説明

胸郭誘導器

ステントグラフト給送器具(30)は、ノーズコーン拡張器(45)の遠位端に取り付けられ且つ該ステントグラフト給送装置のハンドル(52)と組み合わせられたワイヤ引っ張り機構(60)まで伸長している引っ張りワイヤ(46)を備えた引っ張りワイヤ構造を備えている。引っ張りワイヤは、ワイヤ引っ張り機構(60)によって引っ張ってノーズコーン拡張器の遠位側のガイドワイヤカテーテル(44)内に湾曲部を生じさせることができ、その結果、該給送器具の近位端は該器具が配備される患者の血管系の一部分の形状に比較的密に適合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療器具に関し、更に特定すると、人間又は動物の体内に血管器具を誘導するための医療器具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大動脈瘤の治療のために、血管内植え込み型器具が開発されて来た。これらの器具は、切開手術によるのではなく患者の血管系を介して治療部位へ給送される。該器具は、ダクロン(登録商標)繊維、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン等のような管形状のグラフト材料を含んでおり、該グラフト材料には、管状又は円筒状の骨組み又は1以上のステントの枠組みが固定されている。該器具は、最初は、縮径されて小さな直径とされ、カテーテル給送装置の先端又は近位端内に配置され、その後、該給送器具は、例えば大腿切開部を介して患者の血管系内に挿入される。該給送装置の先端は、既に配置されているガイドワイヤの外周に沿って治療部位へ誘導される。
【0003】
患者の体外にある装置の遠位端からカテーテルの近位端まで伸長している制御装置を操作することによって、植え込み型器具は、該器具を該器具が配置される位置に保持され且つ外周のシースが引き抜かれることによって配備される。次いで、ステントグラフト又は植え込み型器具は、解放され且つ自己拡張するか又はステントグラフト誘導器具によって導入されるバルーンを使用することによって拡張せしめられる。ステントグラフトは、(例えば、羽枝によって)大動脈内の健全な壁組織の定位置に係留された状態となり、その後に、給送装置が取り外され、該器具は大動脈内の動脈瘤を逆流させるための位置に残される。その結果、全ての血流はステントグラフト内へと導かれ、その後、血流は動脈瘤内に流れ込まない。この結果、動脈瘤はもはや成長し続けないで且つ恐らく破裂することなく実際には縮小して通常は完全に消失する。
【0004】
胸部大動脈瘤の治療のためには、特に、湾曲しており且つ強い血液の流れが存在する大動脈内及び大動脈領域内の上部に植え込み型の器具を導入することが必要である。
【0005】
植え込み型の器具と胸部大動脈の大血管側枝との間に亘るように大動脈の大動脈弓領域に側方アームを使用してこれらの血管への血流を確保することも提案されて来た。本質的には管である植え込み型の器具が血管側枝を備えていない状態で胸部大動脈内に配備される場合には、これらの大血管側枝への血流の損失は患者に重大な結果をもたらし得る。
【0006】
大血管側枝は基本的に大動脈弓の湾曲部の外側にある。弾性材料によって作られている植え込み型器具のための給送器具は、胸部大動脈内で伸長せしめられると本質的に可能である最も大きな直径の湾曲部を形成し、この最も大きな湾曲部の側面上の大動脈内に位置せしめられる。従って、この給送器具は大血管の近くに位置し、植え込み器具からの血管側枝内にカテーテルを挿入するか又は血管側枝からの植え込み器具内への開窓部にカテーテルを挿入するための作業空間がほとんど又は全く存在しない。植え込み器具内の開窓部と血管側枝との間に若干の不整合があると、カテーテルの挿入に重大な問題が生じ得る。
【0007】
従って、器具の近位端、大動脈弓内の端部が比較的小さい曲率半径となって導入過程中に大動脈弓の湾曲部の外側に何らかの作業空間が提供される配備器具又は配備装置が提供されることが望ましい。
【0008】
本発明は、これらの問題点の少なくとも幾つかを解決し又は少なくとも医師に有用な代替手段を提供することを目的としている。
【0009】
本発明を通して、大動脈の一部分又は配備器具又は人工補装装置に関して、遠位という用語は心臓から出て行く血流方向において遠い方の大動脈又は配備器具又は人工補装装置の端部を意味しており、近位という用語は心臓に近い方の大動脈の部分又は配備器具又は人工補装装置の端部を意味している。他の血管に適用される場合の尾部及び頭部のような類似した用語も理解されるはずである。
【0010】
本発明を通して、“ステントグラフト”という用語は、生体適合性移植片材料からなる管状本体と該管状本体に取り付けられてステントグラフト内に管腔を規定する少なくとも1つのステントとを備えている器具を意味することが意図されている。ステントグラフトは、分岐されていても良いし且つ開窓又は側方アーム又はその他が設けられていても良い。ステントグラフトのその他の構造もまた本発明の範囲内に含まれる。
【発明の開示】
【0011】
本発明の第一の特徴に従って、ステントグラフト給送器具が提供される。該ステントグラフト給送器具は、
該器具の近位端に設けられているノーズコーン拡張器と、
該器具の遠位端から前記ノーズコーン拡張器まで伸長し且つ該ノーズコーン拡張器の中を伸長している弾性のガイドワイヤカテーテルと、
該器具の遠位端から前記近位端に向かって伸長しているプッシャカテーテルと、
該給送器具上の前記ノーズコーン拡張器の遠位端と前記プッシャカテーテルとの間に保持されており且つグラフト管腔が貫通しているステントグラフトであって、前記プッシャカテーテル内を伸張した前記ガイドワイヤカテーテルが該グラフト管腔内を伸張するようにしている、前記ステントグラフトと、
前記ノーズコーン拡張器の遠位端に又は該遠位端に隣接して取り付けられ、当該器具の配備中に前記ガイドワイヤカテーテルが湾曲せしめられるときに湾曲部の内側にとされて前記グラフト管腔及び前記プッシャカテーテルの中を遠位方向に該器具の遠位端に向かって伸長している引っ張りワイヤと、
該器具の遠位端に又は遠位端に隣接して設けられ、前記引っ張りワイヤを引っ張って前記ガイドワイヤカテーテル内の前記ノーズコーン拡張器の遠位側に湾曲部を生じさせるように作動できるワイヤ引っ張り機構と、を備えている。
【0012】
この結果、該給送器具の近位端は、該給送器具が配備される患者の血管系の一部分の形状に更に密に適合する。
【0013】
更に別の実施例によるステントグラフト給送器具が提供される。該ステントグラフト給送器具は、遠位端に設けられたハンドルと、該器具の近位端に設けられたノーズコーン拡張器と、前記ハンドルから前記近位端に設けられた前記ノーズコーン拡張器まで及び該ノーズコーン拡張器の中を伸長しており且つ弾性で可撓性の材料によって作られているガイドワイヤカテーテルと、前記ハンドルから前記近位端に向かって伸長しているプッシャカテーテルと、該給送器具上の前記ノーズコーン拡張器の遠位端と前記プッシャカテーテルとの間に保持され且つグラフト管腔が貫通されており且つ前記ガイドワイヤカテーテルが前記グラフト管腔内を伸長しているステントグラフトと、前記プッシャカテーテル内を貫通しており且つ前記ガイドワイヤカテーテルがその中を伸長していてプッシャに対して長手方向且つ回転方向に動くことができるプッシャ管腔と、前記ノーズコーン拡張器の遠位端に取り付けられ且つ遠位方向に且つ前記ガイドワイヤカテーテルに隣接して且つガイドワイヤカテーテルの外側に伸長し且つ前記ステントグラフト管腔及び前記プッシャ管腔内を前記ハンドルまで伸長している引っ張りワイヤと、前記ハンドルと組み合わせられた前記引っ張りワイヤのためのワイヤ引っ張り機構とを備えており、前記引っ張りワイヤを前記ワイヤ引っ張り機構によって引っ張って前記ノーズコーン拡張器の遠位側でガイドワイヤカテーテル内に湾曲部を生じさせて給送器具の近位端が該器具が配備される患者の血管系の一部分の形状に更に密に適合するようにすることができる。
【0014】
ノーズコーン拡張器は放射線不透過性材料によって作られるのが好ましい。放射線透視マークは選択された横方向の輪郭を有しているノーズコーン拡張器によって構成され、該ノーズコーン拡張器は、血管内処置中に選択された回転位置を向いた状態にあるように放射線透視装置によって監視することができる。例えば、ノーズコーン拡張器は放射線不透過性材料によって作ることができ、放射線透視マークはノーズコーン拡張器に形成された横方向の切り欠きによって構成することができる。
【0015】
“Endovascular Development Device(血管内配備器具)”という名称の米国特許出願第12/074755号(公開第2008/21656号)には、ノーズコーン拡張器上に設けられた放射線透視マークが教示されており、該教示はこれに言及することによりその全体が本明細書に組み入れられている。
【0016】
更に、ステントグラフト給送器具は、ノーズコーン拡張器の一方の側部に放射線不透過性マークを備えていてノーズコーン拡張器の回転位置が放射線透視技術によって監視できるようになされ、引っ張りワイヤは該ノーズコーン拡張器上の放射線不透過性マークが設けられている側と反対側の側部で且つノーズコーン拡張器の遠位端に取り付けられていることが好ましい。
【0017】
一つの実施例においては、ワイヤ引っ張り機構は巻き上げ構造によって構成されている。
【0018】
ワイヤ引っ張り機構は、係止機構を備えていてワイヤを引っ張った後にその引っ張った位置に係止できるのが好ましい。
【0019】
ガイドワイヤカテーテルは、ニチノ―ル(Nitinol)という商品名で販売されているもののようなニッケルチタン合金によって作られた管によって構成することができる。
【0020】
引っ張りワイヤはステンレス鋼ワイヤ又はニチノ―ル(登録商標)のワイヤによって作ることができる。
【0021】
ワイヤ引っ張り機構はハンドルと組み合わせたグリップを備えており、該グリップをハンドルに沿って摺動させて引っ張りワイヤを引っ張ることができるのが好ましい。放射線透視技術によって監視される給送器具の近位端の選択された湾曲位置でグリップをハンドルに係止できるようにするために、つまみねじ構造をグリップと組み合わせることができる。
【0022】
プッシャカテーテルは近位のプッシャ伸長部を備えているのが好ましく、該伸長部は、該プッシャカテーテルからノーズコーン拡張器ガイドワイヤカテーテルに向かって伸長しているスリーブからなり、引っ張りワイヤはプッシャ伸長部内を伸長しており、該引っ張りワイヤを引っ張ることによってガイドワイヤカテーテルの曲げられる長さが制限される。
【0023】
ステントグラフト給送器具は更に、プッシャカテーテルの周囲をノーズコーン拡張器まで伸長している拘束用のシースを備えているのが好ましく、該拘束用のシースは、ステントグラフトを血管系内へ導入する際にステントグラフトをガイドワイヤカテーテルの周囲に拘束する。
【0024】
本発明の更に別の特徴に従って、上述の如き器具を使用してステントグラフトを患者の大動脈弓内に配備することを含む胸部大動脈瘤を治療する方法が提供される。
【0025】
本発明の更に別の特徴に従って大動脈瘤を治療する方法が提供される。該方法は、上述の如き配備器具を、患者の下行大動脈内の上方に位置決めして該器具の近位端が大動脈弓を通過し且つ上行大動脈内へと伸長するようにするステップと、引っ張りワイヤを遠位方向に引っ張ってガイドワイヤカテーテルの近位端をプッシャカテーテルの近位端とノーズコーン拡張器の遠位端との間で湾曲させるステップとを含んでいる。
【0026】
本発明の利点は、患者の体外から引っ張りワイヤを引っ張ることによって給送器具の近位端に十分な湾曲部が付与され、該湾曲部が大動脈弓の形状に更に厳密に適合せしめられて例えば大動脈弓の湾曲部の外側に作業空間が許容される給送器具が提供されることである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
以下、本発明の好ましい実施例を添付図面を参照して説明する。
【図1】図1は、本発明の一つの実施例によるステントグラフトが一部に配備され且つ湾曲せしめられている状態の患者の大動脈弓の概略図である。
【図2】図2は、本発明の一つの実施例による給送器具のノーズコーン拡張器、ガイドワイヤカテーテル、引っ張りワイヤの細部を示している図である。
【図3】図3は、本発明の一つの実施例による給送器具の斜視図である。
【図4】図4は、図3の給送器具において誘起される湾曲部を示している斜視図である。
【図5】図5は、本発明の別の代替的な実施例による給送器具の斜視図である。
【実施例】
【0028】
胸部大動脈の概略断面図を示している図1を詳細に参照すると、胸部大動脈10は上行大動脈12を備えており、上行大動脈12は心臓から大動脈弁14を介して血液を受け取る。上行大動脈の上端には、大静脈のための分枝を備えている大動脈弓15と無名動脈16と左総頚動脈18と左鎖骨下動脈20とが存在する。これらの大きな血管の先の大動脈は下行大動脈22と称され、胸部大動脈瘤が起り得るのはこの領域である。胸部大動脈瘤においては、下行大動脈の壁24の一部分が膨らみ且つ破裂すると重大な結果を及ぼす。胸部大動脈瘤は、大静脈の近くまで伸長し得るか又は大静脈を含み得るので、側方分枝を備えているステントグラフトを大静脈内まで伸長するように配備する必要があるかもしれない。大動脈弓は内側側方湾曲部26と外側側方湾曲部28とを備えている。
【0029】
図1に示されているように、配備器具30は、予め配置されたガイドワイヤ31の周囲に沿って下行大動脈内の上方部分に配備された状態にある。該配備器具の近位端は、大動脈弓の外周に沿って伸長し且つ上行大動脈12内へと伸長している。該配備器具のシース36はステントグラフト32を部分的に解放するために引き抜かれるが、ステントグラフトは依然としてステントグラフト32の近位端の部分40とステントグラフト32の遠位端33における部分42において配備装置に保持されている。
【0030】
“トリガーワイヤ装置(Trigger Wire System)”という名称の米国特許出願第10/447,406号には、ステントグラフトの両端を保持するためのトリガーワイヤ装置の使用方法が教示されており、該教示はこれに言及することによってその全体が本明細書に組み込まれている。
【0031】
ステントグラフト32は3つの開窓32aを備えており、これらの開窓は、ステントグラフトが大動脈弓内へと解放されたときに大血管側枝の開存性を維持するように、側方分岐ステント又はカバーが付けられたステントがこの開窓内に配備されるように意図されている。
【0032】
該給送器具は、ステンレス鋼又はニチノール(登録商標)によって作られたガイドワイヤカテーテル44を備えている。ガイドワイヤカテーテルは大動脈弓の形状に適合するように曲げることができるように弾性を有している。ガイドワイヤカテーテルの曲がりは大動脈の壁との係合によって生じ、従って、該給送器具の湾曲部は大動脈弓の外側の湾曲部28に当接する。この湾曲部は大動脈側枝が大動脈弓から分岐する場所であるので、この湾曲部によって主要動脈に隣接した作業空間が許容されず、従って、本発明の湾曲機構が使用される。該配備器具のプッシャカテーテル34の一部分はステントグラフトの32の遠位端に見ることができる。プッシャカテーテルはプッシャ用管腔34aを備えており(図3を参照)、このプッシャ用管腔内をガイドワイヤカテーテル44が通されている。プッシャ用管腔34a内を通過しているガイドワイヤカテーテル44は、プッシャカテーテル34に対して長手方向及び回転方向に動くことができる。該配備器具はその近位端にノーズコーン拡張器45を備えており、ガイドワイヤカテーテル44の管腔47は、ノーズコーン拡張器45へと及び該ノーズコーン拡張器内を伸長している。
【0033】
該配備器具の近位端の詳細は図2に見ることができる。ガイドワイヤの管腔47はノーズコーン拡張器45内に続いている。ノーズコーン拡張器45の上面には切り欠き43が形成されており、ノーズコーン拡張器45は、放射線不透過性ポリウレタンのような放射線不透過性材料によって作られていて大動脈弓内での給送器具の向きが適当な放射線透視技術によって視認できる。
【0034】
本発明の湾曲機構は引っ張りワイヤ46を備えており、引っ張りワイヤ46はノーズコーン拡張器45の遠位端45aに取り付けられており、この位置で、ガイドワイヤカテーテルと結合されている。例えば、引っ張りワイヤ46は場所49においてスリーブ48に取り付けられており、スリーブ48は例えば溶接によってガイドワイヤカテーテルに取り付けられており、ノーズコーン拡張器は接着等によってスリーブ48に固定されている。引っ張りワイヤは、切り欠き43と反対側の場所49においてノーズコーン拡張器45に結合されている。
【0035】
再度図1を参照すると、引っ張りワイヤ46は、ステントグラフト32の管腔内を通り且つプッシャカテーテル34のプッシャ用管腔34a内へと(しかしながら、ガイドワイヤカテーテル36の外側を)伸長していることがわかる。引っ張りワイヤは、以下に説明し且つ図3〜5に示されているように、更に伸長して配備器具のハンドルまで戻っている。引っ張りワイヤを引っ張ることによって、ノーズコーン拡張器はプッシャカテーテルの方向に引っ張られて湾曲せしめられ、その結果、給送配備器具の近位端に湾曲部が形成され、この湾曲部は、大動脈弓の内側湾曲部26の形状に更に近くなり且つ幾分かの作業空間50がステントグラフトと大動脈弓の外側湾曲部28との間に残される。更に、ノーズコーン拡張器上の切り欠き43は給送器具の湾曲部の外側にあることも注目される。
【0036】
図3及び4は、本発明の一実施例による給送器具30を示している。給送器具30はガイドワイヤカテーテル44を備えており、ガイドワイヤカテーテル44は、遠位のハンドル52から近位のテーパーが付けられているノーズコーン拡張器45まで、遠位端がハンドル52に結合されているプッシャカテーテル34の通路すなわち管腔34a内を長手方向に伸長している。導入器シース36は、給送カテーテル34の周囲に同軸状に嵌合しており且つ任意に放射線不透過性のマークを備えているテーパーが付けられた近位端36aからシースの遠位端に取り付けられているコネクタ弁及びハブ54まで伸長している。導入器シース36は、ノーズコーン拡張器45まで近位方向に伸長しており、該配備器具を患者の体内へ導入する際にステントグラフト32を覆い、配備器具が患者の血管内の選択された位置に配置されると遠位方向に引き抜かれてステントグラフト32を露出させる。ステントグラフトすなわち移殖可能な器具32は、プッシャカテーテル34の近位側で且つノーズコーン拡張器45の遠位側でガイドワイヤカテーテル44上に坦持されている。ステントグラフト32は、生体適合性材料からなる管状本体と、複数の自己拡張型ステント(明確化のために図示されていない)とを備えている。コネクタ弁及びハブ54は、その中を流体が逆流するのを防止するために、シリコーン・ディスク・アセンブリ(図示せず)を備えている。ディスクアセンブリは、ノーズコーン拡張器45及び給送カテーテル34を挿入するためのスリットを備えている。コネクタ及びハブ54はまた側方アーム54aも備えており、側方アーム54aには、その中へ流体を導入したり吸引したりするための管が結合されている。ノーズコーン拡張器45は、公知で且つ市販によって入手可能なワイヤガイド(図示せず)の周囲に沿って血管アクセス部位にアクセスし且つ拡張するためのテーパーが付けられた近位端45aを有している。
【0037】
ワイヤガイドは、例えば公知の穿刺による血管アクセス・セルディンガー(Seldinger)法を使用して導入針によって血管内に挿入される。ガイドワイヤカテーテル44の遠位端には、注射器その他の医療装置に接続するための公知の雄型ルアー係止コネクタハブ58が取り付けられている。プッシャカテーテル34の遠位端に設けられたハンドル52は、使用時に患者の体外に残され且つステントグラフトの種々の部分を解除するために使用されるトリガーワイヤ解除ハンドル機構を支持している。ステントグラフト32の近位端は、該解除ハンドルのうちの一つに結合されているトリガーワイヤ(図示せず)を使用することによって給送装置上に保持されている。該ハンドルはまた、ステント移植片のための縮径帯(図示せず)のための解除ワイヤのための解除機構をも備えている。
【0038】
引っ張りワイヤ46は、該ワイヤがノーズコーン拡張器45(図2参照)の遠位端に取り付けられている位置からステントグラフト32の管腔内を通ってプッシャカテーテル34のプッシャ用管腔内まで伸長している。引っ張りワイヤは、次いで、配備器具のハンドル52まで戻るように伸長せしめられ、この位置で引っ張りワイヤグリップ60に取り付けられている。引っ張りワイヤグリップ60はつまみねじ62によってハンドルにクランプされている。図4に見ることができるように、グリップ60を矢印64によって示されている遠位方向へ引っ張ることによって、引っ張りワイヤ46は、ガイドワイヤカテーテルの近位端をプッシャカテーテル34の近位端とノーズコーン拡張器45の遠位端との間で湾曲させて図示されている湾曲部が形成される。これによってステントグラフトもまた対応する形状に湾曲せしめられる。ひとたび適切な放射線透視技術によって見ることができる所望の湾曲が得られると、つまみねじ62を使用してグリップ60をハンドルにクランプして、導入処置の後続の段階においてこの湾曲を保持することができる。この段階においては、ステントグラフト32は依然として、ステントグラフトの近位端31における領域40とステントグラフトの遠位端の領域42とにおいて配備器具上に保持されている。
【0039】
導入処置の後続の段階としては、開窓へのカテーテルの挿入及び適切な側方アーム給送器具の導入段階があるが、側方アームの実際の配備の前に、引っ張りワイヤが解除され且つステントグラフトが給送器具から解放される。これによって、主要なステントグラフトが大動脈弓内の該ステントグラフトの最終的な位置に落ち着いたときに側方アームが取り外されないことが確保される。
【0040】
図5は、本発明による給送又は配備器具の代替的な実施例を示している。この実施例においては、図3及び4におけるものに対応する物品に対して同じ参照符号が使用されている。
【0041】
この実施例の給送器具70は以前の実施例に対する2つの変更部分を有している。第一に、引っ張りワイヤを引っ張るための巻き上げ構造が設けられており、第二に、引っ張りワイヤを引っ張ることによって湾曲せしめられるガイドワイヤカテーテルの量を減らすためのプッシャ伸長部が設けられている。これら2つの変更部分は、一緒に使用される必要はなく別個に適用することができる。
【0042】
この実施例においては、配備器具70のハンドル72は巻き上げアセンブリ74を備えており、巻き上げアセンブリ74は、該巻き上げアセンブリ74内で巻き上げドラム78に結合されている巻き上げハンドル76を備えており、引っ張りワイヤは巻き上げドラム78の周囲に巻かれる。この巻き上げ構造は、選択された回転位置に巻き上げドラムを保持するために解除可能な係止機構(図示せず)を備えている。
【0043】
プッシャカテーテル34の近位端にはカテーテル伸長部80が設けられており、このカテーテル伸長部80内をガイドワイヤカテーテル44及び引っ張りワイヤ46が平行であるがガイドワイヤカテーテルの外側を通過している。カテーテル伸長部80は、ステントグラフト32の管腔内へ部分的に伸長している。これによって、引っ張りワイヤを引っ張ることによって湾曲せしめられるガイドワイヤカテーテルの長さが制限される。
【0044】
巻き上げハンドル76を回転させることによって、引っ張りワイヤ46がプッシャカテーテル伸長部80の近位端80aとノーズコーン拡張器45の遠位端45aとの間でガイドワイヤカテーテルの近位端を湾曲させて図5に示されている湾曲部が形成される。ひとたび適当な放射線透視方法によって見ることができる所望の湾曲が得られると、解除可能な係止機構はこの湾曲を保持する。
【0045】
巻き上げアセンブリは、ハンドル72の他の部品上に配置することができる。
【0046】
本明細書を通して、本発明の範囲について種々の指示が与えられたが、本発明は、これらのいずれにも限定されず、これらの結合の2以上に存在しても良い。これらの実施例は、例示だけのために提供されており限定的なものではない。
【符号の説明】
【0047】
10 胸部大動脈、 12 上行大動脈、
14 大動脈弁、 15 大動脈弓、
16 無名動脈、 18 左総頚動脈、
20 左鎖骨下動脈、 22 下行大動脈、
24 下行大動脈の壁、
26 大動脈弓の内側側方湾曲部、
28 大動脈弓の外側側方湾曲部、
30 配備器具、 31 ガイドワイヤ、
32 ステントグラフト、 32a 開窓、
33 ステントグラフトの遠位端、
34 プッシャカテーテル、 34a プッシャ用管腔、
36 配備器具のシース、 36a 近位端、
40 ステントグラフトの近位端の部分、
42 ステントグラフトの遠位端の部分、
43 切り欠き、 44 ガイドワイヤカテーテル、
45 ノーズコーン拡張器、 45a ノーズコーン拡張器の遠位端、
46 引っ張りワイヤ、 47 ガイドワイヤカテーテルの管腔、
48 スリーブ、 52 遠位のハンドル、
54 ハブ、 60 引っ張りワイヤグリップ、
62 つまみねじ、 70 給送器具、
72 ハンドル、 74 巻き上げアセンブリ、
76 巻き上げハンドル、 78 巻き上げドラム、
80 カテーテル伸長部、
80a プッシャカテーテル伸長部の近位端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステント給送器具であり、
該器具の近位端に設けられたノーズコーン拡張器と、
該器具の遠位端から前記ノーズコーン拡張器まで伸長し且つ該ノーズコーン拡張器内に延びている弾性のガイドワイヤーテーテルと、
該器具の遠位端から該器具の近位端に向かって延びているプッシャカテーテルと、
該給送器具上の前記ノーズコーン拡張器の遠位端と前記プッシャカテーテルとの間に保持され且つグラフト管腔が貫通しているステントグラフトであって、前記プッシャカテーテル内を延びた前記ガイドワイヤカテーテルが該グラフト管腔内を延びるようにしている、ステントグラフトと、
前記ノーズコーン拡張器の遠位端に又は該遠位端に隣接して取り付けられていて、当該器具の配備中に前記ガイドワイヤカテーテルが湾曲せしめられるときに、該湾曲部の内側とされて前記グラフト管腔内及び前記プッシャカテーテル内を該器具の遠位端に向かって遠位方向に延びる引っ張りワイヤと、
該器具の遠位端に又は該遠位端に隣接して設けられ且つ前記引っ張りワイヤを引っ張って前記ノーズコーン拡張器の遠位側において前記ワイヤーカテーテルに湾曲部を生じさせるワイヤ引っ張り機構と、を備えているステントグラフト給送器具。
【請求項2】
前記ノーズコーン拡張器の一方の側面に設けられた放射線不透過性のマークを更に備えていて、前記ノーズコーン拡張器の回転位置が放射線透視技術によって監視できるようになされている、ことを特徴とする請求項1に記載のステントグラフト給送器具。
【請求項3】
前記引っ張りワイヤが、前記ノーズコーン拡張器上の前記放射線不透過性マークが設けられた側と反対側の側部上の前記ノーズコーン拡張器の遠位端に又は該遠位端側に隣接して取り付けられている、ことを特徴とする請求項2に記載のステントグラフト給送器具。
【請求項4】
前記ワイヤ引っ張り機構が前記ワイヤを引っ張られた位置に係止するための係止機構を備えている、ことを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一の項に記載のステントグラフト給送器具。
【請求項5】
前記ワイヤ引っ張り機構が巻き上げ構造を備えている、ことを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一の項に記載のステントグラフト給送器具。
【請求項6】
前記巻き上げ構造が、巻き上げドラムに結合された巻き上げハンドルと、該巻上げドラムを選択された回転位置に保持する解除可能な係止機構とを備えている、ことを特徴とする請求項5に記載のステントグラフト給送器具。
【請求項7】
前記ガイドワイヤカテーテルがニッケルチタン合金(ニチノ―ル(登録商標))によって作られた管である、ことを特徴とする請求項1〜6のうちのいずれか一の項に記載のステントグラフト給送器具。
【請求項8】
前記ノーズコーン拡張器が放射線不透過性材料によって作られており、前記放射線不透過性マークが、選択された横方向の輪郭のノーズコーン拡張器を備えていて、該ノーズコーン拡張器が血管内処置中に選択された回転位置にあるように放射線透視装置によって監視することができるようになされている、ことを特徴とする請求項1に記載のステントグラフト給送器具。
【請求項9】
前記ノーズコーン拡張器が放射線不透過性材料によって作られており、前記放射線透視マークが前記ノーズコーン拡張器内に設けられた切り欠きを備えている、ことを特徴とする請求項8に記載のステントグラフト給送器具。
【請求項10】
前記引っ張りワイヤがステンレス鋼ワイヤ又はニッケルチタン合金(ニチノ―ル(登録商標))製のワイヤからなる、ことを特徴とする請求項1〜9のうちのいずれか一の項に記載のステントグラフト給送器具。
【請求項11】
該器具の遠位端に設けられたハンドルを更に備えており、前記ワイヤ引っ張り機構が、前記ハンドルと組み合わせられたグリップと該グリップと組み合わせられたつまみねじ構造とを備えていて、前記グリップが前記引っ張りワイヤを引っ張るために前記ハンドルに沿って摺動可能であり、前記つまみねじは該給送器具の前記近位端が選択された湾曲状態になると前記グリップを前記ハンドルに係止するように作動させることができるようになされている、ことを特徴とする請求項1〜10のうちのいずれか一の項に記載のステントグラフト給送器具。
【請求項12】
前記プッシャカテーテルが、該プッシャカテーテルから前記ノーズコーン拡張器に向かって伸長しており且つ前記ステントグラフト内へと部分的に伸長しているスリーブを備えている近位のプッシャ伸長部を備えており、前記引っ張りワイヤは前記プッシャ伸長部内を伸長している、ことを特徴とする請求項1〜11のうちのいずれか一の項に記載のステントグラフト給送器具。
【請求項13】
前記プッシャカテーテルの周囲に設けられ且つ前記ノーズコーン拡張器まで伸長しているシースを更に備えており、該シースは、前記ステントグラフトを血管系内へ誘導する際に前記ステントグラフトを前記ガイドワイヤカテーテルの周囲に拘束するようになされている、ことを特徴とする請求項1〜12のうちのいずれか一の項に記載のステントグラフト給送器具。
【請求項14】
ステントグラフト給送器具であり、該器具の遠位端に設けられたハンドルと、該器具の近位端に設けられたノーズコーン拡張器と、前記ハンドルから該ノーズコーン拡張器まで伸長し且つ該ノーズコーン拡張器内に伸長しており且つ弾性で可撓性の材料によって作られているガイドワイヤカテーテルと、前記ハンドルから前記近位端に向かって伸長しているプッシャカテーテルと、該器具上の前記ノーズコーン拡張器の遠位端と前記プッシャカテーテルとの間に保持されているステントグラフトであって、貫通しているグラフト管腔を有しており、前記ガイドワイヤカテーテルが前記グラフト管腔内を伸長している前記ステントグラフトと、前記プッシャカテーテルを貫通しているプッシャ管腔であって、前記ガイドワイヤカテーテルが該プッシャ管腔内を伸長しており且つ前記プッシャカテーテルに対して長手方向及び回転方向に動くことができるようにしているプッシャ管腔と、前記ノーズコーン拡張器の遠位端に取り付けられ且つ遠位方向に且つ前記ガイドワイヤカテーテルの外側で該ガイドワイヤカテーテルに隣接して、前記ステントグラフト管腔内及び前記プッシャ管腔内を通り前記ハンドルまで伸長している引っ張りワイヤと、前記ハンドルと組み合わせられた引っ張りワイヤのためのワイヤ引っ張り機構であって、該ワイヤ引っ張り機構によって前記引っ張りワイヤを引っ張って前記ノーズコーン拡張器の遠位側で前記ガイドワイヤカテーテル内に湾曲部を生じさせて当該器具の近位端が該器具が配備される患者の血管系の一部分の形状に更に密に適合するようになされているワイヤ引っ張り機構と、を備えているステントグラフト給送器具。
【請求項15】
請求項1〜14のうちのいずれか一の項に記載の器具を使用してステントグラフトを患者の大動脈弓内に配備することを含む、大動脈瘤を治療する方法。
【請求項16】
請求項1〜14のうちのいずれか一の項に記載の配備器具を患者の下行大動脈内の上方に位置決めして、前記配備器具の遠位端が大動脈弓を越えて上行大動脈内へと伸長させるステップと、引っ張りワイヤを遠位方向に引っ張ってガイドワイヤカテーテルの近位端とノーズコーン拡張器の遠位端との間で前記ガイドワイヤカテーテルを湾曲させるステップと、を含む大動脈瘤を治療する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−501206(P2012−501206A)
【公表日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−524980(P2011−524980)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【国際出願番号】PCT/US2009/004807
【国際公開番号】WO2010/024869
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(505055642)ウイリアム エー クック オーストラリア ピィティワイ リミテッド (9)
【氏名又は名称原語表記】WILLIAM A.COOK AUSTRALIA PTY.LTD.
【出願人】(506326006)クック・インコーポレイテッド (27)
【出願人】(504291867)ザ クリーヴランド クリニック ファウンデーション (11)
【氏名又は名称原語表記】THE CLEVELAND CLINIC FOUNDATION
【Fターム(参考)】