説明

育毛低減のための熱ショックタンパク質阻害物質の使用

哺乳類の育毛は、熱ショックタンパク質阻害物質を含む組成物を局所的に適用することによって、低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳動物において、特に美容上の目的において育毛を低減することに関する。
【0002】
哺乳類の毛髪の主要機能は、環境保護の提供である。しかし、その機能はヒトではほとんど失われており、毛髪は本質的に美容上の理由から、身体の様々な部分で維持または除去されている。例えば、頭皮に毛髪を有することは好まれるが、顔面には好まれない。
【0003】
剃毛、電解、脱毛剤クリーム類またはローション類、ワックス除毛(waxing)、抜き毛(plucking)、及び治療用抗アンドロゲン剤を含む種々の手順が、不必要な毛髪を除去するために使用されてきた。一般にこれらの従来の処置は、伴う欠点を有する。例えば、剃毛は切り傷をもたらすことがあり、発毛の速度が速まる感覚を残すことがありうる。剃毛は、また、望ましくない刈り株を残すことがありうる。一方電解は、処置領域を毛髪がない状態に長期間保つことができるが、高価で痛みを伴い、時には瘢痕を残すことがありうる。脱毛剤クリーム類は非常に有効であるが、典型的には、それらの高い刺激可能性がゆえに頻繁な使用は推奨されない。ワックス除毛及び抜き毛は、痛み、不快感、及び短い毛髪の不十分な除去をもたらすことがありうる。最後に、抗アンドロゲン剤−−女性の多毛症を処置するために使用されてきた該剤は、望ましくない副作用をもたらすことがありうる。
【0004】
育毛の速度及び性質は特定の酵素の皮膚阻害物質の適用によって変わりうることが、以前に開示されている。これらの阻害物質には、5−αレダクターゼ、オルニチン脱炭酸酵素、S−アデノシルメチオニン脱炭酸酵素、γ−グルタミルトランスペプチダーゼ、及びトランスグルタミナーゼの阻害物質が挙げられる。例えば、米国特許第4,885,289号(ブロイヤー(Breuer)ら);米国特許第4,720,489号(シャンダー(Shander));米国特許第5,095,007号(アールワリア(Ahluwalia));米国特許第5,096,911号(アールワリアら);及び米国特許第5,132,293号(シャンダーら)を参照されたい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱ショックタンパク質(HSP)は、異なる分子量のサブファミリーから構成される、進化的に保存されたタンパク質の既知のスーパーファミリーである。HSPの例には、HSP−27、HSP−70、及びHSP−90が挙げられる。HSPは、多数の細胞内機能を実行する。これらの合成は、細胞障害性薬剤、熱、及び照射を含む種々のストレスにより刺激されることから、「ストレスタンパク質」とも呼ばれる。HSPは同様に、生理学的条件下で細胞の恒常性の維持に役割を果たす可能性がある。HSPの合成は、熱ショック特異的転写因子による応答配列の転写活性化の結果起こり、その阻害は、HSPレベルの低下をもたらす。HSPは、クライアントタンパク質に結合してその適した折り畳みを促進し、細胞内区画間でのタンパク質の輸送及び選択を助け、活性/未変性立体構造のスイッチングを制御する、監督分子として作用する。HSPの基質には、多数のチロシン、セリン/トレオニン、及びサイクリン依存性キナーゼがある。加えて、HSP−90は、ホルモン受容体を通した信号伝達の変調に関与する。HSPとそれらの依存タンパク質との相互作用は、細胞増殖及び分化の調節が必要となる。細胞周期調節に加えて、HSPは、多種多様な刺激により誘導される、アポトーシスと呼ばれるプログラム細胞死に対して細胞を保護する可能性がある。HSPは、相当な抗アポトーシス特性を有する。これらは、異なる細胞内レベルでプログラム細胞死を制御する可能性がある。HSPの過剰発現は、Fas、TNF、セラミド、及び細胞障害性薬剤により誘導されるアポトーシスに対して細胞を保護する可能性がある。HSPは、ミトコンドリア依存性アポトーシス経路に関わり、カスパーゼの活性化を妨げることが示された。HSP70及びHSP−90は突然変異体p53と相互作用して、細胞周期停止/アポトーシスの重要な調節因子である野生型p53の低減を引き起こす。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの態様において本発明は、育毛を低減するのに有効な量で熱ショックタンパク質(HSP)阻害物質を皮膚に適用することによって、哺乳類(好ましくはヒト)の不必要な育毛を低減する方法(典型的には、美容的な方法)を提供する。不必要な育毛は、美容上の観点から望ましくない可能性があるか、または例えば、疾患若しくは異常状態(例えば、多毛症)によりもたらされる可能性がある。
【0007】
HSP阻害物質には、HSPと強く相互作用することにより1つ以上の毛嚢HSPの活性を特異的に阻害する化合物;毛嚢において1種または複数種のHSPのレベル及び/または発現を低減する化合物;並びに/或いは毛嚢において1種または複数種のHSP mRNAの発現を低減する化合物が挙げられる。「強く相互作用する」とは、化合物がHSPと結合する、または優先的に結合することを意味する。
【0008】
典型的には、上記の方法を実践するにあたり、阻害物質は、皮膚科学的にまたは美容上許容可能なビヒクルと共に局所適用組成物の中に含まれる。それ故に本発明はまた、皮膚科学的にまたは美容上許容可能なビヒクルと、HSP阻害物質とを含む局所適用組成物に関する。
【0009】
加えて、本発明は、育毛を低減する治療的な局所適用組成物の製造のための、HSP阻害物質の使用に関する。
【0010】
特定の化合物には、化合物それ自体と、その化合物の薬理学上許容可能な塩類の両方が挙げられる。
【0011】
本発明の他の特徴及び利点は、発明を実施するための最良の形態及び請求項から明らかになる可能性がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
好ましい組成物には、美容上及び/または皮膚科学的に許容可能なビヒクル中のHSP阻害物質が挙げられる。組成物は、固体、半固体、または液体であってもよい。組成物は、軟膏、ローション、フォーム、クリーム、ゲル、または溶液の形態の、例えば、美容及び皮膚用製品であってもよい。組成物はまた、剃毛調製物またはアフターシェーブの形態であってもよい。ビヒクルは、それ自体不活性であることができるか、またはそれ自体美容的、生理学的及び/若しくは薬学的利益を有することができる。
【0013】
既知のHSP阻害物質の例が表1で提供される。
【0014】
【表1−1】

【0015】
【表1−2】

【0016】
【表1−3】

【0017】
組成物は、2つ以上のHSP阻害物質を包含してもよい。加えて、組成物は1つ以上の他の種類の育毛低減剤を含んでもよく、例えば、米国特許第4,885,289号;米国特許第4,720,489号;米国特許第5,132,293号;米国特許第5,096,911号;米国特許第5.095,007号;米国特許第5,143,925号;米国特許第5,328,686号;米国特許第5,440,090号;米国特許第5,364,885号;米国特許第5,411,991号;米国特許第5,648,394号;米国特許第5,468,476号;米国特許第5,475,763号;米国特許第5,554,608号;米国特許第5,674,477号;米国特許第5,728,736号;米国特許第5,652,273号;PCT国際公開特許WO94/27586;PCT国際公開特許WO94/27563;及びPCT国際公開特許WO98/03149で記載されているものであり、これらは全て参考として本明細書に組み込まれる。
【0018】
組成物中のHSP阻害物質の濃度は、飽和溶液までの広範囲にわたって変わってもよく、好ましくは0.1重量%から30重量%まで、更にそれ以上であり、育毛の低減は、皮膚の単位面積当たりに適用される阻害物質の量が増加するほど大きくなる。有効的に適用される最大量は、阻害物質が皮膚に浸透する速さによってのみ限定される。有効量は、例えば、皮膚の1平方センチメートル当たり10〜3000マイクログラム以上の範囲であってもよい。
【0019】
ビヒクルは、不活性であることができるか、またはそれ自体美容的、生理学的及び/または薬学的利益を有することができる。ビヒクルを、液体または固体皮膚軟化剤、溶媒、増粘剤、保湿剤及び/または粉末剤により配合できる。皮膚軟化剤には、ステアリルアルコール、ミンク油、セチルアルコール、オレイルアルコール、イソプロピルラウレート、ポリエチレングリコール、石油ゼリー、パルミチン酸、オレイン酸、及びミリスチルミリステートが挙げられる。溶媒には、エチルアルコール、イソプロパノール、アセトン、ジエチレングリコール、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、及びジメチルホルムアミドが挙げられる。
【0020】
組成物は任意に、阻害物質の皮膚への及び/または作用部位への浸透を増進させる構成成分を含むことができる。浸透増進剤の例には、尿素、ポリオキシエチレンエーテル類(例えば、ブリジ(Brij)−30及びラウレス(Laureth)−4)、3−ヒドロキシ−3,7,11−トリメチル−1,6,10−ドデカトリエン、テルペン類、シス−脂肪酸類(例えば、オレイン酸、パルミトレイン酸)、アセトン、ラウロカプラム(laurocapram)、ジメチルスルホキシド、2−ピロリドン、オレイルアルコール、グリセリル−3−ステアレート、プロパン−2−オール、ミリスチン酸イソプロピルエステル、コレステロール及びプロピレングリコールが挙げられる。浸透増進剤は、例えば、0.1重量%〜20重量%、または0.5重量%〜5重量%の濃度で添加できる。
【0021】
該組成物は、また、阻害剤の連続的な持続放出を提供するために、皮膚の内部または表面上に容器を提供するように配合できる。該組成物はまた、皮膚からゆっくりと蒸発して、阻害物質が皮膚に浸透するための余分の時間を取れるように配合できる。
【0022】
HSP阻害物質を含有するクリーム系局所適用組成物は、水と全ての水溶性構成成分とを混合容器−Aで一緒に混合することにより調製される。pHは、約3.5〜8.0の所望の範囲に調整される。成分の完全な溶解を達成するために、容器の温度を45℃まで上げてもよい。pH及び温度の選択は、HSP阻害物質の安定性により左右される。防腐剤及び芳香剤構成成分を除く油溶性構成成分は、構成成分を溶融及び混合するために、別の容器(B)で一緒に混合され、70℃まで加熱される。容器Bの加熱された内容物は、水相(容器A)に、勢いよく攪拌しながら注がれる。混合は、約20分間続けられる。防腐剤構成成分が約40℃の温度で添加される。8〜12Pa/s(8,000〜12,000cps)の粘度または所望の粘度の軟質クリームを得るため、温度が約25℃に達するまで攪拌が続けられる。芳香剤構成成分が、約25℃〜30℃で添加されるが、内容物は、まだ混合されており、粘度は所望の範囲まで高まっていなかった。得られるエマルションの粘度を上げることが望まれる場合、従来のホモジナイザー、例えば、角穴高剪断スクリーンを持つシルバーソン(Silverson)L4Rホモジナイザーを使用して、剪断力を適用することができる。局所適用組成物は、上記の製剤調製の際に水相に活性物質を含めることにより作製することができるか、または製剤(ビヒクル)調製が完了した後で加えることができる。活性物質は、ビヒクル調製のいずれかの工程で加えることもできる。クリーム製剤の構成成分は、下記の実施例で記載されている。
【0023】
【表2】

aHSP阻害物質は、例えば、表1で提供されたリストから選択できる。
bポリクオチニウム(Polyquartinium)−51(コラボレイティブ・ラボ(Collaborative Labs)、ニューヨーク)。
cグリセリン、水、ナトリウムPCA、尿素、トレハロース、ポリカウタニウム(polyqauternium)−51、及びヒアルロン酸ナトリウム(コラボレイティブ・ラボ(Collaborative Labs)、ニューヨーク)。
【0024】
【表3】

aHSP阻害物質は、例えば、表1で提供されたリストから選択できる。
【0025】
【表4】

aHSP阻害物質は、例えば、表1で提供されたリストから選択できる。
【0026】
【表5】

【0027】
HSP阻害剤は、実施例4の製剤に添加され、可溶化するまで混合される。HSP阻害物質は、例えば、表1で提供されたリストから選択できる。
【0028】
【表6】

【0029】
HSP阻害剤は、実施例4の製剤に添加され、可溶化するまで混合される。HSP阻害物質は、例えば、表1で提供されたリストから選択できる。
【0030】
【表7】

【0031】
HSP阻害剤は、実施例4の製剤に添加され、可溶化するまで混合される。HSP阻害物質は、例えば、表1で提供されたリストから選択できる。
【0032】
【表8】

【0033】
HSP阻害剤は、実施例4の製剤に添加され、可溶化するまで混合される。HSP阻害物質は、例えば、表1で提供されたリストから選択できる。
【0034】
【表9】

【0035】
HSP阻害剤は、実施例4の製剤に添加され、可溶化するまで混合される。HSP阻害物質は、例えば、表1で提供されたリストから選択できる。
【0036】
HSP阻害剤を含有するヒドロアルコール性製剤は、製剤構成成分を混合容器中で混合することにより調製される。製剤のpHは、3.5〜8.0の範囲の所望の値に調整される。このpH調整は、製剤成分の完全な溶解をもたらすためにも実施することができる。加えて、活性物質の安定性に応じて、製剤成分の溶解を達成するために、加熱を45℃まで、更には70℃まで適用することができる。幾つかのヒドロアルコール性製剤が下記に示されている。
【0037】
【表10】

aHSP阻害物質は、例えば、表1で提供されたリストから選択できる。
bカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド(アビテック社(Abitec Corp.)、オハイオ州)。
【0038】
【表11】

aHSP阻害物質は、例えば、表1で提供されたリストから選択できる。
【0039】
【表12】

【0040】
HSP阻害剤は、製剤に添加され、可溶化するまで混合される。HSP阻害物質は、例えば、表1で提供されたリストから選択できる。
【0041】
該組成物は、育毛を低減することが望まれる、体の選択された領域に局所的に適用されるべきである。例えば、該組成物は、顔、特に顔の髭領域、すなわち頬、頸、上唇及び顎に適用できる。該組成物は、また、剃毛、ワックス除毛、機械式脱毛、化学的除毛、電解及びレーザー補助脱毛を含む、他の脱毛法の補助剤として使用されてもよい。
【0042】
該組成物は、また、脚、腕、胴体または腋の下にも適用できる。該組成物は、多毛症または他の状態を有する女性において、不必要な毛髪の発育を低減するのに特に適している。ヒトでは、該組成物は、知覚される育毛の低減を達成するために、1日1回若しくは2回、または更に頻繁に適用されるべきである。育毛の低減の知覚は、早ければ使用後24時間または48時間(例えば、通常の剃毛の間隔)で起こることがあるか、または例えば3か月まで続くことがある。育毛の低減は、例えば、育毛の速度が遅くなるとき、除去の必要性が低くなるとき、対象者が処置部位で毛髪が少ないことを感知するとき、または定量的には、除去された毛髪の量(いわゆる毛髪量)が低減するときに実証される。
【0043】
ヒト毛嚢発育アッセイ
ヒトの皮膚は、美容整形術の副産物として形成外科医から入手した。皮膚試料は一般に、顔の領域から取られた毛髪領域と非毛髪の領域から構成された。除去した直後、皮膚は、抗生物質を含有するウイリアムス(Williams)E培地の中に置かれ、冷蔵保存された。ウイリアムス(Williams)E培地は市場から購入され(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)、メリーランド州ゲイサーズバーグ(Gaithersburg))、生体外(in-vitro)環境下で毛嚢の生存能力を維持するのに必須の栄養素が配合された。
【0044】
発育期(成長期)のヒト毛嚢が、解剖用顕微鏡下でメス及び時計工鉗子を使用して、美容整形組織から単離された。皮膚は、容易に切開できるように、2〜3列の毛嚢を露出する薄片に切断された。毛嚢は、2mM L−グルタミン、10μg/mlインスリン、10ng/mlヒドロコルチゾン、100単位のペニシリン、0.1mg/mlストレプトマイシン及び0.25μg/mlアンホテリシンBを補充した0.5mlのウイリアムス(Williams)E培地の中に置かれた。毛嚢は、5%CO2及び95%空気の環境下で、24ウエルプレート(1毛嚢/ウエル)中、37℃でインキュベートされた。毛嚢の画像は、20X倍率の解剖用顕微鏡下で、24ウエルプレート中で取られた。毛嚢の長さは、0日目(毛嚢が培養地の中に置かれた日)に測定され、6〜7日目に再び測定された。この系では、毛嚢は毛髪繊維に完全に分化し、生体内(in vivo)で約0.3mm/日の率のヒトと同様の速度で長さが伸びるように思われる。熱ショックタンパク質の阻害物質を試験するために、該阻害物質または抗HSP抗体が培地に0時間から含有され、実験の間を通じ培地中で保持された。
【0045】
免疫組織化学アッセイ
毛嚢または急速冷凍皮膚生検からの8ミクロンの凍結切片を調製し、アセトン中、−20℃で10分間固定した。HSP−27、HSP70またはHSP−90の免疫検出では、チラミド(tyramide)増幅法が使用された。内因性ペルオキシダーゼ及び非特異的アビジン/ビオチン結合をブロックした直後に(アビジン/ビオチンブロックキット、ベクター・ラボ(Vector Lab))、切片は、TNB緩衝剤(0.1Mトリス−HCl、pH7.5、0.15M NaCl及び0.5%ブロック試薬、パーキン・エルマー(Perkin Elmer)、マサチューセッツ州ボストン(Boston))で30分間インキュベートされた。次に、ヒトHSP−27、HSP70に対するマウスモノクローナル抗体(カルバイオケム(Calbiochem))、またはヒトHSP−90に対するウサギポリクローナル抗体(サンタ・クルーズ・バイオテクノロジー(Santa Cruz Biotechnology))が一晩適用され(それぞれ1:500及び1:1000)、続いてTNBブロック緩衝剤(パーキン・エルマー(Perkin Elmer)、マサチューセッツ州ボストン(Boston)、1:200、30分間)で希釈された、ビオチン化ヤギ抗マウスまたはヤギ抗ウサギ抗血清が適用された。その後、切片はストレプトアビジン−ホースラディシュ・ペルオキシダーゼの中(TNB中1:100、30分間)でインキュベートされた。TNT緩衝剤(0.1Mトリス−HCl、pH7.6、0.15M NaCl、0.05%ツイーン)による3回の洗浄の後、TRITC−チラミド(増幅希釈剤中1:50、パーキン・エルマー(Perkin Elmer)、マサチューセッツ州ボストン(Boston))の10分間の適用が続いた。次に、切片は細胞核を確認するためにヘキスト(Hoechst)33342で対比染色され、ベクタシールド(VectaShield)(ベクター・ラボラトリーズ(Vector Laboratories))を使用して載せた。
【0046】
全ての切片は、オリンパス(Olympus)BX60蛍光顕微鏡下で検査され、デジタル画像分析システム(クールスナップ(CoolSnap)(商標)冷却CDカメラ、アルファ・イノテック(Alpha Innotech))の助けを借りて写真記録された。
【0047】
結果
免疫組織化学方法論を使用して、HSPー27、HSP−70及びHSP−90の存在が生体外(in-vitro)でヒト毛嚢において実証された。HSP−27及びHSP−70は、外毛根鞘及び毛嚢の真皮乳頭細胞のような、良好に画定された区画における濾胞性上皮細胞及び間充織細胞で見出された。しかし、他方、毛嚢上皮でより広範囲にわたって発現しているHSP−90は、間充織起原の真皮乳頭細胞では不在である。この免疫組織化学方法論は、HSP−27及びHSP−70またはHSP−90のレベル及び/または発現を特異的に低減させる剤を選択するために使用できる。
【0048】
追加的な免疫組織化学アッセイが、HSP発現の変化及びHSPに結合する剤の特異性を決定するために実施された。ヒト毛嚢発生におけるHSPの役割を検査するために、内因性HSP−27は、抗HSP−27抗体の培地中に加えることによって、中和された。単離されたヒト毛嚢は、1mg/mlの濃度で抗HSP−27抗体が存在する補充されたウイリアム(William)培地で培養された。48時間後、HSP−27の免疫組織化学分析が、毛嚢におけるHSP−27の発現を決定するために実施された。対照毛嚢の分析は、濾胞性上皮細胞及び間充織細胞でのHSP27の強い発現を明らかにした。対照的に、抗HSP−27抗体で処置された毛嚢は、近位毛嚢区画におけるHSP−27の発現の完全な阻害を示した。遠位外毛根鞘の単離された細胞は、HSP−27陽性のままであった。モノクローナル抗HSP−27抗体で処置されたヒト毛嚢の結果は、下記を示す:
(1)免疫組織化学分析で決定されているように、HSP−27タンパク質に対する抗体の有意な結合;
(2)タンパク質に対するこの強い結合の結果、抗HSP−27抗体が、内因性HSP−27の活性及び発現を阻害した;
(3)退行期の発生の頻度の増加(抗HSP−27抗体処置毛嚢67%対対照16%、データが表2で示されている);
(4)毛髪繊維発育の有意な低減(データが表2で示されている);及び
(5)追加のHSP阻害物質を選択する方法。
【0049】
【表13】

a育毛は、5日目の毛嚢の全長から0日目の毛嚢の全長を差し引くことにより決定された。阻害%=100−(阻害物質で処置された毛嚢の育毛/対照の育毛)×100。退行期%=(退行期毛嚢数/全毛嚢数)×100。
【0050】
ヒト毛嚢成育の用量依存性低減が、HSP−90特異的阻害物質ゲルダナマイシンで見られた(表3)。阻害物質のマイクロモル以下の用量での育毛の強力な、50%を超える低減は、最適に機能化されたHSP活性に対する育毛の依存性を示す。
【0051】
【表14】

a育毛は、6日目の毛嚢の全長から0日目の毛嚢の全長を差し引くことにより決定された。阻害%=100−(阻害物質で処置された毛嚢の育毛/対照の育毛)×100。
【0052】
表4は、KNK437、ベンジリデンラクタム化合物によるヒト毛嚢発育の用量依存性低減を示す。化合物KNK437は、mRNAレベルでHSPの誘発、従ってその発現を阻害することが知られている。
【0053】
【表15】

a育毛は、6日目の毛嚢の全長から0日目の毛嚢の全長を差し引くことにより決定された。低減%=100−(阻害物質で処置された毛嚢の育毛/対照の育毛)×100。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類の育毛を低減する方法であって、
育毛の低減が望まれる皮膚の領域を選択すること;及び
育毛を低減するのに有効な量で熱ショックタンパク質阻害物質を含む皮膚科学的に許容可能な組成物を前記皮膚の領域に適用すること、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記阻害物質がゲルダナマイシンであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記阻害物質が、17−アリルアミノ,17−デメトキシゲルダナマイシンであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記阻害物質がKF25706であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
阻害物質がKF58333であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記阻害物質がKF58332であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記阻害物質が、O−カルバモイル−メチルオキシムであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記HSP(熱ショックタンパク質)阻害物質がゲルダナマイシンベンゾ−1,3−ジオキソールであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記阻害物質がKNF437であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記阻害物質がKNK423であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記阻害物質が、1種または複数種の毛嚢熱ショックタンパク質の活性を特異的に阻害することができる化合物であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記阻害物質が、毛嚢において1種または複数種の熱ショックタンパク質のレベル及び/又は発現を低減することができる化合物であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記阻害物質が、毛嚢において1種または複数種の熱ショックタンパク質mRNAの発現を低減することができる化合物であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物における前記阻害物質の濃度が0.1%〜30%であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記阻害物質が、皮膚1平方センチメートル当たり前記阻害物質10〜3000マイクログラムの量で皮膚に適用されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記哺乳動物がヒトであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記皮膚の領域がヒトの顔面にあることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
該組成物が、剃毛と併せて皮膚の領域に適用されることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記皮膚の領域がヒトの脚にあることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記皮膚の領域がヒトの腕にあることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記皮膚の領域がヒトの腋の下にあることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記皮膚の領域がヒトの胴体にあることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項23】
該組成物が、多毛症の女性の皮膚の領域に適用されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記育毛が、アンドロゲン刺激育毛を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項25】
該組成物が、同様に育毛の低減を引き起こす第2の構成成分を更に包含することを特徴とする請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2007−534700(P2007−534700A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−509737(P2007−509737)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【国際出願番号】PCT/US2005/014273
【国際公開番号】WO2005/105023
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(500006524)ザ ジレット コンパニー (14)
【Fターム(参考)】