胎児異数性の診断
本発明は、胎児異数性の非侵襲性の早期診断のための方法に関する。特に、本発明は、母体の生体液、例えば母体の血清または羊水において異数性の特徴を示すタンパク質発現パターンを同定することによる、胎児異数性の診断に関する。一態様では、本発明は、母体の生体液の試験試料のプロテオームプロフィールと、同じ種類の生体液の標準または参照プロテオームプロフィールとを比較すること、ならびに前記試験試料のプロテオームプロフィールが前記標準プロテオームプロフィールに存在しないかまたは前記参照プロテオームプロフィールに存在する、表1〜2および5〜6に記載されるバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも1種類のバイオマーカーを表す少なくとも1つの固有の発現サインを示す場合、胎児異数性の存在を決定することを含む、胎児異数性の診断のための方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、胎児異数性の非侵襲性の早期診断のための方法に関する。特に、本発明は、母体の生体液、例えば母体血清また羊水において異数性の特徴を示すタンパク質発現パターンを同定することによる、胎児異数性の診断に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の説明)
(プロテオミクス)
タンパク質発現パターンの大規模解析は、現在のDNAクローニングおよび遺伝子プロファイリングアプローチの重要かつ必要な補完技法として浮上している(非特許文献1)。DNA配列情報は、ホモロジー法に基づいて何らかの構造上および可能性のあるタンパク質修飾を推論する際に有用であるが、翻訳後修飾、タンパク質分解または区分化によるタンパク質機能の調節に関する情報は得られない。
【0003】
従来のゲルに基づく方法、例えば一次元および二次元ゲル電気泳動は小型タンパク質(タンパク質<1,000)の検出に有用であるが、それには大量の試料を必要とする(非特許文献2)。この制限を克服するためのアプローチとしては、試料中のタンパク質の質量を示すプロフィールを正確に生成するマトリックス支援レーザー脱離イオン化法または表面増強レーザー脱離イオン化法(MALDIまたはSELDI)飛行時間型質量分析計が挙げられる。これらのパターンまたはプロフィールを用いると種々の疾患の同定およびモニターができる。同定の2番目の工程は、ペプチドマッピングとタンデム質量分析とを連結させて、ペプチド断片からアミノ酸配列情報を生成することによりもたらされる。これは、例えば、MALDI/SELDIまたはESIを四重極の飛行時間型MS(Qq−TOF MS)と連結させることにより実現することができる。この最後の方法は、特定のペプチドの定量化に用いることもできる(ICAT法)。
【0004】
(胎児異数性)
胎児異数性は染色体数の異常であり、卵形成または精子形成中の減数分裂の不分離の結果として生ずることが多いが、トリソミー8などの特定の異数性は接合後の減数分裂分離に起因する場合がより多い(非特許文献3)。このような異常には正常な染色体数の減少および増加の両方が含まれ、常染色体ならびに性染色体に関係し得る。異数性の減少の例はターナー症候群で、X性染色体が1本しか存在しないことが特徴である。染色体数の増加の例としては、ダウン症候群(染色体21のトリソミー)、パトー症候群(染色体13のトリソミー)、エドワード症候群(染色体18のトリソミー)、およびクラインフェルター症候群(性染色体のXXYトリソミー)が挙げられる。異数性は一般に著しい身体的かつ神経学的障害を引き起こし、その結果多くの患者が成人期に達することができない。実際、13、18、または21以外の染色体に関する常染色体異数性を有する胎児は一般に子宮の中で死亡する。しかし、特定の異数性、例えばクラインフェルター症候群は、あまり明白でない表現型を示し、他のトリソミー、例えばXXYおよびXXXの患者は、成熟して生殖能力のある成人となる場合も多い。
【0005】
ダウン症候群は人間において最も一般的な単一パターンの形成異常であり、出生時に最も多く見られる重大な先天異常の1つであって、生児出生660人に1人の割合で起こる(非特許文献4)。妊娠第二期に生存しているダウン症候群の胎児全てのうち約3人に1人はその期間を生き抜くことができない;従って、妊娠第二期のダウン症候群の真の発生率は妊娠500例中1例に近い(非特許文献5)。ダウン症候群の乳児の多数は、著しい罹患率および死亡率を引き起こす重大な心臓、胃腸、またはその他の異常を有する。さらに、大多数のダウン症候群の乳児のIQは50未満であり、この症候群を米国における精神遅滞の主な原因の1つにしている。米国では毎年約2500万人の妊娠女性がダウン症候群の血清スクリーニング検査を受けており、スクリーニングがなければ、これらの妊娠のうち約4、000例がダウン症候群の子を出産する可能性がある(非特許文献6)。
【0006】
ダウン症候群は生児出産において最も一般的な異数性であるものの、染色体13、18、および性染色体の異数性はかなりの数の個体に及んでいる。例えばトリソミー18の発生率は、出生約7000対1であり、トリソミー13の発生率は出生約29,000対1である(非特許文献3)。その他の異数性は妊娠中に高い割合で発生するが、胎児が出産予定日になる前、通常妊娠15週以内に自然流産となる(Nicolaidies & Petersen、前掲)。例えば、トリソミー16は最も一般的な単一のヒトトリソミーであり、認識される全ての妊娠の1.5%に起こると考えられているが、致死性の染色体異常である(非特許文献3)。トリソミー15および8はより低い割合で発生するが(全ての自然流産のうちそれぞれ約1.4%および0.7%)これも致死性の異常である(非特許文献3)。
【0007】
(胎児異数性の診断)
最終的な胎児異数性の出生前診断には、羊水穿刺または絨毛膜標本採取(CVS)による侵襲的な検査を必要とし、これらの検査は0.5%〜1%の妊娠の喪失という処置に伴うリスクに関連している(非特許文献7)。胎児異数性、例えばダウン症候群に関するスクリーニングは異常のある胎児を妊娠することのリスクについての評価を患者に提供するため、一般に妊娠中に行われている。これらの侵襲的な検査法に関連するリスクのため、非侵襲的な異数性のスクリーニング法に多くの関心が集まっている。
【0008】
特定の異数性との関連において様々なアプローチ法が用いられているものの、ダウン症候群の場合、スクリーニングは、最初は完全に母体の年齢を基準とし、35歳という任意の境界で侵襲的な胎児検査の実施に値するハイリスクな女性の母集団を限定していた。このアプローチの結果、ダウン症候群の胎児の検出率は20%〜30%、侵襲的な胎児検査の割合は5%〜7%となる。従って、各例のダウン症候群を検出するために約140例の羊水穿刺が必要とされ、異常胎児が2人検出されるたびに正常な胎児1人が死亡する(非特許文献8)。
【0009】
これらの制限のため、検出率を向上させ、侵襲的検査率を低下させるために妊娠第二期の血清スクリーニング法が導入された。現在のダウン症候群のスクリーニングの注意基準は、妊娠15〜18週の全ての患者に3種類のマーカー血清検査を行うことを求めており、これを母体の年齢(MA)とともにリスク判定に用いる。この検査はα−フェトタンパク質(AFP)、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(βhCG)、および非結合型エストリオール(uE3)を検定する。もしこの「3種類スクリーニング」から導かれるリスクが所定の境界より大きければ、患者は胎児核型分析のための侵襲的検査を提案される。最も一般的に用いられるリスク境界は、380対1(35歳女性の出産予定日リスク)であり、この結果ダウン症候群の検出率は65%〜70%、侵襲的胎児検査を提案される妊娠母集団は5%〜7%である(非特許文献9)。MAとこの妊娠第二期血清の「3種類スクリーニング」とを組み合わせて用いて1例のダウン症候群を検出するために60例の羊水穿刺が行われると推測されている(非特許文献8)。
【0010】
ダウン症候群の血清の「3種類スクリーニング」の現在の注意基準は今「4種類検査」へと発展中であり、この検査では血清マーカーインヒビン−Aが他の3種類の分析物に加えられる。4種類検査は1996年8月からロンドンのWolfson Institute of Preventive MedicineでWald教授の指揮下で臨床的に提案されてきた。毎日の診療でのインヒビン−Aの成績は予想通りである。スクリーニングマーカーとしてのインヒビン−Aの成績の評価は非常に一貫している。公表された6つの研究において、ダウン症候群妊娠の場合の母体の血清インヒビン−Aレベルは、非罹患妊娠において見出されたレベルよりも平均して1.9倍高かった(非特許文献9)。インヒビン−Aは、ダウン症候群妊娠の単変量予測因子として、最も強力な単一マーカーであるβhCGとほぼ同程度と評価されている(固定されたスクリーニング陽性率5%で、βhCGの検出率49%と比較してインヒビン−Aの検出率は44%である。)(非特許文献9)。インヒビン−Aを3種類検査に加えることにより、「3種類スクリーニング」のダウン症候群検出率が77%から80%へ、侵襲的な検査の比率は5%〜7%に改善されるであろう(非特許文献9;非特許文献10)。あるいは、4種類の検査を用いてダウン症候群の検出率70%を維持する一方で、侵襲的検査率を5%に減らし、実施される羊水穿刺の件数を有意に低下させることもできるであろう。
【0011】
羊水穿刺の頻度をさらに減らす努力において、妊娠第二期スクリーニング超音波検査がダウン症候群スクリーニングに適用されている。特定の主な胎児の構造上の異常の同定は、ダウン症候群および他の異数性のリスクを著しく増加させ、その結果侵襲的な胎児検査の指標と考えられる。しかし、このアプローチはダウン症候群の集団スクリーニングを改善しない、というのも一般集団における98%の胎児が構造上の異常を有していないためである。
【0012】
それ自体は構造上の異常ではなく、標準的な核型の存在下で胎児に何らリスクを与えない異数性の超音波マーカーの役割を評価するさらなる研究が行われている。ダウン症候群スクリーニングに用いられるこのような超音波マーカーとしては、脈絡叢嚢胞、エコー源性腸管、短い大腿骨、短い上腕骨、微小な水腎症、および肥厚した後頚部襞が挙げられる。超音波検査によるアプローチはスクリーニング陽性率5%でダウン症候群の胎児の73%まで同定する可能性があると何人かの研究者が示唆しているが、これらの研究は全て、既に異数性のリスクの高い母集団から導かれている(非特許文献11)。これらの検査の成績をハイリスク母集団から一般集団または非選択集団まで正確に推定することは、問題とされる疾患の有病率は著しく減少するものであるため不可能である。従って、この「遺伝子の超音波検査」の価値は、一般集団のスクリーニングに適用された場合大幅に限定される。さらに、この知見の希薄さのため、超音波検査によるスクリーニング法の成績はオペレーターの技術と経験に非常に左右され、3次センターの外部で超音波検査によるスクリーニングを適用する場合は再現できない可能性がある(非特許文献12)。「遺伝子の超音波検査」は一次スクリーニングツールとしては有用でないように思われるが、最初の陽性スクリーニング検査の後の異数性のリスクの減少に役割を有しうる(非特許文献8)。
【0013】
ダウン症候群の妊娠第二期スクリーニングに関する主な問題は、それが妊娠15〜18週で行われること、続いて、必要であれば妊娠16〜20週で羊水穿刺診断が行われることである。このことは、一般的な妊娠期間の上限である妊娠24週に達する前に妊娠中絶を望む場合、患者および医療提供者に著しい時間的制約をもたらす。さらに、このような後期の妊娠中絶は母体の罹患率の増加に関係する(非特許文献13)。妊娠第一期を基にする超音波検査による異数性スクリーニングプログラムの価値には、異常が確認された場合の安全な妊娠中絶の方法、ならびに異常が妊娠の初期に検出された場合の患者のプライバシーおよび機密保持の向上が含まれるであろう。
【0014】
ロンドンのFetal Medicine Foundationの研究者らは、MAと妊娠第一期の胎児の超音波評価を組み合わせて用いるスクリーニングからダウン症候群の検出率80%を示した(非特許文献14;非特許文献15)。これは、胎児の首の後部とその上を覆う皮膚との間の半透明の空間の測定に頼るもので、その空間がダウン症候群および他の異数性の胎児では大きくなっていることが報告されている。この後頚部透過像(NT)測定は、妊娠10〜14週の間の経腹的または経膣的超音波検査により達成が容易であると報告されている(非特許文献16)。ダウン症候群の妊娠第一期スクリーニングを裏付ける大部分のデータはロンドンのFetal Medicine Foundationからのものである(非特許文献14;非特許文献16)。しかし、ダウン症候群の検出率は異なるセンター間で一致しておらず、現在まで、Fetal Medicine Foundationネットワーク以外でかれらの結果を反復したセンターはない。
【0015】
種々の妊娠関連タンパク質およびホルモンの妊娠第一期の濃度が、染色体的に正常な妊娠と異常な妊娠とで異なることを示すデータもある。ダウン症候群およびエドワード症候群に関する最も有望な2種類の妊娠第一期血清マーカーはPAPP−Aおよび遊離βhCGであると思われる(非特許文献17)。PAPP−Aの妊娠第一期血清レベルがダウン症候群において有意に低いこと、およびこの低下が後頚部透過像(NT)の肥厚とは関係のないことが報告されている(非特許文献18)。さらに、両方の合計および遊離β−hCGの妊娠第一期血清レベルがダウン症候群胎児において高いこと、およびこの増加も後頚部透過像(NT)の肥厚とは関係のないことが示されている(非特許文献19)。PAPP−Aおよび遊離βhCGもまた、ダウン症候群スクリーニングに適用した場合、互いに関係がない(非特許文献20)。多施設プロスペクティブ研究において、PAPP−Aと遊離βhCGとを組み合せると、ダウン症候群の検出率は60%、侵襲的検査率は5%となった(非特許文献21)。数理モデルは、MA、NT肥厚、遊離βhCG血清、およびPAPP−A血清を利用する複合妊娠第一期スクリーニングプログラムが、侵襲的検査率5%に対して80%を超えるダウン症候群胎児を検出できると示唆している(非特許文献20)。これらの治験およびモデルは最近Nicolaidesにより総説されている(非特許文献22)。
【0016】
これらのデータは、胎児異数性、例えばダウン症候群の複合妊娠第一期スクリーニングプログラムまたは妊娠第一期および第二期統合スクリーニングプログラムが、標準的な妊娠第二期スクリーニングよりも優れているであろうことを示唆しているが、この仮説は臨床現場ではまだ確認されていない。
【0017】
ダウン症候群の妊娠第一期スクリーニングの有効性を明確にし、妊娠第一期および第二期スクリーニングの診断能力を比較するため、NIHは最近多施設の妊娠第一期および第二期リスク評価(First and Second Trimester Evaluation of Risk;FASTER)試験に資金援助した。このプロスペクティブ研究では、患者がNTの超音波検査を受け、妊娠10週と3日から13週と6日までにPAPP−Aおよび遊離βhCGのための母体血清を採取され、結果は妊娠15週〜18週と6日までの4種類スクリーニング(AFP、βhCG、uE3、およびインヒビン−A)を含む2次リスクスクリーニング後まで患者に知らされなかった。38、000名を超える患者がこの調査を完了し、その中から117例の胎児トリソミー21が同定され、そのうち87例で妊娠第一期および第二期のデータが揃った。各検査の診断能力は、複合妊娠第一期スクリーニング(NT/PAPP−A/遊離βhCG/MA);妊娠第二期血清スクリーニング(母体AFP/遊離βhCG/uE3/インヒビン−A/MA);または妊娠第一期および第二期統合スクリーニングを含むスクリーニング法によって分析された。
【0018】
これらのデータは妊娠第一期、または複合妊娠第一期および第二期統合スクリーニングの有用性を確認するものであるが、重大な制限がある。第一に、これらの検査が妊娠期間に大いに依存していること、および妊娠が進むにつれて差別的でなくなること。第二に、ダウン症候群の検出を最適化するために、これらの検査は全てスクリーニング陽性率が低く(5%)、真の偽陽性率が非常に高く(90%を上回る)、その結果患者の不安、および遺伝子検査のための不必要な侵襲的な羊水穿刺をもたらす。従って、信頼性があり広い範囲の妊娠期間にわたって強く且つ偽陽性率の低いそれに変わる検査に対して差し迫った必要がある。
【非特許文献1】PandeyおよびMann,Nature,2000年,第405巻,p.837−46
【非特許文献2】Lilley KS, Razzaq A, Dupree P,「Two−dimensional gel electrophoresis:recent advances in sample preparation,detection and quantitation.」,Curr Opin Chem Biol.,2002年,第6巻,第1号,p.46−50
【非特許文献3】NicolaidisおよびPetersen,Human Reproduction,1998年,第13巻,第2号,p.313−319
【非特許文献4】Jones,K.,「Down’s Syndrome,in Smith’s recognizable patterns of Human malformation」,Jones,K.編,Philadelphia,PA,1997年,p.8−13
【非特許文献5】Cuckle,H.,「Epidemiology of Down Syndrome, in Screening for Down Syndrome in the First Tromester」,J.GrudzinkasおよびR.Ward編,RCOG Press,London,UK,1997年,p.3−13
【非特許文献6】Palomaki,G.E.,ら、Am.J.Obstet.Gynecol.,1997年,第176巻,第5号,p.1046−1051
【非特許文献7】D’Alton,M.E.,Semin Perinatol,1994年,第18巻,第3号,p.140−62
【非特許文献8】VintzielosおよびEgan,Am J.Obstet Gynecol,1995年,第172巻,第3号,p.837−44
【非特許文献9】Waldら、J Med Screen,1997年,第4巻,第4号,p.181−246
【非特許文献10】Waldら、Prenat Diagn,1996年,第16巻,第2号,p.143−53
【非特許文献11】Benacerrafら、Radiology,1994年,第193巻,第1号,p.135−40
【非特許文献12】Ewigman、B.G.,ら、N Engl J Med,1993年,第329巻,第12号,p.821−7
【非特許文献13】Lawson,H.W.,ら、Am J.Obstet Gynecol,1994年,第171巻,第5号,p.1365−72
【非特許文献14】Pandya,P.P.ら、Br J Obstet Gyneacol,1995年,第102巻,第12号,p.957−62
【非特許文献15】Snijders,R.J.,ら,Lancet,1998年,第352巻,第9125号,p.343−6
【非特許文献16】Snijders,R.J.,ら,Ultrasound Obstet Gynecol,1996年,第7巻,第3号,p.216−26
【非特許文献17】Wapner,R.,ら,N Engl J Med,2003年,第349巻,第15号,p.1405−1413
【非特許文献18】Brizot,M.L.,ら,Obstet Gynecol,1994年,第84巻,第6号,p.918−22
【非特許文献19】Brizot,M.L.,Br J Obstet Gynaecol,1995年,第102巻,第2号,p.127−32
【非特許文献20】WaldおよびHackshaw,Prenat Diagn,1997年,第17巻,第9号,p.921−9
【非特許文献21】Haddow,J.E.,ら,N Eng J Med,1998年,第338巻,第14号,p.955−61
【非特許文献22】Nicolaides,Ultrasound in Obstretics and Gynecology,2003年,第21巻,p.313−21
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
ダウン症候群ならびに他の胎児異数性の診断のための新規で効率的で信頼のおける非侵襲性の方法の開発が特に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0020】
(発明の概要)
一態様では、本発明は、母体の生体液の試験試料のプロテオームプロフィールと、同じ種類の生体液の標準または参照プロテオームプロフィールとを比較すること、ならびに前記試験試料のプロテオームプロフィールが前記標準プロテオームプロフィールに存在しないかまたは前記参照プロテオームプロフィールに存在する、表1〜2および5〜6に記載されるバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも1種類のバイオマーカーを表す少なくとも1つの固有の発現サインを示す場合、胎児異数性の存在を決定することを含む、胎児異数性の診断のための方法に関する。
【0021】
さらなる態様では、本発明は、母体の生体液の試験試料のプロテオームプロフィールと、同じ種類の生体液の標準または参照プロテオームプロフィールとを比較すること、ならびに前記試験試料のプロテオームプロフィールが前記標準プロテオームプロフィールに存在しないかまたは前記参照プロテオームプロフィールに存在する、表3に記載されるバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも1種類のバイオマーカーを表す少なくとも1つの固有の発現サインを示す場合、胎児異数性の存在を決定することを含む、胎児異数性の診断のための方法に関する。
【0022】
一実施形態では、本発明は、妊娠ヒト女性から得られた試験試料の使用に関する。
【0023】
本発明の他の実施形態では、プロテオームプロフィールは質量スペクトルである。
【0024】
本発明のさらなる実施形態では、試験試料は母体の血清である。
【0025】
もう1つの実施形態では、固有の発現サインは、16〜20kDa、35〜38kDa、38〜42kDa、40〜45kDa、50〜55kDa、60〜68kDa、および125〜150kDaの分子量範囲のうちの1以上にある。
【0026】
他の実施形態では、試験試料は母体の羊水である。
【0027】
他の実施形態では、固有の発現サインは6〜7kDaおよび8〜10kDaの分子量範囲の一方または両方にある。
【0028】
他の実施形態では、本方法を妊娠の第一期に行う。
【0029】
他の実施形態では、本方法を妊娠の第二期に行う。
【0030】
さらなる実施形態では、本方法は、試験試料において胎児異数性の少なくとも1種類のバイオマーカーの転写されたmRNAのレベルまたは翻訳されたタンパク質のレベルを測定すること、および前記転写されたmRNAのレベルまたは翻訳されたタンパク質のレベルが、標準生体試料におけるそのレベルに対して異なる場合に、胎児異数性の存在を確認することをさらに含む。
【0031】
他の実施形態では、診断される胎児異数性は、ダウン症候群、トリソミー13、トリソミー18、X染色体トリソミー、X染色体モノソミー、クラインフェルター症候群(XXY遺伝子型)、またはXYY症候群(XYY遺伝子型)である。
【0032】
他の実施形態では、その転写されたmRNAのレベルまたは翻訳されたタンパク質のレベルを検出されるバイオマーカーは、PAPP−A、a−フェトタンパク質(AFP)、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(bhCG)、非結合型エストリオール(uE3)、およびインヒビンAからなる群から選択される。
【0033】
さらなる実施形態では、本方法は、妊娠ヒト女性を1種類以上のさらなる診断法に付すことをさらに含む。
【0034】
他の実施形態では、さらなる診断法は、超音波検査、染色体異常を検査するための技法、および後頚部透過像(NT)測定からなる群から選択される。
【0035】
さらなる実施形態では、本発明は1種類以上のバイオマーカーの固有の発現サインの比較を伴う。さらに、発現サインの数は2、3、4、5、6、7、8種類、またはそれより多くのバイオマーカーの数であり得る。
【0036】
さらなる実施形態では、バイオマーカーは、補体H因子(CFAH_HUMAN、SwissProt受託番号P08603);妊娠ゾーンタンパク質(pregnancy zone protein)(PZP_HUMAN;SwissProt受託番号P20741);アファミン(AFAM_HUMAN;SwissProt受託番号P43652);アンジオテンシノーゲン(ANGT_HUMAN;SwissProt受託番号P01019);α−2−hs−糖タンパク質(A2HS_HUMAN;SwissProt受託番号P02765);クラステリン(CLUS_HUMAN;SwissProt受託番号P10909);アポリポタンパク質AI(APA1_HUMAN;SwissProt受託番号P02647);アポリポタンパク質AIV(APA4_HUMAN;SwissProt受託番号P06727);アポリポタンパク質E(APE_HUMAN;SwissProt受託番号P02649);色素上皮由来因子(PEDF_HUMAN;SwissProt受託番号P36955);血清アミロイドAタンパク質(SAA_HUMAN;SwissProt受託番号P02735);AMBPタンパク質(AMBP_HUMAN;SwissProt受託番号P02760);血漿レチノール結合タンパク質(RETB_HUMAN;SwissProt受託番号P02753);血清トランスフェリン前駆体(TRFE_HUMAN;SwissProt受託番号P02787);α−1−抗トリプシン前駆体(A1AT_HUMAN;SwissProt受託番号P01009);α−2−マクログロブリン前駆体(A2MG_HUMAN;SwissProt受託番号P01023);補体C3前駆体(CO3_HUMAN;SwissProt受託番号P01024);アンジオテンシノーゲン前駆体(ANGT_HUMAN;SwissProt受託番号P01019);セルロプラスミン前駆体(CERU_HUMAN;SwissProt受託番号P00450);ハプトグロビン前駆体(HPT_HUMAN;SwissProt受託番号P00738);抗トロンビン−III前駆体(ANT3_HUMAN;SwissProt受託番号P01008);ヘモペキシン前駆体(HEMO_HUMAN;SwissProt受託番号P02790);α−1−酸性糖タンパク質1前駆体(A1AG_HUMAN;SwissProt受託番号P02763);アポリポタンパク質A−I前駆体(APA1_HUMAN;SwissProt受託番号P02647);α 1b−糖タンパク質(SwissProt受託番号P04217);キニノゲン前駆体(KNG_HUMAN;SwissProt受託番号P01042−2);インター−α−トリプシンインヒビター重鎖H2前駆体(ITH2_HUMAN;SwissProt受託番号P19823);α−2−hs−糖タンパク質前駆体(A2HS_HUMAN;SwissProt受託番号P02765);α−1−抗キモトリプシン前駆体(AACT_HUMAN;SwissProt受託番号P01011);インター−α−トリプシンインヒビター重鎖H4前駆体(ITH4_HUMAN;SwissProt受託番号Q14624−2);補体H因子前駆体(CFAH_HUMAN;SwissProt受託番号P08603−1);血漿プロテアーゼC1インヒビター前駆体(IC1_HUMAN;SwissProt受託番号P05155);ヘパリン補因子II前駆体(HEP2_HUMAN SwissProt受託番号P05546);補体B因子前駆体(CFAB_HUMAN;SwissProt受託番号P00751−1);α−2−糖タンパク質1、亜鉛(ZA2G_HUMAN;SwissProt受託番号P25311);ビトロネクチン前駆体(VTNC_HUMAN SwissProt受託番号P04004);インター−α−トリプシンインヒビター重鎖H1前駆体(ITH1_HUMAN;SwissProt受託番号P19827);補体成分C9前駆体(CO9_HUMAN;SwissProt受託番号P02748);フィブリノゲンα/α−E鎖前駆体(FIBA_HUMAN;SwissProt受託番号P02671−1);フィブリノゲンβ鎖前駆体(FIBB_HUMAN;SwissProt受託番号P02675);フィブリノゲンγ鎖前駆体(FIBG_HUMAN;SwissProt受託番号P02679−1);プロトロンビン前駆体(THRB_HUMAN;SwissProt受託番号P00734);クラステリン前駆体(CLUS_HUMAN;SwissProt受託番号P10909);α−1B−糖タンパク質前駆体(A1BG_HUMAN;SwissProt受託番号P04217);α−1−酸性糖タンパク質2前駆体(A1AH_HUMAN;SwissProt受託番号P19652);アポリポタンパク質D前駆体(APOD_HUMAN;SwissProt受託番号P05090);妊娠ゾーンタンパク質前駆体(PZP_HUMAN;SwissProt受託番号P20742);ヒスチジンリッチ糖タンパク質前駆体(HRG_HUMAN;SwissProt受託番号P04196);性ホルモン結合グロブリン前駆体(SHBG_HUMAN;SwissProt受託番号P04278−1);プラスミノゲン前駆体(PLMN_HUMAN;SwissProt受託番号P00747);アポリポタンパク質C−III前駆体(APC3_HUMAN;SwissProt受託番号P02656);ロイシンリッチα−2−糖タンパク質前駆体(A2GL_HUMAN;SwissProt受託番号P02750);アポリポタンパク質E前駆体(APE_HUMAN;SwissProt受託番号P02649);フェチュイン−B前駆体(FETB_HUMAN;SwissProt受託番号Q9UGM5);ミオシン反応性免疫グロブリン軽鎖可変領域(SwissProt受託番号Q9UL83);補体C1S成分前駆体(C1S_HUMAN;SwissProt受託番号P09871);AMBPタンパク質前駆体(AMBP_HUMAN;SwissProt受託番号P02760);および補体C4前駆体(CO4_HUMAN;SwissProt受託番号P01028)からなる群から選択される。
【0037】
特定の実施形態では、本発明で用いられるバイオマーカーは、補体H因子(CFAH_HUMAN、SwissProt受託番号P08603);および妊娠ゾーンタンパク質(PZP_HUMAN;SwissProt受託番号P20741)である。
【0038】
特定の実施形態では、本発明で用いられるバイオマーカーは、補体H因子(CFAH_HUMAN、SwissProt受託番号P08603);およびアファミン(AFAM_HUMAN;SwissProt受託番号P43652)である。
【0039】
特定の実施形態では、本発明で用いられるバイオマーカーは、妊娠ゾーンタンパク質(PZP_HUMAN;SwissProt受託番号P20741);およびα−2−hs−糖タンパク質(A2HS_HUMAN;SwissProt受託番号P02765)である。
【0040】
特定の実施形態では、本発明で用いられるバイオマーカーは、補体H因子(CFAH_HUMAN、SwissProt受託番号P08603);アンジオテンシノーゲン(ANGT_HUMAN;SwissProt受託番号P01019);およびクラステリン(CLUS_HUMAN;SwissProt受託番号P10909)である。
【0041】
特定の実施形態では、本発明で用いられるバイオマーカーは、アポリポタンパク質E(APE_HUMAN;SwissProt受託番号P02649);AMBPタンパク質(AMBP_HUMAN;SwissProt受託番号P02760);および血漿レチノール結合タンパク質(RETB_HUMAN;SwissProt受託番号P02753)である。
【0042】
特定の実施形態では、本発明で用いられるバイオマーカーは、補体H因子(CFAH_HUMAN、SwissProt受託番号P08603);アファミン(AFAM_HUMAN;SwissProt受託番号P43652);アンジオテンシノーゲン(ANGT_HUMAN;SwissProt受託番号P01019);およびクラステリン(CLUS_HUMAN;SwissProt受託番号P10909)である。
【0043】
特定の実施形態では、本発明で用いられるバイオマーカーは、補体H因子(CFAH_HUMAN、SwissProt受託番号P08603);アファミン(AFAM_HUMAN;SwissProt受託番号P43652);色素上皮由来因子(PEDF_HUMAN;SwissProt受託番号P36955);血清アミロイドAタンパク質(SAA_HUMAN;SwissProt受託番号P02735);アンジオテンシノーゲン(ANGT_HUMAN;SwissProt受託番号P01019);およびクラステリン(CLUS_HUMAN;SwissProt受託番号P10909)である。
【0044】
特定の実施形態では、本発明で用いられるバイオマーカーは、アポリポタンパク質E(APE_HUMAN;SwissProt受託番号P02649);AMBPタンパク質(AMBP_HUMAN;SwissProt受託番号P02760);血漿レチノール結合タンパク質(RETB_HUMAN;SwissProt受託番号P02753);血清トランスフェリン前駆体(TRFE_HUMAN;SwissProt受託番号P02787);α−2−マクログロブリン前駆体(A2MG_HUMAN;SwissProt受託番号P01023);およびヒスチジンリッチ糖タンパク質前駆体(HRG_HUMAN;SwissProt受託番号P04196)である。
【0045】
特定の実施形態では、本発明で用いられるバイオマーカーは、インター−α−トリプシンインヒビター重鎖H1前駆体(ITH1_HUMAN;SwissProt受託番号P19827);補体成分C9前駆体(CO9_HUMAN;SwissProt受託番号P02748);フィブリノゲンα/α−E鎖前駆体(FIBA_HUMAN;SwissProt受託番号P02671−1);アポリポタンパク質C−III前駆体(APC3_HUMAN;SwissProt受託番号P02656);ロイシンリッチα−2−糖タンパク質前駆体(A2GL_HUMAN;SwissProt受託番号P02750);アポリポタンパク質E前駆体(APE_HUMAN;SwissProt受託番号P02649);フェチュイン−B前駆体(FETB_HUMAN;SwissProt受託番号Q9UGM5);および補体C4前駆体(CO4_HUMAN;SwissProt受託番号P01028)である。
【0046】
特定の実施形態では、本発明は、少なくとも1種類の糖タンパク質を含むプロテオームプロフィールの使用を含む。
【0047】
特定の実施形態では、本発明は、シアル酸糖タンパク質、マンノース結合糖タンパク質、およびO−結合糖タンパク質からなる群から選択されるプロテオームプロフィールに用いられる糖タンパク質を含む。
【0048】
特定の実施形態では、本発明は、常染色体異数性である、胎児異数性の検出を含む。
【0049】
さらなる実施形態では、本発明は、染色体13、18、または21のトリソミーの検出を含む。
【0050】
特定の実施形態では、本発明は、性染色体異数性である、胎児異数性の検出を含む。
【0051】
さらなる実施形態では、本発明は、X染色体トリソミー、X染色体モノソミー、クラインフェルター症候群(XXY遺伝子型)、およびXYY症候群(XYY遺伝子型)からなる群から選択される異数性の検出を含む。
【0052】
(図表の簡単な説明)
表1. 目的の最初の7領域から同定されたダウン症候群の候補母体血清バイオマーカー(図2)。2Dスポットのゲル内消化のタンデムMS/MS分析に続くデノボシーケンシングおよびOpenSeaを用いるデータベース検索により、これらの領域における各タンパク質の相対存在量が明らかとなった。
【0053】
表2. 同定されたダウン症候群の候補母体血清バイオマーカー。2Dスポットのゲル内消化のタンデムMS/MS分析に続いてデノボシーケンシングおよびOpenSeaを用いるデータベース検索により、これらの領域における各タンパク質の相対存在量が明らかとなった。
【0054】
表3. 同定されたダウン症候群の候補羊水バイオマーカー。2Dスポットのゲル内消化のタンデムMS/MS分析に続いてデノボシーケンシングおよびOpenSeaを用いるデータベース検索により、これらの領域における各タンパク質の相対存在量が明らかとなった。
【0055】
表4. 胎児のダウン症候群の診断に好ましい母体血清および羊水バイオマーカー。
【0056】
表5. 目的の最初の領域から同定されたダウン症候群の候補母体血清バイオマーカー(図7)。タンデムMS/MSを用いて特異的な候補バイオマーカーを同定した。
【0057】
表6. 目的の最初の領域から同定されたダウン症候群の候補母体血清バイオマーカー(図8〜11)。タンデムMS/MSを用いて特異的な候補バイオマーカーを同定した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
(A.定義)
別に定義される場合を除いて、本明細書において用いられる技術用語および科学用語は、本発明の属する技術分野の当業者に一般に理解される意味と同じ意味を有する。Singletonら、Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 2nd ed.,J.Wiley & Sons(New York,N.Y.1994)は、本願で用いられる用語の多くに一般的な指針を当業者に提供する。
【0059】
本明細書において用いられる用語「プロテオーム」は、所定の時点での生体試料中のタンパク質の大部分を説明するために用いられる。プロテオームの概念は基本的にゲノムとは異なる。ゲノムが実質的に静的なものであるのに対して、プロテオームは内的および外的事象に応じて絶えず変化する。
【0060】
用語「プロテオームプロフィール」は、所定の時点での生体試料、例えば生体液中の複数のタンパク質の発現パターンの表現をさすために用いられる。プロテオームプロフィールは、例えば質量スペクトルとして表すことができるが、タンパク質、またはその断片の任意の物理化学的または生化学的特性に基づく他の表現も含まれる。従ってプロテオームプロフィールは、例えば、二次元ゲル電気泳動、例えば2−D PAGEにより測定されるタンパク質の電気泳動特性の差異に基づいてよく、例えば二次元電気泳動ゲルでの複数のスポットとして表すことができる。あるいは、プロテオームプロフィールは、二次元液体クロマトグラフィーで測定されるタンパク質の等電点および疎水性に基づいてよく、例えばコンピュータにより生成された仮想二次元マップとして表すことができる。さらに、レクチンに基づくアフィニティー精製を、本明細書に記載される技法と組み合わせて、生体試料中に見出される種々のタンパク質の特異的グリコシル化特性を強調するプロテオームプロフィールを生成することができる。
【0061】
差次的発現プロフィールは、たとえ特異的に同定されたタンパク質が存在しない場合であっても重要な診断価値を有しうる。例えば免疫ブロット法により、単一のタンパク質スポットまたはクロマトグラフ溶出剤がそれから検出でき、タンパク質マイクロアレイを用いて複数のスポット、溶出剤、またはタンパク質を同定することができる。プロテオームプロフィールは一般に、数ピークから50以上のピークを表す複合プロフィールまでの範囲であり得る情報を表すかまたは含む。従って、例えば、プロテオームプロフィールは、少なくとも2種類、または少なくとも3種類、または少なくとも4種類、または少なくとも5種類、または少なくとも6種類、または少なくとも7種類、または少なくとも8種類、または少なくとも9種類、または少なくとも10種類、または少なくとも15種類、または少なくとも20種類、または少なくとも25種類、または少なくとも30種類、または少なくとも35種類、または少なくとも40種類、または少なくとも45種類、または少なくとも50種類のタンパク質、および同種類のものを含むかまたは表しうる。
【0062】
用語「固有の発現サイン」は、統計学的に有意な形で、対応する標準的な(同種の供給源、例えば生体液から得られた)生体試料のプロテオームプロフィールとは異なる、生体試料(例えば参照試料または試験試料)のプロテオームプロフィールの中の固有の特徴またはモチーフを説明するために用いられる。
【0063】
用語「標準プロテオームプロフィール」は、異数性、または他の染色体異常を有さない胎児を妊娠している妊娠女性から得られた試験試料と同じ種類の母体生体液の生体試料のプロテオームプロフィールをさすために用いられる。
【0064】
用語「参照プロテオームプロフィール」は、異数性を有する胎児を妊娠している妊娠女性から得られた試験試料と同じ種類の母体生体液の生体試料のプロテオームプロフィールをさすために用いられる。
【0065】
「患者の応答」は、患者への利益を示す任意のエンドポイントを用いて評価することができ、このエンドポイントとしては、限定されないが、(1)病的状態の進行の(少なくともある程度の)阻害、(2)病的状態の予防、(3)病的状態に関連する1以上の症状の(少なくともある程度の)軽減;(4)処置後の生存期間の増加;および/または(5)処置後の所定の時点での死亡率の低下が挙げられる。
【0066】
用語「処置」とは、対象が標的病的状態または障害を予防されるかまたは減速される(緩和される)、治療的な処置と予防的手段の両方をさす。処置の必要な者としては、既に障害のある者ならびに障害を有する傾向のある者または障害が予防されている者が挙げられる。
【0067】
「先天性奇形」は、遺伝性ではないが出生時には存在している異常である。
【0068】
診断アッセイの「感受性」または「診断感受性」は、疾患を有する人の中から疾患を発見する検査の確率、または検査結果が陽性であって、疾患を有する人の割合として定義される。統計用語では:感受性=真陽性/(真陽性+偽陽性)。
【0069】
用語「1以上の」とは、本明細書においてプロテオミクスプロフィール、タンパク質マーカー、および固有の発現サインとの関連において、任意の順列での、グループ内の任意の1、2、3、4、その他の記載されたメンバーを意味するために用いられる。従って、用語「1以上の」には、グループ内で具体的に記載された任意の2、任意の3、任意の4その他のメンバーが挙げられる。明細書および請求項を通じて具体的な下位群が記載されているが、これらに限定されない。用語「1以上の」は広い意味で用いられ、複数のメンバーを含むグループ内の任意の下位群を示すために用いられるということに重点が置かれる。同様に、用語「少なくとも2」、「少なくとも3」、「少なくとも4」、その他は、組合せの中のメンバーの合計数が少なくとも3、少なくとも3、少なくとも4、その他であるならば、特定のグループ内のメンバーの任意の組合せを網羅する。
【0070】
B.詳細な説明
本発明は、母体生体液のプロテオームプロフィールに基づく、胎児ダウン症候群および他の染色体異数性の早期の信用性のある非侵襲性の検査のための方法および手段に関する。本発明は当技術分野で周知のプロテオミクス技術を利用し、例えば、その内容が参照により明示的に本明細書に組み入れられる以下のテキストに記載される:Proteome Research: New Frontiers in Functional Genomics(Principles and Ptactice),M.R.Wilkinsら、eds.,Springer Verlag,1007;2−D Proteome Analysis Protocols,Andrew L Link, editor, Humana Press,1999;Proteome Research: Two−Dimensional Gel Electrophoresis and Identification Methods(Principles and Ptactice),T.Rabilloud editor, Springer Verlag,2000;Proteome Research:Mass Spectrometry(Principles and Ptactice),P.James editor, Springer Verlag,2001;Introduction to Proteomics,D.C.Liebler editor, Humana Press,2002;Proteomics in Practice: A Laboratory Manual of Proteome Analysis,R.Westermeierら、eds., John Wiley & Sons,2002。
【0071】
当業者であれば、本明細書に記載されるものと類似しているかまたは同等である多くの方法および材料を理解するであろうし、それらを本発明の実践に用いてもよい。実際に、本発明は記載される方法および材料に一切限定されない。
【0072】
(1.生体液中に発現したタンパク質およびポリペプチドの同定)
本発明によれば、生体液のプロテオミクス解析は、当技術分野で公知の種々の方法を用いて行うことができる。
【0073】
一般に、異なる供給源由来の試料、例えば標準的な生体液(標準試料)および試験生体液(試験試料)のタンパク質パターン(プロテオームマップ)を比較して、疾患において上方制御または下方制御されているタンパク質を検出する。次にこれらのタンパク質を、例えばペプチドマスフィンガープリント法および/または質量分析とシーケンシング法を用いて、同定および完全な特性決定のために摘出するか、あるいは標準および/または疾患特異的プロテオームマップを直接目的の疾患の診断に用いるか、または疾患の存在もしくは不在を確認するために用いることができる。
【0074】
比較分析では、タンパク質の相対存在量を正確に表し、正確な結果を得るために、標準試料と試験試料を全く同じように扱うことが重要である。必要とされる全タンパク質量は、用いる分析法によって決まり、当業者が容易に決定することができる。生体試料に存在するタンパク質は、一般に、それらのpIおよび分子量に従って二次元ゲル電気泳動(2−DE)で分離される。タンパク質はまず、等電点電気泳動(一次元ゲル電気泳動)を用いてそれらの電荷により分離される。この工程は、例えば、市販されている固定化されたpH勾配(IPG)ストリップを用いて行うことができる。二次元目は集まったIPGストリップを試料として用いる通常のSDS−PAGE分析である。2−DE分離後、クーマシーブルーまたは銀染色のような従来型の染料を用いてタンパク質を可視化し、例えばBio−Rad GS800デンシトメーターおよびPDQUESTソフトウェア(両方市販されている)などの既知の技術および装置を用いて画像化することができる。次に個々のスポットをゲルから切り出し、脱染し、トリプシン消化に付す。ペプチド混合物は質量分析(MS)で解析できる。
【0075】
比較分析の代替法、およびこれらの種々の方法の組合せも、本発明の範囲内で使用されうる。例えば、生体試料中に存在するタンパク質を、下記実施例IIに記載されるようにそれらの等電点および疎水性に従って二次元液体クロマトグラフィーにより分離してよい。限定されるものではないが、分子量、pH、または特異的結合親和性、例えば抗体−抗原相互作用に基づいて分離できる材料を含む広範囲の分離材料が当技術分野で周知であるので、当然、クロマトグラフ分離は疎水性に基づく必要はない。さらに、最初の分離工程が完了すると、個々のスポットまたは溶出液試料に存在するペプチドを、キャピラリー高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)により分離し、個別にまたはプールでMSにより解析することができる。
【0076】
実施例IIIに詳述されるように、グリコシル化は真核生物において重要な翻訳後タンパク質修飾であり、従って生体試料のグリコシル化の状態を分離および同定する系は、タンパク質バイオマーカーを発掘する際の有益な手段であり得る。レクチンに基づくアフィニティー精製は、異なるクラスのグリコシル化タンパク質を、それらの特異的かつ可逆的に糖タンパク質のグリカン部分と結合する能力によって単離するための選択法である。糖タンパク質の主要クラスおよび種類は個別に試験試料から単離することができ、ひとたび分離すると、質量分析を用いて疾患に対して対照を比較するための差次的グリコシル化プロフィールを生成することができる。
【0077】
下に詳細に考察されるように、幅広い種類のレクチンおよびそれらの特異性が当技術分野で公知である。1種類以上のこれらのレクチン、ならびに任意の順列のこれらのレクチンおよび他のレクチンの可能性のある組合せを本発明の実践に用いることができる。マンノース結合レクチンは、限定されるものではないが、以下を含むことが知られている:分枝α−マンノース構造、高マンノース型、およびハイブリッド型ならびに二分岐複合型N−グリカンと結合する、タチナタマメ(Canavalia ensiformis)由来のコンカナバリンA;二分岐および三分岐複合型N−グリカンのフコシル化したコア領域と結合するレンズマメ(Lens culinaris)由来のレンチルレクチン;ならびにα1−3およびα1−6結合高マンノース構造と結合するスノードロップ(Galanthus nivalis)由来のスノードロップレクチン。ガラクトース/N−アセチルガラクトサミン結合レクチンとしては、限定されるものではないが、以下が挙げられる:Galβ1−4GlcNAcβ1−Rと結合するトウゴマ(Ricinus communis)由来のトウゴマ凝集素(RCA120);Galβ1−3GalNAcα1−Ser/Thr(T抗原)と結合するピーナッツ(Arachis hypogaea)由来のピーナッツ凝集素;(Sia)Galβ1−3GalNAcα1−Ser/Thr(T抗原)と結合するジャックフルーツ(Artocarpus integrifolia)由来のジャカリン;およびGalNAcα−Ser/Thr(Tn−抗原)と結合するヘアリーベッチ(Vicia villosa)由来のヘアリーベッチレクチン。シアル酸/N−アセチルグルコサミン結合レクチンとしては、限定されるものではないが、以下が挙げられる:GlcNAcβ1−4GlcNAcβ1−4GlcNAc、およびNeu5Ac(シアル酸)と結合する小麦胚芽(Triticum vulgaris)由来の小麦胚凝集素;Neu5Acα2−6Gal(NAc)−Rと結合するセイヨウニワトコ(Sambucus nigra)由来のエルダーベリーレクチン;Neu5Ac/Gcα2−3Galβ1−4GlcNAcβ1−Rと結合するイヌエンジュ(Maackia amurensis)由来のイヌエンジュレクチン。フコース結合レクチンとしては、限定されるものではないが、以下が挙げられる:Fucα1−2Gal−Rと結合するハリエニシダ(Ulex europaeus)由来のハリエニシダ凝集素;Fucα1−2Galβ1−4(Fucα1−3/4)Galβ1−4GlcNAc、およびR2−GlcNAcβ1−4(Fucα1−6)GlcNAc−R1と結合するヒイロチャワンタケ(Aleuria aurantia)由来のヒイロチャワンタケレクチン。
【0078】
質量分析計は、イオン源、質量分析器、イオン検出器、およびデータ収集ユニットから成る。最初に、イオン源でペプチドをイオン化する。次にイオン化したペプチドを質量分析器でそれらの質量対電荷比に従って分離し、分離したイオンを検出する。質量分析は、特にマトリックス支援レーザー脱離イオン化/飛行時間型(MALDI−TOF)およびエレクトロスプレーイオン化(ESI)法の発明以来、タンパク質解析において広く用いられている。質量分析器にはいくつかの種類があり、例えば、MALDI−TOFおよび三連四重極型TOF、またはESIと連結したイオントラップ質量分析器が挙げられる。従って、例えばQ−Tof−2質量分析計は全質量スペクトル範囲にわたってイオンの同時検出を可能にする直交飛行時間分析器を利用する。さらなる詳細に関しては、例えばChemusevichら、J.Mass Spectrom.36:849−865(2001)を参照のこと。
【0079】
必要に応じて、ペプチド断片のアミノ酸配列および最終的にはそれらの由来するタンパク質のアミノ酸配列は、技術分野で公知の技術、例えば質量分析特定の変形形態、またはエドマン分解により決定することができる。
【0080】
質量分析データから分枝の配列を決定する方法は、2004年2月27日出願の同時係属中の特許出願第10/789,424号に開示されており、その全開示内容は参照により本明細書に組み入れられる。この方法は、デノボシーケンシングおよびデータベース検索を含み、完全に配列決定されていないが配列データベースに存在する配列に近い配列相同性を有する配列変化および未知タンパク質を同定するために用いることもできる。
【0081】
(2.染色体異数性)
染色体異常は周産期の罹患率および死亡率の原因となることが多い。染色体異常は生児出産200対1の罹患率で発生する。これらの異常の主な原因は染色体異数性、つまり両親から受け継いだ染色体の数の異常である。最も頻度の高い染色体異数性の1つがトリソミー21(ダウン症候群)であり、これは生児出産800対1で発生する(Hook EB, Hamerton J L:The frequency of chromosome abnormalities detected in consecutive newborn studies: Differences between studies: Results by sex and by severity of phenotypic involvement.In Hook EB, Porter IH(eds): Population Cytogenetics,63−79頁.New York, Academic Press, 1978)。トリソミー21の主要なリスク因子は、35以上の母体年齢であるが、トリソミー21の子の80%が35歳よりも若い女性に生まれている。他の多く見られる異数性の状態としてはトリソミー13および18、ターナー症候群ならびにクラインフェルター症候群が挙げられる。
【0082】
(3.生体液のプロテオームプロフィールまたは生体液で同定されたバイオマーカーを用いる胎児染色体異数性の診断)
本発明は、生体液、例えば、妊娠女性の羊水、血清、血漿、尿、脳脊髄液、母乳、粘液、または唾液のプロテオーム解析に基づく、早期かつ信頼性のある、非侵襲性の胎児染色体異数性の診断のための方法を提供する。
【0083】
前に述べたように、本発明において用語「プロテオームプロフィール」は、所定の時点での生体試料、例えば生体液中の複数のタンパク質の発現パターンの表現をさすために用いられる。プロテオームプロフィールは、例えば質量スペクトルとして表すことができるが、タンパク質の任意の物理化学的または生化学的特性に基づく他の表現も含まれる。生体液のプロテオーム中に存在する全てまたは一部のタンパク質を同定および配列決定することが可能であるが、それは本発明に従って生成されたプロテオームプロフィールの診断使用に必要ではない。診断は、診断される染色体異数性、例えば胎児のダウン症候群が存在する場合に、標準プロテオームプロフィールと同じ環境下で得た同じ生体液のプロテオームプロフィールとの間の特徴的な差異(固有の発現サイン)に基づくものであってよい。固有の発現サインは、統計学的に有意な形で、同種類の供給源から得られた対応する標準生体試料のプロテオームプロフィールとは異なる、試験試料または参照生体試料のプロテオームプロフィールの中の何らかの固有の特徴またはモチーフであり得る。例えば、もしプロテオームプロフィールが質量スペクトルの形で示されるならば、固有の発現サインは、一般に、対応する正常な試料の質量スペクトルとは質的にも量的にも異なるピークまたはピークの組合せである。従って、質量スペクトルにおける新規なピークまたは新規なピークの組合せの出現、あるいは質量スペクトルにおける既存のピークまたは既存のピークの組合せの振幅または形状における何らかの統計上有意な変化は、固有の発現サインとみなすことができる。妊娠女性被験体から得られた試験試料のプロテオームプロフィールを、染色体異数性の特徴を示す固有の発現サインを含む参照試料のプロテオームプロフィールと比較した時に、もし試験試料が固有の発現サインを参照試料と共有しているならば、その胎児はこのような染色体異数性と診断される。
【0084】
特定の染色体異数性、例えば胎児ダウン症候群は、試験される母体被験体から得られた生体液のプロテオームプロフィールと、同じように得られて処理された同種類の標準生体液のプロテオームプロフィールとを比較することにより診断され得る。もし試験試料のプロテオームプロフィールが標準試料のプロテオームプロフィールと本質的に同じであれば、胎児は試験された染色体異数性がないと見なされる。もし試験試料のプロテオームプロフィールが標準試料のプロテオームプロフィールに対して固有の発現サインを示すならば、胎児は染色体異数性と診断される。
【0085】
あるいは、またはさらに、試験試料のプロテオームプロフィールを、独立に当該の状態と診断された妊娠女性の生体液から得られた参照試料のプロテオームプロフィールと比較してもよい。この場合、もし試験試料のプロテオームプロフィールが参照試料のプロテオームプロフィールと固有の発現サインを表す少なくとも1種類の特徴、または特徴の組合せを共有するならば、胎児は病的状態と診断される。
【0086】
本発明の方法において、標準的な生体試料のプロテオームプロフィールは診断上重要な役割を果たす。上記に論じたように、もし試験試料のプロテオームプロフィールが標準生体試料のプロテオームプロフィールと本質的に同じであれば、胎児は同定される染色体異数性ではないと診断される。差異が統計上有意であるならばデータを解析して決定される。
【0087】
本発明の診断法の感受性は、本質的に同じ発現レベルで正常なプロテオームおよび病変プロテオームの両方で見出されるタンパク質(共通タンパク質、例えばアルブミンおよび免疫グロブリン)を解析の前に従来型のタンパク質分離法を用いて取り除くことにより高めることができる。固有の発現サインの一部でないこのような共通タンパク質を取り除くことによって、感受性および診断精度が改善される。あるいは、またはさらに、一般に機械によるスペクトル選択アルゴリズムを用いて結果をコンピュータ分析する間に、共通タンパク質の発現サインを排除して(またはシグナルを取り除いて)診断要求を行うことができる。下記実施例で詳述される結果は、統計学的に有意な形で母体の血清または羊水の標準プロテオームプロフィールとは異なる異数性の特徴を示すプロテオームプロフィールを提示する。さらに、実施例および同封の図は、個別のバイオマーカー、バイオマーカーの群、および異数性の特徴を示す固有の発現サインを同定する。
【0088】
プロテオームプロフィールを比較するための統計的手法は当技術分野で周知である。例えば、質量スペクトルの場合、スペクトルの横軸に沿った主要な質量/電荷(M/Z)ポジションでのピーク振幅値によってプロテオームプロフィールを定義する。従って、特徴的なプロテオームプロフィールは、例えば、所定のM/Z値でのスペクトル振幅の組合せによって形成されたパターンによって特徴付けることができる。特徴的な発現サインの存在または不在、あるいは2つのプロフィールの実質的な同一性は、試験試料のプロテオームプロフィール(パターン)と参照試料または標準試料のプロテオームプロフィール(パターン)とを、適当なアルゴリズムを用いて照合することによって決定できる。プロテオームパターンを解析するための統計的手法は、例えば、Petricoin III,ら、The Lancet 359:572−77(2002).; Issaqら、Biochem Biophys Commun 292:587−92(2002); Ballら、Bioinformatics 18:395−404(2002);およびLiら、Clinical Chemistry Journal, 48:1296−1304(2002)に開示されている。
【0089】
特定の実施形態では、母親から得られた試料をタンパク質チップに適用し、質量分析によりプロテオームパターンを生成する。スペクトル内のピークのパターンは、上に記載されるように、適したバイオインフォマティクス・ソフトウェアによって解析することができる。
【0090】
下記の実施例に示したデータは、胎児異数性の特徴を示すいくつかの固有の発現サインを提供する。例えば、図に示されるように、正常な母体血清の質量スペクトルと、約125〜150kD(領域1)、約60〜68kDa(領域2)、約50〜55kDa(領域3)、約40〜45kDa(領域4)、約38〜42kDa(領域5)、約16〜20kDa(領域6)、および約35〜35kDa(領域7)の分子量範囲で胎児が異数性を有している場合の母体血清の質量スペクトルとの間には特徴的な差異がある。羊水では、約6〜7kDaおよび/または8〜10kDaの分子量範囲で特徴的な発現サインがある。従って、各々固有の発現サインを表す、質量スペクトル全体、または記載した領域のうちの1以上を、母体の血清を用いて胎児の異数性を診断するために用いることができる。さらに、これらの発現サインを含む質量スペクトル、または領域1〜7の1以上の任意の組合せを胎児異数性の診断法の陽性対照として用いることができる。さらに、またはあるいは、異数性を診断するための方法には、異数性を有する胎児を妊娠している女性の生体液(手短に言うと「異数性生体液」)中に差次的に発現した1種類以上のタンパク質、またはこのような差次的に発現したタンパク質の断片の検出が含まれ得る。差次的発現には、もし同種類の標準生体液中のその発現レベルに関して異数性生体液中のタンパク質の発現レベルの間に特徴的な差異があるならば、過剰発現および過少発現の両方が含まれる。
【0091】
母体血清を用いる胎児異数性の検出に適したバイオマーカーは、表1、2、および5〜6に記載されている。母体羊水を用いる胎児異数性の検出に適したバイオマーカーは、表3に記載されている。母体血清および羊水中にそれぞれ存在する好ましいバイオマーカーは、表4に記載されている。診断アッセイは、表1〜6に記載される1種類以上のポリペプチドに基づくものであるか、または表1〜6に記載される1種類以上のポリペプチドのアッセイの一部として用いることができる。特定の実施形態では、表1〜6に記載される1〜20、または1〜15、または1〜20、または1〜15または1〜10、または1〜9、または1〜8、または1〜7、または1〜6、または1〜5、または1〜4、または1〜3、または1または2個のバイオマーカーを、単独または他の異数性のバイオマーカーと組み合わせて、あるいは異数性の1以上の固有の発現サインと共に用いる。バイオマーカーの可能性のある組合せの例としては、以下が挙げられる:補体H因子と妊娠ゾーンタンパク質;補体H因子とアファミン;妊娠ゾーンタンパク質とα−2−hs−糖タンパク質;補体H因子、アンジオテンシノーゲンとクラステリン;アポリポタンパク質、AMBPタンパク質と血漿レチノール結合タンパク質;補体H因子、アファミン、アンジオテンシノーゲンとクラステリン;補体H因子、アファミン、色素上皮由来因子、血清アミロイドAタンパク質、アンジオテンシノーゲンとクラステリン;アポリポタンパク質E、AMBPタンパク質、血漿レチノール結合タンパク質、血清トランスフェリン前駆体、α−2−マクログロブリン前駆体とヒスチジンリッチ糖タンパク質前駆体;インター−α−トリプシンインヒビター重鎖H1前駆体、補体成分C9前駆体、フィブリノゲンα/α−E鎖前駆体、アポリポタンパク質C−III前駆体、ロイシンリッチα−2−糖タンパク質前駆体、アポリポタンパク質E前駆体、フェチュイン−B前駆体と補体C4前駆体。しかし、注意すべきは、本発明がこれらの例に限定されず、むしろ可能性のある組合せの全ての順列が本発明において使用を見出すことができることである。
【0092】
上記のように、異なるバイオマーカーおよび/または特徴的な発現サインの組合せは、診断精度を有意に改善するであろう。例えば、個別のバイオマーカーは一般に胎児異数性、例えばダウン症候群を、約30%〜80%の発生頻度で検出することができる。バイオマーカーおよび/または特徴的な発現サインの組合せでは、少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約85%、さらにより好ましくは少なくとも約90%、さらにより好ましくは少なくとも約95%、最も好ましくは少なくとも約98%の精度を達成することができる。別個の生物学的経路を通じて独立に作用するバイオマーカーの組合せは、このような組合せが診断感受性を有意に増加させることが期待されることから、特に有利である。
【0093】
本発明の診断法は、本質的に同じ検出率で、妊娠第一期および第二期に等しく適用可能できる。
【0094】
本発明のスクリーニング法は、単独で用いた場合、突出した検出率および精度を提供するが、胎児異数性の検出のための既存のスクリーニング法と組み合わせることもできる。従って、本明細書における診断方法を、1以上の既知のバイオマーカー、例えばダウン症候群またはトリソミー18の場合は、血清バイオマーカー、PAPP−A、α−フェトタンパク質(AFP)、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(βhCG)、非結合型エストリオール(uE3)、およびインヒビンAの1種類以上と組み合わせることができる。特に、本スクリーニング法は、PAPP−AおよびβhCGを独立したバイオマーカーとして用いる検査、または、特にスクリーニングが妊娠第二期に行われる場合、AFP、βhCG、およびuE3に基づく3種類のマーカー血清検査と組み合わせることができる。検査は、追加として、または代わりに、インヒビン−Aを含んでよい。本明細書に記載される診断方法と組み合わせてよい、他の染色体異数性を同定することのできるマーカーは、当技術分野で周知である。
【0095】
本明細書におけるスクリーニングアッセイは、さらに、臨床または実験的使用で胎児異数性を検出するための他の手法と組み合わせるかあるいはそれらの手法で補うことができ、このような手法としては、経腹的および透過型超音波検査をはじめとする超音波検査;染色体異常を検査するための種々の技法;ならびに後頚部透過像(NT)測定が挙げられる。
【0096】
(4.タンパク質および抗体アレイ)
上記に考察された診断アッセイは、タンパク質アレイを用いて行うことができる。近年、タンパク質アレイは、タンパク質を検出し、それらの発現レベルをモニターし、タンパク質相互作用および機能を調べるための強力な手段として広く認められるようになってきた。それらはハイスループットタンパク質解析を可能にし、自動化された手段を用いて多数の定量を同時に行うことができる。このような定量は、本来はDNAアレイのために開発されたマイクロアレイまたはチップの形式で行われ、材料の使用は最小限であるが多量のデータを生成する。
【0097】
2Dゲル電気泳動、2D液体クロマトグラフィー、および質量分析によるプロテオーム解析は上記のように非常に効果的であるが、必要とされる高い感受性を常に提供するものではなく、低量で発現する多くのタンパク質を逃しかねない。タンパク質マイクロアレイは、その高い効率に加えて、向上した感受性を提供する。
【0098】
タンパク質アレイは、当技術分野で周知の種々の共有結合および非共有結合化学を用いて、固体表面、例えばガラス、シリコン、マイクロウェル、ニトロセルロース、PVDF膜、およびマイクロビーズ上にタンパク質を固定化することにより形成される。固相支持体は、カップリング手順の前後に化学的に安定である必要があり、良好なスポット形状を可能にし、最小限の非特異結合を表示し、検出系のバックグラウンドとなってはならず、異なる検出系と両立すべきである。
【0099】
概して、タンパク質マイクロアレイは、DNAアレイの読みに一般的に用いられるものと同じ検出方法を用いる。同様に、DNAマイクロアレイの読みに用いられるものと同じ器具をタンパク質アレイに適用できる。
【0100】
従って、キャプチャーアレイ(例えば抗体アレイ)は、2種類の異なる供給源、例えば正常な生体液および病変生体液から蛍光標識されたタンパク質でプローブすることができる。この場合、読み出しは、標的タンパク質の発現レベルの変化を反映するものとして、蛍光シグナルの変化に基づく。それに代わる読み出しとしては、限定されないが、蛍光共鳴エネルギー移動、表面プラズモン共鳴、ローリングサークルDNA増幅、質量分析、共鳴光散乱、および原子間力顕微鏡が挙げられる。
【0101】
さらなる詳細には、例えば、Zhou H,ら、Trends Biotechnol.19:S34−9(2001);Zhuら、Current Opin.Chem.Biol.5:40−45−(2001);WilsonおよびNock,Angew Chem Int Ed Engl 42:494−500(2003);ならびにSchweitzerおよびKingsmore, Curr Opin Biotechnol 13:14−9(2002)を参照のこと。生体分子アレイは、2002年6月18日公開の米国特許第6,406,921号にも開示されており、その全開示内容は参照により明白に本明細書に組み入れられる。
【0102】
本発明のさらなる詳細は以下の限定されない例から明らかとなる。
【実施例】
【0103】
(実施例I)
(母体血清および羊水試料で発現したタンパク質およびポリペプチドの同定)
(材料および方法)
母体血清および羊水試料の評価を行った(妊娠期間に一致)。
【0104】
【化1】
(ヒト血清において豊富なタンパク質の免疫除去)
Agilentマルチプルアフィニティシステムを用いて、ヒト血清から6つの主なタンパク質(アルブミン、IgG、IgA、抗トリプシン、トランスフェリン、およびハプトグロビン)を取り除いた。マルチプルアフィニティカラムは抗体−抗原相互作用、ならびに試料充填、洗浄、溶出、および再生のために最適化されたバッファーに基づいている。カラムによって6つの存在量の高いタンパク質(全タンパク質質量の80〜90%)、例えばアルブミン、IgG、IgA、抗トリプシン、トランスフェリン、およびハプトグロビンをヒト血清から取り除き、プロテオーム解析のための存在量の低いタンパク質を濃縮させる。
【0105】
ヒト血清(40μl)を、AgilentバッファーA(35μlの血清および180μlのバッファーA)で5倍希釈した。微粒子を、16,000xgにて1分間、0.22μmスピンフィルターで濾過することによって取り除いた。160μlの希釈血清を、オートサンプラー、UV検出器、およびフラクションコレクターを備えたWaters HPLCシステムに付属するAgilent免疫親和性カラム(4.6×100mm)に注入した。流速は、最初の10分間は0.5ml/分、Bは0%、10〜17分は1ml/分でBは100%、そして17〜28は1ml/分でBは0%であった。5000MWCOフィルターを用いて、存在量の低い流入画分2〜5を回収し、濃縮し、10mM Tris、pH8.4でバッファー交換した。Bio−Rad DCタンパク質アッセイキットを用いてタンパク質濃度を決定した。
【0106】
(蛍光2−DGE)
血清(1〜3mg)から存在量の高いタンパク質を、上記のように、Agilent免疫親和性カラムを用いて取り除いた。次に、血清タンパク質(20〜50μg)を、色素100〜400pm/タンパク質20〜50μgの濃度のCyDye DIGE Fluor minimal dye(Amersham Biosciences)で標識した。異なる色素(Cy5、Cy3、およびCy2)を用いて対照試料または試験試料または参照血清試料を標識した。標識タンパク質をアセトン沈殿により精製し、IEFバッファーに溶かし、24または13cmのIPGストリップ(pH4〜7)へ室温にて12時間再水和した。再水和の後、IPGストリップを、65〜70kVhrsにて一次元電気泳動に付した。次に、二次元SDS−PAGE分析の前にIPGストリップをDTT平衡バッファーIおよびIAA平衡バッファーIIで15分間順次平衡化した。次に、IPGストリップを8〜16% SDS−PAGEゲルに載せ、電気泳動を80〜90Vで18時間実施して二次元でタンパク質を分離した。
【0107】
二次元の後、550〜600の範囲のPMT電圧で適当なレーザーおよびフィルターを用いてTyphoon 9400スキャナー(Amersham)でゲルをスキャンした。選択された色を使って異なるチャネル(対照および検査)の画像を重ね合わせ、ImageQauntソフトウェア(Amersham Biosciences)を用いて差異をモニターした。Evolutionソフトウェア(Nonlinear Dynamics)を用いてゲル画像の定量化を行った。
【0108】
タンパク質同定のため、血清タンパク質(500g〜1500μg)を、標識せずに2−DGEに付した。ゲルをクーマシーブルーR−250で染色し、画像化した。個々のスポットをゲルから切り出し、脱染し、ゲル内で37℃にて24時間トリプシン消化した。ペプチドを0.1% TFAで抽出し、Millipore社のZip Tipc18ピペットチップを用いて精製した。
【0109】
(ウエスタン免疫ブロット法および免疫沈降)
50〜100μgの血清タンパク質を、200Vにて60分間4〜20% SDS−PAGEに流し、90mAにて75分間PVDF膜に移した。膜を5%ミルク−PBSTで45分間室温にてブロッキングし、1μg/mlの一次抗体(Santa Cruz and Dako)で4℃にて一晩インキュベートした。TBSTで3回洗浄した後、膜をIgG−HRP二次抗体(Sigma)で室温にて90分間インキュベートし、ECL(Pierce)で可視化した。免疫沈降のため、20μgの一次抗体を600μgの血清タンパク質と混合し、4℃にて一晩インキュベートした。次に、15μlのプロテインG−セファロースビーズを添加し、シェーカーで室温にて60分間インキュベートした。溶出およびPAGEの前にビーズをIPバッファーで6回洗浄した。
【0110】
(母体血清のSELDI−TOF解析)
羊水および血清試料の合計0.5〜3.0μgのタンパク質を順相NP20(SiO2表面)、逆相H4(疎水性表面:C−16(長鎖脂肪族化合物)、または固定化したニッケル(IMAC)SELDIタンパク質チップ(登録商標)アレイ(Ciphergen Biosystems,Inc.,Fremont,CA)にスポットした。室温にて1時間のインキュベーションの後、NP1およびH4チップを5−μlの水洗浄に付して結合しなかったタンパク質および妨害物質(すなわちバッファー、塩、洗剤)を除去した。2〜3分間風乾した後、シナピン酸の50%アセトニトリル(v/v)と0.5%トリフルオロ酢酸(v/v)との飽和溶液のうち0.5μlを2適用分添加し、Ciphergen Protein Biology System II (PBS II)で飛行時間質量分析による質量分析を行った。
【0111】
(同位体コードアフィニティタグ(ICAT))
ICATは、対照試料および病変試料において、タンパク質の同定および差次的発現タンパク質の定量化データを提供することにより2DGEのいくつかの制限を克服するために用いられる最近開発された補完的技法である。ICATペプチド標識技術は、同位体組成の異なる反応プローブを用いることによりタンパク質の2つの集団を区別する。タンパク質上の遊離システインをアルキル化するタンパク質−反応性基(ヨードアセトアミド)、12Cまたは13C同位体標識されたリンカー領域、およびシステイン含有ペプチドを選択的に単離するための親和性(ビオチン)タグで構成される、Applied Biosystems社から市販されている、切断可能なICAT試薬を用いた。2つの試料、対照および病変試料を、同位体的に軽い(12C)または重い(13C)ICAT試薬でそれぞれ処理する。次に、標識されたタンパク質混合物を組み合わせ、タンパク質分解によって消化する。次に、ビオチン化ペプチドの固定化した単量体アビジンアフィニティーキャプチャーを用いて標識したペプチドを単離する。次に、標識されたペプチド上のビオチン標識を切断し、エレクトロスプレーイオン化法タンデム質量分析(LC−ESI MS/MS)と組み合わせたナノスケールの液体クロマトグラフィーによりペプチドを分析する。得られるMSおよびMS/MSスペクトルを、MCATソフトウェア(Waters)を用いて分析して対照および病変試料におけるタグペプチド対の相対存在量を判定し、大型タンパク質配列データベースを検索してこのタンパク質を同定する。対照は、比較分析のためタンパク質存在量のレベルを標準化するための内部標準として働く。存在比の増加または低下により上方制御または下方制御についての情報を提供する。
【0112】
(タンパク質の同定)
(データ獲得および解析)
トリプシンでのゲル内消化の後、Waters CapLCに接続されているWatersハイブリッド四重極飛行時間質量分析計(Q−Tof−2)で試料を解析した。Q−Tof−2は標準のZ−スプレーまたはナノスプレー源が備え付けられ、IntegrafritまたはNanoease C18 75μm ID×15cm×3.51μm熔融石英キャピラリーカラムに接続されている。Windows NT(登録商標)およびMassLynx4.0ソフトウェアを備えたCompaqワークステーションで機器を制御し、データを獲得した。Q−Tof−2を、Glu1フィブリノペプチドBを付属のCapLCから直接注入または注射によって用いて較正した。データに従う(Data−directed)解析を用いた。MS/MSMSサーベイ法を用いてMS/MSMSスペクトルを得た。質量400〜1500DaをMSサーベイのためにスキャンし、質量50〜1900DaをMS/MSのためにスキャンした。一次データ解析を、Windows 2000(登録商標)およびProteinLynx Global Server v2.1 (PLGS)ならびにPEAKSデノボシーケンシングアルゴリズムおよび本発明者らの所有するOpenSeaソフトウェアv1.1(Searleら、Analytical Chemistry76:2220−2230(2004))を備えたPCで行った。
【0113】
(PLGS v2.1)
タンデム質量スペクトル(MS/MS)の自動分析をPLGS v2.1ソフトウェア(Waters)を用いて行った。処理パラメータは、バックグラウンド除去を行わずに中程度または低度の同位体除去を用いた。処理の後、同位体を除去したMS/MSスペクトルを、データベース検索を含むワークフローおよびautomodを用いて、非重複性のInternational Protein Index (IPI)ヒトデータベース(20)で検索した。ワークフローにおいて、固定された修飾はカルバミドメチルCであり、可変性の修飾は酸化 Mおよびリン酸化 STYであった。データベース検索後に非特異的一次消化試薬を用いてautomodクエリーを実行して可能性のあるあらゆる修飾および置換を検索した。
【0114】
(OpenSea v1.1)
質量に基づくアラインメントアルゴリズムであるOpenSea v1.1は、PEAKSによりデータから得たデノボ配列をデータベース中のタンパク質配列にアラインすることによりペプチドのMS/MSデータからタンパク質を同定する。OpenSeaは全てのアミノ酸文字を一連の質量に変換し、ダイナミックプログラミングアプローチを用いてこれらの質量を比較する。
【0115】
全てのQ−TOF MS/MSスペクトルを、Peaks Batch Version2.2(Maら、An effective algorithm for the peptide de novo sequencing from MS/MS spectrum,in 14th Symposium of Combinatorial Pattern Matching,2003;Nelsonら、Analytical Chemistry67:1153−8(1995))(Bioinformatics Solutions Inc.,Waterloo,ON,Canada)を用いて、0.1AMUの質量精度を用いてデノボ配列決定した。Peaksは、未知の質量領域なしに全アミノ酸配列を報告するが、その配列中の各アミノ酸に信頼度スコアを割り当てる。アミノ酸の信頼度スコアが50%より低い配列領域をそれらのアミノ酸の組み合わせた質量で置き換えた。もし全配列の平均信頼度スコアが50%よりも低ければ、平均信頼度よりも低い信頼度のアミノ酸だけを組み合わせた。全ての配列を、仮定上の親質量および断片質量の計算のためにモノアイソトピック質量を用いてOpenSeaで解析し、全ての配列が0.25AMUの質量精度で一致した。全ての試料を非重複性のInternational Protein Index(IPI)ヒトデータベースで検索した。
【0116】
タンパク質を同定するために用いたパラメータは次の通りであった:1)タンパク質の説明の中に「ケラチン」という文字列を含むデータベース一致データはいずれも排除した;2)各タンパク質はPLGS v2.1およびOpenSea v1.1の両方で存在の可能性が95%を上回らねばならない;ならびに3)各タンパク質は2種類以上のペプチドを有していなければならない。
【0117】
(質量分析に基づくバイオマーカーの検出のための免疫親和性アッセイ)
2−DGE DIGE実験を用いて同定された、母体対照とダウン症候群血清との間で差次的に発現したタンパク質バイオマーカーは、タンパク質プロフィールに基づく胎児ダウン症候群の検出のためのハイスループットスクリーニング系の開発に適している。個々のタンパク質バイオマーカーを、免疫アフィニティー精製により母体の血清から捕捉し、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析(MALDI−TOF MS)により解析した。
【0118】
(試料調製およびバイオマーカー免疫沈降)
血清試料を、700×gにて15分間遠心分離して血液細胞を小球状にした。上清を−80℃にて保存した。各血清試料(個々のバイオマーカー標的に対し各50μL以下)を結合バッファーで希釈し、50μgの結合抗体で誘導体化した免疫親和性ビーズ(Pierce;Rockford,IL)とともにインキュベートした。ダウン症候群標的タンパク質を低いpHのカオトロピックバッファーを用いてビーズから溶出した。溶出液を脱塩し、ZipTip(商標)C4ピペットチップ(Millipore;Billerica,MA)を用いて濃縮し、疎水性/親水性対照MALDI−TOF MS標的(AnchorChip(商標)MTP標的プレート、BrukerDaltonics;Billerica,MA)上に(シナピン酸マトリックスに沿って)直接スポットした。AnchorChip標的は、試料分布および結晶化でさえも促進し、MALDI−MSスペクトルの感受性を高くし、手動の「スイート・スポット」検索への依存を減らして、ハイスループット自動化に対して解析をさらに従順にする。
【0119】
(MALDI−TOF MS解析)
溶出した完全なタンパク質バイオマーカーのMALDI−TOF MS解析をAutoflex MALDI−TOF−MS質量分析計(Bruker Daltonics;Billerica,MA)を用いて行った。Autoflex MALDI−TOF−MSの解像度仕様(シトクロムcの解像度=1000、12361 Da、 Rs=m/Δm(FWHM))は、タンパク質イソ型および修飾型の検出を可能にする。例えば、Nelsonと共同研究者らは、たった53Da(アポE2およびアポE3イソ型:それぞれ34,236.6および34,183.6Da)で質量の異なるアポリポタンパク質Eのイソ型を分離できた(228 A.T.B.n,母体の血清スクリーニング.In ACOG.1996 Washington D.C.:American College of Obstreticians and Gynecologists)。MALDI−MSを、大型ポリペプチドおよびタンパク質(>5000m/z)の検出のために陽極性を用いて遅延引き出し法、リニアモードで操作した。減衰した調節可能な50Hz窒素レーザー(337nm)を1スペクトルあたり100〜200ショットで用いて質量スペクトルを得た。
【0120】
適切なシグナル対ノイズを考慮して、目的の特異的バイオマーカー標的の強度レベルに応じていくつかのスペクトルを組み合わせた。使用したBruker MALDI−TOF質量分析計の質量精度は、リニア検出モード(>5000m/zの質量の大きいポリペプチド/タンパク質の検出に用いられる)で内部キャリブレーション(m/z12,361においてシトクロムcに関して)を用いて<100ppmである。Bruker MTP AnchorChip(商標)標的プレート上の4つのサンプルウェルの各セット間のキャリブレーションアンカーを利用して外部キャリブレーションを行う。対照試料およびダウン症候群試料から得られたMALDI−MSバイオマーカーイオンシグナルの処理後解析をClinPro Toolsソフトウェア(Bruker Daltonics;Billerica,MA)を用いて行った。
【0121】
(結果)
((A)ダウン症候群を検出するためのSELDI−TOF質量分析を用いるプロテオームプロフィール。)
対照およびダウン症候群を代表するタンパク質パターンをそれぞれ同定するため、方法に記載されるようにAgilent免疫親和性カラムを用いて主に豊富なタンパク質を取り除くことにより最初に低分子量タンパク質を血清中で濃縮した。1〜2μgの濃縮されたタンパク質試料のプロフィールを、4種類の異なる表面化学増強捕捉プロトコール(Ciphergen Protein Cip Arrays)を用いてSELDI−TOFにて生成した。Biomarker Wizard(Ciphergen, Inc.)を用いるデータ解析は、対照とダウン症候群血清とで別個のピークを明らかにした(図1)。試料のサブセットをMALDI−TOF(Autoflex TOF−TOF,Bruker Daltonics)でさらに評価し(Kerseyら、Proteomics4:1985−1988(2004))、Clinprotソフトウェア(Bruker Daltonics)を用いてデータを解析した。このアプローチも、ダウン症候群試料において少数の別個のピークを明らかにした。これらの結果は、低分子量範囲でのダウン症候群の母体血清における潜在的差異が、SELDI/MALDIプロファイリングにより検出され得ることを証明した。ダウン症候群に特有のこれらのプロフィールを利用する敏感かつ特異的アッセイは独自のハイスループットスクリーニング検査へと発展させることができる。
【0122】
((B)蛍光2−DGE。)
方法の項に記載されるように調製された母体血清試料の一致した対(対照およびダウン症候群)を蛍光色素(Cy5、Cy3およびCy2)で標識し、2−Dゲルで分離した。ProteoGenixは、2−Dゲル、ならびに、対照およびダウン症候群試料とともにゲルの全てから分離した、固定した内部標準(プールした母体血清)を用いる半定量手順(2−Dプロフィール)を使って大量の試料をスクリーニングするための独自のハイスループットフォーマットを開発した。図1に示されるように、妊娠第二期母体血清試料は、対照およびダウン症候群の場合での明白な差異、ならびに妊娠第一期および第二期からのプロフィールの有意な類似性を明らかにした。強度比の定量化(Phoreticsソフトウェア、ImageQuantソフトウェア、SAS解析)は、目的の重要な領域1〜7(図2に示されるように、高〜低分子量)が約40〜80%の範囲にある感受性を示したことを実証した。2以上の領域の組合せは、この一致対モデルにおいて全てのダウン症候群の場合を対照と区別することができた。
【0123】
目的のこれらの領域における可能性のあるタンパク質の同定のため、分取2−Dゲル(精製されたタンパク質1〜2mg)を妊娠第一期および第二期からの血清試料の3組の一致対から用いた。目的の領域からのスポット(図2、円で囲んだ領域)をパンチし、トリプシンで消化し、LC/MS/MS(Q−TOF2)で解析した。独自のプロテオームソフトウェア(OpenSea)を用いてタンパク質同定およびデータ解析を行った。目的の各領域は2〜3種類のタンパク質を示した(表1)。目的の領域に示されたタンパク質は、妊娠第一期および第二期血清試料の両方について同一であった。領域1〜7に示されない、母体の血清において差次的に発現したタンパク質を表2に列挙する。
【0124】
羊水試料の一致対(対照およびダウン症候群)を、上記のように蛍光色素(Cy5、Cy3およびCy2)で分析し、2−Dゲルで分離した。デノボシーケンシングを用いて差次的に発現したタンパク質を同定し、および表3に列挙した。
【0125】
2D蛍光ゲルにおいて注目される相対的な定量的差異は、ウエスタンブロット法を用いて測定することができる。例として領域1に発現した主要タンパク質に対する抗体(補体H因子)を用いて、同様に2D蛍光ゲルに分離した母体血清2Dウエスタンブロットをプローブした。図4に示されるように、補体H因子は対照母体血清と比較してダウン症候群において、より高いレベルで発現した。このことは、同定されたタンパク質バイオマーカーが、母体の血清において胎児ダウン症候群を検出するための標準定量化免疫測定に用いることができることを実証する。
【0126】
図5はダウン症候群の候補バイオマーカーのデノボタンパク質配列同定の略図である。特に、この図は補体H因子に属するペプチド配列を表すスペクトルを示す。
【0127】
図6はダウン症候群の候補バイオマーカーのデノボタンパク質配列同定の異なる略図である。この図は補体H因子に属すると同定されたペプチド配列の配列適用範囲マップを示す。薄い陰影はポリペプチド配列内で同定されたペプチドを表し、濃い陰影を付けられたアミノ酸残基は示した位置での可能性のあるタンパク質修飾である。
【0128】
(バイオマーカーを測定するための免疫MALDIアッセイの開発)
上に示されたように、蛍光2−Dゲル解析およびタンパク質同定は、妊娠第一期および第二期試料の両方の母体血清においてかなりの数の可能性のあるバイオマーカーを明らかにした。免疫MALDIアッセイプラットフォームは、前例のない多成分解析の機会を提供する。このアッセイプラットフォームのもう1つの主な利点は、疾患に特異的なイソ型を捕捉できる能力である。このようなタンパク質分解断片またはタンパク質修飾を測るための正確なELISAを開発することは非常に困難であろう。この例は、ダウン症候群を検出するために免疫MALDI技術を用いるハイスループットアッセイを開発する実現可能性を実証する。
【0129】
免疫MALDIアッセイは、領域6および7で差次的に発現したタンパク質を同定するために開発された。この領域の2−Dゲルスポットからのタンパク質同定は、アポリポタンパク質AI、AII、およびEの存在を証明する。対照およびダウン症候群試料の一致した対の母体血清試料600μgを用いてアポリポタンパク質の免疫沈降を行った。方法に記載されるようにAutoflex TOF−TOF(Bruker Daltonics)を用いて溶出剤のプロフィール生成を行った。図3に示されるように、3種類全ての形態のアポリポタンパク質を検出し、アポリポタンパク質AIIは2つの試料間で有意な定量的差異を示した。さらに、アポリポタンパク質AII複合体もダウン症候群母体の血清において別個のイソ型を明らかにした。
【0130】
上記試料対のMALDI解析は、対照血清と比較してダウン症候群血清においてアポA1の下方制御を示した。アポリポタンパク質A2(アポA2)抗体を用いて同じセットの対照およびダウン症候群血清のIP解析を行った場合、図3に示すMALDIプロフィールは、アポA2の相対強度がダウン症候群血清に対して対照血清において再び高かったことを示した(アポA2 MW=8707.9Da)。さらに、ダウン症候群IPに対して対照には異なる種類が存在した。従って、本発明者らのデータから、MALDI−TOF MSによって、相対強度の変化ならびにバイオマーカーパターン変化の両方の評価が可能となることが証明される。
【0131】
この実験は、2−DGE解析で同定された他のバイオマーカーおよび相対定量のためのコンピュータツール(ClinProtソフトウェア)の使用の最適化、ならびに診断プロフィールを作成するための統計アルゴリズムの最適化が、頑強なハイスループットアッセイ系を提供することを証明する。この系は他の可能性のある標的の添加によって、同じ設定において他の異数性を区別するために広げることができる。
【0132】
前記説明の全体にわたって、本発明は特定の一実施形態を参照して考察されているが、そのように限定されるものではない。実際、本明細書において示し説明したものに加えて、本発明の種々の修飾は前記の説明から当業者には明らかであり、付属の請求項の範囲内にある。
【0133】
(実施例II)
(ダウン症候群において差次的に発現したタンパク質の分離および同定のための二次元液体クロマトグラフィー)
母体対照血清およびダウン症候群血清由来タンパク質の2D−DIGE解析を補う戦略として、完全なタンパク質を分離するための二次元液体クロマトグラフィー(2D−LC)法を用いることができる。2D−LC法は、対照血清試料とダウン症候群血清試料との間の差次的タンパク質発現の比較を可能にする仮想2Dマップを提供する。
【0134】
(試料調製および2D−LCの方法論)
母体対照血清およびダウン症候群血清におけるタンパク質発現の比較分析のため、プールした母体の血清の一式を、妊娠第一期および妊娠第二期の患者から準備した。全ての血清を免疫精製し(Agilent)、CF適合性のためにバッファー交換した。5〜7mgの全血清タンパク質を各試料にプールした。同量の全タンパク質を各対照/ダウン症候群試料対の2D−LC分析に用いた;妊娠第一期および第二期試料対を独立に分析した。
【0135】
2D−LC分析を、ProteomeLab PF2D系(Beckman−Coulter;Fullerton,CA)で行った。手短に言えば、血清タンパク質を一次元目のCF陰イオン交換カラムに充填し、下降する直線pH勾配を用いてタンパク質等電点(pI/pH)に従って0.3pH単位の画分へ溶出する。次に、各pH画分を、無孔性C18 RP−HPLCカラムを用いてタンパク質疎水性により二次元で分離する(各pH画分から48画分)。質量分析によるタンパク質同定のためトリプシンで酵素消化される合計800画分をRP−HPLCの次元から(各試料から)回収した。
【0136】
(回収した差次的画分のMS解析)
図7は、妊娠第二期の母体ダウン症候群血清に対する母体対照血清の2D−LC分析により生成されたタンパク質発現マップを示す。図7Aは、X軸にCFから溶出したタンパク質のpIを、Y軸にRP−HPLCから溶出したタンパク質の保持時間、または疎水性を表示するProteoVueソフトウェアを用いて生成された2D−LCマップを表す。図7Bは、左側に赤色で表される対照試料の2Dマップ、および右側に緑色で表されるダウン症候群試料の2Dマップを表す。図の中央は2種類の試料の差分マップ(図7Bでは別々に表示)を表し、緑色に見えるバンドはダウン症候群試料において上方制御されたタンパク質であり、赤色に見えるバンドは対照試料において上方制御されたタンパク質である。
【0137】
ダウン症候群かまたは対照血清における上方制御を示す差分マップ中のバンドをトリプシンで消化させ、ESI−QTOF−MS/MS(QTOF2,Waters;Milford,MA)を用いるタンパク質同定解析の準備をした。対照かまたはダウン症候群試料の高強度ピークの少なくとも10〜20%の差次的強度カットオフを用いると、これは妊娠第一期試料セットでは約95バンド、妊娠第二期試料セットでは80バンドに相当する。対照画分とダウン症候群画分と間の差次的発現強度は、0.004AU〜0.638AUであった(画分消化のMS解析の検出の限界は、保存的に約0.05AU;二次元目の分離のためのAUスケールは最大約1.3AUに達する)。
【0138】
(母体のダウン症候群血清において差次的に発現したタンパク質の2D−LC同定)
表5は、ダウン症候群母体の血清においてLC/MS/MS(Q−TOF2,Waters,Inc)解析で差次的ペプチド数を示す同定されたタンパク質の一覧を示す。(略語は、T1、妊娠第一期;T2、妊娠第二期母体の血清。)
(実施例III)
(ダウン症候群の母体血清予測糖タンパク質プロフィール)
グリコシル化は、真核生物においてタンパク質の複合翻訳後修飾の1つである。単一のグリコシル化事象などの小さな変化が生理学的に重要なタンパク質の運命および機能を変え、それは次には生物の特定の疾患または状態に関連しうるので、グリコシル化プロセスの体系的評価は、タンパク質バイオマーカーの発掘に有益な手段である。細胞シグナルまたは発達段階に応じて発生するグリコシル化パターンまたはグリカン構造における変化を用いて癌などの疾患を同定することもあり得る。レクチンに基づくアフィニティー精製は、異なるクラスのグリコシル化タンパク質を単離するための選択法である。レクチンは植物タンパク質で、特異的かつ可逆的に糖タンパク質のグリカン部分と結合することができる。糖タンパク質の主要クラスおよび種類は試験試料から個別に単離することができ、それらを用いて疾患に対して対照を比較するための差次的グリコシル化プロフィールを生成することができる。
【0139】
(方法)
妊娠期間の一致した対照およびDS母体の血清由来の全糖タンパク質、シアル酸、マンノースおよびO−グリコシル化タンパク質を、適当なレクチン親和性カラム(Q Proteome、Quiagen)を用いて精製した。
【0140】
レクチン、マンノース結合レクチン(ConA、LCH、GNA)+シアル酸/N−アセチル−グルコサミン結合レクチン(WGA、SNA)の組合せを用いて全糖タンパク質抽出を行った。マンノース結合レクチン(ConA、LCH、GNA)を利用してM結合糖タンパク質を抽出した。シアル酸/N−アセチル−グルコサミン結合レクチン(WGA、SNA、MAL)を利用してS結合糖タンパク質を抽出した。ガラクトース/N−アセチル−ガラクトサミン結合レクチン(AIL、PNA)を利用してO結合糖タンパク質を抽出した。
【0141】
対照およびダウン症候群母体の血清から抽出した糖タンパク質を、二次元蛍光ゲル電気泳動およびLC/MS/MSアプローチを用いて解析してダウン症候群の可能性のあるマーカーを同定した。単離された対照およびダウン症候群糖タンパク質各50ugを400pmのCy3およびCy5蛍光色素でそれぞれ標識した。Ettan Dalt 2 IPGphor system(GE−Amresham)のpH4〜7 IPGストリップで各IPGストリップ長に適当な電圧を用いて等電点電気泳動を行った。10〜20%Tris−グリシンゲルを二次元目PAGEに用いた。Typhoon Variable mode imager(GE−Amersham)を用いてCy3およびCy5の励起波長を使って各ゲルの差次的蛍光画像を得た。質量分析計(Q−TOF 2、 Waters Inc)でのタンパク質同定のために、差次的に発現したタンパク質スポットをImageQuant(GE−Amersham)ソフトウェアを用いて可視化し、ゲルから切り出し、トリプシンで消化させた。
【0142】
図8〜11は、ダウン症候群の母体血清中の糖タンパク質の固有の差次的発現プロフィールを表す。
【0143】
差異を示す領域の赤色または緑色を、ゲルから抜き出し、トリプシンで消化させ、LC/MS/MSを用いてタンパク質同定を確認した。
【0144】
妊娠第一期および第二期対照およびダウン症候群母体血清試料から抽出した全糖タンパク質混合物をトリプシンで消化させ、LC/MS/MSを用いて解析した。差異を表す糖タンパク質(各タンパク質に対し多数の全ペプチド)を蓄積して、二次元ゲルから差次的に発現したスポットから同定された糖タンパク質と比較し、ダウン症候群母体血清において同定された糖タンパク質の一覧を表6に示す。
【0145】
本明細書の全体にわたって引用したあらゆる参照文献、およびその中で引用される参照文献は、その全文が参照により明白に本明細書に組み入れられる。
【0146】
【表1】
【0147】
【表2】
【0148】
【表3】
【0149】
【表4】
【0150】
【表5】
【0151】
【表6−1】
【0152】
【表6−2】
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】妊娠第二期対照およびダウン症候群試料の母体血清のSELDI−TOF−MS分析。一番上のパネルは4つ全てが一致した例からプールされた対照を表す。2つの群間で差次的に発現する潜在的ピークを示す目的の領域を枠で囲んだ。
【図2】100pmのCus5(ダウン症候群)またはCy3(対照)で標識したAgilent免疫親和性カラムを用いて精製された母体血清試料(タンパク質20μg)の2−Dゲル。ゲルをTyphoon 94100スキャナー(Amersham Biosciences)で600PMT電圧にてスキャンした。Phoretic 2D Evolution(nonlinear Dynamics)を用いて画像を重ね合わせた。
【図3】免疫−MALDI−TOF−MSアッセイ。免疫沈降したアポリポタンパク質A).アポリポタンパク質A1.B).アポリポタンパク質A2.C).アポリポタンパク質Eの、母体対照由来のスペクトル(青色の痕跡)およびダウン症候群血清由来のスペクトル(赤色の痕跡)。パネルDは、図2の2D DIGEゲルから採取された挿入物で、これからいくつかのアポリポタンパク質種がタンデム質量分析により同定された。
【図4】母体血清における差次的タンパク質発現の検出。ヒト補体H因子抗体でプローブした2−Dウエスタン免疫ブロット法。A)妊娠第二期対照血清;B)妊娠第二期ダウン症候群母体血清。
【図5】ダウン症候群の候補バイオマーカーのデノボタンパク質配列同定の略図。スペクトルは補体H因子に属するペプチド配列を表す。
【図6】ダウン症候群の候補バイオマーカーのデノボタンパク質配列同定の略図。補体H因子に属すると同定されたペプチド配列の配列範囲対象マップ。薄い陰影は同定されたペプチド、濃い陰影はこれらのアミノ酸の可能性のあるタンパク質修飾を表す。
【図7】回収した差次的2−D液体クロマトグラフィー画分のMS分析。A)ProteoVueソフトウェアを用いて生成された2D−LCマップは、X軸にCFから溶出したタンパク質のpIを表示し、Y軸にRP−HPLCから溶出したタンパク質の保持時間、または疎水性を表示する。B)対照試料の2Dマップは左側に赤色で表され、DS試料の2Dマップは右側に緑色で表される。図の中央には2種類の試料の差分マップ(Bでは別々に表示)が表示され、マップ中、緑色に見えるバンドはDS試料において上方制御されたタンパク質であり、赤色に見えるバンドは対照試料において上方制御されたタンパク質である。
【図8】妊娠第二期の対照(赤色)およびDS(緑色)母体血清における全糖タンパク質の差次的発現を表す蛍光二次元ゲル画像。
【図9】妊娠第二期の対照(赤色)およびDS(緑色)母体血清におけるシアル酸(Sialic)−糖タンパク質の差次的発現を表す蛍光二次元ゲル画像。
【図10】妊娠第二期の対照(赤色)およびDS(緑色)母体血清におけるマンノース結合糖タンパク質の差次的発現を表す蛍光二次元ゲル画像。
【図11】妊娠第二期の対照(赤色)およびDS(緑色)母体血清におけるO−結合糖タンパク質の差次的発現を表す蛍光二次元ゲル画像。
【図12】全糖タンパク質のトリプシン消化のMALDI−TOF。対照の母体血清(上部)およびダウン症候群の母体血清(下部)。ダウン症候群で発現したペプチドの有意差が枠で囲まれている。
【図13】シアル酸糖タンパク質のトリプシン消化のMALDI−TOF。対照の母体血清(上部)およびダウン症候群の母体血清(下部)。ダウン症候群で発現したペプチドの有意差が枠で囲まれている。
【図14】マンノース結合糖タンパク質のトリプシン消化のMALDI−TOF。対照の母体血清(上部)およびダウン症候群の母体血清(下部)。ダウン症候群で発現したペプチドの有意差が枠で囲まれている。
【図15】O−結合糖タンパク質のトリプシン消化のMALDI−TOF。対照の母体血清(上部)およびダウン症候群の母体血清(下部)。ダウン症候群で発現したペプチドの有意差が枠で囲まれている。
【図16】100pmのCus5(トリソミー18)またはCy3(対照)で標識したAgilent免疫親和性カラムを用いて精製された母体血清試料(タンパク質20μg)の2−Dゲル。ゲルをTyphoon 94100スキャナー(Amersham Biosciences)で600PMT電圧にてスキャンした。Phoretic 2D Evolution(nonlinear Dynamics)を用いて画像を重ね合わせた。
【図17】100pmのCus5(トリソミー13)またはCy3(対照)で標識したAgilent免疫親和性カラムを用いて精製された母体血清試料(タンパク質20μg)の2−Dゲル。ゲルをTyphoon 94100スキャナー(Amersham Biosciences)で600PMT電圧にてスキャンした。Phoretic 2D Evolution(nonlinear Dynamics)を用いて画像を重ね合わせた。
【図18】100pmのCus5(神経管欠損症)またはCy3(対照)で標識したAgilent免疫親和性カラムを用いて精製された母体血清試料(タンパク質20μg)の2−Dゲル。ゲルをTyphoon 94100スキャナー(Amersham Biosciences)で600PMT電圧にてスキャンした。Phoretic 2D Evolution(nonlinear Dynamics)を用いて画像を重ね合わせた。
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、胎児異数性の非侵襲性の早期診断のための方法に関する。特に、本発明は、母体の生体液、例えば母体血清また羊水において異数性の特徴を示すタンパク質発現パターンを同定することによる、胎児異数性の診断に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の説明)
(プロテオミクス)
タンパク質発現パターンの大規模解析は、現在のDNAクローニングおよび遺伝子プロファイリングアプローチの重要かつ必要な補完技法として浮上している(非特許文献1)。DNA配列情報は、ホモロジー法に基づいて何らかの構造上および可能性のあるタンパク質修飾を推論する際に有用であるが、翻訳後修飾、タンパク質分解または区分化によるタンパク質機能の調節に関する情報は得られない。
【0003】
従来のゲルに基づく方法、例えば一次元および二次元ゲル電気泳動は小型タンパク質(タンパク質<1,000)の検出に有用であるが、それには大量の試料を必要とする(非特許文献2)。この制限を克服するためのアプローチとしては、試料中のタンパク質の質量を示すプロフィールを正確に生成するマトリックス支援レーザー脱離イオン化法または表面増強レーザー脱離イオン化法(MALDIまたはSELDI)飛行時間型質量分析計が挙げられる。これらのパターンまたはプロフィールを用いると種々の疾患の同定およびモニターができる。同定の2番目の工程は、ペプチドマッピングとタンデム質量分析とを連結させて、ペプチド断片からアミノ酸配列情報を生成することによりもたらされる。これは、例えば、MALDI/SELDIまたはESIを四重極の飛行時間型MS(Qq−TOF MS)と連結させることにより実現することができる。この最後の方法は、特定のペプチドの定量化に用いることもできる(ICAT法)。
【0004】
(胎児異数性)
胎児異数性は染色体数の異常であり、卵形成または精子形成中の減数分裂の不分離の結果として生ずることが多いが、トリソミー8などの特定の異数性は接合後の減数分裂分離に起因する場合がより多い(非特許文献3)。このような異常には正常な染色体数の減少および増加の両方が含まれ、常染色体ならびに性染色体に関係し得る。異数性の減少の例はターナー症候群で、X性染色体が1本しか存在しないことが特徴である。染色体数の増加の例としては、ダウン症候群(染色体21のトリソミー)、パトー症候群(染色体13のトリソミー)、エドワード症候群(染色体18のトリソミー)、およびクラインフェルター症候群(性染色体のXXYトリソミー)が挙げられる。異数性は一般に著しい身体的かつ神経学的障害を引き起こし、その結果多くの患者が成人期に達することができない。実際、13、18、または21以外の染色体に関する常染色体異数性を有する胎児は一般に子宮の中で死亡する。しかし、特定の異数性、例えばクラインフェルター症候群は、あまり明白でない表現型を示し、他のトリソミー、例えばXXYおよびXXXの患者は、成熟して生殖能力のある成人となる場合も多い。
【0005】
ダウン症候群は人間において最も一般的な単一パターンの形成異常であり、出生時に最も多く見られる重大な先天異常の1つであって、生児出生660人に1人の割合で起こる(非特許文献4)。妊娠第二期に生存しているダウン症候群の胎児全てのうち約3人に1人はその期間を生き抜くことができない;従って、妊娠第二期のダウン症候群の真の発生率は妊娠500例中1例に近い(非特許文献5)。ダウン症候群の乳児の多数は、著しい罹患率および死亡率を引き起こす重大な心臓、胃腸、またはその他の異常を有する。さらに、大多数のダウン症候群の乳児のIQは50未満であり、この症候群を米国における精神遅滞の主な原因の1つにしている。米国では毎年約2500万人の妊娠女性がダウン症候群の血清スクリーニング検査を受けており、スクリーニングがなければ、これらの妊娠のうち約4、000例がダウン症候群の子を出産する可能性がある(非特許文献6)。
【0006】
ダウン症候群は生児出産において最も一般的な異数性であるものの、染色体13、18、および性染色体の異数性はかなりの数の個体に及んでいる。例えばトリソミー18の発生率は、出生約7000対1であり、トリソミー13の発生率は出生約29,000対1である(非特許文献3)。その他の異数性は妊娠中に高い割合で発生するが、胎児が出産予定日になる前、通常妊娠15週以内に自然流産となる(Nicolaidies & Petersen、前掲)。例えば、トリソミー16は最も一般的な単一のヒトトリソミーであり、認識される全ての妊娠の1.5%に起こると考えられているが、致死性の染色体異常である(非特許文献3)。トリソミー15および8はより低い割合で発生するが(全ての自然流産のうちそれぞれ約1.4%および0.7%)これも致死性の異常である(非特許文献3)。
【0007】
(胎児異数性の診断)
最終的な胎児異数性の出生前診断には、羊水穿刺または絨毛膜標本採取(CVS)による侵襲的な検査を必要とし、これらの検査は0.5%〜1%の妊娠の喪失という処置に伴うリスクに関連している(非特許文献7)。胎児異数性、例えばダウン症候群に関するスクリーニングは異常のある胎児を妊娠することのリスクについての評価を患者に提供するため、一般に妊娠中に行われている。これらの侵襲的な検査法に関連するリスクのため、非侵襲的な異数性のスクリーニング法に多くの関心が集まっている。
【0008】
特定の異数性との関連において様々なアプローチ法が用いられているものの、ダウン症候群の場合、スクリーニングは、最初は完全に母体の年齢を基準とし、35歳という任意の境界で侵襲的な胎児検査の実施に値するハイリスクな女性の母集団を限定していた。このアプローチの結果、ダウン症候群の胎児の検出率は20%〜30%、侵襲的な胎児検査の割合は5%〜7%となる。従って、各例のダウン症候群を検出するために約140例の羊水穿刺が必要とされ、異常胎児が2人検出されるたびに正常な胎児1人が死亡する(非特許文献8)。
【0009】
これらの制限のため、検出率を向上させ、侵襲的検査率を低下させるために妊娠第二期の血清スクリーニング法が導入された。現在のダウン症候群のスクリーニングの注意基準は、妊娠15〜18週の全ての患者に3種類のマーカー血清検査を行うことを求めており、これを母体の年齢(MA)とともにリスク判定に用いる。この検査はα−フェトタンパク質(AFP)、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(βhCG)、および非結合型エストリオール(uE3)を検定する。もしこの「3種類スクリーニング」から導かれるリスクが所定の境界より大きければ、患者は胎児核型分析のための侵襲的検査を提案される。最も一般的に用いられるリスク境界は、380対1(35歳女性の出産予定日リスク)であり、この結果ダウン症候群の検出率は65%〜70%、侵襲的胎児検査を提案される妊娠母集団は5%〜7%である(非特許文献9)。MAとこの妊娠第二期血清の「3種類スクリーニング」とを組み合わせて用いて1例のダウン症候群を検出するために60例の羊水穿刺が行われると推測されている(非特許文献8)。
【0010】
ダウン症候群の血清の「3種類スクリーニング」の現在の注意基準は今「4種類検査」へと発展中であり、この検査では血清マーカーインヒビン−Aが他の3種類の分析物に加えられる。4種類検査は1996年8月からロンドンのWolfson Institute of Preventive MedicineでWald教授の指揮下で臨床的に提案されてきた。毎日の診療でのインヒビン−Aの成績は予想通りである。スクリーニングマーカーとしてのインヒビン−Aの成績の評価は非常に一貫している。公表された6つの研究において、ダウン症候群妊娠の場合の母体の血清インヒビン−Aレベルは、非罹患妊娠において見出されたレベルよりも平均して1.9倍高かった(非特許文献9)。インヒビン−Aは、ダウン症候群妊娠の単変量予測因子として、最も強力な単一マーカーであるβhCGとほぼ同程度と評価されている(固定されたスクリーニング陽性率5%で、βhCGの検出率49%と比較してインヒビン−Aの検出率は44%である。)(非特許文献9)。インヒビン−Aを3種類検査に加えることにより、「3種類スクリーニング」のダウン症候群検出率が77%から80%へ、侵襲的な検査の比率は5%〜7%に改善されるであろう(非特許文献9;非特許文献10)。あるいは、4種類の検査を用いてダウン症候群の検出率70%を維持する一方で、侵襲的検査率を5%に減らし、実施される羊水穿刺の件数を有意に低下させることもできるであろう。
【0011】
羊水穿刺の頻度をさらに減らす努力において、妊娠第二期スクリーニング超音波検査がダウン症候群スクリーニングに適用されている。特定の主な胎児の構造上の異常の同定は、ダウン症候群および他の異数性のリスクを著しく増加させ、その結果侵襲的な胎児検査の指標と考えられる。しかし、このアプローチはダウン症候群の集団スクリーニングを改善しない、というのも一般集団における98%の胎児が構造上の異常を有していないためである。
【0012】
それ自体は構造上の異常ではなく、標準的な核型の存在下で胎児に何らリスクを与えない異数性の超音波マーカーの役割を評価するさらなる研究が行われている。ダウン症候群スクリーニングに用いられるこのような超音波マーカーとしては、脈絡叢嚢胞、エコー源性腸管、短い大腿骨、短い上腕骨、微小な水腎症、および肥厚した後頚部襞が挙げられる。超音波検査によるアプローチはスクリーニング陽性率5%でダウン症候群の胎児の73%まで同定する可能性があると何人かの研究者が示唆しているが、これらの研究は全て、既に異数性のリスクの高い母集団から導かれている(非特許文献11)。これらの検査の成績をハイリスク母集団から一般集団または非選択集団まで正確に推定することは、問題とされる疾患の有病率は著しく減少するものであるため不可能である。従って、この「遺伝子の超音波検査」の価値は、一般集団のスクリーニングに適用された場合大幅に限定される。さらに、この知見の希薄さのため、超音波検査によるスクリーニング法の成績はオペレーターの技術と経験に非常に左右され、3次センターの外部で超音波検査によるスクリーニングを適用する場合は再現できない可能性がある(非特許文献12)。「遺伝子の超音波検査」は一次スクリーニングツールとしては有用でないように思われるが、最初の陽性スクリーニング検査の後の異数性のリスクの減少に役割を有しうる(非特許文献8)。
【0013】
ダウン症候群の妊娠第二期スクリーニングに関する主な問題は、それが妊娠15〜18週で行われること、続いて、必要であれば妊娠16〜20週で羊水穿刺診断が行われることである。このことは、一般的な妊娠期間の上限である妊娠24週に達する前に妊娠中絶を望む場合、患者および医療提供者に著しい時間的制約をもたらす。さらに、このような後期の妊娠中絶は母体の罹患率の増加に関係する(非特許文献13)。妊娠第一期を基にする超音波検査による異数性スクリーニングプログラムの価値には、異常が確認された場合の安全な妊娠中絶の方法、ならびに異常が妊娠の初期に検出された場合の患者のプライバシーおよび機密保持の向上が含まれるであろう。
【0014】
ロンドンのFetal Medicine Foundationの研究者らは、MAと妊娠第一期の胎児の超音波評価を組み合わせて用いるスクリーニングからダウン症候群の検出率80%を示した(非特許文献14;非特許文献15)。これは、胎児の首の後部とその上を覆う皮膚との間の半透明の空間の測定に頼るもので、その空間がダウン症候群および他の異数性の胎児では大きくなっていることが報告されている。この後頚部透過像(NT)測定は、妊娠10〜14週の間の経腹的または経膣的超音波検査により達成が容易であると報告されている(非特許文献16)。ダウン症候群の妊娠第一期スクリーニングを裏付ける大部分のデータはロンドンのFetal Medicine Foundationからのものである(非特許文献14;非特許文献16)。しかし、ダウン症候群の検出率は異なるセンター間で一致しておらず、現在まで、Fetal Medicine Foundationネットワーク以外でかれらの結果を反復したセンターはない。
【0015】
種々の妊娠関連タンパク質およびホルモンの妊娠第一期の濃度が、染色体的に正常な妊娠と異常な妊娠とで異なることを示すデータもある。ダウン症候群およびエドワード症候群に関する最も有望な2種類の妊娠第一期血清マーカーはPAPP−Aおよび遊離βhCGであると思われる(非特許文献17)。PAPP−Aの妊娠第一期血清レベルがダウン症候群において有意に低いこと、およびこの低下が後頚部透過像(NT)の肥厚とは関係のないことが報告されている(非特許文献18)。さらに、両方の合計および遊離β−hCGの妊娠第一期血清レベルがダウン症候群胎児において高いこと、およびこの増加も後頚部透過像(NT)の肥厚とは関係のないことが示されている(非特許文献19)。PAPP−Aおよび遊離βhCGもまた、ダウン症候群スクリーニングに適用した場合、互いに関係がない(非特許文献20)。多施設プロスペクティブ研究において、PAPP−Aと遊離βhCGとを組み合せると、ダウン症候群の検出率は60%、侵襲的検査率は5%となった(非特許文献21)。数理モデルは、MA、NT肥厚、遊離βhCG血清、およびPAPP−A血清を利用する複合妊娠第一期スクリーニングプログラムが、侵襲的検査率5%に対して80%を超えるダウン症候群胎児を検出できると示唆している(非特許文献20)。これらの治験およびモデルは最近Nicolaidesにより総説されている(非特許文献22)。
【0016】
これらのデータは、胎児異数性、例えばダウン症候群の複合妊娠第一期スクリーニングプログラムまたは妊娠第一期および第二期統合スクリーニングプログラムが、標準的な妊娠第二期スクリーニングよりも優れているであろうことを示唆しているが、この仮説は臨床現場ではまだ確認されていない。
【0017】
ダウン症候群の妊娠第一期スクリーニングの有効性を明確にし、妊娠第一期および第二期スクリーニングの診断能力を比較するため、NIHは最近多施設の妊娠第一期および第二期リスク評価(First and Second Trimester Evaluation of Risk;FASTER)試験に資金援助した。このプロスペクティブ研究では、患者がNTの超音波検査を受け、妊娠10週と3日から13週と6日までにPAPP−Aおよび遊離βhCGのための母体血清を採取され、結果は妊娠15週〜18週と6日までの4種類スクリーニング(AFP、βhCG、uE3、およびインヒビン−A)を含む2次リスクスクリーニング後まで患者に知らされなかった。38、000名を超える患者がこの調査を完了し、その中から117例の胎児トリソミー21が同定され、そのうち87例で妊娠第一期および第二期のデータが揃った。各検査の診断能力は、複合妊娠第一期スクリーニング(NT/PAPP−A/遊離βhCG/MA);妊娠第二期血清スクリーニング(母体AFP/遊離βhCG/uE3/インヒビン−A/MA);または妊娠第一期および第二期統合スクリーニングを含むスクリーニング法によって分析された。
【0018】
これらのデータは妊娠第一期、または複合妊娠第一期および第二期統合スクリーニングの有用性を確認するものであるが、重大な制限がある。第一に、これらの検査が妊娠期間に大いに依存していること、および妊娠が進むにつれて差別的でなくなること。第二に、ダウン症候群の検出を最適化するために、これらの検査は全てスクリーニング陽性率が低く(5%)、真の偽陽性率が非常に高く(90%を上回る)、その結果患者の不安、および遺伝子検査のための不必要な侵襲的な羊水穿刺をもたらす。従って、信頼性があり広い範囲の妊娠期間にわたって強く且つ偽陽性率の低いそれに変わる検査に対して差し迫った必要がある。
【非特許文献1】PandeyおよびMann,Nature,2000年,第405巻,p.837−46
【非特許文献2】Lilley KS, Razzaq A, Dupree P,「Two−dimensional gel electrophoresis:recent advances in sample preparation,detection and quantitation.」,Curr Opin Chem Biol.,2002年,第6巻,第1号,p.46−50
【非特許文献3】NicolaidisおよびPetersen,Human Reproduction,1998年,第13巻,第2号,p.313−319
【非特許文献4】Jones,K.,「Down’s Syndrome,in Smith’s recognizable patterns of Human malformation」,Jones,K.編,Philadelphia,PA,1997年,p.8−13
【非特許文献5】Cuckle,H.,「Epidemiology of Down Syndrome, in Screening for Down Syndrome in the First Tromester」,J.GrudzinkasおよびR.Ward編,RCOG Press,London,UK,1997年,p.3−13
【非特許文献6】Palomaki,G.E.,ら、Am.J.Obstet.Gynecol.,1997年,第176巻,第5号,p.1046−1051
【非特許文献7】D’Alton,M.E.,Semin Perinatol,1994年,第18巻,第3号,p.140−62
【非特許文献8】VintzielosおよびEgan,Am J.Obstet Gynecol,1995年,第172巻,第3号,p.837−44
【非特許文献9】Waldら、J Med Screen,1997年,第4巻,第4号,p.181−246
【非特許文献10】Waldら、Prenat Diagn,1996年,第16巻,第2号,p.143−53
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【非特許文献12】Ewigman、B.G.,ら、N Engl J Med,1993年,第329巻,第12号,p.821−7
【非特許文献13】Lawson,H.W.,ら、Am J.Obstet Gynecol,1994年,第171巻,第5号,p.1365−72
【非特許文献14】Pandya,P.P.ら、Br J Obstet Gyneacol,1995年,第102巻,第12号,p.957−62
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【非特許文献17】Wapner,R.,ら,N Engl J Med,2003年,第349巻,第15号,p.1405−1413
【非特許文献18】Brizot,M.L.,ら,Obstet Gynecol,1994年,第84巻,第6号,p.918−22
【非特許文献19】Brizot,M.L.,Br J Obstet Gynaecol,1995年,第102巻,第2号,p.127−32
【非特許文献20】WaldおよびHackshaw,Prenat Diagn,1997年,第17巻,第9号,p.921−9
【非特許文献21】Haddow,J.E.,ら,N Eng J Med,1998年,第338巻,第14号,p.955−61
【非特許文献22】Nicolaides,Ultrasound in Obstretics and Gynecology,2003年,第21巻,p.313−21
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
ダウン症候群ならびに他の胎児異数性の診断のための新規で効率的で信頼のおける非侵襲性の方法の開発が特に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0020】
(発明の概要)
一態様では、本発明は、母体の生体液の試験試料のプロテオームプロフィールと、同じ種類の生体液の標準または参照プロテオームプロフィールとを比較すること、ならびに前記試験試料のプロテオームプロフィールが前記標準プロテオームプロフィールに存在しないかまたは前記参照プロテオームプロフィールに存在する、表1〜2および5〜6に記載されるバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも1種類のバイオマーカーを表す少なくとも1つの固有の発現サインを示す場合、胎児異数性の存在を決定することを含む、胎児異数性の診断のための方法に関する。
【0021】
さらなる態様では、本発明は、母体の生体液の試験試料のプロテオームプロフィールと、同じ種類の生体液の標準または参照プロテオームプロフィールとを比較すること、ならびに前記試験試料のプロテオームプロフィールが前記標準プロテオームプロフィールに存在しないかまたは前記参照プロテオームプロフィールに存在する、表3に記載されるバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも1種類のバイオマーカーを表す少なくとも1つの固有の発現サインを示す場合、胎児異数性の存在を決定することを含む、胎児異数性の診断のための方法に関する。
【0022】
一実施形態では、本発明は、妊娠ヒト女性から得られた試験試料の使用に関する。
【0023】
本発明の他の実施形態では、プロテオームプロフィールは質量スペクトルである。
【0024】
本発明のさらなる実施形態では、試験試料は母体の血清である。
【0025】
もう1つの実施形態では、固有の発現サインは、16〜20kDa、35〜38kDa、38〜42kDa、40〜45kDa、50〜55kDa、60〜68kDa、および125〜150kDaの分子量範囲のうちの1以上にある。
【0026】
他の実施形態では、試験試料は母体の羊水である。
【0027】
他の実施形態では、固有の発現サインは6〜7kDaおよび8〜10kDaの分子量範囲の一方または両方にある。
【0028】
他の実施形態では、本方法を妊娠の第一期に行う。
【0029】
他の実施形態では、本方法を妊娠の第二期に行う。
【0030】
さらなる実施形態では、本方法は、試験試料において胎児異数性の少なくとも1種類のバイオマーカーの転写されたmRNAのレベルまたは翻訳されたタンパク質のレベルを測定すること、および前記転写されたmRNAのレベルまたは翻訳されたタンパク質のレベルが、標準生体試料におけるそのレベルに対して異なる場合に、胎児異数性の存在を確認することをさらに含む。
【0031】
他の実施形態では、診断される胎児異数性は、ダウン症候群、トリソミー13、トリソミー18、X染色体トリソミー、X染色体モノソミー、クラインフェルター症候群(XXY遺伝子型)、またはXYY症候群(XYY遺伝子型)である。
【0032】
他の実施形態では、その転写されたmRNAのレベルまたは翻訳されたタンパク質のレベルを検出されるバイオマーカーは、PAPP−A、a−フェトタンパク質(AFP)、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(bhCG)、非結合型エストリオール(uE3)、およびインヒビンAからなる群から選択される。
【0033】
さらなる実施形態では、本方法は、妊娠ヒト女性を1種類以上のさらなる診断法に付すことをさらに含む。
【0034】
他の実施形態では、さらなる診断法は、超音波検査、染色体異常を検査するための技法、および後頚部透過像(NT)測定からなる群から選択される。
【0035】
さらなる実施形態では、本発明は1種類以上のバイオマーカーの固有の発現サインの比較を伴う。さらに、発現サインの数は2、3、4、5、6、7、8種類、またはそれより多くのバイオマーカーの数であり得る。
【0036】
さらなる実施形態では、バイオマーカーは、補体H因子(CFAH_HUMAN、SwissProt受託番号P08603);妊娠ゾーンタンパク質(pregnancy zone protein)(PZP_HUMAN;SwissProt受託番号P20741);アファミン(AFAM_HUMAN;SwissProt受託番号P43652);アンジオテンシノーゲン(ANGT_HUMAN;SwissProt受託番号P01019);α−2−hs−糖タンパク質(A2HS_HUMAN;SwissProt受託番号P02765);クラステリン(CLUS_HUMAN;SwissProt受託番号P10909);アポリポタンパク質AI(APA1_HUMAN;SwissProt受託番号P02647);アポリポタンパク質AIV(APA4_HUMAN;SwissProt受託番号P06727);アポリポタンパク質E(APE_HUMAN;SwissProt受託番号P02649);色素上皮由来因子(PEDF_HUMAN;SwissProt受託番号P36955);血清アミロイドAタンパク質(SAA_HUMAN;SwissProt受託番号P02735);AMBPタンパク質(AMBP_HUMAN;SwissProt受託番号P02760);血漿レチノール結合タンパク質(RETB_HUMAN;SwissProt受託番号P02753);血清トランスフェリン前駆体(TRFE_HUMAN;SwissProt受託番号P02787);α−1−抗トリプシン前駆体(A1AT_HUMAN;SwissProt受託番号P01009);α−2−マクログロブリン前駆体(A2MG_HUMAN;SwissProt受託番号P01023);補体C3前駆体(CO3_HUMAN;SwissProt受託番号P01024);アンジオテンシノーゲン前駆体(ANGT_HUMAN;SwissProt受託番号P01019);セルロプラスミン前駆体(CERU_HUMAN;SwissProt受託番号P00450);ハプトグロビン前駆体(HPT_HUMAN;SwissProt受託番号P00738);抗トロンビン−III前駆体(ANT3_HUMAN;SwissProt受託番号P01008);ヘモペキシン前駆体(HEMO_HUMAN;SwissProt受託番号P02790);α−1−酸性糖タンパク質1前駆体(A1AG_HUMAN;SwissProt受託番号P02763);アポリポタンパク質A−I前駆体(APA1_HUMAN;SwissProt受託番号P02647);α 1b−糖タンパク質(SwissProt受託番号P04217);キニノゲン前駆体(KNG_HUMAN;SwissProt受託番号P01042−2);インター−α−トリプシンインヒビター重鎖H2前駆体(ITH2_HUMAN;SwissProt受託番号P19823);α−2−hs−糖タンパク質前駆体(A2HS_HUMAN;SwissProt受託番号P02765);α−1−抗キモトリプシン前駆体(AACT_HUMAN;SwissProt受託番号P01011);インター−α−トリプシンインヒビター重鎖H4前駆体(ITH4_HUMAN;SwissProt受託番号Q14624−2);補体H因子前駆体(CFAH_HUMAN;SwissProt受託番号P08603−1);血漿プロテアーゼC1インヒビター前駆体(IC1_HUMAN;SwissProt受託番号P05155);ヘパリン補因子II前駆体(HEP2_HUMAN SwissProt受託番号P05546);補体B因子前駆体(CFAB_HUMAN;SwissProt受託番号P00751−1);α−2−糖タンパク質1、亜鉛(ZA2G_HUMAN;SwissProt受託番号P25311);ビトロネクチン前駆体(VTNC_HUMAN SwissProt受託番号P04004);インター−α−トリプシンインヒビター重鎖H1前駆体(ITH1_HUMAN;SwissProt受託番号P19827);補体成分C9前駆体(CO9_HUMAN;SwissProt受託番号P02748);フィブリノゲンα/α−E鎖前駆体(FIBA_HUMAN;SwissProt受託番号P02671−1);フィブリノゲンβ鎖前駆体(FIBB_HUMAN;SwissProt受託番号P02675);フィブリノゲンγ鎖前駆体(FIBG_HUMAN;SwissProt受託番号P02679−1);プロトロンビン前駆体(THRB_HUMAN;SwissProt受託番号P00734);クラステリン前駆体(CLUS_HUMAN;SwissProt受託番号P10909);α−1B−糖タンパク質前駆体(A1BG_HUMAN;SwissProt受託番号P04217);α−1−酸性糖タンパク質2前駆体(A1AH_HUMAN;SwissProt受託番号P19652);アポリポタンパク質D前駆体(APOD_HUMAN;SwissProt受託番号P05090);妊娠ゾーンタンパク質前駆体(PZP_HUMAN;SwissProt受託番号P20742);ヒスチジンリッチ糖タンパク質前駆体(HRG_HUMAN;SwissProt受託番号P04196);性ホルモン結合グロブリン前駆体(SHBG_HUMAN;SwissProt受託番号P04278−1);プラスミノゲン前駆体(PLMN_HUMAN;SwissProt受託番号P00747);アポリポタンパク質C−III前駆体(APC3_HUMAN;SwissProt受託番号P02656);ロイシンリッチα−2−糖タンパク質前駆体(A2GL_HUMAN;SwissProt受託番号P02750);アポリポタンパク質E前駆体(APE_HUMAN;SwissProt受託番号P02649);フェチュイン−B前駆体(FETB_HUMAN;SwissProt受託番号Q9UGM5);ミオシン反応性免疫グロブリン軽鎖可変領域(SwissProt受託番号Q9UL83);補体C1S成分前駆体(C1S_HUMAN;SwissProt受託番号P09871);AMBPタンパク質前駆体(AMBP_HUMAN;SwissProt受託番号P02760);および補体C4前駆体(CO4_HUMAN;SwissProt受託番号P01028)からなる群から選択される。
【0037】
特定の実施形態では、本発明で用いられるバイオマーカーは、補体H因子(CFAH_HUMAN、SwissProt受託番号P08603);および妊娠ゾーンタンパク質(PZP_HUMAN;SwissProt受託番号P20741)である。
【0038】
特定の実施形態では、本発明で用いられるバイオマーカーは、補体H因子(CFAH_HUMAN、SwissProt受託番号P08603);およびアファミン(AFAM_HUMAN;SwissProt受託番号P43652)である。
【0039】
特定の実施形態では、本発明で用いられるバイオマーカーは、妊娠ゾーンタンパク質(PZP_HUMAN;SwissProt受託番号P20741);およびα−2−hs−糖タンパク質(A2HS_HUMAN;SwissProt受託番号P02765)である。
【0040】
特定の実施形態では、本発明で用いられるバイオマーカーは、補体H因子(CFAH_HUMAN、SwissProt受託番号P08603);アンジオテンシノーゲン(ANGT_HUMAN;SwissProt受託番号P01019);およびクラステリン(CLUS_HUMAN;SwissProt受託番号P10909)である。
【0041】
特定の実施形態では、本発明で用いられるバイオマーカーは、アポリポタンパク質E(APE_HUMAN;SwissProt受託番号P02649);AMBPタンパク質(AMBP_HUMAN;SwissProt受託番号P02760);および血漿レチノール結合タンパク質(RETB_HUMAN;SwissProt受託番号P02753)である。
【0042】
特定の実施形態では、本発明で用いられるバイオマーカーは、補体H因子(CFAH_HUMAN、SwissProt受託番号P08603);アファミン(AFAM_HUMAN;SwissProt受託番号P43652);アンジオテンシノーゲン(ANGT_HUMAN;SwissProt受託番号P01019);およびクラステリン(CLUS_HUMAN;SwissProt受託番号P10909)である。
【0043】
特定の実施形態では、本発明で用いられるバイオマーカーは、補体H因子(CFAH_HUMAN、SwissProt受託番号P08603);アファミン(AFAM_HUMAN;SwissProt受託番号P43652);色素上皮由来因子(PEDF_HUMAN;SwissProt受託番号P36955);血清アミロイドAタンパク質(SAA_HUMAN;SwissProt受託番号P02735);アンジオテンシノーゲン(ANGT_HUMAN;SwissProt受託番号P01019);およびクラステリン(CLUS_HUMAN;SwissProt受託番号P10909)である。
【0044】
特定の実施形態では、本発明で用いられるバイオマーカーは、アポリポタンパク質E(APE_HUMAN;SwissProt受託番号P02649);AMBPタンパク質(AMBP_HUMAN;SwissProt受託番号P02760);血漿レチノール結合タンパク質(RETB_HUMAN;SwissProt受託番号P02753);血清トランスフェリン前駆体(TRFE_HUMAN;SwissProt受託番号P02787);α−2−マクログロブリン前駆体(A2MG_HUMAN;SwissProt受託番号P01023);およびヒスチジンリッチ糖タンパク質前駆体(HRG_HUMAN;SwissProt受託番号P04196)である。
【0045】
特定の実施形態では、本発明で用いられるバイオマーカーは、インター−α−トリプシンインヒビター重鎖H1前駆体(ITH1_HUMAN;SwissProt受託番号P19827);補体成分C9前駆体(CO9_HUMAN;SwissProt受託番号P02748);フィブリノゲンα/α−E鎖前駆体(FIBA_HUMAN;SwissProt受託番号P02671−1);アポリポタンパク質C−III前駆体(APC3_HUMAN;SwissProt受託番号P02656);ロイシンリッチα−2−糖タンパク質前駆体(A2GL_HUMAN;SwissProt受託番号P02750);アポリポタンパク質E前駆体(APE_HUMAN;SwissProt受託番号P02649);フェチュイン−B前駆体(FETB_HUMAN;SwissProt受託番号Q9UGM5);および補体C4前駆体(CO4_HUMAN;SwissProt受託番号P01028)である。
【0046】
特定の実施形態では、本発明は、少なくとも1種類の糖タンパク質を含むプロテオームプロフィールの使用を含む。
【0047】
特定の実施形態では、本発明は、シアル酸糖タンパク質、マンノース結合糖タンパク質、およびO−結合糖タンパク質からなる群から選択されるプロテオームプロフィールに用いられる糖タンパク質を含む。
【0048】
特定の実施形態では、本発明は、常染色体異数性である、胎児異数性の検出を含む。
【0049】
さらなる実施形態では、本発明は、染色体13、18、または21のトリソミーの検出を含む。
【0050】
特定の実施形態では、本発明は、性染色体異数性である、胎児異数性の検出を含む。
【0051】
さらなる実施形態では、本発明は、X染色体トリソミー、X染色体モノソミー、クラインフェルター症候群(XXY遺伝子型)、およびXYY症候群(XYY遺伝子型)からなる群から選択される異数性の検出を含む。
【0052】
(図表の簡単な説明)
表1. 目的の最初の7領域から同定されたダウン症候群の候補母体血清バイオマーカー(図2)。2Dスポットのゲル内消化のタンデムMS/MS分析に続くデノボシーケンシングおよびOpenSeaを用いるデータベース検索により、これらの領域における各タンパク質の相対存在量が明らかとなった。
【0053】
表2. 同定されたダウン症候群の候補母体血清バイオマーカー。2Dスポットのゲル内消化のタンデムMS/MS分析に続いてデノボシーケンシングおよびOpenSeaを用いるデータベース検索により、これらの領域における各タンパク質の相対存在量が明らかとなった。
【0054】
表3. 同定されたダウン症候群の候補羊水バイオマーカー。2Dスポットのゲル内消化のタンデムMS/MS分析に続いてデノボシーケンシングおよびOpenSeaを用いるデータベース検索により、これらの領域における各タンパク質の相対存在量が明らかとなった。
【0055】
表4. 胎児のダウン症候群の診断に好ましい母体血清および羊水バイオマーカー。
【0056】
表5. 目的の最初の領域から同定されたダウン症候群の候補母体血清バイオマーカー(図7)。タンデムMS/MSを用いて特異的な候補バイオマーカーを同定した。
【0057】
表6. 目的の最初の領域から同定されたダウン症候群の候補母体血清バイオマーカー(図8〜11)。タンデムMS/MSを用いて特異的な候補バイオマーカーを同定した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
(A.定義)
別に定義される場合を除いて、本明細書において用いられる技術用語および科学用語は、本発明の属する技術分野の当業者に一般に理解される意味と同じ意味を有する。Singletonら、Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 2nd ed.,J.Wiley & Sons(New York,N.Y.1994)は、本願で用いられる用語の多くに一般的な指針を当業者に提供する。
【0059】
本明細書において用いられる用語「プロテオーム」は、所定の時点での生体試料中のタンパク質の大部分を説明するために用いられる。プロテオームの概念は基本的にゲノムとは異なる。ゲノムが実質的に静的なものであるのに対して、プロテオームは内的および外的事象に応じて絶えず変化する。
【0060】
用語「プロテオームプロフィール」は、所定の時点での生体試料、例えば生体液中の複数のタンパク質の発現パターンの表現をさすために用いられる。プロテオームプロフィールは、例えば質量スペクトルとして表すことができるが、タンパク質、またはその断片の任意の物理化学的または生化学的特性に基づく他の表現も含まれる。従ってプロテオームプロフィールは、例えば、二次元ゲル電気泳動、例えば2−D PAGEにより測定されるタンパク質の電気泳動特性の差異に基づいてよく、例えば二次元電気泳動ゲルでの複数のスポットとして表すことができる。あるいは、プロテオームプロフィールは、二次元液体クロマトグラフィーで測定されるタンパク質の等電点および疎水性に基づいてよく、例えばコンピュータにより生成された仮想二次元マップとして表すことができる。さらに、レクチンに基づくアフィニティー精製を、本明細書に記載される技法と組み合わせて、生体試料中に見出される種々のタンパク質の特異的グリコシル化特性を強調するプロテオームプロフィールを生成することができる。
【0061】
差次的発現プロフィールは、たとえ特異的に同定されたタンパク質が存在しない場合であっても重要な診断価値を有しうる。例えば免疫ブロット法により、単一のタンパク質スポットまたはクロマトグラフ溶出剤がそれから検出でき、タンパク質マイクロアレイを用いて複数のスポット、溶出剤、またはタンパク質を同定することができる。プロテオームプロフィールは一般に、数ピークから50以上のピークを表す複合プロフィールまでの範囲であり得る情報を表すかまたは含む。従って、例えば、プロテオームプロフィールは、少なくとも2種類、または少なくとも3種類、または少なくとも4種類、または少なくとも5種類、または少なくとも6種類、または少なくとも7種類、または少なくとも8種類、または少なくとも9種類、または少なくとも10種類、または少なくとも15種類、または少なくとも20種類、または少なくとも25種類、または少なくとも30種類、または少なくとも35種類、または少なくとも40種類、または少なくとも45種類、または少なくとも50種類のタンパク質、および同種類のものを含むかまたは表しうる。
【0062】
用語「固有の発現サイン」は、統計学的に有意な形で、対応する標準的な(同種の供給源、例えば生体液から得られた)生体試料のプロテオームプロフィールとは異なる、生体試料(例えば参照試料または試験試料)のプロテオームプロフィールの中の固有の特徴またはモチーフを説明するために用いられる。
【0063】
用語「標準プロテオームプロフィール」は、異数性、または他の染色体異常を有さない胎児を妊娠している妊娠女性から得られた試験試料と同じ種類の母体生体液の生体試料のプロテオームプロフィールをさすために用いられる。
【0064】
用語「参照プロテオームプロフィール」は、異数性を有する胎児を妊娠している妊娠女性から得られた試験試料と同じ種類の母体生体液の生体試料のプロテオームプロフィールをさすために用いられる。
【0065】
「患者の応答」は、患者への利益を示す任意のエンドポイントを用いて評価することができ、このエンドポイントとしては、限定されないが、(1)病的状態の進行の(少なくともある程度の)阻害、(2)病的状態の予防、(3)病的状態に関連する1以上の症状の(少なくともある程度の)軽減;(4)処置後の生存期間の増加;および/または(5)処置後の所定の時点での死亡率の低下が挙げられる。
【0066】
用語「処置」とは、対象が標的病的状態または障害を予防されるかまたは減速される(緩和される)、治療的な処置と予防的手段の両方をさす。処置の必要な者としては、既に障害のある者ならびに障害を有する傾向のある者または障害が予防されている者が挙げられる。
【0067】
「先天性奇形」は、遺伝性ではないが出生時には存在している異常である。
【0068】
診断アッセイの「感受性」または「診断感受性」は、疾患を有する人の中から疾患を発見する検査の確率、または検査結果が陽性であって、疾患を有する人の割合として定義される。統計用語では:感受性=真陽性/(真陽性+偽陽性)。
【0069】
用語「1以上の」とは、本明細書においてプロテオミクスプロフィール、タンパク質マーカー、および固有の発現サインとの関連において、任意の順列での、グループ内の任意の1、2、3、4、その他の記載されたメンバーを意味するために用いられる。従って、用語「1以上の」には、グループ内で具体的に記載された任意の2、任意の3、任意の4その他のメンバーが挙げられる。明細書および請求項を通じて具体的な下位群が記載されているが、これらに限定されない。用語「1以上の」は広い意味で用いられ、複数のメンバーを含むグループ内の任意の下位群を示すために用いられるということに重点が置かれる。同様に、用語「少なくとも2」、「少なくとも3」、「少なくとも4」、その他は、組合せの中のメンバーの合計数が少なくとも3、少なくとも3、少なくとも4、その他であるならば、特定のグループ内のメンバーの任意の組合せを網羅する。
【0070】
B.詳細な説明
本発明は、母体生体液のプロテオームプロフィールに基づく、胎児ダウン症候群および他の染色体異数性の早期の信用性のある非侵襲性の検査のための方法および手段に関する。本発明は当技術分野で周知のプロテオミクス技術を利用し、例えば、その内容が参照により明示的に本明細書に組み入れられる以下のテキストに記載される:Proteome Research: New Frontiers in Functional Genomics(Principles and Ptactice),M.R.Wilkinsら、eds.,Springer Verlag,1007;2−D Proteome Analysis Protocols,Andrew L Link, editor, Humana Press,1999;Proteome Research: Two−Dimensional Gel Electrophoresis and Identification Methods(Principles and Ptactice),T.Rabilloud editor, Springer Verlag,2000;Proteome Research:Mass Spectrometry(Principles and Ptactice),P.James editor, Springer Verlag,2001;Introduction to Proteomics,D.C.Liebler editor, Humana Press,2002;Proteomics in Practice: A Laboratory Manual of Proteome Analysis,R.Westermeierら、eds., John Wiley & Sons,2002。
【0071】
当業者であれば、本明細書に記載されるものと類似しているかまたは同等である多くの方法および材料を理解するであろうし、それらを本発明の実践に用いてもよい。実際に、本発明は記載される方法および材料に一切限定されない。
【0072】
(1.生体液中に発現したタンパク質およびポリペプチドの同定)
本発明によれば、生体液のプロテオミクス解析は、当技術分野で公知の種々の方法を用いて行うことができる。
【0073】
一般に、異なる供給源由来の試料、例えば標準的な生体液(標準試料)および試験生体液(試験試料)のタンパク質パターン(プロテオームマップ)を比較して、疾患において上方制御または下方制御されているタンパク質を検出する。次にこれらのタンパク質を、例えばペプチドマスフィンガープリント法および/または質量分析とシーケンシング法を用いて、同定および完全な特性決定のために摘出するか、あるいは標準および/または疾患特異的プロテオームマップを直接目的の疾患の診断に用いるか、または疾患の存在もしくは不在を確認するために用いることができる。
【0074】
比較分析では、タンパク質の相対存在量を正確に表し、正確な結果を得るために、標準試料と試験試料を全く同じように扱うことが重要である。必要とされる全タンパク質量は、用いる分析法によって決まり、当業者が容易に決定することができる。生体試料に存在するタンパク質は、一般に、それらのpIおよび分子量に従って二次元ゲル電気泳動(2−DE)で分離される。タンパク質はまず、等電点電気泳動(一次元ゲル電気泳動)を用いてそれらの電荷により分離される。この工程は、例えば、市販されている固定化されたpH勾配(IPG)ストリップを用いて行うことができる。二次元目は集まったIPGストリップを試料として用いる通常のSDS−PAGE分析である。2−DE分離後、クーマシーブルーまたは銀染色のような従来型の染料を用いてタンパク質を可視化し、例えばBio−Rad GS800デンシトメーターおよびPDQUESTソフトウェア(両方市販されている)などの既知の技術および装置を用いて画像化することができる。次に個々のスポットをゲルから切り出し、脱染し、トリプシン消化に付す。ペプチド混合物は質量分析(MS)で解析できる。
【0075】
比較分析の代替法、およびこれらの種々の方法の組合せも、本発明の範囲内で使用されうる。例えば、生体試料中に存在するタンパク質を、下記実施例IIに記載されるようにそれらの等電点および疎水性に従って二次元液体クロマトグラフィーにより分離してよい。限定されるものではないが、分子量、pH、または特異的結合親和性、例えば抗体−抗原相互作用に基づいて分離できる材料を含む広範囲の分離材料が当技術分野で周知であるので、当然、クロマトグラフ分離は疎水性に基づく必要はない。さらに、最初の分離工程が完了すると、個々のスポットまたは溶出液試料に存在するペプチドを、キャピラリー高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)により分離し、個別にまたはプールでMSにより解析することができる。
【0076】
実施例IIIに詳述されるように、グリコシル化は真核生物において重要な翻訳後タンパク質修飾であり、従って生体試料のグリコシル化の状態を分離および同定する系は、タンパク質バイオマーカーを発掘する際の有益な手段であり得る。レクチンに基づくアフィニティー精製は、異なるクラスのグリコシル化タンパク質を、それらの特異的かつ可逆的に糖タンパク質のグリカン部分と結合する能力によって単離するための選択法である。糖タンパク質の主要クラスおよび種類は個別に試験試料から単離することができ、ひとたび分離すると、質量分析を用いて疾患に対して対照を比較するための差次的グリコシル化プロフィールを生成することができる。
【0077】
下に詳細に考察されるように、幅広い種類のレクチンおよびそれらの特異性が当技術分野で公知である。1種類以上のこれらのレクチン、ならびに任意の順列のこれらのレクチンおよび他のレクチンの可能性のある組合せを本発明の実践に用いることができる。マンノース結合レクチンは、限定されるものではないが、以下を含むことが知られている:分枝α−マンノース構造、高マンノース型、およびハイブリッド型ならびに二分岐複合型N−グリカンと結合する、タチナタマメ(Canavalia ensiformis)由来のコンカナバリンA;二分岐および三分岐複合型N−グリカンのフコシル化したコア領域と結合するレンズマメ(Lens culinaris)由来のレンチルレクチン;ならびにα1−3およびα1−6結合高マンノース構造と結合するスノードロップ(Galanthus nivalis)由来のスノードロップレクチン。ガラクトース/N−アセチルガラクトサミン結合レクチンとしては、限定されるものではないが、以下が挙げられる:Galβ1−4GlcNAcβ1−Rと結合するトウゴマ(Ricinus communis)由来のトウゴマ凝集素(RCA120);Galβ1−3GalNAcα1−Ser/Thr(T抗原)と結合するピーナッツ(Arachis hypogaea)由来のピーナッツ凝集素;(Sia)Galβ1−3GalNAcα1−Ser/Thr(T抗原)と結合するジャックフルーツ(Artocarpus integrifolia)由来のジャカリン;およびGalNAcα−Ser/Thr(Tn−抗原)と結合するヘアリーベッチ(Vicia villosa)由来のヘアリーベッチレクチン。シアル酸/N−アセチルグルコサミン結合レクチンとしては、限定されるものではないが、以下が挙げられる:GlcNAcβ1−4GlcNAcβ1−4GlcNAc、およびNeu5Ac(シアル酸)と結合する小麦胚芽(Triticum vulgaris)由来の小麦胚凝集素;Neu5Acα2−6Gal(NAc)−Rと結合するセイヨウニワトコ(Sambucus nigra)由来のエルダーベリーレクチン;Neu5Ac/Gcα2−3Galβ1−4GlcNAcβ1−Rと結合するイヌエンジュ(Maackia amurensis)由来のイヌエンジュレクチン。フコース結合レクチンとしては、限定されるものではないが、以下が挙げられる:Fucα1−2Gal−Rと結合するハリエニシダ(Ulex europaeus)由来のハリエニシダ凝集素;Fucα1−2Galβ1−4(Fucα1−3/4)Galβ1−4GlcNAc、およびR2−GlcNAcβ1−4(Fucα1−6)GlcNAc−R1と結合するヒイロチャワンタケ(Aleuria aurantia)由来のヒイロチャワンタケレクチン。
【0078】
質量分析計は、イオン源、質量分析器、イオン検出器、およびデータ収集ユニットから成る。最初に、イオン源でペプチドをイオン化する。次にイオン化したペプチドを質量分析器でそれらの質量対電荷比に従って分離し、分離したイオンを検出する。質量分析は、特にマトリックス支援レーザー脱離イオン化/飛行時間型(MALDI−TOF)およびエレクトロスプレーイオン化(ESI)法の発明以来、タンパク質解析において広く用いられている。質量分析器にはいくつかの種類があり、例えば、MALDI−TOFおよび三連四重極型TOF、またはESIと連結したイオントラップ質量分析器が挙げられる。従って、例えばQ−Tof−2質量分析計は全質量スペクトル範囲にわたってイオンの同時検出を可能にする直交飛行時間分析器を利用する。さらなる詳細に関しては、例えばChemusevichら、J.Mass Spectrom.36:849−865(2001)を参照のこと。
【0079】
必要に応じて、ペプチド断片のアミノ酸配列および最終的にはそれらの由来するタンパク質のアミノ酸配列は、技術分野で公知の技術、例えば質量分析特定の変形形態、またはエドマン分解により決定することができる。
【0080】
質量分析データから分枝の配列を決定する方法は、2004年2月27日出願の同時係属中の特許出願第10/789,424号に開示されており、その全開示内容は参照により本明細書に組み入れられる。この方法は、デノボシーケンシングおよびデータベース検索を含み、完全に配列決定されていないが配列データベースに存在する配列に近い配列相同性を有する配列変化および未知タンパク質を同定するために用いることもできる。
【0081】
(2.染色体異数性)
染色体異常は周産期の罹患率および死亡率の原因となることが多い。染色体異常は生児出産200対1の罹患率で発生する。これらの異常の主な原因は染色体異数性、つまり両親から受け継いだ染色体の数の異常である。最も頻度の高い染色体異数性の1つがトリソミー21(ダウン症候群)であり、これは生児出産800対1で発生する(Hook EB, Hamerton J L:The frequency of chromosome abnormalities detected in consecutive newborn studies: Differences between studies: Results by sex and by severity of phenotypic involvement.In Hook EB, Porter IH(eds): Population Cytogenetics,63−79頁.New York, Academic Press, 1978)。トリソミー21の主要なリスク因子は、35以上の母体年齢であるが、トリソミー21の子の80%が35歳よりも若い女性に生まれている。他の多く見られる異数性の状態としてはトリソミー13および18、ターナー症候群ならびにクラインフェルター症候群が挙げられる。
【0082】
(3.生体液のプロテオームプロフィールまたは生体液で同定されたバイオマーカーを用いる胎児染色体異数性の診断)
本発明は、生体液、例えば、妊娠女性の羊水、血清、血漿、尿、脳脊髄液、母乳、粘液、または唾液のプロテオーム解析に基づく、早期かつ信頼性のある、非侵襲性の胎児染色体異数性の診断のための方法を提供する。
【0083】
前に述べたように、本発明において用語「プロテオームプロフィール」は、所定の時点での生体試料、例えば生体液中の複数のタンパク質の発現パターンの表現をさすために用いられる。プロテオームプロフィールは、例えば質量スペクトルとして表すことができるが、タンパク質の任意の物理化学的または生化学的特性に基づく他の表現も含まれる。生体液のプロテオーム中に存在する全てまたは一部のタンパク質を同定および配列決定することが可能であるが、それは本発明に従って生成されたプロテオームプロフィールの診断使用に必要ではない。診断は、診断される染色体異数性、例えば胎児のダウン症候群が存在する場合に、標準プロテオームプロフィールと同じ環境下で得た同じ生体液のプロテオームプロフィールとの間の特徴的な差異(固有の発現サイン)に基づくものであってよい。固有の発現サインは、統計学的に有意な形で、同種類の供給源から得られた対応する標準生体試料のプロテオームプロフィールとは異なる、試験試料または参照生体試料のプロテオームプロフィールの中の何らかの固有の特徴またはモチーフであり得る。例えば、もしプロテオームプロフィールが質量スペクトルの形で示されるならば、固有の発現サインは、一般に、対応する正常な試料の質量スペクトルとは質的にも量的にも異なるピークまたはピークの組合せである。従って、質量スペクトルにおける新規なピークまたは新規なピークの組合せの出現、あるいは質量スペクトルにおける既存のピークまたは既存のピークの組合せの振幅または形状における何らかの統計上有意な変化は、固有の発現サインとみなすことができる。妊娠女性被験体から得られた試験試料のプロテオームプロフィールを、染色体異数性の特徴を示す固有の発現サインを含む参照試料のプロテオームプロフィールと比較した時に、もし試験試料が固有の発現サインを参照試料と共有しているならば、その胎児はこのような染色体異数性と診断される。
【0084】
特定の染色体異数性、例えば胎児ダウン症候群は、試験される母体被験体から得られた生体液のプロテオームプロフィールと、同じように得られて処理された同種類の標準生体液のプロテオームプロフィールとを比較することにより診断され得る。もし試験試料のプロテオームプロフィールが標準試料のプロテオームプロフィールと本質的に同じであれば、胎児は試験された染色体異数性がないと見なされる。もし試験試料のプロテオームプロフィールが標準試料のプロテオームプロフィールに対して固有の発現サインを示すならば、胎児は染色体異数性と診断される。
【0085】
あるいは、またはさらに、試験試料のプロテオームプロフィールを、独立に当該の状態と診断された妊娠女性の生体液から得られた参照試料のプロテオームプロフィールと比較してもよい。この場合、もし試験試料のプロテオームプロフィールが参照試料のプロテオームプロフィールと固有の発現サインを表す少なくとも1種類の特徴、または特徴の組合せを共有するならば、胎児は病的状態と診断される。
【0086】
本発明の方法において、標準的な生体試料のプロテオームプロフィールは診断上重要な役割を果たす。上記に論じたように、もし試験試料のプロテオームプロフィールが標準生体試料のプロテオームプロフィールと本質的に同じであれば、胎児は同定される染色体異数性ではないと診断される。差異が統計上有意であるならばデータを解析して決定される。
【0087】
本発明の診断法の感受性は、本質的に同じ発現レベルで正常なプロテオームおよび病変プロテオームの両方で見出されるタンパク質(共通タンパク質、例えばアルブミンおよび免疫グロブリン)を解析の前に従来型のタンパク質分離法を用いて取り除くことにより高めることができる。固有の発現サインの一部でないこのような共通タンパク質を取り除くことによって、感受性および診断精度が改善される。あるいは、またはさらに、一般に機械によるスペクトル選択アルゴリズムを用いて結果をコンピュータ分析する間に、共通タンパク質の発現サインを排除して(またはシグナルを取り除いて)診断要求を行うことができる。下記実施例で詳述される結果は、統計学的に有意な形で母体の血清または羊水の標準プロテオームプロフィールとは異なる異数性の特徴を示すプロテオームプロフィールを提示する。さらに、実施例および同封の図は、個別のバイオマーカー、バイオマーカーの群、および異数性の特徴を示す固有の発現サインを同定する。
【0088】
プロテオームプロフィールを比較するための統計的手法は当技術分野で周知である。例えば、質量スペクトルの場合、スペクトルの横軸に沿った主要な質量/電荷(M/Z)ポジションでのピーク振幅値によってプロテオームプロフィールを定義する。従って、特徴的なプロテオームプロフィールは、例えば、所定のM/Z値でのスペクトル振幅の組合せによって形成されたパターンによって特徴付けることができる。特徴的な発現サインの存在または不在、あるいは2つのプロフィールの実質的な同一性は、試験試料のプロテオームプロフィール(パターン)と参照試料または標準試料のプロテオームプロフィール(パターン)とを、適当なアルゴリズムを用いて照合することによって決定できる。プロテオームパターンを解析するための統計的手法は、例えば、Petricoin III,ら、The Lancet 359:572−77(2002).; Issaqら、Biochem Biophys Commun 292:587−92(2002); Ballら、Bioinformatics 18:395−404(2002);およびLiら、Clinical Chemistry Journal, 48:1296−1304(2002)に開示されている。
【0089】
特定の実施形態では、母親から得られた試料をタンパク質チップに適用し、質量分析によりプロテオームパターンを生成する。スペクトル内のピークのパターンは、上に記載されるように、適したバイオインフォマティクス・ソフトウェアによって解析することができる。
【0090】
下記の実施例に示したデータは、胎児異数性の特徴を示すいくつかの固有の発現サインを提供する。例えば、図に示されるように、正常な母体血清の質量スペクトルと、約125〜150kD(領域1)、約60〜68kDa(領域2)、約50〜55kDa(領域3)、約40〜45kDa(領域4)、約38〜42kDa(領域5)、約16〜20kDa(領域6)、および約35〜35kDa(領域7)の分子量範囲で胎児が異数性を有している場合の母体血清の質量スペクトルとの間には特徴的な差異がある。羊水では、約6〜7kDaおよび/または8〜10kDaの分子量範囲で特徴的な発現サインがある。従って、各々固有の発現サインを表す、質量スペクトル全体、または記載した領域のうちの1以上を、母体の血清を用いて胎児の異数性を診断するために用いることができる。さらに、これらの発現サインを含む質量スペクトル、または領域1〜7の1以上の任意の組合せを胎児異数性の診断法の陽性対照として用いることができる。さらに、またはあるいは、異数性を診断するための方法には、異数性を有する胎児を妊娠している女性の生体液(手短に言うと「異数性生体液」)中に差次的に発現した1種類以上のタンパク質、またはこのような差次的に発現したタンパク質の断片の検出が含まれ得る。差次的発現には、もし同種類の標準生体液中のその発現レベルに関して異数性生体液中のタンパク質の発現レベルの間に特徴的な差異があるならば、過剰発現および過少発現の両方が含まれる。
【0091】
母体血清を用いる胎児異数性の検出に適したバイオマーカーは、表1、2、および5〜6に記載されている。母体羊水を用いる胎児異数性の検出に適したバイオマーカーは、表3に記載されている。母体血清および羊水中にそれぞれ存在する好ましいバイオマーカーは、表4に記載されている。診断アッセイは、表1〜6に記載される1種類以上のポリペプチドに基づくものであるか、または表1〜6に記載される1種類以上のポリペプチドのアッセイの一部として用いることができる。特定の実施形態では、表1〜6に記載される1〜20、または1〜15、または1〜20、または1〜15または1〜10、または1〜9、または1〜8、または1〜7、または1〜6、または1〜5、または1〜4、または1〜3、または1または2個のバイオマーカーを、単独または他の異数性のバイオマーカーと組み合わせて、あるいは異数性の1以上の固有の発現サインと共に用いる。バイオマーカーの可能性のある組合せの例としては、以下が挙げられる:補体H因子と妊娠ゾーンタンパク質;補体H因子とアファミン;妊娠ゾーンタンパク質とα−2−hs−糖タンパク質;補体H因子、アンジオテンシノーゲンとクラステリン;アポリポタンパク質、AMBPタンパク質と血漿レチノール結合タンパク質;補体H因子、アファミン、アンジオテンシノーゲンとクラステリン;補体H因子、アファミン、色素上皮由来因子、血清アミロイドAタンパク質、アンジオテンシノーゲンとクラステリン;アポリポタンパク質E、AMBPタンパク質、血漿レチノール結合タンパク質、血清トランスフェリン前駆体、α−2−マクログロブリン前駆体とヒスチジンリッチ糖タンパク質前駆体;インター−α−トリプシンインヒビター重鎖H1前駆体、補体成分C9前駆体、フィブリノゲンα/α−E鎖前駆体、アポリポタンパク質C−III前駆体、ロイシンリッチα−2−糖タンパク質前駆体、アポリポタンパク質E前駆体、フェチュイン−B前駆体と補体C4前駆体。しかし、注意すべきは、本発明がこれらの例に限定されず、むしろ可能性のある組合せの全ての順列が本発明において使用を見出すことができることである。
【0092】
上記のように、異なるバイオマーカーおよび/または特徴的な発現サインの組合せは、診断精度を有意に改善するであろう。例えば、個別のバイオマーカーは一般に胎児異数性、例えばダウン症候群を、約30%〜80%の発生頻度で検出することができる。バイオマーカーおよび/または特徴的な発現サインの組合せでは、少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約85%、さらにより好ましくは少なくとも約90%、さらにより好ましくは少なくとも約95%、最も好ましくは少なくとも約98%の精度を達成することができる。別個の生物学的経路を通じて独立に作用するバイオマーカーの組合せは、このような組合せが診断感受性を有意に増加させることが期待されることから、特に有利である。
【0093】
本発明の診断法は、本質的に同じ検出率で、妊娠第一期および第二期に等しく適用可能できる。
【0094】
本発明のスクリーニング法は、単独で用いた場合、突出した検出率および精度を提供するが、胎児異数性の検出のための既存のスクリーニング法と組み合わせることもできる。従って、本明細書における診断方法を、1以上の既知のバイオマーカー、例えばダウン症候群またはトリソミー18の場合は、血清バイオマーカー、PAPP−A、α−フェトタンパク質(AFP)、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(βhCG)、非結合型エストリオール(uE3)、およびインヒビンAの1種類以上と組み合わせることができる。特に、本スクリーニング法は、PAPP−AおよびβhCGを独立したバイオマーカーとして用いる検査、または、特にスクリーニングが妊娠第二期に行われる場合、AFP、βhCG、およびuE3に基づく3種類のマーカー血清検査と組み合わせることができる。検査は、追加として、または代わりに、インヒビン−Aを含んでよい。本明細書に記載される診断方法と組み合わせてよい、他の染色体異数性を同定することのできるマーカーは、当技術分野で周知である。
【0095】
本明細書におけるスクリーニングアッセイは、さらに、臨床または実験的使用で胎児異数性を検出するための他の手法と組み合わせるかあるいはそれらの手法で補うことができ、このような手法としては、経腹的および透過型超音波検査をはじめとする超音波検査;染色体異常を検査するための種々の技法;ならびに後頚部透過像(NT)測定が挙げられる。
【0096】
(4.タンパク質および抗体アレイ)
上記に考察された診断アッセイは、タンパク質アレイを用いて行うことができる。近年、タンパク質アレイは、タンパク質を検出し、それらの発現レベルをモニターし、タンパク質相互作用および機能を調べるための強力な手段として広く認められるようになってきた。それらはハイスループットタンパク質解析を可能にし、自動化された手段を用いて多数の定量を同時に行うことができる。このような定量は、本来はDNAアレイのために開発されたマイクロアレイまたはチップの形式で行われ、材料の使用は最小限であるが多量のデータを生成する。
【0097】
2Dゲル電気泳動、2D液体クロマトグラフィー、および質量分析によるプロテオーム解析は上記のように非常に効果的であるが、必要とされる高い感受性を常に提供するものではなく、低量で発現する多くのタンパク質を逃しかねない。タンパク質マイクロアレイは、その高い効率に加えて、向上した感受性を提供する。
【0098】
タンパク質アレイは、当技術分野で周知の種々の共有結合および非共有結合化学を用いて、固体表面、例えばガラス、シリコン、マイクロウェル、ニトロセルロース、PVDF膜、およびマイクロビーズ上にタンパク質を固定化することにより形成される。固相支持体は、カップリング手順の前後に化学的に安定である必要があり、良好なスポット形状を可能にし、最小限の非特異結合を表示し、検出系のバックグラウンドとなってはならず、異なる検出系と両立すべきである。
【0099】
概して、タンパク質マイクロアレイは、DNAアレイの読みに一般的に用いられるものと同じ検出方法を用いる。同様に、DNAマイクロアレイの読みに用いられるものと同じ器具をタンパク質アレイに適用できる。
【0100】
従って、キャプチャーアレイ(例えば抗体アレイ)は、2種類の異なる供給源、例えば正常な生体液および病変生体液から蛍光標識されたタンパク質でプローブすることができる。この場合、読み出しは、標的タンパク質の発現レベルの変化を反映するものとして、蛍光シグナルの変化に基づく。それに代わる読み出しとしては、限定されないが、蛍光共鳴エネルギー移動、表面プラズモン共鳴、ローリングサークルDNA増幅、質量分析、共鳴光散乱、および原子間力顕微鏡が挙げられる。
【0101】
さらなる詳細には、例えば、Zhou H,ら、Trends Biotechnol.19:S34−9(2001);Zhuら、Current Opin.Chem.Biol.5:40−45−(2001);WilsonおよびNock,Angew Chem Int Ed Engl 42:494−500(2003);ならびにSchweitzerおよびKingsmore, Curr Opin Biotechnol 13:14−9(2002)を参照のこと。生体分子アレイは、2002年6月18日公開の米国特許第6,406,921号にも開示されており、その全開示内容は参照により明白に本明細書に組み入れられる。
【0102】
本発明のさらなる詳細は以下の限定されない例から明らかとなる。
【実施例】
【0103】
(実施例I)
(母体血清および羊水試料で発現したタンパク質およびポリペプチドの同定)
(材料および方法)
母体血清および羊水試料の評価を行った(妊娠期間に一致)。
【0104】
【化1】
(ヒト血清において豊富なタンパク質の免疫除去)
Agilentマルチプルアフィニティシステムを用いて、ヒト血清から6つの主なタンパク質(アルブミン、IgG、IgA、抗トリプシン、トランスフェリン、およびハプトグロビン)を取り除いた。マルチプルアフィニティカラムは抗体−抗原相互作用、ならびに試料充填、洗浄、溶出、および再生のために最適化されたバッファーに基づいている。カラムによって6つの存在量の高いタンパク質(全タンパク質質量の80〜90%)、例えばアルブミン、IgG、IgA、抗トリプシン、トランスフェリン、およびハプトグロビンをヒト血清から取り除き、プロテオーム解析のための存在量の低いタンパク質を濃縮させる。
【0105】
ヒト血清(40μl)を、AgilentバッファーA(35μlの血清および180μlのバッファーA)で5倍希釈した。微粒子を、16,000xgにて1分間、0.22μmスピンフィルターで濾過することによって取り除いた。160μlの希釈血清を、オートサンプラー、UV検出器、およびフラクションコレクターを備えたWaters HPLCシステムに付属するAgilent免疫親和性カラム(4.6×100mm)に注入した。流速は、最初の10分間は0.5ml/分、Bは0%、10〜17分は1ml/分でBは100%、そして17〜28は1ml/分でBは0%であった。5000MWCOフィルターを用いて、存在量の低い流入画分2〜5を回収し、濃縮し、10mM Tris、pH8.4でバッファー交換した。Bio−Rad DCタンパク質アッセイキットを用いてタンパク質濃度を決定した。
【0106】
(蛍光2−DGE)
血清(1〜3mg)から存在量の高いタンパク質を、上記のように、Agilent免疫親和性カラムを用いて取り除いた。次に、血清タンパク質(20〜50μg)を、色素100〜400pm/タンパク質20〜50μgの濃度のCyDye DIGE Fluor minimal dye(Amersham Biosciences)で標識した。異なる色素(Cy5、Cy3、およびCy2)を用いて対照試料または試験試料または参照血清試料を標識した。標識タンパク質をアセトン沈殿により精製し、IEFバッファーに溶かし、24または13cmのIPGストリップ(pH4〜7)へ室温にて12時間再水和した。再水和の後、IPGストリップを、65〜70kVhrsにて一次元電気泳動に付した。次に、二次元SDS−PAGE分析の前にIPGストリップをDTT平衡バッファーIおよびIAA平衡バッファーIIで15分間順次平衡化した。次に、IPGストリップを8〜16% SDS−PAGEゲルに載せ、電気泳動を80〜90Vで18時間実施して二次元でタンパク質を分離した。
【0107】
二次元の後、550〜600の範囲のPMT電圧で適当なレーザーおよびフィルターを用いてTyphoon 9400スキャナー(Amersham)でゲルをスキャンした。選択された色を使って異なるチャネル(対照および検査)の画像を重ね合わせ、ImageQauntソフトウェア(Amersham Biosciences)を用いて差異をモニターした。Evolutionソフトウェア(Nonlinear Dynamics)を用いてゲル画像の定量化を行った。
【0108】
タンパク質同定のため、血清タンパク質(500g〜1500μg)を、標識せずに2−DGEに付した。ゲルをクーマシーブルーR−250で染色し、画像化した。個々のスポットをゲルから切り出し、脱染し、ゲル内で37℃にて24時間トリプシン消化した。ペプチドを0.1% TFAで抽出し、Millipore社のZip Tipc18ピペットチップを用いて精製した。
【0109】
(ウエスタン免疫ブロット法および免疫沈降)
50〜100μgの血清タンパク質を、200Vにて60分間4〜20% SDS−PAGEに流し、90mAにて75分間PVDF膜に移した。膜を5%ミルク−PBSTで45分間室温にてブロッキングし、1μg/mlの一次抗体(Santa Cruz and Dako)で4℃にて一晩インキュベートした。TBSTで3回洗浄した後、膜をIgG−HRP二次抗体(Sigma)で室温にて90分間インキュベートし、ECL(Pierce)で可視化した。免疫沈降のため、20μgの一次抗体を600μgの血清タンパク質と混合し、4℃にて一晩インキュベートした。次に、15μlのプロテインG−セファロースビーズを添加し、シェーカーで室温にて60分間インキュベートした。溶出およびPAGEの前にビーズをIPバッファーで6回洗浄した。
【0110】
(母体血清のSELDI−TOF解析)
羊水および血清試料の合計0.5〜3.0μgのタンパク質を順相NP20(SiO2表面)、逆相H4(疎水性表面:C−16(長鎖脂肪族化合物)、または固定化したニッケル(IMAC)SELDIタンパク質チップ(登録商標)アレイ(Ciphergen Biosystems,Inc.,Fremont,CA)にスポットした。室温にて1時間のインキュベーションの後、NP1およびH4チップを5−μlの水洗浄に付して結合しなかったタンパク質および妨害物質(すなわちバッファー、塩、洗剤)を除去した。2〜3分間風乾した後、シナピン酸の50%アセトニトリル(v/v)と0.5%トリフルオロ酢酸(v/v)との飽和溶液のうち0.5μlを2適用分添加し、Ciphergen Protein Biology System II (PBS II)で飛行時間質量分析による質量分析を行った。
【0111】
(同位体コードアフィニティタグ(ICAT))
ICATは、対照試料および病変試料において、タンパク質の同定および差次的発現タンパク質の定量化データを提供することにより2DGEのいくつかの制限を克服するために用いられる最近開発された補完的技法である。ICATペプチド標識技術は、同位体組成の異なる反応プローブを用いることによりタンパク質の2つの集団を区別する。タンパク質上の遊離システインをアルキル化するタンパク質−反応性基(ヨードアセトアミド)、12Cまたは13C同位体標識されたリンカー領域、およびシステイン含有ペプチドを選択的に単離するための親和性(ビオチン)タグで構成される、Applied Biosystems社から市販されている、切断可能なICAT試薬を用いた。2つの試料、対照および病変試料を、同位体的に軽い(12C)または重い(13C)ICAT試薬でそれぞれ処理する。次に、標識されたタンパク質混合物を組み合わせ、タンパク質分解によって消化する。次に、ビオチン化ペプチドの固定化した単量体アビジンアフィニティーキャプチャーを用いて標識したペプチドを単離する。次に、標識されたペプチド上のビオチン標識を切断し、エレクトロスプレーイオン化法タンデム質量分析(LC−ESI MS/MS)と組み合わせたナノスケールの液体クロマトグラフィーによりペプチドを分析する。得られるMSおよびMS/MSスペクトルを、MCATソフトウェア(Waters)を用いて分析して対照および病変試料におけるタグペプチド対の相対存在量を判定し、大型タンパク質配列データベースを検索してこのタンパク質を同定する。対照は、比較分析のためタンパク質存在量のレベルを標準化するための内部標準として働く。存在比の増加または低下により上方制御または下方制御についての情報を提供する。
【0112】
(タンパク質の同定)
(データ獲得および解析)
トリプシンでのゲル内消化の後、Waters CapLCに接続されているWatersハイブリッド四重極飛行時間質量分析計(Q−Tof−2)で試料を解析した。Q−Tof−2は標準のZ−スプレーまたはナノスプレー源が備え付けられ、IntegrafritまたはNanoease C18 75μm ID×15cm×3.51μm熔融石英キャピラリーカラムに接続されている。Windows NT(登録商標)およびMassLynx4.0ソフトウェアを備えたCompaqワークステーションで機器を制御し、データを獲得した。Q−Tof−2を、Glu1フィブリノペプチドBを付属のCapLCから直接注入または注射によって用いて較正した。データに従う(Data−directed)解析を用いた。MS/MSMSサーベイ法を用いてMS/MSMSスペクトルを得た。質量400〜1500DaをMSサーベイのためにスキャンし、質量50〜1900DaをMS/MSのためにスキャンした。一次データ解析を、Windows 2000(登録商標)およびProteinLynx Global Server v2.1 (PLGS)ならびにPEAKSデノボシーケンシングアルゴリズムおよび本発明者らの所有するOpenSeaソフトウェアv1.1(Searleら、Analytical Chemistry76:2220−2230(2004))を備えたPCで行った。
【0113】
(PLGS v2.1)
タンデム質量スペクトル(MS/MS)の自動分析をPLGS v2.1ソフトウェア(Waters)を用いて行った。処理パラメータは、バックグラウンド除去を行わずに中程度または低度の同位体除去を用いた。処理の後、同位体を除去したMS/MSスペクトルを、データベース検索を含むワークフローおよびautomodを用いて、非重複性のInternational Protein Index (IPI)ヒトデータベース(20)で検索した。ワークフローにおいて、固定された修飾はカルバミドメチルCであり、可変性の修飾は酸化 Mおよびリン酸化 STYであった。データベース検索後に非特異的一次消化試薬を用いてautomodクエリーを実行して可能性のあるあらゆる修飾および置換を検索した。
【0114】
(OpenSea v1.1)
質量に基づくアラインメントアルゴリズムであるOpenSea v1.1は、PEAKSによりデータから得たデノボ配列をデータベース中のタンパク質配列にアラインすることによりペプチドのMS/MSデータからタンパク質を同定する。OpenSeaは全てのアミノ酸文字を一連の質量に変換し、ダイナミックプログラミングアプローチを用いてこれらの質量を比較する。
【0115】
全てのQ−TOF MS/MSスペクトルを、Peaks Batch Version2.2(Maら、An effective algorithm for the peptide de novo sequencing from MS/MS spectrum,in 14th Symposium of Combinatorial Pattern Matching,2003;Nelsonら、Analytical Chemistry67:1153−8(1995))(Bioinformatics Solutions Inc.,Waterloo,ON,Canada)を用いて、0.1AMUの質量精度を用いてデノボ配列決定した。Peaksは、未知の質量領域なしに全アミノ酸配列を報告するが、その配列中の各アミノ酸に信頼度スコアを割り当てる。アミノ酸の信頼度スコアが50%より低い配列領域をそれらのアミノ酸の組み合わせた質量で置き換えた。もし全配列の平均信頼度スコアが50%よりも低ければ、平均信頼度よりも低い信頼度のアミノ酸だけを組み合わせた。全ての配列を、仮定上の親質量および断片質量の計算のためにモノアイソトピック質量を用いてOpenSeaで解析し、全ての配列が0.25AMUの質量精度で一致した。全ての試料を非重複性のInternational Protein Index(IPI)ヒトデータベースで検索した。
【0116】
タンパク質を同定するために用いたパラメータは次の通りであった:1)タンパク質の説明の中に「ケラチン」という文字列を含むデータベース一致データはいずれも排除した;2)各タンパク質はPLGS v2.1およびOpenSea v1.1の両方で存在の可能性が95%を上回らねばならない;ならびに3)各タンパク質は2種類以上のペプチドを有していなければならない。
【0117】
(質量分析に基づくバイオマーカーの検出のための免疫親和性アッセイ)
2−DGE DIGE実験を用いて同定された、母体対照とダウン症候群血清との間で差次的に発現したタンパク質バイオマーカーは、タンパク質プロフィールに基づく胎児ダウン症候群の検出のためのハイスループットスクリーニング系の開発に適している。個々のタンパク質バイオマーカーを、免疫アフィニティー精製により母体の血清から捕捉し、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析(MALDI−TOF MS)により解析した。
【0118】
(試料調製およびバイオマーカー免疫沈降)
血清試料を、700×gにて15分間遠心分離して血液細胞を小球状にした。上清を−80℃にて保存した。各血清試料(個々のバイオマーカー標的に対し各50μL以下)を結合バッファーで希釈し、50μgの結合抗体で誘導体化した免疫親和性ビーズ(Pierce;Rockford,IL)とともにインキュベートした。ダウン症候群標的タンパク質を低いpHのカオトロピックバッファーを用いてビーズから溶出した。溶出液を脱塩し、ZipTip(商標)C4ピペットチップ(Millipore;Billerica,MA)を用いて濃縮し、疎水性/親水性対照MALDI−TOF MS標的(AnchorChip(商標)MTP標的プレート、BrukerDaltonics;Billerica,MA)上に(シナピン酸マトリックスに沿って)直接スポットした。AnchorChip標的は、試料分布および結晶化でさえも促進し、MALDI−MSスペクトルの感受性を高くし、手動の「スイート・スポット」検索への依存を減らして、ハイスループット自動化に対して解析をさらに従順にする。
【0119】
(MALDI−TOF MS解析)
溶出した完全なタンパク質バイオマーカーのMALDI−TOF MS解析をAutoflex MALDI−TOF−MS質量分析計(Bruker Daltonics;Billerica,MA)を用いて行った。Autoflex MALDI−TOF−MSの解像度仕様(シトクロムcの解像度=1000、12361 Da、 Rs=m/Δm(FWHM))は、タンパク質イソ型および修飾型の検出を可能にする。例えば、Nelsonと共同研究者らは、たった53Da(アポE2およびアポE3イソ型:それぞれ34,236.6および34,183.6Da)で質量の異なるアポリポタンパク質Eのイソ型を分離できた(228 A.T.B.n,母体の血清スクリーニング.In ACOG.1996 Washington D.C.:American College of Obstreticians and Gynecologists)。MALDI−MSを、大型ポリペプチドおよびタンパク質(>5000m/z)の検出のために陽極性を用いて遅延引き出し法、リニアモードで操作した。減衰した調節可能な50Hz窒素レーザー(337nm)を1スペクトルあたり100〜200ショットで用いて質量スペクトルを得た。
【0120】
適切なシグナル対ノイズを考慮して、目的の特異的バイオマーカー標的の強度レベルに応じていくつかのスペクトルを組み合わせた。使用したBruker MALDI−TOF質量分析計の質量精度は、リニア検出モード(>5000m/zの質量の大きいポリペプチド/タンパク質の検出に用いられる)で内部キャリブレーション(m/z12,361においてシトクロムcに関して)を用いて<100ppmである。Bruker MTP AnchorChip(商標)標的プレート上の4つのサンプルウェルの各セット間のキャリブレーションアンカーを利用して外部キャリブレーションを行う。対照試料およびダウン症候群試料から得られたMALDI−MSバイオマーカーイオンシグナルの処理後解析をClinPro Toolsソフトウェア(Bruker Daltonics;Billerica,MA)を用いて行った。
【0121】
(結果)
((A)ダウン症候群を検出するためのSELDI−TOF質量分析を用いるプロテオームプロフィール。)
対照およびダウン症候群を代表するタンパク質パターンをそれぞれ同定するため、方法に記載されるようにAgilent免疫親和性カラムを用いて主に豊富なタンパク質を取り除くことにより最初に低分子量タンパク質を血清中で濃縮した。1〜2μgの濃縮されたタンパク質試料のプロフィールを、4種類の異なる表面化学増強捕捉プロトコール(Ciphergen Protein Cip Arrays)を用いてSELDI−TOFにて生成した。Biomarker Wizard(Ciphergen, Inc.)を用いるデータ解析は、対照とダウン症候群血清とで別個のピークを明らかにした(図1)。試料のサブセットをMALDI−TOF(Autoflex TOF−TOF,Bruker Daltonics)でさらに評価し(Kerseyら、Proteomics4:1985−1988(2004))、Clinprotソフトウェア(Bruker Daltonics)を用いてデータを解析した。このアプローチも、ダウン症候群試料において少数の別個のピークを明らかにした。これらの結果は、低分子量範囲でのダウン症候群の母体血清における潜在的差異が、SELDI/MALDIプロファイリングにより検出され得ることを証明した。ダウン症候群に特有のこれらのプロフィールを利用する敏感かつ特異的アッセイは独自のハイスループットスクリーニング検査へと発展させることができる。
【0122】
((B)蛍光2−DGE。)
方法の項に記載されるように調製された母体血清試料の一致した対(対照およびダウン症候群)を蛍光色素(Cy5、Cy3およびCy2)で標識し、2−Dゲルで分離した。ProteoGenixは、2−Dゲル、ならびに、対照およびダウン症候群試料とともにゲルの全てから分離した、固定した内部標準(プールした母体血清)を用いる半定量手順(2−Dプロフィール)を使って大量の試料をスクリーニングするための独自のハイスループットフォーマットを開発した。図1に示されるように、妊娠第二期母体血清試料は、対照およびダウン症候群の場合での明白な差異、ならびに妊娠第一期および第二期からのプロフィールの有意な類似性を明らかにした。強度比の定量化(Phoreticsソフトウェア、ImageQuantソフトウェア、SAS解析)は、目的の重要な領域1〜7(図2に示されるように、高〜低分子量)が約40〜80%の範囲にある感受性を示したことを実証した。2以上の領域の組合せは、この一致対モデルにおいて全てのダウン症候群の場合を対照と区別することができた。
【0123】
目的のこれらの領域における可能性のあるタンパク質の同定のため、分取2−Dゲル(精製されたタンパク質1〜2mg)を妊娠第一期および第二期からの血清試料の3組の一致対から用いた。目的の領域からのスポット(図2、円で囲んだ領域)をパンチし、トリプシンで消化し、LC/MS/MS(Q−TOF2)で解析した。独自のプロテオームソフトウェア(OpenSea)を用いてタンパク質同定およびデータ解析を行った。目的の各領域は2〜3種類のタンパク質を示した(表1)。目的の領域に示されたタンパク質は、妊娠第一期および第二期血清試料の両方について同一であった。領域1〜7に示されない、母体の血清において差次的に発現したタンパク質を表2に列挙する。
【0124】
羊水試料の一致対(対照およびダウン症候群)を、上記のように蛍光色素(Cy5、Cy3およびCy2)で分析し、2−Dゲルで分離した。デノボシーケンシングを用いて差次的に発現したタンパク質を同定し、および表3に列挙した。
【0125】
2D蛍光ゲルにおいて注目される相対的な定量的差異は、ウエスタンブロット法を用いて測定することができる。例として領域1に発現した主要タンパク質に対する抗体(補体H因子)を用いて、同様に2D蛍光ゲルに分離した母体血清2Dウエスタンブロットをプローブした。図4に示されるように、補体H因子は対照母体血清と比較してダウン症候群において、より高いレベルで発現した。このことは、同定されたタンパク質バイオマーカーが、母体の血清において胎児ダウン症候群を検出するための標準定量化免疫測定に用いることができることを実証する。
【0126】
図5はダウン症候群の候補バイオマーカーのデノボタンパク質配列同定の略図である。特に、この図は補体H因子に属するペプチド配列を表すスペクトルを示す。
【0127】
図6はダウン症候群の候補バイオマーカーのデノボタンパク質配列同定の異なる略図である。この図は補体H因子に属すると同定されたペプチド配列の配列適用範囲マップを示す。薄い陰影はポリペプチド配列内で同定されたペプチドを表し、濃い陰影を付けられたアミノ酸残基は示した位置での可能性のあるタンパク質修飾である。
【0128】
(バイオマーカーを測定するための免疫MALDIアッセイの開発)
上に示されたように、蛍光2−Dゲル解析およびタンパク質同定は、妊娠第一期および第二期試料の両方の母体血清においてかなりの数の可能性のあるバイオマーカーを明らかにした。免疫MALDIアッセイプラットフォームは、前例のない多成分解析の機会を提供する。このアッセイプラットフォームのもう1つの主な利点は、疾患に特異的なイソ型を捕捉できる能力である。このようなタンパク質分解断片またはタンパク質修飾を測るための正確なELISAを開発することは非常に困難であろう。この例は、ダウン症候群を検出するために免疫MALDI技術を用いるハイスループットアッセイを開発する実現可能性を実証する。
【0129】
免疫MALDIアッセイは、領域6および7で差次的に発現したタンパク質を同定するために開発された。この領域の2−Dゲルスポットからのタンパク質同定は、アポリポタンパク質AI、AII、およびEの存在を証明する。対照およびダウン症候群試料の一致した対の母体血清試料600μgを用いてアポリポタンパク質の免疫沈降を行った。方法に記載されるようにAutoflex TOF−TOF(Bruker Daltonics)を用いて溶出剤のプロフィール生成を行った。図3に示されるように、3種類全ての形態のアポリポタンパク質を検出し、アポリポタンパク質AIIは2つの試料間で有意な定量的差異を示した。さらに、アポリポタンパク質AII複合体もダウン症候群母体の血清において別個のイソ型を明らかにした。
【0130】
上記試料対のMALDI解析は、対照血清と比較してダウン症候群血清においてアポA1の下方制御を示した。アポリポタンパク質A2(アポA2)抗体を用いて同じセットの対照およびダウン症候群血清のIP解析を行った場合、図3に示すMALDIプロフィールは、アポA2の相対強度がダウン症候群血清に対して対照血清において再び高かったことを示した(アポA2 MW=8707.9Da)。さらに、ダウン症候群IPに対して対照には異なる種類が存在した。従って、本発明者らのデータから、MALDI−TOF MSによって、相対強度の変化ならびにバイオマーカーパターン変化の両方の評価が可能となることが証明される。
【0131】
この実験は、2−DGE解析で同定された他のバイオマーカーおよび相対定量のためのコンピュータツール(ClinProtソフトウェア)の使用の最適化、ならびに診断プロフィールを作成するための統計アルゴリズムの最適化が、頑強なハイスループットアッセイ系を提供することを証明する。この系は他の可能性のある標的の添加によって、同じ設定において他の異数性を区別するために広げることができる。
【0132】
前記説明の全体にわたって、本発明は特定の一実施形態を参照して考察されているが、そのように限定されるものではない。実際、本明細書において示し説明したものに加えて、本発明の種々の修飾は前記の説明から当業者には明らかであり、付属の請求項の範囲内にある。
【0133】
(実施例II)
(ダウン症候群において差次的に発現したタンパク質の分離および同定のための二次元液体クロマトグラフィー)
母体対照血清およびダウン症候群血清由来タンパク質の2D−DIGE解析を補う戦略として、完全なタンパク質を分離するための二次元液体クロマトグラフィー(2D−LC)法を用いることができる。2D−LC法は、対照血清試料とダウン症候群血清試料との間の差次的タンパク質発現の比較を可能にする仮想2Dマップを提供する。
【0134】
(試料調製および2D−LCの方法論)
母体対照血清およびダウン症候群血清におけるタンパク質発現の比較分析のため、プールした母体の血清の一式を、妊娠第一期および妊娠第二期の患者から準備した。全ての血清を免疫精製し(Agilent)、CF適合性のためにバッファー交換した。5〜7mgの全血清タンパク質を各試料にプールした。同量の全タンパク質を各対照/ダウン症候群試料対の2D−LC分析に用いた;妊娠第一期および第二期試料対を独立に分析した。
【0135】
2D−LC分析を、ProteomeLab PF2D系(Beckman−Coulter;Fullerton,CA)で行った。手短に言えば、血清タンパク質を一次元目のCF陰イオン交換カラムに充填し、下降する直線pH勾配を用いてタンパク質等電点(pI/pH)に従って0.3pH単位の画分へ溶出する。次に、各pH画分を、無孔性C18 RP−HPLCカラムを用いてタンパク質疎水性により二次元で分離する(各pH画分から48画分)。質量分析によるタンパク質同定のためトリプシンで酵素消化される合計800画分をRP−HPLCの次元から(各試料から)回収した。
【0136】
(回収した差次的画分のMS解析)
図7は、妊娠第二期の母体ダウン症候群血清に対する母体対照血清の2D−LC分析により生成されたタンパク質発現マップを示す。図7Aは、X軸にCFから溶出したタンパク質のpIを、Y軸にRP−HPLCから溶出したタンパク質の保持時間、または疎水性を表示するProteoVueソフトウェアを用いて生成された2D−LCマップを表す。図7Bは、左側に赤色で表される対照試料の2Dマップ、および右側に緑色で表されるダウン症候群試料の2Dマップを表す。図の中央は2種類の試料の差分マップ(図7Bでは別々に表示)を表し、緑色に見えるバンドはダウン症候群試料において上方制御されたタンパク質であり、赤色に見えるバンドは対照試料において上方制御されたタンパク質である。
【0137】
ダウン症候群かまたは対照血清における上方制御を示す差分マップ中のバンドをトリプシンで消化させ、ESI−QTOF−MS/MS(QTOF2,Waters;Milford,MA)を用いるタンパク質同定解析の準備をした。対照かまたはダウン症候群試料の高強度ピークの少なくとも10〜20%の差次的強度カットオフを用いると、これは妊娠第一期試料セットでは約95バンド、妊娠第二期試料セットでは80バンドに相当する。対照画分とダウン症候群画分と間の差次的発現強度は、0.004AU〜0.638AUであった(画分消化のMS解析の検出の限界は、保存的に約0.05AU;二次元目の分離のためのAUスケールは最大約1.3AUに達する)。
【0138】
(母体のダウン症候群血清において差次的に発現したタンパク質の2D−LC同定)
表5は、ダウン症候群母体の血清においてLC/MS/MS(Q−TOF2,Waters,Inc)解析で差次的ペプチド数を示す同定されたタンパク質の一覧を示す。(略語は、T1、妊娠第一期;T2、妊娠第二期母体の血清。)
(実施例III)
(ダウン症候群の母体血清予測糖タンパク質プロフィール)
グリコシル化は、真核生物においてタンパク質の複合翻訳後修飾の1つである。単一のグリコシル化事象などの小さな変化が生理学的に重要なタンパク質の運命および機能を変え、それは次には生物の特定の疾患または状態に関連しうるので、グリコシル化プロセスの体系的評価は、タンパク質バイオマーカーの発掘に有益な手段である。細胞シグナルまたは発達段階に応じて発生するグリコシル化パターンまたはグリカン構造における変化を用いて癌などの疾患を同定することもあり得る。レクチンに基づくアフィニティー精製は、異なるクラスのグリコシル化タンパク質を単離するための選択法である。レクチンは植物タンパク質で、特異的かつ可逆的に糖タンパク質のグリカン部分と結合することができる。糖タンパク質の主要クラスおよび種類は試験試料から個別に単離することができ、それらを用いて疾患に対して対照を比較するための差次的グリコシル化プロフィールを生成することができる。
【0139】
(方法)
妊娠期間の一致した対照およびDS母体の血清由来の全糖タンパク質、シアル酸、マンノースおよびO−グリコシル化タンパク質を、適当なレクチン親和性カラム(Q Proteome、Quiagen)を用いて精製した。
【0140】
レクチン、マンノース結合レクチン(ConA、LCH、GNA)+シアル酸/N−アセチル−グルコサミン結合レクチン(WGA、SNA)の組合せを用いて全糖タンパク質抽出を行った。マンノース結合レクチン(ConA、LCH、GNA)を利用してM結合糖タンパク質を抽出した。シアル酸/N−アセチル−グルコサミン結合レクチン(WGA、SNA、MAL)を利用してS結合糖タンパク質を抽出した。ガラクトース/N−アセチル−ガラクトサミン結合レクチン(AIL、PNA)を利用してO結合糖タンパク質を抽出した。
【0141】
対照およびダウン症候群母体の血清から抽出した糖タンパク質を、二次元蛍光ゲル電気泳動およびLC/MS/MSアプローチを用いて解析してダウン症候群の可能性のあるマーカーを同定した。単離された対照およびダウン症候群糖タンパク質各50ugを400pmのCy3およびCy5蛍光色素でそれぞれ標識した。Ettan Dalt 2 IPGphor system(GE−Amresham)のpH4〜7 IPGストリップで各IPGストリップ長に適当な電圧を用いて等電点電気泳動を行った。10〜20%Tris−グリシンゲルを二次元目PAGEに用いた。Typhoon Variable mode imager(GE−Amersham)を用いてCy3およびCy5の励起波長を使って各ゲルの差次的蛍光画像を得た。質量分析計(Q−TOF 2、 Waters Inc)でのタンパク質同定のために、差次的に発現したタンパク質スポットをImageQuant(GE−Amersham)ソフトウェアを用いて可視化し、ゲルから切り出し、トリプシンで消化させた。
【0142】
図8〜11は、ダウン症候群の母体血清中の糖タンパク質の固有の差次的発現プロフィールを表す。
【0143】
差異を示す領域の赤色または緑色を、ゲルから抜き出し、トリプシンで消化させ、LC/MS/MSを用いてタンパク質同定を確認した。
【0144】
妊娠第一期および第二期対照およびダウン症候群母体血清試料から抽出した全糖タンパク質混合物をトリプシンで消化させ、LC/MS/MSを用いて解析した。差異を表す糖タンパク質(各タンパク質に対し多数の全ペプチド)を蓄積して、二次元ゲルから差次的に発現したスポットから同定された糖タンパク質と比較し、ダウン症候群母体血清において同定された糖タンパク質の一覧を表6に示す。
【0145】
本明細書の全体にわたって引用したあらゆる参照文献、およびその中で引用される参照文献は、その全文が参照により明白に本明細書に組み入れられる。
【0146】
【表1】
【0147】
【表2】
【0148】
【表3】
【0149】
【表4】
【0150】
【表5】
【0151】
【表6−1】
【0152】
【表6−2】
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】妊娠第二期対照およびダウン症候群試料の母体血清のSELDI−TOF−MS分析。一番上のパネルは4つ全てが一致した例からプールされた対照を表す。2つの群間で差次的に発現する潜在的ピークを示す目的の領域を枠で囲んだ。
【図2】100pmのCus5(ダウン症候群)またはCy3(対照)で標識したAgilent免疫親和性カラムを用いて精製された母体血清試料(タンパク質20μg)の2−Dゲル。ゲルをTyphoon 94100スキャナー(Amersham Biosciences)で600PMT電圧にてスキャンした。Phoretic 2D Evolution(nonlinear Dynamics)を用いて画像を重ね合わせた。
【図3】免疫−MALDI−TOF−MSアッセイ。免疫沈降したアポリポタンパク質A).アポリポタンパク質A1.B).アポリポタンパク質A2.C).アポリポタンパク質Eの、母体対照由来のスペクトル(青色の痕跡)およびダウン症候群血清由来のスペクトル(赤色の痕跡)。パネルDは、図2の2D DIGEゲルから採取された挿入物で、これからいくつかのアポリポタンパク質種がタンデム質量分析により同定された。
【図4】母体血清における差次的タンパク質発現の検出。ヒト補体H因子抗体でプローブした2−Dウエスタン免疫ブロット法。A)妊娠第二期対照血清;B)妊娠第二期ダウン症候群母体血清。
【図5】ダウン症候群の候補バイオマーカーのデノボタンパク質配列同定の略図。スペクトルは補体H因子に属するペプチド配列を表す。
【図6】ダウン症候群の候補バイオマーカーのデノボタンパク質配列同定の略図。補体H因子に属すると同定されたペプチド配列の配列範囲対象マップ。薄い陰影は同定されたペプチド、濃い陰影はこれらのアミノ酸の可能性のあるタンパク質修飾を表す。
【図7】回収した差次的2−D液体クロマトグラフィー画分のMS分析。A)ProteoVueソフトウェアを用いて生成された2D−LCマップは、X軸にCFから溶出したタンパク質のpIを表示し、Y軸にRP−HPLCから溶出したタンパク質の保持時間、または疎水性を表示する。B)対照試料の2Dマップは左側に赤色で表され、DS試料の2Dマップは右側に緑色で表される。図の中央には2種類の試料の差分マップ(Bでは別々に表示)が表示され、マップ中、緑色に見えるバンドはDS試料において上方制御されたタンパク質であり、赤色に見えるバンドは対照試料において上方制御されたタンパク質である。
【図8】妊娠第二期の対照(赤色)およびDS(緑色)母体血清における全糖タンパク質の差次的発現を表す蛍光二次元ゲル画像。
【図9】妊娠第二期の対照(赤色)およびDS(緑色)母体血清におけるシアル酸(Sialic)−糖タンパク質の差次的発現を表す蛍光二次元ゲル画像。
【図10】妊娠第二期の対照(赤色)およびDS(緑色)母体血清におけるマンノース結合糖タンパク質の差次的発現を表す蛍光二次元ゲル画像。
【図11】妊娠第二期の対照(赤色)およびDS(緑色)母体血清におけるO−結合糖タンパク質の差次的発現を表す蛍光二次元ゲル画像。
【図12】全糖タンパク質のトリプシン消化のMALDI−TOF。対照の母体血清(上部)およびダウン症候群の母体血清(下部)。ダウン症候群で発現したペプチドの有意差が枠で囲まれている。
【図13】シアル酸糖タンパク質のトリプシン消化のMALDI−TOF。対照の母体血清(上部)およびダウン症候群の母体血清(下部)。ダウン症候群で発現したペプチドの有意差が枠で囲まれている。
【図14】マンノース結合糖タンパク質のトリプシン消化のMALDI−TOF。対照の母体血清(上部)およびダウン症候群の母体血清(下部)。ダウン症候群で発現したペプチドの有意差が枠で囲まれている。
【図15】O−結合糖タンパク質のトリプシン消化のMALDI−TOF。対照の母体血清(上部)およびダウン症候群の母体血清(下部)。ダウン症候群で発現したペプチドの有意差が枠で囲まれている。
【図16】100pmのCus5(トリソミー18)またはCy3(対照)で標識したAgilent免疫親和性カラムを用いて精製された母体血清試料(タンパク質20μg)の2−Dゲル。ゲルをTyphoon 94100スキャナー(Amersham Biosciences)で600PMT電圧にてスキャンした。Phoretic 2D Evolution(nonlinear Dynamics)を用いて画像を重ね合わせた。
【図17】100pmのCus5(トリソミー13)またはCy3(対照)で標識したAgilent免疫親和性カラムを用いて精製された母体血清試料(タンパク質20μg)の2−Dゲル。ゲルをTyphoon 94100スキャナー(Amersham Biosciences)で600PMT電圧にてスキャンした。Phoretic 2D Evolution(nonlinear Dynamics)を用いて画像を重ね合わせた。
【図18】100pmのCus5(神経管欠損症)またはCy3(対照)で標識したAgilent免疫親和性カラムを用いて精製された母体血清試料(タンパク質20μg)の2−Dゲル。ゲルをTyphoon 94100スキャナー(Amersham Biosciences)で600PMT電圧にてスキャンした。Phoretic 2D Evolution(nonlinear Dynamics)を用いて画像を重ね合わせた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
母体の生体液の試験試料のプロテオームプロフィールと、同じ種類の生体液の標準または参照プロテオームプロフィールとを比較する工程と、該試験試料のプロテオームプロフィールが、該標準プロテオームプロフィールに存在しないかまたは該参照プロテオームプロフィールに存在する、表1〜2および5〜6に記載されるバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも1種類のバイオマーカーを表す少なくとも1つの固有の発現サインを示す場合、胎児異数性の存在を決定する工程とを含む、胎児異数性の診断のための方法。
【請求項2】
母体の生体液の試験試料のプロテオームプロフィールと、同じ種類の生体液の標準または参照プロテオームプロフィールとを比較する工程と、該試験試料のプロテオームプロフィールが、該標準プロテオームプロフィールに存在しないかまたは該参照プロテオームプロフィールに存在する、表3に記載されるバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも1種類のバイオマーカーを表す少なくとも1つの固有の発現サインを示す場合、胎児異数性の存在を決定する工程とを含む、胎児異数性の診断のための方法。
【請求項3】
前記試験試料が妊娠ヒト女性から得たものである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記プロテオームプロフィールが質量スペクトルである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記試験試料が母体の血清である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記固有の発現サインが、16〜20kDa、35〜38kDa、38〜42kDa、40〜45kDa、50〜55kDa、60〜68kDa、および125〜150kDaの分子量範囲のうちの1以上にある、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記試験試料が母体の羊水である、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記固有の発現サインが、6〜7kDaおよび8〜10kDaの分子量範囲の一方または両方にある、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
妊娠の第一期に行う、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
妊娠の第二期に行う、請求項3に記載の方法。
【請求項11】
前記試験試料において、胎児異数性の少なくとも1種類のさらなるバイオマーカーの転写されたmRNAのレベルまたは翻訳されたタンパク質のレベルを測定する工程と、前記転写されたmRNAのレベルまたは翻訳されたタンパク質のレベルが、標準生体試料におけるそのレベルに対して異なる場合に、胎児異数性の存在を確認する工程とをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項12】
前記胎児異数性が、ダウン症候群、トリソミー13、トリソミー18、X染色体トリソミー、X染色体モノソミー、クラインフェルター症候群(XXY遺伝子型)、またはXYY症候群(XYY遺伝子型)である、請求項1、2および11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記のさらなるバイオマーカーが、PAPP−A、a−フェトタンパク質(AFP)、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(bhCG)、非結合型エストリオール(uE3)、およびインヒビンAからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
転写されたmRNAのレベルまたは翻訳されたPAPP−AおよびbhCGのレベルを決定する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
転写されたmRNAのレベルまたは翻訳されたAFP、bhCG、およびuE3のレベルをさらに決定する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
転写されたmRNAのレベルまたは翻訳されたインヒビン−Aのレベルをさらに決定する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
妊娠ヒト女性に1種類以上のさらなる診断法を受けさせる工程をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項18】
前記さらなる診断法が、超音波検査、染色体異常を検査するための技法、および後頚部透過像(NT)測定からなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記バイオマーカーの1種類より多い固有の発現サインを比較する工程を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項20】
前記バイオマーカーが、補体H因子(CFAH_HUMAN、SwissProt受託番号P08603);妊娠ゾーンタンパク質(PZP_HUMAN;SwissProt受託番号P20741);アファミン(AFAM_HUMAN;SwissProt受託番号P43652);アンジオテンシノーゲン(ANGT_HUMAN;SwissProt受託番号P01019);α−2−hs−糖タンパク質(A2HS_HUMAN;SwissProt受託番号P02765);クラステリン(CLUS_HUMAN;SwissProt受託番号P10909);アポリポタンパク質AI(APA1_HUMAN;SwissProt受託番号P02647);アポリポタンパク質AIV(APA4_HUMAN;SwissProt受託番号P06727);アポリポタンパク質E(APE_HUMAN;SwissProt受託番号P02649);色素上皮由来因子(PEDF_HUMAN;SwissProt受託番号P36955);血清アミロイドAタンパク質(SAA_HUMAN;SwissProt受託番号P02735);AMBPタンパク質(AMBP_HUMAN;SwissProt受託番号P02760);血漿レチノール結合タンパク質(RETB_HUMAN;SwissProt受託番号P02753);血清トランスフェリン前駆体(TRFE_HUMAN;SwissProt受託番号P02787);α−1−抗トリプシン前駆体(A1AT_HUMAN;SwissProt受託番号P01009);α−2−マクログロブリン前駆体(A2MG_HUMAN;SwissProt受託番号P01023);補体C3前駆体(CO3_HUMAN;SwissProt受託番号P01024);アンジオテンシノーゲン前駆体(ANGT_HUMAN;SwissProt受託番号P01019);セルロプラスミン前駆体(CERU_HUMAN;SwissProt受託番号P00450);ハプトグロビン前駆体(HPT_HUMAN;SwissProt受託番号P00738);抗トロンビン−III前駆体(ANT3_HUMAN;SwissProt受託番号P01008);ヘモペキシン前駆体(HEMO_HUMAN;SwissProt受託番号P02790);α−1−酸性糖タンパク質1前駆体(A1AG_HUMAN;SwissProt受託番号P02763);アポリポタンパク質A−I前駆体(APA1_HUMAN;SwissProt受託番号P02647);α 1b−糖タンパク質(SwissProt受託番号P04217);キニノゲン前駆体(KNG_HUMAN;SwissProt受託番号P01042−2);インター−α−トリプシンインヒビター重鎖H2前駆体(ITH2_HUMAN;SwissProt受託番号P19823);α−2−hs−糖タンパク質前駆体(A2HS_HUMAN;SwissProt受託番号P02765);α−1−抗キモトリプシン前駆体(AACT_HUMAN;SwissProt受託番号P01011);インター−α−トリプシンインヒビター重鎖H4前駆体(ITH4_HUMAN;SwissProt受託番号Q14624−2);補体H因子前駆体(CFAH_HUMAN;SwissProt受託番号P08603−1);血漿プロテアーゼC1インヒビター前駆体(IC1_HUMAN;SwissProt受託番号P05155);ヘパリン補因子II前駆体(HEP2_HUMAN SwissProt受託番号P05546);補体B因子前駆体(CFAB_HUMAN;SwissProt受託番号P00751−1);α−2−糖タンパク質1、亜鉛(ZA2G_HUMAN;SwissProt受託番号P25311);ビトロネクチン前駆体(VTNC_HUMAN SwissProt受託番号P04004);インター−α−トリプシンインヒビター重鎖H1前駆体(ITH1_HUMAN;SwissProt受託番号P19827);補体成分C9前駆体(CO9_HUMAN;SwissProt受託番号P02748);フィブリノゲンα/α−E鎖前駆体(FIBA_HUMAN;SwissProt受託番号P02671−1);フィブリノゲンβ鎖前駆体(FIBB_HUMAN;SwissProt受託番号P02675);フィブリノゲンγ鎖前駆体(FIBG_HUMAN;SwissProt受託番号P02679−1);プロトロンビン前駆体(THRB_HUMAN;SwissProt受託番号P00734);クラステリン前駆体(CLUS_HUMAN;SwissProt受託番号P10909);α−1B−糖タンパク質前駆体(A1BG_HUMAN;SwissProt受託番号P04217);α−1−酸性糖タンパク質2前駆体(A1AH_HUMAN;SwissProt受託番号P19652);アポリポタンパク質D前駆体(APOD_HUMAN;SwissProt受託番号P05090);妊娠ゾーンタンパク質前駆体(PZP_HUMAN;SwissProt受託番号P20742);ヒスチジンリッチ糖タンパク質前駆体(HRG_HUMAN;SwissProt受託番号P04196);性ホルモン結合グロブリン前駆体(SHBG_HUMAN;SwissProt受託番号P04278−1);プラスミノゲン前駆体(PLMN_HUMAN;SwissProt受託番号P00747);アポリポタンパク質C−III前駆体(APC3_HUMAN;SwissProt受託番号P02656);ロイシンリッチα−2−糖タンパク質前駆体(A2GL_HUMAN;SwissProt受託番号P02750);アポリポタンパク質E前駆体(APE_HUMAN;SwissProt受託番号P02649);フェチュインB前駆体(FETB_HUMAN;SwissProt受託番号Q9UGM5);ミオシン反応性免疫グロブリン軽鎖可変領域(SwissProt受託番号Q9UL83);補体C1S成分前駆体(C1S_HUMAN;SwissProt受託番号P09871);AMBPタンパク質前駆体(AMBP_HUMAN;SwissProt受託番号P02760);および、補体C4前駆体(CO4_HUMAN;SwissProt受託番号P01028)からなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項21】
前記バイオマーカーの1種類より多い固有の発現サインの比較を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記バイオマーカーが、補体H因子(CFAH_HUMAN、SwissProt受託番号P08603);および妊娠ゾーンタンパク質(PZP_HUMAN;SwissProt受託番号P20741)である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項23】
前記バイオマーカーが、補体H因子(CFAH_HUMAN、SwissProt受託番号P08603);およびアファミン(AFAM_HUMAN;SwissProt受託番号P43652)である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項24】
前記バイオマーカーが、妊娠ゾーンタンパク質(PZP_HUMAN;SwissProt受託番号P20741);およびα−2−hs−糖タンパク質(A2HS_HUMAN;SwissProt受託番号P02765)である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項25】
前記バイオマーカーが、補体H因子(CFAH_HUMAN、SwissProt受託番号P08603);アンジオテンシノーゲン(ANGT_HUMAN;SwissProt受託番号P01019);およびクラステリン(CLUS_HUMAN;SwissProt受託番号P10909)である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項26】
前記バイオマーカーが、アポリポタンパク質E(APE_HUMAN;SwissProt受託番号P02649);AMBPタンパク質(AMBP_HUMAN;SwissProt受託番号P02760);および血漿レチノール結合タンパク質(RETB_HUMAN;SwissProt受託番号P02753)である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項27】
前記バイオマーカーが、補体H因子(CFAH_HUMAN、SwissProt受託番号P08603);アファミン(AFAM_HUMAN;SwissProt受託番号P43652);アンジオテンシノーゲン(ANGT_HUMAN;SwissProt受託番号P01019);およびクラステリン(CLUS_HUMAN;SwissProt受託番号P10909)である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項28】
前記バイオマーカーが、補体H因子(CFAH_HUMAN、SwissProt受託番号P08603);アファミン(AFAM_HUMAN;SwissProt受託番号P43652);色素上皮由来因子(PEDF_HUMAN;SwissProt受託番号P36955);血清アミロイドAタンパク質(SAA_HUMAN;SwissProt受託番号P02735);アンジオテンシノーゲン(ANGT_HUMAN;SwissProt受託番号P01019);およびクラステリン(CLUS_HUMAN;SwissProt受託番号P10909)である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項29】
前記バイオマーカーが、アポリポタンパク質E(APE_HUMAN;SwissProt受託番号P02649);AMBPタンパク質(AMBP_HUMAN;SwissProt受託番号P02760);血漿レチノール結合タンパク質(RETB_HUMAN;SwissProt受託番号P02753);血清トランスフェリン前駆体(TRFE_HUMAN;SwissProt受託番号P02787);α−2−マクログロブリン前駆体(A2MG_HUMAN;SwissProt受託番号P01023);およびヒスチジンリッチ糖タンパク質前駆体(HRG_HUMAN;SwissProt受託番号P04196)である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項30】
前記バイオマーカーが、インター−α−トリプシンインヒビター重鎖H1前駆体(ITH1_HUMAN;SwissProt受託番号P19827);補体成分C9前駆体(CO9_HUMAN;SwissProt受託番号P02748);フィブリノゲンα/α−E鎖前駆体(FIBA_HUMAN;SwissProt受託番号P02671−1);アポリポタンパク質C−III前駆体(APC3_HUMAN;SwissProt受託番号P02656);ロイシンリッチα−2−糖タンパク質前駆体(A2GL_HUMAN;SwissProt受託番号P02750);アポリポタンパク質E前駆体(APE_HUMAN;SwissProt受託番号P02649);フェチュイン−B前駆体(FETB_HUMAN;SwissProt受託番号Q9UGM5);および補体C4前駆体(CO4_HUMAN;SwissProt受託番号P01028)である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項31】
前記プロテオームプロフィールに、少なくとも1種類の糖タンパク質が含まれる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項32】
前記少なくとも1種類の糖タンパク質が、シアル酸糖タンパク質、マンノース結合糖タンパク質、およびO−結合糖タンパク質からなる群から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記胎児異数性が常染色体異数性である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項34】
前記常染色体異数性が、染色体13、18、または21のトリソミーである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記胎児異数性が、性染色体異数性である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項36】
前記性染色体異数性が、X染色体トリソミー、X染色体モノソミー、クラインフェルター症候群(XXY遺伝子型)、およびXYY症候群(XYY遺伝子型)からなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項1】
母体の生体液の試験試料のプロテオームプロフィールと、同じ種類の生体液の標準または参照プロテオームプロフィールとを比較する工程と、該試験試料のプロテオームプロフィールが、該標準プロテオームプロフィールに存在しないかまたは該参照プロテオームプロフィールに存在する、表1〜2および5〜6に記載されるバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも1種類のバイオマーカーを表す少なくとも1つの固有の発現サインを示す場合、胎児異数性の存在を決定する工程とを含む、胎児異数性の診断のための方法。
【請求項2】
母体の生体液の試験試料のプロテオームプロフィールと、同じ種類の生体液の標準または参照プロテオームプロフィールとを比較する工程と、該試験試料のプロテオームプロフィールが、該標準プロテオームプロフィールに存在しないかまたは該参照プロテオームプロフィールに存在する、表3に記載されるバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも1種類のバイオマーカーを表す少なくとも1つの固有の発現サインを示す場合、胎児異数性の存在を決定する工程とを含む、胎児異数性の診断のための方法。
【請求項3】
前記試験試料が妊娠ヒト女性から得たものである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記プロテオームプロフィールが質量スペクトルである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記試験試料が母体の血清である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記固有の発現サインが、16〜20kDa、35〜38kDa、38〜42kDa、40〜45kDa、50〜55kDa、60〜68kDa、および125〜150kDaの分子量範囲のうちの1以上にある、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記試験試料が母体の羊水である、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記固有の発現サインが、6〜7kDaおよび8〜10kDaの分子量範囲の一方または両方にある、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
妊娠の第一期に行う、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
妊娠の第二期に行う、請求項3に記載の方法。
【請求項11】
前記試験試料において、胎児異数性の少なくとも1種類のさらなるバイオマーカーの転写されたmRNAのレベルまたは翻訳されたタンパク質のレベルを測定する工程と、前記転写されたmRNAのレベルまたは翻訳されたタンパク質のレベルが、標準生体試料におけるそのレベルに対して異なる場合に、胎児異数性の存在を確認する工程とをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項12】
前記胎児異数性が、ダウン症候群、トリソミー13、トリソミー18、X染色体トリソミー、X染色体モノソミー、クラインフェルター症候群(XXY遺伝子型)、またはXYY症候群(XYY遺伝子型)である、請求項1、2および11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記のさらなるバイオマーカーが、PAPP−A、a−フェトタンパク質(AFP)、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(bhCG)、非結合型エストリオール(uE3)、およびインヒビンAからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
転写されたmRNAのレベルまたは翻訳されたPAPP−AおよびbhCGのレベルを決定する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
転写されたmRNAのレベルまたは翻訳されたAFP、bhCG、およびuE3のレベルをさらに決定する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
転写されたmRNAのレベルまたは翻訳されたインヒビン−Aのレベルをさらに決定する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
妊娠ヒト女性に1種類以上のさらなる診断法を受けさせる工程をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項18】
前記さらなる診断法が、超音波検査、染色体異常を検査するための技法、および後頚部透過像(NT)測定からなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記バイオマーカーの1種類より多い固有の発現サインを比較する工程を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項20】
前記バイオマーカーが、補体H因子(CFAH_HUMAN、SwissProt受託番号P08603);妊娠ゾーンタンパク質(PZP_HUMAN;SwissProt受託番号P20741);アファミン(AFAM_HUMAN;SwissProt受託番号P43652);アンジオテンシノーゲン(ANGT_HUMAN;SwissProt受託番号P01019);α−2−hs−糖タンパク質(A2HS_HUMAN;SwissProt受託番号P02765);クラステリン(CLUS_HUMAN;SwissProt受託番号P10909);アポリポタンパク質AI(APA1_HUMAN;SwissProt受託番号P02647);アポリポタンパク質AIV(APA4_HUMAN;SwissProt受託番号P06727);アポリポタンパク質E(APE_HUMAN;SwissProt受託番号P02649);色素上皮由来因子(PEDF_HUMAN;SwissProt受託番号P36955);血清アミロイドAタンパク質(SAA_HUMAN;SwissProt受託番号P02735);AMBPタンパク質(AMBP_HUMAN;SwissProt受託番号P02760);血漿レチノール結合タンパク質(RETB_HUMAN;SwissProt受託番号P02753);血清トランスフェリン前駆体(TRFE_HUMAN;SwissProt受託番号P02787);α−1−抗トリプシン前駆体(A1AT_HUMAN;SwissProt受託番号P01009);α−2−マクログロブリン前駆体(A2MG_HUMAN;SwissProt受託番号P01023);補体C3前駆体(CO3_HUMAN;SwissProt受託番号P01024);アンジオテンシノーゲン前駆体(ANGT_HUMAN;SwissProt受託番号P01019);セルロプラスミン前駆体(CERU_HUMAN;SwissProt受託番号P00450);ハプトグロビン前駆体(HPT_HUMAN;SwissProt受託番号P00738);抗トロンビン−III前駆体(ANT3_HUMAN;SwissProt受託番号P01008);ヘモペキシン前駆体(HEMO_HUMAN;SwissProt受託番号P02790);α−1−酸性糖タンパク質1前駆体(A1AG_HUMAN;SwissProt受託番号P02763);アポリポタンパク質A−I前駆体(APA1_HUMAN;SwissProt受託番号P02647);α 1b−糖タンパク質(SwissProt受託番号P04217);キニノゲン前駆体(KNG_HUMAN;SwissProt受託番号P01042−2);インター−α−トリプシンインヒビター重鎖H2前駆体(ITH2_HUMAN;SwissProt受託番号P19823);α−2−hs−糖タンパク質前駆体(A2HS_HUMAN;SwissProt受託番号P02765);α−1−抗キモトリプシン前駆体(AACT_HUMAN;SwissProt受託番号P01011);インター−α−トリプシンインヒビター重鎖H4前駆体(ITH4_HUMAN;SwissProt受託番号Q14624−2);補体H因子前駆体(CFAH_HUMAN;SwissProt受託番号P08603−1);血漿プロテアーゼC1インヒビター前駆体(IC1_HUMAN;SwissProt受託番号P05155);ヘパリン補因子II前駆体(HEP2_HUMAN SwissProt受託番号P05546);補体B因子前駆体(CFAB_HUMAN;SwissProt受託番号P00751−1);α−2−糖タンパク質1、亜鉛(ZA2G_HUMAN;SwissProt受託番号P25311);ビトロネクチン前駆体(VTNC_HUMAN SwissProt受託番号P04004);インター−α−トリプシンインヒビター重鎖H1前駆体(ITH1_HUMAN;SwissProt受託番号P19827);補体成分C9前駆体(CO9_HUMAN;SwissProt受託番号P02748);フィブリノゲンα/α−E鎖前駆体(FIBA_HUMAN;SwissProt受託番号P02671−1);フィブリノゲンβ鎖前駆体(FIBB_HUMAN;SwissProt受託番号P02675);フィブリノゲンγ鎖前駆体(FIBG_HUMAN;SwissProt受託番号P02679−1);プロトロンビン前駆体(THRB_HUMAN;SwissProt受託番号P00734);クラステリン前駆体(CLUS_HUMAN;SwissProt受託番号P10909);α−1B−糖タンパク質前駆体(A1BG_HUMAN;SwissProt受託番号P04217);α−1−酸性糖タンパク質2前駆体(A1AH_HUMAN;SwissProt受託番号P19652);アポリポタンパク質D前駆体(APOD_HUMAN;SwissProt受託番号P05090);妊娠ゾーンタンパク質前駆体(PZP_HUMAN;SwissProt受託番号P20742);ヒスチジンリッチ糖タンパク質前駆体(HRG_HUMAN;SwissProt受託番号P04196);性ホルモン結合グロブリン前駆体(SHBG_HUMAN;SwissProt受託番号P04278−1);プラスミノゲン前駆体(PLMN_HUMAN;SwissProt受託番号P00747);アポリポタンパク質C−III前駆体(APC3_HUMAN;SwissProt受託番号P02656);ロイシンリッチα−2−糖タンパク質前駆体(A2GL_HUMAN;SwissProt受託番号P02750);アポリポタンパク質E前駆体(APE_HUMAN;SwissProt受託番号P02649);フェチュインB前駆体(FETB_HUMAN;SwissProt受託番号Q9UGM5);ミオシン反応性免疫グロブリン軽鎖可変領域(SwissProt受託番号Q9UL83);補体C1S成分前駆体(C1S_HUMAN;SwissProt受託番号P09871);AMBPタンパク質前駆体(AMBP_HUMAN;SwissProt受託番号P02760);および、補体C4前駆体(CO4_HUMAN;SwissProt受託番号P01028)からなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項21】
前記バイオマーカーの1種類より多い固有の発現サインの比較を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記バイオマーカーが、補体H因子(CFAH_HUMAN、SwissProt受託番号P08603);および妊娠ゾーンタンパク質(PZP_HUMAN;SwissProt受託番号P20741)である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項23】
前記バイオマーカーが、補体H因子(CFAH_HUMAN、SwissProt受託番号P08603);およびアファミン(AFAM_HUMAN;SwissProt受託番号P43652)である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項24】
前記バイオマーカーが、妊娠ゾーンタンパク質(PZP_HUMAN;SwissProt受託番号P20741);およびα−2−hs−糖タンパク質(A2HS_HUMAN;SwissProt受託番号P02765)である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項25】
前記バイオマーカーが、補体H因子(CFAH_HUMAN、SwissProt受託番号P08603);アンジオテンシノーゲン(ANGT_HUMAN;SwissProt受託番号P01019);およびクラステリン(CLUS_HUMAN;SwissProt受託番号P10909)である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項26】
前記バイオマーカーが、アポリポタンパク質E(APE_HUMAN;SwissProt受託番号P02649);AMBPタンパク質(AMBP_HUMAN;SwissProt受託番号P02760);および血漿レチノール結合タンパク質(RETB_HUMAN;SwissProt受託番号P02753)である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項27】
前記バイオマーカーが、補体H因子(CFAH_HUMAN、SwissProt受託番号P08603);アファミン(AFAM_HUMAN;SwissProt受託番号P43652);アンジオテンシノーゲン(ANGT_HUMAN;SwissProt受託番号P01019);およびクラステリン(CLUS_HUMAN;SwissProt受託番号P10909)である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項28】
前記バイオマーカーが、補体H因子(CFAH_HUMAN、SwissProt受託番号P08603);アファミン(AFAM_HUMAN;SwissProt受託番号P43652);色素上皮由来因子(PEDF_HUMAN;SwissProt受託番号P36955);血清アミロイドAタンパク質(SAA_HUMAN;SwissProt受託番号P02735);アンジオテンシノーゲン(ANGT_HUMAN;SwissProt受託番号P01019);およびクラステリン(CLUS_HUMAN;SwissProt受託番号P10909)である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項29】
前記バイオマーカーが、アポリポタンパク質E(APE_HUMAN;SwissProt受託番号P02649);AMBPタンパク質(AMBP_HUMAN;SwissProt受託番号P02760);血漿レチノール結合タンパク質(RETB_HUMAN;SwissProt受託番号P02753);血清トランスフェリン前駆体(TRFE_HUMAN;SwissProt受託番号P02787);α−2−マクログロブリン前駆体(A2MG_HUMAN;SwissProt受託番号P01023);およびヒスチジンリッチ糖タンパク質前駆体(HRG_HUMAN;SwissProt受託番号P04196)である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項30】
前記バイオマーカーが、インター−α−トリプシンインヒビター重鎖H1前駆体(ITH1_HUMAN;SwissProt受託番号P19827);補体成分C9前駆体(CO9_HUMAN;SwissProt受託番号P02748);フィブリノゲンα/α−E鎖前駆体(FIBA_HUMAN;SwissProt受託番号P02671−1);アポリポタンパク質C−III前駆体(APC3_HUMAN;SwissProt受託番号P02656);ロイシンリッチα−2−糖タンパク質前駆体(A2GL_HUMAN;SwissProt受託番号P02750);アポリポタンパク質E前駆体(APE_HUMAN;SwissProt受託番号P02649);フェチュイン−B前駆体(FETB_HUMAN;SwissProt受託番号Q9UGM5);および補体C4前駆体(CO4_HUMAN;SwissProt受託番号P01028)である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項31】
前記プロテオームプロフィールに、少なくとも1種類の糖タンパク質が含まれる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項32】
前記少なくとも1種類の糖タンパク質が、シアル酸糖タンパク質、マンノース結合糖タンパク質、およびO−結合糖タンパク質からなる群から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記胎児異数性が常染色体異数性である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項34】
前記常染色体異数性が、染色体13、18、または21のトリソミーである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記胎児異数性が、性染色体異数性である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項36】
前記性染色体異数性が、X染色体トリソミー、X染色体モノソミー、クラインフェルター症候群(XXY遺伝子型)、およびXYY症候群(XYY遺伝子型)からなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2008−513031(P2008−513031A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−532678(P2007−532678)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【国際出願番号】PCT/US2005/034083
【国際公開番号】WO2006/034427
【国際公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(505359229)プロテオジェニックス, インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【国際出願番号】PCT/US2005/034083
【国際公開番号】WO2006/034427
【国際公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(505359229)プロテオジェニックス, インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
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