説明

背負式作業機

【課題】 部品点数を少なくして組立を容易にし、かつ更に背負性を向上させた背負式作業機を提供する。
【解決手段】 背負式作業機1は、第1の背当て面18を有する背負い枠10と、背負い枠10の端部に回動可能に取り付けられた板付きパイプ26と、板付きパイプ26に固定された液体タンク12とを備える。液体タンク12の、背負い枠10に隣接する部分に設けられた凹部36に、板付きパイプ26の回動の回動軸が配置される。液体タンク12は、背負い枠10の第1の背当て面18に続く、第2の背当て面34を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体タンクが搭載された背負式作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、背負式動力噴霧機等の液体タンクが搭載された背負式作業機において、作業者が前傾姿勢をとったときの背負い心地や作業の快適性等の背負性を向上させるため、架台における作業者の背中側の面である背当て面を屈曲できるようにしたものが創案されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【特許文献1】実公平7−8047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載されている背負式作業機は、作業者に背に当たる架台の直立部を上下2つの板状部材から構成し、これらの部材を互いに回動可能に接続し、背当て面が屈曲可能となるようにしている。このような構成では、直立部の上側板状部材に液体タンクを固定することが必要となり、組立が煩雑になるという問題点があった。また、このような背負式作業機において、更に背負性を向上させることが求められていた。
【0004】
本発明は、以上の問題点を解決するためになされたものであり、部品点数を少なくして組立を容易にし、かつ更に背負性を向上させた背負式作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、液体タンク(12)を有する背負式作業機(1)において、第1の背当て面(18)を有する背負い枠(10)と、背負い枠(10)の上端部に回動可能に軸支された固定部材(26)と、を備え、液体タンク(12)の、背負い枠(10)に隣接する部分に設けられた凹部(36)に固定部材(26)の回動軸が配置されるよう、液体タンク(12)が固定部材(26)に固定され、かつ、液体タンク(12)が、背負い枠(10)の第1の背当て面(18)に連続する第2の背当て面(34)を有する、ことを特徴としている。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、左、右、前、後、上、下等の方向を表す語は、作業者が背負式作業機(1)を背負って直立した状態を基準とし、作業者の前方を「前」と定める。
【0006】
本発明に係る背負式作業機(1)では、背負い枠(10)の第1の背当て面(18)と液体タンク(12)の第2の背当て面(34)とで、背負式作業機(1)としての背当て面を構成している。また、液体タンク(12)は、板状部材を介して背負い枠(10)に対して回動可能な状態で結合されている。従って、第2の背当て面(34)は第1の背当て面(18)に対して屈曲することができ、良好な背負性を実現する。
【0007】
上記の構成においては、液体タンク(12)自体が有する面を背当て面として利用しているので、従来の如く、背負い枠(10)を複数の部分に分割する必要がなく、より簡易な構成で屈曲による良好な背負性を確保している。また、本発明の背負式作業機(1)においては、作業者の背中に直に液体タンク(12)が接する。従って、本発明の背負式作業機(1)によれば、従来の背負式作業機と比較して、液体タンク(12)の重心が作業者の背中に近づくこととなり、更に背負性が向上する。
【0008】
背負式作業機(1)は、固定部材(26)を介する液体タンク(12)の回動を弾性的に制限する緩衝手段(38)を更に備えることが望ましい。この構成によれば、緩衝用部材により液体タンク(12)が急な回動をすることを防止できる。
【0009】
背負い枠(10)は、液体タンク(12)に突き当たることによりその回動を制限するストッパ(40)を更に有することが望ましい。この構成によれば、過度に液体タンク(12)が回動することがないので、前方に重心が行き過ぎることもない。また、ストッパ(40)は背負い枠(10)と一体に形成されているので、背負式作業機(1)の部品点数が増加することがない。
【0010】
背負式作業機(1)は、背負い枠(10)の第1の背当て面(18)と液体タンク(12)の第2の背当て面(34)とを被覆した背当て部材(48)を更に備えることが望ましい。この構成によれば、第1の背当て面(18)と第2の背当て面(34)とを被覆した背当て部材(48)のみが作業者の背中に接するので、より一層背負性を向上させることができる。また、屈曲のための機構を覆うことができるので、背負式作業機(1)の美観を向上させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の背負式作業機(1)では、液体タンク(12)自体が有する面を背当て面として利用して、複数の板状部材を利用するのではなく、より簡易な構成で屈曲による良好な背負性を確保している。即ち本発明によれば、背負い枠(10)を複数の板状部材で構成したものではなく、少ない部品点数にして容易に組み立てることができる背負式作業機(1)を実現することができる。また、本発明の背負式作業機(1)においては、作業者の背中に直に液体タンク(12)が接する。従って、従来の背負式作業機と比較して、液体タンク(12)の重心が作業者の背中に近づくこととなり、更に背負性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面とともに本発明に係る背負式作業機の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
図1は、本実施形態の背負式作業機1の分解斜視図である。背負式作業機1は、作業者に背負われた状態で使用され、農作物等に液状の薬剤を噴霧するための動力噴霧機である。従って、この作業機1は、背負い枠10と、液状薬剤を貯留する液体タンク12とを備えている。液体タンク12内の薬剤は、背負い枠10に搭載された液体ポンプ(図では明示しない)により吸引され、噴霧ホースを通してその先端の噴霧ノズルから噴霧される。
【0014】
図1に示すように、背負式作業機1の背負い枠10は、作業者の背中に対向する板状部材である背当て部14と、背当て部14の後方に設けられる架台部16とが一体的に形成されてなるものである。背当て部14の前面は、作業者の背中に対向する第1の背当て面18である。また、背負い枠10には、背負い時の左右の安定感が得られるように、背負い枠10の左右の外縁部から前方に延びる一対の腰当て板20が設けられている。
【0015】
背負い枠10の架台部16には、液体タンク12内の液体を噴霧させるための液体ポンプや液体ポンプを駆動させるための内燃エンジン等の機器が搭載されている。また架台部16の上面は、液体タンク12を載置する載置面となっている。
【0016】
背負い枠10の背当て部14の上側には、中央上方に延びた円柱部支持部22が背当て部14と一体に形成されており、円柱部支持部22の側面からは一対の円柱部24が左右に延びている。図2及び図3に示すように、各円柱部24には、板付きパイプ(固定部材)26の円筒部28が回転可能に嵌合され、ヒンジを構成している。
【0017】
板付きパイプ26は、前記の円筒部28、及び円筒部28の軸方向に沿って円筒部28と一体に形成されている板状部30からなっている。また、円筒部28と板状部30との間には、板付きパイプ26の強度を確保するため、2本のリブ32が設けられている。板付きパイプ26の板状部30には、液体タンク12がボルト等により固定される。従って、液体タンク12は板付きパイプ26を介して背負い枠10に対して回動ないしは屈曲することができる。
【0018】
図2及び図3から理解される通り、液体タンク12は、第2の背当て面34の下端に沿った背負い枠10に隣接する部分に凹部36が設けられている。この凹部36に、板付きパイプ26の回転軸が配置されるよう、液体タンク12の位置決めがされている。この結果も液体タンク12は全体的に前方に配置することが可能となり、液体タンク12の前面を、背負い枠10における第1の背当て面18に連続する第2の背当て面34として使用することが可能となる。
【0019】
上記のように液体タンク12が背負い枠10に対して回動可能となっているため、図3に示すように、液体タンク12の第2の背当て面34は背負い枠10の第1の背当て面18に対して屈曲することとなる。この屈曲する位置は、背負式作業機1における上下方向のほぼ中央に位置し、作業者が背負式作業機1を背負ったときの背中の上下方向のほぼ中央に相当する位置である。
【0020】
また、図1〜図3に示すように、背負い枠10は、板付きパイプ26及び液体タンク12の前方への回動を弾性的に制限する左右2つの緩衝プレート(緩衝手段)38を有している。緩衝プレート38は、合成樹脂等の板状のばね材により構成されている。2つの緩衝プレート38の一方の端部は、背負い枠10の円柱部支持部22の上面の第1の背当て面18側に、背当て部14と一体に横並びに形成されている。緩衝プレート38のもう一方の端部は、液体タンク12の凹部36を形成する面を斜め下から突き当たっており、液体タンク12を付勢している。
【0021】
また、図1〜図3に示すように、背負い枠10は、板付きパイプ26の板状部30を挟んで液体タンク12に突き当たることにより板付きパイプ26及び液体タンク12の前方への回動を制限する左右2つのストッパ40を有している。ストッパ40は、背負い枠10の円柱部支持部22の上面の、円柱部24の付け根近傍に(上記の緩衝プレート38とは左右方向の位置をずらして)突起状の部材が背当て部14と一体に形成されることにより、構成されている。なお、前方への回動の制限の角度は、背負式作業機1を使用する作業者がどの程度の前傾姿勢をとるかに基づいて決められるのがよい。また、ストッパ40は、直接液体タンク12に突き当たることとしてもよい。
【0022】
なお、板付きパイプ26及び液体タンク12の後方への回動は、背負い枠10の架台部16が有する載置面がストッパの役割を果たし、制限される。従って、液体タンク12の第2の背当て面34は、背負い枠10の第1の背当て面18よりも後方に屈曲することはない。
【0023】
また、背負い枠10の下部及び液体タンク12の上部の左右には、作業者用の背負いベルト42(図4にはその一方のみ示す)を取り付けるためのフック44,46がそれぞれ設けられる。上記の第2の背当て面34の前方への屈曲は、作業者が前傾姿勢をとり、背負いベルト42から液体タンク12に前方への力が加わった場合等に起こる。
【0024】
また、図4に示すように、背負式作業機1は、作業者の背中に硬質の背負い枠10や液体タンク12の背当て面18,34が接しないように、背負い枠10の第1の背当て面18と液体タンク12の第2の背当て面34を被覆する、平面状のクッション材から構成される背当て部材48を備えることが好適である。背当て部材48は、ねじにより、上部を液体タンク12の部分で、中間部を板付きパイプ26の部分で、下部を背負い枠10の部分で、固定される。
【0025】
また、図1及び図4に示すように、液体タンク12の側面には、水平方向に段差50が設けられている。段差50は、背負式作業機1における上下方向のほぼ中央に位置する。段差50には、ロープを巻き付けることができるようになっている。背負式作業機1の搬送時、この段差50にロープを巻き付けて軽トラック等の荷台に固定される。このとき、ロープの固定により液体タンク12の回動を防止することができる。
【0026】
上述したように、本実施形態に係る背負式作業機1によれば、第2の背当て面34は第1の背当て面18に対して屈曲することができる。従って、背負式作業機1は、背当て面が作業者の姿勢に応じた屈曲形状となり、良好な背負性を実現する。
【0027】
一方、液体タンク12自体が有する面を(第2の)背当て面34として利用して、従来の作業機のように背負い枠を複数の部分に分割したものに比して、より簡易な構成で屈曲による良好な背負性を確保している。即ち本実施形態によれば、少ない部品点数で、容易に組み立てることができる背負式作業機1を実現することができる。また、本実施形態に係る背負式作業機1においては、作業者の背中に直に液体タンク12が接するような位置構成を採っている。従って、本実施形態に係る背負式作業機1によれば、従来の背負式作業機と比較して、液体タンク12の重心が作業者の背中に近づくこととなる。これは、作業者にとっては、後ろに引っ張られる感覚が低減されることになり、更に背負性が向上する。
【0028】
また、本実施形態のように、回動のための機構を液体タンク12に設けられた凹部36に配置したことにより、作業者の側の面に部材が張り出すことなしに屈曲を実現することができる。なお、回動のための機構は必ずしも上述した機構である必要はなく、例えば、背負い枠10側に円筒部を、板付きパイプ26側に円柱部をそれぞれ設け、板付きパイプ26の円柱部を背負い枠10の円筒部に嵌めこむような機構にしてもよい。
【0029】
更に、背負式作業機1が緩衝プレート38のような緩衝手段を備えることとすれば、前傾、後傾及び定置状態から背負う時などの急な動作に対して、液体タンク12が急な回動をすることを防止できる。これは、急激な重心の前方移動を防止するものであり、転倒等を防止することができる。なお、緩衝手段は必ずしも緩衝プレート38を用いる必要はなく、例えば弦巻ばねを用いてもよい。
【0030】
また、本実施形態では、ストッパ40を設けているので、過度に液体タンク12が回動することがない。これも、重心が過度に前方移動することを防止し、転倒から作業者を保護する。なお、ストッパ40を円柱部24の付け根近傍の左右の離れた位置に配置することで、液体タンク12から加わる力を均等に受けることができる。
【0031】
上述したように、背当て部材48により第1の背当て面18と第2の背当て面34とを被覆することとすれば、背当て部材48のみが作業者の背中に接するので、より一層背負性を向上させることができる。また、屈曲のための機構を覆うことができるので、背負式作業機1の美観を向上させる。
【0032】
更にまた、本実施形態における背負式作業機1においては、液体タンク12のみを前傾させて内燃エンジン等の機器を搭載した背負い枠10の架台部16との間に隙間を確保することができるので、メンテナンスが行いやすくなっている。
【0033】
なお、上述した実施形態に係る背負式作業機1は、動力噴霧機であるが、本発明は、他の背負式散布機等の背負式作業機であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態に係る背負式作業機の斜視図である。
【図2】実施形態に係る背負式作業機における、背負い枠と液体タンクとの結合部分の断面図である。
【図3】実施形態に係る背負式作業機における、屈曲したときの、背負い枠と液体タンクとの結合部分の断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る背負式作業機の背当て部材を取り付けたもの斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
1…背負式作業機、10…背負い枠、12…液体タンク、14…背当て部、16…架台部、18…第1の背当て面、20…腰当て板、22…円柱部支持部、24…円柱部、26…板付きパイプ(固定部材)、28…円筒部、30…板状部、32…リブ、34…第2の背当て面、36…凹部、38…緩衝プレート(緩衝手段)、40…ストッパ、42…背負いベルト、44,46…フック、48…背当て部材、段差50。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体タンク(12)を有する背負式作業機(1)において、
第1の背当て面(18)を有する背負い枠(10)と、
前記背負い枠(10)の上端部に回動可能に軸支された固定部材(26)と、を備え、
前記液体タンク(12)の、前記背負い枠(10)に隣接する部分に設けられた凹部(36)に、前記固定部材(26)の回動軸が配置されるよう、前記液体タンク(12)が前記固定部材(26)に固定され、
前記液体タンク(12)が、前記背負い枠(10)の前記第1の背当て面(18)に連続する第2の背当て面(34)を有する、ことを特徴とする背負式作業機。
【請求項2】
前記固定部材(26)を介しての前記液体タンク(12)の回動を弾性的に制限する緩衝手段(38)を更に備えることを特徴とする請求項1記載の背負式作業機。
【請求項3】
前記背負い枠(10)は、前記液体タンク(12)に突き当たることにより回動を制限するストッパ(40)を更に有することを特徴とする請求項1又は2に記載の背負式作業機。
【請求項4】
前記背負い枠(10)の前記第1の背当て面(18)と前記液体タンク(12)の前記第2の背当て面(34)とを被覆した背当て部材(48)を更に備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の背負式作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−38116(P2007−38116A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−224543(P2005−224543)
【出願日】平成17年8月2日(2005.8.2)
【出願人】(000141174)株式会社丸山製作所 (134)
【Fターム(参考)】