説明

肥満および/または糖尿病を診断、モニタリング、および治療するための組成物、試薬、およびキット、ならびにその方法

本発明は、肥満および/または糖尿病関連遺伝子の、交互スプライシングの13個の新規の変異体に関する。


【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2003年9月11日に出願された米国特許出願第10/659,782号(その内容全体を本明細書に援用するものとする)の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、肥満および糖尿病マーカーに、肥満および糖尿病マーカー転写産物および翻訳産物を検出可能な試薬に、肥満および糖尿病マーカー転写産物および翻訳産物を検出するためのキットおよび方法に、個人における肥満および糖尿病をスクリーニングおよび診断する、また、肥満および糖尿病と診断された患者における治療、疾患進行、および疾患再発への応答をモニタリングするための方法およびキットに、肥満および/または糖尿病マーカー転写産物の翻訳産物に特異的に結合する化合物に、治療薬としていくつかの肥満および糖尿病マーカーの組成物またはそれらの翻訳産物のうちの1つを使用する肥満および/または糖尿病の治療に、また、肥満および/または糖尿病を治療するための組成物およびその方法に関する。
【背景技術】
【0003】
肥満は、米国では、妨げることが可能な、タバコ喫煙に次いで2番目に重要な死因である。58,000,000人が肥満に悩まされていると推定されており、米国では毎年300,000人の死因となっており、その有病率は増大している。この疾患を患う人は、高血圧による病気、脂質障害、虚血性心疾患、II型糖尿病、脳卒中、胆嚢疾患、骨関節炎、睡眠無呼吸、呼吸系疾患、およびある種の癌のリスクが高い。
【0004】
エネルギー使用を超える過度のエネルギー摂取が存在する場合、肥満は発症する。この過剰の原因は、患者によって異なる可能性があり、様々な遺伝的、社会的および、環境的要因に由来すると考えられる。現在の研究では、同一の環境条件下で、異なる人が、異なる速度で体重を増し、その増加量は、遺伝的に決定されるらしいという見解が裏づけられている。自然淘汰により、我々の遠い祖先は、次の飢餓を通して体を維持するために、各々のごちそう(feast)からの脂肪を蓄える能力が高められた「倹約遺伝子」を獲得することとなったということが提唱されている。過度の高脂肪、高カロリーの「欧米式」食品という今日の環境では、「倹約遺伝子」は、不利益になってきている。
【0005】
ますます多くの科学者および医師が、良くない食事や運動の欠如のみが肥満の原因であるに過ぎないという従来の考えを却下するようになっており、肥満をますます医学的な状態と考える傾向にある。健康経済学者は、前向き研究および国民健康統計を使用して、1995年の米国における肥満の損失を992億ドルと算出した。2005年までに、世界で1億2000万人を超える人が肥満となるであろうと推定されている。米国における肥満の経済的な打撃は、糖尿病のそれと、ここでは同等であり、心疾患および高血圧に対する支出と並んでランクする。医療研究者は、過体重のアメリカ人において診断されるタイプII糖尿病の総症例の少なくとも88%、虚血性心疾患症例の57%、乳癌の11%、および大腸癌の10%は、肥満に起因すると算出している。
【0006】
世界保健機構は、肥満状態を流行病と分類し、人の健康および福祉に対する最も大きなリスクのうちの1つに取り組むために、特別対策委員会を設立した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
肥満および/または糖尿病特異的なマーカーが依然として必要である。患者からのサンプルにおいて、肥満および/または糖尿病マーカーの存在を検出するために使用できる試薬およびキットが依然として必要である。患者からのサンプルにおける、肥満および/または糖尿病を発症する将来的傾向を検出するために使用できる試薬およびキットが依然として必要である。肥満および/または糖尿病を患う個人をスクリーニングおよび診断する方法、ならびに、肥満および/または糖尿病と診断された患者における治療、疾患進行、および疾患再発に対する応答をモニタリングするための方法が依然として必要である。
【0008】
肥満を患う個人の肥満および/または糖尿病のタイプを決定するための試薬、キット、および方法が依然として必要である。肥満および/または糖尿病関連の細胞を特異的に標的にすることが可能な組成物が依然として必要である。肥満および/または糖尿病を患っている疑いがある個人を治療する改良された方法が依然として必要である。
【0009】
用語解説
以下の説明および特許請求の範囲では、折に触れて様々な用語が用いられることとなり、本発明に従って解釈されるべきであるこうした用語の意味は、以下の通りである。
【0010】
「肥満および/または糖尿病核酸配列」−前記配列および最少15b.p.長の上述の配列のフラグメント(以下、表2参照)に対して少なくとも90%の同一性(以下、表2参照)を有する、配列番号1から配列番号4のうちの、および配列番号22から配列番号25配列のうちのいずれか1つに示される配列。これらの配列は、244アミノ酸のヒト30kDaのグリコプロテインをコードする配列である、Locus Linkでは受入番号NM_004797で遺伝子座Hs.9370として表される、天然かつ既知のアディポネクチン(Adiponectin)の天然に存在する他のスプライスバリアントをコードする配列である。本発明の新規の変異体は、アディポネクチン(Adiponectin)の交互スプライシングに起因する天然に存在する配列であり、単に先端を切断された、突然変異させた、あるいは断片化されただけの形の遺伝子ではないことが強調されるべきである。
【0011】
−前記配列および最少15b.p.長の上述の配列のフラグメント(以下、表2参照)に対して少なくとも90%の同一性(以下参照)を有する、配列番号5から:配列番号9のうちの、および配列番号26から配列番号30のうちのいずれか1つに示される配列。これらの配列は、247アミノ酸のマウス30kDaグリコプロテインをコードする配列である、Locus Linkでは受入番号NM_009605で遺伝子座Mm.11450として表される、天然かつ既知のアディポネクチン(Adiponectin)の天然に存在する他のスプライスバリアントをコードする配列である。本発明の新規の変異体は、アディポネクチン(Adiponectin)の交互スプライシングに起因する天然に存在する配列であり、単に先端を切断された、突然変異させた、あるいは断片化されただけの形の遺伝子ではないことが強調されるべきである。
【0012】
−前記配列および最少15b.p.長の上述の配列のフラグメント(以下、表2参照)に対して少なくとも90%の同一性(以下、表2参照)を有する、配列番号10から:配列番号11のうちの、および配列番号31から配列番号32のうちのいずれか1つに示される配列。これらの配列は、117アミノ酸のヒト13kDaグリコプロテインをコードする配列である、Locus Linkでは受入番号NM_016362で遺伝子座Hs.51738として表される、天然かつ既知のグレリン(Ghrelin)の天然に存在する他のスプライスバリアントをコードする配列である。本発明の新規の変異体は、グレリンの交互スプライシングに起因する天然に存在する配列であり、単に先端を切断された、突然変異させた、あるいは断片化されただけの形の遺伝子ではないことが強調されるべきである。
【0013】
−前記配列および最少15b.p.長の上述の配列のフラグメント(以下、表2参照)に対して少なくとも90%の同一性(以下、表2参照)を有する、配列番号12から:配列番号18のうちの、および配列番号33から配列番号39のうちのいずれか1つに示される配列。これらの配列は、292アミノ酸のヒト32kDaグリコプロテインをコードする配列である、Locus Linkでは受入番号NM_005525で遺伝子座Hs.3290として表される、天然かつ既知の11−ベータ−HSDの天然に存在する他のスプライスバリアントをコードする配列である。本発明の新規の変異体は、11−ベータ−HSDの交互スプライシングに起因する天然に存在する配列であり、単に先端を切断された、突然変異させた、あるいは断片化されただけの形の遺伝子ではないことが強調されるべきである。
【0014】
−前記配列および最少の15b.p.長の上述の配列のフラグメント(以下、表2参照)に対して少なくとも90%の同一性(以下、表2参照)を有する、配列番号19から:配列番号21のうちの、および配列番号40から配列番号42のうちのいずれか1つに示される配列。これらの配列は、292アミノ酸のマウス32kDaグリコプロテインをコードする配列である、Locus Linkでは受入番号NM_008288で遺伝子座mm.15483として表される、天然かつ既知の11−ベータ−HSDの天然に存在する他のスプライスバリアントをコードする配列である。本発明の新規の変異体は、11−ベータ−HSDの交互スプライシングに起因する天然に存在する配列であり、単に先端を切断された、突然変異させた、あるいは断片化されただけの形の遺伝子ではないことが強調されるべきである。
【0015】
肥満および/または糖尿病関連遺伝子の変異体の説明およびオリジナルオリジナルの配列とのそれらの相違を、以下の通りに表1にまとめて示す:
【0016】
【表1−1】

【表1−2】

【表1−3】


【表1−4】

【表1−5】

【表1−6】


配列番号1〜21は、ヌクレオチド配列である。
配列番号22〜42は、配列番号1〜21によってコードされるタンパク質配列である。
【0017】
表2
配列番号1〜9 アディポネクチン(Adiponectin)変異体
【表2−1】

【表2−2】

【表2−3】

【表2−4】

【表2−5】

【表2−6】

【表2−7】

【表2−8】

【表2−9】

【表2−10】

【表2−11】

【表2−12】

【表2−13】

【表2−14】

【表2−15】

【表2−16】

【表2−17】

【表2−18】

【表2−19】

【表2−20】

【表2−21】

【表2−22】

【表2−23】

【0018】
「肥満および/または糖尿病変異体産物」は、時として「肥満および/または糖尿病変異体タンパク質」または「肥満および/または糖尿病変異体ポリペプチド」と呼ばれ、交互スプライシングの結果として得られる天然に存在するmRNA配列である、肥満および/または糖尿病変異体核酸配列によってコードされるアミノ酸配列である。アミノ酸配列は、ペプチド、タンパク質、ならびにグリコペプチドまたはグリコプロテインなどの化学的に修飾されたアミノ酸(以下参照)を有するペプチドまたはタンパク質であり得る。肥満および/または糖尿病変異体産物は、配列番号22から配列番号42のうちのいずれか1つで示される。この用語には、1つまたは複数のアミノ酸が、付加された、欠損させられた、置換された(以下参照)、あるいは化学的に修飾された(以下参照)、前記配列の相同体(以下参照)、ならびに、少なくとも10のアミノ酸を有するこの配列のフラグメント(以下参照)も含まれる。
【0019】
「肥満および/または糖尿病関連変異体核酸配列のフラグメント」−変異体とオリジナルオリジナルの配列との間のヌクレオチドの変異を含有する領域を含む配列番号1から配列番号21のうちのいずれか1つの部分鎖。これらの領域は(アミノ酸レベルで)、上述の表1に図示する通りである。
【0020】
「肥満および/または糖尿病関連変異体産物のフラグメント」−変異体が、表1に示される通りのオリジナルの配列とは異なる領域を含有するような、上述の核酸フラグメントによってコードされたアミノ酸配列。
【0021】
「核酸配列」−DNAヌクレオチド、RNAヌクレオチド、または両方のタイプの組み合わせからなり、かつ天然のヌクレオチド、化学的に修飾されたヌクレオチド、および合成のヌクレオチドを含む可能性がある配列。
【0022】
「アミノ酸配列」−20の天然に生じるアミノ酸、化学的に修飾されたアミノ酸(以下参照)、または合成アミノ酸からなる配列。
【0023】
「変異体の産物/相同体」−1つまたは複数のアミノ酸が、付加された、欠損させられた、あるいは、置き換えられた変異体のアミノ酸配列。変更されるアミノ酸は、例えば、表1の説明によれば、変異がオリジナルの配列とは異なる領域にあるものとする。
【0024】
「保存的置換」−あるクラス内のアミノ酸の、同じクラスのアミノ酸による置換を指す。ここで、クラスは、天然に見られる相同タンパク質において、例えば、標準のデイホフ頻度交換マトリクス(Dayhoff frequency exchange matrix)またはBLOSUMマトリクスによって決定される通りの、共通の物理化学的アミノ酸側鎖特性および高い置換頻度によって定義される。アミノ酸側鎖の6つの一般的なクラスには、以下が含まれ、このように分類されている:クラスI(Cys)、クラスII(Ser、Thr、Pro、Ala、Gly)、クラスIII(Asn、Asp、Gln、Glu)、クラスIV(His、Arg、Lys)、クラスV(Ile、Leu、Val、Met)、およびクラスVI(Phe、Tyr、Trp)。例えば、Aspへの、Asn、Gln、またはGluなどの別のクラスIII残基の置換は、保存的置換である。
【0025】
「非保存的置換」−あるクラスにおけるアミノ酸の、別のクラス由来のアミノ酸での置換;例えば、Ala(クラスII残基)の、Asp、Asn、Glu、またはGlnなどのクラスIII残基での置換を指す。
【0026】
「化学的に修飾される」−本発明の産物を指す場合、そのアミノ酸残基の少なくとも1つが、プロセッシングまたは他の翻訳後修飾などの天然のプロセスによって、あるいは、当分野でよく知られている化学的修飾技術により改変された生成物(タンパク質)を意味する。多数の既知の改変の中で、典型的であるが、限定的ではない例には、以下が含まれる:アセチル化、アシル化、オクタノイル化(octanoylation)、アミド化、ADPリボシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、脂質または脂質誘導体の共有結合、メチル化、ミリスチル化、ペグ化(pegylation)、プレニル化、リン酸化、ユビキチン化、または任意の同様のプロセス。
【0027】
「生物学的に活性である」−何らかの生物活性、例えば、肥満および/または糖尿病関連遺伝子に、あるいは、既知のものとしてのオリジナルの肥満および/または糖尿病関連遺伝子の他のアゴニストに結合する能力を有する変異体産物を指す。
【0028】
「免疫学的に活性である」−天然の、組換え型、または合成の変異体産物、あるいはそれらの任意のフラグメントが、適切な動物または細胞において特定の免疫応答を誘発する、また、特定の抗体と結合する能力を定義する。したがって、例えば、変異体産物の免疫学的に活性なフラグメントは、変異体産物の免疫学的な特性の一部またはすべてを保持する(例えば、特定の抗−変異体産物抗体と結合できる)フラグメント、あるいは、こうした抗体を産生することとなる、あるいは変異体を産生する特異的な免疫細胞の増殖を引き起こすこととなる免疫応答を誘発できるフラグメントを意味する。
【0029】
「最適なアラインメント」−最も高い率の同一性スコアを与えるアラインメントと定義される。こうしたアラインメントは、1のktup、デフォルトのパラメータ、およびデフォルトのPAMを使用する局所的なアラインメントプログラムLALIGNなどの、商業的に入手可能な様々な配列分析プログラムを使用して実施できる。好ましいアラインメントは、10.0のオープン(open)ギャップペナルティ、0.1の伸長(extended)ギャップペナルティ、およびBLOSUM相似マトリックスを用いて作動される、MacVectorTMからのCLUSTAL−Wプログラムを使用して実施されるものである。第2の配列と第1の配列を最適に整列配置するために、第1の配列にギャップが挿入される必要がある場合、同一性(%)は、相当するアミノ酸残基と対にされる残基のみを使用して算出される(すなわち、算出は、第1の配列の「ギャップ」内にある第2の配列中の残基を考慮しない)。既知の遺伝子配列の、新たな変異体の配列とのアラインメントの場合には、常に含まれる最適なアラインメントは、両方に共通の配列の同一の部分を整列配置し、次に離しておき(keeping apart)、一方が他方とは異なる配列のセクションは整列配置しない。
【0030】
「少なくとも90%の同一性を有する」−2つのアミノ酸または核酸配列の配列に関して、配列が最適に整列配置される場合、2つの配列において、同一である残基の割合を指す。したがって、アミノ酸配列の同一性90%は、2つ以上の最適に整列配置されたポリペプチド配列におけるアミノ酸の90%が同一であるということを意味する。
【0031】
「変異体核酸配列を有する単離された核酸分子」−肥満および/または糖尿病関連変異体の核酸コード配列を含む核酸分子である。前記単離された核酸分子は、独立した挿入断片として、肥満および/または糖尿病関連変異体の核酸配列を含むことができ、融合タンパク質を共にコードするさらなるコード配列と融合された肥満および/または糖尿病関連変異体の核酸配列を含むことができ(ここで、変異体のコード配列は、主要な(dominant)コード配列である(例えば、追加のコード配列が、シグナルペプチドをコードすることができる))、肥満および/または糖尿病関連変異体の核酸配列は、適切な宿主におけるコード配列の発現に適したプロモータおよびターミネータ要素あるいは5’および/または3’非翻訳領域などの非コード配列(例えばイントロンまたは制御要素)と結合している可能性があり、ベクターであってもよい(ここで、肥満および/または糖尿病関連変異体タンパク質コード配列が異種性である)。
【0032】
「発現ベクター」−外来の細胞における異種性のDNAフラグメントを組み込み、発現させる能力を有するベクターを指す。多くの原核生物および真核生物の発現ベクターは、知られている、かつ/または商業的に入手可能である。適切な発現ベクターの選択は、当業者の知識の範囲内である。
【0033】
「欠損」−1つまたは複数のヌクレオチドまたはアミノ酸残基をそれぞれ欠くヌクレオチドまたはアミノ酸配列の変化である。
【0034】
「挿入」または「付加」−天然に存在する配列と比較した場合に、1つまたは複数のヌクレオチドまたはアミノ酸残基がそれぞれ追加されているヌクレオチドまたはアミノ酸配列の変化である。
【0035】
「置換」−それぞれ、異なるヌクレオチドまたはアミノ酸による、1つまたは複数のヌクレオチドまたはアミノ酸の置換。アミノ酸配列に関しては、置換は、保存的または非保存的であり得る。
【0036】
「抗体」−IgG、IgM、IgD、IgA、およびIgG抗体を指す。その定義には、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体が含まれる。この用語は、完全な抗体、または抗−変異体産物抗体の抗原結合ドメインを含む、抗体のフラグメント(例えば、Fc部分を含まない抗体、単鎖抗体、本質的に抗体の可変性の抗原結合ドメインのみからなるフラグメント)などを指す。
【0037】
「疾患を治療すること」−疾患に伴う症状を改善するのに有効な治療的物質を投与して、その結果、重さを軽減するあるいは疾患を治癒させる、あるいは疾患が発生するのを予防することを指す。
【0038】
「検出」−疾患、異常、病理学的または通常の状態を検出する方法を指す。この用語は、疾患に対する素因の検出、ならびに、疾患の重さを決定することによって、患者の予後を確証するための検出を指すこともできる。
【0039】
「プローブ」−サンプルにおける他の同様の配列の存在、あるいはこの配列とある程度の相同性を有する配列の存在を検出するために使用される場合の、肥満および/または糖尿病変異体核酸配列、あるいはそれと相補的な配列。検出は、プローブと分析される配列との間のハイブリダイゼーション複合体の同定によって実施される。プローブは、固体支持体に、あるいは検出可能な標識に付着させることができる。
【0040】
「オリジナルの肥満および/または糖尿病関連遺伝子」−本発明の肥満および/または糖尿病関連の変異体が、そこから交互スプライシングの結果として変更されているようなアミノ酸または核酸配列。オリジナルの核の配列は、ヒトアディポネクチン(Adiponectin)について配列番号1として表され(オリジナルのアミノ酸配列は、それによってコードされる配列である)、マウスアディポネクチン(Adiponectin)について配列番号5として表され(オリジナルのアミノ酸配列は、それによってコードされる配列である)、グレリンについて配列番号10として表され(オリジナルのアミノ酸配列は、それによってコードされる配列である)、ヒト11−ベータ−HSDについて配列番号12として表され(オリジナルのアミノ酸配列は、それによってコードされる配列である)、マウス11−ベータ−HSDについて配列番号19として表される(オリジナルのアミノ酸配列は、それによってコードされる配列である)ヒトの肥満および/または糖尿病関連遺伝子の配列である。
【0041】
本発明は、配列番号2〜4、6〜9、11、13〜18、20〜21、および少なくとも15ヌクレオチドを含むそれらのフラグメントからなる群から選択される配列を有する核酸分子を単離することに関する。本発明は、配列番号2〜4、6〜9、11、13〜18、20〜21を含む単離された核酸分子、および少なくとも15ヌクレオチドを含む配列番号2〜4、6〜9、11、13〜18、20〜21のフラグメントを含む単離された核酸分子に関する。
【0042】
本発明は、鋳型として配列番号2〜4、6〜9、11、13〜18、20〜21の配列を使用して生成物を増幅できるPCRプライマーに関する。
【0043】
本発明は、個人を肥満および/または糖尿病についてスクリーニング、診断、およびモニタリングする方法に関する。この方法は、サンプル中の、配列番号2〜4、6〜9、11、13〜18、20〜21からなる群から選択される配列を含む転写産物の存在、欠如、または量を検出することを含む。前記転写産物の存在または量は、肥満および/または糖尿病の指標となる。
【0044】
本発明は、配列番号2〜4、6〜9、11、13〜18、20〜21からなる配列を有する転写産物の翻訳産物を投与するステップを含む、肥満および/または糖尿病を患う個人を治療する方法に関する。
【0045】
本発明は、肥満および/または糖尿病について、個人をスクリーニング、診断、およびモニタリングするためのキットに関する。
【0046】
本発明は、配列番号2〜4、6〜9、11、13〜18、20〜21、からなる群から選択される核酸配列によってコードされるタンパク質、およびそれらの免疫原性フラグメントに関する。
【0047】
本発明は、配列番号2〜4、6〜9、11、13〜18、20〜21からなる群から選択される核酸配列によってコードされるタンパク質上のエピトープに特異的に結合する抗体に関する。
【0048】
本発明は、検出可能な標識または活性な薬剤に連結された、配列番号2〜4、6〜9、11、13〜18、20〜21からなる群から選択される核酸配列によってコードされるタンパク質上のエピトープに特異的に結合する抗体に関する。
【0049】
本発明は、活性な薬剤に連結された、配列番号2〜4、6〜9、11、13〜18、20〜21からなる群から選択される核酸配列によってコードされるタンパク質上のエピトープに特異的に結合する抗体を含む薬剤組成物に関する。
【0050】
本発明は、肥満および/または糖尿病を患っている疑いがある個人を治療する方法に関する。この方法は、活性な薬剤に連結された配列番号2〜4、6〜9、11、13〜18、20〜21からなる群から選択される核酸配列によってコードされるタンパク質上のエピトープに特異的に結合する抗体を個人に投与するステップを含む。
【0051】
本発明は、個人の肥満および/または糖尿病細胞に核酸分子を送達する方法に関する。この方法は、前記個人に、配列番号2〜4、6〜9、11、13〜18、20〜21からなる群から選択される核酸配列および核酸分子によってコードされるタンパク質上のエピトープに特異的に結合する抗体を含む薬剤組成物を投与するステップを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
本出願人等は、すべての引用文献の完全な内容をこの開示に明確に組み込む。さらに、量、濃度、あるいは他の値またはパラメータが、ある範囲、好ましい範囲、またはより上の好ましい値およびより下の好ましい値のリストとして与えられる場合、これは、範囲が別々に開示されているいないに関わらず、任意の上限またはより上の好ましい値と、任意の下限またはより下の好ましい値との任意のペアから形成されるすべての範囲であることを明確に開示するものと理解されるべきである。数値の範囲が本明細書で詳述される場合、特に明記しない限り、範囲は、その終点ならびに範囲内のすべての整数および分数を含むものである。範囲を定義する場合、本発明の範囲は、列挙される特定の値に制限されることは意図されない。
【0053】
肥満および/または糖尿病変異体の核酸配列
本発明の核酸配列は、肥満および/または糖尿病変異体の産物をコードする核酸配列ならびにそれらのフラグメントおよび類似体を含む。あるいは、核酸配列は、上述のコード配列に、あるいは前記コード配列の領域に相補的な配列であり得る。相補配列の長さは、コード配列の発現を回避するのに十分である。核酸配列は、RNAの形またはDNAの形であり得、メッセンジャーRNA、合成RNAおよびDNA、cDNAおよびゲノムDNAが含まれる。DNAは、二本鎖であっても一本鎖であってもよく、一本鎖の場合、コード鎖または非コード(アンチセンス、相補的な)鎖であり得る。これらの核酸配列はまた、どちらも、dNTP、rNTP、ならびに天然に存在しない配列を含むことができる。この配列はまた、アミノ酸配列と核酸配列との間のハイブリッドの部分であり得る。
【0054】
一般的な実施形態では、該核酸配列は、配列番号2から配列番号4、または配列番号6から配列番号9、または配列番号11または配列番号13から配列番号18、または配列番号20から配列番号21と同定される配列のうちのいずれか1つと少なくとも90%の同一性を有する。
【0055】
核酸配列は、それ自体でコード配列を含むことができる。別の変形例では、コード領域は、適切な宿主における、かつ/またはベクターまたは宿主環境におけるコード配列の発現のために有効な、イントロンおよび制御要素、プロモータおよびターミネータ要素、または5’および/または3’非翻訳領域などの非コード配列と組み合わせて、さらなるコード配列(融合タンパク質またはシグナルペプチドをコードしているものなど)と組み合わせることもできる(ここで、変異体核酸配列は、異種性の配列として導入される)。
【0056】
本発明の核酸配列はまた、変異体産物の精製を可能にするマーカー配列にフレーム内(in−frame)融合される、肥満および/または糖尿病変異体産物をコードする配列を有することができる。例えば細菌宿主の場合には、マーカー配列は、マーカーと融合される成熟ポリペプチドの精製を提供するためのヘキサヒスチジンタグであってもよいし、哺乳類宿主(例えばCOS−7細胞)が使用される場合は、マーカー配列は、ヘマグルチニン(HA)タグであってもよい。HAタグは、インフルエンザヘマグルチニンタンパク質から得られるエピトープに相当する(ウィルソン,I((Wilson,I.)ら、「Cell」37:767(1984年)。
【0057】
本発明の範囲内には、一般的に少なくとも17塩基、好ましくはコード配列核酸配列の領域に相当する17〜30の塩基を有する、本明細書ではオリゴヌクレオチドとも呼ばれる、上で定義した通りのフラグメントも含まれる。これらのフラグメントは、プローブ、プライマーとして、また、相補的な場合にはアンチセンス薬剤などとして、既知の方法に従って使用できる。
【0058】
上で示した通り、該核酸配列は、実質的に、配列番号2から配列番号4、または配列番号6から配列番号9または配列番号11、または配列番号13から配列番号18、または配列番号21から配列番号20で表される通り、あるいはそのフラグメント、あるいは前述した通りの上の配列と少なくとも90%の同一性を有する配列であり得る。あるいは、遺伝暗号の縮重の性質により、該配列は、配列番号23から配列番号25、または配列番号27から配列番号30または配列番号32、または配列番号34から配列番号39、または配列番号41から配列番号42のアミノ酸配列、あるいは前記アミノ酸配列のフラグメントまたは類似体のうちのいずれか1つをコードする配列であってもよい。
【0059】
A.核酸配列の調製
該核酸配列は、それとハイブリッド形成できるオリゴヌクレオチドプローブを使用するcDNAライブラリ、または上で開示された肥満および/または糖尿病変異体産物をコードするPCR−増幅核酸配列をスクリーニングすることによって得ることができる。様々な組織から調製されるcDNAライブラリは、商業的に入手可能であり、cDNAクローンをスクリーニングおよび単離するための手順は、当業者によく知られている。こうした技術は、例えば、サムブルック(Sambrook)ら(1989年)「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」(第2版)、コールドスプリングハーバープレス(Cold Spring Harbor Press)、プレインビュー、ニューヨーク州、およびオースベルFM(Ausubel FM)ら(1989年)「Current Protocols in Molecular Biology」、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)、ニューヨーク、ニューヨーク州に記載されている。
【0060】
核酸配列は、上流および下流の配列(プロモータ、調節要素および5’および3’非翻訳領域(UTR)など)を得るために、延長できる。利用できる転写産物配列の伸張は、PCRまたはプライマー伸長(サムブルック(Sambrook)ら、上記)などの当業者に知られている多数の方法によって、あるいは、例えばMarathon RACEキット(クロンテック(Clontech)Cat.#K1802−1)を使用するRACE法によって実施できる。
【0061】
あるいは、既知の遺伝子座近くの隣接配列を検索する汎用プライマーを用いる「制限部位」PCRの技術(ゴビンダ(Gobinda)ら「PCR Methods Appl.」2:318〜22(1993年))を使用できる。最初に、ゲノムDNAを、リンカー配列に対するプライマーと、既知の領域に対して特異的なプライマーの存在下で増幅させる。増幅させた配列を、同じリンカープライマーと、第1のものの内部の別の特異的なプライマーを用いる2回目のPCRにかける。PCRの各回の産物を、適切なRNAポリメラーゼを用いて転写させ、逆転写酵素を使用して配列決定する。
【0062】
インバースPCRは、既知の領域に基づく多岐にわたるプライマーを使用して配列を増幅または延長するために使用できる(トリグリア,T.(Triglia,T.)ら、「Nucleic Acids Res.」16:8186(1988年))。プライマーは、OLIGO(登録商標)4.06 Primer Analysis Software(1992年、ナショナルバイオサイエンスインコーポレイティッド(National Biosciences Inc)、プリマス(Plymouth)、ミネソタ州)、または別の適切なプログラムを使用して、長さが22〜30のヌクレオチドであり、GC含量が50%以上であり、温度約68〜72℃で標的配列とアニーリングするように設計できる。この方法は、遺伝子の既知の領域における適切なフラグメントを生じるための、いくつかの制限酵素を使用する。その後、フラグメントを、分子内ライゲーションによって環状化させ、PCR鋳型として使用する。
【0063】
キャプチャーPCR(ラガーストーム,M.(Lagerstrom,M.)ら、「PCR Methods Appl.」1:111〜19(1991年))は、ヒトおよび酵母人工染色体DNAにおける既知の配列に隣接するDNAフラグメントのPCR増幅のための方法である。キャプチャーPCRはまた、PCRの前に、DNA分子の隣接する部分に、操作された二本鎖配列を入れるために、複数の制限酵素消化およびライゲーションを必要とする。
【0064】
隣接配列を検索するために使用できる別の方法は、パーカー,J.D.(Parker, J.D.)、ら、「Nucleic Acids Res.」19:3055〜60 (1991年)のものである。さらに、ゲノムDNAを「歩く(walk in)」ために、PCR、入れ子状態の(nested)プライマー、およびPromoterFinder(商標)ライブラリを使用できる(PromoterFinder(商標)、クロンテック(Clontech)、パロアルト、カリフォルニア州)。このプロセスは、ライブラリをスクリーニングする必要性をなくす、またイントロン/エキソン接合部を見つけ出すのに有用である。完全長cDNAのスクリーニングのために好ましいライブラリは、より大きなcDNAを含むようにサイズ選択されたものである。また、遺伝子の5’および上流領域を含有するより多くの配列を含有することとなるという点で、ランダムプライミングのライブラリが好ましい。
【0065】
オリゴd(T)ライブラリが全長cDNAを産生しない場合、ランダムにプライミングされるライブラリが、特に有用である可能性がある。ゲノムライブラリは、5’非翻訳制御領域に向けて伸張するのに有用である。
【0066】
本発明の核酸配列およびオリゴヌクレオチドはまた、既知の合成方法に従って、固相法によって調製できる。一般的に、最高約100塩基までのフラグメントを、別々に合成し、続いて連結し、最高数百塩基までの連続する配列を形成させる。
【0067】
B.肥満および/または糖尿病変異体産物の生成のための肥満および/または糖尿病変異体核酸配列の使用
本発明によれば、上で詳述した核酸配列は、肥満および/または糖尿病変異体産物の発現を導く組換えDNA分子として使用される。
【0068】
当業者によって理解される通り、ヒトゲノムに天然に存在する、配列番号2から配列番号4、または配列番号6から配列番号9、または配列番号11または配列番号13から配列番号18、または配列番号20から配列番号21中に存在するもの以外のコドンを持つ肥満および/または糖尿病変異体産物をコードするヌクレオチド配列を生成することは好都合であり得る。特定の原核生物または真核生物の宿主によって好まれるコドン(マレイ,E.(Murray,E.)ら「Nucleic Acids Res.」17:477〜508(1989年))を選択して、例えば、変異体産物の発現の速度を増大させる、あるいは、望ましい特性(天然に存在する配列から産生される転写産物よりも長い半減期など)を有する組換えRNA転写産物を産生することができる。
【0069】
本発明の核酸配列は、それだけには限らないが、産物のクローニング、プロセッシングおよび/または発現を改変する変更を含めて、様々な理由で、肥満および/または糖尿病変異産物コード配列を変えるために操作できる。例えば、新たな制限部位を挿入するために、グリコシル化パターンを変えるために、また、コドン選択などを変化させるために、当分野でよく知られている技術(例えば、部位特異的突然変異誘発)を使用して、変更を導入できる。
【0070】
本発明はまた、上で広く説明した配列のうちの1つまたは複数を含む組換え型構築物を含む。この構築物は、前向きまたは後向きに本発明の核酸配列が挿入されるベクター(プラスミドまたはウイルスベクターなど)を含む。この実施形態の好ましい態様では、構築物は、例えば、配列に作動可能に連結されるプロモータを含めた調節配列をさらに含む。多数の適切なベクターおよびプロモータは、当業者に知られており、商業的に入手可能である。原核生物のおよび真核生物の宿主用として、適切なクローニングおよび発現ベクターもまた、サムブルック(Sambrook)ら(上記)に記載されている。
【0071】
本発明はまた、本発明のベクターを用いて遺伝子操作された宿主細胞、および組換え技術による本発明の産物の産生に関する。宿主細胞は、例えばクローニングベクターまたは発現ベクターであっても良く、本発明のベクターを用いて遺伝子操作される(すなわち、形質導入、形質転換、または形質移入される)。ベクターは、例えば、プラスミド、ウイルス粒子、ファージなどの形であり得る。操作された宿主細胞を、プロモータを活性化させる、形質転換体を選択する、あるいは変異体核酸配列の発現を増幅させるために必要に応じて改変される従来の栄養培地で培養することができる。温度、pHなどの培養条件は、発現のために選択される宿主細胞と共に従来使用されているものであり、当業者には明らかであろう。
【0072】
本発明の核酸配列は、産物を発現させるための様々な発現ベクターのいずれか1つに含まれ得る。こうしたベクターには、染色体の、非染色体の、および合成のDNA配列(例えばSV40の誘導体);細菌性プラスミド;ファージDNA;バキュロウイルス;酵母プラスミド;プラスミドとファージDNAの組み合わせから得られるベクター、牛痘、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、および仮性狂犬病などのウイルスDNAが含まれる。しかし、宿主中で複製可能かつ生存可能である限り、他のいかなるベクターも使用できる。適切なDNA配列は、様々な手順によってベクターに挿入できる。一般に、DNA配列は、当技術分野で知られた手順によって、適切な制限エンドヌクレアーゼ部位に挿入される。こうした手順および関連するサブクローニング手順は、当業者の範囲内であると考えられる。
【0073】
発現ベクター中のDNA配列は、mRNA合成を導くために、適切な転写制御配列(プロモータ)に、作動可能に連結される。こうしたプロモータの例には、以下が含まれる:LTRまたはSV40プロモータ、E.coli lacまたはtrpプロモータ、λファージPLプロモータ、原核生物または真核生物の細胞またはそれらのウイルスにおける遺伝子の発現を制御することが知られている他のプロモータ。発現ベクターはまた、翻訳開始のためのリボソーム結合部位および転写ターミネータを含有する。ベクターはまた、発現を増幅するための適切な配列を含むことができる。さらに、発現ベクターは、形質転換された宿主細胞の選択のための表現型形質(真核生物の細胞培養のためのジヒドロ葉酸レダクターゼまたはネオマイシン耐性など、あるいは、E.coliにおけるテトラサイクリンまたはアンピシリン耐性など)を提供するための、1つまたは複数の選択可能なマーカー遺伝子を含有することが好ましい。
【0074】
上で述べた通りの適切なDNA配列、ならびに適切なプロモータまたは制御配列を含有するベクターを、適切な宿主を形質転換して宿主がタンパク質を発現することを可能にするために使用できる。適切な発現宿主の例には、以下が含まれる:E.coli、ストレプトマイセス(Streptomyces)、サルモネラチフィムリウム(Salmonella typhimurium)などの細菌細胞;酵母などの菌類の細胞;ショウジョウバエ(Drosophila)およびスポドプテラ(Spodoptera)Sf9などの昆虫細胞;CHO、COS、HEK 293、またはボーズメラノーマ(Bowes melanoma)などの動物細胞;アデノウイルス;植物細胞など。適切な宿主の選択は、本明細書の教示から、当業者の範囲内であると考えられる。本発明は、使用される宿主細胞によって制限されない。
【0075】
細菌系では、肥満および/または糖尿病変異体産物のための使用に応じていくつかの発現ベクターを選択できる。例えば、大量の肥満および/または糖尿病変異体産物が、抗体の誘導のために必要とされる場合、容易に精製される融合タンパク質の高度発現を導くベクターが望ましい可能性がある。こうしたベクターには、それだけには限らないが、Bluescript(登録商標)(ストラタジーン(Stratagene))などの多機能性のE.coliクローニングおよび発現ベクター(ここで、肥満および/または糖尿病変異体ポリペプチドをコードする配列は、フレーム内(in−frame)にアミノ末端Metおよびβ‐ガラクトシダーゼのその後の7残基に対する配列を伴い、その結果ハイブリッドタンパク質が産生されるようなベクター;pINベクター(バン ヘッケ(Van Heeke)およびシュスター(Schuster)「J.Biol.Chem.」264:5503〜5509(1989年));pETベクター(ノバゲン(Novagen)、ウィスコンシン州マディソン);などに連結することができる。
【0076】
酵母サッカロミセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)では、アルファ因子、アルコールオキシダーゼ、およびPGHなどの、構成性または誘導性プロモータを含有するいくつかのベクターを使用できる。レビューについては、オースベル(Ausubel)ら(上記)およびグラント(Grant)ら(「Methods in Enzymology」153:516〜544(1987年))を参照のこと。
【0077】
植物発現ベクターが使用される場合、変異体産物をコードする配列の発現は、いくつかのプロモータのいずれかによって駆動することができる。例えば、CaMVの35Sおよび19Sプロモータなどのウイルスプロモータ(ブリソン(Brisson)ら、「Nature」310:511〜514(1984年))は、単独で、あるいはTMV由来のオメガリーダー配列と組み合わせて使用できる(タカマツ(Takamatsu)ら、「EMBO J.」6:307〜311(1987年)。あるいは、RUBISCOの小サブユニットなどの植物プロモータ(コルツィ(Coruzzi)ら、「EMBO J.」3:1671〜1680(1984年);ブロイ(Broglie)ら、「Science 224」:838〜843(1984年));または熱ショックプロモータ(ウインター J(Winter J)およびシニバルディR.M.(Sinibaldi R.M.)、「Results Probl.Cell Differ.」17:85〜105 (1991年))も使用できる。これらの構築物は、直接的なDNA形質転換または病原体仲介性の形質移入によって、植物細胞に導入できる。こうした技術のレビューについては、ホッブスS.(Hobbs S.)またはマリーL.E.(Murry L.E.)(1992年)、「McGraw Hill Yearbook of Science and Technology」内、マグローヒル(McGraw Hill)、ニューヨーク、ニューヨーク州、191〜196ページ、またはワイスバハ(Weissbach)およびワイスバハ(Weissbach)(1988年)、「Methods for Plant Molecular Biology」、アカデミックプレス(Academic Press)、ニューヨーク、ニューヨーク州、421〜463ページを参照のこと。
【0078】
肥満および/または糖尿病変異体産物はまた、昆虫系において発現させることができる。こうした系では、スポドプテラフルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞において、あるいはトリコプルシア幼虫(Trichoplusia larvae)において外来遺伝子を発現させるために、オートグラファカリフォルニカ(Autographa californica)核多角体病ウイルス(AcNPV)が、ベクターとして使用される。肥満および/または糖尿病変異体産物をコードする配列を、ポリヘドリン遺伝子など、ウイルスの必須ではない領域にクローン化し、ポリヘドリンプロモータの制御下に置くことができる。肥満および/または糖尿病コード配列の良好な挿入によって、ポリヘドリン遺伝子が不活性になり、コートタンパク質の外殻を欠く組換え型ウイルスが産生される。組換え型ウイルスは、その後、変異タンパク質が発現されるS.フルギペルダ(S.frugiperda)細胞またはトリコプルシア幼虫(Trichoplusia larvae)を感染させるために使用される(スミス(Smith)ら、「J.Virol.」46:584(1983年));エンゲルハルト,E.K.(Engelhard,E.K.)ら、「Proc.Nat.Acad.Sci.USA」91:3224〜7(1994年))。
【0079】
哺乳動物の宿主細胞では、ウイルスに基づく多くの発現システムを利用できる。アデノウイルスが発現ベクターとして使用される場合、肥満および/または糖尿病変異体産物をコードする配列は、後期プロモータ(late promoter)および三分節(tripartite)リーダー配列からなるアデノウイルス転写/翻訳複合体に連結させることができる。ウイルスゲノムの必須ではないE1またはE3領域における挿入は、感染させる宿主細胞中で変異タンパク質を発現可能な生存可能なウイルスをもたらす(ローガン(Logan)およびシェンク(Shenk)「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」81:3655〜59(1984年)。さらに、転写エンハンサ(例えばニワトリ肉腫ウイルス(RSV)エンハンサ)を、哺乳動物の宿主細胞における発現を増大させるために使用できる。
【0080】
変異体産物をコードする配列の効果的な翻訳のために、特定の開始シグナルも、必要とされる可能性がある。これらのシグナルには、ATG開始コドンおよび隣接する配列が含まれる。肥満および/または糖尿病変異体産物をコードする配列、その開始コドン、および上流配列が、適切な発現ベクターに挿入される場合、追加の翻訳制御シグナルが、まったく必要でない可能性もある。しかし、コード配列またはその一部のみが挿入される場合、ATG開始コドンを含めた外因性の転写制御シグナルが、提供されなければならない。さらに、開始コドンは、挿入物全体の転写を確実にするために、適切な解読フレームでなければならない。外因性の転写要素および開始コドンは、様々な起源のものであり、天然でも合成でもどちらでもよい。発現の効率は、使用される細胞システムに適切なエンハンサを包含させることによって増強できる。(シャーフ,D.(Scharf,D.)ら、「Results Probl.Cell Differ.」20:125〜62(1994年);ビットナー(Bittner)ら、「Meth.Enzymol.」153:516〜544(1987年))。
【0081】
さらなる実施形態では、本発明は、上記の構築物を含有する宿主細胞に関する。宿主細胞は、哺乳類の細胞などの高等真核細胞でも酵母細胞などの下等真核細胞でもよく、また、宿主細胞は、細菌細胞などの原核細胞でもよい。宿主細胞への構築物の導入は、リン酸カルシウム形質移入、DEAE−デキストラン仲介性の形質移入、または電気穿孔法によって実施できる(デイビス,L.(Davis,L.)、ディブナー,M.(Dibner,M.)およびバッティ,I.(Battey,I.)(1986年)「Basic Methods in Molecular Biology」)。本発明のDNA構築物から得られるRNAを使用してポリペプチドを産生するために、無細胞翻訳系もまた使用できる。
【0082】
宿主細胞株は、挿入された配列の発現を調節する能力、または、発現されたタンパク質を所望の様式で加工する能力について選択できる。こうしたポリペプチドの修飾には、それだけには限らないが、アセチル化、カルボキシル化、グリコシレーション、リン酸化、リピデーション、およびアシル化が含まれる。タンパク質のこうした修飾には、それだけには限らないが、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化、およびアシル化が含まれる。適切な挿入、折畳み、および/または機能のために、プレ−プロ(pre−pro)形のタンパク質を切断する翻訳後プロセッシングもまた重要である可能性がある。例えばCHO、HeLa、MDCK、293、WI38などの異なる宿主細胞は、こうした翻訳後活性に対する特異的な細胞の機構および特徴的な機構を有し、導入される外来のタンパク質の適切な修飾およびプロセッシングを確実にするように選択することができる。
【0083】
組換え型タンパク質の長期的な高収率の産生では、安定な発現が好ましい。例えば、変異体産物を安定に発現する細胞系は、ウイルス起源の複製または内在性発現要素および選択可能なマーカー遺伝子を含有する発現ベクターを使用して形質転換できる。ベクターの導入後、細胞は、強化された培地中で1〜2日間増殖させ、その後それらを選択培地に切替えることができる。選択可能なマーカーの目的は、選択に対する耐性を与えることであり、その存在によって、導入された配列を上手く発現する細胞の増殖および回収が可能になる。安定に形質転換された細胞の耐性のクランプは、細胞のタイプに適した組織培養技術を使用して増殖できる。
【0084】
形質転換細胞系を回収するために、多くの選択システムを使用できる。これには、それだけには限らないが、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(ウィグラーM.(Wigler M.)ら、「Cell」11:223〜32(1977年))およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(ローウィI.(Lowy I.)ら、「Cell」22:817〜23(1980年))遺伝子(それぞれ、tk−またはaprt−細胞に使用できる)が含まれる。また、代謝拮抗物質、抗生物質、または除草剤耐性、例えば、メトトレキセートに対する耐性を与えるdhfr(ウィグラーM.(Wigler M.)ら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」77:3567〜70,(1980年));アミノグリコシド・ネオマイシンおよびG−418に対する耐性を与えるnpt(コルバーレ(Colbere)−ガラピン(Garapin),F.ら、「J.Mol.Biol.」150:1〜14(1981年));ならびに、それぞれ、クロルスルフロンおよびフォスフィノトリシン(phosphinotricin)アセチルトランスフェラーゼに対する耐性を与えるalsまたはpat(マリー(Murry)、上記)などを、選択のための基準として使用できる。例えば、細胞を、トリプトファンの代わりにインドールを利用できるようにさせるtrpB、または、細胞を、ヒスチジンの代わりにヒスチノール(histinol)を利用できるようにさせるhisD(ハートマンS.C.(Hartman S.C.)およびR.C.マリガン(R.C.Mulligan)(Proc.Natl.Acad.Sci.85:8047〜51、(1988年))などの、さらなる選択可能な遺伝子が記載されている。可視マーカーの使用は、人気を増してきており、アントシアニン、β‐グルクロニダーゼおよびその基質(GUS)、ならびにルシフェラーゼおよびその基質(ルシフェリンおよびATP)などのマーカーは、形質転換体を同定するためだけでなく、特異的なベクター系に起因する一時的または安定なタンパク質発現の量を定量化するためにも広く使用されている(ロードス,C.A(Rhodes,C.A.)他、「Methods Mol.Biol.」55:121〜131(1995年))。
【0085】
肥満および/または糖尿病変異体産物をコードするヌクレオチド配列を用いて形質転換された宿主細胞を、コードされたタンパク質の細胞培養液からの発現および回収に適した条件下で培養できる。組換え型細胞によって産生される産物は、その配列および/または使用されるベクターに依存して分泌される、あるいは細胞内に含有される可能性がある。当業者によって理解される通り、肥満および/または糖尿病変異体産物をコードする核酸配列を含有する発現ベクターは、原核生物または真核生物の細胞膜を介する肥満および/または糖尿病変異体産物の分泌を導くシグナル配列を用いて設計できる。
【0086】
肥満および/または糖尿病変異体産物はまた、タンパク質精製を容易にするために加えた1つまたは複数のさらなるポリペプチドドメインを伴う組換え型タンパク質として発現させることができる。精製を容易にするこうしたドメインには、それだけには限らないが、固定された金属上での精製を可能にするヒスチジントリプトファンモジュールなどの金属キレートペプチド、固定された免疫グロブリン上での精製を可能にするプロテインAドメイン、およびFLAGS伸張/アフィニティ精製システムで利用されるドメイン(イミュネックスコーポレーション(Immunex Corp.)、シアトル、ワシントン州)が含まれる。精製ドメインと肥満および/または糖尿病変異体産物との間のプロテアーゼ切断可能なポリペプチドリンカー配列を含めることは、精製を容易にするのに有用である。そのような発現ベクターは、エレテロキナーゼ切断部位によって隔てられるポリヒスチジン領域と融合された変異ポリペプチドを損なう融合タンパク質の発現を提供する。ヒスチジン残基により、IMIAC(ポラス(Porath)ら、「Protein Expr. Purif.」3:263〜281(1992年)に記載される通りの、固定化金属イオン親和性クロマトグラフィ)での精製が容易になるのに対して、エレテロキナーゼ切断部位は、融合タンパク質から変異ポリペプチドを単離するための手段を提供する。pGEXベクター(プロメガ(Promega)、マディソン、ウィスコンシン州)はまた、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)を有する融合タンパク質として外来のポリペプチドを発現させるために使用されることができる。一般に、こうした融合タンパク質は、可溶性であり、リガンド−アガロース・ビーズ(例えばGST−融合の場合、グルタチオン−アガロース)への吸着によって、溶解させた細胞から容易に精製し、それに続いて、遊離リガンドが存在する場合には溶出させることができる。
【0087】
適切な宿主株の形質転換、および適切な細胞密度までの宿主株の増殖の後、選択されたプロモータを、適切な手段(例えば温度シフトまたは化学的な誘導)によって誘導させ、細胞を、さらなる時間培養する。細胞は、一般的に、遠心分離によって収集し、物理的または化学的な手段によって粉砕し、得られた未精製の抽出物を、さらなる精製のために保持する。タンパク質の発現に使用される微生物細胞は、凍結融解サイクリング、超音波処理、力学的な破壊、または細胞を溶解させる薬剤の使用、あるいは当業者によく知られている他の方法を含めた任意の好都合な方法によって粉砕できる。
【0088】
肥満および/または糖尿病変異体産物は、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィ、リン酸セルロースクロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、アフィニティークロマトグラフィ、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィ、およびレクチンクロマトグラフィを含めて、当分野でよく知られたいくつかの方法のいずれかによって、組換え細胞培養物から回収および精製できる。必要に応じて、成熟タンパク質の立体配置の完成において、タンパク質リフォールディングステップを使用できる。最後に、最終の精製ステップのために、高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)を使用できる。
【0089】
C.核酸配列を利用する診断のための適用
本発明の核酸配列は、様々な診断目的で使用できる。核酸配列は、肥満および/または糖尿病変異体産物をコードするmRNAの存在を検出することによって、患者の細胞(例えば生検が行われる組織)における肥満および/または糖尿病変異体の発現を検出および定量化するために使用できる。
【0090】
あるいは、この分析は、血清または血液中の可溶性の変異体を検出するために使用することができる。この分析は一般的に、組織または血清から全mRNAを得て、そのmRNAを核酸プローブと接触させることを含む。
【0091】
プローブは、ハイブリッド形成条件下で肥満および/または糖尿病変異体産物をコードする核酸分子の配列内に含まれる配列と特異的にハイブリッド形成し、プローブとハイブリッド形成するmRNAの存在を検出し、それによって、変異体の発現を検出することが可能な、少なくとも20ヌクレオチド(好ましくは20〜30ヌクレオチド)の核酸分子である。この分析は、肥満および/または糖尿病変異体産物の欠如、存在、および過剰発現を識別するために、また、治療的介入中の肥満および/または糖尿病変異体発現のレベルをモニタリングするために使用できる。さらに、この分析は、本発明の肥満および/または糖尿病変異体のレベルを、オリジナルの肥満および/または糖尿病配列(そこから変異がなされている)のレベルと、あるいは、比較が、何らかの生理学的意味をもつような互いのレベルと比較するために使用される。
【0092】
本発明はまた、遺伝性の欠損がある変異体配列に起因する疾患、あるいはオリジナルの肥満および/または糖尿病配列(そこから、肥満および/または糖尿病変異体が変異している)の量の、本発明の新規の肥満および/または糖尿病変異体に対する比が変化しているような疾患の診断薬としての核酸配列の使用を意図する。これらの配列は、欠損がある(すなわち、変異した)肥満および/または糖尿病変異体をコードする領域の配列を、通常のコード領域のそれと比較することによって検出できる。異常な変異体産物活性と、変異した肥満および/または糖尿病変異体産物をコードする配列の関連を立証できる。さらに、変異した肥満および/または糖尿病変異体産物をコードする配列を、突然変異を立証または同定するためのさらに別の手段としての機能的分析システム(例えば、比色分析、HEK293細胞の変異タンパク質欠損株における相補実験)における発現に適したベクターに挿入できる。一旦突然変異遺伝子が同定されると、その後、突然変異遺伝子の保有について、関心が持たれている集団をスクリーニングすることができる。
【0093】
本発明の核酸配列における突然変異をもつ個人は、様々な技術によって、DNAレベルで検出できる。診断のために使用される核酸は、それだけには限らないが、血液、尿、唾液、胎盤、組織生検および剖検材料を含めて、患者の細胞から得ることができる。ゲノムDNAは、検出のために直接使用することもできるし、分析の前にPCR(サイキ(Saiki)ら、「Nature」324:163〜166(1986年))を用いて酵素的に増幅することもできる。RNAまたはcDNAは、また、同じ目的で使用することができる。一例として、本発明の遺伝子中の突然変異を同定および分析するために、本発明の核酸と相補的なPCRプライマーを使用できる。欠損および挿入は、通常の遺伝子型と比較した場合の、増幅された産物の大きさの変化によって検出できる。
【0094】
点突然変異は、本発明の放射標識されたRNA、または本発明の放射標識されたアンチセンスDNA配列に、増幅されたDNAをハイブリッド形成させることによって同定できる。特定の位置での配列変化はまた、RNアーゼおよびS1保護などのヌクレアーゼ保護分析、または化学的切断法(例えば、コットン(Cotton)ら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」85:4397〜4401(1985年))によって、あるいは融解温度の差によって明らかにすることができる。「分子ビーコン」(コストリキス L.G.(Kostrikis L.G.)ら「Science」279:1228〜1229(1998年))、すなわち本発明の核酸に相補的であるプローブ配列を含有するヘアピン形の一本鎖合成オリゴヌクレオチドはまた、点突然変異または他の配列変化を検出する、また、変異体産物の発現レベルをモニタリングするために使用できる。こうした診断薬は、特に出生前検査のために有用であろう。
【0095】
突然変異を検出するための別の方法は、隣接する塩基をもつ、標的の隣接領域にハイブリッド形成するように設計されている2つのDNAプローブを使用する(既知のあるいは疑われている突然変異の領域は、隣接する塩基の位置である、あるいはその近くである)。例えば、リガーゼ酵素が存在するだけでなく、両方のプローブが、プローブ接合部の領域において、正しく塩基対にされる場合には、2つのプローブは、隣接する塩基の位置で連結できる。突然変異の有無は、その後、連結されたプローブの有無によって検出可能である。
【0096】
肥満および/または糖尿病変異体産物をコードする配列における突然変異を検出するのに適しているのはまた、例えば、米国特許第5,547,839号明細書に記載されている通り、ハイブリダイゼーション(SBH)による配列決定に基づくオリゴヌクレオチドアレイ法である。典型的な方法では、DNA標的分析物は、マイクロチップ上に形成されたオリゴヌクレオチドのアレイとハイブリッド形成される。標的の配列は、その後アレイに対する標的結合のパターンから「解読する」ことができる。
【0097】
D. 核酸配列の治療的適用
本発明の核酸配列はまた、治療目的で使用できる。本発明の第2の態様(すなわち肥満および/または糖尿病変異体の発現の抑制)に関しては、肥満および/または糖尿病変異体産物の発現は、相補的な核酸配列、すなわちアンチセンスDNAまたはRNAの、変異体産物をコードする遺伝子の制御領域、5’領域、または調節領域に対するハイブリダイゼーションを介して遺伝子発現を制御する、アンチセンス技術を介して調節できる。例えば、本発明の産物をコードする核酸配列の5’コード部分が、長さ約10から40塩基対のアンチセンスオリゴヌクレオチドを設計するために使用される。転写開始点(例えば開始部位からの位置−10と+10の間)から得られるオリゴヌクレオチドが好ましい。アンチセンスDNAオリゴヌクレオチドは、転写に関与する核酸配列の領域と相補的であるように設計され(リー(Lee)ら、「Nucl.Acids Res.」6:3073(1979年));クーニー(Cooney)ら、「Science」241:456(1988年));およびダーバン(Dervan)ら、「Science」251:1360(1991年))、それによって、変異体産物の転写および生成を予防する。アンチセンスRNAオリゴヌクレオチドは、in vivoでmRNAとハイブリッド形成し、mRNA分子の変異体産物への翻訳をブロックする(オカノ(Okano)、「J.Neurochem.」56:560(1991年))。アンチセンス構築物は、当技術分野で知られた手順によって、細胞に送達させることができ、その結果、アンチセンスRNAまたはDNAは、in vivoで発現できる。アンチセンスは、アンチセンスmRNA、あるいはこうしたアンチセンスmRNAをコード可能なDNA配列であり得る。アンチセンスmRNAまたはそれをコードするDNAは、肥満および/または糖尿病変異タンパク質をコードする核酸配列の完全な配列と、あるいはタンパク質産物の産生を抑制するのに十分なこうした配列のフラグメントと相補的であり得る。アンチセンス技術はまた、ある変異体の発現を、他のものと比べて抑制する、あるいは、変異体の発現を、オリジナルの配列に比べて抑制するために使用できる。
【0098】
ここで、本発明の第1の態様、すなわち肥満および/または糖尿病変異体の発現に戻ると、前記肥満および/または糖尿病変異体産物をコードするためのコード配列を提供することによって、所望の宿主中でその発現を終わらせる適切な制御要素の制御下で、肥満および/または糖尿病変異体産物の発現を増大させることができる。
【0099】
本発明の核酸配列は、適切な薬剤担体と組み合わせて使用できる。こうした組成物は、治療上有効量の化合物、および薬学的に許容される担体または賦形剤を含む。こうした担体としては、食塩水、緩衝化生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。その処方は、投与様式にとって好都合であるべきである。
【0100】
本発明の産物はまた、in vivoでのこうしたポリペプチドの発現によって、本発明に従って使用することができ、これは、しばしば「遺伝子治療」と呼ばれる。患者から得られる細胞を、生体外のポリペプチドをコードする核酸配列(DNAまたはRNA)を用いて操作することができ、その操作された細胞は、その後、ポリペプチドを用いて治療されるべき患者に与えられる。こうした方法は、当分野でよく知られている。例えば、細胞は、本発明のポリペプチドをコードするRNAを含有するレトロウイルス粒子を使用することによって、当技術分野で知られた手順によって操作することができる。
【0101】
同様に、細胞を、当技術分野で知られた手順によって、in vivoでのポリペプチドの発現のために、in vivoで操作することができる。当分野で知られている通り、本発明のポリペプチドをコードするRNAを含有するレトロウイルス粒子を産生するためのプロデューサー細胞は、in vivoでの細胞の操作、およびin vivoでのポリペプチドの発現のために、患者に投与できる。こうした方法によって本発明の産物を投与するためのこれらの方法および他の方法は、本発明の教示から、当業者には明らかであるはずである。例えば、細胞を操作するための発現媒体(expression vehicle)は、レトロウイルス以外、例えば、適切な送達媒体と組み合わせた後にin vivoで細胞を操作するのに使用できるアデノウイルスであり得る。
【0102】
上で述べたレトロウイルスのプラスミドベクターを得ることが可能であるレトロウイルスには、それだけには限らないが、マウス白血病ウイルス(Moloney Murine Leukemia Virus)、脾臓壊死ウイルス(spleen necrosis virus)、ラウス肉腫ウイルスなどのレトロウイルス、ハーベイ肉腫ウイルス(Harvey Sarcoma Virus)、トリ白血病ウイルス、テナガザル白血病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、アデノウイルス、脊髄増殖性肉腫ウイルス(Myeloproliferative Sarcoma Virus)、および乳癌ウイルスが含まれる。
【0103】
レトロウイルスのプラスミドベクターは、パッケージング細胞系を形質導入して、プロデューサー細胞系を生じるために使用される。形質移入させることができるパッケージング細胞の例には、それだけには限らないが、PE501、PA317、psi−2、psi−AM、PA12、T19−14X、VT−19−17−H2、psi−CRE、psi−CRIP、GP+E−86、GP+envAm12、およびミラー(「Human Gene Therapy」、第1巻、5〜14ページ、(1990)年)に記載される通りのDAN細胞系が含まれる。ベクターは、当技術分野で知られた任意の手段を介して、パッケージング細胞を形質導入できる。こうした手段には、電気穿孔法、リポソームの使用、およびCaPO沈殿が含まれるが、これに限定されるものではない。ある変形例では、レトロウイルスのプラスミドベクターは、リポソームに封入させる、あるいは脂質と結びつけることができ、続いて、宿主に投与できる。
【0104】
プロデューサー細胞系は、ポリペプチドをコードする核酸配列を含む感染性レトロウイルスベクター粒子を生じる。続いて、こうしたレトロウイルスベクター粒子を使用して、in vitroまたはin vivoで、真核細胞を形質導入できる。形質導入された真核細胞は、該ポリペプチドをコードする核酸配列を発現する。形質導入させることができる真核細胞には、それだけには限らないが、胚性幹細胞、胚性癌細胞、ならびに造血幹細胞、肝細胞、繊維芽細胞、筋芽細胞、ケラチン合成細胞、内皮細胞、および気管支上皮細胞が含まれる。
【0105】
細胞に導入される遺伝子は、放射線(例えば腫瘍を治療するための放射線療法)に応答して、変異体産生またはアンチセンス阻害を刺激するために、誘導性のプロモータ(例えば放射線誘導性のEgr−1プロモータ)の制御下に置くことが可能である(マセリ,H.J.(Maceri,H.J.)ら、「Cancer Res.」56(19):4311(1996年))。
【0106】
肥満および/または糖尿病変異体産物
本発明の実質的に精製された肥満および/または糖尿病変異体産物は、本発明の核酸配列からコードされる産物として、上で定義されている。好ましくは、そのアミノ酸配列は、配列番号23から配列番号25、または配列番号27から配列番号30、または配列番号32または配列番号34から配列番号39、または配列番号41から配列番号42と同定される配列と、少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列である。タンパク質またはポリペプチドは、成熟したかつ/または修飾された形、また、上で定義した通りの、例えば、リーダー配列の切断によって改変された形であり得る。さらに考えられるのは、肥満および/または糖尿病変異体産物から得られる、少なくとも5つの連続するアミノ酸残基、好ましくは少なくとも5〜20残基を有するタンパク質フラグメント、ならびに前述した通りの相同体である。
【0107】
配列の変異は、好ましくは、上で定義した通りの、考えられる保存される置換である。したがって、例えば、好ましくは上で定義した通りの保存される置換を利用することによる、配列番号23から配列番号25、または配列番号27から配列番号30または配列番号32、または配列番号34から配列番号39、または配列番号41から配列番号42として同定される産物と少なくとも90%の配列同一性を有する配列を有するタンパク質もまた、本発明の一部である。ここで、これは、オリジナルのペプチド(そこから変異がなされている)と同一ではない(一般的に、置換は、変異が、表1中の例に関してはオリジナルの配列とは異なる領域にある)。より特定の実施形態では、タンパク質は、配列番号23から配列番号25、または配列番号27から配列番号30または配列番号32、または配列番号34から配列番号39、または配列番号41から配列番号42と同定される配列を有するあるいは含有する。肥満および/または糖尿病変異体産物は、(i)上で列挙した配列中の1つまたは複数のアミノ酸残基が、保存されるあるいは保存されないアミノ酸残基(好ましくは保存されるアミノ酸残基)で置換されたもの、あるいは(ii)1つまたは複数のアミノ酸残基に、置換基が含まれるもの、あるいは(iii)肥満および/または糖尿病変異体産物が、タンパク質の半減期を増大させる化合物(例えばポリエチレングリコール(PEG))などの別の化合物と融合されたもの、またはその標的組織または細胞集団(抗体など)にタンパク質を導くために、標的手段として働く部分、あるいは(iv)肥満および/または糖尿病変異体産物に、さらなるアミノ酸が融合されたものであり得る。こうしたフラグメント、変異体、および誘導体は、本明細書の教示から、当業者の範囲内であると考えられる。
【0108】
A.肥満および/または糖尿病変異体産物の調製
肥満および/または糖尿病変異体産物、およびタンパク質のフラグメントを産生および単離するための組換え方法は、上で述べた通りである。
【0109】
組換え体生成に加えて、変異体産物のフラグメントおよび部分は、固相法を使用する直接的なペプチド合成によって産生できる(スチュワートら、(1969年)「Solid−Phase Peptide Synthesis」、WHフリーマンコーポレーション(WH Freeman Co)、サンフランシスコ;メリフィールドJ.(Merrifield J.)、「J.Am.Chem.Soc.」85:2149〜2154(1963年))を参照のこと。in vitroのペプチド合成は、手動の技術を使用して、あるいはオートメーションによって実施できる。例えば、自動化された合成は、製造者によって提供される説明書に従って、アプライドバイオシステム431Aペプチド合成機(Applied Biosystems 431A Peptide Synthesizer)を用いて達成できる(パーキンエルマー(Perkin Elmer)、フォスターシティー、カリフォルニア州)。肥満および/または糖尿病変異体産物のフラグメントを、別々に化学的に合成し、化学的方法を使用して組み合わせて、完全長の分子を産生できる。
【0110】
B. 肥満および/または糖尿病変異体産物を利用する治療目的の使用および組成物
本発明の肥満および/または糖尿病変異体産物は通常、肥満症および/または糖尿病の治療に有用である。
【0111】
肥満および/または糖尿病変異体産物またはフラグメントは、標的器官または組織での化合物の安定したかつ予測可能な濃度を提供するように設計された、多くの経路および方法のいずれかによって投与できる。この産物を含有する組成物は、単独で、あるいは、化合物を安定させるものなどの他の薬剤と組み合わせて、かつ/または薬物またはホルモンなどの他の医薬品と組み合わせて投与できる。
【0112】
肥満および/または糖尿病変異体産物を含有する組成物は、それだけには限らないが、経口、静脈内、筋肉内、経皮、皮下、局所的、舌下、または直腸手段を含めた多くの経路によって、また経鼻適用によって投与できる。肥満および/または糖尿病変異体産物を含有する組成物はまた、リポソームを介して投与できる。こうした投与ルートおよび適切な処方は、一般に当業者に周知である。
【0113】
肥満および/または糖尿病変異体産物は、静脈内または腹腔内注射を介して投与できる。同様に、この産物は、体の他の局所的な領域に注射できる。この産物はまた、経鼻的吸入法を介して投与できる。腸内投与もまた可能である。こうした投与については、産物は、経口投与のための適切なカプセルまたはエリキシルに、または直腸投与のための坐薬に調製されるべきである。
【0114】
前述の例示的な投与型式は、おそらく、産物が、例えば軟膏、ゲル、または坐薬を含めて、適切な担体中に調製されることを必要とするであろう。適切な処方は、当業者によく知られている。
【0115】
選択された特定のポリペプチドの効力および治療係数に応じて、産物の投与量は、変動することとなる。
【0116】
この治療方法で使用するための治療組成物は、無菌の注射可能な溶液中に入れた産物、経口送達賦形剤に入れたポリペプチド、経鼻投与用の適切なエアロゾルに入れた生成物、または霧状の形の生成物(すべて、よく知られた方法に従って調製される)を含む。こうした組成物は、治療有効量の化合物と、薬学的に許容される担体または賦形剤を含む。こうした担体としては、食塩水、緩衝化生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、およびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。本発明の産物はまた、細胞培養中に内皮の分化および増殖を調節する、また、例えば、in vivoまたはin vitroで、アポトーシスを調節するために使用できる。
【0117】
抗変異体抗体
A.合成
本発明のさらなる別の態様では、精製された変異体産物は、肥満および/または糖尿病変異体産物の活性、分布、および発現に関連する診断および治療的用途を持つ抗変異体抗体を産生するために使用される。
【0118】
肥満および/または糖尿病変異体に対する抗体は、当分野でよく知られた方法によって生じることができる。こうした抗体には、それだけには限らないが、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、ヒト化、単鎖、Fabフラグメント、およびFab発現ライブラリによって産生されたフラグメントが含まれる。抗体、すなわち二量体形成を抑制するものが、特に治療的使用に好ましい。
【0119】
抗体誘導のための肥満および/または糖尿病変異体産物のフラグメントは、生物活性を特徴づけることが必要とされるだけでなく、免疫学的な活性を特徴づける必要があるが、このタンパク質フラグメントまたはオリゴペプチドは、抗原性でなければならない。特異的な抗体を誘発するために使用されるペプチドは、配列番号23から配列番号25、または配列番号27から配列番号30、または配列番号32または配列番号に34から配列番号39、または配列番号41から配列番号42で指定される配列のうちの少なくとも5アミノ酸、好ましくは少なくとも10アミノ酸からなるアミノ酸配列を有することができる。好ましくは、これらは、天然のタンパク質のアミノ酸配列の一部分に似ているべきであり、小さい、天然に存在する分子の完全なアミノ酸配列を含有していてもよい。短鎖の肥満および/または糖尿病変異タンパク質のアミノ酸は、キーホールリンペットヘモシアニンおよびキメラ分子に対して産生された抗体などの別のタンパク質のそれと融合させることができる。肥満および/または糖尿病変異体産物に対する抗体産生のために、当分野でよく知られた手順を使用できる。
【0120】
抗体産生のために、免疫原特性を保持する肥満および/または糖尿病変異体産物または任意の部分、フラグメント、またはオリゴペプチドを用いる注射によって、ヤギ、ウサギ、ラット、マウスなどを含めた様々な宿主を免疫化することができる。宿主種に応じて様々なアジュバントを使用して、免疫応答を増大できる。こうしたアジュバントには、それだけには限らないが、フロイントのもの、水酸化アルミニウムなどのミネラルゲル、およびリゾレシチンなどの界面活性物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油性乳剤(oil emulsion)、キーホールリンペットヘモシアニン、およびジニトロフェノールが含まれる。BCG、カルメット−ゲラン杆菌(bacilli Calmette−Guerin)、およびコリネバクテリウム−パルブム(Corynebacterium parvum)は、潜在的に有用なヒトアジュバントである。
【0121】
肥満および/または糖尿病変異タンパク質に対するモノクローナル抗体は、培養されている連続細胞系による抗体分子の産生を提供する任意の技術を使用して調製できる。これらには、それだけには限らないが、ケラー(Koehler)およびミルシテイン(Milstein)によって、最初に記載されたハイブリドーマ技術(「Nature」256:495〜497(1975年)、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(コスボール(Kosbor)ら、「Immunol.Today」4:72(1983年);コート(Cote)ら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」80:2026〜2030(1983年))およびEBV−ハイブリドーマ技術(コール(Cole)ら、「Mol.Cell Biol.」62:109〜120(1984年))が含まれる。
【0122】
「キメラ抗体」の産生のために開発された技術、すなわち、適切な抗原特異性および生物活性を持つ分子を得るためのヒト抗体遺伝子に対するマウス抗体遺伝子のスプライシングもまた、使用できる(モリソン(Morrison)ら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」81:6851〜6855(1984年);ニューベルガー(Neuberger)ら、「Nature」312:604〜608(1984年);タケダ(Takeda)ら、「Nature」314:452〜454(1985年))。あるいは、単鎖抗体の産生のための記載されている技術(米国特許第4,946,778号)を、変異タンパク質に特異的な単鎖抗体を産生するのに適合させることもできる。
【0123】
抗体はまた、リンパ球集団におけるin vivo産生を誘発することによって、あるいは、組換え免疫グロブリンライブラリ、またはオルランディ(Orlandi)ら、(「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」86:3833〜3837(1989年))、およびウインターG(Winter G)およびミルシテインC.(Milstein C.)(「Nature」349:293〜299(1991年))に開示される通りの非常に特異的な結合試薬のパネルをスクリーニングすることによって産生することもできる。
【0124】
肥満および/または糖尿病変異タンパク質に対する特異的な結合部を含有する抗体フラグメントもまた、産生することができる。例えば、こうしたフラグメントには、それだけには限らないが、抗体分子のペプシン消化によって産生できるF(ab’)フラグメント、およびF(ab’)フラグメントのジスルフィド架橋を減少させることによって産生できるFabフラグメントが含まれる。あるいは、所望の特異性をもつモノクローナルFabフラグメントの迅速かつ簡単な同定を可能にするために、Fab発現ライブラリを構築できる(ヒューズW.D.(Huse W.D.)ら、Science 256:1275〜1281(1989年))。
【0125】
B.抗体の診断用の適用
特異性が確立されたポリクローナルまたはモノクローナル抗体を使用する競合結合またはイムノラジオメトリックアッセイのための様々なプロトコルは、当分野でよく知られている。こうしたイムノアッセイは一般的に、肥満および/または糖尿病変異体産物とその特異的な抗体との複合体の形成、および複合体形成の測定を含む。特異的な変異体産物上の2つの干渉しない(noninterfering)エピトープに対して反応性があるモノクローナル抗体を利用する、2−部位のモノクローナルに基づくイムノアッセイが好ましいが、競合結合アッセイもまた使用できる。これらのアッセイは、マドックスD.E.(Maddox D.E.)ら(「J.Exp.Med.」158:1211(1983年))に記載されている。
【0126】
肥満および/または糖尿病変異体産物と特異的に結合する抗体は、(通常それが発現されない所での)本発明の新規の肥満および/または糖尿病変異体の発現によって(肥満および/または糖尿病変異体の過小または過剰発現によって)特徴づけられる状態または疾患の診断のために、また、本発明の肥満および/または糖尿病変異体と、オリジナルの肥満および/または糖尿病配列(そこからそれが変異する)との間の量の比率が変化するような疾患の検出のために有用である。あるいは、こうした抗体は、肥満および/または糖尿病変異体産物で治療されている患者をモニタリングするための分析で使用できる。変異タンパク質に対する診断アッセイには、細胞または組織の抽出物またはヒトの体液中の変異体産物を検出するために、抗体および標識を利用する方法が含まれる。本発明の産物および抗体は、改変の有無にかかわらず使用できる。しばしば、タンパク質および抗体は、それらをレポーター分子に共有結合的または非共有結合的に連結することによって標識されることとなる。非常に様々なレポーター分子が、当技術分野で知られている。
【0127】
それぞれのタンパク質に対して特異的なポリクローナルまたはモノクローナル抗体を使用して、肥満および/または糖尿病変異体産物を測定するための様々なプロトコルは、当技術分野で知られている。例としては、酵素結合抗体免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、および蛍光活性化細胞選別(FACS)が含まれる。上記の通り、肥満および/または糖尿病変異体産物上の2つの干渉しない(noninterfering)エピトープに対して反応性があるモノクローナル抗体を利用する、2−部位のモノクローナルに基づくイムノアッセイが好ましいが、競合結合アッセイもまた使用できる。これらのアッセイは、特に、マドックス(Maddox)ら(上記)に記載されている。こうしたプロトコルは、変化されたあるいは異常なレベルの肥満および/または糖尿病変異体産物の発現を診断するための基準を提供する。肥満および/または糖尿病変異体産物発現の正常または標準の値は、正常な対象、好ましくはヒトから取り出される体液または細胞抽出物を、肥満および/または糖尿病変異体産物に対する抗体と、当分野でよく知られている複合体形成のための適切な状態下で組み合わせることによって確立される。標準の複合体形成の量は、様々な方法、好ましくは測光法によって定量化できる。その後、正常なサンプルから得られた標準の値を、疾患によって潜在的に影響を受けている対象由来のサンプルから得られる値と比較できる。標準と対象の値の間の偏差によって、疾病状態の存在が確立される。
【0128】
抗体アッセイは、体液サンプル中に存在する肥満および/または糖尿病変異体産物のレベルを決定するために(それが本当に発現されているか、それが、組織において、過剰発現または過小発現されているかどうかを決定するために)、あるいは、どのぐらいの肥満および/または糖尿病変異体レベルの可変性の産物が、薬物療法に応答しているかどうかという指標として有用である。
【0129】
C.抗体の治療的使用
それらの診断的使用に加えて、抗体は、病的状態における肥満および/または糖尿病変異体産物の活性のブロックまたは減少(こうした減少によって、有益効果が達成され得る)における治療的な有用性をもつことができる。使用される抗体は、好ましくはヒト化モノクローナル抗体、または既知のグロブリン−遺伝子ライブラリ法によって産生したヒトMabである。抗体は一般的に、静脈注射によって、無菌液として投与されるが、他の非経口経路が適切である可能性もある。一般的に、抗体は、約1〜15mg/kg(対象の体重)の量で投与される。治療は、治療的改善が見られるまで、例えば、1〜7日ごとの投薬で続けられる。
【0130】
本発明を特定の方法および実施形態に関して述べてきたが、本発明から逸脱することなく、様々な改変と変更を行うことができることを理解されたい。
【実施例1】
【0131】
実施例1−分離
Sf−9細胞を、MOI 2で、配列番号23から配列番号25、または配列番号27から配列番号30、または配列番号32または配列番号34から配列番号39、または配列番号41から配列番号42のアミノ酸配列を含む、肥満および/または糖尿病変異体を発現しているバキュロウイルスで感染させる(AC−肥満および/または糖尿病変異体)。細胞は、連続振盪(90rpm)で、28℃で増殖させる。感染後60時間(hpi)で、培地を収集し、5000rpmで5分間の遠心分離によって、細胞を培地から分離させる。SP−セファロース(Sepharose)カラムを用いる陽イオン交換クロマトグラフィを使用して、10mlの培地を分離する。カラムにサンプルを装填した後、このカラムを、PBS pH 6.5を用いて平衡化し、このカラムをPBSで洗浄し、結合していないタンパク質を溶出させる(フロースルー画分)。溶出は、2ml/分の流速で、NaClの濃度を増大させながら行う(5% NaCl/分)。
【0132】
異なる画分を、SDS−PAGE電気泳動に、また、抗−肥満および/または糖尿病変異体抗体を使用するウェスタンブロッティングにかける。
【実施例2】
【0133】
−分泌
Sf−9細胞を、MI 2で、、肥満および/または糖尿病変異体を発現しているバキュロウイルスで感染させる(Ac−肥満および/または糖尿病変異体)。細胞は、連続振盪(90rpm)で、28℃で増殖させ、感染後24、48、および60時間(hpi)で、1mlのサンプルを収集する。遠心分離後に、細胞ペレットを、4℃で30分間、溶解緩衝液(50mM Tris pH 7.5、1% トリトン×100、およびプロテアーゼインヒビターカクテル)に溶解させ、30秒間超音波処理する。このサンプルを、14000rpmで10分間遠心分離機にかけると、上清は、所定のペレットである。ペレット調製物および培地(所定の培地)40μLに、サンプルバッファーを補充し、15% SDS−PAGE上の電気泳動にかける。電気泳動後、ゲルは、ニトロセルロース膜上へのセミドライタンパク質転写を受ける。この膜を、抗−肥満および/または糖尿病変異体抗体と共に2時間、抗ウサギ二次抗体と共にさらに1時間保温する。
【0134】
シグナルの検出は、市販のウェスタンブロット検出キットを使用して行われる。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】ヒト起源の4つのアミノ酸配列(配列番号22から配列番号25で表される)の、互いに対する、また、オリジナルの配列に対する複数のアラインメントを示す。
【図2】マウス起源の5つのアミノ酸配列(配列番号26から配列番号30で表される)の、互いに対する、また、オリジナルの配列に対する複数のアラインメントを示す。
【図3】ヒト起源の2つのアミノ酸配列(配列番号31から配列番号32で表される)の、互いに対する、また、オリジナルの配列に対するアラインメントを示す。
【図4】ヒト起源の7つのアミノ酸配列(配列番号33から配列番号39で表される)の、互いに対する、また、オリジナルの配列に対する複数のアラインメントを示す。
【図5】ヒト起源の3つのアミノ酸配列(配列番号40から配列番号42で表される)の、互いに対する、また、オリジナルの配列に対する複数のアラインメントを示す。
【図6】ヒト起源の4つの核酸配列(配列番号1から配列番号4で表される)の、互いに対する、また、オリジナルの配列に対する複数のアラインメントを示す。
【図7】マウス起源の5つの核酸配列(配列番号5から配列番号9で表される)の、互いに対する、また、オリジナルの配列に対する複数のアラインメントを示す。
【図8】ヒト起源の2つの核酸配列(配列番号10から配列番号11で表される)の、オリジナルの配列に対するアラインメントを示す。
【図9】ヒト起源の7つの核酸配列(配列番号12から配列番号18で表される)の、互いに対する、また、オリジナルの配列に対する複数のアラインメントを示す。
【図10】ヒト起源の3つのアミノ酸配列(配列番号19から配列番号21で表される)の、互いに対する、また、オリジナルの配列に対する複数のアラインメントを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号20、配列番号21、およびそれらの相補体から選択される単離された核酸配列。
【請求項2】
請求項1に記載の単離された核酸配列のうちの少なくとも15の連続する塩基対セグメントを含む核酸フラグメント。
【請求項3】
請求項1に記載の単離された核酸配列のうちの15〜30の連続する塩基対セグメントを含む請求項2の核酸フラグメント。
【請求項4】
請求項2に記載の核酸フラグメントを含むプライマー。
【請求項5】
請求項2に記載の核酸フラグメントを含むプローブ。
【請求項6】
少なくとも1つの好ましいコドンが、前記配列の少なくとも1つのコドンを置き換えている請求項1に記載の単離された核酸配列。
【請求項7】
請求項1に記載の単離された核酸配列によってコードされるアミノ酸配列。
【請求項8】
前記アミノ酸が、配列番号24、配列番号25、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号41、および配列番号42から選択される請求項7に記載のアミノ酸配列。
【請求項9】
請求項8に記載のアミノ酸配列のうちの少なくとも5つの連続するアミノ酸セグメントを含むペプチド。
【請求項10】
請求項8に記載のアミノ酸配列のうちの5〜20の連続するアミノ酸セグメントを含む請求項9に記載のペプチド。
【請求項11】
前記配列が、宿主細胞における前記配列の発現のための制御要素に作動可能に連結された、請求項1に記載の単離された核酸配列を含む発現ベクター。
【請求項12】
請求項11に記載の発現ベクターを用いて形質移入される宿主細胞。
【請求項13】
配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号20、および配列番号21から選択される核酸配列の逆の相補体のうちの10〜40の連続する塩基対セグメントを含むアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項14】
生体試料中の肥満および/または糖尿病関連遺伝子の少なくとも1つの変異体核酸配列の存在を検出するための方法であって、
(a)配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号20、配列番号21またはそれらの相補体から選択される単離された核酸配列を、生体試料の核酸材料とハイブリッド形成させるステップと、
(b)ステップ(a)により産生されるハイブリダイゼーション複合体を検出するステップとを含み、
ハイブリダイゼーション複合体の存在は、生体試料中の少なくとも1つの変異体核酸配列の存在と相関する、方法。
【請求項15】
生体試料中の変異体核酸配列のレベルを決定するための方法であって、
(a)配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号20、配列番号21、またはそれらの相補体から選択される単離された核酸配列を、生体試料の核酸材料とハイブリッド形成させるステップと、
(b)ステップ(a)によって産生されたハイブリダイゼーション複合体の量を決定するステップと、
(c)ハイブリダイゼーション複合体の量を規格化して、生体試料における変異体核酸配列のレベルを提供するステップと、を含む方法。
【請求項16】
第1の生体試料における肥満および/または糖尿病関連遺伝子変異体の核酸配列のレベルと、第2の生体試料における交互スプライシングにより産生される変異体のレベルとの間の比を決定するための方法であって、
(a)第1の生体試料における肥満および/または糖尿病関連遺伝子変異体の第1の核酸配列のレベルを決定するステップと、
(b)第2の生体試料における交互スプライシング形の変異体の第2の核酸配列のレベルを決定するステップと、
(c)ステップ(a)とステップ(b)で得られたレベルを比較して、比を与えるステップと、を含む方法。
【請求項17】
第1の生体試料と第2の生体試料が、同一のサンプルである請求項16に記載の方法。
【請求項18】
第1の核酸配列と第2の核酸配列が、mRNA転写産物である請求項16に記載の方法。
【請求項19】
第1の核酸配列と第2の核酸配列が、核酸チップ上に配置される請求項18に記載の方法。
【請求項20】
糖尿病関連タンパク質の受容体に対する、肥満および/または前記糖尿病関連タンパク質の結合親和性に影響を及ぼすことができる化合物の同定のための方法であって、
(a)配列番号24、配列番号25、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号41、および配列番号42から選択されるアミノ酸配列を提供するステップと、
(b)肥満および/または糖尿病関連遺伝子の少なくとも1つの受容体の存在下で、アミノ酸配列と候補化合物を接触させるステップと、
(c)この少なくとも1つの受容体に対するアミノ酸配列の結合に基づいて、候補化合物の効果を決定するステップと、
(d)前記タンパク質の受容体に対する、肥満および/または糖尿病関連タンパク質の結合親和性に影響を及ぼすことができる化合物を選択するステップと、を含む方法。
【請求項21】
第1の生体試料における肥満および/または糖尿病関連タンパク質変異体のレベルと、第2の生体試料における交互スプライシングによって産生される変異体のレベルとの間の比を決定するための方法であって、
(a)第1の生体試料における肥満および/または糖尿病関連遺伝子変異体の第1のアミノ酸配列のレベルを決定するステップと、
(b)第2の生体試料における交互スプライシング形の変異体の第2のアミノ酸配列のレベルを決定するステップと、
(c)ステップ(a)とステップ(b)で得られたレベルを比較して、比を与えるステップと、を含む方法。
【請求項22】
ポリメラーゼ連鎖反応によって、特定の肥満および/または糖尿病関連核酸配列を検出する方法であって、
(a)プライマー対を用いて、特定の肥満および/または糖尿病関連核酸配列を増幅するステップと(ここで、少なくとも1つのプライマーは、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号20、配列番号21、およびそれらの相補体から選択される核酸配列のうちの少なくとも15の連続する塩基対セグメントを含む)、
(b)ステップ(a)の核酸産物を検出するステップと、を含む方法。

【公表番号】特表2007−504825(P2007−504825A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526255(P2006−526255)
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【国際出願番号】PCT/US2004/029230
【国際公開番号】WO2005/026392
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(506083350)
【氏名又は名称原語表記】Liat MINTZ
【Fターム(参考)】