説明

脂質に封入された干渉RNA

【課題】siRNA分子を含む核酸-脂質粒子を細胞に送達することによって遺伝子発現をサイレンシングするための組成物および方法の提供。
【解決手段】siRNA、カチオン性脂質、非カチオン性脂質および粒子の凝集を阻害する複合脂質を用いた、一つまたは複数のsiRNA分子の封入に有用な安定核酸-脂質粒子(SNALP)、siRNAを含むSNALPの作成方法、siRNAを含むSNALP、ならびに対象にSNALPを送達および/または投与して標的遺伝子配列の発現をサイレンシングさせる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、核酸を封入した血清安定的な脂質送達賦形剤を送達すことによって効率的なRNA干渉(RNAi)を細胞内または哺乳動物内に提供する、核酸の治療的送達のための組成物および方法に関する。より具体的には、本発明は、全身送達に好適な、小さな直径を有する血清安定性脂質粒子内に封入された小さな干渉RNA(siRNA)を使用することに関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2003年12月11日出願の米国特許仮出願第60/529,406号;2003年9月15日出願の第60/503,279号、および2003年7月16日出願の第60/488,144号の恩典を主張し、それぞれの開示はそのまま、すべての目的について、参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
RNA干渉(RNAi)は、相補的な標的単鎖mRNAの分解、および対応する翻訳配列の「サイレンシング」を誘導する二本鎖RNA(dsRNA)により誘発される、進化的に保存された配列特異的なメカニズムである(McManus and Sharp, Nature Rev. Genet. 3:737(2002)(非特許文献1))。RNAiは、より長いdsRNA鎖を、生物学的に活性な、長さ約21〜23ヌクレオチドの「短鎖干渉RNA」(siRNA)配列に酵素切断することによって機能する(Elbashir, et al., Genes Dev. 15:188 (2001)(非特許文献2))。siRNAは、関心対象の遺伝子産物の翻訳をダウンレギュレーションまたはサイレンシングさせるのに用いることができる。例えば、様々な疾患および障害に関係する遺伝子をダウンレギュレーションすることが望まれている。
【0004】
siRNAの送達にはまだ多くの問題が残っている(例えば、Novina and Sharp, Nature 430:161-163 (2004)(非特許文献3);およびGarber, J. Natl. Cancer Inst. 95(7):500-2 (2003)(非特許文献4)参照)。siRNAを治療に有用なものにするには、効率的で安全な核酸送達システムが必要である。たいていの対象に投与された裸のdsRNAは:(1) 内因性ヌクレアーゼによって分解され;(2) 細胞膜を通過して標的遺伝子配列に接し、これをサイレンシングさせることができない。
【0005】
ウイルスベクターは、比較的効率的な遺伝子送達システムであるが、望ましくない免疫反応の可能性といった、安全上の様々な懸念がある。さらには、ウイルスシステムは、循環から速やかに排除されるため、トランスフェクションは肺、肝臓、および脾臓といった「初回通過(first-pass)」器官に限定される。これに加えて、これらシステムは、続く注射による送達を危うくする免疫反応を誘導する。その結果、非ウイルス型の遺伝子送達システムがますます注目を集めている(Worgall, et al., Human Gene Therapy 8:37 (1997)(非特許文献5); Peeters, et al., Human Gene Therapy 7:1693 (1996)(非特許文献6); Yei, et al., Gene Therapy 1: 192 (1994)(非特許文献7); Hope, et al., Molecular Membrane Biology 15:1 (1998)(非特許文献8))。
【0006】
プラスミドDNA-カチオン性リポソーム複合体が、現在最も一般的に使用されている非ウイルス遺伝子送達賦形剤である(Felgner, Scientific American 276:102 (1997)(非特許文献9); Chonn, et al., Current Opinion in Biotechnology 6:698 (1995)(非特許文献10))。例えば、昆虫細胞をトランスフェクションするための、両親媒性化合物、中性脂質、および界面活性剤から作られたカチオン性リポソームが、米国特許第6,458,382号(特許文献1)に開示されている。カチオン性リポソーム複合体は、さらに米国特許出願第2003/0073640号(特許文献2)にも開示されている。しかし、カチオン性リポソーム複合体は、全身適用には不適な大型の、画定度の低いシステムであり、さらに毒性の強い副作用を誘発することがある(Harrison, et al., Biotechniques, 19:816 (1995)(非特許文献11); Li, et al., The Gene 4:891 (1997)(非特許文献12); Tam, et al., Gene Ther. 7:1867 (2000)(非特許文献13))。大型の、正の荷電を持つ凝集体であるリポプレックス(lipoplex)は、インビボ投与されると速やかに排除されるため、最も高いレベルの発現は初回通過器官、特に肺で観察されている(Huang, et al., Nature Biotechnology 15:620 (1997)(非特許文献14); Templeton, et al., Nature Biotechnology 15:647 (1997)(非特許文献15): Hofland, et al., Pharmaceutical Research 14:742 (1997)(非特許文献16))。
【0007】
その他のリポソーム送達システムとしては、例えば米国特許第6,429,200号(特許文献3);米国特許出願第2003/0026831号(特許文献4);ならびに米国特許出願第2002/0081736号(特許文献5)および第2003/0082103号(特許文献6)にそれぞれ開示されているような、例えば逆ミセル、アニオン性およびポリマーリポソームの使用が挙げられる。
【0008】
最近の研究は、核酸が、脂質二重層小胞内に封入された単一プラスミドからなる小型(直径約70 nm)の「安定化プラスミド-脂質粒子」(SPLP)に封入できることを示している(Wheeler, et al., Gene Therapy 6:271 (1999)(非特許文献17))。これらSPLPは、一般的には「融合性」脂質であるジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、低レベルのカチオン性脂質(即ち10%以下)を含有し、ポリ(エチレングリコール)(PEG)コーティングが存在することによって水性媒体中で安定化する。SPLPは、静脈内(i.v.)注射後に長い血中寿命を示すこと、遠位腫瘍領域での高い血管透過性によって、遠位腫瘍部位に優先して蓄積すること、かつこれら腫瘍部位でのトランス遺伝子の発現を仲介できることから、全身適用に供される。ルシフェラーゼマーカー遺伝子を含有するSPLPを静脈内注射した後に腫瘍部位で観察されるトランス遺伝子の発現レベルは、プラスミドDNA-カチオン性リポソーム複合体(リポプレックス)または裸のDNAを用いて達成することができるレベルに比べ遙かに高い。
【0009】
しかしながら、それでも尚、当技術分野では、siRNAのような核酸を細胞内に導入するための、新規の、より効率的な方法および組成物が強く求められている。本発明は、この、およびその他ニーズに応えるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6,458,382号
【特許文献2】米国特許出願第2003/0073640号
【特許文献3】米国特許第6,429,200号
【特許文献4】米国特許出願第2003/0026831号
【特許文献5】米国特許出願第2002/0081736号
【特許文献6】米国特許出願第2003/0082103号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】McManus and Sharp, Nature Rev. Genet. 3:737(2002)
【非特許文献2】Elbashir, et al., Genes Dev. 15:188 (2001)
【非特許文献3】Novina and Sharp, Nature 430:161-163 (2004)
【非特許文献4】Garber, J. Natl. Cancer Inst. 95(7):500-2 (2003)
【非特許文献5】Worgall, et al., Human Gene Therapy 8:37 (1997)
【非特許文献6】Peeters, et al., Human Gene Therapy 7:1693 (1996)
【非特許文献7】Yei, et al., Gene Therapy 1: 192 (1994)
【非特許文献8】Hope, et al., Molecular Membrane Biology 15:1 (1998)
【非特許文献9】Felgner, Scientific American 276:102 (1997)
【非特許文献10】Chonn, et al., Current Opinion in Biotechnology 6:698 (1995)
【非特許文献11】Harrison, et al., Biotechniques, 19:816 (1995)
【非特許文献12】Li, et al., The Gene 4:891 (1997)
【非特許文献13】Tam, et al., Gene Ther. 7:1867 (2000)
【非特許文献14】Huang, et al., Nature Biotechnology 15:620 (1997)
【非特許文献15】Templeton, et al., Nature Biotechnology 15:647 (1997)
【非特許文献16】Hofland, et al., Pharmaceutical Research 14:742 (1997)
【非特許文献17】Wheeler, et al., Gene Therapy 6:271 (1999)
【発明の概要】
【0012】
発明の簡単な概要
本発明は、一つまたは複数のsiRNA分子の封入に有用な安定核酸-脂質粒子(SNALP)、siRNAを含むSNALPの作成方法、siRNAを含むSNALP、ならびに対象にSNALPを送達および/または投与して標的遺伝子配列の発現をサイレンシングさせる方法を提供する。
【0013】
一つの態様では、本発明は、カチオン性脂質、非カチオン性脂質、粒子の凝集を防ぐ複合脂質、およびsiRNAを含む核酸-脂質粒子を提供する。いくつかの態様では、siRNA分子は、核酸-脂質粒子内の核酸が、水性溶液中においてヌクレアーゼによる分解に対し耐性であるように核酸-脂質粒子の脂質二重層の中に完全に封入されている。核酸粒子は、哺乳動物に対して実質的に無毒である。siRNA分子は、約15〜約60個のヌクレオチドを含むことができる。siRNA分子は、長さが約25ヌクレオチドより長い二重鎖RNAに由来してもよい。いくつかの態様では、siRNAは、プラスミド、特に標的配列のDNA鋳型を含むプラスミドから転写される。
【0014】
カチオン性脂質は、N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロライド(DODAC)、N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、N-(1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド(DOTAP)、N-(1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA)、およびN,N-ジメチル-2,3-ジオレイルオキシ)プロピルアミン(DODMA)、ならびにそれらの混合物の一つまたは複数であることができる。非カチオン性脂質は、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、卵ホスファチジルコリン(EPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、コレステロール、およびそれらの組合せの一つまたは複数であることができる。
【0015】
粒子の凝集を阻害する複合脂質は、ポリエチレングリコール(PEG)-脂質複合体、ポリアミド(ATTA)-脂質複合体、およびそれらの組合せの一つまたは複数であることができる。PEG-脂質複合体は、PEG-ジアルキルオキシプロピル(DAA)、PEG-ジアシルグリセロール(DAG)、PEG-リン脂質、PEG-セラミド、およびそれらの組合せの一つまたは複数であることができる。PEG-DAG複合体は、PEG-ジラウロイルグリセロール(C12)、PEG-ジミリストイルグリセロール(C14)、PEG-ジパルミトイルグリセロール(C16)、およびPEG-ジステアロイルグリセロール(C18)、ならびにそれらの組合せの一つまたは複数であることができる。PEG-DAA複合体は、PEG-ジラウリルオキシプロピル(C12)、PEG-ジミリスチルオキシプロピル(C14)、PEG-ジパルミチルオキシプロピル(C16)、およびPEG-ジステアリルオキシプロピル(C18)、ならびにそれらの組合せの一つまたは複数であることができる。核酸-脂質粒子は、さらにカチオン性ポリマー脂質を含んでよい。
【0016】
いくつかの態様では、粒子は、水性溶液を第一容器に入れ、有機脂質溶液を第二容器に入れ、水溶液と有機脂質溶液を混合して、干渉RNAを封入したリポソームを実質的に即時に生成することによって作られる。いくつかの態様では、粒子は、界面活性剤ベースまたは有機溶媒ベースのシステムの中に疎水性中間複合体を作ってから界面活性剤または有機溶媒を除去することによって作られる。好ましい態様では、電荷は中和される。
【0017】
一つの態様では、干渉RNAはプラスミドから転写され、プラスミドは界面活性剤溶液の中でカチオン性脂質と混合されてコーティングされた核酸-脂質複合体を提供する。次に複合体を非カチオン性脂質と接触させ、界面活性剤、核酸-脂質複合体、および非カチオン性脂質の溶液を提供し、その後界面活性剤を除去して、干渉RNAの鋳型を含むプラスミドが脂質二重層内に封入されている血清安定的な核酸-脂質粒子の溶液を提供する。こうして作られた粒子は、約50〜150 nmの粒度を有する。
【0018】
別の態様では、血清安定性核酸-脂質粒子は、カチオン性脂質と非カチオン性脂質の有機溶媒混合液を調製すること;干渉RNAを含む核酸の水性溶液を、カチオン性および非カチオン性脂質の混合物と合わせて透明な単相を提供すること;および有機溶媒を除去して、核酸が脂質二重層内に封入されている核酸-脂質粒子懸濁液を提供することによって作られ、粒子は血清中で安定であり、約50〜150 nmの粒度を有する。
【0019】
本発明の核酸-脂質粒子は、siRNA配列を含む核酸の治療的送達に有用である。具体的には、本発明の目的の一つは、標的核酸配列をダウンレギュレーションすること、またはサイレンシングさせることによって哺乳動物の疾患を治療するインビトロおよびインビボの方法を提供することである。これらの方法では、siRNA分子は、核酸-脂質粒子に処方され、粒子は、そのような治療を必要とする患者(例えば標的核酸配列を含む遺伝子の発現または過剰発現に関連する疾患または障害と診断された患者)に投与される。または、細胞を患者から取り出し、siRNAをインビトロで送込み、細胞を患者に注射して戻す。一つの態様では、本発明は、カチオン性脂質、非カチオン性脂質、凝集を阻害する複合脂質およびsiRNAを含む核酸-脂質粒子に細胞を接触させることによって、siRNA分子を細胞内に導入する方法を提供する。
【0020】
核酸-脂質粒子は、例えば静脈内、非経口的、または腹腔内に投与できる。一つの態様では、全投与量の少なくとも約10%の核酸-脂質粒子が、注射から約24、36、48、60、72、84、または96時間後、血漿中に存在する。別の態様では、全注射量の20%、30%、40%を上回る核酸-脂質粒子、および60%、70%、または80%の核酸-脂質粒子が、注射から24、36、48、60、72、84、または96時間後、血漿中に存在する。一つの態様では、投与から24、48、72、および96時間後、siRNAの存在が標的組織(即ち肺、肝臓、腫瘍または炎症部位)の細胞の中に検出できる。一つの態様では、投与から24、48、72、および96時間後、標的配列の発現のダウンレギュレーションが検出できる。一つの態様では、標的配列の発現のダウンレギュレーションは、腫瘍細胞または炎症部位の細胞で優先的に起こる。一つの態様では、核酸-脂質粒子を静脈注射してから少なくとも4日後に、投与部位から遠位にある細胞でsiRNAの存在が検出できる。別の態様では、核酸-脂質粒子を注射してから少なくとも4日後に、標的組織(即ち肺、肝臓、腫瘍、または炎症部位)の細胞でsiRNAの存在が検出できる。
【0021】
粒子は、血流中で安定であること、その粒度が血管外部位および標的細胞集団へのアクセスを可能にする薬物動態学的挙動に必要な大きさであることから、静脈を利用した核酸輸送への使用に好適である。本発明はまた、核酸-脂質粒子を含む、薬学的に許容される組成物を提供する。
【0022】
本発明の別の態様は、siRNAをインビボ送達するための方法を提供する。カチオン性脂質、非カチオン性脂質、粒子の凝集を阻害する複合脂質、およびsiRNAを含む核酸-脂質粒子を、対象(例えばヒトのような哺乳動物)に投与(例えば静脈、皮下、腹腔内、または真皮下)する。いくつかの態様では、本発明は、哺乳動物対象の肝臓に干渉RNAをインビボ送達するための方法を提供する。
【0023】
本発明の更なる態様は、哺乳動物対象の疾患または障害を治療する方法を提供する。カチオン性脂質、非カチオン性脂質、粒子の凝集を阻害する複合脂質、およびsiRNAを含む核酸-脂質粒子の治療有効量を、疾患または障害のある哺乳動物対象(例えばマウスのような齧歯類、ヒトまたはサルのような霊長類)に投与する。いくつかの態様では、疾患または障害は、遺伝子の発現および/または過剰発現に関連しており、遺伝子の発現または過剰発現はsiRNAによってサイレンシングされる。いくつかの態様では、疾患は、例えば肝炎(例えばA型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、E型肝炎、G型肝炎、またはそれらの組合せ)のようなウイルス性疾患である。いくつかの態様では、疾患または障害は、脂質代謝異常のような肝疾患または障害である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】DSPC:コレステロール:DODMA:PEG-DMGリポソーム内に封入された抗β-ガラクトシダーゼsiRNAのインビトロ送達を介したCT26.CL25細胞でのβ-ガラクトシダーゼ発現のダウンレギュレーションを示す。
【図2】PEG-ジアシルグリセロールおよびPEG-セラミドC20の構造を示す。
【図3】PEG-DAGを含むSNALPが、PEG-セラミドC20含有SNALPと同等であることを示す、LUVを用いたクリアランス研究を示す。
【図4A】PEG-DAG含有SNALPが、界面活性剤透析法により処方できることを示す。
【図4B】PEG-DAG含有SNALPが、界面活性剤透析法により処方できることを示す。
【図4C】PEG-DAG含有SNALPが、界面活性剤透析法により処方できることを示す。
【図4D】PEG-DAG含有SNALPが、界面活性剤透析法により処方できることを示す。
【図5】PEG-DAG含有SNALPの薬物動態学特性を示す。
【図6A】PEG-DAG含有SNALPの生体分布特性を示す。
【図6B】PEG-DAG含有SNALPの生体分布特性を示す。
【図6C】PEG-DAG含有SNALPの生体分布特性を示す。
【図6D】PEG-DAG含有SNALPの生体分布特性を示す。
【図7】PEG-セラミドC20含有SPLP 対 PEG-DAG含有SPLPを、Neuro-2a腫瘍を有する雄A/Jマウスの投与から24時間後のルシフェラーゼ遺伝子発現を比較して示す。
【図8】PEG-セラミドC20含有SPLP 対 PEG-DAG含有SPLPを、Neuro-2a腫瘍を有する雄A/Jマウスの静脈内投与から48時間後のルシフェラーゼ遺伝子発現を比較して示す。
【図9】PEG-セラミドC20含有SPLP 対 PEG-DAG含有SPLPを、Neuro-2a腫瘍を有する雄A/Jマウスの静脈内投与から72時間後のルシフェラーゼ遺伝子発現を比較して示す。
【図10】本発明での使用に好適な3例のPEG-ジアルキルオキシプロピル誘導体:即ちN-(2,3-ジミリスチルオキシプロピル)カルバメートPEG2000メチルエーテル(即ちPEG-C-DMA)、N-(2,3-ジミリスチルオキシプロピル)アミドPEG2000メチルエーテル(即ちPEG-A-DMA)、およびN-(2,3-ジミリスチルオキシプロピル)スクシンアミドPEG2000メチルエーテル(即ちPEG-S-DMA)の構造を示す。
【図11】PEG-DAA複合体およびPEG-DAG複合体を含むSPLPの静脈投与から48時間後の、腫瘍におけるルシフェラーゼ遺伝子発現を示すデータを示す。
【図12】PEG-DAA複合体およびPEG-DAG複合体を含むSPLPの静脈投与後の、肝臓、肺、脾臓、心臓、および腫瘍でのルシフェラーゼ遺伝子発現を示すデータを表す。
【図13】Neuro-2a腫瘍を有する雄A/Jマウスにおける、PEG-DAA複合体を含み、さらにCMVプロモータの制御下にあるルシフェラーゼをコードするプラスミドを含有するSPLP、ならびにPEG-DAA複合体を含み、さらに抗ルシフェラーゼsiRNAを含有するSNALPを投与した後の、クリアランス研究より得られたデータを示す。
【図14】Neuro-2a腫瘍を有する雄A/Jマウスにおける、PEG-DAA複合体を含み、さらにCMVプロモータの制御下にあるルシフェラーゼをコードするプラスミドを含有するSPLP、ならびにPEG-DAA複合体を含み、さらに抗ルシフェラーゼsiRNAを含有するSNALPの、薬物動態学特性の研究より得られたデータを示す。
【図15】Neuro-2a腫瘍を有する雄A/Jマウスにおける、PEG-DAA複合体またはPEG-DAG複合体を含み、さらにCMVプロモータの制御下にあるルシフェラーゼをコードするプラスミドを含有するSPLP、PEG-DAG複合体を含み、さらにCMVプロモータの制御下にあるルシフェラーゼをコードするプラスミドを含有するpSPLP、ならびにPEG-DAA複合体を含み、さらに抗ルシフェラーゼsiRNAを含有するSNALPを投与した後の、クリアランス研究から得たデータを表す。
【図16】Neuro-2a腫瘍を有する雄A/Jマウスにおける、PEG-DAA複合体またはPEG-DAG複合体を含み、さらにCMVプロモータの制御下にあるルシフェラーゼをコードするプラスミドを含有するSPLP、PEG-DAG複合体を含み、さらにCMVプロモータの制御下にあるルシフェラーゼをコードするプラスミドを含有するpSPLP、ならびにPEG-DAA複合体を含み、さらに抗ルシフェラーゼsiRNAを含有するSNALPの、薬物動態学特性研究から得られたデータを表す。
【図17】PEG-脂質複合体を含み、さらにCMVプロモータの制御下のルシフェラーゼをコードするプラスミドを含有するSPLP、ならびにPEG-脂質複合体を含み、さらに抗ルシフェラーゼsiRNAを含有するSNALPで処理したルシフェラーゼ発現細胞における、ルシフェラーゼ発現のサイレンシングを示すインビトロデータを示す。
【図18】PEG-DAA複合体を含み、さらにCMVプロモータの制御下のルシフェラーゼをコードするプラスミドを含有するSPLP、ならびにPEG-DAA複合体を含み、さらに抗ルシフェラーゼsiRNAを含有するSNALPで処理した、Neuro-2a腫瘍を有する雄A/Jマウスにおける、ルシフェラーゼ発現のサイレンシングを示すインビボデータを表す。
【図19】PEG-DAA複合体を含み、さらにCMVプロモータの制御下のルシフェラーゼをコードするプラスミドを含有するSPLP、ならびにPEG-DAA複合体を含み、さらに抗ルシフェラーゼsiRNAを含有するSNALPで処理した、Neuro-2a腫瘍を有する雄A/Jマウスにおける、ルシフェラーゼ発現のサイレンシングを示すインビボデータを示す。
【図20】PEG-DAA複合体を含み、さらにCMVプロモータの制御下のルシフェラーゼをコードするプラスミドを含有するSPLP、ならびにPEG-DAA複合体を含み、さらに抗ルシフェラーゼsiRNAを含有するSNALPで処理した、Neuro-2a腫瘍を有する雄A/Jマウスにおける、ルシフェラーゼ発現のサイレンシングを示すインビボデータを示す。
【図21】PEG-DAA複合体を含み、さらにCMVプロモータの制御下のルシフェラーゼをコードするプラスミドを含有するSPLP、ならびにPEG-DAA複合体を含み、さらに抗ルシフェラーゼsiRNAを含有するSNALPで処理した、Neuro-2a腫瘍を有する雄A/Jマウスにおける、ルシフェラーゼ発現のサイレンシングを示すインビボデータを示す。
【図22】PEG-DAA複合体を含み、さらにCMVプロモータの制御下のルシフェラーゼをコードするプラスミドを含有するSPLP、ならびにPEG-DAA複合体を含み、さらに抗ルシフェラーゼsiRNAを含有するSNALPで処理した、Neuro-2a腫瘍を有する雄A/Jマウスにおける、ルシフェラーゼ発現のサイレンシングを示すインビボデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明の詳細な説明
I. 序
本発明は、一つまたは複数のsiRNA分子を封入するのに有用な安定的な核酸-脂質粒子(SNALP)、siRNAを含むSNALPを作製する方法、siRNAを含むSNALP、および対象にSNALPを送り込み、および/または投与して標的遺伝子配列の発現をサイレンシングさせる方法を提供する。
【0026】
本発明は、予想外に、SNALP中に短鎖干渉RNA(siRNA)分子を上手く封入できることに基づいている。本発明の方法を用いると、siRNA分子は、70%を上回る、より一般的には80〜90%を上回る効率でSNALPに封入される。本明細書に記載のSNALPは、インビトロおよびインビボで好都合に用いることができ、標的遺伝子を発現している細胞に、siRNA分子を局所的または全身的に、効率よく送達できる。ひとたび送達されると、SNALP中のsiRNA分子は標的遺伝子の発現をサイレンシングさせる。
【0027】
本明細書に記載のSNALPは、一般的には直径150 nm未満であり、標的組織にsiRNAを送り込むために、血行中において長時間、未変性状態を保つ。SNALPは、細胞および血管コンパートメントの他構成成分と相互作用しない、極めて安定的な、血清耐性の核酸含有粒子である。さらにSNALPは、疾患部位の標的細胞と容易に相互作用し、所望の核酸(例えばsiRNAまたはsiRNAをコードするプラスミド)を細胞内に容易に送達する。
【0028】
II. 定義
「脂質」という用語は、脂肪酸のエステルを含むがこれに限定されるものではない有機化合物であって、水に不溶性であるが多くの有機溶媒に可溶性であることを特徴とするグループを指す。それらは、一般には少なくとも3つのクラス:(1) 脂肪および油、ならびにロウを含む「単純脂質」;(2) リン脂質および糖脂質を含む「複合脂質」;(3) ステロイドのような「誘導脂質」に分けられる。
【0029】
「脂質小胞」とは、その水性体積が両親媒性脂質二重層に封入されているか、または干渉RNA配列を含むプラスミドのような巨大分子成分を少量の水性内部と一緒に含む内部を脂質が覆っているリポソーム;または封入された成分が比較的不規則な脂質混合物中に含まれている脂質凝集物もしくはミセルを含むが、これに限定されるものではない、化合物の送達に用いることができる脂質組成物である。
【0030】
本明細書で使用する「脂質封入された」とは、完全に封入された化合物、部分的に封入された化合物、またはその両方を提供する脂質処方物を指すことができる。好ましい態様では、核酸は脂質処方物に完全に封入される。
【0031】
本明細書で使用する「SNALP」という用語は、安定的な核酸脂質粒子を指す。SNALPは、干渉RNA配列、または干渉RNAが転写されるプラスミドのような核酸を含む、少量の水性内部を覆っている脂質の小胞である。
【0032】
「小胞形成脂質」という用語は、疎水成分と極性頭部基とを有し、それ自体が水中で、大部分のリン脂質で例示されるように、自発的に二重層小胞を形成する任意の両親媒性脂質を包含することを意味する。
【0033】
「小胞採用脂質」という用語は、脂質二重層内に安定的に組み入れられ、その疎水成分が二重膜内側の疎水域に接触しており、その極性頭部基成分が膜外側の極性面に向かう形で他の両親媒性脂質と組み合わさっている任意の両親媒性脂質を含むことを意図する。小胞採用脂質としては、それ自体は非層状形態をとる傾向にあるが、二重層安定化成分が存在する場合には二重層構造をとることができる脂質が挙げられる。代表例はDOPE(ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン)である。二重層安定化成分としては、SNALPの凝集を阻害する複合脂質、ポリアミドオリゴマー(例えばATTA-脂質誘導体)、ペプチド、タンパク質、界面活性剤、脂質誘導体、ジアルキルオキシプロピルに結合したPEG、ジアシルグリセロールに結合したPEG、ホスファチジルエタノールアミンに結合したPEG、およびセラミドと複合したPEGのようなPEG-脂質誘導体を挙げられるが、これに限定されない(参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,885,613を参照)。
【0034】
「両親媒性脂質」という用語は、一部、その脂質物質の疎水性部分が疎水相内に向き、一方親水性部分は水相に向いている、任意の好適物質を指す。両親媒性脂質は、一般的に、脂質小胞の主成分である。親水性は、炭水化物基、リン酸基、カルボキシル基、硫酸基、アミノ基、スルフヒドリル基、ニトロ基、ヒドロキシ基、およびその他同様の基のような極性または荷電基の存在に由来する。疎水性は、長鎖の、飽和および不飽和脂肪族炭化水素基、および一つまたは複数の芳香族基、脂環式もしくは複素環式基により置換されたこのような基を含むが、これに限定されない非極性基を含めることで付与できる。両親媒性化合物の例としては、リン脂質、アミノ脂質、およびスフィンゴ脂質が挙げられるが、これに限定されない。リン脂質の代表例は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン、リソホスファチジルコリン、リソホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、またはジリノレノイルホスファチジルコリンが挙げられるが、これに限定されない。スフィンゴ脂質、グリコスフィンゴ脂質ファミリー、ジアシルグリセロールおよびベータアシルオキシ酸のようなリンを欠いたその他化合物もまた、両親媒性脂質と呼ぶグループに属する。これに加え、上記両親媒性脂質は、トリグリセリドおよびステロールを含むその他の脂質と混合することもできる。
【0035】
「中性脂質」という用語は、選択pHにおいて非電荷または両性イオンの形で存在する数多い脂質種のいずれかを指す。生理学的pHでは、このような脂質として、例えばジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、セファリン、コレステロール、セレブロシド、およびジアシルグリセロールを挙げることができる。
【0036】
「非カチオン性脂質」という用語は、上記の任意の中性脂質およびアニオン性脂質を指す。
【0037】
「アニオン性脂質」という用語は、生理学的pHにおいて、負電荷を有する任意の脂質を指す。これらの脂質としては、ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジン酸、N-ドデカノイルホスファチジルエタノールアミン、N-スクシニルホスファチジルエタノールアミン、N-グルタリルホスファチジルエタノールアミン、リシルホスファチジルグリセロール、パルミトイルオレヨールホスファチジルグリセロール(POPG)および中性脂質に結合したその他アニオン性修飾基を挙げることができるが、これに限定されない。
【0038】
「カチオン性脂質」という用語は、生理学的pHのような選択pHにおいて、正味の正電荷を有する任意の数多い脂質種を指す。このような脂質としては、N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロライド(「DODAC」);N-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド(「DOTMA」);N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド(「DDAB」);N-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド(「DOTAP」);3-(N-(N',N'-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル)コレステロール(「DC-Chol」)およびN-(1,2-ジミリスチルオキシプロプ-3-イル)-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチル)アンモニウムブロミド(「DMRIE」)を挙げられるが、これに限定されない。次の脂質はカチオン性であり、また生理学的pH未満において正電荷を有する:DODAP、DODMA、DMDMA等。
【0039】
「疎水性脂質」という用語は、長鎖の飽和および不飽和脂肪族炭化水素基、および、場合により一つまたは複数の芳香族、脂環式または複素環式基によって置換されたそれらの基を包含するが、それに限定されるわけではない無極性基を有する化合物を指す。好適例としては、ジアシルグリセロール、ジアルキルグリセロール、N-N-ジアルキルアミノ、1,2-ジアシルオキシ-3-アミノプロパンおよび1,2-ジアルキル-3-アミノプロパンが挙げられるが、これに限定されない。
【0040】
「融合性」という用語は、リポソーム、SNALPまたはその他ドラッグデリバリーシステムが細胞膜と融合する能力を指す。膜は、原形質膜でもよいし、細胞小器官、例えばエンドゾーム、核等を取り囲んでいる膜でもよい。
【0041】
「ジアシルグリセロール」という用語は、2-脂肪アシル鎖、R1およびR2を有し、これらの鎖が共にグリセロールの1-および2-位と、エステル結合によって結合している2〜30個の炭素を独立に有している化合物を指す。アシル基は、飽和していてもよいし、様々な程度に不飽和であってもよい。ジアシルグリセロールは次の一般式を有する:

【0042】
「ジアルキルオキシプロピル」という用語は、2-アルキル鎖、R1およびR2を有し、これらの鎖が共に2〜30個の炭素を独立に有している化合物を指す。アルキル基は、飽和していてもよいし、様々な程度に不飽和であってもよい。ジアルキルオキシプロピルは次の一般式を有する:

【0043】
「ATTA」または「ポリアミド」という用語は、米国特許第6,320,017号および第6,586,559号に開示されている化合物を指すが、これに限定されるわけではなく、これら特許は共に参照によって本明細書に組み入れられる。これら化合物は、次式を有する化合物を包含し、

式中、Rは、水素、アルキルおよびアシルからなる群より選択されるメンバーであり;R1は、水素およびアルキルからなる群より選択されるメンバーであり;または場合により、RおよびR1は、窒素に結合してアジド成分を形成し;R2は、水素、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアリールおよびアミノ酸の側鎖から選択される群のメンバーであり;R3は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、ヒドラジノ、アミノおよびNR4R5からなる群より選択されるメンバーであり、このときR4およびR5は独立に水素またはアルキルであり;nは4〜80であり;mは2〜6であり;pは1〜4であり;qは0または1である。本発明の化合物には、他のポリアミドも使用できることは、当業者には明らかである。
【0044】
「核酸」または「ポリヌクレオチド」という用語は、少なくとも2個のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドを単鎖または二本鎖の形で含むポリマーを指す。特に限定しない限り、本用語は、参照核酸と同様の結合特性を有し、天然に産するヌクレオチドと類似の様式で代謝される、天然ヌクレオチドの公知類似体を含む核酸を包含する。特に指示しない限り、特定の核酸配列は、保存的に修飾されたその変種(例えば縮重コドン置換)、対立遺伝子、オルトログ、SNPおよび相補的配列、ならびに明示的に指示された配列をも暗示的に包含する。具体的には、縮重コドン置換は、一つまたは複数の、選択された(またはすべての)コドンの第3位が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を生成することによって達成できる(Batzer et al., Nucleic Acid Res. 19:5081 (1991); Ohtsuka et al., J. Biol. Chem. 260:2605-2608 (1985);および Cassol et al. (1992); Rossolini et al., Mol. Cell. Probes 8:91-98 (1994))。「ヌクレオチド」は、糖デオキシリボース(DNA)またはリボース(RNA)、塩基、およびリン酸基を含有する。ヌクレオチドは、リン酸基を通して互いに結合する。「塩基」は、プリンおよびピリミジンを含み、それらは天然化合物であるアデニン、チミン、グアニン、シトシン、ウラシル、イノシン、および天然類似体、ならびにプリンおよびピリミジンの合成誘導体をも包含し、合成誘導体は、アミン、アルコール、チオール、カルボキシレート、およびハロゲン化アルキルのような、しかしこれに限定されない新規反応基を配置する修飾を含むが、これに限定されるものではない。DNAは、アンチセンス、プラスミドDNA、プラスミドDNAの一部、予備濃縮DNA、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の産物、ベクター(P1、PAC、BAC、YAC、人工染色体)、発現カセット、キメラ配列、染色体DNA、またはこれらの群の誘導体の形をとることができる。核酸という用語は、遺伝子、cDNA、遺伝子がコードするmRNA、および干渉RNA分子と互換的に用いられる。
【0045】
「遺伝子」という用語は、ポリペプチドまたはポリペプチド前駆体(例えばA型、B型、C型、D型、E型、またはG型肝炎ウイルス、あるいは単純ヘルペスウイルス由来のポリペプチドまたはポリペプチド前駆体)の産生に必要な、部分長または全長のコード配列を含む核酸(例えばDNAまたはRNA)配列を指す。
【0046】
本明細書の中で使用する「遺伝子産物」は、例えばmRNAを含むRNA転写物のような、遺伝子産物を指す。
【0047】
「干渉RNA」または「RNAi」または「干渉RNA配列」という用語は、干渉RNAが標的遺伝子と同一の細胞内に在る時に、標的遺伝子の発現を低下または阻害できる(即ち、干渉RNAの配列に相補的なmRNAの分解を仲介することによって)二本鎖RNA(即ち二重鎖RNA)を指す。それゆえに、干渉RNAは、二本の相補鎖または一本の自己相補鎖によって形成される二本鎖RNAを表す。干渉RNAは、一般には、標的遺伝子に実質的または完全に同一である。干渉RNAの配列は、完全長の標的遺伝子、またはその部分配列に対応できる。干渉RNAは、「短鎖干渉RNA」または「siRNA」、即ち長さ約15〜60、15〜50、15〜50、または15〜40(二重鎖)のヌクレオチド、より典型的には長さ約15〜30、15〜25、または19〜25(二重鎖)のヌクレオチド、および好ましくは長さ約20〜24、または約21〜22、または21〜23(二重鎖)のヌクレオチドの干渉RNAを包含する(例えば、二本鎖siRNAの各相補配列は、長さ15〜60、15〜50、15〜50、15〜40、15〜30、15〜25、または19〜25ヌクレオチド、好ましくは長さ約20〜24もしくは約21〜22もしくは21〜23ヌクレオチドであり、また二本鎖siRNAは、長さ約15〜60、15〜50、15〜50、15〜40、15〜30、15〜25、もしくは19〜25、好ましくは約20〜24もしくは約21〜22もしくは約21〜23塩基対である)。siRNA二重鎖は、約1〜約4ヌクレオチド、好ましくは約2〜約3ヌクレオチドの3'オーバーハングおよび5'リン酸末端を含んでもよい。siRNAは、化学的に合成するか、またはプラスミドによってコードすることもできる(例えばヘアピンループを持つ二重鎖に自動的に折りたたまれる配列として転写される)。siRNAは、より長いdsRNA(例えば、約25ヌクレオチドより長いdsRNA)を、大腸菌RNase IIIまたはダイサーを使って切断して作製することもできる。これら酵素は、dsRNAを生物学的に活性なsiRNAに加工する(例えば、Yang et al., PNAS USA 99: 9942-7 (2002); Calegari et al., PNAS USA 99: 14236 (2002); Byrom et al., Ambion TechNotes 10(1): 4-6 (2003); Kawasaki et al., Nucleic Acids Res. 31: 981-7 (2003); Knight and Bass, Science 293: 2269-71 (2001);および Robertson et al., J. Biol. Chem. 243: 82 (1968))。好ましくは、dsRNAは、長さが、少なくとも50ヌクレオチドから約100、200、300、400、または500ヌクレオチドである。dsRNAは、1000、1500、2000、5000ヌクレオチド程度の長さであるか、またはそれより長くともよい。dsRNAは、全遺伝子転写物または遺伝子転写物の一部をコードできる。
【0048】
「実質的に同一」とは、ストリンジェントな条件において、参照配列または参照配列の指定領域に対し指定された割合の同一性を有する配列にハイブリダイゼーションする配列を指す。
【0049】
「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」という語句は、プローブが、典型的には核酸の複合混合物中において、その標的部分配列とはハイブリダイゼーションするが、その他の配列にはハイブリダイゼーションしない条件を指す。ストリンジェントな条件は配列依存的であり、環境がことなれば変わりうる。長い配列ほど、より高い温度で特異的にハイブリダイゼーションする。核酸のハイブリダイゼーションに関する詳しい手引きは、Tijssen, Techniques in Biochemistry and Molecular Biology-Hybridization with Nucleic Probes,「Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays」(1993) に見いだせる。一般的には、ストリンジェントな条件は、規定のイオン強度pHにおいて、具体的な配列の融解点(Tm)より約5〜10℃低くなるように選択される。Tmは、標的に相補的なプローブの50%が、標的配列と平衡状態(標的配列が過剰に存在するため、Tmでは、プローブの50%が平衡状態になる)でハイブリダイゼーションする温度(規定のイオン強度、pH、および核酸濃度において)である。ストリンジェントな条件は、ホルムアミドのような不安定化剤を加えることによっても達成してもよい。選択的または特異的ハイブリダイゼーションの場合、正の信号は、バックグランドの少なくとも2倍、好ましくはバックグランドハイブリダイゼーションの10倍である。
【0050】
例示的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は次のとおりである:50%ホルムアミド、5×SSC、および1% SDS、42℃でインキュベーション、または5×SSC、1% SDS、65℃でインキュベーションし、0.2×SSCおよび0.1% SDS、65℃で洗浄する。PCRの場合、低ストリンジェントな増幅では、約36℃の温度が一般的であるが、アニーリング温度は、プライマーの長さに応じて約32℃〜48℃で変動することができる。高ストリンジェントなPCR増幅では、約62℃の温度が代表的であるが、高ストリンジェントなアニーリング温度は、プライマーの長さ、および特異性に応じて約50℃〜約65℃の範囲で変わる。高および低ストリンジェントな増幅の代表的なサイクル条件は、90℃〜95℃で30秒〜2分間の変性段階、30秒〜2分間のアニーリング段階、および約72℃で1〜2分間の伸長段階を含む。低および高ストリンジェントな増幅反応のプロトコルおよびガイドラインは、例えばInnisら、(1990) PCR Protocols, A Guide to Methods and Applications, Academic Press, Inc. N.Y.に記載されている。
【0051】
ストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイゼーションしない核酸も、それらがコードするポリペプチドが実質的に同一であれば、実質的には同一である。このようなことは、例えば、核酸のコピーを、遺伝子コードが許容する最大のコドン縮重を用いて作るときに起こる。このような例では、核酸は一般的には、中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件でハイブリダイゼーションする。例示的な「中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、40%ホルムアミド、1M NaCl、1% SDSのバッファー中、37℃でのハイブリダイゼーション、および1×SSC、45℃での洗浄を含む。正のハイブリダイゼーションは、少なくともバックグランドの2倍である。当業者は、これに替わるハイブリダイゼーションおよび洗浄条件を用いても、同様のストリンジェント性を有する条件が提供できることを容易に認識するだろう。ハイブリダイゼーションパラメータの決定に関するさらなるガイドラインは、様々な参考資料、例えばCurrent Protocols in Molecular Biology, ed. Ausubel et al.、に記載されている。
【0052】
「実質的に同一である」または「実質的同一性」という用語は、二またはそれより多い核酸に関連して、比較ウインドウについて最大の一致が得られるように並べて比較した時、あるいは次の配列比較アルゴリズムの一つ、または手作業によるアラインメントおよび目視検査によって指定領域全体を比較した時に、全く同じであるか、または同じであるヌクレオチドの指定された割合(即ち、指定された範囲全体の同一性が少なくとも60%、好ましくは65%、70%、75%、好ましくは80%、85%、90%、または95%)を有している、二またはそれより多い配列または部分配列を指す。この定義は、状況から妥当と考えられる場合には、配列の相補性にも同様に当てはめられる。実質的同一性は、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、75、または100ヌクレオチドの長さの領域全体に存在することが好ましい。
【0053】
配列の比較では、一般的には、一つの配列は参照配列となり、これと試験配列とが比較される。配列比較アルゴリズムを用いる場合、試験および参照配列をコンピュータに入力し、必要に応じて部分配列座標を指定し、必要であれば配列アルゴリズムプログラムのパラメータを指定する。初期設定のプログラムパラメータを使用してもよいし、別のパラメータを指定してもよい。その後配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列のパーセント配列同一性を計算する。
【0054】
「比較ウインドウ」とは、本明細書の中では、20〜600、通常は約50〜約200、より一般的には約100〜約150からなる群より選択される連続位置数の任意の一つのセグメントであって、その中の配列が、二つの配列のアラインメントを最適化した後に同じ連続位置番号を持つ参照配列と比較されるセグメントの参照を含む。比較のための配列のアラインメントの方法は、当技術分野において周知である。比較のための配列の最適なアラインメントは、例えばSmith & Waterman, Adv, Appl. Math. 2:482(1981)の局所ホモロジーアルゴリズムによって、Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443 (1970)のホモロジーアラインメントアルゴリズムによって、Pearson & Lipman, Proc, Nat'l. Acad. Sci. USA 85:2444 (1988) の類似性調査法により、これらのアルゴリズムをコンピュータを用い実施することによって(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WI のGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)、あるいは手作業のアラインメントおよび目視検査によって(例えばCurrent Protocols in Molecular Biology (Ausubel et al., eds. 1995 supplement) 参照)実施できる。
【0055】
パーセント配列同一性および配列類似性の決定に適したアルゴリズムの好ましい例は、BLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムであり、これらはAltschulら、Nuc. Acids Res. 25:3389-3402 (1997) およびAltschulら、J. Mol. Biol. 215:403-410 (1990) にそれぞれ記載されている。BLASTおよびBLAST 2.0を、本明細書に記載のパラメータとともに使用し、本発明の核酸およびタンパク質の同一性を判定する。BLSAT分析を実行するソフトウエアは、National Center for Biotechnology Information (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)より公的に入手できる。このアルゴリズムは、データベース配列内の同じ長さのワード(word)とアラインメントを取った時に、ある正の値を持つ閾値スコアTに一致するかまたは条件を満たす長さWの短いワードを問合わせ配列の中に同定することによって、高いスコアを示す配列のペア(HSP)を最初に同定することを含む。Tは、隣接ワードスコア閾値(neighborhood word score threshold)と呼ばれる(Altschul et al. 上記)。このような最初の隣接ワードヒット(word hit)は、それらを含む、より長いHSPを見出す検索を始める際に種となるものである。ワードヒットは、アラインメントの累計スコアが増加する間、各配列に沿って両側に伸ばされていく。累計スコアは、ヌクレオチド配列の場合、パラメータM(一致残基ペアへのリワードスコア;常に>0)および N(不一致残基のペナルティースコア;常に<0)を用いて計算される。アミノ酸配列の場合は、スコア化マトリックスを用いて、累計スコアを計算する。ワードヒットの両側への伸長は、累計アラインメントスコアが得られている最大値からX分だけ低下した時;累計スコアが、一つまたは複数の負のスコア化残基アライメントを加えたことによってゼロ以下になった時;あるいはどちらかの配列端部に到達した時に停止する。BLASTアルゴリズムパラメータW、T、およびXは、アラインメントの感度および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列向け)は、初期設定値として、ワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=4および両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列の場合、BLASTPプログラムは、初期設定値としてワード長3および期待値(E)10を使用し、BLOSUM62スコア化マトリックス(Henikoff & Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci USA 89: 10915 (1989) 参照)アラインメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=-4、および両鎖の比較を使用する。
【0056】
BLASTアルゴリズムは、二配列間の類似性の統計分析をも行う(Karlin & Altschul, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 90:5873-5787 (1993) 参照)。BLASTアルゴリズムが提供する類似性の一つの測度は、最小合計確率(P(N))であり、これは二つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列が偶然一致する確率の指標となる。例えば、核酸は、試験核酸を参照核酸と比較した際の最小合計確率が約0.2未満、より好ましくは0.01未満、最も好ましくは約0.001未満の時、核酸は参照配列と類似していると見なされる。
【0057】
「標的遺伝子の発現を阻害する」という語句は、本発明のsiRNAの、標的遺伝子の遺伝子サイレンシングを開始する能力を指す。遺伝子サイレンシングの程度を調べるためには、関心対象の生物または特定構築物を発現している培養細胞のサンプルまたはアッセイ法と、構築物を発現していないコントロールサンプルとを比較する。コントロールサンプル(構築物の発現を欠いている)には相対値100%が割り当てられる。標的遺伝子の発現の阻害は、コントロール値に対し試験値が約90%、好ましくは50%、より好ましくは25〜0%の時に達成される。好適なアッセイ法としては、例えばドットブロット、ノーザンブロット、インサイチューハイブリダイゼーション、ELISA、免疫沈降、酵素機能、ならびに当業者に公知の表現形アッセイのような、当業者に公知の技術を用いたタンパク質またはmRNAレベルの検査が挙げられる。
【0058】
「核酸」は、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド、および単鎖または二本鎖の形をしたそのポリマーを指す。本用語は、合成、天然に生じる、および非天然に生じ、参照核酸と類似の結合特性を有し、参照ヌクレオチドと同様の様式で代謝される、公知ヌクレオチド類似体または修飾主鎖残基または架橋を含有する核酸を包含する。このような類似体の例としては、ホスホロチオエート、ホスホロアミデート、メチルホスホネート、キラル-メチルホスホネート、2-O-メチルリボヌクレオチド、ペプチド-核酸(PNA)が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0059】
遺伝子または核酸の「サイレンシング」または「ダウンレギュレーション」とは、標的核酸配列、即ちRNAiが標的とする配列の翻訳が検知可能に減少すること、または、標的配列またはタンパク質の量もしくは活性が、干渉RNAまたはその他核酸配列が無い場合に検出されるレベルに比べて低下することを意味する。検出可能な減少は、小さい場合には約5%または10%程度であり、または大きい場合には約80%、90%、または100%程度になる。より典型的には、検出可能な減少は、約20%、30%、40%、50%、60%、または70%である。
【0060】
siRNAの「治療有効量」または「有効量」は、所望の効果、例えばsiRNAが無い場合に検出される通常発現レベルに比べて標的配列の発現の低下を生ずるのに十分な量である。
【0061】
本明細書で用いる「水性溶液」という用語は、そのすべてまたは一部に水を含む組成物を指す。
【0062】
本明細書で用いる「有機脂質溶液」という用語は、そのすべてまたは一部に脂質を有する有機溶媒を含む組成物を指す。
【0063】
「遠位部」とは、本明細書で用いる場合、隣接する毛細血管床に限定されない物理的に離れた部位であり、生体全体に広く分布する部位を包含する。いくつかの態様では、遠位部は、疾患部位(例えば、腫瘍部位、炎症部位、または感染部位)から物理的に離れた部位を指す。
【0064】
核酸-脂質粒子に関連する「血清安定」とは、粒子が、遊離DNAを有意な程度に分解する血清またはヌクレアーゼアッセイに曝露した場合でも、有意な分解を示さないことを意味する。好適なアッセイ法としては、標準的な血清アッセイ、および下記実施例に記載されているようなDNAseアッセイが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0065】
「全身送達」とは、本明細書で使用する場合、化合物が生体内に広く分布するように送達することを指す。いくつかの投与技術は、特定の化合物を全身送達できるが、他の化合物を全身送達することはできない。全身送達は、体の大部分が有用量の、好ましくは治療量の化合物に曝露することを意味する。広範囲の生体分布を達成するには、一般的には、投与部位に対し遠位にある疾患部位に到達する前に、化合物が速やかに分解または排除(初回通過器官(肝臓、肺等)によるもの、または迅速な非特異的細胞結合等による)されない血中寿命が求められる。核酸-脂質粒子の全身送達は、例えば静脈、皮下、腹腔内を含む、当技術分野で公知の任意の手段により可能である。好ましい態様では、核酸-脂質粒子の全身送達は、静脈送達による。
【0066】
本明細書で使用する「局所送達」は、化合物を生体内の標的部位に直接送込むことを指す。例えば、化合物は、腫瘍のような疾患部位、または炎症部位のようなその他標的部位、または肝臓、心臓、膵臓、腎臓等のような標的器官の中に直接注射することによって局所送達することができる。
【0067】
III. 安定核酸-脂質粒子
本明細書に記載の安定核酸-脂質粒子(SNALP)は、典型的には核酸(例えばsiRNA配列またはsiRNA配列をコードしているDNA配列)、カチオン性脂質、非カチオン性脂質および、例えばSNALPの凝集を阻害する複合脂質のような二重層安定化成分を含む。本発明のSNALPは、約150 nm未満の平均直径を有し、実質的に無毒である。さらに、本発明のSNALPに封入された核酸は、水性溶液中でのヌクレアーゼによる分解に耐性である。
【0068】
A. カチオン性脂質
本明細書に記載のSNALPには、単独または一つまたは複数のその他カチオン性脂質種もしくは中性脂質種と組み合わせて、様々な、適当なカチオン性脂質を用いることができる。
【0069】
本発明において有用であるカチオン性脂質は、生理学的pHにおいて正味の正電荷を持つ、数多い脂質種のいずれでもよく、例えば:DODAC、DOTMA、DDAB、DOTAP、DOSPA、DOGS、DC-Chol、およびDMRIE、またはそれらの組合せである。これら幾つかの、本発明でも有用である脂質および関連類似体は、米国特許第5,208,036号、第5,264,618号、第5,279,833号、第5,283,185号、第5,753,613号、および第5,785,992号に記載されており、それぞれの開示は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0070】
カチオン性脂質は、典型的には、該粒子中に存在する全脂質の約2%〜約60%、好ましくは該粒子中に存在する全脂質の約5%〜約45%を占める。ある好ましい態様では、カチオン性脂質は、該粒子中に存在する全脂質の約5%〜約15%を占める。別の好ましい態様では、カチオン性脂質は、該粒子中に存在する全脂質の約40%〜約50%を占める。核酸-脂質粒子の使用目的に応じて成分比率は変わり、または実際の処方物の送達効率は、エンドゾーマル放出パラメータ(ERP)アッセイを用いて測定できる。例えば、全身送達では、カチオン性脂質は、該粒子中に存在する全脂質の約5%〜約15%を占め、かつ局所送達では、カチオン性脂質は、該粒子中に存在する全脂質の約40%〜約50%を占める。
【0071】
B. 非カチオン性脂質
本明細書記載のSNALPの非カチオン性脂質成分は、安定した複合体を作ることが出来る、様々な、中性の、電荷を持たない、両性イオンまたはアニオン性脂質でよい。それらは、好ましくは中性であるが、または正または負に帯電していてもよい。本発明に有用な非カチオン性脂質の例としては:レシチン、ホスファチジルエタノールアミン、リソレシチン、リソホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、セファリン、カルジオリピン、ホスファチジン酸、セレブロシド、ジセチルリン酸、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、パルミトイルオレヨールホスファチジルグリセロール(POPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(POPE) 、およびジオレオイルホスファチジルエタノールアミン4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート(DOPE-mal) のようなリン脂質関連物質が挙げられる。非カチオン性脂質、またはコレステロールのようなステロールも存在できる。追加の非リン含有脂質は、例えばステアリルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、アセチルパルミテート、グリセロールリシノレート、ヘキサデシルステリエート(stereate)、イソプロピルミリステート、両性アクリルポリマー、トリエタノールアミン-ラウリルスルフェート、アルキル-アリールスルフェートポリエチルオキシル化脂肪酸アミド、ジオクタデシルジメチルアンモニウムブロミド等、ジアシルホスファチジルコリン、ジアセチルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、セファリン、およびセレブロシドである。リソホスファチジルコリンおよびリソホスファチジルエタノールアミンのようなその他脂質も存在できる。非カチオン性脂質は、PEG2000、PEG5000、および参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,820,873号に記載されているリン脂質またはセラミドと共役したポリエチレングリコール(PEG-Cerと呼ぶ)のようなポリエチレングリコールをベースとするポリマーも包含する。
【0072】
好ましい態様では、非カチオン性脂質はジアシルホスファチジルコリン(例えばジステアロイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリンおよびジリノレオイルホスファチジルコリン)、ジアシルホスファチジルエタノールアミン(例えばジオレオイルホスファチジルエタノールアミンおよびパルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン)、セラミドまたはスフィンゴミエリンである。これら脂質中のアシル基は、好ましくはC10〜C24炭素鎖を有する脂肪酸に由来するアシル基である。より好ましくは、アシル基はラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイルまたはオレオイルである。特に好ましい態様では、非陽性脂質は、一つまたは複数のコレステロール、1,2-sn-ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、または卵スフィンゴミエリン(ESM)である。
【0073】
非カチオン性脂質は、典型的には該粒子中に存在する全脂質の約5%〜約90%、特に該粒子中に存在する全脂質の約20%〜約85%を占める。PEG-DAG複合体は、典型的には該粒子中に存在する全脂質の1%〜約20%、好ましくは該粒子中に存在する全脂質の4%〜約15%を占める。本発明の核酸-脂質粒子は、コレステロールをさらに含んでよい。存在する場合、コレステロールは、典型的には該粒子中に存在する全脂質の約10%〜約60%を占め、好ましくは、コレステロールは該粒子中に存在する全脂質の約20%〜約45%を占める。
【0074】
C. 二重層安定化成分
一つの態様では、SNALPは、二重層安定化成分(BSC)をさらに含む。好適BSCとしては、ポリアミドオリゴマー、ペプチド、タンパク質、界面活性剤、脂質誘導体、ジアルキルオキシプロピルに結合したPEG(PEG-DAA)、ジアシルグリセロールに結合したPEG(PEG-DAG)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)に結合したPEG(PEG-PE)、またはセラミドに共役したPEG、あるいはそれらの混合体のようなPEG-脂質(参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,885,613号を参照)を挙げることができるが、これに限定されるわけはない。一つの態様では、二重層安定化成分は、PEG-脂質またはATTA-脂質である。一つの好ましい態様では、BSCはSNALPの凝集を阻害する複合脂質である。好適な複合脂質としては、PEG-脂質複合体、ATTA-脂質複合体、カチオン-ポリマー-脂質複合体(CPL)またはその混合体が挙げられるが、これに限定されるものではない。一つの好ましい態様では、SNALPは、PEG-脂質複合体またはATTA-脂質複合体を、CPLと一緒に含む。
【0075】
典型的には、二重層安定化成分は、粒子中に存在する全脂質の約0.5%〜約50%の範囲で存在する。好ましい態様では、二重層安定化成分は、粒子中に存在する全脂質の約0.5%〜約25%の範囲で存在する。別の好ましい態様では、二重層安定化成分は、粒子中に存在する全脂質の約1%〜約20%、または約3%〜約15%、または約4%〜約10%の範囲で存在する。当業者は、二重層安定化成分の濃度が、使用する二重層安定化成分およびリポソームが融合性になる割合に応じて変わりうることを認識するだろう。
【0076】
二重層安定化成分の組成および濃度をコントロールすることによって、二重層安定化成分がリポソームの外と交換される割合、換言すると、リポソームが融合性になる割合をコントロールできる。例えば、ポリエチレングリコール-ホスファチジルエタノールアミン複合体またはポリエチレングリコール-セラミド複合体を二重層安定化成分として使用した場合、リポソームが融合性になる割合は、例えば二重層安定化成分の濃度を変えることによって、ポリエチレングリコールの分子量を変えることによって、またはホスファチジルエタノールアミンもしくはセラミドのアシル鎖基の鎖長および飽和度を変えることによって、変更できる。これに加えて、例えば、pH、温度、イオン強度等を含むその他変数を用いて、リポソームが融合性になる割合を変更および/またはコントロールできる。リポソームが融合性になる割合のコントロールに用いることができるその他方法は、本開示を読むことにより、当業者に明らかになるだろう。
【0077】
1. ジアシルグリセロール-ポリエチレングリコール複合体
一つの態様では、二重層安定化成分は、ジアシルグリセロール-ポリエチレングリコール複合体、即ちDAG-PEG複合体またはPEG-DAG複合体を含む。好ましい態様では、DAG-PEG複合体はジラウリルグリセロール(C12)-PEG複合体、ジミリスチルグリセロール(C14)-PEG複合体(DMG)、ジパルミトイルグリセロール(C16)-PEG複合体またはジステアリルグリセロール(C18)-PEG複合体(DSG)である。当業者は、他のジアシルグリセロールが本発明のDAG-PEG複合体に使用できることをすぐに認識するであろう。本発明での使用に好適なDAG-PEG複合体、およびそれらを作製し、使用する方法は、米国特許出願第2003/0077829号として公開された米国特許出願第10/136,707号、およびPCT特許出願第CA02/00669号に開示されており、各特許出願は、参照により本明細書にその全体が組み入れられる。
【0078】
2. ジアルキルオキシプロピル複合体
別の態様では、二重層安定化成分は、ジアルキルオキシプロピル複合体、即ちPEG-DAA複合体を含む。一つの好ましい態様では、PEG-DAA複合体は次の化学式を有する:

【0079】
式Iでは、R1およびR2は、独立に選択される、約10〜約22個の炭素原子を有する長鎖のアルキル基である。長鎖アルキル基は、飽和でも不飽和でもよい。好適なアルキル基としては、ラウリル(C12)、ミリスチル(C14)、パルミチル(C16)、ステアリル(C18)、およびイコシル(C20)が挙げられるが、これに限定されるものではない。好ましい態様では、R1およびR2は同一、即ちR1およびR2は共にミリスチル(即ちジミリスチル)、R1およびR2は共にステアリル(即ちジステアリル)であるといった具合である。式Iでは、PEGは約550〜約8,500ダルトンの平均分子量を有するポリエチレングリコールである。好ましい態様では、PEGは約1000〜約5000ダルトン、より好ましくは約1,000〜約3,000ダルトン、さらにより好ましくは約2,000ダルトンの平均分子量を有する。PEGは、アルキル、アルコキシ、アシル、またはアリール基で置換されていてもよい。式Iでは、Lはリンカー成分である。PEGのジアルキルオキシプロピル主鎖への結合に好適な、いずれのリンカー成分も使用できる。好適リンカー成分としては、アミド(-C(O)NH-)、アミノ(-NR-)、カルボニル(-C(O)-)、カーボネート(O-C(O)O-)、カルバメート(-NHC(O)O-)、尿素(-NHC(O)NH-)、スクシニル(-(O)OCH2CH2C(O)-)、エーテル、ジスルフィド、およびそれらの組合せが挙げられるが、それに限定されるわけではない。他の好適リンカーは当技術分野で周知である。
【0080】
様々な鎖長および飽和度の、各種アシル鎖基を有するホスファチジルエタノールアミンがポリエチレングリコールと複合し、二重層安定化成分を形作ることができる。このようなホスファチジルエタノールアミンは市販されているか、または当業者に公知の通常の技術を用いて、単離または合成できる。C10からC20の範囲の炭素鎖長を持つ飽和または不飽和脂肪酸を含有するホスファチジルエタノールアミンが好ましい。ホスファチジルエタノールアミンは、モノ不飽和脂肪酸またはジ不飽和脂肪酸、および飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の混合物と共に使用することもできる。好適ホスファチジルエタノールアミンとしては、次のものが挙げられるが、これに限定されるものではない:ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE) およびジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)。
【0081】
ホスファチジルエタノールアミンと同様に、様々な鎖長および飽和度の各種アシル鎖基を有するセラミドをポリエチレングリコールに結合でき、二重層安定化成分を形作ることができる。ホスファチジルエタノールアミンとは異なり、セラミドは、その鎖長および飽和度を容易に変えることができる一つのアシル基だけを持つことは、当業者には明らかである。本発明での使用に好適なセラミドは市販されている。これに加えて、セラミドは、例えば周知の単離技術を用いて、卵または脳から単離できるか、または参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,820,873号に開示されている方法および技術を用いて合成できる。該出願に記載の合成経路を用いると、C2〜C31の範囲の炭素鎖長を持つ飽和または不飽和脂肪酸を有するセラミドが調製できる。
【0082】
3. カチオン性ポリマー脂質
カチオン性ポリマー脂質(CPL)も、本明細書に記載のSNALPSに使用できる。好適なCPLは、一般的には、次の構造部分を有する:(1) 脂質二重層内にCPLを組み入れるための、疎水性脂質のような脂質アンカー;(2) カチオン性頭部基に脂質アンカーを結合するための、ポリエチレングリコールのような親水性スペーサー;および(3) プロトン化可能なカチオン性頭部基を生成するための、天然アミノ酸のようなポリカチオン性成分。本発明での使用に好適なSNALPおよびSNALP-CPL、ならびにSNALPおよびSNALP-CPLを作製および使用する方法は、例えば米国特許出願第09/553,639号および第09/839,707号(米国特許出願2002/0072121として公開)、ならびにPCT特許出願第CA00/00451号(国際公開公報第00/62813号として公開)に開示されており、各特許は参照により本明細書にそのまま組み入れられる。
【0083】
簡単に説明すると、本発明は式IIの化合物を提供する:

式中のA、W、およびYは次の通りである。
【0084】
式IIでは、「A」は両親媒性脂質、中性脂質、または疎水性脂質のような、脂質アンカーとして機能する脂質成分である。好適脂質の例としては、小胞形成脂質または小胞適合脂質が挙げられ、またジアシルグリセロリル、ジアルキルグリセロリル、N-N-ジアルキルアミノ、1,2-ジアシルオキシ-3-アミノプロパンおよび1,2-アルキル-3-アミノプロパンが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0085】
「W」は、親水性ポリマーまたはオリゴマーのような、ポリマーまたはオリゴマーである。好ましくは、親水性ポリマーは、非免疫原性であるか、または内在免疫原性が低い、生体適合ポリマーである。または、親水性ポリマーは、適当なアジュバントと一緒に使用するのであれば、弱い免疫原性があってもよい。好適な非免疫原性ポリマーとしては、PEG、ポリアミド、ポリ酢酸、ポリグリコール酸、ポリ酢酸/ポリグリコール酸コポリマー、およびその組合せが挙げられるが、これに限定されるものではない。好ましい態様では、ポリマーは、約250〜約7000ダルトンの分子量を有する。
【0086】
「Y」はポリカチオン性成分である。ポリカチオン性成分という用語は、正電荷、好ましくは選択したpH、好ましくは生理学的pHにおいて、少なくとも2の正電荷を有する化合物、誘導体または官能基を指す。好適なポリカチオン性成分としては、アルギニン、アスパラギン、グルタミン、リジン、およびヒスチジンのような塩基性アミノ酸およびそれらの誘導体;スペルミン;スペルミジン;カチオン性デンドリマー;ポリアミン;ポリアミン糖;ならびにアミノ多糖が挙げられる。ポリカチオン性成分は、線状テトラリジンのように直線でも、分岐またはデンドリマー構造でもよい。ポリカチオン性成分は、選択されたpHにおいて、約2〜約15の正電荷、好ましくは約2〜約12の正電荷、より好ましくは約2〜約8の正電荷を持つ。どのポリカチオン性成分を用いるかの選択は、所望されるリポソーム応用のタイプによって決められる。
【0087】
ポリカチオン性成分の電荷は、全リポソーム成分の周囲に分布しても、または、例えば電荷スパイクのような、リポソーム成分のある特定領域内の電荷密度の別個の密度であってもよい。電荷密度がリポソーム上に分布する場合は、電荷密度は均一または不均一に分布してよい。本発明は、ポリカチオン性成分の電荷分布のあらゆる変形を包含する。
【0088】
脂質「A」と非免疫原性ポリマー「W」とは、様々な方法、好ましくは共有結合によって結合できる。「A」と「W」との共有結合には、当業者に公知の方法を用いることができる。好適結合としては、アミド、アミン、カルボキシル、カーボネート、カルバメート、エステル、およびヒドラゾン結合が挙げられるが、それに限定されるわけではない。結合の実現には、「A」と「W」が相補的な官能基を有していなければならないことは、当業者にとって明らかであろう。これら二つの基、脂質側の基およびポリマー側の基が反応して、所望の結合を提供する。例えば、脂質がジアシルグリセロールである場合は、末端ヒドロキシルが、例えばNHSおよびDCCによって活性化されて活性化エステルを形成し、次にアミノ基を含むポリマーと、例えばポリアミド(共に参照により本明細書に組み入れられている米国特許第6,320,017号および第6,586,559号を参照)とを反応させ、二つの基の間にアミド結合を形成する。
【0089】
特定の例では、ポリカチオン性成分に、標的化リガンドまたはカルシウムを錯体化するキレート成分のようなリガンドを結合できる。好ましくはリガンド結合後も、カチオン性成分が正電荷を維持することである。ある例では、結合するリガンドは正電荷を有する。好適なリガンドとしては、それに限定されるわけではないが、反応性官能基を持つ化合物または素子が挙げられ、脂質、両親媒性脂質、キャリア化合物、生体親和性化合物、生体材料、バイオポリマー、生物医学的素子、分析的に検出可能な化合物、治療活性化合物、酵素、ペプチド、タンパク質、抗体、免疫刺激剤、放射性標識、発蛍光団、ビオチン、薬物、ハプテン、DNA、RNA、多糖、リポソーム、ビロソーム、ミセル、免疫グロブリン、官能基、その他標的成分、または毒素を挙げることができる。
【0090】
D. SiRNA
SNALPの核酸成分は、一般的には干渉RNA(即ちsiRNA)を含み、干渉RNAは、例えば一つまたは複数の、単離された、短い干渉RNA(siRNA)二重鎖、より長い二本鎖RNA(dsRNA)、またはDNAプラスミドの中の転写カセットから転写されたsiRNAまたはdsRNAを含むいくつかの形態で提供できる。
【0091】
RNA集団は、長鎖の前駆体RNAの提供に用いることができ、または選択した標的配列に実質的または完全に同一である長鎖の前駆体RNAを用いてsiRNAを作ることができる。RNAは細胞または組織から単離でき、当業者に周知の方法に従って合成および/またはクローニングできる。RNAは混合集団(細胞または組織から得るか、cDNAから転写するか、サブトラクションするか、選択したもの等)でもよく、または単一の標的配列でもよい。RNAは天然に産するもの、例えば組織または細胞サンプルより単離したもの、例えばT7またはSP6ポリメラーゼとPCR産物またはクローニングcDNAを用いてインビトロで合成したもの;あるいは化学的に合成したものでよい。
【0092】
長鎖のdsRNAを作る場合、合成RNAであれば、相補体もインビトロで転写し、ハイブリダイゼーションを行ってdsRNAを形作る。天然のRNA集団を用いる場合は、例えばRNA集団に対応するcDNAを転写するか、またはRNAポリメラーゼを用いることによってRNA相補体も得る(例えば、大腸菌RNAase IIIまたはダイサー消化のためのdsRNAを形成するための)。次に前駆体RNAをハイブリダイゼーションし、消化に供する二本鎖RNAを作る。dsRNAはSNALPに直接封入しても、または封入前にインビトロ消化にかけてもよい。
【0093】
または、一つまたは複数のsiRNA鋳型をコードする一つまたは複数のDNAプラスミドを、核酸-脂質粒子に封入する。siRNAは、例えば短核RNA U6またはヒトRNase P RNA H1のための天然の転写単位を基礎にしたRNAポリメラーゼIII転写単位を有するプラスミドの中で、鋳型DNAからヘアピンループを持つ二重鎖に自動的に折りたたまれる配列として転写できる(Brummelkamp, et al., Science 296:550 (2002); Donze, et al., Nucleic Acids Res. 30:e46 (2002); Paddison, et al., Genes Dev. 16:948 (2002); Yu, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 99:6047 (2002); Lee, et al., Nat. Biotech. 20:500 (2002); Miyagishi, et al., Nat. Biotech. 20:497 (2002); Paul, et al., Nat. Biotech. 20:505 (2002);および Sui, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 99:5515 (2002) 参照)。一般的には、転写単位またはカセットは、所望のsiRNA配列の転写の鋳型と機能的に連結しているH1-RNAまたはU6プロモータのようなRNA転写プロモータ配列、および2-3ウリジン残基およびポリチミジン(T5)配列(ポリアデニル化シグナル)(Brummelkamp, Sicence、上記)を含む停止配列を含有すると考えられる。選択したプロモータは、構成的または誘導的転写を提供できる。RNA干渉分子のDNA指導転写のための組成物および方法は、参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第6,573,099号に詳しく記載されている。好ましくは、合成または転写されたsiRNAは、約1〜4ヌクレオチド、好ましくは約2〜3ヌクレオチドの3'オーバーハング、および5'リン酸終端を有する(Elbashir, et al., Genes Dev 15:188(2001); Nykanen, et al., Cell 107:309 (2001))。転写単位はプラスミドまたはDNAベクター内に組み入れることができ、そこから干渉RNAが転写される。治療のための遺伝材料をインビボ送達するのに好適なプラスミドは、米国特許第5,962,428号および第5,910,488号に詳しく記載されており、両特許は参照により本明細書に組み入れられる。選択されたプラスミドは、標的細胞の一過的または安定した送達を提供できる。本来、所望遺伝子配列の発現を目的に設計されたプラスミドを、siRNA転写のための転写単位カセットを含有するように変更できることは、当業者にとって明らかであろう。
【0094】
RNAを単離する方法、RNAを合成する方法、核酸をハイブリダイゼーションする方法、cDNAライブラリーを作製およびスクリーニングする方法、ならびにPCRを実施する方法は、PCR法(米国特許第4,683,195号および第4,683,202号; PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications (Innis et al., eds, 1990))同様に、当技術分野において周知である(例えばGulber & Hoffman, Gene 25;263-269 (1983); Sambrook et al., 上記; Ausubel et al.,上記参照)。発現ライブラリーも当業者に周知である。本発明に使用する一般的方法を開示するその他基本的テキストとしては、Sambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual (2nd ed. 1989); Kriegler, Gene Transfer and Expression: A Laboratory Manual (1990);およびCurrent Protocol in Molecular Biology (Ausubel et al., eds., 1994))が挙げられる。
【0095】
1. 標的遺伝子
一般に、SNALPSは、関心対象の遺伝子産物の翻訳(即ち発現)をダウンレギュレーションまたはサイレンシングさせるために送達することが望まれる。遺伝子産物の好適な分類としては、ウイルス感染および生存に関係する遺伝子、代謝性疾患および障害(例えば肝臓が標的である疾患および障害、ならびに肝臓疾患および障害)に関係する遺伝子、ならびに障害、腫瘍形成、および細胞形質転換に関係する遺伝子、血管形成遺伝子、炎症性、および自己免疫応答に関係するような免疫変更遺伝子、リガンドレセプター遺伝子、ならびに神経変性障害に関係する遺伝子が挙げられるが、それに限定されるわけではない。
【0096】
ウイルス感染および生存に関係する遺伝子には、細胞内で結合、侵入、および複製するためにウイルスが発現する遺伝子が含まれる。特に関心対象のものは、慢性ウイルス性疾患に関係するウイルス配列である。特に関心対象のウイルス配列としては、肝炎ウイルス(Hamasaki, et al., FEBS Lett. 543:51 (2003); Yokota, et al., EMBO Rep. 4:602 (2003); Schlomai, et al., Hepatology 37:764 (2003); Wilson, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 100:2783 (2003); Kapadia, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 100:2014 (2003);および FIELDS VIROLOGY (Knipe et al., eds. 2001))、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)(Banerjea, et al., Mol. Ther. 8:62 (2003); Song, et al., J. Virol. 77:7174 (2003); Stephenson JAMA 289:1494 (2003); Qin, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 100:183 (2003))、およびヒトパピローマウイルス(HPV)(Hall, et al., J. Virol. 77:6066(2003);Jiang, et al., Oncogene 21:6041 (2002))の配列が挙げられる。サイレンシング可能な、例示的肝炎ウイルス核酸配列としては:転写および翻訳に関与する核酸配列(例えばEn1、En2、X、P)、構造タンパク質をコードしている核酸配列(例えばCおよびC-関連タンパク質を含むコアタンパク質;S、M、および/またはLタンパク質を含むカプシドおよびエンベロープタンパク質、またはその断片)(例えばFIELDS VIROLOGY, 2001、上記参照)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。サイレンシング可能な例示的なC型肝炎核酸配列は:セリンプロテアーゼ(例えばNS3/NS4)、ヘリカーゼ(例えばNS3)、ポリメラーゼ(例えばNS5B)およびエンベロープタンパク質(例えばE1、E2、およびp7)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。A型肝炎核酸配列は、例えばGeneBankアクセッション番号NC_001489に記載されており;B型肝炎核酸配列は、例えばGeneBankアクセッション番号NC_003977に記載されており;C型肝炎核酸配列は、例えばGeneBankアクセッション番号NC_004102に記載されており;D型肝炎核酸配列は、例えばGeneBankアクセッション番号NC_001653に記載されており;E型肝炎核酸配列は、例えばGeneBankアクセッション番号NC_001434に記載されており;かつG型肝炎核酸配列は、例えばGeneBankアクセッション番号NC_001710に記載されている。ウイルス疾患および生存に関係する遺伝子をコードしている配列のサイレンシングは、ウイルス疾患の治療に使用される通常の作用薬の投与と組み合わせて、好都合に使用できる。
【0097】
代謝性疾患および障害(例えば、肝臓が標的である障害、ならびに肝臓疾患および障害)に関係する遺伝子としては、例えば脂質代謝異常(例えば肝臓Xレセプター(例えば、LXRαおよびLXRβ Genbankアクセッション番号NM_007121)、ファルネソイドXレセプター(FXR)(Genbankアクセッション番号NM_005123)、ステロール-制御エレメント結合タンパク質(SREBP)、Site-1プロテアーゼ(S1P)、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素A還元酵素(HMG補酵素-A還元酵素)、アポリポタンパク質(ApoB)およびアポリポタンパク質(ApoE))および糖尿病(例えばグルコース6-ホスファターゼ)で発現している遺伝子が挙げられる(例えば、Forman et al., Cell 81:687 (1995); Seol et al., Mol. Endocrinol. 9:72 (1995), Zavacki et al., PNAS USA 94:7909 (1997); Sakai, et al., Cell 85:1037-1046 (1996); Duncan, et al., J. Biol. Chem. 272:12778-12785 (1997); Willy, et al., Genes Dev. 9(9):1033-45 (1995); Lehmann, et al., J. Biol. Chem. 272(6):3137-3140 (1997); Janowski, et al., Nature 383:728-731 (1996); Peet, et al., Cell 93:693-704 (1998) 参照)。当業者は、代謝性疾患および障害に(例えば肝臓が標的となる疾患および障害、ならびに肝臓疾患および障害)関係する遺伝子としては、肝臓そのもので発現している遺伝子だけでなく、他の器官および組織で発現している遺伝子も包含することを認識しているだろう。代謝性疾患および障害に関係する遺伝子をコードしている配列のサイレンシングは、疾患または障害の治療に使用する通常の作用薬の投与と組み合わせて、好都合に使用できる。
【0098】
腫瘍形成および細胞形質転換に関係する遺伝子配列の例としては、MLL融合遺伝子、BCR-ABL(Wilda, et al., Oncogene, 21:5716 (2002); Scherr, et al., Blood 101:1566)、TEL-AML1、EWS-FLI1、TLS-FUS、PAX3-FKHR、BCL-2、AML1-ETO、およびAML1-MTG8(Heidenreich, et al., Blood 101:3157 (2003))のような転移配列;多剤耐性遺伝子のような過剰発現配列(Nieth, et al., FEBS Lett. 545:144 (2003); Wu, et al., Cancer Res. 63:1515 (2003)、サイクリン(Li, et al., Cancer Res. 63:3593 (2003); Zou, et al., Genes Dev. 16:2923 (2002))、ベータ-カテニン(Verma, et al., Clin Cancer Res. 9:1291 (2003))、テロメラーゼ遺伝子(Kosciolek, et al., Mol Cancer Ther. 2:209 (2003))、c-MYC、N-MYC、BCL-2、ERBB1、およびERBB2(Nagy, et al. Exp. Cell Res. 285:39 (2003));およびRASのような変異配列(Tushl and Borkhardt, Mol. Interventions, 2:518(2002)に概説されている)を挙げることができる。DNA修復酵素をコードする配列のサイレンシングは、化学療法薬投与との組み合わせた使用が見出されている(Collis, et al., Cancer Res. 63:1550 (2003))。腫瘍移動に関係するタンパク質をコードする遺伝子もまた関心対象の標的配列であり、例えばインテグリン、セレクチン、およびメタロプロテアーゼである。上記の例は限定的ではない。腫瘍形成または細胞形質転換、腫瘍増殖または腫瘍移動を容易化または促進する、全体または部分的遺伝子配列は、鋳型配列に含めることができる。
【0099】
血管新生遺伝子は、新規血管の形成を促進できる。特に関心対象のものは、血管内皮成長因子(VEGF)である(Reich, et al., Mol. Vis. 9:210 (2003))。
【0100】
免疫調節遺伝子は、一つまたは複数の免疫反応を調節する遺伝子である。免疫調節遺伝子の例としては、成長因子(例えばTGF-α、TGF-β、EGF、FGF、IGF、NGF、PDGF、CGF、GM-CSF、SCF等)、インターロイキン(例えばIL-2、IL-4、IL-12(Hill, et al., J. Immunol. 171:691 (2003))、IL-15、IL-18、IL-20等)、インターフェロン(例えばIFN-α、IFN-β、IFNG-γ等)、およびTNFなどのサイトカインが含まれる。FasおよびFasリガンド遺伝子もまた、関心対象の免疫調節標的配列である(Song, et al., Nat. Med. 9:347 (2003))。造血細胞およびリンパ系細胞の二次シグナル伝達分子をコードする遺伝子もまた、本発明に包含され、例えばBrutonのチロシンキナーゼ(Btk)のようなTecファミリーキナーゼである(Heinonen, et al., FEBS Lett. 527:274 (2002))。
【0101】
細胞レセプターリガンドとしては、細胞表面レセプター(例えばインスリンレセプター、EPOレセプター、G-タンパク質共役レセプター、チロシンキナーゼ活性を持つレセプター、サイトカインレセプター、成長因子レセプター等)に結合でき、レセプターが関与する生理学的経路(例えばグルコースレベル調節、血液細胞の発生、有糸分裂誘発等)を変えるリガンドが挙げられる。細胞レセプターリガンドの例としては、サイトカイン、成長因子、インターロイキン、インターフェロン、エリスロポイエチン(EPO)、インスリン、グルカゴン、G-タンパク質共役レセプターリガンド等)が挙げられる。トリヌクレオチドリピート(例えばCAGリピート)の拡張をコードする鋳型は、脊髄延髄性筋無力症やハンチントン病のようなトリヌクレオチドリピートの拡張を原因とする神経変性障害の病因配列のサイレンシングに用いることができる(Caplen, et al., Hum. Mol. Genet. 11:175 (2002))。
【0102】
IV. SNALPの調製
本発明は、核酸(例えばsiRNAまたはsiRNAをコードしているプラスミド)が脂質二重層内に封入され、かつそれが分解から保護されている、血清安定性核酸-脂質粒子を調製する方法を提供する。本発明の方法で作られたSNALPは、典型的には約50から約150 nmの直径を有する。それらは、一般的には約150 nm未満の中位径、より典型的には約100 nm未満の直径を有し、粒子の多くは約65〜85 nmの中位径を有する。粒子は、例えば界面活性剤透析法を含む当技術分野において公知の方法を用いるか、または有機溶媒を利用して、成分を混合する間に単一相を提供する改良逆相法によって作製することができる。特別な形成メカニズムに固執するつもりはないが、プラスミドまたはその他核酸(即ちsiRNA)は、カチオン性脂質の界面活性剤溶液に接触すると、コーティングされた核酸複合体を形成する。これらコーティング核酸は凝集して沈殿する。しかしながら、界面活性剤の存在はこの凝集を緩和するので、コーティングされた核酸は過剰の脂質(典型的には非カチオン性脂質)と反応できるようになり、脂質二重層の中にプラスミドまたはその他核酸が封入されている粒子を形成することができる。有機溶媒を用いた、核酸-脂質粒子の形成に関する以下記載の方法も、その図式は同様である。SNALP作製の例示的方法は、米国特許第5,705,385号;第5,981,501号;第5,976,567号;第6,586,410号;第6,534,484号;米国特許出願第09/553,639号;米国特許出願公報第2002/0072121号および第2003/0077829号、国際公開公報第96/40964号;および国際公開公報00/62813号に開示されている。
【0103】
一つの態様では、本発明は、第一容器内に水性溶液を加えること、第二容器に有機脂質溶液を加えること、有機脂質溶液が水性溶液と混合して実質的に即時的に核酸を封入したリポソームを生成するように水性溶液と有機脂質溶液とを混合することを含む工程を経て生成される核酸-脂質粒子を提供する。この工程およびこの工程を実施するための装置は、2003年6月30日に提出され、参照により本明細書に組み入れられている米国特許出願第10/611,274号に記載されている。
【0104】
脂質および緩衝液を、混合チャンバーのような混合環境内に連続的に送り込むことによって、脂質溶液は緩衝液で連続的に希釈され、その結果リポソームは実質的に、混合と同時に即時的に生成される。本明細書で用いる「脂質液は緩衝液で連続的に希釈される」という語句(およびその変形)は、一般的に、脂質溶液が、小胞を生成するのに十分な力を用いた水和工程で、十分迅速に希釈されることを意味する。水性溶液と有機脂質溶液とを混合することによって、有機脂質溶液は緩衝液(水溶液)が存在する状態で連続段階的に希釈され、リポソームを生成する。
【0105】
いくつかの態様では、粒子は界面活性剤透析を用いて作られる。したがって、本発明は、血清安定性核酸-脂質粒子を調製するための方法であって、以下の工程を含む方法を提供する:
(a) 核酸とカチオン性脂質を界面活性剤溶液の中に混入し、コーティング核酸-脂質複合体を形成する工程;
(b) 非カチオン性脂質とコーティング核酸-脂質複合体とを混合し、核酸-脂質複合体および非カチオン性脂質を含む界面活性剤溶液を形成する工程;および
(c) 工程(b)の界面活性剤溶液を透析して、核酸が脂質二重層内に封入され、粒子が血清安定であり、且つ約50〜約150 nmの大きさを有する、血清安定性核酸-脂質粒子の溶液を提供する工程。
【0106】
コーティング核酸-脂質複合体の初期溶液は、界面活性剤溶液の中で核酸とカチオン性脂質とを混合することで作られる。
【0107】
これら態様では、界面活性剤溶液は、15〜300 mM、より好ましくは20〜50 mMの臨界ミセル濃度を有する中性界面活性剤の水性溶液であることが好ましい。好適界面活性剤の例としては、例えば、N,N'-((オクタノイルイミノ)-ビス-トリメチレン))-ビス-(D-グルコナミド)(BIGCHAP);BRIJ 35;Deoxy-BIGCHAP;ドデシルポリ(エチレングリコール)エーテル、Tween 20;Tween 40;Tween 60;Tween 80;Tween 85;Mega 8;Mega 9;Zwittergent(登録商標)3-08;Zwittergent(登録商標)3-10;Triton X-405;ヘキシル-、ヘプチル-、オクチル-、およびノニル-β-D-グルコピラノシド;ならびにヘプチルチオグルコピラノシドを挙げることができ;オクチルβ-D-グルコピラノシドおよびTwee 20が最も好ましい。界面活性剤溶液中の界面活性剤の濃度は、典型的には約100 mM〜約2 Mであり、好ましくは約200 mM〜約1.5 Mである。
【0108】
カチオン性脂質および核酸は、典型的には、混合されて、約1:1〜約20:1(+/-)の電荷比、好ましくは約1:1〜約12:1の比、より好ましくは約2:1〜約6:1の比を生ずる。これに加え、溶液中の核酸の全体濃度は、典型的には約25μg/ml〜約1 mg/mL、好ましくは約25μg/mL〜約200μg/mLであり、より好ましくは約50μg/mLから約100μg/mLである。界面活性剤溶液での核酸とカチオン性脂質の組合せは、コーティング複合体が形成されるのに十分な時間、典型的には室温で保たれる。または、核酸とカチオン性脂質を界面活性剤溶液の中で混合してから約37℃までの温度に温めてもよい。温度に特に敏感な核酸の場合は、コーティング複合体をより低い温度、典型的には約4℃に下げて作ることができる。
【0109】
好ましい態様では、形成されたSNALPの脂質に対する核酸の比(質量/質量比)は、約0.01から約0.08の範囲内であろう。一般的には、精製工程により、封入されていない核酸および空のリポソームは除去されることから、原料の割合もこの範囲内である。別の好ましい態様では、SNALP調製では、全脂質10 mg当たり約400μgの核酸を使用するか、または核酸の対脂質比は約0.01〜約0.08、より好ましくは約0.04であり、これは核酸50μg当たり、全脂質1.25 mgに相当する。
【0110】
次に、コーティングされた核酸-脂質複合体の界面活性剤溶液を、非カチオン性脂質と合わせて、核酸-脂質複合体と非カチオン性脂質の界面活性剤溶液を得る。この段階に有用な非カチオン性脂質としては、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、セファリン、カルジオリピン、およびセラブロシドが挙げられる。好ましい態様では、非カチオン性脂質は、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、またはスフィンゴミエリンである。これら脂質のアシル基は、好ましくはC10〜C24炭素鎖を有する脂肪酸に由来するアシル基である。より好ましくは、アシル基はラウリル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル、またはオレオイルである。特に好ましい態様では、非カチオン性脂質は、1,2-sn-ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、卵ホスファチジルコリン(EPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、コレステロール、またはそれらの混合物であろう。最も好ましい態様では、核酸-脂質粒子は、インビボで高い特性を有する融合性粒子であり、非カチオン性脂質はDSPCまたはDOPEでありうる。これに加え、本発明の核酸-脂質粒子は、コレステロールをさらに含んでよい。別の好ましい態様では、参照により本明細書に共に組み入れられる米国特許第5,820,873号および同時係属中特許出願第10/136,707号(米国特許公開出願第2003/0077829号として公開)に記載されているように、非カチオン性脂質は、PEG 2000、PEG 5000、およびジアシルグリセロールに共役したポリエチレングリコールのようなポリエチレングリコールをベースとしたポリマー、セラミド、またはリン脂質をさらに含む。さらに好ましい態様では、非カチオン性脂質は、PEG 2000、PEG 5000、およびジアルキルオキシプロピルに共役したポリエチレングリコールのようなポリエチレングリコールをベースとしたポリマーをさらに含む。
【0111】
本発明に用いられる非カチオン性脂質の量は、一般的には、核酸50μgに対し全脂質で約2〜約20 mgである。好ましくは、全脂質量は核酸50μgに対し約5〜約10 mgである。
【0112】
核酸-脂質複合体と非カチオン性脂質の界面活性剤溶液を処方後、次に界面活性剤を、好ましくは透析によって除去する。界面活性剤の除去により、約50 nm〜約150 nmの大きさを有する血清安定性核酸-脂質粒子を提供する、核酸を取り囲む脂質二重層が形成される。こうして作られた粒子は凝集せず、かつ、任意で、均一な粒度が得られるよう分粒してもよい。
【0113】
血清安定性核酸-脂質粒子は、リポソームの分粒に利用可能な方法を用いて、分粒できる。分粒は、所望するサイズ幅および比較的狭い粒度分布を得るために行われる。
【0114】
粒子の所望粒度への分粒には、いくつかの技術が利用できる。リポソームに使用され、本粒子にも同様に応用できる一つの分粒方法は、参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第4,737,323号に記載されている。粒子懸濁液を、超音波槽または超音波プローブを用い超音波処理すると、粒子は約50 nm未満の粒度まで徐々に小さくなる。ホモジェナイゼーションは、大型の粒子をより小さな粒子に断片化する、剪断エネルギーに基づいた別の方法である。代表的なホモジェナイゼーション法では、選択した粒度、一般的には約60〜80 nmになるまで、粒子を標準のエマルジョンホモジェナイザーに繰り返し通す。いずれの方法でも、粒度の分布は、通常のレーザー光線粒度識別法またはQELSによってモニタリングできる。
【0115】
粒子を小孔性のポリカーボネートメンブレンまたは非対称性セラミックメンブレンを通過させて押出す方法も、粒度を小さくし、比較的良く画定されたサイズ分布に納めるのに効果的な方法である。典型的には、所望の粒度分布が得られるまで、懸濁液をメンブレンに、一回または複数回繰り返し通す。粒子を、連続的に孔径が小さくなるメンブレンに通して押し出し、段階的にサイズを小さくしてもよい。
【0116】
別の態様の群では、本発明は、血清安定性核酸-脂質粒子を調製するための方法であって、以下の工程を含む方法を提供する:
(a) 有機溶媒中にカチオン性脂質と非カチオン性脂質とを含む混合液を調製する工程;
(b) 核酸の水性溶液と、工程 (a) の該混合液とを合わせて、透明な単相を得る工程;および
(c) 該有機溶媒を除去して、核酸が脂質二重層内に封入され、該粒子が血清安定であり、且つ約50〜約150 nmの粒度を有する、核酸-脂質粒子の懸濁液を得る工程。
【0117】
この態様の群に有用な核酸(またはプラスミド)、カチオン性脂質、および非カチオン性脂質は、上記界面活性剤透析法について記載されたものに同じである。
【0118】
有機溶媒を選択する場合は、一般的には、溶媒の極性、粒子形成の後段階における溶媒除去の容易性を考慮して行う。有機溶媒は、可溶化剤としても用いられるが、核酸と脂質の透明な単相混合液を提供するのに十分な量が存在する。好適溶媒としては、クロロホルム、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、シクロヘキサン、シクロペンタン、ベンゼン、トルエン、メタノール、またはプロパノール、イソプロパノール、ブタノール、t-ブタノール、イソ-ブタノール、ペンタノール、およびヘキサノールのような脂肪族アルコールが挙げられるが、これに限定されるものではない。二またはそれより多い溶媒の組合せも、本発明に使用できる。
【0119】
核酸とカチオン性および非カチオン性脂質の有機溶媒液との接触は、核酸の第一溶液、一般的には水性溶液と、脂質の第二有機溶液とを一つに混合することにより達成される。当業者は、この混合が様々な方法、例えばボルテックスミキサーのような機械的手段により実施できることを理解すると思われる。
【0120】
核酸を脂質の有機溶液に接触させた後、有機溶媒を除去し、それにより血清安定性核酸-脂質粒子の水性懸濁液が作られる。有機溶媒の除去に用いる方法は、典型的には減圧下での蒸発、または混合液への不活性ガス(例えば窒素またはアルゴン)流の吹き込みを含む。
【0121】
こうして作られた血清安定性核酸-脂質粒子は、典型的には約50 nm〜150 nmの粒度になる。粒度をさらに小さくするか均一にするために、上記のように分粒を行うことができる。
【0122】
別の態様では、方法は、本組成物を用いた細胞への送達の実施に有用である非脂質ポリカチオンをさらに含む。好適な非脂質ポリカチオンの例としては、ヘキサジメトリンブロミド(Aldrich Chemcial Co., Milwaukee, Wisconsin, USAより、POLYBRENE(登録商標)の商品名で販売されている)またはヘキサジメトリンのその他の塩が挙げられるが、それに限定されるわけではない。他の好適ポリカチオンとしては、例えばポリ-L-オリニチン、ポリ-L-アルギニン、ポリ-L-リジン、ポリ-D-リジン、ポリアリルアミン、およびポリエチレンイミンの塩が挙げられる。
【0123】
ある態様では、核酸-脂質粒子は、単相系(例えばBlighとDyerの単相、または同様の水性および有機溶媒の混合物)または好適混合物を用いる二相系のいずれでも生成できる。
【0124】
複合体の生成を単相系で実施する場合は、カチオン性脂質および核酸それぞれを単相混合液容積内に溶解する。二溶液を混合して単一の混合液とし、その中で複合体を生成する。または、複合体は、カチオン性脂質を核酸(水相内に存在する)に結合させてから、それを有機相に「引き」入れる二相混合液で生成することもできる。
【0125】
別の態様では、本発明は、核酸-脂質粒子を調製するための方法であって、以下の工程を含む方法を提供する:
(a) 核酸を、非カチオン性脂質と界面活性剤とを含む溶液と合わせて、核酸-脂質混合液を生成する工程;
(b) カチオン性脂質と核酸-脂質混合液とを合わせて核酸の負電荷の一部を中和し、電荷が中和された核酸と脂質の混合液を生成する工程;および
(c) 電荷中和混合液から界面活性剤を除去して、その中の核酸が分解から保護されている核酸-脂質粒子を得る工程。
【0126】
一群の態様では、非カチオン性脂質と界面活性剤の溶液は、水性溶液である。非カチオン性脂質と界面活性剤の溶液への核酸の接触は、一般的には、核酸の第一溶液と脂質および界面活性剤の第二溶液とを一つに混合することで達成される。当業者は、この混合が、様々な方法、例えばボルテックスミキサーを用いるような機械的手段により実施できることを理解するだろう。好ましくは、核酸溶液は、界面活性剤溶液でもある。本発明に用いる非カチオン性脂質の量は、一般的には、使用するカチオン性脂質の量に基づき決定され、典型的にはカチオン性脂質の約0.2〜5倍、好ましくは使用するカチオン性脂質の約0.5〜約2倍である。
【0127】
いくつかの態様では、核酸は、例えば米国特許出願第09/774,103号に記載のように、予備濃縮される。
【0128】
こうして作られた核酸-脂質混合液をカチオン性脂質と合わせ、存在する核酸(またはその他ポリアニオン性物質)に付随する負電荷の一部を中和する。用いるカチオン性脂質の量は、一般的には、核酸の負電荷の少なくとも50%を中和するのに十分な量である。好ましくは、負電荷は、少なくとも70%が中和され、より好ましくは少なくとも90%が中和される。本発明に有用なカチオン性脂質としては、例えばDODAC、DOTMA、DDAB、DOTAP、DC-Chol、およびDMRIEが挙げられる。これら脂質および関連類似体は、米国特許第5,208,036号、第5,264,618号、第5,279,833号、第5,283,185号、第5,753,613号、および第5,785,992号に記載されており、各特許の開示は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0129】
カチオン性脂質と核酸-脂質混合液とを接触させることは、様々な技術、好ましくはカチオン性脂質の溶液と核酸脂質混合物を含む溶液とを一つに混合することによって達成できる。二溶液を混合する(または別のやり方で接触させる)ことによって、核酸に付随する負電荷の一部は中和される。しかしながら、核酸は凝縮されない状態のままであり、親水性を獲得する。
【0130】
カチオン性脂質を核酸-脂質混合液と合わせた後、界面活性剤(または界面活性剤と有機溶媒の組合せ)を除去して核酸-脂質粒子を形成する。界面活性剤の除去に用いる方法は、一般的には透析が挙げられる。有機溶媒が存在する場合、除去は、一般的には、減圧下での蒸発、または混合液への不活性ガス(例えば窒素またはアルゴン)流の吹き込みによって達成される。
【0131】
こうして作られた粒子は、典型的には約100 nmから数ミクロンの大きさになる。粒子のサイズをさらに小さくするか均一にするために、核酸-脂質粒子を超音波処理、ろ過、またはリポソーム調剤に用いられる、当業者に公知のその他の分粒技術にかけることができる。
【0132】
別の態様では、方法は、本組成物を用いた細胞のリポフェクション実施に有用である非脂質ポリカチオンを追加することをさらに含む。好適な非脂質ポリカチオンの例としては、ヘキサジメトリンブロミド(Aldrich Chemcial Co., Milwaukee, Wisconsin, USAより、POLYBRENE(登録商標)の商品名で販売されている)またはヘキサジメトリンのその他の塩が挙げられる。他の好適ポリカチオンとしては、例えばポリ-L-オリニチン、ポリ-L-アルギニン、ポリ-L-リジン、ポリ-D-リジン、ポリアリルアミン、およびポリエチレンイミンの塩が挙げられる。これらの塩の追加は、粒子形成後に行うのが好ましい。
【0133】
別の局面では、本発明は、核酸-脂質粒子調製のための方法であって、以下の工程を含む方法を提供する:
(a) ある量のカチオン性脂質を核酸溶液と接触させる工程;このとき溶液は約15〜35%の水および約65〜85%の有機溶媒を含み、かつカチオン性脂質の量は、約0.85〜約2.0の+/-電荷比を生じ、疎水性の核酸-脂質複合体を提供するのに十分な量である;
(b) 疎水性の核酸-脂質複合体溶液と非カチオン性脂質とを接触させて、核酸-脂質混合液を提供する工程;および
(c) 核酸-脂質混合液から有機溶媒を除去して、その中の核酸が分解から保護されている核酸-脂質粒子を提供する工程。
【0134】
本発明のこの局面に有用な核酸、非カチオン性脂質、カチオン性脂質、および有機溶媒は、界面活性剤を用いる上記の方法について記載されたものと同じである。ある群の態様では、工程 (a) の溶液は単相である。別の群の態様では、工程 (a) の溶液は二相である。
【0135】
好ましい態様では、カチオン性脂質はDODAC、DDAB、DOTMA、DOSPA、DMRIE、DOGS、またはそれらの組合せである。別の好ましい態様では、非カチオン性脂質は、ESM、DOPE、DOPC、DSPC、ポリエチレングリコールをベースとするポリマー(例えば、PEG 2000、PEG 5000、PEG-修飾ジアシルグリセロール、またはPEG-修飾ジアルキルオキシプロピル)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、コレステロール、またはそれらの組合せである。さらに別の好ましい態様では、有機溶媒はメタノール、クロロホルム、メチレンクロライド、エタノール、ジエチルエーテル、またはそれらの組合せである。
【0136】
一つの態様では、核酸は、そこから干渉RNAが転写されるプラスミドであり;カチオン性脂質は、DODAC、DDAB、DOTMA、DOSPA、DMRIE、DOGS、またはそれらの組合せであり;非カチオン性脂質はESM、DOPE、DAG-PEG、ジステアリルホスファチジルコリン(DSPC)、コレステロールまたはそれらの組合せ(例えばDSPCとDAG-PEG)であり;かつ有機溶媒はメタノール、クロロホルム、メチレンクロライド、エタノール、ジエチルエーテル、またはそれらの組合せである。
【0137】
上記同様、核酸とカチオン性脂質との接触は、一般的には、核酸の第一溶液と脂質の第二溶液とを一つに混合する、好ましくはボルテックスミキサーを用いるような機械的手段によって混合することで達成される。生じた混合液は、上記のような複合体を含有する。これら複合体は、次に、非カチオン性脂質の追加、および有機溶媒を除去することによって、粒子に変換される。非カチオン性脂質の添加は、一般的には、非カチオン性脂質を複合体含有混合液に単純に加えることで達成される。加え方を逆にしても良い。続く有機溶媒の除去は、当業者に公知であり、かつ上記の方法によっても達成される。
【0138】
本発明のこの局面に用いられる非カチオン性脂質の量は、典型的には、電荷中和核酸-脂質複合体を得るために使用したカチオン性脂質の量(モルをベースとして)の約0.2〜約15倍である。好ましくは、この量は、使用したカチオン性脂質の量の約0.5〜約9倍である。
【0139】
さらに別の局面では、本発明は、上記の方法で調製した核酸-脂質粒子を提供する。これら態様では、核酸-脂質粒子は、正味の電荷が中性であるか、または全体に電荷を帯びており、これによりより高い遺伝子リポフェクション活性を持つ粒子を提供する。好ましくは、粒子の核酸成分は、望ましくないタンパク質の産生を干渉する核酸である。好ましい態様では、核酸は干渉RNAを含み、非カチオン性脂質は卵スフィンゴミエリンであり、カチオン性脂質はDODACである。好ましい態様では、核酸は干渉RNAを含み、非カチオン性脂質はDSPCとコレステロールの混合物であり、かつカチオン性脂質はDOTMAである。別の好ましい態様では、非カチオン性脂質は、コレステロールをさらに含んでよい。
【0140】
本明細書には、SNALP-CPL(CPL含有SNALP)を作製するための、様々な一般的な方法が論じられている。二つの一般的な方法としては、「後挿入」技術、即ちCPLを、例えば事前に作られたSNALPに挿入する技術、および、例えばSNALP生成段階中の脂質混合物中にCPLを含める「標準」技術がある。後挿入技術では、CPLが主にSNALP二重層膜の外面に存在するSNALPを提供し、一方標準技術は、CPLが内外両面に存在するSNALPを提供する。方法は、リン脂質(コレステロールを含むことができる)から作られる小胞に特に有用であり、またPEG-脂質(PEG-DAGのような)を含む小胞にも有用である。SNALP-CPL作成方法は、例えば米国特許第5,705,385号、第6,586,410号、第5,981,501号、および第6,534,484号;米国特許出願第09/553,639号および第09/839,707号(米国特許出願公開第2002/0072121号として公開)、ならびにPCT国際出願第PCT/CA00/00451号(国際公開公報第00/62813号として公開)の中で教示されており、これら特許はそれぞれ参照により本明細書に組み入れられる。
【0141】
本発明の核酸-脂質粒子は、単独で、または投与経路および標準的な薬学的経験に基づき選択される、生理学的に許容されるキャリア(生理食塩水またはリン酸緩衝液のような)と混合して投与できる。一般的には、通常の生理食塩水は、薬学的に許容されるキャリアとして用いられる。その他の好適キャリアとしては、安定性を高めるための糖タンパク質としてアルブミン、リポタンパク質、グロブリン等を含有する、例えば水、緩衝化水、0.4%生理食塩水、0.3%グリシン等が挙げられる。
【0142】
薬学的キャリアは、一般的には粒子生成後に加えられる。したがって、粒子が生成された後に、粒子は、通常生理食塩水のような薬学的に許容されるキャリアに希釈できる。
【0143】
薬学的製剤中の粒子濃度は極めて幅広く、即ち約0.05重量%未満、通常はまたは少なくとも約2.5重量%から10〜30重量%にまで及び、濃度は選択した実際の投与形態に従って、主に流体容積、粘度等から選択される。例えば、濃度は治療に伴い加えられる流体が少ないほど高くなりうる。このことは、虚血性心不全または重症高血圧を伴うアテローム性動脈硬化症の患者には、特に望ましいと思われる。または、刺激性の脂質から成る粒子は、低濃度に希釈して、投与部位の炎症を小さくできる。
【0144】
上記のように、本発明のいくつかの態様では、核酸-脂質粒子はDAG-PEG複合体を含む。本発明の別の態様では、核酸-脂質粒子はPEG-ジアルキルオキシプロピル複合体を含む。DAG-PEG複合体またはPEG-ジアルキルオキシプロピル複合体と類似の様式で機能するその他成分、および粒子の凝集を阻害して血中寿命を長くし、標的組織への核酸-脂質粒子の送達を高める手段を提供する、その他成分を含めることがしばしば望まれる。このような成分としては、粒子に結合する、PEG-セラミドまたはPEG-リン脂質(PEG-PEのような)のようなPEG-脂質複合体、ガングリオシドGM1-修飾脂質、またはATTA-脂質が挙げられるが、それに限定されるわけではない。典型的には、粒子中の成分濃度は、約1〜20%、より好ましくは約3〜10%である。
【0145】
本発明の薬学的組成物は、通常の、周知の滅菌技術によって滅菌できる。水性溶液は、無菌条件下に、使用のために包装または濾過して凍結乾燥でき、凍結乾燥された調製物は、投与前に無菌水性溶液と混合する。組成物は、pH調節剤および緩衝化剤のような生理学的条件に近づけるのに必要な、薬学的に許容される補助物質、張性調節剤等、例えば酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、および塩化カルシウムを含有できる。これに加えて、粒子懸濁液は、保存中のフリーラジカルや脂質-ペルオキシダーゼによる損傷から脂質を保護する、脂質保護剤を含んでよい。アルファトコフェロールのような親脂質性フリーラジカル消去剤、およびフェリオキサミンのような水溶性鉄種キレート剤が好適である。
【0146】
V. SNALPの投与
本発明のSNALPは、核酸の細胞内導入に好都合に用いることができる(例えば、標的遺伝子の発現に関連する疾患または障害の治療または予防のために)。したがって、本発明は、核酸(例えば、干渉RNA)を細胞内に導入するための方法も提供する。その方法は、上記粒子を最初に作り、次にsiRNAが送達されるのに十分な時間、粒子と細胞とを接触させることによって、インビトロまたはインビボで行われる。
【0147】
本発明のSNALPは、混合または接触の相手となる、ほとんどすべてのタイプの細胞に吸着されることができる。一度吸着されると、粒子は細胞の一部によって細胞内に取り込まれ、細胞膜と脂質を交換するか、または細胞と融合する。粒子の核酸部分の移動または取り込みは、これら経路のいずれか一つを介して起こる。具体的には、融合が起こると、粒子の膜は細胞膜と一体化し、粒子の内容物は細胞内液と混合する。
【0148】
siRNAの細胞内送達の標的になることが最も多い細胞のタイプは、新生物細胞(例えば腫瘍細胞)および肝細胞である。標的となりうるその他細胞、例えば造血前駆(幹)細胞、繊維芽細胞、ケラチノサイト、肝実質細胞、内皮細胞、骨格筋および平滑筋細胞、骨芽細胞、神経細胞、静止リンパ細胞、最終分化細胞、低速または非細胞周期一次細胞、実質細胞、リンパ細胞、上皮細胞、骨細胞等がある。好ましい態様では、幹細胞が標的となる。
【0149】
組織培養が必要となる範囲は、当技術分野において周知である。Freshney (1994) (Culture of Animal Cells, a Manual of Basic Technique, third edition Wiley-Liss, New York)、Kuchler ら (1997) Biochemical Methods in Cell Culture and Virology、Kuchler, R. J., Dowden, Hutchinson and Ross, Inc.、およびそこに引用されている参考文献は、細胞培養の一般的な案内書となる。培養細胞系は、多くの場合、単層細胞の形態を取るが、細胞懸濁液も用いられる。
【0150】
A. インビトロ遺伝子移入
インビトロの応用では、siRNAの送達は、植物起源または動物起源であるか、脊椎動物または無脊椎動物であるかを問わない、任意の組織またはタイプの培養増殖した細胞であれば実施できる。好ましい態様では、細胞は動物細胞、より好ましくは哺乳動物細胞、最も好ましくはヒト細胞である。
【0151】
細胞と脂質核酸粒子間の接触は、インビトロで実施する場合は、生物学的に適合した媒体の中で起こる。粒子の濃度は、実際の応用により様々であるが、一般的には約1μmol〜約10 mmolである。核酸-脂質粒子による細胞処理は、一般的には、生理学的温度(約37℃)で、約1〜48時間、好ましくは約2〜4時間行われる。
【0152】
好ましい態様の一群では、脂質核酸粒子懸濁液は、細胞密度約103〜約105細胞/mLの、60〜80%集密度の平板培養細胞に加えられる。細胞に加える懸濁液の濃度は、好ましくは約0.01〜0.2μg/mL、より好ましくは約0.1μg/mLである。
【0153】
SNALPまたはその他脂質ベースのキャリアシステムの送達効率は、エンドソーマルリリースパラメータ(ERP)アッセイを用いて最適化できる。ERPアッセイは、参照により本明細書に組み入れられている米国特許出願第10/136,707号(米国特許出願公開第2003/0077829号として公開)に記載されている。より具体的には、ERPアッセイの目的は、様々なカチオン性脂質の効果およびSNALPの補助脂質成分の効果を、結合/取り込み、またはエンドゾーム膜との融合/不安定化におけるそれらの相対効果に基づいて区別することである。このアッセイ法によって、SNALPまたはその他脂質ベースのキャリアシステムの各成分が、送達の効率にどれだけ影響を与えているか定量的に測定することができ、それによってSNALPまたはその他脂質ベースのキャリアシステムを最適化することができる。通常、ERPアッセイは、レポータータンパク質(例えばルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、グリーン蛍光タンパク質等)の発現を測定し、および幾つかの例では、発現プラスミドに合わせ最適化されたSNALP処方物は、干渉RNAの封入にも適当である。別の例では、ERPアッセイは、干渉RNA存在下または非存在下での、標的配列の翻訳のダウンレギュレーション測定に合わせることもできる。各種SNALPたはその他の脂質をベースとする処方物それぞれについてERPを比較することによって、最適化されたシステム、例えば細胞内に最も多く取り込まれるSNALPまたはその他脂質ベースの処方物を容易に決定できる。
【0154】
本発明のERPアッセイ実施に好適な標識としては、蛍光色素(例えばフルオロセインイソチオシアネート(FITC)およびOregon Green(商標)のようなフルオロセインおよび誘導体;ローダミンおよびテキサスレッド、テトラローダミンイソチオシネート(TRITC)のような誘導体、ジゴキシゲニン、ビオチン、フィコエリスリン、AMCA、CyDyes(商標)等の分光学的標識;3H、125I、35S、14C、32P、33P等の放射線標識;セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ等の酵素;コロイド金または着色ガラス、またはポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックス等のプラスチックビーズのような分光学的比色定量標識が挙げられるが、これに限定されるわけではない。標識は、当技術分野で周知の方法を用いて、SNALPまたはその他脂質ベースキャリアシステムに直接または間接的に結合できる。上記のように、多様な標識が利用でき、必要とされる感度、SNALP成分との結合しやすさ、安定性要求、および利用できる装置や消耗品に応じて標識を選択する。
【0155】
B. インビボ遺伝子移入
いくつかの態様では、SNALPは、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、齧歯類、ウサギ、イノシシ、例えばヒトを含む霊長類を含む様々な脊椎動物へのsiRNAのインビボ送達に用いることができる。SNALPのインビボ送達は、局所的(即ち、関心対象の部位に直接行う)または全身的(即ち、関心対象の部位から遠位な部位より行う)でありうる。
【0156】
インビボ遺伝子治療での全身送達、即ち、循環のような生体システムを介した遠位部標的細胞への治療核酸の送達は、それぞれ参照により本明細書に組み入れられる、公開されているPCT特許出願、国際公開公報第96/40964号、米国特許第5,705,385号、第5,976,567号、第5,981,501号、および第6,410,328号に開示されている核酸-脂質粒子を用いて達成されている。この後者の形式は、血清中でのヌクレアーゼ分解から核酸を保護し、非免疫原性であり、粒度が小さく、かつ反復投与に好適である、完全に封入された核酸-脂質粒子を提供する。
【0157】
本発明のSNALPは、例えば静脈内、筋肉内、皮下、皮内、腹腔内、経口、経鼻、または局所を含む、当技術分野において公知の経路を通して投与できる。例えば、Zhuら、 Science 261:209 (1993)は、プラスミド-カチオン性脂質複合体の静脈内送達を記載している;Hydeら、Nature 362:250 (1993)は、プラスミド-リポソーム複合体(即ちリポプレックス)の鼻内送達を記載しており;またBrighamらは、Am. J. Med. Sci. 298:278 (1989)は、プラスミド-カチオン性脂質複合体の、静脈内および気管内送達を記載している。SNALPは、単独で、または投与経路および標準的な薬学的経験に基づき選択された、生理学的に許容されるキャリア(生理学的食塩水またはリン酸緩衝液のような)と組み合わせて投与できる。
【0158】
本発明の核酸-脂質粒子の薬学的調製物を調製する場合は、空の脂質粒子あるいは核酸が外面に結合した粒子を精製によって減らすか、または除去した核酸-脂質粒子を多く使用することが望ましい。薬学的キャリアは、一般的には、粒子形成後に加えられる。このようにして粒子は、粒子形成後に、薬学的に許容されるキャリア内に希釈できる。
【0159】
薬学的処方物の粒子の濃度は極めて幅広く、即ち約0.05重量%未満、通常はまたは少なくとも約2.5重量%から10〜30重量%にまで及び、濃度は選択した実際の投与形態に従って、主に流体容積、粘度等から選択される。
【0160】
投与する粒子の量は、脂質に対する核酸の割合;使用する具体的な核酸、診断された疾患の状態;患者の年齢、体重および状態、ならびに医師の判断に依存すると考えられる;しかし、一般的には約0.01〜約50 mg/kg体重であり;好ましくは約0.1〜約5 mg/kg体重または108〜1010粒子/注射である。
【0161】
1. 注射による送達
ある状況では、本明細書に開示するSNALPは、米国特許第5,543,158号;米国特許第5,641,515号および米国特許第5,399,363号に記載のように、非腸管的、静脈内、筋肉内、皮内、または腹腔内送達が望ましいと考えられる。SNALPは、関心対象部位(例えば、炎症または新生組成形成のような疾患部位、または標的器官もしくは組織)に局部注射するか、生体全体に広く分布させるために、全身性に注射することができる。SNALPの溶液は、界面活性剤が好適に混合されている水を使って調製できる。分散液も、グリセロール、ポリエチレングリコール液、およびそれらの混合物、ならびに油を使って調製できる。典型的には、これら調製物は、微生物の増殖を防止するための保存剤を含む。一般的には、静脈投与する場合、核酸-脂質粒子処方物は、好適な薬学的キャリアを用いて処方される。一般的には、通常の緩衝化食塩水(135〜150 mM NaCl)が薬学的に許容されるキャリアとして用いられるが、他の好適キャリアでも十分使用できうる。追加の好適キャリアは、例えばREMIGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES, Mack Publishing Company, Philadelphia, PA, 17th ed. (1985) に記載されている。本明細書で用いる「キャリア」は、いずれか、またはすべての溶媒、分散媒体、賦形剤、コーティング剤、希釈剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張および吸着遅延剤、緩衝剤、キャリア溶液、懸濁液、コロイド等を包含する。「薬学的に許容される」という語句は、ヒトに投与した場合に、実体分子および組成物がアレルギーまたは同様の不都合な反応を生じないことを指す。活性成分としてタンパク質を含有する水性組成物の調製は、当技術分野において周知である。典型的には、このような組成物は、溶液または懸濁液の形をした注射剤として調製される;注射の前に液体に溶液化または懸濁化させるのに適した固形形状に調製することもできる。調製物は、さらに、乳剤化できる。
【0162】
これらの組成物は、濾過のような、通常のリポソーム滅菌技術によって滅菌できる。組成物は、pH調節剤および緩衝化剤のような生理学的条件に近づけるのに必要とされる薬学的に許容される補助物質、張性調節剤等、湿潤剤等を含有できる。これら組成物は、上記参照の技術を使って滅菌するか、またはそれに代わって無菌条件下にそれらを製造してよい。得られた水性溶液は、使用向けに包装するか、無菌条件下に濾過して凍結乾燥してよく、凍結乾燥処方物は、投与前に無菌水性溶液と混合される。
【0163】
2. 経口送達
特定の応用では、本明細書に開示されているSNALPは、経口投与により個体に送達できる。活性化合物は、賦形剤と一緒に組み入れ、摂取用錠剤、バッカル錠、トローチ、カプセル、エリキシル、うがい薬、懸濁液、口腔スプレー、シロップ、ウェーハ剤等の形で使用できる(Mathiowitz et al., 1997; Hwang et al., 1998; 米国特許第5,641,515号;米国特許第5,580,579号および米国特許第5,792,451号)。錠剤、トローチ、ピル、カプセル等は、次のものを含んでよい:結合剤、ゼラチン;賦形剤、潤滑剤、または風味剤。投与単位がカプセルの形を取る場合は、それは上記のタイプの物質に加えて、脂質キャリアを含んでよい。様々な、その他材料が、コーティング材として、または投与単位の物理的形状を他に変えるために存在できる。もちろん、投与単位形態の調製に用いる材料は、薬学的に純粋であり、使用する量において実質的に無毒でなければならない。
【0164】
典型的には、これら処方物は、活性化合物を少なくとも約0.1%またはそれより多く含むことができるが、もちろん活性成分の割合は変更でき、全処方物の重量または容積の約1または2%から約60%または70%の間が好都合である。当然、治療に有用な各組成物の中の活性化合物量は、単位投与量の化合物を与えた場合に、好適な投与量が得られるように調製される。このような薬学的組成物を調製する当業者は、可溶性、生体利用度、生物学的半減期、投与経路、製品寿命、ならびにその他薬学的考慮事項といった要因を考慮に入れることから、そのようなものとして様々な投与量および投与方法が望まれる。
【0165】
3. 経鼻到達
ある態様では、薬学的組成物は、鼻内スプレー、吸入、および/またはその他エアゾール送達賦形剤により、送達できる。核酸組成物を、鼻エアゾールスプレーを用いて肺に直接到達させる方法は、例えば、米国特許第5,756,353号および米国特許第5,804,212号に記載されている。同様に、鼻内マイクロ粒子樹脂(Takenaga et al., 1998)およびリソホスファチジル-グリセロール化合物(米国特許第5,725,871号)を用いた薬物の送達も、薬学技術分野では周知である。同様に、ポリテトラフルオロエチレン支持マトリックスの形をした経粘膜薬物送達が、米国特許第5,780,045号に記載されている。
【0166】
4. 局所送達
核酸-脂質粒子使用の別の例では、それらは、ゲル、オイル、乳液等を包含するが、しかし、それに限定されるわけではない広範な局所投与形態に組み入れることができる。例えば、核酸-脂質粒子含有懸濁液は、局所クリーム、ペースト、軟膏、ゲル、ローション等に処方して、投与することができる。
【0167】
C. 予防的および治療的処置
いくつかの態様では、SNALPは、標的配列の発現または過剰発現に関連した疾患または障害を持つ対象(例えば、哺乳動物対象)の予防または治療処置に用いることができる。SNALPは、患者内で治療反応を誘導するのに十分な量で対象に投与される。治療反応誘導の達成に適した量は、「治療有効投与量または治療有効量」または「有効投与量または有効量」と定義される。標的遺伝子の発現または過剰発現を原因とする状態の治療または予防を目的に投与されるSNALPの有効量を決定する場合、医師はSNALPの循環血漿レベル、SNALPの毒性、および標的遺伝子の発現または過剰発現に伴う疾患の進行を評価する。投与は、一回または数回に分けて行うことができる。
【0168】
例えば、SNALPは、病原性微生物に感染した、または感染するリスクのある対象に投与できる。siRNAは、微生物のライフサイクルで必須な役割を果たしている配列に好ましく対応すると同時に、微生物にとって固有でなければならない(または治療を受けている患者本来のゲノムのゲノムには少なくとも存在しないもの)。核酸-脂質複合体は、その治療有効投与量が、標的細胞、組織、または器官内にエクスビボまたは静脈注射によって導入される。病原性感染症に関係する遺伝子をコードする配列のサイレンシングは、病的状態の治療に用いられる通常の作用薬の投与と組み合わせて、好都合に用いることができる。治療薬は、病原性微生物に感染するリスクがある、または病原性微生物に既に感染したヒトに、予防的に投与できる。
【0169】
好ましい態様では、本発明の組成物および方法は、例えば、肝炎のような肝臓障害の治療に好都合に用いることができる。例えば、B型肝炎ウイルスの阻害に好適な部位としては、S、C、P、およびXタンパク質、PRE、EnI、ならびにEnIIをコードする核酸配列が挙げられる(FIELDS VIROLOGY, 2001上記参照)。当業者は、肝炎感染に関係する遺伝子のサイレンシングが、例えば免疫グロブリン、インターフェロン(例えばペグ化、または非ペグ化インターフェロンα)(Medina et al.,Antiviral Res. 60(2):135-143 (2003) 参照);リバビリン(例えばHugle and Cerny, Rev. Med. Virol. 13(6):361-71 (2003) 参照);アデフォビルおよびラミブジン(例えばKock et al., Hepatology 38(6):1410-8 (2003) 参照);プレニル化インヒビター(例えば、Bordier et al., J. Clin.Invest. 112(3):407-414 (2003)参照);ファムシクロビル(例えば、Yurdaydin et al., J Hepatol. 37(2):266-71 (2002) 参照);ならびにサイコサポニンcおよびd(例えば、Chiang et al., Planta Med. 69(8):705-9 (2003) 参照)のような、通常の肝炎治療薬と組み合わせることができる。
【0170】
別の例示的態様では、病原性微生物はHIVである。例えば、HIVウイルス上にある阻害に好適な部位としては、TAR、REVまたはnef(Chatterjee et al., Science 258:1485-1488 (1992))が挙げられる。Revは、スプラシングされていないHIV pre-mRNAの核からの移出を促進する、制御性RNA結合タンパク質である。Malim et al., Nature 338:254 (1989)。Tatは、5'フランキングmRNA内の認識配列を束ねることによって機能する、転写活性化因子と考えられている。Karn & Graeble, Trends Genet. 8:365 (1992)。核酸-脂質複合体は、その治療有効量をエクスビボまたは静脈注射することによって、白血球または造血幹細胞内に導入される。治療薬は、HIVに感染するリスクがあるか、またはHIVに既に感染したヒトに予防的に投与できる。同様の方法は、接着タンパク質をコードする内因性レシピエント細胞遺伝子の発現の抑制に用いられる。
【0171】
別の態様では、本発明の組成物および方法は、遺伝子または遺伝子群の発現または過剰発現を特徴とする疾患および障害の治療に、好都合に用いることができる。いくつかの局面では、本発明の組成物および方法は、例えば脂質代謝異常や糖尿病のような、代謝性疾患および障害(例えば、肝臓が標的である疾患および障害、ならびに肝疾患および障害)の治療に用いることができる。当業者は、代謝性の疾患および障害に関係する遺伝子のサイレンシングが、これら障害の通常の治療に組み合わすことができることを認識するだろう。例えば、脂質代謝異常に関与する遺伝子のサイレンシングは、例えば、スタチン、胆汁酸抑制剤/レジン、およびエゼチミブ、植物スタノール/ステノール、ポリフェノールのようなコレステロール吸収インヒビター、ならびにオーツムギのふすま、プシリウムおよびダイズタンパク質のような機能性食品、ポリスタノール類似体、スクアレン合成酵素インヒビター、胆汁酸運搬インヒビター、SREBP開裂活性化タンパク質(SCAP)活性化リガンド、ニコチン酸(ニアシン)、アシピモックス、高用量の魚油、抗酸化剤およびポリコサノール、ミクロゾーマルトリグリセリド運搬タンパク質(MTP)インヒビター、アシル補酵素A:コレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT)インヒビター、ゲムカベン(gemcabene)、リフィブロール、パントテン酸類似体、ニコチン酸レセプターアゴニスト、抗炎症剤(Lp-PLA(2)アゴニスト、およびAGI1067等)、機能性オイル、PPAR-α、-γ、-δアゴニスト、ならびにデュアルPPAR-α/γおよび汎PPAR-α/γ/δアゴニスト、コレステリルエステル運搬タンパク質(CETP)インヒビター(トルセトラピブ(torcetrapib)等)、CETPワクチン、ATP-結合カセットトランスポータ(ABC)A1のアップレギュレータ、レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)およびスカベンジャレセプタークラスBタイプ1(SRB1)、ならびに合成アポリポタンパク質(Apo)E 関連ペプチド、徐放ナイアシン/ロバスタチン、アトロバスタチン/アムロジピン、エゼチミブ/シムバスタチン、アトロバスタチン/CETPインヒビター、スタチン/PPARアゴニスト、開発中の徐放ナイアシン/シムバスタチンおよびパラバスタチン/アスピリン、ならびに肥満治療薬(例えば、Bays and Stein, Expert Opin. Pharmacother. 4(11):1901-38(2003) 参照)と組み合わせることができる。同様に、糖尿病に関与する遺伝子のサイレンシングは、インスリンを用いた治療、ならびに食事療法および運動と組み合わせることができる。
【0172】
類似の方法は、腫瘍発生および細胞形質転換、腫瘍増殖、および腫瘍移動と関係する内因性レシピエント細胞遺伝子;血管形成遺伝子;炎症性および自己免疫性反応に関係するような免疫調節因子遺伝子;リガンドレセプター遺伝子;神経変性障害に関係する遺伝子;ならびにウイルス感染および生存に関係するその他遺伝子の発現の抑制に用いられる。特に関心対象のある標的遺伝子の配列は上記の通りである。
【0173】
D. SNLAPの検出
いくつかの態様では、核酸-脂質粒子は、粒子投与から8、12、24、36、48、60、72、84、または96時間後に、対象の血漿および/または細胞に検出できる。粒子の存在は、例えば、粒子の直接検出、干渉RNA配列の検出、関心対象の標的配列の検出(即ち、関心対象の配列の発現または発現低下を検出することによる)またはそれらの組合せを含む、当技術分野において公知の手段により検出できる。
【0174】
1. 粒子の検出
核酸-脂質粒子は、本明細書では、当技術分野において公知の任意の方法を用いて検出される。例えば、標識は、当技術分野において周知の方法を用いて、SNALPの成分またはその他脂質ベースキャリアシステムに、直接または間接に結合できる。様々な標識を用いる事ができ、標識は、必要とされる感度、SNALP成分との複合しやすさ、安定性要件、および利用可能な装置および消耗品を考慮して選択される。好適標識としては、蛍光色素(例えばフルオロセインイソチオシアネート(FITC)およびOregon Green(商標)のようなフルオロセインおよび誘導体;ローダミン、およびテキサスレッド、テトラローダミンイソチオシネート(TRITC)等のような誘導体、ジゴキシゲニン、ビオチン、フィコエリスリン、AMCA、CyDyes(商標)等の分光学的標識;3H、125I、35S、14C、32P、33P等の放射線標識;セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ等の酵素;コロイド金または着色ガラス、またはポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックス等のプラスチックビーズのような分光学的比色定量標識が挙げられるが、それに限定されるわけではない。標識は、当技術分野において公知の方法を用いて検出できる。
【0175】
2. 核酸の検出
核酸は、本明細書では、当業者に周知である多くの任意の手段を用いて検出され、定量化される。核酸の検出に先立ち、サザン分析、ノーザン分析、ゲル電気泳動、PCR、放射線標識、シンチレーションカウンティング、および親和性クロマトグラフィーのような周知の方法が実施される。分光測光法、放射線撮影、電気泳動、キャピラリー電気泳動、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、超拡散クロマトグラフィーのような追加の分析的生化学的方法も用いることができる。
【0176】
核酸ハイブリダイゼーションの形式の選択は重要ではない。様々な核酸ハイブリダイゼーションの形式が当業者に公知である。例えば、一般的の形式としては、サンンドイッチアッセイおよび競合もしくは置換アッセイが挙げられる。ハイブリダイゼーション技術は、“Nucleic Acid Hybridization, A Practical Approach,”Hames, B.D.およびHiggins, S. J編集、IRL Press, 1985年に一般的に記載されている。
【0177】
ハイブリダイゼーションアッセイの感度は、検出対象の標的核酸を増加する、核酸増幅システムを用いて高めてもよい。分子プローブとして使用するための配列を増幅する、または続いてサブクローニングするための核酸断片の生成に好適なインビトロ増幅技術は公知である。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、Qβ-レプリカーゼ増幅およびその他RNAポリメラーゼを介した技術(例えばNASBA(商標))を含むインビトロ増幅法を用い実施される、当業者向が十分満足する技術の例は、Sambrook ら、In Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2000、およびAusubelら、SHORT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, 編集、Current Protocols, Greene Publishing Associates, IncおよびJohn Wiley & Sons, Inc., (2002) のジョイントベンチャー、ならびにMullisら (1987)、米国特許第4,683,202号;PCR Protocols A Guide to Methods and Applications (Innis et al. eds) Academic Press Inc. San Diego, CA (1990) (Innis); Arnheim & Levinson (October 1, 1990), C&EN 36; The Journal Of NIH Research, 3:81(1991);(Kwoh et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:1173 (1989); Guatelli et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:1874 (1990); Lomell et al., J. Clin. Chem., 35:1826 (1989);Landegrenら、Science, 241:1077(1988);Van Brunt, Biotechnology, 8:291(1990);WuとWallace, Gene, 4:560 (1989); Barringerら、Gene, 89:117 (1990)、およびSooknananとMalek、Biotechnology, 13:563 (1995) に見いだせる。インビトロ増幅した核酸をクローニングする改良法は、Wallaceら、米国特許第5,426,039号に記載されている。当技術分野において記載されたその他方法は、核酸配列をベースとした増幅(NASBA(商標)、Cangene, Mississauga, Ontario)およびQベータレプリカーゼシステムである。
【0178】
プローブとして、例えばインビトロ増幅法で用いるためのオリゴヌクレオチド、遺伝子プローブとして用いるためのオリゴヌクレオチド、またはインヒビター成分として用いるためのオリゴヌクレオチドは、典型的には、BeaucageとCaruthers、Tetrahedron Letts., 22(20):1859 1862 (1981) 記載の固相蛍光アミドトリエステル法に従って、例えばNeedham VanDevanterら、Nucleic Acids Res., 12:6159 (1984) 記載の自動合成装置を用いて化学的に合成される。オリゴヌクレオチドの精製は、必要な場合、典型的には、未変性アクリルアミドゲル電気泳動またはPearsonとRegnier、J.Chrom., 255;137 149 (1983) 記載のアニオン交換HPLCを用いて行われる。合成オリゴヌクレオチドの配列は、Grossman and Moldave(編集)Academic Press, New York, Methods in Enzymology, 65:499中のMaxamとGilbert (1980) の化学的分解法を用いて検証できる。
【0179】
翻訳レベルを決定するための別の方法は、インサイチューハイブリダイゼーションである。インサイチューハイブリダイゼーションアッセイは周知であり、Angererら、Methods Enzymol., 152:649 (1987)に一般的に記載されている。インサイチューハイブリダイゼーションアッセイでは、細胞は固相支持体、一般的にはガラススライドに固定される。もしDNAをプロービングする場合、細胞を熱またはアルカリで変性しておく。次に、細胞を中度の温度のハイブリダイゼーション溶液に接触させて、標識された特異的プローブをアニーリングさせる。プローブは、放射性同位元素または蛍光レポーターで標識するのが好ましい。
【0180】
VI. キット
本発明は、キットの形をした核酸-脂質粒子も提供する。キットは、典型的には、核酸-脂質粒子の各種要素およびエンドゾーム膜不安定化剤(例えばカルシウムイオン)を納めるために区画化された容器から成る。キットは、本発明の組成物、好ましくは脱水した形の組成物を、それらを再水和し投与するための使用説明書と共に含む。さらに別の態様では、粒子および/または粒子を含む組成物は、粒子表面に取付けられた標的化成分を有しうる。脂質(本粒子で使用されているような)に標的化成分(例えば抗体、タンパク質)を取付ける方法は、当業者に公知である。
【実施例】
【0181】
以下の実施例は、例示を目的に提出されるものであり、主張する本発明を制限するものではない。当業者は、実質的に同一の結果を生む変更または修正が可能である、様々な、重要でないパラメータを容易に認めるると思われる。
【0182】
実施例1. siRNAを封入しているSNALP処方物
本実施例は、短鎖または長鎖のPEG-DAGと一緒に処方され、有機脂質と水性緩衝液を連続混合することにより調製されたSNALP内へのsiRNAの封入を示す。用いたPEG-DAG脂質は、PEG-ジミリスチルグリセロール(C14)(PEG-DMG)およびPEG-ジステアリルグリセロール(C18)(PEG-DSG)である。この方法によりDSPC:コレステロール:DODMA:PEG-DMG/PEG-DSG SANALPに封入された抗β-ガラクトシダーゼ(β-gal)siRNAは、90%以上の封入率(Ribogreenアッセイ)を示し、粒度は〜120 nmであった(Malvern寸法測定器)。調製物は、次の特性を有していた:
4 ml調製:DSPC:Chol:DODMA:PEG-DMGリポソーム内の抗B-gal siRNA
初期混合=封入率94%
希釈混合後=封入率98%
インキュベーション混合後=封入率97%
一晩透析後=封入率96%
粒度=109.7 nm
多分散性=0.14
8 ml調製:DSPC:Chol:DODMA:PEG-DMGリポソーム内の抗B-gal siRNA
希釈およびインキュベーション混合後=89%
一晩透析後=91%
粒度=127.5 nm
多分散性=0.11
8 ml調製:DSPC:Chol:DODMA:PEG-DSGリポソーム内の抗B-gal siRNA
希釈およびインキュベーション混合後=90%
一晩透析後=90%
無菌フィルター後=90%
粒度=111.6 nm
多分散性=0.24
【0183】
実施例2. siRNAを封入したSNALP処方物のインビトロ送達による、細胞での細胞内発現のダウンレギュレーション。
本実施例は、抗β-Gal siRNAを封入したDSPC:コレステロール:DODMA:PEG-DMGリポソームがインビトロ送達されたCT26.CL25細胞における、β-Gal発現のダウンレギュレーションを説明する。結果は図1に示す。
【0184】
抗β-Gal siRNAを封入したオリゴフェクタミン0.2μgのインビトロ送達は、曝露されていないコントロール細胞に比べ、β-Galの活性を約60%低下させた。DSPC:コレステロール:DODMA:PEG-DMGリポソーム内に1.5μgの抗β-Gal siRNAを封入したものは、曝露されていないコントロールの細胞に比べ、β-Galの活性を約30%低下させた。
【0185】
実施例3. 血清安定性に関するアッセイ法
上記技術に従って処方された脂質/治療用核酸粒子は、様々な方法を用いて血清安定性についてアッセイできる。
【0186】
例えば、典型的なDNase I消化では、関心対象の粒子内に封入された1μgのDNAを、総容積100μLの5 mM HEPES、150 mM NaCl、10.0 mM MgCl2 pH7.4の中でインキュベーションする。DNase 処理サンプルは、100または10UのDNase I (Gibco-BRL) によって処理される。コントロール実験では、1.0% Triton X-100を加えて、脂質処方物が酵素を直接不活性化しないようにできる。サンプルを37℃で30分間インキュベーションし、その後500μLのDNAZOLを加え、さらに1.0mLのエタノールを加えてDNAを単離した。サンプルを、卓上型小型遠心機を用いて、30分間、15,000 rpmで遠心分離した。上清をデカントし、得られたDNA沈殿物を80%エタノールで2回洗浄し、乾燥させた。このDNAを30μLのTE緩衝液に再懸濁した。このサンプル20μlを1.0%アガロースゲルにロードして、TAE緩衝液を用いた電気泳動にかけた。
【0187】
典型的な血清アッセイでは、遊離した、封入された、または封入されさらに0.5%のTriton ×100が加えられたDNA50μgを1.5 mlのエッペンドルフチューブに小分けして入れた。チューブに、正常マウスまたはヒト血清45μl、dH2O(最終容積を50μLにする)を加えた。チューブにパラフィルムで封をし、37℃でインキュベーションした。ヌクレアーゼで消化していない遊離した、封入された、または封入+0.5% Triton ×100のサンプル(標準物)を、エッペンドルフチューブに入ったまま液体窒素で凍結し、-20℃で保管した。様々な時点で一部を取りだし、プロテイナーゼ K(133μg/mL)を含むGDP緩衝液に加え、直ぐに液体窒素に入れて凍結し、反応を停止した。全時点のサンプルを一度に集め、水槽の内、55℃でインキュベーションし、プロテイナーゼKを活性化し、残りのエクソヌクレアーゼを変性した。プロテイナーゼK消化サンプルをポリアクリルアミドゲルに用いて、エクソヌクレアーゼ分解のレベルを評価した。
【0188】
上記開示の粒子は、このような処理の結果として、100UのDNase 1が存在する場合でも、DNA分解(部分的または全体)量が5%未満であること、好ましくは検出されないことを示すことによって、血清安定性であることを実証した。これは、このような処理によって完全に分解した遊離DNA、およびその中のDNAが実質的に(すなわち20%を超えて、多くは80%を超えて)分解したプラスミド/脂質複合体(DOTMAまたはDODAC:DOPE複合体等)に比べ有利である。
【0189】
実施例4. SNALPの特徴分析
本実施例は、腫瘍を持ったマウスの疾患部位の標的化、およびSNALPの静脈内投与により生じる遺伝子発現について説明する。本実施例では、封入された核酸はプラスミドである。
【0190】
SNALP法を用いて、小型(直径〜70 nm)の「安定化核酸-脂質粒子」にプラスミドDNAを封入した(SNALP)。SNALPは、ポリ(エチレングリコール)(PEG)コーティングのような二重層安定化成分の存在によって安定化した脂質二重層内に封入された、1粒子当たり1個のプラスミドから成る。SNALPは、静脈内投与後の血中寿命の延長、および遠位腫瘍部位への未変性プラスミドの送達の促進を示し、結果として疾患部位でのレポーター遺伝子の発現を促進した。
【0191】
循環時間が長いSNALPは、腫瘍グラム当たり全注射投与量の5〜10パーセント、または細胞当たり1000コピーのプラスミドDNAを上回るレベルに相当するレベルまで蓄積され、他の組織で観察された遺伝子発現レベルよりも二桁を上回る遺伝子発現レベルを生じさせた。興味深いことに、全注射量の20〜30%が肝臓に蓄積したが、肝臓で観察された遺伝子発現レベルは極めて低かった。これは、肝細胞によるペグ化SNALPの取り込みが制限されているためと考えられた。図7〜9参照。
【0192】
二重層安定化成分を含む核酸-脂質粒子の、インビボ送達およびトランスフェクション能力は、DSPEアンカー、PEG3400スペーサー鎖、およびカチオン頭部基から成るカチオン性PEG脂質(CPL)を組み入れることにより、さらに高まった。CPLをSNALPに、2〜4モル%の濃度で組み入れると、得られたCPL-SNALPは元のSNALPと同様のサイズと安定性を示した。CPLを組み入れることで細胞内送達は劇的に増加し、それに伴ってインビトロおよびインビボで測定されるトランスフェクション活性も上昇した。具体的には、CPL-SNALPは、インビボでの遺伝子発現を、元のSNALPに比べ105倍高くした。CPL-SNALPを静脈内投与すると、それらは元のSNALPに比べ、肝臓での遺伝子発現を大きく(250倍)増加した。CPL-SNALPの効能の上昇は、肝臓に特異的であった。肺、腎臓、脾臓、または心臓で測定された遺伝子発現レベルには変化は見られず、その結果肝臓とその他器官を比べると、測定された遺伝子発現に二桁以上の差が生じた。
【0193】
これらの結果は、全身への遺伝子の送達に求められる安定性、および小型で、均一なサイズを維持しながら、PEG-脂質含有システムの送達特性を調節できる可能性を示している。特に、結果は、非ウイルス性遺伝子送達システムの脂質組成を変えることによって、疾患部位の標的化および組織特異的遺伝子発現を再プログラミングできることを示している。
【0194】
実施例5. PEG-DAG複合体含有SNALP
本実施例は、一連のPEG-ジアシルグリセロール脂質(PEG-DAG)SNALPの調製を示している。この実施例では、封入された核酸はプラスミドである。
【0195】
PEG-DAG SNALPは、10モルパーセントのPEG-ジラウリルグリセロール(C12)、PEG-ジミリスチルグリセロール(C14)、PEG-ジパルミトイルグリセロール(C16)、またはPEG-ジステリルグリセロール(C18)を組み入れ調製され、腫瘍を持ったマウスに全身投与した場合のインビトロのトランスフェクション活性、薬物動態および遺伝子発現の生体分布を評価した。PEG-DAG脂質含有SNALPは、アシル鎖の長さとインビトロのトランスフェクション活性との間の関係について、PEG-セラミド含有のものと類似の関係を示した。アシル鎖アンカーが短いものほど(ジミリスチル(C14)およびジパルミトイル(C16))、より長いアシル鎖アンカー(ジスステリル(C18))を組み入れたものに比べ安定性は低いが、インビトロでのトランスフェクション活性は高いSNALPを生じた。PEG-DAG含有SNALPの薬物動態の評価からは、PEG脂質組成の安定性とSNALPの血中寿命との間に相関性があることが確認された。PEG-ジミリスチルグリセロール(C14)、PEG-ジパルミトイルグリセロール(C16)、およびPEG-ジステリルグリセロール(C18)を含有するSNALPは、それぞれ0.75、7、および15時間の血中半減期を示した。血中寿命が長いことは、結果として、腫瘍への送達および、それに伴う遺伝子発現の増加と相互に関係する。
【0196】
PEG-ジステリルグリセロール(C18)含有SNALPは、静脈内に投与されると、肺を含むいわゆる「初回通過」臓器を迂回し、遠位腫瘍組織内で遺伝子の発現を誘発する。腫瘍で観察されたレポーター遺伝子の発現レベルは、その他組織で観察されたものの100〜1000倍であった。この結果は、PEG-セラミドC20を含有するSNALPの挙動と良く一致した。SNALPへのPEG-DAGの組み入れから、サイズが小さく、表面電荷が低く、血中寿命が長いことが、非ウイルス性トランスフェクションシステム全身投与に続く腫瘍内へのプラスミドDNAの蓄積および遺伝子発現をもたらす、能動的な疾患部位標的化の必要条件であることが確認できた。図3〜9参照。
【0197】
材料および方法
材料
DOPEおよびDSPCは、Northern Lipids(Vancouver, BC)より得た。DODACおよびPEG-ジアシルグリセロールは、Inex Pharmaceuticals(Burnaby, BC)により製造された。他の材料、HEPES、OGP、および3H-コレステリルヘキサデシルエーテルは、複数の異なる販売元から購入した。
【0198】
DOPE:DODAC:PEG-ジアシルグリセロール(82.5:7.5:10)大型単層小胞は、Hepes緩衝化食塩水(150 mMのNaClおよび10 mMのHEPES)を用いて48時間、界面活性剤を透析して調製した。脂質保存液は、エタノールを用いて調製し、次に乾燥して脂質フィルムを作製し、これを戻して最終的に200mM OGPにした。LUVは、3H-コレステリルヘキサデシルエーテルを用いて、1 uCi/1 mg脂質に標識した。粒度は、Nicomp分析によって決定した。放射活性は、Picofluor20を用いたシンチレーションカウンティングによって決定した。
【0199】
PEG-ジアシルグリセロールを含有するSNALPは、DNA封入割合が最大になるように塩濃度を変えて界面活性剤透析を行い調剤した。最適な塩濃度を、48時間透析について選択した。空の小胞は、一工程ショ糖遠心分離により除去した。プラスミド含有PEG-ジアシルグリセロール処方物からの空粒子の分離は、PEG-ジミリスチルグリセロール含有SNALPに5.0%ショ糖を用いたことを除いて、すべて3.5%ショ糖を用いて行った。空小胞はチューブ上部に移動するので、これを分画して除いた。
【0200】
インビトロトランスフェクション
5×104細胞/mlを24ウエルプレートに接種した(1 ml)。細胞は、24時間放置して増殖させた。500μlのトランスフェクション媒体(2.5μg/ウエル)を加えてから、記載の時間の間インキュベーションした。所定時間の後にトランスフェクション媒体を吸引し、次に、さらに24時間、37℃、5.0% CO2で完全培地に曝した。完全培地を取り除いた。細胞をPBSで2回洗浄し、実験日まで-70℃に保管した。細胞を、プロテアーゼインヒビターを含む、150μLの1×CCLRで溶解した。プレートを5分間振とうした。各サンプル20μlを用いて、96ウエル発光プレートの中でルシフェラーゼ活性について二重測定アッセイした。
【0201】
薬物動態、生体分布、およびインビボ遺伝子発現
薬物動態および生体分布はすべて、示された放射活性量についてデータを正規化して決定した。約500μlの血液を心臓穿刺により得た。赤血球と血漿を、遠心分離に(4℃、3000 rpm、10分間)よって分離し、血漿100μlを用いて放射活性カウントを測定した。指定された時点で器官を採取し、溶解マトリックスチューブ(Fast Prep、2×15秒、強度4.5)の中でホモジェナイゼーションし、混合物の一部をアッセイした。
【0202】
遺伝子発現は、ルシフェラーゼアッセイにより測定した。器官を集め、ホモジェナイゼーションし、実験を通して氷上に保った。溶解物を遠心分離(10,000 rpm、5分間)し、上清20μlを用いて、96ウエル発光プレートの中でルシフェラーゼ活性について二重測定アッセイした。結果を図6〜9に示す。
【0203】
インビトロ遺伝子サイレンシング
細胞を、PEG-脂質複合体を含み、CMVプロモータ制御下にあるルシフェラーゼをコードするプラスミドを含有するSPLP、および抗ルシフェラーゼsiRNAを含有するSNALPを用い、上記記載の方法に従ってトランスフェクションした。遺伝子発現は、ルシフェラーゼアッセイによって測定した。結果を図17に示す。
【0204】
実施例6. PEG-ジアルキルオキシプロピル複合体を含むSPLPに封入された核酸の発現
本実施例は、PEG-ジアルキルオキシプロピル複合体を含むSPLPに封入された核酸の発現を比較した実験について説明する。すべてのSPLP処方物が、CMVプロモータ(pLO55)制御下にあるルシフェラーゼをコードするプラスミドを含む。

【0205】
脂質(DSPC:CHOL:DODMA:PEG-脂質)は、SPLP中に、次のモル比(20:55:15:10)で存在した。以下の処方物を作製した:
A: 無菌濾過したPBS、5 mL
B: PEG-DSGを含むpL055-SPLP、0.50 mg/mLで2 mL
C: PEG-A-DSAを含むpL055-SPLP、0.50 mg/mLで2 mL
D: PEG-A-DPAを含むpL055-SPLP、0.50 mg/mLで2 mL
E: PEG-A-DMAを含むpL055-SPLP、0.50 mg/mLで2 mL

【0206】
0日目に、1.5×106個のNeuro2A細胞を各マウスに投与した。腫瘍が好適なサイズ(200〜400 mm3)になった時点でマウスを無作為化し、一回投与量のSPLP処方物またはPBSを静脈内(IV)注射して処置した。投与量は、投与日に測定された体重に基づいた。SPLP投与48時間後、マウスを犠牲にして、その血液を収集し、次の組織を収集して重量を測定し、直ちに凍結し、次の分析まで-80℃に保管した:腫瘍、肝臓(二分割した)、肺、脾臓、および心臓。
【0207】
収集した組織での遺伝子発現は、発現したルシフェラーゼレポータータンパク質の酵素活性をアッセイすることによって測定した。結果は、図11および12に示す。
【0208】
結果は、PEG-ジアルキルオキシプロピル(即ちPEG-DAA)を含むSPLPは、遠位部腫瘍のトランスフェクションに関して、PEG-ジアシルグリセロールを含むSPLPと同じ程度に都合良く使用できることを示している。さらに、PEG-ジアルキルオキシプロピルを含むSPLPに観察されたトランスフェクションレベルは、PEG-ジアシルグリセロール(例えばPEG-DSG)を含有するSPLPに観察されるレベルと同様であった。さらに、PEG-ジアシルグリセロールシステムと同様に、非腫瘍組織ではトランスフェクションは殆ど起こらなかった。さらに、PEG-ジアルキルオキシプロピルを含むSPLPは、他のSPLP処方物に比べ、低い毒性を示した。
【0209】
実施例7. PEG-ジアルキルオキシプロピル複合体含有SNALP
本実施例は、PEG-ジアルキルオキシプロピル脂質SNALP(即ち封入されたsiRNAを含有するSPLP)の生体分布(局所および全身)ならびに薬物動態を分析した実験について説明する。
【0210】
局所生体分布
Neuro-2a腫瘍を持つマウスに抗βガラクトシダーゼsiRNA含有SNALPを全身投与した時のSPLPの局所分布を、蛍光顕微鏡法を用いて調べる。
【0211】
A: PBS
B: 抗βgal siRNA-ローダミン-PE標識-DSPC:Chol:DODMA:PEG-A-DMA SNALP(1:20:54:15:10)

【0212】
0日目に、1.5×106個のNeuro2A細胞を各マウスに投与した。腫瘍が好適なサイズ(200〜400mm3、一般的には9〜12日目)になった時点でマウスを無作為化し、全量230μlを静脈内(IV)注射して100μgのsiRNAまたはPBSを含む一回投与量のSNALP処方物で処置した。投与量は、投与日に測定された体重に基づいた。SPLP投与24時間後、マウスを犠牲にして、その血液を収集し、次の組織を収集して重量を測定し、直ちに凍結し、次の分析まで-80℃に保管した:腫瘍、肝臓(二分割した)、肺、脾臓、および心臓。
【0213】
SNALPの局所分布は、蛍光顕微鏡法によって決定した。SNALPの蓄積は、例えば肝臓に見られ、PEG-ジアルキルオキシプロピルを含むSNALPが溢出、即ち循環系から出て標的組織または器官を標的にできることが示された。
【0214】
薬物動態および全身生体分布
本実施例は、Neuro2A腫瘍が皮下接種されたマウスにおける、CMVプロモータ(LO55)制御下にあるルシフェラーゼをコードするプラスミドを含有するSPLP、および抗ルシフェラーゼsiRNAを含有するSNALPの薬物動態および生態分布を例示する。

【0215】
すべてのサンプルは、0.5 mg/mlの核酸で提供されるものとする。次のSPLPおよびSNALP処方物を調製した:
A. [3H]CHE-LO55-DSPC:Chol:DODMA:PEG-A-DMA(20:55:15:10)
B. [3H]CHE-抗luc siRNA-DSPC:Chol:DODMA:PEG-A-DMA(20:55:15:10)
C. [3H]CHE-LO55-DSPC:Chol:DODMA:PEG-C-DMA(20:55:15:10)
D. [3H]CHE-LO55-pSPLP(PEI)(即ち前濃縮SPLP)
E. [3H]CHE-LO55-DSPC:Chol:DODMA:PEG-DSG(20:55:15:10)

【0216】
30匹の雄A/Jマウス(Jackson Laboratories)に、1.5×106細胞のNeuro 2A細胞を含む全量50μLのリン酸緩衝化食塩水を、0日目に皮下接種した。腫瘍が適当な大きさに達した後(一般的には9日目以降)、上記SPLPまたはSNALP調製物200μl(核酸100μg)を静脈内投与した。SPLPまたはSNALP投与0.25、1、2、4、および8時間後、マウスの体重を測定し、尾を切り血液(一般的には25μL)を採取した。SPLPまたはSNLP投与24時間後に、マウスを犠牲にして血液を採取し、[3H]CHEのクリアランスをアッセイした。器官(例えば肝臓、肺、脾臓、腎臓、心臓)および腫瘍を集め、[3H]CHEの蓄積について評価した。結果は、図13〜16に示す。
【0217】
全処方物の中で、PEG-DSG含有SPLPが最も長く血液中に留まり、6時間後でも注射投与量の50%が残っていた。興味深いことに、pSPLPでは、初期15分以内に最初の急速なクリアランスが現れたが、これは他の処方物には見られなかった。1時間後、pSPLPのクリアランスプロフィールは、SPLPに極めて似ていた。このpSPLPサンプルに見られた初期の急速なクリアランスは、実際には2種類の粒子が存在し、一つは極めて迅速に排出され、もう一つはSPLPとほとんど同じ挙動を示すことを示しうる。
【0218】
C14 PEG-A-DMAと一緒に処方した抗Luc siRNA含有小胞(SNALP)は、C18 PEG-DSG含有SPLPより迅速な血液からのクリアランスを示した。しかしながら、このSNALP処方物は、同じPEG脂質と一緒に処方されたSPLPに比べると、有意に遅い血液クリアランスを示した。この結果の理由として、siRNA含有粒子が、プラスミド含有SPLPよりも細胞免疫系を回避しやすい可能性が考えられる。
【0219】
PEG-C-DMA含有SPLPは、血液からの迅速なクリアランスを示したが、これはPEG-A-DMAを含むSPLPに観察されたものと実質同じであった。これら処方物は共に、血漿半減期は約2時間であり、C18 PEG-脂質含有SPLPに比べ遅い。
【0220】
PEG-DSG含有SPLPは、組織グラム当たり10.9%注射投与量の、最も高い腫瘍蓄積率を有していた。C14 PEG-脂質、PEG-A-DMA、およびPEG-C-DMAを含有する二種類のSPLP処方物は、はるかに低い腫瘍蓄積率である組織グラム当たり6.1%および5.9%の注射投与量を示した。siRNA SNALPは、同じPEG-脂質を含むSPLPサンプルに比べ、若干高い7.3%の腫瘍蓄積率を示したが、この結果はこのSNALPの血漿半減期とも比較的よく相関する。pSPLP処方物は7.5%の腫瘍蓄積率を有していたが、これは類似のPEG-DSG SPLPに比べ低い。
【0221】
心臓および肺でのPEG-DSG含有SPLPおよびpSPLPの蓄積は、他のSPLPおよびSNALPに比べて高く、このことはC18 PEG-脂質を含む粒子の血中半減期が長いことに一致した。驚くべき事ではないが、試験したすべての粒子について、血漿半減期と肝臓での蓄積との間には逆の相関関係があったが、脾臓へのサンプル蓄積には一定の傾向は認められなかった。腎臓での蓄積は、試験した全処方物で極めて少なく、蓄積率はグラム組織当たり1.2〜2.4%注射投与量であった。
【0222】
実施例8. SNALPSによる遺伝子発現のサイレンシング
本実施例は、CMVプロモータ制御下のルシフェラーゼをコードするプラスミドを含有するSPLPおよび抗ルシフェラーゼsiRNAを含有するSNALPと同時投与した後の、Neuro 2A腫瘍を有するマウスにおける遺伝子発現のサイレンシングを示す。

【0223】
36匹の雄A/Jマウス(Jackson Laboratories)に、1.5×106細胞のNeuro 2A細胞を含む全量50μLのリン酸緩衝化食塩水を、0日目に皮下接種した。腫瘍が適当な大きさに達した後(一般的には9日目以降)、PBS、SPLP、またはSNALP調製物200〜240μl(総核酸量100μg)を上記実施例6に記載のように調製し、静脈内投与した。PBS、SPLP、またはSPLPとSNALPとの混合物を投与してから24、48、または72時間後、マウスを犠牲にして器官(例えば肝臓、肺、脾臓、腎臓、心臓)および腫瘍を集め、ルシフェラーゼ活性について評価した。結果は、図18〜22に示す。
【0224】
結果は、pL055 SPLPと抗luc siRNA SNALP(共にPEG-A-DMAを含有)との同時投与は、単回の静脈内投与から48時間後に、ルシフェラーゼ遺伝子発現を最大40%低下させることを示した。
【0225】
実施例9. PEG-ジアルキルオキシプロピル(PEG-DAA)の合成
以下の実施例では、3種類のPEG-脂質、PEG-A-DMA (7)、PEG-C-DMA (8)、およびPEG-S-DMA (9)の合成を説明する。これらは共通の前駆体、アミン脂質1,2-ジミリスチルオキシプロピルアミン(5)を有する。この脂質は、14炭素単位(C14)の長さのアルキル鎖を持つ。本発明での使用に好適なその他PEG DAAは、同様のプロトコルを用いて合成することができる。例えば、PEG-A-DSAおよびPEG-C-DSAは、(5)のC18類似体を用いて合成することができる。C18類似体は、第一工程(化合物(1)の合成)のミリスチルブロミドを、等モル量のステアリルブロミドに単純に置き換えることによって合成することができる。
【0226】
1. 1,2-ジミリスチルオキシ-3-アリルオキシプロパン(1)の調製

ベンゼン(250 ml)を95%水素化ナトリウム(11.4 g、450.0 mmol)に加え、フラスコを窒素でフラッシュして密封した。3-アリルオキシ-1,2-プロパンジオール(6.6 g、50.0 mmol)のベンゼン(75 ml)溶液をフラスコに加えた。シリンジを使って、97%の1-ブロモテトラデカン(36.7 ml、120.0 mmol)をフラスコに加え、一定の窒素流を加えながら、一晩反応液を還流した。一度室温に冷却してから、泡立ちが観察されなくなるまで、エタノールを用いて過剰の水素化ナトリウムをゆっくりクエンチングした。溶液を、ベンゼン(250 ml)と一緒に分液ロートに移し、蒸留水(3×200 ml)で洗浄した。硫酸マグネシウムを用いて有機層を乾燥させ、溶媒をロータリーエバポレーターで取り除き、無色の油状物を得た。TLC(5%エーテル-ヘキサン、モリブデン酸塩で発色)は、出発材料の大部分が反応して生成物を形成したことを示した。この得られた生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(1〜5%エーテル-ヘキサン)によりさらに精製し、15.0 g(57.3%)の1,2-ジミリスチルオキシ-3-アリルオキシプロパン1を得た。
【0227】
2. 1,2-ジミリスチルオキシプロパン-3-オール(2)の調製

1.2-ジミリスチルオキシ-3-アリルオキシプロパン1(15.0 g、28.6 mmol)をエタノール(250 ml)に溶解した。トリフルオロ酢酸(20 ml)を加え、続いてテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(4.5 g、3.9 mmol)を加えた。フラスコをスズ箔で覆い、窒素をフラッシュして、光と空気への曝露を減らしてから、次に80℃で一晩攪拌した。ロータリーエバポレーターでエタノールを除いた。TLC(100% CHCl3、モリブデン酸塩で発色)は、出発材料の大部分が反応して生成物を形成したことを示した。得られたこの生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(100% DCM)によりさらに精製し、11.5 g(83.1%)の1,2-ジミリスチルオキシプロパン-3-オール2を得た。
【0228】
3. O-(2,3-ジミリスチルオキシプロピル)メタンスルホネート(3)の調製

97%無水メタンスルホン酸(8.4 g、48.0 mmol)の入ったフラスコを窒素でフラッシュし、無水ジクロロメタン(50 ml)に溶解した。無水ピリジン(3.9 ml、48.0 mmol)をゆっくり加え、白色の沈殿物が形成させた。1,2-ジミリスチルオキシプロパン-3-オール 15(11.5 g、24.0 mmol)の無水ジクロロメタン(100 ml)溶液を加え、反応液を一晩、室温で攪拌し続けた。溶液を、ジクロロメタン(100 ml)と一緒に分液ロートに移し、蒸留水(3×100 ml)で洗浄した。合わせた水性洗浄水を、ジクロロメタン(100 ml)で逆抽出した。合わせた有機層を、硫酸マグネシウムを用いて乾燥させ、ジクロロメタンをロータリーエバポレーターで取り除いて、無色の油状物を得た。TLC(100% CHCl3、モリブデン酸塩で発色)は、出発材料がすべて反応し、生成物を形成したことを示した。この反応により、11.9 gの粗O-(2,3-ジミリスチルオキシプロピル)メタンスルホネート3を得た。
【0229】
4. N-(2,3-ジミリスチルオキシプロピル)フタルイミド(4)の調製

粗O-(2,3-ジミリスチルオキシプロピル)メタンスルホネート 3(14.2 g、25.3 mmol)およびフタルイミドカリウム(13.9 g、75.0 mmol)を窒素でフラッシュし、無水N,N-ジメチルホルムアミド(250 ml)に溶解した。反応液を、70℃で、一晩、一定の窒素流を当てながら攪拌し続けた。N,N-ジメチルホルムアミドを、通常のアスピレータに代わって高真空ポンプ用いたロータリーエバポレーターで除いた。残留物をクロロホルム(300 ml)に溶解し、クロロホルムすすぎ液(50 ml)と一緒に分液ロートに移してから、蒸留水およびエタノール(蒸留水3×300 ml、エタノール50 ml)で洗浄した。合わせた水性洗浄水をクロロホルム(2×100 ml)で逆抽出した。合わせた有機層を、硫酸マグネシウムを用いて乾燥させ、クロロホルムをロータリーエバポレーターで取り除いた。TLC(30%エーテル-ヘキサン、モリブデン酸塩で発色)は、出発材料が反応して生成物を形成したことを示した。この反応により、13.5 gの粗N-(2,3-ジミリスチルオキシプロピル)フタルイミド4を得た。
【0230】
5. 1,2-ジミリスチルオキシプロピルアミン(5)の調製

粗N-(2,3-ジミリスチルオキシプロピル)フタルアミド4(20.0 g、25.0 mmol)をエタノール(300 ml)に溶解した。一水和ヒドラジン(20 ml、412.3 mmol)を加え、反応液を一晩還流し続けた。エタノールをロータリーエバポレーターで取り除き、残留物をクロロホルム(200 ml)に再溶解した。沈殿物を濾取し、クロロホルムをロータリーエバポレーターで取り除いた。TLC(10% MeOH-CHCl3、モリブデン酸塩で発色)は、出発材料の大部分が反応して、生成物を形成したことを示した。こうして得られた生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(0〜5% MeOH-CHCl3)を用いて精製し、10.4 g(1,2-ジミリスチルオキシプロパン-3-オール2から三工程を通して89.7%)の1,2-ジミリスチルオキシプロピルアミン5を得た。
【0231】
6. メトキシPEG2000酢酸(6)の調製

10%濃硫酸(20 ml)の水溶液(180 ml)を重クロム酸ナトリウム(3.0 g、10 mmol)に加えた。PEG2000メチルエーテル(20.0 g、10 mmol)をこの鮮オレンジ色の溶液に溶解し、反応液を室温で一晩攪拌し続けた。次に生成物をクロロホルム(3×250ml)で抽出すると、暗青色をした水層を残した。クロロホルム溶媒をロータリーエバポレーターで取り除くと、淡青色のワックスが得られた。TLC(13% MeOH-CHCl3、ヨードで発色)は、出発材料の大部分が反応して生成物を形成したことを示した。次に、この粗材料をフラッシュカラムクロマトグラフィー(0〜15% MeOH-CHCl3)を用いてさらに精製した。次に、得られた生成物をエーテル中で結晶化し、白色の固体として5.6 g(27.1%)のメトキシPEG2000酢酸6を得た。
【0232】
7. N-(2,3-ジミリスチルオキシプロピル)アミドPEG2000メチルエーテル(7)の調製

N-(2,3-ジミリスチルオキシプロピル)アミドPEG2000メチルエーテル(即ちPEG-A-DMA)を調製するために、メトキシPEG2000酢酸6(3.4 g、1.7 mmol)をベンゼン(40 ml)に溶解して、窒素でフラッシュした。塩化オキサリル(1.7 ml、2.5 g、20 mmol)を針のついたシリンジを使って、サブシール越しにゆっくり加えた。この反応液を2時間、攪拌し続けてから、ロータリーエバポレーターを使ってベンゼン溶媒を取り除いた。2,3-ミリスチルオキシプロピルアミン5(0.87 g、1.8 mmol)をフラスコに加え、続いて無水ジクロロメタン(40 ml)およびトリエチルアミン(1.5 ml、10 mmol)を加えた。反応液を48時間攪拌し続けた。蒸留水(250 ml)を加え、塩酸(1.5 ml)を使って溶液を酸性化して振とうし、有機層を集めた。生成物を、水層からクロロホルム(2×65 ml)を用いて抽出した。合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。クロロホルムをロータリーエバポレーターで取り除き、黄色の固体を得た。TLC(10% MeOH-CHCl3、硫酸銅およびヨードで発色)は、出発材料の大部分が反応して生成物を形成したことを示した。次に、この粗材料をフラッシュカラムクロマトグラフィー(0〜7% MeOH-CHCl3)を用いてさらに精製した。次に、活性炭(2 g)およびエタノール(100 ml)を加え、混合液をロータリーエバポレーターで、55℃、30分間、回転させて脱色した。チャコールを濾取し、エタノールをロータリーエバポレーターで取り除いた。生成物を凍結乾燥し、綿毛状の白色の粉末として1.7g(38.1%)のN-(2,3-ジミリスチルオキシプロピル)アミドPEG2000メチルエーテル7を得た。
【0233】
8. N-(2,3-ジミリスチルオキシプロピル)カルバメートPEG2000メチルエーテル (8)の調製

N-(2,3-ジミリスチルオキシプロピル)カルバメートPEG2000メチルエーテル(即ち、PEG-C-DMA)の調製では、上記の工程1〜5を繰り返した。その後、PEG2000メチルエーテル(2.0g、1.0 mmol)を窒素でフラッシュし、無水ジクロロメタン(15 ml)に溶解した。ジホスゲン(300μl、2.5 mmol)を加えて、反応液を室温で3時間攪拌し続けた。ジクロロメタンをロータリーエバポレーターで取り除き、残留ジホスゲンを高真空ポンプを用いて取り除いた。フラスコを窒素でフラッシュしてから2,3-ジミリスチルオキシプロピルアミン5(0.7g、1.5 mmol)を加えた。これを無水ジクロロメタン(15 ml)に溶解し、トリエチルアミン(280μl)を加え、反応液を室温で一晩、攪拌し続けた。溶液をジクロロメタン(5ml)と一緒に分液ロートに移し、蒸留水(2×20 ml)で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、ジクロロメタンをロータリーエバポレーターで取り除いた。TLC(3% MeOH-CHCl3、モリブデン酸塩およびヨードで発色)は、出発材料の大部分が反応して生成物を形成したことを示した。得られたこの生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(1.5〜10% MeOH-CHCl3)を用いてさらに精製し、1.2 g(46.5%)のN-(2,3-ジミリスチルオキシプロピル)カルバメートPEG2000メチルエーテル8を得た。
【0234】
9. N-(2,3-ジミリスチルオキシプロピル)スクシンアミドPEG2000メチルエーテル(13)の調製
N-(2,3-ジミリスチルオキシプロピル)スクシンアミドPEG2000メチルエーテル(13)の調製では、上記の工程1〜5を繰り返した。残りの手順は次のとおりである
【0235】
a. PEG2000メシレート (9)の調製

無水メシル(8.2 g、47.1 mmol)を無水クロロホルム(80 ml)に溶解した。ピリジン(3.8 ml、47.0 mmol)を溶液に加え、白色の沈殿物が形成する間、煙霧が観察された。PEG2000メチルエーテル(31.5 g、15.5 mmol)の無水クロロホルム(70 ml)溶液を加え、反応液を3時間攪拌し続けた。形成した白色の沈殿物を濾取し、濾液のクロロホルム溶媒はロータリーエバポレーターで取り除いた。TLC(5% MeOH-CHCl3、ヨードで発色)は、出発材料の大部分が反応して生成物を形成したことを示した。この生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(0〜10% MeOH-CHCl3)を用いてさらに精製し、白色の固体として30.1g(92.8%)のPEG2000メシレート9を得た。
【0236】
b. PEG2000フタルイミド (10)の調製

フタルイミドカリウム(11.1 g、59.7 mmol)を、無水N,N-ジメチルホルムアミド(400 ml)に溶解した。PEG2000メシレート9(35.0 g、16.7 mmol)の無水N,N-ジメチルホルムアミド(100 ml)溶液をフラスコに加え、反応液を75℃で一晩攪拌し続けた。N,N-ジメチルホルムアミド溶媒を、通常のアスピレータの代わりに高真空ポンプを用い、ロータリーエバポレーターで取り除いた。得られた生成物をジクロロメタン(250 ml)に溶解し、蒸留水(2×250 ml)およびブライン(250 ml)で洗浄した。合わせた有機層のジクロロメタン溶媒を、ロータリーエバポレーターで取り除いた。TLC(7% MeOH-CHCl3、UV光およびマリー試薬で視覚化した)は、出発材料の大部分が反応して生成物を形成したことを示した。この得られた生成物は、フラッシュカラムクロマトグラフィー(0〜10% MeOH-CH2Cl2)を用いてさらに精製した。生成物をエーテルから結晶化して19.4 g(54.1%)のPEG2000フタルイミド10を得た。
【0237】
c. PEG2000アミン (11)の調製

PEG2000フタルイミド10(10.3 g、4.8 mmol)を、エタノール(200 ml)に溶解した。一水和ヒドラジン(6.0 ml、123.7 mmol)をゆっくり加え、反応液を100℃で一晩還流し続けた。白色の沈殿物を濾取し、エタノール溶媒をロータリーエバポレーターで取り除いた。生じた生成物をクロロホルムに溶解し、クロロホルムに不溶性である、残った白色の固体を濾取し、再度クロロホルムをロータリーエバポレーターで取り除いた。TLC(10% MeOH-CHCl3、ヨード、モリブデン酸塩、およびマリー試薬で発色)は、すべての出発材料が反応して生成物を形成したことを示した。この生成物を次にエーテルから結晶化して、白色の粉末として9.0 g(93.0%)のPEG2000アミン11を得た。
【0238】
d. PEG2000スクシンアミド (12)の調製

PEG2000アミン11(9.0 g、4.4 mmol)および無水コハク酸(3.8 g、38.1 mmol)をピリジン(100 ml)に溶解し、反応液を一晩攪拌し続けた。ピリジン溶媒を、ロータリーエバポレーターを用いて60℃で取り除いた。残留物を蒸留水(100 ml)に溶解し、塩酸で酸性化し、ジクロロメタン(100 ml、2×70 ml)で抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。TLC(10% MeOH-CHCl3、ヨードで発色)は、出発材料の大部分が反応して生成物を形成したことを示した。この生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(0〜10% MeOH-CHCl3)を用いてさらに精製し、5.2 g(55.9%)のPEG2000スクシンアミド12を得た。
【0239】
e. N-(2,3-ジミリスチルオキシプロピル)スクシンアミドPEG2000メチルエーテル(13)の調製

PEG2000スクシンアミド(2.0 g、0.9 mmol)およびN-ヒドロキシスクシンアミド(0.2 g、2.0 mmol)を無水クロロホルム(10 ml)に溶解した。次に、1,3-ジシクロヘキシル-カルボジイミド(0.3 g、1.5 mmol)の無水クロロホルム(5 ml)溶液を加え、反応液を1時間攪拌し続けた。1,2-ジミリスチルオキシプロピルアミン5(0.48 g、1.0 mmol)の無水クロロホルム(5 ml)およびトリエチルアミン(0.6 ml、4 mmol)溶液を加え、反応液を1時間攪拌し続けた。TLC(12% MeOH-CHCl3、モリブデン酸塩で発色)は、出発材料の大部分が反応して生成物を形成したことを示した。溶液を、ジクロロメタンを用いてセライトで濾過し、塩酸で酸性化し、蒸留水(2×50 ml)およびブライン(50 ml)で洗浄した。水層をジクロロメタン(50 ml)で逆抽出し、合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(0〜7% MeOH-CHCl3)を用いてさらに精製し、1.8 g(69.0%)のN-(2,3-ジミリスチルオキシプロピル)スクシンアミドPEG2000メチルエーテル13を得た。
【0240】
上記の説明は例示を目的としたものであり、制限するものでないことが理解される。上記説明を読むことにより、多くの態様が当業者に明らかになると考えられる。したがって、本発明の範囲は、上記の記載を基準として決定されるべきではなく、添付の特許請求の範囲に権利が与えられる同等物の包括的範囲と共に、特許請求の範囲を基準として決定されるべきである。特許出願、特許、PCT公報を含むすべてのアクセッション番号、文献、および参考資料の開示は、すべての目的について、参照により本明細書に組み入れられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
siRNA;
カチオン性脂質;
非カチオン性脂質;および
粒子の凝集を阻害する複合脂質
を含む、核酸-脂質粒子。
【請求項2】
核酸-脂質粒子のsiRNA成分が、水性溶液中においてヌクレアーゼによる分解に対し耐性である、請求項1記載の核酸-脂質粒子。
【請求項3】
約150 nm未満の中位径を有する、請求項1記載の核酸-脂質粒子。
【請求項4】
siRNAが約15〜約60個のヌクレオチドを含む、請求項1記載の核酸-脂質粒子。
【請求項5】
siRNAが、粒子内に封入されたプラスミドから転写される、請求項1記載の核酸-脂質粒子。
【請求項6】
カチオン性脂質が、N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロライド(DODAC)、N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、N-(1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド(DOTAP)、N-(1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA)、およびN,N-ジメチル-2,3-ジオレイルオキシ)プロピルアミン(DODMA)、ならびにそれらの組合せからなる群より選択されるメンバーである、請求項1記載の核酸-脂質粒子。
【請求項7】
非カチオン性脂質が、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、卵ホスファチジルコリン(EPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、コレステロール、およびそれらの組合せからなる群より選択されるメンバーである、請求項1記載の核酸-脂質粒子。
【請求項8】
粒子の凝集を阻害する複合脂質が、ポリエチレングリコール(PEG)-脂質複合体、ポリアミド(ATTA)-脂質複合体、およびそれらの組合せからなる群より選択されるメンバーである、請求項1記載の核酸-脂質粒子。
【請求項9】
粒子の凝集を阻害する複合脂質がポリエチレングリコール-脂質を含み、PEG-脂質が、PEG-ジアシルグリセロール(DAG)、PEGジアルキルオキシプロピル、PEG-リン脂質、PEG-セラミド、およびそれらの組合せからなる群より選択されるメンバーである、請求項1記載の核酸-脂質粒子。
【請求項10】
粒子の凝集を阻害する複合脂質がポリエチレングリコール(PEG)-ジアルキルオキシプロピル複合体を含む、請求項9記載の核酸-脂質粒子。
【請求項11】
PEG-ジアルキルオキシプロピル複合体が、PEG-ジラウリルオキシプロピル(C12)、PEG-ジミリスチルオキシプロピル(C14)、PEG-ジパルミチルオキシプロピル(C16)、およびPEG-ジステアリルオキシプロピル(C18)、ならびにそれらの組合せからなる群より選択されるメンバーである、請求項10記載の核酸-脂質粒子。
【請求項12】
細胞内にsiRNAを導入する方法であって、
該細胞を、
siRNA;
カチオン性脂質;
非カチオン性脂質;および
粒子の凝集を阻害する複合脂質
を含む核酸-脂質粒子と接触させる工程を含む方法。
【請求項13】
核酸-脂質粒子のsiRNA成分が、水性溶液中においてヌクレアーゼによる分解に対し耐性である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
粒子が約150 nm未満の中位径を有する、請求項12記載の方法。
【請求項15】
siRNAが、粒子内に封入されたプラスミドから転写される、請求項12記載の方法。
【請求項16】
カチオン性脂質が、N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロライド(DODAC)、N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、N-(1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド(DOTAP)、N-(1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA)、およびN,N-ジメチル-2,3-ジオレイルオキシ)プロピルアミン(DODMA)、ならびにそれらの組合せからなる群より選択されるメンバーである、請求項12記載の方法。
【請求項17】
非カチオン性脂質が、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、卵ホスファチジルコリン(EPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、コレステロール、およびそれらの組合せからなる群より選択されるメンバーである、請求項12記載の方法。
【請求項18】
粒子の凝集を阻害する複合脂質が、ポリエチレングリコール(PEG)-脂質複合体、ポリアミド(ATTA)-脂質複合体、およびそれらの組合せからなる群より選択されるメンバーである、請求項12記載の方法。
【請求項19】
粒子の凝集を阻害する複合脂質が、ポリエチレングリコール(PEG)-脂質を含み、PEG-脂質が、PEG-ジアシルグリセロール、PEGジアルキルオキシプロピル、PEG-リン脂質、PEG-セラミド、およびそれらの組合せからなる群より選択されるメンバーである、請求項12記載の方法。
【請求項20】
粒子の凝集を阻害する複合脂質が、ポリエチレングリコール(PEG)-ジアルキルオキシプロピル複合体を含む、請求項12記載の方法。
【請求項21】
PEG-ジアルキルオキシプロピル複合体が、PEG-ジラウリルオキシプロピル(C12)、PEG-ジミリスチルオキシプロピル(C14)、PEG-ジパルミチルオキシプロピル(C16)、およびPEG-ジステアリルオキシプロピル(C18)からなる群より選択されるメンバーである、請求項20記載の方法。
【請求項22】
標的細胞内の核酸-脂質粒子の存在が、該粒子投与から少なくとも48時間後に検出可能である、請求項12記載の方法。
【請求項23】
核酸-脂質粒子の存在が、該粒子投与から少なくとも24時間後に検出可能である、請求項12記載の方法。
【請求項24】
細胞が哺乳動物内にある、請求項12記載の方法。
【請求項25】
10%を上回るこのような粒子が、投与から24時間後、哺乳動物の血漿内に存在する、請求項24記載の方法。
【請求項26】
投与部位に対し遠位な部位のsiRNAの存在が、粒子投与後少なくとも48時間検出可能である、請求項24記載の方法。
【請求項27】
投与部位に対し遠位な部位のsiRNAの存在が、粒子投与後少なくとも24時間検出可能である、請求項24記載の方法。
【請求項28】
哺乳動物がヒトである、請求項27記載の方法。
【請求項29】
標的配列の発現をサイレンシングさせるための方法であって、哺乳動物対象に対し、
siRNA;
カチオン性脂質;
非カチオン性脂質;および
粒子の凝集を阻害する複合脂質
を含む核酸-脂質粒子の治療有効量を投与する工程を含む方法。
【請求項30】
投与が静脈内投与である、請求項29記載の方法。
【請求項31】
哺乳動物がヒトである、請求項29記載の方法。
【請求項32】
ヒトが、siRNAの標的配列を含む遺伝子の発現に関連する疾患または障害を有する、請求項31記載の方法。
【請求項33】
疾患または障害が肝炎である、請求項32記載の方法。
【請求項34】
siRNAのインビボ送達のための方法であって、哺乳動物対象に対し、
siRNA;
カチオン性脂質;
非カチオン性脂質;および
粒子の凝集を阻害する複合脂質
を含む核酸-脂質粒子を投与する工程を含む方法。
【請求項35】
投与が静脈内投与である、請求項34記載の方法。
【請求項36】
哺乳動物がヒトである、請求項34記載の方法。
【請求項37】
ヒトが、siRNAの標的配列を含む遺伝子の発現に関連する疾患または障害を有する、請求項36記載の方法。
【請求項38】
疾患または障害が遺伝子の過剰発現に関連している、請求項37記載の方法。
【請求項39】
疾患または障害が肝炎である、請求項37記載の方法。
【請求項40】
肝臓細胞へsiRNAをインビボ送達するための方法であって、哺乳動物対象に対し、
siRNA;
カチオン性脂質;
非カチオン性脂質;および
粒子の凝集を阻害する複合脂質
を含む核酸-脂質粒子を投与することを含む方法。
【請求項41】
哺乳動物がヒトである、請求項40記載の方法。
【請求項42】
ヒトが、siRNAの標的配列を含む遺伝子の発現に関連する疾患または障害を有する、請求項41記載の方法。
【請求項43】
疾患または障害が遺伝子の過剰発現に関連している、請求項42記載の方法。
【請求項44】
疾患または障害が肝炎である、請求項42記載の方法。
【請求項45】
投与が静脈投与である、請求項40記載の方法。
【請求項46】
哺乳動物対象の疾患を治療する方法であって、該対象に対し、
siRNA;
カチオン性脂質;
非カチオン性脂質;および
粒子の凝集を阻害する複合脂質
を含む核酸-脂質粒子の治療有効量を投与することを含み、ここで該疾患が該siRNAの標的配列を含む遺伝子の発現に関連している方法。
【請求項47】
哺乳動物がヒトである、請求項46記載の方法。
【請求項48】
疾患が肝炎である、請求項46記載の方法。
【請求項49】
肝炎がB型肝炎である、請求項48記載の方法。
【請求項50】
肝炎がC型肝炎である、請求項48記載の方法。
【請求項51】
投与が静脈内投与である、請求項46記載の方法。
【請求項52】
細胞内にsiRNAを導入するための組成物の処方をするための核酸-脂質粒子の使用であって、ここで該核酸-脂質粒子が、
siRNA;
カチオン性脂質;
非カチオン性脂質;および
粒子の凝集を阻害する複合脂質
を含む使用。
【請求項53】
核酸-脂質粒子のsiRNA成分が、水性溶液中においてヌクレアーゼによる分解に対し耐性である、請求項52記載の使用。
【請求項54】
粒子が約150 nm未満の中位径を有する、請求項52記載の使用。
【請求項55】
siRNAが、粒子内に封入されたプラスミドから転写される、請求項52記載の使用。
【請求項56】
カチオン性脂質が、N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロライド(DODAC)、N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、N-(1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド(DOTAP)、N-(1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA)、およびN,N-ジメチル-2,3-ジオレイルオキシ)プロピルアミン(DODMA)、ならびにそれらの組合せからなる群より選択されるメンバーである、請求項52記載の使用。
【請求項57】
非カチオン性脂質が、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、卵ホスファチジルコリン(EPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、コレステロール、およびそれらの組合せからなる群より選択されるメンバーである、請求項52記載の使用。
【請求項58】
粒子の凝集を阻害する複合脂質が、ポリエチレングリコール(PEG)-脂質複合体、ポリアミド(ATTA)-脂質複合体、およびそれらの組合せからなる群より選択されるメンバーである、請求項52記載の使用。
【請求項59】
粒子の凝集を阻害する複合脂質がポリエチレングリコール(PEG)-脂質を含み、PEG-脂質がPEG-ジアシルグリセロール、PEG-ジアルキルオキシプロピル、PEG-リン脂質、PEG-セラミド、およびそれらの組合せからなる群より選択されるメンバーである、請求項52記載の使用。
【請求項60】
粒子の凝集を阻害する複合脂質がポリエチレングリコール(PEG)-ジアルキルオキシプロピル複合体を含む、請求項52記載の使用。
【請求項61】
PEG-ジアルキルオキシプロピル複合体が、PEG-ジラウリルオキシプロピル(C12)、PEG-ジミリスチルオキシプロピル(C14)、PEG-ジパルミチルオキシプロピル(C16)、およびPEG-ジステアリルオキシプロピル(C18)からなる群より選択されるメンバーである、請求項52記載の使用。
【請求項62】
標的細胞内の核酸-脂質粒子の存在が、該粒子投与から少なくとも48時間後に検出可能である、請求項52記載の使用。
【請求項63】
核酸-脂質粒子の存在が、該粒子投与から少なくとも24時間後に検出可能である、請求項52記載の使用。
【請求項64】
細胞が哺乳動物内にある、請求項52記載の使用。
【請求項65】
10%を上回るこのような粒子が、投与から24時間後、哺乳動物の血漿内に存在する、請求項64記載の使用。
【請求項66】
投与部位に対し遠位な部位のsiRNAの存在が、粒子投与後少なくとも48時間検出可能である、請求項64記載の使用。
【請求項67】
投与部位に対し遠位な部位のsiRNAの存在が、粒子投与後少なくとも24時間検出可能である、請求項64記載の使用。
【請求項68】
哺乳動物がヒトである、請求項67記載の使用。
【請求項70】
哺乳動物対象内での標的配列の発現をサイレンシングさせるための薬剤を処方するための核酸-脂質粒子の使用であって、ここで該核酸-脂質粒子が、
siRNA;
カチオン性脂質;
非カチオン性脂質;および
粒子の凝集を阻害する複合脂質
を含む使用。
【請求項71】
核酸-脂質粒子が静脈内投与向けに処方されている、請求項70記載の使用。
【請求項72】
哺乳動物がヒトである、請求項70記載の使用。
【請求項73】
ヒトが、siRNAの標的配列を含む遺伝子の発現に関連する疾患または障害を有する、請求項72記載の使用。
【請求項74】
疾患または障害が肝炎である、請求項72記載の使用。
【請求項75】
siRNAのインビボ送達のための薬剤を処方するための核酸-脂質粒子の使用であって、ここで該核酸-脂質粒子が、
siRNA;
カチオン性脂質;
非カチオン性脂質;および
粒子の凝集を阻害する複合脂質
を含む使用。
【請求項76】
投与が静脈内投与である、請求項75記載の使用。
【請求項77】
哺乳動物がヒトである、請求項75記載の使用。
【請求項78】
ヒトが、siRNAの標的配列を含む遺伝子の発現に関連する疾患または障害を有する、請求項77記載の使用。
【請求項79】
疾患または障害が遺伝子の過剰発現に関連している、請求項78記載の使用。
【請求項80】
疾患または障害が肝炎である、請求項78記載の使用。
【請求項81】
肝細胞へのsiRNAインビボ送達のための薬剤を処方するための核酸-脂質粒子の使用であって、ここで該核酸-脂質粒子が、
siRNA;
カチオン性脂質;
非カチオン性脂質;および
粒子の凝集を阻害する複合脂質
を含む使用。
【請求項82】
哺乳動物がヒトである、請求項81記載の使用。
【請求項83】
ヒトが、siRNAの標的配列を含む遺伝子の発現に関連する疾患または障害を有する、請求項82記載の使用。
【請求項84】
疾患または障害が遺伝子の過剰発現に関連している、請求項83記載の使用。
【請求項85】
疾患または障害が肝炎である、請求項83記載の使用。
【請求項86】
投与が静脈内投与である、請求項81記載の使用。
【請求項87】
哺乳動物対象の疾患を治療するための薬剤を処方するための核酸-脂質粒子の使用であって、ここで該核酸-脂質粒子が、
siRNA;
カチオン性脂質;
非カチオン性脂質;および
粒子の凝集を阻害する複合脂質
を含み、該疾患が該siRNAの標的配列を含む遺伝子の発現に関連している使用。
【請求項88】
哺乳動物がヒトである、請求項87記載の使用。
【請求項89】
疾患が肝炎である、請求項87記載の使用。
【請求項90】
肝炎がB型肝炎である、請求項89記載の使用。
【請求項91】
肝炎がC型肝炎である、請求項89記載の使用。
【請求項92】
薬剤が静脈投与に適合している、請求項87記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−126892(P2011−126892A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10545(P2011−10545)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【分割の表示】特願2006−519738(P2006−519738)の分割
【原出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(506016303)プロチバ バイオセラピューティクス インコーポレイティッド (8)
【Fターム(参考)】