説明

背もたれ付き椅子

【課題】背受けシートをランバーサポートで後ろから支えている椅子において、着座者の体圧でランバーサポートがずり下がることを、昇降操作の容易性を損なうことなく防止する。
【手段】ランバー受け部16aに昇降体19が上下動自在に装着されており、昇降体19にランバーサポート11が固定されている。昇降体19にはレバー22で回動操作される可動ロック体20が内蔵されている。可動ロック体20はアーム47を有しており、アーム47の先端に係合突起30を形成している。ランバー受け部16aには係合突起30が嵌まる係合溝29が多段に形成されている。可動ロック体20はばね49でロック姿勢に押されている。係合突起30と係合溝29とが深く嵌合しているためランバーサポート11はずり下がり不能に保持されており、かつ、レバー22を下向き回動させると係合突起30が係合溝29から逃げてロックが解除される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、背もたれにランバー支持機能を持たせた椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
椅子においては、着座者の腰部(特に第3腰椎を中心にした部分)を後ろから支えることの重要性が認識されており、そこで、背もたれの下部に、側面視で前向き凸状に湾曲したランバー支持部を設けることが一般化している。この場合、ランバー支持部の高さは使用者の体格や好みに応じてまちまちであり、そこで、着座者の体圧がかかる背受けシートを弾性変形する素材で構成し、背受けシートを高さ調節可能なランバーサポートで後ろから支えることにより、ランバー支持部の高さを調節できるようにしている。
【0003】
さて、着座した人の背部の体圧(すなわち背もたれ荷重)がかかる背受けシートをネット材(メッシュ材)で構成して、背受けシートを前後に開口したバックフレームに張った構造のものがあり、このものは通気性やフィット性に優れている利点がある。そして、本願出願人は、背受けシートをネット材で構成した背もたれにおいて、背受けシートのランバー支持部をその左右両側部においてランバーサポート(ランバーパッド)で支持することを開示した。
【0004】
背受けシートをネット材等の可撓性シートで構成することの利点として、上記のとおり身体へのフィット性が挙げられる。そして、特許文献1によると、可撓性シートのランバー支持部は両端支持の状態になっており、着座者の身体に倣って変形することは許容しつつランバー支持機能は発揮するため、ランバー支持機能を有する椅子でありながら、高いフィット性や身体(腰部)への当たりの柔らかさを得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−099104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さて、背受けシートのランバー支持部には着座者の体圧によって後ろ向きの押圧力が掛かるが、例えば着座に際して身体がランバー支持部に当たることで下向きの外力が作用したり、或いは、ロッキングに際して身体と背もたれとが相対動することでランバー支持部に下向き又は上向きの力が作用したりというように、実際には、ランバー支持部に対する後ろ向きの押圧力には下向き又は上向きの分力が含まれていることがある(一般には、下向きの分力を含んでいることが多い。)。
【0007】
他方、ランバーサポートは後ろからランバー受け部で支持されており、従来は、ランバー受け部に複数の係合溝を適宜間隔で上下に飛び飛びで形成し、ランバーサポートに形成した係合突起をいずれかの係合溝に選択的に嵌め込むことで所望の高さを保持し、かつ、ランバーサポートを背受けシートの押圧力に抗して上下動させて、係合突起を係合溝に嵌脱させている。
【0008】
このため、係合突起と係合溝との嵌合深さが浅かったり、背受けシートの伸びによってランバーサポートに対する押圧力が弱くなったりすると、ランバー支持部に作用した下向き又は上向きの分力によってランバーサポートがずれ動いてしまう現象が生じ得る。このずれ動きを防止するためには係合突起と係合溝との嵌合深さを深くすれば良いと考えられるが、この方法では、背受けシートの押圧力に抗して係合突起を係合溝から離脱させるのに大きな力を要するため、ランバーサポートの昇降操作に大きな力が必要になる問題がある。すなわち、ランバーサポートの高さ調節の容易性と、ランバーサポートのずれ移動防止機能とが相反するのであった。
【0009】
本願発明はこのような現状に鑑み成されたものであり、ランバー支持部の昇降操作の容易性を確保しつつ、ランバーサポートが着座者の体圧でずれ移動することを的確に防止することを主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明に係る椅子は、着座した人の体圧を後ろから支える可撓性の背受けシートと、前記背受けシートの後ろに配置されたランバーサポートと、前記ランバーサポートを上下動可能に支持するランバー受け部とを有しており、前記ランバーサポートを高さ調節することで前記背受けシートのうち着座者の腰部を支えるランバー支持部の高さが調節される、という基本構成になっている。
【0011】
そして、請求項1の発明では、上記基本構成において、前記ランバーサポートの上昇動と下降動とのうちいずれか一方又は両方を規制するロック手段と、前記ロック手段による規制を解除する操作手段とを有している。ここに「規制する」とは体圧によってはずれ移動しない状態に保持されるという意味であり、また、「規制を解除する」とは、人の手で容易に移動させ得る状態になるという意味である。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1において、前記ロック手段は、前記ランバーサポートと一体に上下動する可動ロック体を有しており、前記可動ロック体とランバー受け部とのうちいずれか一方に設けた係合突起と他方に設けた係合溝との嵌まり合いによってランバーサポートの高さが保持されており、前記操作手段により、前記係合突起と係合溝との嵌まり合いが解除又は弱められるように前記可動ロック体が操作される。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記ランバーサポート及び前記可動ロック体は、前記ランバー受け部に上下動自在に装着された昇降体に取付けられており、前記背受けシートによる押圧力が前記ランバーサポート及び昇降体を介して前記ランバー受け部で支持されている。請求項4の発明は、請求項3において、前記操作手段は回動式のレバーであり、前記レバーが水平状の軸心回りに回動することで前記ロック手段の規制が解除される。
【0014】
請求項5の発明では、前記ランバー受け部の前端には樹脂製のエッジ部材が取付けられており、前記エッジ部材に前記係合溝又は係合突起を形成している。
【発明の効果】
【0015】
本願発明では、ランバーサポートが着座者の体圧でずれ動くことをロック手段で防止することができ、しかも、操作手段を操作してロックを解除することでランバーサポートを軽快に動かすことができる。従って、ランバーサポートの高さ調整の容易性を損なうことなく、ランバーサポートが着座者の体圧でずれ動く不測の事態を防止できる。
【0016】
ロック手段は様々な構造や機構を採用できるが、請求項2の発明によると、ランバーサポートとは別体の可動ロック体を動かすことでロック状態とロック解除状態とを選択できるため、動作の確実性において優れている。
【0017】
さて、ランバーサポートを直接にランバー受け部に装着して、ランバーサポートに可動ロック体を取り付けることも可能であるが、この場合はランバーサポートが相当に複雑な形状になるため、加工が厄介になるおそれがある(樹脂製品の場合は、金型が非常に複雑化する。)。これに対して請求項3のようにランバー受け部に昇降体を装着してこの昇降体にランバーサポートを取り付けると、部材の加工が容易になる。
【0018】
操作手段としてはプッシュボタンや回転式ハンドル(グリップ)など様々な構造を採用できるが、請求項4のように回動式レバーを採用すると、レバーは下向き又は上向きの力により回動してロック(規制)を解除するため、レバーを押して回動させるだけの一連の操作により、規制の解除(ロックの解除)とランバーサポートの高さ調節とが行われる。すなわち、規制解除(ロック解除)と高さ調節との操作をワンアクションで行うことができるのであり、このため操作性が一層優れている。また、ランバーサポートに大きなモーメントをかけて軽い力で昇降させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(A)は本願発明を適用した椅子の全体斜視図、(B)は側面図である。
【図2】(A)は分離斜視図、(B)は分離側面図である。
【図3】第1実施形態の要部の組図であり、(A)は側面図、(B)(C)は後ろから見た斜視図である。
【図4】全体の部品を分離した斜視図である。
【図5】ランバーサポートを横向きにした状態での分離斜視図である。
【図6】(A)は前から見た分離斜視図、(B)は後ろから見た分離斜視図である。
【図7】(A)は要部を後ろから見た斜視図、(B)は要部を後ろから見た分離斜視図、(C)はロック機構を示す部分的な側面図、(D)はロック機構を示す分離斜視図である。
【図8】(A)はランバー受け部とその付属部材とを示す図で、(A)は分離斜視図、(B)は上部の分離側面図、(C)は下部の側面図である。
【図9】(A)はロック状態の全体的な側断面図、(B)はロック状態での部分的な側面図である。
【図10】(A)はロック解除状態の側断面図、(B)はロック解除状態での部分的な側面図である。
【図11】第2実施形態の分離斜視図である。
【図12】第2実施形態を示す図で、(A)は分離側面図、(B)は縦断側面図である。
【図13】第3実施形態の分離斜視図である。
【図14】第3実施形態を示す図で、(A)はランバーサポートをひっくり返した状態での分離斜視図、(B)は分離側面図である。
【図15】第3実施形態の断面図である。の部分の分離斜視図である。
【図16】第4実施形態を示す図で、(A)は分離斜視図、(B)は組み立て状態での斜視図である。
【図17】第4実施形態を示す図で、(A)はロック状態での縦断側面図、(B)はロック解除状態での要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、事務用に多用されているロッキング式回転椅子に適用している。以下の説明及び請求項では方向を特定するため「前後」「左右」の文言を使用しているが、これら前後・左右の方向は、普通に着座した人を基準にしている。
【0021】
(1).椅子の概要
まず、図1〜図3に基づいて椅子の概要を説明する。椅子は、主要要素として、脚支柱2(ガスシリンダ)を有する脚装置1、脚支柱2の上端に固定されたベース3、ベース3の上方に配置された座4、着座者がもたれ掛かる背もたれ5を備えている。脚1は放射状に延びる複数本の枝足を備えており、各枝足の先端にはキャスタを設けている。
【0022】
ベース3の左右両側には左右一対の揺動フレーム6が配置されている。揺動フレーム6の後部は上向きに立ち上がった背支柱6aになっている。揺動フレーム6はその前端部を中心にして後傾動(回動)するように、その前端部がベース3に左右長手の支軸部7で連結されている。支持部7にはロッキングばねの一例としてトーションバーが内蔵されている。左右の揺動フレーム6は、背支柱6aの下端の箇所においてロアジョイント8で連結されている。
【0023】
背もたれ5は、正面視略四角形のバックフレーム9にネット状の背受けシート10が張られた構成であり、バックフレーム9は背支柱6aにビスで固定されている。バックフレーム9は、着座者の腰部に当たる部分が支持されるように側面視で緩く湾曲しており、従って、背受けシート10は側面視で前向きに突出したランバー支持部10aを有している。背受けシート10におけるランバー支持部10aの左右両側部には後ろからパッド状のランバーサポート(ランバーパッド)11が当たっており、ランバーサポート11を上下動させることで背受けシート10のランバー支持部10aの高さを調節できる。この点は後述する。
【0024】
バックフレーム9は樹脂の成形品であり、上下方向に長く延びる左右サイドメンバー9aと、左右サイドメンバー9aの上端に繋がったアッパーメンバー9bと、左右サイドメンバー9aの下端に繋がったロアメンバー9cとから成っている。従って、バックフレーム9は正面視で略四角形の形態を成している。アッパーメンバー9b及びロアメンバー9cは平面視で前向き凹状に緩く湾曲している。このためランバー支持部10aも平面視では前向き凹状に凹んでいる。
【0025】
座4は、中間部材12に前後位置可能に取り付けられている。中間部材12の前部はフロントリンク13を介してベース3に連結されている。フロントリンク13と中間部材12とはフロントピン14で連結されている。
【0026】
揺動フレーム10の内側面には金属板製のリアリンク15が配置されている。リアリンク15は揺動フレーム6に似た側面視略L形の形態であり、起立部16がバックフレーム9のサイドメンバー9aの内面に沿って延びており、かつ、リアリンク15は起立部16の付け根よりもやや手前側の部位において枢支ピン17で揺動フレーム6に連結されている。リアリンク15の前端は上向きに突出しており、これが中間部材12の後端部にリアピン18で連結されている。揺動フレーム6の背支柱6aは平面視で略L字形の形態であり、その内側面にバックフレーム9のサイドメンバー9aが重なっている。リアリンク15の起立部16はサイドメンバー6aの左右内側に配置されている。
【0027】
着座した人が背もたれ5にもたれ掛かると、リアリンク15の起立部16も後傾するが、起立部16は背支柱6aに対しても相対的に後傾する。すなわち、背支柱6aが後傾する割合よりもリアリンク15の起立部16が後傾する割合が大きい。そして、リアリンク15における起立部16の上端部に既述のランバーサポート11が高さ調節可能に取り付けられている。従って、ロッキングに際してランバーサポート11は背支柱6aに対して相対的に後退することになり、このため、背受けシート10はロッキングするとテンションが緩む。
【0028】
(2).第1実施形態の概略
次に、図3以下の図面を参照して第1実施形態に係るランバー支持装置を説明する。例えば図4に示すように、本実施形態に係るランバー支持装置は、既述のランバーサポート11と、リアリンク15の起立部16に昇降自在に装着した昇降体19と、ランバーサポート11と昇降体19との間に配置した可動ロック体20及び補助金具21と、操作手段の一例としてのレバー22とを有している。ランバーサポート11と昇降体19と可動ロック体20は樹脂製であり、補助金具21は金属製である。
【0029】
レバー22は左右横長の中心軸(回動軸)23を有しており、フラップ22aが中心軸23の後ろに延びている。更に正確に述べると、レバー22は、前部を中心軸23とした平面視L形の棒材に樹脂製のフラップ22aをねじ(図示せず)で固定した形態になっており、着座した人は腕を後ろに回して指先をフラップ22aに当てることができる(椅子から降りて操作してもよい。)。
【0030】
リアリンク15の起立部16のうちその上部を細幅のランバー受け部16aと成している一方、昇降体19にはランバー受け部16aに上方から嵌合する側面視台形状の抱持部19aを有しており、従って、昇降体19は上下動のみ可能な状態でランバー受け部16aに装着されている。昇降体19は前向きに開口しており、その内部に補助金具21を配置し、補助金具21に可動ロック体20を嵌め込んでいる。更に正確に述べると、補助金具21はコの字形になっていてその内部に可動ロック体20が嵌め込まれており、更に、補助金具21は昇降体19の内部に収納されている。
【0031】
図5から理解できるように、ランバーサポート11の裏面には昇降体19を左右両側に位置した内外のサイドリブ24a,24bを一体に形成している。そして、図4,5から理解できるように、レバー22の中心軸23は、ランバーサポート11の内外サイドリブと昇降体19と補助金具21と可動ロック体20とに貫通している。従って、ランバーサポート11と可動ロック体20と補助金具21と昇降体19とは昇降ユニット25を構成しており、この昇降ユニット25が一体に上下動する。
【0032】
ランバー受け部16aの前面には樹脂製のエッジ部材(スライダー)27を上下動不能に装着している。エッジ部材27の上部は、左右一対のホルダー28a,28bでランバー受け部16aにずれ不能に保持されている。
【0033】
そして、エッジ部材27にはロック手段を構成する複数の係合溝29が多段に形成されている一方、可動ロック体20には係合溝29に嵌合する係合突起30が形成されており、係合突起30と係合溝29とが嵌合することにより、ランバーサポート11は体圧が掛かってもずり下がらない状態にロックされ、かつ、レバー22を下向き回動させると、ロック(規制)が解除されてランバーサポート11を下降動させることができる。
【0034】
本実施形態の椅子では、ランバーサポート11は体圧で下向きにずれ移動する傾向を呈するが、上向きにはずれ動く傾向は呈さない。そこで、ランバーサポート11の下向き動のみをロックしており、上向き動は可動ロック体20の部材の弾性変形を利用して行っている(詳細は後述する。)。例えば図4,5に示すように、ランバー受け部16aの後ろには平面視コの字形のカバー31が配置されている。カバー31はバックフレーム6のサイドメンバー6aに取付けられている。次に、各部材の詳細を説明する。
【0035】
(3).ランバー受け部とその付属要素
まず、ランバー受け部16aとその付属要素を主として図6に基づいて説明する。既述のとおり、リアリンク15を構成するランバー受け部16aはその下方部よりも前後幅が細幅になっており、このため、ランバー受け部16aの下端の後ろには段部32が形成されている。そして、例えば図8(A)(B)に示すように、段部32に昇降体19の抱持部19aが当たることにより、昇降体19の下限高さが規制される。
【0036】
図6に示すように、エッジ部材27の上端には後ろ向きの上顎部33が形成されており、ランバー受け部16aには上顎部33が嵌まる上部保持溝34が形成されている一方、エッジ部材27の下端には後ろ向きに突出した下顎部35が形成されており、下顎部35は、エッジ部材27の起立部16に形成した前向き開口の下部保持溝36に嵌まっている。下部保持溝36は斜め上向きに開口しており、このため下顎部35は前向き移動不能に保持されている。
【0037】
また、下顎部35には起立部16を左右から挟む挟持片35aが一体に形成されており、このため、下顎部35はリアリンク15の板厚よりも厚くなっている。挟持片35aにより、エッジ部材27の下部は左右ずれ不能に保持されている。例えば図8(A)(B)から理解できるように、下顎部35の挟持片35aは、昇降体19の下限位置を規制するストッパーとして機能させることもできる。
【0038】
既述のとおり、エッジ部材27の上顎部33はホルダー28a,28bでずれ不能に保持されている。両ホルダー28a,28bには互いに噛み合うリブ38,39が形成されており、弾性に抗してリブ38,39を嵌合させることにより、ランバー受け部16aを挟んだ状態が保持されている。また、外側のホルダー28bのリブ39には、ランバー受け部16aの上部保持溝34に嵌入する押さえ部39aを形成しており、これにより、エッジ部材27をガタがない状態に保持している。
【0039】
補助部材27の上端面33aは後ろに行くに従って高くなる傾斜面になっている一方、外側のホルダー28bにおける押さえ部39aの下面39a′は補助部材27の上端面33aに重なるように傾斜しており、このため、補助部材27の上端部は前向き移動不能に保持されている。
【0040】
ランバー受け部16aには後ろ向きに開口した上部リア溝34aを形成しており、内側のホルダー28aに形成した後部のリブ38aをリア溝34aに嵌合させている。昇降ユニット25の上限高さは昇降体19の抱持部19aがホルダー28a,28bに当たることで規制されるが、ホルダー28a,28bが前後両側においてランバー受け部16aに嵌合しているため、昇降体19に対するストッパー機能を的確に発揮できる。
【0041】
エッジ部材27は、まず下顎部35をランバー受け部16aの下部保持溝36に嵌め入れから上顎部33を上部保持溝34に嵌め込み、次いで、外側のホルダー28bをランバー受け部16aにセットし、それから、内側のホルダー28aをランバー受け部16a及び外側のホルダー38bに重ね合わせる、という手順でずれ不能に取付けられる。
【0042】
エッジ部材27の係合溝29は左右に一対ずつ(2列ずつ)形成されている。従って、エッジ部材27の左右中間部は係合溝29が存在しない平坦面になっている。また、図9(B)及び図10(B)に明瞭に示すように、係合溝29の内周面のうちその下面29aは、側面視でエッジ部材27の前面に対して90°に近い大きな角度で傾斜している一方、上面29bは、側面視でエッジ部材27の前面に対して大きく寝るように交叉角度が小さくなっている。従って、係合溝29に嵌まった係合突起30は下方には動き難いが上方には動き易くなっている。
【0043】
(4).昇降ユニット
次に、ランバーサポート11と昇降体19と補助金具21と可動ロック体20とを主要要素とする昇降ユニット25を詳述する。ランバーサポート11は上下に細長い形態であり、側面視では、その前面は大きな曲率で前向き凸に湾曲している。また、平面視でも、その前面は前向き凸状に緩く湾曲している。
【0044】
例えば図4,5に示すように、昇降体19は抱持部19aの上下両側にはみ出していて全体として上下に長い形態を成しており、左右側板19bにレバー22の中心軸23が貫通している。また、昇降体19の下部にはボス部40を形成しており、ボス部40に前方からねじ込んだビス41でランバーサポート11を昇降体19に固定している。
【0045】
更に、図9(A)に明示するように、昇降体19のうち上寄りの部位には左右側板19bを繋ぐ上部インナーリブ42が形成されており、この上部インナーリブ42に形成した張り出し部42aに、ランバーサポート11の内面に形成した鉤片43を上から引っ掛けている。このため、ランバーサポート11は1本のビス41のみで昇降体19に前後離反不能に固定されている。
【0046】
補助金具21は上下に細長い形状であり、昇降体19の左右側板19bの間にきっちり嵌まっている。図9に示すように、補助金具21は昇降体19に設けた上下の受け部44で支持されており、このため、補助金具21は昇降体19に固定されたのと同様の状態になっている。補助金具21は左右側板と底板21aとを有するコ字形の形態であり、左右側板の間に可動ロック体20が配置されている。
【0047】
可動ロック体20は上下に長い形状であり、その上下略中間部にレバー22の中心軸23が貫通している。そして、可動ロック体20は中心軸23にビス45で固定されている。従って、レバー22を回動させると、可動ロック体20は中心軸23と一体に回動する。例えば図7に示すように、中心軸23の前面には平坦部23aを形成している、この平坦部23aに座金46を重ねている。図7では座金46は可動ロック体20の外側に配置した状態に描いているが、図9、10に示すように、座金46は中心軸23の平坦部23aに重なっている。このため、可動ロック体20は中心軸23にしっかりと固定されている。なお、座金46は可動ロック体20に設けた貫通穴20a(図7参照)に横方向から嵌め入れている。
【0048】
可動ロック体20の後面には下向きに延びるアーム47を一体に形成しており、このアーム47の先端(下端)に係合突起30を形成している。図7,9,10に示すように、補助金具21の底板21aには、可動ロック体20のアーム47をエッジ部材27に向けて露出させるための窓穴48を形成している。既述のとおりエッジ部材27の係合溝29は左右に一対ずつ形成されている。そこで、図8(D)に示すように、可動ロック体20の係合突起30は二股状になっている。このため、係合突起30は左右のブレが防止されて作動が確実になる利点がある。また、係合突起30の側面視形状は丸みを帯びた台形状になっているが、このように台形状に形成すると、係合突起30と係合溝29との接触面積が大きくできるため、磨耗を抑制して耐久性を向上できる。
【0049】
例えば図9(A)、図10(A)に示すように、可動ロック体20の上端部と補助金具21の底板21aとの間には弾性体の一例としてのばね49を介在させている。従って、可動ロック体20は、その係合突起30がエッジ部材27の係合溝29に嵌合し勝手となるように付勢されている。ばね49の弾性力(強さ)はアーム47の弾性力よりも強く設定されている。
【0050】
(5).第1実施形態のまとめ
以上の構成において、図9に示すように、係合突起30がいずれかの係合溝29に嵌まった状態では、係合突起30が係合溝29に深く嵌まっていることにより、着座者の体圧でランバーサポート11に下向きの外力が作用しても当該ランバーサポート11がずり下がることはない。このためランバーサポート11は所望の高さに保持される。なお、ランバーサポート11は背受けシート10のテンションによって後ろに押されているため、係合突起30と係合溝29との嵌合状態が保持されている。
【0051】
ランバーサポート11の高さを低くする場合は、レバー22のフラップ22aを指で摘んで下向きの力を掛ける。すると、レバー22の中心軸23が回転するが、図10に示すように、可動ロック体20は、係合突起30が可動ロック体20から離れるように中心軸23と一緒に回動する。このため、レバー22のフラップ22aを押し続けると、昇降ユニット25を下降させることができる。
【0052】
すなわち、レバー22のフラップ22aを下向きに押すと、まず、係合溝29に対する係合突起30の係合深さが浅くなることでロックが解除され、それから昇降ユニット25が下降するのである。従って、フラップ22aを下向きに押し遣るワンアクションにより、昇降ユニット25のロック解除と下向き移動とが一連に行われる。このため、操作性に優れている。
【0053】
可動ロック体20がロック解除方向に回動するに当たって、ロック解除姿勢は、可動ロック体20の上端部が補助金具21の底板21aに当たることで規制される。この状態で係合突起30は係合溝29から完全には離れておらず、若干ながら係合溝29に入った状態になっている。
【0054】
従って、昇降ユニット25を下降させるにおいて、係合突起30が係合溝29を離脱するときには、可動ロック体20のアーム47は若干撓み変形するため、下降に対する抵抗が少し大きくなると共に、摩擦が生じることでカチッとクリック感を得ることができ、また、係合突起30が下段の係合溝29に到ると、アーム47は弾性復元力で戻り変形して下降動に対する抵抗が弱くなる共にカチッとクリック感を得ることができる。
【0055】
このようにクリック感を得ることにより、椅子の使用者は段階的に高さが変化する状態を的確に把握して所望の高さに停止させることができる。特に、実施形態のようにランバーサポート装置25を左右に分離しして設けた場合は、左右両側のランバーサポート装置25において同じようなクリック感を得るため、左右のランバーサポート装置25を同じ高さに設定することを的確に行える。また、係合突起30が係合溝29と係合溝29と間に位置してしまう不具合も著しく抑制できる。
【0056】
昇降ユニット25を上昇させる場合は、レバー22のフラップ22aに上向きの外力を掛けたらよい。この場合はレバー22及び可動ロック体20は回動せず、図10(B)に示すように、可動ロック体20のアーム47が撓み変形することで昇降ユニット25の上昇動が許容される。アーム47が片持ち梁の状態になっていて容易に撓み変形することと、係合溝29の上面29bが大きく寝た傾斜になっていることとにより、ロック解除をさせることなく昇降ユニット25を軽快に上昇動させることができる。
【0057】
アーム47の変形のみで昇降ユニット25の上昇動を許容する場合は、係合突起30と係合溝29との嵌合深さをできるだけ浅くしてアーム47の撓み変形もできるだけ少なくしておくのが好ましい。しかし、係合突起30と係合溝29との嵌合深さが浅くなると、着座者の体圧によってずり下がる現象が生じる可能性がある。
【0058】
これ対して本実施形態では、係合溝29の下面29aはエッジ部材27の前面に対して大きな角度で交叉させて、係合溝29の上面29bはエッジ部材27の前面に対して小さな角度で交叉させているため、係合突起30と係合溝29との嵌合深さをできるだけ浅くしつつ、係合突起30のずり下がりを的確に防止できる。従って、ずり下がりに対するロック機能は的確に保持しつつ、上昇操作を軽い力で行える。
【0059】
図10に点線で示すように、可動ロック体20の本体部とアーム47との間にゴムやばね等の弾性体50を介在させることも可能である。このように構成すると、アーム47にへたり現象が生じても係合突起30と係合溝29との嵌合状態を確保し続けることができる利点がある。
【0060】
また、補助金具21を使用せずに可動ロック体20を直接に昇降体19に装着することも可能であるが、この場合は、昇降体19を成形する金型が非常に複雑になると共に、中心軸23の回転による磨耗の問題も発生する可能性がある。これに対して本実施形態のように補助金具21を使用すると、昇降体19は型抜きが容易な金型を使用して製造できると共に、補助金具21が軸受け部材として機能するため耐久性と精度も確保できる利点がある。
【0061】
本実施形態では、係合突起30を係合溝29から離脱させることはレバー23の回動によって強制的に行われる。他方、係合突起30が係合溝29に嵌まり込むことはアーム47の弾性力によって行われ、係合突起30が係合溝29に嵌まり込むに際しての作用がレバー22に波及することない。このため、人に違和感を与えることはない。
【0062】
また、昇降アーム25の高さ調節に際して、何らかの理由により、係合突起30が係合溝29に嵌まる前に昇降ユニット25の上下動が停止し、図10(B)のような状態で停止してしまうことが有り得るが、この場合、ばね49によってレバー22は原姿勢に保持されているため、いわばレバー22がブラブラした状態になることはない。すなわち、レバー22と弾性手段によって常に中立姿勢に保持されるように付勢されているのであり、このため、体裁の悪化を防止できる(この点は第2〜第4実施形態も同じである。)。
【0063】
(6).第2実施形態
次に、図11,12に表された第2実施形態を説明する。この第2実施形態は基本的な機能は第1実施形態と同様であり、昇降ユニット25を下降動させるときだけレバー22は回動する。第1実施形態との違いは、第1実施形態では可動ロック体20が単一構造であったのに対して、本実施形態では可動ロック体が前後に重なり合った第1可動ロック体52と第2可動ロック体53とで構成されている点である。
【0064】
本実施形態では、手前側に位置した第1可動ロック体52にレバー22の中心軸23が相対回転不能に固定されており、後ろ側に位置した第2可動ロック体53に係合突起30が形成されている。また、第2可動ロック体53の上端部がばね49で手前に付勢されている。第1可動ロック体52のうち中心軸23が嵌まっている部位には、側面視半円状で後ろ向きに突出した膨出部54を形成している一方、第2可動ロック体53には、膨出部54がきっちり嵌まる側面視前向き開口半円状の受け部55を形成している。このため、第1可動ロック体52と第2可動ロック体53とは、中心軸23の軸心回りに若干の角度だけ相対回動し得る。
【0065】
第1可動ロック体52の下端に設けた段部52aとランバーパッド11との間には、レバー22を原姿勢に付勢するレバー用弾性手段の一例として補助ゴム56を介在させている。第1可動ロック体52と第2可動ロック体53とには、両者を左右ずれ不能に位置決めするための凹部57と凸部58とを形成している。
【0066】
この第2実施形態では、レバー22のフラップ22aを下向きに押すと、レバー22の中心軸23と一緒に第1可動ロック体52が回動し、すると、第1可動ロック体52の上端で第2可動ロック体53の上部が後ろに押され、このため、第2可動ロック体53はばね49に抗して回動し、これによって昇降ユニット25の下向き動に対するロックが解除される。昇降ユニット25の上昇動は、第1第1可動ロック体52がばね49に抗して回動することで許容される。
【0067】
(7).第3実施形態
図13〜図15に示す第3実施形態では、レバー22の中心軸23はランバーパッド11の軸受け部11aに相対回転可能に貫通している。レバー22の中心軸23の先端部には環状溝23cを形成しており、この環状溝スナップリング等の留め具(図示せず)を嵌め込むことにより、中心軸23をランバーパッド11に抜け不能に保持している。抜け止め手段としては、ランバーパッドに弾性変形する係止爪を設けて、この係止爪を環状溝23cに嵌合させることも可能である。
【0068】
そして、この実施形態では、左右両側に突出したボス部59を有するシーソー部材60と、シーソー部材60の手前に配置したテコ部材61と、テコ部材61の上部に貫通した可動ロック体62とを有している。この実施形態では昇降体19は抱持部19aの上方にかなり長く延びている。
【0069】
シーソー部材60のボス部59は昇降体19の内部に形成した軸受け部63に嵌まっており、このためシーソー部材60はボス部59の軸心回りに回動し得る。テコ部材61の下端にはシーソー部材60のボス部59に嵌合する凹所64が形成されており、このため、テコ部材61はシーソー部材60に対して相対回動し得る。テコ部材61は側面視で上にいくほど前後間隔が狭くなっており、凹所64を有する部分はランバーサポート11に当接し、上に行くに従ってランバーサポート11との間隔が広がっている。
【0070】
テコ部材61の上端部には前後に開口した上部貫通穴65が形成され、凹所64に近い下部には前後に開口した下部貫通穴66が形成され、上下貫通穴65,66の間には中間穴67が形成されており、これら各穴65〜67に、弾性体の一例として第1〜第3のゴム68〜70を挿入している。ゴムに代えて圧縮コイルばねを使用しても良いし、また、各穴65〜67は四角形に形成されているが、円形等の他の形態であってもよい。第2ゴム69は中間穴67の底で支持されており、手前に露出している(中間穴67の底部は、第2ゴム69を支持する状態で前後に貫通していてもよい。)。
【0071】
可動ロック体62は昇降体19の内部に前後スライド自在に装着されており、ロック体62とランバーサポート11との間に第1ゴム68が介在している。第2ゴム69はテコ部座61はランバーサポート11との間に介在しており、第3ゴム70はシーソー部材60とランバーサポート11との間に介在している。従って、ランバーサポート11は各ゴム68〜70で手前に付勢されている。
【0072】
可動ロック体62はリアリンク15のランバー受け部16aを左右から挟む挟持片62aを有しており、左右挟持片62aの間に係合突起30が形成されている。また、昇降体19の抱持部19aには、可動ロック体62aの挟持片62aを露出させる逃がし穴71が空いている。また、可動ロック体62の左右両側面には段部62bを設けており、段部62bがテコ部材61に当接している。
【0073】
この実施形態では、シーソー部材60のうちボス部59の下側の押圧部60aに中心軸23が当接するが、中心軸23のうち押圧部60aに当たる部分を馬蹄形部23bと成し、馬蹄形部23bの平坦面をシーソー部材60の押圧部60aに当接させている。そして、レバー22に外力ガ作用していない状態では、シーソー部材60は第3ゴム70で付勢され、テコ部材61は第2ゴム69で付勢され、可動ロック体62は第1ゴム68で付勢されている。
【0074】
また、テコ部材61が可動ロック体62の段部62bに手前から当接しているため、ロック体62はテコ部材61を手前に押しやらないと係合突起30を係合溝29から離脱させることができないが、テコ部材61は第2ゴム69で付勢されているため、可動ロック体62は、第1ゴム68と第2ゴム69との2つのゴムによってロック状態に付勢されている。このためロック状態を確実に保持できる。
【0075】
レバー22のフラップ22aに下向き又は上向きの力が掛かって中心軸23がいずれかの方向に回転すると、シーソー部材60の押圧部60aが中心軸23の馬蹄形部23bで後ろに押され、すると、シーソー部材60は図15において時計回りに回動する。すると、テコ部材61も主として第2ゴム59の弾性に抗して回動し、これにより、可動ロック体62の段部62bに対する押圧が解除され、可動ロック体62は第1ゴム68のみで押された状態になる。従って、クリック感を確保した状態で昇降ユニット25を昇降させることができる。
【0076】
この実施形態では、昇降ユニット25の上昇と下降との両方がロックされており、従って、昇降ユニット25を下降させるときはレバー22は下向き回動し、昇降ユニット25を上昇させるときはレバー22を上向き回動する。
【0077】
さて、背受けシート10が編地や織地のようなメッシュ材で構成されていると、使用しているうちに伸びが生じる。そして、背受けシート10がたるんだ状態であると、体裁が悪い。この点、本実施形態では、ランバーサポート11が各ゴム68〜70で手前に押されているため、背受けシート10に伸びが生じると、図15に一点鎖線で示すように、ランバーサポート11はその上端が手前に移動するように回動し、これにより、背受けシート10をピンと張った状態に保持できる。つまり、ランバー操作装置に背受けシート10の弛み吸収機能を持たせている。
【0078】
ランバーパッド11の後面のうち可動ロック体62のやや上方の部位には、側面視下向き鉤状の第1ストッパー72が後ろ向きに突設されている一方、昇降体19には、側面視上向き鉤状の第2ストッパー73が形成されており、これら両ストッパー72,73を噛み合わせることでランバーパッド11の最大回動角度を規制している。また、ランバーパッド11には上下に長い左右のリブ11bを有しており、この左右リブ11bで昇降体19をカバーしている。
【0079】
(8).第5実施形態
図16,図17に示す第5実施形態では、ランバー受け部16aの後面に係合溝29を直接に形成している。また、ランバーサポート11と昇降体19とを樹脂の一体品と成しており、昇降体19に、前後スライド式の可動ロック体83を手前から嵌め込み装着している。このため、昇降体19にはランバーサポート11の前面に開口したロック用凹部84が形成されている。
【0080】
可動ロック体83はランバー受け部16aを抱持するように上下に開口した形態になっており、ランバー受け部16aに上から嵌め込れまれている。従って、可動ロック体83のうちランバー受け部16aに嵌まっている部分は昇降体19の抱持部19aに内蔵されている。係合突起30は、可動ロック体83の底部83aに形成されている。昇降体19の抱持部19aには、可動ロック体83を露出させる逃がし穴が85が空いている。昇降体19のロック用凹部84はランバー受け部16aの前面に重なる底板84aを有しており、底板84aには可動ロック体83が嵌まる逃がし穴86を形成している。また、可動ロック体83の前端には上下の張り出し部83bを備えており、この張り出し部83bとロック用凹部84の底板84aとの間に弾性手段の一例としてのゴム87を介在させている。
【0081】
レバー22は中心軸23を含む全体が樹脂によって一体成形されており、中心軸23はランバーサポート11に回転可能に挿通している。また、中心軸23には馬蹄形部23bを形成し、馬蹄形部23bの平坦面を可動ロック体83における前向き凹部83cの底面に前から当接させている。ロック用凹部84にはカバー88が嵌め込まれている。カバー88はおおむねランバーサポート11の前面と同一面を成している。図16に示すように、カバー88は後ろ向きに開口したケース状に形成されており、その左右側板に、レバー22の中心軸23に嵌まる開口溝88aを形成形成している。
【0082】
左右の開口溝88aはその開口部の溝幅が狭くなるようにくびれており、このため、カバー88は側板の弾性に抗して押し込むことでレバー22の中心軸23に嵌合する。また、カバー88の側板は馬蹄形部23bの左右両側において中心軸23に被嵌している。従って、カバー88は中心軸23によって前向き抜け不能に保持されていると共に、中心軸23はカバー88によって横向き抜け不能に保持されている(馬蹄形部23bが抜けに対するストッパーとして機能する。)。ランバー受け部16aの上端部にはストッパーを兼用するキャップ28を装着している。
【0083】
この実施形態では、レバー22を上下いずれかに回動させると、中心軸23の馬蹄形部23bの押圧作用で可動ロック体83が後退動し、これによってロックが解除される。従って、レバー22を押し続けると昇降ユニット25を所望の方向に昇降させることができる。昇降体19における抱持部19aの底板には可動ロック体83が後退動することを許容するための凹所89を形成しているが、抱持部19aの底板に可動ロック体83の底板83aが出没する逃がし穴を形成することも可能である(抱持部19の底板は後ろに露出しているので、実施形態のように抱持部19aで可動ロック体83を隠すのが好ましい。)。
【0084】
(9).その他
本願発明は上記の実施形態の他にも様々に具体化できる。例えばランバーサポートは必ずしもリアリンクの起立部に取り付ける必要はないのであり、バックフレームや背支柱に取付けることも可能である。また、実施形態ではランバーサポートを左右に独立して配置したが、ランバーサポートを単一構造とすることも可能であり、従って、横長の形態に形成するなど、任意の形状を選択できる。ランバーサポートを左右分離方式にした場合、左右のレバーを横長のジョイントで連結し、ジョイントを介して左右ランバーサポートを同時に昇降させることも可能である。
【0085】
ロック手段や操作手段も様々の構成を採用できる。例えば操作手段としてプッシュボタンを採用して、プッシュボタンの動きをカム機構やリンク機構によって可動ロック体の動きに変換することも可能である。レバーを上下スライド式に構成して、その下降動又は上昇動若しくは両方においてロックが解除される構成とすることも可能であり、この場合もロック解除と高さ調節とをワンアクションで行える。係合溝を昇降体に形成して、係合突起をガイド部等のランバー受け部の側に形成することも可能である。
【0086】
ロック機構としては、係合突起と係合溝との嵌め合わせに代えて、例えば鋸歯状の凹凸の嵌め合わせや、ピンと穴の嵌め合わせなども採用できる。可動ロック体(ロック体)を左右方向に移動させてロック・ロック解除を行うことも可能である。また、背受けシートとして変形可能な樹脂板を使用することも可能であり、背受けシートの前面にクッションを張ることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本願発明は椅子に適用して有用性を発揮する。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0088】
5 背もたれ
10 背受けシート
10a ランバー支持部
11 ランバーサポート
15 リアリンク
16 リアリンクの起立部
16a ランバー受け部
19 昇降体
20 可動ロック体
21 補助金具
22 レバー
23 レバーの中心軸
27 エッジ部材
29 係合溝
30 係合突起
47 アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座した人の体圧を後ろから支える可撓性の背受けシートと、前記背受けシートの後ろに配置されたランバーサポートと、前記ランバーサポートを上下動可能に支持するランバー受け部とを有しており、前記ランバーサポートを高さ調節することで前記背受けシートのうち着座者の腰部を支えるランバー支持部の高さが調節される、という構成であって、
前記ランバーサポートの上昇動と下降動とのうちいずれか一方又は両方を規制するロック手段と、前記ロック手段による規制を解除する操作手段とを有している、
背もたれ付き椅子。
【請求項2】
前記ロック手段は、前記ランバーサポートと一体に上下動する可動ロック体を有しており、前記可動ロック体とランバー受け部とのうちいずれか一方に設けた係合突起と他方に設けた係合溝との嵌まり合いによってランバーサポートの高さが保持されており、前記操作手段により、前記係合突起と係合溝との嵌まり合いが解除又は弱められるように前記可動ロック体が操作される、
請求項1に記載した背もたれ付き椅子。
【請求項3】
前記ランバーサポート及び前記可動ロック体は、前記ランバー受け部に上下動自在に装着された昇降体に取付けられており、前記背受けシートによる押圧力が前記ランバーサポート及び昇降体を介して前記ランバー受け部で支持されている、
請求項2に記載した背もたれ付き椅子。
【請求項4】
前記操作手段は回動式のレバーであり、前記レバーが水平状の軸心回りに回動することで前記ロック手段の規制が解除される、
請求項1〜3に記載した背もたれ付き椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−71025(P2012−71025A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219479(P2010−219479)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000139780)株式会社イトーキ (833)
【Fターム(参考)】