説明

脂質小胞への荷電した治療剤の高率封入

【課題】脂質に対する治療物質の比が高く、封入効率の優れた組成物及びその組成物を調製する方法の提供。
【解決手段】本発明の方法に従い、プロトン付加可能なまたはプロトン遊離可能な脂質、例えばアミノ脂質及びPEGまたはポリアミドオリゴマー修飾脂質のような脂質を含む脂質の混合物を、荷電した治療物質、例えばポリアニオン核酸の緩衝水溶液と混合し、治療剤が脂質小胞に封入されている粒子を作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イン・ビボ(in vivo)での治療目的のために使用する脂質と治療剤の組合せからなる組成物、特に脂質−核酸組成物に関するものである。これらの組成物では、治療剤は封入され、分解と血清クリアランスから保護される。また、本発明は、本組成物の製造方法、本組成物を用いて細胞中に核酸を導入するための方法及び疾患を治療する方法も提供する。
【背景技術】
【0002】
アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはリボザイムのような治療用オリゴヌクレオチドは、DNAの短い画分であり、特異的なmRNA上の配列とハイブリッド形成するよう設計されている。その結果生じた複合体は、mRNAのタンパク質への翻訳の阻害かつ/またはmRNA転写物のRnase H分解の促進など、幾つかの機序によってタンパク質の産生をダウンレギュレートする。このように、治療用オリゴヌクレオチドは、作用の特異性という点において(即ち、特定の疾患に関連したタンパク質のダウンレギュレーション)多大な可能性をもっている。現時点で、これらの物質は、炎症性疾患、癌及びHIV(Agrawal,Trends in Biotech.14:376-387(1996)中に総説)を含めたイン・ビトロ及びイン・ビボ(in vivo)の幾つかのモデルにおいて有望性が示されている。アンチセンスはまた、染色体DNAと特異的にハイブリッド形成することによって、細胞に活性を与えることもできる。幾つかのアンチセンス製剤に関しては、現在ヒトでの臨床評価が進行中である。これらの製剤のターゲットとなるのは、c-myc,ICAM−1,及びサイトメガロウイルスやHIV-1などの感染性疾患病原体の遺伝子もしくはRNA産物である。
【0003】
ホスホジエステルによるヌクレオチド間結合をもつ治療用オリゴヌクレオチドを使用する上でよく知られている問題点の1つは、血清の存在下あるいは細胞中での半減期が非常に短いということである。(Zelphati,Oら,1993.「イムノリポソーム中に封入したアンチセンスオリゴヌクレオチドによる培養細胞中でのHIV-1複製の阻害」(Inhibition of HIV-1 Replication in Cultured Cells with Antisense Oligonucleotides Encapsulated in Immunoliposomes) Antisense.Res.Dev.3:323-338;及びThierry,ARら,「遺伝子制御:アンチセンスRNA及びDNAの生物学」(Gene Regulation:Biology of Antisense RNA and DNA)中pp147-161 (Erickson編,RP and Izant,JG)1992.Raven Press,NY)。このような問題点や他の問題点があるため、天然の核酸中に見られる塩基性ホスホジエステルの化学的性質を取り上げた臨床評価は現時点では行われていない。
【0004】
この問題は、血清あるいは細胞内での分解を少なくするための化学的修飾を加えることによってある程度克服される。修飾のテストは、ヌクレオチド間架橋(即ち、ホスホロチオエート(phosphorthioate),メチルホスホネート(methylphosphonate)あるいはホスホラミデート(phosphoramidate)結合の利用),ヌクレオチド塩基(即ち、5−プロピニル−ピリミジン)、もしくは糖(即ち、2’−修飾糖)において行われている(Uhlmann Eら,1997.「アンチセンス:化学的修飾」(Antisense:Chemical Modifications) Encyclopedia of Cancer Vol.X.pp64-81 Academic Press Inc.)。他に、2’−5’糖結合を利用して安定性を改善する試みもなされている(米国特許No.5,532,130を参照)。他の変更も試みられている。しかし、これらの解決法はいずれも完全に満足できるものではないことが判明しており、イン・ビボでの遊離アンチセンスの有効性はまだ限られている。アンチセンスによっては細胞膜透過能が低いなどの問題があり(Vlassovら, Biochim.Biophys.Acta 1197:95-1082(1994)参照)、また補体により媒介されるアナフィラキシー,凝固特性の変化及び血球減少といった全身毒性に関連する問題もある(Galbraithら,Antisense Nucl.Acid Drug Des.4:201-206(1994))。さらに、米国特許出願SN.08/657,753及び類似特許申請WO 97/46671(共に参照文献として本文中に引用)の中で公開されているように、修飾したアンチセンスは強い電荷をもっており、循環中からのクリアランスも数分以内に起きてしまう。
【0005】
効率を上げるために、化学的に修飾した、あるいは修飾していないアンチセンスを送達するための脂質担体システムを利用した研究者らもいる。Zelphati,O及びSzoka,F.C.(1996) J.Contr.Rel.41:99-119の中で著者らは、アニオン性(従来型)リポソーム,pH感受性リポソーム,イムノリポソーム,フソジェニックな(fusogenic)リポソーム及びカチオン性脂質/アンチセンス凝集体の利用について述べている。
【0006】
これらの組成物はいずれも、イン・ビボでの治療において、ホスホジエステルアンチセンスを送達することに成功していない。ZelphatiとSzokaは別の論文の中で、カチオン性脂質に結合させたアンチセンスホスホジエステルオリゴヌクレオチドがイン・ビトロでの細胞培養中で活性を示さないことを報告している;また、カチオン性脂質と複合体形成させたホスホジエステルアンチセンスオリゴヌクレオチドの活性を報告した研究は1つしかないことも述べている。著者らは、これらの知見が「・・・オリゴヌクレオチドをターゲット細胞中に送達するために担体を使用したとしても、細胞内及び細胞外のヌクレアーゼに対して比較的耐性を有する[of-sic]バックボーンで修飾したオリゴヌクレオチドの使用が[]必要である」と主張している(1997.J.Lip.Res.7(1):31-49の34)。この知見は、Bennett,CF(1995.「カチオン性リポソームによるオリゴヌクレオチドの細胞内送達」(Intracellular Delivery of Oligonucleotides with Cationic Liposomes) Chp 14,CRC Press)によって確認されている。彼は224頁の中で、「これに対して我々は、カチオン性脂質の存在下で、幾つかの細胞ターゲットに向けた均質なホスホジエステルオリゴデオキシヌクレオチドによる遺伝子発現の阻害を実証することができなかった」と述べている。
【0007】
本発明以前の修飾アンチセンス脂質製剤も、イン・ビボではほとんど無効である。封入効率が低く(受動封入システムの場合15%以下)、脂質に対する薬剤の比が低く(重量にして3%以下)、血清中ヌクレアーゼに対する感受性が高く、循環中からのクリアランスが迅速であり(特にDOTMAから作成したカチオン性脂質/アンチセンス凝集体、商品名LIPOFECTIN(登録商標)の場合)、かつ/または粒子のサイズが大きいため(100 nm以上)ターゲット部位への全身送達には不適である。本発明以前には、脂質封入(ヌクレアーゼ耐性)修飾アンチセンスに関するイン・ビボでの有効性試験は成功していない。
【0008】
顕著なヌクレアーゼ耐性をもつ可能性のある独自の脂質−アンチセンス組成物に関する2種類の参照文献は、検討に値するものである。1報目は、Li,S.とHuang,L(1997.J.Lip.Res.7(1)63-75)によるアニオン性リポソーム(LPD II)組成物である。これはポリリジンをコーティングしたアンチセンスを封入したものであり、封入効率は60〜70%であると言われているが、サイズが200nm付近と大きく、脂質に対する薬剤の比は重量にして8%と低い。イン・ビボにおけるこれらの粒子の効果については不明である。2番目は、カルジオリピン(アニオン性)リポソームのための最小容積捕捉(MVE)法であり、45−65%というかなり高い封入効率が得られるが、やはり薬剤:脂質比が重量にして約6.5%と非常に小さい(米国特許No.5,665,710のRahman ら;Thierry ARとTakle,GB.1995,医療用アンチセンスオリゴヌクレオチドのための送達方法(Delivery Strategies for Antisense Oligonucleotide Therapeutics)における「アンチセンス及びリボザイムのための送達システムとしてのリポソーム」(Liposomes as a Delivery System for Antisense and Ribozyme Compounds),S.Akhtar編,CRC Press,Boca Raton,FL.,pp199-221;Thierry,ARら「遺伝子制御:アンチセンスRNA及びDNAの生物学」中pp147-161 (Erickson編,RP and Izant,JG)1992.Raven Press,NY)。米国特許No.5,665,710の中でも、医学的には有用性のないわずかな量(0.1μg)のアンチセンスの封入効率が60〜90%であることが公開されているが、薬剤脂質比はきわめて低いはずである。
【0009】
従来の薬剤のために使用されていた、本発明以前のさまざまな脂質組成物に関して、アンチセンスの分野で有効性の評価を行なうことができると発明者は考えているが、イン・ビボでの有効性がどの程度改善されたか(遊離のアンチセンスと比較して)は不明である。この点に関して、BaileyとCullisにより薬剤担体として使用することを目的とした脂質製剤が公開されたが(米国特許5552155;及び(1994)Biochem.33(42):12573-12580)、これらの脂質に伴って生物学的活性を有する物質の製剤は公開されておらず、ポリアニオン族を高率で装荷するための有用性については示唆しなかった。
【0010】
本分野に必要なのは、治療のための使用に適した改良型脂質−治療用オリゴヌクレオチド組成物である。これらの組成物は、核酸を高率で封入でき、薬剤:脂質の高い比を持ち、血清中での分解及びクリアランスから保護するよう封入してあり、かつ/または全身送達に適していることが望ましい。本発明は、このような組成物、この組成物の製造方法、この組成物を利用して細胞中に核酸を導入するための方法、そして疾患を治療するための方法を提供する。
発明の要約
本発明に基づき、以下の段階から構成される方法を用いて荷電した治療剤を脂質−封入治療剤粒子の中に封入する:
(a)少なくとも第一の脂質成分と第二の種類の脂質成分から構成される脂質混合物を、荷電した治療剤の水性緩衝液と合わせ、脂質−封入治療剤粒子を含有する中間混合物を形成する、そして
(b)当該脂質―核酸粒子上の外側表面の電荷の少なくとも一部を中和するために中間混合物のpHを変化させ、表面が少なくとも部分的に中和された脂質−封入治療剤粒子を産生する。第一の脂質成分は、当該脂質があるpHにおいて荷電状態となり、別のpH(生理的pHに近いことが望ましい)において中性状態となるようなpKをもつプロトン付加可能な、あるいはプロトン除去可能な基を含有する脂質の中から選択する。緩衝溶液のpHは、第一の脂質成分が緩衝溶液中にある時に荷電状態となるようにし、第一の脂質成分はさらに、治療剤が緩衝溶液中でアニオン性である時に荷電状態がカチオン性となり、治療剤が緩衝溶液中でカチオン性である時にアニオン性となるものを選択する。第二の脂質成分は、脂質−核酸粒子が形成される間に粒子の凝集を防止することのできる脂質の中から選択する。本発明の方法は、脂質−封入核酸、例えばアンチセンス核酸あるいはリボザイムの調製のために特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の脂質−核酸組成物から表面に結合したアンチセンスを遊離するための中和段階を示す。
【図2A】図2Aは、本発明の方法において有用な数種の脂質成分を示す。図2Aは、DODAPの化学構造を含有するアミノ脂質のグループを幾つか示す。
【図2B】図2Bは、発明の方法において有用な数種の脂質成分を示す。PEG修飾脂質のグループを示す。
【図3】図3は、アンチセンスオリゴヌクレオチドの封入に対するエタノールの影響を示す。リポソーム封入アンチセンス組成物は、例の記載の通りに調製し、アンチセンス及び脂質の最終濃度はそれぞれ2mg/mlと9.9mg/mlであった。調製した製剤中のエタノール最終濃度は、0−60%,vol/volの範囲で変動した。封入の評価は、カラム前及びカラム後の[H]−アンチセンスと[14C]−脂質の比の分析、あるいはカラム前及びカラム後の[H]−アンチセンスと[14C]−脂質の総放射能の測定のいずれかによって行なった。
【図4】図4は、圧ろ過の間の脂質及びアンチセンスの消失に対するエタノールの影響を示す。リポソームアンチセンス製剤は、図3の場合と同様にして調製した。「材料及び方法」の中の記載に従い、3枚重ねの100nmフィルターを通じて試料を10回圧ろ過した。圧ろ過の後、標準シンチレーション計測法によりフィルター上の[H]−アンチセンス及び[14C]−脂質の放射能を分析した。結果は、当初の総放射能に対する百分率として表した。
【図5】図5は、アンチセンスオリゴヌクレオチドの封入に対するDODAP含有量の影響を示す。0.6mlの[H]−ホスホロチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチド(300mMクエン酸緩衝液,pH3.80中に溶解)を、脂質(DSPC:CHOL:DODAP:PEG−CerC14;100−(55+X):45:X:10,モル比)の95%エタノール溶液0.4mlと混合し、最終濃度をそれぞれ2mg/ml及び9.9mg/mlとした。DODAPのモル比は0−30%の範囲で変動した。DODAP含有量の変化を補うため、DSPCのモル比を調節した。封入の評価は、カラム前及びカラム後の[H]−アンチセンスと[14C]−脂質の比の分析、あるいはカラム前及びカラム後の[H]−アンチセンスと[14C]−脂質の総放射能の測定のいずれかによって行なった。
【図6】図6は、アンチセンスオリゴヌクレオチドの封入に対するDODAP含有量の影響を示す。試料は図5の場合に調製したものと同一であった。図6の場合、脂質と結合したアンチセンスの量は、「材料及び方法」の中に記載した溶媒抽出法によって評価した。アンチセンスをメタノール:水の水層中に抽出し、脂質は有機(クロロホルム)層中に可溶性であった。水層を回収し、260nmにおける吸光度を測定することによりアンチセンスの濃度を計測した。これによって、アンチセンスが脂質小胞と結合していること、そしてアンチセンス上の[H]−標識が脂質に変化していないことが確認された。
【図7】図7は、封入したリポソームアンチセンスの準弾性(quasi-elastic)光散乱分析を示す。アンチセンスのリポソーム製剤のサイズ分布は、Nicomp Model 370サブミクロン粒子サイズ測定装置を使用して、遊離のアンチセンスを除去した直後(A)、及び4℃において製剤を2ヶ月間保存した後(B)に準弾性光散乱分析(QELS)を行なうことにより測定した。
【図8】図8は、DODAP小胞中のアンチセンス含有量に対する当初のアンチセンス濃度の影響を示す。最終濃度の異なる[H]−ホスホロチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチド(300mMクエン酸緩衝液,pH3.80中に溶解)の20量体を、脂質(DSPC:CHOL:DODAP:PEG−CerC14;25:45:20:10,モル比)のエタノール溶液、9.9mg/ml(最終濃度)と混合した。封入の評価は、カラム前及びカラム後の[H]−アンチセンスと[14C]−脂質の比の分析、あるいはカラム前及びカラム後の[H]−アンチセンスと[14C]−脂質の総放射能の測定のいずれかによって行なった。封入したアンチセンスを含有するEPC:CHOLリポソームも比較に含める。
【図9】図9は、封入したアンチセンスの血漿クリアランスを示す。封入したリポソームアンチセンスは、「材料及び方法」の中に記載したエタノール−クエン酸塩法を用いて調製した。当初の脂質及びアンチセンスの濃度は、それぞれ9.9及び2mg/mlであった。リポソーム製剤の組成はX:CHOL:DODAP:PEG-CerC14(25:45:20:10)であり、Xはジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC),スフィンゴミエリン(SM),あるいはパルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)のいずれかである。この製剤は脂質標識([14C]−コレステリルヘキサデシルエーテル)及び[H]−アンチセンスを含有しており、雌の(20−25g)ICRマウスの側尾静脈を経由して120mg/kgの脂質用量で静脈内投与した(200μL)。麻酔下のマウスに心臓穿刺を行なうことにより、血液を回収した。標準シンチレーション計測法を用いて脂質及びアンチセンスの回収率を測定した。
【図10】図10は、封入したアンチセンスの生物学的分布を示す。封入したリポソームアンチセンスは、「材料及び方法」の中に記載したエタノール−クエン酸塩法を用いて調製した。当初の脂質及びアンチセンスの濃度は、それぞれ9.9及び2mg/mlであった。リポソーム製剤の組成はX:CHOL:DODAP:PEG-CerC14(25:45:20:10)であり、Xはジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC),スフィンゴミエリン(SM),あるいはパルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)のいずれかである。この製剤は脂質標識([14C]−コレステリルヘキサデシルエーテル)及び[H]−アンチセンスを含有しており、雌の(20−25 g)ICRマウスの側尾静脈を経由して120mg/kgの脂質用量で静脈内投与した(200μL)。頸椎脱臼によりマウスを屠殺し、「材料及び方法」の中の記載に従って臓器を摘出し処理した。標準シンチレーション計測法を用いて、脂質及びアンチセンスの回収率を測定した。
【図11】図11は、血漿中でのアンチセンスの放出速度を示す。封入したリポソームアンチセンスは、「材料及び方法」の中に記載したエタノール−クエン酸塩法を用いて調製した。当初の脂質及びアンチセンスの濃度は、それぞれ9.9及び2mg/mlであった。リポソーム製剤の組成はX:CHOL:DODAP:PEG-CerC14(25:45:20:10)であり、Xはジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC),スフィンゴミエリン(SM),あるいはパルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)のいずれかである。この製剤は脂質標識([14C]−コレステリルヘキサデシルエーテル]及び[H]−アンチセンスを含有しており、雌の(20−25 g)ICRマウスの側尾静脈を経由して120mg/kgの脂質用量で静脈内投与した(200μL)。麻酔下のマウスに心臓穿刺を行なうことにより、血液を回収した。標準シンチレーション計測法を用いて、脂質及びアンチセンスの回収率を測定した。放出速度は、時間の経過に伴う[H]/[14C]の比を測定することによって算出した。
【図12】図12は、封入したアンチセンスの血漿クリアランスに対するPEG−アシル鎖の長さの影響について示す。封入したリポソームアンチセンスは、「材料及び方法」の中に記載したエタノール−クエン酸塩法を用いて調製した。当初の脂質及びアンチセンスの濃度は、それぞれ9.9及び2mg/mlであった。リポソーム製剤の組成はDSPC:CHOL:DODAP:PEG-CerC14またはC20(25:45:20:10)であった。この製剤は脂質標識([14C]−コレステリルヘキサデシルエーテル]及び[H]−アンチセンスを含有しており、雌の(20−25 g)ICRマウスの側尾静脈を経由して120mg/kgの脂質用量で静脈内投与した(200μL)。麻酔下のマウスに心臓穿刺を行なうことにより、血液を回収した。標準シンチレーション計測法を用いて、脂質及びアンチセンスの回収率を測定した。
【図13】図13は、DODAPを含有するリポソームアンチセンスの有効性増強を示す−耳腫脹。炎症を発症させたマウスに対して、耳刺激時に30mg/kgの用量のHBS(オリゴなし)、捕捉したPS 3082を伴うEPC:CHOLリポソーム(1000として識別)、捕捉したPS 3082を伴うPOPC:CHOL:DODAP:PEG-CerC14(4100として識別)、あるいは捕捉したPS 3082を伴うDSPC:CHOL:DODAP:PEG-CerC14(4200として識別)のいずれかを静脈内投与した。技師のマイクロメーターを使用して、炎症を発症させてから24時間後に耳の腫脹を測定した。
【図14】図14は、DODAPを含有するリポソームアンチセンスの有効性増強を示す−細胞浸潤。炎症を発症させたマウスに対して、耳刺激時に30mg/kgの用量のHBS(オリゴなし)、捕捉したPS 3082を伴うEPC:CHOLリポソーム(1000として識別)、捕捉したPS 3082を伴うPOPC:CHOL:DODAP:PEG-CerC14(4100として識別)、あるいは捕捉したPS 3082を伴うDSPC:CHOL:DODAP:PEG-CerC14(4200として識別)のいずれかを静脈内投与した。「刺激した」耳と未処理の耳とにおける放射能を測定することにより、細胞浸潤の評価を行なった。結果は、右耳に対する左(刺激した)耳の放射能の比として表す。
【図15】図15は、本発明に基づく、脂質−封入核酸粒子の非対称装荷を示す。
【図16】図16は、各種の量で数種類のアミノ脂質と共に製剤化した脂質−封入アンチセンス粒子のクリアランスを示す。
【図17】図17は、アンチセンス−含有粒子を反復投与した後の血中濃度を示す。
【図18】図18は、アンチセンス−含有粒子を反復投与した後の血中濃度を示す。
【図19】図19は、本発明に基づきマウス腫瘍モデルにおいて行なった脂質−封入アンチセンス粒子のイン・ビボでの有効性に関する試験の結果を示す。
【図20】図20は、本発明に基づき製造した脂質−封入治療剤粒子の封入効率に関する結果を示す。
【図21】図21は、耳炎症モデルにおけるマウスICAM-1の使用についての試験の結果を示す。
【図22】図22は、耳炎症モデルにおけるマウスICAM-1の使用についての試験の結果を示す。
【図23】図23は、耳炎症モデルにおけるマウスICAM-1の使用についての試験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
目 次
I. 用語解説
II. 全般
III.リポソーム/核酸複合体の調製方法
IV. 医薬用調製物
V. 脂質−封入治療剤を細胞に導入するための方法
VI. 例
VII.結論
I.用語解説
略語及び定義
本願では、次の略語を使用する:ATTA,N−(ω−N’−アセトキシ−オクタ(14’アミノ−3’,6’,9’,12’−テトラオキサテトラデカノイル));CHE,コレステリル−ヘキサデシルエーテル;CHOL,コレステロール;DODAPまたはAL-1,1,2-ジオレオイルオキシ−3−ジメチルアミノプロパン(及びこれにプロトン付加したアンモニウム型);DODMA,N−(1-(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル)−N,N,−ジメチル塩化アンモニウム;DSPC,ジステアロイルホスファチジルコリン;EPC,卵ホスファチジルコリン;HBS,HEPES−緩衝溶液;HEPES,N−2-ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2-エタンスルホン酸;MES,2-(N−モルホリノ)エタンスルホン酸;PS 3082,次の配列をもつマウスICAM−1ホスホロチオエートオリゴデオキシヌクレオチド:TGCATCCCCCAGGCCACCAT(SEQ ID No.1);NaCl,塩化ナトリウム;OLIGREEN (登録商標),オリゴヌクレオチドと相互作用して蛍光を発する染色剤;PEG-CerC20,20個の炭素アシル鎖をもつセラミド誘導体と結合したポリエチレングリコール;POPC,パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン;SM,スフィンゴミエリン。
【0013】
「脂質−治療剤粒子」とは、脂質及び荷電した(カチオン性またはアニオン性)治療剤から構成される粒子のことである。「脂質−治療用核酸粒子」とは、脂質及び治療用核酸から構成される粒子のことである。
【0014】
「脂質−封入治療剤(核酸)粒子」とは、粒子の外側表面上、あるいは粒子外側の緩衝液中に検出される治療剤(核酸)が50%未満(10%未満であることが望ましい)である脂質−治療剤粒子のことである。核酸の場合、未封入の核酸に対する封入核酸の量は、ここに記載する蛍光試験またはヌクレアーゼ試験によって測定することが可能である。他の種類の治療剤のためにも、同様の試験が利用できる。
【0015】
「治療上有効な量」とは、治療上の利益が得られる量のことである。アンチセンスオリゴヌクレオチドの場合、これは一般に0.5−50 mg/kg体重を意味するが、脂質粒子製剤中で送達させる場合には、毒性量より少ない量の脂質を使用しなければならない。
【0016】
「粒子からの脂質交換」及びこの交換の速度については、米国特許出願SN 08/486,214及び SN 08/485,608と、PCT特許広報WO 96/10391及びWO 96/10392の中で詳細に説明されている。これらは全て、本文中に参照文献として引用されている。周囲の培養液中への脂質交換が可能なのは、脂質粒子の膜と可逆的に結合している脂質である。それぞれの脂質には粒子からの交換が起こる特徴的な速度があり、アシル鎖の長さ、飽和度、頭部グループの大きさ、緩衝液の組成及び膜の組成など、各種の要因の影響を受ける。
【0017】
「疾患部位」とは、病態を呈している、あるいは病態の原因となっている生物体内の部位のことである。疾患部位は、新生物や炎症の部位のように巣状となっている場合もあり、また非固形腫瘍の場合のようにびまん性である場合もある。「疾患部位の遠位部位への投与」とは、疾患部位に送達させるために、血液またはリンパのいずれかの循環による何らかの全身送達、もしくは生体内部での他の液体移動を必要とするという意味である。
【0018】
ここで使用する「トランスフェクション」という語は、ポリアニオン物質、特に核酸を細胞中に導入することを表す。ポリアニオン物質の形態としては、細胞内に入った後の遺伝子発現を容易にするための発現ベクターに結合させたDNAまたはRNAがある。したがって、本発明の中で使用するポリアニオン物質あるいは核酸は、構造タンパク質、受容体及びホルモンをコードする配列をもつDNAと、転写及び翻訳を制御する要素(即ち、プロモーター,エンハンサー,ターミネーター及びシグナル配列)及びベクター配列を含むよう設計されている。特定の核酸を発現ベクター中に取り込むための方法は、本分野の専門家にはよく知られた技術であるが、例としてSambrookら,「分子クローニング:実験室マニュアル」(第2版),1−3巻,Cold Spring Harbor Laboratory,(1989)または「分子生物学における最新実験法」F.Ausubelら編。Greene Publishing and Wiley-Interscience,New York(1987)の中に詳細に説明されており、どちらの文献も本文中に参照文献として引用されている。
【0019】
「生理的pH」という語は、血清あるいは血液中における通常のpHのことを表す。一般に、pH 7.2−7.5の範囲である。プロトン付加可能な、あるいはプロトン除去可能な脂質は、このpHにおいてほぼ中性となるようなpKaをもつことが望ましい。即ち、アミノ脂質の場合、約4−7のpKaである。
II.全般
本発明は、荷電した治療剤を脂質層中に封入した脂質−封入治療剤分子を製造するための方法とその組成に関するものである。本発明は、ポリアニオン性核酸、ポリアニオン性タンパク質またはペプチド、サイトカイン及びヘパリン、そしてカチオン性タンパク質及びペプチドを含めて、アニオン性及びカチオン性の両方の治療剤に応用することができる。本発明は、ここでは原則として、封入物質として望ましいポリアニオン性核酸を引用したが、同じ原則を多のポリアニオン性またはカチオン性治療剤にも容易に応用することができる。
【0020】
脂質/核酸製剤の品質を評価するために、特に以下の基準を用いる:
薬剤脂質比;
封入効率;
ヌクレアーゼ耐性/血清中での安定性;及び
粒子サイズ。
【0021】
薬剤脂質比が高く、封入効率が高く、ヌクレアーゼ耐性が良好で、血清中で安定であり、コントロール可能な粒子サイズ(一般に直径200nm未満)であることが望ましい。さらに、核酸ポリマーの特性も重要である。何故なら、ヌクレアーゼ耐性を付与するために核酸の修飾を行なうことによって治療のコストが増大するが、多くの場合耐性はわずかに上昇するにとどまるからである。本発明は、このような基準に基づき、現在の技術よりもはるかに優れた脂質−核酸粒子と脂質−核酸製剤を調製するための方法を提供するものである。
【0022】
他に記載のない限り、本仕様書においてこれらの基準は次のような手段で算出される。
【0023】
薬剤脂質比:一定容積の製剤中の薬剤(治療剤)の量を同一容積中の脂質量で割った値。この値の単位は、モル/モル、重量/重量、もしくは重量/モルである。そのまま投与できる最終製剤の薬剤:脂質比は、未結合の治療剤(例えば核酸)をできる限り除去するために透析、クロマトグラフィーかつ/または酵素(例えばヌクレアーゼ)分解を行なった後に算出する。薬剤:脂質比は製剤の力価の目安となるが、薬剤:脂質比が可能な限り最も高いからといって、必ずしも最も力価が高い製剤であるとは限らない;
封入効率:原料となる混合物の薬剤脂質比をそのまま投与できる最終製剤の薬剤脂質比で割った値。これは相対的効率の目安である。絶対的効率の目安として、最終的にそのまま投与できる製剤中に入る原料混合物に治療剤(核酸)の総量を加えた値を算出することもできる。製剤製造工程中に消失した脂質の量も算出できる。効率は、製剤の消失及び損失の目安である。;
ヌクレアーゼ耐性/血清中での安定性:イン・ビトロでの試験、あるいは循環中のいずれかにおいて核酸治療薬をヌクレアーゼによる分解から防御し得る製剤の能力。本仕様書の中に数種類の標準試験の詳細を記載する。封入された粒子は、DODMA/DOPE(LIPOFECTIN(登録商標))製剤などの脂質−アンチセンス凝集体よりもはるかに高いヌクレアーゼ耐性及び血清中での安定性を示す;そして
サイズ:製剤化した粒子の大きさ。サイズの分布は、Nicomp Model 370サブミクロン粒子サイズ測定装置による準弾性光散乱分析(QELS)を用いて測定することができる。新生物及び炎症部位のような血管が新生した(漏出しやすい)組織に対しては、200nm未満の粒子分布が望ましい。
【0024】
本発明の方法及び組成物には、荷電状態及び非荷電状態の両方で存在し得るある種の脂質を利用している。例えば、pKa以下のpHで荷電しており、pKa以上のpHではほぼ中性であるアミノ脂質を2段階の工程で使用することができる。第一に、核酸の存在下で、より低いpHにおいて(カチオン性)アミノ脂質と他の小胞成分を用いて脂質小胞を形成することができる。このようにして、小胞中に核酸を封入し捕捉することが可能である。第二に、培養液のpHを存在するアミノ脂質のpKaより高い値まで、即ち生理的pHまたはそれ以上まで上昇させることによって、新たに形成された小胞の表面電荷を中和することができる。この工程が特に有用である点は、表面に吸着されたすべての核酸を容易に除去し、その結果、中性の表面をもつ核酸送達小胞が得られる、という2つの段階が一度に達成できることである。中性の表面をもつリポソームあるいは脂質粒子は、循環中からの迅速なクリアランスを免れ、またカチオン性リポソーム製剤がもつある種の毒性を避けることができると期待される。
【0025】
さらに、このようにして形成された小胞によって、均一な小胞サイズをもち核酸含有量の高い製剤が得られる、という特徴もある。また、この小胞は複合体を凝集しないが、サイズの範囲が約70−約200nmである(より望ましくは約90−約130nm)大きな単層小胞である。
【0026】
何らかの粒子理論に従うことを目的としたわけではないため、核酸封入の効率が非常に高いのは、低いpHにおける静電的相互作用の結果であると考えられる。図1には、本文中に記載した工程の概要を示す。より詳しくは、この図は封入したアンチセンス核酸及び表面に結合したアンチセンス核酸をもつアミノ脂質及びPEG−修飾脂質の脂質−核酸組成を示したものである。酸性側のpH(pH4.0と記載)では、表面は荷電し、静電的相互作用によってアンチセンスの一部と結合している。外部の酸性緩衝液をより中性に近い(pH7.5,HBS)緩衝液に交換すると、脂質粒子あるいはリポソームの表面が中和され、その結果アンチセンス核酸を遊離する。
【0027】
図15に示した封入効率の結果から、本発明にはさらに予期せぬ利点があることが明らかである。図に示すように、ホスホロチオエート(PS-2302)及びホスホジエステル(PO-2302)のどちらの製剤の場合にも、50%以上の封入効率−即ち、粒子内側に残る核酸の量−を得ることが可能である。ホスホジエステルは60%をかなり上回るし、ホスホロチオエートは少なくとも80%が封入される。大きい単層小胞(LUV)を装荷する最も単純なモデルにおいても、治療剤(核酸)は粒子の内側上と外側上とで均等にカチオン電荷と結合すると考えられることから、このように装荷が非対称であるというのは驚くべきことである。1:1の分布(内側と外側)であるとすれば、外側表面の電荷を中和する際に外側にある50%が除去されるはずであり、50%という効率が理論上の上限になると考えられる。しかし、本発明は、まだ明らかになっていない何らかの機序を通じて、治療剤(核酸)の大部分が粒子の内側に保護されて残るという有効な過程を提供するものである。
III.脂質/治療剤(核酸)製剤の調製方法
上記のように、本発明は脂質/核酸製剤を調製するための方法を提供する。ここに説明する方法においては、脂質の混合物が核酸の緩衝水溶液と結合し、脂質の中に封入された核酸を含有する中間混合物を形成する。この中で、封入された核酸は、約10%重量−約20%重量の核酸/脂質比で存在する。中間混合物のサイズは、脂質部分が望ましくは直径70−200nm、より望ましくは約90−130nmである大きい単層小胞となるような脂質−封入核酸粒子を得るために選択することが可能である。次に、脂質−核酸粒子の表面荷電の少なくとも一部を中和するためにpHを上昇させることにより、少なくとも表面が部分的に中和された脂質−封入核酸成分が得られる。
【0028】
脂質混合物中には、最低2種類の脂質成分が含まれる:当該脂質がpKa以下のpHではカチオン性となりpKa以上のpHにおいて中性となるような脂質の中から選択した第一の脂質成分と、脂質−核酸粒子が形成される間に粒子の凝集を防止することのできる脂質の中から選択した第二の脂質成分である。
【0029】
第一の脂質成分は、当該脂質があるpHにおいて荷電状態(カチオン性またはアニオン性、プロトン付加可能なもしくはプロトン除去可能な基の特性とpKaによって異なる)となり、生理的pHにおいて中性状態となるような、プロトン付加可能な、あるいはプロトン除去可能な基を少なくとも1個含有する脂質(または同様の特性を持つ脂質族の混合物)である。当然、pHの機能としてのプロトンの付加あるいは除去は平衡の過程であること、そして荷電した、あるいは中性の脂質という意味は優勢な脂質族の特性によって決定されるものであって全ての脂質が荷電型あるいは中性型で存在する必要はないことは理解されるであろう。複数のプロトン付加可能基あるいはプロトン除去可能基を持つ脂質、あるいは両性イオン性である脂質であっても、本発明における使用から除外されるわけではない。プロトン付加可能な脂質は、プロトン付加可能基のpKaが約4−約11の範囲であれば、本発明における第一の脂質として特に有用である。最も望ましいのは、pKaが約4−7である脂質である。何故なら、このような脂質はpHの低い製造段階ではカチオン性であり、pH7.5周辺の生理的pHにおいては表面の大部分(完全ではないが)が中和されているためである。このpKaの利点の1つは、粒子の外側表面に付着したアンチセンスのうち少なくとも一部は生理的pHにおいて静電的相互作用を消失し、単純な透析によって除去できる、ということである;このようにして、クリアランスに対する粒子の感受性を大きく下げることが可能となる。
【0030】
脂質混合物の第一の脂質として使用する上で望ましい、プロトン付加可能基をもつ脂質は、アミノ脂質である。ここで使用する「アミノ脂質」という語は、1個あるいは2個の脂肪酸または脂肪アルキル鎖と、アミノ頭部基(アルキルアミノ基もしくはジアルキルアミノ基を含む)とを持つ脂質で、生理的pHにおいてプロトン付加されてカチオン性脂質を形成する脂質を含める(図2A参照)。態様の1つでは、アミノ脂質は次の構造式で表される1級、2級あるいは3級アミンである:
【化1】


但し、RはC12からC24までのアルキル基であり、枝分かれのあるものでもないものでもよく、飽和していても不飽和でもよい。Rは水素、あるいはC1からC24までのアルキル基であり、やはり枝分かれのあるものでもないものでもよく、飽和していても不飽和でもよい(3個以上の炭素が存在する場合)。Rは水素あるいはC1からC6までのアルキル基である。このようなアミノ脂質の例として、ステアリルアミン,オレイルアミン,ジオレイルアミン,N−メチル−N,N−ジオレイルアミン、及びN,N−ジメチルオレイルアミンが挙げられる。
【0031】
別の態様では、アミノ脂質は、アミノ頭部基が例えばグリセロールあるいはプロパンジオール残基のような足場によって1個以上の脂肪酸もしくは脂肪アルキル基に結合している脂質である。このようなアミノ脂質の構造式は次のとおりである:
【化2】


但し、R11及びR12の少なくとも一方、望ましくは両方がC12からC24のアルキル基あるいはアシル基であり、枝分かれのあるものでもないものでもよく、飽和していても不飽和でもよい。R11またはR12のどちらか一方のみが長鎖のアルキル基あるいはアシル基である態様においては、もう一方のR11またはR12は水素もしくは炭素原子を1個から6個もつ短いアルキル基あるいはアシル基である。残りの基、R13とR14は、一般には水素またはC1からC4のアルキルである。この態様の場合、アミノ脂質は3−モノアルキルあるいはジアルキルアミノ−1,2−プロパンジオールの誘導体とみなすことができる。適切なアミノ脂質の例は、DODAP(1,2−ジオレオイルオキシ−3−ジメチルアミノ−プロパン、図2A参照)である。その他のアミノ脂質として、別の脂肪酸基や、アルキル置換基が異なるものを含めた他のジアルキルアミノ基(例えばN−エチル−N−メチルアミノ−、N−プロピル−N−エチルアミノ−など)が含まれる。R11及びR12が共に長鎖のアルキル基またはアシル基である態様の場合、同じでも異なっていてもよい。一般に、飽和度の低いアシル鎖をもつアミノ脂質は、特にろ過滅菌の目的で複合体の大きさを約0.3ミクロン以下にする必要がある場合に、サイズの調節が容易である。不飽和脂肪酸を含み炭素鎖の長さがC14からC22の範囲であるアミノ脂質が特に望ましい。アミノ基とアミノ脂質の脂肪酸または脂肪アルキル部分を分離するために、他の足場を利用することもできる。適切な足場に関しては、本分野においてよく知られている。
【0032】
DODAPに関連する化合物で、本発明に特に有用であるものとしては次の化合物が挙げられる:1−オレオイル−2−ヒドロキシ−3−N,N−ジメチルアミノプロパン;1,2−ジアシル−3−N.N−ジメチルアミノプロパン;及び1,2−ジデカノイル−1−N,N−ジメチルアミノプロパン。さらに、DODAPまたはDODMAの頭部基を種々に修飾した物質、あるいは次の一般構造式をもつ化合物:
を適切なpKaが得られるよう修飾することが可能である。本発明において有用である適切な頭部基の修飾として次のものが挙げられる:
【化3】


他の態様において、当該アミノ脂質は、スフィンゴシンなど、天然産アミノ脂質の誘導体であることもできる。スフィンゴシンの適切な誘導体としては、アミノ官能基に懸垂ヒドロキシル基またはアルキル基、好ましくは低級アルキル基に付加した脂肪酸鎖を有する誘導体がある。
【0033】
本発明の第一の脂質成分として使用されるその他脂質としては、(毒性の点でその用途は限られるが)ホスフィン脂質、及びカルボン酸脂質の誘導体がある。これらは、通常約5のpKa値を有し、したがって、カチオン系の治療剤と共に使用できる。
【0034】
第二の脂質成分は、生成過程で脂質粒子の凝集を減らす傾向にあるので、処方工程を改良する目的で選択される。その理由は、粒子が立体的に安定化し、形成過程で電荷により誘発される凝集を防止するためと考えられる。この目的に適した脂質の例としては、ポリエチレングリコール(PEG)で修飾した脂質,モノシアロガングリオシド,Gm1及びATTA(米国特許出願 SN 60/073,852及び米国特許出願 SN 60/(未受理、TT&C弁護士訴訟記録第16303-005810号、共に当該即時発明の被許諾者に対して許諾済であり、本明細書に参考文献として引用した)などのポリアミドオリゴマー(「PAO」)がある。PEG,Gm1またはATTAのように未荷電、親水性、立体障害部分を有し、処方過程で凝集を防止するその他化合物も、脂質にカップリングさせ、本発明の方法及び組成物の第2脂質成分として使用することができる。通常、第二の脂質成分の濃度は、約1%から15%(脂質に対するモルパーセント)である。
【0035】
本発明で使用し得るPEG修飾脂質(または脂質とポリオキシエチレンの共役物)の特定例に、PEG部分を脂質小胞の表面に固定するために、種々の「投錨(anchoring)」脂質タンパク質を加えることが可能である。適切なPEG修飾脂質の例としては、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン及びホスファチジル酸(図2B、構造A及びBを参照のこと)、PEG修飾ジアシルグリセリン及びジアルキルグリセリン(図2B、構造C及びDを参照のこと)、PEG修飾ジアルキルアミン(図2B、構造E)、及びPEG修飾1,2−ジアシルオキシプロパン−3−アミン(図2B、構造F)がある。特に好ましいのは、共係争中のUSSN 08/486,214に記載され、参考文献として本明細書にも引用した、PFG修飾セラミド共役物(例えば、PEG-CerC14またはPEG-CerC20)である。
【0036】
PEGまたはATTAなどの立体的に大きな部分を脂質錨部に共役させた本態様においては、脂質錨部の選択はどんな様式で脂質粒子と会合しているかに依存する。MePEG(分子量2000)−ジアステアロイル−ホスファチジルエタノールアミン(PEG-DSPE)が、当該粒子が循環系から除かれるまで、恐らく数日間、リポソームと会合したままの状態で残ることは良く知られている。PEG-CerC20などその他共役物も、類似の滞在能力を有している。しかし、ある分析結果によれば、PEG-CerC14が血清に接触すると、当該処方から抜け出して、60分以内のT1/2で血清との間で速やかに交換反応が行われる。米国特許出願SN 08/486,214に記述したように、少なくとも3つの特性が当該交換反応速度に影響を与える。即ち、アシル鎖の長さ、アシル鎖の飽和度、及び立体障害ヘッド基の大きさである。本発明においては、これらの特徴を適切に変化させた化合物を使用することができる。
【0037】
第一及び第二の脂質成分の他にも、当該脂質混合物は、さらに他の脂質種を含むことができる。これらの追加脂質は、例えば、中性脂質またはステロールである。
【0038】
中性脂質が脂質混合物の中に存在する場合、生理pHにおいて、未電荷または中性の双極性イオンの形で、何種類かが存在する可能性がある。このような脂質には、例えばジアシルホスファチジルコリン,ジアシルホスファチジルエタノールアミン,セラミド,スフィンゴミエリン,セファリン及びセレブロシドなどがある。本発明による錯体中で使用するために中性脂質を選択する場合、通常、例えば血流中のリポソームの大きさ及びリポソームの安定性を考えて選択される。好ましくは、当該中性脂質成分は、2つのアシル基を有する脂質(即ち、ジアシルホスファチジルコリン及びジアシルホスファチジルエタノールアミン)である。種々の鎖長及び飽和度の種々のアシル鎖基を有する脂質が市販されているか、あるいは良く知られた方法で単離または合成できる。1つの態様グループにおいては、炭素鎖長がC14からC22の範囲にある飽和脂肪酸を含む資質が好ましい。他の態様グループにおいては、炭素鎖長がC14からC22の範囲にあるモノまたはジ不飽和脂肪酸を有する資質を使用する。さらに、飽和及び不飽和の脂肪酸鎖の混合物を有する脂質を使用することもできる。本発明においては、中性脂質としてDOPE,DSPC,POPCまたは関連ホスファチジルコリンを使用することが好ましい。本発明において有用な中性脂質は、セリン及びイノシトールなど、他のヘッド基を有するスフィンゴミエリンまたはリン脂質によっても構成される。
【0039】
脂質混合物のステロール成分が存在する場合は、これらの成分は、従来使用されていたリポソーム,脂質小胞または脂質粒子の調製分野で使用されてきた如何なるステロールであっても良い。好ましいステロールはコレステロールである。
【0040】
脂質の混合物は、通常、脂質のアルコール性溶媒溶液である。使用するアルコールとしては、親水性で、低分子量の、水に混和可能な、炭素数が10未満のアルコール、好ましくは炭素数が6未満のアルコールが望ましい。本発明において使用される代表的なアルコールは、エタノール,メタノール,プロパノール,ブタノール,ペンタノール並びにエチレングリコール及びプロピレングリコールである。これらの中で、特にエタノールが望ましい。多くの態様において、当該アルコールは、市販されている形で使用される。例えば、エタノールは、絶対エタノール(100%)または95%エタノールとして使用することができる。残りの部分は水である。
【0041】
1つの説明態様において、脂質混合物はアミノ脂質,中性脂質(アミノ脂質を除く),ステロール(例えばコレステロール)及びPEG修飾脂質(例えばPEGセラミド)混合物のアルコール溶液である。優先態様において、脂質混合物は、特にアミノ脂質,中性脂質,コレステロール及びPEGセラミド混合物のアルコール溶液、さらに好ましくはエタノール溶液で構成されている。さらに優先的な態様においては、第一の溶液は、モル比で約10−35%のアミノ脂質:25−45%の中性脂質:35−55%のコレステロール:0.5−15%のPEGセラミドで構成される上記脂質混合物で構成されている。さらに他の優先態様においては、第一の溶液は本質的にDODAP,DSPC,コレステロール及びPEG-CerC14で、より好ましくはモル比で約10−35%のDODAP:25−45%のDSPC:35−55%のコレステロール:0.5−15%のPEG-CerC14で構成される。優先態様の他のグループにおいては、これらの組成物における中性脂質はPOPCまたはSMで置き換えられている。
【0042】
本発明によれば、当該脂質混合物に治療剤、好ましくは核酸の緩衝水溶液を添加する。脂質混合物を添加した治療剤(核酸)の当該緩衝水溶液は、通常、脂質混合物中でプロトンを付加し得る脂質pKa値より小さいpH値を有する溶液である。本発明において使用されるように、「核酸」という用語は、10から100,000のヌクレオチド残基を有するオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを含むことを意味する。アンチセンス及びリボザイムオリゴヌクレオチドは、特に好ましい。「アンチセンスオリゴヌクレオチド」または単に「アンチセンス」という用語は、標的とする核酸に対して相補的であり、かつ約10個から約50個、より好ましくは約15個から約30個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドを含むことを意味している。この用語は、所望の標的遺伝子に対して正確には相補的ではないアンチセンス配列も包含する。したがって、本発明は非標的の比活性がアンチセンスとともに発見された瞬間、または標的配列の1つまたは2つ以上の不一致を含むアンチセンス配列が特定用途で最も好ましい場合に利用できる。
【0043】
本発明に従って脂質核酸粒子の中で使用される核酸には、既知の核酸の全ての形態が含まれる。したがって、当該核酸は、前にヌクレアーゼ抵抗及び血清の安定性を高めるために使用された種類の修飾された核酸であり得る。しかし、驚くべきことに、天然核酸ポリマーのホスホジエステル結合に何らの修飾も行わない核酸から脂質核酸粒子を処方する目的で、本発明の方法により好ましい治療剤を調製することもでき、未修飾ホスホジエステル核酸(即ち、全結合がホスホジエステル結合である核酸)の使用が、本発明における優先態様となる。本発明において有用なさらに他の核酸には、合成または前形成された、ポリ(IC)ICなどのポリRNAがある。
【0044】
本発明で使用される核酸は、単一ストランドのDNAまたはRNA、あるいは二重ストランドのDNAまたはDNA−RNAハイブリッドのいずれであっても良い。二重ストランドDNAの例には、構造遺伝子,制御領域及び終始領域を含む遺伝子、及びプラスミドDNAのような自己複写系などがある。単一ストランド核酸には、アンチセンスオリゴヌクレオチド(上記に述べたように、DNA及びRNAに対して相補的)、リボザイム及びトリプレックス形成オリゴヌクレオチドなどがある。
【0045】
安定性を増すために、単一ストランド核酸のあるものはヌクレオチド結合の一部または全部がホスホロチオエート,ホスホロジチオエート,ホスホロセレネーテ,ボラノホスフェート,メチルホスフォネート,またはO−アルキルホスホトリエステル結合などの安定な非ホスホジエステル結合で置換されている。ホスホロチオエート核酸(PSオリゴス)は、ヌクレオチド間結合の架橋されていない酸素の一つが硫黄で置換されたオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドである。これらのPSオリゴは、ヌクレアーゼ崩壊に対して抵抗性を有しているが、それでも配列固有活性を保持している。同様に、ホスホロジチオエート核酸は、ヌクレオチド間結合の架橋していない酸素のそれぞれが硫黄原子で置換されているオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドである。これらのホスホロジチオエートオリゴスも、天然のホスホジエステル結合の形態より強いヌクレアーゼ抵抗性を有していることが証明されている。その他の有用な核酸誘導体には、架橋酸素原子(ホスホエステル結合を形成している酸素原子)が-S-,-NH-,-CH-などで置換された核酸分子などがある。これらがアンチセンスまたは使用される他の核酸へ変化しても、これにより、核酸の負の電荷が完全には影響を受けないことが望ましい。したがって、本発明では、アンチセンス及びその他結合の一部が中性のホスホン酸メチルまたはホスフォラミジン酸メチルなどで置換された核酸の使用を考慮している。中性の結合を使用する場合、核酸結合の置換率は80%未満が望ましく、50%未満であればさらに望ましい。
【0046】
当技術に精通した者であれば、病気の治療など生体内で使用するには、合理的な経験則として、硫黄化配列は遊離の形態で作用し、また、どんな化学構造であっても、同じ配列の封入粒子も同様に有効であることは実感できるであろう。他の方法ではアンチセンス治療に効力を示さないような条件及び形式でも、本発明の封入粒子は効力を示し、広い生体内用途を有している。当技術に精通した者なら、古いモデルに本発明を適用することにより、アンチセンス治療に効力を発揮できるようになることが容易に理解できるであろう。さらに、本発明を使用することにより、一旦は捨て去られたアンチセンス配列または化学構造を再度訪れ、その効力を再発見することができる。
【0047】
本発明により効力を発揮することが知られているアンチセンス配列治療(一般に標的に固有であると考えられている)には、次のようなものがある。
種名: 遺伝子標的、化学構造及び配列
PS-3082 ネズミICAM-1(細胞間接着分子-1)(ホスホロチオエート)
TGCATCCCCCAGGCCACCAT (SEQ ID. No. 1)
PO-3082 ネズミICAM-1(ホスホジエステル)
TGCATCCCCCAGGCCACCAT (SEQ ID. No. 1)
PS-2302 ヒトICAM-1(ホスホロチオエート)
GCCCAAGCTGGCATCCGTCA (SEQ ID. No. 2)
PO-2302 ヒトICAM-1(ホスホジエステル)
GCCCAAGCTGGCATCCGTCA (SEQ ID. No. 2)
PS-8997 ヒトICAM-1(ホスホロチオエート)
GCCCAAGCTGGCATCCGTCA (SEQ ID. No. 2)
PO-8997 ヒトICAM-1(ホスホジエステル)
GCCCAAGCTGGCATCCGTCA (SEQ ID. No. 2)
US3 ヒトerb-B-2遺伝子(ホスホジエステルまたはホスホロチオエート)
GGT GCT CAC TGC GGC (SEQ ID. No. 3)
LR-3280 ヒトc-myc遺伝子(ホスホロチオエート)
AAC GTT GAG GGG CAT (SEQ ID. No. 4)
Inx-6298 ヒトc-myc遺伝子(ホスホジエステル)
AAC GTT GAG GGG CAT (SEQ ID. No. 4)
Inx-6295 ヒトc-myc遺伝子(ホスホジエステルまたはホスホロチオエート)
T AAC GTT GAG GGG CAT (SEQ ID. No. 5)
LR-3001 ヒトc-myb遺伝子(ホスホジエステルまたはホスホロチオエート)
TAT GCT GTG CCG GGG TCT TCG GGC (SEQ ID. No. 6)
c-myb ヒトc-myb遺伝子(ホスホジエステルまたはホスホロチオエート)
GTG CCG GGG TCT TCG GGC (SEQ ID. No. 7)
IGF-1R ヒトIGF-1R(インスリン成長因子1レセプター)
(ホスホジエステルまたはホスホロチオエート)
GGA CCC TCC TCC GGA GCC (SEQ ID. No. 8)
LR-42 ヒトIGF-1R(ホスホジエステルまたはホスホロチオエート)
TCC TCC GGA GCC AGA CTT (SEQ ID. No. 9)
EGFR ヒトEGFR(上皮成長因子レセプター)
(ホスホジエステルまたはホスホロチオエート)
CCG TGG TCA TGC TCC (SEQ ID. No. 10)
VEGF ヒトVEGF(血管内皮成長因子)遺伝子
(ホスホジエステルまたはホスホロチオエート)
CAG CCT GGC TCA CCG CCT TGG (SEQ ID. No. 11)
PS-4189 ネズミPKC−アルファ(ホフォキナーゼ C−アルファ)遺伝子
(ホスホジエステルまたはホスホロチオエート)
CAG CCA TGG TTC CCC CCA AC (SEQ ID. No. 12)
PS-3521 ヒト PKC−アルファ(ホスホジエステルまたはホスホロチオエート)
GTT CTC GCT GGT GAG TTT CA (SEQ ID. No. 13)
Bcl-2 ヒトbcl-2遺伝子(ホスホジエステルまたはホスホロチオエート)
TCT CCC AgC gTg CgC CAT (SEQ ID. No. 14)
ATG-AS ヒトc-raf-1タンパク質キナーゼ
(ホスホジエステルまたはホスホロチオエート)
GTG CTC CAT TGA TGC (SEQ ID. No. 15)
VEGF-R1 ヒトVEGF-R-1(血管内皮成長因子レセプター1)リボザイム
GAG UUG CUG AUG AGG CCG AAA GGC CGA AAG UCU G (SEQ ID. No. 16)
これらの配列を使用することにより、本発明は、哺乳類の験体における遺伝子の異常表現により特徴付けられる腫瘍などの病気を治療する方法を提供する。当該方法は、脂質で封入した治療用核酸粒子を、本発明に記述した方法に従って調製する諸段階で構成される。ここに、当該治療用核酸成分は、特に異常表現された遺伝子をハイブリッド化し、粒子の形状で治療的有効量を哺乳類験体に投与する。これらの配列は、勿論、本発明を使用して得ることができる治療用オリゴヌクレチド化合物の代表例である。標的遺伝子の種類により、標的遺伝子のコード化領域,イントロン,5'未翻訳領域(5'UTR),翻訳開始領域または3'UTRなどの部分にハイブリッド化するアンチセンスが、治療に使用できることは良く知られている。したがって、上表に示した配列は、アンチセンスの単なる説明に過ぎない。さらに、提案されている代替化学構造(即ち、背景を見ること)は全て本発明により、全種類のリボザイムとともに、その効能を試験することができる。簡単に言えば、上表の化合物は、治療に使用され、かつ本発明で使用される、種々の化学構造を有する5−50量体オリゴヌクレオチドの広い分類を表している。使用できるその他オリゴヌクレオチドとしては、前に遊離形態で効用を示した全化合物がある。
【0048】
本発明を一般的に記載し、アンチセンスオリゴヌクレオチドに関して例証したが、他の核酸についても、これを処方し、治療に使用し、または細胞タンパク質の表現を高める目的で、これを検体に投与することができる。したがって、当該核酸は、しばしば選択した宿主細胞中で複製できるように設計したプラスミドである表現ベクター、クローン化ベクターなどでもあり得る。表現ベクターは、当該技術で良く知られた方法により、自発的に複製し、または宿主細胞のゲノム中へ挿入することにより複製することができる。自発的に複製するベクターは、選択した宿主細胞中で機能する複製起源または自発的な複製配列(ARS)を有するであろう。しばしば、ベクターは複数の宿主細胞、例えばクローン化及び組立ての目的でE.coli、表現の目的で哺乳動物の細胞の中で使用できることが望ましい。
【0049】
さらに、当該核酸には、相補核酸の存在または不存在に関する臨床診断の方法を提供する目的で、標識(例えば放射性標識、蛍光標識または色標識など)を組み込むことができる。したがって、当該核酸またはヌクレオチドポリマーは、ゲノムのDNA,cDNA,mRNAを含む核酸ポリマー、または核酸類似体、例えばSteinら(Science 261:1004-1011(1993))がその総説及び米国特許No.5,264,423及び5,276,019で述べたアンチセンス誘導体を含むオリゴヌクレオチドでもあり得る。これら文献による開示内容も、本明細書に参考として引用した。さらに当該核酸は、プロモーター配列及びエンハンサー配列を含む複写及び翻訳制御配列をコード化することができる。
【0050】
本発明において使用する核酸は、1つまたは2つ以上の糖部分並びに1つまたは2つ以上のピリミジンまたはプリン塩基、あるいはそのいずれかにおいて修飾が行われた核酸を含むこともできる。当修飾には、1つまたは2つ以上のヒドロキシル基をハロゲン,アルキル基,アミン,アジド基,あるいはエーテルまたはエステルのような官能基による置換などがある。さらに、糖の全てを、立体的及び電子的に類似した構造で置換することもできる。これらの類似構造には、アザ糖及び炭素環型糖類似体などがある。プリンまたはピリミジン塩基部分の修飾には、例えばプリン及びピリミジンのアルキル化、アシル化、その他当該技術に精通した者に知られているヘテロ環状置換基などによる修飾がある。上に述べたホフォジエステル結合への修飾の場合のように、糖または塩基部分の全ての修飾は、通常核酸に関連した少なくとも一部の負電荷を保存するように作用することが望ましい。特に修飾は、核酸の保有する全負電荷の少なくとも10%を越える負電荷を保存することが望ましく、全負電荷の50%を越える負電荷を保存することがさらに望ましく、全負電荷の80%を越える負電荷を保存することが最も好ましい。
【0051】
本発明による方法に使用される核酸は、天然の資源からこれを単離することができ、ATCCまたはジーンバンク(GenBank)ライブラリーなどの資源からこれを得ることもでき、あるいは合成的方法によりこれを調製することもできる。合成核酸は、種々の溶液法または固相法によりこれを調製することができる。一般的には、固相合成法により調製するのが好ましい。亜リン酸トリエステル,ホスホトリエステル及びH−ホスフォン酸エステルによる核酸の固相合成法の詳細手順は公知である。例えば、Itakura,米国特許No.4,401,796;Caruthersら,米国特許No.4,458,066及び4,500,707号;Beaucageら;Tetrahedron Lett.,22:1859-1862 (1981);Matteucciら,J.Am.Chem.Soc.,103:3185-3191(1981);Caruthersら,Genetic Engineering,4:1-17(1982);オリゴヌクレオチドの合成「実際的な方法」(Gait編,IRL Press,ワシントンD.C. (1984),第2章(Jones),第3章(Atkinsonら),第4章(Sproatら);Froehlerら,Tetrahedron Lett.,27:469-472(1986);Froehlerら,Nucleic Acids Res.14:5399-5407(1986);Sinhaら,Tetrahedron Lett.,24:5843-5846(1983),Sinhaら,Nucl.Acids Res., 12:4539-4557(1984) を下記を参照されたい。これらの文献は、参考のために本明細書に引用した。
【0052】
上記の通り、治療剤(核酸)の当該溶液は、緩衝水溶液で構成される。好ましい緩衝溶液は、(アニオン性治療剤の場合)第一の脂質成分のpKa値より低いpH値を提供する緩衝溶液である。適切な緩衝溶液の例として、クエン酸塩,リン酸塩,酢酸塩及びMESなどの水溶液がある。特に好ましい緩衝溶液は、クエン酸塩緩衝溶液である。
【0053】
緩衝溶液のアニオン濃度は、封入されているオリゴヌクレオチドの化学構造により異なり、1−1000mMの範囲が好ましく、高充填レベルを達成するには、緩衝溶液濃度の最適化が重要である(図15及び20を参照のこと)。これに代わるものとして、塩化物、硫酸塩などでpH5−6まで酸性化した純水が使用できる。この場合、5%のグルコースまたは他の、粒子膜を横切って浸透圧ポテンシャルをバランスさせるような非イオン系の溶質を添加するのが適切である。このとき、当該粒子が透析してエタノールを除去し、pH値を増加させ、または通常の生理食塩水のように医薬品として使用できる担体と混合する。緩衝溶液中の治療剤(核酸)の量は変更できるが、通常は約0.01mg/mLから約200mg/mLの範囲にあり、約0.5mg/mLから約50mg/mLの範囲にあるのが望ましい。
【0054】
脂質と治療剤(核酸)の緩衝水溶液を混合して、中間混合物を得る。この中間混合物は、通常、治療剤(核酸)を封入した脂質粒子の混合物である。さらに、この中間混合物は、負の電荷を有する核酸と正の電荷を有する脂質粒子表面(アミノ脂質またはプロトンを供給する第一の脂質成分を構成する他の脂質は、当該脂質上のプロトン供給基のpKa値より小さいpH値の緩衝溶液中で正の電荷を有する)のイオン吸引作用により、脂質粒子(リポソームまたは脂質小胞)の表面に付着した治療剤(核酸)部分を包含している。優先態様の1グループにおいて、脂質混合物は脂質のアルコール溶液であり、混合時におけるアルコール含有量が約20体積%から約45体積%になるように調節される。混合物を混合するには種々の方法があるが、そのいずれを使用するかは製造規模により異なる場合が多い。例えば、総体積が約10−20mL以下の場合は、この溶液を試験管の中で混合し、渦巻ミキサーで掻き混ぜることができる。大規模工程の場合は、適切な製造規模のガラス容器の中でこれを実施することができる。
【0055】
脂質で封入した治療剤(核酸)の複合剤は、脂質混合物と治療剤(核酸)の緩衝水溶液を組み合わせることにより製造されるが、この複合剤は、粒径分布を比較的狭くするように粒径を調節することができる。本発明が提供する組成物の粒径は、その平均が約70nmから約200nmの範囲内にあることが望ましく、約90nmから約130nmの範囲にあればさらに望ましい。リポソームを希望の大きさに調節するには、幾つかの方法がある。大きさを決める方法については、米国特許No.4,737,323に記載されている。この特許は、参考文献として本明細書に引用した。リポソームの懸濁液を、水浴超音波法または探針超音波法により破壊すると、段階的に大きさが減少し、遂には0.05ミクロン未満の単一小胞層(SUVs)が得られる。もう1つの方法は均質化である。この方法は、剪断エネルギーにより大きなリポソームを細分化する。代表的な均質化手順においては、従来のレーザー光粒径測定法により測定したリポソームの粒径分布(通常約0.1ミクロンから0.5ミクロンの範囲内にある)が希望の分布になるまで、標準の乳液ホモジナイザーを通して多薄片小胞を再循環する。いずれの方法においても、従来のレーザー光による粒径測定法により、粒径分布を監視することができる。本発明においては、押出法を使用して大きさの均一な小胞を得た。
【0056】
リポソーム組成物をポリカーボネート膜または不均整セラミック膜の小孔を通して圧ろ過すると、比較的に正確な粒径分布が得られる。通常、所望の粒径分布を有するリポソーム複合体が得られるまで、当該膜を1回または2回以上通してこの懸濁液を循環させる。順次孔径を小さくしてリポソームを圧ろ過して、リポソームを順次小さくして行くことができる。形成される脂質−核酸組成物は、サイジング(sizing)を行うことなくそのまま使用することもできる。
【0057】
さらに本発明には、脂質−核酸組成物の脂質表面上の電荷を、少なくとも一部中和する段階がある。表面電荷を少なくとも部分的に中和すると、未封入のアンチセンスまたは他の核酸が脂質粒子の表面から遊離してくるので、従来の方法によりこれを組成物から除去することができる。未封入の核酸及び表面に吸着した核酸は、緩衝溶液を交換して得られた組成物からこれを除去することが望ましい。例えば、クエン酸塩緩衝溶液(pH約4.0、当該組成物を形成するために使用される)をHEPESで緩衝した生理食塩水緩衝溶液(HBSのpHは約7.5)で置換すると、リポソームの表面が中和され、アンチセンスが表面から遊離する。遊離したアンチセンスは、次に標準的なクロマトグラフ法により、これを除去することができる。次に、使用する脂質のpKa値よりpH値の高い緩衝溶液に切り換えることができる。
【0058】
他の側面において、本発明は脂質で封入された核酸組成物、好ましくは上記に詳述した方法により調製された核酸組成物を提供する。したがって、上記の脂質比率及び優先核酸種を有する組成物を使用するのが望ましい。
【0059】
さらに他の側面において、本発明は、複合体の脂質部分がある種のアニオン的性質を有する脂質を含み、封入成分が正の電荷を有する、電荷の正負部分が逆転した治療剤も含む。正の電荷を有する薬剤の一例として、正の電荷を有するペプチドまたはタンパク質がある。本質的に同じ方法により、アニオン性脂質のpKa値を越えるpH値においてリポソームで封入されたタンパク質が形成され、次に緩衝溶液をpH値が低いものに交換することにより表面が中和される(この方法によっても、表面に結合したペプチドまたはタンパク質が放出される)。
IV. 医薬用調製物
上記方法により調製した脂質−核酸組成物は、これを単独で、または投与ルート及び標準医療慣行に従って選択された、生理的に問題の無い担体(例えば生理的食塩水またはリン酸塩緩衝溶液)との混合物として、これを投与することができる。
【0060】
本発明の脂質−核酸組成物で構成される医薬組成物は、標準的方法に従って調製され、さらに医薬品として問題の無い担体で構成される。一般に、医薬品として問題の無い担体として、通常の食塩水が使用される。その他の適切な担体としては、例えば水、緩衝水溶液、0.9%食塩水、0.3%グリシンなどがある。この他に、安定性を改善する目的でアルブミン,リポタンパク質,グロブリンなどの糖タンパク質が使用される。食塩水または他の塩を含む担体で構成される組成物においては、脂質粒子が形成された後で、当該担体を添加することが望ましい。したがって、脂質−核酸組成物が形成された後で、当該組成物を、食塩水のような医薬品に適した担体で希釈するのが普通である。得られた医療用調製物は、従来の良く知られた方法で滅菌することができる。次に、使用に先立って当該水溶液を包装するかまたは無菌状態でろ過し、減圧下でこれを凍結乾燥することができる。投与前に、この凍結乾燥製剤に滅菌水溶液を加える。生理的条件に近づけるために、pH調節剤及び緩衝剤、緊張調節剤など、及び酢酸ナトリウム,乳酸ナトリウム,塩化ナトリウム,塩化カリウム,塩化カルシウムなど医薬品として問題のない補助物質を、必要に応じて当該組成物に添加することができる。さらに、貯蔵中、フリーラジカルに対して脂質を保護し、脂質の過酸化物による損傷を防ぐために、当該脂質懸濁液に脂質保護剤などを添加することができる。αトコフェロールなどの親油性フリーラジカル抑制剤及びフェリオキサミンなどの鉄固有キレーターも添加剤として適している。
【0061】
医薬品製剤における脂質−核酸複合体の濃度は、約0.01重量%未満から、通常は約0.05−5重量%、高い場合には10−30重量%と、広い範囲でこれを変化させることができ、選択した特定の投与方法に合わせ、主に流体の体積、粘度などにより選択される。例えば、治療に使用する流体量を減らすには濃度を高めれば良い。このことは、アテローム性動脈硬化による心不全またはひどい高血圧の患者にとっては特に望ましい。あるいは、刺激性脂質で構成される複合体は低濃度に希釈して、投与部位における炎症を弱めることができる。態様の1グループにおいて、当該核酸に標識を付け、これを(相補核酸が存在すればそれを指示させることにより)診断に使用することができる。この例では、複合体の投与量は、使用する標識の種類、診断する病気の状態、及び臨床医の判断により決定する。しかし、この投与量は、体重1kg当たり約0.01mgと約50mgの間、好ましくは約0.1mgと約5mgの間にあるのが普通である。
【0062】
上記の通り、本発明の脂質−治療剤(核酸)組成物には、ポリエチレングリコール(PEG)で修飾したリン脂質、PEG−セラミド、またはガングリシド GM1修飾脂質または凝集の防止または抑制に有効な他の脂質も含まれる。これらの成分を添加すると、単に複合体の凝集を防止するだけでなく、循環の有効期間を高め、標的組織への脂質−核酸組成物の挿入量を高めることもできる。
【0063】
本発明の脂質−拡散組成物は、キット入りの製品としても提供される。当該キットは、通常、種々の要素を入れるために区分した入れ物でできている。当該キットには、本発明の組成物、好ましくはその脱水物または濃縮物が、これら薬剤の再水和または希釈及び投与方法を書いた説明書とともに入っている。さらに他の態様において、脂質で封入した当該治療剤(核酸)の粒子は、脂質粒子の表面に標的部分が付着してできている。標的部分(例えば抗体,タンパク質,小分子模倣物(mimetics) ,ビタミン,オリゴ糖及びヒアルロン酸)を脂質(本発明の組成物中で使用されるものなど)に付着する方法は、当技術に精通する者にはよく知られている。
【0064】
当該脂質−核酸組成物の投与量は、脂質に対する核酸の比率、並びに患者の年齢、体重及び症状に従って、投与を行う担当医師の意見に従って定められる。
V.脂質封入治療剤を細胞中に導入する方法
本発明の脂質−治療剤組成物は、これらの治療剤を細胞中に導入する目的で使用することができる。核酸を含む組成物の場合、本発明の組成物を核酸、好ましくはプラスミド,アンチセンス及びリボザイムを、細胞の中へ導入する目的で使用することができる。したがって、本発明は、核酸などの治療剤を細胞の中へ導入する方法も提供する。当該方法は、先ず上記の方法で組成物を形成させ、次にこの組成物を標的細胞に移入するに充分な時間接触させることにより、生体外または生体内で実施される。
【0065】
本発明の組成物は、ほぼ全種類の細胞に吸着させることができる。一旦吸着すると、当該組成物は細胞の一部に取り込まれる(endocytosed)か、細胞膜で脂質を交換するか、または当該細胞と融合する。これらいずれかの経路を経由して、組成物の核酸部分が移行しまたは導入される。特に融合が起こる場合、リポソーム膜が細胞膜と一体化し、リポソームの内容物が細胞内流体と合体する。これを生体外で行う場合、細胞と脂質−核酸組成物の接触は、これを生物学的に親和性のある媒体中で行う。組成物の濃度は、その用途によって広い範囲で変えることができるが、一般にその濃度は約1μmolと約10 mmolとの間にある。細胞の脂質−核酸組成物による処理は、一般に生理温度(約37 ℃)で約1時間から6時間、好ましくは約2時間から4時間に亘って行われる。生体外でこれを適用する場合、核酸の送入は、植物細胞または動物細胞、脊椎動物または無脊椎動物、及び組織または細胞の種類の別を問わず、培養液中で増殖させた全ての細胞にこれを適用することができる。優先態様においては、当該細胞として動物の細胞、さらに好ましくは哺乳動物の細胞、最も好ましくはヒトの細胞を使用する。
【0066】
優先態様の1グループにおいては、約10個/mLから約10個/mL、より好ましくは約2×10個/mLの細胞密度を有する脂質−核酸組成物粒子の懸濁液を、60−80%の集密的平板培養細胞に添加する。細胞に添加する懸濁液の濃度は、好ましくは約0.01μg/mLから0.2μg/mL、より好ましくは約0.1μg/mLである。
【0067】
代表的な用途には、よく知られた、治療に有効なポリペプチドをコード化するDNAまたはmRNA配列を細胞内へ導入する目的で行う移入手順を使用する。このようにして、不足または欠乏している遺伝子生成物を与えることにより、遺伝病(デュシェーヌ異栄養病については、Kunkelら,Brit.Med.Bull.45(3):630-643 (1989)、嚢胞性繊維症については、Goodfellow,Nature 341:102-103(1989)を参照のこと)の治療が行われる。本発明による組成物のその他用途として、アンチセンスオリゴヌクレオチドの細胞内導入(Bennettら,Mol.Pharm.41:1023-1033(1992)を参照のこと)などがある。
【0068】
あるいは、本発明の組成物は、当技術に精通する者に知られている方法により、生体内における細胞移入にこれを使用することもできる。特に、本明細書に引用したZhuら,Science 261:209-211(1993)においては、DOTMA-DOPE複合体を使用して、サイトメガロウィルス(CMV)−クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)発現プラスミドを静脈内に送入する方法について記述されている。参考のために本明細書に引用したHydeら,Nature 362:250-256(1993) には、リポソームを使用して、マウスの嚢胞性繊維症膜内外電導度調節(CFTR)遺伝子を、気道上皮及び肺胞へ送入する方法について記述されている。参考のために本明細書に引用したBrighamら,Am.J.Med.Sci.298:278-281(1989)には、細胞内酵素であるクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)をコード化する機能原核遺伝子により、マウスの肺に生体内移入する方法について記載されている。したがって、本発明の組成物は、感染症の治療にもこれを使用することができる。
【0069】
生体内投与を行う場合、当該医薬組成物は腸管外、即ち、関節内,静脈内,腹腔内,皮下または筋肉内投与を行うことが望ましい。当該医薬組成物は静脈内または腹腔内にこれを巨丸剤(bolus)注射で投与するのが、さらに望ましい。例えば、参考のために本明細書に引用したStadlerら,米国特許No.5,286,634を参照のこと。細胞内核酸送入は、Straubringerら,Method in Enzymology,Academic Press,ニューヨーク,101:512-527(1983);Manninoら,Biotechniques 6:682-690(1988);Nicolauら,Crit.Rev.Ther.Drug Carrier Syst.6:239-271 (1989); Behr,Acc.Chem.Res.26:274-278(1993)にも述べられている。さらに他の脂質を主体とする治療剤を投与する方法は、例えば、Rahmanら,米国特許No.3,993,754;Sears,米国特許No.4,145,410;Papahadjopoulosら,米国特許No.4,235,871;Schneider,米国特許No.4,224,179;Schneider,米国特許No.4,224,179;Lenkら,米国特許No.4,522,803;Fountainら,米国特許No.4,588,578にも述べられている。
【0070】
他の方法として、当該医薬品製剤を標的組織に直接塗布して、これと接触させても良い。当該塗布は、局所的な「開手順」または「閉手順」で行うことができる。「局所塗布」とは、皮膚,中咽頭,外耳管など、環境に曝露されている組織に、医薬用調製物を直接塗布することを意味している。「開手順」とは、患者の皮膚を切開し、皮膚の下にある医薬用調製物を塗布する組織を直接露出させる手順である。これは、通常、肺の治療を行うために開胸し、腹部の内臓を治療するために開腹し、その他標的組織を直接治療する外科的な手順により達成される。「閉手順」とは、内部標的組織を直接露出させず、皮膚の小さな傷を通して器具を挿入することにより治療する、侵略的な手順である。例えば、針洗浄法により腹腔に製剤を投与することができる。同様に、通常、脊髄性知覚麻痺患者または脊髄メトラザミド幻覚(metrazamide imaging)患者に腰椎穿刺を行ってから適切な姿勢を取らせ、輸液法により髄膜または脊髄に医薬用調製物を投与することもできる。あるいは、内視鏡装置を通して当該調製物を投与することもできる。
【0071】
当該脂質−核酸組成物を、アエロゾルとして肺の中へ吸入投与(Brighamら,Am.J.Sci.298(4):278-281(1989)を参照のこと)することもでき、または病気の部位へ直接注入(Culver,Human Gene Therapy,Mary Ann Liebert,Inc.,Publishers,ニューヨーク,pp70-71(1994)を参照のこと)することもできる。
【0072】
本発明の方法は、種々の宿主の中でこれを実施することができる。好ましい宿主としては、ヒト,ヒト以外の霊長類,イヌ,ネコ,ウシ,ウマ,ヒツジなどの哺乳類がある。
VI.
材料及び方法
脂質
ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC),スフィンゴミエリン(SM)及びパルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)はNorthern Lipids(Vancouver,Canada)から購入した。1,2−ジオレオイロキシ−3−ジメチルアンモニウムプロパン(DODAPもしくはAL−1)はSteven Ansell博士(Inex Pharmaceuticals)が合成したもの、あるいはAvanti Polar Lipidsより購入したものを用いた。コレステロールはSigma Chemical Company(St.Louis,Missouri, USA)から購入した。PEG−セラミドは、Inex PharmaceuticalsのZhao Wang博士が、参考文献にあげたPCT WO 96/40964に記載の方法を用いて合成した。[H]-あるいは[14C]-CHEはNEN社(Boston,Massachusetts,USA)から購入した。脂質はすべて、99%を超える純度のものであった。
【0073】
緩衝液及び溶媒
エタノール(95%),メタノール,クロロホルム,クエン酸,HEPES緩衝液及びNaClは全て、市販品を用いた。
【0074】
ホスホロチオエートアンチセンスの合成及び精製
PS 3082、即ち、20量体のホスホロチオエートアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチドは、ISIS Pharmaceuticals(Carlsbad,California,USA)が合成、精製したものを供与された。このオリゴヌクレオチドの配列は、TGCATCCCCCAGGCCACCAT(Seq ID No 1)であった。合成及び精製に関する詳細は、他文献を参照のこと(Stepkowskiら,J.Immunol.153:5336-5346(1994))。
【0075】
リポソーム封入アンチセンスの調製
脂質ストック溶液は、95%エタノール中、20mg/mLで調製した。(PEG−セラミドでは50mg/mLとした)。総脂質量が13μmolの、DSPC,CHOL,DODAP,PEG−CerC14(モル比 25:45:20:10)を、微量の[14C]−コレステリルヘキサデシルエーテルの入った13×100mm試験管に加えた。脂質混合物の最終容量は0.4mLであった。幾つかの実験においては、DSPCの代わりにSMもしくはPOPCを用いた。20量体のアンチセンスオリゴヌクレオチドPS 3082(2mg)及び微量の[H]-PS 3082を、0.6mLの300mMクエン酸(pH3.8)の入った13×100mm分離試験管中で溶解した。アンチセンス溶液を65℃まで暖め、脂質(エタノール中)をゆっくりと加え、一定速度で混合した。得られた混合物の体積は1.0mLであり、総量13μmolの脂質、2mgのアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド及び38%エタノール(vol/vol)を含有していた。アンチセンス−脂質混合物は、5回凍結(液体窒素)及び融解(65℃)を繰り返した後、サーモバレルアタッチメント(thermobarrel attachment)をつけた加圧エクストルーダー(extruder)装置(Lipex Biomembranes)を用いて、3枚重ねの100nmフィルター(Poretics)に10回通した。ろ過時の温度は、65℃,圧力は300−400 psi(窒素)であった。ろ過溶液を300mMクエン酸(pH3.8)1.0mLで溶解し、エタノール濃度を20%まで下げた。得られた溶液を速やかにゲルろ過カラムに添加した。あるいは、ろ過後の試料を数リットルの300mMクエン酸緩衝液(pH3.8)で3−4時間透析し(カットオフ 12,000−14,000; SoectraPor)、過剰のエタノールを除去した。試料を更にHBS(pH7.5)にて12−18時間透析してDODAPを中和し、リポソーム表面に付着したアンチセンスを放出させた。遊離アンチセンスは、以下に示すゲルろ過クロマトグラフィーにて、リポソーム封入アンチセンスから除去した。
【0076】
ゲルろ過クロマトグラフィー
Biogel A15m及び100−200メッシュから構成される20×2.5cmのガラス製カラムを、HEPES生食緩衝液(HBS; 20mM HEPES,145mM NaCl,pH7.5)にて平衡化した。リポソーム封入アンチセンス試料2.0mLを上記カラムに添加し、重力下でゲルベットに引き入れた。カラムは、50mL/hrの流速でHBSにて溶出した。カラム分画(1.0mL)を回収し、放射能を標準的な液体シンチレーション計数法にて分析した。各分画は、分画中に存在する[14C]−CHEレベルをもとにプールした。プールしたリポソーム封入アンチセンスのサイズ分布をNICOMP Model 370 サブミクロン粒子径測定器にて求めたところ、典型的に、110±30nmであった。
【0077】
イオン交換クロマトグラフィー
ゲルろ過クロマトグラフィーの代わりに、試料を300mMクエン酸(pH3.80)で2−3時間透析して残留エタノールを除去してから、さらに12時間以上HBSで透析して、クエン酸をHBSに置換してから、残留エタノールを除去することも行った。試料は、HBSで平衡化した、1.5×8cm DEAE-Sepharose Rカラムに添加した。遊離アンチセンスは、きわめて高い親和性でDEAEに結合する。脂質含有ピークをプールし、濃縮し、以下の記述にしたがってアンチセンス含有量を分析した。
【0078】
アンチセンス封入の評価
アンチセンス封入は、ゲルろ過クロマトグラフィーにて遊離アンチセンスと封入アンチセンスを分離した後、二重ラベル([H]−アンチセンス及び[14C]−脂質)液体シンチレーション計数法にて評価した。アンチセンス封入は、脂質ピークに含まれる[H]−アンチセンスの総放射能を合計したものを、[H]−アンチセンスの総放射能で除して評価した。あるいは、ゲルろ過クロマトグラフィーの前と後(プールした脂質ピーク)で、[H]/[14C]比を求めた。アンチセンス封入はまた、以下に述べる、Bligh及びDyerの方法による脂質からのアンチセンス抽出に先立ち、試料の260nm吸収によって評価した。
【0079】
アンチセンスの抽出
アンチセンスの脂質からの抽出は、Bligh及びDyerの方法(Blighら,Can.J.Biochem.Physiol.37:911-917 (1959))に従って行った。簡単に述べると、250μL以下の水性試料を、13×100mmのガラス試験管に加えた後、750μLのクロロホルム:メタノール溶液(1:2.1 vol/vol)、250μLのクロロホルム及び250μLの蒸留水を加えた。1種類加える毎に試料と混合した。試料を3,000rpmで10分間遠心すると、はっきりと二層に分離した。水層(上層)を別の13×100mmの試験管に取った。水層の一部(500μL)を500μLの蒸留水で希釈し、混合し、260nmの吸収をスペクトロフォトメーターで評価した。場合によっては、有機相(下層)を250μLのメタノールで洗浄し、3,000rpmで10分間遠心し、上層を廃棄した。この操作を3回繰り返した。洗浄した有機相のリン脂質含有量を、Fiske及びSubbarrow法(Fiskeら,J.Biol.Chem.66:375-400(1925))にて評価した。
【0080】
OLIGREENアッセイ
Biolumin(登録商標)960蛍光プレートリーダー(Molecular Dynamics,Sunnyvale,California,USA)を用いた、水溶液中の1本鎖オリゴヌクレオチドを定量するための蛍光色素結合アッセイが確立された。簡単に説明すると、封入アンチセンスの一部をHEPES生食緩衝液(HBS;20mM HEPES,145mM NaCl,pH7.5)で希釈した。希釈試料10μLを、0.1%のTriton X-100界面活性剤存在下及び非存在下において、Oligreen(登録商標)試薬の1:200希釈溶液100μLに加えた。0.1% Triton X-100存在下及び非存在下における、アンチセンスの標準曲線を作成し、封入アンチセンスを定量した。OLIGREEN(登録商標)−アンチセンス複合体の蛍光を、485nmの励起波長及び520nmの放出波長を利用して測定した。界面活性剤存在下及び非存在下における蛍光の測定結果を比較して、アンチセンスの結合表面を決定した。
【0081】
耳介炎症モデル及び有効性試験
感作及び接触感受性の誘発
アセトン:オリーブ油(4:1)に溶解した0.5%の2,4−ジニトロ−1−フルオロベンゼン(DNFB)25μLを、剃毛したマウスの腹壁に塗布し、2日間感作した。二度目の塗布から4日後に左耳の背側表面に、10μLの0.2%DNFBアセトン:オリーブ油(4:1)溶液を塗布して、マウスを感作した。反対側(右)の耳には何ら処置を行わなかった。対照群のマウスの一部には、左耳の背側に溶媒10μLを塗布した。
【0082】
耳介腫脹の評価
耳介の厚さは、技術者用マイクロメーター(Mitutoyo,Tokyo,Japan)を用いて感作直前ならびにDNFBの感作後、経時的に測定した。耳介肥厚は、感作後の測定値から感作前の測定値を引いて求めた。
【0083】
3日間にわたる、ICR(異系交配)マウスの耳介炎症進行を図 12及び13に示す。紅斑は、耳介感作のほぼ直後に顕著であり、その後、試験期間を通じて徐々に回復した。ICRマウスの耳介肥厚は、耳介炎症誘発から24時間後にピークを迎えた。耳介肥厚の最大値は、170×10−4インチであり、これは、耳の厚みの70%増加に相当した。炎症開始から48−72時間後には、耳介腫脹は徐々に軽減したが、耳介の厚さは、感作前のレベル(90−100×10−4インチ)にまでは回復しなかった。
【0084】
本明細書のマウスのイン・ビボ実験系は、一部には、ヒトの疾患条件との相関性の高さのため選択された。マウスの耳介炎症モデルは、本発明の方法及び成分により治療が可能であるが、ヒトのアレルギー性接触皮膚炎及びその他の疾患条件に対する優れたモデルであることがよく知られている。本モデルの対照群ではコルチコステロイドを用いたが、この薬剤は、マウスモデル及び関連するヒトの疾患条件の双方において有効性が実証されている。
【0085】
B16腫瘍モデルマウスは、成長速度の早い黒色腫であり、本発明の方法及び成分を用いて治療することができる。本モデルは、広く使用されている、標準的実験系である。本腫瘍モデルは、ビンクリスチンあるいはビンブラスチンといったビンカアルカロイドによる治療が可能であり、ヒトの腫瘍においても同様に有効であることが知られている。
【0086】
本発明で用いた腫瘍マウスにおいて有用性が実証される治療法は、同様の用量及び投与方法によってヒトの疾患を試験する場合の候補として優れている。
【0087】
例 1
例1では、アンチセンス封入に対するエタノールの影響を示す。
【0088】
20量体の[H]−ホスホロチオネートアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(300mMクエン酸緩衝液,pH3.80中)と、脂質(モル比DSPC:CHOL:DODAP:PEG-CerC14;25:45:20:10)のエタノール溶液を、最終濃度がそれぞれ2mg/mL及び9.9mg/mLとなるように混合した。得られた溶液のエタノールの最終濃度は、0−60%(vol/vol)であった。「材料及び方法」で述べたようにして、100nmフィルターを3枚重ねたもので試料を10回ろ過した。試料を、300mMクエン酸緩衝液(pH3.80)で2−3時間透析し、過剰のエタノールのほとんどを除去した。試料をHEPES生食緩衝液(HBS pH7.50)と交換し、12時間以上透析して、クエン酸緩衝液をHBSに置換した。こうすることによってリポソーム外層が中性化され、表面に結合したアンチセンスが放出される。さらに非封入アンチセンスを、「材料及び方法」で述べたようにしてDEAE−セファロースクロマトグラフィでリポソーム封入アンチセンスから除去した。封入は、カラム通過前後の[H]−アンチセンスと[14C]−脂質の比を解析することによって、あるいは、カラム通過前後の[H]−アンチセンスと[14C]−脂質の総放射能を求めることによって評価した。
【0089】
別の実験では、既に述べた方法に準じてリポソーム封入アンチセンスを調製した。ろ過後のフィルターについて、標準的なシンチレーション計数法を用いて、[H]−アンチセンスと[14C]−脂質の放射能を分析した。結果は、初期の総放射能の%で表した。
【0090】
図3は、pH3.8におけるエタノールのアンチセンス封入に対する影響を示したものである。エタノールの最終濃度が50%(vol/vol)となるまで、ホスホロチオエートアンチセンスの封入効率は、ほぼ直線的に上昇した。50%を超えると、多量の凝集あるいは沈殿物が観察される。リポソーム形成に対するエタノールの影響は、脂質及びアンチセンス双方のろ過による損失をモニタリングすることによっても観察することができる(図4)。低エタノール濃度ではろ過速度は遅く、脂質とアンチセンスの損失率は同じであり、このことから、フィルター上に残留する大複合体が形成されるため損失が生じることが示唆される。エタノール濃度が30%及び40%の場合、ろ過はきわめて速やかに進み、脂質及びアンチセンスの損失はいずれも最小である。エタノール濃度が40%を超えると、アンチセンスの損失は脂質と比べて不釣り合いに高くなる。これは、高アルコール濃度ではDNAが不溶性になるためであると考えられる。また、エタノール存在下では、リポソームの凝集及び融合を防ぐためにPEGが必要である(結果は示さない)。
【0091】
例 2
本例では、DODAPのアンチセンス封入に対する影響ならびに成分に対するアンチセンスの初期濃度の影響を示す。
【0092】
エタノールがリポソーム封入アンチセンスの作製を著しく促進することが示されたので、次の段階では、アンチセンス封入に対するDODAP(AL-1)濃度の影響を調べた(図5)。そこで、[H]−ホスホチオエートアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(300mMクエン酸緩衝液,pH 3.80中)0.6mL及び脂質(モル比として、DSPC:CHOL:DODAP:PEG-Cer14;100−(55+X):45:X:10)の45%エタノール溶液を、最終濃度がそれぞれ、2mg/mL及び9.9mg/mLとなるように混合した。DODAPのモル比の範囲は0−30%であった。DSPCのモル比は、DODAP濃度を補うように調整した。「材料及び方法」で述べたようにして、100nmフィルターを3枚重ねたもので試料を10回ろ過し、300mMのクエン酸緩衝液(pH3.80)で2−3時間透析して、過剰エタノールのほとんどを除去した。試料をHEPES生食緩衝液(HBS pH7.50)と交換し、12時間以上透析して、クエン酸緩衝液をHBSに置換した。さらに非封入アンチセンスを、「材料及び方法」で述べたようにしてDEAE−セファロースクロマトグラフィーによってリポソーム封入アンチセンスから除去した。封入は、カラム通過前後の[H]−アンチセンスと[14C]−脂質の比を解析することによって、あるいは、カラム通過前後の[H]−アンチセンスと[14C]−脂質の総放射能を求めることによって評価した。図5に見られるように、アンチセンス封入は、DODAPが5−20%の場合に著しく増加した。DODAP濃度が20−25%になるとリポソームのろ過が困難になり、このことから複合体形成が示唆される。DODAP濃度が20%の場合、ろ過は分単位であったのに対し、40%及び50%になると何時間かかかった。アンチセンスが確かに脂質と結合していることならびに観察されたアンチセンス封入が、アンチセンスから脂質への[H]−標識の移行によるものではないことを確認するために、Bligh及びDyerの抽出法によりアンチセンスを脂質から抽出した。この方法を用いて、水層に溶解するアンチセンスを脂質(有機相に溶解)から分離し、260nm吸収を測定して定量化した(図6)。この方法ではアンチセンス濃度が過小評価されうるが、この方法によって、観察されたアンチセンスと脂質の結合が人工物(artifact)ではないことが実証された。
【0093】
また、別の実験では、20量体の[H]−ホスホロチオエートアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(300mMクエン酸緩衝液,pH3.80中)の濃度を様々に変えて、濃度が9.9mg/mLとなるように脂質のエタノール溶液(モル比として、DSPC:CHOL:DODAP:PEG-Cer14;25:45:20:10)と混合した。上述したように試料をろ過し、2回透析した。さらに非封入アンチセンスを、「材料及び方法」で述べたようにDEAE−セファロースクロマトグラフィーによってリポソーム封入アンチセンスから除去した。封入は、カラム通過前後の[H]−アンチセンスと[14C]−脂質の比を解析することによって、あるいは、カラム通過前後の[H]−アンチセンスと[14C]−脂質の総放射能を求めることによって判定した。アンチセンスを封入したEPC:CHリポソームを比較に含めた。
【0094】
薬剤:脂質比の最適化は、総量9.8mgの脂質(DSPC:CHOL:DODAP:PEG-CerC14;25:45:20:10)を混合したアンチセンスの初期濃度を上昇させることによって達成された(図8)。薬剤:脂質比(w/w)が0.25までは、10 mg/mlのアンチセンス濃度のものを用いて調製された。しかし、薬剤:脂質比が上昇すると、封入効率が低下するので、薬剤:脂質比の最適化と封入効率の間で妥協せざるを得ない。比較として、カチオン性脂質非存在下において乾燥脂質フィルム(EPC:CHOL)の水和によって封入したアンチセンスでは、通常、封入効率(<12−15%)及び薬剤:脂質比は低い(<0.1,w/w)。したがって、相当量のアンチセンスが封入中に浪費される。
例 3
本例では、上述の材料及び方法で述べた、リポソーム封入アンチセンス製剤の特性について説明する。
【0095】
リポソーム封入アンチセンス製剤の粒子径分布を、準弾性光散乱(QELS)により、遊離アンチセンスの除去直後と4℃における2ヶ月の貯蔵後に、Nicomp Model 370 サブミクロン粒子径測定器を用いて求めた。[H]−ホスホロチオエートアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(300mMクエン酸緩衝液,pH3.8中)0.6mLと脂質(モル比として、DSPC:CHOL:DODAP:PEG-Cer14;25:45:20:10)の95%エタノール溶液0.4mLを最終濃度がそれぞれ、2mg/mL及び9.9mg/mLとなるように混合した。「材料及び方法」で述べたようにして、100nmフィルターを3枚重ねたもので試料を10回ろ過し、300mMのクエン酸緩衝液(pH3.80)で2−3時間透析して、過剰エタノールのほとんどを除去した。試料をHEPES生食緩衝液(HBS),pH7.50と交換し、12時間以上透析して、クエン酸緩衝液をHBSに置換した。さらに非封入アンチセンスを、「材料及び方法」で述べたようにしてDEAE−セファロースクロマトグラフィによってリポソーム封入アンチセンスから除去した。
【0096】
本例で述べた、リポソーム封入アンチセンス製剤の粒子径分布及び貯蔵安定性を図7に示す。初期濃度として2mg/mLのアンチセンスを含有する標準的製剤(モル比として、DSPC:CHOL:DODAP:PEG-Cer14;25:45:20:10)の粒径分布を、遊離アンチセンスの除去を目的とするカラムクロマトグラフィーの実施直後に分析した。調製後にきわめて均質な分布が観察された(119±32nm)。均質な粒子径分布は、4℃で2ヶ月間の貯蔵後も安定であった(119±32nm)。
【0097】
例 4
本例では、リポソーム封入した、ネズミICAM-1ホスホロチオエートアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチドのクリアランス、生体内分布及び生物学的活性について説明する。
【0098】
4.1 血漿クリアランス
「材料及び方法」で述べたエタノール−クエン酸法を用いてリポソーム封入アンチセンスを調製した。脂質及びアンチセンスの初期濃度はそれぞれ、9.9 及び2mg/mLであった。リポソームの組成は、X:CHOL:DODAP:PEG-CerC14(25:45:20:10)であった。Xは、ジステロイルホスファチジルコリン(DSPC),スフィンゴミエリン(SM),パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)のいずれかであった。標識した脂質([14C]−コレステリルヘキサデシルエーテル)及び[H]−アンチセンスを含有するリポソーム製剤を、脂質用量として120mg/kg、雌のICRマウス(20−25mg)に経尾静脈的に静注した。血液は、マウスに麻酔をかけ、心臓穿刺にて回収した。脂質とアンチセンスの回収は、標準的なシンチレーション計数法にて測定した。
【0099】
リポソーム封入アンチセン3製剤(DSPC:CHOL:DODAP:PEG-CerC14,SM:CHOL:DODAP:PEG-CerC14及びPOPC:CHOL:DODAP:PEG-CerC14)の血漿クリアランスを、炎症化ICRマウスを用いて調べた(図9)。循環時間が最長だったのは、DSPC含有製剤であった。
【0100】
4.2 臓器蓄積
リポソーム封入アンチセンス製剤を調製し、先に述べた方法でマウスに投与した。マウスは頸椎脱臼にて屠殺し、臓器を摘出し、「材料及び方法」に述べたようにして処理した。脂質とアンチセンスの回収は、標準的なシンチレーション計数法にて測定した。
【0101】
クリアランスの大半を担う、主に肝臓及び脾臓といった網内系臓器における、様々な製剤の臓器蓄積は、既に述べたリポソーム封入アンチセンスのクリアランスパターンに特有のものであった(図10)。1つ面白いことに、「DSPC」含有製剤では、肝臓及び脾臓のクリアランスの総クリアランスに占める割合が、わずか40−45%であった。このことは、かなりの割合のリポソームが他の臓器に蓄積しているか、あるいは排泄されたことを示唆している。
【0102】
4.3 安定性
リポソーム封入アンチセンス製剤を調製し、先に述べた方法でマウスに投与した。血液は、マウスに麻酔をかけ、心臓穿刺にて回収した。脂質とアンチセンスの回収は、標準的なシンチレーション計数法にて測定した。[H]/[14C]比を経時的に測定して放出率を求めた。
【0103】
血液から回収されるアンチセンス及び脂質の比を経時的に測定し、リポソーム封入アンチセンス製剤の安定性を評価した(図11)。比率が1.0の場合、血液循環においてもアンチセンスと脂質が結合していることが示唆される。「DSPC」含有製剤では、比率が24時間を通じてほぼ1.0に保たれたので、血液循環中においてきわめて安定であることが示唆された。「POPC」含有製剤では、2時間後に0.6まで比率が低下し、「SM」含有製剤では、これより低下速度は遅く、12時間後に0.6に達した。これらの結果は、脂質組成を改変すればアンチセンスの放出率を意図的に変化させうることを示している。
【0104】
4.4 チオエートアンチセンス単回投与時の循環半減期に対するPEG-Acylの影響
「材料及び方法」で述べたエタノール−クエン酸法を用いてリポソーム封入アンチセンスを調製した。脂質及びアンチセンスの初期濃度はそれぞれ、9.9 及び2mg/mLとした。リポソームの組成は、DSPC:CHOL:DODAP:PEG-CerC14あるいはC20(25:45:20:10)であった。脂質標識([14C]−コレステリルヘキサデシルエーテル)及び[H]-アンチセンスを含有する製剤200μL、脂質用量として120mg/kgを、雌のICRマウス(20−25mg)に経尾静脈的に静注した。血液は、マウスに麻酔をかけ、心臓穿刺にて回収した。脂質とアンチセンスの回収は、標準的なシンチレーション計数法にて測定した。
【0105】
DSPC:CHOL:DODAP:PEG-CerC14製剤のクリアランス率に対するPEG-acyl鎖長の影響を、PEG-CerC14及びPEG-Cer20を用いて調べた(図12)。PEG-CerC20製剤では、PEG-Cer14製剤に比べて循環時間が延長した。この結果は、PEG-Cer14のほうがPEG-Cer20より速やかにリポソーム交換が行われることを示唆した、イン・ビトロのデータと一致する。
【0106】
4.5 リポソーム封入ICAM-1(ホスホロチオエート)アンチセンス単回投与時のイン・ビボにおける有効性
種々のDOPDAP含有リポソームに封入されたPS-3082の有効性を、ICRマウスの耳介炎症モデルを用いて試験した。
【0107】
炎症マウスは、耳介感作時に、HBS(オリゴヌクレオチド非含有)、PS-3082封入EPC:HOLリポソーム(AS 1000として識別)、PS-3082封入POPC:CHOL:DODAP:PEG-CerC14リポソーム(AS 4100として識別)、あるいはPS-3082封入DSPC:CHOL:DODAP:PEG-CerC14リポソーム(AS 4200として識別)を30 mg/kg、静注した。炎症誘発から24時間後に技術者用マイクロメーターを用いて、耳介腫脹を測定した。
【0108】
耳介感作時にHBS(対照群),PS-3082封入EPC:CHOLリポソーム(オリゴヌクレオチド用量は30mg/kg),PS-3082封入POPC:CHOL:DODAP:PEG-CerC14リポソーム(オリゴヌクレオチド用量は30mg/kg)、あるいはPS-3082封入DSPC:CHOL:DODAP:PEG-CerC14リポソーム(オリゴヌクレオチド用量は30mg/kg)を静注したマウスにおいて、炎症誘発から24時間後、耳介腫脹を測定した(図13)。「DSPC」含有リポソームの有効性が最も高く、感作前と比較した耳介腫脹は、わずか10%増であった。未処置耳介と「感作」耳介への細胞浸潤を比較した場合も、同様の傾向が認められた(図14)。
【0109】
別の評価では、炎症誘発の24時間前、マウスに10μCiの[H]−メチルチミジンを腹腔内投与した。炎症マウスは、耳介感作時に、HBS(オリゴヌクレオチドを含まない),PS-3082封入EPC:CHOLリポソーム(AS 1000として識別),PS-3082封入POPC:CHOL:DODAP:PEG-CerC14リポソーム(AS 4100として識別),あるいはPS-3082封入DSPC:CHOL:DODAP:PEG-CerC14リポソーム(AS 4200として識別)を30mg/kg、静注した。未処置耳介に対する「感作」耳介の放射能を測定して細胞浸潤をモニタリングした。結果は、右耳に対する左耳(感作耳介)の放射能比として表した。
【0110】
4.6 リポソーム封入ICAM-I(ホスホジエステル)アンチセンス単回投与時のイン・ビボにおける有効性
本実験では、発明に準じて、ホスホジエステルアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド封入リポソームのイン・ビボにおける有効性を示す。特に、耳介炎症モデルのICAM-1遺伝子を、ホスホジエステルの標的とした。
【0111】
【表1】

【0112】
アンチセンス試料の調製:アンチセンス封入は、ホスホジエステル修飾を用いた、例5−9の標準法に則って行った。ホスホジエステル製剤では、ホスホロチオエートで用いた300mMクエン酸溶液(pH4.0)の代わりに、10−50mM pH4.0のクエン酸溶液(20mMが望ましい)を用いた。空胞は、脂質成分のみから構成された。重量で0.05%のプロピオン酸ハロベタゾール(Halobetasol propionate)(Westwood squibb, Monetreal)またはデキサメタゾン(アセトン:オリーブ油の4:1溶液に50μgを溶解したもの)のコルチコイドを薄膜に塗布し、耳介感作から15分間後にこの薄膜で耳介表面を被覆した。
【0113】
炎症化及び投与法:マウスの耳介炎症は、材料及び方法で述べたようにしてDNFBを用いて誘発した。雌のICRマウス(6−8週齡)にアンチセンス(200μg)を経尾静脈的に投与した。ホスホロチオエート及びホスホジエステルに対するアンチセンス用量は、20−30mg/kgに調整した。各製剤とも被検動物は6匹であった。投与は、0.2%のDNFBを耳介に塗布してから15分後に行った。投与から24時間後(他に記述のない場合)及び屠殺前にマウスに麻酔をかけ、耳介測定を行った。マウスは頸椎脱臼にて屠殺し、耳は耳介の周りで切り取った。耳の重量を計測し、消化(Solvable)してから液体シンチレーション計数法にて放射能を分析した。以下の3点について耳の分析を行った。1)腫脹に伴う肥厚をもとにした浮腫。投与後の耳の厚みから投与前の厚みを引いて算出する。(図21.2) 炎症(右)耳と対照(左)耳の蓄積放射能をもとにした細胞浸潤。(図22.3)左耳に対する右耳の重量(浮腫の測定)(図23)。
【0114】
結果:緩衝液のみ(HBS)あるいは空胞のみを投与した対照群では、効果は認められなかった。コルチコステロイド投与群では、炎症は感作前の程度にまで回復し、有効性が極めて高く既知の優れた有効性が実証される。ホスホロチオエート及びホスホジエステルアンチセンス投与群では、全身投与による有効性がって極めて高く、炎症は、それぞれ70%及び85%減少する。このように、本発明の成分は、疾患部位から離れた部位での投与が可能である。
【0115】
4.7 US3アンチセンスのイン・ビボにおける有効性(腫瘍ウィンドウモデル)
本例では、erb-B-2遺伝子に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドであるUS3をリポソームに封入し、イン・ビボにおけるヒト乳癌モデルにおいてその抗腫瘍活性を実証した。
【0116】
ヒト乳癌細胞系MDA-MB-453をマウス腫瘍ウィンドウモデルに移植した。方法は、Wu NZ,Da D,Rudoll TL,Needham D,Whorton R及びDewhirst MW(Increased microvascular permeability contributes to preferential accumulation of Stealth liposomes in tumor tissue.Cancer Research 53:3765-3770 1993)並びにDewhirst MW,Tso CY,Oliver R,Gustafson CS,Secomb TW,及びGross JF (Morphologic and hemodynamic comparison of tumor and healing normal tissue microvasculature.Int.J.Radiat.Oncol.Biol.Phys.17:91-99 1989)に従った。また、次の文献も参考のこと:Dewhirst,MW,及びNeedham,D.Extravasation of Stealth Liposomes into Tumors:Direct Measurement of Accumulation and Vascular Permeability using a Skin Flap Window Chamber.In Stealth Liposomes (Lasic,D.及びMartin,F.編1995)。
【0117】
リポソーム封入アンチセンス製剤の組成は、ジステロイルホスファチジルコリン(DSPC,25 mol%),コレステロール(Chol,45 mol%),ジオレオイルホスファチジルジアミノプロパン(DODAPあるいはAL1,20 mol%)及びPEG−セラミド(C14 鎖長,10 mol%)であった。以下に述べる別の実験では、割合及び成分を変更したが、調製法は同一であった。脂質は、20mg/mlの濃度に溶解した(PEG−セラミドでは50mg/ml)。一般に、1−2μCiの14C−コレステリルヘキサデシルエーテルを脂性放射標識として加えた。最終濃度が400μl中10mgとなるように、脂質とエタノールを正確な比率で混合した。さらに、最終容量が1.0mlとなるように、脂質混合物を、300mM pH4.0クエン酸緩衝液に溶解したホスホロチオエートアンチセンス(US3:抗ヒトerb-B-2 GGT GCT CAC TGC GGC(SEQ ID.No 3)600μlに滴下した。アンチセンス濃度は様々に変えたが、封入効率と薬剤:脂質比が最大になる最適濃度は、0.5mg/mlであることが判明した。滴下中に溶液は不透明になった。DODAPは、pH4.0では正に荷電しているので(pKa=6.53)、負に荷電しているDNA分子を引き付ける。混合物は、液体窒素による凍結と65℃解凍をを5回繰り返してから、65℃にて100nmフィルターで10回ろ過した。
【0118】
ろ過後、2つの方法で外部アンチセンスを除去することができる。最初に、リポソームを2:1の割合でクエン酸に希釈してエタノール濃度を20%まで下げてから、HBSで平衡化したBio-Gel A18M 100-200メッシュカラムに添加する。本明細書に提示するカラムの溶出結果はこのようにして得られた。または、リポソームをクエン酸で2時間透析してエタノールを除去し、さらにHBSで一晩透析してpHを上昇させる。得られた混合物を、DEAE陽イオン交換カラムに添加し、外部アンチセンスを除去する。この方法は、イン・ビボ試験のための試料調製で一般的に用いられる。アンチセンス濃度は、通常、260nm吸収測定により求めた。脂質濃度は、初期混合物に既知濃度のH−あるいは14C−コレステリルヘキサデシルエーテルを加えてからシンチレーション計数法で測定するか、HPLCを行って求めた。封入効率は、薬剤:脂質比の最終値を初期値で除して求めた。
【0119】
イン・ビボにおける有効性評価:ウィンドウ内の腫瘍の直径が2−3mmに達したら、遊離あるいはTCS−封入US3オリゴヌクレオチドによる治療を開始する。200μlの遊離US3あるいはTCS−封入US3を、1投与当たりアンチセンス用量として10mg/kg、週3回、経尾静脈的に投与する。腫瘍サイズは、週に3回、顕微鏡でモニターする。
【0120】
結果:ウィンドウモデルのMDA-MB-453ヒト乳癌において、TCS−封入US3オリゴヌクレオチドは、腫瘍成長の防止及び腫瘍サイズの著しい縮小にきわめて有効であった。対照的に、非封入アンチセンスでは、腫瘍成長抑制効果は認められなかった。
【0121】
4.8 代替アミノ脂質を用いた様々なリポソームのイン・ビボのクリアランス
リポソーム封入アンチセンスは、次の点を変更した上で、例2に則って調製した。アッセイ#1及び#2では、それぞれ、25% AL-1(DODAPの塩化水素塩)及び遊離塩基性DODAPを用い、これに伴って、DSPCを減量した。アッセイ#3,4及び#5では、それぞれ、30%、25%、及び20%の遊離塩基性DODMA(Inex Pharmaceuticals Corp.,Burnaby BCにて調製)を用い、これに伴って、DSPCを減量した。
【0122】
各製剤の封入効率及びイン・ビボのクリアランスを調べた。遊離塩基性DODAPと塩化水素塩DODAPでは、封入効率及びイン・ビボのクリアランスともに有意差は認められなかった。DODMA濃度の減少(30,25,20%)に伴い、PS-2302の封入効率は著しく低下し(91%,43%,35%)、薬剤:脂質比についても同様であった。
【0123】
図16のクリアランス試験から、DODMA含有リポソームのクリアランス速度のほうが、25% DODAPあるいはAL-1より、やや高いことが示された。しかし、いずれのリポソームもヒトにおける治療に適した程度に血液循環すると思われた。
【0124】
4.9 リポソーム封入EGF-Rホスホロチオエートアンチセンスの反復投与において、PEG−アシルがクリアランス速度に及ぼす影響
リポソーム封入アンチセンスを、モル比を指定の如く変更した上で、既述のエタノール−クエン酸法にて調製した。脂質及びアンチセンスの初期濃度は、それぞれ9.9mg/ml及び2mg/mlであった。DODAP含有リポソームの薬剤:脂質比は、0.15±0.05であった。受動的封入系の場合、薬剤:脂質比は、0.03であった。以下のモル比を採用して標準法により、9種のリポソーム製剤を調製した。
【0125】
【表2】

【0126】
使用したアンチセンス(「AS」)は完全にホスホロチオエート化されたEGFR(抗ヒト表皮成長因子レセプター)CCG TGG TCA TGC TCC (SEQ ID. No10)(Hybridon社調製)であった。
PEG-CerC14は炭素数14のアシル鎖を持つPEG(分子量2000)−セラミドである。
PEG-CerC20は炭素数20のアシル鎖を持つPEG(分子量2000)−セラミドである。
PEG-DSPEはPEG(分子量2000)−1,2−ジスラアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミンである。
ATTA8-DSPEはN−(w−N’−アセトキシ−オクタ(14’アミノ−3’,6’,9’,12’−テトラオクサテトラデカノイル)−1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(分子量約2660)である。ATTA8-DSPEの合成は米国暫定特許申請出願番号60/073,852、1997年12月23日提出、及び米国暫定特許申請、1998年2月2日提出(Attorney,Docket No.:TT & C 16303-005810)に完全に開示されており、両者は即時発明の譲受人に譲渡されており、参考資料として一緒に提出されている。
【0127】
各製剤は上記例4.4に記載したようにリピッドラベル([14C]−コレステリルヘキサデシルエーテル)及び[H]−アンチセンスを含有している。サンプルは全てエタノール40%を含む300mMクエン酸塩(pH4.0)で調製されており、100nmのフィルターを10回通してある。製剤はホスホロチオエートアンチセンス及び脂質または空脂質のみを含んでいる。サンプルはエタノール及びクエン酸塩を除くためHBS(20mM Hepes,145mM NaCl,pH7.45)中で透析した。サンプルの脂質濃度を脂質の注射量が1.8μmole/マウス/週(5−10mg AS/kg マウス/週)になるように調製した。サンプルは注射前にろ過(0.22μm)した。
【0128】
本実験では雌(20−25g)ICRマウス(6−8週齢を1群6匹の9群に分け、更に対照群を数群設けた。各群には同一製剤を4回注射した。注射は全て200μLの静脈内注射(外側尾静脈)で行い、脂質量は120mg/kgとした。マウスには毎週3週間投与(4回注射)した。4週目に、アンチセンスが存在しなくても担体の速やかなクリアランスが起こるかどうかを調べるため、特定の群(脂質とアンチセンスを投与した群)に種々の組成の空脂質の担体を注射した。毎週3週間、注射1時間後に尾部切り傷から血液(25μl,ピペッター)を採取した。血液量を推定するため毎週マウスの体重を測定した(全血8.0 ml/100 g体重)。血液は、5%EDTA 200μlを含むガラス製シンチレーションバイアルに入れた。ソルバブル(500μl)を添加し、65℃で3時間分解した。70%過酸化水素水100μlを添加してサンプルの脱色を行った。液体シンチレーションカウンターを用いてサンプルの放射能の分析を行った。4週の終わりにCO吸入によって、または全身麻酔後頸部脱臼によって屠殺した。
【0129】
実験結果を図17に示す。アンチセンスを含まない製剤(空脂質)の場合は全て、反復投与時の循環時間は初回投与時とある程度一致した。しかし製剤にアンチセンスを用いると、驚くことに、立体バリヤー部分へと誘導された脂質のアシル鎖の長さがクリアランス速度にかなりの影響を及ぼすことが示された。PEG-CerC20,PEG-DSPE及びATTA8-DSPEなどの製剤を反復投与しても初回投与と比較して循環から速やかに消失したが、PEG-CerC14製剤は初回投与とある程度同じであった。
【0130】
同様の結果を図18に示す。これらの製剤は図17の製剤と同じで、製剤4及び5と同じ脂質を使用した空小胞の追加製剤である。
【0131】
如何なる特定の作用理論とも結びつける意図はないが、血液中で分単位(1−60分)でリポソーム膜からT1/2と交換して出ていくPEG-CerC14脂質のような脂質は、治療用あるいは診断用混合物のような脂質を処方した混合物の反復投与を必要とする場合には、交換して出ていかないPEG-CerC20,PEG-DSPE及びATTA8-DSPEのような脂質よりかなり利点があるということがこれらの結果から示唆される。誘導脂質が循環中にある時にリポゾーム表面から迅速に除去されると哺乳動物の血液のクリアランス反応がこれらを異物抗原として認識しないのかも知れない。しかし誘導脂質が長時間製剤と共に残っているとクリアランス反応が惹起され、反復投与した場合に速やかなクリアランスを引き起こす。このデータから、PEG-CerC20,PEG-DSPEあるいはATTA8-DSPEより速やかにリポゾーム膜から交換して出て行く立体バリヤー分子を持つ誘導脂質は全て反復使用する場合優れていると思われる。例えば交換可能なATTA8-DMPE、あるいはPEG-CerC8〜C18は全て反復投与において循環特性が改善するものと思われる。
【0132】
これらを考慮に入れると、PEG−脂質あるいはATTA−脂質のような立体バリヤー誘導脂質からなる脂質製剤で投与される可能性のある診断用あるいは治療用薬物は、どの製剤が反復投与に最適かを決定するために、長いアシル鎖アンカー及び短いアシル鎖アンカーの両者について試験すべきであるということは、これらの知見から、この技術に熟練した人にとっては明白である。
【0133】
さらに、如何なる特定の作用理論と結びつける意図はないが、投与されている生理活性物質が非細胞毒性物質である場合には本発明は特に有用である。細胞毒性物質は、長時間循環している(即ちPEG-DSPE)リポゾームを取り除くこれらの細胞を殺傷する。このことは、クリアランスに関与する細胞(通常はマクロファージ)が生存していないので、反復投与したものが速やかに除去されないことを確実にするからである。この様な場合にはアシル鎖の長さは意味がないかも知れない。しかしながら、アンチセンス薬(化学や対象に関係なし),プラスミド,タンパク質等,及び従来の薬物の場合のように、生理生活物質が非細胞毒性である場合には、本発明は反復投与にとって有用であると思われる。
【0134】
4.10 腫瘍モデルにおける封入ホスホロチオエートc-mycアンチセンスの反復投与のイン・ビボ有効性
本発明の製剤を用いての反復注射のイン・ビボ有効性を図19のマウス腫瘍系で示す。本実験は本発明に従って処方したアンチセンスの有効性をヒト腫瘍モデルで示したものであり、又反復投与の有効性に関してPEG−アシル鎖長が重要であることを示している。
【0135】
脂質−アンチセンス粒子製剤:製剤の調製はこれらの例に記載されている。
【0136】
【表3】

【0137】
用いたアンチセンスは次の通りである
LR-3280: ヒトc-myc遺伝子ホスホロチオエート
AAC GTT GAG GGG CAT (SEQ ID. No 4)
c-myc SCR: GAA CGG AGA CGG TTT (SEQ ID. No 17)
PS-2302 ヒトICAM-I(ホスホロチオエート)
GCCCAAGCTGGCATCCGTCA (SEQ ID. No 2)
PS-3082 ネズミICAM-1(細胞内付着分子1)
(ホスホロチオエート)
TGCATCCCCCAGGCCACCAT (SEQ ID. No 1)
必要なアンチセンス用量を得るため製剤をろ過したHBS(pH7.6)で希釈した(脂質用量も減少する)。サンプルは注射前にろ過した。外部緩衝液はHBS(20mM Hepes,145mM NaCl,pH7.6)。遊離のアンチセンスをHBSに溶解し、A260(吸光係数:活性及び対象c-myc=3.06,PS-2302=32.8,PS-3082=33.6)によって必要容量に調製した。
【0138】
腫瘍接種:B16-BL6ネズミメラノーマ細胞をTBS 10%を補給したMEM培地に培養して維持した。試験第0日細胞3×10個を雌C57BL/6マウス(20−23g)の背側の側腹部に皮下注射(注射量:50μl)した。一般的には、非回転楕円形の腫瘍または腫瘍が観察されないマウスを試験から除外できるように、15%の余分のマウスにも注射した。試験サンプル及び対照サンプルの投与を開始する前に腫瘍が50−100mmになるまで5−7日間腫瘍を成長させた。
【0139】
処置:最初の投与日に、条件にあった腫瘍を持つマウスを1群5匹ずつに群分けした。腫瘍が50−100 mmになった時投与を開始した。マウスには1日おきに合計7回投与した。投与は尾静脈への静脈注射(200μl)によって行った。製剤の最初の薬物:脂質比は0.20 (w/w)であり、最後の薬物:脂質比(0.14)は一定に保たれた;したがって、サンプルは希望するアンチセンス濃度に希釈されたので脂質濃度は変化した。アンチセンスの投与用量は10mg/kgであった。
【0140】
終点:原発性腫瘍の容量は測径器を用いて測定した。長さ(mm)及び幅(mm)は1日おき(注射をしない日)に測定した。腫瘍の高さは可能な時に測定した。腫瘍容積は次式により計算した:
#1 腫瘍容積(mm)=(L×W)/2
#2 腫瘍容積(mm)=(L×W×H)×p/6
腫瘍容積が体重の10%に達したとき、または潰瘍化の最初の徴候が現れたときマウスを安楽死させた。試験の投与期間中毎日マウスの体重を記録した。終了日に腫瘍を全て摘出し、重量を秤り、FACS分析またはノーザン/ウェスタン分析により観察した。CO吸入または全身麻酔後頸部脱臼によりマウスを安楽死させた。
【0141】
結果:図9にアンチセンス10mg/kg/用量を投与した全ての群について、18日目に摘出し秤量した腫瘍の重量を空脂質対照と比較して示す。AS4200 (c-myc)群の腫瘍の大きさが最高の有効性を示し、観察された腫瘍容積(285−451mm)の極めて狭い範囲内でよく一致した。遊離のc-mycを投与した群も腫瘍は小さかったが、腫瘍の大きさに変動(156−838 mm)がみられた。しかしc-mycを封入した対照(c-myc SCR/PS-2302/PS-3082),AS4204 (c-myc),空脂質担体,及び遊離アンチセンス対照は、HBS対照と比較して、18日間に渡り、腫瘍容積に対して何等の抑制効果も示さなかった。
【0142】
腫瘍組織におけるc-myc発現もFACSにより調べた。腫瘍の大きさとc-mycタンパク質の発現との間の相関関係も認められた(データ示さず)。
【0143】
PEGポリマーの安定性の重要性を調べるために、PEG-CerC14及びPEG-CerC20を含む製剤を用いてPEG−アシル鎖長を調べた。興味あることに、PEG-CerC20(AS4204)を含む製剤は、試験したいずれの投与量においても明確な効果を示さなかった。PEG-CerC14製剤(AS4200)は用量反応を示した。PEG-CerC14とPEG-CerC20製剤との間で観察された差は、他のモデルで観察されている速やかなクリアランス現象を反映していると思われる。
【0144】
遊離の及び封入したアンチセンスの耐用性を確立するため、試験の投与期間中マウスの体重を測定した。遊離のあるいは封入した製剤のどちらに対してもマウス体重の有意な変化は、投与中あるいは試験期間を通じて明らかでなかった。
【0145】
例 5
本例は例2による有効性の高い製剤を具体的に説明するものであるが、但しホスホロチオエートの代わりに次のものを用いたものである。1)ヌクレオチド間にホスホジエステル結合のみを持つホスホジエステルアンチセンス化合物(PO-2302抗ヒトICAM-1 GCCCAAGCTGGCATCCGTCA (SEQ ID. No 1),Inex Pharmaceuticals (米国),Inc.,Hayward CA調製)または2)VEGF-R-1(ヒト血管内皮成長因子レセプター1)に対するリボゾーム分子,配列GAG UUG CUG AUG AGG CCG AAA GGC CGA AAG UCU G(SEQ ID. No 16)の修飾RNAからなる。
【0146】
[H]−ホスホジエステルアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(PO-2302)のクエン酸緩衝液,pH3.80(10〜1000mMクエン酸の範囲で実験)溶液15量体を脂質(DSPC:CHOL:DODAP:PEG-CerC14;25:45:20:10、モル比)のエタノール溶液と混合した。最終濃度をそれぞれ2mg/mL、9.9mg/mLとした。調製液1ml中の最終エタノール濃度は38%vol/volであった。サンプルは「材料と方法」の項に記載したように3枚の100nmフィルターを10回通した。大部分の余分なエタノールを除去するため、サンプルをクエン酸緩衝液(pH3.80)(実験と同じモル濃度)中で2−3時間透析した。サンプルをHEPES緩衝液生理食塩液(HBS)(pH7.50)に切り換え、外部クエン酸緩衝液をHBSに置換するため、最低12時間透析した。未封入のアンチセンスはこの通常のタンジェンシャルフロー透析かまたはクロマドグラフィーにより除去した。封入は、[H]−アンチセンス及び[14C]−脂質のカラム前とカラム後の比を分析するか、またはカラム前後の[H]−アンチセンス及び[14C]−脂質の放射能を測定することによって評価した。
【0147】
図15に結果を示す。封入効率は10−50mMのクエン酸の範囲で50%以上であり、最終(投与直前)薬物:リピッド比は全て重量で10%以上であった。クエン酸濃度をかえた平行実験をホスホロチオエートアンチセンスPS-2302で行った。結果はまた、50%以上の封入であり、事実、特に高濃度のクエン酸において、ホスホジエステルよりも高い封入効率を示している。
【0148】
本実験は、リボゾーム分子をVEGF-R-1(ヒト血管内皮成長因子レセプター1)GAG UUG CUG AUG AGG CCG AAA GGC CGA AAG UCU G (SEQ ID. No.16) に封入するため300mMクエン酸の代わりに20mMクエン酸を用いて行った。図20は、リボザイムの封入効率が50%以上で、ほぼホスホジエステルと同じであることを示す。
【0149】
例 6
本実験は例5と同様に有効性の高い製剤を具体的に説明するものであるが、但しDODAPの代わりに別のプロトン付加可能な脂質を用いて行った。典型的な例として、別の調製物とはX : DSPC : CHOL : PEG-CerC14でそのモル比は20:25:45:10でXはDODAC、OA、DODMAまたは本発明に適切の他の脂質である。
【0150】
材料:ジステアロイルホスファチジルコリン,DSPC;コレステロール,CHOL(両者とも(Northern Lipids,Vancouver,BC製);N,N−ジオレイル−N,N−ジメチルアンモニウムクロライド,DODAC;オレイルアミン,OA(Steve Ansell,Inex製);N−(1−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル)−N,N,−ジメチルアンモニウムクロライド,DODMA(Avanti Polar Lipids,Alabaster AB,塩化物塩はSteve Ansell INEX製);炭素数14のアシル鎖を持つセラミド誘導体に結合させたポリ(エチレングリコール)2000,PEG-CerC14(Zhou Wang,INEX Pharmaceuticals);13×100mmガラス試験管;フィルター滅菌300mMクエン酸緩衝液,pH3.9−4.0(0.2μmフィルター使用)。完全にチオエート化したc-mycアンチセンス(INEX(米国),Hayward Ca),無水エタノール(Commercial Alcohols,Toronto,On),クエン酸,一塩基リン酸ナトリウム,二塩基リン酸ナトリウム,水酸化ナトリウム,HEPES(BDH,Mississauga On),脱イオン水,クロロホルム,メタノール,Oligreen(登録商標)オリゴヌクレオチド試薬(Molecular Probes,Eugene Or),塩化ナトリウム,Triton X-100,アルコール脱水素酵素試薬キット(Sigma Chemical Co., St Louis Mo)。
【0151】
脂質ストック溶液は、以下に示す作用濃度の脂質を用いて、100%エタノール中で作成した:
DSPC,20mg/ml;CHOL,20mg/ml(この濃度以上ではさほど溶けない);DODMA,20mg/ml;PEG-CerC14;50mg/ml。
【0152】
アンチセンスのストック溶液を調製するため、3.33mg/mlの濃度でアンチセンス分子を、ろ過した300mMクエン酸緩衝液に溶解した。脂質は、13×100mmガラス試験管中で下記表1に示したように100%エタノールを用いて脂質の最終容量が0.4mlとなるように、所望の割合で混合した。
【0153】
【表4】

【0154】
別の13×100mmのガラス試験管に、濃度3.33mg/mlのアンチセンス溶液0.6mlを入れた。この溶液のpHは3.9−4.0である。(注:アンチセンスの濃度は重量によって決めるのではなく260nmにおける吸光度の測定によって決める)。脂質の混合溶液を65℃に約2分間温めた。アンチセンス試験管を渦流混合し、この間にバスツールピペットを用いて、脂質(エタノール溶液)を1滴ずつゆっくりと添加した。混合液は濁り、エタノールによりある程度の気泡が見られるかも知れないが、凝集体は存在しないはずである。アンチセンス−脂質混合液の量は1.0mlとなり、脂質の合計は13μmolで10mg(13μmol),アンチセンス2mg,エタノール濃度38%,vol/volとなる。pHは約4.4に上昇すると思われる。
【0155】
アンチセンス−脂質混合液を液体窒素中での凍結、水浴中65℃での融解のサイクルを5回繰り返した。各融解後、混合液に短時間渦流した。その後、混合液を3枚重ねの100nmポリカーボネートフィルター(Poretics)を10回通過させるか、またはサーモバレルアタッチメントの付いた加圧エクストルーダー装置(Lipex Biomembranes)を用いて圧ろ過した。圧ろ過中の温度及び窒素圧はそれぞれ65℃及び200psi以下から300psiであった。各圧ろ過は2分以内とし、各通過後渦流混合した。
【0156】
圧ろ過後、混合液はpH3.9−4.0の300mMクエン酸中で1時間、透析チューブ(分子量3500をカットオフ;Spectrapor)中で透析し、エタノールを除去した。混合液を5LのHBS緩衝液(pH7.5)中に移し、DODMAを中和するために最低12時間更に透析し、小胞の表面に結合したアンチセンスを遊離させた。別の方法として、タンジェンシャルフロー透析、イオン交換クロマトグラフィーまたはゲルろ過クロマトグラフィーを用いて圧ろ過アンチセンス−脂質混合液を処理して、投与可能な調製物とする。
【0157】
例 7
本例は例5と同様に有効性の高い製剤を具体的に説明するものであるが、但しDODAP:SM:CHOL:PGE-Cer14(モル比20:25:45:10)の調製物を作るためにDSPCの代わりにSMを用いて実施した。アンチセンスは1.0mL基準の処方で処理されており、必要な場合には比例的にスケールアップすることが出来る。
【0158】
材料:スフィンゴミエリンSM;コレステロール,CHOL;ジメチルアミノプロパン,DODAP;炭素数14のアシル鎖を持つセラミド誘導体に結合したポリエチレングリコール,PEG-CerC14;13×100mmのガラス試験管;ろ過滅菌300mMクエン酸緩衝液,pH3.9−4.0(0.2μmフィルター使用)。
【0159】
脂質ストック溶液は、以下に示す作用濃度の脂質を用いて、100%エタノール中で作成した:
SM,20mg/ml;CHOL,20mg/ml(この濃度以上はさほど溶けない);DODAP,20ml/ml;PGE-CerC14;50mg/ml。
【0160】
アンチセンスのストック溶液を調製するため、アンチセンス分子を3.33mg/ml濃度に、ろ過した300mMクエン酸緩衝液に溶解した。脂質を13×100mmガラス試験管中で、下記表2に示したように100%エタノールを用いて脂質の最終容量が0.4mlとなるように、所望の割合で混合した:
【0161】
【表5】

【0162】
別の13×100mmのガラス試験管に濃度3.33mg/mlのアンチセンス溶液0.6mlを入れた。この溶液のpHは3.9−4.0となる。(注:アンチセンスの濃度は重量によって決めるのではなく260nmにおける吸光度を測定して決める)。脂質の混合溶液を約2分間65℃に温めた。アンチセンス試験管を渦流混合し、この間にパスツールピペットを用いて、脂質(エタノール溶液)を1滴ずつゆっくりと添加した。混合液は濁り、エタノールによりある程度の気泡が見られるかも知れないが、凝集体は存在しない筈である。アンチセンス−脂質混合液の量は1.0mlとなり、脂質の合計は13μmolで10mg(13μmol),アンチセンス2mg,エタノール濃度38%,vol/volとなる。pHは約4.4に上昇すると思われる。
【0163】
アンチセンス−脂質混合液を液体窒素中での凍結及び水浴中65℃での融解のサイクルを5回繰り返した。各融解後、混合液に短時間渦流混合した。その後混合液を3枚重ねの100nmポリカーボネートフィルター(Poretics)で10回通過させるか、またはサーモバレルアタッチメントの付いた加圧エクストルーダー装置(Lipex Biomembranes)を用いて圧ろ過した。圧ろ過中の温度及び窒素圧はそれぞれ65℃及び200 psi以下から300 psiであった。各圧ろ過は2分以内とし、各通過後渦流混合した。
【0164】
圧ろ過後、混合液をpH3.9−4.0の300mMクエン酸中で1時間透析チューブ(分子量3500をカットオフ;SpectraPor)中で透析し、エタノールを除去した。混合液を5LのHBS緩衝液(pH7.5)中に移し、DODMAを中和するために最低12時間更に透析し、小胞の表面に結合したアンチセンスを遊離させた。別の方法として、タンジェンシャルフロー透析,イオン交換クロマトグラフィーまたはゲルろ過クロマトグラフィーを用いて圧ろ過アンチセンス−脂質混合液を処理して、投与可能な調製物とする。
【0165】
例 8
本例は例5と同様に有効性の高い製剤を具体的に説明するものであるが、但しアンチセンス製剤のDODAP:DSPC:CHOL:ATTA8-DSPE(モル比40:10:45:5)を調製するためPEG-CerC14の代わりにATTA8-DSPEを使用した。
【0166】
材料:ジステアロイルホスファチジルコリン,DSPC;コレステロール,CHOL;ジメチルアミノプロパン,DODAP;N−(w−N’−アセトキシ−オクタ14’アミノ−3’,6’,9’,12’−テトラオキサテトラデカノイル))−1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン,ATTA8-DSPE;13×100mmガラス試験管;ろ過滅菌300mMクエン酸緩衝液,pH3.9−4.0(0.2μmフィルター使用)。
【0167】
脂質ストック溶液は、以下に示す作用濃度の脂質を用いて、100%エタノール中で作成した:
DSPC,20mg/ml;CHOL,20mg/ml(この濃度以上はさほど溶けない);DODAP,20 mg/ml;ATTA8-DSPE;50mg/ml。
【0168】
アンチセンスのストック溶液を調製するため、アンチセンス分子を3.33mg/ml濃度に、ろ過した300mMクエン酸緩衝液に溶解した。脂質を13×100mmガラス試験管中で、下記表3に示したように100%エタノールを用いて脂質の最終容量が0.4mlとなるように、所望の割合で混合した:
【0169】
【表6】

【0170】
別の13×100mmのガラス試験管に濃度3.33mg/mlのアンチセンス溶液0.6mlを入れた。この溶液のpHは3.9−4.0となる。(注:アンチセンスの濃度は重量によって決めるのではなく260nmにおける吸光度を測定して決める)。脂質の混合溶液を約2分間65℃に温めた。アンチセンス試験管を渦流混合し、この間にパスツールピペットを用いて、脂質(エタノール溶液)を1滴ずつゆっくりと添加した。混合液は濁り、エタノールによりある程度の気泡が見られるかも知れないが、凝集体は存在しない筈である。アンチセンス−脂質混合液の量は1.0mlとなり、脂質の合計は13μmolで10mg(13μmol),アンチセンス2mg,エタノール濃度38%,vol/volとなる。pHは約4.4に上昇すると思われる。
【0171】
アンチセンス−脂質混合液を液体窒素中での凍結、水浴中65℃での融解のサイクルを5回繰り返した。各融解後、混合液に短時間渦流混合した。その後混合液を3枚重ねの100nmポリカーボネートフィルター(Poretics)で10回通過させるか、またはサーモバレルアタッチメントの付いた加圧エクストルーダー装置(Lipex Biomembranes)を用いて圧ろ過した。圧ろ過中の温度及び窒素圧はそれぞれ65℃及び200psi以下から300psiであった。各圧ろ過は2分以内とし、各通過後渦流混合した。
【0172】
圧ろ過後、混合液をpH3.9−4.0の300mMクエン酸中で1時間透析チューブ(分子量3500をカットオフ;SpectraPor)中で透析し、エタノールを除去した。混合液を5LのHBS緩衝液(pH7.5)中に移し、DODMAを中和するために最低12時間更に透析し、小胞の表面に結合したアンチセンスを遊離させた。別の方法として、タンジェンシャルフロー透析,イオン交換クロマトグラフィーまたはゲルろ過クロマトグラフィーを用いて圧ろ過アンチセンス−脂質混合液を処理して、投与可能な液とすることが出来る。
【0173】
例 9
本実験は圧ろ過アンチセンス−脂質混合液の大規模(>50 ml)調製液を清澄化して投与可能な調製物を得るために、タンジェンシャルフロー透析の使用を具体的に説明するものである。タンジェンシャルフローダイアフィルトレーションは次の製剤工程において4つの機能で有用であることが示されている:1)緩衝液交換 2)エタノール除去 3)未封入のアンチセンスの除去 4)製剤の濃縮。TFを用いて、サンプル容量の10−15倍の単一緩衝液系を用いて、極めて短時間の工程時間でこれら成分の交換が効果的に出来ることが判明している。
【0174】
タンジェンシャルフロー透析用の材料:Microcross Sampler(登録商標)タンジェンシャルフローカラム(Microgon,Laguna Hills,Ca)Masterflex(登録商標)コンソールドライブ及びEasyload(登録商標)ポンプヘッド(Cole-Parmer,Vernon Hills Ill.),押出装置(Lipex Biomembranes,Vancouver BC),ポリカーボネート膜,100μm,(AMD Manufacturing,Mississauga On)。
【0175】
アンチセンス(c-myc)の調製液は260nmの吸光度でc-myc最終濃度が4.17mg/mlとなるように300mMクエン酸ナトリウム緩衝液に溶解して作成した。アンチセンスの保存溶液は一般的には、65℃で2分間加温して溶解し2次構造物を除いた。AS 4200はDODAP:DSPC:CHOL:PEG-CER-14(%モル比25:20:45:10)からなり、脂質はストック溶液からアリコートを採り、無水アルコール中合計濃度10mg/0.400mlとした。本試験では50−60ml規模の製剤を作成した。したがって20−24mlのアルコール性脂質溶液を室温で蠕動ポンプを用いて1ml/分の速度で1滴ずつ30−36 mlのAS溶液に加える。AS溶液は丸底フラスコ中で2cmの磁気攪拌棒で攪拌しておく(スターラーセッティング2−3)。混合液、脂質/アンチセンス懸濁液を圧ろ過液100ml中にピペットで添加した。圧ろ過液は2−3,100μmのポリカーボネート膜を通し、65℃に予め平衡化したものである。該懸濁液は〜300psiで10回通過させたものである。圧ろ過後、タンジェンシャルフローダイアフィルトレーションを用いて製剤を処理した。
【0176】
タンジェンシャルフロー限外ろ過:Tygonチューブを用いて230cm Microcrossタンジェンシャルフローカートリッジ(50KDaカットオフ)をMasterflexペリスタリックポンプ,サンプル貯留槽及び緩衝液貯留槽に接続した。チューブ,ポンプ及びTFカートリッジの全経路が30mlの総デッドボリューム(dead volume)となるようにチューブの長さを調節した。この系に60mlのサンプル貯留槽を接続した。ペリスタリックポンプを低速で運転させてチューブ及び貯留槽にサンプルを負荷した。負荷後、系を閉じ、最初のTFカートリッジの入圧が12−15psiそして出口圧が8−11psiとなるまでポンプスピードをポンプの最大(約100ml/分)まで徐々に上げた。系の圧が安定した時、ろ液出口及び緩衝液貯留槽のバルブを開いた。これらのバルブを開くと、ろ液が10−15 ml/分の速度でカートリッジから流出し、一方洗浄緩衝液(即ちPBS,pH7.5)は回収されていた。50−60mlの製剤に対し700−900 mlの緩衝液がサンプルの洗浄に使用された。エタノールの除去、pH,及びアンチセンスを分析するため、ろ液のフラクション(10ml)を採集した。ダイアフィルトレーションを終了後、洗浄緩衝液のバルブを閉じ、ポンプの運転を続けてろ液を流し、よってサンプルを濃縮して、一般的には調製液の量をチューブのデッドボリューム(30−35ml)まで減少させた。系からサンプルを回収し、15mlの洗浄緩衝液でチューブ及びカラムを洗浄して残存製剤を除去した。
【0177】
アンチセンスの定量:現在の実験計画書に概説されているように、アンチセンスの濃度は260nmにおける吸光度を測定して定量した。簡単に述べれば、アンチセンスの保存溶液をMilli Q水で1:500に希釈し、吸光度を測定して定量した。TFろ液フラクションはMilli Q水で1:10に希釈して吸光度を測定した。脂質を含む懸濁液中のアンチセンスは、懸濁液10μlをMilli Q水250μlに加えて測定した。単相はCHCl/MeOH(2.1:1)750μlとMeOH 100μlを加えて作成した。混合液を渦流混合した直後に260nmの吸光度を測定した。いずれの場合も所定のアンチセンスの吸光係数に希釈倍率を乗じてアンチセンス濃度を算出した。
【0178】
脂質の定量:現在の実験計画書に概説されているように、脂質/アンチセンス懸濁液50μlをMilli Q水100μlで希釈してHPLCによる分析にかけた。製剤の封入効率%は最終生成物の薬物/脂質比を、脂質及びアンチセンスストック溶液を混合した時の薬物/脂質比で除去して求めた。
【0179】
エタノール定量:TF濾液中のエタノールはSigma Chemical Co.から供給されたアルコール脱水素酵素試薬キットを用いて定量した。
【0180】
DEAEセファデックスクロマトグラフィー:20mM PBS(pH7.5)で平衡化したDEAEセファデックスカラム(1×10cm)に処理する製剤の懸濁液を負荷した。カラムから溶出後、該製剤を滅菌ファルコンチューブに採集した。容量、アンチセンス濃度及び脂質濃度を測定して回収率を求めた。
【0181】
粒子の大きさ:製剤の粒子寸法はNicomp Particle寸法測定器(Nicomp,Santa Barbara CA)を用いてQELSにより測定し、容積重量と共に粒子態様に報告されている。
【0182】
大規模調製物の結果
【表7】

【0183】
例 10
例2及び5−9の方法に従って、封入ホスホジエステル及びホスホロチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチドの血清またはSIヌクレアーゼによるヌクレアーゼ消化に対する相対感受性を調べた。ホスホジエステル結合オリゴヌクレオチドは、遊離の場合とは対照的に封入時では、血清中での防御は有意に高く、分解のT1/2は10分から少なくとも8時間に上昇した。遊離のホスホロチオエートオリゴデオキシヌクレオチドは血清中で30分以内に有意な分解を示したが、封入ホスホロチオエートオリゴデオキシヌクレオチドは血清中で24時間後でも分解の徴候を何ら示さなかった。イン・ビボのデータはこれらの知見と一致し、封入ホスホロチオエートアンチセンスの分解の徴候は8時間まで無いことを示している。
【0184】
陽性対照として、遊離のホスホジエステル及びホスホロチオエートアンチセンスを高単位のSIヌクレアーゼ(100U/50μg)(1単位のSIヌクレアーゼは37℃で1分間にDNA1μgを分解する)に曝した。本酵素は添加後数秒以内で遊離のホスホジエステル及びホスホロチオエートを完全に分解した。同じ条件下で封入ホスホジエステルは24時間で90%以上が無傷であり、また封入ホスホロチオエートは24時間に完全に無傷であった。
実験は仕様書に記載されているように、あるいは次のように修飾して実施した。
【0185】
SIヌクレアーゼによる分解:遊離,封入,または封入+0.5%Triton X-100を含むアリコートを50μgずつ1.5mlのエッペンドルフ試験管に分注した。この試験管に10×SIヌクレアーゼ緩衝液10μl,dHO(最終容積100μlとする),及び、分解直前に、100UのSIを各エッペンドルフ試験管に添加した。この試験管をパラフィンで密閉し、55℃で保温した。又ヌクレアーゼ(標準)による分解を受けない遊離,封入,または封入+0.5%Triton X-100のサンプルはエッペントルフ試験管中で液体窒素により凍結し−20℃で保存した。希望する各時点で各サンプルの1部を採り、プロティナーゼKを含む(133μg/ml)GDP緩衝液に添加し、直ちに液体窒素中で凍結して反応を止めた。全ての時点での採取が終了した時、水浴中でサンプルを55℃に保存してプロティナーゼKを活性化し、残存するSIヌクレアーゼを変性させた。下記のようにプロテインキナーゼ分解サンプルをポリアクリルアミドゲルにかけ、SIヌクレアーゼの分解程度を調べた。
【0186】
正常ネズミ/ヒト血清消化:遊離,封入,または封入+0.5%Triton X-100の50μgずつを1.5mlのエッペンドルフ試験管に分注した。該試験管に45μlのネズミ/ヒト血清を加え、dHOを加えて最終容量50μlとした。試験管をパラフィンで密閉し37℃に保温した。ヌクレアーゼ(標準)で分解しなかった遊離,封入,または封入+0.5%Triton X-100のサンプルをエッペンドルフ試験管中で液体窒素で凍結し、−20℃で保存した。各時点で一部を採り、プロティナーゼK(133μg/ml)を含むGDP緩衝液中に入れて直ちに液体窒素中で凍結し反応を止めた。全ての時点での採取が終了した時、水浴中でサンプルを55℃に温め、プロティナーゼKを活性化して残存エクソヌクレアーゼを変性させた。プロティナーゼK分解サンプルをポリアクリルアミドゲルにかけエクソヌクレアーゼの分解の程度を調べた。
【0187】
ミクロコッカスヌクレアーゼ:本実験では使用しなかったもう1つの標準ヌクレアーゼ定量法はRahman等の米国特許5665710に記載されている定量法である。この定量法では1mM CaCl中、過剰のミクロコッカスヌクレアーゼ存在下で核酸/脂質粒子を37℃で30分間保温する。
【0188】
ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE):7M尿素及びTBEで14cm×16cm×7.5mmのポリアクリルアミド(15%または20%)ゲルを作成する。サンプル(各時点での)及び標準品の300ngをエッペンドルフ試験管に分注した。等容量の2×充填緩衝液を各サンプルに添加した。水浴中でサンプルを90℃,3分間加熱してゲルに塗布した。塗布したゲルを600Vで10分間電気泳動し(バンドをシャープにするため)、その300Vで電気泳動を行った。ゲルを1×SyberGree I染料のTBE溶液に15分間浸し、その後UV光照射下で写真撮影した(露出3.5秒、絞り4.5)。
VII.結論
上記のように、本発明は脂質封入治療剤(核酸)組成物の調製方法を示すものである。治療薬が大きな単層小胞中に極めて効率よく封入されている。更に本発明は、本法によって調製される組成物、並びに治療剤(核酸)を細胞中に導入する方法を提示するものである。組成物はイン・ビボでもイン・ビトロでも、驚くほど効率よく細胞に移入される。
【0189】
本仕様書に記載されている全ての発行物、特許及び特許申請は、それぞれ個々の発行物,特許,または特許申請が参考資料としてここに明細書にそして個々に組み込まれて示されているのと同程度に参考資料によって本仕様書に編入されている。
【0190】
以前の発明は理解を明確にするために図及び例によってある程度詳細に記載したが、記載した請求の範囲内である程度の変更及び修正が行われるかも知れない。
【0191】
配列表
(1)一般情報
(i)申請者:
(A)氏名:Inex Pharmaceuticals Corporation
(B)街:100 - 8900 Glenlyon Parkway
(C)市:Burnaby
(D)州:B.C.
(E)国:カナダ
(F)郵便番号:V5J 5J8
(G)電話:
(H)ファックス:
(I)テレックス:
(ii)発明の名称:脂質小胞への電荷医薬品の高率封入
(iii) 配列数:17
(iv)通信の宛先
(A)受信人:Smart & Biggar
(B)街:Box 11560, Vancouver Centre 2200 - 650 West Georgia Street
(C)市:Vancouver
(D)州:B.C.
(E)国:カナダ
(F)郵便番号:V6B 4N8
(v)コンピューターの読込み形式
(A)媒体のタイプ:フロッピーディスク
(B)コンピューター:IBM PC コンバーティブル
(C)操作システム:PC-DOS/MS-DOS
(D)ソフトウエア:Word Perfect
(vi)現行出願データ
(A)出願番号
(B)出願日
(C)分類
(vii)原出願データ
(A)出願番号:US 08/856,374
(B)出願日:1997年5月14日
(viii)弁護士/弁理士情報
(A)名称:Smart & Biggar
(C)参照/名簿番号:80472-2
(ix)遠距離通信情報
(A)電話:(604) 682-7295
(B)ファックス:(604) 682-0274
(2)配列番号:1の情報
(i)配列の特徴:
(A)長さ:20
(B)型:核酸
(C)鎖の数:1本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:他の核酸
(iii)ハイポセティカル配列:いいえ
(iv)アンチセンス:はい
(ix)配列:配列番号:1
TGCATCCCCC AGGCCACCAT
(2)配列番号:2の情報
(i)配列の特徴:
(A)長さ:20
(B)型:核酸
(C)鎖の数:1本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:他の核酸
(iii)ハイポセティカル配列:いいえ
(iv)アンチセンス:はい
(ix)配列:配列番号:2
GCCCAAGCTG GCATCCGTCA
(2)配列番号:3の情報
(i)配列の特徴:
(A)長さ:15
(B)型:核酸
(C)鎖の数:1本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:他の核酸
(iii)ハイポセティカル配列:いいえ
(iv)アンチセンス:はい
(ix)配列:配列番号:3
GGTGCTCACT GCGGC
(2)配列番号:4の情報
(i)配列の特徴:
(A)長さ:15
(B)型:核酸
(C)鎖の数:1本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:他の核酸
(iii)ハイポセティカル配列:いいえ
(iv)アンチセンス:はい
(ix)配列:配列番号:4
AACGTTGAGG GGCAT
(2)配列番号:5の情報
(i)配列の特徴:
(A)長さ:16
(B)型:核酸
(C)鎖の数:1本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:他の核酸
(iii)ハイポセティカル配列:いいえ
(iv)アンチセンス:はい
(ix)配列:配列番号:5
TAACGTTGAG GGGCAT
(2)配列番号:6の情報
(i)配列の特徴:
(A)長さ:24
(B)型:核酸
(C)鎖の数:1本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:他の核酸
(iii)ハイポセティカル配列:いいえ
(iv)アンチセンス:はい
(ix)配列:配列番号:6
TATGCTGTGC CGGGGTCTTC GGGC
(2)配列番号:7の情報
(i)配列の特徴:
(A)長さ:18
(B)型:核酸
(C)鎖の数:1本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:他の核酸
(iii)ハイポセティカル配列:いいえ
(iv)アンチセンス:はい
(ix)配列:配列番号:7
GTGCCGGGGT CTTCGGGC
(2)配列番号:8の情報
(i)配列の特徴:
(A)長さ:18
(B)型:核酸
(C)鎖の数:1本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:他の核酸
(iii)ハイポセティカル配列:いいえ
(iv)アンチセンス:はい
(xi)配列:配列番号:8
GGACCCTCCT CCGGAGCC
(2)配列番号:9の情報
(i)配列の特徴:
(A)長さ:18
(B)型:核酸
(C)鎖の数:1本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:他の核酸
(iii)ハイポセティカル配列:いいえ
(iv)アンチセンス:はい
(xi)配列:配列番号:9
TCCTCCGGAG CCAGACTT
(2)配列番号:10の情報
(i)配列の特徴:
(A)長さ:15
(B)型:核酸
(C)鎖の数:1本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:他の核酸
(iii)ハイポセティカル配列:いいえ
(iv)アンチセンス:はい
(xi)配列:配列番号:10
CCGTGGTCAT GCTCC
(2)配列番号:11の情報
(i)配列の特徴:
(A)長さ:21
(B)型:核酸
(C)鎖の数:1本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:他の核酸
(iii)ハイポセティカル配列:いいえ
(iv)アンチセンス:はい
(ix)配列:配列番号:11
CAGCCTGGCT CACCGCCTTG G
(2)配列番号:12の情報
(i)配列の特徴:
(A)長さ:20
(B)型:核酸
(C)鎖の数:1本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:他の核酸
(iii)ハイポセティカル配列:いいえ
(iv)アンチセンス:はい
(xi)配列:配列番号:12
CAGCCATGGT TCCCCCCAAC
(2)配列番号:13の情報
(i)配列の特徴:
(A)長さ:20
(B)型:核酸
(C)鎖の数:1本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:他の核酸
(iii)ハイポセティカル配列:いいえ
(iv)アンチセンス:はい
(ix)配列:配列番号:13
GTTCTCGCTG GTGAGTTTCA
(2)配列番号:14の情報
(i)配列の特徴:
(A)長さ:18
(B)型:核酸
(C)鎖の数:1本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:他の核酸
(iii)ハイポセティカル配列:いいえ
(iv)アンチセンス:はい
(xi)配列:配列番号:14
TCTCCCAGCG TGCGCCAT
(2)配列番号:15の情報
(i)配列の特徴:
(A)長さ:15
(B)型:核酸
(C)鎖の数:1本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:他の核酸
(iii)ハイポセティカル配列:いいえ
(iv)アンチセンス:はい
(xi)配列:配列番号:15
GTGCTCCATT GATGC
(2)配列番号:16の情報
(i)配列の特徴:
(A)長さ:34
(B)型:核酸
(C)鎖の数:1本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:他の核酸
(iii)ハイポセティカル配列:いいえ
(iv)アンチセンス:はい
(ix)配列:配列番号:16
GAGUUGCUGA UGAGGCCGAA AGGCCGAAAG UCUG
(2)配列番号:17の情報
(i)配列の特徴:
(A)長さ:15
(B)型:核酸
(C)鎖の数:1本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:他の核酸
(iii)ハイポセティカル配列:いいえ
(iv)アンチセンス:はい
(ix)配列:配列番号:17
GAACGGAGAC GGTTT

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂質−核酸粒子を含む組成物を調製する方法であって、該方法は、
(a)少なくとも第一の脂質成分及び第二の脂質成分を含む脂質の混合物を、核酸の緩衝水溶液と混合して脂質封入核酸粒子を含有する中間混合物を形成する工程であって、
該緩衝液は、第一の脂質成分が、式
【化1】


(R11とR12はそれぞれ、枝分かれのある又はない、飽和又は不飽和である、C12からC24のアルキル基又はアシル基であり、R13及びR14はそれぞれ水素又はC〜Cのアルキル基である)
を有するアミノ脂質であり;
該緩衝液は、緩衝液中にあるとき第一の脂質成分が荷電型となるようなpHを有しており;
該第二の脂質成分がポリエチレングリコール修飾した又はポリアミドオリゴマー修飾した脂質である工程;及び
(b)該脂質封入核酸粒子上の少なくとも部分的な外表面荷電を中和するように、中間混合物のpHを変更して、少なくとも部分的に表面が中和された脂質封入核酸粒子を提供する工程、
を含む、上記方法。
【請求項2】
前記核酸がRNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記核酸がアンチセンス核酸を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記核酸が、ホスホジエステル,ホスホロチオエート,ホスホロジチオエート,ボラノホスフェート,ホスホロセレネート及びアミデート結合からなる群より選択される結合を含む、請求項1〜3いずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記核酸がホスホジエステル結合のみを含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記緩衝液が10−50mMのクエン酸緩衝液またはリン酸緩衝液を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記核酸が少なくとも幾つかのホスホロチオエート結合を含有する、請求項2〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記緩衝液が10−300mMのクエン酸緩衝液またはリン酸緩衝液を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記核酸がリボザイムである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物が本質的に脂質−核酸粒子からなり、該粒子の大きさが70nm−200nmである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程(a)における脂質の混合物が、アルコール中の脂質の混合物である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
13及びR14が共にC〜Cアルキル基である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
13及びR14が共にCHである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記脂質混合物中に存在する前記脂質が、アミノ脂質、中性脂質、Chol、及びPEG修飾した又はポリアミドオリゴマー修飾した脂質を含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記脂質が、中性脂質が20〜45%、Cholが35〜55%、アミノ脂質が10−40%、PEG修飾した又はポリアミドオリゴマー修飾した脂質が0.5−15%のモル百分率で存在する請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第二の脂質がPEG−セラミドである、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記pHを変更する工程が、タンジェンシャルフロー(tangential flow)透析を用いて行われる、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
脂質部分及び核酸を含む脂質−核酸粒子を含む組成物であって、
該核酸は該脂質部分の中に封入され、ヌクレアーゼ分解から保護されており、
該脂質部分が第一の脂質成分及び第二の脂質成分を含み;
該第一の脂質成分が、式
【化2】


(R11とR12はそれぞれ、枝分かれのある又はない、飽和又は不飽和である、C12からC24のアルキル基あるいはアシル基であり、R13及びR14はそれぞれ水素又はC〜Cのアルキル基である)
を有するアミノ脂質であり;及び
該第二の脂質成分がポリエチレングリコール修飾した又はポリアミドオリゴマー修飾した脂質から選択されている;
上記組成物。
【請求項19】
前記粒子が、核酸/脂質比が少なくとも10質量%であり、大きさが70nm−200nmである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも幾つかの、粒子の外表面に配置されているプロトン付加可能な又はプロトン遊離可能な基が中和されている、請求項18又は19に記載の組成物。
【請求項21】
前記核酸がRNAである、請求項18〜20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記核酸がアンチセンス核酸を含む、請求項18〜21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
前記核酸がホスホジエステル結合のみを含む、請求項18〜22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
組成物中の核酸の少なくとも50%が粒子の中に封入されている、請求項18〜23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
組成物中の核酸の少なくとも90%が粒子の中に封入されている、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記核酸がリボザイムである、請求項18に記載の組成物。
【請求項27】
13及びR14が共にC〜Cアルキル基である、請求項18〜26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
13及びR14が共にCHである、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記脂質核酸粒子が、アミノ脂質、中性脂質、Chol、及びPEG修飾した又はポリアミドオリゴマー修飾した脂質を含む、請求項18〜28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
前記脂質が、中性脂質が20〜45%、Cholが35〜55%、アミノ脂質が10〜40%、PEG修飾した又はポリアミドオリゴマー修飾した脂質が0.5−15%のモル百分率で存在する請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
前記第二の脂質がPEGセラミドである、請求項18〜30のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
更に医薬的に許容される担体を含む、請求項18〜31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
核酸をインビトロで細胞に導入する方法であって、細胞を、請求項1〜17のいずれか一項にしたがって調製された組成物又は請求項18〜32のいずれか一項に記載の組成物に、細胞に核酸を導入するのに十分な時間接触させることを含む、上記方法。
【請求項34】
哺乳類の対象における疾病の治療又は予防のための、請求項1〜17のいずれか一項にしたがって調製された脂質封入核酸粒子又は請求項18〜32のいずれか一項に記載の組成物であって、前記核酸が疾病関連遺伝子の相補配列を含み、疾病関連遺伝子の遺伝子産物の産生を減少させる、上記脂質封入核酸粒子又は組成物。
【請求項35】
前記疾病関連遺伝子がICAM−1,c−myc,c−myb,ras,raf,erb−B,PKC−α,IGF−1R,EGFR,VEGF,及びVEGF−R−1から選択される、請求項34に記載の脂質核酸粒子又は組成物。
【請求項36】
前記疾病が腫瘍、炎症、感染疾患から選択される、請求項34又は35に記載の脂質核酸粒子又は組成物。
【請求項37】
前記疾患が腫瘍、炎症、感染疾患から選択される、請求項34〜36のいずれか一項に記載の脂質核酸粒子又は組成物。
【請求項38】
13及びR14が共にC〜Cアルキル基である、請求項34〜37のいずれか一項に記載の脂質核酸粒子又は組成物。
【請求項39】
13及びR14が共にCHである、請求項38に記載の脂質核酸粒子又は組成物。
【請求項40】
請求項1〜17にしたがって調製された脂質核酸粒子及び医薬的に許容される担体を含む組成物。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2010−31046(P2010−31046A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−255730(P2009−255730)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【分割の表示】特願平10−548646の分割
【原出願日】平成10年5月14日(1998.5.14)
【出願人】(509309008)ユニバーシティー オブ ブリティッシュ コロンビア (1)
【Fターム(参考)】