説明

脂質成長因子調合物

本発明は、水溶液中で、生理学的pHで、実質的に不溶性であり、かつ/又は沈殿しやすい、例えば成長因子及び分化因子−5、並びに関連タンパク質を含む疎水性治療化合物の新しい調合物、並びに改良された送達及び投与のための方法に関する。多くの治療化合物は、生理学的pHの範囲で疎水性である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶液中で、生理学的pHで、実質的に不溶性であり、かつ/又は沈殿しやすい、例えば成長因子及び分化因子−5、並びに関連タンパク質を含む疎水性治療化合物の新しい調合物、並びに改良された送達及び投与のための方法に関する。多くの治療化合物は、生理学的pHの範囲で疎水性である。
【0002】
結果として、かかる化合物は、水溶液中の生理学的pH範囲で実質的に不溶性である。さらに、生理学的pHで、水溶液中でわずかに溶ける疎水性治療化合物でさえも、このわずかな疎水性を失い、該溶液のpHが生理学的pHの範囲内で移動する場合に、より高く沈殿しやすくなる。
【0003】
生理学的pHの範囲における水溶液中で、低い水溶性の治療化合物についての多くの問題点がある。例えば、新しい治療化合物のための高流量スクリーニングの能力は、生理学的pHで、水溶液中の溶解性と活性度との適合に依存する。十分な溶解性なしに、該化合物の活性は、認識されない。従って、化合物は、乏しい溶解性に基づく初期試験に失敗し、他の開発努力の放棄をもたらしうる。潜在性の治療化合物の40%が、乏しい水溶性によってスクリーニングで失敗することが推定されている。
【0004】
例として、治療化合物の成長及び分化因子−5(GDF−5)は、35個より多い異なる構成要素を有する関連タンパク質の群の、形質転換成長因子−ベータ(TGF−ベータ)スーパーファミリーに属するモルフォゲンである。TGF−ベータスーパーファミリータンパク質は、細胞増殖及び組織形成を促進し、かつ広い範囲の治療法及び適用に関連する。この群の全ての構成要素は、構造的に類似しており、かつ6個又は7個の標準システイン残基を含有する保存生体活性"システイン−ノット"ドメインを含む。その二量体分子は、主に、タイプI及びタイプIIのセリン/トレオニン受容体キナーゼからなる特異的な受容体複合体を介して作用する。続いて、該受容体キナーゼは、核中へシグナルを伝達して、標的遺伝子の発現を調節する、Smadタンパク質を活性化する。
【0005】
軟骨誘導形態形成タンパク質−1(CDMP−1)又はMP52としても公知の、GDF−5(Hoetten et al. 1994年、Biochem. Biophys Res. Commun. 204,646〜652頁)は、GDF−6及びGDF−7に非常に密接に関係している。それらの3つのタンパク質は、TGF−βスーパーファミリーの別個の部分群を形成し、従って同等の生物学的特性、及びアミノ酸配列同一性の顕著な高い程度を示す(すなわちWolfman et al. 1997年、J. Clin. Invest. 100、321〜330頁を参照)。
【0006】
骨及び軟骨の新規の調合物におけるGDF−5/−6/−7の顕著な機能(Cheng et al. 2003年、J. Bone&Joint Surg. 85A、1544〜1552頁;Settle et al. 2003年、Developm. Biol. 254、116〜130頁)に加えて、この部分群の構成要素は、腱及び靱帯(Wolfman et al. 1997年、J. Clin. Invest. 100、321〜330頁)、血管(Yamashita et al. 1997年、Exp Cell Res. 235、218〜26頁)、神経組織(Farkas et al. 1997年、Neurosci Lett. 236、120〜122頁;Watakabe et al. 2001年、J. Neurochem. 76、1455〜1464頁)、歯周靱帯及び歯(Sena et al 2003年、J. Dent. Res. 82、166〜171頁;Morotome et al. 1998年、Biochem. Biophys. Res. Commun. 244、85〜90頁)、並びに他の組織及び器官の、重要な誘導物質並びに調節物質でもあることが、繰り返して示されてもいる。さらに、GDF−5は、著しい神経栄養の特性を示す(すなわちKrieglstein et al. 1995年、J Neurosci Res. 42、724〜732を参照)。従って、GDF−5は、神経損傷、及び神経変性の疾患、例えばパーキンソン病の治療のための見込みのある作用剤でもある。
【0007】
GDF−5の骨形成性は、過去に、すなわち局所的な骨折の治癒を支持するために、うまく利用されている。かかる目的のために、GDF−5及び固体キャリヤーマトリックスを含有する合された骨誘導材料が、開発されてきている(例えばWO98/21972号を参照)。しかしながら、固体材料は、例えば全身の適用を必要とする骨粗鬆症の検出のために不適当である。問題は、簡単には影響を受けない場所、例えば脳又は脊髄へのタンパク質の薬物送達でもある。
【0008】
前記の及び同様の場合において、可溶性の形でのGDF−5の投与が、一般的に好ましい。しかしながら、前記のタンパク質は、等電点7.6を有し、かつ生理学的条件下で非常に乏しい溶解性を示す。従って、安定な液体又はゲル様GDF−5組成物を形成する以前の試みは、深刻な問題に直面している。GDF−5/MP52(すなわちEP 1 462 126号において示されている)のpH依存の溶解分布は、タンパク質が、水溶液中で、4.25より高いpHで沈澱し始め、かつpH5〜pH9の間で完全に不溶性になることを示す。EP 1 462 126号は、低いイオン強度を有する溶剤を使用することによってタンパク質の溶解分布の改良に成功したが、ほぼ中性のpHでの溶解性は、決して達成されたことがなく、しかし非経口の、及び他の調合物のために望ましい。
【0009】
それらの特有の組織誘導活性によって、TGF−βスーパーファミリー、例えばGDF−5のタンパク質は、特定のマトリックス材料単独で又は組合せで、損傷組織の天然の治癒法を促進及び援助する、治療研究及び再生外科において巧く適用されてきている。
それにもかかわらず、生理学的条件下で、特に、タンパク質と多量の固体キャリヤー材料との組合せ物を許可しない方法で、かかるタンパク質の効率的な投与のための新しい方法及び調合物を開発する多くの必要がまだある。
【0010】
多くの化合物は、治療の可能性を有するが、しかし生理学的pHで制限された水溶性を有する。例えば、L. Malavolta et al.(2006年)、Protein Science 15:1476〜1488頁を参照(とりわけ、pH3で非常に溶解するが、実質的にpH7で不溶性であるベータアミロイド1〜42を論じている)("非常に治療的な可能性のある多くのペプチドを基礎とした薬物が、単に、不可逆の沈澱のための容認できない傾向のために、効果がなくなる。")。
【0011】
従って、本発明の目的は、生理学的pHでのかかる化合物の溶解性を改良することによって、生理学的pHで制限された水溶性を有する疎水性治療化合物の治療の特性を改良することである。他の目的は、生理学的pH値で、安定であり、非毒性であり、かつ治療的に適用できる、液体の成長因子組成物を提供することによって、GDF−5及び関連タンパク質の有用性を改良することである。この目的は、注射できる及び/又は非経口の調合物、粘膜投与のための調合物、緩効性組成物、並びに血液脳関門のために容易に影響されにくい治療対象物へ移送されうる調合物の開発を含む。本発明の第三の目的は、前記の調合物及び組成物の製造方法である。本発明の第三の目的は、前記の成長因子組成物の局所的な又は全身性の投与のための好適な方法を提供することである。他の目的は、多くの選択された疾患の、前記の調合物及び方法での治療である。
【0012】
定義:
誤解及び不明確さを避けるために、本明細書においてしばしば使用されるいくつかの用語は、以下のように定義及び例示される。
【0013】
本明細書において使用される"治療化合物"という用語は、予防の理由のために含まれるあらゆる種類の、動物又は植物に治療成分として投与される物質もしくは治療剤のあらゆる作用剤、物質又は組成物を意味する。
【0014】
本明細書において使用される"システイン−ノットドメイン"という用語は、TGF−ベータスーパーファミリータンパク質、例えばヒトGDF−5の成熟部分に存在し、かつシステイン−ノットとして公知の3次元タンパク質構造を形成する、よく知られている及び保存されているシステインリッチのアミノ酸領域を意味する。該ドメインにおいて、互いにシステイン残基のそれぞれの位置が重要であり、かつ生物学的活性を失わないために非常にわずかに許容することができるだけである。システイン−ノットドメインのみが、タンパク質の生物学的機能のために十分であることが示されている(Schreuder et al.(2005年)、Biochem Biophys Res Commun. 329、1076〜86頁)。システイン−ノットドメインのコンセンサス配列は、技術水準においてよく知られている。本明細書において定義された定義によって、タンパク質のシステイン−ノット−ドメインは、それぞれのタンパク質のシステイン−ノットに関係する最初のシステイン残基によって開始し、かつそれぞれのタンパク質のシステイン−ノットに関係する最後のシステインに従って、該残基で終了する。例えば、ヒトGDF−5前駆体タンパク質のシステイン−ノットドメイン(配列番号:1)は、アミノ酸400〜501からなる(図1も参照)。
【0015】
本明細書において使用される"GDF−5関連タンパク質"という用語は、102aaのヒトGDF−5のシステイン−ノットドメイン(配列番号:1のアミノ酸400〜501)に対して、少なくとも60%のアミノ酸同一性を有するシステイン−ノット−ドメインを含有する、天然に生じる又は人工的に製造されるあらゆるタンパク質を意味する。この用語は、それらのタンパク質がヒトGDF−5のシステイン−ノットドメインとの同一性の前述の割合を示す限り、脊椎動物又は哺乳動物の種類からのGDF−5、GDF−6及びGDF−7タンパク質、並びにそれらの組換え変異体の群に属しているタンパク質を含む。限界値60%は、タンパク質のGDF−5/−6/−7群、並びに他のタンパク質、例えば他のGDFs及びBMPsからのそれらの変異体の別々の構成要素に十分に好適である。ヒトGDF−5、ヒトGDF−6及びヒトGDF−7の102aaシステイン−ノット−ドメイン(図2を参照)の比較は、それらタンパク質間の高い程度のアミノ酸同一性を示す。ヒトGDF−5のシステイン−ノット−ドメインを有する同一残基の、ヒトGDF−6は、87(85%)を共有し、かつヒトGDF−7は、83(81%)を共有する。ある程度同定されている他の脊椎動物及び哺乳動物の種類からのGDF−5/−6/−7分子のそれぞれのドメインは、ヒトGDF−5と比較した場合に、少なくとも75%(79%〜99%)の非常に高い同一性の割合を示す。対照的に、GDF−5/−6/−7部分群に属さないGDFs及びBMPsは、60未満の非常に低い同一性の値を示す(図3を参照)。
【0016】
関連するアミノ酸配列における対応するアミノ酸位置の決定、並びに同一性の割合の計算は、よく知られているアライメントアルゴリズム、及び場合により該アルゴリズムを使用する計算機プログラムの助けによって簡単に実施されうる。この特許出願におけるアミノ酸同一性は、既定のパラメータを有するフリーウェアプルグラムClustalX(1.81版)、続いて手動で同一残基の測定で配列を整列することによって計算されている。2つずつのアライメントのための既定の設定(slow−accurate(時間を掛ければ正確にできる))は、間隙開口パラメータ:10.00、間隙伸長パラメータ:0.10、タンパク質質量マトリックス:Gonnet250である。ClustalXのプログラムは、Thompson,J.D.、Gibson,T.J.、Plewniak,F.、Jeanmougin,F.及びHiggins,D.G.(1997年)において詳細に記載されている。
ClustalXウィンドウズインターフェース:品質分析ツールによって補助された多重配列アライメントのための可撓性戦略
核酸研究(Nucleic Acids Research)24:4876〜4882頁。
【0017】
ClustalXは、ClustalW多重配列アライメントプラグラムのためのウィンドウズインターフェースであり、かつすなわち種々の源から、すなわちftp−igbmc.u−strasbg.fr、ftp.embl−heidelberg.de、ftp.ebi.ac.ukからの作者不明のftpによって、又は次のウェブページ:http://www−igbmc.u−strasbg.fr/Biolnfo/からのダウンロードによって入手可能である。ClustalWプログラム及びアルゴリズムは、Thompson,J.D.、Higgins,D.G.及びGibson,TJ.(1994年)においても詳細に記載されている。
CLUSTALW:配列の重さ、位置−特異的間隙ペナルティー、及び質量マトリックス選択による連続的な多重配列アライメントの感応性の改良。核酸研究22:4673〜4680頁。
【0018】
本明細書において使用されている"変異体"という用語は、次のあらゆるポリペプチド
a)タンパク質の生物学的活性のフラグメント
b)該タンパク質の独自配列に対して過剰な付加配列を含むタンパク質構造
c)a)とb)とのあらゆる組合せ
を意味する。
【0019】
"コロイド"という用語は、液体中に分散された小さな粒子に関する。
【0020】
"脂質微粒子調合物"及び"LMP調合物"は、粒子サイズ200nm未満を有する小さな球状粒子を含有する均一な油/水マイクロエマルションに関する。
【0021】
本記載内容において、疎水性治療化合物、例えばGDF−5関連タンパク質で "増大された溶解性"という用語は、pH5.0〜8.5で、血液及び/又は水溶液中での、疎水性治療化合物、例えばGDF−5関連タンパク質の安定化に関する。この安定化は、安定な液体調合物又は水性エマルション、例えば本発明によるLMP調合物の製造によって得られてよい。
【0022】
本明細書において使用される"生理学的pH"という用語は、4〜8.5の範囲内、及びより有利には5〜7.5の範囲内のpHを意味する。
【0023】
"生物学的活性"という用語は、例えば、一般の生体外アルカリホスファターゼアッセイ(ALP)によって測定されるような、例えば実施例2において及びTakuwa et al.(1989年)、Am.J.Physiol.257、E797〜E803頁)において記載されているような、GDF−5関連タンパク質を含有する治療化合物の活性を意味する。かかるALPアッセイにおいて使用されてよい好適な細胞系列は、例えばATDC−5又はMCHT1/26細胞である。
【0024】
"泌尿生殖器系の疾患"という用語は、次の器官又はそれらの部分:男性及び女性生殖器、前立腺、膀胱を含む泌尿系、括約筋、肛門、骨盤底筋、骨盤底神経、骨盤底結合組織の1つ以上の完全性及び/又は機能に影響を及ぼす疾患を意味する。
【0025】
"仙骨神経"という用語は、どれか1つの仙骨神経、仙骨神経の部分又は枝、及びどれか1つの仙骨神経に神経学的に連結させた、又はそれらに極めて接近した神経を意味する。
【0026】
"陰部神経"という用語は、どれか1つの陰部神経、陰部神経の部分又は枝、及びどれか1つの陰部神経に神経学的に連結させた、又はそれらに極めて接近した神経を意味する。
【0027】
"海綿体(cavernosal)神経"という用語は、どれか1つの海綿体神経、海綿体神経の部分又は枝、及びどれか1つの海綿体神経に神経学的に連結させた、又はそれらに極めて接近した神経を意味する。
【0028】
本発明は、生理学的pHにおける水溶液中で、一般的に不溶性であり、かつ/又は沈澱しやすい疎水性治療化合物に一般的に適用されてよい新しい脂質調合物、例えば成長及び分化因子−5及び関連タンパク質を記載している。一般的に、本発明は、疎水性治療化合物の溶解性を、投与に対して生理学的条件、例えばpHにさらされた場合に増強するために作用する。
【0029】
GDF−5及び密接に関連しているタンパク質GDF−6及びGDF−7は、pH4〜pH9の間のpH値で一際乏しい溶解性と関連するまれな表面電荷の分布パターンを特徴とする。多くの他の疎水性タンパク質と対照的に、GDF−5の表面は、主に、疎水性アミノ酸、例えばアラニン、バリン及びロイシンから構成されない。本発明に従って、GDF−5の制限された溶解性は、図4において示されているまれな表面電荷の分布効果に起因することが明白である。広いpH範囲にわたって、GDF−5の表面は、反対の電荷を有する広い領域を含む。該タンパク質の部分は、互いに引き寄せ合い、かつそれらによって成長因子分子の凝固及び沈澱を誘導しているように見える。極めて高い又は低いpHでのみ、放電操作が、吸引力を妨げ、かつタンパク質の可溶化を可能にする。
【0030】
本発明は、前記の問題を克服するために広範囲の調査である。EP 1 462 126号において既に公表されている前の研究が、種々の水性緩衝液、例えば酢酸ナトリウムにおけるGDF−5の可溶化が、所望のpH範囲で著しいタンパク質の溶解を誘導しないことが示されたために、種々の有機疎水性溶剤は、最初の工程で試験されている。疎水性薬物は、揮発性有機溶剤中で度々より高く溶解する。驚くべきことに、GDF−5の著しい溶解性は、低い又は高いpHでさえ、有機溶剤中で得ることができることはない。それら実験の結果は、図5において示されている。GDF−5を添加した後、ジクロロメタン、アセトニトリル及びDMSO溶液を遠心分離し、そして上清のGDF−5含有量をRP−HPLCで調べた。検索の割合は、常に15%未満であり、GDF−5の非常に小さな断片のみが溶液にあることを示していた。
【0031】
本発明は、生理学的pH範囲において、サブミクロンの粒子サイズの特定の親油性コロイド状薬物キャリヤーへの粘着を安定にする、疎水性治療化合物、例えばGDF−5及び関連する成長因子の活性のある非毒性調合物を製造するための最も効率的な方法を見出している。成長因子と選択されたナノ構造キャリヤーとの相互作用は、わずかに酸性/塩基性で、及び天然のpHでさえ、タンパク質の望ましくない凝固を、効率的に妨げる。
【0032】
全てのコロイド状キャリヤーの一般的な特徴は、それらのサブミクロンの粒子サイズである。しかしながら、ナノメートルのキャリヤーは、材料、組成物、毒性、薬物負荷量、及び適用スペクトルにおいて大きく異なる。GDF−5の異常な表面電荷分布及び他の表面特性のために、成長因子のGDF−5/GDF−6/GDF−7ファミリーのために最適化されたコロイド状キャリヤー材料の選択は、精巧であるが、しかし完全に避けられない。特に、頻繁に使用されるコロイド状キャリヤーは、すなわち、以下で簡単に特徴を述べられている、リポソーム、混合ミセル、脂質粒子(LMP)、及びポリマーナノ粒子である。
【0033】
リポソームは、両親媒性脂質の1つ以上の脂質二重層、すなわちリン脂質又はコレステロールからなる非常に単純な構造である。二重層の親油性部分は、互いに近づき、かつ膜中で内部の疎水性環境を作る。リポソームは、サイズ及び形状において適する場合に脂質二重層の非極性部分と関係しうる、いくつかの親油性薬物のための好適な薬物キャリヤーである。リポソームのサイズは、20nmから数μmの間を変動する。
【0034】
混合ミセルは、胆汁酸塩、リン脂質、トリ、ジ−及びモノグリセリド、脂肪酸、遊離コレステロール、並びに脂溶性微量養分からなる効率的な界面活性構造である。長鎖リン脂質は、水中で分散させた場合に二重層を形成することが公知であるように、短鎖類似物の好ましい層は、球状のミセル性の層である。ミセル性溶液は、水及び有機溶剤中で同時に形成された熱力学的安定系である。ミセルと疎水性/親油性薬物との相互作用は、しばしば膨潤ミセルとも言われる、混合ミセル(MM)の形成を誘導する。ヒトの体において、該ミセルは、疎水性化合物を低い水溶性で取り込み、かつ消化の生成物、例えばモノグリセリドのための貯蔵器として作用する。
【0035】
脂質粒子:この用語は、脂質ナノ−及びマイクロスフェアを含む。マイクロスフェアは、一般的に、約0.2〜100μmのサイズであるあらゆる材料からなる小さな球状粒子として定義される。200nm未満のより小さな球状粒子は、たいていナノスフェアと言われる。脂質マイクロスフェアは、市販の脂肪エマルションに類似の均一な油/水マイクロエマルションであり、かつ強力な音波処理法、又は高圧乳化法(磨砕法)によって製造される。水性分散液中で微視的な油滴からなる簡単な脂質マイクロスフェアは、非経口的栄養のために最初に調査された(Shenking A. World Rev. Nutr. Diet.28、1〜111頁、1978年)。大豆油の水性エマルション及び外側のレクチン(ホスファチジルコリン)殻に基づく系も、開発されていた(Mizushima Y. Drugs Exptl.Res.、Xl(9)、595〜600頁、1985年)。天然の界面活性レクチンは、液体の表面張力を低くし、従って、乳化剤として作用して安定なエマルションを形成する。脂質ナノスフェアの構造及び組成物は、脂質マイクロスフェアの構造及び組成物と類似しているが、しかしより小さな直径を有する(Seki et al、J. Controlled Release 28、352〜353頁)。
【0036】
ポリマー状ナノ粒子は、広範な種々の成分のためのキャリヤーとして役立つ。活性構成成分は、ポリマー状マトリックス中で溶解されるか、又は粒子の表面上で閉じこめられるもしくは吸着されてよい。有機ナノ粒子の製造に好適なポリマーは、セルロース誘導体、並びにポリエステル、例えばポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)及びそれらのコポリマーを含む。それらの小さいサイズ、それらの大きな表面の面積/体積比、及び境界面の機能化の可能性のために、ポリマー状ナノ粒子は、理想キャリヤー、及び放出系である。粒子サイズが50nm未満である場合に、多くの生物学による粒子、及び合成バリヤー層としては、もはや認識されないが、しかし分子的な分散系と同様に作用する。
【0037】
本特許出願において開示された結果に従って(実施例1を参照)、本発明は、GDF−5との組合せで種々の異なるナノメートルのキャリヤーを調査している。混合ミセル及び有機ナノ粒子を含むいくつかの調合物が、所望の効果を呈することに失敗したのに対して、本発明は、驚くべきことに、GDF−5及び関連タンパク質のための最適な脂質微粒子調合物の識別に成功した。本発明の好ましいLMP調合物は、特に、著しく高い、生理学的pH(pH7)でGDF−5又は関連タンパク質2.5mg/mlまで運搬できるように設計され、かつ試験される。
【0038】
LMP調合物において脂質キャリヤーとして使用されうる、市販の多数の油がある。合成油は、それらの純度及びそれらの公知の化学特性によって推奨できる。全ての種類の合成油は、生体適合可能である限り、例えば合成油及び飽和エステル、例えばパルミチン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸アルキル、例えばイソプロピル、ブチル及びセチル、ステアリン酸ヘキシル、オクタン酸及びデカン酸のトリグリセリド、リシノール酸セチル、オクタン酸ステアリル(ピュアセリンオイル(Purcellin oil))並びに水素化ポリイソブテンとして使用されうる。それらのよく知られている生体適合性及び他の特徴によって、とりわけ一般の野菜油又は植物油、例えば綿実油、大豆油、ゴマ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、オリーブ油、アボガド油、ピーナッツ油、クルミ油、アーモンド油及びヘーゼルナッツ油が、殆どの場合において適している。乳化剤と共に油の種々の組成物、及び種々のタンパク質/LMP比は、本発明によって作られ、かつさらに、取り込まれたGDF−5関連成長因子タンパク質の溶解性及び生物学的活性に関して比較された。
【0039】
最適な予め選択された組成物の最終の評価のために、最終的に、乳化剤ホスファチジルセリンの種々の量と共にオリーブ油、大豆油又はベニバナ油を含有する3つのGDF−5 LMP調合物を、生物活性に関して試験している。この試験設定において、アルカリホスファターゼ(ALP)バイオアッセイ及び空のLMP粒子で処理した細胞の微視的評価は、使用される油に依存して、LMP粒子のある程度消極的な効果を示した。タンパク質試料の完全性が確認されたように、低減された生物活性は、成長因子の分解によって、しかしむしろ細胞の成長に対するLMPの阻害作用によって生じないとみなされうる。大豆油又はベニバナ油を含有するGDF−5 LMP調合物が、GDF−5のみと比較して、低い生物活性レベルに対する媒体のみを示したのに対して、はるかによい結果が、オリーブ油を使用して得られた(図8を参照)。従って、本発明の好ましいLMP調合物は、オリーブ油を含む。加えて、該調合物は、乳化剤も含む。有利にはいくつかの合計量で脂質キャリヤーとして、リン脂質、例えばホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン又はホスファチジルエタノールアミンが有利である。他の乳化剤は、例えば蒸留モノグリセリド、モノ−及びジグリセリド、モノグリセリドの酢酸エステル、モノグリセリドの有機酸エステル、脂肪酸のソルビタンエステル、脂肪酸のプロピレングリコールエステル、並びに脂肪酸のポリグリセロールエステルも可能である。
【0040】
別の試験設定において、油及び乳化剤の最適濃度を決定した。油の低い(5〜15mg/ml)、中間の(16〜30mg/ml)及び高い(31〜50mg/ml)濃度、並びにコハク酸緩衝液中の乳化ホスファチジルセリンの理想量を含有するGDF−5 LMP調合物の3群を、ALPアッセイ系において試験した。全ての調合物は、生物活性があることを照明したが、その活性は、明らかに、中間の群でピークに達した(図9を参照)。該結果によって、本発明の好ましいLMP調合物は、油及び/又は乳化剤16〜30mg/mlの濃度を含有する。濃度20〜25mg/mlが最も好ましい。
【0041】
判明した最適な調合物は、以下の有益な特徴:
−水溶液中で、あらゆるpHで、疎水性治療化合物(例えばGDF−5関連タンパク質)の沈澱の予防
−2.5mg/mlまでの濃度を有する非常に高いタンパク質負荷量の可能性
−骨細胞、軟骨細胞及び神経のための生分解性及び非毒性
−タンパク質構成成分の生物活性の維持
−ナノメートルサイズ及び優れた生体適合性による、最も公知の送達技術、例えば皮膚、経口的、舌下、結膜、非経口、眼球、肺、鼻腔内、表面、及び直腸の薬物送達のための完全な注射可能性及び有用性
−1ヶ月にわたる4℃での安定性
−液体窒素における瞬間凍結の耐性
− −70℃での貯蔵可能性
を示す。
【0042】
本発明によって、本発明の前記のコロイド状LMP調合物は、
a)水性緩衝液中で、4未満又は9より大きいpHから選択されたpH値で、疎水性治療化合物(例えばGDF−5又は関連タンパク質)の初期溶解
b)タンパク質溶液の凍結乾燥
c)予め選択された脂質キャリヤー及び乳化剤を含有し、かつ5未満又は9より大きいpHを有するコロイド状薬物キャリヤー溶液の製造
d)タンパク質の凍結乾燥物とコロイド状薬物キャリヤー溶液との組合せ
e)pH4.0〜pH8.5、有利にはpH5〜pH7.5の範囲の生理学的に認容性の値への合された物質のpHの調整、最も有利にはpH7.0への調整
の主な工程を含む方法によって製造されうる。それらの小さいサイズ及び生分解性のために、脂質微粒子、例えば本発明のLMP調合物は、一般に、当業者によく知られている、種々の経路によって投与されうる。非経口的投与が、現在最も求められており、かつかかる分子の送達のために好適である。注入ポンプによる皮下、筋肉内又は静脈内注射又は送達は、全身送達が所望される場合に便利である。他の投与経路、例えば口、皮膚、眼球、結膜、舌下、非経口、直腸、肺、膣、表面又は鼻腔内投与も適用可能である。
【0043】
本発明のGDF−5関連タンパク質は、ヒトGDF−5/配列番号:1の102aaシステイン−ノットドメインに対して少なくとも60%のアミノ酸同一性でシステイン−ノット−ドメインを含有する構造的に類似のタンパク質を含む(他の例に関しては図1〜3を参照)。本発明の好適なタンパク質は、ヒトGDF−5の102aaシステイン−ノットドメインに対して少なくとも70%、80%又は90%のアミノ酸同一性を有する。本発明によるLMP調合物は、一般的に、GDF−5関連タンパク質、例えばGDF−5、GDF−6及びGDF−7も有用である、全ての検出において適用可能である。
【0044】
GDF−5関連タンパク質が、誘発された多面的な成長及び分化因子であり、それらは、すなわち、骨及び軟骨(Cheng et al.2003年、J.Bone&Joint Surg.Am.85−A、1544〜1552頁;Settle et al.2003年、Developm.Biol.254、116〜130頁)、結合組織、例えば腱及び靱帯(Wolfman et al.1997年、J.Clin.Invest.100、321〜330頁)、神経組織(Farkas et al.1997年、Neurosci Lett.236、120〜122頁;Watakabe et al.2001年、J.Neurochem.76、1455〜1464頁)、幹細胞(Shimaoka et al.2003年、J.Biomed.Materials Res.Part A 68A、168〜176頁;Bai et al.2004年、Biochem.Biophys.Res.Commun.325、453〜460頁)、並びに歯周靱帯及び歯(Sena et al 2003年、J.Dent.Res.82、166〜171頁;Morotome et al.1998年、Biochem.Biophys.Res.Commun.244、85〜90頁)の重要な誘発因子並びに調節因子/分化因子であることが、過去に調査されている。
【0045】
脊椎動物及び哺乳動物のGDF−5関連タンパク質に関する制限されない例は、ヒトGDF−5(WO95/04819号においてMP52として、及びHoetten et al.1994年、Biochem.Biophys Res.Commun.204、646〜652頁においてヒトGDF−5として開示されている)、組換え型ヒトGDF−5/MP52(WO96/33215号)、HMWヒトMP52s(WO97/04095号)、CDMP−1(WO96/14335号)、マウス(ハツカネズミ(Mus musculus))GDF−5(US 5,801,014号)、ウサギ(アナウサギ(Oryctolagus cuniculus))GDF−5(Sanyal et al.2000年、Mol Biotechnol.16、203〜210頁)、ニワトリ(Gallus gallus)GDF−5(NCBI受入番号第NP_989669号)、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)GDF−5(NCBI受入番号第AAT99303号)、モノマーGDF−5(WO 01/11041号及びWO 99/61611号)、ヒトGDF−6/BMP−13(US 5,658,882号)マウスGDF−6(NCBI受入番号第NP_038554号)、GDF−6/CDMP−2(WO 96/14335号)、ヒトGDF−7/BMP−12(US 5,658,882号)、マウスGDF−7(NCBI受入番号第AAP97721号)、GDF−7/CDMP−3(WO 96/143335号)である。付加的な突然変異、例えば置換、付加及び欠失を有するGDF−5関連タンパク質のLMP−調合物も、それら付加的な突然変異が、タンパク質活性を完全に破壊しない限り、本発明によって含まれる。いくつかの好ましい変異体は、欧州特許出願番号第05 004 840.4号において記載されている改良された生物学的活性度でのGDF−5関連タンパク質の突然変異体である。例えば、ヒトGDF−5前駆体タンパク質に通常存在する1つ以上の残留物(図8を参照)は、他のアミノ酸によって該突然変異体中で置換される。ヒトGDF−5前駆体の位置438のアルギニンが、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン又はアスパラギンによって置換され、かつ/又はセリン439が、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、ロイシン又はイソロイシンによって置換され、かつ/又はアスパラギン445が、セリン又はトレオニンによって置換される。他の高活性突然変異体は、欧州特許出願番号第05 025 261.8号において記載されている。この突然変異体において、メチオニン453及び/又はメチオニン456は、アラニン、バリン又はイソロイシンによって置換される。ロイシン441が、プロリンによって置換される突然変異体も、関心がある。
【0046】
有利には、本発明のLMP調合物は、脊椎動物のGDF−5タンパク質又はそれらの変異体を含む。該LMP調合物は、GDF−5又はGDF−5変異体の既に記載されている活性度を示すことを求め、かつ該タンパク質が、巧く使用されている場合に適用されうる。GDF−5関連タンパク質の広布の再生能力を記録するいくつかの文献を、下文で要約する。
【0047】
例えば、GDF−5は、骨及び軟骨形成、並びに結合組織形成(例えばWO 95/04819号、Hoetten et al.1996年、Growth Factors 13、65〜74頁;Storm et al.1994年、Nature 368、639〜643頁;Chang et al.1994年、J.Biol.Chem.269、28227〜28234頁を参照)、並びに結合組織性付着の形成(EP 0 831 884号)の非常に有効な促進因子であるとみなされている。この記載内容において、GDF−5は、骨格要素間の関節に関する適用のために有用である(例えば、Storm&Kingsley 1996年、Development 122、3969〜3979頁を参照)。結合組織に関する1例は、腱及び靱帯である(Wolfman et al.1997年、J.Clin.Invest.100、321〜330頁;Aspenberg&Forslund 1999年、Acta Orthop Scand 70、51〜54頁;WO 95/16035号)。そのタンパク質は、半月板及び脊髄/椎間板再建(Walsh et al.2004年、Spine 29、156〜63)及び脊椎固定の適用(Spiro et al.2000年、Biochem Soc Trans.28、362〜368頁)のために有用である。GDF−5は、歯(歯及び歯周)の適用(例えば、WO 95/04819号;WO 93/16099号;Morotome et al.1998年、Biochem Biophys Res Comm 244、85〜90頁を参照)、例えば象牙質又は歯周靱帯の再生において有益的に適用されうる。GDF−5は、あらゆる種類の創傷治癒においても有用である。該GDF−5は、神経系における組織成長の促進及び例えば神経変性疾患の生残のために有用でもある。本記載内容において、GDF−5は、例えばパーキンソン病及びアルツハイマー病又はハンチントン舞踏病のような神経変性疾患を治療するために使用されうる(例えばWO 97/03188号;Krieglstein et al.、(1995年)J.Neurosci Res.42、724〜732頁;Sullivan et al.、(1997年)Neurosci Lett 233、73〜76頁;Sullivan et al.(1998年)、Eur.J.Neurosci 10、3681〜3688頁を参照)。GDF−5は、動物及びヒトに、神経機能を維持すること、又は既に破壊された組織における神経機能の維持することを可能にする。従ってGDF−5は、一般的に適用可能な神経栄養因子であるとみなされる。該GDF−5は、眼、特に網膜、隔膜及び視神経の疾患(例えばWO 97/03188号;You et al.(1999年)、Invest Opthalmol Vis Sci 40、296〜311頁を参照)のために、髪の成長及び皮膚関連疾患治療及び診断(WO 02/076494号;Battaglia et al.2002年、Trans.Orthop.Res.Soc.27、584頁)のために、並びに血管形成の誘発(Yamashita et al.1997年、Exp.Cell Res.235、218〜26頁)のためにも有用である。
【0048】
以上をまとめると、本発明によるLMP調合物は、例えば、軟骨及び/又は骨形成を誘発するため、骨及び/又は軟骨損傷と関連のある疾患の予防又は治療のため、脊椎固定の目的のため、腱及び/又は靱帯を含む結合組織に関連する損傷を受けた又は罹患した組織の予防又は治療のため、歯周又は歯組織の再生のため、人工歯根の固定のため、PNS及びCNS組織を含む神経組織の誘発並びに/又は再生のため、神経病理学的状況及び疾患、例えばパーキンソン病、アルツハイマー病、脳卒中、多発性硬化症、神経AIDS及びルー・ゲーリック病(ALS)の予防又は治療のため、感覚系の組織、肝臓、膵臓、心臓、血管、腎臓、子宮及び甲状腺組織、皮膚、筋肉、粘膜、内皮、上皮の誘発及び/又は再生のため、神経成長、組織再生、血管形成、潰瘍、火傷、外傷又は皮膚移植を含む創傷治癒の促進又は誘発、始原細胞又は骨髄細胞の増殖又は分化の誘発のため、器官又は組織移植のための組織又は細胞の処理又は保存のための増殖又は分化の状態の維持のため、胃腸の裏打ちの完全性のため、受精障害の治療、避妊又は妊娠のために有用である。
【0049】
生理学的pH値で、水性媒体における疎水性治療化合物、例えばGDF−5関連タンパク質の非常に高められた安定化のために、本発明のLMP調合物は、特に全身適用のアプローチのために有用である。脂質キャリヤーのナノメートルの大きさは、投与後数分以内に、体内でタンパク質の広い分布を容易にする。かかる場合において、好ましい投与形式は、皮下、筋肉内又は血管内投与である。注入ポンプによる送達が、適切でもある。骨粗鬆症は、LMP配合GDF−5又は関連タンパク質の全身投与によって予防又は治療されうる全身疾患のために顕著であるが、制限されない例である。本発明のLMP調合物の骨形成及び軟骨形成の特性は、実施例2において示される。GDF−5が、非常に乏しい異所性骨誘発因子であるために、タンパク質は、主に骨組織で新しく骨成長を誘発するが、異所性の場所、例えば血液、筋肉又は他の器官では不十分である。この組織特異性によって、LMP配合GDF−5は、血中へ注射されることができ、かつ血流によって、骨粗鬆症により損傷された全ての骨構造に分布される。
【0050】
本発明によるLMP調合物の、椎間板への、例えば注射による投与も好ましい。GDF−5及び関連タンパク質が、損傷された椎間板の再生を含むこと、従ってそれらの構造の機能性を回復することが可能であることを示すことができた。
【0051】
他の好ましい実施態様において、本発明のLMP調合物は、特に、末梢神経系(PNS)と中枢神経系(CNS)との双方の神経再生のために有用である。実施例7において示されるように、0.4μgほどのGDF−5を運搬する脂質微粒子は、外傷性の神経領域及び神経間隙を治癒することが可能である。該神経間隙が、非常に大きい場合に、LMS調合物は、キャリヤー材料と合されてよい。好ましいキャリヤー材料は、いわゆる神経誘導である。神経誘導は、互いに分かるように神経に方向付けすることができる、陥凹構造を形成する。
【0052】
特に好ましい一実施態様において、泌尿生殖系及び骨盤底の疾患を誘発する細胞損傷を治療及び予防するための方法を開示している。骨盤痛、尿/便制御疾患及び性機能不全の疾患を含むかかる疾患は、数百万人の健康及び生活の質の安全を脅かす。これらの場合において、組織特異再生は、GDF−5関連タンパク質によって媒介され、かつ機能修復をもたらしうる。一般的に、骨盤底及び泌尿生殖系の全ての神経及び組織は、本明細書において記載された方法で再生されることができる。しかしながら、仙骨、陰部、及び海綿体神経に関連した神経障害性の損傷の治療が特に好ましい。加えて、新血管新生、並びに筋肉及び結合組織、例えば腱及び靱帯の再生が、達成される。実施例7A及び7Bにおいて示されたように、これらの効果は、GDF−5関連タンパク質が、脂質微粒子で封入される場合に、著しく高められうる。
【0053】
尿生殖器系の最も頻繁な疾患の2つは、性機能不全と失禁である。多くの場合、これらの疾患は、例えば骨盤を介する尿生殖路に達する副交感神経線維及び交感神経線維、海綿体及び陰部神経の損傷に関係する。よりよい理解のために、骨盤底の神経支配及び共通の骨盤底疾患を、以下で短く記載する。
【0054】
海綿体組織又は勃起神経が、骨盤内で形成される。それらは、陰茎を刺激し、かつ性効能の原因である。それらの神経は、勃起及び腫脹減退中に血流を調整する。特に、体細胞構成成分(陰部神経)は、陰茎によって経験させた感覚、並びに体外横紋筋の収縮及び弛緩の原因である。従って、損傷を受けた海綿体神経は、インポテンスの一般的な原因である。神経性障害、例えばパーキンソン病、脳卒中、糖尿病性腎症及び脳外傷は、しばしば、勃起機能の疾患をもたらす。頻繁な原因は、前立腺摘除術及び他の腹部手術による、機械的な神経の損傷でもある。勃起機能不全の最も多い場合において、神経損傷は、動脈性機能不全と関係がある。それとも言うのも、陰茎が主に血管器官であるからである。
【0055】
隣接神経の損傷による尿失禁は、しばしば、女性において普通分娩後に、又は男性において前立腺の外科的除去(前立腺切除)後に、生じる。かかる場合において、失禁は、例えば、神経活性の減少又は欠失によって生じた固有括約筋欠陥から生じる。普通分娩後の尿道閉鎖の減少は、しばしば、骨盤神経の損傷、陰部神経における遅延伝導、及び骨盤筋系の除神経のためでありうる。場合により神経損傷に付随的である他の理由は、自制を維持する原因である結合組織及び筋肉の損傷である。
【0056】
仙骨神経は、下背における脊髄の基底の近くに位置し、かつ膀胱、腸及び骨盤器官を調節する。仙骨神経叢は、骨盤筋肉、殿筋、及び会陰筋のための神経支配を提供する。仙骨神経は、座骨神経も形成する。腰仙骨神経叢から生じる主な神経は、大腿神経、閉鎖神経、殿部神経、尾部の直腸神経及び座骨神経であり、かつ本発明によって治療可能でもある。
【0057】
陰部神経は、外生殖器、下方の直腸、及び会陰(性器と肛門との間)からの感覚を伝える。陰部神経障害は、あらゆるそれらの範囲で症状を生じる。陰部神経障害の頻繁な予後は、失禁である。何人かは、主に直腸痛を有し、場合により排便の問題を有する。他に、主に、会陰又は性器における痛みを有する。これらの症状は、刺すような、捩れるような及び燃えるような痛み、釘及び針、痺れ感又は過敏症を含んでよい。通常、該症状は、座ることによって悪化し、立つもしくは横になることによってよくなる。
【0058】
本発明は、さらに、尿生殖器系の疾患に関連する血管損傷の予防又は治療のために有用である。例えば、末梢血管疾患は、男性の性的刺激疾患、例えば勃起機能不全の最も一般的な原因の1つである。それというのも、末梢血管疾患は、直接又は間接的に、生殖器の領域の血管に影響する多くの全身疾患と関連するためである。慢性疾患、例えば糖尿病、高コレステロール、高血圧、腎不全、心疾患、及びその他は、非常に一般的であり、かつ静脈の収縮壁の破壊を誘発し、又は陰茎に通じる動脈の硬化、狭窄もしくは閉塞を誘発する。陰茎の勃起は、陰茎の供給動脈によって運搬された血液が、スポンジ状組織からなる勃起体を充血させる場合に起こる。この充満機構におけるあらゆる障害、例えばアテローム斑による動脈の狭窄は、勃起機能不全を誘発してよい。
【0059】
血管損傷は、女性の尿生殖器系の疾患も、頻繁に生じる。出産中の膣の損傷は、膣及び陰核への血管損傷を生じうる。血管の損傷は、女性の陰核、口唇、及び膣の感覚、並びに性的刺激及び潤滑を経験する能力、並びに結果としてオルガスムに影響を与えうる。骨盤骨折、及び他の股ひろげ損傷は、骨盤及び生殖器官、並びにそれらの血液及び神経供給にも影響を及ぼしてよい。
【0060】
本発明は、尿生殖器系の疾患に関連する筋肉又は結合組織の損傷の予防又は治療のためにも有用である。多発性硬化症、パーキンソン病、アルツハイマー病、脳卒中、及び手術中に生じる外傷を含む外傷のすべては、膀胱の神経又は筋肉に害を与えうる。結合組織損傷に関して、特に、腱及び靱帯の損傷の治療が好ましい。例えば、妊娠及び経膣分娩は、女性において尿失禁を誘発する主な危険因子であるとみなされる。それらの2つの事象は、膀胱又は尿道の筋肉又は靱帯損傷を生じてよい。女性における失禁は、しばしば、尿を保持又は放出する補助をする筋肉での問題のために生じる。
【0061】
骨盤底/尿生殖器神経、筋肉、血管及び結合組織に対する再生及び成長/分化の効果によって、本発明は、特に、それらの組織が損傷を受けている種々の病的状態の予防及び治療のために有用である。かかる状態の制限されない例は、男性の性機能不全、例えば射精、腫脹減退/陰茎弛緩、陰茎の感覚、並びに陰茎海綿体筋及び座骨海綿体筋の収縮の減損、インポテンス又は勃起機能不全(ED)、例えば、陰茎の動脈機能不全、静脈閉塞症、糖尿病及び/又は海綿体神経によって生じたED、手術、例えば前立腺切除又は膀胱切除及び前立腺凍結手術の結果のED;女性の性機能不全、例えば神経損傷及び/又は不十分な血流によって生じた膣充血機能不全及び陰核勃起機能不全;骨盤底及び尿生殖路の感染又は炎症性疾患、例えば亀頭炎(陰茎亀頭の炎症)、亀頭包皮炎(亀頭及び包皮の炎症)、尿道炎、前立腺炎による組織損傷;失禁、例えば尿失禁、切迫尿失禁及びストレス失禁、膣腫脹又は手術、例えば前立腺切除術によって生じる尿失禁;靱帯、筋肉又は神経の損傷による骨盤臓器脱、例えば膀胱脱(膀胱ヘルニア)、尿道脱(尿道瘤)、子宮脱、小腸脱、直腸脱;骨盤痛、例えば神経損傷及び靱帯の緩みによる骨盤痛である。
【0062】
他の好ましい実施態様において、見出された脂質微粒子調合物の投与法は、血液脳関門によって保護された哺乳動物の体の領域へGDF−5関連タンパク質を送達するために最適化される。該血液脳関門は、血液中に存在する大部分の溶質の、中枢神経系への進入を防ぐ毛細血管内皮細胞の内層である。
【0063】
脳における炎症は、ホメオスタシス及び修復の促進において有益であってよい二重目的の方法であるが、しかし炎症媒介物質の損傷潜在性を通して組織損傷ももたらしうる。従って、炎症反応の程度を最小にする調整機構は、脳の構造を維持し、かつ機能を修復する補助をするために必要である。多発性硬化症(MS)、神経Aids及び他の慢性CNS炎症疾患は、脳の柔組織の慢性機能不全が、自己免疫、免疫媒介炎症過程及び機能不全の組織再生からもたらすことによる、神経変性疾患である。HIV−1が、血管周辺内で非常に局在化され、かつ柔組織の血液由来マクロファージ及び小膠細胞を浸潤させるために、神経AIDS並びに必然的に伴う神経変性及び神経炎症を治療及び予防する脳柔組織に加えて、リンパ系と脳血管系の血管周辺腔との双方を標的にすることが望ましい。
【0064】
中枢神経系(CNS)における高濃度の神経栄養GDF−5関連タンパク質は、疾患媒介炎症を抑制し、かつ脳特異的環境における抑制様式の、抗炎症に対する免疫反応を切り換えることによって神経保護を提供する。CNSの標識に加えて、三叉神経経路に沿った鼻腔内送達方法は、鼻関連リンパ組織(NALT)、深頸リンパ節、並びに脳血管に関連する血管周辺腔及び血管壁も標的とする。従って、神経栄養GDF−5関連タンパク質の鼻腔内投与は、神経Aids、及び他の神経炎症疾患、例えば多発性硬化症の治療及び/又は予防のために効率的に使用されうる(Hanson及びFrey 2007年、J.Neuroimmune Pharm 2(1)、81〜86頁)。
【0065】
本発明によるLMP調合物をCNSに送達する1つの方法は、他の成長因子、例えばGDNFの送達のために使用されている方法の、大脳内注入である。しかしながら、かかる技術は、侵襲性であり、かつ危険である。それというのも、大脳内の感染が、常に起こりうるからである。従って、GDF−5関連タンパク質を哺乳動物の中枢神経系(すなわち、脳、脳幹及び/又は脊髄)の細胞中へ送達するための好ましい方法は、鼻腔内投与である。該方法(実施例6において示されている)は、GDF−5関連タンパク質がCNSに送達される場所から、a)GDF−5関連タンパク質を含有する組成物を提供する工程、及びb)鼻腔の嗅部と、又は三叉神経によって刺激される鼻腔内もしくは鼻腔外組織中へ該組成物を接触する工程を含む。
【0066】
嗅覚路を介するもしくは嗅覚路による、又は三叉神経路を介する三叉神経路による、基本的な送達方法は、WO 91/07947号及びWO 00/33814号において開示されている。しかしながら、双方の適用は、特定の調合物及び非従来の溶解分布を有する物質、例えばGDF−5及び関連タンパク質の送達について、完全に無症状である。実施例6は、GDF−5関連タンパク質の鼻腔内投与が、該タンパク質が脂質微粒子中で配合される場合に、非常に高められることを示す。
【0067】
嗅覚路を介して、又は嗅覚路によって送達された作用剤は、細胞内又は細胞外経路のどちらかを利用することができる。例えば作用剤は、嗅神経経路もしくは嗅上皮経路に沿って、又は嗅神経経路もしくは嗅上皮経路内で伝わり、CNSに近づいてよい。GDF−5関連タンパク質の調合物が、鼻腔と、特に鼻腔の3分の1と接触すれば、その薬物は、鼻粘膜を介して輸送され、かつ嗅神経に沿ってCNS中へ伝わる。従って、GDF−5関連タンパク質調合物のCNS又は脳への前記の送達は、すなわち、該調合物と、鼻腔とを、有利には鼻腔の3分の1とを接触するために行われうる。
【0068】
代わりに、GDF−5関連タンパク質は、三叉神経又はその枝の1つ(すなわち、眼神経、上顎神経、下顎神経)によって刺激された組織を介して、又はその組織によって送達されてよい。物質、例えばGDF−5が、LMPとして配合される場合に、該物質は、鼻腔の下方部で気道上皮に対して、より粘性に、又は粘着するようになる。このことは、中脳への標的が所望される場合に、例えばパーキンソン病を治療するために有益である。それというのも、かかる運搬が、本質的に、三叉神経経路に沿って鼻腔の下方部から生じるからである。
【0069】
三叉神経及びその枝は、全縁の鼻粘膜だけでなく、顔の皮膚及び頭皮、口組織、並びに眼の周りの組織を含む鼻腔の外側の組織も刺激する。従って、好適な組織は、鼻腔内に位置する鼻腔内組織と、口組織、被包組織、又は結膜組織のような鼻腔外組織、例えば顔、眼、口腔、副鼻洞、もしくは耳の皮膚、上皮、又は粘膜との双方を含む。その薬物は、経皮に又は舌下に投与され、かつ三叉神経経路に沿って輸送されてCNSに到達することができる。三叉神経によって、又は舌の下で刺激された皮膚との接触後に、その作用剤は、皮膚を介して、又は舌側の上皮を横切って輸送され、かつ三叉神経に沿ってCNSの領域中に伝えてよい。
【0070】
実施例6において示されているように、本発明によるLMP調合物は、大量のGDF−5関連タンパク質をCNSに送達するために好適である。GDF−5の治療学的に効果のある濃度を、嗅球(0.6nM)及び三叉神経(3.5nM)で観察し、CNSへの送達が、鼻と三叉経路との双方に沿って起こることを示した。脳の濃度は、0.14nM〜0.51nMの範囲であった。上部頸髄、並びに腹側及び背側の硬膜は、高濃度のGDF−5も含んだ。CNS疾患、例えばパーキンソン病及びアルツハイマー病、並びに中脳及び海馬のための治療標的は、それぞれ0.26nM及び0.15nMのGDF−5を含んだ。三叉神経及び関連する下側の脳領域への高い送達を、観察した。予想通り、頸部リンパ節は、鼻関連リンパからの排液法の結果として、高濃度のGDF−5(3.5nM)を有した。内部器官については、腎臓が最も高い濃度のGDF−5(1.3nM)を有した。鼻腔内GDF5−LMPは、血液又は腎臓のいずれかと比べ、三叉神経、背側及び腹側の硬膜への方がより高い送達をもたらすことが顕著である。GDF−5の鼻腔内投与後の全てのCNS領域への送達は、NaAc水溶液と比べ、LMP調合物での方が非常に多かった。中脳濃度は、LMPの使用でほぼ9倍増加し、かつ海馬濃度は、4倍増加した。血液濃度は、GDF5−LMPでより高かったが、しかし脳橋、中脳、小脳及び上部頸髄を含む下部構造への不均衡により多い送達を観察したことを考慮に入れるべきである。
【0071】
本発明は、リソソーム性蓄積症の予防及び治療のためにも特に好適である。リソソーム性蓄積症は、通常体の細胞中で有害物質を除去する酵素の欠失によって生じる。該酵素は、リソソームという細胞中で、嚢構造で見出される。リソソームは、それぞれの細胞の"再利用中心"として作用し、有害物質を破壊して、新しい物質を製造するために使用するための細胞のための単純な生成物にする。ある酵素の欠失は、該酵素が通常除去され、かつ体の多くの細胞中で堆積する物質の形成を引き起こす。異常な蓄積は、深刻な健康問題を誘発しうる不十分な機能及び体の細胞の損傷を引き起こす。40より多くのリソソーム性蓄積症が公知であり、以下を含む:
ファブリ病(アンダーソン−ファブリ病)−腎臓及び心臓の問題、痛み並びに皮膚の発疹を引き起こす
ゴーシェ病−未処置の場合に、脾腫、貧血、及び骨病変を誘発する
ハーラー症候群−骨格及び顔面機能の変形、脾臓及び肝臓の腫脹、関節硬直、角膜の曇り、精神遅滞並びに難聴を引き起こす
ニーマン・ピックB病−脾臓及び肝臓の腫脹、並びに肺疾患を導く
ポンペ病−グリコーゲンが、特に幼年期の間の、肝臓、心臓、及び筋肉中で増大する、しばしば致命的な蓄積症(酸性マルターゼ欠損としても公知である)
テイ・サックス病−東欧アシュケナジ系の人々においてより一般的に生じ、乳児における脳の変質を引き起こすリソソーム性蓄積症
アルファ−ガラクトシダーゼA欠乏症
広汎性体幹角化血管腫。
【0072】
前述のように、本明細書において記載されている本発明は、治療の特性を有する多くの水性媒体に不溶である疎水性化合物の幅広い列挙に適用できる。一例として、ベータアミロイド1〜42は、水溶液中で、pH3で非常に可溶性であるが、しかし水溶液中で、生理学的pH、例えばpH7.4で非常に低い溶解性を有する。L.Malavolta et al(2006年)、Protein Science 15:1476〜1488頁を参照。
【0073】
従って、本発明は、生理学的pHで低い溶解性を有する、次の疎水性化合物の溶解性を高めるために使用されてよい:
油;リン脂質;タンパク質、例えばある酵素、膜酵素、リポタンパク質及び受容体;ペプチドを基礎とした薬物を含むペプチド;治療の小さな分子、例えば抗酸化剤;抗炎症性化合物;ビオフラボノイド;糖脂質;ポルフィリン;ステロイドの性ホルモン;抗ウィルス剤、抗生物質;抗うつ薬;抗不安薬;向精神薬;化学療法化合物。
【0074】
本発明の利点であってよい特定の化合物は、制限されることなく、栄養補助食品(neutraceutical)、ミリセチン、ビタミンA、ビタミンE、セレニウム、エストロゲン、プロゲステロン、テストステロン、セラミド、トリヘキソシダーゼ、及び中性スフィンゴミエリナーゼを含む。
【0075】
本発明は、医薬組成物中の治療化合物の粘度を増加してよく、そのため該組成物の送達が、嗅上皮、嗅球及び吻側脳構造に対して低減される。この実施態様において、治療化合物は、本発明の医薬組成物を介して、次の1つ以上を標的とする:呼吸上皮、三叉神経、尾側脳構造、上部脊髄、髄膜及びリンパ管。重要なことに、治療化合物の増大された粘度は、加えて可溶性の治療化合物のためにも、呼吸上皮、三叉神経、尾側脳構造、上部脊髄、髄膜及びリンパ管の標的を可能にしてよく、かつ結果として、十分に本発明の趣旨の範囲内にある。
【0076】
さらに、本発明の医薬組成物は、鼻腔内に、鼻腔の3分の1に対して鼻腔内に、経口的に、経皮的に、眼組織、結合組織に、舌下に、非経口的に、直腸に、肺組織に、膣に及び局所的に投与されてよい。さらにまだ、本発明の医薬組成物は、天然で皮下、筋肉内及び/又は血管内である送達及び/又は注射経路によって注入ポンプによって投与されてよい。
【0077】
従って、本発明の医薬組成物は、患者の体循環、リンパ管、三叉神経、嗅神経及び/又は上部脊髄及び脳を含む中枢神経系へ投与されてよい。
【0078】
本発明の種々の実施態様は、従って、医薬組成物を提供し、パーキンソン病を予防及び/又は治療するために使用されてよく、その際前述のある実施態様では、中脳を標的とする。
【0079】
本発明の種々の実施態様は、小脳性運動失調症を予防及び/又は治療するために使用されてよく、その際、ある実施態様は、前述のように、小脳を標的とする。
【0080】
さらに、本発明の種々の実施態様は、脊髄損傷及び/又は脳損傷を治療するために使用されてよく、その際ある実施態様は、脊髄及び/又は脳を標的とする。
【0081】
本発明の追加の実施態様は、脳幹神経膠腫を治療するために使用されてよく、その際脳幹を標的とする。さらに種々の実施態様は、三叉神経痛疾患を予防及び/又は治療するために使用されてよく、その際、三叉神経を標的とする。
【0082】
さらに他の本発明の実施態様は、一般に、パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症及びハンチントン病から生じる神経変性、並びに外傷性脳損傷及び/又は脊髄損傷、虚血並びに/又は脳卒中を含む、中枢神経系疾患を治療するために使用されてよい。
【0083】
嗅覚路を介して又は嗅覚路によって送達される、医薬組成物の付加的な有益な構成物は、臭気物質である。臭気物質は、小さな親油性分子と結合し、かつ嗅神経受容体に対するキャリヤーとして作用することができる臭気物質結合タンパク質に対して高い親和力を有する。該臭気物質の受容体神経単位は、嗅上皮における鼻腔の上部に位置する。臭気物質及びその受容体についてのさらなる情報に関しては、すなわちMori(2003年)Biochem.Soc.Transactions 31、第1部、134〜136頁、及びSnyder et al.(1988年)J.Biol.Chem.263:13972〜13974頁を参照する。
【0084】
有利には、本発明による臭気物質は、GDF−5関連タンパク質を含む、疎水性治療化合物の送達をさらに高める親油性物質、例えば脂質微粒子と不随することが可能であるべきである。好適な臭気剤は、すなわち、臭気物質感受性酵素、例えばアデニル酸シクラーゼ(Lowe et al.(1989年)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA86、5641〜5645頁を参照)、及びグアニル酸シクラーゼの刺激物質である。さらに好適な臭気物質は、すなわち、エステル、例えばイソ吉草酸オクチル、テルペノイド、例えばセトラルバ(cetralva)及びシトロネロール、アルデヒド、例えばアミルシンナムアルデヒド、ジャスミン、例えばCIS−ジャスミン及びジャスマル、並びにムスク89である。
【0085】
前記のLMP調合物は、本発明の疎水性治療化合物と合される場合に、相乗効果を示す他のタンパク質も含んでよい。好ましい追加のタンパク質は、制限されない限り、TGF−アルファの、TGF−ベータの、アクチビン、BMPの、及びGDFのタンパク質を含む、GDNF、ニューロトロフィン、ハリネズミタンパク質、並びに形質転換成長因子ファミリーのタンパク質である。
【0086】
本発明による医薬組成物における他の許容な構成成分は、制限されない限り、緩衝液、安定剤、防腐剤、還元剤、抗酸化剤及び/又は抗酸化キレート剤、等張性を改質する作用剤、補助剤、並びに溶解増強添加剤を含む。特に好ましい抗酸化剤は、ビタミンC、ビタミンE、及びビオフラボノイド化合物である。それらは、可能な添加剤の例のみであり、かつ当業者は、製剤において使用され、又は一般に安全とみなされる、他の賦形剤を容易に添加することができる。医薬組成物を形成し、かつ製剤学的に認容性の物質の選択のための方法についてのより多くの情報に関しては、RemingtonのPharmaceutical Sciences(luth ed.;Mack Publishing Company、Eaton、Pennsylvania、1990年)、Wang et al.(1980年)、J.Parent.Drug Assn.34(6):452〜462頁(1980年);Wang et al.(1988年)、J.Parent.Sci.and Tech.42:4〜26頁;Lachman et al.(1968年)、Drug及びCosmetic Industry 102(1):36〜38頁、40頁及び146〜148頁;並びにAkers(1988年)J.Parent.Sci.and Tech.36(5):222〜228頁を参照する。
【0087】
本発明の好ましい一実施態様において、前記のLMP調合物は、溶解酸素を除去するために、又は真空を使用して、溶存ガスを除去する並びにLMP脂質構成成分及びGDF−5関連タンパク質を酸化から保護するために、N2(g)で発泡させた緩衝液を使用してN2(g)下で製造されうる。代わりに、他の不活性ガス、例えばアルゴンを使用してよい。
【0088】
図及び配列プロトコルと共に、次の制限されない実施例は、本発明をさらに説明することを意図する。
【0089】
配列表:1は、ヒトGDF−5前駆体のDNA及びタンパク質を示す。
【0090】
配列表:2は、ヒト成熟モノマーGDF−5のタンパク質の配列を示す。
【0091】
図面:
図1は、配列番号:1:aa001〜381 プレドメイン(太字)
aa001〜027 シグナルペプチド(太字及び下線)
aa382〜501 成熟タンパク質部分
aa400〜501 システイン−ノットドメイン(下線)
によるヒトGDF−5前駆体タンパク質の追加の特徴を示す。
【0092】
図2は、ヒトGDF−5(配列番号:1)、ヒトGDF−6(特許US 5,685,882号からの配列2)及びヒトGDF−7(特許US 5,658,882号からの配列26)の102aaシステイン−ノックドメインの組成物を示す。すべての3つの分子において同一であるアミノ酸残基は、縁取りによって強調されている。
【0093】
図3は、それぞれ公知のBMPs及びGDFsのシステイン−ノットドメインと、ヒトGDF−5のシステイン−ノットドメインの配列同一性に関する表を示す。
【0094】
図4は、天然のpHでのGDF−5ダイマーの静電荷パターンを示す。同様の電荷を有する領域は、同一の色を示す。
【0095】
図5は、有機溶媒中でのGDF−5の乏しい溶解性を示す。GDF−5の添加後に、溶液を、遠心分離し、そして上清のGDF−5含有率をRP−HPLCで調査した。それぞれの割合は、15%未満であり、GDF−5の非常に小さな断片のみが溶液中にあることを示した。
【0096】
図6は、実施例1Aにおいて記載されているポリマーナノ粒子(ダブルエマルション法)の一般的な合成図を示す。
【0097】
図7は、実施例1AによるResomer(登録商標)R2002Hポリマーナノ粒子の反射電子顕微鏡(REM)の写真を示す。
【0098】
図8は、大豆油、ベニバナ油又はオリーブ油から選択される油を含有するGDF−5 LMP調合物の生物学的活性(ALPアッセイによる測定)と、乳化剤ホスファチジルセリンとの21.1mg/mlの濃度での比較を示す。もっとも高い生物活性を有するLMP調合物は、オリーブ油を含む。ODは、吸光度である。
【0099】
図9は、種々の濃度のホスファチジルセリン及びオリーブ油を含有する3つの群のGDF−5 LMP調合物(低値/群1:図で8.44mg/mlで示される、5〜15mg/ml;中間値/群2:21.2mg/mlで示される16〜30mg/ml;高値/群3:42.2mg/mlで示される31〜50mg/ml)の生物学的活性の比較を示す。該群を、実施例2によるALPアッセイ系で試験した。ODは、吸光度である。
【0100】
図10は、実施例5によるSDS−Pageによるタンパク質サイズ分離の結果を示す。封入されたGDF−5を有するLMPペレットを、10分間80℃で加熱し、脂質を安定化した。非常に少ない分解生成物のみが、明らかであり、したがって、ほとんどのGDF−5タンパク質の完全性を示した。
左から右へのレーン:1:マーカータンパク質、3〜5:GDF−5参照標準5μg、0.25μg、0.025μg、6〜8:GDF−5 LMP試料(それぞれ5μg)
図11〜15は、実施例6において記載されている実験の結果を示す。
【0101】
図11は、3つの調合物(20及び200mM NaAc(pH4.0)での2つ水性調合物に対して実施例6において記載されているLMP調合物(pH7.0))の鼻腔内投与後の、CNSにおけるGDF−5濃度と、種々の他の領域との比較を示す。
【0102】
図12は、LMP調合物の鼻腔内投与後の、CNSと種々の他の領域とのGDF−5濃度(nM)の比較を示す。
【0103】
図13は、3つの調合物の鼻腔内投与後の、GDF5の標準化された組織濃度の比較を示す。すべてのnM濃度は、LMP調合物実験において送達されたnmolに対して標準化された(3.16nmol)。
【0104】
図14は、種々の調合物を有する最終血液濃度に関する組織へのGDF5の標的の比較を示す(組織GDF5/血液GDF5)。
【0105】
図15は、種々の調合物を有する筋濃度に関する組織へのGDF5の標的の比較を示す(組織GDF5/筋肉GDF5)。
【0106】
図16は、実施例7A(キャリヤー結合GDF−5)において記載されている勃起機能不全/海綿体神経挫滅モデルによる、ラットにおける陰茎海綿体内圧(ICP)の測定を示す。勃起機能不全は、刺激に対して、149.5±17.0cm H2Oの陰茎海綿体内圧の増加によって明示されるように、未損傷対照群(偽手術群)において全く観察されなかった(図は示されていない)。比較によって、ICPは、損傷させた対照群(21.3±6.7cm H2O)において非常に低減した。GDF−5で処理させた群は、損傷対照動物よりもより高い回復を示した。海綿体神経損傷後に、最大限のICPの増加が、2μgのキャリヤー結合GDF−5で得られた(平均40.8±13.3 H2O)。
【0107】
図17は、実施例7B(LMP調合物GDF−5)において記載された勃起機能不全/海綿体神経挫滅モデルによる機能試験の結果を示す。
【0108】
図18は、実施例7Bによる双方の海綿体神経挫滅外傷の1ヵ月後の、背側の陰茎神経におけるnNOS神経線維、及び体内アポトーシスを示す。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】配列番号:1によるヒトGDF−5前駆体タンパク質の追加の特徴を示す図。
【図2】ヒトGDF−5(配列番号:1)、ヒトGDF−6(特許US 5,685,882号からの配列2)及びGDF−7の102aaシステイン−ノックドメインの組成物を示す図。
【図3】それぞれ公知のBMPs及びGDFsのシステイン−ノットドメインと、ヒトGDF−5のシステイン−ノットドメインの配列同一性に関する表を示す図。
【図4】天然のpHでのGDF−5ダイマーの静電荷パターンを示す。同様の電荷を有する領域は、同一の色を示す図。
【図5】有機溶媒中でのGDF−5の乏しい溶解性を示す
【図6】実施例1Aにおいて記載されているポリマーナノ粒子(ダブルエマルション法)の一般的な合成図を示す図。
【図7】実施例1AによるResomer(登録商標)R2002Hポリマーナノ粒子の反射電子顕微鏡(REM)の写真を示す図。
【図8】大豆油、ベニバナ油又はオリーブ油から選択される油を含有するGDF−5 LMP調合物の生物学的活性(ALPアッセイによる測定)と、乳化剤ホスファチジルセリンとの21.1mg/mlの濃度での比較を示す図。
【図9】種々の濃度のホスファチジルセリン及びオリーブ油を含有する3つの群のGDF−5 LMP調合物の生物学的活性の比較を示す図。
【図10】実施例5によるSDS−Pageによるタンパク質サイズ分離の結果を示す図。
【図11】3つの調合物(20及び200mM NaAc(pH4.0)での2つ水性調合物に対して実施例6において記載されているLMP調合物(pH7.0))の鼻腔内投与後の、CNSにおけるGDF−5濃度と、種々の他の領域との比較を示す図。
【図12】LMP調合物の鼻腔内投与後の、CNSと種々の他の領域とのGDF−5濃度(nM)の比較を示す図。
【図13】3つの調合物の鼻腔内投与後の、GDF5の標準化された組織濃度の比較を示す図。
【図14】種々の調合物を有する最終血液濃度に関する組織へのGDF5の標的の比較を示す図。
【図15】種々の調合物を有する筋濃度に関する組織へのGDF5の標的の比較を示す図。
【図16】実施例7A(キャリヤー結合GDF−5)において記載されている勃起機能不全/海綿体神経挫滅モデルによる、ラットにおける陰茎海綿体内圧(ICP)の測定を示す図。
【図17】実施例7B(LMP調合物GDF−5)において記載された勃起機能不全/海綿体神経挫滅モデルによる機能試験の結果を示す図。
【図18】実施例7Bによる双方の海綿体神経挫滅外傷の1ヵ月後の、背側の陰茎神経におけるnNOS神経線維、及び体内アポトーシスを示す図。
【0110】
実施例:
実施例1:コロイド状GDF−5調合物の開発及び試験
A.ポリマーナノ粒子
多数のポリマーナノ粒子を、GDF−5のためのコロイド状薬物キャリヤー、すなわちresomer(登録商標)(Boehringer Ingelheim、ドイツ国)として、種々の組成物及び分子量で試験した:PLA resomers(登録商標)R202及びR202S(ポリ−(DL)−ラクチド)、PLGA resomers(登録商標)RG502、RG502H、RG503H及びRG504H(ポリ−(DL−ラクチド−コ−グリコリド))。GDF−5のための一般的な酸性溶媒として、10mM HClを使用し、調査された乳化剤は、ポリビニルアルコール(PVA)、ポロクサマー188(P188)及びポリビニルピロリドン(PVP)であった。ナノ粒子の合成を、ダブルエマルション法で、図6によって、無菌条件下で、実施した(すなわちw1−相=10mM HCl142.1μl中でタンパク質500μg、w2−相=水30ml中で乳化剤160mg、o−相=メチレンクロリド3.1ml中でポリマー40mg)。エマルションを、それぞれ40秒間(w1/0)及び2分間(w1/o/w2)音波処理することによって生成した。蒸発による有機溶媒の除去後に、ポリマーの析出及び続いてタンパク質の封入が生じた。粒子サイズは、電子顕微鏡の助けを借りて決定した。乳化剤ポリビニルアルコール又はポロクサマー188と合したResomer(登録商標)R202H粒子(図7)は、粒子の形態及びタンパク質負荷に関して最良の結果を得た。GDF−5で負荷させた粒子の平均サイズは、約320nmであり、平均薬物濃度は、66μg/mg(粒子)であった。しかしながら、封入されたGDF−5の測定された含有率を、所望の薬理学的作用を得るために低くあるべきであると決定した。加えて、細胞培地でGDF−5ナノ粒子の1:20及び1:200希釈での哺乳動物細胞(骨/軟骨始原細胞株MCHT1/26)の生体外治療は、著しい細胞損傷をもたらした。低いタンパク質負荷及び高い細胞毒性のために、試験された有機ナノ粒子は、GDF−5関連タンパク質のための薬物キャリヤーに相応しくないとみなされた。
【0111】
B.混合ミセル
GDF−5関連タンパク質のための他のポテンシャル薬物キャリヤーの混合ミセル(MM)を、pH4.25より上で、薬物負荷能力及びGDF−5の沈澱の防止のためにも試験した。例えば、50mMコハク酸緩衝液(pH4.25)中でオレイン酸及びホスファチジルセリンの当量を含有するMM1mlを、凍結乾燥させたGDF−5の2.5mgを含む管中で移植した。その試料を、30秒間ボルテックスし、そして5分間10ワットの平均電力出力で音波処理して、MMとタンパク質との組合せ物を得た。この混合物を、0.5M NaOH10μlをその溶液に添加するまで、ボルテックスした。10μlを、取り出し、pHを測定するためにpH試験紙状に置いた。NaOHの添加及びpH試験の工程を、pHがpH7.0に達するまで繰り返した。直ぐにNaOHを、明らかに沈澱を開始したタンパク質に添加した。pHを上昇するにつれて、沈澱量は増加した。pH6.0で、沈澱量の増加が止まった。その試料を、14000毎分回転数で遠心分離し、そして全てのタンパク質が溶液から落ちたように見えた。沈澱は、
より多くのNaOHを添加した場合にその溶液が曇ったように、pHの変化に直接関係して、起こった。MMの繰り返し試験は、同様の結果をもたらした。試験されたMM調合物が、pH4.25より上で、GDF−5を可溶化及び安定化することができなかったことが結論づけられた。
【0112】
C.脂質微粒子(LMP):
いくつかの脂質微粒子組成物を、GDF−5のためのコロイド状薬物キャリヤーとして生成し、そして試験した。例えば、オリーブ油22.93μl(21.1mg)を、1.5mlの遠心管中で、ホスファチジルセリンの当量と合した。pH4.25の50mMコハク酸緩衝液956μlを、添加して、合計量を1mlにした。その混合物を、30秒間ボルテックスし、そしてアイス−エタノール浴に置いて、絶えず4℃で温度を保った。その試料を、20秒の循環周期で25%のデューティーサイクルに対して、平均電力出力22ワットで1時間音波処理した。1時間後に、エマルションは、光に当てた場合に琥珀色で透明に見え、エマルション球が、より小さくなり、そして予想された直径約50nmに達したことを示した。この時点で、LMP混合物を、凍結乾燥させたGDF−5タンパク質2.5mgを含むマイクロ遠心管中へピペットで移した。その試料を、該タンパク質が可溶性になるまでボルテックスした。該タンパク質の導入は、不透明になる混合物を生じ、LMPの不完全の破壊を示した。そして、該LMP混合物を、同一の条件下で、さらに45分間音波処理し、明らかな透過性を回復した。この時点で、脂質微粒子混合物を、0.5M NaOHをpH7.0に達するまで10μlずつ添加する間に、低い設定でボルテックスした。そのpHを、少量の溶液をpH試験紙上に置くことによって測定した。沈澱は、滴定の間全く注意せず、脂質微粒子組成物が、中性のpHでさえ、多量のGDF−5(2.5mg/mlまで)を運搬するのに適切であることを示した。
【0113】
GDF−5で負荷させた脂質微粒子のタンパク質含有率を、ビシンコニン酸(BCA)アッセイ(Smith,P.K.et al.(1985年)、Anal.Biochem.150、76〜85頁)によって決定した。GDF−5濃度は、予想された程度の濃度であった(約2.5mg/ml)。
【0114】
実施例2:生物学的活性を試験するアルカリホスファターゼ(ALP)
GDF−5関連タンパク質及びそれらのコロイド状調合物の生物学的活性は、確立された試験系の助けによって簡単に決定させることができる。一般のアルカリホスファターゼ(ALP)アッセイが最も有用であり、かつ好ましい(Takuwa et al.1989年、Am.J.Physiol.257、E797〜E803頁)。この生体外試験系において、GDF−5関連成長因子の生物学的活性を、骨形成原細胞/軟骨形成原細胞を有する成長因子タンパク質の種々の濃度(0、14.8、44.5、133.2、400、1200ng/mL)の共培養後に測定する。GDF−5及び骨/軟骨形成能力を有する関連タンパク質は、これらの細胞、例えばATDC−5、ROB−C26又はMCHT−1/26細胞におけるアルカリホスファターゼ(ALP)発現を増強する。該細胞溶解産物におけるALP活性を、比色アッセイによって決定する。その反応は、アルカリ条件下で黄色いp−ニトロフェノールアニオンとして可視化できるようになる、ニトロフェニルホスフェート(PNPP)とp−ニトロフェノールとの加水分解に基づく。この目的は、試験されたLMP調合物の活性を、公知の濃度のGDF−5の対照基準で得られたALP活性と比較することによって測定することである。
【0115】
標準化されたALPアッセイにおいて、ATDC−5の1×104細胞、又は骨/軟骨形成原細胞系列のMCHT1/26細胞を、37℃、5%CO2、飽和H2Oで、細胞培地(アルファ−MEM、ペニシリン/ストレプトマイシン、2mM L−グルタミン、10%FCS)中で、96ウェルプレートで、一昼夜培養した。翌日、細胞を、GDF−5関連タンパク質又はそれらのLMP調合物で、72時間、指定されたリガンド濃度で、刺激した。続いて、該細胞を、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)で洗浄した。細胞溶解を、アルカリ溶解緩衝液1(0.1Mグリシン、pH9.6、1%NP−40、1mM MgCl2、1mM ZnCl2)100μ中で、1時間室温で実施した。そして、100μlのアルカリ溶解緩衝液2を添加した(0.1Mグリシン、pH9.6、1mM MgCl2、1mM ZnCl2+PNPP2mg/ml)。そのプレートを、37℃、5%CO2、飽和H2Oで培養した。そのALP反応を、その後30g/l NaOH100μlを用いて停止し、そして最終的に、吸光度を、自動マイクロプレートリーダーを使用して、405nmで、空試験値の減法を考慮して測定した。
【0116】
実施例3:RP−HPLC
GDF−5 LMP調合物とGDF−5標準試料との比較のために、及び可能な凝集又は分解についての情報を得るために、分子の極性によって分子を分離することができる、GDF−5 LMP調合物の一般のRP−HPLC解析を使用した。そのクロマトグラフィーは、固定相(カラム:VydacC18、5μm、Phase 218TP52、タンパク質及びペプチド)及び移動相で、高圧下で実施した。クロマトグラフィー中のタンパク質及び潜在している不純物の溶出は、極性(35%アセトニトリルを有する水中で0.15%トリフルオロ酢酸)からより少ない極性(100%アセトニトリルを有する水中で0.15%トリフルオロ酢酸)へ移動相の勾配を経て達成される。RP−HPLC解析のために、その試料を、13000gで10分間遠心分離した。上清を、35%アセトニトリル中で0.15%TFAで希釈した。その試料を、さらに遠心分離し、そしてその上清をRP−HPLCに適用した。
【0117】
GDF−5を、該上清中で全く検知することができず、GDF−5が、脂質で完全に固定され、RP−HPLCによってその試料を解析することができなかったことを示した。
【0118】
実施例4:脂質微粒子調合物の凍結
LMP混合物が凍結に耐えることができるかどうかを決定するために、LMP試料を瞬間凍結した。該試料を、3分間液体窒素中に沈め、そして−70℃冷凍庫に直接移動し、そして24時間保管した。解凍後に、LMPは、認識できる沈澱を示さず、殆どエマルションの完全性の損失のみを示した。その試料は、光に当てた場合に、微粒子の小部分の副分解を意味するわずかに不透明であったが、しかし5分間音波処理が、完全にエマルションを回復した。この単純な再構成法は、LMPエマルションの頑強性を示す。
【0119】
実施例5:タンパク質分解の検出
封入されたGDF−5を有するLMPペレットを、10分間80℃で加熱して、脂質を溶解し、そしてSDS−PAGEによってさらに処理した。タンパク質のサイズ分離は、非常に少ない分解産物のみを示し、大部分のGDF−5タンパク質の完全性を示した。
【0120】
実施例6:GDF−5の脳への鼻腔内送達
血液脳関門及び血液脳脊髄液関門は、中枢神経系疾患、例えばアルツハイマー病又はパーキンソン病を治療するためのニューロトロフィン、例えばGDF−5の単純な血管内投与を防ぐ。これらの研究の目的は、GDF−5が、鼻腔内投与後に、中枢神経系(CNS)に達することができるかどうか決定することである。鼻から脳への鼻腔内送達法は、匂い及び化学薬品を感知することを含む嗅覚及び三叉神経経路を使用する。該経路は、血液脳関門を交差することなしに、脳と外部環境との間の連結を提供する。この実施例は、GDF−5関連タンパク質の水性組成物とそれらの脂質微粒子調合物との鼻腔内投与を比較する。
【0121】
A.水性GDF−5組成物の鼻腔内送達
この対照研究において、雄のHarlan Sprague−Dawleyラット(237±4g)を使用した。ラットを、ナトリウムペントバルビタール(50mg/kg 腹腔内)で麻酔し、そして必要に応じて付加投与量を与えた。ラットを、仰向けにおき、そして体温を、加熱パッド(37℃で設定した直腸熱量検出器)で維持した。薬物送達の開始のために、下行大動脈を、全ての実験群に関してカニューレを挿入した。
【0122】
GDF−5投与:GDF−5を、125I−標識し、そして20mM酢酸ナトリウム緩衝液中で、pH4.25で配合した。鼻腔内投与のために、125I−GDF−5及び未標識GDF−5の混合物を、平均総量113μL(7.0nmol及び38pCi)で2分毎に交互の鼻孔に10μL滴送達した。鼻腔内送達のためのGDF−5の次の調合物を、200mM酢酸ナトリウム緩衝液中で、pH4.0で製造し、そして平均総量91μL(5.2nmol、28pCi)で送達した。血管内投与のために、125I−GDF−5及び未標識GDF−5の混合物を、尾静脈中への注入で送達した。4つの血管内投与量を、20mM、pH4.25調合物を使用して試験した(全投与、1/10投与、11/20投与、及び1/30投与)。それぞれの注入は、総量500μL(食塩水で希釈したGDF)であった。血液採取:薬物投与の開始後に、血液0.1mlの6試料を、下行大動脈から採取した。食塩水(0.25ml)を、採血毎に体積を置き換えた後に、カニューレを介して注入した。
【0123】
潅流及び固定:薬物送達後に、ラットを、0.9%NaCl60mlで、続いて固定液(ソレンソンのリン酸緩衝液で4%パラホルムアルデヒド)350mlによって下行大動脈カニューレを介して潅流した。溶液を、1分毎に15mlで送達した。
【0124】
ガンマ計数を有する125I−標識されたGDF−5の測定:周辺組織及びCNSラット組織を、解剖学的範囲内で解剖した。組織及び血液試料を、Packard Cobra II自動−ガンマ計数器中でのガンマ線計数のためのSarstedt管中に置いた。それぞれの組織試料(nM)におけるGDF−5の濃度を、送達されたGDF−5混合物の標準試料からの1分毎の計数、組織質量、及び比活性測定値を使用して算出した。
【0125】
結果を、図11において示す。黒質(中脳にある)は、パーキンソン病のためのGDF−5治療のための主な標的である一方で、CNS疾患、例えばパーキンソン病を治療するための他の標的は、尾状核/内皮、腹側嗅核、及び嗅球を含む。以上のことをまとめると、結果は、GDF−5が大脳のCNSへ鼻腔内的に送達されうることを確立した。鼻から脳への鼻腔及び三叉経路に沿った送達は、これらの構造における増加されたが比較的低い濃度によって確立された。20mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.25)中でのGDF−5調合物の鼻腔内投与は、約0.1nMの中脳濃度をもたらした。測定値は、鼻腔内投与されたGDF−5の有効部分が、最初に投与された場合に、直接的に外鼻孔の内部に残存したことを示した。結果として、GDF−5を、より高い緩衝液濃度及びわずかに引くpHで、生理学的pHで組織を最初に接触する場合に薬物が溶液で残存する尤度を増加するために、再配合された。200mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.0)で配合された鼻腔内投与されたGDF−5は、脳へGDF−5を送達して、中脳濃度0.25nMをもたらした。血管内投与されたGDF−5は、鼻腔内投与されたGDF−5よりも2倍多い血液露出をもたらしたが、しかし中脳濃度は、半分未満であった。GDF−5の神経保護作用が、1nMで、培養された中脳神経において示されているため、多数(4〜6)のある一定の時間の鼻腔内投与量は、GDF−5の薬理学的に有効な中脳濃度を得るために要求されうる。従って、LMP調合物での鼻腔内調合物の研究が開発され、かつ以下で示すように、GDF−5の脳への非常に高い送達及び標的をもたらした。
【0126】
B.GDF−5 LMP調合物の鼻腔内送達
2つの実験変化を、鼻腔内GDF−5の以前の研究から行った。GDF−5 LMP調合物の増加させた粘度で、以前の許容な研究は、残存物を、麻酔法のためにペントバルビタールの代わりにケタミンカクテルの使用で、並びに下行大動脈のカニューレ挿入による潅流の代わりに経心潅流(transcardial perfusion)を使用して、大いに増加したことを示した。
【0127】
雄のHarlan Sprague−Dawleyラット(237±4g)を、ケタミンHCl150mg(100mg/mLの1.5mL)、キシラジンHCl30mg(20mg/mLの1.5mL)、及びアセプロマジン5mg(10mg/mLの0.5mL)の麻酔カクテルで麻酔し、そして必要に応じて付加投与量を与えた。ラットを、仰向けにおき、そして体温を、加熱パッド(37℃で設定した直腸熱量検出器)で維持した。
【0128】
GDF−5 LMP調合物:1.5マイクロ遠心管における個々の作成のために、オリーブ油45.86μl(42.2mg)、及び100mMコハク酸緩衝液(pH4.25)912μlを添加した。管をボルテックスし、そして次のプロトコルによって、プローブ音波処理機で音波処理した:a)音波処理機のプローブチップを、側面に触れないようにマイクロ遠心管の底部の直ぐ上に置いた;b)試料を、アイス−エタノール浴中で、1時間、平均電力出力22ワットをもたらす20秒の循環周期で25%のデューティーサイクルに対して設定10で音波処理した;c)アイス−エタノール浴を、約12分毎に交換して、約4℃で試料を維持させた;d)1時間後、そのエマルションは、光に当てた場合に琥珀色で透明に見えた。得られたLMPエマルション500μlを、凍結乾燥GDF−5 2.5mlのアリコートを含有するマイクロ遠心管中へ移動した。該管を、同様のプロトコルに従って別の時間音波処理した。この時点で、LMP中で当量の125I−GDF−5とGDF−5を合した。該管を、パラフィルムで覆い、そして2時間、浴音波処理機中で音波処理した。放射線標識させたGDF−5をLMP中に組み込んでから、その試料をpH7.0まで1M NaOHで滴定した。該NaOHを10μl添加し、そしてその時点で、管が閉じるまでボルテックスした。そのpHを、pH試験紙で測定した。投与量を、アリコートし、使用するまで瞬間冷凍した。それぞれの実験の日に、125I−GDF−5を、室温まで融解し、そして投与する1時間前に浴音波処理に置いた。125I−GDF−5を、2分毎に交互の微孔に5μLの滴で、平均総量38.5μL(3.6nmol及び40μCi)で送達した。合計の薬物送達時間は、14分であった。
【0129】
潅流及び固定:薬物送達の開始の約24分後に、ラットを、0.9%NaCl60mlで、続いて固定液(ソレンソンのリン酸緩衝液で4%パラホルムアルデヒド)350mlで経心的に潅流した。溶液を、1分毎に15mlで送達した。
【0130】
ガンマ計数を有する125I−標識されたGDF−5の測定:周辺組織及びCNSラット組織を、解剖学的範囲内で解剖した。組織及び血液試料を、Packard Cobra II自動−ガンマ計数器中でのガンマ線計数のためのSarstedt管中に置いた。それぞれの組織試料(nM)におけるGDF−5の濃度を、送達されたGDF−5混合物の標準試料からの1分毎の計数、組織質量、及び比活性測定値を使用して算出した。
【0131】
結果を、図11〜15に示す。以上のことをまとめると、GDF−5のLMP調合物は、安定であり、かつケタミン麻酔下で鼻腔内に投与された場合にラットは耐性があった。GDF−5のCNSへの鼻腔内投与は、急速(28分以内)であった。高濃度のGDF−5を、嗅球(0.6nM)及び三叉神経(3.5nM)で観察され、CNSへの送達が、それぞれの経路に沿って生じることを示した。脳濃度は、0.14nM〜0.51nMの範囲であった。上部頸髄、並びに腹側の及び背側の硬膜も、高濃度のGDF−5を含んだ。CNS疾患、例えばパーキンソン病及びアルツハイマー病のための治療標的の中脳及び海馬は、それぞれ0.26nM及び0.15nMのGDF−5を含んだ。一般に、吻側脳領域(前頭皮質、尾状核/被核)におけるGDF−5濃度は、尾側脳領域、例えば脳橋、延髄、小脳における濃度よりも低かった(0.5nM)。高粘度のLMPは、呼吸上皮に対してこの粘着性を増加することができた(三叉神経によって刺激された)一方で、上部鼻腔における嗅上皮に達した量を低減した。予想通り、頸部リンパ節は、鼻関連リンパ管からの排液の結果として高濃度のGDF−5(1.3nM)を有した。内部器官については、腎臓が、最も高いGDF−5の濃度(1.3nM)を有した。鼻腔内GDF5−LMPが、血液又は腎臓のどちらかよりも、三叉神経、腹側及び背側の硬膜へのより高い送達をもたらすことに注目すべきである。このデータは、生理学的pH範囲において殆ど又は全く溶解性を有さない治療タンパク質のGDF−5が、開示されている脂質微粒子調合物を使用して、水性媒体中でうまく安定化され、かつ脳へ送達されていることを示している。
【0132】
GDF5−LMPで得た鼻腔内送達のデータと、水溶液で得られた該データとの比較:GDF5−LMPのデータと20mM NaAcのデータとを比較することが最も適切である。それというのも、投与溶液のイオン強度が同一であるからである。GDF−5の鼻腔内投与後の全てのCNS領域への送達は、20mM NaAc溶液でよりもLMP調合物での方が非常に高かった。中脳濃度は、LMPの使用でほぼ9倍増加され、かつ海馬濃度は、5倍増加された。血液濃度は、GDF5−LMPでより高くなったが、このことを考慮に入れてでさえ、不釣合いに、脳橋、中脳、小脳、及び上部頸髄を含む尾側の構造へより多い送達を観察した。増加されたLMPと上皮との接触、及び増加された該調合物の親油性は、おそらく、増加された生物学的利用率をもたらす。CNSのほぼあらゆる領域において、筋肉濃度(全身曝露を示す)に比例したGDF−5組織濃度の割合を、LMP調合物で著しく増加した。
【0133】
嗅上皮におけるGDF−5の濃度は、20mM NaAc調合物と比較して、LMPで約12倍低かった。しかしながら、嗅球濃度は、実際に約2倍だけ高かった。このことは、LMPが、GDF−5の能力を増強して、鼻の上皮から嗅球へ伝わることを示唆する。これは、GDF−5の水溶液が、溶解性のpH閾値(pH4.3)に近いためであってよい。pHの上昇は、該水溶液が鼻の上皮に接する場合に、おそらく、大いに低減されたGDF−5の溶解性をもたらす。加えて、神経経路に沿って鼻腔からCNSへ伝わるGDF−5に関しては、中性のpH環境を移動しなければならない。前記のLMP調合物は、鼻腔から脳へのその輸送を高める中性のpHでGDF−5を安定化する環境を提供する。
【0134】
実施例7:勃起機能不全の齧歯類モデルにおける、血管形成、及び海綿体神経の再生を媒介させるGDF−5
神経損傷の治療における注入されたGDF−5 LMP調合物との比較におけるキャリヤー−投与GDF−5タンパク質の効果/相違を決定するために、海綿体神経損傷のラットモデルを使用した。海綿体神経又は勃起神経は、Potencyのために必要である。
【0135】
A.キャリヤー−投与GDF−5
この対照研究において、GDF−5タンパク質の通常の投与経路を使用した:GDF−5でふかさせたコラーゲンスポンジの移植。それぞれ8週齢のSprague Dowleyラットを有する4群を使用した。群1は、偽手術(開腹手術群1)を、群2〜4は、双方の海綿体神経(神経海綿体)挫滅を行った。その手術を、2〜3%イソフルオラン麻酔下で行った。Isothermiaを、加熱パッド状にラットを置くことによって37℃で維持した。前立腺を、下側の腹部正中切開によって露出した。前立腺周囲解剖後に、海綿体神経及び主要な骨盤神経節を、後外側的に、前立腺のどちらかの側面上で決定した。未損傷対照(擬似)は、それ以上の操作を行わなかった。残っている群において、海綿体神経を、分離し、そして片面毎に2分間、止血クランプを使用して挫滅した。その後陰茎を露出し、そして右陰茎海綿体を、外科用ブレードを使用して2mm切開した。GDF−5の適切なレベルを含むコラーゲンスポンジを含浸させた3×3mmのGDF−5を、移植した。群は:コラーゲンスポンジのみ(ビヒクル対照/群2)、コラーゲンスポンジ(3cm3)+2μg GDF−5(低投与量群3)、又はコラーゲンスポンジ(3cm3)+20μg GDF−5(高投与量/群3)であった。陰茎海綿体を、被吸収性7/0縫合糸を使用して閉じた。その腹部を、二層で閉じた。
【0136】
手術の8週間後に、勃起機能を、機能性試験によって、例えば海綿体神経の電気刺激、続く勃起の発生によって試験した。海綿体神経の刺激及び陰茎海綿体圧を、実施例7Bにおいて記載されているように実施した。
【0137】
以上を要約すると、キャリヤー結合GDF−5の適用は、勃起機能の回復を適度に高め、その際、2μgの投与量が、神経再生の最も見込みのある結果を示していた。GDF−5で処理された群は、損傷対照動物よりも高い陰茎海綿体圧を示した(図16を参照)。勃起機能不全は、未損傷対照群(擬手術群)において観察されなかった。勃起機能不全は、刺激に対して、149.5±17.0cm H2Oの陰茎海綿体内圧の増加によって明示されるように、未損傷対照群(偽手術群)において全く観察されなかった。比較によって、ICPは、損傷させた対照群(21.3±6.7cm H2O)において非常に低減した。海綿体神経の損傷後に、勃起機能の回復は、低濃度(2μg)のGDF−5治療群で最大であった。最大のICPの増加は、損傷対照群と比較して91.5%の増加の2μgのキャリヤー結合GDF−5に関する40.8±13.3cm H2Oであった。
【0138】
B.この研究を、LMPを基礎とするGDF−5調合物の有効な効果を評価するために設定した。それぞれ8週齢のSprague Dowleyラットを有する6群を使用した。全ての動物は、外科的手術を行う前に、麻酔を受けた。群1は、擬手術(開腹手術群1)を、群2〜6は、双方の海綿体神経挫滅を行った。群2(対照)は、全ての調合物を受けず、群3〜6は、オリーブ油21.1mg/ml、ホスファチジルセリン21.1mg/ml(実施例1Cを参照)、及び付加的に0μg(ビヒクル)、0.4μg(低濃度)、2μg(中間濃度)または10μg(高濃度)のGDF−5を含有する脂質微粒子調合物を受けた。
【0139】
その手術を、2〜3%のイソフルオラン麻酔下で行った。Isothermiaを、加熱パッド状にラットを置くことによって37℃で維持した。前立腺周囲解剖後に、海綿体神経及び主要な骨盤神経節を、後外側的に、前立腺のどちらかの側面上で決定した。未損傷対照(擬似)は、それ以上の操作を行わなかった。残っている群において、海綿体神経を、分離し、そして片面毎に2分間、止血クランプを使用して挫滅した。その後陰茎を露出し、そしてGDF−5の種々の量を含有する脂質微粒子調合物10μlを、33Gの針(Hamilton、Reno、NV)を介して右陰茎海綿体中に注射した。該右陰茎海綿体を、被吸収性7/0縫合糸を使用して閉じた。その腹部を、二層で閉じた。
【0140】
手術の8週間後に、勃起機能を、機能性試験によって、例えば海綿体神経の電気刺激、続く勃起の発生によって試験した。繰り返しの腹部正中切開後に、海綿体神経を、露出して、そして分離した。次胃、その陰茎を、分離し、そして23翼状針を左の下腿中に刺して、陰茎海綿体圧(ICP)を測定した。ヘパリン溶液250U/mlで満たした針を、圧力変換器に接続した。そのICPを、10試料/秒の測度で、センサ入力モジュールを使用して記録した。二極性のステンレス−鋼フック電極を使用して、海綿体神経を直接し激した(それぞれの極は直径0.2mmで、1mmだけ隔てられた)。特注の定電流増幅器を有する単一発電機は、単相性矩形パルスを生じた。その刺激パラメータは、1.5mA、20Hz、パルス幅0.2ms、及び持続時間50秒であった。それぞれのラットにおける最大ICPを、双方側の平均ピークICPとして決定した。
【0141】
機能試験の結果(図17を参照):GDF−5 LMP調合物の注入は、神経再生及び勃起機能の回復を劇的に高め、その際、投与量0.4μgのGDF−5が、最も効果的であり、かつ損傷対照群と比較して566%の増加を示した。標準誤差の考慮後に、この群の最大ICP値(99.87±30.56)は、著しく健康なラットの値(擬群、111.15±29.69)と異ならなかった。対照的に、ICPは、損傷対照群において深刻に減少した(14.99±6.78 H2O)。
【0142】
GDF−5で処理した他の群も、損傷対照動物と比べてより高い陰茎海綿体圧を示した。最大のICP増加は、損傷対照群と比較して381%の増加の、2μgキャリヤー結合GDF−5に関して72.11±35.8cm H2Oであった。10μgのGDF−5吻において、平均値は、26.92±20.16(+79.6%)であった。
【0143】
加えて、神経再生、並びに有意な新血管新生を、組織学的/顕微鏡的に確立した。背側陰茎におけるニューロンの酸化窒素合成酵素(nNOS)含有線維の数を決定するために、肉体の解剖された組織を、冷たい2%ホルムアルデヒド、0.1Mリン酸緩衝液中で0.002%ピクリン酸で4時間固定し、そして30%スクロースを含有する緩衝液で一昼夜液浸した。組織を、OCT化合物で凍結し、そして使用するまで−70℃で保存した。断片を、5ミクロンで切断し、荷電させたスライドに付着させ、5分間空気乾燥し、そして0.05Mリン酸緩衝食塩水(PBS)で再水和した。断片を、過酸化水素/メタノールで処理し、内在性のペルオキシダーゼ活性を消滅した。水洗いした後に、断片を、PBSで洗浄し、続いて3%ヤギ血清/PBS/0.3トリトンX−100で30分間室温でインキュベーションした。断片から溶液を抜き取った後に、組織を、室温で、ウサギのポリクローン性の耐−nNOS(1:800、Cayman Chemicals、Ann Arbor、Ml)で一昼夜インキュベートした。洗浄後、断片を、chromagenのジアミノベンジジンで、アビジン−ビオチン−ペルオキシダーゼ法(Elite ABC;Vector Laboratories、Burlingame、CA)を使用してイムノ染色し、続いてヘマトキシリンで後染色した。該染色を、400×の倍率で背側陰茎におけるnNOS陽性神経線維の数を数えることによって評価した(神経周辺の染色は、計数に含まれなかった)。
【0144】
陰茎海綿体組織におけるアポトーシスの定量化のために、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ−媒介dUTP−ビオチンニック末端標識(TUNEL)を、製造者の仕様書によって、TUNELアポトーシス検出キット(Chemicon、Temecula、CA)を使用して実施した。画像解析のために、5つの無作為に選択された動物に対する海綿体組織の場を、写真に撮り、そして400×の倍率で、Nikon E300顕微鏡(Nikon Instruments、Melville、NY)に取り付けたRetiga1300デジタルカメラ(Qlmaging、Surrey、カナダ)を使用して記録した。画像を、Image−ProPlus5.1ソフトウェア(Media Cybernetics、Bethesda、MD)で解析して、シグナルを定量化した。
【0145】
背側神経の組織学を、未損傷対照と比較して、損傷対照群における挫滅損傷後に、nNOS−陽性線維の有意な欠損を示した(図18)。GDF−5治療は、投与依存型におけるnNOS含有神経線維を保護した。低濃度GDF−5で処理された動物は、損傷対照と比較した場合に、極めて多数のnNOS−陽性線維を有した。中間濃度群における動物は、損傷対照と比べてより多くのnNOS−陽性線維を有したが、しかし、差異は、系統的有意に達しなかった。損傷対照と比較して、高濃度群で染色したnNOSにおける有意差はなかった。
【0146】
海綿体アポトーシスは、CN挫滅後に、極めて増加した(図18)。GDF−5注射は、投与依存型におけるTUNEL−陽性細胞の数を減少した。中間及び低い濃度のGDF−5で処理された動物は、著しい耐アポトーシス効果を示し、その際、低濃度GDF−5が、最も効力があった。高濃度GDF−5で処理された動物は、損傷対照と比較した場合に、著しいアポトーシスの増加を示した。
【0147】
実施例8:他のコロイド状調合物の開発及び試験
本発明の脂質微粒子組成物を、中サイズ又は大きいタンパク質でさえ、たとえばGDF−5のためのコロイド状薬物キャリヤーとして巧く試験した(実施例1を参照)。それらは、異なる化学及び物理特性を有してよい、同様又はより小さなサイズの他の物質のための好適な薬物キャリヤーでもある。いくつかの制限されない例を、以下で示す。
いくつかの物質の溶解性を増加して、その治療可能性を高めるための取り組みにおいて、該物質を、以下のようにLMP中へ取り込んだ:
(a)ホスファチジルセリン21.2mg、オリーブ油22.93μL(21.1mg)、及び50mMコハク酸緩衝液(pH4.25)956μLを、1.5mLマイクロ遠心管へ添加した。
b.該管を、しばらくボルテックスした。
c.その試料を、アイス−エタノール浴へ置き、約4℃の温度を保った。
d.プローブ音波処理機のチップを、マイクロ遠心管の底部のすぐ上に置いた。音波処理機のチップが、管の側面又は底部に触れていないことを確かめた。
e.その試料を、平均電源出力22ワットを生じる、20秒間で25%運転サイクルに対して10の設定で2時間音波処理した。
f.そのアイス−エタノール浴を、12分毎に変えて、温度を維持した。
g.2時間後、そのエマルションは、透明に見えた。光に当てた場合に、LMP溶液は、琥珀色に見えた。
h.該溶液を、4分間、12000rpmで遠心分離して、プルーブチップによって残されたあらゆる金属粒子を除去した。
i.LMP1molを、きれいな1.5マイクロ遠心管に移した。
【0148】
この工程(i)の後に、封入させるための物質を、管に添加した(工程j〜oを参照)。
【0149】
8a.ポリフェノール
ポリフェノールは、1分子に対して1つ以上のフェノール群の存在によって特徴付けられる、植物中に見出される化学物質の群である。その用語は、タンニン、リグニン及びフラボノイドを含む。例えば、フラボノイドミリセチンは、本発明のコロイド状薬物キャリヤー中へ巧く取り込まれうる。ミリセチン(C15108、MW318.24)は、抗酸化剤及び抗炎症性を有するとして公知の、多くの食物源において見出される天然に生じるフラボノイドである。生体外研究は、高濃度のミリセチンが、前立腺癌の罹患率を低減し、かつ白血球摂取を増加することによってLDLコレステロールを改質することを示唆している(Knekt et al.2002年 Am.J.Clin.Nutr.76(3):560〜568頁)。ミリセチンは、アミロイド形成能力を有することも示されており、かつアルツハイマー病及び神経変性を予防又は治療するために役立ってよい(Ono et al.2003年 J.Neurochem 87(1):172〜181頁)。その治療可能性にもかかわらず、ミリセチンは、非常に限られた水溶性を有する。結果に基づいて、水中でのミリセチンの溶解性は、0.065mg/mLである。ミリセチンの溶解性を増加して、その治療可能性を高めるために、ミリセチンを、次のように、脂質粒子中へ取り込んだ:
j.ミリセチン1mgを、前記管に添加し、そしてボルテックスして合した。その混合物は、明るい黄色及び不透明に見えた。
k.そのミリセチン混合物を、アイス−エタノール浴に再度置き、そしてプローブ音波処理機に取り付けた。
l.該混合物を、同様の設定で2.5時間音波処理し、再度アイス−エタノール浴を12〜15分毎に入れ替えた。
m.2.5時間後、その溶液は、金色及び透明に見えた。
n.該溶液を、再度5時間12000rpmで遠心分離して、あらゆる金属粒子を取り除いた。
o.そして該溶液を、1M NaOHでpH7まで滴定した。その金色は深まり、そして完全に透明のままであった。
【0150】
ミリセチンを、1mg/mlで巧く製造し、そして前記の脂質微粒子調合物を使用してpH7で安定化した。天然pHでのミリセチンの水溶性は、この新しい調合物を使用して15.4倍増加された。天然pHでのミリセチンのさらに高い濃度は、そのLMP調合物を使用して得られてよい。このことは、抗酸化剤及び耐炎症性としてのミリセチンの治療潜在性を、大きく改良した。
【0151】
8b.ビタミン
ヒトにおいて、ヒトの体内で製造されることができない13種類のビタミンがある:4種類の脂溶性ビタミン(A、D、E及びK)及び9種類の水溶性ビタミン(8Bビタミン及びビタミンC)である。
【0152】
ビタミンEは、重要な抗酸化剤でもある脂溶性ビタミンである。化学的に、ビタミンEは、水素原子を寄与し、かつ遊離基を低減するヒドロキシル基を含む。その疎水性側鎖は、ビタミンEが、生体膜を貫通することを可能にするが、しかし実際には水性媒体中に不溶のままでもある。ビタミンEは、8個の形で生じる:4個のトコフェロール及び4個のトコトリエノールである。特に、アルファトコフェノールが、ヒトにおいて使用されるビタミンEの最も活性のある形として、しばしば認識される。ヒトにおける欠乏は、特に神経学的問題を誘導しうる。ビタミンEの溶解性の増加は、その治療可能性を増加することができ、かつ欠乏問題を解決するためにも役立ってよい。
【0153】
溶解性を増加するための取り組みにおいて、ビタミンEを、次のように脂質LMP中へ取り込んだ:
j.ビタミンE5μL(4.65mg)を、前記管へ添加し、そしてボルテックスして合した。
k.そのビタミンE混合物を、再度アイス−エタノール浴へ置き、そしてプローブ音波処理機に取り付けた。
l.該混合物を、同様の設定で2.5時間音波処理し、再度アイス−エタノール浴を12〜15分毎に入れ替えた。
m.2.5時間後に、その溶液は透明に見えた。
n.該溶液を、再度5時間12000rpmで遠心分離して、あらゆる金属粒子を取り除いた。
o.そして該溶液を、1M NaOHでpH7まで滴定した。その溶液は、完全に透明のままであった。
【0154】
ビタミンEは、4.65mg/mlで巧く製造され、かつ前記の脂質微粒子調合物を使用してpH7で安定化した。天然pHでのビタミンEの水溶性は、この新しい調合物を使用して大いに増加された。天然pHでのビタミンEのさらに高い濃度は、そのLMP調合物を使用して得られてよい。
【0155】
8c.ペプチド/タンパク質
ペプチド及びタンパク質も、疎水性アミノ酸、例えばPhe、AIa、Leu、Met、lie、Trp及びProの存在によって、しばしば低減された水溶性を示す。例えば、Leu−Leu−Leuは、疎水性の必須アミノ酸ロイシンの3個の基本単位からなるトリペプチドである。化学式C183534及び分子量357.49を有するLeu−Leu−Leuは、限られた水溶性を有する小さな分子である。結果に基づいて、水中でのLeu−Leu−Leuの溶解性は、〜2.5mg/mlである。乏しい水溶性は、個の分子の治療可能性を制限する。
【0156】
Leu−Leu−Leuの水溶性を増加してその治療可能性を高める取り組みにおいて、Leu−Leu−Leuは、次のように脂質微粒子中へ取り込まれる:
j.Leu−Leu−Leu8mgを、前記管へ添加し、そしてボルテックスして合した。その混合物は、白色及び不透明に見えた。
k.そのLeu−Leu−Leu混合物を、再度アイス−エタノール浴へ置き、そしてプローブ音波処理機に取り付けた。
l.該混合物を、同様の設定で2.5時間音波処理し、再度アイス−エタノール浴を12〜15分毎に入れ替えた。
m.2.5時間後に、その溶液は透明に見え、光に当てた場合に、琥珀色に見えた。
n.該溶液を、再度5時間12000rpmで遠心分離して、あらゆる金属粒子を取り除いた。
o.そして該溶液を、1M NaOHでpH7まで滴定した。その溶液は、完全に透明のままであり、かつ結晶化は起こらなかった。
【0157】
Leu−Leu−Leuは、8mg/mlで巧く製造され、かつ前記のLMP調合物を使用してpH7で安定化した。天然pHでのLeu−Leu−Leuの水溶性は、この新しい調合物を使用して3倍以上に増加された。天然pHでのELeu−Leu−Leuのさらに高い濃度は、そのLMP調合物を使用して得られてよい。該LMP調合物は、Leu−Leu−Leu及び疎水性の特徴を有する他のペプチド/タンパク質の治療可能性を大いに改良した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療化合物、脂質キャリヤー、及び乳化剤を含有する水性コロイド状脂質微粒子(LMP)の医薬品組成物。
【請求項2】
a)水、
b)非生理学的pHの水性媒体中の治療化合物、
その際、がい治療化合物の少なくとも1つの成分は、疎水性であり、かつ実質的に生理学的に認容性のpHで水性媒体中で不溶性及び/又は沈澱しやすい、
c)少なくとも1つの脂質キャリヤー、
d)少なくとも1つの乳化剤、及び
e)少なくとも1つの賦形剤
を含む医薬組成物であって、前記賦形剤を、生理学的pHまでの該医薬組成物の滴定を可能にし、そのpHで維持する量で含み、該医薬組成物が、前記治療化合物と比較して、生理学的に認容性のpHで水溶液中で可溶性であり、かつ沈澱されにくい、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
生理学的に認容性のpHが、4〜8.5の範囲内である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
より好ましくは、生理学的に認容性のpHの範囲が、5〜7.5である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記の医薬組成物が、0.2〜100μmのサイズを有する脂質微粒子を含む、請求項1から4までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記の脂質微粒子が、脂質ナノスフェアである、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記の治療化合物が、成長因子、ニューロトロフィン、ハリネズミタンパク質、TGF−ファミリーのタンパク質、抗体、ホルモン、酵素、膜酵素、リポタンパク質及び受容体からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質を含有する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
該治療化合物が、少なくとも1つのGDF−5関連タンパク質を含有する、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記のGDF−5関連タンパク質が、ヒト全長GDF−5(配列番号:1)、シグナルペプチドを欠失しているヒト全長GDF−5(配列番号:1のアミノ酸28〜501)、ヒト成熟GDF−5(配列番号:1のアミノ酸382〜501)、ヒト成熟組換えGDF−5(配列番号:1のアミノ酸383〜501)、ヒトGDF−5のシステイン−ノット領域を含有するタンパク質(配列番号:1のアミノ酸400〜501)、ヒト成熟モノマーGDF−5(配列番号:2)からなる群から選択される、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記の治療化合物が、ペプチドを基礎とする薬物、油、リン脂質、抗酸化剤、耐炎症性化合物、ビオフラボノイド、ポリフェノール、ビタミン、糖脂質、ポルフィリン、抗生物質、抗ウイルス剤、抗うつ剤、抗不安薬、向精神薬、化学療法化合物、ミリセチン、エストロゲン、プロゲステロン、テストステロン、セラミドトリヘキソシド、天然スフィンゴミエリナーゼ、及び栄養補助食品からなる群から選択される1つ以上の物質を含む、請求項1から9までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記の脂質キャリヤーが油である、請求項1から10までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
該脂質キャリヤーが、オリーブ油、大豆油、綿実油、大豆油、ゴマ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、アボガド油、ピーナッツ油、クルミ油、アーモンド油及びヘーゼルナッツ油からなる群から選択される合成油又は植物油である、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
該脂質キャリヤーの濃度が、16〜30mg/mlの範囲である、請求項1から12までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記の乳化剤が、リン脂質、蒸留モノグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリドの酢酸エステル、モノグリセリドの有機酸エステル、脂肪酸のソルビタンエステル、脂肪酸のプロピレングリコールエステル、及び脂肪酸エステルのポリグリセロールエステルからなる群から選択される、請求項1から13までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記のリン脂質が、ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン及びホスファチジルエタノールアミンからなる群から選択される、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記の乳化剤の濃度が、16〜30mg/mlの範囲である、請求項1から15までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
生理学的pHまでの医薬組成物の滴定を可能し、生理学的pHで維持する少なくとも1つの賦形剤が、
a)所望の生理学的pHまで該医薬組成物の滴定を可能にする十分な量で酸又は塩基物質、及び/又は
b)所望の生理学的pHまで該医薬組成物の滴定を可能にし、かつ所望の生理学的pHを維持する十分な量での緩衝液
を含む、請求項1から16までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
さらに、少なくとも1つの抗酸化剤を含有する、請求項1から17までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記の抗酸化剤が、ビタミンE、ビタミンC及びビオフラボノイド化合物からなる群から選択される、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
さらに、少なくとも1つの臭気物質を含有する、請求項1から19までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記の臭気物質が、アデニル酸シクラーゼ、グアニル酸シクラーゼ、イソ吉草酸オクチル、セトラルバ、シトロネロール、アミルシンナムアルデヒド、CIS−ジャスミン、ジャスマル、及びムスク89からなる群から選択される、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
請求項1から21までのいずれか1項に記載の医薬組成物の製造方法。
【請求項23】
pH4.0〜8.5で、血液及び/又は水溶液中での治療剤の沈澱の予防方法。
【請求項24】
疎水性であり、実質的に生理学的pHで水性媒体中で不溶性及び/又は沈澱にしやすい、治療剤の溶解性を増加する方法であって、その際、
a)水性緩衝液中で、非生理学的pHで、該治療剤を溶解すること、
b)治療剤溶液を凍結乾燥すること、
c)脂質キャリヤー及び乳化剤を含むコロイド状治療剤キャリヤー溶液を製造すること、
d)コロイド状薬物キャリヤー溶液が、実質的に水性緩衝液中に溶解させた治療剤のpHと同一であるpHを有することを確実にすること、
e)凍結乾燥させた治療剤溶液とコロイド状治療剤キャリヤー溶液とを合すること、
f)合された凍結乾燥させた治療剤溶液とコロイド状治療剤キャリヤー溶液とのpHを、生理学的pHまで調節して、医薬組成物を製造すること、
を含む方法。
【請求項25】
請求項1から21までのいずれか1項に記載の医薬組成物の有効量を哺乳動物の体に送達する方法。
【請求項26】
請求項1から21までのいずれか1項に記載の医薬組成物を患者の鼻腔内に投与することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
該医薬組成物を患者の鼻腔の底部へ投与して、医薬品を三叉神経経路に沿って中枢神経系に送達することを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
該医薬組成物を患者の鼻腔の3分の1に鼻腔内投与することによって、患者へ投与することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
該医薬組成物を、口、皮膚、眼球、結膜、舌下、非経口、直腸、眼球、肺、耳、膣、移植可能異物及び表面投与から選択される、少なくとも1つの投与経路によって患者に投与することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
該医薬組成物を、注入ポンプによって、皮下、筋肉内及び血管内投与からなる群から選択される送達及び/又は注入経路によって投与することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
該医薬組成物を、体循環、リンパ節、三叉神経、嗅神経及び中枢神経系からなる群から選択される1つ以上の標的へ投与することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
該医薬組成物を、患者の粘膜及び/又は患者の皮膚によって許容される生理学的pHで製造することを含む、請求項25から31までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
さらに、
a)該医薬組成物の、嗅上皮及び嗅球、並びに吻側脳構造への送達を低減すること、並びに
b)該医薬組成物の、呼吸上皮、三叉神経、尾側脳構造、上部脊髄、髄膜及びリンパ管からなる群から選択される1つ以上への送達を標的にすること
を含む、請求項25から32までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
さらに、該医薬組成物の粘度を増加して、該医薬組成物の、嗅上皮及び嗅球、並びに吻側脳構造への送達を低減し、かつ該医薬組成物の、呼吸上皮、三叉神経、尾側脳構造、上部脊髄、髄膜及び/又はリンパ管への送達を標的にすることを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
パーキンソン病の予防及び/又は治療のための、請求項25から34までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
中脳を標的とすることを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
小脳性運動失調症の予防及び/又は治療のための、請求項25から34までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
さらに、小脳を標的とすることを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
脊髄損傷の予防及び/又は治療のための、請求項25から34前のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
脊髄を標的とすることを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
脳幹神経膠腫の治療のための、請求項25から34までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
脳幹を標的とすることを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
三叉神経痛疾患の予防及び/又は治療のための、請求項25から34までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
三叉神経を標的とすることを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
中枢神経系疾患、外傷性脳損傷、脊髄損傷、虚血、脳卒中及び神経変性からなる群から選択される損傷又は疾患の予防及び/又は治療のための、請求項25から34までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記神経変性が、パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症及びハンチントン病からなる群から選択される1つ以上の疾患に関連する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記の治療剤が、さらに、セラミドトリヘキソシダーゼを含有する、請求項25から46までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
ファブリ病、アルファ−ガラクトシダーゼA欠乏症、アンダーソン−ファブリ病、及び広汎性体幹角化血管腫からなる群から選択されるリソソーム性蓄積症の予防及び/又は治療のための、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記治療剤の脳の後部への送達を標的とするための方法であって、
a)水性緩衝液中で、該治療剤を溶解すること、
b)該治療剤の溶液を凍結乾燥すること、
c)脂質キャリヤー及び乳化剤を含有するコロイド状治療剤キャリヤー溶液を製造すること、
d)コロイド状薬物キャリヤー溶液が、実質的に水性緩衝液中に溶解させた治療剤のpHと同一であるpHを有することを確実にすること、
e)凍結乾燥させた治療剤溶液とコロイド状治療剤キャリヤー溶液とを合して、医薬組成物を製造すること、かつ
f)該医薬組成物の粘度を増加して、該医薬組成物の、嗅上皮及び嗅球、並びに吻側脳構造への送達を低減し、かつ該医薬組成物の、呼吸上皮、三叉神経、尾側脳構造、上部脊髄、髄膜及びリンパ管への送達を標的にすること
を含む方法。
【請求項50】
損傷又は罹患させた哺乳動物組織に関連する疾患の予防及び/又は治療のための医薬組成物の製造のための、請求項1から21までのいずれか1項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項51】
前記疾患が、全身性疾患である、請求項50に記載の使用。
【請求項52】
前記の全身性疾患が、骨粗鬆症である、請求項51に記載の使用。
【請求項53】
前記の損傷又は罹患させた組織が、骨、軟骨、腱、靱帯、神経組織、歯周及び歯組織、象牙質、筋肉、皮膚、椎間板及び血管組織からなる群から選択される、請求項47に記載の使用。
【請求項54】
請求項1から21までのいずれか1項に記載の医薬組成物の使用であって、血管形成の誘導のため、創傷治癒のため、半月板修復のため、骨格要素に対する関節に関する変性疾患の治療のため、脊髄/椎間板修復、神経間隙修復を刺激するため、脳卒中、外傷性脳損傷及び脊髄損傷を含む外傷及び/又は虚血からなる群から選択されるCNS損傷にかかっている哺乳動物における中枢神経系機能の回復を高めるため、並びに/又は中枢又は末梢神経系の神経変性疾患の予防及び/又は治療のための、医薬組成物を製造するための使用。
【請求項55】
前記の神経変性疾患が、パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症、神経AIDS及びハンチントン病からなる群から選択される、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
尿生殖器系の疾患の予防又は治療のための医薬組成物の製造のための、請求項1から21までのいずれか1項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項57】
前記疾患が、骨盤底に位置する損傷された神経に関連する、請求項56に記載の使用。
【請求項58】
該疾患が、仙骨神経、陰部神経及び/又は海綿体神経からなる群から選択される損傷された神経に関連する、請求項56に記載の使用。
【請求項59】
前記の尿生殖器系の疾患が、血管新生の欠乏に関連する、請求項56に記載の使用。
【請求項60】
前記の尿生殖器系の疾患が、骨盤底に位置する欠陥のある筋肉及び/又は結合組織に関連する、請求項56に記載の使用。
【請求項61】
前記の尿生殖器の疾患が、骨盤痛、尿/便制御疾患、及び/又は性機能不全からなる群から選択される、請求項56に記載の使用。
【請求項62】
前記疾患が、失禁及び勃起機能不全から選択される、請求項56に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2010−509193(P2010−509193A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533721(P2009−533721)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【国際出願番号】PCT/EP2007/009198
【国際公開番号】WO2008/049588
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(596157104)ビオファルム ゲゼルシャフト ツア ビオテヒノロギッシェン エントヴィックルング フォン ファルマカ ミット ベシュレンクテル ハフツング (3)
【氏名又は名称原語表記】Biopharm Gesellschaft zur biotechnologischen Entwicklung von Pharmaka mbH
【住所又は居所原語表記】Czernyring 22,D−69115 Heidelberg,Germany
【出願人】(509116163)ヘルスパートナーズ リサーチ ファウンデーション (1)
【氏名又は名称原語表記】HealthPartners Research Foundation
【住所又は居所原語表記】8170 33rd Avenue South, P.O.Box 1309, Mineapolis, MN 55440−1309, United States of America
【Fターム(参考)】