍作用、抗ウイルス作用、細胞増殖の調節作用、細胞分化の調節作用、細胞機能の調節作用などを有する。本明細書では、サイトカインはタンパク質形態または核酸形態あるいは他の形態であり得るが、実際に作用する時点において、サイトカインは、通常、ペプチドを含むタンパク質形態であることが多い。
【0066】
本明細書において用いられる「増殖因子」または「細胞増殖因子」とは、本明細書では互換的に用いられ、細胞の増殖および分化誘導を促進または制御する物質をいう。増殖因子は、成長因子または発育因子ともいわれる。増殖因子は、細胞培養または組織培養において、培地に添加されて血清高分子物質の作用を代替し得る。多くの増殖因子は、細胞の増殖以外に、分化状態の制御因子としても機能することが判明している。
【0067】
骨形成関連のサイトカインには、代表的には、トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)、骨形成因子(BMP)、白血病阻止因子(LIF)、コロニー刺激因子(CSF)、インスリン様成長因子(IGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、多血小板血漿(PRP)、血小板由来増殖因子(PDGF)および血管内皮増殖因子(VEGF)などの因子、ならびにアスコルビン酸、デキサメサゾン、グリセロリン酸などの化合物が挙げられる。
【0068】
サイトカインおよび増殖因子などの生理活性物質は一般に、機能重複現象(redundancy)があることから、他の名称および機能(例えば、細胞接着活性または細胞−基質間の接着活性など)で知られるサイトカインまたは増殖因子であっても、本発明に使用される生理活性物質の活性を有する限り、本発明において使用され得る。また、サイトカインまたは増殖因子は、本明細書における好ましい活性(例えば、幹細胞を増殖させる活性または骨芽細胞を形成させる活性)を有してさえいれば、本発明の実施において使用することができる。
【0069】
本明細書において「同系に由来する」とは、自己(自家)、純系または近交系に由来することをいう。
【0070】
本明細書において「生体と同種異系の関係にある個体由来」とは、同種であっても遺伝的には異なる他の個体を起源とすることをいう。
【0071】
本明細書において「生体と異種の関係にある個体由来」とは、異種個体を起源とすることをいう。従って、例えば、ヒトがレシピエントである場合、ラット由来の細胞は「生体と異種の関係にある個体由来」である。
【0072】
本明細書において「被験体」とは、本発明の処置が適用される生物をいい、「患者」ともいわれる。患者または被験体は、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、またはウマ、好ましくは、ヒトであり得る。
【0073】
本明細書において「インプラント」または「骨補填材料」とは、当該分野において用いられる意味で用いられ、本明細書で使用する場合、実質的に同じ意味で用いられるが、特に言及する場合、インプラントとは埋める材料全般を意味し、骨補填材料とは骨の欠損部位を補う材料全般をいう。
【0074】
(好ましい実施形態の説明)
以下に本発明の最良の形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本発明のよりよい理解のために提供されるものであり、本発明の範囲は以下の記載に限定されるべきでないことが理解される。従って、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本発明の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。
【0075】
(複合材料)
1つの局面において、本発明は、生体内の骨形成を促進または誘発するための複合材料を提供する。従来、骨の欠損部位の骨形成を促進または誘発するために使用される人工骨のインプラントおよび骨補填材料は、骨再生の速度、再生された骨の強度などの点からみて十分なものは提供されてこなかった。本発明は、従来技術では再生効率の不良な骨欠損を修復し、骨の再生を導くことができる複合材料を提供することにより、従来、人工物での移植処置が困難であった部位の処置が可能になるという効果を有する。本発明の複合材料は、固定のみでは修復できない大きさの骨の欠損部位の骨形成を改善するためにも用いられ得る。このような複合材料は、A)肥大化能を有する軟骨細胞、およびB)該生体に対して生体適合性を有する足場を含む。
【0076】
1つの好ましい実施形態において、本発明の軟骨細胞は、マーカーとして、X型コラーゲン、アルカリホスファターゼ、オステオネクチン、II型コラーゲン、軟骨型プロテオグリカンまたはその成分、ヒアルロン酸、IX型コラーゲン、XI型コラーゲンおよびコンドロモジュリンからなる群より選択される少なくとも1つを発現している。従って、本明細書における肥大化能を有する軟骨細胞は、形態学的に肥大化することを特徴とし、かつこれらのマーカー群より選択される少なくとも1つを発現する細胞である。好ましい実施形態において、本発明の肥大化能を有する軟骨細胞は、上述の軟骨細胞マーカーの発現、および顕微鏡下で形態学的な肥大化を確認することによって同定され得る。
【0077】
別の実施形態において、本発明の肥大化能を有する軟骨細胞は、哺乳類動物、好ましくは、ヒト由来、マウス由来、ラット由来、ウサギ由来、イヌ由来、ネコ由来、またはウマ由来である。本発明における肥大化能を有する軟骨細胞は、肋骨の骨軟骨移行部、長管骨の骨端線部(例えば、大腿骨、脛骨、腓骨、上腕骨、尺骨および橈骨)、脊椎骨の骨端線部、小骨の成長軟骨帯(例えば、手骨、足骨または胸骨)、軟骨膜または胎児の軟骨から形成された骨原基部、骨折治癒時の仮骨部ならびに骨増殖時の軟骨部のような部位から分離または誘導され得る。肥大化能を有する軟骨細胞は、分化誘導によっても得られ得る。
【0078】
本発明の肥大化能を有する軟骨細胞は、通常、1×107細胞/ml〜1×104細胞/mlの細胞密度に調整されているが、1×104細胞/ml未満または1×107細胞/mlより多くてもよい。1×104細胞/ml未満のときは、培養器で肥大化能を有する軟骨細胞を増殖させ得るからである。本発明の肥大化能を有する軟骨細胞が、1×107細胞/mlより多い場合には、そのまま使用することが可能であるが、必要に応じて、より広い足場へ播種するか、または培地を用いて適切な濃度に希釈され得る。本発明の1つの実施形態において、肥大化能を有する軟骨細胞の細胞密度は、例えば、0.5〜1×106/cm3(ml)、1×105/cm3(ml)であり得る。本発明の別の実施形態において、肥大化能を有する軟骨細胞は、4×104/cm3(ml)であり得る。
【0079】
本発明において用いられる肥大化能を有する軟骨細胞は、どのような培地で培養されてもよく、例えば、Ham’s F12(HamF12)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、最小必須培地(MEM)、最小必須培地α(αMEM)、イーグル基礎培地(BME)、フィットン−ジャクソン改変培地(BGJb)またはそれらの組み合わせのような培地中で培養された細胞であるが、これらに限定されない。肥大化能を有する軟骨細胞は、細胞の増殖、分化またはその両方を促進する物質を含んでいる培地で培養された細胞であってもよい。好ましくは、例えば、トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)、骨形成因子(BMP)、白血病阻止因子(LIF)、コロニー刺激因子(CSF)、アスコルビン酸、デキサメサゾン、グリセロリン酸、インスリン様成長因子(IGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、多血小板血漿(PRP)、血小板由来増殖因子(PDGF)および血管内皮増殖因子(VEGF)からなる群より選択される少なくとも1つの成分のような物質を含む培地で培養された細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
本明細書において使用されるHamF12培地は、例えば、CaCl2(無水物)33.20mg/L、CuSO4・5H2O 0.0025mg/L、FeSO4・7H2O 0.83mg/L、KCl 223.60mg/L、MgCl2(無水物)57.22mg/L、NaCl 7599.00mg/L、NaHCO3 1176.00mg/L、Na2HPO4(無水物)142.00mg/L、ZnSO4・7H2O 0.86mg/L、D−グルコース 1802.00mg/L、ヒポキサンチン・Na 4.77mg/L、リノール酸 0.08mg/L、リポ酸 0.21mg/L、フェノールレッド 1.20mg/L、プトレッシン 2HCl 0.161mg/L、ピルビン酸ナトリウム110.00mg/L、チミジン 0.70mg/L、L−アラニン 8.9mg/L、L−アルギニン・HCl 211.00mg/L、L−アスパラギン・H2O 15.00mg/L、L−アスパラギン酸13.00mg/L、L−システイン HCl・H2O 35.00mg/L、L−グルタミン酸 14.70mg/L、L−アラニル−L−グルタミン 217.00mg/L、グリシン 7.50mg/L、L−ヒスチジン HCl・H2O 21.00mg/L、L−イソロイシン 4.00mg/L、L−ロイシン 13.00mg/L、L−リジン・HCl 36.50mg/L、L−メチオニン 4.50mg/L、L−フェニルアラニン 5.00mg/L、L−プロリン 34.50mg/L、L−セリン 10.50mg/L、L−スレオニン 12.00mg/L、L−トリプトファン 2.00mg/L、L−チロシン・2Na・2H2O 7.80mg/L、L−バリン 11.70mg/L、ビオチン 0.007mg/L、D−Ca パントテナート 0.50mg/L、塩化コリン 14.00mg/L、葉酸 1.30mg/L、i−イノシトール 18.00mg/L、ナイアシンアミド 0.04mg/L、ピリドキシン HCl 0.06mg/L、リボフラビン 0.04mg/L、チアミン HCl 0.30mg/LおよびビタミンB12 1.40mg/L)から構成される。
【0081】
本明細書において使用されるMEM培地は、例えば、CaCl2(無水物)200.00mg/L、KCl 400.00mg/L、MgSO4(無水物)98.00mg/L、NaCl 6800.00mg/L、NaHCO3 2200.00mg/L、NaH2PO4・H2O 140.00mg/L、D−グルコース 1000.00mg/L、フェノールレッド 10.00mg/L、L−アルギニン・HCl 126.00mg/L、L−シスチン・2HCl 31.00mg/L、L−グルタミン 292.00mg/L、L−ヒスタミン HCl・H2O 42.00mg/L、L−イソロイシン 52.00mg/L、L−ロイシン52.00mg/L、L−リジン HCl 73.00mg/L、L−メチオニン 15.00mg/L、L−フェニルアラニン 32.00mg/L、L−スレオニン 48.00mg/L、L−トリプトファン 10.00mg/L、L−チロシン・2Na・2H2O 52.00mg/L、L−バリン 46.00mg/L、D−Caパントテナート 1.00mg/L、塩化コリン 1.00mg/L、葉酸 1.00mg/L、i−イノシトール 2.00mg/L、ナイアシンアミド 1.00mg/L、ピリドキサル HCl 1.00mg/L、リボフラビン 0.10mg/L、チアミンHCl 1.00mg/Lから構成される。
【0082】
本発明において用いられる生体に対して生体適合性を有する足場は、生体適合性を有する限りどのような足場であってもよく、例えば、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、アルミナ、ジルコニア、アパタイト−ウォラストナイト析出ガラス、ゼラチン、コラーゲン、キチン、フィブリン、ヒアルロン酸、絹、セルロース、デキストラン、ポリ乳酸、ポリロイシン、アルギン酸、ポリグリコール酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリシアノアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体、ナイロン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される物質を含む。好ましくは、生体に対して生体適合性を有する足場は、リン酸カルシウム、ゼラチンまたはコラーゲンであり、より好ましくは、種々の形態のヒドロキシアパタイト(例えば、結晶質性ヒドロキシアパタイトまたは傾斜化していないヒドロキシアパタイト)である。足場の生体適合性は、骨内埋植試験、復帰突然変異試験、染色体異常試験、細胞毒性試験、筋肉内埋植試験、皮膚感作試験、皮膚及び皮内刺激性試験、発熱毒性試験、溶血性試験、抗原性試験、急性毒性試験および反復投与試験からなる群より選択される少なくとも1つの試験によって測定され得る。好ましくは、上記の全ての試験によって測定され得る。
【0083】
骨形成の皮下試験は、本来骨の無い部分に骨を形成(異所性骨形成とも呼ばれる)させ、骨形成能を評価する試験である。この試験は容易に実施できるので、当該分野で広く使用されている。骨を治療するときの試験方法には、骨欠損試験が用いられ得る。骨形成は、既に近傍に存在する骨芽細胞および誘導・遊走した骨芽細胞によって骨が形成されるので、通常、皮下試験よりも骨形成率は良いと考えられている。皮下試験の結果は、実際の骨欠損における骨形成の結果によく一致することが知られている(例えば、Urist,M.R.:Science,150:893−899(1965)、Wozney,J.M.ら:Scienece,242:1528−1532(1988)、Johnson,E.E.ら:Clin.Orthop.,230:257−265(1988)、Ekelund,A.ら:Clin.Orthop.,263:102−112(1991)、およびRiley,E.H.ら:Clin.Orthop.,324:39−46(1996)を参照のこと)。従って、皮下試験の結果で骨形成が得られる場合、当業者は、骨欠損試験において当然に骨形成が得られることを理解する。
【0084】
(製造方法)
1つの局面において、本発明は、生体内の骨形成を促進または誘発するための複合材料を製造するための方法を提供する。この方法は、A)肥大化能を有する軟骨細胞を提供する工程、およびB)該肥大化能を有する軟骨細胞を該生体に対して生体適合性を有する足場上で培養する工程を包含する。肥大化能を有する軟骨細胞は、生体に対して生体適合性を有する足場の表面または内部孔内で、好ましくは、37℃、5〜10%CO2存在下で培養され得る。
【0085】
好ましい実施形態において、A)工程は、X型コラーゲン、アルカリホスファターゼ、オステオネクチン、II型コラーゲン、軟骨型プロテオグリカンまたはその成分、ヒアルロン酸、IX型コラーゲン、XI型コラーゲンおよびコンドロモジュリンからなる群より選択される少なくとも1つの発現(指標となる発現は、これらのマーカーに限定されない)を指標として前記肥大化能を有する軟骨細胞を提供し得る。
【0086】
他の好ましい実施形態において、A)工程は、肥大化を指標として前記肥大化能を有する軟骨細胞を提供し得る。肥大化は、例えば、5×105個の該細胞を含むHamF12増殖培地を遠心することにより、細胞のペレットを作製し、この細胞ペレットをそのまま培養することによって、顕微鏡下に確認され得る。
【0087】
本明細書において使用される場合、「HamF12増殖培地」とは、10%のウシ胎児血清を補充し、100U/ml ペニシリンと、0.1mg/L ストレプトマイシンと、0.25μg/ml アンホテリシンBとを含むHamF12培地をいう。
【0088】
本明細書において使用される場合、「MEM増殖培地」とは、15%のウシ胎児血清を補充し、100U/ml ペニシリンと、0.1mg/L ストレプトマイシンと、0.25μg/ml アンホテリシンBとを含むMEM培地をいう。
【0089】
本発明において、肥大化能を有する軟骨細胞の培養は上述のようにして分離または誘導された細胞を用いて行われる。本発明の肥大化能を有する軟骨細胞は、生体に対して生体適合性を有する足場の表面で培養されてもよく、足場に内部孔が存在する場合には、内部孔内で培養されてもよい。肥大化能を有する軟骨細胞の細胞密度は、例えば、1×107細胞/ml〜1×104細胞/mlの細胞密度に調整されるが、1×104細胞/ml未満または1×107細胞/mlより多くてもよい。1×104細胞/ml未満のときは、培養器で肥大化能を有する軟骨細胞を増殖させ得るからである。本発明の肥大化能を有する軟骨細胞が、1×107細胞/mlより多い場合には、そのまま使用することが可能であるが、必要に応じて、より広い足場へ播種するか、または培地を用いて適切な濃度に希釈され得る。本発明の1つの実施形態において、肥大化能を有する軟骨細胞の細胞密度は、例えば、0.5〜1×106/cm3(ml)、1×105/cm3(ml)であり得る。本発明の別の実施形態において、肥大化能を有する軟骨細胞は、4×104/cm3(ml)であり得る。
【0090】
本発明において使用される培地は、肥大化能を有する軟骨細胞が増殖する限りどのような培地であってもよいが、例えば、Ham’s F12(HamF12)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、最小必須培地(MEM)、最小必須培地α(αMEM)、イーグル基礎培地(BME)、フィットン−ジャクソン改変培地(BGJb)またはそれらの組み合わせのような培地が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0091】
他の実施形態において、本方法において肥大化能を有する軟骨細胞の培養に用いられる培地は、細胞の増殖、分化、またはその両方を促進する物質を含んでいてもよい。例えば、このような物質としては、トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)、骨形成因子(BMP)、白血病阻止因子(LIF)、コロニー刺激因子(CSF)、アスコルビン酸、デキサメサゾン、グリセロリン酸、インスリン様成長因子(IGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、多血小板血漿(PRP)、血小板由来増殖因子(PDGF)および血管内皮増殖因子(VEGF)からなる群より選択される少なくとも1つの成分のような物質を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0092】
他の好ましい実施形態において、肥大化能を有する軟骨細胞は、どのような部位から採取された細胞であってもよく、例えば、このような部位としては、肋骨の骨軟骨移行部、長管骨の骨端線部(例えば、大腿骨、脛骨、腓骨、上腕骨、尺骨および橈骨)、脊椎骨の骨端線部、小骨の成長軟骨帯(例えば、手骨、足骨または胸骨)、軟骨膜または胎児の軟骨から形成された骨原基部、骨折治癒時の仮骨部、ならびに骨増殖期の軟骨部のような部位から採取され得る。
【0093】
本方法において用いられる生体に対して生体適合性を有する足場は、上述の通り、生体適合性を有する限りどのような足場であってもよい。
【0094】
本発明において使用される場合、細胞が足場に「定着する」とは、細胞を足場に播種した場合に、足場と細胞との一体性が保持されている状態をいう。細胞が足場に定着したことは、細胞をある環境(培地など)の足場に播種し、細胞が播種された足場を別の環境(例えば、別の培地)に移動させた場合に、播種された細胞と足場との一体性が保持されることを確認することによって確認され得る。別の環境とは、例えば、培養していた培地と同じ培地の入った容器であってもよい。移植適合性を調べる場合は、別の環境は、移植される環境を採用することが好ましいが、これに限定されない。
【0095】
本方法において、肥大化能を有する軟骨細胞を生体に対して生体適合性を有する足場上で培養する期間は、この肥大化能を有する軟骨細胞が足場に定着するのに十分な期間であり得る。この期間は、好ましくは、3時間〜3ヶ月であるが、これに限定されない。より好ましくは、3時間〜3週間、さらにより好ましくは、肥大化能を有する軟骨細胞の培養時間は、半日〜1週間である。肥大化能を有する軟骨細胞の培養時間は、3時間未満であってもよい。なぜなら、肥大化能を有する軟骨細胞は少なくとも1時間で生体適合性を有する足場に付着し得るからである。肥大化能を有する軟骨細胞の培養期間はまた、3ヶ月を超えてもよい。なぜなら肥大化能を有する軟骨細胞が増殖しすぎた場合は、より広い足場へ播種するか、または肥大化能を有する軟骨細胞の細胞密度を再度調整し得るであるからである。
【0096】
他の好ましい実施形態において、肥大化能を有する軟骨細胞は、B)工程において、細胞の増殖、分化、またはその両方を促進する物質を含む培地中で培養され得る。
【0097】
別の好ましい実施形態において、肥大化能を有する軟骨細胞は、B)工程おいて、トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)、骨形成因子(BMP)、白血病阻止因子(LIF)、コロニー刺激因子(CSF)、アスコルビン酸、デキサメサゾン、グリセロリン酸、インスリン様成長因子(IGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、多血小板血漿(PRP)、血小板由来増殖因子(PDGF)および血管内皮増殖因子(VEGF)からなる群より選択される少なくとも1つの成分を含む培地中で培養され得る。
【0098】
(キット)
別の局面において、本発明は、生体内の骨形成を促進または誘発するための複合材料キットを提供する。このキットは、A)肥大化能を有する軟骨細胞と該生体に対して生体適合性を有する足場とを含む複合材料、およびB)送達手段を備える。本発明のキットにおいて使用される複合材料は、上述の(複合材料)に記載される任意の形態が使用され得る。
【0099】
(複合材料の使用)
他の局面において、本発明は、生体内の骨形成を促進または誘発するためのインプラントおよび骨補填材料の製造における、複合材料の使用を提供する。ここで複合材料は、A)肥大化能を有する軟骨細胞、およびB)該生体に対して生体適合性を有する足場を含む。本発明の複合材料の使用に用いられる肥大化能を有する軟骨細胞および生体に対して生体適合性を有する足場は、上述の(複合材料)に記載される任意の形態が使用され得る。
【0100】
(処置方法)
別の局面において、本発明は、骨の欠損部位を修復するための方法を提供する。この方法は、肥大化能を有する軟骨細胞と該生体に対して生体適合性を有する足場とを含む複合材料を、該骨の欠損部位に移植する工程を包含する。骨の欠損部位は、固定のみでは修復できない大きさを有する大きさの欠損部位であってもよい。この方法において用いられる移植方法としては、手術時に目視下に骨の欠損部位に埋入する方法が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の処置方法において用いられる複合材料は、上述の(複合材料)に記載される任意の形態が使用され得る。例えば、本願発明の複合材料は、人工関節のような移植物、プレート、ケージ、釘、ピンなどの医療用デバイスとともに生体内に移植され得る。
【0101】
(肥大化能を有する軟骨細胞を調製する方法)
別の局面において、本発明は、肥大化能を有する軟骨細胞を調製する方法を提供する。この方法は、胸骨体下部の剣状突起移行部から細胞を採取する工程を包含する。本発明において「胸骨体下部の剣状突起移行部」とは、胸骨体下部(骨部)から剣状突起(軟骨部、剣状軟骨ともいう)に移行する境界部分をいう(図1A)。従来、胸骨には成長軟骨細胞が存在すると考えられていたが、その採取は行われていなかった。本発明者は、「胸骨体下部の剣状突起移行部」に成長軟骨細胞(肥大化した軟骨細胞)が存在していることを確認し(図1B)、容易に採取できることを見出した。従って、本発明は成長軟骨細胞を調製する新しい方法を提供する。本発明者は、「胸骨体下部の剣状突起移行部」は、従来の成長軟骨細胞の供給源である肋骨・肋軟骨部と同等量もしくはそれ以上量の成長軟骨細胞が存在すること、および容易に採取できることを見出した。
【0102】
以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、以下の実施例は、例示の目的のみに提供される。従って、本発明の範囲は、上記発明の詳細な説明にも下記実施例にも限定されるものではなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
【0103】
(実施例1:肋骨・肋軟骨部由来の肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合の効果)
(肋骨・肋軟骨部からの肥大化能を有する軟骨細胞の調製)
4週齢〜8週齢の雄性ラット(Wistar系)をクロロホルムを使用して屠殺した。ラットの胸部をバリカンで剃毛し、ヒビテン液(10倍希釈)に全身を浸し消毒した。胸部を切開し、無菌的に肋骨・肋軟骨部を採取した。この肋骨・肋軟骨部の境界部分より半透明の成長軟骨部を採取した。この成長軟骨部を細切し、0.25%トリプシン−EDTA/ダルベッコリン酸緩衝化生理食塩水(D−PBS)中で、37℃で1時間攪拌した。D−PBSの組成は、KCl 0.20g/L、NaH2PO4 0.20g/L、NaCl 8.00g/L、Na2HPO4・7H2O 2.16g/Lである。次いで、遠心分離(1000rpm(170×g)×5分間)により洗浄および回収し、その後0.2%コラゲナーゼ(Collagenase:インビトロジェン社製)/D−PBSとともに37℃で、2.5時間攪拌した。遠心分離(1000rpm(170×g)×5分間)により洗浄および回収した後、攪拌用フラスコ中で0.2%ディスパーゼ(Dispase:インビトロジェン社製)を含むHamF12増殖培地(10%のウシ胎児血清を補充し、100U/ml ペニシリンと、0.1mg/L ストレプトマイシンと、0.25μg/ml アンホテリシンBとを含むHamF12培地とともに、37℃にて、1晩攪拌した。翌日、得られた細胞懸濁液を濾過し、遠心分離(1000rpm(170×g)×5分間)により洗浄および回収した。細胞をトリパンブルーにより染色し、顕微鏡を用いて細胞数をカウントした。
【0104】
評価は、呈色しなかった細胞を生細胞とし、青色に呈色した細胞を死細胞とした。
【0105】
(肥大化能を有する軟骨細胞の確認)
実施例1によって得られた細胞は、分離の際に使用した酵素(トリプシン、コラゲナーゼ、ディスパーゼ)によって障害を受けているので、培養によって障害を回復させ、肥大化能を有する軟骨細胞を、軟骨細胞マーカーの発現、および顕微鏡下で形態学的な肥大化を確認することによって同定する。
【0106】
(肥大化能を有する軟骨細胞特異的マーカーの発現)
上記の操作により得られた細胞の溶解物をドデシル硫酸ナトリウム(SDS)で処理する。SDS処理した溶液をSDSポリアクリルアミド電気泳動する。その後、転写用膜にブロッティング(ウェスタンブロティング)し、軟骨細胞マーカーに対する一次抗体を反応させて、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコシダーゼなどの酵素またはイソチオシアン酸フルオレッセイン(FITC)、フィコエリトリン(PE)、テキサスレッド、7−アミノ−4−メチルクマリン−3−酢酸(AMCA)、ローダミンなどの蛍光を標識した二次抗体で検出する。
【0107】
上記の操作により得られた細胞培養物を、10%中性ホルマリン緩衝液で固定し、軟骨細胞マーカーに対する一次抗体を反応させて、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコシダーゼなどの酵素またはFITC、PE、テキサスレッド、AMCA、ローダミンなどの蛍光を標識した二次抗体で検出する。
【0108】
(軟骨細胞の肥大化能に関する組織学的検索)
5×105個の細胞を含む、HamF12増殖培地を遠心することにより細胞のペレットを作製した。この細胞ペレットを一定期間培養し、10%中性ホルマリン緩衝液で固定し、パラフィン包埋した。薄切標本を作製し、ヘマトキシリン‐エオシン染色(HE染色)した。顕微鏡下に確認した培養前の細胞の大きさと培養後の細胞の大きさを比較した。有意な成長が確認されたときに、細胞を肥大化能を有すると判定した(図1C)。
【0109】
(マーカー遺伝子による分析)
本実施例で得られた肥大化能を有する軟骨細胞について、肥大化能を有する軟骨細胞のマーカーであるX型コラーゲン、アルカリホスファターゼ、II型コラーゲン、軟骨型プロテオグリカンのmRNA量について分析する。各mRNAは、下記のようにリアルタイムPCRにより検出する。
【0110】
(リアルタイムPCR)
試料として、本実施例により得られた肥大化能を有する軟骨細胞を、HamF12増殖培地中のヒドロキシアパタイトに1×106細胞/mlで播種し、37℃、5% CO2インキュベーター中で1週間培養する。対象として軟骨細胞(1×106細胞/ml)を用いる。これらの試料から全RNAを抽出する。
【0111】
これらの試料を粉砕用セルに入れて液体窒素をかけ、粉砕機で粉砕し、2.0mlのチューブに入れる。このチューブに、ISOGEN(和光純薬)を1ml入れ、Vortexで撹拌し、ポリトロンで均一になるまで破砕する。チューブを、室温、10分放置した後、クロロホルム0.2mlを加えて、激しくVortexする。さらに、4℃、5分放置した後、12,000×g、4℃、15分間遠心する。チューブから水相を採取し、イソプロパノール0.6 mlを加えてVortexする。室温、10分放置した後、−30℃に1晩静置する。翌日、12,000×g、4℃、15分間遠心した後、上清を除き、乾燥させ、75%エタノール1mlで洗浄して全RNAを得る。
【0112】
全RNAからHigh−Capacity cDNA Archive Kit(アプライドバイオシステムズ社)を用いてcDNAを合成する。X型コラーゲン、アルカリホスファターゼ、II型コラーゲン、軟骨型プロテオグリカンのそれぞれについて発現定量試薬をアプライドバイオシステムズ社に発注したものを用いる。次いで、上記cDNAをテンプレートとして、X型コラーゲン、アルカリホスファターゼ、II型コラーゲン、軟骨型プロテオグリカンの発現を、Taqmanアッセイ法(Taqman(登録商標)Gene Expression Assays(アプライドバイオシステムズ社))を用いて確認する。
【0113】
リアルタイムPCR反応液(25μLの2×TaqMan Universal PCR Master Mix、2.5μLの20×Taqman(登録商標)Gene Expression Assay Mix、21.5μLのRNase−free water、1μLのテンプレートcDNA)を調製し、96ウェル反応プレートに分注する。次いで、PCR Master Mix(アプライドバイオシステムズ社)を使用して、50℃で2分、および95℃で10分の後、95℃で15秒、および60℃、1分を40サイクルでPCRを行う。次いで、リアルタイムPCR機器(ABI社、PRISM 7900HT)にて測定を行う。PCR反応後、しきい値の設定および到達サイクルの算出を、機器(PRISM 7900HT)内蔵の解析ソフトにより実施する。
【0114】
(結果)
肥大化能を有する軟骨細胞において、軟骨細胞マーカーであるII型コラーゲンおよび軟骨型プロテオグリカンが発現しており、肥大化軟骨マーカーであるX型コラーゲンおよびアルカリホスファターゼの発現は、対照とした軟骨細胞でのこれらの発現よりも有意に高いことが確認される。
【0115】
(肥大化能を有する軟骨細胞の存在の確認)
肥大化能を有する軟骨細胞を希釈した細胞液に、肥大化能を有する軟骨細胞が存在するか否かを確認するために、以下の実験を行った。肥大化能を有する軟骨細胞(1×106細胞/ml)を、気孔率85%円盤状ヒドロキシアパタイト(直径5mm)7個/24ウェルプレート上に播種し(円盤状ヒドロキシアパタイト1個あたり、1.43×105細胞)、HamF12増殖培地中で37℃にて、5% CO2インキュベーター中で、3時間、1日間、3日間、または1週間培養した。次いで、この試料(細胞を播種したヒドロキシアパタイト)を、アルカリホスファターゼ染色した後、10%中性ホルマリン緩衝液で固定し、トルイジン青染色した。アルカリホスファターゼ染色は、試料を、60%アセトン/クエン酸バッファー中に30秒浸漬して固定し、水洗後、アルカリホスファターゼ染色液(2mlの0.25%ナフトールAS−MXリン酸アルカリ溶液(シグマアルドリッチ社)+48mlの0.025%ファーストバイオレットB塩溶液(シグマアルドリッチ社))とともに、室温、遮光下で30分間インキュベートすることにより行った。トルイジン青染色は、トルイジン青染色液(0.05%トルイジン青溶液、pH7.0、和光純薬工業)とともに室温、3〜10分間インキュベートすることにより行った。アルカリホスファターゼ染色では、すべての培養期間において、試料は、赤く斑点状に染まった(図2A〜Dを参照のこと)。トルイジン青では、すべての培養期間において、同一部分が青く斑点状に染まり、細胞が存在することが分かる(図2E〜Hを参照のこと)。従って、ヒドロキシアパタイト上に存在する細胞がアルカリホスファターゼ活性を有することが分かった。
【0116】
(結果)
本実施例によって得られた細胞は、軟骨細胞マーカーを発現しており、形態学的には肥大化していることを確認した。このことにより、本実施例1によって得られた細胞は、肥大化能を有する軟骨細胞であることが確認された。この細胞を以下の実験に用いた。
【0117】
(肋骨・肋軟骨部から採取した肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料の作製)
本実施例により得られた肥大化能を有する軟骨細胞に、HamF12増殖培地を加えて1×106細胞/mlに希釈した。この細胞液を、ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイトのそれぞれに均一に播種し、37℃にて、5% CO2インキュベーター中で1週間培養した。
【0118】
これらの培養物を、ラットの皮下に移植した。移植の4週間後、ラットを屠殺して移植部位を摘出し、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋した。薄切標本を作製し、HE染色して移植部位の状態を確認した。ゼラチン(図3A)、コラーゲン(図3B)およびヒドロキシアパタイト(図3C)の全ての生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成が観察された。
【0119】
(比較例1A:肋骨・肋軟骨部由来の肥大化能を有する軟骨細胞のペレットを皮下に移植した場合の効果)
(肋骨・肋軟骨部由来の肥大化能を有する軟骨細胞ペレットの調製)
実施例1と同様の方法により、肋骨・肋軟骨部から肥大化能を有する軟骨細胞を採取した。これらの細胞(5×105個)に、HamF12増殖培地を加えて5×105個/0.5mlに希釈した。この細胞液を、遠心分離(1000rpm(170×g)×5分間)して肥大化能を有する軟骨細胞ペレットを調製した。
【0120】
この肥大化能を有する軟骨細胞ペレットを、ラットの皮下に移植した。移植の4週間後、ラットを屠殺して移植部位を摘出し、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋した。薄切標本を作製し、HE染色して移植部位の状態を確認した。肋骨・肋軟骨部由来の肥大化能を有する軟骨細胞ペレットを移植した場合には、わずかに骨形成が観察されるが、その骨形成の範囲は、肋骨・肋軟骨部由来の肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を移植した場合(実施例1を参照のこと)よりも、はるかに小さかった。
【0121】
(比較例1B:肋骨・肋軟骨部由来の肥大化能を有する軟骨細胞単独を皮下に移植した場合の効果)
実施例1と同様の方法により得られた肥大化能を有する軟骨細胞を単独でラットの皮下に移植した。肥大化能を有する軟骨細胞を単独で移植した場合、骨形成は生じなかった。
【0122】
(比較例1C:ヒドロキシアパタイト単独を皮下に移植した場合の効果)
実施例1と同じ方法により、足場であるヒドロキシアパタイトを単独でラットの皮下に移植した。ヒドロキシアパタイトを単独で移植した場合、骨形成は生じなかった(図4)を参照のこと。
【0123】
(実施例1および比較例1A〜1Cのまとめ)
肥大化能を有する軟骨細胞と生体適合性足場とを含む複合材料をラット皮下に移植した場合の骨形成は、ペレット状にした肥大化能を有する軟骨細胞単独を移植した場合よりも大きかった。一方、肥大化能を有する軟骨細胞またはヒドロキシアパタイトを単独で移植した場合、骨形成は生じなかった。この結果から、本発明の複合材料を使用した場合、従来の複合材料では治療できなかったほどの大きさの骨欠損を治療可能であると考えられる。
【0124】
(実施例2:胸骨由来の肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合の効果)
(胸骨からの肥大化能を有する軟骨細胞の調製)
4週齢〜8週齢の雄性ラット(Wistar系)をクロロホルムを使用して屠殺した。ラットの胸部をバリカンで剃毛し、ヒビテン液(10倍希釈)に全身を浸し消毒した。胸部を切開し、胸骨から胸骨体下部の剣状突起移行部および他の部位を無菌的に採取した。この剣状突起移行部より半透明の成長軟骨部を採取した。これらの組織を細切し、0.25%トリプシン−EDTA/D−PBS中で、37℃で1時間攪拌した。次いで、遠心分離(1000rpm(170×g)×5分間)により洗浄および回収し、その後0.2%コラゲナーゼ/D−PBSとともに37℃で、2.5時間攪拌した。遠心分離(1000rpm(170×g)×5分間)により洗浄および回収した後、攪拌用フラスコ中で0.2%ディスパーゼ/HamF12増殖培地とともに、37℃にて、1晩攪拌した。0.2%ディスパーゼでの1晩処理を省く場合もある。翌日、この細胞懸濁液を濾過し、遠心分離(1000rpm(170×g)×5分間)により洗浄および回収した。細胞を、トリパンブルーにより染色し、顕微鏡を用いて細胞数をカウントした。
【0125】
評価は、呈色しなかった細胞を生細胞とし、青色に呈色した細胞を死細胞とした。
【0126】
(肥大化能を有する軟骨細胞の確認)
実施例1と同様の方法を使用して、採取した細胞が肥大化能を有する軟骨細胞であることを確認した(図5A)。胸骨の成長軟骨部以外の部位から採取した細胞は、肥大化能を有さなかった(図5B)。
【0127】
(胸骨から採取した肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料の作製)
本実施例により得られた肥大化能を有する軟骨細胞を用いて、実施例1に記載の方法により、複合材料を調製し、ラットの皮下に移植する。移植の4週間後、ラットを屠殺して移植部位を摘出し、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋する。薄切標本を作製し、HE染色して移植部位の状態を確認する。ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成が観察される。
【0128】
(比較例2A:胸骨由来の肥大化能を有する軟骨細胞のペレットを皮下に移植した場合の効果)
(胸骨由来の肥大化能を有する軟骨細胞ペレットの調製)
実施例2と同様の方法により、胸骨から肥大化能を有する軟骨細胞を採取する。これらの細胞(5×105個)に、HamF12増殖培地を加えて5×105個/0.5mlに希釈する。この細胞液を、遠心分離(1000rpm(170×g)×5分間)して肥大化能を有する軟骨細胞ペレットを調製する。
【0129】
この肥大化能を有する軟骨細胞ペレットを、ラットの皮下に移植する。移植の4週間後、ラットを屠殺して移植部位を摘出し、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋する。薄切標本を作製し、HE染色して移植部位の状態を確認する。胸骨由来の肥大化能を有する軟骨細胞ペレットを移植した場合には、わずかに骨形成が観察されるが、その骨形成の範囲は、胸骨由来の肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を移植した場合(実施例2を参照のこと)よりも、はるかに小さい。
【0130】
(比較例2B:胸骨由来の肥大化能を有する軟骨細胞単独を皮下に移植した場合の効果)
実施例2と同様の方法により得られた肥大化能を有する軟骨細胞を、単独でラットの皮下に移植する。肥大化能を有する軟骨細胞を単独で移植した場合、骨形成は生じない。
【0131】
(実施例2ならびに比較例2A、2Bおよび1Cのまとめ)
肥大化能を有する軟骨細胞と生体適合性足場とを含む複合材料をラット皮下に移植した場合の骨形成は、ペレット状にした肥大化能を有する軟骨細胞単独を移植した場合よりも大きい。一方、肥大化能を有する軟骨細胞またはヒドロキシアパタイトを単独で移植した場合、骨形成は生じない(比較例1Cを参照のこと)。この結果から、本発明の複合材料を使用した場合、従来の複合材料では治療できなかったほどの大きさの骨欠損を治療可能であると考えられる。
【0132】
(比較例3A:耳介軟骨部由来の肥大化能を有さない軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合の効果)
(耳介軟骨部からの肥大化能を有さない軟骨細胞の調製)
4週齢〜8週齢の雄性ラット(Wistar系)をクロロホルムを使用して屠殺する。ラットをヒビテン液(10倍希釈)に全身を浸し消毒する。耳介軟骨周囲を切開し、無菌的に皮膚を除去して耳介軟骨部を採取する。この耳介軟骨部を細切し、0.25%トリプシン−EDTA/D−PBS中で、37℃で1時間攪拌する。次いで、遠心分離(1000rpm(170×g)×5分間)により洗浄および回収し、その後0.2%コラゲナーゼ/D−PBSとともに37℃で、2.5時間攪拌する。遠心分離(1000rpm(170×g)×5分間)により洗浄および回収した後、攪拌用フラスコ中で0.2%ディスパーゼ/HamF12増殖培地とともに、37℃にて、1晩攪拌する。0.2%ディスパーゼでの1晩処理を省く場合もある。翌日、この細胞懸濁液を濾過し、遠心分離(1000rpm(170×g)×5分間)により洗浄および回収する。細胞を、トリパンブルーにより染色し、顕微鏡を用いて細胞数をカウントする。
【0133】
評価は、呈色しなかった細胞を生細胞とし、青色に呈色した細胞を死細胞とする。
【0134】
(耳介軟骨部由来の肥大化能を有さない軟骨細胞の確認)
耳介軟骨部由来の肥大化能を有さない軟骨細胞を希釈した細胞液に、肥大化能を有する軟骨細胞が存在するか否かを、実施例1と同様の手順を用いて確認する。アルカリホスファターゼ染色では、試料は染まらない。トルイジン青染色では、その試料は青く斑点状に染まり、細胞が存在することが確認される。ヒドロキシアパタイト上に存在する細胞にはアルカリホスファターゼ活性がないことが確認される。このことにより、本比較例で使用する細胞液には、肥大化能を有さない軟骨細胞が存在することが確認される。
【0135】
実施例1と同様の方法を使用して軟骨細胞マーカーの局在または発現を検出し、形態学的にも検索して、得られた細胞が肥大化能を有さない軟骨細胞であることを確認する。
【0136】
(耳介軟骨部から採取した肥大化能を有さない軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料の作製)
本比較例により得られた肥大化能を有さない軟骨細胞を用いて、実施例1と同様の方法を使用することにより、複合材料を調製し、ラットの皮下に移植する。移植の4週間後、ラットを屠殺して移植部位を摘出し、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋する。薄切標本を作製し、HE染色して移植部位の状態を確認する。ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成は生じない。
【0137】
(比較例3B:関節軟骨由来の肥大化能を有さない軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合の効果)
(関節軟骨からの肥大化能を有さない軟骨細胞の調製)
4週齢〜8週齢の雄性ラット(Wistar系)をクロロホルムを使用して屠殺した。ラットの膝関節周囲をバリカンで剃毛し、ヒビテン液(10倍希釈)に全身を浸し消毒した。膝関節部を切開し、無菌的に関節軟骨を採取した。この関節軟骨を細切し、0.25%トリプシン−EDTA/D−PBS中で、37℃で1時間攪拌した。次いで、遠心分離(1000rpm(170×g)×5分間)により洗浄および回収し、その後0.2%コラゲナーゼ/D−PBSとともに37℃で、2.5時間攪拌した。遠心分離(1000rpm(170×g)×5分間)により洗浄および回収した後、攪拌用フラスコ中で0.2%ディスパーゼ/HamF12増殖培地とともに、37℃にて、1晩攪拌した。0.2%ディスパーゼでの1晩処理を省く場合もある。翌日、この細胞懸濁液を濾過し、遠心分離(1000rpm(170×g)×5分間)により洗浄および回収した。細胞を、トリパンブルーにより染色し、顕微鏡を用いて細胞数をカウントした。
【0138】
評価は、呈色しなかった細胞を生細胞とし、青色に呈色した細胞を死細胞とした。
【0139】
(関節軟骨部由来の肥大化能を有さない軟骨細胞の確認)
関節軟骨部由来の肥大化能を有さない軟骨細胞を希釈した細胞液に、肥大化能を有する軟骨細胞が存在するか否かを、実施例1と同様の手順を用いて確認した。肥大化能を有さない軟骨細胞(1×106細胞/ml)を、気孔率85%円盤状ヒドロキシアパタイト(直径5mm)7個/24ウェルプレート上に播種し(円盤状ヒドロキシアパタイト1個あたり、1.43×105細胞)、HamF12増殖培地中で37℃にて、5% CO2インキュベーター中で1週間培養した。アルカリホスファターゼ染色では、試料は染まらなかった。トルイジン青染色では、その試料は青く斑点状に染まり、細胞が存在することが確認された(図6Aを参照のこと)。ヒドロキシアパタイト上に存在する細胞にはアルカリホスファターゼ活性がないことが確認された(図6Bを参照のこと)。このことにより、本比較例で使用する細胞液には、肥大化能を有さない軟骨細胞が存在することが確認された。
【0140】
実施例1と同様の方法を使用して軟骨細胞マーカーの局在または発現を検出し、形態学的にも検索して、得られた細胞が肥大化能を有さない軟骨細胞であることを確認する。
【0141】
(関節軟骨部から採取した肥大化能を有さない軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料の作製)
本比較例により得られた肥大化能を有さない軟骨細胞を用いて、実施例1と同様の方法を使用することにより、複合材料を調製し、ラットの皮下に移植する。移植の4週間後、ラットを屠殺して移植部位を摘出し、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋する。薄切標本を作製し、HE染色して移植部位の状態を確認する。ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成は生じない。
【0142】
(比較例3C:肋軟骨由来の肥大化能を有さない静止軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合の効果)
(肋軟骨からの肥大化能を有さない静止軟骨細胞の調製)
4週齢〜8週齢の雄性ラット(Wistar系)をクロロホルムを使用して屠殺した。ラットの胸部をバリカンで剃毛し、ヒビテン液(10倍希釈)に全身を浸し消毒した。胸部を切開し、無菌的に肋軟骨部を採取した。この肋軟骨部分より不透明の静止軟骨部を採取した。この静止軟骨部を細切し、0.25%トリプシン−EDTA/D−PBS中で、37℃で1時間攪拌した。次いで、遠心分離(1000rpm(170×g)で3分間)により洗浄および回収し、その後0.2%コラゲナーゼ(Collagenase:インビトロジェン社製)/D−PBSとともに37℃で、2.5時間攪拌した。遠心分離(1000rpm(170×g)で3分間)により洗浄および回収した後、攪拌用フラスコ中で0.2%ディスパーゼ(Dispase:インビトロジェン社製)/HamF12増殖培地とともに、37℃にて、1晩攪拌した。0.2%ディスパーゼでの1晩処理を除く場合もある。翌日、得られた細胞を濾過し、遠心分離(1000rpm(170×g)で3分間)により洗浄および回収した。細胞をトリパンブルーにより染色し、顕微鏡を用いて細胞数をカウントした。
【0143】
評価は、呈色しなかった細胞を生細胞とし、青色に呈色した細胞を死細胞とした。
【0144】
(肋軟骨由来の肥大化能を有さない静止軟骨細胞の確認)
肋軟骨由来の肥大化能を有さない静止軟骨細胞を希釈した細胞液に、肥大化能を有する軟骨細胞が存在するか否かを、実施例1と同様の手順を用いて確認した。静止軟骨細胞(1×106細胞/ml)を、気孔率85%円盤状ヒドロキシアパタイト(直径5mm)7個/24ウェルプレート上に播種し(円盤状ヒドロキシアパタイト1個あたり、1.43×105細胞)、HamF12増殖培地中で37℃にて、5% CO2インキュベーター中で、3時間、1日間、3日間、または1週間培養した。アルカリホスファターゼ染色では、いずれの試料も染まらなかった。トルイジン青染色では、それらの試料は青く斑点状に染まり、細胞が存在することが確認された(図7A〜7Dを参照のこと)。ヒドロキシアパタイト上に存在する細胞にはアルカリホスファターゼ活性がないことが確認された(図7E〜7Hを参照のこと)。このことにより、本比較例で使用する細胞液には、肥大化能を有さない軟骨細胞が存在することが確認された。
【0145】
実施例1と同様の方法を使用して軟骨細胞マーカーの局在または発現を検出し、形態学的にも検索して、得られた細胞が肥大化能を有さない軟骨細胞であることを確認した(図8)。
【0146】
(肋軟骨由来の肥大化能を有さない静止軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料の作製)
本比較例により得られた肥大化能を有さない静止軟骨細胞を用いて、実施例1と同様の方法を使用することにより、複合材料を調製し、ラットの皮下に移植する。移植の4週間後、ラットを屠殺して移植部位を摘出し、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋する。薄切標本を作製し、HE染色して移植部位の状態を確認する。ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成は生じない。
【0147】
(比較例4:骨芽細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合の効果)
(骨芽細胞の調製)
雄性ラット(Wistar系)新生仔をクロロホルムを使用して屠殺する。ヒビテン液(10倍希釈)に全身を浸し消毒する。頭蓋を切開し、頭蓋骨を採取する。この頭蓋骨を細切し、0.2%コラゲナーゼ/D−PBSとともに37℃で、1.5時間攪拌する。この細胞懸濁液を濾過し、遠心分離(1000rpm(170×g)×5分間)により洗浄および回収して細胞を単離する。細胞を、トリパンブルーにより染色し、顕微鏡を用いて細胞数をカウントする。
【0148】
評価は、呈色しなかった細胞を生細胞とし、青色に呈色した細胞を死細胞とする。
【0149】
(骨芽細胞の確認)
マーカーとして骨芽細胞に対するマーカーを使用すること、および培地としてMEM増殖培地を使用すること以外、実施例1と同様の方法を使用して、骨芽細胞であることを確認する。
【0150】
(骨芽細胞および生体適合性足場を用いる複合材料の作製)
本比較例により得られた骨芽細胞を用いて、実施例1と同様の方法を使用することにより、複合材料を調製し、ラットの皮下に移植する。移植の4週間後、ラットを屠殺して移植部位を摘出し、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋する。薄切標本を作製し、HE染色して移植部位の状態を確認する。骨芽細胞と、ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場とを用いる複合材料において骨形成がわずかに観察される。その骨形成を、肋骨・肋軟骨部および胸骨由来の肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を移植した場合(実施例1および2を参照のこと)と比較することにより、肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料が、骨芽細胞の場合より優れた骨形成能力を有することが示される。
【0151】
(比較例5:間葉系幹細胞または間葉系幹細胞由来の骨芽細胞と生体適合性足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合の効果)
(間葉系幹細胞の調製)
検体として4〜8週齢ラットを用いる。ラットを屠殺し、大腿骨を無菌的に採取し、両断を切断して、MEM増殖培地で骨髄内を洗浄および回収する。洗い出された骨髄細胞を75cm2の培養フラスコ(T−75)に播種する。5% CO2、37℃で1週間〜10日間培養した後、培養器に接着した細胞を骨髄由来の間葉系幹細胞として以下の実験に用いる。
【0152】
(間葉系幹細胞または間葉系幹細胞由来の骨芽細胞と生体適合性足場を用いる複合材料の作製)
本比較例により得られた間葉系幹細胞とMEM増殖培地を用いること以外、実施例1と同様の方法を使用することにより、複合材料を調製する。さらに、この複合材料をMEM分化培地(基礎培地を含み、かつグルココルチコイド、β−グリセロホスフェートおよびアスコルビン酸からなる群より選択される従来型骨芽細胞分化誘導成分の少なくとも1つを含んでいる培地)中で5% CO2、37℃で2週間培養し、生体適合性を有する足場に存在する間葉系幹細胞を骨芽細胞に分化誘導させる。分化誘導された骨芽細胞とヒドロキシアパタイトを用いる複合材料を、ラットの皮下に移植する。この2週間の間葉系幹細胞の骨芽細胞への分化誘導操作を省き、生体適合性を有する足場に間葉系幹細胞が存在する複合材料も移植に用いる。移植の4週間後、ラットを屠殺して移植部位を摘出し、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋する。薄切標本を作製し、HE染色して移植部位の状態を確認する。間葉系幹細胞と生体適合性を有する足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合、ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成は観察されない。間葉系幹細胞から誘導された骨芽細胞と生体適合性を有する足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合、ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成がわずかに観察される。その骨形成を、肥大化能を有する軟骨細胞(肋骨・肋軟骨部由来および胸骨由来)および生体適合性足場を用いる複合材料の各々を移植した場合(実施例1および2を参照のこと)と比較することにより、肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料が、間葉系幹細胞または間葉系幹細胞から分化誘導させた骨芽細胞の場合より優れた骨形成能力を有することが示される。
【0153】
(比較例3〜5のまとめ)
肥大化能を有さない軟骨細胞(耳介軟骨部由来、関節軟骨部由来および肋軟骨部由来)と生体適合性足場を含む複合材料、ならびに間葉系幹細胞と生体適合性足場を含む複合材料の各々をラット皮下に移植した場合、骨形成が生じないことが確認される。一方、骨芽細胞または間葉系幹細胞から分化誘導させた骨芽細胞と、生体適合性足場とを含む複合材料をラット皮下に移植した場合、骨形成はわずかに観察される。その骨形成を、肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を移植した場合と比較することにより、肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料が、骨芽細胞または間葉系幹細胞から分化誘導させた骨芽細胞の場合より優れた骨形成能力を有することが示される。
【0154】
(実施例3:肋骨・肋軟骨部由来の肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合の効果)
(肋骨・肋軟骨部からの肥大化能を有する軟骨細胞の調製および確認)
実施例1と同じ方法を用いて肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を調製した。
【0155】
(骨の欠損部位の作製)
Wistar系雄性ラットを麻酔し、無菌的に大腿骨または脛骨の皮膚を切開し、軟部組織を一方にそらせて、大腿骨または脛骨の骨欠損作製部位を露出させた。あるいは、頭蓋骨の皮膚を切開し、頭蓋骨の骨欠損作製部位を露出させた。歯科用穿孔器にトレフィンバールまたはディスクを装着し、穿孔骨欠損または離断骨欠損を作製した。この作製した骨の欠損部位に上記で調製した複合材料を移植した。移植の4、12週間後、ラットを屠殺して移植部位を摘出し、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋した。薄切標本を作製し、HE染色して移植部位の状態を確認した。ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成が観察された。
【0156】
(比較例6A:肋骨・肋軟骨部由来の肥大化能を有する軟骨細胞のペレットを骨の欠損部位に移植した場合の効果)
(肋骨・肋軟骨部由来の肥大化能を有する軟骨細胞ペレットの調製)
比較例1Aと同様の方法により、肥大化能を有する軟骨細胞ペレットを調製し、ラットの骨の欠損部位に移植する。移植の4、12週間後に移植部位の状態を確認する。肋骨・肋軟骨部由来の肥大化能を有する軟骨細胞ペレットを骨の欠損部位に移植した場合には、わずかに骨形成が観察されるが、その骨形成の範囲は、肋骨・肋軟骨部由来の肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合(実施例3を参照のこと)よりも、はるかに小さい。
【0157】
(比較例6B:肋骨・肋軟骨部由来の肥大化能を有する軟骨細胞単独を骨の欠損部位に移植した場合の効果)
実施例1と同様の方法により得られた肥大化能を有する軟骨細胞を単独でラットの骨の欠損部位に移植する。肥大化能を有する軟骨細胞を単独で骨の欠損部位に移植した場合、骨形成は生じない。
【0158】
(比較例6C:ヒドロキシアパタイト単独を骨の欠損部位に移植した場合の効果)
実施例3と同様の方法と同じ方法を用いて、足場であるヒドロキシアパタイトを単独でラットの骨の欠損部位に移植した。ヒドロキシアパタイトを単独で移植した場合、骨形成は移植片周辺部にわずかに生じた。
【0159】
(実施例4:胸骨由来の肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合の効果)
実施例2と同様の方法により得られた胸骨由来の肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を、ラットの骨の欠損部位に移植する。移植の4、12週間後、ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成が観察される。
【0160】
(比較例7A:胸骨由来の肥大化能を有する軟骨細胞のペレットを骨の欠損部位に移植した場合の効果)
比較例2Aと同様の方法により、肥大化能を有する軟骨細胞ペレットを調製し、ラットの骨の欠損部位に移植する。移植4、12週間後に移植部位の状態を確認する。胸骨由来の肥大化能を有する軟骨細胞ペレットを骨の欠損部位に移植した場合には、わずかに骨形成が観察されるが、その骨形成の範囲は、胸骨由来の肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合(実施例4を参照のこと)よりも、はるかに小さい。
【0161】
(比較例7B:胸骨由来の肥大化能を有する軟骨細胞単独を骨の欠損部位に移植した場合の効果)
実施例2により得られた肥大化能を有する軟骨細胞を、単独でラットの骨の欠損部位に移植する。肥大化能を有する軟骨細胞を単独で移植した場合、骨形成は生じない。
【0162】
(比較例8A:耳介軟骨部由来の肥大化能を有さない軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合の効果)
比較例3Aにより得られた耳介軟骨部由来の肥大化能を有さない軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を、ラットの骨の欠損部位に移植する。移植の4、12週間後、ゼラチンおよびコラーゲン各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成は生じなく、ヒドロキシアパタイトの生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成は移植片周辺部にわずかに生じるのみである。
【0163】
(比較例8B:関節軟骨由来の肥大化能を有さない軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合の効果)
比較例3Bにより得られた関節軟骨由来の肥大化能を有さない軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を、ラットの骨の欠損部位に移植する。移植の4、12週間後、ゼラチンおよびコラーゲン各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成は生じなく、ヒドロキシアパタイトの生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成は移植片周辺部にわずかに生じるのみである。
【0164】
(比較例8C:肋軟骨由来の静止軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合の効果)
比較例3Cにより得られた肋軟骨由来の静止軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を、ラットの骨の欠損部位に移植する。移植の4、12週間後、ゼラチンおよびコラーゲン各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成は生じなく、ヒドロキシアパタイトの生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成は移植片周辺部にわずかに生じた。
【0165】
(比較例9:骨芽細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合の効果)
比較例4により得られた骨芽細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を、ラットの骨の欠損部位に移植する。移植の4、12週間後、ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成がわずかに観察される。その骨形成を、肋骨・肋軟骨部および胸骨由来の肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を移植した場合(実施例3および4を参照のこと)と比較することにより、肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料が、骨芽細胞の場合より優れた骨形成能力を有することが示される。
【0166】
(比較例10:間葉系幹細胞または間葉系幹細胞由来の骨芽細胞と体適合性足場を用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合の骨形成率および骨形成量の比較)
比較例5により得られた間葉系幹細胞と生体適合性足場とを用いる複合材料、または間葉系幹細胞から分化誘導させた骨芽細胞と生体適合性足場とを用いる複合材料を、各々ラットの骨の欠損部位に移植する。移植の4、12週間後、間葉系幹細胞と生体適合性足場とを用いる複合材料を移植した場合、ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成がわずかに観察される。間葉系幹細胞から分化誘導させた骨芽細胞と生体適合性足場とを移植した場合、ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成がわずかに観察される。その骨形成を、肋骨・肋軟骨部および胸骨由来の肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を移植した場合(実施例3および4を参照のこと)と比較することにより、肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料が、間葉系幹細胞または間葉系幹細胞から分化誘導させた骨芽細胞の場合より優れた骨形成能力を有することが示される。
【0167】
(実施例3〜4および比較例6A〜10のまとめ)
肥大化能を有する軟骨細胞と生体適合性足場とを含む複合材料をラット骨の欠損部位に移植した場合の骨形成は、ペレット状にした肥大化能を有する軟骨細胞単独を移植した場合よりも大きい。一方、肥大化能を有する軟骨細胞を単独で移植した場合、骨形成は生じない。ヒドロキシアパタイトを単独で移植した場合、骨形成は移植片周辺部にわずかに生じるのみである。これらの結果は、皮下試験の結果(実施例1〜2および比較例1A〜2B)における複合材料と単独材料とを対比したときの傾向とほぼ同様である。さらに、耳介軟骨部、関節軟骨部または静止軟骨部由来の肥大化能を有さない軟骨細胞と、生体適合性足場とを用いる複合材料を骨の欠損部位に移植する場合、ならびに骨芽細胞、間葉系幹細胞から分化誘導させた骨芽細胞または間葉系幹細胞と生体適合性足場とを用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合、いずれの場合にも骨の欠損部位に骨形成がわずかに観察されることが確認される。
【0168】
(実施例5:肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合の骨形成率および骨形成量)
(骨の欠損部位の作製ならびに骨形成率および骨形成量の測定)
骨形成の観察された実施例1の複合材料を骨の欠損部位に移植した場合について、骨形成率および骨形成量を、マイクロCT(株式会社東陽テクニカ、スカイスキャン1172)を用いて測定した。生体適合性足場としてヒドロキシアパタイトを用いた。実施例1と同様の方法により得られた肥大化能を有する軟骨細胞とヒドロキシアパタイトの複合材料(直径4mm×厚さ1mmの円盤状)を、骨の欠損部位(直径4mm円孔の打抜き)に移植した。骨の欠損部位は、実施例3と同様の方法により作製した。移植の4、12週間後に移植部位を摘出し、μCTデータを測定した(65kV−154μA、80kV−125μA、または100kV−100μA、AlまたはTiフィルター、回転角度0.4度)。
【0169】
(骨形成率および骨形成量)
表2に示すように、肥大化能を有する軟骨細胞およびヒドロキシアパタイトを用いた複合材料を骨の欠損部位に移植した場合、移植の4週間後に5.78mm3の骨が新生された。新しく形成された骨の全体に占める割合は45.90%であった。
【0170】
(比較例11:肥大化能を有さない静止軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合の骨形成率および骨形成量)
(骨の欠損部位の作製ならびに骨形成率および骨形成量の測定)
生体適合性足場としてヒドロキシアパタイトを用いた。比較例3Cと同様の方法により得られた肥大化能を有さない軟骨細胞とヒドロキシアパタイトの複合材料(直径4mm×厚さ1mmの円盤状)を、骨の欠損部位(直径4mm円孔の打抜き)に移植した。骨の欠損部位は、実施例3と同様の方法により作製した。
【0171】
(骨形成率および骨形成量)
表2に示すように、肥大化能を有さない軟骨細胞およびヒドロキシアパタイトを用いた複合材料を骨の欠損部位に移植した場合、移植の4週間後に2.74mm3の骨が新生された。新しく形成された骨の全体に占める割合は24.16%であった。骨形成率および骨形成量は、実施例5に記載される肥大化能を有する軟骨細胞およびヒドロキシアパタイトを用いた複合材料と比べて低かった。
【0172】
(比較例12:生体適合性足場単独を骨の欠損部位に移植した場合の骨形成率および骨形成量)
(骨の欠損部位の作製ならびに骨形成率および骨形成量の測定)
生体適合性材料としてヒドロキシアパタイトを用いた。ヒドロキシアパタイト(直径4mm×厚さ1mmの円盤状)を、骨の欠損部位(直径4mm円孔の打抜き)に移植した。この骨の欠損部位は、実施例3と同様の方法により作製した。移植の4週間後に移植部位を摘出し、μCTデータを測定した(65kV−154μA、80kV−125μA、または100kV−100μA、AlまたはTiフィルター、回転角度0.4度)。
【0173】
(骨形成率および骨形成量)
表2に示すように、ヒドロキシアパタイト単独を骨の欠損部位に移植した場合、移植の4週間後に2.72mm3の骨が新生された。新しく形成された骨の全体に占める割合は29.48%であった。骨形成率および骨形成量は、実施例5に記載される肥大化能を有する軟骨細胞およびヒドロキシアパタイトを用いた複合材料と比べて低かった。
【0174】
(実施例5ならびに比較例11および12のまとめ)
骨の欠損部位に、肥大化能を有する軟骨細胞およびヒドロキシアパタイトを用いた複合材料を移植した場合、肥大化能を有さない軟骨細胞およびヒドロキシアパタイトを用いた複合材料を移植したものと比べて、骨形成率は高く、骨形成量は多かった(図9、図10および表2を参照のこと。)。骨の欠損部位に、肥大化能を有する軟骨細胞およびヒドロキシアパタイトを用いた複合材料を移植した場合、ヒドロキシアパタイト単独を移植したものと比べて、骨形成率は高く、骨形成量は多かった(図9、図10および表2を参照のこと。)。骨の欠損部位に、肥大化能を有さない軟骨細胞およびヒドロキシアパタイトを用いた複合材料を移植した場合と、ヒドロキシアパタイト単独を移植した場合とは、骨形成率および骨形成量に差異はなかった(図9、図10および表2を参照のこと。)。
【0175】
【表2】
【0176】
Empty:ヒドロキシアパタイト単独を、ラット頭蓋骨の欠損部位に移植した場合の、4週後の骨形成量(体積)と骨形成率(比率)。
GC:肥大化能を有する軟骨細胞(肋骨・肋軟骨部から採取した成長軟骨細胞)およびヒドロキシアパタイトと用いる複合材料を、ラット頭蓋骨の欠損部位に移植した場合の、4週後の骨形成量(体積)と骨形成率(比率)。
RC:肥大化能を有さない軟骨細胞(肋軟骨部から採取した静止軟骨細胞)およびヒドロキシアパタイトと用いる複合材料を、ラット頭蓋骨の欠損部位に移植した場合の、4週後の骨形成量(体積)と骨形成率(比率)。
【0177】
(比較例13:骨芽細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合の骨形成率および骨形成量)
(骨の欠損部位の作製ならびに骨形成率および骨形成量の測定)
生体適合性足場としてヒドロキシアパタイトを用いる。比較例4と同様の方法により得られた骨芽細胞とヒドロキシアパタイトの複合材料(直径4mm×厚さ1mmの円盤状)を、骨の欠損部位(直径4mm円孔の打抜き)に移植する。骨の欠損部位は、実施例3と同様の方法により作製する。移植の4、12週間後に移植部位を摘出し、μCTデータを測定する(65kV−154μA、80kV−125μA、または100kV−100μA、AlまたはTiフィルター、回転角度0.4度)。
【0178】
(骨形成率および骨形成量)
骨芽細胞およびヒドロキシアパタイトを用いた複合材料を骨の欠損部位に移植した場合、移植の4、12週間後に骨はわずかに新生される。新しく形成された骨の全体に占める割合は少ないことが確認される。骨形成率および骨形成量は、実施例5に記載される肥大化能を有する軟骨細胞およびヒドロキシアパタイトを用いた複合材料と比べて低いことが確認される。
【0179】
(比較例14:間葉系幹細胞もしくは間葉系幹細胞由来の骨芽細胞と生体適合性足場を用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合の骨形成率および骨形成量)
(骨の欠損部位の作製ならびに骨形成率および骨形成量の測定)
生体適合性足場としてヒドロキシアパタイトを用いる。比較例5と同様の方法により得られた間葉系幹細胞もしくは間葉系幹細胞由来の骨芽細胞とヒドロキシアパタイトの複合材料(直径4mm×厚さ1mmの円盤状)を、骨の欠損部位(直径4mm円孔の打抜き)に移植する。骨の欠損部位は、実施例3と同様の方法により作製する。移植の4、12週間後に移植部位を摘出し、μCTデータを測定する(65kV−154μA、80kV−125μA、または100kV−100μA、AlまたはTiフィルター、回転角度0.4度)。
【0180】
(骨形成率および骨形成量)
間葉系幹細胞もしくは間葉系幹細胞由来の骨芽細胞とヒドロキシアパタイトを用いた複合材料を骨の欠損部位に移植した場合、移植の4、12週間後に骨はわずかに新生される。新しく形成された骨の全体に占める割合は少ないことが確認される。骨形成率および骨形成量は、実施例5に記載される肥大化能を有する軟骨細胞およびヒドロキシアパタイトを用いた複合材料と比べて低いことが確認される。
【0181】
(実施例6:肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料に対して、培養培地が与える影響)
(肋骨・肋軟骨部からの肥大化能を有する軟骨細胞の調製および確認)
実施例1と同じ方法を用いて肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を調製した。
【0182】
(肋骨・肋軟骨部から採取した肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料の作製)
実施例1により得られた肥大化能を有する軟骨細胞に、MEM増殖培地を加えて1×106細胞/mlに希釈した。この細胞懸濁液を、ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイトのそれぞれに均一に播種し、37℃にて、5% CO2インキュベーター中で1週間培養した。
【0183】
これらの培養物を、ラットの皮下に移植する。移植の4週間後、ラットを屠殺して移植部位を摘出し、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋する。薄切標本を作製し、HE染色して移植部位の状態を確認する。ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成が観察される。
【0184】
(実施例7:ヒト由来の肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合の効果)
(ヒト由来の肥大化能を有する軟骨細胞の調製)
多肢症、腫瘍、提供軟骨組織などのヒト組織由来の肥大化能を有する軟骨細胞を、ヒト組織資源活用機関(財団法人ヒューマンサイエンス振興財団ヒューマンサイエンス研究資源バンク(HSRRB)、独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンター、独立行政法人医薬基盤研究所JCRB細胞バンク、東北大学加齢医学研究所などの日本の機関、およびInternational Institute for the Advancement of Medicine(IIAM)、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)などの海外の機関、大日本住友製薬株式会社、三光純薬株式会社、東洋紡績株式会社、Cambrex社、Osiris社などの細胞提供業者)より入手する。入手した細胞をHamF12増殖培地に播種する。
【0185】
(肥大化能を有する軟骨細胞の確認)
実施例1と同様の方法を使用して、調製した細胞が肥大化能を有する軟骨細胞であることを確認する。
【0186】
(ヒト由来の肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料の作製)
本実施例により得られた肥大化能を有する軟骨細胞を用いて、実施例1に記載の方法により、複合材料を調製し、免疫不全動物(ヌードマウスおよびヌードラットなど)の皮下に移植する。移植の4週間後、該動物を屠殺して移植部位を摘出し、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋する。薄切標本を作製し、HE染色して移植部位の状態を確認する。ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成が観察される。
【0187】
(肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合の効果)
骨の欠損部位を、実施例3と同様の方法により作製する。本実施例より得られた肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を、骨の欠損部位に移植する。移植の4、12週間後、ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成が観察される。
【0188】
(骨の欠損部位における骨形成率および骨形成量の測定)
移植部位における骨形成率および骨形成量を、実施例5と同じ方法によって測定する。肥大化能を有する軟骨細胞およびヒドロキシアパタイトを用いた複合材料を骨の欠損部位に移植した場合、移植の4、12週間後に骨の新生が確認される。
【0189】
(比較例15A:ヒト由来の肥大化能を有さない軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合の効果)
(ヒト由来の肥大化能を有さない軟骨細胞の調製および確認)
多肢症、腫瘍、提供軟骨組織などのヒト組織由来の肥大化能を有さない軟骨細胞を、ヒト組織資源活用機関(財団法人ヒューマンサイエンス振興財団ヒューマンサイエンス研究資源バンク(HSRRB)、独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンター、独立行政法人医薬基盤研究所JCRB細胞バンク、東北大学加齢医学研究所などの日本の機関、およびInternational Institute for the Advancement of Medicine(IIAM)、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)などの海外の機関、大日本住友製薬株式会社、三光純薬株式会社、東洋紡績株式会社、Cambrex社、Osiris社などの細胞提供業者)より入手する。入手した細胞をHamF12増殖培地に播種する。実施例1と同様の方法を使用して、調製した細胞が肥大化能を有さない軟骨細胞であることを確認する。
【0190】
(ヒト由来の肥大化能を有さない軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料の作製)
本比較例により得られた肥大化能を有さない軟骨細胞を用いて、実施例1と同様の方法を使用することにより、複合材料を調製し、免疫不全動物(ヌードマウスおよびヌードラットなど)の皮下に移植する。移植の4週間後、該動物を屠殺して移植部位を摘出し、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋する。薄切標本を作製し、HE染色して移植部位の状態を確認する。ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成は生じない。
【0191】
(肥大化能を有さない軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合の効果)
骨の欠損部位を、実施例3と同様の方法により作製する。本比較例より得られた肥大化能を有さない軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を、骨の欠損部位に移植する。移植の4、12週間後、ゼラチンおよびコラーゲン各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成は生じなく、ヒドロキシアパタイトの生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成は移植片周辺部にわずかに生じる。
【0192】
(骨の欠損部位における骨形成率および骨形成量の測定)
移植部位における骨形成率および骨形成量を、実施例5と同じ方法によって測定する。肥大化能を有さない軟骨細胞およびヒドロキシアパタイトを用いた複合材料を骨の欠損部位に移植した場合、移植の4、12週間後に骨の新生がわずかに確認される。
【0193】
(比較例15B:ヒト由来の骨芽細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合の効果)
(ヒト由来の骨芽細胞の調製および確認)
ヒト組織資源活用機関(財団法人ヒューマンサイエンス振興財団ヒューマンサイエンス研究資源バンク(HSRRB)、独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンター、独立行政法人医薬基盤研究所JCRB細胞バンク、東北大学加齢医学研究所などの日本の機関、およびInternational Institute for the Advancement of Medicine(IIAM)、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)などの海外の機関、大日本住友製薬株式会社、三光純薬株式会社、東洋紡績株式会社、Cambrex社、Osiris社などの細胞提供業者)よりヒト骨芽細胞を入手する。入手した細胞をMEM増殖培地に播種する。比較例4と同様の方法を使用して、調製した細胞が骨芽細胞であることを確認する。
【0194】
(ヒト由来の骨芽細胞および生体適合性足場を用いる複合材料の作製)
本比較例により得られた骨芽細胞を用いて、実施例1と同様の方法を使用することにより、複合材料を調製し、免疫不全動物(ヌードマウスおよびヌードラットなど)の皮下に移植する。移植の4週間後、該動物を屠殺して移植部位を摘出し、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋する。薄切標本を作製し、HE染色して移植部位の状態を確認する。ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成はわずかに生じる。
【0195】
(骨芽細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合の効果)
骨の欠損部位を、実施例3と同様の方法により作製する。本比較例より得られた骨芽細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を、骨の欠損部位に移植する。移植の4、12週間後、ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成はわずかに生じる。
【0196】
(骨の欠損部位における骨形成率および骨形成量の測定)
移植部位における骨形成率および骨形成量を、実施例5と同じ方法によって測定する。骨芽細胞およびヒドロキシアパタイトを用いた複合材料を骨の欠損部位に移植した場合、移植の4、12週間後に骨の新生がわずかに確認される。
【0197】
(比較例15C:ヒト由来の間葉系幹細胞または間葉系幹細胞由来の骨芽細胞と生体適合性足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合の効果)
(ヒト由来の間葉系幹細胞の調製および確認)
ヒト組織資源活用機関(財団法人ヒューマンサイエンス振興財団ヒューマンサイエンス研究資源バンク(HSRRB)、独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンター、独立行政法人医薬基盤研究所JCRB細胞バンク、東北大学加齢医学研究所などの日本の機関、およびInternational Institute for the Advancement of Medicine(IIAM)、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)などの海外の機関、大日本住友製薬株式会社、三光純薬株式会社、東洋紡績株式会社、Cambrex社、Osiris社などの細胞提供業者)よりヒト由来の間葉系幹細胞を入手する。入手した細胞をHamF12増殖培地に播種する。
【0198】
(ヒト由来の間葉系幹細胞または間葉系幹細胞由来の骨芽細胞と生体適合性足場を用いる複合材料の作製)
本比較例により得られた間葉系幹細胞とMEM増殖培地を用いること以外、実施例1と同様の方法を使用することにより、複合材料を調製する。さらに、この複合材料をMEM分化培地中で5% CO2、37℃で2週間培養し、生体適合性を有する足場に存在する間葉系幹細胞を骨芽細胞に分化誘導させる。分化誘導された骨芽細胞とヒドロキシアパタイトの複合材料を、免疫不全動物(ヌードマウスおよびヌードラットなど)の皮下に移植する。この2週間の間葉系幹細胞の骨芽細胞への分化誘導操作を省き、生体適合性を有する足場に間葉系幹細胞が存在する複合材料も移植に用いる。移植の4週間後、該動物を屠殺して移植部位を摘出し、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋する。薄切標本を作製し、HE染色して移植部位の状態を確認する。間葉系幹細胞と生体適合性を有する足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合、ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成は観察されない。間葉系幹細胞から誘導された骨芽細胞と生体適合性を有する足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合、ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成がわずかに観察される。
【0199】
(ヒト由来の間葉系幹細胞または間葉系幹細胞由来の骨芽細胞と生体適合性足場を用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合の効果)
骨の欠損部位を、実施例3と同様の方法により作製する。本比較例より得られた間葉系幹細胞または間葉系幹細胞由来の骨芽細胞と生体適合性足場を用いる複合材料を、骨の欠損部位に移植する。移植の4、12週間後、ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料においてわずかに骨形成が観察される。
【0200】
(骨の欠損部位における骨形成率および骨形成量の測定)
移植部位における骨形成率および骨形成量を、実施例5と同じ方法によって測定する。間葉系幹細胞または間葉系幹細胞由来の骨芽細胞とヒドロキシアパタイトを用いた複合材料を骨の欠損部位に移植した場合、移植の4、12週間後に骨の新生がわずかに確認される。
【0201】
(実施例8:マウス肋骨・肋軟骨部由来の肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合の効果)
(肋骨・肋軟骨部からの肥大化能を有する軟骨細胞の調製および確認)
検体としてマウスを用いる。実施例1と同様の方法により、マウスの肋骨・肋軟骨部から肥大化能を有する軟骨細胞を調製し、この調製した細胞が肥大化能を有する軟骨細胞であることを確認する。
【0202】
(マウス肋骨・肋軟骨部由来の肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料の作製)
本実施例により得られた肥大化能を有する軟骨細胞を用いて、実施例1に記載の方法により、複合材料を調製し、マウスの皮下に移植する。移植の4週間後、マウスを屠殺して移植部位を摘出し、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋する。薄切標本を作製し、HE染色して移植部位の状態を確認する。ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成が観察される。
【0203】
(肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合の効果)
骨の欠損部位を、実施例3と同様の方法により作製する。本実施例より得られた肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を、骨の欠損部位に移植する。移植の4、12週間後、ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成が観察される。
【0204】
(骨の欠損部位における骨形成率および骨形成量の測定)
移植部位における骨形成率および骨形成量を、実施例5と同じ方法によって測定する。肥大化能を有する軟骨細胞およびヒドロキシアパタイトを用いた複合材料を骨の欠損部位に移植した場合、移植の4、12週間後に骨の新生が確認される。
【0205】
(比較例16A:マウス肋軟骨由来の肥大化能を有さない静止軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合の効果)
(マウス肋軟骨からの静止軟骨細胞の調製および確認)
検体としてマウスを用いる。比較例3Cと同様の方法により静止軟骨細胞を調製し、この調製した細胞が肥大化能を有さない静止軟骨細胞であることを確認する。
【0206】
(マウス肋軟骨由来の肥大化能を有さない静止軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料の作製)
本比較例により得られた肥大化能を有さない静止軟骨細胞を用いて、実施例1と同様の方法を使用することにより、複合材料を調製し、マウスの皮下に移植する。移植の4週間後、マウスを屠殺して移植部位を摘出し、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋する。薄切標本を作製し、HE染色して移植部位の状態を確認する。ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成は生じない。
【0207】
(肥大化能を有さない軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合の効果)
骨の欠損部位を、実施例3と同様の方法により作製する。本比較例より得られた肥大化能を有さない軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を、骨の欠損部位に移植する。移植の4、12週間後、ゼラチンおよびコラーゲン各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成は生じなく、ヒドロキシアパタイトの生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成は移植片周辺部にわずかに生じる。
【0208】
(骨の欠損部位における骨形成率および骨形成量の測定)
移植部位における骨形成率および骨形成量を、実施例5と同じ方法によって測定する。肥大化能を有さない軟骨細胞およびヒドロキシアパタイトを用いた複合材料を骨の欠損部位に移植した場合、移植の4、12週間後に骨の新生がわずかに確認される。
【0209】
(比較例16B:マウス由来の骨芽細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合の効果)
(マウス由来の骨芽細胞の調製および確認)
検体としてマウスを用いる。比較例4と同様の方法を使用して、マウスから骨芽細胞を調製し、この調製した細胞が骨芽細胞であることを確認する。
【0210】
(マウス由来の骨芽細胞および生体適合性足場を用いる複合材料の作製)
本比較例により得られた骨芽細胞を用いて、実施例1と同様の方法を使用することにより、複合材料を調製し、マウスの皮下に移植する。移植の4週間後、マウスを屠殺して移植部位を摘出し、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋する。薄切標本を作製し、HE染色して移植部位の状態を確認する。ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成はわずかに生じる。
【0211】
(マウス由来の骨芽細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合の効果)
骨の欠損部位を、実施例3と同様の方法により作製する。本比較例より得られた骨芽細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を、骨の欠損部位に移植する。移植の4、12週間後、ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料においてわずかに骨形成が観察される。
【0212】
(骨の欠損部位における骨形成率および骨形成量の測定)
移植部位における骨形成率および骨形成量を、実施例5と同じ方法によって測定する。骨芽細胞およびヒドロキシアパタイトを用いた複合材料を骨の欠損部位に移植した場合、移植の4、12週間後に骨の新生がわずかに確認される。
【0213】
(比較例16C:マウス由来の間葉系幹細胞または間葉系幹細胞由来の骨芽細胞と生体適合性足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合の効果)
(マウス由来の間葉系幹細胞の調製および確認)
検体としてマウスを用いる。比較例5と同様の方法を使用して間葉系幹細胞を調製し、この調製した細胞が間葉系幹細胞であることを確認する。
【0214】
(マウス由来の間葉系幹細胞または間葉系幹細胞由来の骨芽細胞と生体適合性足場を用いる複合材料の作製)
本比較例により得られた間葉系幹細胞とMEM増殖培地を用いること以外、実施例1と同様の方法を使用することにより、複合材料を調製する。さらに、この複合材料をMEM分化培地中で5% CO2、37℃で2週間培養し、生体適合性を有する足場に存在する間葉系幹細胞を骨芽細胞に分化誘導させる。分化誘導された骨芽細胞とヒドロキシアパタイトの複合材料を、マウスの皮下に移植する。この2週間の間葉系幹細胞の骨芽細胞への分化誘導操作を省き、生体適合性を有する足場に間葉系幹細胞が存在する複合材料も移植に用いる。移植の4週間後、マウスを屠殺して移植部位を摘出し、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋する。薄切標本を作製し、HE染色して移植部位の状態を確認する。間葉系幹細胞と生体適合性を有する足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合、ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成は観察されない。間葉系幹細胞から誘導された骨芽細胞と生体適合性を有する足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合、ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成がわずかに観察される。
【0215】
(間葉系幹細胞または間葉系幹細胞由来の骨芽細胞と生体適合性足場を用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合の効果)
骨の欠損部位を、実施例3と同様の方法により作製する。本比較例より得られた間葉系幹細胞または間葉系幹細胞由来の骨芽細胞と生体適合性足場を用いる複合材料を、骨の欠損部位に移植する。移植の4、12週間後、ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料においてわずかに骨形成が観察される。
【0216】
(骨の欠損部位における骨形成率および骨形成量の測定)
移植部位における骨形成率および骨形成量を、実施例5と同じ方法によって測定する。間葉系幹細胞または間葉系幹細胞由来の骨芽細胞とヒドロキシアパタイトを用いた複合材料を骨の欠損部位に移植した場合、移植の4、12週間後に骨の新生がわずかに確認される。
【0217】
(実施例9:ウサギ肋骨・肋軟骨部由来の肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合の効果)
(肋骨・肋軟骨部からの肥大化能を有する軟骨細胞の調製)
検体としてウサギを用いる。実施例1と同様の方法により、ウサギの肋骨・肋軟骨部から肥大化能を有する軟骨細胞を調製する。
【0218】
(肥大化能を有する軟骨細胞の確認)
実施例1と同様の方法を使用して、調製した細胞が肥大化能を有する軟骨細胞であることを確認する。
【0219】
(ウサギ肋骨・肋軟骨部由来の肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料の作製)
本実施例により得られた肥大化能を有する軟骨細胞を用いて、実施例1に記載の方法により、複合材料を調製し、ウサギの皮下に移植する。移植の4週間後、ウサギを屠殺して移植部位を摘出し、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋する。薄切標本を作製し、HE染色して移植部位の状態を確認する。ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成が観察される。
【0220】
(肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合の効果)
骨の欠損部位を、実施例3と同様の方法により作製する。本実施例より得られた肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を、骨の欠損部位に移植する。移植の4、12週間後、ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成が観察される。
【0221】
(骨の欠損部位における骨形成率および骨形成量の測定)
移植部位における骨形成率および骨形成量を、実施例5と同じ方法によって測定する。肥大化能を有する軟骨細胞およびヒドロキシアパタイトを用いた複合材料を骨の欠損部位に移植した場合、移植の4、12週間後に骨の新生が確認される。
【0222】
(比較例17A:ウサギ肋軟骨由来の肥大化能を有さない静止軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合の効果)
(ウサギ肋軟骨からの肥大化能を有さない静止軟骨細胞の調製および確認)
検体としてウサギを用いる。比較例3Cと同様の方法により静止軟骨細胞を調製し、この調製した細胞が肥大化能を有さない静止軟骨細胞であることを確認する。
【0223】
(ウサギ肋軟骨由来の肥大化能を有さない静止軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料の作製)
本比較例により得られた肥大化能を有さない静止軟骨細胞を用いて、実施例1と同様の方法を使用することにより、複合材料を調製し、ウサギの皮下に移植する。移植の4週間後、ウサギを屠殺して移植部位を摘出し、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋する。薄切標本を作製し、HE染色して移植部位の状態を確認する。ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成は生じない。
【0224】
(肥大化能を有さない静止軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合の効果)
骨の欠損部位を、実施例3と同様の方法により作製する。本比較例より得られた肥大化能を有さない静止軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を、骨の欠損部位に移植する。移植の4、12週間後、ゼラチンおよびコラーゲン各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成は生じなく、ヒドロキシアパタイトの生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成は移植片周辺部にわずかに生じる。
【0225】
(骨の欠損部位における骨形成率および骨形成量の測定)
移植部位における骨形成率および骨形成量を、実施例5と同じ方法によって測定する。肥大化能を有さない軟骨細胞およびヒドロキシアパタイトを用いた複合材料を骨の欠損部位に移植した場合、移植の4、12週間後に骨の新生がわずかに確認される。
【0226】
(比較例17B:ウサギ由来の骨芽細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合の効果)
(ウサギ由来の骨芽細胞の調製および確認)
検体としてウサギを用いる。比較例4と同様の方法を使用して、ウサギから骨芽細胞を調製し、この調製した細胞が骨芽細胞であることを確認する。
【0227】
(ウサギ由来の骨芽細胞および生体適合性足場を用いる複合材料の作製)
本比較例により得られた骨芽細胞を用いて、実施例1と同様の方法を使用することにより、複合材料を調製し、ウサギの皮下に移植する。移植の4週間後、ウサギを屠殺して移植部位を摘出し、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋する。薄切標本を作製し、HE染色して移植部位の状態を確認する。ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成はわずかに生じる。
【0228】
(骨芽細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合の効果)
骨の欠損部位を、実施例3と同様の方法により作製する。本比較例より得られた骨芽細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を、骨の欠損部位に移植する。移植の4、12週間後、ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料においてわずかに骨形成が観察される。
【0229】
(骨の欠損部位における骨形成率および骨形成量の測定)
移植部位における骨形成率および骨形成量を、実施例5と同じ方法によって測定する。骨芽細胞およびヒドロキシアパタイトを用いた複合材料を骨の欠損部位に移植した場合、移植の4、12週間後に骨の新生がわずかに確認される。
【0230】
(比較例17C:ウサギ由来の間葉系幹細胞または間葉系幹細胞由来の骨芽細胞と生体適合性足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合の効果)
(ウサギ由来の間葉系幹細胞の調製および確認)
検体としてウサギを用いる。比較例5と同様の方法を使用して間葉系幹細胞を調製し、この調製した細胞が間葉系幹細胞であることを確認する。
【0231】
(ウサギ由来の間葉系幹細胞または間葉系幹細胞由来の骨芽細胞と生体適合性足場を用いる複合材料の作製)
本比較例により得られた間葉系幹細胞とMEM増殖培地を用いること以外、実施例1と同様の方法を使用することにより、複合材料を調製する。さらに、この複合材料をMEM分化培地中で5% CO2、37℃で2週間培養し、生体適合性を有する足場に存在する間葉系幹細胞を骨芽細胞に分化誘導させる。分化誘導された骨芽細胞とヒドロキシアパタイトの複合材料を、ウサギの皮下に移植する。この2週間の間葉系幹細胞の骨芽細胞への分化誘導操作を省き、生体適合性を有する足場に間葉系幹細胞が存在する複合材料も移植に用いる。移植の4週間後、ウサギを屠殺して移植部位を摘出し、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋する。薄切標本を作製し、HE染色して移植部位の状態を確認する。間葉系幹細胞と生体適合性を有する足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合、ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成は観察されない。間葉系幹細胞から誘導された骨芽細胞と生体適合性を有する足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合、ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成がわずかに観察される。
【0232】
(間葉系幹細胞または間葉系幹細胞由来の骨芽細胞と生体適合性足場を用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合の効果)
骨の欠損部位を、実施例3と同様の方法により作製する。本比較例より得られた間葉系幹細胞または間葉系幹細胞由来の骨芽細胞と生体適合性足場を用いる複合材料を、骨の欠損部位に移植する。移植の4、12週間後、ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料においてわずかに骨形成が観察される。
【0233】
(骨の欠損部位における骨形成率および骨形成量の測定)
移植部位における骨形成率および骨形成量を、実施例5と同じ方法によって測定する。間葉系幹細胞または間葉系幹細胞由来の骨芽細胞とヒドロキシアパタイトを用いた複合材料を骨の欠損部位に移植した場合、移植の4、12週間後に骨の新生がわずかに確認される。
【0234】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0235】
本発明は、肥大化能を有する軟骨細胞および生体に対して生体適合性を有する足場を使用することによって足場と細胞との組み合わせとしては、予想外に骨形成が進展するという性質をもつ複合材料を提供することにより、実用的とは従来考えられていなかった足場と肥大化能を有する軟骨細胞との組み合わせが骨欠損に実用上耐え得るレベルで使用可能となり、従来人工物での移植処置の成績が不良であった部位の処置が可能になるという有用性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0236】
【図1A】図1Aは、胸骨体下部の剣状突起移行部を示す図である。
【図1B】図1Bは、細胞が肥大化した軟骨細胞が存在する成長軟骨層(中央部)、骨から構成される胸骨体部(右側)、肥大化していない軟骨細胞が存在する層(左側)を示す。
【図1C】図1Cは、肥大化能を有する軟骨細胞(肋骨・肋軟骨由来の成長軟骨細胞)5×105個を含むペレットを1週間培養した後の顕微鏡写真である。染色はHE染色である。図8と比較すると、細胞が肥大化していることが観察できる。左下のバーは30μm。
【図2A】図2Aは、肥大化能を有する軟骨細胞を希釈した細胞液をヒドロキシアパタイトに播種し、アルカリホスファターゼ染色した結果を示す。1×106細胞/mlでヒドロキシアパタイトに播種し、37℃にて、5% CO2インキュベーター中で3時間培養した後、アルカリホスファターゼ染色を行った。アルカリホスファターゼ染色では、試料は赤く染まった。
【図2B】図2Bは、肥大化能を有する軟骨細胞を希釈した細胞液をヒドロキシアパタイトに播種し、アルカリホスファターゼ染色した結果を示す。1×106細胞/mlでヒドロキシアパタイトに播種し、37℃にて、5% CO2インキュベーター中で1日間培養した後、アルカリホスファターゼ染色を行った。アルカリホスファターゼ染色では、試料は赤く染まった。
【図2C】図2Cは、肥大化能を有する軟骨細胞を希釈した細胞液をヒドロキシアパタイトに播種し、アルカリホスファターゼ染色した結果を示す。1×106細胞/mlでヒドロキシアパタイトに播種し、37℃にて、5% CO2インキュベーター中で3日間培養した後、アルカリホスファターゼ染色を行った。アルカリホスファターゼ染色では、試料は赤く染まった。
【図2D】図2Dは、肥大化能を有する軟骨細胞を希釈した細胞液をヒドロキシアパタイトに播種し、アルカリホスファターゼ染色した結果を示す。1×106細胞/mlでヒドロキシアパタイトに播種し、37℃にて、5% CO2インキュベーター中で1週間培養した後、アルカリホスファターゼ染色を行った。アルカリホスファターゼ染色では、試料は赤く染まった。
【図2E】図2Eは、図2Aのアルカリホスファターゼ染色した試料を、トルイジン青染色をした結果を示す。トルイジン青染色では同一部分が青く染まり、細胞が存在することが確認された。下段は、トルイジン青染色したヒドロキシアパタイトの断面図である。
【図2F】図2Fは、図2Bのアルカリホスファターゼ染色した試料を、トルイジン青染色をした結果を示す。トルイジン青染色では同一部分が青く染まり、細胞が存在することが確認された。
【図2G】図2Gは、図2Cのアルカリホスファターゼ染色した試料を、トルイジン青染色をした結果を示す。トルイジン青染色では同一部分が青く染まり、細胞が存在することが確認された。
【図2H】図2Hは、図2Dのアルカリホスファターゼ染色した試料を、トルイジン青染色をした結果を示す。トルイジン青染色では同一部分が青く染まり、細胞が存在することが確認された。
【図3A】図3Aは、肋骨・肋軟骨部由来の肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性を有する足場としてゼラチンを用いた場合の複合材料を移植したラット皮下移植部位の4週間後のHE染色である。左下のバーは100μm。
【図3B】図3Bは、肋骨・肋軟骨部由来の肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性を有する足場としてコラーゲンを用いた場合の複合材料を移植したラット皮下移植部位の4週間後のHE染色である。左下のバーは100μm。
【図3C】図3Cは、肋骨・肋軟骨部由来の肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性を有する足場としてヒドロキシアパタイトを用いた場合の複合材料を移植したラット皮下移植部位の4週間後のHE染色である。左下のバーは200μm。
【図4】図4は、ヒドロキシアパタイト単独を移植したラット皮下移植部位の4週間後のHE染色である。
【図5A】図5Aは、胸骨由来の肥大化能を有する軟骨細胞を希釈した細胞液をヒドロキシアパタイトに播種し、アルカリホスファターゼ染色した結果を示す。1×106細胞/mlでヒドロキシアパタイトに播種し、37℃にて、5% CO2インキュベーター中で1週間培養した後、アルカリホスファターゼ染色を行った。アルカリホスファターゼ染色では、試料は赤く染まった。
【図5B】図5Bは、胸骨の成長軟骨部以外の部位から採取した軟骨細胞を希釈した細胞液をヒドロキシアパタイトに播種し、アルカリホスファターゼ染色した結果を示す。1×106細胞/mlでヒドロキシアパタイトに播種し、37℃にて、5% CO2インキュベーター中で1週間培養した後、アルカリホスファターゼ染色を行った。アルカリホスファターゼ染色では、試料は染まらなかった。
【図6A】図6Aは、関節軟骨部由来の肥大化能を有さない軟骨細胞を希釈した細胞液をヒドロキシアパタイトに播種し、アルカリホスファターゼ染色した結果を示す。1×106細胞/mlでヒドロキシアパタイトに播種し、37℃にて、5% CO2インキュベーター中で1週間培養した後、アルカリホスファターゼ染色を行った。アルカリホスファターゼ染色では、試料は染まらなかった。
【図6B】図6Bは、図6Aのアルカリホスファターゼ染色した試料を、トルイジン青染色をした結果を示す。トルイジン青染色では、試料は青く斑点状に染まり、細胞が存在することが確認された。
【図7A】図7Aは、肥大化能を有さない静止軟骨細胞を希釈した細胞液をヒドロキシアパタイトに播種し、アルカリホスファターゼ染色した結果を示す。1×106細胞/mlでヒドロキシアパタイトに播種し、37℃にて、5% CO2インキュベーター中で3時間培養した後、アルカリホスファターゼ染色を行った。アルカリホスファターゼ染色では、試料は染まらなかった。
【図7B】図7Bは、肥大化能を有さない静止軟骨細胞を希釈した細胞液をヒドロキシアパタイトに播種し、アルカリホスファターゼ染色した結果を示す。1×106細胞/mlでヒドロキシアパタイトに播種し、37℃にて、5% CO2インキュベーター中で1日間培養した後、アルカリホスファターゼ染色を行った。アルカリホスファターゼ染色では、試料は染まらなかった。
【図7C】図7Cは、肥大化能を有さない静止軟骨細胞を希釈した細胞液をヒドロキシアパタイトに播種し、アルカリホスファターゼ染色した結果を示す。1×106細胞/mlでヒドロキシアパタイトに播種し、37℃にて、5% CO2インキュベーター中で3日間培養した後、アルカリホスファターゼ染色を行った。アルカリホスファターゼ染色では、試料は染まらなかった。
【図7D】図7Dは、肥大化能を有さない静止軟骨細胞を希釈した細胞液をヒドロキシアパタイトに播種し、アルカリホスファターゼ染色した結果を示す。1×106細胞/mlでヒドロキシアパタイトに播種し、37℃にて、5% CO2インキュベーター中で1週間培養した後、アルカリホスファターゼ染色を行った。アルカリホスファターゼ染色では、試料は染まらなかった。
【図7E】図7Eは、図7Aのアルカリホスファターゼ染色した試料を、トルイジン青染色をした結果を示す。トルイジン青染色では、試料は青く染まり、細胞が存在することが確認された。
【図7F】図7Fは、図7Bのアルカリホスファターゼ染色した試料を、トルイジン青染色をした結果を示す。トルイジン青染色では、試料は青く染まり、細胞が存在することが確認された。
【図7G】図7Gは、図7Cのアルカリホスファターゼ染色した試料を、トルイジン青染色をした結果を示す。トルイジン青染色では、試料は青く染まり、細胞が存在することが確認された。
【図7H】図7Hは、図7Dのアルカリホスファターゼ染色した試料を、トルイジン青染色をした結果を示す。トルイジン青染色では、試料は青く染まり、細胞が存在することが確認された。
【図8】図8は、肥大化能を有さない軟骨細胞(肋軟骨由来の静止軟骨細胞)5×105個を含むペレットを1週間培養し、HE染色した顕微鏡写真である。図1と比較すると、細胞が肥大化していないことが観察された。左下のバーは30μm。
【図9】図9は、骨の欠損部位に、肥大化能を有する軟骨細胞およびヒドロキシアパタイトを用いた複合材料、肥大化能を有さない軟骨細胞およびヒドロキシアパタイトを用いた複合材料、またはヒドロキシアパタイト単独を移植した場合の骨形成率を示す。Empty:ヒドロキシアパタイト単独を、ラット頭蓋骨の欠損部位に移植した場合の、4週後の骨形成率(比率)。GC:肥大化能を有する軟骨細胞(肋骨・肋軟骨部から採取した成長軟骨細胞)およびヒドロキシアパタイトと用いる複合材料を、ラット頭蓋骨の欠損部位に移植した場合の、4週後の骨形成率(比率)。RC:肥大化能を有さない軟骨細胞(肋軟骨部から採取した静止軟骨細胞)およびヒドロキシアパタイトと用いる複合材料を、ラット頭蓋骨の欠損部位に移植した場合の、骨形成率(比率)。
【図10】図10は、骨の欠損部位に、肥大化能を有する軟骨細胞およびヒドロキシアパタイトを用いた複合材料、肥大化能を有さない軟骨細胞およびヒドロキシアパタイトを用いた複合材料、またはヒドロキシアパタイト単独を移植した場合の骨形成量を示す。Empty:ヒドロキシアパタイト単独を、ラット頭蓋骨の欠損部位に移植した場合の、4週後の骨形成量(体積)。GC:肥大化能を有する軟骨細胞(肋骨・肋軟骨部から採取した成長軟骨細胞)およびヒドロキシアパタイトと用いる複合材料を、ラット頭蓋骨の欠損部位に移植した場合の、4週後の骨形成量(体積)。RC:肥大化能を有さない軟骨細胞(肋軟骨部から採取した静止軟骨細胞)およびヒドロキシアパタイトと用いる複合材料を、ラット頭蓋骨の欠損部位に移植した場合の、4週後の骨形成量(体積)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体内の骨形成を促進または誘発する材料に関する。より詳細には、肥大化能を有する軟骨細胞および足場を用いる複合材料ならびにその製造法およびその利用法に関する。
【背景技術】
【0002】
骨に関わる病気、あるいは骨の損傷または欠損の多くは、骨再生が好ましい治療法である。骨組織が骨折などの損傷を受けると、骨を作る細胞である骨芽細胞が増殖、分化し、骨が再生する。損傷の軽度な症例においては、患部を固定することによって骨芽細胞が機能し、治癒に至る。複雑骨折または関節内の損傷、さらに骨髄炎の併発などにより骨芽細胞が有効に機能し得ない環境では、損傷または欠損を修復するための標準的な方法として、自家骨移植が一般に考えられてきた。骨の欠損部位が大きくて自家骨では修復できない場合は、人工骨を使用するとしても、自家骨を一部混ぜる方法が採られている。しかし、ヒトの場合には自家骨の供給源は限られており、高額な費用および苦痛を伴うものである。さらに、自家骨を使用することにより、骨の採取部位(本来正常部位)には新たな骨欠損が生じる。また採取のためには余分な手術が必要であり、そして採取出来る量に限りがあるという欠点が存在する。
【0003】
米国では死体から採取した同種骨が多く使用されている。しかし、日本では、死体を利用することは習慣として馴染みにくく、そのため利用されることは多くない。骨バンクも存在しているが、現在のところその供給量は多くはない。
【0004】
例えば、米国では死体から採取した同種骨が多く使用されているが、感染症の伝播事故が頻回に起こり、問題になっている。
【0005】
そこで、人工骨のインプラントおよび骨補填材料の使用などさまざまな外科的処置が利用されてきた。しかしながら、これら外科的処置の予後は必ずしも良好ではなく、複数回の手術を必要とすることも多い。
【0006】
特許文献1(特開2003−38635号公報)には、骨軟骨の欠損部位を修復するための、β−リン酸三カルシウム多孔体に、可溶化したアテロコラーゲンに軟骨細胞または骨髄細胞を包埋してゲル化させた材料が記載されているが、肥大化能を有する軟骨細胞との組み合わせは意図されていない。この方法では、可溶化したアテロコラーゲンにこれらの細胞を包埋してゲル化しなければならない。
【0007】
特許文献2(特開平10−243996号公報)には、リン酸カルシウム系化合物と骨性細胞凝集体を主成分とする硬組織石灰化促進用生体材料が記載されている。この方法において使用される細胞には、肥大化能を有する軟骨細胞は意図されていない。さらに、この発明では、骨性細胞は凝集体を形成しており、足場上での培養を意図していない。
【0008】
特許文献3(特開2004−8634号公報)には、硬組織と軟組織の界面を効果的に再生し得る、リン酸カルシウムが傾斜化して含有される生分解性分子材料からなる足場が記載されている。この方法において使用されるリン酸カルシウムは、傾斜化されている必要がある。この文献に記載される足場では、肥大化能を有する軟骨細胞を使用することは意図されていない。
【0009】
特許文献4(特表2001−524937号公報)には、生物学的に活性な薬剤および/または細胞を含有する合成の結晶性不良のアパタイト系(PCA)リン酸カルシウム物質が記載されている。この方法において使用されるリン酸カルシウムは、結晶性不良性でなければならない。特許文献4には、軟骨産生細胞を播種したPCA物質組成物を用いる、イン・ビボまたはイン・ビトロでの軟骨形成についての実施例が記載されているが(実施例28〜31)、軟骨形成の例であり、骨形成の例ではない。骨形成については異所性の骨形成の例が記載されているが(実施例27)、骨髄細胞の使用が意図されている。特許文献4には、肥大化能を有する軟骨細胞は記載されていない。
【0010】
このように従来の人工骨のインプラントおよび骨補填材料には、使用の容易性という点で課題がある。
【0011】
さらに、従来の人工骨のインプラントおよび骨補填材料には、自家骨に比べて、骨形成能が悪く、骨が出来にくく、また靭性が低く衝撃で割れやすいという欠点があった。
【0012】
上に記載した理由により、人工骨の使用割合は増えつつあるものの、未だ2〜3割で、残りの7〜8割は自家骨が使用されている。
【0013】
人工骨のこれらの欠点を改良するために、細胞の再生力を利用した再生医療を使用する試みが行われ始めており、骨欠損に対する治療にも応用されている。この再生医療には骨髄由来の幹細胞が主に使用されている。
【0014】
肥大化能を有する軟骨細胞を、ペレット状にして移植すると骨形成することが示された(非特許文献1:Okihana H.およびShimomura Y.,Bone.13,387−393(1992))。一般に細胞は、ペレット状にせずにそのまま生体に移植すると散逸し、骨を形成することはできず、骨の欠損部位の処置には不向きであった。また、ペレット状にしても実際の骨欠損処置に耐え得るサイズを達成するのは困難である。従来、再生医療に使用されている、骨髄細胞、間葉系幹細胞、骨芽細胞による骨修復は、未だ自家骨に比べて劣っており、満足するものではない(例えば、(特許文献5:特表2000−508911号公報、特許文献6:特表平10−512756号公報、特許文献7:特開2003−199815号公報、特許文献8:特開2003−52365号公報、特許文献9:米国特許5486359号公報、特許文献10:米国特許5226914号公報、特許文献11:特表2000−508911号公報、特許文献12:特表2002−506082号公報、非特許文献2:Ohgushi,H.ら:Acta Orthop.Scand.,60:334−339(1989)、非特許文献3:Caplan,A.I.:J.Orthop.Res.,9:641−650(1991)、非特許文献4:Bruder,S.ら:J.Bone Joint Surg.,80A:985−996(1998)、非特許文献5:Yoshikawa,T.ら:Biomed.Material Eng.,8:311−320(1998)、非特許文献6:Pittenger,M.F.ら:Science,284:143−147(1999)、非特許文献7:Bianco,P.& Robey,P.G.:Nature,414:118−121(2001)、非特許文献8:Quarto,R.ら:New Eng.J.Med.,344:385−386(2001)、非特許文献9:Okihana:Medical Science Digest Vol30(1)(2004)を参照のこと))。
【0015】
非特許文献10(Einhorn,T.A.ら:J Bone Joint Surg.,66A:274−279(1984))には、ラットの骨の欠損部位に同種骨を移植すると、骨形成が生じることが記載されている。しかし、ヒトにおいて、骨の欠損部位の治療のために同種骨を移植することは制約も多く現実的ではない。従って、同種骨の移植に代わる代替方法が求められている。
【0016】
非特許文献11(Bruder,S.P.ら:J Bone Joint Surg.,80A:985−996(1988))には、セラミックインプラントと間葉系幹細胞とをイヌ大腿骨欠損部に移植した実験が記載されている。この文献では、骨欠損部に、セラミックインプラントと間葉系幹細胞とを移植すると、骨癒合が生じることが報告されている。しかし、骨欠損部に間葉系幹細胞とセラミックインプラントとを移植した場合の成功率は自家骨移植ほど高くはなく、培養期間や費用などを勘案すると、実用的な手法とはいえない。
【0017】
骨髄中の間葉系幹細胞は、骨に分化する系統の細胞であるので、足場と組み合せて骨の欠損部位に移植することが試みられている(非特許文献11)。また、良好な骨形成には骨芽細胞またはその前駆細胞(例えば、間葉系幹細胞)が必須であると考えられきた。そこで、骨の欠損部位に、骨形成の足場と骨芽細胞を一緒に移植して骨形成させる試みが記載されている(特許文献4)が、実施したという記載はない。このことから、間葉系幹細胞と同様に実用に耐えないレベルであると予測される。
【0018】
本発明者は、非特許文献1において、骨芽細胞または前駆細胞以外の細胞である成長軟骨細胞が骨形成を誘発し得ることを示した。しかし、足場と組み合わせて使用された例はない。したがって、肥大化能を有する軟骨細胞を足場とともに用いた時の骨形成レベルは予想されていない。元来、骨形成は骨芽細胞によって行われるものであるから、それ以外の細胞を使用することは現実的ではないと考えられている。
【特許文献1】特開2003−38635号公報
【特許文献2】特開平10−243996号公報
【特許文献3】特開2004−8634号公報
【特許文献4】特表2001−524937号公報
【特許文献5】特表2000−508911号公報
【特許文献6】特表平10−512756号公報
【特許文献7】特開2003−199815号公報
【特許文献8】特開2003−52365号公報
【特許文献9】米国特許5486359号公報
【特許文献10】米国特許5226914号公報
【特許文献11】特表2000−508911号公報
【特許文献12】特表2002−506082号公報
【非特許文献1】Okihana,H.およびShimomura Y.,Bone.13,387−393(1992)
【非特許文献2】Ohgushi,H.ら:Acta Orthop.Scand.,60:334−339(1989)
【非特許文献3】Caplan,A.I.:J.Orthop.Res.,9:641−650(1991)
【非特許文献4】Bruder,S.ら:J.Bone Joint Surg.,80A:985−996(1998)
【非特許文献5】Yoshikawa,T.ら:Biomed.Material Eng.,8:311−320(1998)
【非特許文献6】Pittenger,M.F.ら:Science,284:143−147(1999)
【非特許文献7】Bianco,P.& Robey,P.G.:Nature,414:118−121(2001)
【非特許文献8】Quarto,R.ら:New Eng.J.Med.,344:385−386(2001)
【非特許文献9】Okihana:Medical Science Digest Vol30(1)(2004)
【非特許文献10】Einhorn,T.A.ら:J Bone Joint Surg.,66A:274−279(1984).
【非特許文献11】Bruder,S.P.ら:J Bone Joint Surg.,80A:985−996(1988).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、生体骨の大規模な欠損、骨腫瘍および複雑骨折などの処置において使用することができる、自家骨に匹敵するか、あるいは少なくとも同種骨に匹敵する複合材料ならびにその製造法およびその利用法を提供することを課題とする。
【0020】
本発明は、骨再生の速度、再生された骨の強度などの点からみて、従来の人工骨インプラントおよび骨補填材料よりも有用な複合材料を提供することを課題とする。
【0021】
本発明は、固定のみでは修復できない大きさの骨の欠損部位の骨形成を改善するために用いられる複合材料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題は、一部、本発明において肥大化能を有する軟骨細胞および該生体に対して生体適合性を有する足場を使用することによって足場と細胞との組み合わせとしては、予想外に骨化が進展するという性質をもつ複合材料を見出したことによって解決された。特に、肥大化能を有する軟骨細胞と足場との組み合わせが、骨形成に必須と考えられていた骨芽細胞と足場との組み合わせよりも予想外に優れた骨形成率を示し、実用的とは従来考えられていなかった足場と細胞との組み合わせが骨欠損に実用上耐え得るレベルで使用可能ということを本発明者は見出した。本発明が達成した骨形成率は、骨形成は骨芽細胞によって行われるものであるから、それ以外の細胞を使用することは現実的ではないと考えられていることを考慮しても、顕著に優れているといえる。
【0023】
本発明はまた、自家骨に匹敵するか、あるいは少なくとも同種骨に匹敵する複合材料の製造法およびその利用法を提供する。
【0024】
上記目的を達成するために、本発明は、例えば、以下の手段を提供する。
(項目1)
生体内の骨形成を促進または誘発するための複合材料であって、
A)肥大化能を有する軟骨細胞、および
B)該生体に対して生体適合性を有する足場
を含む、複合材料。
(項目2)
前記骨形成は、骨の欠損部位を修復するためのものである、項目1に記載の複合材料。
(項目3)
前記複合材料は、固定のみでは修復できない大きさの骨の欠損部位の骨形成を改善するために用いられる、項目2に記載の複合材料。
(項目4)
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、前記生体に対して生体適合性を有する足場の表面および該生体に対して生体適合性を有する足場の内部孔内からなる群より選択される領域に含まれる、項目1に記載の複合材料。
(項目5)
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、X型コラーゲン、アルカリホスファターゼ、オステオネクチン、II型コラーゲン、軟骨型プロテオグリカンまたはその成分、ヒアルロン酸、IX型コラーゲン、XI型コラーゲンおよびコンドロモジュリンからなる群より選択される少なくとも1つのマーカーを発現している、項目1に記載の複合材料。
(項目6)
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、形態学的に肥大化することを特徴とする、項目1に記載の複合材料。
(項目7)
5×105個の前記細胞を含む培地を遠心することにより該細胞のペレットを作製し、該細胞ペレットを一定期間培養し、顕微鏡下に確認した培養前の細胞の大きさと培養後の細胞の大きさを比較し、有意な成長が確認されたときに、前記肥大化能を有すると判定される、項目6に記載の複合材料。
(項目8)
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、哺乳類動物由来である、項目1に記載の複合材料。
(項目9)
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、ヒト由来、マウス由来、ラット由来、ウサギ由来、イヌ由来、ネコ由来、またはウマ由来である、項目8に記載の複合材料。
(項目10)
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、前記生体と同種異系の関係にある個体由来である、項目1に記載の複合材料。
(項目11)
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、前記生体と異種の関係にある個体由来である、項目1に記載の複合材料。
(項目12)
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、肋骨の骨軟骨移行部、長管骨の骨端線部、脊椎骨の骨端線部、小骨の成長軟骨帯、軟骨膜、胎児の軟骨から形成された骨原基部、骨折治癒時の仮骨部および骨増殖期の軟骨部からなる群より選択される部分から採取された細胞である、項目1に記載の複合材料。
(項目13)
前記長管骨の骨端線部が、大腿骨、脛骨、腓骨、上腕骨、尺骨および橈骨からなる群より選択される部位である、項目12に記載の複合材料。
(項目14)
前記小骨の成長軟骨帯が、手骨、足骨および胸骨からなる群より選択される部位である、項目12に記載の複合材料。
(項目15)
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、1×107細胞/ml〜1×104細胞/mlの細胞密度に調整されている、項目1に記載の複合材料。
(項目16)
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、Ham’s F12(HamF12)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、最小必須培地(MEM)、最小必須培地α(αMEM)、イーグル基礎培地(BME)、フィットン−ジャクソン改変培地(BGJb)およびそれらの組み合わせからなる群より選択される培地を含む培地中で培養された細胞である、項目1に記載の複合材料。
(項目17)
前記培地は、細胞の増殖、分化、またはその両方を促進する物質を含む、項目16に記載の複合材料。
(項目18)
前記培地は、トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)、骨形成因子(BMP)、白血病阻止因子(LIF)、コロニー刺激因子(CSF)、アスコルビン酸、デキサメサゾン、グリセロリン酸、インスリン様成長因子(IGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、多血小板血漿(PRP)、血小板由来増殖因子(PDGF)および血管内皮増殖因子(VEGF)からなる群より選択される少なくとも1つの成分を含む培地である、項目16に記載の複合材料。
(項目19)
前記生体に対して生体適合性を有する足場は、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、アルミナ、ジルコニア、アパタイト−ウォラストナイト析出ガラス、ゼラチン、コラーゲン、キチン、フィブリン、ヒアルロン酸、絹、セルロース、デキストラン、ポリ乳酸、ポリロイシン、アルギン酸、ポリグリコール酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリシアノアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体、ナイロン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される物質を含む、項目1に記載の複合材料。
(項目20)
前記生体に対して生体適合性を有する足場は、リン酸カルシウム、ゼラチン、コラーゲンまたはそれらの組み合わせから構成される、項目19に記載の複合材料。
(項目21)
前記生体に対して生体適合性を有する足場は、ヒドロキシアパタイトから構成される、項目20に記載の複合材料。
(項目22)
生体内の骨形成を促進または誘発するための複合材料を製造するための方法であって、以下の工程:
A)肥大化能を有する軟骨細胞を提供する工程、および
B)該肥大化能を有する軟骨細胞を該生体に対して生体適合性を有する足場上で培養する工程、
を包含する、方法。
(項目23)
前記A)工程は、X型コラーゲン、アルカリホスファターゼ、オステオネクチン、II型コラーゲン、軟骨型プロテオグリカンまたはその成分、ヒアルロン酸、IX型コラーゲン、XI型コラーゲンおよびコンドロモジュリンからなる群より選択される少なくとも1つのマーカーの発現を指標として前記肥大化能を有する軟骨細胞を提供する、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記A)工程は、肥大化を指標として前記肥大化能を有する軟骨細胞を提供し、
5×105個の前記細胞を含む培地を遠心することにより該細胞のペレットを作製し、該細胞ペレットを一定期間培養し、顕微鏡下に確認した培養前の細胞の大きさと培養後の細胞の大きさを比較し、有意な成長が確認されたときに、前記肥大化能を有すると判定される、項目22に記載の方法。
(項目25)
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、哺乳類動物由来である、項目22に記載の方法。
(項目26)
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、ヒト由来、マウス由来、ラット由来、ウサギ由来、イヌ由来、ネコ由来、またはウマ由来である、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、肋骨の骨軟骨移行部、長管骨の骨端線部、脊椎骨の骨端線部、小骨の成長軟骨帯、軟骨膜、胎児の軟骨から形成された骨原基部、骨折治癒時の仮骨部および骨増殖期の軟骨部からなる群より選択される部分から採取された細胞である、項目22に記載の方法。
(項目28)
前記長管骨の骨端線部が、大腿骨、脛骨、腓骨、上腕骨、尺骨および橈骨からなる群より選択される部位である、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記小骨の成長軟骨帯が、手骨、足骨および胸骨からなる群より選択される部位である、項目27に記載の方法。
(項目30)
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、1×107細胞/ml〜1×104細胞/mlの細胞密度で提供される、項目22に記載の方法。
(項目31)
前記B)工程について、前記肥大化能を有する軟骨細胞を、Ham’s F12(HamF12)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、最小必須培地(MEM)、最小必須培地α(αMEM)、イーグル基礎培地(BME)、フィットン−ジャクソン改変培地(BGJb)およびそれらの組み合わせからなる群より選択される培地を含む培地中で培養することを包含する、項目22に記載の方法。
(項目32)
前記B)工程において、前記肥大化能を有する軟骨細胞は、細胞の増殖、分化またはその両方を促進する物質を含む培地中で培養される、項目22に記載の方法。
(項目33)
前記B)工程において、前記肥大化能を有する軟骨細胞は、トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)、骨形成因子(BMP)、白血病阻止因子(LIF)、コロニー刺激因子(CSF)、アスコルビン酸、デキサメサゾン、グリセロリン酸、インスリン様成長因子(IGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、多血小板血漿(PRP)、血小板由来増殖因子(PDGF)および血管内皮増殖因子(VEGF)からなる群より選択される少なくとも1つの成分を含む培地中で培養される、項目22に記載の方法。
(項目34)
前記生体に対して生体適合性を有する足場は、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、アルミナ、ジルコニア、アパタイト−ウォラストナイト析出ガラス、ゼラチン、コラーゲン、キチン、フィブリン、ヒアルロン酸、絹、セルロース、デキストラン、ポリ乳酸、ポリロイシン、アルギン酸、ポリグリコール酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリシアノアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体、ナイロン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される物質を含む、項目22に記載の方法。
(項目35)
前記生体に対して生体適合性を有する足場は、リン酸カルシウム、ゼラチンまたはコラーゲンである、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記生体に対して生体適合性を有する足場は、ヒドロキシアパタイトである、項目35に記載の方法。
(項目37)
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、前記生体に対して生体適合性を有する足場の表面および該生体に対して生体適合性を有する足場の内部孔内からなる群より選択される領域で、37℃、5%〜10%CO2存在下で培養された細胞である、項目22に記載の方法。
(項目38)
前記培養する工程は、前記肥大化能を有する軟骨細胞が前記生体適合性を有する足場に定着するのに十分な期間にわたって実施される、項目22に記載の方法。
(項目39)
生体内の骨形成を促進または誘発するためのインプラントまたは骨補填材料の製造における、複合材料の使用であって、該複合材料は、
A)肥大化能を有する軟骨細胞、および
B)該生体に対して生体適合性を有する足場、
を含む、使用。
(項目40)
骨の欠損部位を修復するための方法であって、該方法は、肥大化能を有する軟骨細胞と該生体に対して生体適合性を有する足場とを含む複合材料を、該骨の欠損部位に移植する工程を包含する、方法。
(項目41)
前記複合材料は、固定のみでは修復できない大きさの骨の欠損部位の骨形成を改善するために用いられる、項目40に記載の方法。
(項目42)
肥大化能を有する軟骨細胞を調製する方法であって、胸骨体下部の剣状突起移行部から細胞を採取する工程を包含する、方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明によって、生体骨の大規模な欠損、骨腫瘍および複雑骨折などの処置において使用することができる、自家骨に匹敵する複合材料ならびにその製造法およびその利用法が提供される。このような複合材料は、従来の複合材料では修復困難な大きさの骨欠損を修復し、予想外の効率で骨形成が起こり、骨の再生を導くことができることから、従来人工物での移植処置の成績が不良であった部位の処置が可能になった。本発明の複合材料は、生体適合性の足場を使用しており、実際に移植治療において機能する。このような複合材料は、従来技術では提供されるものではなく、初めて提供されるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0027】
(用語の定義)
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
【0028】
本明細書において「複合材料」とは、細胞と足場を含む材料をいう。
【0029】
骨形成の「促進」とは、すでに骨形成が起こっている場合に、目的とする変化を加えると、その骨形成の速度が増加することをいう。骨形成の「誘発」とは、骨形成が起こっていない場合に、目的とする変化を加えると骨形成が生じることをいう。
【0030】
本明細書における「骨欠損」には、骨腫瘍、骨粗しょう症、リウマチ性関節炎、変形性関節症、骨髄炎および骨壊死などの病変;骨固定術、椎管拡張術および骨切術などの矯正手術;複雑骨折などの外傷および腸骨採取などによって生じる骨の欠損などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
骨の欠損部位の「修復」とは、その欠損部位が健常状態になるか、またはそれに近づくことをいう。
【0032】
本明細書において「固定のみでは修復できない大きさ」とは、インプラントおよび骨補填材料の使用が不可欠である大きさをいう。
【0033】
(細胞)
本明細書において「成長軟骨細胞(growth cartilage cell)」とは、発生期または成長期および骨折修復期または骨増殖期に、骨を形成する組織(すなわち成長軟骨)にある細胞をいう。成長期に骨を形成する組織を成長軟骨と呼ぶのが一般的であるが、本明細書では、発生期、成長期、骨増殖期または骨折修復期に骨を形成する組織を意味する。成長軟骨細胞はまた、肥大(化)軟骨細胞、石灰化軟骨細胞、または骨端(線)軟骨細胞ともいわれる。成長軟骨細胞がヒトに対して用いられる場合、この成長軟骨細胞はヒト由来であることが好ましいが、周知技術により拒絶反応等の問題が克服できることから、ヒト以外に由来する細胞でも用いることができる。
【0034】
本発明における成長軟骨細胞は、哺乳類動物、好ましくは、ヒト由来、マウス由来、ラット由来、ウサギ由来、イヌ由来、ネコ由来、またはウマ由来である。
【0035】
本発明における成長軟骨細胞は、肋骨の骨軟骨移行部、大腿骨、脛骨、腓骨、上腕骨、尺骨および橈骨などの長管骨の骨端線部、脊椎骨の骨端線部、手骨、足骨および胸骨などの成長軟骨帯、軟骨膜、胎児の軟骨から形成された骨原基部、骨折治癒時の仮骨部、ならびに骨増殖期の軟骨部から採取され得る。これらの成長軟骨細胞は、例えば、本明細書の実施例に記載される方法によって調製され得る。
【0036】
本明細書において「肥大化能を有する軟骨細胞」とは、将来的に肥大化する能力のある細胞をいう。肥大化能を有する軟骨細胞は、生体から直接採取した「成長軟骨細胞」に加えて、本明細書において以下に定義される「肥大化能」の判定法により肥大化能を有する任意の細胞を含む。
【0037】
本発明における肥大化能を有する軟骨細胞は、哺乳類動物、好ましくは、ヒト由来、マウス由来、ラット由来、ウサギ由来、イヌ由来、ネコ由来、またはウマ由来である。肥大化能を有する軟骨細胞がヒトに対して用いられる場合、この肥大化能を有する軟骨細胞はヒト由来であることが好ましいが、周知技術により拒絶反応等の問題が克服できることから、ヒト以外に由来する細胞でも用いることができる。本発明における肥大化能を有する軟骨細胞は、例えば、肋骨の骨軟骨移行部、大腿骨、脛骨、腓骨、上腕骨、尺骨および橈骨などの長管骨の骨端線部、脊椎骨の骨端線部、手骨、足骨および胸骨などの成長軟骨帯、軟骨膜、ならびに胎児の軟骨から形成された骨原基部、骨折治癒時の仮骨部、ならびに骨増殖時の軟骨部から採取され得る。本発明における肥大化能を有する軟骨細胞は、未分化細胞を分化誘導させて得ることも可能である。
【0038】
肥大化能を有する軟骨細胞は、形態学的には肥大化することを特徴とする。
【0039】
本明細書において「肥大化」とは、検鏡下で形態学的に判断され得る。細胞の肥大化は、細胞が柱状配列をしている場合には増殖層に続いて観察され、柱状配列していない場合には、周囲細胞と比較してより大きい状態をいう。
【0040】
肥大化能は、5×105個の前記細胞を含む培地を遠心することにより該細胞のペレットを作製し、該細胞ペレットを一定期間培養し、顕微鏡下に確認した培養前の細胞の大きさと培養後の細胞の大きさを比較し、有意な成長が確認されたときに、肥大化能を有すると判定される。
【0041】
本明細書において、「静止軟骨細胞」とは、肋軟骨の肋骨移行部(成長軟骨部)から離れた部分に位置する軟骨をいい、生涯に亘って軟骨として存在する組織である。静止軟骨部にある細胞を静止軟骨細胞という。本明細書において、「関節軟骨細胞」とは、関節面に存在する軟骨組織(関節軟骨)にある細胞をいう。
【0042】
本明細書において、軟骨細胞は、マーカーとして、II型コラーゲン、軟骨型プロテオグリカン(アグリカン)またはその成分、ヒアルロン酸、IX型コラーゲン、XI型コラーゲンまたはコンドロモジュリンからなる群より選択される少なくとも1つを発現していることを確認することにより判定される。軟骨細胞のうち、肥大化能を有する細胞は、さらにX型コラーゲン、アルカリホスファターゼおよびオステオネクチンからなる群より選択される少なくとも1つを発現していることを確認することによって判定される。X型コラーゲン、アルカリホスファターゼまたはオステオネクチンのいずれも発現していない軟骨細胞は、肥大化能を有していないと判定される。従って、本明細書における肥大化能を有する軟骨細胞は、形態学的に肥大化することを確認する代わりに、軟骨細胞マーカー群より選択される少なくとも1つおよび肥大化能を有する軟骨細胞マーカー群より選択される少なくとも1つを発現していることを確認することによっても判定され得る。マーカーは、特異的な染色法、免疫組織化学的な手法、in situハイブリダイゼーション法、ウェスタンブロッティング法またはPCR法などの培養細胞から抽出したタンパク質またはRNAを解析する手法で、局在または発現が同定される。
【0043】
本明細書において「軟骨細胞マーカー」とは、軟骨細胞において、その局在または発現が軟骨細胞を同定するにおいて補助となるものをいう。好ましくは、その局在または発現(例えば、II型コラーゲン、軟骨型プロテオグリカン(アグリカン)またはその成分、ヒアルロン酸、IX型コラーゲン、XI型コラーゲンまたはコンドロモジュリンの局在または発現)によって軟骨細胞であることが同定できるものをいう。本明細書において「肥大化能を有する軟骨細胞マーカー」とは、肥大化能を有する軟骨細胞において、その局在または発現が軟骨細胞を同定するにおいて補助となるものをいう。好ましくは、その局在または発現(例えば、X型コラーゲン、アルカリホスファターゼまたはオステオネクチンの局在または発現)によって肥大化能を有する軟骨細胞であることが同定できるものをいう。
【0044】
本明細書において、「軟骨型プロテオグリカン」とは、コアタンパク質にコンドロイチン4硫酸、コンドロイチン6硫酸、ケラタン硫酸、O−結合オリゴ糖、N−結合オリゴ糖などのグルコサミノグリカンが多数結合した高分子をいう。この軟骨型プロテオグリカンは、さらにリンクタンパクを介してヒアルロン酸と結合して軟骨型プロテオグリカン集合体を形成する。軟骨組織においてグルコサミノグリカンは豊富で、乾燥重量の20〜40%を占める。軟骨型プロテオグリカンは、アグリカンとも称される。
【0045】
本明細書において、「骨型プロテオグリカン」とは、軟骨型プロテオグリカンより分子量が小さく、コアタンパク質にコンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、O−結合オリゴ糖、N−結合オリゴ糖などのグルコサミノグリカンが結合した高分子をいう。骨組織におけるグルコサミノグリカンは、脱灰骨の乾燥重量の1%以下である。骨型プロテオグリカンとしては、例えば、デコリン、バイグリカンが挙げられ得る。
【0046】
本明細書において「骨芽細胞」とは、骨基質上に存在し、骨基質形成およびその石灰化を行う細胞である。骨芽細胞は、20〜30μmで、立方体または円柱状の細胞である。本明細書において使用される場合、骨芽細胞は、骨芽細胞の前駆体細胞である「前骨芽細胞」を含み得る。
【0047】
骨芽細胞は、マーカーとして、I型コラーゲン、骨型プロテオグリカン(例えば、デコリン、バイグリカン)、アルカリホスファターゼ、オステオカルシン、基質Glaタンパク質、オステオグリシン、オステオポンチン、骨シアル酸タンパク質、オステオネクチンまたはプレイオトロフィン(Pleiotrophin)からなる群より選択される少なくとも1つを発現することによって判定される。加えて、骨芽細胞は、軟骨細胞マーカーであるII型コラーゲン、軟骨型プロテオグリカン(アグリカン)またはその成分、ヒアルロン酸、IX型コラーゲン、XI型コラーゲンまたはコンドロモジュリンを発現していないことを確認することによって確定され得る。マーカーは、特異的な染色法、免疫組織化学的な手法、in situハイブリダイゼーション法、ウェスタンブロッティング法またはPCR法などの培養細胞から抽出したタンパク質またはRNAを解析する手法で、局在または発現が同定される。
【0048】
本明細書において「骨芽細胞マーカー」とは、骨芽細胞において、その局在または発現が骨芽細胞を同定するにおいて補助となるものをいう。好ましくは、その局在または発現(例えば、I型コラーゲン、骨型プロテオグリカン(例えば、デコリン、バイグリカン)、アルカリホスファターゼ、オステオカルシン、基質Glaタンパク質、オステオグリシン、オステオポンチン、骨シアル酸タンパク質、オステオネクチンまたはプレイオトロフィンの局在または発現)によって骨芽細胞であることを確認することができるものをいう。オステオグリシンは、骨誘導因子(OIF)ともいわれる。オステオポンチンは、BSP−I、2arともいわれる。骨シアル酸タンパク質は、BSP−IIともいわれる。プレイオトロフィンは、osteoblast specific protein(OSF−1)、骨芽細胞特異的因子−1ともいわれる。オステオネクチンは、SPARC、BM−40ともいわれる。
【0049】
骨芽細胞であると認定するためには、骨芽細胞のみを陽性と識別するマーカーで陽性であることを示すか:骨芽細胞と肥大化能を有する軟骨細胞とを陽性と識別し、軟骨細胞を陰性と識別するマーカーで陽性であり、かつ骨芽細胞と軟骨細胞とを陽性と識別し、肥大化能を有する軟骨細胞を陰性と識別するマーカーで陽性であることを示すか;骨芽細胞と肥大化能を有する軟骨細胞とを陽性と識別するマーカーで陽性であり、かつ、骨芽細胞を陰性と識別し肥大化能を有する軟骨細胞を陽性と識別するマーカーで陰性であることを示すか;または骨芽細胞と軟骨細胞とを陽性と識別するマーカーで陽性であり、かつ、骨芽細胞を陰性と識別し軟骨細胞を陽性と識別するマーカーで陰性であることなどを示せばよい。
【0050】
肥大化能を有する軟骨細胞であると認定するためには、肥大化能を有する軟骨細胞のみを陽性と識別するマーカーで陽性あることを示すか;肥大化能を有する軟骨細胞と骨芽細胞とを陽性と識別し軟骨細胞を陰性と識別するマーカーで陽性であり、かつ、肥大化能を有する軟骨細胞と軟骨細胞とを陽性と識別し骨芽細胞を陰性と識別するマーカーで陽性であることを示すか;肥大化能を有する軟骨細胞と骨芽細胞とを陽性と識別するマーカーで陽性であり、かつ、肥大化能を有する軟骨細胞を陰性と識別し骨芽細胞を陽性と識別するマーカーで陰性であることを示すか;または肥大化能を有する軟骨細胞と軟骨細胞とを陽性と識別するマーカーで陽性であり、かつ、肥大化能を有する軟骨細胞を陰性と識別し軟骨細胞を陽性と識別するマーカーで陰性であることなどを示せばよい。
【0051】
(肥大化能を有しない)軟骨細胞であると認定するためには、軟骨細胞のみを陽性と識別するマーカーで陽性あることを示すか;軟骨細胞と骨芽細胞とを陽性と識別し肥大化能を有する軟骨細胞を陰性と識別するマーカーで陽性であり、かつ、軟骨細胞と肥大化能を有する軟骨細胞とを陽性と識別し骨芽細胞を陰性と識別するマーカーで陽性であることを示すか;軟骨細胞と骨芽細胞とを陽性と識別するマーカーで陽性であり、かつ、軟骨細胞を陰性と識別し骨芽細胞を陽性と識別するマーカーで陰性であることを示すか;または軟骨細胞と肥大化能を有する軟骨細胞とを陽性と識別するマーカーで陽性であり、かつ、軟骨細胞を陰性と識別し肥大化能を有する軟骨細胞を陽性と識別するマーカーで陰性であることなどを示せばよい。
【0052】
本明細書において、軟骨細胞、肥大化能を有する軟骨細胞、および骨芽細胞を認定するためには、例えば、以下の表に列挙される細胞マーカーの組み合わせが用いられ得る。
【0053】
【表1】
【0054】
本明細書において「間葉系幹細胞」とは、間葉系の組織に見出される幹細胞をいう。間葉系の組織としては、骨髄、脂肪、血管内皮、平滑筋、心筋、骨格筋、軟骨、骨、じん帯が挙げられるが、これらに限定されない。間葉系幹細胞は、代表的には、骨髄、脂肪組織、滑膜組織、筋組織、末梢血、胎盤組織、月経血または臍帯血に由来する幹細胞であり得る。
【0055】
(足場)
本明細書において「足場(scaffold)」とは、細胞を支持するための材料を意味する。足場は、一定の強度、生体適合性を有する。本明細書中で使用される場合、足場は、生物学的物質または天然から供給される物質、天然に存在する物質または合成で供給される物質から製造される。特に言及する場合、足場は、有機体(例えば、組織、細胞)以外の物質(非細胞物質)から形成される。本明細書で使用される場合、足場は、有機体(例えば、組織、細胞)以外の物質から形成された構成物(生物由来の材料(例えば、コラーゲン、ヒドロキシアパタイトも含む)である。本明細書で使用する場合、「有機体」とは、生活機能をもつように組織された物質系をいう。すなわち、有機体は、生物を他の物質系と区別していう。細胞、組織などは有機体の概念に含まれるが、有機体から取り出した生物由来の材料は、有機体には含まれない。細胞が定着する足場の部分としては、足場の表面のほか、内部に孔が存在し、その孔が細胞を収容し得る場合、その内部孔を挙げることができる。例えば、ヒドロキシアパタイトで作製した足場には、通常、細胞を充分に収容し得る孔が多数存在する。
【0056】
足場の材料としては、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、アルミナ、ジルコニア、アパタイト−ウォラストナイト析出ガラス、ゼラチン、コラーゲン、キチン、フィブリン、ヒアルロン酸、絹、セルロース、デキストラン、ポリ乳酸、ポリロイシン、アルギン酸、ポリグリコール酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリシアノアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体、ナイロン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される材料が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、足場の材料は、リン酸カルシウム、ゼラチンまたはコラーゲンである。より好ましくは、足場の材料は、ヒドロキシアパタイトである。
【0057】
これらの足場は、顆粒形態、ブロック形態、スポンジ形態などの任意の形態で提供され得る。これらの足場は、孔があってもなくてもよい。このような足場は、市販されているものを使用してもよく、例えば、ペンタックス株式会社、オリンパス株式会社、京セラ株式会社、三菱ウェルファーマ株式会社、大日本住友製薬株式会社、小林製薬株式会社、ジンマー株式会社などから市販されている。一般的な足場の調製および特徴付けは当該分野において公知であり、そして慣用的な実験および当該分野の技術常識しか必要としない。例えば、米国特許第4,975,526号;同第5,011,691号;同第5,171,574号;同第5,266,683号;同第5,354,557号および同第5,468,845号を参照のこと(これらの開示は本明細書中に参考として援用される)。他の足場はまた、例えば、以下の文献において記載されている:LeGerosおよびDaculsi Handbook of Bioactive Ceramics,II 17−28頁(1990,CRC Press)のような生体適合物質論文;および、Yang Cao,Jie Weng Biomaterials 17,(1996)419−424頁のような他の公開された記載;LeGeros,Adv.Dent.Res.2,164(1988);Johnsonら、J.Orthopaedic Research,1996,14巻、351−369頁;ならびにPiattelliら、Biomaterials 1996、17巻、1767−1770頁を参照のこと(これらの開示は本明細書中に参考として援用される)。
【0058】
本明細書において「リン酸カルシウム」とは、カルシウムリン酸塩の総称である。例えば、CaHPO4、Ca3(PO4)2、Ca4O(PO4)2、Ca10(PO4)6(OH)2、CaP4O11、Ca(PO3)2、Ca2P2O7、Ca(H2PO4)2・H2Oなどの化学式で示される化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
本明細書において「ヒドロキシアパタイト」とは、一般組成をCa10(PO4)6(OH)2とする化合物であり、コラーゲンとともに哺乳類動物の硬組織(骨および歯)の主要構成成分である。ヒドロキシアパタイトは、上記の一連のリン酸カルシウムを含むが、生体硬組織中のアパタイトのPO4およびOH成分は体液中のCO3成分と置換していることが多い。また、ヒドロキシアパタイトは、厚生労働省および米国連邦食品医薬品局(FDA(U.S.Food and Drug Adminisutration)により安全性が承認されている物質である。ヒドロキシアパタイトは、市販のものは生体非吸収性材料であるものが多く、生体内にほとんど吸収されず残存するが、吸収性のものもある。
【0060】
生体に対して生体適合性を有する足場としては、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、アルミナ、ジルコニア、アパタイト−ウォラストナイト析出ガラス、ゼラチン、コラーゲン、キチン、フィブリン、ヒアルロン酸、絹、セルロース、デキストラン、ポリ乳酸、ポリロイシン、アルギン酸、ポリグリコール酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリシアノアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体、ナイロン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される材料を含む足場が挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
本明細書において「コラーゲン」とは、当該分野において慣用される最も広義の意味と同様に用いられ、動物の細胞外マトリクスの主成分である。コラーゲンは、例えば、新田ゼラチン、日本皮革、和光純薬、半井、フナコシ、シグマアルドリッチおよびメルクなどから入手可能であり、その他の供給源からのコラーゲンもまた、本発明において利用可能である。
【0062】
本明細書において「ゼラチン」とは、当該分野において慣用される最も広義の意味と同様に用いられ、コラーゲン(動物の皮、腱、骨から採取)を変性、(例えば、熱変性)させて得られる。コラーゲンのペプチド連鎖間の塩類結合または水素結合が開裂した結果、非可逆的に水溶性タンパク質に変化したものと考えられる。ゼラチンは、例えば、新田ゼラチン、日本皮革、和光純薬、半井、フナコシ、シグマアルドリッチおよびメルクなどから入手可能であり、その他の供給源からのゼラチンもまた、本発明において利用可能である。
【0063】
本明細書において「生体適合性」とは、毒性、免疫反応、損傷などを生じることなく生体組織または臓器と適合する性質をいう。本発明において使用され得る生体適合性材料としては、例えば、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、アルミナ、ジルコニア、アパタイト−ウォラストナイト析出ガラス、ゼラチン、コラーゲン、キチン、フィブリン、ヒアルロン酸、絹、セルロース、デキストラン、ポリ乳酸、ポリロイシン、アルギン酸、ポリグリコール酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリシアノアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体、ナイロンなど、およびそれらの組み合わせが挙げられるがそれらに限定されない。
【0064】
本明細書において「細胞生理活性物質」または「生理活性物質」(physiologically active substance)とは、細胞または組織に作用する物質をいう。そのような作用としては、例えば、その細胞または組織の制御、変化などが挙げられるがそれらに限定されない。生理活性物質には、サイトカインおよび増殖因子が含まれる。生理活性物質は、天然に存在するものであっても、合成されたものでもよい。好ましくは、生理活性物質は、細胞が産生するものまたはそれと同様の作用を有するものであるが改変された作用を持つものであってもよい。本明細書では、生理活性物質は、ペプチドを含むタンパク質形態または核酸形態あるいは他の形態であり得る。
【0065】
本明細書において使用される「サイトカイン」は、当該分野において用いられる最も広義の意味と同様に定義され、細胞から産生され同じまたは異なる細胞に作用する生理活性物質をいう。サイトカインは、一般にタンパク質またはポリペプチドであり、免疫応答の制禦作用、内分泌系の調節、神経系の調節、抗腫瘍作用、抗ウイルス作用、細胞増殖の調節作用、細胞分化の調節作用、細胞機能の調節作用などを有する。本明細書では、サイトカインはタンパク質形態または核酸形態あるいは他の形態であり得るが、実際に作用する時点において、サイトカインは、通常、ペプチドを含むタンパク質形態であることが多い。
【0066】
本明細書において用いられる「増殖因子」または「細胞増殖因子」とは、本明細書では互換的に用いられ、細胞の増殖および分化誘導を促進または制御する物質をいう。増殖因子は、成長因子または発育因子ともいわれる。増殖因子は、細胞培養または組織培養において、培地に添加されて血清高分子物質の作用を代替し得る。多くの増殖因子は、細胞の増殖以外に、分化状態の制御因子としても機能することが判明している。
【0067】
骨形成関連のサイトカインには、代表的には、トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)、骨形成因子(BMP)、白血病阻止因子(LIF)、コロニー刺激因子(CSF)、インスリン様成長因子(IGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、多血小板血漿(PRP)、血小板由来増殖因子(PDGF)および血管内皮増殖因子(VEGF)などの因子、ならびにアスコルビン酸、デキサメサゾン、グリセロリン酸などの化合物が挙げられる。
【0068】
サイトカインおよび増殖因子などの生理活性物質は一般に、機能重複現象(redundancy)があることから、他の名称および機能(例えば、細胞接着活性または細胞−基質間の接着活性など)で知られるサイトカインまたは増殖因子であっても、本発明に使用される生理活性物質の活性を有する限り、本発明において使用され得る。また、サイトカインまたは増殖因子は、本明細書における好ましい活性(例えば、幹細胞を増殖させる活性または骨芽細胞を形成させる活性)を有してさえいれば、本発明の実施において使用することができる。
【0069】
本明細書において「同系に由来する」とは、自己(自家)、純系または近交系に由来することをいう。
【0070】
本明細書において「生体と同種異系の関係にある個体由来」とは、同種であっても遺伝的には異なる他の個体を起源とすることをいう。
【0071】
本明細書において「生体と異種の関係にある個体由来」とは、異種個体を起源とすることをいう。従って、例えば、ヒトがレシピエントである場合、ラット由来の細胞は「生体と異種の関係にある個体由来」である。
【0072】
本明細書において「被験体」とは、本発明の処置が適用される生物をいい、「患者」ともいわれる。患者または被験体は、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、またはウマ、好ましくは、ヒトであり得る。
【0073】
本明細書において「インプラント」または「骨補填材料」とは、当該分野において用いられる意味で用いられ、本明細書で使用する場合、実質的に同じ意味で用いられるが、特に言及する場合、インプラントとは埋める材料全般を意味し、骨補填材料とは骨の欠損部位を補う材料全般をいう。
【0074】
(好ましい実施形態の説明)
以下に本発明の最良の形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本発明のよりよい理解のために提供されるものであり、本発明の範囲は以下の記載に限定されるべきでないことが理解される。従って、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本発明の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。
【0075】
(複合材料)
1つの局面において、本発明は、生体内の骨形成を促進または誘発するための複合材料を提供する。従来、骨の欠損部位の骨形成を促進または誘発するために使用される人工骨のインプラントおよび骨補填材料は、骨再生の速度、再生された骨の強度などの点からみて十分なものは提供されてこなかった。本発明は、従来技術では再生効率の不良な骨欠損を修復し、骨の再生を導くことができる複合材料を提供することにより、従来、人工物での移植処置が困難であった部位の処置が可能になるという効果を有する。本発明の複合材料は、固定のみでは修復できない大きさの骨の欠損部位の骨形成を改善するためにも用いられ得る。このような複合材料は、A)肥大化能を有する軟骨細胞、およびB)該生体に対して生体適合性を有する足場を含む。
【0076】
1つの好ましい実施形態において、本発明の軟骨細胞は、マーカーとして、X型コラーゲン、アルカリホスファターゼ、オステオネクチン、II型コラーゲン、軟骨型プロテオグリカンまたはその成分、ヒアルロン酸、IX型コラーゲン、XI型コラーゲンおよびコンドロモジュリンからなる群より選択される少なくとも1つを発現している。従って、本明細書における肥大化能を有する軟骨細胞は、形態学的に肥大化することを特徴とし、かつこれらのマーカー群より選択される少なくとも1つを発現する細胞である。好ましい実施形態において、本発明の肥大化能を有する軟骨細胞は、上述の軟骨細胞マーカーの発現、および顕微鏡下で形態学的な肥大化を確認することによって同定され得る。
【0077】
別の実施形態において、本発明の肥大化能を有する軟骨細胞は、哺乳類動物、好ましくは、ヒト由来、マウス由来、ラット由来、ウサギ由来、イヌ由来、ネコ由来、またはウマ由来である。本発明における肥大化能を有する軟骨細胞は、肋骨の骨軟骨移行部、長管骨の骨端線部(例えば、大腿骨、脛骨、腓骨、上腕骨、尺骨および橈骨)、脊椎骨の骨端線部、小骨の成長軟骨帯(例えば、手骨、足骨または胸骨)、軟骨膜または胎児の軟骨から形成された骨原基部、骨折治癒時の仮骨部ならびに骨増殖時の軟骨部のような部位から分離または誘導され得る。肥大化能を有する軟骨細胞は、分化誘導によっても得られ得る。
【0078】
本発明の肥大化能を有する軟骨細胞は、通常、1×107細胞/ml〜1×104細胞/mlの細胞密度に調整されているが、1×104細胞/ml未満または1×107細胞/mlより多くてもよい。1×104細胞/ml未満のときは、培養器で肥大化能を有する軟骨細胞を増殖させ得るからである。本発明の肥大化能を有する軟骨細胞が、1×107細胞/mlより多い場合には、そのまま使用することが可能であるが、必要に応じて、より広い足場へ播種するか、または培地を用いて適切な濃度に希釈され得る。本発明の1つの実施形態において、肥大化能を有する軟骨細胞の細胞密度は、例えば、0.5〜1×106/cm3(ml)、1×105/cm3(ml)であり得る。本発明の別の実施形態において、肥大化能を有する軟骨細胞は、4×104/cm3(ml)であり得る。
【0079】
本発明において用いられる肥大化能を有する軟骨細胞は、どのような培地で培養されてもよく、例えば、Ham’s F12(HamF12)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、最小必須培地(MEM)、最小必須培地α(αMEM)、イーグル基礎培地(BME)、フィットン−ジャクソン改変培地(BGJb)またはそれらの組み合わせのような培地中で培養された細胞であるが、これらに限定されない。肥大化能を有する軟骨細胞は、細胞の増殖、分化またはその両方を促進する物質を含んでいる培地で培養された細胞であってもよい。好ましくは、例えば、トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)、骨形成因子(BMP)、白血病阻止因子(LIF)、コロニー刺激因子(CSF)、アスコルビン酸、デキサメサゾン、グリセロリン酸、インスリン様成長因子(IGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、多血小板血漿(PRP)、血小板由来増殖因子(PDGF)および血管内皮増殖因子(VEGF)からなる群より選択される少なくとも1つの成分のような物質を含む培地で培養された細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
本明細書において使用されるHamF12培地は、例えば、CaCl2(無水物)33.20mg/L、CuSO4・5H2O 0.0025mg/L、FeSO4・7H2O 0.83mg/L、KCl 223.60mg/L、MgCl2(無水物)57.22mg/L、NaCl 7599.00mg/L、NaHCO3 1176.00mg/L、Na2HPO4(無水物)142.00mg/L、ZnSO4・7H2O 0.86mg/L、D−グルコース 1802.00mg/L、ヒポキサンチン・Na 4.77mg/L、リノール酸 0.08mg/L、リポ酸 0.21mg/L、フェノールレッド 1.20mg/L、プトレッシン 2HCl 0.161mg/L、ピルビン酸ナトリウム110.00mg/L、チミジン 0.70mg/L、L−アラニン 8.9mg/L、L−アルギニン・HCl 211.00mg/L、L−アスパラギン・H2O 15.00mg/L、L−アスパラギン酸13.00mg/L、L−システイン HCl・H2O 35.00mg/L、L−グルタミン酸 14.70mg/L、L−アラニル−L−グルタミン 217.00mg/L、グリシン 7.50mg/L、L−ヒスチジン HCl・H2O 21.00mg/L、L−イソロイシン 4.00mg/L、L−ロイシン 13.00mg/L、L−リジン・HCl 36.50mg/L、L−メチオニン 4.50mg/L、L−フェニルアラニン 5.00mg/L、L−プロリン 34.50mg/L、L−セリン 10.50mg/L、L−スレオニン 12.00mg/L、L−トリプトファン 2.00mg/L、L−チロシン・2Na・2H2O 7.80mg/L、L−バリン 11.70mg/L、ビオチン 0.007mg/L、D−Ca パントテナート 0.50mg/L、塩化コリン 14.00mg/L、葉酸 1.30mg/L、i−イノシトール 18.00mg/L、ナイアシンアミド 0.04mg/L、ピリドキシン HCl 0.06mg/L、リボフラビン 0.04mg/L、チアミン HCl 0.30mg/LおよびビタミンB12 1.40mg/L)から構成される。
【0081】
本明細書において使用されるMEM培地は、例えば、CaCl2(無水物)200.00mg/L、KCl 400.00mg/L、MgSO4(無水物)98.00mg/L、NaCl 6800.00mg/L、NaHCO3 2200.00mg/L、NaH2PO4・H2O 140.00mg/L、D−グルコース 1000.00mg/L、フェノールレッド 10.00mg/L、L−アルギニン・HCl 126.00mg/L、L−シスチン・2HCl 31.00mg/L、L−グルタミン 292.00mg/L、L−ヒスタミン HCl・H2O 42.00mg/L、L−イソロイシン 52.00mg/L、L−ロイシン52.00mg/L、L−リジン HCl 73.00mg/L、L−メチオニン 15.00mg/L、L−フェニルアラニン 32.00mg/L、L−スレオニン 48.00mg/L、L−トリプトファン 10.00mg/L、L−チロシン・2Na・2H2O 52.00mg/L、L−バリン 46.00mg/L、D−Caパントテナート 1.00mg/L、塩化コリン 1.00mg/L、葉酸 1.00mg/L、i−イノシトール 2.00mg/L、ナイアシンアミド 1.00mg/L、ピリドキサル HCl 1.00mg/L、リボフラビン 0.10mg/L、チアミンHCl 1.00mg/Lから構成される。
【0082】
本発明において用いられる生体に対して生体適合性を有する足場は、生体適合性を有する限りどのような足場であってもよく、例えば、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、アルミナ、ジルコニア、アパタイト−ウォラストナイト析出ガラス、ゼラチン、コラーゲン、キチン、フィブリン、ヒアルロン酸、絹、セルロース、デキストラン、ポリ乳酸、ポリロイシン、アルギン酸、ポリグリコール酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリシアノアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体、ナイロン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される物質を含む。好ましくは、生体に対して生体適合性を有する足場は、リン酸カルシウム、ゼラチンまたはコラーゲンであり、より好ましくは、種々の形態のヒドロキシアパタイト(例えば、結晶質性ヒドロキシアパタイトまたは傾斜化していないヒドロキシアパタイト)である。足場の生体適合性は、骨内埋植試験、復帰突然変異試験、染色体異常試験、細胞毒性試験、筋肉内埋植試験、皮膚感作試験、皮膚及び皮内刺激性試験、発熱毒性試験、溶血性試験、抗原性試験、急性毒性試験および反復投与試験からなる群より選択される少なくとも1つの試験によって測定され得る。好ましくは、上記の全ての試験によって測定され得る。
【0083】
骨形成の皮下試験は、本来骨の無い部分に骨を形成(異所性骨形成とも呼ばれる)させ、骨形成能を評価する試験である。この試験は容易に実施できるので、当該分野で広く使用されている。骨を治療するときの試験方法には、骨欠損試験が用いられ得る。骨形成は、既に近傍に存在する骨芽細胞および誘導・遊走した骨芽細胞によって骨が形成されるので、通常、皮下試験よりも骨形成率は良いと考えられている。皮下試験の結果は、実際の骨欠損における骨形成の結果によく一致することが知られている(例えば、Urist,M.R.:Science,150:893−899(1965)、Wozney,J.M.ら:Scienece,242:1528−1532(1988)、Johnson,E.E.ら:Clin.Orthop.,230:257−265(1988)、Ekelund,A.ら:Clin.Orthop.,263:102−112(1991)、およびRiley,E.H.ら:Clin.Orthop.,324:39−46(1996)を参照のこと)。従って、皮下試験の結果で骨形成が得られる場合、当業者は、骨欠損試験において当然に骨形成が得られることを理解する。
【0084】
(製造方法)
1つの局面において、本発明は、生体内の骨形成を促進または誘発するための複合材料を製造するための方法を提供する。この方法は、A)肥大化能を有する軟骨細胞を提供する工程、およびB)該肥大化能を有する軟骨細胞を該生体に対して生体適合性を有する足場上で培養する工程を包含する。肥大化能を有する軟骨細胞は、生体に対して生体適合性を有する足場の表面または内部孔内で、好ましくは、37℃、5〜10%CO2存在下で培養され得る。
【0085】
好ましい実施形態において、A)工程は、X型コラーゲン、アルカリホスファターゼ、オステオネクチン、II型コラーゲン、軟骨型プロテオグリカンまたはその成分、ヒアルロン酸、IX型コラーゲン、XI型コラーゲンおよびコンドロモジュリンからなる群より選択される少なくとも1つの発現(指標となる発現は、これらのマーカーに限定されない)を指標として前記肥大化能を有する軟骨細胞を提供し得る。
【0086】
他の好ましい実施形態において、A)工程は、肥大化を指標として前記肥大化能を有する軟骨細胞を提供し得る。肥大化は、例えば、5×105個の該細胞を含むHamF12増殖培地を遠心することにより、細胞のペレットを作製し、この細胞ペレットをそのまま培養することによって、顕微鏡下に確認され得る。
【0087】
本明細書において使用される場合、「HamF12増殖培地」とは、10%のウシ胎児血清を補充し、100U/ml ペニシリンと、0.1mg/L ストレプトマイシンと、0.25μg/ml アンホテリシンBとを含むHamF12培地をいう。
【0088】
本明細書において使用される場合、「MEM増殖培地」とは、15%のウシ胎児血清を補充し、100U/ml ペニシリンと、0.1mg/L ストレプトマイシンと、0.25μg/ml アンホテリシンBとを含むMEM培地をいう。
【0089】
本発明において、肥大化能を有する軟骨細胞の培養は上述のようにして分離または誘導された細胞を用いて行われる。本発明の肥大化能を有する軟骨細胞は、生体に対して生体適合性を有する足場の表面で培養されてもよく、足場に内部孔が存在する場合には、内部孔内で培養されてもよい。肥大化能を有する軟骨細胞の細胞密度は、例えば、1×107細胞/ml〜1×104細胞/mlの細胞密度に調整されるが、1×104細胞/ml未満または1×107細胞/mlより多くてもよい。1×104細胞/ml未満のときは、培養器で肥大化能を有する軟骨細胞を増殖させ得るからである。本発明の肥大化能を有する軟骨細胞が、1×107細胞/mlより多い場合には、そのまま使用することが可能であるが、必要に応じて、より広い足場へ播種するか、または培地を用いて適切な濃度に希釈され得る。本発明の1つの実施形態において、肥大化能を有する軟骨細胞の細胞密度は、例えば、0.5〜1×106/cm3(ml)、1×105/cm3(ml)であり得る。本発明の別の実施形態において、肥大化能を有する軟骨細胞は、4×104/cm3(ml)であり得る。
【0090】
本発明において使用される培地は、肥大化能を有する軟骨細胞が増殖する限りどのような培地であってもよいが、例えば、Ham’s F12(HamF12)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、最小必須培地(MEM)、最小必須培地α(αMEM)、イーグル基礎培地(BME)、フィットン−ジャクソン改変培地(BGJb)またはそれらの組み合わせのような培地が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0091】
他の実施形態において、本方法において肥大化能を有する軟骨細胞の培養に用いられる培地は、細胞の増殖、分化、またはその両方を促進する物質を含んでいてもよい。例えば、このような物質としては、トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)、骨形成因子(BMP)、白血病阻止因子(LIF)、コロニー刺激因子(CSF)、アスコルビン酸、デキサメサゾン、グリセロリン酸、インスリン様成長因子(IGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、多血小板血漿(PRP)、血小板由来増殖因子(PDGF)および血管内皮増殖因子(VEGF)からなる群より選択される少なくとも1つの成分のような物質を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0092】
他の好ましい実施形態において、肥大化能を有する軟骨細胞は、どのような部位から採取された細胞であってもよく、例えば、このような部位としては、肋骨の骨軟骨移行部、長管骨の骨端線部(例えば、大腿骨、脛骨、腓骨、上腕骨、尺骨および橈骨)、脊椎骨の骨端線部、小骨の成長軟骨帯(例えば、手骨、足骨または胸骨)、軟骨膜または胎児の軟骨から形成された骨原基部、骨折治癒時の仮骨部、ならびに骨増殖期の軟骨部のような部位から採取され得る。
【0093】
本方法において用いられる生体に対して生体適合性を有する足場は、上述の通り、生体適合性を有する限りどのような足場であってもよい。
【0094】
本発明において使用される場合、細胞が足場に「定着する」とは、細胞を足場に播種した場合に、足場と細胞との一体性が保持されている状態をいう。細胞が足場に定着したことは、細胞をある環境(培地など)の足場に播種し、細胞が播種された足場を別の環境(例えば、別の培地)に移動させた場合に、播種された細胞と足場との一体性が保持されることを確認することによって確認され得る。別の環境とは、例えば、培養していた培地と同じ培地の入った容器であってもよい。移植適合性を調べる場合は、別の環境は、移植される環境を採用することが好ましいが、これに限定されない。
【0095】
本方法において、肥大化能を有する軟骨細胞を生体に対して生体適合性を有する足場上で培養する期間は、この肥大化能を有する軟骨細胞が足場に定着するのに十分な期間であり得る。この期間は、好ましくは、3時間〜3ヶ月であるが、これに限定されない。より好ましくは、3時間〜3週間、さらにより好ましくは、肥大化能を有する軟骨細胞の培養時間は、半日〜1週間である。肥大化能を有する軟骨細胞の培養時間は、3時間未満であってもよい。なぜなら、肥大化能を有する軟骨細胞は少なくとも1時間で生体適合性を有する足場に付着し得るからである。肥大化能を有する軟骨細胞の培養期間はまた、3ヶ月を超えてもよい。なぜなら肥大化能を有する軟骨細胞が増殖しすぎた場合は、より広い足場へ播種するか、または肥大化能を有する軟骨細胞の細胞密度を再度調整し得るであるからである。
【0096】
他の好ましい実施形態において、肥大化能を有する軟骨細胞は、B)工程において、細胞の増殖、分化、またはその両方を促進する物質を含む培地中で培養され得る。
【0097】
別の好ましい実施形態において、肥大化能を有する軟骨細胞は、B)工程おいて、トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)、骨形成因子(BMP)、白血病阻止因子(LIF)、コロニー刺激因子(CSF)、アスコルビン酸、デキサメサゾン、グリセロリン酸、インスリン様成長因子(IGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、多血小板血漿(PRP)、血小板由来増殖因子(PDGF)および血管内皮増殖因子(VEGF)からなる群より選択される少なくとも1つの成分を含む培地中で培養され得る。
【0098】
(キット)
別の局面において、本発明は、生体内の骨形成を促進または誘発するための複合材料キットを提供する。このキットは、A)肥大化能を有する軟骨細胞と該生体に対して生体適合性を有する足場とを含む複合材料、およびB)送達手段を備える。本発明のキットにおいて使用される複合材料は、上述の(複合材料)に記載される任意の形態が使用され得る。
【0099】
(複合材料の使用)
他の局面において、本発明は、生体内の骨形成を促進または誘発するためのインプラントおよび骨補填材料の製造における、複合材料の使用を提供する。ここで複合材料は、A)肥大化能を有する軟骨細胞、およびB)該生体に対して生体適合性を有する足場を含む。本発明の複合材料の使用に用いられる肥大化能を有する軟骨細胞および生体に対して生体適合性を有する足場は、上述の(複合材料)に記載される任意の形態が使用され得る。
【0100】
(処置方法)
別の局面において、本発明は、骨の欠損部位を修復するための方法を提供する。この方法は、肥大化能を有する軟骨細胞と該生体に対して生体適合性を有する足場とを含む複合材料を、該骨の欠損部位に移植する工程を包含する。骨の欠損部位は、固定のみでは修復できない大きさを有する大きさの欠損部位であってもよい。この方法において用いられる移植方法としては、手術時に目視下に骨の欠損部位に埋入する方法が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の処置方法において用いられる複合材料は、上述の(複合材料)に記載される任意の形態が使用され得る。例えば、本願発明の複合材料は、人工関節のような移植物、プレート、ケージ、釘、ピンなどの医療用デバイスとともに生体内に移植され得る。
【0101】
(肥大化能を有する軟骨細胞を調製する方法)
別の局面において、本発明は、肥大化能を有する軟骨細胞を調製する方法を提供する。この方法は、胸骨体下部の剣状突起移行部から細胞を採取する工程を包含する。本発明において「胸骨体下部の剣状突起移行部」とは、胸骨体下部(骨部)から剣状突起(軟骨部、剣状軟骨ともいう)に移行する境界部分をいう(図1A)。従来、胸骨には成長軟骨細胞が存在すると考えられていたが、その採取は行われていなかった。本発明者は、「胸骨体下部の剣状突起移行部」に成長軟骨細胞(肥大化した軟骨細胞)が存在していることを確認し(図1B)、容易に採取できることを見出した。従って、本発明は成長軟骨細胞を調製する新しい方法を提供する。本発明者は、「胸骨体下部の剣状突起移行部」は、従来の成長軟骨細胞の供給源である肋骨・肋軟骨部と同等量もしくはそれ以上量の成長軟骨細胞が存在すること、および容易に採取できることを見出した。
【0102】
以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、以下の実施例は、例示の目的のみに提供される。従って、本発明の範囲は、上記発明の詳細な説明にも下記実施例にも限定されるものではなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
【0103】
(実施例1:肋骨・肋軟骨部由来の肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合の効果)
(肋骨・肋軟骨部からの肥大化能を有する軟骨細胞の調製)
4週齢〜8週齢の雄性ラット(Wistar系)をクロロホルムを使用して屠殺した。ラットの胸部をバリカンで剃毛し、ヒビテン液(10倍希釈)に全身を浸し消毒した。胸部を切開し、無菌的に肋骨・肋軟骨部を採取した。この肋骨・肋軟骨部の境界部分より半透明の成長軟骨部を採取した。この成長軟骨部を細切し、0.25%トリプシン−EDTA/ダルベッコリン酸緩衝化生理食塩水(D−PBS)中で、37℃で1時間攪拌した。D−PBSの組成は、KCl 0.20g/L、NaH2PO4 0.20g/L、NaCl 8.00g/L、Na2HPO4・7H2O 2.16g/Lである。次いで、遠心分離(1000rpm(170×g)×5分間)により洗浄および回収し、その後0.2%コラゲナーゼ(Collagenase:インビトロジェン社製)/D−PBSとともに37℃で、2.5時間攪拌した。遠心分離(1000rpm(170×g)×5分間)により洗浄および回収した後、攪拌用フラスコ中で0.2%ディスパーゼ(Dispase:インビトロジェン社製)を含むHamF12増殖培地(10%のウシ胎児血清を補充し、100U/ml ペニシリンと、0.1mg/L ストレプトマイシンと、0.25μg/ml アンホテリシンBとを含むHamF12培地とともに、37℃にて、1晩攪拌した。翌日、得られた細胞懸濁液を濾過し、遠心分離(1000rpm(170×g)×5分間)により洗浄および回収した。細胞をトリパンブルーにより染色し、顕微鏡を用いて細胞数をカウントした。
【0104】
評価は、呈色しなかった細胞を生細胞とし、青色に呈色した細胞を死細胞とした。
【0105】
(肥大化能を有する軟骨細胞の確認)
実施例1によって得られた細胞は、分離の際に使用した酵素(トリプシン、コラゲナーゼ、ディスパーゼ)によって障害を受けているので、培養によって障害を回復させ、肥大化能を有する軟骨細胞を、軟骨細胞マーカーの発現、および顕微鏡下で形態学的な肥大化を確認することによって同定する。
【0106】
(肥大化能を有する軟骨細胞特異的マーカーの発現)
上記の操作により得られた細胞の溶解物をドデシル硫酸ナトリウム(SDS)で処理する。SDS処理した溶液をSDSポリアクリルアミド電気泳動する。その後、転写用膜にブロッティング(ウェスタンブロティング)し、軟骨細胞マーカーに対する一次抗体を反応させて、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコシダーゼなどの酵素またはイソチオシアン酸フルオレッセイン(FITC)、フィコエリトリン(PE)、テキサスレッド、7−アミノ−4−メチルクマリン−3−酢酸(AMCA)、ローダミンなどの蛍光を標識した二次抗体で検出する。
【0107】
上記の操作により得られた細胞培養物を、10%中性ホルマリン緩衝液で固定し、軟骨細胞マーカーに対する一次抗体を反応させて、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコシダーゼなどの酵素またはFITC、PE、テキサスレッド、AMCA、ローダミンなどの蛍光を標識した二次抗体で検出する。
【0108】
(軟骨細胞の肥大化能に関する組織学的検索)
5×105個の細胞を含む、HamF12増殖培地を遠心することにより細胞のペレットを作製した。この細胞ペレットを一定期間培養し、10%中性ホルマリン緩衝液で固定し、パラフィン包埋した。薄切標本を作製し、ヘマトキシリン‐エオシン染色(HE染色)した。顕微鏡下に確認した培養前の細胞の大きさと培養後の細胞の大きさを比較した。有意な成長が確認されたときに、細胞を肥大化能を有すると判定した(図1C)。
【0109】
(マーカー遺伝子による分析)
本実施例で得られた肥大化能を有する軟骨細胞について、肥大化能を有する軟骨細胞のマーカーであるX型コラーゲン、アルカリホスファターゼ、II型コラーゲン、軟骨型プロテオグリカンのmRNA量について分析する。各mRNAは、下記のようにリアルタイムPCRにより検出する。
【0110】
(リアルタイムPCR)
試料として、本実施例により得られた肥大化能を有する軟骨細胞を、HamF12増殖培地中のヒドロキシアパタイトに1×106細胞/mlで播種し、37℃、5% CO2インキュベーター中で1週間培養する。対象として軟骨細胞(1×106細胞/ml)を用いる。これらの試料から全RNAを抽出する。
【0111】
これらの試料を粉砕用セルに入れて液体窒素をかけ、粉砕機で粉砕し、2.0mlのチューブに入れる。このチューブに、ISOGEN(和光純薬)を1ml入れ、Vortexで撹拌し、ポリトロンで均一になるまで破砕する。チューブを、室温、10分放置した後、クロロホルム0.2mlを加えて、激しくVortexする。さらに、4℃、5分放置した後、12,000×g、4℃、15分間遠心する。チューブから水相を採取し、イソプロパノール0.6 mlを加えてVortexする。室温、10分放置した後、−30℃に1晩静置する。翌日、12,000×g、4℃、15分間遠心した後、上清を除き、乾燥させ、75%エタノール1mlで洗浄して全RNAを得る。
【0112】
全RNAからHigh−Capacity cDNA Archive Kit(アプライドバイオシステムズ社)を用いてcDNAを合成する。X型コラーゲン、アルカリホスファターゼ、II型コラーゲン、軟骨型プロテオグリカンのそれぞれについて発現定量試薬をアプライドバイオシステムズ社に発注したものを用いる。次いで、上記cDNAをテンプレートとして、X型コラーゲン、アルカリホスファターゼ、II型コラーゲン、軟骨型プロテオグリカンの発現を、Taqmanアッセイ法(Taqman(登録商標)Gene Expression Assays(アプライドバイオシステムズ社))を用いて確認する。
【0113】
リアルタイムPCR反応液(25μLの2×TaqMan Universal PCR Master Mix、2.5μLの20×Taqman(登録商標)Gene Expression Assay Mix、21.5μLのRNase−free water、1μLのテンプレートcDNA)を調製し、96ウェル反応プレートに分注する。次いで、PCR Master Mix(アプライドバイオシステムズ社)を使用して、50℃で2分、および95℃で10分の後、95℃で15秒、および60℃、1分を40サイクルでPCRを行う。次いで、リアルタイムPCR機器(ABI社、PRISM 7900HT)にて測定を行う。PCR反応後、しきい値の設定および到達サイクルの算出を、機器(PRISM 7900HT)内蔵の解析ソフトにより実施する。
【0114】
(結果)
肥大化能を有する軟骨細胞において、軟骨細胞マーカーであるII型コラーゲンおよび軟骨型プロテオグリカンが発現しており、肥大化軟骨マーカーであるX型コラーゲンおよびアルカリホスファターゼの発現は、対照とした軟骨細胞でのこれらの発現よりも有意に高いことが確認される。
【0115】
(肥大化能を有する軟骨細胞の存在の確認)
肥大化能を有する軟骨細胞を希釈した細胞液に、肥大化能を有する軟骨細胞が存在するか否かを確認するために、以下の実験を行った。肥大化能を有する軟骨細胞(1×106細胞/ml)を、気孔率85%円盤状ヒドロキシアパタイト(直径5mm)7個/24ウェルプレート上に播種し(円盤状ヒドロキシアパタイト1個あたり、1.43×105細胞)、HamF12増殖培地中で37℃にて、5% CO2インキュベーター中で、3時間、1日間、3日間、または1週間培養した。次いで、この試料(細胞を播種したヒドロキシアパタイト)を、アルカリホスファターゼ染色した後、10%中性ホルマリン緩衝液で固定し、トルイジン青染色した。アルカリホスファターゼ染色は、試料を、60%アセトン/クエン酸バッファー中に30秒浸漬して固定し、水洗後、アルカリホスファターゼ染色液(2mlの0.25%ナフトールAS−MXリン酸アルカリ溶液(シグマアルドリッチ社)+48mlの0.025%ファーストバイオレットB塩溶液(シグマアルドリッチ社))とともに、室温、遮光下で30分間インキュベートすることにより行った。トルイジン青染色は、トルイジン青染色液(0.05%トルイジン青溶液、pH7.0、和光純薬工業)とともに室温、3〜10分間インキュベートすることにより行った。アルカリホスファターゼ染色では、すべての培養期間において、試料は、赤く斑点状に染まった(図2A〜Dを参照のこと)。トルイジン青では、すべての培養期間において、同一部分が青く斑点状に染まり、細胞が存在することが分かる(図2E〜Hを参照のこと)。従って、ヒドロキシアパタイト上に存在する細胞がアルカリホスファターゼ活性を有することが分かった。
【0116】
(結果)
本実施例によって得られた細胞は、軟骨細胞マーカーを発現しており、形態学的には肥大化していることを確認した。このことにより、本実施例1によって得られた細胞は、肥大化能を有する軟骨細胞であることが確認された。この細胞を以下の実験に用いた。
【0117】
(肋骨・肋軟骨部から採取した肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料の作製)
本実施例により得られた肥大化能を有する軟骨細胞に、HamF12増殖培地を加えて1×106細胞/mlに希釈した。この細胞液を、ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイトのそれぞれに均一に播種し、37℃にて、5% CO2インキュベーター中で1週間培養した。
【0118】
これらの培養物を、ラットの皮下に移植した。移植の4週間後、ラットを屠殺して移植部位を摘出し、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋した。薄切標本を作製し、HE染色して移植部位の状態を確認した。ゼラチン(図3A)、コラーゲン(図3B)およびヒドロキシアパタイト(図3C)の全ての生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成が観察された。
【0119】
(比較例1A:肋骨・肋軟骨部由来の肥大化能を有する軟骨細胞のペレットを皮下に移植した場合の効果)
(肋骨・肋軟骨部由来の肥大化能を有する軟骨細胞ペレットの調製)
実施例1と同様の方法により、肋骨・肋軟骨部から肥大化能を有する軟骨細胞を採取した。これらの細胞(5×105個)に、HamF12増殖培地を加えて5×105個/0.5mlに希釈した。この細胞液を、遠心分離(1000rpm(170×g)×5分間)して肥大化能を有する軟骨細胞ペレットを調製した。
【0120】
この肥大化能を有する軟骨細胞ペレットを、ラットの皮下に移植した。移植の4週間後、ラットを屠殺して移植部位を摘出し、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋した。薄切標本を作製し、HE染色して移植部位の状態を確認した。肋骨・肋軟骨部由来の肥大化能を有する軟骨細胞ペレットを移植した場合には、わずかに骨形成が観察されるが、その骨形成の範囲は、肋骨・肋軟骨部由来の肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を移植した場合(実施例1を参照のこと)よりも、はるかに小さかった。
【0121】
(比較例1B:肋骨・肋軟骨部由来の肥大化能を有する軟骨細胞単独を皮下に移植した場合の効果)
実施例1と同様の方法により得られた肥大化能を有する軟骨細胞を単独でラットの皮下に移植した。肥大化能を有する軟骨細胞を単独で移植した場合、骨形成は生じなかった。
【0122】
(比較例1C:ヒドロキシアパタイト単独を皮下に移植した場合の効果)
実施例1と同じ方法により、足場であるヒドロキシアパタイトを単独でラットの皮下に移植した。ヒドロキシアパタイトを単独で移植した場合、骨形成は生じなかった(図4)を参照のこと。
【0123】
(実施例1および比較例1A〜1Cのまとめ)
肥大化能を有する軟骨細胞と生体適合性足場とを含む複合材料をラット皮下に移植した場合の骨形成は、ペレット状にした肥大化能を有する軟骨細胞単独を移植した場合よりも大きかった。一方、肥大化能を有する軟骨細胞またはヒドロキシアパタイトを単独で移植した場合、骨形成は生じなかった。この結果から、本発明の複合材料を使用した場合、従来の複合材料では治療できなかったほどの大きさの骨欠損を治療可能であると考えられる。
【0124】
(実施例2:胸骨由来の肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合の効果)
(胸骨からの肥大化能を有する軟骨細胞の調製)
4週齢〜8週齢の雄性ラット(Wistar系)をクロロホルムを使用して屠殺した。ラットの胸部をバリカンで剃毛し、ヒビテン液(10倍希釈)に全身を浸し消毒した。胸部を切開し、胸骨から胸骨体下部の剣状突起移行部および他の部位を無菌的に採取した。この剣状突起移行部より半透明の成長軟骨部を採取した。これらの組織を細切し、0.25%トリプシン−EDTA/D−PBS中で、37℃で1時間攪拌した。次いで、遠心分離(1000rpm(170×g)×5分間)により洗浄および回収し、その後0.2%コラゲナーゼ/D−PBSとともに37℃で、2.5時間攪拌した。遠心分離(1000rpm(170×g)×5分間)により洗浄および回収した後、攪拌用フラスコ中で0.2%ディスパーゼ/HamF12増殖培地とともに、37℃にて、1晩攪拌した。0.2%ディスパーゼでの1晩処理を省く場合もある。翌日、この細胞懸濁液を濾過し、遠心分離(1000rpm(170×g)×5分間)により洗浄および回収した。細胞を、トリパンブルーにより染色し、顕微鏡を用いて細胞数をカウントした。
【0125】
評価は、呈色しなかった細胞を生細胞とし、青色に呈色した細胞を死細胞とした。
【0126】
(肥大化能を有する軟骨細胞の確認)
実施例1と同様の方法を使用して、採取した細胞が肥大化能を有する軟骨細胞であることを確認した(図5A)。胸骨の成長軟骨部以外の部位から採取した細胞は、肥大化能を有さなかった(図5B)。
【0127】
(胸骨から採取した肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料の作製)
本実施例により得られた肥大化能を有する軟骨細胞を用いて、実施例1に記載の方法により、複合材料を調製し、ラットの皮下に移植する。移植の4週間後、ラットを屠殺して移植部位を摘出し、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋する。薄切標本を作製し、HE染色して移植部位の状態を確認する。ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成が観察される。
【0128】
(比較例2A:胸骨由来の肥大化能を有する軟骨細胞のペレットを皮下に移植した場合の効果)
(胸骨由来の肥大化能を有する軟骨細胞ペレットの調製)
実施例2と同様の方法により、胸骨から肥大化能を有する軟骨細胞を採取する。これらの細胞(5×105個)に、HamF12増殖培地を加えて5×105個/0.5mlに希釈する。この細胞液を、遠心分離(1000rpm(170×g)×5分間)して肥大化能を有する軟骨細胞ペレットを調製する。
【0129】
この肥大化能を有する軟骨細胞ペレットを、ラットの皮下に移植する。移植の4週間後、ラットを屠殺して移植部位を摘出し、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋する。薄切標本を作製し、HE染色して移植部位の状態を確認する。胸骨由来の肥大化能を有する軟骨細胞ペレットを移植した場合には、わずかに骨形成が観察されるが、その骨形成の範囲は、胸骨由来の肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を移植した場合(実施例2を参照のこと)よりも、はるかに小さい。
【0130】
(比較例2B:胸骨由来の肥大化能を有する軟骨細胞単独を皮下に移植した場合の効果)
実施例2と同様の方法により得られた肥大化能を有する軟骨細胞を、単独でラットの皮下に移植する。肥大化能を有する軟骨細胞を単独で移植した場合、骨形成は生じない。
【0131】
(実施例2ならびに比較例2A、2Bおよび1Cのまとめ)
肥大化能を有する軟骨細胞と生体適合性足場とを含む複合材料をラット皮下に移植した場合の骨形成は、ペレット状にした肥大化能を有する軟骨細胞単独を移植した場合よりも大きい。一方、肥大化能を有する軟骨細胞またはヒドロキシアパタイトを単独で移植した場合、骨形成は生じない(比較例1Cを参照のこと)。この結果から、本発明の複合材料を使用した場合、従来の複合材料では治療できなかったほどの大きさの骨欠損を治療可能であると考えられる。
【0132】
(比較例3A:耳介軟骨部由来の肥大化能を有さない軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合の効果)
(耳介軟骨部からの肥大化能を有さない軟骨細胞の調製)
4週齢〜8週齢の雄性ラット(Wistar系)をクロロホルムを使用して屠殺する。ラットをヒビテン液(10倍希釈)に全身を浸し消毒する。耳介軟骨周囲を切開し、無菌的に皮膚を除去して耳介軟骨部を採取する。この耳介軟骨部を細切し、0.25%トリプシン−EDTA/D−PBS中で、37℃で1時間攪拌する。次いで、遠心分離(1000rpm(170×g)×5分間)により洗浄および回収し、その後0.2%コラゲナーゼ/D−PBSとともに37℃で、2.5時間攪拌する。遠心分離(1000rpm(170×g)×5分間)により洗浄および回収した後、攪拌用フラスコ中で0.2%ディスパーゼ/HamF12増殖培地とともに、37℃にて、1晩攪拌する。0.2%ディスパーゼでの1晩処理を省く場合もある。翌日、この細胞懸濁液を濾過し、遠心分離(1000rpm(170×g)×5分間)により洗浄および回収する。細胞を、トリパンブルーにより染色し、顕微鏡を用いて細胞数をカウントする。
【0133】
評価は、呈色しなかった細胞を生細胞とし、青色に呈色した細胞を死細胞とする。
【0134】
(耳介軟骨部由来の肥大化能を有さない軟骨細胞の確認)
耳介軟骨部由来の肥大化能を有さない軟骨細胞を希釈した細胞液に、肥大化能を有する軟骨細胞が存在するか否かを、実施例1と同様の手順を用いて確認する。アルカリホスファターゼ染色では、試料は染まらない。トルイジン青染色では、その試料は青く斑点状に染まり、細胞が存在することが確認される。ヒドロキシアパタイト上に存在する細胞にはアルカリホスファターゼ活性がないことが確認される。このことにより、本比較例で使用する細胞液には、肥大化能を有さない軟骨細胞が存在することが確認される。
【0135】
実施例1と同様の方法を使用して軟骨細胞マーカーの局在または発現を検出し、形態学的にも検索して、得られた細胞が肥大化能を有さない軟骨細胞であることを確認する。
【0136】
(耳介軟骨部から採取した肥大化能を有さない軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料の作製)
本比較例により得られた肥大化能を有さない軟骨細胞を用いて、実施例1と同様の方法を使用することにより、複合材料を調製し、ラットの皮下に移植する。移植の4週間後、ラットを屠殺して移植部位を摘出し、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋する。薄切標本を作製し、HE染色して移植部位の状態を確認する。ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成は生じない。
【0137】
(比較例3B:関節軟骨由来の肥大化能を有さない軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合の効果)
(関節軟骨からの肥大化能を有さない軟骨細胞の調製)
4週齢〜8週齢の雄性ラット(Wistar系)をクロロホルムを使用して屠殺した。ラットの膝関節周囲をバリカンで剃毛し、ヒビテン液(10倍希釈)に全身を浸し消毒した。膝関節部を切開し、無菌的に関節軟骨を採取した。この関節軟骨を細切し、0.25%トリプシン−EDTA/D−PBS中で、37℃で1時間攪拌した。次いで、遠心分離(1000rpm(170×g)×5分間)により洗浄および回収し、その後0.2%コラゲナーゼ/D−PBSとともに37℃で、2.5時間攪拌した。遠心分離(1000rpm(170×g)×5分間)により洗浄および回収した後、攪拌用フラスコ中で0.2%ディスパーゼ/HamF12増殖培地とともに、37℃にて、1晩攪拌した。0.2%ディスパーゼでの1晩処理を省く場合もある。翌日、この細胞懸濁液を濾過し、遠心分離(1000rpm(170×g)×5分間)により洗浄および回収した。細胞を、トリパンブルーにより染色し、顕微鏡を用いて細胞数をカウントした。
【0138】
評価は、呈色しなかった細胞を生細胞とし、青色に呈色した細胞を死細胞とした。
【0139】
(関節軟骨部由来の肥大化能を有さない軟骨細胞の確認)
関節軟骨部由来の肥大化能を有さない軟骨細胞を希釈した細胞液に、肥大化能を有する軟骨細胞が存在するか否かを、実施例1と同様の手順を用いて確認した。肥大化能を有さない軟骨細胞(1×106細胞/ml)を、気孔率85%円盤状ヒドロキシアパタイト(直径5mm)7個/24ウェルプレート上に播種し(円盤状ヒドロキシアパタイト1個あたり、1.43×105細胞)、HamF12増殖培地中で37℃にて、5% CO2インキュベーター中で1週間培養した。アルカリホスファターゼ染色では、試料は染まらなかった。トルイジン青染色では、その試料は青く斑点状に染まり、細胞が存在することが確認された(図6Aを参照のこと)。ヒドロキシアパタイト上に存在する細胞にはアルカリホスファターゼ活性がないことが確認された(図6Bを参照のこと)。このことにより、本比較例で使用する細胞液には、肥大化能を有さない軟骨細胞が存在することが確認された。
【0140】
実施例1と同様の方法を使用して軟骨細胞マーカーの局在または発現を検出し、形態学的にも検索して、得られた細胞が肥大化能を有さない軟骨細胞であることを確認する。
【0141】
(関節軟骨部から採取した肥大化能を有さない軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料の作製)
本比較例により得られた肥大化能を有さない軟骨細胞を用いて、実施例1と同様の方法を使用することにより、複合材料を調製し、ラットの皮下に移植する。移植の4週間後、ラットを屠殺して移植部位を摘出し、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋する。薄切標本を作製し、HE染色して移植部位の状態を確認する。ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成は生じない。
【0142】
(比較例3C:肋軟骨由来の肥大化能を有さない静止軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合の効果)
(肋軟骨からの肥大化能を有さない静止軟骨細胞の調製)
4週齢〜8週齢の雄性ラット(Wistar系)をクロロホルムを使用して屠殺した。ラットの胸部をバリカンで剃毛し、ヒビテン液(10倍希釈)に全身を浸し消毒した。胸部を切開し、無菌的に肋軟骨部を採取した。この肋軟骨部分より不透明の静止軟骨部を採取した。この静止軟骨部を細切し、0.25%トリプシン−EDTA/D−PBS中で、37℃で1時間攪拌した。次いで、遠心分離(1000rpm(170×g)で3分間)により洗浄および回収し、その後0.2%コラゲナーゼ(Collagenase:インビトロジェン社製)/D−PBSとともに37℃で、2.5時間攪拌した。遠心分離(1000rpm(170×g)で3分間)により洗浄および回収した後、攪拌用フラスコ中で0.2%ディスパーゼ(Dispase:インビトロジェン社製)/HamF12増殖培地とともに、37℃にて、1晩攪拌した。0.2%ディスパーゼでの1晩処理を除く場合もある。翌日、得られた細胞を濾過し、遠心分離(1000rpm(170×g)で3分間)により洗浄および回収した。細胞をトリパンブルーにより染色し、顕微鏡を用いて細胞数をカウントした。
【0143】
評価は、呈色しなかった細胞を生細胞とし、青色に呈色した細胞を死細胞とした。
【0144】
(肋軟骨由来の肥大化能を有さない静止軟骨細胞の確認)
肋軟骨由来の肥大化能を有さない静止軟骨細胞を希釈した細胞液に、肥大化能を有する軟骨細胞が存在するか否かを、実施例1と同様の手順を用いて確認した。静止軟骨細胞(1×106細胞/ml)を、気孔率85%円盤状ヒドロキシアパタイト(直径5mm)7個/24ウェルプレート上に播種し(円盤状ヒドロキシアパタイト1個あたり、1.43×105細胞)、HamF12増殖培地中で37℃にて、5% CO2インキュベーター中で、3時間、1日間、3日間、または1週間培養した。アルカリホスファターゼ染色では、いずれの試料も染まらなかった。トルイジン青染色では、それらの試料は青く斑点状に染まり、細胞が存在することが確認された(図7A〜7Dを参照のこと)。ヒドロキシアパタイト上に存在する細胞にはアルカリホスファターゼ活性がないことが確認された(図7E〜7Hを参照のこと)。このことにより、本比較例で使用する細胞液には、肥大化能を有さない軟骨細胞が存在することが確認された。
【0145】
実施例1と同様の方法を使用して軟骨細胞マーカーの局在または発現を検出し、形態学的にも検索して、得られた細胞が肥大化能を有さない軟骨細胞であることを確認した(図8)。
【0146】
(肋軟骨由来の肥大化能を有さない静止軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料の作製)
本比較例により得られた肥大化能を有さない静止軟骨細胞を用いて、実施例1と同様の方法を使用することにより、複合材料を調製し、ラットの皮下に移植する。移植の4週間後、ラットを屠殺して移植部位を摘出し、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋する。薄切標本を作製し、HE染色して移植部位の状態を確認する。ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成は生じない。
【0147】
(比較例4:骨芽細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合の効果)
(骨芽細胞の調製)
雄性ラット(Wistar系)新生仔をクロロホルムを使用して屠殺する。ヒビテン液(10倍希釈)に全身を浸し消毒する。頭蓋を切開し、頭蓋骨を採取する。この頭蓋骨を細切し、0.2%コラゲナーゼ/D−PBSとともに37℃で、1.5時間攪拌する。この細胞懸濁液を濾過し、遠心分離(1000rpm(170×g)×5分間)により洗浄および回収して細胞を単離する。細胞を、トリパンブルーにより染色し、顕微鏡を用いて細胞数をカウントする。
【0148】
評価は、呈色しなかった細胞を生細胞とし、青色に呈色した細胞を死細胞とする。
【0149】
(骨芽細胞の確認)
マーカーとして骨芽細胞に対するマーカーを使用すること、および培地としてMEM増殖培地を使用すること以外、実施例1と同様の方法を使用して、骨芽細胞であることを確認する。
【0150】
(骨芽細胞および生体適合性足場を用いる複合材料の作製)
本比較例により得られた骨芽細胞を用いて、実施例1と同様の方法を使用することにより、複合材料を調製し、ラットの皮下に移植する。移植の4週間後、ラットを屠殺して移植部位を摘出し、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋する。薄切標本を作製し、HE染色して移植部位の状態を確認する。骨芽細胞と、ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場とを用いる複合材料において骨形成がわずかに観察される。その骨形成を、肋骨・肋軟骨部および胸骨由来の肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を移植した場合(実施例1および2を参照のこと)と比較することにより、肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料が、骨芽細胞の場合より優れた骨形成能力を有することが示される。
【0151】
(比較例5:間葉系幹細胞または間葉系幹細胞由来の骨芽細胞と生体適合性足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合の効果)
(間葉系幹細胞の調製)
検体として4〜8週齢ラットを用いる。ラットを屠殺し、大腿骨を無菌的に採取し、両断を切断して、MEM増殖培地で骨髄内を洗浄および回収する。洗い出された骨髄細胞を75cm2の培養フラスコ(T−75)に播種する。5% CO2、37℃で1週間〜10日間培養した後、培養器に接着した細胞を骨髄由来の間葉系幹細胞として以下の実験に用いる。
【0152】
(間葉系幹細胞または間葉系幹細胞由来の骨芽細胞と生体適合性足場を用いる複合材料の作製)
本比較例により得られた間葉系幹細胞とMEM増殖培地を用いること以外、実施例1と同様の方法を使用することにより、複合材料を調製する。さらに、この複合材料をMEM分化培地(基礎培地を含み、かつグルココルチコイド、β−グリセロホスフェートおよびアスコルビン酸からなる群より選択される従来型骨芽細胞分化誘導成分の少なくとも1つを含んでいる培地)中で5% CO2、37℃で2週間培養し、生体適合性を有する足場に存在する間葉系幹細胞を骨芽細胞に分化誘導させる。分化誘導された骨芽細胞とヒドロキシアパタイトを用いる複合材料を、ラットの皮下に移植する。この2週間の間葉系幹細胞の骨芽細胞への分化誘導操作を省き、生体適合性を有する足場に間葉系幹細胞が存在する複合材料も移植に用いる。移植の4週間後、ラットを屠殺して移植部位を摘出し、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋する。薄切標本を作製し、HE染色して移植部位の状態を確認する。間葉系幹細胞と生体適合性を有する足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合、ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成は観察されない。間葉系幹細胞から誘導された骨芽細胞と生体適合性を有する足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合、ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成がわずかに観察される。その骨形成を、肥大化能を有する軟骨細胞(肋骨・肋軟骨部由来および胸骨由来)および生体適合性足場を用いる複合材料の各々を移植した場合(実施例1および2を参照のこと)と比較することにより、肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料が、間葉系幹細胞または間葉系幹細胞から分化誘導させた骨芽細胞の場合より優れた骨形成能力を有することが示される。
【0153】
(比較例3〜5のまとめ)
肥大化能を有さない軟骨細胞(耳介軟骨部由来、関節軟骨部由来および肋軟骨部由来)と生体適合性足場を含む複合材料、ならびに間葉系幹細胞と生体適合性足場を含む複合材料の各々をラット皮下に移植した場合、骨形成が生じないことが確認される。一方、骨芽細胞または間葉系幹細胞から分化誘導させた骨芽細胞と、生体適合性足場とを含む複合材料をラット皮下に移植した場合、骨形成はわずかに観察される。その骨形成を、肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を移植した場合と比較することにより、肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料が、骨芽細胞または間葉系幹細胞から分化誘導させた骨芽細胞の場合より優れた骨形成能力を有することが示される。
【0154】
(実施例3:肋骨・肋軟骨部由来の肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合の効果)
(肋骨・肋軟骨部からの肥大化能を有する軟骨細胞の調製および確認)
実施例1と同じ方法を用いて肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を調製した。
【0155】
(骨の欠損部位の作製)
Wistar系雄性ラットを麻酔し、無菌的に大腿骨または脛骨の皮膚を切開し、軟部組織を一方にそらせて、大腿骨または脛骨の骨欠損作製部位を露出させた。あるいは、頭蓋骨の皮膚を切開し、頭蓋骨の骨欠損作製部位を露出させた。歯科用穿孔器にトレフィンバールまたはディスクを装着し、穿孔骨欠損または離断骨欠損を作製した。この作製した骨の欠損部位に上記で調製した複合材料を移植した。移植の4、12週間後、ラットを屠殺して移植部位を摘出し、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋した。薄切標本を作製し、HE染色して移植部位の状態を確認した。ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成が観察された。
【0156】
(比較例6A:肋骨・肋軟骨部由来の肥大化能を有する軟骨細胞のペレットを骨の欠損部位に移植した場合の効果)
(肋骨・肋軟骨部由来の肥大化能を有する軟骨細胞ペレットの調製)
比較例1Aと同様の方法により、肥大化能を有する軟骨細胞ペレットを調製し、ラットの骨の欠損部位に移植する。移植の4、12週間後に移植部位の状態を確認する。肋骨・肋軟骨部由来の肥大化能を有する軟骨細胞ペレットを骨の欠損部位に移植した場合には、わずかに骨形成が観察されるが、その骨形成の範囲は、肋骨・肋軟骨部由来の肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合(実施例3を参照のこと)よりも、はるかに小さい。
【0157】
(比較例6B:肋骨・肋軟骨部由来の肥大化能を有する軟骨細胞単独を骨の欠損部位に移植した場合の効果)
実施例1と同様の方法により得られた肥大化能を有する軟骨細胞を単独でラットの骨の欠損部位に移植する。肥大化能を有する軟骨細胞を単独で骨の欠損部位に移植した場合、骨形成は生じない。
【0158】
(比較例6C:ヒドロキシアパタイト単独を骨の欠損部位に移植した場合の効果)
実施例3と同様の方法と同じ方法を用いて、足場であるヒドロキシアパタイトを単独でラットの骨の欠損部位に移植した。ヒドロキシアパタイトを単独で移植した場合、骨形成は移植片周辺部にわずかに生じた。
【0159】
(実施例4:胸骨由来の肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合の効果)
実施例2と同様の方法により得られた胸骨由来の肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を、ラットの骨の欠損部位に移植する。移植の4、12週間後、ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成が観察される。
【0160】
(比較例7A:胸骨由来の肥大化能を有する軟骨細胞のペレットを骨の欠損部位に移植した場合の効果)
比較例2Aと同様の方法により、肥大化能を有する軟骨細胞ペレットを調製し、ラットの骨の欠損部位に移植する。移植4、12週間後に移植部位の状態を確認する。胸骨由来の肥大化能を有する軟骨細胞ペレットを骨の欠損部位に移植した場合には、わずかに骨形成が観察されるが、その骨形成の範囲は、胸骨由来の肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合(実施例4を参照のこと)よりも、はるかに小さい。
【0161】
(比較例7B:胸骨由来の肥大化能を有する軟骨細胞単独を骨の欠損部位に移植した場合の効果)
実施例2により得られた肥大化能を有する軟骨細胞を、単独でラットの骨の欠損部位に移植する。肥大化能を有する軟骨細胞を単独で移植した場合、骨形成は生じない。
【0162】
(比較例8A:耳介軟骨部由来の肥大化能を有さない軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合の効果)
比較例3Aにより得られた耳介軟骨部由来の肥大化能を有さない軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を、ラットの骨の欠損部位に移植する。移植の4、12週間後、ゼラチンおよびコラーゲン各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成は生じなく、ヒドロキシアパタイトの生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成は移植片周辺部にわずかに生じるのみである。
【0163】
(比較例8B:関節軟骨由来の肥大化能を有さない軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合の効果)
比較例3Bにより得られた関節軟骨由来の肥大化能を有さない軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を、ラットの骨の欠損部位に移植する。移植の4、12週間後、ゼラチンおよびコラーゲン各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成は生じなく、ヒドロキシアパタイトの生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成は移植片周辺部にわずかに生じるのみである。
【0164】
(比較例8C:肋軟骨由来の静止軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合の効果)
比較例3Cにより得られた肋軟骨由来の静止軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を、ラットの骨の欠損部位に移植する。移植の4、12週間後、ゼラチンおよびコラーゲン各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成は生じなく、ヒドロキシアパタイトの生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成は移植片周辺部にわずかに生じた。
【0165】
(比較例9:骨芽細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合の効果)
比較例4により得られた骨芽細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を、ラットの骨の欠損部位に移植する。移植の4、12週間後、ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成がわずかに観察される。その骨形成を、肋骨・肋軟骨部および胸骨由来の肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を移植した場合(実施例3および4を参照のこと)と比較することにより、肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料が、骨芽細胞の場合より優れた骨形成能力を有することが示される。
【0166】
(比較例10:間葉系幹細胞または間葉系幹細胞由来の骨芽細胞と体適合性足場を用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合の骨形成率および骨形成量の比較)
比較例5により得られた間葉系幹細胞と生体適合性足場とを用いる複合材料、または間葉系幹細胞から分化誘導させた骨芽細胞と生体適合性足場とを用いる複合材料を、各々ラットの骨の欠損部位に移植する。移植の4、12週間後、間葉系幹細胞と生体適合性足場とを用いる複合材料を移植した場合、ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成がわずかに観察される。間葉系幹細胞から分化誘導させた骨芽細胞と生体適合性足場とを移植した場合、ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成がわずかに観察される。その骨形成を、肋骨・肋軟骨部および胸骨由来の肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を移植した場合(実施例3および4を参照のこと)と比較することにより、肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料が、間葉系幹細胞または間葉系幹細胞から分化誘導させた骨芽細胞の場合より優れた骨形成能力を有することが示される。
【0167】
(実施例3〜4および比較例6A〜10のまとめ)
肥大化能を有する軟骨細胞と生体適合性足場とを含む複合材料をラット骨の欠損部位に移植した場合の骨形成は、ペレット状にした肥大化能を有する軟骨細胞単独を移植した場合よりも大きい。一方、肥大化能を有する軟骨細胞を単独で移植した場合、骨形成は生じない。ヒドロキシアパタイトを単独で移植した場合、骨形成は移植片周辺部にわずかに生じるのみである。これらの結果は、皮下試験の結果(実施例1〜2および比較例1A〜2B)における複合材料と単独材料とを対比したときの傾向とほぼ同様である。さらに、耳介軟骨部、関節軟骨部または静止軟骨部由来の肥大化能を有さない軟骨細胞と、生体適合性足場とを用いる複合材料を骨の欠損部位に移植する場合、ならびに骨芽細胞、間葉系幹細胞から分化誘導させた骨芽細胞または間葉系幹細胞と生体適合性足場とを用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合、いずれの場合にも骨の欠損部位に骨形成がわずかに観察されることが確認される。
【0168】
(実施例5:肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合の骨形成率および骨形成量)
(骨の欠損部位の作製ならびに骨形成率および骨形成量の測定)
骨形成の観察された実施例1の複合材料を骨の欠損部位に移植した場合について、骨形成率および骨形成量を、マイクロCT(株式会社東陽テクニカ、スカイスキャン1172)を用いて測定した。生体適合性足場としてヒドロキシアパタイトを用いた。実施例1と同様の方法により得られた肥大化能を有する軟骨細胞とヒドロキシアパタイトの複合材料(直径4mm×厚さ1mmの円盤状)を、骨の欠損部位(直径4mm円孔の打抜き)に移植した。骨の欠損部位は、実施例3と同様の方法により作製した。移植の4、12週間後に移植部位を摘出し、μCTデータを測定した(65kV−154μA、80kV−125μA、または100kV−100μA、AlまたはTiフィルター、回転角度0.4度)。
【0169】
(骨形成率および骨形成量)
表2に示すように、肥大化能を有する軟骨細胞およびヒドロキシアパタイトを用いた複合材料を骨の欠損部位に移植した場合、移植の4週間後に5.78mm3の骨が新生された。新しく形成された骨の全体に占める割合は45.90%であった。
【0170】
(比較例11:肥大化能を有さない静止軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合の骨形成率および骨形成量)
(骨の欠損部位の作製ならびに骨形成率および骨形成量の測定)
生体適合性足場としてヒドロキシアパタイトを用いた。比較例3Cと同様の方法により得られた肥大化能を有さない軟骨細胞とヒドロキシアパタイトの複合材料(直径4mm×厚さ1mmの円盤状)を、骨の欠損部位(直径4mm円孔の打抜き)に移植した。骨の欠損部位は、実施例3と同様の方法により作製した。
【0171】
(骨形成率および骨形成量)
表2に示すように、肥大化能を有さない軟骨細胞およびヒドロキシアパタイトを用いた複合材料を骨の欠損部位に移植した場合、移植の4週間後に2.74mm3の骨が新生された。新しく形成された骨の全体に占める割合は24.16%であった。骨形成率および骨形成量は、実施例5に記載される肥大化能を有する軟骨細胞およびヒドロキシアパタイトを用いた複合材料と比べて低かった。
【0172】
(比較例12:生体適合性足場単独を骨の欠損部位に移植した場合の骨形成率および骨形成量)
(骨の欠損部位の作製ならびに骨形成率および骨形成量の測定)
生体適合性材料としてヒドロキシアパタイトを用いた。ヒドロキシアパタイト(直径4mm×厚さ1mmの円盤状)を、骨の欠損部位(直径4mm円孔の打抜き)に移植した。この骨の欠損部位は、実施例3と同様の方法により作製した。移植の4週間後に移植部位を摘出し、μCTデータを測定した(65kV−154μA、80kV−125μA、または100kV−100μA、AlまたはTiフィルター、回転角度0.4度)。
【0173】
(骨形成率および骨形成量)
表2に示すように、ヒドロキシアパタイト単独を骨の欠損部位に移植した場合、移植の4週間後に2.72mm3の骨が新生された。新しく形成された骨の全体に占める割合は29.48%であった。骨形成率および骨形成量は、実施例5に記載される肥大化能を有する軟骨細胞およびヒドロキシアパタイトを用いた複合材料と比べて低かった。
【0174】
(実施例5ならびに比較例11および12のまとめ)
骨の欠損部位に、肥大化能を有する軟骨細胞およびヒドロキシアパタイトを用いた複合材料を移植した場合、肥大化能を有さない軟骨細胞およびヒドロキシアパタイトを用いた複合材料を移植したものと比べて、骨形成率は高く、骨形成量は多かった(図9、図10および表2を参照のこと。)。骨の欠損部位に、肥大化能を有する軟骨細胞およびヒドロキシアパタイトを用いた複合材料を移植した場合、ヒドロキシアパタイト単独を移植したものと比べて、骨形成率は高く、骨形成量は多かった(図9、図10および表2を参照のこと。)。骨の欠損部位に、肥大化能を有さない軟骨細胞およびヒドロキシアパタイトを用いた複合材料を移植した場合と、ヒドロキシアパタイト単独を移植した場合とは、骨形成率および骨形成量に差異はなかった(図9、図10および表2を参照のこと。)。
【0175】
【表2】
【0176】
Empty:ヒドロキシアパタイト単独を、ラット頭蓋骨の欠損部位に移植した場合の、4週後の骨形成量(体積)と骨形成率(比率)。
GC:肥大化能を有する軟骨細胞(肋骨・肋軟骨部から採取した成長軟骨細胞)およびヒドロキシアパタイトと用いる複合材料を、ラット頭蓋骨の欠損部位に移植した場合の、4週後の骨形成量(体積)と骨形成率(比率)。
RC:肥大化能を有さない軟骨細胞(肋軟骨部から採取した静止軟骨細胞)およびヒドロキシアパタイトと用いる複合材料を、ラット頭蓋骨の欠損部位に移植した場合の、4週後の骨形成量(体積)と骨形成率(比率)。
【0177】
(比較例13:骨芽細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合の骨形成率および骨形成量)
(骨の欠損部位の作製ならびに骨形成率および骨形成量の測定)
生体適合性足場としてヒドロキシアパタイトを用いる。比較例4と同様の方法により得られた骨芽細胞とヒドロキシアパタイトの複合材料(直径4mm×厚さ1mmの円盤状)を、骨の欠損部位(直径4mm円孔の打抜き)に移植する。骨の欠損部位は、実施例3と同様の方法により作製する。移植の4、12週間後に移植部位を摘出し、μCTデータを測定する(65kV−154μA、80kV−125μA、または100kV−100μA、AlまたはTiフィルター、回転角度0.4度)。
【0178】
(骨形成率および骨形成量)
骨芽細胞およびヒドロキシアパタイトを用いた複合材料を骨の欠損部位に移植した場合、移植の4、12週間後に骨はわずかに新生される。新しく形成された骨の全体に占める割合は少ないことが確認される。骨形成率および骨形成量は、実施例5に記載される肥大化能を有する軟骨細胞およびヒドロキシアパタイトを用いた複合材料と比べて低いことが確認される。
【0179】
(比較例14:間葉系幹細胞もしくは間葉系幹細胞由来の骨芽細胞と生体適合性足場を用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合の骨形成率および骨形成量)
(骨の欠損部位の作製ならびに骨形成率および骨形成量の測定)
生体適合性足場としてヒドロキシアパタイトを用いる。比較例5と同様の方法により得られた間葉系幹細胞もしくは間葉系幹細胞由来の骨芽細胞とヒドロキシアパタイトの複合材料(直径4mm×厚さ1mmの円盤状)を、骨の欠損部位(直径4mm円孔の打抜き)に移植する。骨の欠損部位は、実施例3と同様の方法により作製する。移植の4、12週間後に移植部位を摘出し、μCTデータを測定する(65kV−154μA、80kV−125μA、または100kV−100μA、AlまたはTiフィルター、回転角度0.4度)。
【0180】
(骨形成率および骨形成量)
間葉系幹細胞もしくは間葉系幹細胞由来の骨芽細胞とヒドロキシアパタイトを用いた複合材料を骨の欠損部位に移植した場合、移植の4、12週間後に骨はわずかに新生される。新しく形成された骨の全体に占める割合は少ないことが確認される。骨形成率および骨形成量は、実施例5に記載される肥大化能を有する軟骨細胞およびヒドロキシアパタイトを用いた複合材料と比べて低いことが確認される。
【0181】
(実施例6:肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料に対して、培養培地が与える影響)
(肋骨・肋軟骨部からの肥大化能を有する軟骨細胞の調製および確認)
実施例1と同じ方法を用いて肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を調製した。
【0182】
(肋骨・肋軟骨部から採取した肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料の作製)
実施例1により得られた肥大化能を有する軟骨細胞に、MEM増殖培地を加えて1×106細胞/mlに希釈した。この細胞懸濁液を、ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイトのそれぞれに均一に播種し、37℃にて、5% CO2インキュベーター中で1週間培養した。
【0183】
これらの培養物を、ラットの皮下に移植する。移植の4週間後、ラットを屠殺して移植部位を摘出し、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋する。薄切標本を作製し、HE染色して移植部位の状態を確認する。ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成が観察される。
【0184】
(実施例7:ヒト由来の肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合の効果)
(ヒト由来の肥大化能を有する軟骨細胞の調製)
多肢症、腫瘍、提供軟骨組織などのヒト組織由来の肥大化能を有する軟骨細胞を、ヒト組織資源活用機関(財団法人ヒューマンサイエンス振興財団ヒューマンサイエンス研究資源バンク(HSRRB)、独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンター、独立行政法人医薬基盤研究所JCRB細胞バンク、東北大学加齢医学研究所などの日本の機関、およびInternational Institute for the Advancement of Medicine(IIAM)、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)などの海外の機関、大日本住友製薬株式会社、三光純薬株式会社、東洋紡績株式会社、Cambrex社、Osiris社などの細胞提供業者)より入手する。入手した細胞をHamF12増殖培地に播種する。
【0185】
(肥大化能を有する軟骨細胞の確認)
実施例1と同様の方法を使用して、調製した細胞が肥大化能を有する軟骨細胞であることを確認する。
【0186】
(ヒト由来の肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料の作製)
本実施例により得られた肥大化能を有する軟骨細胞を用いて、実施例1に記載の方法により、複合材料を調製し、免疫不全動物(ヌードマウスおよびヌードラットなど)の皮下に移植する。移植の4週間後、該動物を屠殺して移植部位を摘出し、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋する。薄切標本を作製し、HE染色して移植部位の状態を確認する。ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成が観察される。
【0187】
(肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合の効果)
骨の欠損部位を、実施例3と同様の方法により作製する。本実施例より得られた肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を、骨の欠損部位に移植する。移植の4、12週間後、ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成が観察される。
【0188】
(骨の欠損部位における骨形成率および骨形成量の測定)
移植部位における骨形成率および骨形成量を、実施例5と同じ方法によって測定する。肥大化能を有する軟骨細胞およびヒドロキシアパタイトを用いた複合材料を骨の欠損部位に移植した場合、移植の4、12週間後に骨の新生が確認される。
【0189】
(比較例15A:ヒト由来の肥大化能を有さない軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合の効果)
(ヒト由来の肥大化能を有さない軟骨細胞の調製および確認)
多肢症、腫瘍、提供軟骨組織などのヒト組織由来の肥大化能を有さない軟骨細胞を、ヒト組織資源活用機関(財団法人ヒューマンサイエンス振興財団ヒューマンサイエンス研究資源バンク(HSRRB)、独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンター、独立行政法人医薬基盤研究所JCRB細胞バンク、東北大学加齢医学研究所などの日本の機関、およびInternational Institute for the Advancement of Medicine(IIAM)、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)などの海外の機関、大日本住友製薬株式会社、三光純薬株式会社、東洋紡績株式会社、Cambrex社、Osiris社などの細胞提供業者)より入手する。入手した細胞をHamF12増殖培地に播種する。実施例1と同様の方法を使用して、調製した細胞が肥大化能を有さない軟骨細胞であることを確認する。
【0190】
(ヒト由来の肥大化能を有さない軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料の作製)
本比較例により得られた肥大化能を有さない軟骨細胞を用いて、実施例1と同様の方法を使用することにより、複合材料を調製し、免疫不全動物(ヌードマウスおよびヌードラットなど)の皮下に移植する。移植の4週間後、該動物を屠殺して移植部位を摘出し、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋する。薄切標本を作製し、HE染色して移植部位の状態を確認する。ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成は生じない。
【0191】
(肥大化能を有さない軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合の効果)
骨の欠損部位を、実施例3と同様の方法により作製する。本比較例より得られた肥大化能を有さない軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を、骨の欠損部位に移植する。移植の4、12週間後、ゼラチンおよびコラーゲン各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成は生じなく、ヒドロキシアパタイトの生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成は移植片周辺部にわずかに生じる。
【0192】
(骨の欠損部位における骨形成率および骨形成量の測定)
移植部位における骨形成率および骨形成量を、実施例5と同じ方法によって測定する。肥大化能を有さない軟骨細胞およびヒドロキシアパタイトを用いた複合材料を骨の欠損部位に移植した場合、移植の4、12週間後に骨の新生がわずかに確認される。
【0193】
(比較例15B:ヒト由来の骨芽細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合の効果)
(ヒト由来の骨芽細胞の調製および確認)
ヒト組織資源活用機関(財団法人ヒューマンサイエンス振興財団ヒューマンサイエンス研究資源バンク(HSRRB)、独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンター、独立行政法人医薬基盤研究所JCRB細胞バンク、東北大学加齢医学研究所などの日本の機関、およびInternational Institute for the Advancement of Medicine(IIAM)、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)などの海外の機関、大日本住友製薬株式会社、三光純薬株式会社、東洋紡績株式会社、Cambrex社、Osiris社などの細胞提供業者)よりヒト骨芽細胞を入手する。入手した細胞をMEM増殖培地に播種する。比較例4と同様の方法を使用して、調製した細胞が骨芽細胞であることを確認する。
【0194】
(ヒト由来の骨芽細胞および生体適合性足場を用いる複合材料の作製)
本比較例により得られた骨芽細胞を用いて、実施例1と同様の方法を使用することにより、複合材料を調製し、免疫不全動物(ヌードマウスおよびヌードラットなど)の皮下に移植する。移植の4週間後、該動物を屠殺して移植部位を摘出し、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋する。薄切標本を作製し、HE染色して移植部位の状態を確認する。ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成はわずかに生じる。
【0195】
(骨芽細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合の効果)
骨の欠損部位を、実施例3と同様の方法により作製する。本比較例より得られた骨芽細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を、骨の欠損部位に移植する。移植の4、12週間後、ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成はわずかに生じる。
【0196】
(骨の欠損部位における骨形成率および骨形成量の測定)
移植部位における骨形成率および骨形成量を、実施例5と同じ方法によって測定する。骨芽細胞およびヒドロキシアパタイトを用いた複合材料を骨の欠損部位に移植した場合、移植の4、12週間後に骨の新生がわずかに確認される。
【0197】
(比較例15C:ヒト由来の間葉系幹細胞または間葉系幹細胞由来の骨芽細胞と生体適合性足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合の効果)
(ヒト由来の間葉系幹細胞の調製および確認)
ヒト組織資源活用機関(財団法人ヒューマンサイエンス振興財団ヒューマンサイエンス研究資源バンク(HSRRB)、独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンター、独立行政法人医薬基盤研究所JCRB細胞バンク、東北大学加齢医学研究所などの日本の機関、およびInternational Institute for the Advancement of Medicine(IIAM)、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)などの海外の機関、大日本住友製薬株式会社、三光純薬株式会社、東洋紡績株式会社、Cambrex社、Osiris社などの細胞提供業者)よりヒト由来の間葉系幹細胞を入手する。入手した細胞をHamF12増殖培地に播種する。
【0198】
(ヒト由来の間葉系幹細胞または間葉系幹細胞由来の骨芽細胞と生体適合性足場を用いる複合材料の作製)
本比較例により得られた間葉系幹細胞とMEM増殖培地を用いること以外、実施例1と同様の方法を使用することにより、複合材料を調製する。さらに、この複合材料をMEM分化培地中で5% CO2、37℃で2週間培養し、生体適合性を有する足場に存在する間葉系幹細胞を骨芽細胞に分化誘導させる。分化誘導された骨芽細胞とヒドロキシアパタイトの複合材料を、免疫不全動物(ヌードマウスおよびヌードラットなど)の皮下に移植する。この2週間の間葉系幹細胞の骨芽細胞への分化誘導操作を省き、生体適合性を有する足場に間葉系幹細胞が存在する複合材料も移植に用いる。移植の4週間後、該動物を屠殺して移植部位を摘出し、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋する。薄切標本を作製し、HE染色して移植部位の状態を確認する。間葉系幹細胞と生体適合性を有する足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合、ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成は観察されない。間葉系幹細胞から誘導された骨芽細胞と生体適合性を有する足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合、ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成がわずかに観察される。
【0199】
(ヒト由来の間葉系幹細胞または間葉系幹細胞由来の骨芽細胞と生体適合性足場を用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合の効果)
骨の欠損部位を、実施例3と同様の方法により作製する。本比較例より得られた間葉系幹細胞または間葉系幹細胞由来の骨芽細胞と生体適合性足場を用いる複合材料を、骨の欠損部位に移植する。移植の4、12週間後、ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料においてわずかに骨形成が観察される。
【0200】
(骨の欠損部位における骨形成率および骨形成量の測定)
移植部位における骨形成率および骨形成量を、実施例5と同じ方法によって測定する。間葉系幹細胞または間葉系幹細胞由来の骨芽細胞とヒドロキシアパタイトを用いた複合材料を骨の欠損部位に移植した場合、移植の4、12週間後に骨の新生がわずかに確認される。
【0201】
(実施例8:マウス肋骨・肋軟骨部由来の肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合の効果)
(肋骨・肋軟骨部からの肥大化能を有する軟骨細胞の調製および確認)
検体としてマウスを用いる。実施例1と同様の方法により、マウスの肋骨・肋軟骨部から肥大化能を有する軟骨細胞を調製し、この調製した細胞が肥大化能を有する軟骨細胞であることを確認する。
【0202】
(マウス肋骨・肋軟骨部由来の肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料の作製)
本実施例により得られた肥大化能を有する軟骨細胞を用いて、実施例1に記載の方法により、複合材料を調製し、マウスの皮下に移植する。移植の4週間後、マウスを屠殺して移植部位を摘出し、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋する。薄切標本を作製し、HE染色して移植部位の状態を確認する。ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成が観察される。
【0203】
(肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合の効果)
骨の欠損部位を、実施例3と同様の方法により作製する。本実施例より得られた肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を、骨の欠損部位に移植する。移植の4、12週間後、ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成が観察される。
【0204】
(骨の欠損部位における骨形成率および骨形成量の測定)
移植部位における骨形成率および骨形成量を、実施例5と同じ方法によって測定する。肥大化能を有する軟骨細胞およびヒドロキシアパタイトを用いた複合材料を骨の欠損部位に移植した場合、移植の4、12週間後に骨の新生が確認される。
【0205】
(比較例16A:マウス肋軟骨由来の肥大化能を有さない静止軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合の効果)
(マウス肋軟骨からの静止軟骨細胞の調製および確認)
検体としてマウスを用いる。比較例3Cと同様の方法により静止軟骨細胞を調製し、この調製した細胞が肥大化能を有さない静止軟骨細胞であることを確認する。
【0206】
(マウス肋軟骨由来の肥大化能を有さない静止軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料の作製)
本比較例により得られた肥大化能を有さない静止軟骨細胞を用いて、実施例1と同様の方法を使用することにより、複合材料を調製し、マウスの皮下に移植する。移植の4週間後、マウスを屠殺して移植部位を摘出し、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋する。薄切標本を作製し、HE染色して移植部位の状態を確認する。ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成は生じない。
【0207】
(肥大化能を有さない軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合の効果)
骨の欠損部位を、実施例3と同様の方法により作製する。本比較例より得られた肥大化能を有さない軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を、骨の欠損部位に移植する。移植の4、12週間後、ゼラチンおよびコラーゲン各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成は生じなく、ヒドロキシアパタイトの生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成は移植片周辺部にわずかに生じる。
【0208】
(骨の欠損部位における骨形成率および骨形成量の測定)
移植部位における骨形成率および骨形成量を、実施例5と同じ方法によって測定する。肥大化能を有さない軟骨細胞およびヒドロキシアパタイトを用いた複合材料を骨の欠損部位に移植した場合、移植の4、12週間後に骨の新生がわずかに確認される。
【0209】
(比較例16B:マウス由来の骨芽細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合の効果)
(マウス由来の骨芽細胞の調製および確認)
検体としてマウスを用いる。比較例4と同様の方法を使用して、マウスから骨芽細胞を調製し、この調製した細胞が骨芽細胞であることを確認する。
【0210】
(マウス由来の骨芽細胞および生体適合性足場を用いる複合材料の作製)
本比較例により得られた骨芽細胞を用いて、実施例1と同様の方法を使用することにより、複合材料を調製し、マウスの皮下に移植する。移植の4週間後、マウスを屠殺して移植部位を摘出し、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋する。薄切標本を作製し、HE染色して移植部位の状態を確認する。ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成はわずかに生じる。
【0211】
(マウス由来の骨芽細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合の効果)
骨の欠損部位を、実施例3と同様の方法により作製する。本比較例より得られた骨芽細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を、骨の欠損部位に移植する。移植の4、12週間後、ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料においてわずかに骨形成が観察される。
【0212】
(骨の欠損部位における骨形成率および骨形成量の測定)
移植部位における骨形成率および骨形成量を、実施例5と同じ方法によって測定する。骨芽細胞およびヒドロキシアパタイトを用いた複合材料を骨の欠損部位に移植した場合、移植の4、12週間後に骨の新生がわずかに確認される。
【0213】
(比較例16C:マウス由来の間葉系幹細胞または間葉系幹細胞由来の骨芽細胞と生体適合性足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合の効果)
(マウス由来の間葉系幹細胞の調製および確認)
検体としてマウスを用いる。比較例5と同様の方法を使用して間葉系幹細胞を調製し、この調製した細胞が間葉系幹細胞であることを確認する。
【0214】
(マウス由来の間葉系幹細胞または間葉系幹細胞由来の骨芽細胞と生体適合性足場を用いる複合材料の作製)
本比較例により得られた間葉系幹細胞とMEM増殖培地を用いること以外、実施例1と同様の方法を使用することにより、複合材料を調製する。さらに、この複合材料をMEM分化培地中で5% CO2、37℃で2週間培養し、生体適合性を有する足場に存在する間葉系幹細胞を骨芽細胞に分化誘導させる。分化誘導された骨芽細胞とヒドロキシアパタイトの複合材料を、マウスの皮下に移植する。この2週間の間葉系幹細胞の骨芽細胞への分化誘導操作を省き、生体適合性を有する足場に間葉系幹細胞が存在する複合材料も移植に用いる。移植の4週間後、マウスを屠殺して移植部位を摘出し、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋する。薄切標本を作製し、HE染色して移植部位の状態を確認する。間葉系幹細胞と生体適合性を有する足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合、ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成は観察されない。間葉系幹細胞から誘導された骨芽細胞と生体適合性を有する足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合、ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成がわずかに観察される。
【0215】
(間葉系幹細胞または間葉系幹細胞由来の骨芽細胞と生体適合性足場を用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合の効果)
骨の欠損部位を、実施例3と同様の方法により作製する。本比較例より得られた間葉系幹細胞または間葉系幹細胞由来の骨芽細胞と生体適合性足場を用いる複合材料を、骨の欠損部位に移植する。移植の4、12週間後、ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料においてわずかに骨形成が観察される。
【0216】
(骨の欠損部位における骨形成率および骨形成量の測定)
移植部位における骨形成率および骨形成量を、実施例5と同じ方法によって測定する。間葉系幹細胞または間葉系幹細胞由来の骨芽細胞とヒドロキシアパタイトを用いた複合材料を骨の欠損部位に移植した場合、移植の4、12週間後に骨の新生がわずかに確認される。
【0217】
(実施例9:ウサギ肋骨・肋軟骨部由来の肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合の効果)
(肋骨・肋軟骨部からの肥大化能を有する軟骨細胞の調製)
検体としてウサギを用いる。実施例1と同様の方法により、ウサギの肋骨・肋軟骨部から肥大化能を有する軟骨細胞を調製する。
【0218】
(肥大化能を有する軟骨細胞の確認)
実施例1と同様の方法を使用して、調製した細胞が肥大化能を有する軟骨細胞であることを確認する。
【0219】
(ウサギ肋骨・肋軟骨部由来の肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料の作製)
本実施例により得られた肥大化能を有する軟骨細胞を用いて、実施例1に記載の方法により、複合材料を調製し、ウサギの皮下に移植する。移植の4週間後、ウサギを屠殺して移植部位を摘出し、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋する。薄切標本を作製し、HE染色して移植部位の状態を確認する。ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成が観察される。
【0220】
(肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合の効果)
骨の欠損部位を、実施例3と同様の方法により作製する。本実施例より得られた肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を、骨の欠損部位に移植する。移植の4、12週間後、ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成が観察される。
【0221】
(骨の欠損部位における骨形成率および骨形成量の測定)
移植部位における骨形成率および骨形成量を、実施例5と同じ方法によって測定する。肥大化能を有する軟骨細胞およびヒドロキシアパタイトを用いた複合材料を骨の欠損部位に移植した場合、移植の4、12週間後に骨の新生が確認される。
【0222】
(比較例17A:ウサギ肋軟骨由来の肥大化能を有さない静止軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合の効果)
(ウサギ肋軟骨からの肥大化能を有さない静止軟骨細胞の調製および確認)
検体としてウサギを用いる。比較例3Cと同様の方法により静止軟骨細胞を調製し、この調製した細胞が肥大化能を有さない静止軟骨細胞であることを確認する。
【0223】
(ウサギ肋軟骨由来の肥大化能を有さない静止軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料の作製)
本比較例により得られた肥大化能を有さない静止軟骨細胞を用いて、実施例1と同様の方法を使用することにより、複合材料を調製し、ウサギの皮下に移植する。移植の4週間後、ウサギを屠殺して移植部位を摘出し、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋する。薄切標本を作製し、HE染色して移植部位の状態を確認する。ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成は生じない。
【0224】
(肥大化能を有さない静止軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合の効果)
骨の欠損部位を、実施例3と同様の方法により作製する。本比較例より得られた肥大化能を有さない静止軟骨細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を、骨の欠損部位に移植する。移植の4、12週間後、ゼラチンおよびコラーゲン各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成は生じなく、ヒドロキシアパタイトの生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成は移植片周辺部にわずかに生じる。
【0225】
(骨の欠損部位における骨形成率および骨形成量の測定)
移植部位における骨形成率および骨形成量を、実施例5と同じ方法によって測定する。肥大化能を有さない軟骨細胞およびヒドロキシアパタイトを用いた複合材料を骨の欠損部位に移植した場合、移植の4、12週間後に骨の新生がわずかに確認される。
【0226】
(比較例17B:ウサギ由来の骨芽細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合の効果)
(ウサギ由来の骨芽細胞の調製および確認)
検体としてウサギを用いる。比較例4と同様の方法を使用して、ウサギから骨芽細胞を調製し、この調製した細胞が骨芽細胞であることを確認する。
【0227】
(ウサギ由来の骨芽細胞および生体適合性足場を用いる複合材料の作製)
本比較例により得られた骨芽細胞を用いて、実施例1と同様の方法を使用することにより、複合材料を調製し、ウサギの皮下に移植する。移植の4週間後、ウサギを屠殺して移植部位を摘出し、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋する。薄切標本を作製し、HE染色して移植部位の状態を確認する。ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成はわずかに生じる。
【0228】
(骨芽細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合の効果)
骨の欠損部位を、実施例3と同様の方法により作製する。本比較例より得られた骨芽細胞および生体適合性足場を用いる複合材料を、骨の欠損部位に移植する。移植の4、12週間後、ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料においてわずかに骨形成が観察される。
【0229】
(骨の欠損部位における骨形成率および骨形成量の測定)
移植部位における骨形成率および骨形成量を、実施例5と同じ方法によって測定する。骨芽細胞およびヒドロキシアパタイトを用いた複合材料を骨の欠損部位に移植した場合、移植の4、12週間後に骨の新生がわずかに確認される。
【0230】
(比較例17C:ウサギ由来の間葉系幹細胞または間葉系幹細胞由来の骨芽細胞と生体適合性足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合の効果)
(ウサギ由来の間葉系幹細胞の調製および確認)
検体としてウサギを用いる。比較例5と同様の方法を使用して間葉系幹細胞を調製し、この調製した細胞が間葉系幹細胞であることを確認する。
【0231】
(ウサギ由来の間葉系幹細胞または間葉系幹細胞由来の骨芽細胞と生体適合性足場を用いる複合材料の作製)
本比較例により得られた間葉系幹細胞とMEM増殖培地を用いること以外、実施例1と同様の方法を使用することにより、複合材料を調製する。さらに、この複合材料をMEM分化培地中で5% CO2、37℃で2週間培養し、生体適合性を有する足場に存在する間葉系幹細胞を骨芽細胞に分化誘導させる。分化誘導された骨芽細胞とヒドロキシアパタイトの複合材料を、ウサギの皮下に移植する。この2週間の間葉系幹細胞の骨芽細胞への分化誘導操作を省き、生体適合性を有する足場に間葉系幹細胞が存在する複合材料も移植に用いる。移植の4週間後、ウサギを屠殺して移植部位を摘出し、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋する。薄切標本を作製し、HE染色して移植部位の状態を確認する。間葉系幹細胞と生体適合性を有する足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合、ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成は観察されない。間葉系幹細胞から誘導された骨芽細胞と生体適合性を有する足場を用いる複合材料を皮下に移植した場合、ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料において骨形成がわずかに観察される。
【0232】
(間葉系幹細胞または間葉系幹細胞由来の骨芽細胞と生体適合性足場を用いる複合材料を骨の欠損部位に移植した場合の効果)
骨の欠損部位を、実施例3と同様の方法により作製する。本比較例より得られた間葉系幹細胞または間葉系幹細胞由来の骨芽細胞と生体適合性足場を用いる複合材料を、骨の欠損部位に移植する。移植の4、12週間後、ゼラチン、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイト各々の生体適合性を有する足場を用いる複合材料においてわずかに骨形成が観察される。
【0233】
(骨の欠損部位における骨形成率および骨形成量の測定)
移植部位における骨形成率および骨形成量を、実施例5と同じ方法によって測定する。間葉系幹細胞または間葉系幹細胞由来の骨芽細胞とヒドロキシアパタイトを用いた複合材料を骨の欠損部位に移植した場合、移植の4、12週間後に骨の新生がわずかに確認される。
【0234】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0235】
本発明は、肥大化能を有する軟骨細胞および生体に対して生体適合性を有する足場を使用することによって足場と細胞との組み合わせとしては、予想外に骨形成が進展するという性質をもつ複合材料を提供することにより、実用的とは従来考えられていなかった足場と肥大化能を有する軟骨細胞との組み合わせが骨欠損に実用上耐え得るレベルで使用可能となり、従来人工物での移植処置の成績が不良であった部位の処置が可能になるという有用性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0236】
【図1A】図1Aは、胸骨体下部の剣状突起移行部を示す図である。
【図1B】図1Bは、細胞が肥大化した軟骨細胞が存在する成長軟骨層(中央部)、骨から構成される胸骨体部(右側)、肥大化していない軟骨細胞が存在する層(左側)を示す。
【図1C】図1Cは、肥大化能を有する軟骨細胞(肋骨・肋軟骨由来の成長軟骨細胞)5×105個を含むペレットを1週間培養した後の顕微鏡写真である。染色はHE染色である。図8と比較すると、細胞が肥大化していることが観察できる。左下のバーは30μm。
【図2A】図2Aは、肥大化能を有する軟骨細胞を希釈した細胞液をヒドロキシアパタイトに播種し、アルカリホスファターゼ染色した結果を示す。1×106細胞/mlでヒドロキシアパタイトに播種し、37℃にて、5% CO2インキュベーター中で3時間培養した後、アルカリホスファターゼ染色を行った。アルカリホスファターゼ染色では、試料は赤く染まった。
【図2B】図2Bは、肥大化能を有する軟骨細胞を希釈した細胞液をヒドロキシアパタイトに播種し、アルカリホスファターゼ染色した結果を示す。1×106細胞/mlでヒドロキシアパタイトに播種し、37℃にて、5% CO2インキュベーター中で1日間培養した後、アルカリホスファターゼ染色を行った。アルカリホスファターゼ染色では、試料は赤く染まった。
【図2C】図2Cは、肥大化能を有する軟骨細胞を希釈した細胞液をヒドロキシアパタイトに播種し、アルカリホスファターゼ染色した結果を示す。1×106細胞/mlでヒドロキシアパタイトに播種し、37℃にて、5% CO2インキュベーター中で3日間培養した後、アルカリホスファターゼ染色を行った。アルカリホスファターゼ染色では、試料は赤く染まった。
【図2D】図2Dは、肥大化能を有する軟骨細胞を希釈した細胞液をヒドロキシアパタイトに播種し、アルカリホスファターゼ染色した結果を示す。1×106細胞/mlでヒドロキシアパタイトに播種し、37℃にて、5% CO2インキュベーター中で1週間培養した後、アルカリホスファターゼ染色を行った。アルカリホスファターゼ染色では、試料は赤く染まった。
【図2E】図2Eは、図2Aのアルカリホスファターゼ染色した試料を、トルイジン青染色をした結果を示す。トルイジン青染色では同一部分が青く染まり、細胞が存在することが確認された。下段は、トルイジン青染色したヒドロキシアパタイトの断面図である。
【図2F】図2Fは、図2Bのアルカリホスファターゼ染色した試料を、トルイジン青染色をした結果を示す。トルイジン青染色では同一部分が青く染まり、細胞が存在することが確認された。
【図2G】図2Gは、図2Cのアルカリホスファターゼ染色した試料を、トルイジン青染色をした結果を示す。トルイジン青染色では同一部分が青く染まり、細胞が存在することが確認された。
【図2H】図2Hは、図2Dのアルカリホスファターゼ染色した試料を、トルイジン青染色をした結果を示す。トルイジン青染色では同一部分が青く染まり、細胞が存在することが確認された。
【図3A】図3Aは、肋骨・肋軟骨部由来の肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性を有する足場としてゼラチンを用いた場合の複合材料を移植したラット皮下移植部位の4週間後のHE染色である。左下のバーは100μm。
【図3B】図3Bは、肋骨・肋軟骨部由来の肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性を有する足場としてコラーゲンを用いた場合の複合材料を移植したラット皮下移植部位の4週間後のHE染色である。左下のバーは100μm。
【図3C】図3Cは、肋骨・肋軟骨部由来の肥大化能を有する軟骨細胞および生体適合性を有する足場としてヒドロキシアパタイトを用いた場合の複合材料を移植したラット皮下移植部位の4週間後のHE染色である。左下のバーは200μm。
【図4】図4は、ヒドロキシアパタイト単独を移植したラット皮下移植部位の4週間後のHE染色である。
【図5A】図5Aは、胸骨由来の肥大化能を有する軟骨細胞を希釈した細胞液をヒドロキシアパタイトに播種し、アルカリホスファターゼ染色した結果を示す。1×106細胞/mlでヒドロキシアパタイトに播種し、37℃にて、5% CO2インキュベーター中で1週間培養した後、アルカリホスファターゼ染色を行った。アルカリホスファターゼ染色では、試料は赤く染まった。
【図5B】図5Bは、胸骨の成長軟骨部以外の部位から採取した軟骨細胞を希釈した細胞液をヒドロキシアパタイトに播種し、アルカリホスファターゼ染色した結果を示す。1×106細胞/mlでヒドロキシアパタイトに播種し、37℃にて、5% CO2インキュベーター中で1週間培養した後、アルカリホスファターゼ染色を行った。アルカリホスファターゼ染色では、試料は染まらなかった。
【図6A】図6Aは、関節軟骨部由来の肥大化能を有さない軟骨細胞を希釈した細胞液をヒドロキシアパタイトに播種し、アルカリホスファターゼ染色した結果を示す。1×106細胞/mlでヒドロキシアパタイトに播種し、37℃にて、5% CO2インキュベーター中で1週間培養した後、アルカリホスファターゼ染色を行った。アルカリホスファターゼ染色では、試料は染まらなかった。
【図6B】図6Bは、図6Aのアルカリホスファターゼ染色した試料を、トルイジン青染色をした結果を示す。トルイジン青染色では、試料は青く斑点状に染まり、細胞が存在することが確認された。
【図7A】図7Aは、肥大化能を有さない静止軟骨細胞を希釈した細胞液をヒドロキシアパタイトに播種し、アルカリホスファターゼ染色した結果を示す。1×106細胞/mlでヒドロキシアパタイトに播種し、37℃にて、5% CO2インキュベーター中で3時間培養した後、アルカリホスファターゼ染色を行った。アルカリホスファターゼ染色では、試料は染まらなかった。
【図7B】図7Bは、肥大化能を有さない静止軟骨細胞を希釈した細胞液をヒドロキシアパタイトに播種し、アルカリホスファターゼ染色した結果を示す。1×106細胞/mlでヒドロキシアパタイトに播種し、37℃にて、5% CO2インキュベーター中で1日間培養した後、アルカリホスファターゼ染色を行った。アルカリホスファターゼ染色では、試料は染まらなかった。
【図7C】図7Cは、肥大化能を有さない静止軟骨細胞を希釈した細胞液をヒドロキシアパタイトに播種し、アルカリホスファターゼ染色した結果を示す。1×106細胞/mlでヒドロキシアパタイトに播種し、37℃にて、5% CO2インキュベーター中で3日間培養した後、アルカリホスファターゼ染色を行った。アルカリホスファターゼ染色では、試料は染まらなかった。
【図7D】図7Dは、肥大化能を有さない静止軟骨細胞を希釈した細胞液をヒドロキシアパタイトに播種し、アルカリホスファターゼ染色した結果を示す。1×106細胞/mlでヒドロキシアパタイトに播種し、37℃にて、5% CO2インキュベーター中で1週間培養した後、アルカリホスファターゼ染色を行った。アルカリホスファターゼ染色では、試料は染まらなかった。
【図7E】図7Eは、図7Aのアルカリホスファターゼ染色した試料を、トルイジン青染色をした結果を示す。トルイジン青染色では、試料は青く染まり、細胞が存在することが確認された。
【図7F】図7Fは、図7Bのアルカリホスファターゼ染色した試料を、トルイジン青染色をした結果を示す。トルイジン青染色では、試料は青く染まり、細胞が存在することが確認された。
【図7G】図7Gは、図7Cのアルカリホスファターゼ染色した試料を、トルイジン青染色をした結果を示す。トルイジン青染色では、試料は青く染まり、細胞が存在することが確認された。
【図7H】図7Hは、図7Dのアルカリホスファターゼ染色した試料を、トルイジン青染色をした結果を示す。トルイジン青染色では、試料は青く染まり、細胞が存在することが確認された。
【図8】図8は、肥大化能を有さない軟骨細胞(肋軟骨由来の静止軟骨細胞)5×105個を含むペレットを1週間培養し、HE染色した顕微鏡写真である。図1と比較すると、細胞が肥大化していないことが観察された。左下のバーは30μm。
【図9】図9は、骨の欠損部位に、肥大化能を有する軟骨細胞およびヒドロキシアパタイトを用いた複合材料、肥大化能を有さない軟骨細胞およびヒドロキシアパタイトを用いた複合材料、またはヒドロキシアパタイト単独を移植した場合の骨形成率を示す。Empty:ヒドロキシアパタイト単独を、ラット頭蓋骨の欠損部位に移植した場合の、4週後の骨形成率(比率)。GC:肥大化能を有する軟骨細胞(肋骨・肋軟骨部から採取した成長軟骨細胞)およびヒドロキシアパタイトと用いる複合材料を、ラット頭蓋骨の欠損部位に移植した場合の、4週後の骨形成率(比率)。RC:肥大化能を有さない軟骨細胞(肋軟骨部から採取した静止軟骨細胞)およびヒドロキシアパタイトと用いる複合材料を、ラット頭蓋骨の欠損部位に移植した場合の、骨形成率(比率)。
【図10】図10は、骨の欠損部位に、肥大化能を有する軟骨細胞およびヒドロキシアパタイトを用いた複合材料、肥大化能を有さない軟骨細胞およびヒドロキシアパタイトを用いた複合材料、またはヒドロキシアパタイト単独を移植した場合の骨形成量を示す。Empty:ヒドロキシアパタイト単独を、ラット頭蓋骨の欠損部位に移植した場合の、4週後の骨形成量(体積)。GC:肥大化能を有する軟骨細胞(肋骨・肋軟骨部から採取した成長軟骨細胞)およびヒドロキシアパタイトと用いる複合材料を、ラット頭蓋骨の欠損部位に移植した場合の、4週後の骨形成量(体積)。RC:肥大化能を有さない軟骨細胞(肋軟骨部から採取した静止軟骨細胞)およびヒドロキシアパタイトと用いる複合材料を、ラット頭蓋骨の欠損部位に移植した場合の、4週後の骨形成量(体積)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体内の骨形成を促進または誘発するための複合材料であって、
A)肥大化能を有する軟骨細胞、および
B)該生体に対して生体適合性を有する足場
を含む、複合材料。
【請求項2】
前記骨形成は、骨の欠損部位を修復するためのものである、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記複合材料は、固定のみでは修復できない大きさの骨の欠損部位の骨形成を改善するために用いられる、請求項2に記載の複合材料。
【請求項4】
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、前記生体に対して生体適合性を有する足場の表面および該生体に対して生体適合性を有する足場の内部孔内からなる群より選択される領域に含まれる、請求項1に記載の複合材料。
【請求項5】
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、X型コラーゲン、アルカリホスファターゼ、オステオネクチン、II型コラーゲン、軟骨型プロテオグリカンまたはその成分、ヒアルロン酸、IX型コラーゲン、XI型コラーゲンおよびコンドロモジュリンからなる群より選択される少なくとも1つのマーカーを発現している、請求項1に記載の複合材料。
【請求項6】
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、形態学的に肥大化することを特徴とする、請求項1に記載の複合材料。
【請求項7】
5×105個の前記細胞を含む培地を遠心することにより該細胞のペレットを作製し、該細胞ペレットを一定期間培養し、顕微鏡下に確認した培養前の細胞の大きさと培養後の細胞の大きさを比較し、有意な成長が確認されたときに、前記肥大化能を有すると判定される、請求項6に記載の複合材料。
【請求項8】
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、哺乳類動物由来である、請求項1に記載の複合材料。
【請求項9】
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、ヒト由来、マウス由来、ラット由来、ウサギ由来、イヌ由来、ネコ由来、またはウマ由来である、請求項8に記載の複合材料。
【請求項10】
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、前記生体と同種異系の関係にある個体由来である、請求項1に記載の複合材料。
【請求項11】
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、前記生体と異種の関係にある個体由来である、請求項1に記載の複合材料。
【請求項12】
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、肋骨の骨軟骨移行部、長管骨の骨端線部、脊椎骨の骨端線部、小骨の成長軟骨帯、軟骨膜、胎児の軟骨から形成された骨原基部、骨折治癒時の仮骨部および骨増殖期の軟骨部からなる群より選択される部分から採取された細胞である、請求項1に記載の複合材料。
【請求項13】
前記長管骨の骨端線部が、大腿骨、脛骨、腓骨、上腕骨、尺骨および橈骨からなる群より選択される部位である、請求項12に記載の複合材料。
【請求項14】
前記小骨の成長軟骨帯が、手骨、足骨および胸骨からなる群より選択される部位である、請求項12に記載の複合材料。
【請求項15】
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、1×107細胞/ml〜1×104細胞/mlの細胞密度に調整されている、請求項1に記載の複合材料。
【請求項16】
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、Ham’s F12(HamF12)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、最小必須培地(MEM)、最小必須培地α(αMEM)、イーグル基礎培地(BME)、フィットン−ジャクソン改変培地(BGJb)およびそれらの組み合わせからなる群より選択される培地を含む培地中で培養された細胞である、請求項1に記載の複合材料。
【請求項17】
前記培地は、細胞の増殖、分化、またはその両方を促進する物質を含む、請求項16に記載の複合材料。
【請求項18】
前記培地は、トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)、骨形成因子(BMP)、白血病阻止因子(LIF)、コロニー刺激因子(CSF)、アスコルビン酸、デキサメサゾン、グリセロリン酸、インスリン様成長因子(IGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、多血小板血漿(PRP)、血小板由来増殖因子(PDGF)および血管内皮増殖因子(VEGF)からなる群より選択される少なくとも1つの成分を含む培地である、請求項16に記載の複合材料。
【請求項19】
前記生体に対して生体適合性を有する足場は、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、アルミナ、ジルコニア、アパタイト−ウォラストナイト析出ガラス、ゼラチン、コラーゲン、キチン、フィブリン、ヒアルロン酸、絹、セルロース、デキストラン、ポリ乳酸、ポリロイシン、アルギン酸、ポリグリコール酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリシアノアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体、ナイロン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される物質を含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項20】
前記生体に対して生体適合性を有する足場は、リン酸カルシウム、ゼラチン、コラーゲンまたはそれらの組み合わせから構成される、請求項19に記載の複合材料。
【請求項21】
前記生体に対して生体適合性を有する足場は、ヒドロキシアパタイトから構成される、請求項20に記載の複合材料。
【請求項22】
生体内の骨形成を促進または誘発するための複合材料を製造するための方法であって、以下の工程:
A)肥大化能を有する軟骨細胞を提供する工程、および
B)該肥大化能を有する軟骨細胞を該生体に対して生体適合性を有する足場上で培養する工程、
を包含する、方法。
【請求項23】
前記A)工程は、X型コラーゲン、アルカリホスファターゼ、オステオネクチン、II型コラーゲン、軟骨型プロテオグリカンまたはその成分、ヒアルロン酸、IX型コラーゲン、XI型コラーゲンおよびコンドロモジュリンからなる群より選択される少なくとも1つのマーカーの発現を指標として前記肥大化能を有する軟骨細胞を提供する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記A)工程は、肥大化を指標として前記肥大化能を有する軟骨細胞を提供し、
5×105個の前記細胞を含む培地を遠心することにより該細胞のペレットを作製し、該細胞ペレットを一定期間培養し、顕微鏡下に確認した培養前の細胞の大きさと培養後の細胞の大きさを比較し、有意な成長が確認されたときに、前記肥大化能を有すると判定される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、哺乳類動物由来である、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、ヒト由来、マウス由来、ラット由来、ウサギ由来、イヌ由来、ネコ由来、またはウマ由来である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、肋骨の骨軟骨移行部、長管骨の骨端線部、脊椎骨の骨端線部、小骨の成長軟骨帯、軟骨膜、胎児の軟骨から形成された骨原基部、骨折治癒時の仮骨部および骨増殖期の軟骨部からなる群より選択される部分から採取された細胞である、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記長管骨の骨端線部が、大腿骨、脛骨、腓骨、上腕骨、尺骨および橈骨からなる群より選択される部位である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記小骨の成長軟骨帯が、手骨、足骨および胸骨からなる群より選択される部位である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、1×107細胞/ml〜1×104細胞/mlの細胞密度で提供される、請求項22に記載の方法。
【請求項31】
前記B)工程について、前記肥大化能を有する軟骨細胞を、Ham’s F12(HamF12)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、最小必須培地(MEM)、最小必須培地α(αMEM)、イーグル基礎培地(BME)、フィットン−ジャクソン改変培地(BGJb)およびそれらの組み合わせからなる群より選択される培地を含む培地中で培養することを包含する、請求項22に記載の方法。
【請求項32】
前記B)工程において、前記肥大化能を有する軟骨細胞は、細胞の増殖、分化またはその両方を促進する物質を含む培地中で培養される、請求項22に記載の方法。
【請求項33】
前記B)工程において、前記肥大化能を有する軟骨細胞は、トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)、骨形成因子(BMP)、白血病阻止因子(LIF)、コロニー刺激因子(CSF)、アスコルビン酸、デキサメサゾン、グリセロリン酸、インスリン様成長因子(IGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、多血小板血漿(PRP)、血小板由来増殖因子(PDGF)および血管内皮増殖因子(VEGF)からなる群より選択される少なくとも1つの成分を含む培地中で培養される、請求項22に記載の方法。
【請求項34】
前記生体に対して生体適合性を有する足場は、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、アルミナ、ジルコニア、アパタイト−ウォラストナイト析出ガラス、ゼラチン、コラーゲン、キチン、フィブリン、ヒアルロン酸、絹、セルロース、デキストラン、ポリ乳酸、ポリロイシン、アルギン酸、ポリグリコール酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリシアノアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体、ナイロン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される物質を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項35】
前記生体に対して生体適合性を有する足場は、リン酸カルシウム、ゼラチンまたはコラーゲンである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記生体に対して生体適合性を有する足場は、ヒドロキシアパタイトである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、前記生体に対して生体適合性を有する足場の表面および該生体に対して生体適合性を有する足場の内部孔内からなる群より選択される領域で、37℃、5%〜10%CO2存在下で培養された細胞である、請求項22に記載の方法。
【請求項38】
前記培養する工程は、前記肥大化能を有する軟骨細胞が前記生体適合性を有する足場に定着するのに十分な期間にわたって実施される、請求項22に記載の方法。
【請求項39】
生体内の骨形成を促進または誘発するためのインプラントまたは骨補填材料の製造における、複合材料の使用であって、該複合材料は、
A)肥大化能を有する軟骨細胞、および
B)該生体に対して生体適合性を有する足場、
を含む、使用。
【請求項40】
骨の欠損部位を修復するための方法であって、該方法は、肥大化能を有する軟骨細胞と該生体に対して生体適合性を有する足場とを含む複合材料を、該骨の欠損部位に移植する工程を包含する、方法。
【請求項41】
前記複合材料は、固定のみでは修復できない大きさの骨の欠損部位の骨形成を改善するために用いられる、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
肥大化能を有する軟骨細胞を調製する方法であって、胸骨体下部の剣状突起移行部から細胞を採取する工程を包含する、方法。
【請求項1】
生体内の骨形成を促進または誘発するための複合材料であって、
A)肥大化能を有する軟骨細胞、および
B)該生体に対して生体適合性を有する足場
を含む、複合材料。
【請求項2】
前記骨形成は、骨の欠損部位を修復するためのものである、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記複合材料は、固定のみでは修復できない大きさの骨の欠損部位の骨形成を改善するために用いられる、請求項2に記載の複合材料。
【請求項4】
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、前記生体に対して生体適合性を有する足場の表面および該生体に対して生体適合性を有する足場の内部孔内からなる群より選択される領域に含まれる、請求項1に記載の複合材料。
【請求項5】
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、X型コラーゲン、アルカリホスファターゼ、オステオネクチン、II型コラーゲン、軟骨型プロテオグリカンまたはその成分、ヒアルロン酸、IX型コラーゲン、XI型コラーゲンおよびコンドロモジュリンからなる群より選択される少なくとも1つのマーカーを発現している、請求項1に記載の複合材料。
【請求項6】
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、形態学的に肥大化することを特徴とする、請求項1に記載の複合材料。
【請求項7】
5×105個の前記細胞を含む培地を遠心することにより該細胞のペレットを作製し、該細胞ペレットを一定期間培養し、顕微鏡下に確認した培養前の細胞の大きさと培養後の細胞の大きさを比較し、有意な成長が確認されたときに、前記肥大化能を有すると判定される、請求項6に記載の複合材料。
【請求項8】
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、哺乳類動物由来である、請求項1に記載の複合材料。
【請求項9】
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、ヒト由来、マウス由来、ラット由来、ウサギ由来、イヌ由来、ネコ由来、またはウマ由来である、請求項8に記載の複合材料。
【請求項10】
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、前記生体と同種異系の関係にある個体由来である、請求項1に記載の複合材料。
【請求項11】
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、前記生体と異種の関係にある個体由来である、請求項1に記載の複合材料。
【請求項12】
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、肋骨の骨軟骨移行部、長管骨の骨端線部、脊椎骨の骨端線部、小骨の成長軟骨帯、軟骨膜、胎児の軟骨から形成された骨原基部、骨折治癒時の仮骨部および骨増殖期の軟骨部からなる群より選択される部分から採取された細胞である、請求項1に記載の複合材料。
【請求項13】
前記長管骨の骨端線部が、大腿骨、脛骨、腓骨、上腕骨、尺骨および橈骨からなる群より選択される部位である、請求項12に記載の複合材料。
【請求項14】
前記小骨の成長軟骨帯が、手骨、足骨および胸骨からなる群より選択される部位である、請求項12に記載の複合材料。
【請求項15】
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、1×107細胞/ml〜1×104細胞/mlの細胞密度に調整されている、請求項1に記載の複合材料。
【請求項16】
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、Ham’s F12(HamF12)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、最小必須培地(MEM)、最小必須培地α(αMEM)、イーグル基礎培地(BME)、フィットン−ジャクソン改変培地(BGJb)およびそれらの組み合わせからなる群より選択される培地を含む培地中で培養された細胞である、請求項1に記載の複合材料。
【請求項17】
前記培地は、細胞の増殖、分化、またはその両方を促進する物質を含む、請求項16に記載の複合材料。
【請求項18】
前記培地は、トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)、骨形成因子(BMP)、白血病阻止因子(LIF)、コロニー刺激因子(CSF)、アスコルビン酸、デキサメサゾン、グリセロリン酸、インスリン様成長因子(IGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、多血小板血漿(PRP)、血小板由来増殖因子(PDGF)および血管内皮増殖因子(VEGF)からなる群より選択される少なくとも1つの成分を含む培地である、請求項16に記載の複合材料。
【請求項19】
前記生体に対して生体適合性を有する足場は、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、アルミナ、ジルコニア、アパタイト−ウォラストナイト析出ガラス、ゼラチン、コラーゲン、キチン、フィブリン、ヒアルロン酸、絹、セルロース、デキストラン、ポリ乳酸、ポリロイシン、アルギン酸、ポリグリコール酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリシアノアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体、ナイロン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される物質を含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項20】
前記生体に対して生体適合性を有する足場は、リン酸カルシウム、ゼラチン、コラーゲンまたはそれらの組み合わせから構成される、請求項19に記載の複合材料。
【請求項21】
前記生体に対して生体適合性を有する足場は、ヒドロキシアパタイトから構成される、請求項20に記載の複合材料。
【請求項22】
生体内の骨形成を促進または誘発するための複合材料を製造するための方法であって、以下の工程:
A)肥大化能を有する軟骨細胞を提供する工程、および
B)該肥大化能を有する軟骨細胞を該生体に対して生体適合性を有する足場上で培養する工程、
を包含する、方法。
【請求項23】
前記A)工程は、X型コラーゲン、アルカリホスファターゼ、オステオネクチン、II型コラーゲン、軟骨型プロテオグリカンまたはその成分、ヒアルロン酸、IX型コラーゲン、XI型コラーゲンおよびコンドロモジュリンからなる群より選択される少なくとも1つのマーカーの発現を指標として前記肥大化能を有する軟骨細胞を提供する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記A)工程は、肥大化を指標として前記肥大化能を有する軟骨細胞を提供し、
5×105個の前記細胞を含む培地を遠心することにより該細胞のペレットを作製し、該細胞ペレットを一定期間培養し、顕微鏡下に確認した培養前の細胞の大きさと培養後の細胞の大きさを比較し、有意な成長が確認されたときに、前記肥大化能を有すると判定される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、哺乳類動物由来である、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、ヒト由来、マウス由来、ラット由来、ウサギ由来、イヌ由来、ネコ由来、またはウマ由来である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、肋骨の骨軟骨移行部、長管骨の骨端線部、脊椎骨の骨端線部、小骨の成長軟骨帯、軟骨膜、胎児の軟骨から形成された骨原基部、骨折治癒時の仮骨部および骨増殖期の軟骨部からなる群より選択される部分から採取された細胞である、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記長管骨の骨端線部が、大腿骨、脛骨、腓骨、上腕骨、尺骨および橈骨からなる群より選択される部位である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記小骨の成長軟骨帯が、手骨、足骨および胸骨からなる群より選択される部位である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、1×107細胞/ml〜1×104細胞/mlの細胞密度で提供される、請求項22に記載の方法。
【請求項31】
前記B)工程について、前記肥大化能を有する軟骨細胞を、Ham’s F12(HamF12)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、最小必須培地(MEM)、最小必須培地α(αMEM)、イーグル基礎培地(BME)、フィットン−ジャクソン改変培地(BGJb)およびそれらの組み合わせからなる群より選択される培地を含む培地中で培養することを包含する、請求項22に記載の方法。
【請求項32】
前記B)工程において、前記肥大化能を有する軟骨細胞は、細胞の増殖、分化またはその両方を促進する物質を含む培地中で培養される、請求項22に記載の方法。
【請求項33】
前記B)工程において、前記肥大化能を有する軟骨細胞は、トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)、骨形成因子(BMP)、白血病阻止因子(LIF)、コロニー刺激因子(CSF)、アスコルビン酸、デキサメサゾン、グリセロリン酸、インスリン様成長因子(IGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、多血小板血漿(PRP)、血小板由来増殖因子(PDGF)および血管内皮増殖因子(VEGF)からなる群より選択される少なくとも1つの成分を含む培地中で培養される、請求項22に記載の方法。
【請求項34】
前記生体に対して生体適合性を有する足場は、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、アルミナ、ジルコニア、アパタイト−ウォラストナイト析出ガラス、ゼラチン、コラーゲン、キチン、フィブリン、ヒアルロン酸、絹、セルロース、デキストラン、ポリ乳酸、ポリロイシン、アルギン酸、ポリグリコール酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリシアノアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体、ナイロン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される物質を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項35】
前記生体に対して生体適合性を有する足場は、リン酸カルシウム、ゼラチンまたはコラーゲンである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記生体に対して生体適合性を有する足場は、ヒドロキシアパタイトである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記肥大化能を有する軟骨細胞は、前記生体に対して生体適合性を有する足場の表面および該生体に対して生体適合性を有する足場の内部孔内からなる群より選択される領域で、37℃、5%〜10%CO2存在下で培養された細胞である、請求項22に記載の方法。
【請求項38】
前記培養する工程は、前記肥大化能を有する軟骨細胞が前記生体適合性を有する足場に定着するのに十分な期間にわたって実施される、請求項22に記載の方法。
【請求項39】
生体内の骨形成を促進または誘発するためのインプラントまたは骨補填材料の製造における、複合材料の使用であって、該複合材料は、
A)肥大化能を有する軟骨細胞、および
B)該生体に対して生体適合性を有する足場、
を含む、使用。
【請求項40】
骨の欠損部位を修復するための方法であって、該方法は、肥大化能を有する軟骨細胞と該生体に対して生体適合性を有する足場とを含む複合材料を、該骨の欠損部位に移植する工程を包含する、方法。
【請求項41】
前記複合材料は、固定のみでは修復できない大きさの骨の欠損部位の骨形成を改善するために用いられる、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
肥大化能を有する軟骨細胞を調製する方法であって、胸骨体下部の剣状突起移行部から細胞を採取する工程を包含する、方法。
【図1A】
【図9】
【図10】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図2H】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図7G】
【図7H】
【図8】
【図9】
【図10】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図2H】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図7G】
【図7H】
【図8】
【公開番号】特開2006−289062(P2006−289062A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−61931(P2006−61931)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】
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