能動型防振装置
【課題】加振力を発生させる加振器17への通電状態がオフ状態となることを抑制することにより、異音の発生を抑制することができる能動型防振装置を提供する。
【解決手段】加振器17を駆動する回路を非対称型ハーフブリッジ回路162とする。そして、周期性制御信号が負の場合に、非対称型ハーフブリッジ回路162のハイサイドスイッチQ1及びローサイドスイッチQ2を共にオフ駆動させるのではなく、ハイサイドスイッチQ1のみオフ駆動させ、ローサイドスイッチQ2はPWM駆動させる。これにより、加振器17へ流れる電流が急激に低下しないので、加振器17の通電状態をオフ状態になることを抑制できる。
【解決手段】加振器17を駆動する回路を非対称型ハーフブリッジ回路162とする。そして、周期性制御信号が負の場合に、非対称型ハーフブリッジ回路162のハイサイドスイッチQ1及びローサイドスイッチQ2を共にオフ駆動させるのではなく、ハイサイドスイッチQ1のみオフ駆動させ、ローサイドスイッチQ2はPWM駆動させる。これにより、加振器17へ流れる電流が急激に低下しないので、加振器17の通電状態をオフ状態になることを抑制できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、能動型防振装置、特に車両のエンジン等の振動発生源から発生する振動を能動的に抑制する能動型防振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電磁石を備えた能動型防振装置が、例えば特許文献1に開示されている。当該電磁石は、いわゆるエンジンマウントの内部に配置されており、電磁石が発生する加振力によりエンジンの振動の伝達を抑制している。具体的には、エンジンの振動に応じて電磁石の通電状態を制御することにより行っている。
【特許文献1】特開2001−117644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の能動型防振装置においては電磁石への通電状態がオン状態からオフ状態になる際に、異音が生じる場合があった。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、例えば電磁石等の電磁アクチュエータへの通電状態がオフ状態となることを抑制することにより、異音の発生を抑制することができる能動型防振装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の能動型防振装置は、電流通電量を可変にすることにより加振力を発生する電磁アクチュエータと、車両特定部位の振動を測定する振動測定手段と、車両の振動発生源から出力される周期性のパルス信号に基づき車両特定部位の振動を能動的に抑制させる周期性制御信号を発生する制御信号発生手段と、前記周期性制御信号に基づき前記電磁アクチュエータへの前記電流通電量を可変にして前記電磁アクチュエータを駆動する駆動手段とを備える。
【0006】
そして、本発明の能動型防振装置の特徴的構成は、前記駆動手段が、非対称型ハーフブリッジ回路と駆動信号出力手段を有することである。ここで、前記非対称型ハーフブリッジ回路は、少なくとも前記電磁アクチュエータの正極側に接続されたハイサイドスイッチと、前記電磁アクチュエータの負極側に接続され該ハイサイドスイッチに対して非対称位置に配置されたローサイドスイッチとを有する回路である。例えば、Hブリッジ回路であって、一方のアームの上側にハイサイドスイッチを配置し、他方のアームの下側にローサイドスイッチを配置した回路である。なお、逆流(回生)するときのみ電流が流れるように、一方のアームの下側及び他方のアームの上側にはダイオード等を配置する。そして、ハイサイドスイッチ及びローサイドスイッチがオンオフ駆動することにより、電磁アクチュエータに電流が流れる。
【0007】
そして、前記駆動信号出力手段は、前記周期性制御信号が正の場合と負の場合とで異なる駆動信号を出力する。具体的には、前記周期性制御信号が正の場合には、前記駆動信号出力手段は、前記ハイサイドスイッチ及び前記ローサイドスイッチのうち何れか一方にオン駆動信号を出力し、他方に前記周期性制御信号に基づきPWM駆動信号を出力する。若しくは、前記周期性制御信号が正の場合に、前記駆動信号出力手段は、前記ハイサイドスイッチ及び前記ローサイドスイッチの何れもに前記周期性制御信号に基づきPWM駆動信号を出力する。一方、前記周期性制御信号が負の場合には、前記駆動信号出力手段は、前記ハイサイドスイッチ及び前記ローサイドスイッチのうち何れか一方にオフ駆動信号を出力し、他方に前記周期性制御信号に基づきPWM駆動信号を出力する。
【0008】
つまり、前記駆動信号出力手段は、前記周期性制御信号が正の場合に、電磁アクチュエータに流れる電流は増加するように作用する。一方、前記駆動信号出力手段は、前記周期性制御信号が負の場合に、電磁アクチュエータに流れる電流は減少するように作用する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、周期性制御信号が負の場合に、ハイサイドスイッチ及びローサイドスイッチのうち何れか一方をオフ駆動させ、他方を周期性制御信号に基づきPWM駆動させている。ハイサイドスイッチ及びローサイドスイッチを共にオフ駆動させると、急激に電磁アクチュエータに流れる電流が減少して、電流値が零になる場合がある。しかし、本発明のように、ハイサイドスイッチ及びローサイドスイッチのうち何れか一方をオフ駆動させ、他方をPWM駆動させることにより、電磁アクチュエータに流れる電流の減少率が小さくなる。従って、電磁アクチュエータに流れる電流値が零にならないように、電磁アクチュエータを制御することができる。これにより、電磁アクチュエータ(電磁石等)の通電状態がオン状態からオフ状態になることを抑制することにより、結果として異音の発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、実施形態を挙げ、本発明をより詳しく説明する。上述したように、本発明の能動型防振装置は、電磁アクチュエータと、振動測定手段と、制御信号発生手段と、駆動手段とを備える。
【0011】
(1)周期性制御信号
ここで、制御信号発生手段により発生される周期性制御信号は、前記パルス信号の周波数が所定周波数以下の場合と、所定周波数より大きい場合とにおいて、異なるようにすることが好ましい。すなわち、周期性制御信号は、前記パルス信号の周波数が所定周波数以下の場合には前記パルス信号の周波数の1次周波数成分信号と前記パルス信号の周波数に対する高次周波数成分信号とを合わせた低周波数制御信号であり、前記パルス信号の周波数が所定周波数より大きい場合には前記1次周波数成分信号のみからなる高周波数制御信号であるとすることが好ましい。
【0012】
ここで、振動発生源がエンジンであって、本発明の能動型防振装置をエンジンによる振動の抑制に適用する場合を例に挙げて説明する。本発明の能動型防振装置をエンジンによる振動の1次周波数成分のみに適用した場合であっても、振動発生源であるエンジンによる振動の高次周波数とエンジンフレームの固有振動数とが一致する場合には、両者が共振を起こすることによりエンジンフレームの振動が大きくなるおそれがある。そこで、周期性制御信号が、エンジンによる振動の1次周波数成分のみならず、高次周波数成分に対しても考慮することが好ましい。つまり、周期性制御信号が高次周波数成分に対して考慮されることにより、エンジンの振動の高次周波数成分を抑制することができる。これにより、エンジンの振動の高次周波数とエンジンフレームの固有振動数とが一致した場合であっても、エンジンフレームの振動を抑制することができる。ただし、エンジンによる振動の1次周波数がエンジンフレームの固有振動数より大きくなると、両者が共振することはない。従って、上記の場合には、低周波数制御信号と高周波数制御信号とが切り替えられる所定周波数が、パルス信号の周波数の2次周波数がエンジンフレームの固有振動数より大きくなる前記パルス信号の周波数とすればよい。すなわち、例えば、エンジンフレームの固有振動数が100Hzの場合には、所定周波数は50Hzより大きくすればよい。
【0013】
また、前記低周波数制御信号の前記1次周波数成分信号は、正弦波信号としてもよい。つまり、正弦波信号である低周波数数制御信号の1次周波数成分信号は、実際のエンジン等の振動の1次周波数成分とほぼ同様の波形となる。これにより、エンジン等の振動発生源から生じる振動をより適切に抑制することができ、結果として非常に高い静粛性を得ることができる。
【0014】
また、前記低周波数制御信号の前記1次周波数成分信号は、正弦波信号に基づき算出された矩形波信号としてもよい。1次周波数成分信号を矩形波信号とすることにより、1次周波数成分の振動抑制力を高めることができる。さらに、1次周波数成分信号を矩形波信号とすることにより、応答性を高めることができる。つまり、応答性の低い電磁アクチュエータを使用する場合であっても、確実にエンジン等の振動発生源から生じる振動を抑制することができる。
【0015】
また、前記高周波数制御信号は、前記1次周波数成分信号に基づき算出された矩形波信号としてもよい。エンジン等の振動発生源により生じる振動の周波数が高い領域においては、電磁アクチュエータの高い応答性が要求される。そこで、高周波数制御信号を矩形波信号とすることにより応答性を高めることができるので、確実に高周波数領域における振動を抑制することができる。
【0016】
(2)駆動信号出力手段
駆動信号出力手段は、上述したように、前記周期性制御信号が正の場合と負の場合とにより非対称型ハーフブリッジの各スイッチの駆動を異なるようにしている。ここで、駆動信号出力手段は、さらに、前記周期性制御信号が負の際に、前記パルス信号の周波数が所定周波数以下の場合と所定周波数より大きい場合とにより非対称型ハーフブリッジの各スイッチの駆動を異なるようにしてもよい。
【0017】
具体的には、前記駆動信号出力手段は、前記周期性制御信号が負であって前記パルス信号の周波数が所定周波数以下の場合に、前記ハイサイドスイッチ及び前記ローサイドスイッチのうち何れか一方にオフ駆動信号を出力し、他方に前記周期性制御信号に基づきPWM駆動信号を出力するPWM信号を出力する。一方、前記駆動信号出力手段は、前記周期性制御信号が負であって前記パルス信号の周波数が所定周波数より大きい場合に、前記ハイサイドスイッチ及び前記ローサイドスイッチにオフ駆動信号を出力する。
【0018】
つまり、周期性制御信号が負の場合には、パルス信号の周波数が所定周波数以下の場合にのみ、各スイッチの何れか一方をオフ駆動させ他方をPWM駆動させている。このように各スイッチの何れか一方をオフ駆動させ、他方をPWM駆動させることにより、電磁アクチュエータに流れる電流の減少率が小さくなる。従って、電磁アクチュエータに流れる電流値が零にならないように、電磁アクチュエータを制御することができる。これにより、パルス信号の周波数が所定周波数以下の場合には、電磁アクチュエータ(電磁石等)の通電状態がオン状態からオフ状態になることを抑制でき、結果として異音の発生を抑制することができる。
【0019】
一方、パルス信号の周波数が所定周波数より大きい場合には、何れのスイッチもオフ駆動させている。パルス信号の周波数が大きくなるにつれて、エンジン等による騒音が大きくなる。そのため、パルス信号の周波数が大きい場合には、電磁アクチュエータの通電状態がオン状態からオフ状態になる際に生じる異音は、それほど問題とならない。そこで、パルス信号の周波数が所定周波数より大きい場合には、何れのスイッチもオフ駆動させることにより、制御の容易化を図っている。
【0020】
(3)制御信号発生手段
制御信号発生手段は、上述したように、パルス信号及び車両特定部位の振動に基づき前記車両特定部位の振動を能動的に抑制させる周期性制御信号を発生する。この制御信号発生手段は、前記パルス信号の周波数が所定周波数以下の場合と所定周波数より大きい場合とにより異なるようにしてもよい。
【0021】
すなわち、前記制御信号発生手段は、前記パルス信号の周波数が所定周波数以下の場合には、予め記憶されたデータマップ及び制御時の運転状態に基づき前記周期性制御信号を算出するようにする。一方、前記制御信号発生手段は、前記パルス信号の周波数が所定周波数より大きい場合には、適応制御法に基づき前記周期性制御信号を算出するようにする。
【0022】
これにより、パルス信号の周波数が所定周波数以下の場合には、データマップを用いて行うマップ制御を採用することにより、応答性を良好とすることができる。なお、マップ制御は適応制御に比べると適応性に欠ける。しかし、エンジン回転数が低い場合には、エンジン回転以外の信号が少ないので、この振動を十分に抑制することができる。逆に、応答性を高めることにより、確実にエンジンによる振動を抑制することができる。一方、パルス信号の周波数が所定周波数より大きい場合には、適応制御法を採用することにより、種々の運転状態により影響する振動を適応的に抑制することができる。
【実施例】
【0023】
次に、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
【0024】
(1)能動型防振装置1の全体構成
本実施例の能動型防振装置1の全体構成について図1を参照して説明する。図1は、能動型防振装置1の全体構成を示すブロック図である。本実施例の能動型防振装置1は、車両に搭載されたエンジンE/G(振動発生源)により発生される振動が車両の各部位に伝達されることを能動的に抑制するための装置である。この能動型防振装置1は、図1に示すように、周波数算出部11と、モード切替部12と、運転状態信号出力部13と、マップ制御部14と、適応制御部15と、駆動部16と、加振器17と、加速度センサ18とを備えている。
【0025】
(1.1)周波数算出部11
周波数算出部11は、エンジンE/Gの回転数を検出するための回転検出器(図示せず)からパルス信号を入力する。そして、周波数算出部11は、入力されたパルス信号に基づき、該パルス信号の周波数ωを算出する。
【0026】
(1.2)モード切替部12
モード切替部12は、周波数算出部11により算出されたパルス信号の周波数ωを入力する。そして、入力されたパルス信号の周波数ωに基づき、マップ制御モードと適応制御モードとの切り替えを判定する。マップ制御モードと適応制御モードとは、択一的に選択される。なお、モード切替処理、マップ制御モード、及び適応制御モードの詳細は、後述する。
【0027】
(1.3)運転状態信号出力部13
運転状態信号出力部13は、マップ制御モードの際に用いられる。この運転状態信号出力部13は、車両の運転状態、例えば、変速機のシフトポジション(前進D、ニュートラルN、後進R)、エアコンスイッチのON/OFF状態などをマップ制御部14へ出力する。
【0028】
(1.4)マップ制御部(制御信号発生手段)14
マップ制御部14は、モード切替部12によりマップ制御モードに切り替えられた場合に実行される。つまり、マップ制御モードに切り替えられた場合に、マップ制御部14は、周波数算出部11により算出されたパルス信号の周波数ω、及び、運転状態信号出力部13から出力される運転状態信号を入力する。そして、マップ制御部14は、入力されたパルス信号の周波数ω及び運転状態信号、並びに、マップデータ記憶部(後述する)に記憶されたマップデータに基づき、周期性制御信号を算出する。なお、マップ制御部14の詳細は後述する。
【0029】
(1.5)適応制御部(制御信号発生手段)15
一方、適応制御部15は、モード切替部12により適応制御モードに切り替えられた場合に実行される。つまり、適応制御モードに切り替えられた場合に、適応制御部15は、周波数算出部11により算出されたパルス信号の周波数ω、及び、後述する加速度センサ18により検出された加速度信号を入力する。そして、適応制御部15は、入力されたパルス信号の周波数ω及び加速度信号に基づき、適応制御法により周期性制御信号を算出する。なお、適応制御部15の詳細は後述する。
【0030】
(1.6)駆動部(駆動手段)16
駆動部16は、マップ制御部14又は適応制御部15から出力される周期性制御信号に基づき、後述する加振器17を駆動する。ここで、駆動部16は、モード切替部12により切り替えられた制御モードを入力している。つまり、モード切替部12によりマップ制御モードに切り替えられた場合には、駆動部16はマップ制御部14から出力される周期性制御信号に基づき加振器17を駆動する。一方、モード切替部12により適応制御モードに切り替えられた場合には、駆動部16は適応制御部15から出力される周期性制御信号に基づき加振器17を駆動する。なお、駆動部16の詳細は後述する。
【0031】
(1.7)加振器(電磁アクチュエータ)17
加振器17は、例えば、エンジンマウント(図示せず)に搭載されたソレノイドである。加振器17であるソレノイドは、コイルに通電されることにより、加振力を発生する。つまり、加振器17であるソレノイドのコイルへの電流通電量を制御することにより、加振力を変化させることができる。そして、エンジンE/Gの振動と加振器17により発生させる振動とが相殺される時には、エンジンE/Gの振動はエンジンマウントから車体側へ伝達されないことになる。なお、加振器17の詳細は後述する。
【0032】
(1.8)加速度センサ18
加速度センサ18は、エンジンマウントのうちのエンジンフレームへの固定部位に取付けられている。つまり、加速度センサ18は、エンジンマウントのうちのエンジンフレームとの固定部位における振動を検出している。すなわち、加速度センサ18は、エンジンE/Gの振動が伝達系Cを介して伝達された振動と加振器17により発生させた振動とを合成した振動が検出される。この合成された振動は、いわゆる誤差信号となる。そして、加速度センサ18は、この誤差信号を適応制御部15に出力する。
【0033】
(2)加振器17及び加速度センサ18を備えた加振器付エンジンマウントの詳細構成
次に、加振器17及び加速度センサ18を備えた加振器付エンジンマウントの詳細構成について図2を参照して説明する。図2は、加振器付エンジンマウント20の部分断面図を示す。図2に示すように、加振器付エンジンマウント20は、筒状のケース21と、防振ゴム22と、固定金具24と、加振器17と、加速度センサ18とを備えている。防振ゴム22は、ケース21内に設けられている。そして、この防振ゴム22のうちの加振器17側は、ケース21の内壁に固定されている。一方、防振ゴム22には、固定金具24の一端側の取付部を収納するように、ケース21の一端側に向けてストッパ部22aが設けられている。つまり、防振ゴム22のうちの加振器17の反対側は、固定金具24に取付けられている。
【0034】
固定金具24は、上記取付部と固定軸25とから構成される。固定軸25は、取付部から防振ゴム22の反対側に向けて取付けられている。そして、この固定金具24の固定軸25のうちの先端側は、ケース21の一端側に設けられた貫通孔21aから突出している。この固定軸25は、エンジンE/Gが固定されている。
【0035】
そして、加振器17は、コイル(図示せず)が周方向に巻回されており、コイルの軸中心側にコアが配置されている。そして、コイルへの電流通電量を可変にすることにより、コアが往復移動する。このコアの往復移動により加振力が発生する。さらに、ケース21の他端側には固定軸26が設けられている。この固定軸26は、エンジンフレームE/Fに取付けられている。
【0036】
加速度センサ18は、ケース21の外周側に固定されている。つまり、加速度センサ18は、加振器付エンジンマウント20のケース21の振動を計測している。
【0037】
(3)モード切替部12の処理動作
次に、上述したモード切替部12の処理動作について図3を参照して説明する。図3は、モード切替部12の処理動作を示すフローチャートである。図3に示すように、モード切替部12は、周波数算出部11により算出されたパルス信号の周波数ωを入力する(ステップS1)。続いて、入力されたパルス信号の周波数ωが50Hz以下であるか否かを判定する(ステップS2)。そして、パルス信号の周波数ωが50Hz以下である場合には、マップ制御モードへ切り替える(ステップS3)。一方、パルス信号の周波数ωが50Hzより大きい場合には、適応制御モードへ切り替える(ステップS4)。つまり、パルス信号の周波数ωが低周波数の場合にはマップ制御モードに切り替え、パルス信号の周波数ωが高周波数の場合には適応制御モードに切り替える。
【0038】
ここで、制御モードを切り替える周波数を50Hzとしたことについての理由を簡単に説明する。上述したように、モード切替部12は、周波数ωが50Hz以下の場合にマップ制御モードとし、周波数ωが50Hzより大きい場合に適応制御モードにする。そして、周波数ωが低い場合に行うマップ制御モードは、後述するようにエンジンによる振動の1次周波数成分及び高次周波数成分を考慮して能動的に振動を抑制する。一方、周波数ωが高い場合に行う適応制御モードは、後述するようにエンジンによる振動の1次周波数成分のみを考慮して能動的に振動を抑制する。
【0039】
ところで、エンジンE/Gを取付けるエンジンフレームの固有振動数は約80〜100Hzである。つまり、周波数ωが50Hz以下の場合には、エンジンによる振動の高次周波数がエンジンフレームの固有振動数と一致するおそれがある。両者が一致する場合には、共振作用によりエンジンフレームの振動が大きくなるおそれが生じる。一方、周波数ωが50Hzより大きい場合には、エンジンによる振動の高次周波数がエンジンフレームの固有振動数と一致することはない。
【0040】
つまり、エンジンの振動の高次周波数成分がエンジンフレームと共振を起こさないようにするために、周波数ωが50Hz以下の場合に高次周波数成分を考慮するマップ制御モードを行うようにしている。
【0041】
(4)マップ制御部14の詳細構成及び低周波数制御信号C1
(4.1)マップ制御部14の詳細構成
次に、マップ制御部14の詳細構成について図4を参照して説明する。図4は、マップ制御部14の構成を示すブロック図である。図4に示すように、マップ制御部14は、マップデータ記憶部141とマップフィルタ部142とから構成される。このマップ制御部14は、上述したように、モード切替部12によりマップ制御モードに切り替えられた場合に実行される。
【0042】
マップデータ記憶部141は、予めパルス信号の周波数ω及び運転状態に応じたフィルタ係数を記憶している。ここで、フィルタ係数は、フィルタ係数ゲインに相当する振幅値a及びフィルタ係数位相に相当する位相値φである。マップフィルタ部142は、周波数算出部11により算出されたパルス信号の周波数ω、及び、運転状態信号出力部13から出力される運転状態信号を入力する。さらに、マップフィルタ部142は、入力されたパルス信号の周波数ω及び運転状態信号に対応するフィルタ係数をマップデータ記憶部141から入力する。そして、マップフィルタ部142は、入力されたこれらの情報に基づき、振幅補償及び位相補償がされて周期性制御信号(低周波数制御信号)C1を生成する。そして、生成された低周波数制御信号C1を駆動部16へ出力する。
【0043】
(4.2)低周波数制御信号C1
ここで、マップフィルタ部142により生成される低周波数制御信号C1について図5及び図6を参照して説明する。図5は、マップフィルタ部142から出力される低周波数制御信号C1のうち1次周波数成分、2次周波数成分、及び3次周波数成分のそれぞれを示す図である。図6は、図5の各次周波数成分を合成した低周波数制御信号C1を示す図である。なお、図5及び図6は、パルス信号の周波数ωが30Hzの場合の低周波数制御信号C1であって、最大値が1となるように示している。
【0044】
マップフィルタ部142により生成される低周波数制御信号C1は、数1に基づき算出される。ここでは、次数kを3次までとするので、数1においてK=3となる。そして、数1に示すように、低周波数制御信号C1は、パルス信号の周波数ωの1次周波数成分S1、2次周波数成分S2、及び3次周波数成分S3を合成した信号である。ここで、1次周波数成分S1、2次周波数成分S2、及び3次周波数成分S3は、正弦波信号である。なお、ofsetは、予め車両に応じて設定される値である。
【0045】
【数1】
【0046】
そして、数1に基づき得られる低周波数制御信号C1の各次周波数成分S1〜S3の信号波形は図5のようになる。そして、各次周波数成分S1〜S3を合成した信号波形C1は図6のようになる。
【0047】
(5)適応制御部15の詳細構成及び高周波数制御信号C2
(5.1)適応制御部15の詳細構成
次に、適応制御部15の詳細構成について図7を参照して説明する。図7は、適応制御部15の構成を示すブロック図である。ここで、適応制御部15において採用する適応制御法は、遅延調和シンセサイザ最小平均自乗フィルタ(DXHS−LMS)である。なお、適応制御部15は、上述したように、モード切替部12により適応制御モードに切り替えられた場合に実行される。
【0048】
図7に示すように、適応制御部15は、適応フィルタ部151と、伝達関数推定部152と、フィルタ係数更新部153とから構成される。適応フィルタ部151は、周波数算出部11により算出されたパルス信号の周波数ω、フィルタ係数更新部153により更新されたフィルタ係数を入力する。そして、適応フィルタ部151は、入力されたこれらの情報に基づき、振幅補償及び位相補償がされて周期性制御信号(高周波数制御信号)C2を生成する。生成した高周波数制御信号C2を駆動部16へ出力する。
【0049】
伝達関数推定部152は、適応フィルタ部151の出力制御対象系の伝達関数G(駆動部16及び加振器17)の推定値G^(以下、「推定伝達関数G^」という)を算出する。フィルタ係数更新部153は、加速度センサ18の出力信号と推定伝達関数G^とに基づき、DXHS−LMSによりフィルタ係数を更新する。ここで、フィルタ係数は、フィルタ係数ゲインに相当する振幅値a及びフィルタ係数位相に相当する位相値φである。
【0050】
つまり、適応制御部15は、観測点の誤差である加速度センサ18の出力信号が0となるように、フィルタ係数が更新される。そして、更新されたフィルタ係数に基づき、振幅補償及び位相補償がされた高周波数制御信号C2を出力している。
【0051】
(5.2)高周波数制御信号C2
ここで、適応フィルタ部151により生成される高周波数制御信号C2について図8及び図9を参照して説明する。図8は、適応フィルタ部151により生成される補正前の正弦波信号状態の高周波数制御信号を示す図である。図9は、適応フィルタ部151から出力される高周波数制御信号C2を示す図である。なお、図8及び図9は、パルス信号の周波数ωが100Hzの場合の高周波数制御信号であって、最大値が1となるように示している。
【0052】
まず、適応フィルタ部151により生成される補正前の高周波数制御信号S1は、数2に基づき算出される。ここでは、次数kは1次とするので、数1においてK=1となる。つまり、補正前の高周波数制御信号S1は、パルス信号の周波数ωの1次周波数成分S1のみからなる正弦波信号である。この補正前の高周波数制御信号S1の波形は、図8のような正弦波となる。
【0053】
【数2】
【0054】
続いて、算出された補正前の高周波数制御信号S1に対して、数3により補正を行う。この補正後の高周波数制御信号C2が、駆動部16へ出力される信号である。つまり、数3により、補正前の正弦波信号を矩形波信号に変換している。この補正後の高周波数制御信号C2は、図9のような矩形波となる。
【0055】
【数3】
【0056】
(6)駆動部16の詳細構成
次に、駆動部16の詳細構成について図10を参照して説明する。図10は、駆動部16の構成を示す図である。図10に示すように、駆動部16は、駆動信号出力部161と非対称型ハーフブリッジ回路162とから構成される。
【0057】
(6.1)駆動信号出力部161の構成
駆動信号出力部161は、上述したモード切替部12から出力される制御モード、並びに、マップ制御部14又は適応制御部15から出力される周期性制御信号C1、C2に基づき、後述するハイサイドスイッチQ1及びローサイドスイッチQ2の駆動信号を出力する。具体的には、駆動信号出力部161は、ハイサイドスイッチQ1及びローサイドスイッチQ2のゲート電圧を出力する。
【0058】
(6.2)非対称型ハーフブリッジ回路162の構成
非対称型ハーフブリッジ回路162は、いわゆるHブリッジ回路を構成しており、第1上アームには第1ダイオードD1が接続され、第1下アームにはローサイドスイッチQ2が接続されている。第2上アームにはハイサイドスイッチQ1が接続され、第2下アームには第2ダイオードD2が接続されている。ここで、ハイサイドスイッチQ1及びローサイドスイッチQ2は、何れもFETを用いている。
【0059】
具体的には、第1ダイオードD1のカソード側が正極側に接続され、第1ダイオードD1のアノード側とローサイドスイッチQ2のドレイン側とが接続され、ローサイドスイッチQ2のソース側が負極側に接続されている。また、ハイサイドスイッチQ1のドレイン側が正極側に接続され、ハイサイドスイッチQ1のソース側と第2ダイオードD2のカソード側とが接続され、第2ダイオードD2のアノード側が負極側に接続されている。なお、ハイサイドスイッチQ1及びローサイドスイッチQ2のゲート側は、駆動信号出力部161に接続されている。つまり、駆動信号出力部161から出力されるゲート電圧に応じて、ハイサイドスイッチQ1及びローサイドスイッチQ2はオンオフ駆動する。
【0060】
そして、非対称型ハーフブリッジ回路162の出力側には加振器17が接続されている。すなわち、第1ダイオードD1とローサイドスイッチQ2との中間位置、及び、ハイサイドスイッチQ1と第2ダイオードD2の中間位置が、加振器17であるソレノイドのコイルの両端側にそれぞれ接続されている。
【0061】
(6.3)駆動部16の処理動作
上述のような構成からなる駆動部16の処理動作について図11〜図14を参照して説明する。
【0062】
(6.3.1)駆動信号出力部161の処理動作
まず、駆動信号出力部161の処理動作について、図11のフローチャートを参照して説明する図11は、駆動信号出力部161の処理動作を示すフローチャートである。
【0063】
図11に示すように、駆動信号出力部161は、まずモード切替部12から制御モードを入力する(ステップS11)。続いて、入力された制御モードがマップ制御モードであるか否かを判定する(ステップS12)。そして、入力された制御モードがマップ制御モードである場合には(ステップS12:Yes)、マップ制御部14から低周波数制御信号C1を入力する。低周波数制御信号C1は、上述したように図6に示す信号である。
【0064】
続いて、マップ制御部14から入力された低周波数制御信号C1が正であるか負であるかを判定する(ステップS14)。低周波数制御信号C1が正の場合には(ステップS14:Yes)、ハイサイドスイッチQ1をオン駆動させ、ローサイドスイッチQ2を低周波数制御信号C1に基づき算出されたDUTYによりPWM駆動させる信号を各スイッチQ1,Q2に出力する(ステップS15)。すなわち、図6におけるT1以外の区間にて、上記駆動信号が出力される。
【0065】
一方、マップ制御部14から入力された低周波数制御信号C1が負の場合には(ステップS14:No)、低周波数制御信号C1の絶対値を算出する(ステップS16)。続いて、ハイサイドスイッチQ1をオフ駆動させ、ローサイドスイッチQ2を低周波数制御信号C1の絶対値に基づき算出されたDUTYによりPWM駆動させる信号を各スイッチQ1,Q2に出力する(ステップS17)。すなわち、図6におけるT1区間において、上記駆動信号が出力される。
【0066】
また、入力された制御モードがマップ制御モードでない場合、すなわち、適応制御モードである場合には(ステップS12:No)、適応制御部15から高周波数制御信号C2を入力する。高周波数制御信号C2は、上述したように図9に示す信号である。続いて、適応制御部15から入力された高周波数制御信号C2が正であるか負であるかを判定する(ステップS19)。高周波数制御信号C2が正の場合には(ステップS19:Yes)、ハイサイドスイッチQ1をオン駆動させ、ローサイドスイッチQ2を高周波数制御信号C2に基づき算出されたDUTYによりPWM駆動させる信号を各スイッチQ1,Q2に出力する(ステップS20)。すなわち、図9におけるT2以外の区間にて、上記駆動信号が出力される。
【0067】
一方、適応制御部15から入力された高周波数制御信号C2が負の場合には(ステップS19:No)、ハイサイドスイッチQ1及びローサイドスイッチQ2をオフ駆動させる信号を各スイッチQ1,Q2に出力する(ステップS21)。すなわち、図9におけるT2区間にて、上記駆動信号が出力される。
【0068】
(6.3.2)非対称型ハーフブリッジ162の動作
次に、非対称型ハーフブリッジ162の動作について、図12〜図14を参照して説明する。図12(a)〜図12(c)は、各スイッチQ1,Q2の動作に応じて非対称型ハーフブリッジ回路162に流れる電流を示す図である。図13は、マップ制御モードにおける加振器17であるソレノイドのコイルに流れる電流値を示す図である。図14は、適応制御モードにおける加振器17であるソレノイドのコイルに流れる電流値を示す図である。以下に、制御モード及び各スイッチQ1,Q2の動作毎に説明する。
【0069】
(6.3.2.1)マップ制御モードにおいて低周波数制御信号C1が正の場合
まず、マップ制御モードにおいて低周波数制御信号C1が正の場合について図12(a)及び図13を参照して説明する。この場合には、ハイサイドスイッチQ1がオン駆動し、ローサイドスイッチQ2がPWM駆動する。このときの非対称型ハーフブリッジ回路162には、図12(a)の矢印にて示すように電流が流れる。すなわち、電流は、正極側→ハイサイドスイッチQ1→加振器17のコイル→ローサイドスイッチQ2→負極側の方向に流れる。なお、ローサイドスイッチQ2がPWM駆動しているので、そのDUTYに応じた電流が流れることになる。
【0070】
具体的には、図6及び図13に示すように、低周波数制御信号の値が大きい場合には加振器17のコイルに流れる電流値が大きくなり、低周波数制御信号の値が小さい場合には加振器17のコイルに流れる電流値が小さくなる。ここで、加振器17により発生する加振力は、コイルに流れる電流に比例する。従って、低周波数制御信号C1が正の場合には、加振器17は、1次周波数成分S1、2次周波数成分S2、及び3次周波数成分S3を考慮した加振力を発生することができる。
【0071】
(6.3.2.2)マップ制御モードにおいて低周波数制御信号C1が負の場合
次に、マップ制御モードにおいて低周波数制御信号C1が負の場合について図12(b)及び図13を参照して説明する。この場合には、ハイサイドスイッチQ1がオフ駆動し、ローサイドスイッチQ2がPWM駆動する。このときの非対称型ハーフブリッジ回路162には、図12(b)の矢印にて示すように環流電流が流れる。すなわち、電流は、第2ダイオードD2→加振器17のコイル→第2ダイオードD2の方向に環流する。この環流電流が流れるのは、加振器17のコイルのインダクタンスの作用によるものである。従って、時間が経過するにつれて、環流電流は徐々に減少する。具体的には、図13に示すように、T1区間において、加振器17のコイルに流れる電流が減少している。
【0072】
ここで、ローサイドスイッチQ2をPWM駆動させる理由について説明する。ハイサイドスイッチQ1及びローサイドスイッチQ2を共にオフ駆動する場合に比べて、ハイサイドスイッチQ1をオフ駆動しローサイドスイッチQ2をPWM駆動する場合には、加振器17のコイルに流れる電流値の減少率が低減する結果が得られた。その結果、ローサイドスイッチQ2をPWM駆動することにより、加振器17のコイルに流れる電流値が0にならないようにすることができる。このように電流値が0にならないようにすることで、加振器17のコイルの通電状態がオン状態からオフ状態になることを抑制することができる。つまり、加振器17のコイルの通電状態がオン状態からオフ状態になることによる異音の発生を抑制することができる。
【0073】
(6.3.2.3)適応制御モードにおいて高周波数制御信号C2が正の場合
次に、適応制御モードにおいて高周波数制御信号C2が正の場合について図12(a)及び図14を参照して説明する。この場合には、ハイサイドスイッチQ1がオン駆動し、ローサイドスイッチQ2がPWM駆動する。このときの非対称型ハーフブリッジ回路162には、図12(a)の矢印にて示すように電流が流れる。ここで、高周波数制御信号C2は図9に示すように、矩形波信号である。従って、ローサイドスイッチQ2は一定のDUTYに基づきPWM駆動する。つまり、高周波数制御信号C2が正の場合には、図14に示すように、一定の時定数に基づき電流値は上昇する。さらに、高周波数制御信号C2を矩形波信号とすることにより、コイルに流れる電流値の上昇率が大きくすることができる。その結果、加振器17により大きな加振力を発生させることができる。
【0074】
(6.3.2.4)適応制御モードにおいて高周波数制御信号C2が負の場合
次に、適応制御モードにおいて高周波数制御信号C2が負の場合について図12(c)及び図14を参照して説明する。この場合には、ハイサイドスイッチQ1及びローサイドスイッチQ2が共にオフ駆動する。このときの非対称型ハーフブリッジ回路162には、図12(c)の矢印にて示すように回生電流が流れる。すなわち、電流は、負極側→第2ダイオードD2→加振器17のコイル→第1ダイオードD1→正極側の方向に流れる。この場合、図9に示すように、一定の時定数に基づき急速に電流値が減少して零になる。
【0075】
(7)効果
(7.1)マップ制御モードにおける効果
マップ制御モードにおいては、パルス信号の周波数ωの高次周波数成分を考慮した低周波数制御信号C1に基づく加振力を加振器17は発生している。つまり、エンジンによる振動の高次周波数成分に対しても適切に防振することができる。その結果、エンジンによる振動の高次周波数成分がエンジンフレームの固有振動数と一致する場合であっても、振動を抑制することができる。
【0076】
さらに、加振器17のコイルに流れる電流が0にならないように制御している。つまり、加振器17の通電状態がオン状態からオフ状態になることを抑制することができる。従って、加振器17の通電状態がオン状態からオフ状態になることにより生じる異音を抑制することができる。
【0077】
(7.2)適応制御モードにおける効果
適応制御モードにおいては、矩形波に補正された高周波数制御信号C2に基づき加振器17を駆動している。これにより、応答性を良くすることができ、加振器17により高い加振力を発生させることができる。その結果、エンジンが高回転となる場合であっても、適切に振動を抑制することができる。
【0078】
(8)他の実施例
(8.1)他の低周波数制御信号C3及びその場合の加振器17に流れる電流値
(8.1.1)他の低周波数制御信号C3の概要
上記実施例における低周波数制御信号C1は、正弦波からなる1次周波数成分S1、2次周波数成分S2、及び3次周波数成分S3を合成した信号としたが、以下の低周波数制御信号C3を用いてもよい。なお、上記実施例における低周波数制御信号C1によれば、加振器17により発生する加振力は小さいが、エンジンにより発生する振動に適切に対応した加振力を発生することができるので、非常に高い静粛性を得ることができる。一方、以下の低周波数制御信号C3は、大きな加振力を得ることができるようにすることができる。
【0079】
(8.1.2)低周波数制御信号C3の詳細
他の低周波数制御信号C3について図15及び図16を参照して説明する。図15は、マップフィルタ部142から出力される低周波数制御信号C3のうち1次周波数成分P1、2次周波数成分S2、及び3次周波数成分のそれぞれを示す図である。図16は、図15の各次数周波数成分を合成した低周波数制御信号C3を示す図である。なお、図15及び図16は、パルス信号の周波数ωが30Hzの場合の低周波数制御信号C3であって、最大値が1となるように示している。
【0080】
マップフィルタ部142により生成される低周波数制御信号C3は、数4〜数6に基づき算出される。数4は、低周波数制御信号C3のうちの1次周波数成分P1を示す。この1次周波数成分P1は、図15に示すような矩形波信号となる。数5は、低周波数制御信号C3のうちの2次周波数成分S2及び3次周波数成分S3を示す。この2次周波数成分S2及び3次周波数成分S3は、図15に示すような正弦波信号となる。そして、数6は、低周波数制御信号C3である。低周波数制御信号C3は、矩形波信号に変換された1次周波数成分P1と、正弦波信号である2周波数成分S2及び3次周波数成分S3とを合成したものである。ただし、最大値がa1とされている。
【0081】
【数4】
【0082】
【数5】
【0083】
【数6】
【0084】
(8.1.3)上記の場合における加振器17に流れる電流値
上述のような低周波数制御信号C3に基づき駆動部16が駆動した場合における加振器17のコイルに流れる電流値について図17を参照して説明する。図17は、当該電流値を示す図である。ここで、駆動部16の処理動作は、上述した駆動部16の処理動作と同様である。すなわち、マップ制御モードにおいて低周波数制御信号C3が正の場合には、駆動部16は、ハイサイドスイッチQ1をオン駆動させ、ローサイドスイッチQ2をPWM駆動させる。一方、マップ制御モードにおいて低周波数制御信号C3が負の場合には、駆動部16は、ハイサイドスイッチQ1をオフ駆動させ、ローサイドスイッチQ2をPWM駆動させる。
【0085】
そして、低周波数制御信号C3に基づき駆動部16が駆動した場合に、加振器17のコイルに流れる電流値は、図17に示すようになる。すなわち、低周波数制御信号C3が正の場合に電流値が上昇し、低周波数制御信号C3が負の場合に電流値が減少している。さらに、低周波数制御信号C1に基づき駆動部16が駆動した場合に比べると、低周波数制御信号C3に基づき駆動部16が駆動した場合は、加振器17のコイルに流れる電流値が大きい。つまり、低周波数制御信号C3に基づき駆動部16を駆動した場合は、加振器17により大きな加振力を発生させることができる。さらに、低周波数制御信号C3が負の場合にコイルに流れる電流値は減少しているが、0には到達していない。つまり、加振器17の通電状態がオン状態からオフ状態になることを抑制することができる。従って、加振器17の通電状態がオン状態からオフ状態になることにより生じる異音を抑制することができる。
【0086】
(8.2)駆動信号出力部161により出力される他の駆動信号
上述した実施例における駆動信号は、低周波数制御信号C1及び高周波数制御信号C2が正の場合には、ハイサイドスイッチQ1をオン駆動させ、ローサイドスイッチQ2をPWM駆動させる信号としている。この駆動信号は、低周波数制御信号C1及び高周波数制御信号C2が正の場合に、ハイサイドスイッチQ1及びローサイドスイッチQ2をPWM駆動させる信号としてもよい。この場合、ハイサイドスイッチQ1のPWM信号とローサイドスイッチQ2のPWM信号とは、同期をとって駆動するようにしてもよいし、位相をずらして駆動するようにしてもよい。
【0087】
また、上記駆動信号は、マップ制御モードであって低周波数制御信号C1が負の場合には、ハイサイドスイッチQ1をオフ駆動させ、ローサイドスイッチQ2をPWM駆動させる信号としている。この駆動信号は、マップ制御モードであって低周波数制御信号C1が負の場合には、ハイサイドスイッチQ1をPWM駆動させ、ローサイドスイッチQ2をオフ駆動させる信号としてもよい。これらの場合であっても、上記と同様の効果を奏する。
【0088】
(8.3)モード切替部12による他のモード切替処理
上述した実施例におけるモード切替処理は、パルス信号の周波数ωのみにより択一的にマップ制御モードと適応制御モードとを切り替えるようにしている。その他に、例えば、周波数ω及び車速を考慮して、制御モードを切り替えるようにしてもよい。例えば、低周波数であって低車速の場合にマップ制御モードとし、高周波数であって高車速の場合に適応制御モードとしてもよい。
【0089】
(8.4)モード切替部12による切替周波数
上述した実施例においてモード切替部12によりマップ制御モードと適応制御モードとを切り替える周波数を50Hzとしたが、適宜変更してもよい。エンジンフレームに限らず、他の構成部品の固有振動数を考慮してもよい。部品の固有振動数の他にも種々の条件を考慮して制御モードを切り替える周波数を設定してもよい。
【0090】
(8.5)低周波数制御信号C1
低周波数制御信号C1は、1次周波数成分から3次周波数成分までを考慮したが、より高次周波数成分を考慮するようにしてもよい。これにより、より高次の振動に対しても抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】能動型防振装置1の全体構成を示すブロック図である。
【図2】加振器付エンジンマウント20の部分断面図を示す。
【図3】モード切替部12の処理動作を示すフローチャートである。
【図4】マップ制御部14の構成を示すブロック図である。
【図5】マップフィルタ部142から出力される低周波数制御信号C1のうち1次周波数成分、2次周波数成分、及び3次周波数成分のそれぞれを示す図である。
【図6】図5の各次周波数成分を合成した低周波数制御信号C1を示す図である。
【図7】適応制御部15の構成を示すブロック図である。
【図8】適応フィルタ部151により生成される補正前の正弦波信号状態の高周波数制御信号を示す図である。
【図9】適応フィルタ部151から出力される高周波数制御信号C2を示す図である。
【図10】駆動部16の構成を示す図である。
【図11】駆動信号出力部161の処理動作を示すフローチャートである。
【図12】各スイッチQ1,Q2の動作に応じて非対称型ハーフブリッジ回路162に流れる電流を示す図である。
【図13】マップ制御モードにおける加振器17のコイルに流れる電流値を示す図である。
【図14】適応制御モードにおける加振器17のコイルに流れる電流値を示す図である。
【図15】マップフィルタ部142から出力される低周波数制御信号C3のうち1次周波数成分P1、2次周波数成分S2、及び3次周波数成分のそれぞれを示す図である。
【図16】図15の各次数周波数成分を合成した低周波数制御信号C3を示す図である。
【図17】低周波数制御信号C3に基づき駆動部16が駆動した場合における加振器17のコイルに流れる電流値を示す図である。
【符号の説明】
【0092】
1:能動型防振装置、 11:周波数算出部、 12:モード切替部、 13:運転状態信号出力部、 14:マップ制御部(制御信号発生手段)、 15:適応制御部(制御信号発生手段)、 16:駆動部(駆動手段)、 17:加振器(電磁アクチュエータ)、 18:加速度センサ、 20:加振器付エンジンマウント、 21:ケース、 22:防振ゴム、 24:固定金具、 161:駆動信号出力部、 162:非対称型ハーフブリッジ回路、 Q1:ハイサイドスイッチ、 Q2:ローサイドスイッチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、能動型防振装置、特に車両のエンジン等の振動発生源から発生する振動を能動的に抑制する能動型防振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電磁石を備えた能動型防振装置が、例えば特許文献1に開示されている。当該電磁石は、いわゆるエンジンマウントの内部に配置されており、電磁石が発生する加振力によりエンジンの振動の伝達を抑制している。具体的には、エンジンの振動に応じて電磁石の通電状態を制御することにより行っている。
【特許文献1】特開2001−117644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の能動型防振装置においては電磁石への通電状態がオン状態からオフ状態になる際に、異音が生じる場合があった。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、例えば電磁石等の電磁アクチュエータへの通電状態がオフ状態となることを抑制することにより、異音の発生を抑制することができる能動型防振装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の能動型防振装置は、電流通電量を可変にすることにより加振力を発生する電磁アクチュエータと、車両特定部位の振動を測定する振動測定手段と、車両の振動発生源から出力される周期性のパルス信号に基づき車両特定部位の振動を能動的に抑制させる周期性制御信号を発生する制御信号発生手段と、前記周期性制御信号に基づき前記電磁アクチュエータへの前記電流通電量を可変にして前記電磁アクチュエータを駆動する駆動手段とを備える。
【0006】
そして、本発明の能動型防振装置の特徴的構成は、前記駆動手段が、非対称型ハーフブリッジ回路と駆動信号出力手段を有することである。ここで、前記非対称型ハーフブリッジ回路は、少なくとも前記電磁アクチュエータの正極側に接続されたハイサイドスイッチと、前記電磁アクチュエータの負極側に接続され該ハイサイドスイッチに対して非対称位置に配置されたローサイドスイッチとを有する回路である。例えば、Hブリッジ回路であって、一方のアームの上側にハイサイドスイッチを配置し、他方のアームの下側にローサイドスイッチを配置した回路である。なお、逆流(回生)するときのみ電流が流れるように、一方のアームの下側及び他方のアームの上側にはダイオード等を配置する。そして、ハイサイドスイッチ及びローサイドスイッチがオンオフ駆動することにより、電磁アクチュエータに電流が流れる。
【0007】
そして、前記駆動信号出力手段は、前記周期性制御信号が正の場合と負の場合とで異なる駆動信号を出力する。具体的には、前記周期性制御信号が正の場合には、前記駆動信号出力手段は、前記ハイサイドスイッチ及び前記ローサイドスイッチのうち何れか一方にオン駆動信号を出力し、他方に前記周期性制御信号に基づきPWM駆動信号を出力する。若しくは、前記周期性制御信号が正の場合に、前記駆動信号出力手段は、前記ハイサイドスイッチ及び前記ローサイドスイッチの何れもに前記周期性制御信号に基づきPWM駆動信号を出力する。一方、前記周期性制御信号が負の場合には、前記駆動信号出力手段は、前記ハイサイドスイッチ及び前記ローサイドスイッチのうち何れか一方にオフ駆動信号を出力し、他方に前記周期性制御信号に基づきPWM駆動信号を出力する。
【0008】
つまり、前記駆動信号出力手段は、前記周期性制御信号が正の場合に、電磁アクチュエータに流れる電流は増加するように作用する。一方、前記駆動信号出力手段は、前記周期性制御信号が負の場合に、電磁アクチュエータに流れる電流は減少するように作用する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、周期性制御信号が負の場合に、ハイサイドスイッチ及びローサイドスイッチのうち何れか一方をオフ駆動させ、他方を周期性制御信号に基づきPWM駆動させている。ハイサイドスイッチ及びローサイドスイッチを共にオフ駆動させると、急激に電磁アクチュエータに流れる電流が減少して、電流値が零になる場合がある。しかし、本発明のように、ハイサイドスイッチ及びローサイドスイッチのうち何れか一方をオフ駆動させ、他方をPWM駆動させることにより、電磁アクチュエータに流れる電流の減少率が小さくなる。従って、電磁アクチュエータに流れる電流値が零にならないように、電磁アクチュエータを制御することができる。これにより、電磁アクチュエータ(電磁石等)の通電状態がオン状態からオフ状態になることを抑制することにより、結果として異音の発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、実施形態を挙げ、本発明をより詳しく説明する。上述したように、本発明の能動型防振装置は、電磁アクチュエータと、振動測定手段と、制御信号発生手段と、駆動手段とを備える。
【0011】
(1)周期性制御信号
ここで、制御信号発生手段により発生される周期性制御信号は、前記パルス信号の周波数が所定周波数以下の場合と、所定周波数より大きい場合とにおいて、異なるようにすることが好ましい。すなわち、周期性制御信号は、前記パルス信号の周波数が所定周波数以下の場合には前記パルス信号の周波数の1次周波数成分信号と前記パルス信号の周波数に対する高次周波数成分信号とを合わせた低周波数制御信号であり、前記パルス信号の周波数が所定周波数より大きい場合には前記1次周波数成分信号のみからなる高周波数制御信号であるとすることが好ましい。
【0012】
ここで、振動発生源がエンジンであって、本発明の能動型防振装置をエンジンによる振動の抑制に適用する場合を例に挙げて説明する。本発明の能動型防振装置をエンジンによる振動の1次周波数成分のみに適用した場合であっても、振動発生源であるエンジンによる振動の高次周波数とエンジンフレームの固有振動数とが一致する場合には、両者が共振を起こすることによりエンジンフレームの振動が大きくなるおそれがある。そこで、周期性制御信号が、エンジンによる振動の1次周波数成分のみならず、高次周波数成分に対しても考慮することが好ましい。つまり、周期性制御信号が高次周波数成分に対して考慮されることにより、エンジンの振動の高次周波数成分を抑制することができる。これにより、エンジンの振動の高次周波数とエンジンフレームの固有振動数とが一致した場合であっても、エンジンフレームの振動を抑制することができる。ただし、エンジンによる振動の1次周波数がエンジンフレームの固有振動数より大きくなると、両者が共振することはない。従って、上記の場合には、低周波数制御信号と高周波数制御信号とが切り替えられる所定周波数が、パルス信号の周波数の2次周波数がエンジンフレームの固有振動数より大きくなる前記パルス信号の周波数とすればよい。すなわち、例えば、エンジンフレームの固有振動数が100Hzの場合には、所定周波数は50Hzより大きくすればよい。
【0013】
また、前記低周波数制御信号の前記1次周波数成分信号は、正弦波信号としてもよい。つまり、正弦波信号である低周波数数制御信号の1次周波数成分信号は、実際のエンジン等の振動の1次周波数成分とほぼ同様の波形となる。これにより、エンジン等の振動発生源から生じる振動をより適切に抑制することができ、結果として非常に高い静粛性を得ることができる。
【0014】
また、前記低周波数制御信号の前記1次周波数成分信号は、正弦波信号に基づき算出された矩形波信号としてもよい。1次周波数成分信号を矩形波信号とすることにより、1次周波数成分の振動抑制力を高めることができる。さらに、1次周波数成分信号を矩形波信号とすることにより、応答性を高めることができる。つまり、応答性の低い電磁アクチュエータを使用する場合であっても、確実にエンジン等の振動発生源から生じる振動を抑制することができる。
【0015】
また、前記高周波数制御信号は、前記1次周波数成分信号に基づき算出された矩形波信号としてもよい。エンジン等の振動発生源により生じる振動の周波数が高い領域においては、電磁アクチュエータの高い応答性が要求される。そこで、高周波数制御信号を矩形波信号とすることにより応答性を高めることができるので、確実に高周波数領域における振動を抑制することができる。
【0016】
(2)駆動信号出力手段
駆動信号出力手段は、上述したように、前記周期性制御信号が正の場合と負の場合とにより非対称型ハーフブリッジの各スイッチの駆動を異なるようにしている。ここで、駆動信号出力手段は、さらに、前記周期性制御信号が負の際に、前記パルス信号の周波数が所定周波数以下の場合と所定周波数より大きい場合とにより非対称型ハーフブリッジの各スイッチの駆動を異なるようにしてもよい。
【0017】
具体的には、前記駆動信号出力手段は、前記周期性制御信号が負であって前記パルス信号の周波数が所定周波数以下の場合に、前記ハイサイドスイッチ及び前記ローサイドスイッチのうち何れか一方にオフ駆動信号を出力し、他方に前記周期性制御信号に基づきPWM駆動信号を出力するPWM信号を出力する。一方、前記駆動信号出力手段は、前記周期性制御信号が負であって前記パルス信号の周波数が所定周波数より大きい場合に、前記ハイサイドスイッチ及び前記ローサイドスイッチにオフ駆動信号を出力する。
【0018】
つまり、周期性制御信号が負の場合には、パルス信号の周波数が所定周波数以下の場合にのみ、各スイッチの何れか一方をオフ駆動させ他方をPWM駆動させている。このように各スイッチの何れか一方をオフ駆動させ、他方をPWM駆動させることにより、電磁アクチュエータに流れる電流の減少率が小さくなる。従って、電磁アクチュエータに流れる電流値が零にならないように、電磁アクチュエータを制御することができる。これにより、パルス信号の周波数が所定周波数以下の場合には、電磁アクチュエータ(電磁石等)の通電状態がオン状態からオフ状態になることを抑制でき、結果として異音の発生を抑制することができる。
【0019】
一方、パルス信号の周波数が所定周波数より大きい場合には、何れのスイッチもオフ駆動させている。パルス信号の周波数が大きくなるにつれて、エンジン等による騒音が大きくなる。そのため、パルス信号の周波数が大きい場合には、電磁アクチュエータの通電状態がオン状態からオフ状態になる際に生じる異音は、それほど問題とならない。そこで、パルス信号の周波数が所定周波数より大きい場合には、何れのスイッチもオフ駆動させることにより、制御の容易化を図っている。
【0020】
(3)制御信号発生手段
制御信号発生手段は、上述したように、パルス信号及び車両特定部位の振動に基づき前記車両特定部位の振動を能動的に抑制させる周期性制御信号を発生する。この制御信号発生手段は、前記パルス信号の周波数が所定周波数以下の場合と所定周波数より大きい場合とにより異なるようにしてもよい。
【0021】
すなわち、前記制御信号発生手段は、前記パルス信号の周波数が所定周波数以下の場合には、予め記憶されたデータマップ及び制御時の運転状態に基づき前記周期性制御信号を算出するようにする。一方、前記制御信号発生手段は、前記パルス信号の周波数が所定周波数より大きい場合には、適応制御法に基づき前記周期性制御信号を算出するようにする。
【0022】
これにより、パルス信号の周波数が所定周波数以下の場合には、データマップを用いて行うマップ制御を採用することにより、応答性を良好とすることができる。なお、マップ制御は適応制御に比べると適応性に欠ける。しかし、エンジン回転数が低い場合には、エンジン回転以外の信号が少ないので、この振動を十分に抑制することができる。逆に、応答性を高めることにより、確実にエンジンによる振動を抑制することができる。一方、パルス信号の周波数が所定周波数より大きい場合には、適応制御法を採用することにより、種々の運転状態により影響する振動を適応的に抑制することができる。
【実施例】
【0023】
次に、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
【0024】
(1)能動型防振装置1の全体構成
本実施例の能動型防振装置1の全体構成について図1を参照して説明する。図1は、能動型防振装置1の全体構成を示すブロック図である。本実施例の能動型防振装置1は、車両に搭載されたエンジンE/G(振動発生源)により発生される振動が車両の各部位に伝達されることを能動的に抑制するための装置である。この能動型防振装置1は、図1に示すように、周波数算出部11と、モード切替部12と、運転状態信号出力部13と、マップ制御部14と、適応制御部15と、駆動部16と、加振器17と、加速度センサ18とを備えている。
【0025】
(1.1)周波数算出部11
周波数算出部11は、エンジンE/Gの回転数を検出するための回転検出器(図示せず)からパルス信号を入力する。そして、周波数算出部11は、入力されたパルス信号に基づき、該パルス信号の周波数ωを算出する。
【0026】
(1.2)モード切替部12
モード切替部12は、周波数算出部11により算出されたパルス信号の周波数ωを入力する。そして、入力されたパルス信号の周波数ωに基づき、マップ制御モードと適応制御モードとの切り替えを判定する。マップ制御モードと適応制御モードとは、択一的に選択される。なお、モード切替処理、マップ制御モード、及び適応制御モードの詳細は、後述する。
【0027】
(1.3)運転状態信号出力部13
運転状態信号出力部13は、マップ制御モードの際に用いられる。この運転状態信号出力部13は、車両の運転状態、例えば、変速機のシフトポジション(前進D、ニュートラルN、後進R)、エアコンスイッチのON/OFF状態などをマップ制御部14へ出力する。
【0028】
(1.4)マップ制御部(制御信号発生手段)14
マップ制御部14は、モード切替部12によりマップ制御モードに切り替えられた場合に実行される。つまり、マップ制御モードに切り替えられた場合に、マップ制御部14は、周波数算出部11により算出されたパルス信号の周波数ω、及び、運転状態信号出力部13から出力される運転状態信号を入力する。そして、マップ制御部14は、入力されたパルス信号の周波数ω及び運転状態信号、並びに、マップデータ記憶部(後述する)に記憶されたマップデータに基づき、周期性制御信号を算出する。なお、マップ制御部14の詳細は後述する。
【0029】
(1.5)適応制御部(制御信号発生手段)15
一方、適応制御部15は、モード切替部12により適応制御モードに切り替えられた場合に実行される。つまり、適応制御モードに切り替えられた場合に、適応制御部15は、周波数算出部11により算出されたパルス信号の周波数ω、及び、後述する加速度センサ18により検出された加速度信号を入力する。そして、適応制御部15は、入力されたパルス信号の周波数ω及び加速度信号に基づき、適応制御法により周期性制御信号を算出する。なお、適応制御部15の詳細は後述する。
【0030】
(1.6)駆動部(駆動手段)16
駆動部16は、マップ制御部14又は適応制御部15から出力される周期性制御信号に基づき、後述する加振器17を駆動する。ここで、駆動部16は、モード切替部12により切り替えられた制御モードを入力している。つまり、モード切替部12によりマップ制御モードに切り替えられた場合には、駆動部16はマップ制御部14から出力される周期性制御信号に基づき加振器17を駆動する。一方、モード切替部12により適応制御モードに切り替えられた場合には、駆動部16は適応制御部15から出力される周期性制御信号に基づき加振器17を駆動する。なお、駆動部16の詳細は後述する。
【0031】
(1.7)加振器(電磁アクチュエータ)17
加振器17は、例えば、エンジンマウント(図示せず)に搭載されたソレノイドである。加振器17であるソレノイドは、コイルに通電されることにより、加振力を発生する。つまり、加振器17であるソレノイドのコイルへの電流通電量を制御することにより、加振力を変化させることができる。そして、エンジンE/Gの振動と加振器17により発生させる振動とが相殺される時には、エンジンE/Gの振動はエンジンマウントから車体側へ伝達されないことになる。なお、加振器17の詳細は後述する。
【0032】
(1.8)加速度センサ18
加速度センサ18は、エンジンマウントのうちのエンジンフレームへの固定部位に取付けられている。つまり、加速度センサ18は、エンジンマウントのうちのエンジンフレームとの固定部位における振動を検出している。すなわち、加速度センサ18は、エンジンE/Gの振動が伝達系Cを介して伝達された振動と加振器17により発生させた振動とを合成した振動が検出される。この合成された振動は、いわゆる誤差信号となる。そして、加速度センサ18は、この誤差信号を適応制御部15に出力する。
【0033】
(2)加振器17及び加速度センサ18を備えた加振器付エンジンマウントの詳細構成
次に、加振器17及び加速度センサ18を備えた加振器付エンジンマウントの詳細構成について図2を参照して説明する。図2は、加振器付エンジンマウント20の部分断面図を示す。図2に示すように、加振器付エンジンマウント20は、筒状のケース21と、防振ゴム22と、固定金具24と、加振器17と、加速度センサ18とを備えている。防振ゴム22は、ケース21内に設けられている。そして、この防振ゴム22のうちの加振器17側は、ケース21の内壁に固定されている。一方、防振ゴム22には、固定金具24の一端側の取付部を収納するように、ケース21の一端側に向けてストッパ部22aが設けられている。つまり、防振ゴム22のうちの加振器17の反対側は、固定金具24に取付けられている。
【0034】
固定金具24は、上記取付部と固定軸25とから構成される。固定軸25は、取付部から防振ゴム22の反対側に向けて取付けられている。そして、この固定金具24の固定軸25のうちの先端側は、ケース21の一端側に設けられた貫通孔21aから突出している。この固定軸25は、エンジンE/Gが固定されている。
【0035】
そして、加振器17は、コイル(図示せず)が周方向に巻回されており、コイルの軸中心側にコアが配置されている。そして、コイルへの電流通電量を可変にすることにより、コアが往復移動する。このコアの往復移動により加振力が発生する。さらに、ケース21の他端側には固定軸26が設けられている。この固定軸26は、エンジンフレームE/Fに取付けられている。
【0036】
加速度センサ18は、ケース21の外周側に固定されている。つまり、加速度センサ18は、加振器付エンジンマウント20のケース21の振動を計測している。
【0037】
(3)モード切替部12の処理動作
次に、上述したモード切替部12の処理動作について図3を参照して説明する。図3は、モード切替部12の処理動作を示すフローチャートである。図3に示すように、モード切替部12は、周波数算出部11により算出されたパルス信号の周波数ωを入力する(ステップS1)。続いて、入力されたパルス信号の周波数ωが50Hz以下であるか否かを判定する(ステップS2)。そして、パルス信号の周波数ωが50Hz以下である場合には、マップ制御モードへ切り替える(ステップS3)。一方、パルス信号の周波数ωが50Hzより大きい場合には、適応制御モードへ切り替える(ステップS4)。つまり、パルス信号の周波数ωが低周波数の場合にはマップ制御モードに切り替え、パルス信号の周波数ωが高周波数の場合には適応制御モードに切り替える。
【0038】
ここで、制御モードを切り替える周波数を50Hzとしたことについての理由を簡単に説明する。上述したように、モード切替部12は、周波数ωが50Hz以下の場合にマップ制御モードとし、周波数ωが50Hzより大きい場合に適応制御モードにする。そして、周波数ωが低い場合に行うマップ制御モードは、後述するようにエンジンによる振動の1次周波数成分及び高次周波数成分を考慮して能動的に振動を抑制する。一方、周波数ωが高い場合に行う適応制御モードは、後述するようにエンジンによる振動の1次周波数成分のみを考慮して能動的に振動を抑制する。
【0039】
ところで、エンジンE/Gを取付けるエンジンフレームの固有振動数は約80〜100Hzである。つまり、周波数ωが50Hz以下の場合には、エンジンによる振動の高次周波数がエンジンフレームの固有振動数と一致するおそれがある。両者が一致する場合には、共振作用によりエンジンフレームの振動が大きくなるおそれが生じる。一方、周波数ωが50Hzより大きい場合には、エンジンによる振動の高次周波数がエンジンフレームの固有振動数と一致することはない。
【0040】
つまり、エンジンの振動の高次周波数成分がエンジンフレームと共振を起こさないようにするために、周波数ωが50Hz以下の場合に高次周波数成分を考慮するマップ制御モードを行うようにしている。
【0041】
(4)マップ制御部14の詳細構成及び低周波数制御信号C1
(4.1)マップ制御部14の詳細構成
次に、マップ制御部14の詳細構成について図4を参照して説明する。図4は、マップ制御部14の構成を示すブロック図である。図4に示すように、マップ制御部14は、マップデータ記憶部141とマップフィルタ部142とから構成される。このマップ制御部14は、上述したように、モード切替部12によりマップ制御モードに切り替えられた場合に実行される。
【0042】
マップデータ記憶部141は、予めパルス信号の周波数ω及び運転状態に応じたフィルタ係数を記憶している。ここで、フィルタ係数は、フィルタ係数ゲインに相当する振幅値a及びフィルタ係数位相に相当する位相値φである。マップフィルタ部142は、周波数算出部11により算出されたパルス信号の周波数ω、及び、運転状態信号出力部13から出力される運転状態信号を入力する。さらに、マップフィルタ部142は、入力されたパルス信号の周波数ω及び運転状態信号に対応するフィルタ係数をマップデータ記憶部141から入力する。そして、マップフィルタ部142は、入力されたこれらの情報に基づき、振幅補償及び位相補償がされて周期性制御信号(低周波数制御信号)C1を生成する。そして、生成された低周波数制御信号C1を駆動部16へ出力する。
【0043】
(4.2)低周波数制御信号C1
ここで、マップフィルタ部142により生成される低周波数制御信号C1について図5及び図6を参照して説明する。図5は、マップフィルタ部142から出力される低周波数制御信号C1のうち1次周波数成分、2次周波数成分、及び3次周波数成分のそれぞれを示す図である。図6は、図5の各次周波数成分を合成した低周波数制御信号C1を示す図である。なお、図5及び図6は、パルス信号の周波数ωが30Hzの場合の低周波数制御信号C1であって、最大値が1となるように示している。
【0044】
マップフィルタ部142により生成される低周波数制御信号C1は、数1に基づき算出される。ここでは、次数kを3次までとするので、数1においてK=3となる。そして、数1に示すように、低周波数制御信号C1は、パルス信号の周波数ωの1次周波数成分S1、2次周波数成分S2、及び3次周波数成分S3を合成した信号である。ここで、1次周波数成分S1、2次周波数成分S2、及び3次周波数成分S3は、正弦波信号である。なお、ofsetは、予め車両に応じて設定される値である。
【0045】
【数1】
【0046】
そして、数1に基づき得られる低周波数制御信号C1の各次周波数成分S1〜S3の信号波形は図5のようになる。そして、各次周波数成分S1〜S3を合成した信号波形C1は図6のようになる。
【0047】
(5)適応制御部15の詳細構成及び高周波数制御信号C2
(5.1)適応制御部15の詳細構成
次に、適応制御部15の詳細構成について図7を参照して説明する。図7は、適応制御部15の構成を示すブロック図である。ここで、適応制御部15において採用する適応制御法は、遅延調和シンセサイザ最小平均自乗フィルタ(DXHS−LMS)である。なお、適応制御部15は、上述したように、モード切替部12により適応制御モードに切り替えられた場合に実行される。
【0048】
図7に示すように、適応制御部15は、適応フィルタ部151と、伝達関数推定部152と、フィルタ係数更新部153とから構成される。適応フィルタ部151は、周波数算出部11により算出されたパルス信号の周波数ω、フィルタ係数更新部153により更新されたフィルタ係数を入力する。そして、適応フィルタ部151は、入力されたこれらの情報に基づき、振幅補償及び位相補償がされて周期性制御信号(高周波数制御信号)C2を生成する。生成した高周波数制御信号C2を駆動部16へ出力する。
【0049】
伝達関数推定部152は、適応フィルタ部151の出力制御対象系の伝達関数G(駆動部16及び加振器17)の推定値G^(以下、「推定伝達関数G^」という)を算出する。フィルタ係数更新部153は、加速度センサ18の出力信号と推定伝達関数G^とに基づき、DXHS−LMSによりフィルタ係数を更新する。ここで、フィルタ係数は、フィルタ係数ゲインに相当する振幅値a及びフィルタ係数位相に相当する位相値φである。
【0050】
つまり、適応制御部15は、観測点の誤差である加速度センサ18の出力信号が0となるように、フィルタ係数が更新される。そして、更新されたフィルタ係数に基づき、振幅補償及び位相補償がされた高周波数制御信号C2を出力している。
【0051】
(5.2)高周波数制御信号C2
ここで、適応フィルタ部151により生成される高周波数制御信号C2について図8及び図9を参照して説明する。図8は、適応フィルタ部151により生成される補正前の正弦波信号状態の高周波数制御信号を示す図である。図9は、適応フィルタ部151から出力される高周波数制御信号C2を示す図である。なお、図8及び図9は、パルス信号の周波数ωが100Hzの場合の高周波数制御信号であって、最大値が1となるように示している。
【0052】
まず、適応フィルタ部151により生成される補正前の高周波数制御信号S1は、数2に基づき算出される。ここでは、次数kは1次とするので、数1においてK=1となる。つまり、補正前の高周波数制御信号S1は、パルス信号の周波数ωの1次周波数成分S1のみからなる正弦波信号である。この補正前の高周波数制御信号S1の波形は、図8のような正弦波となる。
【0053】
【数2】
【0054】
続いて、算出された補正前の高周波数制御信号S1に対して、数3により補正を行う。この補正後の高周波数制御信号C2が、駆動部16へ出力される信号である。つまり、数3により、補正前の正弦波信号を矩形波信号に変換している。この補正後の高周波数制御信号C2は、図9のような矩形波となる。
【0055】
【数3】
【0056】
(6)駆動部16の詳細構成
次に、駆動部16の詳細構成について図10を参照して説明する。図10は、駆動部16の構成を示す図である。図10に示すように、駆動部16は、駆動信号出力部161と非対称型ハーフブリッジ回路162とから構成される。
【0057】
(6.1)駆動信号出力部161の構成
駆動信号出力部161は、上述したモード切替部12から出力される制御モード、並びに、マップ制御部14又は適応制御部15から出力される周期性制御信号C1、C2に基づき、後述するハイサイドスイッチQ1及びローサイドスイッチQ2の駆動信号を出力する。具体的には、駆動信号出力部161は、ハイサイドスイッチQ1及びローサイドスイッチQ2のゲート電圧を出力する。
【0058】
(6.2)非対称型ハーフブリッジ回路162の構成
非対称型ハーフブリッジ回路162は、いわゆるHブリッジ回路を構成しており、第1上アームには第1ダイオードD1が接続され、第1下アームにはローサイドスイッチQ2が接続されている。第2上アームにはハイサイドスイッチQ1が接続され、第2下アームには第2ダイオードD2が接続されている。ここで、ハイサイドスイッチQ1及びローサイドスイッチQ2は、何れもFETを用いている。
【0059】
具体的には、第1ダイオードD1のカソード側が正極側に接続され、第1ダイオードD1のアノード側とローサイドスイッチQ2のドレイン側とが接続され、ローサイドスイッチQ2のソース側が負極側に接続されている。また、ハイサイドスイッチQ1のドレイン側が正極側に接続され、ハイサイドスイッチQ1のソース側と第2ダイオードD2のカソード側とが接続され、第2ダイオードD2のアノード側が負極側に接続されている。なお、ハイサイドスイッチQ1及びローサイドスイッチQ2のゲート側は、駆動信号出力部161に接続されている。つまり、駆動信号出力部161から出力されるゲート電圧に応じて、ハイサイドスイッチQ1及びローサイドスイッチQ2はオンオフ駆動する。
【0060】
そして、非対称型ハーフブリッジ回路162の出力側には加振器17が接続されている。すなわち、第1ダイオードD1とローサイドスイッチQ2との中間位置、及び、ハイサイドスイッチQ1と第2ダイオードD2の中間位置が、加振器17であるソレノイドのコイルの両端側にそれぞれ接続されている。
【0061】
(6.3)駆動部16の処理動作
上述のような構成からなる駆動部16の処理動作について図11〜図14を参照して説明する。
【0062】
(6.3.1)駆動信号出力部161の処理動作
まず、駆動信号出力部161の処理動作について、図11のフローチャートを参照して説明する図11は、駆動信号出力部161の処理動作を示すフローチャートである。
【0063】
図11に示すように、駆動信号出力部161は、まずモード切替部12から制御モードを入力する(ステップS11)。続いて、入力された制御モードがマップ制御モードであるか否かを判定する(ステップS12)。そして、入力された制御モードがマップ制御モードである場合には(ステップS12:Yes)、マップ制御部14から低周波数制御信号C1を入力する。低周波数制御信号C1は、上述したように図6に示す信号である。
【0064】
続いて、マップ制御部14から入力された低周波数制御信号C1が正であるか負であるかを判定する(ステップS14)。低周波数制御信号C1が正の場合には(ステップS14:Yes)、ハイサイドスイッチQ1をオン駆動させ、ローサイドスイッチQ2を低周波数制御信号C1に基づき算出されたDUTYによりPWM駆動させる信号を各スイッチQ1,Q2に出力する(ステップS15)。すなわち、図6におけるT1以外の区間にて、上記駆動信号が出力される。
【0065】
一方、マップ制御部14から入力された低周波数制御信号C1が負の場合には(ステップS14:No)、低周波数制御信号C1の絶対値を算出する(ステップS16)。続いて、ハイサイドスイッチQ1をオフ駆動させ、ローサイドスイッチQ2を低周波数制御信号C1の絶対値に基づき算出されたDUTYによりPWM駆動させる信号を各スイッチQ1,Q2に出力する(ステップS17)。すなわち、図6におけるT1区間において、上記駆動信号が出力される。
【0066】
また、入力された制御モードがマップ制御モードでない場合、すなわち、適応制御モードである場合には(ステップS12:No)、適応制御部15から高周波数制御信号C2を入力する。高周波数制御信号C2は、上述したように図9に示す信号である。続いて、適応制御部15から入力された高周波数制御信号C2が正であるか負であるかを判定する(ステップS19)。高周波数制御信号C2が正の場合には(ステップS19:Yes)、ハイサイドスイッチQ1をオン駆動させ、ローサイドスイッチQ2を高周波数制御信号C2に基づき算出されたDUTYによりPWM駆動させる信号を各スイッチQ1,Q2に出力する(ステップS20)。すなわち、図9におけるT2以外の区間にて、上記駆動信号が出力される。
【0067】
一方、適応制御部15から入力された高周波数制御信号C2が負の場合には(ステップS19:No)、ハイサイドスイッチQ1及びローサイドスイッチQ2をオフ駆動させる信号を各スイッチQ1,Q2に出力する(ステップS21)。すなわち、図9におけるT2区間にて、上記駆動信号が出力される。
【0068】
(6.3.2)非対称型ハーフブリッジ162の動作
次に、非対称型ハーフブリッジ162の動作について、図12〜図14を参照して説明する。図12(a)〜図12(c)は、各スイッチQ1,Q2の動作に応じて非対称型ハーフブリッジ回路162に流れる電流を示す図である。図13は、マップ制御モードにおける加振器17であるソレノイドのコイルに流れる電流値を示す図である。図14は、適応制御モードにおける加振器17であるソレノイドのコイルに流れる電流値を示す図である。以下に、制御モード及び各スイッチQ1,Q2の動作毎に説明する。
【0069】
(6.3.2.1)マップ制御モードにおいて低周波数制御信号C1が正の場合
まず、マップ制御モードにおいて低周波数制御信号C1が正の場合について図12(a)及び図13を参照して説明する。この場合には、ハイサイドスイッチQ1がオン駆動し、ローサイドスイッチQ2がPWM駆動する。このときの非対称型ハーフブリッジ回路162には、図12(a)の矢印にて示すように電流が流れる。すなわち、電流は、正極側→ハイサイドスイッチQ1→加振器17のコイル→ローサイドスイッチQ2→負極側の方向に流れる。なお、ローサイドスイッチQ2がPWM駆動しているので、そのDUTYに応じた電流が流れることになる。
【0070】
具体的には、図6及び図13に示すように、低周波数制御信号の値が大きい場合には加振器17のコイルに流れる電流値が大きくなり、低周波数制御信号の値が小さい場合には加振器17のコイルに流れる電流値が小さくなる。ここで、加振器17により発生する加振力は、コイルに流れる電流に比例する。従って、低周波数制御信号C1が正の場合には、加振器17は、1次周波数成分S1、2次周波数成分S2、及び3次周波数成分S3を考慮した加振力を発生することができる。
【0071】
(6.3.2.2)マップ制御モードにおいて低周波数制御信号C1が負の場合
次に、マップ制御モードにおいて低周波数制御信号C1が負の場合について図12(b)及び図13を参照して説明する。この場合には、ハイサイドスイッチQ1がオフ駆動し、ローサイドスイッチQ2がPWM駆動する。このときの非対称型ハーフブリッジ回路162には、図12(b)の矢印にて示すように環流電流が流れる。すなわち、電流は、第2ダイオードD2→加振器17のコイル→第2ダイオードD2の方向に環流する。この環流電流が流れるのは、加振器17のコイルのインダクタンスの作用によるものである。従って、時間が経過するにつれて、環流電流は徐々に減少する。具体的には、図13に示すように、T1区間において、加振器17のコイルに流れる電流が減少している。
【0072】
ここで、ローサイドスイッチQ2をPWM駆動させる理由について説明する。ハイサイドスイッチQ1及びローサイドスイッチQ2を共にオフ駆動する場合に比べて、ハイサイドスイッチQ1をオフ駆動しローサイドスイッチQ2をPWM駆動する場合には、加振器17のコイルに流れる電流値の減少率が低減する結果が得られた。その結果、ローサイドスイッチQ2をPWM駆動することにより、加振器17のコイルに流れる電流値が0にならないようにすることができる。このように電流値が0にならないようにすることで、加振器17のコイルの通電状態がオン状態からオフ状態になることを抑制することができる。つまり、加振器17のコイルの通電状態がオン状態からオフ状態になることによる異音の発生を抑制することができる。
【0073】
(6.3.2.3)適応制御モードにおいて高周波数制御信号C2が正の場合
次に、適応制御モードにおいて高周波数制御信号C2が正の場合について図12(a)及び図14を参照して説明する。この場合には、ハイサイドスイッチQ1がオン駆動し、ローサイドスイッチQ2がPWM駆動する。このときの非対称型ハーフブリッジ回路162には、図12(a)の矢印にて示すように電流が流れる。ここで、高周波数制御信号C2は図9に示すように、矩形波信号である。従って、ローサイドスイッチQ2は一定のDUTYに基づきPWM駆動する。つまり、高周波数制御信号C2が正の場合には、図14に示すように、一定の時定数に基づき電流値は上昇する。さらに、高周波数制御信号C2を矩形波信号とすることにより、コイルに流れる電流値の上昇率が大きくすることができる。その結果、加振器17により大きな加振力を発生させることができる。
【0074】
(6.3.2.4)適応制御モードにおいて高周波数制御信号C2が負の場合
次に、適応制御モードにおいて高周波数制御信号C2が負の場合について図12(c)及び図14を参照して説明する。この場合には、ハイサイドスイッチQ1及びローサイドスイッチQ2が共にオフ駆動する。このときの非対称型ハーフブリッジ回路162には、図12(c)の矢印にて示すように回生電流が流れる。すなわち、電流は、負極側→第2ダイオードD2→加振器17のコイル→第1ダイオードD1→正極側の方向に流れる。この場合、図9に示すように、一定の時定数に基づき急速に電流値が減少して零になる。
【0075】
(7)効果
(7.1)マップ制御モードにおける効果
マップ制御モードにおいては、パルス信号の周波数ωの高次周波数成分を考慮した低周波数制御信号C1に基づく加振力を加振器17は発生している。つまり、エンジンによる振動の高次周波数成分に対しても適切に防振することができる。その結果、エンジンによる振動の高次周波数成分がエンジンフレームの固有振動数と一致する場合であっても、振動を抑制することができる。
【0076】
さらに、加振器17のコイルに流れる電流が0にならないように制御している。つまり、加振器17の通電状態がオン状態からオフ状態になることを抑制することができる。従って、加振器17の通電状態がオン状態からオフ状態になることにより生じる異音を抑制することができる。
【0077】
(7.2)適応制御モードにおける効果
適応制御モードにおいては、矩形波に補正された高周波数制御信号C2に基づき加振器17を駆動している。これにより、応答性を良くすることができ、加振器17により高い加振力を発生させることができる。その結果、エンジンが高回転となる場合であっても、適切に振動を抑制することができる。
【0078】
(8)他の実施例
(8.1)他の低周波数制御信号C3及びその場合の加振器17に流れる電流値
(8.1.1)他の低周波数制御信号C3の概要
上記実施例における低周波数制御信号C1は、正弦波からなる1次周波数成分S1、2次周波数成分S2、及び3次周波数成分S3を合成した信号としたが、以下の低周波数制御信号C3を用いてもよい。なお、上記実施例における低周波数制御信号C1によれば、加振器17により発生する加振力は小さいが、エンジンにより発生する振動に適切に対応した加振力を発生することができるので、非常に高い静粛性を得ることができる。一方、以下の低周波数制御信号C3は、大きな加振力を得ることができるようにすることができる。
【0079】
(8.1.2)低周波数制御信号C3の詳細
他の低周波数制御信号C3について図15及び図16を参照して説明する。図15は、マップフィルタ部142から出力される低周波数制御信号C3のうち1次周波数成分P1、2次周波数成分S2、及び3次周波数成分のそれぞれを示す図である。図16は、図15の各次数周波数成分を合成した低周波数制御信号C3を示す図である。なお、図15及び図16は、パルス信号の周波数ωが30Hzの場合の低周波数制御信号C3であって、最大値が1となるように示している。
【0080】
マップフィルタ部142により生成される低周波数制御信号C3は、数4〜数6に基づき算出される。数4は、低周波数制御信号C3のうちの1次周波数成分P1を示す。この1次周波数成分P1は、図15に示すような矩形波信号となる。数5は、低周波数制御信号C3のうちの2次周波数成分S2及び3次周波数成分S3を示す。この2次周波数成分S2及び3次周波数成分S3は、図15に示すような正弦波信号となる。そして、数6は、低周波数制御信号C3である。低周波数制御信号C3は、矩形波信号に変換された1次周波数成分P1と、正弦波信号である2周波数成分S2及び3次周波数成分S3とを合成したものである。ただし、最大値がa1とされている。
【0081】
【数4】
【0082】
【数5】
【0083】
【数6】
【0084】
(8.1.3)上記の場合における加振器17に流れる電流値
上述のような低周波数制御信号C3に基づき駆動部16が駆動した場合における加振器17のコイルに流れる電流値について図17を参照して説明する。図17は、当該電流値を示す図である。ここで、駆動部16の処理動作は、上述した駆動部16の処理動作と同様である。すなわち、マップ制御モードにおいて低周波数制御信号C3が正の場合には、駆動部16は、ハイサイドスイッチQ1をオン駆動させ、ローサイドスイッチQ2をPWM駆動させる。一方、マップ制御モードにおいて低周波数制御信号C3が負の場合には、駆動部16は、ハイサイドスイッチQ1をオフ駆動させ、ローサイドスイッチQ2をPWM駆動させる。
【0085】
そして、低周波数制御信号C3に基づき駆動部16が駆動した場合に、加振器17のコイルに流れる電流値は、図17に示すようになる。すなわち、低周波数制御信号C3が正の場合に電流値が上昇し、低周波数制御信号C3が負の場合に電流値が減少している。さらに、低周波数制御信号C1に基づき駆動部16が駆動した場合に比べると、低周波数制御信号C3に基づき駆動部16が駆動した場合は、加振器17のコイルに流れる電流値が大きい。つまり、低周波数制御信号C3に基づき駆動部16を駆動した場合は、加振器17により大きな加振力を発生させることができる。さらに、低周波数制御信号C3が負の場合にコイルに流れる電流値は減少しているが、0には到達していない。つまり、加振器17の通電状態がオン状態からオフ状態になることを抑制することができる。従って、加振器17の通電状態がオン状態からオフ状態になることにより生じる異音を抑制することができる。
【0086】
(8.2)駆動信号出力部161により出力される他の駆動信号
上述した実施例における駆動信号は、低周波数制御信号C1及び高周波数制御信号C2が正の場合には、ハイサイドスイッチQ1をオン駆動させ、ローサイドスイッチQ2をPWM駆動させる信号としている。この駆動信号は、低周波数制御信号C1及び高周波数制御信号C2が正の場合に、ハイサイドスイッチQ1及びローサイドスイッチQ2をPWM駆動させる信号としてもよい。この場合、ハイサイドスイッチQ1のPWM信号とローサイドスイッチQ2のPWM信号とは、同期をとって駆動するようにしてもよいし、位相をずらして駆動するようにしてもよい。
【0087】
また、上記駆動信号は、マップ制御モードであって低周波数制御信号C1が負の場合には、ハイサイドスイッチQ1をオフ駆動させ、ローサイドスイッチQ2をPWM駆動させる信号としている。この駆動信号は、マップ制御モードであって低周波数制御信号C1が負の場合には、ハイサイドスイッチQ1をPWM駆動させ、ローサイドスイッチQ2をオフ駆動させる信号としてもよい。これらの場合であっても、上記と同様の効果を奏する。
【0088】
(8.3)モード切替部12による他のモード切替処理
上述した実施例におけるモード切替処理は、パルス信号の周波数ωのみにより択一的にマップ制御モードと適応制御モードとを切り替えるようにしている。その他に、例えば、周波数ω及び車速を考慮して、制御モードを切り替えるようにしてもよい。例えば、低周波数であって低車速の場合にマップ制御モードとし、高周波数であって高車速の場合に適応制御モードとしてもよい。
【0089】
(8.4)モード切替部12による切替周波数
上述した実施例においてモード切替部12によりマップ制御モードと適応制御モードとを切り替える周波数を50Hzとしたが、適宜変更してもよい。エンジンフレームに限らず、他の構成部品の固有振動数を考慮してもよい。部品の固有振動数の他にも種々の条件を考慮して制御モードを切り替える周波数を設定してもよい。
【0090】
(8.5)低周波数制御信号C1
低周波数制御信号C1は、1次周波数成分から3次周波数成分までを考慮したが、より高次周波数成分を考慮するようにしてもよい。これにより、より高次の振動に対しても抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】能動型防振装置1の全体構成を示すブロック図である。
【図2】加振器付エンジンマウント20の部分断面図を示す。
【図3】モード切替部12の処理動作を示すフローチャートである。
【図4】マップ制御部14の構成を示すブロック図である。
【図5】マップフィルタ部142から出力される低周波数制御信号C1のうち1次周波数成分、2次周波数成分、及び3次周波数成分のそれぞれを示す図である。
【図6】図5の各次周波数成分を合成した低周波数制御信号C1を示す図である。
【図7】適応制御部15の構成を示すブロック図である。
【図8】適応フィルタ部151により生成される補正前の正弦波信号状態の高周波数制御信号を示す図である。
【図9】適応フィルタ部151から出力される高周波数制御信号C2を示す図である。
【図10】駆動部16の構成を示す図である。
【図11】駆動信号出力部161の処理動作を示すフローチャートである。
【図12】各スイッチQ1,Q2の動作に応じて非対称型ハーフブリッジ回路162に流れる電流を示す図である。
【図13】マップ制御モードにおける加振器17のコイルに流れる電流値を示す図である。
【図14】適応制御モードにおける加振器17のコイルに流れる電流値を示す図である。
【図15】マップフィルタ部142から出力される低周波数制御信号C3のうち1次周波数成分P1、2次周波数成分S2、及び3次周波数成分のそれぞれを示す図である。
【図16】図15の各次数周波数成分を合成した低周波数制御信号C3を示す図である。
【図17】低周波数制御信号C3に基づき駆動部16が駆動した場合における加振器17のコイルに流れる電流値を示す図である。
【符号の説明】
【0092】
1:能動型防振装置、 11:周波数算出部、 12:モード切替部、 13:運転状態信号出力部、 14:マップ制御部(制御信号発生手段)、 15:適応制御部(制御信号発生手段)、 16:駆動部(駆動手段)、 17:加振器(電磁アクチュエータ)、 18:加速度センサ、 20:加振器付エンジンマウント、 21:ケース、 22:防振ゴム、 24:固定金具、 161:駆動信号出力部、 162:非対称型ハーフブリッジ回路、 Q1:ハイサイドスイッチ、 Q2:ローサイドスイッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流通電量を可変にすることにより加振力を発生する電磁アクチュエータと、
車両の振動発生源から出力される周期性のパルス信号に基づき車両特定部位の振動を能動的に抑制させる周期性制御信号を発生する制御信号発生手段と、
前記周期性制御信号に基づき前記電磁アクチュエータへの前記電流通電量を可変にして前記電磁アクチュエータを駆動する駆動手段と、
を備える能動型防振装置において、
前記駆動手段は、
少なくとも前記電磁アクチュエータの正極側に接続されたハイサイドスイッチと前記電磁アクチュエータの負極側に接続され該ハイサイドスイッチに対して非対称位置に配置されたローサイドスイッチとを有する非対称型ハーフブリッジ回路と、
前記周期性制御信号が正の場合に前記ハイサイドスイッチ及び前記ローサイドスイッチのうち何れか一方にオン駆動信号を出力し他方に前記周期性制御信号に基づきPWM駆動信号を出力しあるいは前記ハイサイドスイッチ及び前記ローサイドスイッチの何れもに前記周期性制御信号に基づきPWM駆動信号を出力し、前記周期性制御信号が負の場合に前記ハイサイドスイッチ及び前記ローサイドスイッチのうち何れか一方にオフ駆動信号を出力し他方に前記周期性制御信号に基づきPWM駆動信号を出力する駆動信号出力手段と、
を有することを特徴とする能動型防振装置。
【請求項2】
前記周期性制御信号は、
前記パルス信号の周波数が所定周波数以下の場合には前記パルス信号の周波数の1次周波数成分信号と前記パルス信号の周波数に対する高次周波数成分信号とを合わせた低周波数制御信号であり、
前記パルス信号の周波数が所定周波数より大きい場合には前記1次周波数成分信号のみからなる高周波数制御信号であることを特徴とする請求項1記載の能動型防振装置。
【請求項3】
前記低周波数制御信号の前記1次周波数成分信号は、正弦波信号であることを特徴とする請求項2記載の能動型防振装置。
【請求項4】
前記低周波数制御信号の前記1次周波数成分信号は、正弦波信号に基づき算出された矩形波信号であることを特徴とする請求項2記載の能動型防振装置。
【請求項5】
前記高周波数制御信号は、前記1次周波数成分信号に基づき算出された矩形波信号であることを特徴とする請求項2記載の能動型防振装置。
【請求項6】
前記駆動信号出力手段は、
前記周期性制御信号が負であって前記パルス信号の周波数が所定周波数以下の場合に前記ハイサイドスイッチ及び前記ローサイドスイッチのうち何れか一方にオフ駆動信号を出力し他方に前記周期性制御信号に基づきPWM駆動信号を出力するPWM信号を出力し、
前記周期性制御信号が負であって前記パルス信号の周波数が所定周波数より大きい場合に前記ハイサイドスイッチ及び前記ローサイドスイッチにオフ駆動信号を出力することを特徴とする請求項1記載の能動型防振装置。
【請求項7】
前記制御信号発生手段は、
前記パルス信号の周波数が所定周波数以下の場合に予め記憶されたデータマップ及び制御時の運転状態に基づき前記周期性制御信号を算出し、
前記パルス信号の周波数が所定周波数より大きい場合に適応制御法に基づき前記周期性制御信号を算出することを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の能動型防振装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流通電量を可変にすることにより加振力を発生する電磁アクチュエータと、
車両の振動発生源から出力される周期性のパルス信号に基づき車両特定部位の振動を能動的に抑制させる周期性制御信号を発生する制御信号発生手段と、
前記周期性制御信号に基づき前記電磁アクチュエータへの前記電流通電量を可変にして前記電磁アクチュエータを駆動する駆動手段と、
を備える能動型防振装置において、
前記駆動手段は、
少なくとも前記電磁アクチュエータの正極側に接続されたハイサイドスイッチと前記電磁アクチュエータの負極側に接続され該ハイサイドスイッチに対して非対称位置に配置されたローサイドスイッチとを有する非対称型ハーフブリッジ回路と、
前記周期性制御信号が正の場合に前記ハイサイドスイッチ及び前記ローサイドスイッチのうち何れか一方にオン駆動信号を出力し他方に前記周期性制御信号に基づきPWM駆動信号を出力しあるいは前記ハイサイドスイッチ及び前記ローサイドスイッチの何れもに前記周期性制御信号に基づきPWM駆動信号を出力し、前記周期性制御信号が負の場合に前記ハイサイドスイッチ及び前記ローサイドスイッチのうち何れか一方にオフ駆動信号を出力し他方に前記周期性制御信号に基づきPWM駆動信号を出力する駆動信号出力手段と、
を有することを特徴とする能動型防振装置。
【請求項2】
前記周期性制御信号は、
前記パルス信号の周波数が所定周波数以下の場合には前記パルス信号の周波数の1次周波数成分信号と前記パルス信号の周波数に対する高次周波数成分信号とを合わせた低周波数制御信号であり、
前記パルス信号の周波数が前記所定周波数より大きい場合には前記1次周波数成分信号のみからなる高周波数制御信号であることを特徴とする請求項1記載の能動型防振装置。
【請求項3】
前記低周波数制御信号の前記1次周波数成分信号は、正弦波信号であることを特徴とする請求項2記載の能動型防振装置。
【請求項4】
前記低周波数制御信号の前記1次周波数成分信号は、正弦波信号に基づき算出された矩形波信号であることを特徴とする請求項2記載の能動型防振装置。
【請求項5】
前記高周波数制御信号は、前記1次周波数成分信号に基づき算出された矩形波信号であることを特徴とする請求項2記載の能動型防振装置。
【請求項6】
前記駆動信号出力手段は、
前記周期性制御信号が負であって前記パルス信号の周波数が所定周波数以下の場合に前記ハイサイドスイッチ及び前記ローサイドスイッチのうち何れか一方にオフ駆動信号を出力し他方に前記周期性制御信号に基づきPWM駆動信号を出力し、
前記周期性制御信号が負であって前記パルス信号の周波数が前記所定周波数より大きい場合に前記ハイサイドスイッチ及び前記ローサイドスイッチにオフ駆動信号を出力することを特徴とする請求項1記載の能動型防振装置。
【請求項7】
前記制御信号発生手段は、
前記パルス信号の周波数が所定周波数以下の場合に予め記憶されたデータマップ及び制御時の運転状態に基づき前記周期性制御信号を算出し、
前記パルス信号の周波数が前記所定周波数より大きい場合に適応制御法に基づき前記周期性制御信号を算出することを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の能動型防振装置。
【請求項1】
電流通電量を可変にすることにより加振力を発生する電磁アクチュエータと、
車両の振動発生源から出力される周期性のパルス信号に基づき車両特定部位の振動を能動的に抑制させる周期性制御信号を発生する制御信号発生手段と、
前記周期性制御信号に基づき前記電磁アクチュエータへの前記電流通電量を可変にして前記電磁アクチュエータを駆動する駆動手段と、
を備える能動型防振装置において、
前記駆動手段は、
少なくとも前記電磁アクチュエータの正極側に接続されたハイサイドスイッチと前記電磁アクチュエータの負極側に接続され該ハイサイドスイッチに対して非対称位置に配置されたローサイドスイッチとを有する非対称型ハーフブリッジ回路と、
前記周期性制御信号が正の場合に前記ハイサイドスイッチ及び前記ローサイドスイッチのうち何れか一方にオン駆動信号を出力し他方に前記周期性制御信号に基づきPWM駆動信号を出力しあるいは前記ハイサイドスイッチ及び前記ローサイドスイッチの何れもに前記周期性制御信号に基づきPWM駆動信号を出力し、前記周期性制御信号が負の場合に前記ハイサイドスイッチ及び前記ローサイドスイッチのうち何れか一方にオフ駆動信号を出力し他方に前記周期性制御信号に基づきPWM駆動信号を出力する駆動信号出力手段と、
を有することを特徴とする能動型防振装置。
【請求項2】
前記周期性制御信号は、
前記パルス信号の周波数が所定周波数以下の場合には前記パルス信号の周波数の1次周波数成分信号と前記パルス信号の周波数に対する高次周波数成分信号とを合わせた低周波数制御信号であり、
前記パルス信号の周波数が所定周波数より大きい場合には前記1次周波数成分信号のみからなる高周波数制御信号であることを特徴とする請求項1記載の能動型防振装置。
【請求項3】
前記低周波数制御信号の前記1次周波数成分信号は、正弦波信号であることを特徴とする請求項2記載の能動型防振装置。
【請求項4】
前記低周波数制御信号の前記1次周波数成分信号は、正弦波信号に基づき算出された矩形波信号であることを特徴とする請求項2記載の能動型防振装置。
【請求項5】
前記高周波数制御信号は、前記1次周波数成分信号に基づき算出された矩形波信号であることを特徴とする請求項2記載の能動型防振装置。
【請求項6】
前記駆動信号出力手段は、
前記周期性制御信号が負であって前記パルス信号の周波数が所定周波数以下の場合に前記ハイサイドスイッチ及び前記ローサイドスイッチのうち何れか一方にオフ駆動信号を出力し他方に前記周期性制御信号に基づきPWM駆動信号を出力するPWM信号を出力し、
前記周期性制御信号が負であって前記パルス信号の周波数が所定周波数より大きい場合に前記ハイサイドスイッチ及び前記ローサイドスイッチにオフ駆動信号を出力することを特徴とする請求項1記載の能動型防振装置。
【請求項7】
前記制御信号発生手段は、
前記パルス信号の周波数が所定周波数以下の場合に予め記憶されたデータマップ及び制御時の運転状態に基づき前記周期性制御信号を算出し、
前記パルス信号の周波数が所定周波数より大きい場合に適応制御法に基づき前記周期性制御信号を算出することを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の能動型防振装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流通電量を可変にすることにより加振力を発生する電磁アクチュエータと、
車両の振動発生源から出力される周期性のパルス信号に基づき車両特定部位の振動を能動的に抑制させる周期性制御信号を発生する制御信号発生手段と、
前記周期性制御信号に基づき前記電磁アクチュエータへの前記電流通電量を可変にして前記電磁アクチュエータを駆動する駆動手段と、
を備える能動型防振装置において、
前記駆動手段は、
少なくとも前記電磁アクチュエータの正極側に接続されたハイサイドスイッチと前記電磁アクチュエータの負極側に接続され該ハイサイドスイッチに対して非対称位置に配置されたローサイドスイッチとを有する非対称型ハーフブリッジ回路と、
前記周期性制御信号が正の場合に前記ハイサイドスイッチ及び前記ローサイドスイッチのうち何れか一方にオン駆動信号を出力し他方に前記周期性制御信号に基づきPWM駆動信号を出力しあるいは前記ハイサイドスイッチ及び前記ローサイドスイッチの何れもに前記周期性制御信号に基づきPWM駆動信号を出力し、前記周期性制御信号が負の場合に前記ハイサイドスイッチ及び前記ローサイドスイッチのうち何れか一方にオフ駆動信号を出力し他方に前記周期性制御信号に基づきPWM駆動信号を出力する駆動信号出力手段と、
を有することを特徴とする能動型防振装置。
【請求項2】
前記周期性制御信号は、
前記パルス信号の周波数が所定周波数以下の場合には前記パルス信号の周波数の1次周波数成分信号と前記パルス信号の周波数に対する高次周波数成分信号とを合わせた低周波数制御信号であり、
前記パルス信号の周波数が前記所定周波数より大きい場合には前記1次周波数成分信号のみからなる高周波数制御信号であることを特徴とする請求項1記載の能動型防振装置。
【請求項3】
前記低周波数制御信号の前記1次周波数成分信号は、正弦波信号であることを特徴とする請求項2記載の能動型防振装置。
【請求項4】
前記低周波数制御信号の前記1次周波数成分信号は、正弦波信号に基づき算出された矩形波信号であることを特徴とする請求項2記載の能動型防振装置。
【請求項5】
前記高周波数制御信号は、前記1次周波数成分信号に基づき算出された矩形波信号であることを特徴とする請求項2記載の能動型防振装置。
【請求項6】
前記駆動信号出力手段は、
前記周期性制御信号が負であって前記パルス信号の周波数が所定周波数以下の場合に前記ハイサイドスイッチ及び前記ローサイドスイッチのうち何れか一方にオフ駆動信号を出力し他方に前記周期性制御信号に基づきPWM駆動信号を出力し、
前記周期性制御信号が負であって前記パルス信号の周波数が前記所定周波数より大きい場合に前記ハイサイドスイッチ及び前記ローサイドスイッチにオフ駆動信号を出力することを特徴とする請求項1記載の能動型防振装置。
【請求項7】
前記制御信号発生手段は、
前記パルス信号の周波数が所定周波数以下の場合に予め記憶されたデータマップ及び制御時の運転状態に基づき前記周期性制御信号を算出し、
前記パルス信号の周波数が前記所定周波数より大きい場合に適応制御法に基づき前記周期性制御信号を算出することを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の能動型防振装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2006−38188(P2006−38188A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−222905(P2004−222905)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
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