説明

胆汁酸を含むミノキシジル水性組成物

【課題】ミノキシジルを比較的高濃度(飽和量以上)で溶解でき、有機溶媒を含むことなく皮膚への刺激、及びベタツキを抑え、且つ経皮吸収効果に優れた液体組成物を提供すること。
【解決手段】(i)ミノキシジル、(ii)胆汁酸又はその塩、及び(iii)組成物の重量に対して30重量%以上の水性媒体を含む、液体組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高濃度のミノキシジルを含有した水性組成物(液体製剤)に関する。
【背景技術】
【0002】
ミノキシジル(すなわち2,4−ジアミノ−6−ピペリジニルピリミジン−3−オキシド)は、Loniten(登録商標) および Rogaine(登録商標)の活性成分であり、Pharmacia and Upjohn によって、高血圧の処置として、および男性ホルモン性脱毛症(男性型の禿頭症と女性型の禿頭症)の処置および予防として、それぞれ市販されている。ミノキシジルの製法と抗高血圧の使用は、特許文献1に記載されている。頭髪を成長させるための、および男性型禿頭症と女性型禿頭症を処置するための化合物を用いるための方法、および局所の製剤は、特許文献2及び特許文献3に記載されている。
【0003】
Rogaine(登録商標)のような、局所の適応のための医薬組成物は、例えば、溶液、ゲル、懸濁液などの様々な形態を含むことができる。一般的に言えば、局所の組成物が溶液もしくはゲルである場合、すなわち活性な成分、例えばミノキシジルが担体溶液に溶解している場合に、懸濁液の形態である局所の組成物と比べて、すなわち活性成分が単に組成物中に懸濁している場合と比べて、吸収の改善が達成される。
【0004】
ミノキシジルは水への溶解性が悪く、水溶媒で溶解させる場合には通常50%以上のエタノールを含んでおり(例えば特許文献4)、それによる悪影響(頭皮への刺激、溶剤量が多くなることによるべとつき等の使用感の悪化)が懸念されている。特許文献5では、組成物により、エタノールによる頭皮への刺激が緩和を提案しているが、エタノール含量は40%以上であり、根本的な解決になっていない。依然として、ミノキシジルの溶解性向上、吸収性向上は、有機溶媒によってミノキシジルの溶解濃度を高濃度化させることによる濃度勾配による経皮吸収に頼っており、有機溶媒を使用せずに吸収効率を向上させる手段がなかった。
【0005】
一方、胆汁酸は生体内で生成・吸収されている胆汁に含まれるステロイド誘導体で、コラン骨格を持つ化合物の総称である。産業的には一部、可溶化剤として使用されており、具体的には、ウルソデオキシコール酸は利胆剤、デオキシコール酸は医薬品添加物の分散剤として使用されているが、ミノキシジルの可溶化において著しい効果を示すことはこれまで知られていなかった。また、特許文献6ではモノアシルグリセロフォスフォリピド、脂肪酸モノグリセリドと胆汁酸との混合により、インドメタシンの経皮吸収効率が2倍になることを達成しているが、この働きは胆汁酸単独によるものではなく、胆汁酸単独での経皮吸収促進効果は知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第3,461,461号
【特許文献2】米国特許第4,139,619号
【特許文献3】米国特許第4,596,812号
【特許文献4】特開2004−59587号公報
【特許文献5】特開2006−176447号公報
【特許文献6】特開平1−174355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解消することを解決すべき課題とした。すなわち、本発明は、ミノキシジルを比較的高濃度(飽和量以上)で溶解でき、有機溶媒を含むことなく皮膚への刺激、及びベタツキを抑え、且つ経皮吸収効果に優れた液体組成物を提供することを解決すべき課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、胆汁酸がミノキシジルの可溶化剤および経皮吸収促進剤として著しく効果を発揮することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明によれば、(i)ミノキシジル、(ii)胆汁酸又はその塩、及び(iii)組成物の重量に対して30重量%以上の水性媒体を含む、液体組成物が提供される。
好ましくは、ミノキシジルの含有量は、組成物の重量に対して0.2重量%〜5重量%である。
【0010】
好ましくは、胆汁酸は、デオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、コール酸、ケトコール酸、リトコール酸、ヒオデオキシコール酸、グリココール酸、タウロコール酸、ケノデオキシコール三、ヒオコール酸、及び5α−シプリノールからなる群より選ばれる少なくとも1種もしくはその塩である。
好ましくは、胆汁酸は、デオキシコール酸、及びウルソデオキシコール酸からなる群より選ばれる少なくとも1種もしくはその塩である。
好ましくは、胆汁酸の含有量は、組成物の重量に対して0.01〜20重量%である。
【0011】
好ましくは、本発明の液体組成物は、さらに(iv)ゼラチン、酸処理ゼラチン、カゼイン、グロブリン、フィブロイン、フィブリノーゲン、ケラチン、フェリチン、ラミニン、フィブロネクチン、及びビトロネクチンからなる群より選ばれる少なくとも一種もしくはその塩を含む。
好ましくは、本発明の液体組成物は、さらに(iv)カゼイン又はゼラチンを含む。
【0012】
好ましくは、本発明の液体組成物は、さらに(iv)リポタンパク質、糖タンパク質、リン酸化タンパク質、ヘムタンパク質、フラビンタンパク質、及び金属タンパク質から選ばれる少なくとも一種を含む。
【0013】
さらに本発明によれば、デオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、コール酸、ケトコール酸、リトコール酸、ヒオデオキシコール酸、グリココール酸、タウロコール酸、ケノデオキシコール三、ヒオコール酸、及び5α−シプリノールからなる群より選ばれる少なくとも1種の胆汁酸からなる、ミノキシジルの可溶化剤が提供される。
【0014】
さらに本発明によれば、デオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、コール酸、ケトコール酸、リトコール酸、ヒオデオキシコール酸、グリココール酸、タウロコール酸、ケノデオキシコール三、ヒオコール酸、及び5α−シプリノールからなる群より選ばれる少なくとも1種の胆汁酸からなる、ミノキシジルの経皮吸収促進剤が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の液体組成物は、ミノキシジルを比較的高濃度(飽和量以上)で含有し、また皮膚への刺激、及びベタツキが抑制され、経皮吸収効果にすぐれた液体組成物である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、実施例4及び5の分散液、及び比較例1のエタノールを含むミノキシジル1%製剤を用いてヘアレスラットの皮膚透過性試験を行った結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態についてさらに具体的に説明する。
本発明の液体組成物は、0.2重量%以上のミノキシジルを安定に溶解することを特徴とする。ミノキシジルは、一般名2,4−ジアミノ−6−ピペリジノピリミジン−3−オキサイドで表される化合物であって、高血圧症の治療薬として用いられてきたが、その後、発毛作用が明らかとなり、近年注目されている化合物である。本発明でいう「安定に溶解」とは、40℃で1週間保管後、目視により沈殿を確認した場合に、沈殿が観察されないものをいう。
【0018】
本発明で見出した驚くべき効果は胆汁酸がミノキシジルの可溶化剤として機能すること、さらに、吸収促進剤として機能することである。ここで、胆汁酸としては、合成物でも、抽出物でもよく、特に限定されない。
【0019】
胆汁酸の具体例としては、デオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、コール酸、ケトコール酸、リトコール酸、ヒオデオキシコール酸、グリココール酸、タウロコール酸、ケノデオキシコール三、ヒオコール酸、5α−シプリノールまたはその塩であり、このうち好ましくはウルソデオキシコール酸、デオキシコール酸、またはその塩である。
【0020】
以上、胆汁酸を用いる場合、合成品でも抽出品でもよく、その由来は特に限定されず、豚、牛、山羊、熊、ヒト、鳥、遺伝子組み換え等、いかなる由来でもかまわない。
【0021】
本発明の液体組成物には、0.01〜20重量%の胆汁酸を含有することが好ましく、胆汁酸の重量に対して0.01〜100重量%のミノキシジルを含有することがさらに好ましい
【0022】
本発明の液体組成物におけるミノキシジルの好ましい含有量は0.2重量%〜5重量%である、好ましくは0.2重量%〜4重量%であり、さらに好ましくは0.2重量%〜3重量%、最も好ましくは0.2重量%〜1.0重量%である。
【0023】
本発明の液体組成物においては、さらに多量体タンパク質又は複合タンパク質が含まれることも好ましい。ここで、多量体タンパク質又は複合タンパク質としては、安全性の観点から、又性能から生体適合性であることが好ましい。
【0024】
多量体タンパク質の具体例としては、ゼラチン、酸処理ゼラチン、カゼイン、グロブリン、フィブロイン、フィブリノーゲン、ケラチン、フェリチン、ラミニン、フィブロネクチン、又はビトロネクチンであり、このうち好ましくはゼラチンである。
【0025】
複合タンパクの具体例としては、リポタンパク質、糖タンパク質、リン酸化タンパク質、ヘムタンパク質、フラビンタンパク質、金属タンパク質などが挙げられる。糖タンパク質の具体例として例えば、免疫グロブリンG、トランスフェリン、フィブリノーゲン、プロテオグリカンなどが挙げられる。リン酸化タンパク質の具体例として例えば、カゼイン、カゼインナトリウムなどが挙げられる。ヘムタンパク質の具体例として例えば、ヘモグロビンなどが挙げられる。リポタンパク質の具体例として例えば、血中β-リポタンパクなどが挙げられる。また、タンパク質の場合、由来や化学修飾、化学変性等の何れのものにも限定されない。
【0026】
上述のうち、最も好ましいものは、カゼイン又はゼラチンである。本発明でカゼインを用いる場合、カゼインの由来は特に限定されず、乳由来であっても、豆由来であってもよく、α−カゼイン、β−カゼイン、γ−カゼイン、κ−カゼインおよびそれらの混合物を使用することができる。カゼインは、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。ゼラチンを用いる場合、ゼラチンの由来は特に限定されず、魚、牛、豚、山羊、遺伝子組み換え等、いかなる由来でもかまわない。
【0027】
本発明に用いられる多量体タンパク質又は複合タンパク質は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0028】
本発明の液体組成物には、0.2〜15重量%の多量体タンパク質又は複合タンパク質を含有することが好ましく、0.4〜5重量%の多量体タンパク質又は複合タンパク質を含有することがさらに好ましい。
【0029】
本発明の液体組成物には、上述のタンパク質の重量に対して0.1〜200重量%のミノキシジルを含有することがさらに好ましい。
【0030】
カゼイン及びゼラチンをはじめとする生体適合性高分子は、人体に対する安全性も実証されており、可溶化剤としての性能に加えて、安全性の向上が期待できる。
【0031】
本発明に用いる水性媒体は、有機酸または塩基、無機酸または無機塩基の水溶液、又は緩衝液を用いることができる。本発明の液体組成物における水性媒体は30重量%以上であり、好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、最も好ましくは99重量%以上であり、実質的にエタノール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ジペンチレングリコールなどの有機溶媒を含有しないことが好ましい。
【0032】
有機酸または塩基、無機酸または無機塩基として具体的には、クエン酸、アスコルビン酸、グルコン酸、カルボン酸、酒石酸、コハク酸、酢酸またはフタル酸、トリフルオロ酢酸、モルホリノエタンスルホン酸、2-〔4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル〕エタ
ンスルホン酸のような有機酸;トリス(ヒドロキシメチル)、アミノメタン、アンモニアのような有機塩基;塩酸、過塩素酸、炭酸のような無機酸;燐酸ナトリウム、燐酸カリウム、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウムのような無機塩基を用いた水溶液が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
本発明において、ミノキシジルは、低pHで目標濃度以上に溶解した状態で、胆汁酸及び必要に応じその他の成分を含む溶液と混合したのち、上述の有機酸または塩基、無機酸または無機塩基水溶液を用いてpHを調整することが好ましい。本発明の液体組成物のpHは、8以上が好ましく、8から12が好ましい。より好ましくはpH10〜12である。pHが高すぎると加水分解の懸念や取り扱い上の危険性があるため、上述の範囲が好ましい。
【0034】
本発明の液体組成物の投与方法としては、経皮・経粘膜投与が挙げられる。
【0035】
本発明で用いるミノキシジル以外の生理活性成分の種類は、皮膚から吸収されて活性を示す成分であれば特に限定されないが、例えば、化粧品用成分、医薬部外品成分又は医薬品成分から選ぶことができる。例えば、保湿剤、美白剤、育毛剤、養毛剤、発毛剤、血行促進剤、抗白髪剤、アンチエイジング剤、抗酸化剤、コラーゲン合成促進剤、抗しわ剤、抗にきび剤、ビタミン剤、紫外線吸収剤、香料、色素剤、制汗剤、冷感剤、温感剤、メラニン生成抑制剤、メラノサイト活性化剤、抗生剤、制癌剤、抗炎症剤、抗アレルギー剤、ホルモン剤、抗血栓剤、免疫抑制剤、皮膚疾患治療薬、抗真菌薬、核酸医薬、麻酔薬、解熱剤、鎮痛剤、鎮痒剤、抗浮腫剤、催眠鎮静剤、抗不安剤、興奮剤、精神神経用剤、筋弛緩剤、抗鬱剤、総合感冒薬剤、自律神経系剤、鎮けい剤、発汗剤、止汗剤、強心剤、不整脈用剤、抗不整脈剤、血管収縮剤、血管拡張剤、抗不整脈剤、血圧降下剤、糖尿治療剤、高脂血漿剤、呼吸促進剤、鎮咳剤、ビタミン剤、寄生性皮膚疾患用剤、恒常性剤、ポリペプチド、ホルモン、不全角化抑制剤、ワクチン、又は皮膚軟化剤などを挙げることができる。上記した生理活性成分は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0036】
本発明のミノキシジルを含む水性組成物はさらに、添加物を含むことができる。添加物としては特に限定することはないが、保湿剤、柔軟剤、経皮吸収促進剤、無痛化剤、防腐剤、酸化防止剤、色素剤、増粘剤、香料、又はpH調整剤から選択される1種以上のものを使用することができる。
【0037】
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0038】
実施例1:
デオキシコール酸(和光純薬社製)1.15gを4mlの1N NaOH水溶液で溶解し、クエン酸三ナトリウム50mM(pH10)2.0ml加え、ミリQ水で14mlにメスアップした。その後、ミノキシジル2重量%(HCl 150mM)水溶液を加え、NaOH/HClにてpH8.5に調整し、容量を20mlにし、最終ミノキシジル濃度0.6重量%分散液を得た。
【0039】
実施例2:
デオキシコール酸(和光純薬社製)0.58gを2.5mlの1N NaOH水溶液で溶解し、クエン酸三ナトリウム50mM(pH10)2.0ml加え、あらかじめ10重量%に溶解したカゼインNa(クエン酸三ナトリウム50mM)水溶液を2ml加え、ミリQ水で14mlにメスアップした。その後、ミノキシジル2重量%(HCl 150mM)水溶液を加え、NaOH/HClにてpH8.5に調整し、容量を20mlにし、最終ミノキシジル濃度0.6重量%の分散液を得た。その液は、40℃1週間保存後も、透明安定分散した。
【0040】
実施例3:
コール酸(和光純薬社製)1.8gを5mlの1N NaOH水溶液で溶解し、クエン酸三ナトリウム50mM(pH10)3.0ml加え、あらかじめ10重量%に溶解したカゼインNa(クエン酸三ナトリウム50mM)水溶液を2ml加えた。その後、ミノキシジル2重量%(HCl 150mM)水溶液を加え、NaOH/HClにてpH8.5に調整し、容量を20mlにし、最終ミノキシジル濃度1.0重量%の分散液を得た。その液は、40℃1週間保存後も、透明安定分散した。
【0041】
実施例4:
ウルソデオキシコール酸(和光純薬社製)0.92gを5mlの1N NaOH水溶液で溶解し、クエン酸三ナトリウム50mM(pH10)2.0ml加え、あらかじめ10重量%に溶解したカゼインNa(クエン酸三ナトリウム50mM)水溶液を2ml加えた。その後、ミノキシジル2重量%(HCl 150mM)水溶液を加え、NaOH/HClにてpH8.5に調整し、容量を20mlにし、最終ミノキシジル濃度1.0重量%の分散液を得た。その液は、40℃1週間保存後も、透明安定分散した。
【0042】
実施例5:
デオキシコール酸(和光純薬社製)0.74gを3.4mlの1N NaOH水溶液、ミリQ水4.5mlを加え、溶解し、あらかじめ10重量%に溶解したカゼインNa(クエン酸三ナトリウム50mM)水溶液を2ml加えた。その後、ミノキシジル2重量%(HCl 150mM)水溶液を加え、NaOH/HClにてpH8.5に調整し、容量を20mlにし、最終ミノキシジル濃度1.0重量%の分散液を得た。その液は、40℃1週間保存後も、透明安定分散した。
【0043】
実施例6:
デオキシコール酸(和光純薬社製)1.92gを6.3mlの1N NaOH水溶液、ミリQ水1.7mlを加え、溶解し、あらかじめ10重量%に溶解したカゼインNa(クエン酸三ナトリウム50mM)水溶液を2ml加えた。その後、ミノキシジル2重量%(HCl 150mM)水溶液を加え、NaOH/HClにてpH8.5に調整し、容量を20mlにし、最終ミノキシジル濃度1.0重量%の分散液を得た。その液は、40℃1週間保存後も、透明安定分散した。
【0044】
試験例1:
実施例4及び5の分散液、及び比較例1としてエタノールを含むミノキシジル1%製剤(大正製薬製リアップ)を用いてヘアレスラットの皮膚透過性試験をフランツセルにて評価した。レセプター液はPBS200mM、32±2℃であり、ヘアレスラットの表皮側に各サンプルを1ml滴下し、ヘアレスラットの脂肪側にレセプター液を充満攪拌する。そのレセプター液を決められた時間ごとに採取し、その採取液をHPLCにて皮膚透過したミノキシジル濃度を測定した。結果を表1及び図1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
以上の結果より、ミノキシジルを等量投与した場合において、実施例4は、比較例1の6.2倍、実施例5は13.5倍の透過量を示すことを見出した。
【0047】
試験例2:
モニター5名に上記実施例4及び5の分散液、並びに比較例1の製剤の使用感を評価したところ、比較例1の製剤には使用後手や頭髪にベタツキがある一方で、実施例4及び5の分散液はさっぱり感に優れている、べたつきがない、など使用感も良好であった。
【0048】
上記の結果より、本発明の構成により、エタノール等の溶剤を含まない水性製剤で、ミノキシジルの溶解性を維持し、吸収効率を向上できることが実証された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)ミノキシジル、(ii)胆汁酸又はその塩、及び(iii)組成物の重量に対して30重量%以上の水性媒体を含む、液体組成物。
【請求項2】
ミノキシジルの含有量が、組成物の重量に対して0.2重量%〜5重量%である、請求項1に記載の液体組成物。
【請求項3】
胆汁酸が、デオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、コール酸、ケトコール酸、リトコール酸、ヒオデオキシコール酸、グリココール酸、タウロコール酸、ケノデオキシコール三、ヒオコール酸、及び5α−シプリノールからなる群より選ばれる少なくとも1種もしくはその塩である、請求項1又は2に記載の液体組成物。
【請求項4】
胆汁酸が、デオキシコール酸、及びウルソデオキシコール酸からなる群より選ばれる少なくとも1種もしくはその塩である、請求項1から3の何れかに記載の液体組成物。
【請求項5】
胆汁酸の含有量が、組成物の重量に対して0.01〜20重量%である、請求項1から4の何れかに記載の液体組成物。
【請求項6】
さらに(iv)ゼラチン、酸処理ゼラチン、カゼイン、グロブリン、フィブロイン、フィブリノーゲン、ケラチン、フェリチン、ラミニン、フィブロネクチン、及びビトロネクチンからなる群より選ばれる少なくとも一種もしくはその塩を含む、請求項1から5の何れかに記載の液体組成物。
【請求項7】
さらに(iv)カゼイン又はゼラチンを含む、請求項1から5の何れかに記載の液体製剤。
【請求項8】
さらに(iv)リポタンパク質、糖タンパク質、リン酸化タンパク質、ヘムタンパク質、フラビンタンパク質、及び金属タンパク質から選ばれる少なくとも一種を含む請求項1から7の何れかに記載の液体組成物。
【請求項9】
デオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、コール酸、ケトコール酸、リトコール酸、ヒオデオキシコール酸、グリココール酸、タウロコール酸、ケノデオキシコール三、ヒオコール酸、及び5α−シプリノールからなる群より選ばれる少なくとも1種の胆汁酸からなる、ミノキシジルの可溶化剤。
【請求項10】
デオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、コール酸、ケトコール酸、リトコール酸、ヒオデオキシコール酸、グリココール酸、タウロコール酸、ケノデオキシコール三、ヒオコール酸、及び5α−シプリノールからなる群より選ばれる少なくとも1種の胆汁酸からなる、ミノキシジルの経皮吸収促進剤。

【図1】
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【公開番号】特開2010−222283(P2010−222283A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69887(P2009−69887)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】