説明

育苗マット

【課題】 さらに優れた保型性および作業性を併せ持ち田植え機による移植作業(田植え機に備えられたフィンガーによる掻き取り)が良好に行えるマットであり、苗が良好に成長できる育苗マットを提供する。
【解決手段】 植物性粒状物と芯鞘型複合バインダー短繊維とから構成され、前記芯鞘型複合バインダー短繊維が芯部に高融点成分であるポリ乳酸系重合体が配され、鞘部に低融点成分であるポリアルキレンサクシネートに乳酸が1〜6モル%共重合した重合体が配され、高融点成分と低融点成分との融点差は30℃以上であり、前記低融点成分が溶融または軟化することにより植物性粒状物同士が熱接着されて一体化したマットであり、マットには育苗用肥料が含まれていることを特徴とする育苗マット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水稲等の作物の苗を育苗するために用いられる育苗マットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水稲等の作物の苗を苗床によって育苗し、それを自動田植機で田植えをすることが行われている。そしてこの苗床の床土としては一般的に土壌培土が用いられていた。ところが、このような土壌培土は、良質(均質)の床土が比較的高価で入手が困難であったり、重く運搬性等が悪いという問題があった。
【0003】
このような土壌培土に代わって樹皮、パルプチップ、オガクズなどを堆肥化したバーク堆肥、あるいはこれらに類似の堆肥物、籾殻、切断わらなどのような所謂植物性粒状物を親水性ウレタンプレポリマーあるいはポリビニルアルコール、デンプンなどで結合させ蒸発乾固させた苗床が提案されている(特許文献1)。しかしながら、このような樹脂結合剤等を使用した苗床は、蒸発乾固に時間がかかるため、やはりコストが高いという問題があった。さらに、乾固した苗床は、硬質であることから衝撃に弱く、破損しやすいため、取り扱いが困難であり、作業性が悪い。また、実際の使用においては、逆に、育苗のために水分を含ませるともろくなりすぎて、保型性に劣るという問題があり、自動田植え機にセットして移植作業を実施しようとしても、装置のフィンガーにより掴み取りにくく作業性に劣るものであった。
【0004】
本件出願人は、安価で簡単に製造でき、生分解性を有し、かつ運搬時あるいは作業時の取扱性が良好な植生マットとして、植物性粒状物と、高融点と低融点のポリ乳酸からなる複合繊維とを混合し、低融点のポリ乳酸により、熱接着、保型してなるマットを提案している(特許文献2)。また、特許文献2記載において、高融点と低融点のポリ乳酸からなる複合繊維に換えて、高融点のポリ乳酸と特定の共重合体とからなる複合繊維を用いることにより、特許文献2記載のマットよりもさらに優れた保型性および作業性を併せ持ち、田植え機による移植作業(田植え機に備えられたフィンガーによる掻き取り)が良好に行える植生マットを提案している(特許文献3)。
【特許文献1】特公昭56−18165号公報
【特許文献2】特開2001−333636号
【特許文献3】特開2006−296271号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記載の特許文献3を利用するものであり、優れた保型性および作業性を併せ持ち田植え機による移植作業(田植え機に備えられたフィンガーによる掻き取り)が良好に行えるマットであり、苗が良好に成長できる育苗マットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、植物性粒状物と芯鞘型複合バインダー短繊維とから構成され、前記芯鞘型複合バインダー短繊維が芯部に高融点成分であるポリ乳酸系重合体が配され、鞘部に低融点成分であるポリアルキレンサクシネートに乳酸が1〜6モル%共重合した重合体が配され、高融点成分と低融点成分との融点差は30℃以上であり、前記低融点成分が溶融または軟化することにより植物性粒状物同士が熱接着されて一体化したマットであり、マットには育苗用肥料が含まれていることを特徴とする育苗マットを要旨とするものである。
【0007】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0008】
本発明において用いる植物性粒状物および芯鞘型複合バインダー繊維は、上記特許文献3(特開2006−296271号)に記載されたものを用いることができる。すなわち、植物性粒状物としては、籾殻、樹皮、パルプチップ、オガクズ、裁断わらなど植物由来の粒状物であれば特に限定されるものではない。また、籾殻を用いる場合は、水分を少量加えながら圧縮粉砕したいわゆる膨軟化粉砕籾殻を用いることが好ましい。
【0009】
芯鞘型複合バインダー短繊維は、芯部に高融点成分であるポリ乳酸系重合体が配され、鞘部に低融点成分であるポリアルキレンサクシネートに乳酸が1〜6モル%共重合した重合体が配されたものである。熱融着処理により、芯部の高融点成分は溶融せずに繊維形態を保持し、一方、鞘部の低融点成分は溶融または軟化しバインダー成分として機能する。
【0010】
ポリ乳酸系重合体としては、ポリL−乳酸、ポリD−乳酸、L−乳酸とD−乳酸の共重合体であるポリDL−乳酸、あるいはポリL乳酸とポリD乳酸の混合物(ステレオコンプレックス)のいずれでもよい。ポリDL−乳酸を用いる場合のD−乳酸とL−乳酸の共重合比(D−乳酸/L−乳酸)は、100/0〜95/5、5/95〜0/100が好ましい。上記共重合比を外れる共重合体は、融点が低くなり、また非晶性が高くなり好ましくない。また、ポリ乳酸系重合体として、芯鞘型複合バインダー短繊維の耐久性を向上させる目的で、脂肪族アルコール、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物、エポキシ化合物などの末端封鎖剤をポリ乳酸に添加したものを用いてもよい。また、本発明の目的を損なわない範囲で、ε−カプロラクトン等の環状ラクトン類、α−ヒドロキシ酪酸、α−ヒドロキシイソ酪酸、α−ヒドロキシ吉草酸等のα−オキシ酸類、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール等のグリコール類、コハク酸、セバシン酸等のジカルボン酸類が含有されていてもよい。
【0011】
また、芯部の高融点成分の粘度は、ASTM D 1238に記載の方法に準じて、温度210℃、荷重20.2N(2160gf)で測定したメルトフローレート(以下、MFRと略記する。)が10〜80g/10分であることが好ましく、20〜40g/10分であることがより好ましい。MFRが10g/10分未満であると、紡糸時に溶融押出が困難となるだけでなく、繊維の機械的強力が低下する傾向にある。一方、MFRが80g/10分を超える場合、溶融押出により良好に繊維化しにくい。
【0012】
鞘部の低融点成分を構成するポリアルキレンサクシネートとしては、エチレンサクシネート、ブチレンサクシネート、プロピレンサクシネート等の、エチレングリコール、ブタンジオール等のアルキレンジオールとコハク酸を共重合したものである。また、本発明の目的を損なわない範囲で、上の繰り返し単位に、ε−カプロラクトン等の環状ラクトン類、α−ヒドロキシ酪酸、α−ヒドロキシイソ酪酸、α−ヒドロキシ吉草酸等のα−オキシ酸類、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール等のグリコール類、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、リンゴ酸等のジカルボン酸類を共重合させてもよいが、これらの共重合量は30モル%以下の範囲とする。
【0013】
また、鞘部の低融点成分は、ポリアルキレンサクシネートに乳酸が共重合されているものであるが、乳酸が共重合していることにより、低融点成分と高融点成分(芯部)との相溶性が飛躍的に良化する。両者の相溶性が低い場合、植物性粒状物と複合バインダー繊維とを混合後、熱処理を施した際に、溶融した低融点成分が、高融点成分との界面を小さくするために、流動して島状に凝集するという現象が起こるため、接着強力が低くなり、結果、育苗マットの保型性に劣る傾向となる。低融点成分を構成する重合体において、乳酸を含有させることで、すなわち、高融点成分であるポリ乳酸と共通の成分を含有させることにより、低融点成分である重合体と高融点成分であるポリ乳酸との相溶性が良化し、前述のような現象が起こりにくく、接着強力が向上し、育苗マットの保型性が向上し、取扱い性、作業性に優れる。
【0014】
低融点成分において、共重合する乳酸が1モル%未満であると、鞘部と芯部との相溶性が十分に良化せず、上記の効果が得られにくい。一方、共重合する乳酸が6モル%を超えると、ポリ乳酸との相溶性はより良好ではあるが、ポリアルキレンサクシネートの本来有する柔軟性が損なわれ、得られる育苗マットは硬く屈曲性に欠け取り扱い性に劣る。なお、ポリアルキレンサクシネートに共重合する乳酸は、L−乳酸であっても、D−乳酸でもよい。また、乳酸は、モノマー単位で共重合してなるものを基本とするが、本発明の効果を損なわない範囲でオリゴマー単位(2個〜10個程度)のものが一部含まれていてもよい。
【0015】
鞘部の低融点成分の融点は、90〜140℃が好ましい。融点が90℃未満であると、紡糸や延伸時に密着が起こりやすく操業性に劣る傾向にあり、一方、融点が140℃を超えると、芯部のポリ乳酸系重合体との融点差を設けにくい。また、育苗マットを作成する際、熱処理前に種籾等の種子を熱処理前のマット内に含有させる場合は、熱処理時の熱によって、マット内の種子に熱によるダメージを受けにくくする(正常に発芽することへの影響)ことを考慮して、融点は120℃以下が好ましい。よって、90〜120℃が好ましい。
【0016】
低融点重合体の粘度は、ASTM D 1238に記載の方法に準じて、温度190℃、荷重20.2N(2160gf)で測定したMFRが10〜80g/10分であることが好ましく、20〜40g/10分であることがより好ましい。MFRが10g/10分未満であると、紡糸時の溶融押出が困難となるだけでなく、繊維の機械的強力が低下する傾向にある。一方、MFRが80g/10分を超えても、溶融押出により良好に繊維化しにくい。
【0017】
本発明に用いる芯鞘型複合バインダー短繊維は、鞘部がポリアルキレンサクシネートに乳酸が1〜10モル%共重合した重合体で構成される。なお、鞘部の重合体は、熱接着成分として機能するものであるので、芯部のポリ乳酸の融点よりも30℃以上低い融点を有するものである。
【0018】
芯部のポリ乳酸と鞘部の重合体との融点差は30℃以上であり、より好ましくは50℃以上である。融点差が30℃未満の場合、熱処理の際に設定温度の幅が小さくなるため適正加工を行う温度範囲が狭く、加工性が劣る。また、芯部の高融点成分が熱の影響を受けることなく加工温度を上げることができにくいため、低融点成分(バインダー成分)が十分に溶融せず接着性が低下する傾向となる。
【0019】
芯鞘型複合バインダー短繊維は、各種顔料、染料、撥水剤、吸水剤、難燃剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、金属粒子、結晶核剤、滑剤、可塑剤、抗菌剤、香料その他の添加剤を混合、添加してもよい。
【0020】
芯鞘型複合バインダー短繊維において、芯部と鞘部と芯鞘比率については、特に限定しないが、育苗マットの保型性を考慮すると、芯/鞘(容積比)は30/70〜70/30が好ましい範囲である。
【0021】
芯鞘型複合バインダー短繊維の断面形状は、円形断面に限定されるものではなく、芯部の高融点成分を鞘部の低融点重合体が覆っているものであればよく、扁平形、多角形、多葉形、ひょうたん形、アルファベット形、その他各種の非円形(異形)などであってもよい。
【0022】
芯鞘型複合バインダー繊維の繊維長は、5〜30mm程度が好ましい。5mm未満であると、マットを製造する際に、植物性粒状物とバインダー繊維とを撹拌混合するにあたって、繊維がネットワーク状となって植物性粒状物を包み込む形態をつくりにくい。一方、30mmを超えると、植物性粒状物との形状(長さ)の差が大きくなり、両者が均一に混ざりにくくなる。より好ましい繊維長は、5〜20mmである。
【0023】
芯鞘型複合バインダー短繊維の繊度は、操業安定性、接着性能などを考慮して1.0〜80デシテックス程度が好ましく、1.7〜50デシテックスがより好ましい。また、短繊維には、機械捲縮が付与されたものであってもよいが、捲縮が付与されないノークリンプのものが好ましい。
【0024】
芯鞘型複合バインダー短繊維は、芯部に上記した高融点成分、鞘部に上記した低融点成分となるように、両成分を常法によって複合紡糸することにより得られる。すなわち、まず、両成分を芯鞘型複合口金を用いて従来公知の溶融複合紡糸法で溶融紡糸し、横吹付や環状吹付等の従来公知の冷却装置を用いて、吹付風により冷却した後、油剤を付与し、引き取りローラを介して未延伸糸として巻取機に巻取る。巻取った未延伸糸は、公知の延伸機にて周速の異なるローラ群間で延伸し、押し込み型の捲縮機などで捲縮を付与した後に、ECカッターなどのカッターで目的とする長さに切断すればよい。
【0025】
本発明の育苗マットは、芯鞘型複合バインダー短繊維と植物性粒状物とを攪拌混合し、繊維がネットワーク状になって籾殻と絡み合い、籾殻を包み込み、この状態で、鞘部の低融点成分が溶融または軟化するが芯部の高融点成分は軟化しない温度で加熱成形することにより、植物性粒状物同士が低融点成分により熱接着して一体化したものである。加熱成形するには、発熱体によって雌雄一対の成形型を構成し、この成形型によって所定の形状(例えば、縦寸法28cm、横寸法58cm、厚さ寸法2cmのマット形状)にプレス成形してもよく、予め大きなマット形状にプレス成形した後に所定形状(寸法)に切断してもよい。この場合、加圧の程度としては、攪拌混合した原料(植物性粒状物とバインダー短繊維)の厚さを4cmとした場合に加圧後の厚さが2cmになる程度が好ましい。また、プレスローラ等を用い、攪拌混合した原料を連続的に供給しながらプレスローラ等によって加熱・加圧して、連続的に成形し、その後に切断して完成させてもよい。またこの場合、加熱の仕方としては、プレスローラ自体を熱ローラとして加熱と加圧を同時に行ってもよく、あるいは、熱風を送給することで加熱してもよい。
【0026】
植物性粒状物と芯鞘型複合バインダー短繊維の混合割合は、植物性粒状物100質量部に対しバインダー短繊維を1〜5重量部程度でよいが、この混合割合は適宜変更可能である。
【0027】
本発明の育苗マットは、育苗用肥料が含まれる。育苗用肥料は、植物性粒状物とバインダー短繊維とを攪拌混合する際に、一緒に加えて混合することが好ましい。マット内に均一に存在することができるからである。また、育苗する作物の種類や天候(気候)、地域等に応じて、マットに含ませる育苗用肥料の種類や混合割合を適宜変更して、複数種類の異なる育苗マットを準備することにより、大幅に適用の範囲を拡大させることができる。育苗用肥料としては、中期育成用肥料(例えば、商品名「ロングM100」)、良質土壌菌繁殖用剤(例えば、ゼオライト)、初期育成用肥料(例えば、硫化燐安)、健苗育成剤(例えば、商品名「FTE」)、発芽抑制物質除去剤(例えば、クエン酸)等が挙げられる。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、植物性粒状物と複合バインダー繊維とからなる植生マットであり、複合バインダー繊維は、高融点成分であるポリ乳酸と、低融点成分であるポリアルキレンサクシネートに乳酸が共重合した重合体とから構成され、育苗マットは、低融点成分の溶融または軟化により植物性粒状物同士が接着されて、全体として一体化しているため、低コストであり、土中で分解するため環境面にも配慮したものである。また、接着成分として機能する低融点成分として、ポリアルキレンサクシネートに乳酸が共重合した重合体を用いているため、高融点成分であるポリ乳酸との相溶性が良好で、溶融した際に島状に凝集して部分的に偏在するという現象は起こりにくいため、斑なく接着できて、保型性も良好となる。また、この低融点成分は、溶融により樹脂化した際、硬くなりすぎず、取り扱い性が良好で、田植え機による移植作業が良好に行えるという効果も奏する。
【0029】
さらには、本発明の育苗マットには、育苗用肥料を含んでいるため、別の新たな肥料をこの育苗用培土(マット)に加える必要がなく、良好に苗を生育することができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例によって本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例における特性値等の測定法は、次の通りである。また、MFRの測定法は上記したとおりである。
(1)融点(℃): パーキンエルマ社製の示差走査型熱量計DSC−2型を用い、昇温速度20℃/分の条件で測定し、得られた融解吸熱曲線において極値を与える温度を融点とした。
(2)単糸繊度(dtex):JIS L−10157−5−1−1Aの方法により測定した。
【0031】
実施例1
ポリ乳酸系重合体(MFR21g/10分、融点170℃、D−乳酸/L乳酸の共重合比=1.3/98.7のポリDL−乳酸、)を芯部とし、L−乳酸を3.0モル%共重合したポリブチレンサクシネート(MFR32g/10分、融点109℃)を鞘部とし、孔数560孔、円形断面芯鞘複合紡糸口金を用い、芯鞘比率が溶融容積比として芯:鞘=50:50となるように計量し、紡糸温度230℃、紡糸速度800m/分で溶融紡糸して未延伸糸を得た。次いで、得られた未延伸糸を延伸温度60℃、延伸倍率3.50倍で延伸を行い、次いで、仕上げ油剤を付与後に、70℃で乾燥させ、繊維長10mmに切断し、繊度が2.2dtexであるノークリンプの芯鞘型複合バインダー短繊維を得た。
【0032】
一方、植物性粒状物として、水分を少量加えながら圧縮粉砕した膨軟化粉砕籾殻を用意した。
【0033】
次いで、膨軟化粉砕籾殻600g、芯鞘型複合バインダー短繊維15g、中期育成用肥料(商品名「ロングM100」)60g、 良質土壌菌繁殖用剤(ゼオライト)6g、 初期育成用肥料(硫化燐安)7g、健苗育成剤(商品名「FTE」)0.36g、 発芽抑制物質除去剤(クエン酸)1.2gを攪拌混合し、繊維がネットワーク状に絡んで籾殻などを包み込んだ状態の撹拌混合原料とした。
【0034】
次いで、この攪拌混合原料を、発熱体によって構成された一対の雌成形型及び雄成形型を用い、原料内部温度が130℃になるような加熱温度条件によって、縦寸法28cm、横寸法58cm、厚さ寸法2cmのマット形状にプレス成形し、屈曲性および保水性を有する育苗マットを得た。
【0035】
この育苗マットを育苗箱に敷き、灌水し、水稲の苗を播種し、さらに覆土を施した上で、灌水及び温度管理をして育苗した。マットは、割れたり欠けたりすることなく、運搬中に形が崩れることがなかった。また、肥料を含んでいることから、良好に苗が成長した。これを自動田植機の苗台にセットして田植えを実施した場合にも、田植え機のフィンガー部分がうまく苗を掴み取ることができ、スムースに作業を行うことができた。
【0036】
実施例2〜4、比較例1〜2
芯鞘型複合バインダー短繊維の低融点成分において、用いたポリアルキレンサクシネートおよびこれに共重合する乳酸の共重合量を表1に示すものを用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施した。
【0037】
【表1】

本発明の実施例2〜4のマットも実施例1のマットと同様に接着強力も十分高く、また、屈曲性も良好でスムースに自動田植機で田植えが可能であった。
【0038】
一方、比較例1は、鞘部の重合体における乳酸の共重合量が少なく、芯部のポリ乳酸との相溶性が十分ではないため、接着性が悪くなり、マットが崩れやすかった。
【0039】
比較例2は、鞘部の重合体における乳酸の共重合量が6モル%を超えたものであり、ポリブチレンサクシネートのソフト性が低下し、得られたマットは屈曲性が低く崩れやすいものとなった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物性粒状物と芯鞘型複合バインダー短繊維とから構成され、前記芯鞘型複合バインダー短繊維が芯部に高融点成分であるポリ乳酸系重合体が配され、鞘部に低融点成分であるポリアルキレンサクシネートに乳酸が1〜6モル%共重合した重合体が配され、高融点成分と低融点成分との融点差は30℃以上であり、前記低融点成分が溶融または軟化することにより植物性粒状物同士が熱接着されて一体化したマットであり、マットには育苗用肥料が含まれていることを特徴とする育苗マット。


【公開番号】特開2008−154491(P2008−154491A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−346051(P2006−346051)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(399065497)ユニチカファイバー株式会社 (190)
【Fターム(参考)】