説明

脂環式または芳香族のポリアミド、ポリアミドフィルム、それらを用いた光学用部材およびポリアミドのコポリマ

特定の構造単位を50モル%以上含有するアラミドポリマを用い、波長450nmから700nmの光の光線透過率を80%以上の脂環式または芳香族のポリアミドとする。このポリアミドを用いて、高剛性、高耐熱性かつ無色透明な脂環式または芳香族のポリアミドフィルムが提供される。また、これらポリアミドまたはポリアミドフィルムを用いた各種光学用部材、およびポリアミドのコポリマが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、光学用途や保護部材用途等に好適に使用できる脂環式または芳香族のポリアミドおよびポリアミドフィルムに関する。
【背景技術】
無色透明材料は光学レンズ、機能性光学フィルム、ディスク基板などその多様な用途に応じて種々検討されているが、情報機器の急速な小型軽量化や、表示素子の高精細化に伴い、材料自体に要求される機能、性能もますます精密かつ高度なものとなってきている。
特にフィルムにおいては、偏光板、位相差板などのディスプレイ用部材や、ディスク保護フィルムとして、、ポリカーボネート系、環状ポリオレフィン系、セルロース系等の樹脂を用いたフィルムが使用されてきている。
ポリカーボネートのような透明度の高い熱可塑性樹脂は、光学用途として広く用いられており、位相差フィルムなどの光学フィルムやディスク用基板等の用途が考えられている。特に位相差フィルムは、反射型カラー液晶ディスプレイのコントラストを決める重要な構成部材のひとつである。しかしながら、現在用いられているポリカーボネートは、例えば、下記特許文献1、2に記載されているが、十分な波長分散特性を有しているとはいえない。反射型カラー液晶ディスプレイの高コントラスト化のためには、位相差フィルムとして用いるポリマーフィルムの波長分散特性の向上がひとつの技術課題となっている。
また、これらのフィルムは、透明性は優れるものの耐熱性、機械強度(剛性)は必ずしも十分ではない。このため、寸法、光学特性の斑が生じやすく、特に加工時、使用時の環境変化により、寸法、光学特性が変化しやすいものであった。さらには今後、加工温度の上昇や、一層の薄膜化が求められると、上記した従来のフィルムではその適用に限界がある。
一方、耐熱性を持つポリマーとしてはポリイミドが広く知られているが、一般的なポリイミドは茶褐色に着色しているため光学用途には使用できない。透明性を有するポリイミドとしては例えば下記特許文献3に光波長板の開示があるが、該発明のポリイミドは熱イミド化に2時間以上を要しており、工業的には使用が困難である。また光学フィルムとして重要なヤング率については全く触れられていない。
また、芳香族ポリアミドフィルムは高い耐熱性と機械強度を持ち、位相差フィルムや保護フィルム等に求められる耐熱性や機械強度を十分に満足するが、PPTAのごときパラ配向性芳香族ポリアミドは黄色に着色しており、光学用途への展開は困難であった。たとえば、耐熱性透明導電フィルムが下記特許文献4に開示されているが、このフィルムは実施例においても600nmの波長での透過率が71%と低く、低波長側の透過率はさらに低いため実用的ではなかった。また、下記特許文献5には特定構造を含む芳香族ポリアミドフィルムの開示があるが、該特定構造のモル分率が低い等の理由により透明度の高いフィルムは得られていない。
〔特許文献1〕特開平4−204503号公報
〔特許文献2〕特開平9−304619号公報
〔特許文献3〕特許第3259563号公報
〔特許文献4〕特公平7−89452号公報
〔特許文献5〕特開平7−149892号公報
【発明の開示】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。すなわち、本発明の目的は、高剛性、高耐熱性かつ透明度の高いポリアミドおよびポリアミドフィルム、並びにそれらを用いた光学用部材およびポリアミドのコポリマを提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明は、450nmから700nmまでの全ての波長の光の光線透過率が80%以上である脂環式または芳香族のポリアミド、またはこれを含むポリアミドフィルムを提供する。また本発明は、後述の化学式(I)、(II)、(III)または(IV)で示される構造単位を含み、かつ、化学式(I)、(II)、(III)および(IV)で示される構造単位のモル分率をそれぞれl、m、n、oとしたとき、次式(1)〜(3)を満足しているポリアミド、またはこれを含むポリアミドフィルムを提供する。
50<l+m+n≦100 ・・・ (1)
0≦l、m、n、o≦100 ・・・ (2)
0≦o≦50 ・・・ (3)
さらに本発明は、これらポリアミドまたはポリアミドフィルムを用いた各種光学用部材と、ポリアミドのコポリマを提供する。
ここで、フィルムの厚みが1μmから100μmであることも好ましい。また、400nmの光の光線透過率が60%以上であることも好ましく、また、少なくとも1方向のヤング率が4GPa以上であることも好ましい。さらに、200℃30分の熱処理前後の少なくとも一方向の熱収縮率が1%以下であることも好ましい。
本発明により、位相差板や保護フィルム、フラットパネルディスプレイ基板など多様な光学用フィルムを薄膜化および/または高耐熱化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
以下に、本発明について、望ましい実施の形態とともに詳細に説明する。
本発明のポリアミドおよびポリアミドフィルムは、450nmから700nmまでの全ての波長の光の光線透過率が80%以上である。より好ましくは光線透過率が85%以上、さらに好ましくは90%以上である。450nmから700nmまでの全ての波長の光の光線透過率が80%以上であれば、位相差板や保護フィルムなど多様な光学用途に利用が可能となる。ここで、本発明のポリアミドは屈折率が大きく、表面反射が大きいため、界面が空気の場合は光線透過率として得られる測定値が90%を超えることは困難である。例えば屈折率1.7である本発明のポリアミド単体を空気中(屈折率1.0)に置くと、反射は下記式で表される
反射(%)=(1.7−1.0)/(1.7+1.0)=6.72%
空気層からポリアミド層に入った光が空気層に通過する工程を考えると、100%あった入射光は空気層からポリアミド層への入射時に6.72%反射し、93.28%となる。さらに、この光はポリアミド層から空気層に出る時、再度93.28%の内6.72%が反射するため、ポリアミド層中で全く吸収や拡散が無い場合でも87%しか通過しない。しかし、一般に位相差フィルムなどの光学用フィルムは他の素材と粘着または接着して使用されるため、反射は、上記した界面が空気の場合よりも小さくなることが多い。また、本発明のポリアミドの光線透過率は表面反射を考慮した理論限界値に極めて近く、フィルム内での吸収、拡散が小さい事が分かる。このため、光学用フィルムとして好適に利用できる。
上記したポリアミドやポリアミドフィルムは、脂環式のものであっても、芳香族のものであっても、いずれでも好ましい。なお、脂環式ポリアミド(フィルム)としては、例えば、ポリ−1,4−ノルボルネンテレフタルアミドやポリ−1,4−シクロヘキサンテレフタルアミドの様な半脂環半芳香族ポリアミドや、ポリ−1,4−シクロヘキサン−1,4−シクロヘキサンアミドのような全脂環式ポリアミドがある。芳香族ポリアミド(フィルム)としては、例えば、ポリパラフェニレンテレフタルアミドの様に芳香環が、直結またはアミド結合だけで結合したものや、ポリ2,2−ビス{4−(p−アミノフェノキシ)フェニル}プロピルテレフタルアミド、のように結合単位に直結、アミド結合以外にメチレン、エーテルなどを含む構造を有するものがある。
本発明のポリアミドは、ワニス、薄膜、フィルム、シート、板、成形体など、様々な形状に加工して用いることができる。中でも、薄膜やフィルムとすると、本発明のポリアミドの特徴を活かすことができ好ましい。フィルムとして用いる場合は、その厚みは、0.01μm〜1,000μmであることが好ましい。より好ましくは、1μmから100μmである。より好ましくは2μmから30μm、より好ましくは2μmから20μm、さらに好ましくは2μmから10μmである。フィルムの厚みが1,000μmを超えると光線透過率が低くなることがある。またフィルムの厚みが0.01μm未満ではたとえ高剛性の芳香族ポリアミドであっても加工性が低下することがある。脂環式または芳香族ポリアミド、中でも芳香族ポリアミドを用いることによりフィルムの高剛性化を達成することができ、他材料と比較して極端に薄いフィルムでも光学用、電気用フィルムとして優れた物性を発現させることができる。なお、フィルムの厚みは用途により適切に選定されるべきものであることは言うまでもない。
本発明のポリアミドは、その分子構造を制御することにより、光線透過率を調整することが可能であり、用途に応じて使い分けることができる。短波長の光に対して光線透過率が大きいことが求められる用途、例えば、BD(ブルーレイディスク)、AOD(アドバンスドオプティカルディスク)のような青色や紫色レーザーを用いた記録媒体の保護膜や、殺菌灯、紫外線励起蛍光体の保護膜などにおいては、400nmの光の光線透過率が60%以上であることが好ましい。また、400nmの光の光線透過率が60%以上であることにより、当該ポリアミドの紫外線による分解や劣化を抑制することができる。より好ましくは400nmの光の光線透過率が65%以上、さらに好ましくは75%以上、最も好ましくは90%以上である。近紫外領域である400nmの光線透過率が60%以上であることにより、フィルムの透明度が著しく向上する。また、上記のような用途においては、350nmの光の光線透過率が30%以上であることも好ましい。
プロジェクタのような高温になる機器や、自動車の車内で使用する表示機器のような、高温の環境下で使用する機器には、用いられる材料にも高い耐熱性が求められる。これは、その材料が高いガラス転移温度を有していることにより実現することができる。本発明のポリアミドやポリアミドフィルムにおいては、そのガラス転移温度は120℃以上であることが好ましく、より好ましくは200℃以上、さらに好ましくは300℃以上、最も好ましくは350℃以上である。高いガラス転移温度を有することにより、ITO(酸化インジウム・スズ)等の金属の蒸着温度に耐えることができ、ガラスに蒸着するのと同様にITO等の金属を蒸着することが可能となる。
本発明のポリアミドおよびポリアミドフィルムは、少なくとも一方向のナトリウムD線での屈折率が1.6以上であることが好ましい。高い屈折率を有する樹脂として、本発明のポリアミド(フィルム)を用いる場合は、単独で用いても、他の素材と共に用いても構わない。例えば、酸化チタン等の高い屈折率を有する粒子を本発明のポリアミドに分散することにより、屈折率をより向上させることができる。分散させる粒子の例としては、他に例えばTiO、CeO、ZrO、Inなどがある。これら粒子の添加量は、ポリアミドやポリアミドフィルムと粒子の混合物全体に対して、0.01重量%以上99.9重量%未満であることが好ましい。より好ましくは20重量%以上99.5重量%未満、さらに好ましくは50重量%以上99.5重量%未満である。
本発明において、ナトリウムD線での屈折率が1.6未満となると、例えば、低屈折率膜と組み合わせて高屈折率膜を形成する場合に、反射防止効果が低下する場合がある。上記の屈折率は、好ましくは1.65以上、より好ましくは1.7以上である。屈折率が大きいほど高屈折率膜としての効果が大きく、反射防止膜として利用する場合には、より薄い膜で十分な効果を発揮させることができる。また、光ファイバーや光導波路に本発明のポリアミドを適用する場合には、上記の屈折率が大きいほど光の損失を小さくすることができる。
屈折率の上限は特にないが、膜等の製作上の観点から、好ましくは5.0以下、より好ましくは2.0以下である。屈折率が5.0を超えると、光学むらの少ない膜の製作が困難となる場合がある。なお、上記した屈折率はJIS−K7105−1981に規定された方法に従い、以下の測定器を用いて測定した。ただし、測定範囲は屈折率が1.87以下である。
装置:アッベ屈折計 4T(株式会社アタゴ社製)
光源:ナトリウムD線
測定温度:25℃
測定湿度:65%RH
マウント液:ヨウ化メチレン
屈折率が1.87を超える場合は、以下の方法で測定することができる。この場合、590nmにおける測定結果をナトリウムD線での屈折率とする。
手法:エリプソメトリー
装置:位相差測定装置NPDM−1000(株式会社ニコン社製)
光源:ハロゲンランプ
検出器:Si−Ge
偏光子・検光子:グラムトムソン
検光子回転数:2回
入射角:45°〜80°、0°(dz)
測定波長:590nm
ただし、用途によっては高い屈折率を必要としないものがある。屈折率は用途により適切に選定されるべきものであることは言うまでもない。意図的に屈折率を低下される手法としては、分子鎖へのフッ素原子の導入などが挙げられる。
本発明のポリアミドフィルムは少なくとも一方向のヤング率が4GPa以上であることが加工時、使用時に負荷される力に対して抵抗でき、平面性が一層良好となるため好ましい。また少なくとも一方向のヤング率が4GPa以上であることによりフィルムの薄膜化が可能になる。
全ての方向のヤング率が4GPa未満であると、加工時に変形を起こすことがある。また、ヤング率に上限はないが、ヤング率が20GPaを超えると、フィルムの靱性が低下し、製膜、加工が困難になることがある。ヤング率は、より好ましくは、少なくとも一方向において8GPa以上であり、さらに好ましくは、少なくとも一方向において10GPa以上である。
また、ヤング率の最大値(Em)とそれと直交する方向のヤング率(Ep)の比、Em/Epが、1.1〜3であると、加工時の裁断性が向上するため好ましい。より好ましくは、1.2〜2.5であり、さらに好ましくは1.5〜2.5である。Em/Epが3を超えると、却って、破断しやすくなることがある。
また、本発明のポリアミドフィルムは、JIS−K7127−1989に準拠した測定において、少なくとも一方向の破断伸度が5%以上、より好ましくは10%以上であると成形、加工時の破断が少なくなるため好ましい。破断伸度の上限は特に限定されるものではないが、現実的には250%程度である。
また、本発明のポリアミドフィルムは、1kHzでの誘電率が4以下であることが好ましい。さらに好ましくは3.5以下であり、最も好ましくは2以下である。誘電率が小さいことにより光学フィルム上に直接電子回路を形成した場合に信号の遅延を少なくできる。
本発明のフィルムは、200℃で30分間、実質的に張力を付与しない状態で熱処理したときの少なくとも一方向の熱収縮率が1%以下であると、加工時の寸法変化、また位相差特性の変化を抑えることができるため好ましい。より好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.3%以下である。なお、熱収縮率は、以下の式で定義される。
熱収縮率(%)=((熱処理前の試料長−熱処理し、冷却後の試料長)/熱処理前の試料長)×100
上記の熱収縮率は低い方が好ましいが、現実的には下限は0.1%程度である。上記条件で測定した少なくとも一方向の熱収縮率が1%以下であると、フィルム上に電気回路を形成することや電子部品をハンダ付けすることなどが可能となる。また、光学部材として他部材と貼り合わせる時にフィルムが歪みにくいため、位相差などの光学特性にむらが生じにくくなる。さらには抗張力性が高いので配向が乱されず、位相差などの光学特性にむらが生じにくくなる。
光学用フィルムは、偏光フィルム、位相差フィルムなど、光学異方性が存在した方が好ましい用途と、液晶ディスプレイ基板や保護フィルムのような光学異方性が存在しない方(光学等方性)が好ましい用途に大別することができるが、本発明のフィルムは光学異方性の制御が可能であり、光学等方性、異方性の両用途に好適に使用される。
光学的に異方性のないフィルム:
液晶ディスプレイ基板や保護フィルム等に用いる場合、本発明の芳香族ポリアミドフィルムは550nmの波長の光のレターデーション(位相差)が10nm未満であることが好ましい様態である。このようなレターデーション値は、たとえばフィルム化する際、延伸を行わなかったり、各方向に均一な倍率で延伸したり(二軸延伸では長手方向と幅方向の延伸倍率を同一としたり)することにより実現可能である。上記した用途に用いる場合、このレターデーション値は、より好ましくは5nm以下、さらに好ましくは2nm以下である。550nmの波長の光のレターデーション値が10nm未満と非常に小さいことにより、保護フィルム、特に光ディスク用保護フィルムとして好適である。
光学的に異方性の存在するフィルム:
この場合、波長550nmの光のレターデーション(位相差)が、10〜2,000nmであることが、偏光フィルム、位相差フィルムなど、光学異方性フィルムとして使用する場合、本発明の効果をより高めることができる。位相差がこの範囲であると、光学用の位相差フィルム、特に、広域1/4波長位相差板として使用される場合に、優れた色調再現性を発現することが可能となる。このようなレターデーション値は、たとえばフィルム化する際、特定方向(一軸方向)のみに延伸を行ったり、特定方向に偏った倍率で延伸したりすることにより実現可能である。上記した用途に用いる場合、このレターデーション値は、好ましくは100〜550nmであり、より好ましくは130〜380nmである。
また、本発明のフィルムにおいて、位相差分散性、すなわち位相差の波長依存性は下式を満たすことが、1/4波長位相差板用途に用いる場合の好ましい実施様態となる。
R(450)/R(550)=1.03〜1.25
R(650)/R(550)=0.80〜0.95
ここで、Rは位相差(nm)であり、括弧内の数値は、波長(nm)を表す。
1/4波長位相差板は、可視光波長域で、位相差をそれぞれの波長の1/4にすることが求められる。そのためには、一般に位相差分散性が同じか、または異なるフィルムを、その主軸が平行にならないように積層する方法が用いられる。積層する対手には、環状ポリオレフィン系、ポリカーボネート系、酢酸トリアセテート系、アクリル系のフィルムが用いられ、特に環状ポリオレフィンが好ましく用いられる。
本発明のポリアミドフィルムにおいて、位相差分散性が上記範囲であると、本発明のポリアミドフィルム、環状ポリオレフィン系、ポリカーボネート系、酢酸トリアセテート系、アクリル系のフィルムなどと積層したときに、従来用いられてきたポリカーボネートや、酢酸トリアセテート系フィルムに較べて、1/4波長位相差板として、一層良好な位相差分散性を発現することが可能となる。
本発明のフィルムの位相差分散性は、より好ましくは、
R(450)/R(550)=1.1〜1.22
R(650)/R(550)=0.82〜0.93
である。
位相差板は2枚以上の位相差フィルムを重ね合わせる積層型以外に、1枚の位相差フィルムで構成される単膜型がある。この単膜型に本発明のポリアミドフィルムを用いる場合は、波長が長いほどレターデーション(位相差)の値が大きくなることが好ましい。中でも、R(450)<R(550)の関係を満たしていることが好ましい。
位相差は、厚みと複屈折の関数で表されるが、光ディスク基板などに用いる場合、位相差は小さいことが好ましい。このため、550nmの波長の光の複屈折が0以上0.1未満であることが好ましい。
一方、位相差フィルムとして用いる場合、550nmの波長の光の複屈折が0.1以上0.5未満であることが好ましい。これにより、より薄いフィルムで、目的とする位相差を得ることができる。
本発明のポリアミドフィルムは、25℃/75RH%での吸湿率が6%以下、より好ましくは4%以下、更に好ましくは2%以下であると、使用時、加工時の湿度変化による特性の変化が少なくなるため好ましい。ここでいう吸湿率は、以下に述べる方法で測定する。まず、フィルムを約0.5g採取し、脱湿のため120℃で3時間の加熱を行った後、吸湿しないようにして25℃まで降温し、その降温後の重量を0.1mg単位まで正確に秤量する(この時の重量をW0とする)。次いで、25℃で75RH%の雰囲気下に48時間静置し、その後の重量を測定し、これをW1として、以下の式を用いて吸湿率を求める。
吸湿率(%)=((W1−W0)/W1)×100
なお、吸湿率は低い方が好ましいが、現実的には下限は0.03%程度である。
本発明のポリアミドフィルムは、80℃から120℃の熱膨張係数が50〜0ppm/℃であることが好ましい。熱膨張係数は150℃まで昇温した後に降温過程に於いて測定する。25℃、75Rh%における初期試料長をL0、温度T1の時の試料長をL1、温度T2の時の試料長をL2とするとT1からT2の熱膨張係数は以下の式で求められる。
熱膨張係数(ppm/℃)
=(((L2−L1)/L0)/(T2/T1))×10
熱膨張係数はより好ましくは30〜0ppm/℃であり、さらに好ましくは20〜0ppm/℃である。
また、本発明のポリアミドフィルムは25℃における30%Rhから80%Rhの湿度膨張係数が50〜0ppm/%Rhであることが好ましい。湿度膨張係数の測定法は次のとおりである。まず、高温高湿槽に幅1cm、試料長15cmになるように固定し、一定湿度(約30%Rh)まで脱湿し、フィルム長が一定になった後、加湿(約80%Rh)する。試料は吸湿により伸び始めるが約24時間後吸湿は平衡に達してフィルムの伸びも平衡に達する。この時の伸び量から下式により計算する。
湿度膨張係数(ppm/%Rh)=
(伸び量(cm)/(試長(cm)×湿度差))×10
湿度膨張係数はより好ましくは30〜0ppm/%Rhであり、さらに好ましくは20〜0ppm/%Rhである。熱膨張係数、湿度膨張係数が小さいことで環境による寸法変化が小さくなり、位相差などの光学特性に関しむらが生じにくくなる。
本発明のポリアミドおよびポリアミドフィルムは大きな鉛筆硬度を有する。鉛筆硬度は好ましくはHB以上、より好ましくはH以上、さらに好ましくは3H以上である。特に、鉛筆硬度が3H以上であると、ポリアミドの膜がハードコート層を兼ねることができるため好ましい。
本発明のポリアミドは、以下に示す構造単位を持つことにより、高い透明性と高剛性、耐熱性を両立することができる。即ち、化学式(I)、(II)、(III)または(IV)で示される構造単位を含み、かつ、化学式(I)、(II)、(III)および(IV)で示される構造単位のモル分率をそれぞれl、m、n、oとしたとき、次式(1)〜(3)を満足していることが好ましい。
50<l+m+n≦100・・・ (1)
0≦l、m、n≦100 ・・・ (2)
0≦o≦50 ・・・ (3)
化学式(I):

:環構造を有する基
:芳香族基
:任意の基
:任意の基
化学式(II):

:電子吸引基
:電子吸引基
:任意の基
:任意の基
:芳香族基
化学式(III):

10:Siを含む基、Pを含む基、Sを含む基、ハロゲン化炭化水素基、または、エーテル結合を含む基(ただし、分子内においてこれらの基を有する構造単位が混在していてもよい。)
11:任意の基
12:任意の基
13:直結されているか、または、−フェニル基を必須成分とする炭素数6から12の任意の基
14:直結されているか、または、−フェニル基を必須成分とする炭素数6から12の任意の基
15:芳香族基
化学式(IV):

16:芳香族基
17:芳香族基
化学式(I)、(II)、(III)および(IV)からなる群から選ばれる少なくとも一つの構造単位が含まれていればよく、もちろん、それら全てを含んでいても、一部のみ含んでいても構わない。重要な点は、化学式(I)、(II)および(III)で示される構造単位のモル分率をそれぞれl、m、nとした時、l+m+nの値が100以下であり、かつ50を超えていることである。好ましくはl+m+nの値は80以上であり、より好ましくはl+m+nの値は100である。l+m+nの値が50以下の場合には、これらの効果よりも着色に寄与する構造単位の寄与が大きくなり透明度の高いフィルムが得にくくなる(なお、特開平7−149892号公報には上記化学式(I)の構造を含む芳香族ポリアミドフィルムの開示があるが、化学式(I)のモル分率を0.1モル%から20モル%に制限しているために無色透明化の効果は得られていない)。
また、上記のl、m、n、oは、0≦l、m、n、o≦100を満たしていることが重要である。すなわち、l、m、n、oはそれぞれ存在するか、もしくは50<l+m+n≦100を満たす範囲であれば、存在しない構成単位があっても構わない。
さらに、化学式(IV)で表される構成単位のモル分率をoとしたとき、0≦o≦50を満たしていることも重要である。化学式(IV)で表される構成単位はポリマーの着色に寄与することがあり、このモル分率oが50を超えると透明度の高いフィルムが得にくくなる。
本発明においては、上記式(1)〜(3)を満足する範囲であれば、他の成分、例えばポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルスルホン、環状ポリオレフィンや他の構造単位、例えばイミド、エステル、エーテル、ケトン、などを含んでいても構わない。他の成分、または構造単位としては芳香族または環状化合物であることが、より好ましい。
ポリアミドの着色は分子内および分子間の電荷移動錯体によると考えられているが、化学式(I)、(II)および(III)はいずれもポリアミド分子内および分子間の電荷移動錯体の形成を阻害し、ポリアミドの透明化に寄与すると考えられる。さらに化学式(IV)で表される構成単位を導入することにより化学式(I)、(II)および(III)の効果により得た透明性を保持したまま、機械特性、熱特性などを向上することができる。
化学式(I)は、Rで示された、環構造と分子鎖とが蝶番状に結合した、カルド構造と呼ばれる構造をとり、Rの電子雲が分子鎖の電子雲を分断し、分子内電荷移動錯体の形成を阻害すると考えられる。さらに嵩高いRが分子間電荷移動錯体の形成を阻害すると考えられる。この目的のためにRは環構造を少なくとも1個有していることが好ましい。ここで、環構造とは、芳香族環、脂肪族環、複素環など、その環の構成元素に特に制限はない。また、単環、縮合環、スピロ環など、その形状も問わない。これらの環構造の中では、Rは5員環、6員環または7員環を有する基であることが好ましい。さらに、化学式(V)でそれぞれ示される環状基であることがより好ましい。中でも最も好ましいのはフルオレン基である。
化学式(V):

3員環や4員環は、その構造に歪が大きいため、開環してしまうことがある。また、8員環以上の環構造も歪により他の構造に変換する場合がある。5員環、6員環または7員環構造は歪が小さく、安定しているため、透明性に寄与するとともに耐熱性にも寄与すると考えられる。さらに、立体的に電荷移動錯体の形成を阻害するためには嵩高いことが好ましく、2つ以上の環が縮合した縮合環構造であることが好ましい。縮合環構造としては、例えば6−5−6員環のフルオレン環などがある。4個以上の環が縮合した構造も電荷移動錯体の形成を阻害する目的には好ましいが、重合時に分子量の大きな原料を用いる必要があり、溶媒に溶解しにくいなどの問題が生じることがある。
化学式(I)においてRは芳香族基であれば特に制限はないが、好ましくは化学式(VI)でそれぞれ示される基である。
化学式(VI):

18:それぞれ独立にH、D(重水素)、ハロゲン、芳香族基、炭素数1〜5の炭化水素基、または、炭素数1〜5のハロゲン化炭化水素
中でも、さらに好ましくはフェニル基、クロロフェニル基である。化学式(I)においてRは、耐熱性や剛性を付与する目的においては、例えばパラフェニレン、2−置換パラフェニレン、ビフェニルのような剛直な芳香族基であることが好ましい。一方、ターフェニルやアントラセンなどの多環式芳香族基は剛直ではあるが、多くのπ電子を有し、ポリアミドが着色する原因になることがある。また、近紫外領域や紫外領域における透明性を高める場合には、Rは、メタフェニル基や1,3−ヘキサフルオロプロピル−2,2−ビフェニル基、シクロヘキサン基であることが好ましい。これらの基は、屈曲性を有するため、剛性が低下することはあるが、より短波長の光に対する透明性が向上する。
化学式(I)において、RやRに特に制限はなく、任意の基であればよい。好ましくは、−H、炭素数1〜5の脂肪族基、−CF、−CCl、−OH、−F、−Cl、−Br、−OCH、シリル基、または、芳香族基である。RおよびRは、側鎖の置換基であるため、主鎖の置換基と比較して、ポリアミドの物性に与える影響は相対的に小さいが、光学特性や濡れ性、溶媒可溶性などを改良するために、適宜導入することが好ましい。例えば、濡れ性や2色性色素による染色性向上を目的に−OHや−COOHを導入することが出来る。
化学式(II)において、R、R、R、Rが全て−Hである場合は、電荷移動錯体が形成され、ポリアミドが着色することがある。本発明においては、RおよびRとして、それぞれ独立に電子吸引基を導入することにより、電荷移動錯体の形成を阻害し、ポリアミドの透明度を高めている。ここで、電子吸引基とは、Hammettの置換基常数において正の値を示す基であり、例えば−CF、−CCl、−CI、−CBr、−F、−Cl、−Br、−I、−NO、−CN、−COCH、−CO、などが例示できる。この中でも好ましくは−CF、−CCl、−NO、−CNであり、最も好ましいのは−CFである。これらの基を有する構造単位は、ポリアミド分子内において混在していても構わない。なお、上記のHammett常数については、例えば小竹無二雄監修、朝倉書店発行の「大有機化学」第1巻第308〜311頁等に解説されている。
また、化学式(II)において、R、Rに特に制限はなく、上記の目的を阻害しない範囲で任意の基を用いればよい。好ましくは、上記した電子吸引基、−H、炭素数1〜5の脂肪族基、シリル基、または芳香族基などである。
化学式(II)においてRは芳香族基であれば特に制限はないが、好ましくは上記した化学式(VI)でそれぞれ示される基である。中でも、さらに好ましくはフェニル基、クロロフェニル基である。化学式(II)においてRは、耐熱性や剛性を付与する目的においては、例えばパラフェニレン、2−置換パラフェニレン、ビフェニルのような剛直な芳香族基であることが好ましい。一方、ターフェニルやアントラセンなどの多環式芳香族基は剛直ではあるが、多くのπ電子を有し、ポリアミドが着色する原因になることがある。また、近紫外領域や紫外領域における透明性を高める場合には、Rは、メタフェニル基や1,3−ヘキサフルオロプロピル−2,2−ビフェニル基、シクロヘキサン基であることが好ましい。これらの基は、屈曲性を有するため、剛性が低下することはあるが、より短波長の光に対する透明性が向上する。
化学式(III)は、R10について適当な基を選択しなければ、ポリアミドが着色することがある。そこで、本発明においては、R10としてSiを含む基、Pを含む基、Sを含む基、ハロゲン化炭化水素基、または、エーテル結合を含む基(ただし、分子内においてこれらの基を有する構造単位が混在していてもよい。)を選択することにより、電荷移動錯体の形成を阻害し、ポリアミドの透明度を高めることができる。具体的には、−SO−、−O−、−C(CF−、−(CCl−、−(CBr−、−CF−、−CCl−、−CBr−が好ましく、特に好ましくは、−SO−、−C(CF−である。
化学式(III)において、R11やR12に特に制限はなく、任意の基であればよい。好ましくは、−H、炭素数1〜5の脂肪族基、−CF、−CCl、−OH、−F、−Cl、−Br、−OCH、シリル基、または、芳香族基である。RおよびR12は、側鎖の置換基であるため、主鎖の置換基と比較して、ポリアミドの物性に与える影響は相対的に小さいが、光学特性や濡れ性、溶媒可溶性などを改良するために、適宜導入することが好ましい。例えば、濡れ性や2色性色素による染色性向上を目的に−OHや−COOHを導入することが出来る。
さらに、化学式(III)においては、R13およびR14の位置に他の基を導入することができる。もちろん、そのまま直結されていてもよいが、例えば、−Ph−、−O−Ph−、−C(CF−Ph−などを導入してもよい。ただし、最も好ましいのは直結されている構造である。
化学式(III)においてR15は芳香族基であれば特に制限はないが、好ましくは上記した化学式(VI)でそれぞれ示される基である。中でも、さらに好ましくはフェニル基、クロロフェニル基である。化学式(III)においてR15は、耐熱性や剛性を付与する目的においては、例えばパラフェニレン、2−置換パラフェニレン、ビフェニルのような剛直な芳香族基であることが好ましい。一方、ターフェニルやアントラセンなどの多環式芳香族基は剛直ではあるが、多くのπ電子を有し、ポリアミドが着色する原因になることがある。また、近紫外領域や紫外領域における透明性を高める場合には、R15は、メタフェニル基や1,3−ヘキサフルオロプロピル−2,2−ビフェニル基、シクロヘキサン基であることが好ましい。これらの基は、屈曲性を有するため、剛性が低下することはあるが、より短波長の光に対する透明性が向上する。
本発明のさらに好ましい態様は、上記した化学式(I)および(IV)で示される構造単位を含み、かつ、化学式(I)で示される構造単位のモル分率が50%以上であることである。ポリアミドを工業的に生産する場合、通常1種類の原料に対し、1組の貯蔵槽、計量槽、配管、ポンプ等からなる原料供給設備が必要となる。例えば、化学式(I)、(II)、(III)および(IV)で示される構造単位全てを含む場合、少なくとも4種類のジアミンと1種類の酸ジクロライドが原料として必要なため、5組以上の原料供給設備が必要となる。しかしながら、化学式(I)および(IV)で示される構造単位のみを含む場合には原料供給設備が最低で3組、最大でも4組以下で十分であるため、原料供給設備の製造コスト、運転コストを低減できるため好ましい。また、多種類の原料を用いた場合、その種類にしたがって、重合時間も長時間化してしまうが、化学式(I)および(IV)で示される構造単位のみを含む場合には原料が3〜4種類と少ないため、重合時間が短く、すなわち重合コストを低減する事が可能であり、好ましい。
また、別の好ましい態様としては、上記した化学式(II)および(IV)で示される構造単位を含み、かつ、化学式(II)で示される構造単位のモル分率が50%以上であることである。このような構造をとることにより、化学式(I)、(II)、(III)および(IV)で示される構造単位全てを含む場合と比較して、設備コスト、生産コストが低減する。
さらに、別の好ましい態様としては、上記した化学式(III)および(IV)で示される構造単位を含み、かつ、化学式(III)で示される構造単位のモル分率が50%以上であることである。このような構造をとることにより、化学式(I)、(II)、(III)および(IV)で示される構造単位全てを含む場合と比較して、設備コスト、生産コストが低減する。
本発明においては、上記したような構造を有するポリアミドを含有したポリアミドフィルムとすることにより、透明性に優れ、光学用途などに好適に用いることができる。
次に、以下に本発明におけるポリアミドやその組成物の製造方法、および成形体としてフィルムを製造する例を芳香族ポリアミドを例にとり説明するが、もちろん本発明はこれに限定されるものではない。
ポリアミド溶液、すなわち製膜原液を得る方法は種々の方法が利用可能であり、例えば、低温溶液重合法、界面重合法、溶融重合法、固相重合法などを用いることができる。低温溶液重合法つまりカルボン酸ジクロライドとジアミンから得る場合には、非プロトン性有機極性溶媒中で合成される。
カルボン酸ジクロライドとしてはテレフタル酸ジクロライド、2クロロ−テレフタル酸ジクロライド、イソフタル酸ジクロライド、ナフタレンジカルボニルクロライド、ビフェニルジカルボニルクロライド、ターフェニルジカルボニルクロライド、2フロロ−テレフタル酸ジクロライド、1,4−シクロヘキサンカルボン酸ジクロライドなどが挙げられるが、最も好ましくはテレフタル酸ジクロライド、2クロロ−テレフタル酸ジクロライドが用いられる。
ジアミンとしては例えば4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)フルオレン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパンなどが挙げられるが、好ましくは4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)フルオレン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,4−ノルボルネンジアミンが挙げられる。
ポリアミド溶液は、単量体として酸ジクロライドとジアミンを使用すると塩化水素が副生するが、これを中和する場合には水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウムなどの無機の中和剤、またエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、アンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンなどの有機の中和剤が使用される。また、イソシアネートとカルボン酸との反応は、非プロトン性有機極性溶媒中、触媒の存在下で行なわれる。
2種類以上のジアミンを用いて重合を行う場合、ジアミンは1種類づつ添加し、該ジアミンに対し10〜99モル%の酸ジクロライドを添加して反応させ、この後に他のジアミンを添加して、さらに酸ジクロライドを添加して反応させる段階的な反応方法、およびすべてのジアミンを混合して添加し、この後に酸ジクロライドを添加して反応させる方法などが利用可能である。また、2種類以上の酸ジクロライドを利用する場合も同様に段階的な方法、同時に添加する方法などが利用できる。いずれの場合においても全ジアミンと全酸ジクロライドのモル比は95〜105:105〜95が好ましく、この値を外れた場合、成形に適したポリマー溶液を得ることが困難となる。
ポリアミドの製造において、使用する非プロトン性極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができ、これらを単独又は混合物として用いるのが望ましいが、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の使用も可能である。さらにはポリマーの溶解を促進する目的で溶媒には50重量%以下のアルカリ金属、またはアルカリ土類金属の塩を添加することができる。
ポリアミドには、表面形成、加工性改善などを目的として10重量%以下の無機質または有機質の添加物を含有させてもよい。添加物は無色であっても有色であっても構わないが、本発明のポリアミドフィルムの特徴を損ねないためには無色透明であることが好ましい。表面形成を目的とした添加剤としては例えば、無機粒子ではSiO、TiO、Al、CaSO、BaSO、CaCO、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン、ゼオライト、その他の金属微粉末等が挙げられる。また、好ましい有機粒子としては、例えば、架橋ポリビニルベンゼン、架橋アクリル、架橋ポリスチレン、ポリエステル粒子、ポリイミド粒子、ポリアミド粒子、フッ素樹脂粒子等の有機高分子からなる粒子、あるいは、表面に上記有機高分子で被覆等の処理を施した無機粒子が挙げられる。
なお、上記した本発明のポリアミドフィルムに色素を添加し、着色フィルムとすることも可能である。色素としてはコバルトブルーなどの無機顔料、フタロシアニンなどの有機色素のいずれも好適に使用することができる。従来の芳香族ポリアミドフィルムはそれ自体が着色していたために上記色素を添加しても目的とした色調を得ることができなかったが、本発明のフィルムは着色が少ないために色素本来の色調を持ったフィルムを得ることが可能となる。このように着色されたフィルムは、たとえば、自動車や航空機のヘッドライトのリフレクターあるいはカバーなどの照明機器用として用いることができ、また、各種店舗、住宅などに用いる照明機器にも好適に使用することができる。
また、上記した本発明のポリアミドを50重量%以上含むコポリマも好ましい。他のポリマー成分としては、例えばポリカーボネート、環状ポリオレフィン、ポリスチレンなどが挙げられ、このコポリマは、本発明のポリアミドと他のポリマー成分、両ポリマーの特徴併せ持ち、たとえば位相差板、保護膜、基板などの用途に好適に用いることができる。また、負の複屈折を持つポリマーは本発明のポリアミドとコポリマにした場合、良好な波長分散性を示すため好ましい。
さらに、上記した本発明のポリアミドに感光性を持たせた感光性ポリアミドとすることもできる。これにより、たとえば、光学接着剤、レンズなどの用途に展開が可能となる。感光性を持たせる手法としては、たとえば、本発明のポリアミド主鎖末端を、反応活性な基に置換し、さらに光硬化剤を添加する方法などがある。
また、上記した本発明のポリアミドに熱硬化性を付与した熱硬化性ポリアミドも好ましい。これにより、たとえば、光学接着剤、レンズ、半導体封止材などの用途に展開が可能となる。熱硬化性を付与する手法としては、たとえば、本発明のポリアミド主鎖末端を、反応活性な基に置換し、さらに熱硬化剤を添加する方法などがある。
次にフィルム化について説明する。上記のように調製された製膜原液は、いわゆる溶液製膜法によりフィルム化が行なわれる。溶液製膜法には乾湿式法、乾式法、湿式法などがありいずれの方法で製膜されても差し支えないが、ここでは乾湿式法を例にとって説明する。
乾湿式法で製膜する場合は該原液を口金からドラム、エンドレスベルト等の支持体上に押し出して薄膜とし、次いでかかる薄膜層から溶媒を飛散させ薄膜が自己保持性をもつまで乾燥する。乾燥条件は例えば、室温〜220℃、60分以内の範囲で行うことができる。またこの乾燥工程で用いられるドラム、エンドレスベルトの表面はできるだけ平滑であれば表面の平滑なフィルムが得られる。上記の乾式工程を終えたフィルムは支持体から剥離されて湿式工程に導入され、脱塩、脱溶媒などが行なわれ、さらに延伸、乾燥、熱処理が行なわれてフィルムとなる。
延伸は延伸倍率として面倍率で0.8〜8(面倍率とは延伸後のフィルム面積を延伸前のフィルムの面積で除した値で定義する。1以下はリラックスを意味する。)の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは1.3〜8である。また、熱処理としては200℃〜500℃、好ましくは250℃〜400℃の温度で数秒から数分間熱処理が好ましく実施される。さらに、延伸あるいは熱処理後のフィルムを徐冷することは有効であり、50℃/秒以下の速度で冷却することが有効である。本発明の芳香族ポリアミドから得られるフィルムは単層フィルムでも、積層フィルムであってもよい。 さらに延伸は面方向だけではなく、厚み方向にも行った方が、位相差フィルムとして良好な特性を示すため好ましい。
本発明のフィルムは、透明性を求められる分野では、1/4波長位相差フィルム、1/2波長位相差フィルムをはじめとする任意の位相差フィルム、偏光フィルム、円偏光フィルム、保護フィルム、光ディスク用保護フィルム、タッチパネル、フレキシブルプリント基板、半導体実装用基板、多層積層回路基板、回路基板、コンデンサー、プリンターリボン、音響振動板、フラットパネルディスプレイ基板、太陽電池用のベースフィルム(太陽電池基板)、太陽電池用保護フィルム等どのような用途にも適用できる。中でも、特に、偏光板、位相差板、反射防止板、基板などのディスプレー部材、光ディスクの基板やその保護用フィルムなど光記録部材に代表される各種フィルム部材の構成材として用いると、加工時、使用時の寸法安定性、光学特性安定性に優れるため、好適に用いることができる。
上記用途には、実質的に無配向フィルム(光学的に等方)を用いても、延伸を施すことにより実現される配向フィルム(光学異方性を有する)を用いても、いずれでもよく、どちらも好適に使用できるが、特に、配向フィルムとして使用することが一層好ましい。具体的には、偏光板、位相差板、特に上述した1/4波長位相差板用途に適用した場合、本発明の効果を最も奏することができる。
また、フィルム形態以外の用途としては、光ファイバーや光導波路、レンズ、マイクロレンズアレイ、光学フィルタ、反射防止膜、他素材へのコート剤、他素材と貼り合わせた積層品、成型品などに好適に利用できる。
【実施例】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。
なお、物性の測定方法、効果の評価方法は次の方法に従って行った。
(1)ヤング率
ロボットテンシロンRTA(オリエンテック社製)を用いて、温度23℃、相対湿度65%において測定した。試験片は製膜方向またはバーコーターの移動方向をMD方向、これと直交する方向をTD方向として、MD方向またはTD方向について幅10mmで長さ50mmの試料とした。引張速度は300mm/分である。但し、試験を開始してから荷重が1Nを通過した点を伸びの原点とした。
(2)引張強度
ロボットテンシロンRTA(オリエンテック社製)を用いて、温度23℃、相対湿度65%において測定した。試験片は製膜方向またはバーコーターの移動方向をMD方向、これと直交する方向をTD方向として、MD方向またはTD方向について幅10mmで長さ50mmの試料とした。引張速度は300mm/分である。但し、試験を開始してから荷重が1Nを通過した点を伸びの原点とした。
(3)破断伸度
ロボットテンシロンRTA(オリエンテック社製)を用いて、温度23℃、相対湿度65%において測定した。試験片は製膜方向またはバーコーターの移動方向をMD方向、これと直交する方向をTD方向として、MD方向またはTD方向について幅10mmで長さ50mmの試料とした。引張速度は300mm/分である。但し、試験を開始してから荷重が1Nを通過した点を伸びの原点とした。
(4)鉛筆硬度
JIS K−5400−1979に準拠し測定した。
装置:ヘイドン表面特性試験機
(5)ガラス転移温度(Tg)〔DMA測定〕
装置:粘弾性測定装置EXSTAR6000 DMS(セイコーインスツルメンツ社製)
測定周波数:1Hz
昇温速度:2℃/分
ガラス転移温度(Tg):ASTM E1640−94に準拠し、E’の変曲点をTgとした。装置の限界により、360℃を超えるものは測定できなかったため、表には「360℃以上」と表記し、DSCによる測定を行った。
(6)ガラス転移温度(Tg)〔DSC測定〕
装置:ロボットDSC RDC220(セイコー電子工業社製)
昇温速度:10℃/分
ガラス転移温度(Tg):DSCカーブの変曲点をTgとした。
(7)全光線透過率
下記測定器を用いて測定した。
装置:直読ヘーズメーターHGM−2DP(C光源用)(スガ試験機社製)
光源:ハロゲンランプ12V、50W
受光特性:395〜745nm
光学条件:JIS−K7105−1981に準拠
なお、塊状などのフィルムや薄膜以外の形状の樹脂を測定する場合は、厚みを10μmとしたサンプルを用いて測定する。サンプルの作成が困難な場合は、下記式を用いて厚み10μmに換算して評価する。もちろん、厚み10μmを超えるサンプルしか得られない場合においても、以下の換算手法を適用できる。
10μmの時の光線透過率または全光線透過率(%):T10
厚み(μm):L(適用範囲:0.1オングストローム〜10mm)
厚みLの時の光線透過率または全光線透過率(%):TL
T10=100−((100−TL)/(10/L))
ただし厚みが10μmを超え、全光線透過率が80%以上の場合は、10μmの時にも、全光線透過率が80%以上であることが自明であるため、必ずしも厚み10μmに換算する必要はない。
(8)ヘイズ
下記測定器を用いて測定した。
装置:直読ヘーズメーターHGM−2DP(C光源用)(スガ試験機社製)
光源:ハロゲンランプ12V、50W
受光特性:395〜745nm
光学条件:JIS−K7105−1981に準拠
(9)フィルムの透明性(光線透過率)
下記装置を用いて測定し、各波長の光に対応する透過率を求めた。
透過率(%)=(T1/T0)×100
ただしT1は試料を通過した光の強度、T0は試料を通過しない以外は同一の距離の空気中を通過した光の強度である。
装置:UV測定器U−3410(日立計測社製)
波長範囲:300nm〜800nm
測定速度:120nm/分
測定モード:透過
なお、塊状などのフィルムや薄膜以外の形状の樹脂を測定する場合は、厚みを10μmとしたサンプルを用いて測定する。サンプルの作成が困難な場合は、下記式を用いて厚み10μmに換算して評価する。もちろん、厚み10μmを超えるサンプルしか得られない場合においても、以下の換算手法を適用できる。
10μmの時の光線透過率または全光線透過率(%):T10
厚み(μm):L(適用範囲:0.1オングストローム〜10mm)
厚みLの時の光線透過率または全光線透過率(%):TL
T10=100−((100−TL)/(10/L))
さらに反射率が求められる場合には、反射率から吸光度を算出し、下記式により換算することができる。ただし、上記式で算出した時に、ある測定波長(xnm)での光線透過率がy%以上の場合は、下記式で換算した時にも、この測定波長(xnm)の時の光線透過率はy%以上であるため、改めて換算する必要はない。
反射率(%):R
吸光度(%/μm):a
T10=a×L+TL−a×10
a=(100−R−TL)/L
ただし、厚みが10μmを超え、ある測定波長(xnm)での光線透過率がy%以上の場合は、10μmの時にも、この測定波長(xnm)の時の光線透過率はy%以上であることが自明であるため、必ずしも厚み10μmに換算する必要はない。
(10)屈折率
JIS−K7105−1981に従って、下記測定器を用いて測定した(測定範囲:〜1.87)。
装置:アッベ屈折計 4T(株式会社アタゴ社製)
光源:ナトリウムD線
測定温度:25℃
測定湿度:65%RH
マウント液:ヨウ化メチレン
(厚み方向をMZと表記する。)
(11)アッベ数
下記測定器を用いて測定した。
装置:プリズムカプラ装置PC−2010(メトリコン社製)
測定波長:429.5,539.0,632.8nm
上記測定で得られた3つの測定波長、における屈折率から、セルマイヤーの式(R(λ)=a+b/(λ2−c2))を用いて分散曲線を計算し、波長486nm、589nm、656nmにおける屈折率を求め、それぞれn(486)、n(589)、n(656)とした。さらに下式からアッベ数を求めた。
アッベ数=(n(589)−1)/(n(486)−n(656))
(12)位相差(レターデーション)
下記測定器を用いて測定した。
装置:セルギャップ検査装置RETS−1100(大塚電子社製)
測定径:φ5mm
測定波長:400〜800nm
上記測定で、波長450nm、550nm、650nmの時の位相差をそれぞれR(450)、R(550)、R(650)とした。
(13)200℃30分の熱処理条件における寸法変化率(熱収縮率)
15cm×15cmの試料に10cm×10cmの正方形の頂点となる点にマークを付け、無加重の状態で200℃の熱風オーブンで30分間熱処理を行った。室温まで冷却した後に各マーク間の距離を測定し、その前後の寸法の変化から計算した。任意方向およびそれに直交する方向それぞれの平均値を算出し、低い方の値を採用した。
(14)誘電率
自動平衡ブリッジを用い、測定温度21℃で実施した。また、試験片には3端子電極を塗装し、供試試料とした。
装置:インピーダンス/ゲイン・フェイズアナライザー4194A
HEWLETT PACKARD社製
治具:16451B DIELECTRIC TEST FIXTURE
電極:導電性銀ペースト“ドータイト”藤倉化成(株)社製
寸法:表面電極内円の外形 37mm
表面電極外円の内形 39mm
裏面(対)電極 50mm
(15)熱膨張係数
熱膨張係数は150℃まで昇温した後に降温過程に於いて測定した。25℃、75RH%における初期試料長をL0、温度T1の時の試料長をL1、温度T2の時の試料長をL2とするとT1からT2の熱膨張係数を以下の式で求めた。
熱膨張係数(ppm/℃)=(((L2−L1)/L0)/(T2/T1))×10
装置:セイコー電子社製 TMA/SS6000
(16)湿度膨張係数
高温高湿槽に幅1cm、試長15cmになるように固定し、一定湿度(約30%RH)まで脱湿し、フィルム長が一定になった後、加湿(約80%RH)する。試料は吸湿により伸び始めるが約24時間後吸湿は平衡に達してフィルムの伸びも平衡に達する。この時の伸び量から下式により計算する。
湿度膨張係数((ppm)/%RH)=
(伸び量(cm)/(試長(cm)×湿度差))×10
実施例1:
攪拌機を備えた300ml4つ口フラスコ中に4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン3.7248g、3,3’−ジアミノフェニルスルフォン11.1744g、N−メチル−2−ピロリドン194mlを入れ窒素雰囲気下、氷冷下攪拌した。10分後から30分後にかけてテレフタル酸ジクロライド12.1812gを5回に分けて添加した。さらに1時間攬拌した後、反応で発生した塩化水素を炭酸リチウム1.426gで中和して透明なポリマー溶液を得た。
得られたポリマー溶液の一部をガラス板上に取り、バーコーターを用いて均一な膜を形成せしめた。これを120℃で7分間加熱し、自己保持性のフィルムを得た。得られたフィルムをガラス板から剥がして金枠に固定して、流水中10分間水洗し、さらに280℃1分で熱処理を行い芳香族ポリアミドフィルムを得た。各種物性を表1〜4に示す。
実施例2〜36:
使用するジアミンや酸クロライドを以下に化学式(VII)や化学式(VIII)に記載のものに変更する以外は、実施例1と同様にしてポリマおよびフィルムを得た。各種物性を表1〜4に示す。
化学式(VII):

化学式(VIII):

なお、表1において、原料は実施例22、実施例33、34の3例以外は全て、ジアミンと酸クロライドとを等モル用いた。実施例22においては、酸クロライド100モルに対し、ジアミンは101モル(1モル過剰)となる割合で用いた。同様に、実施例33、34においては、ジアミン100モルに対し、酸クロライドが100.5モル(0.5モル過剰)となる割合で用いた。
比較例1:
攪拌機を備えた200ml4つ口フラスコ中にパラフェニレンテレフタルアミド12.0g、99.6重量%の硫酸88.0gを入れ窒素雰囲気下、60℃で攪拌溶解した。粘度は5,000ポイズであった。このドープを60℃に保ったまま口金から、鏡面に磨いたタンタル製のベルトにキャストした。このベルト上で、絶対湿度31g(水)/kg(乾燥空気)の90℃の空気中に14秒間保持した後、110℃の熱風が吹きつけるゾーンの中を4秒間で通過させて、光学等方性の透明なドープを得た。このドープを移動ベルト上で5℃の水で凝固させた後、水洗、5重量%水酸化ナトリウム水溶液による中和、水洗を繰返し自己支持性のゲルフィルムを得た。
さらにこのゲルフィルムをテンターにて、300℃20分で熱処理を行い芳香族ポリアミドフィルムを得た。得たフィルムは590nmから800nmの全ての波長において光線透過率が80%以上であったが、590nmより短い波長では光線透過率は低く、目視でも黄色い色調であった。





【特許請求の範囲】
【請求項1】
450nmから700nmまでの全ての波長の光の光線透過率が80%以上である脂環式または芳香族のポリアミド。
【請求項2】
400nmの光の光線透過率が60%以上である、請求項1に記載のポリアミド。
【請求項3】
350nmの光の光線透過率が30%以上である、請求項1または2に記載のポリアミド。
【請求項4】
ガラス転移点温度が120℃以上である、請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミド。
【請求項5】
少なくとも一方向のナトリウムD線での屈折率が1.6以上である、請求項1〜4のいずれかに記載のポリアミド。
【請求項6】
化学式(I)、(II)、(III)または(IV)で示される構造単位を含み、かつ、化学式(I)、(II)、(III)および(IV)で示される構造単位のモル分率をそれぞれl、m、n、oとしたとき、次式(1)〜(3)を満足しているポリアミド。
50<l+m+n≦100 ・・・ (1)
0≦l、m、n、o≦100 ・・・ (2)
0≦o≦50 ・・・ (3)
化学式(I):

:環構造を有する基
:芳香族基
:任意の基
:任意の基
化学式(II):

:電子吸引基
:電子吸引基
:任意の基
:任意の基
:芳香族基
化学式(III):

10:Siを含む基、Pを含む基、Sを含む基、ハロゲン化炭化水素基、または、エーテル結合を含む基(ただし、分子内においてこれらの基を有する構造単位が混在していてもよい。)
11:任意の基
12:任意の基
13:直結されているか、または、フェニル基を必須成分とする炭素数6から12の任意の基。
14:直結されているか、または、−フェニル基を必須成分とする炭素数6から12の任意の基
15:芳香族基
化学式(IV):

16:芳香族基
17:芳香族基
【請求項7】
化学式(I)および(IV)で示される構造単位を含み、かつ、化学式(I)で示される構造単位のモル分率が50%以上である、請求項6に記載のポリアミド。
【請求項8】
化学式(II)および(IV)で示される構造単位を含み、かつ、化学式(II)で示される構造単位のモル分率が50%以上である、請求項6に記載のポリアミド。
【請求項9】
化学式(III)および(IV)で示される構造単位を含み、かつ、化学式(III)で示される構造単位のモル分率が50%以上である、請求項6に記載のポリアミド。
【請求項10】
450nmから700nmまでの全ての波長の光の光線透過率が80%以上である脂環式または芳香族のポリアミドを含むポリアミドフィルム。
【請求項11】
厚みが0.01〜1,000μmである、請求項10に記載のポリアミドフィルム。
【請求項12】
450nmから700nmまでの全ての波長の光の光線透過率が80%以上であり、かつ、厚みが1μmから100μmである、請求項11に記載のポリアミドフィルム。
【請求項13】
400nmの光の光線透過率が60%以上である、請求項10〜12のいずれかに記載のポリアミドフィルム。
【請求項14】
少なくとも1方向のヤング率が4GPa以上である、請求項10〜13のいずれかに記載のポリアミドフィルム。
【請求項15】
200℃30分の熱処理条件において少なくとも一方向の熱収縮率が1%以下である、請求項10〜14のいずれかに記載のポリアミドフィルム。
【請求項16】
少なくとも一方向のナトリウムD線での屈折率が1.6以上である、請求項10〜15のいずれかに記載のポリアミドフィルム。
【請求項17】
550nmの波長の光のレターデーションが0nm以上10nm未満である、請求項10〜16のいずれかに記載のポリアミドフィルム。
【請求項18】
550nmの波長の光のレターデーションが10nm以上2,000nm以下である、請求項10〜16のいずれかに記載のポリアミドフィルム。
【請求項19】
550nmの波長の光のレターデーションをR(550)、450nmの波長の光のレターデーションをR(450)としたとき、R(450)<R(550)である、請求項10〜18のいずれかに記載のポリアミドフィルム。
【請求項20】
550nmの波長の光の複屈折率が0以上0.1未満である、請求項10〜19のいずれかに記載のポリアミドフィルム。
【請求項21】
550nmの波長の光の複屈折率が0.1以上0.5未満である、請求項10〜19のいずれかに記載のポリアミドフィルム。
【請求項22】
ポリアミドが芳香族である、請求項10〜21のいずれかに記載の芳香族ポリアミドフィルム。
【請求項23】
化学式(I)、(II)、(III)または(IV)で示される構造単位を含み、かつ、化学式(I)、(II)、(III)および(IV)で示される構造単位のモル分率をそれぞれl、m、n、oとしたとき、次式(1)〜(3)を満足しているポリアミドを含むポリアミドフィルム。
50<l+m+n≦100 ・・・ (1)
0≦l、m、n、o≦100 ・・・ (2)
0≦o≦50 ・・・ (3)
化学式(I):

:環構造を有する基
:芳香族基
:任意の基
:任意の基
化学式(II):

:電子吸引基
:電子吸引基
:任意の基
:任意の基
:芳香族基
化学式(III):

10:Siを含む基、Pを含む基、Sを含む基、ハロゲン化炭化水素基、または、エーテル結合を含む基(ただし、分子内においてこれらの基を有する構造単位が混在していてもよい。)
11:任意の基
12:任意の基
13:直結されているか、または、フェニル基を必須成分とする炭素数6から12の任意の基。
14:直結されているか、または、−フェニル基を必須成分とする炭素数6から12の任意の基
15:芳香族基
化学式(IV):

16:芳香族基
17:芳香族基
【請求項24】
厚みが0.01〜1,000μmである、請求項23に記載のポリアミドフィルム。
【請求項25】
450nmから700nmまでの全ての波長の光の光線透過率が80%以上であり、かつ、厚みが1μmから100μmである、請求項24に記載のポリアミドフィルム。
【請求項26】
400nmの光の光線透過率が60%以上である、請求項23〜25のいずれかに記載のポリアミドフィルム。
【請求項27】
少なくとも1方向のヤング率が4GPa以上である、請求項23〜26のいずれかに記載のポリアミドフィルム。
【請求項28】
200℃30分の熱処理条件において少なくとも一方向の熱収縮率が1%以下である、請求項23〜27のいずれかに記載のポリアミドフィルム。
【請求項29】
少なくとも一方向のナトリウムD線での屈折率が1.6以上である、請求項23〜28のいずれかに記載のポリアミドフィルム。
【請求項30】
550nmの波長の光のレターデーションが0nm以上10nm未満である、請求項23〜29のいずれかに記載のポリアミドフィルム。
【請求項31】
550nmの波長の光のレターデーションが10nm以上2,000nm以下である、請求項23〜29のいずれかに記載のポリアミドフィルム。
【請求項32】
550nmの波長の光のレターデーションをR(550)、450nmの波長の光のレターデーションをR(450)としたとき、R(450)<R(550)である、請求項23〜31のいずれかに記載のポリアミドフィルム。
【請求項33】
550nmの波長の光の複屈折率が0以上0.1未満である、請求項23〜32のいずれかに記載のポリアミドフィルム。
【請求項34】
550nmの波長の光の複屈折率が0.1以上0.5未満である、請求項23〜32のいずれかに記載のポリアミドフィルム。
【請求項35】
ポリアミドが芳香族である、請求項23〜34のいずれかに記載の芳香族ポリアミドフィルム。
【請求項36】
450nmから700nmまでの全ての波長の光の光線透過率が80%以上である脂環式または芳香族のポリアミドを50重量%以上含むコポリマ。
【請求項37】
化学式(I)、(II)、(III)または(IV)で示される構造単位を含み、かつ、化学式(I)、(II)、(III)および(IV)で示される構造単位のモル分率をそれぞれl、m、n、oとしたとき、次式(1)〜(3)を満足しているポリアミドを50重量%以上含むコポリマ。
50<l+m+n≦100 ・・・ (1)
0≦l、m、n、o≦100 ・・・ (2)
0≦o≦50 ・・・ (3)
化学式(I):

:環構造を有する基
:芳香族基
:任意の基
:任意の基
化学式(II):

:電子吸引基
:電子吸引基
:任意の基
:任意の基
:芳香族基
化学式(III):

10:Siを含む基、Pを含む基、Sを含む基、ハロゲン化炭化水素基、または、エーテル結合を含む基(ただし、分子内においてこれらの基を有する構造単位が混在していてもよい。)
11:任意の基
12:任意の基
13:直結されているか、または、フェニル基を必須成分とする炭素数6から12の任意の基。
14:直結されているか、または、−フェニル基を必須成分とする炭素数6から12の任意の基
15:芳香族基
化学式(IV):

16:芳香族基
17:芳香族基
【請求項38】
450nmから700nmまでの全ての波長の光の光線透過率が80%以上である脂環式または芳香族のポリアミドまたは該ポリアミドを含むポリアミドフィルムを用いてなる光学用部材。
【請求項39】
フラットパネルディスプレイ基板である、請求項38に記載の光学用部材。
【請求項40】
太陽電池基板である、請求項38に記載の光学用部材。
【請求項41】
反射防止膜である、請求項38に記載の光学用部材。
【請求項42】
位相差フィルムである、請求項38に記載の光学用部材。
【請求項43】
タッチパネルである、請求項38に記載の光学用部材。
【請求項44】
光ファイバーである、請求項38に記載の光学用部材。
【請求項45】
光導波路である、請求項38に記載の光学用部材。
【請求項46】
レンズである、請求項38に記載の光学用部材。
【請求項47】
化学式(I)、(II)、(III)または(IV)で示される構造単位を含み、かつ、化学式(I)、(II)、(III)および(IV)で示される構造単位のモル分率をそれぞれl、m、n、oとしたとき、次式(1)〜(3)を満足しているポリアミドまたは該ポリアミドを含むポリアミドフィルムを用いてなる光学用部材。
50<l+m+n≦100 ・・・ (1)
0≦l、m、n、o≦100 ・・・ (2)
0≦o≦50 ・・・ (3)
化学式(I):

:環構造を有する基
:芳香族基
:任意の基
:任意の基
化学式(II):

:電子吸引基
:電子吸引基
:任意の基
:任意の基
:芳香族基
化学式(III):

10:Siを含む基、Pを含む基、Sを含む基、ハロゲン化炭化水素基、または、エーテル結合を含む基(ただし、分子内においてこれらの基を有する構造単位が混在していてもよい。)
11:任意の基
12:任意の基
13:直結されているか、または、フェニル基を必須成分とする炭素数6から12の任意の基。
14:直結されているか、または、−フェニル基を必須成分とする炭素数6から12の任意の基
15:芳香族基
化学式(IV):

16:芳香族基
17:芳香族基
【請求項48】
フラットパネルディスプレイ基板である、請求項47に記載の光学用部材。
【請求項49】
太陽電池基板である、請求項47に記載の光学用部材。
【請求項50】
反射防止膜である、請求項47に記載の光学用部材。
【請求項51】
位相差フィルムである、請求項47に記載の光学用部材。
【請求項52】
タッチパネルである、請求項47に記載の光学用部材。
【請求項53】
光ファイバーである、請求項47に記載の光学用部材。
【請求項54】
光導波路である、請求項47に記載の光学用部材。
【請求項55】
レンズである、請求項47に記載の光学用部材。

【国際公開番号】WO2004/039863
【国際公開日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【発行日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−548056(P2004−548056)
【国際出願番号】PCT/JP2003/013790
【国際出願日】平成15年10月28日(2003.10.28)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】