説明

脂肪族ポリエステル及び水再分散性ポリマー粉末を基礎とする生分解性成形体を製造するための混合物

本発明の主題は、1つ以上の脂肪族ポリエステルを基礎とする生分解性成形体を製造するための混合物であって、前記混合物は、さらに1つ以上の水再分散性ポリマー粉末を含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪族ポリエステル及び水再分散性ポリマー粉末(in Wasser redispergierbare Polymerpulver)を基礎とする生分解性成形体を製造するための混合物、並びに前述の混合物を用いた生分解性成形体の製造方法、及び該混合物の使用に関する。
【0002】
脂肪族ポリエステル、例えばポリ乳酸は、生分解性成形体、例えば食品工業における包装用フィルムの製造のために使用される。しかし、ポリ乳酸は繊維へと紡糸されることもでき、そのため枕用充填剤、カーペット繊維及び化粧紙として使用される。問題なのは、脂肪族ポリエステルの脆さである。
【0003】
WO96/31561A1では、生分解性成形体を製造するために脂肪族ポリエステルを使用した際に得られる不十分な材料特性が主題として扱われる。それゆえ、デンプンを基礎とする、さらに少なくとも1つのバイオポリマー、例えば芳香族ポリエステル、ポリエステルアミドを含有する混合物が提案される。ポリ乳酸とデンプン、可塑剤及び熱可塑性ポリマー、例えばポリビニルアルコール又はエチレン−ビニルアルコールコポリマーとの混合物が、WO98/40434A1で提案される。WO2005/059031は、ポリ乳酸を基礎とする成形体の特性を、架橋性の耐衝撃性改良剤の添加によって改善することを提案する。耐衝撃性改良剤として、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート単位を含有するエチレン−(メタ)アクリレートコポリマーが提案される。US2008/0188597A1は、生分解性成分として脂肪族ポリエステル、殊にポリ乳酸を含有する、生分解性成形体を製造するための混合物を記載する。脂肪族ポリエステルは、機械的強度を改善するために、≧80℃の比較的高いTgを有する熱可塑性樹脂、例えばポリスチレン又はPMMAとブレンドされる。難燃性の改善のために有機リン酸が添加される。WO2006/074815A1では、最終生成物の特性の改善のために及びポリ乳酸の煩雑な予備乾燥の回避のために、熱可塑性加工(thermoplastische Verarbeitung)前、脂肪族ポリエステル、例えばポリ乳酸を脂肪族−芳香族ポリエステルとの混合物において使用すること及び、殊にさらにエポキシ架橋剤、例えばエポキシ官能性ポリマー又はビスフェノールAエポキシを使用することが提案される。US5,726,226では、生分解性成形体をポリ乳酸とエチレン−酢酸ビニルコポリマーとの混合物から製造することが提案される。
【0004】
ポリ乳酸に、より柔軟性のさらなるバイオポリエステル及び/又は熱可塑性樹脂をブレンドする際に問題なのは、個々の成分の不十分な混和性である。
【0005】
それゆえ、良好な加工性によってのみならず、改善された機械的特性によっても際立っている、脂肪族ポリエステル、殊にポリ乳酸を基礎とするコンパウンドを提供する課題が存在していた。
【0006】
意想外にも、水再分散性ポリマー粉末が脂肪族ポリエステルと際立って混和性であり、且つポリ乳酸とさらなるバイオポリエステル(脂肪族ポリエステル、脂肪族−芳香族ポリエステル)との混合物と相容性でもあり、並びにバイオポリエステルを基礎とする成形体の機械的特性を改善することが判明した。
【0007】
本発明の主題は、1つ以上の脂肪族ポリエステルを基礎とする生分解性成形体を製造するための混合物であって、該混合物は、さらに1つ以上の水再分散性ポリマー粉末を含有することを特徴とする。
【0008】
適した脂肪族ポリエステルは、例えばポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシ脂肪酸(ポリヒドロキシアルカノエート)、例えばポリ−3−ヒドロキシブタン酸(PHB)、C2〜C6−アルキレンのポリアルキレンサクシネート又はポリアルキレンアジペート、例えばポリブチレンサクシネート又はポリブチレンアジペートである。ポリ乳酸が有利である。ポリ乳酸は、その際、L−乳酸、D−乳酸又はL−乳酸とD−乳酸のラセミ混合物のホモポリマーと解される。ポリ乳酸は、乳酸単位に加えてさらなるコモノマー単位も含有するコポリマーとも解される。例えば、ヒドロキシ酪酸単位、カプロラクトン単位及び/又はグリコール酸単位を有する乳酸コポリマーである。コモノマー単位の割合は、その際、<50モル%、好ましくは<10モル%である。
【0009】
前述の脂肪族ポリエステルは、公知の重合法、例えば重縮合又は開環重合によって、又は公知の微生物学的処理によって製造されることができる(Ullmanns Encyclopedia of Industrial Chemistry,7th Edition,Online Version,DOI 10.1002/14356007)。ポリ乳酸は、例えばNatureWorksR PLAとして市販されている。ポリヒドロキシ酪酸は、例えばBiomerR ポリエステルとして市販されている。
【0010】
水再分散性ポリマー粉末は、ポリ乳酸にさらなる脂肪族ポリエステル又は脂肪族−芳香族ポリエステルをブレンドすることも可能にすることが判明した。それゆえ、本発明による混合物は、好ましくはポリ乳酸と水再分散性ポリマー粉末との混合物以外に、ポリ乳酸とさらなる脂肪族ポリエステル及び水再分散性ポリマー粉末との混合物を有する組成物、及びポリ乳酸と脂肪族−芳香族ポリエステル、場合によりポリ乳酸とは異なる脂肪族ポリエステル、及び水再分散性ポリマー粉末の混合物を包含する。適した脂肪族−芳香族ポリエステルは、例えばWO2006/074815A1において挙げられる半芳香族ポリエステルである。この種の製品は、EastarBioRとして市販されている。該混合物は、前述のバイオポリエステル以外にバイオポリマー、例えばデンプン、タンパク質又はセルロースエステルを含有してよい。好ましくは、混合物はデンプンを含有しない。
【0011】
水再分散性ポリマー粉末と呼ばれるのは、保護コロイドの存在において、相応するペースポリマーの水性分散液の乾燥によって得られる粉末組成物である。この製造プロセスに基づき、分散液の微細な樹脂が十分な量の水溶性の保護コロイドで被覆される。乾燥に際して、保護コロイドは、粒子の粘着を妨げるジャケットのように作用する。水に再分散させると、保護コロイドは再び水に溶解し、且つ元のポリマー粒子の水性分散液が存在することになる(Schulze J.in TIZ,No.9,1985)。
【0012】
適したポリマーは、ビニルエステル、(メタ)アクリル酸エステル、ビニル芳香族化合物、オレフィン、1,3−ジエン及びビニルハロゲン化物及び場合によりそれと共重合可能なモノマーを包含する群からの1つ以上のモノマーを基礎とするポリマーである。
【0013】
適したビニルエステルは、C原子1〜15個を有するカルボン酸のビニルエステルである。有利なのは、酢酸ビニル、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニル−2−エチルヘキサノエート、ビニルラウレート、1−メチル酢酸ビニル、ビニルピバレート及びC原子9〜11個を有するα位で分枝したモノカルボン酸のビニルエステル、例えばVeoVa9R又はVeoVa10R(Resolution社の商品名)である。酢酸ビニルが特に有利である。
【0014】
アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルの群からの適したモノマーは、C原子1〜15個を有する非分枝鎖状又は分枝鎖状のアルコールのエステルである。有利なメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステルは、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートである。メチルアクリレート、メチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート及び2−エチルヘキシルアクリレートが特に有利である。
【0015】
ビニル芳香族化合物として有利なのは、スチレン、メチルスチレン及びビニルトルエンである。有利なビニルハロゲン化物は塩化ビニルである。有利なオレフィンはエチレン、プロピレンであり、且つ有利なジエンは1,3−ブタジエン及びイソプレンである。
【0016】
場合により、モノマー混合物の全質量に対して、さらに補助モノマー0.1〜5質量%が共重合されることができる。有利には、補助モノマー0.5〜2.5質量%が使用される。補助モノマーの例は、エチレン性不飽和のモノカルボン酸及びジカルボン酸、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸及びマレイン酸;エチレン性不飽和のカルボン酸アミド及びカルボン酸ニトリル、好ましくはアクリルアミド及びアクリロニトリル;フマル酸及びマレイン酸のモノエステル及びジエステル、例えばジエチルエステル及びジイソプロピルエステル並びに無水マレイン酸;エチレン性不飽和スルホン酸もしくはそれらの塩、好ましくはビニルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸である。さらなる例は、前架橋性コモノマー、例えば多エチレン性不飽和コモノマー、例えばジアリルフタレート、ジビニルアジペート、ジアリルマレエート、アリルメタクリレート又はトリアリルシアヌレート、又は後架橋性コモノマー、例えばアクリルアミドグリコール酸(AGA)、メチルアクリルアミドグリコール酸メチルエステル(MAGME)、N−メチロールアクリルアミド(NMA)、N−メチロールメタクリルアミド、N−メチロールアリルカルバメート、アルキルエーテル、例えばイソブトキシエーテル又はN−メチロールアクリルアミドのエステル、N−メチロールメタクリルアミドのエステル及びN−メチロールアリルカルバメートのエステルである。エポキシ官能性コモノマー、例えばグリシジルメタクリレート及びグリシジルアクリレートも適している。さらなる例は、ケイ素官能性コモノマー、例えばアクリルオキシプロピルトリ(アルコキシ)シラン及びメタクリルオキシプロピルトリ(アルコキシ)シラン、ビニルトリアルコキシシラン及びビニルメチルジアルコキシシランであり、その際、アルコキシ基として、例えばエトキシ基及びエトキシプロピレングリコールエーテル基が含まれていてよい。ヒドロキシ基又はCO基を有するモノマー、例えばメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル及びアクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、例えばヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート又はヒドロキシブチルアクリレート又はヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート又はヒドロキシブチルメタクリレート並びに、例えばジアセトンアクリルアミド及びアセチルアセトキシエチルアクリレート又はアセチルアセトキシエチルメタクリレートのような化合物も挙げられる。
【0017】
その際、モノマー選択もしくはコモノマーの質量割合の選択は、一般的に、≦120℃、好ましくは−40℃〜+80℃、特に有利には−20℃〜+50℃のガラス転移温度Tgが生じるように行われる。ポリマーのガラス転移温度Tgは、公知の方法で示差走査熱量測定法(DSC)によって測定されることができる。Tgは、Foxの式によっても近似値的に予め計算されることができる。Fox T.G.,Bull.Am.Physics Soc.1,3,page 123(1956)に従って:1/Tg=x1/Tg1+x2/Tg2+...+xn/Tgnが適用され、その際、xnは、モノマーnの質量分率(質量%/100)を表し、且つTgnは、モノマーnのホモポリマーのケルビンにおけるガラス転移温度である。ホモポリマーのTg値は、Polymer Handbook 2nd Edition,J.Wiley & Sons,New York(1975)に記載されている。
【0018】
有利なのは、酢酸ビニル、C原子9〜11個を有するα位で分枝したモノカルボン酸のビニルエステル、塩化ビニル、エチレン、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、スチレンの群からの1つ以上のモノマーを含有するホモポリマー又はコポリマーである。特に有利なのは、酢酸ビニル及びエチレンとのコポリマー;酢酸ビニル、エチレン及び、C原子9〜11個を有するα位で分枝したモノカルボン酸のビニルエステルとのコポリマー;スチレン及び、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートの群からの1つ以上のモノマーとのコポリマー;酢酸ビニル及び、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートの群からの1つ以上のモノマー及び場合によりエチレンとのコポリマー;1,3−ブタジエン及びスチレン及び/又はメチルメタクリレート並びに場合によりさらなるアクリル酸エステルとのコポリマーであり、その際、上述の混合物は、場合によりなお1つ以上の上記の補助モノマーを含有してよい。
【0019】
ポリマーの製造は、保護コロイドの存在において、乳化重合法に従って又は懸濁重合法に従って、好ましくは乳化重合法に従って行われ、その際、重合温度は、一般的に20℃〜100℃、好ましくは60℃〜90℃であり、且つガス状コモノマー、例えばエチレンの共重合の場合、加圧下、一般的に5bar〜100barでも作用されることができる。重合の開始は、乳化重合もしくは懸濁重合のために通常用いられる水溶性もしくはモノマー可溶性の開始剤又はレドックス開始剤の組み合わせ物を用いて行われる。水溶性開始剤の例は、過硫酸ナトリウム、過酸化水素、アゾビスイソブチロニトリルである。モノマー可溶性開始剤の例は、ジセチルペルオキシジカーボネート、ジシクロヘキシルペルオキシジカーボネート、ジベンゾイルペルオキシドである。前述の開始剤は、一般的に、モノマーの全質量に対して0.01〜0.5質量%の量で使用される。レドックス開始剤として、還元剤との組み合わせにおける前述の開始剤からの組み合わせ物が使用される。適した還元剤は、例えば硫酸ナトリウム、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム及びアスコルビン酸である。還元剤量は、好ましくは、モノマーの全質量に対して0.01〜0.5質量%である。
【0020】
分子量の制御のために、重合の間、調節物質を使用してよい。調節剤が使用される場合、これらは通常、重合されるべきモノマーに対して0.01〜5.0質量%の量で使用され、且つ別個に又は反応成分と予め混合して計量供給もされる。かかる物質の例は、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、メルカプトプロピオン酸、メルカプトプロピオン酸メチルエステル、イソプロパノール及びアセトアルデヒドである。好ましくは、いかなる調節物質も使用されない。
【0021】
重合バッチの安定化のために、保護コロイドが、場合により乳化剤との組み合わせにおいて使用される。適した保護コロイドは、部分鹸化又は完全鹸化されたポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン;ポリビニルアセタール;水溶性の形での多糖類、例えばデンプン(アミロース及びアミロペクチン)又はデキストリン又はシクロデキストリン、セルロース及びそれらのカルボキシメチル誘導体、メチル誘導体、ヒドロキシエチル誘導体、ヒドロキシプロピル誘導体、タンパク質、例えばカゼイン又はカゼイネート、大豆タンパク質、ゼラチン;リグニンスルホネート;合成ポリマー、例えばポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレートとカルボキシル官能性コモノマー単位とのコポリマー、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリビニルスルホン酸及びそれらの水溶性コポリマー;メラミンホルムアルデヒドスルホネート、ナフタリンホルムアルデヒドスルホネート、スチレンマレイン酸コポリマー及びビニルエーテルマレイン酸コポリマーである。有利なのは、部分鹸化又は完全鹸化されたポリビニルアルコールである。特に有利なのは、加水分解度80〜95モル%及び4%濃度水溶液においてヘプラー粘度1〜30mPas(20℃でのヘプラーによる方法、DIN 53015)を有する部分鹸化ポリビニルアルコールである。
【0022】
重合の終了後、残留モノマー除去のために、公知の方法の適用において、例えばレドックス触媒を用いて開始される後重合によって後重合されることができる。揮発性残留モノマーは、好ましくは減圧下での蒸留によっても、及び場合により不活性の連行ガス、例えば空気、窒素又は水蒸気の導通又は通過下で除去されることができる。それにともなって得られる水性分散液は、30〜75質量%、好ましくは50〜60質量%の固形物含有率を有する。
【0023】
水再分散性ポリマー粉末組成物の製造のために、分散液は、場合により乾燥助剤としてのさらなる保護コロイドの添加後に、例えば流動床乾燥、凍結乾燥又は噴霧乾燥により乾燥される。好ましくは、分散液は噴霧乾燥される。この場合、噴霧乾燥は、通常用いられる噴霧乾燥装置中で行われ、その際、噴霧は、一流体ノズル、二流体ノズル又は多流体ノズルにより又は回転円板により行われることができる。一般的に出口温度は、45〜120℃、有利には60〜90℃の範囲で、装置、樹脂のTg及び所望の乾燥度に応じて選択される。霧化されるべき原料の粘度は、固形物含有率により、<500mPasの値(20回転及び23℃でのブルックフィールド粘度)、有利には<250mPasが得られるように調整される。霧化されるべき分散液の固形物含有率は、>35%、有利には>40%である。
【0024】
通例、乾燥助剤は、分散液のポリマー成分に対して0.5〜30質量%の全量で使用される。すなわち乾燥プロセスより前の保護コロイドの全量は、ポリマー割合に対して少なくとも1〜30質量%であることが望ましい;有利には、ポリマー割合に対して5〜20質量%が使用される。
【0025】
適した乾燥助剤は当業者に公知であり、且つ例えば既に述べた保護コロイドである。特に有利なのは、加水分解度80〜95モル%及び4%濃度水溶液においてヘプラー粘度1〜30mPas(20℃でのヘプラーによる方法、DIN 53015)を有する部分鹸化ポリビニルアルコールである。
【0026】
霧化される場合、しばしば、ベースポリマーに対して1.5質量%までの含有率の消泡剤が好都合であることが判明した。ブロッキング安定性の改善によって貯蔵性を高めるために、殊に低いガラス転移温度を有する粉末の場合、得られる粉末にブロッキング防止剤(凝結防止剤)を、ポリマー成分の全質量に対して好ましくは1〜30質量%与えてよい。ブロッキング防止剤の例は、好ましくは10nm〜10μmの範囲の粒度を有する炭酸Caもしくは炭酸Mg、タルク、石膏、シリカ、カオリン、メタカオリン、シリケートである。
【0027】
最も有利なのは、酢酸ビニル−ホモポリマー、又は酢酸ビニル及びエチレンとのコポリマー、又は酢酸ビニル、エチレン及び、膜形成ポリマーとしてのC原子9〜11個を有するα位で分枝したモノカルボン酸のビニルエステル及び保護コロイドとしての部分鹸化ポリビニルアルコールとのコポリマーを含有する再分散粉末組成物である。
【0028】
特に好ましいのは、しばしば、−20℃〜+20℃の比較的低いTgを有する水再分散性ポリマー粉末、例えば酢酸ビニル及びエチレンとのコポリマーをベースとするものと、+30℃〜+60℃の比較的高いTgを有する水再分散性ポリマー粉末、例えば酢酸ビニル−ホモポリマーをベースとするものとの混合物の使用である。比較的低いTgのポリマー粉末により成形体の柔軟性が最適化され得る一方で、比較的高いTgのポリマー粉末により成形体の強度が最適化される。
【0029】
再分散性ポリマー粉末は、再分散性でない従来の熱可塑性樹脂(Thermoplast)との混合物においても使用されることができる。従来の熱可塑性樹脂の例は、ポリエチレン、ポリプロピレン、PVC、ABS、ポリ酢酸ビニル樹脂である。これらの熱可塑性樹脂の質量割合は、再分散性ポリマー粉末との混合物において、好ましくは70質量%を超過しないべきである。場合により、再分散性ポリマー粉末は、架橋剤との混合物においても使用されることができる。このための例は、エポキシ架橋剤、例えばEpicote又はイソシアネート架橋剤である。
【0030】
生分解性成形体を製造するための混合物中での水再分散性ポリマー粉末の割合は、そのつどバイオポリエステル、並びに場合によりバイオポリマー、及び再分散性粉末、並びに場合により熱可塑性樹脂からの全質量に対して1〜95質量%、好ましくは2〜50質量%、特に有利には5〜40質量%である。
【0031】
場合により、混合物中にはなお、プラスチックの熱可塑性加工にて通常用いられるさらなる添加剤が含有されていてよい。このための例は、染料、顔料、安定化剤、可塑剤、滑剤及び難燃剤である。一般的に、かかる添加物の量は、そのつど生分解性成形体を製造するための混合物の全質量に対して20質量%まで、好ましくは1〜10質量%である。
【0032】
有利には充填剤も使用される。適した充填剤は、無機及び有機の充填剤である。無機充填剤の例は、ドロマイト、チョーク、石英粉末である。有利なのは、木粉のような有機充填剤、殊に植物性繊維材料又は動物性繊維材料、例えば綿繊維、ジュート繊維、木部繊維、亜麻繊維、サイザル繊維、大麻繊維、ココナッツ繊維又は革繊維である。合成繊維、例えばポリエステル繊維又はポリプロピレン繊維も使用されることができる。一般的に充填剤は、5:95〜100:0のポリマー:充填剤の質量比で使用され、その際、ポリマー割合は、バイオポリエステル割合、場合によりバイオポリマー割合、再分散性ポリマー粉末割合及び場合により熱可塑性樹脂割合から構成される。
【0033】
成形体の製造のために、脂肪族ポリエステル及び水再分散性ポリマー粉末並びに場合によりさらなる添加剤が、例えば粉体ミキサー又はホットミキサー中で互いに混合され、且つ慣例の成形技術(Umformungstechniken)を用いて成形体へと加工される。成形体との用語は、形状付与法、例えば圧縮成形、ペレット化、顆粒化、熱可塑性成形技術の方法生成物と解される。熱可塑性成形法の例は、射出成形法、射出吹込成形法、インフレーション法、カレンダー法、押出法である。好ましくは、加工は、相応する脱気ゾーンを有する押出及び射出成形によって行われる。加工温度は、一般的に60℃〜200℃、好ましくは90℃〜160℃である。好ましくは、高められた圧力で、好ましくは10〜600bar(絶対)の圧力で作業される。成形体の製造は、顆粒段階を介して行ってもよい。
【0034】
意想外にも、熱可塑性加工に際して水再分散性ポリマー粉末が使用される場合、バイオポリエステル及び場合によりバイオポリマーの予備乾燥が必要でないことが明らかになった。それというのも、加工に際して放出される水蒸気が水再分散性ポリマー粉末と結合するからである。成形体の製造は、それゆえ本発明による方法により著しく軽減される。
【0035】
方法生成物は、生分解性成形体の使用に適している。コンポスト化可能な包装材料、例えばフィルム、発泡充填材、入れ物、例えば袋、瓶、缶、管、ブリスターパックとしての使用に適している。コンポスト化可能なケータリング品(Cateringprodukten)、例えばコンポスト化可能な食器、卓上用洋食器類、飲料用容器、飲料用ストローにおける使用に適している。園芸及び造園において、該方法生成物は、コンポスト化可能な製品として、例えばマルチングフィルムとして、植木鉢及び栽培鉢として使用することができる。医療分野におけるコンポスト化可能な製品としての使用は、カプセル材料及びピル材料、外科用縫合糸材料としての使用である。キャンプ分野におけるコンポスト化可能な製品としての使用は、コンポスト化可能なテントの留め杭である。
【0036】
本発明によるブレンドにより、脂肪族ポリエステルの適用範囲が有意に広がる。ポリ乳酸(PLA)は、市場で得られる、より柔軟性のバイオポリエステル、例えば部分芳香族ポリエステル又はポリヒドロキシ酪酸では通常加工され得難い。水再分散性ポリマー粉末の添加によって、PLA及び他のバイオポリエステルとの相容性を改善することができる。
【0037】
以下の例は、本発明のさらなる説明に用いられる:
試験のために下記の構成成分を使用した:
再分散性ポリマー粉末1(RDP1):
VinnexR2510:部分鹸化ポリビニルアルコールで安定化された酢酸ビニル−ホモポリマーをベースとする43℃のTgを有する水再分散性ポリマー粉末
再分散性ポリマー粉末2(RDP2):
VinnexR2504:部分鹸化ポリビニルアルコールで安定化された酢酸ビニル−エチレン−コポリマーをベースとする−4℃のTgを有する水再分散性ポリマー粉末
バイオポリマー1(BiO1)
NatureWorksR PLA ポリマー 2002D:NatureWorks社のポリ乳酸
バイオポリマー2(BiO2):
EasterRBiO:Novamont社の脂肪族−芳香族コポリエステル
滑剤(GM):
Baerlocher社のステアリン酸カルシウム Caesit 1
【0038】
表1及び表2に記載される配合物を用いて、該表中に記載されるロール温度でロールドシート(Walzfelle)を製造し、該表中に記載される温度で引き取り、そして規定の要求に応じた厚みを有する薄板に圧縮成形した。
【0039】
溶融挙動(フィルム)を視覚的に評価した。密度はDIN 53479に従って測定した。ショアD硬度はDIN 53505に従って測定した。
【0040】
使用した混合物の粘度は、高い毛細管力の粘度計(ノズル:30×2)を用いて、100s-1の剪断速度及び150℃(Visko1)と170℃(Visko2)の温度で測定した。機械的強度は、DIN EN ISO 527に従った引張試験によって決定し、且つ破断時の引張応力(ZSB)を測定した。
【0041】
成形体の硬度は、Vicat AとしてDIN EN ISO 306に従って1019gの重りにより決定した。耐衝撃性(SZ)を判定するために、DIN EN ISO 179−1eUに従って破壊モード(Bruchbild)を測定した。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
再分散性ポリマー粉末はPLA中で非常に簡単に加工され得ることを示すことができた:PLA及びバイオポリエステルとからの粉末が溶融物において均一なロールドシートをもたらさない一方で(極めて少量の柔軟性のバイオポリエステルを添加しただけで、強い剪断作用によってのみ分解する異質部分(Inhomoegnitaeten)が明らかに増大する)、PLAと任意にブレンドしたRD粉末を用いることによって、常に均一なロールドシートが得られる(比較例2及び比較例3と実施例1〜6のフィルムの比較)。PLA及びRDPを有する成形体の機械的特性は、PLA/バイオポリエステル−ブレンドのものより明らかに良好である(比較例2と実施例1並びに比較例2と実施例2のZSB及びSZの比較)。かかるブレンドの最終特性は、RD粉末の選択によって制御される(実施例5及び実施例6のZSBの比較)。
【0045】
再分散性ポリマー粉末は、バイオポリエステル(バイオポリマー)より明らかに高い量でPLAと混ぜ合わされることができる。ここで、再分散性ポリマー粉末とPLAとの優れた相容性が明らかになる。引張応力ZSBは高い水準に保たれることができ、その一方で、バイオポリエステルの量が高い場合の引張応力は落ち込むか又はもはや測定可能ではない(実施例3及び4と比較例3との比較、及び実施例5又は6と比較例4との比較)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の脂肪族ポリエステルを基礎とする生分解性成形体を製造するための混合物において、前記混合物が、さらに1つ以上の水再分散性ポリマー粉末を含有することを特徴とする、生分解性成形体を製造するための混合物。
【請求項2】
脂肪族ポリエステルとして、ポリ乳酸、ポリヒドロキシ脂肪酸、C2−C6−アルキレンのポリアルキレンサクシネート及びポリアルキレンアジペートの群からの1つ以上が含有されていることを特徴とする、請求項1記載の混合物。
【請求項3】
前記混合物が、ポリ乳酸及び水再分散性ポリマー粉末を含有し;又はポリ乳酸及び少なくとも1つのさらなる脂肪族ポリエステル及び水再分散性ポリマー粉末を含有し;ポリ乳酸及び少なくとも1つの脂肪族−芳香族ポリエステル、及び場合によりポリ乳酸とは異なる少なくとも1つの脂肪族ポリエステル及び水再分散性ポリマー粉末を含有することを特徴とする、請求項1又は2記載の混合物。
【請求項4】
前記混合物が、さらにデンプン、タンパク質及びセルロースエステルの群からの少なくとも1つのバイオポリマーを含有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の混合物。
【請求項5】
水再分散性ポリマー粉末として、そのつど部分鹸化ポリビニルアルコールを保護コロイドとして有する、酢酸ビニル−ホモポリマー、酢酸ビニル及びエチレンとのコポリマー、酢酸ビニル、エチレン及びC原子9〜11個を有するα位で分枝したモノカルボン酸のビニルエステルとのコポリマーを基礎とする1つ以上が含有されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の混合物。
【請求項6】
水再分散性ポリマー粉末として、−20℃〜+20℃の比較的低いTgを有する水再分散性ポリマー粉末と、+30℃〜+60℃の比較的高いTgを有する水再分散性ポリマー粉末との混合物が含有されていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の混合物。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項記載の混合物を用いた生分解性成形体の製造法であって、その際、前記脂肪族ポリエステル及び前記水再分散性ポリマー粉末並びに場合によりさらなる添加剤を互いに混合し、且つ熱可塑性成形技術によって成形体へと加工する方法。
【請求項8】
請求項7記載の生分解性成形体の製造法であって、その際、プラスチックの熱可塑性加工に際して通常用いられる添加剤をさらに使用する方法。
【請求項9】
請求項7又は8記載の生分解性成形体の製造法であって、その際、さらに無機充填剤又は有機充填剤を使用する方法。
【請求項10】
請求項7から9までのいずれか1項記載の方法による生成物の、生分解性成形体としての使用。
【請求項11】
コンポスト化可能な包装材料として、コンポスト化可能なケータリング品として、園芸及び造園におけるコンポスト化可能な製品として、医療分野におけるコンポスト化可能な製品として、キャンプ分野におけるコンポスト化可能な製品としての、請求項10記載の使用。

【公表番号】特表2012−505942(P2012−505942A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531476(P2011−531476)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【国際出願番号】PCT/EP2009/063403
【国際公開番号】WO2010/043648
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】