説明

脂肪細胞の肥大化に関連する分泌タンパク質

【課題】 脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の診断及び治療に有用な疾患マーカー等を提供する。
【解決手段】 配列番号:1〜25のいずれかに記載の塩基配列において、連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/又は該ポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、並びに配列番号:26〜50のいずれかに記載のアミノ酸配列を有するタンパク質を認識する抗体等からなる、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の疾患マーカー等。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の診断に有用な疾患マーカー及びその利用に関する。より詳細には、本発明は、肥満症、II型糖尿病、高脂血症、高血圧、動脈硬化症等の脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の診断においてプライマー又は検出プローブとして有効に利用できる疾患マーカー、かかる疾患マーカーを利用した当該疾患の検出方法(診断方法)、当該疾患の改善剤又は治療剤として有効な物質をスクリーニングする方法、並びに該方法によって得られる改善剤又は治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
肥満すなわち脂肪細胞の数の増加と脂肪細胞自身の肥大化が見られる状態は、一般に糖尿病や高血圧、動脈硬化、脳卒中、心筋梗塞などの病態を発症させる引き金となる共通の基盤と考えられている。脂肪蓄積および肥大化によりおこる病態の発症には脂肪細胞がつくるタンパク質が関与しており、脂肪組織に発現する補体、増殖因子等の生理活性を有する分泌タンパク質は、アディポサイトカイン(adipocytokine)と呼ばれている。これらの物質は、本来は脂肪細胞自身の代謝に重要な役割を果たすが、肥満などをきっかけに過剰分泌・分泌不全といった分泌制御の異常が生じて、病態の発症を引き起こす原因となる。
例えば、下村らは線溶系の重要な調節因子であるプラスミノーゲンアクティベータインヒビター1(PAI−1)が、脂肪蓄積がおこると特に内臓脂肪で著しく発現量が増加して血中濃度も増加し、血管合併症の成因のひとつとなり得ることを明らかにした。
このように、脂肪細胞特異的に発現するタンパク質は、脂肪蓄積との関係から注目されており、3T3-L1脂肪細胞の培養上清を用いたプロテオーム解析(非特許文献1)やDNAマクロアレイ法による解析が報告されている(非特許文献2)。しかしながら、生体における脂肪蓄積および脂肪細胞の肥大化のモデルとなりうる、実際に肥大化を誘導した脂肪細胞において、有意に発現する分泌タンパク質は、全く知られていない。
【0003】
一方、DNAsegment, Chr10, Johns Hopkins University 81 expressed(配列番号:26又は76に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;非特許文献3を参照)、Niemann Pick type C2 protein (配列番号:27又は77に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;非特許文献4を参照)、cyclophilin C(配列番号:28又は78に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;非特許文献5及び6を参照)、arginin-rich protein, mutated in early stage tumors(配列番号:29又は79に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;非特許文献7を参照)、interleukin 25(配列番号:30又は80に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;非特許文献8を参照)、transmembrane protein 4 (配列番号:31又は81に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;非特許文献9を参照)、proline synthetase co-transcribed (配列番号:32又は82に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;非特許文献10を参照)、pleiotrophin (配列番号:33又は83に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;非特許文献11を参照)、Expressed sequence AU018778 もしくは別名hypothetical protein MGC18894 (配列番号:34又は84に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;配列番号12を参照)、a disintegrin-like and metalloprotease with thrombospondin type 1 motif,1(ADAMTS1) (配列番号:35又は85に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;非特許文献13を参照)、reticulocalbin 1(配列番号:36又は86に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;非特許文献14を参照)、polydomain protein (配列番号:37又は87に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;非特許文献15を参照、calreticulin(配列番号:38又は88に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;非特許文献16を参照)、family with sequence similarity 3, member C(配列番号:39又は89に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;非特許文献17を参照)、granulinもしくは別名epithelin (配列番号:40又は90に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;非特許文献18を参照)、follistatin-like 1もしくはTGF beta-stimulated clone 36(TSC-36) (配列番号:41又は91に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;非特許文献19を参照)、vitamin D binding protein(配列番号:42又は92に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;非特許文献20を参照)、nucleobindin 1 (配列番号:43又は93に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;非特許文献21を参照)、retinoic acid receptor responder ( tazarotene induced ) 2 (配列番号:44又は94に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;非特許文献22を参照)、arylsulfatase A (配列番号:45又は95に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;非特許文献23を参照)、dermatopontinもしくは別名early quiescence-1 (EQ-1) (配列番号:46又は96に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;非特許文献24を参照)、epidermal growth factor-containing fibulin-like extracellular matrix protein 2又は別名fibulin-4 (配列番号:47又は97に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;非特許文献25を参照)、immunoglobulin superfamily containing leucine-rich repeat (配列番号:48又は98に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;非特許文献26を参照)、olfactomedin-like 3 (配列番号:49又は99に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;非特許文献27を参照)、及びtranscobalamin 2(配列番号:50又は100に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;非特許文献28を参照)は、いずれも公知のタンパク質であるが、これらのタンパク質又はそのホモログが肥大化脂肪細胞から分泌されること、及び生活習慣病等の脂肪細胞の肥大化を伴う疾患に関係することは、全く知られていなかった。
【0004】
【非特許文献1】Kratchmarova Iら、「モレキュラー・アンド・セルラー・プロテオミクス」、第1巻(第3号)、pp.213−222、(2002年)
【非特許文献2】Tsuruga, H.ら、「バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーションズ」、272巻、pp.293-297、(2000年)
【非特許文献3】Okazaki Yら、Nature、第420巻(第6915号)、p.p563-73、2002年
【非特許文献4】Crocker, A. Cら、J. Neurochem、第7巻、pp.69−80、1961年
【非特許文献5】Friedman J, Weissman I.ら、Cell、第66巻(第4号):p.p.799-806、1991年
【非特許文献6】Friedman Jら、Am J Pathol、第144巻(第6号):p.p1247-56、1994年
【非特許文献7】Shridhar, V.ら、Oncogene、第12巻: p.p.1931-1939、1996年
【非特許文献8】Tulin,E.E ら、J. Immunol.、第167巻 (第11号)、p.p.6338-47 、2001年
【非特許文献9】Yokoyama-Kobayashiら、Gene、 第163巻:p.p.193-196, 1995年
【非特許文献10】Ikegawa, Sら、J. Hum. Genet.、第 44巻:p.p.337-342、1999年
【非特許文献11】J Merenmies J ら、J Biol Chem.、 第265巻(第28号): p.p.16721-4、1990年
【非特許文献12】Strausberg RLら、Proc Natl Acad Sci U S A.、第99巻(第26号):p.p.16899-903.、2002年
【非特許文献13】Kuno Kら、J Biol Chem.、第272巻(第1号):p.p.556-62.、1997年
【非特許文献14】Ozawa Mら、J.Biol Chem.、第268巻(第1号):p.p.699-705、1993年
【非特許文献15】Gilges Dら、Biochem J. 、第352巻 Pt 1:p.p.49-59、2000 年
【非特許文献16】Burns, Kら、Nature 第367巻: p.p.476-480、1994年
【非特許文献17】Zhu, Y.ら、Genomics 第80巻: p.p.144-150, 2002年
【非特許文献18】Mol Genet Metab.、第75巻 (第1号): p.p.31-7、2002年
【非特許文献19】Tanaka, M.ら、Int. Immun.第10巻:p.p.1305-1314, 1998年
【非特許文献20】Hirschfeld, J.ら 、Acta Path. Microbiol. Scand. 第47巻: p.p.160-168, 1959年
【非特許文献21】Miura, K.ら、 Biochem. Biophys. Res. Commun. 第187巻:p.p.375-380、1992年
【非特許文献22】Meder Wら、FEBS Lett.、第555巻(第3号):p.p.495-9、2003年
【非特許文献23】Ohno Hら、Horm Metab Res.第28巻(第8号):p.p.397-9. 1996年
【非特許文献24】Superti-Furgaら、Genomics 第17巻: p.p.463-467、1993年
【非特許文献25】Katsanis, N.ら、 Hum. Genet. 第106巻: p.p.66-72、 2000年
【非特許文献26】Nagasawa, A.ら、Genomics第44巻: p.p.273-279, 1997.
【非特許文献27】Torrado, M.ら、Hum. Molec. Genet.第11巻: p.p.1291-1301, 2002年
【非特許文献28】Quadros EVら、J. Biol. Chem.第261巻(第33号): p.p. 15455-15460, 1986年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の診断及び治療に有用な疾患マーカーを提供することを目的とする。さらに本発明は該疾患マーカーを利用した脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の検出方法(診断方法)、該疾患の改善又は治療に有用な薬物をスクリーニングする方法、並びに該疾患の改善又は治療に有用な薬物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討を行った。
本発明者らは、既に、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患における、肥満形成とその病態発症のメカニズム解明の一環として、脂肪を蓄積する細胞系を用いて、in vitroにおける細胞レベルでの肥大化した脂肪細胞からの分泌タンパク質の調製方法を確立した。すなわち、脂肪を蓄積することにより体積が肥大化するという特徴を有するマウス前駆脂肪細胞:3T3-L1(Molecular & Cellular Proteomics, 1(3), p.p. 213-222; J. Biol. Chem., 269, p.p.19041(1994); 第124回日本医学会シンポジウム記録集, 肥満の科学 p.p.110-121) を脂肪蓄積する状態に分化させて、さらに30日以上長期培養することで、上記疾患と同様に脂肪細胞が肥大化した状態の細胞を調製し、当該細胞に発現する分泌タンパク質を同定した。
【0007】
更に、本発明者らは、肥大化した脂肪細胞の培養上清に含まれるタンパク質を単離し、構造決定を行った。その結果、従来は脂肪細胞の肥大化を伴う疾患との関連が明らかではなかった、配列番号:76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99及び100(配列番号:76〜100)に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質が、長期培養した脂肪細胞の培養上清に特異的に分泌されていることがわかった。
【0008】
従って、本発明者らは、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患において、配列番号:76〜100のいずれかに記載のアミノ酸配列を有するタンパク質のヒトホモログ、及びこれらをコードするポリヌクレオチド(配列番号:51〜75のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチド)のヒトホモログが、優れた疾患マーカーであるとの知見を得た。さらに、これらのポリヌクレオチドの発現、又はこれらのポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質の発現の制御を指標としたスクリーニング方法は、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の予防、改善又は治療剤の探索に有用であるとの知見を得た。
本発明はかかる知見を基礎にして完成するに至ったものである。
【0009】
すなわち、本発明は、下記に掲げるものである:
〔1〕 配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24及び25のいずれかに記載の塩基配列において、連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/又は該ポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドからなる、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の疾患マーカー;
〔2〕 脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の検出においてプローブ又はプライマーとして使用される〔1〕に記載の疾患マーカー;
〔3〕 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の検出方法:
(a)被験者の生体試料から調製されたRNA又はそれから転写された相補的ポリヌクレオチドと、〔1〕又は〔2〕に記載の疾患マーカーとを結合させる工程、
(b)該疾患マーカーに特異的に結合した生体試料由来のRNA又は該RNAから転写された相補的ポリヌクレオチドを、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、及び
(c)上記(b)で得られる被験者の測定結果が、正常な生体試料について得られる測定結果に比して、以下の1)又は2)のいずれかであることを指標として、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の罹患を判断する工程:
1)配列番号:1、2、3、4、5、6、7及び8のいずれかに記載の塩基配列において、連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/又は該ポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドからならなる疾患マーカーへの結合量が減少していること、
2)配列番号:9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24及び25のいずれかに記載の塩基配列において、連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/又は該ポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドからならなる疾患マーカーへの結合量が増大していること。
〔4〕 配列番号:26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49及び50のいずれかに記載のアミノ酸配列を有するタンパク質を認識する抗体を含有する、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の疾患マーカー;
〔5〕 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の検出方法:
(a)被験者の生体試料から調製されたタンパク質と〔4〕に記載の疾患マーカーとを結合させる工程、
(b)該疾患マーカーに結合した生体試料由来のタンパク質又はその部分ペプチドを、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、及び
(c)上記(b)で得られる被験者の測定結果が、正常な生体試料について得られる測定結果に比して、以下の1)又は2)のいずれかであることを指標として、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の罹患を判断する工程:
1)配列番号:26、27、28、29、30、31、32及び33のいずれかに記載のアミノ酸配列を有するタンパク質を認識する抗体からなる疾患マーカーへの結合量が減少していること、
2)配列番号:34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49及び50のいずれかに記載のアミノ酸配列を有するタンパク質を認識する抗体からなる疾患マーカーへの結合量が増大していること;
〔6〕 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の改善もしくは治療薬のスクリーニング方法:
(a)被験物質と配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24及び25のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチド又はそのホモログを発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞における配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24及び25のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチド又はそのホモログの発現量を測定し、該発現量を被験物質に接触させない対照細胞における上記に対応するポリヌクレオチドの発現量と比較する工程、及び
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24及び25のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチド又はそのホモログの発現量を変動させる被験物質を、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の改善もしくは治療薬の候補物質として選択する工程;
〔7〕 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の改善もしくは治療薬のスクリーニング方法:
(a)被験物質と配列番号:26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49及び50のいずれかに記載のアミノ酸配列を有するタンパク質又はそのホモログを発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞における配列番号:26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49及び50のいずれかに記載のアミノ酸配列を有するタンパク質又はそのホモログの発現量を測定し、該発現量を、被験物質を接触させない対照細胞における上記に対応するタンパク質又はそのホモログの発現量と比較する工程、及び
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、配列番号:26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49及び50のいずれかに記載のアミノ酸配列を有するタンパク質又はそのホモログの発現量を変動させる被験物質を、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の改善もしくは治療薬の候補物質として選択する工程;
〔8〕 配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24及び25のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチド又はそのホモログの発現量を制御する物質を有効成分とする、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の改善又は治療薬;及び
〔9〕 配列番号:26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49及び50のいずれかに記載のアミノ酸配列を有するタンパク質又はそのホモログの発現量を制御する物質を有効成分とする、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の改善又は治療薬;
に関するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によって、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患のモデルである長期培養した3T3-L1細胞に特異的にその分泌量が変動するタンパク質(配列番号:26〜50のアミノ酸配列を有するタンパク質;以下本発明のタンパク質と称する場合がある)が明らかになった。かかるタンパク質、及びこれをコードするポリヌクレオチド(以下本発明のポリヌクレオチドと称する場合がある)は、糖尿病、肥満症、II型糖尿病、高脂血症、高血圧、動脈硬化症、脳卒中、肥満症、心筋梗塞、もしくは脂肪肝等の脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の遺伝子診断に用いられる疾患マーカー(プローブ、プライマー)として有用である。かかる疾患マーカーによれば前記疾患に罹患しているかどうか、及びその罹患の原因を明らかにすることができ(診断精度が向上)、これによってより適切な治療を施すことが可能となる。すなわち、本発明の疾患マーカーは脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の適切な治療のためのツールとして利用することができる。
また、上記ポリヌクレオチドの発現増大と上記疾患との関連性から、該ポリヌクレオチドの発現を抑制/誘導する物質は、上記脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の治療剤として有用であると考えられる。従って、本発明のポリヌクレオチドによれば、その発現の抑制/誘導を指標とすることによって、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の予防、改善ないし治療剤となり得る候補薬をスクリーニングし選別することが可能である。すなわち、本発明は、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の治療剤などの開発技術をも提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本明細書において、アミノ酸、(ポリ)ペプチド、(ポリ)ヌクレオチドなどの略号による表示は、IUPAC−IUBの規定〔IUPAC-IUB Communication on Biological Nomenclature, Eur. J. Biochem., 138: 9 (1984)〕、「塩基配列又はアミノ酸配列を含む明細書等の作成のためのガイドライン」(日本国特許庁編)、及び当該分野における慣用記号に従う。
【0012】
本明細書において「DNA」とは、2本鎖DNAのみならず、それを構成するセンス鎖及びアンチセンス鎖といった各1本鎖DNAを包含する趣旨で用いられる。またその長さによって特に制限されるものではない。従って、本明細書においてDNAとは、特に言及しない限り、ヒトゲノムDNAを含む2本鎖DNA及びcDNAを含む1本鎖DNA(正鎖)並びに該正鎖と相補的な配列を有する1本鎖DNA(相補鎖)、及びこれらの断片のいずれもが含まれる。
【0013】
また、当該「DNA」には、特定の塩基配列で示される「DNA」だけでなく、これらによりコードされるタンパク質と生物学的機能が同等であるタンパク質(例えば、同族体、変異体、誘導体など)をコードする「DNA」が包含される(本明細書においては、これらを総括して上記特定の塩基配列で示される「DNA」の「ホモログ」ともいう。)。かかるホモログとしては、具体的には、後述する(1-1)項に記載のストリンジェントな条件で、前記特定塩基配列で示される「DNA」とハイブリダイズするものを挙げることができる。
【0014】
例えば同族体をコードするDNA(ホモログ)としては、ヒトDNAに対応するマウスやラットなどの他生物種のDNAが例示できる。これらのDNA (ホモログ)は、HomoloGene(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/HomoloGene/)により同定することができる。具体的には、特定ヒト塩基配列をBLAST(Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 90: 5873-5877, 1993、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)にかけて一致する(Scoreが最も高く、E-valueが0でかつIdentityが100%を示す)配列のアクセッション番号を取得する。そのアクセッション番号をUniGene (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/UniGene/)に入力して得られたUniGene Cluster ID(Hs.で示す番号)をHomoloGeneに入力する。結果として得られた他生物種DNAとヒトDNAとのホモログの相関を示したリストから、ヒトDNAに該当するマウスやラットなどの他生物種のDNAを選抜することができる。なお、DNAは、機能領域の別を問うものではなく、例えば発現制御領域、コード領域、エキソン、又はイントロンを含むことができる。
【0015】
本明細書において「ポリヌクレオチド」とは、RNA及びDNAのいずれをも包含する趣旨で用いられる。なお、上記DNAには、cDNA、ゲノムDNA、及び合成DNAのいずれもが含まれる。また上記RNAには、total RNA、mRNA、rRNA、及び合成のRNAのいずれもが含まれる。
【0016】
本明細書において「タンパク質」又は「(ポリ)ペプチド」には、特定の塩基配列で示される「タンパク質」又は「(ポリ)ペプチド」だけでなく、これらと生物学的機能が同等である「タンパク質」又は「(ポリ)ペプチド」(例えば、同族体、変異体、誘導体など)が包含される。なお、本明細書において、これらを上記特定のアミノ酸配列で示される「タンパク質」又は「(ポリ)ペプチド」の「ホモログ」ともいう。例えば、上記同族体(ホモログ)としては、ヒトのタンパク質に該当するマウスやラットなどの他生物種のタンパク質が例示でき、これらはHomoloGene (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/HomoloGene/)により同定された遺伝子(ホモログ)の塩基配列から演繹的に同定することができる。また、上記変異体には、天然に存在するアレル変異体、天然に存在しない変異体、及び人為的に欠失、置換、付加及び挿入されることによって改変されたアミノ酸配列を有する変異体が包含される。なお、かかる変異体としては、変異のないタンパク質又は(ポリ)ペプチドと、少なくとも70%、好ましくは80%、より好ましくは95%、さらにより好ましくは97%相同なものを挙げることができる。
【0017】
本明細書でいう「抗体」には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、又はFabフラグメントやFab発現ライブラリーによって生成されるフラグメントなどのように抗原結合性を有する上記抗体の一部が包含される。
【0018】
さらに本明細書において「疾患マーカー」とは、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の罹患の有無若しくは罹患の程度を診断するために、また、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の改善、治療などに有用な候補物質をスクリーニングするために、直接又は間接的に利用されるものであり、例えば、脂肪細胞の肥大化の亢進に関連して生体内での発現が変動する遺伝子又はタンパク質を特異的に認識し、また結合することのできる(ポリ)(オリゴ)ヌクレオチド及び抗体が包含される。これらの(ポリ)(オリゴ)ヌクレオチド及び抗体は、上記性質に基づいて、生体内、特に脂肪組織などで発現した前記遺伝子及びタンパク質を検出するためのプローブとして、また(オリゴ)ヌクレオチドは生体内、特に脂肪組織などで発現した前記遺伝子を増幅するためのプライマーとして有効に利用することができる。
【0019】
本発明は、前述するように、配列番号:76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99及び100(配列番号:76〜100)のいずれかに記載のアミノ酸配列を有するタンパク質(以下、これらのタンパク質を総称して本タンパク質ともいう。)が、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患のモデルとなり得る、長期間培養した3T3-L1脂肪細胞において特異的に発現が変化していることを見出したことに基づくものである。
【0020】
従って、これらのタンパク質及びそれらをコードするポリヌクレオチド(配列番号:51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74及び75(配列番号:51〜75)のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチド)のヒトホモログは、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の解明、診断、予防及び治療に有効に利用することができ、かかる利用によって医学並びに臨床学上、有用な情報や手段を得ることができる。また、本発明のタンパク質及び本発明のポリヌクレオチド並びにそれらからの派生物(例えば、抗体など)は、上記脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の治療、並びに該治療に有効に用いられる薬剤の開発に好適に利用することができる。さらに、個体又は脂肪組織における、本発明のタンパク質や本発明のポリヌクレオチドの発現の検出、又は該ポリヌクレオチドの変異又はその発現不全の検出は、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の解明や診断に有効に利用することができる。
本明細書において、「脂肪細胞の肥大化を伴う疾患」としては、肥満症、II型糖尿病、高脂血症、高血圧、動脈硬化症、脳卒中、心筋梗塞等の疾患や、メタボリックシンドロームを挙げることができる。
以下、本発明のタンパク質及び本発明のポリヌクレオチドについて、具体的な用途を説明する。
【0021】
(1)脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の疾患マーカー及びその応用
(1-1) ポリヌクレオチド
本発明は、前述するように、配列番号:76〜100のいずれかに記載のアミノ酸配列を有するタンパク質が、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患のモデルとなり得る30日間培養した3T3-L1脂肪細胞において特異的に発現が変化しているという知見を発端に、これらをコードするポリヌクレオチドの発現の有無や発現の程度を検出することによって上記脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の罹患の有無や罹患の程度が検出でき、該疾患の診断を正確に行うことができるという発想に基づくものである。すなわち、本発明は、被験者における上記ポリヌクレオチドの発現の有無又はその程度を検出することによって、被験者について脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の罹患の有無又は罹患の程度を診断することのできるツール(疾患マーカー)として有用なポリヌクレオチドを提供するものである。
【0022】
本発明における配列番号:1〜25に記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドは、公知であり、当業者にとって公知の方法で取得することができる。
すなわち配列番号1に記載の塩基配列よりなる遺伝子は、chromosome 21 open reading frame 33 (C21orf33)として公知であり、その配列はGenbank Acc. No.: NM_004649に記載されている。そのマウスホモログである配列番号51に記載の塩基配列よりなる遺伝子は、DNA segment, Chr10, Johns Hopkins University 81 expressedとして公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NM_138601.1に記載されている。
配列番号2に記載の塩基配列よりなる遺伝子は、Niemann Pick type C2(NPC2)として公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NM_006432に記載されている。そのマウスホモログである配列番号52に記載の塩基配列よりなる遺伝子の配列はGenbank Acc.No.:NM_023409.3に記載されている。
配列番号3に記載の塩基配列よりなる遺伝子は、cyclophilin Cもしくはpeptidylprolyl isomerase C(Ppic)として公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NM_000943に記載されている。そのマウスホモログである配列番号53に記載の塩基配列よりなる遺伝子の配列はGenbank Acc.No.:NM_008908.1に記載されている。
配列番号4に記載の塩基配列よりなる遺伝子は、arginine-rich protein, mutated in early stage tumors(Armet)として公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NM_006010に記載されている。そのマウスホモログである配列番号54に記載の塩基配列よりなる遺伝子の配列はGenbank Acc.No.:NM_029103に記載されている。
配列番号5に記載の塩基配列よりなる遺伝子は、interleukin 25として公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NM_019107に記載されている。そのマウスホモログである配列番号55に記載の塩基配列よりなる遺伝子の配列はGenbank Acc.No.:NM_080837.1に記載されている。
配列番号6に記載の塩基配列よりなる遺伝子は、transmembrane protein 4(Tmem4)として公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NM_014255に記載されている。そのマウスホモログである配列番号56に記載の塩基配列よりなる遺伝子の配列はGenbank Acc.No.:NM_019953.1に記載されている。
配列番号7に記載の塩基配列よりなる遺伝子は、proline synthetase co-transcribed(Prosc)として公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NM_007198に記載されている。そのマウスホモログである配列番号57に記載の塩基配列よりなる遺伝子の配列はGenbank Acc.No.:NM_054057に記載されている。
配列番号8に記載の塩基配列よりなる遺伝子は、pleiotrophin(Ptn)として公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NM_002825に記載されている。そのマウスホモログである配列番号58に記載の塩基配列よりなる遺伝子の配列はGenbank Acc.No.:NM_008973.1に記載されている。
配列番号9に記載の塩基配列よりなる遺伝子は、carboxylesterase 1 (monocyte/macrophage serine esterase 1) (CES1)として公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NM_001266に記載されている。そのマウスホモログである配列番号59に記載の塩基配列よりなる遺伝子の配列はexpressed sequence AU018778もしくは別名hypothetical protein MGC18894として公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NM_144930.1に記載されている。
配列番号10に記載の塩基配列よりなる遺伝子は、disintegrin-like and metalloprotease(reprolysintype) with thrombospondin type 1 motif, 1(Adamts1)として公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NM_006988に記載されている。そのマウスホモログである配列番号60に記載の塩基配列よりなる遺伝子の配列はGenbank Acc.No.:NM_009621に記載されている。
配列番号11に記載の塩基配列よりなる遺伝子は、reticulocalbin 1(Rcn)として公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NM_002901に記載されている。そのマウスホモログである配列番号61に記載の塩基配列よりなる遺伝子の配列はGenbank Acc.No.:NM_009037.1に記載されている。
配列番号12に記載の塩基配列よりなる遺伝子は、complement component (3b/4b) receptor 1, including Knops blood group system (CR1), transcript variantとして公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NM_000573に記載されている。そのマウスホモログである配列番号62に記載の塩基配列よりなる遺伝子の配列は、polydomain protein(Polydom)として公知でありその配列はGenbank Acc.No.:NM_022814.1に記載されている。
配列番号13に記載の塩基配列よりなる遺伝子は、calreticulin(Calr)として公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NM_004343に記載されている。そのマウスホモログである配列番号63に記載の塩基配列よりなる遺伝子の配列はGenbank Acc.No.:NM_007591.2に記載されている。
配列番号14に記載の塩基配列よりなる遺伝子は、family with sequence similarity 3, member C(Fam3C)として公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NM_014888に記載されている。そのマウスホモログである配列番号64に記載の塩基配列よりなる遺伝子の配列はGenbank Acc.No.:NM_138587に記載されている。
配列番号15に記載の塩基配列よりなる遺伝子は、granulin(Grn)もしくは別名epithelinとして公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NM_002087に記載されている。そのマウスホモログである配列番号65に記載の塩基配列よりなる遺伝子の配列はGenbank Acc.No.:NM_008175.2に記載されている。
配列番号16に記載の塩基配列よりなる遺伝子は、follistatin-like 1(Fstl1)もしくは別名TGF beta-stimulated clone 36(TSC-36)として公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NM_007085に記載されている。そのマウスホモログである配列番号66に記載の塩基配列よりなる遺伝子の配列はGenbank Acc.No.:NM_008047に記載されている。
配列番号17に記載の塩基配列よりなる遺伝子は、vitamin D binding proteinとして公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NM_000583に記載されている。そのマウスホモログである配列番号67に記載の塩基配列よりなる遺伝子の配列はGenbank Acc.No.:XM_132170.3に記載されている。
配列番号18に記載の塩基配列よりなる遺伝子は、nucleobindin 1(Nucb)として公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NM_006184に記載されている。そのマウスホモログである配列番号68に記載の塩基配列よりなる遺伝子の配列はGenbank Acc.No.:NM_008749.1に記載されている。
配列番号19に記載の塩基配列よりなる遺伝子は、retinoic acid receptor responder(tazaroteneinduced) 2(Rarres2)として公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NM_002889に記載されている。そのマウスホモログである配列番号69に記載の塩基配列よりなる遺伝子の配列はGenbank Acc.No.:NM_027852.1に記載されている。
配列番号20に記載の塩基配列よりなる遺伝子は、arylsulfatase A(Arsa)として公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NM_000487に記載されている。そのマウスホモログである配列番号70に記載の塩基配列よりなる遺伝子の配列はGenbank Acc.No.:NM_009713.1に記載されている。
配列番号21に記載の塩基配列よりなる遺伝子は、dermatopontin(Dpt)もしくは別名early quiescence-1(EQ-1)として公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NM_001937に記載されている。そのマウスホモログである配列番号71に記載の塩基配列よりなる遺伝子の配列はGenbank Acc.No.:NM_019759.1に記載されている。
配列番号22に記載の塩基配列よりなる遺伝子は、epidermal growth factor-containing fibulin-like extracellular matrixprotein 2(Efemp2)もしくは別名fibulin-4として公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NM_016938に記載されている。そのマウスホモログである配列番号72に記載の塩基配列よりなる遺伝子の配列はGenbankAcc.No.:NM_021474.2に記載されている。
配列番号23に記載の塩基配列よりなる遺伝子は、immunoglobulin superfamily containing leucine-rich repeat(Islr)として公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NM_005545に記載されている。そのマウスホモログである配列番号73に記載の塩基配列よりなる遺伝子の配列はGenbank Acc.No.:NM_012043.2に記載されている。
配列番号24に記載の塩基配列よりなる遺伝子は、olfactomedin-like 3(Olfml3)として公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NM_020190に記載されている。そのマウスホモログである配列番号74に記載の塩基配列よりなる遺伝子の配列はGenbank Acc.No.:NM_133859.1に記載されている。
配列番号25に記載の塩基配列よりなる遺伝子は、transcobalamin 2(Tcn2)として公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NM_000355に記載されている。そのマウスホモログである配列番号75に記載の塩基配列よりなる遺伝子の配列はGenbank Acc.No.:NM_015749.1に記載されている。
【0023】
また、本発明のポリヌクレオチドは、後述の(3)項に記載するような脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の予防、改善又は治療に有用な候補物質のスクリーニングにおいて、配列番号:1〜25のいずれかに記載の塩基配列を有する遺伝子の発現変動を検出するためのスクリーニングツール(疾患マーカー)としても有用である。
【0024】
本発明の疾患マーカーは、配列番号:1〜25のいずれかに記載の1又は複数の塩基配列において、連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/又はそれに相補的なポリヌクレオチドからなることを特徴とする。
【0025】
ここで相補的なポリヌクレオチド(相補鎖、逆鎖)とは、上記各配列番号に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドの全長配列、又は上記各塩基配列において少なくとも連続した15塩基長の塩基配列を有するその部分配列(ここでは便宜上、これらを「正鎖」ともいう)に対して、A:T及びG:Cといった塩基対関係に基づいて、塩基的に相補的な関係にあるポリヌクレオチドを意味するものである。ただし、かかる相補鎖は、対象とする正鎖の塩基配列と完全に相補配列を形成する場合に限らず、対象とする正鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズすることができる程度の相補関係を有するものであってもよい。なお、ここでストリンジェントな条件は、Berger and Kimmel (1987, Guide to Molecular Cloning Techniques Methods in Enzymology, Vol. 152, Academic Press, San Diego CA) に示されるように、複合体或いはプローブと結合する核酸の融解温度(Tm)に基づいて決定することができる。例えばハイブリダイズ後の洗浄条件として、通常「1×SSC、0.1%SDS、37℃」程度の条件を挙げることができる。相補鎖はかかる条件で洗浄しても対象とする正鎖とハイブリダイズ状態を維持するものであることが好ましい。特に制限されないが、より厳しいハイブリダイズ条件として「0.5×SSC、0.1%SDS、42℃」程度、さらに厳しいハイブリダイズ条件として「0.1×SSC、0.1%SDS、65℃」程度の洗浄条件を挙げることができる。具体的には、このような相補鎖として、対象の正鎖の塩基配列と完全に相補的な関係にある塩基配列からなる鎖、並びに該正鎖と少なくとも90%、好ましくは95%の相同性を有する塩基配列からなる鎖を例示することができる。
【0026】
また、正鎖側のポリヌクレオチドには、配列番号:1〜25のいずれかに記載の塩基配列又はその部分配列を有するものだけでなく、上記相補鎖の塩基配列に対してさらに相補的な関係にある塩基配列からなる鎖を含めることができる。
【0027】
さらに上記正鎖のポリヌクレオチド及び相補鎖(逆鎖)のポリヌクレオチドは、各々一本鎖の形態で疾患マーカーとして使用されても、また二本鎖の形態で疾患マーカーとして使用されてもよい。
【0028】
本発明の脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の疾患マーカーは、具体的には配列番号:1〜25のいずれかに記載される塩基配列(全長配列)からなるポリヌクレオチドであってもよいし、その相補配列からなるポリヌクレオチドであってもよい。また、配列番号:1〜25のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドもしくは該ポリヌクレオチドに由来するポリヌクレオチドを選択的に(特異的に)認識するものであれば、上記全長配列若しくはその相補配列の部分配列からなるポリヌクレオチドであってもよい。この場合、部分配列としては、上記全長配列若しくはその相補配列の塩基配列から任意に選択される、少なくとも15個の連続した塩基長を有するポリヌクレオチドを挙げることができる。
【0029】
なお、ここで「選択的に(特異的に)認識する」とは、例えばノーザンブロット法においては、配列番号:1〜25のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチド又はこれらに由来するポリヌクレオチドが特異的に検出できること、またRT-PCR法においては配列番号:1〜25のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチド又はこれらに由来するポリヌクレオチドが特異的に生成されることを意味するが、それに限定されることなく、当業者が上記検出物又は生成物がこれらのポリヌクレオチドに由来するものであると判断できるものであればよい。
【0030】
そのような本発明の疾患マーカーは、検出(認識)する対象のポリヌクレオチド(配列番号:1〜25)に応じて、配列番号:1〜25のいずれかに示される塩基配列をもとに、例えばprimer 3( http://www.genome.wi.mit.edu/cgi-bin/primer/primer3.cgi)あるいはベクターNTI(Infomax社製)を利用して設計することができる。具体的には配列番号:1〜25のいずれかに示される塩基配列をprimer 3又はベクターNTIのソフトウエアにかけて得られる、プライマー又はプローブの候補配列、若しくは少なくとも該配列を一部に含む配列をプライマー又はプローブとして使用することができる。
【0031】
本発明の疾患マーカーは、上述するように連続する少なくとも15塩基の長さを有するものであればよいが、具体的にはマーカーの用途に応じて、長さを適宜選択し設定することができる。
【0032】
(1-2)プローブ又はプライマーとしてのポリヌクレオチド
本発明の疾患マーカーは、上記各ポリヌクレオチドの発現によって生じたRNA又はそれに由来するポリヌクレオチドを特異的に認識し増幅するためのプライマーとして、又は該RNA又はそれに由来するポリヌクレオチドを特異的に検出するためのプローブとして利用することができる。
【0033】
上記疾患マーカーを脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の検出(遺伝子診断)においてプライマーとして用いる場合には、通常15bp〜100bp、好ましくは15bp〜50bp、より好ましくは15bp〜35bpの塩基長を有するものが例示できる。また検出プローブとして用いる場合には、通常15bp〜全配列の塩基数、好ましくは15bp〜1kb、より好ましくは100bp〜1kbの塩基長を有するものが例示できる。
【0034】
本発明の疾患マーカーは、ノーザンブロット法、RT-PCR法、in situハイブリダーゼーション法などといった、特定のポリヌクレオチドを特異的に検出する公知の方法において、常法に従ってプライマー又はプローブとして利用することができ、これによって脂肪細胞の肥大化を伴う疾患に関連する配列番号:1〜25のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドの発現の有無又は発現レベル(発現量)を評価することができる。
【0035】
測定対象となる「生体試料」としては、使用する検出方法の種類に応じて適宜選択することができる。該試料は、例えば、被験者の生体組織、特に脂肪組織の一部をバイオプシ等で採取し、そこから常法に従って調製した前記生体組織から調製されるタンパク質もしくはtotal RNAを用いてもよいし、さらに該RNAをもとにして調製される各種のポリヌクレオチドを用いてもよい。あるいは、生体試料として、被験者の血液、尿等の体液を用いることもできる。
【0036】
また、配列番号:1〜25のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドの生体組織における発現レベルは、DNAチップを利用して検出あるいは定量することができる。この場合、本発明の疾患マーカーは当該DNAチップのプローブとして使用することができる(例えば、Affymetrix社のGene Chip Human Genome U95 A, B, C, D, Eの場合、25bpの長さのポリヌクレオチドプローブとして用いられる)。本発明の疾患マーカーをプローブとするDNAチップを、生体組織から採取したRNAをもとに調製される標識DNA又はRNAとハイブリダイズさせることにより、本発明の疾患マーカー(プローブ)と標識DNA又はRNAとの複合体が形成される。該複合体を該標識DNA又はRNAの標識を指標として検出することにより、配列番号:1〜25のいずれかに記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドの生体組織中での発現の有無又は発現レベル(発現量)が評価できる。
【0037】
なお、上記DNAチップは、配列番号:1〜25のいずれかで示される塩基配列を有するポリヌクレオチドと結合し得る1種又は2種以上の本発明疾患マーカーを含んでいればよい。複数の疾患マーカーを含むDNAチップの利用によれば、ひとつの生体試料について、同時に複数の遺伝子の、発現の有無又は発現レベルの評価が可能である。
【0038】
本発明の疾患マーカーは、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の診断、検出(罹患の有無や罹患の程度の診断)に有用である。具体的には、該疾患マーカーを利用した脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の診断は、被験者の脂肪組織と正常者の脂肪組織における配列番号:1〜25のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドの発現レベルの違いを判定することによって行うことができる。
【0039】
この場合、発現レベルの違いには、発現のある/なしの違いだけでなく、被験者の脂肪組織と正常者の脂肪組織の両者ともに発現がある場合でも、両者間の発現量の格差が2倍以上、好ましくは3倍以上の場合が含まれる。
【0040】
例えば、配列番号:26〜33に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質のマウスホモログは、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患のモデルとなる3T3-L1細胞において、特異的に発現量が減少する。従って、配列番号:1〜8のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドが、被験者の脂肪組織で特異的に減少していれば、好ましくは、該発現量が正常者の脂肪組織の発現量と比べて2倍以下に、より好ましくは3倍以下に減少していれば、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の罹患が疑われる。
また、配列番号:34〜50に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質のマウスホモログは、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患のモデルとなる3T3-L1細胞において、特異的に発現量が増大していた。従って、配列番号:9〜25のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドが、被験者の脂肪組織で特異的に増大していれば、好ましくは、該発現量が正常者の脂肪組織の発現量と比べて2倍以上、より好ましくは3倍以上増大していれば、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の罹患が疑われる。
これらの場合の脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の検出(診断)には、上記ポリヌクレオチドに対応するいずれかに記載の塩基配列(配列番号:1〜25のいずれかに記載の塩基配列)において、連続する少なくとも15塩基長を有するポリヌクレオチド及び/又はそれに相補的なポリヌクレオチドからなる本発明の疾患マーカーが有用である。
【0041】
本発明において脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の検出(診断)は、被験者の生体組織(生体試料)、特に脂肪組織における配列番号:1〜25のいずれかに記載の塩基配列を有する遺伝子の少なくとも1つの発現の有無又は発現レベル(発現量)を評価することによって行われる。検出(診断)の精度や正確性を高めるためには、上記遺伝子群の2以上、好ましくは複数個の遺伝子、より好ましくは上記遺伝子群のすべての遺伝子について、その発現の有無又は発現レベル(発現量)を評価することが望ましい。
【0042】
(1-3)抗体
本発明は、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の疾患マーカーとして、配列番号:1〜25のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドの発現産物(タンパク質)を特異的に認識することのできる抗体を提供する。
【0043】
なお、配列番号:1に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的様態としては配列番号:26で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号:2に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的様態としては配列番号:27で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号:3に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的様態としては配列番号:28で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号:4に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的様態としては配列番号:29で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号:5に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的様態としては配列番号:30で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号:6に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的様態としては配列番号:31で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号:7に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的様態としては配列番号:32で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号:8に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的様態としては配列番号:33で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号:9に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的様態としては配列番号:34で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号:10に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的様態としては配列番号:35で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号:11に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的様態としては配列番号:36で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号:12に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的様態としては配列番号:37で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号:13に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的様態としては配列番号:38で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号:14に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的様態としては配列番号:39で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号:15に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的様態としては配列番号:40で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号:16に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的様態としては配列番号:41で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号:17に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的様態としては配列番号:42で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号:18に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的様態としては配列番号:43で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号:19に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的様態としては配列番号:44で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号:20に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的様態としては配列番号:45で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号:21に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的様態としては配列番号:46で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号:22に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的様態としては配列番号:47で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号:23に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的様態としては配列番号:48で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号:24に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的様態としては配列番号:49で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、配列番号:25に示されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の具体的様態としては配列番号:50で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を、例示することができる。
【0044】
本発明における配列番号:26〜50のいずれかに記載のアミノ酸配列を有するタンパク質は、公知であり、当業者にとって公知の方法で取得することができる。
すなわち配列番号26に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質はchromosome 21 open reading frame 33 (C21orf33)として公知であり、その配列はGenbank Acc. No.: NP_004640に記載されている。そのマウスホモログである配列番号76に記載のアミノ酸配列よりなるタンパク質は、DNA segment, Chr10, Johns Hopkins University 81 expressedとして公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NP_613067.1に記載されている。
配列番号27に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質はNiemann Pick type C2として公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NP_006423に記載されている。そのマウスホモログである配列番号77に記載のアミノ酸配列よりなるタンパク質の配列はGenbank Acc.No.:NP_075898.1に記載されている。
配列番号28に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質はcyclophilin Cもしくはpeptidylprolyl isomerase Cとして公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NP_000934に記載されている。そのマウスホモログである配列番号78に記載のアミノ酸配列よりなるタンパク質の配列はGenbank Acc.No.:NP_032934.1に記載されている。
配列番号29に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質はarginine-rich protein, mutated in early stage tumorsとして公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NP_006001に記載されている。そのマウスホモログである配列番号79に記載のアミノ酸配列よりなるタンパク質の配列はGenbank Acc.No.:NP_083379に記載されている。
配列番号30に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質はinterleukin 25として公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NP_061980に記載されている。そのマウスホモログである配列番号80に記載のアミノ酸配列よりなるタンパク質の配列はGenbank Acc.No.:NP_543027.1に記載されている。
配列番号31に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質はtransmembrane protein 4として公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NP_055070に記載されている。そのマウスホモログである配列番号81に記載のアミノ酸配列よりなるタンパク質の配列はGenbank Acc.No.:NP_064337.1に記載されている。
配列番号32に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質はproline synthetase co-transcribedとして公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NP_009129に記載されている。そのマウスホモログである配列番号82に記載のアミノ酸配列よりなるタンパク質の配列はGenbank Acc.No.:NP_473398.1に記載されている。
配列番号33に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質はpleiotrophinとして公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NP_002816に記載されている。そのマウスホモログである配列番号83に記載のアミノ酸配列よりなるタンパク質の配列はGenbank Acc.No.:NP_032999.1に記載されている。
配列番号34に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質はcarboxylesterase 1 (monocyte/macrophage serine esterase 1) (CES1)として公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NP_001257に記載されている。そのマウスホモログである配列番号84に記載のアミノ酸配列よりなるタンパク質の配列はexpressed sequence AU018778もしくは別名hypothetical protein MGC18894として公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NP_659179.1に記載されている。
配列番号35に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質はdisintegrin-like and metalloprotease(reprolysintype) with thrombospondin type 1 motif, 1として公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NP_008919に記載されている。そのマウスホモログである配列番号85に記載のアミノ酸配列よりなるタンパク質の配列はGenbank Acc.No.:NP_033751に記載されている。
配列番号36に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質はreticulocalbin 1として公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NP_002892に記載されている。そのマウスホモログである配列番号86に記載のアミノ酸配列よりなるタンパク質の配列はGenbank Acc.No.:NP_033063.1に記載されている。
配列番号37に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質はpolydomain proteinとして公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NP_000564に記載されている。そのマウスホモログである配列番号87に記載のアミノ酸配列よりなるタンパク質の配列はGenbank Acc.No.:NP_073725.1に記載されている。
配列番号38に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質はcalreticulinとして公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NP_004334に記載されている。そのマウスホモログである配列番号88に記載のアミノ酸配列よりなるタンパク質の配列はGenbank Acc.No.:NP_031617.1に記載されている。
配列番号39に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質はfamily with sequence similarity 3, member Cとして公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NP_055703に記載されている。そのマウスホモログである配列番号89に記載のアミノ酸配列よりなるタンパク質の配列はGenbank Acc.No.:NP_613053に記載されている。
配列番号40に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質はgranulinもしくは別名epithelinとして公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NP_002078に記載されている。そのマウスホモログである配列番号90に記載のアミノ酸配列よりなるタンパク質の配列はGenbank Acc.No.:NP_032201に記載されている。
配列番号41に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質はfollistatin-like 1もしくは別名TGF beta-stimulated clone 36(TSC-36)として公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NP_009016に記載されている。そのマウスホモログである配列番号91に記載のアミノ酸配列よりなるタンパク質の配列はGenbank Acc.No.:NP_032073に記載されている。
配列番号42に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質はvitamin D binding proteinとして公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NP_000574に記載されている。そのマウスホモログである配列番号92に記載のアミノ酸配列よりなるタンパク質の配列はGenbank Acc.No.:XP_132170.3に記載されている。
配列番号43に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質はnucleobindin 1として公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NP_006175に記載されている。そのマウスホモログである配列番号93に記載のアミノ酸配列よりなるタンパク質の配列はGenbank Acc.No.:NP_032775に記載されている。
配列番号44に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質はretinoic acid receptor responder(tazaroteneinduced) 2として公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NP_002880に記載されている。そのマウスホモログである配列番号94に記載のアミノ酸配列よりなるタンパク質の配列はGenbank Acc.No.:NP_082128.1に記載されている。
配列番号45に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質はarylsulfatase Aとして公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NP_000478に記載されている。そのマウスホモログである配列番号95に記載のアミノ酸配列よりなるタンパク質の配列はGenbank Acc.No.:NP_033843に記載されている。
配列番号46に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質はdermatopontinもしくは別名early quiescence-1(EQ-1)として公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NP_001928に記載されている。そのマウスホモログである配列番号96に記載のアミノ酸配列よりなるタンパク質の配列はGenbank Acc.No.:NP_062733に記載されている。
配列番号47に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質はepidermal growth factor-containing fibulin-like extra cellular matrixprotein 2もしくは別名fibulin-4として公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NP_058634に記載されている。そのマウスホモログである配列番号97に記載のアミノ酸配列よりなるタンパク質の配列はGenbank Acc.No.:NP_067449に記載されている。
配列番号48に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質はimmunoglobulin superfamily containing leucine-rich repeatとして公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NP_005536に記載されている。そのマウスホモログである配列番号98に記載のアミノ酸配列よりなるタンパク質の配列はGenbank Acc.No.:NP_036173.1に記載されている。
配列番号49に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質はolfactomedin-like 3として公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NP_064575に記載されている。そのマウスホモログである配列番号99に記載のアミノ酸配列よりなるタンパク質の配列はGenbank Acc.No.:NP_598620.1に記載されている。
配列番号50に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質はtranscobalamin 2として公知であり、その配列はGenbank Acc.No.:NP_000346に記載されている。そのマウスホモログである配列番号100に記載のアミノ酸配列よりなるタンパク質の配列はGenbank Acc.No.:NP_056564.1に記載されている。
【0045】
本発明の抗体は、その形態に特に制限はなく、上記タンパク質を免疫抗原とするポリクローナル抗体であっても、またそのモノクローナル抗体であってもよい。さらに、当該タンパク質を構成するアミノ酸配列のうち少なくとも連続する、通常8アミノ酸、好ましくは15アミノ酸、更に好ましくは20アミノ酸からなるポリペプチドに対して抗原結合性を有する抗体も、本発明の抗体に含まれる。
【0046】
これらの抗体の製造方法は、すでに周知であり、本発明の抗体もこれらの常法に従って製造することができる(Current protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. John Wiley and Sons. Section 11.12〜11.13)。具体的には、本発明の抗体がポリクローナル抗体の場合には、常法に従って大腸菌等で発現し精製した上記タンパク質を用いて、あるいは常法に従って当該タンパク質の部分アミノ酸配列を有するオリゴペプチドを合成して、家兎等の非ヒト動物に免疫し、該免疫動物の血清から常法に従って得ることが可能である。一方、モノクローナル抗体の場合には、常法に従って大腸菌等で発現し精製した上記タンパク質、あるいはこれらタンパク質の部分アミノ酸配列を有するオリゴペプチドをマウス等の非ヒト動物に免疫し、得られた脾臓細胞と骨髄腫細胞とを細胞融合させて調製したハイブリドーマ細胞の中から得ることができる(Current protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. John Wiley and Sons. Section 11.4〜11.11)。
【0047】
抗体の作製に免疫抗原として使用される配列番号:26〜50のいずれかに記載のいずれかのアミノ酸配列を含むタンパク質は、本発明により提供されるポリヌクレオチドの配列情報(配列番号:1〜25)に基づいて、DNAクローニング、各プラスミドの構築、宿主へのトランスフェクション、形質転換体の培養及び培養物からのタンパク質の回収の操作により得ることができる。これらの操作は、当業者に既知の方法、あるいは文献記載の方法(Molecular Cloning, T.Maniatis et al., CSH Laboratory (1983), DNA Cloning, DM. Glover, IRL PRESS (1985))などに準じて行うことができる。
【0048】
具体的には、配列番号:26〜50に記載のいずれかのアミノ酸配列を含むタンパク質をコードする遺伝子が所望の宿主細胞中で発現できる組み換えDNA(発現ベクター)を作製し、これを宿主細胞に導入して形質転換し、該形質転換体を培養して、得られる培養物から、目的タンパク質を回収することによって、本発明抗体の製造のための免疫抗原としてのタンパク質を得ることができる。また、これら配列番号:26〜50に記載のいずれかのアミノ酸配列を含むタンパク質の部分ペプチドは、本発明により提供されるアミノ酸配列の情報(配列番号:26〜50)に従って、一般的な化学合成法(ペプチド合成)によって製造することもできる。
【0049】
なお、本発明の配列番号:26〜50に記載のいずれかのアミノ酸配列を含むタンパク質には、配列番号:26〜50のいずれかに記載のアミノ酸配列に関わるタンパク質のみならず、その相同物も包含される。該相同物としては、上記配列番号:26〜50のいずれかで示されるアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ改変前の元のタンパク質と免疫学的に同等の活性を有するタンパク質を挙げることができる。
【0050】
なお、ここで配列番号:1〜25のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質(配列番号:26〜50のいずれかに記載のアミノ酸配列を有するタンパク質)の機能と同等の生物学的機能を有するタンパク質としては、各々対応するタンパク質と生化学的又は薬理学的機能において同等の機能を有するタンパク質を挙げることができる。また配列番号:1〜25のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質(配列番号:26〜50のいずれかに記載のアミノ酸配列を有するタンパク質)と免疫学的活性において同等の活性を有するタンパク質としては、適当な動物あるいはその細胞において特定の免疫反応を誘発し、かつ各対応するタンパク質に対する抗体と特異的に結合する能力を有するタンパク質を挙げることができる。
【0051】
なお、タンパク質におけるアミノ酸の変異数や変異部位は、その生物学的機能及び/又は免疫学的活性が保持される限り制限はない。生物学的機能や免疫学的活性を喪失することなくアミノ酸残基が、どのように、何個置換、挿入あるいは欠失されればよいかを決定する指標は、当業者に周知のコンピュータプログラム、例えばDNA Star softwareを用いて見出すことができる。例えば変異数は、典型的には、全アミノ酸の10%以内であり、好ましくは全アミノ酸の5%以内であり、さらに好ましくは全アミノ酸の1%以内である。また置換されるアミノ酸は、置換後に得られるタンパク質が、置換前のタンパク質(配列番号:1〜25のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質(配列番号:26〜50のいずれかに記載のアミノ酸配列を有するタンパク質)の生物学的機能及び/又は免疫学的活性を保持している限り、特に制限されないが、タンパク質の構造保持の観点から、残基の極性、電荷、可溶性、疎水性、親水性並びに両親媒性など、置換前のアミノ酸と似た性質を有するアミノ酸であることが好ましい。例えば、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Met、Phe及びTrpは互いに非極性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn及びGlnは互いに非荷電性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、Asp及びGluは互いに酸性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、またLys、Arg及びHisは互いに塩基性アミノ酸に分類されるアミノ酸である。ゆえに、これらを指標として同群に属するアミノ酸を適宜選択することができる。
【0052】
また本発明の抗体は、配列番号:1〜25のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質(配列番号:26〜50のいずれかに記載のアミノ酸配列を有するタンパク質)又は当該タンパク質の相同物の部分アミノ酸配列を有するオリゴペプチドを用いて調製されるものであってもよい。かかる抗体誘導のために用いられるオリゴペプチドは、機能的な生物活性を有することは要しないが、各々対応する上記のタンパク質と同様な免疫原特性を有するものであることが望ましい。好ましくはかかる特性を有し、配列番号:1〜25のいずれかで示される塩基配列を有するポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質のアミノ酸配列(配列番号:26〜50のいずれかに示されるアミノ酸配列)において少なくとも連続する8アミノ酸、好ましくは15アミノ酸、より好ましくは20アミノ酸からなるポリペプチドを例示することができる。
【0053】
かかるポリペプチドに対する抗体の生成は、宿主に応じて種々のアジュバントを用いて免疫学的反応を高めることによって行うこともできる。限定はされないが、そのようなアジュバントには、フロイントアジュバント、水酸化アルミニウムのようなミネラルゲル、並びにリゾレシチン、プルロニックポリオル、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーホールリンペットヘモシアニン及びジニトロフェノールのような表面活性物質、BCG(カルメット−ゲラン桿菌)やコリネバクテリウム-パルヴムなどのヒトアジュバントなどがある。
【0054】
本発明の抗体は配列番号:1〜25のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質(配列番号:26〜50のいずれかに記載のアミノ酸配列を有するタンパク質)又は当該タンパク質の相同物に特異的に結合する性質を有することから、該抗体を利用することによって、被験者の組織内に発現した上記タンパク質(その相同物を含む)を特異的に検出することができる。すなわち、当該抗体は被験者の組織内における上記タンパク質(その相同物を含む)発現の有無を検出するためのプローブとして有用である。
上記抗体は、従って、被験者における上記タンパク質の発現の有無又はその程度を検出することによって、該被験者が脂肪細胞の肥大化を伴う疾患に罹患しているか否か又はその疾患の程度を診断することのできるツール(疾患マーカー)として有用である。
また上記抗体は、後述の(3-2)項に記載するような脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の予防、改善又は治療に有用な候補物質のスクリーニングにおいて、配列番号:26〜50に記載のいずれかのアミノ酸配列を含むタンパク質のいずれかの発現変動を検出するためのスクリーニングツールとしても有用である。
【0055】
具体的には、患者の生体組織、特に脂肪組織の一部をバイオプシ等で採取し、そこから常法に従ってタンパク質を調製して、例えばウェスタンブロット法、ELISA法など公知の検出方法において、上記抗体を常法に従ってプローブとして使用することによって、上記タンパク質を検出することができる。
【0056】
脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の診断に際しては、被験者の脂肪組織における配列番号:1〜25のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質(配列番号:26〜50のいずれかに記載のアミノ酸配列を有するタンパク質)のいずれか少なくとも1つの量と、正常な脂肪組織における当該タンパク質の量との違いを判定すればよい。この場合、タンパク質量の違いには、タンパク質のある/なし、あるいはタンパク質量の違いが2倍以上、好ましくは3倍以上の場合が含まれる。
【0057】
具体的には、配列番号:26〜50に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質は脂肪細胞の肥大化を伴う疾患のモデルとなり得る30日間培養した3T3-L1脂肪細胞において発現変動(増減)を示したので、被験者の脂肪組織における該タンパク質の量が正常な脂肪組織の発現産物量と比べて2倍以上、好ましくは3倍以上変化することが判定されれば、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の罹患が疑われる。
例えば、配列番号:26〜33に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質は、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患のモデルとなる3T3-L1細胞において、特異的に発現量が減少していた。従って、配列番号:26〜33のいずれかに記載のアミノ酸配列を有するタンパク質が、被験者の脂肪組織で特異的に減少していれば、好ましくは、該発現量が正常者の脂肪組織の発現量と比べて2倍以下、より好ましくは3倍以下に減少していれば、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の罹患が疑われる。
また、配列番号:34〜50に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質は、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患のモデルとなる3T3-L1細胞において、特異的に発現量が増大していた。従って、配列番号:34〜50のいずれかに記載のアミノ酸配列を有するタンパク質が、被験者の脂肪組織で特異的に増大していれば、好ましくは、該発現量が正常者の脂肪組織の発現量と比べて2倍以上、より好ましくは3倍以上に増大していれば、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の罹患が疑われる。
【0058】
(2)脂肪細胞の肥大化の蓄積を伴う疾患の検出方法(診断方法)
本発明は、前述した本発明疾患マーカーを利用した脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の検出方法(診断方法)を提供するものである。
【0059】
具体的には、本発明の検出方法は、被験者の生体組織、特に脂肪組織の一部をバイオプシなどで採取し、そこに含まれる脂肪細胞の肥大化を伴う疾患に関連する配列番号:1〜25のいずれかで示される塩基配列を有するポリヌクレオチドの発現レベル(発現量)、又はこれらのポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質を検出し、その発現量又はそのタンパク質量を測定することにより、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の罹患の有無又はその程度を検出(診断)するものである。また本発明の検出(診断)方法は、例えば脂肪細胞の肥大化を伴う疾患患者において、該疾患の改善のために治療剤を投与した場合における、該疾患の改善の有無又はその程度を検出(診断)することもできる。
【0060】
ここで用いられる生体試料は、被験者の生体組織、特に脂肪組織、該組織から調製されるRNA若しくはそれからさらに調製されるポリヌクレオチド、又は上記組織から調製されるタンパク質である。かかるRNA、ポリヌクレオチド又はタンパク質は、被験者の生体組織、特に脂肪組織の一部をバイオプシ等で採取し、そこから常法に従って調製することができる。
本発明の診断方法は、測定対象として用いる生体試料の種類に応じて、具体的には下記のようにして実施される。
【0061】
(2-1) 測定対象の生体試料としてRNAを利用する場合
診断に用いる生体試料としてRNAを利用する場合は、本発明の検出方法(診断方法)は該RNA中の配列番号:1〜25のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドの発現レベルを検出し、測定することによって実施される。
【0062】
本発明の脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の検出方法(診断方法)は、特に測定対象の生体試料としてRNAを利用して、該RNA中の配列番号:1〜25のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドの発現レベルを検出し、測定することによって実施される。具体的には、上記検出するポリヌクレオチドの塩基配列に応じて、前述する本発明の疾患マーカー(配列番号:1〜25のいずれかに記載の塩基配列において連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/又はその相補的なポリヌクレオチド)をプライマー又はプローブとして用いて、ノーザンブロット法、RT-PCR法、DNAチップ解析法、in situハイブリダイゼーション解析法などの公知の方法を行うことにより実施できる。
【0063】
ノーザンブロット法を利用する場合は、本発明の上記疾患マーカーをプローブとして用いることによって、RNA中の配列番号:1〜25のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドの発現の有無やその発現レベルを検出、測定することができる。具体的には、本発明の疾患マーカー(相補鎖)を放射性同位元素(32P、33Pなど:RI)や蛍光物質などで標識し、それを、常法に従ってナイロンメンブレン等にトランスファーした被験者の生体組織由来のRNAとハイブリダイズさせた後、形成された標識疾患マーカー(DNA)とRNAとの二重鎖について、該疾患マーカーの標識物(RI若しくは蛍光物質など)に由来するシグナルを放射線検出器(BAS-1800II、富士フィルム社製)又は蛍光検出器で検出、測定する方法を例示することができる。また、AlkPhos Direct Labelling and Detection System (Amersham Pharmacia Biotech社製)を用いて、該プロトコールに従って疾患マーカー(プローブDNA)を標識し、被験者の生体組織由来のRNAとハイブリダイズさせた後、疾患マーカーの標識物に由来するシグナルをマルチバイオイメージャーSTORM860(Amersham Pharmacia Biotech社製)で検出、測定する方法を使用することもできる。
【0064】
RT-PCR法を利用する場合は、本発明の上記疾患マーカーをプライマーとして用いることによって、RNA中の配列番号:1〜25のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドの発現の有無や発現レベルを検出、測定することができる。具体的には、被験者の生体組織由来のRNAから常法に従ってcDNAを調製し、これを鋳型として標的のポリヌクレオチドの領域が増幅できるように、本発明の疾患マーカーから調製した一対のプライマー(上記cDNA(−鎖)に結合する正鎖、+鎖に結合する逆鎖)をこれとハイブリダイズさせて、常法に従ってPCR法を行い、得られた増幅二本鎖DNAを検出する方法を例示することができる。なお、増幅された二本鎖DNAの検出は、予めRIや蛍光物質などで標識しておいたプライマーを用いて上記PCRを行うことによって産生される標識二本鎖DNAを検出する方法、産生された二本鎖DNAを常法に従ってナイロンメンブレン等にトランスファーさせて、標識した疾患マーカーをプローブとして使用してこれとハイブリダイズさせて検出する方法などを用いることができる。なお、生成された標識二本鎖DNA産物はアジレント2100バイオアナライザ(横河アナリティカルシステムズ社製)などで測定することができる。また、SYBR Green RT-PCR Reagents (Applied Biosystems 社製)で該プロトコールに従ってRT-PCR反応液を調製し、ABI PRIME 7700 Sequence Detection System (Applied Biosystems 社製)で反応させて、該反応物を検出することもできる。
【0065】
また、DNAチップ解析を利用する場合は、本発明の上記疾患マーカーをDNAプローブ(1本鎖又は2本鎖)として貼り付けたDNAチップを用意し、これに被験者の生体組織由来のRNAから常法によって調製されたcRNAをハイブリダイズさせて、形成されたDNAとcRNAとの二本鎖を、本発明の疾患マーカーから調製される標識プローブと結合させて検出する方法を挙げることができる。また、上記DNAチップとして、配列番号:1〜25のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドの発現レベルの検出、測定が可能なDNAチップを用いることもできる。かかるポリヌクレオチドの発現レベルを検出、測定することができるDNAチップとしては、Affymetrix社のGene Chip Human Genome U95 A, B,C, D, Eを挙げることができる。
【0066】
(2-2) 測定対象物としてタンパク質を用いる場合
測定対象物としてタンパク質を用いる場合は、本発明の検出方法(診断方法)は生体試料中に存在する、配列番号:1〜25のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質(配列番号:26〜50のいずれかに示されるアミノ酸配列を有するタンパク質)を検出し、その量(レベル)を測定することによって実施される。より詳しくは、配列番号:1〜25のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質(配列番号:26〜50のいずれかに示されるアミノ酸配列を有するタンパク質)を認識する抗体を疾患マーカーとして用いて、ウェスタンブロット法などの公知方法で、上記タンパク質を検出、定量する方法を挙げることができる。
【0067】
ウェスタンブロット法は、一次抗体として上記の抗体を用いた後、二次抗体として125Iなどの放射性同位元素や蛍光物質などで標識した標識抗体(一次抗体に結合する標識抗体)を用いて、標識し、該放射性同位元素若しくは蛍光物質などに由来するシグナルを放射線測定器(BAS-1800II:富士フィルム社製など)若しくは蛍光検出器で検出し、測定することによって実施できる。また、一次抗体として本発明の上記疾患マーカーを用いた後、ECL Plus Western Blotting Detection System (Amersham Pharmacia Biotech 社製)を用いて、該プロトコールに従って検出し、マルチバイオイメージャーSTORM860(Amersham Pharmacia Biotech 社製)で測定することもできる。
【0068】
(2-3)脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の診断
脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の診断は、具体的には、被験者の生体組織、特に脂肪組織における配列番号:1〜25のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドの発現レベル、又は配列番号:1〜25のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドの発現産物であるタンパク質の量(レベル)を、上記と対応する正常な生体組織(特に、正常な脂肪組織における当該ポリヌクレオチドの発現レベル又は当該タンパク質の量(レベル)と比較し、両者の違いを判定することによって行うことができる。
【0069】
この場合、正常な生体組織、特に脂肪組織から採取調製した、「正常な生体試料」(RNA又はタンパク質)が必要であるが、これらは脂肪細胞の肥大化を伴う疾患に罹患していない人の生体組織、特に脂肪組織をバイオプシ等で採取することによって取得することができる。なお、ここでいう「脂肪細胞の肥大化を伴う疾患に罹患していない人」とは、例えば、肥満指数(BMI:Body mass index)が25未満である、肥満ではないと診断された人をいう。なお、当該「脂肪細胞の肥大化を伴う疾患に罹患していない人」を以下、本明細書では単に正常者という場合もある。以下、具体的な診断方法について、脂肪組織から採取調製した生体試料を例として記載する。
【0070】
被験者の脂肪組織と正常な脂肪組織(脂肪細胞の肥大化を伴う疾患に罹患していない人の脂肪組織)とのポリヌクレオチドの発現レベル又はその発現産物(タンパク質)量(レベル)の比較は、被験者の生体試料と正常者の生体試料を対象とした測定を並行して行うことで実施できる。並行して行わない場合は、複数(少なくとも2つ、好ましくは3以上、より好ましくは5以上)の正常な脂肪組織を用いて均一な測定条件で測定して得られた上記ポリヌクレオチドの発現レベル、若しくはこれらのポリヌクレオチドの発現産物であるタンパク質の量(レベル)の平均値又は統計的中間値を予め求めておき、これを正常者のポリヌクレオチドの発現レベル又はその発現産物(タンパク質)の量(正常値)として、これらを被験者における測定レベル又は測定値と比較することができる。
【0071】
被験者が、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患に罹患しているかどうかの判断は、該被験者の脂肪組織における配列番号:1〜25のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドの発現レベル、又はその発現産物(タンパク質)の量(レベル)、より具体的には配列番号:26〜50のいずれかで示されるアミノ酸配列を有するタンパク質の量(レベル)が、正常者のそれらと比較して2倍以上、好ましくは3倍以上の変動があるか(多いか又は少ないか)否かを指標として行うことができる。
【0072】
具体的には、被験者において、上記ポリヌクレオチドのうち配列番号:1〜25のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドの発現レベル、又はその発現産物(タンパク質)の量(レベル)が、正常者の上記に対応するポリヌクレオチドの発現レベル又は発現産物の量(レベル)に比べて多い場合には、該被験者について脂肪細胞の肥大化を伴う疾患への罹患が疑われる。
【0073】
なお、上記方法のうち、(2-1)生体試料としてRNAを利用して脂肪細胞の肥大化を伴う疾患を検出(診断)する場合、すなわちポリヌクレオチドの発現の有無又は発現レベル(発現量)から脂肪細胞の肥大化を伴う疾患を検出(診断)する場合は、検出(診断)の精度や正確性を高めるために、配列番号:1〜25に示されるポリヌクレオチドのうち2以上、好ましくは複数個のポリヌクレオチド、より好ましくは上記ポリヌクレオチド群のすべてについて、発現の有無又は発現のレベル(発現量)を評価し、その結果から脂肪細胞の肥大化を伴う疾患を検出(診断)することが望ましい。
【0074】
また、前記(2-2)測定対象物としてタンパク質を利用して脂肪細胞の肥大化を伴う疾患を検出(診断)する場合も、上記と同様に、生体試料について、配列番号:1〜25に示されるポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列を有するタンパク質(具体的には配列番号:26〜50のいずれかで示されるアミノ酸配列を有するタンパク質)のうちの2以上、好ましくは複数個のレベルを評価し、その結果から脂肪細胞の肥大化を伴う疾患を検出(診断)することが望ましい。
【0075】
複数個のポリヌクレオチド又はタンパク質について評価を行う場合には、個々のポリヌクレオチド又はタンパク質での評価をスコア化し、総合的に脂肪細胞の肥大化を伴う疾患を診断することが可能である。すなわち、上記のポリヌクレオチド又はタンパク質4個のポリヌクレオチド又はタンパク質について評価を行い、うち2個以上のポリヌクレオチド又はタンパク質について上記基準に基づいて脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の病態が疑われると評価される場合は、該疾患である可能性が高いと診断できる。なお、この場合、評価するポリヌクレオチド又はタンパク質の数、スコアあるいは診断基準は限定されない。
【0076】
(3)候補薬のスクリーニング方法
(3-1)ポリヌクレオチドの発現を指標とするスクリーニング方法
本発明は、配列番号:1〜25のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドの発現を制御する(減少させる/増大させる)物質をスクリーニングする方法を提供する。
【0077】
本発明のスクリーニングに用いられる細胞としては、内在性及び外来性を問わず、配列番号:1〜25のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドを発現し得る細胞を挙げることができる。かかる細胞としては、具体的には、マウス3T3-L1細胞、又はマウスNIH3T3細胞( American Type Culture Collection http://www.atcc.org/SearchCatalogs/CellBiology.cfm から入手可能)などを挙げることができる。好ましくはマウス3T3-L1細胞が挙げられる。また、かかる細胞としては、配列番号:1〜25のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドのホモログ、すなわち当該ポリヌクレオチドのヒト以外の生物種における同族体又は変異体をコードするポリヌクレオチドを発現し得る細胞を用いることもできる。例えば、配列番号:1〜25のいずれかに記載の塩基配列を有するヒトポリヌクレオチドに対応するラットホモログ(ポリヌクレオチド)やマウスホモログ(配列番号:51〜75のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチド)を内在的に発現している細胞を用いることができる。さらに本発明のスクリーニングに用いられる細胞の範疇には、細胞の集合体である組織も含まれる。
また、細胞として、配列番号:1〜25のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチド又はそのホモログを導入した遺伝子導入細胞を用いることもできる。該遺伝子導入に用いられる宿主細胞、すなわちCOP、L、C127、Sp2/0、NS-1、NIH3T3、ST2等のマウス由来細胞、ラット由来細胞、BHK、CHO等のハムスター由来細胞、COS1、COS3、COS7、CV1、Vero等のサル由来細胞、HeLa、293等のヒト由来細胞、及びSf9、Sf21、High Five等の昆虫由来細胞などが例示される。
【0078】
被験物質(候補物質)となりえるものとしては、制限されないが、核酸(配列番号:1〜25のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドのアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む)、ペプチド、タンパク質、有機化合物、無機化合物などであり、スクリーニングは、具体的にはこれらの被験物質を含む試料(被験試料)を上記組織及び/又は細胞と接触させて行うことができる。かかる被験試料としては、被験物質を含む、細胞抽出液、ポリヌクレオチドライブラリーの発現産物、合成低分子化合物、合成ペプチド、天然化合物、及びこれらの混合物などが挙げられるが、これに制限されない。
【0079】
本発明スクリーニングに際して、被験物質と細胞とを接触させる条件は、特に制限されないが、該細胞が死滅せず且つ所望ポリヌクレオチドを発現できる培養条件(温度、pH、培地組成など)を選択するのが好ましい。
【0080】
実施例に示すように、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患のモデルとなり得る長期培養した3T3-L1細胞では、配列番号:51〜75のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質が発現している。この知見から、配列番号:51〜75のいずれかに記載の塩基配列を有する1又は複数のポリヌクレオチドの発現レベルの上昇(ポリヌクレオチド発現の誘導・増大)は、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患と関連していると考えられる。本発明のスクリーニング方法には、これらポリヌクレオチドの発現レベルの上昇(ポリヌクレオチド発現の誘導・増大)もしくは減少(ポリヌクレオチドの発現の抑制)を指標として、当該ポリヌクレオチドの発現を制御する物質(発現量を変動させる物質)を探索する方法が包含される。本発明のスクリーニング方法によって、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の予防、改善ないし治療剤の有効成分となる候補物質が提供できる。
【0081】
すなわち、本発明のスクリーニング方法は、配列番号:1〜25のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチド又はそのホモログの発現レベルの上昇(発現誘導)又は減少(発現抑制)が、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患と関連することを利用するものである。よって、該脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の緩和/抑制作用を有する(脂肪細胞の肥大化を伴う疾患に対して改善/治療効果を発揮する)物質の探索には、配列番号:1〜25のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチド又はそのホモログの発現レベルの変動が指標とされる。
【0082】
以上のように、本発明のスクリーニング方法は、配列番号:1〜25のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチド又はそのホモログの発現レベルを制御(発現誘導・抑制)する物質を探索するものであり、斯くして得られる物質を脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の改善剤又は治療剤の有効成分となる候補化合物として提供するものである。
【0083】
本発明のスクリーニング方法に従う候補物質の選別は、具体的には配列番号:1〜25のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチド又はそのホモログを発現している細胞を用いる場合は、被験物質(候補物質)を添加した細胞における上記各ポリヌクレオチド又はそのホモログの発現レベルが被験物質(候補物質)を添加しない細胞における同ポリヌクレオチド又はそのホモログの発現レベルに比して低くなること/高くなることをもって、行うことができる。また、本発明のポリヌクレオチド又はそのホモログの発現に発現誘導物質[例えば変性LDL(アセチル処理)等]を刺激剤として必要とする細胞を用いる場合は、発現誘導物質によって誘導される発現が候補物質の存在によって制御されること、すなわち発現誘導物質存在下で候補物質を接触させた細胞の本発明のポリヌクレオチド又はそのホモログの発現が、発現誘導物質存在下で候補物質を接触させない対照細胞(正のコントロール)に比して低くなること/高くなることをもって行うことができる。
【0084】
上記いずれかのポリヌクレオチド又はそのホモログの発現を制御する物質のうち、発現を抑制(発現レベルの減少、発現誘導の抑制)するように制御する物質の探索は、具体的には被験物質を添加した細胞の配列番号:1〜25のいずれかの塩基配列を含むポリヌクレオチド又はそのホモログの発現レベルが、被験物質を添加しない細胞のそのレベルに比して低くなることを指標にして行うことができる。また、これら配列番号:1〜25のいずれかの塩基配列を含むポリヌクレオチドの発現に発現誘導物質を必要とする細胞を用いる場合は、発現誘導物質の存在下で被験物質を接触させた細胞における本発明のポリヌクレオチド又はそのホモログの発現が、発現誘導物質存在下で被験物質を接触させなかった対照細胞(正のコントロール)に比して低くなることを指標として、当該被験物質を候補物質として選別することができる。
【0085】
また、上記いずれかのポリヌクレオチド又はそのホモログの発現を制御する物質のうち、発現を上昇(発現レベルの増加、発現誘導の亢進)するように制御する物質の探索は、具体的には被験物質を添加した細胞の配列番号:1〜25のいずれかの塩基配列を含むポリヌクレオチド又はそのホモログの発現レベルが、被験物質を添加しない細胞のそのレベルに比して高くなることをもって、行うことができる。また、これら配列番号:1〜25のいずれかの塩基配列を含むポリヌクレオチド又はそのホモログの発現に発現誘導物質を必要とする細胞を用いる場合は、発現誘導物質の存在下で被験物質を接触させた細胞における本発明のポリヌクレオチド又はそのホモログの発現が、発現誘導物質存在下で被験物質を接触させなかった対照細胞(正のコントロール)に比して高くなることを指標として、当該被験物質を候補物質として選別することができる。
【0086】
このようなポリヌクレオチド又はそのホモログの発現レベルの検出及び定量は、前述した細胞から調製したRNA又はそれから転写された相補的なポリヌクレオチドと本発明疾患マーカーとを用いて、前記(2-1)項に記述したように、ノーザンブロット法、RT-PCR法など公知の方法や、DNAチップなどを利用して実施できる。指標とするポリヌクレオチド発現レベルの変動(発現の抑制・減少又は誘導・増大)の程度としては、被験物質(候補物質)を添加した細胞における本発明のポリヌクレオチド又はこれらのホモログの発現が、被験物質(候補物質)を添加しない対照細胞での発現量と比較して10%、好ましくは30%、特に好ましくは50%以上の変動(減少又は増大)を例示することができる。
【0087】
また、本発明のポリヌクレオチド又はこれらのホモログの、発現レベルの検出及び定量は、各ポリヌクレオチドの発現を制御する遺伝子領域(発現制御領域)に、例えばルシフェラーゼ遺伝子などのマーカー遺伝子をつないだ融合遺伝子を導入した細胞株を用いて、マーカー遺伝子由来のタンパク質の活性を測定することによっても実施できる。本遺伝子の発現制御物質のスクリーニング方法には、かかるマーカー遺伝子の発現量を指標として標的物質を探索する方法も包含される。この意味において、本発明でいう配列番号:1〜25のいずれかで示される塩基配列を有するポリヌクレオチド又はそのホモログの概念には、該ポリヌクレオチドの発現制御領域とマーカー遺伝子との融合遺伝子が含まれる。
【0088】
上記マーカー遺伝子としては、発光反応や呈色反応を触媒する酵素の構造遺伝子が好ましい。具体的には、上記のルシフェラーゼ遺伝子のほか、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ遺伝子、βグルクロニダーゼ遺伝子、βガラクトシダーゼ遺伝子、及びエクオリン遺伝子などのレポーター遺伝子を例示できる。ここで本発明のポリヌクレオチド又はそのホモログの発現制御領域としては、例えば該ポリヌクレオチドの転写開始部位上流約1kb、好ましくは約2kbを用いることができる。融合遺伝子の作成、及びマーカー遺伝子由来の活性測定は公知の方法で行うことができる。
【0089】
本発明のスクリーニング方法において、スクリーニングの精度や正確性を高めるためには、本発明のポリヌクレオチド又はそのホモログの2以上、好ましくは複数個のポリヌクレオチド、より好ましくは本発明のポリヌクレオチド(又はそのホモログ)のすべてについて被験物質による遺伝子発現レベルを評価し、候補物質を選別することが望ましい。複数個のポリヌクレオチドについて評価する場合には、個々のポリヌクレオチドでの評価をスコア化し、総合的に候補物質を選別することが可能である。例えば、一つの被験物質を用いて、上記のポリヌクレオチドのすべてについて評価を行い、該被験物質がそのうちの2個以上のポリヌクレオチドに関して脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の改善剤又は治療剤の有効成分となる候補化合物であると上記基準から評価される場合、該被験物質は候補化合物である可能性が高いと判断できる。この場合、評価する遺伝子数、スコアあるいは判断基準は限定されない。
【0090】
以上のスクリーニング方法により、被験物質から選別される物質は、配列番号:1〜25のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドの発現制御剤として位置づけることができる。これらの物質は、生体内において配列番号:1〜25のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドの発現を制御することによって、脂質顆粒の蓄積の亢進を抑制し、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患を緩和、抑制(改善、治療)し得ると考えられる。よって、これらの物質は、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患を緩和、抑制(改善、治療)する薬物の有力な候補物質となる。
【0091】
斯くして選抜取得される被験物質は、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患を緩和、抑制(改善、治療)する薬物の有力な候補物質となる。
【0092】
(3-2)タンパク質の発現量を指標とするスクリーニング方法
本発明は、配列番号:26〜50のいずれか記載のアミノ酸配列を有するタンパク質の発現を制御する(減少させる/増大させる)物質をスクリーニングする方法を提供する。
【0093】
本発明スクリーニングに用いられる細胞としては、内在性及び外来性を問わず、配列番号:1〜25のいずれかの塩基配列を含むポリヌクレオチドのいずれかを発現し、発現産物としての配列番号:26〜50に記載のいずれかのアミノ酸配列を含むタンパク質又はそのホモログを有する培養細胞全般を挙げることができる。ここで配列番号:26〜50に記載のいずれかのアミノ酸配列を含むタンパク質又はそのホモログの発現は、遺伝子産物であるタンパク質を公知のウェスタンブロット法にて検出することにより、容易に確認することができる。該細胞としては、具体的には、前記(3−1)項に記載したような、マウス3T3-L1細胞、又は本発明のポリヌクレオチドの1又は複数を導入した株化細胞などが挙げられる。また当該細胞の範疇には、その細胞膜画分、細胞質画分、細胞核画分なども含まれる。
【0094】
本発明スクリーニング方法によってスクリーニングされる被験物質(候補物質)は、制限されないが、核酸(本発明のポリヌクレオチドのアンチセンスヌクレオチドを含む)、ペプチド、タンパク質、有機化合物、無機化合物などであり、本発明スクリーニングは、具体的にはこれらの被験物質又はこれらを含む試料(被験試料)を上記細胞や細胞膜画分と接触させることにより行われる。かかる被験試料としては、被験物質を含む細胞抽出液、遺伝子ライブラリーの発現産物、合成低分子化合物、合成ペプチド、天然化合物などが挙げられるが、これらに制限されない。
【0095】
実施例に示すように、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患のモデルとなり得る3T3-L1細胞において、特異的に配列番号:26〜50のいずれかのアミノ酸配列を有するタンパク質のマウスホモログが発現変動している。この知見から、これら本発明のポリヌクレオチド及び本発明のタンパク質の発現亢進は脂肪細胞の肥大化を伴う疾患と関連していると考えられる。よって本発明のスクリーニング方法には、これら配列番号:26〜50に記載のいずれかのアミノ酸配列を含むタンパク質の発現レベルを指標として、その発現量を変動させる物質を探索する方法が包含される。このスクリーニング方法によって、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の緩和/抑制作用を有する(脂肪細胞の肥大化を伴う疾患に対して改善/治療効果を発揮する)候補物質を提供することができる。
【0096】
すなわち本発明のスクリーニング方法は、配列番号:26〜50に記載のいずれかのアミノ酸配列を含むタンパク質の発現量を変動させる物質を探索することによって、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の改善剤又は治療剤の有効成分となる候補物質を提供するものである。
【0097】
候補物質の選別は、具体的には配列番号:26〜50に記載のいずれかのアミノ酸配列を含むタンパク質又はそのホモログを発現産生している細胞を用いる場合は、被験物質(候補物質)を添加した細胞における前記本発明タンパク質の量(レベル)が、被験物質(候補物質)を添加しない細胞のその量(レベル)に比して変動する(低くなる/高くなる)ことを指標として、行うことができる。また、これら配列番号:26〜50に記載のいずれかのアミノ酸配列を含むタンパク質又はそのホモログの発現・産生に発現誘導物質を必要とする細胞を用いる場合は、発現誘導物質[例えばインシュリン、デキサメタゾン、3-イソブチル-1-メチルキサンチン、プロスタグランジンJ2活性を有する物質等]によって誘導される当該タンパクの産生が被験物質の存在によって制御されること、すなわち発現誘導物質の存在下で被験物質を接触させた細胞の本発明のタンパク質又はそのホモログの発現が、発現誘導物質存在下で被験物質を接触させなかった対照細胞(正のコントロール)に比して変動する(低くなる/高くなる)ことを指標として、当該被験物質を候補物質として選別することができる。
【0098】
用いられる細胞としては、例えば結腸由来細胞であるCaco-2細胞、HT-29細胞又はCOLO 205 細胞等が挙げられる。
【0099】
上記いずれかのタンパク質の発現を制御する物質のうち、発現を低下(発現レベルの減少、発現誘導の抑制)するように制御する候補物質の選別は、具体的には配列番号:26〜50のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むタンパク質又はそのホモログを発現産生している細胞を用いる場合は、被験物質(候補物質)を添加した細胞における、配列番号:26〜50のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むタンパク質又はそのホモログの量(レベル)が、被験物質(候補物質)を添加しない細胞のその量(レベル)に比して低くなることを指標として、行うことができる。また、これら配列番号:26〜50のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むタンパク質又はそのホモログの発現に発現誘導物質を必要とする細胞を用いる場合は、発現誘導物質の存在下で被験物質を接触させた細胞のタンパク質又はそのホモログの発現が、発現誘導物質存在下で被験物質を接触させなかった対照細胞(正のコントロール)に比して低くなることを指標として、当該被験物質を候補物質として選別することができる。
【0100】
上記いずれかのタンパク質の発現を制御する物質のうち、発現を上昇(発現レベルの増加、発現誘導の亢進)するように制御する候補物質の選別は、具体的には配列番号:26〜50のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むタンパク質又はそのホモログを発現産生している細胞を用いる場合は、被験物質(候補物質)を添加した細胞における、配列番号:26〜50のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むタンパク質又はそのホモログの量(レベル)が、被験物質(候補物質)を添加しない細胞のその量(レベル)に比して高くなることを指標として、行うことができる。また、これら配列番号:26〜50のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むタンパク質又はそのホモログの発現に発現誘導物質を必要とする細胞を用いる場合は、発現誘導物質の存在下で被験物質を接触させた細胞のタンパク質の発現が、発現誘導物質存在下で被験物質を接触させなかった対照細胞(正のコントロール)に比して高くなることを指標として、当該被験物質を候補物質として選別することができる。
【0101】
本発明のスクリーニング方法にかかる配列番号:26〜50に記載のいずれかのアミノ酸配列を含むタンパク質又はそのホモログの産生量は、前述したように、例えば抗体に関する本発明疾患マーカー(例えば配列番号:26〜50のいずれかに記載のアミノ酸配列を有するタンパク質又はそのホモログを認識する抗体)を用いたウェスタンブロット法などの公知方法に従って定量できる。ウェスタンブロット法は、一次抗体として本発明疾患マーカーを用いた後、二次抗体として125Iなどの放射性同位元素、蛍光物質、ホースラディッシュペルオキシターゼ(HRP)などの酵素等で標識した一次抗体に結合する抗体を用いて標識し、これら標識物質由来のシグナルを放射線測定器(BAS-1800II:富士フィルム社製など)、蛍光検出器などで測定することによって実施できる。また、一次抗体として本発明疾患マーカーを用いた後、ECL Plus Western Blotting Detction System (アマシャム ファルマシアバイオテク社製)を利用して、該プロトコールに従って検出し、マルチバイオイメージャーSTORM860(アマシャム ファルマシアバイオテク社製)で測定することもできる。
【0102】
(3-3) タンパク質の機能(活性)を指標とするスクリーニング方法
本発明は、配列番号:26〜50のいずれかに記載のいずれかのアミノ酸配列を含むタンパク質の機能(活性)を指標として、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の治療又は予防薬をスクリーニングする方法を提供する。
本発明のスクリーニング方法は次の工程(a)、(b)及び(c)を含む:
【0103】
(a)被験物質を 配列番号:26〜50のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むタンパク質又はそのホモログに接触させる工程、
(b)上記(a)の工程に起因して生じる配列番号:26〜50のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むタンパク質又はそのホモログの機能又は活性を測定し、該機能又は活性を被験物質を接触させない場合の配列番号:26〜50のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むタンパク質又はそのホモログの機能又は活性と比較する工程、及び
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、配列番号:26〜50のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むタンパク質又はそのホモログの機能又は活性の変動をもたらす被験物質を選択する工程。
【0104】
本発明のスクリーニング方法おいては、配列番号:26〜50のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むタンパク質又はそのホモログの公知の機能・活性に基づく如何なる機能・活性測定方法をも利用することができる。すなわち、配列番号:26〜50のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むタンパク質又はそのホモログの公知の機能・活性測定系に被験物質を添加し、当該配列番号:26〜50のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むタンパク質の公知の機能・活性を制御(亢進・抑制・促進・阻害)する被験物質を、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患に対して改善/治療効果を有する候補物質として選択するスクリーニング方法であれば、本発明のスクリーニング方法の範疇に含まれる。
【0105】
前記本発明のスクリーニングは、配列番号:26〜50のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むタンパク質又はそのホモログを含む水溶液、細胞又は該細胞から調製した細胞画分と、被験物質とを接触させることにより行うことができる。すなわち、配列番号:26〜50のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むタンパク質又はそのホモログを含む水溶液としては、通常の水溶液の他、これらのタンパク質を含む細胞溶解液、細胞破砕液、核抽出液あるいは細胞の培養上清などを例示することができる。
【0106】
また、本発明のスクリーニング方法に用いられる細胞としては、内在性及び外来性を問わず、配列番号:26〜50のいずれかに記載のタンパク質又はそのホモログを発現し得る細胞を挙げることができる。該細胞としては、3T3-L1細胞、又は配列番号:26〜50のいずれかに記載のポリヌクレオチド又はそのホモログを導入した株化細胞などを用いることができる。
また本発明のスクリーニング方法に用いられる細胞画分とは、上記細胞に由来する各種の画分を意味し、これには、例えば細胞膜画分、細胞質画分、細胞核画分などが含まれる。
前記スクリーニングにおいて用いられる配列番号:26〜50に記載のタンパク質又はそのホモログは公知のタンパク質であり、前記(1-3)に記述したように、本発明により提供されるポリヌクレオチドの配列情報(配列番号1〜25及び51〜75)に基づいて、DNAクローニング、各プラスミドの構築、宿主へのトランスフェクション、形質転換細胞の培養、及び必要に応じて培養物からのタンパク質の回収の操作により得ることができる。これらの操作は、当業者に既知の方法、あるいは文献記載の方法(Molecular Cloning, T.Maniatis et al., CSH Laboratory (1983), DNA Cloning, DM. Glover, IRL PRESS (1985))などに準じて行うことができる。
【0107】
実施例に示すように、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患のモデルである3T3-L1細胞で、特異的に配列番号:26〜50のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むタンパク質が発現変動している。この知見から、本タンパク質の機能(活性)亢進は、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患と関連していると考えられる。よって本発明のスクリーニング方法には、これら配列番号:26〜50のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むタンパク質の機能(活性)を指標として、該タンパク質の機能(活性)を制御する物質を探索する方法が包含される。本発明スクリーニング方法によれば、配列番号:26〜50のいずれか記載のアミノ酸配列を含むタンパク質の機能又は活性を制御する物質を探索でき、かくして脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の緩和/抑制作用を有する(脂肪細胞の肥大化を伴う疾患に対して改善/治療効果を発揮する)候補物質が提供される。
【0108】
本発明タンパク質の機能(活性)制御の1つの態様として、該タンパク質の機能(活性)を抑制(低下)させる方向に制御する物質の探索は、例えば配列番号:1〜25のいずれかの塩基配列を含むポリヌクレオチド又はそのホモログを含む水溶液、細胞又は該細胞から調製した細胞画分に被験物質を接触させた場合に得られる上記の少なくとも1つのタンパク質の機能(活性)が、被験物質を添加しない対照の水溶液、細胞又は細胞画分の上記対応するタンパク質の機能(活性)に比して低くなることを指標として行うことができる。
【0109】
また本発明タンパク質の機能(活性)制御のもう1つの態様として、該タンパク質の機能(活性)を亢進(上昇、増加)させる方向に制御する物質の探索は、例えば配列番号:26〜50のいずれかに記載のいずれかのアミノ酸配列を含むタンパク質又はそのホモログを含む水溶液、細胞又は該細胞から調製した細胞画分に被験物質を接触させた場合に得られる上記の少なくとも1つのタンパク質の機能(活性)が、被験物質を添加しない対照の水溶液、細胞又は細胞画分の上記対応するタンパク質の機能(活性)に比して高くなることを指標として行うことができる。
すなわち本発明のスクリーニング方法は、配列番号:26〜50のいずれかに記載のいずれかのアミノ酸配列を含むタンパク質又はそのホモログの機能又は活性を制御する物質を探索することによって、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の改善剤又は治療剤の有効成分となる候補物質を提供するものである。
本発明スクリーニング方法によってスクリーニングされる被験物質(候補物質)は、制限されないが、核酸、ペプチド、タンパク質(配列番号:26〜50のいずれかに記載のいずれかのアミノ酸配列を含むタンパク質に対する抗体を含む)、有機化合物、無機化合物などであり、本発明スクリーニングは、具体的にはこれらの被験物質又はこれらを含む試料(被験試料)を上記水溶液、細胞又は細胞画分と接触させることにより行われる。被験試料としては、被験物質を含む、細胞抽出液、遺伝子ライブラリーの発現産物、合成低分子化合物、合成ペプチド、天然化合物などが挙げられるが、これらに制限されない。
【0110】
かくして選抜取得される被験物質は、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患を緩和、抑制(改善、治療)する薬物の有力な候補となる。
【0111】
なお、上記(3-1)〜(3-3)に記載するスクリーニング方法は、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の改善又は治療剤の候補物質を選別するのみならず、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の既存の若しくは新規な改善又は治療剤(候補薬)が、配列番号:1〜25のいずれかに記載の塩基配列を含むポリヌクレオチドの発現を制御するか否か、あるいは配列番号:26〜50のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むタンパク質の発現若しくは機能・活性を制御するか否かを評価、確認するためにも用いることができる。すなわち本発明のスクリーニング方法の範疇には、候補物質の探索のみならず、このような評価あるいは確認を目的とするものも含まれる。
【0112】
上記(3-1)〜(3-3)に記載する本発明のスクリーニング方法によって選択された制御物質又は候補物質は、さらに脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の動物モデルとして周知である動物モデル(例えば、dB/dBマウスモデル、高脂肪食マウスモデル等が挙げられる)、正常動物を用いた薬効試験、安全性/体内動態試験、さらに脂肪細胞の肥大化を伴う疾患に罹患した患者への臨床試験に供してもよく、これらの試験を実施することによって、より実用的な脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の改善又は治療剤を選別取得することができる。このようにして選別された物質は、さらにその構造解析結果に基づいて、化学的合成、生物学的合成(発酵)又は遺伝子学的操作によって、工業的に製造することができる。
【0113】
(4)脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の改善・治療剤
本発明は、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の改善・治療剤を提供するものである。
【0114】
本発明は配列番号:1〜25のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドがコードするタンパク質(配列番号:26〜50のいずれかに記載のアミノ酸配列を有するタンパク質)の発現が脂肪細胞の肥大化を伴う疾患と関連しているという新たな知見から、(1)配列番号:1〜25のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドの発現を変動させる(制御する)物質が、上記疾患の改善又は治療に有効であるという考えに基づくものである。すなわち、本発明の脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の改善・治療剤は配列番号:1〜25のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドの発現を変動させる物質を有効成分とするものである。
【0115】
当該有効成分となる配列番号:1〜25のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドの発現制御物質は、上記のスクリーニング方法を利用して選別されたもののみならず、選別された物質に関する情報に基づいて常法に従って化学・生化学的手法により、若しくは工業的に製造されたものであってもよい。
【0116】
かかる発現制御物質(発現抑制(減少)物質、あるいは発現誘導(増大)物質)は、そのままもしくは自体公知の薬学的に許容される担体(賦形剤、増量剤、結合剤、滑沢剤などが含まれる)や慣用の添加剤などと混合して医薬組成物として調製することができる。当該医薬組成物は、調製する形態(錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤などの経口投与剤;注射剤、点滴剤、外用剤、点鼻剤、点眼剤、吸入剤、坐剤などの非経口投与剤)等に応じて経口投与又は非経口投与することができる。また投与量は、有効成分の種類、投与経路、投与対象又は患者の年齢、体重、症状などによって異なり一概に規定できないが、1日投与用量として、数mg〜2g、好ましくは数十mg〜数百mg程度を、1日1回ないし数回に分けて投与することができる。
【0117】
上記有効成分とする物質がDNAによりコードされるものの場合、該DNAをポリヌクレオチド治療用ベクターに組み込み、遺伝子治療を行うことも考えられる。更に、上記有効成分が配列番号:1〜25のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドのアンチセンスオリゴヌクレオチドの場合は、そのままもしくは遺伝子治療用ベクターにこれを組み込むことにより、遺伝子治療を行うこともできる。これらの場合も、投与量、投与方法は患者の体重や年齢、症状などにより変動するが、当業者であれば適宜選択することが可能である。
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、もとより本発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。
【実施例1】
【0118】
プロテオーム解析
(1)3T3-L1からの分泌タンパク質の調製
マウス3T3-L1 繊維芽細胞は ダルベッコ改変イーグル培地Dulbecco's modified Eagle's medium (GIBCO BRL, Gaithersburg, Md) に10%ウシ血清(GIBCO BRL, Gaithersburg, Md), 2mM L−グルタミン, ペニシリン100U/L, ストレプトマイシン100mg/L (GIBCO BRL, Gaithersburg, Md)を添加して、37℃, 5% 二酸化炭素で10cmシャーレにて培養した。細胞はコンフルエントになった後、2日間そのまま保持した。その後、分化誘導培地におき換えた。分化誘導培地は、ダルベッコ改変イーグル培地,10% ウシ胎児血清, 0.5mM 1-メチル-3-イソブチルキサンチン, 0.25μM デキサメサゾン, 10μg/ml インスリンを用いた。 さらに2日後、培地をダルベッコ改変イーグル培地,10% ウシ胎児血清に取り替えた。細胞はそのまま分化させ、分化8日目と30日目に分泌タンパク質の採取を行った。 分泌タンパク質の採取は、まず培地中の血清タンパクを除くため10mlのPBSで6回洗浄した後、血清を含まないダルベッコ改変イーグル培地で37℃, 5%二酸化炭素の条件で培養し、一晩(16h〜18h)培養した後、その培養液を採取した。採取液はアミコンウルトラ-15,10K(ミリポア社)でメーカー推奨条件にて限外ろ過濃縮し、分泌タンパク質液(試料)とした。
【0119】
(2)タンパク質の電気泳動
(1)で得られた試料はSDS サンプルバッファー(第一化学製)と1:1(v/v)で混合し、5分間90℃の熱処理により完全に変性溶解させた。10cmシャーレ3枚から調製したそれぞれの試料全量をSDS-PAGEで粗分画した。泳動は、10-20% レディーゲルJ (Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA) と電気泳動装置ミニプロティアン3 (Bio-Rad)を用いて、メーカー推奨条件で行い、引き続きCBB染色した。染色後、解剖用のメスでバンドパターンを目印に分子量ごとに9分割した。
(3)タンパク質のトリプシン消化
切り取ったゲルは定法により還元アルキル化後In-gel消化した。すなわち、0.1mM重炭酸アンモニウム / アセトニトリル(50:50)をゲルが完全に浸る量加え、30分間軽く攪拌してゲルの洗浄とバッファー置換を行った。洗浄は2回行った。洗浄液を丁寧に取り除き10mM ジチオスレイトール/0.1M 重炭酸アンモニウムをゲルが完全に浸る量だけ加えて、56℃で1時間還元処理した。ジチオスレイトール液を捨てて、55mMヨードアセトアミド/0.1M 重炭酸アンモニウムを十分な量加え、暗所・室温で緩やかに攪拌しながら1時間アルキル化処理した。その後、0.1mM 重炭酸アンモニウム / アセトニトリル(50:50)をゲルが完全に浸る量加え、30分間軽く攪拌してゲルの洗浄とバッファー置換を行った。洗浄とバッファー置換は2回を行った。その後、ゲルはスピードバックで乾燥させた。完全に乾燥したゲルに100ng/uLトリプシン液(0.1mM 重炭酸アンモニウム)5μLを添加して、軽くスピンダウンした後、純水5μLを加えて、再度スピンダウンした。さらに50mM 重炭酸アンモニウム 10μLを加えて、37℃で一晩処理した。ゲルが浸らない場合には50mM 重炭酸アンモニウムを追加して調節した。ペプチドの抽出には、5%ギ酸40uL / アセトニトリル 40uL を加え、30分間ゆっくりと攪拌・抽出を2回行った後、プールした抽出液をスピードバック乾燥してMS用試料とした。サンプルの分析は、イオントラップ型LC-MS(LCQ;サーモクエスト)でおこなった。上記サンプルを全量、HPLC(HP1100;アジレント)にアプライし、PepMapC18(内径75μm、長さ15cm;LCパッキング)で分離しながら、LC-MS/MS解析をおこないMS/MSスペクトルを取得した。HPLCの条件は、流速0.2μl/min、A液;0.1%酢酸、B液;0.1%酢酸/エタノールでおこなった。
MS/MSスペクトルからのタンパク質同定には、マスコット 検索エンジン(マトリクスサイエンス社製)を用い、NCBI等の公共の遺伝子・タンパク質配列データベースに対し検索を行うことにより実施した。
(4)質量分析によるタンパク質の同定
LC-MS/MS 分析はLCQ ion-trap mass spectrometer (Thermo Electron, San Jose, CA) と nano-HPLC (Agilent 1100 Pump modified with a pre-column splitter, Agilent Technologies, Palo Alto CA) および nanospray sourceをon-lineで用いた。1 μL のペプチド液をnanoLC column (PepMap C18, 75 μm x 150 mm, LC packings, Amsterdam, Holland)で分離した。 溶出条件は移動相A (0.1% 酢酸水)と移動相B(0.1% 酢酸 アセトニトリル)のリニアグラジエント 5-100% / 120分, 0.2 μL/minで行った。The LCQ は、data-dependent MS/MS モードにてfull-MS scan (m/z 400-2000)、 続くMS/MS scansはcollision energy level 35%で行った。 取得したスペクトルはNCBI nonredundant databaseに対してマスコット 検索エンジン(マトリクスサイエンス社製) を用いて検索した。MASCOT search 結果では、各ペプチドのpositive score 20以上のものを用いた。分泌シグナル解析にはPSORT( http://psort.nibb.ac.jp )を用いた。結果を表1に示す。
【0120】
【表1】

【0121】
ここで、表1中の配列番号は、本明細書配列表における配列番号に相当する。「タンパク質量のスコア」とは、そのタンパク質タンパクのトリプシン消化断片ペプチドのうち、スペクトルが観測されたものの数を示す。トリプシンでリジン残基とアルギニン残基のc末端側で特異的に切断すると、タンパク質から生成するペプチド断片の数は、当該タンパク質のアミノ酸配列に依存して固有の値となる。さらに、同じタンパク質であれば、存在量が多い方が当該タンパク質由来のペプチドのスペクトルも数多く観測されることがわかった。従って、同定されたタンパク質の量的な変動のパラメータとして、前記スコアを用い、脂肪細胞の肥大化により発現量が変動するタンパク質として、表1に記載のタンパク質を選抜した後に、スペクトルのイオン強度を比較することにより、量的変化を確認した。
【実施例2】
【0122】
脂肪細胞の肥大化を伴う疾患治療薬のスクリーニング
(1)細胞培養
マウス3T3-L1 繊維芽細胞は ダルベッコ改変イーグル培地Dulbecco's modified Eagle's medium (GIBCO BRL, Gaithersburg, Md) に10%ウシ血清(GIBCO BRL, Gaithersburg, Md), 2mM L−グルタミン, ペニシリン100U/L, ストレプトマイシン100mg/L (GIBCO BRL, Gaithersburg, Md)を添加して、37℃, 5% 二酸化炭素で10cmシャーレにて培養する。細胞はコンフルエントになった後、2日間そのまま保持する。その後、分化誘導培地におき換えた。分化誘導培地は、ダルベッコ改変イーグル培地,10% ウシ胎児血清, 0.5mM 1-メチル-3-イソブチルキサンチン, 0.25μM デキサメサゾン, 10μg/ml インスリンを用いる。 さらに2日後、培地をダルベッコ改変イーグル培地,10% ウシ胎児血清に取り替える。
次に、被験物質もしくは培養溶媒(対照の場合)、および必要に応じて0.5%ジメチルスルホキシド(以下、DMSOと記す。)を添加し、5%CO2存在下、37℃にて培養する。
(2)ポリヌクレオチド発現量によるスクリーニング
RNeasy Mini Kit(QIAGEN)を用いて、それぞれ培養混合物よりtotalRNAを調製、さらにcDNAを調製する。調製したサンプルをノーザンブロット法あるいはRT‐PCR法で分析し、配列番号:1〜25のいずれかに記載の塩基配列を有するポリペプチドの発現レベルを定量する。
具体的には、抽出したRNAサンプルは、1%ホルムアルデヒド変性アガロースゲル電気泳動法にて泳動した後、Hybond-N+メンブレン(Amersham)に転写する。メンブレンのプレハイブリダイゼーションは、Rapid-hyb buffer(Amersham)を用いて65℃で2時間行い、その後、α−32P標識プローブを加えてハイブリダイゼーションを65℃で16時間行う。配列番号1〜25のいずれかに記載のポリヌクレオチドを特異的に認識するプローブは、Bca Best Labeling Kit(Takara)を用いて、マウス由来cDNAからランダムプライム法により作製する。プローブの標識には、1.85MBqの[α−32P]dCTP(Amersham)を用いる。メンブレンの洗いは、SSC with 0.1% SDSにより行う。SSCの濃度は、2x、1x、0.1xの順で洗いを繰り返す毎にその濃度を下げていく。メンブレンのオートラジオグラフィーには、BAS2000 image analyzer(Fuji)を用いる。
前記ポリヌクレオチドの発現量が、対照における発現量と比較して1.5倍以上変動する被験物質(発現制御物質)を、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の治療薬候補物質として選択することができる。
(3)タンパク質発現量によるスクリーニング(ウェスタンブロット法)
(1)の細胞をRIPA buffer[50mM NaCl, 1%(vol/vol) nonidet P-40, 0.5%(vol/vol) deoxycholate, 0.1%(vol/vol) SDS, 50mM Tris-Cl ph8.0, 1mM EDTA, 1mM PMSF, 1mM Na3VO4, 1mM DTT, 10mM NaF, 30mM NaPPi, 15μg/ml Aprotinin, 10μg/ml Leupeptin]にて溶解し、遠心上清をタンパク質抽出サンプルとする。抽出したサンプルは、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法にて泳動した後、ニトロセルロースメンブレン(Advantec)に転写する。1次抗体に配列番号:1〜25のいずれかに記載のアミノ酸配列を有するタンパク質のポリクローナルラビット抗体(Genes Dev, 11:2052-2065, 1997)、2次抗体に抗-ラビットIgG HRP標識ヤギ抗体(Santa cruz)を用いる。抗原抗体反応は、ECL Western Blotting Detection Reagents(Amersham)を用いてHyperfilm ECL(Amersham)上に検出する。前記タンパク質の発現量が、対照における発現量と比較して1.5倍以上変動する被験物質(発現制御物質)を、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の治療薬候補物質として選択することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24及び25のいずれかに記載の塩基配列において、連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/又は該ポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドからなる、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の疾患マーカー。
【請求項2】
脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の検出においてプローブ又はプライマーとして使用される請求項1に記載の疾患マーカー。
【請求項3】
下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の検出方法:
(a)被験者の生体試料から調製されたRNA又はそれから転写された相補的ポリヌクレオチドと、請求項1又は請求項2に記載の疾患マーカーとを結合させる工程、
(b)該疾患マーカーに特異的に結合した生体試料由来のRNA又は該RNAから転写された相補的ポリヌクレオチドを、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、及び
(c)上記(b)で得られる被験者の測定結果が、正常な生体試料について得られる測定結果に比して、以下の1)又は2)のいずれかであることを指標として、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の罹患を判断する工程:
1)配列番号:1、2、3、4、5、6、7及び8のいずれかに記載の塩基配列において、連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/又は該ポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドからならなる疾患マーカーへの結合量が減少していること、
2)配列番号:9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24及び25のいずれかに記載の塩基配列において、連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/又は該ポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドからならなる疾患マーカーへの結合量が増大していること。
【請求項4】
配列番号:26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49及び50のいずれかに記載のアミノ酸配列を有するタンパク質を認識する抗体を含有する、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の疾患マーカー。
【請求項5】
下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の検出方法:
(a)被験者の生体試料から調製されたタンパク質と請求項4に記載の疾患マーカーとを結合させる工程、
(b)該疾患マーカーに結合した生体試料由来のタンパク質又はその部分ペプチドを、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、及び
(c)上記(b)で得られる被験者の測定結果が、正常な生体試料について得られる測定結果に比して、以下の1)又は2)のいずれかであることを指標として、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の罹患を判断する工程:
1)配列番号:26、27、28、29、30、31、32及び33のいずれかに記載のアミノ酸配列を有するタンパク質を認識する抗体からなる疾患マーカーへの結合量が減少していること、
2)配列番号:34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49及び50のいずれかに記載のアミノ酸配列を有するタンパク質を認識する抗体からなる疾患マーカーへの結合量が増大していること。
【請求項6】
下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の改善もしくは治療薬のスクリーニング方法:
(a)被験物質と配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24及び25のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチド又はそのホモログを発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞における配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24及び25のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチド又はそのホモログの発現量を測定し、該発現量を被験物質に接触させない対照細胞における上記に対応するポリヌクレオチドの発現量と比較する工程、及び
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24及び25のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチド又はそのホモログの発現量を変動させる被験物質を、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の改善もしくは治療薬の候補物質として選択する工程。
【請求項7】
下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の改善もしくは治療薬のスクリーニング方法:
(a)被験物質と配列番号:26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49及び50のいずれかに記載のアミノ酸配列を有するタンパク質又はそのホモログを発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞における配列番号:26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49及び50のいずれかに記載のアミノ酸配列を有するタンパク質又はそのホモログの発現量を測定し、該発現量を、被験物質を接触させない対照細胞における上記に対応するタンパク質又はそのホモログの発現量と比較する工程、及び
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、配列番号:26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49及び50のいずれかに記載のアミノ酸配列を有するタンパク質又はそのホモログの発現量を変動させる被験物質を、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の改善もしくは治療薬の候補物質として選択する工程。
【請求項8】
配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24及び25のいずれかに記載の塩基配列を有するポリヌクレオチド又はそのホモログの発現量を制御する物質を有効成分とする、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の改善又は治療薬。
【請求項9】
配列番号:26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49及び50のいずれかに記載のアミノ酸配列を有するタンパク質又はそのホモログの発現量を制御する物質を有効成分とする、脂肪細胞の肥大化を伴う疾患の改善又は治療薬。

【公開番号】特開2006−141233(P2006−141233A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−332734(P2004−332734)
【出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(000002912)大日本住友製薬株式会社 (332)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】