脂質代謝改善作用を有する組成物
【課題】 副作用がなく、安全かつ健康的に、しかも容易に用いることができる脂質代謝改善作用を有する組成物を提供すること。
【解決手段】 ヒノキ科植物ホワイトサイプレス由来の香気成分または抽出物を有効成分として含有する組成物を用いる。本組成物は、血中および肝臓の脂質代謝改善作用およびバニロイド受容体活性化作用を有する。
【解決手段】 ヒノキ科植物ホワイトサイプレス由来の香気成分または抽出物を有効成分として含有する組成物を用いる。本組成物は、血中および肝臓の脂質代謝改善作用およびバニロイド受容体活性化作用を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒノキ科植物ホワイトサイプレスの溶媒抽出物またはホワイトサイプレスの香気成分を有効成分として含有する脂質代謝改善作用を有する組成物に関する。さらに、本発明は、前記組成物を含有する香料または飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、日本人の生活環境は変化している。特に、食生活においては欧米型の高カロリー高脂肪食を摂取する機会が多くなり、これにさらに運動量の減少も加わり、体内のエネルギー収支のアンバランスが生じている。結果として、体内にエネルギーが過度に蓄積されて、2型糖尿病、肥満、高血圧、高脂血症等の発症率が高まっている。高コレステロール血症を代表とする高脂血症は、虚血性疾患などの動脈硬化性疾患の危険因子とされている。高脂血症とは、血清脂質成分のうち、主として、コレステロールとトリグリセリド(中性脂肪)のいずれか一方、または両者が正常以上に増加した状態、として定義される。したがって、高脂血症を予防あるいは改善するためには、血清コレステロールおよび/または血中トリグリセリドを低下させることが必要である。
【0003】
このような背景のもと、食事による血清脂質の改善に高い関心が寄せられており、食品成分中の脂質代謝を調節する機能性因子が探索され、現在、大豆タンパク質、キトサン、低分子アルギン酸ナトリウム、植物ステロール入りジアシルグリセロールなどが血清コレステロールの上昇を抑える特定保健用食品の成分として認可されている。また、ホエイタンパク質あるいはその加水分解物が血中コレステロールを低減させる作用を有すること(特許文献1、2参照)やレシチンが血清トリグリセリドや総コレステロールを低下させ、HDLコレステロールを高めることが報告されている(特許文献3、4参照)。また、小麦ふすま、トウモロコシ外皮などの水不溶性食物繊維や、グアーガム、難消化性デキストリンなどの水溶性食物繊維などが、血漿コレステロールの低下作用、血漿中性脂肪の低下作用、脂肪酸合成系酵素活性の低下作用などを有し、体脂肪蓄積に関係する生体内の各種整生理機能を改善することが報告されている(非特許文献1,2参照)。なお、上記の穀類、豆類の外皮等から得られる水不溶性食物繊維については、肝細胞中に脂質が異常に増加した状態、すなわち脂肪肝の発生を抑制できるとの報告もなされている(特許文献5,6参照)。
【0004】
具体的な肥満を防止する食品として、細胞壁酵母のグルカン・マンナンを有効成分とするビール酵母(非特許文献3参照)や、脂肪酸生成を抑制するヒドロキシクエン酸を有効成分として含有するガルシニア(特許文献7,8参照)等が開発されている。
【0005】
また、近年、トウガラシ等に含まれるカプサイシン類が、バニロイド受容体と結合し、副腎髄質からのアドレナリンの分泌を促進し、肝臓や褐色脂肪細胞に作用してエネルギー代謝を活発にし、肥満防止作用を有すると報告されている(非特許文献4参照)。
【0006】
さらに、グレープフルーツオイルを含有する香料組成物が、交感神経系を活性化させ、血糖値や体重を減少させることも見出されている(特許文献9参照)。
【特許文献1】特開平5−176713号公報
【特許文献2】特開平6−165655号公報
【特許文献3】WO97/09059
【特許文献4】特開平10−84880号公報
【特許文献5】特開平1−242530号公報
【特許文献6】特開平5−43470号公報
【特許文献7】特開平9−176004号公報
【特許文献8】特開平10−265397号公報
【特許文献9】特開2002−193824号公報
【非特許文献1】印南敏及び桐山修八編、「食物繊維」、第131ページ、第一出版、1982年
【非特許文献2】Proceedings of the Society for Experi-mental Biology and Medicine, 175, 215, 1984
【非特許文献3】今井龍弥著「ビール酵母健康法」、マキノ出版、2001年8月
【非特許文献4】岩井和夫、渡辺達夫編集「トウガラシ」、幸書房、2000年1月p.56〜65及びp.148〜163
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のとおり、血清脂質の改善に有用な食品は種々提案されているが、水不溶性食物繊維、水溶性食物繊維などの食品素材は、それらを用いて食品を製造した場合、食品本来の持つ外観、味、歯ざわり、滑らかさなどの食感を損なう場合が多いため、効果を発揮させるのに十分な量で食品中に含有させることが困難であり、適用分野が限定されるという問題があった。また、上記のカプサイシン類は、強い刺激性を有しているために、その用途や使用量を限定されるという問題があった。さらに、大豆やトウモロコシ等の原料そのものでは十分な血清脂質改善作用が発現しない場合が多く、煩雑な工程を要する有効成分の抽出操作が不可欠であるという問題もあった。
【0008】
本発明の課題は、上記問題を解決した副作用がなく、安全かつ健康的に、しかも容易に用いることができる脂質代謝改善作用を有する組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、ヒノキ科植物ホワイトサイプレスの香気成分に血中トリグリセリド低下作用があること、およびバニロイド受容体活性化作用があり、脂質代謝改善剤として有用であることを見出した。そして、ホワイトサイプレスの香気成分が、血清脂質だけでなく肝臓脂肪量をも低下させるということを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
1.ヒノキ科植物ホワイトサイプレス由来の香気成分または抽出物を含有する組成物;
2.抽出物が蒸留、溶媒抽出、または圧搾により得られる、1に記載の組成物;
3.抽出物が、精油であることを特徴とする、1または2に記載の組成物;
4.脂質代謝改善作用を有することを特徴とする、1〜3のいずれか1つに記載の組成物;
5.ヒノキ科植物ホワイトサイプレス由来の香気成分を有効成分として含有する、4に記載の組成物;
6.ヒノキ科植物
ホワイトサイプレスが、Callitris glaucophylla であることを特徴とする、1〜5のいずれか1つに記載の組成物;
7.1〜6のいずれか1つに記載の組成物を含有する香料組成物または飲食品;
8.ヒノキ科植物ホワイトサイプレス由来の香気成分または抽出物の、脂質代謝改善のための使用;
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のホワイトサイプレス抽出物は、血中および肝臓の脂質代謝を改善する作用を有する。同様に、本発明のホワイトサイプレス由来の香気成分も、血中および肝臓の脂質代謝を改善する作用を有する。したがって、本発明の抽出物または香気成分を含有する組成物は、過度のエネルギー蓄積により発症する肥満、高脂血症、動脈硬化等の諸症状を治療または予防することができる。また、本発明の組成物は、天然物由来であるため穏やかな作用を有し安全性が高いという利点もある。
【0012】
さらに、本発明の組成物を香料組成物として用いる際には、嚥下等の動作を要さず容易に摂取できる。したがって、肥満をはじめとする生活習慣病、例えば、高脂血症、動脈硬化及び糖尿病の継続的な予防及び治療において有効に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係るホワイトサイプレスは、オーストラリアンサイプレスとも呼ばれるヒノキ科(Cupressaceae)植物の一つである。一般に「サイプレス」と呼ばれる針葉樹木には、前記のホワイトサイプレス(学名:Callitris glaucophylla,Callitris intratropica,Callitris columellaris)と、イタリアンサイプレス(別名:イタリアイトスギ,学名:Cupressus sempervirens)とがある。これらは、同様に通称「サイプレス」と呼ばれているが、分類学上では種属を異にするものである。前者のホワイトサイプレスは、その抗菌性や油分の多い性質から、主として家屋用木材(木造家屋用構造材、フローリング用材)として利用されている(例えば、特開2000−027320号公報参照)が、ホワイトサイプレスの香気成分やその効能に関する報告はなされていない。
【0014】
一方、後者のイタリアンサイプレスは、葉や球果から精油を抽出し香料として広く利用され、商品名「Sanoflore サイプレス」(HYPER PLANTS CO.,LTD.)、商品名「サイプレスオイル」(ランデル社)等、サイプレス精油として多数市販されており、その精油の成分は、α−ピネン、δ−3−カレン、リモネン、ミルセン、テルピノレン等であることが報告されている(インターネットホームページ:http://www.hyperplants.co.jp/shop/seibun/cupressus_sempervirens.htm参照)。イタリアンサイプレス精油は、森林浴のような香りを利用したアロマオイル(鎮静作用)や、香りのデオドラント作用を利用した男性用化粧品に利用されている。また、イタリアンサイプレス精油は、香料としての利用だけでなく、体液のバランスを整えることから、セルライト用マッサージにも使用できるといわれている(インターネットホームページ:http://www.t-tree.net/essentialoil/cypress.htm 参照)。
【0015】
本発明に係るサイプレスは、上記のとおり、主として家屋用木材として利用されているホワイトサイプレスであり、その香気成分や精油による生体内の脂質代謝改善作用について知られていないことはもちろんのこと、食品、医薬品、香料、化粧料等へのそれらの利用についても知られていない。
【0016】
上記のホワイトサイプレスとしては、三つの種(Callitris glaucophylla,Callitris intratropica,Callitris columellaris)が知られている。それぞれの代表的な産地は、オーストラリア南東部、オーストラリア北部、オーストラリア極東部である。本発明に係るホワイトサイプレスとしてはそのいずれを用いてもよく、また2種以上を混合して用いてもよいが、入手の容易さからCallitris glaucophyllaを好適に用いることができる。
【0017】
本発明のホワイトサイプレス抽出物を得るのに用いられるホワイトサイプレスの部位は、何ら限定されず、幹、枝、葉、根、花、樹皮、芽、果実、種子等いずれの部位を用いてもよいが、特に、幹及び主枝から樹皮を除いた心材を用いることが好ましい。心材から得た溶媒抽出物は、脳を刺激するような「重い香り」を有し、葉や花等から得た揮発しやすい「軽い香り」を有する溶媒抽出物と比較して、香りの持続効果が高いという特徴がある。なお、原料となるホワイトサイプレスは、予め遠心粉砕機等により粉砕しておくと、効率よく抽出物を得ることができる。
【0018】
本発明の抽出物を得るための抽出方法は、何ら限定されず、蒸留、溶媒抽出、圧搾等の当該技術分野で知られている方法を用いることができる。例えば水蒸気蒸留(実施例1参照)や、水、親水性溶媒(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、およびイソプロパノール)または有機溶媒(例えば、n−ヘキサン、シクロヘキサン、および石油エーテル)のいずれか1種以上に接触させることによる溶媒抽出(実施例3参照)等による抽出が可能である。本発明の抽出物は、コンクリート、アブソリュート、レジノイド、オレオレジン、チンキ、精油等の形態で取得し、用いることができるが、ホワイトサイプレスの香気成分を有効成分とすることから、精油の形態で使用することが好ましい。精油とは、植物の幹、枝、葉、花、樹皮、果実、種子、芽、樹脂などより発散されるにおいの根源となる、揮発性物質である。その性状は、概ね液状を呈し、また概ね水より軽い。精油は、普通の油脂と異なりいわゆるグリセリド化合物ではない。また、精油は、単一化合物からなるものであってもよいが、通常は複数化合物の混合物である。ホワイトサイプレス精油の製造には、当該技術分野で知られている方法を用いることができるが、特に水蒸気蒸留により製造するのが好ましい。
【0019】
ホワイトサイプレスから油性成分または水性成分を抽出して得る代わりに、ホワイトサイプレス植物体から揮発される香気成分を集めて、脂質代謝改善作用を有する組成物の製造のために用いることができる。ホワイトサイプレス植物体には、ホワイトサイプレスを構成する幹、枝、葉、根、花、樹皮、果実、芽、種子等が含まれるが、この態様においては、ホワイトサイプレス幹および枝から得られる木材や、その木材を粉砕して得られるチップや鉋屑等を用いるのが好ましい。ホワイトサイプレスの香気成分を揮発させる条件は、特に限定されないが、例えば、後述の実施例4のように、常圧、室温条件下におくことにより、本発明の香気成分を揮発させることができる。揮発した香気成分は、それを含む空気、窒素、酸素、二酸化炭素のような気体と混合した組成物として用いることができる。さらに、揮発させた香気成分は、吸着剤(例えば、活性炭、シリカゲル、および多孔性ポリマー)上に吸着させ、および/または濃縮し、これをそのまま組成物として用いてもよいし、そこから適切な溶媒を用いて溶出させたものを組成物として用いてもよい。香気成分を保持した吸着剤は、加熱等の操作に付すことにより、香気成分の放出を促すことができる。また、ホワイトサイプレス植物体から揮発させた香気成分は、それを含む気体を溶媒へ通気して吸収させて、得られた液を組成物として用いてもよいし、さらに溶媒を濃縮して用いてもよい。
【0020】
上記のようにして得られたヒノキ科ホワイトサイプレス由来の香気成分(もしくはそれを含有する組成物)または抽出物は、脂質代謝改善のために用いることができる。より具体的には、これら成分または抽出物は、それらを含有する脂質代謝改善組成物として、およびそれらの製造のために用いることができる。脂質代謝の改善には、限定されないが、例えば、血中脂質代謝を改善すること、および/または肝臓脂質代謝を改善することが含まれる。血中脂質代謝の改善とは、例えば、本発明の抽出物または香気成分を摂取しない対照群と比較して、血中に含まれるコレステロール、トリグリセリド等の脂質のいずれかの濃度を低下させることをいい、肝臓脂質代謝の改善とは、対照群と比較して、肝臓中の総脂質量を低下させること、または肝臓組織中に含まれるコレステロール、トリグリセリド等の脂質のいずれかの濃度を低下させることをいう。また、脂質代謝改善作用とは、その広い意味においては、この作用に密接な関係があるバニロイド受容体の活性化作用を示すことも含む。
例えば、本発明のホワイトサイプレス抽出物または香気成分を含む組成物は、香料組成物として好適に用いることができる。香料組成物としては、各種空間散布剤用香料組成物(例えば、インセンス、室内芳香剤、及び車内芳香剤、並びに防臭剤等)、化粧品用香料組成物(例えば、香水、コロン、シャンプー・リンス類、スキンケア、ボディシャンプー、ボディリンス、ボディパウダー類、浴剤、ローション、クリーム、石鹸、歯磨剤、エアゾール製品等)、医薬品及び医薬部外品用香料組成物(例えば、皮膚用外剤、吸入剤等)を挙げることができる。香料組成物中のホワイトサイプレス抽出物の濃度は、適宜設定すればよいが、通常ホワイトサイプレス抽出物を0.00001〜100重量%含有させる。
【0021】
また、本発明のホワイトサイプレス抽出物または香気成分を含有する組成物を、飲料または食品に含有させることもできる。食品または飲料に添加する際には、上記香料組成物を添加してもよいし、ホワイトサイプレスを食品または飲料に直接接触させることによって含有するようにしてもよい。また、ホワイトサイプレス抽出物または香気成分を含有する錠剤またはカプセル剤として健康食品等の用途に供してもよい。
【0022】
また、本発明のホワイトサイプレス抽出物または香気成分を含有する組成物は、脂質代謝改善のための医薬組成物として用いることもできる。この用途のためには、本発明の組成物は、錠剤、カプセル剤、および注射剤等の知られた形態に適宜製剤することができる。
【0023】
本発明のホワイトサイプレスの香気成分および抽出物、特に精油は、それ自体単独で使用してもよいが、他の抗肥満/痩身成分等を併用してもよい。用いられ得る抗肥満/痩身成分としては、グレープフルーツオイル、トウガラシ(カプサイシン)、ビール酵母、ガルシニア、タマリンド、シャクヤク、ギムネマシルベスタ、ショウキョウ、ラベンダー、ウイキョウ、イノシット、デキストラン硫酸、カフェイン等のキサンチン誘導体、中国茶、緑茶抽出物等が挙げられる。本発明の組成物には、これら活性成分以外に、具体的な態様に応じて、一般的な成分、例えば香料成分を本発明の効果を損なわない限り配合することができる。
【0024】
飲食品および医薬組成物におけるホワイトサイプレス精油の配合量は、選択する他の配合成分との関係等により適宜選択されるものであり、特に限定されるものではない。しかしながら、通常、ホワイトサイプレス精油は、飲料または食品中、医薬組成物中に0.001〜100重量%、好ましくは10〜100重量%用いられる。
【0025】
ホワイトサイプレス由来の香気成分または抽出物の使用には、このように組成物として用いることのみならず、ホワイトサイプレス植物体を脂質代謝改善用具として、またはホワイトサイプレス植物体を含有する脂質代謝改善用具の製造のために用いることも含まれる。この態様においては、実施例5のように、脂質代謝改善用具(例えばホワイトサイプレス植物体)を、そこから発散される香気成分を生体が利用できるような環境におき、その成分を吸入する生体における脂質代謝改善を図る。この場合、使用するホワイトサイプレス植物体としては、ホワイトサイプレスを構成する幹、枝、葉、根、花、樹皮、芽、種子等が含まれ、好ましくは、幹及び主枝から樹皮を除いた心材が含まれる。また、植物体には、これらを切断、圧縮、粉砕、乾燥等により加工して得られたものも含まれる。特に好ましくは、ホワイトサイプレス植物体は、幹又は主枝のチップ、鉋屑、又はおが屑である。脂質代謝改善用具の他の例としては、ホワイトサイプレス材を用いた椅子等が挙げられる。
【0026】
このように本発明の組成物は様々な用途を有するが、本明細書に記載した用途に何ら限定されるものではない。
[実施例]
以下の実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0027】
ホワイトサイプレス精油の製造(1)
原料としてオーストラリア南東部を代表的な産地とするホワイトサイプレス(学名:Callitris glaucophylla Thompson et Johnson)の心材を用い、ホワイトサイプレス精油を製造した。詳細には、ホワイトサイプレス心材の鉋屑100gを調製し、これを枝付き丸底フラスコに入れて加水(2L)し、コンデンサーと温度計を取り付けて100℃まで加温し、約3時間蒸留して、ホワイトサイプレス精油を得た。採油率は、1.5重量%(以下、単に%と示す)であった。
ホワイトサイプレス精油の製造(2)
同様に、原料をホワイトサイプレス学名:Callitris glaucophylla Thompson et Johnson)の心材のチップ100gに変え、約5時間蒸留してホワイトサイプレス精油を得た。採油率は3%であった。
【実施例2】
【0028】
ホワイトサイプレス精油の成分同定
実施例1(1)により得られたホワイトサイプレス精油を流下薄膜式分子蒸留器(東京理科MF−10A)を用いて分留し、クロマトグラフィ(島津製作所LC10カラム:Nomura ODS-HG5)で単離した後、それぞれの単離成分について、常法に従って核磁気共鳴および質量分析(島津製作所GCMS 5050A)を実施してスペクトル解析を行い構造決定した。
【0029】
結果を図1および表1に示す。ホワイトサイプレス精油の主成分はテルペン類であり、代表的なものは、(−)シトロネル酸、グアイオール、β−オイデスモール、α−オイデスモール、γ−オイデスモールであった。
【0030】
【表1】
【実施例3】
【0031】
ホワイトサイプレス抽出液の製造
ホワイトサイプレス(学名:Callitris glaucophylla Thompson et Johnson)心材のチップ65gに59%エタノールを1L加えて16日間室温で抽出し、ホワイトサイプレスのエタノール抽出液を得た。この抽出液を濾過してホワイトサイプレスチップを除去し、その後、約2時間の蒸留を行って留出液のエタノール濃度83%であるホワイトサイプレスの濃縮抽出液を得た。
【実施例4】
【0032】
ホワイトサイプレスの香気成分の血清脂質代謝改善作用
実験動物として、ddy系5週齢雄性マウス(体重約30g)(日本SLC株式会社)を用いた。マウスを、通常の床敷で飼育する群(コントロール)とホワイトサイプレス心材のチップを床敷で飼育する群とにわけ、室温(24℃)環境下のケージ内で、自由摂餌下で1ヶ月間飼育した。餌は、基本飼料(オリエンタル酵母工業株式会社)1kgに対し、コレステロール粉末(ワコー)10gおよびサフラワー油(日本油脂株式会社)50gを加えた固形餌とした。飼育中、週に2度、体重測定を行った。1ヶ月後、マウスの大動脈を採血し、血液を15,000×gで遠心分離して血清を得、血清中の総コレステロール濃度およびトリグリセリド濃度を求めた。血清の総コレステロール濃度およびトリグリセリド濃度は、酵素法によるコレステロールCII−テスト(和光純薬工業株式会社)およびトリグリセリドEテスト(和光純薬工業株式会社)に基づき、自然解凍後の血清0.02mlを発色試液3.0mlと試験管内で混和し、アルミブロックを用い37℃で5分加温した後に分光光度計(波長:600nm)で吸光度を測定し、予め作成しておいた検量線から求めた。
【0033】
体重の測定結果を図2に示す。高カロリー食餌を与えた際に、ホワイトサイプレスチップを床敷として飼育した群(図中、CYで示される)では、コントロール群と比較して、体重増加が抑制される傾向にあった。
【0034】
血清中の脂質測定結果を図3に示す。ホワイトサイプレスチップを床敷として飼育した群では、コントロール群と比較して、総コレステロール濃度(TC)およびトリグリセリド濃度(TG)のいずれも低く、特にトリグリセリド濃度は大きく低下した。
【0035】
以上より、ホワイトサイプレスの香気成分には、生体内の脂質代謝改善作用があることが示唆された。
【実施例5】
【0036】
ホワイトサイプレスの香気成分の肝臓脂質代謝改善作用
実施例4で飼育したマウスの肝臓を摘出し、総脂質量をFolch法に基づいて定量した。すなわち、試料となる肝臓0.5gを凍結したまま切り取り、氷水中で冷却しながら蒸留済みメタノール15ccの入ったスミロン(登録商標)チューブに入れた。このスミロンチューブ内の試料をホモジナイザーでホモジナイズした後、クロロフォルム30ccで供洗いしながら50ccメスフラスコに移した。これを40℃の恒温層で30分間インキュベートした後、恒温層から取り出して室温に戻し、クロロフォルム:メタノール=2:1の混合液でメスアップした。濾過して不溶物を取り除き、濾液を100cc共栓付きメスシリンダーに入れてその量を測定した。濾液量の1/4量の0.88%KCl水溶液を添加して混和し、4℃の冷蔵庫内で一晩放置した。その後、室温に戻し、上層のメタノール層をアスピレート(除去)した。下層のクロロフォルム層を秤量済みナスフラスコに入れ減圧濃縮を行い、その後ナスフラスコを計量し、肝臓中の総脂質量を求めた。
【0037】
また、肝臓中の総コレステロール濃度およびトリグリセリド濃度を、実施例3と同様のキットを用いて測定した。
肝臓中の総脂質含量の測定結果を図4に、肝臓中の総コレステロール濃度およびトリグリセリド濃度の測定結果を図5示す。ホワイトサイプレスチップを床敷として飼育した群では、コントロール群と比較して、総脂質含量、総コレステロール濃度、トリグリセリド濃度いずれも低下した。
【0038】
以上より、ホワイトサイプレスの香気成分には、肝臓中の脂質代謝改善作用があることが示唆された。
【実施例6】
【0039】
ホワイトサイプレス精油による脂質代謝改善作用
実験動物として、ddy系5週齢雄性マウス(体重約30g)(日本SLC株式会社)を用いた。実施例1(1)で得たホワイトサイプレス精油を、濃度が0(コントロール)、3および6%となるように水に懸濁し、この懸濁液を脱脂綿約10gに染み込ませ上部に穴の空いたバイアル瓶に入れケージ内に置いた。このケージ内で、マウスを室温(24℃)環境下で、自由摂餌下で1ヶ月間飼育した。餌は、実施例4と同様の固形餌を用いた。1ヶ月後、マウスの大動脈を採血し、実施例4と同様にして、血清中の総コレステロール濃度およびトリグリセリド濃度を求めた。
【0040】
血清中の脂質測定結果を図6に示す。ホワイトサイプレス精油が含浸した脱脂綿を入れたケージのマウスでは、コントロール群と比較して、総コレステロール濃度およびトリグリセリド濃度のいずれも低く、ホワイトサイプレス精油の濃度に依存して低下する傾向がみられた。
【0041】
以上より、ホワイトサイプレス精油には、生体内の脂質代謝改善作用があることが示唆された。
【実施例7】
【0042】
ホワイトサイプレス精油のバニロイド受容体におよぼす作用
ラット脊髄の湿重量を測定し、これに137mmol/Lのスクロースを含む10倍容量の10mmol/L Hepes-NaOH(pH7.4)液を加え、氷冷下でホモジナイズした。その後、4℃、1000×gで30分間遠心分離して、上清を分取し、さらに4℃、35000×gで30分間遠心分離した。沈渣を採取し、KCl を 5mmol/L、NaCl を 5.8mmol/L、MgCl2 を 2mmol/L、CaCl2 を 0.75mmol/L、および320mmol/Lのスクロースを含む、沈渣の10倍容量の10mmol/L Hepes-NaOH(pH7.4)液を加え、氷冷下でホモジナイズし、得られた膜分画をレセプター溶液とした。レセプター溶液(20mg tissue eq/mL)500μLにサンプル溶液50μL、蒸留水50μL、緩衝液300μL、放射性リガンド溶液100μLを添加し、1mLの反応液とした。反応液を25℃で60分間インキュベートし、セルハーベスタにより濾過した。濾紙を緩衝液で2回洗浄し、濾紙に残存する放射活性を液体シンチレーションカウンターで計測した。放射性リガンド溶液としては、バニロイド受容体に特異的な3H-Resiniferatoxinの溶液(最終濃度:0.26nmol/L)を用いた。
【0043】
試料には、実施例1(1)で製造したホワイトサイプレス精油を用いた。また、陽性対照には、放射性ラベルされていないResiniferatoxinを用いた。測定は各サンプル2例について行い、平均値を求めた。各サンプルの受容体への結合性は、放射性リガンドのバニロイド受容体への結合に対する各サンプルの阻害率を算出することにより評価した。
【0044】
実験結果を図7に示す。ホワイトサイプレス精油による阻害率は87.6%であり、バニロイド受容体に強い結合性があることがわかった。バニロイド受容体にアゴニストが作用すると、副腎髄質からのアドレナリンの分泌が促進され、そのアドレナリンが肝臓や褐色脂肪細胞に作用してエネルギー代謝を活発にすることから、ホワイトサイプレス精油はカプサイシンと同様に、白色脂肪組織を低減させることができることが示唆された。
【実施例8】
【0045】
カプセル剤
a.処方(1カプセルあたり)
【0046】
【表2】
b.製法
上記表2の処方に従ってホワイトサイプレス精油と乳糖を混合して打錠した。得られた錠剤を粉砕して処方量のステアリン酸マグネシウムを加えて混合した。混合物を500mgずつ日本薬局方カプセル2号に充填して、1カプセル中に5mgのホワイトサイプレス精油を含有するカプセル剤を製造した。
【実施例9】
【0047】
ドリンク剤の製造(1)
a.処方
【0048】
【表3】
b.製法
上記表3の処方に記載の各成分を蒸留水8Lに溶解し、さらに蒸留水を加えて全量10Lとした後、得られた液に0.22μmの除菌フィルターを通過させ、100mLずつ褐色びんに無菌充填して、1剤あたり5mgのホワイトサイプレス精油を含有するドリンク剤を製造した。
【実施例10】
【0049】
ドリンク剤の製造(2)
実施例3で得られたホワイトサイプレス抽出液に水を加え、エタノール濃度が10%となるようにし、ホワイトサイプレス含有酒類を製造した。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】ヒノキ科植物ホワイトサイプレスの精油のGC/MS分析結果を示す図である。
【図2】高カロリーの食餌を与えたマウスの体重変化を示す図である。図中、CYはホワイトサイプレスの床敷で飼育された群を示す。
【図3】血清中の総コレステロール濃度およびトリグリセリド濃度を示す図である。図中、CYはホワイトサイプレスの床敷で飼育された群を示す。
【図4】肝臓の総脂質含量を示す図である。図中、CYはホワイトサイプレスの床敷で飼育された群を示す。
【図5】肝臓中の総コレステロール濃度およびトリグリセリド濃度を示す図である。図中、CYはホワイトサイプレスの床敷で飼育された群を示す。
【図6】血清中の総コレステロール濃度およびトリグリセリド濃度を示す図である。図中、CYはホワイトサイプレス精油を示す。
【図7】バニロイド受容体への結合活性を示す図である。図中、CYはホワイトサイプレスの床敷で飼育された群を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒノキ科植物ホワイトサイプレスの溶媒抽出物またはホワイトサイプレスの香気成分を有効成分として含有する脂質代謝改善作用を有する組成物に関する。さらに、本発明は、前記組成物を含有する香料または飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、日本人の生活環境は変化している。特に、食生活においては欧米型の高カロリー高脂肪食を摂取する機会が多くなり、これにさらに運動量の減少も加わり、体内のエネルギー収支のアンバランスが生じている。結果として、体内にエネルギーが過度に蓄積されて、2型糖尿病、肥満、高血圧、高脂血症等の発症率が高まっている。高コレステロール血症を代表とする高脂血症は、虚血性疾患などの動脈硬化性疾患の危険因子とされている。高脂血症とは、血清脂質成分のうち、主として、コレステロールとトリグリセリド(中性脂肪)のいずれか一方、または両者が正常以上に増加した状態、として定義される。したがって、高脂血症を予防あるいは改善するためには、血清コレステロールおよび/または血中トリグリセリドを低下させることが必要である。
【0003】
このような背景のもと、食事による血清脂質の改善に高い関心が寄せられており、食品成分中の脂質代謝を調節する機能性因子が探索され、現在、大豆タンパク質、キトサン、低分子アルギン酸ナトリウム、植物ステロール入りジアシルグリセロールなどが血清コレステロールの上昇を抑える特定保健用食品の成分として認可されている。また、ホエイタンパク質あるいはその加水分解物が血中コレステロールを低減させる作用を有すること(特許文献1、2参照)やレシチンが血清トリグリセリドや総コレステロールを低下させ、HDLコレステロールを高めることが報告されている(特許文献3、4参照)。また、小麦ふすま、トウモロコシ外皮などの水不溶性食物繊維や、グアーガム、難消化性デキストリンなどの水溶性食物繊維などが、血漿コレステロールの低下作用、血漿中性脂肪の低下作用、脂肪酸合成系酵素活性の低下作用などを有し、体脂肪蓄積に関係する生体内の各種整生理機能を改善することが報告されている(非特許文献1,2参照)。なお、上記の穀類、豆類の外皮等から得られる水不溶性食物繊維については、肝細胞中に脂質が異常に増加した状態、すなわち脂肪肝の発生を抑制できるとの報告もなされている(特許文献5,6参照)。
【0004】
具体的な肥満を防止する食品として、細胞壁酵母のグルカン・マンナンを有効成分とするビール酵母(非特許文献3参照)や、脂肪酸生成を抑制するヒドロキシクエン酸を有効成分として含有するガルシニア(特許文献7,8参照)等が開発されている。
【0005】
また、近年、トウガラシ等に含まれるカプサイシン類が、バニロイド受容体と結合し、副腎髄質からのアドレナリンの分泌を促進し、肝臓や褐色脂肪細胞に作用してエネルギー代謝を活発にし、肥満防止作用を有すると報告されている(非特許文献4参照)。
【0006】
さらに、グレープフルーツオイルを含有する香料組成物が、交感神経系を活性化させ、血糖値や体重を減少させることも見出されている(特許文献9参照)。
【特許文献1】特開平5−176713号公報
【特許文献2】特開平6−165655号公報
【特許文献3】WO97/09059
【特許文献4】特開平10−84880号公報
【特許文献5】特開平1−242530号公報
【特許文献6】特開平5−43470号公報
【特許文献7】特開平9−176004号公報
【特許文献8】特開平10−265397号公報
【特許文献9】特開2002−193824号公報
【非特許文献1】印南敏及び桐山修八編、「食物繊維」、第131ページ、第一出版、1982年
【非特許文献2】Proceedings of the Society for Experi-mental Biology and Medicine, 175, 215, 1984
【非特許文献3】今井龍弥著「ビール酵母健康法」、マキノ出版、2001年8月
【非特許文献4】岩井和夫、渡辺達夫編集「トウガラシ」、幸書房、2000年1月p.56〜65及びp.148〜163
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のとおり、血清脂質の改善に有用な食品は種々提案されているが、水不溶性食物繊維、水溶性食物繊維などの食品素材は、それらを用いて食品を製造した場合、食品本来の持つ外観、味、歯ざわり、滑らかさなどの食感を損なう場合が多いため、効果を発揮させるのに十分な量で食品中に含有させることが困難であり、適用分野が限定されるという問題があった。また、上記のカプサイシン類は、強い刺激性を有しているために、その用途や使用量を限定されるという問題があった。さらに、大豆やトウモロコシ等の原料そのものでは十分な血清脂質改善作用が発現しない場合が多く、煩雑な工程を要する有効成分の抽出操作が不可欠であるという問題もあった。
【0008】
本発明の課題は、上記問題を解決した副作用がなく、安全かつ健康的に、しかも容易に用いることができる脂質代謝改善作用を有する組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、ヒノキ科植物ホワイトサイプレスの香気成分に血中トリグリセリド低下作用があること、およびバニロイド受容体活性化作用があり、脂質代謝改善剤として有用であることを見出した。そして、ホワイトサイプレスの香気成分が、血清脂質だけでなく肝臓脂肪量をも低下させるということを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
1.ヒノキ科植物ホワイトサイプレス由来の香気成分または抽出物を含有する組成物;
2.抽出物が蒸留、溶媒抽出、または圧搾により得られる、1に記載の組成物;
3.抽出物が、精油であることを特徴とする、1または2に記載の組成物;
4.脂質代謝改善作用を有することを特徴とする、1〜3のいずれか1つに記載の組成物;
5.ヒノキ科植物ホワイトサイプレス由来の香気成分を有効成分として含有する、4に記載の組成物;
6.ヒノキ科植物
ホワイトサイプレスが、Callitris glaucophylla であることを特徴とする、1〜5のいずれか1つに記載の組成物;
7.1〜6のいずれか1つに記載の組成物を含有する香料組成物または飲食品;
8.ヒノキ科植物ホワイトサイプレス由来の香気成分または抽出物の、脂質代謝改善のための使用;
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のホワイトサイプレス抽出物は、血中および肝臓の脂質代謝を改善する作用を有する。同様に、本発明のホワイトサイプレス由来の香気成分も、血中および肝臓の脂質代謝を改善する作用を有する。したがって、本発明の抽出物または香気成分を含有する組成物は、過度のエネルギー蓄積により発症する肥満、高脂血症、動脈硬化等の諸症状を治療または予防することができる。また、本発明の組成物は、天然物由来であるため穏やかな作用を有し安全性が高いという利点もある。
【0012】
さらに、本発明の組成物を香料組成物として用いる際には、嚥下等の動作を要さず容易に摂取できる。したがって、肥満をはじめとする生活習慣病、例えば、高脂血症、動脈硬化及び糖尿病の継続的な予防及び治療において有効に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係るホワイトサイプレスは、オーストラリアンサイプレスとも呼ばれるヒノキ科(Cupressaceae)植物の一つである。一般に「サイプレス」と呼ばれる針葉樹木には、前記のホワイトサイプレス(学名:Callitris glaucophylla,Callitris intratropica,Callitris columellaris)と、イタリアンサイプレス(別名:イタリアイトスギ,学名:Cupressus sempervirens)とがある。これらは、同様に通称「サイプレス」と呼ばれているが、分類学上では種属を異にするものである。前者のホワイトサイプレスは、その抗菌性や油分の多い性質から、主として家屋用木材(木造家屋用構造材、フローリング用材)として利用されている(例えば、特開2000−027320号公報参照)が、ホワイトサイプレスの香気成分やその効能に関する報告はなされていない。
【0014】
一方、後者のイタリアンサイプレスは、葉や球果から精油を抽出し香料として広く利用され、商品名「Sanoflore サイプレス」(HYPER PLANTS CO.,LTD.)、商品名「サイプレスオイル」(ランデル社)等、サイプレス精油として多数市販されており、その精油の成分は、α−ピネン、δ−3−カレン、リモネン、ミルセン、テルピノレン等であることが報告されている(インターネットホームページ:http://www.hyperplants.co.jp/shop/seibun/cupressus_sempervirens.htm参照)。イタリアンサイプレス精油は、森林浴のような香りを利用したアロマオイル(鎮静作用)や、香りのデオドラント作用を利用した男性用化粧品に利用されている。また、イタリアンサイプレス精油は、香料としての利用だけでなく、体液のバランスを整えることから、セルライト用マッサージにも使用できるといわれている(インターネットホームページ:http://www.t-tree.net/essentialoil/cypress.htm 参照)。
【0015】
本発明に係るサイプレスは、上記のとおり、主として家屋用木材として利用されているホワイトサイプレスであり、その香気成分や精油による生体内の脂質代謝改善作用について知られていないことはもちろんのこと、食品、医薬品、香料、化粧料等へのそれらの利用についても知られていない。
【0016】
上記のホワイトサイプレスとしては、三つの種(Callitris glaucophylla,Callitris intratropica,Callitris columellaris)が知られている。それぞれの代表的な産地は、オーストラリア南東部、オーストラリア北部、オーストラリア極東部である。本発明に係るホワイトサイプレスとしてはそのいずれを用いてもよく、また2種以上を混合して用いてもよいが、入手の容易さからCallitris glaucophyllaを好適に用いることができる。
【0017】
本発明のホワイトサイプレス抽出物を得るのに用いられるホワイトサイプレスの部位は、何ら限定されず、幹、枝、葉、根、花、樹皮、芽、果実、種子等いずれの部位を用いてもよいが、特に、幹及び主枝から樹皮を除いた心材を用いることが好ましい。心材から得た溶媒抽出物は、脳を刺激するような「重い香り」を有し、葉や花等から得た揮発しやすい「軽い香り」を有する溶媒抽出物と比較して、香りの持続効果が高いという特徴がある。なお、原料となるホワイトサイプレスは、予め遠心粉砕機等により粉砕しておくと、効率よく抽出物を得ることができる。
【0018】
本発明の抽出物を得るための抽出方法は、何ら限定されず、蒸留、溶媒抽出、圧搾等の当該技術分野で知られている方法を用いることができる。例えば水蒸気蒸留(実施例1参照)や、水、親水性溶媒(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、およびイソプロパノール)または有機溶媒(例えば、n−ヘキサン、シクロヘキサン、および石油エーテル)のいずれか1種以上に接触させることによる溶媒抽出(実施例3参照)等による抽出が可能である。本発明の抽出物は、コンクリート、アブソリュート、レジノイド、オレオレジン、チンキ、精油等の形態で取得し、用いることができるが、ホワイトサイプレスの香気成分を有効成分とすることから、精油の形態で使用することが好ましい。精油とは、植物の幹、枝、葉、花、樹皮、果実、種子、芽、樹脂などより発散されるにおいの根源となる、揮発性物質である。その性状は、概ね液状を呈し、また概ね水より軽い。精油は、普通の油脂と異なりいわゆるグリセリド化合物ではない。また、精油は、単一化合物からなるものであってもよいが、通常は複数化合物の混合物である。ホワイトサイプレス精油の製造には、当該技術分野で知られている方法を用いることができるが、特に水蒸気蒸留により製造するのが好ましい。
【0019】
ホワイトサイプレスから油性成分または水性成分を抽出して得る代わりに、ホワイトサイプレス植物体から揮発される香気成分を集めて、脂質代謝改善作用を有する組成物の製造のために用いることができる。ホワイトサイプレス植物体には、ホワイトサイプレスを構成する幹、枝、葉、根、花、樹皮、果実、芽、種子等が含まれるが、この態様においては、ホワイトサイプレス幹および枝から得られる木材や、その木材を粉砕して得られるチップや鉋屑等を用いるのが好ましい。ホワイトサイプレスの香気成分を揮発させる条件は、特に限定されないが、例えば、後述の実施例4のように、常圧、室温条件下におくことにより、本発明の香気成分を揮発させることができる。揮発した香気成分は、それを含む空気、窒素、酸素、二酸化炭素のような気体と混合した組成物として用いることができる。さらに、揮発させた香気成分は、吸着剤(例えば、活性炭、シリカゲル、および多孔性ポリマー)上に吸着させ、および/または濃縮し、これをそのまま組成物として用いてもよいし、そこから適切な溶媒を用いて溶出させたものを組成物として用いてもよい。香気成分を保持した吸着剤は、加熱等の操作に付すことにより、香気成分の放出を促すことができる。また、ホワイトサイプレス植物体から揮発させた香気成分は、それを含む気体を溶媒へ通気して吸収させて、得られた液を組成物として用いてもよいし、さらに溶媒を濃縮して用いてもよい。
【0020】
上記のようにして得られたヒノキ科ホワイトサイプレス由来の香気成分(もしくはそれを含有する組成物)または抽出物は、脂質代謝改善のために用いることができる。より具体的には、これら成分または抽出物は、それらを含有する脂質代謝改善組成物として、およびそれらの製造のために用いることができる。脂質代謝の改善には、限定されないが、例えば、血中脂質代謝を改善すること、および/または肝臓脂質代謝を改善することが含まれる。血中脂質代謝の改善とは、例えば、本発明の抽出物または香気成分を摂取しない対照群と比較して、血中に含まれるコレステロール、トリグリセリド等の脂質のいずれかの濃度を低下させることをいい、肝臓脂質代謝の改善とは、対照群と比較して、肝臓中の総脂質量を低下させること、または肝臓組織中に含まれるコレステロール、トリグリセリド等の脂質のいずれかの濃度を低下させることをいう。また、脂質代謝改善作用とは、その広い意味においては、この作用に密接な関係があるバニロイド受容体の活性化作用を示すことも含む。
例えば、本発明のホワイトサイプレス抽出物または香気成分を含む組成物は、香料組成物として好適に用いることができる。香料組成物としては、各種空間散布剤用香料組成物(例えば、インセンス、室内芳香剤、及び車内芳香剤、並びに防臭剤等)、化粧品用香料組成物(例えば、香水、コロン、シャンプー・リンス類、スキンケア、ボディシャンプー、ボディリンス、ボディパウダー類、浴剤、ローション、クリーム、石鹸、歯磨剤、エアゾール製品等)、医薬品及び医薬部外品用香料組成物(例えば、皮膚用外剤、吸入剤等)を挙げることができる。香料組成物中のホワイトサイプレス抽出物の濃度は、適宜設定すればよいが、通常ホワイトサイプレス抽出物を0.00001〜100重量%含有させる。
【0021】
また、本発明のホワイトサイプレス抽出物または香気成分を含有する組成物を、飲料または食品に含有させることもできる。食品または飲料に添加する際には、上記香料組成物を添加してもよいし、ホワイトサイプレスを食品または飲料に直接接触させることによって含有するようにしてもよい。また、ホワイトサイプレス抽出物または香気成分を含有する錠剤またはカプセル剤として健康食品等の用途に供してもよい。
【0022】
また、本発明のホワイトサイプレス抽出物または香気成分を含有する組成物は、脂質代謝改善のための医薬組成物として用いることもできる。この用途のためには、本発明の組成物は、錠剤、カプセル剤、および注射剤等の知られた形態に適宜製剤することができる。
【0023】
本発明のホワイトサイプレスの香気成分および抽出物、特に精油は、それ自体単独で使用してもよいが、他の抗肥満/痩身成分等を併用してもよい。用いられ得る抗肥満/痩身成分としては、グレープフルーツオイル、トウガラシ(カプサイシン)、ビール酵母、ガルシニア、タマリンド、シャクヤク、ギムネマシルベスタ、ショウキョウ、ラベンダー、ウイキョウ、イノシット、デキストラン硫酸、カフェイン等のキサンチン誘導体、中国茶、緑茶抽出物等が挙げられる。本発明の組成物には、これら活性成分以外に、具体的な態様に応じて、一般的な成分、例えば香料成分を本発明の効果を損なわない限り配合することができる。
【0024】
飲食品および医薬組成物におけるホワイトサイプレス精油の配合量は、選択する他の配合成分との関係等により適宜選択されるものであり、特に限定されるものではない。しかしながら、通常、ホワイトサイプレス精油は、飲料または食品中、医薬組成物中に0.001〜100重量%、好ましくは10〜100重量%用いられる。
【0025】
ホワイトサイプレス由来の香気成分または抽出物の使用には、このように組成物として用いることのみならず、ホワイトサイプレス植物体を脂質代謝改善用具として、またはホワイトサイプレス植物体を含有する脂質代謝改善用具の製造のために用いることも含まれる。この態様においては、実施例5のように、脂質代謝改善用具(例えばホワイトサイプレス植物体)を、そこから発散される香気成分を生体が利用できるような環境におき、その成分を吸入する生体における脂質代謝改善を図る。この場合、使用するホワイトサイプレス植物体としては、ホワイトサイプレスを構成する幹、枝、葉、根、花、樹皮、芽、種子等が含まれ、好ましくは、幹及び主枝から樹皮を除いた心材が含まれる。また、植物体には、これらを切断、圧縮、粉砕、乾燥等により加工して得られたものも含まれる。特に好ましくは、ホワイトサイプレス植物体は、幹又は主枝のチップ、鉋屑、又はおが屑である。脂質代謝改善用具の他の例としては、ホワイトサイプレス材を用いた椅子等が挙げられる。
【0026】
このように本発明の組成物は様々な用途を有するが、本明細書に記載した用途に何ら限定されるものではない。
[実施例]
以下の実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0027】
ホワイトサイプレス精油の製造(1)
原料としてオーストラリア南東部を代表的な産地とするホワイトサイプレス(学名:Callitris glaucophylla Thompson et Johnson)の心材を用い、ホワイトサイプレス精油を製造した。詳細には、ホワイトサイプレス心材の鉋屑100gを調製し、これを枝付き丸底フラスコに入れて加水(2L)し、コンデンサーと温度計を取り付けて100℃まで加温し、約3時間蒸留して、ホワイトサイプレス精油を得た。採油率は、1.5重量%(以下、単に%と示す)であった。
ホワイトサイプレス精油の製造(2)
同様に、原料をホワイトサイプレス学名:Callitris glaucophylla Thompson et Johnson)の心材のチップ100gに変え、約5時間蒸留してホワイトサイプレス精油を得た。採油率は3%であった。
【実施例2】
【0028】
ホワイトサイプレス精油の成分同定
実施例1(1)により得られたホワイトサイプレス精油を流下薄膜式分子蒸留器(東京理科MF−10A)を用いて分留し、クロマトグラフィ(島津製作所LC10カラム:Nomura ODS-HG5)で単離した後、それぞれの単離成分について、常法に従って核磁気共鳴および質量分析(島津製作所GCMS 5050A)を実施してスペクトル解析を行い構造決定した。
【0029】
結果を図1および表1に示す。ホワイトサイプレス精油の主成分はテルペン類であり、代表的なものは、(−)シトロネル酸、グアイオール、β−オイデスモール、α−オイデスモール、γ−オイデスモールであった。
【0030】
【表1】
【実施例3】
【0031】
ホワイトサイプレス抽出液の製造
ホワイトサイプレス(学名:Callitris glaucophylla Thompson et Johnson)心材のチップ65gに59%エタノールを1L加えて16日間室温で抽出し、ホワイトサイプレスのエタノール抽出液を得た。この抽出液を濾過してホワイトサイプレスチップを除去し、その後、約2時間の蒸留を行って留出液のエタノール濃度83%であるホワイトサイプレスの濃縮抽出液を得た。
【実施例4】
【0032】
ホワイトサイプレスの香気成分の血清脂質代謝改善作用
実験動物として、ddy系5週齢雄性マウス(体重約30g)(日本SLC株式会社)を用いた。マウスを、通常の床敷で飼育する群(コントロール)とホワイトサイプレス心材のチップを床敷で飼育する群とにわけ、室温(24℃)環境下のケージ内で、自由摂餌下で1ヶ月間飼育した。餌は、基本飼料(オリエンタル酵母工業株式会社)1kgに対し、コレステロール粉末(ワコー)10gおよびサフラワー油(日本油脂株式会社)50gを加えた固形餌とした。飼育中、週に2度、体重測定を行った。1ヶ月後、マウスの大動脈を採血し、血液を15,000×gで遠心分離して血清を得、血清中の総コレステロール濃度およびトリグリセリド濃度を求めた。血清の総コレステロール濃度およびトリグリセリド濃度は、酵素法によるコレステロールCII−テスト(和光純薬工業株式会社)およびトリグリセリドEテスト(和光純薬工業株式会社)に基づき、自然解凍後の血清0.02mlを発色試液3.0mlと試験管内で混和し、アルミブロックを用い37℃で5分加温した後に分光光度計(波長:600nm)で吸光度を測定し、予め作成しておいた検量線から求めた。
【0033】
体重の測定結果を図2に示す。高カロリー食餌を与えた際に、ホワイトサイプレスチップを床敷として飼育した群(図中、CYで示される)では、コントロール群と比較して、体重増加が抑制される傾向にあった。
【0034】
血清中の脂質測定結果を図3に示す。ホワイトサイプレスチップを床敷として飼育した群では、コントロール群と比較して、総コレステロール濃度(TC)およびトリグリセリド濃度(TG)のいずれも低く、特にトリグリセリド濃度は大きく低下した。
【0035】
以上より、ホワイトサイプレスの香気成分には、生体内の脂質代謝改善作用があることが示唆された。
【実施例5】
【0036】
ホワイトサイプレスの香気成分の肝臓脂質代謝改善作用
実施例4で飼育したマウスの肝臓を摘出し、総脂質量をFolch法に基づいて定量した。すなわち、試料となる肝臓0.5gを凍結したまま切り取り、氷水中で冷却しながら蒸留済みメタノール15ccの入ったスミロン(登録商標)チューブに入れた。このスミロンチューブ内の試料をホモジナイザーでホモジナイズした後、クロロフォルム30ccで供洗いしながら50ccメスフラスコに移した。これを40℃の恒温層で30分間インキュベートした後、恒温層から取り出して室温に戻し、クロロフォルム:メタノール=2:1の混合液でメスアップした。濾過して不溶物を取り除き、濾液を100cc共栓付きメスシリンダーに入れてその量を測定した。濾液量の1/4量の0.88%KCl水溶液を添加して混和し、4℃の冷蔵庫内で一晩放置した。その後、室温に戻し、上層のメタノール層をアスピレート(除去)した。下層のクロロフォルム層を秤量済みナスフラスコに入れ減圧濃縮を行い、その後ナスフラスコを計量し、肝臓中の総脂質量を求めた。
【0037】
また、肝臓中の総コレステロール濃度およびトリグリセリド濃度を、実施例3と同様のキットを用いて測定した。
肝臓中の総脂質含量の測定結果を図4に、肝臓中の総コレステロール濃度およびトリグリセリド濃度の測定結果を図5示す。ホワイトサイプレスチップを床敷として飼育した群では、コントロール群と比較して、総脂質含量、総コレステロール濃度、トリグリセリド濃度いずれも低下した。
【0038】
以上より、ホワイトサイプレスの香気成分には、肝臓中の脂質代謝改善作用があることが示唆された。
【実施例6】
【0039】
ホワイトサイプレス精油による脂質代謝改善作用
実験動物として、ddy系5週齢雄性マウス(体重約30g)(日本SLC株式会社)を用いた。実施例1(1)で得たホワイトサイプレス精油を、濃度が0(コントロール)、3および6%となるように水に懸濁し、この懸濁液を脱脂綿約10gに染み込ませ上部に穴の空いたバイアル瓶に入れケージ内に置いた。このケージ内で、マウスを室温(24℃)環境下で、自由摂餌下で1ヶ月間飼育した。餌は、実施例4と同様の固形餌を用いた。1ヶ月後、マウスの大動脈を採血し、実施例4と同様にして、血清中の総コレステロール濃度およびトリグリセリド濃度を求めた。
【0040】
血清中の脂質測定結果を図6に示す。ホワイトサイプレス精油が含浸した脱脂綿を入れたケージのマウスでは、コントロール群と比較して、総コレステロール濃度およびトリグリセリド濃度のいずれも低く、ホワイトサイプレス精油の濃度に依存して低下する傾向がみられた。
【0041】
以上より、ホワイトサイプレス精油には、生体内の脂質代謝改善作用があることが示唆された。
【実施例7】
【0042】
ホワイトサイプレス精油のバニロイド受容体におよぼす作用
ラット脊髄の湿重量を測定し、これに137mmol/Lのスクロースを含む10倍容量の10mmol/L Hepes-NaOH(pH7.4)液を加え、氷冷下でホモジナイズした。その後、4℃、1000×gで30分間遠心分離して、上清を分取し、さらに4℃、35000×gで30分間遠心分離した。沈渣を採取し、KCl を 5mmol/L、NaCl を 5.8mmol/L、MgCl2 を 2mmol/L、CaCl2 を 0.75mmol/L、および320mmol/Lのスクロースを含む、沈渣の10倍容量の10mmol/L Hepes-NaOH(pH7.4)液を加え、氷冷下でホモジナイズし、得られた膜分画をレセプター溶液とした。レセプター溶液(20mg tissue eq/mL)500μLにサンプル溶液50μL、蒸留水50μL、緩衝液300μL、放射性リガンド溶液100μLを添加し、1mLの反応液とした。反応液を25℃で60分間インキュベートし、セルハーベスタにより濾過した。濾紙を緩衝液で2回洗浄し、濾紙に残存する放射活性を液体シンチレーションカウンターで計測した。放射性リガンド溶液としては、バニロイド受容体に特異的な3H-Resiniferatoxinの溶液(最終濃度:0.26nmol/L)を用いた。
【0043】
試料には、実施例1(1)で製造したホワイトサイプレス精油を用いた。また、陽性対照には、放射性ラベルされていないResiniferatoxinを用いた。測定は各サンプル2例について行い、平均値を求めた。各サンプルの受容体への結合性は、放射性リガンドのバニロイド受容体への結合に対する各サンプルの阻害率を算出することにより評価した。
【0044】
実験結果を図7に示す。ホワイトサイプレス精油による阻害率は87.6%であり、バニロイド受容体に強い結合性があることがわかった。バニロイド受容体にアゴニストが作用すると、副腎髄質からのアドレナリンの分泌が促進され、そのアドレナリンが肝臓や褐色脂肪細胞に作用してエネルギー代謝を活発にすることから、ホワイトサイプレス精油はカプサイシンと同様に、白色脂肪組織を低減させることができることが示唆された。
【実施例8】
【0045】
カプセル剤
a.処方(1カプセルあたり)
【0046】
【表2】
b.製法
上記表2の処方に従ってホワイトサイプレス精油と乳糖を混合して打錠した。得られた錠剤を粉砕して処方量のステアリン酸マグネシウムを加えて混合した。混合物を500mgずつ日本薬局方カプセル2号に充填して、1カプセル中に5mgのホワイトサイプレス精油を含有するカプセル剤を製造した。
【実施例9】
【0047】
ドリンク剤の製造(1)
a.処方
【0048】
【表3】
b.製法
上記表3の処方に記載の各成分を蒸留水8Lに溶解し、さらに蒸留水を加えて全量10Lとした後、得られた液に0.22μmの除菌フィルターを通過させ、100mLずつ褐色びんに無菌充填して、1剤あたり5mgのホワイトサイプレス精油を含有するドリンク剤を製造した。
【実施例10】
【0049】
ドリンク剤の製造(2)
実施例3で得られたホワイトサイプレス抽出液に水を加え、エタノール濃度が10%となるようにし、ホワイトサイプレス含有酒類を製造した。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】ヒノキ科植物ホワイトサイプレスの精油のGC/MS分析結果を示す図である。
【図2】高カロリーの食餌を与えたマウスの体重変化を示す図である。図中、CYはホワイトサイプレスの床敷で飼育された群を示す。
【図3】血清中の総コレステロール濃度およびトリグリセリド濃度を示す図である。図中、CYはホワイトサイプレスの床敷で飼育された群を示す。
【図4】肝臓の総脂質含量を示す図である。図中、CYはホワイトサイプレスの床敷で飼育された群を示す。
【図5】肝臓中の総コレステロール濃度およびトリグリセリド濃度を示す図である。図中、CYはホワイトサイプレスの床敷で飼育された群を示す。
【図6】血清中の総コレステロール濃度およびトリグリセリド濃度を示す図である。図中、CYはホワイトサイプレス精油を示す。
【図7】バニロイド受容体への結合活性を示す図である。図中、CYはホワイトサイプレスの床敷で飼育された群を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒノキ科植物ホワイトサイプレス由来の香気成分または抽出物を含有する組成物。
【請求項2】
抽出物が蒸留、溶媒抽出、または圧搾により得られる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
抽出物が、精油であることを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
脂質代謝改善作用を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
ヒノキ科植物ホワイトサイプレス由来の香気成分を有効成分として含有する、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
ヒノキ科植物ホワイトサイプレスが、Callitris glaucophylla であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物を含有する香料組成物または飲食品。
【請求項8】
ヒノキ科植物ホワイトサイプレス由来の香気成分または抽出物の、脂質代謝改善のための使用。
【請求項1】
ヒノキ科植物ホワイトサイプレス由来の香気成分または抽出物を含有する組成物。
【請求項2】
抽出物が蒸留、溶媒抽出、または圧搾により得られる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
抽出物が、精油であることを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
脂質代謝改善作用を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
ヒノキ科植物ホワイトサイプレス由来の香気成分を有効成分として含有する、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
ヒノキ科植物ホワイトサイプレスが、Callitris glaucophylla であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物を含有する香料組成物または飲食品。
【請求項8】
ヒノキ科植物ホワイトサイプレス由来の香気成分または抽出物の、脂質代謝改善のための使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2006−241287(P2006−241287A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−58233(P2005−58233)
【出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【出願人】(000001904)サントリー株式会社 (319)
【出願人】(304019399)国立大学法人岐阜大学 (289)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【出願人】(000001904)サントリー株式会社 (319)
【出願人】(304019399)国立大学法人岐阜大学 (289)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]