説明

胃腸疾病の治療のために有用なチオアミド置換された三環式のベンゾイミダゾール

本発明は、式(I)で示され、その式中、置換基及び記号が明細書中の意味を有する環式のベンゾイミダゾールに関する。該化合物は、胃酸分泌阻害特性及び優れた胃腸保護作用特性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品の製造のための活性化合物としての、製薬工業において使用される新規化合物に関する。
【0002】
背景技術
欧州特許出願第266326号(米国特許第5,106,862号に相当する)において、非常に広範な様々な置換基を有するベンゾイミダゾール誘導体が開示されており、これらは抗潰瘍剤として有効であると言われている。国際特許出願WO97/47603号(Astra AB)において、特定のベンジルオキシ置換又はベンジルアミノ置換を有するベンゾイミダゾールが記載されている。
【0003】
国際特許出願WO04/054984号は、胃腸管疾病の治療に有用な化合物である置換された二環式のベンゾイミダゾール誘導体を開示している。
【0004】
国際特許出願WO04/087701号は、ベンゾイミダゾール部の5位に種々の置換基を有する三環式のベンゾイミダゾール誘導体であって、同様に胃腸疾病の治療に有用な化合物である誘導体を開示している。
【0005】
本発明の技術的課題の開示
胃酸分泌をH+/K+−ATPアーゼの遮断により阻害する全体の一連の化合物は先行技術から公知である。プロトンポンプインヒビター(PPI)として呼称される化合物、例えばオメプラゾール、エソメプラゾール、ランソプラゾール、パントプラゾール又はラベプラゾールは、H+/K+−ATPアーゼに不可逆的に結合する。PPIは、既に長期にわたり治療薬として利用されている。可逆的プロトンポンプインヒビター(rPPI)又はアシッドポンプアンタゴニスト(APA)又はカリウム拮抗性アシッドブロッカー(P−CAB)と呼称される新規の化合物クラスは、H+/K+−ATPアーゼに可逆的に結合する。rPPI、APA及びP−CABは20年以上知られていて、多くの企業がその開発に携わっているが、どのrPPI、APA又はP−CABも現在でも治療に利用されていない。従って、本発明の基礎を成す技術的課題は、治療に使用できるアシッドポンプアンタゴニストを提供することである。
【0006】
技術的解決
本発明は、式1
【化1】

[式中、
R1は、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、C1〜C4−アルキル、C3〜C7−シクロアルキル、C3〜C7−シクロアルキル−C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ、C1〜C4−アルコキシ−C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシカルボニル、C2〜C4−アルケニル、C2〜C4−アルキニル、フルオロ−C1〜C4−アルキル、ヒドロキシ−C1〜C4−アルキル又はモノ−もしくはジ−C1〜C4−アルキルアミノであり、
R2は、水素、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ、C1〜C4−アルコキシ−C1〜C4−アルキル、アリール、C3〜C7−シクロアルキル、C3〜C7−シクロアルキル−C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシカルボニル、モノ−もしくはジ−C1〜C4−アルキルアミノ−C1〜C4−アルキルカルボニル、ヒドロキシ−C1〜C4−アルキル、フルオロ−C2〜C4−アルキルであり、
R31は、水素、ヒドロキシル、C1〜C7−アルキル、C3〜C7−シクロアルキル、ヒドロキシ−C1〜C4−アルキル又はC1〜C4−アルコキシ−C1〜C4−アルキルであり、かつ
R32は、水素、C1〜C7−アルキル、C3〜C7−シクロアルキル、ヒドロキシ−C1〜C4−アルキル又はC1〜C4−アルコキシ−C1〜C4−アルキルであるか、又は
R31及びR32は、一緒になって、その両者が結合される窒素原子を含んで、ピロリジノ基、ヒドロキシ−ピロリジノ基、アジリジノ基、アゼチジノ基、ピペリジノ基、ピペラジノ基、N−C1〜C4−アルキルピペラジノ基又はモルホリノ基であり、
Xは、O(酸素)又はNHであり、かつ
Arは、R4、R5、R6及びR7によって置換された、フェニル、ナフチル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、1,2,3−トリアゾリル、インドリル、ベンゾイミダゾリル、フリル、ベンゾフリル、チエニル、ベンゾチエニル、チアゾリル、イソキサゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、キノリニル及びイソキノリニルからなる群から選択される、単環式もしくは二環式の芳香族の残基であり、その際、
R4は、水素、C1〜C4−アルキル、ヒドロキシ−C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ、C2〜C4−アルケニルオキシ、C1〜C4−アルキルカルボニル、カルボキシ、C1〜C4−アルコキシカルボニル、カルボキシ−C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシカルボニル−C1〜C4−アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、アリール、アリール−C1〜C4−アルキル、アリール−オキシ、アリール−C1〜C4−アルコキシ、トリフルオロメチル、ニトロ、アミノ、モノ−もしくはジ−C1〜C4−アルキルアミノ、C1〜C4−アルキルカルボニルアミノ、C1〜C4−アルコキシカルボニルアミノ、C1〜C4−アルコキシ−C1〜C4−アルコキシカルボニルアミノ又はスルホニルであり、
R5は、水素、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ、C1〜C4−アルコキシカルボニル、ハロゲン、トリフルオロメチル又はヒドロキシであり、
R6は、水素、C1〜C4−アルキル又はハロゲンであり、かつ
R7は、水素、C1〜C4−アルキル又はハロゲンであり、かつ
アリールは、フェニル又は、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ、カルボキシ、C1〜C4−アルコキシカルボニル、ハロゲン、トリフルオロメチル、ニトロ、トリフルオロメトキシ、ヒドロキシ及びシアノの群からの1個、2個もしくは3個の同一又は異なる置換基で置換されたフェニルである]で示される三環式のベンゾイミダゾール並びにこれらの化合物の塩に関する。
【0007】
本発明の意味上の範囲内ではハロゲンは臭素、塩素及びフッ素である。
【0008】
1〜C4−アルキルは、直鎖状又は分枝鎖状の1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を表す。挙げられる例は、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、プロピル基、イソプロピル基、エチル基及びメチル基である。
【0009】
3〜C7−シクロアルキルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルを表し、そのうちシクロプロピル、シクロブチル及びシクロペンチルが有利である。
【0010】
3〜C7−シクロアルキル−C1〜C4−アルキルは、前記のC3〜C7−シクロアルキル基の1つによって置換されている前記のC1〜C4−アルキル基の1つを表す。挙げられる例は、シクロプロピルメチル、シクロヘキシルメチル及びシクロヘキシルエチル基である。
【0011】
1〜C4−アルコキシは、酸素原子の他に前記のC1〜C4−アルキル基の1つを有する基を表す。挙げられる例は、ブトキシ、イソブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ及び、有利にはエトキシ基及びメトキシ基である。
【0012】
1〜C4−アルコキシ−C1〜C4−アルキルは、前記のC1〜C4−アルコキシ基の1つにより置換された前記のC1〜C4−アルキル基の1つを表す。挙げられる例は、メトキシメチル基、メトキシエチル基及びブトキシエチル基である。
【0013】
1〜C4−アルコキシカルボニル(C1〜C4−アルコキシ−CO−)は、前記のC1〜C4−アルコキシ基の1つが結合されたカルボニル基を表す。挙げられる例は、メトキシカルボニル(CH3O−C(O)−)及びエトキシカルボニル(CH3CH2O−C(O)−)基である。
【0014】
2〜C4−アルケニルは、2〜4個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルケニル基を表す。挙げられる例は、2−ブテニル、3−ブテニル、1−プロペニル及び2−プロペニル基(アリル基)である。
【0015】
2〜C4−アルキニルは、2〜4個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキニル基を表す。挙げられる例は、2−ブチニル、3−ブチニル、及び有利に2−プロピニル基(プロパルギル基)である。
【0016】
フルオロ−C1〜C4−アルキルは、1つ又は複数のフッ素原子により置換されている前記のC1〜C4−アルキル基の1つを表す。挙げられる例は、トリフルオロメチル基である。
【0017】
ヒドロキシ−C1〜C4−アルキルは、ヒドロキシル基で置換された前記のC1〜C4−アルキル基の1つを表す。挙げられる例は、ヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル及び3−ヒドロキシプロピル基である。本発明の範囲内でのヒドロキシ−C1〜C4−アルキルは、例えば2個以上のヒドロキシ基を有するC1〜C4−アルキル基であると解される。挙げられる例は、3,4−ジ−ヒドロキシブチル基、特に2,3−ジヒドロキシプロピル基である。
【0018】
モノ−もしくはジ−C1〜C4−アルキルアミノは、上記のC1〜C4−アルキル基からの又は2個の同じ又は異なる基により置換されたアミノ基を表す。挙げられる例は、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基及びジイソプロピルアミノ基である。
【0019】
モノ−もしくはジ−C1〜C4−アルキルアミノ−C1〜C4−アルキルカルボニルは、1つのモノ−又はジ−C1〜C4−アルキルアミノ基により置換されたC1〜C4−アルキルカルボニル基を表す。挙げられる例は、ジメチルアミノメチルカルボニル基及びジメチルアミノエチルカルボニル基である。
【0020】
フルオロ−C1〜C4−アルキルは、1つ又は複数のフッ素原子により置換されている1つのC1〜C4−アルキル基を表す。挙げられる例は、2,2,2−トリフルオロエチル基である。
【0021】
1〜C7−アルキルは、直鎖状又は分枝鎖状の1〜7個の炭素原子を有するアルキル基を表す。挙げられる例は、ヘプチル基、イソヘプチル(5−メチルヘキシル)基、ヘキシル基、イソヘキシル(4−メチルペンチル)基、ネオヘキシル(3,3−ジメチルブチル)基、ペンチル基、イソペンチル(3−メチルブチル)基、ネオペンチル(2,2−ジメチルプロピル)基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、プロピル基、イソプロピル基、エチル基及びメチル基である。
【0022】
挙げられる基Arは、例えば以下の置換基である:4−アセトキシフェニル、4−アセトアミドフェニル、2−メトキシフェニル、3−メトキシフェニル、4−メトキシフェニル、3−ベンジルオキシフェニル、4−ベンジルオキシフェニル、3−ベンジルオキシ−4−メトキシフェニル、4−ベンジルオキシ−3−メトキシフェニル、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル、4−ブトキシフェニル、2−クロロフェニル、3−クロロフェニル、4−クロロフェニル、2−クロロ−6−フルオロフェニル、3−クロロ−4−フルオロフェニル、2−クロロ−5−ニトロフェニル、4−クロロ−3−ニトロフェニル、3−(4−クロロフェノキシ)フェニル、2,4−ジクロロフェニル、3,4−ジフルオロフェニル、2,4−ジヒドロキシフェニル、2,6−ジメトキシフェニル、3,4−ジメトキシ−5−ヒドロキシフェニル、2,5−ジメチルフェニル、3−エトキシ−4−ヒドロキシフェニル、2−フルオロフェニル、4−フルオロフェニル、4−ヒドロキシフェニル、2−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル、3−メトキシ−2−ニトロフェニル、3−ニトロフェニル、2,3,5−トリクロロフェニル、2,4,6−トリヒドロキシフェニル、2,3,4−トリメトキシフェニル、2−ヒドロキシ−1−ナフチル、2−メトキシ−1−ナフチル、4−メトキシ−1−ナフチル、1−メチル−2−ピロリル、2−ピロリル、3−メチル−2−ピロリル、3,4−ジメチル−2−ピロリル、4−(2−メトキシカルボニルエチル)−3−メチル−2−ピロリル、5−エトキシカルボニル−2,4−ジメチル−3−ピロリル、3,4−ジブロモ−5−メチル−2−ピロリル、2,5−ジメチル−1−フェニル−3−ピロリル、5−カルボキシ−3−エチル−4−メチル−2−ピロリル、3,5−ジメチル−2−ピロリル、2,5−ジメチル−1−(4−トリフルオロメチルフェニル)−3−ピロリル、1−(2,6−ジクロロ−4−トリフルオロメチルフェニル)−2−ピロリル、1−(2−ニトロベンジル)−2−ピロリル、1−(2−フルオロフェニル)−2−ピロリル、1−(4−トリフルオロメトキシフェニル)−2−ピロリル、1−(2−ニトロベンジル)−2−ピロリル、1−(4−エトキシカルボニル)−2,5−ジメチル−3−ピロリル、5−クロロ−1,3−ジメチル−4−ピラゾリル、5−クロロ−1−メチル−3−トリフルオロメチル−4−ピラゾリル、1−(4−クロロベンジル)−5−ピラゾリル、1,3−ジメチル−5−(4−クロロフェノキシ)−4−ピラゾリル、1−メチル−3−トリフルオロメチル−5−(3−トリフルオロメチルフェノキシ)−4−ピラゾリル、4−メトキシカルボニル−1−(2,6−ジクロロフェニル)−5−ピラゾリル、5−アリルオキシ−1−メチル−3−トリフルオロメチル−4−ピラゾリル、5−クロロ−1−フェニル−3−トリフルオロメチル−4−ピラゾリル、3,5−ジメチル−1−フェニル−4−イミダゾリル、4−ブロモ−1−メチル−5−イミダゾリル、2−ブチルイミダゾリル、1−フェニル−1,2,3−トリアゾール−4−イル、3−インドリル、4−インドリル、7−インドリル、5−メトキシ−3−インドリル、5−ベンジルオキシ−3−インドリル、1−ベンジル−3−インドリル、2−(4−クロロフェニル)−3−インドリル、7−ベンジルオキシ−3−インドリル、6−ベンジルオキシ−3−インドリル、2−メチル−5−ニトロ−3−インドリル、4,5,6,7−テトラフルオロ−3−インドリル、1−(3,5−ジフルオロベンジル)−3−インドリル、1−メチル−2−(4−トリフルオロフェノキシ)−3−インドリル、1−メチル−2−ベンゾイミダゾリル、5−ニトロ−2−フリル、5−ヒドロキシメチル−2−フリル、2−フリル、3−フリル、5−(2−ニトロ−4−トリフルオロメチルフェニル)−2−フリル、4−エトキシカルボニル−5−メチル−2−フリル、5−(2−トリフルオロメトキシフェニル)−2−フリル、5−(4−メトキシ−2−ニトロフェニル)−2−フリル、4−ブロモ−2−フリル、5−ジメチルアミノ−2−フリル、5−ブロモ−2−フリル、5−スルホ−2−フリル、2−ベンゾフリル、2−チエニル、3−チエニル、3−メチル−2−チエニル、4−ブロモ−2−チエニル、5−ブロモ−2−チエニル、5−ニトロ−2−チエニル、5−メチル−2−チエニル、5−(4−メトキシフェニル)−2−チエニル、4−メチル−2−チエニル、3−フェノキシ−2−チエニル、5−カルボキシ−2−チエニル、2,5−ジクロロ−3−チエニル、3−メトキシ−2−チエニル、2−ベンゾチエニル、3−メチル−2−ベンゾチエニル、2−ブロモ−5−クロロ−3−ベンゾチエニル、2−チアゾリル、2−アミノ−4−クロロ−5−チアゾリル、2,4−ジクロロ−5−チアゾリル、2−ジエチルアミノ−5−チアゾリル、3−メチル−4−ニトロ−5−イソキサゾリル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、6−メチル−2−ピリジル、3−ヒドロキシ−5−ヒドロキシメチル−2−メチル−4−ピリジル、2,6−ジクロロ−4−ピリジル、3−クロロ−5−トリフルオロメチル−2−ピリジル、4,6−ジメチル−2−ピリジル、4−(4−クロロフェニル)−3−ピリジル、2−クロロ−5−メトキシカルボニル−6−メチル−4−フェニル−3−ピリジル、2−クロロ−3−ピリジル、6−(3−トリフルオロメチルフェノキシ)−3−ピリジル、2−(4−クロロフェノキシ)−3−ピリジル、2,4−ジメトキシ−5−ピリミジニル、2−キノリニル、3−キノリニル、4−キノリニル、2−クロロ−3−キノリニル、2−クロロ−6−メトキシ−3−キノリニル、8−ヒドロキシ−2−キノリニル及び4−イソキノリニル。
【0023】
2〜C4−アルケニルオキシは、酸素原子の他に前記のC2〜C4−アルケニル基の1つを有する基を表す。挙げられる例は、2−ブテニルオキシ、3−ブテニルオキシ、1−プロペニルオキシ及び2−プロペニルオキシ基(アリルオキシ基)である。
【0024】
1〜C4−アルキルカルボニルは、カルボニル基の他に前記のC1〜C4−アルキル基の1つを有する基を表す。挙げられる例は、アセチル基である。
【0025】
カルボキシ−C1〜C4−アルキルは、カルボキシル基により置換されたC1〜C4−アルキル基を表す。挙げられる例は、カルボキシメチル及び2−カルボキシエチル基である。
【0026】
1〜C4−アルコキシカルボニル−C1〜C4−アルキルは、前記のC1〜C4−アルコキシカルボニル基の1つによって置換されているC1〜C4−アルキル基を表す。挙げられる例は、メトキシカルボニルメチル及びエトキシカルボニルメチル基である。
【0027】
アリール−C1〜C4−アルキルは、前記のアリール基の1つにより置換されている前記のC1〜C4−アルキル基の1つを表す。有利なアリール−C1〜C4−アルキル基の例は、ベンジル基である。
【0028】
アリール−C1〜C4−アルコキシは、前記のアリール基の1つにより置換されている前記のC1〜C4−アルコキシ基の1つを表す。有利なアリール−C1〜C4−アルコキシ基の例は、ベンジルオキシ基である。
【0029】
1〜C4−アルキルカルボニルアミノは、C1〜C4−アルキルカルボニル基が結合しているアミノ基を表す。挙げられる例は、プロピオニルアミノ(C37C(O)NH−)及びアセチルアミノ基(アセトアミド基)(CH3C(O)NH−)である。
【0030】
1〜C4−アルコキシカルボニルアミノは、上記のC1〜C4−アルコキシカルボニル基の1つにより置換されたアミノ基を表す。挙げられる例は、エトキシカルボニルアミノ基及びメトキシカルボニルアミノ基である。
【0031】
1〜C4−アルコキシ−C1〜C4−アルコキシは、他のC1〜C4−アルコキシ基により置換された前記のC1〜C4−アルコキシ基の1つを表す。挙げられる例は、2−(メトキシ)エトキシ(CH3−O−CH2−CH2−O−)及び2−(エトキシ)エトキシ(CH3−CH2−O−CH2−CH2−O−)基である。
【0032】
1〜C4−アルコキシ−C1〜C4−アルコキシカルボニルは、前記のC1〜C4−アルコキシ−C1〜C4−アルコキシ基の1つと結合するカルボニル基を表す。挙げられる例は、2−(メトキシ)エトキシカルボニル(CH3−O−CH2CH2−O−CO−)及び2−(エトキシ)エトキシカルボニル(CH3CH2−O−CH2CH2−O−CO−)基である。
【0033】
1〜C4−アルコキシ−C1〜C4−アルコキシカルボニルアミノは、上記のC1〜C4−アルコキシ−C1〜C4−アルコキシカルボニル基の1つにより置換されたアミノ基を表す。挙げられる例は、2−(メトキシ)エトキシカルボニルアミノ基及び2−(エトキシ)エトキシカルボニルアミノ基である。
【0034】
式1の化合物の可能な塩は、(置換基に依存して)特に全ての酸付加塩である。薬学で慣用に使用される無機酸及び有機酸の薬理学的に認容性の塩を特に挙げることができる。好適にはこれらは、酸、例えば塩酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸、酢酸、クエン酸、D−グルコン酸、安息香酸、2−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、酪酸、スルホサリチル酸、マレイン酸、ラウリン酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、シュウ酸、酒石酸、エンボン酸、ステアリン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸又は1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸との水溶性又は非水溶性の酸付加塩であり、前記酸は、この酸が一塩基酸であるか又は多塩基酸であるかに依存して、及びどの塩が所望であるかに依存して、塩の製造において等モル量比又は等モルではない量比で使用される。
【0035】
例えば、本発明による化合物の工業的規模での製造におけるプロセス生成物として最初に得ることができる薬理学的に非認容性の塩は、当業者に公知の方法によって薬理学的に認容性の塩に変換される。
【0036】
本発明による化合物及びその塩は、例えばこれらが結晶形で単離される場合に種々の溶剤量を有してよいことは当業者には知られている。従ってまた本発明は、式1の化合物の全ての溶媒和物及び、特に全ての水和物、及びまた式1の化合物の塩の全ての溶媒和物及び、特に全ての水和物を包含する。
【0037】
式1の化合物は8位にキラル中心を有する。従って、本発明は、相互の全ての所望の混合比での、両者の立体異性体(本発明の有利な対象である純粋なエナンチオマーを含める)に関する。
【0038】
更に、チオアミド置換基R31R32N−C(S)−は、基本骨格に結合される結合の周りでのその残基の束縛回転のため付加的なキラル中心をもたらす。このように、本発明はまた、その束縛回転のため生ずる、純粋な回転異性体を含む全ての回転異性体に関し、それらは本発明の好ましい発明主題である。
【0039】
挙げられるべき化合物は、式1で示され、その式中、
R1は、水素、C1〜C4−アルキル、C3〜C7−シクロアルキル又はフルオロ−C1〜C4−アルキルであり、
R2は、水素、C1〜C4−アルキル又はC1〜C4−アルコキシ−C1〜C4−アルキルであり、
R31は、水素、C1〜C4−アルキル、C3〜C7−シクロアルキル、ヒドロキシ−C1〜C4−アルキル又はC1〜C4−アルコキシ−C1〜C4−アルキルであり、かつ
R32は、水素又はC1〜C4−アルキルであるか、又は
R31及びR32は、一緒になって、その両者が結合される窒素原子を含んで、ピロリジノ基、ヒドロキシピロリジノ基、アジリジノ基、アゼチジノ基、ピペリジノ基、ピペラジノ基、N−C1〜C4−アルキルピペラジノ基又はモルホリノ基であり、
Xは、O(酸素)又はNHであり、かつ
Arは、R4、R5、R6及びR7によって置換された、フェニル基であり、その際、
R4は、水素、C1〜C4−アルキル、ヒドロキシ−C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ、C2〜C4−アルケニルオキシ、C1〜C4−アルキルカルボニル、カルボキシ、C1〜C4−アルコキシカルボニル、カルボキシ−C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシカルボニル−C1〜C4−アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、トリフルオロメチル、ニトロ、アミノ、モノ−もしくはジ−C1〜C4−アルキルアミノ、C1〜C4−アルキルカルボニルアミノ、C1〜C4−アルコキシカルボニルアミノ、C1〜C4−アルコキシ−C1〜C4−アルコキシカルボニルアミノ又はスルホニルであり、
R5は、水素、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ、C1〜C4−アルコキシカルボニル、ハロゲン、トリフルオロメチル又はヒドロキシであり、
R6は、水素、C1〜C4−アルキル又はハロゲンであり、かつ
R7は、水素、C1〜C4−アルキル又はハロゲンである、化合物並びにこれらの化合物の塩である。
【0040】
式1の化合物の中でも、式1a
【化2】

[式中、
R1は、水素、C1〜C4−アルキル、C3〜C7−シクロアルキル又はフルオロ−C1〜C4−アルキルであり、
R2は、水素、C1〜C4−アルキル又はC1〜C4−アルコキシ−C1〜C4−アルキルであり、
R31は、水素、C1〜C4−アルキル、C3〜C7−シクロアルキル、ヒドロキシ−C1〜C4−アルキル又はC1〜C4−アルコキシ−C1〜C4−アルキルであり、かつ
R32は、水素又はC1〜C4−アルキルであるか、又は
R31及びR32は、一緒になって、その両者が結合される窒素原子を含んで、ピロリジノ基、ヒドロキシピロリジノ基、アジリジノ基、アゼチジノ基、ピペリジノ基、ピペラジノ基、N−C1〜C4−アルキルピペラジノ基又はモルホリノ基であり、
R4は、水素、ハロゲン、C1〜C4−アルキル、ヒドロキシ−C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ、C1〜C4−アルコキシカルボニル、トリフルオロメチル、アミノ、モノ−もしくはジ−C1〜C4−アルキルアミノ、C1〜C4−アルキルカルボニルアミノ、C1〜C4−アルコキシカルボニルアミノ又はC1〜C4−アルコキシ−C1〜C4−アルコキシカルボニルアミノであり、
R5は、水素、ハロゲン、C1〜C4−アルキル又はC1〜C4−アルコキシであり、
R6は、水素、ハロゲン、C1〜C4−アルキルであり、かつ
Xは、O(酸素)又はNHである]で示される化合物並びにこれらの化合物の塩が好ましい。
【0041】
また、式1の化合物の中でも、式1aで示され、その式中、
R1は、水素、C1〜C4−アルキル、C3〜C7−シクロアルキル又はフルオロ−C1〜C4−アルキルであり、
R2は、水素、C1〜C4−アルキル又はC1〜C4−アルコキシ−C1〜C4−アルキルであり、
R31は、水素、C1〜C4−アルキル、C3〜C7−シクロアルキル、ヒドロキシ−C1〜C4−アルキル又はC1〜C4−アルコキシ−C1〜C4−アルキルであり、かつ
R32は、水素又はC1〜C4−アルキルであるか、又は
R31及びR32は、一緒になって、その両者が結合される窒素原子を含んで、ピロリジノ基、ヒドロキシピロリジノ基、アジリジノ基、アゼチジノ基、ピペリジノ基、ピペラジノ基、N−C1〜C4−アルキルピペラジノ基又はモルホリノ基であり、
R4は、水素、C1〜C4−アルキル、ヒドロキシ−C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ、C1〜C4−アルコキシカルボニル、トリフルオロメチル、アミノ、モノ−もしくはジ−C1〜C4−アルキルアミノ、C1〜C4−アルキルカルボニルアミノ、C1〜C4−アルコキシカルボニルアミノ又はC1〜C4−アルコキシ−C1〜C4−アルコキシカルボニルアミノであり、
R5は、水素、C1〜C4−アルキル又はC1〜C4−アルコキシであり、
R6は、水素であり、かつ
Xは、O(酸素)又はNHである、化合物並びにこれらの化合物の塩が好ましい。
【0042】
式1の化合物の中でも、式1aで示され、その式中、
R1は、C1〜C4−アルキル、C3〜C7−シクロアルキル又はフルオロ−C1〜C4−アルキルであり、
R2は、水素、C1〜C4−アルキル又はC1〜C4−アルコキシ−C1〜C4−アルキルであり、
R31は、水素、C1〜C4−アルキル、ヒドロキシ−C1〜C4−アルキル、C3〜C7−シクロアルキル又はC1〜C4−アルコキシ−C1〜C4−アルキルであり、かつ
R32は、水素又はC1〜C4−アルキルであるか、又は
R31及びR32は、一緒になって、その両者が結合される窒素原子を含んで、ピロリジノ基、ヒドロキシピロリジノ基、アジリジノ基、アゼチジノ基又はモルホリノ基であり、
R4は、水素、ハロゲン、C1〜C4−アルキルであり、
R5は、水素であり、
R6は、水素、ハロゲンであり、かつ
Xは、O(酸素)又はNHである、化合物並びにこれらの化合物の塩が特に好ましい。
【0043】
式1の化合物の中でも、式1aで示され、その式中、
R1は、C1〜C4−アルキル、C3〜C7−シクロアルキル又はフルオロ−C1〜C4−アルキルであり、
R2は、水素、C1〜C4−アルキル又はC1〜C4−アルコキシ−C1〜C4−アルキルであり、
R31は、水素、C1〜C4−アルキル、ヒドロキシ−C1〜C4−アルキル、C3〜C7−シクロアルキル又はC1〜C4−アルコキシ−C1〜C4−アルキルであり、かつ
R32は、水素又はC1〜C4−アルキルであるか、又は
R31及びR32は、一緒になって、その両者が結合される窒素原子を含んで、ピロリジノ基、ヒドロキシピロリジノ基、アジリジノ基、アゼチジノ基又はモルホリノ基であり、
R4は、水素であり、
R5は、水素であり、
R6は、水素であり、かつ
Xは、O(酸素)又はNHである、化合物並びにこれらの化合物の塩が特に好ましい。
【0044】
特に挙げられるべき式1aの化合物は、その式中、
R1は、C1〜C4−アルキル又はC3〜C7−シクロアルキルであり、
R2は、水素又はC1〜C4−アルキルであり、
R31は、水素、C1〜C4−アルキル、ヒドロキシ−C1〜C4−アルキル、C3〜C7−シクロアルキル又はC1〜C4−アルコキシ−C1〜C4−アルキルであり、かつ
R32は、水素又はC1〜C4−アルキルであるか、又は
R31及びR32は、一緒になって、その両者が結合される窒素原子を含んで、ピロリジノ基、ヒドロキシピロリジノ基、アジリジノ基、アゼチジノ基又はモルホリノ基であり、
R4は、水素、ハロゲン又はC1〜C4−アルキルであり、
R5は、水素であり、
R6は、水素又はハロゲンであり、かつ
Xは、O(酸素)又はNHである、化合物並びにこれらの化合物の塩である。
【0045】
特に挙げられるべき式1aの化合物は、その式中、
R1は、C1〜C4−アルキル又はC3〜C7−シクロアルキルであり、
R2は、水素又はC1〜C4−アルキルであり、
R31は、水素、C1〜C4−アルキル、ヒドロキシ−C1〜C4−アルキル、C3〜C7−シクロアルキル又はC1〜C4−アルコキシ−C1〜C4−アルキルであり、かつ
R32は、水素又はC1〜C4−アルキルであるか、又は
R31及びR32は、一緒になって、その両者が結合される窒素原子を含んで、ピロリジノ基、ヒドロキシピロリジノ基、アジリジノ基、アゼチジノ基又はモルホリノ基であり、
R4は、水素であり、
R5は、水素であり、
R6は、水素であり、かつ
Xは、O(酸素)又はNHである、化合物並びにこれらの化合物の塩である。
【0046】
強調されるものは、式1aで示され、その式中、
R1は、C1〜C4−アルキル又はC3〜C7−シクロアルキルであり、
R2は、水素又はC1〜C4−アルキルであり、
R31は、水素、C1〜C4−アルキル又はC3〜C7−シクロアルキルであり、
R32は、水素又はC1〜C4−アルキルであるか、又は
R31及びR32は、一緒になって、その両者が結合される窒素原子を含んで、アゼチジノ基であり、
R4は、水素であり、
R5は、水素であり、
R6は、水素であり、かつ
Xは、O(酸素)又はNHである、化合物並びにこれらの化合物の塩である。
【0047】
また、強調されるものは、式1aで示され、その式中、
R1は、C1〜C4−アルキル又はC3〜C7−シクロアルキルであり、
R2は、C1〜C4−アルキルであり、
R31は、C1〜C4−アルキル又はC3〜C7−シクロアルキルであり、
R32は、水素又はC1〜C4−アルキルであり、
R4は、水素であり、
R5は、水素であり、
R6は、水素であり、かつ
Xは、O(酸素)又はNHである、化合物並びにこれらの化合物の塩である。
【0048】
本発明の好ましい対象は、式1a−1
【化3】

[式中、
R1は、C1〜C4−アルキル又はC3〜C7−シクロアルキルであり、
R2は、水素又はC1〜C4−アルキルであり、
R31は、水素、C1〜C4−アルキル、ヒドロキシ−C1〜C4−アルキル、C3〜C7−シクロアルキル又はC1〜C4−アルコキシ−C1〜C4−アルキルであり、かつ
R32は、水素又はC1〜C4−アルキルであるか、又は
R31及びR32は、一緒になって、その両者が結合される窒素原子を含んで、ピロリジノ基、ヒドロキシピロリジノ基、アジリジノ基、アゼチジノ基又はモルホリノ基であり、
R4は、水素、メチル、クロロ又はフルオロであり、
R5は、水素であり、
R6は、水素又はフルオロであり、かつ
Xは、O(酸素)又はNHである]で示される化合物並びにこれらの化合物の塩である。
【0049】
また特に挙げられるべき式1aの化合物は、式1a−1で示され、その式中、
R1は、C1〜C4−アルキル又はC3〜C7−シクロアルキルであり、
R2は、水素又はC1〜C4−アルキルであり、
R31は、水素、C1〜C4−アルキル、ヒドロキシ−C1〜C4−アルキル、C3〜C7−シクロアルキル又はC1〜C4−アルコキシ−C1〜C4−アルキルであり、かつ
R32は、水素又はC1〜C4−アルキルであるか、又は
R31及びR32は、一緒になって、その両者が結合される窒素原子を含んで、ピロリジノ基、ヒドロキシピロリジノ基、アジリジノ基、アゼチジノ基又はモルホリノ基であり、
R4は、水素であり、
R5は、水素であり、
R6は、水素であり、かつ
Xは、O(酸素)又はNHである、化合物並びにこれらの化合物の塩である。
【0050】
強調されるものは、式1a−1で示され、その式中、
R1は、C1〜C4−アルキル又はC3〜C7−シクロアルキルであり、
R2は、水素又はC1〜C4−アルキルであり、
R31は、水素、C1〜C4−アルキル又はC3〜C7−シクロアルキルであり、
R32は、水素又はC1〜C4−アルキルであるか、又は
R31及びR32は、一緒になって、その両者が結合される窒素原子を含んで、アゼチジノ基であり、
R4は、水素、メチル、クロロ又はフルオロであり、
R5は、水素であり、
R6は、水素又はフルオロであり、かつ
Xは、O(酸素)又はNHである、化合物並びにこれらの化合物の塩である。
【0051】
また強調されるものは、式1a−1で示され、その式中、
R1は、C1〜C4−アルキル又はC3〜C7−シクロアルキルであり、
R2は、水素又はC1〜C4−アルキルであり、
R31は、水素、C1〜C4−アルキル又はC3〜C7−シクロアルキルであり、
R32は、水素又はC1〜C4−アルキルであるか、又は
R31及びR32は、一緒になって、その両者が結合される窒素原子を含んで、アゼチジノ基であり、
R4は、水素であり、
R5は、水素であり、
R6は、水素であり、かつ
Xは、O(酸素)又はNHである、化合物並びにこれらの化合物の塩である。
【0052】
また、強調されるものは、式1a−1で示され、その式中、
R1は、C1〜C4−アルキル又はC3〜C7−シクロアルキルであり、
R2は、C1〜C4−アルキルであり、
R31は、C1〜C4−アルキル又はC3〜C7−シクロアルキルであり、
R32は、水素又はC1〜C4−アルキルであり、
R4は、水素であり、
R5は、水素であり、
R6は、水素であり、かつ
Xは、O(酸素)又はNHである、化合物並びにこれらの化合物の塩である。
【0053】
特に強調されるものは、式1a−1で示され、その式中、
R1は、C1〜C4−アルキルであり、
R2は、水素又はC1〜C4−アルキルであり、
R31は、C1〜C4−アルキルであり、
R32は、水素又はC1〜C4−アルキルであるか、又は
R31及びR32は、一緒になって、その両者が結合される窒素原子を含んで、アゼチジノ基であり、
R4は、水素であり、
R5は、水素であり、
R6は、水素であり、かつ
Xは、O(酸素)である、化合物並びにこれらの化合物の塩である。
【0054】
特に強調されるものは、式1a−1で示され、その式中、
R1は、C1〜C4−アルキルであり、
R2は、C1〜C4−アルキルであり、
R31は、C1〜C4−アルキルであり、
R32は、C1〜C4−アルキルであり、
R4は、水素であり、
R5は、水素であり、
R6は、水素であり、かつ
Xは、O(酸素)である、化合物並びにこれらの化合物の塩である。
【0055】
好ましい化合物の例は、式1aで示され、その式中、R1、R2、R31、R32、R4、R5及びXが、以下の第1表中に示される意味(Me=CH3、Et=C25)を有する、化合物並びにこれらの化合物の塩である。
【0056】
特に好ましい化合物の例は、式1a−1で示され、その式中、R1、R2、R31、R32、R4、R5及びXが、以下の第1表中に示される意味(Me=CH3、Et=C25)を有する、化合物並びにこれらの化合物の塩である。
【0057】
第1表
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
【表3】

【0060】
実施例で最終生成物として示される式1の化合物及び前記化合物の塩は殊に有利である。
【0061】
本発明による化合物は、相応の出発化合物から、例えば以下に示される反応式1(それは、一般式1の化合物及び一般式1a−1の化合物の合成を例示するものである)に従って合成することができる。合成を、当業者に公知の方法で、例えば反応式1に従う以下の実施例においてより詳細に記載されているように実施する。
【0062】
反応式1:
【化4】

【0063】
本発明による化合物は、式2、式2a又は式2a−1の相応のアミド出発化合物から、例えば前記の反応式1に従って合成することができる。その合成は、当業者に公知のようにして、例えば好適な出発化合物を、硫黄をアミド官能に転移する試薬、例えば五硫化リン(P25)、O,O−ジエチルジチオ−リン酸、硫化ホウ素、二硫化ケイ素、元素の硫黄又は、特にLawessonの試薬[2,4−ビス(4−メトキシフェニル)−2,4−ジチオキソ−1,3,2,4−ジチアジホスフェタン](例えばM.P.Cava,M.I.Levinson,Tetrahedron 1985,41,5061−5087に記載されている)で処理することによって、又はアミド官能のカルボニル酸素を硫黄に置き換えるのに知られる任意の他の方法によって実施される。
【0064】
該出発化合物は、例えばWO04/087701号から公知であるか、又は該化合物は、前記特許出願に一般的に概説されているように製造できるか、又は該化合物は、類似の方法工程を用いて製造できるか、又は該化合物は、以下の実施例に概説されるようにして公知の出発材料から製造することができる。
【0065】
優れた効果
本発明による化合物の優れた胃保護作用及び胃酸分泌阻害作用を動物実験モデルによる検査において示すことができる。実施例では、以下に記載するモデルで検査した本発明による式1の化合物に、これらの化合物の番号に相応する番号を付した。
【0066】
潅流されるラット胃に対する分泌阻害作用の試験
以下の第A表に、インビボでの、十二指腸内投与後の潅流されるラット胃のペンタガストリンにより刺激される酸分泌に対する本発明による式1の化合物の影響を示す。
【0067】
表A
【表4】

【0068】
方法
麻酔処理したラット(CDラット、メス、200〜250g;1.5g/kg i.m.ウレタン)の腹部を気管切開後に正中上腹部切開により開放し、かつPVCカテーテルを経口により食道に固定し、かつチューブの端部がちょうど胃管腔に設置されるように幽門を介してもう1つのカテーテルを固定した。幽門から通るカテーテルは側方の開放部を通って外側の右腹壁に通じていた。
【0069】
完全に洗浄した後(約50〜100ml)、暖かい(37℃)生理NaCl溶液を連続的に胃に通過させた(0.5ml/分、pH6.8〜6.9;Braun−Unita I)。pH(pHメーター632、ガラス電極EA147;φ=5mm、Metrohm)及び、新たに調製した0.01NのNaOH溶液で滴定し、pH7(Dosimat 665 Metrohm)とすることにより、分泌されたHClをそのつど15分間隔で回収された流出液において測定した。
【0070】
胃液分泌を、同時に、手術(つまり2つの予備的なフラクションの測定後)の終了の約30分後に静脈内ペンタガストリン(左大腿静脈)の1μg/kg(=1.65ml/h)の連続的な注入により刺激した。試験すべき物質を十二指腸内に液体体積2.5ml/kgでペンタガストリンの連続的な注入の開始60分後に投与した。
【0071】
動物の体温を赤外線の照射及び加熱パッドにより一定の37.8〜38℃に維持した(自動、直腸温度センサによる無段制御)。
【0072】
発明の実施様式
以下の実施例は本発明をより詳細に説明するものであり、それを制限するものではない。製造方法が明記されていない他の式1の化合物は、同様に又は当業者に公知の方法で慣用の処理技術を用いて製造できる。例として特に名称を記載した化合物及びこれらの化合物の塩は、本発明の有利な対象である。省略形のminは分を表し、hは時間を表し、m.p.は融点を表し、かつeeはエナンチオマー過剰を表す。
【0073】
更に以下の略語を、指示された化学物質に使用する:
Lawessonの試薬 [2,4−ビス(4−メトキシフェニル)−2,4−ジチオキソ−1,3,2,4−ジチアジホスフェタン]
(S)−Xyl−P−Phos (S)−4,4′−ビス−[ビス−(3,5−ジメチル−フェニル)−ホスファニル]−2,6,2′,6′−テトラメトキシ−[3,3′]ビピリジニル
(S)−DAIPEN (2S)−(+)−1,1−ビス(4−メトキシフェニル)−3−メチル−1,2−ブタンジアミン
DIAD ジイソプロピルアゾジカルボキシレート
THF テトラヒドロフラン
DMF ジメチルホルムアミド
Et2O ジエチルエーテル
DIPEA ジイソプロピルエチルアミン
TBTU O−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N′,N′−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート
【0074】
I. 式1の最終化合物
1. (S)−2,3−ジメチル−8−フェニル−3,6,7,8−テトラヒドロ−クロメノ[7,8−d]イミダゾール−5−カルボチオ酸 ジメチルアミド
1.1g(3.7ミリモル)の(S)−2,3−ジメチル−8−フェニル−3,6,7,8−テトラヒドロ−クロメノ[7,8−d]イミダゾール−5−カルボン酸 ジメチルアミドを30mlのトルエン中に溶かした溶液を、1.6g(4.1ミリモル)のLawessonの試薬で処理し、そして該反応混合物を一晩100℃に加熱した。溶剤を真空中で除去し、その残留物をジクロロメタン(100ml)中に溶解させ、そして重炭酸ナトリウム飽和溶液50mlで洗浄した。層を分離させ、有機層を、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、そして蒸発させる。シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール=98:2)による精製と残留物のジエチルエーテルからの結晶化の後に、0.8g(62%)の表題化合物が黄色の固体(融点246〜250℃)として単離された。
【0075】
2. 2,3−ジメチル−8−フェニル−3,6,7,8−テトラヒドロ−クロメノ[7,8−d]イミダゾール−5−カルボチオ酸 シクロプロピルアミド
0.18g(0.49ミリモル)の2,3−ジメチル−8−フェニル−3,6,7,8−テトラヒドロ−クロメノ[7,8−d]イミダゾール−5−カルボン酸 シクロプロピルアミド及び0.12g(0.28ミリモル)のLawessonの試薬をトルエン(30ml)中に入れた混合物を、90℃で2時間加熱した。室温に冷却した後に、反応物を重炭酸ナトリウム飽和溶液で洗浄し、水層をジクロロメタン(3×20ml)で抽出した。有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、そして真空中で濃縮した。残留物を、シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール=15:1)によって精製し、そしてジエチルエーテルから結晶化させることで、0.12g(63%)の表題化合物が白色の固体(融点183〜185℃)として得られた。
【0076】
3. 2−シクロプロピル−3−メチル−8−フェニル−3,6,7,8−テトラヒドロ−クロメノ[7,8−d]イミダゾール−5−カルボチオ酸 ジメチルアミド
0.18g(0.48ミリモル)の2−シクロプロピル−3−メチル−8−フェニル−3,6,7,8−テトラヒドロ−クロメノ[7,8−d]イミダゾール−5−カルボン酸 ジメチルアミド及び0.11g(0.26ミリモル)のLawessonの試薬をトルエン(30ml)中に入れた混合物を、90℃で2時間加熱した。室温に冷却した後に、反応物を重炭酸ナトリウム飽和溶液で洗浄し、水層をジクロロメタン(3×20ml)で抽出した。有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、そして真空中で濃縮した。残留物を、シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール=15:1)によって精製し、そしてジエチルエーテルから結晶化させることで、0.1g(53%)の表題化合物が白色の固体(融点272〜274℃)として得られた。
【0077】
4. 2,3−ジメチル−8−フェニル−6,7,8,9−テトラヒドロ−3H−イミダゾ[4,5−h]キノリン−5−カルボチオ酸 ジメチルアミド
0.2g(0.57ミリモル)の2,3−ジメチル−8−フェニル−6,7,8,9−テトラヒドロ−3H−イミダゾ[4,5−h]キノリン−5−カルボン酸 ジメチルアミドを5mlの1,2−ジメトキシエタン中に溶かした溶液を、0.3g(0.74ミリモル)のLawessonの試薬で処理し、そして該反応混合物を一晩50℃に加熱した。該反応混合物を、ジクロロメタンで希釈し、そして重炭酸ナトリウム飽和溶液で洗浄した。層を分離させ、有機層を、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、そして蒸発させる。シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル)による精製とジエチルエーテル/アセトンからの結晶化によって、0.1g(48%)の表題化合物が固体(融点178〜180℃)として得られた。
【0078】
5. (S)−2−メチル−8−フェニル−3,6,7,8−テトラヒドロ−クロメノ[7,8−d]イミダゾール−5−カルボチオ酸 ジメチルアミド
150mg(0.44ミリモル)の(S)−2−メチル−8−フェニル−3,6,7,8−テトラヒドロ−クロメノ[7,8−d]イミダゾール−5−カルボン酸 ジメチルアミドをトルエン(10ml)中に入れた懸濁液に、90mg(0.22ミリモル)のLawessonの試薬を添加し、そして該反応物を8時間還流させた。室温に冷却した後に、反応混合物を、重炭酸ナトリウム飽和溶液で処理し、そしてクロロホルム(3×20ml)で抽出した。有機層を無水の硫酸マグネシウム上で乾燥させ、そして真空中で濃縮した。残留物を、シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール=15:1)によって精製することで、107mg(63%)の表題化合物が黄色の固体(融点178〜183℃)として得られた。
【0079】
6. (S)−2,3−ジメチル−8−フェニル−3,6,7,8−テトラヒドロ−クロメノ[7,8−d]イミダゾール−5−カルボチオ酸 メチルアミド
0.2g(0.59ミリモル)の(S)−2,3−ジメチル−8−フェニル−3,6,7,8−テトラヒドロ−クロメノ[7,8−d]イミダゾール−5−カルボン酸 メチルアミド及び0.12g(0.3ミリモル)のLawessonの試薬をトルエン(30ml)中に入れた混合物を、95℃で2時間加熱した。室温に冷却した後に、反応物を重炭酸ナトリウム飽和溶液で洗浄し、水層をジクロロメタン(3×20ml)で抽出した。有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、そして真空中で濃縮した。残留物を、シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール=15:1)によって精製し、そしてジエチルエーテルから結晶化させることで、0.13g(70%)の表題化合物が白色の固体(融点179〜183℃)として得られた。
【0080】
7. 1−アゼチジン−1−イル−1−((S)−2,3−ジメチル−8−フェニル−3,6,7,8−テトラヒドロ−クロメノ[7,8−d]イミダゾール−5−イル)−メタンチオン
0.15g(0.42ミリモル)の(1−アゼチジン−1−イル−1−((S)−2,3−ジメチル−8−フェニル−3,6,7,8−テトラヒドロ−クロメノ[7,8−d]イミダゾール−5−イル)−メタノン及び0.08g(0.21ミリモル)のLawessonの試薬をトルエン(30ml)中に入れた混合物を、95℃で5時間加熱した。室温に冷却した後に、反応物を重炭酸ナトリウム飽和溶液で洗浄し、水層をジクロロメタン(3×20ml)で抽出した。有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、そして真空中で濃縮した。残留物を、シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール=15:1)によって精製し、そしてジエチルエーテルから結晶化させることで、0.06g(46%)の表題化合物が白色の固体(融点242〜245℃)として得られた。
【0081】
8. 2,3−ジメチル−8−フェニル−3,6,7,8−テトラヒドロ−クロメノ[7,8−d]イミダゾール−5−カルボチオ酸 ジメチルアミド
1.6g(4.5ミリモル)の2,3−ジメチル−8−フェニル−3,6,7,8−テトラヒドロ−クロメノ[7,8−d]イミダゾール−5−カルボン酸 ジメチルアミドを10mlのトルエン及び2mlのテトラヒドロフラン中に入れた懸濁液を、960mg(2.3ミリモル)のLawessonの試薬で処理し、そして該反応物を一晩90℃に加熱した。室温に冷却した後に、該反応混合物を、重炭酸ナトリウム飽和水溶液中に注ぎ、そしてジクロロメタン(3×)で抽出した。合した有機抽出物を、無水の硫酸マグネシウム上で乾燥させ、そして真空中で蒸発させた。シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール=20:1)による精製と残留物の熱酢酸エチルからの結晶化の後に、0.55g(34%)の表題化合物が白色の固体(融点229〜231℃)として単離された。
【0082】
II. 出発材料
A. 触媒のRuCl2[(S)−Xyl−P−Phos][(S)−DAIPEN]の製造:
(ベンゼン)ジクロロルテニウム二量体(CAS37366−09−9、1当量)及び(S)−Xyl−P−Phos(CAS443347−10−2、Strem Chemicals社とAlfa Aesar社から市販されている、1.03当量)を、排気されアルゴンで満たされたシュレンクフラスコ中に入れた。無水の脱ガスされたDMF(1ミリモルあたり2ml)を添加し、そしてそのフラスコを油浴に入れて、105℃に予熱した。反応物を、105℃で1.5時間にわたり撹拌した。(S)−DAIPEN(CAS148369−91−9、Strem Chemicals社から市販されている、1.1当量)を添加し、そして該反応物を室温で3時間撹拌した。この段階で、反応混合物の試料を、クロロホルム−d中に希釈し、そして31P−NMR分光法によって分析した。所望の錯体と小過剰の遊離の配位子の2つの二重項だけが見られた。DMFを真空下(要加熱)で蒸発させ、そして残留物を、無水の脱ガスされたジクロロメタン(1ミリモルあたり5〜10ml)中に溶解させ、そしてシュレンクフィルタのシリカゲルカラムの頂部にアルゴン下で入れた。生成物を、ジクロロメタン/メチル t−ブチルエーテル=1:1(容量/容量)で溶出させた。澄明な黄色の溶液を、シュレンクフラスコ中に回収し、溶剤を蒸発させることで、黄色/緑色の固体が得られ、それを更に真空下で一晩乾燥させた。単離された収率は、90%(NoyoriによってAngew.Chem.1998,110,1792−1796に記載される一般的手法の適応)であった。
【0083】
B. 4−ベンジルオキシ−6−ブロモ−2−メチル−1−(2−トリメチルシラニル−エトキシメチル)−1H−ベンゾイミダゾール
36.5g(115ミリモル)の4−ベンジルオキシ−6−ブロモ−2−メチル−1H−ベンゾイミダゾール及び17.7ml(138ミリモル)のトリエチルアミンをジメチルホルムアミド−ジクロロメタンの混合物(10:1)中に入れた懸濁液に、24.5ml(138ミリモル)の(2−クロロメトキシ−エチル)−トリメチルシランをゆっくりと滴加し、そしてその懸濁液を室温で5時間撹拌した。該反応物を水に注ぎ、そしてジクロロメタンで3回抽出した。回収された有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、そして真空中で濃縮した。残留物を、シリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(トルエン/ジオキサン=9:1)によって精製することで、19.5g(39%)の表題化合物が白色の固体(融点94〜95℃)として得られた。
【0084】
C. 7−ベンジルオキシ−2−メチル−3−(2−トリメチルシラニル−エトキシメチル)−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸 ジメチルアミド
19.5g(43.6ミリモル)の4−ベンジルオキシ−6−ブロモ−2−メチル−1−(2−トリメチルシラニル−エトキシメチル)−1H−ベンゾイミダゾール、4.6g(17.9ミリモル)のトリフェニルホスフィン、1.5g(6.5ミリモル)の酢酸パラジウム(II)及び218ml(436ミリモル)のジメチルアミン(THF中2M)をオートクレーブに移し、そして120℃で60時間カルボニル化させた(6バールのCO2)。触媒を濾過分離し、そして濾液を真空中で濃縮した。残留物を、シリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(トルエン/ジオキサン=2:1)によって精製することで、13.8g(72%)の表題化合物が白色の固体(融点118〜120℃)として得られた。
【0085】
D. 7−ヒドロキシ−2−メチル−3−(2−トリメチルシラニル−エトキシメチル)−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸 ジメチルアミド
13.7g(31.1ミリモル)の7−ベンジルオキシ−2−メチル−3−(2−トリメチルシラニル−エトキシメチル)−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸 ジメチルアミドを1.2Lのエタノール中に溶かした溶液を、1.4gの10%Pd/C上でオートクレーブ(5バールのH2)中で室温で16時間水素化させた。触媒を濾過分離し、そして濾液を真空中で濃縮した。残留物をジイソプロピルエーテルから結晶化させることで、10.1g(93%)の表題化合物が白色の固体(融点154〜156℃)として得られた。
【0086】
E. 7−ヒドロキシ−2−メチル−6−(3−オキソ−3−フェニルプロピル)−3−(2−トリメチルシラニル−エトキシメチル)−3H−ベンズイミダゾール−5−カルボン酸 ジメチルアミド
10g(28.6ミリモル)の7−ヒドロキシ−2−メチル−3−(2−トリメチルシラニル−エトキシメチル)−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸 ジメチルアミドを600mlのジクロロメタン中に溶かした溶液を、6.4g(34.3ミリモル)のN,N−ジメチルメチレンインモニウムヨージドで処理し、そして該反応物を室温で3時間撹拌した。該反応混合物を、炭酸水素ナトリウム飽和溶液中に注ぎ、そしてジクロロメタンで2回抽出した。有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、そして真空中で濃縮した。残留物(11.3g;98%)を、トルエン(250ml)中に懸濁させ、そして7.2g(41.6ミリモル)のアセトフェノンピロリジンを添加した。該懸濁液を3時間還流させ、そして室温に冷却した後に、溶剤を真空中で濃縮した。残留物を、シリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル/石油エーテル=5:1)によって精製することで、10.6gのベージュ色の固体が得られ、それをアセトン中に溶解させて、フマル酸で処理した。沈殿物を濾過し、ジクロロメタン−メタノール中に溶解させ、そして該溶液を、1MのNaOH溶液で中和した。層を分離させ、有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、そして真空中で濃縮した。残留物から、9.7g(73%)の表題化合物が褐色の固体(融点192〜194℃)として得られた。
【0087】
F. (3R)−7−ヒドロキシ−6−(3−ヒドロキシ−3−フェニル−プロピル)−2−メチル−3−(2−トリメチルシラニル−エトキシメチル)−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸 ジメチルアミド
アルゴンで満たしたフラスコ中で、6.4g(13.2ミリモル)の7−ヒドロキシ−2−メチル−6−(3−オキソ−3−フェニル−プロピル)−3−(2−トリメチルシラニル−エトキシメチル)−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸 ジメチルアミドを、9.3mlのイソプロパノール、2.7mlの水、10mlのt−ブタノール及び14.6mlの1Mのt−ブチレート溶液中に溶解させた。33mgの水素化触媒RuCl2[(S)−Xyl−P−Phos][(S)−DAIPEN]を添加し、そして該混合物をオートクレーブに移し、そして65℃及び80バールの圧力で20時間水素化させた。室温に冷却し、そして水素圧を解放した後に、該反応混合物を真空中で濃縮した。残留物を、シリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール=15:1)によって精製することで、4.9g(77%;ee94%)の表題化合物が白色の固体(融点142〜143℃)として得られた。
【0088】
G. (8S)−2−メチル−8−フェニル−3−(2−トリメチルシラニル−エトキシメチル)−3,6,7,8−テトラヒドロ−クロメノ[7,8−d]イミダゾール−5−カルボン酸 ジメチルアミド
3.3g(6.8ミリモル)の(3R)−7−ヒドロキシ−6−(3−ヒドロキシ−3−フェニル−プロピル)−2−メチル−3−(2−トリメチルシラニル−エトキシメチル)−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸 ジメチルアミドを100mlのテトラヒドロフラン中に溶かした溶液に、5.2g(19.7ミリモル)のトリフェニルホスフィン及び4ml(20.5ミリモル)のDIADを添加し、そして該混合物を室温で90分間撹拌した。該反応物を真空中で濃縮し、残留物を酢酸エチル中で溶解させ、そして250mlの塩化アンモニウム飽和溶液で洗浄した。相分離後に、水層を酢酸エチルで2回抽出した。回収された有機抽出物を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、そして真空中で濃縮した。残留物を、シリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(トルエン/酢酸エチル=1:1)によって精製することで、3.0g(98%)の表題化合物がベージュ色の固体として得られた。
【0089】
1H−NMR(DMSOd6,200MHz):δ=−0.1(s,9H,3Me),0.8(t,2H,CH2SiMe3),2.0−2.3(m,2H),2.5(s,3H,Me),2.78(s,3H,NMe),3.03(s,3H,NMe),3.3(s,3H,Me),3.52(t,2H,OCH2),5.21(dd,1H),5.51(s,2H,NCH2O),7.02(s,1H),7.31−7.70(m,5H,Ph)
H. (S)−2−メチル−8−フェニル−3,6,7,8−テトラヒドロ−クロメノ[7,8−d]イミダゾール−5−カルボチオ酸 ジメチルアミド シュウ酸
3.6g(7.7ミリモル)の(8S)−2−メチル−8−フェニル−3−(2−トリメチルシラニル−エトキシメチル)−3,6,7,8−テトラヒドロ−クロメノ[7,8−d]イミダゾール−5−カルボン酸 ジメチルアミドを30mlのジクロロメタン中に溶かした溶液を、0℃に冷却し、次いで3.9ml(30.9ミリモル)のBF3.Et2Oで処理した。該反応混合物を室温で20時間にわたって撹拌した。溶剤を真空中で除去し、残留物を、シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール=10:1)によって精製し、そしてアセトン中のシュウ酸(1.0当量)で処理することにより結晶化させることで、930mg(28%)の表題化合物がシュウ酸塩(融点216℃)として得られた。
【0090】
I. 8−メトキシ−2,3−ジメチル−8−フェニル−3,6,7,8−テトラヒドロ−クロメノ[7,8−d]イミダゾール−5−カルボン酸 エチルエステル
70ml(570ミリモル)の2,2−ジメトキシプロパンを、13.9g(37.9ミリモル)の7−ヒドロキシ−2,3−ジメチル−6−(3−オキソ−3−フェニル−プロピル)−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸 エチルエステルをジクロロメタン(170ml)中に溶かした溶液に添加した。3.2ml(49.3ミリモル)のメタンスルホン酸をゆっくりと添加した後に、得られた赤色の溶液を16時間還流させた。室温に冷却した後に、該反応混合物を、170mlの炭酸水素ナトリウム飽和溶液及び140mlのジクロロメタンの混合物中に注いだ。相を分離させ、そして水層をジクロロメタン(2×50ml)で抽出した。回収された有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、そして真空中で濃縮した。残留物をジイソプロピルエーテルから結晶化させることで、13.2g(92%)の表題化合物がベージュ色の固体(融点176〜178℃)として得られた。
【0091】
J. 8−メトキシ−2,3−ジメチル−8−フェニル−3,6,7,8−テトラヒドロ−クロメノ[7,8−d]イミダゾール−5−カルボン酸
13.1g(34.4ミリモル)の8−メトキシ−2,3−ジメチル−8−フェニル−3,6,7,8−テトラヒドロ−クロメノ[7,8−d]イミダゾール−5−カルボン酸 エチルエステルをメタノール(290ml)中に入れた懸濁液に、35mlの水酸化カリウム(水中2M)を添加し、そして該混合物を55℃に16時間加熱した。室温に冷却した後に、溶剤を真空中で除去し、そして残留物を300mlの水中に懸濁させた。該懸濁液を、2MのHCl水溶液の添加によってpH5〜6に調整し、そして該溶液を室温で1時間撹拌した。沈殿物を濾過によって単離し、そして真空中で乾燥させることで、12g(99%)の表題化合物がベージュ色の固体(融点288〜289℃)として得られた。
【0092】
K. 8−メトキシ−2,3−ジメチル−8−フェニル−3,6,7,8−テトラヒドロ−クロメノ[7,8−d]イミダゾール−5−カルボン酸 メチルアミド
6g(17ミリモル)の8−メトキシ−2,3−ジメチル−8−フェニル−3,6,7,8−テトラヒドロ−クロメノ[7,8−d]イミダゾール−5−カルボン酸をジメチルホルムアミド(60ml)中に溶かした溶液を、6.5g(20.4ミリモル)のTBTU、7.3ml(42.6ミリモル)のDIPEAで処理し、そして室温で1時間撹拌した。11.5ml(29ミリモル)のメチルアミン(THF中2M)を添加し、そして該反応混合物を室温で2時間撹拌した。該混合物を水(400ml)中に注ぎ、沈殿物を濾過し、そして真空中で乾燥させることで、5.2g(84%)の表題化合物が、白色の固体(融点237〜239℃)として得られた。
【0093】
L. 7−ヒドロキシ−2,3−ジメチル−6−(3−オキソ−3−フェニル−プロピル)−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸 メチルアミド
5.1g(14ミリモル)の8−メトキシ−2,3−ジメチル−8−フェニル−3,6,7,8−テトラヒドロ−クロメノ[7,8−d]イミダゾール−5−カルボン酸 エチルアミドをTHF(75ml)中に入れた懸濁液を、1Nの塩酸(30ml)で処理し、そして該混合物を3時間にわたり50℃に加熱した。5℃に冷却した後に、該反応混合物を水(100ml)中に慎重に注ぎ、そして2MのNaOHで中和した。沈殿物を濾過し、そして真空中で乾燥させることで、4.4g(90%)の表題化合物が白色の固体(融点284〜285℃)として得られた。
【0094】
M. (3R)−7−ヒドロキシ−6−(3−ヒドロキシ−3−フェニル−プロピル)−2,3−ジメチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸 メチルアミド
アルゴンで満たしたフラスコ中で、4.4g(12.5ミリモル)の7−ヒドロキシ−2,3−ジメチル−6−(3−オキソ−3−フェニル−プロピル)−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸 メチルアミドを、イソプロパノール(30ml)、水(5ml)及び15mlの1Mのt−ブチレート溶液中に懸濁した。31mgの水素化触媒RuCl2[(S)−Xyl−P−Phos][(S)−DAIPEN]を添加し、そして該懸濁液をオートクレーブに移し、そして65℃及び80バールの圧力で3日間水素化させた。室温に冷却し、そして水素圧を解放した後に、該反応混合物を真空中で濃縮した。残留物を、シリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール=10:1)によって精製することで、2.2g(52%)の表題化合物が淡緑色の固体(融点247〜249℃)として得られた。
【0095】
N. (8S)−2,3−ジメチル−8−フェニル−3,6,7,8−テトラヒドロ−クロメノ[7,8−d]イミダゾール−5−カルボン酸 メチルアミド
1g(2.8ミリモル)の(3R)−7−ヒドロキシ−6−(3−ヒドロキシ−3−フェニル−プロピル)−2,3−ジメチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸 メチルアミド及び2.1g(8.1ミリモル)のトリフェニル−ホスフィンを50mlのテトラヒドロフラン中に入れた懸濁液に、1.6ml(8.4ミリモル)のDIADを添加し、そして該懸濁液を室温で一晩撹拌した。該反応物を真空中で濃縮し、そして残留物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール=10:1)によって精製することで、0.7g(75%;ee75%)の表題化合物が白色の固体(290〜291℃)として得られた。
【0096】
O. 1−アゼチジン−1−イル−1−(8−メトキシ−2,3−ジメチル−8−フェニル−3,6,7,8−テトラヒドロ−クロメノ[7,8−d]イミダゾール−5−イル)−メタノン
6g(17ミリモル)の8−メトキシ−2,3−ジメチル−8−フェニル−3,6,7,8−テトラヒドロ−クロメノ[7,8−d]イミダゾール−5−カルボン酸をジメチルホルムアミド(60ml)中に溶かした溶液を、6.5g(20.4ミリモル)のTBTU、7.3ml(42.6ミリモル)のDIPEAで処理し、そして室温で1時間撹拌した。2ml(29ミリモル)のアゼチジンを添加し、そして該反応混合物を室温で2時間撹拌した。該混合物を水(400ml)中に注ぎ、沈殿物を濾過し、そして真空中で乾燥させることで、4.8g(72%)の表題化合物が、ベージュ色の固体(147〜150℃)として得られた。
【0097】
P. 3−[6−(1−アゼチジン−1−イル−メタノイル)−4−ヒドロキシ−1,2−ジメチル−1H−ベンゾイミダゾール−5−イル]−1−フェニル−プロパン−1−オン
4.7g(12ミリモル)の1−アゼチジン−1−イル−1−(8−メトキシ−2,3−ジメチル−8−フェニル−3,6,7,8−テトラヒドロ−クロメノ[7,8−d]イミダゾール−5−イル)−メタノンをTHF(75ml)中に入れた懸濁液を、1Nの塩酸(30ml)で処理し、そして該混合物を2時間にわたり50℃に加熱した。室温に冷却した後に、該反応混合物を水(100ml)中に慎重に注ぎ、そして2MのNaOHで中和した。沈殿物を濾過し、そして真空中で乾燥させることで、2.9g(65%)の表題化合物が白色の固体(融点242〜243℃)として得られた。
【0098】
Q. (3R)−1−アゼチジン−1−イル−1−[7−ヒドロキシ−6−(3−ヒドロキシ−3−フェニル−プロピル)−2,3−ジメチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル]−メタノン
アルゴンで満たしたフラスコ中で、2.8g(7.6ミリモル)の3−[6−(1−アゼチジン−1−イル−メタノイル)−4−ヒドロキシ−1,2−ジメチル−1H−ベンゾイミダゾール−5−イル]−1−フェニル−プロパン−1−オンを、イソプロパノール(18.2ml)、水(3ml)及び9.1mlの1Mのt−ブチレート溶液中に懸濁させた。22mgの水素化触媒RuCl2[(S)−Xyl−P−Phos][(S)−DAIPEN]を添加し、そして該混合物をオートクレーブに移し、そして65℃及び80バールの圧力で2日間水素化させた。室温に冷却し、そして水素圧を解放した後に、該反応混合物を真空中で濃縮した。残留物を、シリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール=10:1)によって精製することで、0.93g(32%;ee92%)の表題化合物がベージュ色の固体(融点265〜266℃)として得られた。
【0099】
R. (8S)−1−アゼチジン−1−イル−1−(2,3−ジメチル−8−フェニル−3,6,7,8−テトラヒドロ−クロメノ[7,8−d]イミダゾール−5−イル)−メタノン
0.8g(2.2ミリモル)の(3R)−1−アゼチジン−1−イル−1−[7−ヒドロキシ−6−(3−ヒドロキシ−3−フェニル−プロピル)−2,3−ジメチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル]−メタノン及び1.6g(6.3ミリモル)のトリフェニル−ホスフィンを40mlのテトラヒドロフラン中に入れた懸濁液に、1.3ml(6.5ミリモル)のDIADを添加し、そして該混合物を室温で一晩撹拌した。沈殿物を濾過し、そして40℃で真空中で乾燥させることで、0.6g(76%;ee90%)の表題化合物が白色の固体(融点241〜242℃)として得られた。
【0100】
産業上利用可能性
式1、式1a及び式1a−1の化合物及びそれらの薬理学的に認容性の塩(=本発明による有効化合物)は、それらを産業上利用可能にする有用な薬理学的特性を有する。殊に、式1の化合物及びその塩は、温血動物、殊にヒトにおいて、胃酸分泌の著しい阻害及び優れた胃及び腸の保護作用を示す。本願明細書中において、本発明による有効化合物は、作用の高い選択性、作用の有利な持続、殊に良好な腸内活性、重篤な副作用の不在及び広い治療範囲により特徴付けられる。
【0101】
"胃及び腸の保護"とは、本願明細書中において、胃腸疾患、殊に、例えば微生物(例えばヘリコバクターピロリ)、細菌毒素、医薬品(例えばある種の抗炎症薬及び抗リウマチ薬、例えばNSAID類及びCOX阻害剤類)、化学薬品(例えばエタノール)、胃酸又はストレス環境により引き起こされ得る胃腸炎症疾患及び損傷(例えば胃潰瘍、消化性潰瘍、例えば消化性潰瘍出血、十二指腸潰瘍、胃炎、胃酸過多又は医薬品に関連する機能性消化不良)の予防及び治療の意味であると解釈される。"胃及び腸の保護"とは、一般知識によれば、制限されないが胸やけ及び/又は逆流が含まれる症状の胃食道逆流疾患(GERD)が含まれると解される。
【0102】
その優れた特性において、本発明による有効化合物は、驚異的にも、抗潰瘍発生特性及び抗分泌特性が確定された種々のモデルにおける先行技術から公知の化合物に明確に勝ることが判明した。その特性のため、本発明による有効化合物は、ヒト医学及び獣医学における使用において顕著に適当であり、その際、前記化合物及び塩は殊に胃及び/又は腸の疾患の治療及び/又は予防のために使用される。
【0103】
従って本発明の他の課題は、上記疾患の治療及び/又は予防において使用するための本発明による有効化合物である。
【0104】
本発明は同様に、前記の疾患の治療及び/又は予防のために使用される医薬品の製造のための、本発明による有効化合物の使用に関する。
【0105】
本発明は更に、上記疾患を治療及び/又は予防するための本発明による有効化合物の使用を含む。
【0106】
本発明の更なる態様は、1種又は複数種の本発明による有効化合物を含有する医薬品である。
【0107】
医薬品は、有利に自体公知の方法及び当業者に公知の方法によって製造される。医薬品として、本発明による有効化合物(=有効化合物)は、それ自体で、又は有利には適当な医薬品助剤又は賦形剤と組み合わせて、錠剤、被覆錠剤、カプセル剤、坐剤、パッチ剤(例えばTTS)、乳剤、懸濁剤又は液剤の形で使用され、その際、有効化合物の含有率は有利には0.1〜95%であり、かつ助剤及び賦形剤の適当な選択によって、有効化合物に厳密に適合された、及び/又は作用の所望の開始及び/又は持続に厳密に適合された医薬品投与形(例えば遅延放出形又は腸溶形)を得ることができる。
【0108】
所望の医薬品製剤のために適当な助剤及び賦形剤は、当業者の専門知識に基づき当業者に公知である。液剤、ゲル形成剤、坐剤基剤、錠剤助剤及び他の活性化合物賦形剤の他に、例えば、酸化防止剤、分散剤、乳化剤、消泡剤、矯臭剤、保存剤、可溶化剤、着色剤、又は殊に浸透促進剤及び錯化剤(例えばシクロデキストリン)を使用することができる。
【0109】
活性化合物を、経口的、非経口的又は経皮的に投与することができる。
【0110】
一般にヒト医学において、経口投与の場合、約0.01〜約20、有利には0.05〜5、特に0.1〜1.5mg/体重kgの日用量で、所望の結果を達成するために適切である場合には複数の、有利には2〜4の個別の投与量の形で活性化合物を投与することが有利であることが判明した。非経口的治療の場合には、類似の、又は(殊に活性化合物を静脈投与する場合には)概してより低い用量を使用することができる。当業者は自身の専門知識に基づいて、そのつど必要とされる活性化合物の最適な用量及び投与方法を容易に決定することができる。
【0111】
本発明による有効化合物及び/又はその塩を上記疾患の治療のために使用すべき場合には、医薬製剤は、他の薬剤の群の一つ又はそれ以上の薬理学的活性成分、例えば:トランキライザー(例えばベンゾジアゼピンの群からのもの、例えばジアゼパム)、鎮痙薬(例えばビエタミベリン又はカミロフィン)、抗コリン作用薬(例えばオキシフェンシクリミン又はフェンカルバミド)、局所麻酔薬(例えばテトラカイン又はプロカイン)及び場合によっては更に酵素、ビタミン又はアミノ酸を含有することもできる。
【0112】
本願明細書中で強調すべきであるものは、特に、本発明による有効化合物と、酸の分泌を抑制する医薬品、例えばH2ブロッカー(例えばシメチジン、ラニチジン)、H+/KH+ATPase阻害薬(例えばオメプラゾール、パントプラゾール)との組合せ、又は更に、いわゆる抹消性抗コリン作用薬(例えばピレンゼピン、テレンゼピン)との組合せ、又は、主な作用を付加的もしくはさらに付加的な意味で増強し、かつ/又は副作用を排除もしくは低減することを目的としたガストリン拮抗薬との組合せ、又は更に、ヘリコバクターピロリを制御するための抗菌活性物質(例えばセファロスポリン、テトラサイクリン、ペニシリン、マクロライド、ニトロイミダゾール又はそれとは別にビスマス塩)との組合わせである。挙げることができる適当な抗菌補助成分は、例えばメズロシリン、アンピシリン、アモキシシリン、セファロチン、セフォキシチン、セフォタキシム、イミペネム、ゲンタマイシン、アミカシン、エリスロマイシン、シプロフロキサシン、メトロニダゾール、クラリスロマイシン、アジスロマイシン及びこれらの組合せ(例えばクラリスロマイシン+メトロニダゾール)である。
【0113】
本発明による有効化合物はその優れた胃及び腸の保護作用の観点で、一定の潰瘍発生に有効であることが公知である医薬品(例えば特定の抗炎症薬及び抗リウマチ薬、例えばNSAID類)との自由な、又は固定された組合せのために適切である。更に、式1の化合物は、運動性変性剤との自由な、又は固定された組合せのために適切である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1
【化1】

[式中、
R1は、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、C1〜C4−アルキル、C3〜C7−シクロアルキル、C3〜C7−シクロアルキル−C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ、C1〜C4−アルコキシ−C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシカルボニル、C2〜C4−アルケニル、C2〜C4−アルキニル、フルオロ−C1〜C4−アルキル、ヒドロキシ−C1〜C4−アルキル又はモノ−もしくはジ−C1〜C4−アルキルアミノであり、
R2は、水素、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ、C1〜C4−アルコキシ−C1〜C4−アルキル、アリール、C3〜C7−シクロアルキル、C3〜C7−シクロアルキル−C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシカルボニル、モノ−もしくはジ−C1〜C4−アルキルアミノ−C1〜C4−アルキルカルボニル、ヒドロキシ−C1〜C4−アルキル又はフルオロ−C2〜C4−アルキルであり、
R31は、水素、ヒドロキシル、C1〜C7−アルキル、C3〜C7−シクロアルキル、ヒドロキシ−C1〜C4−アルキル又はC1〜C4−アルコキシ−C1〜C4−アルキルであり、かつ
R32は、水素、C1〜C7−アルキル、C3〜C7−シクロアルキル、ヒドロキシ−C1〜C4−アルキル又はC1〜C4−アルコキシ−C1〜C4−アルキルであるか、又は
R31及びR32は、一緒になって、その両者が結合される窒素原子を含んで、ピロリジノ基、ヒドロキシ−ピロリジノ基、アジリジノ基、アゼチジノ基、ピペリジノ基、ピペラジノ基、N−C1〜C4−アルキルピペラジノ基又はモルホリノ基であり、
Xは、O(酸素)又はNHであり、かつ
Arは、R4、R5、R6及びR7によって置換された、フェニル、ナフチル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、1,2,3−トリアゾリル、インドリル、ベンゾイミダゾリル、フリル、ベンゾフリル、チエニル、ベンゾチエニル、チアゾリル、イソキサゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、キノリニル及びイソキノリニルからなる群から選択される、単環式もしくは二環式の芳香族の残基であり、その際、
R4は、水素、C1〜C4−アルキル、ヒドロキシ−C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ、C2〜C4−アルケニルオキシ、C1〜C4−アルキルカルボニル、カルボキシ、C1〜C4−アルコキシカルボニル、カルボキシ−C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシカルボニル−C1〜C4−アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、アリール、アリール−C1〜C4−アルキル、アリール−オキシ、アリール−C1〜C4−アルコキシ、トリフルオロメチル、ニトロ、アミノ、モノ−もしくはジ−C1〜C4−アルキルアミノ、C1〜C4−アルキルカルボニルアミノ、C1〜C4−アルコキシカルボニルアミノ、C1〜C4−アルコキシ−C1〜C4−アルコキシカルボニルアミノ又はスルホニルであり、
R5は、水素、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ、C1〜C4−アルコキシカルボニル、ハロゲン、トリフルオロメチル又はヒドロキシであり、
R6は、水素、C1〜C4−アルキル又はハロゲンであり、かつ
R7は、水素、C1〜C4−アルキル又はハロゲンであり、かつ
アリールは、フェニル又は、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ、カルボキシ、C1〜C4−アルコキシカルボニル、ハロゲン、トリフルオロメチル、ニトロ、トリフルオロメトキシ、ヒドロキシ及びシアノの群からの1個、2個もしくは3個の同一又は異なる置換基で置換されたフェニルである]で示される化合物並びにそれらの塩。
【請求項2】
式1で示され、その式中、
R1は、水素、C1〜C4−アルキル、C3〜C7−シクロアルキル又はフルオロ−C1〜C4−アルキルであり、
R2は、水素、C1〜C4−アルキル又はC1〜C4−アルコキシ−C1〜C4−アルキルであり、
R31は、水素、C1〜C4−アルキル、C3〜C7−シクロアルキル、ヒドロキシ−C1〜C4−アルキル又はC1〜C4−アルコキシ−C1〜C4−アルキルであり、かつ
R32は、水素又はC1〜C4−アルキルであるか、又は
R31及びR32は、一緒になって、その両者が結合される窒素原子を含んで、ピロリジノ基、ヒドロキシピロリジノ基、アジリジノ基、アゼチジノ基、ピペリジノ基、ピペラジノ基、N−C1〜C4−アルキルピペラジノ基又はモルホリノ基であり、
Xは、O(酸素)又はNHであり、かつ
Arは、R4、R5、R6及びR7によって置換された、フェニル基であり、その際、
R4は、水素、C1〜C4−アルキル、ヒドロキシ−C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ、C2〜C4−アルケニルオキシ、C1〜C4−アルキルカルボニル、カルボキシ、C1〜C4−アルコキシカルボニル、カルボキシ−C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシカルボニル−C1〜C4−アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、トリフルオロメチル、ニトロ、アミノ、モノ−もしくはジ−C1〜C4−アルキルアミノ、C1〜C4−アルキルカルボニルアミノ、C1〜C4−アルコキシカルボニルアミノ、C1〜C4−アルコキシ−C1〜C4−アルコキシカルボニルアミノ又はスルホニルであり、
R5は、水素、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ、C1〜C4−アルコキシカルボニル、ハロゲン、トリフルオロメチル又はヒドロキシであり、
R6は、水素、C1〜C4−アルキル又はハロゲンであり、かつ
R7は、水素、C1〜C4−アルキル又はハロゲンである、請求項1記載の化合物並びにそれらの塩。
【請求項3】
請求項1記載の式1の化合物であって、式1a
【化2】

[式中、
R1は、水素、C1〜C4−アルキル、C3〜C7−シクロアルキル又はフルオロ−C1〜C4−アルキルであり、
R2は、水素、C1〜C4−アルキル又はC1〜C4−アルコキシ−C1〜C4−アルキルであり、
R31は、水素、C1〜C4−アルキル、C3〜C7−シクロアルキル、ヒドロキシ−C1〜C4−アルキル又はC1〜C4−アルコキシ−C1〜C4−アルキルであり、かつ
R32は、水素又はC1〜C4−アルキルであるか、又は
R31及びR32は、一緒になって、その両者が結合される窒素原子を含んで、ピロリジノ基、ヒドロキシピロリジノ基、アジリジノ基、アゼチジノ基、ピペリジノ基、ピペラジノ基、N−C1〜C4−アルキルピペラジノ基又はモルホリノ基であり、
R4は、水素、ハロゲン、C1〜C4−アルキル、ヒドロキシ−C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ、C1〜C4−アルコキシカルボニル、トリフルオロメチル、アミノ、モノ−もしくはジ−C1〜C4−アルキルアミノ、C1〜C4−アルキルカルボニルアミノ、C1〜C4−アルコキシカルボニルアミノ又はC1〜C4−アルコキシ−C1〜C4−アルコキシカルボニルアミノであり、
R5は、水素、ハロゲン、C1〜C4−アルキル又はC1〜C4−アルコキシであり、
R6は、水素、ハロゲン、C1〜C4−アルキルであり、かつ
Xは、O(酸素)又はNHである]で示されることを特徴とする化合物並びにそれらの塩。
【請求項4】
式1aで示され、その式中、
R1は、C1〜C4−アルキル又はC3〜C7−シクロアルキルであり、
R2は、水素又はC1〜C4−アルキルであり、
R31は、水素、C1〜C4−アルキル、ヒドロキシ−C1〜C4−アルキル、C3〜C7−シクロアルキル又はC1〜C4−アルコキシ−C1〜C4−アルキルであり、かつ
R32は、水素又はC1〜C4−アルキルであるか、又は
R31及びR32は、一緒になって、その両者が結合される窒素原子を含んで、ピロリジノ基、ヒドロキシピロリジノ基、アジリジノ基、アゼチジノ基又はモルホリノ基であり、
R4は、水素、ハロゲン又はC1〜C4−アルキルであり、
R5は、水素であり、
R6は、水素又はハロゲンであり、かつ
Xは、O(酸素)又はNHである、請求項3記載の化合物並びにそれらの塩。
【請求項5】
式1aで示され、その式中、
R1は、C1〜C4−アルキル又はC3〜C7−シクロアルキルであり、
R2は、水素又はC1〜C4−アルキルであり、
R31は、水素、C1〜C4−アルキル又はC3〜C7−シクロアルキルであり、
R32は、水素又はC1〜C4−アルキルであるか、又は
R31及びR32は、一緒になって、その両者が結合される窒素原子を含んで、アゼチジノ基であり、
R4は、水素であり、
R5は、水素であり、
R6は、水素であり、かつ
Xは、O(酸素)又はNHである、請求項3記載の化合物並びにそれらの塩。
【請求項6】
請求項3記載の式1aの化合物であって、式1a−1
【化3】

[式中、
R1は、C1〜C4−アルキル又はC3〜C7−シクロアルキルであり、
R2は、水素又はC1〜C4−アルキルであり、
R31は、水素、C1〜C4−アルキル、ヒドロキシ−C1〜C4−アルキル、C3〜C7−シクロアルキル又はC1〜C4−アルコキシ−C1〜C4−アルキルであり、かつ
R32は、水素又はC1〜C4−アルキルであるか、又は
R31及びR32は、一緒になって、その両者が結合される窒素原子を含んで、ピロリジノ基、ヒドロキシピロリジノ基、アジリジノ基、アゼチジノ基又はモルホリノ基であり、
R4は、水素、メチル、クロロ又はフルオロであり、
R5は、水素であり、
R6は、水素又はフルオロであり、かつ
Xは、O(酸素)又はNHである]で示される化合物並びにそれらの塩。
【請求項7】
式1a−1で示され、その式中、
R1は、C1〜C4−アルキル又はC3〜C7−シクロアルキルであり、
R2は、水素又はC1〜C4−アルキルであり、
R31は、水素、C1〜C4−アルキル又はC3〜C7−シクロアルキルであり、
R32は、水素又はC1〜C4−アルキルであるか、又は
R31及びR32は、一緒になって、その両者が結合される窒素原子を含んで、アゼチジノ基であり、
R4は、水素であり、
R5は、水素であり、
R6は、水素であり、かつ
Xは、O(酸素)又はNHである、請求項6記載の化合物並びにそれらの塩。
【請求項8】
式1a−1で示され、その式中、
R1は、C1〜C4−アルキルであり、
R2は、水素又はC1〜C4−アルキルであり、
R31は、C1〜C4−アルキルであり、
R32は、水素又はC1〜C4−アルキルであるか、又は
R31及びR32は、一緒になって、その両者が結合される窒素原子を含んで、アゼチジノ基であり、
R4は、水素であり、
R5は、水素であり、
R6は、水素であり、かつ
Xは、O(酸素)である、請求項6記載の化合物並びにそれらの塩。
【請求項9】
以下の群:
(S)−2,3−ジメチル−8−フェニル−3,6,7,8−テトラヒドロ−クロメノ[7,8−d]イミダゾール−5−カルボチオ酸 ジメチルアミド
2,3−ジメチル−8−フェニル−3,6,7,8−テトラヒドロ−クロメノ[7,8−d]イミダゾール−5−カルボチオ酸 シクロプロピルアミド
2−シクロプロピル−3−メチル−8−フェニル−3,6,7,8−テトラヒドロ−クロメノ[7,8−d]イミダゾール−5−カルボチオ酸 ジメチルアミド
2,3−ジメチル−8−フェニル−6,7,8,9−テトラヒドロ−3H−イミダゾ[4,5−h]キノリン−5−カルボチオ酸 ジメチルアミド
(S)−2−メチル−8−フェニル−3,6,7,8−テトラヒドロ−クロメノ[7,8−d]イミダゾール−5−カルボチオ酸 ジメチルアミド
(S)−2,3−ジメチル−8−フェニル−3,6,7,8−テトラヒドロ−クロメノ[7,8−d]イミダゾール−5−カルボチオ酸 メチルアミド
1−アゼチジン−1−イル−1−((S)−2,3−ジメチル−8−フェニル−3,6,7,8−テトラヒドロ−クロメノ[7,8−d]イミダゾール−5−イル)−メタンチオン、及び
2,3−ジメチル−8−フェニル−3,6,7,8−テトラヒドロ−クロメノ[7,8−d]イミダゾール−5−カルボチオ酸 ジメチルアミド
から選択される化合物並びにそれらの塩。
【請求項10】
請求項1記載の化合物及び/又はその薬理学的に認容性の塩と一緒に慣用の製薬学的助剤及び/又は賦形剤を含有する医薬品。
【請求項11】
請求項1記載の化合物及びその薬理学的に認容性の塩を胃腸疾患を予防及び治療するために用いる使用。

【公表番号】特表2008−534476(P2008−534476A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−502403(P2008−502403)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【国際出願番号】PCT/EP2006/060936
【国際公開番号】WO2006/100255
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(507229021)ニコメッド ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (90)
【氏名又は名称原語表記】Nycomed GmbH
【住所又は居所原語表記】Byk−Gulden−Str. 2, D−78467 Konstanz, Germany
【Fターム(参考)】