説明

肺腫瘍に関連したマーカー分子

【課題】本発明は、肺癌に関連する核酸及びポリペプチドを提供することを課題とする。
【解決手段】上記課題は、明細書に記載される核酸およびポリペプチドを提供することに
よって解決された。本発明は、核酸およびその転写されたポリペプチドに関し、その発現
は、肺癌に関連して著しく変化される。本発明は、本明細書中に開示される遺伝子の差示
的にスプライシングされる一連の転写産物に関し、この転写産物は、気道の腫瘍に関連す
る。さらに、本発明は、肺腫瘍等の細胞増殖性傷害の早期診断、疾患経過の予後、および
モニタリングの方法と、治療方法と、ワクチン接種とを、提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肺癌に関連する核酸およびポリペプチドに関する。具体的には、本発明は、
核酸およびその転写されるポリペプチドに関し、その発現は、肺癌に関連して著しく変化
される。本発明は、本明細書中に開示される遺伝子の選択的にスプライシングされる一連
の転写産物に関し、この転写産物は、気道の腫瘍に関連する。さらに、本発明は、肺腫瘍
等の細胞増殖性疾患の早期診断、予後診断、および疾患の経過のモニタリングする方法と
、治療方法と、ワクチン接種とを提供する。
【背景技術】
【0002】
先進国では、癌による死亡率は過去10年間で減少した。癌が原因の死亡率での減少の
1つの例外は、肺癌である。肺癌全般は、依然として発病率の増加を示す世界で数少ない
癌の1つである。肺癌は、男性および女性両方で癌死の主な原因である。さらに、今日に
至るまで、肺癌での生存率は低く、肺癌分野での科学的かつ医療的な取り組みにもかかわ
らず、生存率は殆ど増加しなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
他の大部分の腫瘍と同様に肺腫瘍では、初期治療に伴う患者の転帰と疾患が診断された
段階との間に強い相関関係がある。そのため、癌が検出されるのが早いほど、患者が生存
する確率が増える。したがって、早期段階で腫瘍を検出するための高感度な試験法が必要
とされる。
【0004】
腫瘍の早期診断に対する最も期待の高い方法は、腫瘍細胞に特有の分子マーカーに関連
するものである。
【0005】
肺癌は、極めて異質な疾患である。細胞増殖の複数の調節因子が癌の発生に関与してい
る可能性がある。細胞周期の調節因子は、突然変異して形質転換状態になる癌遺伝子と呼
ばれるポジティブな調節因子か、または腫瘍抑制遺伝子と呼ばれるネガティブな調節因子
のどちらかの可能性がある。細胞周期の調節に関与することで知られている因子の数およ
び癌の成長の潜在的な候補の数は、既知のもので100を超え、依然増加している。
細胞の癌性状態の発生に関与している分子を、癌細胞と正常組織との識別に用いることが
できる。したがって、癌細胞に特有の分子を検出することによって、癌組織を検出するこ
とができる。これは、多数の分子が癌の原因に潜在的に関与しているので複雑になってい
る。
腫瘍の改良された診断としては、癌、特に肺癌の診断に使用する新規のマーカー分子が
必要とされており、このマーカー分子により特異的な早期検出が可能になり、早期段階で
疾患を治療する機会が与えられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
(a)図1〜12で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸分子と、
(b)図1〜12で示されるヌクレオチド配列を含む核酸分子と、
(c)(a)または(b)で特定される核酸分子によりコードされるポリペプチドのアミ
ノ酸配列に対して少なくとも65パーセントの同一性を 配列が示すポリペプチドをコー
ドする核酸分子と、
(d)遺伝子コードの縮重により、(a)〜(c)の核酸分子の配列とは配列が異なる核
酸分子と、
(e)(a)〜(d)の核酸分子のフラグメントまたは対立遺伝子改変体を表す核酸分子
と、
(f)(a)〜(e)の核酸から転写されるmRNAまたは対応するcDNAと、
(g)図11に提示される遺伝子の選択的スプライシング事象により生じるcDNAまた
はmRNAである核酸と、
(h)野生型アミノ酸配列と比べて、増加されたまたは減少された生物学的活性を有する
、図1〜12に示されるアミノ酸配列のフラグメントまたは改変体をコードする核酸と
からなる群より選択される、肺腫瘍に関連する単離された核酸分子。
(項目2)
項目1の核酸分子を含む組換えベクター。
(項目3)
原核生物および/または真核生物宿主細胞中で翻訳可能なRNAの転写および合成を可能
にする調節因子に、前記核酸分子が作動可能に連結された、項目2の組換えベクター。
(項目4)
項目2または3の組換えベクターを含む組換え宿主細胞。
(項目5)
哺乳動物細胞、細菌細胞、昆虫細胞、または酵母細胞である項目4の組換え宿主細胞。
(項目6)
(a)項目1の核酸分子によりコードされるポリペプチドと、
(b)図1〜12に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドと、
(c)(a)または(b)のポリペプチドに対して生成されて、該(a)または(b)の
ポリペプチドに特異的に結合する結合因子により認識されるポリペプチドと、
(d)ストリンジェントな条件下で項目1記載の核酸にハイブリダイズする核酸配列に
コードされる、(a)〜(c)のポリペプチドのフラグメントまたは改変体と、
(e)肺腫瘍に関連する野生のポリペプチドと比べて、増加されたまたは減少された生物
学的活性を有する、(a)〜(d)のポリペプチドのフラグメントまたは改変体と
からなる群より選択される、肺腫瘍に関連する単離されたポリペプチド分子。
(項目7)
(a)ポリペプチドが発現されるような条件下で、項目4または5の組換え宿主細胞を
培養する工程と、
(b)該ポリペプチドを回収する工程と
を包含する、本発明の肺腫瘍に関連するポリペプチドの生物学的特性を示すポリペプチド
を作製する方法。
(項目8)
細胞を含まないインビトロの転写および/または翻訳系で、本発明の肺腫瘍に関連するポ
リペプチドを生産する方法。
(項目9)
項目7または8の方法により生産されるポリペプチド。
(項目10)
項目1または2記載のポリペプチドもしくは核酸またはそのフラグメントを含む、融合
ポリペプチドまたはキメラ核酸。
(項目11)
項目1の核酸またはそのフラグメントに逆相補的または相補的なDNAまたはRNAで
ある核酸。
(項目12)
(a)抗体と、
(b)抗体のフラグメントと、
(c)免疫原結合エピトープを含むペプチド模倣化合物と、
(d)抗原に特異的に結合できるオリゴペプチドと
からなる群より選択される、項目6または9のポリペプチドを特異的に認識および結合
する結合因子。
(項目13)
検出可能に標識された、項目1記載の核酸、項目6、9、または10記載のポリペプ
チド、あるいは項目12記載の結合因子。
(項目14)
前記標識は、放射性同位体、生物発光化合物、化学発光化合物、蛍光化合物、金属キレー
ト、ビオチンまたはジゴキシゲニンのような生物学的に関連する結合構造、あるいは酵素
からなる群より選択される、項目13記載の核酸、ポリペプチド、または結合因子。
(項目15)
増殖性傷害の検出および治療での使用のための、図11に示される肺腫瘍に関連する遺伝
子の、ネイティブまたは化学的に前処理されたゲノム核酸配列。
(項目16)
項目1の少なくとも1つのポリヌクレオチドあるいは項目2または3の組換えベクタ
ーを含むトランスジェニック非ヒト動物。
(項目17)
対応する肺腫瘍に関連するポリペプチドをコードする遺伝子の少なくとも1つの不活性化
野生型対立遺伝子をさらに含む、項目16のトランスジェニック非ヒト動物。
(項目18)
マウスまたはラットである、項目16または17のトランスジェニック非ヒト動物。
(項目19)
(a)項目6、9、または10のポリペプチドを、スクリーニングされるべき化合物に
接触させる工程と、
(b)該化合物が該ポリペプチドの活性に作用したかどうか、または該ポリペプチドに対
する該化合物の結合が生じたかどうかを決定する工程と
を包含する、項目6、9、または10のポリペプチドに対する結合パートナーを同定す
る方法。
(項目20)
(a)項目6、9、または10のポリペプチドと共に候補化合物をインキュベートする
工程と、
(b)生物学的活性を検定する工程と、
(c)該ポリペプチドの生物学的活性が変化されたかどうかを決定する工程と
を包含する、本発明の肺腫瘍に関連するポリペプチドの活性化因子/アゴニストまたはイ
ンヒビター/アンタゴニストを同定する方法。
(項目21)
(a)タンパク質発現に対するインヴィヴォまたはインビトロ試験系を用いて候補化合物
をインキュベートする工程、あるいは化合物を試験生物に投与する工程と、
(b)該試験系内または該生物内の、項目6または9のポリペプチドのレベルを検出す
る工程と、
(c)該ポリペプチドのレベルが変化されたかどうかを決定する工程と
を包含する、本発明の肺腫瘍に関連するポリペプチドの発現の活性化因子またはインヒビ
ターを同定する方法。
(項目22)
(a)タンパク質分解、細胞増殖、または細胞分化に応答して検出可能なシグナルを提供
できる化合物の存在下で、項目6または9のポリペプチドあるいは該ポリペプチド発現
する細胞を、タンパク質分解、細胞増殖、または細胞分化の変化を可能にする条件下で、
スクリーニングされるべき薬物候補と接触させる工程と、
(b)タンパク質分解、細胞増殖、または細胞分化から生成されるシグナルの有無または
シグナルの増加を検出する工程とを包含し、
ここで、該シグナルの存在または増加が推定上の薬物の指標となる、細胞増殖性傷害の治
療用の薬物候補を同定および入手する方法。
(項目23)
前記細胞は、項目17または18の1項に記載の、トランスジェニック非ヒト動物に含
まれている項目22の方法。
(項目24)
項目19〜21の方法の1つにより入手可能な、項目6または9のポリペプチドの活
性化因子/アゴニストまたはインヒビター/アンタゴニスト、項目6または9のポリペ
プチドの発現の活性化因子またはインヒビター、あるいは項目6または8のポリペプチ
ドの結合パートナー。
(項目25)
(a)個体からサンプルを入手する工程と、
(b)項目1または6記載の核酸分子またはポリペプチドである1つ以上のマーカー分
子のレベルを決定する工程と、
(c)該サンプル内の該核酸またはポリペプチドのレベルを、試験される疾患に冒されて
いない対応する試験サンプル内の内容物と比較する工程とを包含し、
ここで、単一のマーカー分子または1組のマーカー分子の野生型レベルと比べての著しい
変化を、該傷害または疾患経過の予後の指標とみなして、診断または疾患経過の予後を予
測する、異常な細胞増殖に関連する傷害の診断および/または疾患経過の予後のための方
法。
(項目26)
前記サンプルは、核酸、ポリペプチドまたはそれらのフラグメントを含む液体、細胞また
は細胞破片を含む液体、組織サンプル、細胞サンプル、あるいは生検材料である、項目
25の方法。
(項目27)
前記サンプルは、体液、血液、血漿、血清、痰、分泌物、細胞サンプルおよび/または組
織サンプル、あるいは生検材料である、項目25または項目26の方法。
(項目28)
前記疾患は、細胞増殖性傷害、癌、または前駆病変である、項目27記載の方法。
(項目29)
前記癌は、頭頸部癌、気道癌、胃腸管癌、皮膚およびその付属器官の癌、中枢神経系およ
び末梢神経系の癌、泌尿器系癌、生殖器系癌、内分泌系癌、柔組織および骨の癌、リンパ
球産生系および造血系の癌、乳癌、結腸直腸癌、または肛門性器癌である、項目28記
載の方法。
(項目30)
前記マーカー分子の発現の検出は、検出されるべき該マーカー分子に特異的に結合する少
なくとも1つのプローブを用いて実行される、項目25〜29のいずれか1項に記載の
方法。
(項目31)
前記プローブは検出可能に標識される、項目30記載の方法。
(項目32)
前記標識は、放射性同位体、生物発光化合物、化学発光化合物、蛍光化合物、金属キレー
ト、ビオチンまたはジゴキシゲニンのような生物学的に関連する結合構造、あるいは酵素
からなる群より選択される、項目30記載の方法。
(項目33)
前記少なくとも1つのプローブは、抗体、抗体のフラグメント、抗原結合エピトープを含
むペプチド模倣物、またはミニ抗体である、項目30〜32記載の方法。
(項目34)
前記検出は免疫細胞化学的検出手順を含む、項目33記載の方法。
(項目35)
前記少なくとも1つのプローブは、前記マーカー分子の検出に用いられるマーカー核酸に
ハイブリダイズする核酸である、項目30〜32記載の方法。
(項目36)
前記検出反応は、核酸増幅反応を含む項目35記載の方法。
(項目37)
インサイチュ検出に用いられる、項目35〜36記載の方法。
(項目38)
インビボまたはインビトロの分子画像化法の過程で用いられる、項目25〜37のいず
れか1項に記載の方法。
(項目39)
傷害の早期診断、最小残留疾患の診断、または予的スクリーニング試験の過程で実行され
る、項目24〜37のいずれか1項に記載の方法。
(項目40)
(a)ポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドの検出用試薬と、
(b)緩衝液、検出マーカー、キャリア物質などのような、検出反応を実行するために通
常使用される試薬および緩衝液と
を少なくとも含む、項目24〜38のいずれか1項に記載の方法を実行するための試験
キット。
(項目41)
前記ポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドの前記検出用試薬は、該ポリヌクレオ
チドおよび/またはポリペプチドに特異的に結合する因子である、項目39記載の試験
キット。
(項目42)
本発明の肺腫瘍に関連するポリペプチドの発現に関連する傷害を処置するために有用な医
薬の製造のための、項目1〜15のいずれか1つに記載の1つ以上の化合物および/ま
たは項目6もしくは8のポリペプチドの活性化因子/アゴニストもしくはインヒビター
/アンタゴニスト、項目6もしくは8のポリペプチドの発現の活性化因子もしくはイン
ヒビター、項目6もしくは8のポリペプチドの結合パートナー、または項目21記載
の方法により同定可能な薬物候補の使用。
(項目43)
前記傷害は、良性および悪性の腫瘍、癌腫、または異形成症である、項目41記載の使
用。
(項目44)
前記腫瘍は、頭頸部癌、気道癌、胃腸管癌、皮膚およびその付属器官の癌、中枢神経系お
よび末梢神経系の癌、泌尿器系癌、生殖器系癌、内分泌系癌、柔組織および骨の癌、リン
パ球産生系および造血系の癌、乳癌、肛門性器癌、または結腸直腸癌である、項目42
記載の使用。
(項目45)
前記処置方法は、免疫療法、ワクチン接種療法、または遺伝子治療である、項目41〜
43のいずれか1項に記載の使用。
(項目46)
異常な細胞増殖によって特徴付けられる傷害の処置に用いるための、項目1〜15記載
の少なくとも1つの化合物、および/または項目6もしくは8のポリペプチドの活性化
因子/アゴニストもしくはインヒビター/アンタゴニスト、項目6もしくは8のポリペ
プチドの発現の活性化因子もしくはインヒビター、項目6もしくは8のポリペプチドの
結合パートナー、または項目21記載の方法により同定可能な薬物候補を含む、薬学的
組成物。

【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】ヒトLUMA1 mRNA改変体1およびコードされるLUMA1タンパク質アイソフォーム1。
【図2】ヒトLUMA1 mRNA改変体2。エキソン7の選択的なスプライシングにより、エキソン7部分の欠失を生じ、スプライス改変体の3’配列中のフレームシフトを導入する。mRNA改変体1と比べて、改変体2中のコードされるタンパク質は、mRNA改変体1中のものより短い。フレームシフトにより、異なるカルボキシ末端配列を有するタンパク質アイソフォームが生じる。さらに、全エキソンがスプライシングされ得る(図示せず)。
【図3】ヒトLUMA1 mRNA改変体3。この改変体は、3bp欠失および異なるポリアデニル化部位により特定され、より短い3’配列を生じる。
【図4】ヒトLUMA1 mRNA改変体4。この改変体はエキソン3の欠失により特定される。
【図5】ヒトLUMA1 mRNA改変体5。この改変体は、エキソン3およびエキソン4の欠失により特定される。
【図6】ヒトLUMA1 mRNA改変体6。この改変体は、エキソン3、4、および5の欠失により特定される。
【図7−1】タンパク質1をコードするヒトLUMA1 mRNA改変体7。タンパク質1は、mRNAの5’末端に位置するORFによりコードされる。
【図7−2】図7−1の続き。
【図7−3】図7−2の続き。
【図7−4】図7−3の続き。
【図7−5】図7−4の続き。
【図8−1】タンパク質2をコードするヒトLUMA1 mRNA改変体8。タンパク質2は、塩基対2242で開始するORFによりコードされる。オープンリーディングフレームは、bp2863〜65で終止コドンにより停止される。この終止コドンは、タンパク質3をコードするmRNA改変体9中には存在しない(図9参照)。
【図8−2】図8−1の続き。
【図8−3】図8−2の続き。
【図8−4】図8−3の続き。
【図9−1】タンパク質3をコードするヒトLUMA1 mRNA改変体9。タンパク質3のN末端部分は、タンパク質2中に存在する。bp2863〜65での終止コドンの不在により、オープンリーディングフレームは、bp4290まで伸長する。
【図9−2】図9−1の続き。
【図9−3】図9−2の続き。
【図9−4】図9−3の続き。
【図9−5】図9−4の続き。
【図9−6】図9−5の続き。
【図9−7】図9−6の続き。
【図10−1】タンパク質4をコードするヒトLUMA1 mRNA改変体10。タンパク質4は、bp2863〜65での5’終止コドンの存在により、bp2866で開始するORFにコードされる。エキソンを5’末端へ伸長し、フレームシフトを生じさせるエキソン8(エキソンT)での選択的なスプライシングのために、タンパク質3(図9)およびタンパク質4は、図1に図示したタンパク質と比べて、異なるc末端を保持する。
【図10−2】図10−1の続き。
【図10−3】図10−2の続き。
【図10−4】図10−3の続き。
【図10−5】図10−4の続き。
【図10−6】図10−5の続き。
【図10−7】図10−6の続き。
【図11−1】ヒトLUMA1遺伝子のゲノム配列。LUMA1エキソン配列は、赤字または赤紫字で示されており、下線が引かれている。ゲノム配列は、LUMA1エキソン1からエキソン8を保持する。2つの異なるスプライスアクセプター部位がエキソン3で検出可能であり、(>)で示される付加的コドンを生じる。エキソン3、またはエキソン3および4、またはエキソン3、4、および5は、選択的にスプライシングされる。さらに、エキソン7部分の選択的なスプライシングが検出された。エキソン3、エキソン3および4、ならびにエキソン3、4、および5の欠失により、内部のLUMA1アミノ酸配列のフレーム内欠失が生じる一方、エキソン7部分の選択的なスプライシングはフレームシフトを生成する。このフレームシフトにより、異なるカルボキシ末端のLUMA1タンパク質アイソフォームが生じる。エキソン7の2つのスプライスアクセプター部位は、(>)で示されている。さらに、LUMA1遺伝子の2つの異なるポリアデニル化部位が示されている。
【図11−2】図11−1の続き。
【図11−3】図11−2の続き。
【図11−4】図11−3の続き。
【図11−5】図11−4の続き。
【図11−6】図11−5の続き。
【図11−7】図11−6の続き。
【図11−8】図11−7の続き。
【図11−9】図11−8の続き。
【図11−10】図11−9の続き。
【図11−11】図11−10の続き。
【図11−12】図11−11の続き。
【図11−13】図11−12の続き。
【図11−14】図11−13の続き。
【図12−1】マウスLUMA1 mRNA配列。
【図12−2】図12−1の続き。
【図13−1】ヒトおよびマウスLUMA1 mRNAのヌクレオチド配列比較。全コード配列にわたって、発展の間の強度の配列保存が検出可能である。
【図13−2】図13−1の続き。
【図14−1】ヒトおよびマウスLUMA1 mRNAのヌクレオチド配列比較。ヒトおよびマウスLUMA1で同一の配列ブロックは青で囲まれている。
【図14−2】図14−1の続き。
【図15】ヒトおよびマウスLUMA1タンパク質のアミノ酸配列比較。ヒトおよびマウスLUMA1で同一の配列遮断は青で囲まれている。高度に保存されるペプチド配列が存在し、発展の間の高度に保存される機能を示す。
【図16】リアルタイムPCR技術(ABI TaqMan 7700)を用いた肺腺癌中のLUMA1の発現の検出。LUMA1遺伝子の増幅のため、以下のプライマーを用いた。すなわち、LUMA1−A:CTCGTCAGGCGACCTTATATCおよびLUMA1−B:TGTCAGTTGAACATTTTCTGCCである。解析のため、対応する腫瘍および正常試料を用いた。
【図17】リアルタイムPCR技術(ABI TaqMan 7700)を用いた肺腺癌中のLUMA1の発現の検出。LUMA1遺伝子の増幅のため、以下のプライマーを用いた。すなわち、LUMA1−A:CTCGTCAGGCGACCTTATATCおよびLUMA1−B:TGTCAGTTGAACATTTTCTGCCである。解析のため、対応する腫瘍および正常試料を用いた。
【図18】リアルタイムPCR技術(ABI TaqMan 7700)を用いた肺腺癌中のLUMA1の発現の検出。LUMA1遺伝子の増幅のため、以下のプライマーを用いた。すなわち、LUMA1−A:CTCGTCAGGCGACCTTATATCおよびLUMA1−B:TGTCAGTTGAACATTTTCTGCCである。解析のため、対応する腫瘍および正常試料を用いた。
【図19】リアルタイムPCR技術(ABI TaqMan 7700)を用いた肺腺癌中のLUMA1の発現の検出。LUMA1遺伝子の増幅のため、以下のプライマーを用いた。すなわち、LUMA1−A:CTCGTCAGGCGACCTTATATCおよびLUMA1−B:TGTCAGTTGAACATTTTCTGCCである。解析のため、対応する腫瘍および正常試料を用いた。
【図20】リアルタイムPCR技術(ABI TaqMan 7700)を用いた肺腺癌中のLUMA1の発現の検出。LUMA1遺伝子の増幅のため、以下のプライマーを用いた。すなわち、LUMA1−A:CTCGTCAGGCGACCTTATATCおよびLUMA1−B:TGTCAGTTGAACATTTTCTGCCである。解析のため、対応する腫瘍および正常試料を用いた。
【図21】肺腺癌および対応する正常組織中のLUMA1転写産物の増幅の終点PCRのゲル電気泳動。対応する正常試料と比べて、腫瘍T1およびT3では、LUMA1の向上された発現が見られ、腫瘍T4およびT5では、LUMA1の強度の過剰発現が見られた。アガロースゲル上で解析したPCR産物は、図16〜20で示したリアルタイムPCR反応から由来した。
【図22】肺腺癌および対応する正常組織中のLUMA1転写産物の増幅の終点PCRのゲル電気泳動。正常試料N1、N3、およびN4では、LUMA1転写産物は検出されなかった一方で、肺腺癌T1およびT3では、LUMA1転写産物の発現が検出された。T4では、増幅は可視ではなかった。T2およびT5では、向上された発現が検出された。LUMA1遺伝子の増幅のために、以下のプライマーを用いた。すなわち、LUMA1−C:CTCGTCAGGCGATACTCCCおよびLUMA1−D:CACCAGTCAGCTCTAAATGGGである。
【図23】正常組織中の2つの異なるLUMA1エキソン7(エキソンS)転写産物の増幅の終点PCRのゲル電気泳動。エキソン7の長い改変体の発現に対して、11個の正常組織試料を試験した。精巣および肝臓のみで、このエキソン7スプライス改変体の発現が検出された。さらに、精巣、肝臓、および胃で、短いエキソン7スプライス改変体の発現を観測できた。NTC=鋳型対照群なし。
【図24】LUMAエキソン2に対する1次抗体を用いた肺腺癌(B)および対応する正常組織(A)の免疫組織化学的解析。癌腫組織および対応する正常肺組織で、エキソン2のタンパク質配列に対するポリクローナル抗体を用いて細胞質染色が検出された。正常および腫瘍間の染色パターンに相違は認められなかった。
【図25】LUMAエキソン7に対するモノクローナル1次抗体を用いた肺腺癌(B)および対応する正常組織(A)の免疫組織化学的解析。提供試料の癌腫で、lumaエキソン7(長い転写産物)タンパク質アイソフォームの強度の過剰発現が検出可能である。腫瘍細胞は、細胞質染色パターンを示す。対応する正常肺組織では、エキソン7特異的モノクローナル抗体を用いて、染色は検出されなかった。
【図26】LUMAエキソン7に対するモノクローナル抗体を用いた肺カルチノイド(A)および扁平上皮癌(B)の免疫組織化学的解析。カルチノイド(A)および扁平上皮癌(B)では、LUMAエキソン7(長い転写産物)タンパク質アイソフォームの強度の過剰発現が検出された。腫瘍細胞は、細胞質染色パターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、肺癌に関連する核酸およびポリペプチドを提供する。本発明によれば、これ
らの分子を分子マーカーとして使用してもよく、早期段階でも、肺腫瘍等の細胞増殖性疾
患を広範に検出することが可能になる。
【0009】
したがって、本発明は、肺腫瘍に関連して発現が著しく変化し、細胞増殖の異常に関連
する疾患の予後診断および診断を向上させることが可能なポリペプチドおよび核酸を提供
する。さらに、本明細書中に開示される核酸は、遺伝子の選択的スプライシングから生じ
る転写産物を含み、腫瘍組織で発見される可能性があるので、正常組織では発生しない。
【0010】
本発明の別の態様では、本明細書中に開示される核酸および/またはポリペプチドは、
肺腫瘍等の細胞増殖性疾患の治療および/またはワクチン接種のため、単独で、または他
の分子と組み合わせて用いてもよい。
【0011】
本発明のさらに別の態様は、単独で用いるか、あるいは1つ以上の他の治療因子もしく
は診断因子および/または担体またはアジュバント物質と組み合わせて用いる本明細書中
に開示されるポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチドを含む医薬組成物である。
本発明は、本明細書中に開示されるポリヌクレオチドもしくはポリペプチドを検出するた
めの診断用キットまたは調査用キット等のキット、あるいは本明細書中に開示されるポリ
ヌクレオチドもしくはポリペプチド、またはその組み合わせを含むキットも提供する。
【0012】
本発明に至る実験の過程で、肺腫瘍に関連して発現する遺伝子を同定した。本発明はさ
らに、試料中での、本明細書中図1〜11に提示するマーカー遺伝子から転写されるポリ
ペプチドの発現と同様に核酸の発現レベルにより、肺腫瘍等の細胞増殖性疾患を診断およ
び選別して、疾患の経過の予測および初期治療後の疾患の経過観察が可能になるという本
発明者らの発見(実施例1〜6で示す)に基づく。
【0013】
本発明は、したがって、肺癌に関連する新規の核酸およびポリペプチドを提供する。
【0014】
1つの態様では、本発明の方法は、肺腫瘍等の細胞増殖性疾患の早期検出と、微少な後
遺症の診断過程での汎発性の腫瘍細胞の検出とに特に有用である。
本発明の別の態様では、本明細書中に開示される核酸またはポリペプチドを、腫瘍切除、
生検材料等の試料での細胞の異常性増殖に関連する疾患の診断過程で用いてもよい。この
態様では、本発明は、分子特性にしたがって疾患の治療方策を築くことを可能にする方法
を提供する。本発明では、該ポリペプチドおよび/または核酸のレベルを、予後診断、モ
ニタリング、腫瘍治療論の方策の設計のために、分子マーカーとして用いることができる

【0015】
本発明のさらに別の態様は、本発明の遺伝子の発現の活性化因子およびインヒビターの
同定方法と同様に、本発明の核酸およびポリペプチドに結合する分子の同定方法を提供す
る。また、増殖性疾患の治療用の薬物候補を同定する方法も提供する。
【0016】
本発明は、図1〜11で示す配列により特定される腫瘍に関連する核酸およびポリペプ
チドを提供する。
【0017】
本発明で用いるマーカー分子は、核酸およびポリヌクレオチドを含んでよい。核酸のレ
ベルに応じて、マーカー分子は、ゲノムDNA、cDNA、およびmRNAまたはhnR
NAのようなRNAを含むDNAまたはRNAでもよい。本発明の1つの好適な実施形態
では、特定の選択的スプライシング事象により生じる核酸は、マーカー分子でもよい。
【0018】
本発明で用いられるように、発現は、例えば、タンパク質の発現を含んでよい。したが
って、RNAへの転写およびmRNAのレベルは、本発明に従った発現であると理解され
てもよい。
【0019】
化合物の発現は、発現のレベルが30パーセント以上異なる場合、本発明にしたがって
著しく変化したと言える。発現の変化は、例えば、該化合物の上昇した発現または減少し
た発現を含んでよい。変化させた発現の別の態様は、化合物が非野生型状況下で発現され
るような変化であってもよい。これは、例えば、発現が天然に抑制される状況で化合物が
発現されること、または化合物の発現を天然に誘起する状況で発現されないこと含んでよ
い。
【0020】
本明細書中で用いられる発現の変化はまた、遺伝子の転写パターンでの変化を含んでも
よい。例えば、転写パターンの変化は、遺伝子の選択的スプライシングを含んでよい。転
写パターンでの変化は、変化した転写産物から翻訳されるポリペプチドに影響する可能性
があり、また非翻訳領域に限定される可能性がある。遺伝子の転写パターンの変化は、転
写産物中の新規のエキソンの使用、転写産物中のエキソンの欠失、または細胞中の異なる
スプライシング改変体の割合の変形を含んでよい。したがって、本明細書中で用いられる
遺伝子の転写パターンの変化は、制御組織に発生する野生型の核酸と比べて、核酸配列の
付加的伸長を含むmRNA、cDNA等のような核酸の産生を含んでよい。また、選択的
スプライシングパターンにより産生される核酸は、野生型のポリヌクレオチドに存在する
核酸配列の伸長を失っている核酸を産生する可能性がある。付加的伸長の存在は、単一の
転写産物中の元の配列伸長の不在と同時に起る可能性がある。本発明の文脈中用いられる
ように、遺伝子発現の変化は、遺伝子のスプライシング改変体の発現レベルでの変化も含
んでもよい。これは、野生型組織には存在しない改変体の発現と同様に、特定のスプライ
シング改変体の増加または減少した発現を含んでよく、または野生型組織に存在するスプ
ライシング改変体の発現の不在を含んでよい。1つの実施例では、スプライシング改変体
の発現の変化は、該組織中の異なるスプライシング改変体の割合の変化を含んでよい。
【0021】
本発明の文脈中に用いられるように、核酸は、好ましくはポリヌクレオチドまたはその
フラグメントである。好適なポリヌクレオチドは、少なくとも20個の連続したヌクレオ
チドを含み、好ましくは少なくとも30個の連続したヌクレオチド、さらに好ましくは少
なくとも45個の連続したヌクレオチドを含み、これらは同一であるか、配列相同性を共
有しているか、または本明細書に開示される増殖性疾患に関連するポリペプチドに対して
、同一もしくは相同のポリペプチドをコードする。本発明の核酸は、該ポリヌクレオチド
のいずれに相補的であってもよい。ポリヌクレオチドは、例えば、一本鎖(センスまたは
アンチセンス)または二重鎖分子を含んでもよく、さらにDNA(ゲノムDNA、cDN
A、または合成DNA)またはRNAであってよい。RNA分子は、mRNA(イントロ
ンを含まない)と同様に、hnRNA(イントロンを含む)を含む。本発明では、ポリヌ
クレオチドは、支持体原料または検出マーカー分子等の任意の他の分子に結合してもよく
、必須ではないが、付加的なコードまたは非コード配列を含んでもよい。
【0022】
本発明のポリヌクレオチドは、ネイティブな配列またはその改変体であってもよい。改
変体は、それぞれのネイティブなタンパク質に対して、コードされるポリペプチドの免疫
原性が減じることのないように1つ以上の置換、付加、欠失、および/または挿入を含ん
でよい。改変体は、本発明の方法に用いられるネイティブな核酸分子に対して、好ましく
は70パーセント、さらに好ましくは少なくとも80パーセント、最も好ましくは少なく
とも90パーセントの配列同一性を示す。配列類似性を測定する方法は、当業者に既知で
ある。
【0023】
配列類似性を検出する1つの例は、DKFZ ハイデルベルグ(Heidelberg
)のHUSARサーバーで入手可能なFastAおよび/またはBlastNというバイ
オインフォマティクス・ソフトウエアを用いて実行できる。
【0024】
さらに、本発明の核酸は、ストリンジェントな条件下で、本明細書で開示される配列に
特異的なプローブにハイブリダイズする全てのポリヌクレオチドである。ハイブリダイゼ
ーション反応に適用されるストリンジェントな条件は、通常の当業者には既知であり、S
ambrookらのMolecular cloning:A Laboratory
Manual 2nd Edition(1989年)に記載されているように適用して
もよい。
【0025】
本発明は、核酸配列内で、上述のような配列相同性のパーセントン値は示さないが、遺
伝子コードの縮重により、開示される核酸によりネイティブでコードされるポリペプチド
をコードするポリヌクレオチドも提供する。このような核酸は、開示される配列中に存在
するコドンを、縮重コドンによって変化させ、合成核酸を調製することにより発生させる
ことが可能である。
【0026】
本発明のヌクレオチド配列を、既知の組換えDNA技術を用いて様々な他の核酸配列に
結合させてもよい。配列は、例えば、プラスミド、ファージミド、ラムダ・ファージ派生
物、およびコスミド等の様々なクローニングベクターのいずれへもクローニングすること
が可能である。さらに、発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクター、およびシ
ーケンシングベクター等のベクターは、本明細書で開示される配列に結合することが可能
である。本発明の核酸にクローニングできる対象の配列は、例えば、プロモーター、エン
ハンサー、およびターミネーターを含む非コード配列および調節配列である。
【0027】
好適な実施形態では、ポリヌクレオチドは、哺乳類細胞に侵入し、その細胞で発現され
得るように形成することが可能である。この形成は、治療用途に特に有用である。標的細
胞での核酸配列の発現は、当業者に既知の任意の方法により達成できる。核酸は、例えば
、宿主細胞で発現しやすい因子に結合させてもよい。このような因子は、CMV−、SV
40−、RSV−、メタロチオネインI−、もしくは多角体プロモーター、またはCMV
−もしくはSV40−エンハンサー等のプロモーターまたはエンハンサーをそれぞれ含ん
でよい。発現のための可能方法としては、例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス
、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、またはポックスウイルスを含むウイルスベクタ
ーにポリヌクレオチドを組み込むことである。哺乳類宿主細胞での核酸の発現用途のウイ
ルスベクターは、pcDNA3、pMSX、pKCR、pEFBOS、cDM8、pCE
V4等を含んでよい。これらの技術は、当業者に既知である。
【0028】
治療用途での投薬のための他の形成としては、例えば巨大分子複合体、ミクロスフェア
、ビーズ、ミセル、リポソームのようなコロイド分散系が挙げられる。
【0029】
一般に、従来の分子生物学的方法によって、異なる突然変異体を本発明の核酸分子に導
入することが可能である(例えばSambrookら、上掲)。その結果、改変可能な生
物学的特性を有する本発明の肺腫瘍に関連するポリペプチドまたはそれに関連するポリペ
プチドが合成される。1つの可能性として、欠失突然変異体の産生があり、その中で、核
酸分子は、コードDNA配列の5’末端または3’末端からの連続的な欠失により産生さ
れ、それに応じて短縮されるポリペプチドの合成を導く。別の可能性としては、アミノ酸
配列の改変が例えば増殖特異的特性に影響する位置での単一の点突然変異の誘導がある。
この方法により、例えば、 改変されたKm値を持つムテイン、あるいは例えばアロステ
リックな調節または共有結合の改変に関して細胞に通常存在する調節機構に支配されなく
なったムテインを産生することができる。該ムテインは、本発明の肺腫瘍に関連するマー
カーの治療上有用なアンタゴニストとしても大いに役に立つであろう。
【0030】
遺伝子工学による原核細胞での操作としては、本発明の核酸分子または該分子の部分を
、DNA配列の組換えによる突然変異生成または配列の改変を可能にするプラスミドに導
入することができる。 従来の方法(Sambrookら、上掲)により、塩基を置換す
ることができ、さらに天然または合成配列を付加することができる。DNAフラグメント
を互いに結合させるために、アダプターまたはリンカーをそのフラグメントに付加するこ
とができる。さらに、好適な切断部位を設ける操作または余分なDNAもしくは切断部位
を除去する操作を実行することができる。挿入、欠失、または置換が可能な場合、インビ
トロでの突然変異生成、プライマー修復、制限、またはライゲーションが実行できる。解
析方法としては、一般に、配列解析、制限解析、および他の生化学的または分子生物学的
方法を用いる。
【0031】
本発明の核酸分子の様々な改変体にコードされるポリペプチドは、細胞増殖および分化
での調節活性、分子量、免疫反応性、コンフォメーション、または電気泳動移動度、クロ
マトグラフィーでの挙動、沈降係数、可溶性、分光学的特性、安定性、pH最適条件、温
度最適条件の様な物理学的特性等の特定の共通特性を示す。
【0032】
本発明はさらに、本発明の肺腫瘍に関連する核酸分子を含むベクターに関する。このベ
クターは、好ましくは、プラスミド、コスミド、ウイルス、バクテリオファージ、および
遺伝子工学分野で一般に用いられる他のベクターである。本発明に使用する好適なベクタ
ーとしては、限定されないが、哺乳類細胞での発現用にT7をベースとした二重発現ベク
ター(原核生物および真核生物で発現)および昆虫細胞での発現用にバキュロウイルス由
来ベクターが挙げられる。好ましくは、本発明の核酸分子は、原核細胞および/または真
核細胞中で転写および翻訳可能なmRNAの合成を確実にする本発明の組換えベクター中
の調節因子に操作自在に結合される。転写されるヌクレオチド配列は、T7、メタロチオ
ネインI、または多角体プロモーター等のプロモーターに操作可能に結合することができ
る。
【0033】
さらに別の実施形態では、本発明は、本発明の核酸分子またはベクターを一過性にまた
は安定に含む組換え宿主細胞に関する。宿主細胞は、インビトロでの組換えDNAを取り
込むことができ、必要に応じて、本発明の核酸分子にコードされるポリペプチドを合成す
ることができる生体として理解される。好ましくは、これらの細胞は、例えば哺乳類細胞
、細菌細胞、昆虫細胞、または酵母細胞のような原核細胞または真核細胞である。本発明
の宿主細胞は、好ましくは、導入される本発明の核酸分子が形質転換細胞に対して異種で
ある(すなわち、これらの細胞で天然に発生することがない)か、相当する天然に発生す
る配列とは異なるゲノムの位置に局在するかのどちらかであるという事実により特定され
る。
【0034】
本発明のさらに別の実施形態は、本発明の肺腫瘍に関連するマーカーの生物学的特性を
示すとともに本発明の核酸分子にコードされるポリペプチドと、これを産生する方法とに
関し、これにより、例えば、本発明の宿主細胞は、ポリペプチドの合成を可能にする条件
下で培養され、続いてポリペプチドは、培養された細胞および/または培養液から単離さ
れる。組換え的に産生されるポリペプチドの単離および精製は、例えば本発明の肺腫瘍に
関連するマーカータンパク質に向けられる抗体を用いて、調製用クロマトグラフィー、親
和性分離および免疫学的分離を含む従来の手段により実行してもよい。または、例えばS
mithおよびJohnson、Gene 67;31−40(1988年)に記載され
るワンステップ方法により、実質的に精製することもできる。しかし、これらのポリペプ
チドは、組換え的に産生されたポリペプチドを含むのみならず、単離された天然に発生す
るポリペプチド、合成的に産生されたポリペプチド、またはこれらの方法を組み合わせて
産生されたポリペプチドをも含む。このようなポリペプチドまたは関連するポリペプチド
を調製する手段は、この技術で十分に理解されている。これらのポリペプチドは、好まし
くは、実質的に精製された形態である。
【0035】
本発明のポリペプチドの産生は、例えば、細胞を含まないインビトロの転写および/ま
たは翻訳系で実行可能である。このような系は、通常の当業者に既知である。1つの例と
しては、Roche molecular BiochemicalsのRapid t
ranslation Systemにより提供されるインビトロ翻訳系を含んでよい。
本発明に用いられるように、ポリペプチドは、本明細書中に開示される本発明の肺腫瘍に
関連するマーカータンパク質の免疫原性部分を少なくとも含む。ポリペプチドは、任意の
長さでよい。上記に使用される免疫原性部分とは、B細胞および/またはT細胞表面抗原
受容体に認識されるタンパク質の一部分である。免疫原性部分は、肺腫瘍に関連するタン
パク質の少なくとも10個のアミノ酸残基、好ましくは少なくとも20個のアミノ酸残基
を含む。本発明の好適な実施形態では、例えば膜貫通ドメインまたはN末端リーダー配列
のようなタンパク質の特定のドメインは欠失されている。本発明の免疫原性部分は、ネイ
ティブな完全長タンパク質と同様またはほぼ同様の強度で、抗血清のまたは特異的な抗体
と反応する。
【0036】
免疫原性部分は、一般に、この技術で周知の技術を用いて同定される。可能な技術とし
ては、例えば、抗原特異的抗体、抗血清、および/またはT細胞系もしくはクローンと反
応する能力に対するポリペプチドのスクリーニングがある。
【0037】
本発明の肺腫瘍に関連するポリペプチドは、ネイティブなタンパク質の改変体も含む。
このような改変体は、置換、欠失、付加、および/または挿入等の1つ以上の変化の点で
ネイティブなタンパク質とは異なる。本発明の改変体の免疫反応性は、ネイティブなタン
パク質と比べて、実質的に減少されない。本発明の好適な実施形態では、免疫反応性は、
50パーセント以下で減少される。より好適な実施形態では、免疫反応性は、ネイティブ
なポリペプチドと比べて、20パーセント以下で減少される。
【0038】
好適な実施形態では、改変体は、例えばN末端リーダー配列、膜貫通ドメイン、または
小N末端および/もしくはC末端配列のような1つ以上の部分で欠損している。改変体は
、本発明で開示されるポリペプチドに対して、70パーセント、より好ましくは少なくと
も90パーセント、最も好ましくは少なくとも95パーセントの同一性を示す。
【0039】
本発明の改変体は、好ましくは、保存性置換体であるので、変化されるアミノ酸は、同
様の特性を有するアミノ酸と置換される。関係する特性は、アミノ酸残基の極性、電荷、
可溶性、疎水性、親水性、および/または両親媒性の性質を含んでよい。本明細書中で開
示される改変体は、付加的な末端リーダー配列、リンカー、またはより簡易もしくは良好
な方法でポリペプチドの合成、精製、安定を可能にする配列を含んでもよい。
本発明のポリペプチドは、本明細書中に開示される本発明の肺腫瘍に関連するマーカーの
核酸配列にコードされるアミノ酸配列を含む融合またはキメラポリペプチドであるポリペ
プチドも含んでよい。ポリペプチドは、任意の好適なアミノ酸配列に融合されることが可
能である。このような配列は、例えば、抗原フラグメント、受容体、酵素、毒素、キレー
トエピトープを含んでよい。本発明の好適な実施形態では、開示されるポリペプチドに融
合されるアミノ酸配列は、hisタグまたはmycタグ等のポリペプチドの精製または回
収に有用なタグである。互いに融合させるアミノ酸配列は、特定の用途に好適な任意のリ
ンカーもしくはスペーサー配列により、直接結合させること可能であり、または分離され
ることが可能である。
【0040】
本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドは単離される。これは、分子がその元の
環境から取り出されることを意味する。天然環境で共生している物質のいくつかまたは全
てから分離される場合、天然に発生するタンパク質は単離される。ポリヌクレオチドは、
例えば、ベクターにクローニングされる場合に単離される。
【0041】
さらに本発明は、本明細書中に開示される肺腫瘍に関連するタンパク質に特異的に結合
する抗体および抗原結合フラグメント等の結合因子を提供する。
用語「結合因子」とは、抗原結合オリゴペプチド、核酸、糖質、有機化合物等を含むオリ
ゴペプチド、抗体、ペプチド類似分子のような様々な物質を包含する。本発明の抗体は、
好ましくは、基本的に異なるエピトープ特異性を有するプールされるモノクローナル抗体
からなる抗体と、特異なモノクローナル抗体の調製とに関連する。モノクローナル抗体は
、当業者に周知の方法により、本発明のポリペプチドのフラグメントを含む抗原から作製
される(例えば、Kohlerら、Nature 256(1975年)、495を参照
せよ)。本明細書で用いられるように、用語「抗体」(Ab)または「モノクローナル抗
体」(Mab)は、タンパク質に特異的に結合できる抗体フラグメント(例えば、Fab
およびf(ab’)2フラグメント)とともにインタクトな分子を含むことを意味する。
FabおよびF(ab’)2フラグメントは、インタクトな抗体のFcフラグメントを持
たず、インタクトな抗体よりも循環からより迅速に消滅し、より少ない非特異的組織結合
を有してもよい(Wahlら、J.Nucl.Med.24:316−325(1983年)
)。したがって、FABまたは他の免疫グロブリン発現ライブラリーの産物と同様に、こ
のようなフラグメントが好適である。さらに、本発明の抗体は、キメラ、一本鎖、および
ヒト化抗体を含む。
【0042】
本発明の結合因子を、例えば、本明細書中に開示される本発明の肺腫瘍に関連するマー
カーポリペプチドの活性を阻害するために用いることも可能である。この観点から、用語
「結合因子」は、新規の肺腫瘍に関連する核酸から転写されるポリペプチドに特異的に結
合し、この結果該ポリペプチドの活性を阻害する因子に関連する。このような結合因子は
、例えば、核酸(DNA、RNA、PNA等)、ポリペプチド(抗体、受容体、抗原フラ
グメント、オリゴペプチド)、糖質、脂質、または有機化合物もしくは無機化合物(金属
−イオン、硫黄化合物、ボラン、ケイ酸、還元因子、酸化因子)を含んでもよい。結合因
子は、好ましくは、生物学的活性に不可欠なエピトープに結合することによってポリペプ
チドと相互作用するとよい。相互作用は、可逆性または付加逆性でもよい。結合は、ポリ
ペプチドに非共有結合または共有結合さえもすることが可能である。さらに、結合因子は
、本発明のポリペプチドの生物学的活性を変化または減少させるポリペプチドに対する変
化を誘導する可能性がある。
例えば診断方法のような特定の用途としては、本発明の抗体または結合因子は、例えば放
射性同位体、生物発光化合物、化学発光化合物、蛍光化合物、金属キレート、または酵素
で検出可能に標識できる。さらに、分子間相互作用の検出に好適な任意の方法を用いてよ
い。
【0043】
抗体または抗原結合因子は、本明細書に開示されるタンパク質と検出可能なレベルで反
応し、他のタンパク質と特異的に反応しない場合、特異的に反応すると言える。本発明の
抗体は、モノクローナルまたはポリクローナル抗体でもよい。特異的に結合できる他の分
子としては、例えば、Fabフラグメント、RNA分子、またはポリペプチドのような抗
体の抗原結合フラグメントでもよい。本発明では、結合因子を、単独で、または組み合わ
せて用いてもよい。組み合わせることによって、より高度な感受性が達成できる。
【0044】
本発明の方法に有用な抗体は、さらに、治療因子または他のポリペプチドに対する結合
部位を含んでよく、あるいは該治療因子またはポリペプチドに結合してもよい。治療因子
は、薬物、毒素、放射性核種、およびその派生物を含んでよい。この因子は、例えばリン
カーまたは担体群によって、結合因子に直接または間接的に結合してもよい。リンカー群
は、例えば、結合因子と、治療因子または他の因子との間の結合反応を可能にするために
機能することができる。また、リンカーは、融合分子の異なる部位間のスペーサーとして
作用することができる。リンカーは、該条件下で結合している因子を放出するように特定
の状況で切断可能にすることができる。治療因子は、担体群に直接、またはリンカー群を
介して共有結合で結合することが可能である。この因子は、担体に非共有結合で結合する
ことも可能である。本発明に用いることができる担体としては、例えば、アルブミン、ポ
リペプチド、多糖、またはリポソームがある。
本発明に用いられる抗体は、1つ以上の因子に結合してもよい。1つの抗体に結合する複
数の因子は、同様の種の全てでもよく、または1つの抗体に結合する複数の異なる因子で
もよい。
本発明は、本発明の核酸分子またはベクターを含むトランスジェニックマウス、ラット、
ハムスター、イヌ、サル、ウサギ、ブタ、線虫(C.elegans)、およびシビレエ
イ等の魚のようなトランスジェニック非ヒト動物にも関し、好ましくは該核酸分子または
ベクターの存在により本発明の肺腫瘍に関連するマーカーポリペプチド(または関連する
ポリペプチド)の発現を導くように、好ましくは該核酸分子またはベクターは、該非ヒト
動物のゲノムに安定に組み込まれてもよく、あるいは非ヒト動物内で、一過性で発現され
てもよい。該動物は、本発明の肺腫瘍に関連するマーカーポリペプチドの1つもしくは複
数の形態またはその突然変異形態をコードする同一または異なる核酸分子の1つまたは複
数のコピーを有してもよい。この動物は、細胞増殖および分化の調節に対する調査モデル
としての実用性を含む多数の実用性を有しているので、肺腫瘍等の細胞増殖性疾患の増殖
に関与する本発明の肺腫瘍に関連するマーカータンパク質の欠損または機能停止が原因の
疾患に対する療法、治療等の開発で、新規の有益な動物を提供する。したがって、本発明
では、非ヒト動物は、好ましくは、マウスまたはラットのような実験動物である。
好ましくは、本発明のトランスジェニック非ヒト動物はさらに、本発明の肺腫瘍に関連す
るポリペプチドをコードする対応の遺伝子の少なくとも1つの不活性化される野生型対立
遺伝子を含む。この実施形態により、例えば、細胞増殖および分化の調節に関連する疾患
の臨床徴候の初期に、本発明の肺腫瘍に関連するマーカーポリペプチドの様々な突然変異
形態の相互作用を研究することが可能になる。トランスジェニック動物に関して論じる前
に本明細書中に記載された全ての応用は、2つまたは3つ以上の導入遺伝子を保持する動
物にも適用する。トランスジェニック動物の発達および/または一生の特定の段階で、本
発明の肺腫瘍に関連するマーカータンパク質の発現または機能を不活性化することもまた
望まれているであろう。これは、例えば、mRNAをコードする本発明の肺腫瘍に関連す
るマーカーをコードするRNA転写産物に対して向けられるアンチセンスまたはリボザイ
ム等の発現を促進する組織特異的、成長および/または細胞調節性、および/または誘導
性プロモーターを用いて達成できる(上掲)。好適な誘導性系としては、例えば、Gos
senおよびBujard(Proc.Natl.Acad.Sci.89 USA(199
2年)、5547−5551)およびGossenら(Trends Biotech.
12(1994年)、58−62)により記載されるように、例えばテトラサイクリンに
調節される遺伝子発現がある。同様に、突然変異の本発明の肺腫瘍に関連するタンパク質
の発現は、このような調節因子により制御されることが可能である。
【0045】
さらに、本発明は、本発明の核酸分子またはその部分(好ましくは安定にそのゲノムに
組みまれる、または一過性で導入される)を含むトランスジェニック哺乳類細胞にも関し
、この核酸分子またはその部分の転写および/または発現は、本発明の肺腫瘍に関連する
マーカータンパク質の合成の低減に至る。好適な実施形態では、低減は、アンチセンス、
センス、リボザイム、共抑制、および/または優性突然変異作用により達成される。「ア
ンチセンス」および「アンチセンスヌクレオチド」とは、天然に発生する遺伝子産物の発
現を遮断するDNAまたはRNAコンストラクトを意味する。別の好適な実施形態では、
本発明の肺腫瘍に関連するマーカーポリペプチドをコードするネイティブな核酸配列は、
例えば組換えにより該核酸配列の改変体によって変化または置換されてもよく、これによ
り本発明の肺腫瘍に関連するマーカー遺伝子は機能しなくなる。したがって、本発明の肺
腫瘍に関連するマーカーポリペプチド活性を持たない生体を、ノックアウト実験によって
生産することが可能である。
本発明の核酸分子の提供により、上述のように本発明の肺腫瘍に関連するマーカータンパ
ク質を低減したレベルで有ることにより細胞増殖および分化の調節に欠損があるトランス
ジェニック非ヒト動物生産の可能性が切り開かれる。これを達成するための技術は、当業
者に周知である。これは、例えば、アンチセンスRNA、リボザイムの発現を含み、その
分子は、アンチセンスおよびリボザイムの機能を組み合わせ、ならびに/またはその分子
は、共抑制作用を提示する。細胞中での本発明の肺腫瘍に関連するマーカータンパク質量
の低減に対してアンチセンス手法を用いる際、アンチセンスRNAをコードする核酸分子
は、好ましくは、形質転換に用いられる動物種に対して相同の起源を持つ。しかし、本発
明の肺腫瘍に関連するマーカータンパク質をコードする内在的に発生する核酸分子に対し
て高い程度の相同性を示す核酸分子を用いることも可能である。この場合、相同性は、好
ましくは80パーセント以上、特に90パーセント以上、さらに好ましくは95パーセン
ト以上である。トランスジェニック哺乳類細胞での本発明のポリペプチドの合成の低減に
より、内在性タンパク質の分解等に変化が生じる。このような細胞を含むトランスジェニ
ック動物では、これにより様々な生理的、発生的、および/または形態的に変化させるこ
とができる。
【0046】
したがって、本発明は、上記のトランスジェニック細胞を含むトランスジェニック非ヒ
ト動物にも関する。これは、例えば、野生型の動物に比べて、外来性DNAの安定性また
は一過性存在が原因で細胞増殖および/または分化の調節に欠損を示す可能性があり、こ
れにより以下の特徴の少なくとも1つを生じる。すなわち、(a)本発明の肺腫瘍に関連
するマーカーをコードする内在性遺伝子の破壊、(b)本発明の核酸分子を含む転写産物
に対する少なくとも1つのアンチセンスRNAおよび/またはリボザイムの発現、(c)
本発明の核酸分子のセンスおよび/または非翻訳可能mRNAの発現、(d)本発明の抗
体の発現、(e)本発明の調節配列の機能性または非機能性コピーの組み込み、または(
f)本発明の組換えDNA分子またはベクターの組み込みである。
【0047】
本発明のトランスジェニック非ヒト動物、好ましくはトランスジェニックマウスの生産
方法は、当業者に周知である。このような方法は、例えば、細菌細胞、胚細胞、幹細胞、
卵、またはこれら由来の細胞への本発明の核酸分子またはベクターの導入を含む。非ヒト
動物は、本明細書に記載される本発明のスクリーニング方法にしたがって用いることがで
き、非トランスジェニック健常動物でもよく、または疾患を有していてもよい。この疾患
は、好ましくは本発明の肺腫瘍に関連するマーカータンパク質中の少なくとも1つの突然
変異が原因の疾患である。このようなトランスジェニック動物は、上記の本発明の肺腫瘍
に関連するマーカーポリペプチドの突然変異形態に関係する薬物の薬理学的研究等に非常
に適している。トランスジェニック胚の生産およびそのスクリーニングを、例えばA.L.
Joyner Ed.、Gene Targeting、A Practical Ap
proach(1993年)、Oxford University Pressに記載
されているように実行することができる。胚の胚膜のDNAを、例えば、核酸に基づいて
、適当なプローブを用いたサザンブロット、増幅技術(例えばPCR)等を用いて解析す
ることができる(上掲)。
【0048】
本発明の別の態様は、異常性細胞増殖に関連する疾患の治療に用いる医薬組成物である
。本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、および結合因子(特に、抗体)を、医薬ま
たは免疫原性組成物に組み込んでもよい。
【0049】
医薬組成物は、当業者に既知の任意の好適な方法で投与することが可能である。投与は
、例えば皮内、筋肉内、静脈内、もしくは皮下注射のような注射、例えば吸引による鼻腔
内投与、または経口投与を含んでよい。治療の医薬的効果を確実にする好適な投与量は、
当業者に既知であるように、患者の年齢、性別、体重等のパラメーターに応じて選択され
るべきである。
【0050】
医薬組成物は、該化合物および生理学的に許容できる担体を含む。本発明の医薬組成物
に用いられる担体の種類は、投与形態によって変わるであろう。皮下注射等の非経口投与
としては、担体は、好ましくは、水、生理食塩水、アルコール、脂質、ろう、および/ま
たは緩衝液を含む。経口投与としては、上記担体のいずれか、またはマンニトール、ラク
トース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、滑石、セルロー
ス、グルコース、スクロース、および/もしくは炭酸マグネシウム等の固体担体を用いて
もよい。生分解性ミクロスフェア(例えばポリ乳酸グリコール酸)も、本発明の医薬組成
物用担体として用いることができる。好適な生分解性ミクロスフェアは、例えば米国特許
第4,897,268号および第5,075,109号に開示されている。
【0051】
医薬組成物またはワクチンは、例えば、本発明の1つ以上のポリペプチドをコードする
DNAを含んでよい。DNAを、インサイチュでポリペプチドが生成されるように投与し
てもよい。好適な発現系は、当業者に既知である。本発明の別の実施形態では、核酸は、
例えば、アンチセンスコンストラクトでもよい。医薬組成物は、例えばアデノウイルスベ
クター系のようなウイルスまたは他の発現系を含む哺乳類またはヒト宿主系で発現可能な
核酸分子を含んでもよい。
【0052】
核酸を裸核酸として投与してもよい。この場合、生分解性ビーズ上に核酸をコーティン
グするような核酸の取り込みを向上する適当な物理的送達系を用いてもよく、これは効率
的に細胞内に輸送される。裸核酸の投与は、例えば、宿主または宿主細胞内での一過性発
現の用途に対し有用であるだろう。
【0053】
また、医薬組成物は、1つ以上のポリペプチドを含んでよい。医薬組成物に組み込まれ
るポリペプチドは、本発明の肺腫瘍に関連するポリペプチドであってもよい。任意で、ポ
リペプチドは、例えば酵素、抗体、調節因子(サイクリン、サイクリン依存性キナーゼも
しくはCKI等)、または毒素のような1つ以上の他の既知のポリペプチドと組み合わせ
て投与されてもよい。
【0054】
本発明の肺腫瘍に関連するタンパク質の免疫原性部分を含む本発明のポリペプチドまた
はそのフラグメントを、免疫原性組成物に用いてもよく、ポリペプチドは、例えば、腫瘍
細胞に対する患者自身の免疫応答を促進する。患者は、疾患に罹っているか、または検出
可能な疾患からは免れている可能性がある。したがって、本明細書で開示される化合物を
用いて、癌の治療または癌の発達の阻害が可能である。化合物は、原発性腫瘍の外科的除
去のような従来の腫瘍治療、放射性療法処置による治療、従来の化学療法、またはそれぞ
れの癌もしくはその前駆体に対する任意の他の治療形態の以前または以後に投与されてよ
い。
【0055】
ワクチン等の免疫原性組成物は、1つ以上のポリヌクレオチドおよび非特異的免疫応答
エンハンサーを含んでよく、非特異的免疫応答エンハンサーは、外因性抗原に対する免疫
応答を誘発または向上することができる。任意の好適な免疫応答エンハンサーを本発明の
ワクチンで用いてもよい。例えば、アジュバントを含むことも可能である。大分部のアジ
ュバントは、水酸化アルミニウムまたは石油のような急速な異化作用から抗原を保護する
ように設計された物質と、リピドA、百日咳菌(Bordetella pertuss
is)、または結核菌(Mycobacterium tuberculosis)のよ
うな免疫応答の非特異的刺激因子とを含む。このようなアジュバントは、例えばFreu
nd’s Incomplete AdjuvantおよびComplete Adju
vant(Difco Laboratories、Detroit、Mich.)なら
びにMerck Adjuvant 65(Merck and Company,in
c.、 Rahway、N.J.)として市販されている。
【0056】
薬学的組成物およびワクチンは、上述のような融合タンパク質に組み込まれる(すなわ
ち複数のエピトープを含む単一のポリペプチド)か、または異なるポリペプチド内に存在
する腫瘍抗原の他のエピトープを含んでもよい。
【0057】
本発明の文脈中に用いられるように、異常性細胞増殖により特定される疾患は、例えば
、良性腫瘍および悪性腫瘍、癌腫、肉腫、白血病、リンパ腫、または異形成病変のような
新生物を含んでよい。腫瘍は、頭頸部腫瘍、気道腫瘍、胃腸管腫瘍、泌尿器系腫瘍、生殖
器系腫瘍、内分泌系腫瘍、中枢および末梢神経系腫瘍、皮膚およびその付属器官の腫瘍、
柔部組織および骨の腫瘍、リンパ球新生系および造血系腫瘍、乳癌、結腸直腸癌、肛門性
器癌等を含んでよい。
【0058】
本発明の1つの好適な実施形態では、疾患は肺腫瘍である。本発明の肺腫瘍は、正常制
御細胞または組織の増殖特性と比較して、細胞または組織の異常性増殖特性により特定さ
れる気道の症状を含む。細胞または組織の増殖は、例えば、異常に促進されているか、ま
た異常に調節されている可能性がある。上記に用いられるように異常性調節は、天然に発
生する増殖調節作用に対する細胞または組織の非野生型応答の存在または不在の任意の形
態を含んでよい。細胞または組織の増殖での異常は、例えば、新生物性または過形成性で
あってもよい。本発明の1つの好適な実施形態では、肺腫瘍は、癌または気道の前癌症状
である。
【0059】
本発明の方法の試料は、細胞、組織、または体液を含むことが可能な任意の試料である
。さらに、検出されるマーカー分子を潜在的に含む任意の試料は、本発明の試料であって
もよい。このような試料は、例えば、血液、血漿、血清、塗末標本、洗浄物(wash)
、喀痰、細胞試料および組織試料、またはバイオプシーである。
【0060】
本発明の文脈中に用いられるように、バイオプシーは、例えば、腫瘍の制限試料、内視
鏡手段によって調製される組織試料、またはニードルバイオプシーを含んでよい。さらに
、検出されるマーカー分子を潜在的に含む任意の試料は、本発明の試料であってもよい。
【0061】
本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドのレベルの検出方法は、試料中の非常に
少量の特異的な分子を検出するのに適した任意の方法である。本発明の検出反応は、例え
ば、核酸レベルに関してまたはポリペプチドレベルに関しての検出であってもよい。検出
は、細胞全体でまたは細胞ライセートでのポリペプチドまたは核酸のレベルの検出か、あ
るいは異なる細胞下領域でのポリペプチドまたは核酸のレベルの検出のどちらかであって
もよい。化合物の細胞下分布を測定する方法は、当業者に既知である。本発明の1つの実
施形態では、マーカー分子の検出は、特定のスプライシングバリアントの検出を含んでよ
い。本発明の別の実施形態では、検出方法は、試料中の核酸分子のメチル化の検出を含ん
でよい。
【0062】
本発明の検出反応に適用可能なフォーマットとしては、ウエスタンブロット、サザンブ
ロット、ノーザンブロット等のブロッティング技術でもよい。ブロッティング技術は、通
常の当業者に既知であり、例えば、エレクトロブロット、セミドライブロット、バキュー
ムブロット、またはドットブロットとして実行してよい。さらに、分子を検出するための
免疫学的方法が適用可能であり、例えば、ELISA、RIA、またはラテラルフローア
ッセイ等の免疫沈降検定法または免疫検定法である。
【0063】
核酸のメチル化を検出する方法は、当業者に既知であり、例えば、重亜硫酸ナトリウム
、過マンガン酸塩、またはヒドラジン等を用いた核酸の化学的前処理と、例えば増幅反応
の過程での特異的制限エンドヌクレアーゼまたは特異的プローブによる改変のそれ以後の
検出とを用いる方法を含んでよい。メチル化の検出はさらに、メチル化特異的制限エンド
ヌクレアーゼを用いて実行してもよい。
【0064】
本発明の1つの好適な実施形態では、マーカー分子のレベルの検出を、試料中に存在す
るマーカー分子またはそのフラグメントをコードする核酸のレベルを検出することにより
実行する。核酸分子の検出手段は当業者に既知である。核酸の検出方法は、例えば、相補
的な核酸プローブ、核酸に対して結合特異性を有するタンパク質、または該核酸に特異的
に認識および結合する任意の他の要素に対する検出される分子の結合反応により実行する
。この方法は、例えば染色反応を検出する過程で、直接インサイチュで実行するのと同様
にインビトロで実行することができる。本発明の方法で実行される核酸のレベルに関して
試料中のマーカー分子を検出する別の方法は、核酸の増幅反応であり、例えばPCR、L
CR、またはNASBAのような定量的方法で実行できる。
【0065】
本発明の別の好適な実施形態では、マーカー分子のレベルの検出を、タンパク質の発現
レベルを測定することによって実行する。タンパク質レベルに関するマーカー分子の測定
は、例えば、マーカー分子の検出に特異的な結合因子を含む反応中で実行してもよい。こ
のような結合因子は、例えば、微小の抗原結合エピトープ等を含む抗体および抗原結合フ
ラグメント、ニ機能性ハイブリッド抗体、ペプチド模倣物を含んでよい。結合因子は、例
えばウエスタンブロット、ELISA、ラテラルフローアッセイ、ラテックス凝集、イム
ノクロマトグラフィー・ストリップ、または免疫沈降などの多数の異なる検出技術で用い
てもよい。一般に、結合因子に基づく検出は、例えば免疫細胞化学的染色反応の過程で、
直接インサイチュでの実行と同様に、インビトロで実行してもよい。生化学的、化学的、
物理的、または物理化学的方法等の生物試料溶液中の特定のポリペプチド量を測定するの
に好適な任意の他の方法を、本発明にしたがって用いることができる。
【0066】
本発明の1つの好適な実施形態では、マーカーのレベルは、非腫瘍試験試料と比較して
著しく上昇される。この場合、マーカーは試料中で過剰に発現される。本発明の別の好適
な実施形態では、マーカーのレベルは、非腫瘍試験試料と比較して低下される。第3の実
施形態では、対照試料とは異なり、試験試料中でマーカーの検出可能な発現が全くない。
さらに別の実施形態では、非野生型マーカー分子のレベルが検出可能である。非野生型マ
ーカー分子は、細胞増殖性疾患に冒されない野生型組織中で機能的な構造または配列から
、配列または構造中で離れる任意のマーカー分子を含んでよい。野生型配列または構造は
、正常細胞または組織中最も多数を占めて存在する配列または構造である。本発明の1つ
の好適な実施形態では、マーカー遺伝子の特定のスプライシングバリアントのレベルは、
野生型組織と比較して、試験試料中で変化される。これにより、スプライシングバリアン
ト、新規のスプライシングバリアント、新ペプチドのレベルの変化、異なる遺伝子スプラ
イシングバリアントの割合の変化が生じる。
【0067】
本発明の分子マーカーのレベルの検出は、組み合わせたマーカーの同時検出と同様に、
異なる反応混合物中での単一マーカー分子のレベルの検出であってもよい。組み合わせは
、本明細書中に開示される分子マーカーと、腫瘍の検出に有用なさらに付加したマーカー
分子とを含んでよい。
【0068】
検出は、溶液中で実行してもよく、また固相に固定される試薬を用いて実行してもよい

1つ以上の分子マーカーの検出は、単一の反応混合物または2つ以上の異なる反応混合物
中で実行してもよい。複数のマーカー分子に対する検出反応は、例えば、マルチウエル反
応ベッセル中で同時に実行してもよい。本明細書に開示される肺腫瘍に特有のマーカーは
、このような分子を特異的に認識する試薬を用いて検出可能である。同時に1つ以上のさ
らに別のマーカーを、それらを特異的に認識する試薬を用いて検出することが可能である
。各単一マーカーに対する検出反応は、初めのマーカー分子を認識する検出因子、また好
ましくは他の分子を認識するために用いられる分子を認識する検出因子を用いる1つ以上
の反応を含んでよい。このような反応は、例えば、第1および第2およびさらに別の抗体
の使用を含んでよい。検出反応はさらに、肺腫瘍に関連する本発明のポリペプチドのレベ
ルを示すレポーター反応を含んでよい。レポーター反応は、例えば、有色化合物の産生反
応、生物発光反応、蛍光反応、一般的な放射線放出反応であってもよい。
【0069】
1つの好適な実施形態では、マーカー遺伝子産物を発現する組織の検出を、分子画像法
の形態で実行する。各方法は、通常の当業者に既知である。本発明の文脈中で用いられる
画像法は、例えば、インビボ画像化に好適なMRI、SPECT、PETおよび他の方法
を含んでよい。
【0070】
1つの実施形態では、この方法は、マーカー分子による分子画像法の過程で検出可能な
分子に対する不活性化合物または標識化合物の酵素保存に基づいてもよい。別の実施形態
では、分子画像法は、インビボでマーカー分子に特異的に結合する放射性同位体、金属イ
オン等のインビボ分子画像化に好適な標識を保持する化合物の使用に基づいてもよい。
【0071】
本発明の好適な実施形態では、このような化合物は、非毒性化合物であり、各マーカー
遺伝子を過剰に発現する腫瘍組織に蓄積された標識の検出を実行可能にするタイムスパン
で、ヒト等の生体の循環から排出されてもよい。本発明の別の好適な実施形態では、化合
物を分子画像化するために用い、そのため循環からの除去は分子画像反応を実行するのに
関与しない。これは、例えば循環分子等により産生される低バックグラウンドが原因であ
る。分子画像法に使用される化合物は、例えば診断上有用な他の物質、治療上有用な物質
、キャリア物質等のような任意の他の好適な物質を付加的に含む組成物中で薬理学的に許
容できる形態で投与される。
【0072】
本発明で開示されるマーカー分子を、肺腫瘍等の細胞増殖性疾患での診断、疾患経過の
モニタリング、および予後に用いることができる。
【0073】
本明細書で用いられる本発明の遺伝子発現に関連する疾患の診断は、例えば、異常性増
殖に冒された細胞または組織の検出を含んでよい。1つの好適な実施形態では、診断は、
生体または試料中の疾患の第1の検出を意味する。本発明によれば、腫瘍等の疾患の診断
方法は、疾患初期の早期段階で該疾患を検出するために、予防態様として通常のスクリー
ニング試験に適用可能である。別の好適な実施形態では、診断方法を用いて、初期治療後
に腫瘍の微少の後遺症を測定することが可能である。この観点から、本発明の方法を適用
して、肺腫瘍に特有な本発明のマーカー分子の異常性発現を示す身体試料中の細胞を測定
することが可能である。したがって、冒された細胞の拡散を体液中で検出することが可能
である。
【0074】
本発明の1つの実施形態では、本明細書に開示される方法を、転移を検出および同定す
るために用いてもよい。この方法は、本明細書で開示される検出方法による身体組織また
は器官への転移の検出に適用してもよく、また転移は予後および疾患経過の予測について
の診断となりうる。
【0075】
疾患経過のモニタリングは、異なる時間点でのマーカー分子レベルの測定、異なる時間
点でのレベルの比較、および対象として含んだ時間の期間にわたる疾患の進行に関する診
断の評価を含んでよい。したがって、モニタリングによって、特定の患者に対して、予後
の評価および/または適当な治療の設計が可能になるだろう。
【0076】
本発明に係る肺腫瘍等の細胞増殖性疾患の疾患経過の予後は、1つ以上のマーカー分子
の発現レベルを測定すること、データベース中のそれ以後の研究から得たデータとこのレ
ベルを比較すること、およびこの比較から疾患経過を予測することを含んでよい。好適な
実施形態では、この方法は、1組のマーカー分子の発現の検出を含んでよく、これと異な
るレベルは、疾患経過の異なる段階を特定する可能性がある。本発明のさらに別の実施形
態では、マーカーの組み合わせのレベルの組み合わせは、その後の疾患経過の予後に対し
て指標となる可能性があり、適当な治療の設計に対する基礎を築くことが可能である。
【0077】
本発明はさらに、調査または診断方法等で使用するキットを提供する。このようなキッ
トは、科学的アッセイまたは診断アッセイを実行するための2つ以上の構成要素を含んで
よい。構成要素は、化合物、試薬、コンテナ、および/または装置であってもよい。1つ
の構成要素としては、肺腫瘍に関連するポリペプチドに特異的に結合する抗体またはその
フラグメントでもよい。さらに、キットは、診断アッセイを実行するために必要な試薬、
緩衝液、またはこの技術で既知の他のものを含んでよい。また、調査キットまたは診断キ
ットは、DNAまたはRNAを検出するためのヌクレオチドプローブまたはプライマーを
含んでよい。このようなキットは、この技術で既知の適当な追加試薬または緩衝液を含む
べきである。
【0078】
本発明にもとづくキットは、
(a)分子マーカー分子を検出するための試薬と、
(b)緩衝液、検出マーカー、キャリア物質等、検出反応を実行するために一般に用いら
れる試薬および緩衝液と、
(d)ポジティブコントロール反応を実行するためのマーカー試料とを含む。
【0079】
マーカーを検出するための試薬は、マーカー分子と結合可能な任意の因子を含む。この
ような試薬は、タンパク質、ポリペプチド、核酸、糖タンパク質、プロテオグリカン、多
糖、または脂質を含んでよい。
【0080】
ポジティブコントロールを実行するための試料は、例えば、溶液または塩等の適用可能
な形態の核酸、適用可能な形態のペプチド、組織断片試料、または肺腫瘍に関連する分子
を発現する陽性細胞を含んでよい。
【0081】
本発明の好適な実施形態では、マーカー分子の検出は、ポリペプチドのレベルに基づい
て実行する。この実施形態では、結合因子は、例えば、マーカー分子に特異的な抗体また
はそのフラグメントでもよい。
【0082】
試験キットの別の実施形態では、マーカー分子の検出は、核酸レベルに基づいて実行す
る。本発明のこの実施形態では、検出用試薬は、例えば、該マーカー分子核酸に相補的な
核酸プローブまたはプライマーでもよい。
【0083】
本発明の別の態様は、治療および/またはワクチン接種の方法を提供することである。
本発明に従えば、細胞増殖性疾患の治療は、本発明の肺腫瘍に関連するポリペプチドおよ
び/またはポリヌクレオチドを用いて実行することができる。治療は、例えば、免疫療法
または体細胞遺伝子治療でもよい。
【0084】
本発明の肺腫瘍に関連するポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチドは、本発明に
したがって、細胞増殖性疾患に対するワクチン接種に用いてもよい。本発明のワクチン接
種には、免疫原性化合物に対する免疫応答を促進して、その結果該免疫原性化合物に対し
て個体を免疫化する用途のために、該免疫原性化合物を該個体に投与することを含んでよ
い。免疫応答の促進は、細胞障害性T細胞の促進と同様に、該化合物に対する抗体の産生
の誘導を含んでよい。ワクチン接種用途として、本発明のポリペプチド、核酸、および結
合因子を生理学的に許容できる形態で投与してもよい。 個体に投与される組成物は、1
つ以上の抗原性化合物、生理学的に許容できるキャリア物質もしくは緩衝溶液、免疫促進
剤、および/またはアジュバントを含んでよい。アジュバントは、例えば、フロイントの
不完全アジュバントもしくはフロイントの完全アジュバントまたは当業者に既知の他のア
ジュバントを含んでよい。
【0085】
組成物は、静脈内、皮下、筋肉内等の任意の適用可能な方法で投与することが可能であ
る。組成物の投与量は、ワクチン接種の特定の症例および用途に依存する。これは、年齢
、体重、性別等の治療される個体によるパラメーターに適用されなければならない。さら
に、誘発される免疫応答の種類を考慮に入れなければならない。一般に、100μg〜1
gの本発明のポリペプチドまたは本発明の核酸を含む10〜1012MOIの組換え核
酸を、インサイチュで発現されることが可能な形態で、個体が受ける場合が好適である。
【0086】
ワクチン接種用途に対する個体は、本発明の肺腫瘍に関連するポリペプチドおよび/ポ
リヌクレオチドを含むとともに細胞増殖性疾患に冒される可能性のある任意の生体でよい

【0087】
個体のワクチン接種は、例えば、細胞増殖性疾患に関連するマーカー分子の変化された
非野生型配列または構造の場合に有利である。
【0088】
本明細書に開示されるポリペプチドを、癌の治療のために養子免疫療法で使用してもよ
い。養子免疫療法は、広くは、能動免疫療法または受動免疫療法のどちらかに分類される
であろう。能動免疫療法では、治療は、内在性宿主免疫系のインビボの促進に依存し、免
疫応答を改変する因子(例えば、腫瘍ワクチン、細菌性アジュバント、および/またはサ
イトカイン)を投与することで腫瘍に対して反応する。
【0089】
受動免疫療法では、治療は、直接または間接に抗腫瘍作用を仲介することができるとと
もに必ずしもインタクトな宿主免疫系に依存しない確立された腫瘍免疫反応性を用いた生
物試薬の送達(例えばエフェクター細胞または抗体)を含む。エフェクター細胞の例とし
ては、開示される抗原を発現するTリンパ球(例えば、CD8+細胞障害性Tリンパ球、
CD4+Tヘルパー腫瘍湿潤リンパ球)、キラー細胞(例えば、ナチュラルキラー細胞、
リンパ球活性化キラー細胞)、B細胞、または抗原提示細胞(例えば樹状細胞およびマク
ロファージ)が挙げられる。本明細書に開示されるポリペプチドを用いて、受動免疫療法
に関して、抗体または抗イディオタイプ抗体を生成してもよい(米国特許第4,918,
164号記載)。
【0090】
養子免疫療法のための適当数のT細胞を産生する主流の方法は、インビトロで免疫T細
胞を増殖させることである。インビボでの抗原認識の保持を用いて単一の抗原特異的T細
胞を数十億数まで増殖させるための培養条件は、この技術で周知である。このようなイン
ビトロ培養条件では、多くの場合はIL−2等のサイトカインおよび非分裂性フィーダー
細胞の存在下で、抗原を用いた断続的な促進を通常利用する。上述のように、本明細書に
記載される免疫反応性ポリペプチドを用いて、免疫療法に十分な数の細胞を生成するため
に抗原特異的T細胞培養物を迅速に増殖させてもよい。具体的には、樹状細胞、マクロフ
ァージ、またはB細胞のような抗原提示細胞を、この技術に周知の標準的技術を用いて、
免疫反応性ポリペプチドでパルスするか、または核酸配列でトランスフェクションしても
よい。例えば、抗原提示細胞を核酸配列でトランスフェクションすることが可能であり、
該配列は、発現の増加に適当なプロモーター領域を含み、組換えウイルスまたは他の発現
系の部分として発現されることができる。治療に効果的な培養されるT細胞としては、こ
の培養T細胞が増殖し、広範囲に分布して、インビボで長期間生存することが可能でなけ
ればならない。IL−2を添加した抗原で刺激を繰り返すことにより、培養T細胞が誘導
されてインビボで増殖するとともに相当数が長期間生存できることが研究により証明され
た(例えば、Cheever, Mら、“Therapy With Cultured
T Cells: Principles Revisited,” Immunol
ogical Reviews、157:177、1997年を参照せよ)。
【0091】
本明細書に開示されるポリペプチドを利用して、腫瘍反応性T細胞を生成および/また
は単離してもよく、これは、その後、患者に投与されることができる。1つの技術では、
抗原特異的T細胞系は、開示されるポリペプチドの免疫原性部分に対応する短ペプチドを
用いたインビボ免疫化により生成してもよい。得られた抗原特異的CD8CTLクロー
ンを患者から単離して、標準の組織培養技術を用いて増殖させ、患者に戻すことが可能で
ある。
【0092】
また、本発明のポリペプチドの免疫原性部分に対応するペプチドを用いて、選択的in
vitro刺激および自己由来T細胞の増殖により腫瘍反応性T細胞サブセットを生成
し、抗原特異的T細胞を提供することも可能である。この抗原特異的T細胞を、その後、
例えばChangら(Crit.Rev.Oncol.Hematol.,22(3),
213,1996年)によって記載されるように、患者に移送してもよい。セルプロ社(
CellPro Incorporated)(Bothell,Wash.)のセプレ
ート(CEPRATE)TMシステム等の市販の細胞分離システムを用いて、T細胞等の
免疫系の細胞を患者の末梢血から単離してもよい(米国特許第5,240,856号、米
国特許第5,215,926号、WO 89/06280、WO 91/16116、お
よびWO 92/07243を参照せよ)。分離した細胞を、ミクロスフェア等の送達手
段内に含有される1つ以上の免疫反応性ポリペプチドで刺激して、抗原特異的T細胞を提
供する。その後、抗原特異的T細胞の集まりを、標準技術を用いて増殖させ、この細胞を
患者に再投与する。
【0093】
別の実施形態では、養子免疫療法で使用するために、ポリペプチドに特異的なT細胞お
よび/または抗体受容体をクローニング、増殖、および他のベクターまたはエフェクター
細胞に移入できる。
【0094】
さらに別の実施形態では、共通遺伝子型または自己由来型の樹状細胞を、本明細書に開
示されるポリペプチドの少なくとも1つの免疫原性部分に対応するペプチドを用いてパル
スしてもよい。得られた抗原特異的樹状細胞を患者に移入するか、またこれを用いてT細
胞を刺激し、抗原特異的T細胞を提供し、その後この抗原特異的T細胞を患者に投与して
もよい。抗原特異的T細胞を生成するようにペプチドでパルスした樹上細胞の使用と、マ
ウスモデル中の腫瘍を除去するための該抗原特異的T細胞のその後の使用とは、Chee
verら(Immunological Reviews、157:177、1997年
)により実施されてきた。
【0095】
また、開示される核酸を発現するベクターを、患者から採取した幹細胞に導入して、自
己由来移植として同患者に戻すためにin vitroでクローン的に増殖させてもよい

【0096】
本発明のモノクローナル抗体を、腫瘍を収縮または除去するために、治療用化合物とし
て用いてもよい。抗体は、それ自体で(例えば、転移を阻害するために)、または1つ以
上の治療用因子と結合させて用いてもよい。これに関する好適な因子としては、放射性核
種、分化誘導物質、薬物、毒素、およびその派生物が挙げられる。好適な放射性核種とし
ては、90Y、123I、125I、131I、186Re、188Re、211At、
および212Biが挙げられる。好適な薬物として、メトトレキセートとピリミジンおよ
びプリン類似物とが挙げられる。好適な分化誘導物質としては、ホルボール、エステル、
および酪酸が挙げられる。好適な毒素としては、リシン、アブリン、ジフテリア毒素、コ
レラ毒素、ゲロニン、シュードモナス(Pseudomonas)外毒素、赤痢菌(Sh
igella)毒素、およびアメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質が挙げられる。
【0097】
本発明の1つの実施形態では、異常性細胞増殖により特定される障害の治療は、アンチ
センス構築物またはリボザイムの投与を含んでよい。リボザイムまたはアンチセンス構築
物の投与方法は、当業者に既知である。投与は、裸核酸の投与として、またはin si
tuでの関連する活性産物の発現に好適な核酸の投与として行ってもよい。
【0098】
本発明の別の実施形態では、障害の治療は、本発明の肺腫瘍に関連する分子に向けられ
る結合因子の投与を含んでよい。このような結合因子は、例えば、毒素、酵素、放射性同
位体等の他の化合物と結合してもよい。
【0099】
本発明の別の実施形態では、本発明の肺腫瘍に関連する分子の異常性発現に関連する障
害の治療は、本発明の肺腫瘍に関連する分子のアンタゴニストまたはアゴニストの投与、
本発明の肺腫瘍に関連するポリペプチドの結合パートナーの投与、本発明の肺腫瘍に関連
するポリペプチド発現の阻害因子またはエンハンサーの投与または本発明の肺腫瘍に関連
するポリペプチドの活性を測定することを含むアッセイによって同定可能な薬物の投与を
含んでよい。このような物質の同定方法は当業者に公知である。
【0100】
本発明の肺腫瘍に関連するポリペプチド(または関連するポリペプチド)および/また
はポリヌクレオチドの結合パートナーの同定方法の例には、
(a)本発明の肺腫瘍に関連するポリペプチドを、スクリーニングされる化合物と接触
させるステップと、
(b)化合物がポリペプチドの活性に作用するかどうかを測定するステップとを含んで
よい。
【0101】
本発明の肺腫瘍に関連するポリペプチドを用いて、本発明の肺腫瘍に関連するポリペプ
チドに結合するタンパク質もしくは他の化合物、または本発明の肺腫瘍に関連するポリペ
プチドが結合するタンパク質もしくは他の化合物をスクリーニングしてもよい。本発明の
肺腫瘍に関連するポリペプチドおよび分子の結合により、本発明の肺腫瘍に関連するポリ
ペプチドもしくは結合される分子の活性を、活性化(アゴニスト)、増加、阻害(アンタ
ゴニスト)、または減少することが可能である。このような分子の例としては、抗体、オ
リゴヌクレオチド、タンパク質(例えば受容体)、または小分子が挙げられる。
【0102】
好ましくは、分子は、本発明の肺腫瘍に関連するポリペプチドの天然のリガンド(例え
ばリガンドのフラグメント)、天然物質、リガンド、または構造もしくは機能性擬態に非
常に関連している(例えば、Coligan,Current Protocols i
n Immunology 1(2)(1991年);Chapter 5を参照せよ)
。同様に、分子は、本発明の肺腫瘍に関連するポリペプチドが結合する天然の受容体、ま
たは少なくとも本発明の肺腫瘍に関連するポリペプチド(例えば活性部位)により結合可
能な受容体のフラグメントにかなり関連させることができる。どちらの場合でも、既知の
技術を用いて、分子を合理的に設計することができる。
【0103】
好ましくは、このような分子のスクリーニングは、分泌タンパク質としてまたは細胞膜
上で、本発明の肺腫瘍に関連するポリペプチドを発現する適当な細胞を産生することを含
む。好適な細胞としては、哺乳類、酵母、ショウジョバエ、または大腸菌(E.Coli
)から得た細胞が挙げられる。その後、本発明の肺腫瘍に関連するポリペプチドを発現す
る細胞(または発現されるポリペプチドを含む細胞膜)を、好ましくは、分子を潜在的に
含む試験化合物に接触させ、本発明の肺腫瘍に関連するポリペプチドの結合、活性促進、
または活性阻害をモニタリングする。
【0104】
アッセイにより、本発明の肺腫瘍に関連するポリペプチドへの候補化合物の結合を簡易
に試験することができ、結合は、標識により、または標識した拮抗因子を用いた拮抗を含
むアッセイで検出される。さらに、アッセイにより、候補化合物が本発明の肺腫瘍に関連
するポリペプチドに結合することにより生成されるシグナルを生じるかどうかを試験する
ことが可能である。
【0105】
また、細胞を含まない調製物、固相に固定したポリペプチド/分子、化学ライブラリー
、または天然産物混合物を用いて、アッセイを実行できる。アッセイには、候補化合物を
、本発明の肺腫瘍に関連するポリペプチドを含む溶液と混和するステップと、本発明の肺
腫瘍に関連するポリペプチド/分子活性または結合を測定するステップと、本発明の肺腫
瘍に関連するポリペプチド/分子活性または結合を標準と比較するステップとを簡便に含
んでよい。
【0106】
好ましくは、ELISAアッセイにより、モノクローナルまたはポリクローナル抗体を
用いて、試料(例えば生物学的試料)中の本発明の肺腫瘍に関連するポリペプチドレベル
または活性を測定できる。本発明の肺腫瘍に関連するポリペプチドに直接もしくは間接に
結合することによって、または基質に対して本発明の肺腫瘍に関連するポリペプチドと拮
抗することによって、抗体は、本発明の肺腫瘍に関連するポリペプチドレベルまたは活性
を測定することができる。診断用または予後用マーカーとして、上記アッセイの全てを用
いることができる。これらのアッセイを用いて発見された分子を用いて、本発明の肺腫瘍
に関連する分子を活性化または阻害することによって、疾患を治療すること、または患者
に特定の成果をもたらす(例えば、上皮腫瘍の除去または腫瘍増殖の進行の停止)ことが
できる。さらに、アッセイにより、好ましく操作された細胞または組織から、本発明の肺
腫瘍に関連するポリペプチドの産生を阻害または向上する可能性のある因子を発見するこ
とができる。
【0107】
そのため、本発明は、本発明の肺腫瘍に関連するポリペプチドに結合する化合物を同定
する方法を含み、
(a)本発明のポリペプチド(本発明の肺腫瘍に関連するポリペプチド)に対する候補
結合化合物をインキュベートするステップと、
(b)結合が起きたかどうかを測定するステップとを含む。
【0108】
さらに、本発明は、本発明の肺腫瘍に関連するポリペプチドの活性化因子/アゴニスト
または阻害因子/アンタゴニストを同定する方法を含み、
(a)本発明のポリペプチドとして候補化合物をインキュベートするステップと、
(b)生物活性を検定するステップと、
(c)本発明のポリペプチドの生物活性が変化されたかどうかを測定するステップとを
含む。
【0109】
別の実施形態では、本発明は、異常性細胞増殖により特定される障害の治療用の薬物候
補を同定および入手する方法に関し、
(a)細胞増殖の変化される調節および変化される細胞分化に応じて検出可能なシグナ
ルを提示できる化合物の存在下で、本発明の肺腫瘍に関連するポリペプチドまたは該ポリ
ペプチドを発現する細胞を、タンパク質分解を可能にする条件下でスクリーニングされる
該薬物候補に接触させるステップと、
(b)タンパク質分解から生成されたシグナルの有無またはシグナルの増加を検出する
ステップとを含み、このシグナルの有無は、推定上の薬物の示唆となる。
【0110】
動物、単離した細胞、または単離した細胞系を用いる実験を使用して、本発明の肺腫瘍
に関連するポリペプチド作用に依存する細胞または組織の増殖性挙動を検査してもよい。
同様の方法を、細胞分化の研究のために利用することが可能である。
【0111】
薬物候補は、単一の化合物または複数の化合物でもよい。本発明の方法中の用語「複数
の化合物」とは、同一であるかまたは同一でない複数の物質として理解される。
【0112】
このような化合物または複数の化合物は、化学的に合成されるか、または微生物学的に
産生されてもよく、および/または例えば植物、動物、微生物から得られる細胞抽出物等
の試料に含まれてもよい。さらに、該化合物(または複数の化合物)は、当該分野で公知
のものでよいが、これまでは本発明の肺腫瘍に関連するポリペプチドを抑制または活性化
できることが知られていない。反応混合物は、細胞を含まない抽出物でもよく、あるいは
細胞または組織培養物を含んでもよい。本発明の方法に好適な機構は、当業者に公知であ
り、例えば、Albertsら、Molecular Biology of the
Cell, third edition(1994年)および付随する実施例に一般に
記載されている。複数の化合物は、例えば、反応混合物、培養液に添加されてもよく、細
胞に注入されてもよく、またはトランスジェニック動物に適用してもよい。本発明の方法
に利用可能な細胞または組織は、好ましくは、本明細書の実施形態で先述した本発明の宿
主細胞、哺乳類細胞、または非ヒトトランスジェニック動物である。
【0113】
1つの化合物または複数の化合物を含む試料が本発明の方法で同定される場合、本発明
の肺腫瘍に関連するポリペプチドを抑制または活性化できる化合物を含むとして同定され
た元の試料から化合物を単離することが可能である。また、例えば元の試料が複数の異な
る化合物から構成されている場合、元の試料を細分して、試料毎の異なる物質の数を減ら
すとともに、元の試料を細分したものを用いて本方法を繰り返すことができる。試料の複
雑性によって、上記ステップを複数回実行することができ、好ましくは、本発明の方法に
したがって同定された試料が、限られた数または1つのみの物質のみを含むまで実行する
。好ましくは、該試料は、同様の化学的および/物理的特性の物質を含み、最も好ましく
は、該物質は同一である。
【0114】
巨大ライブラリーを産生およびスクリーニングして、標的に対して特異的親和性を有す
る化合物を同定するための複数の方法が当業者に公知である。このような方法は、ファー
ジ提示法を含み、この方法では、ランダム化されたペプチドがファージから提示され、固
定される受容体に対してアフィニティークロマトグラフィーによりスクリーニングされる
(例えば、WO 91/17271、WO 92/01047、US−A−5,223,
409号を参照せよ)。別の手法では、フォトリソグラフィーを用いて、チップに固定し
たポリマーの組み合わせライブラリーを合成する(例えばUS−A−5,143,854
、WO 90/15070およびWO 92/10092を参照せよ)。固定したポリマ
ーを標識した受容体と接触させ、標識に対してスキャンして、受容体に結合しているポリ
マーを同定する。本発明のポリペプチドの結合リガンドと、可能性のある阻害因子および
活性因子を同定するために用いることができる連続したセルロース膜支持体上のペプチド
ライブラリーの合成およびスクリーニングは、例えばKramer、Methods M
ol.Biol.87(1998年)、25−39に記載されている。この方法は、例え
ば、本発明のポリペプチド中の結合部位および認識モチーフを測定するために用いること
もできる。同様の方法では、DnaKシャペロンの基質特異性が測定され、ヒトインター
ロイキン−6とその受容体との間の接触部位が測定された(Rudiger,EMBO
J.16(1997年),1501−1507およびWeiergraber,FEBS
Lett.379(1996年),122−126をそれぞれ参照せよ)。さらに、上
記の方法は、本発明のポリペプチド由来の結合スーパートープ(supertope)を
構築するために用いることができる。抗p24(HIV−1)モノクローナル抗体のペプ
チド抗原に対して、同様の手法が成功して記載された(Kramer,Cell 91(
1997年),799−809を参照せよ)。クラスター化されたアミノ酸ペプチドライ
ブラリーを用いたペプチド・抗体相互作用のフィンガープリント解析への一般的な道筋が
Kramer,Mol.Immunol.32(1995年),459−465に記載さ
れている。さらに、本発明の肺腫瘍に関連するポリペプチドのアンタゴニストを、Dor
ing,Mol,Immunol.31(1994年),1059−1067に記載の方
法にしたがって、本発明のポリペプチドと特異的に反応するモノクローナル抗体から生じ
させて同定することができる。
【0115】
より最近では、所望の特性、特にポリペプチドまたはその細胞受容体にアゴナイズする
能力、結合する能力、またはアンタゴナイズする能力を有する化合物に対して複合体のラ
イブラリーをスクリーニングするための別の方法がWO 98/25146に記載された
。このようなライブラリー中の複合体は、試験下での化合物、化合物合成の少なくとも1
つのステップを記録するタグ、およびレポーター分子による改変を受けやすいテザーを含
む。テザーの改変を用いて、複合体が所望の特性を有する化合物を含むことを示す。タグ
が読み込まれて、このような化合物の合成時に少なくとも1つのステップを明らかにする
ことができる。本発明のポリペプチドまたは該分子をコードする核酸分子と相互作用する
化合物を同定するための他の方法としては、例えば、フィルター結合アッセイ、または例
えばBlAcore装置(Pharmacia)を用いる相互作用の「リアルタイム」測
定と同様に、ファージ提示系を用いたin vitroのスクリーニングがある。
【0116】
本発明にしたがってこれらの方法を全て用いて、本発明の肺腫瘍に関連するポリペプチ
ドまたは関連するポリペプチドの活性化因子/アゴニストおよび阻害因子/アンタゴニス
トを同定することができる。
【0117】
このような活性化因子または阻害因子の基本構造に対する様々なソースは、利用される
ことができ、かつ例えば本発明のポリペプチドの擬態類似物を含むことができる。本発明
のポリペプチドの擬態類似物または生物学的に活性なそのフラグメントを、例えば、立体
異性体、すなわちD−アミノ酸を用いた生物活性に不可欠であると考えられるアミノ酸の
置換によって生成できる(例えば、Tsukida,J.Med.Chem.40(19
97年),3534−3541を参照せよ)。さらに、生物学的に活性な類似物の設計用
にフラグメントを用いる場合、擬態前駆体構成要素をペプチドに組み込んで、元のポリペ
プチド部分の除去の際に消去された可能性のある少なくともいくつかのコンフォーメーシ
ョン特性を再構築する(例えば、Nachman,Regul.Pept.57(199
5年),359−370を参照せよ)。さらに、本発明の肺腫瘍に関連するポリペプチド
を用いて、天然のポリペプチドと同程度効果的に基質、結合パートナーまたは本発明のポ
リペプチドの受容体にリガンドとして結合するか、あるいはリガンドとして機能できる合
成化学ペプチド類似体を同定することができる(例えば、Engleman,J.Cli
n.Invest.99(1997),2284−2292を参照せよ)。例えば、本発
明のポリペプチドの構造モチーフの折り畳みシミュレーションおよびコンピューター再設
計は、適当なコンピュータープログラムを用いて実行できる(Olszewski,Pr
oteins 25 (1996年),286−299;Hoffman,Comput
.Appl.Biosci.11(1995年),675−679)。タンパク質折り畳
みのコンピューターモデル化は、詳細なペプチドおよびタンパク質モデルのコンフォメー
ションおよびエネルギー解析のために用いることができる(Monge,J.Mol.B
iol.247(1995年),995−1012;Renouf,Adv.Exp.M
ed.Biol.376(1995年),37−45)。具体的には、相補的なペプチド
配列に関するコンピューターアシスタントサーチによって、本発明の肺腫瘍に関連するポ
リペプチドおよび可能性のあるその受容体、そのリガンド、または相互作用する他のタン
パク質の相互作用部位の同定するために、適当なプログラムを用いることができる(Fa
ssina,Immunomethods 5(1994年),114−120)。さら
に、タンパク質およびペプチドを設計するための好適なコンピューターシステムは、例え
ば、Berry,Biochem.Soc.Trans.22(1994年),1033
−1036;Wodak,Ann.N.Y.Acad.Sci.501(1987年),
1−13;Pabo,Biochemistry 25(1986年),5987−59
91中の先行技術に記載されている。上記コンピューター解析により得られた結果は、例
えば本発明のタンパク質またはそのフラグメントのペプチド類似体の調製のために用いる
ことができる。タンパク質の天然のアミノ酸配列に類似しているこのような擬似ペプチド
は、非常に効率的に親タンパク質を模倣することが可能である(Benkirane,J
.Biol.Chem.271(1996年),33218−33224)。例えば、本
発明のタンパク質またはそのフラグメントへの、簡便に利用できるアキラルなアミノ酸残
基の組み込みによって、脂肪族鎖のポリメチレンユニットによるアミド結合の置換が生じ
、その結果、ペプチド類似体を構築するのに都合よい方策が提供される(Banerje
e,Biopolymers 39(1996年),769−777)。他のシステムで
の小ペプチドホルモンの高活性ペプチド類似体は、先行技術に記載されている(Zhan
g,Biochem.Biophys.Res.Commun.224(1996年),
327−331)。連続するアミドのアルキル化を介したペプチド類似体組み合わせライ
ブラリーの合成によって、さらにその結合特性および免疫学的特性に関して得られた化合
物を試験することによって、本発明のタンパク質の適当なペプチド類似体を同定すること
もできる。ペプチド類似体組み合わせライブラリーの生成および使用方法は、例えばOs
tresh,Methods in Enzymology 267(1996年)、2
20−234およびDorner,Bioorg.Med.Chem.4(1996年)
,709−715中の先行技術に記載されている。さらに、本発明のポリペプチドの三次
元構造および/または結晶学的構造は、本発明のポリペプチドの生物活性のペプチド類似
阻害因子の設計のために用いることができる(Rose,Biochemistry 3
5 (1996年),12933−12944;Rutenber, Bioorg.M
ed.Chem.4(1996年),1545−1558)。
【0118】
ネイティブな生物学的ポリペプチドの活性を模倣する低分子量合成分子の構造に基づく
設計および合成はさらに、例えばDowd,Nature Biotechnol.16
(1998年),190−195;Kieber−Emmons,Current Op
inion Biotechnol.8(1997年),435−441;Moore,
Proc.West Pharmacol.Soc.40(1997年),115−11
9;Mathews,Proc.West Pharmacol.Soc.40(199
7年),121−125;Mukhija,European J.Biochem.2
54(1998年),433−438に記載されている。
【0119】
例えば、本発明の肺腫瘍に関連するポリペプチドまたは関連するポリペプチドに対する
基質またはリガンドとして作用できる小有機化合物の類似体を設計、合成、および評価す
ることが可能であることも当業者には周知である。例えば、ハパロシンのD−グルコース
類似体は、細胞障害性で多剤耐性補助に関連するタンパク質をアンタゴナイズする際、ハ
パロシンと同様の効率性を示すということが記載されている(Dinh,J.Med.C
hem.41(1998年),981−987を参照せよ)。
【0120】
本発明の核酸分子は、活性因子および阻害因子に対する標的としての役割も果たすこと
ができる。活性因子は、例えば、本発明の肺腫瘍に関連するポリペプチドをコードする遺
伝子のmRNAに結合するタンパク質を含んでよく、これにより、例えばTatタンパク
質がHIV−RNAに作用するのと同様の方法で、mRNAのネイティブなコンフォメー
ションを安定させ、転写および/または翻訳を促進する。さらに、定義されたまたは未定
義の標的RNA分子の構造を模倣するRNAフラグメント等の核酸分子を同定する方法が
文献に記載されており、この標的RNA分子に化合物が細胞内部で結合し、細胞増殖の遅
延または細胞死を生じる(例えばWO 98/18947および本明細書で参照している
参考文献を参照せよ)。これらの核酸分子は、製薬および/または農業対象の未知の化合
物を同定するため、あるいは疾患の治療に用いる未知のRNA標的を同定するために用い
ることができる。これらの方法および組成物は、新規の抗生物質、静菌剤、またはその改
変をスクリーニングする際に用いることができ、また核酸分子にコードされるタンパク質
の発現レベルを変化させるのに有用な化合物を同定するために用いることができる。また
、例えば、結合部位を模倣するRNAフラグメントのコンフォメーション構造を合理的な
薬物設計で利用して、公知の抗生物質を改変し、より強力に標的に結合させることができ
る。1つのこのような方法論としては、核磁気共鳴(NMR)があり、薬物およびRNA
コンフォメーション構造を同定するのに有用である。なお、他の方法としては、例えば、
WO 95/35367およびUS−A−5,322,933に記載されている薬物設計
方法があり、RNAフラグメントの結晶構造を推論することができ、コンピュータープロ
グラムを用いて抗生物質として作用できる新規の結合化合物を設計する。
【0121】
いくつかの遺伝子変化により、タンパク質コンフォメーションの変化された状態が導か
れる。例えば、いくつかの突然変異の本発明の肺腫瘍に関連するポリペプチドは、それら
のタンパク質分解能を低くする三次構造を持つ可能性がある。突然変異タンパク質の正常
のまたは調節されたコンフォメーションの修復は、非常に困難であるが、これら分子の欠
損を修正する最も優れたかつ特異な手段である。薬理学的操作はしたがって、本発明の肺
腫瘍に関連するポリペプチドの野生型コンフォメーションの修復を意図してもよい。した
がって、本発明の核酸分子およびコードされるポリペプチドを用いて、本発明の肺腫瘍に
関連するポリペプチドまたは関連するポリペプチドの野生型機能を活性化できる分子の設
計および/または同定をしてもよい。
【0122】
本発明の方法にしたがって試験および同定することができる化合物は、例えばcDNA
発現ライブラリーのような発現ライブラリー、ペプチド、タンパク質、核酸、抗体、小有
機化合物、ホルモン、ペプチド類似体、PNA等であってもよい(Milner,Nat
ure Medicine 1(1995年),879−880;Hupp, Cell
83(1995年),237−245;Gibbs,Cell 79(1994年),
193−198および参考文献、上掲)。さらに、本発明の肺腫瘍に関連するポリペプチ
ドの推定上の調節因子をコードする遺伝子および/または本発明の肺腫瘍に関連するポリ
ペプチド上流もしくは下流でその作用を示す遺伝子を、例えば、当該分野で公知である遺
伝子標的ベクター等を利用した挿入突然変異生成を用いて、同定することが可能である。
このような化合物は、公知の阻害因子または活性化因子の機能性派生物または類似体であ
ってもよい。このような有用な化合物は、例えば、本発明の肺腫瘍に関連するポリペプチ
ドまたはそれをコードする遺伝子の調節配列に結合するトランス作用因子であることも可
能である。トランス作用因子の同定は、当該分野で標準の方法を用いて実行することがで
きる(例えば、Sambrook、上掲、およびAusubel、上掲)。タンパク質が
タンパク質自体または調節配列に結合したかどうかを測定するために、標準的なネイティ
ブゲルシフトアッセイを実行することができる。タンパク質または調節配列に結合するト
ランス作用因子を同定するために、タンパク質または調節配列を、標準的なタンパク質精
製法で親和性試薬として、または発現ライブラリーのスクリーニング用プローブとして用
いることができる。上述の本発明の肺腫瘍に関連するポリペプチドと相互作用するポリペ
プチドをコードする核酸分子の同定は、例えば、いわゆる酵母の「ツーハイブリッド系」
を用いて、Scofield(Science 274(1996年),2063−20
65)に記載のように達成することもできる。この系では、本発明の核酸分子にコードさ
れるポリペプチドまたはその小部分は、GAL4転写因子のDNA結合ドメインに結合す
る。この融合ポリペプチドを発現し、かつGAL4の転写因子に認識される適当なプロモ
ーターに促進されるlacZレポーター遺伝子を含む酵母株は、活性化ドメインに融合さ
れる植物タンパク質またはそのペプチドを発現するであろうcDNAライブラリーで形質
転換される。したがって、cDNAの1つにコードされるペプチドと、本発明の肺腫瘍に
関連するポリペプチドのペプチドを含む融合ペプチドとが相互作用できる場合、複合体は
、レポーター遺伝子の発現を導くことができる。この方法では、本発明の核酸分子および
コードされるペプチドを用いて、本発明の肺腫瘍に関連するタンパク質と相互作用するペ
プチドおよびタンパク質を同定することができる。本発明の肺腫瘍に関連するタンパク質
の結合の阻害因子を同定するために、この系および同様の系がその後さらに利用されるこ
とは、当業者には明白である。
【0123】
トランス作用因子が同定されると、例えば本発明の肺腫瘍に関連するポリペプチドへの
その結合の調節および発現の調節が、本発明のタンパク質へのトランス作用因子の結合に
対する阻害因子のスクリーニングで開始して追跡され得る。その後、例えば発現ベクター
中でトランス作用因子(またはその阻害因子)またはそれをコードする遺伝子を適用する
ことによって、本発明の肺腫瘍に関連するタンパク質の活性化または抑制を動物中で達成
することが可能である。さらに、トランス作用因子の活性形態が二量体である場合、その
活性を阻害するために、トランス作用因子の優勢のネガティブな突然変異体が作られる可
能性がある。さらに、トランス作用因子の同定の際、本発明の肺腫瘍に関連するポリペプ
チドの制御に関与する遺伝子の活性に至る経路(シグナル転換)または抑制に至る経路で
、他の構成要素がその後同定され得る。その後、動物中のタンパク質分解の代謝を調節す
るためのさらなる薬物および方法を開発するために、このような構成要素の活性の調節を
追跡することができる。したがって、本発明は、本発明の肺腫瘍に関連するポリペプチド
または本発明の肺腫瘍に関連するポリペプチドの活性化因子もしくは阻害因子の同定のた
めの、上記に定義したようなツーハイブリッド系の使用にも関する。
【0124】
上記の方法により単離される化合物は、類似化合物の開発用のリード化合物としても機
能する。類似体は、リード化合物と実質的に同様の方法で、基調となる官能基が本発明の
肺腫瘍に関連するポリペプチドまたは可能性のあるその受容体に提示されるのを可能にす
る安定した電子配置および分子コンフォメーションを有するべきである。特に、類似化合
物は、結合領域に同等の空間的電子特性を有してはいるが、一般に約2kD未満、好まし
くは1kD未満の分子量を有する、リード化合物より小さい分子であり得る。類似化合物
の同定は、自己無撞着の場(SCF)解析、配置間相互作用(CI)解析、および通常形
態の力学的解析等の技術の使用を介して実行できる。これらの技術を達成するために、コ
ンピュータプログラムが利用できる。すなわち、例えばRein, Computer−
Assisted Modeling of Receptor−Ligand In
teractions(Alan Liss、New York、1989年)である。
化学派生物および類似物の調製方法は、当業者に周知であり、例えばBeilstein
, Handbook of Organic Chemistry, Springe
r edition New York inc., 175 Fifth Aven
ue, New York, N.Y. 10010 U.S.A.およびOrgani
c Synthesis, Wiley, New York, USAに記載されてい
る。さらに、該派生物および類似物は、この技術に既知である方法にしたがって、その作
用を試験できる(上掲)。さらに、ペプチド類似体および/または適当な派生物および類
似体のコンピューター補助の設計を、例えば上述の方法にしたがって用いることができる

【0125】
本発明の上記方法の好適な実施形態では、該細胞は、本発明の細胞、または本発明の方
法により得られる細胞であり、あるいは上記トランスジェニック非ヒト動物に含まれる。
【0126】
上記の化合物が同定および入手されると、この化合物は、治療的に許容できる形態で好
適に提供される。
【0127】
本発明は、癌等の異常性細胞増殖により特定される疾患の検出および治療方法を提供す
る。1つの態様では、本発明は、生物学的試料中での、本発明の肺腫瘍に関連する遺伝子
の発現の有無および/またはレベルの測定に基づいて、癌等の異常性細胞増殖により特定
される疾患の検出方法を提供する。第2の態様では、本発明は、本発明の肺腫瘍に関連す
る遺伝産物を治療上活性な因子として利用することによって、癌等の異常性細胞増殖によ
り特定される疾患の治療方法を提供する。本発明は、本発明の肺腫瘍に関連するポリペプ
チドの活性の調節に基づく治療方法も提供する。本発明の1つの態様では、患者試料中で
の本発明の肺腫瘍に関連する遺伝子産物の検出に基づいて合理的に腫瘍を管理する方法と
、該遺伝子産物の検出された過剰発現と相関する治療を特定の目的に合わせる(tail
oring)方法とを提供する。さらに、本発明は、本発明の肺腫瘍に関連する遺伝子の
過剰発現の有無および/またはレベルの検出に関与する反応を実行するための調査または
診断試験キットを提供する。最後に、本発明は、本発明の疾患治療に適用可能な医薬組成
物に関する。
【0128】
以下の実施例は、例示のみを目的として示し、ここに開示された本発明の範囲の限定を
意図したものではない。
【実施例】
【0129】
実施例1: 結腸癌、胃癌、肺小細胞癌、および肺腺癌を含む腫瘍試料における、LU
MA1発現のリアルタイムRT−PCR分析
テストされた肺腺癌の60%で、LUMA1転写産物のアップレギュレーションが検出
されたが、結腸癌、胃癌、および小細胞肺癌の試料では、アップレギュレーションが全く
見られなかった。
【0130】
1.1. 理論的基礎
製造元のマニュアルに従い、PCR生成物の指数増殖に伴うシグナルの増大が検出され
始める閾値サイクル数から、定量的な値を得た(PEバイオシステムズ(Biosyst
ems)の分析ソフトウェアを使用)。
【0131】
各リアルタイムPCRに、オリゴdTプライマーでプライミングされた全RNAによる
cDNA 6.25ngを加えた。内在性RNAコントロールとして、ヒト・ベータアク
チン(ACTB)をコードするベータアクチン遺伝子(ACTBアクチン、プライマーA
ctin1−CCTAAAAGCCACCCCACTTCTC、プライマーActin2
−ATGCTATCACCTCCCCTGTGTG)の転写を定量化した。
【0132】
対照遺伝子ACTBと比較して、標的(target)遺伝子発現をN倍の差異として
表す最終結果を「Ntarget」と称し、以下の通りに算出した。すなわち、
target=2(ΔCtsample−ΔCtreference gen

ただし、試料(sample)と対照(reference)のΔCt値は、ACTB遺
伝子の平均Ct値から、WT1遺伝子の平均Ct値を引くことによって算出される。
【0133】
WT1用プライマーおよびACTB遺伝子用プライマーは、コンピュータプログラムで
あるプライマー(PRIMER)(HUSARプログラムパッケージ、DKFZ Hei
delberg)およびプライマーエクスプレス(Primer Express)(P
erkin−Elmer Applied Biosystems, Foster C
ity, CA))の助けをかりて選択した。LUMA1遺伝子増幅用に、以下のヌクレ
オチド配列をもつプライマーを用いた。すなわち、LUMA1−A:CTCGTCAGG
CGACCTTATATCおよびLUMA1−B:TGTCAGTTGAACATTTT
CTGCC; LUMA1−C:CTCGTCAGGCGATACTCCCおよびLUM
A1−D:CACCAGTCAGCTCTAAATGGGである。
【0134】
1.2. RNA抽出
全RNAは、組織標本からQIAamp RNA Mini Protocol(Qi
agen, Hilden, Germany)を用いて、抽出した。
【0135】
1.3. cDNA合成
1μgの全RNAを、1μlのDNAse I Amp Grade(1Unit/μ
l;インビトロゲン(Invitrogen))と、2μlのDNアーゼ反応緩衝液(1
0×;インビトロゲン)とを含む最終容積20μl中で、25℃、15分間、DNアーゼ
I消化した。2μlのEDTA(25mM;インビトロゲン)を加え、65℃で、10分
間、インキュベーションすることによって、反応を停止した。逆転写は、10倍RT緩衝
液 4μl、5mM dNTP 4μl、40U/μl RNAsin(プロメガ(Pr
omega)) 1μl、0.5μg/ml オリゴdTプライマー 4μl、および4
U/μl Omniscript(Qiagen, Hilden, Germany)
2μlを含む最終容積40μl中で、37℃で、2時間、行った。逆転写酵素は、93℃
で、5分間加熱し、4℃で、5分間冷却することによって、不活性化した。
【0136】
1.4. PCR増幅
すべてのPCR反応は、ABI Prism 7700 Sequence Dete
ction System(Perkin−Elmer Applied Biosys
tems)を用いて行った。PCRは、SYBRR(登録商標) Green PCR
Mix(Perkin−Elmer Applied Biosystems)を用いて
行った。熱サイクルコンディションは、95℃で10分間の初期変性ステップを含み、9
5℃で15秒間、および60℃で1分間を40サイクル行うことを含んだ。実験は、各デ
ータポイントに関し、2回繰り返しておこなった。
【0137】
図16〜20に示されるように、肺腺癌におけるLUMA1転写産物の発現増強が検出
された。LUMA1転写産物の増幅用に、以下のプライマーを用いた。すなわち、LUM
A1−A:CTCGTCAGGCGACCTTATATC、およびLUMA1−B:TG
TCAGTTGAACATTTTCTGCCである。プライマーLUMA1−A、および
プライマーLUMA1−Bを用いたPCRにより、エキソン7の全長を含むスプライス改
変体が増幅される。一方、プライマーLUMA1−C(CTCGTCAGGCGATAC
TCCC)、およびプライマーLUMA1−D(CACCAGTCAGCTCTAAAT
GGG)によっては、エキソン7の一部のみを表すスプライス改変体が増幅される。これ
らのプライマーの組合せを用いて、両スプライス改変体のアップレギュレーションをリア
ルタイムPCR実験で観測した。腫瘍1、および対応する正常試料1のリアルタイム増幅
を、図16に示す(プライマーLUMA1−A、およびLUMA1−B)。閾値サイクル
差3が観測されたが、ACTB遺伝子用の対照プライマーでは、違いが全く検出されなか
った(結果は不図示)。これはある個体の肺腺癌でのLUMA1転写産物が8倍に過剰発
現されていることを示す。別の個体では、正常組織と、肺腺癌組織との違いは全く観測さ
れなかった(図14)。さらに別の一個体では、腫瘍組織で13倍の過剰発現がみられた
(図15)。より多くの個体が、正常組織におけるLUMA1転写産物の欠如と、腫瘍組
織における強いアップレギュレーションによって特徴付けられた(4000倍より強く)
(図16および17)。
【0138】
図23に示されるエキソン7の分析された2つの異なる改変体に関し、上述のリアルタ
イムPCR法によりPCR産物を得、ゲル電気泳働で分析した。
【0139】
実施例2:選択的にスプライシングされたLUMA1転写産物のクローニング
LUMA1転写産物に特異的なプライマーを使用し、肺腺癌、結腸癌、および胎児脳由
来のランダムプライミングされたヒトcDNAを用いてPCRを行った。
【0140】
フォワードプライマー:
LUMA1−C:CTCGTCAGGCGATACTCCC; LUMA1−E:AT
GGAAATCACCACTCTGAGAG; LUMA1−F:TTGATCCAGA
AAGTGTGTGAGC。
【0141】
リバースプライマー;
LUMA1−G:TGCAGTTGGCCCAGCTTAGAA; LUMA1−H:
AGTCTTTAAAAAGCGTTGCTGG。
【0142】
プライマーは、以下の組合せで増幅に用いた。
【0143】
すなわち、LUMA1−C + LUMA1−H; LUMA1−E + LUMA1
−G; LUMA1−E + LUMA1−H; LUMA1−F + LUMA1−G
; LUMA1−F + LUMA1−Hである。
【0144】
以下のPCRコンディションを用いて、選択的スプライシング(differenti
al splicing)をおこなったLUMA1転写産物を増幅した。
【0145】
すなわち、95℃1分、ならびに(95℃30秒、60℃1分、および68℃3.5分
)を34サイクルである。
【0146】
Taqアドバンテージ(Advantage)ポリメラーゼ(Clontech)を用
いた。
【0147】
1μl dNTP(20mM)、0.5μl 50×Taq Advantage I
I(Clontech)、2.5μl 10倍緩衝液、3μl cDNA(100ng)
、1.5μl(Primer forward、10μm)、1.5μl(Primer
reverse、10μm)、15μl HO)。
【0148】
PCR産物は、直接配列決定するか、まず、pCR2.1ベクター(Invitrog
en)にクローニングし、その後配列決定した。配列分析およびデータベース検索は、H
USARプログラムパッケージ(DKFZ Heidelberg)を用いて行った。ク
ローニングしたPCR産物の配列分析により、LUMA1転写産物の大規模なスプライシ
ングが実証された。エキソン3の欠失によって特徴付けられた1つの転写産物が、同定さ
れた。別の転写産物は、エキソン3および4を失っていた。加えて、ある転写産物は、エ
キソン3、4、および5がスプライシングにより除去されたものとしてクローニングされ
た。エキソン3、4、5、またはその組合せがスプライシングにより除去されても、リー
ディングフレームは変らず、コードされているLUMA1タンパク質アイソフォームの内
部欠失となる。これらのスプライス改変体とは対照的に、エキソン7における異なるスプ
ライシングはフレームシフトとなる。転写産物に完全なエキソン7が存在している場合、
オープンリーディングフレームは、転写産物のほぼ3’末端に達する。得られた転写産物
中で、スプライシングによりエキソン7の最初の部分が除去される場合、フレームシフト
が生じ、コードされたタンパク質は、カルボキシ末端のより短いものとなる。エキソン7
の両スプライス改編体が肺腺癌でアップレギュレートされていることを示した(図13〜
17; 図18〜19)。
【0149】
(実施例3:LUMA1の全長クローニング)
LUMA1の全長クローニングRACE:Rapid Amplification
of cDNA Ends)
LUMA1 cDNAの5’末端を増幅するため、SMARTTM RACEcDNA
増幅キット(Clontech)を用いて、全長クローニングを行った。
【0150】
PCR反応液を以下の通りに調製した:1μl dNTP(10mM)、1μl 50
×Taq Advantage II(Clontech)、5μl 10倍緩衝液、2
.5μl cDNA、胎盤(Clontech)(1μg/μl)、5μl ユニバーサ
ルプライマーミックス(Clontech)(10×)、1μl 遺伝子特異的プライマ
ー(リバース)(Clontech)、34.5μl HO。
【0151】
ユニバーサル・プライマーミックス(Universal Primer Mix):
CTAATACGACTCACTATAGGGCAAGCAGTGGTATCAACGC
AGAGT(0、4μm)、CTAATACGACTCACTATAGGGC(0.2μ
m)。
【0152】
LUMA1遺伝子特異的プライマー(リバース):GGAGATGGAGCTGTTT
GACCTGA。
【0153】
PCR反応により明確なバンドが得られなかったので、ネスト化PCRを行った。
【0154】
5μlの第一のPCR産物を245μlのトリシンEDTA緩衝液(Clontech
)(10mM トリシン−KOH(pH8.5)、1mM EDTA)に希釈した。
【0155】
PCR反応液を以下の通りに調製した。すなわち、1μl dNTP(10mM)、1
μl 50×Taq Advantage II(Clontech)、5μl 10倍
緩衝液、5μlの希釈された一次PCR産物、1μlネスト化ユニバーサルプライマー(
Clontech)(10×)、1μl ネスト化遺伝子特異的プライマー(リバース)
(Clontech)(10μm)、36μlH0である。
【0156】
ネスト化ユニバーサルプライマー:AAGCAGTGGTATCAACGCAGAGT

【0157】
LUMA1ネスト化遺伝子特異的プライマー(リバース):TGTCAGTTGAAC
ATTTTCTGCC。
【0158】
全長転写産物を生成するため、以下のPCRコンディションを用いた。すなわち、
(94℃30秒、72℃3分)を5サイクル、
(94℃30秒、70℃30秒、72℃3分)を5サイクル、および
(94℃30秒、68℃30秒、72℃3分)を27サイクル
である。
【0159】
RACE産物を、アガロースゲル電気泳動法で検出した。バンドは、高純度PCR産物
精製キット(High Pure PCR Product Purification
Kit)(Roche)を用いて、ゲル精製した。DNAバンドを、エタノール滅菌し
たメスを用いて、アガロースゲル(1%)から切り出し、アガロースゲル切片をチューブ
に入れ、液体窒素中に2分間移した。ゲル切片を、無菌フィルター微量遠心チューブに入
れ、10分間、13 00rpmで遠心分離した。バインディング緩衝液(Bindin
g Buffer)を、フロースルー100μlあたり500μl加え、新しい無菌フィ
ルター微量遠心チューブに入れた。13 00rpmで1分間の遠心分離。試料を、50
0μlの洗浄用緩衝液で2回洗浄し、13 00rpmで1分間遠心分離した。フロース
ルーは廃棄した。50μlの溶出用緩衝液を、フィルターチューブの上側リザーバに加え
た。13 00rpmで1分間の遠心分離。微量遠心チューブに精製されたDNAが含ま
れていた。
【0160】
精製されたDNAを、pCR−XL−TOPOベクター(Invitrogen)にク
ローニングし、その後、配列決定した。配列分析およびデータベース検索を、HUSAR
プログラムパッケージ(DKFZ Heidelberg)を用いて行った。クローニン
グしたPCR産物の配列分析により、12の新しいエキソン(A、B、C、D、E、F、
G、H、I、J、K、L)と、エキソン1の新しい部分(エキソンM)と、エキソン8(
エキソンT)の5’側延長部分とを同定した。
【0161】
追加のLUMA1エキソンを、RACE実験によって同定した。LUMA1エキソンの
位置を、ゲノムクローンAL359711(VERSION AL359711.18
GI:13234940/第6染色体、クローンRP11−425D10の完全配列から
のヒトDNA配列)(寄託番号al359711)に関して示す。
【0162】
塩基対(bp)
エキソンA 16742−16898
エキソンB 17967−18132
エキソンC 22671−22809
(このエキソンは差次的にスプライシングされている。)
エキソンD 28399−28552
エキソンE 30422−32094
エキソンF 36503−36732
エキソンG 37720−37858
エキソンH 39288−39408
エキソンI 46143−46290
(差次的にスプライシングされて、胎児の肺に存在している。)
エキソンJ 51443−51552
エキソンK 58808−58957
エキソンL 59836−59889
エキソンM エキソン1 60888−61055
エキソンN エキソン2 63342−63494
エキソンO エキソン3 63739(63742)−63873
(bp63742はこのエキソンの代替的開始点、このエキソンは差次的にスプライシン
グされている。)
エキソンP エキソン4 64839−64991
(このエキソンは差次的にスプライシングされている。)
エキソンQ エキソン5 66427−66636
(このエキソンは差次的にスプライシングされている。)
エキソンR エキソン6 70867−70987
エキソンS エキソン7 75227(75279)−75354
(bp75279はこのエキソンの代替的開始点。両方のエキソン改変体は特異的にスプ
ライシングされている。エキソンの代替的開始により、フレームシフトがおこる。完全な
エキソンがスプライシングにより、除去される可能性がある。)
エキソンT エキソン8 76537(77287)−77410
(bp77287はこのエキソンの代替的開始点。エキソンの代替的開始により、フレー
ムシフトがおこる。代替的(art of)エキソンにより、フレームシフトがおこる。

(実施例4:抗体の産生)
LUMA1ペプチドを用い、これらのポリペプチドに対するモノクローナル抗体、およ
びポリクローナル抗体を産生した。LUMAエキソン2について、以下のペプチドを免疫
化のために用いてポリクロナール抗体を産生する。すなわち、(C E L I G E
V R T E G I D N M K D L K)である。モノクローナル抗体
の産生用には、LUMAエキソン7b(長い改変体)によってコードされたペプチド配列
(R F L K T N L K G S K I T R C)を用いた。
【0163】
(A.ポリクローナル抗体の産生:)
ポリクローナル抗体をアフィニティクロマトグラフィによって精製し、その後、患者試
料中のそれぞれのポリペプチドの検出用に使用した。手順は以下の通りに行った。すなわ
ち、
完全フロイントアジュバンド中のKLHと結合させた100μgのLUMA1ペプチド
を用いてNZW(ニュージランドホワイト種)ラビットを免疫し(一次(ground)
免疫)、不完全フロイントアジュバンド中の同量のタンパク質を用い、2週間ごとに、4
回ブースト(boost)する。
【0164】
2回目のブーストの1週間後に、血液を取り、固定抗原上でELISA分析する。
【0165】
最後のブーストの1週間後に、動物から全採血する。凝血後、最終血液を10分間、4
000×gで遠心する。このステップで得られた上清を、再び15分間、16600×g
で遠心する。この上清が生のLUMA1抗血清である。
【0166】
この抗血清を2ステップで精製する。ステップ1は、従来のプロテインAクロマトグラ
フィーである。ステップ2で、ステップ1のIg分画を、セファロースに固定された抗原
上のアフィニティクロマトグラフィによって精製する。ステップ2の溶出液が精製LUM
A1抗血清である。
【0167】
ペプチドELISAによって、精製抗血清を、固定抗原上で1/1000〜1/100
0 000のいくつかの希釈率でテストする。これにより、特異的抗体を、西洋わさびペ
ルオキシダーゼ(HRP)と結合した抗ウサギ二次試薬によって検出し、それに続き比色
分析反応(例えば、TMB)で、検出する。
【0168】
第2のアプローチでは、SDS−PAGE、およびニトロセルロースへのトラスファー
の後、固定抗原を用いたウェスタンブロットによって精製抗血清を評価する。
【0169】
最終評価ステップでは、抗血清を組織アレイ上で免疫組織学(IHC)によってテスト
する。ウェスタンブロット分析およびIHCにおいて、結合抗体の可視化は、比色分析反
応を触媒するHRPに結合した抗ウサギ二次試薬を用いて行う。
【0170】
(B.モノクローナル抗体)
LUMAエキソン7b(長い改変体)によってコードされるペプチド配列(R F L
K T N L K G S K I T R C)に対するモノクローナル抗体は、
Harlow、およびLaneによる「Antibodies: A Laborato
ry Manual」(第1版、1988年)の記載のように生成した。
【0171】
(実施例6:LUMA1発現の免疫組織学的検出)
ホルマリン固定してパラフィン包埋した肺の組織試料切片を、LUMA1に対して特異
的な抗体を用いることによって免疫細胞化学的に染色した。
【0172】
切片は、キシレンおよび段階的なエタノールのインキュベーションを通して再水和し、
純水(Aqua bidest)に移した。抗原回復を10mMクエン酸緩衝液(pH6
.0)を用いて行った。したがって、スライドを水浴で95℃、40分間、加熱した。ス
ライドを、20分間、室温まで冷却し、洗浄用緩衝液(PBS/0.1% Tween2
0)に移した。
【0173】
内在性ペルオキシダーゼを不活性化するため、試料を3%Hで、20分間、室温
でインキュベートし、その後、PBS / 0.1%Tween20で5〜10分間洗う

【0174】
その後、エキソン2(図24)、およびエキソン7(図25、26)にそれぞれ特異的
な一次抗体(2μg/ml)と共に、スライドを、1時間、室温でインキュベートした。
その後、スライドを洗浄用緩衝液でリンスし、新たな緩衝液槽中に5分間静置した。その
後、スライドを、二次抗体(ヤギ抗ウサギ抗体(1:500)、またはヤギ抗マウス抗体
(1:500))と共に、室温で、1時間インキュベートした。洗浄を、5分間、3回行
った。スライドを、200μlの基質−色素源(chromogen)溶液(DAB)で
10分間、覆った。その後、スライドは、前と同様に洗浄し、ヘマトキシリン槽中で、2
分間、対比染色した。残留ヘマトキシリンを蒸留水でリンスし、標本をマウントし、水性
封入剤と共にカバーグラスで覆った。
【0175】
スライド検鏡により、腫瘍細胞が、エキソン7にコードされた配列に対するモノクロー
ナルLUMA1抗体による特異的な免疫反応性を示すことを明らかにする。腫瘍細胞では
、可視的な特異染色が細胞質に見られる。
【0176】
記載された方法による、末梢静脈血、骨髄、およびリンパ球の免疫化学的分析によって
、コントロールの正常個体から得られた試料に、LUMA1に対する免疫反応性がないこ
とを明らかにした。このことは、LUMA1に対する抗体による特異的な免疫化学的染色
によって、これらの試料において、LUMA1による免疫反応性をもつ散在性腫瘍細胞が
同定されるかもしれないことを示す。
【0177】
(LUMA1エキソン7に対するモノクローナル抗体を用いた肺腫瘍組織および対応す
る正常組織の免疫組織化学的分析の概要)
【0178】
【表1−1】

【0179】
【表1−2】

【0180】
T=腫瘍 悪性腫瘍
N=正常 正常な肺で陽性
14症例の肺腫瘍を、LUMAエキソン7タンパク質イソ型の発現に関して分析した。
8症例の腫瘍で、陽性の染色が見られる。対応する正常組織では染色が見られない。いく
つかの肺腫瘍の結合組織において、炎症細胞の染色が検出された。これらの結果は、LU
MA1エキソン7の配列に特異的な試薬で染色することにより、生物試料中の腫瘍細胞を
同定することが可能となることを示している。タンパク質レベルで得られた結果は、リア
ルタイムPCR法で得られた結果との相関する。両方の実験で、LUMA1エキソン7の
配列(RNA配列およびタンパク質配列)が腫瘍細胞で特異的にアップレギュレートされ
ているのがわかった。エキソン7の配列とは対照的に、LUMAのエキソン2は、腫瘍細
胞中、RNAレベルにおいても、タンパク質レベルにおいてもアップレギュレーションを
示さない。このことは、特異的なLUMA1スプライス改変体、およびそれがコードして
いるタンパク質改変体のみが腫瘍特異的であることを明確に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載される、肺腫瘍に関連する単離された核酸分子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図7−3】
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【図7−4】
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【図7−5】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図8−3】
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【図8−4】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図9−3】
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【図9−4】
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【図9−5】
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【図9−6】
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【図9−7】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図10−3】
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【図10−4】
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【図10−5】
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【図10−6】
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【図10−7】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図11−3】
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【図11−4】
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【図11−5】
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【図11−6】
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【図11−7】
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【図11−8】
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【図11−9】
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【図11−10】
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【図11−11】
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【図11−12】
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【図11−13】
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【図11−14】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図13−1】
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【図13−2】
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【図14−1】
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【図14−2】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2010−17194(P2010−17194A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−240933(P2009−240933)
【出願日】平成21年10月19日(2009.10.19)
【分割の表示】特願2004−506526(P2004−506526)の分割
【原出願日】平成15年5月16日(2003.5.16)
【出願人】(504341793)エムティーエム ラボラトリーズ アクチェンゲゼルシャフト (9)
【Fターム(参考)】