説明

肺炎連鎖球菌3型多糖体の精装

本発明は、溶菌後の加熱またはpH調整に関する工程を含む、血清型3多糖体を含有する複雑な細胞性肺炎連鎖球菌の溶菌産物またはセントレートからの蛋白質不純物の減少または除去のための改善された方法を、提供する。いくつかの方法において、該溶菌産物は、その溶菌産物中に存在する蛋白質を変性させ、それらの凝集および沈殿を引き起こすのに十分な温度でしばらくの間加熱される。1つの実施形態において、該溶菌産物は、蛋白質の凝集および沈殿を引き起こすため、少なくとも60℃に少なくとも30分間、より具体的には約60℃〜約70℃に約30分〜約50分間、そしてさらにより具体的には約65℃に約40分間加熱される。他の方法において、該溶菌産物またはセントレートのpHは、濾過性を改善するために、少なくとも8.0に、より具体的には約8.0〜8.4に、さらにより具体的には約8.2に上げられる。さらなる方法において、加熱とpH調整工程は、蛋白質の凝集および沈殿を引き起こすために、ならびに該溶菌産物またはセントレートの濾過性を改善するために、組み合わせられる。他の方法において、該溶菌産物またはセントレートのpHは、蛋白質の凝集および沈殿を引き起こすために、約3.0〜約5.0に下げられる。該方法は、実質的に精製された血清型3多糖体を含有する溶菌産物またはセントレートの産生を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱またはpH調整工程を含む、血清型3多糖体を含有する複雑な細胞性肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)溶菌産物またはセントレート(centrate)から蛋白質不純物を減少または除去するための、改善された方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生物の肺炎連鎖球菌(別名、肺炎球菌)に起因する感染病の予防を対象とする多価の結合型肺炎球菌ワクチンの調製においては、選択された肺炎連鎖球菌血清型が、ワクチンを産生するのに必要とされる多糖体を供給するために、生育される。細胞は、大型の発酵槽で生育され、デオキシコール酸ナトリウム(DOC)または別の溶菌剤の添加によって、発酵の最後に溶菌が誘導される。次いで、その溶菌ブロスは、最終段階の精製およびその細菌細胞を取り囲む莢膜多糖体の回収のために集められる。担体蛋白質とのコンジュゲーション後、その多糖体は最終的なワクチン産物に含まれ、選択された肺炎連鎖球菌血清型に対する免疫を、ワクチンの標的集団に与える。
【0003】
この過程で産生された細胞溶菌産物は標的の多糖体を含むが、それは、DNA、RNA、蛋白質および残余の培地成分を含む大量の細胞残屑もまた含有する。従来の処理では、溶菌剤およびいくらかの不純物の沈殿を補助するための酢酸添加によって、溶菌産物は最小で6.6までのpH低下を伴った。この材料は、遠心分離に続いて、大部分の固体を取り除き0.45μmの基準寸法まで小さくするために、濾過される。しかしながら、そのような従来の処理では、不純物の最低限の低下を示し、精製多糖体の規格に適合させるためには、可溶性蛋白質を除去する点で問題を含んでいた。
【0004】
高負荷量の混入した可溶性蛋白質が、特定の血清型の試行において特に問題となっている。いくつかの血清型、特に、肺炎連鎖球菌3型は、細胞の溶菌の際に増殖培地に放出される巨大で粘着性の多糖体鎖(例えば、3型、200万ダルトン〜300万ダルトンのグルコース/グルクロン酸鎖)を産生する。その粘性は、遠心分離後の濾過を困難にし、このような場合、その精製過程を通じた蛋白質の除去は不十分で、試行の失敗を引き起こす。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Deutscher, M. P. (編), Guide to Protein Purification, San Diego: Academic Press, Inc. (1990)
【非特許文献2】Aquilar, M.「HPLC of Peptides and Proteins: Methods and Protocols」 Totowa, NJ: Humana Press (2004)
【非特許文献3】Walker, J.M. 「The Protein Protocols Handbook」 Totowa, NJ: Humana Press (2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、複雑な細胞性肺炎連鎖球菌溶菌産物から、特に、肺炎連鎖球菌3型多糖体を含む溶菌産物から、蛋白質不純物を除去するための改善された方法が、必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
血清型3多糖体を含む複雑な細胞性肺炎連鎖球菌溶菌産物またはセントレートからの蛋白質不純物の減少または除去のための、改善された方法が、提供される。1つの方法において、血清型3多糖体を含む細胞性肺炎連鎖球菌溶菌産物は、その溶菌産物中に存在する蛋白質を変性させ、それらの凝集および沈殿を引き起こすのに十分な時間と温度で、加熱される。したがって、本発明の1つの実施形態において、該方法は、1)蛋白質凝集および沈殿を引き起こすため、少なくとも60℃に少なくとも30分間加熱する工程;および2)その溶菌産物から沈殿物を分離する工程を含み、ここで、実質的に精製された血清型3多糖体を含有する溶菌産物が産生される。特定の実施形態において、その溶菌産物は、約60℃〜約70℃に約30分〜約50分間加熱される。他の特定の実施形態において、その溶菌産物は、約65℃に約40分間加熱される。さらなる実施形態において、分離工程は、沈殿物を取り除くため、メンブレンフィルター、特に0.45μmの孔径のメンブレンフィルターを用いて、その溶菌産物を濾過することを含む。他の実施形態において、分離工程は、沈殿物を取り除くため、デプスフィルターを用いて、その溶菌産物を濾過することを含む。他の特定の実施形態において、溶菌産物から沈殿物を分離する工程は、沈殿物を取り除くため、溶菌産物を遠心分離することを含む。
【0008】
本発明の他の実施形態において、血清型3多糖体を含む細胞性肺炎連鎖球菌溶菌産物またはセントレートから、蛋白質不純物を減少もしくは除去するための方法であって、該溶菌産物またはセントレートのpH調整に関する工程を含む方法が、提供される。この実施形態において、このpH調整工程は、濾過性を改善する。特定の実施形態において、溶菌産物またはセントレートのpHは、濾過前に少なくとも8.0にまで、具体的には濾過前に約8.0〜約8.4の間にまで、より具体的には濾過前に約8.2まで上げられる。さらなる実施形態において、濾過工程は、メンブレンフィルター、特に0.45μm孔径のメンブレンフィルターを用いて、溶菌産物またはセントレートを濾過することを含む。他の実施形態において、濾過工程は、デプスフィルターを用いて溶菌産物またはセントレートを濾過することを含む。
【0009】
本発明の他の実施形態において、血清型3多糖体を含む細胞性肺炎連鎖球菌溶菌産物から、蛋白質不純物を減少もしくは除去する方法であって、該溶菌産物または該溶菌産物の遠心分離によって産生されるセントレートのpH調整に関する工程と組み合わせられた、溶菌産物を加熱する工程を含む方法が、提供される。この実施形態において、pH調整工程は、過性を改善する。したがって、1つの実施形態において、本方法は、工程:1)蛋白質凝集および沈殿を引き起こすために、溶菌産物を少なくとも60℃に少なくとも30分間加熱すること;2)該溶菌産物を遠心分離して沈殿性の蛋白質を溶菌産物から分離し、セントレートを産生すること;3)該セントレートのpHを少なくとも8.0にまで上げること;および、4)該セントレートを濾過することを含み、ここで、実質的に精製された血清型3多糖体を含有するセントレートが産生される。特定の実施形態において、溶菌産物は、遠心分離前に、約60℃〜約70℃まで約30分〜約50分間、より具体的には約60℃に約40分間加熱される。他の実施形態において、セントレートのpHは、濾過前に約8.0〜約8.4の間に、特に約8.2にまで上げられる。さらなる実施形態において、濾過工程は、沈殿物を除去するため、メンブレンフィルター、より具体的には0.45μm孔径のメンブレンフィルターを用いて溶菌産物を濾過することを含む。他の実施形態において、濾過工程は、沈殿物を除去するため、デプスフィルターを用いて溶菌産物を濾過することを含む。
【0010】
本発明の他の実施形態において、血清型3多糖体を含む細胞性肺炎連鎖球菌溶菌産物またはセントレートから、蛋白質不純物を減少もしくは除去する方法であって、蛋白質凝集および沈殿を引き起こすためのpH調整工程を含む方法が、提供される。この実施形態において、本方法は、工程:1)蛋白質凝集および沈殿を引き起こすため、該溶菌産物のpHを約3.0〜約5.0に下げること;2)該溶菌産物を遠心分離して沈殿性の蛋白質を溶菌産物から分離し、セントレートを産生すること;3)該セントレートのpHを少なくとも8.0にまで上げること;および、4)該セントレートを濾過することを含み、ここで、実質的に精製された血清型3多糖体を含有するセントレートが産生される。特定の実施形態において、溶菌産物のpHは、遠心分離前に約3.0に下げられる。他の特定の実施形態において、セントレートのpHは、濾過前に、約8.0〜約8.4の間に、より具体的には約8.2に上げられる。さらなる実施形態において、蛋白質凝集および沈殿を引き起こすためのpH調整工程は、溶菌産物を、少なくとも60℃に少なくとも30分間、より具体的には約60℃〜約70℃に約30分〜約50分間、さらにより具体的には約60℃に約40分間加熱することをさらに含む。さらなる実施形態において、濾過工程は、沈殿物を除去するため、メンブレンフィルター、より具体的には0.45μm孔径のメンブレンフィルターを用いて溶菌産物を濾過することを含む。他の実施形態において、濾過工程は、沈殿物を除去するため、デプスフィルターを用いて溶菌産物を濾過することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】血清型3溶菌産物についてのさまざまな加熱条件および保持時間の研究室実験による多糖体収率を示す。データは、非加熱処理試料からのパーセンテージ値として示され、処理試料の相対的な蛋白質減少のパーセンテージを示す(100%は減少していないことと等しい)。
【図2】血清型3溶菌産物についてのさまざまな加熱条件および保持時間の研究室実験による蛋白質収率を示す。データは、非加熱処理試料からのパーセンテージ値として示され、処理試料の相対的な蛋白質減少のパーセンテージを示す(100%は減少していないことと等しい)。
【図3】血清型3溶菌産物における蛋白質(上)および多糖体(PS、下)における時間(左)および温度(右)の効果の、補正した応答グラフを示す。「補正したPS%」および「補正した蛋白質%」の値は、それぞれ、時間=0分および室温(これらは、蛋白質と多糖体濃度について100%の値を表す)と比較した、さまざまな時間および温度点での、多糖体および蛋白質濃度のパーセンテージを示す。
【図4】温度と時間の条件について作図した、血清型3溶菌産物からの全蛋白質のパーセントの等高線図を示す。残留する可溶性蛋白質のパーセンテージは、グラフ中の曲線付近に示される。60℃〜70℃で30分〜50分の範囲が、ボックスにより強調される。
【図5】加熱処置された細胞溶菌産物からの可溶性蛋白質の除去を示すSDS−PAGEゲルを示す。非加熱処置されたレーンは左(IPPPN3−007)であり、加熱処置されたレーンは右(IPPPN3−011)である。
【図6】同じ時間での沈殿物沈降後の、加熱処理(右)および非加熱処理(左)の血清型3溶菌産物を比較する写真である。
【図7】セントレートのpHを関数とした、血清型3セントレートの多糖体(PS)濃度、蛋白質濃度および相対的な濾過性のグラフを示す。5回の実験操作に対応する棒グラフの5つの群が、示される。多糖体濃度(mg/mL)および蛋白質濃度(g/10L)値は、左のy軸に提示される。相対的濾過性の値は、右のy軸に提示され、それらは、1〜5の尺度(1=容易、5=困難)で、0.45μm注射器フィルターを通じて血清型3セントレート3mlを押し出すのに要する相対的な力に相当する。
【図8】セントレートのpHを関数として、デプスフィルターを通じた血清型3セントレート試料の時間に対する流速を比較するグラフを示す。流速(y軸)は、フィルターの各時間についての割合を計算する(時間(分)をその時間にフィルターを通過したセントレートの全重量(グラム)で割る)ことによって測定された(割合が低ければ低いほど、より高い流速となる)。セントレート試料は、種々のpHレベル(5.0〜8.5)に調整され、種々の定圧条件(5〜20ポンド毎1平方インチ(psi))下で、フィルターを通じて押し出した。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、血清型3多糖体を含む複雑な細胞性肺炎連鎖球菌溶菌産物またはセントレートから蛋白質不純物を減少または除去するための改善された方法であって、溶菌後の加熱またはpH調整に関する工程を含む方法を、提供する。特定の方法において、溶菌産物は、その溶菌産物およびセントレート中に存在する蛋白質を変性させ、それらの凝集および沈殿を引き起こすのに十分な時間と温度で加熱される。他の方法において、溶菌産物または該溶菌産物の遠心分離により産生されるセントレートは、濾過性を改善するために、または蛋白質の凝集および沈殿を引き起こすために、pH調整される。さらなる方法において、加熱とpH調整工程は、蛋白質の凝集と沈殿を引き起こすために、ならびに溶菌産物およびセントレートの濾過性を改善するために、組み合わされる。そのような方法は、実質的に精製された血清型3多糖体を含む溶菌産物またはセントレートの産生を可能にする。
【0013】
本明細書中で用いられる用語「実質的に精製された血清型3多糖体を含む溶菌産物」または「実質的に精製された血清型3多糖体を含むセントレート」は、溶菌産物またはセントレートの相対的蛋白質濃度が、蛋白質除去前の溶菌産物またはセントレート中の蛋白質濃度と比較して、約40%、約35%、約30%、約25%、約20%、約15%、約10%、約5%または約1%未満の蛋白質となるよう、蛋白質が除去された、細胞性肺炎連鎖球菌血清型3の溶菌産物またはセントレートを意味する。細胞溶菌産物またはセントレート中の蛋白質濃度の定量方法は、当分野で周知であり、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)分析、クロマトグラフィおよび電気泳動を含む(例えば、Deutscher, M. P. (編), Guide to Protein Purification, San Diego: Academic Press, Inc. (1990)を参照のこと)。
【0014】
1つの実施形態において、本発明は、血清型3多糖体を含む細胞性肺炎連鎖球菌溶菌産物から蛋白質不純物を減少または除去するための、加熱工程を含む方法、を提供する。熱への暴露は、蛋白質の天然構造を破壊し、多糖体に影響を及ぼすことなく、それらを変性させる。次いで、変性蛋白質は、凝集および沈殿し、溶菌産物の分離を改善し、および遠心分離もしくは濾過により固体を容易に除去できる。そのような加熱工程は、かなりの濃度の可溶性蛋白質不純物を含む生物学的混合物から、何らかの耐熱性多糖体の回収または精製に効果的であろうし、したがって可溶性蛋白質濃度が問題となるいずれかの液相(例えば、DNA、RNA、多糖体、オリゴ糖、サッカリド、脂肪酸および脂質を含む生物学的混合物)に用いられよう。
【0015】
したがって、1つの実施形態において、本発明は、血清型3多糖体を含む細胞性肺炎連鎖球菌溶菌産物から蛋白質不純物を減少または除去するための方法であって、以下の工程:1)蛋白質の凝集および沈殿を引き起こすために、溶菌産物を少なくとも50℃、少なくとも55℃または少なくとも60℃にまで、少なくとも15分または少なくとも30分間加熱すること;および、2)沈殿物を溶菌産物から分離すること(ここで、実質的に精製された血清型3多糖体を含む溶菌産物が産生される)を含む方法を、提供する。特定の実施形態において、溶菌産物は、約50℃〜約80℃にまで、約15分〜約60分間加熱される。他の特定の実施形態において、溶菌産物は、約60℃〜約70℃の間にまで、約30分〜約50分間加熱される。他の特定の実施形態において、溶菌産物は、約65℃に約40分間加熱される。下記の実施例の章でさらに詳細に記載されるように、熱安定性の血清型3多糖体に関しては、80%以上の蛋白質が、多糖体の消失を最小限にしつつ65℃に40分間加熱することによって、除去された。さらなる実施形態において、分離工程は、溶菌産物から蛋白質を除去もしくは減少するための遠心分離または濾過を、含む。特に、1つの実施形態において、分離工程は、メンブレンフィルター、特に0.45μm孔径のメンブレンフィルターを用いて沈殿物を除去するために、溶菌産物を濾過することを含む。他の実施形態において、分離工程は、デプスフィルターを用いて沈殿物を除去するために、溶菌産物を濾過することを含む。
【0016】
血清型3多糖体の精製などの大容量の濾過処置に典型的に用いられるフィルターは、メンブレン(または表面)フィルターおよびデプスフィルターを含む。メンブレンフィルターは、サイズ排除によって主として機能し、そこでは、メンブレンフィルターの所定の孔径より大きい、濾過される溶液中の不純物はすべて、フィルター表面に捕われる。対照的に、デプスフィルターは、濾過される溶液が通過する無作為な多孔質構造を有する線維または顆粒マトリックスからなり、そのマトリックスの深さ方向の至るところで、不純物の無作為な吸着および機械的な捕捉を通じて、主として機能する。本発明の方法の範囲内において、メンブレンフィルターおよびデプスフィルターはいずれも、より大きな不純物を回収するデプスフィルターと、そしてより小さい不純物を捕捉するための表面フィルターと、組み合わせて用いられうる。
【0017】
本発明の他の実施形態において、血清型3多糖体を含む細胞性肺炎連鎖球菌溶菌産物から、あるいは該溶菌産物の遠心分離により産生されるセントレートの、蛋白質不純物を減少もしくは除去するための方法であって、溶菌産物またはセントレートのpH調整に関する工程を含む方法も、提供される。この実施形態において、pH調整工程は、濾過性を改善する。本明細書中で用いられる、血清型3多糖体を含む細胞性肺炎連鎖球菌溶菌産物またはセントレートの「濾過性」は、メンブレンフィルターまたはデプスフィルターなどのフィルターを通じて溶菌産物またはセントレートを通過させる能力を示す。したがって、溶菌産物またはセントレートの改善した濾過性は、例えば、フィルターを横切る溶菌産物またはセントレートの増加した流速、溶菌産物またはセントレートによるフィルターの目詰まりの低下、あるいはフィルターを横切る溶菌産物またはセントレートの所定量を通過させるために要求される圧力の減少と関係する。
【0018】
血清型3多糖体を含む細胞性肺炎連鎖球菌溶菌産物またはセントレートからの不純物の除去のための従来法は、酢酸添加による該溶菌産物の最小で6.6までのpH低下に続いて、連続遠心分離と0.45μmの濾過を伴う。この処理方法は、不純物の最小限の減少を示し、該産物を精製過程に送る前の、メンブレンフィルターまたはデプスフィルターを通じた可溶性蛋白質の除去能力において後々困難を伴う。しかしながら、本発明の方法は、この高分子量多糖体の濾過性が、pHの直接的な関数として変わりうるという発見に、および溶菌産物またはセントレートのpHを増加さることで、多糖体血清型3の分子量サイズまたは機能に有意な喪失を伴うことなく濾過性を改善するという発見に基づく。
【0019】
したがって、本発明の1つの実施形態において、血清型3多糖体を含む細胞性肺炎連鎖球菌溶菌産物からの、または該溶菌産物の遠心分離によって産生されるセントレートの、蛋白質不純物を減少もしくは除去するための方法であって、濾過前にセントレートまたは溶菌産物のpHを少なくとも8.0に上げる工程を含む方法が、提供される。他の実施形態において、セントレートまたは溶菌産物のpHは、濾過前に、約8.0〜約8.4に、より具体的には約8.2に上げられる。溶菌産物またはセントレートのpH調整に続く濾過は、メンブレンフィルター、特に0.45μm孔径のメンブレンフィルターを用いて、溶菌産物またはセントレートを濾過することを含んでいてもよい。他の実施形態において、溶菌産物またはセントレートを濾過することは、デプスフィルターを用いることを含んでいてもよい。
【0020】
さらなる実施形態において、血清型3多糖体を含む細胞性肺炎連鎖球菌溶菌産物から蛋白質不純物を減少もしくは除去するための方法であって、溶菌産物のpH調整を含む工程と組み合わせられた溶菌産物の加熱工程を含む方法が、提供される。1つの実施形態において、本方法は、以下の工程;1)蛋白質の凝集および沈殿を引き起こすために、溶菌産物を少なくとも50℃、少なくとも55℃または少なくとも60℃にまで、少なくとも15分または少なくとも30分間加熱すること;2)該溶菌産物を遠心分離して沈殿性蛋白質を溶菌産物から分離し、セントレートを産生すること;3)該セントレートのpHを少なくとも8.0に上げること;および、4)該セントレートを濾過すること(ここで、実質的に精製された血清型3多糖体を含むセントレートが産生される)を含む。特定の実施形態において、溶菌産物は、遠心分離前に約50℃〜約80℃にまで約15分〜約60分間加熱される。他の特定の実施形態において、溶菌産物は、遠心分離前に約60℃〜約70℃にまで約30分〜約50分間加熱される。さらなる実施形態において、溶菌産物は、遠心分離前に約65℃に約40分間加熱される。他の特定の実施形態において、セントレートのpHは、濾過前に約8.0〜約8.4に、より具体的には約8.2に上げられる。さらなる実施形態において、濾過工程は、メンブレンフィルター、特に0.45μm孔径のメンブレンフィルターを用いて、セントレートを濾過することを含む。他の実施形態において、濾過工程は、デプスフィルターを用いて沈殿物を除去するために、溶菌産物を濾過することを含む。
【0021】
さらなる実施形態において、血清型3型多糖体を含む細胞性肺炎連鎖球菌溶菌産物またはセントレートから蛋白質不純物を減少もしくは除去するための方法であって、蛋白質凝集および沈殿を引き起こすためのpH調整工程を含む方法が、提供される。1つの実施形態において、方法は、以下の工程;1)該ライセートのpHを、蛋白質凝集および沈殿を引き起こすため、約5.0、4.5、4.0、3.5もしくは3.0未満まで、または約3.0〜約5.0まで下げること;2)該溶菌産物を遠心分離して沈殿性蛋白質を溶菌産物から分離し、セントレートを産生すること;3)該セントレートのpHを少なくとも8.0に上げること;および4)該セントレートを濾過すること(ここで、実質的に精製された血清型3多糖体を含むセントレートが産生される)を含む。特定の実施形態において、溶菌産物のpHは、遠心分離前に約3.0にまで下げられる。他の特定の実施形態において、セントレートのpHは、濾過前に約8.0〜約8.4の間に、より具体的には約8.2に上げられる。特定の実施形態において、濾過工程は、メンブレンフィルター、より具体的には0.45μm孔径のメンブレンフィルターを用いて沈殿物を除去するために、溶菌産物を濾過することを含む。他の実施形態において、濾過工程は、デプスフィルターを用いて沈殿物を除去するために、溶菌産物を濾過することを含む。
【0022】
さらなる実施形態において、蛋白質の凝集および沈殿を引き起こすためのpH調整工程を含む、血清型3多糖体を含有する細胞性肺炎連鎖球菌溶菌産物またはセントレートから蛋白質不純物を減少もしくは除去するための方法は、蛋白質の凝集および沈殿を生じさせるため、溶菌産物を少なくとも50℃、少なくとも55℃または少なくとも60℃にまで、少なくとも15分または少なくとも30分加熱することを、さらに含む。特定の実施形態において、溶菌産物は、遠心分離前に約50℃〜約80℃にまで約15〜約60分間加熱される。他の特定の実施形態において、溶菌産物は、遠心分離前に約60℃〜約70℃にまで約30〜約50分間加熱される。さらなる実施形態において、溶菌産物は、遠心分離前に約65℃に約40分間加熱される。
以下の実施例は、例示として提供されるのであって、制限のために提供されるのではない。
【0023】
(実施例)
肺炎連鎖球菌3型は、細胞溶菌の際に増殖培地中に放出される、非常に大きくそして粘着性の多糖体を産生する。この溶菌は、現在では、発酵の終わりにデオキシコール酸ナトリウム(DOC)を用いて誘導される。3型多糖体は、広域の温度およびpH範囲にわたって非常に安定であるようだが、しかしながら、その粘性は、遠心分離後に濾過することを困難にし、それは無細胞ブロス(CFB)の低い回収をもたらす。以下の実施例は、蛋白質を変性させて沈殿除去するための溶菌後の加熱、ならびに溶菌産物の濾過性を改善するためのpH調整に関する研究を記載する。
【0024】
実施例1.加熱工程
肺炎連鎖球菌血清型3の回収に関する加熱工程を試行することは、精製工程前の蛋白質の持ち込みを減少させる必要性によって打ち出された。精製された多糖体のバッチでは、所定の仕様レベルである5%w/w蛋白質/多糖体より高い残留蛋白質濃度のため、失敗のバッチとなりやすかった。したがって、以下の研究室実験は、肺炎連鎖球菌血清型3の精製および回収における加熱工程の効果および使用の範囲を特徴づけるために実施した。この加熱工程を含めた最終目標は、高い多糖体濃度を維持しながら蛋白質濃度の減少をもたらすことであった。
【0025】
研究室において、パイロットプラント試行から得られた発酵細胞溶菌産物材を、ファルコン(Falcon)(登録商標)(BDバイオサイエンス、ベッドフォード、マサチューセッツ州)に分注し、そして、水浴中でさまざまな温度に加熱した。調べた温度は、50℃から80℃の範囲で、維持時間は15分から240分の範囲であった。対照試料は、周囲室温(約21℃)で放置した。次いで、すべての試料は、周囲条件で一晩放置され、その後、試料は、多糖体および蛋白質分析のための材料を提供するために、遠心分離され、0.45μmm注射フィルター(HT Tuffryn(登録商標)メンブレン、25mm、メンブレン25mm注射フィルター、低蛋白質結合、Pall Life Sciences、Anne Arbor、MI)を通じた。実験データは、多糖体および蛋白質濃度における温度と時間の影響を同定するために、統計ソフトウェア・パッケージ(Applied Systems Technologies社, Dunnellon, FLからのCornerstone(登録商標))によって分析された。
【0026】
多糖体および蛋白質分析
多糖体分析は、当分野で周知の標準的な方法論を用いて、HPLC−SEC(高速液体クロマトグラフィー・サイズ排除カラム)により実施された(例えば、Aquilar, M.「HPLC of Peptides and Proteins: Methods and Protocols」 Totowa, NJ: Humana Press (2004)を参照のこと)。図1は、さまざまな加熱時間の研究室実験による多糖体収率を示す。報告されたデータは、対照多糖体レベルのパーセンテージであり、100%は損失がないことを示す。図1で示されるように、多糖体収率は、加熱時間および温度に関して安定だった。
【0027】
パイロット・スケールのデータも収集され、略語「IPP」で示されるデータ・ポイントとして図1中に示される。列記された時間は、加熱期間、所定条件での保温期間、そして冷却期間を意味する。これらの試料は、研究室での加熱と対照的に、実際の発酵槽中での加熱処理後に採取された。パイロット・スケールで試験された温度および時間範囲(30分〜50分、そして60℃〜70℃)内での多糖体損失は、0〜18%の範囲であり、ほとんどの試験損失は10%未満であった。これは、この材料の最終段階の過程について許容される範囲にあった。
【0028】
蛋白質分析は、当分野で周知の標準的なSDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動)方法を用いることにより実施された(例えば、Walker, J.M. 「The Protein Protocols Handbook」 Totowa, NJ: Humana Press (2002)を参照のこと)。ゲル分析は、蛋白質標準に対する全バンド(レーン)密度を判断するゲル画像処理システム(Labworks(登録商標)によるUVP Imager V.3ソフトウェア、UVP社、アップランド、カルフォルニア州)により行われた。
【0029】
図2で示されるように、50℃から80℃までの温度が、研究室およびパイロット・スケール(略語「IPP」で示されるデータ・ポイント)の両方で研究された。蛋白質データは、非加熱過程試料からの対照パーセンテージ値として示され、処置試料の相対的な蛋白質損失パーセントを示す。15分の加熱時間が、60℃の温度での加熱沈殿を通じて60%の可溶性蛋白質を除去するのに適当であった(図2を参照)。有意な蛋白質減少は50℃と55℃でも生じたが、パイロットプラント操作では、より堅調な蛋白質除去レベルのために、60℃を最小値とした。
【0030】
図3は、時間および温度に対して作図された蛋白質および多糖体濃度の補正した応答グラフ(Adjusted Response Graph)を示す。示されるデータは、時間=0分および室温(それは、蛋白質および多糖体に関して100%の値を表す)と比較した、さまざまな時間および温度点での蛋白質および多糖体濃度のパーセンテージを表す。図3で示されるように、15分の保持を越える期間は重要ではないが、保温温度は、可溶性蛋白質除去において顕著な影響を示した。多糖体(PS)収率について、時間および温度はいずれも、PS損失について限定された影響(最終段階の過程について許容される、<20%損失)を示した。
【0031】
図4は、温度と時間の条件について作図した、血清型3溶菌産物からの全蛋白質のパーセントの等高線プロットを示す。残留する可溶性蛋白質のパーセンテージは、グラフ中の曲線付近に示される。60℃〜70℃で30分〜50分の範囲が、ボックスで強調され、そして、本明細書中で記載される加熱工程の実施に関して選択された好ましい範囲を表す。しかしながら、上記のように、より広い範囲も分析され、そして有効であることも示された。
【0032】
図5は、パイロット・スケールでの加熱工程試験後の可溶性蛋白質のSDS−PAGEゲルを示す。左のゲルは、加熱工程なしのパイロット・スケール発酵バッチ(IPPPN3−007)の結果を示し、回収過程(pH前、pH後、遠心分離後およびタンクpH調整後)を通じて完全な蛋白質レベルを示す。「タンクpH調整後」は、濾過前に所定のpHレベルに調整した後のセントレートのホールド・タンクから採取された試料を意味する。100キロダルトン(KD)のタンジェンシャル・フロー(tangential flow)精製限外濾過(UF)過程は、連続循環および濾過を用いて元の懸濁培地を緩衝液で段階的に置換し、続いてその溶液を濃縮することよって、100KD未満の溶質を除去するために、用いられた。このUF処理工程後のバッチIPPPN3−007の蛋白質含有量は、w/wに基づいて31%蛋白質/多糖体と報告された。完全な精製後の最終的な蛋白質レベルは、9.9%(多糖体に対するw/w)であり、最終のバッチ濃度(Final Batch Concentrate)(FBC)仕様≦5%蛋白質に適合するには不完全なバッチとなった。バッチIPPPN3−011に関しては、60℃固定の30分間の加熱工程が、溶菌産物を得た後であって最終段階の過程前に組み込まれた。100KUF濾過後の蛋白質レベルは6.7%であり、そして、FBC蛋白質レベルは2.5%であって、これはFBC薬物中間体仕様に合格するものであった。図5中右のゲル像で示されるように、加熱工程は、回収操作の間に蛋白質レベルが顕著に減少する結果となった。
【0033】
この加熱工程に関するパイロット・スケールのデータの概要は、表1でも示される。試行−001、−004、−005、−007および−013は、加熱工程を用いなかった。これらの試行のうち、試行−001と−004だけが、≦5%の標的蛋白質仕様に合格したが、これは、UF処理工程後に20%〜35%の蛋白質の持ち込みを取り除く精製過程における稽留の難点を表している。試行−011、−012、−014、−015および−017について表1で示されるように、加熱保温工程を含めることで、UF処置工程後の蛋白質の持ち込みは、3.1%〜6.7%まで低下され、その精製された多糖体中の最終的な蛋白質レベルは0.6%〜2.5%であった。
【表1】

【0034】
加熱工程の実施も、より効率的な遠心分離を可能にする蛋白質の凝集を増加させることによって、分離効率を改善した。この工程がもたらす効果は、図6に例示され、写真は、周囲条件で一晩攪拌せずに保持した後の、非加熱(左)および加熱(右)細胞溶菌産物の比較を提供する。培地は、加熱処理後に顕著に透明になり、これは、蛋白質のより大きな凝集と沈殿を反映するものであった。
【0035】
上記のデータにより示されるように、加熱工程を組み込むことは、多糖体の産生にあたって、蛋白質不純物を除去するのに重要であった。最終的な多糖体は、≦5%w/w(蛋白質/多糖体)の薬物中間放出基準を満たし、熱処理に関する産物安定性を実証した。
【0036】
実施例2.pH調整および濾過工程
Prevnar(登録商標)ワクチン中に含まれる肺炎連鎖球菌多糖体についての従来の濾過は、細胞溶菌産物の連続遠心分離に続いて、デプスフィルターおよびメンブレンフィルターを用いた。上述のように、肺炎連鎖球菌3型は、溶液中で粘着性の巨大な多糖体であり、そのため、従来の処理条件下では上手く濾過できない。これらの失敗のため、この多糖体の濾過特性をモディファイするための研究が行われた。したがって、血清型3多糖体溶液の濾過性を改善するための手段を同定するための研究が、行われた。
【0037】
変量としてpHを用い、蛋白質除去および血清型3溶菌液の直径25mmの0.45μm HT Tuffryn(登録商標)注射器フィルター(Pall Life Sciences, Anne Arbor, MI)に対する濾過性における影響について最初の実験を研究室で行った。遠心分離前に、血清型3の発酵溶菌産物の試料は、可溶性蛋白質を除去する試みで酢酸もしくは硫酸のいずれかを用いて、6.6(2回実験試行)、5.0(2回実験試行)または3.0(1回実験試行)にpH調整された。溶菌産物を遠心分離し、ファルコン(登録商標)チューブ(BDバイオサイエンス、ベッドフォード、マサチューセッツ州)中に、3N NaOH(水酸化ナトリウム溶液)を用いてpH調整した以下の4条件:1)対照(pH調整を行わない);2)7.0にpH調整;3)8.0にpH調整;および4)9.0にpH調整の1つを分注した。次いで、セントレートは、0.45μm注射器フィルターを通じて約3mLの材料を濾過するのに必要とされる相対的な力で押し出した。
【0038】
上記の5つの実験試行の結果は図7に示され、それはセントレートのpHを関数とした、血清型3セントレートの多糖体(PS)濃度、蛋白質濃度、および相対的な濾過性のグラフを示す。多糖体濃度(mg/mL)および蛋白質濃度(g/10L)値は、左のy軸で提供される。相対的な濾過性の値は、右のy軸に提示され、1〜5のスケール(1=容易、5=困難)で、約3mlの血清型3セントレートを0.45μm注射器フィルターに通じて押し出すのに必要とされる相対的な力に対応する。図7で示されるように、1つの実験試行を除くすべてで高いpHレベルは、改善されたセントレートの濾過性と関係した。図7で示される結果はまた、3.0の非常に低いpHでは、蛋白質をうまく除去できるのだが、濾過において増大した問題を伴うことを実証した。
【0039】
確認されたpHの影響を含め、次いで、pHの濾過能力における影響を決定するため制御された検査を行った。遠心分離後の材料は、パイロット・プラント試行から得て、研究室で再び遠心分離した。その溶菌産物を分け、5.0〜8.5の範囲にpH調整した。その溶菌産物を、定圧にする圧力容器に置いた。その溶菌産物は、CUNO 60SPデプスフィルター(CUNO社、Meriden、CT)にいたる管部分を通じて押し出され、その濾過能力について分析された。これは、試験される各pH(5.0〜8.5)について、種々の定圧条件下(5〜20ポンド毎1平方インチ(psi))で実施された。結果は図8に示され、それは、セントレートのpHを関数として、デプスフィルターによる血清型3セントレート試料の時間に対する流速を比較するものである。流速(y軸)は、時間(分)を、その時間にフィルターを通じたセントレートの総重量(グラム)で割ることによる、各時間(分)あたりの濾過率を計算することによって測定された(この割合が低ければ低いほど、流速は早くなる)。図8で示されるように、高pH7.0〜8.5での処理は、同じ定圧条件(10psi)下の低pH5.0または6.0における処理と比較すると、より速い流速となった。pH8.0では、10psiまたは20psiの定圧はまた、5psiと比較するとより速い流速を伴った。
【0040】
次いで、上記のpH調整工程を組み込んだパイロット・スケール試行を行った(パイロット・スケール試行は以下の表2で列挙される)。肺炎連鎖球菌3型接種材料を含むシード・ボトルを、発酵器具中で生育させた。その細胞を化学的に溶解し、その溶菌得産物を、遠心分離するか、あるいは遠心分離前に加熱処理のいずれかを行った。遠心分離に続いて、pH調整された(試行IPPPN3−015を除いて)、そして、その溶菌産物を、精製のための最終段階の処理に送る前に、デプスフィルターおよび0.45μmメンブレンフィルターを通じて濾過した。さまざまな試行からの溶菌産物を処理するために必要とされるフィルターの数を、濾過性の計測値として用いられた(濾過性が低ければ低いほど、フィルターの目詰まりの頻度はより高くなり、溶菌産物を処理するのに必要とされるフィルターの数はより多くなる)。表2は、ただ1つのデプスフィルターおよびただ1つのメンブレンフィルターが、種々のpH7.5またはそれ以上、加熱処理の有無に対して調節されたさまざまな試行からの溶菌産物を処理するために必要とされたことを、示す。試行−015では、pH6.6の濾過性における影響が評価された。示されるように、試行−015に関しては、3つのフィルター・セットが、わずか37Lの処理に必要とされた。この結果は、試行−015において蛋白質除去のための加熱工程を用いた場合でさえ、得られた。試行−015の残りの溶菌産物材料をpH8.2に調整した後、1セットのフィルターで、残りの68Lを処理した。
【表2】


血清型3溶菌産物の濾過性を改善するための処理操作に関し、図7と図8に示される研究室データおよびパイロットプラント施設のpH調整能に基づいて、好ましいpHの範囲8.2±0.2が認められた。
【0041】
冠詞「ある(「a」および「an」)は、冠詞の文法上の目的のうちの1つ(すなわち、少なくとも1つ)ではなく、1つまたは複数を意味するよう、本明細書中で用いられる。例として、「ある因子」は、1つまたは複数の因子を意味する。
明細書中で言及される刊行物および特許出願はすべて、本発明に関わる当業者の水準を表す。すべての刊行物および特許出願は、あたかも個々の刊行物または特許出願が具体的にかつ個別に示されて出典明示により一部とされるように、出典明示により同じ範囲で本明細書の一部とされる。
前述の発明は、理解の明確さの目的のために例示および実施例として幾分詳しく記載されるが、特定の変更および改良は、添付の請求の範囲の範囲内にあると考えられうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血清型3多糖体を含む細胞性肺炎連鎖球菌溶菌産物から蛋白質不純物を減少または除去するための方法であって、以下の工程;
a) 蛋白質の凝集および沈殿を引き起こすために、該溶菌産物を少なくとも60℃に少なくとも30分間加熱すること;および、
b) 沈殿物を該溶菌産物から分離すること;
を含み、実質的に精製された血清型3多糖体を含む溶菌産物が産生されるところの、方法。
【請求項2】
工程a)が、該溶菌産物を約60℃〜約70℃に加熱することを含むところの、請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程a)が、該溶菌産物を約30分〜約50分間加熱することを含むところの、請求項2記載の方法。
【請求項4】
工程a)が、該溶菌産物を約65℃に約40分間加熱することを含むところの、請求項3記載の方法。
【請求項5】
工程b)が、該溶菌産物から沈殿物を除去するために、該溶菌産物を濾過することを含むところの、請求項1記載の方法。
【請求項6】
該溶菌産物が、メンブレンフィルターおよびデプスフィルターからなる群より選択される少なくとも1つのフィルターを用いて濾過されるところの、請求項5記載の方法。
【請求項7】
メンブレンフィルターが、0.45μm孔径のメンブレンフィルターであるところの、請求項6記載の方法。
【請求項8】
工程b)が、該溶菌産物から沈殿物を除去するために、該溶菌産物を遠心分離することを含むところの、請求項1記載の方法。
【請求項9】
血清型3多糖体を含む細胞性肺炎連鎖球菌溶菌産物またはセントレートから蛋白質不純物を減少または除去するための方法であって、以下の工程;
a) 該溶菌産物またはセントレートのpHを少なくとも8.0に上げること;および、
b) 該溶菌産物またはセントレートを濾過すること;
を含み、実質的に精製された血清型3多糖体を含む溶菌産物またはセントレートが産生されるところの、方法。
【請求項10】
該溶菌産物またはセントレートのpHを、濾過前に約8.0〜約8.4の間に上げるところの、請求項9記載の方法。
【請求項11】
該溶菌産物またはセントレートのpHを、濾過前に約8.2に上げるところの、請求項10記載の方法。
【請求項12】
該溶菌産物が、メンブレンフィルターおよびデプスフィルターからなる群より選択される少なくとも1つのフィルターを用いて、濾過されるところの、請求項9の方法。
【請求項13】
メンブレンフィルターが、0.45μm孔径のメンブレンフィルターであるところの、請求項12記載の方法。
【請求項14】
血清型3多糖体を含む細胞性肺炎連鎖球菌溶菌産物から蛋白質不純物を減少または除去するための方法であって、以下の工程;
a) 蛋白質の凝集および沈殿を引き起こすために、該溶菌産物を少なくとも60℃に少なくとも30分間加熱すること;
b) 該溶菌産物を遠心分離して沈殿性蛋白質を該溶菌産物から分離し、セントレートを産生すること;
c) 該セントレートのpHを少なくとも8.0に上げること;および、
d) 該セントレートを濾過すること;
を含み、実質的に精製された血清型3多糖体を含むセントレートが産生されるところの、方法。
【請求項15】
工程a)が、該溶菌産物を約60℃〜約70℃に加熱すること含むところの、請求項14記載の方法。
【請求項16】
工程a)が、該溶菌産物を約30分〜約50分間加熱すること含むところの、請求項14記載の方法。
【請求項17】
工程a)が、該溶菌産物を約60℃に約40分間加熱すること含むところの、請求項14記載の方法。
【請求項18】
工程c)が、該セントレートのpHを約8.0〜約8.4の間に上げることを含むところの、請求項14記載の方法。
【請求項19】
工程c)が、該セントレートのpHを約8.2に上げることを含むところの、請求項18記載の方法。
【請求項20】
工程d)が、メンブレンフィルターおよびデプスフィルターからなる群より選択される少なくとも1つのフィルターを用いて、該セントレートを濾過することを含むところの、請求項14記載の方法。
【請求項21】
メンブレンフィルターが、0.45μm孔径のメンブレンフィルターであるところの、請求項20記載の方法。
【請求項22】
血清型3多糖体を含む細胞性肺炎連鎖球菌溶菌産物から蛋白質不純物を減少または除去するための方法であって、以下の工程;
a) 蛋白質の凝集および沈殿を引き起こすために、該溶菌産物のpHを約3.0〜約5.0まで下げること;
b) 該溶菌産物を遠心分離して沈殿性蛋白質を該溶菌産物から分離し、セントレートを産生すること;
c) 該セントレートのpHを少なくとも8.0に上ること;および、
d) 該セントレートを濾過すること;
を含み、実質的に精製された血清型3多糖体を含むセントレートが産生されるところの、方法。
【請求項23】
工程a)が、蛋白質の凝集および沈殿を引き起こすために、該溶菌産物のpHを約3.0まで下げることを含むところの、請求項22記載の方法。
【請求項24】
工程c)が、該セントレートのpHを約8.0〜約8.4の間に上げることを含むところの、請求項22記載の方法。
【請求項25】
工程c)が、該セントレートのpHを約8.2に上げることを含むところの、請求項24記載の方法。
【請求項26】
該セントレートが、メンブレンフィルターおよびデプスフィルターからなる群より選択される少なくとも1つのフィルターを用いて、濾過されるところの、請求項25記載の方法。
【請求項27】
メンブレンフィルターが、0.45μm孔径のメンブレンフィルターであるところの、請求項26記載の方法。
【請求項28】
工程a)が、該溶菌産物を少なくとも60℃に少なくとも30分間加熱することをさらに含むところの、請求項22記載の方法。
【請求項29】
工程a)が、該溶菌産物を約60℃〜約70℃に加熱することをさらに含むところの、請求項22記載の方法。
【請求項30】
工程a)が、該溶菌産物を約30分〜約50分間加熱することをさらに含むところの、請求項22記載の方法。
【請求項31】
工程a)が、該溶菌産物を約60℃に約40分間加熱することをさらに含むところの、請求項22記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−505963(P2010−505963A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−532526(P2009−532526)
【出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【国際出願番号】PCT/US2007/080768
【国際公開番号】WO2008/045852
【国際公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(591011502)ワイス エルエルシー (573)
【Fターム(参考)】