胎児細胞および幹細胞の分離および増殖を含む粒子の分離のための方法および装置
【課題】 本開示は段階状の通路の中を流れる粒子の能力に基づき粒子を分離する装置に関するものである。
【解決手段】 少なくともいくつかの粒子が第1の段に境界される通路で収容されるが、少なくともいくつかの粒子は第2の段に境界されるより狭い通路を通り抜けることができず、結果的に粒子が分離される。本明細書において説明する装置および方法は、多種多様なタイプの粒子を分離するのに用いることが可能である。例として、それらは胎児様細胞を母体動脈血のような母体血液サンプルから分離することに用いることが可能である。
【解決手段】 少なくともいくつかの粒子が第1の段に境界される通路で収容されるが、少なくともいくつかの粒子は第2の段に境界されるより狭い通路を通り抜けることができず、結果的に粒子が分離される。本明細書において説明する装置および方法は、多種多様なタイプの粒子を分離するのに用いることが可能である。例として、それらは胎児様細胞を母体動脈血のような母体血液サンプルから分離することに用いることが可能である。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
粒子を研究または使用するために共通した必要な基本的操作は異なる種類の粒子を分離する能力である。例えば、細胞生物学分野における無数の応用では、1つの細胞型をもう1つの細胞型から分離する能力を必要とする。産業廃棄物管理の分野における応用では、固体粒子を産業廃水または廃ガスから分離する能力を必要とする。農業および食品加工分野における応用では、粒子状汚染物を穀物のような微粒食品から分離する能力を必要とする。
【0002】
例えば、分娩の直後に臍から採血した血液(「臍帯血」)は、胚性幹細胞および造血幹細胞のような幹細胞の豊富な源である。造血幹細胞は血液疾患の治療に有用である。臍帯血サンプルを保存する方法は既に知られている。これらの方法は将来の医療処置において用いるのに十分な数の幹細胞を保存するため、比較的大量の血量(例えば、100〜250ミリリットル)が保存されなければならないという欠点を有する。大量の臍帯血の保存はコストを増加させ手順の利便性を低下させる。幹細胞を保管する前に臍帯血からすぐに分離することが可能であれば、(例えば、0.1〜1ミリリットルまで)保存量を有意に減少させることが可能である。しかしながら、幹細胞を臍帯血から分離する現在の方法は、高額で、手技が煩雑であり、効果がない場合がある。幹細胞を臍帯血から分離する効率的で費用効果の優れた方法が必要である。
【0003】
さらに例として、妊婦の血液、および、以前妊娠していた女性の血液において、明らかに胎児由来である細胞(すなわち、胎児様細胞)が発見される。これらの細胞は母体が男児を出産した場合、または男児を妊娠する場合、男性のDNAを有することが可能であり、したがって、DNAは胎児起源であるものと思われる。これらの細胞は、母体血液流において稀であり、母体血液液の1ミリリットルにつきたった10〜12細胞のみ存在する可能性がある。母体血液中に観察される胎児様細胞と共通し、女性が出産したあと、胎児栄養胚葉は比較的速く分解することが可能である。数は少ないが他の種類の胎児様細胞が妊娠後、数年または数十年間、女性の血液中に認められることが報告されている。いくつかの胎児様細胞の希少性と明らかな持続時間の短かさが、それら細胞を捕らえることを困難にしている。従って、ほとんど細胞について知られていない。胎児様細胞を母体血液からすばやく、経済的に、そして、効果的に分離するための方法が必要である。母体血液において胎児栄養胚葉を他の胎児様細胞から分離する方法もまた必要である。
【0004】
数十マイクロメートル(生物学的細胞の寸法)から数ナノメートル(いくつかの生体高分子の寸法)までの範囲の寸法の構造エレメントを有する生物学的細胞および他の小さな粒子の操作を目的とする機械的な装置の記述がなされてきた。例えば、米国特許第5928880号明細書、米国特許第5866345号明細書、米国特許第5744366号明細書、米国特許第5486335号明細書および米国特許第5427946号明細書では、細胞および生体分子を取り扱う装置が記述されている。PCT出願公開番号WO03/008931では、粒子および細胞の分離、識別、選別および操作のための微細構造が記述されている。
【0005】
ミクロンの寸法で定義された隙間を血液が通過することが課題である。細胞の完全性を破壊する傾向にある周期的な圧力および細胞の「詰め込み」に起因する通過スペースの目詰まりの可能性を考慮すべきである。細胞の完全性が失われる場合、(カスケード様に)血液凝固する傾向もまたこれを困難なものにしている。さらにまた、大きな粒子(生体サンプル中の細胞、凝集した細胞、細胞外物質および十分に特徴づけられない「破片」)は装置の先の流体通路を妨げ、それらの効率および操作を阻害することが知られている。
【0006】
本明細書において開示する対象は、粒子または細胞の混合集団から生物学的細胞、細胞小器官および他の粒子を分離および操作するのに用いることが可能である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、細胞のような粒子を分離する装置に関するものである。 装置には、本体、カバーおよび分離エレメントが含まれる。本体とカバーは、間隙を定義する。 分離エレメントは、間隙の中に含まれる。間隙は、流体注入口領域および流体排出口領域を有する。分離エレメントは、間隙において注入口および排出口を流動的につなぐ段階状の通路を定義する形状を有する。分離エレメントは第1および第2の段を含み、それぞれは段階状の通路にまで及ぶ。第2の段に境界される通路は、第1の段により境界される通路より狭い。粒子を含む流体が注入口領域に存在する場合、流体は注入口領域から、第1の通路を通り、第2の通路を通り、そして排出口領域に流れることが可能である。粒子のサイズが各々の通路の狭径を上回らず、または粒子が変形した形状で十分に変形可能であり、それらが各々の通路を通し押し出すことが可能である場合、流体中に浮遊する粒子は第1および第2の通路を通過することが可能である。粒子のいくつかのみがそれを通して通過することが可能な狭径を第2の通路に選択することにより、粒子を分離することが可能となる。流体の粒子が個々に第1の通路を通過することができるよう第1の通路の狭径を選択するが、それらが第1の通路の狭径全域に渡り積み重なる場合、2つの粒子が同時に第1の通路を通り抜けることは不可能である。
【0008】
装置の外部から注入口領域への流体の流れ、排出口領域から装置の外側までの流体の流れ、またはその両方を容易にするため、装置には流入口が含まれる可能性がある。流体置換装置(例えば、ポンプまたは重力で流体を供給するタンク)は段階状の通路を通過する流体の流れを促進するため注入口および排出口の一方または両方と接続することが可能である。粒子を分離するため、そのような流れは注入口領域から排出口領域に向かう方向である可能性がある。例えば注入口から排出口領域へ流体が流入する場合、第2の通路を通過できなかった粒子を洗い流すために、流体の流れを排出口領域から注入口領域の方向とすることが可能である。
【0009】
分離エレメントの段は段階状の通路の中の通路を定義し、2若しくはそれ以上のそのような段を持つことが可能である。段は(標準的な直角段を形成する)直角に交わる平面領域により形成されることが可能で、または、第1の平面段領域を傾斜した平面、または曲面により、第2の平面段領域に接続させ段の立ち上がり部分(すなわち移行面)を傾斜させることが可能である。平面段の領域はカバーの一部、本体の一部または両方とほぼ平行であり、それを境界する通路の多様な狭径(例えば、2、4、10または1000)と(バルク流体の流れの方向における)長さを等しく保持する必要がある。それが境界する通路の多様な(例えば、10、1000、10000の)狭径と、平面領域(バルク流体の流れに対して垂直方向で)の幅を等しくする必要がある。
【0010】
装置の組立ておよび操作において、段階状の通路の寸法を維持するため、装置は間隙に1若しくはそれ以上の支持体を有する可能性がある。支持体の距離は完全に分離エレメント、本体またはカバーの間にまで及ぶ、または(例えば、装置の組立ておよび締め付けにおいて)エレメントの変形の余地を提供するためその距離の一部にのみ及ぶ可能性がある。
【0011】
本開示には粒子を分離する方法が含まれる。方法には装置の注入口領域に粒子を導入することが含まれ、それらを段階状の通路を通し(すなわち、内在性細胞運動性、または、誘導された流体の流れの影響を受け)排出口領域に移動させる。少なくともいくつかの粒子は通路における段により排出口領域に進入するのを阻害され、粒子が結果的に分離される。段階状の通路における全ての段を通過することが可能な粒子は、排出口領域から回収することが可能である。段階状の通路において少なくとも1つの段を通過することができない粒子は、それらの移動を阻害する段から上流の一部の通路から回収することが可能である。例えば、装置(例えば、カテーテル)を段階状の通路に挿入することにより、流体の流れを逆流させ、トラップされた細胞を通路から洗い流すことにより、または、装置を分解し、トラップされた粒子を直接回収することにより、トラップされた粒子を回収することが可能である。トラップされた粒子が細胞である場合、段階状の通路において溶解させ、溶解産物をいずれかの方向の流れにより回収することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
添付の図面とともに読む場合、以下の本発明の詳細な解説のみならず、前述の概要はよりよく理解される。これらの図面は本開示を例示する目的で含まれる。本開示は示される正確な配置および手段に限定されるものではない。
【図1A】図1は、図1Aおよび1Bから成る。図1Aは、1つの実施形態における装置の一部の正面図である。
【図1B】図1Bは図1Aに示す平面1Bに沿って切り取られた装置の部分垂直断面であり、間隙11を定義する本体10を示す。カバー12は前記本体10とともに流体密封を形成している前記間隙11全域にわたり配置される。第1の段61および第2の段62を有する分離エレメント14は、注入口16と排出口18との間の前記間隙11の中に配置される。第1の段61は、幅広表面31および移行面41を有する。第2の段62は、幅広表面32および移行面42を有する。
【図2A】図2は、図2A、2Bおよび2Cから成る。図2Aは、内部の支持体構造20を有する1実施形態における装置の一部の正面図である。
【図2B】図2Bは、前記図2Aに示す平面2Bに沿って切り取られた装置の部分垂直断面である。
【図2C】図2Cは、図2Aに示す平面2Cに沿ってとられた装置の部分垂直断面である。
【図3A】図3は、図3Aおよび3Bから成り、第1および第2の通路の配置が第1および第2の通路を通してほぼ一定の直線流速を成し遂げるのに選択することが可能な、本明細書において説明する装置の構成を図示する。図3Aは、各々の通路の幅が注入口領域から排出口領域までの方向で増加する一連の通路の正面図である。
【図3B】図3Bは、図3Aに示す平面3Bに沿って切り取られた一連の通路の垂直断面であり、各々の通路の高さは注入口領域から排出口領域までの方向で減少する。
【図4】図4は、段の長さ「l」、高さ「h」および幅「w」を示し、段を通過したバルク流体の流れ「BFF」の方向を示す分離エレメントの一部の斜視図である。
【図5】実施例2本明細書において説明するような図5は、組み立てられた装置のカバー12の正面図を示し、適切に組み立てられた装置における光パターンを表すカラー画像である。
【図6】図6は、前記カバー12、基部10および実施例3および4において本明細書において説明する実施例において用いられる装置の前記分離エレメント14の、第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、および第8の段(61−68)の相対的な配置を図示する略図である。流体の流れの方向は「D」として示す。
【図7】図7は、胎児様細胞を検出した実施例4において、本明細書において説明する実施例の分離領域の中におけるおよその位置を示す地図である。排出口領域」と称した相対的垂直位置の割合はカバーから段までの距離が4.2および4.4マイクロメートルを有する段が位置するカセットの割合とほぼ一致し、「注入口領域」と称した相対的垂直位置の割合はカバーから段までの距離が5.2および5.4マイクロメートルを有する段が位置するカセットの割合とほぼ一致する。
【図8A】図8は、図8Aおよび8Bから成る。図8Aは、1実施形態の膜81の一部の正面図である。
【図8B】図8Bは、図8Aの平面8Bに沿って切り取られた膜81の垂直断面の部分の拡大図である。この特定の実施形態において、膜81は多孔性であり、片側がコーティングされており、従って図8Bは、膜81およびコーティング83を通って延長している細孔82を示す。図8に示される実施形態において、前記コーティング83は膜81の片面に適用されて(ただし、他面には適用されない)、細孔82の中に延長せず、細孔82を塞がない。
【図9】図9Aは、前記本体10と前記カバー12との間に挿入された膜81を含む図2Aで示したタイプの装置の平面9Aに沿って切り取られた垂直断面である。内部の支持体20は、装置の範囲内で膜81の変位量のレベルを均等にするのに役立つ。内部の支持体20もまた前記間隙11を定義するのに役立ち、前記間隙11のサイズの制御を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は通路を通過する能力に基づき粒子を分離する装置に関するものである。装置における分離エレメントにより定義された段階状の通路を通して粒子(例えば液体またはガス状の流体において浮遊する粒子、または真空中の粒子)を移動させる。段階状の通路には直列に流動的につながる少なくとも2つの通路が含まれ、各々の通路には狭径が存在する。流体におけるほとんどまたは全ての粒子は第1の通路へ移動することが可能であるが、粒子のいくつかのみが第2の通路を通り移動することが可能である。最終結果として、他の粒子は第1の通路の中といったような装置内に残留するが、いくつかの粒子は全ての段階状の通路を通り移動することが可能となる。粒子の分離はこのように達成される。例えば、粒子の挙動に、流体の流れ、重力、振動またはこれらの任意の組合せにより刺激を与えることが可能である。
【0014】
障壁を通過することが可能な粒子を、障壁の通過が不可能、通過能が低い、または通過速度が遅い粒子から分離するために、膜または他の半透性または浸透可能な障壁を装置と組み合わせ用いることが可能である。本実施形態において、通路を通過するそれらの能力および膜を通過するそれら両方の能力に基づき粒子を分離するのに、装置を用いることが可能である。望まれる粒子の回収、分離またはその両方ともを向上させるために特異的に興味のある粒子と結合する試薬で(膜を含む)装置の1若しくはそれ以上の部分を被覆することが可能である。
【0015】
定義
本明細書において用いられるように、次の各々の条件は本章おいてそれに関連した意味を有するものである。
【0016】
図4における長方形の段について図示したように、段(または段により境界される通路の、図4の「l」)の「長さ」は、段に相当する通路を通しバルク流体の流れの方向に段が伸びる距離を示す。
【0017】
図4における長方形の段について図示したように、段の平面(すなわち、上流)に先行する段の「高さ」(図4における「h」)は分離エレメントから離れる方向で延びる距離を示す。
【0018】
図4における長方形の段について図示したように、段の「幅」(または段により境界される通路の、図4の「w」)は、段を越えるバルク流体の流れに対して垂直である方向で伸びる距離を示す。
【0019】
通路の「狭径」とは分離エレメントの段の平らな部分と、それと対向し、平行である、装置の表面(例えば、間隙に面するカバーまたは本体の表面)との間の距離を示す。例えば、通路を通すバルク流体の流れの方向に対して垂直に切り取った面が長方形の横断面を有する通路では、通路の狭径は段の各々の平面に対し直角に交わる平面と装置の対向する面の平面との間に広がる平面における直線距離である。さらに例として、図1Bにおける通路51および52の各々の「狭径」は、各々の段の面31および32とカバー12と最も近い面の間の最小距離である。
【0020】
通路の「流れの範囲」は、通路における流体の流れの方向に対し垂直な平面でとった通路の断面である。
【0021】
詳細な説明
本開示は少なくとも2本の通路を通し流れるそれらの能力に基づき粒子を分離する装置に関するものであり、(下流の)第2の通路52が(上流の)第1の通路51より幅が狭くなっている。 装置には本体10およびカバー12により作られる間隙11に配置されている分離エレメント14が含まれる。間隙11の中において分離エレメント14は間隙の注入口領域15を間隙の排出口領域17から分断させる。注入口および排出口領域は分離エレメント14および本体10およびカバー12の一方または両方により定義される段階状の通路により流体連結にある。分離エレメントにおいて形成される段は、第1および第2の通路を定義する。注入口領域および排出口領域への流体の供給および抜き取りを容易にするため、装置は、選択的に間隙11の注入口領域15に流動的につながる注入口16、および、間隙11の排出口領域17に流動的につながる排出口18を有する。
【0022】
1つの実施形態において、装置には間隙11と流体連結にあり、もう一方のタイプの粒子と比較し、望ましいタイプの粒子に選択的に浸透する膜または他の障壁81が含まれる。また、膜または他の障壁81は、もう一方のタイプの粒子と比較し、望ましいタイプの粒子と選択的に結合するそれに付着した試薬を有する可能性がある(ことができる)。分離エレメント14および膜または他の障壁81の両方を含む装置において、分離エレメントおよび膜または他の障壁81は、同じ粒子タイプ(すなわち、望ましい粒子の分離を促進する2つのエレメント)または異なる粒子タイプ(すなわち、お互い異なるタイプに含まれる粒子の混合物から複数の粒子タイプの分離を促進する2つのエレメント)の分離を促進するため選択される。
【0023】
操作において、注入口領域15の粒子は第1の通路51に移動し、それらが可能である場合2の通路52に移動する。第2の通路52の粒子は、排出口領域17に移動する。第2の通路52に向かい、またはそれに沿って移動できない細胞は、排出口領域17に到達しない。このように、排出口領域17に到達することができる粒子は、排出口領域17に到達することができない粒子から分離される。2つの粒子の集団を装置から別々に回収することが可能である。例えば、排出口領域17から抜き取られる液体の流れで、排出口領域17の粒子は、(例えば、排出口により、または排出口領域17に挿入されるカテーテルにより)回収されることが可能である。排出口領域17へ向かい第2の通路52を通過することができない粒子は、それらを逆方向で、第1の通路51を通り注入口領域15方向にフラッシングすることにより回収することが可能である。そのような粒子は注入口領域15から抜き取ることが可能である。 あるいは、排出口領域17へ向かい第2の通路52を通過することができない粒子は、装置中に残される、または装置を分解することにより回収することが可能である。 第1の通路51または第2の通路52に入ることができない粒子は注入口領域15から回収される。
【0024】
本明細書において説明する装置は多種多様な応用において使用することが可能である。粒子を粒子の混合集団から分離することに加え、例えば、本装置は分離した粒子集団の1若しくはそれ以上を同定、または操作する応用において用いることが可能である。これまでに粒子分離のために使われてきた装置と比較して、装置の構造と操作は分離する粒子による目詰まりに抵抗性を持つ。都合のよいことに、本明細書において説明する装置を用い分離する粒子は、液体またはガス状の流体中、または全く流体のない(例えば、真空状態)において浮遊しているものである。さらにまた、粒子が浮遊する任意の流体は装置を通り流れる、またはそのまま動かず停滞する可能性がある。つまり、それらが浮遊する任意の流体が装置のスペースを通り移動が起こるか否かにかかわらず、粒子を分離することが可能である。このように、例えば、乾燥粒子の混合物の粒子は、混合物を注入口領域に提供し、(重力が分離領域に粒子を引き入れる傾向があるように、正しい位置に置いた)装置を振動または振とうすることにより分離することが可能である。流体中の粒子の懸濁液がの中止が好ましくない、または不必要であると考えられる状況(例えば、植物の種を他の植物の種のような他の粒子状物質から分離する場合)において、そのような使用は効果的である。
【0025】
装置の部品と部分は、これより個別に詳細に説明する。
【0026】
本体およびカバー
装置はそれらの間で間隙11を定義する本体10およびカバー12を有する。一部が分離エレメント14により定義される間隙11の一部は段階状の通路である。段階状の通路はまた本体10の表面、カバー12の表面、またはこれらの組合せにより定義され、それは分離エレメント14の段階状の表面31および32と対向する(すなわち、表面が作る表面の間で広がる内腔(すなわち、段階状の通路)のような通路における、分離エレメント14の段階状の通路を形作る平面が接する本体10および/またはカバー12の段階状の通路を形作る平面のような配置において)。装置の構造を単純化するために、カバー12または本体10の凹所、平面に囲まれている陥凹部分で作られる不可欠な部分である分離エレメント14に、段階状の通路を定義するほとんどまたは全ての表面を形成、または機械加工することが可能であり、本体10とカバー12の平面との間に接触する段階状の通路を作るため、本体10またはカバー12の対向する表面がもう一方の平面のみである必要がある。
【0027】
本体10およびカバー12(の一部として作成、または部分的に機械加工した)分離エレメント14は、その1つと望ましくは一体的である。本実施形態において、装置の作動する部分は、基本的に2つの部分――カバー12およびその一部として分離エレメント14を有する本体10、または本体10およびその一部として分離エレメント14を有するカバー12――から成る。分離エレメント14が配置される間隙11に本体10およびカバー12が壁を作りそれを定義するため、本体10およびカバー12のうちどちらが分離エレメント14を有するのかは重要ではない。好ましくは、2つの部品の組立てができるように間隙11は平面の交合により密封され、分離エレメント14はこのように密封された間隙11の中に配置される。本実施形態では、間隙11および分離エレメント14の両方を有する部品の1つは、その中で形成、または機械加工され、またはその中で形成、または機械加工された間隙11を有し、間隙11の中に置かれた、組み立てられた、または付着された分離エレメント14を有する。
【0028】
間隙11において段階状の通路を定義する本体10および/またはカバー12の部分および間隙11を密封するために対になる本体10およびカバー12の部分を除き、本体10およびカバー12の形状は決定的ではない。段階状の通路を定義する本体10および/またはカバー12の部分の必要条件は、本開示の段階状の通路に関する章において論じられる。装置の組み立てにおいて、間隙11を密封するために対になる本体10およびカバー12の部分は、本体10およびカバー12により境界される任意の開口部(例えば、注入口または排出口)を持つことが許され、それらが間隙11を密封する必要があるということ以外はどのような特定の形状または場所条件も有さない。密閉は本体10とカバー12の関連した部分との間が直接接触することにより提供されることが可能である。あるいは、または加えて、接着剤、グリース、ガスケット、ワックスなどのようなシーリング剤を本体10およびカバー12の密封表面に使用することが可能である。その操作において、密封は装置の範囲内で発生する予想された内圧に耐えられることが必要である。例えば、多くの実施形態において、ゲージ圧25重量ポンド毎平方インチ(psig)より大きい内部液圧は通常ではなく、この圧力で流体の漏れを防止することができる密封がそのような実施形態に対し十分である必要がある。装置を用い生物学的細胞を分離する実施形態におけるより典型的な操作圧は、>0−15psigの範囲の中にあるものと予想される。いくつかのの実施形態で、装置を排出口領域に対し陰圧(すなわち、真空)で使用し操作することが可能であり、そのような実施形態において、密封は装置の外から間隙への空気または液体の通過を防ぐ必要がある(無論、注入口領域以外)。
【0029】
本体10およびカバー12の残りの部分のサイズと形状は決定的でなく、例えば、装置の製造、取扱いまたは操作を容易にするのに選択することが可能である。 例として、(例えば、顕微鏡スライドのためのカバー・スリップのような)かなり平らなカバー12を有する装置において、本体10は形成、または機械加工した間隙11および分離エレメント14を有することが可能であり、間隙11の外の本体10の部分は固定形状のフレームまたはホルダーにおける固定に適応するよう形成または機械加工される可能性がある。このように、例えば、本体10はその上にクランプ、または作成し、適用し、または機械工作した他の機構のためのフランジ、ハンドル、ねじ穴、滑らかな穴、模様またはインデントを有することが可能であり、そのような機構は、装置を操作する際、装置における本体10の再現性のある配向、または本体10における間隙11および分離エレメント14の一方または両方を機械加工するための装置において本体10の再現性のある配向を容易にすることが可能である。
【0030】
本体10、カバー12、またはその両方により、流体がそれを通し間隙11に導入されるまたは間隙11から抜き取られる開口部を定義することが可能である。 例えば、本体10は、注入口領域15に流動的に通じている注入口16を定義する。注入口16に導入する流体は注入口領域15から流入することが可能であり、(間隙が密封されるため)すでにそこにある段階状の通路に入り、そして、それから第1の通路51および第2の通路52に入り、そして排出口領域17に入り流体を置換する。流体中で浮遊する粒子はこれらの領域および通路の1つにおいて下流領域または通路に運び込まれることが可能であり、提供された粒子は 中間に存在する通路または領域を通り流れることが可能である。同様に、本体10で形成された排出口18に至るまでの排出口領域17からの流体の抜き取りが、排出口領域17と流体連結した通路から、およびそれと流体連結した通路および領域から流体の流れを誘導することを可能にする。
【0031】
開口部位はカバーまたは本体を通して延びる単純な穴であり、また開口部位に流体の流れ装置の接続を容易にするために、それらはそれらに関連した材料固定具(バリ、リング、ハブまたは他の接続金具)を有することが可能である。本体10、カバー12またはその両方は間隙11の注入口領域15において注入口16を定義し、間隙11の排出口領域17における排出口18を定義し、または、注入口16と排出口18の両方を定義する。流体は、注入口16を通して注入口領域15に導入される。流体は、排出口18を通して排出口領域17から抜き取られる。注入口領域15への流体の連続導入、および排出口領域17からの流体の連続した抜き取りまたは排出は、装置を通し流体に連続流を生じさせる可能性がある。同様に、排出口領域17からの流体の連続した抜き取り、および同時に起こる注入口領域15への流体の流入または導入は、連続流を生じさせる可能性がある。
【0032】
間隙
本体10およびカバー12はそれらが組み立てられるとき間隙11を形成する。間隙11は、注入口領域15、排出口領域17、および注入口領域15と排出口領域17との間に挿入された分離領域を有する。分離エレメント14は分離領域中に配置され、本体10、カバー12または両方ともと共に、段階状の通路を定義する。段階状の通路には、少なくとも第1の通路51よび第2の通路52が含まれ、順に流動的につながれ、分離エレメント14における段により定義される。段階状の通路は任意の数の追加的な段を含むことが可能であり、それら各々は間隙において追加的な通路を定義することが可能である。
【0033】
装置の作動において、少なくとも、間隙11の注入口領域15、排出口領域17および段階状の通路は、流体で満たされる。 好ましくは、作動の間、全ての間隙11が流体で満たされる。 1つの実施形態において、注入口領域15および排出口領域17をつなぐ唯一の流体管路は段階状の通路である。それらがサイズ(すなわち、狭径)または第1の通路51の形状により排除されない限り、注入口領域15に存在する粒子は入ることができ、段階状の通路の第1の通路51を通過することが可能である。それらがサイズ(すなわち、狭径)または第2の通路52の形状により排除されない限り、あるいは、第1の通路51を通してのそれらの移動がサイズ(すなわち、狭径)または第1の通路51の形により妨げられない限り、第1の通路51に存在する粒子は第2の通路52に入ることが可能である。第2の通路52を通してのそれらの移動がサイズ(すなわち、狭径)または第2の通路52の形状により妨げられない限り、第2の通路52に存在する粒子は排出口領域17に入ることが可能である。装置を通した流体の流れ、細胞の固有の運動性またはその2つの組合せにより、装置の範囲内の粒子の移動を誘発されることが可能である。時間経過とともに、第1の通路51に入ることができない粒子は、注入口領域15において分離される、 第1の通路51に入ることができるが、第2の通路52に(または第1の通路51に自由に移動はできるが)入ることができない粒子は、第1の通路51で分離され、第2の通路52に入ることができるが、それを通過し自由に移動できない粒子は、第2の通路52において分離される、そして、第1の通路51および第2の通路52の両方を通り移動することができる粒子は、排出口領域17において(または排出口領域17から抜き取られる、または放出される流体において)分離される。
【0034】
このように分離される粒子は、(本明細書において説明するいくつかの方法を含む、任意の様々な既知の方法を用い)それらのそれぞれの場所から回収することが可能である。例として、カテーテルを装置の領域または通路(例えば、注入口領域15または第1の通路51)に挿入することができ、カテーテルの内腔で吸引を誘導することにより、その中に存在している粒子を抜き取ることが可能である。さらに例として、注入口領域15で集められる、抜き取られる、または放出される流体で注入口領域15、第1の通路51および第2の通路52の1若しくはそれ以上に存在する粒子を集めるのに、バックフラッシュ(すなわち、注入口領域15の方向における排出口領域17からの流体の流れ)が用いられる。また更に例として、このために注入口領域15と流体連結で提供される開口部を用い、注入口領域15に存在する粒子は、(注入口領域15から段階状の通路を通り排出口領域17へ向かう方向のバルク流体の流れと比較して)注入口領域15の全域を通過する流体流れにより集められる。
【0035】
分離エレメント
本体10およびカバー12、および間隙11の注入口領域15と排出口領域17との間により定義される間隙11に位置している分離エレメント14は、段階状の通路の一部を定義する表面を有する装置の一部である。本体10およびカバー12の一方または両方は段階状の通路の残りの境界を定義し、それは注入口領域15および排出口領域17を流動的につなぐ。分離エレメント14は少なくとも2つの段を含む形を有し、段は第1の通路51および第2の通路52の各々の境界の少なくとも1つを形成する。本体10およびカバー12の一方または両方は、第1の通路51および第2の通路52の残りの境界を定義する。
【0036】
装置の作動において、段階状の通路は、粒子が移動する、流体が流れる、またはその両方の開口部である。分離エレメント14は段階状の構造を有し、それは段階状の通路の少なくとも1つの側面の段階状の形状を定義する。分離エレメント14は、少なくとも2つの段、第1の段61および第2の段62を有する。第1の段61は段階状の通路における第1の通路51の境界線を定義する。第2の段62は第2の通路52の境界線を定義し、第2の通路52は第1の通路51より小さな狭径(例えば図2Bを参照)を有する。第1および第2の通路は直列に流動的につながれ、装置の通常の操作において、第2の通路52は第1の通路51の下流に存在する。装置が組み立てられる場合、注入口領域15から排出口領域17まで移動させるために、流体は段階状の通路の第1および第2の通路の各々の中を流れる必要がある。
【0037】
分離エレメント14は、本体10およびカバー12の少なくとも1つと関連する。分離エレメント14は、本体10またはカバー12の表面に付随する。本体10およびカバー12が組み立てられる場合、分離エレメント14はむしろ本体10またはカバー12の1つと一体である可能性があり、分離エレメント14の段階状の表面が、段階状の通路の境界で形成される本体10およびカバー12の表面の反対にもたらされる。あるいは、分離エレメント14は、カバー12または本体10とは別の部品である場合がある。本体10、カバー12および分離エレメント14が別々の部品である場合、装置が組み立てられるときに分離エレメント14がカバー12と本体10との間での圧縮により適当な状態に保たれるように部品を望ましい大きさに形成する。
【0038】
装置(例えば、第2の通路52の中で)の範囲内の液圧は流体が接触する全ての表面にかかり、そのような液圧は変形可能な材料において湾曲、または膨張を誘導する。さらに、それを組み立てた状態で(例えば、本体10の一部に対してカバー12を圧迫する1またはそれ以上のクランプで)しっかり固定するために装置の部品に印加される外圧はまた、湾曲または膨張を装置の1若しくはそれ以上の部品をつくる柔軟な材料において誘導する。分離エレメント14および本体10およびカバー12の少なくとも1つにより定義される第2の通路52が操作中の装置による粒子分離の一次機構であるので、第2の通路52の狭径が厳密に第2の段62の幅方向に比較的一定に保たれることが好ましい。
【0039】
例として、境界を有する第2の通路52は、分離エレメント14の第2の段62、および本体10およびカバー12の一方または両方により定義される。本体10およびカバー12を一緒に固定することは第2の通路52の境界線を作る部分で外力がかかる可能性があり、それにより、部品の湾曲が誘導される傾向となり、第2の通路52の狭径が狭まる。そのような湾曲および狭窄は、第2の通路52の内腔の中に1若しくはそれ以上の支持体20を含むことにより減少、または排除することが可能である。支持体20は、例えば、第2の通路52の境界線を本体10またはカバー12の対向する面の方向に定義する分離エレメント14の表面から延びる棒状の拡張である可能性がある。あるいは、長方形の横断面を有する拡張は、支持体20を形成する可能性のある分離エレメント14の対向する面の方向で第2の通路52の境界を定義する本体10またはカバー12の表面から離れて延びる可能性がある。1若しくはそれ以上の支持体20が平行にまたは順に1若しくはそれ以上の固形のまたは分割された壁を形成するよう配置される可能性があり、そのような支持体は間隙の中で複数の流れ経路を定義することが可能であり、複数の流れ経路がそれらの端の一方または両方で交わる。第3の選択肢として、支持体20は第2の通路52の内腔において分離エレメント14と本体10またはカバー12の対向する面との間の狭径が十分にまたは完全に距離がとられ配置される個別の部品である可能性がある。第2の通路52を定義する分離エレメント14の表面の上、第2の通路52を定義する本体10またはカバー12の表面の上、または両方の表面の上での支持体の衝突は面の湾曲を制限、または停止させ、(例えばカバー12が第2の段62の幅広面32に対し完全に押圧し、望ましい値以下で第2の通路52の狭径を減少させることを防ぐために)支持体20の厚さとほぼ同等、またはより大きい値の狭径を維持させる。
【0040】
支持体20は適切な形態で装置の部分を固定し、装置の寸法の安定性を増加させる。寸法の安定性を増すことにより、支持体20は様々な操作条件(例えば、様々な締め付け圧、または様々な液圧)の下で装置の操作性を促進することが可能で、装置の寿命を延ばすことが可能である。支持体20はまた、本体10またはカバー12の変形、および段階状の通路の第1および第2の通路の1若しくはそれ以上の狭径の変形を防ぐことにより装置の粒子分離の正確さを促進することが可能である。支持体20はまた、第1および第2の通路の外側の間隙11に配置される場合もあり、間隙の高さにまで及ぶ場合がある。そのような支持体20は、第1および第2の通路の外の間隙11の開存性を維持することが可能である。支持体20は支持体20が影響を与える平面において不可欠のものではなく、支持体20が面に付着、(例えば間に入り、表面および支持体の部分を結合する接着剤を用いた)接着、または融合することはない。
【0041】
支持体20はまた別に、間隙11(図2Aの支持体20を参照)の中における単一の流体の流れ経路を2若しくはそれ以上の流体の流れ経路に分割することが可能である。図2において表される実施形態において、装置は平らなカバー12、カバー12とかみ合う平面を有し、注入口領域15および排出口領域17を有する間隙11を定義している本体10、および第1の段61および第2の段62を含む分離エレメント14から成り、4つの支持体20と共にそれらは不可欠である。分離エレメント14が注入口領域15と排出口領域17との間で間隙11に配置される場合、(図2Bおよび2Cにおいて表されるように)支持体20の高さは間隙11の深さと同等であり、本体10の平面と支持体20の上面がほぼ同一平面上となる。カバー12を本体10の平面に対して組み立てる場合、支持体20の上面は間隙11を定義するカバー12の表面と接し、それにより、カバー12の変形から生じる(本体10の平面にぴったりくっつきそれを保持するためカバー12に加えられる)締め付け圧を防ぐ。カバー12を歪める締め付け圧が間隙の内部に向かう方向にカバー12に加えられたとしても、支持体20によりカバー12に提供される支柱(筋かい)は第2の通路52の狭径および第1の通路51の狭径を維持する働きをする カバー12が1若しくはそれ以上の支持体20と融合、または接着する場合、図2において示される装置はまた、装置の範囲内での液圧により誘導されるカバー12への外向きの(すなわち、間隙11から離れる方向への)湾曲が生じる可能性のある第1の通路51および第2の通路52の狭径の拡大に抵抗することが可能である。
【0042】
支持体20の形状、輪郭、寸法および配置は決定的ではない。例えば、支持体20は長方形、偏菱形、円形、楕円、または翼形の横断面を有することが可能である。支持体20は(図2で示される支持体20が行うのと同様に)流体の流れを誘導する壁を作成することに加え、流体の流れ通路で乱流を誘発し、混和を誘導することが可能であり、あるいは、そのような支持体の下流にすばやい粒子の置換を誘導する。例として、丸みを帯びた横断面を有し、第2の通路52の最先端(すなわち、最上流の)の近辺に配置された支持体は第2の通路52の最先端において乱流を誘導することが可能であり、一方ではぶつかり合った粒子が第2の通路52を閉鎖する可能性があり、それにより第2の通路52を通し流体の流れを強化する。
【0043】
分離エレメント14は、本明細書において議論される段階状の通路以外の流体の流れ経路を定義することが可能である。そのような流体の流れ経路は、例えば、注入口領域15と段階状の通路との間で、または段階状の通路と排出口領域17との間で延長することが可能である。さらに例として、分離エレメント14の第1の段61により定義される第1の通路51は、(すなわち、直接第2の通路52に通じている第1の通路51よりむしろ)分離エレメントにより定義される流体の流れ経路である分離エレメント14の第2の段62により定義される第2の通路52と接続することが可能である。
【0044】
いくつかの応用においては、注入口領域15に存在する粒子のサンプルがほぼ同時に複数の段階状の通路の各々に入ることが重要である。図2の中で示すそのような装置が使用される場合、注入口16により注入口領域15に提供する粒子が注入口16(図2Aにおける中央の通路)に最も近い段階状の通路に到着する後に、最も外側の段階状の通路(図2Aにおける最一番左および一番右の通路)に到着することは明らかである。図2中で示す装置に関して、分離エレメント14は、注入口16に配置される壁またはチャンネルを定義することが可能で、(各々の流れ経路に沿った流れの直線距離が等しいような)個々の段階状の通路の各々へと続く様々な経路により延ばすことが可能である。このように、注入口16と中央の流れ通路との間で広がる流れ経路は、注入口16と最も外側の流れ経路との間で広がっている流れ経路と比較してカーブするか、湾曲られるか、または注蛇行する。結果として、流れの直線経路の長さが等しいため、流れ経路の各々の注入口の終点に提供した粒子が、流れ経路の段階状の通路の終点にほぼ同時に達することとなる。
【0045】
分離エレメント14には、第2の段62より注入口領域15により近い(段階状の通路に沿って)第1の段61を含む少なくとも2つの段が含まれる。流体中に漂う浮遊する粒子は、 第1の通路51より小さな狭径を有する第1の通路51および第2の通路52を含む段階状の通路の中を流れる。流体におけるほとんどまたは全ての粒子は第1の通路51内に流入することができるが、第2の通路52の中には粒子のいくつかのみが流入することができる。他の粒子は第1の通路51の中といったような装置の範囲内で保持されるが、最終的な結果として、流体中のいくつかの粒子は全ての段階状の通路の中を流れることが可能である。粒子の分離はこのようにしてなされる。
【0046】
分離エレメント14の段は、様々な任意の形状を有することが可能である。1つの実施形態において(例えば、図1の中で表される装置において)、第1の段61および第2の段62は、従来の「階段」段構造、すなわち、直角で交差する2つの平面表面を有する。つまり、第2の段62の移行面42および第2の段62の幅広面32がそうであるように、第1の段61の移行面41および第1の段61の幅広面31は直角に交わる。あるいは、例えば、図3の中で表されるように、段の移行面および幅広面は90〜180度の角度で交わる。段の移行面および幅広面はまた0〜90度の角度で交わり、突出部を形成する。
【0047】
突出を形成する段および90度近くの角度で交わる面を有する段は、段の面が交わる末端の近辺で、乱流を誘導することが可能である。そのような乱流は別の面では段の幅広面および本体10とカバー12の対向した面との間で通路を閉鎖する可能性がある粒子を取り除くことが可能であり、この乱流はそれにより通路を詰まらせることを妨げることが可能であり、装置を通し流体の流れを強化すること(および、液圧低下を減少させること)が可能であり、それは有益な影響である。さらにまた、段が突出を形成し、段の高さが十分に高い場合、一方では通路を詰まらせる可能性がある粒子は、段が通路の目詰まりを減少させ装置の性能を向上させることもできるような突出により形成される凹部に存在することが可能である。比較的大きなおおよそのサイズの範囲内において、サンプル中の望ましくない粒子が予測することができ、段階状の通路を通る流体の流れを有意に妨げない場所および数量で望ましくない粒子を捕獲するために、そのような粒子を捕獲、または排除するよう設計された1若しくはそれ以上の段を装置に組み込むことが可能である。
【0048】
90〜180度の角度で交わる、移行面および幅広面を有する段は、様々なサイズを有する粒子の通路を塞ぐことが可能である(すなわち、それらは段の幅広面により定義される通路の狭径と段から上流のスペースの狭径との間の中間のサイズを有する)。段の移行面の異なる位置においてわずかに異なるサイズを有する粒子の通路を停止することにより、90〜180度の角度で交わる、移行面および幅広面を有する段は、90度以下の角度で交わる移行面および幅広面を有する段よりも大きな角度において段の幅広面により定義される通路の目詰まりを妨げる場合がある。
【0049】
段の幅広平面により定義される通路を塞ぐ粒子による段を流れ過ぎた流体の目詰まりはまた、段の幅を増やすことにより減少、または避けることが可能である。粒子により覆い隠される流れ領域のみの流体の流れを各々の粒子が塞ぐため、より広い段ではより多くの数の塞いでいる粒子により必然的に目詰まりが生じる。2つの方法のどちらかまたは両方において段の幅を増加させることが可能である。第1には、単に段の線幅(図4の中で表されるように)を増加させることにより、段の幅を増加させることが可能である。第2には、段の直線性(すなわち、真直度)を減少させることにより、段の幅広面および移行面が交わる端の長さを増加させることにより、段の幅を増加させることが可能である。
【0050】
例として、長方形の横断面を有する流路では、チャンネルの真向かいに広がる(すなわち、側面に対し直角で)段は、単にチャンネルの幅と等しい最上流の端の境界の長さを有する。段の形状が半円である場合、半円の中心が半円の最上流の端の下流にあるように広がっている半円の弧で、段の境界の長さは半円の長さと同等であり、それはパイをチャンネルの幅と乗じ、2で割った数字(すなわち、チャンネルの幅のおよそ1.57倍)である。 同様に、円または楕円の弧のような、山形紋のような(すなわち、Vの文字のような)、ジグザグのような、蛇行曲線のような、または不規則な線のような形状をした端を有する段の全ては、長方形の横断面を有する流れチャンネルに垂直に交差して延びる段の境界の長さよりもより長い境界の長さを有する。そのような形状を持つ端を有する段を本明細書において説明する装置において使用することが可能である。
【0051】
第1の段61および第2の段62の面積は決定的ではないが、第2の段62は第2の通路52の境界線を定義し、本明細書において説明するような粒子を分離する働きをする。このような理由のため、前記分離エレメント14の第2の段62と前記対向する本体10またはカバー12によって定義される、前記第2の段62および対応する第2の通路52の面積は、慎重に選択される必要がある。これらの面積の選択に関する基準は、第2の通路52を通過するそれらの能力により分離される粒子の寸法を含む。
【0052】
例として、比較的大きな細胞をサイズの異なる細胞集団から分離する場合、比較的大きな細胞が 第2の通路52に入ることが実質的にできず、その集団のその他の細胞が第2の通路52を通過することができるような第2の通路52の狭径を選択する必要がある。この例では、比較的大きな細胞による第2の通路52の目詰まりを減少、遅延、または回避させるため、サンプル中に存在することが予期される比較的大きな細胞の数に基づき、第2の段62の形状および幅を選択する必要がある。
【0053】
同様に、より大きな流動性を持つ同様のサイズの粒子(すなわち、比較的変形可能な粒子)から限られた流動性の粒子(すなわち、比較的変形しにくい粒子)を分離する場合、両方の種類の粒子が第2の通路52に入ることが可能であるが、比較的変形可能な粒子が、平均して、限られた流動性を持つ粒子より短時間で第2の通路52を通過することが可能であることがわかっている2種類の粒子のサイズにしっかり合う第2の通路52の狭径を選択する必要がある。この例では、各々がほぼ目詰まりを起こすことなく、予想した数の粒子を収めるのに十分な幅および形状を有する複数の第2の通路52を含むことは有利である。この例では、限られた流動性を持つ粒子に比べ短時間で第2の通路52を通過する比較的変形可能な粒子による目詰まりを最小限に抑えるように、各々の第2の通路52が比較的短い長さを有することはまた有利である。
【0054】
装置を用い処理を行うことが予期されるサンプルを考慮すると、第1の段61および第2の段62の各々の幅は(すなわち、本明細書において定義し図4に示すように)、段で予想した粒子の蓄積に基づき選択することが可能である。第2の通路52の狭径に基づき、第2の通路52に入ることができない粒子の割合および数を推定することが可能である。 第2の通路52に入ることができない粒子の平均サイズとこの情報を結合することにより第2の通路52に入ることができない粒子により塞がれそうである段の全長の推定を行うことが可能であり、その予想を適切な段の幅を選ぶのに用いることが可能である。段を過ぎて流れの全体の閉塞を防止するのに望ましい各々の段の幅が選択される。段の幅(および、段により定義される対応する通路)は、通路の狭径よりかなり大きい(例えば、10、1000または100000倍)となるよう選択することが可能である。一例として、母体血液から胎児様細胞を分離する場合、段の幅が対応する通路の狭径のおおよそ少なくとも1000(1千)、および望ましくは10000(1万)倍であることが望ましいものと考えられる。比較的広い段は通路の目詰まりを制限しつつ通路の中において粒子の蓄積を可能にする。
【0055】
いくつかの場合において、第2の通路52に入ることが不可能な粒子が1つの粒子の深さ以下の層を作るように(すなわち、第1の通路51の狭径の方向に)、第1の通路51の狭径を選択することが望ましい。第1の段61の幅および長さはそのような細胞の予想された数を収容できるよう選ぶことが可能である。
【0056】
分離エレメント14の(すなわち、本明細書において定義し、図4に示したように)第1および第2の段の長さは決定的ではなく、実際には本明細書において説明する装置の分離的な機能を提供する(それぞれ、第1および第2の段により境界される)第1および第2の通路の狭径である。段において粒子を蓄積する、または観察することが望まれる状況では、予想、または推定した数量およびサイズの粒子を段において収容するため段の長さを選択することが可能である。装置の分離能力が異なるタイプの粒子が第1の通路51および第2の通路52の一方または両方を通過することができる相対的な率の違いに依存するような例では、段の長さは成し遂げられる分離の程度に影響することが可能であり、より長い段が異なる通過率により生じる分離を促進する。1つの段の長さを増加させることにより、選択した長さの段(同じ狭径を有する通路を定義する各々の段)の数を増加させることにより、または、これらの組合せにより、段の長さを増加させることが可能である。
【0057】
いくつかの実施形態において、平面段領域はカバーの一部、本体の一部または両方ともとほぼ平行であり、それが囲む通路の複数の狭径(例えば、2、4、10または1000)の(バルク流体の流れの方向での)長さは同等である必要がある。それにより囲まれる通路の複数の狭径(例えば、10、1000、または10000)の(バルク流体の流れに対して垂直な方向での)平面領域の幅は同等である必要がある。本明細書において説明する装置の実施例のいくつかの例では、平面領域の(バルク流体の流れに対して垂直な流れの方向における)幅の比率は、3つの別々のカセットの設計において、最も開けた終点での1318から最も狭い終点(排出口)での805、最も開けた終点での659から最も狭い終点(排出口)での967、最も開けた終点での537から最も狭い終点(排出口)での725で変動する。各々のグラデーションの中で唯一段の幅と高さの率が増加したのはカセットの注入口から排出口側面へ向かう66.7においてである。この高さに対する幅の比率はカセットを通過させることが求められ、カセットの範囲内で獲得することが望まれる粒子の数の比率に依存し変化する。本明細の例4に記載されているように、本明細書に説明するタイプの装置により捕えられる(白血球+赤血球)に対する胎児細胞の比率は、非常に高く、適切な段の高さおよび長さの選択が母体血液サンプルにおける全ての有核血球の99.99%を超える通路の通過を可能にする。
【0058】
装置の第1の段61および第2の段62に関して本明細書において説明したが、追加的な段(例えば、3、4、10または100段)は装置に含まれ、各々の段が特徴的な狭径を有する段階状の通路の中で通路を定義する。
【0059】
装置には、単一の分離エレメント14または複数の分離エレメント14が含まれる可能性がある。例として、装置が第1の段61を定義する第1の分離エレメントおよび第2の段62を定義する第2の分離エレメントを含むことが可能である。本体10に全体が含まれる場合、両方の分離エレメント14が間隙11の中にあり、間隙11の注入口領域15と排出口領域17との間に入り、および同じ段階状の通路における段を定義する限り、第1および第2の分離エレメント14は本体10の異なる部位に配置される可能性がある。あるいは、両方の分離エレメントが間隙11の中にあり、間隙11の注入口領域15と排出口領域17との間に入り、および同じ段階状の通路における段を定義する限り、第1の段61を定義している分離エレメントは本体10と一体化している(または付随している)可能性があり、および第2の段62を定義している第2の分離エレメントはカバー12と一体化している(または付随している)可能性がある。同様に、同一の条件が満たされるならば、2つの分離エレメントが別々の部分であることが可能である。
【0060】
分離エレメント14は単一の材料から構築される可能性があり(および本体10およびカバー12の1つと一体化である可能性があり)、または材料の複数の部分から構築される可能性がある。例として、図1の中で表されるもののような装置の分離エレメント14が材料の2つの長方形の棒(各々の対がその他の2対に直角に配置される3対の平行面を有する固形)から形成されることが可能であり、1本の棒を間隙11における本体10の平坦部分上に置き第1の段61を形成させ、第2の棒を第1の棒の上に置き第2の段62を形成させる。
【0061】
通路の配置
少なくともいくつかの粒子がその段により定義される通路を通り抜けることが可能であり、少なくともその他のいくつかの粒子がその段により定義される通路を通り抜けることが不可能であるというような、各々の段の配置を選択する必要がある。剛体粒子が通路を通り抜ける能力は、粒子の特徴的な寸法に依存する。剛体粒子は、粒子の短径より低い高さを有する通路を通り抜けることが不可能である。剛体粒子は粒子の長径より高い高さを持つ通路を通り抜けることに関してはあまり抑制されない。剛体粒子はその短径より高い高さを有する通路を通り抜けることが可能であるが、その長径より低い場合は不可能である。しかし通路は少なくともいくらかは粒子が通るのを抑制する。
【0062】
変形可能な粒子(例えば、生物学的細胞、ガス泡または穀物)の通路を通過する能力は、剛体粒子の能力と同様に、その特有の寸法に依存する。そのうえ、粒子が通路を通り「割り込む」ように変形することができる範囲で、変形可能な粒子は粒子の短径よりさらに短い狭径を有する通路を通過することが可能である。この能力は粒子の堅さ、通路のサイズ、および粒子に対してかかる液圧に依存する。これらの数量が不明、または予想できない場合、そのような粒子の所定のサイズの通路を通過する能力を決定、または推定するために、経験的なデータを集積することが可能であり、本明細書において説明する装置の第1および第2の通路の適切な径を選択するのにそのような経験的なデータ(実験によるデータ)を用いることが可能である。
【0063】
本開示のいくつかの部分において、長方形の横断面(バルク流体の流れの方向に対して垂直でとられるような横断面)を有する流体通路の実施例について述べられている。本明細書において説明する装置の流体通路は、そのような直角チャンネルに限定されるものではない。流体通路の壁は、お互いに、および本体10、カバー12および分離エレメント14の1若しくはそれ以上が垂直である可能性がある。壁は、同様にその他の配置を有することが可能である。1つの実施形態において、流体通路は(丸みを帯びた先端を有する回転するドリルの錐で材料の除去により作成した通路のように)曲線的なものである。同様に、流体通路は一方(例えば、本体10に作成した場所)で曲線的であり、もう一方の側面(例えば、平らなカバー12により境界される場所)で平らである可能性がある。
【0064】
剪断応力の減少
流体剪断応力は生物学的細胞のような変形可能または壊れやすい粒子を阻害することが可能である。したがって装置がそのような粒子を処理するのに用いられる場合、装置内の流体剪断応力が軽減されることが望まれる。流体チャンネルの構造が変化するような部位、直線流速が急速に変化する流体チャンネルの位置において、かなりの流体剪断応力が生じる可能性がある。装置内で直線流速を増加、減少、または一定に維持させるため、流体チャンネルの配置(配置)が選択される。直線流速を増減させることで流体剪断応力が生じる。他の種類の粒子の内の数種類の粒子を破裂させる、変形させる、または破壊するのに、流体剪断応力のレベルは、選択可能である。例えば、壊れやすい粒子を破砕する流体剪断応力を誘導することにより、耐久性のある粒子を同じサイズを有する壊れやすい粒子から分離することが可能である。壊れやすい粒子の断片は第2の段62を通過し排出口領域17内に流入するが、耐久性のある粒子は通路で維持される。同様に、ほぼ一定の直線流体速度は、適切な流体チャンネル寸法を選択することにより装置を通し(または少なくともその段階状の通路中を通し)て維持することが可能である。
【0065】
流体の流れの方向に関する段階状の通路の断面積が増加、減少、または一定のままとなるように、本体10、カバー12および分離エレメント14を形成することが可能である。段階状の通路の断面積は装置における流体の圧力および流動速度に影響を及ぼす。 分離エレメントが一定の幅を有する場合、第1の通路51の高さおよび幅により定義される断面積は注入口領域15の断面積より狭い。(例えば、それが長方形の断面積である場合、第2の通路の高さおよび幅により定義される)第2の通路52の断面積は第1の通路51のそれより狭い。通路の断面積が減少するに従い、断面積の中を流れる流体の液圧および流動速度は増加する。流体チャンネルの配置は、液圧および流動速度におけるこれらの変化を打ち消すように選択することが可能である。例えば、通路の断面積が一定となるよう通路の高さを減少させるにつれ、長方形の通過面を有する通路の幅を比例的に増加させる。各々の段が傾斜する移行面により分かれる分離エレメント14については、移行面により定義される通路の幅を一定の率で増加させることが可能であり、通路の高さが減少する率と等しい。そのような分離エレメントにより定義される通路を通しての液圧および流動速度は一定のままである。そのような通路の例は図3に示される。
【0066】
言い換えれば、そのような流体流動が装置の幅が狭い通路を通し全ての場所で等しくなるよう、本体10、カバー12および分離エレメント14が形成されることが可能である。例えば、図3(注入口領域15を通した流体流動)に示す装置において、通路は表面41、31、42および32により定義され、排出口領域17は一定である。あるいは、流体流動がバルク流体の流れの方向に増加または減少するように、本体10、カバー12および分離エレメント14が形成されることが可能である。例えば、間隙11の幅を定義する本体10またはカバー12の表面は、注入口領域15または排出口領域17の方に向かうにつれ次第に細くすることが可能である。
【0067】
装置を段階状の通路において流体を使用せず操作する場合、流体剪断応力は、もちろん、懸念事項ではない。ガス状の流体の粘度が液体流体の粘度より有意に低いため、粒子が液体流体中ではなくガス状の流体(例えば、空気)の中で浮遊する場合、流体剪断応力はさらに小さな懸念事項となる。同様に、流体剪断応力は流体粘性を扱う既知の方法において変化するため、異なる粘度の流体に適切に対応した本明細書において説明する装置の修正は通常熟練した技術者にとり明らかである。
【0068】
(段において流体中に浮遊する任意の細胞を含む)段から流体を除去するために、本体、カバーまたはその両方が、分離エレメントの段の表面と流動的に接続している1若しくはそれ以上の流体チャンネルを有する場合がある。さらにまた、段が段における領域または別々の溝を有する場合、流体チャンネルが最も近くの段の別々の溝または領域と流動的にやりとり(連絡)し、溝または段の領域の近くの流体が除去できるよう、カバーまたは本体を機械加工することが可能である。粒子がそれにより捕獲される場合、チャンネルのすぐ近くの比較的少ない量の流体のみを捕獲することにより、そのような領域のチャンネルは精製を改善することが可能である。同様に、本体、カバー、分離エレメントまたはこれらいくつかの組合せは、その中、または表面において選択した段と一致する位置、または 選択した段の溝(水路)または領域と一致する位置で構築した(例えば、エッチング、膜堆積または他の既知の技術により)光学的、電気的、または光学電気的装置を有することが可能である。そのような装置は(例えば、段およびカバーと本体の表面との間の流体全体を通過して伝わる光または他の放射線で減少を検出可能な検出器を用い)細胞を検出する、または、細胞を(例えば、発熱体の近位で移動または静止する細胞を除去できる活性化可能な発熱体を用い)操作するのに用いることが可能である。カバー、本体または段により構築された装置は、個々に電子アドレスを装置に割り当てることにより活性化することが可能となる。このように、細胞は装置の別々の領域で検出され、他の位置の細胞を操作することなく、選択した領域の細胞を操作することが可能である。
【0069】
選択した段(または複数の選択した段)からの細胞の回収は、単にその段または段の一部から流体を抜き取ることにより行うことが可能である。ある場合にはおいて、静止する細胞と段との間に接着が生じる場合、細胞を取り除く、又はさもなければそれらの除去を容易にするため装置にエネルギーを印加することが有効となりうる。様々な形態のエネルギーを用いることが可能であり、通常好ましい形態は細胞型、または移動させる対象物、および段から細胞または物体の移動を阻害する力または現象の固有性に依存する。例として、段の1つの部分からの流体の抜き取りを、同じ段の別の部分で、流体の追加と同時に行うことが可能である。細胞を回収するため装置に応用することが可能である形態の他のエネルギーの例として、揺らす、軽くたたく、震盪させる、または装置を振動させる、または超音波、加熱、赤外線または他の放射線、気泡、圧縮空気、などの形でエネルギーを応用することが含まれる。
【0070】
分離エレメントの1若しくはそれ以上の段で保持される細胞を回収せず、細胞をその代わりに検出、または操作することが可能である。1つの実施形態において、電気的、機械的または熱エネルギーの細胞への応用により、1若しくはそれ以上の細胞を溶解させ、それにより装置の間隙において細胞の中身を放出させる。細胞の在中物は装置において分析または操作し、または、それらを装置から回収し、装置外で分析または操作する。例として、段の特定の場所で保持される細胞を特定の場所に局在させる、または、集中させる装置を用い溶解することが可能であり、それにより間隙へ細胞のDNAを放出させる。DNAはPCR試薬を間隙に提供することにより間隙で増幅することが可能であり、または、それは(例えば、間隙の選択した部分から得た流体を容器に集める、またあるいは、流体を間隙に通し移動させ、排出口流体においてDNAを集めることにより)装置の外に回収し増幅することが可能である。装置はこのように個々の細胞または細胞集団の内容を分析するのに用いることが可能である。
【0071】
装置の範囲内で細胞を回収または操作する多種多様な任意の方法は、本明細書において説明する装置を用い使用することが可能である。例として、既知の「光学ピンセット」装置、レーザー顕微解剖装置、および粒子結合膜および薄膜を用いる方法が使用される。薄膜または膜を使用する実施形態において、薄膜または膜は開口部(穴)または流体チャンネルを覆い、間隙の残りから開口部(穴)または流体チャンネルを密封する。興味のある粒子が薄膜または膜に付着、または静止する状態の観察により、粒子(または粒子を囲んでいる領域)と接触している薄膜または膜の部分を分離、または穿刺(破裂、穴を開ける)することが可能であり、これまでに薄膜または膜により分離した開口部または流体チャンネルとの流体連結に粒子を置く。薄膜または膜がそれらにより同定することが可能な光学、磁気的性質を有する場合、(例えば、付着した興味のある粒子を有する)薄膜または膜の分離した部分は粒子の特徴の検定、または、薄膜または膜の特徴(例えば、分光学的特性または磁気的特性)の検定により分離することが可能である。さらにまた、薄膜が選択した方向に移動するよう促すことが可能な(例えば、磁気)特性を薄膜または膜が有する場合、その薄膜はそれに付着した粒子を機械的に操作するのに用いられることが可能である。例えば、それに付着した細胞を有する磁気薄膜または膜の分離した部分は、停止した膜において流体に方向性のある磁界を利用することにより、またはチャンネル、チャンバーまたは容器のような望ましい場所の方へそれに付着した細胞と磁気薄膜または膜の分離した部分を導くために磁気プローブを移動させることにより、それらの細胞を運搬する車両のように用いることが可能である。
【0072】
膜または他の障壁
装置には、一部の間隙11で流体連結にある膜または他の障壁81が含まれる可能性がある。望ましくない粒子から間隙においてそれに接触している望ましい粒子を優先的に分離するような膜または他の障壁81を選択する。1つの実施形態において、膜または他の障壁81は、細孔より大きな粒子は膜の通過を妨げられるが、(例えば、流体の流れまたは圧力の差が膜全体に生じる場合)細孔より小さな粒子は膜を通過することが可能となるようなサイズを同定した細孔を有する膜である。あるいは、膜または他の障壁81は比較的親水性の粒子は膜の細孔を通過することが可能であるが、比較的疎水性の粒子は膜面からはね返される(そして、その細孔を通過しない)傾向があるような疎水性物質でできている多孔質膜である可能性がある。さらに別の可能性として、膜または他の障壁81は、望ましい粒子は通過可能であるが望ましくない粒子は通過不可能である物質から作られる(多孔性、または望ましくは、無孔性の)障壁である。
【0073】
例として、胎児細胞栄養芽層は、子宮の細胞外マトリックスを含む母体の子宮組織を通過することが可能である。本明細書において開示される装置の間隙11に含まれ、子宮膜または類似物質(例えば、BD Biosciences社、カリフォルニア州San Joseから入手可能な基底膜マトリックス製品のマトリゲル・ラインのような基底膜抽出物)からできる障壁と接触するそのような細胞は、そのような物質でできた比較的薄い障壁に潜り込み通り抜け侵入することが可能である。もしそのようなマトリックスを貫通することができる他の細胞型が知られているとしても小数である。
【0074】
例えば、本明細書において説明する装置の間隙11の領域を通り抜けることが不可能なことにより、本明細書においてどこか他で説明するような母体血液の中の胎児細胞栄養芽層が分離されることが可能である。母体血液に存在する他の細胞もまた、間隙11の同じ領域を通過することができず、装置の範囲内で胎児細胞栄養芽層と共に残存する可能性がある。この細胞集団がマトリゲル(商標)タイプの物質でできている薄い固体の障壁と接触する場合、胎児栄養膜は障壁に付着し、進入し、貫通することができ、障壁に付着し、進入し、貫通することができない他の細胞集団から分離することが可能である。このように、胎児細胞栄養芽層を母体血液に存在する他の細胞と物質からの分離は、細胞と素材物質(すなわち、本明細書において説明する装置を通過する能力および基底膜状のマトリックス障壁の障壁との相互作用)の2つの特性に基づきもたらされる。同様に、そのような能力を失った(または一度も保持しない)胎児細胞栄養芽層からそのような障壁と相互作用する、またはそれを貫通することが可能な胎児細胞栄養芽層を分離するのに、そのような装置を用いることが可能である。
【0075】
膜または他の障壁81は本明細書において説明する装置の一部であり、粒子の分離が装置を用い行われた後、装置と組み合わせ、または粒子の分離が装置を用い行われる前、またはその後に装置とは単独で使用される。好ましい実施形態において、膜または他の障壁81は望ましい粒子が装置を用い行われた粒子分離の後、残存することが予想される一部の間隙11に隣接した状態にある。本実施形態では、本明細書において説明するような粒子の第1集団を分離することが可能で、望ましい粒子を含む(例えば、第1の通路51を通過することが可能であるが、第2の通路52には入ることができない粒子の)第2の粒子集団を生じさせる。膜または他の障壁81が粒子の第2の集団を含む一部の間隙11に隣接した状態にある場合、膜または他の障壁81と相互作用するそれらの異なる能力に基づき、それらの粒子を分離することが可能である。例として、膜または他の障壁81が特異的に第2の集団において粒子の一部と結合する物質(例えば、モノクローナル抗体)を含む場合、その一部はその集団において他の粒子から分離することが可能である。同じように例として、第2の集団における粒子の一部が膜または他の障壁81を通過することが可能である場合、膜または他の障壁81を通過することができない第2の集団においてその一部は他の粒子から分離されることが可能となる。
【0076】
膜または他の障壁81の面が間隙11の一部に隣接する場合、膜または他の障壁81の対向する面は第2の間隙または第2の材料に隣接する可能性がある。第2の間隙または第2の材料は、選択的に、膜または他の障壁81を通過する(例えば、結合するか、使い果たされる)粒子と、相互作用する1若しくはそれ以上の構成要素を含む場合がある。例として、細胞集団を分離する装置において、細胞の小集団が生じるものと予想された場所で装置の間隙11に隣接する膜の片側の面と代謝や細胞増殖を支える成長培地を含む第2の間隙に隣接する膜の他面で、装置に細胞の小集団を選択的に通過させる半透性膜が含まれる可能性がある。代わりに、または加えて、第2の間隙には、選択したタイプの細胞が膜を通過する場合、それらが第2の材料と結合して、膜を再度通過しない傾向があるような、選択したタイプの細胞と、特異的に結合する第2の材料が含まれる可能性がある。膜または他の障壁81を通過する細胞またはその他の粒子の通過は、膜または他の障壁81を通過する流体の流れ、細胞または粒子の運動性、重力、拡散またはその他によりなされる。
【0077】
材料および構築の方法
本明細書において説明する装置の操作において、部品がそれらの形状を維持し、実質的には変形せず、または壊れず十分に堅い必要があることを除き、本体10およびカバー12を構築するのに用いられる材料の固有性は決定的ではない。変形可能な材料を使用する部位において、部品のサイズと形状を設計する場合、操作を行う状況下において予期される変形を考慮する必要がある。適切な材料の例には、ガラス、ポリテトラフルオロエチレンおよびエポキシ樹脂のような固体ポリマー、およびシリコンのような結晶性鉱物が含まれる。必要に応じて、本明細書において説明する本体10、カバー12、分離エレメント14およびその他の構成要素は各々異なる材料から作成される。好ましくは、各部は同じ材料で作成され、それにより、例えば各部の部品の伸縮における温度の影響を同様にする。
【0078】
装置において粒子の挙動、状態または性質を観察することは有益である。このような場合には、本体10およびカバー12の少なくとも1つは、組み立てた装置で粒子の観察を容易にする材料から構築される必要がある。例として、多くのガラスは人間の目に見える光スペクトルの領域において光の波長に対し透明である。そのようなガラス製の1若しくはそれ以上の部品での装置の構築は、操作者が装置を操作する間、間隙11中の粒子を視覚的に観察することを可能にする(例えば、第1の通路51の粒子の蓄積)。
【0079】
本明細書において説明するような装置の操作において、分離エレメント14がその形状を維持し、実質的には変形せず、または壊れずに十分に堅い必要があることを除き、分離エレメント14を構築するのに用いられる材料の固有性もまた決定的ではない。
【0080】
装置およびその部品の構築に用いた材料の選択はその中で分離されるべき粒子の性質により影響される。粒子の性質はまた、装置の範囲内で接触する可能性のある表面と粒子の相互作用を調節するのに適切な表面処理の決定にも影響を与える。例えば、粒子が実質的に装置に結合、または付着することなく装置の範囲内で分離される場合、材料および/または表面処理は表面に粒子が結合する可能性を減らす、また排除するよう選択するべきである。あるいは、装置(例えば、第1の段61の幅広面31)の1若しくはそれ以上の表面が、粒子(または粒子の混合集団の範囲内の特定の種類の粒子)を表面に付着、または結合させるような方法で処理される可能性がある。例として、生物学的細胞がそれらの表面で様々なタンパク質を発現することが知られており、選択したタイプのタンパク質と特異的に結合する抗体を既知の方法により作成することが可能である。特定のタイプの細胞の表面で発現したタンパク質と特異的に結合する抗体を段階状の通路の表面に固定する場合、抗体と特定のタイプの細胞との結合は、装置において表面を通り過ぎた細胞の通過を阻害、または停止させるものと期待され、それらの表面(および、抗体が結合できない部位)で、タンパク質を発現しない細胞からそれらの細胞の分離を促進させる。
【0081】
流体置換装置
装置を構築する方法の選択は、その中で分離する粒子のサイズにより影響されることが可能である。装置およびその部品を構築するのに用いる特定の方法は決定的でない。マイクロメートルおよびナノメートルスケールで正確である形状および形態(構造、配置)を有する部品を形成する多種多様な方法が知られている。例えば、任意の様々な既知のマイクロ機械加工方法を使用することが可能である。そのようなミクロ機械加工方法の例には、スピンコーティングおよび化学蒸着のような膜蒸着工程(堆積プロセス)、レーザー装置、およびUVまたはエックス線工程のようなフォトリソグラフィー技術、精度機械加工方法または湿式化学工程またはかプラズマ工程により行われる可能性のあるエッチング方法が含まれる。(例えばManz et al.1991、Trends in Analytical Chemistry、10>144−149を参照)。あるいは、部品は機械加工よりはむしろ、任意の様々な既知の成形法を用い、型に入れて作られる可能性がある。切断、彫刻、成形、エッチング、溶接および鋳造のような多種多様な巨視的規模で用いる部品の成形および機械加工方法が知られている。
【0082】
本体10、カバー12および分離エレメント14は個別に構築し、装置を作成するために組み立てることが可能であり、そのような組み立てはメーカーまたは装置のユーザーにより行われることが可能である。あるいは、分離エレメント14は、カバー12または本体10のうちの1つの一体部分とし構築することが可能である。1つの実施形態において、単一のカバー12は、任意の様々な本体10により形成した間隙11を密封できるように作られる(例えば、本体10の間隙11において分離エレメント14を有する各々、段の高さの異なりのような異なる特性を有する様々な分離エレメント14)。
【0083】
分離可能な粒子
本装置は、本明細書において説明する装置の第1および第2の通路を通過する様々な粒子の能力に基づき粒子を分離する。本装置を用い分離することが可能な粒子には、動物または植物細胞のような生物粒子、バクテリアまたは原生動物、または非生物粒子が含まれる。本明細書において説明する装置は、より大きな粒子(例えば、穀物、または齧歯目の糞便、ガス泡、およびボウリング・ボール)およびより小さな粒子(例えば、亜細胞性の細胞小器官、ウイルス、および沈殿した鉱物粒子)を分離するのに用いることが可能である。
【0084】
本明細書において説明する装置の第1および第2の通路を通過するそれらの能力に影響を及ぼす粒子の特質には、粒子のサイズ、形状、表面特性および変形能が含まれる。
【0085】
不規則に流体中を動き回る粒子は、粒子で最も長い径と等しい径を有する球量と等しい体積排除を持つ。このように1マイクロメートルの直径を有する剛体球形、1マイクロメートルの直径および0.2マイクロメートルの厚さを有する不規則に動き回る円盤状の剛体粒子、および1マイクロメートルの長さおよび0.1マイクロメートルの直径を有する不規則に動き回る棒状の剛体粒子の各々は、等しい体積排除を持つ。表面特性の影響を無視すると、これら各々の粒子は、1マイクロメートル以上の小直径を有する通路を通過することが可能である。円盤状および棒状の粒子は、1マイクロメートル以下および0.2マイクロメートル以上の小直径を有する通路を通過することが可能である。棒状の粒子は、0.2マイクロメートル以下および0.1マイクロメートル以上の小直径を有する通路を通過することが可能である。これらの通路の1つを通過するこれら粒子の非剛体(すなわち、変形可能な)類似物の能力(および、そのような通過が起こり得る率)は、粒子の変形性の程度および範囲、および粒子が通路の中に適合するために変形する必要のある範囲に依存する。さらにまた、粒子の表面特性および通路を定義する面は、粒子が通路を通過する率に影響を及ぼし、そのような通過が生じることから防ぐことが可能である(例えば、粒子が非常に強く通路の表面と結合する、または通路および粒子の表面がお互い反発する場合)。
【0086】
重要な実施形態において、分離する粒子は、細胞(すなわち、複数のタイプの細胞を含む細胞の懸濁)の混合集団に存在する生物学的細胞である。本明細書において説明する装置の第1および第2の通路の適切な狭径の選択により、それらのサイズ、形状、表面特性、変形性、またはこれらの特性のいくつかの組合せに基づく生物学的細胞の分離が可能となる。本明細書において説明する装置を用い分離することが可能な生物学的細胞の例には、母体血液中を循環している胎児細胞、胚性幹細胞(母体血液中または個人の自身の胚性幹細胞)、成体幹細胞、腫瘍細胞、バクテリアおよび他の病原体、および免疫系の細胞(例えば、T細胞、B細胞、好中球、マクロファージ、および単球のような様々な白血球細胞)が含まれる。本方法は、これらのタイプの細胞の混合物を分離するのに用いることが可能である。本明細書において説明する方法は、同様に亜細胞性の細胞小器官(例えば、核、葉緑体およびミトコンドリア)を分離するのに用いることが可能である。
【0087】
もう1つの重要な実施形態において、装置は伝染病(例えば、バクテリアまたはウイルス)または他の病原体(例えば、原生動物または寄生虫)の病原体をサンプルから分離するのに用いられる。これらの実施形態において、対象が伝染性の病原体に感染しているかどうかを同定するために対象から得た生体サンプルを分析することのような診断目的のために、装置を用いることが可能である。これらの実施形態のもう1つの例として、対象により摂取される場合、対象が病気または他の健康状態を悪化させる可能性の一因となる病原体の存在に対し、直接サンプルを評価するために本明細書において説明する装置を用いることにより、またはサンプルが接触する流体を用いることにより、水サンプルまたは食品または原料成分のようなサンプルを、評価することが可能である。
【0088】
例えば、幹細胞は母体血液、または胎盤血において存在する他の細胞から分離することが可能である。そのような血液には、幹細胞、赤血球および血小板を含む様々な細胞が含まれる。本明細書の例5において説明するような、求める細胞が毛細血管の通常の直径を超えるサイズ(すなわち、直径>8−10マイクロメートル)を有する場合、血液は毛細血管床の望ましくは上流で採血する。このように、そのような前毛細血管血(肺および気管支の滲出液および分泌物、またはそれらを含んでいる気管支の洗浄液のような流体)に由来する動脈血(例えば、総肝動脈からとられる血液)または流体は、(胎児栄養膜と幹細胞のような)大きな細胞の好ましい源である。ヒト幹細胞は、およそ12マイクロメートルの直径を有する球体と等しい体積排除を示す傾向がある。ヒト赤血球はおよそ5.5マイクロメートルの直径を有する球体と等しい体積排除を示す傾向がある。ヒト血小板はおよそ1マイクロメートルの直径を有する球体と等しい体積排除を示す傾向がある。変形能および表面特性の効果を無視し、4〜8マイクロメートルのオーダーの狭径を有する通路から、赤血球または血小板以外の幹細胞を除外する。赤血球および血小板は可能であるが、4〜8マイクロメートルの狭径を有する第2の通路52と本明細書において説明する装置の注入口領域15に提供される幹細胞は装置の排出口領域17にまで移動しない。第1の通路51の狭径がおよそ12マイクロメートルより大きい場合(例えば、第1の通路51の狭径が18マイクロメートルである場合)、幹細胞、赤血球、および血小板の全ては第1の通路51を通過する。18マイクロメートルの狭径を有する第1の通路51、および8マイクロメートル以下の狭径を有する第2の通路52を持つ、本明細書において説明する装置の注入口領域15に母体血液または胎盤血が提供され、血液が装置の段階状の通路を通し通過する場合、幹細胞が第2の通路52から上流で保持されるが、赤血球および血小板は装置(すなわち、第1および第2の通路を通して、排出口領域17まで)を通過する。図1の中で示すように構成された装置が用いられる場合(すなわち、第1と第2の通路との間に介在する通路またはチャンバーがない)、幹細胞は第1の通路51に蓄積する。血液を通過させた後、装置にさらに無細胞流体を通過させることで、幹細胞から分離される赤血球および血小板の割合を増加させる傾向がある。装置(すなわち、排出口領域17から、段階状の通路を通し、注入口領域15の方へ向かう方向で生じている流体の流れで)のバックフラッシュにより、注入口領域15に、装置から幹細胞を流すことが可能であり、その結果としてそれらは回収されることが可能である。
【0089】
段階状の通路の中の粒子は、剪断、圧縮、および通路を通る流体の流れにより任意のその他の力にさらされる。変形、圧縮、破裂、溶解または破損(すなわち、第1および第2の通路の一方または両方を通過する粒子の率または能力を変える任意の特徴)に対し異なる抵抗性を示す粒子(例えば、生物学的細胞)が存在する場合、流体の流れに対する粒子の反応の違いは特異的に粒子の段階状の通路の通過(または非通過)に影響を及ぼすのに用いることが可能である。例として、流体剪断で容易に溶解する細胞および流体剪断で実質的には溶解しない同じサイズの細胞を含む細胞型の混合物において、比較的遅い流体の流れ(すなわち、十分に遅く、ほとんどまたは全く細胞が溶解させない流れ)の条件下で、これらの2つのタイプの細胞は、他の粒子から分離することが可能である。そのような分離の後、第2のタイプの細胞でなく、第1のタイプの細胞が溶解する段階状の通路の少なくとも1つの部分の範囲内において十分な流体剪断を生じさせるために、液体流速を増加させることが可能であり、排出口領域からの廃液中に第1タイプの細胞の溶解産物を生じさせ、装置内に第2のタイプの細胞が保持される。
【0090】
流体置換装置
本明細書に記載される装置は、装置の間隙11の注入口領域15に粒子を提供すること、および注入口領域15、段階状通路、および排出口領域17に存在する流体によって粒子が移動できることによって作動されることができる。このような動きは、細胞の固有の運動性または重力の影響を受けている非運動性粒子の受動的固定によるものである。後者の場合において、重力が、注入口領域15から段階状通路を通じて排出口領域17に向かって「落下する」ように流体よりも濃い粒子、または、注入口領域15から段階状通路を通じて排出口領域17に向かって「上昇する」ように流体よりも濃くない粒子を生じる傾向にあるように当該装置を正しい方向に置く必要がある。
【0091】
さらに典型的には、本明細書に記載される当該装置は、流体(例えば、粒子を含む懸濁液または粒子を含まない流体)または注入口領域15に対するポンプのような他の流体置換装置を含む貯蔵部を流動的に接続することによって作動される。装置を通じた流体の流れは、当該装置の注入口領域15に流体を導入することによって、当該装置の排出口領域17から流体を連続的に抜き取ることによって、またはその両方によって達成される。注入口領域15に導入された流体は、間隙11内に既に存在する流体を置換し、排出口領域17内または排出口領域17と流動的につながっている排出口18を通じて、間隙11内から流体の放出を誘導する。粒子が当該装置の段階状通路を横断するにつれて、粒子は、そこから排出口領域17に現れる。このような粒子は、排出口領域17内に蓄積される流体またはそれと流動的につながる貯蔵部から、または、排出口領域17と流動的につながる排出口18から抜き取られる流体から、回収されることができる。装置を通じた流体の流れの間、当該装置の第1通路51または第2通路52を横断することができない粒子は、当該装置内で保持され、および、そこから回収されることができる。
【0092】
注入口領域15に流体の流れを提供するのに使用される流体置換装置の独自性は決定的ではない。流体置換装置は、単に、重力の影響を受けて、貯蔵部および注入口領域と流動的につながる注入口16の間の流体接続管としての装置を通じて流出することができる流体を含む貯蔵部であることがある。機械式ポンプは、ポンプ出口および注入口16の間の密封された流体接続管を経由して、流体を注入口16に送達することができる。ポンプによって送達された流体は、段階状通路内の当該装置の注入口領域15に存在する流体を移動させ、流体を移動させたところから排出口領域17の方へ放流され、集められ、または放出されることができる。あるいは、当該装置の排出口領域17と流体連結の排出口18から、密封された流体接続管を経由して、機械式ポンプは、流体を放流することができる。排出口領域17から流体の放流は、排出口領域17での流体圧力を低下させる。そして、排出口領域17への装置の隣接する段階状通路から、および、段階状通路への注入口領域15から、流体の置換を誘導する。
【0093】
当該装置の間隙11における流体の正の置換(例えば流体のポンピングによる注入口領域15への誘導)は、間隙内における流体の圧力を増加させる。増加した流体の圧力は、当該装置の径(例えば、当該装置の部分の屈曲または置換を誘導することによって)、当該装置内の粒子の径(例えば、周囲の流体の圧力が増加するにつれて、変形可能なガスが充填した粒子は寸法が減少する傾向がある)またはその両方を変更することができる。さらに、流体の圧力の脈動またはそうでなければ流体の圧力を変化させることは、当該装置内で局所化された流体の流れにおいて一時的な変化を誘発することができる。
【0094】
一時的な局所化された流れの変化は、有益であることができる。例えば、段階状通路の第1または第2段に入ることができない粒子は、通路の上流の範囲に対して圧接されることがあり、粒子によってふさがれる通路の部分を経由する流体の流れを妨げる。粒子による通路の閉塞での流体の流れにおける一時的な変化は、択一的に、粒子を通路開口部に対して圧接することができ、および、開口部から間隔をおいて配置される粒子を圧接することができる。このことにより、一時的に閉塞をゆるめ、通路の以前閉塞された部分を経由した流体の流れを可能にする。
【0095】
流体の脈動または他の急速な流れの変化は、流体および流体内に懸濁された粒子上の剪断応力を誘導することができ、粒子はこのような剪断応力によって損傷を受けることがある。粒子の損傷(例えば、生物学的細胞の溶解)は、流体内の剪断応力およびそれらの原因を減らすことにより減少させることができる。この開示において他で述べられる装置の流体チャネルの配置における変更は別として、当該装置とつながれた流体置換装置のタイプおよび特徴の変更は、流体内における剪断応力を増加または減少させることができる。例えば、比較的一定の容積測定率(つまり、よりパルス状の容積測定率よりに多くの蠕動ポンプと同様に)で流体を送達するポンプは、当該装置内の流体圧力における潮の急増によって誘導される流体剪断応力を減少させることができる。さらに、例を挙げると、比較的一定の圧力で流体を送達するポンプ(つまり、ポンプの出力ストリーム内の流体圧力を監視し、一定の圧力を維持するために容積測定流率を調整するポンプ)は、容積測定流率が調整されない場合に、段階状通路の第1および/または第2通路の部分が粒子または破片によって塞がれるにつれて高くなる剪断応力を減少させることができる。当該装置を経由して流体を移動させるのに適したポンプの例は、低パルスシリンジポンプである。このようなポンプは、振動メカニズムを含むことができ、当該装置の作動の間、粒子が定着するのを防止するのに役立つことができる。
【0096】
間隙11内からの流体の負の置換(例えば、排出口領域17からの流体の放流によって誘導される)は、間隙11内の流体圧力を減少し、当該装置の部分の変形および置換、および一時的な流れの変化を含む類似の問題を誘導することがある。間隙11からの流体の負の置換は、当該装置における流体内で気泡形成を誘導することもでき、気泡は当該装置の作動を(例えば、通路の部分を経由する流体の流れを塞ぐことによって、または、装置の粒子上の作用に関連する表面張力を誘導することによって)妨害する。したがって、気泡形成は回避されなければならない。当該装置の間隙11内の流体の正の置換はこの理由により好適である。
【0097】
一変化において、当該装置の注入口領域15を有する流体連結の流体を含む貯蔵部に遠心「力」を加圧することによって、流体は当該装置を通過して置換される。遠心「力」は軸の周りで貯蔵部を回転させることによって発生し、流体の角運動量保存は、回転軸から流体を遠ざける。この「力」は、当該装置の注入口領域15と貯蔵部出口を流動的に接続することによって、当該装置の間隙11から流体を置換するのに使用することができる。例えば、遠心的に操作可能な装置は、回転軸の近位の位置から回転軸の遠位の位置に向かって直線的配置に、流体貯蔵部、間隙11の注入口領域15、段階状通路、および間隙11の排出口領域17を含むことができる。貯蔵部からの流体は、注入口領域15内の遠心「力」によって、段階状通路(第1通路51は第2通路52と比較して回転軸の近くに位置している)を経由して、排出口領域17に運ばれる。そして、当該装置を通過した流体を集めるための第2貯蔵部を含むことができる。第2通路52を横断することができない粒子は、流体貯蔵部における一部のまたは全ての流体が装置を通過した後、間隙11内に残留する。
【0098】
装置の組み立ての確認
多くの適用において、本明細書に記載された装置の流体チャネルの顕著な径は、比較的限られた許容度を有する。すなわち、当該装置の適切な作動は、比較的狭い範囲(つまり、数十ナノメートルに対してマイクロメートルのオーダーで)において流体チャネルを維持する径に依存することがある。当該装置は、作動可能な装置を得るために組み立てられるカバー12および本体10を含むので、および、作動において、正の内部流体圧力が、カバー12および本体10を分離する傾向がある当該装置内で動作するので、組み立てられた位置において本体10およびカバー12を固定する、またはそうでなければ保つためのいくつかの手段が通常使用される。その組み立てられた位置でカバー12および本体10を固定すること、またはそうでなければ保つことによって誘導される圧力は、カバー12または本体10のぶ部の変形を誘導することがあり、潜在的にそれらの部分の有意な径を変更する。これが生じる際にこのような変形を検出することは重要である。
【0099】
本開示は、本明細書に記載された装置の適切な組み立てを確認する方法を含む。この方法は、間隙11および間隙11を被覆し、間隙11を被覆する面と反対側に平坦な表面を有するカバー12を定義する本体10を含む装置において例証されるものである。しかしながら、実質的に同じ方法は、変形が検出される部分に平坦な表面を含むことによって、他の構成における部分の変形を検出するのに使用されることができる。当該装置の適切な組み立てを確認するために、本体10およびカバー12は組み立てられる。そして、本体10またはカバー12の任意の部分に圧力を働かせる全てのクランプ、ホルダー、または他の装置を含む。任意に、粒子のない流体は、使用された作業圧力で当該装置を経由して流される。カバー12の平坦な表面は、放射線によって照射される。カバー12の平坦表面によって反射される、または、屈折する放射線の干渉パターンは調べられる。干渉パターンは、当該カバーにおける曲げの位置および範囲を示し、例えば、間隙11を定義するカバー12の表面および本体10によって定義される間隙11の壁の間の距離における変化が、適当な許容語の範囲内であるかどうかの確認を可能にする。
【0100】
当該装置は、装置の適切な組み立てを確認する様々な可視的表示器を含むことができる。可視的表示器は、当該装置が適切に組み立てられたときの一つの外観および当該装置が適切に組み立てられなかったときの異なる外観を有する本体またはカバーの特徴である。実質的には任意の観察可能な現象も、可視的表示器として役に立つことができる。上記のように、装置の一部の変形を示している干渉パターンが使用されることができる。嵌合部に描画され、描かれ、または刻まれる線の配置は、適切な組み立ての可視的表示器として役立つことができる。
【0101】
装置の使用
当該装置は、生物学的細胞のような、流体試料中に懸濁された粒子を分離するために使用されることができる。流体試料は間隙11の注入口領域15に誘導される。試料中の粒子は、分離エレメント14および少なくとも1つの本体10およびカバー12によって定義される段階状通路内に注入口領域15から移動する。当該装置内での粒子の移動は、粒子の固有の運動性(例えば生物学的細胞の運動性)によって、当該装置内の流体による粒子の密度によって媒介される固定または上昇によって、または、当該装置の範囲内で誘導される大部分の流体の流れに応答して生じる。段階状通路は分離エレメント14の第1段61に囲まれた第1通路51を含む。第1通路51は狭径(つまり、第1段61の表面および本体10および/またはカバー12の反対側表面との距離)を有し、いくつかの粒子は、それらの寸法(粒子の変形性を考慮する)のために第1通路51に入ることができないことがある。第1通路51を横断することができる粒子は、段階状通路に沿って、分離エレメント14の第2段62に囲まれた第2通路52に移動を続ける。第2通路52は、第1通路の狭径よりも小さい狭径(第2段62の表面および本体10および/またはカバー12の反対側表面との距離)を有し、いくつかの粒子は、それらの寸法(粒子の変形性を考慮する)のために第2通路52に入ることができないことがある。第1通路51および第2通路52の両方を横断することができる粒子は、段階状通路に沿って、間隙11の排出口領域17に移動を続ける。当該装置は、このように、第1通路51に入ることができない粒子、第1通路51を横断することができるが、第2通路52に入ることができない粒子、および第1通路51および第2通路52の両方を横断することができる粒子を分離する。粒子のこれらの集団は、第1および第2通路の1つに入ることができるが、(作動の期間の間に)横断することができない粒子として別々に回収されることができる。択一的に、または、加えて、当該装置の排出口領域から回収される廃水は、回収されることができる。一実施形態において、第1および第2通路の1つまたは両方を横断することができない粒子は、廃水を回収する前に、溶解またはそうでなければ分解(つまり、装置を通過するために生成物の溶解または分解を可能にするため)されることができる。
【0102】
それぞれの装置の注入口領域15内に同じ流体試料が適用されることによって、複数の装置は一度に(つまり同時に)作動されることができる。当該複数の装置は、共通の注入口領域15、または、それぞれの注入口領域15と流動的につながる共通の上流貯水部を有することができる。複数の平衡した装置が、同じ本体10、同じカバー12またはその両方を共有するかどうかは、重要ではない。もちろん、複数の別々の装置は、それぞれに作動されることができる。一実施形態において、複数の装置は、集団の一端に注入口領域15(または注入口領域15に流動的につながる流体チャネル)を有する集団(例えば、ウェーハのブロック、各ウェーハは、ウェーハの一表面上の一装置のための本体10およびウェーハの反対側表面に隣接する装置のためのカバー12として作用する)を形成するために、分類され、結合され、または一緒に押圧される。粒子を含む流体試料は、集団の端に適用されることができ、流体試料は、それによって、集団の各装置の注入口領域15に提供されることができる。流体の流れは、圧力下(例えば、ポンプを使用して)で集団の同一末端に流体を提供することによって、集団の全ての装置を経由して誘導されることができる。この配置は、装置の構成の再編成または再設計することなく、本明細書に記載された装置および方法のスケールアップが可能となる。その代わりに、ウェーハの数は、粒子の予想された数に適応するように単純に増加することができる。
【0103】
当該装置を使用して得られた粒子および細胞、および本明細書に記載された方法は、さらなる目的の任意の広い多様性において使用されることができる。さらに、これらの目的の多くにおいて、分離の目的における作動後、当該装置内に残存することのできる粒子を分離する必要はない。例として、多くの場合において、試薬(例えば、抗体、酵素基質、潜在的に相補的な核酸および栄養素)と完全な生物学的細胞または生物学的細胞の構成要素との相互作用は、それらの相互作用が当該装置から回収された細胞において観察されるのと同様に、当該装置内に残った細胞においても観察されることができる。さらに、装置内に存在する流体チャネルは、装置内に残る細胞にこのような試薬を送達するのを容易にすることができる。このように、当該装置は、細胞を分離するために、および、その後、様々な試薬と細胞の相互作用を観察するための反応槽としての両方で使用することができる。
【0104】
生体細胞を含む流体を含むために当該装置が使用されるとき、流体は生体細胞の健全性を維持するのに十分な浸透性を有するように好適には選択されなければならない。細胞の生存度または他の生物学的機能が重要であるとみなされる場合、流体も所望の生物学的機能(biological function(s))を維持するために選択されなければならない。
【0105】
装置内に残る粒子を有する装置は、貯蔵、維持、粒子と試薬を接触させるための容器として使用されることもできる。例えば、当該装置は、装置内で、試料(例えば、鶏卵のような食品が洗浄されるものを有する流体試料)中に生じるバクテリアを分離するために使用することができる。装置内のバクテリアを分離した後、バクテリアの生存および繁殖を促すために、装置の間隙11に培地が提供されることができる。指標(例えば、特定のバクテリア抗原と特異的に結合する抗体、または、有害なバクテリアによってのみ代謝性である試薬)は、当該間隙に提供されることができ、その中の細胞とそれらの相互作用は観察されることができる。このような例は、病原性バクテリアによる食品の汚染の分析において有用である。
【0106】
血液試料の老化
本明細書に記載された装置を使用するとともに、装置内の血液および血球の流れの特徴が、時間とともに著しく変化することが発見された。血液試料が採取されたすぐ後に血球の退化は始まり、退化の効果は、数時間後には本明細書に記載された装置によって遂行される分離の効果を危うくし始める。これは、少なくとも一部において、酸素、栄養の欠如、装置の表面に付着することのある白血球細胞の断片への曝露、または、溶解した白血球細胞によって放出された酵素への曝露、によるものである。血液試料が採取されてから約6〜8時間後に装置を通過する時、血球は不安定になる傾向があり、より溶解しやすくなる傾向がある。血液試料が採取されてから約10〜12時間後に、血液試料における細胞を効果的に分離することはより困難になる。血液試料が採取されてから6時間以内、せいぜい12時間以内に使用されることが好適である。
【0107】
8時間より古い血液試料のさらなる操作において、血液試料において観察される変化は、本明細書に記載された装置および方法に特有のものではないことが明らかになったが、そのかわりに、血液試料を用いて実行される多種多様な分析に関連する、より一般的な現象であることが明らかになった。比較的狭い通路(つまり、100マイクロメートルまたはそれ以下)を経由する血液または血球の通過を必要とする任意の分析において、分析よりも12時間未満、好適には10時間未満、8時間未満、または7時間未満前に対象から得られた血液試料を使用する分析を実行することは利点があるようである。本明細書に記載された装置は、比較的専門性の少ないオペレーターによって簡便に作動されることができるので、当該装置は、例えば診療室内または静脈切開実験室内で血液が対象から得られた時間と非常に近い時間で血液試料を分析するのに使用されることができる。
【0108】
この開示の主題は、これから以下の実施例に関して記載される。これらの実施例は例証のみの目的に提供されるものであり、主題はこれらの実施例に限定されるのではなく、本明細書に提供された教示の結果として明白である全ての変化を包含するものである。
【実施例】
【0109】
実施例1
母体血液からの胎児細胞の分離
本明細書に開示されたタイプの装置は、母体血液の1ミリリットル試料中の他の細胞から、胎児様、巨大核細胞を分離するのに使用された。
【0110】
ポリカーボネート装置は、周知のエポキシ樹脂鋳造過程を使用して構成され、本体10によって定義される8つのチャネルのそれぞれに必要な分離エレメント14を有する本体10が含まれる。この用途で使用できる他の材料は、環状オレフィン・コポリマーおよびポリプロピレン環状オレフィンポリマーを含む。
【0111】
分離エレメント14は段階状通路に連続的に配置された通路を定義する6つの段を有し、当該通路は、それぞれ、10、7、5、4、3および2マイクロメートルの狭径を有するものである。各段(および通路)は1ミリメートルの長さを有した。本体10に固定された標準ガラス顕微鏡スライドがカバー12として用いられた。別々の段階状通路間の本体10の部分は、支持体20として機能した。カバー12は、本体10にシリコンゴム接着剤を使用して接着された。
【0112】
母体血液をシミュレーションするために、男児胎児からの血液試料が得られ、女性から得られた血液と混合された。この混合は、標準的な手順を用いて凝血防止され、一晩かけて冷凍された。他の抗凝固剤、例えばカリウムEDTAは、この用途にも適している。試料は、室温に持ってこられ、シリンジを使用する複数のチャネルの注入口領域15に注射された。試料が装置を通過した後、当該装置は顕微鏡の下で観察された。胎児由来であるように見える巨大細胞(つまり通常の血球よりも大きな細胞)は、段階状通路のいくつかの位置で止められたのが観察された。
【0113】
巨大細胞は、組み立てられた装置を短時間遠心分離することによって、ガラスカバーに付着された。遠心分離の後に、カバー12は本体10から取り外され、カバー12に付着された細胞は、メタノール:酢酸が3:1の混合物を使用するカーノイ固定によって固定された。細胞は、それから、市販のキットを使用する染色体XおよびYの検出のために、標準的な蛍光インサイツハイブリダイゼーション法(FISH)によって処理された。
【0114】
XおよびY染色体上の特異的配列の位置を特定するためのFISHプローブのハイブリダイゼーションを表す蛍光信号は、スライド上で観察され、男児(つまりY染色体を含む)胎児細胞が血液試料から装置を使用して分離されたことを示した。すくなくともいくつかの巨大細胞は、多核であることが観察され、栄養芽層起源を示唆した。
【0115】
胎児栄養芽層細胞は、母体血液内で生じる他のタイプの胎児細胞(例えば、原始胎児幹細胞)と異なり、妊娠の停止後比較的すぐに母体血液から除去されるものであると考えられている。以前の妊娠からの栄養芽層細胞が女性の血液に残りそうにないため、胎児栄養芽層細胞の分離は、女性の現在の胎児の状態に関して、他のタイプの胎児細胞(女性に知られている、または知られていない、以前の妊娠から残っていることができた細胞を含む)の分離よりも有益でありえる。
【0116】
実施例2
本明細書に記載された装置の組立を評価することは、照明の下で装置から反射される光、屈折される光、または反射および屈折される光を観察することで達成されることができる。図5は、適切に組み立てられた装置において観察された光のパターンを表す色画像である。
【0117】
図5に示された装置は、それに不可欠な分離エレメントおよびそれに付けられた平坦なガラスカバーを有するプラスティックの本体の形状をなす。段階状通路は、段階状通路の上部(ここ)表面のカバーによって、および、段階状通路の下部(ここ)表面の分離エレメントによって定義される。9つの支持体は、注入口領域から(図5に示された矢印の方向に)排出口領域へと、段階状通路を10の分離された流れチャネルに分けて、分離エレメントの全長を実質的に延長する。分離エレメントは、基本的にカバーと平行した8つの平坦な部分を有し、この平坦な部分(段)は、段階状通路を定義するカバーの表面から4.0、4.2、4.4、4.6、4.8、5.0、5.2および5.4マイクロメートルの距離を定義する。
【0118】
蛍光は、カバーに対してほぼ垂直な、および、直接的にカバー上部の照明の角度で光源から放射された。図5は、カバーに対して約30〜45度で照準線によって配された観察者によって観察された画像を示す。図5に示すように、「チェッカー盤」のような光のパターンが観察されたことがわかる。作動の任意の特定の理論に縛られることなく、カバーの上面(つまり、段階状通路の外側)から反射された光は、カバーの底面によって反射された光、分離エレメントの平坦な部分によって反射された光、または図5に示す色を得るためこれらのいくつかの組合せと結合するものと考えられる。光の変化の源または解説に関係なく、分離エレメントおよび支持体のパターンに対応する光のパターンは、当該装置が適切に組み立てられたときに観察された。カバーまたは本体における変形は、例えば、チェッカー盤パターンを歪め、分離エレメントの平坦な部分に対応する長方形は、不均等な、または、カーブして見える。
【0119】
実施例3
ヒト絨毛膜絨毛試料からの胎児細胞の分離
この実施例に記載された実験において、この用土において記載されたタイプの装置は、成人の細胞と男児胎児を身ごもっているとわかっている妊婦から得られた絨毛膜絨毛(CV)試料に存在した胎児細胞との混合物から胎児細胞を分離するのに使用された。
【0120】
この実施例において記載された実験で使用された装置は、マイクロ射出成形過程を使用するポリカーボネートから製造される本体およびガラスカバーを有する2つのピースのカセットであり、本体は、図6に示したように、分離エレメントおよびカバーの間に複数の段をその上に定義する分離を有する。カセットのカバーおよび本体は、注入口領域および排出口領域を有する間隙を定義した。注入口領域および排出口領域は分離領域を経由して互いに流体連結においてあった。分離領域は平坦な部分(つまり比較的広い通路)を含み、そこにおいて、本体とカバーの間の最少の距離は4.0マイクロメートルであり、本体とカバーの間の最大の距離は5.4マイクロメートルであった。図6に示すように、8つの段における段に対するカバーの距離は(流体の流れの方向に)5.4マイクロメートル、5.2マイクロメートル、5.0マイクロメートル、4.8マイクロメートル、4.6マイクロメートル、4.4マイクロメートル、4.2マイクロメートルおよび4.0マイクロメートルである。流体の流れにおける分離領域の長さ(つまり、図6に示すように、8つの段構造の左から右への距離)は20ミリメートルであり、および、分離領域内の8つの段のそれぞれは、流体の流れの方向に2.5ミリメートルの長さを有した。分離領域の幅(つまり、図6に示された8つの段構造が図6に示される平面図に対して垂直な径において延長した距離)は24ミリメートルであった。組み立てられた装置の間隙の総内部容積は、約2.2マイクロリットルの間隙(つまり、カバーおよび段付き分離エレメントの間の部分)の分離エレメントの体積と約10マイクロリットルの注入口および排出口領域を合わせた体積とで約12.2マイクロリットルであった。カセットのこのモデルはD3v2と称された。
【0121】
他に取りうる実施形態において、類似の装置が用いられることができ、類似の装置は、8つの段における段に対するカバーの距離が、(流体の流れの方向に)4.4マイクロメートル、4.2マイクロメートル、4.0マイクロメートル、3.8マイクロメートル、3.6マイクロメートル、3.2マイクロメートルおよび3.0マイクロメートルということにおいてのみ実質的に異なる。カセットのこのモデルはD2V3と称された。
【0122】
流体の流れの作動の間、カセットを固定し、カセットからの任意の流体の漏出を防ぐ方法でカセット本体と嵌合したガラスカバーを確保するのに役立つ目的で設計されたホルダーに、カセットは含まれた。ホルダーの正確な構造は、重要なものではなく、気圧と関連して、カセット内の正または負の両方の流体圧力による漏出を防ぐために十分に均一に圧力を印加するのに役立った。この実施例に記載された実験において、ホルダーは、金属パーツおよびカセットパーツが一緒にホールドされる力を調整する器具を有する2つの金属パーツから構成された。金属パーツのうちの1つは、本体およびカバーの間の間隙領域にほぼ対応した「窓」(図5を参照)を定義し、その窓によって間隙内の細胞の目視観察はなされることができる。流体を提供するため、および、カセット内の間隙から流体を回収するための接続に適応するために注入口および排出口に合わせられる穴を含む場合を除いて、他の金属パーツは実質的に硬い。
【0123】
カセットによる流体の流れは、1.25ミリリットルのシリンジを備えているHamilton PSD3シリンジポンプを使用して成し遂げられた。当該ポンプは、MatLab(商標)Instrument Control Toolbox上で動作しているアプリケーションを用いてソフトウェア制御された。システムもカセット内の流体圧力が常に監視されることを可能にした圧力センサーを含む。システムの構成要素が接続された流体導孔および器具は予測された圧力に適応するように選択されるが、その同一性は重要ではない。実質的に任意の流体導孔および器具が使用されることができる。
【0124】
これらの研究において使用された分子プローブは、Abbott Molecularから得られ、CEP(登録商標)X Spectrum Orange(商標)(試薬で処理された細胞内のX染色体から赤色蛍光信号を提供する)およびCEP(登録商標)Y Spectrum Green(商標)(試薬で処理された細胞内のY染色体からの緑色蛍光信号を提供する)からなる。他の全ての試薬は、非特異的ハイブリダイゼーションを防止するために、十分な等級であった。
【0125】
CV試料は、組織試料からの細胞が懸濁されたダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DMPBS;0.9ミリモルのCaCl2;0.49ミリモルのMgCl2;2.7ミリモルのKCl;1.47ミリモルのKH2PO4;138ミリモルのNaClおよび8.06ミリモルのNa2HPO4、pH7.2)の約5ミリリットルに組織片を含む15ミリリットルスクリューキャッププラスチックチューブにおいて受け取られた。細胞懸濁液は吸引され、チューブの底の固体組織片はそのまま残した(チューブに残った材料の量は0.25ミリリットル未満であった)。吸引物は、15ミリリットルのスクリューキャッププラスチックチューブ内に配置され、3,000rpm(およそ1,500×g)で5分間遠心分離された。遠心分離および上澄みの除去後、圧縮された細胞の約0.1ミリリットルは、チューブ内に残されたままだった。DMPBSの約2ミリリットルがチューブに加えられ、ペレット化された細胞を再び懸濁するために、構成要素はボルテックスタイプミキサーで十分に混合された。再び懸濁された細胞試料は、摂氏4℃で1時間貯蔵された。
【0126】
再び懸濁された細胞試料の試料は標準的なガラス顕微鏡スライドに塗り広げられ、ライト−ギムザ染色によって染色され、および、白色光照明のもとで400倍の拡大で観察された。染色された調製物は試料において(胎児)栄養芽層細胞の存在を示した。試料において観察された他の細胞は、好中球(有核の白血球)および赤血球であると考えられる。この方法による試料中の胎児栄養芽層細胞および他の細胞の観察は、栄養芽層細胞が試料中の多くの他の細胞よりも顕著に大きいことを明らかにした。
【0127】
懸濁された細胞の1.25ミリリットル分割量およびシリンジポンプ装置を使用する注入口領域への適用によるD3v2カセットを経由する通過は上述された。試料の適用の前に、カセットは予め多量のDMPBSの通過によって準備された。この試料は、毎分0.025ミリリットルの流量割合でカセットに通過された。試料が通過する間、流体工学システムにおける圧力は監視され、4.6〜6.8psigの範囲内での変化が観察された。
【0128】
試料がカセットによって通された後、固定液(メタノール:酢酸が3:1の割合)の3つの0.1ミリリットル分割量は、カセットによって通された。10分間で固定液の通路の間を通過することができた。カセットおよびホルダーは、この段落に記載されている方法の間、当該装置に水氷を適用することで冷やされた。前の工程は室温(摂氏およそ20度)で実行された。
【0129】
固定後、排出口領域に吸引を適用することでカセットは乾燥された。これは、カセット内の間隙から全ての流体を除去するのに効果的である。カセットは、摂氏4度で一晩かけて貯蔵された。貯蔵の後、カセットは100倍拡大で顕微鏡により観察された。約20マイクロメートルよりも大きな直径を有するいくつかの有核細胞は分離領域、注入口領域の中のいくつかにおいて観察され、その他は、カセットの分離領域における第1分離段において観察された。約20μmよりも大きな直径を有する細胞は、カセットの分離領域における第1分離段から顆粒では観察されなかった。
【0130】
カセットは分解され、ガラスカバーは除去され、標準的なFISHプロトコルを用いて処理された。自動検出アルゴリズムと結合されたコンピュータ制御ステージを備えている蛍光顕微鏡を使用して、カバーは検査された。完全な核の視覚化を可能にするために(つまり、細胞の捕捉を確認するために)、カバーはDAPIによって染色された。FISHおよびDAPI染色は、Abbott Molecular (Chicago, IL)から得られる市販のキットで提供されたもので実行された。
【0131】
DAPIおよびFISH染色されたカバーの検査は、当該ガラスカバー上に多数の有核細胞があることを示した。多くの細胞は、段に対するカバーの距離が4.2および4.4マイクロメートルである段に対応するカセットの部分で、比較的小さい領域で観察された。これらの細胞は引き伸ばされた、またはそうでなければ変形したように見えた。雄性細胞(つまり、X染色体およびY染色体の両方の存在に対応する蛍光信号を生じる細胞)が存在した。我々は、これらの細胞が妊婦の男児胎児から生じたものだと結論した。雌性細胞(つまり、X染色体の存在に対応する蛍光信号は生成するが、Y染色体の存在に対応する任意お蛍光信号は欠如している細胞)も検出された。我々は、これらの細胞が、男児胎児からではなく、妊婦から生じたものだと結論した。検出された細胞のうち、多葉核を呈するものはなく、そこから、我々は、捕捉された細胞は白血球細胞ではないと結論した。
【0132】
実施例4
母体血液試料からの胎児細胞の分離
この実施例に記載されている実験において、この用途に記載されたタイプの装置は、男児胎児を身ごもっていることがわかっている妊婦の血液循環から得られた血液試料から胎児細胞を分離するのに使用された。
【0133】
この実施例に記載された実験において使用された装置は、実施例3に記載されたD3v2カセットであり、その実施例に記載されたように作動された。
【0134】
血液は、(超音波画像診断によって)男児を身ごもっているとわかっている22人の妊婦のそれぞれから静脈穿刺によって約5ミリリットルのペアで収集された。胎児の在胎月齢は、17週、6日から29週、6日の範囲内であり、平均在胎月齢は21週、5日であり、年齢中央値は20週、2日であった。各血液試料は5ミリリットルチューブにおいて収集され、カセットに適用するために調製されるまで氷浴中で貯蔵された。試料収集および試料調製の間の経過時間は1時間未満であった。
【0135】
場合によっては、同じ試料が2つのカセットに通され、そのうちの1つはその後FISH試薬を使用して染色され、およびもう一方はライト−ギムザ試薬を使用して染色された。これは、組織学(ライト−ギムザで染色された細胞)の結果とFISH生成物から得られた結果とを比較することを可能にした。他の場合において、単一の患者からの複製血液試料は、結果の再現性を確認するため分離カセットに通された。
【0136】
カセットで汲み上げられるように調製されたHamiltonシリンジ内に患者の血液試料を吸引することで、血液試料はカセットに通された。1.25ミリリットル血液試料は毎分0.025ミリリットルの流量割合で個々のカセットによって汲み上げられた。流体工学システムにおける圧力は、血液試料の通過の間監視され、7〜9psigの範囲内での変化が観察された。
【0137】
血液試料がカセットに通された後、カセットにおいて保持される細胞以外の試料からの任意の残留物を除去するために、試料の流れと同じ方向および同じ流量割合でダルベッコリン酸緩衝生理食塩水の1.25mlがカセットに通された。この洗浄手順の後、固定剤の3つの0.1ミリリットルの分割量は、毎分0.025ミリリットルでカセットに通された。固定剤の通過に10分間を要した。固定剤分割量の通過の間および介在期間、水氷を装置に適用することで、カセットおよびホルダーは冷やされた。
【0138】
固定剤の通過の後、カセットは2つの方法のうちの1つで処理された。通過後すぐに固定剤が(カセットから固定剤の液滴がなくなるまでろ過された空気をカセットに通過させることによって)除去された、いくつかのカセットは、摂氏4度で一晩かけて貯蔵され、一晩かけた貯蔵の後FISH処理された。4つ以上のカセットが蓄積されるまで、他のカセットは、カセット内に残留した固定剤と摂氏4度で貯蔵され、固定剤が除去された時、カセットは摂氏4度で一晩かけて貯蔵され、一晩かけた貯蔵の後FISH処理された。FISH処理は、カバーの除去および実施例3に記載したようにCEP(登録商標)X Spectrum Orange(商標)CEP(登録商標)Y Spectrum Green(商標)を使用する処理を必要とした。DAPIは対比染色として、および、完全な核を示すために使用された。
【0139】
染色後、そこに付着された染色された細胞を有するガラスカバーは、手動で蛍光顕微鏡を使用するか、または自動検出アルゴリズムに連結するコンピュータ制御のステージを使用して、調べられた。
【0140】
いくつかのカセットにおいて、カバー上に固定された細胞は、カセット内に捕捉された細胞のタイプおよび分布を調べるためにライト−ギムザ染色によってのみ染色された。
【0141】
この実施例における実験から得られた結果は、これから議論される。
【0142】
妊娠した女性22人から得られた母体血液の試料は、38のカセットに通された。26のカセットは、本明細書に記載されたFISH/DAPI手順を用いて処理され、12のカセットはライト−ギムザのみによって染色された。FISHにおいて使用された26カセットのうち、12は分析に適しているとわかり、14は正しくハイブリダイズすること、または、染色剤で染色したものを習得することに失敗し、それらが不適当に固定されたことを示した。
【0143】
全体のカバー域の約12.5%が自動顕微鏡およびアルゴリズムを使用してスキャンされると、分析に適当であった12カセットのうち、3つが雄性陽性信号を出力した。自動化システムの厳密さに対する懸念により、いくつかのカセットが手動で再びスキャンされた。カセットの再スキャンは、個々のプレートで検出された1〜11の間の雄性細胞によって、12カセットのそれぞれでの雄性陽性信号細胞の発生を明らかにした(12のプレートのそれぞれで検出された雄性細胞の数は、1、2、2、2、2、3、3、3、3、4、8、および11であった)。これらの雄性細胞のうち、多く(64%)が、段に対するカバーの距離が4.0、4.2および4.4マイクロメートルである段に対応するカセットカバーの部分で検出された。雄性細胞の約36%は、段に対するカバーの距離が4.6、4.8、5.0、5.2および5.4マイクロメートルである段に対応するカセットカバーの部分で検出された。
【0144】
図7は、男児胎児細胞における陽性信号を提供する同定された細胞のそれぞれの位置の相対的な「地図」を提供する。同定された細胞の多くは、カセットの排出口または排出口領域にあり、わずかな細胞が注入口領域内にある。これは、カセットが胎児細胞を捕捉できること、および、その通過をさせないことを示している。
【0145】
1つのカセットからの結果は、11の胎児細胞(つまり核内にXおよびY染色体の両方の存在を示す蛍光信号を示す細胞)が捕捉されたことを示し、それらは、約300の成体雌性細胞(主に白血球であると考えられる)よりも少ない。
【0146】
捕捉された細胞の形態を調べるため、12のカセットはライト−ギムザ染色によって染色された。これらのカセットはFISH分析において使用されず、光学顕微鏡によってのみ観察された。これらのカセットのうちの2つは、カセットに塗布された試料の性質に関して知らされていない有核白血球における専門家(移植免疫学者)に提供された。この専門家は、補足された細胞は、顆粒白血球およびそれらと混じった単核細胞を有する主に「類上皮細胞」の不規則なバンドを含むと考えた。これらの細胞の細胞学的形態が、専門家によって上皮様であると評されたにもかかわらず、免疫学者が、胎児栄養芽層が観察された細胞の一つかもしれないと予想するように言われなかったという事実からみて、それらは栄養芽層または他の巨大細胞であると考えられた。胎児栄養芽層が胎盤内の母体血管に侵入する上皮細胞であることは公知である。
【0147】
胎児栄養芽層様細胞は、段との距離が4.0、4.2および4.4マイクロメートルであるカバーを有する段に対応するカセットカバーの部分で観察された。XおよびY染色体の両方のための信号を提供した細胞の大部分が、その部分で発見された。これらの栄養芽層様細胞の推定された頻度は、循環癌細胞または通常の血液中の他の形態が類似している細胞において予測されたものよりも非常に高いものであった。この観察は、ヒトの血液循環において通常観察されない(またはごく少数のみ観察される)細胞をカセットが捕捉したことを示す。
【0148】
この実施例に記載された実験において使用されたカセットの検査は、カセットが通常、母体血液の各1.25ミリリットル試料から約200〜4000の細胞を捕捉したことを示す。捕捉された細胞の少なくともいくつかが胎児由来の細胞であることは捕捉された細胞の観察から明らかである。しかしながら、血液試料から他の様々な血液媒介細胞を捕捉できることも等しく明らかである。これらの他の細胞は白血球を含む。これらの実験において使用されたカセット中に捕捉された細胞の位置の分析は、細胞が主に3つの異なる領域で捕捉されたことを明らかにした。細胞の約30〜35%は、段に対して5.2および5.4マイクロメートルの距離のカバーを有する段を生じたカセットの部分で捕捉された。細胞の約25%は、段に対して4.0、4.2および4.4マイクロメートルの距離のカバーを有する段を生じたカセットの部分で捕捉された。捕捉された細胞の残りは、中間の段(つまり、段に対して5.0、4.8および4.6マイクロメートルの距離のカバーを有する段)に対応するカセットの部分に捕捉された。
【0149】
これらの実験に使用された条件下で、捕捉された好中球(通常、約9〜10マイクロメートルの細胞直径を有する)が単球(通常約10〜30ミクロンの細胞直径を有する)よりも流体の流れの方向にカセットの分離チャンバーに沿ってさらに移動でき、分離チャンバーの上流側のより近くでより頻繁に保持されたことが観察された。これらの観察は、この出願に記載された装置が、母体血液細胞から胎児細胞を分離するため、および母体血液細胞の異なるタイプを分離するための両方に使用されることができることを示している。(比較的小さい)好中球よりも、(比較的大きい)単球は、分離チャンバーの上流部分の近くで頻繁に捕捉できる傾向にあるという観察は、細胞が分離チャンバーを横断する能力は逆に寸法依存である論点を支持する。したがって、これらの観察は、細胞が血液細胞であろうとなかろうと(および細胞以外の粒子)、本明細書に記載されたような装置を使用して寸法によって分離されることができることを予測するために、この結果が血液媒介細胞を超えて挿入されることができることを示している。
【0150】
この実施例に記載された実験においてされた他の興味深い観察は、血中における相対的頻度と比較して、好中球に対する単球のカセット内における選択的保持に関連するものである。通常の血液試料における好中球および単球の集団は、通常、それぞれ、50〜70%および2〜8%の範囲内である。すなわち、通常の血液において、好中球は単球よりも一桁以上多い傾向がある。しかしながら、この実施例に記載された実験において、好中球:単球の割合は、より近い値である(55〜65):(35〜45)であった。本明細書に記載された装置を使用して得られた試料における好中球:単球の割合は、通常の血液において生じる割合(約50:1)よりはるかに高い(分離チャンバーの上流側において1.03:1および下流側において1.67:1)。これらの結果は、この出願に記載された装置が、少なくともこの実施例において記載されたように構成された時、好中球を捕捉するよりも効果的に単球を補足することを示している。
【0151】
母体血液1ミリリットルあたりに400万〜1,000万の白血球細胞があると仮定すると、この実施例に記載された実験は、本明細書に記載されたカセットの使用が、胎児細胞を含む潜在的に対象となるいくつかの細胞の明らかに分離可能なプールを維持する一方で、母体血液の1.25ml試料から、実質的に赤血球細胞、血小板および血漿、および、全ての有核白血球細胞を除去したことを示す。血液の1.25ミリリットル試料において約2.5〜6.25X1016の細胞があると仮定すると、この実施例において記載された結果は、対象の細胞をまだ維持すると同時にカセットが553±316(6のNにおける平均の平均±標準誤差)のみ捕捉することから、本明細書に記載された装置の作動が基本的に全ての細胞のカセットを経由した通路において生じたことを示す。特定の細胞分離のこの度合いは注目に値するものであり、――分離領域内の粒子の分離を無視しても約1014倍の浄化である。
【0152】
この実施例で記載された実験の結果は、この実施例に記載されたカセットが、ミクロンの寸法で定義される狭い空間を経由する血液の通過に適応できるものであることを示している。この実施例に記載された装置において、流体圧力、および、細胞の「パッキング」により細胞の完全性を崩壊し、狭い通路を潜在的に塞ぐことのある他の特徴は使用された血液試料においてこれらの効果を生じなかった。血液の凝固も観察されなかった。作動のいかなる理論にも束縛されることなく、この実施例に記載されたカセットは、粒子の寸法または直径に依存した分離選択過程を提供するとともに、全ての赤血球細胞、血小板、白血球細胞が通過するのに十分な空間を維持するようカセット内に適当な距離を提供すると考えられる。
【0153】
この実施例に記載された研究は、細胞に最小限の損傷で、凝固することなく1.25ミリリットルの血液がカセットを通過するのに十分な流出条件を定義した。さらに、血液の試料の通過は単一の分離ユニットのみを使用して1時間未満に達成された。この細胞分離時間は、他の細胞分離方法を使用して達成できるものよりも実質的に短く、臨床的に、および、商業的に関連した時間の範囲内で血液細胞の定義されたサブ集団を送達するために十分なものである。それらを実行するために使用されたこれらの急速な方法および装置は、出生前胎児診断または他の診断、治療または研究への適応のための診断対象の細胞集団の収集を可能にする。大多数の他の細胞がカセットを通過することができるとともに、全ての胎児細胞を捕捉できる能力は、分析および例えば遺伝子異常の検出のための完全な胎児遺伝子試料を提供することができる。これらのデータは、装置によって捕捉された材料が分子診断プロトコルの使用に適していることも示している。
【0154】
この実施例において記載されたカセットおよび方法は、分析のための細胞または粒子試料を豊富にすること、または分析のための純粋な集団を得ることのどちらもが重要である、治療、診断および一般的な研究への適用における生物学的対象の細胞および他の粒子の選別において有益な手段を提供する。遺伝子への適用、表現型分析、エピジェネティック分析は、このような分離過程から恩恵を受けうる分野である。
【0155】
実施例5
母体動脈血液試料からの胎児細胞の分離
ヒト胎児栄養芽層細胞は、通常、14.3〜30マイクロメートルの範囲で細胞直径を示すものと考えられている。哺乳類の毛細血管の管腔は、約15マイクロメートルまたはそれより小さい、著しく小さい径を呈することがある(例えば、Wang et al.,2007,Exp.Eye Res.84:108−117を参照、そこにおいて、動脈血に与えた8マイクロメートル<直径を有する微小球体が体循環に再び入ることは観察されなかった;Maxwell et al., 1985, Heart Circ. Physiol. 248(2):H217−H224、同様に、腸毛細血管循環を通過する動脈投与された微小球体において、約9マイクロメートルを限界とするサイズが観察された。)。
【0156】
これらの観察を考慮して、in vivoでの胎児栄養芽層(および類似の巨大細胞)は全身の毛細血管床の動脈側に選択的に集中されていることが決定された。これは毛細血管の動脈側にある流体が特に胎児栄養芽層の適切な源であるという決定に続いて起こる。このような流体は、動脈血、特に、毛細血管床の(生理学的血流に関して)上流から取られる動脈血を含むことができる。これらの流体はまた、毛細血管(例えば肺または気管内分泌)または他の狭い通路を介する動脈血(例えば総肝動脈における血液)の通過より前の動脈血から送達された流体も含むことができる。
【0157】
この実施例に記載された観察は、胎児栄養芽層(および類似の巨大細胞)の有意な数が、毛細血管床、特にこのような毛細血管床の動脈側に蓄積することを期待できることも示している。毛細血管床から直ちに上流に取りこまれた血液は、胎児栄養芽層(および類似の巨大細胞)が比較的豊富であると期待できる。
【0158】
母体血液循環における胎児栄養芽層の比較的希少性の観点において、胎児栄養芽層が豊富である身体的位置からの胎児栄養芽層の収集は、このような細胞の検出および非検出間で違いをつくることができる。したがって、この実施例における観察は、母体動脈血液の得られた試料、動脈血液から送達された流体(つまり、毛細血管を介したこのような血液の通過の前)または毛細血管床の上流を直ちに収集した母体血液が、静脈血液試料と比較して、胎児栄養芽層(および類似の巨大細胞)がこのような試料から収集される可能性を改善することができることを示唆している。
【0159】
実施例6
胎児栄養芽層における細胞表面マーカーの使用
他は、グリコスフィンゴリピド指定されたグロボシドが胎児栄養芽層および他の細胞の限られた数の表面で生じること、および、グロボシドがヒトパルボウイルスB19の受容体として作用することを報告した。Wegner et al., 2004, Infect. Dis. Obstet. Gynecol. 12:69−78.Wegner et al.は中空B19キャプシドがヒト絨毛栄養芽層細胞に特異的に結合することを報告した。
【0160】
他は、B19が単独でグロボシドと結合しないが、その代わりに、1以上のグリコスフィンゴリピドおよび/または他の分子の複合体を結合すると報告した。Kaufmann et al., 2005,Virology 332:189−198.B19およびB19キャプシドタンパク質が結合する実態の正確な同一性に関係なく、B19およびそのキャプシドタンパク質はヒト胎児栄養芽層と結合し、このような結合のためにこれらの栄養芽層の膜におけるグロボシドの発生を必要とするように見える。したがって、B19、そのキャプシドおよびキャプシドタンパク質および他のグロボシド結合剤は、他のヒト細胞(妊婦および以前妊娠した母体の血液において生じるヒト細胞由来を含む)からヒト胎児栄養芽層を同定し、分離するために使用されることができる。
【0161】
グロボシドは広くヒトにおいて発現される。ヒト集団のごくわずかな一部だけがその赤血球細胞上にグロボシドを発現することに失敗する。グロボシドの発現は、発達の妊娠初期におけるヒト胎児の栄養芽層が最も高いと報告されている。したがって、グロボシドは胎児栄養芽層を同定するためのマーカーとして使用されることができ、および、細胞によるグロボシド発現の強度は、比較的早い段階の栄養芽層は、通常、後の段階の栄養芽層よりも、高いレベルで(または細胞表面密度)でグロボシドを発現することから、胎児から分離された栄養芽層における発達の段階の指標として使用されることができる。
【0162】
染色体材料とのハイブリダイゼーションによって胎児栄養芽層を同定する(つまり、いくつかのコピーのうちどの1つが細胞ごとに存在するか)蛍光インサイツハイブリダイゼーション法と比較して、グロボシドの検出を含む細胞検出方法は、細胞表面における複数のグロボシド分子の発生の観点からみて、有意に大きな信号対雑音比を有することがある。さらに、胎児栄養芽層発達の初期段階とグロボシド発現の相関は、グロボシド発現の強度に基づいた細胞の選択または分離を可能にする。
【0163】
グロボシドは、胎児栄養芽層および他のグロボシド発現細胞を同定するための細胞表面マーカーとして使用されることができる。他の特徴(例えば、細胞寸法および構造)はグロボシドを発現する他の細胞(例えば赤血球細胞、巨大核細胞、内皮細胞および胎児の心臓筋細胞)からの栄養芽層と区別するために用いることができる。
【0164】
グロボシドと特異的に反応または結合する任意の試薬は、グロボシド表現型細胞を同定するために使用することができ、例えば、グロボシドに対する単クローン抗体、ヒトパルボウイルスB19VP2カプシドタンパク質(例えば、色原体、放射性、またはビオチンで標識されたタンパク質)、エンプティB19カプシド、または完全なB19ウイルスを含む。このような試薬は、例えば、グロボシド表現型細胞が装置の表面に特異的に付着するように、本明細書に記載された装置の表面に試薬を付着することによって、捕捉試薬として使用されることができる。
【0165】
実施例7
分離された細胞の培養および/または増殖
本明細書に記載された方法および装置は、非侵襲性出生前診断における資料を得るために胎児細胞栄養芽層の分離および選択的培養において使用されることができる。
【0166】
胎児栄養芽層は(例えば)母体血液試料の他の細胞から分離されることができ、浸潤できない汚染母体有核細胞を残して、多孔質膜内に浸潤し、および、多孔質膜を介して移動するために、これらの細胞を第一のきっかけとして培養されることができる。その後、胎児栄養芽層は、これらの細胞において増殖的挙動を誘導すると知られている要因を使用して、浸潤性から増殖性表現型へと転換するきっかけとなることができる。増殖する細胞は分割し、例えば、既存の分析条件の感度要件を満たすのに十分な数の細胞のような所望のレベルにその数を増やす。栄養芽層(または他の細胞)を選択的に培養するために、浸潤性表現型から増殖性表現型への転換を誘導することを含むこれらの方法は、培養された胎児細胞を使用して診断されることのできる任意の疾患の非侵襲性出生前診断において使用されることができる。
【0167】
本明細書に記載された表現型スイッチを容易にするため、本明細書に記載された粒子分離装置は、1つの実施例において、装置の本体およびカバーの間に被覆された、または被覆されていない多孔質膜を加えることにより修正される。細胞を分離するために、本明細書に記載されたように当該装置は作動され、および、胎児細胞の侵入、移動および増殖する能力を利用するこの実施例に記載された細胞を分離および増幅する工程を付加的に実行することによって作動される。
【0168】
細胞分離工程
本明細書の他で記載された過程は以下のように改変される。本明細書に記載された装置は、本明細書に記載されたように試料(例えば、母体血液試料)から胎児細胞を分離および濃縮するために使用される。分離された細胞は、本体10および膜81の間の間隙11に配置される。胎児細胞の浸潤性表現型は(例えば、このような表現型を誘導すると知られている化合物を間隙に付加することによって)誘導され、それによって、胎児細胞は、汚染母体細胞を含む間隙から膜を横切って移動する。移動胎児細胞は、膜81の細孔82へと移動し、膜81を介して膜81およびカバー12の間の空間内へと侵入する。この空間の中で、胎児細胞の表現型は、再び転換され、この時は、分割し、数を増やす細胞を生じる増殖性表現型に転換される。胎児細胞の集団を拡大した結果は、例えば、胎児遺伝子材料を必要とする胎児診断方法において使用されることができる。これらの細胞は、胎児から非浸潤で得ることができる試料から(例えば、母体末梢血液試料から)得ることができるため、これらの方法は、胎児試料を得るために胎児の妨害を必要としない点において、他の胎児診断方法と比較して利点を有する。
【0169】
この実施例に記載された装置および方法は、胎児細胞以外の細胞および粒子にも同様に有用である。これらは胎児細胞の分離だけではなく、バクテリア、ウイルス、原生動物、例えば虫、昆虫、寄生虫のような多細胞生物、鉱物および有機粒子、有機および無機分子の分離においても使用されることができる。
【0170】
膜または他の障壁81は多孔性または非多孔性であることができ、および、1以上の材料から製造されることができ、および/または1以上の材料によって被覆されることができる。膜または他の障壁81の目的は、それとともに結合するおよび/またはそれを通して通過する、集団における細胞の少なくとも1つのタイプの能力に基づいて、集団における細胞を少なくとも2つのタイプに分離することができる構造を提供することである。明らかに、複数の膜または他の障壁81は、本明細書に記載された方法および装置において(間隙11における粒子の観点から、連続して、または並行して)使用されることができる。
【0171】
背景
胎児栄養芽層は、母体末梢血液において非常に珍しい。多くの既存の分析技術において有用であるために、試料中の胎児細胞は、非胎児(つまり母体)細胞から実質的に分離されなければならない。現在利用可能な胎児細胞収集方法および装置は、しばしば、胎児細胞の十分な数および純度を有する試料を製造することができない。有用な胎児細胞は、対応する胎児内に存在する細胞である必要はない;多くの適用において、胎児細胞は、胎児から得られた子孫細胞であれば十分である。
【0172】
通常、初期胎児細胞(例えば胎盤中の細胞栄養芽層)は系統学的に少なくとも2つの異なる表現型を経る。初期段階において、胎児栄養芽層は増殖性表現型を示し、成長し、分割し、および増殖する。その後、それらは浸潤性表現型に分化し、胎児側から胎盤の母体側(つまり胎盤内または胎盤を経由して浸潤する)に移動する。浸潤性を示す胎児栄養芽層、移動表現型は、例えば、母体らせん動脈の内側(内皮)表面を移動するように、母体血流に到達するものであると考えられる。
【0173】
胎児栄養芽層におけるこの表現型転換の過程は、酸素濃度における変化を含む条件の組み合わせによって、および、表現型変化を生じ、誘導し、または支持する信号分子の発生によって、引き起こされる。これらの条件および信号分子は、例えば本明細書に記載された装置および方法のようなin vitroで、胎児栄養芽層において表現型転換を誘導するために使用されることができる。
【0174】
分離された胎児栄養芽層のin vitroでの増大
この実施例に記載された方法および装置は、胎児栄養芽層の分離及び培養を可能にするために、初期胎児細胞の増殖および侵入の自然な性質を利用する。これは、試料における胎児栄養芽層細胞を多孔質膜内に侵入および多孔質膜を介して移動するための第一誘発によって達成される(例えば、Logan et al.,1992,Cancer Res.52:6001−6009、または、Yang et al.,2009,J.Histochem.Cytochem.57:605−612に記載された周知の方法を使用する)。このような浸潤ができない汚染母体有核細胞を残し、栄養芽層は細孔を介して浸潤する。栄養芽層はそれによって汚染細胞から分離される。
【0175】
分離された胎児栄養芽層は、増殖的挙動を誘導することが知られている要因を使用して、浸潤性表現型から増殖性表現型に転換するよう誘導される(例えば、これらの1つ以上がRed−Horse et al.,2004,J.Clin.Invest.114:744−754;Ray et al.,2009,Placenta 30:96−100;Genbacev et al.,1997,Science 277:1669−1672;Gobble et al.,2009,Placenta 30:869−875;Truman et al.,1986,"The Effect of Substrate and Epidermal Growth Factor on Human Placental Trophoblast Cells in Culture,Springer,Berlin;Zhou et al.,2008,"Extreme Makeover:Converting One Cell into Another,"Elsevier,Cambridge;米国特許第7,244,707号に記載された)。増殖性細胞は、分裂し、例えば、既存の市販分析技術の感度要求を満たすのに十分なレベルのような選択されたレベルへと数が増える。
【0176】
図8は膜または他の障壁81の適当な実施形態を示す。図8Aは膜81の一部の正面図である。図8Bは、図8Aの平面8Bに沿って切り取られた膜81の垂直断面の部分の拡大図である。この特定の実施形態において、膜81は多孔性であり、片側一方が被覆されており、したがって図8Bは、膜81およびコーティング83を通って延長している細孔82を示す。図8に示される実施形態において、前記コーティング83は膜81の片面に適用されて(ただし、他面には適用されない)用いられるが、もう一方の面にはなされず、細孔82の中に延長せず、細孔82を塞がない。
【0177】
図9は膜または他の障壁81を組み込む装置を示す。図9は、図2Aに示され、本体10およびカバー12の間に差し挟まれた膜81を含むタイプの装置の平面図9Aに沿って切り取られた垂直断面図である。内側支持体20は、装置内の膜81の均一な、水平化された置換を援助する。内側支持体20は、間隙11を定義するのにも役立ち、および、間隙11のサイズに対する制御も提供する。細胞が分離された後、胎児栄養芽層を含む細胞の集団は、間隙11内、膜81との流体連結内に残留する。膜に配置された試薬(例えばB19 VP2タンパク質)は膜と結合するために胎児栄養芽層を生じる。非結合細胞は、例えば、このような細胞を除去する流体で洗浄されることにより間隙から除去される。間隙は、培養培地および胎児栄養芽層において増殖性表現型を誘導できる1以上の試薬で満たされる。栄養芽層は膜81および/または間隙11内で増殖し、それによって採取されることができる。
【0178】
図9の部分的に示された装置の他の実施形態において、カバー12の代わりに内側支持体構造20を有する、第2の同一の本体10がある。しかしながら、この第二本体は膜81の反対側に「反映する」方法で適用されるので、2つの同一の一致した本体は膜の両側で互いを「反映する」。これは、互いから分離され、および、膜の反対表面と接触する複数の間隙をつくる。この実施形態において、膜の両側の間隙11は、例えば細胞、分子などの様々な種類が、膜を介して一方の間隙から他方の空隙に浸透するまたは浸潤する(つまり膜を横切って)ために空間を提供する。このように、胎児栄養芽層がそれらの浸潤性表現型において移動することができる材料(例えば、基底膜マトリックスの薄いフィルム)から膜ができている場合、および、浸潤性胎児栄養芽層を含む細胞の集団が膜の1つの面に生じる場合、胎児栄養芽層の浸透(つまり浸潤)を生じることができ、結果として、膜の反対側の間隙に胎児栄養芽層(しかし集団の他の細胞ではない)の出現となる。この実施形態はまた、膜の反対側の間隙から同一でない流体または試料を誘導するまたは取り出すための機会を提供する。
【0179】
膜81を通って浸透することができる胎児栄養芽層のin vitroでの分離および増大は、例えば以下のように達成されることができる。
【0180】
胎児細胞および他の類似の寸法の細胞は、本明細書(膜または他の障壁81に関する開示を無視する)に記載されたように母体末梢血液から分離されることができる。細胞の寸法分離された集団は、実質的に赤血球、血小板、他の小さな細胞および血漿を実質的に除去するために流体で洗浄される。このとき、集団における細胞の少なくともいくつかは胎児栄養芽層であるが、同様に、集団における母体細胞(例えば巨大有核リンパ球)であることもある。それにもかかわらず、細胞のこの集団は、装置の間隙11内に残留されることができ、もとの母体血液試料と比較して、有意に(例えば1000フォールド)胎児細胞において富む。
【0181】
試薬は間隙に加えられ、この試薬は、浸潤性表現型を呈するために胎児栄養芽層を集団に誘導する。例として、間隙は、最大で20%の酸素を含むガス混合物(つまり、間隙における上記の液体に代わって)で満たされることができる。この処理によって、胎児栄養芽層は、それらと接触している膜81(例えば、膜81が間隙11と接触していた場合、または、栄養芽層が間隙11によって被覆され、膜81と他の場所で接触していた場合)を介して浸透することができる。必要または所望の場合、当該装置(または所望の細胞を含む当該装置の部分)は、細胞が浸潤性表現型を呈することを促進するために、回転することができる、または、操作されることができる。あるいは、または、加えて、胎児栄養芽層の薬剤(例えばSmurf2遺伝子産物)への移動を誘導する薬剤は、膜81の間隙11の反対、膜81側に隔離されることができる。それによって胎児栄養芽層を膜の方へまたは膜を介して移動するよう誘導する。
【0182】
胎児栄養芽層が膜を介して第2間隙内または第2材料内に透過した後、それらは回収されることができる。あるいは、胎児栄養芽層の多くの数または濃度を所望する場合、第2間隙または第2材料(または、随意に、装置全体)は、当該栄養芽層を増殖に誘導する条件(例えば、酸素濃度の減少または増殖的な表現型を誘導することが知られている特定のキナーゼのような要因の付加)に曝されることができる。細胞が採取前に増殖に誘導されるかどうかに関係なく、胎児栄養芽層としての強度を確認するために、細胞は、様々な方法および試薬(例えば、その物理的特性または本明細書に記載されたB19 VP2タンパク質との結合能力を分析することによって)によりテストされることができる。
【0183】
本明細書に記載された膜81は、ヒト胎盤の細胞外マトリックスに類似の製剤から製造される、または被覆される、または構成された基底膜様マトリックスから製造される。このような膜およびコーティングを製造するための市販品は、Matrigel(商標)(Collaborative Research,Lexington,マサチューセッツ州)および基底膜抽出物Cultrex(商標;Trevigne,Inc.,Gaithersburg,メリーランド州)を含む。図8Bに示したように、細孔は膜の一方からもう一方に連続的に及び、したがって、膜の反対側平坦面と互いに流動的に接続する(及び膜のいずれの面上の間隙と流動的に接続する)。細孔の寸法および形は、それらのコーティングおよび充填剤と同様に、特定の適用、装置設計および分離される粒子、細胞または分子のタイプに依存する。
【0184】
適当な装置の他の実施形態は、図9を参照することによって記載されることができる。この実施形態において、本体10の代わりに、膜81およびカバー12の間に付加的な支持体および供給層を含むまたは保有することができる。この層は、例えば、剛性成形または押出加工されたプラスティックまたは弾性シリコンゴムから製造されることができる。この層は、この必須の装置において2つの必要な機能を提供する。第1に、この層は、循環培養培地のための供給チャネルを提供し、および、増殖/分割する標的細胞の増大のための室を提供するための構造を供給することができる。第2に、この層は、図9における内側支持体構造20と類似の隆起のような機械的支持体を提供することができる。膜は、これらの隆起および支持体構造20の間で固定されることができる。このように、力の移行は、平坦な同一のクランピング、および、分離装置のカバーおよび本体の間に吊された膜の伸びを確保するために、カバー12から膜81への隆起を介して支持体構造20および本体10に提供される。
【0185】
膜81は、流体の流れ、細胞の転位、またはその両方を導くために成形された部分を含むことができる。一実施形態において、膜81を被覆している第1層83はごく薄いものであり、第2層は、高い隆起および埋め込まれた溝(チャネル)をつくるために第1層に(つまり、膜81と接触する第1層の表面の反対側表面に)堆積され、印刷されて(または書かれて)いる。ストリップおよび溝の幅は、細胞処理が及びと予想される範囲がどの程度であるかに基づいて選択される。その結果、細胞はその処理によって溝に届き、および、溝を感知し、溝における媒体の流れのような、細胞を引き付ける要因がある場合に、溝の中へと移動する。あるいは、本体10およびカバー12の1つまたは両方は、溝または同じ機能を提供する他の形作られた表面を有することができる。もちろん、膜81は、本体10およびカバー12の間の間隙11に合うように形作られる、または切断されることができ、装置の他のエレメント(例えば、注入口および排出口)に適応するために穴または付属品を有することができる。
【0186】
膜または他の障壁81は均一な厚さを有することができ、またはこの厚さは変化することができる。膜または他の障壁81の1つまたは両方の表面は、例えば全体にわたって溝付きの、または、複数の繰り返しパターンにおいて鋳造されたような、特定の適用、装置設計および分離される粒子、細胞または分子のタイプに依存する形を有することができる。このような複数のパターン変化は、前述した構造的および幾何的変化と一致する、または一致しない、材料、多孔性および膜のコーティングにおける変化に適用されることもできる。
【0187】
その間にマトリックス層を有する2つの膜または他の障壁81は、単一の膜または他の障壁81の代わりに使用されることができる。膜または他の障壁81の端は、一緒に封止されることができ、平坦なポーチを効率的につくる。マトリックスは、例えば、胎児栄養芽層において浸潤性または増殖性表現型を誘導する培養培地および/または化合物を含むことができる。例えば、マトリックスが、胎児栄養芽層において増殖性表現型を誘導できる細胞培養培地および要因を含む場合、当該マトリックスに入る浸潤性栄養芽層は増殖性表現型に変わることができ、細胞培養培地において増殖するよう誘導されることができる。
【0188】
細胞を選択的に分離する、および増殖する方法の他に取りうる実施形態において、選択されたタイプのバクテリア(例えばヒト病原体)はヒトから採取された試料から分離されることができ、および、増殖のために本明細書に記載された装置に導入される。
【0189】
バクテリアはとても小さく、しばしばミクロ流体の装置において分離することが困難である。しかしながら、装置の部分を経由して通過する細胞の能力に基いて細胞を分割し、当該装置の間隙11、および、対象の1以上のバクテリアを選択的に引き付けるおよび/またはバクテリアの増殖を促進する培地の間にはさまれた多孔質膜を含む細胞分離装置を含む、本明細書に記載された装置を使用して、バクテリアは分割されることができる。膜が当該装置の間隙11における流体と流動的につながる場合、間隙におけるバクテリアは膜を横断して移動(能動的または受動的に)することができ、培地において増殖することができる。このような装置および方法は、試料中の少数のバクテリア(例えば、血液、尿、食品、廃水などのような試料中のバクテリアまたは他の病原体の希薄集団)を検出するために有用である。
【0190】
間隙11の反対側の膜または他の障壁81側に誘引物または培養培地を含むことに加えて、他の装置または組成物は、その空間に位置されることができる。例えば、その空間が、反応/検出区画として使用されることができ、例えば、DNAのゲル電気泳動のためにゲルで満たされる。例えば、ゲル内に移動したバクテリアは溶解されることができ、その核酸は他の試薬と電気泳動で分離、反応またはハイブリダイズされることができた。
【0191】
本明細書に引用された全ての特許、特許出願および公報の開示は、その全体に参照によって本明細書に組み込まれている。
【0192】
主題は、具体的な実施形態を参照することにより本明細書に開示されたとともに、この主題の他の実施形態および変化が、主題の真の精神と範囲から逸脱することなく他の当業者によって考案されることができることは明らかである。添付された特許請求の範囲は、全てのこの種の実施形態および等価な変化を含むものである。
【背景技術】
【0001】
粒子を研究または使用するために共通した必要な基本的操作は異なる種類の粒子を分離する能力である。例えば、細胞生物学分野における無数の応用では、1つの細胞型をもう1つの細胞型から分離する能力を必要とする。産業廃棄物管理の分野における応用では、固体粒子を産業廃水または廃ガスから分離する能力を必要とする。農業および食品加工分野における応用では、粒子状汚染物を穀物のような微粒食品から分離する能力を必要とする。
【0002】
例えば、分娩の直後に臍から採血した血液(「臍帯血」)は、胚性幹細胞および造血幹細胞のような幹細胞の豊富な源である。造血幹細胞は血液疾患の治療に有用である。臍帯血サンプルを保存する方法は既に知られている。これらの方法は将来の医療処置において用いるのに十分な数の幹細胞を保存するため、比較的大量の血量(例えば、100〜250ミリリットル)が保存されなければならないという欠点を有する。大量の臍帯血の保存はコストを増加させ手順の利便性を低下させる。幹細胞を保管する前に臍帯血からすぐに分離することが可能であれば、(例えば、0.1〜1ミリリットルまで)保存量を有意に減少させることが可能である。しかしながら、幹細胞を臍帯血から分離する現在の方法は、高額で、手技が煩雑であり、効果がない場合がある。幹細胞を臍帯血から分離する効率的で費用効果の優れた方法が必要である。
【0003】
さらに例として、妊婦の血液、および、以前妊娠していた女性の血液において、明らかに胎児由来である細胞(すなわち、胎児様細胞)が発見される。これらの細胞は母体が男児を出産した場合、または男児を妊娠する場合、男性のDNAを有することが可能であり、したがって、DNAは胎児起源であるものと思われる。これらの細胞は、母体血液流において稀であり、母体血液液の1ミリリットルにつきたった10〜12細胞のみ存在する可能性がある。母体血液中に観察される胎児様細胞と共通し、女性が出産したあと、胎児栄養胚葉は比較的速く分解することが可能である。数は少ないが他の種類の胎児様細胞が妊娠後、数年または数十年間、女性の血液中に認められることが報告されている。いくつかの胎児様細胞の希少性と明らかな持続時間の短かさが、それら細胞を捕らえることを困難にしている。従って、ほとんど細胞について知られていない。胎児様細胞を母体血液からすばやく、経済的に、そして、効果的に分離するための方法が必要である。母体血液において胎児栄養胚葉を他の胎児様細胞から分離する方法もまた必要である。
【0004】
数十マイクロメートル(生物学的細胞の寸法)から数ナノメートル(いくつかの生体高分子の寸法)までの範囲の寸法の構造エレメントを有する生物学的細胞および他の小さな粒子の操作を目的とする機械的な装置の記述がなされてきた。例えば、米国特許第5928880号明細書、米国特許第5866345号明細書、米国特許第5744366号明細書、米国特許第5486335号明細書および米国特許第5427946号明細書では、細胞および生体分子を取り扱う装置が記述されている。PCT出願公開番号WO03/008931では、粒子および細胞の分離、識別、選別および操作のための微細構造が記述されている。
【0005】
ミクロンの寸法で定義された隙間を血液が通過することが課題である。細胞の完全性を破壊する傾向にある周期的な圧力および細胞の「詰め込み」に起因する通過スペースの目詰まりの可能性を考慮すべきである。細胞の完全性が失われる場合、(カスケード様に)血液凝固する傾向もまたこれを困難なものにしている。さらにまた、大きな粒子(生体サンプル中の細胞、凝集した細胞、細胞外物質および十分に特徴づけられない「破片」)は装置の先の流体通路を妨げ、それらの効率および操作を阻害することが知られている。
【0006】
本明細書において開示する対象は、粒子または細胞の混合集団から生物学的細胞、細胞小器官および他の粒子を分離および操作するのに用いることが可能である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、細胞のような粒子を分離する装置に関するものである。 装置には、本体、カバーおよび分離エレメントが含まれる。本体とカバーは、間隙を定義する。 分離エレメントは、間隙の中に含まれる。間隙は、流体注入口領域および流体排出口領域を有する。分離エレメントは、間隙において注入口および排出口を流動的につなぐ段階状の通路を定義する形状を有する。分離エレメントは第1および第2の段を含み、それぞれは段階状の通路にまで及ぶ。第2の段に境界される通路は、第1の段により境界される通路より狭い。粒子を含む流体が注入口領域に存在する場合、流体は注入口領域から、第1の通路を通り、第2の通路を通り、そして排出口領域に流れることが可能である。粒子のサイズが各々の通路の狭径を上回らず、または粒子が変形した形状で十分に変形可能であり、それらが各々の通路を通し押し出すことが可能である場合、流体中に浮遊する粒子は第1および第2の通路を通過することが可能である。粒子のいくつかのみがそれを通して通過することが可能な狭径を第2の通路に選択することにより、粒子を分離することが可能となる。流体の粒子が個々に第1の通路を通過することができるよう第1の通路の狭径を選択するが、それらが第1の通路の狭径全域に渡り積み重なる場合、2つの粒子が同時に第1の通路を通り抜けることは不可能である。
【0008】
装置の外部から注入口領域への流体の流れ、排出口領域から装置の外側までの流体の流れ、またはその両方を容易にするため、装置には流入口が含まれる可能性がある。流体置換装置(例えば、ポンプまたは重力で流体を供給するタンク)は段階状の通路を通過する流体の流れを促進するため注入口および排出口の一方または両方と接続することが可能である。粒子を分離するため、そのような流れは注入口領域から排出口領域に向かう方向である可能性がある。例えば注入口から排出口領域へ流体が流入する場合、第2の通路を通過できなかった粒子を洗い流すために、流体の流れを排出口領域から注入口領域の方向とすることが可能である。
【0009】
分離エレメントの段は段階状の通路の中の通路を定義し、2若しくはそれ以上のそのような段を持つことが可能である。段は(標準的な直角段を形成する)直角に交わる平面領域により形成されることが可能で、または、第1の平面段領域を傾斜した平面、または曲面により、第2の平面段領域に接続させ段の立ち上がり部分(すなわち移行面)を傾斜させることが可能である。平面段の領域はカバーの一部、本体の一部または両方とほぼ平行であり、それを境界する通路の多様な狭径(例えば、2、4、10または1000)と(バルク流体の流れの方向における)長さを等しく保持する必要がある。それが境界する通路の多様な(例えば、10、1000、10000の)狭径と、平面領域(バルク流体の流れに対して垂直方向で)の幅を等しくする必要がある。
【0010】
装置の組立ておよび操作において、段階状の通路の寸法を維持するため、装置は間隙に1若しくはそれ以上の支持体を有する可能性がある。支持体の距離は完全に分離エレメント、本体またはカバーの間にまで及ぶ、または(例えば、装置の組立ておよび締め付けにおいて)エレメントの変形の余地を提供するためその距離の一部にのみ及ぶ可能性がある。
【0011】
本開示には粒子を分離する方法が含まれる。方法には装置の注入口領域に粒子を導入することが含まれ、それらを段階状の通路を通し(すなわち、内在性細胞運動性、または、誘導された流体の流れの影響を受け)排出口領域に移動させる。少なくともいくつかの粒子は通路における段により排出口領域に進入するのを阻害され、粒子が結果的に分離される。段階状の通路における全ての段を通過することが可能な粒子は、排出口領域から回収することが可能である。段階状の通路において少なくとも1つの段を通過することができない粒子は、それらの移動を阻害する段から上流の一部の通路から回収することが可能である。例えば、装置(例えば、カテーテル)を段階状の通路に挿入することにより、流体の流れを逆流させ、トラップされた細胞を通路から洗い流すことにより、または、装置を分解し、トラップされた粒子を直接回収することにより、トラップされた粒子を回収することが可能である。トラップされた粒子が細胞である場合、段階状の通路において溶解させ、溶解産物をいずれかの方向の流れにより回収することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
添付の図面とともに読む場合、以下の本発明の詳細な解説のみならず、前述の概要はよりよく理解される。これらの図面は本開示を例示する目的で含まれる。本開示は示される正確な配置および手段に限定されるものではない。
【図1A】図1は、図1Aおよび1Bから成る。図1Aは、1つの実施形態における装置の一部の正面図である。
【図1B】図1Bは図1Aに示す平面1Bに沿って切り取られた装置の部分垂直断面であり、間隙11を定義する本体10を示す。カバー12は前記本体10とともに流体密封を形成している前記間隙11全域にわたり配置される。第1の段61および第2の段62を有する分離エレメント14は、注入口16と排出口18との間の前記間隙11の中に配置される。第1の段61は、幅広表面31および移行面41を有する。第2の段62は、幅広表面32および移行面42を有する。
【図2A】図2は、図2A、2Bおよび2Cから成る。図2Aは、内部の支持体構造20を有する1実施形態における装置の一部の正面図である。
【図2B】図2Bは、前記図2Aに示す平面2Bに沿って切り取られた装置の部分垂直断面である。
【図2C】図2Cは、図2Aに示す平面2Cに沿ってとられた装置の部分垂直断面である。
【図3A】図3は、図3Aおよび3Bから成り、第1および第2の通路の配置が第1および第2の通路を通してほぼ一定の直線流速を成し遂げるのに選択することが可能な、本明細書において説明する装置の構成を図示する。図3Aは、各々の通路の幅が注入口領域から排出口領域までの方向で増加する一連の通路の正面図である。
【図3B】図3Bは、図3Aに示す平面3Bに沿って切り取られた一連の通路の垂直断面であり、各々の通路の高さは注入口領域から排出口領域までの方向で減少する。
【図4】図4は、段の長さ「l」、高さ「h」および幅「w」を示し、段を通過したバルク流体の流れ「BFF」の方向を示す分離エレメントの一部の斜視図である。
【図5】実施例2本明細書において説明するような図5は、組み立てられた装置のカバー12の正面図を示し、適切に組み立てられた装置における光パターンを表すカラー画像である。
【図6】図6は、前記カバー12、基部10および実施例3および4において本明細書において説明する実施例において用いられる装置の前記分離エレメント14の、第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、および第8の段(61−68)の相対的な配置を図示する略図である。流体の流れの方向は「D」として示す。
【図7】図7は、胎児様細胞を検出した実施例4において、本明細書において説明する実施例の分離領域の中におけるおよその位置を示す地図である。排出口領域」と称した相対的垂直位置の割合はカバーから段までの距離が4.2および4.4マイクロメートルを有する段が位置するカセットの割合とほぼ一致し、「注入口領域」と称した相対的垂直位置の割合はカバーから段までの距離が5.2および5.4マイクロメートルを有する段が位置するカセットの割合とほぼ一致する。
【図8A】図8は、図8Aおよび8Bから成る。図8Aは、1実施形態の膜81の一部の正面図である。
【図8B】図8Bは、図8Aの平面8Bに沿って切り取られた膜81の垂直断面の部分の拡大図である。この特定の実施形態において、膜81は多孔性であり、片側がコーティングされており、従って図8Bは、膜81およびコーティング83を通って延長している細孔82を示す。図8に示される実施形態において、前記コーティング83は膜81の片面に適用されて(ただし、他面には適用されない)、細孔82の中に延長せず、細孔82を塞がない。
【図9】図9Aは、前記本体10と前記カバー12との間に挿入された膜81を含む図2Aで示したタイプの装置の平面9Aに沿って切り取られた垂直断面である。内部の支持体20は、装置の範囲内で膜81の変位量のレベルを均等にするのに役立つ。内部の支持体20もまた前記間隙11を定義するのに役立ち、前記間隙11のサイズの制御を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は通路を通過する能力に基づき粒子を分離する装置に関するものである。装置における分離エレメントにより定義された段階状の通路を通して粒子(例えば液体またはガス状の流体において浮遊する粒子、または真空中の粒子)を移動させる。段階状の通路には直列に流動的につながる少なくとも2つの通路が含まれ、各々の通路には狭径が存在する。流体におけるほとんどまたは全ての粒子は第1の通路へ移動することが可能であるが、粒子のいくつかのみが第2の通路を通り移動することが可能である。最終結果として、他の粒子は第1の通路の中といったような装置内に残留するが、いくつかの粒子は全ての段階状の通路を通り移動することが可能となる。粒子の分離はこのように達成される。例えば、粒子の挙動に、流体の流れ、重力、振動またはこれらの任意の組合せにより刺激を与えることが可能である。
【0014】
障壁を通過することが可能な粒子を、障壁の通過が不可能、通過能が低い、または通過速度が遅い粒子から分離するために、膜または他の半透性または浸透可能な障壁を装置と組み合わせ用いることが可能である。本実施形態において、通路を通過するそれらの能力および膜を通過するそれら両方の能力に基づき粒子を分離するのに、装置を用いることが可能である。望まれる粒子の回収、分離またはその両方ともを向上させるために特異的に興味のある粒子と結合する試薬で(膜を含む)装置の1若しくはそれ以上の部分を被覆することが可能である。
【0015】
定義
本明細書において用いられるように、次の各々の条件は本章おいてそれに関連した意味を有するものである。
【0016】
図4における長方形の段について図示したように、段(または段により境界される通路の、図4の「l」)の「長さ」は、段に相当する通路を通しバルク流体の流れの方向に段が伸びる距離を示す。
【0017】
図4における長方形の段について図示したように、段の平面(すなわち、上流)に先行する段の「高さ」(図4における「h」)は分離エレメントから離れる方向で延びる距離を示す。
【0018】
図4における長方形の段について図示したように、段の「幅」(または段により境界される通路の、図4の「w」)は、段を越えるバルク流体の流れに対して垂直である方向で伸びる距離を示す。
【0019】
通路の「狭径」とは分離エレメントの段の平らな部分と、それと対向し、平行である、装置の表面(例えば、間隙に面するカバーまたは本体の表面)との間の距離を示す。例えば、通路を通すバルク流体の流れの方向に対して垂直に切り取った面が長方形の横断面を有する通路では、通路の狭径は段の各々の平面に対し直角に交わる平面と装置の対向する面の平面との間に広がる平面における直線距離である。さらに例として、図1Bにおける通路51および52の各々の「狭径」は、各々の段の面31および32とカバー12と最も近い面の間の最小距離である。
【0020】
通路の「流れの範囲」は、通路における流体の流れの方向に対し垂直な平面でとった通路の断面である。
【0021】
詳細な説明
本開示は少なくとも2本の通路を通し流れるそれらの能力に基づき粒子を分離する装置に関するものであり、(下流の)第2の通路52が(上流の)第1の通路51より幅が狭くなっている。 装置には本体10およびカバー12により作られる間隙11に配置されている分離エレメント14が含まれる。間隙11の中において分離エレメント14は間隙の注入口領域15を間隙の排出口領域17から分断させる。注入口および排出口領域は分離エレメント14および本体10およびカバー12の一方または両方により定義される段階状の通路により流体連結にある。分離エレメントにおいて形成される段は、第1および第2の通路を定義する。注入口領域および排出口領域への流体の供給および抜き取りを容易にするため、装置は、選択的に間隙11の注入口領域15に流動的につながる注入口16、および、間隙11の排出口領域17に流動的につながる排出口18を有する。
【0022】
1つの実施形態において、装置には間隙11と流体連結にあり、もう一方のタイプの粒子と比較し、望ましいタイプの粒子に選択的に浸透する膜または他の障壁81が含まれる。また、膜または他の障壁81は、もう一方のタイプの粒子と比較し、望ましいタイプの粒子と選択的に結合するそれに付着した試薬を有する可能性がある(ことができる)。分離エレメント14および膜または他の障壁81の両方を含む装置において、分離エレメントおよび膜または他の障壁81は、同じ粒子タイプ(すなわち、望ましい粒子の分離を促進する2つのエレメント)または異なる粒子タイプ(すなわち、お互い異なるタイプに含まれる粒子の混合物から複数の粒子タイプの分離を促進する2つのエレメント)の分離を促進するため選択される。
【0023】
操作において、注入口領域15の粒子は第1の通路51に移動し、それらが可能である場合2の通路52に移動する。第2の通路52の粒子は、排出口領域17に移動する。第2の通路52に向かい、またはそれに沿って移動できない細胞は、排出口領域17に到達しない。このように、排出口領域17に到達することができる粒子は、排出口領域17に到達することができない粒子から分離される。2つの粒子の集団を装置から別々に回収することが可能である。例えば、排出口領域17から抜き取られる液体の流れで、排出口領域17の粒子は、(例えば、排出口により、または排出口領域17に挿入されるカテーテルにより)回収されることが可能である。排出口領域17へ向かい第2の通路52を通過することができない粒子は、それらを逆方向で、第1の通路51を通り注入口領域15方向にフラッシングすることにより回収することが可能である。そのような粒子は注入口領域15から抜き取ることが可能である。 あるいは、排出口領域17へ向かい第2の通路52を通過することができない粒子は、装置中に残される、または装置を分解することにより回収することが可能である。 第1の通路51または第2の通路52に入ることができない粒子は注入口領域15から回収される。
【0024】
本明細書において説明する装置は多種多様な応用において使用することが可能である。粒子を粒子の混合集団から分離することに加え、例えば、本装置は分離した粒子集団の1若しくはそれ以上を同定、または操作する応用において用いることが可能である。これまでに粒子分離のために使われてきた装置と比較して、装置の構造と操作は分離する粒子による目詰まりに抵抗性を持つ。都合のよいことに、本明細書において説明する装置を用い分離する粒子は、液体またはガス状の流体中、または全く流体のない(例えば、真空状態)において浮遊しているものである。さらにまた、粒子が浮遊する任意の流体は装置を通り流れる、またはそのまま動かず停滞する可能性がある。つまり、それらが浮遊する任意の流体が装置のスペースを通り移動が起こるか否かにかかわらず、粒子を分離することが可能である。このように、例えば、乾燥粒子の混合物の粒子は、混合物を注入口領域に提供し、(重力が分離領域に粒子を引き入れる傾向があるように、正しい位置に置いた)装置を振動または振とうすることにより分離することが可能である。流体中の粒子の懸濁液がの中止が好ましくない、または不必要であると考えられる状況(例えば、植物の種を他の植物の種のような他の粒子状物質から分離する場合)において、そのような使用は効果的である。
【0025】
装置の部品と部分は、これより個別に詳細に説明する。
【0026】
本体およびカバー
装置はそれらの間で間隙11を定義する本体10およびカバー12を有する。一部が分離エレメント14により定義される間隙11の一部は段階状の通路である。段階状の通路はまた本体10の表面、カバー12の表面、またはこれらの組合せにより定義され、それは分離エレメント14の段階状の表面31および32と対向する(すなわち、表面が作る表面の間で広がる内腔(すなわち、段階状の通路)のような通路における、分離エレメント14の段階状の通路を形作る平面が接する本体10および/またはカバー12の段階状の通路を形作る平面のような配置において)。装置の構造を単純化するために、カバー12または本体10の凹所、平面に囲まれている陥凹部分で作られる不可欠な部分である分離エレメント14に、段階状の通路を定義するほとんどまたは全ての表面を形成、または機械加工することが可能であり、本体10とカバー12の平面との間に接触する段階状の通路を作るため、本体10またはカバー12の対向する表面がもう一方の平面のみである必要がある。
【0027】
本体10およびカバー12(の一部として作成、または部分的に機械加工した)分離エレメント14は、その1つと望ましくは一体的である。本実施形態において、装置の作動する部分は、基本的に2つの部分――カバー12およびその一部として分離エレメント14を有する本体10、または本体10およびその一部として分離エレメント14を有するカバー12――から成る。分離エレメント14が配置される間隙11に本体10およびカバー12が壁を作りそれを定義するため、本体10およびカバー12のうちどちらが分離エレメント14を有するのかは重要ではない。好ましくは、2つの部品の組立てができるように間隙11は平面の交合により密封され、分離エレメント14はこのように密封された間隙11の中に配置される。本実施形態では、間隙11および分離エレメント14の両方を有する部品の1つは、その中で形成、または機械加工され、またはその中で形成、または機械加工された間隙11を有し、間隙11の中に置かれた、組み立てられた、または付着された分離エレメント14を有する。
【0028】
間隙11において段階状の通路を定義する本体10および/またはカバー12の部分および間隙11を密封するために対になる本体10およびカバー12の部分を除き、本体10およびカバー12の形状は決定的ではない。段階状の通路を定義する本体10および/またはカバー12の部分の必要条件は、本開示の段階状の通路に関する章において論じられる。装置の組み立てにおいて、間隙11を密封するために対になる本体10およびカバー12の部分は、本体10およびカバー12により境界される任意の開口部(例えば、注入口または排出口)を持つことが許され、それらが間隙11を密封する必要があるということ以外はどのような特定の形状または場所条件も有さない。密閉は本体10とカバー12の関連した部分との間が直接接触することにより提供されることが可能である。あるいは、または加えて、接着剤、グリース、ガスケット、ワックスなどのようなシーリング剤を本体10およびカバー12の密封表面に使用することが可能である。その操作において、密封は装置の範囲内で発生する予想された内圧に耐えられることが必要である。例えば、多くの実施形態において、ゲージ圧25重量ポンド毎平方インチ(psig)より大きい内部液圧は通常ではなく、この圧力で流体の漏れを防止することができる密封がそのような実施形態に対し十分である必要がある。装置を用い生物学的細胞を分離する実施形態におけるより典型的な操作圧は、>0−15psigの範囲の中にあるものと予想される。いくつかのの実施形態で、装置を排出口領域に対し陰圧(すなわち、真空)で使用し操作することが可能であり、そのような実施形態において、密封は装置の外から間隙への空気または液体の通過を防ぐ必要がある(無論、注入口領域以外)。
【0029】
本体10およびカバー12の残りの部分のサイズと形状は決定的でなく、例えば、装置の製造、取扱いまたは操作を容易にするのに選択することが可能である。 例として、(例えば、顕微鏡スライドのためのカバー・スリップのような)かなり平らなカバー12を有する装置において、本体10は形成、または機械加工した間隙11および分離エレメント14を有することが可能であり、間隙11の外の本体10の部分は固定形状のフレームまたはホルダーにおける固定に適応するよう形成または機械加工される可能性がある。このように、例えば、本体10はその上にクランプ、または作成し、適用し、または機械工作した他の機構のためのフランジ、ハンドル、ねじ穴、滑らかな穴、模様またはインデントを有することが可能であり、そのような機構は、装置を操作する際、装置における本体10の再現性のある配向、または本体10における間隙11および分離エレメント14の一方または両方を機械加工するための装置において本体10の再現性のある配向を容易にすることが可能である。
【0030】
本体10、カバー12、またはその両方により、流体がそれを通し間隙11に導入されるまたは間隙11から抜き取られる開口部を定義することが可能である。 例えば、本体10は、注入口領域15に流動的に通じている注入口16を定義する。注入口16に導入する流体は注入口領域15から流入することが可能であり、(間隙が密封されるため)すでにそこにある段階状の通路に入り、そして、それから第1の通路51および第2の通路52に入り、そして排出口領域17に入り流体を置換する。流体中で浮遊する粒子はこれらの領域および通路の1つにおいて下流領域または通路に運び込まれることが可能であり、提供された粒子は 中間に存在する通路または領域を通り流れることが可能である。同様に、本体10で形成された排出口18に至るまでの排出口領域17からの流体の抜き取りが、排出口領域17と流体連結した通路から、およびそれと流体連結した通路および領域から流体の流れを誘導することを可能にする。
【0031】
開口部位はカバーまたは本体を通して延びる単純な穴であり、また開口部位に流体の流れ装置の接続を容易にするために、それらはそれらに関連した材料固定具(バリ、リング、ハブまたは他の接続金具)を有することが可能である。本体10、カバー12またはその両方は間隙11の注入口領域15において注入口16を定義し、間隙11の排出口領域17における排出口18を定義し、または、注入口16と排出口18の両方を定義する。流体は、注入口16を通して注入口領域15に導入される。流体は、排出口18を通して排出口領域17から抜き取られる。注入口領域15への流体の連続導入、および排出口領域17からの流体の連続した抜き取りまたは排出は、装置を通し流体に連続流を生じさせる可能性がある。同様に、排出口領域17からの流体の連続した抜き取り、および同時に起こる注入口領域15への流体の流入または導入は、連続流を生じさせる可能性がある。
【0032】
間隙
本体10およびカバー12はそれらが組み立てられるとき間隙11を形成する。間隙11は、注入口領域15、排出口領域17、および注入口領域15と排出口領域17との間に挿入された分離領域を有する。分離エレメント14は分離領域中に配置され、本体10、カバー12または両方ともと共に、段階状の通路を定義する。段階状の通路には、少なくとも第1の通路51よび第2の通路52が含まれ、順に流動的につながれ、分離エレメント14における段により定義される。段階状の通路は任意の数の追加的な段を含むことが可能であり、それら各々は間隙において追加的な通路を定義することが可能である。
【0033】
装置の作動において、少なくとも、間隙11の注入口領域15、排出口領域17および段階状の通路は、流体で満たされる。 好ましくは、作動の間、全ての間隙11が流体で満たされる。 1つの実施形態において、注入口領域15および排出口領域17をつなぐ唯一の流体管路は段階状の通路である。それらがサイズ(すなわち、狭径)または第1の通路51の形状により排除されない限り、注入口領域15に存在する粒子は入ることができ、段階状の通路の第1の通路51を通過することが可能である。それらがサイズ(すなわち、狭径)または第2の通路52の形状により排除されない限り、あるいは、第1の通路51を通してのそれらの移動がサイズ(すなわち、狭径)または第1の通路51の形により妨げられない限り、第1の通路51に存在する粒子は第2の通路52に入ることが可能である。第2の通路52を通してのそれらの移動がサイズ(すなわち、狭径)または第2の通路52の形状により妨げられない限り、第2の通路52に存在する粒子は排出口領域17に入ることが可能である。装置を通した流体の流れ、細胞の固有の運動性またはその2つの組合せにより、装置の範囲内の粒子の移動を誘発されることが可能である。時間経過とともに、第1の通路51に入ることができない粒子は、注入口領域15において分離される、 第1の通路51に入ることができるが、第2の通路52に(または第1の通路51に自由に移動はできるが)入ることができない粒子は、第1の通路51で分離され、第2の通路52に入ることができるが、それを通過し自由に移動できない粒子は、第2の通路52において分離される、そして、第1の通路51および第2の通路52の両方を通り移動することができる粒子は、排出口領域17において(または排出口領域17から抜き取られる、または放出される流体において)分離される。
【0034】
このように分離される粒子は、(本明細書において説明するいくつかの方法を含む、任意の様々な既知の方法を用い)それらのそれぞれの場所から回収することが可能である。例として、カテーテルを装置の領域または通路(例えば、注入口領域15または第1の通路51)に挿入することができ、カテーテルの内腔で吸引を誘導することにより、その中に存在している粒子を抜き取ることが可能である。さらに例として、注入口領域15で集められる、抜き取られる、または放出される流体で注入口領域15、第1の通路51および第2の通路52の1若しくはそれ以上に存在する粒子を集めるのに、バックフラッシュ(すなわち、注入口領域15の方向における排出口領域17からの流体の流れ)が用いられる。また更に例として、このために注入口領域15と流体連結で提供される開口部を用い、注入口領域15に存在する粒子は、(注入口領域15から段階状の通路を通り排出口領域17へ向かう方向のバルク流体の流れと比較して)注入口領域15の全域を通過する流体流れにより集められる。
【0035】
分離エレメント
本体10およびカバー12、および間隙11の注入口領域15と排出口領域17との間により定義される間隙11に位置している分離エレメント14は、段階状の通路の一部を定義する表面を有する装置の一部である。本体10およびカバー12の一方または両方は段階状の通路の残りの境界を定義し、それは注入口領域15および排出口領域17を流動的につなぐ。分離エレメント14は少なくとも2つの段を含む形を有し、段は第1の通路51および第2の通路52の各々の境界の少なくとも1つを形成する。本体10およびカバー12の一方または両方は、第1の通路51および第2の通路52の残りの境界を定義する。
【0036】
装置の作動において、段階状の通路は、粒子が移動する、流体が流れる、またはその両方の開口部である。分離エレメント14は段階状の構造を有し、それは段階状の通路の少なくとも1つの側面の段階状の形状を定義する。分離エレメント14は、少なくとも2つの段、第1の段61および第2の段62を有する。第1の段61は段階状の通路における第1の通路51の境界線を定義する。第2の段62は第2の通路52の境界線を定義し、第2の通路52は第1の通路51より小さな狭径(例えば図2Bを参照)を有する。第1および第2の通路は直列に流動的につながれ、装置の通常の操作において、第2の通路52は第1の通路51の下流に存在する。装置が組み立てられる場合、注入口領域15から排出口領域17まで移動させるために、流体は段階状の通路の第1および第2の通路の各々の中を流れる必要がある。
【0037】
分離エレメント14は、本体10およびカバー12の少なくとも1つと関連する。分離エレメント14は、本体10またはカバー12の表面に付随する。本体10およびカバー12が組み立てられる場合、分離エレメント14はむしろ本体10またはカバー12の1つと一体である可能性があり、分離エレメント14の段階状の表面が、段階状の通路の境界で形成される本体10およびカバー12の表面の反対にもたらされる。あるいは、分離エレメント14は、カバー12または本体10とは別の部品である場合がある。本体10、カバー12および分離エレメント14が別々の部品である場合、装置が組み立てられるときに分離エレメント14がカバー12と本体10との間での圧縮により適当な状態に保たれるように部品を望ましい大きさに形成する。
【0038】
装置(例えば、第2の通路52の中で)の範囲内の液圧は流体が接触する全ての表面にかかり、そのような液圧は変形可能な材料において湾曲、または膨張を誘導する。さらに、それを組み立てた状態で(例えば、本体10の一部に対してカバー12を圧迫する1またはそれ以上のクランプで)しっかり固定するために装置の部品に印加される外圧はまた、湾曲または膨張を装置の1若しくはそれ以上の部品をつくる柔軟な材料において誘導する。分離エレメント14および本体10およびカバー12の少なくとも1つにより定義される第2の通路52が操作中の装置による粒子分離の一次機構であるので、第2の通路52の狭径が厳密に第2の段62の幅方向に比較的一定に保たれることが好ましい。
【0039】
例として、境界を有する第2の通路52は、分離エレメント14の第2の段62、および本体10およびカバー12の一方または両方により定義される。本体10およびカバー12を一緒に固定することは第2の通路52の境界線を作る部分で外力がかかる可能性があり、それにより、部品の湾曲が誘導される傾向となり、第2の通路52の狭径が狭まる。そのような湾曲および狭窄は、第2の通路52の内腔の中に1若しくはそれ以上の支持体20を含むことにより減少、または排除することが可能である。支持体20は、例えば、第2の通路52の境界線を本体10またはカバー12の対向する面の方向に定義する分離エレメント14の表面から延びる棒状の拡張である可能性がある。あるいは、長方形の横断面を有する拡張は、支持体20を形成する可能性のある分離エレメント14の対向する面の方向で第2の通路52の境界を定義する本体10またはカバー12の表面から離れて延びる可能性がある。1若しくはそれ以上の支持体20が平行にまたは順に1若しくはそれ以上の固形のまたは分割された壁を形成するよう配置される可能性があり、そのような支持体は間隙の中で複数の流れ経路を定義することが可能であり、複数の流れ経路がそれらの端の一方または両方で交わる。第3の選択肢として、支持体20は第2の通路52の内腔において分離エレメント14と本体10またはカバー12の対向する面との間の狭径が十分にまたは完全に距離がとられ配置される個別の部品である可能性がある。第2の通路52を定義する分離エレメント14の表面の上、第2の通路52を定義する本体10またはカバー12の表面の上、または両方の表面の上での支持体の衝突は面の湾曲を制限、または停止させ、(例えばカバー12が第2の段62の幅広面32に対し完全に押圧し、望ましい値以下で第2の通路52の狭径を減少させることを防ぐために)支持体20の厚さとほぼ同等、またはより大きい値の狭径を維持させる。
【0040】
支持体20は適切な形態で装置の部分を固定し、装置の寸法の安定性を増加させる。寸法の安定性を増すことにより、支持体20は様々な操作条件(例えば、様々な締め付け圧、または様々な液圧)の下で装置の操作性を促進することが可能で、装置の寿命を延ばすことが可能である。支持体20はまた、本体10またはカバー12の変形、および段階状の通路の第1および第2の通路の1若しくはそれ以上の狭径の変形を防ぐことにより装置の粒子分離の正確さを促進することが可能である。支持体20はまた、第1および第2の通路の外側の間隙11に配置される場合もあり、間隙の高さにまで及ぶ場合がある。そのような支持体20は、第1および第2の通路の外の間隙11の開存性を維持することが可能である。支持体20は支持体20が影響を与える平面において不可欠のものではなく、支持体20が面に付着、(例えば間に入り、表面および支持体の部分を結合する接着剤を用いた)接着、または融合することはない。
【0041】
支持体20はまた別に、間隙11(図2Aの支持体20を参照)の中における単一の流体の流れ経路を2若しくはそれ以上の流体の流れ経路に分割することが可能である。図2において表される実施形態において、装置は平らなカバー12、カバー12とかみ合う平面を有し、注入口領域15および排出口領域17を有する間隙11を定義している本体10、および第1の段61および第2の段62を含む分離エレメント14から成り、4つの支持体20と共にそれらは不可欠である。分離エレメント14が注入口領域15と排出口領域17との間で間隙11に配置される場合、(図2Bおよび2Cにおいて表されるように)支持体20の高さは間隙11の深さと同等であり、本体10の平面と支持体20の上面がほぼ同一平面上となる。カバー12を本体10の平面に対して組み立てる場合、支持体20の上面は間隙11を定義するカバー12の表面と接し、それにより、カバー12の変形から生じる(本体10の平面にぴったりくっつきそれを保持するためカバー12に加えられる)締め付け圧を防ぐ。カバー12を歪める締め付け圧が間隙の内部に向かう方向にカバー12に加えられたとしても、支持体20によりカバー12に提供される支柱(筋かい)は第2の通路52の狭径および第1の通路51の狭径を維持する働きをする カバー12が1若しくはそれ以上の支持体20と融合、または接着する場合、図2において示される装置はまた、装置の範囲内での液圧により誘導されるカバー12への外向きの(すなわち、間隙11から離れる方向への)湾曲が生じる可能性のある第1の通路51および第2の通路52の狭径の拡大に抵抗することが可能である。
【0042】
支持体20の形状、輪郭、寸法および配置は決定的ではない。例えば、支持体20は長方形、偏菱形、円形、楕円、または翼形の横断面を有することが可能である。支持体20は(図2で示される支持体20が行うのと同様に)流体の流れを誘導する壁を作成することに加え、流体の流れ通路で乱流を誘発し、混和を誘導することが可能であり、あるいは、そのような支持体の下流にすばやい粒子の置換を誘導する。例として、丸みを帯びた横断面を有し、第2の通路52の最先端(すなわち、最上流の)の近辺に配置された支持体は第2の通路52の最先端において乱流を誘導することが可能であり、一方ではぶつかり合った粒子が第2の通路52を閉鎖する可能性があり、それにより第2の通路52を通し流体の流れを強化する。
【0043】
分離エレメント14は、本明細書において議論される段階状の通路以外の流体の流れ経路を定義することが可能である。そのような流体の流れ経路は、例えば、注入口領域15と段階状の通路との間で、または段階状の通路と排出口領域17との間で延長することが可能である。さらに例として、分離エレメント14の第1の段61により定義される第1の通路51は、(すなわち、直接第2の通路52に通じている第1の通路51よりむしろ)分離エレメントにより定義される流体の流れ経路である分離エレメント14の第2の段62により定義される第2の通路52と接続することが可能である。
【0044】
いくつかの応用においては、注入口領域15に存在する粒子のサンプルがほぼ同時に複数の段階状の通路の各々に入ることが重要である。図2の中で示すそのような装置が使用される場合、注入口16により注入口領域15に提供する粒子が注入口16(図2Aにおける中央の通路)に最も近い段階状の通路に到着する後に、最も外側の段階状の通路(図2Aにおける最一番左および一番右の通路)に到着することは明らかである。図2中で示す装置に関して、分離エレメント14は、注入口16に配置される壁またはチャンネルを定義することが可能で、(各々の流れ経路に沿った流れの直線距離が等しいような)個々の段階状の通路の各々へと続く様々な経路により延ばすことが可能である。このように、注入口16と中央の流れ通路との間で広がる流れ経路は、注入口16と最も外側の流れ経路との間で広がっている流れ経路と比較してカーブするか、湾曲られるか、または注蛇行する。結果として、流れの直線経路の長さが等しいため、流れ経路の各々の注入口の終点に提供した粒子が、流れ経路の段階状の通路の終点にほぼ同時に達することとなる。
【0045】
分離エレメント14には、第2の段62より注入口領域15により近い(段階状の通路に沿って)第1の段61を含む少なくとも2つの段が含まれる。流体中に漂う浮遊する粒子は、 第1の通路51より小さな狭径を有する第1の通路51および第2の通路52を含む段階状の通路の中を流れる。流体におけるほとんどまたは全ての粒子は第1の通路51内に流入することができるが、第2の通路52の中には粒子のいくつかのみが流入することができる。他の粒子は第1の通路51の中といったような装置の範囲内で保持されるが、最終的な結果として、流体中のいくつかの粒子は全ての段階状の通路の中を流れることが可能である。粒子の分離はこのようにしてなされる。
【0046】
分離エレメント14の段は、様々な任意の形状を有することが可能である。1つの実施形態において(例えば、図1の中で表される装置において)、第1の段61および第2の段62は、従来の「階段」段構造、すなわち、直角で交差する2つの平面表面を有する。つまり、第2の段62の移行面42および第2の段62の幅広面32がそうであるように、第1の段61の移行面41および第1の段61の幅広面31は直角に交わる。あるいは、例えば、図3の中で表されるように、段の移行面および幅広面は90〜180度の角度で交わる。段の移行面および幅広面はまた0〜90度の角度で交わり、突出部を形成する。
【0047】
突出を形成する段および90度近くの角度で交わる面を有する段は、段の面が交わる末端の近辺で、乱流を誘導することが可能である。そのような乱流は別の面では段の幅広面および本体10とカバー12の対向した面との間で通路を閉鎖する可能性がある粒子を取り除くことが可能であり、この乱流はそれにより通路を詰まらせることを妨げることが可能であり、装置を通し流体の流れを強化すること(および、液圧低下を減少させること)が可能であり、それは有益な影響である。さらにまた、段が突出を形成し、段の高さが十分に高い場合、一方では通路を詰まらせる可能性がある粒子は、段が通路の目詰まりを減少させ装置の性能を向上させることもできるような突出により形成される凹部に存在することが可能である。比較的大きなおおよそのサイズの範囲内において、サンプル中の望ましくない粒子が予測することができ、段階状の通路を通る流体の流れを有意に妨げない場所および数量で望ましくない粒子を捕獲するために、そのような粒子を捕獲、または排除するよう設計された1若しくはそれ以上の段を装置に組み込むことが可能である。
【0048】
90〜180度の角度で交わる、移行面および幅広面を有する段は、様々なサイズを有する粒子の通路を塞ぐことが可能である(すなわち、それらは段の幅広面により定義される通路の狭径と段から上流のスペースの狭径との間の中間のサイズを有する)。段の移行面の異なる位置においてわずかに異なるサイズを有する粒子の通路を停止することにより、90〜180度の角度で交わる、移行面および幅広面を有する段は、90度以下の角度で交わる移行面および幅広面を有する段よりも大きな角度において段の幅広面により定義される通路の目詰まりを妨げる場合がある。
【0049】
段の幅広平面により定義される通路を塞ぐ粒子による段を流れ過ぎた流体の目詰まりはまた、段の幅を増やすことにより減少、または避けることが可能である。粒子により覆い隠される流れ領域のみの流体の流れを各々の粒子が塞ぐため、より広い段ではより多くの数の塞いでいる粒子により必然的に目詰まりが生じる。2つの方法のどちらかまたは両方において段の幅を増加させることが可能である。第1には、単に段の線幅(図4の中で表されるように)を増加させることにより、段の幅を増加させることが可能である。第2には、段の直線性(すなわち、真直度)を減少させることにより、段の幅広面および移行面が交わる端の長さを増加させることにより、段の幅を増加させることが可能である。
【0050】
例として、長方形の横断面を有する流路では、チャンネルの真向かいに広がる(すなわち、側面に対し直角で)段は、単にチャンネルの幅と等しい最上流の端の境界の長さを有する。段の形状が半円である場合、半円の中心が半円の最上流の端の下流にあるように広がっている半円の弧で、段の境界の長さは半円の長さと同等であり、それはパイをチャンネルの幅と乗じ、2で割った数字(すなわち、チャンネルの幅のおよそ1.57倍)である。 同様に、円または楕円の弧のような、山形紋のような(すなわち、Vの文字のような)、ジグザグのような、蛇行曲線のような、または不規則な線のような形状をした端を有する段の全ては、長方形の横断面を有する流れチャンネルに垂直に交差して延びる段の境界の長さよりもより長い境界の長さを有する。そのような形状を持つ端を有する段を本明細書において説明する装置において使用することが可能である。
【0051】
第1の段61および第2の段62の面積は決定的ではないが、第2の段62は第2の通路52の境界線を定義し、本明細書において説明するような粒子を分離する働きをする。このような理由のため、前記分離エレメント14の第2の段62と前記対向する本体10またはカバー12によって定義される、前記第2の段62および対応する第2の通路52の面積は、慎重に選択される必要がある。これらの面積の選択に関する基準は、第2の通路52を通過するそれらの能力により分離される粒子の寸法を含む。
【0052】
例として、比較的大きな細胞をサイズの異なる細胞集団から分離する場合、比較的大きな細胞が 第2の通路52に入ることが実質的にできず、その集団のその他の細胞が第2の通路52を通過することができるような第2の通路52の狭径を選択する必要がある。この例では、比較的大きな細胞による第2の通路52の目詰まりを減少、遅延、または回避させるため、サンプル中に存在することが予期される比較的大きな細胞の数に基づき、第2の段62の形状および幅を選択する必要がある。
【0053】
同様に、より大きな流動性を持つ同様のサイズの粒子(すなわち、比較的変形可能な粒子)から限られた流動性の粒子(すなわち、比較的変形しにくい粒子)を分離する場合、両方の種類の粒子が第2の通路52に入ることが可能であるが、比較的変形可能な粒子が、平均して、限られた流動性を持つ粒子より短時間で第2の通路52を通過することが可能であることがわかっている2種類の粒子のサイズにしっかり合う第2の通路52の狭径を選択する必要がある。この例では、各々がほぼ目詰まりを起こすことなく、予想した数の粒子を収めるのに十分な幅および形状を有する複数の第2の通路52を含むことは有利である。この例では、限られた流動性を持つ粒子に比べ短時間で第2の通路52を通過する比較的変形可能な粒子による目詰まりを最小限に抑えるように、各々の第2の通路52が比較的短い長さを有することはまた有利である。
【0054】
装置を用い処理を行うことが予期されるサンプルを考慮すると、第1の段61および第2の段62の各々の幅は(すなわち、本明細書において定義し図4に示すように)、段で予想した粒子の蓄積に基づき選択することが可能である。第2の通路52の狭径に基づき、第2の通路52に入ることができない粒子の割合および数を推定することが可能である。 第2の通路52に入ることができない粒子の平均サイズとこの情報を結合することにより第2の通路52に入ることができない粒子により塞がれそうである段の全長の推定を行うことが可能であり、その予想を適切な段の幅を選ぶのに用いることが可能である。段を過ぎて流れの全体の閉塞を防止するのに望ましい各々の段の幅が選択される。段の幅(および、段により定義される対応する通路)は、通路の狭径よりかなり大きい(例えば、10、1000または100000倍)となるよう選択することが可能である。一例として、母体血液から胎児様細胞を分離する場合、段の幅が対応する通路の狭径のおおよそ少なくとも1000(1千)、および望ましくは10000(1万)倍であることが望ましいものと考えられる。比較的広い段は通路の目詰まりを制限しつつ通路の中において粒子の蓄積を可能にする。
【0055】
いくつかの場合において、第2の通路52に入ることが不可能な粒子が1つの粒子の深さ以下の層を作るように(すなわち、第1の通路51の狭径の方向に)、第1の通路51の狭径を選択することが望ましい。第1の段61の幅および長さはそのような細胞の予想された数を収容できるよう選ぶことが可能である。
【0056】
分離エレメント14の(すなわち、本明細書において定義し、図4に示したように)第1および第2の段の長さは決定的ではなく、実際には本明細書において説明する装置の分離的な機能を提供する(それぞれ、第1および第2の段により境界される)第1および第2の通路の狭径である。段において粒子を蓄積する、または観察することが望まれる状況では、予想、または推定した数量およびサイズの粒子を段において収容するため段の長さを選択することが可能である。装置の分離能力が異なるタイプの粒子が第1の通路51および第2の通路52の一方または両方を通過することができる相対的な率の違いに依存するような例では、段の長さは成し遂げられる分離の程度に影響することが可能であり、より長い段が異なる通過率により生じる分離を促進する。1つの段の長さを増加させることにより、選択した長さの段(同じ狭径を有する通路を定義する各々の段)の数を増加させることにより、または、これらの組合せにより、段の長さを増加させることが可能である。
【0057】
いくつかの実施形態において、平面段領域はカバーの一部、本体の一部または両方ともとほぼ平行であり、それが囲む通路の複数の狭径(例えば、2、4、10または1000)の(バルク流体の流れの方向での)長さは同等である必要がある。それにより囲まれる通路の複数の狭径(例えば、10、1000、または10000)の(バルク流体の流れに対して垂直な方向での)平面領域の幅は同等である必要がある。本明細書において説明する装置の実施例のいくつかの例では、平面領域の(バルク流体の流れに対して垂直な流れの方向における)幅の比率は、3つの別々のカセットの設計において、最も開けた終点での1318から最も狭い終点(排出口)での805、最も開けた終点での659から最も狭い終点(排出口)での967、最も開けた終点での537から最も狭い終点(排出口)での725で変動する。各々のグラデーションの中で唯一段の幅と高さの率が増加したのはカセットの注入口から排出口側面へ向かう66.7においてである。この高さに対する幅の比率はカセットを通過させることが求められ、カセットの範囲内で獲得することが望まれる粒子の数の比率に依存し変化する。本明細の例4に記載されているように、本明細書に説明するタイプの装置により捕えられる(白血球+赤血球)に対する胎児細胞の比率は、非常に高く、適切な段の高さおよび長さの選択が母体血液サンプルにおける全ての有核血球の99.99%を超える通路の通過を可能にする。
【0058】
装置の第1の段61および第2の段62に関して本明細書において説明したが、追加的な段(例えば、3、4、10または100段)は装置に含まれ、各々の段が特徴的な狭径を有する段階状の通路の中で通路を定義する。
【0059】
装置には、単一の分離エレメント14または複数の分離エレメント14が含まれる可能性がある。例として、装置が第1の段61を定義する第1の分離エレメントおよび第2の段62を定義する第2の分離エレメントを含むことが可能である。本体10に全体が含まれる場合、両方の分離エレメント14が間隙11の中にあり、間隙11の注入口領域15と排出口領域17との間に入り、および同じ段階状の通路における段を定義する限り、第1および第2の分離エレメント14は本体10の異なる部位に配置される可能性がある。あるいは、両方の分離エレメントが間隙11の中にあり、間隙11の注入口領域15と排出口領域17との間に入り、および同じ段階状の通路における段を定義する限り、第1の段61を定義している分離エレメントは本体10と一体化している(または付随している)可能性があり、および第2の段62を定義している第2の分離エレメントはカバー12と一体化している(または付随している)可能性がある。同様に、同一の条件が満たされるならば、2つの分離エレメントが別々の部分であることが可能である。
【0060】
分離エレメント14は単一の材料から構築される可能性があり(および本体10およびカバー12の1つと一体化である可能性があり)、または材料の複数の部分から構築される可能性がある。例として、図1の中で表されるもののような装置の分離エレメント14が材料の2つの長方形の棒(各々の対がその他の2対に直角に配置される3対の平行面を有する固形)から形成されることが可能であり、1本の棒を間隙11における本体10の平坦部分上に置き第1の段61を形成させ、第2の棒を第1の棒の上に置き第2の段62を形成させる。
【0061】
通路の配置
少なくともいくつかの粒子がその段により定義される通路を通り抜けることが可能であり、少なくともその他のいくつかの粒子がその段により定義される通路を通り抜けることが不可能であるというような、各々の段の配置を選択する必要がある。剛体粒子が通路を通り抜ける能力は、粒子の特徴的な寸法に依存する。剛体粒子は、粒子の短径より低い高さを有する通路を通り抜けることが不可能である。剛体粒子は粒子の長径より高い高さを持つ通路を通り抜けることに関してはあまり抑制されない。剛体粒子はその短径より高い高さを有する通路を通り抜けることが可能であるが、その長径より低い場合は不可能である。しかし通路は少なくともいくらかは粒子が通るのを抑制する。
【0062】
変形可能な粒子(例えば、生物学的細胞、ガス泡または穀物)の通路を通過する能力は、剛体粒子の能力と同様に、その特有の寸法に依存する。そのうえ、粒子が通路を通り「割り込む」ように変形することができる範囲で、変形可能な粒子は粒子の短径よりさらに短い狭径を有する通路を通過することが可能である。この能力は粒子の堅さ、通路のサイズ、および粒子に対してかかる液圧に依存する。これらの数量が不明、または予想できない場合、そのような粒子の所定のサイズの通路を通過する能力を決定、または推定するために、経験的なデータを集積することが可能であり、本明細書において説明する装置の第1および第2の通路の適切な径を選択するのにそのような経験的なデータ(実験によるデータ)を用いることが可能である。
【0063】
本開示のいくつかの部分において、長方形の横断面(バルク流体の流れの方向に対して垂直でとられるような横断面)を有する流体通路の実施例について述べられている。本明細書において説明する装置の流体通路は、そのような直角チャンネルに限定されるものではない。流体通路の壁は、お互いに、および本体10、カバー12および分離エレメント14の1若しくはそれ以上が垂直である可能性がある。壁は、同様にその他の配置を有することが可能である。1つの実施形態において、流体通路は(丸みを帯びた先端を有する回転するドリルの錐で材料の除去により作成した通路のように)曲線的なものである。同様に、流体通路は一方(例えば、本体10に作成した場所)で曲線的であり、もう一方の側面(例えば、平らなカバー12により境界される場所)で平らである可能性がある。
【0064】
剪断応力の減少
流体剪断応力は生物学的細胞のような変形可能または壊れやすい粒子を阻害することが可能である。したがって装置がそのような粒子を処理するのに用いられる場合、装置内の流体剪断応力が軽減されることが望まれる。流体チャンネルの構造が変化するような部位、直線流速が急速に変化する流体チャンネルの位置において、かなりの流体剪断応力が生じる可能性がある。装置内で直線流速を増加、減少、または一定に維持させるため、流体チャンネルの配置(配置)が選択される。直線流速を増減させることで流体剪断応力が生じる。他の種類の粒子の内の数種類の粒子を破裂させる、変形させる、または破壊するのに、流体剪断応力のレベルは、選択可能である。例えば、壊れやすい粒子を破砕する流体剪断応力を誘導することにより、耐久性のある粒子を同じサイズを有する壊れやすい粒子から分離することが可能である。壊れやすい粒子の断片は第2の段62を通過し排出口領域17内に流入するが、耐久性のある粒子は通路で維持される。同様に、ほぼ一定の直線流体速度は、適切な流体チャンネル寸法を選択することにより装置を通し(または少なくともその段階状の通路中を通し)て維持することが可能である。
【0065】
流体の流れの方向に関する段階状の通路の断面積が増加、減少、または一定のままとなるように、本体10、カバー12および分離エレメント14を形成することが可能である。段階状の通路の断面積は装置における流体の圧力および流動速度に影響を及ぼす。 分離エレメントが一定の幅を有する場合、第1の通路51の高さおよび幅により定義される断面積は注入口領域15の断面積より狭い。(例えば、それが長方形の断面積である場合、第2の通路の高さおよび幅により定義される)第2の通路52の断面積は第1の通路51のそれより狭い。通路の断面積が減少するに従い、断面積の中を流れる流体の液圧および流動速度は増加する。流体チャンネルの配置は、液圧および流動速度におけるこれらの変化を打ち消すように選択することが可能である。例えば、通路の断面積が一定となるよう通路の高さを減少させるにつれ、長方形の通過面を有する通路の幅を比例的に増加させる。各々の段が傾斜する移行面により分かれる分離エレメント14については、移行面により定義される通路の幅を一定の率で増加させることが可能であり、通路の高さが減少する率と等しい。そのような分離エレメントにより定義される通路を通しての液圧および流動速度は一定のままである。そのような通路の例は図3に示される。
【0066】
言い換えれば、そのような流体流動が装置の幅が狭い通路を通し全ての場所で等しくなるよう、本体10、カバー12および分離エレメント14が形成されることが可能である。例えば、図3(注入口領域15を通した流体流動)に示す装置において、通路は表面41、31、42および32により定義され、排出口領域17は一定である。あるいは、流体流動がバルク流体の流れの方向に増加または減少するように、本体10、カバー12および分離エレメント14が形成されることが可能である。例えば、間隙11の幅を定義する本体10またはカバー12の表面は、注入口領域15または排出口領域17の方に向かうにつれ次第に細くすることが可能である。
【0067】
装置を段階状の通路において流体を使用せず操作する場合、流体剪断応力は、もちろん、懸念事項ではない。ガス状の流体の粘度が液体流体の粘度より有意に低いため、粒子が液体流体中ではなくガス状の流体(例えば、空気)の中で浮遊する場合、流体剪断応力はさらに小さな懸念事項となる。同様に、流体剪断応力は流体粘性を扱う既知の方法において変化するため、異なる粘度の流体に適切に対応した本明細書において説明する装置の修正は通常熟練した技術者にとり明らかである。
【0068】
(段において流体中に浮遊する任意の細胞を含む)段から流体を除去するために、本体、カバーまたはその両方が、分離エレメントの段の表面と流動的に接続している1若しくはそれ以上の流体チャンネルを有する場合がある。さらにまた、段が段における領域または別々の溝を有する場合、流体チャンネルが最も近くの段の別々の溝または領域と流動的にやりとり(連絡)し、溝または段の領域の近くの流体が除去できるよう、カバーまたは本体を機械加工することが可能である。粒子がそれにより捕獲される場合、チャンネルのすぐ近くの比較的少ない量の流体のみを捕獲することにより、そのような領域のチャンネルは精製を改善することが可能である。同様に、本体、カバー、分離エレメントまたはこれらいくつかの組合せは、その中、または表面において選択した段と一致する位置、または 選択した段の溝(水路)または領域と一致する位置で構築した(例えば、エッチング、膜堆積または他の既知の技術により)光学的、電気的、または光学電気的装置を有することが可能である。そのような装置は(例えば、段およびカバーと本体の表面との間の流体全体を通過して伝わる光または他の放射線で減少を検出可能な検出器を用い)細胞を検出する、または、細胞を(例えば、発熱体の近位で移動または静止する細胞を除去できる活性化可能な発熱体を用い)操作するのに用いることが可能である。カバー、本体または段により構築された装置は、個々に電子アドレスを装置に割り当てることにより活性化することが可能となる。このように、細胞は装置の別々の領域で検出され、他の位置の細胞を操作することなく、選択した領域の細胞を操作することが可能である。
【0069】
選択した段(または複数の選択した段)からの細胞の回収は、単にその段または段の一部から流体を抜き取ることにより行うことが可能である。ある場合にはおいて、静止する細胞と段との間に接着が生じる場合、細胞を取り除く、又はさもなければそれらの除去を容易にするため装置にエネルギーを印加することが有効となりうる。様々な形態のエネルギーを用いることが可能であり、通常好ましい形態は細胞型、または移動させる対象物、および段から細胞または物体の移動を阻害する力または現象の固有性に依存する。例として、段の1つの部分からの流体の抜き取りを、同じ段の別の部分で、流体の追加と同時に行うことが可能である。細胞を回収するため装置に応用することが可能である形態の他のエネルギーの例として、揺らす、軽くたたく、震盪させる、または装置を振動させる、または超音波、加熱、赤外線または他の放射線、気泡、圧縮空気、などの形でエネルギーを応用することが含まれる。
【0070】
分離エレメントの1若しくはそれ以上の段で保持される細胞を回収せず、細胞をその代わりに検出、または操作することが可能である。1つの実施形態において、電気的、機械的または熱エネルギーの細胞への応用により、1若しくはそれ以上の細胞を溶解させ、それにより装置の間隙において細胞の中身を放出させる。細胞の在中物は装置において分析または操作し、または、それらを装置から回収し、装置外で分析または操作する。例として、段の特定の場所で保持される細胞を特定の場所に局在させる、または、集中させる装置を用い溶解することが可能であり、それにより間隙へ細胞のDNAを放出させる。DNAはPCR試薬を間隙に提供することにより間隙で増幅することが可能であり、または、それは(例えば、間隙の選択した部分から得た流体を容器に集める、またあるいは、流体を間隙に通し移動させ、排出口流体においてDNAを集めることにより)装置の外に回収し増幅することが可能である。装置はこのように個々の細胞または細胞集団の内容を分析するのに用いることが可能である。
【0071】
装置の範囲内で細胞を回収または操作する多種多様な任意の方法は、本明細書において説明する装置を用い使用することが可能である。例として、既知の「光学ピンセット」装置、レーザー顕微解剖装置、および粒子結合膜および薄膜を用いる方法が使用される。薄膜または膜を使用する実施形態において、薄膜または膜は開口部(穴)または流体チャンネルを覆い、間隙の残りから開口部(穴)または流体チャンネルを密封する。興味のある粒子が薄膜または膜に付着、または静止する状態の観察により、粒子(または粒子を囲んでいる領域)と接触している薄膜または膜の部分を分離、または穿刺(破裂、穴を開ける)することが可能であり、これまでに薄膜または膜により分離した開口部または流体チャンネルとの流体連結に粒子を置く。薄膜または膜がそれらにより同定することが可能な光学、磁気的性質を有する場合、(例えば、付着した興味のある粒子を有する)薄膜または膜の分離した部分は粒子の特徴の検定、または、薄膜または膜の特徴(例えば、分光学的特性または磁気的特性)の検定により分離することが可能である。さらにまた、薄膜が選択した方向に移動するよう促すことが可能な(例えば、磁気)特性を薄膜または膜が有する場合、その薄膜はそれに付着した粒子を機械的に操作するのに用いられることが可能である。例えば、それに付着した細胞を有する磁気薄膜または膜の分離した部分は、停止した膜において流体に方向性のある磁界を利用することにより、またはチャンネル、チャンバーまたは容器のような望ましい場所の方へそれに付着した細胞と磁気薄膜または膜の分離した部分を導くために磁気プローブを移動させることにより、それらの細胞を運搬する車両のように用いることが可能である。
【0072】
膜または他の障壁
装置には、一部の間隙11で流体連結にある膜または他の障壁81が含まれる可能性がある。望ましくない粒子から間隙においてそれに接触している望ましい粒子を優先的に分離するような膜または他の障壁81を選択する。1つの実施形態において、膜または他の障壁81は、細孔より大きな粒子は膜の通過を妨げられるが、(例えば、流体の流れまたは圧力の差が膜全体に生じる場合)細孔より小さな粒子は膜を通過することが可能となるようなサイズを同定した細孔を有する膜である。あるいは、膜または他の障壁81は比較的親水性の粒子は膜の細孔を通過することが可能であるが、比較的疎水性の粒子は膜面からはね返される(そして、その細孔を通過しない)傾向があるような疎水性物質でできている多孔質膜である可能性がある。さらに別の可能性として、膜または他の障壁81は、望ましい粒子は通過可能であるが望ましくない粒子は通過不可能である物質から作られる(多孔性、または望ましくは、無孔性の)障壁である。
【0073】
例として、胎児細胞栄養芽層は、子宮の細胞外マトリックスを含む母体の子宮組織を通過することが可能である。本明細書において開示される装置の間隙11に含まれ、子宮膜または類似物質(例えば、BD Biosciences社、カリフォルニア州San Joseから入手可能な基底膜マトリックス製品のマトリゲル・ラインのような基底膜抽出物)からできる障壁と接触するそのような細胞は、そのような物質でできた比較的薄い障壁に潜り込み通り抜け侵入することが可能である。もしそのようなマトリックスを貫通することができる他の細胞型が知られているとしても小数である。
【0074】
例えば、本明細書において説明する装置の間隙11の領域を通り抜けることが不可能なことにより、本明細書においてどこか他で説明するような母体血液の中の胎児細胞栄養芽層が分離されることが可能である。母体血液に存在する他の細胞もまた、間隙11の同じ領域を通過することができず、装置の範囲内で胎児細胞栄養芽層と共に残存する可能性がある。この細胞集団がマトリゲル(商標)タイプの物質でできている薄い固体の障壁と接触する場合、胎児栄養膜は障壁に付着し、進入し、貫通することができ、障壁に付着し、進入し、貫通することができない他の細胞集団から分離することが可能である。このように、胎児細胞栄養芽層を母体血液に存在する他の細胞と物質からの分離は、細胞と素材物質(すなわち、本明細書において説明する装置を通過する能力および基底膜状のマトリックス障壁の障壁との相互作用)の2つの特性に基づきもたらされる。同様に、そのような能力を失った(または一度も保持しない)胎児細胞栄養芽層からそのような障壁と相互作用する、またはそれを貫通することが可能な胎児細胞栄養芽層を分離するのに、そのような装置を用いることが可能である。
【0075】
膜または他の障壁81は本明細書において説明する装置の一部であり、粒子の分離が装置を用い行われた後、装置と組み合わせ、または粒子の分離が装置を用い行われる前、またはその後に装置とは単独で使用される。好ましい実施形態において、膜または他の障壁81は望ましい粒子が装置を用い行われた粒子分離の後、残存することが予想される一部の間隙11に隣接した状態にある。本実施形態では、本明細書において説明するような粒子の第1集団を分離することが可能で、望ましい粒子を含む(例えば、第1の通路51を通過することが可能であるが、第2の通路52には入ることができない粒子の)第2の粒子集団を生じさせる。膜または他の障壁81が粒子の第2の集団を含む一部の間隙11に隣接した状態にある場合、膜または他の障壁81と相互作用するそれらの異なる能力に基づき、それらの粒子を分離することが可能である。例として、膜または他の障壁81が特異的に第2の集団において粒子の一部と結合する物質(例えば、モノクローナル抗体)を含む場合、その一部はその集団において他の粒子から分離することが可能である。同じように例として、第2の集団における粒子の一部が膜または他の障壁81を通過することが可能である場合、膜または他の障壁81を通過することができない第2の集団においてその一部は他の粒子から分離されることが可能となる。
【0076】
膜または他の障壁81の面が間隙11の一部に隣接する場合、膜または他の障壁81の対向する面は第2の間隙または第2の材料に隣接する可能性がある。第2の間隙または第2の材料は、選択的に、膜または他の障壁81を通過する(例えば、結合するか、使い果たされる)粒子と、相互作用する1若しくはそれ以上の構成要素を含む場合がある。例として、細胞集団を分離する装置において、細胞の小集団が生じるものと予想された場所で装置の間隙11に隣接する膜の片側の面と代謝や細胞増殖を支える成長培地を含む第2の間隙に隣接する膜の他面で、装置に細胞の小集団を選択的に通過させる半透性膜が含まれる可能性がある。代わりに、または加えて、第2の間隙には、選択したタイプの細胞が膜を通過する場合、それらが第2の材料と結合して、膜を再度通過しない傾向があるような、選択したタイプの細胞と、特異的に結合する第2の材料が含まれる可能性がある。膜または他の障壁81を通過する細胞またはその他の粒子の通過は、膜または他の障壁81を通過する流体の流れ、細胞または粒子の運動性、重力、拡散またはその他によりなされる。
【0077】
材料および構築の方法
本明細書において説明する装置の操作において、部品がそれらの形状を維持し、実質的には変形せず、または壊れず十分に堅い必要があることを除き、本体10およびカバー12を構築するのに用いられる材料の固有性は決定的ではない。変形可能な材料を使用する部位において、部品のサイズと形状を設計する場合、操作を行う状況下において予期される変形を考慮する必要がある。適切な材料の例には、ガラス、ポリテトラフルオロエチレンおよびエポキシ樹脂のような固体ポリマー、およびシリコンのような結晶性鉱物が含まれる。必要に応じて、本明細書において説明する本体10、カバー12、分離エレメント14およびその他の構成要素は各々異なる材料から作成される。好ましくは、各部は同じ材料で作成され、それにより、例えば各部の部品の伸縮における温度の影響を同様にする。
【0078】
装置において粒子の挙動、状態または性質を観察することは有益である。このような場合には、本体10およびカバー12の少なくとも1つは、組み立てた装置で粒子の観察を容易にする材料から構築される必要がある。例として、多くのガラスは人間の目に見える光スペクトルの領域において光の波長に対し透明である。そのようなガラス製の1若しくはそれ以上の部品での装置の構築は、操作者が装置を操作する間、間隙11中の粒子を視覚的に観察することを可能にする(例えば、第1の通路51の粒子の蓄積)。
【0079】
本明細書において説明するような装置の操作において、分離エレメント14がその形状を維持し、実質的には変形せず、または壊れずに十分に堅い必要があることを除き、分離エレメント14を構築するのに用いられる材料の固有性もまた決定的ではない。
【0080】
装置およびその部品の構築に用いた材料の選択はその中で分離されるべき粒子の性質により影響される。粒子の性質はまた、装置の範囲内で接触する可能性のある表面と粒子の相互作用を調節するのに適切な表面処理の決定にも影響を与える。例えば、粒子が実質的に装置に結合、または付着することなく装置の範囲内で分離される場合、材料および/または表面処理は表面に粒子が結合する可能性を減らす、また排除するよう選択するべきである。あるいは、装置(例えば、第1の段61の幅広面31)の1若しくはそれ以上の表面が、粒子(または粒子の混合集団の範囲内の特定の種類の粒子)を表面に付着、または結合させるような方法で処理される可能性がある。例として、生物学的細胞がそれらの表面で様々なタンパク質を発現することが知られており、選択したタイプのタンパク質と特異的に結合する抗体を既知の方法により作成することが可能である。特定のタイプの細胞の表面で発現したタンパク質と特異的に結合する抗体を段階状の通路の表面に固定する場合、抗体と特定のタイプの細胞との結合は、装置において表面を通り過ぎた細胞の通過を阻害、または停止させるものと期待され、それらの表面(および、抗体が結合できない部位)で、タンパク質を発現しない細胞からそれらの細胞の分離を促進させる。
【0081】
流体置換装置
装置を構築する方法の選択は、その中で分離する粒子のサイズにより影響されることが可能である。装置およびその部品を構築するのに用いる特定の方法は決定的でない。マイクロメートルおよびナノメートルスケールで正確である形状および形態(構造、配置)を有する部品を形成する多種多様な方法が知られている。例えば、任意の様々な既知のマイクロ機械加工方法を使用することが可能である。そのようなミクロ機械加工方法の例には、スピンコーティングおよび化学蒸着のような膜蒸着工程(堆積プロセス)、レーザー装置、およびUVまたはエックス線工程のようなフォトリソグラフィー技術、精度機械加工方法または湿式化学工程またはかプラズマ工程により行われる可能性のあるエッチング方法が含まれる。(例えばManz et al.1991、Trends in Analytical Chemistry、10>144−149を参照)。あるいは、部品は機械加工よりはむしろ、任意の様々な既知の成形法を用い、型に入れて作られる可能性がある。切断、彫刻、成形、エッチング、溶接および鋳造のような多種多様な巨視的規模で用いる部品の成形および機械加工方法が知られている。
【0082】
本体10、カバー12および分離エレメント14は個別に構築し、装置を作成するために組み立てることが可能であり、そのような組み立てはメーカーまたは装置のユーザーにより行われることが可能である。あるいは、分離エレメント14は、カバー12または本体10のうちの1つの一体部分とし構築することが可能である。1つの実施形態において、単一のカバー12は、任意の様々な本体10により形成した間隙11を密封できるように作られる(例えば、本体10の間隙11において分離エレメント14を有する各々、段の高さの異なりのような異なる特性を有する様々な分離エレメント14)。
【0083】
分離可能な粒子
本装置は、本明細書において説明する装置の第1および第2の通路を通過する様々な粒子の能力に基づき粒子を分離する。本装置を用い分離することが可能な粒子には、動物または植物細胞のような生物粒子、バクテリアまたは原生動物、または非生物粒子が含まれる。本明細書において説明する装置は、より大きな粒子(例えば、穀物、または齧歯目の糞便、ガス泡、およびボウリング・ボール)およびより小さな粒子(例えば、亜細胞性の細胞小器官、ウイルス、および沈殿した鉱物粒子)を分離するのに用いることが可能である。
【0084】
本明細書において説明する装置の第1および第2の通路を通過するそれらの能力に影響を及ぼす粒子の特質には、粒子のサイズ、形状、表面特性および変形能が含まれる。
【0085】
不規則に流体中を動き回る粒子は、粒子で最も長い径と等しい径を有する球量と等しい体積排除を持つ。このように1マイクロメートルの直径を有する剛体球形、1マイクロメートルの直径および0.2マイクロメートルの厚さを有する不規則に動き回る円盤状の剛体粒子、および1マイクロメートルの長さおよび0.1マイクロメートルの直径を有する不規則に動き回る棒状の剛体粒子の各々は、等しい体積排除を持つ。表面特性の影響を無視すると、これら各々の粒子は、1マイクロメートル以上の小直径を有する通路を通過することが可能である。円盤状および棒状の粒子は、1マイクロメートル以下および0.2マイクロメートル以上の小直径を有する通路を通過することが可能である。棒状の粒子は、0.2マイクロメートル以下および0.1マイクロメートル以上の小直径を有する通路を通過することが可能である。これらの通路の1つを通過するこれら粒子の非剛体(すなわち、変形可能な)類似物の能力(および、そのような通過が起こり得る率)は、粒子の変形性の程度および範囲、および粒子が通路の中に適合するために変形する必要のある範囲に依存する。さらにまた、粒子の表面特性および通路を定義する面は、粒子が通路を通過する率に影響を及ぼし、そのような通過が生じることから防ぐことが可能である(例えば、粒子が非常に強く通路の表面と結合する、または通路および粒子の表面がお互い反発する場合)。
【0086】
重要な実施形態において、分離する粒子は、細胞(すなわち、複数のタイプの細胞を含む細胞の懸濁)の混合集団に存在する生物学的細胞である。本明細書において説明する装置の第1および第2の通路の適切な狭径の選択により、それらのサイズ、形状、表面特性、変形性、またはこれらの特性のいくつかの組合せに基づく生物学的細胞の分離が可能となる。本明細書において説明する装置を用い分離することが可能な生物学的細胞の例には、母体血液中を循環している胎児細胞、胚性幹細胞(母体血液中または個人の自身の胚性幹細胞)、成体幹細胞、腫瘍細胞、バクテリアおよび他の病原体、および免疫系の細胞(例えば、T細胞、B細胞、好中球、マクロファージ、および単球のような様々な白血球細胞)が含まれる。本方法は、これらのタイプの細胞の混合物を分離するのに用いることが可能である。本明細書において説明する方法は、同様に亜細胞性の細胞小器官(例えば、核、葉緑体およびミトコンドリア)を分離するのに用いることが可能である。
【0087】
もう1つの重要な実施形態において、装置は伝染病(例えば、バクテリアまたはウイルス)または他の病原体(例えば、原生動物または寄生虫)の病原体をサンプルから分離するのに用いられる。これらの実施形態において、対象が伝染性の病原体に感染しているかどうかを同定するために対象から得た生体サンプルを分析することのような診断目的のために、装置を用いることが可能である。これらの実施形態のもう1つの例として、対象により摂取される場合、対象が病気または他の健康状態を悪化させる可能性の一因となる病原体の存在に対し、直接サンプルを評価するために本明細書において説明する装置を用いることにより、またはサンプルが接触する流体を用いることにより、水サンプルまたは食品または原料成分のようなサンプルを、評価することが可能である。
【0088】
例えば、幹細胞は母体血液、または胎盤血において存在する他の細胞から分離することが可能である。そのような血液には、幹細胞、赤血球および血小板を含む様々な細胞が含まれる。本明細書の例5において説明するような、求める細胞が毛細血管の通常の直径を超えるサイズ(すなわち、直径>8−10マイクロメートル)を有する場合、血液は毛細血管床の望ましくは上流で採血する。このように、そのような前毛細血管血(肺および気管支の滲出液および分泌物、またはそれらを含んでいる気管支の洗浄液のような流体)に由来する動脈血(例えば、総肝動脈からとられる血液)または流体は、(胎児栄養膜と幹細胞のような)大きな細胞の好ましい源である。ヒト幹細胞は、およそ12マイクロメートルの直径を有する球体と等しい体積排除を示す傾向がある。ヒト赤血球はおよそ5.5マイクロメートルの直径を有する球体と等しい体積排除を示す傾向がある。ヒト血小板はおよそ1マイクロメートルの直径を有する球体と等しい体積排除を示す傾向がある。変形能および表面特性の効果を無視し、4〜8マイクロメートルのオーダーの狭径を有する通路から、赤血球または血小板以外の幹細胞を除外する。赤血球および血小板は可能であるが、4〜8マイクロメートルの狭径を有する第2の通路52と本明細書において説明する装置の注入口領域15に提供される幹細胞は装置の排出口領域17にまで移動しない。第1の通路51の狭径がおよそ12マイクロメートルより大きい場合(例えば、第1の通路51の狭径が18マイクロメートルである場合)、幹細胞、赤血球、および血小板の全ては第1の通路51を通過する。18マイクロメートルの狭径を有する第1の通路51、および8マイクロメートル以下の狭径を有する第2の通路52を持つ、本明細書において説明する装置の注入口領域15に母体血液または胎盤血が提供され、血液が装置の段階状の通路を通し通過する場合、幹細胞が第2の通路52から上流で保持されるが、赤血球および血小板は装置(すなわち、第1および第2の通路を通して、排出口領域17まで)を通過する。図1の中で示すように構成された装置が用いられる場合(すなわち、第1と第2の通路との間に介在する通路またはチャンバーがない)、幹細胞は第1の通路51に蓄積する。血液を通過させた後、装置にさらに無細胞流体を通過させることで、幹細胞から分離される赤血球および血小板の割合を増加させる傾向がある。装置(すなわち、排出口領域17から、段階状の通路を通し、注入口領域15の方へ向かう方向で生じている流体の流れで)のバックフラッシュにより、注入口領域15に、装置から幹細胞を流すことが可能であり、その結果としてそれらは回収されることが可能である。
【0089】
段階状の通路の中の粒子は、剪断、圧縮、および通路を通る流体の流れにより任意のその他の力にさらされる。変形、圧縮、破裂、溶解または破損(すなわち、第1および第2の通路の一方または両方を通過する粒子の率または能力を変える任意の特徴)に対し異なる抵抗性を示す粒子(例えば、生物学的細胞)が存在する場合、流体の流れに対する粒子の反応の違いは特異的に粒子の段階状の通路の通過(または非通過)に影響を及ぼすのに用いることが可能である。例として、流体剪断で容易に溶解する細胞および流体剪断で実質的には溶解しない同じサイズの細胞を含む細胞型の混合物において、比較的遅い流体の流れ(すなわち、十分に遅く、ほとんどまたは全く細胞が溶解させない流れ)の条件下で、これらの2つのタイプの細胞は、他の粒子から分離することが可能である。そのような分離の後、第2のタイプの細胞でなく、第1のタイプの細胞が溶解する段階状の通路の少なくとも1つの部分の範囲内において十分な流体剪断を生じさせるために、液体流速を増加させることが可能であり、排出口領域からの廃液中に第1タイプの細胞の溶解産物を生じさせ、装置内に第2のタイプの細胞が保持される。
【0090】
流体置換装置
本明細書に記載される装置は、装置の間隙11の注入口領域15に粒子を提供すること、および注入口領域15、段階状通路、および排出口領域17に存在する流体によって粒子が移動できることによって作動されることができる。このような動きは、細胞の固有の運動性または重力の影響を受けている非運動性粒子の受動的固定によるものである。後者の場合において、重力が、注入口領域15から段階状通路を通じて排出口領域17に向かって「落下する」ように流体よりも濃い粒子、または、注入口領域15から段階状通路を通じて排出口領域17に向かって「上昇する」ように流体よりも濃くない粒子を生じる傾向にあるように当該装置を正しい方向に置く必要がある。
【0091】
さらに典型的には、本明細書に記載される当該装置は、流体(例えば、粒子を含む懸濁液または粒子を含まない流体)または注入口領域15に対するポンプのような他の流体置換装置を含む貯蔵部を流動的に接続することによって作動される。装置を通じた流体の流れは、当該装置の注入口領域15に流体を導入することによって、当該装置の排出口領域17から流体を連続的に抜き取ることによって、またはその両方によって達成される。注入口領域15に導入された流体は、間隙11内に既に存在する流体を置換し、排出口領域17内または排出口領域17と流動的につながっている排出口18を通じて、間隙11内から流体の放出を誘導する。粒子が当該装置の段階状通路を横断するにつれて、粒子は、そこから排出口領域17に現れる。このような粒子は、排出口領域17内に蓄積される流体またはそれと流動的につながる貯蔵部から、または、排出口領域17と流動的につながる排出口18から抜き取られる流体から、回収されることができる。装置を通じた流体の流れの間、当該装置の第1通路51または第2通路52を横断することができない粒子は、当該装置内で保持され、および、そこから回収されることができる。
【0092】
注入口領域15に流体の流れを提供するのに使用される流体置換装置の独自性は決定的ではない。流体置換装置は、単に、重力の影響を受けて、貯蔵部および注入口領域と流動的につながる注入口16の間の流体接続管としての装置を通じて流出することができる流体を含む貯蔵部であることがある。機械式ポンプは、ポンプ出口および注入口16の間の密封された流体接続管を経由して、流体を注入口16に送達することができる。ポンプによって送達された流体は、段階状通路内の当該装置の注入口領域15に存在する流体を移動させ、流体を移動させたところから排出口領域17の方へ放流され、集められ、または放出されることができる。あるいは、当該装置の排出口領域17と流体連結の排出口18から、密封された流体接続管を経由して、機械式ポンプは、流体を放流することができる。排出口領域17から流体の放流は、排出口領域17での流体圧力を低下させる。そして、排出口領域17への装置の隣接する段階状通路から、および、段階状通路への注入口領域15から、流体の置換を誘導する。
【0093】
当該装置の間隙11における流体の正の置換(例えば流体のポンピングによる注入口領域15への誘導)は、間隙内における流体の圧力を増加させる。増加した流体の圧力は、当該装置の径(例えば、当該装置の部分の屈曲または置換を誘導することによって)、当該装置内の粒子の径(例えば、周囲の流体の圧力が増加するにつれて、変形可能なガスが充填した粒子は寸法が減少する傾向がある)またはその両方を変更することができる。さらに、流体の圧力の脈動またはそうでなければ流体の圧力を変化させることは、当該装置内で局所化された流体の流れにおいて一時的な変化を誘発することができる。
【0094】
一時的な局所化された流れの変化は、有益であることができる。例えば、段階状通路の第1または第2段に入ることができない粒子は、通路の上流の範囲に対して圧接されることがあり、粒子によってふさがれる通路の部分を経由する流体の流れを妨げる。粒子による通路の閉塞での流体の流れにおける一時的な変化は、択一的に、粒子を通路開口部に対して圧接することができ、および、開口部から間隔をおいて配置される粒子を圧接することができる。このことにより、一時的に閉塞をゆるめ、通路の以前閉塞された部分を経由した流体の流れを可能にする。
【0095】
流体の脈動または他の急速な流れの変化は、流体および流体内に懸濁された粒子上の剪断応力を誘導することができ、粒子はこのような剪断応力によって損傷を受けることがある。粒子の損傷(例えば、生物学的細胞の溶解)は、流体内の剪断応力およびそれらの原因を減らすことにより減少させることができる。この開示において他で述べられる装置の流体チャネルの配置における変更は別として、当該装置とつながれた流体置換装置のタイプおよび特徴の変更は、流体内における剪断応力を増加または減少させることができる。例えば、比較的一定の容積測定率(つまり、よりパルス状の容積測定率よりに多くの蠕動ポンプと同様に)で流体を送達するポンプは、当該装置内の流体圧力における潮の急増によって誘導される流体剪断応力を減少させることができる。さらに、例を挙げると、比較的一定の圧力で流体を送達するポンプ(つまり、ポンプの出力ストリーム内の流体圧力を監視し、一定の圧力を維持するために容積測定流率を調整するポンプ)は、容積測定流率が調整されない場合に、段階状通路の第1および/または第2通路の部分が粒子または破片によって塞がれるにつれて高くなる剪断応力を減少させることができる。当該装置を経由して流体を移動させるのに適したポンプの例は、低パルスシリンジポンプである。このようなポンプは、振動メカニズムを含むことができ、当該装置の作動の間、粒子が定着するのを防止するのに役立つことができる。
【0096】
間隙11内からの流体の負の置換(例えば、排出口領域17からの流体の放流によって誘導される)は、間隙11内の流体圧力を減少し、当該装置の部分の変形および置換、および一時的な流れの変化を含む類似の問題を誘導することがある。間隙11からの流体の負の置換は、当該装置における流体内で気泡形成を誘導することもでき、気泡は当該装置の作動を(例えば、通路の部分を経由する流体の流れを塞ぐことによって、または、装置の粒子上の作用に関連する表面張力を誘導することによって)妨害する。したがって、気泡形成は回避されなければならない。当該装置の間隙11内の流体の正の置換はこの理由により好適である。
【0097】
一変化において、当該装置の注入口領域15を有する流体連結の流体を含む貯蔵部に遠心「力」を加圧することによって、流体は当該装置を通過して置換される。遠心「力」は軸の周りで貯蔵部を回転させることによって発生し、流体の角運動量保存は、回転軸から流体を遠ざける。この「力」は、当該装置の注入口領域15と貯蔵部出口を流動的に接続することによって、当該装置の間隙11から流体を置換するのに使用することができる。例えば、遠心的に操作可能な装置は、回転軸の近位の位置から回転軸の遠位の位置に向かって直線的配置に、流体貯蔵部、間隙11の注入口領域15、段階状通路、および間隙11の排出口領域17を含むことができる。貯蔵部からの流体は、注入口領域15内の遠心「力」によって、段階状通路(第1通路51は第2通路52と比較して回転軸の近くに位置している)を経由して、排出口領域17に運ばれる。そして、当該装置を通過した流体を集めるための第2貯蔵部を含むことができる。第2通路52を横断することができない粒子は、流体貯蔵部における一部のまたは全ての流体が装置を通過した後、間隙11内に残留する。
【0098】
装置の組み立ての確認
多くの適用において、本明細書に記載された装置の流体チャネルの顕著な径は、比較的限られた許容度を有する。すなわち、当該装置の適切な作動は、比較的狭い範囲(つまり、数十ナノメートルに対してマイクロメートルのオーダーで)において流体チャネルを維持する径に依存することがある。当該装置は、作動可能な装置を得るために組み立てられるカバー12および本体10を含むので、および、作動において、正の内部流体圧力が、カバー12および本体10を分離する傾向がある当該装置内で動作するので、組み立てられた位置において本体10およびカバー12を固定する、またはそうでなければ保つためのいくつかの手段が通常使用される。その組み立てられた位置でカバー12および本体10を固定すること、またはそうでなければ保つことによって誘導される圧力は、カバー12または本体10のぶ部の変形を誘導することがあり、潜在的にそれらの部分の有意な径を変更する。これが生じる際にこのような変形を検出することは重要である。
【0099】
本開示は、本明細書に記載された装置の適切な組み立てを確認する方法を含む。この方法は、間隙11および間隙11を被覆し、間隙11を被覆する面と反対側に平坦な表面を有するカバー12を定義する本体10を含む装置において例証されるものである。しかしながら、実質的に同じ方法は、変形が検出される部分に平坦な表面を含むことによって、他の構成における部分の変形を検出するのに使用されることができる。当該装置の適切な組み立てを確認するために、本体10およびカバー12は組み立てられる。そして、本体10またはカバー12の任意の部分に圧力を働かせる全てのクランプ、ホルダー、または他の装置を含む。任意に、粒子のない流体は、使用された作業圧力で当該装置を経由して流される。カバー12の平坦な表面は、放射線によって照射される。カバー12の平坦表面によって反射される、または、屈折する放射線の干渉パターンは調べられる。干渉パターンは、当該カバーにおける曲げの位置および範囲を示し、例えば、間隙11を定義するカバー12の表面および本体10によって定義される間隙11の壁の間の距離における変化が、適当な許容語の範囲内であるかどうかの確認を可能にする。
【0100】
当該装置は、装置の適切な組み立てを確認する様々な可視的表示器を含むことができる。可視的表示器は、当該装置が適切に組み立てられたときの一つの外観および当該装置が適切に組み立てられなかったときの異なる外観を有する本体またはカバーの特徴である。実質的には任意の観察可能な現象も、可視的表示器として役に立つことができる。上記のように、装置の一部の変形を示している干渉パターンが使用されることができる。嵌合部に描画され、描かれ、または刻まれる線の配置は、適切な組み立ての可視的表示器として役立つことができる。
【0101】
装置の使用
当該装置は、生物学的細胞のような、流体試料中に懸濁された粒子を分離するために使用されることができる。流体試料は間隙11の注入口領域15に誘導される。試料中の粒子は、分離エレメント14および少なくとも1つの本体10およびカバー12によって定義される段階状通路内に注入口領域15から移動する。当該装置内での粒子の移動は、粒子の固有の運動性(例えば生物学的細胞の運動性)によって、当該装置内の流体による粒子の密度によって媒介される固定または上昇によって、または、当該装置の範囲内で誘導される大部分の流体の流れに応答して生じる。段階状通路は分離エレメント14の第1段61に囲まれた第1通路51を含む。第1通路51は狭径(つまり、第1段61の表面および本体10および/またはカバー12の反対側表面との距離)を有し、いくつかの粒子は、それらの寸法(粒子の変形性を考慮する)のために第1通路51に入ることができないことがある。第1通路51を横断することができる粒子は、段階状通路に沿って、分離エレメント14の第2段62に囲まれた第2通路52に移動を続ける。第2通路52は、第1通路の狭径よりも小さい狭径(第2段62の表面および本体10および/またはカバー12の反対側表面との距離)を有し、いくつかの粒子は、それらの寸法(粒子の変形性を考慮する)のために第2通路52に入ることができないことがある。第1通路51および第2通路52の両方を横断することができる粒子は、段階状通路に沿って、間隙11の排出口領域17に移動を続ける。当該装置は、このように、第1通路51に入ることができない粒子、第1通路51を横断することができるが、第2通路52に入ることができない粒子、および第1通路51および第2通路52の両方を横断することができる粒子を分離する。粒子のこれらの集団は、第1および第2通路の1つに入ることができるが、(作動の期間の間に)横断することができない粒子として別々に回収されることができる。択一的に、または、加えて、当該装置の排出口領域から回収される廃水は、回収されることができる。一実施形態において、第1および第2通路の1つまたは両方を横断することができない粒子は、廃水を回収する前に、溶解またはそうでなければ分解(つまり、装置を通過するために生成物の溶解または分解を可能にするため)されることができる。
【0102】
それぞれの装置の注入口領域15内に同じ流体試料が適用されることによって、複数の装置は一度に(つまり同時に)作動されることができる。当該複数の装置は、共通の注入口領域15、または、それぞれの注入口領域15と流動的につながる共通の上流貯水部を有することができる。複数の平衡した装置が、同じ本体10、同じカバー12またはその両方を共有するかどうかは、重要ではない。もちろん、複数の別々の装置は、それぞれに作動されることができる。一実施形態において、複数の装置は、集団の一端に注入口領域15(または注入口領域15に流動的につながる流体チャネル)を有する集団(例えば、ウェーハのブロック、各ウェーハは、ウェーハの一表面上の一装置のための本体10およびウェーハの反対側表面に隣接する装置のためのカバー12として作用する)を形成するために、分類され、結合され、または一緒に押圧される。粒子を含む流体試料は、集団の端に適用されることができ、流体試料は、それによって、集団の各装置の注入口領域15に提供されることができる。流体の流れは、圧力下(例えば、ポンプを使用して)で集団の同一末端に流体を提供することによって、集団の全ての装置を経由して誘導されることができる。この配置は、装置の構成の再編成または再設計することなく、本明細書に記載された装置および方法のスケールアップが可能となる。その代わりに、ウェーハの数は、粒子の予想された数に適応するように単純に増加することができる。
【0103】
当該装置を使用して得られた粒子および細胞、および本明細書に記載された方法は、さらなる目的の任意の広い多様性において使用されることができる。さらに、これらの目的の多くにおいて、分離の目的における作動後、当該装置内に残存することのできる粒子を分離する必要はない。例として、多くの場合において、試薬(例えば、抗体、酵素基質、潜在的に相補的な核酸および栄養素)と完全な生物学的細胞または生物学的細胞の構成要素との相互作用は、それらの相互作用が当該装置から回収された細胞において観察されるのと同様に、当該装置内に残った細胞においても観察されることができる。さらに、装置内に存在する流体チャネルは、装置内に残る細胞にこのような試薬を送達するのを容易にすることができる。このように、当該装置は、細胞を分離するために、および、その後、様々な試薬と細胞の相互作用を観察するための反応槽としての両方で使用することができる。
【0104】
生体細胞を含む流体を含むために当該装置が使用されるとき、流体は生体細胞の健全性を維持するのに十分な浸透性を有するように好適には選択されなければならない。細胞の生存度または他の生物学的機能が重要であるとみなされる場合、流体も所望の生物学的機能(biological function(s))を維持するために選択されなければならない。
【0105】
装置内に残る粒子を有する装置は、貯蔵、維持、粒子と試薬を接触させるための容器として使用されることもできる。例えば、当該装置は、装置内で、試料(例えば、鶏卵のような食品が洗浄されるものを有する流体試料)中に生じるバクテリアを分離するために使用することができる。装置内のバクテリアを分離した後、バクテリアの生存および繁殖を促すために、装置の間隙11に培地が提供されることができる。指標(例えば、特定のバクテリア抗原と特異的に結合する抗体、または、有害なバクテリアによってのみ代謝性である試薬)は、当該間隙に提供されることができ、その中の細胞とそれらの相互作用は観察されることができる。このような例は、病原性バクテリアによる食品の汚染の分析において有用である。
【0106】
血液試料の老化
本明細書に記載された装置を使用するとともに、装置内の血液および血球の流れの特徴が、時間とともに著しく変化することが発見された。血液試料が採取されたすぐ後に血球の退化は始まり、退化の効果は、数時間後には本明細書に記載された装置によって遂行される分離の効果を危うくし始める。これは、少なくとも一部において、酸素、栄養の欠如、装置の表面に付着することのある白血球細胞の断片への曝露、または、溶解した白血球細胞によって放出された酵素への曝露、によるものである。血液試料が採取されてから約6〜8時間後に装置を通過する時、血球は不安定になる傾向があり、より溶解しやすくなる傾向がある。血液試料が採取されてから約10〜12時間後に、血液試料における細胞を効果的に分離することはより困難になる。血液試料が採取されてから6時間以内、せいぜい12時間以内に使用されることが好適である。
【0107】
8時間より古い血液試料のさらなる操作において、血液試料において観察される変化は、本明細書に記載された装置および方法に特有のものではないことが明らかになったが、そのかわりに、血液試料を用いて実行される多種多様な分析に関連する、より一般的な現象であることが明らかになった。比較的狭い通路(つまり、100マイクロメートルまたはそれ以下)を経由する血液または血球の通過を必要とする任意の分析において、分析よりも12時間未満、好適には10時間未満、8時間未満、または7時間未満前に対象から得られた血液試料を使用する分析を実行することは利点があるようである。本明細書に記載された装置は、比較的専門性の少ないオペレーターによって簡便に作動されることができるので、当該装置は、例えば診療室内または静脈切開実験室内で血液が対象から得られた時間と非常に近い時間で血液試料を分析するのに使用されることができる。
【0108】
この開示の主題は、これから以下の実施例に関して記載される。これらの実施例は例証のみの目的に提供されるものであり、主題はこれらの実施例に限定されるのではなく、本明細書に提供された教示の結果として明白である全ての変化を包含するものである。
【実施例】
【0109】
実施例1
母体血液からの胎児細胞の分離
本明細書に開示されたタイプの装置は、母体血液の1ミリリットル試料中の他の細胞から、胎児様、巨大核細胞を分離するのに使用された。
【0110】
ポリカーボネート装置は、周知のエポキシ樹脂鋳造過程を使用して構成され、本体10によって定義される8つのチャネルのそれぞれに必要な分離エレメント14を有する本体10が含まれる。この用途で使用できる他の材料は、環状オレフィン・コポリマーおよびポリプロピレン環状オレフィンポリマーを含む。
【0111】
分離エレメント14は段階状通路に連続的に配置された通路を定義する6つの段を有し、当該通路は、それぞれ、10、7、5、4、3および2マイクロメートルの狭径を有するものである。各段(および通路)は1ミリメートルの長さを有した。本体10に固定された標準ガラス顕微鏡スライドがカバー12として用いられた。別々の段階状通路間の本体10の部分は、支持体20として機能した。カバー12は、本体10にシリコンゴム接着剤を使用して接着された。
【0112】
母体血液をシミュレーションするために、男児胎児からの血液試料が得られ、女性から得られた血液と混合された。この混合は、標準的な手順を用いて凝血防止され、一晩かけて冷凍された。他の抗凝固剤、例えばカリウムEDTAは、この用途にも適している。試料は、室温に持ってこられ、シリンジを使用する複数のチャネルの注入口領域15に注射された。試料が装置を通過した後、当該装置は顕微鏡の下で観察された。胎児由来であるように見える巨大細胞(つまり通常の血球よりも大きな細胞)は、段階状通路のいくつかの位置で止められたのが観察された。
【0113】
巨大細胞は、組み立てられた装置を短時間遠心分離することによって、ガラスカバーに付着された。遠心分離の後に、カバー12は本体10から取り外され、カバー12に付着された細胞は、メタノール:酢酸が3:1の混合物を使用するカーノイ固定によって固定された。細胞は、それから、市販のキットを使用する染色体XおよびYの検出のために、標準的な蛍光インサイツハイブリダイゼーション法(FISH)によって処理された。
【0114】
XおよびY染色体上の特異的配列の位置を特定するためのFISHプローブのハイブリダイゼーションを表す蛍光信号は、スライド上で観察され、男児(つまりY染色体を含む)胎児細胞が血液試料から装置を使用して分離されたことを示した。すくなくともいくつかの巨大細胞は、多核であることが観察され、栄養芽層起源を示唆した。
【0115】
胎児栄養芽層細胞は、母体血液内で生じる他のタイプの胎児細胞(例えば、原始胎児幹細胞)と異なり、妊娠の停止後比較的すぐに母体血液から除去されるものであると考えられている。以前の妊娠からの栄養芽層細胞が女性の血液に残りそうにないため、胎児栄養芽層細胞の分離は、女性の現在の胎児の状態に関して、他のタイプの胎児細胞(女性に知られている、または知られていない、以前の妊娠から残っていることができた細胞を含む)の分離よりも有益でありえる。
【0116】
実施例2
本明細書に記載された装置の組立を評価することは、照明の下で装置から反射される光、屈折される光、または反射および屈折される光を観察することで達成されることができる。図5は、適切に組み立てられた装置において観察された光のパターンを表す色画像である。
【0117】
図5に示された装置は、それに不可欠な分離エレメントおよびそれに付けられた平坦なガラスカバーを有するプラスティックの本体の形状をなす。段階状通路は、段階状通路の上部(ここ)表面のカバーによって、および、段階状通路の下部(ここ)表面の分離エレメントによって定義される。9つの支持体は、注入口領域から(図5に示された矢印の方向に)排出口領域へと、段階状通路を10の分離された流れチャネルに分けて、分離エレメントの全長を実質的に延長する。分離エレメントは、基本的にカバーと平行した8つの平坦な部分を有し、この平坦な部分(段)は、段階状通路を定義するカバーの表面から4.0、4.2、4.4、4.6、4.8、5.0、5.2および5.4マイクロメートルの距離を定義する。
【0118】
蛍光は、カバーに対してほぼ垂直な、および、直接的にカバー上部の照明の角度で光源から放射された。図5は、カバーに対して約30〜45度で照準線によって配された観察者によって観察された画像を示す。図5に示すように、「チェッカー盤」のような光のパターンが観察されたことがわかる。作動の任意の特定の理論に縛られることなく、カバーの上面(つまり、段階状通路の外側)から反射された光は、カバーの底面によって反射された光、分離エレメントの平坦な部分によって反射された光、または図5に示す色を得るためこれらのいくつかの組合せと結合するものと考えられる。光の変化の源または解説に関係なく、分離エレメントおよび支持体のパターンに対応する光のパターンは、当該装置が適切に組み立てられたときに観察された。カバーまたは本体における変形は、例えば、チェッカー盤パターンを歪め、分離エレメントの平坦な部分に対応する長方形は、不均等な、または、カーブして見える。
【0119】
実施例3
ヒト絨毛膜絨毛試料からの胎児細胞の分離
この実施例に記載された実験において、この用土において記載されたタイプの装置は、成人の細胞と男児胎児を身ごもっているとわかっている妊婦から得られた絨毛膜絨毛(CV)試料に存在した胎児細胞との混合物から胎児細胞を分離するのに使用された。
【0120】
この実施例において記載された実験で使用された装置は、マイクロ射出成形過程を使用するポリカーボネートから製造される本体およびガラスカバーを有する2つのピースのカセットであり、本体は、図6に示したように、分離エレメントおよびカバーの間に複数の段をその上に定義する分離を有する。カセットのカバーおよび本体は、注入口領域および排出口領域を有する間隙を定義した。注入口領域および排出口領域は分離領域を経由して互いに流体連結においてあった。分離領域は平坦な部分(つまり比較的広い通路)を含み、そこにおいて、本体とカバーの間の最少の距離は4.0マイクロメートルであり、本体とカバーの間の最大の距離は5.4マイクロメートルであった。図6に示すように、8つの段における段に対するカバーの距離は(流体の流れの方向に)5.4マイクロメートル、5.2マイクロメートル、5.0マイクロメートル、4.8マイクロメートル、4.6マイクロメートル、4.4マイクロメートル、4.2マイクロメートルおよび4.0マイクロメートルである。流体の流れにおける分離領域の長さ(つまり、図6に示すように、8つの段構造の左から右への距離)は20ミリメートルであり、および、分離領域内の8つの段のそれぞれは、流体の流れの方向に2.5ミリメートルの長さを有した。分離領域の幅(つまり、図6に示された8つの段構造が図6に示される平面図に対して垂直な径において延長した距離)は24ミリメートルであった。組み立てられた装置の間隙の総内部容積は、約2.2マイクロリットルの間隙(つまり、カバーおよび段付き分離エレメントの間の部分)の分離エレメントの体積と約10マイクロリットルの注入口および排出口領域を合わせた体積とで約12.2マイクロリットルであった。カセットのこのモデルはD3v2と称された。
【0121】
他に取りうる実施形態において、類似の装置が用いられることができ、類似の装置は、8つの段における段に対するカバーの距離が、(流体の流れの方向に)4.4マイクロメートル、4.2マイクロメートル、4.0マイクロメートル、3.8マイクロメートル、3.6マイクロメートル、3.2マイクロメートルおよび3.0マイクロメートルということにおいてのみ実質的に異なる。カセットのこのモデルはD2V3と称された。
【0122】
流体の流れの作動の間、カセットを固定し、カセットからの任意の流体の漏出を防ぐ方法でカセット本体と嵌合したガラスカバーを確保するのに役立つ目的で設計されたホルダーに、カセットは含まれた。ホルダーの正確な構造は、重要なものではなく、気圧と関連して、カセット内の正または負の両方の流体圧力による漏出を防ぐために十分に均一に圧力を印加するのに役立った。この実施例に記載された実験において、ホルダーは、金属パーツおよびカセットパーツが一緒にホールドされる力を調整する器具を有する2つの金属パーツから構成された。金属パーツのうちの1つは、本体およびカバーの間の間隙領域にほぼ対応した「窓」(図5を参照)を定義し、その窓によって間隙内の細胞の目視観察はなされることができる。流体を提供するため、および、カセット内の間隙から流体を回収するための接続に適応するために注入口および排出口に合わせられる穴を含む場合を除いて、他の金属パーツは実質的に硬い。
【0123】
カセットによる流体の流れは、1.25ミリリットルのシリンジを備えているHamilton PSD3シリンジポンプを使用して成し遂げられた。当該ポンプは、MatLab(商標)Instrument Control Toolbox上で動作しているアプリケーションを用いてソフトウェア制御された。システムもカセット内の流体圧力が常に監視されることを可能にした圧力センサーを含む。システムの構成要素が接続された流体導孔および器具は予測された圧力に適応するように選択されるが、その同一性は重要ではない。実質的に任意の流体導孔および器具が使用されることができる。
【0124】
これらの研究において使用された分子プローブは、Abbott Molecularから得られ、CEP(登録商標)X Spectrum Orange(商標)(試薬で処理された細胞内のX染色体から赤色蛍光信号を提供する)およびCEP(登録商標)Y Spectrum Green(商標)(試薬で処理された細胞内のY染色体からの緑色蛍光信号を提供する)からなる。他の全ての試薬は、非特異的ハイブリダイゼーションを防止するために、十分な等級であった。
【0125】
CV試料は、組織試料からの細胞が懸濁されたダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DMPBS;0.9ミリモルのCaCl2;0.49ミリモルのMgCl2;2.7ミリモルのKCl;1.47ミリモルのKH2PO4;138ミリモルのNaClおよび8.06ミリモルのNa2HPO4、pH7.2)の約5ミリリットルに組織片を含む15ミリリットルスクリューキャッププラスチックチューブにおいて受け取られた。細胞懸濁液は吸引され、チューブの底の固体組織片はそのまま残した(チューブに残った材料の量は0.25ミリリットル未満であった)。吸引物は、15ミリリットルのスクリューキャッププラスチックチューブ内に配置され、3,000rpm(およそ1,500×g)で5分間遠心分離された。遠心分離および上澄みの除去後、圧縮された細胞の約0.1ミリリットルは、チューブ内に残されたままだった。DMPBSの約2ミリリットルがチューブに加えられ、ペレット化された細胞を再び懸濁するために、構成要素はボルテックスタイプミキサーで十分に混合された。再び懸濁された細胞試料は、摂氏4℃で1時間貯蔵された。
【0126】
再び懸濁された細胞試料の試料は標準的なガラス顕微鏡スライドに塗り広げられ、ライト−ギムザ染色によって染色され、および、白色光照明のもとで400倍の拡大で観察された。染色された調製物は試料において(胎児)栄養芽層細胞の存在を示した。試料において観察された他の細胞は、好中球(有核の白血球)および赤血球であると考えられる。この方法による試料中の胎児栄養芽層細胞および他の細胞の観察は、栄養芽層細胞が試料中の多くの他の細胞よりも顕著に大きいことを明らかにした。
【0127】
懸濁された細胞の1.25ミリリットル分割量およびシリンジポンプ装置を使用する注入口領域への適用によるD3v2カセットを経由する通過は上述された。試料の適用の前に、カセットは予め多量のDMPBSの通過によって準備された。この試料は、毎分0.025ミリリットルの流量割合でカセットに通過された。試料が通過する間、流体工学システムにおける圧力は監視され、4.6〜6.8psigの範囲内での変化が観察された。
【0128】
試料がカセットによって通された後、固定液(メタノール:酢酸が3:1の割合)の3つの0.1ミリリットル分割量は、カセットによって通された。10分間で固定液の通路の間を通過することができた。カセットおよびホルダーは、この段落に記載されている方法の間、当該装置に水氷を適用することで冷やされた。前の工程は室温(摂氏およそ20度)で実行された。
【0129】
固定後、排出口領域に吸引を適用することでカセットは乾燥された。これは、カセット内の間隙から全ての流体を除去するのに効果的である。カセットは、摂氏4度で一晩かけて貯蔵された。貯蔵の後、カセットは100倍拡大で顕微鏡により観察された。約20マイクロメートルよりも大きな直径を有するいくつかの有核細胞は分離領域、注入口領域の中のいくつかにおいて観察され、その他は、カセットの分離領域における第1分離段において観察された。約20μmよりも大きな直径を有する細胞は、カセットの分離領域における第1分離段から顆粒では観察されなかった。
【0130】
カセットは分解され、ガラスカバーは除去され、標準的なFISHプロトコルを用いて処理された。自動検出アルゴリズムと結合されたコンピュータ制御ステージを備えている蛍光顕微鏡を使用して、カバーは検査された。完全な核の視覚化を可能にするために(つまり、細胞の捕捉を確認するために)、カバーはDAPIによって染色された。FISHおよびDAPI染色は、Abbott Molecular (Chicago, IL)から得られる市販のキットで提供されたもので実行された。
【0131】
DAPIおよびFISH染色されたカバーの検査は、当該ガラスカバー上に多数の有核細胞があることを示した。多くの細胞は、段に対するカバーの距離が4.2および4.4マイクロメートルである段に対応するカセットの部分で、比較的小さい領域で観察された。これらの細胞は引き伸ばされた、またはそうでなければ変形したように見えた。雄性細胞(つまり、X染色体およびY染色体の両方の存在に対応する蛍光信号を生じる細胞)が存在した。我々は、これらの細胞が妊婦の男児胎児から生じたものだと結論した。雌性細胞(つまり、X染色体の存在に対応する蛍光信号は生成するが、Y染色体の存在に対応する任意お蛍光信号は欠如している細胞)も検出された。我々は、これらの細胞が、男児胎児からではなく、妊婦から生じたものだと結論した。検出された細胞のうち、多葉核を呈するものはなく、そこから、我々は、捕捉された細胞は白血球細胞ではないと結論した。
【0132】
実施例4
母体血液試料からの胎児細胞の分離
この実施例に記載されている実験において、この用途に記載されたタイプの装置は、男児胎児を身ごもっていることがわかっている妊婦の血液循環から得られた血液試料から胎児細胞を分離するのに使用された。
【0133】
この実施例に記載された実験において使用された装置は、実施例3に記載されたD3v2カセットであり、その実施例に記載されたように作動された。
【0134】
血液は、(超音波画像診断によって)男児を身ごもっているとわかっている22人の妊婦のそれぞれから静脈穿刺によって約5ミリリットルのペアで収集された。胎児の在胎月齢は、17週、6日から29週、6日の範囲内であり、平均在胎月齢は21週、5日であり、年齢中央値は20週、2日であった。各血液試料は5ミリリットルチューブにおいて収集され、カセットに適用するために調製されるまで氷浴中で貯蔵された。試料収集および試料調製の間の経過時間は1時間未満であった。
【0135】
場合によっては、同じ試料が2つのカセットに通され、そのうちの1つはその後FISH試薬を使用して染色され、およびもう一方はライト−ギムザ試薬を使用して染色された。これは、組織学(ライト−ギムザで染色された細胞)の結果とFISH生成物から得られた結果とを比較することを可能にした。他の場合において、単一の患者からの複製血液試料は、結果の再現性を確認するため分離カセットに通された。
【0136】
カセットで汲み上げられるように調製されたHamiltonシリンジ内に患者の血液試料を吸引することで、血液試料はカセットに通された。1.25ミリリットル血液試料は毎分0.025ミリリットルの流量割合で個々のカセットによって汲み上げられた。流体工学システムにおける圧力は、血液試料の通過の間監視され、7〜9psigの範囲内での変化が観察された。
【0137】
血液試料がカセットに通された後、カセットにおいて保持される細胞以外の試料からの任意の残留物を除去するために、試料の流れと同じ方向および同じ流量割合でダルベッコリン酸緩衝生理食塩水の1.25mlがカセットに通された。この洗浄手順の後、固定剤の3つの0.1ミリリットルの分割量は、毎分0.025ミリリットルでカセットに通された。固定剤の通過に10分間を要した。固定剤分割量の通過の間および介在期間、水氷を装置に適用することで、カセットおよびホルダーは冷やされた。
【0138】
固定剤の通過の後、カセットは2つの方法のうちの1つで処理された。通過後すぐに固定剤が(カセットから固定剤の液滴がなくなるまでろ過された空気をカセットに通過させることによって)除去された、いくつかのカセットは、摂氏4度で一晩かけて貯蔵され、一晩かけた貯蔵の後FISH処理された。4つ以上のカセットが蓄積されるまで、他のカセットは、カセット内に残留した固定剤と摂氏4度で貯蔵され、固定剤が除去された時、カセットは摂氏4度で一晩かけて貯蔵され、一晩かけた貯蔵の後FISH処理された。FISH処理は、カバーの除去および実施例3に記載したようにCEP(登録商標)X Spectrum Orange(商標)CEP(登録商標)Y Spectrum Green(商標)を使用する処理を必要とした。DAPIは対比染色として、および、完全な核を示すために使用された。
【0139】
染色後、そこに付着された染色された細胞を有するガラスカバーは、手動で蛍光顕微鏡を使用するか、または自動検出アルゴリズムに連結するコンピュータ制御のステージを使用して、調べられた。
【0140】
いくつかのカセットにおいて、カバー上に固定された細胞は、カセット内に捕捉された細胞のタイプおよび分布を調べるためにライト−ギムザ染色によってのみ染色された。
【0141】
この実施例における実験から得られた結果は、これから議論される。
【0142】
妊娠した女性22人から得られた母体血液の試料は、38のカセットに通された。26のカセットは、本明細書に記載されたFISH/DAPI手順を用いて処理され、12のカセットはライト−ギムザのみによって染色された。FISHにおいて使用された26カセットのうち、12は分析に適しているとわかり、14は正しくハイブリダイズすること、または、染色剤で染色したものを習得することに失敗し、それらが不適当に固定されたことを示した。
【0143】
全体のカバー域の約12.5%が自動顕微鏡およびアルゴリズムを使用してスキャンされると、分析に適当であった12カセットのうち、3つが雄性陽性信号を出力した。自動化システムの厳密さに対する懸念により、いくつかのカセットが手動で再びスキャンされた。カセットの再スキャンは、個々のプレートで検出された1〜11の間の雄性細胞によって、12カセットのそれぞれでの雄性陽性信号細胞の発生を明らかにした(12のプレートのそれぞれで検出された雄性細胞の数は、1、2、2、2、2、3、3、3、3、4、8、および11であった)。これらの雄性細胞のうち、多く(64%)が、段に対するカバーの距離が4.0、4.2および4.4マイクロメートルである段に対応するカセットカバーの部分で検出された。雄性細胞の約36%は、段に対するカバーの距離が4.6、4.8、5.0、5.2および5.4マイクロメートルである段に対応するカセットカバーの部分で検出された。
【0144】
図7は、男児胎児細胞における陽性信号を提供する同定された細胞のそれぞれの位置の相対的な「地図」を提供する。同定された細胞の多くは、カセットの排出口または排出口領域にあり、わずかな細胞が注入口領域内にある。これは、カセットが胎児細胞を捕捉できること、および、その通過をさせないことを示している。
【0145】
1つのカセットからの結果は、11の胎児細胞(つまり核内にXおよびY染色体の両方の存在を示す蛍光信号を示す細胞)が捕捉されたことを示し、それらは、約300の成体雌性細胞(主に白血球であると考えられる)よりも少ない。
【0146】
捕捉された細胞の形態を調べるため、12のカセットはライト−ギムザ染色によって染色された。これらのカセットはFISH分析において使用されず、光学顕微鏡によってのみ観察された。これらのカセットのうちの2つは、カセットに塗布された試料の性質に関して知らされていない有核白血球における専門家(移植免疫学者)に提供された。この専門家は、補足された細胞は、顆粒白血球およびそれらと混じった単核細胞を有する主に「類上皮細胞」の不規則なバンドを含むと考えた。これらの細胞の細胞学的形態が、専門家によって上皮様であると評されたにもかかわらず、免疫学者が、胎児栄養芽層が観察された細胞の一つかもしれないと予想するように言われなかったという事実からみて、それらは栄養芽層または他の巨大細胞であると考えられた。胎児栄養芽層が胎盤内の母体血管に侵入する上皮細胞であることは公知である。
【0147】
胎児栄養芽層様細胞は、段との距離が4.0、4.2および4.4マイクロメートルであるカバーを有する段に対応するカセットカバーの部分で観察された。XおよびY染色体の両方のための信号を提供した細胞の大部分が、その部分で発見された。これらの栄養芽層様細胞の推定された頻度は、循環癌細胞または通常の血液中の他の形態が類似している細胞において予測されたものよりも非常に高いものであった。この観察は、ヒトの血液循環において通常観察されない(またはごく少数のみ観察される)細胞をカセットが捕捉したことを示す。
【0148】
この実施例に記載された実験において使用されたカセットの検査は、カセットが通常、母体血液の各1.25ミリリットル試料から約200〜4000の細胞を捕捉したことを示す。捕捉された細胞の少なくともいくつかが胎児由来の細胞であることは捕捉された細胞の観察から明らかである。しかしながら、血液試料から他の様々な血液媒介細胞を捕捉できることも等しく明らかである。これらの他の細胞は白血球を含む。これらの実験において使用されたカセット中に捕捉された細胞の位置の分析は、細胞が主に3つの異なる領域で捕捉されたことを明らかにした。細胞の約30〜35%は、段に対して5.2および5.4マイクロメートルの距離のカバーを有する段を生じたカセットの部分で捕捉された。細胞の約25%は、段に対して4.0、4.2および4.4マイクロメートルの距離のカバーを有する段を生じたカセットの部分で捕捉された。捕捉された細胞の残りは、中間の段(つまり、段に対して5.0、4.8および4.6マイクロメートルの距離のカバーを有する段)に対応するカセットの部分に捕捉された。
【0149】
これらの実験に使用された条件下で、捕捉された好中球(通常、約9〜10マイクロメートルの細胞直径を有する)が単球(通常約10〜30ミクロンの細胞直径を有する)よりも流体の流れの方向にカセットの分離チャンバーに沿ってさらに移動でき、分離チャンバーの上流側のより近くでより頻繁に保持されたことが観察された。これらの観察は、この出願に記載された装置が、母体血液細胞から胎児細胞を分離するため、および母体血液細胞の異なるタイプを分離するための両方に使用されることができることを示している。(比較的小さい)好中球よりも、(比較的大きい)単球は、分離チャンバーの上流部分の近くで頻繁に捕捉できる傾向にあるという観察は、細胞が分離チャンバーを横断する能力は逆に寸法依存である論点を支持する。したがって、これらの観察は、細胞が血液細胞であろうとなかろうと(および細胞以外の粒子)、本明細書に記載されたような装置を使用して寸法によって分離されることができることを予測するために、この結果が血液媒介細胞を超えて挿入されることができることを示している。
【0150】
この実施例に記載された実験においてされた他の興味深い観察は、血中における相対的頻度と比較して、好中球に対する単球のカセット内における選択的保持に関連するものである。通常の血液試料における好中球および単球の集団は、通常、それぞれ、50〜70%および2〜8%の範囲内である。すなわち、通常の血液において、好中球は単球よりも一桁以上多い傾向がある。しかしながら、この実施例に記載された実験において、好中球:単球の割合は、より近い値である(55〜65):(35〜45)であった。本明細書に記載された装置を使用して得られた試料における好中球:単球の割合は、通常の血液において生じる割合(約50:1)よりはるかに高い(分離チャンバーの上流側において1.03:1および下流側において1.67:1)。これらの結果は、この出願に記載された装置が、少なくともこの実施例において記載されたように構成された時、好中球を捕捉するよりも効果的に単球を補足することを示している。
【0151】
母体血液1ミリリットルあたりに400万〜1,000万の白血球細胞があると仮定すると、この実施例に記載された実験は、本明細書に記載されたカセットの使用が、胎児細胞を含む潜在的に対象となるいくつかの細胞の明らかに分離可能なプールを維持する一方で、母体血液の1.25ml試料から、実質的に赤血球細胞、血小板および血漿、および、全ての有核白血球細胞を除去したことを示す。血液の1.25ミリリットル試料において約2.5〜6.25X1016の細胞があると仮定すると、この実施例において記載された結果は、対象の細胞をまだ維持すると同時にカセットが553±316(6のNにおける平均の平均±標準誤差)のみ捕捉することから、本明細書に記載された装置の作動が基本的に全ての細胞のカセットを経由した通路において生じたことを示す。特定の細胞分離のこの度合いは注目に値するものであり、――分離領域内の粒子の分離を無視しても約1014倍の浄化である。
【0152】
この実施例で記載された実験の結果は、この実施例に記載されたカセットが、ミクロンの寸法で定義される狭い空間を経由する血液の通過に適応できるものであることを示している。この実施例に記載された装置において、流体圧力、および、細胞の「パッキング」により細胞の完全性を崩壊し、狭い通路を潜在的に塞ぐことのある他の特徴は使用された血液試料においてこれらの効果を生じなかった。血液の凝固も観察されなかった。作動のいかなる理論にも束縛されることなく、この実施例に記載されたカセットは、粒子の寸法または直径に依存した分離選択過程を提供するとともに、全ての赤血球細胞、血小板、白血球細胞が通過するのに十分な空間を維持するようカセット内に適当な距離を提供すると考えられる。
【0153】
この実施例に記載された研究は、細胞に最小限の損傷で、凝固することなく1.25ミリリットルの血液がカセットを通過するのに十分な流出条件を定義した。さらに、血液の試料の通過は単一の分離ユニットのみを使用して1時間未満に達成された。この細胞分離時間は、他の細胞分離方法を使用して達成できるものよりも実質的に短く、臨床的に、および、商業的に関連した時間の範囲内で血液細胞の定義されたサブ集団を送達するために十分なものである。それらを実行するために使用されたこれらの急速な方法および装置は、出生前胎児診断または他の診断、治療または研究への適応のための診断対象の細胞集団の収集を可能にする。大多数の他の細胞がカセットを通過することができるとともに、全ての胎児細胞を捕捉できる能力は、分析および例えば遺伝子異常の検出のための完全な胎児遺伝子試料を提供することができる。これらのデータは、装置によって捕捉された材料が分子診断プロトコルの使用に適していることも示している。
【0154】
この実施例において記載されたカセットおよび方法は、分析のための細胞または粒子試料を豊富にすること、または分析のための純粋な集団を得ることのどちらもが重要である、治療、診断および一般的な研究への適用における生物学的対象の細胞および他の粒子の選別において有益な手段を提供する。遺伝子への適用、表現型分析、エピジェネティック分析は、このような分離過程から恩恵を受けうる分野である。
【0155】
実施例5
母体動脈血液試料からの胎児細胞の分離
ヒト胎児栄養芽層細胞は、通常、14.3〜30マイクロメートルの範囲で細胞直径を示すものと考えられている。哺乳類の毛細血管の管腔は、約15マイクロメートルまたはそれより小さい、著しく小さい径を呈することがある(例えば、Wang et al.,2007,Exp.Eye Res.84:108−117を参照、そこにおいて、動脈血に与えた8マイクロメートル<直径を有する微小球体が体循環に再び入ることは観察されなかった;Maxwell et al., 1985, Heart Circ. Physiol. 248(2):H217−H224、同様に、腸毛細血管循環を通過する動脈投与された微小球体において、約9マイクロメートルを限界とするサイズが観察された。)。
【0156】
これらの観察を考慮して、in vivoでの胎児栄養芽層(および類似の巨大細胞)は全身の毛細血管床の動脈側に選択的に集中されていることが決定された。これは毛細血管の動脈側にある流体が特に胎児栄養芽層の適切な源であるという決定に続いて起こる。このような流体は、動脈血、特に、毛細血管床の(生理学的血流に関して)上流から取られる動脈血を含むことができる。これらの流体はまた、毛細血管(例えば肺または気管内分泌)または他の狭い通路を介する動脈血(例えば総肝動脈における血液)の通過より前の動脈血から送達された流体も含むことができる。
【0157】
この実施例に記載された観察は、胎児栄養芽層(および類似の巨大細胞)の有意な数が、毛細血管床、特にこのような毛細血管床の動脈側に蓄積することを期待できることも示している。毛細血管床から直ちに上流に取りこまれた血液は、胎児栄養芽層(および類似の巨大細胞)が比較的豊富であると期待できる。
【0158】
母体血液循環における胎児栄養芽層の比較的希少性の観点において、胎児栄養芽層が豊富である身体的位置からの胎児栄養芽層の収集は、このような細胞の検出および非検出間で違いをつくることができる。したがって、この実施例における観察は、母体動脈血液の得られた試料、動脈血液から送達された流体(つまり、毛細血管を介したこのような血液の通過の前)または毛細血管床の上流を直ちに収集した母体血液が、静脈血液試料と比較して、胎児栄養芽層(および類似の巨大細胞)がこのような試料から収集される可能性を改善することができることを示唆している。
【0159】
実施例6
胎児栄養芽層における細胞表面マーカーの使用
他は、グリコスフィンゴリピド指定されたグロボシドが胎児栄養芽層および他の細胞の限られた数の表面で生じること、および、グロボシドがヒトパルボウイルスB19の受容体として作用することを報告した。Wegner et al., 2004, Infect. Dis. Obstet. Gynecol. 12:69−78.Wegner et al.は中空B19キャプシドがヒト絨毛栄養芽層細胞に特異的に結合することを報告した。
【0160】
他は、B19が単独でグロボシドと結合しないが、その代わりに、1以上のグリコスフィンゴリピドおよび/または他の分子の複合体を結合すると報告した。Kaufmann et al., 2005,Virology 332:189−198.B19およびB19キャプシドタンパク質が結合する実態の正確な同一性に関係なく、B19およびそのキャプシドタンパク質はヒト胎児栄養芽層と結合し、このような結合のためにこれらの栄養芽層の膜におけるグロボシドの発生を必要とするように見える。したがって、B19、そのキャプシドおよびキャプシドタンパク質および他のグロボシド結合剤は、他のヒト細胞(妊婦および以前妊娠した母体の血液において生じるヒト細胞由来を含む)からヒト胎児栄養芽層を同定し、分離するために使用されることができる。
【0161】
グロボシドは広くヒトにおいて発現される。ヒト集団のごくわずかな一部だけがその赤血球細胞上にグロボシドを発現することに失敗する。グロボシドの発現は、発達の妊娠初期におけるヒト胎児の栄養芽層が最も高いと報告されている。したがって、グロボシドは胎児栄養芽層を同定するためのマーカーとして使用されることができ、および、細胞によるグロボシド発現の強度は、比較的早い段階の栄養芽層は、通常、後の段階の栄養芽層よりも、高いレベルで(または細胞表面密度)でグロボシドを発現することから、胎児から分離された栄養芽層における発達の段階の指標として使用されることができる。
【0162】
染色体材料とのハイブリダイゼーションによって胎児栄養芽層を同定する(つまり、いくつかのコピーのうちどの1つが細胞ごとに存在するか)蛍光インサイツハイブリダイゼーション法と比較して、グロボシドの検出を含む細胞検出方法は、細胞表面における複数のグロボシド分子の発生の観点からみて、有意に大きな信号対雑音比を有することがある。さらに、胎児栄養芽層発達の初期段階とグロボシド発現の相関は、グロボシド発現の強度に基づいた細胞の選択または分離を可能にする。
【0163】
グロボシドは、胎児栄養芽層および他のグロボシド発現細胞を同定するための細胞表面マーカーとして使用されることができる。他の特徴(例えば、細胞寸法および構造)はグロボシドを発現する他の細胞(例えば赤血球細胞、巨大核細胞、内皮細胞および胎児の心臓筋細胞)からの栄養芽層と区別するために用いることができる。
【0164】
グロボシドと特異的に反応または結合する任意の試薬は、グロボシド表現型細胞を同定するために使用することができ、例えば、グロボシドに対する単クローン抗体、ヒトパルボウイルスB19VP2カプシドタンパク質(例えば、色原体、放射性、またはビオチンで標識されたタンパク質)、エンプティB19カプシド、または完全なB19ウイルスを含む。このような試薬は、例えば、グロボシド表現型細胞が装置の表面に特異的に付着するように、本明細書に記載された装置の表面に試薬を付着することによって、捕捉試薬として使用されることができる。
【0165】
実施例7
分離された細胞の培養および/または増殖
本明細書に記載された方法および装置は、非侵襲性出生前診断における資料を得るために胎児細胞栄養芽層の分離および選択的培養において使用されることができる。
【0166】
胎児栄養芽層は(例えば)母体血液試料の他の細胞から分離されることができ、浸潤できない汚染母体有核細胞を残して、多孔質膜内に浸潤し、および、多孔質膜を介して移動するために、これらの細胞を第一のきっかけとして培養されることができる。その後、胎児栄養芽層は、これらの細胞において増殖的挙動を誘導すると知られている要因を使用して、浸潤性から増殖性表現型へと転換するきっかけとなることができる。増殖する細胞は分割し、例えば、既存の分析条件の感度要件を満たすのに十分な数の細胞のような所望のレベルにその数を増やす。栄養芽層(または他の細胞)を選択的に培養するために、浸潤性表現型から増殖性表現型への転換を誘導することを含むこれらの方法は、培養された胎児細胞を使用して診断されることのできる任意の疾患の非侵襲性出生前診断において使用されることができる。
【0167】
本明細書に記載された表現型スイッチを容易にするため、本明細書に記載された粒子分離装置は、1つの実施例において、装置の本体およびカバーの間に被覆された、または被覆されていない多孔質膜を加えることにより修正される。細胞を分離するために、本明細書に記載されたように当該装置は作動され、および、胎児細胞の侵入、移動および増殖する能力を利用するこの実施例に記載された細胞を分離および増幅する工程を付加的に実行することによって作動される。
【0168】
細胞分離工程
本明細書の他で記載された過程は以下のように改変される。本明細書に記載された装置は、本明細書に記載されたように試料(例えば、母体血液試料)から胎児細胞を分離および濃縮するために使用される。分離された細胞は、本体10および膜81の間の間隙11に配置される。胎児細胞の浸潤性表現型は(例えば、このような表現型を誘導すると知られている化合物を間隙に付加することによって)誘導され、それによって、胎児細胞は、汚染母体細胞を含む間隙から膜を横切って移動する。移動胎児細胞は、膜81の細孔82へと移動し、膜81を介して膜81およびカバー12の間の空間内へと侵入する。この空間の中で、胎児細胞の表現型は、再び転換され、この時は、分割し、数を増やす細胞を生じる増殖性表現型に転換される。胎児細胞の集団を拡大した結果は、例えば、胎児遺伝子材料を必要とする胎児診断方法において使用されることができる。これらの細胞は、胎児から非浸潤で得ることができる試料から(例えば、母体末梢血液試料から)得ることができるため、これらの方法は、胎児試料を得るために胎児の妨害を必要としない点において、他の胎児診断方法と比較して利点を有する。
【0169】
この実施例に記載された装置および方法は、胎児細胞以外の細胞および粒子にも同様に有用である。これらは胎児細胞の分離だけではなく、バクテリア、ウイルス、原生動物、例えば虫、昆虫、寄生虫のような多細胞生物、鉱物および有機粒子、有機および無機分子の分離においても使用されることができる。
【0170】
膜または他の障壁81は多孔性または非多孔性であることができ、および、1以上の材料から製造されることができ、および/または1以上の材料によって被覆されることができる。膜または他の障壁81の目的は、それとともに結合するおよび/またはそれを通して通過する、集団における細胞の少なくとも1つのタイプの能力に基づいて、集団における細胞を少なくとも2つのタイプに分離することができる構造を提供することである。明らかに、複数の膜または他の障壁81は、本明細書に記載された方法および装置において(間隙11における粒子の観点から、連続して、または並行して)使用されることができる。
【0171】
背景
胎児栄養芽層は、母体末梢血液において非常に珍しい。多くの既存の分析技術において有用であるために、試料中の胎児細胞は、非胎児(つまり母体)細胞から実質的に分離されなければならない。現在利用可能な胎児細胞収集方法および装置は、しばしば、胎児細胞の十分な数および純度を有する試料を製造することができない。有用な胎児細胞は、対応する胎児内に存在する細胞である必要はない;多くの適用において、胎児細胞は、胎児から得られた子孫細胞であれば十分である。
【0172】
通常、初期胎児細胞(例えば胎盤中の細胞栄養芽層)は系統学的に少なくとも2つの異なる表現型を経る。初期段階において、胎児栄養芽層は増殖性表現型を示し、成長し、分割し、および増殖する。その後、それらは浸潤性表現型に分化し、胎児側から胎盤の母体側(つまり胎盤内または胎盤を経由して浸潤する)に移動する。浸潤性を示す胎児栄養芽層、移動表現型は、例えば、母体らせん動脈の内側(内皮)表面を移動するように、母体血流に到達するものであると考えられる。
【0173】
胎児栄養芽層におけるこの表現型転換の過程は、酸素濃度における変化を含む条件の組み合わせによって、および、表現型変化を生じ、誘導し、または支持する信号分子の発生によって、引き起こされる。これらの条件および信号分子は、例えば本明細書に記載された装置および方法のようなin vitroで、胎児栄養芽層において表現型転換を誘導するために使用されることができる。
【0174】
分離された胎児栄養芽層のin vitroでの増大
この実施例に記載された方法および装置は、胎児栄養芽層の分離及び培養を可能にするために、初期胎児細胞の増殖および侵入の自然な性質を利用する。これは、試料における胎児栄養芽層細胞を多孔質膜内に侵入および多孔質膜を介して移動するための第一誘発によって達成される(例えば、Logan et al.,1992,Cancer Res.52:6001−6009、または、Yang et al.,2009,J.Histochem.Cytochem.57:605−612に記載された周知の方法を使用する)。このような浸潤ができない汚染母体有核細胞を残し、栄養芽層は細孔を介して浸潤する。栄養芽層はそれによって汚染細胞から分離される。
【0175】
分離された胎児栄養芽層は、増殖的挙動を誘導することが知られている要因を使用して、浸潤性表現型から増殖性表現型に転換するよう誘導される(例えば、これらの1つ以上がRed−Horse et al.,2004,J.Clin.Invest.114:744−754;Ray et al.,2009,Placenta 30:96−100;Genbacev et al.,1997,Science 277:1669−1672;Gobble et al.,2009,Placenta 30:869−875;Truman et al.,1986,"The Effect of Substrate and Epidermal Growth Factor on Human Placental Trophoblast Cells in Culture,Springer,Berlin;Zhou et al.,2008,"Extreme Makeover:Converting One Cell into Another,"Elsevier,Cambridge;米国特許第7,244,707号に記載された)。増殖性細胞は、分裂し、例えば、既存の市販分析技術の感度要求を満たすのに十分なレベルのような選択されたレベルへと数が増える。
【0176】
図8は膜または他の障壁81の適当な実施形態を示す。図8Aは膜81の一部の正面図である。図8Bは、図8Aの平面8Bに沿って切り取られた膜81の垂直断面の部分の拡大図である。この特定の実施形態において、膜81は多孔性であり、片側一方が被覆されており、したがって図8Bは、膜81およびコーティング83を通って延長している細孔82を示す。図8に示される実施形態において、前記コーティング83は膜81の片面に適用されて(ただし、他面には適用されない)用いられるが、もう一方の面にはなされず、細孔82の中に延長せず、細孔82を塞がない。
【0177】
図9は膜または他の障壁81を組み込む装置を示す。図9は、図2Aに示され、本体10およびカバー12の間に差し挟まれた膜81を含むタイプの装置の平面図9Aに沿って切り取られた垂直断面図である。内側支持体20は、装置内の膜81の均一な、水平化された置換を援助する。内側支持体20は、間隙11を定義するのにも役立ち、および、間隙11のサイズに対する制御も提供する。細胞が分離された後、胎児栄養芽層を含む細胞の集団は、間隙11内、膜81との流体連結内に残留する。膜に配置された試薬(例えばB19 VP2タンパク質)は膜と結合するために胎児栄養芽層を生じる。非結合細胞は、例えば、このような細胞を除去する流体で洗浄されることにより間隙から除去される。間隙は、培養培地および胎児栄養芽層において増殖性表現型を誘導できる1以上の試薬で満たされる。栄養芽層は膜81および/または間隙11内で増殖し、それによって採取されることができる。
【0178】
図9の部分的に示された装置の他の実施形態において、カバー12の代わりに内側支持体構造20を有する、第2の同一の本体10がある。しかしながら、この第二本体は膜81の反対側に「反映する」方法で適用されるので、2つの同一の一致した本体は膜の両側で互いを「反映する」。これは、互いから分離され、および、膜の反対表面と接触する複数の間隙をつくる。この実施形態において、膜の両側の間隙11は、例えば細胞、分子などの様々な種類が、膜を介して一方の間隙から他方の空隙に浸透するまたは浸潤する(つまり膜を横切って)ために空間を提供する。このように、胎児栄養芽層がそれらの浸潤性表現型において移動することができる材料(例えば、基底膜マトリックスの薄いフィルム)から膜ができている場合、および、浸潤性胎児栄養芽層を含む細胞の集団が膜の1つの面に生じる場合、胎児栄養芽層の浸透(つまり浸潤)を生じることができ、結果として、膜の反対側の間隙に胎児栄養芽層(しかし集団の他の細胞ではない)の出現となる。この実施形態はまた、膜の反対側の間隙から同一でない流体または試料を誘導するまたは取り出すための機会を提供する。
【0179】
膜81を通って浸透することができる胎児栄養芽層のin vitroでの分離および増大は、例えば以下のように達成されることができる。
【0180】
胎児細胞および他の類似の寸法の細胞は、本明細書(膜または他の障壁81に関する開示を無視する)に記載されたように母体末梢血液から分離されることができる。細胞の寸法分離された集団は、実質的に赤血球、血小板、他の小さな細胞および血漿を実質的に除去するために流体で洗浄される。このとき、集団における細胞の少なくともいくつかは胎児栄養芽層であるが、同様に、集団における母体細胞(例えば巨大有核リンパ球)であることもある。それにもかかわらず、細胞のこの集団は、装置の間隙11内に残留されることができ、もとの母体血液試料と比較して、有意に(例えば1000フォールド)胎児細胞において富む。
【0181】
試薬は間隙に加えられ、この試薬は、浸潤性表現型を呈するために胎児栄養芽層を集団に誘導する。例として、間隙は、最大で20%の酸素を含むガス混合物(つまり、間隙における上記の液体に代わって)で満たされることができる。この処理によって、胎児栄養芽層は、それらと接触している膜81(例えば、膜81が間隙11と接触していた場合、または、栄養芽層が間隙11によって被覆され、膜81と他の場所で接触していた場合)を介して浸透することができる。必要または所望の場合、当該装置(または所望の細胞を含む当該装置の部分)は、細胞が浸潤性表現型を呈することを促進するために、回転することができる、または、操作されることができる。あるいは、または、加えて、胎児栄養芽層の薬剤(例えばSmurf2遺伝子産物)への移動を誘導する薬剤は、膜81の間隙11の反対、膜81側に隔離されることができる。それによって胎児栄養芽層を膜の方へまたは膜を介して移動するよう誘導する。
【0182】
胎児栄養芽層が膜を介して第2間隙内または第2材料内に透過した後、それらは回収されることができる。あるいは、胎児栄養芽層の多くの数または濃度を所望する場合、第2間隙または第2材料(または、随意に、装置全体)は、当該栄養芽層を増殖に誘導する条件(例えば、酸素濃度の減少または増殖的な表現型を誘導することが知られている特定のキナーゼのような要因の付加)に曝されることができる。細胞が採取前に増殖に誘導されるかどうかに関係なく、胎児栄養芽層としての強度を確認するために、細胞は、様々な方法および試薬(例えば、その物理的特性または本明細書に記載されたB19 VP2タンパク質との結合能力を分析することによって)によりテストされることができる。
【0183】
本明細書に記載された膜81は、ヒト胎盤の細胞外マトリックスに類似の製剤から製造される、または被覆される、または構成された基底膜様マトリックスから製造される。このような膜およびコーティングを製造するための市販品は、Matrigel(商標)(Collaborative Research,Lexington,マサチューセッツ州)および基底膜抽出物Cultrex(商標;Trevigne,Inc.,Gaithersburg,メリーランド州)を含む。図8Bに示したように、細孔は膜の一方からもう一方に連続的に及び、したがって、膜の反対側平坦面と互いに流動的に接続する(及び膜のいずれの面上の間隙と流動的に接続する)。細孔の寸法および形は、それらのコーティングおよび充填剤と同様に、特定の適用、装置設計および分離される粒子、細胞または分子のタイプに依存する。
【0184】
適当な装置の他の実施形態は、図9を参照することによって記載されることができる。この実施形態において、本体10の代わりに、膜81およびカバー12の間に付加的な支持体および供給層を含むまたは保有することができる。この層は、例えば、剛性成形または押出加工されたプラスティックまたは弾性シリコンゴムから製造されることができる。この層は、この必須の装置において2つの必要な機能を提供する。第1に、この層は、循環培養培地のための供給チャネルを提供し、および、増殖/分割する標的細胞の増大のための室を提供するための構造を供給することができる。第2に、この層は、図9における内側支持体構造20と類似の隆起のような機械的支持体を提供することができる。膜は、これらの隆起および支持体構造20の間で固定されることができる。このように、力の移行は、平坦な同一のクランピング、および、分離装置のカバーおよび本体の間に吊された膜の伸びを確保するために、カバー12から膜81への隆起を介して支持体構造20および本体10に提供される。
【0185】
膜81は、流体の流れ、細胞の転位、またはその両方を導くために成形された部分を含むことができる。一実施形態において、膜81を被覆している第1層83はごく薄いものであり、第2層は、高い隆起および埋め込まれた溝(チャネル)をつくるために第1層に(つまり、膜81と接触する第1層の表面の反対側表面に)堆積され、印刷されて(または書かれて)いる。ストリップおよび溝の幅は、細胞処理が及びと予想される範囲がどの程度であるかに基づいて選択される。その結果、細胞はその処理によって溝に届き、および、溝を感知し、溝における媒体の流れのような、細胞を引き付ける要因がある場合に、溝の中へと移動する。あるいは、本体10およびカバー12の1つまたは両方は、溝または同じ機能を提供する他の形作られた表面を有することができる。もちろん、膜81は、本体10およびカバー12の間の間隙11に合うように形作られる、または切断されることができ、装置の他のエレメント(例えば、注入口および排出口)に適応するために穴または付属品を有することができる。
【0186】
膜または他の障壁81は均一な厚さを有することができ、またはこの厚さは変化することができる。膜または他の障壁81の1つまたは両方の表面は、例えば全体にわたって溝付きの、または、複数の繰り返しパターンにおいて鋳造されたような、特定の適用、装置設計および分離される粒子、細胞または分子のタイプに依存する形を有することができる。このような複数のパターン変化は、前述した構造的および幾何的変化と一致する、または一致しない、材料、多孔性および膜のコーティングにおける変化に適用されることもできる。
【0187】
その間にマトリックス層を有する2つの膜または他の障壁81は、単一の膜または他の障壁81の代わりに使用されることができる。膜または他の障壁81の端は、一緒に封止されることができ、平坦なポーチを効率的につくる。マトリックスは、例えば、胎児栄養芽層において浸潤性または増殖性表現型を誘導する培養培地および/または化合物を含むことができる。例えば、マトリックスが、胎児栄養芽層において増殖性表現型を誘導できる細胞培養培地および要因を含む場合、当該マトリックスに入る浸潤性栄養芽層は増殖性表現型に変わることができ、細胞培養培地において増殖するよう誘導されることができる。
【0188】
細胞を選択的に分離する、および増殖する方法の他に取りうる実施形態において、選択されたタイプのバクテリア(例えばヒト病原体)はヒトから採取された試料から分離されることができ、および、増殖のために本明細書に記載された装置に導入される。
【0189】
バクテリアはとても小さく、しばしばミクロ流体の装置において分離することが困難である。しかしながら、装置の部分を経由して通過する細胞の能力に基いて細胞を分割し、当該装置の間隙11、および、対象の1以上のバクテリアを選択的に引き付けるおよび/またはバクテリアの増殖を促進する培地の間にはさまれた多孔質膜を含む細胞分離装置を含む、本明細書に記載された装置を使用して、バクテリアは分割されることができる。膜が当該装置の間隙11における流体と流動的につながる場合、間隙におけるバクテリアは膜を横断して移動(能動的または受動的に)することができ、培地において増殖することができる。このような装置および方法は、試料中の少数のバクテリア(例えば、血液、尿、食品、廃水などのような試料中のバクテリアまたは他の病原体の希薄集団)を検出するために有用である。
【0190】
間隙11の反対側の膜または他の障壁81側に誘引物または培養培地を含むことに加えて、他の装置または組成物は、その空間に位置されることができる。例えば、その空間が、反応/検出区画として使用されることができ、例えば、DNAのゲル電気泳動のためにゲルで満たされる。例えば、ゲル内に移動したバクテリアは溶解されることができ、その核酸は他の試薬と電気泳動で分離、反応またはハイブリダイズされることができた。
【0191】
本明細書に引用された全ての特許、特許出願および公報の開示は、その全体に参照によって本明細書に組み込まれている。
【0192】
主題は、具体的な実施形態を参照することにより本明細書に開示されたとともに、この主題の他の実施形態および変化が、主題の真の精神と範囲から逸脱することなく他の当業者によって考案されることができることは明らかである。添付された特許請求の範囲は、全てのこの種の実施形態および等価な変化を含むものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
母体血液サンプルからの胎児様細胞を分離する方法であって、
本体、カバーおよび分離エレメントを有する装置の注入口領域に前記サンプルを導入する工程であって、
前記本体およびカバーは前記分離エレメントを含む間隙を定義するものであり、当該間隙は注入口領域および排出口領域を有するものであり、
前記分離エレメントは第一の段と第二の段とを有し、前記注入口領域および排出口領域を流動的につなぐ段階状の通路を定義するものであり、
前記段階状の通路は、前記第一の段と前記本体およびカバーの少なくとも1つとにより境界される第一の通路を含み、且つさらに、前記第二の段と前記本体およびカバーの少なくとも1つとにより境界される第二の通路を含むものであり、
前記第一の通路は狭径を有し、且つ前記第二の通路と前記注入口領域とを流動的につなぐものであり、
前記第二の通路は前記第一の通路の狭径よりも狭い狭径を有し、当該第二の通路の狭径は8〜15マイクロメートルの範囲である、前記導入する工程と、
前記注入口領域から前記排出口領域に向かう方向において、前記段階状の通路における流体の流れを誘導する工程であって、これにより母体血液細胞が前記第一および第二の通路を通過して、前記排出口領域に移動し、且つ胎児様細胞は前記第二の通路に入ることができないものである、前記誘導する工程と
を有するものである、方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、この方法は、さらに、
前記装置から前記胎児様細胞を回収する工程を有するものである、方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法において、前記胎児様細胞は、前記排出口領域から前記注入口領域への方向の前記段階状の通路において流体の流れを誘導することにより集められ、これにより前記胎児様細胞が前記注入口領域に入ることが可能である、方法。
【請求項4】
請求項2記載の方法において、前記胎児様細胞は、当該胎児様細胞を分離した後に前記第一の通路から流体を集めることにより、収集されるものである、方法。
【請求項5】
請求項4記載の方法において、前記胎児様細胞は、装置を分解し、且つ前記第一の通路から当該胎児様細胞を回収することにより収集されるものである、方法。
【請求項6】
請求項4記載の方法において、前記胎児様細胞は、前記第一の通路の中にカテーテルを挿入し、且つ前記カテーテルの内腔を通して当該胎児様細胞を収集することにより、収集されるものである、方法。
【請求項7】
請求項1記載の方法において、この方法は、さらに、
前記第一の通路の範囲内で溶解産物を産生させるため前記胎児様細胞を溶解する工程と、前記溶解産物を含む前記流体を収集する工程とを有するものである、方法。
【請求項8】
請求項1記載の方法において、前記装置の外側と前記注入口領域との間での流体の流れを促進するために、少なくとも1つの前記本体およびカバーは、当該注入口領域と流体連結する流体注入口を定義するものである、方法。
【請求項9】
請求項1記載の方法において、前記装置の外側と前記排出口領域との間での流体の流れを促進するために、少なくとも1つの前記本体およびカバーは、当該排出口領域と流体連結する流体排出口を定義するものである、方法。
【請求項10】
請求項1記載の方法において、前記分離エレメントは、前記本体および前記カバーの少なくとも1つと一体化するものである、方法。
【請求項11】
請求項1記載の方法において、この方法は、さらに、
前記第一の通路の前記狭径を維持するための支持体を有するものであり、当該支持体は、前記第一の通路に位置し、且つ前記第一の通路の前記狭径の方向に延伸するものである、方法。
【請求項12】
請求項11記載の方法において、前記支持体は前記分離エレメントと一体化し、且つ当該分離エレメントから離れて延伸するものである、方法。
【請求項13】
請求項11記載の方法において、前記支持体は前記本体および前記カバーの1つと一体化し、且つそれらから離れて延伸するものである、方法。
【請求項14】
請求項1記載の方法において、この方法は、さらに、
前記第二の通路の前記狭径を維持するための支持体を有するものであり、当該支持体は、前記第二の通路に位置し、且つ前記第二の通路の前記狭径の方向に延伸するものである、方法。
【請求項15】
請求項1記載の方法において、前記分離エレメントは複数の段階状の通路を定義するものであり、当該段階状の通路は、i)前記注入口および排出口領域を流動的につなぐものであり、且つii)第一の段により境界される第一の通路および第二の段により境界される第二の通路を含むものである、方法。
【請求項16】
請求項15記載の方法において、前記段階状の通路の1つの、前記第一の通路の前記狭径は、少なくとも1つの他の前記段階状の通路の前記第一の通路の前記狭径とは異なるものである、方法。
【請求項17】
請求項1記載の方法において、前記段階状の通路の中を流れる流体の前期第一および第二の通路において実質的に直線流速を等しくするために、当該第一および第二の通路の幾何学的寸法は選択されるものである、方法。
【請求項18】
請求項17記載の方法において、前記段階状の通路の全体において、当該段階状の通路の中を流れる流体の直線流速を実質的に等しくするために、当該段階状の通路の全ての部分の幾何学的寸法は選択されるものである、方法。
【請求項19】
請求項1記載の方法において、前記第一および第二の段の各々は、直角で交わる前記分離エレメントの一対の平面により定義されるものである、方法。
【請求項20】
請求項1記載の方法において、前記第一および第二の段の少なくとも1つは、90〜180度の角度で交わる前記分離エレメントの一対の平面により定義されるものである、方法。
【請求項21】
粒子を分離する装置であって、本体、カバーおよび分離エレメントを有し、
前記本体およびカバーは前記分離エレメントを含む間隙を定義するものであり、当該間隙は注入口領域および排出口領域を有するものであり、
前記分離エレメントは第一の段と第二の段とを有し、前記注入口領域および排出口領域を流動的につなぐ段階状の通路を定義するものであり、
前記段階状の通路は、前記第一の段と前記本体およびカバーの少なくとも1つとにより境界される第一の通路を含み、且つさらに、前記第二の段と前記本体およびカバーの少なくとも1つとにより境界される第二の通路を含むものであり、
前記第一の通路は狭径を有し、且つ前記第二の通路と前記注入口領域とを流動的につなぐものであり、
前記第二の通路は前記第一の通路の狭径よりも狭い狭径を有し、
これにより、前記注入口領域から前記排出口領域に移動する粒子は、それらが前記第一の通路および前記第二の通路のいずれかまたは両方を通過することができないことにより、分離され得るものである、装置。
【請求項22】
請求項21記載の装置において、前記注入口領域から前記排出口領域に移動する流体における粒子が、それらが前記第一の通路を通過すること及び前記第二の通路を通過できないことにより分離され得るようにするため、前記第一および第二の通路の前記狭径は選択されるものである、装置。
【請求項23】
請求項21記載の装置において、前記装置の外側と前記注入口領域との間での流体の流れを促進するために、少なくとも1つの前記本体およびカバーは、当該注入口領域と流体連結する流体注入口を定義するものである、装置。
【請求項24】
請求項21記載の装置において、前記装置の外側と前記排出口領域との間での流体の流れを促進するために、少なくとも1つの前記本体およびカバーは、当該排出口領域と流体連結する流体排出口を定義するものである、装置。
【請求項25】
請求項21記載の装置において、前記分離エレメントは、前記本体およびカバーの少なくとも1つと一体化するものである、装置。
【請求項26】
請求項21記載の装置において、この装置は、さらに、
前記第一の通路の前記狭径を維持するための支持体を有するものであり、当該支持体は、前記第一の通路に位置し、且つ前記第一の通路の前記狭径の方向に延伸するものである、装置。
【請求項27】
請求項26記載の装置において、前記支持体は前記分離エレメントと一体化し、且つ当該分離エレメントから離れて延伸するものである、装置。
【請求項28】
請求項26記載の装置において、前記支持体は前記本体および前記カバーの1つと一体化し、且つそれらから離れて延伸するものである、装置。
【請求項29】
請求項21記載の装置において、この装置は、さらに、
前記第二の通路の前記狭径を維持するための支持体を有するものであり、当該支持体は、前記第二の通路に位置し、且つ前記第二の通路の前記狭径の方向に延伸するものである、装置。
【請求項30】
請求項21記載の装置において、前記分離エレメントは複数の段階状の通路を定義するものであり、当該段階状の通路は、i)前記注入口および排出口領域を流動的につなぐものであり、ii)第一の段により境界される第一の通路および第二の段により境界される第二の通路を含むものである、装置。
【請求項31】
請求項30記載の装置において、前記複数の段階状の通路の各々の前記流体経路の長さは、実質的に等しいものである、装置。
【請求項32】
請求項30記載の装置において、前記段階状の通路の1つの、前記第一の通路の前記狭径は、少なくとも1つの他の前記段階状の通路の前記第一の通路の前記狭径とは異なるものである、装置。
【請求項33】
請求項30記載の装置において、前記段階状の通路の1つの、前記第二の通路の前記狭径は、少なくとも1つの他の前記段階状の通路の前記第二の通路の前記狭径とは異なるものである、装置。
【請求項34】
請求項30記載の装置において、前記段階状の通路の各々は、前記注入口領域と前記第一の通路との間に延伸する注入口通路を含み、且つ前記注入口通路の各々の流体経路の長さは実質的に等しいものである、装置。
【請求項35】
請求項21記載の装置において、前記段階状の通路の中を流れる流体の前期第一および第二の通路において実質的に直線流速を等しくするために、当該第一および第二の通路の幾何学的寸法は選択されるものである、装置。
【請求項36】
請求項35記載の装置において、移行チャネルは前記第一および第二の通路を流動的につなぐものであり、前記段階状の通路の中を流れる流体の前記第一の通路および前記移行チャネルにおいて実質的に直線流速を等しくするために、当該移行チャネルの幾何学的寸法は選択されるものである、装置。
【請求項37】
請求項36記載の装置において、前記移行チャネルは実質的に長方形のチャネルであり、当該移行チャネルの幅および高さの数学的結果は前記第一の通路から前記第二の通路まで当該移行チャネルの長さに沿って実質的に一定である、装置。
【請求項38】
請求項35記載の装置において、前記段階状の通路の全体において、当該段階状の通路の中を流れる流体の直線流速を実質的に等しくするために、当該段階状の通路の全ての部分の幾何学的寸法は選択されるものである、装置。
【請求項39】
請求項21記載の装置において、前記第二の通路の流れ領域に対する前記第一の通路の流れ領域の比率が0.5〜2となるように、当該第一および第二の通路の幾何学的寸法が選択されるものである、装置。
【請求項40】
請求項21記載の装置において、前記第一および第二の段の各々は、直角で交わる前記分離エレメントの一対の平面により定義されるものである、装置。
【請求項41】
請求項21記載の装置において、前記第一および第二の段の少なくとも1つは、90〜180度の角度で交わる前記分離エレメントの一対の平面により定義されるものである、装置。
【請求項42】
請求項21記載の装置において、前記第一の段は前記分離エレメントの平面によって定義されるものであり、当該分離エレメントは、前記平面を横切る前記第一の通路の前記狭径と等しい距離で、前記カバーおよび前記本体の1つから分離されているものである、装置。
【請求項43】
請求項21記載の装置において、前記第一および第二の通路の各々の前記流れ領域は長方形である、装置。
【請求項44】
請求項21記載の装置において、前記第一および第二の通過の各々の前記流れ領域は半楕円形である、装置。
【請求項45】
請求項21記載の装置において、前記分離エレメントは、前記注入口領域から前記排出口領域への方向において、前記段階状の通路において連続的に狭くなる通路の境界となる少なくとも3つの段を定義するものである、装置。
【請求項46】
請求項21記載の装置において、前記第一の通路は、前記本体および前記カバーの1つの平面と実質的に平行である前記分離エレメントの平面により境界されるものである、装置。
【請求項47】
請求項21記載の装置において、前記分離エレメントの平面の長さは、バルク流体の流れの方向において、前記第一の通路の前記狭径の少なくとも4倍である、装置。
【請求項48】
請求項21記載の装置において、前記平面の幅は、バルク流体の流れに対して垂直な方向において、前記第一の通路の前記狭径の少なくとも1000倍である、装置。
【請求項49】
粒子を分離する方法であって、
本体、カバー、および分離エレメントを有する装置の注入口領域において、流体に懸濁された粒子を導入する工程であって、
前記本体およびカバーは前記分離エレメントを含む間隙を定義するものであり、当該間隙は注入口領域および排出口領域を有するものであり、
前記分離エレメントは第一の段と第二の段とを有し、前記注入口領域および排出口領域を流動的につなぐ段階状の通路を定義するものであり、
前記段階状の通路は、前記第一の段と前記本体およびカバーの少なくとも1つとにより境界される第一の通路を含み、且つさらに、前記第二の段と前記本体およびカバーの少なくとも1つとにより境界される第二の通路を含むものであり、
前記第一の通路は狭径を有し、且つ前記第二の通路と前記注入口領域とを流動的につなぐものであり、
前記第二の通路は前記第一の通路の狭径よりも狭い狭径を有するものである、前記導入する工程と、
前記排出口領域において粒子を集める工程であって、これにより前記排出口領域における粒子が、前記第二の通路に入ることができない他の粒子から分離されるものである、前記集める工程と
を有するものである、方法。
【請求項50】
請求項49記載の方法において、前記粒子が前記注入口領域に導入された後、当該注入口領域から前記排出口領域への方向において、流体の流れは前記段階状の通路に誘導されるものである、方法。
【請求項51】
請求項50記載の方法において、流体の流れは重力により誘導されるものである、方法。
【請求項52】
請求項49記載の方法において、前記流体はガスである、方法。
【請求項53】
請求項50記載の方法において、流体の流れは前記注入口領域と流体連結する容器における静水圧により誘導されるものである、方法。
【請求項54】
請求項50記載の方法において、流体の流れは、前記注入口領域および前記排出口領域の少なくとも1つと流体連結するポンプで誘導されるものである、方法。
【請求項55】
請求項54記載の方法において、前記ポンプによって誘導される流体の流れの容積流量は、前記ポンプが作動している間、前記注入口と排出口領域との間の圧力低下を実質的に一定に維持するために、制御されるものである、方法。
【請求項56】
請求項49記載の方法において、前記粒子は細胞である、方法。
【請求項57】
請求項56記載の方法において、前記細胞が浮遊する前記流体は血液である、方法。
【請求項58】
請求項57記載の方法において、前記血液は母体血液である、方法。
【請求項59】
請求項57記載の方法において、前記装置に前記細胞を導入する8時間前以内に、前記血液は対象から得られるものである、方法。
【請求項60】
請求項56記載の方法において、前記細胞は運動性細胞である、方法。
【請求項61】
狭い通路に流す血液サンプルを分析する工程を含む方法の改善であって、前記狭い通路に血液サンプルを流す6時間前以内に、対応する対象から前記血液サンプルを収集する工程を有するものである、改善。
【請求項62】
請求項61記載の改善において、前記狭い通路は約100マイクロメートル以下の狭径を有するものである、改善。
【請求項63】
請求項61記載の改善において、前記狭い通路は約25マイクロメートル以下の狭径を有するものである、改善。
【請求項64】
請求項61記載の改善において、前記狭い通路がおよそ10センチメートル以下の狭径を有するものである、改善。
【請求項65】
請求項61記載の改善において、前記血液サンプルを前記狭い通路に流す2時間前以内に、前記対応する対象から前記血液サンプルを収集する工程を有するものである、改善。
【請求項66】
間隙を定義する本体および当該間隙を覆うカバーを有する装置の適切な組み立てを確認する方法であって、前記装置は、前記カバーと、前記本体により定義される前記間隙の壁との間の距離における変化に対して低い許容値を有するものであり、
前記間隙を定義する面と対向する平面を有するカバーを組み立てる工程と、
その後、前記カバーの平面を放射線で照射する工程と、
前記カバーにより反射または屈折する放射線の干渉パターンを観察する工程であって、これにより、前記干渉パターンは、前記カバーにおける湾曲の場所および範囲を示し、且つ前記間隙を定義する前記カバーの面と、前記本体により定義される前記間隙の壁との間の距離における変化が、適切な許容範囲内であるかどうかの確認を可能にするものである、前記観察する工程と
を有する、方法。
【請求項67】
請求項58記載の方法において、前記母体血液は動脈血である、方法。
【請求項68】
請求項57記載の方法において、前記流体は、動脈血、および毛細管より上流の動脈血由来の流体から成る群から選択されるものである、方法。
【請求項69】
請求項68記載の方法において、前記流体は、総肝動脈、肺分泌物、および気管支洗浄液から採血される血液から成る群から選択されるものである、方法。
【請求項70】
請求項1記載の方法において、前記装置は、さらに、前記間隙と流体連結する障壁を有するものであり、前記障壁は、前記胎児様細胞が前記サンプル中の他の細胞とは異なる相互作用をする材料を有するものである、方法。
【請求項71】
請求項70記載の方法において、前記胎児様細胞は前記障壁を貫通することが可能である、方法。
【請求項72】
請求項71記載の方法において、前記胎児様細胞は誘導されて、浸潤性表現型を示すものである、方法。
【請求項73】
請求項72記載の方法において、前記胎児様細胞は誘導されて、前記装置内での酸素濃度を増加させることにより浸潤性表現型を示すものである、方法。
【請求項74】
請求項71記載の方法において、前記障壁はヒトの胎盤の細胞外基質の構成要素を有する膜である、方法。
【請求項75】
請求項70記載の方法において、前記装置は、さらに、前記障壁と、前記間隙からの前記障壁の対向する表面とで囲まれている区画を有するものであり、これにより、前記障壁を通過する細胞が前記区画に入るものである、方法。
【請求項76】
請求項75記載の方法において、前記区画は、胎児栄養胚葉を引きつける作用因子を含むものである、方法。
【請求項77】
請求項76記載の方法において、前記作用因子はSMURF2遺伝子産物である、方法。
【請求項78】
請求項76記載の方法において、前記区画は、前記作用因子により実質的に完全に満たされるものである、方法。
【請求項79】
請求項75記載の方法において、前記区画は、胎児栄養胚葉が増殖性表現型を示すように誘導する作用因子を含むものである、方法。
【請求項80】
請求項75記載の方法において、前記区画は、胎児栄養胚葉の増殖を支える培地を含むものである、方法。
【請求項81】
請求項80記載の方法において、前記区画は、胎児栄養胚葉が増殖性表現型を示すように誘導する作用因子を含むものである、方法。
【請求項82】
請求項1記載の方法において、この方法は、さらに、
前記サンプルの他の細胞から前記胎児様細胞を分離した後、当該胎児様細胞の増殖を支えるのに十分である条件下において、前記装置を維持する工程を有するものである、方法。
【請求項83】
請求項1記載の方法において、前記間隙を定義する前記装置の一部は、前記胎児様細胞と特に結合する試薬で被覆されるものである、方法。
【請求項84】
請求項83記載の方法において、前記試薬はヒトパルボウイルスB19のVP2タンパク質を有するものである、方法。
【請求項85】
請求項83記載の方法において、前記試薬は空のヒトパルボウイルスB19カプシドである、方法。
【請求項86】
請求項83記載の方法において、前記試薬はヒトパルボウイルスB19の実質的に精製されたVP2タンパク質である、方法。
【請求項1】
母体血液サンプルからの胎児様細胞を分離する方法であって、
本体、カバーおよび分離エレメントを有する装置の注入口領域に前記サンプルを導入する工程であって、
前記本体およびカバーは前記分離エレメントを含む間隙を定義するものであり、当該間隙は注入口領域および排出口領域を有するものであり、
前記分離エレメントは第一の段と第二の段とを有し、前記注入口領域および排出口領域を流動的につなぐ段階状の通路を定義するものであり、
前記段階状の通路は、前記第一の段と前記本体およびカバーの少なくとも1つとにより境界される第一の通路を含み、且つさらに、前記第二の段と前記本体およびカバーの少なくとも1つとにより境界される第二の通路を含むものであり、
前記第一の通路は狭径を有し、且つ前記第二の通路と前記注入口領域とを流動的につなぐものであり、
前記第二の通路は前記第一の通路の狭径よりも狭い狭径を有し、当該第二の通路の狭径は8〜15マイクロメートルの範囲である、前記導入する工程と、
前記注入口領域から前記排出口領域に向かう方向において、前記段階状の通路における流体の流れを誘導する工程であって、これにより母体血液細胞が前記第一および第二の通路を通過して、前記排出口領域に移動し、且つ胎児様細胞は前記第二の通路に入ることができないものである、前記誘導する工程と
を有するものである、方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、この方法は、さらに、
前記装置から前記胎児様細胞を回収する工程を有するものである、方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法において、前記胎児様細胞は、前記排出口領域から前記注入口領域への方向の前記段階状の通路において流体の流れを誘導することにより集められ、これにより前記胎児様細胞が前記注入口領域に入ることが可能である、方法。
【請求項4】
請求項2記載の方法において、前記胎児様細胞は、当該胎児様細胞を分離した後に前記第一の通路から流体を集めることにより、収集されるものである、方法。
【請求項5】
請求項4記載の方法において、前記胎児様細胞は、装置を分解し、且つ前記第一の通路から当該胎児様細胞を回収することにより収集されるものである、方法。
【請求項6】
請求項4記載の方法において、前記胎児様細胞は、前記第一の通路の中にカテーテルを挿入し、且つ前記カテーテルの内腔を通して当該胎児様細胞を収集することにより、収集されるものである、方法。
【請求項7】
請求項1記載の方法において、この方法は、さらに、
前記第一の通路の範囲内で溶解産物を産生させるため前記胎児様細胞を溶解する工程と、前記溶解産物を含む前記流体を収集する工程とを有するものである、方法。
【請求項8】
請求項1記載の方法において、前記装置の外側と前記注入口領域との間での流体の流れを促進するために、少なくとも1つの前記本体およびカバーは、当該注入口領域と流体連結する流体注入口を定義するものである、方法。
【請求項9】
請求項1記載の方法において、前記装置の外側と前記排出口領域との間での流体の流れを促進するために、少なくとも1つの前記本体およびカバーは、当該排出口領域と流体連結する流体排出口を定義するものである、方法。
【請求項10】
請求項1記載の方法において、前記分離エレメントは、前記本体および前記カバーの少なくとも1つと一体化するものである、方法。
【請求項11】
請求項1記載の方法において、この方法は、さらに、
前記第一の通路の前記狭径を維持するための支持体を有するものであり、当該支持体は、前記第一の通路に位置し、且つ前記第一の通路の前記狭径の方向に延伸するものである、方法。
【請求項12】
請求項11記載の方法において、前記支持体は前記分離エレメントと一体化し、且つ当該分離エレメントから離れて延伸するものである、方法。
【請求項13】
請求項11記載の方法において、前記支持体は前記本体および前記カバーの1つと一体化し、且つそれらから離れて延伸するものである、方法。
【請求項14】
請求項1記載の方法において、この方法は、さらに、
前記第二の通路の前記狭径を維持するための支持体を有するものであり、当該支持体は、前記第二の通路に位置し、且つ前記第二の通路の前記狭径の方向に延伸するものである、方法。
【請求項15】
請求項1記載の方法において、前記分離エレメントは複数の段階状の通路を定義するものであり、当該段階状の通路は、i)前記注入口および排出口領域を流動的につなぐものであり、且つii)第一の段により境界される第一の通路および第二の段により境界される第二の通路を含むものである、方法。
【請求項16】
請求項15記載の方法において、前記段階状の通路の1つの、前記第一の通路の前記狭径は、少なくとも1つの他の前記段階状の通路の前記第一の通路の前記狭径とは異なるものである、方法。
【請求項17】
請求項1記載の方法において、前記段階状の通路の中を流れる流体の前期第一および第二の通路において実質的に直線流速を等しくするために、当該第一および第二の通路の幾何学的寸法は選択されるものである、方法。
【請求項18】
請求項17記載の方法において、前記段階状の通路の全体において、当該段階状の通路の中を流れる流体の直線流速を実質的に等しくするために、当該段階状の通路の全ての部分の幾何学的寸法は選択されるものである、方法。
【請求項19】
請求項1記載の方法において、前記第一および第二の段の各々は、直角で交わる前記分離エレメントの一対の平面により定義されるものである、方法。
【請求項20】
請求項1記載の方法において、前記第一および第二の段の少なくとも1つは、90〜180度の角度で交わる前記分離エレメントの一対の平面により定義されるものである、方法。
【請求項21】
粒子を分離する装置であって、本体、カバーおよび分離エレメントを有し、
前記本体およびカバーは前記分離エレメントを含む間隙を定義するものであり、当該間隙は注入口領域および排出口領域を有するものであり、
前記分離エレメントは第一の段と第二の段とを有し、前記注入口領域および排出口領域を流動的につなぐ段階状の通路を定義するものであり、
前記段階状の通路は、前記第一の段と前記本体およびカバーの少なくとも1つとにより境界される第一の通路を含み、且つさらに、前記第二の段と前記本体およびカバーの少なくとも1つとにより境界される第二の通路を含むものであり、
前記第一の通路は狭径を有し、且つ前記第二の通路と前記注入口領域とを流動的につなぐものであり、
前記第二の通路は前記第一の通路の狭径よりも狭い狭径を有し、
これにより、前記注入口領域から前記排出口領域に移動する粒子は、それらが前記第一の通路および前記第二の通路のいずれかまたは両方を通過することができないことにより、分離され得るものである、装置。
【請求項22】
請求項21記載の装置において、前記注入口領域から前記排出口領域に移動する流体における粒子が、それらが前記第一の通路を通過すること及び前記第二の通路を通過できないことにより分離され得るようにするため、前記第一および第二の通路の前記狭径は選択されるものである、装置。
【請求項23】
請求項21記載の装置において、前記装置の外側と前記注入口領域との間での流体の流れを促進するために、少なくとも1つの前記本体およびカバーは、当該注入口領域と流体連結する流体注入口を定義するものである、装置。
【請求項24】
請求項21記載の装置において、前記装置の外側と前記排出口領域との間での流体の流れを促進するために、少なくとも1つの前記本体およびカバーは、当該排出口領域と流体連結する流体排出口を定義するものである、装置。
【請求項25】
請求項21記載の装置において、前記分離エレメントは、前記本体およびカバーの少なくとも1つと一体化するものである、装置。
【請求項26】
請求項21記載の装置において、この装置は、さらに、
前記第一の通路の前記狭径を維持するための支持体を有するものであり、当該支持体は、前記第一の通路に位置し、且つ前記第一の通路の前記狭径の方向に延伸するものである、装置。
【請求項27】
請求項26記載の装置において、前記支持体は前記分離エレメントと一体化し、且つ当該分離エレメントから離れて延伸するものである、装置。
【請求項28】
請求項26記載の装置において、前記支持体は前記本体および前記カバーの1つと一体化し、且つそれらから離れて延伸するものである、装置。
【請求項29】
請求項21記載の装置において、この装置は、さらに、
前記第二の通路の前記狭径を維持するための支持体を有するものであり、当該支持体は、前記第二の通路に位置し、且つ前記第二の通路の前記狭径の方向に延伸するものである、装置。
【請求項30】
請求項21記載の装置において、前記分離エレメントは複数の段階状の通路を定義するものであり、当該段階状の通路は、i)前記注入口および排出口領域を流動的につなぐものであり、ii)第一の段により境界される第一の通路および第二の段により境界される第二の通路を含むものである、装置。
【請求項31】
請求項30記載の装置において、前記複数の段階状の通路の各々の前記流体経路の長さは、実質的に等しいものである、装置。
【請求項32】
請求項30記載の装置において、前記段階状の通路の1つの、前記第一の通路の前記狭径は、少なくとも1つの他の前記段階状の通路の前記第一の通路の前記狭径とは異なるものである、装置。
【請求項33】
請求項30記載の装置において、前記段階状の通路の1つの、前記第二の通路の前記狭径は、少なくとも1つの他の前記段階状の通路の前記第二の通路の前記狭径とは異なるものである、装置。
【請求項34】
請求項30記載の装置において、前記段階状の通路の各々は、前記注入口領域と前記第一の通路との間に延伸する注入口通路を含み、且つ前記注入口通路の各々の流体経路の長さは実質的に等しいものである、装置。
【請求項35】
請求項21記載の装置において、前記段階状の通路の中を流れる流体の前期第一および第二の通路において実質的に直線流速を等しくするために、当該第一および第二の通路の幾何学的寸法は選択されるものである、装置。
【請求項36】
請求項35記載の装置において、移行チャネルは前記第一および第二の通路を流動的につなぐものであり、前記段階状の通路の中を流れる流体の前記第一の通路および前記移行チャネルにおいて実質的に直線流速を等しくするために、当該移行チャネルの幾何学的寸法は選択されるものである、装置。
【請求項37】
請求項36記載の装置において、前記移行チャネルは実質的に長方形のチャネルであり、当該移行チャネルの幅および高さの数学的結果は前記第一の通路から前記第二の通路まで当該移行チャネルの長さに沿って実質的に一定である、装置。
【請求項38】
請求項35記載の装置において、前記段階状の通路の全体において、当該段階状の通路の中を流れる流体の直線流速を実質的に等しくするために、当該段階状の通路の全ての部分の幾何学的寸法は選択されるものである、装置。
【請求項39】
請求項21記載の装置において、前記第二の通路の流れ領域に対する前記第一の通路の流れ領域の比率が0.5〜2となるように、当該第一および第二の通路の幾何学的寸法が選択されるものである、装置。
【請求項40】
請求項21記載の装置において、前記第一および第二の段の各々は、直角で交わる前記分離エレメントの一対の平面により定義されるものである、装置。
【請求項41】
請求項21記載の装置において、前記第一および第二の段の少なくとも1つは、90〜180度の角度で交わる前記分離エレメントの一対の平面により定義されるものである、装置。
【請求項42】
請求項21記載の装置において、前記第一の段は前記分離エレメントの平面によって定義されるものであり、当該分離エレメントは、前記平面を横切る前記第一の通路の前記狭径と等しい距離で、前記カバーおよび前記本体の1つから分離されているものである、装置。
【請求項43】
請求項21記載の装置において、前記第一および第二の通路の各々の前記流れ領域は長方形である、装置。
【請求項44】
請求項21記載の装置において、前記第一および第二の通過の各々の前記流れ領域は半楕円形である、装置。
【請求項45】
請求項21記載の装置において、前記分離エレメントは、前記注入口領域から前記排出口領域への方向において、前記段階状の通路において連続的に狭くなる通路の境界となる少なくとも3つの段を定義するものである、装置。
【請求項46】
請求項21記載の装置において、前記第一の通路は、前記本体および前記カバーの1つの平面と実質的に平行である前記分離エレメントの平面により境界されるものである、装置。
【請求項47】
請求項21記載の装置において、前記分離エレメントの平面の長さは、バルク流体の流れの方向において、前記第一の通路の前記狭径の少なくとも4倍である、装置。
【請求項48】
請求項21記載の装置において、前記平面の幅は、バルク流体の流れに対して垂直な方向において、前記第一の通路の前記狭径の少なくとも1000倍である、装置。
【請求項49】
粒子を分離する方法であって、
本体、カバー、および分離エレメントを有する装置の注入口領域において、流体に懸濁された粒子を導入する工程であって、
前記本体およびカバーは前記分離エレメントを含む間隙を定義するものであり、当該間隙は注入口領域および排出口領域を有するものであり、
前記分離エレメントは第一の段と第二の段とを有し、前記注入口領域および排出口領域を流動的につなぐ段階状の通路を定義するものであり、
前記段階状の通路は、前記第一の段と前記本体およびカバーの少なくとも1つとにより境界される第一の通路を含み、且つさらに、前記第二の段と前記本体およびカバーの少なくとも1つとにより境界される第二の通路を含むものであり、
前記第一の通路は狭径を有し、且つ前記第二の通路と前記注入口領域とを流動的につなぐものであり、
前記第二の通路は前記第一の通路の狭径よりも狭い狭径を有するものである、前記導入する工程と、
前記排出口領域において粒子を集める工程であって、これにより前記排出口領域における粒子が、前記第二の通路に入ることができない他の粒子から分離されるものである、前記集める工程と
を有するものである、方法。
【請求項50】
請求項49記載の方法において、前記粒子が前記注入口領域に導入された後、当該注入口領域から前記排出口領域への方向において、流体の流れは前記段階状の通路に誘導されるものである、方法。
【請求項51】
請求項50記載の方法において、流体の流れは重力により誘導されるものである、方法。
【請求項52】
請求項49記載の方法において、前記流体はガスである、方法。
【請求項53】
請求項50記載の方法において、流体の流れは前記注入口領域と流体連結する容器における静水圧により誘導されるものである、方法。
【請求項54】
請求項50記載の方法において、流体の流れは、前記注入口領域および前記排出口領域の少なくとも1つと流体連結するポンプで誘導されるものである、方法。
【請求項55】
請求項54記載の方法において、前記ポンプによって誘導される流体の流れの容積流量は、前記ポンプが作動している間、前記注入口と排出口領域との間の圧力低下を実質的に一定に維持するために、制御されるものである、方法。
【請求項56】
請求項49記載の方法において、前記粒子は細胞である、方法。
【請求項57】
請求項56記載の方法において、前記細胞が浮遊する前記流体は血液である、方法。
【請求項58】
請求項57記載の方法において、前記血液は母体血液である、方法。
【請求項59】
請求項57記載の方法において、前記装置に前記細胞を導入する8時間前以内に、前記血液は対象から得られるものである、方法。
【請求項60】
請求項56記載の方法において、前記細胞は運動性細胞である、方法。
【請求項61】
狭い通路に流す血液サンプルを分析する工程を含む方法の改善であって、前記狭い通路に血液サンプルを流す6時間前以内に、対応する対象から前記血液サンプルを収集する工程を有するものである、改善。
【請求項62】
請求項61記載の改善において、前記狭い通路は約100マイクロメートル以下の狭径を有するものである、改善。
【請求項63】
請求項61記載の改善において、前記狭い通路は約25マイクロメートル以下の狭径を有するものである、改善。
【請求項64】
請求項61記載の改善において、前記狭い通路がおよそ10センチメートル以下の狭径を有するものである、改善。
【請求項65】
請求項61記載の改善において、前記血液サンプルを前記狭い通路に流す2時間前以内に、前記対応する対象から前記血液サンプルを収集する工程を有するものである、改善。
【請求項66】
間隙を定義する本体および当該間隙を覆うカバーを有する装置の適切な組み立てを確認する方法であって、前記装置は、前記カバーと、前記本体により定義される前記間隙の壁との間の距離における変化に対して低い許容値を有するものであり、
前記間隙を定義する面と対向する平面を有するカバーを組み立てる工程と、
その後、前記カバーの平面を放射線で照射する工程と、
前記カバーにより反射または屈折する放射線の干渉パターンを観察する工程であって、これにより、前記干渉パターンは、前記カバーにおける湾曲の場所および範囲を示し、且つ前記間隙を定義する前記カバーの面と、前記本体により定義される前記間隙の壁との間の距離における変化が、適切な許容範囲内であるかどうかの確認を可能にするものである、前記観察する工程と
を有する、方法。
【請求項67】
請求項58記載の方法において、前記母体血液は動脈血である、方法。
【請求項68】
請求項57記載の方法において、前記流体は、動脈血、および毛細管より上流の動脈血由来の流体から成る群から選択されるものである、方法。
【請求項69】
請求項68記載の方法において、前記流体は、総肝動脈、肺分泌物、および気管支洗浄液から採血される血液から成る群から選択されるものである、方法。
【請求項70】
請求項1記載の方法において、前記装置は、さらに、前記間隙と流体連結する障壁を有するものであり、前記障壁は、前記胎児様細胞が前記サンプル中の他の細胞とは異なる相互作用をする材料を有するものである、方法。
【請求項71】
請求項70記載の方法において、前記胎児様細胞は前記障壁を貫通することが可能である、方法。
【請求項72】
請求項71記載の方法において、前記胎児様細胞は誘導されて、浸潤性表現型を示すものである、方法。
【請求項73】
請求項72記載の方法において、前記胎児様細胞は誘導されて、前記装置内での酸素濃度を増加させることにより浸潤性表現型を示すものである、方法。
【請求項74】
請求項71記載の方法において、前記障壁はヒトの胎盤の細胞外基質の構成要素を有する膜である、方法。
【請求項75】
請求項70記載の方法において、前記装置は、さらに、前記障壁と、前記間隙からの前記障壁の対向する表面とで囲まれている区画を有するものであり、これにより、前記障壁を通過する細胞が前記区画に入るものである、方法。
【請求項76】
請求項75記載の方法において、前記区画は、胎児栄養胚葉を引きつける作用因子を含むものである、方法。
【請求項77】
請求項76記載の方法において、前記作用因子はSMURF2遺伝子産物である、方法。
【請求項78】
請求項76記載の方法において、前記区画は、前記作用因子により実質的に完全に満たされるものである、方法。
【請求項79】
請求項75記載の方法において、前記区画は、胎児栄養胚葉が増殖性表現型を示すように誘導する作用因子を含むものである、方法。
【請求項80】
請求項75記載の方法において、前記区画は、胎児栄養胚葉の増殖を支える培地を含むものである、方法。
【請求項81】
請求項80記載の方法において、前記区画は、胎児栄養胚葉が増殖性表現型を示すように誘導する作用因子を含むものである、方法。
【請求項82】
請求項1記載の方法において、この方法は、さらに、
前記サンプルの他の細胞から前記胎児様細胞を分離した後、当該胎児様細胞の増殖を支えるのに十分である条件下において、前記装置を維持する工程を有するものである、方法。
【請求項83】
請求項1記載の方法において、前記間隙を定義する前記装置の一部は、前記胎児様細胞と特に結合する試薬で被覆されるものである、方法。
【請求項84】
請求項83記載の方法において、前記試薬はヒトパルボウイルスB19のVP2タンパク質を有するものである、方法。
【請求項85】
請求項83記載の方法において、前記試薬は空のヒトパルボウイルスB19カプシドである、方法。
【請求項86】
請求項83記載の方法において、前記試薬はヒトパルボウイルスB19の実質的に精製されたVP2タンパク質である、方法。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【公表番号】特表2013−511992(P2013−511992A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541219(P2012−541219)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/058172
【国際公開番号】WO2011/066497
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(510283351)パーソーティックス、インク. (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/058172
【国際公開番号】WO2011/066497
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(510283351)パーソーティックス、インク. (2)
【Fターム(参考)】
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