説明

肥料散布装置用作業条件算出装置

【課題】肥料散布時に簡単に作業条件を算出可能であり、従来の肥料散布機にも使用可能な肥料散布装置用の作業条件算出装置を安価に提供する。
【解決手段】作業条件算出装置5は、作業走行速度と単位面積当たりの肥料散布量と散布する肥料の特性値の入力部を有し、入力部よりの各入力により肥料散布装置2のシャッタ部の開口量を算出してシャッタ開度を表示する表示部51を設けて肥料散布装置2とは別体で構成されている肥料散布装置用の作業条件算出装置5による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタ等の走行車に連結されて使用される肥料散布装置の作業条件を算出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、肥料散布装置で肥料を散布する場合、希望する単位面積当たりの肥料の散布量を決めて、これに基づいて走行車の走行速度と肥料散布装置からの肥料の繰出し量を計算し決定して散布が行われる。この場合、計算作業が煩わしいため図7に示すような予め設定された散布量早見表などを使用して作業条件を決定していた。また、肥料の繰出し量を変更するシャッタを電動で操作可能として、作業中の車速を計測しながら一定の散布量となるようにシャッタを自動制御により開閉する技術も公知である。
例えば特開2004−321163号公報(従来技術1)に記載の肥料散布機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−321163号公報(従来技術1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のように、散布都度計算して条件を決定する作業は煩わしく、散布量早見表などを使用して作業条件を決定するが、散布表の見間違いや、使用方法が理解し難いなどの問題があった。
【0005】
また、シャッタ部の電動作動構造や車速計測制御等の構造とした場合、製造コストが高額となる問題がある。
【0006】
このため本発明は、このような問題を解決すべくされたもので、肥料散布時に簡単に作業条件を算出可能であり、従来の肥料散布機にも使用可能な肥料散布装置用の作業条件算出装置を安価に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、肥料を収容するホッパの底板に肥料繰出し用の開口孔を設け、開口孔の開口量を調節して肥料の繰出し量を調節するシャッタ部を有したトラクタ等の走行車に連結されて使用される肥料散布装置の作業条件算出装置であり、作業条件算出装置は、前記走行車の作業走行速度と単位面積当たりの肥料散布量と散布する肥料の特性値の入力部を有し、前記入力部よりの各入力により前記肥料散布装置のシャッタ部の開口量を算出して適正なシャッタ開度を表示する表示部を設けて肥料散布装置とは別体で構成されていることを特徴とした肥料散布装置用の作業条件算出装置を提案する。
【0008】
また、肥料を収容するホッパの底板に肥料繰出し用の開口孔を設け、開口孔の開口量を調節して肥料の繰出し量を調節するシャッタ部を有したトラクタ等の走行車に連結されて使用される肥料散布装置の作業条件算出装置であり、作業条件算出装置は、前記肥料散布装置のシャッタ部のシャッタ開度と単位面積当たりの肥料散布量と散布する肥料の特性値の入力部を有し、前記入力部よりの入力により前記走行車の適正な作業走行速度を算出して表示する表示部を設けて肥料散布装置とは別体で構成されていることを特徴とした肥料散布装置用の作業条件算出装置を提案する。
【0009】
さらに、肥料の特性値は、使用する肥料散布装置で散布する肥料の散布可能散布幅と単位時間当たりの肥料繰出し量の値であることを特徴とした前記007欄又は008欄記載の肥料散布装置用の作業条件算出装置を提案する。
【0010】
さらにまた、作業走行速度と単位面積当たりの肥料散布量は、何れも又は何れかは予め設定された範囲内の値から選択して入力することを特徴とした前記007,008,009欄の何れかに記載の肥料散布装置用の作業条件算出装置を提案する。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、肥料散布装置とは別体で構成され肥料散布装置の状態に関わらず簡単に作業条件を設定することができ、安価に装置を構成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】制御過程を説明するためのフローチャート
【図2】制御過程を説明するためのフローチャート
【図3】シャッタ開度目盛りに対する各肥料の流下量の一例を示した流量表
【図4】本発明の実施例の作業条件算出装置
【図5】本発明の実施例の作業条件算出装置を使用して作業をする肥料散布機の一例
【図6】肥料散布機のシャッタが電動で開閉可能である場合の配線図の一例
【図7】従来の散布量早見表
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明の作業条件算出装置を説明する前に、この作業条件算出装置を使用して作業条件を設定して作業を行う肥料散布装置の一例を図5乃至図6に基づいて説明する。図5は走行装置であるトラクタ1に装着された肥料散布装置2を示したものである。本例の肥料散布装置2は水平回転する散布用円板部により肥料を拡散散布するブロードキャスターを示しているが、他の肥料散布装置である揺動するスパウトにより散布するブロードキャスターや、幅広のホッパから肥料を落下させて散布するライムソワータイプであっても本発明は適用できる。
【0014】
1はトラクタで、この後方に設けられた農作業機装着部に、肥料散布装置2が装着されている。肥料散布装置2前方部には、制御ユニット3が配設され、その下方には電動作動部20が設けてあり、この電動作動部20を作動させることにより、肥料散布装置2の散布量を調節するシャッタの開閉を行う。また、トラクタ1の座席近傍には、操作部4が設けてあり、トラクタ1の運転者が操作部4を操作して肥料散布装置2の制御ユニット3に信号を送り電動作動部20を作動させる。各操作部4や制御ユニット3へはトラクタ1のバッテリー10からハーネス40によりそれぞれ接続されて電気が供給されている。操作部4と制御ユニット3との間は通信ケーブル42で連結され信号を送信しているが、無線により信号のやり取りを行っても良い。また、電動によるシャッタの操作機構を有さずに、手動でシャッタの開閉を調節する散布装置であっても本発明の作業条件算出装置は使用できる。
【0015】
本例の肥料散布装置2は、前方部にトラクタ1に装着する為の装着部21を有し、この装着部21に支えられたフレーム22に、上方が開放されていて肥料が投入されるホッパ23が設けられ、ホッパ23下方底部には、水平方向にスライドすることで重合する孔の大きさを調節して肥料の落下量を調節するシャッタ部25が設けてあり、さらに、その下方にトラクタ1からの動力で水平回転する散布用円板部を設けシャッタ部25から落下した肥料を拡散散布するように構成された散布部24が設けられている。
【0016】
制御ユニット3はフレーム22前方上方部に設けられ、その下方部にモータにより作動する電動作動部20が配置されていてシャッタ部25のシャッタを開閉作動させる。
図6は、シャッタ部25を電動作動させるための配線図を示したもので、トラクタ側に設けられる操作部4及び肥料散布装置2側に設けられる制御ユニット3には、トラクタのバッテリー10が導通されていて、操作部4の操作指示により制御ユニット3のCPU30を有する制御部がリレー31を開閉し、これに連結されたモータで構成されている電動作動部20が作動して、シャッタ部25のシャッタが開閉される。トラクタ1に乗車した作業者は、操作部4を操作してシャッタ開度を設定するとともに、トラクタ1の走行速度を選択して作業を行う。
【0017】
前記作業を行う際に、散布する肥料の種類や単位面積当たりの散布量が決められているが、散布速度とシャッタ部のシャッタ開度の設定により単位面積当たりの散布量が変化するため、双方の条件を決定して作業を開始しなければならない。その方法には作業者自身の走行する作業速度を決定してシャッタ開度を計算する場合と、シャッタ開度を決定して走行速度を計算する場合とがある。速度V(km/h)は[1000平米(=10a)÷肥料散布機の散布幅W(m)]÷[単位面積当たりの散布量G(kg/10a)÷シャタ開度に対応する流量Q(kg/h)]で算出することができる。また、シャタ開度に対応する流量Q(kg/h)は速度V(km/h)×肥料散布機の散布幅W(m)×散布量G(kg/10a)÷1000平米(=10a)で算出される。
【0018】
前記の計算のシャタ開度に対応する流量Qは、シャッタの開口量と肥料の種類によって変化する値である。また、肥料散布機の散布幅Wも肥料の種類によって異なった数値となる。近年は多種類の肥料があり、それぞれ特性が異なるが、本実施例の肥料散布装置による測定データによると図3の流量表のようになる。データによると、肥料の種類は大粒状と小粒状及び粉状に分類すると流量Q及び散布幅Wはそれぞれ一定の値となる。表は各シャッタ開度目盛りのときの各肥料の流量と各肥料の本肥料散布装置で散布したときの散布幅を示している。
【0019】
前記のように肥料散布作業を行うには、散布都度計算して条件を決定する必要があり、作業は非常に煩わしいものとなっている。このため、図7に示すような散布量早見表を予め用意して簡易的にシャッタの開度量を求める方法も行われていた。これの使用方法は、先ず肥料の種類と10a当たりの散布量とトラクタの走行速度を決め、シャッタの開度量を求めるもので、例として肥料が大粒状の場合散布幅が約11mとし、54kg/10aの量を6km/hの速度で散布すると仮定すると、表の上方の54kg/10aの目盛りから下方に進み(1)大粒状肥料の散布幅10−12Mの中間11Mとの交点を見つけます。その交点から水平方向に進み(2)トラクタの速度6km/hとの交点を見つけます。その交点から下方に進む(3)と60の数値が得られます。この数値は、毎分散布量を表していて、60kg/分の量が散布されることを表しています。次にその位置から大粒状肥料の目盛りを読み取った「9」が本肥料散布装置のシャッタの設定目盛りとなります。逆の順序で行うとシャッタの設定目盛りを決定して10a当たりの散布量が求められる。しかし従来は、表の使用方法の間違いや見間違いにより散布量を間違える場合が発生していた。
【0020】
図4は本発明の肥料散布装置用作業条件算出装置の一例を示したもので、中央上部に表示部51が設けられ、その下方部に各条件を入力する入力部が設けられている。電源スイッチ50を押して電源を入れ、散布量スイッチ54を押すと、予め設定された範囲の散布量が表示部51に表示され右側の条件選択スイッチ56により目的の散布量に移動させて条件設定確認スイッチ55により確定させる。次に走行速度も同様に走行速度スイッチ53を押して、予め設定された範囲の走行速度が表示部51に表示され右側の条件選択スイッチ56により目的の走行速度に移動させて条件設定確認スイッチ55により確定させる。また、肥料の特性値を入力するための肥料の種類スイッチ52を押すと、大粒状肥料、小粒状肥料、粉状肥料が選択可能となっていて、右側の条件選択スイッチ56により選択して条件設定確認スイッチ55により確定させる。肥料の種類が確定すると散布幅も予め入力されて対応する値に決定され、これらの条件から流量が演算部で計算され、これに対応したシャッタ開度目盛りの値が表示部51に表示される。本例においては、散布幅の入力部を設けないで簡素化のため肥料の種類を入力すると自動的に対応する散布幅が演算部に入力されるようになっているが、散布幅の入力スイッチを設けて入力できるようにすると、実情にあったより正確な演算結果が得られる。
【0021】
図1と図2は、作業条件算出装置5の制御過程を説明するためのフローチャートである。作業条件算出装置5の肥料の種類スイッチ52と走行速度スイッチ53と散布量スイッチ54の入力部により条件が入力されると、流量が演算部で計算され、これに対応したシャッタ開度目盛りが表示部51に表示される。演算部での計算には、予め測定して得られた肥料ごとのデータがリンクされて使用される。データには肥料の特性値である大粒状肥料、小粒状肥料、粉状肥料のそれぞれの散布幅や各シャッタ開度目盛りに対応した流量のデータが入力されている。シャッタ開度目盛りのそれぞれに対応する流量は、それぞれ一定の範囲の流量が設定されている。また、走行速度スイッチにより作業者が希望する走行速度を入力する場合、任意に数値を入力するようにしても良いが、予め設定した範囲の数値を選択するようにすると、作業者が選択しやすいとともに、演算部も簡易に構成することができる。前記データは、複数の肥料散布装置のデータを組み込んでおくと、これを切替えることで一つの作業条件算出装置で複数の機種に容易に使用することができる。尚、肥料ごとの流量は、散布都度散布する肥料の実際の流量を測定した実測値を入力すると、より正確な散布精度で散布できる。
【0022】
図2は、図1の走行速度に変えて予め設定されたシャッタ開度を入力すると、対応する走行速度が演算され表示部51に走行速度が表示される場合を示したものである。
作業条件算出装置5は、作業者のポケットなどに入れられる様な大きさで携帯可能な構成であると容易に圃場で使用可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
この発明は、トラクタ等の走行機後方に装着されて使用される肥料散布装置の作業条件の算出に利用される。
【符号の説明】
【0024】
1 トラクタ
10 バッテリー
2 肥料散布装置
20 電動作動部(モータ)
21 装着部
22 フレーム
23 ホッパ
24 散布部
25 シャッタ部
3 制御ユニット
30 CPU
31 リレー
4 操作部
40 ハーネス
41 カプラー
42 通信ケーブル
5 作業条件算出装置
50 電源ケーブル
51 表示部
52 肥料の種類スイッチ
53 走行速度スイッチ
54 散布量スイッチ
55 条件設定確認スイッチ
56 条件選択スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肥料を収容するホッパの底板に肥料繰出し用の開口孔を設け、開口孔の開口量を調節して肥料の繰出し量を調節するシャッタ部を有したトラクタ等の走行車に連結されて使用される肥料散布装置の作業条件算出装置であり、
作業条件算出装置は、前記走行車の作業走行速度と単位面積当たりの肥料散布量と散布する肥料の特性値の入力部を有し、前記入力部よりの各入力により前記肥料散布装置のシャッタ部の開口量を算出して適切なシャッタ開度を表示する表示部を設けて肥料散布装置とは別体で構成されていることを特徴とした肥料散布装置用の作業条件算出装置。
【請求項2】
肥料を収容するホッパの底板に肥料繰出し用の開口孔を設け、開口孔の開口量を調節して肥料の繰出し量を調節するシャッタ部を有したトラクタ等の走行車に連結されて使用される肥料散布装置の作業条件算出装置であり、
作業条件算出装置は、前記肥料散布装置のシャッタ部のシャッタ開度と単位面積当たりの肥料散布量と散布する肥料の特性値の入力部を有し、前記入力部よりの入力により前記走行車の適切な作業走行速度を算出して表示する表示部を設けて肥料散布装置とは別体で構成されていることを特徴とした肥料散布装置用の作業条件算出装置。
【請求項3】
肥料の特性値は、使用する肥料散布装置で散布する肥料の散布可能散布幅と単位時間当たりの肥料繰出し量の値であることを特徴とした請求項1又は請求項2記載の肥料散布装置用の作業条件算出装置。
【請求項4】
作業走行速度と単位面積当たりの肥料散布量は、何れも又は何れかは予め設定された範囲内の値から選択して入力することを特徴とした請求項1乃至請求項3の何れかに記載の肥料散布装置用の作業条件算出装置。

【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−70667(P2012−70667A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218004(P2010−218004)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000171746)株式会社ササキコーポレーション (192)
【Fターム(参考)】